委員会での発言
法務委員会
第159回国会 衆議院 法務委員会 第23号 2004年05月11日(火)
午前十時一分開議
○柳本委員長
 御苦労さん。
 柴山昌彦君。

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦と申します。
 埼玉地区から今回の補選で当選させていただきましたが、従前、弁護士をしていたということで、水野参考人の先ほどの御説明で私の質問しようとしていたことがすべて解消されてしまったような部分もございまして、今さら何を聞けばいいのかという部分もあるんですけれども、今回の政府の改正案については、特に実務家の目から見れば、先ほどおっしゃった被告適格の緩和、あるいは争点整理の段階から釈明処分という形で、行政庁の手持ち資料を積極的に開示するという形で、立証責任の転換を図ることなく武器対等ということになるべく近づこうとしている、このような点も含めて、また義務づけ訴訟の導入も含めて非常に評価できる点が多いとは考えております。
 ただ、若干私としても疑問に思っている点が残っていますので、これについて、ほとんど時間がないんですけれども、幾つか質問をさせていただければと思います。
 まず第一点は、従前、原告適格については非常にいろいろなところでさまざまな議論がなされていて、今回は原告適格の判断のための文言上の要件という形で補充が行われた。ただ、そこで示された四要件のうち、結局、従来の判例の整理だけで、実のあるのは最後の四番目の不利益の部分だけではないかというような声も聞こえてくるんです。
 まず、三人の参考人の先生方にお聞きしたいのは、このような不利益あるいは原告の害される利益というものの中で、それが憲法上の利益をダイレクトにしんしゃくすることができるのか。関連法律とかそういう問題をしんしゃくすることなく、例えば処分の根拠法あるいは趣旨を共通にする法律以外の、例えば環境の問題あるいは騒音、景観、そういったものについても憲法上ダイレクトに原告適格を判断するのにしんしゃくすることが今度の改正法によってできるのかという点について、まず先生方にお聞きしたいと思います。

○塩野参考人
 私は、行政法の定義として、憲法的価値の実現の技術に関する法であるというふうに講義もいたしましたし、教科書にも書いてあります。その枠内で考えるということであれば、基本権というのは当然にその考慮の対象になるということであると思います。
 ドイツにおきましては、基本権の考慮義務というものを原告適格の拡大の一つのてこにして動いてまいりました。ただ、それでは、基本権が何でもすべて、根拠法規の処分要件の解釈の問題でございますから、それとおよそ関係のない基本権を持ち出してきてこれで認めろといっても、それはなかなか裁判所としては認めがたいところでありましょうし、あるいは今度の四項目についても、そこは憲法的なことは直接には書いてございませんけれども、およそ関係のないものを持ち出してくるということにはならないのではないかと思います。
 しかし、繰り返して申しますけれども、憲法的価値の実現の技術に関する法が行政法であるということを御理解いただきたいと思います。

○藤川参考人
 お答えいたします。
 大変難しい問題で、私のような法律の素人には答えられるかどうかわかりませんが、そうであってほしいし、そうあるべきだというのが私の基本的な考えでございます。
 今御指摘のありました、例えば環境の問題です。
 私は三年ほど四国に赴任したことがあるんですが、そのときに白砂青松の浜辺を埋め立てるという問題がありました。埋め立てて工業用地をつくる、そのときに、漁業補償、これは公有水面埋立法に基づいた補償対象ですから彼らの同意が必要なんですが、そうではなくて、朝に晩に海岸に出て浜辺を散歩したり、海水浴を楽しんだり、潮干狩りをしたり、そういう人にその埋め立てをちょっと待ってくれという権利があるかどうかというのが非常に問題になった。ところが、今の、これまでの考え方だと、それはだめですよということだと思います。
 今御指摘のように、憲法十三条に基づく人格権なり環境権という考え方からすると、私はそれを認めてもいいのじゃないかという気がします。そういう行政訴訟法であるべきではないかという気がいたしますので、その憲法上の権利あるいは憲法上の利益がここに書きました考慮すべき利益とすごいストレートにつながるかどうか、これは学者じゃないのでわかりませんけれども、そういうものを実現する行政訴訟制度であってほしいという気がいたします。

○水野参考人
 今回の、九条二項を設けたことによってどれだけ原告適格が広がるのかという御趣旨でございます。
 おっしゃるように、一から三まではこれまでの判例が認めてきたとおりじゃないか、四だけが多少広がる可能性があるか、こういう先生の問題意識で、御指摘はそのとおりだと思います。
 私どもの「考え方」というのを出しましたときには、今おっしゃった四つを並列的に並べておったんですね。今回の法律案では四番目の項目というのが二番目の項目の中に組み込まれた形になっておりまして、それが私としては若干気になっているところでございますが、いずれにしましても、原告適格を拡大する、今の判例の到達点よりも拡大するということで今回の法律ができておるわけでございますので、今おっしゃる四について柔軟に解釈していく必要があるだろうというふうに考えております。もちろん、憲法に保障された具体的な権利、そういったものも当然、先生のおっしゃった四のところで十分に考慮すべきものだというふうに考えております。

○柴山委員
 次に、義務づけ訴訟についてお伺いしたいと思います。
 実は、私も弁護士時代に、この義務づけ訴訟というものがあればややこしい国家賠償の請求なんかしなくても済むのになというようなことで制度化を非常に心待ちにしていた一人でございます。ただ、今回の義務づけ訴訟については、各界から要件がかなり厳し過ぎるのではないかという声が上がっております。
 よく挙げられる例では、原子力発電所の建設について、取り消し訴訟、これを起こす場合については、隣の住民が生命身体を害されるおそれがあるということで恐らく原告適格が認められる。ただ、結局、原子力発電所あるいは工場について、最新の技術水準に合うように改善命令を出してくれというような義務づけ訴訟を起こすためには、処分が行われないことによって重大な損害を生じるおそれがあって、かつ重大な損害を避けるためにほかに適切な方法がないことなどというような非常に厳しい要件が付加されているわけでございます。
 当然のことながら、取り消し訴訟よりもこういった改善命令の方が、少なくとも再考してくれという判決ぐらいはすぐに出せるのではないかと思うんですけれども、この要件の厳しさというものについて三人の参考人の先生方の御意見をお伺いしたいと思います。

○塩野参考人
 ただいまの御質問にすぐお答えする前に、先ほどの原告適格に関する四項目で、第四番目のものについては従来の判例はない、それまでは従来の判例のそのままではないかということでございますけれども、第四番目も従来の判例に見出すことができます。それから、そのまま引き写して従来の判例、既往の判例の固定化を考えているという御趣旨の御発言であれば、それは誤解であるということを申し上げておきたいと思います。
 私は、検討会の間におきましても、判例評釈はやめてくださいと。この四項目はそれぞれ一つの視点を持ってきたものである、その視点の素材は既存の判例からとったものですけれども、これをどう発展させ、どう組み合わせていくかは、それこそ裁判所、そして弁護士の役割であるというふうに考えております。
 それから、今のお話でございますけれども、これは原子力発電の施設の許可における許可の基準の問題をどう見るかということとも関係いたしますが、現在の最高裁の判例ですと、当時の科学水準というのは、つまり科学水準ですから常に新しい水準で見直す、そういう形になっておりますので、日本ではなかなか今のような、新しい技術が発展してきたので、あるいは知見が発展してきたので、今までのではどうも危ないから、取り消し訴訟ではなくて義務づけ訴訟を出すということにはなかなかならないんですけれども、ドイツではまさにそういう議論をしております。第三者に対する義務づけ訴訟の典型的な例が原子力発電所等の停止命令でございます。
 今の例ですと、私はまさにそのものずばりだと思います。原子力発電について、何かしら新しい知見でもって多少危険なものがあるということであれば、それはもう当然にこの三十七条の二は導き出せるということで、それを押しとどめるような議論は全くしたことがございません。

○藤川参考人
 お答えいたします。
 大変難しい問題で、私みたいな素人にはよくわからないんですが、やはり考え方としては、考慮すべきことを考慮し、考慮すべきでないことを考慮したというのは非常に問題であると思います。そういう意味において、現段階において考慮すべきことの内容として最新の技術水準を考えるというのは、それは当然のことだと思います。
 ですから、現在の水準から見て欠陥があるとわかったことについて、それについて差しとめるなり、あるいは補修を義務づけるなりというのは、周辺住民として僕は当然認められるべきことではないかという気がいたします。
 以上でございます。

○水野参考人
 御指摘の問題は、今回の義務づけ訴訟の要件では、一つは、一定の処分ということの解釈、これが問題になろうと思います。ただし、この一定の処分というのは、具体的な改善命令、どういう改善命令をせよというところまで特定しなくても、何らかの改善命令をせよというので一定の処分と解釈すべきだという、これは検討会で一致しているところでございまして、そこの点はまずクリアできる。
 それから、重大な損害については、これは原発のことですから生命身体にかかわる、これは重大な損害に当たるだろうと思いますし、その損害を避けるために他に適当な方法があるかどうかということについては、これは極めて例外的な場合のことを指している、例えば民事訴訟でやれるからいいじゃないかということにはならないということは、これまた確認されておりますから、この問題もクリアできる。
 原告適格が認められることについては、これは現在の判例でも認められておりますから、御指摘の事例については、義務づけ訴訟で何らかの改善命令をせよといった義務づけ判決ができるというふうに解釈できると思います。

○柴山委員
 今はわかりやすい事例で、恐らく、水野参考人がおっしゃったように、判決としては不当な判決は出ないであろうと思いましたが、ただ、要件論として、今みたいな厳しい要件がこの義務づけ訴訟で定められているということで何らかの不当な結論が出る可能性があるのではないかという問題意識だけは提起をさせていただきたかったわけでございます。
 さて、時間がほとんどないんですけれども、まだまだ、納税者訴訟についてもお聞きしたかったんですが、またの機会に譲らせていただくこととしまして、次の質問は確認訴訟についてでございます。
 確認訴訟の積極的な活用によって、処分性のない行政行為についても、その違法の確認をすることによって、行政庁に対して何らかのインパクトを与えることができるのではないかということについては、私も賛成でございます。
 ただ、この確認訴訟についても、やはり対世効がないという問題がある一方、また、確認の利益を厳格にとらえた場合に、それがどれほど救済に役に立つのか。あるいは、確認訴訟で違法が確認されたにもかかわらず行政庁が何らその違法状態を是正することなく放置していた場合に、それをどうやって改めさせればよいのかというような問題があると思いますが、これについて、お三方の意見を最後にお伺いしたいと思います。

○塩野参考人
 私どもが大変頭を悩ませている論点についての御指摘というふうに承りました。
 まず対世効についてでございますけれども、実は判決の効力については、検討会では十分な議論をする余裕がございませんでした。義務づけ判決についてもそうでございます。ここは私としては大変心残りのことでございますけれども、これは今後の学説、判例にゆだねざるを得ないというふうに思っております。
 判決の効力につきましては、昭和三十七年の行政事件訴訟法制定に際して、六年もかけて、その時々にその判決の効力についての議論がなされました。それ以後は、学説、判例、かなり積み重ねておりましたけれども、今度の検討会においては、それがいろいろな事情で間に合わなかったということでございます。
 それから、確認の利益について。これは一番頭の痛いところでございまして、これはだんだんに積み重ねていくよりしようがない。その場合の積み重ねとして、例えば、行政訴訟検討会で素材にいたしましたのはドイツの行政事件訴訟法における確認訴訟でございます。
 つまり、日本の民訴あるいは民訴法学はドイツ法を基礎に成り立っておりますけれども、ドイツの行政事件訴訟法でもこれだけ確認の利益を認めているではないかという資料が出てまいりまして、そういうことを参照にしながら、確認の利益というものについて、十分行政訴訟の特殊性を考慮しながら判断していただきたいというのが裁判所に対する私の希望でございます。
 それからもう一つ、それに従わない場合どうするか。これは、判決についてすべて同じようなことが起こるわけでございまして、例えば取り消し判決の拘束力というものがございますけれども、その拘束力に従わないで行動した場合にはどうなるか。例えばこれは、諸外国におきましては、裁判所侮辱罪的なものを使うとか、あるいは罰金を科するとか、そういった手だてをとっておりますけれども、日本の場合には、そこは割合従うという慣例がございます。それで、今回の場合も、判決に対しての違反、それに従わないということについては特段の措置は講じておりません。
 ただ、確認訴訟の場合には、同じく、準用規定におきまして行政主体あるいは行政機関に対する拘束力が働きますので、その拘束力が、従来の取り消し判決の拘束力と同じような意味合いにおいて、行政機関においてそれを守るということを期待しているという次第でございます。
 以上でございます。

○藤川参考人
 お答えいたします。
 だんだん専門的な話になってきまして、不得意な分野でございますけれども。
 まず対世効の問題でございますけれども、確認訴訟を求めた当事者が求めているものは何かというと、要するに、違法の宣言、それによって紛争の根源を絶つということだと思います。だから、取り消し訴訟と違って、確認訴訟の段階で、例えば、先ほど御指摘のありました違法な行政指導が行われたという場合を考えた場合、その指導そのものが違法であるということを宣言してもらえれば、それで指導を受けた側としては目的を達し得たと思います。そういう意味で、判決主文の主観的範囲といいますか及ぼす範囲をそれ以上に広げる必要があるのかな、取り消し訴訟と違ってあるのかなという気が私はちょっといたします。それはまあ素人の考えです。
 それから、確認の利益のことでございますけれども、そもそも、憲法で裁判を受ける権利というのを認めている以上、僕はかなり広くとっていいんじゃないかという気がします。今までの行政訴訟法は、憲法で認められている裁判を受ける権利を勝手に裁判所というか法律の都合で切っているわけですから、かなりもっと広げていいんじゃないかと思います。
 それから、違法状態については、僕はこういうことだと思います。行政というのは公益を目的としておりますから、裁判所によって違法と宣言されたものを追求することが果たして行政としていかがかという問題であり、行政はそういう意味で社会的な責任を追及されるんじゃないかと思います。

○水野参考人
 先ほど塩野参考人が御答弁されたとおりでございますので、それを援用させていただきます。
 一つだけつけ加えさせていただきますと、先生の御質問では、当然に、例えば行政指導、そういったものの、そのものの違法確認ができるという前提で御質問されたと思います。私も、今回、確認訴訟の関係で、公法上の法律関係の確認というのが例示されましたけれども、法律関係に置き直せない場合においても、行政処分的なもの、例えば行政指導とかありましたけれども、そのものの違法確認を求めることができるというふうに今考えておりますので、そのことだけつけ加えさせていただきます。

○柴山委員
 五分ほど時間がオーバーしてしまいました。後続の御質問の方に御迷惑をおかけしたことをおわび申し上げます。
 本当はもっと具体的な事例をとらえて申し上げたかったんですけれども、初めての質問ということで、多々不手際な点があったことをおわびしたいと思います。
 以上です。どうもありがとうございました。
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