委員会での発言
法務委員会
第162回国会 衆議院 法務委員会 第12号 2005年04月15日 (金)
午前九時三十三分開議
○田村(憲)委員長代理
 次に、柴山昌彦君。

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 本日の質疑、これで最後となりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
 今回の会社法の現代語化によりまして、本法律が国民により身近となる一方、企業文化の根幹が大変大きく変わることになるのではないかと私は思っております。
 そもそも、現行法上、会社の種類として、有限責任社員のみがいる株式会社、そして無限責任社員のみがいる合名会社というのが典型的でありまして、その両者がいる合資会社、それから、有限責任社員のみだけれども小規模閉鎖的な性格を有する有限会社というものもある。私は、こうした現行法上の会社の分類というものは、それなりにこれまで一定の合理性があったのではないかというように思っております。
 しかしながら、今度の法律においては、物的会社を株式会社一つというように定めた上で、さらに、有限責任社員のみだけれども、機関の柔軟性、それから利益配当の柔軟性というものを持つ新たな合同会社というものを新設するという改正を行っているわけであります。
 こうした新たな枠組みというものは、どのような要請によって定められたのか。また、今回のこの現代語化がその要請にこたえられているのかという根本的なところなんですが、ぜひ南野大臣の方にお伺いしたいと思います。

○南野国務大臣
 お答え申し上げます。
 会社法案は、株式会社と有限会社を統合して、先ほど先生がおっしゃったように株式会社に一本化いたしますが、これは、従来の物的会社の区分が理念どおりではなく形骸化しているという上に、物的会社に一様でないニーズがあるということでございます。最近では、株主総会と取締役のみから成る最も基本的な形の会社を出発点として、その成長に応じて、取締役会とか会計参与、監査役、会計監査人など、必要とされる機関を選択しながらステップアップしたいというような中小企業のニーズも出てきております。
 これらの事情にこたえるために、合同会社は、株式会社のように出資の比率で配当等を決めるのではなく、高い技術を持っている社員に厚く配当をすることができるようにするなど、柔軟な経営が可能な有限責任の法人制度の創設が必要であるというベンチャー企業等からの要請にこたえるために新設されたものであります。
 株式会社と有限会社の一本化も、合同会社の創設も、特に中小企業に高く評価していただいております。今回の改正は、その要請にこたえられているというふうに感じております。

○柴山委員
 昨日、衆議院を有限責任事業組合法がまさに通過をしたわけですけれども、この法律の中では、先ほどもちらっと御指摘ありましたとおり、いわゆるパススルーの課税、構成員課税の要請というものが実現をされることになり、かつ、各組合員が有限責任しか負わないという、その仕組みが実現したわけでございます。
 にもかかわらず、こうした合同会社という仕組みをつくるということについては、どのような実益があるんでしょうか。

○寺田政府参考人
 これは端的に申し上げますと、今御指摘になりましたLLPは、法人格がない、組合そのものでありながら、しかし出資者が有限責任を負っている。これに対しまして、合同会社、LLCと言われるものは、法人格があって、出資者が有限責任を負っている。ただ、内部的には組合そのものである。こういうことでございまして、違いは、法人格があるかないかというところでございます。
 したがいまして、LLP、有限責任事業組合と比べてどういうメリットがあるかということは、必然的に法人格があることによるメリットということになるわけでございまして、具体的に申し上げますと、例えば、組織変更等で将来株式会社にずっと移行していくというようなことが可能でございますし、あるいは、ほかの会社との合併、分割などが可能であるということがございます。また、法人格があるということでございまして、当然のことながらその名において登記ができる等、社会的にもあるいは取引上も非常に便利な、そういう地位に立つわけでございます。

○柴山委員
 従前、いわゆる組合的色彩の強い人的会社においては、社員たる地位の移転というものは、ほかの社員の同意があればできましたけれども、原則としてはできなかった。
 一方、物的会社においては、株式会社では、株式は原則として自由譲渡、有限会社は、小規模閉鎖性を加味して持ち分の譲渡が制限をされているとともに、社債発行も認められなかったわけですけれども、新法では、今局長が御指摘になった合同会社を含めて、それぞれの仕組み、譲渡性あるいは社債についてどのような扱いになっているのか、お答えいただきたいと思います。

○寺田政府参考人
 株式会社は、その社員の地位、つまり株式でございますが、それを譲渡することができる、自由に譲渡することができるというのが本質的な要請でございます。したがいまして、この新しい会社法におきましても、自由譲渡ということを原則にいたしております。
 しかし、これまでもございましたとおり、譲渡によりまして株式を取得したことの対抗要件であります株主名簿への書きかえを株式会社の承認に係らしめることができる、つまり譲渡を制限することができるわけでございます。これは、この新しい会社法においてもそれを引き継いでおりまして、会社の承認ということを制約として課することができるわけでございますが、ただ、新しい会社法においては、その承認すべき機関というのを、現在は取締役会の承認に係らしめているだけでございますけれども、定款自治を認めまして、株主総会等でも承認をすることができるような仕組みにすることもできるわけでございます。
 これに対しまして、持ち分会社、合名、合資会社等でございますが、これらは、社員の地位というのを基本的には全員の承諾がなければ譲渡することができないわけでございます。これは、この新しい会社法においても維持している原則でございます。
 では、どういうときに譲渡ができるかといいますと、有限責任社員については、業務を執行する社員の全員の承諾があれば持ち分の譲渡をすることができるわけでございます。ただし、定款でそれと異なる定めをすることももちろん許されております。
 社債につきましては、株式会社、持ち分会社とも、社債を発行することができるようにいたしております。

○柴山委員
 特に社債の部分については、有限会社にもこれを認めてほしい、小規模の物的会社についてもこれを認めてほしいという関係各位からの要望があったと伝え聞いております。
 さて、そこでちょっと疑問が出てくるのは、会社、特に社員の個性が重視される人的会社において、一人会社をこのたび認めることにしたわけですけれども、これは会社の社団性というものに反するのではないでしょうか。いかがでしょうか。

○寺田政府参考人
 これはなかなか、理論的にはいろいろ経緯があった問題でございます。
 つまり、株式会社が発展してきた経緯というものを追いますと、もともと団体というものがあり、その団体に法人格を与え、その地位というものを細分化して現在の発展形態をつくったということがございますので、どうしても団体ということが基礎になっていたわけであります。
 そこで、我が国の商法におきましても、かつては、これは、一人会社というのは認められないというような仕組みもございました。しかし、その後、むしろ、法人格ができた、そういう営利法人である会社を中心に考えて、一体社員は何人でなきゃいけないのかというように論理が逆転したわけであります。
 そこで、株式会社の場合は、特に今まで譲渡性ということがありました関係で、仮に一人会社でも、その地位というのはいろいろな形で複数人に譲渡し得るようなことになるわけでありますので、むしろ一時的に、これは結果的には恒久的になるかもわかりませんけれども、それが一人の会社であっても別に差し支えないのではないかという議論になりまして、そこで、株式会社においては一人会社が現行法で認められるということになっているわけであります。
 持ち分会社も、これは本来は譲渡性を持ち分に持たないものでありますけれども、しかし、先ほど申し上げましたように、社員の加入や持ち分譲渡というものもあり得ないわけではない、非常に例外的な場合ではございますけれども、あり得ないわけではないので、こういうことを全く無視して一人会社を認めないという規制をどうかというふうに問われますと、これもなかなか、論理的には一人会社を認めてもいいのではないかという結論にならざるを得ないわけであります。
 今回の見直しでは、そういうようなプロセスを経て、この持ち分会社についても一人会社が認められたということでございまして、ただ、私どもは、この一人会社がそう主流を占めるような存在になるだろうということは考えておりません。何と申しましても、この持ち分会社というのは、いろいろな団体というもの、無限責任社員を中心とした団体というものがやはり発展的に法人格を持ったものがどうしても中心になるだろうというふうには考えております。

○柴山委員
 将来の譲渡可能性というところから理論づけてくださったわけですけれども、実益からしても、例えば機関設計が簡素な有限責任社員による会社である合同会社、先ほど谷口先生の方からエンロン事件について言及がありましたけれども、こういうような会社で一人会社を認めると、いわゆる他者による監督ということがどうしても必要になってくるんじゃないか、一人会社によって有限責任の利点というものを享受させるということになると、会社債権者を害する事態が生じてくるのではないかということについて、どのようにお考えでしょうか。

○寺田政府参考人
 この会社内部の規律をどう保つかというのは、会社法の本質的な課題でございますので、ここは非常に慎重に考えなきゃならないところでございます。しかしながら、複数人いれば会社の規律が保てて、一人ではなかなか保ちにくいというのも難しい論理ではないかなと。
 つまり、こういう会社内部の規律、会社内部で運用を正していくというのは、それは社員が一人であろうが百人であろうが、やはり非常に難しい問題でありまして、それはむしろ、第三者チェックあるいは外部の方に対する情報提供、具体的には財産状況の開示等によって確保されるということになるのではないかなと。
 また、社員全員が有限責任である合同会社については、財産状況の開示について、債権者にも貸借対照表の閲覧権を認められる等の手だてがございますので、そういう形でチェックをしていくということにならざるを得ないのではないかなというふうに思っております。

○柴山委員
 一方の有限責任組合、これについては、先ほどの質問とちょっと関連しますけれども、一人で設立することはできるんでしょうか。

○舟木政府参考人
 お答え申し上げます。
 LLPでございますが、LLPは、組合契約を締結することで設立をされるものでございます。したがいまして、必然的に最低二人必要でございます。

○柴山委員
 そういう意味からすれば、先ほどの寺田局長に対する私の質問で、これが合同会社の一つのメリットになっているかなという気はいたします。
 それとあと、それぞれやはり、今局長の方からもお話があったとおり、第三者に対する公示ということが非常に重要になってくると思うんですが、合同会社と有限責任組合、それぞれ登記にどのような事項が含まれているのか。特に、責任の有限性というところから資本、これについて御説明いただきたいと思います。

○寺田政府参考人
 合同会社につきましては、これは法人でございますので、基本的な登記事項というのは、法人格を有するほかの会社と同様ございます。資本金の額も登記事項でございます。

○舟木政府参考人
 LLPの登記事項でございますが、これは今度のLLP法案の五十七条に規定をしているところでございまして、組合の名称、事業内容、所在地、組合員の氏名、名称、住所、組合の設立年月日、存続期間、組合員が法人の場合の職務執行者、組合契約で特に解散事由を定めたときはその事由が登記事項でございまして、出資金自体は登記事項にはなっておりません。

○柴山委員
 いろいろと両制度の間には違いがあるということがよくわかります。
 続きまして、ちょっと総則の関係なんですが、商号の規律について伺いたいと思います。
 今回の法律で、同一市町村内における商号の重複登記を排除する商法の十九条、これが廃止をされました。また、不正競争目的による商号使用の差しとめ請求を定めた商法二十条についても、これを削除するとともに、同一市町村内における利用にそういった不正競争目的を推定するといった規定、これもまた削除されたわけでございます。これはどのような趣旨に基づくものなんでしょうか。

○寺田政府参考人
 現在の同一商号、類似商号についての規制でございますが、これは問題点が幾つかございますけれども、第一に、その効力の範囲が同一市町村にあるというところです。東京で申しますと、例えばここですと千代田区でございます。千代田区にある会社を、例えば永田町商事という会社をつくりますと、千代田区に同一目的の永田町商事あるいは永田町商事に類似する商号を持つものについては、この規制によって登記ができない、こういう効力になるわけでございます。
 しかし、今日の経済情勢を考えますと、これが隣の中央区あるいは新宿区には設立できるのに千代田区にはつくれないというのは、余り実態に沿わない規制ではないかという指摘がかねてあったわけでございます。そこで、こういう規制をやめてはどうかという声がかねてからあったわけでございますので、それにこたえるというポイントが一つございます。
 もう一つは、これは同一目的の会社という点にございます。今日、会社というのはいろいろな営業活動をやっております。しかし、登記事項をごらんいただきますと、一定の目的、つまり、例えば物の売買ですとか不動産の建設でありますとかということが書いてございます。それが一致したものについて、同一商号規制、類似商号規制がかかるわけであります。そういたしますと、登記所の方では、それが同じ目的なのかどうかということを非常に苦心して審査をせざるを得ないということがございます。最近では、非常に新しい業種がどんどん出てくるわけでございますけれども、その業種が果たして同じなのか違うのかということを審査するのはまことに難しい問題でございます。
 そこで、これもまた利用者の方から、そういう登記所のさじかげん一つでできたりできなかったりするような規制というのはやめていただきたいという要請がこれまたあったわけでございまして、今回はそれにもこたえるということでございます。
 このように、設立についての事前規制としての商号の機能というのはなくなるわけでございますけれども、しかし、不正競争の目的で、相手会社に損害を与えようということで同じ商号を使うということになりますと、それは当然、事後的な規制の対象にはなるわけでございまして、今後は、そういうことも、規制に移行することによって、全体はスムーズに運営したいというように考えているところでございます。

○柴山委員
 事前規制から事後的な、個々の事情を考慮した上でのきめ細かな判断に移行するというお話で、その方向性自体は理解できないではありません。しかし、小規模の商店などは、やはり同一市町村内において同じ商号をかたられた事業者が活動すると大変困るという方も大勢いらっしゃるわけでして、そういった紛争を簡易迅速な形で事後解決するための工夫というものはやはり必要になってくるんじゃないかというように思っております。
 例えば、既存商号を含む商号を新たに登記しようという場合に、これは、同一の文字列があるかどうかというのは、今はパソコンですぐ検索できるわけですから、そういった類似先行登記の存在について後行者に対して通知されるようなシステムを設ければ、それは当然、後行者は、そういう先発している人の存在を認識しつつ、一定の覚悟を持ってやるというわけですから、当然のことながら、そういった事後的な紛争解決に当たって、かなり有力かつ簡便な指針を提起するということになると思うんですが、こういうシステムについてどのようにお考えでしょうか。

○寺田政府参考人
 このような類似商号規制、事前規制の廃止によりまして、かえってトラブルが非常にふえたということになりますと、やはりそれは望ましくないわけであります。おっしゃるとおり、それについての工夫が幾つか必要になります。
 まず、申請者側に対してどう対応するかでございますが、現在は、新たな申請人は、登記所の窓口において備え置いてある商号調査簿というのを閲覧することができますので、事前にどのような商号が既に登記されているかということを調査することは登記所で可能です。
 ただ、それは一々登記所に赴かなきゃなりません。申請する直前ならそうなさるわけでしょうけれども、もっと事前にわからないかという問題がございます。
 そこで、現在利用できるものといたしましては、登記全体のコンピューター化に並行いたしまして、登記情報提供サービスが平成十二年から実施されておりまして、この法律の施行までには全国のすべての会社はほぼその登記情報提供サービスの範囲内に入るだろうというふうに私ども努力しているところでございます。
 これは、インターネットで一定の手続を踏んでいただければ、どういうものが現在商号として登記されているかがわかる、そういう仕組みになっておりまして、この仕組み自体は、登記簿をとるのは有料でございますが、商号にどういうものがあるかということをインターネットで検索なさる範囲では無料でございます。
 本来的には、登記申請人がこういう努力をしていただきたいというふうに思うわけでございますが、当初はいろいろな混乱もございましょうから、私ども登記所の方でも、申請人の方に、事前に、こういう登記をされると登記されているものと全く同じ商号になりますよというような御注意というのは、場合によってはさせていただけるようになるのではないかなというように、そういう方向で少し検討をしてみたいというように思っております。
 また、御指摘になりましたADRその他の紛争解決についても、これも先ほど申したように、裁判所へ行けば事後的に差しとめ等の請求ができることになるわけでございますけれども、しかし、裁判所に行かないで解決できるというのにも一つのメリットがあることは言うまでもないことでございますので、私どもも含めまして、この点についても、施行までにさまざまな努力をさせていただきたいというふうに思っております。

○柴山委員
 ADRの点についてはよくわかったんですが、前者についてはちょっと納得できない部分がありまして、というのは、後から出ていく人は、それは調べればわかるというのはわかるんですけれども、あえてそういう事業者がいるということを内々に知っていて出ていく場合には、それは、そういうやつを排除して出ていきたいというやつは、調査をしなくてもわかっているわけでして、そういう人が不正の目的を持っているかどうかというものを簡易に立証する手段として強制的な事前通知制度というものをつくったらどうかというのが私の提案でございます。

○寺田政府参考人
 既に登記されている方の利益をどうやって守るかということで、これもまた大事なことだとは思います。ただ、こういうことを登記所の方でやるかどうかというのには、官と民のすみ分けの問題としてなかなか難しい問題がございます。
 いろいろな工夫はあり得ると思いますので、私どもの方でも、既に登記された方が何らかの形で通知が得られるような仕組みというのは考えられないかどうか、それは少し検討してみたいと思っております。

○柴山委員
 ぜひ御検討をお願いしたいと思います。
 次に、設立の部分について少し質問をさせていただきたいと思います。
 最低資本金制度がなくなった、平成二年に一たん設けておきながらまた廃止したわけでありますけれども、非常に事業者にとっては大きなメリットが生ずるというのは先ほど来いろいろ御説明をいただいたんですが、やはり、先ほど来御説明があったように、弊害もあるのではないかというように思っております。
 とりわけ、私の弁護士時代の経験から、法人格制度を濫用する事例がかなりふえてくるんじゃないかというように思っております。債務の免脱等、こういうような事例が今後ふえていくのではないかと思うんですが、当初、この法人格の濫用について配慮するというような条文が検討されていたやに伺っていますが、これがなくなってしまったというのはどういう事情によるものでしょうか。また、私が申し上げたような事例について、簡便にそういう事例というものを排除するための工夫というものがやはり必要になるのではないでしょうか。
    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

○寺田政府参考人
 最低資本金の制度の廃止についてはたびたび御説明しているとおりでございますけれども、おっしゃるとおり、これに伴って弊害がないかどうかということについても、もちろん慎重に考えなきゃいけないところでございます。
 そのことと若干関連をいたしまして、先ほど申しましたような法人格の濫用について具体的に規定を置くかどうかということでございますが、この平成十四年からの新しい会社法の検討の過程では、とりわけ試案に至る過程では、そのことについて検討いたした経緯がございます。
 しかしながら、検討の結果、逆に、濫用を否定する、こういう濫用は許さないということで条件をつけてしまうというのは、今の法人格否認の裁判所の論理というのが比較的いろいろな場合に柔軟に対応できるような形で設けられているということを考慮いたしますと、むしろ決め込んでしまわないか、つまりそれ以外の場合には法人格の濫用に当たらないということを決めつけてしまうのではないかという、つまりプラス・マイナスの比較からするとマイナスの方が大きいのではないかというような御議論がございまして、最終的に、法律上の規定という意味ではそういうような規定を置かないことにいたしております。
 しかしながら、そのことは、この場合に法人格の否認の論理がきかないということではもちろんないわけでありまして、今後もそのようなことの存在ということは念頭に置いて法人格というものを考えていただかなければならないわけでございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 設立については、その健全性というものが非常に大きな要請になってくるのではないかなというように私は思っております。
 その観点から質問させていただきたいんですが、平成二年に、事後設立、会社設立後二年内に営業のために継続使用する資産を資本の二十分の一以上に当たる対価で取得する、こういった行為は、現物出資ですとか財産引き受けと同様の規制ということで、検査役の検査を要求するという法改正がなされたわけであります。しかし、今回、こういった検査役の検査の制度というものが廃止されることになったわけですが、なぜこのような廃止が行われたんでしょうか。

○寺田政府参考人
 これも平成二年の法改正によるものでございますけれども、もちろん事後設立におけるさまざまな問題というものについては適切に対応しなきゃならないわけでございます。この検査役の調査というのも、それを企図して導入された制度であります。
 しかしながら、二年間の間に財産を取得する場合にすべて検査役の調査を受けなきゃならないということについては、非常な費用や時間がかかる、円滑な事業の遂行の妨げになるということで、実務界には非常に評判が悪かった制度でございます。設立直後に大きな財産を購入するということは相当多く見られるわけでございまして、それに対してチェックがあるということは、なかなか会社の運営にとってはつらい問題だという御指摘があったわけでございます。
 こういう設立規制を避けるために、むしろ会社の成立後数年を経過したような休眠会社というものの利用が起きたり、あるいはこういう会社の高値での取引がされるというような非常にゆがんだ実務さえ登場したというふうに私どもも聞いております。
 そもそも、会社が事業のために必要な財産を購入するということについて、その対価が適正かどうかということは、これは会社の運用上非常に基本的なことでございまして、当然のことながら、取締役あるいは取締役会、あるいは場合によっては監査役というような、会社の普通の機構でその適正さがチェックできないということは、逆に申しますと、非常にゆゆしいことでございます。そういうようなことを、あり得るといいますか、しばしばあり得るというようなことを前提に制度を組むのはやや行き過ぎではないかなと私どもも、平成二年に導入したところではございますけれども、反省するに至ったわけであります。
 むしろ、先ほどのような、ゆがんだところに逃げ込ませるようなことをしないようにして、しかしながら、本来の取締役あるいはその他の執行者に対するチェックという形でこういうものの適正さは担保すべきではないかなというふうに考えているところでございます。

○柴山委員
 基本的には、事前規制というよりは、事後不都合が起きた場合にその責任をしっかりととっていくという方向、今回の法改正は基本的にそういう大きな流れになっていると思いますので、それがもし徹底されていれば、それで了としたいと思います。ただ、今御指摘になった、今回の設立の健全性を初めとして、資本の充実についての責任というものが軽くなっているのはおかしいんじゃないかというのをちょっとまた後ほど私は指摘させていただきたいと思います。
 続いて、機関の方に質問を移らせていただきたいと思います。
 近時、リコール隠しですとかあるいは粉飾決算が続出して、コンプライアンス強化ということが非常に大きなテーマとなっているわけですけれども、こうした観点から本法を見ると、会社のガバナンスを柔軟化して、株主の自主権限、自主監督権限を強化するというような仕組みになっていると思います。これもやはりシステムの柔軟化という今の流れに沿ったものであると思うんですが、果たしてそれでこれまで同様の会社債権者の保護というものが図れるんでしょうか。

○寺田政府参考人
 会社のガバナンス、つまり会社の内部で株主と執行を任された役員とでどういう権限の分配があるかということと債権者の保護ということは、私どもは直接結びつかないのではないかなというふうに考えております。
 株主と役員との関係、あるいは株主同士の関係については、おっしゃるように、この会社法においては相当柔軟化いたしまして、株主総会の決議により、あるいは定款の変更により、さまざまなことが可能になっております。しかし、債権者保護は、そういうこととは相対的に別の次元の問題として十分に考えていかなきゃならない、むしろ会社の有限責任との関係で考えていかなきゃならない問題だろう。
 具体的に申し上げますと、この会社法においても、会社の財産状況が適切に開示される、つまりディスクロージャー、あるいは会社にその財産があると示されている財産が現にきちっと留保される、そういうことが債権者のためには重要だと考えておりまして、まず、財産状況の適切な開示といたしましては、会計帳簿の作成の適時性、正確性の明文化、あるいは会計参与制度の創設、会計監査人の設置範囲の拡大、これらの施策をやっておりますし、あるいは株式会社はすべて計算書類、貸借対照表の公告の義務づけがなされているわけでございます。
 また、会社に示された財産というのが適正に留保されるかどうかという点については、株主に対して財産の払い戻しをする、従来ですと配当と言っておりますが、その配当規制について、一般的に財源規制を課す。これは自己株式の取得も、そういう整理で同じような規制をいたしております。また、財源規制に違反して配当を行った取締役の責任について、これが仮に配当可能利益を超えるということになりますと、総株主の同意があっても免除ができないという非常に厳しい規定を設けております。さらに、会社には純資産が三百万円なければ配当等ができないということにもいたしております。
 こういう形で、債権者に対しましては、会社の財産が十分に表示どおりあり、その表示が適正に世の中に示されているということを重視しているということで理解をいただきたいと思います。

○柴山委員
 会社債権者と限るのが少し語弊があるのであれば、利害関係人、ステークホルダーと言ってもいいかもしれません。
 いずれにしましても、会社の経営が適切になされるかどうかというのはやはり重要なことではないかと私は思っておりますので、以下ちょっと各論でお尋ねしたいと思います。
 今度の会社法で、株式の譲渡制限を行っているような会社、当然、こうした会社でも大会社はあるわけですけれども、従前、こうした会社にも当然のことながら取締役会が設けられて、取締役の相互チェックによって業務運営の適正性というものを図ってきたわけですけれども、譲渡制限会社、今度は取締役会が必ずしも必要ないというような形になっていますが、本当にこれで妥当なんでしょうか。

○寺田政府参考人
 まず、今回のガバナンスの基本を申し上げますと、株主総会の権限というのは、もし株主総会が望めば、運営、組織、管理の基本事項すべてについて株主総会の権限とすることができるわけでございます。これを二百九十五条の一項で定めております。
 しかしながら、取締役会を設置した会社においては、これらの会社の業務に関する重要な事項、これは取締役会にゆだねられる、こういう仕組みになっております。この場合には、株主総会が決議することができる事項は当然限定されるということになるわけであります。
 午前中も御説明申し上げましたとおり、株式会社法制の中で、今回は一方では公開ということを基準にし、他方では大か中小かということを基準にして、それによって、どういう運営形態、どういう役員の構成をとるかということを決めたわけでございますけれども、大会社について言えば、これは相当に大きいわけでございますので、財産管理面で重要性は高いということで会計監査人の存置というのを義務づけておりますけれども、しかし、大会社であっても譲渡制限を課している会社というのはだれでも株主になれるというわけではないので、必ずしも取締役会のように株主総会の権限を代行するという組織を義務づけることはないのではないか。
 つまり、やはり譲渡制限会社というのは株主にある程度の特殊性があるということも念頭に置かなければなりませんので、そういうところは株主総会の機能というのもある程度あるということを前提に制度を組まなければならないだろうというわけでございます。
 したがいまして、大会社であっても、譲渡制限会社においては取締役会の設置というのを必要的ということにしておりません。しかし、もちろん会社はさまざまな御事情があって、そういう取締役会を設けるということのメリットをお感じになることもあるわけでございますので、それは任意的には取締役会を置けるということになるわけでございます。

○柴山委員
 もう一つ、私が非常に疑問に思っているのは、取締役会を設置しない、取締役は一人でいいんだよという株式会社において、監査役会を設置できないという定めになったのは一体どういうことなんでしょうか。

○寺田政府参考人
 これは、先ほど私が申し上げました原則からいいますと、論理必然ではございません。つまり、一応、大会社、中小会社と公開会社、非公開会社で分けまして、基準を立てた上で、後はその範囲内で自由にやってくださいというのが基本でございますので、今おっしゃるように、取締役しかいないけれども監査役会がある会社というのも理論上は可能ではないかなというふうに私自身思うわけでございます。
 ただ、この場合は、取締役はあるいは場合によっては一人で、監査役は三人以上、こういうことになるわけであります。しかも、監査役は、この場合は社外監査役も入ってくるわけでありまして、そういう組織形態というのは現実にはちょっと考えにくいんじゃないかなということでございまして、今まで申し上げたことからすると、法律は緩やかに決めておいて、後は御自由にというポリシーからすると、少し逸脱した決め方かもしれませんが、そこまでニーズはないんじゃないかなということをここでは考えさせていただいたわけでございます。

○柴山委員
 定めは柔軟にというお話がたびたび出ておりましたけれども、今、資本市場の監督体制、これについてやはり充実強化させるべきではないかという議論が大変我々の間でかまびすしくなされているわけでして、例えば、日本版のSECの導入というか強化ですか、あるいは継続開示に関する課徴金の制度とか、そういうような仕組みというものが検討されているわけであります。
 そんな中で、やはり大きな会社については第三者によるきちんとした監督ということが必要になってくるのではないか、社外取締役の義務化、例えばこれを上場公開会社についてはやっていくべきではないかという議論があるわけなんです。今では当然、重要財産委員会を設置する場合には社外取締役は一人以上いなくちゃいけないということになっていますけれども、もう少し拡大をしていかなければいけないと思うんですが、この点、どのようにお考えでしょうか。

○寺田政府参考人
 これは大変難しい問題です。社外取締役は、言うまでもなく、社内に余り縁のない方を取締役としてお願いして、いろいろなチェックを相対的に独立してやっていただきたい、そういう意図でございます。それはそれとして、有用に思う企業の方はおいでになりますし、これを非常に有力なガバナンスの一つの工夫というふうに評価される方も多いわけであります。
 しかしながら、この社外取締役を強制するというのが果たして現実的かなということはやはり考えざるを得ないわけでございまして、会社によってはこういう社外取締役ではなく、むしろ監査役を充実させたいというふうにお思いの会社もおありになりますでしょうし、もっと違う形で会社のガバナンスを行いたいという会社もおありになるわけであります。
 委員会設置会社については社外の方というのが一つの大きな役割を持っておられますけれども、すべての株式会社、特に取締役の人数が余り多くない小規模の株式会社にこれを義務づけるというのは、少し義務としては重過ぎるかなという感じがいたしております。

○柴山委員
 今、監査役を強くしてもいいんじゃないかというお話があったんですが、その監査役も実は十分監査ができない仕組みになっているんじゃないかなということでお尋ねしたいんですが、今の制度ですと、監査役等に貸借対照表等を提出してから一定期間を経過しなければそれを承認する定時総会を開けないというたてつけになっているんですけれども、これが今度の法律では廃止されてしまう。そうなりますと、当然のことながら、監査役あるいは監査役会の監査の期間が十分確保できないのではないかという危惧が生じるんですが、これはどのようにお考えでしょうか。

○寺田政府参考人
 監査役に監査の期間を十分与えないということは許されないことでございますので、会社法でも、監査役等に一定の監査期間を確保するということに四百三十六条でなっております。
 ただ、現行法は、おっしゃるとおり、定時総会の七週間前に提出義務を課することによって、事実上、定時総会の開催時期を制限するというような形での規制になっております。しかし、それはどちらかというと、規制の仕方としてはやや異例で、定時総会の開催時期と監査に十分の期間を与えるということをぴったり連動させるという必然性はないのではないかと私どもは考えたわけでございます。
 もちろん、監査を受けた計算書類を定時総会に提出するというのは今度の会社法でも同じでございますから、監査が終了しなければ定時総会は開けないわけであります。しかしながら、その監査の期間の確保というのは監査の期間の確保という規定自体で決めたい、これが今回の考え方でございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 続いて、取締役の任期についてお伺いしたいんですけれども、小規模の会社について取締役の任期をどうやって考えていくかというのは従来から大きな問題となっていたんですが、このたび最長十年ということになったわけですが、今、商事時効も五年ということになっていますし、また、最後の登記から五年間全然役員登記等が変わっていない場合に休眠会社が解散するというような制度、これも五年ということになっております。にもかかわらず最長十年というのは、いかにも長過ぎるんじゃないかなと。
 十年というと、個人商店も代がわりして、子供が立派な大人になるという大変な長い期間であります。十年という期間に合理性があるのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。

○寺田政府参考人
 この点については、この法案を作成する過程でもいろいろ議論があったところでございます。
 実は、有限会社を廃止いたしまして、現在有限会社を想定されるような会社も株式会社として取り込むということにいたしました時点で、取締役の任期をどうするかというのは非常に大きな問題になったわけであります。有限会社には、御承知のとおり、役員の任期というのはございません。これに対しまして、株式会社について現行法は二年という年次を決めております。委員会設置会社については一年でございます。
 したがいまして、これをどう調整するかというところでございます。株式会社に典型的な大きな会社を考えてみれば、おっしゃるとおり、もっと短い期間でどんどん取締役の任期を来させてチェックをさせるということも十分考えられるわけでございます。
 しかしながら、やはり相当小さい会社も含まれるということが先ほどのことからもおわかりいただけるとおりでございますので、そういう会社について全く規制をしない、任期を決めないというのもともかくといたしまして、任期をどんどん短くしていくというのはやはり相当の負担になりますし、また、そういう必要性も必ずしもない会社も少なくないわけであります。
 そこで、さまざま調整いたしました結果、原則は二年としつつも、定款で十年と定めて、その範囲内で決められるという仕組みにいたしたわけでございます。
 これについてどういう評価があるかということはさまざまでありましょう。十年はおっしゃるとおり長過ぎるということもございますが、しかし他方で、今まで有限会社について全く規制がなかったのが十年ごとにやらなきゃならなくなったというのは相当の負担だとおっしゃる方も実はいることも事実でございます。そういうことで、私どもは、バランスからいうと、このぐらいが制度の大枠としては妥当かなというふうに現在のところは考えているところでございます。
 なお、会社法でこのとおり任期を決めたということになりますので、休眠会社の意義ということも変更をせざるを得ません。この会社法では四百七十二条で、最後の登記があった日から十二年を経過したものを休眠会社として扱うということにいたしているところでございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 取締役会についてお尋ねします。
 従前、我々の理解では、持ち回り決議はいけませんというのが一つの大きな原則になっておりまして、取締役会の書面決議を認めてしまうと、取締役が実際に集まっていろいろ協議をしていかなくてはいけないというその実質が失われてしまうと思うんですが、今回の法律ではこれを認めてしまっております。これは問題ではないでしょうか。
 また、仮に書面決議を認めるとしても、やはり会社の実態に合わせて、これは一定の事項に限っていくべきではないでしょうか。

○寺田政府参考人
 これも、非常に小さな会社も株式会社の中に取り込むということによって、考えるとなかなか難しい問題になっております。
 現行法ではもちろん認められていなかったわけでございますので、これをどうするかということでございますが、会社法では、いろいろ小さな会社が簡易に取締役会を開かなきゃならない場面も想定いたしまして、書面決議も認めるということにいたしております。
 しかし、これはかなり限定的でございます。まず、定款に定めを置くことが必要でございます。しかも、取締役会の決議の対象になる事項についてそれぞれの取締役が同意をしており、かつ、業務監査権限を有する監査役が設置されていて、それについて監査役には意見がないという条件があるわけでございます。
 つまりは、株主、取締役、監査役、どれも、まあ問題ない、集まって相談するまでもないというときにだけこの書面決議が認められるということでございますので、社会的にほかにいろいろな会議体がございまして、一定の場合には認められておりますが、ここでも非常に限定的ながらそれを認めたというように御理解をいただきたいところでございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 さて、いよいよ事前規制から事後責任の強化という、その事後責任についてお話を移していきたいと思いますが、取締役の責任を今回かなり広範に過失責任化しております。
 まず、そういったものは一体どういうものがあるのかということについてお伺いしたいと思います。

○寺田政府参考人
 現行法においては、二百六十六条で違法配当ほか四つの類型について取締役の無過失責任が認められ、法令と定款の違反についての責任、これが過失責任、こういう理解を通常されております。これに対して、委員会設置会社においては、違法配当でありますとかあるいは利益相反行為についての責任は、これは明らかに過失責任だという明文の規定があるわけでございます。
 そこで、今回、会社法を整理するに当たって、この点についてどう調整をするかという問題を検討したわけでございます。これは、とりわけこの前の商法の改正における委員会の附帯決議でも、この点についての調整が必要であるという御意向が示されていたところでもございます。
 私どもは、この点について、委員会設置会社に認められている過失責任というのがむしろ原則としてはあるべき姿であって、無過失責任というのは今の法律の立場からするとやや異例であるということで、しかも、事の実態を見れば、仮に無過失責任を過失責任にいたすとしてもそう大きな違いは出ないんじゃないかなという感じもいたしたところで、具体的に、分配可能額を超える額の剰余金を配当した場合の責任その他について、無過失責任を過失責任に転換させたということで立法的な解決を図ったわけでございます。

○柴山委員
 ただ、我々の従前の理解からすると、やはり取引主体にとっては、資本の充実というものは、資本を登記している以上、これはやはり絶対に信頼できるものでなくてはいけないわけで、証取法でも、開示書類の虚偽記載、これについては、市場における民事上の無過失責任、そういう制度になっております。
 無過失責任、要するに、先ほどディスクロージャーをきちんと確保していくべきだというお話をされましたけれども、そういった信頼に対するしっかりとした責任というものは、私はやはりとっていくべきじゃないか。従来、我々、やはり資本充実というのは担保責任で無過失責任というようにずっと教わってきたということもありますので、この点について、特に資本充実との関係で御説明いただければと思います。

○寺田政府参考人
 資本充実の原則は、先ほども御説明しましたとおり、表示された額の資本を現実に確保しなければならないという点でございます。したがいまして、それについては取締役は、役員は非常に重たい責任を持っているわけでございますので、これについて確保ができなければ、例えば設立のときはそれは許されないということになるわけでございますけれども、取締役の責任をどういう形でとるかということは、それとは別に過失責任化するということに矛盾はないだろうというふうには考えております。

○柴山委員
 一応、次の質問に移らせていただきます。
 今回、会社役員等についての責任ということで、会計監査人の責任、これについて、代表訴訟の対象となるという仕組みになるとともに、社外取締役同様の一部免除が認められたわけであります。しかし、会計監査人というのはそもそも会計書類を自分たちの専門性をもって監査するというのが職務なわけですから、社外取締役が会社の外から取締役の職務を執行するというのとはわけが違うというように私は思っております。一部免除というのは理論的におかしいのではないかと思っておりますが、この点、いかがでしょうか。

○寺田政府参考人
 おっしゃるとおり、会計監査人の責任の免除について、現行法上は何らの規定もないわけであります。
 これに対しまして、社外取締役の株式会社に対する責任についてこれは免除する規定がございまして、しかし、免除するには原則として総株主の同意を要するということにされております。また、一定の要件を満たす場合には、株主総会の特別決議等で責任の一部免除が認められるわけであります。
 会計監査人の株式会社に対する責任につきまして、これは非常に重大な責任でございますし、その地位の社外性ということもございますので、私ども、今回も、これはいろいろな平仄を考えまして、やはり社外取締役の株式会社に対する責任ということと異なるのはおかしいのではないかという結論に至ったわけでございます。したがいまして、会計監査人の責任についても社外取締役と同様の一部免除の制度を導入するということにいたしているわけでございます。
 なお、この会計監査人の責任の一部免除について、責任の限度額として確定金額を法定するということも一つの考え方ではございますが、法律上、当然に、確定金額に至るまでの責任が限定されるということは必ずしも合理的ではないのではないかということから見送っているところでございます。

○柴山委員
 必ずしも質問にお答えいただけていないかなと思いますが、時間もございませんので、先に進ませていただきます。
 代表訴訟についてお伺いしたいんですが、先ほどの御質問の中で簡易却下について御説明をいただきました。今の制度でも、先ほど局長御自身が御説明になりましたけれども、訴権濫用による却下ということもありますし、また、悪意の場合の担保提供命令、これも可能なわけですけれども、従前の制度で、果たして、そういう悪意の株主に対する制裁というか、濫訴に対しては対応不十分なんでしょうか。

○寺田政府参考人
 おっしゃるとおり、この種の訴訟、つまり本来の目的に沿わない代表訴訟の利用については、裁判所の方でさまざまな工夫をされております。訴権の濫用の法理により訴えの却下をされた例もあるということは先ほど御説明申し上げました。また、被告側の請求によりまして担保の提供が命ぜられるという仕組みもあるわけでございます。
 しかしながら、訴権の濫用については、これは必ずしも定着している扱いではございません。どういった場合に訴権の濫用になるかということを明示しておくことには一定の合理性があるというように考えております。
 それから、担保の提供命令というのは、これは、悪意の株主が訴訟を提起したことによって取締役自身に損害が生ずる、こういう場面の措置であります。私どもがこの場合に念頭に置いておりますのは、むしろ、取締役ではなくて、会社自体に損害が生ずる、原告の悪意ある訴訟追行によって会社がお金を原告に払わなきゃならない、無理やりですね、そういう事態を原告がねらって訴訟をしてくるというようなところを念頭に置いてあるわけでございますので、担保提供等によっては対応できないのではないかなということで、あえてこのような仕組みを今回御提案しているところでございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 大分時間がなくなってまいりましたので、株式の問題に移りたいと思います。
 このたび、譲渡制限会社におきまして、株式の相続の扱いなんですが、相続というのは、いわば親の地位に取ってかわる、包括承継であるということになっているにもかかわらず、株式会社が相続人から株式を取得できるというような制度に改められているわけですが、これは一体どのような趣旨に基づくものなんでしょうか。

○寺田政府参考人
 おっしゃるとおり、相続は包括承継でありまして、財産の承継という観点からいたしますと、全く同一人が財産を持っている状況と変わりがないというのが法律上の原則でございます。
 しかし、組織上を考えてみますと、相続人が被相続人の地位にそのまま成りかわるということが必ずしも適当でない場面もありまして、株式の譲渡制限制度が置かれている株式会社において相続が生じた場合もその一つでございます。
 この譲渡制限制度というのは、形の上で一般承継という財産承継の形が認められている場合であっても、会社にとって必ずしも適当でない方が株式の所有者、株主におなりになるということはやはり認めがたいときもあることは否定できないところでございます。株式の売り渡しをもって株主たる地位を失わせるということは、それなりに閉鎖会社、非公開会社の実体を維持するときに必要な制度の一つと言えなくもないわけであります。中小企業における円滑な事業の承継という観点で団体からいろいろな要望が寄せられている中にも、この点が一つのポイントにもなっていたわけであります。
 そこで、今度の会社法では、定款の定めによりまして、相続その他の一般承継により株式を取得した者に対して株式会社の側から売り渡しを請求することができるという制度を設けたわけでございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 株式の問題として最近よく議論になっているのが株式分割の問題でして、平成十三年に商法改正で一株当たりの純資産額規制、五万円を下回ってはならないという規制が廃止されてから、大分盛んに無償交付、分割等々が行われるようになってきたわけです。
 ただ、最近は、これが錬金術に使われているんじゃないかと。実際に株券が手元に届くまで売買ができないということで需給バランスが崩れるとか、あとは、小口になればそれは投資対象としての魅力が増すというような形で、錬金術に使われているんじゃないかという批判があるんですが、これに対して何か会社法上の手だてというものは講じられているんでしょうか。

○寺田政府参考人
 これは基本的には株式の流通上の問題で、市場の問題もございますので、いろいろ市場のルールでもっての工夫というのも一つあろうかと思います。
 会社法上の手だてといたしましては、昨年の通常国会で成立いたしました株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部改正法によりまして、上場会社は、株券を出さない、不発行会社になるということが可能になったわけでございます。
 こうなりますと、株券の交付なしで株式を譲渡することが可能になりますので、おっしゃるような、株式の譲渡があるのにもかかわらず株券の交付がないためにさまざまな弊害が出るということはなくなるわけでございます。会社法案もこのことを前提にいたしておりますが、ただ、今申し上げた法律の施行は、公布の日の五年以内の政令で定める日というふうになっておりますので、平成十六年の六月から五年さらに先ということでございますから、今から四年少し先ということになるわけでございます。
 もう一つは、現行法においても株券の保振法がございます。
 これについて、原理的といいますか、法律の制度の上では、預託株券について、株券が発行されない段階でも株式の取引をすることがこれは可能でございます。ただ、保振の制度の運用に当たっておられる側面から申し上げると、運用者の方で、新株券が発行されるまでは株式の譲渡をしないという扱いを現在はされておられるようでございます。しかしながら、今のような問題もあるので、保振機関や株券の保護預かりを行っている証券会社の皆さんを中心に、もう少しこの点の運用が改善できないかということで御相談なさっておられるというふうに私どもは承知しております。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 いよいよ佳境ということでしょうか、MアンドAの関係に行きたいと思っております。
 合併対価の柔軟化によって、外国会社の子会社とのいわゆる三角合併というものが法制度上認められるようになったわけですけれども、こうした三角合併、これは諸外国ではどのような取り扱いになっていますでしょうか。

○寺田政府参考人
 親会社の株券を合併によって消滅する会社に与えることによって三角合併をするというのが今御説明のあったいわゆる三角合併でございますが、これは、アメリカ合衆国において、ほぼすべての州が認めているところでございます。ただ、ヨーロッパではこのような形での合併は法制上は認められておらないようでございます。

○柴山委員
 当然それにかわる制度ということになるんでしょうが、いずれにいたしましても、日本で今回この制度を導入するに当たって、自民党の中でも、敵対的買収を促進するという効果がないのかということが活発に議論されましたが、これについての御説明を簡潔にお願いしたいと思います。

○寺田政府参考人
 一言で申し上げますと、合併というのは組織変更の当事者の合意による出来事でありまして、買収が敵対的であるかどうかであるにせよ、どういうふうに成功するか成功しないかというのは、これはそれに至る前の企業の株式の取得の問題でございまして、両者は直接的な関係はないというふうに理解をいたしております。

○柴山委員
 簡潔な御答弁ありがとうございました。
 ただ、会社の過半数の支配権を持った場合に取締役の解任決議ができるようになりましたね。従前は特別決議によらざれば取締役の解任というものはできなかったんですが、そういう意味では、経営陣の交代ということがより容易になったという側面は否定できないと思うんですが、この点、いかがでしょう。

○寺田政府参考人
 おっしゃるとおり、取締役の解任には特別決議が現行法では必要だったのを、ガバナンス強化の観点から、解任の要件を原則として普通決議に引き下げたわけでございます。つまりは、三分の二でない、二分の一をとっても取締役をとれないということはやはり原則として適当でないという判断でございます。
 しかし、会社のあり方は会社自身がお決めになることでございますので、これは定款でそういう要件でないように定めることもできるわけでございます。具体的には、もちろん特別決議に改めることも可能ですし、さらに、特殊決議等の厳しい要件を課することも法律上は可能ということになります。

○柴山委員
 そういう懸念がある一方で、先ほど小泉総理の対日投資促進のお話もありましたけれども、こうした対日投資を促進していくことが日本企業の活性化につながっていくというお話もあるわけでして、この点、経済産業省はどのようにお考えでしょうか。

○桑山政府参考人
 一般論として申し上げますけれども、今先生御指摘のとおり、対日直接投資の促進を図るということは、新しい技術とか経営ノウハウの導入、あるいは雇用の維持確保、あるいは消費者利益の増大といったようなことに資するということでございますので、我が国の経済活性化のかぎになるものと認識をしております。
 ただ、他方、こういう外国からの投資を促進するということといいましても、守るべき我が国の安全を損なうとか、そういうようなおそれのあるような外国からの投資等につきましては、外国為替及び外国貿易法、いわゆる外為法によりまして、きちんと規制することが必要と考えております。
 経済産業省といたしましても、このような認識のもとで安全保障上の必要な措置等に万全を期すということを十分確保いたしました上で、引き続き対日直接投資の促進に努めてまいりたいと思っております。

○柴山委員
 また、今日本企業はやはり、先ほどの御質問にもあったのですが、これは経済産業省の企業価値研究会でよく御検討されていると思うのですが、不当に低くしか評価されていないんじゃないかという実態があると思うんです。その実態についてどういうふうに把握されているか、お聞かせいただきたいと思います。また、その理由についても御見解を伺いたいと思います。

○舟木政府参考人
 日米の株価の時価総額の御質問でございます。
 これは、日米の株価の時価総額は網羅的に把握するということはできないわけでございますが、例えば、日本の東証一部上場企業の時価総額とアメリカ・ニューヨーク証券取引所上場企業の時価総額を二〇〇四年八月時点で比較をしてみますと、東証は三兆ドル程度、ニューヨーク証券取引所は十二兆ドル程度ということになっておりまして、約四倍の差があるということになっております。
 どういう要因でこういうことになったのかという御質問でございますが、株価の水準は、経済産業省としましても、その水準自体についてコメントすることはできないわけでございます。いずれにしましても、いろいろな要因によりこういう現実になっているわけですが、企業がみずからの価値を向上するための経営努力を引き続き行っていくことによって、日本企業の株価が上昇していくことを期待したいと考えております。

○柴山委員
 一般的には、利益配当が非常に少ない、あるいは経営の透明性、予測可能性というものに欠けるというようなことが要因として指摘されていると思います。
 今申し上げたような守るべきか開くべきかというはざまの中で、今回の会社法の改正で買収防衛策というものがとられていると思うんですが、これが本当に適切、有効なものなのかどうかということについて、どういう買収防衛策がとられているのかとともに簡潔に御説明いただきたいと思います。

○寺田政府参考人
 おっしゃるとおり、買収防衛策自体は企業でいろいろお考えになることでございます。
 極端に申し上げると、株価を上げることあるいは下げること自体が買収防衛策になる場合もございます。そういうこととは別に、普通に言われておりますポイズンピルですとか黄金株だとか言われるものがございます。これは、ポイズンピルでいいますと、強制転換条項つき株式あるいは新株予約権を利用した防衛策でございますし、黄金株は、種類株と譲渡制限というものを利用した防衛策でございます。
 このうち黄金株について、わかりやすいので申し上げますと、黄金株は、例えば一定の会社の重要な事項について、ほかの株とは違った権限を持つ株式ということになるわけでございます。具体的には、例えば合併をするときに、その合併は許さないというようなことを、この株式を持っている人だけがそういう権限を持つ、そういうような形での株でございますけれども、こういう株というものを持つということは現行法上も許されてはおります。しかし、だれにでも手に渡るということになりますと、防衛策としては少し不十分なものだというふうに理解はされているわけであります。
 それを、会社法によりまして譲渡制限と種類株というものを組み合わせることができるということになりますと、これは甚だ強い効力を持つわけでありますので、そういうことが会社法のもとでとれるようになるということは、それなりの有効性は防衛策としては高まる、そういう余地を与えるわけであります。
 ただ、そういうのを実際に利用されるかどうかということは、これはポイズンピルが毒薬ということで呼ばれていることからもおわかりになりますとおり、今さまざまな副作用があるわけであります。当然のことながら、マーケットに敬遠されるということも一つあり得るわけでありますので、それは会社自身でそれぞれ御判断になられることでありますし、特にポイズンピルと呼ばれるものの中には、やり方によっては相当株主の地位を危うくするというものもあり、裁判所でこれが完全に有効だというふうに認められるについて疑問符が打たれるものもあり得るわけであります。
 そういう意味で、経済産業省の方では、こういうものを特に客観的に会社の取締役の立場を離れて評価できる人が評価できるシステム、あるいは一般にこういうものをとっているということが十分に開示されるかどうかというようなマーケットに対する発信、そういったことを組み合わせてガイドラインを設けようというような方向で御検討になっておられると承知しております。
 私どもも、そういうことの努力と相まって、今回の会社法の整備とともに、企業の防衛策というのは進化していくだろうというふうには考えております。

○柴山委員
 ソトーあるいはライブドアの非常にジャーナリズムを騒がせた事件等で、今局長の方からお話があったとおり、この問題について過敏になっているという面もあるのじゃないかなと私は思います。
 こうした防衛策が経営陣の保身に使われ、過剰防衛ということになっていかないかという懸念がやはりあると私は思いますので、これについて、先ほど第三者チェックというお話がありました、マーケットによる淘汰というお話もありました、ほかに何か過剰防衛に対するチェック、考えられますでしょうか。

○寺田政府参考人
 これは、今委員も御説明の中で引用されました事件については、裁判所がその有効無効を御判断になったわけであります。その際には、株主への影響その他を考えまして、現在の特に不公正な有利発行等の枠組みを利用して、その枠内で違法と判断されたわけでありまして、そういう裁判所によるチェックというのも一つ考えられるわけであります。
 そもそもは、何といいましても株主を中心といたします会社の経営機構の中でそういうことの健全性が判断されるというのが第一のポイントではないかと思いますので、会社の関係者の皆様には、私どもも、こういったことの実際の機能については、経済産業省の方と御協力して十分に御説明した上でおとりいただく必要があるんじゃないかなというふうに思っているところでございます。

○柴山委員
 最後の質問です。
 企業価値、これにおいて、従業員あるいはステークホルダー、そういったものをどのように考えて、それらの利益も保護していかなくてはいけないのかということが、私はこれから新しいテーマとして問われていくべきではないかなと思っておりますので、そのあたり、経済産業省の方で何かお考えがあれば。

○舟木政府参考人
 従業員や取引先、地域といったいわゆるステークホルダーに関しての御質問でございます。
 企業価値、これは会社自体の持つ利益の総体であろうかと思いますが、これを長期的に高めていくためには、やはり従業員、取引先、地域といったステークホルダーと良好な協力関係を確立するということが不可欠であろうというふうに考えております。
 したがいまして、例えば、買収者が、ステークホルダーの利益をいたずらに犠牲にして、株主への配当だけをふやすような提案は、これは企業価値を損なうものであるというふうに我々考えておりまして、長期的な株価向上にもマイナスとなる場合もあると考えておるところでございます。
 いずれにしましても、企業価値を考えます上で、ステークホルダーの利益を無視して判断をすることはできないと考えておりまして、極めて重要なファクターであろうというふうに考えておるところでございます。

○柴山委員
 これからの課題として制度設計を私も一緒に考えていきたいと思いますので、どうか皆様方、格段の御支持、御支援のほどよろしくお願い申し上げます。
 長時間にわたりまして失礼いたしました。どうもありがとうございました。

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