委員会での発言
経済産業委員会
第169回 国会 衆議院 経済産業委員会
第3号 2008年4月2日(水)
午前十時開議
○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 知的財産権の充実をずっと訴えてこられた甘利大臣に、こうして特許法等改正案につきまして質問ができることを大変うれしく思っております。
 私は、現行の特許法の有する大きな課題として、国際的連携が必ずしも十分ではないこと、それと、特許の登録ですとか紛争解決に時間やコストがかかり過ぎることをずっと主張してまいりました。今回の改正はその是正に資するものと思いますけれども、まずお伺いしたいのは、特許、意匠、商標の拒絶査定の不服審判請求期間を三十日から三カ月に拡大するという点でございます。これは、もちろん権利保障のためであるとはいえ、さっき申し上げた紛争解決の迅速性の要請からは若干問題も指摘されるところだとも思うんですけれども、この点についてはどういうお考えなのでしょうか。

○肥塚政府参考人
 お答え申し上げます。
 特許制度については、審査処理件数が増加しておりまして、これに伴って、拒絶査定が行われる件数、さらには拒絶査定に対して不服審判を請求する件数も増加してきております。それから一方で、制度利用者にとっては、各特許出願について審判請求の当否を判断するための調査や検討の時間を十分確保することができないという要望が出されております。
 こういう状況下で、審議会でも御議論をいただきまして、他国の特許制度においては、米国ですとか中国では審判請求期間が三カ月、欧州では二カ月となっていること、それから行政不服審査法で、手続保障の観点から、請求期間を六十日から三カ月に拡大する方向だということを踏まえて、請求期間を三カ月に拡大する提案をしているところでございます。
 今の期間の問題でございますけれども、特許制度では、審判を請求する際に、特許を請求する技術範囲に補正がなされますと、拒絶査定を行った審査官が再度審査をして、適正な補正がなされていますと、みずからの拒絶の査定を取り消して特許にするという制度、前置審査という制度がございます。
 この前置審査、再審査の段階で特許になる確率は非常に高うございまして、いわゆる二〇〇六年の統計で四五%ぐらいございます。また、この審査官による再審査は原則二カ月以内にやるということになっておりまして、補正が行われますとこういうスピーディーな処理がなされるわけでございます。
 今回の請求期間の拡大で、補正の検討可能期間が長くなるということになりますと、適切な補正を伴った審判請求がふえるというふうに思われまして、その場合には、審査官による再審査の結果特許にされる可能性がさらに高まるということで、速やかに権利取得がなされるということになろうかというふうに考えております。
 それから、このように、審判部における審理待ち期間を経ることなく特許になるケースがふえるということになりますと、結果として、特許庁全体として効率的な出願の処理にもなっていくのではないかというふうに考えている次第でございます。

○柴山委員
 結果的には、件数の処理がうまく回ることによって迅速性の要請に資するという趣旨も今御答弁いただいたかと思います。
 さて、この期間の問題もそうなんですけれども、先ほど申し上げたようにコストの問題も非常に大きな要素になってくると思います。
 特許あるいは商標関係の料金、特に中小企業の負担が大きい十年目以降の特許料ですとかあるいは商標設定登録料の引き下げ、これが実現をしたことは評価をさせていただきたいと思います。
 しかし、その引き下げの理由というのが、いわゆる特許会計におけるシステム化等の歳出軽減というようなところが理由になっているわけなんですけれども、そもそもこの特別会計制度というのは、この際抜本的に見直すべきではないか、同じような趣旨を持っている登記特別会計との統一処理も、場合によっては考えていくべきではないかと思うんですけれども、これについて大臣どのようにお考えですか。

○甘利国務大臣
 特会というのは、なぜ設定するかといえば、それは受益と負担の関係を明確にするということであります。その意味では、登記特会も特許特会も同じ趣旨にのっとって設置をされた。問題は、その目的が達成されているか、その目的に沿って引き続き行われているかという違いだと思います。
 登記特別会計は、コンピューター化を早急に進めていくという趣旨でもって、受益と負担の関係を明確にする特会として設けられているわけなんですが、平成二十二年度末をもって当初の目的を達成すると考えられることから、一般会計へ統合することになったというふうに聞いております。
 一方で、特許特会の方は、技術革新に合わせて不断に特許事務が高度化される体制を構築していく、財源としての手数料等の適切な改定をそれに沿って行っていくという仕組みでなされているわけであります。
 国内外のユーザーニーズに合わせた制度改正、国際的な出願増に対応したワークシェアリング、それから国際的な制度調和等に不断に対応するために、今後とも、出願人の理解と協力を得つつ、所要の財源を確保するという意味で、特別会計を維持する必要性が依然として特許特別会計にはあるということであろうと思っております。

○柴山委員
 御指摘の趣旨は大変よくわかるんですけれども、やはり登記にしてもこの登録にしても、しょせんは手数料であるというような部分では共通性を有するのではないかなと思っております。
 また、時代おくれの収支相償の発想を持っていることによって、特許審査関係の請求料を、国際的に見て大変高いと言われている商標の登録料で補っているというような指摘もあります。
 そういうようなことからすれば、やはり抜本的な見直しが必要ではないかということを問題意識としてぜひ提起をさせていただければというように思っております。
 次の質問に移らせていただきたいと思います。
 今回の改正では、発明を実施できる通常実施権、あるいは、今回仮通常実施権という形で、出願段階での権利も保護される対象また登録の対象となったわけですけれども、この登録で、ライセンシーの情報ですとかあるいはその権利の具体的な内容についてはマスキングをかけることができるという形になっているわけですね。このマスキングは、例えば利害関係人、特に特許権を譲り受けようとする者の取引の安全を害するのではないかというようにも思われるんですけれども、この点はいかがなんでしょうか。

○肥塚政府参考人
 先生御指摘のとおり、通常実施権の登録記載事項の開示を制限することによりまして、対抗力を具備した通常実施権者に関する情報は、通常実施権者がサブライセンサーになっている場合も含めて、登録原簿上は不明確となります。この点は御指摘のとおりだと思います。
 ただ一方で、特許権取引の実務は専門家同士で行われることがほとんどでありまして、権利を譲り受けようとする者などの利害関係者は、事前に、ライセンス契約の存在についてのデューデリと申しますか法的監査を行うことを通じて、当該権利に関する情報を取得した上で取引を行う場合が多いということは御承知のとおりでございます。
 また、特許権の譲渡契約においては、表明保証条項あるいは解除条項を設けることが通常でございまして、仮に、契約時に示されたライセンシーにかかわる情報と事実が異なったことによって譲り受け人が不測の損害をこうむることがあっても、これらの条項に基づくと、事後的には金銭的に補われるということになっていると承知しています。
 一方で、特許権にかかわる通常実施権の登録率は、今、十万件に対して千数百件、一%ぐらいにとどまっているというふうに推計されておりまして、登録記載事項の開示制限、ユーザーニーズでございますが、こういうことを導入することによって通常実施権の登録制度が利用しやすくなって、これまで登録されていなかった通常実施権が登録されるようになるということを通じて、特許権の取引の際に、通常実施権の有無について、公示を通じて得られる情報量が全体としてふえるという側面もあるというふうに思っております。また、これらの登録制度の活用を通じて、知財の活用の拡大というのを目指しているのがこの改正の趣旨でございます。
 したがいまして、御指摘のような側面はあろうかというふうに思いますけれども、これら全体を考えますと、登録記載事項の開示制限の導入によって、取引の安全が損なわれるケースは限定的だというふうに考えておりまして、むしろ、通常実施権の保護を図る見地からは、開示制限を導入して登録制度の活用を促していくという方が妥当ではないかというふうに考えている次第でございます。

○柴山委員
 今、特許権を譲り受けようとする者は、当該特許権のライセンス契約の存否についてはデューデリジェンスをかけるからいいじゃないかというようなお話があったかと思うんです。
 ただ、これについては、今の特許というのは、いろいろ複合的な特許が設定をされているものですとか、あるいは、さっきサブライセンスという説明もありましたけれども、そういう形で派生的な権利が発生しているものもあるわけですね。また、本当にプロだけの間しか特許権が流通しないのか、今後さまざまな形での、信託も含めた形での取引がなされる中で、確かに今登録が、余り普及が進んでいないという側面はあるんですけれども、私はやはりこれをオープンにしていくということが求められているのではないかなというように思っております。
 現に、諸外国における通常実施権の登録制度を比較しましても、ライセンシーの情報ですとかあるいはライセンス期間、またその権利の内容等については登録事項とされている国が大宗であるというように思います。恐らく、審議会ではさまざまな議論があったかと思うんですけれども、こういうこともぜひ配慮をしていただきたいと思いますし、もし説明に追加することがあればお願いをしたいと思います。
 また、今私は、特許権を取得しようとする者についてだけ言いましたけれども、例えば、並列的に別の通常実施権を取得した者ですとか、あるいは一般公衆ですとか、こういったほかの利害関係人に対しても、登録ということをきちんとオープンにしていく要請はないのかということについてもあわせてお聞きしたいと思います。

○肥塚政府参考人
 まず、今の最後の点でございますけれども、通常、通説ですとか判例でございますと、通常実施権者は、無権原の第三者が発明を実施したとしても、特許権者にかわって第三者に対して権利を行使するということは認められていないというふうに承知していまして、通常実施権者同士の間の関係、確かに実態として複数の、重畳的に通常実施権が与えられるというようなケースもあろうかと思いますけれども、通常実施権の登録自身は、効力発生要件ではなくて第三者対抗要件でありますので、現行制度の中でも、登録簿上にあらわれていない通常実施権が数多くあるというような状況であろうかというふうに思っております。
 さっき先生がお話しになられましたように、海外では開示をする制度をとっている国がございますけれども、その点は、先ほど先生からまさにお話がありましたように、審議会でも議論がございました。ただ他方で、我が国でも動産ですとか債権の譲渡の対抗要件に関する、例の動産・債権譲渡特例法などのような、こういう制度をとっている法制度も徐々に広がってきているのも事実でございまして、したがって、先ほど申し上げましたように、登録記載事項の一般への非開示によって取引の安全性が損なわれるケースは限定的ではなかろうか、むしろ、こういうことの改善を通じまして登録制度の活用を促していく方が、全体としての知財の活用を推し進めるのではないかというふうに考えている次第でございます。

○柴山委員
 次の質問に移りたいと思います。
 今度の改正法では、特許法あるいは実用新案法における優先権書類の電子的交換の対象国の拡大について処理がなされています。PDFファイルでこの優先権書類をやりとりするということになるかと思うんですけれども、この際私が心配するのは、やはりセキュリティーの問題でございます。どうしても、間に偽造あるいは捏造というプロセスが入ってきてしまうのではないかなと思うんですけれども、これについてはどのような手当てをお考えなんでしょうか。

○肥塚政府参考人
 先生御指摘のとおり、私どものシステムでも、それから国際的にも、ますます特許の世界は情報化が進んでまいりますので、セキュリティーは非常に大事だというふうに思っています。
 優先権書類の交換につきましては、一番先駆けてやりましたのは欧州特許庁とで、一九九九年から優先権書類の電子交換を開始しております。その後、韓国やアメリカとの間でも優先権書類の交換を実施しておりまして、今、一カ月当たり大体七千件程度の優先権書類が電子的にやりとりをされている状況にございます。
 今回の法改正は、こういう交換実績を積んでいる枠組みを世界各国に拡張しようということの前提として、こういう制度の改正を提案しておりまして、具体的には、欧州特許庁を介してドイツ、フランス、オランダといったような国との優先権書類の交換、それからもう一つは、国際知的所有権機関、WIPOを介して世界各国との優先権書類の交換が可能になるという制度が今議論になっておりまして、WIPOでは二〇〇九年にそのサービスが開始されるということになっております。
 このWIPOの制度を含めまして、今までの欧州、アメリカとの実績のもとで拡大していこうというふうに考えておりまして、当面、欧州特許庁それからアメリカ特許庁を介したもの、それからWIPOを介したものを予定しております。したがいまして、ネットワークセキュリティーが確立して信頼性が高い国、あるいは機関を考えております。
 そういう意味では、現在の優先権書類のやりとりと同等のセキュリティー基準のネットワークでやられていくというふうに考えておりまして、技術的にはいろいろございますけれども、優先権書類の真正は担保されるんじゃないかというふうに考えております。
 ただ、先ほど先生御指摘のように、セキュリティーの問題というのは非常に大事だというふうに考えておりますので、技術的にも、電子化あるいは電子データの交換の過程で、優先権書類の捏造といったことが行われる可能性がないような仕組みを考えておりますけれども、非常に重要な課題でございますので、国際的な専門家会合、これは三極でもWIPOでもございますので、そういう場でも引き続き議論してまいりたいというふうに考えております。

○柴山委員
 いずれにいたしましても、送信の過程での作為、また出願人が違うデータを送らせるという、やはりこの両面あるというように私は思っておりますので、今の御指摘は、WIPOあるいは欧州各国とか米国とか、そういうセキュリティーのしっかりしたところからデータをもらう、当面はそこに限るというようなお話だったので、今後しっかりと関係各国と連携、またセキュリティーの問題等もきちんと深めた検討を進めていただきたいと思います。
 今回の法律については、喫緊の課題ばかり対応していただけたと思いますので、ぜひ速やかな成立を図っていただきたいと思います。
 時間が参りましたので、私の質問は以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。

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