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第183回 国会 衆議院 決算行政監視委員会

第183回 衆議院 決算行政監視委員会第二分科会 第1号
平成25年6月21日(金)
午前九時開会

【本日の会議に付した案件】
 平成二十一年度一般会計歳入歳出決算
 平成二十一年度特別会計歳入歳出決算
 平成二十一年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成二十一年度政府関係機関決算書
 平成二十一年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成二十一年度国有財産無償貸付状況総計算書
 平成二十二年度一般会計歳入歳出決算
 平成二十二年度特別会計歳入歳出決算
 平成二十二年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成二十二年度政府関係機関決算書
 平成二十二年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成二十二年度国有財産無償貸付状況総計算書
 平成二十三年度一般会計歳入歳出決算
 平成二十三年度特別会計歳入歳出決算
 平成二十三年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成二十三年度政府関係機関決算書
 平成二十三年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成二十三年度国有財産無償貸付状況総計算書
 (総務省、財務省所管、株式会社日本政策金融公庫、文部科学省及び防衛省所管)

○三谷分科員
 今、B―CASシステムの後継といたしまして、これは二〇一二年七月末から関東近県で開始されて、本年四月には実は全国運用が開始されたTRMP方式というものがあるということなんですけれども、こちらについて伺いたいと思います。
 このTRMP方式というのは具体的にどのような方式、どのようなプロテクトでしょうか。 

○柴山副大臣
 今御質問いただいた、B―CASの後継として採用されておりますTRMP方式なんですけれども、これは、受信機のチップに内蔵されたソフトウエアを利用いたしました新しい方式であります。今のB―CASカードと違って市販のカードリーダーで読み書きをできないということから、物理的により堅牢なシステムであるというように考えております。
 また、暗号鍵もB―CAS方式よりも強化をされておりますので、セキュリティーは向上しているということで、暗号鍵の長さを非常に長くすることによりまして解読に要する時間が大幅にふえるということで、セキュリティーが大幅に強化をされるシステムであるというように説明できると思います。 

○三谷分科員
 ありがとうございます。
 こちらについて、カードという物理的なものを配布するというものではなく、そういったソフトウエア、プログラムを組み込むことになっているというふうな話ですけれども、プロテクションというのは以前のB―CASのものに比べて強くなっているという御説明を今いただきましたが、そうはいっても、イタチごっこの部分というのはあろうかと思います。
 これは、一旦またハックされた場合への対策というのは講じることはできるんでしょうか、このTRMP方式は。

○柴山副大臣 
 これは、今委員御指摘のとおり、イタチごっこの部分というのは当然あるんですけれども、例えば、カードの情報を改ざんするというより、内蔵されたチップについて暗号を解読してハッキングをするということであれば、それに対応する新たな捜査手法というのを、当然、警察当局等と連携をし、あるいは事業者と連携をしてとっていくということになっていこうかと思います。それは、当然、技術の進展に伴って、私どもも所管省庁と連携をして対応していきたいと思っております。

○三谷分科員 
 ありがとうございます。
 TRMP方式というものができている、これも最近私は勉強して知ったんですけれども、本当にこれで、費用も四百円もかからない、もっともっと安価で対応できるという話も伺っております。B―CASカードの今のシステムよりも何かすぐれているような印象を受けるんですけれども、このTRMP方式というものについて検討が始まったのはいつぐらいだったというふうに御認識されておりますでしょうか。事前の通告はなかったので、できれば参考人の方に答えていただければと思います。

○柴山副大臣 
 検討が始まった時期というのは、今、ちょっと調べなくてはいけないということで事務方の方に検討してもらいますけれども、実際にスタートしたのが二〇一一年の六月、二〇一二年の七月末から関東広域圏において、そして二〇一三年四月から全国において運用開始ということで、非常に新しいシステムであろうというように思っております。

○三谷分科員 ありがとうございます。
 二〇〇九年から、実際、B―CASカードの不正利用というものが始まるはるか前からTRMP方式の検討が始まってきたということは、正直なところ、B―CASカードというものは最終的な手段ではないということは当時から恐らく認識されていたのかなというふうには推察しております。
 TRMP方式というものは、現時点では一般社団法人が運用しているというふうに理解をしております。総務省といたしまして、運用しているというこの一般社団法人に対して、何らかの財政的な支援または行政的な施策を講じているということはありますでしょうか。

○柴山副大臣 お答えいたします。
 今申し上げたTRMP方式は、放送事業者によって自主的に設立された一般社団法人である地上放送RMP管理センターによって運営をされているんですね。それで、総務省として、これに対して指導監督をしているという事実や、財政支援をしているという事実はございません。
 もちろん、放送コンテンツの保護の方式につきましては、先ほど私が申し上げたとおり、公益上の問題が絡んできますので、総務省として非常に関心を持っているわけですけれども、基本的に、この法人に対する監督あるいは支援ということは、今申し上げたように行っておりませんし、私どもの職員のOBが再就職をしているというような実態もございません。

第183回 国会 衆議院 災害対策特別委員会

第183回 衆議院 災害対策特別委員会 第5号
平成25年5月10日(金)
午前九時一分開会

【本日の会議に付した案件】
・政府参考人出頭要求に関する件
・災害対策基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五六号)
・大規模災害からの復興に関する法律案(内閣提出第五七号)

○畑委員
 防災行政無線のあり方なんですね。実は、これはいろいろな公共団体で使い方が一定していないという問題意識があります。例えば、ある公共団体は、行事のためにめちゃくちゃ頻繁に防災行政無線を使う。これは生活の平穏にも非常に支障があるというかうるさいわけですけれども、ただ、流されているけれども聞こえないと逆に不安をかき立てる。こういう使い方がいいのかどうかという思いがあります。あと、そういうことに使わない、抑制的に使っているところももちろんあります。あるいは、災害だけに基本的には使っているわけですが、例えば注意報レベルでも流してしまう、あるいは、本日は空気が乾燥していますから気をつけてください、こんなレベルでも頻繁に流す。こういうことをやっていると、いざ防災情報が流された場合に、オオカミ少年じゃないですけれども、何だ、また何か流しているなということで、ぴんとこなくなってしまうような危険性を私は感じております。ですから、ここは、地方の実情に任せるという部分はあるんですが、やはり準則というぐらいの大枠、こういう考え方の整理をひとつしていただいて、防災行政無線はこういうふうに使いましょうという、ちょっとその辺の整理をしていただきたいなと思うんですが、いかがでしょうか。

○柴山副大臣
 お答えをいたします。ちょっとここではっきりさせておきたいんですけれども、防災行政用無線局の目的は、電波法関係審査基準でこのように定められております。「それぞれの地域における防災、応急救助、災害復旧等に関する業務及び地方行政に関する業務の遂行上必要な無線通信を行うために開設するものである」。したがって、この目的に合致する内容であれば、防災行政無線による情報提供は、まさしく地方公共団体の判断で実施されることとなっております。災害というのはしょっちゅうあるわけではありませんから、平常時における行政情報の提供は、災害時における防災情報の提供に対する訓練という意味合いもあるわけです。音で発出するわけですから、いざというときに、日ごろ使っていなくて全然聞こえないよというのじゃ困るわけですね。ですから、御指摘のとおり災害時には防災情報の提供をまず優先するべきであると考えられますけれども、平常時には、御指摘のように例えば気象情報ですとか雨量や河川情報以外に、地方公共団体がそれこそ地域の実情を踏まえて、みずからの判断で行政情報と防災情報の提供をバランスをとって運用して、当該設備の有効活用を図っているということだろうというように思っておりまして、情報提供の内容について国が統一的な基準を設けるということは、必ずしも適当ではないのではないかというように考えております。

第183回 国会 参議院 議院運営委員会

第183回 参議院 議院運営委員会 第29号
平成25年6月5日(水)
午前九時三十五分開会

【本日の会議に付した案件】
・日本放送協会経営委員会委員の任命同意に関する件

○副大臣(柴山昌彦君) 
 日本放送協会経営委員会委員浜田健一郎君、北原健児君、澤登久子君、竹中ナミ君及び室伏きみ子君の五氏は六月十九日に任期満了となりますが、浜田健一郎君及び室伏きみ子君の二氏を再任し、北原健児君の後任として上田良一君を、澤登久子君の後任として宮田亮平君を、竹中ナミ君の後任として美馬のゆり君を任命いたしたいので、放送法第三十一条第一項の規定により、両議院の同意を求めるため本件を提出いたしました。
 何とぞ、御審議の上、速やかに同意されますようお願いいたします。

第183回 参議院 議院運営委員会 第17号
平成25年3月29日(金)
午後一時開会

【本日の会議に付した案件】
・人事官の任命同意に関する件
・検査官の任命同意に関する件
・会計検査院情報公開・個人情報保護審査会委員の任命同意に関する件
・情報公開・個人情報保護審査会委員の任命同意に関する件
・公益認定等委員会委員の任命同意に関する件
・預金保険機構監事の任命同意に関する件
・公認会計士・監査審査会会長及び同委員の任命同意に関する件
・電気通信紛争処理委員会委員の任命同意に関する件
・中央更生保護審査会委員の任命同意に関する件
・公害健康被害補償不服審査会委員の任命同意に関する件
・立法事務費の交付を受ける会派の認定に関する件
・本日の本会議の議事に関する件

○委員長(岩城光英君)
 次に、総務副大臣柴山昌彦君。

○副大臣(柴山昌彦君) 電気通信紛争処理委員会委員である各務洋子君は本年三月三十一日に退任いたしますが、後任として荒川薫君を任命いたしたいので、電気通信事業法第百四十七条第一項の規定により、両議院の同意を求めるため本件を提出いたしました。何とぞ、御審議の上、速やかに同意されますようお願いいたします。

第183回 参議院 議院運営委員会 第7号
平成25年2月26日(火)
午後三時二十八分開会

【本日の会議に付した案件】
・理事補欠選任の件
・検査官の任命同意に関する件
・総合科学技術会議議員の任命同意に関する件
・公正取引委員会委員長及び同委員の任命同意に関する件
・国家公安委員会委員の任命同意に関する件
・預金保険機構理事長及び同理事の任命同意に関する件
・電波監理審議会委員の任命同意に関する件
・日本放送協会経営委員会委員の任命同意に関する件
・労働保険審査会委員の任命同意に関する件
・中央社会保険医療協議会委員の任命同意に関する件
・社会保険審査会委員の任命同意に関する件
・中央労働委員会公益委員の任命同意に関する件
・運輸審議会委員の任命同意に関する件
・運輸安全委員会委員長及び同委員の任命同意に関する件
・公害健康被害補償不服審査会委員の任命同意に関する件
・本日の本会議の議事に関する件

○副大臣(柴山昌彦君)
 電波監理審議会委員山田攝子君及び山本隆司君の二氏は平成二十四年十二月三日に任期が満了したため欠員となっているところでありますが、山田攝子君の後任として村田珠美君を任命し、山本隆司君を再度任命いたしたいので、電波法第九十九条の三第一項の規定により、両議院の同意を求めるため本件を提出いたしました。 次に、日本放送協会経営委員会委員であった數土文夫君は平成二十四年五月三十日に退任いたしましたが、後任として室伏きみ子君を任命いたしたいので、放送法第三十一条第一項の規定により、両議院の同意を求めるため本件を提出いたしました。 何とぞ、御審議の上、速やかに同意されますようお願いいたします。 以上です。

第183回 国会 参議院 総務委員会 New!!

第183回 参議院 総務委員会 第12号
平成25年5月30日(木)
午後一時開会

【本日の会議に付した案件】
・理事補欠選任の件・政府参考人の出席要求に関する件
・電波法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○藤末健三君
 民主党・新緑風会の藤末でございます。
 私は、この電波法、非常に重要な法だと思っておりまして、やはり電波、有限の資源ということが余り認識されていないんではないかと思っております。
 皆様御存じのように、有線であれば、線であれば、線を増やせばどんどんどんどん通信の量は増えますけれども、電波はもう空間しかございません。この空間にどれだけの電波を使うか、有効に使うかというのは非常に大きな、限られた資源を割り当てるこの電波法の意義は大きいと思います。
 私は、そのような観点から、二つのポイント、一つは、いかに電波を使ったイノベーションを進めるか。今、成長戦略の議論なんかがされているところではございますが、この電波の分野では非常に大きな成長の可能性があるんではないかと思います。そしてまた同時に、グローバリゼーション、経済を成長する機動力としてのグローバリゼーションに電波法の観点からどのように対応するかということについて御質問申し上げたいと思います。
 まず初めに御質問申し上げたいのは、今、移動通信、スマートフォンが出てきまして、その通信の量、トラフィックは大体年間二倍のペースに拡大しているという状況でございます。先ほど申し上げましたように、電波というのはもう限られた資源でございますので、これを今電波法の中でいろいろ再編を行ったり、また利用効率化努力ということで技術開発を進めるということでございますが、年間二倍のペースがこのまま続いたときに、恐らく電波の利用の配置換え、そして恐らく電波の多重化、いろんな技術があるかもしれませんけれども、恐らく間に合わないんではないかというふうに考えます。
 いろいろなやり方はあると思うんですけれども、例えば公衆無線LANなどを増やすという話もございますけれども、一番お聞きしたいのは、これ柴山副大臣にお聞きしたいと思うんですけれども、級数的に増えていく電波の使用のトラフィックの増加、それとどう対応していくか、そういう大きな枠組みをお答えいただきたいと思います。お願いいたします。

○副大臣(柴山昌彦君)
 お答え申し上げます。
 今委員が御指摘のとおり、移動通信のトラフィック、年間約二倍の非常に速いペースで大変逼迫をしている状況であります。
 今御指摘になったように、総務省の方では、周波数を有効活用する、帯域を圧縮させるですとか、あるいは高い周波数の方を使っていただくというような技術など、研究開発を進めております。そして、周波数の再編を行って必要な追加の割当てをしていくというような形で、現在、移動通信用の周波数として約六百メガヘルツ幅を確保しております。今後は、当面、二〇二〇年までに千四百メガヘルツ幅以上を新たに追加確保して、先ほどの六百メガヘルツと合わせて合計で二千メガヘルツ幅以上とするように取り組んでおります。
 ただ、今御指摘があったように、それで足りるのかという問題意識は持っていなければいけないと思っておりまして、携帯電話事業者においては、この増加するトラフィックに対処するために、基地局の増設によるネットワーク容量の増強ですとか、あるいは利用効率の高い、多くのデータを同時に送信できるLTEの開始などの対応をしておりますし、これも今御指摘があったように、無線LANなどを活用して移動通信トラフィックを固定通信回線などに迂回させるオフロードを推進をしております。こうした取組によりまして、固定通信網も含めたネットワーク全体での対応ということを引き続き進めていければというように思っております。
 以上です。


(中略)


○藤末健三君
 柴山副大臣にちょっと是非、これは提案というか、もし可能であればお答えいただきたいんですけど、今どういう状況かというと、若い方々はLINEを使われている、もう爆発的に増えています。うちの子供もほとんどLINEで話している。もうそれが常識。彼らはやはり携帯の通信という認識とか余りないんですよね。もう普通の電話として使っている、LINEを。
 そういう中で、法律的には何が違いがあるかというと、音声通信というのは途絶えちゃいけませんよ、例えば基地局に停電対策をしなさいとか、質をこれだけしなさいという条件がある。一方、データ通信はもうほぼないです、そういう基準が。しかしながら、データ通信を使っている人はどんどん増えている中でそれをどう見るかということ。 そして、ついでに申し上げますと、例えば東日本大震災があったとき、私、携帯は使えなかったです、はっきり申し上げて。政治家登録していても。私が使ったのは何かというと、スカイプ。スカイプの方が、IPのデータ通信の通話の方が結局使えたというのが現状、これが。でございまして、法的にこの音声というものを維持している、これはもうほとんどアナログの世界。一方、デジタルで飛ばす音声の世界が生まれている中で、この体系を見直さなきゃいけないと思います、恐らく、法的に。
 そして、もう一つ大事なことは何かというと、ビジネス的にもそうだと思う。今後、このLINE、スカイプという動きは起きながら、恐らくキャリアの方がデータ通信を基盤とした音声サービスをせざるを得なくなると思います、これは間違いなく。そういうことを踏まえた上での政策、競争政策もそうだと思います。今、三社プラス一社になっていますけど、この小さな一社はデータ通信だけで戦おうとしている。そういうものも含めて、やはり私は法的な体制を見直すべきだと思うんですけど、もし副大臣、何か御意見がございましたらお願いします。

○副大臣(柴山昌彦君)
 今御指摘のとおり、まさに社会状況、そして技術はもう日進月歩で変化をしているわけですね。ですので、このデータ通信と音声を別のものととらえる今の法制度が遅れているという側面があるのは、私は御指摘のとおり、否めないと思っております。
 ただ、現実には、そうはいっても音声伝送役務の技術基準を守って制度設計をすれば、これは両方満たすという状況にあるわけですから、今御指摘のような技術環境の変化も含めて、設備の共用化などの効率化ですとかサービスの向上、そして技術発展ということを総合的にやっぱり見ていくことが必要であるというふうに思っております。


(中略)


○藤末健三君
 是非、その準天頂衛星、私ずっと推していましたので、利用を是非進めていただきたいと思います。
 本当に、やっぱりアメリカと同じことをやっちゃまずいと思いますので、日本らしいテクノロジーを使ってきめ細かいサービス、恐らく、僕は正直言ってアメリカの道路で成功しても絶対日本じゃ失敗すると思うんですよ、あっち、めちゃくちゃ道広いですからね、信号もないし、はっきり言って、と私は思っています。だから、本当に準天頂衛星ぐらいのものを使わなければ私は日本ではできないと思いますので、日本でできれば、次、準天頂はアジアで使えますから、まさしくそういうビジネス展開をしていただきたいと思います。
 そういうことでございまして、海外への展開、このワイヤレスのビジネスにおける海外への展開というのは非常に重要でありまして、今回、柴山副大臣におかれましてはミャンマーへ行っていただきまして本当にありがとうございました。あれは私行きたくて企画してまして、実は。柴山さんに行っていただいて本当に良かったし、また同時に、郵便のシステムの話をしていただいたのは本当に有り難かったと思います。また、インドネシアも行っていただきまして、防災ICTの話も見事成就していただいたということは非常に有り難いと思います。 そういうような、私は、これからもこの情報通信、ASEANの市場というのは非常に大きいものがあると考えているわけでございますが、この日本のICTを海外に展開するということにつきまして、柴山副大臣の見解をお聞きしたいと思います。お願いします。

○副大臣(柴山昌彦君)
 ありがとうございます。
 今御指摘になったように、日本らしさということで、ASEANのこれからの有望な市場を開拓していくということは双方にとって極めて意義のあることであるというように思っております。
 まず、今御指摘になられた、今後民主化が進み、成長余力が大きいミャンマーに対する取組、これは極めて重要でありまして、先日、安倍総理がミャンマーを訪問され、そしてインフラ整備への支援を表明したところなんですけれども、その直前に、先方の情報通信担当大臣が訪日をされまして、私も面会をさせていただきました。そして、今御指摘があったとおり、私自身、一月の下旬に関連企業とともにミャンマーを訪問させていただきまして、我が国のICT製品ですとか情報通信網、サービスの展開につきまして官民併せての働きかけということをしてまいりました。
 そして、今御指摘になった防災ICT分野につきましては、私が申し上げるまでもありませんけれども、新藤総務大臣が今年四月にインドネシアを訪問された際に、防災ICTシステムの早期導入に向けた具体的な取組について合意をしてもらいました。
 今後、こういった取組を他のASEAN諸国の方に進めていきたいというように考えておりますし、また、他の省庁との連携によりまして、例えば他の省庁の所管するインフラなどともパッケージにして、しっかりと官民挙げて展開をしていきたいというように思っております。


(中略)


○小坂憲次君
 消防救急無線、また防災行政無線のデジタル化、今回の電波法の改正の議題でございます。この電波法の改正の頭に、現に設置されているというのが今回のこの消防救急無線、防災行政無線のデジタル化に際して市町村の補助をするスキームの原則でございます。この現に設置されているアナログの機器をデジタル化する、そのためには百五十、四百の防災行政無線、あるいは百五十の消防救急無線、これを移行することによって電波の有効活用ができる、結構なことでございます。しかし、これにはメリット、デメリットあるはずでございます。
 デジタル化することによるメリット、それはデータが一緒に送れるようになる、あるいは、準動画という表現を使っているようですが、簡易な動画、非常に滑らかな動画ではないかもしれないけれども動画情報も送れるようになる、そして音声も明瞭になるだろうと、こういうことでございますが、このデータ通信はいろんな活用方法があると思います。後に指摘したいと思います。
 また、デメリットもあると。デジタル化することによって電池の消費量が非常に大きくなりますので、ポータブルの通信機については電池容量を増すとか、あるいは、増せば少し重くなりますが、当然その影響で大型化、大型というよりも少しサイズが大きくなる、こういったデメリットもあるかもしれません。
 こういったメリット、デメリットあるんでございますけれども、まず、先ほどもちょっと質問が出ていたし、衆議院の方でも既に質問が出ているようでございますけれども、この消防救急無線のデジタル化は二十八年五月までに終わるということになっております。現在の消防救急無線、使っている対象の消防本部は、もう一方の施策で広域化を推進をしております。 広域化を推進しながら、同時に一方では二十八年の五月までにデジタル化を終わると。広域化は二十九年末でございますから、そこに若干時間の差もございます。
 一生懸命デジタル化したら、今度は広域化して、今度範囲が変わってまた別の枠組みでやらなきゃいかぬ、こういう二重投資あるいは二重負担のようなことにならないように、無線機ですから、チャンネルは共通のチャンネルあるんで、それでできるではないかというのもあるかもしれない。しかし、どういうスペックでつくるかによりますが、そういったデメリットも考えられますが、これに対して、こういった問題は認識をされていると思います。どのような対策を考えていらっしゃるでしょうか、担当の方から御回答願います。

○政府参考人(市橋保彦君)
 ただいま御指摘ございました消防救急無線のデジタル化、これは通信基盤強化のために平成二十八年五月を期限として推進しております。また一方で、消防の広域化につきましては、消防体制の確立や消防力の拡充のために、現在、平成三十年四月一日を期限として推進しているところでございます。この二つの施策、お互いに独立した施策でございますけれども、共に消防体制を強化していくという意味で非常に重要な施策でございまして、できるだけ相互に、共に速やかに進めるよう努力をしているところでございます。
 また、御指摘がございました、広域化によりまして整備したデジタル化が手戻りが生じてしまうということは非常に無駄につながるわけでございまして、そういう広域化を計画しているような、それが具体化しているような団体につきましては、それを見極めながら整備を進めていくというふうなことで、そういう留意点につきましても助言をしているところでございます。

○小坂憲次君
 当然のことかもしれません。財政力の弱い市町村がどこに今度は広域化するかということは真っ先に考えなきゃいかぬことでしょうから、短期的に財政力の弱いところから手を着けるということであればなおさらのこと、そういったところにしっかり目配りをして調整をしていただきたいと思います。
 それで、先ほど、現に設置されているという条件が付いていると、このスキームは、現に設置されているということになりますと、今、全ての市町村は、消防救急無線と行政防災無線、全て持っているんでしょうか。この点について、まずお伺いしたいと思います。

○政府参考人(市橋保彦君)
 お答えいたします。
 消防救急無線につきましては、消防本部が当然これは保有しているということでございます。また、今回の対象となります市町村防災行政無線、これの移動系につきましては平成二十四年三月三十一日現在で整備率八一・九%というふうに把握しているところでございます。

○小坂憲次君
 そうすると、片方しか整備していないというところ、すなわち、多分消防救急の方が整備率は高いんだと思うんですが、あるいは逆ですか。その場合、欠けている方を新たに、現在アナログで機器を持っているんではなくて、新たにそこにデジタルの機器を入れようとした場合、これは今回のスキームの対象になるんでしょうか。

○政府参考人(吉良裕臣君)
 お答え申し上げます。
 今回は、消防救急無線、それから市町村防災行政無線の整備、原則どちらも市町村が整備することは整備するわけでございますが、既に一方の無線を自力でデジタル化整備を行った市町村については、残りの無線のデジタル化を行う場合には補助対象とします。
 片方のみの無線のみを整備している、今のお尋ねの件でございますが、市町村については、前提が、両方を一緒にデジタルに移行するということを前提としておりますので、片方のみ整備されている市町村についてはデジタル化が行われる場合に広げるということはなかなか困難であろうというふうに思っておりますが、その場合でも、このケースも空き周波数が出るということがありますので、検討してみたいというふうに考えておるところでございます。

○小坂憲次君
 そうしますと、百五十と四百の防災行政、そして消防救急の百五十、これ両方一体で二百六十に移行したときにこの補助スキームを発動するという原則で、今言われた前段はいいんです。後段の部分の、片方しか整備していないところに新たにもう片方をデジタルで整備する。これをこの費用から出すとなると、先ほどの吉川さんの質問の中での、電波法の使途の範囲にこれ入るのかという疑問とぶつかってくると思うんですが、この辺はどういうふうになるんでしょうか。

○政府参考人(吉良裕臣君)
 先ほど申し上げましたように、そういう面でこれを補助するのはなかなか難しいというふうになろうかと思います。

○小坂憲次君
 ということは、自主財源でやれ、あるいは地財措置でやれと、こういうことなんでしょうか。どうですか。

○政府参考人(吉良裕臣君)
 電波法上のこのスキームにはなかなか乗っかってきませんので、自治財源あるいはその他地財措置で対応するということになります。

○小坂憲次君
 であるならば、財政力の弱いところに対して発動するスキームですから、当然、片方が欠けていてその対象になるとすれば、財政力が弱いということになります。ですから、そういうところに対しての地財措置、これを是非とも積極的にやるということの御答弁をいただきたいと思いますが、大臣いらっしゃらないので、副大臣いかがでしょうか。

○副大臣(柴山昌彦君)
 これは、今御指摘になられたとおり、従前の地財措置等のストラクチャーで対応しておりますので、自主努力と併せてそういったスキームを使って、きちんとした普及ができるように努力をしてまいりたいと思っております。


(中略)


○小坂憲次君
 さて、デジタル移行ということでいいますと、最初にスカイツリーの話をしましたが、VHF帯がそれで空いたわけですね、七十六から九十メガヘルツと百七十から二百二十二、この最初の方をV―LOWといい、後の方をV―HIGHといって、二つの区分で移行後のこの空き地をどのように使うかということがあります。
 ここで二つ、ちょっとテーマでお話をしたいんですが、一つはいわゆるそのV―HIGH、百七十から二百二十二メガヘルツのこの空き周波数を活用した新しい試みで、スマートフォン向けのマルチメディア放送、具体的に言うとNOTTVというのがあります。このNOTTVの、二十四年の四月に開始したわけですが、このマルチメディア放送という枠組みでスタートしたこの事業には、広域専用電波利用料として、これはそのままで計算しますと、一メガヘルツ約一億円弱ですから、割当ての十四・五メガヘルツを掛けますと十三億八千万円となるわけですね。非常に高額の利用料を払わなきゃいかぬということになります。新しい試みのものがこれだけ大きな負担を覚悟しなければ立ち上がれないとなりますと、後を続く者が余り出てこなくなります。後を続く者が出ないということは、すなわち競争が促進されず、そして新たなビジネスチャンスも奪われてしまうということになります。
 こういったものについては、やはり放送であって、これは防災面でも活用は可能だと思います。そういう役割もどんどん出てくるでしょう。そういった意味からは、いわゆる特性係数という、生命、財産保護に寄与するか、あるいはあまねく受信責務を負わせるというようなことに配慮して軽減措置が図られていると。このいわゆる特性係数を適用してあげればもっと軽い負担で済む、そして後発者も出やすくなる。
 こういった軽減措置を、ニュービジネスに対してインキュベーターとして何かこの軽減措置を講じるという考えはおありでしょうか、大臣。じゃ、副大臣お願いします。

○副大臣(柴山昌彦君)
 ありがとうございます。
 今御指摘になったV―HIGHマルチメディア放送というのは、地上アナログテレビの停波した後の周波数のうち二百七・五メガヘルツ以上二百二十二メガヘルツ以下の周波数を利用して行う携帯端末向けの放送でありまして、それで、今御指摘があったとおり、平成二十三年度のこのV―HIGHマルチメディア放送の電波利用料の負担額は約十三億円とかなり高額であることは事実であります。
 ただ、この料額については、平成二十三年度の電波利用料の見直しの際に取りまとめられました電波利用料制度に関する専門調査会基本方針における方針でありまして、地上デジタル放送に移行した後の空き周波数帯を使用する新しい免許人は、他の免許人以上に多額の費用を要する地上デジタル放送移行対策の受益に対する負担を行っているわけではないという理屈から、基本的に新たに特性係数の適用は行わないという提言、これを受けて、今御指摘になった特性係数を適用せずに料額を算定をしているわけなんですね。
 ただ、平成二十六年度から適用する次の電波利用料の在り方については、今年の三月から電波利用料の見直しに関する検討会を開催しております、先ほど大臣から御説明がありました。その中で、こういった新規参入事業者に適用する電波利用料額の軽減措置は果たしてどうあるべきかというのがまさしく論点の一つに挙がっているところであります。
 この検討会におきましては、意見募集やヒアリングの際に様々な意見をいただいているところでありまして、今後、これらを十分に踏まえて、今年八月に予定している基本方針の取りまとめに向けて議論をさせていただきたいというように思っております。


(中略)


○片山虎之助君
 そこで、今、電波利用料については検討会をつくって、副大臣が中心のようですけれども、検討中のようですが、大まかなスケジュールと大きな論点はどこなのか、教えてください。

○政府参考人(吉良裕臣君)
 お答え申し上げます。
 電波利用料制度というのは、電波法によりまして少なくとも三年ごとで見直すということで、現在、総務副大臣とそれから総務大臣政務官の主催によりまして、検討会を三月から開始しているところでございます。本検討会では、主に電波利用料を活用して今後強化すべき施策だとか、あるいは電波利用額の軽減措置の在り方、それから今日いろいろ議論が出ておりますスマートメーターだとかM2Mシステムの新しい無線システムに関する料額の在り方等について御議論をいただいているところでございます。
 これまでパブリックコメントやヒアリングを実施してきておりまして、具体的には、歳出規模を抑制的にすべきだというような意見だとか、あるいは電波有効利用の促進のための研究の充実を求める意見だとか、あるいは無線局の特性に応じて適用されます軽減措置の在り方に関する意見、それから携帯電話等に関する料額を周波数幅に応じた課金に一本化すべきとの意見、それからスマートメーターなどの新しいデータ通信システムに関する料額を低減又は免除すべきというような意見をちょうだいしているところでございます。
 今後これらの意見を踏まえて、検討会において、本年の八月ごろまでに料額の見直しの基本方針をまとめていただくという予定になっております。

○片山虎之助君
 八月までに基本方針をまとめて、法案が要るでしょう、それがどういうあれですか。それから、いつから適用なの。二十六年度か二十七年度か。

○政府参考人(吉良裕臣君)
 八月の末ごろ基本方針をまとめていただきまして、この基本方針を受けて新たな電波利用料額を算定して、平成二十六年の通常国会に電波法改正案を提出できるように進めていくと、こういう予定でございます。

○片山虎之助君
 いやいや、そこで、ちょっと先ほども議論が出たんだけれども、結局、電波料の今の負担が、これはバランスが取れて公正なものかどうかという議論があるんですよね。特に、先ほど聞くと、パブコメですか、七百件の中で五百件はテレビ局が割安じゃないかと、負担が低いじゃないかという意見があったという話でしょう。これはもう常に放送と通信はそういう関係にあるんですよ。ただ、今、特性係数で放送は大分まけているわね。あまねくというユニバーサルサービスの問題があるし、あるいは災害報道なんかはある程度責任を持たなきゃいけませんわね、放送は。
 そういうことで、皆さんが特性係数というのでまけているんだけれども、これについてはまたいろんな議論があるので、その辺はどういう方向なんですか。余り詳しいことは言えないかもしれないけれども、ずっと大変な関心があるんですよ、放送業界にも通信業界にも。

○副大臣(柴山昌彦君)
 御指摘のとおり、今委員が御指摘になられた論点は大変大きな関心を集めております。
 この電波利用料の料額算定に当たっては、まず電波利用共益費用を一番目として、例えば研究開発ですとかエリア整備のような電波の経済的価値の向上につながる事務に要する費用、そして二番目として、どの局にも必要な監視業務など電波の適正な利用を確保するために必要な恒常的な事務に要する費用の二つに分けまして、前者については各無線局が使用する周波数幅などに応じて負担を配分しまして、後者については無線局数で均等割、今二百円としていますけれども、といたしまして、それらの合計額を各無線局の料額とするというのが一応原則となっております。
 ただ、その場合に、一部の無線システムについては、その特性を考慮して、実際に使用する周波数幅に軽減係数、今御指摘になられた特性係数ですね、これを乗じることによって負担額を軽減をしているところであります。
 そして、地上テレビジョン放送局の料額の算定に当たっては、あまねく普及努力義務、NHKについてはあまねく普及義務、そして国民の生命などの保護に寄与する災害放送の実施義務という公益的な義務が法律上規定されておりますことから、これらの公共性を勘案して、使用する周波数幅に、二分の一の要素が二つ、そしてそれを掛け合わせて四分の一を乗じて負担額を算定をしております。
 こういった事柄も考慮して今後どうするかということを検討しているわけですけれども、電波法によって少なくとも三年ごとに見直すということとなっておりまして、平成二十六年度から二十八年度に適用する次の電波利用料の検討を行うことを目的とした検討会を三月から開催しているところでありまして、その中でこの特性係数の在り方についても様々な御議論をちょうだいし、先ほど御指摘があったパブリックコメントやヒアリングなどでいろんな方向性の御意見をいただいております。
 ですので、これを現時点でどのようにするか、あるいは放送事業者と通信事業者とのバランスをどのようにするかということについては断言をする状況ではありませんけれども、これからもそういった様々な御意見を踏まえて、本年八月末ごろまでの今御指摘があったような基本方針のスケジュールに従って取りまとめをしていくことにしております。

第183回 参議院 総務委員会 第5号
平成25年3月27日(水)
午前十時開会

【本日の会議に付した案件】
・政府参考人の出席要求に関する件
・参考人の出席要求に関する件
・放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)

○藤川政人君
 是非、積極的な推進をお願いしたいと思います。 もう時間もなくなってまいりました。最後の質問になると思いますが、先ほどから出ております4K、8K、ハイブリッドキャストの開発についてお伺いしたいと思います。 今回の予算の中には、現在のハイビジョンテレビの十六倍の画素数となるスーパーハイビジョン、いわゆる8Kや、通信と放送等の新たなサービスであるハイブリッドキャストの開発の項目がありますが、これがどのような形で視聴者や国の利益につながるのでしょうか、伺いたいと思います。

○参考人(久保田啓一君)
 お答えいたします。 NHKは、これまで新しい放送サービスの研究開発に取り組んでまいりました。今おっしゃいましたスーパーハイビジョンですとかハイブリッドキャストの実用化につきましては、現在、総務省の放送サービスの高度化に関する検討会にNHKも参加いたしまして、その推進を進めているところでございます。 スーパーハイビジョンでございますけれども、これまでは二〇二〇年に実用化試験放送を目指すということで開発を進めてまいりましたけれども、技術の進展のスピードが大変速いこと、あるいは早期実現への要望が強いということを踏まえまして、二〇一六年のリオデジャネイロのオリンピックの時点で実用化試験放送ができないかと。そして、二〇二〇年には本放送が開始できないかということで検討を進めているところでございます。 二〇二〇年でございますけれども、これは今、東京オリンピックの招致を目指しているところでございますけれども、先日、IOCの評価チームの皆さんが日本にいらっしゃいましたときに、このスーパーハイビジョンをプレゼンいたしまして、高い評価を得たところでございます。この高精細映像技術ですけれども、日本のお家芸でありまして、この実用化に取り組むことが日本の国益につながると思いますし、もちろん日本の映像文化、放送文化の活性化あるいは高度化ということにつながるということになると思っております。 今までにない新しいテレビの開発、これが日本の放送業界、家電業界に新しい輝きを取り戻すのではないかというふうに考えているところでございます。

○副大臣(柴山昌彦君)
 ありがとうございます。
 今御指摘があったように、これ、国際競争の観点からも他国に先駆けてしっかりと進めていくということが必要だと思っております。韓国、既にKBSが昨年、実証放送、4Kについては実現をしております。8Kについて後れを取らないように、今御指摘のあった検討委員会等を通じて、しっかりと補正予算の活用を含めて取り組んでまいりたいというように思っております。

第183回 参議院 総務委員会 第1号
平成25年2月26日(火)
午後一時一分開会

【本日の会議に付した案件】
・理事補欠選任の件
・国政調査に関する件
・政府参考人の出席要求に関する件
・地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○委員長(松あきら君)
 柴山総務副大臣。

○副大臣(柴山昌彦君)
 同じく総務副大臣を拝命しました柴山昌彦でございます。 委員長、そして委員の皆様の格段の御指導をよろしくお願い申し上げます。

第183回 国会 衆議院 総務委員会 New!!

第183回 衆議院 総務委員会 第10号
平成25年6月4日(木)
午前九時三分開議

【本日の会議に付した案件】
・政府参考人出頭要求に関する件
・参考人出頭要求に関する件
・地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案
(内閣提出第五五号)(参議院送付)
・行政機構及びその運営、公務員の制度及び給与並びに恩給、地方自治及び地方税財政、
 情報通信及び電波、郵政事業並びに消防に関する件

○佐藤(正)委員
 続いて、電波利用料の軽減についてお尋ねをしたいと思います。 これも、前回の委員会で、放送法でNHKと民放に対して軽減措置が同率になっている、そこで、NHKは義務づけがされていますが、民放は努力義務、どうして義務と努力義務で同じ軽減率になっているんでしょうかねというお尋ねをしましたが、再度この点についてお答え願いたいと思います。

○柴山副大臣 お答え申し上げます。
 前回私の方から答弁をさせていただきましたけれども、この軽減規定の趣旨ということを少し整理させていただきたいと思います。
 前回私が申し上げたとおり、サービスの持つ価値が大切であるかということ、それと、今御指摘のユニバーサルサービスが確保されているかどうか、これはそれぞれ法律で書き分けられております。
 その中で、確かに、放送法においては、NHKに対しては、あまねく全国において受信できるように措置する義務を定めておりますし、また、民放に対しては、その放送対象地域においてあまねく受信できるように努める義務を課しており、このユニバーサルサービスの確保において、あたかも違う表現がなされていて、サービス内容が違うように受け取られるという趣旨だと思います。
 しかしながら、実態としては、同一放送対象地域において、中継局の基地数に関して、NHKと民放において乖離があるわけではありません。例えば、関東広域圏における中継局設置数、NHKが百六十七局、在京キー局五社は各百五十九局と、決して遜色のない水準にあります。また、義務違反に対する罰則は、NHK、民放、それぞれございません。そういった実態が同一であるということが非常に重要です。
 また、法律上も、放送法の目的として、「放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障する」ものということが第一条一号に規定されておりまして、通常の市場活動を超えた責務が法律により規定されているという点において、NHKと民放は異なるものはありません。
 こういったことから、同様の軽減率を適用しているというように御理解をいただきたいと思います。

○佐藤(正)委員 
 であるならば、もう同じ条文にした方がいいですね、実際。
 それと同時に、例えば北海道では、テレビ東京系のテレビ北海道、実は日ハムが日本シリーズに出たときに見られないところがたくさんあるんですよ、見られない地域が。こういう現状も実はあるんですよ。質問時間がなくなって余り細かいことは言いませんが、現実ではそういう実態もある。
 そこで、今度、例えば携帯電話についてお尋ねをしたんですが、携帯電話には普及努力義務というものはありませんというふうに、前回、総務委員会で、吉良局長でよろしいんでしょうか、お答えになりましたけれども、これはそのとおりでよろしいんですか。

○柴山副大臣 
 はい。前回局長から答弁をさせていただいたとおり、電気通信事業法においては、その目的に、放送法第一条に書いてあるように今私が紹介した、普及に関する規定というものはありません。ですので、このような軽減率は現在適用していないということであります。
 ただ、本件も含めて、料額の算定に当たっては、今広く意見募集を行った上で検討しているという状況でございます。

○佐藤(正)委員 
 そこで、先ほど来から8Kの話とか出て、要するに空き地をつくらなきゃという、これはもう一番大前提だと思います。空き地をつくって携帯電話にその空き地を渡したときに、実は、携帯電話事業者の方には、認定後七年後までに全ての管内で人口カバー率八〇%をそれぞれ達成することと入っているんですね。そのときは普及しなさいということを言っているんですよ。携帯電話にその枠を上げるときに言っているんですよ。恐らく、この法律ができたときには、携帯電話がこんなに普及するとは考えていなかったんだろうと思うんですね。
 そこでお尋ねをしますが、この事実を踏まえたときに、先ほど検討されていると言っていましたが、やはりそろそろ少し考え方を変えるときが来たのではないかなと思いますが、いかがですか。

○柴山副大臣 
 今答弁をさせていただいたとおり、電波利用料のあり方に関する検討委員会が、私あるいは橘政務官を筆頭として開かれております。その中で、今委員から御指摘のあったような実態も踏まえて、また一般の意見も踏まえて検討させていただいているところでございます。

第183回 衆議院 総務委員会 第8号
平成25年5月23日(木)
午前九時開議

【本日の会議に付した案件】
・政府参考人出頭要求に関する件
・参考人出頭要求に関する件
・一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二四号)
・行政機構及びその運営、公務員の制度及び給与並びに恩給、地方自治及び地方税財政、情報通信及び電波、郵政事業並びに消防に関する件

○塩川委員
 日本共産党の塩川鉄也です。
 地域住民や沿線自治体に甚大な影響を与えます一部投資家による西武鉄道路線廃止提案問題について、まず最初にお尋ねをいたします。
 三月十一日、西武鉄道を子会社とする西武ホールディングスの筆頭株主、米投資会社サーベラス・グループは、株式公開買い付け、TOBで西武ホールディングスの株式を買い増すと発表しました。その後、株式の買い増しなどを条件変更し、五月三十一日までが期限となっております。
 西武ホールディングスが公表したところによると、サーベラスは西武ホールディングスに対し、都市交通、沿線事業において、少なくとも一千四十五名中八十名の駅員の削減、八%に相当します、を提案する、また、不要路線として西武秩父線、国分寺線、多摩川線、山口線、多摩湖線を列挙する、埼玉西武ライオンズは売却の選択肢としています。
 西武ホールディングスの筆頭株主サーベラスによるこのようなリストラ提案に対し、埼玉県を初め廃止提案がされた路線の沿線自治体がこぞって反対であります。また、埼玉県市長会、埼玉県町村会、十七市が参加する東京都北多摩議長連絡協議会、埼玉県秩父郡市の一市四町議会なども同様であります。西武鉄道沿線全ての自治体あるいは地方議会から路線存続の要望が出ております。
 資料の一枚目にありますように、こういう地方団体、議会から意見表明、要望も出され、二枚目には、東村山市を初めとしました国分寺線、多摩湖線沿線の四市が出された要望書、こういったものがそれぞれからも出されているわけであります。背景には、とんでもないという住民の怒りがあるわけです。
 そこで、最初に、沿線住民の一人でもあります柴山副大臣にお尋ねをします。
 このように、路線廃止問題について沿線自治体と住民からこぞって反対の声が上がっている、こういう声をどのように受けとめておられるのか、お尋ねします。

○柴山副大臣
 塩川委員も私も同じ埼玉八区を地盤としておりまして、まさしくこの西武鉄道の動向というのは地元の大変大きな関心事であります。
 先日出演をしたテレビ番組で、私は、この問題に対しては、確かに民民の問題でありますけれども、ただ、やはり地域の利便性に非常に重大な影響を及ぼす問題であるということから、非常に関心を持っているというような話をさせていただきました。
 私の直接の所管ではありませんけれども、個人的には、地元で行われた署名にも協力をさせていただいておりますし、何としても、まだお互いの条件に食い違いがあるというような報道がありますので確定的なことは申し上げられませんけれども、一住民として、今申し上げたように、沿線地域にとって非常に重要な路線あるいは球団の移転などは、非常に懸念を持っているところでございます。

第183回 衆議院 総務委員会 第7号
平成25年5月21日(火)
午前九時開議

【本日の会議に付した案件】
 ・政府参考人出頭要求に関する件
 ・参考人出頭要求に関する件
 ・電波法の一部を改正する法律案(内閣提出第二五号)
 ・電波法の一部を改正する法律案(原口一博君外三名提出、衆法第一〇号)
 ・通信・放送委員会設置法案(原口一博君外三名提出、衆法第一一号)

○濱村委員
 皆さん、おはようございます。公明党の新人議員、濱村進でございます。
 本日は、総務委員会で質問する機会を与えていただきまして、私にこのような機会を下さった全ての方々に感謝を申し上げたいと思います。
 十分間という短い時間でございますので、まず、大変大事な大事な点について、電波法の一部を改正する法律案につきまして質問をさせていただきたいと思います。
 まず、この改正案の趣旨ですけれども、電波利用料の使い道を拡大するということであるかと思います。電波利用料というのは無線局の免許人が支払うわけでございますけれども、その使途について、使い道については法律事項でありまして、私もこの総務委員になるまで知らなかったんですが、この使途について、人命または財産の保護の用に供する無線設備の整備のための補助金の交付を追加することとなるわけであります。
 端的に言えば、電波利用料の使い道として、防災行政無線あるいは消防救急無線のデジタル化について補助しますよということであるかと思うわけであります。
 既にデジタル化を進めた自治体もありますけれども、二十四年度末におきまして、防災行政無線は三七・六%、移行期限のある消防救急無線につきましては四〇・六%の自治体におきまして、デジタル化がもう既に終わっている状況であるということで聞いております。
 このたびの法改正におきましては、財政力の弱い市町村について優先的に補助金を交付するというふうに伺っております。
 そこで、今、日本だけではなくて世界じゅうで無線環境が逼迫している状況であります。スマートフォン等の普及によって逼迫しているわけですけれども、移動通信トラフィックの急増や、災害に強い通信・放送インフラの整備の必要性が高まってきておりまして、電波のさらなる有効活用、有効利用を実現するための技術開発も必要になってきているわけであります。
 電波利用をめぐる環境が劇的に変化しているわけでありますけれども、こういった背景を踏まえまして、政府として、今後、電波の利用について全体像をお示しいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○柴山副大臣
 お答え申し上げます。
 今委員が御指摘になられたとおり、スマートフォンの普及などによって、移動通信のトラフィックは、今年間約二倍のペースで増加をしております。また、スマートメーターやセンサーネットワークなどの新たな電波利用システムの進展も期待されております。
 こういった増大する周波数の需要に対応するために、総務省においては、周波数を効率的に利用する技術、具体的にはデジタルによって圧縮する、ナロー化と言いますが、そういう技術ですとか、あるいは高い周波数への移行を促進する技術など、電波を効率的に利用するための研究開発を推進するとともに、周波数の再編成を行って必要な追加割り当てを行っております。
 今御指摘になられた移動通信用の周波数としては現在約六百メガヘルツ幅を確保しているところでありまして、二〇二〇年までに千四百メガヘルツ幅以上を新たに確保して、合計で二千メガヘルツ幅以上とするように取り組んでおります。
 いずれにいたしましても、総務省としては、今後とも、積極的に研究開発や周波数の再編によるさらなる周波数の確保を進めていく所存であります。
 以上です。


(中略)


○中田委員
 よろしくお願いします。
 維新の会の時間の中で、私が残りの分をやらせていただきたいと思いますけれども、きょうは、新藤総務大臣、お疲れさまでございます。あわせて、原口元総務大臣もいらっしゃいますので、新旧総務大臣が居並ぶというこの状況の中で、なるべく民主党案にもぜひお伺いをしたいというふうには思っておりますので、その意味では、急ぎ、入らせていただきたいと思います。
 まず、政府案の方からもろもろお聞きをしていきたいと思うんです。
 この電波法の改正案でありますけれども、電波利用料の使途の範囲を拡大していくということでありますね。その中には、市町村の防災行政無線と消防救急無線のデジタル化の費用、これに二分の一の補助をしようということが盛り込まれております。
 私も経験があるわけですけれども、市町村のこうした緊急時の無線体制というものをデジタル化していくというのは当然重要なことでありまして、いざというときの備えという意味においては、これは大いに評価をしていきたいというふうには思っています。デジタル化すれば、当然ですけれども、高速で送ることができるようになるわけでありまして、防災や救急救命活動に資するということであります。
 その意味で、まず基本的なことなんですが、二十四年度末時点でのデジタル化率というのは、データでは、防災行政無線で一三・二%、消防救急無線では四〇・六%にとどまっているということです。だからこそ補助をしていくという趣旨は理解できるわけですが、さて、目標をどのぐらいに置くんですか。しっかりと目標を立ててやってもらいたいと思うわけですが、そこについての御答弁をお願いしたい。

○柴山副大臣
 今御指摘のありました防災行政無線並びに消防救急無線のデジタル化は、今御指摘のとおり、通信の秘匿性の向上に加えて、データ伝送の利用も可能となりますし、効率も飛躍的に高まるということで、いずれも私どもの最終的な目標は一〇〇%デジタル化であります。
 そして、期限についてなんですけれども、まず、消防救急無線のデジタル化は、先ほど来お話がありますとおり平成二十八年五月三十一日が移行期限であって、同期日までに一〇〇%の達成を求めることとしております。
 そして、防災行政無線の移行期限につきましても、今後、情報通信審議会の審議ですとか、市町村における移行計画を十分把握した上で移行期限を検討していきたいと考えております。
 本施策の実施によりまして、財政力の弱い市町村を優先的に、移動系になりますが、防災行政無線のデジタル化を支援すること、及び移行期限を定めるなどによりましてデジタル化の加速を図って、最終的に一〇〇%デジタル化することを目指してまいります。
 なお、デジタル方式への移行期限が平成二十八年五月三十一日と定められている消防救急無線の方につきましては、本施策とあわせて、自助努力による設備整備や、消防庁などの財政支援を行うことで完全デジタル化というふうにしてまいりたいと思っております。
 以上です。


(中略)


○佐藤(正)委員
 みんなの党の佐藤正夫でございます。
 中田委員の質問に「いいね」が大分入ったのかなと思っています。 早速質問に入らせていただきますが、先ほど新藤大臣が言われた、電波利用料、総括原価方式、何のために使って、それで財源がこれだけ要るんだ、それが電波利用料になっていく、まさにそのとおりだと私は思います。そういうことを考えたときに、オークションとはまた別の次元で、今の中ではそういう状況であるので、それを基軸にして質問をさせていただきたいと思うんですね。
 そうしますと、先ほどの質問の中でもあったように、地デジ化が四十数%。今後、あとどれだけ地デジ化のお金が要るのかなという資料を出させていただいたんですが、それでいきますと、平成二十六年から三十年ぐらいの中で、約八百四十五億円がまだ必要であるということです。ですから、これを年で割れば当然出てくるわけです。
 そうなると、基本的に、先ほど大臣が言われたように、これがなくなるとすれば、普通だったら利用料が下がるというのが当たり前だと思います。経費、使うものが減ってくるわけですから、総括原価方式でいけば当然下がっていく、これはそのとおりだと、さっきの答弁は私は納得をしております。
 そこで、何点かお聞きをしたいのが、電波利用料たるものは、本来、先ほどから、十二項目が十三項目になったということでありますけれども、今回の電波利用料の大きな目的は、いわゆるデジタル化によって空き地をふやす、これをまず一義的にやらなきゃいけないということから始まったのだと思いますね。
 国会の総務調査室の方からいろいろ資料をいただきました。そこで見ますと、基本的には、平成八年に、当時の郵政省電気通信局から消防庁に対し、電波の有効利用のために消防救急無線のデジタル化及びナロー化についての協力がなされた。その後、いろいろ消防の方で検討をされてまいった。そして、その経緯を言うと、検討していただいて、消防庁も消防・救急無線デジタル化検討委員会を設置し、進めていくということになった。
 そこを受けて、総務省は、アナログ消防救急無線のデジタル化及びナロー化の移行について、平成二十年四月九日に、先ほど大臣からも審議会、審議会という話がありましたが、電波監理審議会に諮問をしたということでありますが、このことは間違いないでしょうか。

○柴山副大臣
 平成二十年の四月九日の電波監理審議会では、百五十メガヘルツ帯のアナログ方式の消防用無線局について、二百六十メガヘルツ帯のデジタル方式への移行を推進してまいりました。ただ、その移行について一定のめどがついたことから、アナログ方式の消防用周波数の使用期限、先ほど申し上げたように平成二十八年の五月三十一日までとしておりますけれども、これを定めるための周波数割り当て計画、総務省告示の一部変更案について諮問をしたものでございます。
 本件につきましては、この周波数の移行によって利用可能となる百五十メガヘルツ帯が陸上移動通信に適した周波数帯であるということから、まさしく鉄道用とか電力用など公共業務を中心に広く利用されているということを踏まえて、電波利用者の利便性の向上及び周波数の有効利用の推進といった観点から、同日、原案を適当とするという旨の答申をいただいております。


(中略)


○佐藤(正)委員
 ぜひそれを、後ろの方はもういいですから、最初に言った方を考えていただいたら。
 何でもそうなんですよ。投資をしました、投資したから、これはもったいないからずっとやっていこうといったら、この投資した金がどんどん死んでいくんですよ。それよりも、その投資を欠損、損金に落としてでも、新しいものを導入した方が実は有益であるということがたくさんありますから、ぜひ、新藤大臣、前半の部分でしっかり検討していただくことをお願いしたいと思います。
 次に、先ほど来の電波利用料の件なんですが、中田委員からも御質問の中でありました、携帯電話の方が電波利用料は約七十数%を占めているというところですね。
 そこでお尋ねをしたいんですが、この中で、テレビ、放送とかいろいろな部分で利用料の軽減措置があるということですが、この軽減措置について、どういう仕組みで、どういうところが対象になっているのか、お尋ねをしたいと思います。

○柴山副大臣
 お尋ねの電波利用料の軽減措置のあり方については、まさに現在開催をしている電波利用料の見直しに関する検討会、これは私が座長を務めさせていただいておりまして、橘政務官も加わっていただいておりますけれども、そこで、一つの重要な論点として検討しているところであります。
 今御指摘のとおり、携帯電話につきましても、例えば緊急地震速報を受信したりとか、いろいろと災害対策の公益的な役割を果たすではないかというようなことを通信事業者の方々からいただいているのは事実であります。
 それも踏まえて、この検討会においては、これまで、もちろん、既存の放送会社の方からもきちんと意見を聞いておりますけれども、こういった幅広い意見の募集ですとか、公開ヒアリングにおきまして、この無線局の軽減措置は一体どのようにあるべきかということについて、さまざまな意見を交わしているところであります。
 今後、これらの意見を踏まえて、検討会において、ことし八月末ごろまでに料額の見直しの基本方針をまとめていただくこととしております。
 以上でございます。

○佐藤(正)委員
 では、今も検討していると。検討するということは、やはりちょっとおかしいな、今までの仕組みが、例えば放送の方に対して四分の一ほどの軽減がある、携帯の方には軽減はない、しかも、利用料を払っている大部分が携帯事業者である、そういう中で、これは少し変えなきゃいけないのかなということが根底にあって、検討に入られているんだろうと思います。   そこで、テレビ局に軽減があるわけですが、これは、NHKと民放とではどういうふうに中身が違うんですかね。

○柴山副大臣
 お答えいたします。
 確かに、NHKと民放では、軽減率を考慮するに当たって、考慮すべきファクターとして、普及義務のあり方が考慮されるべき点だと思っております。
 現在の電波利用料制度では、地上テレビジョン放送の料額の算定に当たっては、あまねく普及をさせる義務、これがNHKです。そして、あまねく普及をさせるよう努力する義務、これが民放なんですね。それを勘案して、使用する周波数帯域に二分の一を乗じて算定をしているところなんです。
 いずれも、電波利用の便益を国民に広く付与するための責務であるということから、その公共性を勘案して、二分の一を掛けるということとさせていただいております。

○佐藤(正)委員
 普及の義務と、民放は努力義務、これで何で同じなんでしょうね。おかしいでしょう。NHKは義務をしっかり言っているけれども、民放については努力しなさい。
 では、携帯電話の方にはこういう努力義務は与えていないんですか。携帯電話事業者にはそういうのは与えていませんか。

○吉良政府参考人
 携帯電話には、特性係数が掛かることはございません。

○佐藤(正)委員
 さっきからその議論をやっているので、それはわかっているんですよ。携帯電話にも例えばこういう普及努力義務というのはないんでしょうかというのを言っているんです。

○吉良政府参考人

失礼しました。携帯電話には、普及努力義務というのはございません。

○佐藤(正)委員
 では、お尋ねしますが、努力がつくのとつかないのと、どこがどう違うんですか。教えてください。

○吉良政府参考人
 いずれにしても、あまねく普及義務とあまねく普及努力義務というのが放送法に定まっている、法律に定まっているということを勘案して、その公共性があるというふうに勘案して、二分の一を乗じているところでございます。

○佐藤(正)委員
 だから、私はわからないので教えてくださいと言っているんですよ。法律の中で努力と努力がついていないのを教えてください、それをお尋ねしているんですよ。

○吉良政府参考人
 いずれにしても、法律に定まっているということでございまして、NHKと民放、同様に二分の一を乗じているということでございます。

○佐藤(正)委員
 多分、聞いている方はわからなくなったんだろうと思うんです。
 だから、明確に聞きたいのは、私は法律がわかりませんから教えてください、法律の中で努力というのが入っているのと入っていないのは、どういうふうに私は解釈をしたらよろしいんでしょうかということをお尋ねしているんです。
 答えられるんだったらもう一回答えてもらったらとは思いますが、時間がなくなってきましたので、どうなんですか。

○吉良政府参考人
 いずれにしても、先ほどから繰り返しておりますけれども、あまねく普及義務とあまねく普及努力義務を勘案して、法律に定まっているので二分の一を乗じているところでございますが、いずれも、電波利用の便益を国民に広く付与するために、通常の市場活動を超えた責務が法令により規定されているということで、その公共性を勘案しているところでございます。 ただ、本件も含めて、料額の算定に当たっては、具体的な算定方法について広く意見募集を今行っているというところでございます。

○佐藤(正)委員
 もう時間がないんですが、先ほどの答弁の中で、公共性というのが入るんだけれども、基本的には、携帯電話なんて、今すごい公共性がありますよ。今回の東日本でも、携帯はかなり活躍されたと思いますし、そしていろいろな情報も流れています。
 そういう意味では、先ほど副大臣が言われたように、検討を進めているというのは確かにいいことだと思いますので……(柴山副大臣「一言だけいいですか」と呼ぶ)前向きなものですか。では、お願いします。

○柴山副大臣
 ですので、公共性と一言で言うと混乱をしてしまうんですね。要するに、そのサービスの持つ価値が非常に大切かどうかということと、今、NHKと民放のように、ユニバーサルサービスが確保されているかあるいは確保されていないかということで条文の書き分けをしているということ、これをしっかりと整理していかなければいけない、そういうことです。

第183回 衆議院 総務委員会 第4号
平成25年3月21日(木)
午前九時開議

【本日の会議に付した案件】
・政府参考人出頭要求に関する件
・参考人出頭要求に関する件
・地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)
・地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一三号)
・放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、承認第三号)
・地方税財政基盤の早期確立及び東日本大震災への対応に関する件

○瀬戸委員
 震災の際は、NHKの役割というのは非常に大きいものがあると思います。しっかりとよろしくお願いしたいと思います。 
 次に、新たな放送・通信のサービスについて、お伺いしたいと思います。 昨年度、日本の家電メーカー、ソニーとかパナソニックなどは、液晶テレビ部門での不振で過去にない赤字決算となりました。家電メーカーの収益の大部分は、液晶テレビの生産によって一時期得られていたということもありました。それが、現在ではサムスンに席巻されてしまっているということでございます。幸い、現時点、アベノミクスによる円安によって、日本の家電メーカーは息を吹き返しつつありますが、第三の矢、成長戦略の検討が必要となります。 
 私は、家電メーカーにとっても、またインターネットと視聴者をとり合うことになっているテレビ局にとっても、今後のスマートテレビ戦略というのが大きなポイントになると考えています。スマートテレビの開発においては、スマートフォンの開発のときのように海外に先んじられるべきではないというふうに考えています。我が国の成長戦略にも大きく貢献するものというふうに考えています。その実用化、普及に向けて、放送業界、家電メーカーが連携して枠組みをつくる必要があると考えています。
 総務省において、スマートテレビの将来展望について検討を進めていると聞いておりますが、今後、どのように実用化、普及を図っていくのか、お考えをお聞かせください。

○柴山副大臣
 お答えをいたします。 
 この二月、総務省は、日本を元気にする成長戦略の策定を目標として、ICT成長戦略会議を設置しました。そのもとで、デジタル移行後の放送サービスの高度化の内容や進め方に関しまして、極めてスピードの速いデジタル技術の進歩の状況や、国際標準化の動向なども踏まえて検討を進めている、まさにそういうステージなんです。
 グローバルに見れば、ハイビジョンの4K、8Kといった高画質化、あるいは、今先生が御指摘になられたスマートテレビに見られる高機能化、これらが高度化の流れということなのではないかなというように思っております。

この高度化の進め方を具体的に決めていくに当たっては、技術や国際標準など、グローバルな動きを踏まえることも重要なんですけれども、今後の実用化、普及を目指すサービスが視聴者からの支持を得られるものとなるのか、あるいはビジネスとしての採算性がとれるのか、こういったことも十分に考えていくことが必要になってくると思います。
 御指摘のとおり、日本のICT分野は、全体として、非常に厳しいグローバル競争の中で崖っ縁と言われるような状況にあると思いますけれども、今申し上げた要素を踏まえつつ、この競争にしっかりと勝ち抜いていくための戦略をつくってまいります。
 具体的には、この成長戦略、五月をめどに一定の取りまとめを行う予定でありますけれども、それこそ、官民が共同で、オール・ジャパンで取り組むべき目標をしっかりと打ち出してまいりたいと思います。以上です。

○瀬戸委員
 ぜひ、オール・ジャパンとしてもしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

(中略)

○田所委員
 4K、8Kなど次世代スーパーハイビジョン開発が進められておりますけれども、その概要が十分に示されておりません。地デジへの対応がやっと終わった現在において、どれだけ必要性があるのか、有用なものであるのか、理解ができないのであります。
 しかし、資源のない我が国の発展のためには先進的な技術開発は成長戦略として大変重要だと思いますので、市場のニーズがどれだけ見込めるのか、産業としての実用性あるいは価値、今後の負担等を考慮して、説明責任を果たしながら、実用化に向けた工程を示すべきであると思います。
 NHKの研究開発における役割とあわせて、どのように考えているのか、総務省にお伺いをいたします。

○柴山副大臣
 大変貴重な御指摘をありがとうございます。ただ、昨年十月の韓国における4K試験放送の開始ですとか、あるいはこの一月のCES、国際家電見本市における多くの展示等でも明らかなとおり、4K、8Kといった高画質化は、これはもう世界の流れだと思っております。
 世界に先駆けてこういった新しいサービスの導入に取り組んでいくことが重要でありまして、委員御指摘のとおり、それが今後我が国の成長戦略の一つと位置づけられていくのかなというようにも思っております。 
 総務省といたしましては、平成二十四年度の補正予算を活用して、この4K、8K、それぞれの放送サービスの実用化を前倒しすべく今取り組んでいるところであります。
 その際、今御指摘いただいたような市場ニーズあるいは事業者や視聴者の負担、こういったさまざまな課題ですとか、あるいは解決に向けたステップについて明確化を図って、説明責任を果たしていくことが必要なんですけれども、この点につきましては、この二月に設置をいたしましたICT成長戦略会議において、NHKさん、あるいは民間放送事業者、受信機メーカーさんなどに参加をいただいて検討しておりますし、私自身も問題意識を持っております。
 この春にロードマップを取りまとめて、それに沿って早期実用化を加速していきますけれども、その際、今御指摘のあった4K、8Kについては、先進的なサービスに対するニーズを持つ利用者が多い衛星放送から始めていくということを想定しております。
 それから、二番目のNHKの研究開発における役割ということなんですけれども、これら実用化の過程で、技術やサービス基盤の確立に向けて公共放送としてやはり先導的な役割を果たしていただくことによりまして、視聴者への還元を図っていくということが必要だと思っておりまして、そして、そういった需要を喚起して、それを通じて関係産業分野の成長と国際競争力の回復というものを図っていければというように思っております。以上でございます。

第183回 衆議院 総務委員会 第3号
平成25年3月19日(火)
午前九時開議

【本日の会議に付した案件】
・政府参考人出頭要求に関する件
・地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)
・地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一三号)

○小川委員
 私自身も含めて、私ども、今自問自答しています。あれは何だったのか、政権交代は。大臣の言葉の中から、うれしくも何ともない、あるいは緊張感、緊迫感、そして自民党も変わろうとした、そういうお言葉を聞いて、ある意味、これは、どっちの政権がよかったか悪かったか、いろいろ議論はあるでしょう。しかし、政権がかわるということの緊張感なりダイナミズム、これそのものは極めて大きいということを共有させていただくということを前提に、少し議論させてください。
 それで、ごめんなさいね、ちょっと時間がないので簡潔な答弁にぜひそれぞれ御協力いただきたい。
この点、若手、中堅の意見も聞いてみたい。
 私が個人的に敬愛しております柴山副大臣。この点、野党時代の経験は自民党に何をもたらしたのか。そして橘政務官。珍しく、自民党の議員でありながら、野党としてスタートを切った。この時代、本当に真摯な姿勢で、総務委員会で何度も御質問をいただいた、たくさん歌の御披露もいただいた。御答弁前に歌を御披露いただいても結構ですが。お二人、若手なり中堅なりの見識をちょっと述べていただきたい。

○柴山副大臣
 過分なお言葉、ありがとうございます。
 一般的な話をすれば、野党である以上、議員立法ですとか、あるいは委員会で質問などを通じて、批判的な目で政府の政策ですとか手順を外から検証することができたということが非常に大きな経験だったと思います。ですから、我々が政権に復帰したときに、それこそ民主党の皆さんが目指していた政治主導ということをしっかり意識するようになった。これが、かつての与党時代と違って、私は大きな前進ではないかなというように思っております。
 私の所管でいえば、情報通信や郵政は日進月歩の分野ですから、それこそ外の目でしっかりと外部の人の意見あるいは民間の人たちの意見を取り入れるということが重要な分野です。ですから、野党の経験ということがそういう意味でも役に立っているのではないかというように思っています。以上です。

○橘大臣政務官
小川委員にお答えいたします。おっしゃるとおり、野党から始めさせていただきました。三年間、この総務委員会で皆さんにお世話になり、きょういらっしゃっている中では、原口議員、また小川議員、黄川田議員、福田議員から真摯な御答弁をいただいて、大変勉強になったと思っております。その問題意識をやはり生かして、私も今、柴山副大臣の下で、放送、通信、郵政という分野になりますけれども、また、この国の発展のために努力していきたいと思っています。
 あわせて、皆さん方、今回、与党、野党かわっておりますけれども、その立場で、その質問席からどういうふうなことを質問したい、そうしたら、どういうことが問題意識か、これも私なりには自分の経験から理解できるところがございます。そして、皆さん方との議論を通じて、それを少しでも、やはりいいものは取り入れていくという、そういうことが政権として非常に大事だと思っております。これからも努めてまいります。


(中略)


○小川委員
 政策的にもそうでしょう。副大臣なり政務官としての仕事ぶりは変わっているのかどうか、お聞きしたい。
 柴山副大臣が、まさに政治主導を意識して仕事をしているとおっしゃった。よくも悪くもとあえて申し上げます。私どもの時代は、副大臣、政務官による、主宰する会議が山ほどあった。よくも悪くもとあえて申し上げます。
 そして、余り知られていませんよ、大きくは報道されていない、きょう地方税法の改正案、審議対象ですけれども、税負担軽減措置の適用状況を明らかにしたのは初めてですよ。前政権時代につくった、いわゆる租税特別措置の透明化法を受けて、こういうことを整理した。それから、再三議論になっていますが、一括交付金。国、地方協議の場が法制化された。直轄事業の負担金のあり方、見直しましたよ。一部廃止した。義務づけも大幅に廃止した。地方議員年金、坂本先生に大変お世話になりました。破綻のおそれを来したことを受けて、廃止しました。そして交付税特会の借り入れ、皆さんがつくった借金だ。私たちは一千億返した。一千億ずつ返したって三百年かかりますよ。しかし返した。
 随所に、未熟なところ、至らぬところは全て認めて、おわびもしなきゃいけないところもあると思う。しかし、しかかろうとした、意思を持った政府、政権であったことは間違いない。
 その意味で、坂本副大臣にちょっとお聞きしますが、今、政務三役会議というのはやっているんですか。あるいは、この税法そして予算に、副大臣として、俺はここにすばらしく影響を与えた、俺が決めた、あるいは大臣と相談してここに決定的な影響力を行使したということは何かありますか。

○坂本副大臣
 これは小川委員たちの政権のときの成果だと思いますが、役所の方が、役所主導ではなくて私たちにある程度任せてくれるようになりました。そして、自分たちが何をやるべきかということをやはり改めて自覚するようになりました。五つのミッションというものを大臣が言われて、それを総務省が取り込んで、五つのミッションでやっているのもそういうことであります。
 副大臣会議、政務官会議、やっております。毎週やっております。そして、次は何をやるべきなのか、このことも話し合っております。同時に、それぞれの副大臣、政務官が勉強会をつくって、チームを立ち上げて、そしてこれからのやるべき仕事というものを話し合っているところです。

第183回 衆議院 総務委員会 第1号
平成25年2月14日(木)
午前九時五十分開議

【本日の会議に付した案件】
・理事の辞任及び補欠選任
・国政調査承認要求に関する件
・政府参考人出頭要求に関する件
・地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二号)

○北側委員長 
 次に、柴山総務副大臣。

○柴山副大臣
 総務副大臣を同じく拝命いたしました柴山昌彦です。 新藤大臣を支え、皆様方の負託に応え、全力を尽くしてまいりたいと思います。 北側委員長を初め皆様、どうぞよろしくお願い申し上げます。


第180回 国会 衆議院 法務委員会

第180回 衆議院 法務委員会 第12号
平成24年8月7日(火)
午前九時開議

【本日の会議に付した案件】
・政府参考人出頭要求に関する件
・刑法等の一部を改正する法律案(第百七十九回国会内閣提出第一三号、参議院送付)
・薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案
(第百七十九回国会内閣提出第一四号、参議院送付)

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 午前中の平沢勝栄議員の大津いじめ事件問題に関する質問に、ちょっと補足してお伺いしたいことがあります。
 先ほど、事件当時の教師に対する処分がどのようになっているのかということが話題になりましたけれども、今回、被害届を受理しなかった警察当局の担当課の職員のその後の責任というのはどのようになっているんでしょうか。
 先ほど御説明をいただいたように、三度にわたって被害者のお父さんが警察にこのいじめ自殺について相談に行かれている。担当課長は、三度目のその相談では、遺書もなく、被害者が亡くなられているので、被害者から、具体的な被害の状況やそのときの心境を初め、犯罪の立件で重要となる事柄を確認できないと、通常の犯罪であれば、全く間の抜けたお話をされているわけです。
 しかも、一回目の相談においては、やはり担当課長から、現時点では事実の有無を判断できないので、立件は難しい状況にあるため、学校から情報収集を行いますなどと言って、みずからの職責を全く果たそうとされていないわけですね。
 こういった警察の対応は不備だとはお感じにならないんでしょうか。警察庁、いかがでしょうか。

○岩瀬政府参考人
 お答え申し上げます。
 この本件の御相談に対する対応についての責任ということについて、まずお尋ねでございます。
 本件につきましては、三回にわたって御相談をいただいたということでございまして、十月に二回、十二月に一回ということで御相談をいただいたところであります。
 その中で、例えば、一回目、二回目であれば、どう処罰できるか等の御相談があったということでございますが、これについては、現段階では事実の有無がなかなか判断することができないので、学校等からの情報収集を行います、こういう答えをさせていただいたということでございます。それから、三回目につきましても、具体的な犯罪事実の認定には困難な部分があるなどの理由から、被害届の受理に至らなかったものでございます。
 こういう事案に対しまして、そもそも、学校におけるいじめ問題について、教育上の配慮ということもございます。まずは教育現場における対応を尊重する、こういう必要がありますけれども、当然、犯罪等の違法行為がある場合には、警察として必要な対応をとっていく、ましてや、生命や身体に危険のある場合には早急に必要な体制をとっていく、これが当然のことでございますので、そのような対応をとらなければならないということでございます。
 今回のこの三回の相談につきまして、どの時点で相談を受理すべきであったのかという議論もあるところでございます。被害を訴えてこられた被害者の方の意思を十分に尊重して、なるべく速やかに受理をすべきであるというのが基本的な考え方だと思っております。
 そういう意味では、滋賀県警察からは、今回の対応につきまして、御遺族の気持ちをしっかりと受けとめた対応をとるべきであった、そういう報告を受けておるところでございます。
 その処分の問題でございますけれども、この相談からその後の学校等への事情聴取を経まして、現在、七月十一日に捜索を行い、その後の捜査を今実施しているところでございます。全体の捜査につきまして、これから事案解明ということを進めていった上で、この過程について検証する、その中で、滋賀県警の方で処分という問題について適切に対応していくというふうに考えております。

○柴山委員
 きのう、警察庁の出した報告書を読ませていただきましたけれども、そこには明確に、警察として配慮が足りなかったということを明言されているわけですね。
 今申し上げたように、告訴を受理しなかった、被害届をしっかりと受理しなかったことによって、結局、対応がおくれ、この間、加害少年は引っ越しをしてしまい、そして今、学校は夏休み中なわけですね。それによって捜査に影響が出てくる側面も私は少なからずあるのかなという気もいたしますし、これがもし職務上しっかりとした行為を行っていないということになれば、当然、懲戒処分の対象になるのかなというように私は思います。
 この点については、今捜査中ということですけれども、しかるべき時を見て、しっかりとまた報告をしていただきたいというように思います。
 続いて、この関連なんですけれども、今申し上げた、加害少年あるいは加害少年の家族についての聞き取りあるいは情報把握、これを警察の方ではきちんとやっているんでしょうか。

○岩瀬政府参考人
 お答え申し上げます。
 個々の関係者からの事情聴取の状況等、事件捜査の詳細につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思いますが、滋賀県警察におきましては、現在、学校の生徒を含む関係者からの事情聴取などを順次進めているところでございます。今後も引き続き、事実関係の解明に向けて取り組んでまいるものと承知をしております。

○柴山委員
 当然、目撃情報、周りの生徒に対して行う等々を通じて、また本人に対してもしっかりと事情を聞くというようなことが段階的に必要になってくるというように思うんです。
 この少年、実は転校しております。しかも、家族の方々もいろいろな報道がされています。そういう中で、やはり、罪証隠滅ですとか、あるいは、場合によっては逃亡ですとか、そういうおそれが出てくる可能性だってなきにしもあらずというように思うんですね。そういう場合には、どのような対応をしなければいけないんですか。

○岩瀬政府参考人
 個別の事案ですので詳細はお答えを差し控えさせていただきますけれども、今議員御指摘のように、順序というものがあります。順次、関係者につきまして、現在、事情聴取等の捜査を行っている状況でございます。当然、任意の捜査でございますので、相手方の御承諾をいただいて事情聴取を行う、こういう手順で捜査を進めているところでございます。

○柴山委員
 私の質問は、加害少年とされておられる方々あるいはその御家族の方々に、罪証を隠滅する、隠す、あるいは口裏を合わせる、あるいは逃亡のおそれがある、そういうような事例が生じた場合には、一体どうなるんですかということをお聞きしているんです。一般論で結構です。お答えください。

○岩瀬政府参考人
 お答えいたします。
 一般論でお答えせよということでございますので、そうさせていただきますが、逃亡のおそれ、罪証の隠滅のおそれ等がある場合には、身柄をとって捜査をするということも一つの選択肢となってまいることでございます。

○柴山委員
 身柄を拘束する、逮捕するということが望ましいということを必ずしも申し上げているわけではありません。しかしながら、これだけ初動捜査がおくれているわけですから、さまざまな事柄に対応できるような体制を警察にはとっていただかないといけない。それは、やはり、警察自身のこの問題の落ち度に対する責任でもあるというように私は思っております。
 続きまして、ちょっと逆のお話にもなるんですけれども、加害少年側のプライバシーについての対策、これは一体どのようになっているんでしょうか。

○滝国務大臣
 今回の事件については差し控えさせていただきますけれども、一般論としては、例えば、インターネットの場合でございますけれども、これについては、電気通信事業者団体で構成されておりますプロバイダーの責任制限法ガイドライン協議会というのがございまして、それに加盟しているインターネットのいわば提供者、これに対して被害者から削除要請などがございますと、法務局を通じて、どうしたらいいかとか、あるいは当該プロバイダーに対して直接法務局から要請をするとか、こういうようなことをして、専ら被害者からの要請によって行動するということにいたしているわけでございます。

○柴山委員
 プロバイダー責任法のガイドラインに基づいての処理というようにおっしゃいましたけれども、それに基づけば、今大臣がおっしゃるように被害者、被害者というのは今回でいえば人権あるいはプライバシーを害されている加害少年側ということになるんでしょうか、その当事者からの申請がなければ動かない。職権では動かない。どんなに問題としてひどいプライバシー侵害があっても、これに対して職権で動くことはできないということでよろしいんでしょうか。

○滝国務大臣
 そのとおりでございます。
 理由を申しますと、職権でやりますと、またそのプロバイダーがどういう反応をするかというのがつかみ切れないものですから、専らいわばインターネットの被害者からの要請によって、本人と相談した上で対応するというのを原則としているわけでございます。

○柴山委員
 ということは、今堂々と加害少年側あるいはその御家族の情報がインターネットを通じて流布しているというのは、本人側からの削除要請がないということなんですか。

○滝国務大臣
 恐らくそういうふうに思われます。

○柴山委員
 この問題についても、これからあるべき方策ということはある程度きちんと検討していかないといけないような事態になっているのかなというように思います。加害行為の悪質性と、それから、特に少年のプライバシーの問題、これは別個の問題だと思っておりますので、問題提起をさせていただきました。
 ちなみに、被害者の少年の父親に対して大津市長は謝罪をしたと報道で伝わっておりますけれども、嘉田知事はどのような対応をされているんでしょうか。

〔委員長退席、樋口委員長代理着席〕

○関政府参考人
 滋賀県知事は記者会見におきまして、本事案がまことに残念であり、心が痛んでいることや、十分に対応できなかったということを反省している旨を述べていると承知をしております。
 県教育委員会から報告を受けているところでは、県教育委員会におきましては、昨年十月十一日以降、大津市教育委員会からの情報収集や、大津市教育委員会に対する指導助言、スクールカウンセラーの緊急派遣、各市町に対するいじめ問題への対応の再点検を求める指導などを行っていたと聞いております。
 また、本年七月四日以降につきましては、大津市教育委員会に対しまして、事実関係を確認し、説明責任を果たすよう指導助言するほか、県の職員やスクールカウンセラーを大津市教育委員会及び当該学校に常駐派遣いたしますとともに、県教育委員会、知事部局内の関係部局で構成をいたします、いじめから子どもを守る緊急対策チーム会議などを開催して、県内の市町に対する対策の徹底等を求めるとともに、今後、滋賀県知事を本部長とする滋賀県いじめ対策本部を立ち上げ、恒久的ないじめ対策を検討することとしていると承知をしております。

○柴山委員
 おかしくないですか。めちゃめちゃおかしいですよ。だって、大津市の教育委員会は今回の隠蔽の当事者なわけですよ。いわば、本来裁かれなければいけない、まないたの上のコイですよ。それに対して県の教育委員会が、何ですか、確認の聞き取りをする、カウンセラーを送る、そんなことで本当に実態解明はされるんですか。結局、身内同士の、第三者性を欠いた組織における隠蔽工作への加担になるんじゃないですか。
 現に、少年の父親は、今回立ち上がるという第三者調査委員会の議論の手続へのアクセスと、それから、調査への市職員の不関与を求めているということなんです。その被害者父親の要望は、一体どのように扱われるんでしょうか。

○関政府参考人
 お答えいたします。
 お尋ねの第三者委員会の会議の公開につきましては、七月二十五日に行われました大津市長と御遺族の面会の場におきまして、御遺族側から、プライバシー等の配慮により全面公開が難しいことは理解できるが、関係者への公開ができないかとの要望をされていたと承知をしております。
 また、御指摘のございました第三者委員会の調査への市の職員の関与についてでございますが、同じく、この面会の場におきまして、大津市側から、資料の整理や日程調整などの事務局的機能にとどめる内容の説明を行ったところ、御遺族側からも一定の評価をする旨の発言がなされていると承知をしております。
 これらの点を含めまして、第三者委員会のあり方につきましては、現在、大津市側と御遺族側との間で具体的な調整が行われているところであると承知をしております。

○柴山委員
 市の教育委員会の調査、それから県の教育委員会のこれに対する指導、それから文部科学省の国としてのさまざまな指導、三つのトリプルトラックになって、結局、物事の解明が進まないということになったら困るわけですね。ですから、やはり、この解明ということは、特に犯罪行為にかかわる部分については、しっかりと警察と連携をして、強制的な形で事案の解明を行い、そして、その情報が文部科学省にきちんとフィードバックされる中で、文部科学省から各委員会にきちんとした形での指導を行う。その指導が、場合によっては、強制的な権限がない場合には、法改正を伴ってでもそれに対してきちんと指導の実を上げていく、そういうようなことが私は必要になってくるというように思っております。
 いずれにいたしましても、やはり、今回の実態調査ということにゆめゆめ隠蔽が伴わないようにぜひお願いしたいというように思います。
 平沢議員の質問の関連については以上とさせていただきます。
 続きまして、六月十二日に大阪地検が起訴した、脱法ハーブを吸って女性をひき逃げした事件について伺います。
 と申しますのも、きょう議論をする法案は薬物事件の根絶を目指すものなんですけれども、こういった脱法ハーブが今、流行して大問題となっているからであります。
 まず、今申し上げた事案はいかなる犯罪で起訴されたんでしょうか。

○稲田政府参考人
 御指摘の案件は大阪市内で五月六日に発生した事件かと存じますが、これにつきまして、御指摘のありました六月十二日、大阪地検におきまして、危険運転致傷罪及び道路交通法違反、これは交通事故の場合の救護義務違反、報告義務違反などの事実により、大阪地裁に公訴提起したものと承知しております。

○柴山委員
 これも先ほど質問に出てきましたけれども、京都府亀岡市の、無免許無謀運転によって小学生、十人がはねられて死者も出た、一晩じゅう乗り回して居眠りまでしていたという案件では、今お話があった危険運転致死傷罪は適用されなかったのに、今回、脱法ハーブを吸って女性がけがをしたという案件については危険運転致傷罪が適用された。一体、これはどういう違いがあるんですか。

○稲田政府参考人
 お答え申し上げます。
 個別具体的な事件の内容にかかわるものでございますので詳細についてまでお答えすることは差し控えさせていただきますが、今申し上げました脱法ハーブの事案につきましては、薬物である脱法ハーブの影響によりまして正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって人を負傷させたものと検察当局においては認定して、危険運転致傷罪の構成要件に該当すると判断したものと承知しております。
 他方で、亀岡市の事案につきましては、午前中の質疑の際にも申し上げましたが、検察当局の認定といたしましては、居眠りが事故の直接の原因であると認められたところ。危険運転致死傷罪につきましては、四類型あると言われておりますが、そのうちの、例えばアルコールまたは薬物の影響により、あるいは進行を制御する技能を有しないことなどによって生じたものではなく、この死傷の結果と因果関係を有する危険運転行為とは認められなかったことから、この危険運転致死傷罪の構成要件に該当しないと検察当局において判断したものと承知しております。

○柴山委員
 今申し上げたように、一般の感覚からすれば、やはり到底マッチしない擬律だと思っております。脱法ハーブを吸った運転が危険な運転で、無免許で居眠りをした運転が危険運転に当たらないというのは、やはりどう考えても均衡を欠くというように言わざるを得ません。
 先ほど滝大臣の方からは危険運転致死傷罪の改正についても御言及をいただきましたけれども、いま一度簡単にスケジュールを説明してください。

○滝国務大臣
 基本的に、八月中に、法制審議会に対して、どういうふうな改正をしていくのかということを目指した取りまとめをする、それに基づいて九月早々にでも法制審議会に諮問をしたいと考えております。
 まだ法制審のスケジュールを押さえているわけじゃありませんけれども、できれば九月中にそういう格好で諮問をする、そして、その結果はできるだけ早く、恐らく法制審も、最初の現行法案も法制審で議論をしていただいておりますから、この改正についても、いわばその下地の上で議論をしていただけるということも予想されますので、かなりのスピードでもって結論をいただきたい、そんなことを期待しながら、できるだけ早く法律改正に持ち込めればいい、こんなスケジュールを予定いたしているところでございます。

○柴山委員
 危険運転致死傷罪の改正については、なるべく速やかに、できれば通常国会にでも対応していただきたいというように思います。
 そして、今の質問については脱法ハーブの規制についてでありまして、そもそも脱法ハーブは大麻と同様の幻想あるいは妄想を生じさせる成分を含んでおります。
 今回はMAM2201という成分のようでして、こういったものを取り締まることができないのか。また、問題があっても、香料として売られればこれを取り締まれないというような実態もあるというように伺っているんですけれども、こういった実態の把握を厚労省の方では行っているんでしょうか。また、これについて、やはり刑罰化するということは考えていないんでしょうか。

○平山政府参考人
 お答えします。
 違法ドラッグにつきましては、それに含まれる化学物質が中枢神経系への作用を有し、人の体に使用された場合には保健衛生上の危害を発生させることもあるため、厚生労働省としても、監視、取り締まりをしっかりやっていく必要があると認識しております。
 このため、薬事法におきまして順次指定薬物を指定しておりまして、ことし六月には新たに九つの物質を指定しております。また、指定薬物のうち、流通が継続し、依存性が確認されたものにつきましては、麻薬に指定しまして規制を強化しているところでございまして、七月には新たに四つの物質を麻薬に指定したところでございます。
 指定薬物を指定いたしましても新たな類似物質が次々に登場するという状況に対応するため、薬事・食品衛生審議会指定薬物部会の開催頻度を増加させる、また、国内で流通していない物質でも、海外での流通が確認されたものについては先行して指定することや、化学物質が類似している特定の物質群を指定薬物として包括的に指定することについて指定薬物部会で議論すべく、科学的な根拠を含めた検討を進めているところでございます。

○柴山委員
 罪刑法定主義の壁があるということはわかるんですけれども、今お話があったように、やはり類似の作用をもたらすものが化合物の一部の部分だけを取りかえることによって容易にできてしまうというような実態もあります。ぜひこれは包括的な規制のやり方も含めて考えてほしいというように思います。
 また、これは先ほど私が質問したことにちょっとお答えをいただいていないんですけれども、薬事法の規制ということであれば、医薬品に該当しないような扱われ方、それこそハーブとかアロマとか、そういうような形で売られることには問題はないんでしょうか。

○平山政府参考人
 指定薬物につきましては、流通というか販売を禁止するということになりますので、指定薬物に指定すると同時に販売ができなくなるというふうに理解しております。
 そこの、指定薬物外の類似薬物につきましては、実態に応じて対応することになるわけでありますけれども、それを未然に予測するということが不可能でございますので、人体に使わないという形で販売されてしまうとなかなか規制が難しいというところですけれども、その面につきましても鋭意、販売できないような方向で関係者と協力して対応してまいりたいと思っております。

〔樋口委員長代理退席、委員長着席〕

○柴山委員
 今お話のあった、グレーゾーン、類似薬物の部分がまさしく非常に大きな問題を引き起こしているわけですから、きちんと実態の調査をお願いしたいというように思っております。
 続いて、法案プロパーの質問はもう少し後でさせていただきますけれども、施行から三年を経過した裁判員制度についてお伺いしたいと思います。
 裁判員法は、附則で、施行三年を経過後に必要があれば所要の措置を講ずると規定されているんですけれども、法務省として、その三年目に当たる今、制度改革の必要を感じておられますか。イエスかノーかでお答えください。

○稲田政府参考人
 今御指摘ございましたように、裁判員法におきましては、施行から三年経過後に施行状況について検討を行い、必要に応じ所要の措置を講ずるものという規定がございます。
 法務省におきましては、まず、有識者の皆様から御意見を伺って裁判員制度に関する検討を行うために、平成二十一年九月に裁判員制度に関する検討会を設置し、これまで十一回の会合を開催し、制度の実施状況を把握しつつ、それに基づいて意見交換などを行ってきているところでございまして、今後引き続きこの検討会において必要な検討を進めていくということにしているところでございます。

○柴山委員
 多分、網羅的に、さまざまな課題について検討していただけることになると思うんですけれども、その中で、ちょっと幾つかお伺いしたいと思います。
 まず一つは、薬物絡みということで、薬物は薬物でも、薬物の密輸事件、特に否認事件で無罪となる案件が多くなっていることが報道上問題となっています。これは一体どういう実態なんでしょうか。実際にどのような形で何件ぐらい無罪が出ているんでしょうか。

○稲田政府参考人
 薬物密輸事犯は、御案内のとおり、裁判員裁判の対象ということになるわけでございますが、二十一年に裁判員裁判が実施されるようになりましてから今日まで、無罪判決が言い渡された被告人は、これはいずれも覚せい剤取締法違反被告事件についてのものでございまして、八人いるものと承知しております。
 これらの内容は、いずれも、密輸した者が、規制薬物であることの認識あるいは密輸についての共謀が否定されたというふうに承知しているところでございます。

○柴山委員
 共謀や故意が立証するのが非常に難しいということはいろいろな事例で私もよく理解をしているところなんですけれども、ただ、裁判員裁判を導入したことによって立証のハードルが高くなってしまったとすれば、それはやはり非常に大きな問題じゃないか、特に法益保護の観点から問題じゃないかというように考えております。
 そういう理解でよろしいんでしょうか。また、これに対する対策は法務省の方では何か考えておられるんでしょうか。

○稲田政府参考人
 裁判員裁判施行以降、先ほど、八人無罪判決が言い渡されたというふうに申し上げましたが、その間に裁判員裁判対象となりました覚せい剤取締法違反被告事件につきましては、三百五十三人に判決が言い渡されております。この無罪率が高いか低いかということにつきましてはいろいろ御議論のあるところだろうと思いますが、基本的には個別具体的事件の積み重ねでございますので、それらの裁判所の判断について所感に等しいことを申し上げることは差し控えさせていただきます。
 法務省、特に検察当局といたしましては、このような八件の無罪事件が言い渡されているという事実もあることから、裁判員裁判対象の薬物密輸事犯につきまして、より的確な立証のあり方などを実務的に検討する一種の勉強会などを開いて検討を進めているというふうに承知しているところでございます。

○柴山委員
 裁判員の方々にとっては、事件というのは一期一会なんですね。ところが、プロの裁判官の方々にとっては、もちろん、類似の事件についてさまざまな形で勉強したり、あるいは、御自分の経験も持ったりしているわけです。そこの違いというのはやはり私は看過できない、無視できないというように思っておりますので、これは、裁判所あるいは検察庁ともどもに、議論を誘導しろということでは必ずしもないんですけれども、きちんと正確な情報を一般国民から抽出された裁判員の方々に提供するという努力は行っていただきたいなというように思っております。
 そういうことも含めてですけれども、やはり、素人の方々を含む評議の客観化、あるいは量刑の相場についてどのような基準をつくり、そして裁判員裁判に生かしていくのか、このあたりについて、ぜひ裁判所の方から御説明をいただきたいと思います。

○植村最高裁判所長官代理者
 お答えをいたします。
 評議におきましては、裁判員と裁判官が話し合いをいたしまして、有罪無罪の事実認定、それから刑を決めることになります。
 量刑について申し上げますと、委員も御承知のとおり、法律で定められました刑の幅というのは非常に広うございます。例えば、殺人罪でございますと、死刑、無期懲役刑があるほか、五年から二十年の範囲の有期懲役刑が定められております。したがいまして、初めて刑事裁判に参加される裁判員の方々にとっては、このような幅広い刑の中で具体的にどのような刑を決めればいいのか、なかなか見当がつかないというのがあろうかと思っております。
 そこで、各裁判所では、裁判員裁判対象事件の判決を集積いたしまして、データベースをつくっております。裁判員量刑検索システムと申しておりますが、このシステムは、例えば今申し上げました殺人罪について申し上げますと、まず動機、これは怨恨であるとか、保険金目的であるとか、そういった動機を入れる。それから、犯罪の計画性も問題になりますので、計画的な殺人なのか、あるいは一時の激情に駆られた殺人なのか、こういったデータも入れる。あるいは、凶器を使っているのかどうか。使っている場合にはどのような凶器を使ったのか。さらに、単独犯か共犯か。共犯である場合とすれば、主犯格なのかどうか。あるいは、被告人と被害者とにどんな関係があったのか。こういった量刑上考慮すべき要素を抽出いたしまして、それを入力し、社会的に類似した事例においてどのような刑が宣告されてきたのかがわかるようにしてございます。
 そういうことをいたしますと、一定の幅を持って社会的な類型に沿った傾向が出てまいります。裁判員の皆さんには、こうした傾向を参考にしていただいた上で、具体的な事件についての刑について意見を述べてもらう、そういうことで充実した評議ができるようにということで努めているところでございます。
 ただ、このシステムの利用につきましては、あくまで一つの参考でございますので、これに縛られる必要はないわけでございまして、その点につきましても裁判員の皆さんには十分御説明をした上で使っているというふうに承知をしております。

○柴山委員
 ことしの七月に、司法研修所から平成二十一年度司法研究報告書が出てまいりまして、私の手元にもあるんですけれども、ここの中で、裁判員裁判にふさわしい量刑評議のあり方や判決書のあり方を考察、検討している、そういう書面であります。これについては、現場にちゃんとフィードバックされるんでしょうか。

○植村最高裁判所長官代理者
 お答えをいたします。
 今委員御指摘のとおり、先日、「裁判員裁判における量刑評議の在り方について」という司法研究報告を公表いたしまして、全国の裁判官の方にも配付をいたしまして、今、読んでもらって、執務の参考にしてもらおうというふうに考えているところでございます。

○柴山委員
 この前、殺人の現場写真を見て裁判員の方が卒倒したというようなこともニュースで流れていましたけれども、ともすると、そういうグラフィカルな事柄が表に出てくると量刑が厳しくなってしまうんじゃないかとか、そういうようなことも指摘をされています。ぜひ、冷静な形でしっかりと必要な考慮要素を裁判員の方に検討していただけるように、基準づくりに取り組んでいただきたいと思います。
 ただ、どんなにそういうことを行っても、やはりプロの感覚と一般の方々の感覚は違うんですね。それが如実にあらわれるのは、例えば性犯罪では量刑が厳格化する傾向があります。その一方で、現住建造物等放火ないし強盗致傷、非常に重罪と一般言われているものですけれども、こういう犯罪での執行猶予判決が増加をしているというような傾向も出ています。
 また、七月三十日には、大阪地裁で、発達障害を持つ被告が起こした殺人事件について、求刑の懲役十六年を上回る懲役二十年の判決が出て、障害が刑の減軽に寄与するという法曹の常識が覆されました。こういう場合は、長期間被告を刑務所に収容することが社会秩序に資するというような考慮があったのかなというようにも感じているんですけれども、大臣は、こういったプロと一般の方々の意識の乖離、ギャップについて、何か思うところはありますか。

○滝国務大臣
 もともと裁判員裁判というのは、プロと一般国民との意識のずれ、そういうものを何とか埋めていこうというところから出発していると思うのであります。
 ただ、具体的な、今の場合には、そのずれを修正することになるのかどうか、そういうような議論は必要だろうとは思います。

○柴山委員
 私も大臣と同じで、ずれがあるということは、多分どんなにしっかりと議論をしても埋まらない溝というのはあると思うんですね。ただ、そもそも、裁判員制度を導入したのは、そういった一般の方々の感覚が、やはり一般国民に対する規範意識あるいは抑止力、こういった刑罰の重大な機能を発揮させるために必要な試みであったというように思うんですね。
 ですので、これについてはぜひ、必ずしもマイナス面ばかりではなくて、積極的な面を正面から取り入れた上で、今行われているという裁判員制度の検証の中できちんと分析をするとともに、将来的にはこれを、これがまた量刑相場の新しいトレンドというものになっていくのかもしれませんし、場合によっては責任能力というものの根本的な概念の見直しということにつながっていくのかもしれません。弁護士会などにも恐らくさまざまな意見もあると思います。そういうことで、ぜひしっかりと検証していただきたいというように思っております。
 あと、済みません、裁判員制度でもう一問だけお伺いしたいのは、評議とかあるいは事件についての守秘義務の緩和が必要だという声をよく聞くんですね。裁判員の方々は、人の命を奪うような重大な犯罪について、全くこれまで経験したことのない重い判断をしなければいけない。さまざまな現場の証拠などもごらんになるわけですね。これを守秘義務の中で悶々と苦しみながらずっと経験を持ち続けているというようなことは、心理的にも負担になるんじゃないか。あるいは、さっき申し上げたような評議の客観化というところからも、やはり検証の足かせになる部分もあるんじゃないかというように思っているところです。こういった問題についてはどう検討されているでしょうか。

○稲田政府参考人
 裁判員につきまして守秘義務が定められておりますのは、事件関係者などのプライバシーを保護するとともに、裁判の公正さや裁判の信頼を確保し、評議における自由な意見表明を保障するためであるとされているところでございまして、現行の制度の趣旨からすれば、現在の守秘義務の規定については、基本的には適切であると考えているところではございます。
 ただ、この守秘義務のあり方につきましても、今御指摘もありましたようなさまざまな御意見がございます。先ほど申し上げました検討会におきましても、これに関する御意見が述べられているところであります。この問題につきましては、今後、この検討会の場やそのほかの場におきまして、必要に応じ、議論、検討がなされていくものというふうに思っているところでございます。

○柴山委員
 よろしくお願いいたします。
 遅くなりましたが、それでは、法案の質疑に入りたいと思います。
 刑法一部改正法案、一部執行猶予制度を導入したり、あるいは、保護観察中、社会貢献活動をさせたりというのは、私は、これは従来の刑罰概念に教育刑を導入するという意味合いがあるんじゃないかなというように思っているんですけれども、いかがでしょうか。

○稲田政府参考人
 御指摘のありました教育刑あるいは教育刑主義というのは、刑罰の目的を犯罪人の社会復帰のための教育であるというような考え方ではないかというふうに承知しているところでございます。
 今回導入いたします刑の一部の執行猶予制度は、あくまでもその犯した罪に対する刑罰の言い渡しの一環として、その刑事責任に見合った刑の範囲内において刑の一部の執行猶予を言い渡すことを可能とすることによりまして、その刑事責任を果たさせつつ、施設内処遇と社会内処遇を連携させて、再犯防止、改善更生を実現することを趣旨、目的としておりまして、再犯防止、改善更生のみを目的とするものではないというふうに御理解いただきたいと思います。
 今申し上げましたような観点からすれば、刑の一部執行猶予を言い渡すためには、刑事責任に見合った刑を科すという観点から相当性が認められることが一つの要件でありますし、このような要請にも応えながら、再犯防止、改善更生の要請にもよりよく応える刑の言い渡しの選択肢を新しく設けるものだということでありまして、刑罰制度の目的そのものを変更するというところまでは考えていないけれども、今申し上げたような考え方であるというふうに御理解をいただきたいと思います。

○柴山委員
 先ほど大口委員もお尋ねになっていたんですけれども、やはり刑事責任の範囲内でということで、教育を行っていく、あるいは再犯の防止を図っていくということじゃないかなと思うんですね。この制度が導入をされたからといって、本来あるべき刑罰を超えた形で何か苦役が科されるというような誤解を与えてはいけないと私は思うんです。
 これは先ほども質問に出ていたかと思うんですが、対象事件、軽い案件ではありますけれども、裁判員裁判は含まれるんですか。

○稲田政府参考人
 午前中の審議の際にもお話がございましたが、この刑の一部執行猶予の言い渡しは、三年以下の懲役または禁錮の言い渡しの場合とされているところでございますが、裁判員裁判におきましても三年以下の懲役が言い渡されることがあり得るわけでありまして、その場合につきましては、刑の一部執行猶予が適用可能であると考えております。

○柴山委員
 その場合に、裁判員に本当に適切な説明がされているのかということであります。今、現時点で制度は導入をされていないわけなんですけれども、導入がされた暁には、一部執行猶予等の制度について、なかなか内容的には、これからちょっと質問させていただくとおり、技術的に難しい問題もいろいろあると思うんですけれども、きちんと説明をすることはできるんでしょうか。あるいは、なされていくんでしょうか。

○稲田政府参考人
 裁判員法六十六条五項におきまして、裁判長は「評議において、裁判員に対して必要な法令に関する説明を丁寧に行う」というふうにされているところでございまして、これまでも裁判所においてはこの運用がなされてきているものと承知しているところでございます。
 今後、この新たな制度が導入されて、刑の一部執行猶予の言い渡しが問題となる事案では、裁判長から、そのような説明の一環として、裁判員に対しまして、制度の趣旨や適用の要件に加えて、社会内処遇であるとか保護観察の実情など、必要な説明を行っていただくことになるものと考えております。

○柴山委員
 次の質問に移ります。
 薬物犯に対応する問題です。
 薬物犯で、今度、累犯者にもこの一部執行猶予の制度が導入されることになったんですけれども、それはなぜでしょうか。

○稲田政府参考人
 確かに、今回の改正におきましては、刑法上の刑の一部執行猶予制度は、二度目以上の服役となる者については適用しないということにいたしております。
 他方で、薬物使用等の罪を犯した者につきましては、その者の薬物への傾向性を改善し、薬物の誘惑のあり得る社会内においてもこれを維持強化することがその再犯防止、改善更生のための共通の課題でありますし、現にそのための施設内処遇であるとか社会内処遇における処遇プログラムが存在しているところであって、一般的、類型的に、施設内処遇後に相応の期間の社会内処遇を行うことが再犯防止、改善更生のために必要かつ有用だと言うことができるのではないかというふうに考えられます。
 他方で、それ以外の事犯につきましては、やはり対象者ごとの個別的な事情によっていろいろと処遇の内容が大きく異なるのではないかということから、薬物使用等の事犯のものについてだけこのような制度を導入することにしたというところでございます。

○柴山委員
 私は、今の御答弁にはちょっと異論があるんですね。
 というのは、薬物犯でしかも累犯、つまり性懲りもなくまたやったという人、そういう方でも、社会内、つまり開放的な処遇の中で更生を図るべきプログラムというのが必要な場合がある。必要な場合があるということで、必ず社会内処遇しろというわけじゃない仕組みになっているわけですね。
 ただ、私、実は弁護士時代に、例えば国選弁護で、無銭飲食を二十回以上やったという方の弁護をしたことがあります。これはもう依存症なんですよ。立派な方なんです。社会的にしっかりとした地位を持った方なんですけれども、ほんの出来心で始めて、そして、それがどうしてもやめられない。結局、軽微な情状であっても、それを繰り返し繰り返し行うことによって、しゃばと刑務所の行ったり来たりを繰り返している、こういう案件だったわけです。
 無銭飲食はともかく、すりのような事例もありますね。すりは窃盗なわけですけれども、結局、このすり犯も、ほかに仕事ができないわけではないわけですよ。だから、更生プログラムを社会内できちんと行えば立ち直ることが場合によってはできるかもしれないけれども、そういった社会内の更生プログラムがないから、実刑、そして釈放、実刑、釈放と、しゃばと刑務所を行ったり来たりの生活、これで何十回も刑務所暮らしをしているという方を私は現に知っています。
 やはり、こういう一般の刑法犯にも今局長の方からお話があったような制度を導入する、少なくとも選択肢を与えていくべきだというように思うんですが、いかがでしょうか。

○稲田政府参考人
 御指摘のように、特に窃盗罪で同種事犯を繰り返す一種の依存症のようなタイプの犯罪者がいるということはまことにそのとおりでございまして、今回の法案のもとになりました議論を法制審議会の部会において行いました際も、このような窃盗罪を繰り返す者につきましても、薬物の事件と同様の類型として、この新たな制度を累犯者にも適用させてはいかがかという議論もかなりございました。
 ただ、いろいろ内部といいますか審議会の中で議論をしていく中で、一つは、薬物に比べると窃盗の方が犯罪類型の形といいますかそういうものがいろいろ千差万別であって、薬物ほど類型的な判断になじまないというところもございますし、処遇プログラム等につきましても、現在までにそこまできちんとしたものができているのかというようなことがございまして、なかなか現時点でこれを裁判所に御判断いただくのは難しいのではないかということで、取り入れないという結果になったものというふうに承知しているところでございます。

○柴山委員
 私は、すりなら必ずこの一部猶予制度を導入しろと言っているわけじゃないんですね。薬物の場合も、一部猶予を累犯事例で適用するかどうかというのは任意なわけですよ。確かに判決言い渡し時点においてそれを判断するのが難しい場合というのはありますが、何回も繰り返しているかどうかというのは裁判官が事実を見ればわかるわけですから、少なくともオプションをつくって任意的な選択肢として導入することは可能なわけですし、今の局長の答弁は、私は全然説得力がないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○稲田政府参考人
 先ほども申し上げましたように、薬物の関係につきましては、これまでの施設内処遇あるいは社会内処遇における処遇プログラムというものがかなり存在しているという実態があるということがやはり大きい面がございますし、対象者ごとの個別的事情によって必要とされる処遇の内容がそれほど大きく異ならないという薬物に特有の特殊性もあるのではないかということから、現段階で、裁判所に判決時点でこの点を薬物以外について御判断いただくのがなかなか難しいのではないかというふうに考えているところでございます。

○柴山委員
 今の問題はまた議論させていただきたいと思います。
 それで、薬物事犯についてなんですけれども、薬物に対する依存の改善に資する医療を受けるために指示などができることと今度の制度でされているんですけれども、これは強制力はないんですか。

○青沼政府参考人
 薬物依存がある保護観察対象者の改善更生を図るためには、依存の改善に資する医療ですとか援助を受けさせることが必要な場合があるわけですけれども、現行法では、これらの医療、援助につきましては、いわゆる補導援護の一環として、援助的、福祉的措置を行うことができるのみでありまして、これらを受けるよう指示的に働きかける根拠に欠けているとされているものであります。
 そこで、今回の改正では、このような医療及び援助をより確実に受けさせることができるよう、指導監督上の措置として、医療、援助を受けることにつき、必要な指示をすることができるものとしたものでございます。対象者が指示に応じなかった場合には、個々の事案に応じ、観察官が面接などをして指示の趣旨や意図を十分に説明し、理解をさせるなどの対応を行っていくということになります。
 もっとも、この指示は特別遵守事項によって義務づけるものではございませんので、指示に従わなかった場合に直ちに執行猶予の取り消しなどの措置に結びつくものではございません。しかし、指示に反して医療や援助を受けなかった場合には保護観察所に出頭するよう指示することが考えられまして、この指示にも従わなかった場合には、一般遵守事項違反として、執行猶予の取り消し等の措置が検討されるということになると思います。

○柴山委員
 何か説明を聞いているとめちゃめちゃまどろっこしいんですね。
 要するに、これまでの医療を受けるためのさまざまなアドバイスが強制力が全くなかったということで一定の指示という形をとったということなんですけれども、結局、面接とか指導に従わないで、さっき稲田局長の方から薬物についてはちゃんとしっかりとしたプログラムが確立しているというようなお話があったんですけれども、薬物に関しては医療の問題が非常に重要なんですよ。ですから、この薬物に関する指導はやはり特別遵守事項というような形をとらないと、今お話があったように、それに従わなくて、しかも観察官の呼び出しに応じないとそこで初めて一般遵守事項違反みたいなことになるということにしたら、だったら観察官の呼び出しには応じて医療だけは受けません、そういうことを繰り返し繰り返しやっていたら取り消しにならないということじゃないですか。そうじゃないですか。

○青沼政府参考人
 委員御指摘のような意見もあるということは重々承知しておるところではございますけれども、医療ということになりますと、原則的に契約行為、あるいは本人の同意、医療機関との信頼関係ということを基礎としておりますので、なかなか直接的に指示をするということは難しいというふうに考えております。

○柴山委員
 何も対象者の腕をつかまえてきてそこで何か強制的な行為をしろと言っているんじゃないんです。要は、特別遵守事項として、医療に対するアドバイスに従わなかった者については、これは執行猶予を取り消せ、そういうことができないかということを私は言っているんであって、それがないということは、私はちょっとやはり画竜点睛を欠く制度じゃないかなということを言っているということだけはここで申し上げさせていただきます。
 時間が余りなくなってきたんですけれども、裁判員がなかなか理解しづらい問題として、改正刑法の二十七条の七という条文があります。一部執行猶予の猶予期間がめでたく満了した、経過したということの効果で、猶予されなかった実刑の期間を刑期とする執行を終わった日またはその執行を受けることがなくなった日において執行を受け終わったこととするという条文があるんですけれども、これは一体どういう意味を持つんでしょうか。また、この条文の効果は、一体どういう効果を持つんでしょうか。

○松野大臣政務官
 極めて技術的な条文で少しわかりにくいかと思いますが、具体的な例で申し上げますと、例えば懲役二年を言い渡す、今回からはそのうちの一部執行猶予できるということになりましたので、一年六月が実刑部分、そして六カ月部分が猶予部分というふうになりますと、刑の執行が終了する時期というのは、順調に、取り消されることなくいけば、実刑が終わったときということになりますので、つまり一年六カ月終了した時点でこの刑の執行は受け終わったというふうに判断されるということであります。
 そして、この刑の執行が終了という意味は、その翌日から五年が経過すればまた新たな執行猶予がつけられる、こういうような仕組みがあったり、あるいはいろいろな師業、例えば看護師さんあたりですと、刑の執行が終わって十年経過するとまた看護師の免許を取得できる、そういうような仕組みがあるわけですから、いつ刑の執行が終了したのかというのはそういう点でも意味を持つ、こういうことでございます。

○柴山委員
 ところが、条文には「又はその執行を受けることがなくなった日において、」執行を受け終わったとするというように書いてあるんですけれども、これは一体どういう意味なんですか。

○松野大臣政務官
 「又は」というのは、現実に刑の執行を終わった場合ではなくて、例えば恩赦によって刑の執行が免除されたという場合を指しているわけです。

○柴山委員
 裁判員にわかるように説明してください。
 続きまして、これは質問が幾つか出ていたんですけれども、これに伴って保護観察官の負担がやはり、執行猶予期間、これは一部猶予でも一年から五年という形で、かなり保護観察も活用されると思っております。人員、予算の拡大、これについて、局長からぜひしっかりと見通しを述べていただきたいと思います。

○青沼政府参考人
 委員御指摘のとおり、刑の一部の執行猶予制度が導入された場合は、薬物事犯者を中心に保護観察対象者が増加することが見込まれるほか、社会貢献活動の実施や、関係機関との連携した活動先の確保にも取り組む必要がありまして、保護観察官の業務負担は増加するものというふうに認識しております。
 これに対応しまして、平成二十四年度におきましては、東日本大震災の被災地における保護観察処遇体制の再構築のため二十五人のほか、薬物依存のある刑務所出所者等に対する再犯防止等の強化のための三十人の保護観察官の増員が図られたところでございます。
 今後も、刑の一部執行猶予制度及び社会貢献活動の実施を見据えて、保護観察官の業務負担などの状況を踏まえ、法施行までに、必要な実施体制の整備について適切に取り組んでいきたいと思っております。

○柴山委員
 時間は経過しましたが、最後、一問だけお伺いしたいと思います。
 この一部猶予の制度等によって、やはり、公的な監督がきちんと及ぶ範囲で、例えば社会内の身元引受人を確保するなどの措置がより図られてくるというようには思います。ただ、これは以前、滝法務大臣に対してお伺いしたと思うんですけれども、例えば大阪のあの心斎橋事件、要するに、覚醒剤で満期出所して、半月で結局、仕事がなくて、男女を刺殺してしまったというような、満期後の、公的監督が及ばない後の再犯防止ということは、さっき検討されているというようにはお話があったんですけれども、少なくとも、この法律ではカバーされないわけですね。先ほど、すりや無銭飲食の話もしましたけれども、ぜひ、そういった部分の対応ということを、大臣から一言だけお答えいただきたいと思います。

○滝国務大臣
 今回の法案のカバーできない部分、これについては、引き続き、やはり重大な問題として、関心を持って検討を続けなければいけないと思っております。

○柴山委員
 以上です。ありがとうございました。

第180回 国会 衆議院 憲法審査会

第180回 衆議院 憲法審査会 第8号
平成24年8月2日(木)
午前九時開議

【日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法の各条章のうち、第四章の論点)】

○大畠会長
 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に日本国憲法の各条章のうち、第四章の論点について調査を進めます。
 本日の議事について申し上げます。
 まず、衆議院法制局当局から説明を聴取し、その後、各委員からの意見表明等を含む自由討議を行うことといたします。
 それでは、衆議院法制局当局から説明を聴取いたします。衆議院法制局法制企画調整部長橘幸信君。

○橘法制局参事
 衆議院法制局の橘でございます。
 本日は、第四章国会の章につきまして、お手元配付の資料に基づき、その主要論点について御報告させていただきます。何とぞよろしくお願い申し上げます。
 申し上げるまでもなく、日本国憲法は、その政治システムとして、いわゆる議院内閣制を採用しております。この議院内閣制という政治システムの核心につきましては、学説上議論があるところですが、一般的には次のように説明されるのが通例でございます。
 すなわち、立法府と行政府が権力分立の要請に基づいて一応分離されていること、そしてその上で、行政府が立法府、特に両院制の場合には下院に対して政治責任を負い、その民主的なコントロールに服する関係にあること、このように理解されているところでございます。さらに、一般的には、この場合、立法府は行政府の長たる首相を選任し、かつその不信任を決議する権限を有するとともに、首相側は立法府の解散権という武器を持ち、相互にチェック・アンド・バランスを図るような制度設計がなされる例が多いとも言われております。
 このように、立法府と行政府のいわば分離と融合のもとにおける責任政治のシステムこそが議院内閣制の核心ということになるわけでございます。
 そういたしますと、このような政治システムを議論する際には、国会と内閣を関連させて一緒に議論することが必要となってまいります。衆議院の憲法調査会報告書におきまして、両者をあわせて政治部門という形で整理しているのも、このような理由からであると拝察いたします。
 以上のようなことを念頭に置いた上で、かつ、各章ごとの検証を行うという本審査会の趣旨を踏まえまして、本日先生方のお手元に配付いたしました資料に掲げました論点は、基本的に国会に特化した論点に限定してございます。
 今申し上げました議院内閣制というシステムに直結するような論点、例えば国会の行政監視機能や首相公選制などに関する論点につきましては、次回の第五章内閣の章において取り上げることといたしておりますので、何とぞ、この点、御了承、御容赦のほどお願い申し上げる次第でございます。

 さて、以上を踏まえつつ、前回までと同様に、国会の章に規定されております各条項に関しまして、お手元配付のA3縦長の論点表に基づきまして、その主要論点について御報告させていただきます。
 ここでは、幹事会での御指示を踏まえまして、大きく二つの分野に大別した上で、それぞれ幾つかの論点を抽出してございます。

 まず第一の分野は、第四章冒頭の国会の地位、立法権に関する第四十一条に関する論点、そして、本日最大の論点と言っても過言ではないと存じますが、第四十二条及びこれに続く一連の条文において定められております二院制に関する論点であります。

 第二の分野は、通年国会など国会における議事手続等に関する論点、及び、現行憲法には規定はございませんが、現代民主政治を論ずる上で避けては通れない政党と憲法に関する論点、そして、それ以外の条文に関する論点でございます。

 さて、まず最初は、第四十一条の国会の地位、立法権についてでございます。
 本条項は、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」という簡潔かつ格調高い条文であり、先生方の日々の立法活動の根幹に位置する条文でもございますが、この簡潔な条文をめぐっては、例えば国権の最高機関の法的あるいは政治的意味など、学説上も実に多くの議論がなされているところであります。
 衆議院憲法調査会等におきまして特に議論されてきた実務的な論点は、後段の唯一の立法機関という文言に関する、先生方の法律案提出権の制限に関する論点であるかと存じます。
 すなわち、国会の構成メンバーである国会議員の先生方が法律案提出権を有することは当然でありますが、現行法令上は、国会とは別の権力機関である内閣にも法律案提出権が認められております。
 その一方で、本来的な権限者である国会議員の先生方の法律案提出権につきましては、逆に、国会法などによりまして、所定の賛成者を要する旨の制限が課されております。
 さらに、衆議院におきましては、会派所属議員が法律案その他の議案の提出者、賛成者になろうとするときは、その所属会派の党議を経た旨の国対委員長などの所定の役員の承認印、いわゆる機関承認が必要との確立した先例もあるところでございます。
 このような現状に対しまして、Aの欄に掲げた明文改憲の御主張は、国会を真に唯一の立法機関とするためには、法律案提出権を国会議員に限定する明文の規定を置くべきであるとする御意見です。
 これに対して、現在のままの運用で何ら問題はないとするのがC1の御意見です。
 他方、Bは、議員立法の賛成者の員数要件、現在は、例えば衆議院であれば、予算を伴う法律案は五十人以上、予算を伴わない法律案は二十人以上の賛成者が必要とされておりますが、これを、国会法を改正して撤廃あるいは緩和すべきであるという御意見です。
 また、C2は、先ほどの機関承認の先例は廃止するべきであるとする御意見でございます。

 次に、二院制に関する論点について御報告いたします。
 まず第一の論点は、二院制、一院制の是非それ自体に関する御議論です。憲法改正をして一院制を導入すべきであるとするのがAの欄の御意見であり、現在の二院制を維持すべきとするのがCの欄の御意見です。
 次に、二院制を維持するとしても、現在のままの二院制で全く問題はないとする御意見は、これまでの御議論におきましてはほとんどございませんでした。二院制を維持するべきとする見解の多くは、同時に、両院の役割分担やその選挙制度について、二院制の趣旨がより生かされるようにするべくさまざまな改善策を唱えております。
 これを大きく二つに分類して整理したのが、論点表の、両院の役割分担等という両院の権限関係に着目した論点と、国会議員の選出方法という両院の組織原理に着目した論点のそれぞれの欄でございます。
 まず、両院の役割分担、権限関係に関する論点でありますが、ここでは、明文改憲を主張する御意見として、両院の性格の違いをより一層明らかにするため憲法改正をするべきであるとするAの欄の御意見がございます。
 具体的には、一つ、現在、五十九条二項によって、衆参の議決が異なった場合に衆議院が再議決するには三分の二以上の特別多数決が必要とされておりますが、これを過半数に引き下げるなどして、より衆議院の優越を強化するべきであるとする御意見。
 二つ、予算については、現行憲法六十条二項の規定によって、衆参の議決が一致しないときや三十日経過による自然成立など衆議院の強度の優越規定が定められておりますが、しかし、この予算を担保するための歳入法案、例えば特例公債発行法案などは、一般の法律と同じように三分の二以上の特別多数決による再議決が必要となっているのは整合性を欠くのではないかとして、このような歳入法案についても、予算と同様に衆議院の強度の優越が働くようにするべきとする御意見などがございます。
 他方、三つ目として、衆議院は予算審査中心、参議院は決算審査中心との役割分担を明確にする観点から、これを憲法に明記するべきであるとか、会計検査院を参議院の附置機関にするべき等といった御主張もございます。
 これらの明文改憲の御主張に対して、憲法の規定はそのままにして、立法措置でできる範囲内の改善策、例えば、国会同意人事に関する議決について衆議院の優越規定を定めることとしたり、また、両院協議会における協議手続について、国会法あるいは両院協議会規程などを改正して、より両院間の実質的な協議ができるようにするべきとの御意見もございます。これがB1やB2の御意見でございます。
 これらの御意見に対して、現行法令の枠内の運用改善で対処すれば足りるとするのがCの欄の御主張です。例えば、参議院の決算審査重視の運営などは現に行われているものであるとか、あるいは、参議院の問責決議などはより慎重で抑制的な運用をすればよいとの提言などがその具体例でございます。
 もう一つは、国会議員の選出方法、すなわち組織原理に着目した論点であります。
 まず、いわゆる一票の格差に関して明文改憲を行うべきとする御意見がございますが、これに関しては、方向性が異なる二つの見解が唱えられているように存じます。一つは、あくまでも厳格な人口比例に基づく平等を求めるA1の見解であり、これに対して、人口を基本としつつも、それ以外の要素をも勘案するべきであり、最近の最高裁判決や学説の多数に見られるように、人口比例原則に過度に拘泥するのは適切ではない、このことを憲法に明記すべきであるとするA2の見解でございます。
 以上の二つの見解は、衆参を特に区別した議論ではございませんが、A3の明文改憲の御主張は、両院の選出方法に違いを持たせ、二院制の機能をより明確にしようというものです。例えば、第一院たる衆議院について全国民代表や直接選挙の原則を維持するのは、これは当然の前提とした上で、第二院たる参議院の選挙制度については、地域代表制や職能代表制、さらには間接選挙制や推薦制などの導入も検討すべきとする御見解です。
 これに対して、Bの欄の御主張は、あくまでも現行憲法の枠内で両院の選挙制度に違いを持たせ、異なる代表機能を発揮させることを目指すべきであるとする御見解です。

 次は、二つ目の分野に関する諸論点でございます。
 まず最初は、国会の議事手続等に関する論点であります。
 この中には、まず、いわゆる通年国会に関する御議論がございます。
 現行憲法は、第五十二条におきまして、「国会の常会は、毎年一回これを召集する。」と定めるとともに、五十三条においては臨時会の規定を設けるなど、一般に会期制を前提としているものと理解されております。
 これに関して、憲法改正をして通年国会、例えば衆議院議員の総選挙から次の総選挙まで、これは一般に立法期とか議会期と言われるようなものでありますけれども、これを広い意味での一つの会期として、必要に応じて休会をすればいいとするのがAの欄の御意見です。
 これに対して、国会審議がスケジュール闘争になっているのは、会期制それ自体に問題があるのではなくて、国会法に定める会期不継続の原則にこそあるのであり、国会法を改正してこれを廃止すれば足りるとするのがBの欄の御意見です。
 もちろん、国会会期の長期化については、現行憲法、国会法の枠内でも十分に対処可能であり、長期の延長や臨時会の適宜の召集で対処すれば足りるとするCの欄の御意見もございます。
 議事手続に関する特徴的な見解の一つに、二番目の論点として、憲法五十六条一項に定める定足数に関する御議論がございます。
 現行憲法では、本会議を開会しその議事を進める際にも、そしてもちろん、最終的な採決、議決をする際にも、総議員の三分の一以上の出席がなければならないとする定足数を定めております。
 しかし、議決の際の定足数は必要だとしても、開会をして議事を進める段階での定足数は必ずしも必要ないのではないかとして、議事を開くことに関する定足規定は削除すべきであるとする御主張がございます。これがAの欄に掲げた見解です。

 次に、国政調査権に関する議論がございます。
 現行憲法六十二条に規定されております国政調査権の主体は、あくまでも議院、ハウスでございます。衆参両院の本会議において行使するものと定められているわけでございます。
 この本会議の有する権限を、現行の国会法、衆参両院の議院規則におきましては、常任委員会や特別委員会に授権して行使することができるものとしているわけでありますが、しかし、これよりもより小さな単位、例えば議員、メンバーの先生方個々人が国政調査権を行使できるようなものとはされておりません。本会議や委員会が国政調査の行使主体であるということは、その発動の可否の判断は多数決、要するに、衆議院でいえば与党会派の意向に委ねられるということになります。
 そこで、政府の行動を機動的、適切に監視するためには、少数会派による行政監視機能を充実させる必要があり、そのためには、まず憲法改正をして、より小さな単位の一定数以上の議員、あるいは、究極的には個々の議員にも国政調査権を付与するべきではないかとするのがAの欄の見解です。同じ趣旨のことを、現行憲法の枠内で、国会法規の改正等の立法措置でもって実現できることをまず行うべきであるとするのがBの欄の御見解です。
 なお、御参考までに付言いたしますならば、平成九年の国会法改正によって、衆議院についてだけではありますけれども、いわゆる予備的調査の制度が導入されております。これは、多数派が拒否権を発動しない限りという条件つきではございますが、四十人以上の先生方が連名で、調査局長あるいは法制局長に対して予備的調査の発動を命ずることができるとするもので、広い意味で、少数会派の国政調査権を保障する制度として評価されているものと承っております。

 議事手続に関する四番目の論点として、国務大臣の議院出席義務に関する御議論がございます。
 国会のような合議体におきましては、その会議体で発言できるのは、基本的には合議体の構成メンバーである先生方自身でございます。これが大原則であります。これに対して憲法は、六十三条におきまして、内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかわらず、いつでも議案について発言するために議院の会議に出席することができるとした上で、逆に、国会サイドから答弁、説明のために出席を求められたときは、出席しなければならないと定めているわけでございます。
 しかし、この国会出席の権利及び義務のうち、出席義務については、この規定のために、国会会期中における国務大臣の外交等のための海外出張が必要以上に制約されているとして、これを緩和するべきであるとする御主張がございます。
 例えば、職務の遂行上特に必要がある場合にはこの限りでないとして、出席義務が免除される場合を憲法上明記すべきではないかとする御主張が、Aの欄の明文改憲の御主張でございます。
 これに対して、そのようなことは、国権の最高機関である国会の役割、権威を低めるものであり、また、そもそも議院内閣制のもとでは、閣僚の国会出席義務こそが行政監視機能の重要な要素であって、出席義務の緩和などは認めるべきではないとするC1のような御見解もございます。他方、真に必要な海外出張についてはこれを認めるべきであるが、それは運用で対処すれば足りるのであって、憲法改正までするような話ではないとするC2のような見解もございます。

 最後に、政党に関する条項を憲法に設けるべきかどうかという御議論について御紹介申し上げます。
 現代国家においては、外交や防衛、治安維持などにとどまらず、社会保障の分野など行政活動の役割が飛躍的に増大した、いわゆる行政国家の現象が顕著になってきております。
 そのような中において、国民と議会を媒介する組織として、かつ複数政党の存在を前提とした、政府・与党対野党という意味での実質的な権力分立の観点からも、政党の存在はますます重要になってきていると言われております。まさしく、政党なしには現代民主政治は機能し得ないと言っても過言ではないわけでございます。
 このような政党と憲法を初めとする法令の関係を歴史的に見れば、先生方には釈迦に説法かとは存じますが、例えばトリーペルの四段階説などによる説明では、まず最初は、政党というものに対して国家は敵視する態度をとる。その後、これを無視するという第二期の時代を経て、第三期に入ると、参政権の拡大や代議制の発達、それに続く議院内閣制の確立などに伴って政党の重要性が増し、その存在を法的に承認する段階に入る。例えば、政治資金規正法や政党法人格付与法、政党助成法や公職選挙法など、個別の法律を持つ我が国の現在の制度はこの段階にあるというふうに言われるところです。
 そして、その次の第四段階として、ドイツの基本法のように、政党を公的存在として憲法制度の中に編入する国もあらわれてくるようになるということでございます。
 このような理解を背景にしつつ、我が国でも、政党の公的性格に鑑みて、憲法に位置づけて、その政治活動の自由とともに、政党内部の必要な規律についても定めるべきではないかとするのがAの欄の見解です。
 これに対して、先ほど申し上げた政党助成法等の法律とともに、現行憲法下において、必要とあらば政党法を制定すれば足りるとするのがBの欄の御見解です。
 これらに対して、そのような主張は、公権力による政党の内部秩序に対する介入をもたらす危険性があるとして、あくまでも政党は、自由な私的結社として位置づけておくことこそが望ましいとするCの欄の御見解もございます。

 その他、第四章には、国会議員の三大特権と言われます歳費を受ける権利、不逮捕特権、免責特権などに関する規定や、一般に独立を保障されている司法権に対する重大なコントロール権能としての弾劾裁判所の設置など重要な条文もありますが、ここでは詳細な論点紹介は省略させていただきます。
 以上、本日は、第四章国会に関する主要論点につきまして御報告させていただきました。
 雑駁で疎密のある御報告であったとは存じますが、以上でございます。ありがとうございました。

○大畠会長
 以上で衆議院法制局当局からの説明聴取は終わりました。

    ―――――――――――――

○大畠会長
 これより各委員からの意見表明等を含む自由討議に入ります。
 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派を代表する委員が順次発言を行い、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。
 それでは、まず、各会派を代表する委員の発言に入ります。
 発言時間は七分以内とし、その経過につきましては、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせいたします。御協力をよろしくお願いいたします。
 発言は自席から着席のままで結構でございます。

(中略)

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 日本国憲法第四章国会について、自由民主党を代表して見解を述べさせていただきます。
 国会機能の充実については、中身もそうですけれども、憲法事項かどうかという議論も非常に大切だと思っております。私たちも、今お話があった国会の行政監視機能の充実に思いをいたしておりますけれども、例えば、福島原発の事故調の設置、あるいは行政仕分けについても、しっかりと国会で行うべきという提言をさせていただいております。
 さて、現在、国会のあり方に関して最も根本的でかつ活発な議論が行われている問題として、一院制、二院制についての議論があります。
 自民党の憲法改正草案の作成過程でも、一院制を採用すべきか否かは、憲法全体を通じて最も大きな議論のあったテーマでした。党内の議論では、ねじれ国会の状況に対する決められない政治などの批判を背景として、一院制を採用すべきとの意見も多く出されました。
 しかしながら、一院制の導入の具体化には、選挙制度を含めた詳細な制度設計を踏まえた議論が必要なんですけれども、今回の草案全体の位置づけや時間的制約により、そこまでの議論を行うことは困難でしたし、また、諸外国に見られる二院制の持つ慎重審議の効用を重く見るべきとの意見も、やはり強く主張されました。
 そこで、あくまでも、今回の草案では二院制を維持することとしており、論点表ではCになります。今後、二院制のあり方についてのさまざまな課題を検討する中で、一院制についても検討することとしております。
 続きまして、両院の役割分担についても、一院制に関する検討と絡めて議論があり、また、法律案の再議決要件の引き下げについても議論がありました。
 ねじれ国会のもとで法案審議が停滞しているとの認識を背景に、国政の停滞を避けるため、三分の二の再可決要件を過半数に引き下げるべきという意見も多くありましたが、一方で、それは参議院の存在を否定するものだという意見も強く出されました。
 結局、今回の草案では、一院制導入について現状を変更しなかったのと同様の理由から、再議決要件についても現状を維持することとし、論点表のCの立場をとりましたけれども、今後、二院制についての検討を進めていく上では、一院制についての議論と並んで、この再議決要件のあり方も重要なテーマであると考えます。

 次に、国会議員の選出方法、特に一票の格差についてです。
 一票の格差の是正を含めた選挙制度の改正については、最高裁判所の判決等を受けて議論が現に行われておりますけれども、そもそも、日本国憲法四十七条では、選挙区その他両議院の議員の選挙に関する事項は法律で定めるとされ、基本的に立法府の裁量に委ねられております。
 一票の格差は、投票価値の平等という民主政治の根幹にかかわる問題であり、その是正は喫緊の課題ではありますが、選挙制度は、人口をまず基本としつつも、行政区画、地勢など、その他の要素も総合的に勘案して定められるものであります。
 自民党の改正草案では、この点を明らかにする規定を、現行法制の規定を参考にしつつ四十七条後段として加えております。論点表ではAの2になります。

 次に、議事手続等についてです。
 自民党の草案では、通常国会の会期を法律で定めると規定し、また、いずれかの議院の四分の一以上から臨時国会の開会要求があった場合の召集期日を、要求から二十日以内と明確に定めました。
 会期制については、先ほど御紹介があったようにさまざまな意見がありますけれども、まず、これらの規定の運用により、国会の活動期間の確保のため一定の対応がとれるようになります。

 その他、自民党の草案では、両議院の本会議の定足数について、議事の定足数を削除し、議決だけの要件としています。論点表ではAになります。
 また、国務大臣の国会出席義務について、重要な外交日程があるにもかかわらず国会に拘束され、その結果国益が損なわれてしまうようなことがないようにするため、「職務の遂行上特に必要がある場合は、この限りでない。」として、出席義務を緩和し、論点表のAとしております。

 最後に、政党についてです。
 現代政治において、民意を媒介する機関としての政党のウエートは確実に大きくなってきており、議会制民主主義にとって不可欠な存在となっております。いろいろ議論はありますけれども、このような政党の重要性に鑑み、自民党の草案では、政党について新たに憲法上規定を置いております。これとあわせて、結社の自由との関係をも踏まえ、「政党の政治活動の自由は、保障する。」との規定も置いております。論点表ではAになります。
 憲法に政党についてこのような規定を置くことにより、政党法を制定し、政治活動の自由の保障と同時に、党内民主主義の確立などの内部規律を定めていくための根拠になると考えております。
 以上、自由民主党代表としての意見表明とさせていただきます。

第180回 国会 衆議院 法務委員会

第180回 衆議院 法務委員会 第10号
平成24年7月31日(火)
午前九時開議

【本日の会議に付した案件】
・政府参考人出頭要求に関する件
・裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 法案質疑に先立ちまして、二つほどお伺いしたいと思います。
 まず、今月十八日に法制審議会の会社法制部会が提示した会社法改正の要綱原案についてです。
 私たち自民党の法務部会、財務金融部会、経済産業部会、企業・資本市場法制プロジェクトチーム、企業会計小委員会の合同会議の方では、かねてから、企業ガバナンスの強化のため、上場会社における複数の社外取締役選任義務を上場規則で明示し、それができなければ法律で義務づけるべきだと主張してまいりましたけれども、この点、要綱ではどのようになったんでしょうか。

○原政府参考人
 お答えいたします。
 社外取締役の選任の義務づけの問題につきましては、会社法制部会におきまして当初から意見が大きく対立していた論点であるというふうに承知しております。現在は、選任を義務づけることにかえまして、社外取締役がいない一定の株式会社について、その理由に関する情報の開示を充実することなどが議論されているものと承知しています。
 いずれにしましても、最終的な取りまとめにはまだ至っていないと承知しております。

○柴山委員
 結局、義務づけには至っていない。この要綱案においても至っていないし、しかも、まだ結論すら出ていないということなんですけれども、これは一体なぜなんでしょうか。
 確かに、社外取締役を入れることによってさまざまな不祥事を全て防ぐということはできません。ただ、外部の目を入れることが一定の経営の透明性を増すという効果にはつながると思いますし、また、社内では得られない知見を獲得するということは、その会社自体にとっても有用なはずなんですよね。
 既に海外では、イギリス、アメリカ、フランスのほか、韓国あるいは中国においてすら社外取締役の選任が義務づけられています。それでは足りないからより厳しい仕組みをつくるというのであれば話はわかりますけれども、なぜ、社外取締役の選任を義務づけることに、これほどまでに経済界から反対が多いんですか。

○原政府参考人
 この問題につきましては、法制審議会のさまざまな立場のメンバーから多様な意見が出されまして、コンセンサスが得られていないという状況でございます。
 今委員が御発言になりましたように、社外取締役を選任することをいたしますと、社外取締役には経営者を監督する機能が期待されますので、取締役会の監督機能が強化されるですとか、取締役会の透明性が高まる、そういうメリットがあるという指摘が一方でございます。
 他方で、各企業の実情に応じた最適な企業統治体制をとることが阻害されてしまうのではないか、あるいは、社外取締役の選任を義務づけますと適切な人材確保が難しい、そういったいろいろな意見がございまして、現在のところは、社外取締役の選任を会社法では義務づけない方向での議論が進められているという状況でございます。

○柴山委員
 では、具体的にお伺いします。
 人材がいないというように今局長はおっしゃいましたけれども、東証一部に上場している企業の中で社外取締役を置いている会社の割合は何%ですか。

○原政府参考人
 平成二十三年八月に、一般社団法人であります日本取締役協会が調査結果を発表しております。上場企業のコーポレート・ガバナンス調査二〇一一という資料でございますが、この調査結果によりますと、東証一部に上場している企業の中で社外取締役を置いている会社は五一・四%であるというふうに報告をされております。

○柴山委員
 この五年間で、どういう形で推移したんでしょうか。

○原政府参考人
 ただいま御紹介いたしました資料によりますと、二〇〇四年でも調査がされておりますが、二〇〇四年の調査結果では、東証一部の企業で社外取締役を選任している企業の割合は三〇・〇%であった、それが二〇一一年には五一・四%にまでなったということでございます。

○柴山委員 
 つまり、このわずか七年間に、三〇%から五一・四%と飛躍的に増加しているわけなんですね。しかも、ことし二月の資料なんですけれども、経団連の会長、副会長出身会社十七社のうち、社外取締役を置く会社は実に十四社です。しかもその平均人数は二・二九人です。
 ですから、例えば時価総額一定以上の上場会社に限定して複数の社外取締役を選任することを義務づけることは決して不可能ではないというように思うんですけれども、いかがですか。

○原政府参考人
 この問題につきましては、どのような企業を対象に社外取締役を義務づけるべきかということも議論されました。
 一つの案としては、上場企業に社外取締役の選任を義務づけるという案も検討いたしましたし、上場会社一律に社外取締役の選任を義務づけるのではなくして、今委員が言われましたように、もう少し限定する。例えば、株式会社の規模ですとか上場後の経過年数、上場区分等といった、そういうものでもう少し限定して義務づけをしたらどうかという案もございまして、こういった案につきましても検討がされましたが、そういった案も含めて、社外取締役の選任を義務づけることについてはコンセンサスが得られていない、こういう状況でございます。

○柴山委員
 ちょっと、なかなか説得的な根拠になっていないと思うんですよ。
 報道ベースでお伺いする限り、先ほど局長がおっしゃったとおり、義務づけは見送るけれども、例えば、有価証券報告書を提出する会社について、社外取締役を置かない理由を株主総会の事業報告に載せるというような案が提示をされているということなんですけれども、要は説明責任ということになるんでしょうか。その詳細についてお伺いしたいと思います。

○原政府参考人
 委員から御指摘いただきましたように、七月十八日の第二十三回の会合におきまして要綱案の第一次案を提示しておりますが、その案では、社外取締役の選任の義務づけはしないということのかわりに、一定の株式会社において、社外取締役が存在しない場合には、社外取締役を置くことが相当でない理由を事業報告の内容とすることと。ちゃんと説明をしていただく、こういうことを提案しているところでございます。

○柴山委員
 それに対する経済界の委員の反応と、そしてその理由を教えてください。

○原政府参考人
 この点は、まだ審議中でございまして、賛否両論があってコンセンサスが得られていないという状況でございますが、次回の法制審の部会におきましてはコンセンサスが得られる方向で議論がされていくのではないか、私は個人的にはそう思っております。

○柴山委員
 報道ベースでは、この点については何とかまとまるんじゃないかというようなことも伺っていますけれども、書式ですとか、通り一遍の説明では、やはり今私が申し上げたような統計の上からいって到底納得はできないというように思いますので、その詳細についても含めて、ぜひまたこの国会で議論をさせていただきたいというように思います。
 論点がたくさんあります。
 親会社株主が子会社の役員の責任を追及できるという多重代表訴訟、これは、完全親会社の発行済み株式あるいは議決権総数の一%を保有することなどを要件とするいわゆる少数株主権とするとのことなんですけれども、本来、代表訴訟は一株でも持っていれば提起できる単独株主権ではなかったですか。

○原政府参考人
 通常の代表訴訟の場合には、提訴権は単独株主権とされております。

○柴山委員
 なぜこのようなハードルを設けたんでしょうか。

○原政府参考人
 この多重代表訴訟は、親会社の株主が子会社の取締役等の責任を追及する訴訟でございますので、完全子会社と完全親会社の株主との関係は、当該完全親会社を介した間接的な関係になるわけでございます。したがいまして、利害関係が一定程度強い場合にのみ多重代表訴訟の提起権を認めるのが相当であろうということで、少数株主権にされているというふうに承知しております。

○柴山委員
 それもなかなか説明が苦しいんじゃないかと思うんですね。
 確かに、法人格が一つ間に介在しているというような御説明ではあったんですけれども、そもそもこの代表訴訟というのは、会社と取締役の間のなれ合いをなくして、会社の機関として株主が会社にかわって訴えを提起するものだったはずであります。ですので、一〇〇%親会社である場合には、子会社の取締役選任を事実上完全に支配している、法人格の壁はありますけれどもそういった実態がありますし、しかも、子会社の損害というのはイコール親会社の損害であるというふうに評価できるわけです。
 とすれば、株主が自分のためというよりは、むしろ親会社の機関として、その親会社と一体になっている子会社にかわってその取締役を訴えることができるというのはむしろ当然でありますし、例えば濫訴などを気にしているということであれば、単独株主権をいじるんじゃなくて、むしろ、その親子会社の類型ですとか、さまざまな背景事情についてきちんと類型分けをしていくということが本来あるべき姿じゃないんですか。

○原政府参考人
 通常の株主代表訴訟の提起権が単独株主権とされているのに対しまして、この多重代表訴訟の提起権を少数株主権にいたしましたのは、先ほど御説明しましたように、関係が間接的であるということでございます。少数株主権にしているのは濫訴防止のためではないか、そういう捉え方もありますが、法制審における考え方は、今申し上げたようなことで検討がされているというふうに承知しております。
 濫訴防止という点もやはり議論になりまして、この点につきましては、完全子会社または完全親会社に損害を加えることを目的として多重代表訴訟を提起するような場合は、これは認めないということで、別の策を設けているところでございます。

○柴山委員
 なかなかわかりづらい部分があります。
 これ以外にも、今回の要綱についてさまざまな論点がありますけれども、先ほど申し上げたように、折に触れて質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 続いて、入管行政について、法案審議に先立ってお伺いしたいと思います。
 国際交流強化の観点から、例えば中国に対して、累次にわたってビザの発行の免除、緩和などを行っているところだと思います。真面目な方が入ってくるということについてはもちろん結構なんですけれども、それに伴って、在留している中国人を初めとした外国の人とのトラブルが発生しているというような実態はありませんか。

○高宅政府参考人
 お答えいたします。
 観光立国の推進などの観点から、中国人観光客に対する査証の発給要件の緩和、見直しが行われてきております。
 具体的に申し上げますと、平成二十一年七月から、十分な経済力を有する中国人観光客に対して個人観光査証の発給を開始する。そして、二十三年九月には、その発給対象を、一定の経済力を有する者に緩和しております。また、二十三年七月からは、初回入国時に沖縄県を訪問する十分な経済力を有する中国人観光客に対しまして、有効期間三年の数次観光査証を発給するということとしております。また、本年七月からは、東日本大震災により甚大な被害を受けた岩手県、宮城県、福島県を訪問する中国人観光客の方に対しても、同様に数次の観光査証を発給しております。
 このように、中国人に対する観光査証の発給要件についての見直し、緩和が行われてきておりますが、これらの査証で入国した方の不法残留状況について見てみますと、個人観光査証による中国人入国者は、入国管理局の電算上では、発給の開始、これは二十一年の七月でございますが、それから平成二十三年末までで約十一万七千人、そのうち、不法残留となった者は二十三人でございます。
 また、沖縄訪問を目的とした数次観光査証による中国人入国者につきましても、発給の開始から二十三年末までで約九千人が入国しておりますが、不法残留となった者は二人となっております。
 現時点で断定的な評価を行うことは必ずしも容易ではないと考えますが、これまでのところでは、少なくとも治安の悪化とか不法残留者の増加ということについて、明らかな結果とか兆候は認められていないと考えております。

○柴山委員
 統計上の数字は必ずしも数は多くないということなんですけれども、もしそういった方々が何か日本に対して国益を損なうような行為をすれば、それは数が少ないからといって看過するわけには当然いかなくなるわけです。
 そこで、入管当局にお伺いしたいんですけれども、不正入国のチェックについては、この間、どのような形で強化をしていますか。

○高宅政府参考人
 お答えいたします。
 入国管理局におきましては、上陸拒否事由に該当する人についての情報、あるいは、退去強制をした人間につきましては、その際に採取した指紋などをデータベース化しておりますが、これらのデータベースを有効に活用して、不正に入国しようとする者を防止するということをしております。
 具体的に言えば、本邦に乗り入れる船舶、航空機は、ここから事前に旅客などの身分事項の提供を受けておりまして、上陸拒否事由該当者かどうか等の事前照合を実施しております。
 それから、上陸申請時に指紋及び顔写真の提供を義務づけまして、当局保有の指紋情報等との照合を実施しております。
 このほか、ICPO紛失・盗難旅券データベース検索システムというのがございますが、それにより盗難旅券の確実な発見に努める、あるいは旅券の偽変造のチェックを確実に行うというようなことをしております。
 このようなことによりまして、不正な入国を防止して、引き続き厳格な入国審査を実施していきたいと思っております。

○柴山委員
 ところが、それだけバイオメトリックス等の力をかりて不正入国を防止しようということで入管当局が尽力をされているにもかかわらず、つい先日も、中国人五十三人が中国残留邦人の親族として来日し、大半が入国直後に生活保護を請求するという事件が発生しています。ブローカーの取り締まりも含めての対策をぜひ示してください。

○高宅政府参考人
 平成二十二年に、大阪におきまして、不実の記載のある身元保証書などを提出しまして在留資格認定証明書の交付を受けて、日系中国人五十三名が入国しております。そして、その方たちが入国直後に生活保護申請を行ったという事案が発生しておりますが、このことを踏まえまして、入管局では経費支弁能力に関する審査を厳格に行っているところでございます。
 具体的には、入管法五条で、貧困者、放浪者等で生活上国または地方公共団体の負担となるおそれのある者というものは、上陸拒否事由、我が国に上陸することができないと定められておりますので、入国事前審査という性格を持つ在留資格認定証明書交付申請の審査に当たりまして、申請を行った外国人の生活費の支弁能力、あるいは身元保証人が支弁するというような場合にはその保証能力などを慎重に審査するなどしまして、公共の負担となるおそれがないことを確認しております。
 もし、在留資格認定証明書交付申請におきまして、例えば経費支弁方法として不実の記載のある文書を提出するなどのことがありました場合には、その証明書の交付を受けて入国し、あるいは入国して在留している外国人につきましては、入管法二十二条の四に基づきまして在留資格を取り消すなどの対応をしております。

○柴山委員
 さっき、ビザ発給要件で、十分な資力から一定の資力というような形の緩和がなされたというように聞いております。
 そして、今局長がおっしゃったんですけれども、結局、身元保証人等の存在については、今私がちらっと申し上げたように、国内のブローカーがおかしな書類を出すということは十分想定されるわけですよ。一定の段階で在留期間が取り消しになっても、それでブローカーがごっそりもうけるということが出てきてしまうわけなんですね。水際で取り組むだけでは、こういった私が今申し上げたような犯罪というのは根絶できないんです。
 だから、その点も含めて対策がどういうふうにとられているんですかということをお聞きしているんです。もう一度答弁ください。

○高宅政府参考人
 不正な形で入国しようとする外国人につきましては、最初の段階でまず在留資格の認定証明書の申請等がございますので、そこの段階で、先ほど申し上げましたように、経費支弁能力をきちんと確認する。そして、身元保証人につきましても、それが本当に身元保証する意思があるのか、あるいはその能力があるのか等を考えるわけでございますが、これも、不実の文書あるいは虚偽の文書等で破られた場合につきましては、入国管理局としましては、入国後にそのことが判明した段階で取り消すという方法をとっているわけでございます。
 ただ、そこにおきましては、例えばブローカー等が判明した場合につきましては、ブローカー自身が外国人であればもちろん入管局自身でそれへの対応をいたしますが、それ以外の場合には、やはり警察と協力して対応するということになると思います。

○柴山委員
 とにかく、しっかりとした連携をしなければいけないということを申し上げたいと思います。
 そもそも、先日、福岡高等裁判所において、永住外国人という限定はついていたかと思いますけれども外国人の生活保護の支給が法的根拠を持つという判決が出ているんですけれども、今御指摘になったように、十分な経費支弁能力等の在留資格の厳格なチェックがしっかりしていれば、私は、かなりこういった生活保護の支給ということを外国の方に行う必要性というのはないというように思うんです。
 また、生活保護のチェックというのは各自治体でやっているわけなんですけれども、それをきちんとトレースするということも必要だと思いますし、これは局長、今おっしゃった入管情報で外国人登録との連携、これはどういう形で行われているんでしょうか。

○高宅政府参考人
 外国人登録につきましては本年七月九日で廃止されておりますが、その後、新しい在留管理制度ということで、法務省が直接情報を取得する、外国人の在留状況に関する情報を取得しておるわけでございますが、いずれにしましても、この点につきましては、狭い意味での在留管理にかなり限定された情報ということになっておりますので、その市町村とのやりとりというのはある程度定まっておりますが、その事項は限定しておりまして、生活保護に直接関係するというのはちょっと難しいかと思います。

○柴山委員
 いや、だから、それですと、はっきり言って、本当に実効性のある自治体との連携ということになっているのかどうかということが私の問題意識なんです。
 入管当局の資料を生活保護先にも出させるようにするということが、今私が申し上げたような、要するに自治体レベルでのしっかりとした不正のチェックにつながってくるというように思うんですけれども、厚生労働省、対応はしていますか。

○西藤政府参考人
 お答え申し上げます。
 生活保護法は、日本国民のみを対象としており、外国人の方は対象としておりませんが、一方、昭和二十九年に通知を発出いたしまして、永住者、定住者等の在留資格を有する外国人の方については、人道上の観点から、予算措置として支給しております。
 そうした中で、外国人の方も含めまして、生活保護制度における不適正事案への対応というのは極めて重要でございます。
 こうしたことから、昨年八月に、法務省とも協議をさせていただき、地方公共団体向けに通知を発出いたしまして、入国直後の外国人から生活保護の申請があった場合には、その方が入国当局に提出した資料、具体的には、身元保証人の収入や本人の生計維持能力を証明する書類などでございますが、こうした資料の提出を求めることによりまして、入国時は生計の維持が可能であると認定されていながら、なぜ短期間で生活保護申請に至ったかについて厳密にチェックをすることにいたしております。

○柴山委員
 いずれにしましても、直接情報が連携をしていない。そういう中で、今、厚生労働省さんの方からお話があったような通達が出ても、自治体が本当にしっかりとチェックをするかどうかというのは私は怪しいと思いますよ。
 これはやはり、自治体の現場で仕事をしている職員にしっかりとしたインセンティブ、あるいは、不正受給をしてしまった者に対する監督、そういうことを行えるようにしないと、私は問題のある事案というのは防げないのではないかというように思っています。
 統計のことをちょっとお伺いしたいんですけれども、オーバーステイや不法就労の摘発についての具体的な統計数、あるいは生活保護についての件数、これについてお伺いしたいと思います。

○高宅政府参考人
 まず、オーバーステイ、不法残留者数についてでございますが、平成二十四年一月一日現在の不法残留者数は、電算上、六万七千六十五人となっております。これは、平成二十三年一月一日、一年前に比べまして約一万一千人の減少となっております。
 その中の不法就労者でございますが、この辺は摘発した方からということになりますが、平成二十三年中に入管法違反によりまして退去強制手続をとった外国人、これが二万六百五十九人おりますが、そのうち不法就労したものと認められた者は一万三千九百十三名、六七・三%でございます。

○柴山委員
 生活保護についてはいかがですか。

○西藤政府参考人
 お答えいたします。
 世帯主が日本国籍を有しない生活保護受給世帯数ということでございますが、平成十七年は二万八千四百九十九世帯でございます。それが年々ふえておりまして、直近では、平成二十二年でございますが、約四万世帯となっております。

○柴山委員
 おわかりのとおり、不法就労者数あるいはオーバーステイが減っていても、生活保護の受給件数はふえているんですね。やはり、こういう実態もきちんと踏まえた上で、今御指摘になられたようなさまざまな対策を厳格にぜひとっていただけるようにお願いを申し上げて、法案固有の質問に移らせていただきます。
 裁判所職員定員法一部改正法案の質問に移らせていただきます。
 率直に申し上げて、裁判官の数は少な過ぎるというのが私の考えです。例えば、ここ数年の東京地裁民事通常部での裁判官一人当たりの手持ち件数はどのように推移しておりますでしょうか。

○戸倉最高裁判所長官代理者
 過去三年間の数字で申し上げますと、東京地裁民事通常部の裁判官一人当たりの手持ち件数は、平成二十一年末で約二百七十件、二十二年末で約二百八十件、平成二十三年末で約二百二十件となっております。

○柴山委員
 異常な数字です。裁判官一人当たりの手持ち件数が三百件近い。平成二十三年についてはちょっと減ったといいますけれども、二百二十件という紹介がありましたけれども、異常としか言いようがありません。
 平成十三年四月十六日付、最高裁判所事務総局が出した「裁判所の人的体制の充実について」というペーパーを私、二年前のこの法務委員会の質疑で紹介させていただいたんです。そこには今後の目標として、裁判官の手持ち件数を大幅に減らさなければいけない、手持ち件数を現在の、平成十三年のです、百八十件から、四分の三の百三十件から百四十件、こういった形でペースダウンしていくということが必要だというように明記をされているんです。
 今御紹介された実態は全く真逆の方向でありまして、余りにもかけ離れているんじゃないですか。

○戸倉最高裁判所長官代理者
 今委員が御指摘のとおり、平成十三年に最高裁が申し上げました裁判官手持ち件数百三十ないし百四十件という目標の数値につきましては、その後、過払い金事件等を中心として急増した、当時必ずしもその点が十分想定できなかったということもございまして、結果として非常に事件が増加したというところでございます。
 ただ、この事件数動向については、最近は若干の落ちつきを見せておる。そのほか、今後とも一定程度の計画性を持った増員をしていくということによって、私ども、この目標については今後とも維持しながら、実現に努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

○柴山委員
 計画的な増員とおっしゃいますけれども、私からいえば、計画性のない、非常に控え目な増員であるというように思っております。
 労働審判や行政訴訟など、専門事件の新受件数は最近どのような傾向でしょうか。

○戸倉最高裁判所長官代理者
 これらの専門的事件については、五年間の事件の比較で申し上げますと、まず、労働審判事件は、平成十九年には一千四百九十四件でございましたが、平成二十三年には三千五百八十六件、これは過去最高の件数でございます。
 行政訴訟につきましては、十年で見ますと増加をしておりますが、この五年間で見ますとほぼ横ばいでございまして、平成二十三年では二千二百六十八件でございます。
 知的財産訴訟は、四百件から六百件台の間で推移をしておりまして、平成二十二年には六百五件でございましたが、これが二十三年になりますと四百五十六件という状況でございます。
 医事関係訴訟は、平成十六年にピークを記録したわけでございますが、その後はやや減少傾向にございまして、五年前の平成十九年は九百二十七件、平成二十三年は七百四十一件といった状況でございます。

○柴山委員
 労働審判の件数が突出してふえていますね。
 先ほど来お話があった成年後見事件などの家事事件について、もう一度ちょっと説明をお願いしたいと思います。

○戸倉最高裁判所長官代理者
 まず、家事事件でございますが、これも同じく五年間で申し上げますと、家事審判事件が、平成十九年に約五十八万件でございましたが、平成二十三年には約六十四万件でございます。
 その中で、成年後見の開始事件につきましては、平成十九年には約三万件でありましたが、平成二十三年には約四万件でございます。これに伴いまして後見人に対する監督事務も増加しておりまして、これは後見監督の処分の事件と、あと、専門職後見人については報酬付与の事件で監督を行うわけでございます。その合計数で申し上げますと、平成十九年には約六万四千件でございましたが、平成二十一年に約七万七千件と、これは最高を記録いたしまして、昨年、二十三年には約七万五千件と、依然高い水準にございます。

○柴山委員
 はっきり言って、本当に深刻な水準に達しているというように言わざるを得ないというように思っています。
 そして問題なのは、常日ごろから指摘をされているように、弁護士の増加に比べて裁判官の増加のペースが、同じ期間で比較すると、割合的に非常に鈍いのではないかというように思うんですね。弁護士の増加と裁判官の増加、これを五年ベースで比較するとどうなりますでしょうか。また、司法研修所終了試験である二回試験の合格者の中で判事補に進む人数の割合の推移、これがこの五年間でどのように推移しているでしょうか。

○戸倉最高裁判所長官代理者
 弁護士数につきましては、平成十九年には約二万三千人でございましたが、平成二十三年には約三万一千人ということで、これは約三二%の増加でございます。これに対しまして、裁判官、これは簡裁判事を除いた人数でございますが、平成十九年には二千六百十人でございましたが、平成二十三年には二千八百五十人でございまして、約九%の増加でございます。
 また、修習を終えた者のうち判事補になった者の割合でございますが、これは、平成十九年に修習を終えた者のうち百十八名が裁判官になっておりまして、その割合は四・九七%でございます。平成二十三年に修習を終えた者につきましては、これは百二人が裁判官になっておりまして、四・七四%でございます。

○柴山委員
 とにかく、弁護士がふえている割に裁判官のふえるペースというのは非常に少ないというように思っています。
 今回の定員法では裁判官が三十人ふえていますけれども、判事補の期間が十年あるわけですから、判事補として採用したのは今から十年前であります。ここ数年間は判事補はふやしていないんですよね。これは、やはり私は非常に大きな問題があるのではないかというように思っています。
 なぜ判事補の採用をふやしていかれないんでしょうか。

○戸倉最高裁判所長官代理者
 今委員御指摘のように、判事補についてはこのところふやしてはおりませんけれども、判事補は十年後には判事になる人材ということでございます。そういう意味で、判事補の採用数を考えるに当たりましては、各種事件動向ということになるわけですが、それは、十年より先のさらに事件動向も踏まえてどの程度の採用をするかという、非常に長期的な見通しを立てる必要があるということがございます。
 それにしましても、私どもとしては、やはり判事補になる方で優秀な方がおられれば、これはぜひできる限り任官をしていただきたいというふうに考えているわけでございますが、昨今の司法修習生の志望状況を見ますと、私ども、できれば来ていただきたいと思うような優秀層の方は、やはり弁護士事務所の方も非常に早目に内定であるとか、そういったこともやっておられるということもあり、極めて厳しい競争下にございまして、私ども、判事補にふさわしいなと思う方が、必ずしも十分希望をしていただけてもいないという状況にあるわけでございます。
 こういったことはございますけれども、私ども、やはり少しでも将来を担う優秀な判事補についてはできる限り採用してまいりたいというふうに考えておるところではございます。

○柴山委員
 裁判の中で解決する紛争手続というのが、ある程度、非常に件数的に難しい、厳しい状況だというのであれば、これからは裁判の外で解決する手続を充実させていかなくてはいけないのではないかというように思っています。そういった裁判外の紛争解決実態はどのようになっているのでしょうか。
 そして、ちょっと関連するんですけれども、独禁法で審判制度を廃止して訴訟へ一元化しようという、時代に逆行した流れができつつあったかと思うんですけれども、この審判制度廃止の現在の状況について、それぞれお伺いしたいと思います。
 まず、裁判外紛争解決手続からお願いします。

○滝国務大臣
 裁判外の紛争解決は、司法制度改革の中で出てきた問題でございますから、比較的なじみがまだないというのが実態だろうと思います。しかし、当時からできるだけ裁判外の紛争解決というものにも力を入れていくということで、法務省が認定しているいわば認証ADRということもかなりふえてきておるわけでございます。
 御指摘のように、裁判だけではなくて、やはりADRを中心にした、いわば調停、和解みたいな、一口に言えばそういうことでございますけれども、それによる紛争解決というものももうちょっと宣伝をしていく余地があるかなという感じは今いたしております。

○鵜瀞政府参考人
 独占禁止法の審判制度を廃止いたしまして、公正取引委員会の行政処分に対する不服審査を裁判所に委ねるという独占禁止法改正案でございますが、一昨年の三月に国会提出されまして、今百八十回国会まで継続審査となっておりますけれども、まだ成立しておりません。

○柴山委員
 これは大切な法案ですから、しっかりと与党の皆さんにチェックをしていただきたいというように思います。
 時間がなくなりましたので、最後の質問です。
 これは昨年の定員法の質疑のときにも質問させていただいたんですけれども、震災に伴って、さまざまな法律事件の増加というものが現実化しているのではないかというように思います。どのような事件がどのように増加して、それに対して現状しっかりと対応できているのかどうか、これを最後にお伺いしたいと思います。

○戸倉最高裁判所長官代理者
 震災に関連する事件につきましては、私どもも、これは神戸の震災の経験もございまして、増加するのではないかという予測を持って注視をしてまいったわけでございますが、今のところ、平成二十二年と平成二十三年の比較で見ましても、被災地の地裁の民事訴訟事件につきましては、平成二十二年の比較でいきますと、むしろ二八%の減少でございます。
 また、簡裁民訴事件あるいは民事調停事件では、いずれも平成二十二年度の半分程度という事件の増嵩でございます。
 ただ、家事審判事件につきましては、家事審判事件は全般的には微増というところでございますが、その中で見ますと、相続放棄の審判事件が、これは前年比でいきますと二、三割程度増加しております。また、相続放棄等の期間伸長の審判事件につきましては、三、四倍に増加したところでございます。
 こういった増加した事件につきましては、私ども、必要な人的手当て等、審理の対応をいたしまして、現時点では全て事件処理を終わっておるというところでございます。

○柴山委員
 大変痛ましい実態を紹介していただきましたけれども、表に出てきた訴訟が少ないことが法的解決のニーズが減っているということではありませんから、声を殺して泣いている人たちが出ないように、しっかりと法曹全体で取り組みをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

第180回 国会 衆議院 法務委員会

第180回 衆議院 法務委員会 第8号
平成24年6月15日(金)
午前九時開議

・政府参考人出頭要求に関する件
・裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 滝大臣、このたびは御就任おめでとうございます。
 まず、オウム真理教の現状について伺います。
 昨年末の平田信、今月の菊地直子と、立て続けに指名手配犯の逮捕が続き、つい先ほど、高橋克也容疑者についても東京都大田区の路上で身柄が確保されたとのニュースが飛び込んできました。
 まず、警察庁に事実関係の確認をしたいと思います。

○舟本政府参考人
 お答えいたします。
 去る六月三日、特別手配の菊地直子を、情報に基づきまして相模原市内で逮捕いたしました。また、同人をかくまっていた男性を、翌四日に犯人蔵匿で逮捕いたしました。
 この両人の供述から、高橋克也が川崎市内に居住していたという情報がもたらされまして、そこに赴きましたが、直前に逃走しておりました。警視庁初め全国警察を挙げて高橋克也の追跡捜査を行っていましたところ、けさ方、情報がもたらされまして、都内、大田区の路上におきまして同人を発見、確保いたしまして、蒲田署におきまして本人であるということの確認をいたしまして、昼前、十一時過ぎに、地下鉄サリン事件、殺人及び殺人未遂で通常逮捕したところでございます。

○柴山委員
 けさ方、情報がもたらされたということなんですけれども、差し支えない範囲で結構ですので、一体どういうソースの情報だったんでしょうか。

○舟本政府参考人
 お答えします。
 今後の捜査を待つところが多いわけでございますので、詳細は控えさせていただきたいと存じますけれども、けさ方、大田区内の漫画喫茶で同人と似たような男を見たことがあるという旨の情報がもたらされまして、捜査員を急派して、その付近で本人を確保したところでございます。

○柴山委員
 今、舟本刑事局長の方からもお話があったとおり、あれほど映像あるいは足取りがわかっていて、逃走してから十日余りが既に経過をしているわけであります。周辺の住民の不安も大変なものがあったのかなというように思います。
 高橋容疑者が勤務先の社員寮から逃走したのは、菊地容疑者の逮捕の報道がきっかけだったというようなことが言われているわけですけれども、今お話をお聞きしたような経緯について、警察として初動捜査の反省はありませんか。

○舟本政府参考人
 お答えいたします。
 菊地直子につきましても、高橋克也につきましても、現在、鋭意捜査中でございます。全容が解明される中で、今回の追跡捜査等々のあり方につきましてもいろいろな形で検討を加え、今後に生かすべきものがあれば当然生かしてまいりたいと考えております。

○柴山委員
 ただ、今申し上げたように、菊地容疑者の逮捕の報道がきっかけとなって直前に逃げられてしまったということは、やはり、さまざまな想定が甘かったんじゃないかなというふうに思わざるを得ません。
 また、平田容疑者の自発的な出頭なくして、菊地直子容疑者、あるいは今回の高橋容疑者の逮捕はなかったというように思います。そういうことからすれば、やはり情報ネットワークということをしっかりと研ぎ澄ませておかなければいけないのではなかったのかということを強く感じます。
 私の住んでいるところは所沢でありますが、この所沢に被疑者らは潜伏をしていました。そして、菊地容疑者につきましては、防護服の着用を行ったり、土谷正実死刑囚のもとで実験工程をノートにまとめたり、薬品の影響を受けて体がふらついていたりしていたという元信者の供述があるようにも報じられていまして、やはりかなり深く地下鉄サリン事件にかかわっていた可能性があるというように感じるんですけれども、そういうことから、私の地元でも大変関心が深いものと思われます。
 今、捜査の経過、現状については、引き続き取り組んでいるということなんですけれども、今後しっかりと実態の解明をし、また、麻原を中心としたオウム教団の闇を暴いていただきたいというように思います。
 一点お伺いしたいんですけれども、今回の高橋容疑者の逮捕に伴いまして、現在係属している麻原あるいは平田等の刑事手続はどのような影響を受けることになるんでしょうか。これは法務省でしょうか。

○稲田政府参考人
 先ほど警察庁からお話がございましたとおり、本日、高橋が逮捕されたばかりでございますし、菊地につきましても、先般逮捕されたところで、まだ捜査中でございます。したがいまして、事実関係も詳細わからないところでございますので、現在係属しております平田被告人に対してどのような影響があるかは、ちょっと、現時点でまだ申し上げられるような段階にないというふうに思います。
 また、麻原につきましては、既に死刑が確定しているという状況にございますので、そういう意味では、特別の影響があるとかないとかいうことにはならないのではないかとは思います。

○柴山委員
 これは以前この法務委員会でも質問させていただいたところなんですけれども、死刑の執行につきまして、滝法務大臣は、就任の記者会見で、これについては適切に対応するということをおっしゃっていました。しかし、確定した死刑を執行するか否かの判断において、共犯事件の帰趨というものがやはりかなり影響してくるのではないかということを質問させていただいたところであります。
 滝法務大臣、この点について再度お伺いしたいと思います。

○滝国務大臣
 基本的には、今回の逮捕でどういうようなことが解明されるかということにかかわってくるわけでございます。基本的には、確定した判決について影響をするようなことはまずないわけでございますけれども、実際の執行面においては、当然のことながら、基本的に、点検した上でどうするかという、個々具体的なケースに即して判断をしていく、そんな事件だろうと思っております。

○柴山委員
 ちなみに、オウムの後継教団としてアレフやひかりの輪が周辺住民の不安を招いています。この間の一連の報道によって、これらの施設における活動が何か影響を受けている事実はありますか。

○尾崎政府参考人
 公安調査庁といたしましては、観察処分の実施ということで、立入検査を初めとして、いろんな手段によって観察処分を実施しているところでございます。
 施設に関しましても、立入検査をこの間、頻繁に行っておりまして、二十三年度中には延べ四十八カ所、二十四年に入ってからは延べ二十一カ所、立入検査を行っております。
 お尋ねは、この間の動きということでございますけれども、実際に立入検査で、教団がどういう動向を示すのか、それについて今後とも引き続き注視してまいりたいと考えております。

○柴山委員
 ちょっとおかしいと思いますね。私は、個別に、やはり公安調査庁から、この間のオウム後継教団の活動が活発化していて、非常に予断を許さない状況であるというようなことをお伺いしているわけですね。
 今お話があったように、平成二十四年に入ってからも何度も立入検査を行っているわけで、その過程で一連の、平田が昨年の末に逮捕となったわけですけれども、報道が過熱する中で、どのような状況にあるかということは、むしろ一般社会に対してきちんと説明をしておくべきだというふうに私は思うんですけれども、いかがでしょうか。再度答弁を求めます。

○尾崎政府参考人
 お尋ねのとおり、アレフ、上祐派、大きく二つに分かれております。
 この間の立入検査で判明した事柄を若干申し上げますと、アレフに関しましては、非常に麻原回帰ということで、麻原に対する個人的な絶対的な帰依、これを強調するような方向に動いているということでございます。
 上祐派につきましては、若干、麻原の影響力を排除するかのように見せかけておりますけれども、依然として麻原に対する絶対的帰依というものが続いておりますし、教義の面からも、危険な教義を維持しているというふうに考えております。

○柴山委員
 現時点での施設、信者の概況、その監視の実態について、少し教えてください。

○尾崎政府参考人
 現在、信徒数につきましては、当庁が把握しております人数は約千五百人ということでございまして、そのうち約四百人が出家信徒で、集団的に居住する、非常に閉鎖的な生活を送っているというふうに考えております。
 施設につきましては、拠点施設で、十五都道府県下に三十二カ所、それから、信者が住んでいる居住施設といたしましては、六都道府県下に約二十カ所ございます。
 関係地方公共団体からいろいろな情報提供の要請がありました場合には、団体規制法に基づいて、適切に情報を提供しているところでございます。

○柴山委員
 大臣、拠点が十五都道府県で三十二カ所ですよ。これは、松原国家公安委員長とも力を合わせて、ぜひ本気になって取り組んでいただかなければいけないという事案だと思います。
 感想と、今後どのような取り組みをされるのか、決意をぜひ伺いたいと思います。

○滝国務大臣
 オウム真理教の問題は、まだ根本的に終結しているわけではありませんから、当然、公安庁としては監視を続ける。
 こういう中で、当然、国家公安委員長とも連携をとりながら、これからのいろいろな事態が起きないように、そんなことも念頭に置きながら対処してまいらなければいけないと思っております。

○柴山委員
 そもそも、伝家の宝刀である解散命令というものがなぜなされないのかということは、同僚の馳議員からもこれまで質問がなされたこともあるかと思うんですけれども、そういったことも含めて、やはりしっかりと適切に対応していただきたいというように思います。
 次の質問に移らせていただきます。
 滝大臣、検察行政の目的は何だとお考えになりますでしょうか。通告なしの質問で恐縮なんですけれども、お考えのところをお聞かせください。

○滝国務大臣
 世の中に不正という問題があれば、それを未然に防ぐ、そして、それについては、仮に発生すれば厳正に対処する、これが検察の本来的な目的だろうと思っております。

○柴山委員
 不正に対して厳正に対処する、それによって社会正義の実現が図られるということであろうかと思います。
 それでは、実際は無罪の疑いが生じたにもかかわらず、一旦起訴したからといって、そうした疑いを押し隠して有罪判決を得ようとすることは、不正に厳正に対処することになるんでしょうか。

○滝国務大臣
 基本的には、無罪であるものを押し隠して以後の手続を進めるということは、それはあってはならない、そんな判断をしていかなければいけないと思っております。

○柴山委員
 東京電力OL殺人事件で、ゴビンダ・マイナリ被告が釈放され、きょう午後にも成田から出国かという件についてお伺いします。
 大臣は、六月八日の記者会見で、今回の東京高裁での再審開始決定、そして執行停止決定について感想を尋ねられて、このように述べておられます。検察の捜査がある意味では十分ではなかったのではないかと受け取れるわけですから、そういうものも含めて捜査に何か問題がなかったかと、残念な結果であると思います。
 これは、冤罪の可能性を生じた、ずさんな捜査が申しわけないという趣旨なんですね。

○滝国務大臣
 基本的には、検察は異議申し立てをいたしたわけでございますけれども、異議申し立てが却下をされる、こういうことでございましたから、その点については、何か足りないものがあったのではないだろうか、こういうような趣旨で感想を申し上げたところでございます。

○柴山委員
 異議申し立てが却下されたということは、裁判所に対して被告の勾留の必要性を説得できなかったということですよね。勾留の必要性を説得できなかったということは、やはり、滝法務大臣も検察庁と同じように、この件については本来勾留が認められてしかるべきだ、そういうお考えだということですか。

○滝国務大臣
 少なくとも、そういう実体的な前提じゃなくて、形式的に私は感想を申し上げました。要するに、検察が異議申し立てをするならそれなりの理由があるはずだ、それが決定でもって却下されたということは、検察の申し立てが十分な説得力を持っていなかった、こういうふうに判断をせざるを得ないという意味で、何か足りないものがあったのではないか、こういうふうに感想を申し上げたわけです。

○柴山委員
 形式的に残念だということがよくわからないんですよ。
 つまり、これは高等裁判所の裁判官が、勾留の継続と執行について認められないというように判断をしたわけです。すなわち、そこには検察の主張に問題があったということを言外ににおわせているわけですね。
 ということは、これはただ検察の異議申し立てが認められなかったということに対する不満ではなくて、その背景にある検察の捜査、これについて、法務大臣として一体どのように感じておられるかということをぜひこの場で述べていただきたいと思います。

○滝国務大臣
 この問題は、もう一つ、執行の停止の問題もあるわけでございます。そういう執行の停止の方も結局は認められなかったということは、再審決定でございますから、今後の公判ということを考えますと、本人がいないことにはなかなか、再審決定をされてもその後の推移が不透明になる、こんなことも含めて、私は感想として申し上げたわけです。

○柴山委員
 確かに、二〇〇〇年、第一審判決で無罪という判断が出た後、東京高裁で一転勾留決定され、逆転有罪判決が出て、それが最高裁で確定しているということからすれば、微妙な案件であったことは事実でしょう。
 しかし、これはやはり問題が多々あった案件であって、現在もそういった問題は解消されていないのではないか、疑われるものです。
 まず、殺人事件四日後の一九九七年三月二十三日にマイナリ氏が不法残留容疑で逮捕され、五月二十日の初公判において入管法違反で有罪判決が出て、強制退去処分となる前に強盗殺人事件の容疑を固めようと拙速な捜査がなされたのではないかということです。
 被疑者が出国した後の取り調べなどの捜査あるいは公判は、どのように行えばよいのでしょうか。

○滝国務大臣
 具体的な問題ですから、私の方からそのようなことについてコメントするというものではないように思います。

○柴山委員
 先ほど滝大臣は、本人が国内にいないと手続が進まないということを残念だと思う理由の一つに挙げておられたわけですから、それはやはり、捜査上あるいは公判の係属上大きな支障が生じるということを御自分でお認めになったんじゃないんですか。それについては、これは刑事局長でも結構ですけれども、今後どのように捜査あるいは公判を行えばよいのか、お答えください。

○稲田政府参考人
 お答え申し上げます。
 まず、ちょっと今の御質問を二つに分けてお答えさせていただきたいと思います。
 まず、一般論といたしまして、単純に、その捜査をしている最中、今回の場合はもう既に起訴した後のことになりますけれども、そうではなく、時点でいいますと、例えば平成九年の段階でのことというふうに考えまして、捜査をしているときに被疑者と目される人間が外国にいる場合にどうするかということになりますと、所在する国に捜査共助をする、あるいは身柄の引き渡しを求めるということがあり得るとは思います。ただ、外国にいるということで、なかなか時間的にも手間もかかるという状況があると思います。
 次に、今回の、現在御指摘の東電OL事件の状況についてでございますが、先ほど委員御指摘がありましたように、平成二十四年、すなわちことし六月七日に東京高等裁判所が再審開始決定と刑の執行停止の決定をなさいました。そこで、検察官はこれに対しまして、まず再審開始決定そのものに対する異議申し立てをするとともに、刑の執行停止決定に対する異議の申し立て、すなわち刑の執行停止がされますと釈放になりますので、そのことに対する異議の申し立てを行いました。また、あわせて、刑の執行停止決定の執行停止を求める申し立てを行ったわけであります。
 現在までに、東京高等裁判所は、刑の執行停止決定の執行停止を求める申し立ては退けられたところでございますが、再審開始決定に対する異議申し立てと刑の執行停止決定に対する異議申し立ては係属している状況にございます。したがいまして、現在、裁判の段階としては、再審請求に対する判断が確定はしていないという状況にあるというふうに御理解をいただきたいと思います。

○柴山委員
 一般論としてで結構ですので。つまり、本件についてはまだ再審開始が正式に行われていないということですから、ですから、恐らく正式な公判の係属ということは観念し得ないというお答えだと思うんですけれども、私は、やはり一般論として、今後、再審決定がなされることもあり得るということを前提に、あるいは先般、稲田議員も何度か御質問されていたと思いますが、中国人の漁船船長釈放事件で、日本の今後の公判等の手続をどうするかという問題にも通じるわけですから、公判手続が、呼び出し等において、あるいはその出頭確保、こういうことについてどのように行っていけばよいかということをお聞きしたかったわけであります。

○稲田政府参考人
 失礼いたしました。
 これは全くの一般論でございますけれども、仮に起訴をした被告人が外国にいるという状況になりました場合に、その被告人に裁判に出頭してもらうためには、やはり、国外のことでございますので、我が国の主権が行使できない場所にございますので、強制的に出頭させるということは我が国の力としてはできませんので、当該所在地の国の御協力をいただくことになります。
 したがいまして、例えば、出頭のための召喚状を捜査共助というような形で送っていただく、あるいは外交ルートを通じてそういうものを送付していただくということになる場合もあろうかと思います。そういうような形で御協力をいただいていくということになると思います。

○柴山委員
 報道によれば、この一九九七年五月の初公判の直前の四月中旬に、これは心証としては被疑者、犯人だ、強制退去になれば迷宮入りだ、必死で詰めているところ、あるいは、すぐに判決が出て即送還になれば終わり、ここ一カ月が勝負などと当時の捜査幹部がコメントしていたということであります。そういうことがやはり拙速な捜査につながっていたのではないかということを懸念しております。
 何より問題なのは、二〇〇五年三月に始まった、先ほどお話があった再審の請求審で、ずっと膠着状態が続いていたわけですね。その中で、ようやく昨年の夏になって、検察側がそれまで存在を明らかにしていなかった現場の遺留物四十二点を開示したということです。そして、その後も新たな物証を約四十点も開示されたということですが、これらをなぜもっと早く開示しなかったのですか。そして、なぜこの時期に開示したのですか。

○稲田政府参考人
 ただいまの御指摘は、先ほど申し上げました、現在再審請求の手続が係属している事件におきます検察官の活動の内容にかかわるところでございまして、現時点におきまして、私の方からその辺につきましてつまびらかにすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

○柴山委員
 ちょっと待ってください。検察官の手持ち証拠の開示は、弁護士会が長年求め続けていたことであります。本件に限ったことではないんです。
 もう一度答弁してください。

○稲田政府参考人
 再審請求審における証拠の開示に関しましては、現在いろいろな御見解があることは承知はしているところではございますけれども、再審請求手続が通常の公判手続の審理とは手続の基本構造を異にしているというような状況もあることを踏まえて、検察官として対応しているものと承知しております。

○柴山委員
 再審だから正直にやるって、それはおかしくないですか。再審というのは極めて例外的な手続なんですよ。再審にならなければ検察官が自分の都合のいいストーリーをつくっていい、そんなことにはならないでしょう。
 被害者の体内に残された体液のDNA鑑定が現場に落ちていた体毛のDNAと一致し、かつ、それがマイナリ被告以外の第三者のものであった、これは決定的な証拠です。まさに大臣が先ほどおっしゃったとおり、検察が不正に厳正に対処することを放棄したということではないんでしょうか。
 実は私は、司法修習生時代の一九九九年から二〇〇〇年にかけて、この事件を担当した弁護士と刑事弁護に関する勉強会をしていました。そして、その段階から本件についてはさまざまな問題を感じていたんです。
 二〇〇四年に導入された公判前整理手続制度で、検察側が争点に関する証拠を原則として開示するルールの整備がされたとされていますけれども、今後はこのような不幸はなくなるという理解でよろしいんでしょうか。

○稲田政府参考人
 ただいま御指摘がありましたように、平成十六年に刑事訴訟法が裁判員制度の導入の際に改正されまして、証拠開示の手続が大幅に改められました。そして、検察官の手持ち証拠の開示の範囲が大幅に拡充され、検察官が取り調べを請求した証拠の証明力を判断するために重要な一定類型の証拠、これは証拠物なども含みます、それから、被告人が明らかにした主張に関連する証拠についても、開示の必要性と開示によって生じるおそれのある弊害等を勘案し、相当と認めるときは開示をしなければならないこととされたところであり、これにつきまして当事者間で争いが生じたときには裁判所がこれを裁定するということとされたものというふうに考えております。
 この改正によりまして、関係者の名誉、プライバシー、さらには争点の整理や迅速な審理に与える影響などの問題点が十分考慮され、そうした点を踏まえつつ、被告人の防御の準備のために必要かつ十分な証拠が開示されることになったものというふうに考えております。

○柴山委員
 教科書的にはそういうお答えだと思いますよ。しかし、現実はどうなんでしょうかね。
 前田、大坪、佐賀元検事のいわゆる郵便不正事件証拠偽造をめぐる問題を初め、相次いで今なお次々と明るみに出る冤罪事件を見ると……(発言する者あり)陸山会事件、そこはちょっと見解に相違があるかもしれません。本当に、体質も含めて、検察の問題、これは解決していないんじゃないんでしょうか。

○稲田政府参考人
 ただいま御指摘がありましたような各種の事件において検察に対して厳しい批判があるということは、検察自身が最もよく理解しているものというふうに思っておりますし、それを踏まえながら検察の改革を進めていっているというふうに考えているところでございます。

○柴山委員
 検察が一番よくわかっているというお話ですよね。どうなんでしょうか。
 検察改革が本気かどうか。大臣は、先日の所信挨拶で、監察体制の構築や検察基本規程の策定などを検察改革の方策として挙げておられます。検察の在り方検討会議でもいろいろと議論がなされていたところだと思います。しかし、本当に、まないたの上のコイが、自分で自分の体にメスを入れられるんでしょうか。
 閉鎖的組織を改革するには、それこそ、社外取締役ではないですけれども、第三者のチェックを入れるという観点、あるいは内部通報保護という観点、こういったことを我々会社法でも議論してきたんですけれども、やはりそういう抜本的な改革の視点を持つことが必要なんじゃないんですか。大臣、いかがですか。

○滝国務大臣
 検察改革については、今ようやく見直しというか、昨年来新しい角度から取り組もうとしているわけでございますから、その中でどうこれを実質的に改革につなげていくかというのは、日々の仕事の中で当然考えていかなければいけない問題だろうと思っております。
 そういう意味では、第三者的なというような御提案でございますけれども、もともと、今回の検察改革に当たっては、当然、外部というか、ある意味では身内の延長みたいな方々も参与してくださったと思いますけれども、そういう中で出てきたわけでございますから、引き続き、そういう第三者的な目を向けながら、さらに一層、毎日の責務の中で改革を徹底させていくということが当面必要ではないかとは思っております。

○柴山委員
 先ほどの所信挨拶と今私が申し上げたことは、はっきり言って質が違うと思うんですよ。これはやはり検察の再生がかかっていると思いますよ。ぜひ真剣に検討してほしいというように思います。
 また、先ほど大口委員の方からも御質問があったと思いますけれども、捜査の可視化にどの程度具体的に取り組むかということも注目されます。大臣は、先日の所信表明の中で、検察における試行について紹介をしていただきましたけれども、その検証とあわせたスケジュール、取り調べ全過程の可視化のいかん、またそのスケジュールについて改めて御説明をしてください。

○滝国務大臣
 基本的に、今、可視化に向けての試行をやっているわけでございますし、その中身をできるだけ早く詰めていく、こういう基本的なスケジュールのもとにやっているわけでございます。
 したがって、いつと言うわけにはまいりませんけれども、とにかく昨年から始まった試行でございますから、そういうものをどの段階で中間的にでも報告を求めるかというのはこれからの問題だろうと思っています。

○柴山委員
 スケジュールのない計画は計画じゃないんです。中間報告でもいいから、その中間報告に一体何を盛り込むか、そしてその中間報告をいつまでに出すか、これぐらいのことは、今この場で答えられなかったら、次に質問したときに必ず答えてください。

○滝国務大臣
 とりあえずは、六月下旬にある程度の取りまとめをするということでございますから、その報告を待って、今委員が御指摘のようなことがその中でどれだけ検証できるかということもあわせて検討をしていかなければいけないと思います。

○柴山委員
 もう間もなくですから、ぜひよろしくお願いします。
 次の質問に移ります。再犯防止策についてでございます。
 大阪の心斎橋で、今月十日、男女二人が刺殺される通り魔事件がありました。現行犯逮捕された礒飛京三容疑者は、ことし五月二十四日、覚せい剤取締法違反で服役していた新潟刑務所を出所したばかりで、一月もたたないうちに凶行に及んでいることになります。自殺しようと思って近くで包丁を買ったが死に切れず、人を殺せば死刑になると思ってやったと身勝手な供述をしているとのことですが、何度も逮捕歴があり、家族から事実上勘当されていたとか就職が断られていたとかいう報道がなされています。
 警察庁の方から背景を御説明いただけますでしょうか。

○舟本政府参考人
 事件の概要ということでよろしいのでございましょうか。(柴山委員「はい」と呼ぶ)
 お尋ねの事件につきましては、本年六月十日午後一時ごろ、大阪市中央区東心斎橋の路上におきまして、通行中の男性及び女性の二人の方が、半月ほど前に刑務所を出所したばかりの被疑者にゆえなく包丁で襲われ亡くなったという、理不尽きわまりない痛ましい通り魔事件でございます。
 事件発生間もなく通報を受けて駆けつけた警察官が、被疑者を殺人未遂の現行犯として逮捕いたしました。現在、大阪府警におきましては、捜査本部を設置して、全容解明に向けて鋭意捜査中であります。
 この種の事件は国民に大きな不安を与える事件でありますから、今後、事件の背景、動機も含め、全容を明らかにしてまいりたいと考えております。

○柴山委員
 まさに、その背景、動機のところが非常に重要だと思うんです。秋葉原の加藤智大容疑者の無差別殺人、あのときもやはり国民に非常に大きな不安を与えたと思います。
 今回も、今申し上げたように、この礒飛容疑者、覚せい剤取締法の逮捕歴があったというように報じられていますけれども、覚せい剤取締法違反以外の前科について教えてください。

○舟本政府参考人
 お答えいたします。
 いわば本件被疑者の前歴にかかわる事柄でございますので、プライバシーにかかわる事柄でございますので、具体的なことはお答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

○柴山委員
 わかりました。
 それでは、法務省に伺います。
 一般論で結構です。覚醒剤自己使用の再犯率はどれぐらいですか。

○三浦政府参考人
 お答えいたします。
 平成二十一年の犯罪白書で明らかにされている統計数値でございますが、お尋ねの覚醒剤の自己使用というふうに自己使用に限ったものではございませんが、覚せい剤取締法違反の罪で受刑をして平成十六年に出所した者について調査をした結果であります。
 それらの者について、出所後五年以内の再入の状況を累積で調べてみますと、満期釈放者については六二・七%、仮釈放者につきましては四三%が再入、刑務所に再び入っているという結果となっております。

○柴山委員
 驚愕の数字ですよ。仮釈放、つまり品行がよくて情状が軽いということから仮釈放なんだろうと思いますけれども、それでも四三%、満期出所に至っては何と六三%が再入ですよ。犯したということじゃないんです。また戻ってくるんです。まともに就職できず、しゃばと刑務所の往復を繰り返すというのは、この類型の犯罪者のお決まりコースと言っても過言ではありません。
 滝大臣は、十二日の記者会見でこのように述べておられます。今の制度からいうと、満期出所者について、出所後のフォローアップがなかなかできるようなシステムになっていません、出所するまでにいろいろな状況があるとは思いますが、そのあたりのところがどうなっているか、改めて矯正局としても取り組む課題ではないかという感じは持っています。
 先日の所信表明の御挨拶でも決意の一端をお述べいただきましたけれども、改めて、本件のような事案の再発防止のために具体的にどのようなことをなさるおつもりか、伺いたいと存じます。

○滝国務大臣
 今度の場合も、出所した後、紹介を得て、自分の生まれ故郷の栃木県へ参りまして、民間の協力団体のもとで、住むところ、そして食事、そういうような世話をしてもらっていたわけです。ところが、そういう拘束に耐えられないのか、出るということだったものですから、保護観察所長がもうしばらくここにおれと言って引きとめたようでございますけれども、結局、満期出所者だったものですから、保護観察所長の説得は強制力を持たなかった、その結果、大阪へと出てしまってこういう大事故につながったというのが大体この事件の推移のようでございます。
 そういうところから見ると、まだまだ、こういう満期出所者に対する法のフォローアップが少し欠けているところがあるのかなという感じもしますし、そもそも満期出所者ですから、出所する前にもう少し何とか本人とコンタクトをとれるような方法はなかったのか、それはこれからの緊急の課題だというふうに思っております。

○柴山委員
 やはり、満期出所した後のフォローアップ、刑務所出所者の住居や就労の確保、こういった社会復帰の支援対策、こういうものが大切だ、それを充実させるということを先日の所信表明でもおっしゃられていたかと思います。今おっしゃったような、やはり継続的にコンタクトをとるということも必要だと思います。
 しかし、一般論として、言うはやすく行うはかたしなんです。刑務所に入っていない人がこれだけ就職難で苦しんでいるわけですから、一体どうするのかということなんです。
 あと、今、保護観察所長の指導ということもおっしゃいましたけれども、保護観察官の拡大はなかなか進んでおりません。また、保護司の方々への支援、これらの方々は今ほとんどボランティアでやっていただいている現状です。トータルとしてどのようにしていくおつもりなんですか。

○滝国務大臣
 人材もなかなかそろわない、あるいは予算的にもなかなか思うようにいかない、こういう中でございますけれども、政府としては、昨年の七月に、再犯防止のための取り組みというテーマで閣議報告ももらっているわけでございます。
 そういうところから、とにかく今回の事件の発生に鑑みて、喫緊の課題としてもう少し具体的な一歩を踏み出す、これが私どもの責務だろうと思っております。

○柴山委員
 ぜひ、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 また、それぞれの議員の方々の御地元にも、民生委員の方々、保護司の方々がいらっしゃると思います。我々、やはり政治の力でそういった再犯防止の施策というものをきちんと進めていかなければいけない、取り組みを進めていかなければいけないと思っております。
 次は、ちょっと緊張感を欠いた案件であります。千葉地裁が、今月の二日、手続上のミスから、七人の逮捕された被疑者を不当勾留決定していたことがわかり、千葉地検が六日に一旦全員を釈放した上で、五人を再逮捕、残る二名を任意捜査に切りかえたということです。
 一体なぜこんなことが生じたのか、裁判所に説明を求めます。

○植村最高裁判所長官代理者
 まず、今回このようなことを起こしまして、関係者の方を含め、本当におわびを申し上げたいというふうに思います。
 今委員から御指摘のございました千葉地裁の本庁でございますが、六月二日の土曜日、日直の事務を行っておりまして、刑事訴訟規則によりますと、勾留質問手続というのは裁判所書記官が立ち会うこととされております。この日の七件の勾留質問手続に、書記官の資格は有していたのですが裁判所書記官としての発令を受けていない職員が立ち会いまして、勾留質問手続が行われたという事態が発生いたしました。
 裁判所がこれに気がついたのが、六月五日火曜日の夜のことでございました。気がつきまして、検察庁に御連絡をいたしまして、翌六日に、七人の被疑者が一旦釈放されて、委員のお話にありましたように、二人については任意の捜査に切りかえられて、残りの五人の被疑者については再逮捕、それから勾留請求があり、勾留質問をもう一回行って、改めて勾留状が発付されたということであります。
 千葉地裁の通常の日直体制を御説明しておきますと、書記官二人と事務官一人で行うことになっております。ただ、勾留請求事件が多い日には、書記官一人または書記官資格のある事務官一人の応援を頼むことになっておりました。書記官資格のある事務官の応援を頼んだときには、当たり前のことですが、勾留質問手続には立ち会わないで、それ以外の事務の応援をさせることになっていたわけでございますが、六月二日は、書記官資格を有していれば勾留質問の手続に立ち会えるというふうに誤解をいたしまして立ち会ったというふうに承知をしております。

○柴山委員
 対象者の罪名は何でしょうか。傷害容疑者がいるという報道がありましたけれども、任意捜査に切りかえたというのは、一体どういう罪名で、どういう背景だったんでしょうか。検察庁あるいは裁判所、どちらでも結構です。

○植村最高裁判所長官代理者
 申しわけないのでございますが、これは捜査段階のことでございますので、捜査情報ということで、ここでお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

○柴山委員
 任意捜査に切りかえたということは、やはりそれなりの社会に対する不安というものにも配慮した手続でなければいけないわけですから、本来であれば、やはりこれは、私が震災直後の釈放について質問をしたときにも同じような御答弁だったわけですけれども、おかしいと思うんですよね。
 千葉地裁は、今回の案件を十二日まで公表していなかったんですよ。今お話があったように、日直が行われたのは二日、全員釈放したのは六日、二人がそのまま任意捜査ということなんですよね。なぜ公表をしなかったんですか。

○植村最高裁判所長官代理者
 確かに、この件が私どもの方で把握できたのは先ほど御説明したとおりでございましたが、捜査過程の問題で過誤が起きた場合には発表しないということもございまして、この件につきましては、従来のその取り扱いをさせていただいたというふうに聞いております。

○柴山委員
 ということは、何ですか、従来の慣例によって発表しなかったということは、こういうことが頻繁に起きているということですか。

○植村最高裁判所長官代理者
 頻繁に起きているとは思っておりませんけれども、捜査過程の問題でこういうことが起きた場合に、常に、直ちに公表をしておるような扱いにはしておりません。

○柴山委員
 二人を任意捜査に切りかえたわけですからね。これは、もともと在宅の事件が在宅だという話じゃないわけですよ。一旦勾留決定して、二日に逮捕して、六日に一旦全員を釈放したということですから、満期前に任意捜査に切りかえているということですよね。これはやはり説明が必要なんじゃないんですか。
 それは、もちろん勾留の継続の必要性がなかったからということでしょうし、恐らく罪名もそんなに重罪ではなかったということは想像できますけれども、しかし、やはりそれにしても、こういうことが一旦表に出た以上は、それは千葉の方々は何だと思うんじゃないんでしょうか。いかがですか。

○植村最高裁判所長官代理者
 七人の被疑者の方のうち、お二人の被疑者を任意捜査に切りかえたのは検察庁の御判断でございますので、私どもはそこについてお答えするのはちょっと差し控えたいと思います。

○柴山委員
 それでは、法務省から説明を求めます。

○稲田政府参考人
 申しわけございません、突然のことなので手元に詳細な資料を持ち合わせておりませんけれども、もともと勾留手続が違法になっていたという状態の中でもう一度身柄の拘束をするということは、やはりそれなりに慎重に判断をしなければならないものであるというふうに考えているところだと思います。

○柴山委員
 確かに、対最高裁判所というふうに質問通告ではしていましたけれども、一応法務省にも流しているわけですから、こういう質問はある程度想定してぜひ準備をしておいてほしかったと思います。
 報道によりますと、別の地裁関係者が、あり得ないミス、勾留への緊張感が乏しいと言われても仕方がないというふうにコメントをされているようですけれども、関係者の処分は一体どうなるんでしょうか。

○植村最高裁判所長官代理者
 今、事実関係を正確に把握して、委員の御指摘のような点は今後の問題であるというふうに思っております。

○柴山委員
 しっかりと事案を把握した上で、やはり綱紀粛正と再発防止策にも取り組んでほしいと思います。
 次の質問に移らせていただきます。
 次は、がらっとお話はかわって、震災対応に関連してお伺いしたいと思います。
 私は、自民党青年局の同僚たちと、今月十一日、福島県、第一原子力発電所の警戒区域内に視察に伺うとともに、現地の声に耳を傾けてまいりました。率直に申し上げて、何にも、ほとんど進んでおりません。瓦れきの処理や生活再建に加え、広大な土地が津波でほとんど更地になってしまったのに、権利関係の確定をどうするか、その前提となる地籍調査や地図整備をどうするか、こういった問題は全く手つかずの状況であります。
 そこで法務省に伺いますが、被災地でのこういった地籍調査や地図整備は今後どうなるんでしょうか。

○原政府参考人
 お答えいたします。
 法務省におきましては、地図整備事業を全国的にやっておりますが、特に被災地におきましては、地震の影響で、地殻変動によって土地が大幅に移動したり、あるいは不規則に移動した地域等がございますので、こうした土地につきましては、土地の境界を復元し、登記所備えつけ地図の修正作業等をするべく努力しているところでございます。

○柴山委員
 一般論として、努力をしていますじゃ答えにならないんですよ。
 今申し上げたように、被災者の方々は、こういった境界の確定等の公的処理が、その後に続く町の再生復興の、いわばインフラのベースとなるわけなんですよね。ですから、これをしっかりと計画的にやっていただかないと、本当に円滑な復興ということが図られないのではないかというように思います。
 また、今私が申し上げた視察をした警戒区域内は、放射線の濃度というか、線量が高い地域でもあります。こういったところをどうするかということもやはり長期的な課題だと思いますけれども、そういったところも、道路の復旧ですとか、あるいは防潮堤の建設、そういったことを含めて、やはり土地に関するさまざまな処理ということが必要になってくるというふうに思いますので、そういったことも含めて、やはりスケジュール感というのをもう少し出してほしいと思うんですよ。いかがですか。

○原政府参考人
 被災地域の復興のためには、今委員がおっしゃいましたように、まずは、倒壊等した建物がございますので、そういう建物の職権滅失登記をした上で、土地の境界の復元や地図の修正作業をする必要がございます。
 その意味で、平成二十三年度の第一次、第三次補正予算、それから二十四年度予算におきましても、職権滅失登記に要する経費や地図の修正に要する経費をいただいておりますので、現在、これらを使って鋭意作業を続けているところでございます。
 ただ、被災地域が非常に膨大でございますので、土地の境界の復元やあるいは地図の修正作業、これはできるだけ早くやりたいと思っておりますけれども、二、三年かかるんじゃないか、しかしながら、復興局を通じまして、地元の要請を受けて、緊急性の高いところからこういった作業に着手している、こういう状況でございます。

○柴山委員
 復興局の人たちに原局長が今おっしゃったような専門的なノウハウがあるわけじゃありませんから、これはオール・ジャパンで専門家を集めてやっていかなければ前に進まないんですよ。そして、それをアレンジするのが復興庁なら復興庁なのかもしれませんけれども、そこがまだ全然機能していないというんですよ、被災地の方々は。少なくとも、被災地の方々にそれが届いていないということは、ぜひしっかりと受けとめていただきたいと思います。
 一方、先ほど橘議員も質問されていましたけれども、震災への不安を背景に、都市部、例えば首都圏においても、登記所備えつけ地図の整備等に関するニーズが高まっています。現状及び優先順位について、どう考えておられますか。

○原政府参考人
 地図整備につきましては、特に都市部において整備の緊急性が高いということから、法務省におきましては、平成十五年の都市再生本部の方針を受けまして、都市部の地図混乱地域を対象にして地図整備を進めるべく、計画を立てて、その計画に基づいて地図整備を実施しているわけでございます。
 平成十六年度以降、二十三年度まで、トータルしますと、先ほど御答弁いたしましたけれども、八十八平方キロメートルの地図整備をやっているということでございます。これは、国土の面積からすれば少ない面積ではございますが、地図整備につきましては、国土交通省におきましても地籍調査事業をやっておりますので、国土交通省と法務省でいわば役割分担をいたしまして、地籍調査事業がなかなか進まない都市部の地図混乱地域について、法務省において地図整備を進めるということで、計画を立てて、緊急性のあるところから地図作成をしている、こういう状況でございます。

○柴山委員
 予算などを考えると、確かになかなか一斉にというわけにもいかないと思いますし、何といっても、先ほど申し上げたような被災地の状況もありますから、ある程度、緊急性、必要性を厳しく見ないといけないということは理解をいたしますけれども、ただ、地図混乱地域だけじゃないですから、必要なところというのは。
 地図整備は、再三繰り返すように、権利関係のインフラでありますから、混乱をしているところだけじゃなくて、それは都市部は、やはり取引がある以上、必要なんですよ。ですから、経済対策の一環としても、重点政策と位置づけて、しっかりと取り組んでいただきたいと重ねて要望したいと思うんですが、法務大臣、いかがでしょうか。

○滝国務大臣
 地図混乱地域の問題は、都市部においては特に、何も手がつかない、権利関係の調整ができないという最大の足を引っ張る材料でございますから、当然、優先順位をつけながらも頑張っていかないといけないと思っております。

○柴山委員
 地図混乱地域、あるいはそこに該当しなくても必要なところにはしっかりと、これは経済対策のベースになると私は思っているんです。私は改革を進めていくという志向が強いんですけれども、ただ、やはり経済発展のベースになる部分についてはしっかりとした予算をつけていかないと、経済成長もできないし、改革もすることができないというように思いますので、ぜひとも滝大臣には、今おっしゃったような決意でこの問題について取り組んでいただきたいと重ねてお願いをしたいと思います。
 最後に、残った時間で、人権委員会設置法案について若干お伺いしたいと思います。内容については、この後、城内議員から詳細に御質問があると思いますが、私からは、外形的な事実関係についてだけお尋ねしたいと思います。
 私が部会長を務める自民党法務部会では、ことしの二月十四日、当時法務省がまとめた法案骨子について審査した結果、問題が多く、受け入れられないという決定をさせていただきました。しかし、あろうことか、この後、まさしくこの骨子案に従った条文作成が行われ、既に各省間調整も終わって、あとは民主党の党内手続を行うのみというように伺っています。
 これはとりもなおさず、自民党を無視して法案提出を行おうということでしょうか。また、所信挨拶でもあったんですけれども、今国会においての提出を目指すということに変わりはないんでしょうか。以上二点、政務三役全てにお伺いしたいと思います。

○滝国務大臣
 政府としては、とにかく政府の案を固めなきゃいけませんから、そういう意味で各省折衝も行ってきたことは事実でございます。
 ただ、今それを閣議決定まで持っていくような段階ではございません。なるべく早く閣議決定も経たいとは思っておりますけれども、まだまだ意見を聞かなければいけない分野もあろうかと思います。そういう中で、この問題は、今御指摘のところはどうするかということも含めて、なお慎重に検討してまいりたいと思います。

○谷副大臣
 今大臣がお答えしたとおりでございますが、そういういろいろな調整をさせていただきながら、この国会で提出できる条件が整えば、法案の提出まで進めていければというふうな考え方は持っております。

○松野大臣政務官
 今二人、大臣、副大臣からお話があったとおりでありますが、要するに、提出に向けた環境整備に努めているということであるかと思います。ですから、自民党を無視している、そういうようなつもりで進めているわけではないことは御承知いただきたいと思います。

○柴山委員
 松野先生は、政務官御就任直前まで民主党の法務部門の責任者として、自民党の私のカウンターパートとして、法テラス法案ですとかあるいは裁判所法の改正案ですとか、本当にさまざまな場面で大変御苦労をおかけしたということで、今環境整備について具体的にお触れになりましたけれども、その思いはわかりますが、ただ、全く実態が伴っていないと思っております。
 現に、法務部会、先ほど申し上げた二月十四日、そしてその後、先日も法案についての報告を求めたんですけれども、私のところに人権担当の方がいらっしゃったことは、その二月あるいは六月といった段階では少なくともありませんでしたし、ましてや、私は条文の作成ということは全く聞いていなかったと思います。さらに、先日、自民党の法務部会の中で、一体どのような背景がこの非常に拙速な動きにつながっているのかというふうにお伺いしても、その背景についても十分な御答弁をいただきませんでした。
 なぜ副大臣がさまざまな調整をしながらということをおっしゃっているのか、私には全く理解ができません。政務官がおっしゃった環境整備、あるいは副大臣がおっしゃったいろいろな調整というのが、一体何を指しているのか。民主党の党内手続もまだ進んでいない、閣議決定もまだ済んでいない。具体的に、一体何を調整しているのか、お二人にお伺いしたいと思います。

○谷副大臣
 この法案に対しましては、いろいろな御意見が出ております。新たな人権救済機関の創設が必要なほどの人権侵害がないのではないか、救済の対象となる人権侵害の範囲が曖昧ではないかとか、人権侵害の加害者とされた者の保護が不十分ではないか、あるいはまた人権委員会の権限が強過ぎるのではないか、こういういろいろな御意見なども寄せられていることも事実でございます。
 こういうふうないろいろな意見等を、いろいろなものを聞きながら、そういうものに対して丁寧に議論をして御理解をいただいていくような、そういうふうな努力もしなければいけない。そういうことも含めて先ほど答弁を申し上げました。

○柴山委員
 そういったさまざまな問題点、今御指摘された問題点だと思います。
 この後、繰り返すように、城内議員からもっとしっかりと質問があるかと思いますが、私が解せないのは、繰り返しますけれども、そういったさまざまな問題点について議論をしたいというふうにおっしゃいますが、その議論は一体どこでするんですか。閣議決定をして、ここで出しますよ、ここで議論すればもういいじゃないですか、そういうスタンスなのか。あるいは、法案の提出の前にさまざまな形で、骨子案等についても、修正するものはきちんと超党派で議論をしながら提出前に修正をしていく、そういうことなのか。どっちなんですか。政務官からもぜひ御答弁ください。

○松野大臣政務官
 この法案は、もう御案内かと思いますが、以前、自公政権当時は人権擁護法案というような形で検討されてきた、実際に法案も提出された、こういうようないきさつもあります。いろいろないきさつがあるわけですから、その辺はいろいろ御議論があることを私たちも承知しておりますので、これは非常に慎重にいろいろ議論を詰めていかなければいけない。
 そういう意味では、民主党の党内だけではなくて、野党の皆さんとも、いろいろと意見交換をさせていただきながら、詰められるところは詰めた上で閣議を経て提出、そういうようなことを今考えているということでございます。

○柴山委員
 最後に大臣にお伺いしますけれども、今国会においての提出を目指すということに変わりはないんですか。

○滝国務大臣
 基本的には目指すということで考えているわけでございますけれども、その目指し方の問題をめぐっていろいろな意見がおありでありますから、そういうことも考慮しながら、最終的な判断にはまだ至っていない、こういうことでございます。

○柴山委員
 目指し方という非常に新しい言葉が出てきてちょっと驚いておりますけれども。
 ちょっと時間は残っているんですが、これ以外にも、裁判員制度ですとか、あるいは脱法ハーブ使用の危険運転致傷事件など、いろいろお伺いしたいことがありましたが、きょうはここで質問を終わらせていただきます。
 大臣、何かありますか、補足。

○滝国務大臣
 先ほどの大阪の事件に関連いたしまして、私の発言がちょっと正確を欠きましたので、正確に申し上げておきたいと思います。
 栃木へ行きまして、民間団体が、住むところ、食事を用意した。それに対して、もちろんそこの所長も引きとめた、それに加えて保護観察所長も引きとめたと言いましたけれども、直接的には本人に会ったのはその民間団体の所長だけでございますので、そこのところは不正確でございましたので、訂正をさせていただきたいと思います。

○柴山委員
 終わります。

第180回 国会 衆議院 環境委員会

第180回 衆議院 環境委員会 第6号
平成24年6月15日(金)
午前九時開議

【原子力規制委員会設置法(自公案)の提案者としての答弁 】

【本日の会議に付した案件】
・原子力規制委員会設置法案(塩崎恭久君外三名提出、衆法第一〇号)の撤回許可に関する件
・地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件(内閣提出、承認第五号)
・原子力規制委員会設置法案起草の件
・原子力規制委員会設置等に関する件

○生方委員長
 これより会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 塩崎恭久君外三名提出、原子力規制委員会設置法案につきまして、提出者全員から撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○生方委員長
 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

○生方委員長
 原子力規制委員会設置法案起草の件について議事を進めます。
 本件につきましては、近藤昭一君外五名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の共同提案により、お手元に配付いたしておりますとおり、原子力規制委員会設置法案の起草案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。近藤昭一君。

○近藤(昭)委員
 原子力規制委員会設置法案の起草案につきまして、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党を代表して、その趣旨及び内容について御説明申し上げます。
 平成二十三年三月十一日に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故は、今なお多くの方が困難な避難生活を余儀なくされているなど、国民の生活に深刻な影響をもたらしました。
 この事故では、原子力を推進する経済産業省に原子力安全・保安院が属するなど、規制機関の独立性が欠如していたことや原子力規制機関に専門的知識を有した人材も能力も欠落していたことなど、我が国の原子力に関する行政についての問題点が次々と明らかとなり、国内外の信頼は大きく損なわれました。
 今回の事故の深い反省に立ち、このような事故を二度と起こさないためにも、また、損なわれた信頼を回復するためにも、原子力の安全に関する行政の体系の再構築は喫緊の課題であります。
 このような認識のもと、私ども三会派は、精力的に協議を行った結果、本起草案をまとめた次第であります。

 以下、その主な内容を御説明いたします。

 第一に、この法律の目的として、原子力の安全規制は、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資するものであることを明確にしております。
 第二に、新たな原子力安全規制組織には、環境省に、国際基準にのっとった、独立性が高い三条委員会の原子力規制委員会を設置することとし、そのもとに原子力規制庁と称する事務局を置くこととしております。
 原子力規制委員会には、原子力安全・保安院及び原子力安全委員会の事務のほか、放射線モニタリングや核テロの事務なども一元化することとしております。
 第三に、原子力規制委員会は、委員長及び委員の職務の中立公正に関し国民の疑惑または不信を招くような行為を防止するため、委員長または委員の研究に係る原子力事業者等からの寄附に関する情報の公開、委員長または委員の地位にある間における原子力事業者等からの寄附の制限その他の委員長及び委員が遵守すべき内部規範を定め、これを公表しなければならないこととしております。
 第四に、原子力規制委員会は、国民の知る権利の保障に資するため、その保有する情報の公開を徹底することにより、その運営の透明性を確保しなければならないこととしております。
 第五に、原子力規制庁については、原子力利用における安全の確保のための規制の独立性を確保する観点から、全ての職員に原子力推進官庁へのノーリターンルールを適用することとしております。
 第六に、一体的な原子力安全規制行政の確保の観点から、原子力安全規制の専門技術的事務を担う独立行政法人原子力安全基盤機構が行う業務を原子力規制委員会に行わせるため、可能な限り速やかに同機構を廃止、統合するものとし、このために必要となる法制上の措置を速やかに講じるものとしております。
 第七に、平時における原子力防災対策のうち、関係機関の調整等を行う組織として、内閣総理大臣を議長とし、環境大臣や原子力規制委員会委員長などを副議長とする原子力防災会議を設置することとしております。
 第八に、原子力安全のための規制や制度の見直しとして、シビアアクシデント対策の強化、既存の発電用原子炉施設等に最新の知見を適用するバックフィット制度の導入や発電用原子炉の運転期間の制限など、原子炉等規制法の改正を行うものとしております。
 なお、改正後の原子炉等規制法の規定については、その施行の状況を勘案して速やかに検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置を講じることとしております。
 第九に、原子力災害対策特別措置法の改正として、原子力災害予防対策の充実、原子力緊急事態における原子力災害対策本部の強化、原子力緊急事態解除後の事後対策の強化及び原子力災害対策指針の法定化などの措置を行うこととしております。
 また、原子力災害対策本部長である内閣総理大臣の緊急事態応急対策の実施に係る指示の対象事項から、原子力規制委員会がその所掌に属する事務に関して専ら技術的及び専門的な知見に基づいて原子力施設の安全の確保のために行うべき判断の内容に係る事項を除くこととしております。
 なお、この法律は、一部の規定を除き、公布の日から三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
 以上が、本起草案の趣旨及びその内容であります。
 何とぞ速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

○生方委員長
 以上で趣旨の説明は終わりました。

 原子力規制委員会設置法案
〔本号末尾に掲載〕

○生方委員長
 本件について発言を求められておりますので、順次これを許します。川越孝洋君。

○川越委員
 おはようございます。民主党、川越孝洋であります。
 私は、平成二十三年、原発事故があって三カ月後でありますが、五月三十一日の環境委員会で質問に立ちまして、時の松本龍環境大臣に対して、原子力行政を推進する官庁、その同じ官庁のもとに、監視する原子力安全・保安院がある。推進する官庁と、それを抑制をする、監視をする官庁が同じところにあるというのは、これはおかしいのではないか、それぞれ独立性を持たせて切り離すべきではないかという質問をいたしました。松本大臣は、「経済産業省と原子力安全・保安院をしっかり切り分ける。原子力安全委員会も、全くニュートラルコーナーに行って、本当に学術的な助言をするシステムをつくり上げていかなければならない。」というふうに答えられました。
 それから月日のたつのは早いもので、一年以上の歳月が流れました。この間、いろいろな意見がありましたけれども、そういった時間の経過の中で、ようやくここに原子力規制委員会設置起草の動議が提出されたということは、それぞれが十分な知見を持って、時間はかかりましたけれども、それだけ重みのある法案が起草されようとしていることだと思っております。
 そこで、この法案について二、三の質問をさせていただきます。
 その第一は、原子力規制委員会は、独立した機関として原子力規制委員会を設け、その規制委員会は国家行政組織法第三条二項の規定に基づいて環境省の外局として設置することになり、委員長の権限も非常に大きくなりました。五人の委員が選ばれて、その中から一人が委員長として選任されるということになるようであります。
 原子力規制委員会の国会同意についてでありますけれども、高い識見を有する委員であって、いろいろ条件も付してありますけれども、そういった方々の、この人が本当に適しているかどうか、そういった審議というものはどのような形でなされるのか、そのことについてお伺いをしたいと思います。

〔委員長退席、矢崎委員長代理着席〕

○横山委員
 国会の同意人事ですから、人事院人事官とか会計検査院検査官と同様に、議院運営委員会というところでその所信の聴取を行います。今回、原子力規制委員会も同様の方法になります。

○川越委員
今まで既存の委員会と同様の方法によるということでありますけれども、事は人命にかかわることであり、また、この被害がどこまで及ぶかわからない、大変な事象に対する委員会でありますから、また、独立性を非常に強めておる委員会でありますから、ただ、今までの方法と同じ方法だけで十分にそれが担保できるものでしょうか。その点についてもう一度お願いいたします。

〔矢崎委員長代理退席、委員長着席〕

○横山委員
 その決定は議院運営委員会の判断ということになります。

○川越委員
 これ以上は言いませんが、しかし、日本国民全員が注視する委員会であります。それ相応の工夫をし、国民の納得のいく選び方をしていただきたい、そのように申し上げておきたいと思います。
 続いて、非常時の決断についてであります。
 この原子力規制委員会の設置するための要綱によりますと、高潔で専門知識及び経験、高い識見を持つ委員長、委員、これは申し分のないお方がなられると思いますけれども、非常時のときの決断であります。
 大体、決断というのは、ある意味では、確かにそういった学問的な裏づけも必要ですけれども、人間の第六感といいますか、これは危ないといった非常時の決断というのが要るわけでありますけれども、どうしても学者先生たちになると、こういう場合はこうやって、どうしてああしてで論議がぐるぐる回り出してなかなか決断というのがさっと出てこないというのが、いろいろな会議を見ておると言えるわけであります。
 原子力災害対策本部長たる総理大臣は、技術的な内容については口出しできないようになっております。しかし、いざ決断というときになったときに、できないならできないで、いつまでも結果が出てこないときには、規制委員会が行うオンサイトの対策について、早くこの結論を急いでほしいとかいうようなサポートをするような発言、もしくは結論を促す発言、そういった主導というものは、主導というのが悪ければ、サポートをするといいますか、そういうことはできないものなのか、対応を促す発言等についてあり得るのかどうなのか、この点についてお伺いをしたいと思います。

○近藤(昭)委員
 御質問の趣旨、大変に重要なことだと思います。
 国民の皆さんの財産そして生命を守る、そうした観点から、政府、その政府の長である総理、今回私どもが議論させていただいた点は、いわゆる規制委員会、ここが専門的な知識をしっかりと有して、そしてまた高い識見のもとに判断をする、その内容については、やはりそこで決められたことが第一だと。しかしながら、そこに対して、今、川越議員も指摘なさったように、それがなかなか判断が進んでいないような場合、あるいはその判断のもとに指示をされたけれども、指示を受けた事業者、関連の組織がなかなか動いていない、こういう場合に限って、そういう中ではしっかりとやはり総理、その責任ある者が指示をする、このことは法律的に認めるということでございます。

○川越委員
 わかりました。
 決断をおろすということは、その人の財産、命、全てのことを守ることでありますから、やはり、それに対するバック、やはり、補償の問題なりその後の生活の問題なり、いろいろなことが絡むわけであります。したがって、そういった決断をするのは、やはり政治家たる、国民から選ばれ、そして議会で選ばれた総理大臣がするのがふさわしい。どうしても自分としてそこのところがわからなかったので尋ねました。
 そういうことであれば、ぜひともそこのところをしっかりと詰めておいていただきたい。でないと、どうしても学のある人の会議というのは延々と続く可能性がある、今ここに危険があるというときにそのことだけはぜひ避けていただきたいと思うからであります。決して、これから選ばれるであろう人たちがみんなそうだと言っておるわけではありません。そういうことが往々にしてあるので、そういうことにならないように、いざというときに、やはり総理大臣の指揮権、指示権、こういったものはしっかりと確立しておいてほしいと思うわけであります。
 次に、委員長及び委員の服務でありますけれども、十一項のところに書いてあります。「委員長及び委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」とすること、「その職務を退いた後も、同様とする」とありますが、十七項「情報の公開」には、原子力規制委員会は、国民の知る権利に資するために、その保有する情報の公開を徹底することにより、その運営の透明性を確保するよう努めなければならないとあります。
 一方は秘密を守れ、一方は知る権利に応えよ、これでは組織に都合のいいことだけ出すようなことになりはしないのか、また、この二つの矛盾について同じ法律の中にあるということはどういうことなのか、そのことについてお尋ねをいたします。

○大谷(信)委員
 お答えさせていただきます。
 原子力事故やまたトラブルというもの、その規模の大きさにかかわらず必ず国民に対して情報公開するということは、国民の信頼を得るためには非常に重要なことであるというふうに考えています。
 でも、国家公務員には守秘義務というものがございます。しかしながら、この委員長及び委員には、特別職の国家公務員でございますので守秘義務が課せられていません。それをこの法律で課すことによって、例えば、核のセキュリティーにかかわるようなテロを起こすような人たちに有益な情報なんというものは守らなきゃいけない、しかしながら、トラブル等を初めとして、情報公開すべきもの、国民の信頼をかち取るものはしっかりとしていくということであって、別の情報、別の課題だというふうに考えていますので、しっかりと守秘義務は守秘義務で守り、国民に知らしめるべき情報は知らしめるということでやっていきたいというふうに思っております。
 そういう意味でございます。

○川越委員
 ぜひ、情報についてはしっかりと開示をし、みんなが事に当たって、安心できる、そういった施策をとっていくようにお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

○生方委員長
 次に、塩崎恭久君。

○塩崎委員
 自民党の塩崎恭久でございます。
 修正合意をされた原子力規制委員会設置法案が出てまいりまして、自公案原案をほぼそのまま受け入れていただき、なおかつ、今そちらに並んでおられます実務者の皆様方の並々ならぬ御努力の結果、さらなる改善が加わって、よりよいものにしていただいたというふうに思っております。
 こうして新しい独立した規制機関ができるということで、一年以上にわたって議論を重ねてきた者の一人として、そしてまた自公案の提案者の一人として、大変ありがたく、また、改めて実務者の皆様方には感謝を申し上げたいというふうに思います。
 その上で、修正案が我々の立法意図、当初の立法意思や目的としておった目指すべき目的にしっかりと合っているかどうか、自民党の提出者吉野議員に確認をさせていただきたい、このように思っております。
 まず、総理の指示権についてでありますが、自公案では、原子力規制委員会の所掌事務に関して総理が法律上の指示権は持たないという整理をしておりました。いわゆる菅直人リスクの排除であります。修正案においても、総理の指示権については原子力規制委員会の所掌に関する専門技術的な判断については何ら影響を与えるものではなく、例えば、六月五日の環境委員会の質疑で柴山議員はこのように言っております。
 第一に、本来行うべき職務を委員会が懈怠、ぐずぐずしているときに、本部長がしっかり仕事をしてくださいと督励するケース、それから第二番目に、委員会が既に事業者に措置を指示していたにもかかわらず、事業者がなかなかやらないときに本部長が重ねて要請する、いわゆる追認のケースに限られて、原子力規制委員会の下す判断の結果からみじんもはみ出さない範囲にとどまるということだと思いますが、総理の指示によって何ら新しいことが加わらない、すなわち、総理が規制委員会の専門技術的な判断に反する指示や、委員会が判断していないことを勝手に指示することはあり得ないということが、この条文、原災法二十条三項によって規定されていることを改めて確認したいと思います。

○吉野委員
 私も国会議員になって十年たちます。最初から、保安院の分離独立、これを言い続けてきました。今回、塩崎先生の御努力、本当に感謝申し上げます。こうやって保安院の分離独立がきょうできるということ、私も感慨無量であります。
 お答え申し上げます。
 塩崎先生のおっしゃるとおりです。特に督励の部分、これもあり得ないんです。素人が専門家に対して早くしろなんて言うことはあり得ない。でも、これも認めたところでありまして、極めて限定的であります。
 以上であります。

○塩崎委員
 ありがとうございました。
 自公案から何ら後退しているわけではないということ、そういう理解だと思います。
 次に、原子力防災会議がつくられることになりました。修正案では、原子力防災会議が創設されて、その事務局長をなぜか環境大臣が担うということになっておりますが、その理由は、三条委員会たる原子力規制委員会が、たまたま今回、環境省に軒をお借りをするという格好になっているからだというふうに私は考えておりますが、それでよろしいか。
 そうすると、附則第五条の、三年以内に見直しというのがありますが、内閣府の三条委員会となる可能性が高いわけでありまして、その場合は、当然のことながら、環境大臣は副議長及び事務局長から外れて、事務局長には原子力規制委員会ないしは日本版FEMA担当大臣などが充てられることになると理解しておりますけれども、それでよろしいでしょうか。
 それから、原子力防災会議の事務局スタッフについては、昨日の交渉の担当をしておった林政調会長代理は、内閣府の職員が担うというふうに言っておりました。それでよろしいか、環境省からどっと異動が行われることはないか、そのことを確認したいと思います。

○吉野委員
 おっしゃるとおりでありまして、原子力防災会議の副議長及び事務局長を環境大臣が務めることについては、御指摘のとおり、三条委員会に規制委員会がぶら下がっておりますので、環境省の軒を借りている、私たちは内閣府の防災大臣にしてくれということを主張しましたけれども、こういう形になりました。
 当然、原子力規制委員会の設置を環境省から内閣府等へ移管する三年後の見直しの際には、副議長、事務局長から外れると思っております。
 また、附則第六条七項において、日本版FEMAのようなものを政府に検討させることとしております。将来的には、原子力災害と一般災害対策は一元化され、内閣が責任を持って担うこととなろうと考えております。事務局長は、原子力規制委員会ないしは日本版FEMA担当大臣となるのではないかと思っております。
 さらに、事務局スタッフについては、内閣府に設置されていることから、当然、内閣府の職員が担うこととなり、特定の省庁からの動員、異動によって本来のあり方から逸脱することは法律の想定していないことであり、そうしたことになるべきではないと考えております。

○塩崎委員
 ありがとうございました。
 この法案の附則第十二条におきまして、原子力防災会議のつかさどる事務は、原子力規制委員会の策定する原子力災害対策指針に基づく施策の実施の推進を担うことになっております。もともと自公案では、平時のオフサイト対策は原子力規制委員会が担うこととなっておりましたが、自公案の規制機関の独立性と専門性という本来の趣旨はこの修正案においても損なわれてはならず、あくまでも、防災会議の所掌事務は規制委員会が策定する指針の範囲内というふうに考えております。
 その観点から、二点確認したいと思います。
 第一点目は、「その他原子力事故が発生した場合に備えた政府の総合的な取組を確保するための施策の実施の推進」、これは第二十六の二項だと思いますが、これはきのうの要綱だったのでちょっと違うかもわかりませんが、及び「原子力事故が発生した場合において多数の関係者による長期にわたる総合的な取組が必要となる施策の実施の推進」というのは、いずれも、原子力規制委員会が定める指針や方針等に従って、そこから何ら裁量的に逸脱したり拡大したりしない範囲において原子力防災会議によって実施されるというふうに理解してよろしいでしょうかというのが一点目。
 二点目は、原災法改正において定められます、きのうの要綱案では三十二の三項で書いてありましたが、「原子力災害予防対策の充実」や「原子力災害対策本部の強化」、さらには緊急時の総理の指示権においても、いずれも原子力規制委員会が定める指針や方針等に従って、そこからも何ら裁量的に逸脱したり拡大したりしない範囲に限定されることを確認をいたしたいと思います。

○吉野委員
 原子力防災会議、これは、事故が起こって初めて原災本部が立ち上がるわけですから、ふだんの訓練、これが大事なんです、平時のオフサイトの訓練。そのために、防災会議が事故時の場合は原災本部に即変わり得る、そういう位置づけで原子力規制委員会と原子力防災会議の関係はこういう関係になろうかと思っております。
 御指摘のとおり、原子力規制委員会が定める指針等の範囲内において、何ら裁量的に逸脱したり拡大したりしない範囲に限定されるべきであると考えております。

○塩崎委員
 ありがとうございました。
 JNESでありますが、独立行政法人原子力安全基盤機構、これは、今まで三つに分かれていて、安全委員会、保安院、そしてJNESということで、結局、ばらばらになっていたがゆえに有効に対応できなかったという反省があって、我々はこれを統合するということにしました。それも、やはりその精神からいけば、この委員会発足時に同時統合ということでなければいけないと私は思っておりますが、残念ながら、それは「可能な限り速やかに」というところで終わってしまっております。
 私は、今の精神を考えてみれば、さまざまな難問を克服して、遅くとも年内、あるいは、どんなに遅くても、最悪年度内にはスタートすべきだと思います。
 それから、統合されたJNESは、原子力規制庁内においても規制部門と双璧をなす重要な部局として位置づけられることとすべきであると思いますけれども、御見解を聞きたいと思います。

○吉野委員
 JNESの統合は本当に大事なんです。ですから、附則六条四項において、私たちも同時立ち上げを目指しておりましたけれども、なかなかここは事務的に難しいということで、普通ならば速やかにだけなんですけれども、「可能な限り速やかに」という、最大限の言葉で法律をつくらせていただきました。
 また、職員の待遇についても、「相当の職員」ということで附則六条の四項にも盛り込んだところであります。

○塩崎委員
 年内、年度内についてお答えがありませんが。

○吉野委員
 時間を区切るということは大変難しいものですから、同時に発足をする、そういう心を持って、「可能な限り速やかに」ということで対応していきたいと思っています。

○塩崎委員
 ありがとうございました。ぜひその方向でお願いしたいと思います。
 ノーリターンルールでありますが、五年間例外を認めながらも、原子力規制委員会創設当初から導入するこのノーリターンルールの趣旨は、安全確保のための規制の独立性の確保、そしてもう一つ、独自の計画的高度専門人材の育成というのがあると思います。
 附則第六条二項において原子力利用の推進に係る事務を所掌する行政組織への配置転換を禁止しておりますけれども、経産省、文科省など明らかな推進官庁との間のノーリターンは当然だと思います。
 加えて、私は五月二十九日の本会議の趣旨説明において、規制委員会の関与が不可欠な安全基準のもとで除染や放射性瓦れきの処理を担う環境省など、原子力安全に関する利益相反が起こり得る省庁との人事交流も戒めると明言したところであります。
 あらゆる利益相反を排して安全確保のための規制の独立性を確保しながら、IAEA安全基準にあります人事の独立性を確保するためには、原子力規制庁のポストが環境省の指定席となったり、ローテーションで次々に人が送り込まれてきて事実上の環境省の植民地となってしまっては、規制機関の独立性が失われてしまいます。その他の行政機関からの独立というのも、明確にIAEA基準には書いてあります。この点から、環境省との間で人事ローテーションはあってはならないと思います。
 今あるこの規定につきまして、自公案の当初の書きぶりと何ら変わっておりませんので、我々立法者の意図として私が申し述べた、当然環境省を含むと考えてよろしいでしょうか。

○吉野委員
 このノーリターンルールが、独立性を担保するためには本当に非常に重要であると考えております。ですから、原子力利用の推進に係る事務、ここへの配置転換、これを禁じているところです。
 また、六条三項において、例えば、メーカー、原子力事業者、民間からの方々もおります、そこへの再就職、これも規制をしているところです。国民の疑惑または不信を招く、こういう人事というものは、IAEA基準の利益相反という観点からしても、これは排除すべきであるというふうに思っております。
 私たち、このノーリターンルールは、原子力利用の推進に係る事務、当然、先生がおっしゃったような経産、文科、そして原子力委員会をつかさどっている内閣府、これも入ろうかと思っております。
 以上です。

○塩崎委員
 今、明快にお答えをいただいて、環境省も対象になるというふうに私は理解をいたしましたし、IAEAの安全基準からいって、これは法律じゃないんですね。IAEAの安全基準を守るかどうかというのは、その国の言ってみれば節度とか、そういうものにかかってくる部分もたくさんあって、この法律の有無にかかわらず、私は、そもそも利益相反がある、それから、他の行政からの影響を受けてはならないというふうに書いてあるIAEA安全基準を守るならば、環境省との間のノーリターンルールも当然のことだというふうに思っております。
 それから次に、特別会計の問題です。
 とりあえず原子力安全規制対策という勘定をつくっていただけるということでありますが、やはり電促税というのは推進側の財源ですから、私は、独自財源をアメリカやイギリスのように持ち、なおかつ特別会計を別途つくって、原子力規制特別会計などをつくるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○吉野委員
 おっしゃるとおりでありまして、今は電促税をエネルギー特別会計の中での区分経理という形で出発しておりますけれども、本当の目標は、きちんと自分たちで手数料、検査料という形で独自財源を得ること、これが私たちの大きな将来の目標であります。(塩崎委員「特別会計」と呼ぶ)それを特別会計にして区分経理をしていきたいと思っております。

○塩崎委員
 終わります。ありがとうございました。

○生方委員長
 この際、お諮りいたします。
 議員高木美智代君から委員外の発言を求められております。これを許可するに御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○生方委員長
 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 高木美智代君。

○高木(美)議員
 公明党の高木美智代でございます。
 原子力規制委員会設置法案起草の件につきまして、公明党を代表して質問させていただきます。
 このたび、民主党、自民党、公明党三党の協議によりまして自公提出法案を軸とする原子力規制委員会設置法案が起草されましたことは、大変喜ばしいと思っております。関係者の皆様の御努力に心から御礼を申し上げるものでございます。
 この原子力規制委員会設置法につきましては、我が国のこれまでの原子力規制行政を刷新する画期的な法案になったと確信をしております。私は、その理由を順次挙げながら、何点か、起草者と、また政府、特に細野大臣の見解を伺っておきたいと思います。
 まず、本法案を高く評価できる理由の第一でございますが、規制委員会の独立性、中立性を確保したという点でございます。
 この規制委員会は、環境省に置かれるものの、いわゆる三条委員会として独立して職権を行う。内閣や環境大臣の影響力が行使されることはない。そして、委員長並びに委員は国会同意人事であり、国会の同意なくして罷免されることもない。いずれも、規制組織の業務が政治的圧力や利害関係者の意向に左右されることを防ぎまして、科学的、客観的な知見に基づいた中立的なものであることを確保するための措置でございます。
 このように規制委員会に高い独立性を与える以上は、いや増してこの規制委員会のあり方が問われると思っております。公明党は自公案検討のときに、規制委員長及び委員の任命の要件に、いわゆる人事院の人事官等と同様に、人格が高潔ということを挙げさせていただきました。
 これまで、政府にかかわる原子力専門家の中に、寄附金とかまた研究費の名目で業界との間で多額の金銭授受が行われていた問題が明らかになりまして、ここからいわゆる原子力村という言葉が生まれるような、職務の中立公正性に関して国民が大きな疑惑また不信を抱いてきました。
 人格の高潔は、そのような事態の改善を求めるという国会の意思でありまして、規制委員会の国会に対する説明責任の要件でもあると考えております。
 また、さらに本法案では、規制委員会の委員長及び委員による国民の疑惑、不信を招くそのような行為を防止するために、原子力事業者等からの寄附の制限など、内部規範を制定、公表するということ、また、原子力事業者等からの寄附に関する情報公開も盛り込まれました。これらは、中立性、公正性の確保のために極めて重要なことと考えております。
 ここで、起草者の方に、特に我が党、私も加わらせていただきましたが、中心的に取りまとめて努力をされました江田議員に対しまして伺いたいのですが、寄附の制限とは禁止を意味するのか、また、情報公開は在職前等も含むのか、見解をお伺いしておきます。
 あわせまして、委員長及び委員の任命要件につきましても、三党協議の中で「原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する者」と拡充されましたが、その趣旨はどのようなものであるのか、江田議員にお伺いいたします。

○江田(康)委員
 本法案に対しての高い評価、ありがとうございます。
 高木先生の御質問にお答えいたしますが、この規制委員会の独立性、中立性を担保するためには、この寄附の制限、情報公開は非常に重要と思っております。
 この寄附の制限規定の趣旨は、寄附を一律に禁止するものではありません。原子力規制委員会の委員長、委員が、専門的知見に基づいて、中立公正な立場で独立して職権を行使することを担保するために、いわゆる原子力村から寄附金を受けて中立公正な立場が揺らぐことを防止するために、公開制度を創設して、国民による監視を図るものとしたところでございます。
 具体的な運用については、原子力規制委員会の内部規範で定めていくことになりますが、その際には、就任前、例えば三年程度は公表する旨の規定を設けることが望ましいと考えております。
 次に、委員長及び委員の任命要件として御質問がございました。
 原子力利用における安全の確保に関しては、専門的知識及び経験が必要なことは言うまでもありませんけれども、この要件だけに限定すると、いわゆる原子力村的な視野の狭い技術者に限られる懸念があると考えます。
 そこで、高い識見を要件としまして、全体としてバランスのとれた人材の確保を可能としているものでございます。

○高木(美)議員
 ありがとうございました。
 さて、この規制委員会でございますが、原子力規制庁と称する事務局が置かれることになります。事務局は、他の官僚組織からは独立して、規制委員会の指揮命令にのみ服するということになっております。他省庁との連携は必要ですが、今の答弁にもありましたとおり、決して癒着と言われるようなことがあってはならないと思います。
 そのために、自公案に基づきまして、規制庁の全職員の推進官庁へのノーリターンルールが盛り込まれたわけでございます。
 このノーリターンルールは、当然、規制庁発足時から実施されるものでありまして、適性等の観点から認められる五年間の例外措置というのも入っておりますが、極めてこれも抑制的に運用すべきと考えております。その点もお含みいただきたいと思います。
 次に、法案を高く評価できる理由の第二といたしまして、規制組織の専門性の確保を挙げたいと思います。
 これに関しては、特に、独立行政法人原子力安全基盤機構における専門知識の蓄積を十分活用することを目指しまして、この機構の職員を、規制庁の相当の職員として、この機構が行う業務を可能な限り速やかに規制委員会に行わせるということになりました。
 この可能な限り速やかに統合を行うためには、政府が速やかに法制上の措置をとるということが必要なわけですが、政府は、いつまでにこの関連法案を提出し、いつまでに統合を行うお考えか、細野大臣の所見をお伺いしたいと思います。

○細野国務大臣
 御質問は、統合はJNESの件ということでよろしいでしょうか。(高木(美)議員「そうです、JNESです」と呼ぶ)はい、ありがとうございます。
 JNESにつきましては、今回の事故以降、何人かの専門家と私もやりとりしましたけれども、非常に有能な方が多いですから、統合できるというのは非常にありがたいことだというふうに思っておりますので、法律の趣旨のとおり、可能な限り速やかに実施をしてまいりたいというふうに思っております。
 問題がございますのは、JNESというのは非公務員型の独立行政法人でありますので、私も接した中でいうと、明らかに年齢層が高うございます。六十歳を超えている職員が三割を占めておりまして、中途採用でかなり即戦力を採用しております。これを公務員にしてしまいますと、もう全部定年になってしまいますので、能力が大幅に減ずるということになってしまうんです。
 ですから、公務員の年齢というものを大幅に変えるというのは、これは難しいですから、まず、JNESのあり方そのものを、若干時間をかけて、時間をできるだけかけずにやりたいとは思いますけれども、どう戦力を維持するかということを大前提としないと、統合して弱体化するということにもなりかねないんですね。
 ですから、そのあたりについて準備をした上で、できるだけ早く統合することで原子力規制庁そのものを強い組織にして、原子力規制委員会の判断のもとでしっかりと働き得る組織にしてまいりたいと考えております。

○高木(美)議員
 そうしたことを含めまして、いつごろまでにその統合の流れを整理をするのか、また、いつごろまでにこの統合を実施をしていくのか、スケジュールをお示しいただけますか。

○細野国務大臣
 できるだけ早くやりたいと思います。
 もう一つは、JNESの職員というのは、専門的な人間については高い処遇をできるという形になっているんです。ですから、それが公務員の場合はなくなりますので、給料が下がる人が出てきます。ですから、定年で三割いなくなってしまって、そのほかの人についても、例えば優秀な人は給料が下がるということになると、人がいなくなってしまいます。そういう状況はできるだけ早く解消されるということを目指し、それが解消された時点でできるだけ早く統合したいと考えております。

○高木(美)議員
 それでは、次の、理由の第三に移らせていただきます。
 我が国の原子力規制行政の長年の二元体制に終止符を打ちまして、原子力規制行政が一元化されるという点でございます。
 政府案におけますテロ対策などのセキュリティー規制、また、放射線規制にとどまらず、放射線の日常的モニタリング、また核不拡散のための保障措置もこの規制委員会に一元化されることになりました。まさにこれは国際標準に合致した形態でありますし、限られた人的、物的資源の有効活用のためにも意義が大きいと考えております。
 また、理由の第四ですが、世界最高水準の規制を導入するということで、シビアアクシデント対策、また、最新の知見を既存施設にも反映できるバックフィット制度を導入する、また、発電用原子炉につきましても四十年運転制限制を導入するという点でございます。
 この四十年運転制限制につきましては、公明党も修正協議におきまして導入を主張いたしました。ただ、この四十年まで安心という科学的な保証があるわけではありませんので、厳格な老朽化の検査またバックフィットが重要なことは、言うまでもありません。また、二十年を超えない範囲で運転延長を認める例外規定につきましても、この四十年制限制がなし崩しになるものであってはならないと思います。
 また、原子炉等に対する種々の規制につきましては、原子力規制委員会が発足した後に速やかに見直すことになっていますが、この趣旨につきまして起草者にお伺いしたいと思います。

○江田(康)委員
 私も、今の点に関しては高木先生の御指摘のとおりだと思っております。その御指摘のとおり、四十年運転制限規制の趣旨は、原則として四十年以上の原子炉の運転はしないこととするものでありまして、運転延長が認められるのは例外的なケースであると考えます。
 原子炉等規制法に基づいて、この安全規制全体については、法律の施行後速やかに、施行の状況を勘案して検討が加えられる旨の見直し規定が置かれておりますけれども、これはあくまで、この原子力規制委員会発足後、新たな科学的基準に基づいて規制を不断に改善していく趣旨であると考えるものでございます。
 新しい基準に適合しないものは、四十年前の廃炉もあり得るわけでありまして、この新しい組織による新しい基準、これが基本的な考えになってくるかと思っております。

○高木(美)議員
 ありがとうございます。
 第五は、緊急時における政府と規制組織の役割分担が明確になったことです。
 この法案では、原子力施設の安全確保に関する専門技術的事項に関しまして、規制委員会が原子炉等規制法上の監督官庁として権限を行使することを明確にいたしました。そして、規制委員会が専門的、技術的な知見に基づきまして原子力施設の安全確保のために行うべき判断の内容に関して、総理が指示する権限を認めないことといたしました。まさにこれは、先ほど来、菅リスクと言われておりますが、今回の事故の教訓を踏まえたものとなっていると思っております。
 第六に、平時におけるオフサイト対策の体制が明確になったことです。
 現行の原子力災害対策本部は緊急事態宣言のもとで瞬時に設置される組織でありまして、平時は、関係省庁、地方自治体等と連絡をとり、万一のための準備を進める、その体制が別途必要だったという状況でした。
 この法案におきましては、緊急時の原子力災害対策本部に加えまして、平時の原子力防災会議を設置し、その事務局を内閣府が担うこととしております。規制委員長も副本部長としてその会議に参画するとともに、規制委員会は科学的、技術的知見を提供することとなっております。
 加えまして、規制委員会と原子力防災会議の組織の立て分けが明確にされまして、規制委員会、規制庁の独立性も確保されております。
 ここにおきましては、両者の連携が重要になってくると思います。そのあり方につきまして起草者の見解をお伺いいたします。

○江田(康)委員
 御指摘のとおり、平時のオフサイト対策のうちでこの原子力規制委員会が行うものは、専門的、技術的知見に基づくものである。また、原子力防災会議は、原子力防災推進のために、地方公共団体や自衛隊等実力部隊との調整、放射能環境汚染対策など、多数の関係者による長期にわたる総合的な取り組みの推進を行う。このように、原子力防災会議と規制委員会が平時のオフサイト対策においてその業務が切り分けられたことによって、この独立性は大変高まったものと思います。
 他方、現実の原子力防災会議では、関係機関がそれぞれの役割を果たしながら緊密な連携を図っていくことが最重要課題でありまして、これは、平時から、日ごろから十分な情報提供や情報共有や意見交換を行っていくことが必要不可欠であると考えております。

○高木(美)議員
 ありがとうございました。
 起草者の皆様の御努力によりまして、極めて画期的な原子力規制組織に関する法案が起草されたと確信をいたします。本法案が早期に成立をいたしまして、原子力規制行政が国民の信頼を回復し、また、国民の安全を守ることを要望いたしまして、私の発言といたします。
 ありがとうございました。

○生方委員長
 次に、斎藤やすのり君。

○斎藤(や)委員
 今回、法案が成立して新たな規制組織が立ち上がるわけでございます。福島の事故で地に落ちたこの原子力行政の信頼を回復するためにも、万全を期さなければいけないというふうに考えております。
 法案を見る限り、独立性の確保、それから政治介入のリスクの除去という点は大体クリアされておりまして、私たち新党きづなとしては賛成の立場をとりますけれども、一言言わせていただきたいのが、このところの国会軽視の流れでございます。
 この法案も、そして今一番ホットな消費増税の関連法案も、民主、自民、公明の三党の協議で決まってしまう。しかも、この三党協議というのが、議員会館の会議室、ホテルの一室などの密室で話し合いがなされて、ここで決まったことが突然国会に落ちてきて、審議の時間も大してとらずに採決されてしまう。
 そもそもこの法案というのは、もう二度と福島の悲劇を起こさないように、じっくりと国会で審議をして決めていかなければいけないものだと思っております。ところが、法案の審議はなかなか始まらず、始まったと思ったら、環境委員会での質疑は一回、参考人質疑そして連合審査が一回ずつ、修正法案ができたと思ったら、審議は半日で終わり。これでは、多くの国民が納得しないと思いますし、国会軽視でございます。強く抗議をしたいというふうに考えております。
 時間が余りないので、修正案について質問いたします。
 ノーリターンルールなんですが、今回、五年の経過措置を設けるという例外規定が設けられました。この五年ルールができた経緯と理由をちょっと説明していただきたいと思います。

○大谷(信)委員
 五年ルールですよね。五年ルールができた理由は、先ほどの答弁にもありましたように、ノーリターンルールですぐに帰れないようにするべきだというのもありますが、全く新しい組織ということもあり、ここは、この組織になじまないような方、また、なじまない能力であったようなことも発見するようなことがあるということで、行って、例外として五年間の間はもとに戻れるというようなルールを定めさせていただきました。
 それは、余り能力がない人、意欲がそがれてしまった人が残って、本来の規制委員会の能力が発揮できないということを阻止するためでございます。

○斎藤(や)委員
 ありがとうございます。
 一方で、これはリスクも非常に伴っているんじゃないかなというふうに思います。どういうリスクかといいますと、この規制委員会の最初のミッションというのは、何といっても新しい安全基準をつくることだと思うんですが、心配なのは、この基準づくりをするという重責を負う職員が、いわばノーリターンルールの対象外であるということでございます。
 原子力村の影響を排除して新しい安全基準をつくれるのかどうか、五年で帰れるわけですから、これについて大谷先生、どうでしょうか。

○大谷(信)委員
 そこは国会同意人事でもありますし、しっかり、そんなことがない委員長、そしてそんなことがない他四名の委員を私たちが選ぶことで阻止できるものだというふうに思っております。

○斎藤(や)委員
 国会同意人事でチェックをするということだと思いますが、そのほかにも、利権を五年間の中で確立する利権あさりをする人とか、そういうことも十分考えられると思いますので、そこはやはり国会でしっかりとチェックしなければいけないというふうに思います。
 それと、済みません、これは質問通告にないんですが、どうしても一問聞きたいのでお聞きしたいんですが。
 最初のスタートが肝心だと思います、この組織。組織が腐らないようにするためのチェックが必要だと思うんですが、規制委員会をチェックする機関というのは、この法案を読む限り、見当たりません。自浄作用に期待するしかないのか、国会の同意人事でということなのか、このあたりもちょっと教えていただきたいんですが。

○大谷(信)委員
 委員を罷免できるというところがありまして、そこはこれから内規を定めさせていただいて、例えば多額の寄附をするであるとか、これはあくまで例えばですが、余りにも原子力村寄りの発言が出るとか、これは内規で定めることでありますが、一定そういうルールをつくった上で、我々立法府の人間もそれをチェックしながら高めていこうということになります。

○斎藤(や)委員
 チェック機関が存在しない、内規でということで自浄作用に期待するというところだと思うんですけれども、このあたりも懸案事項の一つだと思いますので、今後考えていただければというふうに思います。
 一方で、ちょっと今回一つ心配なのは、内閣に設置された原子力防災会議というものでございます。これも修正協議で出てきたものでございますけれども、組織をたくさん立ち上げて権限のすみ分けが難しくなるというのが今までの原子力の規制組織だったと思うんですが、結果的に混乱が助長されるリスクを抱えております。
 今回の修正案で急に出てきたこの原子力防災会議という組織、これに関しての業務内容、それから内閣府に置いた理由というのを教えていただければと思います。

○大谷(信)委員
 お答えいたします。
 平時のオフサイト対策のうち、原子力安全についての専門的、技術的知見に基づくものは原子力規制委員会、そして、原子力防災推進のために、地方公共団体や自衛隊等実力部隊との調整、放射能環境汚染対策など、多数の関係者により、また、長期にわたる総合的な取り組みの推進が必要なものは原子力防災会議及び事務局がそれを担っていくということであります。
 ここは緊密な連携あってこそ初めて可能だというふうに考えています。

○斎藤(や)委員
 今回のこの規制組織の目的というのが、やはり独立性と一元化というものがあったと思います。このつくった組織が、平時の防災対策ということではありますけれども、政治介入とか、それから情報隠しの隠れみのにならないように、このあたりもしっかりとお願いしたいと思います。
 この規制委員会は、再稼働の妥当性から原発事故の対応まで、強大な権限を持ちます。ということで、この規制委員会の人事が非常に重要になります。
 これはすごくすごくすごく基本的なことなんですけれども、国会の同意人事で選ばれるわけなんですけれども、国会に出す人事案を策定するというのは政府のどの部署なのかという基本的な質問を教えてください。

○横山委員
 原子力規制委員会の委員長及び委員は、「両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。」ということですので、原子力規制委員会の委員長及び委員の人事案は、内閣官房において調整されることになると考えております。

○斎藤(や)委員
 内閣官房ということで、委員長とそれから四人の委員の方がこの組織のあり方を大きく左右されると思います。国の方向としては、野田総理が言っているように、脱原発依存と言っているわけでございますので、危ない原発は稼働させない、それから廃炉への道筋をきちんと示すことができる、そういう方をぜひ選んでいただければというふうに思います。
 それから、四人の委員の一人ぐらいは原発の専門家ではない方、例えば、法律家とか、それから思想家なんかの方も一人入れていいのではないか。米国の原子力規制委員会は、報道によりますと、委員長候補の一人に地質学者を入れているという話でもございますので、そのあたりもぜひ考慮していただければと思います。
 それから、ちょっとこれも済みません、質問通告をしていないんですが、自民党の方に一つだけお伺いしたいんです。
 私は、この前の細野大臣との質疑の中で、四十年ルールを設定するのはいかがかと言いました。これは無制限にしろと言ったわけではなくて、私の趣旨は、四十年が妥当なのか、もっと精査すべきではないのかという意味で言ったわけでございます。稼働年数のキャップをもう少し下げてもいいんじゃないか。ドイツはちなみに三十二年です。さらに、二十年だろうと三十年だろうと、脆性遷移温度とか炉の耐久性によっては、耐久性が弱くなったら廃炉にするべきだということを言ったわけなんです。
 この四十年ルールに対して、済みません、これも報道なんですけれども、朝日新聞の報道です。自民党さんが修正協議の中で、四十年たったものが劣化しているとは言いがたいというふうに、強硬にこの四十年の廃炉ルールに対しては反対した、そういう報道がされておりました。
 この修正協議には議事録がありませんので、その報道についてちょっとお伺いしたいと思います。済みません。

○田中(和)委員
 お答えをいたします。
 今、斎藤議員がおっしゃったことと私の思いはほとんど同じでございます。まず、四十年という数字の設定が非常に政治的なものであって、科学的な根拠に基づかない。原発はそれぞれみんな、できたときも違いますけれども、よって立つ地理的な条件を初め数々のことがございます。当然のことながら、独立した三条の機関ができていくわけでございますし、そこで選ばれた委員の皆さんがお決めになるということが当然のことでございます。
 ましてや我が党が、四十年を、プラス二十年の話もありますけれども、それをさらに延ばすべきだというような発言をしたことは一切ございませんし、私は、場合によっては一年で閉めなければいけない炉も起こってくる、このように思っておりますので、誤解のなきように。マスコミの皆さんも正しく報道をしていただかなければならない、このように思います。
 ありがとうございました。

○斎藤(や)委員
 どうもありがとうございました。
 最後に、今回の野田総理の大飯原発再稼働の方針には、新党きづなとして断固反対で抗議をいたします。
 福島原発事故の国会事故調の結果報告が出ていないのにもかかわらず再稼働を決めているという点、さらに、今回の原発事故は、原子力安全・保安院と原子力安全委員会の安全規制の失敗が大きな原因になっています。いわばA級戦犯である保安院と安全委員会がつくった安全基準で再稼働を決めることに、やはり私は正当性はないというふうに思っております。これはもう間違っているというふうに思います。
 大飯原発だけ特別につくられた暫定基準で再稼働させるのではなく、これから発足する原子力規制委員会がつくる安全基準で再稼働するかしないかを決めるべきであるということを訴えさせていただきまして、私の質問は終わりにいたします。
 どうもありがとうございました。

○生方委員長
 この際、お諮りいたします。
 議員吉井英勝君、服部良一君、柿澤未途君及び松木けんこう君から委員外の発言を求められております。これを許可するに御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○生方委員長
 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 吉井英勝君。

○吉井議員
 日本共産党の吉井英勝です。
 私は、環境省の立ち位置について最初に伺っておきたいと思います。
 本会議での私の質問に野田総理は答弁を逃げたんですが、六月五日の委員会で細野大臣は、地球温暖化の手段として原子力推進という立場にはないと答弁をされました。
 改めて伺いますが、そうすると、地球温暖化対策基本法第十六条から、「特に原子力に係る施策については、」「推進するものとする。」としているこの原発推進を削除するのかどうか、明確にしていただきたいと思います。

○細野国務大臣
 御指摘の地球温暖化対策基本法案の第十六条でございますが、環境省は原発推進の立場には立たないということからすると、この条文は確かに矛盾するところがあるというふうに考えております。
 国会に提出をしている法案ではありますけれども、これについては、こうした状況を鑑みて、新たなエネルギーに対するさまざまな政策、そして、それと同時に、温暖化の問題についても今政府内で検討が行われておりますので、その選択肢を提示をするという方向の中でしっかりと再検討する必要があるというふうに思っております。

○吉井議員
 地球温対推進法に基づく目達計画ですね、閣議決定したもの、二〇〇八年三月二十八日に閣議決定されたものが、改めて昨年の十二月二十日にも確認しているんですね。この目達計画からも原発推進部分というのは除くという、こういう立場でやっていかれますか。

○細野国務大臣
 新しい環境の温暖化の方針が出た段階でそういったことについても見直すということになります。今、中央環境審議会でこのエネルギーの問題を見きわめながら気候変動の問題についての議論をしておりますが、そこでもそのことを徹底をしております。
 つまり、環境省の方で、エネルギーの中で原発が占める割合について判断をすることはしない。それを高めることで温暖化に資するであるとかいう考え方はとりませんので、それは資源エネルギー庁の方で検討をされ、それをそのまま使うようにということで徹底をしております。
 したがいまして、原子力の考え方そのものについてもすべて見直すという、そういう方向であります。

○吉井議員
 見直していくというお話なんですが、ここをきちんとしないと、環境省はこれまで原発推進の一翼を担ってきたというこの立場が消えるわけのものではありません。
 次に、関西電力の美浜、高浜、大飯の原発で、いただいた公式発表の事故・トラブルを見ると、運転開始から二十年以内の原発で合計百十二件あるんですね。もちろん、事故の予兆と見るべきものが多いんですが、実際、小さなトラブルを見逃して、大規模な、死傷者を出すような事故につながったものもあります。
 中性子照射による脆性劣化というのは、BWRでは、二〇〇二年に問題になったコアシュラウドの亀裂などで、材質をよいものにかえても、二、三年でまた高速中性子でやられてしまってひびが入るとか、PWRの場合は、二〇〇六年五月十二日の国会で指摘しましたが、美浜とか玄海などで上昇が続いて、もう三十年ぐらいで危険領域に近づいていると。これは圧力容器ですよ、脆性劣化で。こういうのが現状なんですね。
 現実に進行している事態は、四十年期限や、さらに二十年延長するというのは一体どういう根拠があるのかと。
 環境大臣と動議提出者に伺っておきますが、速やかに検討とか所要の措置という文言がありますが、いつまでにどのような方向での検討の見直しなのか、これはさらに延長することもあり得るということなのか、伺います。

○近藤(昭)委員
 貴重な御質問をいただいたというふうに思っております。
 四十年運転制限制度というのは、経年劣化等に伴う安全上のリスクを低減する観点から重要な制度、こういうふうに考えておるわけであります。
 新たな科学的知見に基づいて安全規制を不断に改善し、また、この法案によって新たに設置される原子力規制委員会の委員長及び委員の知見に照らして検証されることが重要である。御指摘の四十年の運転制限の規定を含め、施行の状況を勘案して速やかに検討を加え、安全規制全体に関して見直すというのが、この速やかに検討、所要の措置ということであります。
 このことについては多くの議論があったと思います。私自身は、四十年規制、これから原子力規制委員会という、極めて専門的に、そして独立性を持って、そして今回、さまざまな条項を加えることによって中立性を保つということを加えさせていただきました。この独立した委員会の中でしっかりと規制がされていること。
 今言及させていただきました炉の劣化等々、これは科学的に知見をすれば、それぞれの炉によって非常に違うわけだというふうに思っております。劣化したものによってはかなりの温度で割れてしまうようなものがある、科学的にはこういう知見も出ているわけであります。そうした炉に万が一のことがあったときには、お湯で冷やすような、つまり、余りに冷たいもの、水をかけると破断してしまうようなものもある、こういう知見も出ているわけであります。
 そういう意味では、私は、新しくできた規制委員会がきっちりと知見を持って当たっていくことによって、逆に言うと、四十年、これは基本的に、少なくともという意味であります。それぞれの炉の状況によってはもっと早く廃炉をすべしということが出てくるんだ、こういうふうに思っております。

○細野国務大臣
 吉井委員は、中性子の脆化の問題を御指摘をされました。非常に重要な御指摘だと思います。もう一つは、機器は全体でできていますので、やはりそのシステム自体の古さというのも非常に気になっております。
 そういったことを考えれば、四十年の運転制限制度というのは必要であるというのが、これが私どもの立場であるということは明確に申し上げておきたいというふうに思います。
 先ほど、近藤提出者の方からもお話がございましたとおり、それを科学的に確認をするということだというふうに理解をしておりますので、しっかり確認をしていただいて、四十年で運転制限をしていくということが重要ではないかと考えております。
 これは初めて導入した制度でございまして、これまでの経緯も確認をしてきましたが、先ほど斎藤委員から、年限は設けるべきでないという話がありましたが、これは強烈なことなんです。巨大な投資をした電力会社に、それを廃止せよ、設備としてこれはもう完全になきものにするということですから、大変なことなんですね。それはもちろん専門的に判断していただいたらいいと思います。
 専門的に判断していただいたらいいと思いますが、まずは運転を制限をするというしっかりとした法的な意思というのは示しておかないと、やはり専門家もなかなか判断しにくいというのが、これがこれまでの現実でありますから、それをしっかりと法律に書くというのは極めて大事で、これを公明党、自民党の皆さんにも受け入れていただいたというのは大きな意味があると考えております。

○吉井議員
 脆性劣化の問題にしてもシステム全体の問題にしても、そもそも、三百十億円かけた世界一の規模の大型振動台を売り飛ばしてしまったんですよ。脆性劣化したものの安全性その他を検証する実証実験をやる装置を、三百十億円ですよ、売り飛ばしてしまったぐらいですから、今のように簡単に物を言ってもらうと困ると思うんです。
 動議提出者に一言だけ伺っておきますが、今度の規制委員会に置く審議会で、原子炉安全審査会と核燃料安全審査会のメンバーから、電力及び原子力関係事業者、団体の者を排除するのかどうか、これを一言だけ伺っておきます。

○近藤(昭)委員
 その欠格要件でありますけれども、審議会等の委員の欠格要件についても、委員長及び委員の欠格要件の趣旨を踏まえて、下位法令において定めるべきものと考えております。
 その意味では、原子力規制委員会の独立した規制上の判断と決定を担保するという観点から、利害関係者である原子力事業者等は排除されることになる、排除されるべきと考えております。

○吉井議員
 質疑時間の中で意見も表明してくれという話なんで、今から意見を申し上げておきたいと思います。
 昨年の三・一一福島第一原発事故は、全電源喪失によるメルトダウンとその後の水素爆発によって大量の放射性物質を大気中に飛散させ、汚染水を海洋に流出させるなど、チェルノブイリに並ぶ史上最悪の原発事故となりました。
 あれだけ大きな被害を受け、今も約十六万人の人々が避難生活を強いられているときに、事故の深い原因究明と責任、教訓を明らかにして、本来、特別委員会を設置して各党が十分な議論を尽くしてよい法律をつくるべきであるのに、環境委員会という一つの常任委員会での審議で、しかも、三党修正協議がきょう出てきていきなり質疑、採決というやり方は、議会制民主主義に反する暴挙であり、民主、自民、公明三党修正協議と法案審議のあり方そのものについて、まず強く抗議をしておきたいと思います。
 その上で私は、原子力規制委員会設置法案に対し、反対の意見を述べます。
 このような事態を招いた政府と東京電力の責任は極めて重大です。事故を完全に収束させ、放射能汚染の被害から国民の生命と暮らしを守り、二度とこのような事故を起こすことのないように事故原因の徹底究明が不可欠であり、本法案の大前提となるものです。
 ところが、政府や国会の事故調の事故原因の究明が途上であるにもかかわらず、加害者である東京電力は、想定外の津波が原因で、人災でないと責任回避を続けております。野田政権もまた、津波、浸水が事故原因で、地震の影響はなかったという驚くべき断定を行いました。
 これは、再び新しい安全神話を復活させ、大飯三、四号機を初め、原発再稼働に進み、原発輸出戦略の条件づくりであり、断じて容認できません。
 この点でまた、事故の被害を拡大した当時の官邸の混乱のみを菅リスクと過大に問題にすることは、事態を一面的に描くものです。
 これと同時に、三・一一以前の歴代自民党政権の原子力行政のゆがみを徹底的に検証しなければなりません。
 反対理由の第一は、昨年の三・一一福島第一原発の事故原因と教訓を全面的に踏まえた法案となっていないからであります。
 特に、原子炉等規制法で根拠も実証試験もなく、老朽原発の四十年、例外六十年制限としたところ、本法案ではさらに事実上青天井とし、半永久的稼働を容認したことは、政府案を一層改悪するものであり、認められません。
 第二に、原子力規制組織をいわゆる三条委員会としていますが、推進と規制の分離、独立性を確保すべき原子力委員会を環境省のもとに置くとしていることは容認できません。
 環境省は、歴史的にも基本政策の上でも原発推進の一翼を担ってきた官庁であり、今国会に提出している地球温暖化対策基本法案で、温室効果ガスの排出抑制のため原発推進を条文上も明記したままです。これの削除と根本的な反省なしに真の独立は担保されません。当然、電促税を財源とする財源面でも問題であります。
 第三に、原子力基本法を改め、原子力利用の目的について「我が国の安全保障に資する」としたことは、いわゆる原子力平和利用三原則にも抵触するものです。
 また、国際的動向を踏まえた放射線対策と称して、内外の批判の強いICRP、国際放射線防護委員会の線量基準などを持ち込もうとしていることも認められません。
 最後に、我が国の原発政策の根幹をなす日米原子力協定と電源三法のもとで、原発安全神話をつくり上げ、地域住民の反対を押し切って原発を推進してきた歴代自民党政権の、政財官学の癒着した一体構造そのものにメスを入れる必要があります。
 地域独占体制と総括原価方式に守られた、電力会社を中心とする、原発メーカー、鉄鋼、セメント、ゼネコン、銀行など財界中枢で構成する原発利益共同体ともいうべき利益構造を解体することと、そして、再生可能エネルギーの爆発的普及とその仕事を地域経済の再生に結びつけ、エネルギーでも地域経済でも原発に依存しない日本社会への発展の道こそ、政治的決断をするべきものであります。
 以上申し述べて、私の発言を終わります。

○生方委員長
 次に、服部良一君。

○服部議員
 社民党の服部良一です。
 早速質問させていただきます。
 新規制機関が発足しない中での大飯原発三、四号機の再稼働を決めるということはあり得ないということを申し上げてきたわけですが、まず、動議提出者にお伺いいたします。
 本法案が成立し、原子力規制委員会が発足したら、ストレステストを導入した昨年七月十一日の三大臣文書「我が国原子力発電所の安全性の確認について」と、総理以下四大臣で政治的判断をする枠組みは当然失効するというふうに思いますけれども、それをどう認識されているか、これが一点です。
 それから、少なくとも大飯以外の原発について、原子炉等規制法の改正に基づき策定される新たな安全基準とバックフィットによる適合が確認されなければ再稼働できないというふうに私は理解しますけれども、本法案の立法趣旨からしてそういう理解でいいのかどうか。
 その点、二点お尋ねいたします。

○大谷(信)委員
 この法案ができたことにより、新たな規制組織である原子力規制委員会が設置されることになります。他の行政機関や政治的な影響から独立した技術的、専門的な観点から、原発の再稼働についての手続も改めて検討されることとなります。
 この法案が施行されると、既に許可を受けた原子力施設も、最新の知見を踏まえた新たな安全性の基準に適合させるいわゆるバックフィット体制が導入され、この新たな基準に適合しない原子炉施設に運転は認められないということに理解をしております。
 それとあと、三大臣、四大臣の枠組みというのは、ちょっと私の方では、政府のことでございますので、答えられません。

○服部議員
 それでは、同じ質問を細野大臣にさせていただきたいと思うんですけれども、今の答弁に対してどういう御意見をお持ちか。
 というのは、これは新聞報道ですけれども、仙谷さんが、「ストレステストが済めば、その他の原発も粛々と動かすべきだ」ということをおっしゃっているんですね。報道ベースなので、その真意のほどはわかりませんけれども。
 そういう意味で、新しい規制機関が発足する中で、一体どういう精神でこれをやろうとされているのか、そこはきちっと私としては問う必要があるという意味で、大臣としての答弁を求めたいと思います。

○細野国務大臣
 新しい原子力規制委員会が誕生すれば、定期検査中の原子力発電所の再稼働についても、また、稼働中の原発の継続についても、全てそこで判断されるということになります。
 したがって、先ほど大谷提出者の方から、バックフィットの件につきましては、政府の考え方も踏まえて御発言をいただきましたけれども、そういったものが適用されるということに制度上ももちろんなるわけです。
 ですから、そこも含めて全ては新しい組織の専門家の判断ということになりますので、私から、こうするべきだというようなことについての発言をする立場にはない。まさに独立した委員会ができるわけですから、そこでしっかりやっていただくということだと思います。

○服部議員
 ですから、私の質問のもう一つ、ストレステストを導入した七月十一日の三大臣文書及び四大臣での政治判断の枠組み、これはもう失効するという理解でよろしいですね。

○細野国務大臣
 ストレステストは行政指導でやりました。当時の状況からすると、そのままストレステストを課していなければ秋から順番に再稼働していましたので、そういう状況はやはり日本社会においては認めがたいだろうということで、菅総理の判断で昨年の夏、ストレステストが導入されたわけですね。
 その扱いをどうするかも含めて、それは新しい規制組織で考えるものというふうに思います。

○服部議員
 法案趣旨説明者によると政治の判断だと言われるし、ちょっとそこがはっきりしないなと思いますけれども、いずれにしてもこれは、我々とすればやはり、当然失効して、そして新たな規制組織の中でやるものだというふうに今は理解をさせていただきたいと思います。
 それから、四十年の問題については、先ほどから議論になっていますけれども、新聞報道では、骨抜きではないかというような報道も出ております。
 先ほどの田中委員の答弁ですと、そういうことではないんだということなんですけれども、確かに、四十年たっていないのに脆性遷移温度が非常に高くなっていると懸念される炉もあるという中で、これは厳格化もあり得る、例えば、四十年を短縮したり例外的な延長規定を削除したりすることもあり得る、そういう趣旨だということでよろしいんでしょうか。再確認でお願いします。

○大谷(信)委員
 はい、そういうことです。

○服部議員
 ただ、法文をそのまま読む限りにおいては、本当にそのまま信用していいのかなという、そこは実は我が党もこの法案の賛否に非常に迷うといいますか、懸念をしているところでございます。
 そうしますと、細野大臣も、この四十年制限というのは非常に政府提出案の肝だということをおっしゃってこられたわけですが、先日、美浜二号について、経年劣化の評価について延長もあり得るというような、これは駆け込みで審査したんじゃないかというふうに言われるわけですけれども、この美浜も含めて、今回、この新たな規制委員会で四十年を延ばすか延ばさないか、これは改めて議論をされるという理解でよろしいんでしょうか。

○細野国務大臣
 御指摘のとおりであります。
 美浜の二号機で行われたのは高経年化の技術評価ということですので、これは、動いていなくても、プールの中には燃料がありますから、安全についてやはり確認をすべきだということでなされたものです。ですから、再稼働について判断をしたものでは全くありません。
 この美浜の二号機も含めて、この法律に基づいて新しい規制組織でしっかりとやっていただくということであります。

○服部議員
 それでは、バックフィットの運用ルールについて、先日、私の本会議での質問に対して、個々の対策に応じた適切なルールを設定することが必要というふうに大臣が答弁をされております。
 その原則についてお聞きしたいんですけれども、例えば、新たな基準を適合するまでの猶予期間を仮に設けるとして、その間の運転は認めるのか、あるいはそうでなくて、一旦停止をして対応して、そして期限までにできないということになれば、許認可の取り消しだとか廃炉にするというふうなそういうやり方をされるのか、基本的なこの運用ルールの原則、これについてお尋ねをいたします。

○細野国務大臣
 そこも、一言で申し上げるならば、新しい規制組織の判断ということになろうかと思います。
 今、服部委員がおっしゃったようなやり方も確かにあると思うんです。ただ、結果的にそのことによって、例えば一定の期間、何年かかかるような対策を突貫作業でやられても、これも困るわけですよね。ですから、時間をかけて着実にやるべきものというような場合に、その猶予期間については稼働を認めるか認めないのか、それは一概には言えないですから、ケース・バイ・ケースの判断になろうかというふうに思います。
 ただ、はっきりしていることは、バックフィットで対応できないものとなったものについてはこれは運転しないということでありますから、この原則はしっかりと確立をしているということでございます。

○服部議員
 その点についても、今まで安全だと決めつけて曖昧な対応をとってきたということがこの間の事故にもつながっているわけですので、その点は、どういう具体的な適用をするか、これはぜひとも慎重に検討いただきたいと思います。
 それから人事の問題です。修正案に規制委員長あるいは委員の寄附制限が追加されたということは評価しますけれども、罷免の要件に寄附制限違反というのは含まれるのか。あるいは、委員長、委員の経歴制限についてはどのような認識をお持ちなのか。
 それから、二つの専門審査会の委員やその他の外部有識者についても、経歴制限あるいは利益相反排除、寄附情報の公開等について明確なルールが必要ではないかというふうに思いますけれども、その点について提出者にお尋ねいたします。

○大谷(信)委員
 委員長、また委員、それから外部の人も含めてですけれども、これは中立公正な立場で仕事をしていただくことはもうもちろんでございますし、そのためにいろいろなことを考えていきたいというふうに思っておりますが、一方、原子力事業者と全くかかわりない方だけの専門家ということも、これまた、一つ大事なところの視点が抜けてしまうというふうに考えております。
 そのため審査専門委員については、少なくとも、委員に就任できない場合は、個別の許認可等の審査に参加できない場合を明確にしておくとか、原子力事業者との関係について情報公開を徹底するとかなど含めて、利益相反しない厳密なルールをしっかりと検討、作成していきたいというふうに考えています。

○服部議員
 政府案の審査専門委員については厳格なルールが必要だということを大臣も御答弁されているわけですけれども、有識者についてのルール策定もお約束いただけるのではないかというふうに思っております。その点、ちょっとお尋ねいたします。
 それからさらに、中途採用者や技術参与などの非常勤職員の採用基準とか利益相反排除についても厳格なルールが必要だというふうに考えております。在籍出向はあり得ないというふうに答弁されているわけですけれども、これについてもルールを設けるということでいいのかどうか。
 いずれにしましても、有識者の部分も含めて中立的な人事監視の仕組みが必要だというふうに思いますけれども、これについてまとめて答弁をお願いしたいと思います。

○細野国務大臣
 多くの点を御指摘をされましたので、全体としてまず申し上げると、審査専門委員や技術参与も含めて、何らかの判断に影響を及ぼし得るそういう専門家が、疑念を持たれるということがあってはならないと思います。
 したがって、二つあると思っていまして、一つは、やはり一定の基準を設けてそれを採用していくということです。もう一つは、徹底した情報公開をしていくということだというふうに思います。
 もちろん、最大限、例えば電力会社からなどの影響力は排除するようなガイドラインを設けたいというふうに思いますが、先ほど大谷委員も言われたように、全ての電力会社の関係を断ち切ってしまった場合に、技術のわからない人だけ集まってもこれは意味がありませんので、そういった場合には、徹底した情報公開をすることによって、その事実も知っていただいた上で役割を担っていただくということになるのではないかと思います。
 その際も、個別の審査には、例えば電力会社から何らかの金銭の授受があったメンバーの場合には、その当該電力会社の許認可にはかかわらないなどの厳格な運用というのもあわせて必要だと考えております。

○服部議員
 原子力委員会で問題になりました非公式会合の禁止であるとか、あるいは、事業者等への情報照会等にかかわる明文のルールが必要ではないかというふうに思いますけれども、その点はどうでしょうか。

○細野国務大臣
 情報公開の徹底と透明性というのは、新しい組織にとって死活的に重要であるというふうに思っております。
 御指摘のような、実質的な議論が秘密裏に行われるような会合、そういったものはこれはあってはならないというふうに思っておりまして、委員会の会合の開催とその公開について一定のルールを設けることを検討してまいりたいというふうに思っております。
 また、事業者との接触ということについて、これもいろいろな疑いを持たれかねないというふうに思います。
 繰り返しになりますが、事業者と全く接触せずになかなかその本当のところの規制はできないという面がありますから、そういう必要な接触というのはあると思うんです。あると思うんですが、そういったものを例えば記録にしっかり残しておくとか、そういったことも含めて対応が必要ではないかと考えております。

○服部議員
 国民が大変な不信を持っている中でこの規制委員会がまさに発足しようとしているわけで、旧態依然の人が集まって本当に規制ができるのかと。この不信というのは、国民の中から払拭できていないと思うんですね。
 そういう意味で、いろいろきょう答弁いただいておりますけれども、そういう趣旨でしっかりとした規制機関としてやっていただきたいということを強く申し上げ、また、そういったことがない中で再稼働が強行されているということに改めて抗議を申し上げて、質問を終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。

○生方委員長
 次に、柿澤未途君。

○柿澤議員
 みんなの党の柿澤未途でございます。
 再び委員外発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 内閣提出の原子力規制庁法案、自公の原子力規制委員会法案、修正協議で一本化が図られ、新たな法案が提出をされました。きょう、採決も予定をされているわけであります。
 しかし、なぜこれほど急ぐのか。規制組織のあり方を含めた提言を行うこととなっている国会事故調の提言が今月中には出てくるわけです。黒川委員長をお呼びして話を聞いて、法案をつくればよいではありませんか。なぜ、国会事故調が結論を出す前に急いで法案を通そうとするのか。国会事故調の提言が出てしまうとよほど都合の悪いことでもあるのか、こういうふうにも勘ぐりたくなってしまいます。
 こうして急ぎ足に法案を成立させようとしている、こうした意図は何であるのか、お伺いをしたいと思います。

○田中(和)委員
 お答えをいたしたいと思います。
 私も先般、同趣旨の質問をこの場でいたした経過があります。三月十一日の、昨年の未曽有の大震災、それを受けて福島原発で大変な事故が起こったわけです。この世界に及ぶ影響や、国民の全ての人たちが大変な不安の中にある状況の中で、政治がどういうふうに動くかということは非常に重要なことであります。
 私たちは、本当は昨年の臨時国会ででもこの法案は審議されて成立を図るべきであった、このように思っておりました。
 そして、ことしの一月三十一日に政府案が国会に提出されたわけでございます。そして、その内容は、みんなの党の皆さんも指摘されておりますけれども、独立性に非常に欠けておる、こういうことでございまして、我々はそれから自民党、公明党で汗をかきまして、四月二十日に我々の議員立法案を国会に出しました。
 しかし、その時点でちょうど参議院での問責決議でございまして、国会の状況等を含めて今日になったという現実は、私は極めて遅過ぎるという認識の中でこの問題を取り組んでおるわけでございます。
 いずれにしましても、そういう中で私たちは今国民の期待にどう応えていくのか、この視点から、今回はいろいろなことはございます。議会に事故調が設けられて今まだ結論が出ていない状況もよく私たちは理解しております。ただ、今、この法律を、この国会の会期等々考えるときに、やっておかなければならない、この責任を国民に果たしていかなければならない、こういう認識に立って、三党で修正協議、長時間にわたって行ったわけでございますが、今日、皆様方に案を提出したということでございます。
 以上でございます。

○柿澤議員
 私は、国会事故調がこれから提言を出そうという、結果的にその直前です。この時期にこの法案を成立をさせてしまう、この一点だけでも、本法案には正当性が欠けているというふうに思います。国会事故調、全会一致で設置をした国会の意思の自己否定、こう言っても差し支えないと思います。
 その点からやはりこの法案には賛成することはできない、こういうことを申し上げておきたいと思います。
 法案の内容も、政府案と自公の対案を足して二で割って、重要なところで骨抜きが図られているのではないでしょうか。専門家でもない政府首脳が事故対応に無用かつ有害な介入をしてくるのを避けようという意図が自公案にはあったと思います。
 しかし、今回、修正案で、内閣総理大臣を議長、環境大臣を事務局長とする原子力防災会議を置くことになりました。原子力規制委員長はその原子力防災会議の副議長ですから、結局、内閣総理大臣の下に置かれている形です。これでは、事実上現在と変わらない。政治介入を許す余地ができてしまっているのではないでしょうか。
 仮に原子力防災会議が必要であるとしても、事故対応において原子力規制委員長を真に独立した存在であらしめるとするならば、原子力規制委員長に、少なくとも、事故対応中には、例えばこの原子力防災会議における拒否権を伴う優越的な地位を与える、こうしたことをやるべきではないかと思いますが、御見解をお尋ねいたします。

○田中(和)委員
 原子力防災会議は、あくまでも、平時における原子力防災を政府を挙げた体制で強化するためのものでございまして、内閣に設置をされます。
 しかし、今お話がありましたように、私ども自民党・公明党案は、三条委員会の組織ということで、徹底した独立性を尊重する組織でなければならない、こういうことに努めてまいりました。今回の我々の修正協議案もその趣旨から全く外れていない、こういう認識に立っています。
 といいますのは、総理も含めて政治的レベル、委員会以外の人たちが専門的な分野の発言や行動、指示をすることはできないわけでございまして、このことはしっかりと担保された制度になっておりますので、決して、議長が総理で、副議長が委員長だからということでは全くございません。
 議長であろうと副議長であろうと、その関係は上下関係ではございませんし、専門的な分野には、委員会あるいは規制庁側のことに対して一切干渉ができないということを明確に申し上げておきたいと思います。

○柿澤議員
 この点については、田中先生がそういう決意である、そういう読みであることは私もよくわかっています。
 しかし、現実には、事故発生時の総合的な施策の実施、こういうことが原子力防災会議に所掌事務としてつけ加えられている。こういう点を解釈をすれば、場合によっては、どこまでが専門的な知見を要する事項かということの解釈次第によっては、やはり、これは政治的な介入の余地が与えられる、こういうものになってしまっているんではないかと思うんです。
 もう一つ、ノーリターンルールについてですが、「原子力利用の推進に係る事務を所掌する行政組織への配置転換を認めない」、こういうことになっています。しかし、そもそも「原子力利用の推進に係る事務を所掌する行政組織」というのは、これはどの範囲なのか、省なのか局なのか部なのか課なのか、この点、お伺いをしたいと思います。
 もう一つ、ノーリターンルールに五年間の経過措置を設けたことで、実は、最も重要な立ち上がりの五年間、安全基準をつくり直して、そして体制の見直しをする、こうしたことを行う時期を事実上推進官庁からの出向者が取り仕切ることができる、そしてその人たちは、安全基準、大事なところをつくってまた推進官庁に戻っていく、こういうことができる余地が残されてしまったのではないかと思います。
 この点、私には骨抜きとしか思えませんが、御見解をお願いいたします。

○田中(和)委員
 国家行政組織法上、国の行政機関は、省、委員会及び庁を言いますけれども、「原子力利用の推進に係る事務を所掌する行政組織」とは、これらの機関が原子力利用の推進に係る事務を所掌する場合を言っておるわけでございます。例えば、警察庁とか防衛省などがそういう対象になるのではないかと考えております。
 そして、今お話がありました問題でございますけれども、五年間の間、ノーリターンを決めた上で、その間、特別な措置として、本人が能力がないとか、今後どうしても規制委員会、規制庁の仕事の中になじまないとか、そういう事情があったときに実は許可をするものでございまして、決して、政府側、政治側の人たちが新しい組織の中に入ってきて、自分たちに都合のいい制度やシステム、ルールをつくって、またそれが戻っていくというような、そういう悪意に満ちた、我々と全く違う、関係のないひどい状況でこの運営がされるということは、絶対にあってはなりませんし、そうさせてはならない。
 そして、委員の人たちも、そういうことをきちっと守って管理監督、指導ができる人たちを国会の中で選び出したい、このように思っております。

○柿澤議員
 御決意はよく理解できます。しかし、それならなおさら、なぜ五年の経過措置を設けたのか、こんな気もするところです。
 天下り規制もよくわかりません。「職務の執行の公正さに対する国民の疑惑又は不信を招くような再就職を規制する」、これはいかなる意味なんでしょうか。誰がそれを判断してストップをかけるんでしょうか。
 天下り根絶といった場合に対象となるのは、現政権においては、省庁のあっせんがあった場合のみであるはずです。さんざん議論をしてきました。そうでない再就職をどう規制しようというのか、お尋ねを申し上げたいと思います。

○田中(和)委員
 この規定を設けた趣旨というのは、原子力規制庁の職員が原子力事業者や原子力利用の推進官庁からの不当な影響を受けることがないようにするとともに、原子力安全規制に対する国民の信頼を確保することにあることは当然でございます。
 具体的には、特定の原子力施設の検査業務に専属的に従事していた者が、その原子力施設を保有する電力会社に再就職するようなことだとか、原子力規制庁発足後に退職を迎えた者が、原子力関連以外も含めた出身元官庁の関係団体や関係企業に再就職することなどを徹底的に規制する、こういうことを考えております。
 このような規制については、原子力規制委員会において内規が定められ、適切な運用が図られていくものだと考えております。
 なお、国家公務員法上、営利企業等への再就職について公表制度がございますので、そのもとに、不断の監視、国民の監視のもとに置かれる、このように認識をしております。
 以上でございます。

○柿澤議員
 御答弁をいただいた田中先生に今後それなりのポストについていただいてこの履行監視をしていただければ、間もなくそういう機会もめぐってくるでしょうから、ぜひ御期待を申し上げたい、こういうふうにも思います。
 規制委員会の人選についてですが、原子力村に無縁の専門家なんて、国内には皆無と言っていい状況ではありませんか。規制行政が電力事業者と癒着していて、安全検査も電力事業者におんぶにだっこ、それで幾ら組織の独立を言っても、結局これは何も変わらないと思うんです。根本的な安全文化の立て直しが求められていて、日本がそれをできるのか、世界が注目をしている。
 今回の法案も、NRCを初めとする海外の事例を参考にしているわけですから、この際、当面の期間、まさに国際標準に合った安全規制のあり方をやはり日本において実現していくために、この原子力規制に専門性と知見を持った外国人の起用を検討すべきではないかというふうに思います。
 そういう意味では、規制委員会の委員の人選、幹部の人選にもそうした方々に入ってきていただく、このことが必要なのではないかと思っておりますが、そうしたことについて御見解をお尋ね申し上げたいと思います。

○田中(和)委員
 私どもも、今の日本の状況を考えるときに、世界の知見、優秀な人材の頭脳というものをこれから取り入れていくべきだと、このように思って議論してまいりました。
 その中で、この組織、委員会並びに規制庁の組織というのは、やはり公務員なんですよね、考えてみれば。公務員ということになれば当然決まりがあるわけでございまして、外国人はその任に当たることができません。
 そこで、我々も知恵を絞りまして、いろいろと考えまして、国外の大学や研究機関等から専門的な知識や経験を有する者を積極的に登用するということを定めておりますし、もう一方、参与だとか顧問などの職として活用できるのではないかと、このように考えておりまして、ぎりぎり、そういう外国の皆さんの知恵も能力も、我々のこれから活動の中に、大切なこの委員会や組織の中に、私は使わせていただけるようなことができるのではないかと思っております。
 柿澤議員の御趣旨、よく承って、我々も提出者として重く受けとめておきたいと思います。

○柿澤議員
 細野環境大臣の御奮闘にも日ごろから敬意を表しているところでございます。立派な大臣だと私も思っておりますけれども、ぜひ田中環境大臣の誕生を心よりお待ちを申し上げて、質問は終わりたいと思います。
 以上です。

○生方委員長
 次に、松木けんこう君。

○松木議員
 新党大地・真民主の松木けんこうでございます。
 また委員外でこういう質疑をさせていただけること、皆さんに本当にありがとうと言いたいところでございます。
 今回、政府の案と、そして自民党と公明党の皆さんが一生懸命案を考えられた。そして三党で合意をされたということなんです。いいことだと私は思いますけれども、ただ、うちの党なんというのはわけあり集団と言われている党ですから、私たちぐらいは無視しても構わないけれども、しかし、ほかにも党がいっぱいあるわけですから、それぞれが民主党に近い人たち、そして自民、公明党と近い野党の人たちでも何でも結構なんですけれども、ちょっと工夫をされて、そういう人たちの意見も聞くようなそういう時間をちょっとでもつくれば、これはまただんご三兄弟みたいなことを言われなくて済むと私は思うんですよね。
 ぜひそこら辺は、今の消費税のことでも同じことをやっているわけですけれども、ちょっとの工夫をぜひこれから、またの機会で結構でございますので、ぜひしっかりしていただきたいなというふうに思います。
 そして今回は、ベストミックスということで、譲るところは譲り合って、そして主張するところは主張し合って新しい原子力規制庁のこの法案をつくられたということだというふうに思います。
 その中で、特に問題点だった、あるいは、やはり話し合ったからこういういいものができたというのはあると思うんですけれども、ずっと今質疑を聞いていまして一つ思ったのは、総理大臣の菅直人さんリスクですか、大したものですね、名前までついてリスクになっちゃうんですからね。とても私にはできないことでございますけれども、こういう話が随分ありました。
 しかし、どうなんでしょうね、まず自公の方々にちょっと聞きたいんですけれども、この委員長が全権を握っているということになるんですか。政治家には責任は余りとらせるようなところはないんですか、これは。そこら辺をちょっと教えていただきたい。

○吉野委員
 お答え申し上げます。
 松木先生の奥さんの御実家は福島大熊町でございまして、今避難をされております。ですから、福島の事情をよく御存じだと思います。
 まさにそこなんです。みんな、全て規制委員会が仕切るんだと思っているんですけれども、規制委員会と、もう事故ってますから原災本部、いわゆる総理大臣、ここが本当に一緒になって事故の対応に当たらねばならないんです。
 ですから、そこの専門的な部分、いわゆる物理現象、ここのところは専門家である規制委員会が行い、ここから、きちんとこうしなさい、ベントをしなさい、海水を入れなさいということの答えがあれば、それを受けて原災本部長である総理大臣は、自衛隊を使ったり消防を使ったり、いかに住民の避難をさせていくかという、ここに基本的な役割分担があろうかと思っています。
 ですから、どっちがどっちなんだということじゃなくて、本当に規制委員会と原災本部が一緒になって事故対応に当たっていかなければならないと思っております。
 以上です。

○松木議員
 この間の質問のときに細野さんが、しかし、政治家がやはり決断しなきゃならないことがオンサイトにおいてもあるんだというお話がありました。
 ここら辺、確かに、今回いた総理大臣には問題もあったでしょうし、こういう同じようなことは二度と起きないような気もしますけれども、しかし現実には起こっちゃったわけですけれども、私は、政治家が最終的にはいろいろな責任を負うということというのがやはりあった方がいいだろうというふうに思いますので、これから原子力規制庁というのは開いて、それから、物事というのは一〇〇%いいものというのはまだありませんね。ですから、どうですか、ちょっとやはりそこら辺を譲ったわけでしょう。
 ぜひまたこれからもそこら辺は、やはり政治家というのは最終責任をとるということを常に頭に入れながらやらなきゃいけないという点において、これで終わりじゃなくて、これからも、ぜひ与党、野党の中心的なところがやはり話し合いを続けていくのもよかろうかなというふうに思いますけれども、どうでしょうか。

○細野国務大臣
 いろいろと私にお気遣いをいただきまして、ありがとうございます。
 私は、今回の三党で合意をした案というのは、いろいろなバランスを考えた上で御判断をいただいたというふうに思っています。総理の指示権は残しながらも、技術的、専門的なことについては、これは指示権を発動できないようにする。そのことによって、そこはバランスがとれた部分があるというふうに思います。
 もう一つは、オフサイトについては、これは政府全体で取り組まないと、防災訓練なんかもそうですし、立地交付金なんかもそうなんですけれども、対応し切れませんので、そこについては、防災会議というのをつくっていただいたのが、私は、形としては非常にうまく機能するようにできるんじゃないかと思っています。
 問題は、先ほど吉野先生がおっしゃったとおり、では、この独立した三条委員会、環境省のもとに置かれるこの三条委員会と内閣府の防災というのをどううまく連携していくのかと。形は全く違う組織になっていますから、そこが最後の肝だろうと思うんです。
 私は、昨年の事故を経験して、オンサイトとオフサイトというのは、まさに一体的に機能しないと事故に対応できないということを身をもって体験をしました。ですから、そこのつなぎ役を環境大臣がやるというのが、恐らく、法案をつくっていただいた皆さんの趣旨もしっかりと踏まえて現実的な事故にも対応できるという、そういう体制なのではないかと考えております。

○松木議員
 かなりいいものができたということで、おめでとうございます。国民も安心する第一歩になるんではないかなというふうには思います。
 そこで、原子力というものを、将来、脱原発と言う人もいるし、やはり原発を使っていかなきゃならないと言う人もいるし、いろいろな方がいると思います。私も私なりの意見はありますけれども、それはおいておいて、脱原発だろうが、このまま原発をある程度使っていくだろうが、いずれにしてもやらなきゃならないことがあるんですね。
 それは何かというと、最終処理の問題です。これはどっちにしたって、今やめると言ったって、もういろいろなものがあるんですから、こういうものをやはりしっかりやっていかなきゃならないというふうに私は思います。
 であれば、どっちの方向に行くにしても、やはり、そういう技術者なり担っていただく方々を育てていかなければ絶対いけないんですね。これはやはりこれからも予算をしっかりつけてやっていくべきだというふうに私は思っておりますけれども、そこら辺は、もしよかったら細野さんから、御意見があったら。

○細野国務大臣
 御指摘いただいたとおりだと思います。
 原発の数が少なくなるというのは、これはもう政府の方針でもあるし現実でもあるというふうに思うんですが、使用済み燃料は残りますので、それにどう向き合っていくのかというのは、国家的な課題といっても言い過ぎではないというふうに思います。
 原子力委員会の小委員会の方でも、全量直接処分や再処理、また、この組み合わせも含めて三つの案を出しておりますが、どの案をとるにしても、最終処分の問題は出てくるわけです。ですから、そこにしっかりと向き合うことは、国家として絶対に欠かしてはならないと思います。そして、そのときに一番重要なのは、今、松木委員が言われたように、技術者をしっかり確保するということです。
 残念ながら、今、原子力というのは魅力がなかなかないと言われていて、専門家が集まっていません。このまま例えば十年たち、二十年たち、廃炉まで三十年から四十年、そして使用済み燃料ということになると、その先もこれは技術者を確保するのは、並大抵のことではありません。
 ですから、原子力の専門家というのも、これまでのような推進サイドの専門家ではなくて、むしろ、使用済み燃料の取り扱いとか、環境問題とか、安全とか、そういったことでしっかりと学べるような、産業のあり方自体も変えなきゃならないし、人材育成もやり方を変えなければならないのではないかと考えております。

○松木議員
 大変いい答弁だと思います。ぜひそういうふうにして頑張っていきましょう。
 給料も少し高くしてやらなきゃいけないかなと思いますよね。だって、みんなやりたくないんだから。やりたくないんだったら、そこでいい人材を本当に確保しようとしたら、やはり給料を上げなきゃだめだということもちょっと頭に入れておいてください。
 あとちょっと私ごとの話を、あと五分ありますので、お話しさせていただきます。
 さっき吉野先生からお話がありましたけれども、私の妻は大熊町というところの出身で、父と母も、そして家族も、全員大体大熊町に三月十一日もおりました。そして、残念ながらああいう事故が起きて避難をしたということでございまして、郡山高校の体育館でしばらく避難生活を余儀なくしておりました。
 私も、なるべく早く顔を見たいなと思って、その体育館にも行ってきました。大熊町の町民の皆さんが、同じ体育館でみんな一緒になって寝ていました。大変だなと思っていました。残念ながら、三日後にうちの母がその体育館で倒れました。そして、一年間入退院を繰り返して、やはり大熊に帰りたい、そういう言葉を残して、残念ながら先週亡くなりました。八十三歳ですから、それなりに人生もいただいた母親だったんじゃないかなというふうには思いますけれども、葬式をやったときに、私、非常に思ったことが一つあるんです。
 というのは、私の父は大熊町の町議会議員を三十年やっていました、町議会議長もやりましたし。ということは、私は今民主党でもなくなりましたけれども、要するにうちのおやじは自民党なんですよ、自民党だった。ですから、農協共済の組合長それから葉たばこの問題だとか、いろいろなありとあらゆる役職についていた、典型的な田舎の、しかし有力者というか、地域の人たちのお世話係みたいな雰囲気のおやじだったんですね。
 それで、葬式があった。しかし、葬式があっても誰もお参りには来ませんでした。それは松木君、嫌われていたんじゃないかなと言うかもしれない。そんなことはないんです。意外と好かれていたおやじだったと思うんですね。というのは、もう連絡がとれないんですよ、全然。確かに、福島の葉たばこの関係から花輪は来ていたんですけれども、九九%が私のものなんです。ほとんど連絡がとれない。そして、うちの母の本当に仲のいい人は町内にいるんです。やはり顔を見せなかった。もうわからない。
 そして、もう一つびっくりしたのは、親戚が集まったわけですよ。そうすると、おい、あいつどうしたんだ、いや、実は三カ月前に死んだんだよ、こんなのまでありました。要するに、もう地域が破壊されているんですよね、残念ながら。
 というのは、こういう大きな事故があったので、一年ぐらいはこれはしようがなかったかなというのもあります。しかし、もう一年数カ月たっている。消費税のことをみんなで話し合いするのもいいけれども、私はやはり、この原発のこういうことをいち早く解決してもらいたい。自分の家族のこともあるもので、随分私的なことをお願いするみたいで申しわけないところもありますけれども、本当に私はこれは大切なことだというふうに思います。ぜひこれからも、早くこれが済むように努力をしていただきたい。
 細野さん、あなたは若いし、吉野先生にしても私なんかも大体死んでいくんだから、あなたは将来総理大臣になるかもしれない。別にそれはよいしょしているんじゃない。これは、いい政治家になってもらうための本当にすごい経験を今していると僕は思う。ぜひこういう経験も生かしてこれからもっともっと立派な政治家になってもらいたいし、そして、この原発の問題、本当に早く解決をしていただきたいと思います。
 御所見があれば、もう時間が来ましたけれども。

○細野国務大臣
 お母様の件、お話を聞かせていただいて、本当に申しわけないという気持ちでいっぱいでございます。
 私もあの郡山の体育館へ行きましたけれども、大熊の方が本当に大勢おられて、本当に御不自由な生活を送っておられました。体調を壊された方もたくさんおられたんだろうと思いますので、心よりおわびを申し上げたいと思います。
 原発の事故への対応ということで今一番大事なのは、皆さんに、どこで生活をしていただくのか、そういう将来展望を示すことだというふうに思っています。もう一つは、やはり経済的な問題もありますから、賠償についてしっかりめどをつけることだというふうに思っております。
 私にとりましては、国政の課題はいろいろありますが、それが一番大事な課題だ、その思いで取り組んでまいりますので、ぜひ御指導をこれからもよろしくお願い申し上げます。

○松木議員
 時間が来ましたので、これで終わります。

○生方委員長
 以上で発言は終了いたしました。
 お諮りいたします。
 本起草案を委員会の成案と決定し、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

〔賛成者起立〕

○生方委員長
 起立多数。よって、そのように決しました。
 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○生方委員長
 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

○生方委員長
 次に、本法律案の提出に際しまして、近藤昭一君外五名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の共同提案による原子力規制委員会設置等に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。田中和徳君。

○田中(和)委員
 ただいま議題となりました原子力規制委員会設置等に関する件につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 趣旨の説明は、案文を朗読してかえさせていただきたいと存じます。

原子力規制委員会設置等に関する件(案)

  政府は、「原子力規制委員会設置法」を施行するに当たっては、次の事項に留意し、その運用について万全を期すべきである。

 一 本法律が、「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資すること」を目的としていることに鑑み、原子力規制行政に当たっては、推進側の論理に影響されることなく、国民の安全の確保を第一として行うこと。
 二 原子力規制庁の職員の人事については、本法律が原子力利用における安全の確保のための規制の独立性を確保する観点から、全ての職員に原子力利用の推進に係る事務を所掌する行政組織へのノーリターンルールを適用することとしていることに鑑み、法施行後五年以内にあっても、可能な限りその趣旨に沿った人事を行うこと。
 三 原子力安全規制の専門技術的事務を担う独立行政法人原子力安全基盤機構の統合は、一体的な原子力安全規制行政の確保に不可欠であることに鑑み、統合のための法制上の措置が可能な限り速やかに行えるよう、関係の行政機関が一体となって取り組むこと。また、その職員の引継ぎに当たっては、現在の給与水準の確保及び専門的な知識及び経験を要する職務と責任に応じ、資格等の取得の状況も考慮した給与の体系の整備その他の処遇の充実のための措置を行うこと。
 四 原子力安全規制の独立性を確保するためには、職員の原子力安全に関する能力等の向上を図ることが重要であることに鑑み、国際機関や国内外の大学や研究機関との人事交流や職員の研修制度の充実のための措置を行うこと。
 五 東京電力福島第一原子力発電所事故においては、緊急事態応急対策拠点施設、いわゆるオフサイトセンターが機能しなかった反省に鑑み、原子力防災対策に関し現地での実効性を担保するために、オフサイトセンターを原子力施設から適切に離れた場所に設置すること。また、その場所は、原子力施設近傍の原子力災害を受けない場所に第二オフサイトセンターを新設するのではなく、県庁等の関係者の参集が容易な交通手段が整い、情報収集や指示・命令の情報伝達を行う通信の確保が図りやすい場所を基本とすること。
 六 原子力災害において、避難が遅れた住民の安全の確保が図られるよう、放射線防護のための一時避難が行える施設を整備すること。
 七 今回の東京電力福島第一原子力発電所事故から、緊急時の防災は平時から防災に対する備えが重要であるとの教訓を得たことに鑑み、原子力防災会議と原子力規制委員会は平時から緊密な連携関係を構築し、防災体制の一体化を図ること。
 八 内閣に置かれる原子力防災会議及びその事務局長、事務局の在り方については、原子力災害を含む大規模災害への対処に当たる政府の組織の在り方についての抜本的な見直しの方向性を踏まえつつ、この法律の施行後三年以内に行われる原子力利用における安全の確保に係る事務を所掌する行政組織に関する検討と併せて、その見直しを行い、必要な措置を講ずること。
 九 地方公共団体、住民等が編成する地域の組織と、国、原子力事業者及び関係行政機関等との緊密な連携協力体制を整備するため、フランスにおける原子力透明化法に規定される地域情報委員会制度等、諸外国の事例等を踏まえつつ、望ましい法体系の在り方について検討し、必要な措置を速やかに講ずること。
 十 第十一条第四項の内部規範を定めるに当たっては、原子力規制委員会は、以下の各点の規定を設けること。

  1 委員長若しくは委員個人の研究又はその所属する研究室等に対する原子力事業者等からの寄附について、その在任中のみならず、その就任前直近三年間についても、寄附者及び寄附金額を公表する旨の規定
  2 委員長又は委員が、その在任中、原子力事業者等から寄附を受けてはならない旨の規定
  3 委員長又は委員に就任した者が研究を指導していた学生の原子力事業者への就職について、その原子力事業者名、事業者ごとの就職者数等を公表する規定

 十一 原子力規制委員会が行う原子力事故の原因の調査に関する事務については、原子力行政において過去に原子力事故やトラブルの隠蔽がされてきたことへの反省に立ち、事故等の規模にかかわらず、国民に対し、速やかに全ての情報を公開することを旨として行うこと。
 十二 国家公務員を新規に採用するに当たっては、原子力規制庁に十分な人材が配置されるよう、一定の採用枠を確保する等の配慮を行うこと。
  右決議する。

以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○生方委員長
 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

〔賛成者起立〕

○生方委員長
 起立多数。よって、本動議のとおり決議することに決しました。
 この際、ただいまの決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。細野国務大臣。

○細野国務大臣
 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、努力してまいる所存であります。
 この法律案の成立、さらには、その真摯な御議論に御協力をいただいた全ての皆さんに、最後に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

○生方委員長
 お諮りいたします。
 本決議の議長に対する報告及び関係各方面への参考送付等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○生方委員長
 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時十五分休憩
    午前十一時四十一分開議

○生方委員長
 休憩前に引き続き会議を開きます。
 本日付託になりました内閣提出、地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。細野国務大臣。

 地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件

〔本号末尾に掲載〕

○細野国務大臣
 地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 このたび国会において提出されました原子力規制委員会設置法案において原子力安全・保安院が廃止されることに伴い、現在、産業保安に関する業務を行う組織として原子力安全・保安院に設置されている産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署を経済産業省の地方機関として設置することについて、地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づく国会の御承認を求めようとするものであります。
 以上が、本件の提案理由説明及びその内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御承認くださいますようお願いいたします。

○生方委員長
 以上で趣旨の説明は終わりました。

○生方委員長
 本件につきましては、質疑、討論ともに申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 内閣提出、地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件について採決いたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

〔賛成者起立〕

○生方委員長
 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○生方委員長
 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

〔報告書は附録に掲載〕

○生方委員長
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

第180回 国会 衆議院 環境委員会

第180回 衆議院 環境委員会 第5号
平成24年6月8日(金)
午前九時開議

【原子力規制委員会設置法(自公案)の提案者としての答弁 】

【本日の会議に付した案件】
・原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)
・原子力安全調査委員会設置法案(内閣提出第一二号)
・地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)
・原子力規制委員会設置法案(塩崎恭久君外三名提出、衆法第一〇号)

〇生方委員長
 これより会議を開きます。
 規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件並びに塩崎恭久君外三名提出、原子力規制委員会設置法案の各案件を議題といたします。
 本日は、各案件審査のため、参考人として、獨協医科大学准教授木村真三君、福島原発事故独立検証委員会委員長北澤宏一君、法政大学大学院客員教授宮野廣君、認定NPO法人環境エネルギー政策研究所所長飯田哲也君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、参考人各位からそれぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
 それでは、まず木村参考人にお願いいたします。

〇木村参考人
 おはようございます。獨協医科大学の木村真三と申します。
 きょうは、実は皆さんにお配りしたレジュメの方にも出していますが、このお話をメーンにしてやっていきたいと思います。さらに、大変申しわけございません、誤字脱字が多々ありますことを、この場をおかりしておわび申し上げたいと思います。
 それでは始めたいと思います。
 まず、私が今回このような場所でお話をするということになりまして感じたのは、まず、原子力規制庁という法案作成の場ということですが、私自身の考えとしては、安全、安心という言葉自身が私は大嫌いです。安全というものは、技術革新、技術の進歩によって行われることですが、安心というのは全く受け手側の心理的なものである。全く違うものを一緒に言葉として使っていること自身がまず間違いであると私は思っております。
 これまで私自身が文部科学省政務三役勉強会や内閣官房の低線量被曝影響ワーキンググループ等でお話をして申し上げてきましたが、まず、規制庁というよりは、ウクライナとかロシア、アメリカ等もつくられております緊急事態省の方がより効果的で、その発動権限等についてもよく研究なされているのではないかと私は思っております。
 原子力発電自体を継続させるべきか、また、将来的に廃止していくべきかについて国民的な合意がなされていないまま、原子力の安全利用を前提とした組織を新設するのは適切でないと私は思っております。原子力を利用するのであれば、安全性について我々が徹底的に監視するという基本姿勢を持った組織をつくるべきであろうと私は思っております。
 原子力規制庁、原子力規制委員会が一時的な組織でないかと受けとめられると職員の士気を低減させるおそれがあり、恒久的な組織として存続させる用意が必要であると考えております。
 原子力規制委員会が独立性を持った三条委員会として設置されるとしても、その判断が環境省や内閣の政治的意図に左右されない姿勢を確保しなければならない。
 東海村臨界事故の際も、科学技術庁は、自身の管轄下であった核燃料取扱事業所に対する事実の隠蔽や、自身が管轄する事業所についての不都合な事実を隠蔽するために、調査を阻止しました。
 現に、私が当時の放射線医学総合研究所で現地に入りたいと申し上げたときに、まず企画の方からだめだと。所長の方にお願いをしていったときにも、本庁が許可をしないということで取り下げられてしまって、一週間初動がおくれてしまったということがあります。当時の政府は、緊急時の情報を集約するためのシステム構築は完成させたが、国民への情報公開への配慮は欠けていました。
 今回、この事故に対しても全くそのとおりで、このようなことがあったがために、国民の政治不信、行政不信につながったと考えております。
 チェルノブイリ原発事故調査を、ことしで十三年目、十二年間続けております。その経緯から申し上げましても、日本政府はチェルノブイリの教訓を全く生かしていないというふうに感じております。
 今回の福島原発事故の際、参考人が当時所属していた厚生労働省所轄の独立行政法人労働安全衛生総合研究所でも、調査の規制が入りました。これは、当時の研究所幹部、本省から出向職員として来た理事、また、企画調整部首席の保身からではないかというふうに考えております。
 さらに、事業仕分けの弊害から、科研費で私がチェルノブイリ研究をもとにこういうような震災等があったときに必ず生かせるというようなテーマとして出してきたものも、労働衛生ではないという理由により、廃止を震災二日前に研究所の役員会で決定され、廃止処分を受けました。
 このようなことから考えても、こういう国立研究機関やそれに準ずるような機関が一体何のために存続するのかということを、まず皆さん、考えていただきたいと思います。こんなものは実際につくったって仕方がないんです。こんな小役人が実際に自分たちの保身のためだけでやってしまうような、それが、本来持つべき、国民の意図するものと全くかけ離れているということを、皆さん、どうかこの席上で考えた上で、今後の審議に入っていただきたいと思っております。
 そのような気持ちから、今回の震災があった、事故が起きたといった瞬間に、ああ、やめなければならないということで、辞表を提出して、現地に三月十五日から入りました。
本来は三月十二日にもう既に入る予定でしたが、NHKのドキュメンタリーがどうしても撮りたいということで、一般公開という形では、今までの既存の考え方である論文や学会等の発表、こんなものはどうだっていいんです。これは、今緊急時における実態というものに対しては、すぐさまにでも国民にその情報を提供し適切な判断を促すというのが我々研究者の立場です。こういうことができないということで、考えたあげく、NHKの協力を得て現地に入りました。
 実際、このような状況になったのは、政治も含めて、誰のためのものなのかということを問題提起したいと思います。
 事故に関する情報を、前回の轍を踏まえて、ジェー・シー・オー事故、東海村臨界事故を踏まえて一元化したにもかかわらず、正しく事故状況を認識できず、間違った政治的判断を下すことになったということも、ここは問題と思います。
 原子力、放射能の専門家、例えば東海村臨界事故で陣頭指揮をとったような先生方を身近に置けば、被害の拡大が現在よりも数段軽減されるというふうに私は思っております。誰が まともな専門家なのか判断するのは極めて困難です。目立った人材には、問題を抱えている場合が非常に多くあります。事故時対応や安全対策の実績で選ぶというような方法が良案ではないかと考えております。
 首相官邸に指揮系統をまとめることは不可能であり、原子力安全委員会や原子力保安院と同じ機能だけではなく、事故を想定した事故対策班をあらかじめ設置しておくべきだと考えております。
 その際に重要なのは、原発や産業発展を重視せず、国民の生命を守ること、第一義にそのことを考えてそのような人材を集めてくることが重要であると考えております。
 その件に関して、ノーリターンルールではそのような人材が確保できるかということについて、皆さんもう少し考えていただきたいと思います。これは、民間も含めた上で、安全対策というものを徹底していかなければならないと私は思っております。
 また、行政に関しても、経済産業省が、今回、大飯原発の再稼働の推進というようなこともあり、ここに書かれています資料を皆さんお読みになっていただければいいと思います。
このようなことがあったり、文部科学省が、当時、SPEEDIが活用されていないということも含め、さらに、事故後のモニタリングポスト、私は、いわき市川前町志田名というところにおとといの夜から入り、きのうの午前中そこで仕事をして、さらに、二本松で仕事をして帰ってきました。このようなときに、全てモニタリングポストがあるんですが、そこは全て除染されているんです。ほとんど除染された上にモニタリングポストが立っているんです。数値があたかも低く見せられているんですが、現実問題、そこには二マイクロシーベルトがあるところでも〇・三マイクロぐらいの数値しか出ていない。
 このようなことが新聞報道で、全国紙で発表されてしまえば、福島の現実というものが、実は大したことないんだと国民に思わせてしまいがちです。ところが、福島県の地元紙などでは、挙げられた線量について事細かく書いておりますが、そのような数値は一切入っておりません。飯舘村にしても全く同じことが言えます。このようなことを、実際、文部科学省は一体どう考えているのかということを私は問いたいと思います。
 また、気象庁についても、SPEEDIが動かなかったときにはそのバックアップ体制として機能しなければならないのに、国研である気象研究所には箝口令がしかれていた。この事実は私自身が確認しております。このようなことからも、実際、機能はしていない。誰のため、自分たちの保身のためだけというようなこんなものは、潰してしまった方がいいと思います。
 また、その研究者が一番の問題です。研究者も論文至上主義というような形にとらわれてしまい、予算がいろいろな関係機関から配られるということで、それに迎合するような形で事故当時のマスコミに出られた方々はそう言っておられます。実際、そういう方々は、自分の研究費なんか、僕なんかは手弁当でやっているわけです。手弁当でやっているような人間でも、できる範囲でもやれることはいっぱいあるわけです。そのようなことを、実際、頭を使ってやっていないということが一番の問題だと思います。
 また、原子力工学の専門家が、放射線影響に対して、人体の研究が何たるかわかっていないのにあたかも知ったかのような話をしたり、また、放射線医学の専門家が放射線計測学や物理学的、化学的な要素を含んだ話を住民説明会等でして、住民の不信感を買ってしまう。このようなことが実際多く見受けられております。
 実際、私は、事故現場で今ホームステイしながら住み、暮らしていますが、そのようなところから非常に多くの言葉を聞いております。
 このようなことから、研究者自身というものに対してもきちんとした対応をせねばならない。マスコミ等で出てきた情報というのは一体何カ月後、これは本来この人たちに最初に出すべきでしょうというのをやっていない。このようなことを、実際、あたかも学者面して話をすること自身がおかしいと私は思っております。
 私の活動というものは、こちらの方にお渡ししていますが、これはほんの一部の抜粋です。最近有名になったのは二本松における汚染マンションの発見ですが、これも、私は当初からこれを予測した上で、個々の個人被曝線量をはかりながらきちんと見ていくというようなことで出しております。
 そのようなことで、御質問等があればこの後受けますので、よろしくお願いします。
 また、大飯原発の再稼働については、きちんとこの責任の所在を考えなければならない。東電、政府、また、野田首相においては全責任は自分自身でとると言われますが、一体何をするのか、どういったことを言っているのかというのが全く見えてこない。私は、これは国民の声を代弁して言っているつもりです。
 このようなことで私の意見陳述は終わりたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)

〇生方委員長
 木村参考人、ありがとうございました。
 次に、北澤参考人にお願いいたします。

〇北澤参考人
 北澤でございます。
 本日は、私は民間事故調の委員長をやらせていただいたということでこちらにお呼びいただいているかというふうに思いますけれども、規制庁との関係も考えて、二点お話ししたいと思います。
 こういう横長の資料を一枚だけ、皆さんのお手元にお配りしているかと思います。
 それで、私が申し上げたい二点は、一番目は、なぜあのような大きな事故になってしまったのかということの調査結果から学ぶことであります。第二は、なぜ事故対策ができていなかったのかということに関して、規制庁とのかかわりでどういうことが考えられるかということを申し上げたいというふうに思います。
 この民間事故調といいますのは、一番下に書きましたけれども、日本再建イニシアティブ財団というところが新たにできまして、そこは、原子力、電力関係の企業からは寄附金をもらわないということで設立された財団なんですけれども、そこが中立を保って、国会の事故調それから政府の事故調、東電の事故調とは独立に調査、検証するんだということで、私も協力させていただいたわけであります。
 それで、この事故調は全く権限がございませんでしたので、多くの方々から、そんな何の権限もない事故調に一体何が調べられるんだというふうに言われました。私もそう思っておりました。しかし、民主主義の国において民間の事故調がこのような大きな事故が起こったときには活動するというのは、民主主義国の責任でもあり特権でもあるというふうに言うことができるかと思います。
 スリーマイルアイランドの事故が起きた三十年前にアメリカでも民間の事故調もできて、二十年後にまだそれを検証する本が出版されるというような感じで、スリーマイルアイランドの事故、これは福島に比べればはるかに小さな事故でありましたけれども、非常に大きなショックを持って迎えられたわけであります。
 そういうことで、三月十一日の一周年までに私どもは報告書を出すことができました。それで、約三百人の方をヒアリングさせていただいて、三十人のワーキンググループ、これは若い人たちですけれども、彼らがヒアリングをして、その結果をまとめたわけであります。
 この民間事故調の報告書といいますのは二千部ほど刷らせていただきまして、報道陣の報道によってその日のうちにあっという間にあちこちから問い合わせがありまして、すぐにはけてしまったというようなことがありました。ただし、民間事故調にはお金もないということで、仕方なく、市販本としてその後十日間のうちに印刷してもらって、出すことにさせていただきました。本屋さんの名前をつけただけで、報告書を全くそのまま市販本として出させていただいて、アマゾン・ドットコムの調査では、それが二週間ぐらいのうちにベストセラーになったということであります。
 私どもの印象としましては、こういう報告書などというものを一般の方々が何万部も買ってくださるということは、日本の国民がいかに関心を持っているかということであったというふうに思っております。
 そういう中から、きょう、二点ちょっとお話しさせていただきたいんです。
 まず第一点は、なぜあのような大きな事故になってしまったのかということに関してでありますけれども、これは一言で申し上げれば、大量の放射能の源が過密に配置されていたということであります。つまり、量が多かったということと、過密配置であったというこの二点。ですから、この二点が今後も直らない限りにおいては、また大きな事故が起きる可能性を抱えているということであります。
 それで、過密に配置されていると事故対策の活動が阻害されるんですけれども、それは、瓦れきが飛ぶ距離、それから、放射能レベルがベントなんかをしたときに上がってしまう距離の中に第二の原子炉があったり第二の放射能の源が配置されていると、そこへ近づけなくなってしまう。
 それで、原子炉というのは、実は、人間がそこに手を加え続けないと暴れ出してしまう、そういう存在であったということであります。これは多くの方々が御存じないし、私自身も知りませんでした。つまり、ほっぽっておいたら原子炉というのは黙っていないということであります。
 それはどういうことかといいますと、燃料棒から大量の放射能が出てくる。その放射能というのは大きなエネルギーを持っている粒子のことでありますので、大きなそのエネルギーというのが自分自身を加熱してしまって、熱くなって溶けてしまう。そうすると、そこから放射能がさらに出てきてしまう。そういう問題であります。
 そのために冷やし続けなければならないわけですけれども、それが、人間が近づけなくなってしまうとできなくなってしまう。電源があれば自動的に遠隔操作できるわけであります けれども、それができなくなった、電源が全て喪失してしまったというのが今回の福島の事故でありました。
 それで、そのために事故が次々と拡大していくわけでありますけれども、余りにも過密に配置されていたということが、第一に我々が学ばなければならないことであるというふうに思います。
 実は、福島の事故というのは、安全か安全じゃないかという、ゼロか一では決してありません。ゼロに限りなく近い事故もあるし、一に限りなく近い事故といいますか、うんと大きな事故もあり得るわけでありまして、ゼロか一では決してない。
 ですから、今後も、安全か安全じゃないかという問いに関しては、答えることはできない問題であります。この程度に危険である、この程度に安全であるというそういう答え方になりますので、それともう一つ、なぜつくらなければならないのか、なぜ稼働させなければならないかということとのバランスで物事が決まっていく、そういう問題であるというわけであります。
 したがいまして、どれだけ大きな事故が起きるのかというこの源を少しでも少なくするというこの問題というのは、これから非常に大きな問題だと思います。
 なぜそんなに大量の放射能源が置かれているのかということなんですけれども、それは、使用済み核燃料をどこにも持っていけないという、この問題があるということであります。この問題がある限りは、原子炉は非常に危険な量の放射能を自分の建物の中に抱えておかなければならない、そういうことであります。これはよくトイレのないマンションであるというふうに原子炉が言われるのは、そういうことを表現しているというのがまず第一点であります。
 第二点。その事故が〇・一でとまるのか、〇・三までいっちゃうのか、〇・五までいくのかというのは、事故が起こり始めてからの対策がどれだけ準備されていたかということによって決まります。残念ながら今回は、電源が失われて、そこから後の対策は実はほとんど立てられていなかったということが、私たちの調査でもわかっております。
 どういうことかと考えてみますと、それは、電源が失われると、いろいろなことをマニュアルでやらなければ、手動でやらなければならないことになるわけであります。そうしますと、ふだん、自動で、遠隔操作でスイッチを押せばいろいろなことができるようになっているわけですけれども、それを全部手動でやらなければならない。では、一体、バルブとかそういったものがどこにあるのかというようなことがふだん訓練ができていないと、それは緊急時にはできないということになります。
 ですから、一番最初の日、それから翌日、翌々日、そのころの福島第一のテレビに出てくる様子を見ると、非常にもたもたしているふうに見えました。
 なぜかといいますと、やはりどうしていいかわからない。ではこうしようと言って、これは非常に泥縄的なことになるんですけれども、これをやってみる、やってみようと言って行くと、どこにあるかわからないというようなそういったことが続いていくわけであります。それで、探してそこにたどり着いてみると、もう放射能レベルが上がってしまっていて近づけない。
 そして次に、では電源車を、電池をたくさん積んだものを持ってこようというようなことを考えても、それをどうやってつないでいいかわからない。あるいは、消防ポンプがやってきても、どうやって水を入れたらいいかそこが考えていなかったというようなことで、いろいろなことを対策を立てるんですけれども、私たちの報告書ではこれを、泥縄的な対策がいろいろ行われたというような書き方になっておりますが、それは今申し上げたようなことを意味します。そういうことのために、もはや手おくれという状況になってしまうわけであります。
 それで、最初申し上げましたように、原子炉はとにかく燃料棒を冷やしていないと放射能が漏れるようにだんだんなっていってしまう、そういう問題でありました。ですから、なるべく早くいつ冷やせるかということが最も大事なことであったわけでありますけれども、それが今回できなかった。
 これが、そこに書きましたように、推進、規制両方の組織的な怠慢によってそれが起こっていた、しかもそこにはおごりがあったというふうに、ちょっと厳しい口調で我々の報告書に書かれております。
 このおごりとは何を意味するかということなんですけれども、実は、スリーマイルアイランドの事故が三十年前、チェルノブイリの事故が二十五年前にあったわけでありますけれども、海外はそれに非常に恐れをなして、いろいろな事故の対策というのを立てたわけであります。日本は、事故は起きないということのもとにその対策を立てなかった。日本は、原子力の技術は最もすぐれていて安全だというふうに、海外が対策を立てるときに、日本国内でそういうふうに言っていたということであります。
 これは一番下から二行目に書いてありますけれども、日本では安全神話というものができて、その安全神話によって、規制側及び推進側も自分たち自身の手を縛ることになってしまった。なぜかと申しますと、一〇〇%安全であると言い張ったわけであります、これが安全神話なんですけれども、そうしますと、一〇〇%安全なものにそれ以上の安全はない、そういう論理ができていってしまうわけであります。
 ほかの国は、安全性がまだ不十分だからということでいろいろな対策を立てて、遠くの方からぐるぐるとベントのバルブを回したり、そういったことができるようにいろいろな改造を加えていくわけでありますけれども、日本はやらなかった。なぜやらなかったか。一〇〇%安全だからというふうに言い張るからであります。そうすると、何の対策も立てられない。対策を立てようとすると、では一〇〇%安全じゃなかったんですねと言われてしまう、この問題であります。
 そのために、一〇〇%安全だと言えば言うほど安全対策はできなくなっていってしまうということがこの三十年間起こっていた、その実態があったということを民間事故調は強調いたしました。そして、日本の技術はすぐれているというふうに言うことによって、一〇〇%安全ということをサポートするような言い方になっていたわけであります。
 このことは、日本だけがなぜそんなガラパゴス化したようなそういう状況を迎えたのかということなんですけれども、これは、個々人が空気を読むという、そういう日本のこれはいい風土でもありますけれども、安全に対してもうからない規制をやらなければならないというこの原子力の特殊性、そういう分野においては、お互いに空気を読んで、規制側は推進側が困らないように、こういう形で今までの規制は行われていた。私たちはそれを、組織的な問題があったというふうに考えております。
 したがいまして、組織及び法律によってそういう空気を読む、そういう雰囲気のもとで規制が行われ安全対策が考えられるようなそういう原子力行政では、今後も同じことが発生するということを申し上げたいと思います。
 そうしますと、なぜ、空気を読む、そういう土壌ができてしまうのかというのが最後の問題になるわけでありますけれども、これは、先ほど木村先生のお話にも出てきましたけれども、ノーリターンルールとか、その辺のことが非常に大きな問題になる。
 特に、日本では永久雇用システムのようなものが定着しておりますから、自分がいつ、どこに帰っていくのかという帰巣本能みたいなものが、これは公務員を初めいろいろな人たちにあります。私たちにもあります。
 その帰巣本能、最後に戻っていく先というんですか、そういうものがあるために、そこに不都合になるようなことを、今自分が規制側にいてもやることができないというこの問題であります。
 そのことを、今後、規制の組織をつくり、法律をおつくりになられるときには、ノーリターンルールというのはそういうことから出てきてはいますけれども、では、どこの巣に帰っていったらいいのかということまで考えないと、このノーリターンルールというのは実効が出てこないということになるかというふうに思います。
 以上のことを申し上げまして、私のプレゼンテーションを終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。(拍手)

〇生方委員長
 北澤参考人、ありがとうございました。
 次に、宮野参考人にお願いいたします。

〇宮野参考人
 宮野でございます。
 私は、長い間、原子力標準委員会の委員長をやりまして、公正、公平、公開という原則のもとに、規格基準づくりに携わってまいりました。そういう立場から、現在思うことを話をさせていただきます。
 まず、きょうの課題であります安全規制の組織をどうするかということについて、一言まず申し上げさせていただきます。
 安全規制というのは、原子力安全の確保をするというのが規制でございます。そこには、もちろん、政治、政策といったものが入る余地はないと私は思っておりますし、原子力安全の確保は合理的な科学的判断によるものでなければならないというのは、これまでお二人の話の中でも当然のことであると、私もそういうふうに思います。
 安全を超えて安心を求めるという声はもちろんあるわけでございますが、それは、安全を確保した上で規制機関や事業者に信頼が生まれれば、当然、そこに安心が生まれてくるものであるというふうに思っているところでございまして、安全と安心は明確に分けて議論しなければならないというふうに考えているところでございます。
 さて、原子力の平和利用としての原子力発電を推進するかしないかという問題は、エネルギー政策の一環として国民が決定することでありまして、それはさまざまな選択肢があるというふうに私も理解しております。
 規制機関は、原子力発電のエネルギー政策上の位置づけがどういうふうになろうとも、その原子力安全を確保しなければならないというところは当然のことであります。
 もちろん、安全規制というのは、人との関係を考慮した上で、その原子力安全の確保という命題に対して純然たる技術的領域の問題であり、専門家が何者からの影響も受けずに、責任を持って取り組むことが必要であるというふうに考えています。
 こういうことは、IAEA、国際原子力機関の安全原則にも、規制機関の役割として独立性の重要性が指摘されておりまして、先進各国では、当然、独立性が保障されているのが現状であります。
 この規制機関の独立性というのは、通常の安全確保、常時の安全確保と異常時の安全確保と双方において確保されなければならないというところが当然であります。
常時の原子力安全の確保ということは、規制機関が組織として独立をして、責任を持って安全確保に努めるということは最も重要なことであるというふうに思っております。
その上で、原子力の特殊性から、地域住民との関係が重要な要素となると考えております。
 それは、原子炉設置者が、地域として必要な、もしくは対応できる意見をプラントの運用に取り入れて、地域住民とともに発電所の安全と地域の安全をつくり上げるということは、当然のことながら、やる姿勢が重要でありますが、それを規制機関が十分にバックアップしていくということも規制機関の重要な役割の一つであるというふうに考えているところであります。
 原子炉は五層の安全対策がとられています。これは深層防護と言われておりますが、第一層が異常の発生の防止、第二層が拡大の防止、第三層が影響の緩和であり、そして第四層が、事故が発生したときの対応、異常が発生したときの対応、さらに、バックアップとして第五層が防災というふうに言われております。それぞれの層においては、異なる考え方で見て安全を確保していくという対策がとられるわけでございます。
 安全を担うこの組織が、現場に人を配して、必要に応じて情報収集して、直接こういった各層に対応した対応をすぐに判断できるような手を打つことが重要であるというふうに考えておるわけでございまして、昨年の事故でも、当然皆さん御承知だったと思いますが、事故は待ってくれません。どんどん進みます。そういう意味で、すぐに技術的な判断ができるという体制が必要だということは当然であります。
 専門家の役割が重要であり、異常との闘いの中でその専門家が結論を出し、トップがリーダーシップを持って技術的な判断を行うことが重要であり、トップの役割は極めて重要なものであると言えるわけであります。昨年の事故でも明らかになりましたように、政治的な判断というのは、それによって対策がおくれるということはあってはならないということを私たちは感じたのではないかというふうに思います。
 事故を起こした原子炉の対応として、あくまでも、技術的に判断をしてすぐに対応できるようなそういう組織であることが重要であり、そこには政治の入る余地はないというふうに私は思っております。
 しかし、第五層の防災という視点で見た場合には、地方、住民、市町村、県そして国、そういった住民の避難、退避ということは当然必要でありますし、事故の対応においても事業者が十分にできるわけではない。必要な資源を送らなければいけないということに対する支援は、国として最も重要な役割であり、それをできるのは首相である、総理大臣であるというふうに思っております。
 そういう意味では、今回の福島の事故では、多くの組織が関与しておりました。その中で、役割分担をきちんとやることが重要だということを私たちは学んだのではないかというふうに思っております。そこで組織が技術的な問題と住民退避の問題をきちんと分けて迅速に対応することが必要であるということが最も重要な事故時の対応であるというふうに思っています。
 このように、異常時にはオフサイトの対応は総理大臣が、そして、オンサイトの対応は規制組織の長が行うということで、国の機関の役割を明確にして、国全体として迅速かつ的確な判断、対応ができるようになるのではないかということでございます。
 原子力安全の確保ということについて、航空機の歴史を見てみると、同様に多くの事故があったというふうに私たちも思っております。しかし、それを克服してきたのは、航空機の専門家が情熱を持って対策をとってきたからだ、規制をしてきたからだというふうに思っています。同様に、原子力の安全を担うのは、原子力の安全に情熱を持った専門家だというふうに思います。この専門家以上に原子力の安全を担う人たちはいないと私は確信をしております。
 そういう人たちが原子力の安全を担うということが必要でありますし、そしてまた、昨年の事故を反省して、その反省の中から、何をすべきかということをきちんと決めていくことが大切なことではないかと私は思います。
 これまで、原子力発電の、動かすという責任から安全とは何かという話を申し上げました。
 一方で、安全確保のためには、とめるという判断をする勇気と責任を持つことが必要であります。そこにおいても、そこに政治的な判断もしくは経営的な判断があってはいけません。そういう意味で、科学的な、合理的な判断を行えるような組織が必要であるというふうに言えるわけであります。
 原子力推進の政党や、もしくは反対の政党が政権をとることがあると思います。そういった場合でも、原子力の安全を担う規制機関の役割というのは変わりません。淡々と原子力安全を担っていく、そういう姿勢が必要であるということであります。
 そのためには、組織全体がそういう動きをするためには、組織全体の長は、そういう意識、そういう見識を持った人がなるべきである、私はそういうふうに思うところであります。
動かす責任と、それから、とめる勇気を持った決断ということを申し上げました。このように、原子力の安全というのは、合理的、科学的な判断のもとに、動かすことととめることをきちんと判断できる組織であり、組織の長が必要であるというふうに私は確信するところであります。
 これは私の主題でございますが、昨日、原子力学会の声明を出しましたということで、私たちがこれまでを反省して、こういう組織であるべきだというのをニュースに投げております。原子力学会のホームページでもごらんいただけると思いますが、原子力学会が安全規制に係る国会審議に向けての提言というのをお出ししました。ぜひごらんいただきたいというふうに思います。
 きょうは詳しくは御紹介できませんが、四十年の寿命問題は、これも、技術的な判断、科学的な判断を行うべきだというふうに申し上げております。
 そして、私がもう一つ申し上げたいところは、人材の育成だというふうに思います。規制組織は、人材を固定してそこに置くんだということに対応して、いかに人材を育成するかということをよく考えなければいけないというふうに思います。人材の硬直化を防ぐためには何をすべきかということであります。
 組織の一元化ということでありまして、原子力の組織は、原子炉の安全だけではなく、セキュリティーの問題、それから核不拡散、スリーSと言われておりますが、そういったものを一元化することと、それの研究開発もあわせてこういう組織でやるということが私は必要ではないかと。それを行うことで、人材が研究開発にしばらく籍を置くことで広く世界を見ることができ、それが安全規制を行う糧となるというふうに思うところでありまして、他の部署との交流をなくすことでは、人材はそれだけでは育ちません。それをなくしたときには、どういうふうにして人材を育てるかということが最も重要な課題になるかというふうに思っております。
 ぜひそういう組織にしていただきたいと思うところであります。
 さて、最後に、IAEAの安全原則では、公衆それから利害関係者の意見を求めることというのが規制機関に求められているところでありますし、それから、数年前にIAEAが保安院を監査したときに言われたのは、役所の職員と原子炉設置者との間の良好な相互関係、信頼構築を推進すべきだというふうに指摘をされています。
 私が日ごろから思っているところは、現場のことは現場の人たちはよく知っております。その責任者は責任を持って安全を確保しようと努力しております。しかし、今指摘ありましたように、規制機関と現場が対峙しているのが今の現状ではないかと私は危惧しております。憂えております。
 そういう意味で、原子力事業者は、胸襟を開いて、現場の情報を規制の人たちに公開、それから一般の人たちにも広く公開をすることが必要ですし、その情報をもって規制機関は運転をしている現場に対してよくサービスを行う、適切な対応を行う、支援を行うということが必要だというふうに思っておりまして、お互いに良好な関係を築くことが最も重要な安全確保の道であるというふうに思います。
 ただし、監視という意味では極めて厳しい目が必要だということで、世界は、そういう厳しい目で規制を行い、良好な関係を築いているというのが現実であります。
 そういうことで、ぜひ信頼関係を築くような組織にしていただきたいというのが私の最後の願いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 どうもありがとうございました。(拍手)

〇生方委員長
 宮野参考人、ありがとうございました。
 次に、飯田参考人にお願いいたします。

〇飯田参考人
 認定NPO法人環境エネルギー政策研究所の飯田哲也と申します。よろしくお願いします。
 お手元に二枚物のレジュメを用意しましたので、大体それに沿ってお話をしたいと思います。
 その前に、私は、もともと神戸製鋼で、放射性廃棄物、特に使用済み核燃料の輸送、貯蔵処分の設計、研究、開発、製造にかかわって、安全解析、安全許認可、その後、電力中央研究所に行って原子力安全委員会の事務局の仕事と電気事業連合会の裏仕事をして、いわゆる原子力村という名づけ親として知られています。
 しかも、全く偶然にも、私が原子力村時代に最後にやった仕事が、福島第一原発に今もある乾式貯蔵施設、キャスク貯蔵、そこにもかかわって、例えば、日本の安全規制の制度設計というか基準づくりの実務がどうあったのか、もう二十年も前ですから今は多少は改善しているかもしれませんが、そして、許認可の現場は一体どうあるのか、あるいは物づくりの現場がどうあるのかという、私は徹底的にリアリティーにこだわってきておりまして、そういった観点からすると、これまでの議事録とかを拝見しても、なかなか宙に浮いた感覚がありまして、あれだけの事故を起こした国で実質的に改善をしないと、今ここで改善しないと一体いつ改善できるのかということを、ぜひ国会議員の皆さんには覚悟を込めてしっかりやっていただきたいと思うんですね。
 それで、サブタイトルとしては、形骸化、偽装された安全性から実質的、実効的な安全性をしっかり担保するということが必要だと思います。
 まず、そういう観点から申し上げると、今、この原子力規制庁の議論が並行して進んでいますが、今事実として進んでいる、現実として進んでいる矛盾と、これからでき上がっていく規制庁なり安全規制体制のギャップをどう埋めるのか。魔法のように安全規制組織ができるとは思えないわけですね。
 まず、再稼働問題です。
 私、同時に大阪府市統合本部の特別顧問をしておりますが、ここの中で、私も一応原子力の専門家の片割れですが、各電力会社の原子力のアドバイザリーをしている佐藤特別参与と一緒に体系的な分析をして、大飯三、四号を初めとするあのストレステストの、極めて限定的な状況で安全性はどう考えても担保されていない。少なくとも、福島の事故を踏まえた安全性は担保されていないです。
 それを、先日も議事録を拝見すると、細野大臣は、あるいは四大臣は、安全性を確認したと強弁される。これは明らかにうそですよ。しかも、専門家が安全ではないと言っているものを政治家が安全だと言うのは、これは政治の介入ですね。何でこんなことが今まかり通っているんですか。おかしいじゃないですか。
 それで、その政治のもとでできる原子力規制庁がまともなものになるとは思えないわけです。
 その結果として、国民は非常にリーズナブルですから、昨年の秋は、即時脱原発よりは、いつかはなくなってほしいという人が八割だったわけですが、もう今となっては再稼働反対が圧倒的多数になっているのは、これは、安全性の問題はこれで完全に信頼を喪失しているという問題だと思う。これは完全に政治の失敗だと私は思います。
 この現実と、これからでき上がっていく原子力規制庁とそして規制体系というものは必ずつながっていますので、この問題をきっちり筋を通しながら、並行して法案の議論も必要だと思います。
 同時に、原子力委員会の秘密会議の問題です。何か私の名前もうわさされていたと報道されていましたが、これは私も原子力村にいたときから常態化していて、それは当然だと思うんです。しかも、事務局は前々からみんな知っていました。電力会社や原子力の事業者の方々が出向で、私自身も出向で、しかも原子力安全規制の仕事をやっていた経験もありますから。そういう、ある種ずぶずぶの関係なわけですね。そういった組織が、原子力委員会という名のもとに、結局、規範性を欠いて今もなお運営されているといったこともやはりしっかりと見ていかないといけないだろうと思う。
 そして、昨今報道されている美浜原発の駆け込みで四十年超えですね。四十年超えは例外だというような話が駆け込みのような形で行われる。これはもう明らかに政治の不作為だと思います。
 確かに、形式的には、今、現行法でやるから認められる、あるいは、新しい法案ができても、それは例外ということできちっとやったら認められるかもしれません。
 しかし、あれだけの事故を起こした国が、抜け駆けのような形で、しかも、これは安全規制の失敗でもありますから、冒頭のストレステストも含めて今進めている人たちは、ある意味、手が汚れている人たちですね。そういったものに対して政治がブレーキをかけないと、この国のモラルはどこまで落ちていくんだと。これは本当に世界に対して恥ずかしい状況だと私は思います。
 そして、福島第一原発の教訓を一体どう学ぶんだ。これは、北澤先生が立派な報告書をつくられているので余り詳しく申し上げませんが、去年の秋にスイスの原子力規制庁、きょう添付資料で、北海道大学の吉田先生が翻訳をされたサマリーのところだけですが、膨大な分析をされて、そこからスイスの原子力規制庁は学ばないといけないことをされています。
 その中で、これも北澤先生が指摘されていましたが、特に組織的な問題が非常に大きい。学習ができない組織、あるいは学習を阻害する。保安院が経産省に依存をしている、あるいは意思決定が非常に不透明である。これは今も非常に不透明ですね。なぜ美浜が進むのか、なぜ再稼働が進むのか極めて不透明で、裏側のことが進んでいる。もろもろ、あとはちょっと省略しますが、そして原子力村問題も指摘されている。
 そして、北澤先生の民間事故調の報告は出ていますが、政府の事故調の最終報告、そして国会の事故調、皆さん自身がつくられた事故調の報告が出ていないのに、そこから学んでつくるべき規制庁や原子力安全規制体制の法案がなぜ先に進むのか。これも明らかに政治の不作為というか、おかしいと思われないんでしょうかというふうに私は思う。
 これは、別の都合でほかのことが進む。これはまさに再稼働問題と一緒ですね。安全性をないがしろにしてほかの都合で物事が進むと、結局は安全神話にまた舞い戻りしているのではないかというふうに思います。
 そして、私自身がいた原子力村の問題、これは本当に徹底的に、きちんと社会科学的にメスを入れる必要があると思うんです。
 一人一人は、ほとんどの方は極めて誠実で、きちんとした技術者の方が多いわけです。しかしながら、これが、かつての旧日本軍のときの陸軍、海軍の問題と同じように、全体として膨大なある種の利益集団となっていくと、その誠実な方は押し黙り、ゆがんだ言論が前に出てくるといったことで、日本の安全性は極めてないがしろにされてきた。特に上に行けば行くほど、腹芸と寝わざで、きちんとした論理的なことをおっしゃらない。そうすると、下の者はその腹を読みながら、結局、情緒的コネクション、裏の仕事でしか物事ができなくなる。そして異論は、あの人はちょっとおかしいよねという形でだんだん遠ざけられて、実質的な議論はどんどん表舞台でされなくなっていく。いわゆる空気の支配ですね。
 今回も、例えばノーリターンルールとかもありますが、形式的、形骸的なルールをつくることによって実質的なところが見逃されていく。どんな形式、ルールをつくっても必ず実質というのは中を抜いてきますから、実質をどういうふうに埋めていくのかということに知恵を尽くす必要があると思います。
 それで、幾つか論点が挙がっていると思いますが、例えば専門性の確保。
 これは、組織的な学習能力をいかに高めていくか。これまでの閉鎖的な組織文化を、いかに外部、特に国内外、そして批判的な人も含めたオープンな組織風土をどうつくれるか。一人一人が非常にモチベーションが高く、士気が高く、好奇心旺盛な学習文化をつくる。
 そのためには、自立した個と国際的なネットワークに一人一人が結ばれていて、その人がやはり固有名詞で、きょう例えば木村先生とか北澤先生、宮野先生ですね、固有名詞で勝負をすると、世界に吹きさらされるので、恥ずかしいことができなくなるんですね。
 これは、ノーリターンルールとか、私はそういうことではないと思うんです。一人一人が誇りを持った仕事ができる環境をどうつくるのかということ、その実質を問わなきゃいけないと思う。
 私がいたスウェーデンの例ですと、まずはトップの人、本当に尊敬できる指揮官、専門性と人格的独立性をいかに確保する、そういう人を据えて、その人のもとで、ここにあるような専門性と人格、社会性、戦略性、機能性、よくある、前回も調達価格委員会等で、国会同意人事であれば何でもいいわけではなくて、いつの間にか決まってしまうような非常に不思議な人事が出てくるわけですが、そうではなくて、本当に人格的にこの人なら、その組織、日本の原子力安全規制を守れる、そういう人をきっちりと担保する、新しいトップとガバナンス体制をつくる必要があると思います。
 それから、日本全体のやはり原子力技術の安全技術の底上げが必要で、これは一例ですけれども、私が二十年前から指摘している旧告示五〇一号問題とか、これはちょっと専門的になるのであれですけれども、昔は電気事業法の下にぶら下がっていた告示五〇一号というのは、これは、かつてASMEの、いわゆるアメリカで原子力機器をつくる機器基準は、そのまま横文字を縦文字にしたものが電気事業法の下にぶら下がっていたのが、今は機械学会の、一応形式的にはASMEのまねごとのようになっていますが、今、実態はいまだにASMEの横文字を縦文字にしたものでしかなくて、やはり、オープンな文化で実質的な技術基準をつくり上げていくような組織風土、これは法律の問題ではなくて、皆さんの問題ではなくて、民間というかアカデミアの話だとは思いますが、全体を底上げしていく。
 しかしながら、これはやはり原子力村のところにメスを入れていくような規制庁のあり方が、範を垂れるという意味では、関係をしてくるのではないかと思います。
 それから危機管理体制については、これも、やはり実態や能力を伴わない形式的体制をやめて、例えば総理の本部長が本当にいいのかどうか。これは、あの震災直前の九月一日の防災訓練で当時の菅首相がSPEEDIということを命令しておられるわけですが、実際に起きたときに、御本人を含めてどなたもSPEEDIのことは存じなかったという、いわば、台本を読み上げるような学芸会的あるいはセレモニー的なことは、いいかげんもうやめた方がいいんではないかというふうに思います。
 そういう意味では、政治がとるべき責任と、専門家、いわゆる指揮官がとるべき責任をしっかり仕分けをして、政治家は任命責任と結果責任をとる、指揮官にやはりしっかりとした専門性の方を置くというような、そこらあたりのきちんとした仕分けが必要だと思います。
 そういう意味でいうと、この国の全体のモラルとしてやはり私が一番問題だと思うのは、もう一年三カ月も経過をして、政治も、行政も、そして事故を起こした当事者の東電も、誰一人として責任をとっていないですね。これは、もちろん民事、刑事のことを言っているのではなくて、道義的な結果責任です。
 これはなぜなのか。これは、将来世代に対しても、今の現世代に対しても、世界に対しても本当に恥ずかしいことですね。なぜ誰もみずから辞任をし、あるいは辞任を命じないのか。これは本当に恥ずかしいことだと思います。
 その他のちょっと細かい論点はつぶして、論点に入っていない最後のところですね。
 私は原子力委員会は廃止すべきだと思います。これはそもそも機能としてもう必要ない。そしてもう一つは、今回の秘密会議の問題もあります。モラルが極めて低下をしている。今回の規制庁にあわせて、実は原子力委員会だけではなくて、文科省にぶら下がっているさまざまな、今度、原子力村が縦割りになってしまうのをしっかりと統合するという意味でも、この原子力委員会の廃止というのは極めて象徴的になる。
 もう一つは再稼働問題。電気が足りる足りないという話になっていますが、結局はそうではない。本当の問題は、電力会社の経営問題であり、そして、その先は使用済み燃料問題なわけです。そこをしっかり表に出した円卓会議のようなものをしっかりやらないと、この大飯三、四号で国民の反発をますます招いても、その先、問題はもっと大きくなる一方ですから、もうちょっと大きな問題解決の場をつくった方がいいのではないかというふうに思います。
 どうもありがとうございました。(拍手)

〇生方委員長
 飯田参考人、ありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

〇生方委員長
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉川政重君。

〇吉川委員
 おはようございます。民主党の吉川政重でございます。
 参考人の先生方には、本日は、大変お忙しい中、わざわざこの委員会にお出ましをいただきまして、また、ただいまは、それぞれの専門のお立場から貴重な御意見を賜りましたことを、改めて御礼を申し上げます。本当にありがとうございます。
 さて、昨年の福島第一原発のこの事故は、我が国で初めて、原子炉の炉心融解、あるいは水素爆発という、極めて深刻な事態となりました。この事故によって、我が国のこれまでの原子力行政あるいは安全行政について、国内外の信頼、これは大きく損なわれてございます。
 こうした中で、我が国の原子力安全対策、これを根本的に見直すことが不可避となり、従来の原子力安全・保安院の原子力規制部門を経済産業省から分離して、いわゆる原子力の規制と利用の分離を徹底して原子力の安全確保に関する事務の一元化を図るなど、関係組織の再編、これを行うために、このたび立法措置をとらせていただくということになりました。
このことについて、既に、政府・与党案とそれから自民・公明案の二つの法案が提案をされておりまして、この環境委員会でも審議がスタートしております。
 その中で、与野党の協議も議論も深まってまいりまして、議論は進んでおるんですけれども、しかしその一方で、なお意見の隔たる項目もございまして、これらの点について、特にきょう御出席の専門家の先生方の御意見をお聞かせいただきたいというふうに思っております。

〔委員長退席、川越委員長代理着席〕

 それで、今、政府・与党案とそれから自民・公明案、この大きな違いは、組織のあり方、形ですね、これがまず決定的に違っております。
 政府・与党案は、環境省の外局に原子力規制庁という部署をつくりまして、従来の原子力安全・保安院の原子力安全規制部門を経産省から分離して、あるいは、従来、文科省、経済産業省あるいは国土交通省が所掌しておりました原子力安全規制に関する事務も一元化して、原子力安全の確保の任務を環境省の任務にするというものであります。
 それに対して自民・公明案は、同じく環境省の外局に組織をつくるということについては共通しておりますけれども、国家行政組織法第三条に基づく原子力規制委員会、これを設置してこの任務に当たらせようというものでございます。
 政府案は、いわゆる一人制の原子力安全規制庁長官という役職をつくって、それに任を当たらせる。それに対して自公案は、原子力規制委員会という合議制の委員会をつくってこれに当たらせるという、そういうところが大きく異なっているところであります。
 それで、この自公案をベースに考えるとするならば、委員会というのは、世の中には委員会という名前の組織はたくさんございますけれども、この国家行政組織法の三条で言う委員会というのは、これは普通の委員会ではありません。今、日本に六つしかないんですね。これは行政庁であります。
 行政庁というのは、国家の意思を決定して、これを外部に表示する権限を有する行政機関が行政庁であります。
 これには二種類ありまして、一つは独任制の行政庁、つまり大臣とか長官であります。もう一つは合議制の行政庁であり、これが、いわゆる国家行政組織法で言う第三条委員会であります。今回、自公案で提案されているのは、このまさに第三条の行政委員会を設置するということであります。
 この行政委員会を設置されるということの目的といいますかその意図というのは、当然、独立性というところを強化するというところがその意図があろうというふうに思うところであります。
 そうしたら、政府の役割との関係はどうなのかということで、いろいろとお話を伺っておりますと、原発の敷地内、いわゆるオンサイトにおける原子炉事故等の収束のための専門的判断についてはこの規制委員会が責任を担う、それに対して敷地外、いわゆるオフサイトの住民避難などの対応については政府が責任を負うということで、役割分担をされるというそういうたてつけになってございます。
 そもそも、この三条委員会に権限を担わせようとする最大の論拠は、より高いレベルの独立性が確保されるというのは今申し上げたとおりであります。そこには、政治の関与を極力排除しようという意図があるわけであります。
 確かに、今回の福島原発事故に際しまして、原子力の専門家ではない当時の菅総理あるいは官邸サイドがオンサイトに過度に介入したことが現場に混乱を引き起こしたとの事故検証報告も出されており、この点は大きな課題であろうと私も考えております。
 しかしその一方で、机の上ではこの委員会と政府の役割分担、これは分けられるとしても、緊急時や災害時のときにこのような線引きが果たして現場でできるのか、あるいは、専門的な観点からのみ全てを判断、決定することが果たして可能なのか。例えば緊急時の総理の指示権の確保は本当に必要ないのか、あるいは責任の所在が明確になるのか。委員会が所掌するとすれば、当然、合議制でありますから、一人の長官とか大臣という責任の所在というのは、これは明確にならないということも指摘をされております。
 この点について、先ほど何人かの先生からは組織のあり方についての明確なお答えもあったと思うんですけれども、原子力規制委員会のあり方、この三条委員会という合議制の行政庁に行わせるべきなのか、それとも独任制、長官や大臣という責任者を据えて、その組織でこの事務を行わせるのがいいのか、この点についての先生方の御所見をまずお伺いをしたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

〔川越委員長代理退席、委員長着席〕

〇木村参考人
 質問にお答えしたいと思います。
 私自身の考えでは、合議制というのは一番理想的ではありますが、緊急事態においては、合議の上での時間差というので、多くの災害の拡大につながっていく可能性はあると思っております。
 その中で私が考えるのは、アメリカ等での緊急事態省ということで、総理ではなくて、その庁のトップがその現場で自己判断によってやっていく。ただし、その責任の所在というものは明確化するべきだというふうに考えております。
 結局、この事故自身、緊急時ということを前提に置いた場合では、即決を求められるということが重要かと思います。この即決を求められる時間が長ければ長いほど、時間がかかればかかるほど、問題というもの、事故の被害というのは拡大していきますので、その部分というものをきちんと即決していくということが望ましいかと思います。
 以上です。

〇北澤参考人
 今の御質問をちょっと言葉を私なりに直しますと、対策を行っていくときに、原子炉を経済的になるべく生き長らえさせて、それで、対策をやっていくときにはなるべく遅くまで水は入れたくないとか、どうしてもそういった気持ちがある。それに対して、安全性だけを考えれば、もうなるべく早くにベントをして、なるべく早くに水を入れてしまうのが一番いい。
 そうすると、どこの時点でどうするのかというのは一体誰が決めるのかということで、電力会社の経営者が決めれば、どうしても遅くしたい、そういうことになりますから、それは誰が決めるのかということをはっきりさせなければならないという、そういうことが変わってまいります。
 それで、一番は緊急時の対応ですから、そこの相反する時間軸上の願望というのを、安全サイドに行くのか、それとも経営サイドに行くのかということを誰かが判断して、よし、ここで行くぞということを決めるという、そこがはっきり決まっていればこれはやっていける。
 今回の教訓からすればそれができるんだと思うんですけれども、組織をこうしたというだけでは、それははっきりとしないというところがあるかと思います。
 以上です。

〇宮野参考人
 私の見解は先ほどるる申し上げたと思いますけれども、昨年の事故を顧みますと、やはり、なぜ対応がおくれたのかといった議論が先日の国会でもありましたが、撤退する、しないという議論があったという話もあります。それは、現場を全く関係なしの、全くの茶番をやっていたと。要するに、東電の中でも経営者と現場は全く乖離しておりました。情報が行っていないということもありますし、国の中でも情報が全く来ていないという中でああいう議論をやっているというのは、非常におかしい。
 現場は撤退なんということは絶対あり得ません。そのためにあの当時の所長の吉田は、今はもうがんで入院してまだ出てきていないと私は聞きました。それくらい、彼はずっとあそこにいて責任をとっていたというふうに思います。やはり現場が一番です。
 本来は、オフサイトセンターが現場にあって、そこで規制機関が支援をすることになっていたはずです。それが機能しなくなった途端に、なぜ東京に本部が来て、遠隔でしようということになったのか、私は非常に不思議です。本来は、現場できちんと対応して、それを東京が支援をする、要するに国が支援をするという、そういう体制が必要です。
 それをきちんとできるのは、やはり、技術的判断ができる組織、即対応できる組織を持つことであり、それが、事業者、現場を動かしている人間と連携をよくしてやるというのが必要だということで、それは、アメリカにおいてもフランスにおいても、世界では、同じそういう共通の組織になってそういう対応が今はできているというふうに私は思っております。ぜひそういう組織が必要だと思います。
 以上であります。

〇飯田参考人
 基本的には、今回の事故、十条通告がどこの時点かですが、とにかく平時から異常時は、いわゆる戦時の対応のような体制に切りかえることだろうと思いますね。
 だとすると、いわば戦争に例えると、大本営参謀が現地の戦闘の指揮をとることは恐らく不可能なので、もちろん、全体のこちらの戦時の参謀は、例えば三条委員会でも委員長がその権限を持つということと、あとは、実際の事故炉に対してしっかりと権限を付与するような体制というのもやはり考えるべきだろうというふうに思います。
 今回はそれが非常に混乱をしていたので、どこに中心があるのかというのは非常に混乱したのではないかというふうに思っています。

〇吉川委員
 ありがとうございます。
 私があえてこれをお尋ねするのは、自民・公明の案でいきますと、基本的には、この三条委員会に原子力にかかわる権限を全て与えるということになるんですね。
 しかも、どういう方が委員に任命されるかということについては、「原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験を有する者」というふうに限定されておりますので、これは、研究者、学者の皆さんがこの委員に任命されるということになると思うんですね。
 先ほども言いましたけれども、この委員会というのは、従来の委員会、例えば専門的な見地からいろいろな提言をしていただいたりアドバイスをいただいて、それで政治家が物事を決定するというようなものじゃなくて、この委員会そのものが決定権限を持つということなんですね。
 そこで私が危惧するのは、これは大変失礼ですけれども、いろいろな判断の中で、先ほど先生もおっしゃったように、純粋に専門技術的な見地からだけで判断が下せるのであれば私はこの委員会でやっていただいたらいいと思うんですけれども、現実には、それだけの判断では済まないような局面がやはりあるのではないかというふうに思うんですね。
 例えば、先ほど先生がおっしゃったように、あの事故のときに東電の撤退の話がありました。それが実際に全員撤退だったのかどうかというのは、これは、民間事故調のきょうは委員長もお見えですけれども、それではまだはっきりしないんですけれども、ただ、ああいうときが起こった場合に、例えば現場の作業員からしたら命にかかわることなんですよね、それに対して専門技術的なお立場からだけで、だめだ、現場に残って闘えというようなことを判断するというのは、これはやはり、専門技術的な判断を超えた一つの政治的決断であろうというふうに思うんです。
 ですから、たとえオンサイトであったとしても、全て専門技術的な判断だけで対応ができるというような局面ばかりではないということを私は思っております。ですから、そういう政治的なものを全て排除するということが果たして妥当なのかどうか。
 もし、この自公案に基づく委員会ができたとしたら、多分きょうおられる先生方は、日本の原子力を代表される先生方なので、ひょっとしたら先生方がその委員に任命されるかもわかりません。
 そのときに、例えば、先ほど原発の再開の話もございました。この原発の再開については、当然、安全性の審査については、先生方の御専門の知識で安全かどうかの判断はしていただけると思います。しかし、安全だからといって原発を再開することを認めるかどうかは、もう一つ別の判断があるんですね。
 つまり、国全体としてエネルギー政策をどうするかという政策的な話がございます。原発の依存度をどうするかという話もあります。そういう中で原発の再開をするかどうかの判断というのはしていただく。これは従来は政治家がやっていました。
 しかし、今回もしこういう形で法律ができますと、委員である先生方がその判断をしていただくということになるんですね。ですから、その判断の中には、純粋な専門技術的な判断を超える、一定の政策的、政治的決断というものはこれは必ず避けて通れないというふうに私は思うんですけれども、この点について、本当にこの三条委員会で、専門家の先生だけでそういう政策決定にかかわる分野までも果たしてやっていただけるのか。
 従来は、国民から直接責任を負う政治家が先生方の意見を尊重して決定していたということで行われているんですけれども、それが、先生方自身がそれを決めていただくということになるんですけれども、果たしてそういうことが妥当とお考えなのか。先生方がもしその立場になったときにその判断を果たしてしていただけるのかどうかを、再度、ぶしつけな質問で大変恐縮でございますけれども、私の言おうとしていることはおわかりいただけるかどうかわかりませんが、ぜひお答えをいただきたいと思います。お願いいたします。(発言する者あり)

〇生方委員長
 お静かにお願いします。

〇木村参考人
 私ができるかできないかというと、できます。そうなんですよ。それはその判断をしないといけないんです。そのための事故研究をずっとやってきたわけです。この事故研究をやっていない人間たちが入るからわからないわけですよ。
 だから、そういう意味では、政治的判断、例えばこの再稼働の話というのは、また別個の話なわけじゃないですか。今回、この法案がどうするかというような、稼働の問題とその話は別であって、そもそも論で言うと、これは環境省の外局でいいのかというところからまず入ります。
 なぜかというと、環境省には法律の専門家はいません。この専門家がいないところでどうやって束ねるのかというところからまず判断しなくてはいけないんです。環境大臣等を含んで合議をして、一体何が言えるのかというのが私の一番の疑問です。
 だから、そういう部分も含めた上で、もし緊急事態が発生した場合、例えば、その現場における指揮系統で一番のトップが判断していくというような、それはそれぞれの事故現場の判断によるという一番常識的なやり方というのがいいとは思いますが、でも、その責任は、三条委員会以外でも、その行政の長という者がとっていくということでやればいいのかなと 私は思っております。
 以上です。

〇北澤参考人
 御質問の趣旨はよく理解できるところがあります。
 ただし、これは、その人がその場になってその専門的な知識あるいは経営的な知識で判断できるかといったら、そんなものはできない、誰でもできない。つまり、何が今回足りなかったかというと、どういうことが起きたときに何をするのかというのがあらかじめ決まっていなかったということなわけであります。
 それで、原子炉は複雑なシステムではありますけれども、何が起きそうか、ここが破られたらどうする、ではここが破られたらどうするというのは、これからそういう委員会ができたら、あらかじめ全て決めておくべきであります。
 この程度のことが起きたらこの程度のことをやるんだということは、もうどんなに時間がかかってもきちんと決めるというのは当たり前のことでありまして、それができていれば、そういう全体の流れを見ながら、それが最後で首相が口を挟むようなことが起こってくるかもしれませんけれども、その情報の流れと決断の流れを首相にまでずっと見えるようなそういう体制を、この情報化の時代ですからつくりながら、そして、こういうことが起きたらこうするというあらかじめのマニュアルというのをちゃんとつくっておいてもらうというのが、これから一番必要になるんじゃないかというふうに思います。
以上です。

〇宮野参考人
 私は、その判断を必ずやるんだ、安全に対する判断、原子力安全というものに対する判断を行うということなので、それはできますし、やるべきだというふうに思います。
 それで、稼働する、しないという問題と原子力安全を確認するという問題は、私は全く別問題だと思います。
 原子力発電所をどういうふうに使うか。先ほど申し上げました、選択肢はいろいろあると思いますが、どういうふうにするかは国民の合意が必要ですし、それは政治的な判断が必要なところだというふうに思います。
 それから、安全については科学技術的に判断をするというのは、それは必要なことですし、単に科学的な判断というのは、式をどうのこうのつなげてというだけではありません、科学の中でもマネジメントをしなきゃいけない。要するに、全体をどう考えるかというのは、皆さん意見が多分違うんです。そこの中でどう結論を出していくかということがその委員会もしくは委員長の見識にかかわるところでありまして、それが重要なところだというふうに思います。
 そういう意味では、十分にそこに責任を持つことができると思いますし、その結果は、当然、国、首相にも上げるべきでありますし、その後の判断は国としてやることが必要なことが出てくるというふうに思います。
 以上であります。

〇飯田参考人
 皆さんほぼ共通した意見だと思いますので、私も繰り返しになりますが、先ほどおっしゃった、まず平時の場合で言う再稼働であるとか、その後の原子力政策を推進云々という話は、これは、原子力規制庁とか規制委員会、どちらであっても、それは安全性だけの判断ですから、考慮すべきことではない。これは当然のことです。
 それは全く別のもので、そして異常時の場合は、基本的には委員長がきちっと原子力の専門として判断されるべきだと思いますが、それがさらに多領域にわたって自衛隊云々ということであれば、総理に戻すか、別途FEMAのような組織を考えるかということをまたやればいいわけであって、委員会で全く私は問題ないというふうに思います。

〇吉川委員
 ありがとうございます。
 今、与野党の議論の中で、組織のあり方と、もう一つは、最終的に災害時に首相のいわゆる指示権というものを全て排除するのか、それとも、それは最終的には一定残した方がいいのかということも今協議の中で議論をされているというふうにお聞きしております。
 これについても再度先生方にお尋ねするんですけれども、今、原災法のもとで最終的に指示権というのは首相にあるんですけれども、これはやはりなくした方がいいとお考えなのか、それとも、これは従来どおり残した方がいいというふうにお考えなのか。時間がありませんけれども、これをもう一度先生方にぜひお尋ねしたいと思います。
 よろしくお願いします。

〇木村参考人
 私にはわかりません。
 これはもっと審議すべきことであって、今ここで私のような者が答えられるようなものではなくて、私は緊急時については専門家ですが、その平常時については私自身が専門家ではないので、この場で申し上げるようなことはございません。
 以上です。

〇北澤参考人
 安全規制の範疇内に属するのか、それとも国が危うくなるといったような、今回もそういう危険性があったわけでありますけれども、国全体がだめになるというようなそういったことまで予想されるような事態において首相が関与しないはずがない。
 これは、安全だけで言える問題と、それから、避難の仕方とかそういったことまで含めて、首都圏の人たちがみんなどこに逃げていくのか、そちらの方にも原子炉があるのかどうかとか、いろいろなことを考えての判断というのはこの規制庁だけでできることではありませんから、最後の最後に、国全体にかかわる問題に関して首相が責任を持つのは当然だというふうに私は考えます。

〇宮野参考人
 これも何度も申し上げておりますが、技術の範疇は規制委員会。先ほど、深層防護の話を申し上げました。第四層まではきちんと守るというのは、これは委員会の責任です。それが危なくなったとき、第五層をやるのは国です。
 そういう意味では、お互いに切れているわけじゃなくて、連携をとりながらやることが重要なのであって、今、北澤さんが申し上げましたように、国の問題にかかわるところは、当然ながら、首相がやるのが当たり前です。それはかわりの誰かがやっても構いませんが、国としての判断は別にやることであって、この委員会は、安全規制の範疇で責任を最後まで持つということだというふうに思います。
 以上です。

〇飯田参考人
 私も、最終的にはもちろん首相だと思います。
 ただし、個別の各論のところまで指揮をするというよりは、一個一個の大きな責任権限に関するいわば任命責任と、その任命した責任者がきちんと答申を出して、それを受けて最終的には政治家が判断する、そこの仕分けがきちんと仕分けされる必要があるというふうに思っております。
 以上です。

〇吉川委員
 どうもありがとうございました。
 組織論、そうした組織のあり方、それから、それぞれ組織の権限、国のかかわり、これについて先生方から見識をいただきまして、ぜひこれを参考に、今後、この委員会の中で法案についての議論を深めさせていただきたいというふうに思います。
 本日はありがとうございました。

〇生方委員長
 次に、柴山昌彦君。

〇柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 参考人の皆様におかれましては、きょうは本当に御多用の中、ありがとうございました。
 今御質問があったところと関係をいたしますけれども、民間事故調の報告書の中には、菅総理の緊急時の現場介入について非常に批判をされております。
 「官邸による現場のアクシデント・マネジメントへの介入が事故対応として有効だった事例は少なく、ほとんどの場合、全く影響を与えていないか、無用な混乱やストレスにより状況を悪化させるリスクを高めていたものと考える。」「政府のトップが原子力災害の現場対応に介入することに伴うリスクについては、今回の福島原発事故の重い教訓として共有されるべきである。」というように書かれております。
 しかしその一方で、今お話があった、東電の清水社長による福島第一原発からの退避の申し出を退けた件については、「この撤退拒否が東京電力により強い覚悟を迫り、今回の危機対応における一つのターニングポイント」であったとまで評価をしているんですね。
 私は、この二つの記述が相矛盾しているようにちょっと思えてしまいます。
 撤退拒否ということの事実関係はいろいろとあると思います。ただ、事実関係はさておき、北澤参考人にお伺いしたいんですけれども、この民間事故調の報告書の撤退拒否に対する評価というのは、撤退拒否という内容を評価されているのか、それとも、それを菅前総理が指示したということを評価されたんでしょうか。明確にお答えいただきたいと思います。

〇北澤参考人
 ただいまの件でありますけれども、菅総理がということと、それから、今御質問の最後の部分でしたけれども、そういうことを指示したということを評価するか、どちらなのか、そういう御質問と考えていいですか。(柴山委員「はい」と呼ぶ)わかりました。
 その意味では、そういうことが官邸の方から指示されて、そしてそういう事態になっていったということを評価しているのであって、何総理大臣であってもそれは構わない、あるいは、それが官房長官から出てきたとしてもそれは別に構わないという、そういうことであります。

〇柴山委員
 今のところ、要は内容が評価されるというふうにお答えいただきましたけれども、それでは、同じ内容、撤退拒否という内容を別の機関が判断をしても、例えば今度設置する原子力規制委員会、我々は規制庁じゃなくて規制委員会という独立行政委員会の設置を主張しているわけですけれども、その別の機関が判断をしても、そこにきちんと最終的な権限が与えられ、そして避難等については、オンサイトの避難などですよ、それに責任を持つ総理とそれこそ緊密な連携がとれていれば構わないんじゃないんですか。

〇北澤参考人
 実質的にそれが担保されるということであれば全く問題はないと思いますが、思いますがなんです。
 今回、どういう事態が起こっていたかというと、それができていないような組織であったと。では、そのときに誰が出ていくのかというときに、菅総理が出ていったということかと思います。
 その意味で、今回の事態においては、できないような、つまり、細かいことまで誰が一体考えているのかということがわからない。それを周りの人たちに聞いても、本来だったら官邸に報告すべきような人たちがそれを把握していないという、そういう事態が起こっていたということであります。
 それで、誰がそれを把握していったらいいのか。そのときに、かなり細かいことまで菅総理は、自分が考えなければ誰もちゃんと考えている人がいないじゃないかというようなことで、それを我々は介入という言葉で呼んだ部分がありますが、私たちの、介入したことに問題があると言うのは、介入させた側にも非常に大きな問題がある。介入した側も、その意味でいえば、もっとそれをきちんと情報を上げてくる、あるいは、情報を決断しているのか、それからうまくいっているのかうまくいっていないのか、そういったことを把握して上げてくる、そういう組織がはっきり機能しなかったというそういう問題があったわけですね。
 ですから、今回起こった事態において菅総理がああいう形で介入していったということは、私たちも一定程度の理解ができるというふうに思っているわけです。
 それですから、これからできる組織においては、それがきちんといくようにしてもらわないといけないということであります。

〇柴山委員
 今の御説明で、完全に全部、終始一貫して理解ができました。ありがとうございます。
 次の質問に移らせていただきます。
 平時それから緊急時、それぞれ原子力対策というのは重要なわけなんです。これも北澤参考人にぜひお伺いしたいんですけれども、今度新しくできる原子力規制委員会が、今御指摘になられたように、しっかりと権限が与えられ、安全について独立に判断ができるというものができたといたしまして、その規制委員会の役目は、あくまでサイトの、緊急時にいろいろと事故が発生して、それが被害を拡大させてしまいかねないというような状況になったときに、どのような技術的措置を講ずれば鎮圧できるのかということについて判断をし、必要であれば、そのための技術的なアドバイスをするための人材を派遣するなどして協力することだと思っておりまして、別に、原子力規制委員会が災害対応においてオフサイト等も含めて全面的に災害対策本部の事務局機能を担う必要はないし、またその余裕もないというように考えていますけれども、そういった理解で何か不都合はありますか。

〔委員長退席、川越委員長代理着席〕

〇北澤参考人
 わかりません。
 わかりませんという意味は、これは最終的に組織がどうなるかでありますけれども、なるべくこういうことは一元化されていた方がいいというふうにまず思っております。
それで、それが分かれていたときに技術的なことはどこまで責任を持つのかというのは、そこの委員会の構成によって決まると思うんですが、最終的に一番問題になるのは、いろいろ場面を想定して物事をあらかじめ決めておいてそれでハンドリングできることについては、かなり技術的にできるかと思うんです。
 ところが、最後、もうこんなことになっているというそういうときに、技術的なことと政治的なこと、それをあわせて決めなければならない、そういう状況になっていくかと思いますので、そこのところをはっきりこの委員会が、つまり、分離できないというときに、一元化されていればそこのところはやれると思いますけれども、分離してある場合には、最終的にそこのところが迅速にできるようなそういう体制ができていないとどうしようもないということを、今の御質問に対しては感じました。

〇柴山委員
 要は、技術的、専門的な事柄については、迅速に判断をしなければならないことについても、もしこの委員会がそれをきちんと迅速に判断できるのであればこの組織でやってよろしい、ただ、それと、例えばオフサイト、要するに発電所から離れた部分についての対応、これがうまく連携をとれているかどうか、ここが肝だというようなお答えだったと理解をいたしました。私もその御意見に賛成をさせていただきます。
 続きまして、ノーリターンルールについて、先生方から御指摘があったのでちょっと質問をさせていただきたいというように思います。
 特に木村参考人から、やはり今回の事故においては、関係者の保身ということについての強い懸念を示していただいたかと思います。
 ノーリターンルール、つまり、一度この規制組織に来られた方が、その母体となる例えば経済産業省ですとかあるいは原子力事業者、そういうところに戻るということを禁止するというのがノーリターンルールなわけですけれども、もしこのノーリターンルールが適用されないとすると、この規制機関が、先ほどちょっと飯田参考人からもお話があったかもしれませんけれども、戻ってしまうことを想定して、やはり保身を図って公正な判断ができないのではないかということをずっと我々は主張しているわけなんですけれども、それについては、ノーリターンルールを破るということが必要になるのか、それとも、ノーリターンルールはノーリターンルールで維持しておいて、人材確保のためにいろいろと工夫をするということで対応できるのか、そこのあたりの御所見をお伺いしたいと思います。

〇木村参考人
 私の考えですが、先ほど柴山議員からお答えされたように、後者の方を考えております。
 もし呼び戻しがあった場合、今までは規制をしていたところで操作していた方々が逆に今度は推進の方にかわるというような状況になった場合、やはり、心情的にはやりづらいと思います。それを完全に機械のように振り分けることが可能であるならばそれはよいとは思うんですが、基本的には難しいと思います。
 人材確保という上では、まず最初にそういう方々をノーリターンルールで入れますが、それ以上に、新規で、もっとフレキシビリティーのある外部の方々を入れていくことが望ましいかと思っております。
 以上です。

〇柴山委員
 この点、先ほど宮野参考人から、もしノーリターンルールを導入するのであれば、工夫として、やはり人材確保のために、例えば原子力に関係する研究組織などをここにしっかりと入れていく、そうしないとなかなか研究人材なんかも、ここに来てもとに戻れないというふうになると、確保が難しいんじゃないかというようなお話もあったかと思うんです。
 そういう意味では、やはり、この新しい規制組織が研究部分も含めた一元化ということをしていかなければいけないということをお述べになったかと思うんですが、そのあたりについてもう一度教えていただけますか。

〇宮野参考人
 そのとおりであります。
 私も、こういう件については、ずっと昨年から真因は何かということは検討してまいりまして、こういうふうな組織をつくって人材育成をどうするか、人材確保をどうするかというのが大きな課題だと。特に、これは新しい組織だけではなくて、日本全体の課題にもなっていくというふうに思います。
 その日本全体の課題の中でこの狭い規制組織をどうやって維持をしていくのかということは非常に重要なことでありまして、最も重要なことは、モチベーションをどうつくるかということだと思います。毎日毎日規制だけやっているというのは、非常に大変なことだと思います。
 そういう意味で、違った目でモチベーションを持って、この規制の役割を果たせるような組織づくりが重要なことだろうというふうに思います。
 もう一つ、今、外から人を入れればということがございましたが、これは昔、今の保安院は、その下のJNESというところにたくさんの人間を入れました。それは、国のプラントの建設状況がどんどん落ち込んで、人材が余って受け入れになったという状況があったわけでありまして、そういう事態でもなければ、日本の場合は人材の流動化というのはほとんどありません。非常に難しい。
 そういうことで、組織の中でいかに人材を流動化をさせて、そしてモチベーションを持たせるかという工夫が必要だということで私も長い間悩みましたが、今申し上げましたように、この組織の中に研究機関をつなげるということで少しそういうことは改善されていくのではないかということで、先ほど申し上げた次第でございます。ぜひそういう工夫をしていただきたい。
 ノーリターンでなくても一生懸命仕事をする人は役所の方にはおられると思います。ただ、それはルールとしてはなかなか難しいということで、ノーリターンルールがいいんじゃないかということを私は賛成するところでありますし、工夫をしていただきたいということでございます。

〔川越委員長代理退席、委員長着席〕

〇柴山委員
 非常に明快な御答弁をありがとうございました。
 飯田参考人にもお伺いしたいと思います。
 飯田参考人には、さっきの撤退の部分で事実関係がどうかということをちょっと留保をさせていただいたんですけれども、あの事故のときには、最前線の吉田所長はまだ頑張れるというように本部に伝えていて、清水社長個人はともかく、現場としては全面撤退の意思はなかったのではないかというように言われております。また、撤退拒否ということの指摘は、二号機の安定化に向けた具体的な方策を伴ったものではなかったんじゃないか。
 そうすると、やはり、一番よくわかっている現場の意向に任せるということが実は最善の策だったのではないかなと。
 また、現場に仮に任せれば、それこそ一時退避というようなことはあったかもしれませんが、先ほどもお話があったように、ずっと原子力災害は対応し続けていかないと事態が悪化するという運命があるわけですから、もう後ろに下がっちゃって何もしないよというそういう意味の撤退ということは、科学的、技術的にはあり得なかったんじゃないかなと思うんです。
 以上二点、現場に任せた方がいいんじゃないかということ、それから、そもそも全面撤退などという選択肢はあり得なかったんじゃないかという点、以上についてちょっと御所見をお伺いしたいと思います。

〇飯田参考人
 その点については全く私も推測でしか物を申し上げられないのであれですけれども、事実としてやはり吉田所長が踏ん張られたということが、かなりのところ福島第一を、相当悪化をしましたが、逆に言えば、あの程度で食いとめられたという事実はあっただろうと思います。
 そこから先というか後知恵として、どうすればこの次はより緊急時はよくなるのかという意味でいうと、一つは、吉田所長があそこまで頑張ったというのは、やはり自分たちの施設だという使命感だと思います。
 ただ同時に、そうはいっても東京電力の一所長でしかないという限界があったので、そこを補強するような、それが吉田所長に国の権限を付与するのがいいのか、本来であれば、オフサイトセンターにいた保安院の人間が、使命感を持ってそこに寄り添ってできるような人間がそこにいるべきなのか、それはこれからのいわゆる規制委員会のあり方として緊急時で考えるべきだと思いますが、いずれにしても、国のサポートが逆に弱かった、混乱していたという部分は、そこを限定的にした要素としてあるのではないかというふうに思います。
 いずれにしても全面撤退は、恐らく吉田所長の選択としてはなかったというのは、私は伝聞では聞いております。

〇柴山委員
 ありがとうございます。
 以上の参考人に対するいろいろとお話をお伺いして強く感じたのは、今の政府案は、現時点での欠陥の多い保安院なり原子力委員会を前提として、そこを政治主導で補わなければいけないというような発想がまず頭にあって、その上で中途半端な仕組みを出しているように思えてなりません。
 私が参考人の先生方からお話をお伺いして強く感じたのは、NRCなどの国際水準のしっかりとした専門性と一元化とそれから権限が与えられた機関がびしっとできれば、そこにはやはり政治的な介入の余地も必要性も全くないんじゃないかなというように思いますし、現に、NRCのメザーブ元委員長が国会の事故調でベントに関して聞かれたときに、これを大統領が決めることなどはあり得ない、よっぽど日本の政治家は能力が高いんでしょうねというふうに言っていたのを私は強烈に思い出しまして、大臣が伝家の宝刀とかなんとかおっしゃっていましたけれども、そういうクリティカルな場面であっても、NRCあるいは外国の規制機関の常識からすれば、トップ、トップというのは行政のトップですよ、行政のトップが最終判断を下すということはあり得ないんじゃないかなというふうに思うんですけれども、ちょっと先生方から、今のメザーブ委員長の御発言に対してそれぞれお一人ずつ御所見をお伺いできますでしょうか。

〇木村参考人
 これ自身も、言っておきますが、もともと私は事故の人を守る方が専門であって、原子力の専門家でない人間がどうのこうのと言うのは、僕には一切実は口を挟めるような知識もありません。
 ということなので、私にはこういうことはわかりません。

〇北澤参考人
 今の御質問ですけれども、これは認識に若干間違いがあると私は思います。
 これはどういうことかと申しますと、初期のベントのときに官邸が介入したというふうに言われているわけでありますけれども、これはどういう問題かというと、ベントをするということを現場は言ってきた、それもわかっていて、それを官邸側もオーケーということを出した。ところが、いつまでたってもベントが進まない。なぜ進まないのかと聞いてみても、わかりませんという答えしか保安院とかそういったところからは返ってこない。さて、そのときに一国の責任を預かる人は何をすべきでしょうかという、そういう問題だったと思います。
 わかっていて介入したわけでは決してない。何が起こっているかわからない状況でそれを見に行ったというのが、菅首相がやられたことなわけですね。
 ですから、そういう状況であったところで起こったことであって、菅首相の方がベントのことについてよくわかっていて、それで介入したということでは決してないので、メザーブさんがそういうことを冗談っぽく言われたんだと思いますけれども、あの状況は、なぜ上がってこないのかというときに、もしかすると、電力会社は原子炉を損したくないためにベントをなるたけやりたくないんじゃないかということを官邸側は感じておられたというふうに、民間事故調の調査では思われます。
 それですから、そういう中で起こったことで、そのときに、どういう状況になったときにベントをどうしなければならないのかということは、やはり初期のころからきちんと考えてある必要があったのが考えていなかったということが今回のああいう大混乱を引き起こしているわけで、決して菅さんが現場に行ったから混乱が引き起こされたわけではないというのが民間事故調の見方であります。

〇宮野参考人
 まず最初に、首相がどう口を挟むかという問題ですが、私は、NRCに昨年十二月に行って直接話を聞きました。全く同じ答えで、あり得ないと。要するに、政治が技術に口を挟むということはあり得ない、あってはならないと言っていました。これはあえて私が聞いたわけじゃないんですが、そういう話になったときに、そういうことはアメリカであるのかというのを聞いて、それはあり得ないと。というほどに、NRCの中でも、上から下まで基本的に考えは全く同じだということです。
 それはNRCだけではなくて、アメリカの仕組みが、NRCから始まり、電力事業者、そして電力会社、そしてサイトと、順番に同じ考えを持って安全確保のための運営をしているということはよくわかりました。違うところへ行っても同じ答え。日本のように金太郎あめを切ったような同じ答えではなくて、それぞれの立場で考えを述べるということが重要だということがわかりました。それが日本にどうなるかという問題があります。
 もう一つ申し上げたいのは、情報の話が、ベントする、しないという問題がございます。
 情報のラインをよくすればいいのではないかという議論があると思いますが、それは緊急時には非常に難しいのではないかと。それで、現場で判断をすることの大切さということを申し上げているわけですし、もともと我が国の体制も、オフサイトセンターで対応することになっていたはずです。それは、よくわかっているからそういうふうになっていたんだと思いますが、それができなくなったときに首相がリーダーシップをとってしまったと。
 そういうことを報告して指導を受けたがために現場での対応がなかなかとれないという状況にもなったのではないかというふうに思いますが、そういうことのないようにすることがこれからは必要ではないかということを申し上げておきたいと思います。
 どうも失礼しました。

〇飯田参考人
 お時間ないでしょうから手短に。
 基本的にこのベントの話と再稼働の話というのは非常によく似ていて、アメリカNRCでもこういった再稼働、通常であれば、認可するのはこんな首相が判断することではなくて、通常の担当官が判断すべきこと。
 問題は、ベントもこの再稼働も、政治が判断すべきような状況になっていないのに政治が判断する状況になっているということですね。そこが政治の不作為としてあるということで、そこはしっかり認識していただいた方がいいんじゃないかというふうに思います。

〇柴山委員
 恐らくあと五分ぐらいで質問の時間が終わると思いますけれども、原子力安全委員会原子力施設等防災専門部会防災指針検討ワーキンググループ、ちょっと長いんですが、「中間とりまとめ」において、一般災害に対応する組織が一般災害と原子力災害に係る公衆の防護の対応の両方を実施することが合理的であると三十六ページに書かれております。
 これは、要は、公衆の防護は一般災害に対応する組織が当たって、原子炉事故の収束は規制機関が担う。だからこそ、原子力災害においても、一般災害に対応する組織というものがオフサイトを中心として対応できるというような考え方だと思うんですけれども、私たち自民党・公明党案は、この記述を踏まえて、原子力規制機関が災害時においても原災本部における従的対応ということで副本部長というふうにならせていただき、そして原災本部長はやはり総理大臣というような仕組みにしているわけなんですけれども、これに関する御所見を北澤参考人にお伺いしたいと思います。

〇北澤参考人
 私どもそこまで考えたことがありませんので、今の御質問にすぐお答えすることはちょっと不可能です。

〇柴山委員
 最後になると思いますが、木村参考人にお伺いしたいと思います。
 木村参考人は、どちらかというと、やはり放射能被害とか健康問題についていろいろと、過去の著作も論考も拝見していますけれども、書かれているかと思います。
 その上で、やはりデータの問題ですね。結局、SPEEDIの個々のデータ測定の部分と、災害時に司令塔として行う部分、ここが一元化されていない限り、適切な対応というものはもう不可能なんじゃないかなというように私は思いますし、また、先ほども少しお話しになっていたと思いますが、特に避難の部分でこのデータが何か作為的に隠蔽されているようなことがあったら、それはとんでもない禍根を残すということになると思うんですけれども、ここについて、一元化それからデータの開示、最後にお話をお伺いして、私の質問を終わります。

〇木村参考人
 一元化に関しては必要であると思います。それを判断すべきことは、このデータの開示をもって、どこまでが危険であるということをきちんと、まず予防的措置、これもあくまでも暫定措置としてやっていくことが望ましいかと思います。
 実際に事故が起きた状況でその判断というものは、すぐに風の流れとか放射能放出量によって決まってまいりますので、そのデータをまず開示していきながら判断をしていくことが重要かと思っております。
 以上です。

〇柴山委員
 質問を終わります。

〇生方委員長
 次に、江田康幸君。

〇江田(康)委員
 きょうは参考人の先生方、大変御苦労さまでございます。大変貴重な御意見を賜り、まことにありがとうございました。公明党の江田康幸です。質問をさせていただきます。
 まず、きょうも続いておりますけれども、これまでの環境委員会の質疑では、大変幅広い、また深い審議ができていると思っております。
 これを受けて、現在、与野党の実務者同士で法案の協議を行っております。新しい原子力機関としては、独立性の高い三条委員会とすることで合意をすることができたわけでございますが、これは非常に歓迎すべきことで、原子力規制を実施する上で、独立性、中立性の確保に向けて、日本の原子力規制庁が本格的に前進することになると思っております。
 その独立性、中立性に加えて重要になるのが、先ほどからも先生たちから御指摘がある、専門性でございます。
 今回の事故では、原子力安全・保安院は、その専門能力の低さを国民に対して、また全世界に対しても露呈したところであります。ここにいらっしゃる北澤先生におまとめいただきました民間事故調の報告書においても、それは痛烈に批判をされているところであろうかと思っております。
 一方で、アメリカの原子力規制委員会、NRCは、みずから原子炉を動かすことができる複数の職員を有する、専門性の高い、四千名から成る職員を抱えておるわけであります。
余りの落差に愕然とするところでございますが、これを改善するために、自公案では、原子力規制に関する専門能力を有する原子力安全基盤機構、JNESの職員を基本的に原子力規制委員会の職員とすることで人材の質を高めるということにしていたわけであります。また、原子力研究開発機構、JAEAについても、原子力規制委員会が文部科学省とともに共管して、これらの組織が持つ知見を集積するということにしているところでございます。
 ここで、飯田先生と木村先生に御質問をさせていただきますが、JNESを原子力規制機関に統合して専門能力を高めていく、この考え方、これは今ほぼ合意をしているところではございますけれども、どのような御見解をお持ちか。また、先ほどからあります。この原子力規制機関の専門能力を高めていくということが喫緊の課題でありますけれども、そのための方策について御意見を二人にお伺いしたいと思います。

〇飯田参考人
 基本的には、先ほど先生がおっしゃったように、研究機関を統合する方が望ましいというのが、まず一次元的には思います。
 ただ、しかしながら、さらに副次的なところがあって、国の研究機関というのは、一つは非常に官僚主義的である、そして、今回の規制委員会というのは非常に権威的になります。権威的な組織というのは、大体往々にして中身がどんどんうつろになっていきますので、実質的な専門性をどう高めていくのかというのは、そこにしっかりとしたくさびというか、打っていく。
 それで、きょうちょっと私書かせていただいたのは、権威ではなくて、実質、権限はあるけれども、しかしオープンな組織文化で、国内外に開かれた、そして個人個人の顔がしっかり見える、特にトップはもちろんディレクターレベルが世界に開かれて、その人が責任を持った仕事ができる、そういう組織風土にすることがまず非常に重要かというふうに思っております。
 以上です。

〇木村参考人
 私も、今お答えになられた飯田さんの意見に基本的に合意です。
 僕が一番思うのは、やはり人材なんです。今現在の人材でいいのかということなんですよ。これは宮野先生もおっしゃっておりましたが、人材育成というところにかかわってくる問題で、もし例えばその研究機関の方々が入ってきたとしても、今現在の人たちでどの程度まで十分に国民の理解が得られるかというのは、僕にはわかりません。
 この事故を踏まえた上でのやはり再編成というのは必要になってくるし、それは、基盤機構だけじゃなくて、大学等からも入れていくというのがよいのかと思います。
 以上です。

〇宮野参考人
 宮野でございます。
 先ほどから申し上げておりますが、アメリカの場合の話が出ました。NRCは実機を動かせるくらいの能力のある人たちがいるという話です。
 日本の場合は、原子力は平和利用で行っているわけでございます。平和利用の国で原子力発電所をこれだけ動かしているところはほとんどないと思いますが、アメリカの場合には、海軍という、立派な原子力施設、潜水艦を持っているところがたくさんあります。そこの人たちが、実炉の経験を踏まえて、NRCとか、それから電力会社の原子力を動かすところに入ってくる。人材の流動化が非常に活発に行われているところでありまして、人材の育成が十分なされているというふうに思いますし、また、NRCでは、二千人以上の人たちが働いて、その中でも活性化をしているわけであります。もちろん研究機関もたくさんあります。
 では、我が国はどうなのかというのを見ると、非常に寂しいといいますか、非常に苦しい思いがあるところでありまして、JAEAの話がございましたが、JAEAの一部の人たちが原子力の研究をされているというところでありますし、また、先ほど御指摘にありました、いかに活性化されていないかといいますか、研究の中にどっぷりいるという状況もあるというふうに言われておりますし、そういうおそれがないわけではないと思います。
 そういう意味で、どうやって活性化をするのかというのは非常に大きな課題であります。研究マネジメントという教育をすることも必要なのではないかということで、ぜひそれをお願いしたいなと。マネジメントというのは、経営だけではありません。研究においてもマネジメントをいかにするかということが重要で、それを原子力の分野でもきちんとやって、そういう人たちがリーダーシップをとって世界に出ていくということが一つあるというふうに思います。
 ぜひ教育をお願いしたい。

〇江田(康)委員
 ありがとうございました。
 現在、この人材育成と密接に絡むわけですけれども、新しい原子力規制機関の職員をどのように配置するか、ノーリターンルールに関して、私、質問をさせていただきます。
 そういう議論が行われているわけでありますが、人材が限られている中、発足当初は、これは、原子力安全規制を担っている経済産業省の原子力安全・保安院、また、文部科学省から人材を集めざるを得ないかもしれません。
 しかし、これらの職員が、先ほどもございました、親元の経済産業省とか文部科学省、帰巣本能とも言われましたけれども、そういうようなところを見て仕事をするようでは、これは独立性や中立性が確保できずに、専門性も高めることはできないと思っております。
 このために、自公案では、経済産業省、文部科学省から原子力規制委員会への職員の配置につきましては、このノーリターンルールを徹底するということで、したわけでございます。
 このことについて、これまでの議論で政府は、立ち上げに必要な全ての職員をノーリターンしてしまうと、強い意欲を持って規制業務への参加を希望する優秀な職員が少数にとどまる懸念があるというような大臣答弁もございます。確かに、立ち上げから人材を集めるというのは厳しい面もあるかもしれませんが、意欲や能力のない職員をノーリターンにしてしまうというリスクもあるかもしれないわけであります。
 この新しい原子力規制機関をやはり実効性のあるものにするためには、資格の創設や、また処遇も充実させて、研究交流等々においても、意欲のある職員が集まるような環境を整備する前向きの取り組みが絶対に必要だと思っております。
 先ほど述べましたJNESとの統合というのも、これは、千人規模でそういう専門能力のある職員の組織をつくる、そういう中でノーリターン化していくことであれば、十分にこういう意欲のある職員が育つ環境になってくる、このように思うからでございます。
 ここでもう一度御質問をいたしますが、飯田先生、また北澤先生にお伺いをいたします。
 このノーリターンルール、どのような手順で進めていくべきと考えておられますでしょうか。また、処遇の改善、また、ほかとあわせて徹底しなければこの実効性は確保できないと思いますが、その辺のところの見解をお聞かせいただきたいと思います。

〇飯田参考人
 どうもありがとうございます。
ノーリターンは、これはもう当然だというふうに思いますが、ノーリターンだけではなくて、そこからさらに通り抜けて別の原子力村の方におりていくというのも、原子力村というのは非常に狭いものですから、そういった利害関係のあるところに、さらにその次に行かないといった最低限のディシプリンは絶対マストだと思います。
 基本的には、まず組織をつくるときにノーリターンルールが出てきたのは、これは恐らく霞が関文化からだと思いますが、通常の民間で考えるとおよそ考えがたいことで、きちんと ミッションがあって、それを呼びかける責任者がいれば、優秀な人材を公募していって立ち上げれば、白地で立ち上げた方がよりしがらみのない、優秀な組織が立ち上がりますし、処遇というよりはむしろ、誇りがある仕事をきちんと与えれば人間は本当にいい仕事をしますので、とにかく誇りがある仕事。であれば、意思決定が不透明になりますから、ノーリターンだけではなくて、例えばさまざまな省庁のしがらみで役職が不透明に決まるといったことは、決して避けなきゃいけないと思います。
 そういった意味で、外部は資金の関係もあって公募は難しいかもしれませんが、先ほどのJNESの統合に関しても、内部組織的にもきちんと公募制と人事評価を透明にしていって、優秀な人がディレクションをしっかりしていくという、年功序列ではない形をしっかりとっていった方がいいのではないかというふうに思っております。
 以上です。

〇北澤参考人
 ノーリターンルールに関してなんですけれども、やはり日本のお役所というのは、世界の中でも非常に特殊な面があって、それは、そのお役所をやめてから、終生にわたって、その後のいろいろなところへのポストもお役所の人事が全て決めている。ですから、一旦そこから外れたらもうどうしようもない、そういう恐怖感というものに対する、ノーリターンルールというのはそこから出てくると思うんですけれども、非常にそれが強固であるだけに、表向きノーリターンになっていますというのは、余り大きな意味を持っていないように私には感じられます。
 ですから、これは相当にきちんと考えなければならない問題で、それでさらに問題は、事務局というのが日本ではとても大切でありまして、その事務局を構成する人たち、その人たちが帰巣本能に基づいてというか、親省庁に帰っていくというようなそういう形で働いていたのでは、やはり日本のいろいろな委員会というのは、事務局が、若い人たちが実際には動かしていますから、その人たちに推進側と癒着しないようなそういう規制側の実効をどうやって上げさせるかということが、ノーリターンルールでは非常に重要な、考えなければならない部分だというふうに思います。
 それで、研究教育にかかわるような人たちについては、原子力に関しては安全性といったようなものがほかの産業に比べてはるかに重要な部分であるだけに、テクニカルなことにかかわる人あるいはその行政にかかわるような人に関しては、その部分から教育と研究に相当に携わる人が出てくるべきであるというふうに思います。
 例として申し上げますと、例えば東大の原子力工学科の中には、この規制側の組織が運営している三つぐらいの研究室があるとか、そういう形で、原子力に関しては、総合的にリスクマネジメントを含めて教育及び研究に携わる人たちがたくさん出てくるということによって高いモラルと専門性というのを保っていくことができるというふうに感じております。
 以上です。

〇江田(康)委員
 ありがとうございました。
 時間が過ぎてまいりましたが、先ほどから論点になっていますところの、総理の指示権を含めた危機管理について質問をさせていただきます。
 現在、最も大きな議論になっているのが、緊急時における総理の指示権でございます。原子力の安全性について一義的責任を持つのはこれは事業者でありますが、その事業者がしっかりと安全を確保しているかを監視して監督するのがこの規制組織であるというこの役割がございます。この役割というのは、これは平時においても緊急時においても同様にしなければならない。
 そういう中で、国家、総理の介入というのは、あくまで必要最小限の、また抑制的なものでなければならない、こういう議論がされているところであります。
 今回の事故でも、これは北澤先生の民間事故調の報告書にもございます。菅総理また官邸の現場への過剰介入というのが、例えば、海水注入やベントの要請というようなところにおいても大変大きな問題となっておるわけであります。
 大変厳しい評価をこの民間事故調ではなされているかと思いますが、ここで北澤先生にもう一度御質問をさせていただきます。
 今回のこの事故の検証をされていたお立場から、先ほども種々ございましたけれども、緊急時における国家、総理の介入のこの必要性について、先ほどもございますけれども、どのように見解をお持ちか、改めて伺います。
 また、過剰な介入を防止する、このことが大変重要になるかと思いますが、どのような措置を講じていくべきか。これは飯田先生にももう一度お伺いをさせていただきます。具体的なお考えをお示しいただければと思います。

〇北澤参考人
 先ほども申しましたけれども、安全性という観点からは、ゼロか一というデジタルな問題ではない。ですから、安全性を高めれば高めるほどコストもかかりますし、それから稼働もできなくなってくる、そういう類の問題でありますから、その意味では、最終的に社会全体としてどのレベルで安全性をやっていくのか、あるいは原子炉を廃炉にするというような決断をどの時点でするかというのは、技術だけでは絶対に決まらない。最後は、社会それから経済性、いろいろなことを考えて決めていかなければなりませんから、そこのところで政治が全く入ってこないということはもうあり得ないという、私はそういう見解に立っております。
 ですから、そこのところを、どこの場合にはどうなのかということを平時から関連者たちはきちんと考えておいて、政治ともそういうことは話し合っておく。それで、どうしようもない想定外というのは出てこないようにしていくということが一番重要なことであるというふうに思います。
 それで、最後の最後は、首相が出てくるのは、それがどうしようもないときには出てくるのは当然なことであるというふうに思っております。

〇飯田参考人
 今回は、もちろん首相が最後出ていったという話があるんですが、一方で、保安院、安全委員会、その間で専門的役割を果たすべき組織が全て崩壊をしたという中で、誰がどうすべきかという混乱状況であったと。
 その中で、恐らくイフはありませんが、すべきだったことというのは、やはりあそこまでぐずぐずになってしまった中で、きちんとした緊急時の権限移譲をもう少し実体化すればよかったのではないかと。空本先生いらっしゃいますが、空本先生もいろいろ大きな力を発揮されたというふうに伺っています。
 それが、非公式な権限でいろいろ動いていた状況が指揮権と情報の混乱をもたらしたのではないかと思いますので、そういう意味では、緊急時のときに、やはりそこのところの専門性を持った、しかも緊急時に対応できる人が、本来はもともと用意されていればいいんですが、なかったときに政治家は何をどう判断するのかということが大事だったのかということが教訓ではないかというふうに思います。

〇江田(康)委員
 この質問に引き続いてでございますが、緊急時にどう対応していくか、今回も大変大きな課題が残ったわけですが、そのためにも平時における危機管理体制をしっかりとしていかなければならないというのは、北澤先生を初め、きょうの御指摘でもございます。
 今回の事故を改めて振り返れば、政府はシビアアクシデントに対する備えが全くできていない、そういう結果であったと思われます。想定したこともない事故が発生して、マニュアルも不十分で、関係者の能力も不十分で、情報共有の体制も整備されていない、専門知識、経験を欠いた少数の政治家が中心となって、次々と思いつきだけで場当たり的な対応を続けた、こう言わざるを得ない、危機管理体制というのは全く機能していなかった、こういうことだと思います。
 政府の危機管理体制というのは、民間事故調でも御指摘がございます。先ほどから出ています。稚拙で泥縄的な危機管理だったのではないかということで、つまりは、やはり先生たち御指摘のように、平時から事故に対する備えが全くできていなかった、いざ緊急事態になったら、何をしてよいかわからない、右往左往した状況だったということだと思われます。
緊急時の対応ができるためには、やはり平時からの連続で危機に備えていなければ、これは十分対応することはできないということは明らかでございます。
 この点については、今環境委員会でも大きな議論をしているところでありますけれども、平時のオフサイト対策として、市長を含む自治体との調整そして連携、また、自衛隊、警察、消防との調整や連携、さらには、防災訓練、原子力防災対策指針、防災計画の作成、また、風評被害対策から被災者の健康管理、こういうところまで多くの仕事があります。これらは、ハイレベルで調整できる者を配置できる体制も含めて議論していかなければならない、大きな論点であります。
ここでもう一度、北澤先生に御質問をさせていただきます。
 稚拙で泥縄的な危機管理とならないように、平時から関係者と調整して連携を深めてしっかりとした備えをしていく必要があるわけですが、これについてどのように進めていくのが適切であるのか、また、このような備え、これを充実させるために何に留意をしていけばいいのか、御見解をお願いいたします。

〇北澤参考人
 今度できる組織の最大の任務は、まずすぐに当然事故が起きることは望まないわけでありますけれども、あらゆるタイプの事故が起きることを想定して、そして、それに対する対策の仕方を一つ一つみんな考えておくという、どこまで考えることができるかというのが一番最初の大きな任務だというふうに私は思います。
 それで、それをちゃんとやっていくに当たって、技術の中身からだけでは決して対策というのはできないということも事実でありまして、つまり、安全性だけを重んじれば、幾らでもコストをかけて幾らでもやっていくことはできるわけですから、あるいは安全性だけを考えれば、とめてしまうのがもう最も安全なことでありますし、何もやらないということになります。
 ですから、そこのところを政治の側とも相談しながらやっていかなければならないところは随分あると思いますし、これは、社会的にもいろいろな議論を巻き起こしていかなければならない問題だというふうに感じております。
 以上です。

〇江田(康)委員
 これ、済みませんが、それぞれの先生からいただけますでしょうか。

〇木村参考人
 平常時の危機管理ですが、まず私が申し上げたいのは、一九九九年に、東海村臨界事故があった年に私は放射線医学総合研究所に入りました。その前からその研究計画を提出するんですが、そのときに、有事の際と原子力災害というふうに書いたときに上司から言われたのは、事故は起きない、原発は事故を起こさないということをまず言われたんですね。そういう話からまず原点に戻って考えていかなければならないわけですよ。
 私はその当時、科技庁の職員でもありましたから、そういう監督官庁の部分自身も、事故は起きないというあり得ない想定のもとに話が進んでいって、今回事故が起こりました。だから、事故についてさまざまな角度から見ていくんじゃなくて、あらゆる部分に対応可能な組織づくりにしていかねばならないという考えがします。
 私自身が今回その調査に臨んだ気持ちというのは、これは戦場だ、戦場というのは何が起こるかわからない、自分の命は自分で守るしかないんだ、自分の周りにいる人たちを守るにはどうすべきかというようなことから発展して考えてきました。
 このような観点から申しますと、さまざまな分野の方々が意見を言われても、根底に何があるかというのをまず考えた上で平常時というものを考えていかねばならないと考えております。だから、根本から、根底からまず考え直していただきたいというのが私の意見です。
 以上です。

〇宮野参考人
 平常時と異常時でございますが、平常時に異常時のことを考えて手を打っておくということは、非常に難しいことです。
 難しいというのは、防災という問題について、特にオフサイトの問題について、常にどういう事故が起こるかわかりません。それを、いつもそういうことを考えながら手を打つというのは、国として考えるのは非常に難しい。そういうことで、オフサイトセンターの機能がうまくいかなかったという例があるように、やはり、常時を考えて異常時をどう展開していくかということをきちんと考えておくことが必要だと。
 すなわちどういうことかと申し上げますと、地元と常に連携をしながら発電所をどうやって運営していくのかということを考えることが、日常のことが重要なのであって、事故が起きたときにはどうするんだということを一緒に考えるということです。それは、世界、アメリカでもそうです。常に地元と考えて、事故が起きたときにはどうするんだということで手を打ってきている。それが平時の事故に対する考え方です。
 防災は、原子力だけじゃなくて、ほかのものも一緒に考える必要があるのではないかというふうに思っております。

〇飯田参考人
 かつてまだ私が原子力をやっていたころは、例えば防災訓練をすること自身が住民を怖がらせるからやらないんだという時代がまずあって、それが、いわゆるジェー・シー・オーの事故も起きて、セレモニー的防災訓練になりましたね。今回はもうそれをやってはならないので、事故は起きるという前提のもとで、実質的ないわば機能を設ける。
 それは今、宮野先生もおっしゃったように、事故が起きたときには何が起きるかわからない。それは確かに平時には準備できないんですが、何が起きるかわからないときに何ができるかは想像力と責任感でしかないので、ですから、充て職はやめることですね。本当に、モラルを持って、責任感を持ったリーダーがきちんと座った組織にするということ以外にないのではないかというふうに思います。

〇江田(康)委員
 時間が参りました。本日は大変にありがとうございました。
 終わります。

〇生方委員長
 次に、斎藤やすのり君。

〇斎藤(や)委員
 きょうはありがとうございます。大変参考になりました。
 今、これまでの質問された方がかなり細かいところまで質問されておりましたので、私からは、ダブるところもあるとは思うんですけれども、ぜひよろしくお願いを申し上げます。
 先ほど、飯田先生から、今回の福島事故で誰も責任をとっていないじゃないかというようなことがありました。私もこれは同感でございまして、飯舘村の子供たちのおしっこからセシウムが出てしまったのはなぜかということなんです。これは、政治主導が誤った形で行われてしまった、これがやはり事故を拡大させてしまったことは私は確かだと思っております。ですから、この規制組織というのは、政治に暴走させないこと、それから、原子力村からいかに独立性を確保させるのかというのがポイントになってくるんだというふうに思います。
 今回のこの規制機関の設置と、そして何といっても大飯原発再稼働の話というのは、切っても切れません。まずは、この大飯原発再稼働の話からちょっとお伺いしたいというふうに思います。
 きょう、野田総理が大飯原発再稼働について国民に訴えをするそうです、夕方の記者会見だそうですけれども。そもそもこの再稼働に正当性はあるのか。政治的正当性、それからリスクという点から見た正当性、これはどうなのかということを、ぜひ宮野先生そして飯田先生にお伺いしたいと思います。

〇宮野参考人
 私は、再稼働についてどうこう言う立場では基本的にはないというふうに思っております。
 原子力発電所が安全かどうかということについては、その判断を行ったところの評価について、私はそのとおりだというふうに理解しております。
 それは、一つは、基本的に設計というのは安全を確保するためにきちんとなされておりますし、運用もなされてきております。そういう評価をしてきているはずです。そういう中で運転をしてきたということに間違いがあったかどうかということで、それはまずないと。しかし、昨年起きた津波での災害に対応してきちんと評価できているかどうかということに対して対応できているという評価がなされていれば、それは正しいことだと。それで安全が担保できるか、その前提条件としてのストレステスト等々があったというふうに理解をしておりますし、その評価については、いろいろ見解に相違があるかもしれませんが、出された結論については、それなりの結果だというふうに思います。
 その結果をもって再稼働するかしないかは、それは政治の判断だということで、安全であるかどうかということについては、私は安全性は担保できたというふうに理解をしているところでございます。
 以上であります。

〇飯田参考人
 私は、特にこの問題は、大阪府市の統合本部のエネルギー戦略会議の立場として検討してまいりましたが、現在確認されている安全性というのは、これまでの安全神話のもとでの安全性は確認されているかもしれませんが、福島事故以降の、安全神話が崩壊した後の安全性は一切確認されていないということは、これはもう大阪エネルギー戦略会議全員の共通見解です。
 まず、正当性がないというのは、事故調査の結果が出ていないのに、それに対してどのような安全性を今後担保すべきかということができるわけがない。安全性の判断の前提がまずないということです。
 そして、安全性に関しても、今想定されるものとしては、まず福島級の地震と津波に耐えればいいというのは、これはまさに安全神話そのものであって、どのような事故原因がこれからあるかもわからないということを根底からまず見直す。それには、テロもあり得る、あるいは最近では竜巻すら、あるいは爆弾低気圧もあるわけですから、そして飛行機の墜落もあり得る。どこまで想定するのかということを虚心坦懐に考え直して、そしてその上で、壊れるか壊れないかをきちんと判断する。それも、ただ計算だけではない。そして、閉じ込めることができるかどうか、閉じ込められなくても住民の安全を防護できるか、そしてさらに損害賠償と復旧に財政が対応できるかというこの三掛ける四のマトリックスを、きちんとそれなりに対応しないといけない。
 我々は八条件を大阪からは提示しておりますが、一切、どれ一つとして対応していないというのが今の政権ですので、必要性から再稼働にいくというのは、これは全く政治的に正当性がない判断だというふうに我々は判断しています。

〇斎藤(や)委員
 私も飯田先生の意見と同感でして、保安院がつくった三十の安全基準からとりあえず十三を取り出して二日でつくった暫定基準で動かしますよというのは、国民の誰が納得できるんでしょうか。私は、これについてはこの場で訴えるのもおかしいですけれども、政府に強くこの点は訴えたい。国民の安全というものをどう考えているのか。
 これは私の意見だけじゃなくて、国民の多くが、六割以上の方が今、この大飯原発の再稼働に対しては反対していますので、私は、引き続ききょうの午後の連合審査会でも政府に強く抗議の意を訴えていきたいというふうに思っております。
 なぜ再稼働を急ぐのか、これもまたきちんと政府は話していないわけです。恐らく、夏の電力不足というのが一つの再稼働の大きな原因だとは思うんですけれども、政府、電力会社が出した夏の需給予測について、これも済みません、飯田先生、どのような見解をこれはお持ちでしょうか。

〇飯田参考人
 私の理解は、これは国家戦略室の担当にも確認した話ですが、五月十八日に行われたエネルギー・環境会議のもとで確認されたものは、電力制限令は行わなくてよい、つまり、節電目標、関西電力一五%、九州電力一〇%、その他西日本五%の節電目標によって、そして広域の需給調整を、広域で連携を図ることによってこの夏の西日本地域はできるんだという見解になっているというのが私の認識です。
 以上です。

〇斎藤(や)委員
 どうもありがとうございます。
 やはり、自家発電の掘り起こしとか、それから、想定されている夏の暑さが、一昨年のウルトラ猛暑、本当に二十一世紀の中では一番という暑さを想定されている需要予測に基づかれているものです。
 私は気象予報士で、実際、電力会社にも電気の供給予測というのはしていましたのでこのあたりはよくわかっているんですけれども、一昨年のようなああいうウルトラ猛暑にはことしはなり得ない、下手をすると冷夏になるリスクもあるという中で、大げさに需要が多くて供給が不足するというのは、ちょっとこのあたりは疑問でございますので、このあたりもしっかりと意見を述べていきたいというふうに思っております。
 先ほども言ったように、福島の事故調査結果が出ておりません。しかも、先ほど飯田先生からありましたけれども、事故を起こした責任ある保安院がつくったその安全基準で動かそうとしております。
 このまま大飯原発再稼働に突っ込んだ場合に、最大の事故リスクというものはどういうことが考えられるのかということを、民間の事故調で調査結果を出した北澤先生にぜひお伺いしたいんですけれども、どうでしょうか。

〇北澤参考人
 大飯原発のことに関しては、私は詳しくわかっておりません。
 ただ、言えますことは、使用済み核燃料の貯蔵場所を含めて、どれだけの量の燃料棒がどこに蓄えられているのかということをきちんと把握して、そして、大飯原発についてもそういうことも把握した上で、最後の事故の拡大するところはどこまで行くかというのはそれによって決まりますので、原子炉だけでは決まらない。
 それで、それが漏れ出したときに最大ここまで行くということは考えなければならないわけですけれども、今回の福島原発のときには、かなりの放射能は海の方に流れたわけでありますけれども、これが冬に起こったとしますと、そうすると琵琶湖とかそちらの方に来てしまうという問題も非常に大きくありますので、それから、大都市がすぐ近くに、風下になっているというようなこともあって、これは非常に考えなければならないことで、そこのところは政治がきちんと考えなくちゃいけない問題だと思います。
 これは、技術的にはどの程度のことになるかというのはある程度予測がつくわけですから、最後は政治の問題だと思います。

〇斎藤(や)委員
 先生、ありがとうございました。
 やはり、今の安全基準というのが原子炉の安全基準ばかりに焦点が当たっていて、では、国民の安全は一体どこにあるのかというところがもう明らかにこれは欠如していると思いますので、事故が起きた後なんですから、余計そこに焦点を当てて安全基準をつくるべきだというふうに私は考えております。
 次の福島が日本を破滅させる、そういう思いでやはり規制組織をつくらなければいけないというふうに思います。
 次の福島を起こさないための規制組織はどうあるべきか。木村先生にちょっとお伺いしたいんですが、これは非常にざっくりとした質問なんですけれども、大きなトラブルがあった場合の指揮系統ということは、非常にざっくりとした聞き方で申しわけないんですが、危機管理はどうあるべきかというのをちょっと教えてください。

〇木村参考人
 まずは調べることでしょうね。とにかく、事故が起きたというときには、まずその事故状況を予測するという予測システム、SPEEDIのようなものというのは非常に重要なんですが、それ以上に、実際の現場で何が起こったか、どういうことが起きているのかというのをつぶさに判断する必要に迫られると思います。
 以上です。

〇斎藤(や)委員
 そういう意味では、原発の建屋が吹き飛んだときに、私は実は隣の仙台にいました。八十キロの場所にいたわけです。そして、宮城県内の放射能のモニタリングがもう全部停電でとまってしまいまして、放射能がどれぐらい飛んでいるのかもわからない。SPEEDIも情報が出ない。しかもひどかったのは、ガソリンがなかったんです。ガソリンがなかったから、次、原子炉が吹き飛んだら、これはもう逃げられないなと。食料もないんです。私は初めてそこで死というものを意識したわけでございます。
 ですから、そういう意味でも、先ほど先生がおっしゃったように、SPEEDIの管理だとかそれから放射能のモニタリングの管理なんですけれども、そこの問題も今回非常に焦点が当てられております。これについて、北澤先生とそれから飯田先生にお伺いします。
 政府案では、規制庁がこのモニタリング業務については機能を担うと言っております。しかし、文科省にある実施機能は移管されない。先ほど柴山先生の質問もありまして、かぶる部分はあるんですが。実は文科省は、モニタリングには人員が要る、規制庁には実動部隊を抱えるだけの規模がなく、我々がやるしかないというふうに言っております。実施とそれから指揮というところがばらばらでもいいというふうに言っているわけなんですが、先ほど言ったように、やはり、何といいますか、恣意的なというか、政治的な情報の隠蔽みたいなものが起こり得るということでございますから、私は、これは一元管理でするべきだというふうに思っております。
放射能情報の管理、情報のリリースのあり方について、先ほど木村先生に聞いていましたので、北澤先生と飯田先生に、この情報の管理、情報のリリースの仕方、お伺いしたいと思い ます。

〇北澤参考人
 今回、SPEEDIが役に立たなかった一番の理由は、一元化の問題があったかと思います。
 つまり、文部科学省がそれを動かして、そしてそれを判断してみんなに知らせる役割というのは、文科省は自分にあるとは思っていなかったという、それによって情報が外に出ていかなかったというふうに思われるわけでありますけれども、実際に動かしている人たちは感情もあり、これはどういうことになるのかということは皆さんわかっておられるわけで、そのときに、その人たちに心があれば、それをきちんと伝えていったはずなわけであります。それを伝えられるような組織になっていなかった。つまり、文科省にはそれを外に発表していくようなそういう権限がないというふうに理解していたということが一番の問題だと思います。
 そのときに、それをきちんと外に、こうですよ、大変ですよと言って伝えていったかというと、そこまではやれなかった。なぜかというと、それは文科省の中に何らかの事情があったんだというふうに思えるわけでありますけれども、一元化されていればこういう問題は起きなかったというふうに思います。

〇飯田参考人
 基本的には私も一元化だと思いますけれども、これは、もともと私、原子力村にいた人間として申し上げると、大分今は形が変わってきましたが、やはり日本の原子力村には、国策直営のいわゆるかつての旧科学技術庁グループと国策民営の通産、電力会社グループが大きくあって、かつてのジェー・シー・オーの事故は、これは文科省グループが起こした不始末だから、旧通産省、経産省グループは一切協力しなかったわけですね。今回はその逆が起きたわけです。今回は電力が起こした不始末だからということで、当初、文科省グループは一切動かなかった。
 そのことが実は尾を引いているわけで、そういう意味でも、原子力村の構造に切り込んで、文科省管轄の原子力グループは全てある意味一つに一元化することも含めた、私は、そういう意味で先ほどの原子力委員会の廃止等も御提言申し上げたということです。

〇斎藤(や)委員
 利権が絡むと俺が俺がというふうに言ってくる人たちが、いざ事故が起こると、俺には責任がないというふうな構造がその原子力村の構造だというふうに思います。
 ですから、話はちょっと変わりますけれども、この原子力のモニタリングの問題については、今修正をしているのであれば、衆法で出している、モニタリングも一元化するということにぜひかじをとっていただければなというふうに私は思います。
 さて、ちょっと気になったのが、けさの読売新聞か何かで、報道のことなので実際はどうなのかということはちょっとわからない部分ではあるんですけれども、修正案の中で総理の指揮権を認めるという旨の報道がありました。政府案は総理の指揮権を認める、政府の指揮権を認めるということなんですが、修正案でも総理の指揮権を認める旨の報道がありました。
 報道ベースですから私はわかりませんが、仮に総理の指揮権を認めるという法案に修正されたとして、新聞に何て書いてあったのかというと、例えば、低レベルの汚染水を海に放出する、それからベント、それから原子炉への注水、こういう重大な決断が必要な場合に総理の指揮権を認めるということのように修正案がなるようなんです。
 ずっとこの委員会の中で、これは言葉は悪いですが、菅直人リスクのことが言われておりました。私は、専門家でないリーダーの暴走、私の元の上司ですけれども、いわゆる菅直人リスクが今回の災害にはあったと思っていいと私は思っています。
 不当な政治介入を防ぐため、これにやはり全力で今回の法案というのはまとめ上げなければいけないというふうに思いますけれども、この総理の指揮権も含めて、どのような組織のたてつけであるべきかということを、ぜひ木村先生にお伺いしたいと思います。総理の指揮権を中心としたことでお答えいただければと思います。

〇木村参考人
 これも私も新聞報道でしかほとんど読んでいないので、実際こういう話というのは、正直な話、事故当初の話、僕がわかるわけないんですよ。何でかといったら、現場にいましたから。情報なんか見れるわけないんですよ。車の中のラジオしかわからないし、その状況がどうなっているかということを気にしていたら、自分のモニタリングはできないわけです。
 ということなので、正直な話、指揮権については、新聞で読んだ限りのことなので、ここの場で何を言っていいのかというのは、正直なところ責任が持てないので、ちょっと私には答えかねます。済みません。

〇斎藤(や)委員
 同じ質問を、ぜひ北澤先生にお願いいたします。

〇北澤参考人
 現場のことに関することも、これは、ベントも含めて、最終的には国全体にかかわる問題であります。ですから、一国の総理たるもの、そこのところにおいて国に危険が及ぶというようなことになったときに、それが、その部分での利害関係とか経営の問題とか、そういったことでおくらせるようなことが行われる可能性があるときには、当然、総理は指揮権を発動しなければならない、そういうところに陥るそういう場面というのは、想定されるというふうに私は考えております。

〇斎藤(や)委員
 ありがとうございます。
 恐らく、専門家でない人が中途半端な知識を振りかざして何か指示を出すということではなくて、専門家が出した最良の手段を総理に預けて、総理がその有無を判断するということの多分指揮権だとは思うんですけれども、このあたりも含めて、ぜひ修正案で修正できればというふうに思います。
 さて、組織の問題で最後なんですけれども、飯田先生から、ノーリターンルールなんというのをつくっても、実質的なものを伴わなければいけない、そういう話がありました。
 これから規制組織をつくるにしても、職員の四分の三が保安院で、あとは原子力安全委員会とそれから文科省のスタッフです。
 今回の原発事故の、ちょっと言葉は悪いですけれども、戦犯とも言うべきスタッフをそのままスライドさせて、果たして、だめなものはだめと言える体制をつくれるのかということなんです。
 実のある、まさに原発のリスクから国民を守っていこう、原子力村の甘いささやきに耳をかさない組織をどうやってつくっていくか。最初のベースをどうつくるか、人材をどのように配置をするのか。そして、それともう一つ、原発の安全性を厳格に追い求めるだけの集団であるべきなのか。それから、海外では規制機関の人材教育をどのようにやっているのかということもやはり参考にしなければいけないというふうに思うんですけれども、飯田先生と宮野先生に、組織の中身の人事だとか人材発掘だとか、そしてマインドの持ち方とか、そういうことをお伺いしたいと思います。

〇飯田参考人
 まず申し上げた、ノーリターンルールを私は否定するのではなくて、それは最低限絶対必要だと、形式的には。ただし、形式的ルールだけでは必ず実体が崩れていくので、まずは、これは基本的には、去年、実は原子力安全顧問会議というものに私は突っ込まれて、お座敷のような割と緩い会議だったんですが、並行して実体の組織設計はどんどん進んでいきました。それは今日に至るまで、実務で行われている状況というのは全く不透明だったわけです。
 欧米的な形でいうと、本来あるべき組織論というのは、まず、トップを誰にするかというのをしっかり決めます。そのトップが自分の裁量権のもとでディレクターを選んで、そのディレクターがきちんとその組織を所掌する。もちろん、全体としてのアームスレングス、いわゆるきちんと距離を置くようなルールとかはきちんとつくった上で、あとは、その組織を透明化していくことによって、そういう恥ずかしいことはできなくなりますね。
 だから、霞が関は両方あるんです。霞が関の各省庁の思惑が入り込むリスクと、それから原子力村との利害相反、その両方を排するようなきちんとした背筋の伸びた組織を、やはり、権限移譲とトップのいわゆるガバナンス、そしてディレクション、そこをしっかりつくることによって、一人一人は真面目な技術者の人がほとんどですので、その人たちに誇りのある仕事をしていただくような組織をどうつくるかという意味では、そういうリーダーの役割が非常に重要だというふうに思います。

〇宮野参考人
 組織は、ノーリターンというのはそのとおりだと思いますし、どういう組織にしたらいいのかということを、今、飯田先生がおっしゃいました。
 やはり、トップをしっかり決めることがまず大事です。それで、その周りに委員を何人か置くということになっていると思いますが、トップがその委員を決めてはならないと私は思います。やはり、その委員も含めてバランスよく決める。要するに、反対を言っていてもいいと思うんです。技術的な議論は幾らでもあってもいいと思います。ただ、そこに政治的な議論を持ち込むのはおかしいと思いますし、それから、専門家でない人たちが入って議論するのは意味がないと思います。
 ぜひ、反対の意見を述べる専門家が集まって常に議論をしていただきたい。その中で下の組織をきちんと動かしていけば、日本人は、上がしっかりすればきちんと下は動くようになると私は思います。
 教育の仕組みは、先ほど申し上げませんでしたが、来週からIAEAの国際人材育成というのが、日本で英語だけで教育をするというのは、東海村で東大が行うと私は聞いておりますが、三週間ぐらい缶詰になって国際人と一緒になって日本人も議論する。そういう教育の中に入れ込んでいくというようなことも必要だというふうに思いますし、ぜひ、教育をするということでマインドを育てていっていただきたい。ぜひ、トップそれからその周りをきちんと固めて、その見識に従った組織となるように持っていくようにしていただきたいなというふうに思います。
 以上であります。

〇斎藤(や)委員
 今、トップのやはりマインドだとかトップの方向性だとか、そういうのが非常に重要であるということを言われました。
 追加でちょっと質問なんですけれども、そのトップのキャリア、そういうものはどうあるべきかと思うんですけれども、過去の職歴とか仕事の仕方とか、今はありましたけれども、そういう点では飯田先生それから宮野先生、どうでしょうか。

〇飯田参考人
 きょうの私のメモの中に、スウェーデンのSKIの例ということで、当然、専門性は必要であると同時に、人格、社会性あるいはきちんと戦略的目線を持っているかといったことが厳しく評価をされて、つい最近も、スウェーデンの原子力長官選考プロセスを、かわったばかりですね、いろんな人がノミネートされていましたが、思惑で人を選ぶのではなくて、まずはきちんとそういう人を何名か出して、あとは政治決定だと思いますが、最低限のきちんと高いレベルのスクリーニングが必要だというふうに思います。

〇宮野参考人
 私も全く同感でございます。
 ぜひ専門性をきちんと見て、見識、それから経歴も参考にするのがよろしいかと思いますが、やはり、人格その他含めて、専門性をきちんと持った人の中からそういった人間を選ぶということが必要だというふうに思います。ぜひそういうふうにしていただきたいと思います。

〇斎藤(や)委員
 ありがとうございました。非常に参考になりました。
 やはり私たちがやらなければいけないのは、もう本当に次の福島をつくらないということ、それをしないための組織づくりをするべきだというふうに思います。
 きょう、四人の先生方からそれぞれ御意見がありました。形骸化された安全性から実効性のある安全性の確保をするべきだ、最悪のことを想定した組織、法律、情報管理の整備をするべきだ、そして、無責任集団ではなくて、心ある責任集団に変えるための組織づくりをするべきだ、私はきょうの提言からこの三つを抽出したんですけれども、ぜひこの三つを目標にした、そして、それを実行できる規制組織というものをこれから修正案で与野党でもんでもんで、そしていいものができればなというふうに思います。
 できれば、その規制組織の安全基準で大飯原発再稼働というのは判断するべきなのではないかということを最後に提言させていただきまして、ちょっと時間が余ってしまいましたけれども、私の質問とかえさせていただきます。
 きょうはありがとうございました。

〇生方委員長
 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

第180回 国会 衆議院 憲法審査会

第180回 衆議院 憲法審査会 第7号
平成24年6月7日(木)
午前九時一分開議

【日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法の各条章のうち、第三章の論点)】

○大畠会長
 これより会議を開きます。
 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に日本国憲法の各条章のうち、第三章の論点について調査を進めます。
 本日の議事について申し上げます。
 まず、衆議院法制局当局から説明を聴取し、その後、各委員からの意見表明等を含む自由討議を行うことといたします。
 それでは、衆議院法制局当局から説明を聴取いたします。衆議院法制局法制企画調整部長橘幸信君。

○橘法制局参事
 衆議院法制局の橘でございます。
 前回に引き続きまして、今回は、第三章国民の権利及び義務の章につきまして、お手元配付の資料に基づき、その主要論点について御報告をさせていただくことになりました。よろしくお願い申し上げます。
 申し上げるまでもなく、人権保障規定は憲法の最も中核的な規定でございます。この点を端的にあらわすものとして、まず冒頭、内外二つの事例を御紹介申し上げたいと存じます。
 一つは、フランス人権宣言の規定でございます。一七八九年のフランス人権宣言十六条では、権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていない全ての社会は、憲法を有しないと定めて、近代憲法の核心が人権保障と権力分立であることを端的に述べています。
 もう一つは、大日本帝国憲法制定時における、伊藤博文と、初代文部大臣として有名な森有礼の論争でございます。
 明治憲法第二章の臣民の権利義務に対して、森有礼は、臣民は、天皇に対して、責任は持っているが権利などは持っていないとして、臣民の権利という文言ではなく、臣民の分際とすべきと主張したそうでございます。これに対して伊藤博文は、森氏の説は憲法学及び国法学に退去を命じたるの説と言うべし、そもそも、憲法を創設するの精神は、第一、君権を制限し、第二、臣民の権利を保護するにあり、ゆえに、もし憲法において臣民の権利を列記せず、ただ責任のみを記載せば、憲法を設くる必要なしとして、憲法から臣民の権利を除けば、それは憲法ではなくなると述べて反論したそうでございます。結局、伊藤博文の説が採用されたわけです。
 それほどに、憲法における人権保障規定の重要さは、洋の東西を問わずに認識されてきたものと言えるかと存じます。
 さて、以上を踏まえつつ、本日のテーマでございます第三章国民の権利及び義務に定められております第十条から第四十条までの三十一カ条の規定を眺めますと、この章は、判例の積み重ねも大変多うございまして、実に多くの論点が含まれている分野でございます。
 それらを念頭に置きつつも、ここでは、これまでと同様に、あくまでも、衆議院憲法調査会の報告書を初めとする、国会でのこれまでの憲法論議及び各党各会派の憲法提言等で取り上げられてまいりました条文を中心に、分類、整理いたしました。同時に、幹事会での御指摘、御示唆を踏まえながら、先生方の自由討議が濃密かつ効率的に行われることに資するため、大きく四つに分類して御報告申し上げたいと存じます。
 お手元配付のA3縦長の一枚紙、論点表をごらんいただければと存じます。
 すなわち、第一は、人権総論に位置づけられます人権の調整、制約原理としての公共の福祉と、これに関して議論されることになる国民の義務について。第二は、これまでの国会での権利義務に関する議論の大半を占めてまいりました、いわゆる新しい人権について。第三は、そのほかに、これまでの憲法論議において御議論が多かった人権条項に関する論点を四つほど抽出し、これらについて御報告申し上げたいと存じます。そして最後に、これら以外の第三章の条項に関する論点についても簡潔に御報告させていただきたいと存じます。

 まず、第一の論点、公共の福祉についてでございます。
 この概念については、学説の通説的見解によれば、人権相互の矛盾、衝突を調整するための実質的公平の原理を意味するもの、このように理解されているところでございます。
 しかし、これに対しては、従来から次のような御批判があるところでございます。
 例えば、人権を制約する根拠となるのは必ず他の者の人権でなければならないとの前提は、人権という概念をよほど拡張的な意味に用いない限り理解が困難である。例えば、表現の自由を規制する根拠として持ち出される町の美観や静穏、性道徳の維持、電波の混信の防止などといったものは、いずれも個々人の権利に還元されないものであり、社会全体の利益としてしか観念し得ないのではないか。あるいは、公共の福祉を人権相互の矛盾調整のための原理とする学説の影響で、国家や国民全体の利益のために人権を制限することに過度に抑制的な対応がなされているのではないか。このような御批判でございます。
 また、そもそも公共の福祉という表現そのものがパブリックウエルフェアの翻訳であり、人権相互の調整、制約原理をあらわす日本語として、ややミスリードではないかとの御批判もあるようでございます。
 このような問題意識を背景にしつつ、公共の福祉の概念について、人権制約の一般的原理にふさわしい別の表現、例えば、公益及び公の秩序といった表現に改めるべきではないかとする御見解がAの欄の御見解です。
 これに対して、そのような表現変更は不要であり、必要かつ合理的な人権相互の調整、制約は、現在でも公共の福祉の概念のもとで国会が定める法律によって行われており、今後ともそのような方式でよいとするのがBの欄の御見解でございます。また、Cの欄の見解は、法律による人権制約は必要最小限度であるべきとする点を強調して、現行のままでよいとする御見解かと存じます。

 次に、国民の義務に関する議論です。
 現行憲法には、その保護する子女に教育を受けさせる義務、勤労の義務、納税の義務のいわゆる三つの国民の義務規定が定められております。
 これに対しては、現行憲法は権利一辺倒で義務意識や規範意識が希薄であるとか、あるいは、権利の行使には義務の履行が伴うことを憲法において明確にするべきであるとして、新たな義務規定の創設を求める見解がございます。これがA1の見解であり、そこで挙げられる具体的な義務規定としては、国防の義務、環境保全の義務、投票の義務などがございます。これに対してA2は、そのような権利の反面としての義務という強い規定ではなくて、より緩やかな、規範意識というような意味での責任あるいは責務という形で、例えば国民の環境保全の責務のようなものを規定するのが適切ではないかとする御見解でございます。
 これらの明文改憲の御主張に対しては、近代立憲主義における憲法の意義は、公権力に対する縛りという制限規範という点にこそあるのであって、憲法が権利一辺倒であるのはそもそも当然のことであるとして、国民の義務や責務のようなものは、それが必要なのであれば法律ベースで定めればよいとするのがBの御見解でございます。さらに、明文改憲も特段の立法措置も必要ないとするのがCの欄の御見解です。

 大きな二番目は、いわゆる新しい人権に関する御議論です。
 この論点につきましては、まず、憲法の人権保障の規定には、現行憲法九十七条自体が人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であると述べていることなども踏まえて、時代の変化に対応して、この人権のカタログを豊富化していくことが望ましい、またそれこそが憲法の要請するところであるとして、このような認識を背景とし、明文改憲を主張するAのお立場がございます。
 これに対して、我が日本国憲法は、人権保障に関する一般的、包括的な規定として第十三条を持っている、新しい人権と言われるものは、この十三条の定める幸福追求権の具体化として解釈上導き出すことができるのであるから、このような解釈を前提として立法措置を講ずれば足りるとするBのお立場、さらには、十三条に既に含まれているのであるから、立法措置を講ずる必要もないとするCのお立場もございます。
 なお、一般的に主張されることが多い新しい人権としては、環境権、知る権利あるいはアクセス権、プライバシー権あるいは自己情報のコントロール権、犯罪被害者の権利などがございますが、ここでは、最もよく議論の俎上に上ります環境権に関する御議論を簡単に御紹介申し上げさせていただきたいと存じます。
 まず、国民の良好な環境を享受する権利を憲法に明記するべきであるとするのがA1の立場です。
 これに対して、同じ明文改憲の御主張でも、良好な環境というものについて、これを大気や水といった自然環境に限定する考え方もあろうし、他方、遺跡や寺院などのような文化的、社会的環境まで含める考え方もあり、人それぞれによって違うのではないか、少なくとも現時点では、これを個人の権利として規定することは適切ではないのではないか、むしろ、規定するのであれば、ドイツの基本法二十a条のように、国家の環境保全の責務という国家目標規定として定めるのが適切ではないかとする見解がA2のお立場かと存じます。
 そして、このA2の立場において、国家の義務あるいは責務というだけではなく、国民の義務あるいは責務としても定めるべきであるとする見解は、第二の論点として先ほど言及いたしました国民の義務、責務の論点と関係してくることになります。
 なお、このように、国民の権利として規定するべきか、それとも国家や国民の責務として規定するべきかという論点は、次の知る権利などについてもございます。すなわち、知る権利という形で国民の側の権利として定式化するのか、それとも政府の説明責任といった形で定式化するのかといったぐあいでございます。

 三番目は、これまでの憲法論議において御議論の多かった、その他の人権条項に関する論点として、四つほど論点表に掲げております。
 まず、生命倫理に関する御議論です。
 これは、遺伝子工学等の発達により、それらの学問、研究は、時として生命の尊厳や生命倫理と緊張関係を生ずる場合が出てまいります。そこで、スイス憲法等の規定に倣って、学問の自由といっても決して無制限なものではない、特に、生命の尊厳を侵害するような生命操作の禁止、遺伝情報へのアクセス規制などを憲法に明記するべきであるとする見解がAの欄のお立場であります。
 これに対して、そのようなことは公共の福祉による人権制約として、法律でもって規定すれば足りるとするのがBの欄のお立場です。

 二つ目として、政教分離原則に関する御議論がございます。
 現行憲法は、二十条一項の後段で、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」と規定するとともに、同条三項では、「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」と定めて、いわゆる厳格な政教分離を定めていると言われているところでございます。
 しかし、国家と宗教の厳格な分離といっても、その一切のかかわりを排除するものではなく、最高裁判所におきましても、まず第一に、その行為が世俗的な目的のものであること、第二に、その行為の主要な効果が特定の宗教を助長したり、逆に圧迫したりするものでないこと、このような条件を満たす場合には、二十条三項で禁止される宗教的活動には該当しないと判示しているところです。いわゆる目的効果論と言われる判断基準です。しかし、具体的にどのような行為が許容され、あるいは禁止されるのかについては御議論があるところでございます。
 また、毎年八月になりますと、首相初め国務大臣などの靖国神社の公式参拝の可否、適否が政治的にも問題となってきたことは先生方御承知のとおりでございます。
 このような問題意識を背景といたしまして、明文改憲を主張する御見解としては、厳格な政教分離を前提として、これをこのまま憲法に明文化すべきであるとするA1の見解と、これとは逆に、一般的な習俗的行事や社会的儀礼に属する行為については、広く憲法上許容されるように明文の規定を設けるべきであるとするA2の見解がございます。
 もちろん、現在のままでよいとするCの見解もございます。

 三つ目として、家族、家庭や共同体に関する御議論がございます。
 現行憲法は余りに個人主義的に偏しているとして、社会の基礎としての家族や家庭の重要性を再認識し、家族間における相互扶助、家庭教育等の家族や家庭が果たしてきた機能を再構築するためにも、家族や家庭の尊重及び国家によるその保護の規定を憲法に設けるべきであるとするAの欄の御主張がございます。
 これに対して、家族や家庭に関する事項は、近代憲法が峻別してきた公と私、公、パブリックと、私、プライベートのうち、後者に属するものであり、それは私人の自由な領域に任せておくべき事項であること、また、家族や家庭の尊重のような道徳的な事項は憲法に書き込むべきではないことなどを理由として、現行のままでよいとするCの欄の御主張もございます。

 最後は、知的財産権に関する御議論です。
 現行憲法では、二十九条に財産権一般の保障規定がございますが、知財立国としての我が国の立場を憲法上明記する観点からも、知的財産権については特記するのが望ましいというAの欄の御主張がございます。
 これに対しては、知的財産基本法等の法律ベースで措置すればよいとするBの御主張もございます。
 最後に、以上、御報告申し上げました論点に係る条文以外の第三章の条項に関する論点について、ごく簡潔に御報告申し上げます。

 ここにも重要な条項が幾つも並んでおります。
 例えば、第十四条の法のもとの平等に関する規定は、立法過程においても裁判においても頻繁に引用され問題となる条文でございますが、国会論議におきましても、女性などの社会的弱者に対して優遇措置を講ずることにより実質的平等を図ろうとする、いわゆるアファーマティブアクション、積極的是正措置の議論や、議員定数不均衡、いわゆる一票の格差の是正の問題などが議論されております。
 また、二十五条の生存権条項につきましては、健康で文化的な最低限度の生活の保障規定が昨年の三・一一以降の大震災による被災のもとにおいてどのような意味を持っているのか、憲法の理念は本当に実現されているのか。さらに第二十七条、二十八条の労働基本権をめぐりましても、現下の厳しい雇用状況のもとにおいて、憲法の定める勤労の権利はどのようなものとして保障されているのか、働きたくとも仕事がないのでは、勤労の義務など果たすことはできないのではないのかとの言説すらある状況をどう考えるべきかといった議論があり得るところです。
 さらに、三十一条から四十条のいわゆる刑事手続上の権利をめぐっては、加害者である刑事被告人の権利はあるけれども犯罪被害者の権利がないではないかといったことに関する御議論は、新しい人権の欄にも掲載している事項でありますが、そのほかにも、第三十一条の適正手続条項の射程距離の問題や、第三十二条の裁判を受ける権利と裁判員制度、第三十六条の残虐な刑罰禁止と死刑制度の存廃の論点などもあるかと存じます。
 以上は、いずれも明文改憲の要否という視点とは別の観点からの論点ではありますけれども、国会の内外においてさまざまな議論が行われてきている重要な論点と言えるかと存じます。
 以上、憲法第三章国民の権利義務に関する主要論点につきまして御報告させていただきました。
 駆け足で大変大ざっぱな御報告になってしまいましたが、以上でございます。ありがとうございました。

○大畠会長
 以上で衆議院法制局当局からの説明聴取は終わりました。

○大畠会長
 これより各委員からの意見表明等を含む自由討議に入ります。
 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派を代表する委員が順次発言を行い、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。
 それでは、まず、各会派を代表する委員の発言に入ります。
 発言時間は七分以内とし、その経過につきましては、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせをいたします。
 発言は自席から着席のままで結構でございます。

(中略)

○大畠会長
 次に、委員各位による自由討議に入ります。
 この際、委員各位に申し上げます。
 本日の審査会におきましては、論点を、第一に、公共の福祉及び国民の義務に関する論点、第二に、いわゆる新しい人権に関する論点、第三に、生命倫理、政教分離原則、家族、家庭や共同体の尊重及び知的財産権に関する論点、第四に、第一から第三までで議論の対象としていない論点、以上四つに分類いたします。
 各委員におかれましては、おおむねこの四つの論点の分類ごとに意見表明をしていただきますよう、御協力をお願いいたします。
 なお、この四つの論点の分類はあくまで目安でございますので、各委員の発言がその他の論点等に及ぶことは結構でございます。
 発言を希望される委員は、お手元にあるネームプレートをお立ていただき、会長の指名を受けた後、発言をお願いいたします。発言が終わりましたら、ネームプレートは戻していただきますようにお願いいたします。
 発言は自席から着席のままで結構でございます。また、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただきますようお願いいたします。
 なお、幹事会の協議によりまして、一回当たりの発言時間は五分以内といたしたく存じます。委員各位の御協力をお願い申し上げます。
 発言時間の経過につきましては、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせをいたしますので、どうぞ御協力をお願いいたします。
 それでは、まず、公共の福祉及び国民の義務に関する論点について発言を希望される委員は、ネームプレートをお立ていただきます。

○鈴木委員
 民主党の鈴木克昌でございます。
 私は、先ほど何人かの委員の方からも出たんですが、雇用の問題と憲法の問題について少し持論を述べさせていただきたいというふうに思います。特に、非正規雇用とそれから憲法のいわゆる平等原則とか勤労の権利というところでございます。
 言うまでもありませんけれども、現在の非正規労働者の数というのは千七百五十万人を超えておるということで、勤労者の三割を占めているということであります。その方々が幸せな生活を送っていただいておればいいんですけれども、現状では大変厳しい状況に置かれております。
 非正規労働者というのは、正規労働者と比較して、不況期においては解雇や雇いどめなどを受ける、賃金が低い、それから、いわゆる企業内での職業訓練を受ける機会も低い、こういうことが問題になっているわけであります。
 私は、この非正規労働者の問題というのは憲法にかかわる問題だ、このように思っておりまして、いわゆる憲法二十七条でありますけれども、国民は勤労の権利を有するというふうに規定をされております。しかし、非正規労働者がここまで増加をしている状況の中で、勤労の権利が十分保障されているというふうに言えるかどうか、これについて私は、やはり検証をする必要があるというふうに思っております。
 また、憲法十四条の一項で、いわゆる平等原則ということでもありますが、これもやはり検証が必要ではないかな、このように思っております。
 何が言いたいかということでありますけれども、やはり同一労働、同一形態といいますか、同一価値の労働に対してはやはり同一の賃金が払われるべきであるというふうに私は考えておりまして、非正規労働者の労働条件の確保等についても検討が必要であるというふうに思います。
 改めて、憲法の保障する勤労や、そして平等の原則といいますか理念等々に立ち返って、国民の勤労の権利を確保するような、とりわけ非正規労働者の労働条件の確保等の問題について、憲法問題として検討していく必要があるのではないかな、私はこのように思っております。
 以上です。

○柴山委員
 権利保障は、非常に現代社会において重要性が高い分野だと思っております。なかんずく、新しい人権の問題について、かつて想定されていた明文上の権利ではなかなか解釈が難しいものがあり、そういった分野の権利については、やはり私は明文を書き加えていくことが必要であるというように思っております。
 しかし、過度に人権を尊重し過ぎるが余り、国民が義務あるいは責務について軽視をする風潮が近時見られることについては、やはり警鐘を鳴らさなくてはいけないというように感じております。
 そこで、公共の福祉について取り上げなければいけません。
 この公共の福祉は、人権を制約する原理として憲法十三条などに書かれておりますけれども、私は、この福祉という言葉の使い方が、権利を制限するのに本当に適切な用語であるかどうかということについては疑問に感じるところであります。
 また、この公共の福祉の解釈についても問題が大きいと思います。先ほど橘部長よりお話があったとおり、通説では、公共の福祉とは人権相互の矛盾、衝突を調整するための実質的公平の原理ということでありまして、平たく言えば、人に迷惑さえかけなければ権利は最大限に尊重されなければいけないという理念でございます。
 しかしながら、私たちの経験上も明らかなとおり、人に迷惑さえかけなければいいという方々が実は結構他人に迷惑をかけていたりすることもございます。これについてはまた、先ほどお話があったように、美観あるいは性道徳、国家的な秩序の利益ということについては、人に迷惑さえかけなければこれらを脅かしてよいのかということについて、なかなか説明がつきづらいという側面があります。
 青少年の健全育成に係る規制、あるいは薬物を使用しても、例えば暴れ出してほかに迷惑をかけなければ、自分自身が健康を害してもいい、そういうようなことにもつながっていきかねません。このような解釈をもたらす公共の福祉というものは、やはり私はしっかりとした文言に改めなければいけないというように思っております。
 解釈上、先ほど来お話が出ているように、社会的な弱者をしっかりと保護するために、社会国家的な側面を公共の福祉に読み込むということは既に行われておりますけれども、例えば、健全育成のためにその者の自立、自己決定に干渉していくパターナリスティックな、先ほど申し上げたような麻薬ですとか健全育成、こういう事柄についてはなかなか、解釈上まだ制約原理として成熟はしておりません。
 こういったことも含めて、公共の福祉という言葉を改め、公益または公の秩序というような文言改正をしていくことが必要なのではないかというように私は考えております。
 違憲立法審査で、裁判上、判断基準さえ明確にすればよいではないかという意見もありますけれども、まずは、やはり実定憲法の上でこの公共の福祉という言葉を改めることが私は必要であるというように思っております。私益よりも公益が無秩序に優先するということに解釈がなっては当然いけないわけですけれども、そこは精緻に解釈をしていくということができるかと思います。
 また、国民の義務について、これを憲法上書く必要はない、法律上定めればよいではないかというお話もありますけれども、それは今申し上げたことと裏腹の関係にありまして、憲法上、権利の制約ということで必ずしも説明はできないけれども、やはりさまざまな形で責務として明文上しておいた方が誤解が生じないもの、これについては最低限の明文化ということが必要になってくるということを私は申し上げたいと思います。例えば、後日話題になるであろう緊急事態における国民の責務等がこれに当たるかと思います。
 以上申し上げて、私の発言を終わらせていただきます。ありがとうございました。

第180回 国会 衆議院 環境委員会

第180回 衆議院 環境委員会 第4号
平成24年6月5日(火)
午前九時開議

【原子力規制委員会設置法(自公案)の提案者としての答弁 】

【本日の会議に付した案件】
連合審査会開会に関する件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)
原子力安全調査委員会設置法案(内閣提出第一二号)
地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)
原子力規制委員会設置法案(塩崎恭久君外三名提出、衆法第一〇号)

○生方委員長
 これより会議を開きます。
 内閣提出、原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案、原子力安全調査委員会設置法案及び地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件並びに塩崎恭久君外三名提出、原子力規制委員会設置法案の各案件を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案件審査のため、本日、参考人として原子力安全委員会委員長班目春樹君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室長森本英香君、内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室副室長櫻田道夫君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院長深野弘行君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○生方委員長
 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

○生方委員長
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山花郁夫君。

○山花委員
 民主党・無所属クラブの山花郁夫でございます。
 規制庁については、もともと四月一日スタートという目標だったわけですけれども、残念ながら、ようやく委員会での審議がスタートということになりました。この間も与野党でも協議がされてきたと承知をいたしておりますし、早期のスタートが望まれるわけですので、与野党の協議は政党間でございますので、衆法提出者の皆さんもぜひ議論を加速していただければと思っております。
 その上で、先般本会議でも質問させていただきましたけれども、細かいことも含め、また、本会議と違って往復でということになりますので、少し議論にわたることについても質疑をさせていただければと思っております。
 まず、この組織のあり方について、政府案と衆法では、基本的には、要するに、推進をするところと規制をするところをはっきり分けようということは同じだと思うんですけれども、ただ、その体制についていささか考え方の違いがあるのかなと思っております。
 まず基本的なことですけれども、例えば政府案ですと、原子力規制庁の長官という人物はどういう人がなるということを想定しているのか。また、衆法ですと委員会なんですけれども、委員長ということになりますね。大体、イメージとしては学識経験者みたいな人がなるのかなというふうに受けとめているんですけれども、まず、そのあたりについてのイメージを、政府側と衆法の提出者、両方に伺いたいと思います。

○細野国務大臣
 原子力規制庁の長官でありますけれども、やはり二つの要素があるというふうに思っております。一つは、原子炉の安全確保を科学的、客観的に判断をするという専門性の部分、もう一つは、今回の事故を経験をいたしましたので、やはり危機管理がしっかりできるという能力、この二つをどう考えるか、バランスするか、そういう観点から人選をしなければならないのではないかと思っております。
 加えまして、能力的な要素だけではなくて、昨年起こりました原発の事故をしっかりと反省をして、その反省に立った上で新たに規制をやっていかなければならないという、そういう要素も必要なのではないかというふうに考えているところでございます。

○塩崎議員
 基本的な考え方は今大臣からお話がありましたけれども、特に異論があるわけではありませんが、我々は法第七条で、委員長は、「人格が高潔であって、原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。」ということで、特に、学識経験者、学者とかいうことを前提に、それでなきゃいけないというようなことを書いているわけではないわけであります。
 専門的な知識とか経験をしっかり持っている、なおかつ、規制行政ですから、実務的な行政の能力を兼ね備えた者がやはりいいんじゃないかというふうに思っていますし、諸外国でこのような委員の制度を持っているところ、アメリカとかフランスとか見てみますと、学識経験者、つまり学者バックグラウンドだけではなくて、行政経験、つまり役人出身という人もいるわけですね。
 フランスなんかの場合は、五人のうち二人が役所出身です。それも、日本でいえば産業政策局長までやってから原子力の世界に行って、そのままずっと規制をやっているというような人もおる。二人ともそうですね。ただし、二人とも事務官ではなくて、技術者、鉱山学校の出身のお二人でありまして、そういうことで、何もがちがちの学者というようなことを考えているわけでは全くないということであります。

○山花委員
 イメージとしては、例えば行政経験者といっても、今御指摘があったように、日本でいうと経産省みたいなところの、技術者だというお話でしたけれども、今回、規制と推進というのを分離するということですから、何かイメージとしては学識経験者かなというイメージを持っていたんですけれども、必ずしもそうではないというお話でありました。
 ただ、いずれにしても、衆法ですと、いわゆる三条委員会ということで、要するに分離独立ということを非常に強調されているわけですけれども、趣旨はわからないでもないですし、かつて我々もそういうイメージを持っていたということは認めるところでありますが、ただ、実際今回の震災などを受けて、やはりちょっと考えなければいけないなというふうに我々も思った上で、与党ということで、政府提出の形の法案について議論をして、それでよしとしてきたという経緯がございます。
 一つは、本会議で他党の方からも、昔、民主党は三条委員会ということを言っていたじゃないかということを言われて、総理の方からも、いや、今回の震災を受けてちょっと検討し直したんだというふうに答えております。
 一つ我々が問題だよねと思っているのは、三条委員会の形にしますと、通常のときはまあまあそれでも何とかなるのかなと思いますけれども、いわゆる緊急事態なども想定をしたときに、それぞれの委員について国会同意人事ということになります。総理が国会の同意を得て任命するという形になるわけで、先ほど、通常のケースであれば問題ないよねと思っていたというふうに申し上げたのは、たまにイレギュラーなことがあって同意が得られないというようなことも、これまでの国会の経験の中で、この問題ではなくて、三条委員会についてはあったわけです。
 例えば国会閉会中であれば、任命して事後に同意をすればいいということになっていますけれども、例えば事後に同意が得られないとこれは罷免するということになってしまいますので、そういうリスクが発生してしまう。そうすると責任体制に空白が生じてしまうのではないかという問題意識を持っているんですけれども、この点について、衆法提出者の方々についてはどのように考えておられるんでしょう。

○柴山議員
 ありがとうございます。
 今、山花委員から御指摘になられているように、国会が閉会中ですとか、あるいは解散されている等の理由によりまして国会の同意を行うことができないという場合については、これは暫定的に政府の方で指名をするという規定がございます。
 それで、国会開会中について、これまでも、国会の同意を得られずに、国会がいろいろ空転して、記憶に新しいところですと、日銀の総裁の同意人事で再三にわたりまして民主党の大反対によってポストがずっと決まらなかったということもありますけれども、また、そういう事実を踏まえて検討しなくてはいけないということはありますけれども、ただ、あのときと違って、やはり原子力安全規制を担う組織の構成員ということは、まず、今おっしゃったように、人命にかかわる非常に重要かつ緊急性を要する人事である。これについてのコンセンサスは、恐らく、党派を超えて我々議員各位が持っているというように思うんです。それがまず一点。
 それから、あくまで、原子力規制組織ということになりますと、専門技術的な事務を遂行するのに必要な知識と経験を有しているかどうかという判断の客観性というものが比較的担保できるのではないかという、この両者を踏まえるべきだと思います。
 この両者を踏まえれば、政府も、適切な判断のもとに原子力規制委員会の委員長及び委員の人選案を提示することになると思いますし、そうやって提示された人事案について、国会でも迅速に詰めた議論をするということが期待されると思います。
 逆に、政府に人選をお任せするということになると、ともすると、先ほど委員御自身が指摘をされたように、推進側に偏った人選が行われてしまうということが私はあり得ると思いますので、そこはやはり、国会でオープンにかつ迅速に議論をするということがかえって求められるんじゃないかなというように思います。

○山花委員
 中身について専門的、技術的なことであり、また、判断についても客観性が求められるというお話であります。
 そしてまた、コンセンサスが得やすいのではないかという話ですけれども、性善説と言ってしまうと言い過ぎかもしれませんけれども、うまく回る、要するにノーマルに回る話というのは、これは別にこの話だけじゃないはずで、余り我々も触れたくない話かもしれないけれども、日銀の件だって、一般的に言えばいろいろそういう理屈は立つんだと思うんです。
 ただ、国会同意人事というのはそれだけではなくて、まず、出す段階で情報管理等々いろいろ難しいところも結構あったりするわけでありまして、そこについて制度の問題としてちょっとそういうリスクがあるのではないですかということについては、今の御説明でもまだ解消できないのかなと思っておりますが、きょうは第一ラウンドなので、指摘だけにとどめさせていただきます。
 また、今御答弁がありました政治とのかかわりについても、ここがやはり我々との判断でちょっと違っているのかなと思っているところがあって、これは本会議でも議論させていただきましたけれども、緊急時の総理の権限についてでございます。
 災害時の総理の指示権ということについては、本会議の御答弁では、緊急時だからといって病状を総理に判断してもらいたいという話ではないはずだという御答弁だったと記憶しておりますけれども、ただ、問題はちょっと違うのかなと思っております。
 最終的に重い政治的な決断をしなければいけない、例えばお医者さんの例えでいえば、緊急時にお医者さんが診断したくないと言っているのに対して、ちゃんと診断せよというふうに命じたりということではないかと思っておりまして、塩崎委員からは菅リスクということを言われておりました。
 今、事故調で調査していますので、東電が全面的に撤退を申し出た、それについて当時の菅総理がとめたということについて、それを前提にして話すわけではありませんが、仮定の話としては、例えば、現場がもう撤退したいと言っているのに対して、政治の責任でそれを撤退するなと言うことというのはあり得るんじゃないかと思っております。
 事実関係としてあった、なかったという話をしているのではなくて、もし本当にそういうことがあったとすると、政治の側でかかわるということが必要なんじゃないか。その意味では、最低限、最後の手段としてそういうかかわり合いが必要だと我々は思っていますし、政府案もそうなっていると思っております。
 そうはいっても、そこは提出者が言われているとおりで、余り素人があれのこれのとむやみに指示をするというのは、これもこれで適切でないと思っておりますので、その発動要件について、むやみに指示が発せられないということについて確認をさせていただきたいと思います。

○細野国務大臣
 緊急時の原子炉の鎮圧については、本会議でも申し上げましたけれども、まず一義的には事業者がしっかりやる、そして、科学的な知見に基づいて、事業者の対策に対する指導、助言、必要な指示ということについては規制機関が行うという、そういうたてつけになっております。
 この規制機関というのは当然科学的、客観的に行うということになりますので、総理の指示権というようなことはここでは想定をされていないわけですね。
 ですから、今山花委員が御指摘をされたように、総理が指示権を発動するようなケースというのは極めて限定的であるべきで、国としての危機管理上の最低限の、かつ最後の手段として行うべきものだというふうに考えています。
 一つだけ、私が経験をした例で申し上げますと、総理が指示を出した中で私が非常に記憶にとどめておかなければならないと思っております指示が、三月二十日に出ております。この三月二十日の時点で何を我々がとにかく取り組んでいたか、やっていたかというと、プールへの放水をやらなければならないということで努力をしておったんです。まさに危機的な状況がまだ続いていたというふうに考えます。
 そのときに、自衛隊も放水能力がある、警察も放水能力がある、消防もある、そして、中では東京電力がそれをしっかりと受けとめてサポートしなければならぬという状況の中で、誰がどういうふうな順番で行くのかということについて、現場の実は混乱がございました。私は東京電力の本店でその調整に当たっておりましたが、どこがどういう判断をして、どういう順番で行くのかということについて大変大きな混乱があって、放水がスムーズにいかないという経験をしたんです。
 これは、本当にまさに危機的な状況の中で一刻の猶予もないということでありましたので、何らかの調整ができるような準備をしなければならないということで総理が指示書を出されたという、そういう経緯がございます。
 そこでは、さまざまな、そういう放水にかかわるような調整については、これは、自衛隊が中心となって調整をして決定をする、そして、一元的な管理を現地に派遣をされる自衛隊が現地調整所において行うという、この指示書がなければ放水というのはスムーズに行うことができなかったというふうに考えています。
 したがって、こういう事故を二度とは起こしてはならないし、撤退の議論なんかも本来あってはならない話でありますけれども、本当にこういう極めてシビアなケースになった場合に、最後の手段としての総理の指示権というのはやはり必要ではないかと、この一例をもってしても私はそのように考えているところであります。

○山花委員
 大変貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございます。
 我々も本当に今回みたいなケースというのは二度とあってはいけないと思っておりますが、他方、今回あったことについてやはりちゃんと検証して、その教訓を生かしていかなければいけないと思うわけであります。
 衆法ですと、原災本部長の緊急時の指示の対象事項から委員会の所掌に関する事項を除いておりますので、そうすると、本会議でも御答弁ありましたけれども、今例えば国務大臣の答弁を聞かれて、そういうケースがあるんじゃないかということなんですが、我々としては、そういった意味で、最後のところでやはり政治がかかわる可能性というのは残しておいた方が、本当の緊急の事態のときにはいいのではないかと思っているんですけれども、衆法のたてつけだと、いわば切り離すというのは一つの理屈ではありますけれども、こういうケースでできるんですかと言われれば、できるとお答えになるんでしょうけれども、そういう極めて重たい政治責任を委員会の委員長が負うという形になってしまうと思うんです。本当にそれで適切でしょうか。
 そして、本当に三条委員会の委員長がそうした緊急時の最後の決断について担うということであって、政治が全く切り離されてしまう可能性があるわけですけれども、そこが適切なのかどうかということについての御認識を伺いたいと思います。

○塩崎議員
 極めて重い政治責任を負わされるんじゃないか、委員長に対して、委員会に対してという御質問でございますけれども、この点についてはかなり誤解が蔓延をしておりまして、非常に我々も迷惑をしているというか困っているというか、ですからこれは、委員会審議を通じて早くやろう、それで誤解を解いていこう、こんなふうに思っていたところであります。
 緊急時に原子力災害対策本部を設けて本部長のもとで緊急対処をするということについては、現行制度も今回の政府の提案も我々も全く変わらない、同じであるわけでありますし、自公案でも、政治の責任で判断すべき事項については引き続き総理が指示権限を有するということであるのでありまして、一方、総理の指示対象から外しているのは、委員会の所掌事務、すなわち、科学的知見に基づいて専門的に判断されるべき事項、これに限るわけであります。
 さっき菅直人リスクの話がありましたが、この間も私がテレビでもちょっと説明しましたけれども、別に菅直人さん個人を攻撃しているわけじゃなくて、要は、我々は皆同じなんですね。素人です。素人が専門技術的なことに口を突っ込んで大混乱をもたらしてリスクを高める、これを私は菅直人リスクと、申しわけないですけれども使わせていただいたということなんですね。
 そこで、もう一つ抜けていることは、何か三条委員会だと、全然遠いところに行って、月のかなたにいて、もう何もできないというようなことをお考えになっていらっしゃる方が多いんですけれども、世界の言ってみれば原子力規制当局に詳しい経験者が皆言っているのは、独立は孤立ではないと。つまり、独立していても、これはウェートマンの去年の六月の報告書にもあるように、緊密な協力というのは、この委員会と、それからあらゆるところがしっかりとやっていかなきゃいけない。ですから、一番やらなきゃいけないのは、総理とこの委員会がぴったしいつも一緒になっていなければいけないということだろうというふうに思うんですね。
 それで、誤解の典型は、プールへの放水とかあるいは海水注入とか、海水注入はともかく、プールへの放水は自衛隊にお願いするということなんですけれども、これは委員会がやるというふうに誤解されている方が多いんです。
 例えば毎日新聞の六月一日の社説にも、「最終判断は、国民の負託を受けた政治家の仕事である。自衛隊や警察、消防の出動なども同様だろう。」こう言っちゃっているわけですね。それは全然違う話であって、出動要請するのは、当然、本部長たる総理、これがおやりになるということなので、何ら変わるわけではないということを申し上げなきゃいけないんだろうと思うんです。
 要するに規制委員会は、専門技術的事項について科学的知見に基づく判断と対応をするのであって、政治的な決断を求められるわけではなくて、政治的な決断はやはり総理が、本部長がおやりになっていくというので、何も変わらないんだろうと思うんです。
 一方で、しかしそうはいいながら、今までとは違う独立性を持たせる、そして専門性を格段に高めるこの委員長及び委員会のメンバー、こういう人たちは、これまでとは違った重い責任はやはり負うわけであって、それは政治責任じゃなくて、この我々の法律に基づくマンデートに対する責任と覚悟をやはり持ってもらわなければいけないということが大前提で、それで、さっき申し上げた大事なことは、緊急時であろうと平時であろうと全く役割は変わらないけれども、しっかりとこの委員会と、それから総理を初めとする他の行政各部が協力を緊密にやっていくという中で、言ってみれば、事態を打開して安定を取り戻すということだろうと思います。

○山花委員
 今御説明があったんですけれども、ただ、たてつけとしては、委員会の所掌に関する事項を原災本部長の緊急時の指示の対象から除いていますので、ちょっと限界事例かもしれませんけれども、例えば先ほど例として挙げた、撤退することが適切かどうかというのは、かなり専門技術的な知見が必要かもしれない。
 そして、実際にあったかなかったかじゃなくて想定ですよ、そのときに、ひょっとすると本当にその現場にいる人たちの命が危ないかもしれないけれども、でもとどまってくれというような話というのは出てくるのではないかという、限界事例じゃないかと言われるかもしれないけれども、そういうケースについて、書き方としては委員会の所掌に関する事項から外れるのかどうかというのが、申しわけないけれども、今みたいな御説明だと、普通の典型的なケースは当てはまるんですけれども、まさに限界的なケースについて、委員会の所掌なのか原災本部長がまだ依然として権限を持っているのかというところが必ずしも明らかではないのかなと思っているんですけれども、もう一度お願いできないでしょうか。

○塩崎議員
 明らかなことは、原子炉が異常な状態で危機的なところまで来ているというときにどうするかという判断をするのがこの規制委員会であって、これは炉規法に基づいてやるわけですね。そこの判断が専門的な、技術的な知見に基づいて行われる判断ですから、そこがやはり最終的には、この炉に対してどうするのか、そして、そこに対して鎮圧をするやり方としてどの位置にいながらやるかとか、そういうことについてはやはり判断をしなきゃいけないわけですね。
 退避をするとか、そういうようなことも、ですから、どの距離でやるのかとか、そういうことであって、すぐれてこれは専門技術的な問題に基づくもので、それをすべきかどうかというようなことは、当然、委員会が判断をして決断をしなければいけないと思いますが、先ほど申し上げたように、そういう大変重大なときには、特に、先ほど申し上げた緊密な協力関係、相談というものがあってしかるべきであって、本部長としては全体に対して責任を負っているわけです。その一部に、規制委員会の、言ってみればこの炉規法の世界で、オンサイトで頑張らなきゃいけないという責務があるわけでありますので、当然、本部長並びに他の関係者との間で緊密な協力と連携がこの委員会との間でなければいけないので、そういった一次退避を、どこまで、どういうふうにするのか。
 だって、やめてどこか旅行に出るわけじゃないのであって、技術的な判断の延長線上で退避をするかとかそういう選択肢が出てくるけれども、それが本当に正しいのかどうかというのは技術的な観点から判断をしなければいけないので、それは総理はできないということは先ほどお認めになったとおりであって、そういうことを総合的に、さっき言ったように一体不離でぴったしやっていくということが一番いい結果をもたらす最短の道だというふうに思います。

○山花委員
 済みません、時間が迫ってまいりまして、ちょっと通告したのを全部できそうもないんですけれども、もう一つ、防災体制についてお伺いしたいと思います。これも本会議で少し議論をさせていただいた話です。
 広域にわたる避難とかモニタリングなどを円滑にやろうとすると、自治体の首長さんだとか、場合によっては自衛隊を動かすみたいな話が出てきて、平素からの調整というのが必要だと思うんですけれども、これについて、政府として具体的にどんなケースが想定されるのか、どんなことを想定しているのかというのを教えてください。
 あわせて、衆法の提出者については、もう一回聞く話ですけれども、できるんだというようなことを本会議でおっしゃっておられましたけれども、本来は、やはり原子炉の安全任務、先ほど、技術的な、専門的なということを言われた。そこを任務としている人たちが、こういった自衛隊との連携ということでやるのはちょっと現実的に難しいんじゃないかと思うんですけれども、改めてそこについて教えてください。

○細野国務大臣
 先ほどの件について一言だけ。
 塩崎先生の御答弁を聞いて、考え方としてそごはないなということで、正直、安心をいたしました。共通認識ができると私は思います。
 ただ、一つだけ、これから大事ないろいろな修正の議論も行われると思いますので懸念を申し上げると、原子力規制委員会設置法案を読ませていただいたんですけれども、ここについては、所掌の事務として、オンサイトもオフサイトも防災の部分は全て書かれているわけです。そして、その部分についての指示権は原災法上除かれているわけですね。ですから、科学的なものに限定をするんだとおっしゃるけれども、法律のたてつけとしてはそこは完全に除かれていて、そこを乗り越える指示権を発動できるようにはどうしても法律的には読めないということを私自身は考えておりまして、ぜひそこは詰めた議論をしていただきたいと思います。
 ちなみに、先ほど申し上げた放水の場合の指示の対象は、警察庁長官、消防庁長官、防衛大臣、福島県知事に加えて東京電力の社長となっておりまして、それぞれ省庁、考え方がかなり差がありましたので、かなり総理が強い指示権を発動しなければこれができませんでした。ですから、まさにこういったものに対応できるようなものが必要ではないかということを申し上げたいと思います。
 その上で御質問についてお答えをいたします。
 具体的には、事業者や自治体や関係省庁に対する放射線モニタリング、さらには、住民避難などについてのさまざまな、例えば輸送手段、スクリーニングの段取り、避難所、病院、介護施設の受け入れ先の確保、さらには、避難者への救援物資の調達や輸送なども今お話があった中に入ってまいります。
 ですから、そこも含めて平素から連携をして、政府全体として取り組まなければならない課題であると考えております。

○塩崎議員
 本会議でもお答えをいたしまして、そのときと同じことを言わざるを得ないというふうに思いますけれども、緊急時にちゃんとやれるためには平時からが大事だということで、平時についての防災対策に関する理解とか習熟、さまざまな事態を想定して、明確に目的を定めた上での訓練をやはりやっていかなきゃいかぬということで、さっきもお話があったように、原子力事業者、国、それから地方自治体、関係機関の責任体制、連絡調整の事前準備というのはやはりやっておかなきゃいけないんだろうというふうに思うんですね。
 NRCとか、ああいうところでも、これは住民なんかを巻き込まないで、NRCが主体となって地域の防災体制というのはふだんからやっているというのが当たり前でありますし、政府案でもたしかそうなっているんだろうと思うんですけれども、自公案では、原災法で改正を行って、対策の円滑な実施を確保するための指針をつくるとか、あるいは、事業者に対する防災訓練の報告の義務づけなどの予防対策の充実等に関する規定を新たに設けるとか、これらの事務を委員会にやらせるということに今しているわけでありまして、担当大臣がいるかどうかということは余りこの中身とは関係ない話であって、事務の実施に特に差異が、大臣がいるからできる、いないからできないということにはやはりならないんじゃないかなというふうに私は思っています。
 あのときも申し上げたように、我々は、この附則の六条六項で、政府は、東日本大震災における原発事故を踏まえて、速やかに、原子力災害が発生した場合における国、地方公共団体、原子力事業者等の間及び関係行政機関間のより緊密な連携協力体制を整備するため必要な措置を講ずるものと規定をしておって、今回、細野さんも御苦労されたわけでありますけれども、事前にいろいろなことが定められていなかったということで大混乱ということで、緊急時の対策を実効的に機能させるために、ふだんからやはり事前にあらゆる手順を決めておくということをやるということを、我々は附則で改めて政府に要望をしているところであります。

○山花委員
 終わります。ありがとうございました。

○生方委員長
 次に、柿沼正明君。

○柿沼委員
 民主党の柿沼でございます。
 本日は、質問の時間をいただきまして、まことにありがとうございます。
 きょうは時間の都合で衆法提出の皆様への質問はございませんが、少し触れるところはありますけれども、そういう意味では、ちょっと申しわけございませんでした。
 福島の事故から一年三カ月がたちました。これまで、この規制機関ができるのが少し遅いんじゃないかという声も聞かれます。
 この福島の事故は、IAEAの国際原子力評価尺度、INESでレベル7、非常に過酷な、深刻な事故であると。今までレベル7というのは、チェルノブイリだけであります。あの有名なスリーマイルはレベル5で、その後、アメリカの原子力政策は、当面新設ができなくなった。
 そのことを踏まえますと、この福島の事故というのは、日本のエネルギーだけじゃなくて、生活も含めて、非常に大きな影響を受ける出来事だったということであります。そして、世の中の、世論を含めた国民の意識も大きく変わりました。ある意味、パラダイムは転換したということだろうと思います。
 そこで、今回の地震は、マグニチュード九、五百キロ近い地盤が動いた。震度も七、六強、非常に大きな地震でした。津波も、非常に大きな津波が来た。事故が起こった直後、政府も含めて想定外ということを言ったと思いますが、この想定外というのが大きな批判も招きました。
 まさにこの原子力規制行政というのは、想定外というのがあってはいけない。想定外だったんじゃなくて、想定を間違っていたんだという修正をしていただいてこれからに対応していただきたい。同じことが起こったとき、次はもう言いわけできない、想定外というのは絶対に言えない、そういうことだろうと思います。
 いろいろございますが、原子力規制庁は非常に大きな役割を担うものでありますし、逆に言うと、この規制庁が信頼されなければ、原子力というものはもう稼働もできなければ、新しいものもつくれない。そのくらい大きな役割を担うものというふうに思います。
 二〇〇七年六月、塩崎先生、官房長官のころでしょうか、IRRSというものが、これはIAEAのレビューですね。(塩崎議員「僕は官房長官じゃない、もう終わっている。十二月だろ」と呼ぶ)終わった後ですか。六月から七月に検査はしています。発表は次です。福田内閣です。
 この助言と勧告がありまして、非常に示唆に富む助言と勧告をIAEAからいただいています。保安院と原子力安全委員会の役割分担が明確でない、もっと明確化した方がいいんじゃないかと。それと、これは今回のことに非常にかかわりますけれども、保安院のエネ庁からの独立をしっかりした方がいいというものをいただいています。これから五年が過ぎているわけであります。
 きょう、多分この後御質問になられるでしょうけれども、共産党の吉井先生からも質問があると思いますけれども、国会では吉井先生も、福島第一事故に関して、非常用電源の問題について質問もされています。こうしたシビアアクシデント対策も含めて、おくれてしまった。いろいろなことが反省材料としてあると思います。
 そこで、原子力規制行政を新たに体制を構築するというタイミングですので、少し総括的な質問をさせていただきたいんですが、事故前に対処すべきだったことは何だったのか。事故後の対応の失敗は、これはかなり報道もされていますけれども、どういうものだったのか。今後の新体制でそうした反省、総括をどう生かすつもりなのか。
 ちょっとマクロの質問ですが、まずこれにお答えいただきたいと思います。

○細野国務大臣
 柿沼委員から今、IRRSのことについて御指摘がございました。
 二〇〇七年というのは、我々は野党の立場でありましたけれども、政権をとってから事故まで二年近くがたっていますので、その間も含めて、行政のあり方を推進サイドからしっかり切り離すという判断を、行政も、そして我々立法府もできなかったということに関しては、これは深刻な反省が必要だろうというふうに思っています。
 エネルギーの供給や原子力の推進というものが一つの大きな前提としてあって、その中で安全や規制のことについては考えていくという、私は優先順位を間違ったんだろうというふうに考えています。
 それが具体的な姿としてあらわれたのが、一つは、過酷事故は日本では起こらないという思い込みにとらわれて、いわゆる安全神話にとらわれてきたということ、そして、それの当然の帰結として、さまざまな新しい科学的、技術的な知見というのが、これが本来は取り入れられるべきなんですが、そういったことに積極的になってこなかったというそういうことが、今回のシビアアクシデントがまさに現実のものとなってしまった、シビアアクシデントによってこれだけ放射性物質が外に出てしまったということにつながった、そのように考えているところであります。

○柿沼委員
 ありがとうございました。
 もう本当にこれは、どの党派か関係なく、これまで立法、行政に携わった全ての人が反省して次に進めていかなくちゃいけないということだろうと思います。
 今の大臣の御答弁の中にも出てきましたけれども、過酷事故は日本では起こらない、多くの国民も、少なくない国民と言った方がいいかもしれませんけれども、原子力安全神話、絶対安全神話、それに近いものを信じていました。もしかしたら信じさせられていた。言ってみれば、少しリアリティーが管理されたかなということがありました。
 本当に悲しい出来事でありましたけれども、いろいろなことが報道を通じて言われております。浜岡原発のことを言っていいのかわかりませんが、あそこはどう考えても大きな地震が起こり得る場所だということは、去年わかったわけじゃないです。昔から言われている場所でした。ところが、あそこに原発は実際に立地しました。これは、ここが安全だから立地した、ある意味の安全神話の中で、安全だという中で立地したんだと思います。
 その後、つい先月ですか、敦賀原発、ここも何か断層の真上に建てたということが言われております。今まさに調査をされているんだと思いますけれども、もしこういうことが起こってくると、この安全神話というのは何だったのかと。安全だから立地したというのは、恐らく、当時のまさに安全神話を神話ならしめるために言っていた言葉だろうと思います。立地できたところを安全だと言ったんだと思いますね。
 それはもう過去の出来事でありますけれども、そういうことを通じて、もう既にこの国には、五十四基、原子力発電所が立地されているんですね。その中には、使用済み燃料も含めて大変危険な状態がもうあるんです。つくっちゃったわけです。それをどうやって安全なものにしていくかがまさにこの規制庁であるということだと思いますし、先ほどのシビアアクシデント対策のおくれも含めて、こういう原発安全神話にどう対応していくのか。
 私は、これはちょっと大臣にもお聞きしたいんですけれども、この安全神話というものを、もうこれは金輪際終わりにしなくちゃいけない。まだ信じている人は余りいないと思いますけれども、ぜひ大臣の口からも、もう安全神話はないんだということも含めてしっかりとお答えいただきたい。
 安全神話と並んで、やはりこの国の原発政策の非常に大きなところを占めているのが、原子力村と最近言うんでしょうか、安全神話をまさにこの原子力村の論理の中で構築していったものというふうに思います。これから、既にある原子力発電所をどう管理して、どう安全なものにしていくのかも含めて、原子力規制庁、今度新しくできるこの新しい体制が信頼されなければ、とてももう社会がもたない、そんな状況だろうと思います。
 そこで、ちょっと自分ばかりしゃべっちゃいけないんですけれども、原子力安全神話は恐らく崩壊してきていると思います。安全規制行政にもゆがみを生じさせてきた、そのことについて大臣のお考えを、ぜひこれは、もう安全神話は終わりなんだということも含めておっしゃっていただきたい。
 それともう一つ。原子力村論理に立脚した今までの政府の論理構成、それに対する不信感は物すごく高まっています。そんなことはないと思いますけれども、大飯原発再稼働をめぐるいろいろな動きの中で、多くの国民の皆さんが見せられたあの切り取った画像では、まだこの原子力村の論理があるんじゃないか、こういう不信も持たれているわけですから、そこはそうではないということも含めて、安全神話の部分と原子力村の論理の破壊、もう破壊させていくんだということも含めて、ぜひ所見をいただきたいと思います。

○細野国務大臣
 今御指摘をされた二点は、非常に重要だと思います。出発点として、しっかりとそれこそ我々が肝に銘じてやっていかなければならないことを御指摘をされたというふうに考えます。
 まず安全神話でございますけれども、これは完全に払拭をしなければ、そもそも、新しい原子力規制機関そのものの信頼を取り戻すことができないと考えております。
 安全神話というのは、ここまでやればもう絶対安全で問題がない、そう考えることなわけですね。そういうふうに考える結果として、それ以上のシビアなケースについての対応を怠るということにもなるわけです。ですから、そこはそういった神話に陥ることがないように、厳にそこは我々が肝に銘じてやっていかなければならないところであるというふうに思っています。
 そこで、原子力の安全確保や防災体制の強化ということについては、常に高いレベルを目指していく必要があります。終わりはありません。そして、それを、これだけの事故を経験をしましたので、我が国は常に世界の先頭になってやっていく、これが安全神話を克服する唯一の道であるというふうに考えております。
 制度としては、当然、推進サイドから独立をさせるとか、当たり前のことでありますが、そういったことがありますが、どういう組織になったとしても、安全神話にとらわれない、今申し上げたような発想に立つことは極めて重要であるというふうに考えます。
 もう一点、原子力村でありますが、これもやはり大きな問題の一つだ、そのように考えます。
 私も、エネルギー政策そのものについては、議員になってから私なりに野党時代から関心を持ち、かかわりを持ち、原子力の関係者ともそれなりにつき合ってまいりましたが、やはり、事故を受けて改めて、いわゆる原子力村と言われるような方々ともいろいろなコミュニケーションをとるようになりました。
 そこで感じましたことは、原子力の関係者というのは、規制側も含めて、原子力の推進という大前提があって、そして、その中で安全を確保するというそういう発想にどうしても立ちがちだということです。そこをやはり根本的に改めなければいかぬだろうと思います。
 したがって、新しく誕生する原子力規制機関は、まさに安全と規制をやる機関として専らそれをやります。ですから、そのことによって、原子力の推進が常にちらつくということとは組織としてははっきり離さなければならないと思います。そういう発想に立つ中で、当然、事業者の側にもやはりそれを求めていかなければならないと思います。
 これまで原子力産業というのは原子力の推進という大前提があったわけですが、むしろ、どのようにすれば安全を高めることができるのか、どのようにすれば環境をしっかりと維持をすることができるのか、そのことを追求していくような規制機関のあり方、さらには産業のあり方というものにそこはもう大転換をしていかなければならないというふうに考えます。
 その意味では、これまで言われてきたような原子力村そのものは、一度これはもう徹底的になきものにして、やはり新しい原子力の専門家というのを育てていかなければならない、そのように考えます。

○柿沼委員
 大臣、ありがとうございます。
 今の言葉を多くの国民の皆さんもずっと期待していたと思います。なかなかそういう言葉が政府から発せられることがなく、事故後一年三カ月たちましたけれども、今は非常にありがたい、ありがたいというか、国民としてありがたい言葉だなというふうに思います。
 今、大臣がお話しになりましたけれども、まさに原子力の規制行政が信頼されるためには、やはり推進部門との分離ですね、規制と推進がしっかりと分離されること、そして、独立性というのは、今、山花議員の御質問でもいろいろありましたけれども、難しい面も多々ありますけれども、独立して、ある意味政治的なものにかかわらずに判断もできる部分も必要だということ、これにこの今回の法律は尽きるんだというふうに私は思います。
 そこで、ちょっといろいろあるんですけれども、先ほど、塩崎先生からも菅直人リスクという言葉が出てきましたけれども、事故後のことについては、マスコミから本当にたくさんたたかれ、政治家も官僚も財界も、事故調も含めて社会的制裁も受けているだろう。事業者である東京電力さんも、大きなリストラをしているわけであります。ただ、事故前の、本当に責任がある立場にあった原子力村の主導者、そういう方が、特定の名前は出しませんけれども、ほとんど問題にされていない。事故後の人たちはいろいろと批判され、たたかれ、社会的制裁を受けている。でも、事故前の人たち、特に公務員の方々は、何か責任をとるといっても、そのとりようもない。いわゆる首になるとか、そういうのもないですし、政治家のように落選の危機に遭うとか人気が落ちるということもない。民間企業のように、リストラになって給料が下がるということも余りない。
 そういう中で、今回、新しい原子力規制庁、そこの職員は、保安院と安全委員会、保安院の方が多数を占めると思いますけれども、そこが移籍するようなイメージだと思いますけれども、これは、箱が変わっただけで人が全部一緒だ。昔、まさに政策失敗とは言いませんけれども、原子力規制行政のいろいろな問題点をつくってきた人たち、その失敗をしてきた人たちがそのまま移ってくるというのでは、看板のかけかえじゃないか、同じ人がやっているんじゃないかと。
 もちろん、人間ですから、今までとは変わるんだ、もう自分たちは原子力村の論理からは離れるんだということでやってもらえればいいと思いますけれども、その辺についてはやはり不信感があると思いますね。
 その辺についてどういうふうに移籍人材というものを選定したりしていくのか、ちょっとそこについてお伺いしたいと思います。

○細野国務大臣
 新しく誕生する原子力規制組織の人材というのは、当面はやはり、これまでの原子力の規制に携わってきた、そういう経験を要する府省からの出向に求めざるを得ないというふうに考えております。
 ただ、そのときに注意をしなければならないのは、まずは、特に規制そのものにかかわる人間に関して言うと、これまで、特に経済産業省のもとで、必ずしも専門性を有していない人材もローテーションで回ってきていたという面があるわけですね。これはやはり改めていかなければならないだろうと思います。原子力に関する規制や技術について熟知した職員をまず集めるというのが大変重要ではないかと、こういうふうに思っております。
 その上で、もう一つ重要なことは、新しい組織のもとで、しっかりとそこで取り組むべき課題を明確にして個人の意識を変えていくということがなければ、恐らく看板のかけかえという御批判に応えることにはならないだろうというふうに思います。人選ももちろんでありますけれども、そうした組織の文化そのものを意識的につくり直す取り組みはぜひしていきたいというふうに思っております。
 これを当初は新しい規制機関ができる前に準備段階でやろうかとも思ったんですが、それはやめました。なぜなら、新しい規制機関をつくって、それこそ中で徹底的に議論をして生み出さなければ、その原則は絵に描いた餅になりかねませんので、新しい規制機関ができた段階でそのことをしっかりと議論をして方向性を打ち出し、そして、組織ももちろんでありますけれども、個人も変わるという面がなければならないのではないかと、こういうふうに思っております。
 そのほか、当然のことでありますけれども、人材という意味では、民間の研究機関などから人材も求めてまいりたいというふうに思っておりますし、中でもしっかりと育てていかなければならないというふうに思っておりまして、できるだけ幅広い人材を集めることができるような体制はぜひつくりたいというふうに考えているところでございます。

○柿沼委員
 少し小さな質問を。
 この移籍は、出し手側の、例えば保安院とか安全委員会を所管する文科省、経産省が決めるのか、それとも受け手側の環境省が人材の選定をするのか、どちらなんでしょうか。

○細野国務大臣
 私は、今回の原子力の事故を受けまして、規制組織にかかわる主要なメンバーはほぼ全て一緒に仕事をしましたし、それぞれの人材のいいところも悪いところも見ておりますので、私なりに思うところはございます。
 ただ、野党の皆さんからの御意見も御批判もあり、余り政治が直接関与することは必ずしも好ましくないというお話もございますので、私なりに思うところはございますけれども、その組織のあり方については、トップの人選をして、そのもとでしっかりとやっていくということが重要ではないかというふうに思います。
 そのときに、私自身ももともとそのように考えておりましたけれども、ぜひお願いをしたいのは、何とか省から推薦をされたのでその人材を採るとか、人事のローテーション上、今そこにいるから採るというようなことがあっては絶対ならないと思います。そこは、個人の資質、一人一人をしっかりと見て判断をするということはぜひやっていただきたいと思います。
 懸念があるとするならば、私は一年半やりましたからわかりますけれども、本当に人選をきちっとやっていただけるような、そういう形での人事構成をいかにしたらできるかということについては、ぜひ与野党で胸襟を開いて議論をしていただきたいなと、そのように思います。

○柿沼委員
 余り時間がなくなっているので。
 今回の規制庁は環境省の外局ということでありますけれども、環境省そのものは、今までの原子力の推進という意味での強いアクセル役ではなかったと思います。それはそれとしても、地球温暖化という意味では、環境省自身も原子力に対して、積極的にと言うかどうかはわかりませんけれども、アクセル役の一部を担ったということであります。
 規制庁の大きな位置づけとしては、やはり、独立性に加えて、推進と規制の分離というのが非常にあると思います。この辺はどうお考えなのか、環境省の外局になることでそこは問題ないのかどうか、ちょっと御意見をお聞かせください。

○細野国務大臣
 今回、新たな法律の中で、原子力安全規制の目的として、人と環境を守るということを明確にしております。今、環境省は、除染や福島県内の廃棄物の問題に取り組んでおりまして、いかにこういう原発の事故が起こったときに環境が破壊をされるか、そして人の生活が破壊をされるかということについて、最も深刻な影響を間近に見て対応している、そういう役所であるというふうに感じております。
 そういった意味で、先ほど温暖化の御指摘がございましたけれども、地球温暖化の手段として原子力を推進をするという立場にはもはやありません。それは、安全規制をしっかりやる中でしか原子力というのはあり得ないという、そういう大前提に省全体が立つ状況に今なっているということを申し上げたいと思います。
 その上で、環境省のもとに置かれる原子力規制庁という存在ではありますけれども、その独立性というのはしっかりと確保していくことが重要であり、法律的にもそのようになっております。
 具体的には、原子炉等の規制にかかわる行政判断については、法律上、長官に委任をされておりますし、予算についても、しっかりとしたそういう枠を設けてこれからやっていくという方針を出しております。
 したがいまして、環境省そのものも原子力の推進サイドという立場には立ちませんし、その環境省のもとに置かれる規制庁についても、独立性をしっかりと確保することで安全規制そのものをやり切る組織をつくっていきたいと考えているところでございます。

○柿沼委員
 ありがとうございます。ちょっと感想も述べたいんですけれども、時間がなくて申しわけありません。
 環境省が原子力のもはや推進役ではないというお話がありました。今回のことは、いわゆるノーリターンルールがあるという話もありますけれども、ノーリターンルールの、ルールの細かいことはちょっとわかりませんけれども、推進側の役所にいた人がこの規制庁に来て、規制側をやってまた推進側に行くのはもうないという意味に私は捉えているんですけれども、逆に言うと、環境省が推進側ではないということになれば、例えば環境省の幹部から規制庁に来て、戻って事務次官になる、要するに、推進側ではないからリターンできるんだということになるのかどうか。
 この規制庁長官人事というのも非常に多くの関心が寄せられると思いますけれども、今の現時点での大臣のお考えを聞かせていただきたい。

○細野国務大臣
 人事については、余り私が個別にああした方がいいとかこうだと言うことは、今、国会審議をいただいていますので、多分、申し上げない方がいいんだろうというふうに思います。
一点だけその点で申し上げると、新しい規制庁が環境省の外局という形で来るとしても、それが例えば環境省の指定ポストになって、ポストがふえて環境省が得をするというようなことがあるというのは、これはもう論外だというふうに思います。
 したがいまして、環境省であろうが、経済産業省であろうが、文部科学省であろうが、原子力安全委員会であろうが、規制と安全に強い意欲を持ち、それをやり切る人材を採るということであって、どこかの省庁からこのポストは必ず来るというようなそういう種の人事をやることは、これは極めて不適切であるというふうに考えます。

○柿沼委員
 ありがとうございます。
 もうほとんど時間がないんですけれども、原子力安全調査委員会、非常に立場が曖昧だなという感じがしております。本当は御質問したかったんですけれども、きょうは時間がないので。ここの意味では、与党の質問で言っていいのか、衆法提出の方が少し、いいと言ったらあれですけれども、わかりやすいなという感じもしているんですけれども。
 そこでちょっとお伺いしたいのは、衆法提出の皆さんの立法のやり方もあるんですけれども、政府の方の安全調査委員会、ここを三条委員会化する。要するに、安全調査委員会は規制庁に対して指揮命令権がないんですね。そこを三条委員会化して指揮命令権を与えるというのは、そういう考え方はないのかどうか。
 それと、もう時間がないのでまとめ質問にしますけれども、去年、私は原賠機構のまさに衆法提出者になりまして、こういう答弁を受ける立場になりました。今回の件は、賠償関係は一切触れられていないんですね。そこはどこが担っていくのか。まあ規制庁ではないんだろうと思いますけれども、明確にちょっと言ってほしいなと。
 二問、お願いします。

○細野国務大臣
 今回の制度をつくるときに私どもが意識をしたのは、きちっと規制をやる、危機管理をやる組織といろいろなことについてチェックをする組織は、これは分けた方がいいのではないかというふうに考えたんです。
 ですから、規制庁そのものについては、規制そのものをやるし、そして、実際に危機管理の部分についても直接担う。一方で原子力安全調査委員会というのは、例えば、その規制庁がおかしなことをやらないかどうかをチェックをする。事故が起こった場合には、その事故についてもさまざまなそれこそ調査を行う権限を持つというような、そういう役割分担を考えたわけです。
 ですから、自民党・公明党案で出てきている規制委員会のもとに規制庁という考え方とは、そこは若干出発点が違うということでありまして、調査委員会を三条委員会化して指示を出せるという考え方は、むしろ自公案に基づく考え方にかなり近い発想で今言われたのかなと、そのように思います。
 したがいまして、この制度を前提にそれをそのままするというのは、少しちょっと無理があるのかなというふうに思っております。
 ただ、これは率直に申し上げますけれども、政府案を出しております。これが我々ベストな案だというふうに考えますが、各党各会派の議論の中であるべき姿というのが示されるのであれば、そういったことについてはできるだけ柔軟に対応していきたい、そのように考えております。
 最後に、賠償制度についてでありますけれども、これも政府内で議論をしました。議論しましたが、賠償というのは、まさに原子力をやるときの、万が一のことがあったときに備えるものでありますから、これは、規制側に置くのとはちょっと性格が違うだろうということで、この組織改編の中には入れなかったという経緯がございます。今後の原子力政策のあり方の見直しの結果などを踏まえて、しっかりと検討していく必要があるというふうに考えているところでございます。

○柿沼委員
 まだまだあるんですけれども、時間になりましたので、ありがとうございます。終わります。

○生方委員長
 次に、矢崎公二君。

○矢崎委員
 民主党の矢崎公二でございます。本日は質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。
 原子力規制庁、原子力利用における安全を確保する意味で、本当に少しでも早く動き出さなければいけないという思いでおります。東日本大震災が発生してから既に一年以上がたっております。ようやく議論が始まったということでございますけれども、この委員会の場で議論を尽くして、できるだけ早く規制庁を動かすということが大切かというふうに思います。
 当初の政府案では、原子力安全庁という言葉が使われました。民主党内の議論で、安全庁ではなくて規制庁だろうという議論がたくさん出まして、それによって改められた。これは当然のことと思います。無用な規制というのは非常に問題がありますけれども、環境あるいは原子力に対してはきちんとした規制が必要だというふうに考えます。
 さて、本日の質問ですけれども、大きく二点ございます。一つは、原子力発電所の運転期間の年数期限の導入について、そしてもう一つは、シビアアクシデントが発生したときの緊急時の対応体制についてでございます。この二点について、内閣提出の政府案、そして衆法提出の皆さんにも御質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 まず、原子力発電所の運転期間の年数制限についてです。
 細野大臣は一月三十日の記者会見で、既に四十年を超えている原発の再稼働はあり得ないということをおっしゃいました。法案では、原発の運転期間の制限を四十年と設定して、法的に運転年数の制限を設けております。
 さまざまなものには耐用年数というものがございます。国税庁の減価償却資産の耐用年数、それを見ますと、電車であれば十三年だそうです。消防車、救急車、こういった命を守るものについては五年という設定がされております。住宅は四十七年、病院は三十九年というふうに言われております。
 その一方で、日本では、原子力あるいは水力、火力発電所のいずれも、耐用年数の規定をするものはありません。原子力発電所について、それを構成する機械装置類の適切な保守、交換などと、法律により義務づけられている定期検査などに合格することによって、理論上、半永久的に運転を継続することができることが現在は可能でございます。
 その上でお伺いしますが、原子力発電所について運転年数の制限を法的に設ける狙い、その制限を四十年と設定した根拠を御説明いただきたいというふうに思います。

○細野国務大臣
 原子力発電施設の経年劣化については、国民や自治体の間にも、これまでもさまざまな議論が存在をしておりました。ただ、そういう議論はありながらも、運転制限制度というのは我が国においては導入をされてこなかったという、そういう経緯がございます。
 まず一般論から申し上げると、設備や機器類というのは、使用年数の経過に従って当然劣化をするわけでありまして、その安全上のリスクというのは増大をいたします。したがいまして、このリスクを低減するために、発電用の原子炉の運転制限制度を導入をすることとしたものでございます。
 この運転制限の期間につきましては、原則として四十年以上の原子炉の運転はしないということにいたしまして、経年劣化の状況を踏まえまして、延長する期間において安全性が確保されれば例外的に運転を継続をするという形にしておりますが、そこは、科学的にしっかりと確認をした上で、申請に基づいてやるということでありますので、極めて限定的なケースになるというふうに考えております。安全上のリスクを低減するというのが、この運転制限制度の目的ということでございます。
 なぜ四十年なのかということでありますが、幾つか根拠として考えたものがございます。
 まず一つは、いわゆる圧力容器の中性子の照射による脆化であります。これは、温度が下がった場合に、シビアアクシデントになると水を入れて下げるということになる可能性があるわけですが、そういった場合に、どこまでこれが脆化をするかということについてこれまでさまざまな蓄積がございますけれども、そのデータの中で一定の懸念というものが生じてくるのが、この四十年というあたりに一つの線があるのではないかと考えられることが一つ。
 もう一つは、さまざまな機器についてのいわゆる工事の計画の認可の申請書における、どの程度それを使うのかということについての想定をした回数というのがございます、それぞれの機器について。そういった想定をされる回数というものが、一つのラインとしておよそ四十年程度を目安になされているというのがございます。
 したがいまして、原子炉圧力容器の強度の問題に加えまして、発電所というのは、プラントというのはシステムでありますから、いろいろな機器がいろいろな形で当然稼働いたします。作動するそのそれぞれの機器の耐用年数というものも考慮にした中で四十年というところの数字を導き出したということでございます。

○矢崎委員
 ありがとうございました。
 現在の、経産省が定める省令に基づきますと、運転開始後三十年を経過する前とその後の十年を超えない期間ごとに事業者は、経年劣化というんですか、こういう非常に難しい言葉で一般の方にはわからないと思いますが、いわゆる老朽化のことだと思いますけれども、老朽化の技術的評価を実施するということになっていました。その意味では、四十年という制限を設ける、これは大きな意味があるというふうに私は考えます。
 一方で、アメリカでは、今回の日本の法案と同様に、運転期間を四十年と定めております。その意味では、アメリカに倣ったというような見方もされているようでございます。その一方で、ドイツは約三十二年で例外なく廃炉にすることを決めております。
 私は、大切なことは、四十年という運転の年数の制限を設けて、日本にある原発を廃炉にする工程をきちんとつくっていく、それをもとに再生可能エネルギーへの転換をできるだけ早く進めていくということが、エネルギー政策上必要なことだというふうに思います。
 ところで、政府案では、運転年数の制限を四十年としていますけれども、四十年を経過した後にさらに一回に限って二十年以内で更新できるという、延長を認める例外規定を設けております。二十年延長もオーケーということでございますけれども、こうしたことに対して、原発の立地自治体などからは疑問の声も上がっております。
 この辺はきちんと説明をしないといけないと思いますけれども、なぜ運転期間の延長を認める可能性を残しているのか、例外的に運転期間が延長できるのはどのようなケースなのか、さらに、運転期間の延長の上限を二十年としたのはどういう意味があるのか、その点について御説明をお願いをいたします。

○細野国務大臣
 まず、経年劣化についての考え方ですが、先ほど、四十年のところに一つの線を引いた根拠を申し上げましたが、一方で、四十年をたてばそのときから急に危険になって、四十年までは全く問題がないということでもないわけですね。つまり、そういうリスクが高まるという中でどこに線を引くかということになるわけです。
 したがいまして、若干、これまで十分に伝え切れていないところがありますけれども、バックフィットという制度を導入しますので、四十年を待たずとも、これはリスクが高いということになれば、そこで運転をとめるということも制度としてはあるわけです。
 ですから、そういう四十年までは絶対動かし、そして、もうそこだけが基準だということではないということをぜひ御理解をいただきたいと思います。
 その上で、延長を認める可能性についてでありますが、その可能性についてなぜ考えるのかということについては、個々のプラントによって状況というのは、これはやはり異なります。PWR、BWRというのも原発としては随分性格が違います。さらには、技術的な知見という意味でも、四十年前の原発と今の原発とではまた随分違うというのも、これも紛れもない事実です。
 そういうそれぞれの状況というのがございますので、運転期間の例外を一切排除するという考え方をとるのではなくて、一定の要件を満たして許可を受けた場合には、運転期間の延長を可能とする余地も残したということであります。
 この運転延長につきましては、この許可基準は、法律上、長期間の運転に伴い生じる劣化の状況を踏まえて、延長しようとする期間において安全性を確保するための基準を環境省令で定めることとしておりまして、これは、ですから申請に基づくわけですね。ですから、それぞれの事業者が、何年間延長するのかということも含めて判断をして、その申請をしっかりと厳格に見ていくということになろうかと思います。
 したがいまして、逆に言うと、四十年以上をあり得ないと申し上げたのは、この基準ができるまでは四十年以上は絶対動かないわけですから。そういった意味も含めて、それこそ、なし崩し的なことはあり得ないという趣旨で以前私発言をしたということであります。
 その上で、なぜ二十年なのかということにつきましては、これまで、高経年化の技術評価で、運転開始後六十年を見通した経年劣化の評価を行ってきていること、これは一つの材料としてはございます。米国においても、運転許可の更新を二十年を超えない期間としていることも、これも参考とはいたしました。
 そういったことを一つの材料といたしまして、延長するとしてもその上限というものは、設けるとすればやはりこういうところではないかということで規定することを考えたということでございます。

○矢崎委員
 ありがとうございました。
 政府案の四十年の運転期間、それを過ぎた後二十年以内の延長の規定という、その理由はわかりましたけれども、現行の制度では、上限は、上のふたはされていませんけれども、運転開始後三十年、十年ごとに評価するというシステムになっております。
 その意味で、四十年以降、新しい法律ではさらに二十年ということですから、四十年からさらに二十年の間、この期間がどうなるかという心配があると思います。法案ではきちんとした規定はされていないと思いますが、現行法よりもむしろ後退してしまうのではないかというような懸念もございますけれども、その点について、四十年から六十年までの間のいわゆる十年ごとの定期安全レビューとか、そういうものを実施していくことになるのかどうか、その点を確認をさせてください。

○細野国務大臣
 三十年以降十年ごとに行う安全性の評価というのは、これはこれからもやっていく必要があるというふうに考えております。
 したがって、三十年でまずそこのものが来て、四十年はまた違う意味で、これはもう運転制限そのものですから、しっかりと厳格な判断というのがなされるということであります。
そこは新しい規制機関のもとでしっかりと議論をした上で方針を出していただきたいというふうに思っておりますが、四十年以上というのは、極めて例外的だというそういう制度になっておるんですね。その例外的に適用されるものが出てきた場合に、その後の安全規制についてどのようにしていくのかということは、これは、専門家の中で徹底した議論をしていただく必要があるのではないかというふうに思います。
 今の時点で法案のたてつけとして申し上げるならば、バックフィット制度がありますから、当然、これは四十年以上に例えば例外的になった場合も常に適用されますので、十年ごとということを待たずに常に最新の知見でチェックをされ、それでクリアできなければそこでもうだめなわけですね。そういう制度が維持をされつつ、なおかつ、また十年というところでそういう制度をするかどうかという議論は、そこは新しい規制機関のもとで行っていくべきものではないかと思います。
いずれにしても、以前よりも規制のレベルが下がるということはこれはあってはなりませんので、そこは、厳格な適用は当然なされることになろうかというふうに思います。

○矢崎委員
 ありがとうございました。
 米国では運転期間四十年と定められております。連邦政府の独立機関であるNRCが定める連邦規則によって、さらに二十年の運転を認める規定がございます。恐らく日本もこの方式だというふうに思いますけれども、そのほかの各国の状況を見てみますと、フランスでは耐用年数に関する法的な規定はありません。イギリスでも耐用年数に関する法的規定はない。それぞれのフランス、イギリスでは十年ごとに定期安全評価を実施することになっていますが、こちらは、実質的に半永久的に運転を継続することも可能なようになっております。
 一方でドイツ、二〇二〇年までに、現在稼働している九基の原発を段階的に運転を停止するとしています。平均運転年数は約三十四年ということになります。ベルギーでは、運転期間を一律四十年。四十年に達したものから順次閉鎖していく。スペインでは、四十年の運転年数を超える原発の順次閉鎖の方針を示しています。
 そのほか、フィンランド、スウェーデン、スイス、韓国では、耐用年数や運転期間に関する法的規定はありません。
 今述べたことは国立国会図書館による調べでございますけれども。
 やはり日本は、そういった世界状況を見ながら、その中でも、より厳しい、そういう規定をきちんとつくっていかなければいけないというふうに私は考えております。
改めてですけれども、日本の法的規制について、その画期的と言える意味について、大臣の御見解をお伺いします。

○細野国務大臣
 私も各国の例は調べました。ドイツは、たしか運転時間か何かではかっていて、平均すると三十四年ぐらいになるというような、そんな形だったかというふうに思います。
 若干一般論になるわけですけれども、私、ちょうど四十歳になるものですから、四十年前と今との技術の違いというのは、これは、私ならずとも誰でもわかるわけですね、例えば電気製品をとっても、車を見ても。四十年前の技術で今そのまま通用するものは、逆に言うとほとんどない。それぐらい大きな技術革新がなされているわけです。
 原子力発電所に関しては、四十年前も大丈夫ですということを、やはりこれまでちょっと安易に信じ過ぎていたのではないかと。今回、四十年というところで一つの運転の制限をして、高経年化については、相当厳しくこれから日本国内でさまざまな研究をしていかなければならないというふうに思います。
 それを我が国がまずやることで、それこそ原発の先進国と言われる国々はもちろんですけれども、これから原発を導入しようとか導入をし始めたとか、そういう国に対しても、高経年化については、常に日本が最新の知見を蓄積をし、それを発信をし、それを他国にも反映をしていくように、言うならば促していくという、そういった役割を担うべきではないかというふうに思います。
 その意味で、四十年というところに運転制限を設けたというのは、極めて大きな意味があるのではないかというふうに考えております。

○矢崎委員
 ありがとうございました。
 この四十年について衆法の提出者の皆さんにも御意見をお伺いしたいんですけれども、運転年数の制限を設けることについてどのように受けとめていらっしゃるか、導入すべきと考えているのか否か、お聞かせください。

○吉野議員
 自公案は組織論だけを議論しました。というのは、規制当局に独立性がもしあったならばあの事故は防げた、私はこのように思います。
 きのうの産経新聞のニュース、ごらんになったと思います。平成四年に、全電源がとまった場合はどうするのかというワーキンググループを原子力安全委員会は立ち上げました。そのことを本当に議論して、全電源がとまった場合はどうするということを定めていれば、この事故は起きなかったんです。すなわち独立性です。独立性がきちんと保たれた組織論を私たちは議論していましたので、この運転年数については、正直言って一個も議論しておりません。
 ですから、四十年がどう合理的に正しいのかどうか、この辺も含めてこれから議論していきたいと思っています。
 以上です。

○矢崎委員
 吉野先生の個人的な御意見でもよかったんですけれども、具体的に聞けなかったのはちょっと残念でございます。
 次に、二番目の質問に移ります。
 シビアアクシデントの発生時の緊急対応体制についてお伺いをいたします。
 三月十一日の東日本大震災による福島第一原発の事故の反省点は幾つかあると思います。一つは、原子力災害対策本部において迅速な情報と専門知見による意思決定が円滑に行われなかった、あるいは、SPEEDIの情報が伝わらないなど関係機関の連携が円滑に進まなかったこと、さらには、平時から重大事故を想定した準備ができていなかったことなどが挙げられます。
 オンサイトの原子炉の鎮圧とオフサイトの住民避難誘導などの両面での体制の強化が必要だということは、皆さん同じ御意見だというふうに思います。関係機関の役割分担や、特に、政府内での防災体制の中核となる機関を明確に定めることが不可欠でございます。
 そこで、衆法提出者の皆さんにお伺いをいたしますが、自公案は、本会議での趣旨説明によりますと、オフサイトの対応については、政府、すなわち原子力災害対策本部が責任を持ち、規制委員会が、これに対して職員の派遣、専門的知見の提供等で協力する立場と説明をされました。にもかかわらず、規制委員会は、設置法上、原子力事故による災害の防止の事務を所掌し、原災法上も、関係機関の役割を定める災害指針の策定、オフサイトセンターなどの指定など、オフサイト対策のさまざまな事務を所掌をいたします。
 この二つは大きな矛盾があると考えますけれども、自公案でオフサイト対策の中心となるのはどの機関になるのでしょうか。

○江田(康)議員
 矢崎先生の御質問にお答えいたします。
 自公案でオフサイト対策の中心となるのはどの機関かということでございますが、原子力災害が発生した場合の緊急時におきましては、そのオフサイト対策の中心となるのは、原子力災害対策本部であります。これは自公案も政府案も変わらない。
 自公案では、原子力災害対策本部は、原子力施設外のオフサイトに関する事項全般についてその事務を遂行するわけでございますが、原子力委員会からの必要な助言を受けてオフサイト対策を行うことになる。他方、原子力規制委員会は、原子力災害時にも、独立した役割と責任を持ってオンサイトの専門技術的な事項にかかわる事務を行います。オフサイトはその助言を行って連携を図る。
 その上で両者の緊密な連携協力は、これは不可欠でございますので、原子力災害対策本部の副本部長として原子力規制委員会の委員長が加わって、その職員の派遣も想定している、そういう役割分担であります。
 以上です。

○矢崎委員
 今の説明を伺うと、平時の場合は規制委員会、有事の場合は政府というふうな認識にも聞こえますけれども、いわゆる自治体とか防衛とか警察を含む関係省庁との調整について、平時は誰が行うのか。有事は今のお話ですと政府ということだと思いますが、平時と有事で責任者が変わってしまうという、そうするときちんと対応ができないのではないかというふうに懸念をしますけれども、いかがでございましょうか。

○柴山議員
 お答え申し上げます。
 緊急時の際の対応については、関係省庁との調整を含めて、あらかじめ定められていたことを実行するのが原則なわけです。このことは、国会事故調の中間報告におきましても、大規模災害に対応できるだけの体制を事前に整備をして、関係省庁や関係地方自治体と連携して、関係組織全体で対応できる体制の整備を図る必要があるとされているところなんですね。ですので、関係省庁との調整、まずこれは平時にやっておかなくてはいけないということなんです。
 私たち自公案におきましては、平時におけるそういった調整は原子力規制委員会が行うこととなります。そして、有事における関係省庁との調整については、オフサイトに関する事項全般の事務を遂行するのが原子力災害対策本部ということで、ここがメーンになるということは、御指摘のとおりであります。
 ただ、今おっしゃったように、この二つが違ってだめなんじゃないかということは、私はそれは当たらないと思っております。関係省庁との連絡調整において、政府案を見てみると、政府案でも、平時においては環境大臣が所掌することとなっておりますし、緊急時においては原子力災害対策本部長、すなわち総理が行うということになっているわけなんです。すなわち、原子力規制委員会か環境大臣かの差はあれ、政府案と我々自公案において、そこのところに本質的な違いがあるわけではありません。
 むしろ、平時のそういった防災連携について、担当大臣がいるかどうかでそういった事務の実施に差が生じるわけではないと思っておりますので、そこはやはり、専門家たる原子力規制委員会がそこをしっかりとグリップをするということでよいのかなというように思っております。
 むしろ、私から逆に政府案に対して、平時と緊急時の違いをちょっと過度に強調し過ぎじゃないかなと思うのは、まさしく、原子炉の炉周りの規制の部分なんですね。ここは再三我々も本会議などで再三答弁していますけれども、平時においても、また緊急時においても、そういった原子炉周りの規制機関について、独立性を持った、やはり権限のある者が圧力を受けない形で行わなければいけない。これは、二〇一一年六月のIAEA国際専門家調査団の報告書にも書かれている部分なんですね。ですから、我々の案は、そういった原子炉周りの技術的な事項については、平時においても緊急時においてもこの委員会がやるということで一貫をしているんです。
 ただ、今おっしゃったような形での防災連携、これについて、やはり平時においては専門的な観点から委員会がやる、政府案は環境大臣のもとでやる、そして、緊急時においては本部長である総理が災害対策本部長として必要な指揮をとる、こういうような形で整理をしている部分であります。
 以上です。

○矢崎委員
 ありがとうございました。
 緊急時、有事の際に、総理、政治の責任者の権限がオフサイトの方に及ばないということがないように、それをどうやって知恵を絞ってこの法案に盛り込んでいくかということが大事だというふうに思います。
 東日本大震災によって宮城から茨城県にかけての太平洋沿岸の原子力発電所は、軒並み津波に襲われました。福島第一原発は、メルトダウンから水素爆発に至りました。その一方で、女川原発、そして東海第二原発は、瀬戸際で危機を乗り越えたと言われております。
 女川原発第一号機については、東北電力の副社長が、十二メートルの津波想定という意見に対して十五メートルを主張して、十四・八メートルの高台に建屋など主要施設を建てた。それが女川原発を救ったのだというようなことが、東京新聞など、美談で語られています。
 しかし、政府の事故調の中間報告によりますと、実際は、津波のしぶきは堤防を越えて、補機冷却海水ポンプは使えなくなりました。二号機では、原子炉建屋地下三階に浸水をして、非常用ディーゼル発電機三台中二台が停止した。一台が生き残った。これは単なる運がよかったということだというふうに私は思います。
 東海第二原発についてもさまざまな美談が語られております。茨城県の津波浸水想定区域図に基づいて、震災の二日前に防波壁の関連の工事が終了した、これが大きな事故に至らなかった理由だということが報じられておりますが、しかし、これも実際は違うようでございます。
 政府の事故調中間報告によると、工事の一部は震災が発生したときに完成していなかった。たまたま、工事をしていた作業員が、この穴も塞ごうよということで、非常用ディーゼル発電機につながる穴というか空間を塞いで、それが海水が入るのを防いだという話もございます。たまたま運がよかったとかいうことでは片づけられない問題だというふうに思います。
 私は、四十年を限度に、閉められる原発はできるだけ早く廃炉にしていくことが必要だというふうに思います。そのためには、環境の整備を急ぐ必要があります。そして、そうした姿勢を政治が目に見える形で国民に示していかなければ、今後の原発政策に対する理解は得られないというふうに思います。
 そのことを強調させていただきまして、質問を終えたいと思います。
 どうもありがとうございました。

○生方委員長
 次に、工藤仁美君。

○工藤委員
 民主党の工藤仁美でございます。きょうは、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 昨年三月十一日の福島第一原発の事故から、間もなく一年三カ月がたとうとしております。今、原子力行政の規制にかかわる法案の審議を始めることになりまして、直接的に被害を受けた被災地の皆さんはもちろん、多くの国民の皆さんが重大な関心を持ってこの議論を見守っておられます。
 私の地元の事務所それから会館の事務所にも、この数日、たくさんのファクスや電話が入りました。私もそういった国民の思いを強く感じながら質問に立っておりますので、御答弁の方、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず初めに、福井県の大飯原発の再稼働について細野大臣に質問をいたします。
 この法案審議と時を同じくして、野田総理は、福井県の大飯原発の再稼働をまさに判断されようとしておられます。昨日は、細野大臣が福井県知事にお会いになられたというふうに聞いております。
 私は、民主党の原発事故収束対策PTにも出席して、再稼働には慎重に慎重を期すべきという四月十日付のPTの緊急提言をまとめる議論にも加わっておりました。夏の電力供給不足を予想されての再稼働の御判断とは考えますけれども、国民の中にも、原発の再稼働については反対という意見も多くあります。
そこで、細野大臣、この大飯原発の安全性の評価というのは、今回提出された法案の考え方からして、問題がないというそういう御判断なのか、ぜひお話しいただきたいというふうに思います。

〔委員長退席、大谷(信)委員長代理着席〕

○細野国務大臣
 政府としても、原子力の安全の問題については、慎重にも慎重を期して判断をしてまいりました。
 他国の例でありますけれども、旧ソ連のチェルノブイリ原発の事故、あれだけの事故がありましたが、ソ連は、その後、原子力発電所をとめてはおりません。アメリカではスリーマイルアイランドの事故がありまして、その後、新しい原発の新設は確かに行われませんでしたが、他の原発は動かし続けました。
 そうした過去のさまざまな国の取り組みと比較をしても、我が国は、今全ての原発がとまっているというこの現状において、まさに慎重に判断をしてきた結果があらわれているというふうに考えております。
 今回、政府が、特に四大臣として判断をいたしました三つの基準というのは、特に基準一と基準二で、東京電力の福島原発を襲ったのと同様の事象が起こったとしても、炉心が損傷する、そういう状況には至らないということについて、さまざまな専門家の議論を一年以上にわたって積み重ねて、そして判断をしたものであります。
 ただ、一方で、安全にはこれは絶対はありません。したがいまして、これまた専門家の皆さんの議論を経て、三十項目、将来的にしっかり確保すべき安全の考え方というのがありますので、それをできる限り前倒しをして、そして、現状において大飯についても反映をしたのが基準三ということになります。前倒しをいたしました。そのことによってさらに安全性が高まったというふうに考えております。
 なお、それでも申し上げますが、三十項目全てが達成されたとしても、安全に絶対はありません。ですから、常にその上をしっかりと目指して安全性を高めていくということは極めて重要である、そのように考えております。
 今回提出をしている政府法案との整合性で申し上げるならば、新しい知見ができたときにはそれは反映をするというバックフィットの考え方をとりますが、法律ではまだできておりませんが、さまざまな新しい今回の事象を受けての知見というのが出てきておりますので、それを取り入れて炉心損傷に至らないことを確認をしたという意味では、そのバックフィットの発想に立って新しいさまざまな取り組みをしているという意味では、整合性があるものであるというふうに考えております。

○工藤委員
 大臣、ありがとうございました。今の大臣の御答弁を聞きましても、なおのこと、この法案審議、与野党でいい結論を得るよう、私も議論に参加していきたいというふうに思います。
 大飯原発の再稼働については、この質問については終わります。
 次に、規制のための組織体制のあり方について、内閣提出法案と衆法の提出された法案の中身では、争点になっております、衆法では規制委員会、そして内閣提出法案の方では原子力安全調査委員会ですか、この点について質問をいたします。
 先ほど来、前の委員からも独立性ということについて質問がありましたけれども、重なる面もあると思いますが、非常に重要な点ですので、ぜひとも私の質問に対しても、衆法提出者の先生方、よろしく御答弁をお願いいたします。
 先日、五月二十九日の衆議院本会議での塩崎先生の趣旨の説明では、新しい原子力規制組織は、国際的な規範であるIAEAの安全基準にのっとり、平時、緊急時のいかんを問わず、原子力推進官庁からの独立はもとより、他の省庁や政治から独立していること、権限、人事及び予算の独立性が与えられた専門技術的な規制が行える規制機関とすべきこととして、さらに、職員についても全員にノーリターンルールを適用しと述べられ、そして、そのためにはいわゆる三条委員会とするしかないというふうに結論づけておられます。そしてまた、規制委員会の下に規制庁を置くとしていますけれども、この規制庁は、事務局を規制庁と呼ぶという位置づけになっております。
 私も、原子力の利用推進と規制を担う機関というのを切り離さなければならないということは全く同じ考えであります。また、規制機関の独立性ということについては、昨年十二月末に出されました顧問会議の提言にも厳しくその点は指摘をされているところなんですけれども、しかし、今までの段階で御説明を聞いている段階なんですけれども、ここまで独立性が高いということは、非常にいい面もありながらも、その一方で、こういった独立した委員会がやっていることに対して一体誰がチェックをするのかという、非常にそこのところは疑問でございます。
 他の行政機関からも政治からも独立して職権を行使できるということになると、委員長それから委員の任期中、言葉はあれなんですけれども、いわゆる暴走をしたような場合、誰が一体それをとめることができるのか、そして、政治からも独立というふうに説明をされておられるので、国会もこの規制委員会が行うことについて関与することができないのかという点について、ぜひ御説明をお願いいたします。

〔大谷(信)委員長代理退席、委員長着席〕

○江田(康)議員
 工藤先生の質問にお答えさせていただきます。
 国会は独立性に対してどう関与をできるのかということと、委員会を監視する機関が必要ではないか、その旨の質問だったと思います。
 この原子力規制委員会については、委員長や委員の任命をこれは国会同意人事としておりますことが一点、そしてまた、政府特別補佐人である原子力規制委員会の委員長等への委員会質疑等を通じて行政監視を行う、これらによって国会の関与は図られるとしております。
 また、この原子力規制委員会は三条委員会として設置されますので、委員長、委員の職権の独立行使が認められる以上、その職務遂行をチェックするための特別の第三者機関を新たに設ける必要はないと考えております。必要なチェックは、先ほど申しましたように、国会による行政監視により行われることになります。
 以上であります。

○柴山議員
 今、提出者江田議員から御説明があったとおりなんですけれども、ちょっと補足をさせていただきますと、全くチェックができないのかというところに関して言えば、今回、私たちが提出している法案の九条に罷免の条項がございます。
 九条二項におきまして、「内閣総理大臣は、委員長若しくは委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき、又は委員長若しくは委員に職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない行為があると認めるときは、あらかじめ原子力規制委員会の意見を聴いた上、」これはデュープロセス上の要請ですね、「意見を聴いた上、両議院の同意を得て、これらを罷免することができる。」このような形で、全くチェックができないということではありません。
 以上です。

○工藤委員
 ありがとうございました。
 次に、細野大臣にお伺いしますけれども、政府提出法案の原子力安全調査委員会なんですが、これは、原子力安全調査委員会設置法案の第三条で原子力安全調査委員会の所掌事務というものが規定されておりますけれども、その内容を見ますと、その役割というのは非常に重要となっております。しかし、この重要である役割を果たすためにも、安全調査委員会の委員の人選が適切になされなければその役割は果たせないものと私は考えております。
 先ほど来、細野大臣より、人事についてはなかなか答えることができないというようなお話がありましたけれども、私は、人事というのではなくて、原子力安全調査委員会の委員の人選の方針というものをぜひ細野大臣にお伺いしたいと思います。
 といいますのは、つい最近も、毎日新聞などでは大きく報道されておりますけれども、これは内閣府の方の安全委員会の、何といいますか、非常に隠蔽的な体質の中での村会議みたいなものについて開催されたというような記事も載っておりまして、そういったことがあるとすれば、なかなか原子力規制行政全体に対する国民の信頼というものは、それは一部の事象かもわからないんだけれども、規制行政全体がやはり何か国民の目から見てうさん臭いといいますか、不信感を持たれるようなことになろうかと思いますので、そのためにも、その 委員の人選というのは非常に重要だというふうに思っております。
 ですので、ぜひ、大臣のその人選のときの方針についてお伺いしたいと思います。

○細野国務大臣
 工藤委員から今、重要な御指摘をいただいたというふうに思います。
 原子力安全調査委員会の役割というのは、規制機関が本当に国民から見てもきちっと機能しているかチェックをし、そして、それこそ万が一にも事故が起こった場合には、そうした対応がなされているかというのも確認をする、そういう場でございまして、自公案、私もしっかり真摯に受けとめさせていただきたいと思っておりますし、柔軟にと思っておりますが、このチェック機能がどのように果たされるのかというのは、ぜひ国会でも御議論をいただきたいというふうに思います。
 私は、今回の東京電力の福島第一原発のこれから三十年、四十年にわたって行われる廃炉がきちっとなされるか、さらには事故原因が何かということも含めて恒常的にしっかりと見られるような形というのは、やはり何らかの形で必要ではないかというふうに思っておりますので、ぜひそういった御議論をいただければ大変幸いだと思っております。
 委員会の委員でございますが、法案の中では、要件として「科学的かつ公正な判断を行うことができると認められる者」となっております。すなわち、中立的な立場から科学的、専門的な知見に基づいて判断できる有識者であることが必要であります。
 ただ一方で、私も原子力の専門家と随分この間さまざまなやりとりをしてまいりましたが、原子力の専門家といっても非常に多岐にわたりまして、それぞれの専門分野ごとにやはりかなりの違いがあります。
 そこで、例えば一例でありますけれども、原子力の分野はもちろんでありますが、耐震の分野の専門家、さらに危機管理の専門家、そして、放射線障害というのはこれはまた別の専門でありまして、放射線防護の専門家、そういった分野からバランスよく配置をしなければそうした委員会というのは機能しないのではないかというふうに思います。
 この調査委員会も独立をさせますが、独立をさせたときに、何かそこに万能な人がいて全てやってくれるというものでは、なかなかやはりこれはそういったふうにはなりにくいですから、そこも含めて、どういった組織であれば機能するのかという議論は、これは、我々が出している原子力安全調査委員会はもちろん、自民党・公明党案で出てきている原子力規制委員会も含めて、そこは、あり方そのものに踏み込んだ議論も国会では必要ではないかと思います。
 なお、特に、原子力事業者の従業員など原子力安全行政に利害関係を持つ方は委員には適さないと考えておりまして、そこは、明確に法律の中で欠格条項として位置づけることとしております。

○工藤委員
 今、細野大臣より、委員の人選についても、非常にきめ細かく、御丁寧な答弁と、そして考え方を持っておられるということが私にも理解できました。
 しかし、あえてさらに申し上げさせていただきますけれども、ぜひこの委員の人選に当たっては、今現在利害関係がある人はもとより、昨年三月十一日まで、いわゆる原子力村に属する、原子力の利用推進を標榜してきたような学者、研究者、評論家、官僚出身者、また、原子力で利益を得ていた事業者の関係者などなど、そういった方は決して選んでいただきたくないということを私は強くお願いをいたしたいと思います。
 そうでなければ、その委員会でのいい議論もないと思いますし、また、やはり、どういった方が人選されたかというところを国民は政府の考え方を判断する一つの基準として注目しているのではないかというふうに思いますので、ぜひともそこはよろしくお願いをしたいと思います。
 次に、規制の具体的内容にかかわることについて質問をしたいと思います。
 今回の政府提出法案の中で、原子炉等規制法と電気事業法の改正も同時に行われるという法案になっておりますけれども、その二つの、原子炉等規制法と電気事業法改正について質問いたします。
 原子力施設全体の安全規制について今まで電気事業法それから原子炉等規制法と分かれていたものが、今回の法の改正によって、原子力施設全体の安全規制について原子炉等規制法に一元化し、そして、新たに法案として提出しております規制庁が責任を持つ、こういった内容になっているというふうに理解しておりますけれども、そのような理解でよろしいんでしょうか。

○櫻田政府参考人
 御説明申し上げます。
 委員御指摘のとおり、今回の法案におきましては、原子炉等規制法と電気事業法の改正を行いまして、これまで二つの法律で行っていた原子力施設に対する規制を一元化する、それを新しく設置されます原子力規制庁において運用する、こういう形にしてございます。
 その中身でございますが、今、原子力安全規制におきましては、公共の安全の確保上特に重要な設備につきましては、国が工事計画の認可を行い、使用前検査で確認をする、また、運転開始後においては定期検査でこれを確認する、こういう仕組みになってございます。
 こういった対象の設備というのは、原子炉の周りとか、非常用炉心冷却設備とか、そういった主要な設備になってございますが、この対象になっていない機器につきましては事業者が保守管理を行う、この保守管理活動が適切に行われているかどうかについて国が確認をする、こういう仕組みになってございます。
 先ほど申し上げましたように、従来はこうした規制を、原子炉等規制法と電気事業法、この二つの法律によって実施してきたところでございますが、今回は法案によって一元化して、原子炉等規制法一本で規制をする、こういう形にしてございます。
 ちなみに、その対象についてこれまでと変更があるということではなくて、二つの法律を一元化するという、そういう法改正を御提案をしているということでございます。

○工藤委員
 昨年三月十一日の福島第一原発の大事故の直後は、私もテレビで保安院の方の説明を、よく保安院の方が紙に書いた原子炉の絵というんですか、図柄を持って説明をされていたのをずっと見ておりましたし、また、党内の会議においても、そういった図面、原発の絵を見ながら説明を聞いていたんですが、事故後かなりたってから実際の写真が公開されまして、私は北海道なんですけれども、地元にも泊原発三基ありますので、それまで私は外からは原子力発電施設というものは遠目には見たことがあるんですけれども、その内部には入ったことがありませんでしたので、そういった絵をずっと見ているうちに、何か原子力発電施設というのは物すごく単純なものというふうに勘違いをしていたんですが、しかし、実際に大事故を起こした内部の公開された写真を見まして、これは全然自分が思い描いていたイメージとは違うものだと。
 その機械類を膨大な管と線がつないでいるという、そこが大事故を起こしてぐちゃぐちゃになってしまったという映像を見まして、それで、そういった原子力発電施設全体の安全性を求める上での点検、管や線など、細々したねじ、くぎに至るまで、そういったものがちょっとした破損をすることによって放射能に汚染された気体や液体などが外部に漏れるわけですから、そういった細々した設備、施設全てにおいて厳しくチェックをしていくことが求められていると思うんですけれども、それを規制庁が責任を持つというふうに今回の法改正でなるということなんです。
 しかし一方で、検査のやり方ですね。例えば民間事故調などでは、その報告の中で、規制を厳しくすると、それは書類の数がふえるだけではないか、本当に実効ある検査の仕方になっているのかというような民間事故調の指摘もございますし、やはり今後は、国民の安全のために、そして安全規制を高めるためにも、検査や審査というものが形骸化していない、そしてさらに、効率よい、そういった審査、検査のやり方というものが求められるのではないかというふうに思います。
 このような民間事故調、またさまざまな分野からの指摘を含めて、原子力発電施設全体の安全のための規制の実効性と効率性を高めるために今後どのような取り組みを強化していこうというふうに考えておられるのか、ぜひお聞きをしたいというふうに思います。

○細野国務大臣
 原子力の安全審査でありますが、事業者の皆さんともこの間、私も中に入り込んでおりましたので若干議論いたしましたけれども、本当の意味での安全を高めるというよりは、形式に落ちて、形式ばかりがどうも目立つ部分であるとか、また、ペーパーワークが多くて膨大な書類があってそれに忙殺をされているとか、そういう指摘があるのは事実でございます。
今回、規制を強化をすることになるわけですので、本当にしっかりやらないと、逆に形式ばかりがまた膨らんで、実質的な部分が空になるということにもなりかねないというふうに思っております。
 そこで、どう現場を重視した審査、検査、これをやっていくのかということについて、各国からもぜひさまざまな知見を集めて、我が国として最善のものをやっていきたいというふうに思っています。
 NRCの関係者なんかとも話をしましたけれども、それこそ現場の事業者よりも詳しく、しっかりと急所を捉えて物事を判断できるような検査官、これを育てていかなきゃならないわけですね。これは並大抵のことではないというふうに思っておりますが、研修やOJTはもちろん、国際的にも通用するような人材をつくることによりまして、実質的な意味で安全を高めることができるような審査体制をつくっていかなければならないと考えております。

○工藤委員
 私の質問に対して細野大臣の本当に熱意のある御答弁をいただき、感謝をしております。

○生方委員長
 時間は終わっています。

○工藤委員
 時間がなくて一つ質問ができませんでしたので、衆法提出者の皆さん、申しわけありません。
 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

○生方委員長
 次に、田中和徳君。

○田中(和)委員
 自由民主党の田中和徳でございます。
 政府提出の原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案及び自民党並びに公明党提出の衆法、原子力規制委員会設置法案外二案の四法案について質問をしてまいります。
 私の感ずるところ、これは、今審議が行われております社会保障と税の一体改革の法案と同じぐらいに、それ以上に重要な法案で、まさに私たちにとって非常に重い責任がある、このように認識をしております。
 まず委員長に申し上げます。
 我が国は、未曽有の原発事故を起こした国として、しっかりと事故の反省と教訓を反映し、発想を根本から転換する原子力規制組織の抜本的改革を行わなければなりません。私自身、自民党の議員ということでございまして、長年にわたり政府・与党の立場にあったわけでして、原子力発電所の行政も事業も推進してきた立場でございます。当然、深い反省がなければならないと私自身肝に銘じてこの質問にも立たせていただいているところでございます。
 そのためには、これから審議する法案の審議時間は相当なものになると思われます。会期も、今の国会の状況を考えれば延長ということになるのではないかと、このように私も思っておりますので、そういう状況で頑張ってまいりたいなと思っております。六月中に出る国会事故調の最終報告も十分に織り込んでいくことができればなと、こういう思いも持っております。
 不安と不満、まさしく憤りが募っておりまして、国民の原子力に対する目は極めて厳しくなっています。徹底的に議論を尽くしても、それでも、国民、とりわけ原発立地自治体の地元の皆さんの不安は解消されないかもしれない、こういう思いでございます。
 日本が今回の事故から学んだ教訓をしっかりと生かすために、法案審議のスピードよりも大事なことは、日本の原子力規制の仕組みを根っこから大転換することだと思います。看板をかえさえすればよい、こういうわけにいかないわけでございます。
 参考人の聴取についても、とりあえず次の定例日の六月八日の予定が決定しましたが、例えば、組織論と緊急時対策、予算と人材育成対策、新たな原子力規制策など、今後の原子力規制を託す機関についてしっかりと有識者の意見を聞かなければならないと思います。おのおの最低でも一日ずつ時間をかけないといけないような重要なテーマではないかとも思います。
 しっかりと中身を詰めた議論を行うため、十分な審議時間と、参考人聴取等が行える機会をしっかりと確保していただくことを委員長に特にお願いをしておきたいと思います。
 また、重要広範議案でございますので、委員会審議に野田総理大臣の出席を強く求め、ここに申し入れをさせていただきたいと思います。
 委員長、よろしくお願いいたします。

○生方委員長
 田中委員の今の御指摘をしっかりと受けとめて委員会運営に当たっていきたいと思います。

○田中(和)委員
 それでは、どうぞひとつよろしくお願いします。
 細野大臣に申し上げます。ここは環境委員会の場でございますけれども、原発事故担当大臣としてもお尋ねをしてまいりますが、環境大臣の立場とあわせて、双方の立場でお答えをいただければと思います。
 まず大臣にお聞きします。あなたは、この閣法の提出者として対案の自公案についてどのような評価をお持ちですか。また、修正協議にどのような姿勢で向かおうとなさっているのか。まずお聞きをいたします。

○細野国務大臣
 田中先生におかれましては、環境行政を常に大変牽引をしていただいておりますし、この原子力規制のあり方についても、野党側の責任者として対応していただいております。心より感謝を申し上げます。ありがとうございます。
 出てきております自民党・公明党案についてということでございますが、私は政府案を出している立場でございますので、政府案が我々として出しているベストのものだというふうに考えてはおりますが、一方で、政府案と自公案というのは、共通する部分も非常に多いというふうに感じております。
 それは、推進側からの独立という考え方はもちろんでありますけれども、できる限り規制組織を一元化をするという考え方、そして、規制のレベルをやはり上げていくというこの方向性についても、一致をする部分が非常に多いというふうに感じております。
 そういう中で、組織のあり方として、我々は原子力規制庁というのを提案をさせていただいている一方で、自公の皆さんは原子力規制委員会というのを提案されていて、そこの組織のあり方がやはり若干違うところがあるということでございます。
 そこで、私も原子力規制委員会というものそのものを否定的に捉える考えはございません。独立性をしっかりと高めた形で規制を強化できるということであれば、それも一つの考え方として十分に傾聴に値し得るし、考え得るというふうに私は思っております。
 一点だけその部分について懸念を申し上げると、どう危機管理と合議制の独立した委員会というのを両立をさせていくのか、ここについてぜひ国会でも御議論をいただきたいし、各党でもさまざまな考え方のすり合わせをしていただければ大変幸いだというふうに思っています。
 総理の指示権の問題やオンサイト、オフサイトの扱い、きょうの議論の中でももう既にいろいろ出てきておりますが、そのあたりも含めて、ぜひお互いの考え方を一致させるような形での御議論をいただければ幸いであると考えているところでございます。

○田中(和)委員
 今の大臣の御発言は、私としては非常に歓迎をする。弾力的な対応をするということですが、政府案の審議が始まったその瞬間の答弁とすれば、非常に異例な御発言ではないか、このように思うんです。悪く言えば自信がないのかなと、このようにも思うわけでございまして、いずれにしても、私ども、理事として修正案の協議をするということをもう既にスタートしておるわけでございますので、責任を持って頑張っていきたいなと、こう思っております。
 大臣、きのうは福井県出張、御苦労さまでございました。六月四日、きのうの時点で、再稼働が妥当であるという原発は、大飯の三と四、四国電力の伊方の三号機ということで、この三つですね。ということなんでしょうか。そして、あとの十九の原発が保安院のチェックを今受けている。五月三十日に行われた閣僚会議で野田総理が、立地自治体の判断が得られれば、最終的に私の責任で再稼働を判断する、こう言明されまして、関西電力の大飯三号機、四号機の再稼働をいわば決断をされた、こういう流れだと思います。
 細野大臣も、原発事故担当として当然その場でいろいろな御発言もされたんだと思います。今審議をする法案が進まないから原発の再稼働に影響する、早く審議をしてほしいとの話が私のところにも随分あったんですけれども、そんなことはないような流れでございますが、どうでしょうか。

○細野国務大臣
 原発の再稼働の問題でありますけれども、大飯の三号機、四号機に関しましては、ことしの三月末までに、原子力安全・保安院、さらには原子力安全委員会も含めてさまざまな確認が終了いたしました。そこは、もともと規制庁の発足が四月というふうに予定をしておりましたので、その予定をされていた発足時期よりも前に最終的な専門家の確認ができたということで、それも踏まえて四閣僚として判断をしたという経緯でございます。
 一方で伊方でございますけれども、この原発について原子力安全・保安院の方での手続が進んでいるのは、先生御指摘のとおりでございます。ただ、原子力安全委員会ということに関して言いますと、その確認作業というのは進んでおりませんので、そういった意味で、四大臣として再稼働について判断をしているという段階ではございません。
 今後でございますけれども、もちろん、今も規制組織が原子力安全・保安院そして原子力安全委員会ということで現存をしておりますし、安全確認も含めてそうした機能がしっかりと果たされるのが、これが大前提だというふうに当然考えます。
 しかし、その一方で、四月以降は新しい規制機関が誕生するという予定になっている中で、どこまで原子力安全・保安院、安全・保安院はまさにその役そのものをやるべきだということで今もやっておるわけですが、原子力安全委員会が先に進むかということについては、独立した委員会でもございますので、委員の皆さんにもいろいろな御意見がございます。
 そうした皆さんの意見も踏まえながら、私としては、大飯の三号機、四号機以降の原子力発電所については、できれば、充実した審議をしていただいた上でできるだけ早く原子力の規制組織を誕生させていただいて、その組織のもとでしっかりとした厳格な判断がなされるのが最も望ましいのではないかと、そのように考えております。

○田中(和)委員
 大臣、実は、この修正協議も含めて時間をかけてやらなければいけないと私が今言ったばかりなんですね。一方において大飯の方におきましては、もう既に政府の方は相当な動きをしておられるわけですよね。今の答弁だけですと、ちょっと私は納得いかない状況にございます。
 もともと、関西の、関西だけじゃありませんけれども、この夏の電力不足はもうわかっていたわけですから。とっくにわかっていた。この夏、全部原発がとまればどういう状況になるかというのは、昨年、あの事故が起きた直後に、我々も含めて、専門家はもちろんのこと、みんなが議論をしていたわけですね。その後、菅さんの発言、ストレステストの問題もあって、ルールをどんどんと変えられたのは民主党、政府の皆さんなんですよ。そして、実は今日に至っているわけですから。
 ですから、今の我々の行う修正協議が調わなければこの規制庁の制度はできていかないわけですから、これと大飯の原発をリンクさせるのかさせないのか、非常に重要なことをお尋ねしているわけですから、お答えをいただきたいと思います。

○細野国務大臣
 大飯の三号機、四号機に関しましては、ことしの三月までの間に、政府としての、さまざまな専門家の検討や四大臣としての判断というのを、基本的には基準という意味でも終了しておりますので、この規制庁の議論と直接かかわりなく、さまざまな手続が進められるものというふうに考えております。
 ただ、一方で、福井県知事からも、さらには関西連合の皆さんからも我々もう本当に繰り返し繰り返し言われておりますのは、何とか早く原子力の新しい規制組織を誕生させてもらえないだろうかという、そういう話をいただいておるんです。
 それは、関西や福井の皆さんだけではなくて、私は福島のこともどうしても気になります。といいますのも、福島第一原発はもう発電所ではありません。あの発電所ではなくなってしまった、ダメージを受けたところをぴっちりと安全を確保する高いレベルの取り組みというのが求められるわけですが、そういう法整備がまだできておりません。
 もう一点だけ済みません、御質問とは外れますが率直にお話をさせていただくと、防災指針というのが、これが法定化されておりません。したがいまして、動いていない原発も含めて、本来はプールの中に燃料がありますから、さまざまなそれこそ自治体の取り組みというのをしっかりと我々は促していかなければならないわけでありますが、原子力防災指針が法定化されていない中で全国の自治体の取り組みも、これも十分にまだできていない部分があるのも率直に事実なんですね。
 そういったことも含めて、もちろん慎重に議論をいただいてさまざまな御検討をいただく必要があるというふうに思いますが、そういうかなり切迫した状況であるということを、ぜひそこは私の方からお伝えをできればというふうに考えた次第であります。
 大飯については、この法案審議とはまた別のところで政府としてのさまざまな手続を進めていくということでございます。

○田中(和)委員
 一言に言うと、非常にタイミングが悪いんですよ。
 この法案の審議を行う。本会議をやって、委員会に付託されて今始まったわけですね。これは今から私、大臣とのやりとりをしますけれども、それは全て政府・与党側に原因があるわけです、はっきり言って。そして、この一方において、関西の状況を十分知っていながら、どんどんと原発始動についての議論は遅くに遅くに実は誘導してきた。
 安全というのは当たり前なんですね。国民の不安を払拭するのは当たり前です。これはもう政府の一番の責任なんですよ。だけれども、国会軽視に映りますし、国民から見ると何かちぐはぐで、矛盾していて、何でこんなときに大飯原発の再稼働と私たちのこの重要な議案、法案の審議が重なってしまったんだろうということで、国民の皆さんによほど説明をしないと、これは大変な誤解を与えるし、今後の政治の原発行政に対しての信頼感を失う。私はこういう心配をしているわけですね。
 さて、我々野党が審議に応じられなかった理由は、大臣、何だと思いますか。

○細野国務大臣
 私どもは、今、行政の一翼、一つの役割を担わせていただいている立場から申し上げて、できるだけ政府が提出をしている法案を御審議をいただきたいというそういう立場でお願いをしてまいりましたが、御審議いただけなかった一つの大きな要因といたしましては、問責決議案に対する対応等があったと承知しております。

○田中(和)委員
 これは第一と第二がありまして、第一の方は、大臣がお出しになった一月三十一日の法案にこれは問題があったんです。
 本当に我々から見れば、これで国民の信頼が得られるのかと。三条委員会のことも含めて、独立性のことも含めて、菅直人リスクも含めて、本当にそれを反映しただけの議案、法案になっているのかと。我々が見たときに、これは問題あり、こういうことで我々も、塩崎提案者おいでですが、我が党の中では大変な危惧とともに議論をして、対案をつくるために公明党さんにも御指導いただきながら、今日あるわけですね。
 そして、我々が提出したのは四月二十日なんですよ。時間がかかってしまいました。でも四月二十日。この日に実は問責が前田、田中両大臣に可決されてしまったわけですね。
 当然、大臣としては、これだけの重要な法案を抱えているわけですから、総理に対して、この二大臣を早くやめさせてください、これだけの重要な法案を審議しなきゃいけない障害になっているんだからどうしますかということを、どのように御協議されましたか。

○細野国務大臣
 もちろん、私は法案を出している責任者でございますので、この法案の重要性については、総理や官房長官を初め、皆さんに累次にわたって説明をしてまいりました。また、国会の関係者の皆さん、これはもちろん与党ということもありますけれども、でき得る限り私の及ぶ範囲で野党の皆さんにも、ぜひ重要性をここは踏まえて御審議をいただきたいということで、お願いをしてまいりました。
 そういう努力はしてきたつもりでありますけれども、この時期まで審議が進んでこなかったということについては、やはり、行政、そして法律を出しているという立場でいうならば、全ては私に責任があるというふうに思っておりますので、そこは国民の皆さんに大変申しわけないという、そんな思いでおります。
 その中で、政府の中で問責の問題についてどうだったのかというそういう御質問でございますが、そこは私自身が申し上げるべき立場ではない。総理自身が総合的にいろいろなことを当然お考えになっているわけでありますから、そのことについてお考えになるのは、もうこれは総理しかおられないというふうに考えましたので、直接的なやりとりをしたことはございません。

○田中(和)委員
 私はもう時間の関係ではしょっていきますけれども、小沢さんの会談が終わった途端に大臣の入れかえをされた。本当に政府・与党の皆さんは国民に目を向けているんだろうかと。我々野党の方に目が向いていないのはしようがないにしても、国民の不安、これだけの事態が起きているときに、本当に国民の生活や心というものに対してどう向き合っているんだろうかと。小沢さんは民主党の一議員さんですよ。確かに有力な方かもしれません。そういうことを考えたときに、歴然とした主権者不在の姿というのが明らかじゃないですか。
 大臣は、非常に嘱望されて、お若いし、非常にシャープだといって評判もいいんです。これから総理大臣にもなられるという人が、原発の担当をし、環境省の大臣をやってこれだけの重責にありながら、なぜ野田総理ともっと膝詰めの話をしなかったんですか。問責の大臣をここまで交代ができなかった、罷免ができなかったという事実を、私は、これはこの場でしっかりと説明してもらわないといけない、このように思います。

○細野国務大臣
 私は、経験もありませんし非常に未熟者ではありますが、原発の事故への対応と、この原子力の新しい組織を誕生させなければならないということに関しては非常に大きな責任があるというふうに思っておりますので、その面で、総理に対しても何度もこのことの重要性は率直に説明をさせていただきました。
 その一方で、内閣総理大臣というのは、このエネルギー問題や原子力の問題だけではなくて、今議論されている社会保障と税の問題も含め、国全体のことを動かさなければならないお立場ですので、それは、本当にすさまじいプレッシャーの中で日々さまざまな判断をされているというふうに私は感じてまいりました。
 したがって、そういう総理というお立場でいろいろ御判断をされなければならないことについて、私の所掌の部分については強く申し上げます、私の担当しているところについては率直に申し上げますけれども、それ以外の全体のことを考えておられる総理に対して、今、田中先生の方から御指摘をされたようなことというのは、これは私の立場として申し上げるという立場でももちろんありませんし、これはやはり申し上げるべきものではないというふうに考えたところでございます。

○田中(和)委員
 大臣は、事故当時、昨年の三月十一日当時、総理補佐官をお務めでございました。総理補佐官も極めて重要なお立場ですよね。政治主導ということで政権をとられた民主党の皆さんが、先ほど来より議論がありますように、菅直人リスク、まさしく政治主導が結果として大事故、大災害を起こす原因になった、こういう議論が、民間の事故調でも、議会の事故調でも、マスコミ報道を初め各方面の話でも、国会の審議でもあったわけですよ。これは当然、大臣も重要なお役についておられたんですから、そのときの責任も重いものがありますね。
政治主導とか菅直人リスクだとかもろもろのことが言われているんですけれども、このことについて大臣はどのように反省の弁をされるのか、また、どういうふうに思っていらっしゃるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

○細野国務大臣
 御指摘のとおり私は、事故発生当時は補佐官でございました。補佐官というのは総理をサポートする役割でございますので、菅総理に対してさまざまな厳しい御意見、さらには、事故を防げなかった、事故後の対応についても、これも万全というふうにはいかなかったということに関して総理に御批判があるということは、すなわち、全て私もその御批判をしっかりと受けとめなければならないそういう立場であるというふうに思っております。
 そのことについて率直に責任を認めた上で、菅前総理の対応についてはさまざまな御批判がありますが、当時の政府の責任者として、まさに当事者としてどう原子炉を制圧していくか、国民の生活をもとに戻すかということについては、総理としては、しかるべきときのしかるべき判断や当事者としての判断を逃げなかったという意味において、私は、そこは評価をされていい部分もあるのではないかと、そのように考えております。
 一つ一つの個別のことについてきょうここで御説明をする場面ではないというふうに思いますので、全体として申し上げるならば、菅前総理については、私は今そのような考えを持っております。

○田中(和)委員
 何か事故があったときの本部長は当然総理大臣ですね。これは、これから議論する規制委員会、規制庁がどんなに独立しようとも、総理大臣は一番重要な役割を果たすんですよ。その総理大臣がここまで重大な指摘を多くの人たちからされて、そして、チームワークも結局国民のために機能しなかった。これは、私たち、政権にあるときにこういうことがあったらということをやはり考えなきゃいけないんですけれども、本当に重大なことが起きている。
 ということで、ここからなんですが、今回の政府案の独立性は、我々の案からすれば非常に弱いと思うし、独立性が保たれていないように思えるんですが、大臣は、独立性を政府案はどのように保っていると認識をしておられますか。

○細野国務大臣
 まず、一般的に独立性と言う場合に、かつてのIAEAのIRRSなどでも指摘をされておりますが、まずは推進サイドからの独立性というのが、これがもう大前提になるわけです。その面においては、原子力の規制組織がこれまで原子力安全・保安院という形で経済産業省のもとにありましたので、そこからは完全に分離独立をするという意味では、ここは完全なる独立性を確保できているというふうに思っております。
 今、御指摘は、政治からの独立をどのように果たしていくのかということだと思います。
 政府案の考え方というのは、オンサイトのさまざまな技術的な問題については権限を原子力規制庁長官に委任をする、法的なそういうことになっておりますので、そこで独立性について確保するという、そういうたてつけになっております。
 加えまして、委員会を設けましてそこでチェックをするという役割も果たしますので、そこで独立性をさらに補強するというそういう考え方に立っておりまして、その面では、最後の総理の手段としての指示権というようなものについては、残すという考え方をとっておりますが、それは極めて例外的に行使をされるべきものというふうに位置づけられておりますので、政治からの独立性という観点に関しても、政府案は確保できているというふうに考えているところでございます。

○田中(和)委員
 衆法の提出者の方にお尋ねをいたします。
 、大臣から答弁もありましたけれども、私は、手前みそというのか、自公案こそ、この衆法案こそ独立性が保てる、政府案よりもはるかにそれはちゃんとしていると思っておりますけれども、ひとつ御答弁を願いたいと思います。

○塩崎議員
 ありがとうございます。
 今、細野大臣から、政府案について独立性があるというお話でございましたけれども、まず第一に、長官人事、これは閣議決定でありますから、結局政治の影響を受け、そしてまた、環境大臣の任命でありますので、逆に言えば罷免もできるということで、極めて不安定な形で政治的な影響を受けるということは変わりがないということでありますから、形だけ、経産省の下にぶら下がっていた保安院が環境省の下に来たということでは、完全に独立というお言葉をさっき大臣は使われましたけれども、それはもう全く違うし、本質は何も変わっていない、第二保安院だ、こういうふうに申し上げているわけであります。
 ノーリターンルールについても、またいろいろこれから議論があると思いますけれども、管理職以上の本当にごく一部に限られているということで、結局、今の政府部内にいる人材を考えれば、いわゆる推進官庁から来るということが多いわけで、そこにまたリターンしていくということであれば、これはもう独立がない。
 結局、今までの原子力村というのは何かというと、原子力のことは詳しいけれども、安全を軽んじて推進の方を優先した、これが原子力村の定義だろうと私は思うので、それも何も変わっていない。ですから、原子力村のお引っ越しということだろうと思います。
 それから、緊急時については、先ほど限定的にという話がありましたけれども、法律上は、専門技術的な領域に至るまでオンサイトのことについて口が出せるというふうに本部長に権限を与えているということでありますから、これも独立性がないということで、言ってみれば、最終的にIAEAの安全基準が言っているのは、独立した規制上の判断と決定が担保されていないといけないということでありますけれども、ほとんど何一つと言っていいほど担保されていないということだろうと思います。
 それに対し我々は、ちゃんと三条委員会でありますから、今のような人事の面も、国会同意人事の後罷免をされないという身分保障を与えられるということであり、権限も人事も予算も、そしてまた、原子力事業者からの独立は当然ですけれども、他の行政機関あるいは政治全体からの影響というものにも独立性を保てるということであります。
ノーリターンも、我々は、上から下まで原則としてこれはノーリターンを適用することによって、一つは独立性、もう一つは、その中できちっと育てるという意味においての人材育成の独立性というものも確保しているということであります。
 それから、災害時も、これは先ほど来少し議論になりましたけれども、技術的な事項についてはあくまでも規制委員会が決めるということで、本部長からの指示は受けないということでありますし、それから大事なことは、他のいろいろな機関との緊密な協力をもって、ばらばらな今回のようなことではなくて、やはり一体的に事に当たるということで、我々としては、委員長を副本部長として原災本部に入れるという形で貢献をし、なおかつ、連携をするためにそういった形にとっておりますし、いろいろなレベルにおいてインプットあるいは人材派遣というものを委員会からしていこう、こんなふうに思っております。
 言ってみれば、政府の方は、形は独立したかのように見せながら、実は独立をしていない。我々は、実質的にも形式的にも独立をさせたということでございます。

○田中(和)委員
 政治の独立についても後ほどちょっとお聞きしたいと思いますが、今の御答弁の続きをと思っております。
 自公案も、結局政府案もそうですけれども、原子力安全規制組織というのが新しく生まれるにしても、当初は、原子力安全・保安院だとか原子力安全委員会だとか、今まで原子力安全を担った現行の行政組織の職員が横滑りをする、こういうことがやはり国民の目から見れば、仕方がないという一面、何となく箱の入れかえみたいな話で、箱の中身は一緒だ、こういう批判が出ておるのは当たり前のことだと思うんですね。
 これをどうするか、国民の信頼をどうやって確保するのか、こういうことは本当に、当初、スタートのときに一番重要なことだと思うんですね。
 また、職員の皆さんもちょっと大変な話だと思うんですよ。自分たちがそういう目で見られているんだという一方で、本当にどうしていいのか、何をどう変えていいのか、これはなかなか難しい話だと思うんです。
 提出者の方から先にお話を聞いて、大臣からも、その点どのような制度設計を考えているのか、特に、出身官庁に関係する再就職をとにかく国民に疑問を持たれない、こういうことは大変な難しいことではあると思うんですが、御答弁を願いたいと思います。

○江田(康)議員
 田中先生の御質問にお答えいたします。
 先生御指摘のとおり、原子力規制委員会の独立性を確保するために重要なことは、原子力安全規制にかかわる者が原子力推進官庁や事業者に属する者から影響を受けることのないように制度的に担保されることが大変に重要であります。そのための措置がいわゆるノーリターンルールということであります。これによって原子力規制庁の職員は、原子力事業者や原子力利用の推進官庁からの不当な影響を受けることがなくなるものと考えられます。
 また、御指摘のように、例えば、新組織に配職後に退職を迎える者が原子力関連以外も含めた出身官庁の関係団体や関係企業に再就職するようなことを認めるのであれば、出身官庁からの影響は免れないことになります。
 そこで、自公案においては、原子力規制庁の職員について、その職務の執行の公正さに対する国民の疑惑または不信を招くような再就職も、厳として規制することとしているところでございます。

○細野国務大臣
 田中先生の方から最後に御指摘をされた再就職については、極めて重要であるというふうに考えております。国民の疑念を招くことがないよう、国家公務員法に基づく再就職のあっせんの禁止、利害関係企業などに対する求職活動の禁止、再就職者による働きかけの禁止などの規制が既に設けられておりますので、規制庁についても、特にこれらのルールにのっとって厳格に対応していく必要があるというふうに思っています。
 この面で国民の疑念や不信を招くような事態が起これば、これは原子力の規制、安全に対する信頼を非常に大きく傷つけることになりますので、そこはしっかりとやっていく必要があるというふうに思っております。
 それと人材に関してでございますけれども、私は、しっかりとした人材を確保する上で、鍵は採用にあるというふうに思っております。
 採用する組織でないと人を育てることができません。内閣府の特命担当大臣も昨年の六月からしておりまして、かなりの数の内閣府の組織に私はかかわりましたが、その多くの組織では採用ができておりません。そうなりますと、結局は借り物の人材でやっていかなければならないという事態になるわけですね。
 内閣府のもとにあるさまざまな組織の中で、きちっと採用ができていて、そこで人事のマネジメントができているのは、これは公正取引委員会ぐらいではないかと思います。公正取引委員会がそういうことになるまで一定のやはりいろいろなプロセスがあったのも含めて考えますと、原子力の新しい規制組織でしっかりと採用して人を育てるということを、できるだけ早くしていかなければならないというふうに思います。
 確かに、先ほど、提出者である塩崎先生の方から、ノーリターンルールについて政府案というのは限定的だという御批判がありましたけれども、当初は、有為な人材を集める方法として課長職以上ということで限定をするという判断をいたしました。
 ただ、中で人材を育て採用し、きちっとマネジメントをやり切ることができれば、私はしっかりとした規制組織ができるというふうに思っておりまして、そこに責任を持って対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。

○田中(和)委員
 政府案は経産省から環境省に所管官庁を横滑りさせるだけで、もとより、十分な縦割り解消とか独立性を期待ができづらい、このように私は思っております。
 出身官庁からの独立性をいかに確保するか、また、出身官庁に関係する再就職についても、先ほど申し上げましたけれども、独立性の確保のためにも重要なことがたくさんございますけれども、そういう中で私は、この部分、難しいにしても、相当きちっとしていかないといけない、このように思っております。
 ノーリターンルール、キャリアパスについてちょっとお尋ねを自公の衆法提出者に申し上げますけれども、先日の本会議の質疑では、ノーリターンルールについて、政府の考え方と自公案の違いが浮き彫りになったというところがたくさんございました。
 自公案は職員全員にノーリターンルールを適用、また、非管理職についてもノーリターンルールを基本的に適用、こういうことなんですね。政府案の方は、昨年十月二十五日の衆議院の環境委員会において細野大臣が、「若手のときは違うところにも行っていろいろなそれこそ修業をしてきた方が人材は育つと思う」と御答弁をされておられますけれども、非管理職についてはノーリターンルールを適用しない、こういうことになっています。
 ノーリターンルールを徹底すると、意欲を持って規制業務への参加を希望する優秀な職員が少数にとどまることが懸念されると政府は言っておりますけれども、自公案提出者としてはどのように考えておられるのか、何か経過措置が設けられているのか、お尋ねをいたします。

○吉野議員
 お答え申し上げます。
 ノーリターンルールを徹底すると優秀な人材が集まらないという政府側の考え方ですけれども、これは全く逆であります。
 国会事故調の論点整理の中でも書かれております。規制当局に行くことは、ある意味で腰かけ意識、そこのポストを踏まえて次に出世していく、そういう意味で本当に安全文化をつくっていくというその志、これが欠けている、このように指摘をされております。
 こういうことを踏まえると、他省庁の組織の論理からきちんと独立をして本当に原子力の安全というものを考えていく人材、これが一番大事なわけであります。それを徹底していくのがこのノーリターンルールである、私たちはこのように考えているところです。
 さて、経過期間です。
 確かに、規制委員会に入って適性問題等々ございます。私たちは三年から五年の経過期間を考えております。この経過期間を過ぎて本当に残った者、志のある者が、規制委員会、規制当局に入るわけですから、本当に原子力の安全をきちんと心から考えていく、そういう有能な人材が集まる、このように思っているところです。

○田中(和)委員
 吉野先生の大変力強い説明ではあったんですけれども、やはりよそに行かれないということになると、何となく我々から考えると、心配する向きもあるんじゃないかな、お給料の面だとか待遇の面でもよほどやはりきちっとしてあげなきゃいけないんじゃないかな、このようにも思うわけですね。
 また、事故調が五月十七日に発表した「現時点での論点整理」においても、これまで原子力推進官庁を含む役所の中でのローテーションという腰かけ意識が原子力規制組織の安全文化の醸成を妨げてきた、こういうことで指摘していますね。
 自公案では、職能に応じたキャリアパスがある人事制度を構築する、こうしておられるわけでございますが、具体的にはどんな案をお持ちか、御説明を願いたい。

○江田(康)議員
 職員の処遇やキャリアパスについてどういう構想をお持ちかという御質問にお答えをさせていただきます。
 先ほども述べられたとおり、自公案では、職員の専門的な知識、能力の向上を図るためのこの具体策として、国の内外の専門家の積極的な登用、また、国際機関や大学との人材交流の実施、さらには、研修体制の整備について、政府に必要な措置をとるよう義務づける規定を設けております。また、原子力規制庁の職員に関して、専門的な知識及び経験を要する職務と責任に応じて、資格等の取得の状況も考慮した給与の体系の整備そのほかの処遇の充実を図って、有能な人材が集まるように政府が必要な措置を講ずる、このように義務づけているところでございます。

○田中(和)委員
 アメリカでは、原子力潜水艦を持つ海軍が、原子力に関する独自の人材供給源として非常に重要でありました。また、米国NRCは、大変人気の高い職場として、米国内で一定の権威と信頼を有しております。
 我が国は、これだけの事故が起こった後ですから、なおさら、それに負けない人材確保と育成策が必要であります。NRCほか諸外国の実態等も踏まえて、衆法提出者のお考えを伺いたいと思います。

○江田(康)議員
 先生の、NRCほか諸外国の実態を踏まえて人材確保と育成策についてどのように考えるかということにお答えをさせていただきます。
 アメリカの政府職員に対するアンケート調査によりますれば、NRCの職員については、能力管理や仕事の満足度において高い満足度が得られている。そして、職員のNRCへの評価が高い理由の一つは、自分の専門性に合った仕事が行える、また、独立機関で働く責任感と充実感があることとのことでございます。さらには、その給与水準が高いことも理由に挙げられております。
 そこで、自公案では、アメリカのNRCほか諸外国のキャリアパス制度も参考にいたしまして、原子力規制庁の職員に関して、給与その他の処遇の充実、国の内外の専門家の積極的な登用、国際機関や大学との人材交流の実施、研修体制の整備等について、政府に必要な措置をとるように義務づけたところでございます。

○田中(和)委員
 最後の質問になるかと思います。
 原子力安全基盤機構、いわゆるJNESは、当機構のホームページによると、平成二十四年四月現在で、理事長一名、理事三名、監事二名、職員四百十七名から成る組織でございます。自公案では、このJNESを原子力規制委員会へ移管する、こうしておりますけれども、そうなれば、四百人超の職員が新たに公務員となります。
 さきの五月二十九日の衆議院本会議でも野田総理は、行政組織の肥大化を招くこと、公務員制度の枠内では柔軟な人事管理が難しいことを指摘しておるわけでございます。
 行政改革の観点から公務員の人数の抑制が主張される時代に原子力安全規制の分野だけを例外扱いできるのかどうか、どのように整理をする考えなのか、衆法提出者にお伺いをしておきたいと思います。

○塩崎議員
 これまで原子力規制というのは、安全委員会があり、そして保安院があって、このJNES、基盤機構があるという三層構造になっていました。
 この間の事故のときに、私が聞いている範囲では、一番専門家がいるこの基盤機構の中で、どうしたらいいかということを例えば百アドバイスが出たら、保安院に行くと十になって、官邸に行ったときにはもう一になっている。そのくらいこの三層構造、分断されている構造というのが、いかに機能的に本当にうまくいっていなかったかということがよくわかり、また、今までの事務官支配というか、ゼネラリスト支配で専門家がどちらかというと軽んじられてきた。この文化の典型が、この基盤機構に一番優秀な人がいながら、一番下にあって、上の方の意思決定にはなかなか加われていないということがありました。
 そこで我々は、このJNESを新しい規制庁あるいは規制委員会のもとの一つの組織の中に入れようということで、行政の無駄を整理することが行革であって、これは、無駄を出すということではなくて、むしろ国民の信頼を再醸成といいますか、それに非常に重要な我々としての提案であって、これは決して総理がおっしゃっているような行政組織の肥大化とか、そういう一面的なことを考えて、野田さんの頭の中には何のためにそもそも今回改革をやるのかということはどこかに飛んでしまって、ただ行政の肥大化だというようなことだけを言っているのであって、我々は、そんなことではない、今までの欠点をなくそうと思えばそれしかないし、もう一つは、もちろん税金をどう使うかの話でありますから、これは気をつけなきゃいけない。
 そこで我々は、独自財源を考えよう。イギリスは九八%独自財源、つまり、原子力事業者から取る検査料とかそういうので賄っています。アメリカは、約九割がNRCは独自財源でやっています。
 したがって、それを自分の裁量でもってやることで、たしかメザーブさんは、この間、国会事故調でボーナスという言葉を使いましたが、何らかの形で、そういう処遇も考えながらやるということで、少なくとも一般会計には御迷惑をかけない形を工夫しながら、何しろ実を上げる、つまり、安全性を高めていくというためにこのJNESはやはり一緒にすることが大事なんじゃないかなというふうに思っております。

○田中(和)委員
 時間が参りましたのでまた次の機会に質問させていただくこととして、これで終わります。
 ありがとうございました。

○生方委員長
 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

午前十一時五十四分休憩
午後一時開議

○生方委員長
 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。塩崎恭久君。

○塩崎委員
 環境委員会で初めて質問をさせていただきたいと思います。
 きょうの質問に入る前に、配付資料を配っておりますので、委員長にお願いでありますが、たしか理事会で合意をいただければ議事録に掲載をしていただけるという話を聞いておりますので、御検討をお願いしたいと思います。

○生方委員長
 理事会で協議します。

○塩崎委員
 ありがとうございます。
 政府案に対して御質問申し上げたいと思うんですが、私は自公案の提案者なものですから自分の方には質問ができないということなので、きょうは細野大臣にいろいろとお教えをいただきたいというふうに思っております。
 その前に、先ほど田中筆頭の質問の中で、なぜこんなにおくれたんだという話がありましたが、その中で再稼働の話がございました。大飯の三号、四号についてはどうもこのままいくということでありますが、私の愛媛県、伊方原発がございます。三号機が去年のたしか七月でしょうか、本来は再稼働のはずだったものがいまだにとまったままということでありますが、先ほどの大臣のお話ですと、どうもかなり先になりそうな雰囲気がございました。
 この法律が通らなければ、新しい組織ができなければというふうにおっしゃるわけでありますが、もともと去年の臨時国会で出してこなきゃいけなかったものを一月の終わりに出し、それももう予算で審議ができるはずがないタイミングだった。それで四月一日なんて、もともと無理筋を言っていたわけですよ、皆さんは。でありますから、この法律を人質に、さっき田中筆頭が言ったように、再稼働の問題、もちろん私の地元でも賛否両論あります。いずれにしてもしかし、それは俎上に上がらないというのがいけないのであって、改めてお聞きをいたします。
 この法律が通るということになると、これは委員長にお願いですけれども、何かこの金曜日は参考人だけかと思ったら、連合審査までやる。そうすると火曜日に採決ですかと心配をするぐらいハイペースでやっているものですから、これはもっとしっかりと議論しなければいけない、先ほど田中筆頭が言ったとおりでありますが。仮に七月の頭にでも我々の方が通ったとすると、三月のうちに施行になります。そうすると、七、八、九、国会をやっていなければ同意人事はなかなかできませんよね。そうすると秋、さらに、それがスタートしてから安全基準を新たにつくる、年を越えるかもわからないじゃないですか。
 そういうことを計算してみると、では、大飯の後の伊方から、その次は一体どういうことになるのか。とりあえず伊方のことだけで結構でございますけれども、どういうスケジュール観を持っていらっしゃるのかを教えていただきたいと思います。

○細野国務大臣
 私は規制の側の担当で、安全の確認をする側の担当でありますから、どういうスケジュールで再稼働を考えているかということについて私自身が判断をするという立場ではありません。むしろ、それを考えてしまうと安全がないがしろにされる、規制が緩くなるというそういう失敗を重ねてまいりましたので、そういうスケジュール観を私自身が持っているということではありません。昨日も福井県に行ってまいりましたけれども、安全性についてのこれまでの取り組みについて説明をしたということでございますので、そこは明確に分けたいと思っております。
 その上で申し上げますと、大飯三号機、四号機に関しましては、三月末までに原子力安全・保安院のストレステストの評価、さらには、それについての安全委員会としてのこの評価というのがなされておりましたので、そこは、その後のさまざまな自治体とのやりとりも含めて、現在進行中ということであります。
 一方で、伊方三号機に関しましては、三月いっぱいをもってそういう手続が完了しているという状況ではありません。そういう状況の中でこの規制組織の審議が行われておりますので、国民も、早く規制組織を誕生させろという声をあちこちで私は聞いておりますので、それが恐らく最も適切な考え方ではないかと、そのように考えております。
 ただ、別に、人質をとるとか、それがあるからもうこっちの審議がとかということを、私はこの場で申し上げるつもりは全くございません。

○塩崎委員
 私どもの地元の愛媛県の中村知事も、県民が早く判断できるようなということで一生懸命頑張っているわけでありますので、俎上にはできるだけ早く上げていただいた方がいいんじゃないかなというふうに思いますので、また引き続き御努力を願いたいと思います。
 そこで、まず独立性の話でありますが、政府案の独立性ということについては、先ほど来も、御自身でも余り独立性がないかのような雰囲気の御発言をされておりましたが、実に私もそのとおりだと思っておりまして、きょう改めてIAEAの安全基準、特に独立性に関しての、もう今さら読みませんけれども、きょう田中筆頭が大分これを言ってくれたので。要するに、初めて見る方もおられるといけないので、一応念のために配りました。このとおりやらなければ、いわば、独立性に関して真っ当な規制機関としては見られないということであります。
 ところが、ことごとくこれらが守られていない。先ほど、人事の問題を含めて形だけはやっているけれども、そうじゃないと。
 例えば、政府事故調の十二月のあの中間報告がありましたけれども、この中で、政府内の位置づけを変えるだけでは不十分だ、組織として自律的に機能できるために必要な権限、財源、人員を付与しないといけないなどと指摘を、政府の事故調がしているわけであります。
 それから、三月六日に細野大臣はウェートマンさんと電話会談しました。国会の質問を受けて答弁の中で、お墨つきをいただいたかのようなことをおっしゃっていますけれども、よく見ると、特に英文で読むと、前のハウエバーじゃありませんが、構造上の手当てはしたけれども、権限などの独立性は不十分ではないか、こういうことを事実上言っているような表現にもなっている。ですから、私もいろいろな世界の人々とこの問題について話をしますけれども、やはり独立性は不十分だという感じを我々も受けるわけであります。
 それから、この中で、さっきも原子力安全調査委員会の話が出ました。これも考えてみれば、何で今までの安全委員会とそれから保安院の二重構造みたいなものをまた持ち込んできて、やっていて独立性のない、つまり、皆さんだったら原子力規制庁、この単体で物事を決めればいいのに、それを一々何かお墨つきをもらうというかチェックをするという形になっているのがおかしいな、独立した判断基準ができない事実上の証左になってしまうということだろうと思います。
 それからもう一つ、許認可をする際に、審査専門委員という非常勤の二年任期の方を選んで、非常勤ですよ、言ってみれば、その人たちにお墨つきをもらうという審査専門委員という制度も設けているんですね。何で皆さん方の規制庁独自で許認可すら判断ができないのだろうか、何で意見を聞かなきゃいけないのか、私はそれは全く理解ができない。
 何でまた二重構造をつくっているんだということで、本当にこれらを見ても、独立性、自律性がない規制当局だということしか我々からは見えないということを申し上げたいと思うわけでございます。
 それで、炉規法で実は許認可をする際に、推進官庁、つまり経産省であったり文科省、こういうところに同意をするという制度があるんですね。これ、皆さん方でいけば炉規法の七十一条であって、環境大臣は、許可をする場合には、条件を付す場合、あらかじめ、各号に定める大臣の同意を得なければならない。先ほど来、繰り返し細野大臣は、推進と規制を分断しないといけない、こうおっしゃっているんですね。
 ところが、この推進母体である経産省とか文科省の同意を得ないと許認可を与えられない、こういうことになっているのは我々にはとてもじゃないけれども理解ができないので、一体これは何のために同意を求めているのかということを、まず最初の質問で聞きたいと思います。

○細野国務大臣
 まず独立性ですが、若干、短くコメントさせてください。
 塩崎委員の方から、IAEAの基準、要件四の二の八をお示しをいただきましたけれども、これは総合的にぜひ見ていただきたくて、この前に二の七というのがございます。塩崎委員もよく御承知だと思いますが、そこにはこう書いてあります。「独立した規制機関は、他の政府機関から完全に分離されないであろう。」すなわちこの分離というのは、政府そのものとのある種の関係の中で保たれるべきもの、そういうふうな文面があるわけです。その上で予算や権限についてという、そういう文脈で書かれております。
 ウェートマン博士ともそのことを議論いたしました。その中でウェートマン博士からは、「日本の規制機関についての提案は、原子力の推進機関や不当な政治的な影響からの構造的な独立性を確保している。」そういう発言をいただいております。その上で、「柔軟性についての独立性を与えられることが推奨される。」ということが書かれておりますが、仕組みはできているので、それを実際に運用上もしっかりやるようにという、そういう見解が示されているということを私の方から御紹介を申し上げたいと思います。
 そこで、御質問にお答えをいたします。
 原子炉等規制法の七十一条第一項におきまして、原子炉の許可をする場合には、これは、関係大臣の同意を得る旨の規定が存在をいたします。これは、関係をする施策を実施する行政組織の間において整合性を持って法律を執行していくことが重要であるから、それで設けられているものであります。
 一方で、今般の政府の改正案においては、この同意が必要となるのは、原子力規制庁長官が設置を許可するときと条件を付すときなどに限られております。逆に、許可を取り消す場合、停止命令を行う場合には、これは同意は必要ではありません。つまり、許可をする場合には同意があるということですから、規制機関として許可をする場合は、安全性について確保するわけですね。
 逆に許可を取り消す場合、これで同意を得る必要ということになってくると、いや、それは、原子力は必要なので同意できないということになると規制機関としての役割を果たすことができませんから、そこは同意は必要なしとされております。これは、今回の改正案で同意を必要なしとしたものであります。
 つまり、そこはもう明確で、推進側から完全に独立をして判断をできるように、設置については同意を求めるけれども、許可については同意を求めない、通知のみでやる、そういう形になっているということをぜひ御理解をいただきたいと思います。

○塩崎委員
 一通りの説明はわかりましたが、同意と言いますけれども、そもそも、例えば経産省の場合でいけば、恐らくエネルギー庁と相談をして、詰めた上で申請を出してくるというのが、アメリカでもこの間何十年ぶりかでありましたけれども、そうなっているんだろうと思うので、あえてまたここで同意が要るという必要は私はないと思うんですね。
 ですから、それは許可取り消しのときだけとおっしゃいますけれども、そもそも、許可をするときだって同意というものを持っている必要は私はないと思っておりますので、これはまたさらに問題にさせていただきたいと思います。
 そこで、先ほど来、人事の話が出ていますが、改めて聞きます。以前も聞きました。
 身分保障を、長官、それから我々でいえば委員五人ですけれども、皆さんでいえば指定職七人、これについて身分保障はない、つまり罷免可能だということでよろしいですか。

○細野国務大臣
 先ほどちょっと説明をはしょってしまいました。もう少しだけつけ加えさせていただいてよろしいでしょうか。
 許可の方の話ですけれども、原子炉の……(塩崎委員「もういいよ、それは済んだからいい」と呼ぶ)では、後ほどまた文面でお届けをします。
 御質問は、規制庁の長官の人事ということでよろしいでしょうか。(塩崎委員「と幹部」と呼ぶ)幹部ですか。 
 規制庁の長官そして幹部については、専門性を確保した上で委任をして、そしてそこで権限を行使できるという、そういう身分保障が与えられております。もちろん、そこはしっかりとした判断ができるということを前提に、言うならば、全権を委任されて専門的な判断をするという形になっております。
 任命そのものは、これは行政官でありますので、規制庁の長官として、通常の手続にのっとって行われるということでございます。

○塩崎委員
 いや、身分保障があるかというので、今初めて聞いたような身分保障の定義をおっしゃったけれども、要するに、特に公取とかそういうところで身分保障があるところがありますが、それはありますかと聞いているので。今、最後、行政官ですからないということを事実上言った。
 これは実は世界の非常識であって、アメリカでも、それからイギリスでも、それからフランスでも身分保障はちゃんとあって、ですからこそ独立性が保たれ、独立性のある判断ができるわけであって、身分がいつも危なくなるという中でのぎりぎりの判断というのはなかなかできないわけであって、与党の皆さん方にも知っておいてもらいたいのは、世界の非常識を今の政府案はやろうとしている、つまり、この規制を決める立場の人たちに身分保障が与えられていないということを改めて申し上げたいというふうに思うんですね。
 委任規定があるからというような話を今もちょっとお話しされましたけれども、それは権限の話であって、人事はまた別問題でありますので、政策で対立をすれば罷免されるおそれがあるということで、これは独立性がないというふうに思います。
 規制庁の予算の要求折衝というのはだれがやるんですか。

○細野国務大臣
 この予算については、規制庁として安全組織をきっちりやっていくということでございますので、そこで立案をされるということになります。
 その上で、やはり予算がしっかりと確保できるということが極めて重要でございますので、そこを、しっかりと勘定として別のものができるようにということで現在準備を進めているということであります。
 予算全体としての要求は、これは環境省として行うということになろうかと思います。

○塩崎委員
 いろいろおっしゃいましたけれども、結局、環境省大臣官房会計課がやるということだと思うので、そういうことでよろしいですね。イエスかノーか、こくでいいですよ。

○細野国務大臣
 予算全体としては環境省として要求をするという形になります。

○塩崎委員
 ですから、規制庁自体で予算を要求したりする、管理をしたりするわけじゃないということで、管理は自分でやるんでしょうけれども、会計課がやるということであります。
 それから、規制庁内の人事の話、ちょっとさっき出ましたけれども、これは誰がやるんですか。

○細野国務大臣
 これは、規制庁の長官が人事をやっていくということになろうかというふうに思います。

○塩崎委員
 三月六日、私の予算委員会の答弁で、指定職以上は私が直接面接をする、こうおっしゃったのは覚えていますか。これをどう思いますか、独立性との観点で。

○細野国務大臣
 その御指摘もございましたので、私は一年半一緒にやってきましたので、この人間なれば安全規制をきっちりできるというふうに考えている人間はおりますが、それを一本釣りしてきたり、そこをもう確定をしたようなことはやっておりません。
 逆に、ただちょっと危惧をしておりますのは、原子力規制庁の長官の人事にしても、自民党案で出ている原子力規制委員会の人事にしても、それぞれ来ていただくとしても、そこは、それこそ専門家とはいえ、マネジメントにはかかわっていない方があるときから入るということになるわけですね。その方が、個性を全部把握できて、いい人を引っ張ってこられればいいですけれども、それは、私は一年半やりましたけれども、本当にいい人材かどうかと見きわめるのは極めて難しいです。
 そうなってまいりますと、その人が決め切れなかった場合はどうなるかということを考えるわけです。そうなると、結局は、それこそ各省から出された人材をそのまま認めざるを得ないことになるんじゃないかというのを危惧しているんです。
 これは、決して例えば私が権限を行使したいとかいうことを言っているわけじゃなくて、本当に強い規制機関をつくるためには、人材が宝なんですね。その人材は今の政府の中にあまたいるかというと、いません。どうしても、能力のある人間とかこの事故の教訓を得ている人間というのは、そんなにいないんです。その人材をどう有効活用するかという実質面でぜひ御理解を賜りたいというふうに思います。

○塩崎委員
 人材が大事なことは、我々もよくわかっているがゆえにノーリターンルールとかをいろいろ考えているわけでありますので、最初がなかなか難しいことはともかく、みずからやるということを公言するということは、やはりそこら辺の独立性ということがよくわかっておられないんだなということを世の中に発した、私に対する答弁だったということを申し上げたいと思います。
 それで、ノーリターンルールですけれども、ノーリターンルールは、先ほど来いろいろ言っていますけれども、大臣は大事だと思っていらっしゃるのかどうか。

○細野国務大臣
 ノーリターンルールは極めて大事であると思っております。私、それぞれ文科省そして経産省と、どういうやり方でやるか協議をいたしましたが、やはり当初は指定職のみでどうだろうかと、そんな話もございました。
 ただ、それでは十分ではないということで、これは、課長クラス以上、政令職についてもやはり原則ノーリターンということで交渉いたしまして、そこまでそれぞれの省庁も納得をして今準備を進めているという状況であります。
 したがいまして、極めて大事であると考えております。
 先ほどの午前中の質疑の中で吉野先生の方から、三年から五年という猶予期間を設けてと、そういう御発言もございましたので、そういったやり方も含めて我々も検討していかなければならないというふうに思っております。

○塩崎委員
 大事だというふうにおっしゃっているんですが、私の三月六日のあの質問のときに、きょうお配りをしております「「原子力規制庁」の人事ルール」、二月二十四日に出たものですけれども、このときに、大臣、あなたは政令職の人数を知りませんでしたよね。あのとき答えられなかったんですよ。だから僕はあのときに、ああ、ではこれは、大臣がほとんど見ていないでつくっちゃったんだな。だって、指定職が七人で政令職が十二人ぐらいのことは、誰でも一度聞いたらわかりますから。さんざん今、指定職だけにというお話はしましたけれども、これを知らないということは、これは事務方がつくったんだなと思いました。
 それで、その下を見ていただきたいんですね、皆さん。二枚目の「人事ルール」のところでありますけれども、この中で、いいことも書いてある。「腰掛け人事は一切行わない。」これが大事だと思うんですね。だからこそ我々はノーリターンルールだと言っているのですが、その次に例えば、「ただし、規制庁に所属後、一定期間を過ぎても馴染めない場合や適性に課題がある場合の復帰は可能。」だと。だから、ちょっといろいろ問題で、余り俺は好きじゃないよみたいな話だと、希望すれば大体復帰できる。「また、成果を挙げ、役割を果たした後で、本人が希望する場合も、復帰を認める場合がある。」成果も上げない、役割を果たさないという人は大体いなくて、減点主義じゃないこの公務員の世界というのは、基本的に、みんな何らかの成果を上げて次に行くという形に人事はなっています。
 そうなると、これを見ると、もうほとんど誰でも、本人が希望する場合は帰れるというふうにしか思えないんだけれども、一体ここをどのぐらいのことを考えているのか。
 それから、政令職の原則としてノーリターンの、原則じゃない、やはり本国に帰るというのは、どういう場合に帰るんですか。その二つを教えてください。

○細野国務大臣
 余り感情的なやりとりにならないようにしたいんですが、塩崎先生、私、全部組織は見ているんです。この間の御質問は何人ですかと言われたので、その正確な人数はその場で把握していなかったので答えませんでしたけれども、どういう組織にするか、オンサイトはこういうことにしよう、オフサイトはこうしよう、自衛隊の人はこう入れよう、全部私自身がかかわって、ここはもう本当に半年間、一年間私がずっとやってきた仕事ですので、それを全面的に否定するような言い方はぜひ控えていただきたいというふうに思います。
その上で申し上げますが、なぜこういうふうなことを書いたかというと、一つは、事務の職員について考えたわけです。
 技術職の職員は、原子力の専門家としてやっていたり、もしくはこれからも原子力でさらに伸びていこうという職員が、これはもうまさに主翼を担わなければなりませんので、そういう職員については、もうこれはノーリターンということでぜひやっていきたいと思います。
 一方で、やはり組織を回していくためには、事務の人間も必要です。いわゆる文科系の人間です。文科系の人間は、それぞれわけあってそれぞれの省庁に入っています。たまたまそのときに、いろいろなやりくりの中で、原子力は専門ではないけれども、人事をやったりいろいろなマネジメントをやる人間が一人もいないというわけにいきませんから、そういう人間についても全部片道でいいのかと言われれば、それは、それぞれ皆さん、人生の選択があるから、例外全くなしというわけにいかぬだろうということがあったわけです。
 ですから、繰り返しになりますが、いい組織にしたいですから、それはもうできる限りそこでしっかりと人を育てていきたいというふうに思いますよ。思いますけれども、初めにやはりいい人材を集めるためには、がちがちの組織をつくってしまうと本当に、今原子力が問われているから、もしかしたら日本で原子力がなくなるんじゃないかというふうに思っている人も当然いるわけですね。そういう中で、ノーリターンですよ、もうこれであなたは官僚としてここでずっとやっていくんですと言われたときに、それは腰が引ける人もいますよ。原子力をやってきた人間はそれはそれで一つの考え方だけれども、事務職まで、そこまで本当にやれますかということを考えて、こういう書き方になっておるということであります。

○塩崎委員
 お言葉ですけれども、恐らく、事務職の方々がこれまでの霞が関の論理でこの人事政策をつくったな、私はそう思っています。
 ウェートマンさんに聞いてもメザーブさんに聞いても、ほとんどの人が、やはり一生同じ組織にいるという世界ができているわけですね。我々はそれを目指さないといけないのであって、我々、三年から五年の経過期間はもちろん置きますよ、生身の人間を扱うわけですからめちゃくちゃなことはできないので。それはわかっています。
 しかしながら、やはり我々がこれだけの事故を起こして、これだけの不十分なことを、我々自民党時代からやってきたことが中心だけれども、反省するならば、ここはもうほかの霞が関の組織の論理とは全く違うのをやらなきゃいけないし、そんな人事交流なんかしている余裕は恐らくないぐらい、バックフィットと同じように、人間のバックフィットをいつもやっていかないといけない。こういうことだと思うんですね。
 したがって、私が今まで勉強した限りでは、これはかなり厳密にやっていかないといけないし、では、何で連邦政府の中で一位、二位の人気がある組織になっているのか。これをもうちょっと前向きに我々は考えた方がいいと思うんですよ、何でこんなになっちゃうのかなと。だから、ぜひそこのところは、余りがちがちしないようにとあなたは言うけれども、やっていった方が私はいいと思っています。
 ちょっと話をかえますが、班目委員長もおいでになっていただいていますけども、これはまず細野大臣に、例の防災指針検討ワーキンググループの「中間とりまとめ」、これについてなんですけれども、この間の答弁で、本会議で、「中間とりまとめ」を踏まえるということを大臣はおっしゃってくれました。「中間とりまとめ」、我々も勉強会をやりましたけれども、非常によくできた、反省を込めたいい提案が私はされていると思うんです。
 その中は、要は、「一般災害に対応する組織が、一般災害対応と原子力災害に係る「公衆の防護」の対応の両方を実施することが合理的である。」というふうになっていて、オフサイト対策は一般災害に対応する組織、すなわち災害対策本部がこれに当たるというふうになっているんですね。
 ところが、政府の方は原子力規制庁が原災本部の事務方となるということになっているものですから、この政府の案では、独立性に反するとともに、公衆の防護は一般災害に対応する組織が当たり、原子炉事故の収束は規制機関が担うという、オフサイト、オンサイトの役割分担を明確化しようとしている安全委員会の「中間とりまとめ」にも反しているんじゃないかというふうに思うんですね。
 そこで、細野大臣はそこのところをどう考えるのか。さっきもちょっと話がありましたが、我々の提案している案でいくと、例の、規制委員会の所掌事務を除くということで御心配をされていますけれども、我々は、基本的にオンサイトが委員会でオフサイトは原災本部、これが見るというふうには思っているんですけれども、この「中間とりまとめ」に書いてあることはちょっと政府の考えていることと違うんだろうと思うんですけれども、それはどうでしょうか。

○細野国務大臣
この「中間とりまとめ」は、原子力安全委員会の原子力施設等防災専門部会の防災指針ワーキンググループというところで、三月末で原子力安全委員会としての役割を終えるということを前提に、班目委員長が陣頭指揮をとって、非常に精力的に議論を重ねて出していただいたものだというふうに考えております。その意味では、きょうは委員長が来られていますけれども、その御努力は非常にこれは大きなものがあったということを皆さんに知っていただきたいというふうに思います。
これに基づいて原子力災害対策指針というのはこの法律の中でさせていただきたいというふうに思っておりますし、その法定化された原子力災害対策指針のもとで、地域の防災計画をできるだけ早くつくっていただけるような体制を政府としてつくりたいと考えております。
オンサイト、オフサイトの役割分担でありますが、私どもも、炉の問題については、これは原子力規制庁が専らやる、そしてオフサイトについては原子力災害対策本部が行うという、そういうたてつけにしております。
ただ、このオンサイトとオフサイトというのは、極めて密接にかかわっております。オフサイトにおける例えば避難やモニタリング、そういったことも含めてそこは極めて綿密にかかわっておりますので、事務局機能はどこかがしっかりと担わなければならないと思います。
自民党案を拝見しましたが、原子力災害対策本部の事務局をどこが担うのかというのが明確ではありません。明確でないということは、平時の防災訓練も含めてその準備ができないのではないかということを懸念をいたします。
そこで、政府案では、平時においても常に防災訓練をして、そして自治体の防災計画をしっかりと現実化していくという意味で、オフサイトについても、常に原子力災害を想定して、担当する担当官を置いて、その部隊も置きます。ここは、常に有事に備えてやる組織をつくり、そして、本当に有事になってしまった場合には原災本部のもとで対応するという、そういう体制を考えております。

○塩崎委員
 班目委員長にもちょっと簡単にお答えいただきたいんですけれども、ここの問題は、オンサイトのデマケの話じゃなくて、公衆の防護は一般災害に対応する組織が当たるということが問題なのであって、原子炉の収束は規制機関がやるのは当たり前なんですけれども、そこの点、この一点だと思うんですよ。一言でお願いします。

○班目参考人
 お尋ねの点については、我々のまとめでは、おっしゃるとおりな形でやるべきだというふうに提言してございます。

○塩崎委員ありがとうございます。
 ですから、これから防災の体制を考えるときに、修正協議をするときにどうするかというのは、この取りまとめ案をベースにやはり考え、我々の考え方と同じだと思うんですけれども、それをやはり考えていくべきじゃないかなというふうに思います。
 次に移りますが、ウェートマン報告というのが、去年六月にIAEAの調査団、その報告というのを一番最後につけてあります。要するに、平時でも緊急時でも、電力事業者それから規制機関、政府の役割というのは変わらずに、それで、緊急時だからといって混同してはならないというふうに指摘されているわけです。
つまり、混同すべきじゃないということは、実は日本は混同していたということを事実上言われちゃっているわけであって、ですから、緊急時になったらもう役割とか何かがぐちゃぐちゃになっちゃってよくわからなかったというのが日本であったと思うんですね。
 ただ、これは細野大臣とは何度も議論していますけれども、そうはいいながら、ハウエバーといって、とはいえ、特に過酷事故などのときには緊密な協力が必要だと。これがやはりこれからいろいろ原災本部の、あるいは、どういう体制にするかは別にして、災害が起きたときの対策をつくるときの基本的に大事なところなんですね。
 これは、緊密な協力を持っているけれども、何度も言いますけれども、コオペレーション、クロース・コオペレーションと英語でこれは言いますが、コオペレーションというのは、もともと、二つの対等のものが同時にオペレートするという意味ですから、対等なものであって、その一つ前にある、これは原子力安全庁時代に準備室がつくったものですけれども、事故のときの原災本部の事務を事務局としてサポートするのがこの規制機関の役割だというのが政府案なんですね。これは違うだろうと。それは下になるんじゃなくて、対等のものだろうというふうに言いたかったわけであります。
 そういうことで、我々にとって大事なのは、さっきちょっと答弁で説明しましたけれども、原災本部長たる総理と、我々のだったら規制委員会が、やはり一体不離でやっていく。だから、そこに認識のギャップがないようにいつもクロース・コオペレーションをしていくということが大事なので、何となく、三条委員会で独立していると、勝手なことをやって自由がきかないみたいなことになっていますけれども、そんなために我々はつくるんじゃないんですから。やはり、事故が起きたときにはちゃんとみんなで、内閣を挙げてと言っていますけれども、我々も同じように、内閣を挙げて、国家を挙げて、一緒にこれを押抑え込むというために我々は提案をしているわけであります。
 これからちょっと幾つか質問をするんですが、前提として言わなきゃいけないのは、やはり今までの組織は、どうしてもまず独立性がなかった。それから専門性も、人材的にJNESに固まっていっちゃったり、いろいろあって知見も必ずしも十分高くなかったわけですけれども、いずれにしても、今度新しい組織をつくったときには、独立性を確立させる、そして専門性も、専門性の高い人、やる気のある人材を集めるということでありますから、使命感も覚悟もこれまでよりもはるかに多く、強く持ってもらわなきゃいけない。それで、持ってもらえるだろうということを前提にしなければいけないと思うんですね。
 それをやることを前提に、我々のだったら委員長は認証官ですから、言ってみれば大臣クラスですよ。何か政治家の大臣じゃなきゃいけないという話がありましたけれども、何か、防衛大臣で政治家じゃない人がおなりになられたような話をきのう聞きましたが、まさに人の命を預かる防衛大臣が政治家じゃなくなったですよね、今度。そういうことについての意見もちょっとお聞きをしたいんですが。
 そういうことで、これからは変わるんだということを前提に申し上げたいと思うんですけれども、まず最初の質問は、メザーブさんがこの間事故調で来られたときに私も話をいろいろ聞いたりしていましたが、そのときに、最も情報が集まって、最も知見を持っている人が最もリスクの低い判断をするということをメザーブさんはおっしゃっていました。これについて細野大臣は御同意されますか。最も情報が集まって、最も知見をたくさん持っている、そういう人こそが一番リスクの低い判断をするだろうということについてどうでしょう。

○細野国務大臣
 メザーブ氏とは私も何度か会って話をしていまして、元NRCの委員長として、専門家で、世界でも有数の、この世界のオーソリティーだというふうに思います。
 済みません、ちょっとどういう趣旨でおっしゃっているのかわからないんですが、専門家がまずしっかりと判断すべきである、専門家が判断するその前提として、事業者がまずさまざまなことについてしっかり取り組む、そういうことを意味しておられるのであれば、おっしゃるとおりだというふうに思います。

○塩崎委員
 情報が一番集まって、そしてその道に一番知見がある、そういう人が、やはり厳しいときの判断は一番リスクが低いんじゃないかと。つまり、情報も持っていなくて、そして知見もない人が判断するときというのは、やはりこれはリスクの高い結論を出す可能性が十分あるということだろうと思うんですね。
 今、一般論としては認められたわけですけれども、そうすると、やはり現場に近くて知見がある人が緊急時も判断をすべきだと。だからこそIAEAの安全基準も、原子力事業者がまず責任を負え、こういうふうに今のこれにも書いてありますが、なっているわけです。
 そうすると、専門的なこと、緊急時におけるいろいろ原子炉の鎮圧等は、これが専門的であることはよくわかっているとおりですけれども、やはり、官邸にいる政治家がやることではないんじゃないかなというふうに思うんですね、その専門的なことを。その点はどうですか。

○細野国務大臣
 塩崎委員とこうして議論をしておりますと、相当距離は近づいているなという感じはするんです。ですから、今の御指摘は、私もそのとおりだと思います。
 つまり、事業者が責任を持って炉の鎮圧をすべきです。その責任はそこにあります。そして、それを監督して、場合によってはさまざまな技術的なことについて指導していくことは、これは規制機関の専門家がやるべきです。そこまでは全く一致をします。そして、政治家がそれに安易に口を出すべきでもないというところも全く同意をいたします。
 ただ、これだけの事故を経験をしていて、先ほど一つだけ例を挙げましたけれども、例えばプールに放水をしなければならないというようなケースに、これは、自衛隊に対する指示権だけではなくて、ほかの行政機関や事業者に対しても何らかの指示権が行使をできるような最後の権限を残しておかないと、本当に、ある種技術を超えた、泥臭い力が必要な作業が出てきたわけですね、今回も。そういったところについてはぜひ考えていただけないかというのが、私どもの、唯一残っている違うところということになれば、そういうことになるのではないかというふうに思います。

○塩崎委員
 やはり、こういう議論を重ねるというのはいいことだと思うんですね。
 海水注入で今回いろいろありましたね。本当は海水注入やらなきゃいけないのに、再臨界大丈夫かという一言で一回中断しましたね、民間事故調のあの報告書なんかを見ていても。いや、中断というのは、五時五十五分に海江田さんがやれと言って、六時に総理が入ってきて、それで再臨界大丈夫かと言って、次に総理を入れて会議をやったのは七時四十分ですから。一時間四十分リハーサルをしていたと書いてあるんですね、民間事故調には。一発で菅さんをしとめないといかぬというのでやったというふうになっていますけれども。
 そこで質問は、規制委員会、我々にとっては規制委員会、規制当局が海水注入をすべきだと言ったときに、今の法律でいくと、二十条二項でいけば総理は逆の提案ができちゃうわけです。つまり、海水注入をとめろと言うことをできるようになっていると私は理解していますが、そういうことですよね。そういう判断をすればできますね、二十条二項で。

○細野国務大臣
 先ほど私が申し上げた海水注入は、ちょっと認識が、済みません、そこは合っておりませんで、プールへの海水注入を申し上げたんです。自衛隊と警察と消防と、そして……(塩崎委員「わかっている、それはまた後で言うから」と呼ぶ)ああそうですか。そこについて申し上げたので、そこは、済みません、ちょっと御指摘の部分とは違うんです。
 総理の指示権というのは、もともとこういう規定になっています。「特に必要があると認めるときは、その必要な限度において、」というふうになっていますから、その範囲で指示権を行使をするということであります。

○塩崎委員
 いや、今大臣がおっしゃったのは二十条三項の話を言っているので、私は二十条二項のことを言っているんですね。だから、これを、ベントじゃなくて、まあベントでもいいんだけれども、やれと言ったことをだめだという指示権を出せるというふうに理解をしているので、それはやはりよろしくないねというふうに事実上細野さんはおっしゃっているけれども、そういう理解でいいかと。
 それで、三項の一般的な指示権の話はちょっと別の話で、二項の話で海水注入をやれという命令を出しているのに、もう一回逆のことをやると言うことがあるんじゃないかということです。もうイエスかノーかだけで結構です。そこから次に行きたいと思います。

○細野国務大臣
 ですから、そこは抑制的に行使をするということを累次にわたる答弁で申し上げています。
 それで、塩崎委員がそこまでおっしゃったので、ちょっと逆に、私は質問する権限はないので、意見だけ申し上げます。(塩崎委員「申しわけない、質問権ないんだから、僕は時間がないから、さっきの大事な話に戻るから」と呼ぶ)一言だけ申し上げます。
 自公案で私が懸念していることを一言だけ申し上げると、四条の七で、「原子力利用における安全の確保の観点からの原子炉の運転等により生じた事故による災害の防止に関すること。」原子力の災害の防止に関すること全体が原子力規制委員会の所掌になっているんです。そして、そこについては全て総理の指示権から除外をされているんです。
 ですから、今の私が言ったような放水の場面も含めて本当に指示権は行使を出されるのかというところについて、せっかくちょっとかみ合ってきたので、懸念を持っているということを申し上げたいと思います。

○塩崎委員
 要するに、二十条二項だったらばとめることができるというふうに否定しなかったから、そうだということでいいですよね。しかし、細野さんは余り専門的な分野に首を突っ込むなと言いながら、抑制的にとおっしゃったから、これはやはりまだできるということをおっしゃったんですね。
 さっきのプールへの放水の話は、私はそれを聞いてよかったと思うんです。つまり、そんなことを我々が委員会にやらせようなんてことには全くなっていませんから、そこのところはまた議論しましょう。我々はそんなことは考えていなくて、当然総理がやるべきこととして整理をしていますから、そこのところはよく理解をしてもらわなきゃいけないなということだと思うんですね。
 そういうことで、先ほどおっしゃっているのは、今度は一般的な指示権でどうだということを言っているので、我々が規制委員会の所掌事務を除くというふうに言っているのは、さっき申し上げたような、専門技術的なことについて口を挟んでもらったら困りますよということを込めた、括弧内の原子力規制委員会の所掌事務を除く、そういう意味ですから、だから、それ以外のことは総理は当然一般的に指示ができるわけですよ。そのかわり、規制委員会が下す専門技術的な判断と違うことをやってもらったら困るし、そうじゃないことを言ってもらっても困る。つまり、委員会が決めていないことも言ってもらったら困るというのが我々の考えですよ。
 だから、細野大臣も、専門的な、技術的なことに政治家が首を突っ込むべきではないということははっきりおっしゃってくれたので、そこは、だから二十条の二項、これは本当は削除していいんじゃないかなというふうに思うんですね。それは炉規法上の命令の指示ですから、それは必要ないというふうに、私は、今の答弁から見れば当然そういう帰結になると思うんですね。
 したがって、あと、さっきの準備室がつくったコオペレーションというのは、対等で初めて政府とこの規制委員会が一緒に協力してぴったしでいくということですから、それが、今の皆さんの案でいくと、事務局としてサポートをする、主従関係になる、これは間違いじゃないですかと。それがまた専門技術的なことについてまで首を突っ込んできて大混乱を、つまり、これがあの菅直人リスクだということを申し上げているんですね。

○細野国務大臣
 委員のお考えはよくわかりました。ですから、あとは、そこまで初日に言うのは何でございますけれども、今のお考えは、やれることはしっかり残しておく、政府として指示権を。しかし、技術的なことについて政治が口を出すべきではないというのは全く一致します。ですから、それを法律的にどう書くのかということについて、ぜひ前向きな御議論をいただけるとこれはいいのではないかなというふうに思います。
 その上で、今の部分については若干懸念がございます。
 というのは、原子力災害対策本部というのは、常設をされている組織ではありません。常設をされていない組織が、いざ緊急事態になった場合に設定をされて動くわけですね。なぜ原子力規制庁を事務局にするかというと、原子力規制庁は常設ですから、常にオフサイトについても備えをすることができます。ですから、塩崎委員がおっしゃるクロース・コオペレーションをやる手段として、事務局にしっかりと置くべきではないかというのが我々の発想なんです。
 ですから、そこも考え方は一致をするというふうに思いますので、どういう組織ならば平時から有事にスムーズに対応できるのかということについて、ぜひ御検討いただければ幸いであります。

○塩崎委員
 そもそも、シビアアクシデントが起きたときの、原災本部が立ち上がったときの規制組織のやるべきことというのは、何しろ、原子炉をどう鎮圧するか、もうこれに全てなんですね。あとは、本部が全体に対して責任を持っているわけですから、だから、原災本部の回しをやるような余裕はどこにもないんですね。
 委員長を我々は副本部長で入れていますけれども、人によっては、おまえ、そんな余裕があるわけないじゃないか、そこに行っている余裕なんか絶対ないぞということで、やるべきことは、実はサイトの方をみんな向いていないといけないわけです。ところが、今回はみんな官邸の方を向いていたから、何だかこっちがおろそかになっちゃった。ただ、たまたま吉田さんが頑張ったときがあって、うまくいったときもあるけれども。
 そういうようなことで、本当に役割が、御経験されているからもちろん私よりも知っていることはたくさんおありなんだけれども、役割分担をもっとはっきりしていかなきゃいけないんじゃないかなと。そして、イギリスにはサイエンスアドバイザーというのが必要な役所にはほとんどあって、プライムミニスターズオフィスにはチーフサイエンティフックアドバイザーがいるのはこの間お会いになったとおりで、イギリスのONRの人に話を聞いたんです。この間、大飯のときに一月に来たでしょう。その後、私のところに来てくれて話をしたんです。日本の場合には政治家が細かな技術的なことに首を突っ込むんだけれどもと言ったら、じっと考えて、イギリスでは科学的にわからないことに口出す政治家はいませんと言われましたよ。これってすごく大事で、サイエンスアドバイザーがいない日本ですから、そういう文化がないというのかもわからない。
 こんなところからも直していかなきゃいけないんですけれども、きょう大分議論して争点が、争点というか論点がわかってきたので、ぜひこれはいい結論を出して、結論から言うと我々の案になるんだろうなというふうに思いますけれども、ぜひ話し合いをしたいと思います。
 終わります。

○生方委員長
 次に、井上信治君。

○井上(信)委員
 自由民主党の井上信治です。
 いよいよこの原子力規制組織の法案が委員会審議にかかるということで感謝をしておりますけれども、けさも何名かの委員の方が指摘をされたように、本来であればもう少し早くできていなければいけなかったなということで、これは政府・与党だけに限らず、我々も含めてこれは反省をし、そして、しっかりしたものをつくっていかなければいけないと思っております。
 そういう意味では、もう一年三カ月たっておりますけれども、遅くなってしまったから、だからこの国会審議もとにかく早く終わらせて早く成立させよう、スタートさせようというのは、これはちょっと違うと思いますから、やはり徹底した審議、慎重な審議をしていただく、例えば、細野大臣はもちろんですけれども、野田総理大臣にもこの委員会の場にも出てきていただいてちゃんと我々の質問にも答えてもらう、そういうことも含めて、ぜひ理事の先生方、委員長もお考えをいただきたいなと私は思っております。
 ただ、非常によかったなと思いますのは、やはり自民党、公明党から対案としてきちんと議員立法が出てきたということだと思っております。塩崎先生は、もう国会事故調の法案のときからこの原子力関係の問題に大変な情熱を持って、そして関心を持って取り組んでおられたということ、それから吉野先生は、福島が地元でありますから、そういう意味でも本当にすばらしいそういう方ですし、また、柴山先生は法律の専門家であり、江田先生は、ちょっと褒めようと思ったんですがいませんけれども、原子力そして環境行政全般に大変な知見を有する、いわばベストメンバーの自公の方々が法案を提出していただいた、本当にありがたく思っております。
 細野大臣も、ちょっと何だかお疲れのように見えますけれども、福井に行かれたり、被災地福島、そして関西と、本当に大活躍をされて、けさも朝からほとんどお一人で答弁をされて大変なことだというふうには思いますよ。しかし、やはり本当に大事な案件でありますから、引き続きぜひ頑張っていただきたいと期待をしております。
私は、これは本当に大部にわたる法案でありまして、論点も多岐にわたります、ですから、そういう意味ではもう切りがないものですから、おかげさまで、五月二十九日の本会議で代表質問をやらせていただきましたので、そこの論点に少し絞って、また、逆に言うと、残念ながら、やはりちょっと総理、細野大臣のその答弁、不十分だな、すれ違いだな、おかしいな、ちゃんと答えてもらいたいな、そう思った点も多々あったものですから、この委員会審議の中で少し深掘りをさせていただきたいと思っております。
 まずは、これは全くのすれ違い答弁しかいただけなかったんですが、民主党さんのインデックス二〇〇九、このときに、「国家行政組織法第三条による独立性の高い原子力安全規制委員会を創設する」と約束を国民にされていたわけですよね。議員立法もこれに基づいてやっておられます。しかし、今回の与党になってからの閣法は全く違うものになってしまった。むしろ、自公案の方が三条委員会方式ということでありますから。ですから、このことに関しては明らかにマニフェスト違反ではないかなと思います。
 野田総理からは答弁として、今般の法案は、党の政策を大災害の経験と教訓から発展させて危機管理対応を強化したものだ、こういう答弁だけなんですね。ですから、明確に、マニフェストに反しているのか反していないのか、そこについてまずお聞かせいただきたいと思います。

○細野国務大臣
 井上委員には、いろいろ済みません、御配慮いただきましてありがとうございます。温かいお言葉をいただきましたので、しっかりと取り組んでまいります。ありがとうございます。
 この政策集、インデックスの位置づけなんですが、ここをまず正確にお伝えをすべきであろうというふうに思います。
 確かに私ども、選挙のたびにマニフェストを示しておりまして、それと時期を若干前後して、前のケースが多いと思うんですが、政策インデックスというのを出しております。ただ、この政策インデックスというのは、実は質的にマニフェストとは全く違う性質のものであります。これは、これまで国会で取り組んできたことを実績として整理をしたのが政策インデックスなんです。
 ですから、そういうこれまでの実績を整理したインデックスと、これからやるべきことをマニフェストで書いたこのものというのは、そういった意味で違う性格を持っているということはぜひ初めに申し上げたいと思います。
 したがって、マニフェスト違反かと問われれば、それは、お示しをしたマニフェストができていない部分は御批判は当たるわけですが、そこには書いていないという意味では、これはちょっと違う問題だということであります。
 ただ、御指摘のとおり、そういう独立した三条委員会という考え方を民主党が野党時代とってきたことは、これは事実です。ですから法案も出してきました。
 その考え方がなぜ実際に導入をするに当たって変わったのかということになってまいりますと、それは、今回の非常にシビアな事故というのを経験して、緊急対応に責任を持って当たるという意味においては、独立をした三条委員会、合議制というそういうやり方よりは、内閣の責任のもとで迅速な意思決定が行われるそういう行政組織の方が適切なのではないかという判断をして、今回、こういった形で法案を出させていただいているということでございます。

〔委員長退席、横山委員長代理着席〕

○井上(信)委員
 最初は褒めさせていただいたんですが、ちょっとがっかりしたのは、やはりそういう詭弁を弄されない方がよろしいと思いますね。民主党の整理はそうかもしれない。しかし、国民にはわかりませんよ、そのインデックスと本物のマニフェストの違いというものは。やはり、これはもうマニフェストだと国民は思っておりますから。
 ですから、いいんです、素直にお認めをいただければ。違反じゃない、それでもいいですよ。しかし、政策変更したのは間違いないということですから、そういう意味では、ここを余りここで議論しても仕方ないことですが、でも、私は、やはりそういう詭弁を弄さない方がいいということだけは言わせてもらいたいというふうに思っております。
 確かに、未曽有の大震災の教訓を生かしていかなければいけないというのは、これは当然のことだとは思うんですけれども、ただ、他方で、本当に大きな事件や事故が起きますと、何でもやはり制度が悪い、今の制度がこういう制度だから、この制度を変えればよくなるんじゃないか。これは我々政治家も悪いんだと思うんですね、制度を変えれば何か仕事したような気になって。
 でも、そんな単純なものじゃないですよね。やはり、そのときにいた人材の能力ややり方の問題、そしてその制度の運用の仕方、そういったものがちょっと複雑に絡み合っているはずなので、そこのところがちょっと制度論ばかりをしているような気が若干いたしますので、そこをちゃんと考えていただきたいと思うんですよ。
 我々の議員立法のときにもいろいろな議論がありました。菅直人リスク、あるいは、御本人が先ほどまでいらっしゃって、いないのかな、ちょっと言いにくいんですが、班目リスク、どっちが悪いんだ、あるいは両方悪いんじゃないか。では、どうやればいいのか。
 これは、よりふさわしい適切な人がそのポストにいれば何の問題も起きなかったかもしれない。しかし他方で、どんなにいい制度をつくっても、いわばよくない人がついてしまえば、その制度も失敗する可能性はありますよね。だから、そこのところを少し精緻に議論をしてもらいたいなというのが私の印象です。
 一番の違いは、やはり独立性だと思うんです。これはもう朝からいろいろな方がいろいろな議論をされているので、ちょっと私はこの独立性は次の機会にとっておくといたしまして、一元化の問題。
 御承知のようにこの一元化についても、例えば今回の事故の教訓ということでいえば、SPEEDIの試算結果、これが迅速に公表されなかった。この原因としてはやはり、放射線モニタリングが文科省、原子力安全規制は保安院や原子力安全委員会、所管がばらばらで役割分担も不明確だった、一貫した責任体制がなかった、これが原因の大きな一つだとは思います。
 あるいは、昨年九月の国連ハイレベル会合において野田総理大臣も、規制の一元化を図ると明言されました。しかし、残念ながら政府案では、きちんとした、徹底した一元化というのがなされていない。一体なぜなのか。これ、やはり総理の答弁を聞いてもよくわからないんですね。
 例えば、保障措置について私が本会議で質問をいたしました。総理の答弁は、核不拡散の保障措置規制は原子力の安全規制とは異なる、この一言だけなんですね。これは余りに不誠実で、それは異なったら一元化しないでしょうけれども、何がどう異なるのか、全く説明がない。
 ぜひ細野大臣、詳しく教えてください。

○細野国務大臣
 確かにそこは、本会議での答弁というものは、極めて限られた時間でありますので、若干舌足らずの部分があったのではないかというふうに思います。
 そこで、若干込み入った話になりますけれども、説明の機会をいただきましたので、説明をさせていただきたいと思います。
 いわゆる安全規制、セキュリティーとかセーフティーの世界になりますけれども、そういったところというのは、政府が基準を定めまして、原子力事業者に対して審査、検査などを行うという、言うならば、規制をする側とされる側という単純な構図になるわけですね。そこに、まさに二者以外の関係者が直接立ち入るということはありません。いろいろアドバイスをもらったり、各国間で調整をしたり、お互いに情報を共有し合ったりすることはありますけれども、基本的には二者の関係になるわけです。
 一方で、保障措置に関しましては、これはNPTに加盟をしている非核兵器国の義務として、IAEAによる査察を日本として受けるということになるわけですね。その場合はIAEAが査察をしますので、日本政府の立場が微妙になるわけです。日本政府は、一つの立場としては、IAEAから査察をされるという立場です。
 一方で、日本政府は、この保障措置をきちっとやるために、日ごろ事業者に対して、言うならば、さまざまな実質的な規制をする、ちゃんと核物質を管理しなさいよという規制もする立場。
 ですから、日本政府が規制される立場と規制する側と両方の立場になるというそういう意味合いがありまして、若干関係は込み入るわけですね。
 そういう意味で総理は、保障措置の場合には安全業務とは性格が異なるという、そういう説明をしたということであります。
 ただ、一方で日本政府が、スリーSということを、あれはたしか洞爺湖サミットだったでしょうか、発言をいたしました。セーフティー、セキュリティー、セーフガード、我々がよく参考にするNRCは、この三つをセットでやっています。多くの国はこれをセットでやっている。なぜかというと、この三つには、核物質をきちっと管理をし、そして安全を確保し、テロにも備えるという、共通した一つの言うならば方向性があるからですね。
 ですから、そういう考え方を各国がとっている中で我が国がどこまで一元化をするかという議論は、さらに深めていく必要があるというふうに思います。
 政府内では、まずやれることとしてこういう案を提示しておりまして、保障措置については、年内をめどにしっかりと再検討するということになっておりますので、国会での議論というのは、これはいろいろな御議論が当然あるというふうに思いますので、大いに私も聞かせていただきたいと考えているところであります。

〔横山委員長代理退席、委員長着席〕

○井上(信)委員
 前向きな御答弁だと思うんですが、年内に検討するなら、なぜこの法案には盛り込んでいなかったんですか。そこが自公案の方には入っているわけですから、ちょっとそこを説明してもらえますか。

○細野国務大臣
 去年の夏の菅政権の最後のときに法案として方針を出しました。閣議決定をいたしました。その中で、来年いっぱいにということの閣議決定もなされたわけであります。
 法案の作業というのは、一月になったことはこれは遅いという御批判があれば、それはもう甘んじて私どもは承らなければならないと思いますが、実際には膨大な作業で、かなり急ピッチで行いました。
 ですから、去年の夏に方針を決めて、法案をつくるのにまずその方針でということでいきましたので、今回出している法律の中では保障措置については入っていない、そういう経緯でございます。

○井上(信)委員
 そうすると、まさにそのタイミング、時間的余裕の話だということですから、少なくとも、この保障措置も一元化をする方向で見直すというところまで明言してください。

○細野国務大臣
 私は政府案を出している立場ですので、政府案を出させていただいているという立場で言うならば、そこには確かに入っておりません。
 ただし、保障措置についてそういう御議論が、スリーSは全部一緒にすべきだという御議論があるのは、もうこれは私もよく理解をできますので、それについては、できる限りしっかり我々は耳を傾けて、柔軟な対応をしていく必要があるのではないかと考えているところであります。

○井上(信)委員
 方向性をやはり示してもらいたいんですよ。お立場はあると思いますが、ただ、大臣のお話を聞いていると、やはりこれを一元化すべきじゃないのかというふうに聞こえるものですから、方向性でいいですから、決めたとこの場では言えないでしょうけれども、ぜひお願いします。

○細野国務大臣
 保障措置も含めて一元化をすべきであるというお考えについては、理解ができます。

○井上(信)委員
 年内の見直しの検討を待つまでに、恐らく自公案との修正協議などもあると思いますから、これはむしろ理事の先生方に申し上げる話かもしれませんが、大臣の思いのうちは何となく伝わってきましたので、そういう方向でぜひやってもらいたいなと思っております。
 それから、そういう意味では、モニタリング、このモニタリングも完全に一元化されていないですよね。やはり、これはどう考えてもおかしいなと思うんですね。
 緊急時のモニタリング、そして平時については司令塔機能のみを規制庁に移管するとされておられますよね。何でこれは司令塔機能だけなのかということ、そして、平時と緊急時とのその対応に違いがあるということで、これで有効に機能するかどうか、これは疑問に思うと思うんですけれども、ぜひここについても御説明ください。

○細野国務大臣
 今回の事故の反省点といたしましてよくSPEEDIのことが話題になるんですけれども、私は、SPEEDIと同等か、もしくは、それ以上にモニタリングのことを反省をしなければならないのではないかと思っているんです。
 SPEEDIはあくまでシミュレーションですので、いろいろなことは当然やれるわけでありますけれども、正確な情報かと言われれば、そこは若干いろいろな議論があるわけですね。一方で、そこでモニタリングができれば、それはもう厳然たる事実ですから、この情報は国民にすぐお伝えをできるわけです。
 ところが、昨年の三月十一日までの制度というのは、そういう緊急時においては、モニタリングは自治体がするということになっておったわけです。そういう緊急時が発生したときに、自治体がどれぐらい大変な事態になって混乱をするかということについての想像力がやはり欠如していた、そういう仕組みだというふうに私は思います。
 ですから、モニタリングのあり方については、相当根本的に改めて、国の役割を明確にして、そういった場合にははかることができるような仕組みにはしなければならないというふうに思います。
 率直に申し上げると、ここもいろいろ政府内でも議論がございました。
 その中で、モニタリングというのは、文部科学省が一番大きな役割をやっているんですが、そのほかにも、実は私が所管をしている環境省も水のことについてやっておったり、水産庁もやっておったり、それぞれの省庁がかなりいろいろな形でかかわっておりまして、それを全部一元化をするのは、これは余り現実的ではないだろうと。
 その中で、では、どの部分を一元化すべきかということでさまざま議論がありまして、原子力規制庁が司令塔機能を担うことといたしまして、モニタリングに関する指針の策定であるとか、関係省庁による各種のモニタリングの全体計画案など、言うならば、全体をしっかりと方向性を出した上で、関係省庁が行う事故の影響の調査のためのモニタリングの予算については原子力規制庁に一括計上して関係省庁の調整を行うという、ちょっと説明が長くなりましたが、こういったところで落ちついたという経緯があります。
 ただ、ここは、どういうところまで一元化するかというのは、さまざまな御議論は確かにあり得るだろうというふうに思います。

○井上(信)委員
 平時のモニタリングの一元化については現実的でないというふうにおっしゃいましたが、何がなぜ現実的じゃないんですか、一元化すればいいと思いますが。

○細野国務大臣
 私が現実的ではないと申し上げましたのは、例えばモニタリングでいいますと、文部科学省が全国的なものについて確かに一番かかわっているんですけれども、例えば学校や保育所については、文科省以外にも厚労省がかかわっています。食品については厚労省、水産庁がやっています。港湾とか空港とか公園、下水などは国土交通省がやっております。水や廃棄物については環境省がやっていまして、海域については文科省、環境省、水産庁、海上保安庁、農地については農水省という、実は、ざっと挙げただけでも両手でもおさまらないぐらいの省庁がかかわっているので、それを全部一元化するというのは、これは必ずしも現実的ではないのではないかということで申し上げました。(井上(信)委員「なぜですか、なぜ現実的じゃないんですか」と呼ぶ)
 それは、それぞれの省庁がこれまで管理をしてきたところについてはかっていますので、人員の確保も含めて、では、全ての省庁から人を寄せていくということが現実的かということについて、必ずしも現実的ではないのではないかと、そういう議論をしたということであります。

○井上(信)委員
 全くわかりません。全ての省庁から人を寄せればいいんじゃないんですか。一元化の大切さがわかったわけですよね、今回の大震災で。それで一元化していこうという議論になっているときに、いや、全ての人を寄せるわけにいきませんよね、モニタリングの人が各省庁にどれだけいるか知りませんよ、しかし、それをやるのが一元化でしょう。だから、現実的に人の数の問題とかそんなことでできないというのは、これは納得いかないと思います。
 やはり、一元化をすることによってどんな弊害が出るのか、一元化するよりしない方がいいという理由があるなら教えてください。その理由がなければ、一元化をちゃんとやってください。

○細野国務大臣
 一元化をしない、もしくは、それをやることで弊害が出るという面があるということではありません。ですから、一元化をすることが望ましいのは、今、井上委員がおっしゃったとおりであります。
 ただ、それぞれ対象によって、例えばはかり方であるとか専門性であるとかそういったことも、これまでこれがあったのも一つは事実なんですね、そういったことも含めてどこまで一元化をするかという議論の中で、今回はこういう形になったということであります。
 平時と有事で当然連続していた方がいいのはもうおっしゃるとおりでありますから、平時のモニタリングをどこまで一元化をし、では、有事についてそれをどう本当に情報を集めていくのかというのは、これからさまざまなやはり検討は必要であるというふうに思います。

○井上(信)委員
 かなり苦しい答弁だと思いますよ。大臣も本当は心の中では一元化した方がいいとお思いになっているんじゃないかなと私は思いますよ。秘書官が何か耳打ちしていたから、自分の思いと違う話をされているような、そんな言い方に聞こえました。だって、一元化して何も弊害がないけれども、一元化の方がいいとは思う、ではすればいいじゃないですか。それはそうですよね。
 やはり、役所の今までの組織の論理とかそういうものにとらわれちゃっている。あるいは、さっきの保障措置の話と一緒ですよ。時間的な検討の時間、これが足りなかったのかもしれない。しかし、やはりベストなもの、理想のものを追い求めなければ、こんな改革をやる必要性はありませんよ。だから、私は大臣のその答弁では全く納得がいきません。
 ですから、お考えがあればもう一度聞きたいのと、保障措置はとりあえず年内に見直すと先ほど明言されました。では、このモニタリングの一元化について、少なくとも見直すお考えはおありですか。

○細野国務大臣
 昨年の夏行いました閣議決定の中で、一元化、いろいろな積み残した課題がございます。そういったものの中に、私の認識ではこのモニタリングも入っているというふうに思っております。

○井上(信)委員
 では、きょうはこれまでにしますけれども、見直しの対象に入っているということですから、ぜひこれを本当に見直してください。残念ながら、大臣のその答弁では国民は納得しないと思います。
 それと、これは先ほど来塩崎先生の質問やいろいろなところで話題にもなっております、緊急時の指示権の話です。これは本当に大事な問題だと思いますし、いわば、なかなか歩み寄れない、積み残した課題の大きな一つだというふうに思っています。
 私が本会議で伺ったとき、細野大臣は、「国家の命運を誰に託すか」、「国としての、危機管理上の最低限の、かつ最後の手段としては、不可欠な存在である」、こういわば格好よく述べられまして、この映像ばかりテレビニュースで使われていたものですから、何か国民もちょっと誤解していると思うんですね。さっきもちょっとそのやりとりがありました。報道でも、緊急時の指示権、自公案だと何か総理には何もないように言われているんですね、残念ながら。
 何かさっきのを聞いていると、大臣もひょっとしたら誤解していたのかなと思うぐらいの話であって、これは、自公案におきましては、やはり国家の命運を誰に託すかということ、この命運というのは具体的に何を指しているかというのはちょっと不明ですけれども、ただ、少なくとも、本当にこの日本の国家が将来どうなるかということに関する重大な事項の重大な判断としては、自公案でも当然これは総理が判断をし、総理に指示権があると思うんですね。規制委員会というのは、先ほど来おっしゃっているように、技術的、専門的な事項、そしてオンサイトの事項ですから、そのことを国家の命運というふうにおっしゃっているわけじゃないと思うんです。
 この点について自公の提出者の方、御説明をお願いします。

○塩崎議員
 役割分担の話につきましては、私の質問の中でも大分議論になりまして、だんだん整理はされてきているんだろうと思うんですけれども、やはり今先生御指摘のように、誤解が多いような感じがしてならない。
 原則は、オンサイトが規制委員会、オフサイトが総理を初めとする原災本部全体が責任を持つということで、規制委員会は、炉規法に基づく専門技術的な問題についての問題については唯一決定をすることができるところだというふうに理解をしているわけでありまして、先ほどの国家の命運をという、本当に命運というのは何だかよくわからないけれども、確かに格好はよかったですけれども、中身は実は非常にぼわっとしていてわからない。何かというと、結局とどのつまりは、原子炉がどうなっているのか、これにどうするのかということしかないんですね。
 これは、すぐれて専門技術的な問題で判断をしなきゃいけなくて、あとは、先ほどの誤解として出てきたように、自衛隊の出動要請とか消防に出動していただくとか、そういうようなことについては規制委員会がやるんではなくて、規制委員会の出した結論で当然必要になってきた自衛隊の出動とか消防の放水とか、そういうものについて原災本部長が、国家のトップリーダーとしてまさに命運というんですか、原子炉を鎮圧するというためにみんなが一体となって自衛隊あるいは消防に出てきてもらう、そういうことを一体不離でみんなでやる、こういうデマケじゃないかなというふうに思うんですね。
 あくまでも技術的なところは規制委員会でないとわからないことでもありますから、これはさっき細野大臣も、細かな専門的なことはやはり政治家が口を出すべきじゃない、こういうことでありました。
 ですから、あと本当に大変なことになるときというのは、その技術的なものの積み上げで起きてきていることですから、そこの情報と知見で判断をしたものを、どう今度は総理がちゃんとそれをやるかということだろうと思います。

○井上(信)委員わ
 わかりやすくありがとうございました。
 まとめてしまうと、要は、国家の命運はやはり総理大臣に託して、そしてその指示のもとにみんなで一体となって対処をする、そういうお答えだと思うんです。
 ですから、私は細野大臣が本会議で答弁されたことは誤解だと思いますが、いかがですか。

○細野国務大臣
 今、塩崎先生が答弁者としておっしゃったことができるのであれば、私の誤解だというふうに思います。
 ただ、法律的なところをぜひちょっと御教授いただきたくて、少しだけ私の方から、逆にこちらの側で質問するようで変な話なんですけれども、ぜひここを聞いていただきたいんです。
 原子力規制委員会の設置法案の第四条の七号に、原子力防災全般について原子力規制委員会がやると書いてあるわけです。これは、オンサイトもオフサイトも基本的には全て含むように読めるわけですね。この原子力規制委員会がやるオンサイト、オフサイトのこのものについては、総理の指示権が及ばないような形に原災法が改正をされているわけです。ですから、原子力規制委員会の所掌となった時点で総理の指示権が及ばないと読めるわけですね。
 この七の中に、実は、そういうシビアアクシデントにおけるさまざまな放水であるとか、撤退は絶対にあってはならないことでありますけれども、例えば仮にそういったことが議論されたときには、いや、とどまれというようなことは、原子力規制委員会のこの第四条の七号のところに入らないということが明確にならない限り、総理の指示権は出せない形になっているんですね。
 ですから、そこが確認されるということであれば、そういう法律になっているということであれば、それは私が誤解をしていたということになろうかと思います。

○井上(信)委員
 これはちょっと私に聞かれても困るものですから、それはここで提出者の方に伺ってもいいんですが、これはよく両者で話していただいて、私がそれぞれの仲介役をするというのも変なものですから。
 ただ、もし大臣がおっしゃるように法文に不備があるということだったら、むしろ法文を直せばいいことですから。それは、塩崎先生がおっしゃったのが自公案のいわば思いだ、趣旨だということであれば、それはお認めになって、やはり、それだったら国家の命運はちゃんと総理に託しているんだ、ここの理解をお願いしたいと思っております。
 うなずいていただいたので、次に入りたいと思います。答弁の後段部分、「国家の命運を誰に託すか」、「国としての、危機管理上の最低限の、かつ最後の手段としては、不可欠な存在である」と述べられた今度は後段部分ですけれども、最低限あるいは最後の手段、こうおっしゃっていますよね。これは多分、原災法の二十条二項あるいは三項のその指示の話だと思うんですね。さっきも議論がありました。適切、迅速、必要な場合とかいろいろ限定をかけておりますから、そういう意味で最小限だったりあるいは最後の手段だ、こういう御趣旨だと思うんですが、私はこれは実は違うと思っております。
 自公案では二十条二項を削除していますよね。三項では括弧書きで除外をしています。その趣旨は、最後の手段とか最低限とかという順番とか程度の問題じゃないと思うんですよ。やはり、オンサイトなのかオフサイトなのか、技術的、専門的なことなのかそうじゃないのか、こういうことでちゃんと切り分けないと、では、何が適切なのか、何が迅速なのか、何が必要な手段なのか、これはやはり抽象的ですから、判断によって変わってきますよね。
 その教訓というものが、やはりあの大震災のときにもあったわけですよ。これは、政府の事故調の中間報告でもそのような趣旨のことが述べられて、やはり菅総理が、ある意味、余りにも関与をし過ぎてしまった。これは原災法を根拠にしてやられているのかどうだかは知りませんけれども、少なくともその法律があるから、総理にいろいろなこと、細かいこと、技術的なことまで言われて、そこでストップしてしまったということですよね。だから、こういう規定を残しておくと、やはり、過度に介入をしてしまう、その危険性は残ると思っているんです。
 ですから、私は、そういう意味では、ちゃんと事柄として切り分けている自公案の方が適切だと思いますが、いかがですか。

○細野国務大臣
 そこはなかなか悩ましいんです。
 時間も限られておりますので簡潔に申し上げますけれども、例えば去年の四月、私が一番悩んだのは、海水の汚染水を流出させるのはどうかというのは悩んだわけです。当時は、極めて低レベルの汚染水がたまってきまして、それを一部の専門家では、もうこれは流した方がいいという話でした。ただ、私は、それは漁業のことも考えたり国際的なことを考えたら、流すべきではないと考えまして、一回とめました。それは科学的には流しても問題ないのかもしれないけれども、当時の状況からすれば、少なくとも一旦はとめるべきだという判断をしたからです。
 それは、総理が明確に指示権を出したということではないけれども、私は総理の半ば名代的な位置づけで東電にいましたから、それでこれは流すべきでないと言えたという経緯があるわけです。
 結局、それは後で違う形になりまして、もっと高いレベルの水がたまってしまって、それが流れて、とめなきゃならなかったものですから、濃い方をためておく場所として薄い方を流さざるを得ない状況になりまして、結果的に、それをしっかりと皆さんに事前に十分な説明をしませんでしたので、御説明したつもりだったんですが、やり切れていなかったので、大変厳しい御批判をいただきました。
 ただ、何が言いたいかというと、汚染水を流すというそういう科学的なことに思えることについても、社会が受けとめるかどうかというところで実は判断が非常に微妙なケースがあるんですね。ですから、確かに法文に書ければ一番いいんですけれども、オンサイトは専門家、オフサイトはこれは指示権が及ぶという切り分けもちょっと難しいです。オンサイトにおいても、これもやはりどうしても最後、指示権に基づいてやらなければならないことが多分出てくると思います。
 技術的なことについては、政治家はもう基本的には口を挟むべきではないと私も思います。思いますが、これだけシビアな事故になればなるほど、技術的にはこうなんだけれども、それをいつのタイミングでやるかとか、どういうふうに説明をするかとか、そういったことについてどうしても、ある種の社会的な判断が求められる部分があるんですね。ですから、そこをどう書き切るかということが極めて難しい。
 その事柄が難しいものですから、そういう最後の判断権限は残しておいた方がいいんじゃないかということで、政府が出している指示権は、非常に限定的な行使を前提とはしておりますが、一般的な書き方になっているということでございます。

○井上(信)委員
 これは私も同じ懸念を持っていまして、確かに、何が専門的、技術的なのか、何がオンサイトなのか、これは単純ではありません。あるいは、そうじゃないこととの関連性もいろいろありますよね。だから、そういう意味では、やはり自公案の方も、より正確に書いていく、あるいは解釈を示す、こういう作業は当然必要だとは思います。
 ただ、だからといって、では、今の原災法の二十条二項や三項をそのまま残すのがいいかというと、これは論理の飛躍ですよ。それだったら、やはり少なくとも明確に、どういう場合の指示権かというのをもうちょっと書き下さないと、これは危険ですよ。同じことが起きてしまう。今の規定だとそれを防げませんよね。これは私は無責任だと思う。だから、そういう意味では、そこはよくお考えをいただきたい。
 自公の提出者の方にも、やはりこのポイントというのはすごく大事なところだと思いますので、ぜひお願いをしたいと思います。
 そういう意味で、本会議の答弁のときに非常に気になったのは、「今回の事故では、オンサイトからの撤退が検討されました。」と細野大臣が答弁をされました。多分この趣旨は、オンサイトからの撤退については、これは国家の命運がかかること、でも、それが自公案だと、やはり規制委員会の権限になっているという話だと思うんですね。
 そういう意味では、では実際、自公案の解釈として、本当にそういうときに総理の、災害対策本部長の指示権が全く及ばないのかということについて、自公案の提出者の方、御説明していただきたいと思います。

○塩崎議員
 何度も申し上げますけれども、全ては、原子炉が不正常、超不正常になっているからこそいろいろ問題が起きてきて、人間を守る、あるいは環境を守るということをやるには、この原子炉がどうなっているのか、どうすればこれが人間を守ることになるのかということがわからないといけない、そういうことだと思うんですね。
 したがって、総理の指示権の問題は、これは、さっき一時退避の話をおっしゃっていましたけれども、本部長、総理が原子力事業者に対して、我々の解釈では、やはり規制委員会がすぐれて専門技術的に判断をした結果が、退避をすべきかするべきじゃないか、どっちもあると思うんですけれども、その規制委の意向に反して総理が一時退避をするなとかしろとかいう逆方向のことを言うということは、私は、指示権としてはあってはならないことだと思うんですね。
 そのために、我々はあそこに括弧で、二十条、我々でいえば二項、政府案でいけば三項、その中に括弧で規制委員会の所掌事務を除くというふうに入れているわけで、これはもう何度も細野大臣も認めているように、技術的な、専門的なことについては政治家が判断するのではなくて、やはり専門家が判断すべきだ、こういうことでありますから、定義上、それは 規制委員会がすることですので、その意に反した指示をするということはあり得ないというふうに我々は理解しております。

○井上(信)委員
 そうすると今の話も、規制委員会の意向に反してはできないけれども、規制委員会の意向といわば同じであれば、これは指示もできると。
 ですから、そういう意味で、細野大臣がオンサイトからの撤退が検討されたとした答弁、その趣旨が、自公案では、そのことに対しても総理が指示できないという趣旨であるとしたら、それは誤解だったということに多分なると思うんですね、今のお答えを聞いていると。(柴山議員「違います」と呼ぶ)違いますか。では柴山さん、お願いします。

○柴山議員そ
 これはある程度しっかりと整理をする必要があると思っています。
 要は、原災本部長と原子力規制委員会が同じ方向を向いていたら総理が指示をできるのかというと、それは、法律上は権限は及びません。及びませんので、そこの例えば指示を、原子力安全委員会がやっていないという事態に、では、総理がそれをかわってできるかといえば、これは明確にできません。
 ただ、さっき塩崎委員から、クロース・コオペレーションというようなお話がありましたけれども、本来行うべき職務を緊急時にあって委員会が懈怠をしている、要するにぐずぐずしているという場合には、当然、それは本部長が規制委員会に対して、しっかりと仕事をしてくださいということを相互連携の一環としてきちんと協議をする、あるいは督励をする、そういうことはできるわけです。
 それからまた、原子力安全委員会が例えば安全確保のために措置をするように命じる、でも、事業者がなかなかそれをやらないというときに、一旦指示されたその指示について総理が、法律上は権限はないんだけれども、事実上、重ねてお願いをするということは、これは法律上の権限ではなくても、枝野さんも答弁でおっしゃっておられたように、では、法律に書かれていないことを一切総理としてできないかというと、そういうことではないわけですね。
 それは、少なくとも委員会が既に表明していることについて総理が事実上同じことを言及するということについては、これは原子力安全委員会の権限をオーバーライドしているものではないわけですね、それをただ重ねて事実上言及しているというだけですから。
 だから、法律上は、少なくとも、原子力安全委員会が本来業務としてやるべきことに対する総理の法律上の権限はないというのが私たちのたてつけであります。

○井上(信)委員
 法律上、明文化はしていないけれども、そういう意味では総理が規制委員会の意向と同じような指示をすることができる、多分そういう答弁だと思うんですが、では、これをお聞きになって細野大臣、この点についてはいかがお考えですか。

○細野国務大臣
 今の御答弁、塩崎先生の御答弁と柴山先生の御答弁と若干解釈の問題もあるようですので、一度きちっと議論をさせていただきたいというふうに思います。
 ちょっと個別のことは、もうここまで来ていますので余り言わない方がいいと思うんですが、あえて、大事なことですので私の思いを申し上げると、本当に国家の命運をかけた判断ということはあり得ますし、それもやはり考えなきゃいかぬぐらいの経験を我が国はしたわけですね。
 そういう経験をした立場からすると、あえて申し上げますね。技術的なこと、専門的なことに政治家は関与すべきではないと思うし、それはきちっと担保すべきだとも思いますが、それをはるかに超えて国家の命運がかかった場合には、規制委員会がこうだと言っても総理は逆の判断をしなければならない場面は、私は想定をしておいた方がいいと思います。
 そういう意味でいうならば、そこは誤解であったかと……(柴山議員「何を言っているのか」と呼ぶ)ちょっと……

○生方委員長
 ちょっと控えてください。

○細野国務大臣
 つまり、撤退をするかどうかというようなシビアなケースは絶対起こしちゃいかぬと思います。それはもう私の骨身にしみた教訓ですけれども、そういったこともどうしても考えなきゃならないような場合は、規制委員会の判断を超えても判断をしなければならないし、最後は伝家の宝刀として持っていなければならないんじゃないかというのが、私の今回の事故から得た経験であります。

○井上(信)委員
 お考えとしてはそういう考えもあるなとは思いますけれども、だから私がさっき申し上げたように、それならもうちょっとちゃんと書き切った方がいいですよ。あの原災法の規定は、あれでは菅リスクは防げません。教訓を生かし切れていない。
 自公案については、これはまたちょっとよくお話をしていただくということで。
 時間がもう余りないものですから、本当は、これまた大きな議論になっていた三条委員会の合議制の話をちょっとしたかったんですが、時間がなくなってしまったもので、また次の機会にというふうに思っております。
 きょうもいろいろ、私の質疑もそうですし、塩崎先生初め皆さんとの質疑も聞いていると、非常にいい質疑ができたなというふうに思っておりますので、ぜひこれを与野党協議の中にも生かしていただいて、よりよいものをつくり上げてもらいたいと思っているんですね。
 私はその中でちょっと一点だけ注文があるんですけれども、大臣、覚えていらっしゃると思うんですが、三月十六日、この環境委員会において私は大臣に伺ったんです。見直し規定の話、きょうも、その一元化で保障措置やモニタリングについて年内に見直ししますと明言されましたよね。確かに八月の閣議決定にそのことも書いてありますよ、漠とした書き方ですが。これを閣法の法案の中に書いていないんですよ。これはおかしいですよ。自公案については、三年以内ということで、例の国会事故調の報告の話もありますよ。それは見直さなきゃいかぬですよ。国会軽視と言われてしまいます。
 ましてや、閣議決定もし、そして今の御答弁でもやるとおっしゃっているんだから、少なくとも見直し規定を入れるという修正だけは、もちろんほかのもやってもらわなきゃいかぬのだが、これだけはちゃんとやると明言してください。

○細野国務大臣
 非常に重要な御指摘をいただいたというふうに思います。

○井上(信)委員
 もうちょっと踏み込んで。これはそんなに中身にかかわる話じゃなくて、閣議決定しているんですから、むしろ、これをやらないと言ったら閣議決定軽視ですよ。もうちょっと踏み込んだ答弁をお願いします。

○細野国務大臣
 ちょっと近藤理事の顔色を見ながらでありますが、政府案としては法案を出しておりますが、しっかりと見直すべきであるという御指摘は、私も全く思いを同じくいたしておるところであります。

○井上(信)委員
 この辺で了解をしたいと思いますけれども、あともう一つ。
 これから法案の修正協議なんかも入られると思いますけれども、実は、組織の新設という話でいえば、最近は復興庁がありましたよね。あのときも、私も委員をやっていていろいろやりましたが、閣法と議員立法と、やはり妥協案みたいな形にだけはしないでほしいんですよ。結局、それをやってしまうと、何だか間に落ちて、ちゃんとワークしなくなってしまった。申しわけないが、復興庁でもそういう声が被災地で上げられていますよね。ワンストップだと言いながら、結局、ワンストップじゃなくて、むしろ入り口がふえちゃったみたいな話とか。だから、そうならないようにしてほしいんです。
 そのためには、やはり自公案を丸のみしてもらいたいと思っていますので、これは大臣に言うことじゃなくてこっちかもしれませんが、とにかく、国民のためになる新しい組織をつくっていただくようによろしくお願いしたいと思います。
 どうもありがとうございました。

○生方委員長
 次に、江田康幸君。

○江田(康)委員
 公明党の江田康幸でございます。
 本日は、原子力規制組織及び制度改革について質問をさせていただきます。
 私も塩崎先生と一緒で、提案者でございますので、自公案に対しては聞くことができません。本日は政府に対してのみ質問をさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 公明党は、東京電力福島第一原発事故を直視して、今こそ本格的に、原発に依存しない、安全・安心エネルギー社会への移行に取り組むべきと考えております。そのためには、思い切った省エネの推進、再生可能エネルギーの導入、また、化石燃料利用の高効率化を推進し、原発の新たな着工は認めずに、段階的に原発を縮小していくべきである、こういう公明党のスタンスを持っております。
 その上で、既存の原発については、科学的、客観的な規制を実施して安全性を確保していかなければなりません。そのために、原子力規制組織のあり方が極めて重要になってくるわけでございます。
 公明党は、この規制組織には、独立性、中立性、そして専門性、強い規制権限が必要であり、内閣から独立した地位が与えられている独立行政委員会として設置すべきと主張してまいりました。この点において自由民主党と見解を同じくして、原子力規制委員会設置法案を共同提案しているところでございます。
 改革に当たって重要となる論点が、まずは独立性、中立性、専門性であり、次に危機管理、また規制強化であると思っております。本日は、この三点を中心に質問をさせていただくとともに、公明党が重要と考える申告制度についても質問したいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、独立性、中立性、専門性ということについてでございます。
 政府案の一番大きな問題点は、先ほどからももう出尽くしておりますけれども、規制機関の独立性、中立性、専門性の欠如にあります。
 さきの衆院本会議において、公明党の佐藤茂樹議員から、政府は、なぜ、かつて民主党が主張していた三条委員会のような独立性の高い規制組織とせずに、環境省の外局として規制庁を設置することにしたのかと、こう質問をいたしました。これに対して野田総理からは、原子力安全規制の権限は全て環境大臣から原子力規制庁長官に委任して、原子力安全調査委員会が継続的に監視することにより、原子力規制庁の独立性を担保するということでございました。
 しかしながら、依然として政治の関与の余地を残しておりまして、IAEAの安全基準から見ても、政府案の規制庁は、独立性の点で甚だ不十分と言わざるを得ません。
 私が最も懸念しているのは、原子力規制庁長官の任命権、解任権を政治家である環境大臣が持っているということにあります。環境大臣は、原子力安全規制の権限を原子力規制庁長官に委任するとしておりますけれども、人事上の任命権、解任権を持っているということは、これは長官に対する多大な影響力を持つということであり、例えて言うならば、環境大臣は政治の思惑に合わせて原子力規制庁長官をコントロールすることが可能ということになり、その結果、原子力安全規制は不当な圧力によりねじ曲げられてしまう、こういう可能性があるわけであります。
 ここで大臣に質問をいたします。
 環境大臣がこの原子力規制庁長官の任命権、解任権を持っている仕組みであるにもかかわらず、政府はどのような理由でこの原子力安全規制の独立性を担保できると考えておられるか。一歩踏み込んで大臣のお話をお伺いしたいと思います。

○細野国務大臣
 独立性については、これも再三答弁をさせていただいておりますけれども、まず第一に、やはり、推進側から明確に独立をするということを考えました。これはIAEAからも実質的な勧告もあった件でございますので、そこはしっかりと確保するということで、規制庁を提案をさせていただいております。
 今、江田先生の方からの御指摘は、それに加えて政治的な独立性ということについての御質問かというふうに思います。
 そこについては、総理からも答弁がありましたとおり、主に二つの仕組みで確保するという考え方であります。
 一つは、法律上の判断権限というのを長官に委任をされますので、そこに介入する余地というのは法的に大臣にはないということが一点であります。
 しかし、法的にはないんだけれども、何らかの形でそれこそ恣意的に介入をするようなことがないのかということに関しましては、これは、原子力安全調査委員会、国会の同意人事でつくられるわけでありますが、ここが原子力規制庁の独立性を常に監視することとなっておりますので、大臣が長官に対して不当な政治的な影響を及ぼすような場合には、チェックをする仕組みができているというふうに考えているところであります。

○江田(康)委員
 想定する答弁でございますけれども、やはりいずれにしても、この原子力規制庁長官の任命権、解任権というのが環境大臣に残っているものであるのは間違いないわけで、やはり、この点が独立性が不十分であると指摘せざるを得ない。三条委員会にすべきものと考えております。
 総理の答弁で、この独立性の確保のあり方については、今後、国会での審議の中でしっかりと議論していくとありました、さきの本会議の答弁でありますが。これは大臣、政府案の規制庁ではなくて、自公案の独立性の高い三条委員会を設置するということを意味しているのか。

○細野国務大臣
 そこは野田総理の思いが答弁の中に込められているのではないかというふうに感じました、私も聞かせていただいて。その思いというのは、政府案を提出をしておりまして閣議決定していますから、それは、政府としては国会にお願いするという意味で責任ある立場であります。
 しかし一方で、原子力の規制組織というのは、これは会派、党派を超えて極めて重要なものでありますから、それこそ、各党各会派からさまざま御提案いただいていることに関してもしっかりと柔軟に対応すべきだという思いを総理自身がお述べになったものではないかと考えているところであります。

○江田(康)委員
 それでは、この規制組織の一元化、このことについてお伺いをさせていただきたいと思っております。
 規制機関は、その能力、資源、責任、これを集約して、原子力の安全確保に向けては最大限の実効性を確保していく必要があるわけですね。原子力安全を担うこの行政機関は、これはばらばらであってはいけないわけで、しっかりとこれを一元化して、独立性を持って専門的な能力を発揮しなければならないわけです。
 本年二月末に公表されました民間事故調の報告書においても、その点、指摘があります。複数の組織が絡む日本の原子力行政が安全規制のガバナンスの無責任状態の元凶であったと、こう指摘しております。
 これは、二〇〇一年の省庁再編、このとき、原子力安全規制のガバナンスを一元化して強化するチャンスはあったわけであります。それにもかかわらず、文科省、経産省と、その体制を補強する原子力委員会、原子力安全委員会というこの二元推進体制、また二元審査体制、このことが維持されました。
 原子力の安全規制は、そのことによって経産省の原子力安全・保安院と原子力安全委員会がともにこれは担うことになったわけでありますけれども、文部科学省の抵抗があり、試験研究炉の規制、さらには、放射線モニタリング、放射線防護、核不拡散の保障措置などの権限が残されたわけであります。その結果、安全規制はより複雑なものとなった。
 今回の事故で、一元化されていない結果、最も大きな問題を引き起こしたのは、SPEEDIであります。
 このSPEEDIは、今回のようなシビアアクシデント時に、速やかにその試験結果を発表して住民避難に役立てるものであるはずでありました。三十年近くにわたって開発もしてきたわけです。これを所管する文科省は、放出源のデータがとれないという不確実性を理由に、SPEEDIの活用や公表には極めて消極的でありました。
 さらには、SPEEDIの公開の是非が政治問題化するや否や文科省は、その評価や公表の任務を原子力安全委員会に押しつけた、こういうようなこともささやかれているわけでありまして、国民の安全に直結して出すべき情報を出さない、また、役所間が責任のなすり合いをしていく、これが国民の信頼を失墜した大きな要因の一つになったものだと思っております。
 やはり、限られた原子力安全の組織、人材、英知というのは、結集されなければならない。この点から、政府案の原子力安全業務の一元化の考え方は中途半端と言わざるを得ないんです。今回の事故でも問題がありました、この民間事故調でも安全規制のガバナンスの問題点が指摘されているにもかかわらず、政府の法案では、文部科学省にモニタリングの実施、放射線防護、核不拡散の保障措置等の多くの機能が残ることとされております。
 先ほど来から、これは井上先生も御指摘でありますけれども、政府は、このような中途半端な一元化の体制が、原子力の人的資源を集積して、原子力の安全向上を進めて今後の事故に備える上で適切なものと本当に考えているのか、そうではないのか、大臣、また一歩踏み込んで大臣のお考えをぜひとも聞かせていただきたいと思います。

○細野国務大臣
 今回の法案の中では、従来の組織改編そして一元化の議論で問題になっていたところも含めて、最大限の一元化をしていこうというところがスタートとしてはございました。
 したがいまして、例えば、これまで文部科学省にあった研究炉なんかの安全規制も、今度は規制庁に移ります。これも文部科学省が従来持っていた権限になりますが、それは一元化をするという形になるわけですね。江田委員御指摘になったようなSPEEDIなんかも一元化の対象になりました。
 そういった意味では、かなりの程度一元化が行われ、そうしたベースとなる放射性物質、放射能に対する検討の場でもある放射線審議会、これも、放射線防護に関する業務のうち、原子力規制の一層の向上に寄与することが期待できるものということで、一元化の対象になったという経緯があります。
 一方で、先ほども井上委員からもありました、今、江田委員の方からも具体的な御指摘がありました。放射線モニタリングについては、司令塔を担い、関係省庁においてそれぞれ行うモニタリングを総合調整をするというところにとどまっております。
 放射線防護に関しては、これもなかなか悩ましいところがあるんですが、どうしても、例えば医療などで放射能を使うものというのは結構ございまして、そこを果たして厚生労働省から持ってくることが本当にこの目的に沿うのだろうかというような、実はかなり技術的な検討もした上で、ちょっとそこは性質的に違うのではないかという経緯があって残った部分がございます。
 そして、恐らく国会でも一番議論になろうかと思いますのはいわゆる保障措置でございまして、これについては、IAEAが政府をもある意味でしっかりと監視をする、政府をですね、そういう面もありますので、原子力のいわゆるセキュリティー、セーフティーとは若干性質が違うということで今回の一元化にはならなかったという経緯がございます。
 八月の閣議決定において、当面の対応として今御説明を申し上げたような形になっておりますが、年内にさらに検討を進めて方向性を出すということになっておりますので、この国会での議論も踏まえながら、我々もさらに検討を進めていく必要があるというふうに感じております。
 最後にもう一点だけ。
 江田委員から非常に重要な御指摘だなと思いながら聞いておりましたのは、やはり人材なんですね。それぞれの省庁が持つ行政の事務については、それなりの理由があってそれぞれの場所に残るということは、確かに理屈としてはあり得るんだけれども、もう一つやはり考えなければならないのは、これだけ原子力の安全が問われている中でもっと専門家を一元化をしていかないと強い組織ができないのではないかというのは、極めて重要な御指摘だというふうに思います。
 その意味で、分散化している部分があるとすれば、それもやはりどんどんとしっかりと一つのところに一元化をすることで強い組織をつくっていくという必要性については、思いを同じくするところであります。

〔委員長退席、大谷(信)委員長代理着席〕

○江田(康)委員
 一元化については今大臣が繰り返しおっしゃっていることでございますけれども、やはりモニタリング一つとっても、それは司令塔であり、実際のモニタリングの計測実施というのは文科省に残っているという非常にアンバランスな、それを総合調整するというようなことで果たして今回起こったような緊急の事態に対して的確に対応できるのか、同じ轍を踏むのではないか、こういうような問題がありますし、放射線防護や保障措置に関しては、年内、検討を進めて結論を出すとあります。
 この大臣の答弁は評価をするわけでございますが、ここのところは、本当に原子力行政を一元化していくことが、独立性もまた担保でき、そして専門性も確保して、国民の期待に沿う原子力規制組織ができ上がる非常に重要なところだと思っておりますので、今後の課題を、これは絶対に先延ばししてはならないと思います。そういう意味では、結論を出すとおっしゃいました、そういうことをしっかりと我々も議論してまいりたいと思っております。
 次の質問でございますけれども、今、一元化の問題、これは行政機関だけに限らないわけでありまして、その傘下にある支援機関、研究機関たる独立行政法人までこれは及んでいるわけであります。さきにおっしゃいましたけれども、平時において独立行政法人が有する高い専門的知見を取り入れていくということはもとより、緊急時においては、これらの法人の持つ能力を結集させる、これが非常に重要であると指摘されております。
 これまでの縦割り行政のまま、原子力安全で最も重要な独立行政法人である原子力研究開発機構、JAEAや放射線医学総合研究所は文部科学省の所管であります。原子力安全基盤機構、JNESは経済産業省の所管のままとなりました。このため、今回の事故でも、これらの機関は定められた行動だけをとった。相互の連携協力、これは全くとることができなかった。
 我々は、これでは緊急時に対応ができない、また、我が国の原子力安全規制のレベルを上げていくことができないと強いその問題意識を持って、この放射線医学総合研究所だけでなくて、原子力に関する科学的知見が最も豊富なJAEAも文部科学省と原子力規制委員会が共管することにしたわけであります。
 これに対して政府案では、JAEAに対しては原子力規制機関が関与できない仕組みとなっているわけでございます。
 これでは、この事故から一体何を学んだというのか。また、行政組織の一元化もできない。いつまでも役所の縄張り意識、縦割り行政の範疇から抜け出せないというのでは、これは、国民の命を守るのと役所の既得権益を守るのと、どっちが大事だと考えているのかと問わざるを得ないわけであります。
 そこで、大臣にお聞かせいただきますが、政府はなぜ原子力規制庁がJAEAを所管しないことにしたか。自公案のように、原子力規制委員会がJAEAを所管することによって、原子力安全に関する新しい知見を取り入れて今後の事故に備えることができると考えるわけですが、大臣のいま一度の答弁をお願いします。

○細野国務大臣
 独立行政法人の問題は非常に大事だというふうに思っております。
 御指摘いただきましたとおり、原子力安全基盤機構については、今保安院のもとにありますが、これを規制庁がしっかりと担っていく。公明党さんの案では、役所と一元化をするという案も出てきていますので、そういったあり方も含めてさまざま検討する必要があるというふうに思います。
 一方で放医研については、これもいろいろ議論があったんですが、やはり福島の健康管理についてもこれからしっかりとやっていかなければならないだろうということで、これも共管という形にいたしまして、提案をしております。
 そして、そうならなかったのが、今御指摘のとおり、JAEAということであります。
 もうよくよく御承知かと思いますが、JAEAの場合は、もともと、いわゆる基礎的な研究や応用研究をする旧原研と高速増殖炉を主にやっております旧動燃と二つの組織、これが合わさる形で独立行政法人としてのさまざまな業務をやっております。専門家が我が国においてどこにいるかということを見渡すと、このJAEAには大変人的な蓄積があるというのは紛れもない事実です。したがって、どういった形になるにしても、新しい規制組織のもとでこのJAEAとの連携というのは、大変重要であるというふうに考えています。
 そこで、今後のあり方なんですが、一つの我々の考えた理由といたしましては、この原子力研究開発機構の中で、旧動燃のいわゆる高速増殖炉の部分などはむしろ推進サイドに近いという面がございますので、そこは規制サイドと必ずしも融合性というか、全く一致をするというものではない面がある。一方で、いわゆる旧原研がやっていたような放射能全体に対する研究であるとかさまざまな基礎的な知見であるとか、そういったところは我々もぜひそういった皆さんの力をかりたいというふうに思うわけですね。
 ですから、そういう皆さんの力をどのようにすることでかりることができるのかということについては、これは大いに検討する余地があるというふうに思いますし、規制庁もこのJAEAに共管という形で関与せよという御提案をいただいておりますので、それについては私どもももう一度しっかりと考える必要があるのではないかと、そのように感じたところであります。

○江田(康)委員
 まさに今大臣がおっしゃったことと私も全く同意でありまして、大変安心したわけでありますけれども、ぜひとも、このJAEA、旧原研のその専門家はここにいるわけでありまして、専門家集団のこのJAEA、もう何らかの形でこれは今回の規制組織に一元化といいますか、合流していく、そういうようなことにしなければと強く思っておりますので、ぜひともこれは、さらに努めて結論を出していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 さらに続けて、専門性ということについてお伺いをさせていただきます。専門性の高い人材の確保ということですね。
 今回の事故で原子力安全・保安院は、専門能力の低さを、国民に対して、また世界に対しても暴露してしまったわけであります、露呈してしまいました。民間事故調も、保安院は、規制機関としての理念も能力も人材も乏しかったと指摘しています。痛烈に批判しています。
 保安院は、結局のところは、安全規制のプロフェッショナルを育てることはできなかったわけでありまして、事故の際、保安院のトップは官邸の政府中枢の質問にもまともに答え切れなかったのは、国民みんながテレビ等でも見ていたわけでありまして、大変残念であります。事故収束の対応に向けて専門的な企画も立案もできなかった。東京電力に対しては、事故の進展を後追いするだけで、これは御用聞き以上の役割を果たすことはできなかったとも言わざるを得ない。
 これに対してアメリカの原子力規制委員会、NRCは、みずから原子炉を動かすことができる複数の職員を有しているわけです。専門性の高い四千名から成る職員を抱えております。我が国の原子力安全・保安院と比べると、余りの能力の違いに愕然として、大変残念に思うわけです。
 これを改善するために、自公案では、原子力規制に関する専門能力を有する原子力安全基盤機構、JNESの職員を基本的に原子力規制委員会の職員とすることとして、人材の質を高めることとしたわけであります。
 翻って政府案を見れば、専門性の高い人材の確保に向けて何ら法的な手当てをしていないところが重大な問題だと思っております。
ここで大臣に質問をさせていただきます。
 政府案では、このJNESを原子力規制庁のもとに所管させるだけとしているわけでありますが、このような体制で、大臣もそうは思ってはいらっしゃらないと思いますけれども、原子力規制機関の専門性、これを高め続けることができるのか、国際レベルに近づけていくことができるのか、大臣、そこのところはどうですか。

○細野国務大臣
 NRCの体制は、日本でいうならば原子力安全・保安院にJNESを加えたような、検査の実務に加えてさまざまな研究、いわゆる検査にかかわるような検討も幅広くできるようなそういう組織になっているわけですね。ですから、自公で提案をしていただいている考え方は、そういったNRCの例なども考えると、一つの御提案だというふうには思います。
 いずれにしても、本当に優秀な人材を確保するという意味で、当面、政府案の中で考えておりましたのは、JNESというのはさまざまな技術的な専門性を確かに持っておりますし、実際にそのJNESの知見に基づいて保安院がさまざまな規制をしてきたという面があるわけですね。ですから、そういった意味でのしっかりとした人事交流もしながら技術のレベルを高めていくという、そういうことを当初考えていたということであります。
 なぜ、では一元化をしないのかということについては、これは総理が本会議でも答弁をしておりますとおり、率直に申し上げまして、積極的な理由というよりは、これまでのさまざまな行政改革の流れというのがあるというのがその理由であります。
 行政組織の肥大化を招くであるとか、公務員制度の枠内では独立行政法人と比べて柔軟な人事管理が難しい、これはどちらかというと行革とは違う理由でありますけれども。あと三番目といたしまして、公務員でない職員を公務員とする、これまでは言うならば独立行政法人の職員という非公務員型の独立行政法人であったものを公務員にするわけですから、公務員の数がふえますよね、かなりの規模の組織ですから。そういったことについて検討すべきだということで、そういう形を当面考えておったということでございます。

○江田(康)委員
 何をやりたいのかということですよね。やはりこの東電の事故を踏まえて、我が国には、原子力規制組織、専門性の高い、また独立性のあるその組織がなかったわけで、これをつくり上げようというのが今の我々の仕事であるわけで、政治家の責任でございます。
 その際に、JNESを使わなければ、あそこに専門家はずらりとおるわけですから、そこの五百人を一元化していけば千人体制になってくる。そういう中で初めてこの原子力規制委員会、規制組織が本当に専門性のあるものとして、また職員の皆さん方は、キャリアパス等で非常に夢を持って、希望を持って、誇りを持ってこの規制の仕事をやり抜いていける。JNESというのはこの柱中の柱といいますか、非常に大事なことであります。
 今回、我々自公案がこのように国会に提出されて、まさに、これからその修正協議も踏まえて一つの形をなそうとしております。これまで乗り越えられなかった、やはり先ほどおっしゃっているのは縦割り行政の弊害であって、各官僚の、省庁の言い分にすぎないわけであって、それをやはり変えていくのが我々国会ではないですか。
 そういう立法府の役目を本当に今回は果たしていくべきだと思いますので、これは大臣、腹の底では一緒でございますので、本当に実効力のある、専門性の高い規制組織をつくるためにJNES等の一体化はぜひとも実現してまいりたいと思います。どうぞ頑張りましょう。よろしくお願いします。
ノーリターンルールについてお聞きをさせていただきます。
 政府案では、原子力規制庁の職員のほとんどは原子力を推進してきた経済産業省と文部科学省から寄せ集めることとして、言い方は悪いかもしれませんが、規制と利用の分離を担保するためのノーリターンルールも幹部職員に限定する、こういうことで、私どもからいえば、大変弱い、骨抜きにされたものではないかと思っております。
 これに対してこの自公案では、ノーリターンルールを徹底して、さらに、さきに述べたように、JNESと一体化することによって専門能力を持った職員をしっかりと確保していくことをこの目的としているわけであります。先ほどこれは大臣からも、重要な御指摘ということで評価をしていただいています。
 先週の本会議で、我が党の佐藤議員からノーリターンルールや人材育成について質問をいたしました。野田総理はそのとき、原子力規制庁の立ち上げに必要な全ての職員をノーリターンしてしまうと、強い意欲を持って規制業務への参加を希望する優秀な職員が少数にとどまることが懸念されると述べられました。我々はびっくりしたわけでありますが、この答弁は大きな矛盾を感じます、逆ではないかと。ノーリターンにしなければ出向した職員はいつかは経産省などのもとの役所に戻ることができるわけですから、当然、もとの役所を見て仕事をして、意欲のない人材ばかりが集まるのではないでしょうか。
 また野田総理は、人材育成については適性のある職員の採用と適材適所の配置をして、将来の管理職や幹部となる人材を含めて職員をしっかり育成していくと。これは当たり前のことを述べているだけで、全くこれは具体策がないと思います。
 ここで大臣に質問をいたします。
 ノーリターンルール、これを厳格に適用するとなぜ意欲がある職員が集まらないと考えておられるのでしょうか。

〔大谷(信)委員長代理退席、委員長着席〕

○細野国務大臣
 新しく創設をいたします原子力の規制組織というのは、やる気と能力に満ちた職員をできるだけ数多く集めたいというふうに思っています。
 あくまで現段階の私の感触でございますけれども、原子力にかかわっている人間にとってはここはまさに正念場でございますので、技術系の職員については、これはしっかりと確保していかなければならないし、また、できるのではないかというふうに思っています。彼らは、ノーリターンの範囲に入っていようがいまいが、原子力でやっていくというふうに腹を決めていれば、これから安全と規制が本丸になることはよくわかりますから、そこでしっかりとやってくれるのではないかという、そういう感触を受けております。
 一方で、悩ましいのは事務系の職員でございまして、文部科学省や経済産業省に事務系で入った職員の場合は、例えば文部科学省であれば、科学技術で幅広く全体をバックアップしていくであるとか、科学技術庁は比較的事務系の職員は少ないですけれども、経済産業省であればエネルギー政策であるとか産業政策であるとか、そういったこと全体をやるために入っている職員なわけですね。その職員が、例えば、原子力規制庁の人事管理とかマネジメントをするからどうしてもではおまえ来てくれと言われた場合に、彼らのキャリアパスというようなことを考えたときに、全員それを強制をするというわけにはいかないのではないかというようなこともあるわけですね。
 そこを、例えばノーリターンですよということで初めから全員がそういう形でしか来れないということになってしまうと、特にマネジメントにかかわるようなところというのは人材を集めにくいのではないか、そういう懸念を今私は持っております。
 マネジメントができないというのはかなり深刻なことでありまして、採用ももちろんそうでありますし、人材をどうこれから育てていくか、それこそ組織をどう強化をしていくか、あらゆる面でそういう職員はやはり重要です、必要です。ですから、そこも考えたときに、ノーリターンをどこまで適用するかということについてぜひ実質的な御議論をいただければ、私どももそこはしっかり耳を傾けたいと思っているところであります。

○江田(康)委員
 今、実質的なところで大臣からの御指摘もありましたが、これはやはり努力していかなければならないと思っているんです。何をやらなくてはならないか、それはやはり、専門的能力があって意欲がある職員を確保して、また、独立性を確保していくことでありますから、やはり、ノーリターンルールというのが基本にないと育たないと思うんですね。
 そういう意味では、JNESと一体化して職員を一千名程度の規模としていく、専門性を高めていく、こういうことが基本ではありますけれども、事務系、マネジメント系、ここもしっかりとこれは実態に即して我々も十分議論をして結論を出していかなくてはならないと思いますが、やはり基本的には、ノーリターンルールというものを大きく掲げるということが必要ではないかと申しておきたいと思います。
 時間も少なくなってまいりましたけれども、次に、私、大事だと思っているのは、先ほどからもありますけれども、危機管理についてであります。まず、総理の指示権にもかかわるところですので、これについてお聞きをいたします。
 平時の原子力安全規制において独立性を確保することは、これは言うまでもないことでありますが、しかし、これは緊急時においても同様で、原子炉の安全対策、いわゆるオンサイト対策は、あくまで科学的な判断のもとに専門家が進めるべきであって、政治の介入は極力避けなければならない。
 今回の事故で、先ほどからも指摘されておりますけれども、官邸の現場への過剰介入が大きな問題となったわけです。事故直後には、現場が必死で対応している中に菅総理がヘリコプターで現場を訪れて、吉田所長を初めとする多くの関係者が、最も重要な初動対応の時期にこの総理の受け入れの対応に追われた。また、この最たるものでは、原子炉への海水注入に当たって総理が納得されないために、一時中止を命じさせた。ここらのところにおいては、これからの国会事故調や政府の事故調等々で明確になってくるわけでありますけれども、こういうような現場の危機を増大させるような事態まで、これは政治の介入が引き起こしたわけであります。
 民間事故調の報告書にも、総じて官邸によるこういうアクシデントマネジメントへの介入が、ほとんどの場合には全く無駄だったというか、影響を与えていない、無用な混乱やストレスを高めただけであるというような指摘もしているところであります。
 自公案では、このような官邸の現場への過剰介入を阻止するために、緊急時における総理の指示権、これを削除しているところであります。これによってオンサイト対策については、政治の介入を受けることなく、原子力規制委員会が高い専門性を持って科学的、客観的に対応することが可能となります。
 先週の本会議においても、この件についてまた我が党の佐藤茂樹議員から、総理や政府が原子炉鎮圧について介入する是非についてどう考えるかと総理に問い尋ねました。そのとき総理は、総理や政府の介入は、国として危機管理上最低限のかつ最後の手段であり、抑制的に行使されるものと答えておりました。
 しかしながら、今回の事故の菅総理の対応を見れば、これは政府がオンサイト対策に全面的に介入していて、野田総理が言うような抑制的なものとはとても思えない、こういうことが実際に起こるということを我々は経験したわけであります。
 ここで大臣に質問をいたします。
 政府案では依然として総理の指示権を残しておりますけれども、先ほど来からこの御質問の中で答弁はされておりますけれども、その意味するところは何ですか、どういう理由を持っていらっしゃるか、そこを逆に我々は問い尋ねたいと思うわけであります。また、今後、今回の事故対応のような総理の過剰介入をこれで避けられる、こう思っておられるのか。

○細野国務大臣
 緊急時の原子炉の鎮圧については、事業者が一義的な責任を持つということはまず明確に申し上げておくべきだろうと思います。
 それを申し上げた上で、専門家である規制組織がこれを監視をし、科学的知見に基づく客観的な判断から、事業者の対策に対する指導、助言、さらには、本当に必要な場合については指示をしていくということが基本となってまいります。
 そういった基本的な枠組みを考えますと、原子力災害対策本部長たる総理が指示をするケースというのは極めて限定的であるべきだし、特に技術的な部分について介入をすることは、厳に慎むべきだと私も思います。そういう意味では、今、江田委員の方がお話しになりましたことに私も全く異議はございません。賛同いたします。
 その一方で、先ほど来幾つかの例をお示しをしましたけれども、オンサイトでもどうしても総理の指示というのが必要となるケースというのがございます。典型的な事例としては、自衛隊によるプールへの放水の総合調整というのを総理の指示で出しましたが、あそこは、総理の指示があったから回り出したというふうに私は思っております。
 ここは、技術的な側面というよりは、どちらかというと、非常に力わざというか、泥臭いけれども現場の調整というようなことになるものですから、いわゆる専門性とか科学性ということとは若干離れて行使をできる余地を残すということもやはり必要ではないか。
 ここは恐らく各党各会派、御賛同いただけるのではないかというふうに思いますが、最後に恐らく残ります論点というのは、いわゆる国家存亡のときというようなことが絶対に来てはならぬわけですが、万々が一やってきた場合に、そのときに総理の指示権というのをどう考えるか、ここは議論の余地があるところではないかと感じているところでございます。

○江田(康)委員
 先ほど来から議論があっているところですので、私の考えも申し上げたいとは思いますが、確かに、細野大臣が幾つか事例を挙げられました。汚染水を流すときの判断、さらには、例えば東電が撤退するといった場合の命にかかわる職員、その方たちを考慮してどう政治判断していくか、ここはまさに政治判断の大きなところが予想されるということは、私も実は思うところであります。
 ただ、それに対して具体的に最後の手段としてというのが、幾つか具体例がそうやってから挙げられますけれども、総理が介入する必要性というのは、そういう意味では理解できるところもあるわけです。
 ただ、政府案では、その総理の過剰介入を防止する手段、こういうことが十分というか全く示されていない中で、最後の手段というような具体例を挙げながら言われても説得力がないわけでありまして、そういうようなところにおいてどのような政治の過剰介入を防止していくこの具体策をとっていくのか、ここにおいてぜひとも逆にもう一度問いたいと思うんですが、こういうところを十分にこれから審議をしていかないといけない重要なところだと思っておりますので、何かありましたら。

○細野国務大臣
 非常に悩ましい点について御質問いただいたと思います。
 今、私が幾つか、二つ、三つ例を挙げましたのは、今回の事故を本当に一つの偶然というか、そういう役にたまたまございましたので、本当に間近で経験をしたから挙げることができた例でございまして、これからいろいろなことが考えられる中で全てのケースを予見することは、とてもこれは不可能だというふうに思っています。
 したがって、どういったケースに指示権を絞り込んでいくのかというのは、これはなかなか難しいと思うんです。法律の中でも、既に、「特に必要があると認めるときは、その必要な限度において、」ということで絞り込まれています。絞り込まれている中でどう抑制的な行使の余地を残すのかということについて、ここはやはり知恵を絞っていく必要があるのではないかなというふうに感じております。
 全てを予見をすることが難しいとはいいながらも、過度な濫用はやはり防止をするということも検討する余地があるというふうに思いますので、私自身も、どういったやり方があり得るのかということについては少し考えてみたいというふうに思います。

○江田(康)委員
 さらに、平時における危機管理体制の強化を質問していきたいと思います。
 今回の事故の反省を踏まえれば、強固な危機管理体制を構築すべきであることは我々も全く異論はありません。政府案では果たして本当に危機管理体制が強化されているのか、これをしっかりと確認する必要もあります。
 今回の事故を改めて振り返りますと、政府はシビアアクシデントに対する備えが全くできていなかった。想定したこともない事故が発生し、マニュアルも不十分、関係者の能力も不十分、情報共有の体制も整備されていない中で、専門知識、経験を欠いた少数の政治家が中心となって、次々と思いつきだけで場当たり的な対応を続けたと言われても仕方がないようなこともございました。当初予定していた危機管理体制は全く機能しなかったのではないか。大変に残念であります。
 このような危機管理体制が、民間事故調の言葉をかりれば、まさに稚拙で泥縄的な危機管理と言われたわけであります。
 この稚拙で泥縄的な危機管理という言葉は、政府が平時から事故に対する備えが全くできておらず、いざ緊急事態になったら、役割分担もわからず、何をしてよいかわからず右往左往していることをあらわしているわけで、つまり、緊急時対応というのは、やはり平時からの連続で、平時において危機に備えていなければ十分に対応できないということがこれは逆にわかったわけであります。
 ここで大臣に質問をいたします。稚拙で泥縄的な危機管理とならないように、平時における備えをしっかりとしておく必要がありますが、そのための平時の取り組みとしてどのような仕事があるか。この委員会の中でもなかなかそういうようなところまで具体的には質問があっておりませんでしたので、どんな仕事があって、誰がどのように進めていくというようにされているか、そこを明確にお示しください。

○細野国務大臣
 今回の事故対応で反省を一言だけ申し上げますと、御指摘のとおり、事前の準備が極めて不十分でありました。しかし、不十分ながらも行っておった事前準備がほとんど機能をいたしませんでした。
 一番典型的な例は、オフサイトセンターが早々にもう機能しなくなって、次に考えておった場所もどうもだめそうだということで、早々に県庁に行くということになったわけですね。ですから、当初は、オフサイトセンターに地元の自治体の皆さんも来ていただいて現場で判断というそういういわゆるマニュアルになっておったわけですが、そこが全く機能しなかったということがございます。
 そこで、いろいろなレベルの事故があり得るというふうに思いますので、それぞれのレベルの事故に応じてしっかりとやはり備えるということが基本中の基本になってくるだろうというふうに思います。
 そこで、今回の改正案の中で、原子力の防災指針、これまでは法定化されておりませんでしたけれども、これも法定化をして、しっかりと国として指針を出します。その指針に基づいて、地域でそれぞれ防災計画をつくっていただきたいというふうに思います。ですから、その防災計画であるとかそのもとでつくられますマニュアルの策定について地方を全面的に支援をして、国としても、そうしたマニュアルや基本計画に沿った防災訓練についても全面的に見直して対応していく、これが重要ではないかと考えております。
 そして、そういうことをやる専門家を育成をしていかなければなりません。自公案を拝見しておりまして、そこはぜひちょっと御議論いただきたいなと思うんですけれども、政府案は、原子力地域安全総括官というのを置きまして、これをオフサイトの防災の専門家としてフル活用いたします。
 もうかなりいろいろなことが煮詰まっておりますので、正直申し上げますと、そこは警察から人を引っ張ってきまして、相当責任あるポジションに据えます。この人間を初めとしたチームが常に全国で防災のさまざまな取り組みについて巡回をして回る形をとって、準備ができていないところがあればそこは底上げをしていくという、そういう体制をとるわけです。
 そういう体制をとるからこそ、逆に万々が一事故が起こった場合には、原子力災害対策本部の、しっかりとした事務局も含めて全体の回しができるようなたてつけの方が、平時から有事ということでスムーズなのではないかというふうに考えたところでございます。
 また、担当大臣についても、必要ないのではないかというそういう御意見がございました。確かにそういう考え方ももしかしたらあり得るのかもしれませんが、私の経験から申し上げると、いろいろ防災対策をする場合は、どうしても地域の首長さんとの関係であるとか、さまざまな事故が起こった後の対応も含めて、福島がまさにそうでありますけれども、政務とそして現地の首長さん方とのやりとりというのはかなり頻繁になります。
 そして、政府全体で、原子力規制庁だけではなくて、原災本部全体としてやり得る事前の準備という意味では、各省を巻き込まなければなりません。そういう各省も巻き込むことも含めて、相当の力わざが恐らく求められるところについて担当大臣がない方がいいのかというと、ちょっと私はそこはいかがなものかなというふうに思案をしているところでございまして、ぜひそういったことも含めて御検討いただければ幸いでございます。

○江田(康)委員
 私も、平時のオフサイト対策の重要性というのは、規制組織の議論、また研究、勉強をしていく中において非常に重要であるということに気づいております。
 それは今おっしゃったように、関係機関との調整事務、防災訓練の実施にかかわる地方自治体との関係との連絡調整から、さっきおっしゃった、重要な原子力災害対策マニュアル、防災指針、それから、警察、消防、防衛との調整、緊急時における住民の避難、被災者の健康管理や風評被害対策、それから、放射線モニタリングの司令塔としての実施機関を調整とか、ハイレベルのものだけでもこれだけある。だから質問が複数これまでも出ているわけだと私も思っておりますが、平時のオフサイト対策で、今、自公案並びに政府案ともにこれはひとつ十分な審議をして、それらの調整を、本当に動いていけるその体制をつくることが非常に重要だと私は思っています。
 実は、今回のこの事故でも最も望まれてくるのは、こういうようなオフサイト対策であろうかと思んですね。それを平時からきちんとつくり上げていくというのは、私も重要ではないかなと思っております。
 そういう意味で、大臣が必要か必要でないかというようなところはもっと深くやはり議論していってもいいんじゃないかと。自公案、政府案ともに平時のオフサイト対策は、今提示しているものよりも現実に起動する、そういう体制をつくらなければならないのではないかと思っております。
 提案者がこういうことを言っていいのか、塩崎先生がそこからにらまれておるんですが、率直にこれは十分審議をし尽くしていけばいいのではないかなと思っております。
 もう最後の時間でございますので用意したものが全てできませんが、それでは規制については次の議論としまして、最後に、地方自治体の関与のあり方、誰も質問をなされておりませんので、ここを先にやらせていただきます。
 危機管理とか防災体制の強化は、地方自治体のもう最大の関心事項であります。原発事故があった際にその影響を最も大きく受けるのは、地域住民の方々です。また、地方自治体は、原子力の安全規制に何ら関与できないにもかかわらず、原発事故の際にはいきなり当事者となって、地域住民の避難を初め、地域住民を守らなければならない立場にさらされます。
 このような立場を改善すべく、一部の地方自治体は、原子力事業者と地域協定を結んで、地域の声を取り入れるべく努力をされていますが、こういう取り組みはあくまで自主的なもので、法的な位置づけは全くありません。
 このような中で、地方自治体からは、みずからが関与する仕組みをつくるべく、国に働きかけが今行われ始めました。本年四月には、山田京都府知事、また嘉田滋賀県知事の連名で提案書が出されています。その中に、「確固たる安全体制づくりに向けて、地元自治体と地元住民参加の仕組みの創設を図り、安全性を住民とともに追求する意識の醸成を図るべきである。」また、「国民理解を得るためには、まず国民の判断基準となる情報を徹底的に公開すべきである。」こういう提案がございます。
 フランスでは、原子力安全透明化法という法律の中で、地方自治体、国、事業者との間で協議の場をつくって、徹底的に情報公開を行って、地域の声を拾い上げて、それを原子力の安全性の向上に生かすための取り組みが構築されております。
 ここで大臣に御提案であり、質問をいたします。
 地方自治体は原子力事故の際に大きな影響を受ける。したがって、放射線による有害な環境から人と環境を守るための原子力の安全体制づくりとして、地方自治体が関与できる仕組みを構築することは大変重要だと思いますが、大臣の見解を最後にお伺いいたします。

○細野国務大臣
 大変重要な御指摘を最後にいただいたというふうに思います。
 これまでは、立地自治体及び隣接の自治体に対してのさまざまな原災法上の関係というのはございましたけれども、自治体においては、それ以上に事業者との安全協定というのがむしろ重視をされてきた面があったやに私は感じております。やはりそれは、国としてのコミュニケーションのあり方として、それ自体は否定をしません、これからもいろいろな役割を担うというふうに思いますが、やはり、もう少し密なるコミュニケーションをとるべきであったのではないかという反省は必要だというふうに感じています。
 特に、指針の中間報告でも、UPZという形で範囲を拡大をするというようなことも本格的にこれから検討されますので、その中で、地元の自治体との事業者も含めた建設的なコミュニケーションをどのように深めていくことができるか、ここは知恵の出しどころだというふうに思っています。
 余り慌てるよりは、じっくり地元の自治体と少し協議をした方がいいのではないかというふうに思っておりますので、新しい規制組織ができた暁には、真っ先にそうしたことに取り組みたいと考えておるところでございます。

○江田(康)委員
 時間でございます。きょうは十分な審議をさせていただきました。
 ありがとうございました。

○生方委員長
 次に、斎藤やすのり君。

○斎藤(や)委員
 新党きづなの斎藤やすのりでございます。
 今後の原子力規制機関のあり方と大飯原発再稼働の話というのは、切っても切れない話だと思いますので、きょうは、最初にこの大飯原発再稼働のことについて質問をしていきたいというふうに思います。
 今週中に大飯原発再稼働決定という報道がなされております。細野大臣、関係閣僚会議というのは今週いつ設定されているんでしょうか。

○細野国務大臣
 昨日、私、福井県に行ってまいりまして説明をしてまいりました。そうした福井県に対する説明、さらには受けとめ方というのも、これもしっかりと確認をした上でこれから検討されるものというふうに考えておりますので、まだ時期について設定をされているという状況ではございません。

○斎藤(や)委員
 非常に国民が不安に感じていまして、慎重にお願いしたいと私から強く訴えたいと思います。
 というのも、世論調査、もう皆さん御存じのように、各社出ております。朝日新聞の世論調査が五四%が再稼働反対で、毎日新聞が七一%が再稼働は急がなくてもいい、そういう結果を出しております。
 この再稼働の是非というのは、実は国会の採決がございません。しかし、この原発というのは、一回トラブルが起きますとこれだけ取り返しのない災害になる、被害になるというのは、今回、本当によくわかったわけでございます。国民生活に多大なる影響が出てしまう原発でございますから、今、原発がゼロになって、これから再稼働するかどうかというのは、国民の審判なり、あるいは国民の代表たる国会議員が審判をする、そういう機会があっても全くおかしくないほど重要な事案であるというふうに私は思います。
 私は、これは個人的な思いですが、選挙をやってもいいと思いますし、あるいは国民投票をやってもいいんじゃないかというぐらいのレベルの話だと思います。しかし、残念ながら、それの国会採決もない。
 そして民主党の中でも、先ほどNHKの報道を見ていたら、百二十名の方が再稼働反対の署名を出したという報道を私は見ました。政党を超えて、これは拙速だろうというそういうムーブメントも非常に強く上がっている中で、細野大臣、大変失礼なんですけれども、四人の専門家でない政治家の責任でこの原発を動かすというのは、国民は納得しないんじゃないか。そしてその四人の政治家の中には、これも厳しい言い方ですが、多くの福島の子供たちを被曝させてしまった、そういう責任を持っている方もいるんじゃないか。しかも、その福島原発の事故原因もまだわからない。これはわからないんですよ。
 細野大臣に一つ質問です。国会の事故調の結果報告というのはいつごろ出るんでしょうか。わかりますでしょうか。済みません、通告していないんですが。

○細野国務大臣
 済みません、六月の末ごろに出るというふうに伺っておりますが、詳細については、済みません、承知しておりません。

○斎藤(や)委員
 いろいろ国会日程のこととかもあるとは思いますけれども、六月末ごろにその事故の結果報告というのが出るというのであれば、それを見て再稼働の是非を決める、あるいは、この規制庁の採決などもその結果が出てからでも私はいいのではないかというふうに思います。
 福島原発の事故の原因がわからないわけです。こんな状況で本当に動かしてもいいのか、安全は確保されているのかというのが、国民に今渦巻いている不安と疑問の声なんです。
改めて聞きます、細野大臣。安全は、大飯原発、確保されているんでしょうか。

○細野国務大臣
 まず、斎藤委員は宮城県御出身で福島ではありませんけれども、いろいろな、間接的なものも含めて、被災をされている方々のその思いを受けとめておられますので、そういった皆さんの思いを代弁して今おっしゃっているということはよく承知をしておりますし、そうした皆さんに対してのどうした説明をしていくべきなのかということについての、まだ課題を抱えているというのも事実だろうというふうに思います。
 その一方で、ここはしっかりと御説明をさせていただきたいんですが、四大臣で判断をしたこの基準というのは、この四大臣が勝手につくったものではないんです。四十回以上にわたりまして専門家がさまざまな議論を積み重ねてきて、それを言うならば集約をする形で判断をしたというものであります。
 基準一と基準二は、これは、東京電力の福島原発で起こったものと同じ津波が来ても炉心溶融には至らないというそういう判断基準。そして基準三は、最高水準の安全を目指すという意味で、三十項目の最終的に達成すべき、最終的にというのはちょっと言い過ぎかもしれません、達成すべき目標として設定をしたその三十項目を前倒しをしたもの、それができているものについて確認をしてつくったのが三つ目の基準。そういったことも含めて安全性について判断をしたということであります。
 その一方で、斎藤委員の方から、安全なのかということで御質問がありましたが、こういうことは申し上げられます。東京電力の福島原発と同じ津波が大飯原発を襲っても、同じような事象が起こったとしても、それについては炉心溶融には至らないということは、私もセカンドオピニオンも含めてさまざま聞きましたので、そこは大丈夫だというふうに言えます。
 しかし、安全について、ではそこで終わったのかといえば、そうではなくて、いろいろなリスクが考えられますし、それについて常に高いレベルを目指していかなければなりませんので、その取り組みはこれからも続けていかなければならないというふうに考えております。

○斎藤(や)委員
 先ほど、午前中の柿沼委員の質問の答弁で、安全神話に陥らないようにしっかりやらなければいけないということに基づいた、今の細野大臣の答弁だったというふうに思うんですけれども、とはいっても、今回の再稼働に関しては、野田総理も細野大臣も枝野大臣も、やはりこれ、言葉は厳しいですけれども、リスクに目をつぶって再稼働させているような私は気がしてなりません。
 やはり新聞報道等々でも言われているように、その防潮堤も、まだくいも打たれていない、工事も始まっていないという情報も入っております。完成は来年度だということですし。それから、何といっても、ストレステストの中に水素対策が評価されていない。それから、この原発の形が加圧水型で、容器内で水素爆発が起こり得る原発であるということ。それから、今回、福島原発で現場作業を支えた免震重要棟が大飯原発にはない。そして、大きな道路が一本しかない、土砂災害が起きたときなどはどうするのだ。
 こういうことをやはり一つ一つ潰して、一〇〇%安全だということが確保されなければ、やはり今の日本は原発を動かす資格はないというふうに私は思っているんです。どうもやはり、再稼働が先、対策は後ということに私はなっているのではないかなと感じております。
 実は、本会議のときにも言いましたけれども、この大飯原発の地震の想定には、一五〇〇年代の天正地震というものの災害の想定、ボーリング調査はされておりますけれども、西暦七百一年の大地震、大宝地震の検証は行われておりません。この前も言いましたけれども、大飯原発のある若狭湾の海沿い、高さ三十メートルの場所に、波せき地蔵という、ここまで津波が来たという言い伝えがある。この一五〇〇年以前の大地震や大津波の検証がほとんどされていない原発を、今まさに再稼働しようとしているそういう現実があります。こういう ところも、ぜひ野田総理もそして細野大臣にも耳を傾けていただければ幸いです。
 そもそも、なぜ大飯原発をそんなに再稼働を急ぐのかという点を細野大臣にお聞きしたいと思います。

○細野国務大臣
 斎藤委員にここはぜひ申し上げたいんですけれども、なぜこれまで根本的な対策が打たれてこなかったのか、そういう防潮堤のようなものもそうだし、免震重要棟も、東京電力はつくりましたが、ほかの電力会社はつくっていませんね。いろいろな根本的な対策がなぜおくれてきたのか、これは根本的にしっかり考え直した方がいいと思うんです。
 なぜかというと、それをやると言った瞬間、では危険なんだろう、できるまでは動かしちゃいかぬという議論が出てくるだろうと思って怠ってきたんですよ。それを安全神話と呼んでいるんです。
 そうじゃないんです、今やらなきゃならないのは。常に高いレベルを目指して、何年かかっても、やらなきゃならないことはどんどん上を目指していく。そして、今できることはやっていく。常にそれをやり続けていかないと、本当の意味でのリスクを管理して、そして安全性を高めていくことはできないですよということなんですよ。
 ですから、その繰り返しを余りしてしまうとむしろ安全体制が進まないということにもなりかねないので、それはもうやめようというのが、これが安全に対する考え方なんだということを、ここは本当に心配をされている斎藤委員だということがよくわかりますので、あえて申し上げたいと思います。
 そこで、波せき神社なんですが、本会議で御質問いただいて非常に記憶に残りまして、私も調べました。私は綾部で生まれておりまして、宮津市は隣なんです。土地カンがございます、すぐ近くですから。どういったところにあるのかも確認をいたしました。確かに三十メートルぐらいのところに神社があって、そしてそこにお地蔵さんがいて、そこに確かに立て札が立っているという写真も確認をいたしました。
 ただ、例えば古文書があるかとか、これまでのさまざまな周辺の調査なども含めてそういう科学的なデータがあるかといえば、それは今のところ確認をされていないということなんです。
 もちろんずっと検証はしますから、ないことを証明するのはなかなか難しいですから、やり続けなきゃならないというふうに思いますけれども、現段階においては、さまざまな知見を集約して、どうもそういう事実は必ずしも認められないのではないかということをしっかりと確認をした上でこういう判断をしているということは御理解をいただきたいと思います。
 ただ、何度も申し上げますが、安全神話に陥ってはいけませんので、地震対策、津波対策、何が来たのかということについて最新の知見を常に探って、そして新しい知見が出てきた場合にはバックフィットをする、それでこれはおかしいということになれば、それは勇気を持ってしっかりととめていくということはやっていかなければならないと考えております。

○斎藤(や)委員
 あともう一つ、済みません、大臣。なぜ大飯原発をそんなに急ぐのかというところですね。お願いします。

○細野国務大臣
 大変失礼いたしました。
 大飯原発だけを急いでいるということではないんです。なぜ大飯原発三号機、四号機を先行してこういう形でやっているかと申し上げますと、ことしの三月までに手続が終わっておりました。新しい規制組織は四月以降に誕生させる予定でありましたので、三月までは既存の組織でしっかりやろうということが当初からの考え方だったわけですね。
 それにのっとって出てきたものですから、それについては常に上のレベルは目指していくんだけれども、現行組織のもとでしっかりと判断をして、そして、それに基づいて再稼働についても検討していくべきだろうという判断をしたものでございます。

○斎藤(や)委員
 その既存の組織が、堂々めぐりになってしまいますけれども、福島の原発事故を起こしてしまった。既存の組織がつくったその基準で本当に大飯原発を再稼働させてもいいのかというのが、今の国民の世論の声なんですね。これからまさに新しい規制庁の下で新しい安全基準をつくる。であるならば、事故後新しくできたその規制庁で、新しい基準のもとで大飯原発を再稼働するべきなのではないかということが国民の世論に今なっております。
 二つ確認があります。
 これから新しい規制庁の下で新しい基準をつくるということなんですが、大飯原発以外はこの新しい基準で再稼働するかしないかを決めるんですねということと、それから、この大飯原発も、再稼働するにしても、あくまでこれは夏の電力不足を補う意味で使う、秋にもう一度とめて、この新しい基準で再度判断するんですか。
 この二つをお伺いしたいと思います。

○細野国務大臣
 大飯原発三号機、四号機以外の原子力発電所については、新しい規制組織が誕生して、そこで判断をしていくというのが適切であると考えております。
 そして、大飯原発三号機、四号機についても、今の基準でもちろん動かすことを今検討しておるわけでありますが、新しい規制機関が誕生した時点で、この基準の是非についても判断をし、そして、その基準そのものが例えばおかしいであるとか、こういったことについて対応しなければ稼働させるべきではないという判断がなされた場合には、それは稼働を停止することはあり得るということであります。

○斎藤(や)委員
 続きまして、原子力規制機関の任務についてちょっと質問をしたいと思います。
 政府案では、この規制機関の任務、これはいわば目的ですけれども、政府案では何のためにこの原子力規制機関を置くんでしょうか、そもそも論なんですが。

○細野国務大臣
 政府提出法案では、放射線による有害な影響から人の健康及び環境を保護することを基本的理念といたしまして新しい組織をつくり規制を強化する、そういう考え方をとっております。

○斎藤(や)委員
 それでは、自公案の方は、この任務についてはどう明記されていますでしょうか。

○柴山議員
 お答え申し上げます。
 私たちの法案では、原子力規制委員会の三条で、「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資するため、原子力利用における安全の確保を図る」ということを任務としております。

○斎藤(や)委員
 ぜひ、そこをきちんとこれから自公と民で、政府の方で修正されると思うんですけれども、必ず、国民の生命それから健康及び財産の保護、環境の保全というのを入れていただきたいんです。そこをぜひお願いいたします。
 今までは、とかく原子炉の安全というところばかりがフィーチャーされていましたけれども、やはりこれだけの大きな事故があったわけですから、国民の安全というところに焦点を当ててぜひ盛り込んでいただければというふうに思います。よろしくお願い申し上げます。
 さて、原子炉の運転期間について、午前中、矢崎委員からも質問がありましたけれども、何度も言っていますが、福島原発事故の検証が終わっていないわけで、場合によっては延長を二十年するということなんですけれども、実は福島第一原発一号機も、これは運転開始から四十年たっていたということなんですが、もしかしたら、劣化とかプラントの構造が古かったのが原因で事故が深刻化したということが考えられないでしょうか。このあたりはどうでしょうか。
 なぜ、例外といっても延長を認めるのか。この原因がわからない中で延長を認めるというのは、ちょっと国民の方は納得いかないのではないかなと思うんですが、そのあたりはどうでしょうか。

○細野国務大臣
 福島原発におきましては、四つの原発が事故を起こしたわけでありますけれども、東京電力の福島第一原発においては四つの原子炉が事故を起こしたわけですが、一号機が一番初めに水素爆発をいたしました。これはICの操作の問題も含めていろいろなことが言われているわけですが、結果として、一番古いものが事故を起こしたという面はあるわけです。
 そこも含めて、高経年化というものがどのような影響を原発に及ぼすのかというのは、相当厳しく我が国は見ていかなければならないだろうと思います。
 これまでは、とかく、いわゆる放射性物質による、中性子による脆化の部分、格納容器のまさにかたさの問題が注目をされてきたわけですが、むしろ私は、システムそのものの古さにどう向き合っていくのかということをこれから議論していくべきだというふうに思います。そこも含めて徹底的な検証が行われた上でこの四十年というものを運転期間として設定をし、それが、延長が例えばあり得るとすればどういったことなのかということについては、科学的にしっかりとお示しをしなければ、これはとても延長を認められるものではないというふうに考えます。

○斎藤(や)委員
 世界では五十年以上稼働した原発はないということ、それから、矢崎委員も言っていましたけれども、ドイツでは三十二年で廃炉にしているというのがありました。
 午前中、細野大臣が、圧力容器は原発の運転で出る中性子を浴び続けるともろくなるという答弁がございましたけれども、これ、その発言の後に私もちょっと調べてみました。プラントに仮にトラブルがあって、急激に冷やすと割れるおそれがあるということのようです。
 金属の場合、劣化が進むと、ある温度より低くなると、まるで陶磁器が割れるように小さな力であっさりと割れてしまう。この温度を脆性遷移温度というそうなんですけれども、原発の脆性遷移温度を見てみると、やはり新しいのが温度が低いんですね。運転から七年の女川三号機はマイナス四十五度。でも、古いプラントは軒並み高くて、四十年たった美浜一号機は七十四度、三十五年たった玄海一号機は九十八度。冷やすためにはいわば熱湯をかけなきゃいけない状況になっているわけで、九十八度の玄海一号機の原子炉は、いわば本当に陶器のような状況になってしまっていて、簡単にひび割れして破断してしまうおそれがあるということでございます。
 福島の事故は深刻ですけれども、それでも放射性物質の九割は容器内に残っているというふうに言われております。この圧力容器が割れたら大変なことになります。
 何を言いたいのかというと、古い原発というのは、もう皆さん御存じのとおり、リスクがあるということでございます。運転期間の延長というのは、事故リスクを高める。技術への過信、検査しているから大丈夫だというのは、それこ