委員会での発言
法務委員会
第164回国会 衆議院 法務委員会 第12号 2004年3月31日(金)
午前十一時開議
○石原委員長
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴山昌彦君。

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 長年大きな論争を巻き起こしていた未決拘禁者の処遇につき、今回抜本的な法改正がなされるということは非常に高く評価されるべきでありまして、一刻も早い本法案の成立、施行がなされることを強く期待しております
 ただ、若干疑問がございますので、以下、質問をさせていただきます。
 まず最初に、警察署に付設された留置場を拘置所のかわりにするいわゆる代用刑事施設、この制度につきまして、本法案はこれを認めております。今後、これをふやしていくのか、現状維持をしていくのか、減らしていくのか、基本的な政策の方向性をぜひ法務大臣にお伺いしたいと思います。

○杉浦国務大臣
 柴山委員におかれましては、弁護士としての長い経験を踏まえられまして政治の道に参加いただいて、本当にありがたく思っております。法務行政、これからますます大事になりますので、今後とも、この面においても大いにお力をおかしいただき、御活躍いただきますよう、まずもってお願い申し上げる次第でございます。
 先生は長年にわたると申されましたが、個人的には、実に万感こもるものがございます。昭和五十七年、拘禁二法が提案された際、私は第一東京弁護士会の副会長でございました。そして、反対運動の先頭に立ったわけであります、代監制度を廃止しろと。私ども一弁はどちらかというと伝統的に保守的な会派でございまして、東京では、東弁、二弁は、一弁よりは革新的と申しますか、傾向の強い団体であったわけですが、私ども一弁は自民党を担当いたしまして、議員の先生方と説得活動に当たったわけであります。
 あのころの留置場はひどいものでした。施設もよくありませんし、捜査と留置の区別がつかなかった。代用監獄は自白の温床であるという指摘も無理からないものであった、正直言ってそう思います。
 反対運動、長く続きました。四半世紀、紆余曲折ございましたが、ここに、日弁連も加えた検討会議の議を経て正式に成案を得た、国会で御審議いただくまでになったということでございまして、まことに感無量のものがございます。
 留置施設も変わってまいりました。当時、我々が猛反対したものですから、警察庁は留置場の大改修を始めました。昭和何年でしたか、警視庁が建てかえられたときに、今の警視庁の留置場が当時一番いい留置場だと。そして、捜査と留置の区別もきちっとする初めての施設として、東京警視庁に留置施設が誕生したわけであります。
 今回法務大臣に就任して、実は、東京の留置場のうち一番新しいものと一番古いものを見せてくれというふうに頼みまして、視察に参りました。一番新しいのは池上警察署でした。一番古いのは警視庁の留置場でございました。本質的に差はございませんが、池上の方は施設も立派で、警視庁の留置場よりもいろいろな面ですぐれているという印象を持ちましたが、基本的にそんなに変わっておりませんでした。
 全国で、私の地元でも、留置場をどんどん改造しております。一々見たわけじゃありませんけれども、相当程度改善され、当時私どもが指摘した、捜査と留置の分離がなされていない、施設も劣悪である、警察官の思惑次第で差し入れも自由、自白誘導が可能なような運営が行われている、そういった問題点はかなりというかほぼ解消されているような印象を今度の視察で受けた次第でございます。
 したがって、このたび、今度の法案で、代替刑事施設を維持する、それが現実的な方法でもあるということで、代用刑事施設制度の存続を前提とした上で制度的改善を加えることとしておるわけでございます。
 我が国の刑事司法制度のもとでは、最大二十三日間という限られた身柄拘束の期間の中で、被疑者の取り調べその他の捜査を円滑かつ効率的に実施しなければなりません。被疑者と家族、弁護人等々の接見の便にも資するためには、津々浦々にきめ細かくいわば設置されている、つまり警察署に併設されているわけですから、そういう留置施設に被疑者を勾留することが現実的であるということも言えると思うわけでございます。
 ちなみに、私が弁護士になったころ、当時、巣鴨の刑務所から今の東京拘置所へ移転するということになりました。先輩が猛反対運動をいたしました。私が弁護士になったときにはもう移転しておりましたが、その反対の理由は、何であんな田舎へ持っていくんだ、不便になると。まあ、巣鴨は、電車の便もいいし、タクシーで行っても近い。あの当時はまだ小菅はかなり田舎でございまして、高速道路もない、鉄道も不便という状況で、猛反対運動があったそうでありますが、それに次ぐこの私どもの反対運動は盛り上がったわけであります。
 弁護士の本音としては、近いところにあった方がいい。だから、名古屋や広島とかであるように、裁判所、検察庁の近くに置けと。今弁護士会館が建っているぐらいのところへつくりなさいというのが、当時の我々の主張だったと思います。全国を私は歩きまして、地域によっては裁判所と検察庁と拘置所が、名古屋もそうですけれども、すぐ近くにある。これは非常に便利ですね。来られる人も、交通も便利だと。
 それが理想的ではあると思うんですが、ただ、現実問題として、地域によっては恵まれていない地域もあるわけでございまして、理想は理想としながら、現実的な面にも配慮されなければならない。東京にいる弁護士さんの本音は、近くに留置施設があった方が便利だという本音ではほぼ一致していると思うんです、ほぼ。そうじゃない先生もいらっしゃいますが、多くの先生はそう言っていると思います。
 代用収容制度にしても、これで永久に存続するとしているわけではございませんで、法律には、今後の検討としておりまして、今後の刑事司法制度のあり方を検討するに際しては、取り調べを含む捜査のあり方のほかに、刑事施設のあり方についても、留置施設のあり方についても、刑事手続全体との関係の中で検討を怠ってはならないと考えております。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 今大臣の方から、捜査と留置の人の分離ということが言われたわけですけれども、この点について、法案の十六条三項に、留置担当官は当該被留置者の犯罪の捜査に従事してはならないという規定がございます。この規定はもちろん、逆に捜査官が留置業務に関与するということも禁じた規定であると理解しておりますが、それでよろしいでしょうか。

○安藤政府参考人
 ただいま委員の御指摘のとおりでございます。
 ここで言います留置担当官とは、留置管理係に所属する者のみならず、現に留置業務に従事する者をいいまして、この第十六条三項は、この留置担当官がその被留置者の捜査に従事してはならないことを定めたものでございます。
 したがいまして、現に被留置者の捜査を行っている捜査官が当該被留置者の処遇を行いますと、その捜査官は、この十六条三項で言います留置担当官に該当することとなるため、この規定に違反することになるということでございます。

○柴山委員
 とすれば、今度の法案の百八十四条に、留置業務管理者は食事あるいは就寝の時間帯を定めるということが書いてあるわけですけれども、捜査担当者はこうした時間帯をしっかりと守らなければいけないということになろうかと思いますが、そうしたことが担保されているということでよろしいでしょうか。

○安藤政府参考人
 新しい法律、新法の百八十四条の規定に基づきまして、留置業務管理者は、日課時限、これはすなわち、被留置者の起床とか就寝時間、食事の時間、運動の時間等をあらかじめ定めることとしているところであります。もちろん、被留置者の処遇というのは原則としてこれらの時限に従って行われることとなりますが、他方、被留置者は刑事手続の対象でもあり、勾留質問、取り調べ、公判出廷、弁護人等との面会等を実施すべき公益上の必要性もあるところでございます。
 したがいまして、具体的事案に応じて、やむを得ず、定められた時間に実施できないこともやはりあり得るところではございますので、そういう場合も、定められた時間に運動が実施できない場合には別の時間に運動を実施する等の補完措置を現在講じている状況でございます。

○柴山委員
 続きまして、不服申し立ての制度についてお伺いしたいと思います。
 留置施設の処遇に関する不服申し立てはどのようになっているんでしょうか。従前は情願という非常に不十分な制度しかなくて、また、施設内でこうした不服が握りつぶされていたのではないかという指摘もございました。お聞かせいただきたいと思います。

○安藤政府参考人
 お答えいたします。
 今回の法案におきます留置施設における不服申し立て制度というのは三本柱で成り立っておりまして、一つは、処分性のある措置についての警察本部長に対します審査の申請、二つ目は、警察職員による違法な有形力の行使等についての警察本部長に対する事実の申告、それから三つ目が、処遇全般に関します苦情の申し出、この三つの制度を設けておりまして、審査の申請と事実の申告につきましては、これはさらに公安委員会への不服申し立てができる、こういう組み立てを行いまして、刑事施設における不服申し立て制度との均衡を図っているわけでございます。
 これらの不服申し立てにつきましては、例えば、警察本部長による裁決等に不服がある場合につきましては、第三者機関であります都道府県公安委員会が不服申し立ての審査を行うこととか、あるいは不服申し立ての処理状況は留置施設視察委員会に報告されること、さらには留置施設を実地監査します監査官、こういう制度を新しく設けるわけですが、この監査官にも直接苦情を申し出ることができる、こういうことなどを定めまして、被留置者の不服申し立てを適正に処理することが法的に担保されていると考えております。

○柴山委員
 今、刑事施設と横並びというお話もありました。公安委員会が警察署に対してどれだけ独立性を持っているかということも、議論のあるところだと思います。留置施設におきましても、公安委員会と独立した第三者機関による審査ということが弁護士会の方からも提言されていると思いますので、御検討いただければと思います。
 さて、いろいろと質問があるんですが、今後の課題として、この後、倉田理事の方からも言及があるいはあるかもしれませんけれども、取り調べの適正化をどのようにして図っていくかということが大変大きなテーマとなってくるかと思います。
 今、取り調べの可視化、いわゆる録画、録音等について大変大きな議論がなされているわけですけれども、これにつきまして、大臣、どのような御見解をお持ちでしょうか。

○杉浦国務大臣
 これはかねてから大変問題になっている件でございますが、被疑者の取り締まり状況を録音ないし録画すれば、捜査段階の供述を事後的に正確に確認することが容易になる。特に、自白の任意性が争われた場合には非常に有効であるという意見があることは承知しております。他方におきまして、取り調べ状況の録音、録画を義務づけた場合、取り調べ状況のすべてが記録されますので、関係者のプライバシーにかかわることを話題とすることが難しくなることもあり得るし、被疑者に供述をためらわせる要因となって、その結果、真相を十分解明し得なくなるといった問題がございます。
 いずれにしましても、取り調べ状況の録音、録画等可視化につきましては、司法制度改革審議会意見においても、刑事手続全体における被疑者の取り調べの機能、役割との関係で慎重な配慮が必要であることなどの理由から、将来的検討課題とされているところでございます。法務省としても、慎重な検討が必要であると考えております。

○柴山委員
 今の御指摘の中で、テープの取り扱いがプライバシーの関係で問題ではないかということがあったんですが、当然のことながら、今の刑事司法手続の中では、インカメラの手続とかも工夫できるわけですし、また、被疑者が供述をためらうであろうというようなお話もあったんですが、私はむしろ、被疑者にはカメラが見えないようにすることができるわけですから、捜査官側がためらうんじゃないかということで危惧をされているんだと思っています。
 私は、何も、カメラを入れることによって捜査が萎縮をするという事態は望んでいるわけではありません。取り調べというのは、自由な社会で対等な、例えば契約者が交渉するというような社会とは違うわけですから、時には大声を出したり、場合によっては机をたたいたりするようなこともあるんだと思います。ただ、状況に応じた一定の節度というものはあるわけでして、それを超えたかどうかをチェックすることは必要ではないかと考えております。
 また、捜査の側にとってみても、私も杉浦大臣ほどではありませんが若干弁護士の経験がございますけれども、被疑者というものは、本当に不合理な弁解を時としてするものでありまして、こういうような取り扱いを受けたと言うわけですが、それを客観的に示す、あるいはそれがうそだよというものがなければ、我々弁護人としては、その被疑者の不合理な主張によって動かざるを得ないわけですね。そのことが公判を紛糾させたり、検察官との信頼関係を損なったりする一つの大きな原因になっていることは、私は否めないと思っております。こうした不要なフリクション、あつれきというものを解消するためにも、私はこれはぜひ前向きに検討していただけたらというように思っております。
 もう一度、御意見をお伺いしたいと思います。

○杉浦国務大臣
 検討を進めておるところでございます。
 最高裁、法務省及び日弁連による刑事手続の在り方等に関する協議会や、そのもとに置かれた三者による研究会でも取り調べの録音、録画制度に関する研究を行っておりますし、法務省としても、こういう制度を導入している国ではどんな手段でやっているかということを調査研究もいたしております。さまざまな方法で検討はいたしております。

○柴山委員
 よろしくお願いいたします。
 もう時間が過ぎますので、一点、さらに追加してお伺いします。
 今回、海上保安留置施設の処遇についても規定が整備をされたんですけれども、これは他の留置施設と一体どのような理由で、どういう違いが定められているのでしょうか。お聞かせいただきたいと思います。

○平田政府参考人
 お答え申し上げます。
 海上保安留置施設につきましては、長期にわたり被収容者を収容する刑事施設でございますとか警察の留置施設とは異なりまして、被逮捕者の送致までの四十八時間以内の短期の留置を前提として運営され、代用刑事施設としての運営を行わない施設としている点が特徴でございます。したがいまして、本法案におきます規定ぶりも、刑事施設でございますとか警察の留置施設と一部異なったものとなってございます。
 具体的に申し上げますと、まず、施設関係におきましては、海上保安留置施設につきましては、被逮捕者を留置するものでございまして、被勾留者の代替収容は行わないこと、施設の視察委員会を設置しないことでございます。さらに、処遇関係におきましては、海上保安留置施設は、ただいま申し上げましたように四十八時間以内の短期留置であるために、留置期間中の捜査、食事、就寝などの時間配分から余暇活動は不可能であるため、余暇活動に対する援助は行わないこと、定期の健康診断は行わない、処罰の規定は置かないというようなことになっているところでございます。

○柴山委員
 今御指摘のあった被留置者に対する処罰の点等々、まだ質問事項はございますけれども、質疑時間が終了いたしましたので、以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

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