委員会での発言
法務委員会
第161回国会 衆議院 法務委員会 第10号 2004年11月19日(金)
午前九時三十分開議
○塩崎委員長
 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴山昌彦君。

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 参考人の皆様におかれましては、本日は、御多用中のところ、本当にありがとうございました。よろしくお願いいたします。
 さて、早速、法案の内容について、事例を交えて質問させていただきます。
 まず、動産の譲渡の対抗要件の特例に関する質問でございます。
 例えば、法人Aが法人Bに対してその倉庫の内容物を譲渡する、そういう契約を結んだといたします。そして、それについて動産譲渡登記ファイルにしっかりと対抗要件を備えた。そうした場合に、第三者CがAから当該倉庫動産を譲り受けた場合、Cは即時取得によって保護される余地があるのでしょうか。山野目参考人、いかがでしょうか。

○山野目参考人
 御質問ありがとうございます。
 動産譲渡登記制度の創設を見た場面における民法百九十二条が定める即時取得制度の適用関係との関係につきましては、これは、基本的には従来法制との関係で大きな変更を加えるものではない。御提案申し上げている法律案の中におきましても、民法百九十二条との関係での改正であるとか特例であるとかいうことは設けられておりませんので、基本的には従前法制が維持されるというふうに考えるべきであろうと思います。
 その上で、ただいま議員から御質問のありました設例について申し上げますと、Cが登場した際に、通常は、Bなる者の存在を知らないでCが取引に入ってきて、民法百九十二条が定める要件を充足しているというふうに認められて、それらの要件が立証された場合には、当然のことながらCの即時取得が認められるわけでございます。
 Cが、何と申しますか、取引裡において専門的に事業を行うような者ではないような、通常のという言い方はちょっと変な言い方でありますけれども、そのような譲受人である場合につきましては、そのような即時取得の要件の充足が認められる可能性も高いのではないかというふうに考える次第でございます。
 しかしながら、例えば、Cが、事業裡において、あるいは取引裡において登場してくる人物でありまして、このような動産譲渡登記制度の存在、あるいは動産に係る譲渡担保の取引慣行のようなものを知っているんだというふうなことが言えて、そのような観点から動産譲渡登記の内容について注意を払う、調査、確認をすべきことが期待されるような場面におきましては、当然、そのような観点を考慮に入れて、百九十二条が定める善意かつ無過失、とりわけ過失の方でございますけれども、その認定判断がなされるということになりましょうから、そのような場面におきましては、場合によっては百九十二条の要件を充足せず、したがって、Cのための即時取得の成立が妨げられるということも一般論としてはあり得るのではないか、かように考える次第でございます。
 以上でございます。

○柴山委員
 結論としては、即時取得、場合によっては可能ということですが、最高裁判所昭和六十二年の判例で、登録制度のある自動車については即時取得の適用がないという判断が下されておりますが、これとの整合性はどのように説明をされますか、山野目先生。

○山野目参考人
 ありがとうございます。
 ただいま議員御指摘の点に関しましても、従来法制及び判例との関係で大きく何か変更を加えようという提案が今般の法律案に含まれているものではない、かように考える次第でございます。
 議員も御案内のとおり、自動車に関しましては、登録が所有権移転の対抗要件であるという仕組みがとられているわけでございますけれども、反面、未登録の自動車については、通常の民法百七十八条の規律のもとで取引が行われるわけでございまして、この未登録の場面に関して申しますれば、自動車であるからといって殊さら何か特段の取り扱いの違いが生ずるわけではなく、今般御提案申し上げております動産譲渡登記制度の対象としてその登記をすることも可能でございますし、それがなされた場合の法律関係の運用も、従来法制及びそれに基づく、議員も御指摘のとおりの判例に基づいた運用がなされるであろうというふうに考えられるわけでございますので、未登録の自動車の法律関係については、一言で申し上げれば、従来と同じに考えてよい、かように考える次第でございます。
 以上でございます。

○柴山委員
 しかしながら、登録された自動車と登録された倉庫動産については規律を異にする。具体的には、登録された倉庫動産についてはその後の譲受人が即時取得をすることが可能だけれども、登録自動車の譲受人については即時取得によって保護されることはない、この不均衡があることはお認めになられるわけですね。

○山野目参考人
 ただいま議員御指摘の法律関係がそういうふうになるということは確かにそのとおりだと存じますけれども、それをもって不均衡というふうに考えるべきかどうかということ、それは評価がいろいろあり得るのではないかと思いますけれども、それは、従来の自動車に関する登録がなされた場合の法律関係について即時取得の適用関係が変容を来してくるということから、十分にあり得ることでございまして、それによって関係取引当事者に何か甚大な、民事上の紛争処理において困ったことが生ずるかというと、必ずしもそうではないというふうに参考人としては認識いたしております。
 以上でございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 当然のことながら、自動車の場合は、登録制度はその自動車と終始するものであって、容易にそれを調査することが可能である。一方、今回の登録動産につきましては、これは必ずしもその動産について登録がされているものではなくて、指定登記所あるいは譲渡人の本店所在地において概要ファイルが設置されているだけだ、そういうような違いもあるのかなということから、私は、こういった扱いをすること自体については特段異議を述べるわけではありません。
 ただ、その場合、Cからさらに当該倉庫動産を譲り受けたDについては、これは前者につき、いかに調査しようとも登記が出てくることはないわけですから、この場合は、従前と同じように、登記されていようがされていまいが、Bは権利を失ってしまう、当初の譲受人Bは権利を失ってしまうということは避けられないと思いますが、この点、いかがでしょうか。

○山野目参考人
 御質問ありがとうございます。
 ただいま議員の御指摘のDが登場してきた場合のそのDの保護は、まさに民法百九十二条の一般的な適用によってそのDを保護しなければならないと考えますし、仮に、動産譲渡登記がBのためになされていたからといって、またその担保取引を保護する一般的、経済的な必要があるからといって、ただいま御指摘のような場面のDを保護しないということも、これはまたちょっとバランスが欠けていておかしいわけでございまして、それはもちろん、百九十二条の一般的要件を充足すればDは即時取得が可能だと思いますし、また、そのような結果でよろしいと。
 そのことは、恐らく、この動産譲渡登記制度による例えば譲渡担保の推進といったようなことにとって別に欠点ということではなく、従来法制上、一般的に予定されている、一つの限界といえば限界であろうというふうには思いますけれども、それなりに合理的な結果なのではないか、かように思料する次第でございます。

○柴山委員
 次の質問に移ります。
 今回の動産登記制度において、担保目的の譲渡と真正譲渡の区別は結局のところなされなかったわけですが、例えばその場合に、債務者が破産した、そういう事例であれば、この両者は、いずれにせよ、別除権なり、もちろん譲渡の場合は否認権が行使されない限り財団から外れているということで、統一的に処理をしてよいかと思うのですが、債務者が会社更生手続に入ったような場合、これは更生担保権になるのか、あるいは債務者の財産でなくなるのかということで、私は大きな差があるのではないかと思いますが、この点、担保目的の譲渡と真正譲渡の区別がなされなかったということについて、実務家の立場から、奈良先生、どのようにお考えでしょうか。また、これについて妥当性があるとお考えでしょうか、山野目先生。

○奈良参考人
 私どもの意見は、先ほど申し上げたように、余り積極的に賛成してはおらないわけですね。しかし、動産の登記制度の必要性の要請というのも非常に理解できるので、限った範囲で認めてはどうだろうかという程度の意見でございますので、今のように、真正譲渡と担保目的譲渡の違い、会社更生上の違い等は検討しておりませんので、まことに申しわけありませんが、お答えすることができません。

○山野目参考人
 議員御指摘の、倒産手続が開始された場合の動産譲渡登記に係る譲渡担保の設定などがあった場合の関係処理のことでございますけれども、これは確かに、法制審議会における調査審議の中でも、管財業務などを担っておられる弁護士の先生方からの意見が出されて、それらを踏まえて調査審議を進めたところでございます。
 確かに、対抗要件具備の方法が広げられることによって従前以上に幅広く担保権が機能するということになりますと、破産管財人が処理をして配当等の原資にすることができる財産の保護に影響を与えてくるのではないかということが一般的に懸念されるわけでございまして、そのような一般的懸念はさらに、当該倒産手続が破産であるか、会社更生であるか、民事再生であるかなどによって若干の違いはあるところでございますけれども、一般的な御懸念として理解できるところでございます。
 しかしながら、例えば民事再生手続の場合に、譲渡担保権は、明文の規定はございませんけれども、恐らく別除権として取り扱われるということになるんだと思うんですけれども、しかし、別除権として取り扱われるからといって、必ずしも管財人のお仕事がしにくくなるようにがっさりと常に債権者が持っていってしまうものなのかということを考えますと、それは恐らく、倒産処理実務の実地のことを見てみますと、何分にも問題となっているものは動産でございますから、それをとんとんと売却して権利を、別除権を行使していくということにはなかなか実際上難しいこともあるのではないかと思います。
 そういう場合に、再生債務者自身に処分をしてもらって、別除権協定などが成立するといったようなことの期待を踏まえて、そのうちの一部を債権者に分配し、しかしまた、その自余の部分については別途の処理を考えるといったような、いわば法律の字面とは違う実地運用というものを期待していく余地というものは大いにあるのではないかというふうに考えるものですから、議員御指摘の御懸念がもっともであると同時に、それに対しては一定の合理的な対応を期待することができるのではないかということも申し上げさせていただきたいと存じます。
 以上でございます。

○柴山委員
 最後に、この動産登記について、質権の行使というものは結局今回は検討されなかったわけですか。

○山野目参考人
 検討しなかったわけではございませんけれども、結論として、質権については適用がないというふうな法律案の内容になってございます。何分にも、需要が確認でき、立法事実の認知できるところについて法律案を策定するという方針で法制審議会の調査審議及び立案が行われました。それらを踏まえて考えますと、動産の質入れではなくて、非占有型の担保である譲渡担保をコアとなる立法事実として考慮の上制度設計を仕組んだ、かようなことであるというふうに理解しております。

○柴山委員
 次に、債権譲渡の対抗要件の特例についてお伺いします。
 債務者不特定の将来債権をAからBに譲渡された場合に、Bの債権者が、Bが債務不履行であるということで当該債権を差し押さえしてその満足を得る方法について、どのようになるのでしょうか。山野目先生あるいは奈良先生、いずれか。

○山野目参考人
 お答え申し上げます。
 AからBに譲渡されたときに、Bの債権者が差し押さえをするということでございますと、通常の差し押さえの手続と同様の仕方で行われるということで、特に従前法制との関係で変更がないというふうに考えられます。

○柴山委員
 私が申し上げたかったのは、債務者が特定されていない場合には差し押さえ命令は第三債務者には送達されませんので、この場合について、それでもBからあるいは第三者に転々譲渡されてしまう可能性がある場合に、債権者としてはこれを差し押さえる必要があるのではないかということで質問させていただいたところでございます。

○山野目参考人
 議員も御案内のとおり、債権差し押さえ命令の発令を執行裁判所に申し立てる際には、第三債務者を表示して差し押さえの申し立てをすることが必要でございます。恐らくそのような観点からの御質疑をいただいたんだというふうに考えますけれども、これは当然、まだ債権が文字どおり将来債権であって発生していない段階では、第三債務者を表示することができませんので、その差し押さえができないということは、物理的にと申しますか、事柄の、事物の本性上当然のことだと思います。
 債権が発生して、そして第三債務者を特定、誰何するという努力は、やはりその申し立てをする差し押さえ債権者にしていただかなければいけないわけでございますし、その表示をした上で債権差し押さえ命令を申し立てていただくということになります。この手続の流れは、今までの債権譲渡登記制度の運用のもとで行われてきたことと特段変わるところはないというふうに認識しております。

○柴山委員
 結論としては、Bに対して債権者は当該債権を差し押さえることができないというように承りました。
 さて、時間が非常に限られていますので、本当はもっとたくさんあったんですが、一点だけ。
 民法の一部改正について、包括根保証はこの後松島委員の質問にお任せするとしまして、それ以外の、民法の例えば不合理な規定、百二十二条ただし書きで、取り消し得る行為を一定の追認権者が追認したときに当初から有効なものとする、ただし、第三者の権利を害することができないという規定がありますけれども、このただし書きは、もともと当該行為というのは有効なんだからただし書きは不合理ではないかというような議論がいろいろあったと思うんですが、この点について、そのまま放置されたというのはどういう根拠によるものでしょうか。

○山野目参考人
 議員、何分にも民法を大変よく研究しておられて、大学の講義でいつも議論が展開されるような御質問を今ちょうだいしたんだというふうに考えまして、私も大変自分にとっては親しみのあるフィールドのお尋ねをいただいたというふうに感じました。
 御指摘のようなことも、例えば大学の講義や演習の授業などで議論する際に、なぜあの規定が置かれたのかというようなことについて諸説あって、いろいろな議論をいたします。例えば、立法の過誤ではないのかとか、いや、そうはいってもやはり適用がある場面があるんだとかいうようなさまざまな議論が学説裡において交わされております。
 そのことを踏まえて申し上げたいのは、今般の民法の現代語化の法律案は、およそ判例、学説上異論のないところであって、かつ、それが法文上明らかになっていない事柄については内容的な変更であっても大いにつけ加えていこうではないかという方針で作業を始めたことでございまして、反面において、今申し上げたように、若干でも、例えば一人の学者が言っている異論でも、一応これはもう少し検討してみる必要があると思われるところは、それを現代語化の作業で一遍にやってしまって規定を入れるということになりますと、やはりそれは今後の学界論議とか判例の運用等に影響を与えてまいる部分がございますから、そこはやはり慎重に考えて控えよう、かような方針で作業が始められたものだというふうに認識しております。
 御指摘の法文についての議員の御所見といいますか解釈は承りましたけれども、なお論議がある部分であるということもまた申し上げさせていただきたいと存じます。
 以上でございます。

○柴山委員
 時間になりました。以上で終わります。

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