- ○石井(啓)議員
- それでは、本法律案の趣旨についてまず申し上げます。
現在、振り込め詐欺等の預金口座への振り込みを利用した犯罪行為が行われた場合には、金融機関は、捜査機関等からの情報提供を受けて、約款にのっとり、預金口座の利用の停止、解約を行い、その預金口座に係る資金を別段預金で管理しまして、申し出のあった被害者に被害金を返還する扱いをとっております。しかしながら、平成十九年三月末の時点で約八十億円もの資金が被害者に返還されることなく金融機関に滞留をしておりまして、被害回復が十分に行われていない状況にございます。
このように金融機関に滞留しておりますのは、一つは、この預金口座に係る預金の債権が名義人に帰属をしておりますので、金融機関には被害者と名義人と二重の支払いリスクがあるということがございます。もう一つは、預金口座に複数の被害者から振り込まれている場合における被害者に対する分配のルールが定まっていない、このことから、金融機関から被害者への資金の返還が進んでいない、こういう状況にございます。また、被害者が訴訟を提起する等の方法によって預金口座に係る資金の返還を求めることについては、時間とコストがかかります上に、特に名義人が行方不明の場合が少なくないという状況で、余り行われていないわけであります。
そこで、振り込め詐欺等の被害者の財産的被害の迅速な回復に資するために、犯罪に利用された預金口座を、一定の慎重な手続のもとに失権をさせまして、これを原資として被害者に被害回復分配金を支給する、この手続等を定めることにしたものでございます。
また、本法案の概要について申し上げますが、本法律案は、振り込め詐欺等の預金口座等への振り込みを利用した犯罪行為の被害者の財産的被害の迅速な回復に資するために、犯罪利用預金口座等に係る預金等債権の消滅手続、振り込み利用犯罪行為の被害者に対する被害回復分配金の支払い手続等を定めたものであります。
まず、預金等債権の消滅手続でありますが、金融機関は、捜査機関からの情報等を勘案いたしまして、預金口座等が犯罪利用預金口座等であると疑うに足りる相当な理由があるときは、預金等債権の消滅手続の開始に係る公告を預金保険機構に求めなければならないということにいたしまして、六十日を下らない権利行使の届け出に係る期間内に名義人等による権利行使の届け出等がない場合は、公告に係る預金等の債権は消滅するということにしております。
次に、被害回復分配金の支払い手続でありますが、預金等債権が消滅した場合には、金融機関は被害回復分配金の支払い手続の開始に係る公告を預金保険機構に求めなければならないことといたしまして、三十日を下らない申請期間内に申請があったときは、被害者及び被害額を認定して、被害回復分配金の額を決定してこれを支払うこととしております。
なお、被害額が消滅預金等債権の額を上回る場合には、被害者の被害額により案分した額を支払うということにしております。
次に、預金等債権の消滅手続において失権した名義人等の救済措置でありますけれども、名義人等の預金等債権が消滅した場合であっても、権利行使の届け出等に係る期間内に権利行使の届け出を行わなかったことについてのやむを得ない事情等について名義人等から必要な説明が行われまして、この預金口座等が犯罪利用預金口座等でないことについて相当な理由があると認められる場合には、名義人等が金融機関に消滅預金等債権の額に相当する額の支払いを請求することができるというふうにしております。
支払いを行った金融機関に過失がないときは、預金保険機構に対してはその支払い相当額の支払いを請求することができるとしております。
さらに、被害回復分配金の支払い手続が終了いたしまして、まだ残金がある場合につきましては、金融機関はその残金を預金保険機構に納付しなければならないとしておりまして、預金保険機構は、その納付を受けた金銭について、省令で定める割合を除きまして、犯罪被害者等の支援の充実のために支出することとしているところでございます。
以上であります。
- ○関委員
- 今、石井先生から、概要、趣旨をお伺いしまして、本当によく、すばらしくでき上がっているな、弁護士とも何度も何度も打ち合わせされたというところも伺っていますし、全銀協、金融機関の方ともしっかりと打ち合わせされたということが本当に反映されているなというのが、今非常に感じたところでございます。
そして、一方、銀行の方は、金融機関の方は、実務手続としまして、いろいろなことが今後も発生することでございますけれども、一点、確認をさせておいていただきたい点がございます。それは、振り込み利用犯罪行為による被害財産とまた他の財産が一つの振り込みされた口座に混在している場合、このような場合の預金口座等はどのように扱われるか、その点についてお伺いしたいと思います。
- ○柴山議員
- お答え申し上げます。
関議員には、私どもの苦労の成果につきまして最大限の賛辞をいただいたこと、まず御礼を申し上げたいと思います。
今の御質問ですけれども、確かにおっしゃるとおり、名義人に関しては、たとえ犯罪行為を行ったにしても、その預金には固有財産ですとかあるいは他の正当な取引によって振り込まれたお金等々が混在をしているという事例が多々あるわけでございます。しかしながら、私どもの考えといたしましては、金融機関が事前に被害財産とそういった他の財産を区分することが困難であることから、名義人等の権利保障にはしっかりとした形での配慮をしつつ、預金口座等に係る預金等の債権全額につきまして、預金等債権の消滅手続を実施することとしております。
こうした形で預金等債権の消滅手続がとられた場合には、権利行使の届け出等に係る期間内に行使の届け出があれば預金等債権の消滅手続は終了し、そして、その届け出等がなければ預金等債権全額が消滅してしまうという形をとらせていただいているわけでございます。
なお、このように権利の全部が消滅した場合でありましても、名義人等の救済措置といたしまして、名義人等が権利行使の届け出等に係る期間内に権利行使の届け出を行わなかったことにつきまして、やむを得ない事情があったということについて必要な説明を行った場合には、金融機関に対して当該被害財産以外の固有財産の支払いを請求することができるということを二十五条二項で定めさせていただいております。
- ○関委員
- 今、柴山代議士の方から内容の説明を受けまして、本当に手続が明確化されておりまして、今の手続がきっちりと踏まえられますと、預金口座の名義人とももめることなくスムーズに事務が進んでいくだろうということが想像されるところでございます。
〜中略〜
- ○関委員
- 私も民間の金融機関で十七年ほど働いてまいりましたけれども、今、石井代議士がお答えいただいたようなことで、この立証というのは実際に金融機関しか無理だな、私も全く同感でございます。そのことを一言申し添えておきたいと思います。
最後の質問をさせていただきます。
これは政府等によります周知、公表に係る責務規定ということでございますけれども、この法律案に関しまして、民主党の案の方では、政府に対して、法律の円滑な実施を図るため、法律の趣旨及び被害回復分配金の支払い手続等に関する事項等について、広報活動等を通じ国民に周知を図り、その理解を得るよう努めるものと規定をされております。これは当然のことだとは思うんですけれども、そのことをあえて言わなければならないのかなという気もいたすわけでございまして、その点につきまして、与党の提案者の方から感想を聞かせていただけたらと思います。
- ○柴山議員
- 関委員御指摘のとおり、どのような法律でありましても、法律が成立し、そしてそれが施行されれば、それを誠実に執行する責務のある政府としては、その周知を徹底しなければいけないというのは当然のことだと私どもも考えております。ましてや、この振り込め詐欺等に関する法律に関しては、国民に対して、なおさら、身近な法律関係について平易にわかりやすく説明しなければいけないという必要性が大きいものと考えております。したがって、わざわざ特別の規定を設けるまでもなく、そういった国民への周知広報をするということは当然に私どもとしては予定しておりましたので、あえて御指摘のような条文を設けなかった次第であります。
〜中略〜
- ○小川(友)委員
- 関連して再度お伺いします。
被害回復分配金の支払い手続が実施されていることを知らない被害者、自身がいわゆる振り込め詐欺等の被害に遭ったことを認識していない被害者が存在し得る可能性ということは当然想定がされると思います。
そのような意味で、三十日という支払い申請期間というものはちょっと短過ぎるのではないかなというふうに、要するに支払い申請期間が三十日間であるということは短過ぎるのではないかなというふうに考えますが、いかがお考えでしょうか。
- ○階議員
- 今のはおっしゃるとおりだと思っていまして、私どもの案は、三十日間だと被害者の支払いの申請の期間としては短いということで六十日間設けておりますので、そういった意味で、被害者の保護には我々の方の案が資するのかと思います。
- ○小川(友)委員
- 与党として、今の民主党、野党案を聞いていてどのようにお考えになっているか。この一元化、二元化の方がいいというのが与党案ですよね。その辺をどうお考えなのか、お伺いします。
- ○柴山議員
- 後段の三十日間の権利の届け出期間というものが、もしこれが単体で、被害者保護のための救済期間として、そこで終わりなんですよということであれば、それは若干短いのかなという感触もあると思います。
しかし、先ほど来御説明をさせていただいているとおり、既にその前提として六十日間の公告等の手続がありますので、少なくとも、被害者と見込まれる方は、その期間内に自分の被害について認識する機会というものは確保されているわけです。
それを前提とした上で、その申請のみの期間を三十日という期間に限ることは、先ほど御説明があったかと思いますけれども、確定刑事事件等に係る犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律との均衡からいっても、必ずしも短いとは言えない。むしろ、被害回復の迅速性ということに重きを置いた形で、処理の迅速性を図っていくというフェーズに入っていくのかなというように思いますので、また、トータルとしての期間の既存の遺失物法との均衡も考えてこのような制度設計をしたということでございます。
加えて申しますれば、一度被害者が、これは申し出をすれば被害回復が図れるんじゃないかということで手を挙げたんだけれども、最終的に、何か知らないけれども、調査のときには黙っていた名義人がやおらよっこいしょと手を挙げてきて、いや、やはりあれはおれのものだと言った場合に、金融機関として、こうした手を既に挙げてきた被害者に対して通知を改めて全部出し直さなくちゃいけないという形での混乱ということが見込まれることについても、ぜひ御配慮いただきたいと思います。
以上です。
〜中略〜
- ○佐々木(憲)委員
- 次に、預金等に係る債権の消滅手続という問題ですが、法案では、疑うに足る相当な理由があると金融機関が判断した場合となっておりますね。法案では、相当な理由を判断する基準ということで四点挙げておるわけですね。一つは捜査機関等からの情報提供、それから被害状況について行った調査の結果、それから名義人の住所への連絡等による名義人の状況についての調査の結果、預金口座等に係る取引の状況、この四つを挙げられているわけです。
相当な理由という場合、預金口座を債権の消滅を行う場合には、この四つが基準になっている。しかし、凍結を判断する場合、最初に私が申し上げました凍結、最初の凍結という場合の判断、これは判断基準に差があるわけですね。そういう認識でよろしいですね。では、与党案。
- ○柴山議員
- この部分は、民主党の提案と私どもの提案で差がないものと考えますので、私の方から答弁をさせていただきます。
今、階議員の方から御答弁がありましたとおり、口座の凍結ということに関しましては、要は、名義人、いわゆる加害者がこれを引き出すのを何とかして食いとめなければいけないということで、もちろん金融機関側の債務不履行のリスクというものはありますけれども、比較的迅速性に重きを置いた形で凍結等の運用をしなければいけないという必要性があるのに対しまして、佐々木委員が御質問されたとおり、失権という部分に関しましては、むしろ、より名義人の権利保護にしっかりと重きを置いた形での扱いが必要になるというわけで、御指摘の法四条の各号に、失権をさせてもやむを得ないという形で、これはあくまでも例示列挙でありますけれども、相当の理由というものを書かせていただいた次第でございます。
なお、これに加えまして、先ほど階議員の方から法三条の方について御説明があったのと同様、金融機関が行う認定方法の詳細につきましては、全銀協等の業界団体で、実務を踏まえた形でガイドライン等の統一的な基準ですね、口座売買を疑わせる相当な理由ですとか、あるいは異常な入出金、過去の履歴等と比較して異なる形での取引履歴が発生しているような場合等々、精緻な検討がされているというように承知をしております。
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