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第183回 国会 衆議院 決算行政監視委員会

第183回 衆議院 決算行政監視委員会第二分科会 第1号
平成25年6月21日(金)
午前九時開会

【本日の会議に付した案件】
 平成二十一年度一般会計歳入歳出決算
 平成二十一年度特別会計歳入歳出決算
 平成二十一年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成二十一年度政府関係機関決算書
 平成二十一年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成二十一年度国有財産無償貸付状況総計算書
 平成二十二年度一般会計歳入歳出決算
 平成二十二年度特別会計歳入歳出決算
 平成二十二年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成二十二年度政府関係機関決算書
 平成二十二年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成二十二年度国有財産無償貸付状況総計算書
 平成二十三年度一般会計歳入歳出決算
 平成二十三年度特別会計歳入歳出決算
 平成二十三年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成二十三年度政府関係機関決算書
 平成二十三年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成二十三年度国有財産無償貸付状況総計算書
 (総務省、財務省所管、株式会社日本政策金融公庫、文部科学省及び防衛省所管)

○三谷分科員
 今、B―CASシステムの後継といたしまして、これは二〇一二年七月末から関東近県で開始されて、本年四月には実は全国運用が開始されたTRMP方式というものがあるということなんですけれども、こちらについて伺いたいと思います。
 このTRMP方式というのは具体的にどのような方式、どのようなプロテクトでしょうか。 

○柴山副大臣
 今御質問いただいた、B―CASの後継として採用されておりますTRMP方式なんですけれども、これは、受信機のチップに内蔵されたソフトウエアを利用いたしました新しい方式であります。今のB―CASカードと違って市販のカードリーダーで読み書きをできないということから、物理的により堅牢なシステムであるというように考えております。
 また、暗号鍵もB―CAS方式よりも強化をされておりますので、セキュリティーは向上しているということで、暗号鍵の長さを非常に長くすることによりまして解読に要する時間が大幅にふえるということで、セキュリティーが大幅に強化をされるシステムであるというように説明できると思います。 

○三谷分科員
 ありがとうございます。
 こちらについて、カードという物理的なものを配布するというものではなく、そういったソフトウエア、プログラムを組み込むことになっているというふうな話ですけれども、プロテクションというのは以前のB―CASのものに比べて強くなっているという御説明を今いただきましたが、そうはいっても、イタチごっこの部分というのはあろうかと思います。
 これは、一旦またハックされた場合への対策というのは講じることはできるんでしょうか、このTRMP方式は。

○柴山副大臣 
 これは、今委員御指摘のとおり、イタチごっこの部分というのは当然あるんですけれども、例えば、カードの情報を改ざんするというより、内蔵されたチップについて暗号を解読してハッキングをするということであれば、それに対応する新たな捜査手法というのを、当然、警察当局等と連携をし、あるいは事業者と連携をしてとっていくということになっていこうかと思います。それは、当然、技術の進展に伴って、私どもも所管省庁と連携をして対応していきたいと思っております。

○三谷分科員 
 ありがとうございます。
 TRMP方式というものができている、これも最近私は勉強して知ったんですけれども、本当にこれで、費用も四百円もかからない、もっともっと安価で対応できるという話も伺っております。B―CASカードの今のシステムよりも何かすぐれているような印象を受けるんですけれども、このTRMP方式というものについて検討が始まったのはいつぐらいだったというふうに御認識されておりますでしょうか。事前の通告はなかったので、できれば参考人の方に答えていただければと思います。

○柴山副大臣 
 検討が始まった時期というのは、今、ちょっと調べなくてはいけないということで事務方の方に検討してもらいますけれども、実際にスタートしたのが二〇一一年の六月、二〇一二年の七月末から関東広域圏において、そして二〇一三年四月から全国において運用開始ということで、非常に新しいシステムであろうというように思っております。

○三谷分科員 ありがとうございます。
 二〇〇九年から、実際、B―CASカードの不正利用というものが始まるはるか前からTRMP方式の検討が始まってきたということは、正直なところ、B―CASカードというものは最終的な手段ではないということは当時から恐らく認識されていたのかなというふうには推察しております。
 TRMP方式というものは、現時点では一般社団法人が運用しているというふうに理解をしております。総務省といたしまして、運用しているというこの一般社団法人に対して、何らかの財政的な支援または行政的な施策を講じているということはありますでしょうか。

○柴山副大臣 お答えいたします。
 今申し上げたTRMP方式は、放送事業者によって自主的に設立された一般社団法人である地上放送RMP管理センターによって運営をされているんですね。それで、総務省として、これに対して指導監督をしているという事実や、財政支援をしているという事実はございません。
 もちろん、放送コンテンツの保護の方式につきましては、先ほど私が申し上げたとおり、公益上の問題が絡んできますので、総務省として非常に関心を持っているわけですけれども、基本的に、この法人に対する監督あるいは支援ということは、今申し上げたように行っておりませんし、私どもの職員のOBが再就職をしているというような実態もございません。

第183回 国会 衆議院 災害対策特別委員会

第183回 衆議院 災害対策特別委員会 第5号
平成25年5月10日(金)
午前九時一分開会

【本日の会議に付した案件】
・政府参考人出頭要求に関する件
・災害対策基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五六号)
・大規模災害からの復興に関する法律案(内閣提出第五七号)

○畑委員
 防災行政無線のあり方なんですね。実は、これはいろいろな公共団体で使い方が一定していないという問題意識があります。例えば、ある公共団体は、行事のためにめちゃくちゃ頻繁に防災行政無線を使う。これは生活の平穏にも非常に支障があるというかうるさいわけですけれども、ただ、流されているけれども聞こえないと逆に不安をかき立てる。こういう使い方がいいのかどうかという思いがあります。あと、そういうことに使わない、抑制的に使っているところももちろんあります。あるいは、災害だけに基本的には使っているわけですが、例えば注意報レベルでも流してしまう、あるいは、本日は空気が乾燥していますから気をつけてください、こんなレベルでも頻繁に流す。こういうことをやっていると、いざ防災情報が流された場合に、オオカミ少年じゃないですけれども、何だ、また何か流しているなということで、ぴんとこなくなってしまうような危険性を私は感じております。ですから、ここは、地方の実情に任せるという部分はあるんですが、やはり準則というぐらいの大枠、こういう考え方の整理をひとつしていただいて、防災行政無線はこういうふうに使いましょうという、ちょっとその辺の整理をしていただきたいなと思うんですが、いかがでしょうか。

○柴山副大臣
 お答えをいたします。ちょっとここではっきりさせておきたいんですけれども、防災行政用無線局の目的は、電波法関係審査基準でこのように定められております。「それぞれの地域における防災、応急救助、災害復旧等に関する業務及び地方行政に関する業務の遂行上必要な無線通信を行うために開設するものである」。したがって、この目的に合致する内容であれば、防災行政無線による情報提供は、まさしく地方公共団体の判断で実施されることとなっております。災害というのはしょっちゅうあるわけではありませんから、平常時における行政情報の提供は、災害時における防災情報の提供に対する訓練という意味合いもあるわけです。音で発出するわけですから、いざというときに、日ごろ使っていなくて全然聞こえないよというのじゃ困るわけですね。ですから、御指摘のとおり災害時には防災情報の提供をまず優先するべきであると考えられますけれども、平常時には、御指摘のように例えば気象情報ですとか雨量や河川情報以外に、地方公共団体がそれこそ地域の実情を踏まえて、みずからの判断で行政情報と防災情報の提供をバランスをとって運用して、当該設備の有効活用を図っているということだろうというように思っておりまして、情報提供の内容について国が統一的な基準を設けるということは、必ずしも適当ではないのではないかというように考えております。

第183回 国会 参議院 議院運営委員会

第183回 参議院 議院運営委員会 第29号
平成25年6月5日(水)
午前九時三十五分開会

【本日の会議に付した案件】
・日本放送協会経営委員会委員の任命同意に関する件

○副大臣(柴山昌彦君) 
 日本放送協会経営委員会委員浜田健一郎君、北原健児君、澤登久子君、竹中ナミ君及び室伏きみ子君の五氏は六月十九日に任期満了となりますが、浜田健一郎君及び室伏きみ子君の二氏を再任し、北原健児君の後任として上田良一君を、澤登久子君の後任として宮田亮平君を、竹中ナミ君の後任として美馬のゆり君を任命いたしたいので、放送法第三十一条第一項の規定により、両議院の同意を求めるため本件を提出いたしました。
 何とぞ、御審議の上、速やかに同意されますようお願いいたします。

第183回 参議院 議院運営委員会 第17号
平成25年3月29日(金)
午後一時開会

【本日の会議に付した案件】
・人事官の任命同意に関する件
・検査官の任命同意に関する件
・会計検査院情報公開・個人情報保護審査会委員の任命同意に関する件
・情報公開・個人情報保護審査会委員の任命同意に関する件
・公益認定等委員会委員の任命同意に関する件
・預金保険機構監事の任命同意に関する件
・公認会計士・監査審査会会長及び同委員の任命同意に関する件
・電気通信紛争処理委員会委員の任命同意に関する件
・中央更生保護審査会委員の任命同意に関する件
・公害健康被害補償不服審査会委員の任命同意に関する件
・立法事務費の交付を受ける会派の認定に関する件
・本日の本会議の議事に関する件

○委員長(岩城光英君)
 次に、総務副大臣柴山昌彦君。

○副大臣(柴山昌彦君) 電気通信紛争処理委員会委員である各務洋子君は本年三月三十一日に退任いたしますが、後任として荒川薫君を任命いたしたいので、電気通信事業法第百四十七条第一項の規定により、両議院の同意を求めるため本件を提出いたしました。何とぞ、御審議の上、速やかに同意されますようお願いいたします。

第183回 参議院 議院運営委員会 第7号
平成25年2月26日(火)
午後三時二十八分開会

【本日の会議に付した案件】
・理事補欠選任の件
・検査官の任命同意に関する件
・総合科学技術会議議員の任命同意に関する件
・公正取引委員会委員長及び同委員の任命同意に関する件
・国家公安委員会委員の任命同意に関する件
・預金保険機構理事長及び同理事の任命同意に関する件
・電波監理審議会委員の任命同意に関する件
・日本放送協会経営委員会委員の任命同意に関する件
・労働保険審査会委員の任命同意に関する件
・中央社会保険医療協議会委員の任命同意に関する件
・社会保険審査会委員の任命同意に関する件
・中央労働委員会公益委員の任命同意に関する件
・運輸審議会委員の任命同意に関する件
・運輸安全委員会委員長及び同委員の任命同意に関する件
・公害健康被害補償不服審査会委員の任命同意に関する件
・本日の本会議の議事に関する件

○副大臣(柴山昌彦君)
 電波監理審議会委員山田攝子君及び山本隆司君の二氏は平成二十四年十二月三日に任期が満了したため欠員となっているところでありますが、山田攝子君の後任として村田珠美君を任命し、山本隆司君を再度任命いたしたいので、電波法第九十九条の三第一項の規定により、両議院の同意を求めるため本件を提出いたしました。 次に、日本放送協会経営委員会委員であった數土文夫君は平成二十四年五月三十日に退任いたしましたが、後任として室伏きみ子君を任命いたしたいので、放送法第三十一条第一項の規定により、両議院の同意を求めるため本件を提出いたしました。 何とぞ、御審議の上、速やかに同意されますようお願いいたします。 以上です。

第183回 国会 参議院 総務委員会 New!!

第183回 参議院 総務委員会 第12号
平成25年5月30日(木)
午後一時開会

【本日の会議に付した案件】
・理事補欠選任の件・政府参考人の出席要求に関する件
・電波法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○藤末健三君
 民主党・新緑風会の藤末でございます。
 私は、この電波法、非常に重要な法だと思っておりまして、やはり電波、有限の資源ということが余り認識されていないんではないかと思っております。
 皆様御存じのように、有線であれば、線であれば、線を増やせばどんどんどんどん通信の量は増えますけれども、電波はもう空間しかございません。この空間にどれだけの電波を使うか、有効に使うかというのは非常に大きな、限られた資源を割り当てるこの電波法の意義は大きいと思います。
 私は、そのような観点から、二つのポイント、一つは、いかに電波を使ったイノベーションを進めるか。今、成長戦略の議論なんかがされているところではございますが、この電波の分野では非常に大きな成長の可能性があるんではないかと思います。そしてまた同時に、グローバリゼーション、経済を成長する機動力としてのグローバリゼーションに電波法の観点からどのように対応するかということについて御質問申し上げたいと思います。
 まず初めに御質問申し上げたいのは、今、移動通信、スマートフォンが出てきまして、その通信の量、トラフィックは大体年間二倍のペースに拡大しているという状況でございます。先ほど申し上げましたように、電波というのはもう限られた資源でございますので、これを今電波法の中でいろいろ再編を行ったり、また利用効率化努力ということで技術開発を進めるということでございますが、年間二倍のペースがこのまま続いたときに、恐らく電波の利用の配置換え、そして恐らく電波の多重化、いろんな技術があるかもしれませんけれども、恐らく間に合わないんではないかというふうに考えます。
 いろいろなやり方はあると思うんですけれども、例えば公衆無線LANなどを増やすという話もございますけれども、一番お聞きしたいのは、これ柴山副大臣にお聞きしたいと思うんですけれども、級数的に増えていく電波の使用のトラフィックの増加、それとどう対応していくか、そういう大きな枠組みをお答えいただきたいと思います。お願いいたします。

○副大臣(柴山昌彦君)
 お答え申し上げます。
 今委員が御指摘のとおり、移動通信のトラフィック、年間約二倍の非常に速いペースで大変逼迫をしている状況であります。
 今御指摘になったように、総務省の方では、周波数を有効活用する、帯域を圧縮させるですとか、あるいは高い周波数の方を使っていただくというような技術など、研究開発を進めております。そして、周波数の再編を行って必要な追加の割当てをしていくというような形で、現在、移動通信用の周波数として約六百メガヘルツ幅を確保しております。今後は、当面、二〇二〇年までに千四百メガヘルツ幅以上を新たに追加確保して、先ほどの六百メガヘルツと合わせて合計で二千メガヘルツ幅以上とするように取り組んでおります。
 ただ、今御指摘があったように、それで足りるのかという問題意識は持っていなければいけないと思っておりまして、携帯電話事業者においては、この増加するトラフィックに対処するために、基地局の増設によるネットワーク容量の増強ですとか、あるいは利用効率の高い、多くのデータを同時に送信できるLTEの開始などの対応をしておりますし、これも今御指摘があったように、無線LANなどを活用して移動通信トラフィックを固定通信回線などに迂回させるオフロードを推進をしております。こうした取組によりまして、固定通信網も含めたネットワーク全体での対応ということを引き続き進めていければというように思っております。
 以上です。


(中略)


○藤末健三君
 柴山副大臣にちょっと是非、これは提案というか、もし可能であればお答えいただきたいんですけど、今どういう状況かというと、若い方々はLINEを使われている、もう爆発的に増えています。うちの子供もほとんどLINEで話している。もうそれが常識。彼らはやはり携帯の通信という認識とか余りないんですよね。もう普通の電話として使っている、LINEを。
 そういう中で、法律的には何が違いがあるかというと、音声通信というのは途絶えちゃいけませんよ、例えば基地局に停電対策をしなさいとか、質をこれだけしなさいという条件がある。一方、データ通信はもうほぼないです、そういう基準が。しかしながら、データ通信を使っている人はどんどん増えている中でそれをどう見るかということ。 そして、ついでに申し上げますと、例えば東日本大震災があったとき、私、携帯は使えなかったです、はっきり申し上げて。政治家登録していても。私が使ったのは何かというと、スカイプ。スカイプの方が、IPのデータ通信の通話の方が結局使えたというのが現状、これが。でございまして、法的にこの音声というものを維持している、これはもうほとんどアナログの世界。一方、デジタルで飛ばす音声の世界が生まれている中で、この体系を見直さなきゃいけないと思います、恐らく、法的に。
 そして、もう一つ大事なことは何かというと、ビジネス的にもそうだと思う。今後、このLINE、スカイプという動きは起きながら、恐らくキャリアの方がデータ通信を基盤とした音声サービスをせざるを得なくなると思います、これは間違いなく。そういうことを踏まえた上での政策、競争政策もそうだと思います。今、三社プラス一社になっていますけど、この小さな一社はデータ通信だけで戦おうとしている。そういうものも含めて、やはり私は法的な体制を見直すべきだと思うんですけど、もし副大臣、何か御意見がございましたらお願いします。

○副大臣(柴山昌彦君)
 今御指摘のとおり、まさに社会状況、そして技術はもう日進月歩で変化をしているわけですね。ですので、このデータ通信と音声を別のものととらえる今の法制度が遅れているという側面があるのは、私は御指摘のとおり、否めないと思っております。
 ただ、現実には、そうはいっても音声伝送役務の技術基準を守って制度設計をすれば、これは両方満たすという状況にあるわけですから、今御指摘のような技術環境の変化も含めて、設備の共用化などの効率化ですとかサービスの向上、そして技術発展ということを総合的にやっぱり見ていくことが必要であるというふうに思っております。


(中略)


○藤末健三君
 是非、その準天頂衛星、私ずっと推していましたので、利用を是非進めていただきたいと思います。
 本当に、やっぱりアメリカと同じことをやっちゃまずいと思いますので、日本らしいテクノロジーを使ってきめ細かいサービス、恐らく、僕は正直言ってアメリカの道路で成功しても絶対日本じゃ失敗すると思うんですよ、あっち、めちゃくちゃ道広いですからね、信号もないし、はっきり言って、と私は思っています。だから、本当に準天頂衛星ぐらいのものを使わなければ私は日本ではできないと思いますので、日本でできれば、次、準天頂はアジアで使えますから、まさしくそういうビジネス展開をしていただきたいと思います。
 そういうことでございまして、海外への展開、このワイヤレスのビジネスにおける海外への展開というのは非常に重要でありまして、今回、柴山副大臣におかれましてはミャンマーへ行っていただきまして本当にありがとうございました。あれは私行きたくて企画してまして、実は。柴山さんに行っていただいて本当に良かったし、また同時に、郵便のシステムの話をしていただいたのは本当に有り難かったと思います。また、インドネシアも行っていただきまして、防災ICTの話も見事成就していただいたということは非常に有り難いと思います。 そういうような、私は、これからもこの情報通信、ASEANの市場というのは非常に大きいものがあると考えているわけでございますが、この日本のICTを海外に展開するということにつきまして、柴山副大臣の見解をお聞きしたいと思います。お願いします。

○副大臣(柴山昌彦君)
 ありがとうございます。
 今御指摘になったように、日本らしさということで、ASEANのこれからの有望な市場を開拓していくということは双方にとって極めて意義のあることであるというように思っております。
 まず、今御指摘になられた、今後民主化が進み、成長余力が大きいミャンマーに対する取組、これは極めて重要でありまして、先日、安倍総理がミャンマーを訪問され、そしてインフラ整備への支援を表明したところなんですけれども、その直前に、先方の情報通信担当大臣が訪日をされまして、私も面会をさせていただきました。そして、今御指摘があったとおり、私自身、一月の下旬に関連企業とともにミャンマーを訪問させていただきまして、我が国のICT製品ですとか情報通信網、サービスの展開につきまして官民併せての働きかけということをしてまいりました。
 そして、今御指摘になった防災ICT分野につきましては、私が申し上げるまでもありませんけれども、新藤総務大臣が今年四月にインドネシアを訪問された際に、防災ICTシステムの早期導入に向けた具体的な取組について合意をしてもらいました。
 今後、こういった取組を他のASEAN諸国の方に進めていきたいというように考えておりますし、また、他の省庁との連携によりまして、例えば他の省庁の所管するインフラなどともパッケージにして、しっかりと官民挙げて展開をしていきたいというように思っております。


(中略)


○小坂憲次君
 消防救急無線、また防災行政無線のデジタル化、今回の電波法の改正の議題でございます。この電波法の改正の頭に、現に設置されているというのが今回のこの消防救急無線、防災行政無線のデジタル化に際して市町村の補助をするスキームの原則でございます。この現に設置されているアナログの機器をデジタル化する、そのためには百五十、四百の防災行政無線、あるいは百五十の消防救急無線、これを移行することによって電波の有効活用ができる、結構なことでございます。しかし、これにはメリット、デメリットあるはずでございます。
 デジタル化することによるメリット、それはデータが一緒に送れるようになる、あるいは、準動画という表現を使っているようですが、簡易な動画、非常に滑らかな動画ではないかもしれないけれども動画情報も送れるようになる、そして音声も明瞭になるだろうと、こういうことでございますが、このデータ通信はいろんな活用方法があると思います。後に指摘したいと思います。
 また、デメリットもあると。デジタル化することによって電池の消費量が非常に大きくなりますので、ポータブルの通信機については電池容量を増すとか、あるいは、増せば少し重くなりますが、当然その影響で大型化、大型というよりも少しサイズが大きくなる、こういったデメリットもあるかもしれません。
 こういったメリット、デメリットあるんでございますけれども、まず、先ほどもちょっと質問が出ていたし、衆議院の方でも既に質問が出ているようでございますけれども、この消防救急無線のデジタル化は二十八年五月までに終わるということになっております。現在の消防救急無線、使っている対象の消防本部は、もう一方の施策で広域化を推進をしております。 広域化を推進しながら、同時に一方では二十八年の五月までにデジタル化を終わると。広域化は二十九年末でございますから、そこに若干時間の差もございます。
 一生懸命デジタル化したら、今度は広域化して、今度範囲が変わってまた別の枠組みでやらなきゃいかぬ、こういう二重投資あるいは二重負担のようなことにならないように、無線機ですから、チャンネルは共通のチャンネルあるんで、それでできるではないかというのもあるかもしれない。しかし、どういうスペックでつくるかによりますが、そういったデメリットも考えられますが、これに対して、こういった問題は認識をされていると思います。どのような対策を考えていらっしゃるでしょうか、担当の方から御回答願います。

○政府参考人(市橋保彦君)
 ただいま御指摘ございました消防救急無線のデジタル化、これは通信基盤強化のために平成二十八年五月を期限として推進しております。また一方で、消防の広域化につきましては、消防体制の確立や消防力の拡充のために、現在、平成三十年四月一日を期限として推進しているところでございます。この二つの施策、お互いに独立した施策でございますけれども、共に消防体制を強化していくという意味で非常に重要な施策でございまして、できるだけ相互に、共に速やかに進めるよう努力をしているところでございます。
 また、御指摘がございました、広域化によりまして整備したデジタル化が手戻りが生じてしまうということは非常に無駄につながるわけでございまして、そういう広域化を計画しているような、それが具体化しているような団体につきましては、それを見極めながら整備を進めていくというふうなことで、そういう留意点につきましても助言をしているところでございます。

○小坂憲次君
 当然のことかもしれません。財政力の弱い市町村がどこに今度は広域化するかということは真っ先に考えなきゃいかぬことでしょうから、短期的に財政力の弱いところから手を着けるということであればなおさらのこと、そういったところにしっかり目配りをして調整をしていただきたいと思います。
 それで、先ほど、現に設置されているという条件が付いていると、このスキームは、現に設置されているということになりますと、今、全ての市町村は、消防救急無線と行政防災無線、全て持っているんでしょうか。この点について、まずお伺いしたいと思います。

○政府参考人(市橋保彦君)
 お答えいたします。
 消防救急無線につきましては、消防本部が当然これは保有しているということでございます。また、今回の対象となります市町村防災行政無線、これの移動系につきましては平成二十四年三月三十一日現在で整備率八一・九%というふうに把握しているところでございます。

○小坂憲次君
 そうすると、片方しか整備していないというところ、すなわち、多分消防救急の方が整備率は高いんだと思うんですが、あるいは逆ですか。その場合、欠けている方を新たに、現在アナログで機器を持っているんではなくて、新たにそこにデジタルの機器を入れようとした場合、これは今回のスキームの対象になるんでしょうか。

○政府参考人(吉良裕臣君)
 お答え申し上げます。
 今回は、消防救急無線、それから市町村防災行政無線の整備、原則どちらも市町村が整備することは整備するわけでございますが、既に一方の無線を自力でデジタル化整備を行った市町村については、残りの無線のデジタル化を行う場合には補助対象とします。
 片方のみの無線のみを整備している、今のお尋ねの件でございますが、市町村については、前提が、両方を一緒にデジタルに移行するということを前提としておりますので、片方のみ整備されている市町村についてはデジタル化が行われる場合に広げるということはなかなか困難であろうというふうに思っておりますが、その場合でも、このケースも空き周波数が出るということがありますので、検討してみたいというふうに考えておるところでございます。

○小坂憲次君
 そうしますと、百五十と四百の防災行政、そして消防救急の百五十、これ両方一体で二百六十に移行したときにこの補助スキームを発動するという原則で、今言われた前段はいいんです。後段の部分の、片方しか整備していないところに新たにもう片方をデジタルで整備する。これをこの費用から出すとなると、先ほどの吉川さんの質問の中での、電波法の使途の範囲にこれ入るのかという疑問とぶつかってくると思うんですが、この辺はどういうふうになるんでしょうか。

○政府参考人(吉良裕臣君)
 先ほど申し上げましたように、そういう面でこれを補助するのはなかなか難しいというふうになろうかと思います。

○小坂憲次君
 ということは、自主財源でやれ、あるいは地財措置でやれと、こういうことなんでしょうか。どうですか。

○政府参考人(吉良裕臣君)
 電波法上のこのスキームにはなかなか乗っかってきませんので、自治財源あるいはその他地財措置で対応するということになります。

○小坂憲次君
 であるならば、財政力の弱いところに対して発動するスキームですから、当然、片方が欠けていてその対象になるとすれば、財政力が弱いということになります。ですから、そういうところに対しての地財措置、これを是非とも積極的にやるということの御答弁をいただきたいと思いますが、大臣いらっしゃらないので、副大臣いかがでしょうか。

○副大臣(柴山昌彦君)
 これは、今御指摘になられたとおり、従前の地財措置等のストラクチャーで対応しておりますので、自主努力と併せてそういったスキームを使って、きちんとした普及ができるように努力をしてまいりたいと思っております。


(中略)


○小坂憲次君
 さて、デジタル移行ということでいいますと、最初にスカイツリーの話をしましたが、VHF帯がそれで空いたわけですね、七十六から九十メガヘルツと百七十から二百二十二、この最初の方をV―LOWといい、後の方をV―HIGHといって、二つの区分で移行後のこの空き地をどのように使うかということがあります。
 ここで二つ、ちょっとテーマでお話をしたいんですが、一つはいわゆるそのV―HIGH、百七十から二百二十二メガヘルツのこの空き周波数を活用した新しい試みで、スマートフォン向けのマルチメディア放送、具体的に言うとNOTTVというのがあります。このNOTTVの、二十四年の四月に開始したわけですが、このマルチメディア放送という枠組みでスタートしたこの事業には、広域専用電波利用料として、これはそのままで計算しますと、一メガヘルツ約一億円弱ですから、割当ての十四・五メガヘルツを掛けますと十三億八千万円となるわけですね。非常に高額の利用料を払わなきゃいかぬということになります。新しい試みのものがこれだけ大きな負担を覚悟しなければ立ち上がれないとなりますと、後を続く者が余り出てこなくなります。後を続く者が出ないということは、すなわち競争が促進されず、そして新たなビジネスチャンスも奪われてしまうということになります。
 こういったものについては、やはり放送であって、これは防災面でも活用は可能だと思います。そういう役割もどんどん出てくるでしょう。そういった意味からは、いわゆる特性係数という、生命、財産保護に寄与するか、あるいはあまねく受信責務を負わせるというようなことに配慮して軽減措置が図られていると。このいわゆる特性係数を適用してあげればもっと軽い負担で済む、そして後発者も出やすくなる。
 こういった軽減措置を、ニュービジネスに対してインキュベーターとして何かこの軽減措置を講じるという考えはおありでしょうか、大臣。じゃ、副大臣お願いします。

○副大臣(柴山昌彦君)
 ありがとうございます。
 今御指摘になったV―HIGHマルチメディア放送というのは、地上アナログテレビの停波した後の周波数のうち二百七・五メガヘルツ以上二百二十二メガヘルツ以下の周波数を利用して行う携帯端末向けの放送でありまして、それで、今御指摘があったとおり、平成二十三年度のこのV―HIGHマルチメディア放送の電波利用料の負担額は約十三億円とかなり高額であることは事実であります。
 ただ、この料額については、平成二十三年度の電波利用料の見直しの際に取りまとめられました電波利用料制度に関する専門調査会基本方針における方針でありまして、地上デジタル放送に移行した後の空き周波数帯を使用する新しい免許人は、他の免許人以上に多額の費用を要する地上デジタル放送移行対策の受益に対する負担を行っているわけではないという理屈から、基本的に新たに特性係数の適用は行わないという提言、これを受けて、今御指摘になった特性係数を適用せずに料額を算定をしているわけなんですね。
 ただ、平成二十六年度から適用する次の電波利用料の在り方については、今年の三月から電波利用料の見直しに関する検討会を開催しております、先ほど大臣から御説明がありました。その中で、こういった新規参入事業者に適用する電波利用料額の軽減措置は果たしてどうあるべきかというのがまさしく論点の一つに挙がっているところであります。
 この検討会におきましては、意見募集やヒアリングの際に様々な意見をいただいているところでありまして、今後、これらを十分に踏まえて、今年八月に予定している基本方針の取りまとめに向けて議論をさせていただきたいというように思っております。


(中略)


○片山虎之助君
 そこで、今、電波利用料については検討会をつくって、副大臣が中心のようですけれども、検討中のようですが、大まかなスケジュールと大きな論点はどこなのか、教えてください。

○政府参考人(吉良裕臣君)
 お答え申し上げます。
 電波利用料制度というのは、電波法によりまして少なくとも三年ごとで見直すということで、現在、総務副大臣とそれから総務大臣政務官の主催によりまして、検討会を三月から開始しているところでございます。本検討会では、主に電波利用料を活用して今後強化すべき施策だとか、あるいは電波利用額の軽減措置の在り方、それから今日いろいろ議論が出ておりますスマートメーターだとかM2Mシステムの新しい無線システムに関する料額の在り方等について御議論をいただいているところでございます。
 これまでパブリックコメントやヒアリングを実施してきておりまして、具体的には、歳出規模を抑制的にすべきだというような意見だとか、あるいは電波有効利用の促進のための研究の充実を求める意見だとか、あるいは無線局の特性に応じて適用されます軽減措置の在り方に関する意見、それから携帯電話等に関する料額を周波数幅に応じた課金に一本化すべきとの意見、それからスマートメーターなどの新しいデータ通信システムに関する料額を低減又は免除すべきというような意見をちょうだいしているところでございます。
 今後これらの意見を踏まえて、検討会において、本年の八月ごろまでに料額の見直しの基本方針をまとめていただくという予定になっております。

○片山虎之助君
 八月までに基本方針をまとめて、法案が要るでしょう、それがどういうあれですか。それから、いつから適用なの。二十六年度か二十七年度か。

○政府参考人(吉良裕臣君)
 八月の末ごろ基本方針をまとめていただきまして、この基本方針を受けて新たな電波利用料額を算定して、平成二十六年の通常国会に電波法改正案を提出できるように進めていくと、こういう予定でございます。

○片山虎之助君
 いやいや、そこで、ちょっと先ほども議論が出たんだけれども、結局、電波料の今の負担が、これはバランスが取れて公正なものかどうかという議論があるんですよね。特に、先ほど聞くと、パブコメですか、七百件の中で五百件はテレビ局が割安じゃないかと、負担が低いじゃないかという意見があったという話でしょう。これはもう常に放送と通信はそういう関係にあるんですよ。ただ、今、特性係数で放送は大分まけているわね。あまねくというユニバーサルサービスの問題があるし、あるいは災害報道なんかはある程度責任を持たなきゃいけませんわね、放送は。
 そういうことで、皆さんが特性係数というのでまけているんだけれども、これについてはまたいろんな議論があるので、その辺はどういう方向なんですか。余り詳しいことは言えないかもしれないけれども、ずっと大変な関心があるんですよ、放送業界にも通信業界にも。

○副大臣(柴山昌彦君)
 御指摘のとおり、今委員が御指摘になられた論点は大変大きな関心を集めております。
 この電波利用料の料額算定に当たっては、まず電波利用共益費用を一番目として、例えば研究開発ですとかエリア整備のような電波の経済的価値の向上につながる事務に要する費用、そして二番目として、どの局にも必要な監視業務など電波の適正な利用を確保するために必要な恒常的な事務に要する費用の二つに分けまして、前者については各無線局が使用する周波数幅などに応じて負担を配分しまして、後者については無線局数で均等割、今二百円としていますけれども、といたしまして、それらの合計額を各無線局の料額とするというのが一応原則となっております。
 ただ、その場合に、一部の無線システムについては、その特性を考慮して、実際に使用する周波数幅に軽減係数、今御指摘になられた特性係数ですね、これを乗じることによって負担額を軽減をしているところであります。
 そして、地上テレビジョン放送局の料額の算定に当たっては、あまねく普及努力義務、NHKについてはあまねく普及義務、そして国民の生命などの保護に寄与する災害放送の実施義務という公益的な義務が法律上規定されておりますことから、これらの公共性を勘案して、使用する周波数幅に、二分の一の要素が二つ、そしてそれを掛け合わせて四分の一を乗じて負担額を算定をしております。
 こういった事柄も考慮して今後どうするかということを検討しているわけですけれども、電波法によって少なくとも三年ごとに見直すということとなっておりまして、平成二十六年度から二十八年度に適用する次の電波利用料の検討を行うことを目的とした検討会を三月から開催しているところでありまして、その中でこの特性係数の在り方についても様々な御議論をちょうだいし、先ほど御指摘があったパブリックコメントやヒアリングなどでいろんな方向性の御意見をいただいております。
 ですので、これを現時点でどのようにするか、あるいは放送事業者と通信事業者とのバランスをどのようにするかということについては断言をする状況ではありませんけれども、これからもそういった様々な御意見を踏まえて、本年八月末ごろまでの今御指摘があったような基本方針のスケジュールに従って取りまとめをしていくことにしております。

第183回 参議院 総務委員会 第5号
平成25年3月27日(水)
午前十時開会

【本日の会議に付した案件】
・政府参考人の出席要求に関する件
・参考人の出席要求に関する件
・放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)

○藤川政人君
 是非、積極的な推進をお願いしたいと思います。 もう時間もなくなってまいりました。最後の質問になると思いますが、先ほどから出ております4K、8K、ハイブリッドキャストの開発についてお伺いしたいと思います。 今回の予算の中には、現在のハイビジョンテレビの十六倍の画素数となるスーパーハイビジョン、いわゆる8Kや、通信と放送等の新たなサービスであるハイブリッドキャストの開発の項目がありますが、これがどのような形で視聴者や国の利益につながるのでしょうか、伺いたいと思います。

○参考人(久保田啓一君)
 お答えいたします。 NHKは、これまで新しい放送サービスの研究開発に取り組んでまいりました。今おっしゃいましたスーパーハイビジョンですとかハイブリッドキャストの実用化につきましては、現在、総務省の放送サービスの高度化に関する検討会にNHKも参加いたしまして、その推進を進めているところでございます。 スーパーハイビジョンでございますけれども、これまでは二〇二〇年に実用化試験放送を目指すということで開発を進めてまいりましたけれども、技術の進展のスピードが大変速いこと、あるいは早期実現への要望が強いということを踏まえまして、二〇一六年のリオデジャネイロのオリンピックの時点で実用化試験放送ができないかと。そして、二〇二〇年には本放送が開始できないかということで検討を進めているところでございます。 二〇二〇年でございますけれども、これは今、東京オリンピックの招致を目指しているところでございますけれども、先日、IOCの評価チームの皆さんが日本にいらっしゃいましたときに、このスーパーハイビジョンをプレゼンいたしまして、高い評価を得たところでございます。この高精細映像技術ですけれども、日本のお家芸でありまして、この実用化に取り組むことが日本の国益につながると思いますし、もちろん日本の映像文化、放送文化の活性化あるいは高度化ということにつながるということになると思っております。 今までにない新しいテレビの開発、これが日本の放送業界、家電業界に新しい輝きを取り戻すのではないかというふうに考えているところでございます。

○副大臣(柴山昌彦君)
 ありがとうございます。
 今御指摘があったように、これ、国際競争の観点からも他国に先駆けてしっかりと進めていくということが必要だと思っております。韓国、既にKBSが昨年、実証放送、4Kについては実現をしております。8Kについて後れを取らないように、今御指摘のあった検討委員会等を通じて、しっかりと補正予算の活用を含めて取り組んでまいりたいというように思っております。

第183回 参議院 総務委員会 第1号
平成25年2月26日(火)
午後一時一分開会

【本日の会議に付した案件】
・理事補欠選任の件
・国政調査に関する件
・政府参考人の出席要求に関する件
・地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○委員長(松あきら君)
 柴山総務副大臣。

○副大臣(柴山昌彦君)
 同じく総務副大臣を拝命しました柴山昌彦でございます。 委員長、そして委員の皆様の格段の御指導をよろしくお願い申し上げます。

第183回 国会 衆議院 総務委員会 New!!

第183回 衆議院 総務委員会 第10号
平成25年6月4日(木)
午前九時三分開議

【本日の会議に付した案件】
・政府参考人出頭要求に関する件
・参考人出頭要求に関する件
・地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案
(内閣提出第五五号)(参議院送付)
・行政機構及びその運営、公務員の制度及び給与並びに恩給、地方自治及び地方税財政、
 情報通信及び電波、郵政事業並びに消防に関する件

○佐藤(正)委員
 続いて、電波利用料の軽減についてお尋ねをしたいと思います。 これも、前回の委員会で、放送法でNHKと民放に対して軽減措置が同率になっている、そこで、NHKは義務づけがされていますが、民放は努力義務、どうして義務と努力義務で同じ軽減率になっているんでしょうかねというお尋ねをしましたが、再度この点についてお答え願いたいと思います。

○柴山副大臣 お答え申し上げます。
 前回私の方から答弁をさせていただきましたけれども、この軽減規定の趣旨ということを少し整理させていただきたいと思います。
 前回私が申し上げたとおり、サービスの持つ価値が大切であるかということ、それと、今御指摘のユニバーサルサービスが確保されているかどうか、これはそれぞれ法律で書き分けられております。
 その中で、確かに、放送法においては、NHKに対しては、あまねく全国において受信できるように措置する義務を定めておりますし、また、民放に対しては、その放送対象地域においてあまねく受信できるように努める義務を課しており、このユニバーサルサービスの確保において、あたかも違う表現がなされていて、サービス内容が違うように受け取られるという趣旨だと思います。
 しかしながら、実態としては、同一放送対象地域において、中継局の基地数に関して、NHKと民放において乖離があるわけではありません。例えば、関東広域圏における中継局設置数、NHKが百六十七局、在京キー局五社は各百五十九局と、決して遜色のない水準にあります。また、義務違反に対する罰則は、NHK、民放、それぞれございません。そういった実態が同一であるということが非常に重要です。
 また、法律上も、放送法の目的として、「放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障する」ものということが第一条一号に規定されておりまして、通常の市場活動を超えた責務が法律により規定されているという点において、NHKと民放は異なるものはありません。
 こういったことから、同様の軽減率を適用しているというように御理解をいただきたいと思います。

○佐藤(正)委員 
 であるならば、もう同じ条文にした方がいいですね、実際。
 それと同時に、例えば北海道では、テレビ東京系のテレビ北海道、実は日ハムが日本シリーズに出たときに見られないところがたくさんあるんですよ、見られない地域が。こういう現状も実はあるんですよ。質問時間がなくなって余り細かいことは言いませんが、現実ではそういう実態もある。
 そこで、今度、例えば携帯電話についてお尋ねをしたんですが、携帯電話には普及努力義務というものはありませんというふうに、前回、総務委員会で、吉良局長でよろしいんでしょうか、お答えになりましたけれども、これはそのとおりでよろしいんですか。

○柴山副大臣 
 はい。前回局長から答弁をさせていただいたとおり、電気通信事業法においては、その目的に、放送法第一条に書いてあるように今私が紹介した、普及に関する規定というものはありません。ですので、このような軽減率は現在適用していないということであります。
 ただ、本件も含めて、料額の算定に当たっては、今広く意見募集を行った上で検討しているという状況でございます。

○佐藤(正)委員 
 そこで、先ほど来から8Kの話とか出て、要するに空き地をつくらなきゃという、これはもう一番大前提だと思います。空き地をつくって携帯電話にその空き地を渡したときに、実は、携帯電話事業者の方には、認定後七年後までに全ての管内で人口カバー率八〇%をそれぞれ達成することと入っているんですね。そのときは普及しなさいということを言っているんですよ。携帯電話にその枠を上げるときに言っているんですよ。恐らく、この法律ができたときには、携帯電話がこんなに普及するとは考えていなかったんだろうと思うんですね。
 そこでお尋ねをしますが、この事実を踏まえたときに、先ほど検討されていると言っていましたが、やはりそろそろ少し考え方を変えるときが来たのではないかなと思いますが、いかがですか。

○柴山副大臣 
 今答弁をさせていただいたとおり、電波利用料のあり方に関する検討委員会が、私あるいは橘政務官を筆頭として開かれております。その中で、今委員から御指摘のあったような実態も踏まえて、また一般の意見も踏まえて検討させていただいているところでございます。

第183回 衆議院 総務委員会 第8号
平成25年5月23日(木)
午前九時開議

【本日の会議に付した案件】
・政府参考人出頭要求に関する件
・参考人出頭要求に関する件
・一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二四号)
・行政機構及びその運営、公務員の制度及び給与並びに恩給、地方自治及び地方税財政、情報通信及び電波、郵政事業並びに消防に関する件

○塩川委員
 日本共産党の塩川鉄也です。
 地域住民や沿線自治体に甚大な影響を与えます一部投資家による西武鉄道路線廃止提案問題について、まず最初にお尋ねをいたします。
 三月十一日、西武鉄道を子会社とする西武ホールディングスの筆頭株主、米投資会社サーベラス・グループは、株式公開買い付け、TOBで西武ホールディングスの株式を買い増すと発表しました。その後、株式の買い増しなどを条件変更し、五月三十一日までが期限となっております。
 西武ホールディングスが公表したところによると、サーベラスは西武ホールディングスに対し、都市交通、沿線事業において、少なくとも一千四十五名中八十名の駅員の削減、八%に相当します、を提案する、また、不要路線として西武秩父線、国分寺線、多摩川線、山口線、多摩湖線を列挙する、埼玉西武ライオンズは売却の選択肢としています。
 西武ホールディングスの筆頭株主サーベラスによるこのようなリストラ提案に対し、埼玉県を初め廃止提案がされた路線の沿線自治体がこぞって反対であります。また、埼玉県市長会、埼玉県町村会、十七市が参加する東京都北多摩議長連絡協議会、埼玉県秩父郡市の一市四町議会なども同様であります。西武鉄道沿線全ての自治体あるいは地方議会から路線存続の要望が出ております。
 資料の一枚目にありますように、こういう地方団体、議会から意見表明、要望も出され、二枚目には、東村山市を初めとしました国分寺線、多摩湖線沿線の四市が出された要望書、こういったものがそれぞれからも出されているわけであります。背景には、とんでもないという住民の怒りがあるわけです。
 そこで、最初に、沿線住民の一人でもあります柴山副大臣にお尋ねをします。
 このように、路線廃止問題について沿線自治体と住民からこぞって反対の声が上がっている、こういう声をどのように受けとめておられるのか、お尋ねします。

○柴山副大臣
 塩川委員も私も同じ埼玉八区を地盤としておりまして、まさしくこの西武鉄道の動向というのは地元の大変大きな関心事であります。
 先日出演をしたテレビ番組で、私は、この問題に対しては、確かに民民の問題でありますけれども、ただ、やはり地域の利便性に非常に重大な影響を及ぼす問題であるということから、非常に関心を持っているというような話をさせていただきました。
 私の直接の所管ではありませんけれども、個人的には、地元で行われた署名にも協力をさせていただいておりますし、何としても、まだお互いの条件に食い違いがあるというような報道がありますので確定的なことは申し上げられませんけれども、一住民として、今申し上げたように、沿線地域にとって非常に重要な路線あるいは球団の移転などは、非常に懸念を持っているところでございます。

第183回 衆議院 総務委員会 第7号
平成25年5月21日(火)
午前九時開議

【本日の会議に付した案件】
 ・政府参考人出頭要求に関する件
 ・参考人出頭要求に関する件
 ・電波法の一部を改正する法律案(内閣提出第二五号)
 ・電波法の一部を改正する法律案(原口一博君外三名提出、衆法第一〇号)
 ・通信・放送委員会設置法案(原口一博君外三名提出、衆法第一一号)

○濱村委員
 皆さん、おはようございます。公明党の新人議員、濱村進でございます。
 本日は、総務委員会で質問する機会を与えていただきまして、私にこのような機会を下さった全ての方々に感謝を申し上げたいと思います。
 十分間という短い時間でございますので、まず、大変大事な大事な点について、電波法の一部を改正する法律案につきまして質問をさせていただきたいと思います。
 まず、この改正案の趣旨ですけれども、電波利用料の使い道を拡大するということであるかと思います。電波利用料というのは無線局の免許人が支払うわけでございますけれども、その使途について、使い道については法律事項でありまして、私もこの総務委員になるまで知らなかったんですが、この使途について、人命または財産の保護の用に供する無線設備の整備のための補助金の交付を追加することとなるわけであります。
 端的に言えば、電波利用料の使い道として、防災行政無線あるいは消防救急無線のデジタル化について補助しますよということであるかと思うわけであります。
 既にデジタル化を進めた自治体もありますけれども、二十四年度末におきまして、防災行政無線は三七・六%、移行期限のある消防救急無線につきましては四〇・六%の自治体におきまして、デジタル化がもう既に終わっている状況であるということで聞いております。
 このたびの法改正におきましては、財政力の弱い市町村について優先的に補助金を交付するというふうに伺っております。
 そこで、今、日本だけではなくて世界じゅうで無線環境が逼迫している状況であります。スマートフォン等の普及によって逼迫しているわけですけれども、移動通信トラフィックの急増や、災害に強い通信・放送インフラの整備の必要性が高まってきておりまして、電波のさらなる有効活用、有効利用を実現するための技術開発も必要になってきているわけであります。
 電波利用をめぐる環境が劇的に変化しているわけでありますけれども、こういった背景を踏まえまして、政府として、今後、電波の利用について全体像をお示しいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○柴山副大臣
 お答え申し上げます。
 今委員が御指摘になられたとおり、スマートフォンの普及などによって、移動通信のトラフィックは、今年間約二倍のペースで増加をしております。また、スマートメーターやセンサーネットワークなどの新たな電波利用システムの進展も期待されております。
 こういった増大する周波数の需要に対応するために、総務省においては、周波数を効率的に利用する技術、具体的にはデジタルによって圧縮する、ナロー化と言いますが、そういう技術ですとか、あるいは高い周波数への移行を促進する技術など、電波を効率的に利用するための研究開発を推進するとともに、周波数の再編成を行って必要な追加割り当てを行っております。
 今御指摘になられた移動通信用の周波数としては現在約六百メガヘルツ幅を確保しているところでありまして、二〇二〇年までに千四百メガヘルツ幅以上を新たに確保して、合計で二千メガヘルツ幅以上とするように取り組んでおります。
 いずれにいたしましても、総務省としては、今後とも、積極的に研究開発や周波数の再編によるさらなる周波数の確保を進めていく所存であります。
 以上です。


(中略)


○中田委員
 よろしくお願いします。
 維新の会の時間の中で、私が残りの分をやらせていただきたいと思いますけれども、きょうは、新藤総務大臣、お疲れさまでございます。あわせて、原口元総務大臣もいらっしゃいますので、新旧総務大臣が居並ぶというこの状況の中で、なるべく民主党案にもぜひお伺いをしたいというふうには思っておりますので、その意味では、急ぎ、入らせていただきたいと思います。
 まず、政府案の方からもろもろお聞きをしていきたいと思うんです。
 この電波法の改正案でありますけれども、電波利用料の使途の範囲を拡大していくということでありますね。その中には、市町村の防災行政無線と消防救急無線のデジタル化の費用、これに二分の一の補助をしようということが盛り込まれております。
 私も経験があるわけですけれども、市町村のこうした緊急時の無線体制というものをデジタル化していくというのは当然重要なことでありまして、いざというときの備えという意味においては、これは大いに評価をしていきたいというふうには思っています。デジタル化すれば、当然ですけれども、高速で送ることができるようになるわけでありまして、防災や救急救命活動に資するということであります。
 その意味で、まず基本的なことなんですが、二十四年度末時点でのデジタル化率というのは、データでは、防災行政無線で一三・二%、消防救急無線では四〇・六%にとどまっているということです。だからこそ補助をしていくという趣旨は理解できるわけですが、さて、目標をどのぐらいに置くんですか。しっかりと目標を立ててやってもらいたいと思うわけですが、そこについての御答弁をお願いしたい。

○柴山副大臣
 今御指摘のありました防災行政無線並びに消防救急無線のデジタル化は、今御指摘のとおり、通信の秘匿性の向上に加えて、データ伝送の利用も可能となりますし、効率も飛躍的に高まるということで、いずれも私どもの最終的な目標は一〇〇%デジタル化であります。
 そして、期限についてなんですけれども、まず、消防救急無線のデジタル化は、先ほど来お話がありますとおり平成二十八年五月三十一日が移行期限であって、同期日までに一〇〇%の達成を求めることとしております。
 そして、防災行政無線の移行期限につきましても、今後、情報通信審議会の審議ですとか、市町村における移行計画を十分把握した上で移行期限を検討していきたいと考えております。
 本施策の実施によりまして、財政力の弱い市町村を優先的に、移動系になりますが、防災行政無線のデジタル化を支援すること、及び移行期限を定めるなどによりましてデジタル化の加速を図って、最終的に一〇〇%デジタル化することを目指してまいります。
 なお、デジタル方式への移行期限が平成二十八年五月三十一日と定められている消防救急無線の方につきましては、本施策とあわせて、自助努力による設備整備や、消防庁などの財政支援を行うことで完全デジタル化というふうにしてまいりたいと思っております。
 以上です。


(中略)


○佐藤(正)委員
 みんなの党の佐藤正夫でございます。
 中田委員の質問に「いいね」が大分入ったのかなと思っています。 早速質問に入らせていただきますが、先ほど新藤大臣が言われた、電波利用料、総括原価方式、何のために使って、それで財源がこれだけ要るんだ、それが電波利用料になっていく、まさにそのとおりだと私は思います。そういうことを考えたときに、オークションとはまた別の次元で、今の中ではそういう状況であるので、それを基軸にして質問をさせていただきたいと思うんですね。
 そうしますと、先ほどの質問の中でもあったように、地デジ化が四十数%。今後、あとどれだけ地デジ化のお金が要るのかなという資料を出させていただいたんですが、それでいきますと、平成二十六年から三十年ぐらいの中で、約八百四十五億円がまだ必要であるということです。ですから、これを年で割れば当然出てくるわけです。
 そうなると、基本的に、先ほど大臣が言われたように、これがなくなるとすれば、普通だったら利用料が下がるというのが当たり前だと思います。経費、使うものが減ってくるわけですから、総括原価方式でいけば当然下がっていく、これはそのとおりだと、さっきの答弁は私は納得をしております。
 そこで、何点かお聞きをしたいのが、電波利用料たるものは、本来、先ほどから、十二項目が十三項目になったということでありますけれども、今回の電波利用料の大きな目的は、いわゆるデジタル化によって空き地をふやす、これをまず一義的にやらなきゃいけないということから始まったのだと思いますね。
 国会の総務調査室の方からいろいろ資料をいただきました。そこで見ますと、基本的には、平成八年に、当時の郵政省電気通信局から消防庁に対し、電波の有効利用のために消防救急無線のデジタル化及びナロー化についての協力がなされた。その後、いろいろ消防の方で検討をされてまいった。そして、その経緯を言うと、検討していただいて、消防庁も消防・救急無線デジタル化検討委員会を設置し、進めていくということになった。
 そこを受けて、総務省は、アナログ消防救急無線のデジタル化及びナロー化の移行について、平成二十年四月九日に、先ほど大臣からも審議会、審議会という話がありましたが、電波監理審議会に諮問をしたということでありますが、このことは間違いないでしょうか。

○柴山副大臣
 平成二十年の四月九日の電波監理審議会では、百五十メガヘルツ帯のアナログ方式の消防用無線局について、二百六十メガヘルツ帯のデジタル方式への移行を推進してまいりました。ただ、その移行について一定のめどがついたことから、アナログ方式の消防用周波数の使用期限、先ほど申し上げたように平成二十八年の五月三十一日までとしておりますけれども、これを定めるための周波数割り当て計画、総務省告示の一部変更案について諮問をしたものでございます。
 本件につきましては、この周波数の移行によって利用可能となる百五十メガヘルツ帯が陸上移動通信に適した周波数帯であるということから、まさしく鉄道用とか電力用など公共業務を中心に広く利用されているということを踏まえて、電波利用者の利便性の向上及び周波数の有効利用の推進といった観点から、同日、原案を適当とするという旨の答申をいただいております。


(中略)


○佐藤(正)委員
 ぜひそれを、後ろの方はもういいですから、最初に言った方を考えていただいたら。
 何でもそうなんですよ。投資をしました、投資したから、これはもったいないからずっとやっていこうといったら、この投資した金がどんどん死んでいくんですよ。それよりも、その投資を欠損、損金に落としてでも、新しいものを導入した方が実は有益であるということがたくさんありますから、ぜひ、新藤大臣、前半の部分でしっかり検討していただくことをお願いしたいと思います。
 次に、先ほど来の電波利用料の件なんですが、中田委員からも御質問の中でありました、携帯電話の方が電波利用料は約七十数%を占めているというところですね。
 そこでお尋ねをしたいんですが、この中で、テレビ、放送とかいろいろな部分で利用料の軽減措置があるということですが、この軽減措置について、どういう仕組みで、どういうところが対象になっているのか、お尋ねをしたいと思います。

○柴山副大臣
 お尋ねの電波利用料の軽減措置のあり方については、まさに現在開催をしている電波利用料の見直しに関する検討会、これは私が座長を務めさせていただいておりまして、橘政務官も加わっていただいておりますけれども、そこで、一つの重要な論点として検討しているところであります。
 今御指摘のとおり、携帯電話につきましても、例えば緊急地震速報を受信したりとか、いろいろと災害対策の公益的な役割を果たすではないかというようなことを通信事業者の方々からいただいているのは事実であります。
 それも踏まえて、この検討会においては、これまで、もちろん、既存の放送会社の方からもきちんと意見を聞いておりますけれども、こういった幅広い意見の募集ですとか、公開ヒアリングにおきまして、この無線局の軽減措置は一体どのようにあるべきかということについて、さまざまな意見を交わしているところであります。
 今後、これらの意見を踏まえて、検討会において、ことし八月末ごろまでに料額の見直しの基本方針をまとめていただくこととしております。
 以上でございます。

○佐藤(正)委員
 では、今も検討していると。検討するということは、やはりちょっとおかしいな、今までの仕組みが、例えば放送の方に対して四分の一ほどの軽減がある、携帯の方には軽減はない、しかも、利用料を払っている大部分が携帯事業者である、そういう中で、これは少し変えなきゃいけないのかなということが根底にあって、検討に入られているんだろうと思います。   そこで、テレビ局に軽減があるわけですが、これは、NHKと民放とではどういうふうに中身が違うんですかね。

○柴山副大臣
 お答えいたします。
 確かに、NHKと民放では、軽減率を考慮するに当たって、考慮すべきファクターとして、普及義務のあり方が考慮されるべき点だと思っております。
 現在の電波利用料制度では、地上テレビジョン放送の料額の算定に当たっては、あまねく普及をさせる義務、これがNHKです。そして、あまねく普及をさせるよう努力する義務、これが民放なんですね。それを勘案して、使用する周波数帯域に二分の一を乗じて算定をしているところなんです。
 いずれも、電波利用の便益を国民に広く付与するための責務であるということから、その公共性を勘案して、二分の一を掛けるということとさせていただいております。

○佐藤(正)委員
 普及の義務と、民放は努力義務、これで何で同じなんでしょうね。おかしいでしょう。NHKは義務をしっかり言っているけれども、民放については努力しなさい。
 では、携帯電話の方にはこういう努力義務は与えていないんですか。携帯電話事業者にはそういうのは与えていませんか。

○吉良政府参考人
 携帯電話には、特性係数が掛かることはございません。

○佐藤(正)委員
 さっきからその議論をやっているので、それはわかっているんですよ。携帯電話にも例えばこういう普及努力義務というのはないんでしょうかというのを言っているんです。

○吉良政府参考人

失礼しました。携帯電話には、普及努力義務というのはございません。

○佐藤(正)委員
 では、お尋ねしますが、努力がつくのとつかないのと、どこがどう違うんですか。教えてください。

○吉良政府参考人
 いずれにしても、あまねく普及義務とあまねく普及努力義務というのが放送法に定まっている、法律に定まっているということを勘案して、その公共性があるというふうに勘案して、二分の一を乗じているところでございます。

○佐藤(正)委員
 だから、私はわからないので教えてくださいと言っているんですよ。法律の中で努力と努力がついていないのを教えてください、それをお尋ねしているんですよ。

○吉良政府参考人
 いずれにしても、法律に定まっているということでございまして、NHKと民放、同様に二分の一を乗じているということでございます。

○佐藤(正)委員
 多分、聞いている方はわからなくなったんだろうと思うんです。
 だから、明確に聞きたいのは、私は法律がわかりませんから教えてください、法律の中で努力というのが入っているのと入っていないのは、どういうふうに私は解釈をしたらよろしいんでしょうかということをお尋ねしているんです。
 答えられるんだったらもう一回答えてもらったらとは思いますが、時間がなくなってきましたので、どうなんですか。

○吉良政府参考人
 いずれにしても、先ほどから繰り返しておりますけれども、あまねく普及義務とあまねく普及努力義務を勘案して、法律に定まっているので二分の一を乗じているところでございますが、いずれも、電波利用の便益を国民に広く付与するために、通常の市場活動を超えた責務が法令により規定されているということで、その公共性を勘案しているところでございます。 ただ、本件も含めて、料額の算定に当たっては、具体的な算定方法について広く意見募集を今行っているというところでございます。

○佐藤(正)委員
 もう時間がないんですが、先ほどの答弁の中で、公共性というのが入るんだけれども、基本的には、携帯電話なんて、今すごい公共性がありますよ。今回の東日本でも、携帯はかなり活躍されたと思いますし、そしていろいろな情報も流れています。
 そういう意味では、先ほど副大臣が言われたように、検討を進めているというのは確かにいいことだと思いますので……(柴山副大臣「一言だけいいですか」と呼ぶ)前向きなものですか。では、お願いします。

○柴山副大臣
 ですので、公共性と一言で言うと混乱をしてしまうんですね。要するに、そのサービスの持つ価値が非常に大切かどうかということと、今、NHKと民放のように、ユニバーサルサービスが確保されているかあるいは確保されていないかということで条文の書き分けをしているということ、これをしっかりと整理していかなければいけない、そういうことです。

第183回 衆議院 総務委員会 第4号
平成25年3月21日(木)
午前九時開議

【本日の会議に付した案件】
・政府参考人出頭要求に関する件
・参考人出頭要求に関する件
・地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)
・地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一三号)
・放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、承認第三号)
・地方税財政基盤の早期確立及び東日本大震災への対応に関する件

○瀬戸委員
 震災の際は、NHKの役割というのは非常に大きいものがあると思います。しっかりとよろしくお願いしたいと思います。 
 次に、新たな放送・通信のサービスについて、お伺いしたいと思います。 昨年度、日本の家電メーカー、ソニーとかパナソニックなどは、液晶テレビ部門での不振で過去にない赤字決算となりました。家電メーカーの収益の大部分は、液晶テレビの生産によって一時期得られていたということもありました。それが、現在ではサムスンに席巻されてしまっているということでございます。幸い、現時点、アベノミクスによる円安によって、日本の家電メーカーは息を吹き返しつつありますが、第三の矢、成長戦略の検討が必要となります。 
 私は、家電メーカーにとっても、またインターネットと視聴者をとり合うことになっているテレビ局にとっても、今後のスマートテレビ戦略というのが大きなポイントになると考えています。スマートテレビの開発においては、スマートフォンの開発のときのように海外に先んじられるべきではないというふうに考えています。我が国の成長戦略にも大きく貢献するものというふうに考えています。その実用化、普及に向けて、放送業界、家電メーカーが連携して枠組みをつくる必要があると考えています。
 総務省において、スマートテレビの将来展望について検討を進めていると聞いておりますが、今後、どのように実用化、普及を図っていくのか、お考えをお聞かせください。

○柴山副大臣
 お答えをいたします。 
 この二月、総務省は、日本を元気にする成長戦略の策定を目標として、ICT成長戦略会議を設置しました。そのもとで、デジタル移行後の放送サービスの高度化の内容や進め方に関しまして、極めてスピードの速いデジタル技術の進歩の状況や、国際標準化の動向なども踏まえて検討を進めている、まさにそういうステージなんです。
 グローバルに見れば、ハイビジョンの4K、8Kといった高画質化、あるいは、今先生が御指摘になられたスマートテレビに見られる高機能化、これらが高度化の流れということなのではないかなというように思っております。

この高度化の進め方を具体的に決めていくに当たっては、技術や国際標準など、グローバルな動きを踏まえることも重要なんですけれども、今後の実用化、普及を目指すサービスが視聴者からの支持を得られるものとなるのか、あるいはビジネスとしての採算性がとれるのか、こういったことも十分に考えていくことが必要になってくると思います。
 御指摘のとおり、日本のICT分野は、全体として、非常に厳しいグローバル競争の中で崖っ縁と言われるような状況にあると思いますけれども、今申し上げた要素を踏まえつつ、この競争にしっかりと勝ち抜いていくための戦略をつくってまいります。
 具体的には、この成長戦略、五月をめどに一定の取りまとめを行う予定でありますけれども、それこそ、官民が共同で、オール・ジャパンで取り組むべき目標をしっかりと打ち出してまいりたいと思います。以上です。

○瀬戸委員
 ぜひ、オール・ジャパンとしてもしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

(中略)

○田所委員
 4K、8Kなど次世代スーパーハイビジョン開発が進められておりますけれども、その概要が十分に示されておりません。地デジへの対応がやっと終わった現在において、どれだけ必要性があるのか、有用なものであるのか、理解ができないのであります。
 しかし、資源のない我が国の発展のためには先進的な技術開発は成長戦略として大変重要だと思いますので、市場のニーズがどれだけ見込めるのか、産業としての実用性あるいは価値、今後の負担等を考慮して、説明責任を果たしながら、実用化に向けた工程を示すべきであると思います。
 NHKの研究開発における役割とあわせて、どのように考えているのか、総務省にお伺いをいたします。

○柴山副大臣
 大変貴重な御指摘をありがとうございます。ただ、昨年十月の韓国における4K試験放送の開始ですとか、あるいはこの一月のCES、国際家電見本市における多くの展示等でも明らかなとおり、4K、8Kといった高画質化は、これはもう世界の流れだと思っております。
 世界に先駆けてこういった新しいサービスの導入に取り組んでいくことが重要でありまして、委員御指摘のとおり、それが今後我が国の成長戦略の一つと位置づけられていくのかなというようにも思っております。 
 総務省といたしましては、平成二十四年度の補正予算を活用して、この4K、8K、それぞれの放送サービスの実用化を前倒しすべく今取り組んでいるところであります。
 その際、今御指摘いただいたような市場ニーズあるいは事業者や視聴者の負担、こういったさまざまな課題ですとか、あるいは解決に向けたステップについて明確化を図って、説明責任を果たしていくことが必要なんですけれども、この点につきましては、この二月に設置をいたしましたICT成長戦略会議において、NHKさん、あるいは民間放送事業者、受信機メーカーさんなどに参加をいただいて検討しておりますし、私自身も問題意識を持っております。
 この春にロードマップを取りまとめて、それに沿って早期実用化を加速していきますけれども、その際、今御指摘のあった4K、8Kについては、先進的なサービスに対するニーズを持つ利用者が多い衛星放送から始めていくということを想定しております。
 それから、二番目のNHKの研究開発における役割ということなんですけれども、これら実用化の過程で、技術やサービス基盤の確立に向けて公共放送としてやはり先導的な役割を果たしていただくことによりまして、視聴者への還元を図っていくということが必要だと思っておりまして、そして、そういった需要を喚起して、それを通じて関係産業分野の成長と国際競争力の回復というものを図っていければというように思っております。以上でございます。

第183回 衆議院 総務委員会 第3号
平成25年3月19日(火)
午前九時開議

【本日の会議に付した案件】
・政府参考人出頭要求に関する件
・地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)
・地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一三号)

○小川委員
 私自身も含めて、私ども、今自問自答しています。あれは何だったのか、政権交代は。大臣の言葉の中から、うれしくも何ともない、あるいは緊張感、緊迫感、そして自民党も変わろうとした、そういうお言葉を聞いて、ある意味、これは、どっちの政権がよかったか悪かったか、いろいろ議論はあるでしょう。しかし、政権がかわるということの緊張感なりダイナミズム、これそのものは極めて大きいということを共有させていただくということを前提に、少し議論させてください。
 それで、ごめんなさいね、ちょっと時間がないので簡潔な答弁にぜひそれぞれ御協力いただきたい。
この点、若手、中堅の意見も聞いてみたい。
 私が個人的に敬愛しております柴山副大臣。この点、野党時代の経験は自民党に何をもたらしたのか。そして橘政務官。珍しく、自民党の議員でありながら、野党としてスタートを切った。この時代、本当に真摯な姿勢で、総務委員会で何度も御質問をいただいた、たくさん歌の御披露もいただいた。御答弁前に歌を御披露いただいても結構ですが。お二人、若手なり中堅なりの見識をちょっと述べていただきたい。

○柴山副大臣
 過分なお言葉、ありがとうございます。
 一般的な話をすれば、野党である以上、議員立法ですとか、あるいは委員会で質問などを通じて、批判的な目で政府の政策ですとか手順を外から検証することができたということが非常に大きな経験だったと思います。ですから、我々が政権に復帰したときに、それこそ民主党の皆さんが目指していた政治主導ということをしっかり意識するようになった。これが、かつての与党時代と違って、私は大きな前進ではないかなというように思っております。
 私の所管でいえば、情報通信や郵政は日進月歩の分野ですから、それこそ外の目でしっかりと外部の人の意見あるいは民間の人たちの意見を取り入れるということが重要な分野です。ですから、野党の経験ということがそういう意味でも役に立っているのではないかというように思っています。以上です。

○橘大臣政務官
小川委員にお答えいたします。おっしゃるとおり、野党から始めさせていただきました。三年間、この総務委員会で皆さんにお世話になり、きょういらっしゃっている中では、原口議員、また小川議員、黄川田議員、福田議員から真摯な御答弁をいただいて、大変勉強になったと思っております。その問題意識をやはり生かして、私も今、柴山副大臣の下で、放送、通信、郵政という分野になりますけれども、また、この国の発展のために努力していきたいと思っています。
 あわせて、皆さん方、今回、与党、野党かわっておりますけれども、その立場で、その質問席からどういうふうなことを質問したい、そうしたら、どういうことが問題意識か、これも私なりには自分の経験から理解できるところがございます。そして、皆さん方との議論を通じて、それを少しでも、やはりいいものは取り入れていくという、そういうことが政権として非常に大事だと思っております。これからも努めてまいります。


(中略)


○小川委員
 政策的にもそうでしょう。副大臣なり政務官としての仕事ぶりは変わっているのかどうか、お聞きしたい。
 柴山副大臣が、まさに政治主導を意識して仕事をしているとおっしゃった。よくも悪くもとあえて申し上げます。私どもの時代は、副大臣、政務官による、主宰する会議が山ほどあった。よくも悪くもとあえて申し上げます。
 そして、余り知られていませんよ、大きくは報道されていない、きょう地方税法の改正案、審議対象ですけれども、税負担軽減措置の適用状況を明らかにしたのは初めてですよ。前政権時代につくった、いわゆる租税特別措置の透明化法を受けて、こういうことを整理した。それから、再三議論になっていますが、一括交付金。国、地方協議の場が法制化された。直轄事業の負担金のあり方、見直しましたよ。一部廃止した。義務づけも大幅に廃止した。地方議員年金、坂本先生に大変お世話になりました。破綻のおそれを来したことを受けて、廃止しました。そして交付税特会の借り入れ、皆さんがつくった借金だ。私たちは一千億返した。一千億ずつ返したって三百年かかりますよ。しかし返した。
 随所に、未熟なところ、至らぬところは全て認めて、おわびもしなきゃいけないところもあると思う。しかし、しかかろうとした、意思を持った政府、政権であったことは間違いない。
 その意味で、坂本副大臣にちょっとお聞きしますが、今、政務三役会議というのはやっているんですか。あるいは、この税法そして予算に、副大臣として、俺はここにすばらしく影響を与えた、俺が決めた、あるいは大臣と相談してここに決定的な影響力を行使したということは何かありますか。

○坂本副大臣
 これは小川委員たちの政権のときの成果だと思いますが、役所の方が、役所主導ではなくて私たちにある程度任せてくれるようになりました。そして、自分たちが何をやるべきかということをやはり改めて自覚するようになりました。五つのミッションというものを大臣が言われて、それを総務省が取り込んで、五つのミッションでやっているのもそういうことであります。
 副大臣会議、政務官会議、やっております。毎週やっております。そして、次は何をやるべきなのか、このことも話し合っております。同時に、それぞれの副大臣、政務官が勉強会をつくって、チームを立ち上げて、そしてこれからのやるべき仕事というものを話し合っているところです。

第183回 衆議院 総務委員会 第1号
平成25年2月14日(木)
午前九時五十分開議

【本日の会議に付した案件】
・理事の辞任及び補欠選任
・国政調査承認要求に関する件
・政府参考人出頭要求に関する件
・地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二号)

○北側委員長 
 次に、柴山総務副大臣。

○柴山副大臣
 総務副大臣を同じく拝命いたしました柴山昌彦です。 新藤大臣を支え、皆様方の負託に応え、全力を尽くしてまいりたいと思います。 北側委員長を初め皆様、どうぞよろしくお願い申し上げます。


第180回 国会 衆議院 法務委員会

第180回 衆議院 法務委員会 第12号
平成24年8月7日(火)
午前九時開議

【本日の会議に付した案件】
・政府参考人出頭要求に関する件
・刑法等の一部を改正する法律案(第百七十九回国会内閣提出第一三号、参議院送付)
・薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案
(第百七十九回国会内閣提出第一四号、参議院送付)

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 午前中の平沢勝栄議員の大津いじめ事件問題に関する質問に、ちょっと補足してお伺いしたいことがあります。
 先ほど、事件当時の教師に対する処分がどのようになっているのかということが話題になりましたけれども、今回、被害届を受理しなかった警察当局の担当課の職員のその後の責任というのはどのようになっているんでしょうか。
 先ほど御説明をいただいたように、三度にわたって被害者のお父さんが警察にこのいじめ自殺について相談に行かれている。担当課長は、三度目のその相談では、遺書もなく、被害者が亡くなられているので、被害者から、具体的な被害の状況やそのときの心境を初め、犯罪の立件で重要となる事柄を確認できないと、通常の犯罪であれば、全く間の抜けたお話をされているわけです。
 しかも、一回目の相談においては、やはり担当課長から、現時点では事実の有無を判断できないので、立件は難しい状況にあるため、学校から情報収集を行いますなどと言って、みずからの職責を全く果たそうとされていないわけですね。
 こういった警察の対応は不備だとはお感じにならないんでしょうか。警察庁、いかがでしょうか。

○岩瀬政府参考人
 お答え申し上げます。
 この本件の御相談に対する対応についての責任ということについて、まずお尋ねでございます。
 本件につきましては、三回にわたって御相談をいただいたということでございまして、十月に二回、十二月に一回ということで御相談をいただいたところであります。
 その中で、例えば、一回目、二回目であれば、どう処罰できるか等の御相談があったということでございますが、これについては、現段階では事実の有無がなかなか判断することができないので、学校等からの情報収集を行います、こういう答えをさせていただいたということでございます。それから、三回目につきましても、具体的な犯罪事実の認定には困難な部分があるなどの理由から、被害届の受理に至らなかったものでございます。
 こういう事案に対しまして、そもそも、学校におけるいじめ問題について、教育上の配慮ということもございます。まずは教育現場における対応を尊重する、こういう必要がありますけれども、当然、犯罪等の違法行為がある場合には、警察として必要な対応をとっていく、ましてや、生命や身体に危険のある場合には早急に必要な体制をとっていく、これが当然のことでございますので、そのような対応をとらなければならないということでございます。
 今回のこの三回の相談につきまして、どの時点で相談を受理すべきであったのかという議論もあるところでございます。被害を訴えてこられた被害者の方の意思を十分に尊重して、なるべく速やかに受理をすべきであるというのが基本的な考え方だと思っております。
 そういう意味では、滋賀県警察からは、今回の対応につきまして、御遺族の気持ちをしっかりと受けとめた対応をとるべきであった、そういう報告を受けておるところでございます。
 その処分の問題でございますけれども、この相談からその後の学校等への事情聴取を経まして、現在、七月十一日に捜索を行い、その後の捜査を今実施しているところでございます。全体の捜査につきまして、これから事案解明ということを進めていった上で、この過程について検証する、その中で、滋賀県警の方で処分という問題について適切に対応していくというふうに考えております。

○柴山委員
 きのう、警察庁の出した報告書を読ませていただきましたけれども、そこには明確に、警察として配慮が足りなかったということを明言されているわけですね。
 今申し上げたように、告訴を受理しなかった、被害届をしっかりと受理しなかったことによって、結局、対応がおくれ、この間、加害少年は引っ越しをしてしまい、そして今、学校は夏休み中なわけですね。それによって捜査に影響が出てくる側面も私は少なからずあるのかなという気もいたしますし、これがもし職務上しっかりとした行為を行っていないということになれば、当然、懲戒処分の対象になるのかなというように私は思います。
 この点については、今捜査中ということですけれども、しかるべき時を見て、しっかりとまた報告をしていただきたいというように思います。
 続いて、この関連なんですけれども、今申し上げた、加害少年あるいは加害少年の家族についての聞き取りあるいは情報把握、これを警察の方ではきちんとやっているんでしょうか。

○岩瀬政府参考人
 お答え申し上げます。
 個々の関係者からの事情聴取の状況等、事件捜査の詳細につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思いますが、滋賀県警察におきましては、現在、学校の生徒を含む関係者からの事情聴取などを順次進めているところでございます。今後も引き続き、事実関係の解明に向けて取り組んでまいるものと承知をしております。

○柴山委員
 当然、目撃情報、周りの生徒に対して行う等々を通じて、また本人に対してもしっかりと事情を聞くというようなことが段階的に必要になってくるというように思うんです。
 この少年、実は転校しております。しかも、家族の方々もいろいろな報道がされています。そういう中で、やはり、罪証隠滅ですとか、あるいは、場合によっては逃亡ですとか、そういうおそれが出てくる可能性だってなきにしもあらずというように思うんですね。そういう場合には、どのような対応をしなければいけないんですか。

○岩瀬政府参考人
 個別の事案ですので詳細はお答えを差し控えさせていただきますけれども、今議員御指摘のように、順序というものがあります。順次、関係者につきまして、現在、事情聴取等の捜査を行っている状況でございます。当然、任意の捜査でございますので、相手方の御承諾をいただいて事情聴取を行う、こういう手順で捜査を進めているところでございます。

○柴山委員
 私の質問は、加害少年とされておられる方々あるいはその御家族の方々に、罪証を隠滅する、隠す、あるいは口裏を合わせる、あるいは逃亡のおそれがある、そういうような事例が生じた場合には、一体どうなるんですかということをお聞きしているんです。一般論で結構です。お答えください。

○岩瀬政府参考人
 お答えいたします。
 一般論でお答えせよということでございますので、そうさせていただきますが、逃亡のおそれ、罪証の隠滅のおそれ等がある場合には、身柄をとって捜査をするということも一つの選択肢となってまいることでございます。

○柴山委員
 身柄を拘束する、逮捕するということが望ましいということを必ずしも申し上げているわけではありません。しかしながら、これだけ初動捜査がおくれているわけですから、さまざまな事柄に対応できるような体制を警察にはとっていただかないといけない。それは、やはり、警察自身のこの問題の落ち度に対する責任でもあるというように私は思っております。
 続きまして、ちょっと逆のお話にもなるんですけれども、加害少年側のプライバシーについての対策、これは一体どのようになっているんでしょうか。

○滝国務大臣
 今回の事件については差し控えさせていただきますけれども、一般論としては、例えば、インターネットの場合でございますけれども、これについては、電気通信事業者団体で構成されておりますプロバイダーの責任制限法ガイドライン協議会というのがございまして、それに加盟しているインターネットのいわば提供者、これに対して被害者から削除要請などがございますと、法務局を通じて、どうしたらいいかとか、あるいは当該プロバイダーに対して直接法務局から要請をするとか、こういうようなことをして、専ら被害者からの要請によって行動するということにいたしているわけでございます。

○柴山委員
 プロバイダー責任法のガイドラインに基づいての処理というようにおっしゃいましたけれども、それに基づけば、今大臣がおっしゃるように被害者、被害者というのは今回でいえば人権あるいはプライバシーを害されている加害少年側ということになるんでしょうか、その当事者からの申請がなければ動かない。職権では動かない。どんなに問題としてひどいプライバシー侵害があっても、これに対して職権で動くことはできないということでよろしいんでしょうか。

○滝国務大臣
 そのとおりでございます。
 理由を申しますと、職権でやりますと、またそのプロバイダーがどういう反応をするかというのがつかみ切れないものですから、専らいわばインターネットの被害者からの要請によって、本人と相談した上で対応するというのを原則としているわけでございます。

○柴山委員
 ということは、今堂々と加害少年側あるいはその御家族の情報がインターネットを通じて流布しているというのは、本人側からの削除要請がないということなんですか。

○滝国務大臣
 恐らくそういうふうに思われます。

○柴山委員
 この問題についても、これからあるべき方策ということはある程度きちんと検討していかないといけないような事態になっているのかなというように思います。加害行為の悪質性と、それから、特に少年のプライバシーの問題、これは別個の問題だと思っておりますので、問題提起をさせていただきました。
 ちなみに、被害者の少年の父親に対して大津市長は謝罪をしたと報道で伝わっておりますけれども、嘉田知事はどのような対応をされているんでしょうか。

〔委員長退席、樋口委員長代理着席〕

○関政府参考人
 滋賀県知事は記者会見におきまして、本事案がまことに残念であり、心が痛んでいることや、十分に対応できなかったということを反省している旨を述べていると承知をしております。
 県教育委員会から報告を受けているところでは、県教育委員会におきましては、昨年十月十一日以降、大津市教育委員会からの情報収集や、大津市教育委員会に対する指導助言、スクールカウンセラーの緊急派遣、各市町に対するいじめ問題への対応の再点検を求める指導などを行っていたと聞いております。
 また、本年七月四日以降につきましては、大津市教育委員会に対しまして、事実関係を確認し、説明責任を果たすよう指導助言するほか、県の職員やスクールカウンセラーを大津市教育委員会及び当該学校に常駐派遣いたしますとともに、県教育委員会、知事部局内の関係部局で構成をいたします、いじめから子どもを守る緊急対策チーム会議などを開催して、県内の市町に対する対策の徹底等を求めるとともに、今後、滋賀県知事を本部長とする滋賀県いじめ対策本部を立ち上げ、恒久的ないじめ対策を検討することとしていると承知をしております。

○柴山委員
 おかしくないですか。めちゃめちゃおかしいですよ。だって、大津市の教育委員会は今回の隠蔽の当事者なわけですよ。いわば、本来裁かれなければいけない、まないたの上のコイですよ。それに対して県の教育委員会が、何ですか、確認の聞き取りをする、カウンセラーを送る、そんなことで本当に実態解明はされるんですか。結局、身内同士の、第三者性を欠いた組織における隠蔽工作への加担になるんじゃないですか。
 現に、少年の父親は、今回立ち上がるという第三者調査委員会の議論の手続へのアクセスと、それから、調査への市職員の不関与を求めているということなんです。その被害者父親の要望は、一体どのように扱われるんでしょうか。

○関政府参考人
 お答えいたします。
 お尋ねの第三者委員会の会議の公開につきましては、七月二十五日に行われました大津市長と御遺族の面会の場におきまして、御遺族側から、プライバシー等の配慮により全面公開が難しいことは理解できるが、関係者への公開ができないかとの要望をされていたと承知をしております。
 また、御指摘のございました第三者委員会の調査への市の職員の関与についてでございますが、同じく、この面会の場におきまして、大津市側から、資料の整理や日程調整などの事務局的機能にとどめる内容の説明を行ったところ、御遺族側からも一定の評価をする旨の発言がなされていると承知をしております。
 これらの点を含めまして、第三者委員会のあり方につきましては、現在、大津市側と御遺族側との間で具体的な調整が行われているところであると承知をしております。

○柴山委員
 市の教育委員会の調査、それから県の教育委員会のこれに対する指導、それから文部科学省の国としてのさまざまな指導、三つのトリプルトラックになって、結局、物事の解明が進まないということになったら困るわけですね。ですから、やはり、この解明ということは、特に犯罪行為にかかわる部分については、しっかりと警察と連携をして、強制的な形で事案の解明を行い、そして、その情報が文部科学省にきちんとフィードバックされる中で、文部科学省から各委員会にきちんとした形での指導を行う。その指導が、場合によっては、強制的な権限がない場合には、法改正を伴ってでもそれに対してきちんと指導の実を上げていく、そういうようなことが私は必要になってくるというように思っております。
 いずれにいたしましても、やはり、今回の実態調査ということにゆめゆめ隠蔽が伴わないようにぜひお願いしたいというように思います。
 平沢議員の質問の関連については以上とさせていただきます。
 続きまして、六月十二日に大阪地検が起訴した、脱法ハーブを吸って女性をひき逃げした事件について伺います。
 と申しますのも、きょう議論をする法案は薬物事件の根絶を目指すものなんですけれども、こういった脱法ハーブが今、流行して大問題となっているからであります。
 まず、今申し上げた事案はいかなる犯罪で起訴されたんでしょうか。

○稲田政府参考人
 御指摘の案件は大阪市内で五月六日に発生した事件かと存じますが、これにつきまして、御指摘のありました六月十二日、大阪地検におきまして、危険運転致傷罪及び道路交通法違反、これは交通事故の場合の救護義務違反、報告義務違反などの事実により、大阪地裁に公訴提起したものと承知しております。

○柴山委員
 これも先ほど質問に出てきましたけれども、京都府亀岡市の、無免許無謀運転によって小学生、十人がはねられて死者も出た、一晩じゅう乗り回して居眠りまでしていたという案件では、今お話があった危険運転致死傷罪は適用されなかったのに、今回、脱法ハーブを吸って女性がけがをしたという案件については危険運転致傷罪が適用された。一体、これはどういう違いがあるんですか。

○稲田政府参考人
 お答え申し上げます。
 個別具体的な事件の内容にかかわるものでございますので詳細についてまでお答えすることは差し控えさせていただきますが、今申し上げました脱法ハーブの事案につきましては、薬物である脱法ハーブの影響によりまして正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって人を負傷させたものと検察当局においては認定して、危険運転致傷罪の構成要件に該当すると判断したものと承知しております。
 他方で、亀岡市の事案につきましては、午前中の質疑の際にも申し上げましたが、検察当局の認定といたしましては、居眠りが事故の直接の原因であると認められたところ。危険運転致死傷罪につきましては、四類型あると言われておりますが、そのうちの、例えばアルコールまたは薬物の影響により、あるいは進行を制御する技能を有しないことなどによって生じたものではなく、この死傷の結果と因果関係を有する危険運転行為とは認められなかったことから、この危険運転致死傷罪の構成要件に該当しないと検察当局において判断したものと承知しております。

○柴山委員
 今申し上げたように、一般の感覚からすれば、やはり到底マッチしない擬律だと思っております。脱法ハーブを吸った運転が危険な運転で、無免許で居眠りをした運転が危険運転に当たらないというのは、やはりどう考えても均衡を欠くというように言わざるを得ません。
 先ほど滝大臣の方からは危険運転致死傷罪の改正についても御言及をいただきましたけれども、いま一度簡単にスケジュールを説明してください。

○滝国務大臣
 基本的に、八月中に、法制審議会に対して、どういうふうな改正をしていくのかということを目指した取りまとめをする、それに基づいて九月早々にでも法制審議会に諮問をしたいと考えております。
 まだ法制審のスケジュールを押さえているわけじゃありませんけれども、できれば九月中にそういう格好で諮問をする、そして、その結果はできるだけ早く、恐らく法制審も、最初の現行法案も法制審で議論をしていただいておりますから、この改正についても、いわばその下地の上で議論をしていただけるということも予想されますので、かなりのスピードでもって結論をいただきたい、そんなことを期待しながら、できるだけ早く法律改正に持ち込めればいい、こんなスケジュールを予定いたしているところでございます。

○柴山委員
 危険運転致死傷罪の改正については、なるべく速やかに、できれば通常国会にでも対応していただきたいというように思います。
 そして、今の質問については脱法ハーブの規制についてでありまして、そもそも脱法ハーブは大麻と同様の幻想あるいは妄想を生じさせる成分を含んでおります。
 今回はMAM2201という成分のようでして、こういったものを取り締まることができないのか。また、問題があっても、香料として売られればこれを取り締まれないというような実態もあるというように伺っているんですけれども、こういった実態の把握を厚労省の方では行っているんでしょうか。また、これについて、やはり刑罰化するということは考えていないんでしょうか。

○平山政府参考人
 お答えします。
 違法ドラッグにつきましては、それに含まれる化学物質が中枢神経系への作用を有し、人の体に使用された場合には保健衛生上の危害を発生させることもあるため、厚生労働省としても、監視、取り締まりをしっかりやっていく必要があると認識しております。
 このため、薬事法におきまして順次指定薬物を指定しておりまして、ことし六月には新たに九つの物質を指定しております。また、指定薬物のうち、流通が継続し、依存性が確認されたものにつきましては、麻薬に指定しまして規制を強化しているところでございまして、七月には新たに四つの物質を麻薬に指定したところでございます。
 指定薬物を指定いたしましても新たな類似物質が次々に登場するという状況に対応するため、薬事・食品衛生審議会指定薬物部会の開催頻度を増加させる、また、国内で流通していない物質でも、海外での流通が確認されたものについては先行して指定することや、化学物質が類似している特定の物質群を指定薬物として包括的に指定することについて指定薬物部会で議論すべく、科学的な根拠を含めた検討を進めているところでございます。

○柴山委員
 罪刑法定主義の壁があるということはわかるんですけれども、今お話があったように、やはり類似の作用をもたらすものが化合物の一部の部分だけを取りかえることによって容易にできてしまうというような実態もあります。ぜひこれは包括的な規制のやり方も含めて考えてほしいというように思います。
 また、これは先ほど私が質問したことにちょっとお答えをいただいていないんですけれども、薬事法の規制ということであれば、医薬品に該当しないような扱われ方、それこそハーブとかアロマとか、そういうような形で売られることには問題はないんでしょうか。

○平山政府参考人
 指定薬物につきましては、流通というか販売を禁止するということになりますので、指定薬物に指定すると同時に販売ができなくなるというふうに理解しております。
 そこの、指定薬物外の類似薬物につきましては、実態に応じて対応することになるわけでありますけれども、それを未然に予測するということが不可能でございますので、人体に使わないという形で販売されてしまうとなかなか規制が難しいというところですけれども、その面につきましても鋭意、販売できないような方向で関係者と協力して対応してまいりたいと思っております。

〔樋口委員長代理退席、委員長着席〕

○柴山委員
 今お話のあった、グレーゾーン、類似薬物の部分がまさしく非常に大きな問題を引き起こしているわけですから、きちんと実態の調査をお願いしたいというように思っております。
 続いて、法案プロパーの質問はもう少し後でさせていただきますけれども、施行から三年を経過した裁判員制度についてお伺いしたいと思います。
 裁判員法は、附則で、施行三年を経過後に必要があれば所要の措置を講ずると規定されているんですけれども、法務省として、その三年目に当たる今、制度改革の必要を感じておられますか。イエスかノーかでお答えください。

○稲田政府参考人
 今御指摘ございましたように、裁判員法におきましては、施行から三年経過後に施行状況について検討を行い、必要に応じ所要の措置を講ずるものという規定がございます。
 法務省におきましては、まず、有識者の皆様から御意見を伺って裁判員制度に関する検討を行うために、平成二十一年九月に裁判員制度に関する検討会を設置し、これまで十一回の会合を開催し、制度の実施状況を把握しつつ、それに基づいて意見交換などを行ってきているところでございまして、今後引き続きこの検討会において必要な検討を進めていくということにしているところでございます。

○柴山委員
 多分、網羅的に、さまざまな課題について検討していただけることになると思うんですけれども、その中で、ちょっと幾つかお伺いしたいと思います。
 まず一つは、薬物絡みということで、薬物は薬物でも、薬物の密輸事件、特に否認事件で無罪となる案件が多くなっていることが報道上問題となっています。これは一体どういう実態なんでしょうか。実際にどのような形で何件ぐらい無罪が出ているんでしょうか。

○稲田政府参考人
 薬物密輸事犯は、御案内のとおり、裁判員裁判の対象ということになるわけでございますが、二十一年に裁判員裁判が実施されるようになりましてから今日まで、無罪判決が言い渡された被告人は、これはいずれも覚せい剤取締法違反被告事件についてのものでございまして、八人いるものと承知しております。
 これらの内容は、いずれも、密輸した者が、規制薬物であることの認識あるいは密輸についての共謀が否定されたというふうに承知しているところでございます。

○柴山委員
 共謀や故意が立証するのが非常に難しいということはいろいろな事例で私もよく理解をしているところなんですけれども、ただ、裁判員裁判を導入したことによって立証のハードルが高くなってしまったとすれば、それはやはり非常に大きな問題じゃないか、特に法益保護の観点から問題じゃないかというように考えております。
 そういう理解でよろしいんでしょうか。また、これに対する対策は法務省の方では何か考えておられるんでしょうか。

○稲田政府参考人
 裁判員裁判施行以降、先ほど、八人無罪判決が言い渡されたというふうに申し上げましたが、その間に裁判員裁判対象となりました覚せい剤取締法違反被告事件につきましては、三百五十三人に判決が言い渡されております。この無罪率が高いか低いかということにつきましてはいろいろ御議論のあるところだろうと思いますが、基本的には個別具体的事件の積み重ねでございますので、それらの裁判所の判断について所感に等しいことを申し上げることは差し控えさせていただきます。
 法務省、特に検察当局といたしましては、このような八件の無罪事件が言い渡されているという事実もあることから、裁判員裁判対象の薬物密輸事犯につきまして、より的確な立証のあり方などを実務的に検討する一種の勉強会などを開いて検討を進めているというふうに承知しているところでございます。

○柴山委員
 裁判員の方々にとっては、事件というのは一期一会なんですね。ところが、プロの裁判官の方々にとっては、もちろん、類似の事件についてさまざまな形で勉強したり、あるいは、御自分の経験も持ったりしているわけです。そこの違いというのはやはり私は看過できない、無視できないというように思っておりますので、これは、裁判所あるいは検察庁ともどもに、議論を誘導しろということでは必ずしもないんですけれども、きちんと正確な情報を一般国民から抽出された裁判員の方々に提供するという努力は行っていただきたいなというように思っております。
 そういうことも含めてですけれども、やはり、素人の方々を含む評議の客観化、あるいは量刑の相場についてどのような基準をつくり、そして裁判員裁判に生かしていくのか、このあたりについて、ぜひ裁判所の方から御説明をいただきたいと思います。

○植村最高裁判所長官代理者
 お答えをいたします。
 評議におきましては、裁判員と裁判官が話し合いをいたしまして、有罪無罪の事実認定、それから刑を決めることになります。
 量刑について申し上げますと、委員も御承知のとおり、法律で定められました刑の幅というのは非常に広うございます。例えば、殺人罪でございますと、死刑、無期懲役刑があるほか、五年から二十年の範囲の有期懲役刑が定められております。したがいまして、初めて刑事裁判に参加される裁判員の方々にとっては、このような幅広い刑の中で具体的にどのような刑を決めればいいのか、なかなか見当がつかないというのがあろうかと思っております。
 そこで、各裁判所では、裁判員裁判対象事件の判決を集積いたしまして、データベースをつくっております。裁判員量刑検索システムと申しておりますが、このシステムは、例えば今申し上げました殺人罪について申し上げますと、まず動機、これは怨恨であるとか、保険金目的であるとか、そういった動機を入れる。それから、犯罪の計画性も問題になりますので、計画的な殺人なのか、あるいは一時の激情に駆られた殺人なのか、こういったデータも入れる。あるいは、凶器を使っているのかどうか。使っている場合にはどのような凶器を使ったのか。さらに、単独犯か共犯か。共犯である場合とすれば、主犯格なのかどうか。あるいは、被告人と被害者とにどんな関係があったのか。こういった量刑上考慮すべき要素を抽出いたしまして、それを入力し、社会的に類似した事例においてどのような刑が宣告されてきたのかがわかるようにしてございます。
 そういうことをいたしますと、一定の幅を持って社会的な類型に沿った傾向が出てまいります。裁判員の皆さんには、こうした傾向を参考にしていただいた上で、具体的な事件についての刑について意見を述べてもらう、そういうことで充実した評議ができるようにということで努めているところでございます。
 ただ、このシステムの利用につきましては、あくまで一つの参考でございますので、これに縛られる必要はないわけでございまして、その点につきましても裁判員の皆さんには十分御説明をした上で使っているというふうに承知をしております。

○柴山委員
 ことしの七月に、司法研修所から平成二十一年度司法研究報告書が出てまいりまして、私の手元にもあるんですけれども、ここの中で、裁判員裁判にふさわしい量刑評議のあり方や判決書のあり方を考察、検討している、そういう書面であります。これについては、現場にちゃんとフィードバックされるんでしょうか。

○植村最高裁判所長官代理者
 お答えをいたします。
 今委員御指摘のとおり、先日、「裁判員裁判における量刑評議の在り方について」という司法研究報告を公表いたしまして、全国の裁判官の方にも配付をいたしまして、今、読んでもらって、執務の参考にしてもらおうというふうに考えているところでございます。

○柴山委員
 この前、殺人の現場写真を見て裁判員の方が卒倒したというようなこともニュースで流れていましたけれども、ともすると、そういうグラフィカルな事柄が表に出てくると量刑が厳しくなってしまうんじゃないかとか、そういうようなことも指摘をされています。ぜひ、冷静な形でしっかりと必要な考慮要素を裁判員の方に検討していただけるように、基準づくりに取り組んでいただきたいと思います。
 ただ、どんなにそういうことを行っても、やはりプロの感覚と一般の方々の感覚は違うんですね。それが如実にあらわれるのは、例えば性犯罪では量刑が厳格化する傾向があります。その一方で、現住建造物等放火ないし強盗致傷、非常に重罪と一般言われているものですけれども、こういう犯罪での執行猶予判決が増加をしているというような傾向も出ています。
 また、七月三十日には、大阪地裁で、発達障害を持つ被告が起こした殺人事件について、求刑の懲役十六年を上回る懲役二十年の判決が出て、障害が刑の減軽に寄与するという法曹の常識が覆されました。こういう場合は、長期間被告を刑務所に収容することが社会秩序に資するというような考慮があったのかなというようにも感じているんですけれども、大臣は、こういったプロと一般の方々の意識の乖離、ギャップについて、何か思うところはありますか。

○滝国務大臣
 もともと裁判員裁判というのは、プロと一般国民との意識のずれ、そういうものを何とか埋めていこうというところから出発していると思うのであります。
 ただ、具体的な、今の場合には、そのずれを修正することになるのかどうか、そういうような議論は必要だろうとは思います。

○柴山委員
 私も大臣と同じで、ずれがあるということは、多分どんなにしっかりと議論をしても埋まらない溝というのはあると思うんですね。ただ、そもそも、裁判員制度を導入したのは、そういった一般の方々の感覚が、やはり一般国民に対する規範意識あるいは抑止力、こういった刑罰の重大な機能を発揮させるために必要な試みであったというように思うんですね。
 ですので、これについてはぜひ、必ずしもマイナス面ばかりではなくて、積極的な面を正面から取り入れた上で、今行われているという裁判員制度の検証の中できちんと分析をするとともに、将来的にはこれを、これがまた量刑相場の新しいトレンドというものになっていくのかもしれませんし、場合によっては責任能力というものの根本的な概念の見直しということにつながっていくのかもしれません。弁護士会などにも恐らくさまざまな意見もあると思います。そういうことで、ぜひしっかりと検証していただきたいというように思っております。
 あと、済みません、裁判員制度でもう一問だけお伺いしたいのは、評議とかあるいは事件についての守秘義務の緩和が必要だという声をよく聞くんですね。裁判員の方々は、人の命を奪うような重大な犯罪について、全くこれまで経験したことのない重い判断をしなければいけない。さまざまな現場の証拠などもごらんになるわけですね。これを守秘義務の中で悶々と苦しみながらずっと経験を持ち続けているというようなことは、心理的にも負担になるんじゃないか。あるいは、さっき申し上げたような評議の客観化というところからも、やはり検証の足かせになる部分もあるんじゃないかというように思っているところです。こういった問題についてはどう検討されているでしょうか。

○稲田政府参考人
 裁判員につきまして守秘義務が定められておりますのは、事件関係者などのプライバシーを保護するとともに、裁判の公正さや裁判の信頼を確保し、評議における自由な意見表明を保障するためであるとされているところでございまして、現行の制度の趣旨からすれば、現在の守秘義務の規定については、基本的には適切であると考えているところではございます。
 ただ、この守秘義務のあり方につきましても、今御指摘もありましたようなさまざまな御意見がございます。先ほど申し上げました検討会におきましても、これに関する御意見が述べられているところであります。この問題につきましては、今後、この検討会の場やそのほかの場におきまして、必要に応じ、議論、検討がなされていくものというふうに思っているところでございます。

○柴山委員
 よろしくお願いいたします。
 遅くなりましたが、それでは、法案の質疑に入りたいと思います。
 刑法一部改正法案、一部執行猶予制度を導入したり、あるいは、保護観察中、社会貢献活動をさせたりというのは、私は、これは従来の刑罰概念に教育刑を導入するという意味合いがあるんじゃないかなというように思っているんですけれども、いかがでしょうか。

○稲田政府参考人
 御指摘のありました教育刑あるいは教育刑主義というのは、刑罰の目的を犯罪人の社会復帰のための教育であるというような考え方ではないかというふうに承知しているところでございます。
 今回導入いたします刑の一部の執行猶予制度は、あくまでもその犯した罪に対する刑罰の言い渡しの一環として、その刑事責任に見合った刑の範囲内において刑の一部の執行猶予を言い渡すことを可能とすることによりまして、その刑事責任を果たさせつつ、施設内処遇と社会内処遇を連携させて、再犯防止、改善更生を実現することを趣旨、目的としておりまして、再犯防止、改善更生のみを目的とするものではないというふうに御理解いただきたいと思います。
 今申し上げましたような観点からすれば、刑の一部執行猶予を言い渡すためには、刑事責任に見合った刑を科すという観点から相当性が認められることが一つの要件でありますし、このような要請にも応えながら、再犯防止、改善更生の要請にもよりよく応える刑の言い渡しの選択肢を新しく設けるものだということでありまして、刑罰制度の目的そのものを変更するというところまでは考えていないけれども、今申し上げたような考え方であるというふうに御理解をいただきたいと思います。

○柴山委員
 先ほど大口委員もお尋ねになっていたんですけれども、やはり刑事責任の範囲内でということで、教育を行っていく、あるいは再犯の防止を図っていくということじゃないかなと思うんですね。この制度が導入をされたからといって、本来あるべき刑罰を超えた形で何か苦役が科されるというような誤解を与えてはいけないと私は思うんです。
 これは先ほども質問に出ていたかと思うんですが、対象事件、軽い案件ではありますけれども、裁判員裁判は含まれるんですか。

○稲田政府参考人
 午前中の審議の際にもお話がございましたが、この刑の一部執行猶予の言い渡しは、三年以下の懲役または禁錮の言い渡しの場合とされているところでございますが、裁判員裁判におきましても三年以下の懲役が言い渡されることがあり得るわけでありまして、その場合につきましては、刑の一部執行猶予が適用可能であると考えております。

○柴山委員
 その場合に、裁判員に本当に適切な説明がされているのかということであります。今、現時点で制度は導入をされていないわけなんですけれども、導入がされた暁には、一部執行猶予等の制度について、なかなか内容的には、これからちょっと質問させていただくとおり、技術的に難しい問題もいろいろあると思うんですけれども、きちんと説明をすることはできるんでしょうか。あるいは、なされていくんでしょうか。

○稲田政府参考人
 裁判員法六十六条五項におきまして、裁判長は「評議において、裁判員に対して必要な法令に関する説明を丁寧に行う」というふうにされているところでございまして、これまでも裁判所においてはこの運用がなされてきているものと承知しているところでございます。
 今後、この新たな制度が導入されて、刑の一部執行猶予の言い渡しが問題となる事案では、裁判長から、そのような説明の一環として、裁判員に対しまして、制度の趣旨や適用の要件に加えて、社会内処遇であるとか保護観察の実情など、必要な説明を行っていただくことになるものと考えております。

○柴山委員
 次の質問に移ります。
 薬物犯に対応する問題です。
 薬物犯で、今度、累犯者にもこの一部執行猶予の制度が導入されることになったんですけれども、それはなぜでしょうか。

○稲田政府参考人
 確かに、今回の改正におきましては、刑法上の刑の一部執行猶予制度は、二度目以上の服役となる者については適用しないということにいたしております。
 他方で、薬物使用等の罪を犯した者につきましては、その者の薬物への傾向性を改善し、薬物の誘惑のあり得る社会内においてもこれを維持強化することがその再犯防止、改善更生のための共通の課題でありますし、現にそのための施設内処遇であるとか社会内処遇における処遇プログラムが存在しているところであって、一般的、類型的に、施設内処遇後に相応の期間の社会内処遇を行うことが再犯防止、改善更生のために必要かつ有用だと言うことができるのではないかというふうに考えられます。
 他方で、それ以外の事犯につきましては、やはり対象者ごとの個別的な事情によっていろいろと処遇の内容が大きく異なるのではないかということから、薬物使用等の事犯のものについてだけこのような制度を導入することにしたというところでございます。

○柴山委員
 私は、今の御答弁にはちょっと異論があるんですね。
 というのは、薬物犯でしかも累犯、つまり性懲りもなくまたやったという人、そういう方でも、社会内、つまり開放的な処遇の中で更生を図るべきプログラムというのが必要な場合がある。必要な場合があるということで、必ず社会内処遇しろというわけじゃない仕組みになっているわけですね。
 ただ、私、実は弁護士時代に、例えば国選弁護で、無銭飲食を二十回以上やったという方の弁護をしたことがあります。これはもう依存症なんですよ。立派な方なんです。社会的にしっかりとした地位を持った方なんですけれども、ほんの出来心で始めて、そして、それがどうしてもやめられない。結局、軽微な情状であっても、それを繰り返し繰り返し行うことによって、しゃばと刑務所の行ったり来たりを繰り返している、こういう案件だったわけです。
 無銭飲食はともかく、すりのような事例もありますね。すりは窃盗なわけですけれども、結局、このすり犯も、ほかに仕事ができないわけではないわけですよ。だから、更生プログラムを社会内できちんと行えば立ち直ることが場合によってはできるかもしれないけれども、そういった社会内の更生プログラムがないから、実刑、そして釈放、実刑、釈放と、しゃばと刑務所を行ったり来たりの生活、これで何十回も刑務所暮らしをしているという方を私は現に知っています。
 やはり、こういう一般の刑法犯にも今局長の方からお話があったような制度を導入する、少なくとも選択肢を与えていくべきだというように思うんですが、いかがでしょうか。

○稲田政府参考人
 御指摘のように、特に窃盗罪で同種事犯を繰り返す一種の依存症のようなタイプの犯罪者がいるということはまことにそのとおりでございまして、今回の法案のもとになりました議論を法制審議会の部会において行いました際も、このような窃盗罪を繰り返す者につきましても、薬物の事件と同様の類型として、この新たな制度を累犯者にも適用させてはいかがかという議論もかなりございました。
 ただ、いろいろ内部といいますか審議会の中で議論をしていく中で、一つは、薬物に比べると窃盗の方が犯罪類型の形といいますかそういうものがいろいろ千差万別であって、薬物ほど類型的な判断になじまないというところもございますし、処遇プログラム等につきましても、現在までにそこまできちんとしたものができているのかというようなことがございまして、なかなか現時点でこれを裁判所に御判断いただくのは難しいのではないかということで、取り入れないという結果になったものというふうに承知しているところでございます。

○柴山委員
 私は、すりなら必ずこの一部猶予制度を導入しろと言っているわけじゃないんですね。薬物の場合も、一部猶予を累犯事例で適用するかどうかというのは任意なわけですよ。確かに判決言い渡し時点においてそれを判断するのが難しい場合というのはありますが、何回も繰り返しているかどうかというのは裁判官が事実を見ればわかるわけですから、少なくともオプションをつくって任意的な選択肢として導入することは可能なわけですし、今の局長の答弁は、私は全然説得力がないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○稲田政府参考人
 先ほども申し上げましたように、薬物の関係につきましては、これまでの施設内処遇あるいは社会内処遇における処遇プログラムというものがかなり存在しているという実態があるということがやはり大きい面がございますし、対象者ごとの個別的事情によって必要とされる処遇の内容がそれほど大きく異ならないという薬物に特有の特殊性もあるのではないかということから、現段階で、裁判所に判決時点でこの点を薬物以外について御判断いただくのがなかなか難しいのではないかというふうに考えているところでございます。

○柴山委員
 今の問題はまた議論させていただきたいと思います。
 それで、薬物事犯についてなんですけれども、薬物に対する依存の改善に資する医療を受けるために指示などができることと今度の制度でされているんですけれども、これは強制力はないんですか。

○青沼政府参考人
 薬物依存がある保護観察対象者の改善更生を図るためには、依存の改善に資する医療ですとか援助を受けさせることが必要な場合があるわけですけれども、現行法では、これらの医療、援助につきましては、いわゆる補導援護の一環として、援助的、福祉的措置を行うことができるのみでありまして、これらを受けるよう指示的に働きかける根拠に欠けているとされているものであります。
 そこで、今回の改正では、このような医療及び援助をより確実に受けさせることができるよう、指導監督上の措置として、医療、援助を受けることにつき、必要な指示をすることができるものとしたものでございます。対象者が指示に応じなかった場合には、個々の事案に応じ、観察官が面接などをして指示の趣旨や意図を十分に説明し、理解をさせるなどの対応を行っていくということになります。
 もっとも、この指示は特別遵守事項によって義務づけるものではございませんので、指示に従わなかった場合に直ちに執行猶予の取り消しなどの措置に結びつくものではございません。しかし、指示に反して医療や援助を受けなかった場合には保護観察所に出頭するよう指示することが考えられまして、この指示にも従わなかった場合には、一般遵守事項違反として、執行猶予の取り消し等の措置が検討されるということになると思います。

○柴山委員
 何か説明を聞いているとめちゃめちゃまどろっこしいんですね。
 要するに、これまでの医療を受けるためのさまざまなアドバイスが強制力が全くなかったということで一定の指示という形をとったということなんですけれども、結局、面接とか指導に従わないで、さっき稲田局長の方から薬物についてはちゃんとしっかりとしたプログラムが確立しているというようなお話があったんですけれども、薬物に関しては医療の問題が非常に重要なんですよ。ですから、この薬物に関する指導はやはり特別遵守事項というような形をとらないと、今お話があったように、それに従わなくて、しかも観察官の呼び出しに応じないとそこで初めて一般遵守事項違反みたいなことになるということにしたら、だったら観察官の呼び出しには応じて医療だけは受けません、そういうことを繰り返し繰り返しやっていたら取り消しにならないということじゃないですか。そうじゃないですか。

○青沼政府参考人
 委員御指摘のような意見もあるということは重々承知しておるところではございますけれども、医療ということになりますと、原則的に契約行為、あるいは本人の同意、医療機関との信頼関係ということを基礎としておりますので、なかなか直接的に指示をするということは難しいというふうに考えております。

○柴山委員
 何も対象者の腕をつかまえてきてそこで何か強制的な行為をしろと言っているんじゃないんです。要は、特別遵守事項として、医療に対するアドバイスに従わなかった者については、これは執行猶予を取り消せ、そういうことができないかということを私は言っているんであって、それがないということは、私はちょっとやはり画竜点睛を欠く制度じゃないかなということを言っているということだけはここで申し上げさせていただきます。
 時間が余りなくなってきたんですけれども、裁判員がなかなか理解しづらい問題として、改正刑法の二十七条の七という条文があります。一部執行猶予の猶予期間がめでたく満了した、経過したということの効果で、猶予されなかった実刑の期間を刑期とする執行を終わった日またはその執行を受けることがなくなった日において執行を受け終わったこととするという条文があるんですけれども、これは一体どういう意味を持つんでしょうか。また、この条文の効果は、一体どういう効果を持つんでしょうか。

○松野大臣政務官
 極めて技術的な条文で少しわかりにくいかと思いますが、具体的な例で申し上げますと、例えば懲役二年を言い渡す、今回からはそのうちの一部執行猶予できるということになりましたので、一年六月が実刑部分、そして六カ月部分が猶予部分というふうになりますと、刑の執行が終了する時期というのは、順調に、取り消されることなくいけば、実刑が終わったときということになりますので、つまり一年六カ月終了した時点でこの刑の執行は受け終わったというふうに判断されるということであります。
 そして、この刑の執行が終了という意味は、その翌日から五年が経過すればまた新たな執行猶予がつけられる、こういうような仕組みがあったり、あるいはいろいろな師業、例えば看護師さんあたりですと、刑の執行が終わって十年経過するとまた看護師の免許を取得できる、そういうような仕組みがあるわけですから、いつ刑の執行が終了したのかというのはそういう点でも意味を持つ、こういうことでございます。

○柴山委員
 ところが、条文には「又はその執行を受けることがなくなった日において、」執行を受け終わったとするというように書いてあるんですけれども、これは一体どういう意味なんですか。

○松野大臣政務官
 「又は」というのは、現実に刑の執行を終わった場合ではなくて、例えば恩赦によって刑の執行が免除されたという場合を指しているわけです。

○柴山委員
 裁判員にわかるように説明してください。
 続きまして、これは質問が幾つか出ていたんですけれども、これに伴って保護観察官の負担がやはり、執行猶予期間、これは一部猶予でも一年から五年という形で、かなり保護観察も活用されると思っております。人員、予算の拡大、これについて、局長からぜひしっかりと見通しを述べていただきたいと思います。

○青沼政府参考人
 委員御指摘のとおり、刑の一部の執行猶予制度が導入された場合は、薬物事犯者を中心に保護観察対象者が増加することが見込まれるほか、社会貢献活動の実施や、関係機関との連携した活動先の確保にも取り組む必要がありまして、保護観察官の業務負担は増加するものというふうに認識しております。
 これに対応しまして、平成二十四年度におきましては、東日本大震災の被災地における保護観察処遇体制の再構築のため二十五人のほか、薬物依存のある刑務所出所者等に対する再犯防止等の強化のための三十人の保護観察官の増員が図られたところでございます。
 今後も、刑の一部執行猶予制度及び社会貢献活動の実施を見据えて、保護観察官の業務負担などの状況を踏まえ、法施行までに、必要な実施体制の整備について適切に取り組んでいきたいと思っております。

○柴山委員
 時間は経過しましたが、最後、一問だけお伺いしたいと思います。
 この一部猶予の制度等によって、やはり、公的な監督がきちんと及ぶ範囲で、例えば社会内の身元引受人を確保するなどの措置がより図られてくるというようには思います。ただ、これは以前、滝法務大臣に対してお伺いしたと思うんですけれども、例えば大阪のあの心斎橋事件、要するに、覚醒剤で満期出所して、半月で結局、仕事がなくて、男女を刺殺してしまったというような、満期後の、公的監督が及ばない後の再犯防止ということは、さっき検討されているというようにはお話があったんですけれども、少なくとも、この法律ではカバーされないわけですね。先ほど、すりや無銭飲食の話もしましたけれども、ぜひ、そういった部分の対応ということを、大臣から一言だけお答えいただきたいと思います。

○滝国務大臣
 今回の法案のカバーできない部分、これについては、引き続き、やはり重大な問題として、関心を持って検討を続けなければいけないと思っております。

○柴山委員
 以上です。ありがとうございました。

第180回 国会 衆議院 憲法審査会

第180回 衆議院 憲法審査会 第8号
平成24年8月2日(木)
午前九時開議

【日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法の各条章のうち、第四章の論点)】

○大畠会長
 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に日本国憲法の各条章のうち、第四章の論点について調査を進めます。
 本日の議事について申し上げます。
 まず、衆議院法制局当局から説明を聴取し、その後、各委員からの意見表明等を含む自由討議を行うことといたします。
 それでは、衆議院法制局当局から説明を聴取いたします。衆議院法制局法制企画調整部長橘幸信君。

○橘法制局参事
 衆議院法制局の橘でございます。
 本日は、第四章国会の章につきまして、お手元配付の資料に基づき、その主要論点について御報告させていただきます。何とぞよろしくお願い申し上げます。
 申し上げるまでもなく、日本国憲法は、その政治システムとして、いわゆる議院内閣制を採用しております。この議院内閣制という政治システムの核心につきましては、学説上議論があるところですが、一般的には次のように説明されるのが通例でございます。
 すなわち、立法府と行政府が権力分立の要請に基づいて一応分離されていること、そしてその上で、行政府が立法府、特に両院制の場合には下院に対して政治責任を負い、その民主的なコントロールに服する関係にあること、このように理解されているところでございます。さらに、一般的には、この場合、立法府は行政府の長たる首相を選任し、かつその不信任を決議する権限を有するとともに、首相側は立法府の解散権という武器を持ち、相互にチェック・アンド・バランスを図るような制度設計がなされる例が多いとも言われております。
 このように、立法府と行政府のいわば分離と融合のもとにおける責任政治のシステムこそが議院内閣制の核心ということになるわけでございます。
 そういたしますと、このような政治システムを議論する際には、国会と内閣を関連させて一緒に議論することが必要となってまいります。衆議院の憲法調査会報告書におきまして、両者をあわせて政治部門という形で整理しているのも、このような理由からであると拝察いたします。
 以上のようなことを念頭に置いた上で、かつ、各章ごとの検証を行うという本審査会の趣旨を踏まえまして、本日先生方のお手元に配付いたしました資料に掲げました論点は、基本的に国会に特化した論点に限定してございます。
 今申し上げました議院内閣制というシステムに直結するような論点、例えば国会の行政監視機能や首相公選制などに関する論点につきましては、次回の第五章内閣の章において取り上げることといたしておりますので、何とぞ、この点、御了承、御容赦のほどお願い申し上げる次第でございます。

 さて、以上を踏まえつつ、前回までと同様に、国会の章に規定されております各条項に関しまして、お手元配付のA3縦長の論点表に基づきまして、その主要論点について御報告させていただきます。
 ここでは、幹事会での御指示を踏まえまして、大きく二つの分野に大別した上で、それぞれ幾つかの論点を抽出してございます。

 まず第一の分野は、第四章冒頭の国会の地位、立法権に関する第四十一条に関する論点、そして、本日最大の論点と言っても過言ではないと存じますが、第四十二条及びこれに続く一連の条文において定められております二院制に関する論点であります。

 第二の分野は、通年国会など国会における議事手続等に関する論点、及び、現行憲法には規定はございませんが、現代民主政治を論ずる上で避けては通れない政党と憲法に関する論点、そして、それ以外の条文に関する論点でございます。

 さて、まず最初は、第四十一条の国会の地位、立法権についてでございます。
 本条項は、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」という簡潔かつ格調高い条文であり、先生方の日々の立法活動の根幹に位置する条文でもございますが、この簡潔な条文をめぐっては、例えば国権の最高機関の法的あるいは政治的意味など、学説上も実に多くの議論がなされているところであります。
 衆議院憲法調査会等におきまして特に議論されてきた実務的な論点は、後段の唯一の立法機関という文言に関する、先生方の法律案提出権の制限に関する論点であるかと存じます。
 すなわち、国会の構成メンバーである国会議員の先生方が法律案提出権を有することは当然でありますが、現行法令上は、国会とは別の権力機関である内閣にも法律案提出権が認められております。
 その一方で、本来的な権限者である国会議員の先生方の法律案提出権につきましては、逆に、国会法などによりまして、所定の賛成者を要する旨の制限が課されております。
 さらに、衆議院におきましては、会派所属議員が法律案その他の議案の提出者、賛成者になろうとするときは、その所属会派の党議を経た旨の国対委員長などの所定の役員の承認印、いわゆる機関承認が必要との確立した先例もあるところでございます。
 このような現状に対しまして、Aの欄に掲げた明文改憲の御主張は、国会を真に唯一の立法機関とするためには、法律案提出権を国会議員に限定する明文の規定を置くべきであるとする御意見です。
 これに対して、現在のままの運用で何ら問題はないとするのがC1の御意見です。
 他方、Bは、議員立法の賛成者の員数要件、現在は、例えば衆議院であれば、予算を伴う法律案は五十人以上、予算を伴わない法律案は二十人以上の賛成者が必要とされておりますが、これを、国会法を改正して撤廃あるいは緩和すべきであるという御意見です。
 また、C2は、先ほどの機関承認の先例は廃止するべきであるとする御意見でございます。

 次に、二院制に関する論点について御報告いたします。
 まず第一の論点は、二院制、一院制の是非それ自体に関する御議論です。憲法改正をして一院制を導入すべきであるとするのがAの欄の御意見であり、現在の二院制を維持すべきとするのがCの欄の御意見です。
 次に、二院制を維持するとしても、現在のままの二院制で全く問題はないとする御意見は、これまでの御議論におきましてはほとんどございませんでした。二院制を維持するべきとする見解の多くは、同時に、両院の役割分担やその選挙制度について、二院制の趣旨がより生かされるようにするべくさまざまな改善策を唱えております。
 これを大きく二つに分類して整理したのが、論点表の、両院の役割分担等という両院の権限関係に着目した論点と、国会議員の選出方法という両院の組織原理に着目した論点のそれぞれの欄でございます。
 まず、両院の役割分担、権限関係に関する論点でありますが、ここでは、明文改憲を主張する御意見として、両院の性格の違いをより一層明らかにするため憲法改正をするべきであるとするAの欄の御意見がございます。
 具体的には、一つ、現在、五十九条二項によって、衆参の議決が異なった場合に衆議院が再議決するには三分の二以上の特別多数決が必要とされておりますが、これを過半数に引き下げるなどして、より衆議院の優越を強化するべきであるとする御意見。
 二つ、予算については、現行憲法六十条二項の規定によって、衆参の議決が一致しないときや三十日経過による自然成立など衆議院の強度の優越規定が定められておりますが、しかし、この予算を担保するための歳入法案、例えば特例公債発行法案などは、一般の法律と同じように三分の二以上の特別多数決による再議決が必要となっているのは整合性を欠くのではないかとして、このような歳入法案についても、予算と同様に衆議院の強度の優越が働くようにするべきとする御意見などがございます。
 他方、三つ目として、衆議院は予算審査中心、参議院は決算審査中心との役割分担を明確にする観点から、これを憲法に明記するべきであるとか、会計検査院を参議院の附置機関にするべき等といった御主張もございます。
 これらの明文改憲の御主張に対して、憲法の規定はそのままにして、立法措置でできる範囲内の改善策、例えば、国会同意人事に関する議決について衆議院の優越規定を定めることとしたり、また、両院協議会における協議手続について、国会法あるいは両院協議会規程などを改正して、より両院間の実質的な協議ができるようにするべきとの御意見もございます。これがB1やB2の御意見でございます。
 これらの御意見に対して、現行法令の枠内の運用改善で対処すれば足りるとするのがCの欄の御主張です。例えば、参議院の決算審査重視の運営などは現に行われているものであるとか、あるいは、参議院の問責決議などはより慎重で抑制的な運用をすればよいとの提言などがその具体例でございます。
 もう一つは、国会議員の選出方法、すなわち組織原理に着目した論点であります。
 まず、いわゆる一票の格差に関して明文改憲を行うべきとする御意見がございますが、これに関しては、方向性が異なる二つの見解が唱えられているように存じます。一つは、あくまでも厳格な人口比例に基づく平等を求めるA1の見解であり、これに対して、人口を基本としつつも、それ以外の要素をも勘案するべきであり、最近の最高裁判決や学説の多数に見られるように、人口比例原則に過度に拘泥するのは適切ではない、このことを憲法に明記すべきであるとするA2の見解でございます。
 以上の二つの見解は、衆参を特に区別した議論ではございませんが、A3の明文改憲の御主張は、両院の選出方法に違いを持たせ、二院制の機能をより明確にしようというものです。例えば、第一院たる衆議院について全国民代表や直接選挙の原則を維持するのは、これは当然の前提とした上で、第二院たる参議院の選挙制度については、地域代表制や職能代表制、さらには間接選挙制や推薦制などの導入も検討すべきとする御見解です。
 これに対して、Bの欄の御主張は、あくまでも現行憲法の枠内で両院の選挙制度に違いを持たせ、異なる代表機能を発揮させることを目指すべきであるとする御見解です。

 次は、二つ目の分野に関する諸論点でございます。
 まず最初は、国会の議事手続等に関する論点であります。
 この中には、まず、いわゆる通年国会に関する御議論がございます。
 現行憲法は、第五十二条におきまして、「国会の常会は、毎年一回これを召集する。」と定めるとともに、五十三条においては臨時会の規定を設けるなど、一般に会期制を前提としているものと理解されております。
 これに関して、憲法改正をして通年国会、例えば衆議院議員の総選挙から次の総選挙まで、これは一般に立法期とか議会期と言われるようなものでありますけれども、これを広い意味での一つの会期として、必要に応じて休会をすればいいとするのがAの欄の御意見です。
 これに対して、国会審議がスケジュール闘争になっているのは、会期制それ自体に問題があるのではなくて、国会法に定める会期不継続の原則にこそあるのであり、国会法を改正してこれを廃止すれば足りるとするのがBの欄の御意見です。
 もちろん、国会会期の長期化については、現行憲法、国会法の枠内でも十分に対処可能であり、長期の延長や臨時会の適宜の召集で対処すれば足りるとするCの欄の御意見もございます。
 議事手続に関する特徴的な見解の一つに、二番目の論点として、憲法五十六条一項に定める定足数に関する御議論がございます。
 現行憲法では、本会議を開会しその議事を進める際にも、そしてもちろん、最終的な採決、議決をする際にも、総議員の三分の一以上の出席がなければならないとする定足数を定めております。
 しかし、議決の際の定足数は必要だとしても、開会をして議事を進める段階での定足数は必ずしも必要ないのではないかとして、議事を開くことに関する定足規定は削除すべきであるとする御主張がございます。これがAの欄に掲げた見解です。

 次に、国政調査権に関する議論がございます。
 現行憲法六十二条に規定されております国政調査権の主体は、あくまでも議院、ハウスでございます。衆参両院の本会議において行使するものと定められているわけでございます。
 この本会議の有する権限を、現行の国会法、衆参両院の議院規則におきましては、常任委員会や特別委員会に授権して行使することができるものとしているわけでありますが、しかし、これよりもより小さな単位、例えば議員、メンバーの先生方個々人が国政調査権を行使できるようなものとはされておりません。本会議や委員会が国政調査の行使主体であるということは、その発動の可否の判断は多数決、要するに、衆議院でいえば与党会派の意向に委ねられるということになります。
 そこで、政府の行動を機動的、適切に監視するためには、少数会派による行政監視機能を充実させる必要があり、そのためには、まず憲法改正をして、より小さな単位の一定数以上の議員、あるいは、究極的には個々の議員にも国政調査権を付与するべきではないかとするのがAの欄の見解です。同じ趣旨のことを、現行憲法の枠内で、国会法規の改正等の立法措置でもって実現できることをまず行うべきであるとするのがBの欄の御見解です。
 なお、御参考までに付言いたしますならば、平成九年の国会法改正によって、衆議院についてだけではありますけれども、いわゆる予備的調査の制度が導入されております。これは、多数派が拒否権を発動しない限りという条件つきではございますが、四十人以上の先生方が連名で、調査局長あるいは法制局長に対して予備的調査の発動を命ずることができるとするもので、広い意味で、少数会派の国政調査権を保障する制度として評価されているものと承っております。

 議事手続に関する四番目の論点として、国務大臣の議院出席義務に関する御議論がございます。
 国会のような合議体におきましては、その会議体で発言できるのは、基本的には合議体の構成メンバーである先生方自身でございます。これが大原則であります。これに対して憲法は、六十三条におきまして、内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかわらず、いつでも議案について発言するために議院の会議に出席することができるとした上で、逆に、国会サイドから答弁、説明のために出席を求められたときは、出席しなければならないと定めているわけでございます。
 しかし、この国会出席の権利及び義務のうち、出席義務については、この規定のために、国会会期中における国務大臣の外交等のための海外出張が必要以上に制約されているとして、これを緩和するべきであるとする御主張がございます。
 例えば、職務の遂行上特に必要がある場合にはこの限りでないとして、出席義務が免除される場合を憲法上明記すべきではないかとする御主張が、Aの欄の明文改憲の御主張でございます。
 これに対して、そのようなことは、国権の最高機関である国会の役割、権威を低めるものであり、また、そもそも議院内閣制のもとでは、閣僚の国会出席義務こそが行政監視機能の重要な要素であって、出席義務の緩和などは認めるべきではないとするC1のような御見解もございます。他方、真に必要な海外出張についてはこれを認めるべきであるが、それは運用で対処すれば足りるのであって、憲法改正までするような話ではないとするC2のような見解もございます。

 最後に、政党に関する条項を憲法に設けるべきかどうかという御議論について御紹介申し上げます。
 現代国家においては、外交や防衛、治安維持などにとどまらず、社会保障の分野など行政活動の役割が飛躍的に増大した、いわゆる行政国家の現象が顕著になってきております。
 そのような中において、国民と議会を媒介する組織として、かつ複数政党の存在を前提とした、政府・与党対野党という意味での実質的な権力分立の観点からも、政党の存在はますます重要になってきていると言われております。まさしく、政党なしには現代民主政治は機能し得ないと言っても過言ではないわけでございます。
 このような政党と憲法を初めとする法令の関係を歴史的に見れば、先生方には釈迦に説法かとは存じますが、例えばトリーペルの四段階説などによる説明では、まず最初は、政党というものに対して国家は敵視する態度をとる。その後、これを無視するという第二期の時代を経て、第三期に入ると、参政権の拡大や代議制の発達、それに続く議院内閣制の確立などに伴って政党の重要性が増し、その存在を法的に承認する段階に入る。例えば、政治資金規正法や政党法人格付与法、政党助成法や公職選挙法など、個別の法律を持つ我が国の現在の制度はこの段階にあるというふうに言われるところです。
 そして、その次の第四段階として、ドイツの基本法のように、政党を公的存在として憲法制度の中に編入する国もあらわれてくるようになるということでございます。
 このような理解を背景にしつつ、我が国でも、政党の公的性格に鑑みて、憲法に位置づけて、その政治活動の自由とともに、政党内部の必要な規律についても定めるべきではないかとするのがAの欄の見解です。
 これに対して、先ほど申し上げた政党助成法等の法律とともに、現行憲法下において、必要とあらば政党法を制定すれば足りるとするのがBの欄の御見解です。
 これらに対して、そのような主張は、公権力による政党の内部秩序に対する介入をもたらす危険性があるとして、あくまでも政党は、自由な私的結社として位置づけておくことこそが望ましいとするCの欄の御見解もございます。

 その他、第四章には、国会議員の三大特権と言われます歳費を受ける権利、不逮捕特権、免責特権などに関する規定や、一般に独立を保障されている司法権に対する重大なコントロール権能としての弾劾裁判所の設置など重要な条文もありますが、ここでは詳細な論点紹介は省略させていただきます。
 以上、本日は、第四章国会に関する主要論点につきまして御報告させていただきました。
 雑駁で疎密のある御報告であったとは存じますが、以上でございます。ありがとうございました。

○大畠会長
 以上で衆議院法制局当局からの説明聴取は終わりました。

    ―――――――――――――

○大畠会長
 これより各委員からの意見表明等を含む自由討議に入ります。
 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派を代表する委員が順次発言を行い、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。
 それでは、まず、各会派を代表する委員の発言に入ります。
 発言時間は七分以内とし、その経過につきましては、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせいたします。御協力をよろしくお願いいたします。
 発言は自席から着席のままで結構でございます。

(中略)

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 日本国憲法第四章国会について、自由民主党を代表して見解を述べさせていただきます。
 国会機能の充実については、中身もそうですけれども、憲法事項かどうかという議論も非常に大切だと思っております。私たちも、今お話があった国会の行政監視機能の充実に思いをいたしておりますけれども、例えば、福島原発の事故調の設置、あるいは行政仕分けについても、しっかりと国会で行うべきという提言をさせていただいております。
 さて、現在、国会のあり方に関して最も根本的でかつ活発な議論が行われている問題として、一院制、二院制についての議論があります。
 自民党の憲法改正草案の作成過程でも、一院制を採用すべきか否かは、憲法全体を通じて最も大きな議論のあったテーマでした。党内の議論では、ねじれ国会の状況に対する決められない政治などの批判を背景として、一院制を採用すべきとの意見も多く出されました。
 しかしながら、一院制の導入の具体化には、選挙制度を含めた詳細な制度設計を踏まえた議論が必要なんですけれども、今回の草案全体の位置づけや時間的制約により、そこまでの議論を行うことは困難でしたし、また、諸外国に見られる二院制の持つ慎重審議の効用を重く見るべきとの意見も、やはり強く主張されました。
 そこで、あくまでも、今回の草案では二院制を維持することとしており、論点表ではCになります。今後、二院制のあり方についてのさまざまな課題を検討する中で、一院制についても検討することとしております。
 続きまして、両院の役割分担についても、一院制に関する検討と絡めて議論があり、また、法律案の再議決要件の引き下げについても議論がありました。
 ねじれ国会のもとで法案審議が停滞しているとの認識を背景に、国政の停滞を避けるため、三分の二の再可決要件を過半数に引き下げるべきという意見も多くありましたが、一方で、それは参議院の存在を否定するものだという意見も強く出されました。
 結局、今回の草案では、一院制導入について現状を変更しなかったのと同様の理由から、再議決要件についても現状を維持することとし、論点表のCの立場をとりましたけれども、今後、二院制についての検討を進めていく上では、一院制についての議論と並んで、この再議決要件のあり方も重要なテーマであると考えます。

 次に、国会議員の選出方法、特に一票の格差についてです。
 一票の格差の是正を含めた選挙制度の改正については、最高裁判所の判決等を受けて議論が現に行われておりますけれども、そもそも、日本国憲法四十七条では、選挙区その他両議院の議員の選挙に関する事項は法律で定めるとされ、基本的に立法府の裁量に委ねられております。
 一票の格差は、投票価値の平等という民主政治の根幹にかかわる問題であり、その是正は喫緊の課題ではありますが、選挙制度は、人口をまず基本としつつも、行政区画、地勢など、その他の要素も総合的に勘案して定められるものであります。
 自民党の改正草案では、この点を明らかにする規定を、現行法制の規定を参考にしつつ四十七条後段として加えております。論点表ではAの2になります。

 次に、議事手続等についてです。
 自民党の草案では、通常国会の会期を法律で定めると規定し、また、いずれかの議院の四分の一以上から臨時国会の開会要求があった場合の召集期日を、要求から二十日以内と明確に定めました。
 会期制については、先ほど御紹介があったようにさまざまな意見がありますけれども、まず、これらの規定の運用により、国会の活動期間の確保のため一定の対応がとれるようになります。

 その他、自民党の草案では、両議院の本会議の定足数について、議事の定足数を削除し、議決だけの要件としています。論点表ではAになります。
 また、国務大臣の国会出席義務について、重要な外交日程があるにもかかわらず国会に拘束され、その結果国益が損なわれてしまうようなことがないようにするため、「職務の遂行上特に必要がある場合は、この限りでない。」として、出席義務を緩和し、論点表のAとしております。

 最後に、政党についてです。
 現代政治において、民意を媒介する機関としての政党のウエートは確実に大きくなってきており、議会制民主主義にとって不可欠な存在となっております。いろいろ議論はありますけれども、このような政党の重要性に鑑み、自民党の草案では、政党について新たに憲法上規定を置いております。これとあわせて、結社の自由との関係をも踏まえ、「政党の政治活動の自由は、保障する。」との規定も置いております。論点表ではAになります。
 憲法に政党についてこのような規定を置くことにより、政党法を制定し、政治活動の自由の保障と同時に、党内民主主義の確立などの内部規律を定めていくための根拠になると考えております。
 以上、自由民主党代表としての意見表明とさせていただきます。

第180回 国会 衆議院 法務委員会

第180回 衆議院 法務委員会 第10号
平成24年7月31日(火)
午前九時開議

【本日の会議に付した案件】
・政府参考人出頭要求に関する件
・裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 法案質疑に先立ちまして、二つほどお伺いしたいと思います。
 まず、今月十八日に法制審議会の会社法制部会が提示した会社法改正の要綱原案についてです。
 私たち自民党の法務部会、財務金融部会、経済産業部会、企業・資本市場法制プロジェクトチーム、企業会計小委員会の合同会議の方では、かねてから、企業ガバナンスの強化のため、上場会社における複数の社外取締役選任義務を上場規則で明示し、それができなければ法律で義務づけるべきだと主張してまいりましたけれども、この点、要綱ではどのようになったんでしょうか。

○原政府参考人
 お答えいたします。
 社外取締役の選任の義務づけの問題につきましては、会社法制部会におきまして当初から意見が大きく対立していた論点であるというふうに承知しております。現在は、選任を義務づけることにかえまして、社外取締役がいない一定の株式会社について、その理由に関する情報の開示を充実することなどが議論されているものと承知しています。
 いずれにしましても、最終的な取りまとめにはまだ至っていないと承知しております。

○柴山委員
 結局、義務づけには至っていない。この要綱案においても至っていないし、しかも、まだ結論すら出ていないということなんですけれども、これは一体なぜなんでしょうか。
 確かに、社外取締役を入れることによってさまざまな不祥事を全て防ぐということはできません。ただ、外部の目を入れることが一定の経営の透明性を増すという効果にはつながると思いますし、また、社内では得られない知見を獲得するということは、その会社自体にとっても有用なはずなんですよね。
 既に海外では、イギリス、アメリカ、フランスのほか、韓国あるいは中国においてすら社外取締役の選任が義務づけられています。それでは足りないからより厳しい仕組みをつくるというのであれば話はわかりますけれども、なぜ、社外取締役の選任を義務づけることに、これほどまでに経済界から反対が多いんですか。

○原政府参考人
 この問題につきましては、法制審議会のさまざまな立場のメンバーから多様な意見が出されまして、コンセンサスが得られていないという状況でございます。
 今委員が御発言になりましたように、社外取締役を選任することをいたしますと、社外取締役には経営者を監督する機能が期待されますので、取締役会の監督機能が強化されるですとか、取締役会の透明性が高まる、そういうメリットがあるという指摘が一方でございます。
 他方で、各企業の実情に応じた最適な企業統治体制をとることが阻害されてしまうのではないか、あるいは、社外取締役の選任を義務づけますと適切な人材確保が難しい、そういったいろいろな意見がございまして、現在のところは、社外取締役の選任を会社法では義務づけない方向での議論が進められているという状況でございます。

○柴山委員
 では、具体的にお伺いします。
 人材がいないというように今局長はおっしゃいましたけれども、東証一部に上場している企業の中で社外取締役を置いている会社の割合は何%ですか。

○原政府参考人
 平成二十三年八月に、一般社団法人であります日本取締役協会が調査結果を発表しております。上場企業のコーポレート・ガバナンス調査二〇一一という資料でございますが、この調査結果によりますと、東証一部に上場している企業の中で社外取締役を置いている会社は五一・四%であるというふうに報告をされております。

○柴山委員
 この五年間で、どういう形で推移したんでしょうか。

○原政府参考人
 ただいま御紹介いたしました資料によりますと、二〇〇四年でも調査がされておりますが、二〇〇四年の調査結果では、東証一部の企業で社外取締役を選任している企業の割合は三〇・〇%であった、それが二〇一一年には五一・四%にまでなったということでございます。

○柴山委員 
 つまり、このわずか七年間に、三〇%から五一・四%と飛躍的に増加しているわけなんですね。しかも、ことし二月の資料なんですけれども、経団連の会長、副会長出身会社十七社のうち、社外取締役を置く会社は実に十四社です。しかもその平均人数は二・二九人です。
 ですから、例えば時価総額一定以上の上場会社に限定して複数の社外取締役を選任することを義務づけることは決して不可能ではないというように思うんですけれども、いかがですか。

○原政府参考人
 この問題につきましては、どのような企業を対象に社外取締役を義務づけるべきかということも議論されました。
 一つの案としては、上場企業に社外取締役の選任を義務づけるという案も検討いたしましたし、上場会社一律に社外取締役の選任を義務づけるのではなくして、今委員が言われましたように、もう少し限定する。例えば、株式会社の規模ですとか上場後の経過年数、上場区分等といった、そういうものでもう少し限定して義務づけをしたらどうかという案もございまして、こういった案につきましても検討がされましたが、そういった案も含めて、社外取締役の選任を義務づけることについてはコンセンサスが得られていない、こういう状況でございます。

○柴山委員
 ちょっと、なかなか説得的な根拠になっていないと思うんですよ。
 報道ベースでお伺いする限り、先ほど局長がおっしゃったとおり、義務づけは見送るけれども、例えば、有価証券報告書を提出する会社について、社外取締役を置かない理由を株主総会の事業報告に載せるというような案が提示をされているということなんですけれども、要は説明責任ということになるんでしょうか。その詳細についてお伺いしたいと思います。

○原政府参考人
 委員から御指摘いただきましたように、七月十八日の第二十三回の会合におきまして要綱案の第一次案を提示しておりますが、その案では、社外取締役の選任の義務づけはしないということのかわりに、一定の株式会社において、社外取締役が存在しない場合には、社外取締役を置くことが相当でない理由を事業報告の内容とすることと。ちゃんと説明をしていただく、こういうことを提案しているところでございます。

○柴山委員
 それに対する経済界の委員の反応と、そしてその理由を教えてください。

○原政府参考人
 この点は、まだ審議中でございまして、賛否両論があってコンセンサスが得られていないという状況でございますが、次回の法制審の部会におきましてはコンセンサスが得られる方向で議論がされていくのではないか、私は個人的にはそう思っております。

○柴山委員
 報道ベースでは、この点については何とかまとまるんじゃないかというようなことも伺っていますけれども、書式ですとか、通り一遍の説明では、やはり今私が申し上げたような統計の上からいって到底納得はできないというように思いますので、その詳細についても含めて、ぜひまたこの国会で議論をさせていただきたいというように思います。
 論点がたくさんあります。
 親会社株主が子会社の役員の責任を追及できるという多重代表訴訟、これは、完全親会社の発行済み株式あるいは議決権総数の一%を保有することなどを要件とするいわゆる少数株主権とするとのことなんですけれども、本来、代表訴訟は一株でも持っていれば提起できる単独株主権ではなかったですか。

○原政府参考人
 通常の代表訴訟の場合には、提訴権は単独株主権とされております。

○柴山委員
 なぜこのようなハードルを設けたんでしょうか。

○原政府参考人
 この多重代表訴訟は、親会社の株主が子会社の取締役等の責任を追及する訴訟でございますので、完全子会社と完全親会社の株主との関係は、当該完全親会社を介した間接的な関係になるわけでございます。したがいまして、利害関係が一定程度強い場合にのみ多重代表訴訟の提起権を認めるのが相当であろうということで、少数株主権にされているというふうに承知しております。

○柴山委員
 それもなかなか説明が苦しいんじゃないかと思うんですね。
 確かに、法人格が一つ間に介在しているというような御説明ではあったんですけれども、そもそもこの代表訴訟というのは、会社と取締役の間のなれ合いをなくして、会社の機関として株主が会社にかわって訴えを提起するものだったはずであります。ですので、一〇〇%親会社である場合には、子会社の取締役選任を事実上完全に支配している、法人格の壁はありますけれどもそういった実態がありますし、しかも、子会社の損害というのはイコール親会社の損害であるというふうに評価できるわけです。
 とすれば、株主が自分のためというよりは、むしろ親会社の機関として、その親会社と一体になっている子会社にかわってその取締役を訴えることができるというのはむしろ当然でありますし、例えば濫訴などを気にしているということであれば、単独株主権をいじるんじゃなくて、むしろ、その親子会社の類型ですとか、さまざまな背景事情についてきちんと類型分けをしていくということが本来あるべき姿じゃないんですか。

○原政府参考人
 通常の株主代表訴訟の提起権が単独株主権とされているのに対しまして、この多重代表訴訟の提起権を少数株主権にいたしましたのは、先ほど御説明しましたように、関係が間接的であるということでございます。少数株主権にしているのは濫訴防止のためではないか、そういう捉え方もありますが、法制審における考え方は、今申し上げたようなことで検討がされているというふうに承知しております。
 濫訴防止という点もやはり議論になりまして、この点につきましては、完全子会社または完全親会社に損害を加えることを目的として多重代表訴訟を提起するような場合は、これは認めないということで、別の策を設けているところでございます。

○柴山委員
 なかなかわかりづらい部分があります。
 これ以外にも、今回の要綱についてさまざまな論点がありますけれども、先ほど申し上げたように、折に触れて質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 続いて、入管行政について、法案審議に先立ってお伺いしたいと思います。
 国際交流強化の観点から、例えば中国に対して、累次にわたってビザの発行の免除、緩和などを行っているところだと思います。真面目な方が入ってくるということについてはもちろん結構なんですけれども、それに伴って、在留している中国人を初めとした外国の人とのトラブルが発生しているというような実態はありませんか。

○高宅政府参考人
 お答えいたします。
 観光立国の推進などの観点から、中国人観光客に対する査証の発給要件の緩和、見直しが行われてきております。
 具体的に申し上げますと、平成二十一年七月から、十分な経済力を有する中国人観光客に対して個人観光査証の発給を開始する。そして、二十三年九月には、その発給対象を、一定の経済力を有する者に緩和しております。また、二十三年七月からは、初回入国時に沖縄県を訪問する十分な経済力を有する中国人観光客に対しまして、有効期間三年の数次観光査証を発給するということとしております。また、本年七月からは、東日本大震災により甚大な被害を受けた岩手県、宮城県、福島県を訪問する中国人観光客の方に対しても、同様に数次の観光査証を発給しております。
 このように、中国人に対する観光査証の発給要件についての見直し、緩和が行われてきておりますが、これらの査証で入国した方の不法残留状況について見てみますと、個人観光査証による中国人入国者は、入国管理局の電算上では、発給の開始、これは二十一年の七月でございますが、それから平成二十三年末までで約十一万七千人、そのうち、不法残留となった者は二十三人でございます。
 また、沖縄訪問を目的とした数次観光査証による中国人入国者につきましても、発給の開始から二十三年末までで約九千人が入国しておりますが、不法残留となった者は二人となっております。
 現時点で断定的な評価を行うことは必ずしも容易ではないと考えますが、これまでのところでは、少なくとも治安の悪化とか不法残留者の増加ということについて、明らかな結果とか兆候は認められていないと考えております。

○柴山委員
 統計上の数字は必ずしも数は多くないということなんですけれども、もしそういった方々が何か日本に対して国益を損なうような行為をすれば、それは数が少ないからといって看過するわけには当然いかなくなるわけです。
 そこで、入管当局にお伺いしたいんですけれども、不正入国のチェックについては、この間、どのような形で強化をしていますか。

○高宅政府参考人
 お答えいたします。
 入国管理局におきましては、上陸拒否事由に該当する人についての情報、あるいは、退去強制をした人間につきましては、その際に採取した指紋などをデータベース化しておりますが、これらのデータベースを有効に活用して、不正に入国しようとする者を防止するということをしております。
 具体的に言えば、本邦に乗り入れる船舶、航空機は、ここから事前に旅客などの身分事項の提供を受けておりまして、上陸拒否事由該当者かどうか等の事前照合を実施しております。
 それから、上陸申請時に指紋及び顔写真の提供を義務づけまして、当局保有の指紋情報等との照合を実施しております。
 このほか、ICPO紛失・盗難旅券データベース検索システムというのがございますが、それにより盗難旅券の確実な発見に努める、あるいは旅券の偽変造のチェックを確実に行うというようなことをしております。
 このようなことによりまして、不正な入国を防止して、引き続き厳格な入国審査を実施していきたいと思っております。

○柴山委員
 ところが、それだけバイオメトリックス等の力をかりて不正入国を防止しようということで入管当局が尽力をされているにもかかわらず、つい先日も、中国人五十三人が中国残留邦人の親族として来日し、大半が入国直後に生活保護を請求するという事件が発生しています。ブローカーの取り締まりも含めての対策をぜひ示してください。

○高宅政府参考人
 平成二十二年に、大阪におきまして、不実の記載のある身元保証書などを提出しまして在留資格認定証明書の交付を受けて、日系中国人五十三名が入国しております。そして、その方たちが入国直後に生活保護申請を行ったという事案が発生しておりますが、このことを踏まえまして、入管局では経費支弁能力に関する審査を厳格に行っているところでございます。
 具体的には、入管法五条で、貧困者、放浪者等で生活上国または地方公共団体の負担となるおそれのある者というものは、上陸拒否事由、我が国に上陸することができないと定められておりますので、入国事前審査という性格を持つ在留資格認定証明書交付申請の審査に当たりまして、申請を行った外国人の生活費の支弁能力、あるいは身元保証人が支弁するというような場合にはその保証能力などを慎重に審査するなどしまして、公共の負担となるおそれがないことを確認しております。
 もし、在留資格認定証明書交付申請におきまして、例えば経費支弁方法として不実の記載のある文書を提出するなどのことがありました場合には、その証明書の交付を受けて入国し、あるいは入国して在留している外国人につきましては、入管法二十二条の四に基づきまして在留資格を取り消すなどの対応をしております。

○柴山委員
 さっき、ビザ発給要件で、十分な資力から一定の資力というような形の緩和がなされたというように聞いております。
 そして、今局長がおっしゃったんですけれども、結局、身元保証人等の存在については、今私がちらっと申し上げたように、国内のブローカーがおかしな書類を出すということは十分想定されるわけですよ。一定の段階で在留期間が取り消しになっても、それでブローカーがごっそりもうけるということが出てきてしまうわけなんですね。水際で取り組むだけでは、こういった私が今申し上げたような犯罪というのは根絶できないんです。
 だから、その点も含めて対策がどういうふうにとられているんですかということをお聞きしているんです。もう一度答弁ください。

○高宅政府参考人
 不正な形で入国しようとする外国人につきましては、最初の段階でまず在留資格の認定証明書の申請等がございますので、そこの段階で、先ほど申し上げましたように、経費支弁能力をきちんと確認する。そして、身元保証人につきましても、それが本当に身元保証する意思があるのか、あるいはその能力があるのか等を考えるわけでございますが、これも、不実の文書あるいは虚偽の文書等で破られた場合につきましては、入国管理局としましては、入国後にそのことが判明した段階で取り消すという方法をとっているわけでございます。
 ただ、そこにおきましては、例えばブローカー等が判明した場合につきましては、ブローカー自身が外国人であればもちろん入管局自身でそれへの対応をいたしますが、それ以外の場合には、やはり警察と協力して対応するということになると思います。

○柴山委員
 とにかく、しっかりとした連携をしなければいけないということを申し上げたいと思います。
 そもそも、先日、福岡高等裁判所において、永住外国人という限定はついていたかと思いますけれども外国人の生活保護の支給が法的根拠を持つという判決が出ているんですけれども、今御指摘になったように、十分な経費支弁能力等の在留資格の厳格なチェックがしっかりしていれば、私は、かなりこういった生活保護の支給ということを外国の方に行う必要性というのはないというように思うんです。
 また、生活保護のチェックというのは各自治体でやっているわけなんですけれども、それをきちんとトレースするということも必要だと思いますし、これは局長、今おっしゃった入管情報で外国人登録との連携、これはどういう形で行われているんでしょうか。

○高宅政府参考人
 外国人登録につきましては本年七月九日で廃止されておりますが、その後、新しい在留管理制度ということで、法務省が直接情報を取得する、外国人の在留状況に関する情報を取得しておるわけでございますが、いずれにしましても、この点につきましては、狭い意味での在留管理にかなり限定された情報ということになっておりますので、その市町村とのやりとりというのはある程度定まっておりますが、その事項は限定しておりまして、生活保護に直接関係するというのはちょっと難しいかと思います。

○柴山委員
 いや、だから、それですと、はっきり言って、本当に実効性のある自治体との連携ということになっているのかどうかということが私の問題意識なんです。
 入管当局の資料を生活保護先にも出させるようにするということが、今私が申し上げたような、要するに自治体レベルでのしっかりとした不正のチェックにつながってくるというように思うんですけれども、厚生労働省、対応はしていますか。

○西藤政府参考人
 お答え申し上げます。
 生活保護法は、日本国民のみを対象としており、外国人の方は対象としておりませんが、一方、昭和二十九年に通知を発出いたしまして、永住者、定住者等の在留資格を有する外国人の方については、人道上の観点から、予算措置として支給しております。
 そうした中で、外国人の方も含めまして、生活保護制度における不適正事案への対応というのは極めて重要でございます。
 こうしたことから、昨年八月に、法務省とも協議をさせていただき、地方公共団体向けに通知を発出いたしまして、入国直後の外国人から生活保護の申請があった場合には、その方が入国当局に提出した資料、具体的には、身元保証人の収入や本人の生計維持能力を証明する書類などでございますが、こうした資料の提出を求めることによりまして、入国時は生計の維持が可能であると認定されていながら、なぜ短期間で生活保護申請に至ったかについて厳密にチェックをすることにいたしております。

○柴山委員
 いずれにしましても、直接情報が連携をしていない。そういう中で、今、厚生労働省さんの方からお話があったような通達が出ても、自治体が本当にしっかりとチェックをするかどうかというのは私は怪しいと思いますよ。
 これはやはり、自治体の現場で仕事をしている職員にしっかりとしたインセンティブ、あるいは、不正受給をしてしまった者に対する監督、そういうことを行えるようにしないと、私は問題のある事案というのは防げないのではないかというように思っています。
 統計のことをちょっとお伺いしたいんですけれども、オーバーステイや不法就労の摘発についての具体的な統計数、あるいは生活保護についての件数、これについてお伺いしたいと思います。

○高宅政府参考人
 まず、オーバーステイ、不法残留者数についてでございますが、平成二十四年一月一日現在の不法残留者数は、電算上、六万七千六十五人となっております。これは、平成二十三年一月一日、一年前に比べまして約一万一千人の減少となっております。
 その中の不法就労者でございますが、この辺は摘発した方からということになりますが、平成二十三年中に入管法違反によりまして退去強制手続をとった外国人、これが二万六百五十九人おりますが、そのうち不法就労したものと認められた者は一万三千九百十三名、六七・三%でございます。

○柴山委員
 生活保護についてはいかがですか。

○西藤政府参考人
 お答えいたします。
 世帯主が日本国籍を有しない生活保護受給世帯数ということでございますが、平成十七年は二万八千四百九十九世帯でございます。それが年々ふえておりまして、直近では、平成二十二年でございますが、約四万世帯となっております。

○柴山委員
 おわかりのとおり、不法就労者数あるいはオーバーステイが減っていても、生活保護の受給件数はふえているんですね。やはり、こういう実態もきちんと踏まえた上で、今御指摘になられたようなさまざまな対策を厳格にぜひとっていただけるようにお願いを申し上げて、法案固有の質問に移らせていただきます。
 裁判所職員定員法一部改正法案の質問に移らせていただきます。
 率直に申し上げて、裁判官の数は少な過ぎるというのが私の考えです。例えば、ここ数年の東京地裁民事通常部での裁判官一人当たりの手持ち件数はどのように推移しておりますでしょうか。

○戸倉最高裁判所長官代理者
 過去三年間の数字で申し上げますと、東京地裁民事通常部の裁判官一人当たりの手持ち件数は、平成二十一年末で約二百七十件、二十二年末で約二百八十件、平成二十三年末で約二百二十件となっております。

○柴山委員
 異常な数字です。裁判官一人当たりの手持ち件数が三百件近い。平成二十三年についてはちょっと減ったといいますけれども、二百二十件という紹介がありましたけれども、異常としか言いようがありません。
 平成十三年四月十六日付、最高裁判所事務総局が出した「裁判所の人的体制の充実について」というペーパーを私、二年前のこの法務委員会の質疑で紹介させていただいたんです。そこには今後の目標として、裁判官の手持ち件数を大幅に減らさなければいけない、手持ち件数を現在の、平成十三年のです、百八十件から、四分の三の百三十件から百四十件、こういった形でペースダウンしていくということが必要だというように明記をされているんです。
 今御紹介された実態は全く真逆の方向でありまして、余りにもかけ離れているんじゃないですか。

○戸倉最高裁判所長官代理者
 今委員が御指摘のとおり、平成十三年に最高裁が申し上げました裁判官手持ち件数百三十ないし百四十件という目標の数値につきましては、その後、過払い金事件等を中心として急増した、当時必ずしもその点が十分想定できなかったということもございまして、結果として非常に事件が増加したというところでございます。
 ただ、この事件数動向については、最近は若干の落ちつきを見せておる。そのほか、今後とも一定程度の計画性を持った増員をしていくということによって、私ども、この目標については今後とも維持しながら、実現に努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

○柴山委員
 計画的な増員とおっしゃいますけれども、私からいえば、計画性のない、非常に控え目な増員であるというように思っております。
 労働審判や行政訴訟など、専門事件の新受件数は最近どのような傾向でしょうか。

○戸倉最高裁判所長官代理者
 これらの専門的事件については、五年間の事件の比較で申し上げますと、まず、労働審判事件は、平成十九年には一千四百九十四件でございましたが、平成二十三年には三千五百八十六件、これは過去最高の件数でございます。
 行政訴訟につきましては、十年で見ますと増加をしておりますが、この五年間で見ますとほぼ横ばいでございまして、平成二十三年では二千二百六十八件でございます。
 知的財産訴訟は、四百件から六百件台の間で推移をしておりまして、平成二十二年には六百五件でございましたが、これが二十三年になりますと四百五十六件という状況でございます。
 医事関係訴訟は、平成十六年にピークを記録したわけでございますが、その後はやや減少傾向にございまして、五年前の平成十九年は九百二十七件、平成二十三年は七百四十一件といった状況でございます。

○柴山委員
 労働審判の件数が突出してふえていますね。
 先ほど来お話があった成年後見事件などの家事事件について、もう一度ちょっと説明をお願いしたいと思います。

○戸倉最高裁判所長官代理者
 まず、家事事件でございますが、これも同じく五年間で申し上げますと、家事審判事件が、平成十九年に約五十八万件でございましたが、平成二十三年には約六十四万件でございます。
 その中で、成年後見の開始事件につきましては、平成十九年には約三万件でありましたが、平成二十三年には約四万件でございます。これに伴いまして後見人に対する監督事務も増加しておりまして、これは後見監督の処分の事件と、あと、専門職後見人については報酬付与の事件で監督を行うわけでございます。その合計数で申し上げますと、平成十九年には約六万四千件でございましたが、平成二十一年に約七万七千件と、これは最高を記録いたしまして、昨年、二十三年には約七万五千件と、依然高い水準にございます。

○柴山委員
 はっきり言って、本当に深刻な水準に達しているというように言わざるを得ないというように思っています。
 そして問題なのは、常日ごろから指摘をされているように、弁護士の増加に比べて裁判官の増加のペースが、同じ期間で比較すると、割合的に非常に鈍いのではないかというように思うんですね。弁護士の増加と裁判官の増加、これを五年ベースで比較するとどうなりますでしょうか。また、司法研修所終了試験である二回試験の合格者の中で判事補に進む人数の割合の推移、これがこの五年間でどのように推移しているでしょうか。

○戸倉最高裁判所長官代理者
 弁護士数につきましては、平成十九年には約二万三千人でございましたが、平成二十三年には約三万一千人ということで、これは約三二%の増加でございます。これに対しまして、裁判官、これは簡裁判事を除いた人数でございますが、平成十九年には二千六百十人でございましたが、平成二十三年には二千八百五十人でございまして、約九%の増加でございます。
 また、修習を終えた者のうち判事補になった者の割合でございますが、これは、平成十九年に修習を終えた者のうち百十八名が裁判官になっておりまして、その割合は四・九七%でございます。平成二十三年に修習を終えた者につきましては、これは百二人が裁判官になっておりまして、四・七四%でございます。

○柴山委員
 とにかく、弁護士がふえている割に裁判官のふえるペースというのは非常に少ないというように思っています。
 今回の定員法では裁判官が三十人ふえていますけれども、判事補の期間が十年あるわけですから、判事補として採用したのは今から十年前であります。ここ数年間は判事補はふやしていないんですよね。これは、やはり私は非常に大きな問題があるのではないかというように思っています。
 なぜ判事補の採用をふやしていかれないんでしょうか。

○戸倉最高裁判所長官代理者
 今委員御指摘のように、判事補についてはこのところふやしてはおりませんけれども、判事補は十年後には判事になる人材ということでございます。そういう意味で、判事補の採用数を考えるに当たりましては、各種事件動向ということになるわけですが、それは、十年より先のさらに事件動向も踏まえてどの程度の採用をするかという、非常に長期的な見通しを立てる必要があるということがございます。
 それにしましても、私どもとしては、やはり判事補になる方で優秀な方がおられれば、これはぜひできる限り任官をしていただきたいというふうに考えているわけでございますが、昨今の司法修習生の志望状況を見ますと、私ども、できれば来ていただきたいと思うような優秀層の方は、やはり弁護士事務所の方も非常に早目に内定であるとか、そういったこともやっておられるということもあり、極めて厳しい競争下にございまして、私ども、判事補にふさわしいなと思う方が、必ずしも十分希望をしていただけてもいないという状況にあるわけでございます。
 こういったことはございますけれども、私ども、やはり少しでも将来を担う優秀な判事補についてはできる限り採用してまいりたいというふうに考えておるところではございます。

○柴山委員
 裁判の中で解決する紛争手続というのが、ある程度、非常に件数的に難しい、厳しい状況だというのであれば、これからは裁判の外で解決する手続を充実させていかなくてはいけないのではないかというように思っています。そういった裁判外の紛争解決実態はどのようになっているのでしょうか。
 そして、ちょっと関連するんですけれども、独禁法で審判制度を廃止して訴訟へ一元化しようという、時代に逆行した流れができつつあったかと思うんですけれども、この審判制度廃止の現在の状況について、それぞれお伺いしたいと思います。
 まず、裁判外紛争解決手続からお願いします。

○滝国務大臣
 裁判外の紛争解決は、司法制度改革の中で出てきた問題でございますから、比較的なじみがまだないというのが実態だろうと思います。しかし、当時からできるだけ裁判外の紛争解決というものにも力を入れていくということで、法務省が認定しているいわば認証ADRということもかなりふえてきておるわけでございます。
 御指摘のように、裁判だけではなくて、やはりADRを中心にした、いわば調停、和解みたいな、一口に言えばそういうことでございますけれども、それによる紛争解決というものももうちょっと宣伝をしていく余地があるかなという感じは今いたしております。

○鵜瀞政府参考人
 独占禁止法の審判制度を廃止いたしまして、公正取引委員会の行政処分に対する不服審査を裁判所に委ねるという独占禁止法改正案でございますが、一昨年の三月に国会提出されまして、今百八十回国会まで継続審査となっておりますけれども、まだ成立しておりません。

○柴山委員
 これは大切な法案ですから、しっかりと与党の皆さんにチェックをしていただきたいというように思います。
 時間がなくなりましたので、最後の質問です。
 これは昨年の定員法の質疑のときにも質問させていただいたんですけれども、震災に伴って、さまざまな法律事件の増加というものが現実化しているのではないかというように思います。どのような事件がどのように増加して、それに対して現状しっかりと対応できているのかどうか、これを最後にお伺いしたいと思います。

○戸倉最高裁判所長官代理者
 震災に関連する事件につきましては、私どもも、これは神戸の震災の経験もございまして、増加するのではないかという予測を持って注視をしてまいったわけでございますが、今のところ、平成二十二年と平成二十三年の比較で見ましても、被災地の地裁の民事訴訟事件につきましては、平成二十二年の比較でいきますと、むしろ二八%の減少でございます。
 また、簡裁民訴事件あるいは民事調停事件では、いずれも平成二十二年度の半分程度という事件の増嵩でございます。
 ただ、家事審判事件につきましては、家事審判事件は全般的には微増というところでございますが、その中で見ますと、相続放棄の審判事件が、これは前年比でいきますと二、三割程度増加しております。また、相続放棄等の期間伸長の審判事件につきましては、三、四倍に増加したところでございます。
 こういった増加した事件につきましては、私ども、必要な人的手当て等、審理の対応をいたしまして、現時点では全て事件処理を終わっておるというところでございます。

○柴山委員
 大変痛ましい実態を紹介していただきましたけれども、表に出てきた訴訟が少ないことが法的解決のニーズが減っているということではありませんから、声を殺して泣いている人たちが出ないように、しっかりと法曹全体で取り組みをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

第180回 国会 衆議院 法務委員会

第180回 衆議院 法務委員会 第8号
平成24年6月15日(金)
午前九時開議

・政府参考人出頭要求に関する件
・裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 滝大臣、このたびは御就任おめでとうございます。
 まず、オウム真理教の現状について伺います。
 昨年末の平田信、今月の菊地直子と、立て続けに指名手配犯の逮捕が続き、つい先ほど、高橋克也容疑者についても東京都大田区の路上で身柄が確保されたとのニュースが飛び込んできました。
 まず、警察庁に事実関係の確認をしたいと思います。

○舟本政府参考人
 お答えいたします。
 去る六月三日、特別手配の菊地直子を、情報に基づきまして相模原市内で逮捕いたしました。また、同人をかくまっていた男性を、翌四日に犯人蔵匿で逮捕いたしました。
 この両人の供述から、高橋克也が川崎市内に居住していたという情報がもたらされまして、そこに赴きましたが、直前に逃走しておりました。警視庁初め全国警察を挙げて高橋克也の追跡捜査を行っていましたところ、けさ方、情報がもたらされまして、都内、大田区の路上におきまして同人を発見、確保いたしまして、蒲田署におきまして本人であるということの確認をいたしまして、昼前、十一時過ぎに、地下鉄サリン事件、殺人及び殺人未遂で通常逮捕したところでございます。

○柴山委員
 けさ方、情報がもたらされたということなんですけれども、差し支えない範囲で結構ですので、一体どういうソースの情報だったんでしょうか。

○舟本政府参考人
 お答えします。
 今後の捜査を待つところが多いわけでございますので、詳細は控えさせていただきたいと存じますけれども、けさ方、大田区内の漫画喫茶で同人と似たような男を見たことがあるという旨の情報がもたらされまして、捜査員を急派して、その付近で本人を確保したところでございます。

○柴山委員
 今、舟本刑事局長の方からもお話があったとおり、あれほど映像あるいは足取りがわかっていて、逃走してから十日余りが既に経過をしているわけであります。周辺の住民の不安も大変なものがあったのかなというように思います。
 高橋容疑者が勤務先の社員寮から逃走したのは、菊地容疑者の逮捕の報道がきっかけだったというようなことが言われているわけですけれども、今お話をお聞きしたような経緯について、警察として初動捜査の反省はありませんか。

○舟本政府参考人
 お答えいたします。
 菊地直子につきましても、高橋克也につきましても、現在、鋭意捜査中でございます。全容が解明される中で、今回の追跡捜査等々のあり方につきましてもいろいろな形で検討を加え、今後に生かすべきものがあれば当然生かしてまいりたいと考えております。

○柴山委員
 ただ、今申し上げたように、菊地容疑者の逮捕の報道がきっかけとなって直前に逃げられてしまったということは、やはり、さまざまな想定が甘かったんじゃないかなというふうに思わざるを得ません。
 また、平田容疑者の自発的な出頭なくして、菊地直子容疑者、あるいは今回の高橋容疑者の逮捕はなかったというように思います。そういうことからすれば、やはり情報ネットワークということをしっかりと研ぎ澄ませておかなければいけないのではなかったのかということを強く感じます。
 私の住んでいるところは所沢でありますが、この所沢に被疑者らは潜伏をしていました。そして、菊地容疑者につきましては、防護服の着用を行ったり、土谷正実死刑囚のもとで実験工程をノートにまとめたり、薬品の影響を受けて体がふらついていたりしていたという元信者の供述があるようにも報じられていまして、やはりかなり深く地下鉄サリン事件にかかわっていた可能性があるというように感じるんですけれども、そういうことから、私の地元でも大変関心が深いものと思われます。
 今、捜査の経過、現状については、引き続き取り組んでいるということなんですけれども、今後しっかりと実態の解明をし、また、麻原を中心としたオウム教団の闇を暴いていただきたいというように思います。
 一点お伺いしたいんですけれども、今回の高橋容疑者の逮捕に伴いまして、現在係属している麻原あるいは平田等の刑事手続はどのような影響を受けることになるんでしょうか。これは法務省でしょうか。

○稲田政府参考人
 先ほど警察庁からお話がございましたとおり、本日、高橋が逮捕されたばかりでございますし、菊地につきましても、先般逮捕されたところで、まだ捜査中でございます。したがいまして、事実関係も詳細わからないところでございますので、現在係属しております平田被告人に対してどのような影響があるかは、ちょっと、現時点でまだ申し上げられるような段階にないというふうに思います。
 また、麻原につきましては、既に死刑が確定しているという状況にございますので、そういう意味では、特別の影響があるとかないとかいうことにはならないのではないかとは思います。

○柴山委員
 これは以前この法務委員会でも質問させていただいたところなんですけれども、死刑の執行につきまして、滝法務大臣は、就任の記者会見で、これについては適切に対応するということをおっしゃっていました。しかし、確定した死刑を執行するか否かの判断において、共犯事件の帰趨というものがやはりかなり影響してくるのではないかということを質問させていただいたところであります。
 滝法務大臣、この点について再度お伺いしたいと思います。

○滝国務大臣
 基本的には、今回の逮捕でどういうようなことが解明されるかということにかかわってくるわけでございます。基本的には、確定した判決について影響をするようなことはまずないわけでございますけれども、実際の執行面においては、当然のことながら、基本的に、点検した上でどうするかという、個々具体的なケースに即して判断をしていく、そんな事件だろうと思っております。

○柴山委員
 ちなみに、オウムの後継教団としてアレフやひかりの輪が周辺住民の不安を招いています。この間の一連の報道によって、これらの施設における活動が何か影響を受けている事実はありますか。

○尾崎政府参考人
 公安調査庁といたしましては、観察処分の実施ということで、立入検査を初めとして、いろんな手段によって観察処分を実施しているところでございます。
 施設に関しましても、立入検査をこの間、頻繁に行っておりまして、二十三年度中には延べ四十八カ所、二十四年に入ってからは延べ二十一カ所、立入検査を行っております。
 お尋ねは、この間の動きということでございますけれども、実際に立入検査で、教団がどういう動向を示すのか、それについて今後とも引き続き注視してまいりたいと考えております。

○柴山委員
 ちょっとおかしいと思いますね。私は、個別に、やはり公安調査庁から、この間のオウム後継教団の活動が活発化していて、非常に予断を許さない状況であるというようなことをお伺いしているわけですね。
 今お話があったように、平成二十四年に入ってからも何度も立入検査を行っているわけで、その過程で一連の、平田が昨年の末に逮捕となったわけですけれども、報道が過熱する中で、どのような状況にあるかということは、むしろ一般社会に対してきちんと説明をしておくべきだというふうに私は思うんですけれども、いかがでしょうか。再度答弁を求めます。

○尾崎政府参考人
 お尋ねのとおり、アレフ、上祐派、大きく二つに分かれております。
 この間の立入検査で判明した事柄を若干申し上げますと、アレフに関しましては、非常に麻原回帰ということで、麻原に対する個人的な絶対的な帰依、これを強調するような方向に動いているということでございます。
 上祐派につきましては、若干、麻原の影響力を排除するかのように見せかけておりますけれども、依然として麻原に対する絶対的帰依というものが続いておりますし、教義の面からも、危険な教義を維持しているというふうに考えております。

○柴山委員
 現時点での施設、信者の概況、その監視の実態について、少し教えてください。

○尾崎政府参考人
 現在、信徒数につきましては、当庁が把握しております人数は約千五百人ということでございまして、そのうち約四百人が出家信徒で、集団的に居住する、非常に閉鎖的な生活を送っているというふうに考えております。
 施設につきましては、拠点施設で、十五都道府県下に三十二カ所、それから、信者が住んでいる居住施設といたしましては、六都道府県下に約二十カ所ございます。
 関係地方公共団体からいろいろな情報提供の要請がありました場合には、団体規制法に基づいて、適切に情報を提供しているところでございます。

○柴山委員
 大臣、拠点が十五都道府県で三十二カ所ですよ。これは、松原国家公安委員長とも力を合わせて、ぜひ本気になって取り組んでいただかなければいけないという事案だと思います。
 感想と、今後どのような取り組みをされるのか、決意をぜひ伺いたいと思います。

○滝国務大臣
 オウム真理教の問題は、まだ根本的に終結しているわけではありませんから、当然、公安庁としては監視を続ける。
 こういう中で、当然、国家公安委員長とも連携をとりながら、これからのいろいろな事態が起きないように、そんなことも念頭に置きながら対処してまいらなければいけないと思っております。

○柴山委員
 そもそも、伝家の宝刀である解散命令というものがなぜなされないのかということは、同僚の馳議員からもこれまで質問がなされたこともあるかと思うんですけれども、そういったことも含めて、やはりしっかりと適切に対応していただきたいというように思います。
 次の質問に移らせていただきます。
 滝大臣、検察行政の目的は何だとお考えになりますでしょうか。通告なしの質問で恐縮なんですけれども、お考えのところをお聞かせください。

○滝国務大臣
 世の中に不正という問題があれば、それを未然に防ぐ、そして、それについては、仮に発生すれば厳正に対処する、これが検察の本来的な目的だろうと思っております。

○柴山委員
 不正に対して厳正に対処する、それによって社会正義の実現が図られるということであろうかと思います。
 それでは、実際は無罪の疑いが生じたにもかかわらず、一旦起訴したからといって、そうした疑いを押し隠して有罪判決を得ようとすることは、不正に厳正に対処することになるんでしょうか。

○滝国務大臣
 基本的には、無罪であるものを押し隠して以後の手続を進めるということは、それはあってはならない、そんな判断をしていかなければいけないと思っております。

○柴山委員
 東京電力OL殺人事件で、ゴビンダ・マイナリ被告が釈放され、きょう午後にも成田から出国かという件についてお伺いします。
 大臣は、六月八日の記者会見で、今回の東京高裁での再審開始決定、そして執行停止決定について感想を尋ねられて、このように述べておられます。検察の捜査がある意味では十分ではなかったのではないかと受け取れるわけですから、そういうものも含めて捜査に何か問題がなかったかと、残念な結果であると思います。
 これは、冤罪の可能性を生じた、ずさんな捜査が申しわけないという趣旨なんですね。

○滝国務大臣
 基本的には、検察は異議申し立てをいたしたわけでございますけれども、異議申し立てが却下をされる、こういうことでございましたから、その点については、何か足りないものがあったのではないだろうか、こういうような趣旨で感想を申し上げたところでございます。

○柴山委員
 異議申し立てが却下されたということは、裁判所に対して被告の勾留の必要性を説得できなかったということですよね。勾留の必要性を説得できなかったということは、やはり、滝法務大臣も検察庁と同じように、この件については本来勾留が認められてしかるべきだ、そういうお考えだということですか。

○滝国務大臣
 少なくとも、そういう実体的な前提じゃなくて、形式的に私は感想を申し上げました。要するに、検察が異議申し立てをするならそれなりの理由があるはずだ、それが決定でもって却下されたということは、検察の申し立てが十分な説得力を持っていなかった、こういうふうに判断をせざるを得ないという意味で、何か足りないものがあったのではないか、こういうふうに感想を申し上げたわけです。

○柴山委員
 形式的に残念だということがよくわからないんですよ。
 つまり、これは高等裁判所の裁判官が、勾留の継続と執行について認められないというように判断をしたわけです。すなわち、そこには検察の主張に問題があったということを言外ににおわせているわけですね。
 ということは、これはただ検察の異議申し立てが認められなかったということに対する不満ではなくて、その背景にある検察の捜査、これについて、法務大臣として一体どのように感じておられるかということをぜひこの場で述べていただきたいと思います。

○滝国務大臣
 この問題は、もう一つ、執行の停止の問題もあるわけでございます。そういう執行の停止の方も結局は認められなかったということは、再審決定でございますから、今後の公判ということを考えますと、本人がいないことにはなかなか、再審決定をされてもその後の推移が不透明になる、こんなことも含めて、私は感想として申し上げたわけです。

○柴山委員
 確かに、二〇〇〇年、第一審判決で無罪という判断が出た後、東京高裁で一転勾留決定され、逆転有罪判決が出て、それが最高裁で確定しているということからすれば、微妙な案件であったことは事実でしょう。
 しかし、これはやはり問題が多々あった案件であって、現在もそういった問題は解消されていないのではないか、疑われるものです。
 まず、殺人事件四日後の一九九七年三月二十三日にマイナリ氏が不法残留容疑で逮捕され、五月二十日の初公判において入管法違反で有罪判決が出て、強制退去処分となる前に強盗殺人事件の容疑を固めようと拙速な捜査がなされたのではないかということです。
 被疑者が出国した後の取り調べなどの捜査あるいは公判は、どのように行えばよいのでしょうか。

○滝国務大臣
 具体的な問題ですから、私の方からそのようなことについてコメントするというものではないように思います。

○柴山委員
 先ほど滝大臣は、本人が国内にいないと手続が進まないということを残念だと思う理由の一つに挙げておられたわけですから、それはやはり、捜査上あるいは公判の係属上大きな支障が生じるということを御自分でお認めになったんじゃないんですか。それについては、これは刑事局長でも結構ですけれども、今後どのように捜査あるいは公判を行えばよいのか、お答えください。

○稲田政府参考人
 お答え申し上げます。
 まず、ちょっと今の御質問を二つに分けてお答えさせていただきたいと思います。
 まず、一般論といたしまして、単純に、その捜査をしている最中、今回の場合はもう既に起訴した後のことになりますけれども、そうではなく、時点でいいますと、例えば平成九年の段階でのことというふうに考えまして、捜査をしているときに被疑者と目される人間が外国にいる場合にどうするかということになりますと、所在する国に捜査共助をする、あるいは身柄の引き渡しを求めるということがあり得るとは思います。ただ、外国にいるということで、なかなか時間的にも手間もかかるという状況があると思います。
 次に、今回の、現在御指摘の東電OL事件の状況についてでございますが、先ほど委員御指摘がありましたように、平成二十四年、すなわちことし六月七日に東京高等裁判所が再審開始決定と刑の執行停止の決定をなさいました。そこで、検察官はこれに対しまして、まず再審開始決定そのものに対する異議申し立てをするとともに、刑の執行停止決定に対する異議の申し立て、すなわち刑の執行停止がされますと釈放になりますので、そのことに対する異議の申し立てを行いました。また、あわせて、刑の執行停止決定の執行停止を求める申し立てを行ったわけであります。
 現在までに、東京高等裁判所は、刑の執行停止決定の執行停止を求める申し立ては退けられたところでございますが、再審開始決定に対する異議申し立てと刑の執行停止決定に対する異議申し立ては係属している状況にございます。したがいまして、現在、裁判の段階としては、再審請求に対する判断が確定はしていないという状況にあるというふうに御理解をいただきたいと思います。

○柴山委員
 一般論としてで結構ですので。つまり、本件についてはまだ再審開始が正式に行われていないということですから、ですから、恐らく正式な公判の係属ということは観念し得ないというお答えだと思うんですけれども、私は、やはり一般論として、今後、再審決定がなされることもあり得るということを前提に、あるいは先般、稲田議員も何度か御質問されていたと思いますが、中国人の漁船船長釈放事件で、日本の今後の公判等の手続をどうするかという問題にも通じるわけですから、公判手続が、呼び出し等において、あるいはその出頭確保、こういうことについてどのように行っていけばよいかということをお聞きしたかったわけであります。

○稲田政府参考人
 失礼いたしました。
 これは全くの一般論でございますけれども、仮に起訴をした被告人が外国にいるという状況になりました場合に、その被告人に裁判に出頭してもらうためには、やはり、国外のことでございますので、我が国の主権が行使できない場所にございますので、強制的に出頭させるということは我が国の力としてはできませんので、当該所在地の国の御協力をいただくことになります。
 したがいまして、例えば、出頭のための召喚状を捜査共助というような形で送っていただく、あるいは外交ルートを通じてそういうものを送付していただくということになる場合もあろうかと思います。そういうような形で御協力をいただいていくということになると思います。

○柴山委員
 報道によれば、この一九九七年五月の初公判の直前の四月中旬に、これは心証としては被疑者、犯人だ、強制退去になれば迷宮入りだ、必死で詰めているところ、あるいは、すぐに判決が出て即送還になれば終わり、ここ一カ月が勝負などと当時の捜査幹部がコメントしていたということであります。そういうことがやはり拙速な捜査につながっていたのではないかということを懸念しております。
 何より問題なのは、二〇〇五年三月に始まった、先ほどお話があった再審の請求審で、ずっと膠着状態が続いていたわけですね。その中で、ようやく昨年の夏になって、検察側がそれまで存在を明らかにしていなかった現場の遺留物四十二点を開示したということです。そして、その後も新たな物証を約四十点も開示されたということですが、これらをなぜもっと早く開示しなかったのですか。そして、なぜこの時期に開示したのですか。

○稲田政府参考人
 ただいまの御指摘は、先ほど申し上げました、現在再審請求の手続が係属している事件におきます検察官の活動の内容にかかわるところでございまして、現時点におきまして、私の方からその辺につきましてつまびらかにすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

○柴山委員
 ちょっと待ってください。検察官の手持ち証拠の開示は、弁護士会が長年求め続けていたことであります。本件に限ったことではないんです。
 もう一度答弁してください。

○稲田政府参考人
 再審請求審における証拠の開示に関しましては、現在いろいろな御見解があることは承知はしているところではございますけれども、再審請求手続が通常の公判手続の審理とは手続の基本構造を異にしているというような状況もあることを踏まえて、検察官として対応しているものと承知しております。

○柴山委員
 再審だから正直にやるって、それはおかしくないですか。再審というのは極めて例外的な手続なんですよ。再審にならなければ検察官が自分の都合のいいストーリーをつくっていい、そんなことにはならないでしょう。
 被害者の体内に残された体液のDNA鑑定が現場に落ちていた体毛のDNAと一致し、かつ、それがマイナリ被告以外の第三者のものであった、これは決定的な証拠です。まさに大臣が先ほどおっしゃったとおり、検察が不正に厳正に対処することを放棄したということではないんでしょうか。
 実は私は、司法修習生時代の一九九九年から二〇〇〇年にかけて、この事件を担当した弁護士と刑事弁護に関する勉強会をしていました。そして、その段階から本件についてはさまざまな問題を感じていたんです。
 二〇〇四年に導入された公判前整理手続制度で、検察側が争点に関する証拠を原則として開示するルールの整備がされたとされていますけれども、今後はこのような不幸はなくなるという理解でよろしいんでしょうか。

○稲田政府参考人
 ただいま御指摘がありましたように、平成十六年に刑事訴訟法が裁判員制度の導入の際に改正されまして、証拠開示の手続が大幅に改められました。そして、検察官の手持ち証拠の開示の範囲が大幅に拡充され、検察官が取り調べを請求した証拠の証明力を判断するために重要な一定類型の証拠、これは証拠物なども含みます、それから、被告人が明らかにした主張に関連する証拠についても、開示の必要性と開示によって生じるおそれのある弊害等を勘案し、相当と認めるときは開示をしなければならないこととされたところであり、これにつきまして当事者間で争いが生じたときには裁判所がこれを裁定するということとされたものというふうに考えております。
 この改正によりまして、関係者の名誉、プライバシー、さらには争点の整理や迅速な審理に与える影響などの問題点が十分考慮され、そうした点を踏まえつつ、被告人の防御の準備のために必要かつ十分な証拠が開示されることになったものというふうに考えております。

○柴山委員
 教科書的にはそういうお答えだと思いますよ。しかし、現実はどうなんでしょうかね。
 前田、大坪、佐賀元検事のいわゆる郵便不正事件証拠偽造をめぐる問題を初め、相次いで今なお次々と明るみに出る冤罪事件を見ると……(発言する者あり)陸山会事件、そこはちょっと見解に相違があるかもしれません。本当に、体質も含めて、検察の問題、これは解決していないんじゃないんでしょうか。

○稲田政府参考人
 ただいま御指摘がありましたような各種の事件において検察に対して厳しい批判があるということは、検察自身が最もよく理解しているものというふうに思っておりますし、それを踏まえながら検察の改革を進めていっているというふうに考えているところでございます。

○柴山委員
 検察が一番よくわかっているというお話ですよね。どうなんでしょうか。
 検察改革が本気かどうか。大臣は、先日の所信挨拶で、監察体制の構築や検察基本規程の策定などを検察改革の方策として挙げておられます。検察の在り方検討会議でもいろいろと議論がなされていたところだと思います。しかし、本当に、まないたの上のコイが、自分で自分の体にメスを入れられるんでしょうか。
 閉鎖的組織を改革するには、それこそ、社外取締役ではないですけれども、第三者のチェックを入れるという観点、あるいは内部通報保護という観点、こういったことを我々会社法でも議論してきたんですけれども、やはりそういう抜本的な改革の視点を持つことが必要なんじゃないんですか。大臣、いかがですか。

○滝国務大臣
 検察改革については、今ようやく見直しというか、昨年来新しい角度から取り組もうとしているわけでございますから、その中でどうこれを実質的に改革につなげていくかというのは、日々の仕事の中で当然考えていかなければいけない問題だろうと思っております。
 そういう意味では、第三者的なというような御提案でございますけれども、もともと、今回の検察改革に当たっては、当然、外部というか、ある意味では身内の延長みたいな方々も参与してくださったと思いますけれども、そういう中で出てきたわけでございますから、引き続き、そういう第三者的な目を向けながら、さらに一層、毎日の責務の中で改革を徹底させていくということが当面必要ではないかとは思っております。

○柴山委員
 先ほどの所信挨拶と今私が申し上げたことは、はっきり言って質が違うと思うんですよ。これはやはり検察の再生がかかっていると思いますよ。ぜひ真剣に検討してほしいというように思います。
 また、先ほど大口委員の方からも御質問があったと思いますけれども、捜査の可視化にどの程度具体的に取り組むかということも注目されます。大臣は、先日の所信表明の中で、検察における試行について紹介をしていただきましたけれども、その検証とあわせたスケジュール、取り調べ全過程の可視化のいかん、またそのスケジュールについて改めて御説明をしてください。

○滝国務大臣
 基本的に、今、可視化に向けての試行をやっているわけでございますし、その中身をできるだけ早く詰めていく、こういう基本的なスケジュールのもとにやっているわけでございます。
 したがって、いつと言うわけにはまいりませんけれども、とにかく昨年から始まった試行でございますから、そういうものをどの段階で中間的にでも報告を求めるかというのはこれからの問題だろうと思っています。

○柴山委員
 スケジュールのない計画は計画じゃないんです。中間報告でもいいから、その中間報告に一体何を盛り込むか、そしてその中間報告をいつまでに出すか、これぐらいのことは、今この場で答えられなかったら、次に質問したときに必ず答えてください。

○滝国務大臣
 とりあえずは、六月下旬にある程度の取りまとめをするということでございますから、その報告を待って、今委員が御指摘のようなことがその中でどれだけ検証できるかということもあわせて検討をしていかなければいけないと思います。

○柴山委員
 もう間もなくですから、ぜひよろしくお願いします。
 次の質問に移ります。再犯防止策についてでございます。
 大阪の心斎橋で、今月十日、男女二人が刺殺される通り魔事件がありました。現行犯逮捕された礒飛京三容疑者は、ことし五月二十四日、覚せい剤取締法違反で服役していた新潟刑務所を出所したばかりで、一月もたたないうちに凶行に及んでいることになります。自殺しようと思って近くで包丁を買ったが死に切れず、人を殺せば死刑になると思ってやったと身勝手な供述をしているとのことですが、何度も逮捕歴があり、家族から事実上勘当されていたとか就職が断られていたとかいう報道がなされています。
 警察庁の方から背景を御説明いただけますでしょうか。

○舟本政府参考人
 事件の概要ということでよろしいのでございましょうか。(柴山委員「はい」と呼ぶ)
 お尋ねの事件につきましては、本年六月十日午後一時ごろ、大阪市中央区東心斎橋の路上におきまして、通行中の男性及び女性の二人の方が、半月ほど前に刑務所を出所したばかりの被疑者にゆえなく包丁で襲われ亡くなったという、理不尽きわまりない痛ましい通り魔事件でございます。
 事件発生間もなく通報を受けて駆けつけた警察官が、被疑者を殺人未遂の現行犯として逮捕いたしました。現在、大阪府警におきましては、捜査本部を設置して、全容解明に向けて鋭意捜査中であります。
 この種の事件は国民に大きな不安を与える事件でありますから、今後、事件の背景、動機も含め、全容を明らかにしてまいりたいと考えております。

○柴山委員
 まさに、その背景、動機のところが非常に重要だと思うんです。秋葉原の加藤智大容疑者の無差別殺人、あのときもやはり国民に非常に大きな不安を与えたと思います。
 今回も、今申し上げたように、この礒飛容疑者、覚せい剤取締法の逮捕歴があったというように報じられていますけれども、覚せい剤取締法違反以外の前科について教えてください。

○舟本政府参考人
 お答えいたします。
 いわば本件被疑者の前歴にかかわる事柄でございますので、プライバシーにかかわる事柄でございますので、具体的なことはお答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

○柴山委員
 わかりました。
 それでは、法務省に伺います。
 一般論で結構です。覚醒剤自己使用の再犯率はどれぐらいですか。

○三浦政府参考人
 お答えいたします。
 平成二十一年の犯罪白書で明らかにされている統計数値でございますが、お尋ねの覚醒剤の自己使用というふうに自己使用に限ったものではございませんが、覚せい剤取締法違反の罪で受刑をして平成十六年に出所した者について調査をした結果であります。
 それらの者について、出所後五年以内の再入の状況を累積で調べてみますと、満期釈放者については六二・七%、仮釈放者につきましては四三%が再入、刑務所に再び入っているという結果となっております。

○柴山委員
 驚愕の数字ですよ。仮釈放、つまり品行がよくて情状が軽いということから仮釈放なんだろうと思いますけれども、それでも四三%、満期出所に至っては何と六三%が再入ですよ。犯したということじゃないんです。また戻ってくるんです。まともに就職できず、しゃばと刑務所の往復を繰り返すというのは、この類型の犯罪者のお決まりコースと言っても過言ではありません。
 滝大臣は、十二日の記者会見でこのように述べておられます。今の制度からいうと、満期出所者について、出所後のフォローアップがなかなかできるようなシステムになっていません、出所するまでにいろいろな状況があるとは思いますが、そのあたりのところがどうなっているか、改めて矯正局としても取り組む課題ではないかという感じは持っています。
 先日の所信表明の御挨拶でも決意の一端をお述べいただきましたけれども、改めて、本件のような事案の再発防止のために具体的にどのようなことをなさるおつもりか、伺いたいと存じます。

○滝国務大臣
 今度の場合も、出所した後、紹介を得て、自分の生まれ故郷の栃木県へ参りまして、民間の協力団体のもとで、住むところ、そして食事、そういうような世話をしてもらっていたわけです。ところが、そういう拘束に耐えられないのか、出るということだったものですから、保護観察所長がもうしばらくここにおれと言って引きとめたようでございますけれども、結局、満期出所者だったものですから、保護観察所長の説得は強制力を持たなかった、その結果、大阪へと出てしまってこういう大事故につながったというのが大体この事件の推移のようでございます。
 そういうところから見ると、まだまだ、こういう満期出所者に対する法のフォローアップが少し欠けているところがあるのかなという感じもしますし、そもそも満期出所者ですから、出所する前にもう少し何とか本人とコンタクトをとれるような方法はなかったのか、それはこれからの緊急の課題だというふうに思っております。

○柴山委員
 やはり、満期出所した後のフォローアップ、刑務所出所者の住居や就労の確保、こういった社会復帰の支援対策、こういうものが大切だ、それを充実させるということを先日の所信表明でもおっしゃられていたかと思います。今おっしゃったような、やはり継続的にコンタクトをとるということも必要だと思います。
 しかし、一般論として、言うはやすく行うはかたしなんです。刑務所に入っていない人がこれだけ就職難で苦しんでいるわけですから、一体どうするのかということなんです。
 あと、今、保護観察所長の指導ということもおっしゃいましたけれども、保護観察官の拡大はなかなか進んでおりません。また、保護司の方々への支援、これらの方々は今ほとんどボランティアでやっていただいている現状です。トータルとしてどのようにしていくおつもりなんですか。

○滝国務大臣
 人材もなかなかそろわない、あるいは予算的にもなかなか思うようにいかない、こういう中でございますけれども、政府としては、昨年の七月に、再犯防止のための取り組みというテーマで閣議報告ももらっているわけでございます。
 そういうところから、とにかく今回の事件の発生に鑑みて、喫緊の課題としてもう少し具体的な一歩を踏み出す、これが私どもの責務だろうと思っております。

○柴山委員
 ぜひ、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 また、それぞれの議員の方々の御地元にも、民生委員の方々、保護司の方々がいらっしゃると思います。我々、やはり政治の力でそういった再犯防止の施策というものをきちんと進めていかなければいけない、取り組みを進めていかなければいけないと思っております。
 次は、ちょっと緊張感を欠いた案件であります。千葉地裁が、今月の二日、手続上のミスから、七人の逮捕された被疑者を不当勾留決定していたことがわかり、千葉地検が六日に一旦全員を釈放した上で、五人を再逮捕、残る二名を任意捜査に切りかえたということです。
 一体なぜこんなことが生じたのか、裁判所に説明を求めます。

○植村最高裁判所長官代理者
 まず、今回このようなことを起こしまして、関係者の方を含め、本当におわびを申し上げたいというふうに思います。
 今委員から御指摘のございました千葉地裁の本庁でございますが、六月二日の土曜日、日直の事務を行っておりまして、刑事訴訟規則によりますと、勾留質問手続というのは裁判所書記官が立ち会うこととされております。この日の七件の勾留質問手続に、書記官の資格は有していたのですが裁判所書記官としての発令を受けていない職員が立ち会いまして、勾留質問手続が行われたという事態が発生いたしました。
 裁判所がこれに気がついたのが、六月五日火曜日の夜のことでございました。気がつきまして、検察庁に御連絡をいたしまして、翌六日に、七人の被疑者が一旦釈放されて、委員のお話にありましたように、二人については任意の捜査に切りかえられて、残りの五人の被疑者については再逮捕、それから勾留請求があり、勾留質問をもう一回行って、改めて勾留状が発付されたということであります。
 千葉地裁の通常の日直体制を御説明しておきますと、書記官二人と事務官一人で行うことになっております。ただ、勾留請求事件が多い日には、書記官一人または書記官資格のある事務官一人の応援を頼むことになっておりました。書記官資格のある事務官の応援を頼んだときには、当たり前のことですが、勾留質問手続には立ち会わないで、それ以外の事務の応援をさせることになっていたわけでございますが、六月二日は、書記官資格を有していれば勾留質問の手続に立ち会えるというふうに誤解をいたしまして立ち会ったというふうに承知をしております。

○柴山委員
 対象者の罪名は何でしょうか。傷害容疑者がいるという報道がありましたけれども、任意捜査に切りかえたというのは、一体どういう罪名で、どういう背景だったんでしょうか。検察庁あるいは裁判所、どちらでも結構です。

○植村最高裁判所長官代理者
 申しわけないのでございますが、これは捜査段階のことでございますので、捜査情報ということで、ここでお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

○柴山委員
 任意捜査に切りかえたということは、やはりそれなりの社会に対する不安というものにも配慮した手続でなければいけないわけですから、本来であれば、やはりこれは、私が震災直後の釈放について質問をしたときにも同じような御答弁だったわけですけれども、おかしいと思うんですよね。
 千葉地裁は、今回の案件を十二日まで公表していなかったんですよ。今お話があったように、日直が行われたのは二日、全員釈放したのは六日、二人がそのまま任意捜査ということなんですよね。なぜ公表をしなかったんですか。

○植村最高裁判所長官代理者
 確かに、この件が私どもの方で把握できたのは先ほど御説明したとおりでございましたが、捜査過程の問題で過誤が起きた場合には発表しないということもございまして、この件につきましては、従来のその取り扱いをさせていただいたというふうに聞いております。

○柴山委員
 ということは、何ですか、従来の慣例によって発表しなかったということは、こういうことが頻繁に起きているということですか。

○植村最高裁判所長官代理者
 頻繁に起きているとは思っておりませんけれども、捜査過程の問題でこういうことが起きた場合に、常に、直ちに公表をしておるような扱いにはしておりません。

○柴山委員
 二人を任意捜査に切りかえたわけですからね。これは、もともと在宅の事件が在宅だという話じゃないわけですよ。一旦勾留決定して、二日に逮捕して、六日に一旦全員を釈放したということですから、満期前に任意捜査に切りかえているということですよね。これはやはり説明が必要なんじゃないんですか。
 それは、もちろん勾留の継続の必要性がなかったからということでしょうし、恐らく罪名もそんなに重罪ではなかったということは想像できますけれども、しかし、やはりそれにしても、こういうことが一旦表に出た以上は、それは千葉の方々は何だと思うんじゃないんでしょうか。いかがですか。

○植村最高裁判所長官代理者
 七人の被疑者の方のうち、お二人の被疑者を任意捜査に切りかえたのは検察庁の御判断でございますので、私どもはそこについてお答えするのはちょっと差し控えたいと思います。

○柴山委員
 それでは、法務省から説明を求めます。

○稲田政府参考人
 申しわけございません、突然のことなので手元に詳細な資料を持ち合わせておりませんけれども、もともと勾留手続が違法になっていたという状態の中でもう一度身柄の拘束をするということは、やはりそれなりに慎重に判断をしなければならないものであるというふうに考えているところだと思います。

○柴山委員
 確かに、対最高裁判所というふうに質問通告ではしていましたけれども、一応法務省にも流しているわけですから、こういう質問はある程度想定してぜひ準備をしておいてほしかったと思います。
 報道によりますと、別の地裁関係者が、あり得ないミス、勾留への緊張感が乏しいと言われても仕方がないというふうにコメントをされているようですけれども、関係者の処分は一体どうなるんでしょうか。

○植村最高裁判所長官代理者
 今、事実関係を正確に把握して、委員の御指摘のような点は今後の問題であるというふうに思っております。

○柴山委員
 しっかりと事案を把握した上で、やはり綱紀粛正と再発防止策にも取り組んでほしいと思います。
 次の質問に移らせていただきます。
 次は、がらっとお話はかわって、震災対応に関連してお伺いしたいと思います。
 私は、自民党青年局の同僚たちと、今月十一日、福島県、第一原子力発電所の警戒区域内に視察に伺うとともに、現地の声に耳を傾けてまいりました。率直に申し上げて、何にも、ほとんど進んでおりません。瓦れきの処理や生活再建に加え、広大な土地が津波でほとんど更地になってしまったのに、権利関係の確定をどうするか、その前提となる地籍調査や地図整備をどうするか、こういった問題は全く手つかずの状況であります。
 そこで法務省に伺いますが、被災地でのこういった地籍調査や地図整備は今後どうなるんでしょうか。

○原政府参考人
 お答えいたします。
 法務省におきましては、地図整備事業を全国的にやっておりますが、特に被災地におきましては、地震の影響で、地殻変動によって土地が大幅に移動したり、あるいは不規則に移動した地域等がございますので、こうした土地につきましては、土地の境界を復元し、登記所備えつけ地図の修正作業等をするべく努力しているところでございます。

○柴山委員
 一般論として、努力をしていますじゃ答えにならないんですよ。
 今申し上げたように、被災者の方々は、こういった境界の確定等の公的処理が、その後に続く町の再生復興の、いわばインフラのベースとなるわけなんですよね。ですから、これをしっかりと計画的にやっていただかないと、本当に円滑な復興ということが図られないのではないかというように思います。
 また、今私が申し上げた視察をした警戒区域内は、放射線の濃度というか、線量が高い地域でもあります。こういったところをどうするかということもやはり長期的な課題だと思いますけれども、そういったところも、道路の復旧ですとか、あるいは防潮堤の建設、そういったことを含めて、やはり土地に関するさまざまな処理ということが必要になってくるというふうに思いますので、そういったことも含めて、やはりスケジュール感というのをもう少し出してほしいと思うんですよ。いかがですか。

○原政府参考人
 被災地域の復興のためには、今委員がおっしゃいましたように、まずは、倒壊等した建物がございますので、そういう建物の職権滅失登記をした上で、土地の境界の復元や地図の修正作業をする必要がございます。
 その意味で、平成二十三年度の第一次、第三次補正予算、それから二十四年度予算におきましても、職権滅失登記に要する経費や地図の修正に要する経費をいただいておりますので、現在、これらを使って鋭意作業を続けているところでございます。
 ただ、被災地域が非常に膨大でございますので、土地の境界の復元やあるいは地図の修正作業、これはできるだけ早くやりたいと思っておりますけれども、二、三年かかるんじゃないか、しかしながら、復興局を通じまして、地元の要請を受けて、緊急性の高いところからこういった作業に着手している、こういう状況でございます。

○柴山委員
 復興局の人たちに原局長が今おっしゃったような専門的なノウハウがあるわけじゃありませんから、これはオール・ジャパンで専門家を集めてやっていかなければ前に進まないんですよ。そして、それをアレンジするのが復興庁なら復興庁なのかもしれませんけれども、そこがまだ全然機能していないというんですよ、被災地の方々は。少なくとも、被災地の方々にそれが届いていないということは、ぜひしっかりと受けとめていただきたいと思います。
 一方、先ほど橘議員も質問されていましたけれども、震災への不安を背景に、都市部、例えば首都圏においても、登記所備えつけ地図の整備等に関するニーズが高まっています。現状及び優先順位について、どう考えておられますか。

○原政府参考人
 地図整備につきましては、特に都市部において整備の緊急性が高いということから、法務省におきましては、平成十五年の都市再生本部の方針を受けまして、都市部の地図混乱地域を対象にして地図整備を進めるべく、計画を立てて、その計画に基づいて地図整備を実施しているわけでございます。
 平成十六年度以降、二十三年度まで、トータルしますと、先ほど御答弁いたしましたけれども、八十八平方キロメートルの地図整備をやっているということでございます。これは、国土の面積からすれば少ない面積ではございますが、地図整備につきましては、国土交通省におきましても地籍調査事業をやっておりますので、国土交通省と法務省でいわば役割分担をいたしまして、地籍調査事業がなかなか進まない都市部の地図混乱地域について、法務省において地図整備を進めるということで、計画を立てて、緊急性のあるところから地図作成をしている、こういう状況でございます。

○柴山委員
 予算などを考えると、確かになかなか一斉にというわけにもいかないと思いますし、何といっても、先ほど申し上げたような被災地の状況もありますから、ある程度、緊急性、必要性を厳しく見ないといけないということは理解をいたしますけれども、ただ、地図混乱地域だけじゃないですから、必要なところというのは。
 地図整備は、再三繰り返すように、権利関係のインフラでありますから、混乱をしているところだけじゃなくて、それは都市部は、やはり取引がある以上、必要なんですよ。ですから、経済対策の一環としても、重点政策と位置づけて、しっかりと取り組んでいただきたいと重ねて要望したいと思うんですが、法務大臣、いかがでしょうか。

○滝国務大臣
 地図混乱地域の問題は、都市部においては特に、何も手がつかない、権利関係の調整ができないという最大の足を引っ張る材料でございますから、当然、優先順位をつけながらも頑張っていかないといけないと思っております。

○柴山委員
 地図混乱地域、あるいはそこに該当しなくても必要なところにはしっかりと、これは経済対策のベースになると私は思っているんです。私は改革を進めていくという志向が強いんですけれども、ただ、やはり経済発展のベースになる部分についてはしっかりとした予算をつけていかないと、経済成長もできないし、改革もすることができないというように思いますので、ぜひとも滝大臣には、今おっしゃったような決意でこの問題について取り組んでいただきたいと重ねてお願いをしたいと思います。
 最後に、残った時間で、人権委員会設置法案について若干お伺いしたいと思います。内容については、この後、城内議員から詳細に御質問があると思いますが、私からは、外形的な事実関係についてだけお尋ねしたいと思います。
 私が部会長を務める自民党法務部会では、ことしの二月十四日、当時法務省がまとめた法案骨子について審査した結果、問題が多く、受け入れられないという決定をさせていただきました。しかし、あろうことか、この後、まさしくこの骨子案に従った条文作成が行われ、既に各省間調整も終わって、あとは民主党の党内手続を行うのみというように伺っています。
 これはとりもなおさず、自民党を無視して法案提出を行おうということでしょうか。また、所信挨拶でもあったんですけれども、今国会においての提出を目指すということに変わりはないんでしょうか。以上二点、政務三役全てにお伺いしたいと思います。

○滝国務大臣
 政府としては、とにかく政府の案を固めなきゃいけませんから、そういう意味で各省折衝も行ってきたことは事実でございます。
 ただ、今それを閣議決定まで持っていくような段階ではございません。なるべく早く閣議決定も経たいとは思っておりますけれども、まだまだ意見を聞かなければいけない分野もあろうかと思います。そういう中で、この問題は、今御指摘のところはどうするかということも含めて、なお慎重に検討してまいりたいと思います。

○谷副大臣
 今大臣がお答えしたとおりでございますが、そういういろいろな調整をさせていただきながら、この国会で提出できる条件が整えば、法案の提出まで進めていければというふうな考え方は持っております。

○松野大臣政務官
 今二人、大臣、副大臣からお話があったとおりでありますが、要するに、提出に向けた環境整備に努めているということであるかと思います。ですから、自民党を無視している、そういうようなつもりで進めているわけではないことは御承知いただきたいと思います。

○柴山委員
 松野先生は、政務官御就任直前まで民主党の法務部門の責任者として、自民党の私のカウンターパートとして、法テラス法案ですとかあるいは裁判所法の改正案ですとか、本当にさまざまな場面で大変御苦労をおかけしたということで、今環境整備について具体的にお触れになりましたけれども、その思いはわかりますが、ただ、全く実態が伴っていないと思っております。
 現に、法務部会、先ほど申し上げた二月十四日、そしてその後、先日も法案についての報告を求めたんですけれども、私のところに人権担当の方がいらっしゃったことは、その二月あるいは六月といった段階では少なくともありませんでしたし、ましてや、私は条文の作成ということは全く聞いていなかったと思います。さらに、先日、自民党の法務部会の中で、一体どのような背景がこの非常に拙速な動きにつながっているのかというふうにお伺いしても、その背景についても十分な御答弁をいただきませんでした。
 なぜ副大臣がさまざまな調整をしながらということをおっしゃっているのか、私には全く理解ができません。政務官がおっしゃった環境整備、あるいは副大臣がおっしゃったいろいろな調整というのが、一体何を指しているのか。民主党の党内手続もまだ進んでいない、閣議決定もまだ済んでいない。具体的に、一体何を調整しているのか、お二人にお伺いしたいと思います。

○谷副大臣
 この法案に対しましては、いろいろな御意見が出ております。新たな人権救済機関の創設が必要なほどの人権侵害がないのではないか、救済の対象となる人権侵害の範囲が曖昧ではないかとか、人権侵害の加害者とされた者の保護が不十分ではないか、あるいはまた人権委員会の権限が強過ぎるのではないか、こういういろいろな御意見なども寄せられていることも事実でございます。
 こういうふうないろいろな意見等を、いろいろなものを聞きながら、そういうものに対して丁寧に議論をして御理解をいただいていくような、そういうふうな努力もしなければいけない。そういうことも含めて先ほど答弁を申し上げました。

○柴山委員
 そういったさまざまな問題点、今御指摘された問題点だと思います。
 この後、繰り返すように、城内議員からもっとしっかりと質問があるかと思いますが、私が解せないのは、繰り返しますけれども、そういったさまざまな問題点について議論をしたいというふうにおっしゃいますが、その議論は一体どこでするんですか。閣議決定をして、ここで出しますよ、ここで議論すればもういいじゃないですか、そういうスタンスなのか。あるいは、法案の提出の前にさまざまな形で、骨子案等についても、修正するものはきちんと超党派で議論をしながら提出前に修正をしていく、そういうことなのか。どっちなんですか。政務官からもぜひ御答弁ください。

○松野大臣政務官
 この法案は、もう御案内かと思いますが、以前、自公政権当時は人権擁護法案というような形で検討されてきた、実際に法案も提出された、こういうようないきさつもあります。いろいろないきさつがあるわけですから、その辺はいろいろ御議論があることを私たちも承知しておりますので、これは非常に慎重にいろいろ議論を詰めていかなければいけない。
 そういう意味では、民主党の党内だけではなくて、野党の皆さんとも、いろいろと意見交換をさせていただきながら、詰められるところは詰めた上で閣議を経て提出、そういうようなことを今考えているということでございます。

○柴山委員
 最後に大臣にお伺いしますけれども、今国会においての提出を目指すということに変わりはないんですか。

○滝国務大臣
 基本的には目指すということで考えているわけでございますけれども、その目指し方の問題をめぐっていろいろな意見がおありでありますから、そういうことも考慮しながら、最終的な判断にはまだ至っていない、こういうことでございます。

○柴山委員
 目指し方という非常に新しい言葉が出てきてちょっと驚いておりますけれども。
 ちょっと時間は残っているんですが、これ以外にも、裁判員制度ですとか、あるいは脱法ハーブ使用の危険運転致傷事件など、いろいろお伺いしたいことがありましたが、きょうはここで質問を終わらせていただきます。
 大臣、何かありますか、補足。

○滝国務大臣
 先ほどの大阪の事件に関連いたしまして、私の発言がちょっと正確を欠きましたので、正確に申し上げておきたいと思います。
 栃木へ行きまして、民間団体が、住むところ、食事を用意した。それに対して、もちろんそこの所長も引きとめた、それに加えて保護観察所長も引きとめたと言いましたけれども、直接的には本人に会ったのはその民間団体の所長だけでございますので、そこのところは不正確でございましたので、訂正をさせていただきたいと思います。

○柴山委員
 終わります。

第180回 国会 衆議院 環境委員会

第180回 衆議院 環境委員会 第6号
平成24年6月15日(金)
午前九時開議

【原子力規制委員会設置法(自公案)の提案者としての答弁 】

【本日の会議に付した案件】
・原子力規制委員会設置法案(塩崎恭久君外三名提出、衆法第一〇号)の撤回許可に関する件
・地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件(内閣提出、承認第五号)
・原子力規制委員会設置法案起草の件
・原子力規制委員会設置等に関する件

○生方委員長
 これより会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 塩崎恭久君外三名提出、原子力規制委員会設置法案につきまして、提出者全員から撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○生方委員長
 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

○生方委員長
 原子力規制委員会設置法案起草の件について議事を進めます。
 本件につきましては、近藤昭一君外五名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の共同提案により、お手元に配付いたしておりますとおり、原子力規制委員会設置法案の起草案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。近藤昭一君。

○近藤(昭)委員
 原子力規制委員会設置法案の起草案につきまして、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党を代表して、その趣旨及び内容について御説明申し上げます。
 平成二十三年三月十一日に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故は、今なお多くの方が困難な避難生活を余儀なくされているなど、国民の生活に深刻な影響をもたらしました。
 この事故では、原子力を推進する経済産業省に原子力安全・保安院が属するなど、規制機関の独立性が欠如していたことや原子力規制機関に専門的知識を有した人材も能力も欠落していたことなど、我が国の原子力に関する行政についての問題点が次々と明らかとなり、国内外の信頼は大きく損なわれました。
 今回の事故の深い反省に立ち、このような事故を二度と起こさないためにも、また、損なわれた信頼を回復するためにも、原子力の安全に関する行政の体系の再構築は喫緊の課題であります。
 このような認識のもと、私ども三会派は、精力的に協議を行った結果、本起草案をまとめた次第であります。

 以下、その主な内容を御説明いたします。

 第一に、この法律の目的として、原子力の安全規制は、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資するものであることを明確にしております。
 第二に、新たな原子力安全規制組織には、環境省に、国際基準にのっとった、独立性が高い三条委員会の原子力規制委員会を設置することとし、そのもとに原子力規制庁と称する事務局を置くこととしております。
 原子力規制委員会には、原子力安全・保安院及び原子力安全委員会の事務のほか、放射線モニタリングや核テロの事務なども一元化することとしております。
 第三に、原子力規制委員会は、委員長及び委員の職務の中立公正に関し国民の疑惑または不信を招くような行為を防止するため、委員長または委員の研究に係る原子力事業者等からの寄附に関する情報の公開、委員長または委員の地位にある間における原子力事業者等からの寄附の制限その他の委員長及び委員が遵守すべき内部規範を定め、これを公表しなければならないこととしております。
 第四に、原子力規制委員会は、国民の知る権利の保障に資するため、その保有する情報の公開を徹底することにより、その運営の透明性を確保しなければならないこととしております。
 第五に、原子力規制庁については、原子力利用における安全の確保のための規制の独立性を確保する観点から、全ての職員に原子力推進官庁へのノーリターンルールを適用することとしております。
 第六に、一体的な原子力安全規制行政の確保の観点から、原子力安全規制の専門技術的事務を担う独立行政法人原子力安全基盤機構が行う業務を原子力規制委員会に行わせるため、可能な限り速やかに同機構を廃止、統合するものとし、このために必要となる法制上の措置を速やかに講じるものとしております。
 第七に、平時における原子力防災対策のうち、関係機関の調整等を行う組織として、内閣総理大臣を議長とし、環境大臣や原子力規制委員会委員長などを副議長とする原子力防災会議を設置することとしております。
 第八に、原子力安全のための規制や制度の見直しとして、シビアアクシデント対策の強化、既存の発電用原子炉施設等に最新の知見を適用するバックフィット制度の導入や発電用原子炉の運転期間の制限など、原子炉等規制法の改正を行うものとしております。
 なお、改正後の原子炉等規制法の規定については、その施行の状況を勘案して速やかに検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置を講じることとしております。
 第九に、原子力災害対策特別措置法の改正として、原子力災害予防対策の充実、原子力緊急事態における原子力災害対策本部の強化、原子力緊急事態解除後の事後対策の強化及び原子力災害対策指針の法定化などの措置を行うこととしております。
 また、原子力災害対策本部長である内閣総理大臣の緊急事態応急対策の実施に係る指示の対象事項から、原子力規制委員会がその所掌に属する事務に関して専ら技術的及び専門的な知見に基づいて原子力施設の安全の確保のために行うべき判断の内容に係る事項を除くこととしております。
 なお、この法律は、一部の規定を除き、公布の日から三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
 以上が、本起草案の趣旨及びその内容であります。
 何とぞ速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

○生方委員長
 以上で趣旨の説明は終わりました。

 原子力規制委員会設置法案
〔本号末尾に掲載〕

○生方委員長
 本件について発言を求められておりますので、順次これを許します。川越孝洋君。

○川越委員
 おはようございます。民主党、川越孝洋であります。
 私は、平成二十三年、原発事故があって三カ月後でありますが、五月三十一日の環境委員会で質問に立ちまして、時の松本龍環境大臣に対して、原子力行政を推進する官庁、その同じ官庁のもとに、監視する原子力安全・保安院がある。推進する官庁と、それを抑制をする、監視をする官庁が同じところにあるというのは、これはおかしいのではないか、それぞれ独立性を持たせて切り離すべきではないかという質問をいたしました。松本大臣は、「経済産業省と原子力安全・保安院をしっかり切り分ける。原子力安全委員会も、全くニュートラルコーナーに行って、本当に学術的な助言をするシステムをつくり上げていかなければならない。」というふうに答えられました。
 それから月日のたつのは早いもので、一年以上の歳月が流れました。この間、いろいろな意見がありましたけれども、そういった時間の経過の中で、ようやくここに原子力規制委員会設置起草の動議が提出されたということは、それぞれが十分な知見を持って、時間はかかりましたけれども、それだけ重みのある法案が起草されようとしていることだと思っております。
 そこで、この法案について二、三の質問をさせていただきます。
 その第一は、原子力規制委員会は、独立した機関として原子力規制委員会を設け、その規制委員会は国家行政組織法第三条二項の規定に基づいて環境省の外局として設置することになり、委員長の権限も非常に大きくなりました。五人の委員が選ばれて、その中から一人が委員長として選任されるということになるようであります。
 原子力規制委員会の国会同意についてでありますけれども、高い識見を有する委員であって、いろいろ条件も付してありますけれども、そういった方々の、この人が本当に適しているかどうか、そういった審議というものはどのような形でなされるのか、そのことについてお伺いをしたいと思います。

〔委員長退席、矢崎委員長代理着席〕

○横山委員
 国会の同意人事ですから、人事院人事官とか会計検査院検査官と同様に、議院運営委員会というところでその所信の聴取を行います。今回、原子力規制委員会も同様の方法になります。

○川越委員
今まで既存の委員会と同様の方法によるということでありますけれども、事は人命にかかわることであり、また、この被害がどこまで及ぶかわからない、大変な事象に対する委員会でありますから、また、独立性を非常に強めておる委員会でありますから、ただ、今までの方法と同じ方法だけで十分にそれが担保できるものでしょうか。その点についてもう一度お願いいたします。

〔矢崎委員長代理退席、委員長着席〕

○横山委員
 その決定は議院運営委員会の判断ということになります。

○川越委員
 これ以上は言いませんが、しかし、日本国民全員が注視する委員会であります。それ相応の工夫をし、国民の納得のいく選び方をしていただきたい、そのように申し上げておきたいと思います。
 続いて、非常時の決断についてであります。
 この原子力規制委員会の設置するための要綱によりますと、高潔で専門知識及び経験、高い識見を持つ委員長、委員、これは申し分のないお方がなられると思いますけれども、非常時のときの決断であります。
 大体、決断というのは、ある意味では、確かにそういった学問的な裏づけも必要ですけれども、人間の第六感といいますか、これは危ないといった非常時の決断というのが要るわけでありますけれども、どうしても学者先生たちになると、こういう場合はこうやって、どうしてああしてで論議がぐるぐる回り出してなかなか決断というのがさっと出てこないというのが、いろいろな会議を見ておると言えるわけであります。
 原子力災害対策本部長たる総理大臣は、技術的な内容については口出しできないようになっております。しかし、いざ決断というときになったときに、できないならできないで、いつまでも結果が出てこないときには、規制委員会が行うオンサイトの対策について、早くこの結論を急いでほしいとかいうようなサポートをするような発言、もしくは結論を促す発言、そういった主導というものは、主導というのが悪ければ、サポートをするといいますか、そういうことはできないものなのか、対応を促す発言等についてあり得るのかどうなのか、この点についてお伺いをしたいと思います。

○近藤(昭)委員
 御質問の趣旨、大変に重要なことだと思います。
 国民の皆さんの財産そして生命を守る、そうした観点から、政府、その政府の長である総理、今回私どもが議論させていただいた点は、いわゆる規制委員会、ここが専門的な知識をしっかりと有して、そしてまた高い識見のもとに判断をする、その内容については、やはりそこで決められたことが第一だと。しかしながら、そこに対して、今、川越議員も指摘なさったように、それがなかなか判断が進んでいないような場合、あるいはその判断のもとに指示をされたけれども、指示を受けた事業者、関連の組織がなかなか動いていない、こういう場合に限って、そういう中ではしっかりとやはり総理、その責任ある者が指示をする、このことは法律的に認めるということでございます。

○川越委員
 わかりました。
 決断をおろすということは、その人の財産、命、全てのことを守ることでありますから、やはり、それに対するバック、やはり、補償の問題なりその後の生活の問題なり、いろいろなことが絡むわけであります。したがって、そういった決断をするのは、やはり政治家たる、国民から選ばれ、そして議会で選ばれた総理大臣がするのがふさわしい。どうしても自分としてそこのところがわからなかったので尋ねました。
 そういうことであれば、ぜひともそこのところをしっかりと詰めておいていただきたい。でないと、どうしても学のある人の会議というのは延々と続く可能性がある、今ここに危険があるというときにそのことだけはぜひ避けていただきたいと思うからであります。決して、これから選ばれるであろう人たちがみんなそうだと言っておるわけではありません。そういうことが往々にしてあるので、そういうことにならないように、いざというときに、やはり総理大臣の指揮権、指示権、こういったものはしっかりと確立しておいてほしいと思うわけであります。
 次に、委員長及び委員の服務でありますけれども、十一項のところに書いてあります。「委員長及び委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」とすること、「その職務を退いた後も、同様とする」とありますが、十七項「情報の公開」には、原子力規制委員会は、国民の知る権利に資するために、その保有する情報の公開を徹底することにより、その運営の透明性を確保するよう努めなければならないとあります。
 一方は秘密を守れ、一方は知る権利に応えよ、これでは組織に都合のいいことだけ出すようなことになりはしないのか、また、この二つの矛盾について同じ法律の中にあるということはどういうことなのか、そのことについてお尋ねをいたします。

○大谷(信)委員
 お答えさせていただきます。
 原子力事故やまたトラブルというもの、その規模の大きさにかかわらず必ず国民に対して情報公開するということは、国民の信頼を得るためには非常に重要なことであるというふうに考えています。
 でも、国家公務員には守秘義務というものがございます。しかしながら、この委員長及び委員には、特別職の国家公務員でございますので守秘義務が課せられていません。それをこの法律で課すことによって、例えば、核のセキュリティーにかかわるようなテロを起こすような人たちに有益な情報なんというものは守らなきゃいけない、しかしながら、トラブル等を初めとして、情報公開すべきもの、国民の信頼をかち取るものはしっかりとしていくということであって、別の情報、別の課題だというふうに考えていますので、しっかりと守秘義務は守秘義務で守り、国民に知らしめるべき情報は知らしめるということでやっていきたいというふうに思っております。
 そういう意味でございます。

○川越委員
 ぜひ、情報についてはしっかりと開示をし、みんなが事に当たって、安心できる、そういった施策をとっていくようにお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

○生方委員長
 次に、塩崎恭久君。

○塩崎委員
 自民党の塩崎恭久でございます。
 修正合意をされた原子力規制委員会設置法案が出てまいりまして、自公案原案をほぼそのまま受け入れていただき、なおかつ、今そちらに並んでおられます実務者の皆様方の並々ならぬ御努力の結果、さらなる改善が加わって、よりよいものにしていただいたというふうに思っております。
 こうして新しい独立した規制機関ができるということで、一年以上にわたって議論を重ねてきた者の一人として、そしてまた自公案の提案者の一人として、大変ありがたく、また、改めて実務者の皆様方には感謝を申し上げたいというふうに思います。
 その上で、修正案が我々の立法意図、当初の立法意思や目的としておった目指すべき目的にしっかりと合っているかどうか、自民党の提出者吉野議員に確認をさせていただきたい、このように思っております。
 まず、総理の指示権についてでありますが、自公案では、原子力規制委員会の所掌事務に関して総理が法律上の指示権は持たないという整理をしておりました。いわゆる菅直人リスクの排除であります。修正案においても、総理の指示権については原子力規制委員会の所掌に関する専門技術的な判断については何ら影響を与えるものではなく、例えば、六月五日の環境委員会の質疑で柴山議員はこのように言っております。
 第一に、本来行うべき職務を委員会が懈怠、ぐずぐずしているときに、本部長がしっかり仕事をしてくださいと督励するケース、それから第二番目に、委員会が既に事業者に措置を指示していたにもかかわらず、事業者がなかなかやらないときに本部長が重ねて要請する、いわゆる追認のケースに限られて、原子力規制委員会の下す判断の結果からみじんもはみ出さない範囲にとどまるということだと思いますが、総理の指示によって何ら新しいことが加わらない、すなわち、総理が規制委員会の専門技術的な判断に反する指示や、委員会が判断していないことを勝手に指示することはあり得ないということが、この条文、原災法二十条三項によって規定されていることを改めて確認したいと思います。

○吉野委員
 私も国会議員になって十年たちます。最初から、保安院の分離独立、これを言い続けてきました。今回、塩崎先生の御努力、本当に感謝申し上げます。こうやって保安院の分離独立がきょうできるということ、私も感慨無量であります。
 お答え申し上げます。
 塩崎先生のおっしゃるとおりです。特に督励の部分、これもあり得ないんです。素人が専門家に対して早くしろなんて言うことはあり得ない。でも、これも認めたところでありまして、極めて限定的であります。
 以上であります。

○塩崎委員
 ありがとうございました。
 自公案から何ら後退しているわけではないということ、そういう理解だと思います。
 次に、原子力防災会議がつくられることになりました。修正案では、原子力防災会議が創設されて、その事務局長をなぜか環境大臣が担うということになっておりますが、その理由は、三条委員会たる原子力規制委員会が、たまたま今回、環境省に軒をお借りをするという格好になっているからだというふうに私は考えておりますが、それでよろしいか。
 そうすると、附則第五条の、三年以内に見直しというのがありますが、内閣府の三条委員会となる可能性が高いわけでありまして、その場合は、当然のことながら、環境大臣は副議長及び事務局長から外れて、事務局長には原子力規制委員会ないしは日本版FEMA担当大臣などが充てられることになると理解しておりますけれども、それでよろしいでしょうか。
 それから、原子力防災会議の事務局スタッフについては、昨日の交渉の担当をしておった林政調会長代理は、内閣府の職員が担うというふうに言っておりました。それでよろしいか、環境省からどっと異動が行われることはないか、そのことを確認したいと思います。

○吉野委員
 おっしゃるとおりでありまして、原子力防災会議の副議長及び事務局長を環境大臣が務めることについては、御指摘のとおり、三条委員会に規制委員会がぶら下がっておりますので、環境省の軒を借りている、私たちは内閣府の防災大臣にしてくれということを主張しましたけれども、こういう形になりました。
 当然、原子力規制委員会の設置を環境省から内閣府等へ移管する三年後の見直しの際には、副議長、事務局長から外れると思っております。
 また、附則第六条七項において、日本版FEMAのようなものを政府に検討させることとしております。将来的には、原子力災害と一般災害対策は一元化され、内閣が責任を持って担うこととなろうと考えております。事務局長は、原子力規制委員会ないしは日本版FEMA担当大臣となるのではないかと思っております。
 さらに、事務局スタッフについては、内閣府に設置されていることから、当然、内閣府の職員が担うこととなり、特定の省庁からの動員、異動によって本来のあり方から逸脱することは法律の想定していないことであり、そうしたことになるべきではないと考えております。

○塩崎委員
 ありがとうございました。
 この法案の附則第十二条におきまして、原子力防災会議のつかさどる事務は、原子力規制委員会の策定する原子力災害対策指針に基づく施策の実施の推進を担うことになっております。もともと自公案では、平時のオフサイト対策は原子力規制委員会が担うこととなっておりましたが、自公案の規制機関の独立性と専門性という本来の趣旨はこの修正案においても損なわれてはならず、あくまでも、防災会議の所掌事務は規制委員会が策定する指針の範囲内というふうに考えております。
 その観点から、二点確認したいと思います。
 第一点目は、「その他原子力事故が発生した場合に備えた政府の総合的な取組を確保するための施策の実施の推進」、これは第二十六の二項だと思いますが、これはきのうの要綱だったのでちょっと違うかもわかりませんが、及び「原子力事故が発生した場合において多数の関係者による長期にわたる総合的な取組が必要となる施策の実施の推進」というのは、いずれも、原子力規制委員会が定める指針や方針等に従って、そこから何ら裁量的に逸脱したり拡大したりしない範囲において原子力防災会議によって実施されるというふうに理解してよろしいでしょうかというのが一点目。
 二点目は、原災法改正において定められます、きのうの要綱案では三十二の三項で書いてありましたが、「原子力災害予防対策の充実」や「原子力災害対策本部の強化」、さらには緊急時の総理の指示権においても、いずれも原子力規制委員会が定める指針や方針等に従って、そこからも何ら裁量的に逸脱したり拡大したりしない範囲に限定されることを確認をいたしたいと思います。

○吉野委員
 原子力防災会議、これは、事故が起こって初めて原災本部が立ち上がるわけですから、ふだんの訓練、これが大事なんです、平時のオフサイトの訓練。そのために、防災会議が事故時の場合は原災本部に即変わり得る、そういう位置づけで原子力規制委員会と原子力防災会議の関係はこういう関係になろうかと思っております。
 御指摘のとおり、原子力規制委員会が定める指針等の範囲内において、何ら裁量的に逸脱したり拡大したりしない範囲に限定されるべきであると考えております。

○塩崎委員
 ありがとうございました。
 JNESでありますが、独立行政法人原子力安全基盤機構、これは、今まで三つに分かれていて、安全委員会、保安院、そしてJNESということで、結局、ばらばらになっていたがゆえに有効に対応できなかったという反省があって、我々はこれを統合するということにしました。それも、やはりその精神からいけば、この委員会発足時に同時統合ということでなければいけないと私は思っておりますが、残念ながら、それは「可能な限り速やかに」というところで終わってしまっております。
 私は、今の精神を考えてみれば、さまざまな難問を克服して、遅くとも年内、あるいは、どんなに遅くても、最悪年度内にはスタートすべきだと思います。
 それから、統合されたJNESは、原子力規制庁内においても規制部門と双璧をなす重要な部局として位置づけられることとすべきであると思いますけれども、御見解を聞きたいと思います。

○吉野委員
 JNESの統合は本当に大事なんです。ですから、附則六条四項において、私たちも同時立ち上げを目指しておりましたけれども、なかなかここは事務的に難しいということで、普通ならば速やかにだけなんですけれども、「可能な限り速やかに」という、最大限の言葉で法律をつくらせていただきました。
 また、職員の待遇についても、「相当の職員」ということで附則六条の四項にも盛り込んだところであります。

○塩崎委員
 年内、年度内についてお答えがありませんが。

○吉野委員
 時間を区切るということは大変難しいものですから、同時に発足をする、そういう心を持って、「可能な限り速やかに」ということで対応していきたいと思っています。

○塩崎委員
 ありがとうございました。ぜひその方向でお願いしたいと思います。
 ノーリターンルールでありますが、五年間例外を認めながらも、原子力規制委員会創設当初から導入するこのノーリターンルールの趣旨は、安全確保のための規制の独立性の確保、そしてもう一つ、独自の計画的高度専門人材の育成というのがあると思います。
 附則第六条二項において原子力利用の推進に係る事務を所掌する行政組織への配置転換を禁止しておりますけれども、経産省、文科省など明らかな推進官庁との間のノーリターンは当然だと思います。
 加えて、私は五月二十九日の本会議の趣旨説明において、規制委員会の関与が不可欠な安全基準のもとで除染や放射性瓦れきの処理を担う環境省など、原子力安全に関する利益相反が起こり得る省庁との人事交流も戒めると明言したところであります。
 あらゆる利益相反を排して安全確保のための規制の独立性を確保しながら、IAEA安全基準にあります人事の独立性を確保するためには、原子力規制庁のポストが環境省の指定席となったり、ローテーションで次々に人が送り込まれてきて事実上の環境省の植民地となってしまっては、規制機関の独立性が失われてしまいます。その他の行政機関からの独立というのも、明確にIAEA基準には書いてあります。この点から、環境省との間で人事ローテーションはあってはならないと思います。
 今あるこの規定につきまして、自公案の当初の書きぶりと何ら変わっておりませんので、我々立法者の意図として私が申し述べた、当然環境省を含むと考えてよろしいでしょうか。

○吉野委員
 このノーリターンルールが、独立性を担保するためには本当に非常に重要であると考えております。ですから、原子力利用の推進に係る事務、ここへの配置転換、これを禁じているところです。
 また、六条三項において、例えば、メーカー、原子力事業者、民間からの方々もおります、そこへの再就職、これも規制をしているところです。国民の疑惑または不信を招く、こういう人事というものは、IAEA基準の利益相反という観点からしても、これは排除すべきであるというふうに思っております。
 私たち、このノーリターンルールは、原子力利用の推進に係る事務、当然、先生がおっしゃったような経産、文科、そして原子力委員会をつかさどっている内閣府、これも入ろうかと思っております。
 以上です。

○塩崎委員
 今、明快にお答えをいただいて、環境省も対象になるというふうに私は理解をいたしましたし、IAEAの安全基準からいって、これは法律じゃないんですね。IAEAの安全基準を守るかどうかというのは、その国の言ってみれば節度とか、そういうものにかかってくる部分もたくさんあって、この法律の有無にかかわらず、私は、そもそも利益相反がある、それから、他の行政からの影響を受けてはならないというふうに書いてあるIAEA安全基準を守るならば、環境省との間のノーリターンルールも当然のことだというふうに思っております。
 それから次に、特別会計の問題です。
 とりあえず原子力安全規制対策という勘定をつくっていただけるということでありますが、やはり電促税というのは推進側の財源ですから、私は、独自財源をアメリカやイギリスのように持ち、なおかつ特別会計を別途つくって、原子力規制特別会計などをつくるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○吉野委員
 おっしゃるとおりでありまして、今は電促税をエネルギー特別会計の中での区分経理という形で出発しておりますけれども、本当の目標は、きちんと自分たちで手数料、検査料という形で独自財源を得ること、これが私たちの大きな将来の目標であります。(塩崎委員「特別会計」と呼ぶ)それを特別会計にして区分経理をしていきたいと思っております。

○塩崎委員
 終わります。ありがとうございました。

○生方委員長
 この際、お諮りいたします。
 議員高木美智代君から委員外の発言を求められております。これを許可するに御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○生方委員長
 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 高木美智代君。

○高木(美)議員
 公明党の高木美智代でございます。
 原子力規制委員会設置法案起草の件につきまして、公明党を代表して質問させていただきます。
 このたび、民主党、自民党、公明党三党の協議によりまして自公提出法案を軸とする原子力規制委員会設置法案が起草されましたことは、大変喜ばしいと思っております。関係者の皆様の御努力に心から御礼を申し上げるものでございます。
 この原子力規制委員会設置法につきましては、我が国のこれまでの原子力規制行政を刷新する画期的な法案になったと確信をしております。私は、その理由を順次挙げながら、何点か、起草者と、また政府、特に細野大臣の見解を伺っておきたいと思います。
 まず、本法案を高く評価できる理由の第一でございますが、規制委員会の独立性、中立性を確保したという点でございます。
 この規制委員会は、環境省に置かれるものの、いわゆる三条委員会として独立して職権を行う。内閣や環境大臣の影響力が行使されることはない。そして、委員長並びに委員は国会同意人事であり、国会の同意なくして罷免されることもない。いずれも、規制組織の業務が政治的圧力や利害関係者の意向に左右されることを防ぎまして、科学的、客観的な知見に基づいた中立的なものであることを確保するための措置でございます。
 このように規制委員会に高い独立性を与える以上は、いや増してこの規制委員会のあり方が問われると思っております。公明党は自公案検討のときに、規制委員長及び委員の任命の要件に、いわゆる人事院の人事官等と同様に、人格が高潔ということを挙げさせていただきました。
 これまで、政府にかかわる原子力専門家の中に、寄附金とかまた研究費の名目で業界との間で多額の金銭授受が行われていた問題が明らかになりまして、ここからいわゆる原子力村という言葉が生まれるような、職務の中立公正性に関して国民が大きな疑惑また不信を抱いてきました。
 人格の高潔は、そのような事態の改善を求めるという国会の意思でありまして、規制委員会の国会に対する説明責任の要件でもあると考えております。
 また、さらに本法案では、規制委員会の委員長及び委員による国民の疑惑、不信を招くそのような行為を防止するために、原子力事業者等からの寄附の制限など、内部規範を制定、公表するということ、また、原子力事業者等からの寄附に関する情報公開も盛り込まれました。これらは、中立性、公正性の確保のために極めて重要なことと考えております。
 ここで、起草者の方に、特に我が党、私も加わらせていただきましたが、中心的に取りまとめて努力をされました江田議員に対しまして伺いたいのですが、寄附の制限とは禁止を意味するのか、また、情報公開は在職前等も含むのか、見解をお伺いしておきます。
 あわせまして、委員長及び委員の任命要件につきましても、三党協議の中で「原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する者」と拡充されましたが、その趣旨はどのようなものであるのか、江田議員にお伺いいたします。

○江田(康)委員
 本法案に対しての高い評価、ありがとうございます。
 高木先生の御質問にお答えいたしますが、この規制委員会の独立性、中立性を担保するためには、この寄附の制限、情報公開は非常に重要と思っております。
 この寄附の制限規定の趣旨は、寄附を一律に禁止するものではありません。原子力規制委員会の委員長、委員が、専門的知見に基づいて、中立公正な立場で独立して職権を行使することを担保するために、いわゆる原子力村から寄附金を受けて中立公正な立場が揺らぐことを防止するために、公開制度を創設して、国民による監視を図るものとしたところでございます。
 具体的な運用については、原子力規制委員会の内部規範で定めていくことになりますが、その際には、就任前、例えば三年程度は公表する旨の規定を設けることが望ましいと考えております。
 次に、委員長及び委員の任命要件として御質問がございました。
 原子力利用における安全の確保に関しては、専門的知識及び経験が必要なことは言うまでもありませんけれども、この要件だけに限定すると、いわゆる原子力村的な視野の狭い技術者に限られる懸念があると考えます。
 そこで、高い識見を要件としまして、全体としてバランスのとれた人材の確保を可能としているものでございます。

○高木(美)議員
 ありがとうございました。
 さて、この規制委員会でございますが、原子力規制庁と称する事務局が置かれることになります。事務局は、他の官僚組織からは独立して、規制委員会の指揮命令にのみ服するということになっております。他省庁との連携は必要ですが、今の答弁にもありましたとおり、決して癒着と言われるようなことがあってはならないと思います。
 そのために、自公案に基づきまして、規制庁の全職員の推進官庁へのノーリターンルールが盛り込まれたわけでございます。
 このノーリターンルールは、当然、規制庁発足時から実施されるものでありまして、適性等の観点から認められる五年間の例外措置というのも入っておりますが、極めてこれも抑制的に運用すべきと考えております。その点もお含みいただきたいと思います。
 次に、法案を高く評価できる理由の第二といたしまして、規制組織の専門性の確保を挙げたいと思います。
 これに関しては、特に、独立行政法人原子力安全基盤機構における専門知識の蓄積を十分活用することを目指しまして、この機構の職員を、規制庁の相当の職員として、この機構が行う業務を可能な限り速やかに規制委員会に行わせるということになりました。
 この可能な限り速やかに統合を行うためには、政府が速やかに法制上の措置をとるということが必要なわけですが、政府は、いつまでにこの関連法案を提出し、いつまでに統合を行うお考えか、細野大臣の所見をお伺いしたいと思います。

○細野国務大臣
 御質問は、統合はJNESの件ということでよろしいでしょうか。(高木(美)議員「そうです、JNESです」と呼ぶ)はい、ありがとうございます。
 JNESにつきましては、今回の事故以降、何人かの専門家と私もやりとりしましたけれども、非常に有能な方が多いですから、統合できるというのは非常にありがたいことだというふうに思っておりますので、法律の趣旨のとおり、可能な限り速やかに実施をしてまいりたいというふうに思っております。
 問題がございますのは、JNESというのは非公務員型の独立行政法人でありますので、私も接した中でいうと、明らかに年齢層が高うございます。六十歳を超えている職員が三割を占めておりまして、中途採用でかなり即戦力を採用しております。これを公務員にしてしまいますと、もう全部定年になってしまいますので、能力が大幅に減ずるということになってしまうんです。
 ですから、公務員の年齢というものを大幅に変えるというのは、これは難しいですから、まず、JNESのあり方そのものを、若干時間をかけて、時間をできるだけかけずにやりたいとは思いますけれども、どう戦力を維持するかということを大前提としないと、統合して弱体化するということにもなりかねないんですね。
 ですから、そのあたりについて準備をした上で、できるだけ早く統合することで原子力規制庁そのものを強い組織にして、原子力規制委員会の判断のもとでしっかりと働き得る組織にしてまいりたいと考えております。

○高木(美)議員
 そうしたことを含めまして、いつごろまでにその統合の流れを整理をするのか、また、いつごろまでにこの統合を実施をしていくのか、スケジュールをお示しいただけますか。

○細野国務大臣
 できるだけ早くやりたいと思います。
 もう一つは、JNESの職員というのは、専門的な人間については高い処遇をできるという形になっているんです。ですから、それが公務員の場合はなくなりますので、給料が下がる人が出てきます。ですから、定年で三割いなくなってしまって、そのほかの人についても、例えば優秀な人は給料が下がるということになると、人がいなくなってしまいます。そういう状況はできるだけ早く解消されるということを目指し、それが解消された時点でできるだけ早く統合したいと考えております。

○高木(美)議員
 それでは、次の、理由の第三に移らせていただきます。
 我が国の原子力規制行政の長年の二元体制に終止符を打ちまして、原子力規制行政が一元化されるという点でございます。
 政府案におけますテロ対策などのセキュリティー規制、また、放射線規制にとどまらず、放射線の日常的モニタリング、また核不拡散のための保障措置もこの規制委員会に一元化されることになりました。まさにこれは国際標準に合致した形態でありますし、限られた人的、物的資源の有効活用のためにも意義が大きいと考えております。
 また、理由の第四ですが、世界最高水準の規制を導入するということで、シビアアクシデント対策、また、最新の知見を既存施設にも反映できるバックフィット制度を導入する、また、発電用原子炉につきましても四十年運転制限制を導入するという点でございます。
 この四十年運転制限制につきましては、公明党も修正協議におきまして導入を主張いたしました。ただ、この四十年まで安心という科学的な保証があるわけではありませんので、厳格な老朽化の検査またバックフィットが重要なことは、言うまでもありません。また、二十年を超えない範囲で運転延長を認める例外規定につきましても、この四十年制限制がなし崩しになるものであってはならないと思います。
 また、原子炉等に対する種々の規制につきましては、原子力規制委員会が発足した後に速やかに見直すことになっていますが、この趣旨につきまして起草者にお伺いしたいと思います。

○江田(康)委員
 私も、今の点に関しては高木先生の御指摘のとおりだと思っております。その御指摘のとおり、四十年運転制限規制の趣旨は、原則として四十年以上の原子炉の運転はしないこととするものでありまして、運転延長が認められるのは例外的なケースであると考えます。
 原子炉等規制法に基づいて、この安全規制全体については、法律の施行後速やかに、施行の状況を勘案して検討が加えられる旨の見直し規定が置かれておりますけれども、これはあくまで、この原子力規制委員会発足後、新たな科学的基準に基づいて規制を不断に改善していく趣旨であると考えるものでございます。
 新しい基準に適合しないものは、四十年前の廃炉もあり得るわけでありまして、この新しい組織による新しい基準、これが基本的な考えになってくるかと思っております。

○高木(美)議員
 ありがとうございます。
 第五は、緊急時における政府と規制組織の役割分担が明確になったことです。
 この法案では、原子力施設の安全確保に関する専門技術的事項に関しまして、規制委員会が原子炉等規制法上の監督官庁として権限を行使することを明確にいたしました。そして、規制委員会が専門的、技術的な知見に基づきまして原子力施設の安全確保のために行うべき判断の内容に関して、総理が指示する権限を認めないことといたしました。まさにこれは、先ほど来、菅リスクと言われておりますが、今回の事故の教訓を踏まえたものとなっていると思っております。
 第六に、平時におけるオフサイト対策の体制が明確になったことです。
 現行の原子力災害対策本部は緊急事態宣言のもとで瞬時に設置される組織でありまして、平時は、関係省庁、地方自治体等と連絡をとり、万一のための準備を進める、その体制が別途必要だったという状況でした。
 この法案におきましては、緊急時の原子力災害対策本部に加えまして、平時の原子力防災会議を設置し、その事務局を内閣府が担うこととしております。規制委員長も副本部長としてその会議に参画するとともに、規制委員会は科学的、技術的知見を提供することとなっております。
 加えまして、規制委員会と原子力防災会議の組織の立て分けが明確にされまして、規制委員会、規制庁の独立性も確保されております。
 ここにおきましては、両者の連携が重要になってくると思います。そのあり方につきまして起草者の見解をお伺いいたします。

○江田(康)委員
 御指摘のとおり、平時のオフサイト対策のうちでこの原子力規制委員会が行うものは、専門的、技術的知見に基づくものである。また、原子力防災会議は、原子力防災推進のために、地方公共団体や自衛隊等実力部隊との調整、放射能環境汚染対策など、多数の関係者による長期にわたる総合的な取り組みの推進を行う。このように、原子力防災会議と規制委員会が平時のオフサイト対策においてその業務が切り分けられたことによって、この独立性は大変高まったものと思います。
 他方、現実の原子力防災会議では、関係機関がそれぞれの役割を果たしながら緊密な連携を図っていくことが最重要課題でありまして、これは、平時から、日ごろから十分な情報提供や情報共有や意見交換を行っていくことが必要不可欠であると考えております。

○高木(美)議員
 ありがとうございました。
 起草者の皆様の御努力によりまして、極めて画期的な原子力規制組織に関する法案が起草されたと確信をいたします。本法案が早期に成立をいたしまして、原子力規制行政が国民の信頼を回復し、また、国民の安全を守ることを要望いたしまして、私の発言といたします。
 ありがとうございました。

○生方委員長
 次に、斎藤やすのり君。

○斎藤(や)委員
 今回、法案が成立して新たな規制組織が立ち上がるわけでございます。福島の事故で地に落ちたこの原子力行政の信頼を回復するためにも、万全を期さなければいけないというふうに考えております。
 法案を見る限り、独立性の確保、それから政治介入のリスクの除去という点は大体クリアされておりまして、私たち新党きづなとしては賛成の立場をとりますけれども、一言言わせていただきたいのが、このところの国会軽視の流れでございます。
 この法案も、そして今一番ホットな消費増税の関連法案も、民主、自民、公明の三党の協議で決まってしまう。しかも、この三党協議というのが、議員会館の会議室、ホテルの一室などの密室で話し合いがなされて、ここで決まったことが突然国会に落ちてきて、審議の時間も大してとらずに採決されてしまう。
 そもそもこの法案というのは、もう二度と福島の悲劇を起こさないように、じっくりと国会で審議をして決めていかなければいけないものだと思っております。ところが、法案の審議はなかなか始まらず、始まったと思ったら、環境委員会での質疑は一回、参考人質疑そして連合審査が一回ずつ、修正法案ができたと思ったら、審議は半日で終わり。これでは、多くの国民が納得しないと思いますし、国会軽視でございます。強く抗議をしたいというふうに考えております。
 時間が余りないので、修正案について質問いたします。
 ノーリターンルールなんですが、今回、五年の経過措置を設けるという例外規定が設けられました。この五年ルールができた経緯と理由をちょっと説明していただきたいと思います。

○大谷(信)委員
 五年ルールですよね。五年ルールができた理由は、先ほどの答弁にもありましたように、ノーリターンルールですぐに帰れないようにするべきだというのもありますが、全く新しい組織ということもあり、ここは、この組織になじまないような方、また、なじまない能力であったようなことも発見するようなことがあるということで、行って、例外として五年間の間はもとに戻れるというようなルールを定めさせていただきました。
 それは、余り能力がない人、意欲がそがれてしまった人が残って、本来の規制委員会の能力が発揮できないということを阻止するためでございます。

○斎藤(や)委員
 ありがとうございます。
 一方で、これはリスクも非常に伴っているんじゃないかなというふうに思います。どういうリスクかといいますと、この規制委員会の最初のミッションというのは、何といっても新しい安全基準をつくることだと思うんですが、心配なのは、この基準づくりをするという重責を負う職員が、いわばノーリターンルールの対象外であるということでございます。
 原子力村の影響を排除して新しい安全基準をつくれるのかどうか、五年で帰れるわけですから、これについて大谷先生、どうでしょうか。

○大谷(信)委員
 そこは国会同意人事でもありますし、しっかり、そんなことがない委員長、そしてそんなことがない他四名の委員を私たちが選ぶことで阻止できるものだというふうに思っております。

○斎藤(や)委員
 国会同意人事でチェックをするということだと思いますが、そのほかにも、利権を五年間の中で確立する利権あさりをする人とか、そういうことも十分考えられると思いますので、そこはやはり国会でしっかりとチェックしなければいけないというふうに思います。
 それと、済みません、これは質問通告にないんですが、どうしても一問聞きたいのでお聞きしたいんですが。
 最初のスタートが肝心だと思います、この組織。組織が腐らないようにするためのチェックが必要だと思うんですが、規制委員会をチェックする機関というのは、この法案を読む限り、見当たりません。自浄作用に期待するしかないのか、国会の同意人事でということなのか、このあたりもちょっと教えていただきたいんですが。

○大谷(信)委員
 委員を罷免できるというところがありまして、そこはこれから内規を定めさせていただいて、例えば多額の寄附をするであるとか、これはあくまで例えばですが、余りにも原子力村寄りの発言が出るとか、これは内規で定めることでありますが、一定そういうルールをつくった上で、我々立法府の人間もそれをチェックしながら高めていこうということになります。

○斎藤(や)委員
 チェック機関が存在しない、内規でということで自浄作用に期待するというところだと思うんですけれども、このあたりも懸案事項の一つだと思いますので、今後考えていただければというふうに思います。
 一方で、ちょっと今回一つ心配なのは、内閣に設置された原子力防災会議というものでございます。これも修正協議で出てきたものでございますけれども、組織をたくさん立ち上げて権限のすみ分けが難しくなるというのが今までの原子力の規制組織だったと思うんですが、結果的に混乱が助長されるリスクを抱えております。
 今回の修正案で急に出てきたこの原子力防災会議という組織、これに関しての業務内容、それから内閣府に置いた理由というのを教えていただければと思います。

○大谷(信)委員
 お答えいたします。
 平時のオフサイト対策のうち、原子力安全についての専門的、技術的知見に基づくものは原子力規制委員会、そして、原子力防災推進のために、地方公共団体や自衛隊等実力部隊との調整、放射能環境汚染対策など、多数の関係者により、また、長期にわたる総合的な取り組みの推進が必要なものは原子力防災会議及び事務局がそれを担っていくということであります。
 ここは緊密な連携あってこそ初めて可能だというふうに考えています。

○斎藤(や)委員
 今回のこの規制組織の目的というのが、やはり独立性と一元化というものがあったと思います。このつくった組織が、平時の防災対策ということではありますけれども、政治介入とか、それから情報隠しの隠れみのにならないように、このあたりもしっかりとお願いしたいと思います。
 この規制委員会は、再稼働の妥当性から原発事故の対応まで、強大な権限を持ちます。ということで、この規制委員会の人事が非常に重要になります。
 これはすごくすごくすごく基本的なことなんですけれども、国会の同意人事で選ばれるわけなんですけれども、国会に出す人事案を策定するというのは政府のどの部署なのかという基本的な質問を教えてください。

○横山委員
 原子力規制委員会の委員長及び委員は、「両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。」ということですので、原子力規制委員会の委員長及び委員の人事案は、内閣官房において調整されることになると考えております。

○斎藤(や)委員
 内閣官房ということで、委員長とそれから四人の委員の方がこの組織のあり方を大きく左右されると思います。国の方向としては、野田総理が言っているように、脱原発依存と言っているわけでございますので、危ない原発は稼働させない、それから廃炉への道筋をきちんと示すことができる、そういう方をぜひ選んでいただければというふうに思います。
 それから、四人の委員の一人ぐらいは原発の専門家ではない方、例えば、法律家とか、それから思想家なんかの方も一人入れていいのではないか。米国の原子力規制委員会は、報道によりますと、委員長候補の一人に地質学者を入れているという話でもございますので、そのあたりもぜひ考慮していただければと思います。
 それから、ちょっとこれも済みません、質問通告をしていないんですが、自民党の方に一つだけお伺いしたいんです。
 私は、この前の細野大臣との質疑の中で、四十年ルールを設定するのはいかがかと言いました。これは無制限にしろと言ったわけではなくて、私の趣旨は、四十年が妥当なのか、もっと精査すべきではないのかという意味で言ったわけでございます。稼働年数のキャップをもう少し下げてもいいんじゃないか。ドイツはちなみに三十二年です。さらに、二十年だろうと三十年だろうと、脆性遷移温度とか炉の耐久性によっては、耐久性が弱くなったら廃炉にするべきだということを言ったわけなんです。
 この四十年ルールに対して、済みません、これも報道なんですけれども、朝日新聞の報道です。自民党さんが修正協議の中で、四十年たったものが劣化しているとは言いがたいというふうに、強硬にこの四十年の廃炉ルールに対しては反対した、そういう報道がされておりました。
 この修正協議には議事録がありませんので、その報道についてちょっとお伺いしたいと思います。済みません。

○田中(和)委員
 お答えをいたします。
 今、斎藤議員がおっしゃったことと私の思いはほとんど同じでございます。まず、四十年という数字の設定が非常に政治的なものであって、科学的な根拠に基づかない。原発はそれぞれみんな、できたときも違いますけれども、よって立つ地理的な条件を初め数々のことがございます。当然のことながら、独立した三条の機関ができていくわけでございますし、そこで選ばれた委員の皆さんがお決めになるということが当然のことでございます。
 ましてや我が党が、四十年を、プラス二十年の話もありますけれども、それをさらに延ばすべきだというような発言をしたことは一切ございませんし、私は、場合によっては一年で閉めなければいけない炉も起こってくる、このように思っておりますので、誤解のなきように。マスコミの皆さんも正しく報道をしていただかなければならない、このように思います。
 ありがとうございました。

○斎藤(や)委員
 どうもありがとうございました。
 最後に、今回の野田総理の大飯原発再稼働の方針には、新党きづなとして断固反対で抗議をいたします。
 福島原発事故の国会事故調の結果報告が出ていないのにもかかわらず再稼働を決めているという点、さらに、今回の原発事故は、原子力安全・保安院と原子力安全委員会の安全規制の失敗が大きな原因になっています。いわばA級戦犯である保安院と安全委員会がつくった安全基準で再稼働を決めることに、やはり私は正当性はないというふうに思っております。これはもう間違っているというふうに思います。
 大飯原発だけ特別につくられた暫定基準で再稼働させるのではなく、これから発足する原子力規制委員会がつくる安全基準で再稼働するかしないかを決めるべきであるということを訴えさせていただきまして、私の質問は終わりにいたします。
 どうもありがとうございました。

○生方委員長
 この際、お諮りいたします。
 議員吉井英勝君、服部良一君、柿澤未途君及び松木けんこう君から委員外の発言を求められております。これを許可するに御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○生方委員長
 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 吉井英勝君。

○吉井議員
 日本共産党の吉井英勝です。
 私は、環境省の立ち位置について最初に伺っておきたいと思います。
 本会議での私の質問に野田総理は答弁を逃げたんですが、六月五日の委員会で細野大臣は、地球温暖化の手段として原子力推進という立場にはないと答弁をされました。
 改めて伺いますが、そうすると、地球温暖化対策基本法第十六条から、「特に原子力に係る施策については、」「推進するものとする。」としているこの原発推進を削除するのかどうか、明確にしていただきたいと思います。

○細野国務大臣
 御指摘の地球温暖化対策基本法案の第十六条でございますが、環境省は原発推進の立場には立たないということからすると、この条文は確かに矛盾するところがあるというふうに考えております。
 国会に提出をしている法案ではありますけれども、これについては、こうした状況を鑑みて、新たなエネルギーに対するさまざまな政策、そして、それと同時に、温暖化の問題についても今政府内で検討が行われておりますので、その選択肢を提示をするという方向の中でしっかりと再検討する必要があるというふうに思っております。

○吉井議員
 地球温対推進法に基づく目達計画ですね、閣議決定したもの、二〇〇八年三月二十八日に閣議決定されたものが、改めて昨年の十二月二十日にも確認しているんですね。この目達計画からも原発推進部分というのは除くという、こういう立場でやっていかれますか。

○細野国務大臣
 新しい環境の温暖化の方針が出た段階でそういったことについても見直すということになります。今、中央環境審議会でこのエネルギーの問題を見きわめながら気候変動の問題についての議論をしておりますが、そこでもそのことを徹底をしております。
 つまり、環境省の方で、エネルギーの中で原発が占める割合について判断をすることはしない。それを高めることで温暖化に資するであるとかいう考え方はとりませんので、それは資源エネルギー庁の方で検討をされ、それをそのまま使うようにということで徹底をしております。
 したがいまして、原子力の考え方そのものについてもすべて見直すという、そういう方向であります。

○吉井議員
 見直していくというお話なんですが、ここをきちんとしないと、環境省はこれまで原発推進の一翼を担ってきたというこの立場が消えるわけのものではありません。
 次に、関西電力の美浜、高浜、大飯の原発で、いただいた公式発表の事故・トラブルを見ると、運転開始から二十年以内の原発で合計百十二件あるんですね。もちろん、事故の予兆と見るべきものが多いんですが、実際、小さなトラブルを見逃して、大規模な、死傷者を出すような事故につながったものもあります。
 中性子照射による脆性劣化というのは、BWRでは、二〇〇二年に問題になったコアシュラウドの亀裂などで、材質をよいものにかえても、二、三年でまた高速中性子でやられてしまってひびが入るとか、PWRの場合は、二〇〇六年五月十二日の国会で指摘しましたが、美浜とか玄海などで上昇が続いて、もう三十年ぐらいで危険領域に近づいていると。これは圧力容器ですよ、脆性劣化で。こういうのが現状なんですね。
 現実に進行している事態は、四十年期限や、さらに二十年延長するというのは一体どういう根拠があるのかと。
 環境大臣と動議提出者に伺っておきますが、速やかに検討とか所要の措置という文言がありますが、いつまでにどのような方向での検討の見直しなのか、これはさらに延長することもあり得るということなのか、伺います。

○近藤(昭)委員
 貴重な御質問をいただいたというふうに思っております。
 四十年運転制限制度というのは、経年劣化等に伴う安全上のリスクを低減する観点から重要な制度、こういうふうに考えておるわけであります。
 新たな科学的知見に基づいて安全規制を不断に改善し、また、この法案によって新たに設置される原子力規制委員会の委員長及び委員の知見に照らして検証されることが重要である。御指摘の四十年の運転制限の規定を含め、施行の状況を勘案して速やかに検討を加え、安全規制全体に関して見直すというのが、この速やかに検討、所要の措置ということであります。
 このことについては多くの議論があったと思います。私自身は、四十年規制、これから原子力規制委員会という、極めて専門的に、そして独立性を持って、そして今回、さまざまな条項を加えることによって中立性を保つということを加えさせていただきました。この独立した委員会の中でしっかりと規制がされていること。
 今言及させていただきました炉の劣化等々、これは科学的に知見をすれば、それぞれの炉によって非常に違うわけだというふうに思っております。劣化したものによってはかなりの温度で割れてしまうようなものがある、科学的にはこういう知見も出ているわけであります。そうした炉に万が一のことがあったときには、お湯で冷やすような、つまり、余りに冷たいもの、水をかけると破断してしまうようなものもある、こういう知見も出ているわけであります。
 そういう意味では、私は、新しくできた規制委員会がきっちりと知見を持って当たっていくことによって、逆に言うと、四十年、これは基本的に、少なくともという意味であります。それぞれの炉の状況によってはもっと早く廃炉をすべしということが出てくるんだ、こういうふうに思っております。

○細野国務大臣
 吉井委員は、中性子の脆化の問題を御指摘をされました。非常に重要な御指摘だと思います。もう一つは、機器は全体でできていますので、やはりそのシステム自体の古さというのも非常に気になっております。
 そういったことを考えれば、四十年の運転制限制度というのは必要であるというのが、これが私どもの立場であるということは明確に申し上げておきたいというふうに思います。
 先ほど、近藤提出者の方からもお話がございましたとおり、それを科学的に確認をするということだというふうに理解をしておりますので、しっかり確認をしていただいて、四十年で運転制限をしていくということが重要ではないかと考えております。
 これは初めて導入した制度でございまして、これまでの経緯も確認をしてきましたが、先ほど斎藤委員から、年限は設けるべきでないという話がありましたが、これは強烈なことなんです。巨大な投資をした電力会社に、それを廃止せよ、設備としてこれはもう完全になきものにするということですから、大変なことなんですね。それはもちろん専門的に判断していただいたらいいと思います。
 専門的に判断していただいたらいいと思いますが、まずは運転を制限をするというしっかりとした法的な意思というのは示しておかないと、やはり専門家もなかなか判断しにくいというのが、これがこれまでの現実でありますから、それをしっかりと法律に書くというのは極めて大事で、これを公明党、自民党の皆さんにも受け入れていただいたというのは大きな意味があると考えております。

○吉井議員
 脆性劣化の問題にしてもシステム全体の問題にしても、そもそも、三百十億円かけた世界一の規模の大型振動台を売り飛ばしてしまったんですよ。脆性劣化したものの安全性その他を検証する実証実験をやる装置を、三百十億円ですよ、売り飛ばしてしまったぐらいですから、今のように簡単に物を言ってもらうと困ると思うんです。
 動議提出者に一言だけ伺っておきますが、今度の規制委員会に置く審議会で、原子炉安全審査会と核燃料安全審査会のメンバーから、電力及び原子力関係事業者、団体の者を排除するのかどうか、これを一言だけ伺っておきます。

○近藤(昭)委員
 その欠格要件でありますけれども、審議会等の委員の欠格要件についても、委員長及び委員の欠格要件の趣旨を踏まえて、下位法令において定めるべきものと考えております。
 その意味では、原子力規制委員会の独立した規制上の判断と決定を担保するという観点から、利害関係者である原子力事業者等は排除されることになる、排除されるべきと考えております。

○吉井議員
 質疑時間の中で意見も表明してくれという話なんで、今から意見を申し上げておきたいと思います。
 昨年の三・一一福島第一原発事故は、全電源喪失によるメルトダウンとその後の水素爆発によって大量の放射性物質を大気中に飛散させ、汚染水を海洋に流出させるなど、チェルノブイリに並ぶ史上最悪の原発事故となりました。
 あれだけ大きな被害を受け、今も約十六万人の人々が避難生活を強いられているときに、事故の深い原因究明と責任、教訓を明らかにして、本来、特別委員会を設置して各党が十分な議論を尽くしてよい法律をつくるべきであるのに、環境委員会という一つの常任委員会での審議で、しかも、三党修正協議がきょう出てきていきなり質疑、採決というやり方は、議会制民主主義に反する暴挙であり、民主、自民、公明三党修正協議と法案審議のあり方そのものについて、まず強く抗議をしておきたいと思います。
 その上で私は、原子力規制委員会設置法案に対し、反対の意見を述べます。
 このような事態を招いた政府と東京電力の責任は極めて重大です。事故を完全に収束させ、放射能汚染の被害から国民の生命と暮らしを守り、二度とこのような事故を起こすことのないように事故原因の徹底究明が不可欠であり、本法案の大前提となるものです。
 ところが、政府や国会の事故調の事故原因の究明が途上であるにもかかわらず、加害者である東京電力は、想定外の津波が原因で、人災でないと責任回避を続けております。野田政権もまた、津波、浸水が事故原因で、地震の影響はなかったという驚くべき断定を行いました。
 これは、再び新しい安全神話を復活させ、大飯三、四号機を初め、原発再稼働に進み、原発輸出戦略の条件づくりであり、断じて容認できません。
 この点でまた、事故の被害を拡大した当時の官邸の混乱のみを菅リスクと過大に問題にすることは、事態を一面的に描くものです。
 これと同時に、三・一一以前の歴代自民党政権の原子力行政のゆがみを徹底的に検証しなければなりません。
 反対理由の第一は、昨年の三・一一福島第一原発の事故原因と教訓を全面的に踏まえた法案となっていないからであります。
 特に、原子炉等規制法で根拠も実証試験もなく、老朽原発の四十年、例外六十年制限としたところ、本法案ではさらに事実上青天井とし、半永久的稼働を容認したことは、政府案を一層改悪するものであり、認められません。
 第二に、原子力規制組織をいわゆる三条委員会としていますが、推進と規制の分離、独立性を確保すべき原子力委員会を環境省のもとに置くとしていることは容認できません。
 環境省は、歴史的にも基本政策の上でも原発推進の一翼を担ってきた官庁であり、今国会に提出している地球温暖化対策基本法案で、温室効果ガスの排出抑制のため原発推進を条文上も明記したままです。これの削除と根本的な反省なしに真の独立は担保されません。当然、電促税を財源とする財源面でも問題であります。
 第三に、原子力基本法を改め、原子力利用の目的について「我が国の安全保障に資する」としたことは、いわゆる原子力平和利用三原則にも抵触するものです。
 また、国際的動向を踏まえた放射線対策と称して、内外の批判の強いICRP、国際放射線防護委員会の線量基準などを持ち込もうとしていることも認められません。
 最後に、我が国の原発政策の根幹をなす日米原子力協定と電源三法のもとで、原発安全神話をつくり上げ、地域住民の反対を押し切って原発を推進してきた歴代自民党政権の、政財官学の癒着した一体構造そのものにメスを入れる必要があります。
 地域独占体制と総括原価方式に守られた、電力会社を中心とする、原発メーカー、鉄鋼、セメント、ゼネコン、銀行など財界中枢で構成する原発利益共同体ともいうべき利益構造を解体することと、そして、再生可能エネルギーの爆発的普及とその仕事を地域経済の再生に結びつけ、エネルギーでも地域経済でも原発に依存しない日本社会への発展の道こそ、政治的決断をするべきものであります。
 以上申し述べて、私の発言を終わります。

○生方委員長
 次に、服部良一君。

○服部議員
 社民党の服部良一です。
 早速質問させていただきます。
 新規制機関が発足しない中での大飯原発三、四号機の再稼働を決めるということはあり得ないということを申し上げてきたわけですが、まず、動議提出者にお伺いいたします。
 本法案が成立し、原子力規制委員会が発足したら、ストレステストを導入した昨年七月十一日の三大臣文書「我が国原子力発電所の安全性の確認について」と、総理以下四大臣で政治的判断をする枠組みは当然失効するというふうに思いますけれども、それをどう認識されているか、これが一点です。
 それから、少なくとも大飯以外の原発について、原子炉等規制法の改正に基づき策定される新たな安全基準とバックフィットによる適合が確認されなければ再稼働できないというふうに私は理解しますけれども、本法案の立法趣旨からしてそういう理解でいいのかどうか。
 その点、二点お尋ねいたします。

○大谷(信)委員
 この法案ができたことにより、新たな規制組織である原子力規制委員会が設置されることになります。他の行政機関や政治的な影響から独立した技術的、専門的な観点から、原発の再稼働についての手続も改めて検討されることとなります。
 この法案が施行されると、既に許可を受けた原子力施設も、最新の知見を踏まえた新たな安全性の基準に適合させるいわゆるバックフィット体制が導入され、この新たな基準に適合しない原子炉施設に運転は認められないということに理解をしております。
 それとあと、三大臣、四大臣の枠組みというのは、ちょっと私の方では、政府のことでございますので、答えられません。

○服部議員
 それでは、同じ質問を細野大臣にさせていただきたいと思うんですけれども、今の答弁に対してどういう御意見をお持ちか。
 というのは、これは新聞報道ですけれども、仙谷さんが、「ストレステストが済めば、その他の原発も粛々と動かすべきだ」ということをおっしゃっているんですね。報道ベースなので、その真意のほどはわかりませんけれども。
 そういう意味で、新しい規制機関が発足する中で、一体どういう精神でこれをやろうとされているのか、そこはきちっと私としては問う必要があるという意味で、大臣としての答弁を求めたいと思います。

○細野国務大臣
 新しい原子力規制委員会が誕生すれば、定期検査中の原子力発電所の再稼働についても、また、稼働中の原発の継続についても、全てそこで判断されるということになります。
 したがって、先ほど大谷提出者の方から、バックフィットの件につきましては、政府の考え方も踏まえて御発言をいただきましたけれども、そういったものが適用されるということに制度上ももちろんなるわけです。
 ですから、そこも含めて全ては新しい組織の専門家の判断ということになりますので、私から、こうするべきだというようなことについての発言をする立場にはない。まさに独立した委員会ができるわけですから、そこでしっかりやっていただくということだと思います。

○服部議員
 ですから、私の質問のもう一つ、ストレステストを導入した七月十一日の三大臣文書及び四大臣での政治判断の枠組み、これはもう失効するという理解でよろしいですね。

○細野国務大臣
 ストレステストは行政指導でやりました。当時の状況からすると、そのままストレステストを課していなければ秋から順番に再稼働していましたので、そういう状況はやはり日本社会においては認めがたいだろうということで、菅総理の判断で昨年の夏、ストレステストが導入されたわけですね。
 その扱いをどうするかも含めて、それは新しい規制組織で考えるものというふうに思います。

○服部議員
 法案趣旨説明者によると政治の判断だと言われるし、ちょっとそこがはっきりしないなと思いますけれども、いずれにしてもこれは、我々とすればやはり、当然失効して、そして新たな規制組織の中でやるものだというふうに今は理解をさせていただきたいと思います。
 それから、四十年の問題については、先ほどから議論になっていますけれども、新聞報道では、骨抜きではないかというような報道も出ております。
 先ほどの田中委員の答弁ですと、そういうことではないんだということなんですけれども、確かに、四十年たっていないのに脆性遷移温度が非常に高くなっていると懸念される炉もあるという中で、これは厳格化もあり得る、例えば、四十年を短縮したり例外的な延長規定を削除したりすることもあり得る、そういう趣旨だということでよろしいんでしょうか。再確認でお願いします。

○大谷(信)委員
 はい、そういうことです。

○服部議員
 ただ、法文をそのまま読む限りにおいては、本当にそのまま信用していいのかなという、そこは実は我が党もこの法案の賛否に非常に迷うといいますか、懸念をしているところでございます。
 そうしますと、細野大臣も、この四十年制限というのは非常に政府提出案の肝だということをおっしゃってこられたわけですが、先日、美浜二号について、経年劣化の評価について延長もあり得るというような、これは駆け込みで審査したんじゃないかというふうに言われるわけですけれども、この美浜も含めて、今回、この新たな規制委員会で四十年を延ばすか延ばさないか、これは改めて議論をされるという理解でよろしいんでしょうか。

○細野国務大臣
 御指摘のとおりであります。
 美浜の二号機で行われたのは高経年化の技術評価ということですので、これは、動いていなくても、プールの中には燃料がありますから、安全についてやはり確認をすべきだということでなされたものです。ですから、再稼働について判断をしたものでは全くありません。
 この美浜の二号機も含めて、この法律に基づいて新しい規制組織でしっかりとやっていただくということであります。

○服部議員
 それでは、バックフィットの運用ルールについて、先日、私の本会議での質問に対して、個々の対策に応じた適切なルールを設定することが必要というふうに大臣が答弁をされております。
 その原則についてお聞きしたいんですけれども、例えば、新たな基準を適合するまでの猶予期間を仮に設けるとして、その間の運転は認めるのか、あるいはそうでなくて、一旦停止をして対応して、そして期限までにできないということになれば、許認可の取り消しだとか廃炉にするというふうなそういうやり方をされるのか、基本的なこの運用ルールの原則、これについてお尋ねをいたします。

○細野国務大臣
 そこも、一言で申し上げるならば、新しい規制組織の判断ということになろうかと思います。
 今、服部委員がおっしゃったようなやり方も確かにあると思うんです。ただ、結果的にそのことによって、例えば一定の期間、何年かかかるような対策を突貫作業でやられても、これも困るわけですよね。ですから、時間をかけて着実にやるべきものというような場合に、その猶予期間については稼働を認めるか認めないのか、それは一概には言えないですから、ケース・バイ・ケースの判断になろうかというふうに思います。
 ただ、はっきりしていることは、バックフィットで対応できないものとなったものについてはこれは運転しないということでありますから、この原則はしっかりと確立をしているということでございます。

○服部議員
 その点についても、今まで安全だと決めつけて曖昧な対応をとってきたということがこの間の事故にもつながっているわけですので、その点は、どういう具体的な適用をするか、これはぜひとも慎重に検討いただきたいと思います。
 それから人事の問題です。修正案に規制委員長あるいは委員の寄附制限が追加されたということは評価しますけれども、罷免の要件に寄附制限違反というのは含まれるのか。あるいは、委員長、委員の経歴制限についてはどのような認識をお持ちなのか。
 それから、二つの専門審査会の委員やその他の外部有識者についても、経歴制限あるいは利益相反排除、寄附情報の公開等について明確なルールが必要ではないかというふうに思いますけれども、その点について提出者にお尋ねいたします。

○大谷(信)委員
 委員長、また委員、それから外部の人も含めてですけれども、これは中立公正な立場で仕事をしていただくことはもうもちろんでございますし、そのためにいろいろなことを考えていきたいというふうに思っておりますが、一方、原子力事業者と全くかかわりない方だけの専門家ということも、これまた、一つ大事なところの視点が抜けてしまうというふうに考えております。
 そのため審査専門委員については、少なくとも、委員に就任できない場合は、個別の許認可等の審査に参加できない場合を明確にしておくとか、原子力事業者との関係について情報公開を徹底するとかなど含めて、利益相反しない厳密なルールをしっかりと検討、作成していきたいというふうに考えています。

○服部議員
 政府案の審査専門委員については厳格なルールが必要だということを大臣も御答弁されているわけですけれども、有識者についてのルール策定もお約束いただけるのではないかというふうに思っております。その点、ちょっとお尋ねいたします。
 それからさらに、中途採用者や技術参与などの非常勤職員の採用基準とか利益相反排除についても厳格なルールが必要だというふうに考えております。在籍出向はあり得ないというふうに答弁されているわけですけれども、これについてもルールを設けるということでいいのかどうか。
 いずれにしましても、有識者の部分も含めて中立的な人事監視の仕組みが必要だというふうに思いますけれども、これについてまとめて答弁をお願いしたいと思います。

○細野国務大臣
 多くの点を御指摘をされましたので、全体としてまず申し上げると、審査専門委員や技術参与も含めて、何らかの判断に影響を及ぼし得るそういう専門家が、疑念を持たれるということがあってはならないと思います。
 したがって、二つあると思っていまして、一つは、やはり一定の基準を設けてそれを採用していくということです。もう一つは、徹底した情報公開をしていくということだというふうに思います。
 もちろん、最大限、例えば電力会社からなどの影響力は排除するようなガイドラインを設けたいというふうに思いますが、先ほど大谷委員も言われたように、全ての電力会社の関係を断ち切ってしまった場合に、技術のわからない人だけ集まってもこれは意味がありませんので、そういった場合には、徹底した情報公開をすることによって、その事実も知っていただいた上で役割を担っていただくということになるのではないかと思います。
 その際も、個別の審査には、例えば電力会社から何らかの金銭の授受があったメンバーの場合には、その当該電力会社の許認可にはかかわらないなどの厳格な運用というのもあわせて必要だと考えております。

○服部議員
 原子力委員会で問題になりました非公式会合の禁止であるとか、あるいは、事業者等への情報照会等にかかわる明文のルールが必要ではないかというふうに思いますけれども、その点はどうでしょうか。

○細野国務大臣
 情報公開の徹底と透明性というのは、新しい組織にとって死活的に重要であるというふうに思っております。
 御指摘のような、実質的な議論が秘密裏に行われるような会合、そういったものはこれはあってはならないというふうに思っておりまして、委員会の会合の開催とその公開について一定のルールを設けることを検討してまいりたいというふうに思っております。
 また、事業者との接触ということについて、これもいろいろな疑いを持たれかねないというふうに思います。
 繰り返しになりますが、事業者と全く接触せずになかなかその本当のところの規制はできないという面がありますから、そういう必要な接触というのはあると思うんです。あると思うんですが、そういったものを例えば記録にしっかり残しておくとか、そういったことも含めて対応が必要ではないかと考えております。

○服部議員
 国民が大変な不信を持っている中でこの規制委員会がまさに発足しようとしているわけで、旧態依然の人が集まって本当に規制ができるのかと。この不信というのは、国民の中から払拭できていないと思うんですね。
 そういう意味で、いろいろきょう答弁いただいておりますけれども、そういう趣旨でしっかりとした規制機関としてやっていただきたいということを強く申し上げ、また、そういったことがない中で再稼働が強行されているということに改めて抗議を申し上げて、質問を終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。

○生方委員長
 次に、柿澤未途君。

○柿澤議員
 みんなの党の柿澤未途でございます。
 再び委員外発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 内閣提出の原子力規制庁法案、自公の原子力規制委員会法案、修正協議で一本化が図られ、新たな法案が提出をされました。きょう、採決も予定をされているわけであります。
 しかし、なぜこれほど急ぐのか。規制組織のあり方を含めた提言を行うこととなっている国会事故調の提言が今月中には出てくるわけです。黒川委員長をお呼びして話を聞いて、法案をつくればよいではありませんか。なぜ、国会事故調が結論を出す前に急いで法案を通そうとするのか。国会事故調の提言が出てしまうとよほど都合の悪いことでもあるのか、こういうふうにも勘ぐりたくなってしまいます。
 こうして急ぎ足に法案を成立させようとしている、こうした意図は何であるのか、お伺いをしたいと思います。

○田中(和)委員
 お答えをいたしたいと思います。
 私も先般、同趣旨の質問をこの場でいたした経過があります。三月十一日の、昨年の未曽有の大震災、それを受けて福島原発で大変な事故が起こったわけです。この世界に及ぶ影響や、国民の全ての人たちが大変な不安の中にある状況の中で、政治がどういうふうに動くかということは非常に重要なことであります。
 私たちは、本当は昨年の臨時国会ででもこの法案は審議されて成立を図るべきであった、このように思っておりました。
 そして、ことしの一月三十一日に政府案が国会に提出されたわけでございます。そして、その内容は、みんなの党の皆さんも指摘されておりますけれども、独立性に非常に欠けておる、こういうことでございまして、我々はそれから自民党、公明党で汗をかきまして、四月二十日に我々の議員立法案を国会に出しました。
 しかし、その時点でちょうど参議院での問責決議でございまして、国会の状況等を含めて今日になったという現実は、私は極めて遅過ぎるという認識の中でこの問題を取り組んでおるわけでございます。
 いずれにしましても、そういう中で私たちは今国民の期待にどう応えていくのか、この視点から、今回はいろいろなことはございます。議会に事故調が設けられて今まだ結論が出ていない状況もよく私たちは理解しております。ただ、今、この法律を、この国会の会期等々考えるときに、やっておかなければならない、この責任を国民に果たしていかなければならない、こういう認識に立って、三党で修正協議、長時間にわたって行ったわけでございますが、今日、皆様方に案を提出したということでございます。
 以上でございます。

○柿澤議員
 私は、国会事故調がこれから提言を出そうという、結果的にその直前です。この時期にこの法案を成立をさせてしまう、この一点だけでも、本法案には正当性が欠けているというふうに思います。国会事故調、全会一致で設置をした国会の意思の自己否定、こう言っても差し支えないと思います。
 その点からやはりこの法案には賛成することはできない、こういうことを申し上げておきたいと思います。
 法案の内容も、政府案と自公の対案を足して二で割って、重要なところで骨抜きが図られているのではないでしょうか。専門家でもない政府首脳が事故対応に無用かつ有害な介入をしてくるのを避けようという意図が自公案にはあったと思います。
 しかし、今回、修正案で、内閣総理大臣を議長、環境大臣を事務局長とする原子力防災会議を置くことになりました。原子力規制委員長はその原子力防災会議の副議長ですから、結局、内閣総理大臣の下に置かれている形です。これでは、事実上現在と変わらない。政治介入を許す余地ができてしまっているのではないでしょうか。
 仮に原子力防災会議が必要であるとしても、事故対応において原子力規制委員長を真に独立した存在であらしめるとするならば、原子力規制委員長に、少なくとも、事故対応中には、例えばこの原子力防災会議における拒否権を伴う優越的な地位を与える、こうしたことをやるべきではないかと思いますが、御見解をお尋ねいたします。

○田中(和)委員
 原子力防災会議は、あくまでも、平時における原子力防災を政府を挙げた体制で強化するためのものでございまして、内閣に設置をされます。
 しかし、今お話がありましたように、私ども自民党・公明党案は、三条委員会の組織ということで、徹底した独立性を尊重する組織でなければならない、こういうことに努めてまいりました。今回の我々の修正協議案もその趣旨から全く外れていない、こういう認識に立っています。
 といいますのは、総理も含めて政治的レベル、委員会以外の人たちが専門的な分野の発言や行動、指示をすることはできないわけでございまして、このことはしっかりと担保された制度になっておりますので、決して、議長が総理で、副議長が委員長だからということでは全くございません。
 議長であろうと副議長であろうと、その関係は上下関係ではございませんし、専門的な分野には、委員会あるいは規制庁側のことに対して一切干渉ができないということを明確に申し上げておきたいと思います。

○柿澤議員
 この点については、田中先生がそういう決意である、そういう読みであることは私もよくわかっています。
 しかし、現実には、事故発生時の総合的な施策の実施、こういうことが原子力防災会議に所掌事務としてつけ加えられている。こういう点を解釈をすれば、場合によっては、どこまでが専門的な知見を要する事項かということの解釈次第によっては、やはり、これは政治的な介入の余地が与えられる、こういうものになってしまっているんではないかと思うんです。
 もう一つ、ノーリターンルールについてですが、「原子力利用の推進に係る事務を所掌する行政組織への配置転換を認めない」、こういうことになっています。しかし、そもそも「原子力利用の推進に係る事務を所掌する行政組織」というのは、これはどの範囲なのか、省なのか局なのか部なのか課なのか、この点、お伺いをしたいと思います。
 もう一つ、ノーリターンルールに五年間の経過措置を設けたことで、実は、最も重要な立ち上がりの五年間、安全基準をつくり直して、そして体制の見直しをする、こうしたことを行う時期を事実上推進官庁からの出向者が取り仕切ることができる、そしてその人たちは、安全基準、大事なところをつくってまた推進官庁に戻っていく、こういうことができる余地が残されてしまったのではないかと思います。
 この点、私には骨抜きとしか思えませんが、御見解をお願いいたします。

○田中(和)委員
 国家行政組織法上、国の行政機関は、省、委員会及び庁を言いますけれども、「原子力利用の推進に係る事務を所掌する行政組織」とは、これらの機関が原子力利用の推進に係る事務を所掌する場合を言っておるわけでございます。例えば、警察庁とか防衛省などがそういう対象になるのではないかと考えております。
 そして、今お話がありました問題でございますけれども、五年間の間、ノーリターンを決めた上で、その間、特別な措置として、本人が能力がないとか、今後どうしても規制委員会、規制庁の仕事の中になじまないとか、そういう事情があったときに実は許可をするものでございまして、決して、政府側、政治側の人たちが新しい組織の中に入ってきて、自分たちに都合のいい制度やシステム、ルールをつくって、またそれが戻っていくというような、そういう悪意に満ちた、我々と全く違う、関係のないひどい状況でこの運営がされるということは、絶対にあってはなりませんし、そうさせてはならない。
 そして、委員の人たちも、そういうことをきちっと守って管理監督、指導ができる人たちを国会の中で選び出したい、このように思っております。

○柿澤議員
 御決意はよく理解できます。しかし、それならなおさら、なぜ五年の経過措置を設けたのか、こんな気もするところです。
 天下り規制もよくわかりません。「職務の執行の公正さに対する国民の疑惑又は不信を招くような再就職を規制する」、これはいかなる意味なんでしょうか。誰がそれを判断してストップをかけるんでしょうか。
 天下り根絶といった場合に対象となるのは、現政権においては、省庁のあっせんがあった場合のみであるはずです。さんざん議論をしてきました。そうでない再就職をどう規制しようというのか、お尋ねを申し上げたいと思います。

○田中(和)委員
 この規定を設けた趣旨というのは、原子力規制庁の職員が原子力事業者や原子力利用の推進官庁からの不当な影響を受けることがないようにするとともに、原子力安全規制に対する国民の信頼を確保することにあることは当然でございます。
 具体的には、特定の原子力施設の検査業務に専属的に従事していた者が、その原子力施設を保有する電力会社に再就職するようなことだとか、原子力規制庁発足後に退職を迎えた者が、原子力関連以外も含めた出身元官庁の関係団体や関係企業に再就職することなどを徹底的に規制する、こういうことを考えております。
 このような規制については、原子力規制委員会において内規が定められ、適切な運用が図られていくものだと考えております。
 なお、国家公務員法上、営利企業等への再就職について公表制度がございますので、そのもとに、不断の監視、国民の監視のもとに置かれる、このように認識をしております。
 以上でございます。

○柿澤議員
 御答弁をいただいた田中先生に今後それなりのポストについていただいてこの履行監視をしていただければ、間もなくそういう機会もめぐってくるでしょうから、ぜひ御期待を申し上げたい、こういうふうにも思います。
 規制委員会の人選についてですが、原子力村に無縁の専門家なんて、国内には皆無と言っていい状況ではありませんか。規制行政が電力事業者と癒着していて、安全検査も電力事業者におんぶにだっこ、それで幾ら組織の独立を言っても、結局これは何も変わらないと思うんです。根本的な安全文化の立て直しが求められていて、日本がそれをできるのか、世界が注目をしている。
 今回の法案も、NRCを初めとする海外の事例を参考にしているわけですから、この際、当面の期間、まさに国際標準に合った安全規制のあり方をやはり日本において実現していくために、この原子力規制に専門性と知見を持った外国人の起用を検討すべきではないかというふうに思います。
 そういう意味では、規制委員会の委員の人選、幹部の人選にもそうした方々に入ってきていただく、このことが必要なのではないかと思っておりますが、そうしたことについて御見解をお尋ね申し上げたいと思います。

○田中(和)委員
 私どもも、今の日本の状況を考えるときに、世界の知見、優秀な人材の頭脳というものをこれから取り入れていくべきだと、このように思って議論してまいりました。
 その中で、この組織、委員会並びに規制庁の組織というのは、やはり公務員なんですよね、考えてみれば。公務員ということになれば当然決まりがあるわけでございまして、外国人はその任に当たることができません。
 そこで、我々も知恵を絞りまして、いろいろと考えまして、国外の大学や研究機関等から専門的な知識や経験を有する者を積極的に登用するということを定めておりますし、もう一方、参与だとか顧問などの職として活用できるのではないかと、このように考えておりまして、ぎりぎり、そういう外国の皆さんの知恵も能力も、我々のこれから活動の中に、大切なこの委員会や組織の中に、私は使わせていただけるようなことができるのではないかと思っております。
 柿澤議員の御趣旨、よく承って、我々も提出者として重く受けとめておきたいと思います。

○柿澤議員
 細野環境大臣の御奮闘にも日ごろから敬意を表しているところでございます。立派な大臣だと私も思っておりますけれども、ぜひ田中環境大臣の誕生を心よりお待ちを申し上げて、質問は終わりたいと思います。
 以上です。

○生方委員長
 次に、松木けんこう君。

○松木議員
 新党大地・真民主の松木けんこうでございます。
 また委員外でこういう質疑をさせていただけること、皆さんに本当にありがとうと言いたいところでございます。
 今回、政府の案と、そして自民党と公明党の皆さんが一生懸命案を考えられた。そして三党で合意をされたということなんです。いいことだと私は思いますけれども、ただ、うちの党なんというのはわけあり集団と言われている党ですから、私たちぐらいは無視しても構わないけれども、しかし、ほかにも党がいっぱいあるわけですから、それぞれが民主党に近い人たち、そして自民、公明党と近い野党の人たちでも何でも結構なんですけれども、ちょっと工夫をされて、そういう人たちの意見も聞くようなそういう時間をちょっとでもつくれば、これはまただんご三兄弟みたいなことを言われなくて済むと私は思うんですよね。
 ぜひそこら辺は、今の消費税のことでも同じことをやっているわけですけれども、ちょっとの工夫をぜひこれから、またの機会で結構でございますので、ぜひしっかりしていただきたいなというふうに思います。
 そして今回は、ベストミックスということで、譲るところは譲り合って、そして主張するところは主張し合って新しい原子力規制庁のこの法案をつくられたということだというふうに思います。
 その中で、特に問題点だった、あるいは、やはり話し合ったからこういういいものができたというのはあると思うんですけれども、ずっと今質疑を聞いていまして一つ思ったのは、総理大臣の菅直人さんリスクですか、大したものですね、名前までついてリスクになっちゃうんですからね。とても私にはできないことでございますけれども、こういう話が随分ありました。
 しかし、どうなんでしょうね、まず自公の方々にちょっと聞きたいんですけれども、この委員長が全権を握っているということになるんですか。政治家には責任は余りとらせるようなところはないんですか、これは。そこら辺をちょっと教えていただきたい。

○吉野委員
 お答え申し上げます。
 松木先生の奥さんの御実家は福島大熊町でございまして、今避難をされております。ですから、福島の事情をよく御存じだと思います。
 まさにそこなんです。みんな、全て規制委員会が仕切るんだと思っているんですけれども、規制委員会と、もう事故ってますから原災本部、いわゆる総理大臣、ここが本当に一緒になって事故の対応に当たらねばならないんです。
 ですから、そこの専門的な部分、いわゆる物理現象、ここのところは専門家である規制委員会が行い、ここから、きちんとこうしなさい、ベントをしなさい、海水を入れなさいということの答えがあれば、それを受けて原災本部長である総理大臣は、自衛隊を使ったり消防を使ったり、いかに住民の避難をさせていくかという、ここに基本的な役割分担があろうかと思っています。
 ですから、どっちがどっちなんだということじゃなくて、本当に規制委員会と原災本部が一緒になって事故対応に当たっていかなければならないと思っております。
 以上です。

○松木議員
 この間の質問のときに細野さんが、しかし、政治家がやはり決断しなきゃならないことがオンサイトにおいてもあるんだというお話がありました。
 ここら辺、確かに、今回いた総理大臣には問題もあったでしょうし、こういう同じようなことは二度と起きないような気もしますけれども、しかし現実には起こっちゃったわけですけれども、私は、政治家が最終的にはいろいろな責任を負うということというのがやはりあった方がいいだろうというふうに思いますので、これから原子力規制庁というのは開いて、それから、物事というのは一〇〇%いいものというのはまだありませんね。ですから、どうですか、ちょっとやはりそこら辺を譲ったわけでしょう。
 ぜひまたこれからもそこら辺は、やはり政治家というのは最終責任をとるということを常に頭に入れながらやらなきゃいけないという点において、これで終わりじゃなくて、これからも、ぜひ与党、野党の中心的なところがやはり話し合いを続けていくのもよかろうかなというふうに思いますけれども、どうでしょうか。

○細野国務大臣
 いろいろと私にお気遣いをいただきまして、ありがとうございます。
 私は、今回の三党で合意をした案というのは、いろいろなバランスを考えた上で御判断をいただいたというふうに思っています。総理の指示権は残しながらも、技術的、専門的なことについては、これは指示権を発動できないようにする。そのことによって、そこはバランスがとれた部分があるというふうに思います。
 もう一つは、オフサイトについては、これは政府全体で取り組まないと、防災訓練なんかもそうですし、立地交付金なんかもそうなんですけれども、対応し切れませんので、そこについては、防災会議というのをつくっていただいたのが、私は、形としては非常にうまく機能するようにできるんじゃないかと思っています。
 問題は、先ほど吉野先生がおっしゃったとおり、では、この独立した三条委員会、環境省のもとに置かれるこの三条委員会と内閣府の防災というのをどううまく連携していくのかと。形は全く違う組織になっていますから、そこが最後の肝だろうと思うんです。
 私は、昨年の事故を経験して、オンサイトとオフサイトというのは、まさに一体的に機能しないと事故に対応できないということを身をもって体験をしました。ですから、そこのつなぎ役を環境大臣がやるというのが、恐らく、法案をつくっていただいた皆さんの趣旨もしっかりと踏まえて現実的な事故にも対応できるという、そういう体制なのではないかと考えております。

○松木議員
 かなりいいものができたということで、おめでとうございます。国民も安心する第一歩になるんではないかなというふうには思います。
 そこで、原子力というものを、将来、脱原発と言う人もいるし、やはり原発を使っていかなきゃならないと言う人もいるし、いろいろな方がいると思います。私も私なりの意見はありますけれども、それはおいておいて、脱原発だろうが、このまま原発をある程度使っていくだろうが、いずれにしてもやらなきゃならないことがあるんですね。
 それは何かというと、最終処理の問題です。これはどっちにしたって、今やめると言ったって、もういろいろなものがあるんですから、こういうものをやはりしっかりやっていかなきゃならないというふうに私は思います。
 であれば、どっちの方向に行くにしても、やはり、そういう技術者なり担っていただく方々を育てていかなければ絶対いけないんですね。これはやはりこれからも予算をしっかりつけてやっていくべきだというふうに私は思っておりますけれども、そこら辺は、もしよかったら細野さんから、御意見があったら。

○細野国務大臣
 御指摘いただいたとおりだと思います。
 原発の数が少なくなるというのは、これはもう政府の方針でもあるし現実でもあるというふうに思うんですが、使用済み燃料は残りますので、それにどう向き合っていくのかというのは、国家的な課題といっても言い過ぎではないというふうに思います。
 原子力委員会の小委員会の方でも、全量直接処分や再処理、また、この組み合わせも含めて三つの案を出しておりますが、どの案をとるにしても、最終処分の問題は出てくるわけです。ですから、そこにしっかりと向き合うことは、国家として絶対に欠かしてはならないと思います。そして、そのときに一番重要なのは、今、松木委員が言われたように、技術者をしっかり確保するということです。
 残念ながら、今、原子力というのは魅力がなかなかないと言われていて、専門家が集まっていません。このまま例えば十年たち、二十年たち、廃炉まで三十年から四十年、そして使用済み燃料ということになると、その先もこれは技術者を確保するのは、並大抵のことではありません。
 ですから、原子力の専門家というのも、これまでのような推進サイドの専門家ではなくて、むしろ、使用済み燃料の取り扱いとか、環境問題とか、安全とか、そういったことでしっかりと学べるような、産業のあり方自体も変えなきゃならないし、人材育成もやり方を変えなければならないのではないかと考えております。

○松木議員
 大変いい答弁だと思います。ぜひそういうふうにして頑張っていきましょう。
 給料も少し高くしてやらなきゃいけないかなと思いますよね。だって、みんなやりたくないんだから。やりたくないんだったら、そこでいい人材を本当に確保しようとしたら、やはり給料を上げなきゃだめだということもちょっと頭に入れておいてください。
 あとちょっと私ごとの話を、あと五分ありますので、お話しさせていただきます。
 さっき吉野先生からお話がありましたけれども、私の妻は大熊町というところの出身で、父と母も、そして家族も、全員大体大熊町に三月十一日もおりました。そして、残念ながらああいう事故が起きて避難をしたということでございまして、郡山高校の体育館でしばらく避難生活を余儀なくしておりました。
 私も、なるべく早く顔を見たいなと思って、その体育館にも行ってきました。大熊町の町民の皆さんが、同じ体育館でみんな一緒になって寝ていました。大変だなと思っていました。残念ながら、三日後にうちの母がその体育館で倒れました。そして、一年間入退院を繰り返して、やはり大熊に帰りたい、そういう言葉を残して、残念ながら先週亡くなりました。八十三歳ですから、それなりに人生もいただいた母親だったんじゃないかなというふうには思いますけれども、葬式をやったときに、私、非常に思ったことが一つあるんです。
 というのは、私の父は大熊町の町議会議員を三十年やっていました、町議会議長もやりましたし。ということは、私は今民主党でもなくなりましたけれども、要するにうちのおやじは自民党なんですよ、自民党だった。ですから、農協共済の組合長それから葉たばこの問題だとか、いろいろなありとあらゆる役職についていた、典型的な田舎の、しかし有力者というか、地域の人たちのお世話係みたいな雰囲気のおやじだったんですね。
 それで、葬式があった。しかし、葬式があっても誰もお参りには来ませんでした。それは松木君、嫌われていたんじゃないかなと言うかもしれない。そんなことはないんです。意外と好かれていたおやじだったと思うんですね。というのは、もう連絡がとれないんですよ、全然。確かに、福島の葉たばこの関係から花輪は来ていたんですけれども、九九%が私のものなんです。ほとんど連絡がとれない。そして、うちの母の本当に仲のいい人は町内にいるんです。やはり顔を見せなかった。もうわからない。
 そして、もう一つびっくりしたのは、親戚が集まったわけですよ。そうすると、おい、あいつどうしたんだ、いや、実は三カ月前に死んだんだよ、こんなのまでありました。要するに、もう地域が破壊されているんですよね、残念ながら。
 というのは、こういう大きな事故があったので、一年ぐらいはこれはしようがなかったかなというのもあります。しかし、もう一年数カ月たっている。消費税のことをみんなで話し合いするのもいいけれども、私はやはり、この原発のこういうことをいち早く解決してもらいたい。自分の家族のこともあるもので、随分私的なことをお願いするみたいで申しわけないところもありますけれども、本当に私はこれは大切なことだというふうに思います。ぜひこれからも、早くこれが済むように努力をしていただきたい。
 細野さん、あなたは若いし、吉野先生にしても私なんかも大体死んでいくんだから、あなたは将来総理大臣になるかもしれない。別にそれはよいしょしているんじゃない。これは、いい政治家になってもらうための本当にすごい経験を今していると僕は思う。ぜひこういう経験も生かしてこれからもっともっと立派な政治家になってもらいたいし、そして、この原発の問題、本当に早く解決をしていただきたいと思います。
 御所見があれば、もう時間が来ましたけれども。

○細野国務大臣
 お母様の件、お話を聞かせていただいて、本当に申しわけないという気持ちでいっぱいでございます。
 私もあの郡山の体育館へ行きましたけれども、大熊の方が本当に大勢おられて、本当に御不自由な生活を送っておられました。体調を壊された方もたくさんおられたんだろうと思いますので、心よりおわびを申し上げたいと思います。
 原発の事故への対応ということで今一番大事なのは、皆さんに、どこで生活をしていただくのか、そういう将来展望を示すことだというふうに思っています。もう一つは、やはり経済的な問題もありますから、賠償についてしっかりめどをつけることだというふうに思っております。
 私にとりましては、国政の課題はいろいろありますが、それが一番大事な課題だ、その思いで取り組んでまいりますので、ぜひ御指導をこれからもよろしくお願い申し上げます。

○松木議員
 時間が来ましたので、これで終わります。

○生方委員長
 以上で発言は終了いたしました。
 お諮りいたします。
 本起草案を委員会の成案と決定し、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

〔賛成者起立〕

○生方委員長
 起立多数。よって、そのように決しました。
 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○生方委員長
 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

○生方委員長
 次に、本法律案の提出に際しまして、近藤昭一君外五名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の共同提案による原子力規制委員会設置等に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。田中和徳君。

○田中(和)委員
 ただいま議題となりました原子力規制委員会設置等に関する件につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 趣旨の説明は、案文を朗読してかえさせていただきたいと存じます。

原子力規制委員会設置等に関する件(案)

  政府は、「原子力規制委員会設置法」を施行するに当たっては、次の事項に留意し、その運用について万全を期すべきである。

 一 本法律が、「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資すること」を目的としていることに鑑み、原子力規制行政に当たっては、推進側の論理に影響されることなく、国民の安全の確保を第一として行うこと。
 二 原子力規制庁の職員の人事については、本法律が原子力利用における安全の確保のための規制の独立性を確保する観点から、全ての職員に原子力利用の推進に係る事務を所掌する行政組織へのノーリターンルールを適用することとしていることに鑑み、法施行後五年以内にあっても、可能な限りその趣旨に沿った人事を行うこと。
 三 原子力安全規制の専門技術的事務を担う独立行政法人原子力安全基盤機構の統合は、一体的な原子力安全規制行政の確保に不可欠であることに鑑み、統合のための法制上の措置が可能な限り速やかに行えるよう、関係の行政機関が一体となって取り組むこと。また、その職員の引継ぎに当たっては、現在の給与水準の確保及び専門的な知識及び経験を要する職務と責任に応じ、資格等の取得の状況も考慮した給与の体系の整備その他の処遇の充実のための措置を行うこと。
 四 原子力安全規制の独立性を確保するためには、職員の原子力安全に関する能力等の向上を図ることが重要であることに鑑み、国際機関や国内外の大学や研究機関との人事交流や職員の研修制度の充実のための措置を行うこと。
 五 東京電力福島第一原子力発電所事故においては、緊急事態応急対策拠点施設、いわゆるオフサイトセンターが機能しなかった反省に鑑み、原子力防災対策に関し現地での実効性を担保するために、オフサイトセンターを原子力施設から適切に離れた場所に設置すること。また、その場所は、原子力施設近傍の原子力災害を受けない場所に第二オフサイトセンターを新設するのではなく、県庁等の関係者の参集が容易な交通手段が整い、情報収集や指示・命令の情報伝達を行う通信の確保が図りやすい場所を基本とすること。
 六 原子力災害において、避難が遅れた住民の安全の確保が図られるよう、放射線防護のための一時避難が行える施設を整備すること。
 七 今回の東京電力福島第一原子力発電所事故から、緊急時の防災は平時から防災に対する備えが重要であるとの教訓を得たことに鑑み、原子力防災会議と原子力規制委員会は平時から緊密な連携関係を構築し、防災体制の一体化を図ること。
 八 内閣に置かれる原子力防災会議及びその事務局長、事務局の在り方については、原子力災害を含む大規模災害への対処に当たる政府の組織の在り方についての抜本的な見直しの方向性を踏まえつつ、この法律の施行後三年以内に行われる原子力利用における安全の確保に係る事務を所掌する行政組織に関する検討と併せて、その見直しを行い、必要な措置を講ずること。
 九 地方公共団体、住民等が編成する地域の組織と、国、原子力事業者及び関係行政機関等との緊密な連携協力体制を整備するため、フランスにおける原子力透明化法に規定される地域情報委員会制度等、諸外国の事例等を踏まえつつ、望ましい法体系の在り方について検討し、必要な措置を速やかに講ずること。
 十 第十一条第四項の内部規範を定めるに当たっては、原子力規制委員会は、以下の各点の規定を設けること。

  1 委員長若しくは委員個人の研究又はその所属する研究室等に対する原子力事業者等からの寄附について、その在任中のみならず、その就任前直近三年間についても、寄附者及び寄附金額を公表する旨の規定
  2 委員長又は委員が、その在任中、原子力事業者等から寄附を受けてはならない旨の規定
  3 委員長又は委員に就任した者が研究を指導していた学生の原子力事業者への就職について、その原子力事業者名、事業者ごとの就職者数等を公表する規定

 十一 原子力規制委員会が行う原子力事故の原因の調査に関する事務については、原子力行政において過去に原子力事故やトラブルの隠蔽がされてきたことへの反省に立ち、事故等の規模にかかわらず、国民に対し、速やかに全ての情報を公開することを旨として行うこと。
 十二 国家公務員を新規に採用するに当たっては、原子力規制庁に十分な人材が配置されるよう、一定の採用枠を確保する等の配慮を行うこと。
  右決議する。

以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○生方委員長
 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

〔賛成者起立〕

○生方委員長
 起立多数。よって、本動議のとおり決議することに決しました。
 この際、ただいまの決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。細野国務大臣。

○細野国務大臣
 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、努力してまいる所存であります。
 この法律案の成立、さらには、その真摯な御議論に御協力をいただいた全ての皆さんに、最後に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

○生方委員長
 お諮りいたします。
 本決議の議長に対する報告及び関係各方面への参考送付等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○生方委員長
 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時十五分休憩
    午前十一時四十一分開議

○生方委員長
 休憩前に引き続き会議を開きます。
 本日付託になりました内閣提出、地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。細野国務大臣。

 地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件

〔本号末尾に掲載〕

○細野国務大臣
 地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 このたび国会において提出されました原子力規制委員会設置法案において原子力安全・保安院が廃止されることに伴い、現在、産業保安に関する業務を行う組織として原子力安全・保安院に設置されている産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署を経済産業省の地方機関として設置することについて、地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づく国会の御承認を求めようとするものであります。
 以上が、本件の提案理由説明及びその内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御承認くださいますようお願いいたします。

○生方委員長
 以上で趣旨の説明は終わりました。

○生方委員長
 本件につきましては、質疑、討論ともに申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 内閣提出、地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件について採決いたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

〔賛成者起立〕

○生方委員長
 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○生方委員長
 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

〔報告書は附録に掲載〕

○生方委員長
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

第180回 国会 衆議院 環境委員会

第180回 衆議院 環境委員会 第5号
平成24年6月8日(金)
午前九時開議

【原子力規制委員会設置法(自公案)の提案者としての答弁 】

【本日の会議に付した案件】
・原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)
・原子力安全調査委員会設置法案(内閣提出第一二号)
・地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)
・原子力規制委員会設置法案(塩崎恭久君外三名提出、衆法第一〇号)

〇生方委員長
 これより会議を開きます。
 規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件並びに塩崎恭久君外三名提出、原子力規制委員会設置法案の各案件を議題といたします。
 本日は、各案件審査のため、参考人として、獨協医科大学准教授木村真三君、福島原発事故独立検証委員会委員長北澤宏一君、法政大学大学院客員教授宮野廣君、認定NPO法人環境エネルギー政策研究所所長飯田哲也君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、参考人各位からそれぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
 それでは、まず木村参考人にお願いいたします。

〇木村参考人
 おはようございます。獨協医科大学の木村真三と申します。
 きょうは、実は皆さんにお配りしたレジュメの方にも出していますが、このお話をメーンにしてやっていきたいと思います。さらに、大変申しわけございません、誤字脱字が多々ありますことを、この場をおかりしておわび申し上げたいと思います。
 それでは始めたいと思います。
 まず、私が今回このような場所でお話をするということになりまして感じたのは、まず、原子力規制庁という法案作成の場ということですが、私自身の考えとしては、安全、安心という言葉自身が私は大嫌いです。安全というものは、技術革新、技術の進歩によって行われることですが、安心というのは全く受け手側の心理的なものである。全く違うものを一緒に言葉として使っていること自身がまず間違いであると私は思っております。
 これまで私自身が文部科学省政務三役勉強会や内閣官房の低線量被曝影響ワーキンググループ等でお話をして申し上げてきましたが、まず、規制庁というよりは、ウクライナとかロシア、アメリカ等もつくられております緊急事態省の方がより効果的で、その発動権限等についてもよく研究なされているのではないかと私は思っております。
 原子力発電自体を継続させるべきか、また、将来的に廃止していくべきかについて国民的な合意がなされていないまま、原子力の安全利用を前提とした組織を新設するのは適切でないと私は思っております。原子力を利用するのであれば、安全性について我々が徹底的に監視するという基本姿勢を持った組織をつくるべきであろうと私は思っております。
 原子力規制庁、原子力規制委員会が一時的な組織でないかと受けとめられると職員の士気を低減させるおそれがあり、恒久的な組織として存続させる用意が必要であると考えております。
 原子力規制委員会が独立性を持った三条委員会として設置されるとしても、その判断が環境省や内閣の政治的意図に左右されない姿勢を確保しなければならない。
 東海村臨界事故の際も、科学技術庁は、自身の管轄下であった核燃料取扱事業所に対する事実の隠蔽や、自身が管轄する事業所についての不都合な事実を隠蔽するために、調査を阻止しました。
 現に、私が当時の放射線医学総合研究所で現地に入りたいと申し上げたときに、まず企画の方からだめだと。所長の方にお願いをしていったときにも、本庁が許可をしないということで取り下げられてしまって、一週間初動がおくれてしまったということがあります。当時の政府は、緊急時の情報を集約するためのシステム構築は完成させたが、国民への情報公開への配慮は欠けていました。
 今回、この事故に対しても全くそのとおりで、このようなことがあったがために、国民の政治不信、行政不信につながったと考えております。
 チェルノブイリ原発事故調査を、ことしで十三年目、十二年間続けております。その経緯から申し上げましても、日本政府はチェルノブイリの教訓を全く生かしていないというふうに感じております。
 今回の福島原発事故の際、参考人が当時所属していた厚生労働省所轄の独立行政法人労働安全衛生総合研究所でも、調査の規制が入りました。これは、当時の研究所幹部、本省から出向職員として来た理事、また、企画調整部首席の保身からではないかというふうに考えております。
 さらに、事業仕分けの弊害から、科研費で私がチェルノブイリ研究をもとにこういうような震災等があったときに必ず生かせるというようなテーマとして出してきたものも、労働衛生ではないという理由により、廃止を震災二日前に研究所の役員会で決定され、廃止処分を受けました。
 このようなことから考えても、こういう国立研究機関やそれに準ずるような機関が一体何のために存続するのかということを、まず皆さん、考えていただきたいと思います。こんなものは実際につくったって仕方がないんです。こんな小役人が実際に自分たちの保身のためだけでやってしまうような、それが、本来持つべき、国民の意図するものと全くかけ離れているということを、皆さん、どうかこの席上で考えた上で、今後の審議に入っていただきたいと思っております。
 そのような気持ちから、今回の震災があった、事故が起きたといった瞬間に、ああ、やめなければならないということで、辞表を提出して、現地に三月十五日から入りました。
本来は三月十二日にもう既に入る予定でしたが、NHKのドキュメンタリーがどうしても撮りたいということで、一般公開という形では、今までの既存の考え方である論文や学会等の発表、こんなものはどうだっていいんです。これは、今緊急時における実態というものに対しては、すぐさまにでも国民にその情報を提供し適切な判断を促すというのが我々研究者の立場です。こういうことができないということで、考えたあげく、NHKの協力を得て現地に入りました。
 実際、このような状況になったのは、政治も含めて、誰のためのものなのかということを問題提起したいと思います。
 事故に関する情報を、前回の轍を踏まえて、ジェー・シー・オー事故、東海村臨界事故を踏まえて一元化したにもかかわらず、正しく事故状況を認識できず、間違った政治的判断を下すことになったということも、ここは問題と思います。
 原子力、放射能の専門家、例えば東海村臨界事故で陣頭指揮をとったような先生方を身近に置けば、被害の拡大が現在よりも数段軽減されるというふうに私は思っております。誰が まともな専門家なのか判断するのは極めて困難です。目立った人材には、問題を抱えている場合が非常に多くあります。事故時対応や安全対策の実績で選ぶというような方法が良案ではないかと考えております。
 首相官邸に指揮系統をまとめることは不可能であり、原子力安全委員会や原子力保安院と同じ機能だけではなく、事故を想定した事故対策班をあらかじめ設置しておくべきだと考えております。
 その際に重要なのは、原発や産業発展を重視せず、国民の生命を守ること、第一義にそのことを考えてそのような人材を集めてくることが重要であると考えております。
 その件に関して、ノーリターンルールではそのような人材が確保できるかということについて、皆さんもう少し考えていただきたいと思います。これは、民間も含めた上で、安全対策というものを徹底していかなければならないと私は思っております。
 また、行政に関しても、経済産業省が、今回、大飯原発の再稼働の推進というようなこともあり、ここに書かれています資料を皆さんお読みになっていただければいいと思います。
このようなことがあったり、文部科学省が、当時、SPEEDIが活用されていないということも含め、さらに、事故後のモニタリングポスト、私は、いわき市川前町志田名というところにおとといの夜から入り、きのうの午前中そこで仕事をして、さらに、二本松で仕事をして帰ってきました。このようなときに、全てモニタリングポストがあるんですが、そこは全て除染されているんです。ほとんど除染された上にモニタリングポストが立っているんです。数値があたかも低く見せられているんですが、現実問題、そこには二マイクロシーベルトがあるところでも〇・三マイクロぐらいの数値しか出ていない。
 このようなことが新聞報道で、全国紙で発表されてしまえば、福島の現実というものが、実は大したことないんだと国民に思わせてしまいがちです。ところが、福島県の地元紙などでは、挙げられた線量について事細かく書いておりますが、そのような数値は一切入っておりません。飯舘村にしても全く同じことが言えます。このようなことを、実際、文部科学省は一体どう考えているのかということを私は問いたいと思います。
 また、気象庁についても、SPEEDIが動かなかったときにはそのバックアップ体制として機能しなければならないのに、国研である気象研究所には箝口令がしかれていた。この事実は私自身が確認しております。このようなことからも、実際、機能はしていない。誰のため、自分たちの保身のためだけというようなこんなものは、潰してしまった方がいいと思います。
 また、その研究者が一番の問題です。研究者も論文至上主義というような形にとらわれてしまい、予算がいろいろな関係機関から配られるということで、それに迎合するような形で事故当時のマスコミに出られた方々はそう言っておられます。実際、そういう方々は、自分の研究費なんか、僕なんかは手弁当でやっているわけです。手弁当でやっているような人間でも、できる範囲でもやれることはいっぱいあるわけです。そのようなことを、実際、頭を使ってやっていないということが一番の問題だと思います。
 また、原子力工学の専門家が、放射線影響に対して、人体の研究が何たるかわかっていないのにあたかも知ったかのような話をしたり、また、放射線医学の専門家が放射線計測学や物理学的、化学的な要素を含んだ話を住民説明会等でして、住民の不信感を買ってしまう。このようなことが実際多く見受けられております。
 実際、私は、事故現場で今ホームステイしながら住み、暮らしていますが、そのようなところから非常に多くの言葉を聞いております。
 このようなことから、研究者自身というものに対してもきちんとした対応をせねばならない。マスコミ等で出てきた情報というのは一体何カ月後、これは本来この人たちに最初に出すべきでしょうというのをやっていない。このようなことを、実際、あたかも学者面して話をすること自身がおかしいと私は思っております。
 私の活動というものは、こちらの方にお渡ししていますが、これはほんの一部の抜粋です。最近有名になったのは二本松における汚染マンションの発見ですが、これも、私は当初からこれを予測した上で、個々の個人被曝線量をはかりながらきちんと見ていくというようなことで出しております。
 そのようなことで、御質問等があればこの後受けますので、よろしくお願いします。
 また、大飯原発の再稼働については、きちんとこの責任の所在を考えなければならない。東電、政府、また、野田首相においては全責任は自分自身でとると言われますが、一体何をするのか、どういったことを言っているのかというのが全く見えてこない。私は、これは国民の声を代弁して言っているつもりです。
 このようなことで私の意見陳述は終わりたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)

〇生方委員長
 木村参考人、ありがとうございました。
 次に、北澤参考人にお願いいたします。

〇北澤参考人
 北澤でございます。
 本日は、私は民間事故調の委員長をやらせていただいたということでこちらにお呼びいただいているかというふうに思いますけれども、規制庁との関係も考えて、二点お話ししたいと思います。
 こういう横長の資料を一枚だけ、皆さんのお手元にお配りしているかと思います。
 それで、私が申し上げたい二点は、一番目は、なぜあのような大きな事故になってしまったのかということの調査結果から学ぶことであります。第二は、なぜ事故対策ができていなかったのかということに関して、規制庁とのかかわりでどういうことが考えられるかということを申し上げたいというふうに思います。
 この民間事故調といいますのは、一番下に書きましたけれども、日本再建イニシアティブ財団というところが新たにできまして、そこは、原子力、電力関係の企業からは寄附金をもらわないということで設立された財団なんですけれども、そこが中立を保って、国会の事故調それから政府の事故調、東電の事故調とは独立に調査、検証するんだということで、私も協力させていただいたわけであります。
 それで、この事故調は全く権限がございませんでしたので、多くの方々から、そんな何の権限もない事故調に一体何が調べられるんだというふうに言われました。私もそう思っておりました。しかし、民主主義の国において民間の事故調がこのような大きな事故が起こったときには活動するというのは、民主主義国の責任でもあり特権でもあるというふうに言うことができるかと思います。
 スリーマイルアイランドの事故が起きた三十年前にアメリカでも民間の事故調もできて、二十年後にまだそれを検証する本が出版されるというような感じで、スリーマイルアイランドの事故、これは福島に比べればはるかに小さな事故でありましたけれども、非常に大きなショックを持って迎えられたわけであります。
 そういうことで、三月十一日の一周年までに私どもは報告書を出すことができました。それで、約三百人の方をヒアリングさせていただいて、三十人のワーキンググループ、これは若い人たちですけれども、彼らがヒアリングをして、その結果をまとめたわけであります。
 この民間事故調の報告書といいますのは二千部ほど刷らせていただきまして、報道陣の報道によってその日のうちにあっという間にあちこちから問い合わせがありまして、すぐにはけてしまったというようなことがありました。ただし、民間事故調にはお金もないということで、仕方なく、市販本としてその後十日間のうちに印刷してもらって、出すことにさせていただきました。本屋さんの名前をつけただけで、報告書を全くそのまま市販本として出させていただいて、アマゾン・ドットコムの調査では、それが二週間ぐらいのうちにベストセラーになったということであります。
 私どもの印象としましては、こういう報告書などというものを一般の方々が何万部も買ってくださるということは、日本の国民がいかに関心を持っているかということであったというふうに思っております。
 そういう中から、きょう、二点ちょっとお話しさせていただきたいんです。
 まず第一点は、なぜあのような大きな事故になってしまったのかということに関してでありますけれども、これは一言で申し上げれば、大量の放射能の源が過密に配置されていたということであります。つまり、量が多かったということと、過密配置であったというこの二点。ですから、この二点が今後も直らない限りにおいては、また大きな事故が起きる可能性を抱えているということであります。
 それで、過密に配置されていると事故対策の活動が阻害されるんですけれども、それは、瓦れきが飛ぶ距離、それから、放射能レベルがベントなんかをしたときに上がってしまう距離の中に第二の原子炉があったり第二の放射能の源が配置されていると、そこへ近づけなくなってしまう。
 それで、原子炉というのは、実は、人間がそこに手を加え続けないと暴れ出してしまう、そういう存在であったということであります。これは多くの方々が御存じないし、私自身も知りませんでした。つまり、ほっぽっておいたら原子炉というのは黙っていないということであります。
 それはどういうことかといいますと、燃料棒から大量の放射能が出てくる。その放射能というのは大きなエネルギーを持っている粒子のことでありますので、大きなそのエネルギーというのが自分自身を加熱してしまって、熱くなって溶けてしまう。そうすると、そこから放射能がさらに出てきてしまう。そういう問題であります。
 そのために冷やし続けなければならないわけですけれども、それが、人間が近づけなくなってしまうとできなくなってしまう。電源があれば自動的に遠隔操作できるわけであります けれども、それができなくなった、電源が全て喪失してしまったというのが今回の福島の事故でありました。
 それで、そのために事故が次々と拡大していくわけでありますけれども、余りにも過密に配置されていたということが、第一に我々が学ばなければならないことであるというふうに思います。
 実は、福島の事故というのは、安全か安全じゃないかという、ゼロか一では決してありません。ゼロに限りなく近い事故もあるし、一に限りなく近い事故といいますか、うんと大きな事故もあり得るわけでありまして、ゼロか一では決してない。
 ですから、今後も、安全か安全じゃないかという問いに関しては、答えることはできない問題であります。この程度に危険である、この程度に安全であるというそういう答え方になりますので、それともう一つ、なぜつくらなければならないのか、なぜ稼働させなければならないかということとのバランスで物事が決まっていく、そういう問題であるというわけであります。
 したがいまして、どれだけ大きな事故が起きるのかというこの源を少しでも少なくするというこの問題というのは、これから非常に大きな問題だと思います。
 なぜそんなに大量の放射能源が置かれているのかということなんですけれども、それは、使用済み核燃料をどこにも持っていけないという、この問題があるということであります。この問題がある限りは、原子炉は非常に危険な量の放射能を自分の建物の中に抱えておかなければならない、そういうことであります。これはよくトイレのないマンションであるというふうに原子炉が言われるのは、そういうことを表現しているというのがまず第一点であります。
 第二点。その事故が〇・一でとまるのか、〇・三までいっちゃうのか、〇・五までいくのかというのは、事故が起こり始めてからの対策がどれだけ準備されていたかということによって決まります。残念ながら今回は、電源が失われて、そこから後の対策は実はほとんど立てられていなかったということが、私たちの調査でもわかっております。
 どういうことかと考えてみますと、それは、電源が失われると、いろいろなことをマニュアルでやらなければ、手動でやらなければならないことになるわけであります。そうしますと、ふだん、自動で、遠隔操作でスイッチを押せばいろいろなことができるようになっているわけですけれども、それを全部手動でやらなければならない。では、一体、バルブとかそういったものがどこにあるのかというようなことがふだん訓練ができていないと、それは緊急時にはできないということになります。
 ですから、一番最初の日、それから翌日、翌々日、そのころの福島第一のテレビに出てくる様子を見ると、非常にもたもたしているふうに見えました。
 なぜかといいますと、やはりどうしていいかわからない。ではこうしようと言って、これは非常に泥縄的なことになるんですけれども、これをやってみる、やってみようと言って行くと、どこにあるかわからないというようなそういったことが続いていくわけであります。それで、探してそこにたどり着いてみると、もう放射能レベルが上がってしまっていて近づけない。
 そして次に、では電源車を、電池をたくさん積んだものを持ってこようというようなことを考えても、それをどうやってつないでいいかわからない。あるいは、消防ポンプがやってきても、どうやって水を入れたらいいかそこが考えていなかったというようなことで、いろいろなことを対策を立てるんですけれども、私たちの報告書ではこれを、泥縄的な対策がいろいろ行われたというような書き方になっておりますが、それは今申し上げたようなことを意味します。そういうことのために、もはや手おくれという状況になってしまうわけであります。
 それで、最初申し上げましたように、原子炉はとにかく燃料棒を冷やしていないと放射能が漏れるようにだんだんなっていってしまう、そういう問題でありました。ですから、なるべく早くいつ冷やせるかということが最も大事なことであったわけでありますけれども、それが今回できなかった。
 これが、そこに書きましたように、推進、規制両方の組織的な怠慢によってそれが起こっていた、しかもそこにはおごりがあったというふうに、ちょっと厳しい口調で我々の報告書に書かれております。
 このおごりとは何を意味するかということなんですけれども、実は、スリーマイルアイランドの事故が三十年前、チェルノブイリの事故が二十五年前にあったわけでありますけれども、海外はそれに非常に恐れをなして、いろいろな事故の対策というのを立てたわけであります。日本は、事故は起きないということのもとにその対策を立てなかった。日本は、原子力の技術は最もすぐれていて安全だというふうに、海外が対策を立てるときに、日本国内でそういうふうに言っていたということであります。
 これは一番下から二行目に書いてありますけれども、日本では安全神話というものができて、その安全神話によって、規制側及び推進側も自分たち自身の手を縛ることになってしまった。なぜかと申しますと、一〇〇%安全であると言い張ったわけであります、これが安全神話なんですけれども、そうしますと、一〇〇%安全なものにそれ以上の安全はない、そういう論理ができていってしまうわけであります。
 ほかの国は、安全性がまだ不十分だからということでいろいろな対策を立てて、遠くの方からぐるぐるとベントのバルブを回したり、そういったことができるようにいろいろな改造を加えていくわけでありますけれども、日本はやらなかった。なぜやらなかったか。一〇〇%安全だからというふうに言い張るからであります。そうすると、何の対策も立てられない。対策を立てようとすると、では一〇〇%安全じゃなかったんですねと言われてしまう、この問題であります。
 そのために、一〇〇%安全だと言えば言うほど安全対策はできなくなっていってしまうということがこの三十年間起こっていた、その実態があったということを民間事故調は強調いたしました。そして、日本の技術はすぐれているというふうに言うことによって、一〇〇%安全ということをサポートするような言い方になっていたわけであります。
 このことは、日本だけがなぜそんなガラパゴス化したようなそういう状況を迎えたのかということなんですけれども、これは、個々人が空気を読むという、そういう日本のこれはいい風土でもありますけれども、安全に対してもうからない規制をやらなければならないというこの原子力の特殊性、そういう分野においては、お互いに空気を読んで、規制側は推進側が困らないように、こういう形で今までの規制は行われていた。私たちはそれを、組織的な問題があったというふうに考えております。
 したがいまして、組織及び法律によってそういう空気を読む、そういう雰囲気のもとで規制が行われ安全対策が考えられるようなそういう原子力行政では、今後も同じことが発生するということを申し上げたいと思います。
 そうしますと、なぜ、空気を読む、そういう土壌ができてしまうのかというのが最後の問題になるわけでありますけれども、これは、先ほど木村先生のお話にも出てきましたけれども、ノーリターンルールとか、その辺のことが非常に大きな問題になる。
 特に、日本では永久雇用システムのようなものが定着しておりますから、自分がいつ、どこに帰っていくのかという帰巣本能みたいなものが、これは公務員を初めいろいろな人たちにあります。私たちにもあります。
 その帰巣本能、最後に戻っていく先というんですか、そういうものがあるために、そこに不都合になるようなことを、今自分が規制側にいてもやることができないというこの問題であります。
 そのことを、今後、規制の組織をつくり、法律をおつくりになられるときには、ノーリターンルールというのはそういうことから出てきてはいますけれども、では、どこの巣に帰っていったらいいのかということまで考えないと、このノーリターンルールというのは実効が出てこないということになるかというふうに思います。
 以上のことを申し上げまして、私のプレゼンテーションを終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。(拍手)

〇生方委員長
 北澤参考人、ありがとうございました。
 次に、宮野参考人にお願いいたします。

〇宮野参考人
 宮野でございます。
 私は、長い間、原子力標準委員会の委員長をやりまして、公正、公平、公開という原則のもとに、規格基準づくりに携わってまいりました。そういう立場から、現在思うことを話をさせていただきます。
 まず、きょうの課題であります安全規制の組織をどうするかということについて、一言まず申し上げさせていただきます。
 安全規制というのは、原子力安全の確保をするというのが規制でございます。そこには、もちろん、政治、政策といったものが入る余地はないと私は思っておりますし、原子力安全の確保は合理的な科学的判断によるものでなければならないというのは、これまでお二人の話の中でも当然のことであると、私もそういうふうに思います。
 安全を超えて安心を求めるという声はもちろんあるわけでございますが、それは、安全を確保した上で規制機関や事業者に信頼が生まれれば、当然、そこに安心が生まれてくるものであるというふうに思っているところでございまして、安全と安心は明確に分けて議論しなければならないというふうに考えているところでございます。
 さて、原子力の平和利用としての原子力発電を推進するかしないかという問題は、エネルギー政策の一環として国民が決定することでありまして、それはさまざまな選択肢があるというふうに私も理解しております。
 規制機関は、原子力発電のエネルギー政策上の位置づけがどういうふうになろうとも、その原子力安全を確保しなければならないというところは当然のことであります。
 もちろん、安全規制というのは、人との関係を考慮した上で、その原子力安全の確保という命題に対して純然たる技術的領域の問題であり、専門家が何者からの影響も受けずに、責任を持って取り組むことが必要であるというふうに考えています。
 こういうことは、IAEA、国際原子力機関の安全原則にも、規制機関の役割として独立性の重要性が指摘されておりまして、先進各国では、当然、独立性が保障されているのが現状であります。
 この規制機関の独立性というのは、通常の安全確保、常時の安全確保と異常時の安全確保と双方において確保されなければならないというところが当然であります。
常時の原子力安全の確保ということは、規制機関が組織として独立をして、責任を持って安全確保に努めるということは最も重要なことであるというふうに思っております。
その上で、原子力の特殊性から、地域住民との関係が重要な要素となると考えております。
 それは、原子炉設置者が、地域として必要な、もしくは対応できる意見をプラントの運用に取り入れて、地域住民とともに発電所の安全と地域の安全をつくり上げるということは、当然のことながら、やる姿勢が重要でありますが、それを規制機関が十分にバックアップしていくということも規制機関の重要な役割の一つであるというふうに考えているところであります。
 原子炉は五層の安全対策がとられています。これは深層防護と言われておりますが、第一層が異常の発生の防止、第二層が拡大の防止、第三層が影響の緩和であり、そして第四層が、事故が発生したときの対応、異常が発生したときの対応、さらに、バックアップとして第五層が防災というふうに言われております。それぞれの層においては、異なる考え方で見て安全を確保していくという対策がとられるわけでございます。
 安全を担うこの組織が、現場に人を配して、必要に応じて情報収集して、直接こういった各層に対応した対応をすぐに判断できるような手を打つことが重要であるというふうに考えておるわけでございまして、昨年の事故でも、当然皆さん御承知だったと思いますが、事故は待ってくれません。どんどん進みます。そういう意味で、すぐに技術的な判断ができるという体制が必要だということは当然であります。
 専門家の役割が重要であり、異常との闘いの中でその専門家が結論を出し、トップがリーダーシップを持って技術的な判断を行うことが重要であり、トップの役割は極めて重要なものであると言えるわけであります。昨年の事故でも明らかになりましたように、政治的な判断というのは、それによって対策がおくれるということはあってはならないということを私たちは感じたのではないかというふうに思います。
 事故を起こした原子炉の対応として、あくまでも、技術的に判断をしてすぐに対応できるようなそういう組織であることが重要であり、そこには政治の入る余地はないというふうに私は思っております。
 しかし、第五層の防災という視点で見た場合には、地方、住民、市町村、県そして国、そういった住民の避難、退避ということは当然必要でありますし、事故の対応においても事業者が十分にできるわけではない。必要な資源を送らなければいけないということに対する支援は、国として最も重要な役割であり、それをできるのは首相である、総理大臣であるというふうに思っております。
 そういう意味では、今回の福島の事故では、多くの組織が関与しておりました。その中で、役割分担をきちんとやることが重要だということを私たちは学んだのではないかというふうに思っております。そこで組織が技術的な問題と住民退避の問題をきちんと分けて迅速に対応することが必要であるということが最も重要な事故時の対応であるというふうに思っています。
 このように、異常時にはオフサイトの対応は総理大臣が、そして、オンサイトの対応は規制組織の長が行うということで、国の機関の役割を明確にして、国全体として迅速かつ的確な判断、対応ができるようになるのではないかということでございます。
 原子力安全の確保ということについて、航空機の歴史を見てみると、同様に多くの事故があったというふうに私たちも思っております。しかし、それを克服してきたのは、航空機の専門家が情熱を持って対策をとってきたからだ、規制をしてきたからだというふうに思っています。同様に、原子力の安全を担うのは、原子力の安全に情熱を持った専門家だというふうに思います。この専門家以上に原子力の安全を担う人たちはいないと私は確信をしております。
 そういう人たちが原子力の安全を担うということが必要でありますし、そしてまた、昨年の事故を反省して、その反省の中から、何をすべきかということをきちんと決めていくことが大切なことではないかと私は思います。
 これまで、原子力発電の、動かすという責任から安全とは何かという話を申し上げました。
 一方で、安全確保のためには、とめるという判断をする勇気と責任を持つことが必要であります。そこにおいても、そこに政治的な判断もしくは経営的な判断があってはいけません。そういう意味で、科学的な、合理的な判断を行えるような組織が必要であるというふうに言えるわけであります。
 原子力推進の政党や、もしくは反対の政党が政権をとることがあると思います。そういった場合でも、原子力の安全を担う規制機関の役割というのは変わりません。淡々と原子力安全を担っていく、そういう姿勢が必要であるということであります。
 そのためには、組織全体がそういう動きをするためには、組織全体の長は、そういう意識、そういう見識を持った人がなるべきである、私はそういうふうに思うところであります。
動かす責任と、それから、とめる勇気を持った決断ということを申し上げました。このように、原子力の安全というのは、合理的、科学的な判断のもとに、動かすことととめることをきちんと判断できる組織であり、組織の長が必要であるというふうに私は確信するところであります。
 これは私の主題でございますが、昨日、原子力学会の声明を出しましたということで、私たちがこれまでを反省して、こういう組織であるべきだというのをニュースに投げております。原子力学会のホームページでもごらんいただけると思いますが、原子力学会が安全規制に係る国会審議に向けての提言というのをお出ししました。ぜひごらんいただきたいというふうに思います。
 きょうは詳しくは御紹介できませんが、四十年の寿命問題は、これも、技術的な判断、科学的な判断を行うべきだというふうに申し上げております。
 そして、私がもう一つ申し上げたいところは、人材の育成だというふうに思います。規制組織は、人材を固定してそこに置くんだということに対応して、いかに人材を育成するかということをよく考えなければいけないというふうに思います。人材の硬直化を防ぐためには何をすべきかということであります。
 組織の一元化ということでありまして、原子力の組織は、原子炉の安全だけではなく、セキュリティーの問題、それから核不拡散、スリーSと言われておりますが、そういったものを一元化することと、それの研究開発もあわせてこういう組織でやるということが私は必要ではないかと。それを行うことで、人材が研究開発にしばらく籍を置くことで広く世界を見ることができ、それが安全規制を行う糧となるというふうに思うところでありまして、他の部署との交流をなくすことでは、人材はそれだけでは育ちません。それをなくしたときには、どういうふうにして人材を育てるかということが最も重要な課題になるかというふうに思っております。
 ぜひそういう組織にしていただきたいと思うところであります。
 さて、最後に、IAEAの安全原則では、公衆それから利害関係者の意見を求めることというのが規制機関に求められているところでありますし、それから、数年前にIAEAが保安院を監査したときに言われたのは、役所の職員と原子炉設置者との間の良好な相互関係、信頼構築を推進すべきだというふうに指摘をされています。
 私が日ごろから思っているところは、現場のことは現場の人たちはよく知っております。その責任者は責任を持って安全を確保しようと努力しております。しかし、今指摘ありましたように、規制機関と現場が対峙しているのが今の現状ではないかと私は危惧しております。憂えております。
 そういう意味で、原子力事業者は、胸襟を開いて、現場の情報を規制の人たちに公開、それから一般の人たちにも広く公開をすることが必要ですし、その情報をもって規制機関は運転をしている現場に対してよくサービスを行う、適切な対応を行う、支援を行うということが必要だというふうに思っておりまして、お互いに良好な関係を築くことが最も重要な安全確保の道であるというふうに思います。
 ただし、監視という意味では極めて厳しい目が必要だということで、世界は、そういう厳しい目で規制を行い、良好な関係を築いているというのが現実であります。
 そういうことで、ぜひ信頼関係を築くような組織にしていただきたいというのが私の最後の願いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 どうもありがとうございました。(拍手)

〇生方委員長
 宮野参考人、ありがとうございました。
 次に、飯田参考人にお願いいたします。

〇飯田参考人
 認定NPO法人環境エネルギー政策研究所の飯田哲也と申します。よろしくお願いします。
 お手元に二枚物のレジュメを用意しましたので、大体それに沿ってお話をしたいと思います。
 その前に、私は、もともと神戸製鋼で、放射性廃棄物、特に使用済み核燃料の輸送、貯蔵処分の設計、研究、開発、製造にかかわって、安全解析、安全許認可、その後、電力中央研究所に行って原子力安全委員会の事務局の仕事と電気事業連合会の裏仕事をして、いわゆる原子力村という名づけ親として知られています。
 しかも、全く偶然にも、私が原子力村時代に最後にやった仕事が、福島第一原発に今もある乾式貯蔵施設、キャスク貯蔵、そこにもかかわって、例えば、日本の安全規制の制度設計というか基準づくりの実務がどうあったのか、もう二十年も前ですから今は多少は改善しているかもしれませんが、そして、許認可の現場は一体どうあるのか、あるいは物づくりの現場がどうあるのかという、私は徹底的にリアリティーにこだわってきておりまして、そういった観点からすると、これまでの議事録とかを拝見しても、なかなか宙に浮いた感覚がありまして、あれだけの事故を起こした国で実質的に改善をしないと、今ここで改善しないと一体いつ改善できるのかということを、ぜひ国会議員の皆さんには覚悟を込めてしっかりやっていただきたいと思うんですね。
 それで、サブタイトルとしては、形骸化、偽装された安全性から実質的、実効的な安全性をしっかり担保するということが必要だと思います。
 まず、そういう観点から申し上げると、今、この原子力規制庁の議論が並行して進んでいますが、今事実として進んでいる、現実として進んでいる矛盾と、これからでき上がっていく規制庁なり安全規制体制のギャップをどう埋めるのか。魔法のように安全規制組織ができるとは思えないわけですね。
 まず、再稼働問題です。
 私、同時に大阪府市統合本部の特別顧問をしておりますが、ここの中で、私も一応原子力の専門家の片割れですが、各電力会社の原子力のアドバイザリーをしている佐藤特別参与と一緒に体系的な分析をして、大飯三、四号を初めとするあのストレステストの、極めて限定的な状況で安全性はどう考えても担保されていない。少なくとも、福島の事故を踏まえた安全性は担保されていないです。
 それを、先日も議事録を拝見すると、細野大臣は、あるいは四大臣は、安全性を確認したと強弁される。これは明らかにうそですよ。しかも、専門家が安全ではないと言っているものを政治家が安全だと言うのは、これは政治の介入ですね。何でこんなことが今まかり通っているんですか。おかしいじゃないですか。
 それで、その政治のもとでできる原子力規制庁がまともなものになるとは思えないわけです。
 その結果として、国民は非常にリーズナブルですから、昨年の秋は、即時脱原発よりは、いつかはなくなってほしいという人が八割だったわけですが、もう今となっては再稼働反対が圧倒的多数になっているのは、これは、安全性の問題はこれで完全に信頼を喪失しているという問題だと思う。これは完全に政治の失敗だと私は思います。
 この現実と、これからでき上がっていく原子力規制庁とそして規制体系というものは必ずつながっていますので、この問題をきっちり筋を通しながら、並行して法案の議論も必要だと思います。
 同時に、原子力委員会の秘密会議の問題です。何か私の名前もうわさされていたと報道されていましたが、これは私も原子力村にいたときから常態化していて、それは当然だと思うんです。しかも、事務局は前々からみんな知っていました。電力会社や原子力の事業者の方々が出向で、私自身も出向で、しかも原子力安全規制の仕事をやっていた経験もありますから。そういう、ある種ずぶずぶの関係なわけですね。そういった組織が、原子力委員会という名のもとに、結局、規範性を欠いて今もなお運営されているといったこともやはりしっかりと見ていかないといけないだろうと思う。
 そして、昨今報道されている美浜原発の駆け込みで四十年超えですね。四十年超えは例外だというような話が駆け込みのような形で行われる。これはもう明らかに政治の不作為だと思います。
 確かに、形式的には、今、現行法でやるから認められる、あるいは、新しい法案ができても、それは例外ということできちっとやったら認められるかもしれません。
 しかし、あれだけの事故を起こした国が、抜け駆けのような形で、しかも、これは安全規制の失敗でもありますから、冒頭のストレステストも含めて今進めている人たちは、ある意味、手が汚れている人たちですね。そういったものに対して政治がブレーキをかけないと、この国のモラルはどこまで落ちていくんだと。これは本当に世界に対して恥ずかしい状況だと私は思います。
 そして、福島第一原発の教訓を一体どう学ぶんだ。これは、北澤先生が立派な報告書をつくられているので余り詳しく申し上げませんが、去年の秋にスイスの原子力規制庁、きょう添付資料で、北海道大学の吉田先生が翻訳をされたサマリーのところだけですが、膨大な分析をされて、そこからスイスの原子力規制庁は学ばないといけないことをされています。
 その中で、これも北澤先生が指摘されていましたが、特に組織的な問題が非常に大きい。学習ができない組織、あるいは学習を阻害する。保安院が経産省に依存をしている、あるいは意思決定が非常に不透明である。これは今も非常に不透明ですね。なぜ美浜が進むのか、なぜ再稼働が進むのか極めて不透明で、裏側のことが進んでいる。もろもろ、あとはちょっと省略しますが、そして原子力村問題も指摘されている。
 そして、北澤先生の民間事故調の報告は出ていますが、政府の事故調の最終報告、そして国会の事故調、皆さん自身がつくられた事故調の報告が出ていないのに、そこから学んでつくるべき規制庁や原子力安全規制体制の法案がなぜ先に進むのか。これも明らかに政治の不作為というか、おかしいと思われないんでしょうかというふうに私は思う。
 これは、別の都合でほかのことが進む。これはまさに再稼働問題と一緒ですね。安全性をないがしろにしてほかの都合で物事が進むと、結局は安全神話にまた舞い戻りしているのではないかというふうに思います。
 そして、私自身がいた原子力村の問題、これは本当に徹底的に、きちんと社会科学的にメスを入れる必要があると思うんです。
 一人一人は、ほとんどの方は極めて誠実で、きちんとした技術者の方が多いわけです。しかしながら、これが、かつての旧日本軍のときの陸軍、海軍の問題と同じように、全体として膨大なある種の利益集団となっていくと、その誠実な方は押し黙り、ゆがんだ言論が前に出てくるといったことで、日本の安全性は極めてないがしろにされてきた。特に上に行けば行くほど、腹芸と寝わざで、きちんとした論理的なことをおっしゃらない。そうすると、下の者はその腹を読みながら、結局、情緒的コネクション、裏の仕事でしか物事ができなくなる。そして異論は、あの人はちょっとおかしいよねという形でだんだん遠ざけられて、実質的な議論はどんどん表舞台でされなくなっていく。いわゆる空気の支配ですね。
 今回も、例えばノーリターンルールとかもありますが、形式的、形骸的なルールをつくることによって実質的なところが見逃されていく。どんな形式、ルールをつくっても必ず実質というのは中を抜いてきますから、実質をどういうふうに埋めていくのかということに知恵を尽くす必要があると思います。
 それで、幾つか論点が挙がっていると思いますが、例えば専門性の確保。
 これは、組織的な学習能力をいかに高めていくか。これまでの閉鎖的な組織文化を、いかに外部、特に国内外、そして批判的な人も含めたオープンな組織風土をどうつくれるか。一人一人が非常にモチベーションが高く、士気が高く、好奇心旺盛な学習文化をつくる。
 そのためには、自立した個と国際的なネットワークに一人一人が結ばれていて、その人がやはり固有名詞で、きょう例えば木村先生とか北澤先生、宮野先生ですね、固有名詞で勝負をすると、世界に吹きさらされるので、恥ずかしいことができなくなるんですね。
 これは、ノーリターンルールとか、私はそういうことではないと思うんです。一人一人が誇りを持った仕事ができる環境をどうつくるのかということ、その実質を問わなきゃいけないと思う。
 私がいたスウェーデンの例ですと、まずはトップの人、本当に尊敬できる指揮官、専門性と人格的独立性をいかに確保する、そういう人を据えて、その人のもとで、ここにあるような専門性と人格、社会性、戦略性、機能性、よくある、前回も調達価格委員会等で、国会同意人事であれば何でもいいわけではなくて、いつの間にか決まってしまうような非常に不思議な人事が出てくるわけですが、そうではなくて、本当に人格的にこの人なら、その組織、日本の原子力安全規制を守れる、そういう人をきっちりと担保する、新しいトップとガバナンス体制をつくる必要があると思います。
 それから、日本全体のやはり原子力技術の安全技術の底上げが必要で、これは一例ですけれども、私が二十年前から指摘している旧告示五〇一号問題とか、これはちょっと専門的になるのであれですけれども、昔は電気事業法の下にぶら下がっていた告示五〇一号というのは、これは、かつてASMEの、いわゆるアメリカで原子力機器をつくる機器基準は、そのまま横文字を縦文字にしたものが電気事業法の下にぶら下がっていたのが、今は機械学会の、一応形式的にはASMEのまねごとのようになっていますが、今、実態はいまだにASMEの横文字を縦文字にしたものでしかなくて、やはり、オープンな文化で実質的な技術基準をつくり上げていくような組織風土、これは法律の問題ではなくて、皆さんの問題ではなくて、民間というかアカデミアの話だとは思いますが、全体を底上げしていく。
 しかしながら、これはやはり原子力村のところにメスを入れていくような規制庁のあり方が、範を垂れるという意味では、関係をしてくるのではないかと思います。
 それから危機管理体制については、これも、やはり実態や能力を伴わない形式的体制をやめて、例えば総理の本部長が本当にいいのかどうか。これは、あの震災直前の九月一日の防災訓練で当時の菅首相がSPEEDIということを命令しておられるわけですが、実際に起きたときに、御本人を含めてどなたもSPEEDIのことは存じなかったという、いわば、台本を読み上げるような学芸会的あるいはセレモニー的なことは、いいかげんもうやめた方がいいんではないかというふうに思います。
 そういう意味では、政治がとるべき責任と、専門家、いわゆる指揮官がとるべき責任をしっかり仕分けをして、政治家は任命責任と結果責任をとる、指揮官にやはりしっかりとした専門性の方を置くというような、そこらあたりのきちんとした仕分けが必要だと思います。
 そういう意味でいうと、この国の全体のモラルとしてやはり私が一番問題だと思うのは、もう一年三カ月も経過をして、政治も、行政も、そして事故を起こした当事者の東電も、誰一人として責任をとっていないですね。これは、もちろん民事、刑事のことを言っているのではなくて、道義的な結果責任です。
 これはなぜなのか。これは、将来世代に対しても、今の現世代に対しても、世界に対しても本当に恥ずかしいことですね。なぜ誰もみずから辞任をし、あるいは辞任を命じないのか。これは本当に恥ずかしいことだと思います。
 その他のちょっと細かい論点はつぶして、論点に入っていない最後のところですね。
 私は原子力委員会は廃止すべきだと思います。これはそもそも機能としてもう必要ない。そしてもう一つは、今回の秘密会議の問題もあります。モラルが極めて低下をしている。今回の規制庁にあわせて、実は原子力委員会だけではなくて、文科省にぶら下がっているさまざまな、今度、原子力村が縦割りになってしまうのをしっかりと統合するという意味でも、この原子力委員会の廃止というのは極めて象徴的になる。
 もう一つは再稼働問題。電気が足りる足りないという話になっていますが、結局はそうではない。本当の問題は、電力会社の経営問題であり、そして、その先は使用済み燃料問題なわけです。そこをしっかり表に出した円卓会議のようなものをしっかりやらないと、この大飯三、四号で国民の反発をますます招いても、その先、問題はもっと大きくなる一方ですから、もうちょっと大きな問題解決の場をつくった方がいいのではないかというふうに思います。
 どうもありがとうございました。(拍手)

〇生方委員長
 飯田参考人、ありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

〇生方委員長
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉川政重君。

〇吉川委員
 おはようございます。民主党の吉川政重でございます。
 参考人の先生方には、本日は、大変お忙しい中、わざわざこの委員会にお出ましをいただきまして、また、ただいまは、それぞれの専門のお立場から貴重な御意見を賜りましたことを、改めて御礼を申し上げます。本当にありがとうございます。
 さて、昨年の福島第一原発のこの事故は、我が国で初めて、原子炉の炉心融解、あるいは水素爆発という、極めて深刻な事態となりました。この事故によって、我が国のこれまでの原子力行政あるいは安全行政について、国内外の信頼、これは大きく損なわれてございます。
 こうした中で、我が国の原子力安全対策、これを根本的に見直すことが不可避となり、従来の原子力安全・保安院の原子力規制部門を経済産業省から分離して、いわゆる原子力の規制と利用の分離を徹底して原子力の安全確保に関する事務の一元化を図るなど、関係組織の再編、これを行うために、このたび立法措置をとらせていただくということになりました。
このことについて、既に、政府・与党案とそれから自民・公明案の二つの法案が提案をされておりまして、この環境委員会でも審議がスタートしております。
 その中で、与野党の協議も議論も深まってまいりまして、議論は進んでおるんですけれども、しかしその一方で、なお意見の隔たる項目もございまして、これらの点について、特にきょう御出席の専門家の先生方の御意見をお聞かせいただきたいというふうに思っております。

〔委員長退席、川越委員長代理着席〕

 それで、今、政府・与党案とそれから自民・公明案、この大きな違いは、組織のあり方、形ですね、これがまず決定的に違っております。
 政府・与党案は、環境省の外局に原子力規制庁という部署をつくりまして、従来の原子力安全・保安院の原子力安全規制部門を経産省から分離して、あるいは、従来、文科省、経済産業省あるいは国土交通省が所掌しておりました原子力安全規制に関する事務も一元化して、原子力安全の確保の任務を環境省の任務にするというものであります。
 それに対して自民・公明案は、同じく環境省の外局に組織をつくるということについては共通しておりますけれども、国家行政組織法第三条に基づく原子力規制委員会、これを設置してこの任務に当たらせようというものでございます。
 政府案は、いわゆる一人制の原子力安全規制庁長官という役職をつくって、それに任を当たらせる。それに対して自公案は、原子力規制委員会という合議制の委員会をつくってこれに当たらせるという、そういうところが大きく異なっているところであります。
 それで、この自公案をベースに考えるとするならば、委員会というのは、世の中には委員会という名前の組織はたくさんございますけれども、この国家行政組織法の三条で言う委員会というのは、これは普通の委員会ではありません。今、日本に六つしかないんですね。これは行政庁であります。
 行政庁というのは、国家の意思を決定して、これを外部に表示する権限を有する行政機関が行政庁であります。
 これには二種類ありまして、一つは独任制の行政庁、つまり大臣とか長官であります。もう一つは合議制の行政庁であり、これが、いわゆる国家行政組織法で言う第三条委員会であります。今回、自公案で提案されているのは、このまさに第三条の行政委員会を設置するということであります。
 この行政委員会を設置されるということの目的といいますかその意図というのは、当然、独立性というところを強化するというところがその意図があろうというふうに思うところであります。
 そうしたら、政府の役割との関係はどうなのかということで、いろいろとお話を伺っておりますと、原発の敷地内、いわゆるオンサイトにおける原子炉事故等の収束のための専門的判断についてはこの規制委員会が責任を担う、それに対して敷地外、いわゆるオフサイトの住民避難などの対応については政府が責任を負うということで、役割分担をされるというそういうたてつけになってございます。
 そもそも、この三条委員会に権限を担わせようとする最大の論拠は、より高いレベルの独立性が確保されるというのは今申し上げたとおりであります。そこには、政治の関与を極力排除しようという意図があるわけであります。
 確かに、今回の福島原発事故に際しまして、原子力の専門家ではない当時の菅総理あるいは官邸サイドがオンサイトに過度に介入したことが現場に混乱を引き起こしたとの事故検証報告も出されており、この点は大きな課題であろうと私も考えております。
 しかしその一方で、机の上ではこの委員会と政府の役割分担、これは分けられるとしても、緊急時や災害時のときにこのような線引きが果たして現場でできるのか、あるいは、専門的な観点からのみ全てを判断、決定することが果たして可能なのか。例えば緊急時の総理の指示権の確保は本当に必要ないのか、あるいは責任の所在が明確になるのか。委員会が所掌するとすれば、当然、合議制でありますから、一人の長官とか大臣という責任の所在というのは、これは明確にならないということも指摘をされております。
 この点について、先ほど何人かの先生からは組織のあり方についての明確なお答えもあったと思うんですけれども、原子力規制委員会のあり方、この三条委員会という合議制の行政庁に行わせるべきなのか、それとも独任制、長官や大臣という責任者を据えて、その組織でこの事務を行わせるのがいいのか、この点についての先生方の御所見をまずお伺いをしたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

〔川越委員長代理退席、委員長着席〕

〇木村参考人
 質問にお答えしたいと思います。
 私自身の考えでは、合議制というのは一番理想的ではありますが、緊急事態においては、合議の上での時間差というので、多くの災害の拡大につながっていく可能性はあると思っております。
 その中で私が考えるのは、アメリカ等での緊急事態省ということで、総理ではなくて、その庁のトップがその現場で自己判断によってやっていく。ただし、その責任の所在というものは明確化するべきだというふうに考えております。
 結局、この事故自身、緊急時ということを前提に置いた場合では、即決を求められるということが重要かと思います。この即決を求められる時間が長ければ長いほど、時間がかかればかかるほど、問題というもの、事故の被害というのは拡大していきますので、その部分というものをきちんと即決していくということが望ましいかと思います。
 以上です。

〇北澤参考人
 今の御質問をちょっと言葉を私なりに直しますと、対策を行っていくときに、原子炉を経済的になるべく生き長らえさせて、それで、対策をやっていくときにはなるべく遅くまで水は入れたくないとか、どうしてもそういった気持ちがある。それに対して、安全性だけを考えれば、もうなるべく早くにベントをして、なるべく早くに水を入れてしまうのが一番いい。
 そうすると、どこの時点でどうするのかというのは一体誰が決めるのかということで、電力会社の経営者が決めれば、どうしても遅くしたい、そういうことになりますから、それは誰が決めるのかということをはっきりさせなければならないという、そういうことが変わってまいります。
 それで、一番は緊急時の対応ですから、そこの相反する時間軸上の願望というのを、安全サイドに行くのか、それとも経営サイドに行くのかということを誰かが判断して、よし、ここで行くぞということを決めるという、そこがはっきり決まっていればこれはやっていける。
 今回の教訓からすればそれができるんだと思うんですけれども、組織をこうしたというだけでは、それははっきりとしないというところがあるかと思います。
 以上です。

〇宮野参考人
 私の見解は先ほどるる申し上げたと思いますけれども、昨年の事故を顧みますと、やはり、なぜ対応がおくれたのかといった議論が先日の国会でもありましたが、撤退する、しないという議論があったという話もあります。それは、現場を全く関係なしの、全くの茶番をやっていたと。要するに、東電の中でも経営者と現場は全く乖離しておりました。情報が行っていないということもありますし、国の中でも情報が全く来ていないという中でああいう議論をやっているというのは、非常におかしい。
 現場は撤退なんということは絶対あり得ません。そのためにあの当時の所長の吉田は、今はもうがんで入院してまだ出てきていないと私は聞きました。それくらい、彼はずっとあそこにいて責任をとっていたというふうに思います。やはり現場が一番です。
 本来は、オフサイトセンターが現場にあって、そこで規制機関が支援をすることになっていたはずです。それが機能しなくなった途端に、なぜ東京に本部が来て、遠隔でしようということになったのか、私は非常に不思議です。本来は、現場できちんと対応して、それを東京が支援をする、要するに国が支援をするという、そういう体制が必要です。
 それをきちんとできるのは、やはり、技術的判断ができる組織、即対応できる組織を持つことであり、それが、事業者、現場を動かしている人間と連携をよくしてやるというのが必要だということで、それは、アメリカにおいてもフランスにおいても、世界では、同じそういう共通の組織になってそういう対応が今はできているというふうに私は思っております。ぜひそういう組織が必要だと思います。
 以上であります。

〇飯田参考人
 基本的には、今回の事故、十条通告がどこの時点かですが、とにかく平時から異常時は、いわゆる戦時の対応のような体制に切りかえることだろうと思いますね。
 だとすると、いわば戦争に例えると、大本営参謀が現地の戦闘の指揮をとることは恐らく不可能なので、もちろん、全体のこちらの戦時の参謀は、例えば三条委員会でも委員長がその権限を持つということと、あとは、実際の事故炉に対してしっかりと権限を付与するような体制というのもやはり考えるべきだろうというふうに思います。
 今回はそれが非常に混乱をしていたので、どこに中心があるのかというのは非常に混乱したのではないかというふうに思っています。

〇吉川委員
 ありがとうございます。
 私があえてこれをお尋ねするのは、自民・公明の案でいきますと、基本的には、この三条委員会に原子力にかかわる権限を全て与えるということになるんですね。
 しかも、どういう方が委員に任命されるかということについては、「原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験を有する者」というふうに限定されておりますので、これは、研究者、学者の皆さんがこの委員に任命されるということになると思うんですね。
 先ほども言いましたけれども、この委員会というのは、従来の委員会、例えば専門的な見地からいろいろな提言をしていただいたりアドバイスをいただいて、それで政治家が物事を決定するというようなものじゃなくて、この委員会そのものが決定権限を持つということなんですね。
 そこで私が危惧するのは、これは大変失礼ですけれども、いろいろな判断の中で、先ほど先生もおっしゃったように、純粋に専門技術的な見地からだけで判断が下せるのであれば私はこの委員会でやっていただいたらいいと思うんですけれども、現実には、それだけの判断では済まないような局面がやはりあるのではないかというふうに思うんですね。
 例えば、先ほど先生がおっしゃったように、あの事故のときに東電の撤退の話がありました。それが実際に全員撤退だったのかどうかというのは、これは、民間事故調のきょうは委員長もお見えですけれども、それではまだはっきりしないんですけれども、ただ、ああいうときが起こった場合に、例えば現場の作業員からしたら命にかかわることなんですよね、それに対して専門技術的なお立場からだけで、だめだ、現場に残って闘えというようなことを判断するというのは、これはやはり、専門技術的な判断を超えた一つの政治的決断であろうというふうに思うんです。
 ですから、たとえオンサイトであったとしても、全て専門技術的な判断だけで対応ができるというような局面ばかりではないということを私は思っております。ですから、そういう政治的なものを全て排除するということが果たして妥当なのかどうか。
 もし、この自公案に基づく委員会ができたとしたら、多分きょうおられる先生方は、日本の原子力を代表される先生方なので、ひょっとしたら先生方がその委員に任命されるかもわかりません。
 そのときに、例えば、先ほど原発の再開の話もございました。この原発の再開については、当然、安全性の審査については、先生方の御専門の知識で安全かどうかの判断はしていただけると思います。しかし、安全だからといって原発を再開することを認めるかどうかは、もう一つ別の判断があるんですね。
 つまり、国全体としてエネルギー政策をどうするかという政策的な話がございます。原発の依存度をどうするかという話もあります。そういう中で原発の再開をするかどうかの判断というのはしていただく。これは従来は政治家がやっていました。
 しかし、今回もしこういう形で法律ができますと、委員である先生方がその判断をしていただくということになるんですね。ですから、その判断の中には、純粋な専門技術的な判断を超える、一定の政策的、政治的決断というものはこれは必ず避けて通れないというふうに私は思うんですけれども、この点について、本当にこの三条委員会で、専門家の先生だけでそういう政策決定にかかわる分野までも果たしてやっていただけるのか。
 従来は、国民から直接責任を負う政治家が先生方の意見を尊重して決定していたということで行われているんですけれども、それが、先生方自身がそれを決めていただくということになるんですけれども、果たしてそういうことが妥当とお考えなのか。先生方がもしその立場になったときにその判断を果たしてしていただけるのかどうかを、再度、ぶしつけな質問で大変恐縮でございますけれども、私の言おうとしていることはおわかりいただけるかどうかわかりませんが、ぜひお答えをいただきたいと思います。お願いいたします。(発言する者あり)

〇生方委員長
 お静かにお願いします。

〇木村参考人
 私ができるかできないかというと、できます。そうなんですよ。それはその判断をしないといけないんです。そのための事故研究をずっとやってきたわけです。この事故研究をやっていない人間たちが入るからわからないわけですよ。
 だから、そういう意味では、政治的判断、例えばこの再稼働の話というのは、また別個の話なわけじゃないですか。今回、この法案がどうするかというような、稼働の問題とその話は別であって、そもそも論で言うと、これは環境省の外局でいいのかというところからまず入ります。
 なぜかというと、環境省には法律の専門家はいません。この専門家がいないところでどうやって束ねるのかというところからまず判断しなくてはいけないんです。環境大臣等を含んで合議をして、一体何が言えるのかというのが私の一番の疑問です。
 だから、そういう部分も含めた上で、もし緊急事態が発生した場合、例えば、その現場における指揮系統で一番のトップが判断していくというような、それはそれぞれの事故現場の判断によるという一番常識的なやり方というのがいいとは思いますが、でも、その責任は、三条委員会以外でも、その行政の長という者がとっていくということでやればいいのかなと 私は思っております。
 以上です。

〇北澤参考人
 御質問の趣旨はよく理解できるところがあります。
 ただし、これは、その人がその場になってその専門的な知識あるいは経営的な知識で判断できるかといったら、そんなものはできない、誰でもできない。つまり、何が今回足りなかったかというと、どういうことが起きたときに何をするのかというのがあらかじめ決まっていなかったということなわけであります。
 それで、原子炉は複雑なシステムではありますけれども、何が起きそうか、ここが破られたらどうする、ではここが破られたらどうするというのは、これからそういう委員会ができたら、あらかじめ全て決めておくべきであります。
 この程度のことが起きたらこの程度のことをやるんだということは、もうどんなに時間がかかってもきちんと決めるというのは当たり前のことでありまして、それができていれば、そういう全体の流れを見ながら、それが最後で首相が口を挟むようなことが起こってくるかもしれませんけれども、その情報の流れと決断の流れを首相にまでずっと見えるようなそういう体制を、この情報化の時代ですからつくりながら、そして、こういうことが起きたらこうするというあらかじめのマニュアルというのをちゃんとつくっておいてもらうというのが、これから一番必要になるんじゃないかというふうに思います。
以上です。

〇宮野参考人
 私は、その判断を必ずやるんだ、安全に対する判断、原子力安全というものに対する判断を行うということなので、それはできますし、やるべきだというふうに思います。
 それで、稼働する、しないという問題と原子力安全を確認するという問題は、私は全く別問題だと思います。
 原子力発電所をどういうふうに使うか。先ほど申し上げました、選択肢はいろいろあると思いますが、どういうふうにするかは国民の合意が必要ですし、それは政治的な判断が必要なところだというふうに思います。
 それから、安全については科学技術的に判断をするというのは、それは必要なことですし、単に科学的な判断というのは、式をどうのこうのつなげてというだけではありません、科学の中でもマネジメントをしなきゃいけない。要するに、全体をどう考えるかというのは、皆さん意見が多分違うんです。そこの中でどう結論を出していくかということがその委員会もしくは委員長の見識にかかわるところでありまして、それが重要なところだというふうに思います。
 そういう意味では、十分にそこに責任を持つことができると思いますし、その結果は、当然、国、首相にも上げるべきでありますし、その後の判断は国としてやることが必要なことが出てくるというふうに思います。
 以上であります。

〇飯田参考人
 皆さんほぼ共通した意見だと思いますので、私も繰り返しになりますが、先ほどおっしゃった、まず平時の場合で言う再稼働であるとか、その後の原子力政策を推進云々という話は、これは、原子力規制庁とか規制委員会、どちらであっても、それは安全性だけの判断ですから、考慮すべきことではない。これは当然のことです。
 それは全く別のもので、そして異常時の場合は、基本的には委員長がきちっと原子力の専門として判断されるべきだと思いますが、それがさらに多領域にわたって自衛隊云々ということであれば、総理に戻すか、別途FEMAのような組織を考えるかということをまたやればいいわけであって、委員会で全く私は問題ないというふうに思います。

〇吉川委員
 ありがとうございます。
 今、与野党の議論の中で、組織のあり方と、もう一つは、最終的に災害時に首相のいわゆる指示権というものを全て排除するのか、それとも、それは最終的には一定残した方がいいのかということも今協議の中で議論をされているというふうにお聞きしております。
 これについても再度先生方にお尋ねするんですけれども、今、原災法のもとで最終的に指示権というのは首相にあるんですけれども、これはやはりなくした方がいいとお考えなのか、それとも、これは従来どおり残した方がいいというふうにお考えなのか。時間がありませんけれども、これをもう一度先生方にぜひお尋ねしたいと思います。
 よろしくお願いします。

〇木村参考人
 私にはわかりません。
 これはもっと審議すべきことであって、今ここで私のような者が答えられるようなものではなくて、私は緊急時については専門家ですが、その平常時については私自身が専門家ではないので、この場で申し上げるようなことはございません。
 以上です。

〇北澤参考人
 安全規制の範疇内に属するのか、それとも国が危うくなるといったような、今回もそういう危険性があったわけでありますけれども、国全体がだめになるというようなそういったことまで予想されるような事態において首相が関与しないはずがない。
 これは、安全だけで言える問題と、それから、避難の仕方とかそういったことまで含めて、首都圏の人たちがみんなどこに逃げていくのか、そちらの方にも原子炉があるのかどうかとか、いろいろなことを考えての判断というのはこの規制庁だけでできることではありませんから、最後の最後に、国全体にかかわる問題に関して首相が責任を持つのは当然だというふうに私は考えます。

〇宮野参考人
 これも何度も申し上げておりますが、技術の範疇は規制委員会。先ほど、深層防護の話を申し上げました。第四層まではきちんと守るというのは、これは委員会の責任です。それが危なくなったとき、第五層をやるのは国です。
 そういう意味では、お互いに切れているわけじゃなくて、連携をとりながらやることが重要なのであって、今、北澤さんが申し上げましたように、国の問題にかかわるところは、当然ながら、首相がやるのが当たり前です。それはかわりの誰かがやっても構いませんが、国としての判断は別にやることであって、この委員会は、安全規制の範疇で責任を最後まで持つということだというふうに思います。
 以上です。

〇飯田参考人
 私も、最終的にはもちろん首相だと思います。
 ただし、個別の各論のところまで指揮をするというよりは、一個一個の大きな責任権限に関するいわば任命責任と、その任命した責任者がきちんと答申を出して、それを受けて最終的には政治家が判断する、そこの仕分けがきちんと仕分けされる必要があるというふうに思っております。
 以上です。

〇吉川委員
 どうもありがとうございました。
 組織論、そうした組織のあり方、それから、それぞれ組織の権限、国のかかわり、これについて先生方から見識をいただきまして、ぜひこれを参考に、今後、この委員会の中で法案についての議論を深めさせていただきたいというふうに思います。
 本日はありがとうございました。

〇生方委員長
 次に、柴山昌彦君。

〇柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 参考人の皆様におかれましては、きょうは本当に御多用の中、ありがとうございました。
 今御質問があったところと関係をいたしますけれども、民間事故調の報告書の中には、菅総理の緊急時の現場介入について非常に批判をされております。
 「官邸による現場のアクシデント・マネジメントへの介入が事故対応として有効だった事例は少なく、ほとんどの場合、全く影響を与えていないか、無用な混乱やストレスにより状況を悪化させるリスクを高めていたものと考える。」「政府のトップが原子力災害の現場対応に介入することに伴うリスクについては、今回の福島原発事故の重い教訓として共有されるべきである。」というように書かれております。
 しかしその一方で、今お話があった、東電の清水社長による福島第一原発からの退避の申し出を退けた件については、「この撤退拒否が東京電力により強い覚悟を迫り、今回の危機対応における一つのターニングポイント」であったとまで評価をしているんですね。
 私は、この二つの記述が相矛盾しているようにちょっと思えてしまいます。
 撤退拒否ということの事実関係はいろいろとあると思います。ただ、事実関係はさておき、北澤参考人にお伺いしたいんですけれども、この民間事故調の報告書の撤退拒否に対する評価というのは、撤退拒否という内容を評価されているのか、それとも、それを菅前総理が指示したということを評価されたんでしょうか。明確にお答えいただきたいと思います。

〇北澤参考人
 ただいまの件でありますけれども、菅総理がということと、それから、今御質問の最後の部分でしたけれども、そういうことを指示したということを評価するか、どちらなのか、そういう御質問と考えていいですか。(柴山委員「はい」と呼ぶ)わかりました。
 その意味では、そういうことが官邸の方から指示されて、そしてそういう事態になっていったということを評価しているのであって、何総理大臣であってもそれは構わない、あるいは、それが官房長官から出てきたとしてもそれは別に構わないという、そういうことであります。

〇柴山委員
 今のところ、要は内容が評価されるというふうにお答えいただきましたけれども、それでは、同じ内容、撤退拒否という内容を別の機関が判断をしても、例えば今度設置する原子力規制委員会、我々は規制庁じゃなくて規制委員会という独立行政委員会の設置を主張しているわけですけれども、その別の機関が判断をしても、そこにきちんと最終的な権限が与えられ、そして避難等については、オンサイトの避難などですよ、それに責任を持つ総理とそれこそ緊密な連携がとれていれば構わないんじゃないんですか。

〇北澤参考人
 実質的にそれが担保されるということであれば全く問題はないと思いますが、思いますがなんです。
 今回、どういう事態が起こっていたかというと、それができていないような組織であったと。では、そのときに誰が出ていくのかというときに、菅総理が出ていったということかと思います。
 その意味で、今回の事態においては、できないような、つまり、細かいことまで誰が一体考えているのかということがわからない。それを周りの人たちに聞いても、本来だったら官邸に報告すべきような人たちがそれを把握していないという、そういう事態が起こっていたということであります。
 それで、誰がそれを把握していったらいいのか。そのときに、かなり細かいことまで菅総理は、自分が考えなければ誰もちゃんと考えている人がいないじゃないかというようなことで、それを我々は介入という言葉で呼んだ部分がありますが、私たちの、介入したことに問題があると言うのは、介入させた側にも非常に大きな問題がある。介入した側も、その意味でいえば、もっとそれをきちんと情報を上げてくる、あるいは、情報を決断しているのか、それからうまくいっているのかうまくいっていないのか、そういったことを把握して上げてくる、そういう組織がはっきり機能しなかったというそういう問題があったわけですね。
 ですから、今回起こった事態において菅総理がああいう形で介入していったということは、私たちも一定程度の理解ができるというふうに思っているわけです。
 それですから、これからできる組織においては、それがきちんといくようにしてもらわないといけないということであります。

〇柴山委員
 今の御説明で、完全に全部、終始一貫して理解ができました。ありがとうございます。
 次の質問に移らせていただきます。
 平時それから緊急時、それぞれ原子力対策というのは重要なわけなんです。これも北澤参考人にぜひお伺いしたいんですけれども、今度新しくできる原子力規制委員会が、今御指摘になられたように、しっかりと権限が与えられ、安全について独立に判断ができるというものができたといたしまして、その規制委員会の役目は、あくまでサイトの、緊急時にいろいろと事故が発生して、それが被害を拡大させてしまいかねないというような状況になったときに、どのような技術的措置を講ずれば鎮圧できるのかということについて判断をし、必要であれば、そのための技術的なアドバイスをするための人材を派遣するなどして協力することだと思っておりまして、別に、原子力規制委員会が災害対応においてオフサイト等も含めて全面的に災害対策本部の事務局機能を担う必要はないし、またその余裕もないというように考えていますけれども、そういった理解で何か不都合はありますか。

〔委員長退席、川越委員長代理着席〕

〇北澤参考人
 わかりません。
 わかりませんという意味は、これは最終的に組織がどうなるかでありますけれども、なるべくこういうことは一元化されていた方がいいというふうにまず思っております。
それで、それが分かれていたときに技術的なことはどこまで責任を持つのかというのは、そこの委員会の構成によって決まると思うんですが、最終的に一番問題になるのは、いろいろ場面を想定して物事をあらかじめ決めておいてそれでハンドリングできることについては、かなり技術的にできるかと思うんです。
 ところが、最後、もうこんなことになっているというそういうときに、技術的なことと政治的なこと、それをあわせて決めなければならない、そういう状況になっていくかと思いますので、そこのところをはっきりこの委員会が、つまり、分離できないというときに、一元化されていればそこのところはやれると思いますけれども、分離してある場合には、最終的にそこのところが迅速にできるようなそういう体制ができていないとどうしようもないということを、今の御質問に対しては感じました。

〇柴山委員
 要は、技術的、専門的な事柄については、迅速に判断をしなければならないことについても、もしこの委員会がそれをきちんと迅速に判断できるのであればこの組織でやってよろしい、ただ、それと、例えばオフサイト、要するに発電所から離れた部分についての対応、これがうまく連携をとれているかどうか、ここが肝だというようなお答えだったと理解をいたしました。私もその御意見に賛成をさせていただきます。
 続きまして、ノーリターンルールについて、先生方から御指摘があったのでちょっと質問をさせていただきたいというように思います。
 特に木村参考人から、やはり今回の事故においては、関係者の保身ということについての強い懸念を示していただいたかと思います。
 ノーリターンルール、つまり、一度この規制組織に来られた方が、その母体となる例えば経済産業省ですとかあるいは原子力事業者、そういうところに戻るということを禁止するというのがノーリターンルールなわけですけれども、もしこのノーリターンルールが適用されないとすると、この規制機関が、先ほどちょっと飯田参考人からもお話があったかもしれませんけれども、戻ってしまうことを想定して、やはり保身を図って公正な判断ができないのではないかということをずっと我々は主張しているわけなんですけれども、それについては、ノーリターンルールを破るということが必要になるのか、それとも、ノーリターンルールはノーリターンルールで維持しておいて、人材確保のためにいろいろと工夫をするということで対応できるのか、そこのあたりの御所見をお伺いしたいと思います。

〇木村参考人
 私の考えですが、先ほど柴山議員からお答えされたように、後者の方を考えております。
 もし呼び戻しがあった場合、今までは規制をしていたところで操作していた方々が逆に今度は推進の方にかわるというような状況になった場合、やはり、心情的にはやりづらいと思います。それを完全に機械のように振り分けることが可能であるならばそれはよいとは思うんですが、基本的には難しいと思います。
 人材確保という上では、まず最初にそういう方々をノーリターンルールで入れますが、それ以上に、新規で、もっとフレキシビリティーのある外部の方々を入れていくことが望ましいかと思っております。
 以上です。

〇柴山委員
 この点、先ほど宮野参考人から、もしノーリターンルールを導入するのであれば、工夫として、やはり人材確保のために、例えば原子力に関係する研究組織などをここにしっかりと入れていく、そうしないとなかなか研究人材なんかも、ここに来てもとに戻れないというふうになると、確保が難しいんじゃないかというようなお話もあったかと思うんです。
 そういう意味では、やはり、この新しい規制組織が研究部分も含めた一元化ということをしていかなければいけないということをお述べになったかと思うんですが、そのあたりについてもう一度教えていただけますか。

〇宮野参考人
 そのとおりであります。
 私も、こういう件については、ずっと昨年から真因は何かということは検討してまいりまして、こういうふうな組織をつくって人材育成をどうするか、人材確保をどうするかというのが大きな課題だと。特に、これは新しい組織だけではなくて、日本全体の課題にもなっていくというふうに思います。
 その日本全体の課題の中でこの狭い規制組織をどうやって維持をしていくのかということは非常に重要なことでありまして、最も重要なことは、モチベーションをどうつくるかということだと思います。毎日毎日規制だけやっているというのは、非常に大変なことだと思います。
 そういう意味で、違った目でモチベーションを持って、この規制の役割を果たせるような組織づくりが重要なことだろうというふうに思います。
 もう一つ、今、外から人を入れればということがございましたが、これは昔、今の保安院は、その下のJNESというところにたくさんの人間を入れました。それは、国のプラントの建設状況がどんどん落ち込んで、人材が余って受け入れになったという状況があったわけでありまして、そういう事態でもなければ、日本の場合は人材の流動化というのはほとんどありません。非常に難しい。
 そういうことで、組織の中でいかに人材を流動化をさせて、そしてモチベーションを持たせるかという工夫が必要だということで私も長い間悩みましたが、今申し上げましたように、この組織の中に研究機関をつなげるということで少しそういうことは改善されていくのではないかということで、先ほど申し上げた次第でございます。ぜひそういう工夫をしていただきたい。
 ノーリターンでなくても一生懸命仕事をする人は役所の方にはおられると思います。ただ、それはルールとしてはなかなか難しいということで、ノーリターンルールがいいんじゃないかということを私は賛成するところでありますし、工夫をしていただきたいということでございます。

〔川越委員長代理退席、委員長着席〕

〇柴山委員
 非常に明快な御答弁をありがとうございました。
 飯田参考人にもお伺いしたいと思います。
 飯田参考人には、さっきの撤退の部分で事実関係がどうかということをちょっと留保をさせていただいたんですけれども、あの事故のときには、最前線の吉田所長はまだ頑張れるというように本部に伝えていて、清水社長個人はともかく、現場としては全面撤退の意思はなかったのではないかというように言われております。また、撤退拒否ということの指摘は、二号機の安定化に向けた具体的な方策を伴ったものではなかったんじゃないか。
 そうすると、やはり、一番よくわかっている現場の意向に任せるということが実は最善の策だったのではないかなと。
 また、現場に仮に任せれば、それこそ一時退避というようなことはあったかもしれませんが、先ほどもお話があったように、ずっと原子力災害は対応し続けていかないと事態が悪化するという運命があるわけですから、もう後ろに下がっちゃって何もしないよというそういう意味の撤退ということは、科学的、技術的にはあり得なかったんじゃないかなと思うんです。
 以上二点、現場に任せた方がいいんじゃないかということ、それから、そもそも全面撤退などという選択肢はあり得なかったんじゃないかという点、以上についてちょっと御所見をお伺いしたいと思います。

〇飯田参考人
 その点については全く私も推測でしか物を申し上げられないのであれですけれども、事実としてやはり吉田所長が踏ん張られたということが、かなりのところ福島第一を、相当悪化をしましたが、逆に言えば、あの程度で食いとめられたという事実はあっただろうと思います。
 そこから先というか後知恵として、どうすればこの次はより緊急時はよくなるのかという意味でいうと、一つは、吉田所長があそこまで頑張ったというのは、やはり自分たちの施設だという使命感だと思います。
 ただ同時に、そうはいっても東京電力の一所長でしかないという限界があったので、そこを補強するような、それが吉田所長に国の権限を付与するのがいいのか、本来であれば、オフサイトセンターにいた保安院の人間が、使命感を持ってそこに寄り添ってできるような人間がそこにいるべきなのか、それはこれからのいわゆる規制委員会のあり方として緊急時で考えるべきだと思いますが、いずれにしても、国のサポートが逆に弱かった、混乱していたという部分は、そこを限定的にした要素としてあるのではないかというふうに思います。
 いずれにしても全面撤退は、恐らく吉田所長の選択としてはなかったというのは、私は伝聞では聞いております。

〇柴山委員
 ありがとうございます。
 以上の参考人に対するいろいろとお話をお伺いして強く感じたのは、今の政府案は、現時点での欠陥の多い保安院なり原子力委員会を前提として、そこを政治主導で補わなければいけないというような発想がまず頭にあって、その上で中途半端な仕組みを出しているように思えてなりません。
 私が参考人の先生方からお話をお伺いして強く感じたのは、NRCなどの国際水準のしっかりとした専門性と一元化とそれから権限が与えられた機関がびしっとできれば、そこにはやはり政治的な介入の余地も必要性も全くないんじゃないかなというように思いますし、現に、NRCのメザーブ元委員長が国会の事故調でベントに関して聞かれたときに、これを大統領が決めることなどはあり得ない、よっぽど日本の政治家は能力が高いんでしょうねというふうに言っていたのを私は強烈に思い出しまして、大臣が伝家の宝刀とかなんとかおっしゃっていましたけれども、そういうクリティカルな場面であっても、NRCあるいは外国の規制機関の常識からすれば、トップ、トップというのは行政のトップですよ、行政のトップが最終判断を下すということはあり得ないんじゃないかなというふうに思うんですけれども、ちょっと先生方から、今のメザーブ委員長の御発言に対してそれぞれお一人ずつ御所見をお伺いできますでしょうか。

〇木村参考人
 これ自身も、言っておきますが、もともと私は事故の人を守る方が専門であって、原子力の専門家でない人間がどうのこうのと言うのは、僕には一切実は口を挟めるような知識もありません。
 ということなので、私にはこういうことはわかりません。

〇北澤参考人
 今の御質問ですけれども、これは認識に若干間違いがあると私は思います。
 これはどういうことかと申しますと、初期のベントのときに官邸が介入したというふうに言われているわけでありますけれども、これはどういう問題かというと、ベントをするということを現場は言ってきた、それもわかっていて、それを官邸側もオーケーということを出した。ところが、いつまでたってもベントが進まない。なぜ進まないのかと聞いてみても、わかりませんという答えしか保安院とかそういったところからは返ってこない。さて、そのときに一国の責任を預かる人は何をすべきでしょうかという、そういう問題だったと思います。
 わかっていて介入したわけでは決してない。何が起こっているかわからない状況でそれを見に行ったというのが、菅首相がやられたことなわけですね。
 ですから、そういう状況であったところで起こったことであって、菅首相の方がベントのことについてよくわかっていて、それで介入したということでは決してないので、メザーブさんがそういうことを冗談っぽく言われたんだと思いますけれども、あの状況は、なぜ上がってこないのかというときに、もしかすると、電力会社は原子炉を損したくないためにベントをなるたけやりたくないんじゃないかということを官邸側は感じておられたというふうに、民間事故調の調査では思われます。
 それですから、そういう中で起こったことで、そのときに、どういう状況になったときにベントをどうしなければならないのかということは、やはり初期のころからきちんと考えてある必要があったのが考えていなかったということが今回のああいう大混乱を引き起こしているわけで、決して菅さんが現場に行ったから混乱が引き起こされたわけではないというのが民間事故調の見方であります。

〇宮野参考人
 まず最初に、首相がどう口を挟むかという問題ですが、私は、NRCに昨年十二月に行って直接話を聞きました。全く同じ答えで、あり得ないと。要するに、政治が技術に口を挟むということはあり得ない、あってはならないと言っていました。これはあえて私が聞いたわけじゃないんですが、そういう話になったときに、そういうことはアメリカであるのかというのを聞いて、それはあり得ないと。というほどに、NRCの中でも、上から下まで基本的に考えは全く同じだということです。
 それはNRCだけではなくて、アメリカの仕組みが、NRCから始まり、電力事業者、そして電力会社、そしてサイトと、順番に同じ考えを持って安全確保のための運営をしているということはよくわかりました。違うところへ行っても同じ答え。日本のように金太郎あめを切ったような同じ答えではなくて、それぞれの立場で考えを述べるということが重要だということがわかりました。それが日本にどうなるかという問題があります。
 もう一つ申し上げたいのは、情報の話が、ベントする、しないという問題がございます。
 情報のラインをよくすればいいのではないかという議論があると思いますが、それは緊急時には非常に難しいのではないかと。それで、現場で判断をすることの大切さということを申し上げているわけですし、もともと我が国の体制も、オフサイトセンターで対応することになっていたはずです。それは、よくわかっているからそういうふうになっていたんだと思いますが、それができなくなったときに首相がリーダーシップをとってしまったと。
 そういうことを報告して指導を受けたがために現場での対応がなかなかとれないという状況にもなったのではないかというふうに思いますが、そういうことのないようにすることがこれからは必要ではないかということを申し上げておきたいと思います。
 どうも失礼しました。

〇飯田参考人
 お時間ないでしょうから手短に。
 基本的にこのベントの話と再稼働の話というのは非常によく似ていて、アメリカNRCでもこういった再稼働、通常であれば、認可するのはこんな首相が判断することではなくて、通常の担当官が判断すべきこと。
 問題は、ベントもこの再稼働も、政治が判断すべきような状況になっていないのに政治が判断する状況になっているということですね。そこが政治の不作為としてあるということで、そこはしっかり認識していただいた方がいいんじゃないかというふうに思います。

〇柴山委員
 恐らくあと五分ぐらいで質問の時間が終わると思いますけれども、原子力安全委員会原子力施設等防災専門部会防災指針検討ワーキンググループ、ちょっと長いんですが、「中間とりまとめ」において、一般災害に対応する組織が一般災害と原子力災害に係る公衆の防護の対応の両方を実施することが合理的であると三十六ページに書かれております。
 これは、要は、公衆の防護は一般災害に対応する組織が当たって、原子炉事故の収束は規制機関が担う。だからこそ、原子力災害においても、一般災害に対応する組織というものがオフサイトを中心として対応できるというような考え方だと思うんですけれども、私たち自民党・公明党案は、この記述を踏まえて、原子力規制機関が災害時においても原災本部における従的対応ということで副本部長というふうにならせていただき、そして原災本部長はやはり総理大臣というような仕組みにしているわけなんですけれども、これに関する御所見を北澤参考人にお伺いしたいと思います。

〇北澤参考人
 私どもそこまで考えたことがありませんので、今の御質問にすぐお答えすることはちょっと不可能です。

〇柴山委員
 最後になると思いますが、木村参考人にお伺いしたいと思います。
 木村参考人は、どちらかというと、やはり放射能被害とか健康問題についていろいろと、過去の著作も論考も拝見していますけれども、書かれているかと思います。
 その上で、やはりデータの問題ですね。結局、SPEEDIの個々のデータ測定の部分と、災害時に司令塔として行う部分、ここが一元化されていない限り、適切な対応というものはもう不可能なんじゃないかなというように私は思いますし、また、先ほども少しお話しになっていたと思いますが、特に避難の部分でこのデータが何か作為的に隠蔽されているようなことがあったら、それはとんでもない禍根を残すということになると思うんですけれども、ここについて、一元化それからデータの開示、最後にお話をお伺いして、私の質問を終わります。

〇木村参考人
 一元化に関しては必要であると思います。それを判断すべきことは、このデータの開示をもって、どこまでが危険であるということをきちんと、まず予防的措置、これもあくまでも暫定措置としてやっていくことが望ましいかと思います。
 実際に事故が起きた状況でその判断というものは、すぐに風の流れとか放射能放出量によって決まってまいりますので、そのデータをまず開示していきながら判断をしていくことが重要かと思っております。
 以上です。

〇柴山委員
 質問を終わります。

〇生方委員長
 次に、江田康幸君。

〇江田(康)委員
 きょうは参考人の先生方、大変御苦労さまでございます。大変貴重な御意見を賜り、まことにありがとうございました。公明党の江田康幸です。質問をさせていただきます。
 まず、きょうも続いておりますけれども、これまでの環境委員会の質疑では、大変幅広い、また深い審議ができていると思っております。
 これを受けて、現在、与野党の実務者同士で法案の協議を行っております。新しい原子力機関としては、独立性の高い三条委員会とすることで合意をすることができたわけでございますが、これは非常に歓迎すべきことで、原子力規制を実施する上で、独立性、中立性の確保に向けて、日本の原子力規制庁が本格的に前進することになると思っております。
 その独立性、中立性に加えて重要になるのが、先ほどからも先生たちから御指摘がある、専門性でございます。
 今回の事故では、原子力安全・保安院は、その専門能力の低さを国民に対して、また全世界に対しても露呈したところであります。ここにいらっしゃる北澤先生におまとめいただきました民間事故調の報告書においても、それは痛烈に批判をされているところであろうかと思っております。
 一方で、アメリカの原子力規制委員会、NRCは、みずから原子炉を動かすことができる複数の職員を有する、専門性の高い、四千名から成る職員を抱えておるわけであります。
余りの落差に愕然とするところでございますが、これを改善するために、自公案では、原子力規制に関する専門能力を有する原子力安全基盤機構、JNESの職員を基本的に原子力規制委員会の職員とすることで人材の質を高めるということにしていたわけであります。また、原子力研究開発機構、JAEAについても、原子力規制委員会が文部科学省とともに共管して、これらの組織が持つ知見を集積するということにしているところでございます。
 ここで、飯田先生と木村先生に御質問をさせていただきますが、JNESを原子力規制機関に統合して専門能力を高めていく、この考え方、これは今ほぼ合意をしているところではございますけれども、どのような御見解をお持ちか。また、先ほどからあります。この原子力規制機関の専門能力を高めていくということが喫緊の課題でありますけれども、そのための方策について御意見を二人にお伺いしたいと思います。

〇飯田参考人
 基本的には、先ほど先生がおっしゃったように、研究機関を統合する方が望ましいというのが、まず一次元的には思います。
 ただ、しかしながら、さらに副次的なところがあって、国の研究機関というのは、一つは非常に官僚主義的である、そして、今回の規制委員会というのは非常に権威的になります。権威的な組織というのは、大体往々にして中身がどんどんうつろになっていきますので、実質的な専門性をどう高めていくのかというのは、そこにしっかりとしたくさびというか、打っていく。
 それで、きょうちょっと私書かせていただいたのは、権威ではなくて、実質、権限はあるけれども、しかしオープンな組織文化で、国内外に開かれた、そして個人個人の顔がしっかり見える、特にトップはもちろんディレクターレベルが世界に開かれて、その人が責任を持った仕事ができる、そういう組織風土にすることがまず非常に重要かというふうに思っております。
 以上です。

〇木村参考人
 私も、今お答えになられた飯田さんの意見に基本的に合意です。
 僕が一番思うのは、やはり人材なんです。今現在の人材でいいのかということなんですよ。これは宮野先生もおっしゃっておりましたが、人材育成というところにかかわってくる問題で、もし例えばその研究機関の方々が入ってきたとしても、今現在の人たちでどの程度まで十分に国民の理解が得られるかというのは、僕にはわかりません。
 この事故を踏まえた上でのやはり再編成というのは必要になってくるし、それは、基盤機構だけじゃなくて、大学等からも入れていくというのがよいのかと思います。
 以上です。

〇宮野参考人
 宮野でございます。
 先ほどから申し上げておりますが、アメリカの場合の話が出ました。NRCは実機を動かせるくらいの能力のある人たちがいるという話です。
 日本の場合は、原子力は平和利用で行っているわけでございます。平和利用の国で原子力発電所をこれだけ動かしているところはほとんどないと思いますが、アメリカの場合には、海軍という、立派な原子力施設、潜水艦を持っているところがたくさんあります。そこの人たちが、実炉の経験を踏まえて、NRCとか、それから電力会社の原子力を動かすところに入ってくる。人材の流動化が非常に活発に行われているところでありまして、人材の育成が十分なされているというふうに思いますし、また、NRCでは、二千人以上の人たちが働いて、その中でも活性化をしているわけであります。もちろん研究機関もたくさんあります。
 では、我が国はどうなのかというのを見ると、非常に寂しいといいますか、非常に苦しい思いがあるところでありまして、JAEAの話がございましたが、JAEAの一部の人たちが原子力の研究をされているというところでありますし、また、先ほど御指摘にありました、いかに活性化されていないかといいますか、研究の中にどっぷりいるという状況もあるというふうに言われておりますし、そういうおそれがないわけではないと思います。
 そういう意味で、どうやって活性化をするのかというのは非常に大きな課題であります。研究マネジメントという教育をすることも必要なのではないかということで、ぜひそれをお願いしたいなと。マネジメントというのは、経営だけではありません。研究においてもマネジメントをいかにするかということが重要で、それを原子力の分野でもきちんとやって、そういう人たちがリーダーシップをとって世界に出ていくということが一つあるというふうに思います。
 ぜひ教育をお願いしたい。

〇江田(康)委員
 ありがとうございました。
 現在、この人材育成と密接に絡むわけですけれども、新しい原子力規制機関の職員をどのように配置するか、ノーリターンルールに関して、私、質問をさせていただきます。
 そういう議論が行われているわけでありますが、人材が限られている中、発足当初は、これは、原子力安全規制を担っている経済産業省の原子力安全・保安院、また、文部科学省から人材を集めざるを得ないかもしれません。
 しかし、これらの職員が、先ほどもございました、親元の経済産業省とか文部科学省、帰巣本能とも言われましたけれども、そういうようなところを見て仕事をするようでは、これは独立性や中立性が確保できずに、専門性も高めることはできないと思っております。
 このために、自公案では、経済産業省、文部科学省から原子力規制委員会への職員の配置につきましては、このノーリターンルールを徹底するということで、したわけでございます。
 このことについて、これまでの議論で政府は、立ち上げに必要な全ての職員をノーリターンしてしまうと、強い意欲を持って規制業務への参加を希望する優秀な職員が少数にとどまる懸念があるというような大臣答弁もございます。確かに、立ち上げから人材を集めるというのは厳しい面もあるかもしれませんが、意欲や能力のない職員をノーリターンにしてしまうというリスクもあるかもしれないわけであります。
 この新しい原子力規制機関をやはり実効性のあるものにするためには、資格の創設や、また処遇も充実させて、研究交流等々においても、意欲のある職員が集まるような環境を整備する前向きの取り組みが絶対に必要だと思っております。
 先ほど述べましたJNESとの統合というのも、これは、千人規模でそういう専門能力のある職員の組織をつくる、そういう中でノーリターン化していくことであれば、十分にこういう意欲のある職員が育つ環境になってくる、このように思うからでございます。
 ここでもう一度御質問をいたしますが、飯田先生、また北澤先生にお伺いをいたします。
 このノーリターンルール、どのような手順で進めていくべきと考えておられますでしょうか。また、処遇の改善、また、ほかとあわせて徹底しなければこの実効性は確保できないと思いますが、その辺のところの見解をお聞かせいただきたいと思います。

〇飯田参考人
 どうもありがとうございます。
ノーリターンは、これはもう当然だというふうに思いますが、ノーリターンだけではなくて、そこからさらに通り抜けて別の原子力村の方におりていくというのも、原子力村というのは非常に狭いものですから、そういった利害関係のあるところに、さらにその次に行かないといった最低限のディシプリンは絶対マストだと思います。
 基本的には、まず組織をつくるときにノーリターンルールが出てきたのは、これは恐らく霞が関文化からだと思いますが、通常の民間で考えるとおよそ考えがたいことで、きちんと ミッションがあって、それを呼びかける責任者がいれば、優秀な人材を公募していって立ち上げれば、白地で立ち上げた方がよりしがらみのない、優秀な組織が立ち上がりますし、処遇というよりはむしろ、誇りがある仕事をきちんと与えれば人間は本当にいい仕事をしますので、とにかく誇りがある仕事。であれば、意思決定が不透明になりますから、ノーリターンだけではなくて、例えばさまざまな省庁のしがらみで役職が不透明に決まるといったことは、決して避けなきゃいけないと思います。
 そういった意味で、外部は資金の関係もあって公募は難しいかもしれませんが、先ほどのJNESの統合に関しても、内部組織的にもきちんと公募制と人事評価を透明にしていって、優秀な人がディレクションをしっかりしていくという、年功序列ではない形をしっかりとっていった方がいいのではないかというふうに思っております。
 以上です。

〇北澤参考人
 ノーリターンルールに関してなんですけれども、やはり日本のお役所というのは、世界の中でも非常に特殊な面があって、それは、そのお役所をやめてから、終生にわたって、その後のいろいろなところへのポストもお役所の人事が全て決めている。ですから、一旦そこから外れたらもうどうしようもない、そういう恐怖感というものに対する、ノーリターンルールというのはそこから出てくると思うんですけれども、非常にそれが強固であるだけに、表向きノーリターンになっていますというのは、余り大きな意味を持っていないように私には感じられます。
 ですから、これは相当にきちんと考えなければならない問題で、それでさらに問題は、事務局というのが日本ではとても大切でありまして、その事務局を構成する人たち、その人たちが帰巣本能に基づいてというか、親省庁に帰っていくというようなそういう形で働いていたのでは、やはり日本のいろいろな委員会というのは、事務局が、若い人たちが実際には動かしていますから、その人たちに推進側と癒着しないようなそういう規制側の実効をどうやって上げさせるかということが、ノーリターンルールでは非常に重要な、考えなければならない部分だというふうに思います。
 それで、研究教育にかかわるような人たちについては、原子力に関しては安全性といったようなものがほかの産業に比べてはるかに重要な部分であるだけに、テクニカルなことにかかわる人あるいはその行政にかかわるような人に関しては、その部分から教育と研究に相当に携わる人が出てくるべきであるというふうに思います。
 例として申し上げますと、例えば東大の原子力工学科の中には、この規制側の組織が運営している三つぐらいの研究室があるとか、そういう形で、原子力に関しては、総合的にリスクマネジメントを含めて教育及び研究に携わる人たちがたくさん出てくるということによって高いモラルと専門性というのを保っていくことができるというふうに感じております。
 以上です。

〇江田(康)委員
 ありがとうございました。
 時間が過ぎてまいりましたが、先ほどから論点になっていますところの、総理の指示権を含めた危機管理について質問をさせていただきます。
 現在、最も大きな議論になっているのが、緊急時における総理の指示権でございます。原子力の安全性について一義的責任を持つのはこれは事業者でありますが、その事業者がしっかりと安全を確保しているかを監視して監督するのがこの規制組織であるというこの役割がございます。この役割というのは、これは平時においても緊急時においても同様にしなければならない。
 そういう中で、国家、総理の介入というのは、あくまで必要最小限の、また抑制的なものでなければならない、こういう議論がされているところであります。
 今回の事故でも、これは北澤先生の民間事故調の報告書にもございます。菅総理また官邸の現場への過剰介入というのが、例えば、海水注入やベントの要請というようなところにおいても大変大きな問題となっておるわけであります。
 大変厳しい評価をこの民間事故調ではなされているかと思いますが、ここで北澤先生にもう一度御質問をさせていただきます。
 今回のこの事故の検証をされていたお立場から、先ほども種々ございましたけれども、緊急時における国家、総理の介入のこの必要性について、先ほどもございますけれども、どのように見解をお持ちか、改めて伺います。
 また、過剰な介入を防止する、このことが大変重要になるかと思いますが、どのような措置を講じていくべきか。これは飯田先生にももう一度お伺いをさせていただきます。具体的なお考えをお示しいただければと思います。

〇北澤参考人
 先ほども申しましたけれども、安全性という観点からは、ゼロか一というデジタルな問題ではない。ですから、安全性を高めれば高めるほどコストもかかりますし、それから稼働もできなくなってくる、そういう類の問題でありますから、その意味では、最終的に社会全体としてどのレベルで安全性をやっていくのか、あるいは原子炉を廃炉にするというような決断をどの時点でするかというのは、技術だけでは絶対に決まらない。最後は、社会それから経済性、いろいろなことを考えて決めていかなければなりませんから、そこのところで政治が全く入ってこないということはもうあり得ないという、私はそういう見解に立っております。
 ですから、そこのところを、どこの場合にはどうなのかということを平時から関連者たちはきちんと考えておいて、政治ともそういうことは話し合っておく。それで、どうしようもない想定外というのは出てこないようにしていくということが一番重要なことであるというふうに思います。
 それで、最後の最後は、首相が出てくるのは、それがどうしようもないときには出てくるのは当然なことであるというふうに思っております。

〇飯田参考人
 今回は、もちろん首相が最後出ていったという話があるんですが、一方で、保安院、安全委員会、その間で専門的役割を果たすべき組織が全て崩壊をしたという中で、誰がどうすべきかという混乱状況であったと。
 その中で、恐らくイフはありませんが、すべきだったことというのは、やはりあそこまでぐずぐずになってしまった中で、きちんとした緊急時の権限移譲をもう少し実体化すればよかったのではないかと。空本先生いらっしゃいますが、空本先生もいろいろ大きな力を発揮されたというふうに伺っています。
 それが、非公式な権限でいろいろ動いていた状況が指揮権と情報の混乱をもたらしたのではないかと思いますので、そういう意味では、緊急時のときに、やはりそこのところの専門性を持った、しかも緊急時に対応できる人が、本来はもともと用意されていればいいんですが、なかったときに政治家は何をどう判断するのかということが大事だったのかということが教訓ではないかというふうに思います。

〇江田(康)委員
 この質問に引き続いてでございますが、緊急時にどう対応していくか、今回も大変大きな課題が残ったわけですが、そのためにも平時における危機管理体制をしっかりとしていかなければならないというのは、北澤先生を初め、きょうの御指摘でもございます。
 今回の事故を改めて振り返れば、政府はシビアアクシデントに対する備えが全くできていない、そういう結果であったと思われます。想定したこともない事故が発生して、マニュアルも不十分で、関係者の能力も不十分で、情報共有の体制も整備されていない、専門知識、経験を欠いた少数の政治家が中心となって、次々と思いつきだけで場当たり的な対応を続けた、こう言わざるを得ない、危機管理体制というのは全く機能していなかった、こういうことだと思います。
 政府の危機管理体制というのは、民間事故調でも御指摘がございます。先ほどから出ています。稚拙で泥縄的な危機管理だったのではないかということで、つまりは、やはり先生たち御指摘のように、平時から事故に対する備えが全くできていなかった、いざ緊急事態になったら、何をしてよいかわからない、右往左往した状況だったということだと思われます。
緊急時の対応ができるためには、やはり平時からの連続で危機に備えていなければ、これは十分対応することはできないということは明らかでございます。
 この点については、今環境委員会でも大きな議論をしているところでありますけれども、平時のオフサイト対策として、市長を含む自治体との調整そして連携、また、自衛隊、警察、消防との調整や連携、さらには、防災訓練、原子力防災対策指針、防災計画の作成、また、風評被害対策から被災者の健康管理、こういうところまで多くの仕事があります。これらは、ハイレベルで調整できる者を配置できる体制も含めて議論していかなければならない、大きな論点であります。
ここでもう一度、北澤先生に御質問をさせていただきます。
 稚拙で泥縄的な危機管理とならないように、平時から関係者と調整して連携を深めてしっかりとした備えをしていく必要があるわけですが、これについてどのように進めていくのが適切であるのか、また、このような備え、これを充実させるために何に留意をしていけばいいのか、御見解をお願いいたします。

〇北澤参考人
 今度できる組織の最大の任務は、まずすぐに当然事故が起きることは望まないわけでありますけれども、あらゆるタイプの事故が起きることを想定して、そして、それに対する対策の仕方を一つ一つみんな考えておくという、どこまで考えることができるかというのが一番最初の大きな任務だというふうに私は思います。
 それで、それをちゃんとやっていくに当たって、技術の中身からだけでは決して対策というのはできないということも事実でありまして、つまり、安全性だけを重んじれば、幾らでもコストをかけて幾らでもやっていくことはできるわけですから、あるいは安全性だけを考えれば、とめてしまうのがもう最も安全なことでありますし、何もやらないということになります。
 ですから、そこのところを政治の側とも相談しながらやっていかなければならないところは随分あると思いますし、これは、社会的にもいろいろな議論を巻き起こしていかなければならない問題だというふうに感じております。
 以上です。

〇江田(康)委員
 これ、済みませんが、それぞれの先生からいただけますでしょうか。

〇木村参考人
 平常時の危機管理ですが、まず私が申し上げたいのは、一九九九年に、東海村臨界事故があった年に私は放射線医学総合研究所に入りました。その前からその研究計画を提出するんですが、そのときに、有事の際と原子力災害というふうに書いたときに上司から言われたのは、事故は起きない、原発は事故を起こさないということをまず言われたんですね。そういう話からまず原点に戻って考えていかなければならないわけですよ。
 私はその当時、科技庁の職員でもありましたから、そういう監督官庁の部分自身も、事故は起きないというあり得ない想定のもとに話が進んでいって、今回事故が起こりました。だから、事故についてさまざまな角度から見ていくんじゃなくて、あらゆる部分に対応可能な組織づくりにしていかねばならないという考えがします。
 私自身が今回その調査に臨んだ気持ちというのは、これは戦場だ、戦場というのは何が起こるかわからない、自分の命は自分で守るしかないんだ、自分の周りにいる人たちを守るにはどうすべきかというようなことから発展して考えてきました。
 このような観点から申しますと、さまざまな分野の方々が意見を言われても、根底に何があるかというのをまず考えた上で平常時というものを考えていかねばならないと考えております。だから、根本から、根底からまず考え直していただきたいというのが私の意見です。
 以上です。

〇宮野参考人
 平常時と異常時でございますが、平常時に異常時のことを考えて手を打っておくということは、非常に難しいことです。
 難しいというのは、防災という問題について、特にオフサイトの問題について、常にどういう事故が起こるかわかりません。それを、いつもそういうことを考えながら手を打つというのは、国として考えるのは非常に難しい。そういうことで、オフサイトセンターの機能がうまくいかなかったという例があるように、やはり、常時を考えて異常時をどう展開していくかということをきちんと考えておくことが必要だと。
 すなわちどういうことかと申し上げますと、地元と常に連携をしながら発電所をどうやって運営していくのかということを考えることが、日常のことが重要なのであって、事故が起きたときにはどうするんだということを一緒に考えるということです。それは、世界、アメリカでもそうです。常に地元と考えて、事故が起きたときにはどうするんだということで手を打ってきている。それが平時の事故に対する考え方です。
 防災は、原子力だけじゃなくて、ほかのものも一緒に考える必要があるのではないかというふうに思っております。

〇飯田参考人
 かつてまだ私が原子力をやっていたころは、例えば防災訓練をすること自身が住民を怖がらせるからやらないんだという時代がまずあって、それが、いわゆるジェー・シー・オーの事故も起きて、セレモニー的防災訓練になりましたね。今回はもうそれをやってはならないので、事故は起きるという前提のもとで、実質的ないわば機能を設ける。
 それは今、宮野先生もおっしゃったように、事故が起きたときには何が起きるかわからない。それは確かに平時には準備できないんですが、何が起きるかわからないときに何ができるかは想像力と責任感でしかないので、ですから、充て職はやめることですね。本当に、モラルを持って、責任感を持ったリーダーがきちんと座った組織にするということ以外にないのではないかというふうに思います。

〇江田(康)委員
 時間が参りました。本日は大変にありがとうございました。
 終わります。

〇生方委員長
 次に、斎藤やすのり君。

〇斎藤(や)委員
 きょうはありがとうございます。大変参考になりました。
 今、これまでの質問された方がかなり細かいところまで質問されておりましたので、私からは、ダブるところもあるとは思うんですけれども、ぜひよろしくお願いを申し上げます。
 先ほど、飯田先生から、今回の福島事故で誰も責任をとっていないじゃないかというようなことがありました。私もこれは同感でございまして、飯舘村の子供たちのおしっこからセシウムが出てしまったのはなぜかということなんです。これは、政治主導が誤った形で行われてしまった、これがやはり事故を拡大させてしまったことは私は確かだと思っております。ですから、この規制組織というのは、政治に暴走させないこと、それから、原子力村からいかに独立性を確保させるのかというのがポイントになってくるんだというふうに思います。
 今回のこの規制機関の設置と、そして何といっても大飯原発再稼働の話というのは、切っても切れません。まずは、この大飯原発再稼働の話からちょっとお伺いしたいというふうに思います。
 きょう、野田総理が大飯原発再稼働について国民に訴えをするそうです、夕方の記者会見だそうですけれども。そもそもこの再稼働に正当性はあるのか。政治的正当性、それからリスクという点から見た正当性、これはどうなのかということを、ぜひ宮野先生そして飯田先生にお伺いしたいと思います。

〇宮野参考人
 私は、再稼働についてどうこう言う立場では基本的にはないというふうに思っております。
 原子力発電所が安全かどうかということについては、その判断を行ったところの評価について、私はそのとおりだというふうに理解しております。
 それは、一つは、基本的に設計というのは安全を確保するためにきちんとなされておりますし、運用もなされてきております。そういう評価をしてきているはずです。そういう中で運転をしてきたということに間違いがあったかどうかということで、それはまずないと。しかし、昨年起きた津波での災害に対応してきちんと評価できているかどうかということに対して対応できているという評価がなされていれば、それは正しいことだと。それで安全が担保できるか、その前提条件としてのストレステスト等々があったというふうに理解をしておりますし、その評価については、いろいろ見解に相違があるかもしれませんが、出された結論については、それなりの結果だというふうに思います。
 その結果をもって再稼働するかしないかは、それは政治の判断だということで、安全であるかどうかということについては、私は安全性は担保できたというふうに理解をしているところでございます。
 以上であります。

〇飯田参考人
 私は、特にこの問題は、大阪府市の統合本部のエネルギー戦略会議の立場として検討してまいりましたが、現在確認されている安全性というのは、これまでの安全神話のもとでの安全性は確認されているかもしれませんが、福島事故以降の、安全神話が崩壊した後の安全性は一切確認されていないということは、これはもう大阪エネルギー戦略会議全員の共通見解です。
 まず、正当性がないというのは、事故調査の結果が出ていないのに、それに対してどのような安全性を今後担保すべきかということができるわけがない。安全性の判断の前提がまずないということです。
 そして、安全性に関しても、今想定されるものとしては、まず福島級の地震と津波に耐えればいいというのは、これはまさに安全神話そのものであって、どのような事故原因がこれからあるかもわからないということを根底からまず見直す。それには、テロもあり得る、あるいは最近では竜巻すら、あるいは爆弾低気圧もあるわけですから、そして飛行機の墜落もあり得る。どこまで想定するのかということを虚心坦懐に考え直して、そしてその上で、壊れるか壊れないかをきちんと判断する。それも、ただ計算だけではない。そして、閉じ込めることができるかどうか、閉じ込められなくても住民の安全を防護できるか、そしてさらに損害賠償と復旧に財政が対応できるかというこの三掛ける四のマトリックスを、きちんとそれなりに対応しないといけない。
 我々は八条件を大阪からは提示しておりますが、一切、どれ一つとして対応していないというのが今の政権ですので、必要性から再稼働にいくというのは、これは全く政治的に正当性がない判断だというふうに我々は判断しています。

〇斎藤(や)委員
 私も飯田先生の意見と同感でして、保安院がつくった三十の安全基準からとりあえず十三を取り出して二日でつくった暫定基準で動かしますよというのは、国民の誰が納得できるんでしょうか。私は、これについてはこの場で訴えるのもおかしいですけれども、政府に強くこの点は訴えたい。国民の安全というものをどう考えているのか。
 これは私の意見だけじゃなくて、国民の多くが、六割以上の方が今、この大飯原発の再稼働に対しては反対していますので、私は、引き続ききょうの午後の連合審査会でも政府に強く抗議の意を訴えていきたいというふうに思っております。
 なぜ再稼働を急ぐのか、これもまたきちんと政府は話していないわけです。恐らく、夏の電力不足というのが一つの再稼働の大きな原因だとは思うんですけれども、政府、電力会社が出した夏の需給予測について、これも済みません、飯田先生、どのような見解をこれはお持ちでしょうか。

〇飯田参考人
 私の理解は、これは国家戦略室の担当にも確認した話ですが、五月十八日に行われたエネルギー・環境会議のもとで確認されたものは、電力制限令は行わなくてよい、つまり、節電目標、関西電力一五%、九州電力一〇%、その他西日本五%の節電目標によって、そして広域の需給調整を、広域で連携を図ることによってこの夏の西日本地域はできるんだという見解になっているというのが私の認識です。
 以上です。

〇斎藤(や)委員
 どうもありがとうございます。
 やはり、自家発電の掘り起こしとか、それから、想定されている夏の暑さが、一昨年のウルトラ猛暑、本当に二十一世紀の中では一番という暑さを想定されている需要予測に基づかれているものです。
 私は気象予報士で、実際、電力会社にも電気の供給予測というのはしていましたのでこのあたりはよくわかっているんですけれども、一昨年のようなああいうウルトラ猛暑にはことしはなり得ない、下手をすると冷夏になるリスクもあるという中で、大げさに需要が多くて供給が不足するというのは、ちょっとこのあたりは疑問でございますので、このあたりもしっかりと意見を述べていきたいというふうに思っております。
 先ほども言ったように、福島の事故調査結果が出ておりません。しかも、先ほど飯田先生からありましたけれども、事故を起こした責任ある保安院がつくったその安全基準で動かそうとしております。
 このまま大飯原発再稼働に突っ込んだ場合に、最大の事故リスクというものはどういうことが考えられるのかということを、民間の事故調で調査結果を出した北澤先生にぜひお伺いしたいんですけれども、どうでしょうか。

〇北澤参考人
 大飯原発のことに関しては、私は詳しくわかっておりません。
 ただ、言えますことは、使用済み核燃料の貯蔵場所を含めて、どれだけの量の燃料棒がどこに蓄えられているのかということをきちんと把握して、そして、大飯原発についてもそういうことも把握した上で、最後の事故の拡大するところはどこまで行くかというのはそれによって決まりますので、原子炉だけでは決まらない。
 それで、それが漏れ出したときに最大ここまで行くということは考えなければならないわけですけれども、今回の福島原発のときには、かなりの放射能は海の方に流れたわけでありますけれども、これが冬に起こったとしますと、そうすると琵琶湖とかそちらの方に来てしまうという問題も非常に大きくありますので、それから、大都市がすぐ近くに、風下になっているというようなこともあって、これは非常に考えなければならないことで、そこのところは政治がきちんと考えなくちゃいけない問題だと思います。
 これは、技術的にはどの程度のことになるかというのはある程度予測がつくわけですから、最後は政治の問題だと思います。

〇斎藤(や)委員
 先生、ありがとうございました。
 やはり、今の安全基準というのが原子炉の安全基準ばかりに焦点が当たっていて、では、国民の安全は一体どこにあるのかというところがもう明らかにこれは欠如していると思いますので、事故が起きた後なんですから、余計そこに焦点を当てて安全基準をつくるべきだというふうに私は考えております。
 次の福島が日本を破滅させる、そういう思いでやはり規制組織をつくらなければいけないというふうに思います。
 次の福島を起こさないための規制組織はどうあるべきか。木村先生にちょっとお伺いしたいんですが、これは非常にざっくりとした質問なんですけれども、大きなトラブルがあった場合の指揮系統ということは、非常にざっくりとした聞き方で申しわけないんですが、危機管理はどうあるべきかというのをちょっと教えてください。

〇木村参考人
 まずは調べることでしょうね。とにかく、事故が起きたというときには、まずその事故状況を予測するという予測システム、SPEEDIのようなものというのは非常に重要なんですが、それ以上に、実際の現場で何が起こったか、どういうことが起きているのかというのをつぶさに判断する必要に迫られると思います。
 以上です。

〇斎藤(や)委員
 そういう意味では、原発の建屋が吹き飛んだときに、私は実は隣の仙台にいました。八十キロの場所にいたわけです。そして、宮城県内の放射能のモニタリングがもう全部停電でとまってしまいまして、放射能がどれぐらい飛んでいるのかもわからない。SPEEDIも情報が出ない。しかもひどかったのは、ガソリンがなかったんです。ガソリンがなかったから、次、原子炉が吹き飛んだら、これはもう逃げられないなと。食料もないんです。私は初めてそこで死というものを意識したわけでございます。
 ですから、そういう意味でも、先ほど先生がおっしゃったように、SPEEDIの管理だとかそれから放射能のモニタリングの管理なんですけれども、そこの問題も今回非常に焦点が当てられております。これについて、北澤先生とそれから飯田先生にお伺いします。
 政府案では、規制庁がこのモニタリング業務については機能を担うと言っております。しかし、文科省にある実施機能は移管されない。先ほど柴山先生の質問もありまして、かぶる部分はあるんですが。実は文科省は、モニタリングには人員が要る、規制庁には実動部隊を抱えるだけの規模がなく、我々がやるしかないというふうに言っております。実施とそれから指揮というところがばらばらでもいいというふうに言っているわけなんですが、先ほど言ったように、やはり、何といいますか、恣意的なというか、政治的な情報の隠蔽みたいなものが起こり得るということでございますから、私は、これは一元管理でするべきだというふうに思っております。
放射能情報の管理、情報のリリースのあり方について、先ほど木村先生に聞いていましたので、北澤先生と飯田先生に、この情報の管理、情報のリリースの仕方、お伺いしたいと思い ます。

〇北澤参考人
 今回、SPEEDIが役に立たなかった一番の理由は、一元化の問題があったかと思います。
 つまり、文部科学省がそれを動かして、そしてそれを判断してみんなに知らせる役割というのは、文科省は自分にあるとは思っていなかったという、それによって情報が外に出ていかなかったというふうに思われるわけでありますけれども、実際に動かしている人たちは感情もあり、これはどういうことになるのかということは皆さんわかっておられるわけで、そのときに、その人たちに心があれば、それをきちんと伝えていったはずなわけであります。それを伝えられるような組織になっていなかった。つまり、文科省にはそれを外に発表していくようなそういう権限がないというふうに理解していたということが一番の問題だと思います。
 そのときに、それをきちんと外に、こうですよ、大変ですよと言って伝えていったかというと、そこまではやれなかった。なぜかというと、それは文科省の中に何らかの事情があったんだというふうに思えるわけでありますけれども、一元化されていればこういう問題は起きなかったというふうに思います。

〇飯田参考人
 基本的には私も一元化だと思いますけれども、これは、もともと私、原子力村にいた人間として申し上げると、大分今は形が変わってきましたが、やはり日本の原子力村には、国策直営のいわゆるかつての旧科学技術庁グループと国策民営の通産、電力会社グループが大きくあって、かつてのジェー・シー・オーの事故は、これは文科省グループが起こした不始末だから、旧通産省、経産省グループは一切協力しなかったわけですね。今回はその逆が起きたわけです。今回は電力が起こした不始末だからということで、当初、文科省グループは一切動かなかった。
 そのことが実は尾を引いているわけで、そういう意味でも、原子力村の構造に切り込んで、文科省管轄の原子力グループは全てある意味一つに一元化することも含めた、私は、そういう意味で先ほどの原子力委員会の廃止等も御提言申し上げたということです。

〇斎藤(や)委員
 利権が絡むと俺が俺がというふうに言ってくる人たちが、いざ事故が起こると、俺には責任がないというふうな構造がその原子力村の構造だというふうに思います。
 ですから、話はちょっと変わりますけれども、この原子力のモニタリングの問題については、今修正をしているのであれば、衆法で出している、モニタリングも一元化するということにぜひかじをとっていただければなというふうに私は思います。
 さて、ちょっと気になったのが、けさの読売新聞か何かで、報道のことなので実際はどうなのかということはちょっとわからない部分ではあるんですけれども、修正案の中で総理の指揮権を認めるという旨の報道がありました。政府案は総理の指揮権を認める、政府の指揮権を認めるということなんですが、修正案でも総理の指揮権を認める旨の報道がありました。
 報道ベースですから私はわかりませんが、仮に総理の指揮権を認めるという法案に修正されたとして、新聞に何て書いてあったのかというと、例えば、低レベルの汚染水を海に放出する、それからベント、それから原子炉への注水、こういう重大な決断が必要な場合に総理の指揮権を認めるということのように修正案がなるようなんです。
 ずっとこの委員会の中で、これは言葉は悪いですが、菅直人リスクのことが言われておりました。私は、専門家でないリーダーの暴走、私の元の上司ですけれども、いわゆる菅直人リスクが今回の災害にはあったと思っていいと私は思っています。
 不当な政治介入を防ぐため、これにやはり全力で今回の法案というのはまとめ上げなければいけないというふうに思いますけれども、この総理の指揮権も含めて、どのような組織のたてつけであるべきかということを、ぜひ木村先生にお伺いしたいと思います。総理の指揮権を中心としたことでお答えいただければと思います。

〇木村参考人
 これも私も新聞報道でしかほとんど読んでいないので、実際こういう話というのは、正直な話、事故当初の話、僕がわかるわけないんですよ。何でかといったら、現場にいましたから。情報なんか見れるわけないんですよ。車の中のラジオしかわからないし、その状況がどうなっているかということを気にしていたら、自分のモニタリングはできないわけです。
 ということなので、正直な話、指揮権については、新聞で読んだ限りのことなので、ここの場で何を言っていいのかというのは、正直なところ責任が持てないので、ちょっと私には答えかねます。済みません。

〇斎藤(や)委員
 同じ質問を、ぜひ北澤先生にお願いいたします。

〇北澤参考人
 現場のことに関することも、これは、ベントも含めて、最終的には国全体にかかわる問題であります。ですから、一国の総理たるもの、そこのところにおいて国に危険が及ぶというようなことになったときに、それが、その部分での利害関係とか経営の問題とか、そういったことでおくらせるようなことが行われる可能性があるときには、当然、総理は指揮権を発動しなければならない、そういうところに陥るそういう場面というのは、想定されるというふうに私は考えております。

〇斎藤(や)委員
 ありがとうございます。
 恐らく、専門家でない人が中途半端な知識を振りかざして何か指示を出すということではなくて、専門家が出した最良の手段を総理に預けて、総理がその有無を判断するということの多分指揮権だとは思うんですけれども、このあたりも含めて、ぜひ修正案で修正できればというふうに思います。
 さて、組織の問題で最後なんですけれども、飯田先生から、ノーリターンルールなんというのをつくっても、実質的なものを伴わなければいけない、そういう話がありました。
 これから規制組織をつくるにしても、職員の四分の三が保安院で、あとは原子力安全委員会とそれから文科省のスタッフです。
 今回の原発事故の、ちょっと言葉は悪いですけれども、戦犯とも言うべきスタッフをそのままスライドさせて、果たして、だめなものはだめと言える体制をつくれるのかということなんです。
 実のある、まさに原発のリスクから国民を守っていこう、原子力村の甘いささやきに耳をかさない組織をどうやってつくっていくか。最初のベースをどうつくるか、人材をどのように配置をするのか。そして、それともう一つ、原発の安全性を厳格に追い求めるだけの集団であるべきなのか。それから、海外では規制機関の人材教育をどのようにやっているのかということもやはり参考にしなければいけないというふうに思うんですけれども、飯田先生と宮野先生に、組織の中身の人事だとか人材発掘だとか、そしてマインドの持ち方とか、そういうことをお伺いしたいと思います。

〇飯田参考人
 まず申し上げた、ノーリターンルールを私は否定するのではなくて、それは最低限絶対必要だと、形式的には。ただし、形式的ルールだけでは必ず実体が崩れていくので、まずは、これは基本的には、去年、実は原子力安全顧問会議というものに私は突っ込まれて、お座敷のような割と緩い会議だったんですが、並行して実体の組織設計はどんどん進んでいきました。それは今日に至るまで、実務で行われている状況というのは全く不透明だったわけです。
 欧米的な形でいうと、本来あるべき組織論というのは、まず、トップを誰にするかというのをしっかり決めます。そのトップが自分の裁量権のもとでディレクターを選んで、そのディレクターがきちんとその組織を所掌する。もちろん、全体としてのアームスレングス、いわゆるきちんと距離を置くようなルールとかはきちんとつくった上で、あとは、その組織を透明化していくことによって、そういう恥ずかしいことはできなくなりますね。
 だから、霞が関は両方あるんです。霞が関の各省庁の思惑が入り込むリスクと、それから原子力村との利害相反、その両方を排するようなきちんとした背筋の伸びた組織を、やはり、権限移譲とトップのいわゆるガバナンス、そしてディレクション、そこをしっかりつくることによって、一人一人は真面目な技術者の人がほとんどですので、その人たちに誇りのある仕事をしていただくような組織をどうつくるかという意味では、そういうリーダーの役割が非常に重要だというふうに思います。

〇宮野参考人
 組織は、ノーリターンというのはそのとおりだと思いますし、どういう組織にしたらいいのかということを、今、飯田先生がおっしゃいました。
 やはり、トップをしっかり決めることがまず大事です。それで、その周りに委員を何人か置くということになっていると思いますが、トップがその委員を決めてはならないと私は思います。やはり、その委員も含めてバランスよく決める。要するに、反対を言っていてもいいと思うんです。技術的な議論は幾らでもあってもいいと思います。ただ、そこに政治的な議論を持ち込むのはおかしいと思いますし、それから、専門家でない人たちが入って議論するのは意味がないと思います。
 ぜひ、反対の意見を述べる専門家が集まって常に議論をしていただきたい。その中で下の組織をきちんと動かしていけば、日本人は、上がしっかりすればきちんと下は動くようになると私は思います。
 教育の仕組みは、先ほど申し上げませんでしたが、来週からIAEAの国際人材育成というのが、日本で英語だけで教育をするというのは、東海村で東大が行うと私は聞いておりますが、三週間ぐらい缶詰になって国際人と一緒になって日本人も議論する。そういう教育の中に入れ込んでいくというようなことも必要だというふうに思いますし、ぜひ、教育をするということでマインドを育てていっていただきたい。ぜひ、トップそれからその周りをきちんと固めて、その見識に従った組織となるように持っていくようにしていただきたいなというふうに思います。
 以上であります。

〇斎藤(や)委員
 今、トップのやはりマインドだとかトップの方向性だとか、そういうのが非常に重要であるということを言われました。
 追加でちょっと質問なんですけれども、そのトップのキャリア、そういうものはどうあるべきかと思うんですけれども、過去の職歴とか仕事の仕方とか、今はありましたけれども、そういう点では飯田先生それから宮野先生、どうでしょうか。

〇飯田参考人
 きょうの私のメモの中に、スウェーデンのSKIの例ということで、当然、専門性は必要であると同時に、人格、社会性あるいはきちんと戦略的目線を持っているかといったことが厳しく評価をされて、つい最近も、スウェーデンの原子力長官選考プロセスを、かわったばかりですね、いろんな人がノミネートされていましたが、思惑で人を選ぶのではなくて、まずはきちんとそういう人を何名か出して、あとは政治決定だと思いますが、最低限のきちんと高いレベルのスクリーニングが必要だというふうに思います。

〇宮野参考人
 私も全く同感でございます。
 ぜひ専門性をきちんと見て、見識、それから経歴も参考にするのがよろしいかと思いますが、やはり、人格その他含めて、専門性をきちんと持った人の中からそういった人間を選ぶということが必要だというふうに思います。ぜひそういうふうにしていただきたいと思います。

〇斎藤(や)委員
 ありがとうございました。非常に参考になりました。
 やはり私たちがやらなければいけないのは、もう本当に次の福島をつくらないということ、それをしないための組織づくりをするべきだというふうに思います。
 きょう、四人の先生方からそれぞれ御意見がありました。形骸化された安全性から実効性のある安全性の確保をするべきだ、最悪のことを想定した組織、法律、情報管理の整備をするべきだ、そして、無責任集団ではなくて、心ある責任集団に変えるための組織づくりをするべきだ、私はきょうの提言からこの三つを抽出したんですけれども、ぜひこの三つを目標にした、そして、それを実行できる規制組織というものをこれから修正案で与野党でもんでもんで、そしていいものができればなというふうに思います。
 できれば、その規制組織の安全基準で大飯原発再稼働というのは判断するべきなのではないかということを最後に提言させていただきまして、ちょっと時間が余ってしまいましたけれども、私の質問とかえさせていただきます。
 きょうはありがとうございました。

〇生方委員長
 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

第180回 国会 衆議院 憲法審査会

第180回 衆議院 憲法審査会 第7号
平成24年6月7日(木)
午前九時一分開議

【日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法の各条章のうち、第三章の論点)】

○大畠会長
 これより会議を開きます。
 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に日本国憲法の各条章のうち、第三章の論点について調査を進めます。
 本日の議事について申し上げます。
 まず、衆議院法制局当局から説明を聴取し、その後、各委員からの意見表明等を含む自由討議を行うことといたします。
 それでは、衆議院法制局当局から説明を聴取いたします。衆議院法制局法制企画調整部長橘幸信君。

○橘法制局参事
 衆議院法制局の橘でございます。
 前回に引き続きまして、今回は、第三章国民の権利及び義務の章につきまして、お手元配付の資料に基づき、その主要論点について御報告をさせていただくことになりました。よろしくお願い申し上げます。
 申し上げるまでもなく、人権保障規定は憲法の最も中核的な規定でございます。この点を端的にあらわすものとして、まず冒頭、内外二つの事例を御紹介申し上げたいと存じます。
 一つは、フランス人権宣言の規定でございます。一七八九年のフランス人権宣言十六条では、権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていない全ての社会は、憲法を有しないと定めて、近代憲法の核心が人権保障と権力分立であることを端的に述べています。
 もう一つは、大日本帝国憲法制定時における、伊藤博文と、初代文部大臣として有名な森有礼の論争でございます。
 明治憲法第二章の臣民の権利義務に対して、森有礼は、臣民は、天皇に対して、責任は持っているが権利などは持っていないとして、臣民の権利という文言ではなく、臣民の分際とすべきと主張したそうでございます。これに対して伊藤博文は、森氏の説は憲法学及び国法学に退去を命じたるの説と言うべし、そもそも、憲法を創設するの精神は、第一、君権を制限し、第二、臣民の権利を保護するにあり、ゆえに、もし憲法において臣民の権利を列記せず、ただ責任のみを記載せば、憲法を設くる必要なしとして、憲法から臣民の権利を除けば、それは憲法ではなくなると述べて反論したそうでございます。結局、伊藤博文の説が採用されたわけです。
 それほどに、憲法における人権保障規定の重要さは、洋の東西を問わずに認識されてきたものと言えるかと存じます。
 さて、以上を踏まえつつ、本日のテーマでございます第三章国民の権利及び義務に定められております第十条から第四十条までの三十一カ条の規定を眺めますと、この章は、判例の積み重ねも大変多うございまして、実に多くの論点が含まれている分野でございます。
 それらを念頭に置きつつも、ここでは、これまでと同様に、あくまでも、衆議院憲法調査会の報告書を初めとする、国会でのこれまでの憲法論議及び各党各会派の憲法提言等で取り上げられてまいりました条文を中心に、分類、整理いたしました。同時に、幹事会での御指摘、御示唆を踏まえながら、先生方の自由討議が濃密かつ効率的に行われることに資するため、大きく四つに分類して御報告申し上げたいと存じます。
 お手元配付のA3縦長の一枚紙、論点表をごらんいただければと存じます。
 すなわち、第一は、人権総論に位置づけられます人権の調整、制約原理としての公共の福祉と、これに関して議論されることになる国民の義務について。第二は、これまでの国会での権利義務に関する議論の大半を占めてまいりました、いわゆる新しい人権について。第三は、そのほかに、これまでの憲法論議において御議論が多かった人権条項に関する論点を四つほど抽出し、これらについて御報告申し上げたいと存じます。そして最後に、これら以外の第三章の条項に関する論点についても簡潔に御報告させていただきたいと存じます。

 まず、第一の論点、公共の福祉についてでございます。
 この概念については、学説の通説的見解によれば、人権相互の矛盾、衝突を調整するための実質的公平の原理を意味するもの、このように理解されているところでございます。
 しかし、これに対しては、従来から次のような御批判があるところでございます。
 例えば、人権を制約する根拠となるのは必ず他の者の人権でなければならないとの前提は、人権という概念をよほど拡張的な意味に用いない限り理解が困難である。例えば、表現の自由を規制する根拠として持ち出される町の美観や静穏、性道徳の維持、電波の混信の防止などといったものは、いずれも個々人の権利に還元されないものであり、社会全体の利益としてしか観念し得ないのではないか。あるいは、公共の福祉を人権相互の矛盾調整のための原理とする学説の影響で、国家や国民全体の利益のために人権を制限することに過度に抑制的な対応がなされているのではないか。このような御批判でございます。
 また、そもそも公共の福祉という表現そのものがパブリックウエルフェアの翻訳であり、人権相互の調整、制約原理をあらわす日本語として、ややミスリードではないかとの御批判もあるようでございます。
 このような問題意識を背景にしつつ、公共の福祉の概念について、人権制約の一般的原理にふさわしい別の表現、例えば、公益及び公の秩序といった表現に改めるべきではないかとする御見解がAの欄の御見解です。
 これに対して、そのような表現変更は不要であり、必要かつ合理的な人権相互の調整、制約は、現在でも公共の福祉の概念のもとで国会が定める法律によって行われており、今後ともそのような方式でよいとするのがBの欄の御見解でございます。また、Cの欄の見解は、法律による人権制約は必要最小限度であるべきとする点を強調して、現行のままでよいとする御見解かと存じます。

 次に、国民の義務に関する議論です。
 現行憲法には、その保護する子女に教育を受けさせる義務、勤労の義務、納税の義務のいわゆる三つの国民の義務規定が定められております。
 これに対しては、現行憲法は権利一辺倒で義務意識や規範意識が希薄であるとか、あるいは、権利の行使には義務の履行が伴うことを憲法において明確にするべきであるとして、新たな義務規定の創設を求める見解がございます。これがA1の見解であり、そこで挙げられる具体的な義務規定としては、国防の義務、環境保全の義務、投票の義務などがございます。これに対してA2は、そのような権利の反面としての義務という強い規定ではなくて、より緩やかな、規範意識というような意味での責任あるいは責務という形で、例えば国民の環境保全の責務のようなものを規定するのが適切ではないかとする御見解でございます。
 これらの明文改憲の御主張に対しては、近代立憲主義における憲法の意義は、公権力に対する縛りという制限規範という点にこそあるのであって、憲法が権利一辺倒であるのはそもそも当然のことであるとして、国民の義務や責務のようなものは、それが必要なのであれば法律ベースで定めればよいとするのがBの御見解でございます。さらに、明文改憲も特段の立法措置も必要ないとするのがCの欄の御見解です。

 大きな二番目は、いわゆる新しい人権に関する御議論です。
 この論点につきましては、まず、憲法の人権保障の規定には、現行憲法九十七条自体が人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であると述べていることなども踏まえて、時代の変化に対応して、この人権のカタログを豊富化していくことが望ましい、またそれこそが憲法の要請するところであるとして、このような認識を背景とし、明文改憲を主張するAのお立場がございます。
 これに対して、我が日本国憲法は、人権保障に関する一般的、包括的な規定として第十三条を持っている、新しい人権と言われるものは、この十三条の定める幸福追求権の具体化として解釈上導き出すことができるのであるから、このような解釈を前提として立法措置を講ずれば足りるとするBのお立場、さらには、十三条に既に含まれているのであるから、立法措置を講ずる必要もないとするCのお立場もございます。
 なお、一般的に主張されることが多い新しい人権としては、環境権、知る権利あるいはアクセス権、プライバシー権あるいは自己情報のコントロール権、犯罪被害者の権利などがございますが、ここでは、最もよく議論の俎上に上ります環境権に関する御議論を簡単に御紹介申し上げさせていただきたいと存じます。
 まず、国民の良好な環境を享受する権利を憲法に明記するべきであるとするのがA1の立場です。
 これに対して、同じ明文改憲の御主張でも、良好な環境というものについて、これを大気や水といった自然環境に限定する考え方もあろうし、他方、遺跡や寺院などのような文化的、社会的環境まで含める考え方もあり、人それぞれによって違うのではないか、少なくとも現時点では、これを個人の権利として規定することは適切ではないのではないか、むしろ、規定するのであれば、ドイツの基本法二十a条のように、国家の環境保全の責務という国家目標規定として定めるのが適切ではないかとする見解がA2のお立場かと存じます。
 そして、このA2の立場において、国家の義務あるいは責務というだけではなく、国民の義務あるいは責務としても定めるべきであるとする見解は、第二の論点として先ほど言及いたしました国民の義務、責務の論点と関係してくることになります。
 なお、このように、国民の権利として規定するべきか、それとも国家や国民の責務として規定するべきかという論点は、次の知る権利などについてもございます。すなわち、知る権利という形で国民の側の権利として定式化するのか、それとも政府の説明責任といった形で定式化するのかといったぐあいでございます。

 三番目は、これまでの憲法論議において御議論の多かった、その他の人権条項に関する論点として、四つほど論点表に掲げております。
 まず、生命倫理に関する御議論です。
 これは、遺伝子工学等の発達により、それらの学問、研究は、時として生命の尊厳や生命倫理と緊張関係を生ずる場合が出てまいります。そこで、スイス憲法等の規定に倣って、学問の自由といっても決して無制限なものではない、特に、生命の尊厳を侵害するような生命操作の禁止、遺伝情報へのアクセス規制などを憲法に明記するべきであるとする見解がAの欄のお立場であります。
 これに対して、そのようなことは公共の福祉による人権制約として、法律でもって規定すれば足りるとするのがBの欄のお立場です。

 二つ目として、政教分離原則に関する御議論がございます。
 現行憲法は、二十条一項の後段で、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」と規定するとともに、同条三項では、「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」と定めて、いわゆる厳格な政教分離を定めていると言われているところでございます。
 しかし、国家と宗教の厳格な分離といっても、その一切のかかわりを排除するものではなく、最高裁判所におきましても、まず第一に、その行為が世俗的な目的のものであること、第二に、その行為の主要な効果が特定の宗教を助長したり、逆に圧迫したりするものでないこと、このような条件を満たす場合には、二十条三項で禁止される宗教的活動には該当しないと判示しているところです。いわゆる目的効果論と言われる判断基準です。しかし、具体的にどのような行為が許容され、あるいは禁止されるのかについては御議論があるところでございます。
 また、毎年八月になりますと、首相初め国務大臣などの靖国神社の公式参拝の可否、適否が政治的にも問題となってきたことは先生方御承知のとおりでございます。
 このような問題意識を背景といたしまして、明文改憲を主張する御見解としては、厳格な政教分離を前提として、これをこのまま憲法に明文化すべきであるとするA1の見解と、これとは逆に、一般的な習俗的行事や社会的儀礼に属する行為については、広く憲法上許容されるように明文の規定を設けるべきであるとするA2の見解がございます。
 もちろん、現在のままでよいとするCの見解もございます。

 三つ目として、家族、家庭や共同体に関する御議論がございます。
 現行憲法は余りに個人主義的に偏しているとして、社会の基礎としての家族や家庭の重要性を再認識し、家族間における相互扶助、家庭教育等の家族や家庭が果たしてきた機能を再構築するためにも、家族や家庭の尊重及び国家によるその保護の規定を憲法に設けるべきであるとするAの欄の御主張がございます。
 これに対して、家族や家庭に関する事項は、近代憲法が峻別してきた公と私、公、パブリックと、私、プライベートのうち、後者に属するものであり、それは私人の自由な領域に任せておくべき事項であること、また、家族や家庭の尊重のような道徳的な事項は憲法に書き込むべきではないことなどを理由として、現行のままでよいとするCの欄の御主張もございます。

 最後は、知的財産権に関する御議論です。
 現行憲法では、二十九条に財産権一般の保障規定がございますが、知財立国としての我が国の立場を憲法上明記する観点からも、知的財産権については特記するのが望ましいというAの欄の御主張がございます。
 これに対しては、知的財産基本法等の法律ベースで措置すればよいとするBの御主張もございます。
 最後に、以上、御報告申し上げました論点に係る条文以外の第三章の条項に関する論点について、ごく簡潔に御報告申し上げます。

 ここにも重要な条項が幾つも並んでおります。
 例えば、第十四条の法のもとの平等に関する規定は、立法過程においても裁判においても頻繁に引用され問題となる条文でございますが、国会論議におきましても、女性などの社会的弱者に対して優遇措置を講ずることにより実質的平等を図ろうとする、いわゆるアファーマティブアクション、積極的是正措置の議論や、議員定数不均衡、いわゆる一票の格差の是正の問題などが議論されております。
 また、二十五条の生存権条項につきましては、健康で文化的な最低限度の生活の保障規定が昨年の三・一一以降の大震災による被災のもとにおいてどのような意味を持っているのか、憲法の理念は本当に実現されているのか。さらに第二十七条、二十八条の労働基本権をめぐりましても、現下の厳しい雇用状況のもとにおいて、憲法の定める勤労の権利はどのようなものとして保障されているのか、働きたくとも仕事がないのでは、勤労の義務など果たすことはできないのではないのかとの言説すらある状況をどう考えるべきかといった議論があり得るところです。
 さらに、三十一条から四十条のいわゆる刑事手続上の権利をめぐっては、加害者である刑事被告人の権利はあるけれども犯罪被害者の権利がないではないかといったことに関する御議論は、新しい人権の欄にも掲載している事項でありますが、そのほかにも、第三十一条の適正手続条項の射程距離の問題や、第三十二条の裁判を受ける権利と裁判員制度、第三十六条の残虐な刑罰禁止と死刑制度の存廃の論点などもあるかと存じます。
 以上は、いずれも明文改憲の要否という視点とは別の観点からの論点ではありますけれども、国会の内外においてさまざまな議論が行われてきている重要な論点と言えるかと存じます。
 以上、憲法第三章国民の権利義務に関する主要論点につきまして御報告させていただきました。
 駆け足で大変大ざっぱな御報告になってしまいましたが、以上でございます。ありがとうございました。

○大畠会長
 以上で衆議院法制局当局からの説明聴取は終わりました。

○大畠会長
 これより各委員からの意見表明等を含む自由討議に入ります。
 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派を代表する委員が順次発言を行い、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。
 それでは、まず、各会派を代表する委員の発言に入ります。
 発言時間は七分以内とし、その経過につきましては、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせをいたします。
 発言は自席から着席のままで結構でございます。

(中略)

○大畠会長
 次に、委員各位による自由討議に入ります。
 この際、委員各位に申し上げます。
 本日の審査会におきましては、論点を、第一に、公共の福祉及び国民の義務に関する論点、第二に、いわゆる新しい人権に関する論点、第三に、生命倫理、政教分離原則、家族、家庭や共同体の尊重及び知的財産権に関する論点、第四に、第一から第三までで議論の対象としていない論点、以上四つに分類いたします。
 各委員におかれましては、おおむねこの四つの論点の分類ごとに意見表明をしていただきますよう、御協力をお願いいたします。
 なお、この四つの論点の分類はあくまで目安でございますので、各委員の発言がその他の論点等に及ぶことは結構でございます。
 発言を希望される委員は、お手元にあるネームプレートをお立ていただき、会長の指名を受けた後、発言をお願いいたします。発言が終わりましたら、ネームプレートは戻していただきますようにお願いいたします。
 発言は自席から着席のままで結構でございます。また、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただきますようお願いいたします。
 なお、幹事会の協議によりまして、一回当たりの発言時間は五分以内といたしたく存じます。委員各位の御協力をお願い申し上げます。
 発言時間の経過につきましては、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせをいたしますので、どうぞ御協力をお願いいたします。
 それでは、まず、公共の福祉及び国民の義務に関する論点について発言を希望される委員は、ネームプレートをお立ていただきます。

○鈴木委員
 民主党の鈴木克昌でございます。
 私は、先ほど何人かの委員の方からも出たんですが、雇用の問題と憲法の問題について少し持論を述べさせていただきたいというふうに思います。特に、非正規雇用とそれから憲法のいわゆる平等原則とか勤労の権利というところでございます。
 言うまでもありませんけれども、現在の非正規労働者の数というのは千七百五十万人を超えておるということで、勤労者の三割を占めているということであります。その方々が幸せな生活を送っていただいておればいいんですけれども、現状では大変厳しい状況に置かれております。
 非正規労働者というのは、正規労働者と比較して、不況期においては解雇や雇いどめなどを受ける、賃金が低い、それから、いわゆる企業内での職業訓練を受ける機会も低い、こういうことが問題になっているわけであります。
 私は、この非正規労働者の問題というのは憲法にかかわる問題だ、このように思っておりまして、いわゆる憲法二十七条でありますけれども、国民は勤労の権利を有するというふうに規定をされております。しかし、非正規労働者がここまで増加をしている状況の中で、勤労の権利が十分保障されているというふうに言えるかどうか、これについて私は、やはり検証をする必要があるというふうに思っております。
 また、憲法十四条の一項で、いわゆる平等原則ということでもありますが、これもやはり検証が必要ではないかな、このように思っております。
 何が言いたいかということでありますけれども、やはり同一労働、同一形態といいますか、同一価値の労働に対してはやはり同一の賃金が払われるべきであるというふうに私は考えておりまして、非正規労働者の労働条件の確保等についても検討が必要であるというふうに思います。
 改めて、憲法の保障する勤労や、そして平等の原則といいますか理念等々に立ち返って、国民の勤労の権利を確保するような、とりわけ非正規労働者の労働条件の確保等の問題について、憲法問題として検討していく必要があるのではないかな、私はこのように思っております。
 以上です。

○柴山委員
 権利保障は、非常に現代社会において重要性が高い分野だと思っております。なかんずく、新しい人権の問題について、かつて想定されていた明文上の権利ではなかなか解釈が難しいものがあり、そういった分野の権利については、やはり私は明文を書き加えていくことが必要であるというように思っております。
 しかし、過度に人権を尊重し過ぎるが余り、国民が義務あるいは責務について軽視をする風潮が近時見られることについては、やはり警鐘を鳴らさなくてはいけないというように感じております。
 そこで、公共の福祉について取り上げなければいけません。
 この公共の福祉は、人権を制約する原理として憲法十三条などに書かれておりますけれども、私は、この福祉という言葉の使い方が、権利を制限するのに本当に適切な用語であるかどうかということについては疑問に感じるところであります。
 また、この公共の福祉の解釈についても問題が大きいと思います。先ほど橘部長よりお話があったとおり、通説では、公共の福祉とは人権相互の矛盾、衝突を調整するための実質的公平の原理ということでありまして、平たく言えば、人に迷惑さえかけなければ権利は最大限に尊重されなければいけないという理念でございます。
 しかしながら、私たちの経験上も明らかなとおり、人に迷惑さえかけなければいいという方々が実は結構他人に迷惑をかけていたりすることもございます。これについてはまた、先ほどお話があったように、美観あるいは性道徳、国家的な秩序の利益ということについては、人に迷惑さえかけなければこれらを脅かしてよいのかということについて、なかなか説明がつきづらいという側面があります。
 青少年の健全育成に係る規制、あるいは薬物を使用しても、例えば暴れ出してほかに迷惑をかけなければ、自分自身が健康を害してもいい、そういうようなことにもつながっていきかねません。このような解釈をもたらす公共の福祉というものは、やはり私はしっかりとした文言に改めなければいけないというように思っております。
 解釈上、先ほど来お話が出ているように、社会的な弱者をしっかりと保護するために、社会国家的な側面を公共の福祉に読み込むということは既に行われておりますけれども、例えば、健全育成のためにその者の自立、自己決定に干渉していくパターナリスティックな、先ほど申し上げたような麻薬ですとか健全育成、こういう事柄についてはなかなか、解釈上まだ制約原理として成熟はしておりません。
 こういったことも含めて、公共の福祉という言葉を改め、公益または公の秩序というような文言改正をしていくことが必要なのではないかというように私は考えております。
 違憲立法審査で、裁判上、判断基準さえ明確にすればよいではないかという意見もありますけれども、まずは、やはり実定憲法の上でこの公共の福祉という言葉を改めることが私は必要であるというように思っております。私益よりも公益が無秩序に優先するということに解釈がなっては当然いけないわけですけれども、そこは精緻に解釈をしていくということができるかと思います。
 また、国民の義務について、これを憲法上書く必要はない、法律上定めればよいではないかというお話もありますけれども、それは今申し上げたことと裏腹の関係にありまして、憲法上、権利の制約ということで必ずしも説明はできないけれども、やはりさまざまな形で責務として明文上しておいた方が誤解が生じないもの、これについては最低限の明文化ということが必要になってくるということを私は申し上げたいと思います。例えば、後日話題になるであろう緊急事態における国民の責務等がこれに当たるかと思います。
 以上申し上げて、私の発言を終わらせていただきます。ありがとうございました。

第180回 国会 衆議院 環境委員会

第180回 衆議院 環境委員会 第4号
平成24年6月5日(火)
午前九時開議

【原子力規制委員会設置法(自公案)の提案者としての答弁 】

【本日の会議に付した案件】
連合審査会開会に関する件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)
原子力安全調査委員会設置法案(内閣提出第一二号)
地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)
原子力規制委員会設置法案(塩崎恭久君外三名提出、衆法第一〇号)

○生方委員長
 これより会議を開きます。
 内閣提出、原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案、原子力安全調査委員会設置法案及び地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件並びに塩崎恭久君外三名提出、原子力規制委員会設置法案の各案件を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案件審査のため、本日、参考人として原子力安全委員会委員長班目春樹君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室長森本英香君、内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室副室長櫻田道夫君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院長深野弘行君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○生方委員長
 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

○生方委員長
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山花郁夫君。

○山花委員
 民主党・無所属クラブの山花郁夫でございます。
 規制庁については、もともと四月一日スタートという目標だったわけですけれども、残念ながら、ようやく委員会での審議がスタートということになりました。この間も与野党でも協議がされてきたと承知をいたしておりますし、早期のスタートが望まれるわけですので、与野党の協議は政党間でございますので、衆法提出者の皆さんもぜひ議論を加速していただければと思っております。
 その上で、先般本会議でも質問させていただきましたけれども、細かいことも含め、また、本会議と違って往復でということになりますので、少し議論にわたることについても質疑をさせていただければと思っております。
 まず、この組織のあり方について、政府案と衆法では、基本的には、要するに、推進をするところと規制をするところをはっきり分けようということは同じだと思うんですけれども、ただ、その体制についていささか考え方の違いがあるのかなと思っております。
 まず基本的なことですけれども、例えば政府案ですと、原子力規制庁の長官という人物はどういう人がなるということを想定しているのか。また、衆法ですと委員会なんですけれども、委員長ということになりますね。大体、イメージとしては学識経験者みたいな人がなるのかなというふうに受けとめているんですけれども、まず、そのあたりについてのイメージを、政府側と衆法の提出者、両方に伺いたいと思います。

○細野国務大臣
 原子力規制庁の長官でありますけれども、やはり二つの要素があるというふうに思っております。一つは、原子炉の安全確保を科学的、客観的に判断をするという専門性の部分、もう一つは、今回の事故を経験をいたしましたので、やはり危機管理がしっかりできるという能力、この二つをどう考えるか、バランスするか、そういう観点から人選をしなければならないのではないかと思っております。
 加えまして、能力的な要素だけではなくて、昨年起こりました原発の事故をしっかりと反省をして、その反省に立った上で新たに規制をやっていかなければならないという、そういう要素も必要なのではないかというふうに考えているところでございます。

○塩崎議員
 基本的な考え方は今大臣からお話がありましたけれども、特に異論があるわけではありませんが、我々は法第七条で、委員長は、「人格が高潔であって、原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。」ということで、特に、学識経験者、学者とかいうことを前提に、それでなきゃいけないというようなことを書いているわけではないわけであります。
 専門的な知識とか経験をしっかり持っている、なおかつ、規制行政ですから、実務的な行政の能力を兼ね備えた者がやはりいいんじゃないかというふうに思っていますし、諸外国でこのような委員の制度を持っているところ、アメリカとかフランスとか見てみますと、学識経験者、つまり学者バックグラウンドだけではなくて、行政経験、つまり役人出身という人もいるわけですね。
 フランスなんかの場合は、五人のうち二人が役所出身です。それも、日本でいえば産業政策局長までやってから原子力の世界に行って、そのままずっと規制をやっているというような人もおる。二人ともそうですね。ただし、二人とも事務官ではなくて、技術者、鉱山学校の出身のお二人でありまして、そういうことで、何もがちがちの学者というようなことを考えているわけでは全くないということであります。

○山花委員
 イメージとしては、例えば行政経験者といっても、今御指摘があったように、日本でいうと経産省みたいなところの、技術者だというお話でしたけれども、今回、規制と推進というのを分離するということですから、何かイメージとしては学識経験者かなというイメージを持っていたんですけれども、必ずしもそうではないというお話でありました。
 ただ、いずれにしても、衆法ですと、いわゆる三条委員会ということで、要するに分離独立ということを非常に強調されているわけですけれども、趣旨はわからないでもないですし、かつて我々もそういうイメージを持っていたということは認めるところでありますが、ただ、実際今回の震災などを受けて、やはりちょっと考えなければいけないなというふうに我々も思った上で、与党ということで、政府提出の形の法案について議論をして、それでよしとしてきたという経緯がございます。
 一つは、本会議で他党の方からも、昔、民主党は三条委員会ということを言っていたじゃないかということを言われて、総理の方からも、いや、今回の震災を受けてちょっと検討し直したんだというふうに答えております。
 一つ我々が問題だよねと思っているのは、三条委員会の形にしますと、通常のときはまあまあそれでも何とかなるのかなと思いますけれども、いわゆる緊急事態なども想定をしたときに、それぞれの委員について国会同意人事ということになります。総理が国会の同意を得て任命するという形になるわけで、先ほど、通常のケースであれば問題ないよねと思っていたというふうに申し上げたのは、たまにイレギュラーなことがあって同意が得られないというようなことも、これまでの国会の経験の中で、この問題ではなくて、三条委員会についてはあったわけです。
 例えば国会閉会中であれば、任命して事後に同意をすればいいということになっていますけれども、例えば事後に同意が得られないとこれは罷免するということになってしまいますので、そういうリスクが発生してしまう。そうすると責任体制に空白が生じてしまうのではないかという問題意識を持っているんですけれども、この点について、衆法提出者の方々についてはどのように考えておられるんでしょう。

○柴山議員
 ありがとうございます。
 今、山花委員から御指摘になられているように、国会が閉会中ですとか、あるいは解散されている等の理由によりまして国会の同意を行うことができないという場合については、これは暫定的に政府の方で指名をするという規定がございます。
 それで、国会開会中について、これまでも、国会の同意を得られずに、国会がいろいろ空転して、記憶に新しいところですと、日銀の総裁の同意人事で再三にわたりまして民主党の大反対によってポストがずっと決まらなかったということもありますけれども、また、そういう事実を踏まえて検討しなくてはいけないということはありますけれども、ただ、あのときと違って、やはり原子力安全規制を担う組織の構成員ということは、まず、今おっしゃったように、人命にかかわる非常に重要かつ緊急性を要する人事である。これについてのコンセンサスは、恐らく、党派を超えて我々議員各位が持っているというように思うんです。それがまず一点。
 それから、あくまで、原子力規制組織ということになりますと、専門技術的な事務を遂行するのに必要な知識と経験を有しているかどうかという判断の客観性というものが比較的担保できるのではないかという、この両者を踏まえるべきだと思います。
 この両者を踏まえれば、政府も、適切な判断のもとに原子力規制委員会の委員長及び委員の人選案を提示することになると思いますし、そうやって提示された人事案について、国会でも迅速に詰めた議論をするということが期待されると思います。
 逆に、政府に人選をお任せするということになると、ともすると、先ほど委員御自身が指摘をされたように、推進側に偏った人選が行われてしまうということが私はあり得ると思いますので、そこはやはり、国会でオープンにかつ迅速に議論をするということがかえって求められるんじゃないかなというように思います。

○山花委員
 中身について専門的、技術的なことであり、また、判断についても客観性が求められるというお話であります。
 そしてまた、コンセンサスが得やすいのではないかという話ですけれども、性善説と言ってしまうと言い過ぎかもしれませんけれども、うまく回る、要するにノーマルに回る話というのは、これは別にこの話だけじゃないはずで、余り我々も触れたくない話かもしれないけれども、日銀の件だって、一般的に言えばいろいろそういう理屈は立つんだと思うんです。
 ただ、国会同意人事というのはそれだけではなくて、まず、出す段階で情報管理等々いろいろ難しいところも結構あったりするわけでありまして、そこについて制度の問題としてちょっとそういうリスクがあるのではないですかということについては、今の御説明でもまだ解消できないのかなと思っておりますが、きょうは第一ラウンドなので、指摘だけにとどめさせていただきます。
 また、今御答弁がありました政治とのかかわりについても、ここがやはり我々との判断でちょっと違っているのかなと思っているところがあって、これは本会議でも議論させていただきましたけれども、緊急時の総理の権限についてでございます。
 災害時の総理の指示権ということについては、本会議の御答弁では、緊急時だからといって病状を総理に判断してもらいたいという話ではないはずだという御答弁だったと記憶しておりますけれども、ただ、問題はちょっと違うのかなと思っております。
 最終的に重い政治的な決断をしなければいけない、例えばお医者さんの例えでいえば、緊急時にお医者さんが診断したくないと言っているのに対して、ちゃんと診断せよというふうに命じたりということではないかと思っておりまして、塩崎委員からは菅リスクということを言われておりました。
 今、事故調で調査していますので、東電が全面的に撤退を申し出た、それについて当時の菅総理がとめたということについて、それを前提にして話すわけではありませんが、仮定の話としては、例えば、現場がもう撤退したいと言っているのに対して、政治の責任でそれを撤退するなと言うことというのはあり得るんじゃないかと思っております。
 事実関係としてあった、なかったという話をしているのではなくて、もし本当にそういうことがあったとすると、政治の側でかかわるということが必要なんじゃないか。その意味では、最低限、最後の手段としてそういうかかわり合いが必要だと我々は思っていますし、政府案もそうなっていると思っております。
 そうはいっても、そこは提出者が言われているとおりで、余り素人があれのこれのとむやみに指示をするというのは、これもこれで適切でないと思っておりますので、その発動要件について、むやみに指示が発せられないということについて確認をさせていただきたいと思います。

○細野国務大臣
 緊急時の原子炉の鎮圧については、本会議でも申し上げましたけれども、まず一義的には事業者がしっかりやる、そして、科学的な知見に基づいて、事業者の対策に対する指導、助言、必要な指示ということについては規制機関が行うという、そういうたてつけになっております。
 この規制機関というのは当然科学的、客観的に行うということになりますので、総理の指示権というようなことはここでは想定をされていないわけですね。
 ですから、今山花委員が御指摘をされたように、総理が指示権を発動するようなケースというのは極めて限定的であるべきで、国としての危機管理上の最低限の、かつ最後の手段として行うべきものだというふうに考えています。
 一つだけ、私が経験をした例で申し上げますと、総理が指示を出した中で私が非常に記憶にとどめておかなければならないと思っております指示が、三月二十日に出ております。この三月二十日の時点で何を我々がとにかく取り組んでいたか、やっていたかというと、プールへの放水をやらなければならないということで努力をしておったんです。まさに危機的な状況がまだ続いていたというふうに考えます。
 そのときに、自衛隊も放水能力がある、警察も放水能力がある、消防もある、そして、中では東京電力がそれをしっかりと受けとめてサポートしなければならぬという状況の中で、誰がどういうふうな順番で行くのかということについて、現場の実は混乱がございました。私は東京電力の本店でその調整に当たっておりましたが、どこがどういう判断をして、どういう順番で行くのかということについて大変大きな混乱があって、放水がスムーズにいかないという経験をしたんです。
 これは、本当にまさに危機的な状況の中で一刻の猶予もないということでありましたので、何らかの調整ができるような準備をしなければならないということで総理が指示書を出されたという、そういう経緯がございます。
 そこでは、さまざまな、そういう放水にかかわるような調整については、これは、自衛隊が中心となって調整をして決定をする、そして、一元的な管理を現地に派遣をされる自衛隊が現地調整所において行うという、この指示書がなければ放水というのはスムーズに行うことができなかったというふうに考えています。
 したがって、こういう事故を二度とは起こしてはならないし、撤退の議論なんかも本来あってはならない話でありますけれども、本当にこういう極めてシビアなケースになった場合に、最後の手段としての総理の指示権というのはやはり必要ではないかと、この一例をもってしても私はそのように考えているところであります。

○山花委員
 大変貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございます。
 我々も本当に今回みたいなケースというのは二度とあってはいけないと思っておりますが、他方、今回あったことについてやはりちゃんと検証して、その教訓を生かしていかなければいけないと思うわけであります。
 衆法ですと、原災本部長の緊急時の指示の対象事項から委員会の所掌に関する事項を除いておりますので、そうすると、本会議でも御答弁ありましたけれども、今例えば国務大臣の答弁を聞かれて、そういうケースがあるんじゃないかということなんですが、我々としては、そういった意味で、最後のところでやはり政治がかかわる可能性というのは残しておいた方が、本当の緊急の事態のときにはいいのではないかと思っているんですけれども、衆法のたてつけだと、いわば切り離すというのは一つの理屈ではありますけれども、こういうケースでできるんですかと言われれば、できるとお答えになるんでしょうけれども、そういう極めて重たい政治責任を委員会の委員長が負うという形になってしまうと思うんです。本当にそれで適切でしょうか。
 そして、本当に三条委員会の委員長がそうした緊急時の最後の決断について担うということであって、政治が全く切り離されてしまう可能性があるわけですけれども、そこが適切なのかどうかということについての御認識を伺いたいと思います。

○塩崎議員
 極めて重い政治責任を負わされるんじゃないか、委員長に対して、委員会に対してという御質問でございますけれども、この点についてはかなり誤解が蔓延をしておりまして、非常に我々も迷惑をしているというか困っているというか、ですからこれは、委員会審議を通じて早くやろう、それで誤解を解いていこう、こんなふうに思っていたところであります。
 緊急時に原子力災害対策本部を設けて本部長のもとで緊急対処をするということについては、現行制度も今回の政府の提案も我々も全く変わらない、同じであるわけでありますし、自公案でも、政治の責任で判断すべき事項については引き続き総理が指示権限を有するということであるのでありまして、一方、総理の指示対象から外しているのは、委員会の所掌事務、すなわち、科学的知見に基づいて専門的に判断されるべき事項、これに限るわけであります。
 さっき菅直人リスクの話がありましたが、この間も私がテレビでもちょっと説明しましたけれども、別に菅直人さん個人を攻撃しているわけじゃなくて、要は、我々は皆同じなんですね。素人です。素人が専門技術的なことに口を突っ込んで大混乱をもたらしてリスクを高める、これを私は菅直人リスクと、申しわけないですけれども使わせていただいたということなんですね。
 そこで、もう一つ抜けていることは、何か三条委員会だと、全然遠いところに行って、月のかなたにいて、もう何もできないというようなことをお考えになっていらっしゃる方が多いんですけれども、世界の言ってみれば原子力規制当局に詳しい経験者が皆言っているのは、独立は孤立ではないと。つまり、独立していても、これはウェートマンの去年の六月の報告書にもあるように、緊密な協力というのは、この委員会と、それからあらゆるところがしっかりとやっていかなきゃいけない。ですから、一番やらなきゃいけないのは、総理とこの委員会がぴったしいつも一緒になっていなければいけないということだろうというふうに思うんですね。
 それで、誤解の典型は、プールへの放水とかあるいは海水注入とか、海水注入はともかく、プールへの放水は自衛隊にお願いするということなんですけれども、これは委員会がやるというふうに誤解されている方が多いんです。
 例えば毎日新聞の六月一日の社説にも、「最終判断は、国民の負託を受けた政治家の仕事である。自衛隊や警察、消防の出動なども同様だろう。」こう言っちゃっているわけですね。それは全然違う話であって、出動要請するのは、当然、本部長たる総理、これがおやりになるということなので、何ら変わるわけではないということを申し上げなきゃいけないんだろうと思うんです。
 要するに規制委員会は、専門技術的事項について科学的知見に基づく判断と対応をするのであって、政治的な決断を求められるわけではなくて、政治的な決断はやはり総理が、本部長がおやりになっていくというので、何も変わらないんだろうと思うんです。
 一方で、しかしそうはいいながら、今までとは違う独立性を持たせる、そして専門性を格段に高めるこの委員長及び委員会のメンバー、こういう人たちは、これまでとは違った重い責任はやはり負うわけであって、それは政治責任じゃなくて、この我々の法律に基づくマンデートに対する責任と覚悟をやはり持ってもらわなければいけないということが大前提で、それで、さっき申し上げた大事なことは、緊急時であろうと平時であろうと全く役割は変わらないけれども、しっかりとこの委員会と、それから総理を初めとする他の行政各部が協力を緊密にやっていくという中で、言ってみれば、事態を打開して安定を取り戻すということだろうと思います。

○山花委員
 今御説明があったんですけれども、ただ、たてつけとしては、委員会の所掌に関する事項を原災本部長の緊急時の指示の対象から除いていますので、ちょっと限界事例かもしれませんけれども、例えば先ほど例として挙げた、撤退することが適切かどうかというのは、かなり専門技術的な知見が必要かもしれない。
 そして、実際にあったかなかったかじゃなくて想定ですよ、そのときに、ひょっとすると本当にその現場にいる人たちの命が危ないかもしれないけれども、でもとどまってくれというような話というのは出てくるのではないかという、限界事例じゃないかと言われるかもしれないけれども、そういうケースについて、書き方としては委員会の所掌に関する事項から外れるのかどうかというのが、申しわけないけれども、今みたいな御説明だと、普通の典型的なケースは当てはまるんですけれども、まさに限界的なケースについて、委員会の所掌なのか原災本部長がまだ依然として権限を持っているのかというところが必ずしも明らかではないのかなと思っているんですけれども、もう一度お願いできないでしょうか。

○塩崎議員
 明らかなことは、原子炉が異常な状態で危機的なところまで来ているというときにどうするかという判断をするのがこの規制委員会であって、これは炉規法に基づいてやるわけですね。そこの判断が専門的な、技術的な知見に基づいて行われる判断ですから、そこがやはり最終的には、この炉に対してどうするのか、そして、そこに対して鎮圧をするやり方としてどの位置にいながらやるかとか、そういうことについてはやはり判断をしなきゃいけないわけですね。
 退避をするとか、そういうようなことも、ですから、どの距離でやるのかとか、そういうことであって、すぐれてこれは専門技術的な問題に基づくもので、それをすべきかどうかというようなことは、当然、委員会が判断をして決断をしなければいけないと思いますが、先ほど申し上げたように、そういう大変重大なときには、特に、先ほど申し上げた緊密な協力関係、相談というものがあってしかるべきであって、本部長としては全体に対して責任を負っているわけです。その一部に、規制委員会の、言ってみればこの炉規法の世界で、オンサイトで頑張らなきゃいけないという責務があるわけでありますので、当然、本部長並びに他の関係者との間で緊密な協力と連携がこの委員会との間でなければいけないので、そういった一次退避を、どこまで、どういうふうにするのか。
 だって、やめてどこか旅行に出るわけじゃないのであって、技術的な判断の延長線上で退避をするかとかそういう選択肢が出てくるけれども、それが本当に正しいのかどうかというのは技術的な観点から判断をしなければいけないので、それは総理はできないということは先ほどお認めになったとおりであって、そういうことを総合的に、さっき言ったように一体不離でぴったしやっていくということが一番いい結果をもたらす最短の道だというふうに思います。

○山花委員
 済みません、時間が迫ってまいりまして、ちょっと通告したのを全部できそうもないんですけれども、もう一つ、防災体制についてお伺いしたいと思います。これも本会議で少し議論をさせていただいた話です。
 広域にわたる避難とかモニタリングなどを円滑にやろうとすると、自治体の首長さんだとか、場合によっては自衛隊を動かすみたいな話が出てきて、平素からの調整というのが必要だと思うんですけれども、これについて、政府として具体的にどんなケースが想定されるのか、どんなことを想定しているのかというのを教えてください。
 あわせて、衆法の提出者については、もう一回聞く話ですけれども、できるんだというようなことを本会議でおっしゃっておられましたけれども、本来は、やはり原子炉の安全任務、先ほど、技術的な、専門的なということを言われた。そこを任務としている人たちが、こういった自衛隊との連携ということでやるのはちょっと現実的に難しいんじゃないかと思うんですけれども、改めてそこについて教えてください。

○細野国務大臣
 先ほどの件について一言だけ。
 塩崎先生の御答弁を聞いて、考え方としてそごはないなということで、正直、安心をいたしました。共通認識ができると私は思います。
 ただ、一つだけ、これから大事ないろいろな修正の議論も行われると思いますので懸念を申し上げると、原子力規制委員会設置法案を読ませていただいたんですけれども、ここについては、所掌の事務として、オンサイトもオフサイトも防災の部分は全て書かれているわけです。そして、その部分についての指示権は原災法上除かれているわけですね。ですから、科学的なものに限定をするんだとおっしゃるけれども、法律のたてつけとしてはそこは完全に除かれていて、そこを乗り越える指示権を発動できるようにはどうしても法律的には読めないということを私自身は考えておりまして、ぜひそこは詰めた議論をしていただきたいと思います。
 ちなみに、先ほど申し上げた放水の場合の指示の対象は、警察庁長官、消防庁長官、防衛大臣、福島県知事に加えて東京電力の社長となっておりまして、それぞれ省庁、考え方がかなり差がありましたので、かなり総理が強い指示権を発動しなければこれができませんでした。ですから、まさにこういったものに対応できるようなものが必要ではないかということを申し上げたいと思います。
 その上で御質問についてお答えをいたします。
 具体的には、事業者や自治体や関係省庁に対する放射線モニタリング、さらには、住民避難などについてのさまざまな、例えば輸送手段、スクリーニングの段取り、避難所、病院、介護施設の受け入れ先の確保、さらには、避難者への救援物資の調達や輸送なども今お話があった中に入ってまいります。
 ですから、そこも含めて平素から連携をして、政府全体として取り組まなければならない課題であると考えております。

○塩崎議員
 本会議でもお答えをいたしまして、そのときと同じことを言わざるを得ないというふうに思いますけれども、緊急時にちゃんとやれるためには平時からが大事だということで、平時についての防災対策に関する理解とか習熟、さまざまな事態を想定して、明確に目的を定めた上での訓練をやはりやっていかなきゃいかぬということで、さっきもお話があったように、原子力事業者、国、それから地方自治体、関係機関の責任体制、連絡調整の事前準備というのはやはりやっておかなきゃいけないんだろうというふうに思うんですね。
 NRCとか、ああいうところでも、これは住民なんかを巻き込まないで、NRCが主体となって地域の防災体制というのはふだんからやっているというのが当たり前でありますし、政府案でもたしかそうなっているんだろうと思うんですけれども、自公案では、原災法で改正を行って、対策の円滑な実施を確保するための指針をつくるとか、あるいは、事業者に対する防災訓練の報告の義務づけなどの予防対策の充実等に関する規定を新たに設けるとか、これらの事務を委員会にやらせるということに今しているわけでありまして、担当大臣がいるかどうかということは余りこの中身とは関係ない話であって、事務の実施に特に差異が、大臣がいるからできる、いないからできないということにはやはりならないんじゃないかなというふうに私は思っています。
 あのときも申し上げたように、我々は、この附則の六条六項で、政府は、東日本大震災における原発事故を踏まえて、速やかに、原子力災害が発生した場合における国、地方公共団体、原子力事業者等の間及び関係行政機関間のより緊密な連携協力体制を整備するため必要な措置を講ずるものと規定をしておって、今回、細野さんも御苦労されたわけでありますけれども、事前にいろいろなことが定められていなかったということで大混乱ということで、緊急時の対策を実効的に機能させるために、ふだんからやはり事前にあらゆる手順を決めておくということをやるということを、我々は附則で改めて政府に要望をしているところであります。

○山花委員
 終わります。ありがとうございました。

○生方委員長
 次に、柿沼正明君。

○柿沼委員
 民主党の柿沼でございます。
 本日は、質問の時間をいただきまして、まことにありがとうございます。
 きょうは時間の都合で衆法提出の皆様への質問はございませんが、少し触れるところはありますけれども、そういう意味では、ちょっと申しわけございませんでした。
 福島の事故から一年三カ月がたちました。これまで、この規制機関ができるのが少し遅いんじゃないかという声も聞かれます。
 この福島の事故は、IAEAの国際原子力評価尺度、INESでレベル7、非常に過酷な、深刻な事故であると。今までレベル7というのは、チェルノブイリだけであります。あの有名なスリーマイルはレベル5で、その後、アメリカの原子力政策は、当面新設ができなくなった。
 そのことを踏まえますと、この福島の事故というのは、日本のエネルギーだけじゃなくて、生活も含めて、非常に大きな影響を受ける出来事だったということであります。そして、世の中の、世論を含めた国民の意識も大きく変わりました。ある意味、パラダイムは転換したということだろうと思います。
 そこで、今回の地震は、マグニチュード九、五百キロ近い地盤が動いた。震度も七、六強、非常に大きな地震でした。津波も、非常に大きな津波が来た。事故が起こった直後、政府も含めて想定外ということを言ったと思いますが、この想定外というのが大きな批判も招きました。
 まさにこの原子力規制行政というのは、想定外というのがあってはいけない。想定外だったんじゃなくて、想定を間違っていたんだという修正をしていただいてこれからに対応していただきたい。同じことが起こったとき、次はもう言いわけできない、想定外というのは絶対に言えない、そういうことだろうと思います。
 いろいろございますが、原子力規制庁は非常に大きな役割を担うものでありますし、逆に言うと、この規制庁が信頼されなければ、原子力というものはもう稼働もできなければ、新しいものもつくれない。そのくらい大きな役割を担うものというふうに思います。
 二〇〇七年六月、塩崎先生、官房長官のころでしょうか、IRRSというものが、これはIAEAのレビューですね。(塩崎議員「僕は官房長官じゃない、もう終わっている。十二月だろ」と呼ぶ)終わった後ですか。六月から七月に検査はしています。発表は次です。福田内閣です。
 この助言と勧告がありまして、非常に示唆に富む助言と勧告をIAEAからいただいています。保安院と原子力安全委員会の役割分担が明確でない、もっと明確化した方がいいんじゃないかと。それと、これは今回のことに非常にかかわりますけれども、保安院のエネ庁からの独立をしっかりした方がいいというものをいただいています。これから五年が過ぎているわけであります。
 きょう、多分この後御質問になられるでしょうけれども、共産党の吉井先生からも質問があると思いますけれども、国会では吉井先生も、福島第一事故に関して、非常用電源の問題について質問もされています。こうしたシビアアクシデント対策も含めて、おくれてしまった。いろいろなことが反省材料としてあると思います。
 そこで、原子力規制行政を新たに体制を構築するというタイミングですので、少し総括的な質問をさせていただきたいんですが、事故前に対処すべきだったことは何だったのか。事故後の対応の失敗は、これはかなり報道もされていますけれども、どういうものだったのか。今後の新体制でそうした反省、総括をどう生かすつもりなのか。
 ちょっとマクロの質問ですが、まずこれにお答えいただきたいと思います。

○細野国務大臣
 柿沼委員から今、IRRSのことについて御指摘がございました。
 二〇〇七年というのは、我々は野党の立場でありましたけれども、政権をとってから事故まで二年近くがたっていますので、その間も含めて、行政のあり方を推進サイドからしっかり切り離すという判断を、行政も、そして我々立法府もできなかったということに関しては、これは深刻な反省が必要だろうというふうに思っています。
 エネルギーの供給や原子力の推進というものが一つの大きな前提としてあって、その中で安全や規制のことについては考えていくという、私は優先順位を間違ったんだろうというふうに考えています。
 それが具体的な姿としてあらわれたのが、一つは、過酷事故は日本では起こらないという思い込みにとらわれて、いわゆる安全神話にとらわれてきたということ、そして、それの当然の帰結として、さまざまな新しい科学的、技術的な知見というのが、これが本来は取り入れられるべきなんですが、そういったことに積極的になってこなかったというそういうことが、今回のシビアアクシデントがまさに現実のものとなってしまった、シビアアクシデントによってこれだけ放射性物質が外に出てしまったということにつながった、そのように考えているところであります。

○柿沼委員
 ありがとうございました。
 もう本当にこれは、どの党派か関係なく、これまで立法、行政に携わった全ての人が反省して次に進めていかなくちゃいけないということだろうと思います。
 今の大臣の御答弁の中にも出てきましたけれども、過酷事故は日本では起こらない、多くの国民も、少なくない国民と言った方がいいかもしれませんけれども、原子力安全神話、絶対安全神話、それに近いものを信じていました。もしかしたら信じさせられていた。言ってみれば、少しリアリティーが管理されたかなということがありました。
 本当に悲しい出来事でありましたけれども、いろいろなことが報道を通じて言われております。浜岡原発のことを言っていいのかわかりませんが、あそこはどう考えても大きな地震が起こり得る場所だということは、去年わかったわけじゃないです。昔から言われている場所でした。ところが、あそこに原発は実際に立地しました。これは、ここが安全だから立地した、ある意味の安全神話の中で、安全だという中で立地したんだと思います。
 その後、つい先月ですか、敦賀原発、ここも何か断層の真上に建てたということが言われております。今まさに調査をされているんだと思いますけれども、もしこういうことが起こってくると、この安全神話というのは何だったのかと。安全だから立地したというのは、恐らく、当時のまさに安全神話を神話ならしめるために言っていた言葉だろうと思います。立地できたところを安全だと言ったんだと思いますね。
 それはもう過去の出来事でありますけれども、そういうことを通じて、もう既にこの国には、五十四基、原子力発電所が立地されているんですね。その中には、使用済み燃料も含めて大変危険な状態がもうあるんです。つくっちゃったわけです。それをどうやって安全なものにしていくかがまさにこの規制庁であるということだと思いますし、先ほどのシビアアクシデント対策のおくれも含めて、こういう原発安全神話にどう対応していくのか。
 私は、これはちょっと大臣にもお聞きしたいんですけれども、この安全神話というものを、もうこれは金輪際終わりにしなくちゃいけない。まだ信じている人は余りいないと思いますけれども、ぜひ大臣の口からも、もう安全神話はないんだということも含めてしっかりとお答えいただきたい。
 安全神話と並んで、やはりこの国の原発政策の非常に大きなところを占めているのが、原子力村と最近言うんでしょうか、安全神話をまさにこの原子力村の論理の中で構築していったものというふうに思います。これから、既にある原子力発電所をどう管理して、どう安全なものにしていくのかも含めて、原子力規制庁、今度新しくできるこの新しい体制が信頼されなければ、とてももう社会がもたない、そんな状況だろうと思います。
 そこで、ちょっと自分ばかりしゃべっちゃいけないんですけれども、原子力安全神話は恐らく崩壊してきていると思います。安全規制行政にもゆがみを生じさせてきた、そのことについて大臣のお考えを、ぜひこれは、もう安全神話は終わりなんだということも含めておっしゃっていただきたい。
 それともう一つ。原子力村論理に立脚した今までの政府の論理構成、それに対する不信感は物すごく高まっています。そんなことはないと思いますけれども、大飯原発再稼働をめぐるいろいろな動きの中で、多くの国民の皆さんが見せられたあの切り取った画像では、まだこの原子力村の論理があるんじゃないか、こういう不信も持たれているわけですから、そこはそうではないということも含めて、安全神話の部分と原子力村の論理の破壊、もう破壊させていくんだということも含めて、ぜひ所見をいただきたいと思います。

○細野国務大臣
 今御指摘をされた二点は、非常に重要だと思います。出発点として、しっかりとそれこそ我々が肝に銘じてやっていかなければならないことを御指摘をされたというふうに考えます。
 まず安全神話でございますけれども、これは完全に払拭をしなければ、そもそも、新しい原子力規制機関そのものの信頼を取り戻すことができないと考えております。
 安全神話というのは、ここまでやればもう絶対安全で問題がない、そう考えることなわけですね。そういうふうに考える結果として、それ以上のシビアなケースについての対応を怠るということにもなるわけです。ですから、そこはそういった神話に陥ることがないように、厳にそこは我々が肝に銘じてやっていかなければならないところであるというふうに思っています。
 そこで、原子力の安全確保や防災体制の強化ということについては、常に高いレベルを目指していく必要があります。終わりはありません。そして、それを、これだけの事故を経験をしましたので、我が国は常に世界の先頭になってやっていく、これが安全神話を克服する唯一の道であるというふうに考えております。
 制度としては、当然、推進サイドから独立をさせるとか、当たり前のことでありますが、そういったことがありますが、どういう組織になったとしても、安全神話にとらわれない、今申し上げたような発想に立つことは極めて重要であるというふうに考えます。
 もう一点、原子力村でありますが、これもやはり大きな問題の一つだ、そのように考えます。
 私も、エネルギー政策そのものについては、議員になってから私なりに野党時代から関心を持ち、かかわりを持ち、原子力の関係者ともそれなりにつき合ってまいりましたが、やはり、事故を受けて改めて、いわゆる原子力村と言われるような方々ともいろいろなコミュニケーションをとるようになりました。
 そこで感じましたことは、原子力の関係者というのは、規制側も含めて、原子力の推進という大前提があって、そして、その中で安全を確保するというそういう発想にどうしても立ちがちだということです。そこをやはり根本的に改めなければいかぬだろうと思います。
 したがって、新しく誕生する原子力規制機関は、まさに安全と規制をやる機関として専らそれをやります。ですから、そのことによって、原子力の推進が常にちらつくということとは組織としてははっきり離さなければならないと思います。そういう発想に立つ中で、当然、事業者の側にもやはりそれを求めていかなければならないと思います。
 これまで原子力産業というのは原子力の推進という大前提があったわけですが、むしろ、どのようにすれば安全を高めることができるのか、どのようにすれば環境をしっかりと維持をすることができるのか、そのことを追求していくような規制機関のあり方、さらには産業のあり方というものにそこはもう大転換をしていかなければならないというふうに考えます。
 その意味では、これまで言われてきたような原子力村そのものは、一度これはもう徹底的になきものにして、やはり新しい原子力の専門家というのを育てていかなければならない、そのように考えます。

○柿沼委員
 大臣、ありがとうございます。
 今の言葉を多くの国民の皆さんもずっと期待していたと思います。なかなかそういう言葉が政府から発せられることがなく、事故後一年三カ月たちましたけれども、今は非常にありがたい、ありがたいというか、国民としてありがたい言葉だなというふうに思います。
 今、大臣がお話しになりましたけれども、まさに原子力の規制行政が信頼されるためには、やはり推進部門との分離ですね、規制と推進がしっかりと分離されること、そして、独立性というのは、今、山花議員の御質問でもいろいろありましたけれども、難しい面も多々ありますけれども、独立して、ある意味政治的なものにかかわらずに判断もできる部分も必要だということ、これにこの今回の法律は尽きるんだというふうに私は思います。
 そこで、ちょっといろいろあるんですけれども、先ほど、塩崎先生からも菅直人リスクという言葉が出てきましたけれども、事故後のことについては、マスコミから本当にたくさんたたかれ、政治家も官僚も財界も、事故調も含めて社会的制裁も受けているだろう。事業者である東京電力さんも、大きなリストラをしているわけであります。ただ、事故前の、本当に責任がある立場にあった原子力村の主導者、そういう方が、特定の名前は出しませんけれども、ほとんど問題にされていない。事故後の人たちはいろいろと批判され、たたかれ、社会的制裁を受けている。でも、事故前の人たち、特に公務員の方々は、何か責任をとるといっても、そのとりようもない。いわゆる首になるとか、そういうのもないですし、政治家のように落選の危機に遭うとか人気が落ちるということもない。民間企業のように、リストラになって給料が下がるということも余りない。
 そういう中で、今回、新しい原子力規制庁、そこの職員は、保安院と安全委員会、保安院の方が多数を占めると思いますけれども、そこが移籍するようなイメージだと思いますけれども、これは、箱が変わっただけで人が全部一緒だ。昔、まさに政策失敗とは言いませんけれども、原子力規制行政のいろいろな問題点をつくってきた人たち、その失敗をしてきた人たちがそのまま移ってくるというのでは、看板のかけかえじゃないか、同じ人がやっているんじゃないかと。
 もちろん、人間ですから、今までとは変わるんだ、もう自分たちは原子力村の論理からは離れるんだということでやってもらえればいいと思いますけれども、その辺についてはやはり不信感があると思いますね。
 その辺についてどういうふうに移籍人材というものを選定したりしていくのか、ちょっとそこについてお伺いしたいと思います。

○細野国務大臣
 新しく誕生する原子力規制組織の人材というのは、当面はやはり、これまでの原子力の規制に携わってきた、そういう経験を要する府省からの出向に求めざるを得ないというふうに考えております。
 ただ、そのときに注意をしなければならないのは、まずは、特に規制そのものにかかわる人間に関して言うと、これまで、特に経済産業省のもとで、必ずしも専門性を有していない人材もローテーションで回ってきていたという面があるわけですね。これはやはり改めていかなければならないだろうと思います。原子力に関する規制や技術について熟知した職員をまず集めるというのが大変重要ではないかと、こういうふうに思っております。
 その上で、もう一つ重要なことは、新しい組織のもとで、しっかりとそこで取り組むべき課題を明確にして個人の意識を変えていくということがなければ、恐らく看板のかけかえという御批判に応えることにはならないだろうというふうに思います。人選ももちろんでありますけれども、そうした組織の文化そのものを意識的につくり直す取り組みはぜひしていきたいというふうに思っております。
 これを当初は新しい規制機関ができる前に準備段階でやろうかとも思ったんですが、それはやめました。なぜなら、新しい規制機関をつくって、それこそ中で徹底的に議論をして生み出さなければ、その原則は絵に描いた餅になりかねませんので、新しい規制機関ができた段階でそのことをしっかりと議論をして方向性を打ち出し、そして、組織ももちろんでありますけれども、個人も変わるという面がなければならないのではないかと、こういうふうに思っております。
 そのほか、当然のことでありますけれども、人材という意味では、民間の研究機関などから人材も求めてまいりたいというふうに思っておりますし、中でもしっかりと育てていかなければならないというふうに思っておりまして、できるだけ幅広い人材を集めることができるような体制はぜひつくりたいというふうに考えているところでございます。

○柿沼委員
 少し小さな質問を。
 この移籍は、出し手側の、例えば保安院とか安全委員会を所管する文科省、経産省が決めるのか、それとも受け手側の環境省が人材の選定をするのか、どちらなんでしょうか。

○細野国務大臣
 私は、今回の原子力の事故を受けまして、規制組織にかかわる主要なメンバーはほぼ全て一緒に仕事をしましたし、それぞれの人材のいいところも悪いところも見ておりますので、私なりに思うところはございます。
 ただ、野党の皆さんからの御意見も御批判もあり、余り政治が直接関与することは必ずしも好ましくないというお話もございますので、私なりに思うところはございますけれども、その組織のあり方については、トップの人選をして、そのもとでしっかりとやっていくということが重要ではないかというふうに思います。
 そのときに、私自身ももともとそのように考えておりましたけれども、ぜひお願いをしたいのは、何とか省から推薦をされたのでその人材を採るとか、人事のローテーション上、今そこにいるから採るというようなことがあっては絶対ならないと思います。そこは、個人の資質、一人一人をしっかりと見て判断をするということはぜひやっていただきたいと思います。
 懸念があるとするならば、私は一年半やりましたからわかりますけれども、本当に人選をきちっとやっていただけるような、そういう形での人事構成をいかにしたらできるかということについては、ぜひ与野党で胸襟を開いて議論をしていただきたいなと、そのように思います。

○柿沼委員
 余り時間がなくなっているので。
 今回の規制庁は環境省の外局ということでありますけれども、環境省そのものは、今までの原子力の推進という意味での強いアクセル役ではなかったと思います。それはそれとしても、地球温暖化という意味では、環境省自身も原子力に対して、積極的にと言うかどうかはわかりませんけれども、アクセル役の一部を担ったということであります。
 規制庁の大きな位置づけとしては、やはり、独立性に加えて、推進と規制の分離というのが非常にあると思います。この辺はどうお考えなのか、環境省の外局になることでそこは問題ないのかどうか、ちょっと御意見をお聞かせください。

○細野国務大臣
 今回、新たな法律の中で、原子力安全規制の目的として、人と環境を守るということを明確にしております。今、環境省は、除染や福島県内の廃棄物の問題に取り組んでおりまして、いかにこういう原発の事故が起こったときに環境が破壊をされるか、そして人の生活が破壊をされるかということについて、最も深刻な影響を間近に見て対応している、そういう役所であるというふうに感じております。
 そういった意味で、先ほど温暖化の御指摘がございましたけれども、地球温暖化の手段として原子力を推進をするという立場にはもはやありません。それは、安全規制をしっかりやる中でしか原子力というのはあり得ないという、そういう大前提に省全体が立つ状況に今なっているということを申し上げたいと思います。
 その上で、環境省のもとに置かれる原子力規制庁という存在ではありますけれども、その独立性というのはしっかりと確保していくことが重要であり、法律的にもそのようになっております。
 具体的には、原子炉等の規制にかかわる行政判断については、法律上、長官に委任をされておりますし、予算についても、しっかりとしたそういう枠を設けてこれからやっていくという方針を出しております。
 したがいまして、環境省そのものも原子力の推進サイドという立場には立ちませんし、その環境省のもとに置かれる規制庁についても、独立性をしっかりと確保することで安全規制そのものをやり切る組織をつくっていきたいと考えているところでございます。

○柿沼委員
 ありがとうございます。ちょっと感想も述べたいんですけれども、時間がなくて申しわけありません。
 環境省が原子力のもはや推進役ではないというお話がありました。今回のことは、いわゆるノーリターンルールがあるという話もありますけれども、ノーリターンルールの、ルールの細かいことはちょっとわかりませんけれども、推進側の役所にいた人がこの規制庁に来て、規制側をやってまた推進側に行くのはもうないという意味に私は捉えているんですけれども、逆に言うと、環境省が推進側ではないということになれば、例えば環境省の幹部から規制庁に来て、戻って事務次官になる、要するに、推進側ではないからリターンできるんだということになるのかどうか。
 この規制庁長官人事というのも非常に多くの関心が寄せられると思いますけれども、今の現時点での大臣のお考えを聞かせていただきたい。

○細野国務大臣
 人事については、余り私が個別にああした方がいいとかこうだと言うことは、今、国会審議をいただいていますので、多分、申し上げない方がいいんだろうというふうに思います。
一点だけその点で申し上げると、新しい規制庁が環境省の外局という形で来るとしても、それが例えば環境省の指定ポストになって、ポストがふえて環境省が得をするというようなことがあるというのは、これはもう論外だというふうに思います。
 したがいまして、環境省であろうが、経済産業省であろうが、文部科学省であろうが、原子力安全委員会であろうが、規制と安全に強い意欲を持ち、それをやり切る人材を採るということであって、どこかの省庁からこのポストは必ず来るというようなそういう種の人事をやることは、これは極めて不適切であるというふうに考えます。

○柿沼委員
 ありがとうございます。
 もうほとんど時間がないんですけれども、原子力安全調査委員会、非常に立場が曖昧だなという感じがしております。本当は御質問したかったんですけれども、きょうは時間がないので。ここの意味では、与党の質問で言っていいのか、衆法提出の方が少し、いいと言ったらあれですけれども、わかりやすいなという感じもしているんですけれども。
 そこでちょっとお伺いしたいのは、衆法提出の皆さんの立法のやり方もあるんですけれども、政府の方の安全調査委員会、ここを三条委員会化する。要するに、安全調査委員会は規制庁に対して指揮命令権がないんですね。そこを三条委員会化して指揮命令権を与えるというのは、そういう考え方はないのかどうか。
 それと、もう時間がないのでまとめ質問にしますけれども、去年、私は原賠機構のまさに衆法提出者になりまして、こういう答弁を受ける立場になりました。今回の件は、賠償関係は一切触れられていないんですね。そこはどこが担っていくのか。まあ規制庁ではないんだろうと思いますけれども、明確にちょっと言ってほしいなと。
 二問、お願いします。

○細野国務大臣
 今回の制度をつくるときに私どもが意識をしたのは、きちっと規制をやる、危機管理をやる組織といろいろなことについてチェックをする組織は、これは分けた方がいいのではないかというふうに考えたんです。
 ですから、規制庁そのものについては、規制そのものをやるし、そして、実際に危機管理の部分についても直接担う。一方で原子力安全調査委員会というのは、例えば、その規制庁がおかしなことをやらないかどうかをチェックをする。事故が起こった場合には、その事故についてもさまざまなそれこそ調査を行う権限を持つというような、そういう役割分担を考えたわけです。
 ですから、自民党・公明党案で出てきている規制委員会のもとに規制庁という考え方とは、そこは若干出発点が違うということでありまして、調査委員会を三条委員会化して指示を出せるという考え方は、むしろ自公案に基づく考え方にかなり近い発想で今言われたのかなと、そのように思います。
 したがいまして、この制度を前提にそれをそのままするというのは、少しちょっと無理があるのかなというふうに思っております。
 ただ、これは率直に申し上げますけれども、政府案を出しております。これが我々ベストな案だというふうに考えますが、各党各会派の議論の中であるべき姿というのが示されるのであれば、そういったことについてはできるだけ柔軟に対応していきたい、そのように考えております。
 最後に、賠償制度についてでありますけれども、これも政府内で議論をしました。議論しましたが、賠償というのは、まさに原子力をやるときの、万が一のことがあったときに備えるものでありますから、これは、規制側に置くのとはちょっと性格が違うだろうということで、この組織改編の中には入れなかったという経緯がございます。今後の原子力政策のあり方の見直しの結果などを踏まえて、しっかりと検討していく必要があるというふうに考えているところでございます。

○柿沼委員
 まだまだあるんですけれども、時間になりましたので、ありがとうございます。終わります。

○生方委員長
 次に、矢崎公二君。

○矢崎委員
 民主党の矢崎公二でございます。本日は質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。
 原子力規制庁、原子力利用における安全を確保する意味で、本当に少しでも早く動き出さなければいけないという思いでおります。東日本大震災が発生してから既に一年以上がたっております。ようやく議論が始まったということでございますけれども、この委員会の場で議論を尽くして、できるだけ早く規制庁を動かすということが大切かというふうに思います。
 当初の政府案では、原子力安全庁という言葉が使われました。民主党内の議論で、安全庁ではなくて規制庁だろうという議論がたくさん出まして、それによって改められた。これは当然のことと思います。無用な規制というのは非常に問題がありますけれども、環境あるいは原子力に対してはきちんとした規制が必要だというふうに考えます。
 さて、本日の質問ですけれども、大きく二点ございます。一つは、原子力発電所の運転期間の年数期限の導入について、そしてもう一つは、シビアアクシデントが発生したときの緊急時の対応体制についてでございます。この二点について、内閣提出の政府案、そして衆法提出の皆さんにも御質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 まず、原子力発電所の運転期間の年数制限についてです。
 細野大臣は一月三十日の記者会見で、既に四十年を超えている原発の再稼働はあり得ないということをおっしゃいました。法案では、原発の運転期間の制限を四十年と設定して、法的に運転年数の制限を設けております。
 さまざまなものには耐用年数というものがございます。国税庁の減価償却資産の耐用年数、それを見ますと、電車であれば十三年だそうです。消防車、救急車、こういった命を守るものについては五年という設定がされております。住宅は四十七年、病院は三十九年というふうに言われております。
 その一方で、日本では、原子力あるいは水力、火力発電所のいずれも、耐用年数の規定をするものはありません。原子力発電所について、それを構成する機械装置類の適切な保守、交換などと、法律により義務づけられている定期検査などに合格することによって、理論上、半永久的に運転を継続することができることが現在は可能でございます。
 その上でお伺いしますが、原子力発電所について運転年数の制限を法的に設ける狙い、その制限を四十年と設定した根拠を御説明いただきたいというふうに思います。

○細野国務大臣
 原子力発電施設の経年劣化については、国民や自治体の間にも、これまでもさまざまな議論が存在をしておりました。ただ、そういう議論はありながらも、運転制限制度というのは我が国においては導入をされてこなかったという、そういう経緯がございます。
 まず一般論から申し上げると、設備や機器類というのは、使用年数の経過に従って当然劣化をするわけでありまして、その安全上のリスクというのは増大をいたします。したがいまして、このリスクを低減するために、発電用の原子炉の運転制限制度を導入をすることとしたものでございます。
 この運転制限の期間につきましては、原則として四十年以上の原子炉の運転はしないということにいたしまして、経年劣化の状況を踏まえまして、延長する期間において安全性が確保されれば例外的に運転を継続をするという形にしておりますが、そこは、科学的にしっかりと確認をした上で、申請に基づいてやるということでありますので、極めて限定的なケースになるというふうに考えております。安全上のリスクを低減するというのが、この運転制限制度の目的ということでございます。
 なぜ四十年なのかということでありますが、幾つか根拠として考えたものがございます。
 まず一つは、いわゆる圧力容器の中性子の照射による脆化であります。これは、温度が下がった場合に、シビアアクシデントになると水を入れて下げるということになる可能性があるわけですが、そういった場合に、どこまでこれが脆化をするかということについてこれまでさまざまな蓄積がございますけれども、そのデータの中で一定の懸念というものが生じてくるのが、この四十年というあたりに一つの線があるのではないかと考えられることが一つ。
 もう一つは、さまざまな機器についてのいわゆる工事の計画の認可の申請書における、どの程度それを使うのかということについての想定をした回数というのがございます、それぞれの機器について。そういった想定をされる回数というものが、一つのラインとしておよそ四十年程度を目安になされているというのがございます。
 したがいまして、原子炉圧力容器の強度の問題に加えまして、発電所というのは、プラントというのはシステムでありますから、いろいろな機器がいろいろな形で当然稼働いたします。作動するそのそれぞれの機器の耐用年数というものも考慮にした中で四十年というところの数字を導き出したということでございます。

○矢崎委員
 ありがとうございました。
 現在の、経産省が定める省令に基づきますと、運転開始後三十年を経過する前とその後の十年を超えない期間ごとに事業者は、経年劣化というんですか、こういう非常に難しい言葉で一般の方にはわからないと思いますが、いわゆる老朽化のことだと思いますけれども、老朽化の技術的評価を実施するということになっていました。その意味では、四十年という制限を設ける、これは大きな意味があるというふうに私は考えます。
 一方で、アメリカでは、今回の日本の法案と同様に、運転期間を四十年と定めております。その意味では、アメリカに倣ったというような見方もされているようでございます。その一方で、ドイツは約三十二年で例外なく廃炉にすることを決めております。
 私は、大切なことは、四十年という運転の年数の制限を設けて、日本にある原発を廃炉にする工程をきちんとつくっていく、それをもとに再生可能エネルギーへの転換をできるだけ早く進めていくということが、エネルギー政策上必要なことだというふうに思います。
 ところで、政府案では、運転年数の制限を四十年としていますけれども、四十年を経過した後にさらに一回に限って二十年以内で更新できるという、延長を認める例外規定を設けております。二十年延長もオーケーということでございますけれども、こうしたことに対して、原発の立地自治体などからは疑問の声も上がっております。
 この辺はきちんと説明をしないといけないと思いますけれども、なぜ運転期間の延長を認める可能性を残しているのか、例外的に運転期間が延長できるのはどのようなケースなのか、さらに、運転期間の延長の上限を二十年としたのはどういう意味があるのか、その点について御説明をお願いをいたします。

○細野国務大臣
 まず、経年劣化についての考え方ですが、先ほど、四十年のところに一つの線を引いた根拠を申し上げましたが、一方で、四十年をたてばそのときから急に危険になって、四十年までは全く問題がないということでもないわけですね。つまり、そういうリスクが高まるという中でどこに線を引くかということになるわけです。
 したがいまして、若干、これまで十分に伝え切れていないところがありますけれども、バックフィットという制度を導入しますので、四十年を待たずとも、これはリスクが高いということになれば、そこで運転をとめるということも制度としてはあるわけです。
 ですから、そういう四十年までは絶対動かし、そして、もうそこだけが基準だということではないということをぜひ御理解をいただきたいと思います。
 その上で、延長を認める可能性についてでありますが、その可能性についてなぜ考えるのかということについては、個々のプラントによって状況というのは、これはやはり異なります。PWR、BWRというのも原発としては随分性格が違います。さらには、技術的な知見という意味でも、四十年前の原発と今の原発とではまた随分違うというのも、これも紛れもない事実です。
 そういうそれぞれの状況というのがございますので、運転期間の例外を一切排除するという考え方をとるのではなくて、一定の要件を満たして許可を受けた場合には、運転期間の延長を可能とする余地も残したということであります。
 この運転延長につきましては、この許可基準は、法律上、長期間の運転に伴い生じる劣化の状況を踏まえて、延長しようとする期間において安全性を確保するための基準を環境省令で定めることとしておりまして、これは、ですから申請に基づくわけですね。ですから、それぞれの事業者が、何年間延長するのかということも含めて判断をして、その申請をしっかりと厳格に見ていくということになろうかと思います。
 したがいまして、逆に言うと、四十年以上をあり得ないと申し上げたのは、この基準ができるまでは四十年以上は絶対動かないわけですから。そういった意味も含めて、それこそ、なし崩し的なことはあり得ないという趣旨で以前私発言をしたということであります。
 その上で、なぜ二十年なのかということにつきましては、これまで、高経年化の技術評価で、運転開始後六十年を見通した経年劣化の評価を行ってきていること、これは一つの材料としてはございます。米国においても、運転許可の更新を二十年を超えない期間としていることも、これも参考とはいたしました。
 そういったことを一つの材料といたしまして、延長するとしてもその上限というものは、設けるとすればやはりこういうところではないかということで規定することを考えたということでございます。

○矢崎委員
 ありがとうございました。
 政府案の四十年の運転期間、それを過ぎた後二十年以内の延長の規定という、その理由はわかりましたけれども、現行の制度では、上限は、上のふたはされていませんけれども、運転開始後三十年、十年ごとに評価するというシステムになっております。
 その意味で、四十年以降、新しい法律ではさらに二十年ということですから、四十年からさらに二十年の間、この期間がどうなるかという心配があると思います。法案ではきちんとした規定はされていないと思いますが、現行法よりもむしろ後退してしまうのではないかというような懸念もございますけれども、その点について、四十年から六十年までの間のいわゆる十年ごとの定期安全レビューとか、そういうものを実施していくことになるのかどうか、その点を確認をさせてください。

○細野国務大臣
 三十年以降十年ごとに行う安全性の評価というのは、これはこれからもやっていく必要があるというふうに考えております。
 したがって、三十年でまずそこのものが来て、四十年はまた違う意味で、これはもう運転制限そのものですから、しっかりと厳格な判断というのがなされるということであります。
そこは新しい規制機関のもとでしっかりと議論をした上で方針を出していただきたいというふうに思っておりますが、四十年以上というのは、極めて例外的だというそういう制度になっておるんですね。その例外的に適用されるものが出てきた場合に、その後の安全規制についてどのようにしていくのかということは、これは、専門家の中で徹底した議論をしていただく必要があるのではないかというふうに思います。
 今の時点で法案のたてつけとして申し上げるならば、バックフィット制度がありますから、当然、これは四十年以上に例えば例外的になった場合も常に適用されますので、十年ごとということを待たずに常に最新の知見でチェックをされ、それでクリアできなければそこでもうだめなわけですね。そういう制度が維持をされつつ、なおかつ、また十年というところでそういう制度をするかどうかという議論は、そこは新しい規制機関のもとで行っていくべきものではないかと思います。
いずれにしても、以前よりも規制のレベルが下がるということはこれはあってはなりませんので、そこは、厳格な適用は当然なされることになろうかというふうに思います。

○矢崎委員
 ありがとうございました。
 米国では運転期間四十年と定められております。連邦政府の独立機関であるNRCが定める連邦規則によって、さらに二十年の運転を認める規定がございます。恐らく日本もこの方式だというふうに思いますけれども、そのほかの各国の状況を見てみますと、フランスでは耐用年数に関する法的な規定はありません。イギリスでも耐用年数に関する法的規定はない。それぞれのフランス、イギリスでは十年ごとに定期安全評価を実施することになっていますが、こちらは、実質的に半永久的に運転を継続することも可能なようになっております。
 一方でドイツ、二〇二〇年までに、現在稼働している九基の原発を段階的に運転を停止するとしています。平均運転年数は約三十四年ということになります。ベルギーでは、運転期間を一律四十年。四十年に達したものから順次閉鎖していく。スペインでは、四十年の運転年数を超える原発の順次閉鎖の方針を示しています。
 そのほか、フィンランド、スウェーデン、スイス、韓国では、耐用年数や運転期間に関する法的規定はありません。
 今述べたことは国立国会図書館による調べでございますけれども。
 やはり日本は、そういった世界状況を見ながら、その中でも、より厳しい、そういう規定をきちんとつくっていかなければいけないというふうに私は考えております。
改めてですけれども、日本の法的規制について、その画期的と言える意味について、大臣の御見解をお伺いします。

○細野国務大臣
 私も各国の例は調べました。ドイツは、たしか運転時間か何かではかっていて、平均すると三十四年ぐらいになるというような、そんな形だったかというふうに思います。
 若干一般論になるわけですけれども、私、ちょうど四十歳になるものですから、四十年前と今との技術の違いというのは、これは、私ならずとも誰でもわかるわけですね、例えば電気製品をとっても、車を見ても。四十年前の技術で今そのまま通用するものは、逆に言うとほとんどない。それぐらい大きな技術革新がなされているわけです。
 原子力発電所に関しては、四十年前も大丈夫ですということを、やはりこれまでちょっと安易に信じ過ぎていたのではないかと。今回、四十年というところで一つの運転の制限をして、高経年化については、相当厳しくこれから日本国内でさまざまな研究をしていかなければならないというふうに思います。
 それを我が国がまずやることで、それこそ原発の先進国と言われる国々はもちろんですけれども、これから原発を導入しようとか導入をし始めたとか、そういう国に対しても、高経年化については、常に日本が最新の知見を蓄積をし、それを発信をし、それを他国にも反映をしていくように、言うならば促していくという、そういった役割を担うべきではないかというふうに思います。
 その意味で、四十年というところに運転制限を設けたというのは、極めて大きな意味があるのではないかというふうに考えております。

○矢崎委員
 ありがとうございました。
 この四十年について衆法の提出者の皆さんにも御意見をお伺いしたいんですけれども、運転年数の制限を設けることについてどのように受けとめていらっしゃるか、導入すべきと考えているのか否か、お聞かせください。

○吉野議員
 自公案は組織論だけを議論しました。というのは、規制当局に独立性がもしあったならばあの事故は防げた、私はこのように思います。
 きのうの産経新聞のニュース、ごらんになったと思います。平成四年に、全電源がとまった場合はどうするのかというワーキンググループを原子力安全委員会は立ち上げました。そのことを本当に議論して、全電源がとまった場合はどうするということを定めていれば、この事故は起きなかったんです。すなわち独立性です。独立性がきちんと保たれた組織論を私たちは議論していましたので、この運転年数については、正直言って一個も議論しておりません。
 ですから、四十年がどう合理的に正しいのかどうか、この辺も含めてこれから議論していきたいと思っています。
 以上です。

○矢崎委員
 吉野先生の個人的な御意見でもよかったんですけれども、具体的に聞けなかったのはちょっと残念でございます。
 次に、二番目の質問に移ります。
 シビアアクシデントの発生時の緊急対応体制についてお伺いをいたします。
 三月十一日の東日本大震災による福島第一原発の事故の反省点は幾つかあると思います。一つは、原子力災害対策本部において迅速な情報と専門知見による意思決定が円滑に行われなかった、あるいは、SPEEDIの情報が伝わらないなど関係機関の連携が円滑に進まなかったこと、さらには、平時から重大事故を想定した準備ができていなかったことなどが挙げられます。
 オンサイトの原子炉の鎮圧とオフサイトの住民避難誘導などの両面での体制の強化が必要だということは、皆さん同じ御意見だというふうに思います。関係機関の役割分担や、特に、政府内での防災体制の中核となる機関を明確に定めることが不可欠でございます。
 そこで、衆法提出者の皆さんにお伺いをいたしますが、自公案は、本会議での趣旨説明によりますと、オフサイトの対応については、政府、すなわち原子力災害対策本部が責任を持ち、規制委員会が、これに対して職員の派遣、専門的知見の提供等で協力する立場と説明をされました。にもかかわらず、規制委員会は、設置法上、原子力事故による災害の防止の事務を所掌し、原災法上も、関係機関の役割を定める災害指針の策定、オフサイトセンターなどの指定など、オフサイト対策のさまざまな事務を所掌をいたします。
 この二つは大きな矛盾があると考えますけれども、自公案でオフサイト対策の中心となるのはどの機関になるのでしょうか。

○江田(康)議員
 矢崎先生の御質問にお答えいたします。
 自公案でオフサイト対策の中心となるのはどの機関かということでございますが、原子力災害が発生した場合の緊急時におきましては、そのオフサイト対策の中心となるのは、原子力災害対策本部であります。これは自公案も政府案も変わらない。
 自公案では、原子力災害対策本部は、原子力施設外のオフサイトに関する事項全般についてその事務を遂行するわけでございますが、原子力委員会からの必要な助言を受けてオフサイト対策を行うことになる。他方、原子力規制委員会は、原子力災害時にも、独立した役割と責任を持ってオンサイトの専門技術的な事項にかかわる事務を行います。オフサイトはその助言を行って連携を図る。
 その上で両者の緊密な連携協力は、これは不可欠でございますので、原子力災害対策本部の副本部長として原子力規制委員会の委員長が加わって、その職員の派遣も想定している、そういう役割分担であります。
 以上です。

○矢崎委員
 今の説明を伺うと、平時の場合は規制委員会、有事の場合は政府というふうな認識にも聞こえますけれども、いわゆる自治体とか防衛とか警察を含む関係省庁との調整について、平時は誰が行うのか。有事は今のお話ですと政府ということだと思いますが、平時と有事で責任者が変わってしまうという、そうするときちんと対応ができないのではないかというふうに懸念をしますけれども、いかがでございましょうか。

○柴山議員
 お答え申し上げます。
 緊急時の際の対応については、関係省庁との調整を含めて、あらかじめ定められていたことを実行するのが原則なわけです。このことは、国会事故調の中間報告におきましても、大規模災害に対応できるだけの体制を事前に整備をして、関係省庁や関係地方自治体と連携して、関係組織全体で対応できる体制の整備を図る必要があるとされているところなんですね。ですので、関係省庁との調整、まずこれは平時にやっておかなくてはいけないということなんです。
 私たち自公案におきましては、平時におけるそういった調整は原子力規制委員会が行うこととなります。そして、有事における関係省庁との調整については、オフサイトに関する事項全般の事務を遂行するのが原子力災害対策本部ということで、ここがメーンになるということは、御指摘のとおりであります。
 ただ、今おっしゃったように、この二つが違ってだめなんじゃないかということは、私はそれは当たらないと思っております。関係省庁との連絡調整において、政府案を見てみると、政府案でも、平時においては環境大臣が所掌することとなっておりますし、緊急時においては原子力災害対策本部長、すなわち総理が行うということになっているわけなんです。すなわち、原子力規制委員会か環境大臣かの差はあれ、政府案と我々自公案において、そこのところに本質的な違いがあるわけではありません。
 むしろ、平時のそういった防災連携について、担当大臣がいるかどうかでそういった事務の実施に差が生じるわけではないと思っておりますので、そこはやはり、専門家たる原子力規制委員会がそこをしっかりとグリップをするということでよいのかなというように思っております。
 むしろ、私から逆に政府案に対して、平時と緊急時の違いをちょっと過度に強調し過ぎじゃないかなと思うのは、まさしく、原子炉の炉周りの規制の部分なんですね。ここは再三我々も本会議などで再三答弁していますけれども、平時においても、また緊急時においても、そういった原子炉周りの規制機関について、独立性を持った、やはり権限のある者が圧力を受けない形で行わなければいけない。これは、二〇一一年六月のIAEA国際専門家調査団の報告書にも書かれている部分なんですね。ですから、我々の案は、そういった原子炉周りの技術的な事項については、平時においても緊急時においてもこの委員会がやるということで一貫をしているんです。
 ただ、今おっしゃったような形での防災連携、これについて、やはり平時においては専門的な観点から委員会がやる、政府案は環境大臣のもとでやる、そして、緊急時においては本部長である総理が災害対策本部長として必要な指揮をとる、こういうような形で整理をしている部分であります。
 以上です。

○矢崎委員
 ありがとうございました。
 緊急時、有事の際に、総理、政治の責任者の権限がオフサイトの方に及ばないということがないように、それをどうやって知恵を絞ってこの法案に盛り込んでいくかということが大事だというふうに思います。
 東日本大震災によって宮城から茨城県にかけての太平洋沿岸の原子力発電所は、軒並み津波に襲われました。福島第一原発は、メルトダウンから水素爆発に至りました。その一方で、女川原発、そして東海第二原発は、瀬戸際で危機を乗り越えたと言われております。
 女川原発第一号機については、東北電力の副社長が、十二メートルの津波想定という意見に対して十五メートルを主張して、十四・八メートルの高台に建屋など主要施設を建てた。それが女川原発を救ったのだというようなことが、東京新聞など、美談で語られています。
 しかし、政府の事故調の中間報告によりますと、実際は、津波のしぶきは堤防を越えて、補機冷却海水ポンプは使えなくなりました。二号機では、原子炉建屋地下三階に浸水をして、非常用ディーゼル発電機三台中二台が停止した。一台が生き残った。これは単なる運がよかったということだというふうに私は思います。
 東海第二原発についてもさまざまな美談が語られております。茨城県の津波浸水想定区域図に基づいて、震災の二日前に防波壁の関連の工事が終了した、これが大きな事故に至らなかった理由だということが報じられておりますが、しかし、これも実際は違うようでございます。
 政府の事故調中間報告によると、工事の一部は震災が発生したときに完成していなかった。たまたま、工事をしていた作業員が、この穴も塞ごうよということで、非常用ディーゼル発電機につながる穴というか空間を塞いで、それが海水が入るのを防いだという話もございます。たまたま運がよかったとかいうことでは片づけられない問題だというふうに思います。
 私は、四十年を限度に、閉められる原発はできるだけ早く廃炉にしていくことが必要だというふうに思います。そのためには、環境の整備を急ぐ必要があります。そして、そうした姿勢を政治が目に見える形で国民に示していかなければ、今後の原発政策に対する理解は得られないというふうに思います。
 そのことを強調させていただきまして、質問を終えたいと思います。
 どうもありがとうございました。

○生方委員長
 次に、工藤仁美君。

○工藤委員
 民主党の工藤仁美でございます。きょうは、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 昨年三月十一日の福島第一原発の事故から、間もなく一年三カ月がたとうとしております。今、原子力行政の規制にかかわる法案の審議を始めることになりまして、直接的に被害を受けた被災地の皆さんはもちろん、多くの国民の皆さんが重大な関心を持ってこの議論を見守っておられます。
 私の地元の事務所それから会館の事務所にも、この数日、たくさんのファクスや電話が入りました。私もそういった国民の思いを強く感じながら質問に立っておりますので、御答弁の方、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず初めに、福井県の大飯原発の再稼働について細野大臣に質問をいたします。
 この法案審議と時を同じくして、野田総理は、福井県の大飯原発の再稼働をまさに判断されようとしておられます。昨日は、細野大臣が福井県知事にお会いになられたというふうに聞いております。
 私は、民主党の原発事故収束対策PTにも出席して、再稼働には慎重に慎重を期すべきという四月十日付のPTの緊急提言をまとめる議論にも加わっておりました。夏の電力供給不足を予想されての再稼働の御判断とは考えますけれども、国民の中にも、原発の再稼働については反対という意見も多くあります。
そこで、細野大臣、この大飯原発の安全性の評価というのは、今回提出された法案の考え方からして、問題がないというそういう御判断なのか、ぜひお話しいただきたいというふうに思います。

〔委員長退席、大谷(信)委員長代理着席〕

○細野国務大臣
 政府としても、原子力の安全の問題については、慎重にも慎重を期して判断をしてまいりました。
 他国の例でありますけれども、旧ソ連のチェルノブイリ原発の事故、あれだけの事故がありましたが、ソ連は、その後、原子力発電所をとめてはおりません。アメリカではスリーマイルアイランドの事故がありまして、その後、新しい原発の新設は確かに行われませんでしたが、他の原発は動かし続けました。
 そうした過去のさまざまな国の取り組みと比較をしても、我が国は、今全ての原発がとまっているというこの現状において、まさに慎重に判断をしてきた結果があらわれているというふうに考えております。
 今回、政府が、特に四大臣として判断をいたしました三つの基準というのは、特に基準一と基準二で、東京電力の福島原発を襲ったのと同様の事象が起こったとしても、炉心が損傷する、そういう状況には至らないということについて、さまざまな専門家の議論を一年以上にわたって積み重ねて、そして判断をしたものであります。
 ただ、一方で、安全にはこれは絶対はありません。したがいまして、これまた専門家の皆さんの議論を経て、三十項目、将来的にしっかり確保すべき安全の考え方というのがありますので、それをできる限り前倒しをして、そして、現状において大飯についても反映をしたのが基準三ということになります。前倒しをいたしました。そのことによってさらに安全性が高まったというふうに考えております。
 なお、それでも申し上げますが、三十項目全てが達成されたとしても、安全に絶対はありません。ですから、常にその上をしっかりと目指して安全性を高めていくということは極めて重要である、そのように考えております。
 今回提出をしている政府法案との整合性で申し上げるならば、新しい知見ができたときにはそれは反映をするというバックフィットの考え方をとりますが、法律ではまだできておりませんが、さまざまな新しい今回の事象を受けての知見というのが出てきておりますので、それを取り入れて炉心損傷に至らないことを確認をしたという意味では、そのバックフィットの発想に立って新しいさまざまな取り組みをしているという意味では、整合性があるものであるというふうに考えております。

○工藤委員
 大臣、ありがとうございました。今の大臣の御答弁を聞きましても、なおのこと、この法案審議、与野党でいい結論を得るよう、私も議論に参加していきたいというふうに思います。
 大飯原発の再稼働については、この質問については終わります。
 次に、規制のための組織体制のあり方について、内閣提出法案と衆法の提出された法案の中身では、争点になっております、衆法では規制委員会、そして内閣提出法案の方では原子力安全調査委員会ですか、この点について質問をいたします。
 先ほど来、前の委員からも独立性ということについて質問がありましたけれども、重なる面もあると思いますが、非常に重要な点ですので、ぜひとも私の質問に対しても、衆法提出者の先生方、よろしく御答弁をお願いいたします。
 先日、五月二十九日の衆議院本会議での塩崎先生の趣旨の説明では、新しい原子力規制組織は、国際的な規範であるIAEAの安全基準にのっとり、平時、緊急時のいかんを問わず、原子力推進官庁からの独立はもとより、他の省庁や政治から独立していること、権限、人事及び予算の独立性が与えられた専門技術的な規制が行える規制機関とすべきこととして、さらに、職員についても全員にノーリターンルールを適用しと述べられ、そして、そのためにはいわゆる三条委員会とするしかないというふうに結論づけておられます。そしてまた、規制委員会の下に規制庁を置くとしていますけれども、この規制庁は、事務局を規制庁と呼ぶという位置づけになっております。
 私も、原子力の利用推進と規制を担う機関というのを切り離さなければならないということは全く同じ考えであります。また、規制機関の独立性ということについては、昨年十二月末に出されました顧問会議の提言にも厳しくその点は指摘をされているところなんですけれども、しかし、今までの段階で御説明を聞いている段階なんですけれども、ここまで独立性が高いということは、非常にいい面もありながらも、その一方で、こういった独立した委員会がやっていることに対して一体誰がチェックをするのかという、非常にそこのところは疑問でございます。
 他の行政機関からも政治からも独立して職権を行使できるということになると、委員長それから委員の任期中、言葉はあれなんですけれども、いわゆる暴走をしたような場合、誰が一体それをとめることができるのか、そして、政治からも独立というふうに説明をされておられるので、国会もこの規制委員会が行うことについて関与することができないのかという点について、ぜひ御説明をお願いいたします。

〔大谷(信)委員長代理退席、委員長着席〕

○江田(康)議員
 工藤先生の質問にお答えさせていただきます。
 国会は独立性に対してどう関与をできるのかということと、委員会を監視する機関が必要ではないか、その旨の質問だったと思います。
 この原子力規制委員会については、委員長や委員の任命をこれは国会同意人事としておりますことが一点、そしてまた、政府特別補佐人である原子力規制委員会の委員長等への委員会質疑等を通じて行政監視を行う、これらによって国会の関与は図られるとしております。
 また、この原子力規制委員会は三条委員会として設置されますので、委員長、委員の職権の独立行使が認められる以上、その職務遂行をチェックするための特別の第三者機関を新たに設ける必要はないと考えております。必要なチェックは、先ほど申しましたように、国会による行政監視により行われることになります。
 以上であります。

○柴山議員
 今、提出者江田議員から御説明があったとおりなんですけれども、ちょっと補足をさせていただきますと、全くチェックができないのかというところに関して言えば、今回、私たちが提出している法案の九条に罷免の条項がございます。
 九条二項におきまして、「内閣総理大臣は、委員長若しくは委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき、又は委員長若しくは委員に職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない行為があると認めるときは、あらかじめ原子力規制委員会の意見を聴いた上、」これはデュープロセス上の要請ですね、「意見を聴いた上、両議院の同意を得て、これらを罷免することができる。」このような形で、全くチェックができないということではありません。
 以上です。

○工藤委員
 ありがとうございました。
 次に、細野大臣にお伺いしますけれども、政府提出法案の原子力安全調査委員会なんですが、これは、原子力安全調査委員会設置法案の第三条で原子力安全調査委員会の所掌事務というものが規定されておりますけれども、その内容を見ますと、その役割というのは非常に重要となっております。しかし、この重要である役割を果たすためにも、安全調査委員会の委員の人選が適切になされなければその役割は果たせないものと私は考えております。
 先ほど来、細野大臣より、人事についてはなかなか答えることができないというようなお話がありましたけれども、私は、人事というのではなくて、原子力安全調査委員会の委員の人選の方針というものをぜひ細野大臣にお伺いしたいと思います。
 といいますのは、つい最近も、毎日新聞などでは大きく報道されておりますけれども、これは内閣府の方の安全委員会の、何といいますか、非常に隠蔽的な体質の中での村会議みたいなものについて開催されたというような記事も載っておりまして、そういったことがあるとすれば、なかなか原子力規制行政全体に対する国民の信頼というものは、それは一部の事象かもわからないんだけれども、規制行政全体がやはり何か国民の目から見てうさん臭いといいますか、不信感を持たれるようなことになろうかと思いますので、そのためにも、その 委員の人選というのは非常に重要だというふうに思っております。
 ですので、ぜひ、大臣のその人選のときの方針についてお伺いしたいと思います。

○細野国務大臣
 工藤委員から今、重要な御指摘をいただいたというふうに思います。
 原子力安全調査委員会の役割というのは、規制機関が本当に国民から見てもきちっと機能しているかチェックをし、そして、それこそ万が一にも事故が起こった場合には、そうした対応がなされているかというのも確認をする、そういう場でございまして、自公案、私もしっかり真摯に受けとめさせていただきたいと思っておりますし、柔軟にと思っておりますが、このチェック機能がどのように果たされるのかというのは、ぜひ国会でも御議論をいただきたいというふうに思います。
 私は、今回の東京電力の福島第一原発のこれから三十年、四十年にわたって行われる廃炉がきちっとなされるか、さらには事故原因が何かということも含めて恒常的にしっかりと見られるような形というのは、やはり何らかの形で必要ではないかというふうに思っておりますので、ぜひそういった御議論をいただければ大変幸いだと思っております。
 委員会の委員でございますが、法案の中では、要件として「科学的かつ公正な判断を行うことができると認められる者」となっております。すなわち、中立的な立場から科学的、専門的な知見に基づいて判断できる有識者であることが必要であります。
 ただ一方で、私も原子力の専門家と随分この間さまざまなやりとりをしてまいりましたが、原子力の専門家といっても非常に多岐にわたりまして、それぞれの専門分野ごとにやはりかなりの違いがあります。
 そこで、例えば一例でありますけれども、原子力の分野はもちろんでありますが、耐震の分野の専門家、さらに危機管理の専門家、そして、放射線障害というのはこれはまた別の専門でありまして、放射線防護の専門家、そういった分野からバランスよく配置をしなければそうした委員会というのは機能しないのではないかというふうに思います。
 この調査委員会も独立をさせますが、独立をさせたときに、何かそこに万能な人がいて全てやってくれるというものでは、なかなかやはりこれはそういったふうにはなりにくいですから、そこも含めて、どういった組織であれば機能するのかという議論は、これは、我々が出している原子力安全調査委員会はもちろん、自民党・公明党案で出てきている原子力規制委員会も含めて、そこは、あり方そのものに踏み込んだ議論も国会では必要ではないかと思います。
 なお、特に、原子力事業者の従業員など原子力安全行政に利害関係を持つ方は委員には適さないと考えておりまして、そこは、明確に法律の中で欠格条項として位置づけることとしております。

○工藤委員
 今、細野大臣より、委員の人選についても、非常にきめ細かく、御丁寧な答弁と、そして考え方を持っておられるということが私にも理解できました。
 しかし、あえてさらに申し上げさせていただきますけれども、ぜひこの委員の人選に当たっては、今現在利害関係がある人はもとより、昨年三月十一日まで、いわゆる原子力村に属する、原子力の利用推進を標榜してきたような学者、研究者、評論家、官僚出身者、また、原子力で利益を得ていた事業者の関係者などなど、そういった方は決して選んでいただきたくないということを私は強くお願いをいたしたいと思います。
 そうでなければ、その委員会でのいい議論もないと思いますし、また、やはり、どういった方が人選されたかというところを国民は政府の考え方を判断する一つの基準として注目しているのではないかというふうに思いますので、ぜひともそこはよろしくお願いをしたいと思います。
 次に、規制の具体的内容にかかわることについて質問をしたいと思います。
 今回の政府提出法案の中で、原子炉等規制法と電気事業法の改正も同時に行われるという法案になっておりますけれども、その二つの、原子炉等規制法と電気事業法改正について質問いたします。
 原子力施設全体の安全規制について今まで電気事業法それから原子炉等規制法と分かれていたものが、今回の法の改正によって、原子力施設全体の安全規制について原子炉等規制法に一元化し、そして、新たに法案として提出しております規制庁が責任を持つ、こういった内容になっているというふうに理解しておりますけれども、そのような理解でよろしいんでしょうか。

○櫻田政府参考人
 御説明申し上げます。
 委員御指摘のとおり、今回の法案におきましては、原子炉等規制法と電気事業法の改正を行いまして、これまで二つの法律で行っていた原子力施設に対する規制を一元化する、それを新しく設置されます原子力規制庁において運用する、こういう形にしてございます。
 その中身でございますが、今、原子力安全規制におきましては、公共の安全の確保上特に重要な設備につきましては、国が工事計画の認可を行い、使用前検査で確認をする、また、運転開始後においては定期検査でこれを確認する、こういう仕組みになってございます。
 こういった対象の設備というのは、原子炉の周りとか、非常用炉心冷却設備とか、そういった主要な設備になってございますが、この対象になっていない機器につきましては事業者が保守管理を行う、この保守管理活動が適切に行われているかどうかについて国が確認をする、こういう仕組みになってございます。
 先ほど申し上げましたように、従来はこうした規制を、原子炉等規制法と電気事業法、この二つの法律によって実施してきたところでございますが、今回は法案によって一元化して、原子炉等規制法一本で規制をする、こういう形にしてございます。
 ちなみに、その対象についてこれまでと変更があるということではなくて、二つの法律を一元化するという、そういう法改正を御提案をしているということでございます。

○工藤委員
 昨年三月十一日の福島第一原発の大事故の直後は、私もテレビで保安院の方の説明を、よく保安院の方が紙に書いた原子炉の絵というんですか、図柄を持って説明をされていたのをずっと見ておりましたし、また、党内の会議においても、そういった図面、原発の絵を見ながら説明を聞いていたんですが、事故後かなりたってから実際の写真が公開されまして、私は北海道なんですけれども、地元にも泊原発三基ありますので、それまで私は外からは原子力発電施設というものは遠目には見たことがあるんですけれども、その内部には入ったことがありませんでしたので、そういった絵をずっと見ているうちに、何か原子力発電施設というのは物すごく単純なものというふうに勘違いをしていたんですが、しかし、実際に大事故を起こした内部の公開された写真を見まして、これは全然自分が思い描いていたイメージとは違うものだと。
 その機械類を膨大な管と線がつないでいるという、そこが大事故を起こしてぐちゃぐちゃになってしまったという映像を見まして、それで、そういった原子力発電施設全体の安全性を求める上での点検、管や線など、細々したねじ、くぎに至るまで、そういったものがちょっとした破損をすることによって放射能に汚染された気体や液体などが外部に漏れるわけですから、そういった細々した設備、施設全てにおいて厳しくチェックをしていくことが求められていると思うんですけれども、それを規制庁が責任を持つというふうに今回の法改正でなるということなんです。
 しかし一方で、検査のやり方ですね。例えば民間事故調などでは、その報告の中で、規制を厳しくすると、それは書類の数がふえるだけではないか、本当に実効ある検査の仕方になっているのかというような民間事故調の指摘もございますし、やはり今後は、国民の安全のために、そして安全規制を高めるためにも、検査や審査というものが形骸化していない、そしてさらに、効率よい、そういった審査、検査のやり方というものが求められるのではないかというふうに思います。
 このような民間事故調、またさまざまな分野からの指摘を含めて、原子力発電施設全体の安全のための規制の実効性と効率性を高めるために今後どのような取り組みを強化していこうというふうに考えておられるのか、ぜひお聞きをしたいというふうに思います。

○細野国務大臣
 原子力の安全審査でありますが、事業者の皆さんともこの間、私も中に入り込んでおりましたので若干議論いたしましたけれども、本当の意味での安全を高めるというよりは、形式に落ちて、形式ばかりがどうも目立つ部分であるとか、また、ペーパーワークが多くて膨大な書類があってそれに忙殺をされているとか、そういう指摘があるのは事実でございます。
今回、規制を強化をすることになるわけですので、本当にしっかりやらないと、逆に形式ばかりがまた膨らんで、実質的な部分が空になるということにもなりかねないというふうに思っております。
 そこで、どう現場を重視した審査、検査、これをやっていくのかということについて、各国からもぜひさまざまな知見を集めて、我が国として最善のものをやっていきたいというふうに思っています。
 NRCの関係者なんかとも話をしましたけれども、それこそ現場の事業者よりも詳しく、しっかりと急所を捉えて物事を判断できるような検査官、これを育てていかなきゃならないわけですね。これは並大抵のことではないというふうに思っておりますが、研修やOJTはもちろん、国際的にも通用するような人材をつくることによりまして、実質的な意味で安全を高めることができるような審査体制をつくっていかなければならないと考えております。

○工藤委員
 私の質問に対して細野大臣の本当に熱意のある御答弁をいただき、感謝をしております。

○生方委員長
 時間は終わっています。

○工藤委員
 時間がなくて一つ質問ができませんでしたので、衆法提出者の皆さん、申しわけありません。
 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

○生方委員長
 次に、田中和徳君。

○田中(和)委員
 自由民主党の田中和徳でございます。
 政府提出の原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案及び自民党並びに公明党提出の衆法、原子力規制委員会設置法案外二案の四法案について質問をしてまいります。
 私の感ずるところ、これは、今審議が行われております社会保障と税の一体改革の法案と同じぐらいに、それ以上に重要な法案で、まさに私たちにとって非常に重い責任がある、このように認識をしております。
 まず委員長に申し上げます。
 我が国は、未曽有の原発事故を起こした国として、しっかりと事故の反省と教訓を反映し、発想を根本から転換する原子力規制組織の抜本的改革を行わなければなりません。私自身、自民党の議員ということでございまして、長年にわたり政府・与党の立場にあったわけでして、原子力発電所の行政も事業も推進してきた立場でございます。当然、深い反省がなければならないと私自身肝に銘じてこの質問にも立たせていただいているところでございます。
 そのためには、これから審議する法案の審議時間は相当なものになると思われます。会期も、今の国会の状況を考えれば延長ということになるのではないかと、このように私も思っておりますので、そういう状況で頑張ってまいりたいなと思っております。六月中に出る国会事故調の最終報告も十分に織り込んでいくことができればなと、こういう思いも持っております。
 不安と不満、まさしく憤りが募っておりまして、国民の原子力に対する目は極めて厳しくなっています。徹底的に議論を尽くしても、それでも、国民、とりわけ原発立地自治体の地元の皆さんの不安は解消されないかもしれない、こういう思いでございます。
 日本が今回の事故から学んだ教訓をしっかりと生かすために、法案審議のスピードよりも大事なことは、日本の原子力規制の仕組みを根っこから大転換することだと思います。看板をかえさえすればよい、こういうわけにいかないわけでございます。
 参考人の聴取についても、とりあえず次の定例日の六月八日の予定が決定しましたが、例えば、組織論と緊急時対策、予算と人材育成対策、新たな原子力規制策など、今後の原子力規制を託す機関についてしっかりと有識者の意見を聞かなければならないと思います。おのおの最低でも一日ずつ時間をかけないといけないような重要なテーマではないかとも思います。
 しっかりと中身を詰めた議論を行うため、十分な審議時間と、参考人聴取等が行える機会をしっかりと確保していただくことを委員長に特にお願いをしておきたいと思います。
 また、重要広範議案でございますので、委員会審議に野田総理大臣の出席を強く求め、ここに申し入れをさせていただきたいと思います。
 委員長、よろしくお願いいたします。

○生方委員長
 田中委員の今の御指摘をしっかりと受けとめて委員会運営に当たっていきたいと思います。

○田中(和)委員
 それでは、どうぞひとつよろしくお願いします。
 細野大臣に申し上げます。ここは環境委員会の場でございますけれども、原発事故担当大臣としてもお尋ねをしてまいりますが、環境大臣の立場とあわせて、双方の立場でお答えをいただければと思います。
 まず大臣にお聞きします。あなたは、この閣法の提出者として対案の自公案についてどのような評価をお持ちですか。また、修正協議にどのような姿勢で向かおうとなさっているのか。まずお聞きをいたします。

○細野国務大臣
 田中先生におかれましては、環境行政を常に大変牽引をしていただいておりますし、この原子力規制のあり方についても、野党側の責任者として対応していただいております。心より感謝を申し上げます。ありがとうございます。
 出てきております自民党・公明党案についてということでございますが、私は政府案を出している立場でございますので、政府案が我々として出しているベストのものだというふうに考えてはおりますが、一方で、政府案と自公案というのは、共通する部分も非常に多いというふうに感じております。
 それは、推進側からの独立という考え方はもちろんでありますけれども、できる限り規制組織を一元化をするという考え方、そして、規制のレベルをやはり上げていくというこの方向性についても、一致をする部分が非常に多いというふうに感じております。
 そういう中で、組織のあり方として、我々は原子力規制庁というのを提案をさせていただいている一方で、自公の皆さんは原子力規制委員会というのを提案されていて、そこの組織のあり方がやはり若干違うところがあるということでございます。
 そこで、私も原子力規制委員会というものそのものを否定的に捉える考えはございません。独立性をしっかりと高めた形で規制を強化できるということであれば、それも一つの考え方として十分に傾聴に値し得るし、考え得るというふうに私は思っております。
 一点だけその部分について懸念を申し上げると、どう危機管理と合議制の独立した委員会というのを両立をさせていくのか、ここについてぜひ国会でも御議論をいただきたいし、各党でもさまざまな考え方のすり合わせをしていただければ大変幸いだというふうに思っています。
 総理の指示権の問題やオンサイト、オフサイトの扱い、きょうの議論の中でももう既にいろいろ出てきておりますが、そのあたりも含めて、ぜひお互いの考え方を一致させるような形での御議論をいただければ幸いであると考えているところでございます。

○田中(和)委員
 今の大臣の御発言は、私としては非常に歓迎をする。弾力的な対応をするということですが、政府案の審議が始まったその瞬間の答弁とすれば、非常に異例な御発言ではないか、このように思うんです。悪く言えば自信がないのかなと、このようにも思うわけでございまして、いずれにしても、私ども、理事として修正案の協議をするということをもう既にスタートしておるわけでございますので、責任を持って頑張っていきたいなと、こう思っております。
 大臣、きのうは福井県出張、御苦労さまでございました。六月四日、きのうの時点で、再稼働が妥当であるという原発は、大飯の三と四、四国電力の伊方の三号機ということで、この三つですね。ということなんでしょうか。そして、あとの十九の原発が保安院のチェックを今受けている。五月三十日に行われた閣僚会議で野田総理が、立地自治体の判断が得られれば、最終的に私の責任で再稼働を判断する、こう言明されまして、関西電力の大飯三号機、四号機の再稼働をいわば決断をされた、こういう流れだと思います。
 細野大臣も、原発事故担当として当然その場でいろいろな御発言もされたんだと思います。今審議をする法案が進まないから原発の再稼働に影響する、早く審議をしてほしいとの話が私のところにも随分あったんですけれども、そんなことはないような流れでございますが、どうでしょうか。

○細野国務大臣
 原発の再稼働の問題でありますけれども、大飯の三号機、四号機に関しましては、ことしの三月末までに、原子力安全・保安院、さらには原子力安全委員会も含めてさまざまな確認が終了いたしました。そこは、もともと規制庁の発足が四月というふうに予定をしておりましたので、その予定をされていた発足時期よりも前に最終的な専門家の確認ができたということで、それも踏まえて四閣僚として判断をしたという経緯でございます。
 一方で伊方でございますけれども、この原発について原子力安全・保安院の方での手続が進んでいるのは、先生御指摘のとおりでございます。ただ、原子力安全委員会ということに関して言いますと、その確認作業というのは進んでおりませんので、そういった意味で、四大臣として再稼働について判断をしているという段階ではございません。
 今後でございますけれども、もちろん、今も規制組織が原子力安全・保安院そして原子力安全委員会ということで現存をしておりますし、安全確認も含めてそうした機能がしっかりと果たされるのが、これが大前提だというふうに当然考えます。
 しかし、その一方で、四月以降は新しい規制機関が誕生するという予定になっている中で、どこまで原子力安全・保安院、安全・保安院はまさにその役そのものをやるべきだということで今もやっておるわけですが、原子力安全委員会が先に進むかということについては、独立した委員会でもございますので、委員の皆さんにもいろいろな御意見がございます。
 そうした皆さんの意見も踏まえながら、私としては、大飯の三号機、四号機以降の原子力発電所については、できれば、充実した審議をしていただいた上でできるだけ早く原子力の規制組織を誕生させていただいて、その組織のもとでしっかりとした厳格な判断がなされるのが最も望ましいのではないかと、そのように考えております。

○田中(和)委員
 大臣、実は、この修正協議も含めて時間をかけてやらなければいけないと私が今言ったばかりなんですね。一方において大飯の方におきましては、もう既に政府の方は相当な動きをしておられるわけですよね。今の答弁だけですと、ちょっと私は納得いかない状況にございます。
 もともと、関西の、関西だけじゃありませんけれども、この夏の電力不足はもうわかっていたわけですから。とっくにわかっていた。この夏、全部原発がとまればどういう状況になるかというのは、昨年、あの事故が起きた直後に、我々も含めて、専門家はもちろんのこと、みんなが議論をしていたわけですね。その後、菅さんの発言、ストレステストの問題もあって、ルールをどんどんと変えられたのは民主党、政府の皆さんなんですよ。そして、実は今日に至っているわけですから。
 ですから、今の我々の行う修正協議が調わなければこの規制庁の制度はできていかないわけですから、これと大飯の原発をリンクさせるのかさせないのか、非常に重要なことをお尋ねしているわけですから、お答えをいただきたいと思います。

○細野国務大臣
 大飯の三号機、四号機に関しましては、ことしの三月までの間に、政府としての、さまざまな専門家の検討や四大臣としての判断というのを、基本的には基準という意味でも終了しておりますので、この規制庁の議論と直接かかわりなく、さまざまな手続が進められるものというふうに考えております。
 ただ、一方で、福井県知事からも、さらには関西連合の皆さんからも我々もう本当に繰り返し繰り返し言われておりますのは、何とか早く原子力の新しい規制組織を誕生させてもらえないだろうかという、そういう話をいただいておるんです。
 それは、関西や福井の皆さんだけではなくて、私は福島のこともどうしても気になります。といいますのも、福島第一原発はもう発電所ではありません。あの発電所ではなくなってしまった、ダメージを受けたところをぴっちりと安全を確保する高いレベルの取り組みというのが求められるわけですが、そういう法整備がまだできておりません。
 もう一点だけ済みません、御質問とは外れますが率直にお話をさせていただくと、防災指針というのが、これが法定化されておりません。したがいまして、動いていない原発も含めて、本来はプールの中に燃料がありますから、さまざまなそれこそ自治体の取り組みというのをしっかりと我々は促していかなければならないわけでありますが、原子力防災指針が法定化されていない中で全国の自治体の取り組みも、これも十分にまだできていない部分があるのも率直に事実なんですね。
 そういったことも含めて、もちろん慎重に議論をいただいてさまざまな御検討をいただく必要があるというふうに思いますが、そういうかなり切迫した状況であるということを、ぜひそこは私の方からお伝えをできればというふうに考えた次第であります。
 大飯については、この法案審議とはまた別のところで政府としてのさまざまな手続を進めていくということでございます。

○田中(和)委員
 一言に言うと、非常にタイミングが悪いんですよ。
 この法案の審議を行う。本会議をやって、委員会に付託されて今始まったわけですね。これは今から私、大臣とのやりとりをしますけれども、それは全て政府・与党側に原因があるわけです、はっきり言って。そして、この一方において、関西の状況を十分知っていながら、どんどんと原発始動についての議論は遅くに遅くに実は誘導してきた。
 安全というのは当たり前なんですね。国民の不安を払拭するのは当たり前です。これはもう政府の一番の責任なんですよ。だけれども、国会軽視に映りますし、国民から見ると何かちぐはぐで、矛盾していて、何でこんなときに大飯原発の再稼働と私たちのこの重要な議案、法案の審議が重なってしまったんだろうということで、国民の皆さんによほど説明をしないと、これは大変な誤解を与えるし、今後の政治の原発行政に対しての信頼感を失う。私はこういう心配をしているわけですね。
 さて、我々野党が審議に応じられなかった理由は、大臣、何だと思いますか。

○細野国務大臣
 私どもは、今、行政の一翼、一つの役割を担わせていただいている立場から申し上げて、できるだけ政府が提出をしている法案を御審議をいただきたいというそういう立場でお願いをしてまいりましたが、御審議いただけなかった一つの大きな要因といたしましては、問責決議案に対する対応等があったと承知しております。

○田中(和)委員
 これは第一と第二がありまして、第一の方は、大臣がお出しになった一月三十一日の法案にこれは問題があったんです。
 本当に我々から見れば、これで国民の信頼が得られるのかと。三条委員会のことも含めて、独立性のことも含めて、菅直人リスクも含めて、本当にそれを反映しただけの議案、法案になっているのかと。我々が見たときに、これは問題あり、こういうことで我々も、塩崎提案者おいでですが、我が党の中では大変な危惧とともに議論をして、対案をつくるために公明党さんにも御指導いただきながら、今日あるわけですね。
 そして、我々が提出したのは四月二十日なんですよ。時間がかかってしまいました。でも四月二十日。この日に実は問責が前田、田中両大臣に可決されてしまったわけですね。
 当然、大臣としては、これだけの重要な法案を抱えているわけですから、総理に対して、この二大臣を早くやめさせてください、これだけの重要な法案を審議しなきゃいけない障害になっているんだからどうしますかということを、どのように御協議されましたか。

○細野国務大臣
 もちろん、私は法案を出している責任者でございますので、この法案の重要性については、総理や官房長官を初め、皆さんに累次にわたって説明をしてまいりました。また、国会の関係者の皆さん、これはもちろん与党ということもありますけれども、でき得る限り私の及ぶ範囲で野党の皆さんにも、ぜひ重要性をここは踏まえて御審議をいただきたいということで、お願いをしてまいりました。
 そういう努力はしてきたつもりでありますけれども、この時期まで審議が進んでこなかったということについては、やはり、行政、そして法律を出しているという立場でいうならば、全ては私に責任があるというふうに思っておりますので、そこは国民の皆さんに大変申しわけないという、そんな思いでおります。
 その中で、政府の中で問責の問題についてどうだったのかというそういう御質問でございますが、そこは私自身が申し上げるべき立場ではない。総理自身が総合的にいろいろなことを当然お考えになっているわけでありますから、そのことについてお考えになるのは、もうこれは総理しかおられないというふうに考えましたので、直接的なやりとりをしたことはございません。

○田中(和)委員
 私はもう時間の関係ではしょっていきますけれども、小沢さんの会談が終わった途端に大臣の入れかえをされた。本当に政府・与党の皆さんは国民に目を向けているんだろうかと。我々野党の方に目が向いていないのはしようがないにしても、国民の不安、これだけの事態が起きているときに、本当に国民の生活や心というものに対してどう向き合っているんだろうかと。小沢さんは民主党の一議員さんですよ。確かに有力な方かもしれません。そういうことを考えたときに、歴然とした主権者不在の姿というのが明らかじゃないですか。
 大臣は、非常に嘱望されて、お若いし、非常にシャープだといって評判もいいんです。これから総理大臣にもなられるという人が、原発の担当をし、環境省の大臣をやってこれだけの重責にありながら、なぜ野田総理ともっと膝詰めの話をしなかったんですか。問責の大臣をここまで交代ができなかった、罷免ができなかったという事実を、私は、これはこの場でしっかりと説明してもらわないといけない、このように思います。

○細野国務大臣
 私は、経験もありませんし非常に未熟者ではありますが、原発の事故への対応と、この原子力の新しい組織を誕生させなければならないということに関しては非常に大きな責任があるというふうに思っておりますので、その面で、総理に対しても何度もこのことの重要性は率直に説明をさせていただきました。
 その一方で、内閣総理大臣というのは、このエネルギー問題や原子力の問題だけではなくて、今議論されている社会保障と税の問題も含め、国全体のことを動かさなければならないお立場ですので、それは、本当にすさまじいプレッシャーの中で日々さまざまな判断をされているというふうに私は感じてまいりました。
 したがって、そういう総理というお立場でいろいろ御判断をされなければならないことについて、私の所掌の部分については強く申し上げます、私の担当しているところについては率直に申し上げますけれども、それ以外の全体のことを考えておられる総理に対して、今、田中先生の方から御指摘をされたようなことというのは、これは私の立場として申し上げるという立場でももちろんありませんし、これはやはり申し上げるべきものではないというふうに考えたところでございます。

○田中(和)委員
 大臣は、事故当時、昨年の三月十一日当時、総理補佐官をお務めでございました。総理補佐官も極めて重要なお立場ですよね。政治主導ということで政権をとられた民主党の皆さんが、先ほど来より議論がありますように、菅直人リスク、まさしく政治主導が結果として大事故、大災害を起こす原因になった、こういう議論が、民間の事故調でも、議会の事故調でも、マスコミ報道を初め各方面の話でも、国会の審議でもあったわけですよ。これは当然、大臣も重要なお役についておられたんですから、そのときの責任も重いものがありますね。
政治主導とか菅直人リスクだとかもろもろのことが言われているんですけれども、このことについて大臣はどのように反省の弁をされるのか、また、どういうふうに思っていらっしゃるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

○細野国務大臣
 御指摘のとおり私は、事故発生当時は補佐官でございました。補佐官というのは総理をサポートする役割でございますので、菅総理に対してさまざまな厳しい御意見、さらには、事故を防げなかった、事故後の対応についても、これも万全というふうにはいかなかったということに関して総理に御批判があるということは、すなわち、全て私もその御批判をしっかりと受けとめなければならないそういう立場であるというふうに思っております。
 そのことについて率直に責任を認めた上で、菅前総理の対応についてはさまざまな御批判がありますが、当時の政府の責任者として、まさに当事者としてどう原子炉を制圧していくか、国民の生活をもとに戻すかということについては、総理としては、しかるべきときのしかるべき判断や当事者としての判断を逃げなかったという意味において、私は、そこは評価をされていい部分もあるのではないかと、そのように考えております。
 一つ一つの個別のことについてきょうここで御説明をする場面ではないというふうに思いますので、全体として申し上げるならば、菅前総理については、私は今そのような考えを持っております。

○田中(和)委員
 何か事故があったときの本部長は当然総理大臣ですね。これは、これから議論する規制委員会、規制庁がどんなに独立しようとも、総理大臣は一番重要な役割を果たすんですよ。その総理大臣がここまで重大な指摘を多くの人たちからされて、そして、チームワークも結局国民のために機能しなかった。これは、私たち、政権にあるときにこういうことがあったらということをやはり考えなきゃいけないんですけれども、本当に重大なことが起きている。
 ということで、ここからなんですが、今回の政府案の独立性は、我々の案からすれば非常に弱いと思うし、独立性が保たれていないように思えるんですが、大臣は、独立性を政府案はどのように保っていると認識をしておられますか。

○細野国務大臣
 まず、一般的に独立性と言う場合に、かつてのIAEAのIRRSなどでも指摘をされておりますが、まずは推進サイドからの独立性というのが、これがもう大前提になるわけです。その面においては、原子力の規制組織がこれまで原子力安全・保安院という形で経済産業省のもとにありましたので、そこからは完全に分離独立をするという意味では、ここは完全なる独立性を確保できているというふうに思っております。
 今、御指摘は、政治からの独立をどのように果たしていくのかということだと思います。
 政府案の考え方というのは、オンサイトのさまざまな技術的な問題については権限を原子力規制庁長官に委任をする、法的なそういうことになっておりますので、そこで独立性について確保するという、そういうたてつけになっております。
 加えまして、委員会を設けましてそこでチェックをするという役割も果たしますので、そこで独立性をさらに補強するというそういう考え方に立っておりまして、その面では、最後の総理の手段としての指示権というようなものについては、残すという考え方をとっておりますが、それは極めて例外的に行使をされるべきものというふうに位置づけられておりますので、政治からの独立性という観点に関しても、政府案は確保できているというふうに考えているところでございます。

○田中(和)委員
 衆法の提出者の方にお尋ねをいたします。
 、大臣から答弁もありましたけれども、私は、手前みそというのか、自公案こそ、この衆法案こそ独立性が保てる、政府案よりもはるかにそれはちゃんとしていると思っておりますけれども、ひとつ御答弁を願いたいと思います。

○塩崎議員
 ありがとうございます。
 今、細野大臣から、政府案について独立性があるというお話でございましたけれども、まず第一に、長官人事、これは閣議決定でありますから、結局政治の影響を受け、そしてまた、環境大臣の任命でありますので、逆に言えば罷免もできるということで、極めて不安定な形で政治的な影響を受けるということは変わりがないということでありますから、形だけ、経産省の下にぶら下がっていた保安院が環境省の下に来たということでは、完全に独立というお言葉をさっき大臣は使われましたけれども、それはもう全く違うし、本質は何も変わっていない、第二保安院だ、こういうふうに申し上げているわけであります。
 ノーリターンルールについても、またいろいろこれから議論があると思いますけれども、管理職以上の本当にごく一部に限られているということで、結局、今の政府部内にいる人材を考えれば、いわゆる推進官庁から来るということが多いわけで、そこにまたリターンしていくということであれば、これはもう独立がない。
 結局、今までの原子力村というのは何かというと、原子力のことは詳しいけれども、安全を軽んじて推進の方を優先した、これが原子力村の定義だろうと私は思うので、それも何も変わっていない。ですから、原子力村のお引っ越しということだろうと思います。
 それから、緊急時については、先ほど限定的にという話がありましたけれども、法律上は、専門技術的な領域に至るまでオンサイトのことについて口が出せるというふうに本部長に権限を与えているということでありますから、これも独立性がないということで、言ってみれば、最終的にIAEAの安全基準が言っているのは、独立した規制上の判断と決定が担保されていないといけないということでありますけれども、ほとんど何一つと言っていいほど担保されていないということだろうと思います。
 それに対し我々は、ちゃんと三条委員会でありますから、今のような人事の面も、国会同意人事の後罷免をされないという身分保障を与えられるということであり、権限も人事も予算も、そしてまた、原子力事業者からの独立は当然ですけれども、他の行政機関あるいは政治全体からの影響というものにも独立性を保てるということであります。
ノーリターンも、我々は、上から下まで原則としてこれはノーリターンを適用することによって、一つは独立性、もう一つは、その中できちっと育てるという意味においての人材育成の独立性というものも確保しているということであります。
 それから、災害時も、これは先ほど来少し議論になりましたけれども、技術的な事項についてはあくまでも規制委員会が決めるということで、本部長からの指示は受けないということでありますし、それから大事なことは、他のいろいろな機関との緊密な協力をもって、ばらばらな今回のようなことではなくて、やはり一体的に事に当たるということで、我々としては、委員長を副本部長として原災本部に入れるという形で貢献をし、なおかつ、連携をするためにそういった形にとっておりますし、いろいろなレベルにおいてインプットあるいは人材派遣というものを委員会からしていこう、こんなふうに思っております。
 言ってみれば、政府の方は、形は独立したかのように見せながら、実は独立をしていない。我々は、実質的にも形式的にも独立をさせたということでございます。

○田中(和)委員
 政治の独立についても後ほどちょっとお聞きしたいと思いますが、今の御答弁の続きをと思っております。
 自公案も、結局政府案もそうですけれども、原子力安全規制組織というのが新しく生まれるにしても、当初は、原子力安全・保安院だとか原子力安全委員会だとか、今まで原子力安全を担った現行の行政組織の職員が横滑りをする、こういうことがやはり国民の目から見れば、仕方がないという一面、何となく箱の入れかえみたいな話で、箱の中身は一緒だ、こういう批判が出ておるのは当たり前のことだと思うんですね。
 これをどうするか、国民の信頼をどうやって確保するのか、こういうことは本当に、当初、スタートのときに一番重要なことだと思うんですね。
 また、職員の皆さんもちょっと大変な話だと思うんですよ。自分たちがそういう目で見られているんだという一方で、本当にどうしていいのか、何をどう変えていいのか、これはなかなか難しい話だと思うんです。
 提出者の方から先にお話を聞いて、大臣からも、その点どのような制度設計を考えているのか、特に、出身官庁に関係する再就職をとにかく国民に疑問を持たれない、こういうことは大変な難しいことではあると思うんですが、御答弁を願いたいと思います。

○江田(康)議員
 田中先生の御質問にお答えいたします。
 先生御指摘のとおり、原子力規制委員会の独立性を確保するために重要なことは、原子力安全規制にかかわる者が原子力推進官庁や事業者に属する者から影響を受けることのないように制度的に担保されることが大変に重要であります。そのための措置がいわゆるノーリターンルールということであります。これによって原子力規制庁の職員は、原子力事業者や原子力利用の推進官庁からの不当な影響を受けることがなくなるものと考えられます。
 また、御指摘のように、例えば、新組織に配職後に退職を迎える者が原子力関連以外も含めた出身官庁の関係団体や関係企業に再就職するようなことを認めるのであれば、出身官庁からの影響は免れないことになります。
 そこで、自公案においては、原子力規制庁の職員について、その職務の執行の公正さに対する国民の疑惑または不信を招くような再就職も、厳として規制することとしているところでございます。

○細野国務大臣
 田中先生の方から最後に御指摘をされた再就職については、極めて重要であるというふうに考えております。国民の疑念を招くことがないよう、国家公務員法に基づく再就職のあっせんの禁止、利害関係企業などに対する求職活動の禁止、再就職者による働きかけの禁止などの規制が既に設けられておりますので、規制庁についても、特にこれらのルールにのっとって厳格に対応していく必要があるというふうに思っています。
 この面で国民の疑念や不信を招くような事態が起これば、これは原子力の規制、安全に対する信頼を非常に大きく傷つけることになりますので、そこはしっかりとやっていく必要があるというふうに思っております。
 それと人材に関してでございますけれども、私は、しっかりとした人材を確保する上で、鍵は採用にあるというふうに思っております。
 採用する組織でないと人を育てることができません。内閣府の特命担当大臣も昨年の六月からしておりまして、かなりの数の内閣府の組織に私はかかわりましたが、その多くの組織では採用ができておりません。そうなりますと、結局は借り物の人材でやっていかなければならないという事態になるわけですね。
 内閣府のもとにあるさまざまな組織の中で、きちっと採用ができていて、そこで人事のマネジメントができているのは、これは公正取引委員会ぐらいではないかと思います。公正取引委員会がそういうことになるまで一定のやはりいろいろなプロセスがあったのも含めて考えますと、原子力の新しい規制組織でしっかりと採用して人を育てるということを、できるだけ早くしていかなければならないというふうに思います。
 確かに、先ほど、提出者である塩崎先生の方から、ノーリターンルールについて政府案というのは限定的だという御批判がありましたけれども、当初は、有為な人材を集める方法として課長職以上ということで限定をするという判断をいたしました。
 ただ、中で人材を育て採用し、きちっとマネジメントをやり切ることができれば、私はしっかりとした規制組織ができるというふうに思っておりまして、そこに責任を持って対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。

○田中(和)委員
 政府案は経産省から環境省に所管官庁を横滑りさせるだけで、もとより、十分な縦割り解消とか独立性を期待ができづらい、このように私は思っております。
 出身官庁からの独立性をいかに確保するか、また、出身官庁に関係する再就職についても、先ほど申し上げましたけれども、独立性の確保のためにも重要なことがたくさんございますけれども、そういう中で私は、この部分、難しいにしても、相当きちっとしていかないといけない、このように思っております。
 ノーリターンルール、キャリアパスについてちょっとお尋ねを自公の衆法提出者に申し上げますけれども、先日の本会議の質疑では、ノーリターンルールについて、政府の考え方と自公案の違いが浮き彫りになったというところがたくさんございました。
 自公案は職員全員にノーリターンルールを適用、また、非管理職についてもノーリターンルールを基本的に適用、こういうことなんですね。政府案の方は、昨年十月二十五日の衆議院の環境委員会において細野大臣が、「若手のときは違うところにも行っていろいろなそれこそ修業をしてきた方が人材は育つと思う」と御答弁をされておられますけれども、非管理職についてはノーリターンルールを適用しない、こういうことになっています。
 ノーリターンルールを徹底すると、意欲を持って規制業務への参加を希望する優秀な職員が少数にとどまることが懸念されると政府は言っておりますけれども、自公案提出者としてはどのように考えておられるのか、何か経過措置が設けられているのか、お尋ねをいたします。

○吉野議員
 お答え申し上げます。
 ノーリターンルールを徹底すると優秀な人材が集まらないという政府側の考え方ですけれども、これは全く逆であります。
 国会事故調の論点整理の中でも書かれております。規制当局に行くことは、ある意味で腰かけ意識、そこのポストを踏まえて次に出世していく、そういう意味で本当に安全文化をつくっていくというその志、これが欠けている、このように指摘をされております。
 こういうことを踏まえると、他省庁の組織の論理からきちんと独立をして本当に原子力の安全というものを考えていく人材、これが一番大事なわけであります。それを徹底していくのがこのノーリターンルールである、私たちはこのように考えているところです。
 さて、経過期間です。
 確かに、規制委員会に入って適性問題等々ございます。私たちは三年から五年の経過期間を考えております。この経過期間を過ぎて本当に残った者、志のある者が、規制委員会、規制当局に入るわけですから、本当に原子力の安全をきちんと心から考えていく、そういう有能な人材が集まる、このように思っているところです。

○田中(和)委員
 吉野先生の大変力強い説明ではあったんですけれども、やはりよそに行かれないということになると、何となく我々から考えると、心配する向きもあるんじゃないかな、お給料の面だとか待遇の面でもよほどやはりきちっとしてあげなきゃいけないんじゃないかな、このようにも思うわけですね。
 また、事故調が五月十七日に発表した「現時点での論点整理」においても、これまで原子力推進官庁を含む役所の中でのローテーションという腰かけ意識が原子力規制組織の安全文化の醸成を妨げてきた、こういうことで指摘していますね。
 自公案では、職能に応じたキャリアパスがある人事制度を構築する、こうしておられるわけでございますが、具体的にはどんな案をお持ちか、御説明を願いたい。

○江田(康)議員
 職員の処遇やキャリアパスについてどういう構想をお持ちかという御質問にお答えをさせていただきます。
 先ほども述べられたとおり、自公案では、職員の専門的な知識、能力の向上を図るためのこの具体策として、国の内外の専門家の積極的な登用、また、国際機関や大学との人材交流の実施、さらには、研修体制の整備について、政府に必要な措置をとるよう義務づける規定を設けております。また、原子力規制庁の職員に関して、専門的な知識及び経験を要する職務と責任に応じて、資格等の取得の状況も考慮した給与の体系の整備そのほかの処遇の充実を図って、有能な人材が集まるように政府が必要な措置を講ずる、このように義務づけているところでございます。

○田中(和)委員
 アメリカでは、原子力潜水艦を持つ海軍が、原子力に関する独自の人材供給源として非常に重要でありました。また、米国NRCは、大変人気の高い職場として、米国内で一定の権威と信頼を有しております。
 我が国は、これだけの事故が起こった後ですから、なおさら、それに負けない人材確保と育成策が必要であります。NRCほか諸外国の実態等も踏まえて、衆法提出者のお考えを伺いたいと思います。

○江田(康)議員
 先生の、NRCほか諸外国の実態を踏まえて人材確保と育成策についてどのように考えるかということにお答えをさせていただきます。
 アメリカの政府職員に対するアンケート調査によりますれば、NRCの職員については、能力管理や仕事の満足度において高い満足度が得られている。そして、職員のNRCへの評価が高い理由の一つは、自分の専門性に合った仕事が行える、また、独立機関で働く責任感と充実感があることとのことでございます。さらには、その給与水準が高いことも理由に挙げられております。
 そこで、自公案では、アメリカのNRCほか諸外国のキャリアパス制度も参考にいたしまして、原子力規制庁の職員に関して、給与その他の処遇の充実、国の内外の専門家の積極的な登用、国際機関や大学との人材交流の実施、研修体制の整備等について、政府に必要な措置をとるように義務づけたところでございます。

○田中(和)委員
 最後の質問になるかと思います。
 原子力安全基盤機構、いわゆるJNESは、当機構のホームページによると、平成二十四年四月現在で、理事長一名、理事三名、監事二名、職員四百十七名から成る組織でございます。自公案では、このJNESを原子力規制委員会へ移管する、こうしておりますけれども、そうなれば、四百人超の職員が新たに公務員となります。
 さきの五月二十九日の衆議院本会議でも野田総理は、行政組織の肥大化を招くこと、公務員制度の枠内では柔軟な人事管理が難しいことを指摘しておるわけでございます。
 行政改革の観点から公務員の人数の抑制が主張される時代に原子力安全規制の分野だけを例外扱いできるのかどうか、どのように整理をする考えなのか、衆法提出者にお伺いをしておきたいと思います。

○塩崎議員
 これまで原子力規制というのは、安全委員会があり、そして保安院があって、このJNES、基盤機構があるという三層構造になっていました。
 この間の事故のときに、私が聞いている範囲では、一番専門家がいるこの基盤機構の中で、どうしたらいいかということを例えば百アドバイスが出たら、保安院に行くと十になって、官邸に行ったときにはもう一になっている。そのくらいこの三層構造、分断されている構造というのが、いかに機能的に本当にうまくいっていなかったかということがよくわかり、また、今までの事務官支配というか、ゼネラリスト支配で専門家がどちらかというと軽んじられてきた。この文化の典型が、この基盤機構に一番優秀な人がいながら、一番下にあって、上の方の意思決定にはなかなか加われていないということがありました。
 そこで我々は、このJNESを新しい規制庁あるいは規制委員会のもとの一つの組織の中に入れようということで、行政の無駄を整理することが行革であって、これは、無駄を出すということではなくて、むしろ国民の信頼を再醸成といいますか、それに非常に重要な我々としての提案であって、これは決して総理がおっしゃっているような行政組織の肥大化とか、そういう一面的なことを考えて、野田さんの頭の中には何のためにそもそも今回改革をやるのかということはどこかに飛んでしまって、ただ行政の肥大化だというようなことだけを言っているのであって、我々は、そんなことではない、今までの欠点をなくそうと思えばそれしかないし、もう一つは、もちろん税金をどう使うかの話でありますから、これは気をつけなきゃいけない。
 そこで我々は、独自財源を考えよう。イギリスは九八%独自財源、つまり、原子力事業者から取る検査料とかそういうので賄っています。アメリカは、約九割がNRCは独自財源でやっています。
 したがって、それを自分の裁量でもってやることで、たしかメザーブさんは、この間、国会事故調でボーナスという言葉を使いましたが、何らかの形で、そういう処遇も考えながらやるということで、少なくとも一般会計には御迷惑をかけない形を工夫しながら、何しろ実を上げる、つまり、安全性を高めていくというためにこのJNESはやはり一緒にすることが大事なんじゃないかなというふうに思っております。

○田中(和)委員
 時間が参りましたのでまた次の機会に質問させていただくこととして、これで終わります。
 ありがとうございました。

○生方委員長
 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

午前十一時五十四分休憩
午後一時開議

○生方委員長
 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。塩崎恭久君。

○塩崎委員
 環境委員会で初めて質問をさせていただきたいと思います。
 きょうの質問に入る前に、配付資料を配っておりますので、委員長にお願いでありますが、たしか理事会で合意をいただければ議事録に掲載をしていただけるという話を聞いておりますので、御検討をお願いしたいと思います。

○生方委員長
 理事会で協議します。

○塩崎委員
 ありがとうございます。
 政府案に対して御質問申し上げたいと思うんですが、私は自公案の提案者なものですから自分の方には質問ができないということなので、きょうは細野大臣にいろいろとお教えをいただきたいというふうに思っております。
 その前に、先ほど田中筆頭の質問の中で、なぜこんなにおくれたんだという話がありましたが、その中で再稼働の話がございました。大飯の三号、四号についてはどうもこのままいくということでありますが、私の愛媛県、伊方原発がございます。三号機が去年のたしか七月でしょうか、本来は再稼働のはずだったものがいまだにとまったままということでありますが、先ほどの大臣のお話ですと、どうもかなり先になりそうな雰囲気がございました。
 この法律が通らなければ、新しい組織ができなければというふうにおっしゃるわけでありますが、もともと去年の臨時国会で出してこなきゃいけなかったものを一月の終わりに出し、それももう予算で審議ができるはずがないタイミングだった。それで四月一日なんて、もともと無理筋を言っていたわけですよ、皆さんは。でありますから、この法律を人質に、さっき田中筆頭が言ったように、再稼働の問題、もちろん私の地元でも賛否両論あります。いずれにしてもしかし、それは俎上に上がらないというのがいけないのであって、改めてお聞きをいたします。
 この法律が通るということになると、これは委員長にお願いですけれども、何かこの金曜日は参考人だけかと思ったら、連合審査までやる。そうすると火曜日に採決ですかと心配をするぐらいハイペースでやっているものですから、これはもっとしっかりと議論しなければいけない、先ほど田中筆頭が言ったとおりでありますが。仮に七月の頭にでも我々の方が通ったとすると、三月のうちに施行になります。そうすると、七、八、九、国会をやっていなければ同意人事はなかなかできませんよね。そうすると秋、さらに、それがスタートしてから安全基準を新たにつくる、年を越えるかもわからないじゃないですか。
 そういうことを計算してみると、では、大飯の後の伊方から、その次は一体どういうことになるのか。とりあえず伊方のことだけで結構でございますけれども、どういうスケジュール観を持っていらっしゃるのかを教えていただきたいと思います。

○細野国務大臣
 私は規制の側の担当で、安全の確認をする側の担当でありますから、どういうスケジュールで再稼働を考えているかということについて私自身が判断をするという立場ではありません。むしろ、それを考えてしまうと安全がないがしろにされる、規制が緩くなるというそういう失敗を重ねてまいりましたので、そういうスケジュール観を私自身が持っているということではありません。昨日も福井県に行ってまいりましたけれども、安全性についてのこれまでの取り組みについて説明をしたということでございますので、そこは明確に分けたいと思っております。
 その上で申し上げますと、大飯三号機、四号機に関しましては、三月末までに原子力安全・保安院のストレステストの評価、さらには、それについての安全委員会としてのこの評価というのがなされておりましたので、そこは、その後のさまざまな自治体とのやりとりも含めて、現在進行中ということであります。
 一方で、伊方三号機に関しましては、三月いっぱいをもってそういう手続が完了しているという状況ではありません。そういう状況の中でこの規制組織の審議が行われておりますので、国民も、早く規制組織を誕生させろという声をあちこちで私は聞いておりますので、それが恐らく最も適切な考え方ではないかと、そのように考えております。
 ただ、別に、人質をとるとか、それがあるからもうこっちの審議がとかということを、私はこの場で申し上げるつもりは全くございません。

○塩崎委員
 私どもの地元の愛媛県の中村知事も、県民が早く判断できるようなということで一生懸命頑張っているわけでありますので、俎上にはできるだけ早く上げていただいた方がいいんじゃないかなというふうに思いますので、また引き続き御努力を願いたいと思います。
 そこで、まず独立性の話でありますが、政府案の独立性ということについては、先ほど来も、御自身でも余り独立性がないかのような雰囲気の御発言をされておりましたが、実に私もそのとおりだと思っておりまして、きょう改めてIAEAの安全基準、特に独立性に関しての、もう今さら読みませんけれども、きょう田中筆頭が大分これを言ってくれたので。要するに、初めて見る方もおられるといけないので、一応念のために配りました。このとおりやらなければ、いわば、独立性に関して真っ当な規制機関としては見られないということであります。
 ところが、ことごとくこれらが守られていない。先ほど、人事の問題を含めて形だけはやっているけれども、そうじゃないと。
 例えば、政府事故調の十二月のあの中間報告がありましたけれども、この中で、政府内の位置づけを変えるだけでは不十分だ、組織として自律的に機能できるために必要な権限、財源、人員を付与しないといけないなどと指摘を、政府の事故調がしているわけであります。
 それから、三月六日に細野大臣はウェートマンさんと電話会談しました。国会の質問を受けて答弁の中で、お墨つきをいただいたかのようなことをおっしゃっていますけれども、よく見ると、特に英文で読むと、前のハウエバーじゃありませんが、構造上の手当てはしたけれども、権限などの独立性は不十分ではないか、こういうことを事実上言っているような表現にもなっている。ですから、私もいろいろな世界の人々とこの問題について話をしますけれども、やはり独立性は不十分だという感じを我々も受けるわけであります。
 それから、この中で、さっきも原子力安全調査委員会の話が出ました。これも考えてみれば、何で今までの安全委員会とそれから保安院の二重構造みたいなものをまた持ち込んできて、やっていて独立性のない、つまり、皆さんだったら原子力規制庁、この単体で物事を決めればいいのに、それを一々何かお墨つきをもらうというかチェックをするという形になっているのがおかしいな、独立した判断基準ができない事実上の証左になってしまうということだろうと思います。
 それからもう一つ、許認可をする際に、審査専門委員という非常勤の二年任期の方を選んで、非常勤ですよ、言ってみれば、その人たちにお墨つきをもらうという審査専門委員という制度も設けているんですね。何で皆さん方の規制庁独自で許認可すら判断ができないのだろうか、何で意見を聞かなきゃいけないのか、私はそれは全く理解ができない。
 何でまた二重構造をつくっているんだということで、本当にこれらを見ても、独立性、自律性がない規制当局だということしか我々からは見えないということを申し上げたいと思うわけでございます。
 それで、炉規法で実は許認可をする際に、推進官庁、つまり経産省であったり文科省、こういうところに同意をするという制度があるんですね。これ、皆さん方でいけば炉規法の七十一条であって、環境大臣は、許可をする場合には、条件を付す場合、あらかじめ、各号に定める大臣の同意を得なければならない。先ほど来、繰り返し細野大臣は、推進と規制を分断しないといけない、こうおっしゃっているんですね。
 ところが、この推進母体である経産省とか文科省の同意を得ないと許認可を与えられない、こういうことになっているのは我々にはとてもじゃないけれども理解ができないので、一体これは何のために同意を求めているのかということを、まず最初の質問で聞きたいと思います。

○細野国務大臣
 まず独立性ですが、若干、短くコメントさせてください。
 塩崎委員の方から、IAEAの基準、要件四の二の八をお示しをいただきましたけれども、これは総合的にぜひ見ていただきたくて、この前に二の七というのがございます。塩崎委員もよく御承知だと思いますが、そこにはこう書いてあります。「独立した規制機関は、他の政府機関から完全に分離されないであろう。」すなわちこの分離というのは、政府そのものとのある種の関係の中で保たれるべきもの、そういうふうな文面があるわけです。その上で予算や権限についてという、そういう文脈で書かれております。
 ウェートマン博士ともそのことを議論いたしました。その中でウェートマン博士からは、「日本の規制機関についての提案は、原子力の推進機関や不当な政治的な影響からの構造的な独立性を確保している。」そういう発言をいただいております。その上で、「柔軟性についての独立性を与えられることが推奨される。」ということが書かれておりますが、仕組みはできているので、それを実際に運用上もしっかりやるようにという、そういう見解が示されているということを私の方から御紹介を申し上げたいと思います。
 そこで、御質問にお答えをいたします。
 原子炉等規制法の七十一条第一項におきまして、原子炉の許可をする場合には、これは、関係大臣の同意を得る旨の規定が存在をいたします。これは、関係をする施策を実施する行政組織の間において整合性を持って法律を執行していくことが重要であるから、それで設けられているものであります。
 一方で、今般の政府の改正案においては、この同意が必要となるのは、原子力規制庁長官が設置を許可するときと条件を付すときなどに限られております。逆に、許可を取り消す場合、停止命令を行う場合には、これは同意は必要ではありません。つまり、許可をする場合には同意があるということですから、規制機関として許可をする場合は、安全性について確保するわけですね。
 逆に許可を取り消す場合、これで同意を得る必要ということになってくると、いや、それは、原子力は必要なので同意できないということになると規制機関としての役割を果たすことができませんから、そこは同意は必要なしとされております。これは、今回の改正案で同意を必要なしとしたものであります。
 つまり、そこはもう明確で、推進側から完全に独立をして判断をできるように、設置については同意を求めるけれども、許可については同意を求めない、通知のみでやる、そういう形になっているということをぜひ御理解をいただきたいと思います。

○塩崎委員
 一通りの説明はわかりましたが、同意と言いますけれども、そもそも、例えば経産省の場合でいけば、恐らくエネルギー庁と相談をして、詰めた上で申請を出してくるというのが、アメリカでもこの間何十年ぶりかでありましたけれども、そうなっているんだろうと思うので、あえてまたここで同意が要るという必要は私はないと思うんですね。
 ですから、それは許可取り消しのときだけとおっしゃいますけれども、そもそも、許可をするときだって同意というものを持っている必要は私はないと思っておりますので、これはまたさらに問題にさせていただきたいと思います。
 そこで、先ほど来、人事の話が出ていますが、改めて聞きます。以前も聞きました。
 身分保障を、長官、それから我々でいえば委員五人ですけれども、皆さんでいえば指定職七人、これについて身分保障はない、つまり罷免可能だということでよろしいですか。

○細野国務大臣
 先ほどちょっと説明をはしょってしまいました。もう少しだけつけ加えさせていただいてよろしいでしょうか。
 許可の方の話ですけれども、原子炉の……(塩崎委員「もういいよ、それは済んだからいい」と呼ぶ)では、後ほどまた文面でお届けをします。
 御質問は、規制庁の長官の人事ということでよろしいでしょうか。(塩崎委員「と幹部」と呼ぶ)幹部ですか。 
 規制庁の長官そして幹部については、専門性を確保した上で委任をして、そしてそこで権限を行使できるという、そういう身分保障が与えられております。もちろん、そこはしっかりとした判断ができるということを前提に、言うならば、全権を委任されて専門的な判断をするという形になっております。
 任命そのものは、これは行政官でありますので、規制庁の長官として、通常の手続にのっとって行われるということでございます。

○塩崎委員
 いや、身分保障があるかというので、今初めて聞いたような身分保障の定義をおっしゃったけれども、要するに、特に公取とかそういうところで身分保障があるところがありますが、それはありますかと聞いているので。今、最後、行政官ですからないということを事実上言った。
 これは実は世界の非常識であって、アメリカでも、それからイギリスでも、それからフランスでも身分保障はちゃんとあって、ですからこそ独立性が保たれ、独立性のある判断ができるわけであって、身分がいつも危なくなるという中でのぎりぎりの判断というのはなかなかできないわけであって、与党の皆さん方にも知っておいてもらいたいのは、世界の非常識を今の政府案はやろうとしている、つまり、この規制を決める立場の人たちに身分保障が与えられていないということを改めて申し上げたいというふうに思うんですね。
 委任規定があるからというような話を今もちょっとお話しされましたけれども、それは権限の話であって、人事はまた別問題でありますので、政策で対立をすれば罷免されるおそれがあるということで、これは独立性がないというふうに思います。
 規制庁の予算の要求折衝というのはだれがやるんですか。

○細野国務大臣
 この予算については、規制庁として安全組織をきっちりやっていくということでございますので、そこで立案をされるということになります。
 その上で、やはり予算がしっかりと確保できるということが極めて重要でございますので、そこを、しっかりと勘定として別のものができるようにということで現在準備を進めているということであります。
 予算全体としての要求は、これは環境省として行うということになろうかと思います。

○塩崎委員
 いろいろおっしゃいましたけれども、結局、環境省大臣官房会計課がやるということだと思うので、そういうことでよろしいですね。イエスかノーか、こくでいいですよ。

○細野国務大臣
 予算全体としては環境省として要求をするという形になります。

○塩崎委員
 ですから、規制庁自体で予算を要求したりする、管理をしたりするわけじゃないということで、管理は自分でやるんでしょうけれども、会計課がやるということであります。
 それから、規制庁内の人事の話、ちょっとさっき出ましたけれども、これは誰がやるんですか。

○細野国務大臣
 これは、規制庁の長官が人事をやっていくということになろうかというふうに思います。

○塩崎委員
 三月六日、私の予算委員会の答弁で、指定職以上は私が直接面接をする、こうおっしゃったのは覚えていますか。これをどう思いますか、独立性との観点で。

○細野国務大臣
 その御指摘もございましたので、私は一年半一緒にやってきましたので、この人間なれば安全規制をきっちりできるというふうに考えている人間はおりますが、それを一本釣りしてきたり、そこをもう確定をしたようなことはやっておりません。
 逆に、ただちょっと危惧をしておりますのは、原子力規制庁の長官の人事にしても、自民党案で出ている原子力規制委員会の人事にしても、それぞれ来ていただくとしても、そこは、それこそ専門家とはいえ、マネジメントにはかかわっていない方があるときから入るということになるわけですね。その方が、個性を全部把握できて、いい人を引っ張ってこられればいいですけれども、それは、私は一年半やりましたけれども、本当にいい人材かどうかと見きわめるのは極めて難しいです。
 そうなってまいりますと、その人が決め切れなかった場合はどうなるかということを考えるわけです。そうなると、結局は、それこそ各省から出された人材をそのまま認めざるを得ないことになるんじゃないかというのを危惧しているんです。
 これは、決して例えば私が権限を行使したいとかいうことを言っているわけじゃなくて、本当に強い規制機関をつくるためには、人材が宝なんですね。その人材は今の政府の中にあまたいるかというと、いません。どうしても、能力のある人間とかこの事故の教訓を得ている人間というのは、そんなにいないんです。その人材をどう有効活用するかという実質面でぜひ御理解を賜りたいというふうに思います。

○塩崎委員
 人材が大事なことは、我々もよくわかっているがゆえにノーリターンルールとかをいろいろ考えているわけでありますので、最初がなかなか難しいことはともかく、みずからやるということを公言するということは、やはりそこら辺の独立性ということがよくわかっておられないんだなということを世の中に発した、私に対する答弁だったということを申し上げたいと思います。
 それで、ノーリターンルールですけれども、ノーリターンルールは、先ほど来いろいろ言っていますけれども、大臣は大事だと思っていらっしゃるのかどうか。

○細野国務大臣
 ノーリターンルールは極めて大事であると思っております。私、それぞれ文科省そして経産省と、どういうやり方でやるか協議をいたしましたが、やはり当初は指定職のみでどうだろうかと、そんな話もございました。
 ただ、それでは十分ではないということで、これは、課長クラス以上、政令職についてもやはり原則ノーリターンということで交渉いたしまして、そこまでそれぞれの省庁も納得をして今準備を進めているという状況であります。
 したがいまして、極めて大事であると考えております。
 先ほどの午前中の質疑の中で吉野先生の方から、三年から五年という猶予期間を設けてと、そういう御発言もございましたので、そういったやり方も含めて我々も検討していかなければならないというふうに思っております。

○塩崎委員
 大事だというふうにおっしゃっているんですが、私の三月六日のあの質問のときに、きょうお配りをしております「「原子力規制庁」の人事ルール」、二月二十四日に出たものですけれども、このときに、大臣、あなたは政令職の人数を知りませんでしたよね。あのとき答えられなかったんですよ。だから僕はあのときに、ああ、ではこれは、大臣がほとんど見ていないでつくっちゃったんだな。だって、指定職が七人で政令職が十二人ぐらいのことは、誰でも一度聞いたらわかりますから。さんざん今、指定職だけにというお話はしましたけれども、これを知らないということは、これは事務方がつくったんだなと思いました。
 それで、その下を見ていただきたいんですね、皆さん。二枚目の「人事ルール」のところでありますけれども、この中で、いいことも書いてある。「腰掛け人事は一切行わない。」これが大事だと思うんですね。だからこそ我々はノーリターンルールだと言っているのですが、その次に例えば、「ただし、規制庁に所属後、一定期間を過ぎても馴染めない場合や適性に課題がある場合の復帰は可能。」だと。だから、ちょっといろいろ問題で、余り俺は好きじゃないよみたいな話だと、希望すれば大体復帰できる。「また、成果を挙げ、役割を果たした後で、本人が希望する場合も、復帰を認める場合がある。」成果も上げない、役割を果たさないという人は大体いなくて、減点主義じゃないこの公務員の世界というのは、基本的に、みんな何らかの成果を上げて次に行くという形に人事はなっています。
 そうなると、これを見ると、もうほとんど誰でも、本人が希望する場合は帰れるというふうにしか思えないんだけれども、一体ここをどのぐらいのことを考えているのか。
 それから、政令職の原則としてノーリターンの、原則じゃない、やはり本国に帰るというのは、どういう場合に帰るんですか。その二つを教えてください。

○細野国務大臣
 余り感情的なやりとりにならないようにしたいんですが、塩崎先生、私、全部組織は見ているんです。この間の御質問は何人ですかと言われたので、その正確な人数はその場で把握していなかったので答えませんでしたけれども、どういう組織にするか、オンサイトはこういうことにしよう、オフサイトはこうしよう、自衛隊の人はこう入れよう、全部私自身がかかわって、ここはもう本当に半年間、一年間私がずっとやってきた仕事ですので、それを全面的に否定するような言い方はぜひ控えていただきたいというふうに思います。
その上で申し上げますが、なぜこういうふうなことを書いたかというと、一つは、事務の職員について考えたわけです。
 技術職の職員は、原子力の専門家としてやっていたり、もしくはこれからも原子力でさらに伸びていこうという職員が、これはもうまさに主翼を担わなければなりませんので、そういう職員については、もうこれはノーリターンということでぜひやっていきたいと思います。
 一方で、やはり組織を回していくためには、事務の人間も必要です。いわゆる文科系の人間です。文科系の人間は、それぞれわけあってそれぞれの省庁に入っています。たまたまそのときに、いろいろなやりくりの中で、原子力は専門ではないけれども、人事をやったりいろいろなマネジメントをやる人間が一人もいないというわけにいきませんから、そういう人間についても全部片道でいいのかと言われれば、それは、それぞれ皆さん、人生の選択があるから、例外全くなしというわけにいかぬだろうということがあったわけです。
 ですから、繰り返しになりますが、いい組織にしたいですから、それはもうできる限りそこでしっかりと人を育てていきたいというふうに思いますよ。思いますけれども、初めにやはりいい人材を集めるためには、がちがちの組織をつくってしまうと本当に、今原子力が問われているから、もしかしたら日本で原子力がなくなるんじゃないかというふうに思っている人も当然いるわけですね。そういう中で、ノーリターンですよ、もうこれであなたは官僚としてここでずっとやっていくんですと言われたときに、それは腰が引ける人もいますよ。原子力をやってきた人間はそれはそれで一つの考え方だけれども、事務職まで、そこまで本当にやれますかということを考えて、こういう書き方になっておるということであります。

○塩崎委員
 お言葉ですけれども、恐らく、事務職の方々がこれまでの霞が関の論理でこの人事政策をつくったな、私はそう思っています。
 ウェートマンさんに聞いてもメザーブさんに聞いても、ほとんどの人が、やはり一生同じ組織にいるという世界ができているわけですね。我々はそれを目指さないといけないのであって、我々、三年から五年の経過期間はもちろん置きますよ、生身の人間を扱うわけですからめちゃくちゃなことはできないので。それはわかっています。
 しかしながら、やはり我々がこれだけの事故を起こして、これだけの不十分なことを、我々自民党時代からやってきたことが中心だけれども、反省するならば、ここはもうほかの霞が関の組織の論理とは全く違うのをやらなきゃいけないし、そんな人事交流なんかしている余裕は恐らくないぐらい、バックフィットと同じように、人間のバックフィットをいつもやっていかないといけない。こういうことだと思うんですね。
 したがって、私が今まで勉強した限りでは、これはかなり厳密にやっていかないといけないし、では、何で連邦政府の中で一位、二位の人気がある組織になっているのか。これをもうちょっと前向きに我々は考えた方がいいと思うんですよ、何でこんなになっちゃうのかなと。だから、ぜひそこのところは、余りがちがちしないようにとあなたは言うけれども、やっていった方が私はいいと思っています。
 ちょっと話をかえますが、班目委員長もおいでになっていただいていますけども、これはまず細野大臣に、例の防災指針検討ワーキンググループの「中間とりまとめ」、これについてなんですけれども、この間の答弁で、本会議で、「中間とりまとめ」を踏まえるということを大臣はおっしゃってくれました。「中間とりまとめ」、我々も勉強会をやりましたけれども、非常によくできた、反省を込めたいい提案が私はされていると思うんです。
 その中は、要は、「一般災害に対応する組織が、一般災害対応と原子力災害に係る「公衆の防護」の対応の両方を実施することが合理的である。」というふうになっていて、オフサイト対策は一般災害に対応する組織、すなわち災害対策本部がこれに当たるというふうになっているんですね。
 ところが、政府の方は原子力規制庁が原災本部の事務方となるということになっているものですから、この政府の案では、独立性に反するとともに、公衆の防護は一般災害に対応する組織が当たり、原子炉事故の収束は規制機関が担うという、オフサイト、オンサイトの役割分担を明確化しようとしている安全委員会の「中間とりまとめ」にも反しているんじゃないかというふうに思うんですね。
 そこで、細野大臣はそこのところをどう考えるのか。さっきもちょっと話がありましたが、我々の提案している案でいくと、例の、規制委員会の所掌事務を除くということで御心配をされていますけれども、我々は、基本的にオンサイトが委員会でオフサイトは原災本部、これが見るというふうには思っているんですけれども、この「中間とりまとめ」に書いてあることはちょっと政府の考えていることと違うんだろうと思うんですけれども、それはどうでしょうか。

○細野国務大臣
この「中間とりまとめ」は、原子力安全委員会の原子力施設等防災専門部会の防災指針ワーキンググループというところで、三月末で原子力安全委員会としての役割を終えるということを前提に、班目委員長が陣頭指揮をとって、非常に精力的に議論を重ねて出していただいたものだというふうに考えております。その意味では、きょうは委員長が来られていますけれども、その御努力は非常にこれは大きなものがあったということを皆さんに知っていただきたいというふうに思います。
これに基づいて原子力災害対策指針というのはこの法律の中でさせていただきたいというふうに思っておりますし、その法定化された原子力災害対策指針のもとで、地域の防災計画をできるだけ早くつくっていただけるような体制を政府としてつくりたいと考えております。
オンサイト、オフサイトの役割分担でありますが、私どもも、炉の問題については、これは原子力規制庁が専らやる、そしてオフサイトについては原子力災害対策本部が行うという、そういうたてつけにしております。
ただ、このオンサイトとオフサイトというのは、極めて密接にかかわっております。オフサイトにおける例えば避難やモニタリング、そういったことも含めてそこは極めて綿密にかかわっておりますので、事務局機能はどこかがしっかりと担わなければならないと思います。
自民党案を拝見しましたが、原子力災害対策本部の事務局をどこが担うのかというのが明確ではありません。明確でないということは、平時の防災訓練も含めてその準備ができないのではないかということを懸念をいたします。
そこで、政府案では、平時においても常に防災訓練をして、そして自治体の防災計画をしっかりと現実化していくという意味で、オフサイトについても、常に原子力災害を想定して、担当する担当官を置いて、その部隊も置きます。ここは、常に有事に備えてやる組織をつくり、そして、本当に有事になってしまった場合には原災本部のもとで対応するという、そういう体制を考えております。

○塩崎委員
 班目委員長にもちょっと簡単にお答えいただきたいんですけれども、ここの問題は、オンサイトのデマケの話じゃなくて、公衆の防護は一般災害に対応する組織が当たるということが問題なのであって、原子炉の収束は規制機関がやるのは当たり前なんですけれども、そこの点、この一点だと思うんですよ。一言でお願いします。

○班目参考人
 お尋ねの点については、我々のまとめでは、おっしゃるとおりな形でやるべきだというふうに提言してございます。

○塩崎委員ありがとうございます。
 ですから、これから防災の体制を考えるときに、修正協議をするときにどうするかというのは、この取りまとめ案をベースにやはり考え、我々の考え方と同じだと思うんですけれども、それをやはり考えていくべきじゃないかなというふうに思います。
 次に移りますが、ウェートマン報告というのが、去年六月にIAEAの調査団、その報告というのを一番最後につけてあります。要するに、平時でも緊急時でも、電力事業者それから規制機関、政府の役割というのは変わらずに、それで、緊急時だからといって混同してはならないというふうに指摘されているわけです。
つまり、混同すべきじゃないということは、実は日本は混同していたということを事実上言われちゃっているわけであって、ですから、緊急時になったらもう役割とか何かがぐちゃぐちゃになっちゃってよくわからなかったというのが日本であったと思うんですね。
 ただ、これは細野大臣とは何度も議論していますけれども、そうはいいながら、ハウエバーといって、とはいえ、特に過酷事故などのときには緊密な協力が必要だと。これがやはりこれからいろいろ原災本部の、あるいは、どういう体制にするかは別にして、災害が起きたときの対策をつくるときの基本的に大事なところなんですね。
 これは、緊密な協力を持っているけれども、何度も言いますけれども、コオペレーション、クロース・コオペレーションと英語でこれは言いますが、コオペレーションというのは、もともと、二つの対等のものが同時にオペレートするという意味ですから、対等なものであって、その一つ前にある、これは原子力安全庁時代に準備室がつくったものですけれども、事故のときの原災本部の事務を事務局としてサポートするのがこの規制機関の役割だというのが政府案なんですね。これは違うだろうと。それは下になるんじゃなくて、対等のものだろうというふうに言いたかったわけであります。
 そういうことで、我々にとって大事なのは、さっきちょっと答弁で説明しましたけれども、原災本部長たる総理と、我々のだったら規制委員会が、やはり一体不離でやっていく。だから、そこに認識のギャップがないようにいつもクロース・コオペレーションをしていくということが大事なので、何となく、三条委員会で独立していると、勝手なことをやって自由がきかないみたいなことになっていますけれども、そんなために我々はつくるんじゃないんですから。やはり、事故が起きたときにはちゃんとみんなで、内閣を挙げてと言っていますけれども、我々も同じように、内閣を挙げて、国家を挙げて、一緒にこれを押抑え込むというために我々は提案をしているわけであります。
 これからちょっと幾つか質問をするんですが、前提として言わなきゃいけないのは、やはり今までの組織は、どうしてもまず独立性がなかった。それから専門性も、人材的にJNESに固まっていっちゃったり、いろいろあって知見も必ずしも十分高くなかったわけですけれども、いずれにしても、今度新しい組織をつくったときには、独立性を確立させる、そして専門性も、専門性の高い人、やる気のある人材を集めるということでありますから、使命感も覚悟もこれまでよりもはるかに多く、強く持ってもらわなきゃいけない。それで、持ってもらえるだろうということを前提にしなければいけないと思うんですね。
 それをやることを前提に、我々のだったら委員長は認証官ですから、言ってみれば大臣クラスですよ。何か政治家の大臣じゃなきゃいけないという話がありましたけれども、何か、防衛大臣で政治家じゃない人がおなりになられたような話をきのう聞きましたが、まさに人の命を預かる防衛大臣が政治家じゃなくなったですよね、今度。そういうことについての意見もちょっとお聞きをしたいんですが。
 そういうことで、これからは変わるんだということを前提に申し上げたいと思うんですけれども、まず最初の質問は、メザーブさんがこの間事故調で来られたときに私も話をいろいろ聞いたりしていましたが、そのときに、最も情報が集まって、最も知見を持っている人が最もリスクの低い判断をするということをメザーブさんはおっしゃっていました。これについて細野大臣は御同意されますか。最も情報が集まって、最も知見をたくさん持っている、そういう人こそが一番リスクの低い判断をするだろうということについてどうでしょう。

○細野国務大臣
 メザーブ氏とは私も何度か会って話をしていまして、元NRCの委員長として、専門家で、世界でも有数の、この世界のオーソリティーだというふうに思います。
 済みません、ちょっとどういう趣旨でおっしゃっているのかわからないんですが、専門家がまずしっかりと判断すべきである、専門家が判断するその前提として、事業者がまずさまざまなことについてしっかり取り組む、そういうことを意味しておられるのであれば、おっしゃるとおりだというふうに思います。

○塩崎委員
 情報が一番集まって、そしてその道に一番知見がある、そういう人が、やはり厳しいときの判断は一番リスクが低いんじゃないかと。つまり、情報も持っていなくて、そして知見もない人が判断するときというのは、やはりこれはリスクの高い結論を出す可能性が十分あるということだろうと思うんですね。
 今、一般論としては認められたわけですけれども、そうすると、やはり現場に近くて知見がある人が緊急時も判断をすべきだと。だからこそIAEAの安全基準も、原子力事業者がまず責任を負え、こういうふうに今のこれにも書いてありますが、なっているわけです。
 そうすると、専門的なこと、緊急時におけるいろいろ原子炉の鎮圧等は、これが専門的であることはよくわかっているとおりですけれども、やはり、官邸にいる政治家がやることではないんじゃないかなというふうに思うんですね、その専門的なことを。その点はどうですか。

○細野国務大臣
 塩崎委員とこうして議論をしておりますと、相当距離は近づいているなという感じはするんです。ですから、今の御指摘は、私もそのとおりだと思います。
 つまり、事業者が責任を持って炉の鎮圧をすべきです。その責任はそこにあります。そして、それを監督して、場合によってはさまざまな技術的なことについて指導していくことは、これは規制機関の専門家がやるべきです。そこまでは全く一致をします。そして、政治家がそれに安易に口を出すべきでもないというところも全く同意をいたします。
 ただ、これだけの事故を経験をしていて、先ほど一つだけ例を挙げましたけれども、例えばプールに放水をしなければならないというようなケースに、これは、自衛隊に対する指示権だけではなくて、ほかの行政機関や事業者に対しても何らかの指示権が行使をできるような最後の権限を残しておかないと、本当に、ある種技術を超えた、泥臭い力が必要な作業が出てきたわけですね、今回も。そういったところについてはぜひ考えていただけないかというのが、私どもの、唯一残っている違うところということになれば、そういうことになるのではないかというふうに思います。

○塩崎委員
 やはり、こういう議論を重ねるというのはいいことだと思うんですね。
 海水注入で今回いろいろありましたね。本当は海水注入やらなきゃいけないのに、再臨界大丈夫かという一言で一回中断しましたね、民間事故調のあの報告書なんかを見ていても。いや、中断というのは、五時五十五分に海江田さんがやれと言って、六時に総理が入ってきて、それで再臨界大丈夫かと言って、次に総理を入れて会議をやったのは七時四十分ですから。一時間四十分リハーサルをしていたと書いてあるんですね、民間事故調には。一発で菅さんをしとめないといかぬというのでやったというふうになっていますけれども。
 そこで質問は、規制委員会、我々にとっては規制委員会、規制当局が海水注入をすべきだと言ったときに、今の法律でいくと、二十条二項でいけば総理は逆の提案ができちゃうわけです。つまり、海水注入をとめろと言うことをできるようになっていると私は理解していますが、そういうことですよね。そういう判断をすればできますね、二十条二項で。

○細野国務大臣
 先ほど私が申し上げた海水注入は、ちょっと認識が、済みません、そこは合っておりませんで、プールへの海水注入を申し上げたんです。自衛隊と警察と消防と、そして……(塩崎委員「わかっている、それはまた後で言うから」と呼ぶ)ああそうですか。そこについて申し上げたので、そこは、済みません、ちょっと御指摘の部分とは違うんです。
 総理の指示権というのは、もともとこういう規定になっています。「特に必要があると認めるときは、その必要な限度において、」というふうになっていますから、その範囲で指示権を行使をするということであります。

○塩崎委員
 いや、今大臣がおっしゃったのは二十条三項の話を言っているので、私は二十条二項のことを言っているんですね。だから、これを、ベントじゃなくて、まあベントでもいいんだけれども、やれと言ったことをだめだという指示権を出せるというふうに理解をしているので、それはやはりよろしくないねというふうに事実上細野さんはおっしゃっているけれども、そういう理解でいいかと。
 それで、三項の一般的な指示権の話はちょっと別の話で、二項の話で海水注入をやれという命令を出しているのに、もう一回逆のことをやると言うことがあるんじゃないかということです。もうイエスかノーかだけで結構です。そこから次に行きたいと思います。

○細野国務大臣
 ですから、そこは抑制的に行使をするということを累次にわたる答弁で申し上げています。
 それで、塩崎委員がそこまでおっしゃったので、ちょっと逆に、私は質問する権限はないので、意見だけ申し上げます。(塩崎委員「申しわけない、質問権ないんだから、僕は時間がないから、さっきの大事な話に戻るから」と呼ぶ)一言だけ申し上げます。
 自公案で私が懸念していることを一言だけ申し上げると、四条の七で、「原子力利用における安全の確保の観点からの原子炉の運転等により生じた事故による災害の防止に関すること。」原子力の災害の防止に関すること全体が原子力規制委員会の所掌になっているんです。そして、そこについては全て総理の指示権から除外をされているんです。
 ですから、今の私が言ったような放水の場面も含めて本当に指示権は行使を出されるのかというところについて、せっかくちょっとかみ合ってきたので、懸念を持っているということを申し上げたいと思います。

○塩崎委員
 要するに、二十条二項だったらばとめることができるというふうに否定しなかったから、そうだということでいいですよね。しかし、細野さんは余り専門的な分野に首を突っ込むなと言いながら、抑制的にとおっしゃったから、これはやはりまだできるということをおっしゃったんですね。
 さっきのプールへの放水の話は、私はそれを聞いてよかったと思うんです。つまり、そんなことを我々が委員会にやらせようなんてことには全くなっていませんから、そこのところはまた議論しましょう。我々はそんなことは考えていなくて、当然総理がやるべきこととして整理をしていますから、そこのところはよく理解をしてもらわなきゃいけないなということだと思うんですね。
 そういうことで、先ほどおっしゃっているのは、今度は一般的な指示権でどうだということを言っているので、我々が規制委員会の所掌事務を除くというふうに言っているのは、さっき申し上げたような、専門技術的なことについて口を挟んでもらったら困りますよということを込めた、括弧内の原子力規制委員会の所掌事務を除く、そういう意味ですから、だから、それ以外のことは総理は当然一般的に指示ができるわけですよ。そのかわり、規制委員会が下す専門技術的な判断と違うことをやってもらったら困るし、そうじゃないことを言ってもらっても困る。つまり、委員会が決めていないことも言ってもらったら困るというのが我々の考えですよ。
 だから、細野大臣も、専門的な、技術的なことに政治家が首を突っ込むべきではないということははっきりおっしゃってくれたので、そこは、だから二十条の二項、これは本当は削除していいんじゃないかなというふうに思うんですね。それは炉規法上の命令の指示ですから、それは必要ないというふうに、私は、今の答弁から見れば当然そういう帰結になると思うんですね。
 したがって、あと、さっきの準備室がつくったコオペレーションというのは、対等で初めて政府とこの規制委員会が一緒に協力してぴったしでいくということですから、それが、今の皆さんの案でいくと、事務局としてサポートをする、主従関係になる、これは間違いじゃないですかと。それがまた専門技術的なことについてまで首を突っ込んできて大混乱を、つまり、これがあの菅直人リスクだということを申し上げているんですね。

○細野国務大臣
 委員のお考えはよくわかりました。ですから、あとは、そこまで初日に言うのは何でございますけれども、今のお考えは、やれることはしっかり残しておく、政府として指示権を。しかし、技術的なことについて政治が口を出すべきではないというのは全く一致します。ですから、それを法律的にどう書くのかということについて、ぜひ前向きな御議論をいただけるとこれはいいのではないかなというふうに思います。
 その上で、今の部分については若干懸念がございます。
 というのは、原子力災害対策本部というのは、常設をされている組織ではありません。常設をされていない組織が、いざ緊急事態になった場合に設定をされて動くわけですね。なぜ原子力規制庁を事務局にするかというと、原子力規制庁は常設ですから、常にオフサイトについても備えをすることができます。ですから、塩崎委員がおっしゃるクロース・コオペレーションをやる手段として、事務局にしっかりと置くべきではないかというのが我々の発想なんです。
 ですから、そこも考え方は一致をするというふうに思いますので、どういう組織ならば平時から有事にスムーズに対応できるのかということについて、ぜひ御検討いただければ幸いであります。

○塩崎委員
 そもそも、シビアアクシデントが起きたときの、原災本部が立ち上がったときの規制組織のやるべきことというのは、何しろ、原子炉をどう鎮圧するか、もうこれに全てなんですね。あとは、本部が全体に対して責任を持っているわけですから、だから、原災本部の回しをやるような余裕はどこにもないんですね。
 委員長を我々は副本部長で入れていますけれども、人によっては、おまえ、そんな余裕があるわけないじゃないか、そこに行っている余裕なんか絶対ないぞということで、やるべきことは、実はサイトの方をみんな向いていないといけないわけです。ところが、今回はみんな官邸の方を向いていたから、何だかこっちがおろそかになっちゃった。ただ、たまたま吉田さんが頑張ったときがあって、うまくいったときもあるけれども。
 そういうようなことで、本当に役割が、御経験されているからもちろん私よりも知っていることはたくさんおありなんだけれども、役割分担をもっとはっきりしていかなきゃいけないんじゃないかなと。そして、イギリスにはサイエンスアドバイザーというのが必要な役所にはほとんどあって、プライムミニスターズオフィスにはチーフサイエンティフックアドバイザーがいるのはこの間お会いになったとおりで、イギリスのONRの人に話を聞いたんです。この間、大飯のときに一月に来たでしょう。その後、私のところに来てくれて話をしたんです。日本の場合には政治家が細かな技術的なことに首を突っ込むんだけれどもと言ったら、じっと考えて、イギリスでは科学的にわからないことに口出す政治家はいませんと言われましたよ。これってすごく大事で、サイエンスアドバイザーがいない日本ですから、そういう文化がないというのかもわからない。
 こんなところからも直していかなきゃいけないんですけれども、きょう大分議論して争点が、争点というか論点がわかってきたので、ぜひこれはいい結論を出して、結論から言うと我々の案になるんだろうなというふうに思いますけれども、ぜひ話し合いをしたいと思います。
 終わります。

○生方委員長
 次に、井上信治君。

○井上(信)委員
 自由民主党の井上信治です。
 いよいよこの原子力規制組織の法案が委員会審議にかかるということで感謝をしておりますけれども、けさも何名かの委員の方が指摘をされたように、本来であればもう少し早くできていなければいけなかったなということで、これは政府・与党だけに限らず、我々も含めてこれは反省をし、そして、しっかりしたものをつくっていかなければいけないと思っております。
 そういう意味では、もう一年三カ月たっておりますけれども、遅くなってしまったから、だからこの国会審議もとにかく早く終わらせて早く成立させよう、スタートさせようというのは、これはちょっと違うと思いますから、やはり徹底した審議、慎重な審議をしていただく、例えば、細野大臣はもちろんですけれども、野田総理大臣にもこの委員会の場にも出てきていただいてちゃんと我々の質問にも答えてもらう、そういうことも含めて、ぜひ理事の先生方、委員長もお考えをいただきたいなと私は思っております。
 ただ、非常によかったなと思いますのは、やはり自民党、公明党から対案としてきちんと議員立法が出てきたということだと思っております。塩崎先生は、もう国会事故調の法案のときからこの原子力関係の問題に大変な情熱を持って、そして関心を持って取り組んでおられたということ、それから吉野先生は、福島が地元でありますから、そういう意味でも本当にすばらしいそういう方ですし、また、柴山先生は法律の専門家であり、江田先生は、ちょっと褒めようと思ったんですがいませんけれども、原子力そして環境行政全般に大変な知見を有する、いわばベストメンバーの自公の方々が法案を提出していただいた、本当にありがたく思っております。
 細野大臣も、ちょっと何だかお疲れのように見えますけれども、福井に行かれたり、被災地福島、そして関西と、本当に大活躍をされて、けさも朝からほとんどお一人で答弁をされて大変なことだというふうには思いますよ。しかし、やはり本当に大事な案件でありますから、引き続きぜひ頑張っていただきたいと期待をしております。
私は、これは本当に大部にわたる法案でありまして、論点も多岐にわたります、ですから、そういう意味ではもう切りがないものですから、おかげさまで、五月二十九日の本会議で代表質問をやらせていただきましたので、そこの論点に少し絞って、また、逆に言うと、残念ながら、やはりちょっと総理、細野大臣のその答弁、不十分だな、すれ違いだな、おかしいな、ちゃんと答えてもらいたいな、そう思った点も多々あったものですから、この委員会審議の中で少し深掘りをさせていただきたいと思っております。
 まずは、これは全くのすれ違い答弁しかいただけなかったんですが、民主党さんのインデックス二〇〇九、このときに、「国家行政組織法第三条による独立性の高い原子力安全規制委員会を創設する」と約束を国民にされていたわけですよね。議員立法もこれに基づいてやっておられます。しかし、今回の与党になってからの閣法は全く違うものになってしまった。むしろ、自公案の方が三条委員会方式ということでありますから。ですから、このことに関しては明らかにマニフェスト違反ではないかなと思います。
 野田総理からは答弁として、今般の法案は、党の政策を大災害の経験と教訓から発展させて危機管理対応を強化したものだ、こういう答弁だけなんですね。ですから、明確に、マニフェストに反しているのか反していないのか、そこについてまずお聞かせいただきたいと思います。

○細野国務大臣
 井上委員には、いろいろ済みません、御配慮いただきましてありがとうございます。温かいお言葉をいただきましたので、しっかりと取り組んでまいります。ありがとうございます。
 この政策集、インデックスの位置づけなんですが、ここをまず正確にお伝えをすべきであろうというふうに思います。
 確かに私ども、選挙のたびにマニフェストを示しておりまして、それと時期を若干前後して、前のケースが多いと思うんですが、政策インデックスというのを出しております。ただ、この政策インデックスというのは、実は質的にマニフェストとは全く違う性質のものであります。これは、これまで国会で取り組んできたことを実績として整理をしたのが政策インデックスなんです。
 ですから、そういうこれまでの実績を整理したインデックスと、これからやるべきことをマニフェストで書いたこのものというのは、そういった意味で違う性格を持っているということはぜひ初めに申し上げたいと思います。
 したがって、マニフェスト違反かと問われれば、それは、お示しをしたマニフェストができていない部分は御批判は当たるわけですが、そこには書いていないという意味では、これはちょっと違う問題だということであります。
 ただ、御指摘のとおり、そういう独立した三条委員会という考え方を民主党が野党時代とってきたことは、これは事実です。ですから法案も出してきました。
 その考え方がなぜ実際に導入をするに当たって変わったのかということになってまいりますと、それは、今回の非常にシビアな事故というのを経験して、緊急対応に責任を持って当たるという意味においては、独立をした三条委員会、合議制というそういうやり方よりは、内閣の責任のもとで迅速な意思決定が行われるそういう行政組織の方が適切なのではないかという判断をして、今回、こういった形で法案を出させていただいているということでございます。

〔委員長退席、横山委員長代理着席〕

○井上(信)委員
 最初は褒めさせていただいたんですが、ちょっとがっかりしたのは、やはりそういう詭弁を弄されない方がよろしいと思いますね。民主党の整理はそうかもしれない。しかし、国民にはわかりませんよ、そのインデックスと本物のマニフェストの違いというものは。やはり、これはもうマニフェストだと国民は思っておりますから。
 ですから、いいんです、素直にお認めをいただければ。違反じゃない、それでもいいですよ。しかし、政策変更したのは間違いないということですから、そういう意味では、ここを余りここで議論しても仕方ないことですが、でも、私は、やはりそういう詭弁を弄さない方がいいということだけは言わせてもらいたいというふうに思っております。
 確かに、未曽有の大震災の教訓を生かしていかなければいけないというのは、これは当然のことだとは思うんですけれども、ただ、他方で、本当に大きな事件や事故が起きますと、何でもやはり制度が悪い、今の制度がこういう制度だから、この制度を変えればよくなるんじゃないか。これは我々政治家も悪いんだと思うんですね、制度を変えれば何か仕事したような気になって。
 でも、そんな単純なものじゃないですよね。やはり、そのときにいた人材の能力ややり方の問題、そしてその制度の運用の仕方、そういったものがちょっと複雑に絡み合っているはずなので、そこのところがちょっと制度論ばかりをしているような気が若干いたしますので、そこをちゃんと考えていただきたいと思うんですよ。
 我々の議員立法のときにもいろいろな議論がありました。菅直人リスク、あるいは、御本人が先ほどまでいらっしゃって、いないのかな、ちょっと言いにくいんですが、班目リスク、どっちが悪いんだ、あるいは両方悪いんじゃないか。では、どうやればいいのか。
 これは、よりふさわしい適切な人がそのポストにいれば何の問題も起きなかったかもしれない。しかし他方で、どんなにいい制度をつくっても、いわばよくない人がついてしまえば、その制度も失敗する可能性はありますよね。だから、そこのところを少し精緻に議論をしてもらいたいなというのが私の印象です。
 一番の違いは、やはり独立性だと思うんです。これはもう朝からいろいろな方がいろいろな議論をされているので、ちょっと私はこの独立性は次の機会にとっておくといたしまして、一元化の問題。
 御承知のようにこの一元化についても、例えば今回の事故の教訓ということでいえば、SPEEDIの試算結果、これが迅速に公表されなかった。この原因としてはやはり、放射線モニタリングが文科省、原子力安全規制は保安院や原子力安全委員会、所管がばらばらで役割分担も不明確だった、一貫した責任体制がなかった、これが原因の大きな一つだとは思います。
 あるいは、昨年九月の国連ハイレベル会合において野田総理大臣も、規制の一元化を図ると明言されました。しかし、残念ながら政府案では、きちんとした、徹底した一元化というのがなされていない。一体なぜなのか。これ、やはり総理の答弁を聞いてもよくわからないんですね。
 例えば、保障措置について私が本会議で質問をいたしました。総理の答弁は、核不拡散の保障措置規制は原子力の安全規制とは異なる、この一言だけなんですね。これは余りに不誠実で、それは異なったら一元化しないでしょうけれども、何がどう異なるのか、全く説明がない。
 ぜひ細野大臣、詳しく教えてください。

○細野国務大臣
 確かにそこは、本会議での答弁というものは、極めて限られた時間でありますので、若干舌足らずの部分があったのではないかというふうに思います。
 そこで、若干込み入った話になりますけれども、説明の機会をいただきましたので、説明をさせていただきたいと思います。
 いわゆる安全規制、セキュリティーとかセーフティーの世界になりますけれども、そういったところというのは、政府が基準を定めまして、原子力事業者に対して審査、検査などを行うという、言うならば、規制をする側とされる側という単純な構図になるわけですね。そこに、まさに二者以外の関係者が直接立ち入るということはありません。いろいろアドバイスをもらったり、各国間で調整をしたり、お互いに情報を共有し合ったりすることはありますけれども、基本的には二者の関係になるわけです。
 一方で、保障措置に関しましては、これはNPTに加盟をしている非核兵器国の義務として、IAEAによる査察を日本として受けるということになるわけですね。その場合はIAEAが査察をしますので、日本政府の立場が微妙になるわけです。日本政府は、一つの立場としては、IAEAから査察をされるという立場です。
 一方で、日本政府は、この保障措置をきちっとやるために、日ごろ事業者に対して、言うならば、さまざまな実質的な規制をする、ちゃんと核物質を管理しなさいよという規制もする立場。
 ですから、日本政府が規制される立場と規制する側と両方の立場になるというそういう意味合いがありまして、若干関係は込み入るわけですね。
 そういう意味で総理は、保障措置の場合には安全業務とは性格が異なるという、そういう説明をしたということであります。
 ただ、一方で日本政府が、スリーSということを、あれはたしか洞爺湖サミットだったでしょうか、発言をいたしました。セーフティー、セキュリティー、セーフガード、我々がよく参考にするNRCは、この三つをセットでやっています。多くの国はこれをセットでやっている。なぜかというと、この三つには、核物質をきちっと管理をし、そして安全を確保し、テロにも備えるという、共通した一つの言うならば方向性があるからですね。
 ですから、そういう考え方を各国がとっている中で我が国がどこまで一元化をするかという議論は、さらに深めていく必要があるというふうに思います。
 政府内では、まずやれることとしてこういう案を提示しておりまして、保障措置については、年内をめどにしっかりと再検討するということになっておりますので、国会での議論というのは、これはいろいろな御議論が当然あるというふうに思いますので、大いに私も聞かせていただきたいと考えているところであります。

〔横山委員長代理退席、委員長着席〕

○井上(信)委員
 前向きな御答弁だと思うんですが、年内に検討するなら、なぜこの法案には盛り込んでいなかったんですか。そこが自公案の方には入っているわけですから、ちょっとそこを説明してもらえますか。

○細野国務大臣
 去年の夏の菅政権の最後のときに法案として方針を出しました。閣議決定をいたしました。その中で、来年いっぱいにということの閣議決定もなされたわけであります。
 法案の作業というのは、一月になったことはこれは遅いという御批判があれば、それはもう甘んじて私どもは承らなければならないと思いますが、実際には膨大な作業で、かなり急ピッチで行いました。
 ですから、去年の夏に方針を決めて、法案をつくるのにまずその方針でということでいきましたので、今回出している法律の中では保障措置については入っていない、そういう経緯でございます。

○井上(信)委員
 そうすると、まさにそのタイミング、時間的余裕の話だということですから、少なくとも、この保障措置も一元化をする方向で見直すというところまで明言してください。

○細野国務大臣
 私は政府案を出している立場ですので、政府案を出させていただいているという立場で言うならば、そこには確かに入っておりません。
 ただし、保障措置についてそういう御議論が、スリーSは全部一緒にすべきだという御議論があるのは、もうこれは私もよく理解をできますので、それについては、できる限りしっかり我々は耳を傾けて、柔軟な対応をしていく必要があるのではないかと考えているところであります。

○井上(信)委員
 方向性をやはり示してもらいたいんですよ。お立場はあると思いますが、ただ、大臣のお話を聞いていると、やはりこれを一元化すべきじゃないのかというふうに聞こえるものですから、方向性でいいですから、決めたとこの場では言えないでしょうけれども、ぜひお願いします。

○細野国務大臣
 保障措置も含めて一元化をすべきであるというお考えについては、理解ができます。

○井上(信)委員
 年内の見直しの検討を待つまでに、恐らく自公案との修正協議などもあると思いますから、これはむしろ理事の先生方に申し上げる話かもしれませんが、大臣の思いのうちは何となく伝わってきましたので、そういう方向でぜひやってもらいたいなと思っております。
 それから、そういう意味では、モニタリング、このモニタリングも完全に一元化されていないですよね。やはり、これはどう考えてもおかしいなと思うんですね。
 緊急時のモニタリング、そして平時については司令塔機能のみを規制庁に移管するとされておられますよね。何でこれは司令塔機能だけなのかということ、そして、平時と緊急時とのその対応に違いがあるということで、これで有効に機能するかどうか、これは疑問に思うと思うんですけれども、ぜひここについても御説明ください。

○細野国務大臣
 今回の事故の反省点といたしましてよくSPEEDIのことが話題になるんですけれども、私は、SPEEDIと同等か、もしくは、それ以上にモニタリングのことを反省をしなければならないのではないかと思っているんです。
 SPEEDIはあくまでシミュレーションですので、いろいろなことは当然やれるわけでありますけれども、正確な情報かと言われれば、そこは若干いろいろな議論があるわけですね。一方で、そこでモニタリングができれば、それはもう厳然たる事実ですから、この情報は国民にすぐお伝えをできるわけです。
 ところが、昨年の三月十一日までの制度というのは、そういう緊急時においては、モニタリングは自治体がするということになっておったわけです。そういう緊急時が発生したときに、自治体がどれぐらい大変な事態になって混乱をするかということについての想像力がやはり欠如していた、そういう仕組みだというふうに私は思います。
 ですから、モニタリングのあり方については、相当根本的に改めて、国の役割を明確にして、そういった場合にははかることができるような仕組みにはしなければならないというふうに思います。
 率直に申し上げると、ここもいろいろ政府内でも議論がございました。
 その中で、モニタリングというのは、文部科学省が一番大きな役割をやっているんですが、そのほかにも、実は私が所管をしている環境省も水のことについてやっておったり、水産庁もやっておったり、それぞれの省庁がかなりいろいろな形でかかわっておりまして、それを全部一元化をするのは、これは余り現実的ではないだろうと。
 その中で、では、どの部分を一元化すべきかということでさまざま議論がありまして、原子力規制庁が司令塔機能を担うことといたしまして、モニタリングに関する指針の策定であるとか、関係省庁による各種のモニタリングの全体計画案など、言うならば、全体をしっかりと方向性を出した上で、関係省庁が行う事故の影響の調査のためのモニタリングの予算については原子力規制庁に一括計上して関係省庁の調整を行うという、ちょっと説明が長くなりましたが、こういったところで落ちついたという経緯があります。
 ただ、ここは、どういうところまで一元化するかというのは、さまざまな御議論は確かにあり得るだろうというふうに思います。

○井上(信)委員
 平時のモニタリングの一元化については現実的でないというふうにおっしゃいましたが、何がなぜ現実的じゃないんですか、一元化すればいいと思いますが。

○細野国務大臣
 私が現実的ではないと申し上げましたのは、例えばモニタリングでいいますと、文部科学省が全国的なものについて確かに一番かかわっているんですけれども、例えば学校や保育所については、文科省以外にも厚労省がかかわっています。食品については厚労省、水産庁がやっています。港湾とか空港とか公園、下水などは国土交通省がやっております。水や廃棄物については環境省がやっていまして、海域については文科省、環境省、水産庁、海上保安庁、農地については農水省という、実は、ざっと挙げただけでも両手でもおさまらないぐらいの省庁がかかわっているので、それを全部一元化するというのは、これは必ずしも現実的ではないのではないかということで申し上げました。(井上(信)委員「なぜですか、なぜ現実的じゃないんですか」と呼ぶ)
 それは、それぞれの省庁がこれまで管理をしてきたところについてはかっていますので、人員の確保も含めて、では、全ての省庁から人を寄せていくということが現実的かということについて、必ずしも現実的ではないのではないかと、そういう議論をしたということであります。

○井上(信)委員
 全くわかりません。全ての省庁から人を寄せればいいんじゃないんですか。一元化の大切さがわかったわけですよね、今回の大震災で。それで一元化していこうという議論になっているときに、いや、全ての人を寄せるわけにいきませんよね、モニタリングの人が各省庁にどれだけいるか知りませんよ、しかし、それをやるのが一元化でしょう。だから、現実的に人の数の問題とかそんなことでできないというのは、これは納得いかないと思います。
 やはり、一元化をすることによってどんな弊害が出るのか、一元化するよりしない方がいいという理由があるなら教えてください。その理由がなければ、一元化をちゃんとやってください。

○細野国務大臣
 一元化をしない、もしくは、それをやることで弊害が出るという面があるということではありません。ですから、一元化をすることが望ましいのは、今、井上委員がおっしゃったとおりであります。
 ただ、それぞれ対象によって、例えばはかり方であるとか専門性であるとかそういったことも、これまでこれがあったのも一つは事実なんですね、そういったことも含めてどこまで一元化をするかという議論の中で、今回はこういう形になったということであります。
 平時と有事で当然連続していた方がいいのはもうおっしゃるとおりでありますから、平時のモニタリングをどこまで一元化をし、では、有事についてそれをどう本当に情報を集めていくのかというのは、これからさまざまなやはり検討は必要であるというふうに思います。

○井上(信)委員
 かなり苦しい答弁だと思いますよ。大臣も本当は心の中では一元化した方がいいとお思いになっているんじゃないかなと私は思いますよ。秘書官が何か耳打ちしていたから、自分の思いと違う話をされているような、そんな言い方に聞こえました。だって、一元化して何も弊害がないけれども、一元化の方がいいとは思う、ではすればいいじゃないですか。それはそうですよね。
 やはり、役所の今までの組織の論理とかそういうものにとらわれちゃっている。あるいは、さっきの保障措置の話と一緒ですよ。時間的な検討の時間、これが足りなかったのかもしれない。しかし、やはりベストなもの、理想のものを追い求めなければ、こんな改革をやる必要性はありませんよ。だから、私は大臣のその答弁では全く納得がいきません。
 ですから、お考えがあればもう一度聞きたいのと、保障措置はとりあえず年内に見直すと先ほど明言されました。では、このモニタリングの一元化について、少なくとも見直すお考えはおありですか。

○細野国務大臣
 昨年の夏行いました閣議決定の中で、一元化、いろいろな積み残した課題がございます。そういったものの中に、私の認識ではこのモニタリングも入っているというふうに思っております。

○井上(信)委員
 では、きょうはこれまでにしますけれども、見直しの対象に入っているということですから、ぜひこれを本当に見直してください。残念ながら、大臣のその答弁では国民は納得しないと思います。
 それと、これは先ほど来塩崎先生の質問やいろいろなところで話題にもなっております、緊急時の指示権の話です。これは本当に大事な問題だと思いますし、いわば、なかなか歩み寄れない、積み残した課題の大きな一つだというふうに思っています。
 私が本会議で伺ったとき、細野大臣は、「国家の命運を誰に託すか」、「国としての、危機管理上の最低限の、かつ最後の手段としては、不可欠な存在である」、こういわば格好よく述べられまして、この映像ばかりテレビニュースで使われていたものですから、何か国民もちょっと誤解していると思うんですね。さっきもちょっとそのやりとりがありました。報道でも、緊急時の指示権、自公案だと何か総理には何もないように言われているんですね、残念ながら。
 何かさっきのを聞いていると、大臣もひょっとしたら誤解していたのかなと思うぐらいの話であって、これは、自公案におきましては、やはり国家の命運を誰に託すかということ、この命運というのは具体的に何を指しているかというのはちょっと不明ですけれども、ただ、少なくとも、本当にこの日本の国家が将来どうなるかということに関する重大な事項の重大な判断としては、自公案でも当然これは総理が判断をし、総理に指示権があると思うんですね。規制委員会というのは、先ほど来おっしゃっているように、技術的、専門的な事項、そしてオンサイトの事項ですから、そのことを国家の命運というふうにおっしゃっているわけじゃないと思うんです。
 この点について自公の提出者の方、御説明をお願いします。

○塩崎議員
 役割分担の話につきましては、私の質問の中でも大分議論になりまして、だんだん整理はされてきているんだろうと思うんですけれども、やはり今先生御指摘のように、誤解が多いような感じがしてならない。
 原則は、オンサイトが規制委員会、オフサイトが総理を初めとする原災本部全体が責任を持つということで、規制委員会は、炉規法に基づく専門技術的な問題についての問題については唯一決定をすることができるところだというふうに理解をしているわけでありまして、先ほどの国家の命運をという、本当に命運というのは何だかよくわからないけれども、確かに格好はよかったですけれども、中身は実は非常にぼわっとしていてわからない。何かというと、結局とどのつまりは、原子炉がどうなっているのか、これにどうするのかということしかないんですね。
 これは、すぐれて専門技術的な問題で判断をしなきゃいけなくて、あとは、先ほどの誤解として出てきたように、自衛隊の出動要請とか消防に出動していただくとか、そういうようなことについては規制委員会がやるんではなくて、規制委員会の出した結論で当然必要になってきた自衛隊の出動とか消防の放水とか、そういうものについて原災本部長が、国家のトップリーダーとしてまさに命運というんですか、原子炉を鎮圧するというためにみんなが一体となって自衛隊あるいは消防に出てきてもらう、そういうことを一体不離でみんなでやる、こういうデマケじゃないかなというふうに思うんですね。
 あくまでも技術的なところは規制委員会でないとわからないことでもありますから、これはさっき細野大臣も、細かな専門的なことはやはり政治家が口を出すべきじゃない、こういうことでありました。
 ですから、あと本当に大変なことになるときというのは、その技術的なものの積み上げで起きてきていることですから、そこの情報と知見で判断をしたものを、どう今度は総理がちゃんとそれをやるかということだろうと思います。

○井上(信)委員わ
 わかりやすくありがとうございました。
 まとめてしまうと、要は、国家の命運はやはり総理大臣に託して、そしてその指示のもとにみんなで一体となって対処をする、そういうお答えだと思うんです。
 ですから、私は細野大臣が本会議で答弁されたことは誤解だと思いますが、いかがですか。

○細野国務大臣
 今、塩崎先生が答弁者としておっしゃったことができるのであれば、私の誤解だというふうに思います。
 ただ、法律的なところをぜひちょっと御教授いただきたくて、少しだけ私の方から、逆にこちらの側で質問するようで変な話なんですけれども、ぜひここを聞いていただきたいんです。
 原子力規制委員会の設置法案の第四条の七号に、原子力防災全般について原子力規制委員会がやると書いてあるわけです。これは、オンサイトもオフサイトも基本的には全て含むように読めるわけですね。この原子力規制委員会がやるオンサイト、オフサイトのこのものについては、総理の指示権が及ばないような形に原災法が改正をされているわけです。ですから、原子力規制委員会の所掌となった時点で総理の指示権が及ばないと読めるわけですね。
 この七の中に、実は、そういうシビアアクシデントにおけるさまざまな放水であるとか、撤退は絶対にあってはならないことでありますけれども、例えば仮にそういったことが議論されたときには、いや、とどまれというようなことは、原子力規制委員会のこの第四条の七号のところに入らないということが明確にならない限り、総理の指示権は出せない形になっているんですね。
 ですから、そこが確認されるということであれば、そういう法律になっているということであれば、それは私が誤解をしていたということになろうかと思います。

○井上(信)委員
 これはちょっと私に聞かれても困るものですから、それはここで提出者の方に伺ってもいいんですが、これはよく両者で話していただいて、私がそれぞれの仲介役をするというのも変なものですから。
 ただ、もし大臣がおっしゃるように法文に不備があるということだったら、むしろ法文を直せばいいことですから。それは、塩崎先生がおっしゃったのが自公案のいわば思いだ、趣旨だということであれば、それはお認めになって、やはり、それだったら国家の命運はちゃんと総理に託しているんだ、ここの理解をお願いしたいと思っております。
 うなずいていただいたので、次に入りたいと思います。答弁の後段部分、「国家の命運を誰に託すか」、「国としての、危機管理上の最低限の、かつ最後の手段としては、不可欠な存在である」と述べられた今度は後段部分ですけれども、最低限あるいは最後の手段、こうおっしゃっていますよね。これは多分、原災法の二十条二項あるいは三項のその指示の話だと思うんですね。さっきも議論がありました。適切、迅速、必要な場合とかいろいろ限定をかけておりますから、そういう意味で最小限だったりあるいは最後の手段だ、こういう御趣旨だと思うんですが、私はこれは実は違うと思っております。
 自公案では二十条二項を削除していますよね。三項では括弧書きで除外をしています。その趣旨は、最後の手段とか最低限とかという順番とか程度の問題じゃないと思うんですよ。やはり、オンサイトなのかオフサイトなのか、技術的、専門的なことなのかそうじゃないのか、こういうことでちゃんと切り分けないと、では、何が適切なのか、何が迅速なのか、何が必要な手段なのか、これはやはり抽象的ですから、判断によって変わってきますよね。
 その教訓というものが、やはりあの大震災のときにもあったわけですよ。これは、政府の事故調の中間報告でもそのような趣旨のことが述べられて、やはり菅総理が、ある意味、余りにも関与をし過ぎてしまった。これは原災法を根拠にしてやられているのかどうだかは知りませんけれども、少なくともその法律があるから、総理にいろいろなこと、細かいこと、技術的なことまで言われて、そこでストップしてしまったということですよね。だから、こういう規定を残しておくと、やはり、過度に介入をしてしまう、その危険性は残ると思っているんです。
 ですから、私は、そういう意味では、ちゃんと事柄として切り分けている自公案の方が適切だと思いますが、いかがですか。

○細野国務大臣
 そこはなかなか悩ましいんです。
 時間も限られておりますので簡潔に申し上げますけれども、例えば去年の四月、私が一番悩んだのは、海水の汚染水を流出させるのはどうかというのは悩んだわけです。当時は、極めて低レベルの汚染水がたまってきまして、それを一部の専門家では、もうこれは流した方がいいという話でした。ただ、私は、それは漁業のことも考えたり国際的なことを考えたら、流すべきではないと考えまして、一回とめました。それは科学的には流しても問題ないのかもしれないけれども、当時の状況からすれば、少なくとも一旦はとめるべきだという判断をしたからです。
 それは、総理が明確に指示権を出したということではないけれども、私は総理の半ば名代的な位置づけで東電にいましたから、それでこれは流すべきでないと言えたという経緯があるわけです。
 結局、それは後で違う形になりまして、もっと高いレベルの水がたまってしまって、それが流れて、とめなきゃならなかったものですから、濃い方をためておく場所として薄い方を流さざるを得ない状況になりまして、結果的に、それをしっかりと皆さんに事前に十分な説明をしませんでしたので、御説明したつもりだったんですが、やり切れていなかったので、大変厳しい御批判をいただきました。
 ただ、何が言いたいかというと、汚染水を流すというそういう科学的なことに思えることについても、社会が受けとめるかどうかというところで実は判断が非常に微妙なケースがあるんですね。ですから、確かに法文に書ければ一番いいんですけれども、オンサイトは専門家、オフサイトはこれは指示権が及ぶという切り分けもちょっと難しいです。オンサイトにおいても、これもやはりどうしても最後、指示権に基づいてやらなければならないことが多分出てくると思います。
 技術的なことについては、政治家はもう基本的には口を挟むべきではないと私も思います。思いますが、これだけシビアな事故になればなるほど、技術的にはこうなんだけれども、それをいつのタイミングでやるかとか、どういうふうに説明をするかとか、そういったことについてどうしても、ある種の社会的な判断が求められる部分があるんですね。ですから、そこをどう書き切るかということが極めて難しい。
 その事柄が難しいものですから、そういう最後の判断権限は残しておいた方がいいんじゃないかということで、政府が出している指示権は、非常に限定的な行使を前提とはしておりますが、一般的な書き方になっているということでございます。

○井上(信)委員
 これは私も同じ懸念を持っていまして、確かに、何が専門的、技術的なのか、何がオンサイトなのか、これは単純ではありません。あるいは、そうじゃないこととの関連性もいろいろありますよね。だから、そういう意味では、やはり自公案の方も、より正確に書いていく、あるいは解釈を示す、こういう作業は当然必要だとは思います。
 ただ、だからといって、では、今の原災法の二十条二項や三項をそのまま残すのがいいかというと、これは論理の飛躍ですよ。それだったら、やはり少なくとも明確に、どういう場合の指示権かというのをもうちょっと書き下さないと、これは危険ですよ。同じことが起きてしまう。今の規定だとそれを防げませんよね。これは私は無責任だと思う。だから、そういう意味では、そこはよくお考えをいただきたい。
 自公の提出者の方にも、やはりこのポイントというのはすごく大事なところだと思いますので、ぜひお願いをしたいと思います。
 そういう意味で、本会議の答弁のときに非常に気になったのは、「今回の事故では、オンサイトからの撤退が検討されました。」と細野大臣が答弁をされました。多分この趣旨は、オンサイトからの撤退については、これは国家の命運がかかること、でも、それが自公案だと、やはり規制委員会の権限になっているという話だと思うんですね。
 そういう意味では、では実際、自公案の解釈として、本当にそういうときに総理の、災害対策本部長の指示権が全く及ばないのかということについて、自公案の提出者の方、御説明していただきたいと思います。

○塩崎議員
 何度も申し上げますけれども、全ては、原子炉が不正常、超不正常になっているからこそいろいろ問題が起きてきて、人間を守る、あるいは環境を守るということをやるには、この原子炉がどうなっているのか、どうすればこれが人間を守ることになるのかということがわからないといけない、そういうことだと思うんですね。
 したがって、総理の指示権の問題は、これは、さっき一時退避の話をおっしゃっていましたけれども、本部長、総理が原子力事業者に対して、我々の解釈では、やはり規制委員会がすぐれて専門技術的に判断をした結果が、退避をすべきかするべきじゃないか、どっちもあると思うんですけれども、その規制委の意向に反して総理が一時退避をするなとかしろとかいう逆方向のことを言うということは、私は、指示権としてはあってはならないことだと思うんですね。
 そのために、我々はあそこに括弧で、二十条、我々でいえば二項、政府案でいけば三項、その中に括弧で規制委員会の所掌事務を除くというふうに入れているわけで、これはもう何度も細野大臣も認めているように、技術的な、専門的なことについては政治家が判断するのではなくて、やはり専門家が判断すべきだ、こういうことでありますから、定義上、それは 規制委員会がすることですので、その意に反した指示をするということはあり得ないというふうに我々は理解しております。

○井上(信)委員
 そうすると今の話も、規制委員会の意向に反してはできないけれども、規制委員会の意向といわば同じであれば、これは指示もできると。
 ですから、そういう意味で、細野大臣がオンサイトからの撤退が検討されたとした答弁、その趣旨が、自公案では、そのことに対しても総理が指示できないという趣旨であるとしたら、それは誤解だったということに多分なると思うんですね、今のお答えを聞いていると。(柴山議員「違います」と呼ぶ)違いますか。では柴山さん、お願いします。

○柴山議員そ
 これはある程度しっかりと整理をする必要があると思っています。
 要は、原災本部長と原子力規制委員会が同じ方向を向いていたら総理が指示をできるのかというと、それは、法律上は権限は及びません。及びませんので、そこの例えば指示を、原子力安全委員会がやっていないという事態に、では、総理がそれをかわってできるかといえば、これは明確にできません。
 ただ、さっき塩崎委員から、クロース・コオペレーションというようなお話がありましたけれども、本来行うべき職務を緊急時にあって委員会が懈怠をしている、要するにぐずぐずしているという場合には、当然、それは本部長が規制委員会に対して、しっかりと仕事をしてくださいということを相互連携の一環としてきちんと協議をする、あるいは督励をする、そういうことはできるわけです。
 それからまた、原子力安全委員会が例えば安全確保のために措置をするように命じる、でも、事業者がなかなかそれをやらないというときに、一旦指示されたその指示について総理が、法律上は権限はないんだけれども、事実上、重ねてお願いをするということは、これは法律上の権限ではなくても、枝野さんも答弁でおっしゃっておられたように、では、法律に書かれていないことを一切総理としてできないかというと、そういうことではないわけですね。
 それは、少なくとも委員会が既に表明していることについて総理が事実上同じことを言及するということについては、これは原子力安全委員会の権限をオーバーライドしているものではないわけですね、それをただ重ねて事実上言及しているというだけですから。
 だから、法律上は、少なくとも、原子力安全委員会が本来業務としてやるべきことに対する総理の法律上の権限はないというのが私たちのたてつけであります。

○井上(信)委員
 法律上、明文化はしていないけれども、そういう意味では総理が規制委員会の意向と同じような指示をすることができる、多分そういう答弁だと思うんですが、では、これをお聞きになって細野大臣、この点についてはいかがお考えですか。

○細野国務大臣
 今の御答弁、塩崎先生の御答弁と柴山先生の御答弁と若干解釈の問題もあるようですので、一度きちっと議論をさせていただきたいというふうに思います。
 ちょっと個別のことは、もうここまで来ていますので余り言わない方がいいと思うんですが、あえて、大事なことですので私の思いを申し上げると、本当に国家の命運をかけた判断ということはあり得ますし、それもやはり考えなきゃいかぬぐらいの経験を我が国はしたわけですね。
 そういう経験をした立場からすると、あえて申し上げますね。技術的なこと、専門的なことに政治家は関与すべきではないと思うし、それはきちっと担保すべきだとも思いますが、それをはるかに超えて国家の命運がかかった場合には、規制委員会がこうだと言っても総理は逆の判断をしなければならない場面は、私は想定をしておいた方がいいと思います。
 そういう意味でいうならば、そこは誤解であったかと……(柴山議員「何を言っているのか」と呼ぶ)ちょっと……

○生方委員長
 ちょっと控えてください。

○細野国務大臣
 つまり、撤退をするかどうかというようなシビアなケースは絶対起こしちゃいかぬと思います。それはもう私の骨身にしみた教訓ですけれども、そういったこともどうしても考えなきゃならないような場合は、規制委員会の判断を超えても判断をしなければならないし、最後は伝家の宝刀として持っていなければならないんじゃないかというのが、私の今回の事故から得た経験であります。

○井上(信)委員
 お考えとしてはそういう考えもあるなとは思いますけれども、だから私がさっき申し上げたように、それならもうちょっとちゃんと書き切った方がいいですよ。あの原災法の規定は、あれでは菅リスクは防げません。教訓を生かし切れていない。
 自公案については、これはまたちょっとよくお話をしていただくということで。
 時間がもう余りないものですから、本当は、これまた大きな議論になっていた三条委員会の合議制の話をちょっとしたかったんですが、時間がなくなってしまったもので、また次の機会にというふうに思っております。
 きょうもいろいろ、私の質疑もそうですし、塩崎先生初め皆さんとの質疑も聞いていると、非常にいい質疑ができたなというふうに思っておりますので、ぜひこれを与野党協議の中にも生かしていただいて、よりよいものをつくり上げてもらいたいと思っているんですね。
 私はその中でちょっと一点だけ注文があるんですけれども、大臣、覚えていらっしゃると思うんですが、三月十六日、この環境委員会において私は大臣に伺ったんです。見直し規定の話、きょうも、その一元化で保障措置やモニタリングについて年内に見直ししますと明言されましたよね。確かに八月の閣議決定にそのことも書いてありますよ、漠とした書き方ですが。これを閣法の法案の中に書いていないんですよ。これはおかしいですよ。自公案については、三年以内ということで、例の国会事故調の報告の話もありますよ。それは見直さなきゃいかぬですよ。国会軽視と言われてしまいます。
 ましてや、閣議決定もし、そして今の御答弁でもやるとおっしゃっているんだから、少なくとも見直し規定を入れるという修正だけは、もちろんほかのもやってもらわなきゃいかぬのだが、これだけはちゃんとやると明言してください。

○細野国務大臣
 非常に重要な御指摘をいただいたというふうに思います。

○井上(信)委員
 もうちょっと踏み込んで。これはそんなに中身にかかわる話じゃなくて、閣議決定しているんですから、むしろ、これをやらないと言ったら閣議決定軽視ですよ。もうちょっと踏み込んだ答弁をお願いします。

○細野国務大臣
 ちょっと近藤理事の顔色を見ながらでありますが、政府案としては法案を出しておりますが、しっかりと見直すべきであるという御指摘は、私も全く思いを同じくいたしておるところであります。

○井上(信)委員
 この辺で了解をしたいと思いますけれども、あともう一つ。
 これから法案の修正協議なんかも入られると思いますけれども、実は、組織の新設という話でいえば、最近は復興庁がありましたよね。あのときも、私も委員をやっていていろいろやりましたが、閣法と議員立法と、やはり妥協案みたいな形にだけはしないでほしいんですよ。結局、それをやってしまうと、何だか間に落ちて、ちゃんとワークしなくなってしまった。申しわけないが、復興庁でもそういう声が被災地で上げられていますよね。ワンストップだと言いながら、結局、ワンストップじゃなくて、むしろ入り口がふえちゃったみたいな話とか。だから、そうならないようにしてほしいんです。
 そのためには、やはり自公案を丸のみしてもらいたいと思っていますので、これは大臣に言うことじゃなくてこっちかもしれませんが、とにかく、国民のためになる新しい組織をつくっていただくようによろしくお願いしたいと思います。
 どうもありがとうございました。

○生方委員長
 次に、江田康幸君。

○江田(康)委員
 公明党の江田康幸でございます。
 本日は、原子力規制組織及び制度改革について質問をさせていただきます。
 私も塩崎先生と一緒で、提案者でございますので、自公案に対しては聞くことができません。本日は政府に対してのみ質問をさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 公明党は、東京電力福島第一原発事故を直視して、今こそ本格的に、原発に依存しない、安全・安心エネルギー社会への移行に取り組むべきと考えております。そのためには、思い切った省エネの推進、再生可能エネルギーの導入、また、化石燃料利用の高効率化を推進し、原発の新たな着工は認めずに、段階的に原発を縮小していくべきである、こういう公明党のスタンスを持っております。
 その上で、既存の原発については、科学的、客観的な規制を実施して安全性を確保していかなければなりません。そのために、原子力規制組織のあり方が極めて重要になってくるわけでございます。
 公明党は、この規制組織には、独立性、中立性、そして専門性、強い規制権限が必要であり、内閣から独立した地位が与えられている独立行政委員会として設置すべきと主張してまいりました。この点において自由民主党と見解を同じくして、原子力規制委員会設置法案を共同提案しているところでございます。
 改革に当たって重要となる論点が、まずは独立性、中立性、専門性であり、次に危機管理、また規制強化であると思っております。本日は、この三点を中心に質問をさせていただくとともに、公明党が重要と考える申告制度についても質問したいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、独立性、中立性、専門性ということについてでございます。
 政府案の一番大きな問題点は、先ほどからももう出尽くしておりますけれども、規制機関の独立性、中立性、専門性の欠如にあります。
 さきの衆院本会議において、公明党の佐藤茂樹議員から、政府は、なぜ、かつて民主党が主張していた三条委員会のような独立性の高い規制組織とせずに、環境省の外局として規制庁を設置することにしたのかと、こう質問をいたしました。これに対して野田総理からは、原子力安全規制の権限は全て環境大臣から原子力規制庁長官に委任して、原子力安全調査委員会が継続的に監視することにより、原子力規制庁の独立性を担保するということでございました。
 しかしながら、依然として政治の関与の余地を残しておりまして、IAEAの安全基準から見ても、政府案の規制庁は、独立性の点で甚だ不十分と言わざるを得ません。
 私が最も懸念しているのは、原子力規制庁長官の任命権、解任権を政治家である環境大臣が持っているということにあります。環境大臣は、原子力安全規制の権限を原子力規制庁長官に委任するとしておりますけれども、人事上の任命権、解任権を持っているということは、これは長官に対する多大な影響力を持つということであり、例えて言うならば、環境大臣は政治の思惑に合わせて原子力規制庁長官をコントロールすることが可能ということになり、その結果、原子力安全規制は不当な圧力によりねじ曲げられてしまう、こういう可能性があるわけであります。
 ここで大臣に質問をいたします。
 環境大臣がこの原子力規制庁長官の任命権、解任権を持っている仕組みであるにもかかわらず、政府はどのような理由でこの原子力安全規制の独立性を担保できると考えておられるか。一歩踏み込んで大臣のお話をお伺いしたいと思います。

○細野国務大臣
 独立性については、これも再三答弁をさせていただいておりますけれども、まず第一に、やはり、推進側から明確に独立をするということを考えました。これはIAEAからも実質的な勧告もあった件でございますので、そこはしっかりと確保するということで、規制庁を提案をさせていただいております。
 今、江田先生の方からの御指摘は、それに加えて政治的な独立性ということについての御質問かというふうに思います。
 そこについては、総理からも答弁がありましたとおり、主に二つの仕組みで確保するという考え方であります。
 一つは、法律上の判断権限というのを長官に委任をされますので、そこに介入する余地というのは法的に大臣にはないということが一点であります。
 しかし、法的にはないんだけれども、何らかの形でそれこそ恣意的に介入をするようなことがないのかということに関しましては、これは、原子力安全調査委員会、国会の同意人事でつくられるわけでありますが、ここが原子力規制庁の独立性を常に監視することとなっておりますので、大臣が長官に対して不当な政治的な影響を及ぼすような場合には、チェックをする仕組みができているというふうに考えているところであります。

○江田(康)委員
 想定する答弁でございますけれども、やはりいずれにしても、この原子力規制庁長官の任命権、解任権というのが環境大臣に残っているものであるのは間違いないわけで、やはり、この点が独立性が不十分であると指摘せざるを得ない。三条委員会にすべきものと考えております。
 総理の答弁で、この独立性の確保のあり方については、今後、国会での審議の中でしっかりと議論していくとありました、さきの本会議の答弁でありますが。これは大臣、政府案の規制庁ではなくて、自公案の独立性の高い三条委員会を設置するということを意味しているのか。

○細野国務大臣
 そこは野田総理の思いが答弁の中に込められているのではないかというふうに感じました、私も聞かせていただいて。その思いというのは、政府案を提出をしておりまして閣議決定していますから、それは、政府としては国会にお願いするという意味で責任ある立場であります。
 しかし一方で、原子力の規制組織というのは、これは会派、党派を超えて極めて重要なものでありますから、それこそ、各党各会派からさまざま御提案いただいていることに関してもしっかりと柔軟に対応すべきだという思いを総理自身がお述べになったものではないかと考えているところであります。

○江田(康)委員
 それでは、この規制組織の一元化、このことについてお伺いをさせていただきたいと思っております。
 規制機関は、その能力、資源、責任、これを集約して、原子力の安全確保に向けては最大限の実効性を確保していく必要があるわけですね。原子力安全を担うこの行政機関は、これはばらばらであってはいけないわけで、しっかりとこれを一元化して、独立性を持って専門的な能力を発揮しなければならないわけです。
 本年二月末に公表されました民間事故調の報告書においても、その点、指摘があります。複数の組織が絡む日本の原子力行政が安全規制のガバナンスの無責任状態の元凶であったと、こう指摘しております。
 これは、二〇〇一年の省庁再編、このとき、原子力安全規制のガバナンスを一元化して強化するチャンスはあったわけであります。それにもかかわらず、文科省、経産省と、その体制を補強する原子力委員会、原子力安全委員会というこの二元推進体制、また二元審査体制、このことが維持されました。
 原子力の安全規制は、そのことによって経産省の原子力安全・保安院と原子力安全委員会がともにこれは担うことになったわけでありますけれども、文部科学省の抵抗があり、試験研究炉の規制、さらには、放射線モニタリング、放射線防護、核不拡散の保障措置などの権限が残されたわけであります。その結果、安全規制はより複雑なものとなった。
 今回の事故で、一元化されていない結果、最も大きな問題を引き起こしたのは、SPEEDIであります。
 このSPEEDIは、今回のようなシビアアクシデント時に、速やかにその試験結果を発表して住民避難に役立てるものであるはずでありました。三十年近くにわたって開発もしてきたわけです。これを所管する文科省は、放出源のデータがとれないという不確実性を理由に、SPEEDIの活用や公表には極めて消極的でありました。
 さらには、SPEEDIの公開の是非が政治問題化するや否や文科省は、その評価や公表の任務を原子力安全委員会に押しつけた、こういうようなこともささやかれているわけでありまして、国民の安全に直結して出すべき情報を出さない、また、役所間が責任のなすり合いをしていく、これが国民の信頼を失墜した大きな要因の一つになったものだと思っております。
 やはり、限られた原子力安全の組織、人材、英知というのは、結集されなければならない。この点から、政府案の原子力安全業務の一元化の考え方は中途半端と言わざるを得ないんです。今回の事故でも問題がありました、この民間事故調でも安全規制のガバナンスの問題点が指摘されているにもかかわらず、政府の法案では、文部科学省にモニタリングの実施、放射線防護、核不拡散の保障措置等の多くの機能が残ることとされております。
 先ほど来から、これは井上先生も御指摘でありますけれども、政府は、このような中途半端な一元化の体制が、原子力の人的資源を集積して、原子力の安全向上を進めて今後の事故に備える上で適切なものと本当に考えているのか、そうではないのか、大臣、また一歩踏み込んで大臣のお考えをぜひとも聞かせていただきたいと思います。

○細野国務大臣
 今回の法案の中では、従来の組織改編そして一元化の議論で問題になっていたところも含めて、最大限の一元化をしていこうというところがスタートとしてはございました。
 したがいまして、例えば、これまで文部科学省にあった研究炉なんかの安全規制も、今度は規制庁に移ります。これも文部科学省が従来持っていた権限になりますが、それは一元化をするという形になるわけですね。江田委員御指摘になったようなSPEEDIなんかも一元化の対象になりました。
 そういった意味では、かなりの程度一元化が行われ、そうしたベースとなる放射性物質、放射能に対する検討の場でもある放射線審議会、これも、放射線防護に関する業務のうち、原子力規制の一層の向上に寄与することが期待できるものということで、一元化の対象になったという経緯があります。
 一方で、先ほども井上委員からもありました、今、江田委員の方からも具体的な御指摘がありました。放射線モニタリングについては、司令塔を担い、関係省庁においてそれぞれ行うモニタリングを総合調整をするというところにとどまっております。
 放射線防護に関しては、これもなかなか悩ましいところがあるんですが、どうしても、例えば医療などで放射能を使うものというのは結構ございまして、そこを果たして厚生労働省から持ってくることが本当にこの目的に沿うのだろうかというような、実はかなり技術的な検討もした上で、ちょっとそこは性質的に違うのではないかという経緯があって残った部分がございます。
 そして、恐らく国会でも一番議論になろうかと思いますのはいわゆる保障措置でございまして、これについては、IAEAが政府をもある意味でしっかりと監視をする、政府をですね、そういう面もありますので、原子力のいわゆるセキュリティー、セーフティーとは若干性質が違うということで今回の一元化にはならなかったという経緯がございます。
 八月の閣議決定において、当面の対応として今御説明を申し上げたような形になっておりますが、年内にさらに検討を進めて方向性を出すということになっておりますので、この国会での議論も踏まえながら、我々もさらに検討を進めていく必要があるというふうに感じております。
 最後にもう一点だけ。
 江田委員から非常に重要な御指摘だなと思いながら聞いておりましたのは、やはり人材なんですね。それぞれの省庁が持つ行政の事務については、それなりの理由があってそれぞれの場所に残るということは、確かに理屈としてはあり得るんだけれども、もう一つやはり考えなければならないのは、これだけ原子力の安全が問われている中でもっと専門家を一元化をしていかないと強い組織ができないのではないかというのは、極めて重要な御指摘だというふうに思います。
 その意味で、分散化している部分があるとすれば、それもやはりどんどんとしっかりと一つのところに一元化をすることで強い組織をつくっていくという必要性については、思いを同じくするところであります。

〔委員長退席、大谷(信)委員長代理着席〕

○江田(康)委員
 一元化については今大臣が繰り返しおっしゃっていることでございますけれども、やはりモニタリング一つとっても、それは司令塔であり、実際のモニタリングの計測実施というのは文科省に残っているという非常にアンバランスな、それを総合調整するというようなことで果たして今回起こったような緊急の事態に対して的確に対応できるのか、同じ轍を踏むのではないか、こういうような問題がありますし、放射線防護や保障措置に関しては、年内、検討を進めて結論を出すとあります。
 この大臣の答弁は評価をするわけでございますが、ここのところは、本当に原子力行政を一元化していくことが、独立性もまた担保でき、そして専門性も確保して、国民の期待に沿う原子力規制組織ができ上がる非常に重要なところだと思っておりますので、今後の課題を、これは絶対に先延ばししてはならないと思います。そういう意味では、結論を出すとおっしゃいました、そういうことをしっかりと我々も議論してまいりたいと思っております。
 次の質問でございますけれども、今、一元化の問題、これは行政機関だけに限らないわけでありまして、その傘下にある支援機関、研究機関たる独立行政法人までこれは及んでいるわけであります。さきにおっしゃいましたけれども、平時において独立行政法人が有する高い専門的知見を取り入れていくということはもとより、緊急時においては、これらの法人の持つ能力を結集させる、これが非常に重要であると指摘されております。
 これまでの縦割り行政のまま、原子力安全で最も重要な独立行政法人である原子力研究開発機構、JAEAや放射線医学総合研究所は文部科学省の所管であります。原子力安全基盤機構、JNESは経済産業省の所管のままとなりました。このため、今回の事故でも、これらの機関は定められた行動だけをとった。相互の連携協力、これは全くとることができなかった。
 我々は、これでは緊急時に対応ができない、また、我が国の原子力安全規制のレベルを上げていくことができないと強いその問題意識を持って、この放射線医学総合研究所だけでなくて、原子力に関する科学的知見が最も豊富なJAEAも文部科学省と原子力規制委員会が共管することにしたわけであります。
 これに対して政府案では、JAEAに対しては原子力規制機関が関与できない仕組みとなっているわけでございます。
 これでは、この事故から一体何を学んだというのか。また、行政組織の一元化もできない。いつまでも役所の縄張り意識、縦割り行政の範疇から抜け出せないというのでは、これは、国民の命を守るのと役所の既得権益を守るのと、どっちが大事だと考えているのかと問わざるを得ないわけであります。
 そこで、大臣にお聞かせいただきますが、政府はなぜ原子力規制庁がJAEAを所管しないことにしたか。自公案のように、原子力規制委員会がJAEAを所管することによって、原子力安全に関する新しい知見を取り入れて今後の事故に備えることができると考えるわけですが、大臣のいま一度の答弁をお願いします。

○細野国務大臣
 独立行政法人の問題は非常に大事だというふうに思っております。
 御指摘いただきましたとおり、原子力安全基盤機構については、今保安院のもとにありますが、これを規制庁がしっかりと担っていく。公明党さんの案では、役所と一元化をするという案も出てきていますので、そういったあり方も含めてさまざま検討する必要があるというふうに思います。
 一方で放医研については、これもいろいろ議論があったんですが、やはり福島の健康管理についてもこれからしっかりとやっていかなければならないだろうということで、これも共管という形にいたしまして、提案をしております。
 そして、そうならなかったのが、今御指摘のとおり、JAEAということであります。
 もうよくよく御承知かと思いますが、JAEAの場合は、もともと、いわゆる基礎的な研究や応用研究をする旧原研と高速増殖炉を主にやっております旧動燃と二つの組織、これが合わさる形で独立行政法人としてのさまざまな業務をやっております。専門家が我が国においてどこにいるかということを見渡すと、このJAEAには大変人的な蓄積があるというのは紛れもない事実です。したがって、どういった形になるにしても、新しい規制組織のもとでこのJAEAとの連携というのは、大変重要であるというふうに考えています。
 そこで、今後のあり方なんですが、一つの我々の考えた理由といたしましては、この原子力研究開発機構の中で、旧動燃のいわゆる高速増殖炉の部分などはむしろ推進サイドに近いという面がございますので、そこは規制サイドと必ずしも融合性というか、全く一致をするというものではない面がある。一方で、いわゆる旧原研がやっていたような放射能全体に対する研究であるとかさまざまな基礎的な知見であるとか、そういったところは我々もぜひそういった皆さんの力をかりたいというふうに思うわけですね。
 ですから、そういう皆さんの力をどのようにすることでかりることができるのかということについては、これは大いに検討する余地があるというふうに思いますし、規制庁もこのJAEAに共管という形で関与せよという御提案をいただいておりますので、それについては私どもももう一度しっかりと考える必要があるのではないかと、そのように感じたところであります。

○江田(康)委員
 まさに今大臣がおっしゃったことと私も全く同意でありまして、大変安心したわけでありますけれども、ぜひとも、このJAEA、旧原研のその専門家はここにいるわけでありまして、専門家集団のこのJAEA、もう何らかの形でこれは今回の規制組織に一元化といいますか、合流していく、そういうようなことにしなければと強く思っておりますので、ぜひともこれは、さらに努めて結論を出していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 さらに続けて、専門性ということについてお伺いをさせていただきます。専門性の高い人材の確保ということですね。
 今回の事故で原子力安全・保安院は、専門能力の低さを、国民に対して、また世界に対しても暴露してしまったわけであります、露呈してしまいました。民間事故調も、保安院は、規制機関としての理念も能力も人材も乏しかったと指摘しています。痛烈に批判しています。
 保安院は、結局のところは、安全規制のプロフェッショナルを育てることはできなかったわけでありまして、事故の際、保安院のトップは官邸の政府中枢の質問にもまともに答え切れなかったのは、国民みんながテレビ等でも見ていたわけでありまして、大変残念であります。事故収束の対応に向けて専門的な企画も立案もできなかった。東京電力に対しては、事故の進展を後追いするだけで、これは御用聞き以上の役割を果たすことはできなかったとも言わざるを得ない。
 これに対してアメリカの原子力規制委員会、NRCは、みずから原子炉を動かすことができる複数の職員を有しているわけです。専門性の高い四千名から成る職員を抱えております。我が国の原子力安全・保安院と比べると、余りの能力の違いに愕然として、大変残念に思うわけです。
 これを改善するために、自公案では、原子力規制に関する専門能力を有する原子力安全基盤機構、JNESの職員を基本的に原子力規制委員会の職員とすることとして、人材の質を高めることとしたわけであります。
 翻って政府案を見れば、専門性の高い人材の確保に向けて何ら法的な手当てをしていないところが重大な問題だと思っております。
ここで大臣に質問をさせていただきます。
 政府案では、このJNESを原子力規制庁のもとに所管させるだけとしているわけでありますが、このような体制で、大臣もそうは思ってはいらっしゃらないと思いますけれども、原子力規制機関の専門性、これを高め続けることができるのか、国際レベルに近づけていくことができるのか、大臣、そこのところはどうですか。

○細野国務大臣
 NRCの体制は、日本でいうならば原子力安全・保安院にJNESを加えたような、検査の実務に加えてさまざまな研究、いわゆる検査にかかわるような検討も幅広くできるようなそういう組織になっているわけですね。ですから、自公で提案をしていただいている考え方は、そういったNRCの例なども考えると、一つの御提案だというふうには思います。
 いずれにしても、本当に優秀な人材を確保するという意味で、当面、政府案の中で考えておりましたのは、JNESというのはさまざまな技術的な専門性を確かに持っておりますし、実際にそのJNESの知見に基づいて保安院がさまざまな規制をしてきたという面があるわけですね。ですから、そういった意味でのしっかりとした人事交流もしながら技術のレベルを高めていくという、そういうことを当初考えていたということであります。
 なぜ、では一元化をしないのかということについては、これは総理が本会議でも答弁をしておりますとおり、率直に申し上げまして、積極的な理由というよりは、これまでのさまざまな行政改革の流れというのがあるというのがその理由であります。
 行政組織の肥大化を招くであるとか、公務員制度の枠内では独立行政法人と比べて柔軟な人事管理が難しい、これはどちらかというと行革とは違う理由でありますけれども。あと三番目といたしまして、公務員でない職員を公務員とする、これまでは言うならば独立行政法人の職員という非公務員型の独立行政法人であったものを公務員にするわけですから、公務員の数がふえますよね、かなりの規模の組織ですから。そういったことについて検討すべきだということで、そういう形を当面考えておったということでございます。

○江田(康)委員
 何をやりたいのかということですよね。やはりこの東電の事故を踏まえて、我が国には、原子力規制組織、専門性の高い、また独立性のあるその組織がなかったわけで、これをつくり上げようというのが今の我々の仕事であるわけで、政治家の責任でございます。
 その際に、JNESを使わなければ、あそこに専門家はずらりとおるわけですから、そこの五百人を一元化していけば千人体制になってくる。そういう中で初めてこの原子力規制委員会、規制組織が本当に専門性のあるものとして、また職員の皆さん方は、キャリアパス等で非常に夢を持って、希望を持って、誇りを持ってこの規制の仕事をやり抜いていける。JNESというのはこの柱中の柱といいますか、非常に大事なことであります。
 今回、我々自公案がこのように国会に提出されて、まさに、これからその修正協議も踏まえて一つの形をなそうとしております。これまで乗り越えられなかった、やはり先ほどおっしゃっているのは縦割り行政の弊害であって、各官僚の、省庁の言い分にすぎないわけであって、それをやはり変えていくのが我々国会ではないですか。
 そういう立法府の役目を本当に今回は果たしていくべきだと思いますので、これは大臣、腹の底では一緒でございますので、本当に実効力のある、専門性の高い規制組織をつくるためにJNES等の一体化はぜひとも実現してまいりたいと思います。どうぞ頑張りましょう。よろしくお願いします。
ノーリターンルールについてお聞きをさせていただきます。
 政府案では、原子力規制庁の職員のほとんどは原子力を推進してきた経済産業省と文部科学省から寄せ集めることとして、言い方は悪いかもしれませんが、規制と利用の分離を担保するためのノーリターンルールも幹部職員に限定する、こういうことで、私どもからいえば、大変弱い、骨抜きにされたものではないかと思っております。
 これに対してこの自公案では、ノーリターンルールを徹底して、さらに、さきに述べたように、JNESと一体化することによって専門能力を持った職員をしっかりと確保していくことをこの目的としているわけであります。先ほどこれは大臣からも、重要な御指摘ということで評価をしていただいています。
 先週の本会議で、我が党の佐藤議員からノーリターンルールや人材育成について質問をいたしました。野田総理はそのとき、原子力規制庁の立ち上げに必要な全ての職員をノーリターンしてしまうと、強い意欲を持って規制業務への参加を希望する優秀な職員が少数にとどまることが懸念されると述べられました。我々はびっくりしたわけでありますが、この答弁は大きな矛盾を感じます、逆ではないかと。ノーリターンにしなければ出向した職員はいつかは経産省などのもとの役所に戻ることができるわけですから、当然、もとの役所を見て仕事をして、意欲のない人材ばかりが集まるのではないでしょうか。
 また野田総理は、人材育成については適性のある職員の採用と適材適所の配置をして、将来の管理職や幹部となる人材を含めて職員をしっかり育成していくと。これは当たり前のことを述べているだけで、全くこれは具体策がないと思います。
 ここで大臣に質問をいたします。
 ノーリターンルール、これを厳格に適用するとなぜ意欲がある職員が集まらないと考えておられるのでしょうか。

〔大谷(信)委員長代理退席、委員長着席〕

○細野国務大臣
 新しく創設をいたします原子力の規制組織というのは、やる気と能力に満ちた職員をできるだけ数多く集めたいというふうに思っています。
 あくまで現段階の私の感触でございますけれども、原子力にかかわっている人間にとってはここはまさに正念場でございますので、技術系の職員については、これはしっかりと確保していかなければならないし、また、できるのではないかというふうに思っています。彼らは、ノーリターンの範囲に入っていようがいまいが、原子力でやっていくというふうに腹を決めていれば、これから安全と規制が本丸になることはよくわかりますから、そこでしっかりとやってくれるのではないかという、そういう感触を受けております。
 一方で、悩ましいのは事務系の職員でございまして、文部科学省や経済産業省に事務系で入った職員の場合は、例えば文部科学省であれば、科学技術で幅広く全体をバックアップしていくであるとか、科学技術庁は比較的事務系の職員は少ないですけれども、経済産業省であればエネルギー政策であるとか産業政策であるとか、そういったこと全体をやるために入っている職員なわけですね。その職員が、例えば、原子力規制庁の人事管理とかマネジメントをするからどうしてもではおまえ来てくれと言われた場合に、彼らのキャリアパスというようなことを考えたときに、全員それを強制をするというわけにはいかないのではないかというようなこともあるわけですね。
 そこを、例えばノーリターンですよということで初めから全員がそういう形でしか来れないということになってしまうと、特にマネジメントにかかわるようなところというのは人材を集めにくいのではないか、そういう懸念を今私は持っております。
 マネジメントができないというのはかなり深刻なことでありまして、採用ももちろんそうでありますし、人材をどうこれから育てていくか、それこそ組織をどう強化をしていくか、あらゆる面でそういう職員はやはり重要です、必要です。ですから、そこも考えたときに、ノーリターンをどこまで適用するかということについてぜひ実質的な御議論をいただければ、私どももそこはしっかり耳を傾けたいと思っているところであります。

○江田(康)委員
 今、実質的なところで大臣からの御指摘もありましたが、これはやはり努力していかなければならないと思っているんです。何をやらなくてはならないか、それはやはり、専門的能力があって意欲がある職員を確保して、また、独立性を確保していくことでありますから、やはり、ノーリターンルールというのが基本にないと育たないと思うんですね。
 そういう意味では、JNESと一体化して職員を一千名程度の規模としていく、専門性を高めていく、こういうことが基本ではありますけれども、事務系、マネジメント系、ここもしっかりとこれは実態に即して我々も十分議論をして結論を出していかなくてはならないと思いますが、やはり基本的には、ノーリターンルールというものを大きく掲げるということが必要ではないかと申しておきたいと思います。
 時間も少なくなってまいりましたけれども、次に、私、大事だと思っているのは、先ほどからもありますけれども、危機管理についてであります。まず、総理の指示権にもかかわるところですので、これについてお聞きをいたします。
 平時の原子力安全規制において独立性を確保することは、これは言うまでもないことでありますが、しかし、これは緊急時においても同様で、原子炉の安全対策、いわゆるオンサイト対策は、あくまで科学的な判断のもとに専門家が進めるべきであって、政治の介入は極力避けなければならない。
 今回の事故で、先ほどからも指摘されておりますけれども、官邸の現場への過剰介入が大きな問題となったわけです。事故直後には、現場が必死で対応している中に菅総理がヘリコプターで現場を訪れて、吉田所長を初めとする多くの関係者が、最も重要な初動対応の時期にこの総理の受け入れの対応に追われた。また、この最たるものでは、原子炉への海水注入に当たって総理が納得されないために、一時中止を命じさせた。ここらのところにおいては、これからの国会事故調や政府の事故調等々で明確になってくるわけでありますけれども、こういうような現場の危機を増大させるような事態まで、これは政治の介入が引き起こしたわけであります。
 民間事故調の報告書にも、総じて官邸によるこういうアクシデントマネジメントへの介入が、ほとんどの場合には全く無駄だったというか、影響を与えていない、無用な混乱やストレスを高めただけであるというような指摘もしているところであります。
 自公案では、このような官邸の現場への過剰介入を阻止するために、緊急時における総理の指示権、これを削除しているところであります。これによってオンサイト対策については、政治の介入を受けることなく、原子力規制委員会が高い専門性を持って科学的、客観的に対応することが可能となります。
 先週の本会議においても、この件についてまた我が党の佐藤茂樹議員から、総理や政府が原子炉鎮圧について介入する是非についてどう考えるかと総理に問い尋ねました。そのとき総理は、総理や政府の介入は、国として危機管理上最低限のかつ最後の手段であり、抑制的に行使されるものと答えておりました。
 しかしながら、今回の事故の菅総理の対応を見れば、これは政府がオンサイト対策に全面的に介入していて、野田総理が言うような抑制的なものとはとても思えない、こういうことが実際に起こるということを我々は経験したわけであります。
 ここで大臣に質問をいたします。
 政府案では依然として総理の指示権を残しておりますけれども、先ほど来からこの御質問の中で答弁はされておりますけれども、その意味するところは何ですか、どういう理由を持っていらっしゃるか、そこを逆に我々は問い尋ねたいと思うわけであります。また、今後、今回の事故対応のような総理の過剰介入をこれで避けられる、こう思っておられるのか。

○細野国務大臣
 緊急時の原子炉の鎮圧については、事業者が一義的な責任を持つということはまず明確に申し上げておくべきだろうと思います。
 それを申し上げた上で、専門家である規制組織がこれを監視をし、科学的知見に基づく客観的な判断から、事業者の対策に対する指導、助言、さらには、本当に必要な場合については指示をしていくということが基本となってまいります。
 そういった基本的な枠組みを考えますと、原子力災害対策本部長たる総理が指示をするケースというのは極めて限定的であるべきだし、特に技術的な部分について介入をすることは、厳に慎むべきだと私も思います。そういう意味では、今、江田委員の方がお話しになりましたことに私も全く異議はございません。賛同いたします。
 その一方で、先ほど来幾つかの例をお示しをしましたけれども、オンサイトでもどうしても総理の指示というのが必要となるケースというのがございます。典型的な事例としては、自衛隊によるプールへの放水の総合調整というのを総理の指示で出しましたが、あそこは、総理の指示があったから回り出したというふうに私は思っております。
 ここは、技術的な側面というよりは、どちらかというと、非常に力わざというか、泥臭いけれども現場の調整というようなことになるものですから、いわゆる専門性とか科学性ということとは若干離れて行使をできる余地を残すということもやはり必要ではないか。
 ここは恐らく各党各会派、御賛同いただけるのではないかというふうに思いますが、最後に恐らく残ります論点というのは、いわゆる国家存亡のときというようなことが絶対に来てはならぬわけですが、万々が一やってきた場合に、そのときに総理の指示権というのをどう考えるか、ここは議論の余地があるところではないかと感じているところでございます。

○江田(康)委員
 先ほど来から議論があっているところですので、私の考えも申し上げたいとは思いますが、確かに、細野大臣が幾つか事例を挙げられました。汚染水を流すときの判断、さらには、例えば東電が撤退するといった場合の命にかかわる職員、その方たちを考慮してどう政治判断していくか、ここはまさに政治判断の大きなところが予想されるということは、私も実は思うところであります。
 ただ、それに対して具体的に最後の手段としてというのが、幾つか具体例がそうやってから挙げられますけれども、総理が介入する必要性というのは、そういう意味では理解できるところもあるわけです。
 ただ、政府案では、その総理の過剰介入を防止する手段、こういうことが十分というか全く示されていない中で、最後の手段というような具体例を挙げながら言われても説得力がないわけでありまして、そういうようなところにおいてどのような政治の過剰介入を防止していくこの具体策をとっていくのか、ここにおいてぜひとも逆にもう一度問いたいと思うんですが、こういうところを十分にこれから審議をしていかないといけない重要なところだと思っておりますので、何かありましたら。

○細野国務大臣
 非常に悩ましい点について御質問いただいたと思います。
 今、私が幾つか、二つ、三つ例を挙げましたのは、今回の事故を本当に一つの偶然というか、そういう役にたまたまございましたので、本当に間近で経験をしたから挙げることができた例でございまして、これからいろいろなことが考えられる中で全てのケースを予見することは、とてもこれは不可能だというふうに思っています。
 したがって、どういったケースに指示権を絞り込んでいくのかというのは、これはなかなか難しいと思うんです。法律の中でも、既に、「特に必要があると認めるときは、その必要な限度において、」ということで絞り込まれています。絞り込まれている中でどう抑制的な行使の余地を残すのかということについて、ここはやはり知恵を絞っていく必要があるのではないかなというふうに感じております。
 全てを予見をすることが難しいとはいいながらも、過度な濫用はやはり防止をするということも検討する余地があるというふうに思いますので、私自身も、どういったやり方があり得るのかということについては少し考えてみたいというふうに思います。

○江田(康)委員
 さらに、平時における危機管理体制の強化を質問していきたいと思います。
 今回の事故の反省を踏まえれば、強固な危機管理体制を構築すべきであることは我々も全く異論はありません。政府案では果たして本当に危機管理体制が強化されているのか、これをしっかりと確認する必要もあります。
 今回の事故を改めて振り返りますと、政府はシビアアクシデントに対する備えが全くできていなかった。想定したこともない事故が発生し、マニュアルも不十分、関係者の能力も不十分、情報共有の体制も整備されていない中で、専門知識、経験を欠いた少数の政治家が中心となって、次々と思いつきだけで場当たり的な対応を続けたと言われても仕方がないようなこともございました。当初予定していた危機管理体制は全く機能しなかったのではないか。大変に残念であります。
 このような危機管理体制が、民間事故調の言葉をかりれば、まさに稚拙で泥縄的な危機管理と言われたわけであります。
 この稚拙で泥縄的な危機管理という言葉は、政府が平時から事故に対する備えが全くできておらず、いざ緊急事態になったら、役割分担もわからず、何をしてよいかわからず右往左往していることをあらわしているわけで、つまり、緊急時対応というのは、やはり平時からの連続で、平時において危機に備えていなければ十分に対応できないということがこれは逆にわかったわけであります。
 ここで大臣に質問をいたします。稚拙で泥縄的な危機管理とならないように、平時における備えをしっかりとしておく必要がありますが、そのための平時の取り組みとしてどのような仕事があるか。この委員会の中でもなかなかそういうようなところまで具体的には質問があっておりませんでしたので、どんな仕事があって、誰がどのように進めていくというようにされているか、そこを明確にお示しください。

○細野国務大臣
 今回の事故対応で反省を一言だけ申し上げますと、御指摘のとおり、事前の準備が極めて不十分でありました。しかし、不十分ながらも行っておった事前準備がほとんど機能をいたしませんでした。
 一番典型的な例は、オフサイトセンターが早々にもう機能しなくなって、次に考えておった場所もどうもだめそうだということで、早々に県庁に行くということになったわけですね。ですから、当初は、オフサイトセンターに地元の自治体の皆さんも来ていただいて現場で判断というそういういわゆるマニュアルになっておったわけですが、そこが全く機能しなかったということがございます。
 そこで、いろいろなレベルの事故があり得るというふうに思いますので、それぞれのレベルの事故に応じてしっかりとやはり備えるということが基本中の基本になってくるだろうというふうに思います。
 そこで、今回の改正案の中で、原子力の防災指針、これまでは法定化されておりませんでしたけれども、これも法定化をして、しっかりと国として指針を出します。その指針に基づいて、地域でそれぞれ防災計画をつくっていただきたいというふうに思います。ですから、その防災計画であるとかそのもとでつくられますマニュアルの策定について地方を全面的に支援をして、国としても、そうしたマニュアルや基本計画に沿った防災訓練についても全面的に見直して対応していく、これが重要ではないかと考えております。
 そして、そういうことをやる専門家を育成をしていかなければなりません。自公案を拝見しておりまして、そこはぜひちょっと御議論いただきたいなと思うんですけれども、政府案は、原子力地域安全総括官というのを置きまして、これをオフサイトの防災の専門家としてフル活用いたします。
 もうかなりいろいろなことが煮詰まっておりますので、正直申し上げますと、そこは警察から人を引っ張ってきまして、相当責任あるポジションに据えます。この人間を初めとしたチームが常に全国で防災のさまざまな取り組みについて巡回をして回る形をとって、準備ができていないところがあればそこは底上げをしていくという、そういう体制をとるわけです。
 そういう体制をとるからこそ、逆に万々が一事故が起こった場合には、原子力災害対策本部の、しっかりとした事務局も含めて全体の回しができるようなたてつけの方が、平時から有事ということでスムーズなのではないかというふうに考えたところでございます。
 また、担当大臣についても、必要ないのではないかというそういう御意見がございました。確かにそういう考え方ももしかしたらあり得るのかもしれませんが、私の経験から申し上げると、いろいろ防災対策をする場合は、どうしても地域の首長さんとの関係であるとか、さまざまな事故が起こった後の対応も含めて、福島がまさにそうでありますけれども、政務とそして現地の首長さん方とのやりとりというのはかなり頻繁になります。
 そして、政府全体で、原子力規制庁だけではなくて、原災本部全体としてやり得る事前の準備という意味では、各省を巻き込まなければなりません。そういう各省も巻き込むことも含めて、相当の力わざが恐らく求められるところについて担当大臣がない方がいいのかというと、ちょっと私はそこはいかがなものかなというふうに思案をしているところでございまして、ぜひそういったことも含めて御検討いただければ幸いでございます。

○江田(康)委員
 私も、平時のオフサイト対策の重要性というのは、規制組織の議論、また研究、勉強をしていく中において非常に重要であるということに気づいております。
 それは今おっしゃったように、関係機関との調整事務、防災訓練の実施にかかわる地方自治体との関係との連絡調整から、さっきおっしゃった、重要な原子力災害対策マニュアル、防災指針、それから、警察、消防、防衛との調整、緊急時における住民の避難、被災者の健康管理や風評被害対策、それから、放射線モニタリングの司令塔としての実施機関を調整とか、ハイレベルのものだけでもこれだけある。だから質問が複数これまでも出ているわけだと私も思っておりますが、平時のオフサイト対策で、今、自公案並びに政府案ともにこれはひとつ十分な審議をして、それらの調整を、本当に動いていけるその体制をつくることが非常に重要だと私は思っています。
 実は、今回のこの事故でも最も望まれてくるのは、こういうようなオフサイト対策であろうかと思んですね。それを平時からきちんとつくり上げていくというのは、私も重要ではないかなと思っております。
 そういう意味で、大臣が必要か必要でないかというようなところはもっと深くやはり議論していってもいいんじゃないかと。自公案、政府案ともに平時のオフサイト対策は、今提示しているものよりも現実に起動する、そういう体制をつくらなければならないのではないかと思っております。
 提案者がこういうことを言っていいのか、塩崎先生がそこからにらまれておるんですが、率直にこれは十分審議をし尽くしていけばいいのではないかなと思っております。
 もう最後の時間でございますので用意したものが全てできませんが、それでは規制については次の議論としまして、最後に、地方自治体の関与のあり方、誰も質問をなされておりませんので、ここを先にやらせていただきます。
 危機管理とか防災体制の強化は、地方自治体のもう最大の関心事項であります。原発事故があった際にその影響を最も大きく受けるのは、地域住民の方々です。また、地方自治体は、原子力の安全規制に何ら関与できないにもかかわらず、原発事故の際にはいきなり当事者となって、地域住民の避難を初め、地域住民を守らなければならない立場にさらされます。
 このような立場を改善すべく、一部の地方自治体は、原子力事業者と地域協定を結んで、地域の声を取り入れるべく努力をされていますが、こういう取り組みはあくまで自主的なもので、法的な位置づけは全くありません。
 このような中で、地方自治体からは、みずからが関与する仕組みをつくるべく、国に働きかけが今行われ始めました。本年四月には、山田京都府知事、また嘉田滋賀県知事の連名で提案書が出されています。その中に、「確固たる安全体制づくりに向けて、地元自治体と地元住民参加の仕組みの創設を図り、安全性を住民とともに追求する意識の醸成を図るべきである。」また、「国民理解を得るためには、まず国民の判断基準となる情報を徹底的に公開すべきである。」こういう提案がございます。
 フランスでは、原子力安全透明化法という法律の中で、地方自治体、国、事業者との間で協議の場をつくって、徹底的に情報公開を行って、地域の声を拾い上げて、それを原子力の安全性の向上に生かすための取り組みが構築されております。
 ここで大臣に御提案であり、質問をいたします。
 地方自治体は原子力事故の際に大きな影響を受ける。したがって、放射線による有害な環境から人と環境を守るための原子力の安全体制づくりとして、地方自治体が関与できる仕組みを構築することは大変重要だと思いますが、大臣の見解を最後にお伺いいたします。

○細野国務大臣
 大変重要な御指摘を最後にいただいたというふうに思います。
 これまでは、立地自治体及び隣接の自治体に対してのさまざまな原災法上の関係というのはございましたけれども、自治体においては、それ以上に事業者との安全協定というのがむしろ重視をされてきた面があったやに私は感じております。やはりそれは、国としてのコミュニケーションのあり方として、それ自体は否定をしません、これからもいろいろな役割を担うというふうに思いますが、やはり、もう少し密なるコミュニケーションをとるべきであったのではないかという反省は必要だというふうに感じています。
 特に、指針の中間報告でも、UPZという形で範囲を拡大をするというようなことも本格的にこれから検討されますので、その中で、地元の自治体との事業者も含めた建設的なコミュニケーションをどのように深めていくことができるか、ここは知恵の出しどころだというふうに思っています。
 余り慌てるよりは、じっくり地元の自治体と少し協議をした方がいいのではないかというふうに思っておりますので、新しい規制組織ができた暁には、真っ先にそうしたことに取り組みたいと考えておるところでございます。

○江田(康)委員
 時間でございます。きょうは十分な審議をさせていただきました。
 ありがとうございました。

○生方委員長
 次に、斎藤やすのり君。

○斎藤(や)委員
 新党きづなの斎藤やすのりでございます。
 今後の原子力規制機関のあり方と大飯原発再稼働の話というのは、切っても切れない話だと思いますので、きょうは、最初にこの大飯原発再稼働のことについて質問をしていきたいというふうに思います。
 今週中に大飯原発再稼働決定という報道がなされております。細野大臣、関係閣僚会議というのは今週いつ設定されているんでしょうか。

○細野国務大臣
 昨日、私、福井県に行ってまいりまして説明をしてまいりました。そうした福井県に対する説明、さらには受けとめ方というのも、これもしっかりと確認をした上でこれから検討されるものというふうに考えておりますので、まだ時期について設定をされているという状況ではございません。

○斎藤(や)委員
 非常に国民が不安に感じていまして、慎重にお願いしたいと私から強く訴えたいと思います。
 というのも、世論調査、もう皆さん御存じのように、各社出ております。朝日新聞の世論調査が五四%が再稼働反対で、毎日新聞が七一%が再稼働は急がなくてもいい、そういう結果を出しております。
 この再稼働の是非というのは、実は国会の採決がございません。しかし、この原発というのは、一回トラブルが起きますとこれだけ取り返しのない災害になる、被害になるというのは、今回、本当によくわかったわけでございます。国民生活に多大なる影響が出てしまう原発でございますから、今、原発がゼロになって、これから再稼働するかどうかというのは、国民の審判なり、あるいは国民の代表たる国会議員が審判をする、そういう機会があっても全くおかしくないほど重要な事案であるというふうに私は思います。
 私は、これは個人的な思いですが、選挙をやってもいいと思いますし、あるいは国民投票をやってもいいんじゃないかというぐらいのレベルの話だと思います。しかし、残念ながら、それの国会採決もない。
 そして民主党の中でも、先ほどNHKの報道を見ていたら、百二十名の方が再稼働反対の署名を出したという報道を私は見ました。政党を超えて、これは拙速だろうというそういうムーブメントも非常に強く上がっている中で、細野大臣、大変失礼なんですけれども、四人の専門家でない政治家の責任でこの原発を動かすというのは、国民は納得しないんじゃないか。そしてその四人の政治家の中には、これも厳しい言い方ですが、多くの福島の子供たちを被曝させてしまった、そういう責任を持っている方もいるんじゃないか。しかも、その福島原発の事故原因もまだわからない。これはわからないんですよ。
 細野大臣に一つ質問です。国会の事故調の結果報告というのはいつごろ出るんでしょうか。わかりますでしょうか。済みません、通告していないんですが。

○細野国務大臣
 済みません、六月の末ごろに出るというふうに伺っておりますが、詳細については、済みません、承知しておりません。

○斎藤(や)委員
 いろいろ国会日程のこととかもあるとは思いますけれども、六月末ごろにその事故の結果報告というのが出るというのであれば、それを見て再稼働の是非を決める、あるいは、この規制庁の採決などもその結果が出てからでも私はいいのではないかというふうに思います。
 福島原発の事故の原因がわからないわけです。こんな状況で本当に動かしてもいいのか、安全は確保されているのかというのが、国民に今渦巻いている不安と疑問の声なんです。
改めて聞きます、細野大臣。安全は、大飯原発、確保されているんでしょうか。

○細野国務大臣
 まず、斎藤委員は宮城県御出身で福島ではありませんけれども、いろいろな、間接的なものも含めて、被災をされている方々のその思いを受けとめておられますので、そういった皆さんの思いを代弁して今おっしゃっているということはよく承知をしておりますし、そうした皆さんに対してのどうした説明をしていくべきなのかということについての、まだ課題を抱えているというのも事実だろうというふうに思います。
 その一方で、ここはしっかりと御説明をさせていただきたいんですが、四大臣で判断をしたこの基準というのは、この四大臣が勝手につくったものではないんです。四十回以上にわたりまして専門家がさまざまな議論を積み重ねてきて、それを言うならば集約をする形で判断をしたというものであります。
 基準一と基準二は、これは、東京電力の福島原発で起こったものと同じ津波が来ても炉心溶融には至らないというそういう判断基準。そして基準三は、最高水準の安全を目指すという意味で、三十項目の最終的に達成すべき、最終的にというのはちょっと言い過ぎかもしれません、達成すべき目標として設定をしたその三十項目を前倒しをしたもの、それができているものについて確認をしてつくったのが三つ目の基準。そういったことも含めて安全性について判断をしたということであります。
 その一方で、斎藤委員の方から、安全なのかということで御質問がありましたが、こういうことは申し上げられます。東京電力の福島原発と同じ津波が大飯原発を襲っても、同じような事象が起こったとしても、それについては炉心溶融には至らないということは、私もセカンドオピニオンも含めてさまざま聞きましたので、そこは大丈夫だというふうに言えます。
 しかし、安全について、ではそこで終わったのかといえば、そうではなくて、いろいろなリスクが考えられますし、それについて常に高いレベルを目指していかなければなりませんので、その取り組みはこれからも続けていかなければならないというふうに考えております。

○斎藤(や)委員
 先ほど、午前中の柿沼委員の質問の答弁で、安全神話に陥らないようにしっかりやらなければいけないということに基づいた、今の細野大臣の答弁だったというふうに思うんですけれども、とはいっても、今回の再稼働に関しては、野田総理も細野大臣も枝野大臣も、やはりこれ、言葉は厳しいですけれども、リスクに目をつぶって再稼働させているような私は気がしてなりません。
 やはり新聞報道等々でも言われているように、その防潮堤も、まだくいも打たれていない、工事も始まっていないという情報も入っております。完成は来年度だということですし。それから、何といっても、ストレステストの中に水素対策が評価されていない。それから、この原発の形が加圧水型で、容器内で水素爆発が起こり得る原発であるということ。それから、今回、福島原発で現場作業を支えた免震重要棟が大飯原発にはない。そして、大きな道路が一本しかない、土砂災害が起きたときなどはどうするのだ。
 こういうことをやはり一つ一つ潰して、一〇〇%安全だということが確保されなければ、やはり今の日本は原発を動かす資格はないというふうに私は思っているんです。どうもやはり、再稼働が先、対策は後ということに私はなっているのではないかなと感じております。
 実は、本会議のときにも言いましたけれども、この大飯原発の地震の想定には、一五〇〇年代の天正地震というものの災害の想定、ボーリング調査はされておりますけれども、西暦七百一年の大地震、大宝地震の検証は行われておりません。この前も言いましたけれども、大飯原発のある若狭湾の海沿い、高さ三十メートルの場所に、波せき地蔵という、ここまで津波が来たという言い伝えがある。この一五〇〇年以前の大地震や大津波の検証がほとんどされていない原発を、今まさに再稼働しようとしているそういう現実があります。こういう ところも、ぜひ野田総理もそして細野大臣にも耳を傾けていただければ幸いです。
 そもそも、なぜ大飯原発をそんなに再稼働を急ぐのかという点を細野大臣にお聞きしたいと思います。

○細野国務大臣
 斎藤委員にここはぜひ申し上げたいんですけれども、なぜこれまで根本的な対策が打たれてこなかったのか、そういう防潮堤のようなものもそうだし、免震重要棟も、東京電力はつくりましたが、ほかの電力会社はつくっていませんね。いろいろな根本的な対策がなぜおくれてきたのか、これは根本的にしっかり考え直した方がいいと思うんです。
 なぜかというと、それをやると言った瞬間、では危険なんだろう、できるまでは動かしちゃいかぬという議論が出てくるだろうと思って怠ってきたんですよ。それを安全神話と呼んでいるんです。
 そうじゃないんです、今やらなきゃならないのは。常に高いレベルを目指して、何年かかっても、やらなきゃならないことはどんどん上を目指していく。そして、今できることはやっていく。常にそれをやり続けていかないと、本当の意味でのリスクを管理して、そして安全性を高めていくことはできないですよということなんですよ。
 ですから、その繰り返しを余りしてしまうとむしろ安全体制が進まないということにもなりかねないので、それはもうやめようというのが、これが安全に対する考え方なんだということを、ここは本当に心配をされている斎藤委員だということがよくわかりますので、あえて申し上げたいと思います。
 そこで、波せき神社なんですが、本会議で御質問いただいて非常に記憶に残りまして、私も調べました。私は綾部で生まれておりまして、宮津市は隣なんです。土地カンがございます、すぐ近くですから。どういったところにあるのかも確認をいたしました。確かに三十メートルぐらいのところに神社があって、そしてそこにお地蔵さんがいて、そこに確かに立て札が立っているという写真も確認をいたしました。
 ただ、例えば古文書があるかとか、これまでのさまざまな周辺の調査なども含めてそういう科学的なデータがあるかといえば、それは今のところ確認をされていないということなんです。
 もちろんずっと検証はしますから、ないことを証明するのはなかなか難しいですから、やり続けなきゃならないというふうに思いますけれども、現段階においては、さまざまな知見を集約して、どうもそういう事実は必ずしも認められないのではないかということをしっかりと確認をした上でこういう判断をしているということは御理解をいただきたいと思います。
 ただ、何度も申し上げますが、安全神話に陥ってはいけませんので、地震対策、津波対策、何が来たのかということについて最新の知見を常に探って、そして新しい知見が出てきた場合にはバックフィットをする、それでこれはおかしいということになれば、それは勇気を持ってしっかりととめていくということはやっていかなければならないと考えております。

○斎藤(や)委員
 あともう一つ、済みません、大臣。なぜ大飯原発をそんなに急ぐのかというところですね。お願いします。

○細野国務大臣
 大変失礼いたしました。
 大飯原発だけを急いでいるということではないんです。なぜ大飯原発三号機、四号機を先行してこういう形でやっているかと申し上げますと、ことしの三月までに手続が終わっておりました。新しい規制組織は四月以降に誕生させる予定でありましたので、三月までは既存の組織でしっかりやろうということが当初からの考え方だったわけですね。
 それにのっとって出てきたものですから、それについては常に上のレベルは目指していくんだけれども、現行組織のもとでしっかりと判断をして、そして、それに基づいて再稼働についても検討していくべきだろうという判断をしたものでございます。

○斎藤(や)委員
 その既存の組織が、堂々めぐりになってしまいますけれども、福島の原発事故を起こしてしまった。既存の組織がつくったその基準で本当に大飯原発を再稼働させてもいいのかというのが、今の国民の世論の声なんですね。これからまさに新しい規制庁の下で新しい安全基準をつくる。であるならば、事故後新しくできたその規制庁で、新しい基準のもとで大飯原発を再稼働するべきなのではないかということが国民の世論に今なっております。
 二つ確認があります。
 これから新しい規制庁の下で新しい基準をつくるということなんですが、大飯原発以外はこの新しい基準で再稼働するかしないかを決めるんですねということと、それから、この大飯原発も、再稼働するにしても、あくまでこれは夏の電力不足を補う意味で使う、秋にもう一度とめて、この新しい基準で再度判断するんですか。
 この二つをお伺いしたいと思います。

○細野国務大臣
 大飯原発三号機、四号機以外の原子力発電所については、新しい規制組織が誕生して、そこで判断をしていくというのが適切であると考えております。
 そして、大飯原発三号機、四号機についても、今の基準でもちろん動かすことを今検討しておるわけでありますが、新しい規制機関が誕生した時点で、この基準の是非についても判断をし、そして、その基準そのものが例えばおかしいであるとか、こういったことについて対応しなければ稼働させるべきではないという判断がなされた場合には、それは稼働を停止することはあり得るということであります。

○斎藤(や)委員
 続きまして、原子力規制機関の任務についてちょっと質問をしたいと思います。
 政府案では、この規制機関の任務、これはいわば目的ですけれども、政府案では何のためにこの原子力規制機関を置くんでしょうか、そもそも論なんですが。

○細野国務大臣
 政府提出法案では、放射線による有害な影響から人の健康及び環境を保護することを基本的理念といたしまして新しい組織をつくり規制を強化する、そういう考え方をとっております。

○斎藤(や)委員
 それでは、自公案の方は、この任務についてはどう明記されていますでしょうか。

○柴山議員
 お答え申し上げます。
 私たちの法案では、原子力規制委員会の三条で、「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資するため、原子力利用における安全の確保を図る」ということを任務としております。

○斎藤(や)委員
 ぜひ、そこをきちんとこれから自公と民で、政府の方で修正されると思うんですけれども、必ず、国民の生命それから健康及び財産の保護、環境の保全というのを入れていただきたいんです。そこをぜひお願いいたします。
 今までは、とかく原子炉の安全というところばかりがフィーチャーされていましたけれども、やはりこれだけの大きな事故があったわけですから、国民の安全というところに焦点を当ててぜひ盛り込んでいただければというふうに思います。よろしくお願い申し上げます。
 さて、原子炉の運転期間について、午前中、矢崎委員からも質問がありましたけれども、何度も言っていますが、福島原発事故の検証が終わっていないわけで、場合によっては延長を二十年するということなんですけれども、実は福島第一原発一号機も、これは運転開始から四十年たっていたということなんですが、もしかしたら、劣化とかプラントの構造が古かったのが原因で事故が深刻化したということが考えられないでしょうか。このあたりはどうでしょうか。
 なぜ、例外といっても延長を認めるのか。この原因がわからない中で延長を認めるというのは、ちょっと国民の方は納得いかないのではないかなと思うんですが、そのあたりはどうでしょうか。

○細野国務大臣
 福島原発におきましては、四つの原発が事故を起こしたわけでありますけれども、東京電力の福島第一原発においては四つの原子炉が事故を起こしたわけですが、一号機が一番初めに水素爆発をいたしました。これはICの操作の問題も含めていろいろなことが言われているわけですが、結果として、一番古いものが事故を起こしたという面はあるわけです。
 そこも含めて、高経年化というものがどのような影響を原発に及ぼすのかというのは、相当厳しく我が国は見ていかなければならないだろうと思います。
 これまでは、とかく、いわゆる放射性物質による、中性子による脆化の部分、格納容器のまさにかたさの問題が注目をされてきたわけですが、むしろ私は、システムそのものの古さにどう向き合っていくのかということをこれから議論していくべきだというふうに思います。そこも含めて徹底的な検証が行われた上でこの四十年というものを運転期間として設定をし、それが、延長が例えばあり得るとすればどういったことなのかということについては、科学的にしっかりとお示しをしなければ、これはとても延長を認められるものではないというふうに考えます。

○斎藤(や)委員
 世界では五十年以上稼働した原発はないということ、それから、矢崎委員も言っていましたけれども、ドイツでは三十二年で廃炉にしているというのがありました。
 午前中、細野大臣が、圧力容器は原発の運転で出る中性子を浴び続けるともろくなるという答弁がございましたけれども、これ、その発言の後に私もちょっと調べてみました。プラントに仮にトラブルがあって、急激に冷やすと割れるおそれがあるということのようです。
 金属の場合、劣化が進むと、ある温度より低くなると、まるで陶磁器が割れるように小さな力であっさりと割れてしまう。この温度を脆性遷移温度というそうなんですけれども、原発の脆性遷移温度を見てみると、やはり新しいのが温度が低いんですね。運転から七年の女川三号機はマイナス四十五度。でも、古いプラントは軒並み高くて、四十年たった美浜一号機は七十四度、三十五年たった玄海一号機は九十八度。冷やすためにはいわば熱湯をかけなきゃいけない状況になっているわけで、九十八度の玄海一号機の原子炉は、いわば本当に陶器のような状況になってしまっていて、簡単にひび割れして破断してしまうおそれがあるということでございます。
 福島の事故は深刻ですけれども、それでも放射性物質の九割は容器内に残っているというふうに言われております。この圧力容器が割れたら大変なことになります。
 何を言いたいのかというと、古い原発というのは、もう皆さん御存じのとおり、リスクがあるということでございます。運転期間の延長というのは、事故リスクを高める。技術への過信、検査しているから大丈夫だというのは、それこそやはり安全神話に取りつかれているというふうに言わざるを得ません。
 ここで提言なんですけれども、経過年数による厳しい制限を設けて、例えばドイツ並みの三十二年でキャップをかけて、午前中もありましたが、廃炉というのを目指すべきですし、そして、それともう一つ、やはり脆性遷移温度というものを厳しく管理するということも重要だと思います。あれだけの事故があっても、例外とはいえども、六十年の超高齢原発を認めるのかということなんですが、このあたりの見解、細野大臣、よろしくお願いします。

○細野国務大臣
 斎藤委員がごらんになっているグラフと同じものを私も手元に持っているんですけれども、このグラフをごらんいただいてもおわかりのように、四十年というところに明確に線があって、それ以上は危険でそれ以下は安全ということではないわけですね。年数がたてばたつほど脆化が進む、つまり、高い温度で脆弱になってくるということなわけです。
 だからこそ、まずは運転制限でどこかにやはり線を引くべきだろうと考えたわけですね。そしてその線を引くべきは、このデータからも出てきている温度のレベルからいっても、それぞれの機器の耐用年数からいっても、やはり四十年ではないかということなわけです。
 ただ、四十年で全てそこで線が引けて、それ以前について安全だ、完璧だというふうに考えているわけではありません。
 そこで機能してくるのがバックフィットなわけですね。先ほど御質問があったような、津波の知見や地震の知見はもちろんですが、こういう高経年化についての影響についても、これから新しい知見が出てくると思います。我が国がそれを探っていかなければなりません。
 そういったものが出てきた場合は、それをバックフィットすることによって、例えば三十年でもその基準を満たさないものについてはしっかりととめていく、場合によっては廃炉をしていく、そういう制度を今回提案をしておるんです。
 ですから、四十年というところで線を引いて、そこで安住するという趣旨ではないということをぜひ御理解いただきたいと思います。

○斎藤(や)委員
 今細野大臣が言ったことも含めて、やはり新しいルールをその新しい規制機関で設けるべきなんじゃないかなと思います。
 そういう点では、午前中、吉野委員が、独立性を担保した新しい機関でこのような点も議論すべきだという答弁をされていましたけれども、私も実はそれに賛成をしておりますので、このあたりもぜひ修正案で検討していただければというふうに思います。
 最後、時間がないんですが、一問、四号機の燃料プールの安全性について。私、週末にタウンミーティングをやりましたら、複数の方からこれを聞かれました。恐らく報道の影響だと思うんですけれども、四号機の燃料プールは大丈夫か、プールの耐震、建屋の崩壊のリスク、冷却システム、千五百本の核燃料は安全な状態なのかということを聞かれました。
 細野大臣、大丈夫なんでしょうか。

○細野国務大臣
 四号機のプールの燃料の健全性は、昨年の三月からずっと日本政府としてさまざまな検証を行い、そして必要な対応をしてまいりました。そして、その検討の結果といたしまして、震度六強の地震が発生をしても十分な耐震性を有しているということを、これは専門家も含めてしっかりと検討した上で判断をいたしております。
 去年の六月ですから、ちょうど今ごろも、四号機のプールの補強というのをやっておりました。先日、私、その現場に、責任者としてやはりここは行かないかぬだろうということで行ってまいりましたけれども、大変厳しい環境の中で作業員の皆さんが歯を食いしばって補強してくれたことがよくわかりました。そこは、政府としても、また事業者としても、万全の体制をこれまでも敷いてきたし、これからもさらにしっかりとその体制を強化をしていかなければならないと考えているところでございます。

○斎藤(や)委員
 その細野大臣の視察の様子も見ました。確かに、プールの底が鉄柱で補強されていて、プールの耐震性というのが強化されているんだなというのは目で見てもわかったわけなんですが、肝心の建屋がぼろぼろで、外壁が反り返っている部分などもありました。事故後、恐らくあの建屋の構造計算などもほとんどされていないというふうに思いまして、それを皆さんが心配されているんだと思います。
 細野大臣、大臣です、閣僚ですからなかなか言いにくいとは思うんですけれども、四号機のプールで巨大地震が起きたときにどんなことが起こり得るか、また、それを想定して作業のシミュレーションはしているのかというのを、ちょっと単刀直入にお伺いします。どうでしょうか。

○細野国務大臣
 それはしております、去年から。最悪のシナリオも想定をして、それでも水が入り続ける。さらには、最悪の最悪を想定しても外に放射性物質を出さないということについては、設備も準備をしておりますし、人も配置をして昨年から備えてまいりました。
 詳細に説明をすることは、時間的な制約もありますので控えたいと思いますが、やっておりますので、そのことは皆さんに御報告させていただきます。

○斎藤(や)委員
 きょうは衆議院テレビのネット放送で皆さんがたくさん見られていると思いますので、その言葉を私は信じたいというふうに思います。
 今我が国がやるべきことというのは、徹底的な福島原発事故の検証とその情報公開ということに尽きると思います。そして、既存の原子力規制当局が機能しなかったことで原発事故が発生したんだよ、そして、これは言いにくいですが、誤った政治主導で原発事故が拡大したのかもしれないという反省に立って、原発村から距離を置いた、独立性の高い三条委員会としての規制庁を設置することが私は重要なのではないかというふうに考えております。
 その規制組織を、国民の安全の確保のために汗をかく、組織に身をささげる、脱原発のマインドを持った専門家集団でその組織があるべきだという意見を述べまして、私の質問を終わりにさせていただきます。
 大臣、誠意ある答弁、ありがとうございました。

○生方委員長
 この際、お諮りいたします。
 議員吉井英勝君、服部良一君、柿澤未途君及び松木けんこう君から委員外の発言を求められております。これを許可するに御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○生方委員長
 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 吉井英勝君。

○吉井議員
 日本共産党の吉井英勝です。
 ただいま委員外発言を許可する決議をいただきましたので、今から質問に移らせていただきたいと思います。
 最初は、原子力安全委員長に来ていただいておりますが、まず、原発立地に当たって、安全評価審査指針において、運転時の異常な過渡的変化と、それを超える事態により、放射性物質が放出する可能性のあるものを事故として評価するということにしていますね。事故については、「周辺の公衆に対し、著しい放射線被ばくのリスクを与えないこと。」としております。
 周辺の公衆の実効線量の評価値が事故発生時に何ミリシーベルトであればリスクは小さい、それを超えるものについては原子炉設置を認めないという、この基準の値というのがありますね。この基準の値を幾らにしておられるかをまず伺います。

○班目参考人
 御質問は、異常の過渡と、あと、いわゆる各種事故と言われているものだと思いますが、この場合の目安線量は五ミリシーベルトということになってございます。

○吉井議員
 それで次に、指針の適用に関する判断のめやすについてという一九六四年の原子力委員会決定の別紙一、重大事故、仮想事故を挙げていますが、別紙二の方で、要するに、被曝線量についての判断する目安の線量としてここで挙げているのは、全身に対しては二百五十ミリシーベルト、これは当時ですね。今は百ミリシーベルトというふうにしていると思うんです が、この基準をどのように定め、どのように取り組んでいらっしゃるかを伺っておきたいと思います。

○班目参考人
 目安線量につきましては、国際的な動向を踏まえて決めてきてございます。したがいまして、ICRPなどの勧告をもとにそのような判断をしてございます。

○吉井議員
 当初は、炉心損傷で定義してきたのは大体一千度Cぐらいまでだったんですね。しかし、核燃料が二千八百度Cでメルトダウンを実際にする、これを考えていなかったのがこれまでの基準だと思うんです。
 それでやはり確認しておきたいんですが、福島第一原発と大飯原発の敷地境界における、立地審査指針で定めている放射線量基準は、これは今おっしゃったように、昔は二百五十ミリシーベルト、現在は百ミリシーベルトということで臨んでいるわけですね。確認しておきます。

○班目参考人
 おっしゃるとおりでございます。

○吉井議員
 次に、原子力安全・保安院の方に伺っておきたいんですが、福島第一原発の事故後一年間の敷地境界における累積線量というのは幾らになっていますか。

○深野政府参考人
 お答えをいたします。
 震災による事故以降のおおむね一年間の線量でございます。
 昨年の四月一日から本年の三月末までをとったものでございますけれども、これを見ますと、モニタリングポストごとにかなり線量が違っております。その中で一番線量が高いものがモニタリングポストの七番というものでございますけれども、これについては九百五十六ミリシーベルトでございます。一番低いものはモニタリングポストの一番でございまして、これは四十五ミリシーベルト程度でございます。

○吉井議員
 今お答えいただいたように、風向、風速とか、年間を通じての全体としての傾向がありますから、当然、モニタリングポストの位置によって変わってくるのは当たり前なんですが、MP七については九百五十六ミリシーベルトと。ただしこれは、三月十一日の事故直後の、三月末までの最も厳しいときのデータがないんです。
 ですから、四月一日からことし三月三十一日までの一年間のデータとして今お答えいただいたわけですが、そうすると、福島第一原発というのは、累積線量で九百五十六ミリシーベルトですから、立地審査指針の基準値である現在の百ミリシーベルトを大きく超えているということになります。
 設置許可については、原子炉規制法の担当大臣は枝野さんということになりますが、今まさに事故に直面して、事故担当として細野大臣は座っておられるわけです。大臣として、これは経産大臣と諮ってということになるかもしれませんが、福島第一原発は設置許可を取り消すということをやはりきちんとやらなきゃいけないと思うんですが、どうですか。

○細野国務大臣
 法的な設置許可そのものは、これはもう本当に厳密に法律に定められていて、これは、今の規制機関である原子力安全・保安院、そして枝野大臣のもとで行われているものであります。
 したがって、それについて、私が幾ら事故そのものの担当をしているからといって、直接こういう国会の場において関与を表明をするのは、これはちょっとやはり控えるべきではないかというふうに考えます。

○吉井議員
 実は、ことし三月三十日に東京電力の方から、電気事業法第九条一項の規定により一号機から四号機は廃止しますという届け出がありますね。ですから、相手は届け出ているんですけれども、国として、これは基準に反しているんだから許可をもう取り消すんだと、この取り消しというのをきっちり判断しなきゃいけないと思うんですが、どうも大臣の方がためらっておられるので、これを担当する原子力安全・保安院の方、これは経産大臣ときちんと相談をして、原子炉規制法三十三条に基づく許可の取り消しというのをきちんと取り組まれるべきだと思うんですが、どうですか。

○深野政府参考人
 今御指摘の福島第一原子力発電所でございますけれども、これにつきましては、正確に今手元にデータ、資料がございませんのであれでございますが、電気事業法につきましては廃止ということで、発電をもうしないということで、いわゆる電気工作物としての取り扱いというのはなくなっている、そのように承知をしております。
 一方で、原子炉等規制法につきましては、これにつきましては、まだその廃止措置に移行するような燃料棒の取り出しということもできておりませんので、これについては、むしろ、現行の原子炉等規制法によりましてきちんと安全を確保していくということが必要ではないかと考えております。

○吉井議員
 これは、原子炉としてやっていくことの許可をやめても、これは、将来の廃炉も全部一緒なんですよ。時間がかかるのは当たり前なんです。
 問題は、これまで、こういう明確に敷地境界での累積線量が基準値を超えている、こういうふうな実態にありながら、相手の方からは廃止しますという届け出は来たけれども、国としては、許可を取り消すんだときちんとやっていないんですね。私は、こういう態度ではやはり問題じゃないかというふうに思うんです。ですから、これは直ちに取り組んでいただきたい。
 次に、保安院長にまた伺っていきますが、これまで炉心溶融を考えないで仮想事故の場合、事故発生後に放出される核分裂生成物の量は、炉内蓄積量に対して希ガス一〇〇%、沃素五〇%の割合と考えてきました。
 ところが、ずっと長時間運転してきた場合の大飯原発の設置許可申請書では、この希ガスと沃素のそれぞれの炉心内の蓄積量が幾らなのか、大気中に放出される量をそれぞれ幾らと見込んで申請を出してきているのか、これを伺っておきたいと思います。

○深野政府参考人
 お答えいたします。
 大飯原子力発電所の仮想事故における放射性物質の放出量でございます。
 これにつきましては、沃素が百二十テラベクレル、一・二掛ける十の十四乗ベクレルということでございまして、希ガスにつきましては、八・五掛ける十の十五乗ベクレル、八千五百テラベクレル、こういうことを想定しております。

○吉井議員
 ですから、設置許可申請のときにはそれだけの放出量を想定していたわけです。
 では、現実に福島で、一年前になりますが、二〇一一年六月六日現在で大気中に放出された放射性物質は希ガスと沃素でそれぞれ幾らなのか。これはちゃんとデータをとっておられるわけですから、伺っておきたいと思います。

○深野政府参考人
 お答えをいたします。
 福島第一原子力発電所でございますが、一号機から三号機までの各号機から放射性物質の放出があったわけでございますけれども、今の三つの号機を合計いたしまして、希ガスでございますと、これはキセノンで代表しておりますけれども、一・一掛ける十の十九乗ベクレルでございます。
 それから沃素につきましては、沃素131で代表いたしますと、今の三つの合計を合わせまして、一・六掛ける十の十七乗ベクレルでございます。

○吉井議員
 ですから、大飯原発で設置許可申請書の添付十に記載している仮想事故の中で、地上放出分と放射性プルーム、スカイシャイン効果による敷地境界外における最大の甲状腺被曝線量とかガンマ線被曝線量などを挙げているわけですけれども、今お答えいただいたものからしても、現に、大飯が出した申請書の数値よりも福島事故で出した分というのは、三桁から四桁多いんですよ。
 ですから、大飯原発の問題というのは、現実に発生した福島第一原発の事故による累積被曝線量は、昨年四月一日以降の一年間で九百五十六ミリシーベルトで、立地審査指針で定めている放射線線量基準である百ミリシーベルトと比べても、福島第一原発の設置許可申請書で当時福島で最も高いと想定しておった値と比べても、はるかに大きいものが現実に発生したわけです。
 だから、事故を発生させないというのはこれは当然のことなんですが、仮にやはり考えておかなきゃいけないのは、私、一昨年もこれは経産委員会で当時の経産大臣相手に議論したんですが、全電源喪失になれば炉心溶融になるだろうと、そうしたら、メルトダウンは起こさない構造になっています、これが当時の答弁だったんですよ。
 細野大臣も、けさほど来お聞きしておりますと、そういう事故を起こさせないように取り組んでいるんだ、頑張っているんだというお話は随分伺いました。その取り組みは当然のことなんですよ。ただ、当然のことだけれども、それを超えた場合に、実際に事故をやった場合に、放射線被曝量も敷地内にとどめるというその対策なりその基準なり、そういうものを何かお考えなのかどうか。あれば伺っておきたいと思います。

○細野国務大臣
 昨年の事故を受けまして、特に深刻な影響を与えた津波についての対応として、先ほど来御説明をしておりますとおり、仮に東京電力等の福島原発と同様の津波が来た場合にも炉心損傷には至らないという、そういう考え方をとって基準一、基準二というのをクリアしたということで皆さんに御説明をさせていただいております。
 つまり、今、吉井委員の方が御指摘になったそういう事態が起こらないための対策をして、そのもとでさらに安全性を高めていくという判断をしているということでございます。

○吉井議員
 昨年の津波にしても、もともと、敷地内で十五・七メートルの津波というのは東京電力自体が想定しておったんですよ。それは、津波の場合もそうなんです。押し波もそうなんですが、引き波の場合にはそもそも冷却水がとれなくなる。そういったこともずっと議論してきたんだけれども、全然真面目に取り扱おうとしなかったわけですよ。それであの事故をやっちゃったわけですね。今の対策というのは物理的な対策なんですね、今おっしゃっておられたのは。それは暫定基準を設けてやっているんだという話はよく伺ってきているんですけれども、しかし、今度の法案でも、第四十三条の三の二十三でバックフィット制度を入れるわけです。これは、新しい知見が出ればバックフィットする。新しい知見というのは、まさに福島第一原発事故でどれだけの放射線量が出たのか、そのことに基づいて、事故そのものを起こさない対策は当然の話なんですよ、しかし、それで出たときに、それでも敷地内の中にとどめられるような対策なりなんなりの基準をきちんと考えておかなかったら、それは、事故が現実に発生したときに国民の安全が守れるかどうかというのが、今度の福島第一原発事故の最も大きな教訓なんですね。
 その教訓に立って新しい知見をバックフィットするんだと言うんだったら、放射線の放出についても、実際に出るものをどう抑え込むのかとか、やはりそれは簡単な話じゃないということは私はよくわかるんですが、しかし、そういったことを考えたときに、そもそも福島事故からバックフィットだと言うんだったら、まだとてもじゃないが再稼働の条件に達していないじゃないかと。
 そのことをやはりきちんと見ておかないと、敷地境界のところの線量をはるかに三桁も四桁も超えるぐらいの事故をやっておいて、いや、バックフィットやりました、もう放射線被曝の問題は心配ありません、バックフィットの問題もクリアしたから、考えていくから再稼働の条件が満たされたんだ、こういうことで細野大臣初め四大臣でそれでも再稼働を決めるのか、今はそのことが問われているときだと思うんですよ。どうですか。

○細野国務大臣
 吉井委員は本当に専門家でおられますし、三・一一の前に、最もある意味こういうことを想定されていた方でありますから、そういう方のお話ということで、しっかり今のお話は承らなければならないというふうに感じております。
 そのことを申し上げた上で、バックフィットでございますけれども、これは、法律に基づいて、さまざまな新しい知見が出てきたときに、これまで動いていた原発についても当てはめていくということでありますから、今、バックフィットの制度が法律に基づいてできているということではありません。
 私がバックフィットの考え方に基づいてやっていると申し上げたのは、津波が来た場合に、どういった形で炉心溶融に至ったのかということについてのかなりの部分の蓄積がございますので、それにならないような部分を反映しているということであります。
 今、吉井委員の方が御指摘をされた、放射性物質が外に出てしまったではないか、それも含めて基準そのものから見直せというその考え方がこのバックフィットということと適合するのかどうかということについては、これはちょっと私自身も、専門家の意見も聞きながら検討させていただきたいと思います。
 今の私の理解では、バックフィットというのは、さまざまなケースを想定し、さまざまなそれこそ技術的な知見を踏まえて、地震や津波も含めて事故に至らないようなさまざまな取り組みをしていくという趣旨と受け取っておりますので、それについては、そういう発想に立ってやれることをまさにやっているということであります。

○吉井議員
 時間が来たという紙が回ってまいりましたので終わりますけれども、法律上まだないものでやっていくのは無理があるみたいな話をしながら、一方では暫定基準というのも、これは法律にまだないわけですよ。だけれども、これだけは前倒ししてやっていこうというわけですね。
 これはどう考えてもおかしいわけで、福島原発事故からすると、風向、風速など考慮して大飯原発三、四号機の申請時の仮想事故の冷却材喪失による敷地境界における最大被曝線量を見ると、指針に示す基準値をはるかに超えておるわけですよ。現実に福島で超えたわけです。
 そういう中で、暫定基準値もまだ法律前からやると言いながらこっちの方は曖昧にして、とにかく何が何でも再稼働だというのは、これはとても考えることのできない論外の話だということを申し上げて、時間が参りましたので質問を終わります。

○生方委員長
 次に、服部良一君。

○服部議員
 社民党の服部良一です。
 きょうは委員外議員として質問の機会を与えていただきまして、委員長あるいは理事各位に心から御礼申し上げます。
 今も議論ありましたけれども、まず冒頭、政府が大飯三、四号の再稼働を強引に進めているということに対して厳しく抗議をいたします。
 昨日の毎日新聞でも、世論調査、再稼働を急ぐ必要がないが七一%、それから、市民団体が全国五十四カ所で行った街頭投票でも、くしくも反対が七一%という数字が出ております。賛成は一三パー、わからないが一五パーと、国民の方はよく冷静に事態の推移を見ているなというふうに私は感じました。
 大臣、再稼働を経済界の一部は喜ぶかもしれませんけれども、拙速な判断は、本当にもう政権にとっても命取りになるんじゃないですかと私は思います。
 先ほど田中委員の方からも、この委員会でも、ぜひ規制組織の問題、徹底審議をお願いしたい、あるいは総理入りの審議の要求も出ました。全く同感であります。修正の話も出ておりましたけれども、この法案は、いわゆる政局の具にするような対決法案でもありません。修正も含めて、ぜひとも全会派が入った丁寧な議論を進めていただくように、委員外議員の立場ではありますけれども、ぜひ委員長にもよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 私の事務所にも多くの市民からファクス等を多数いただいております。その中で、原子力規制組織の審議中に政府が再稼働を決定するようなことがあれば、それは国会軽視ではないかというような声が幾つも寄せられているわけですけれども、大臣、この規制組織の審議中によもや再稼働をするというようなことはないですよね。

○細野国務大臣
 この規制組織のあり方もそうでありますし、事故の検証もそうですし、さまざまな新しい知見もそうなんですが、常に新しいものが出るわけですね。それでさらに安全性については上を目指していかなければならないというのが、昨年の事故の最大の教訓だというふうに私は思っています。
 規制組織を早期に誕生させることも当然重要であります。国会の事故調査委員会が六月の末に見解をお出しになるということですので、そこに耳を傾けることも、これはもう極めて大切な調査委員会でありますから、当然、我々はそれをやっていかなければならないと思っています。政府の調査委員会はその後に恐らく結果を出すと思います。年末には、IAEAが日本政府と一緒に事故についてのさまざまな検証を行う、そういうシンポジウムを行う予定をしております。
 つまり、その時々に常に新しいさまざまな取り組みがなされるわけですね。それにしっかりと対応していくというのが、安全神話に陥らない、常に最高レベルの安全を求める政府がやるべき手続だというふうに思っております。
 したがって、そういった手続はしっかりとやっていきながら、最新のさまざまな取り組みに基づいて原発の再稼働についても判断をしていくということになります。

○服部議員
 いろいろおっしゃったわけですけれども、きのう、福井県知事にもお会いになったと思いますが、NHKのニュースの言いぶりからして、西川知事は、新しい原子力の規制機関を早急に発足させることなどを求めたということもあります。
 ですから、ちょっともう一回お聞きしますけれども、まさにこの規制機関の審議中に再稼働をゴーサインさせるようなことはないですね。イエス、ノーだけで結構です。

○細野国務大臣
 審議中かどうかということでいうならば、去年の夏にはもう閣議決定をして、新しい規制機関についての考え方をまとめておるんです。そして、年明けには法律を出しておるわけです。ですから、できるだけ早く規制については新しい組織をつくって、より厳格なものを導入しようと、もう一年近くにわたって政府として取り組んできたわけですね。
 その問題と、この再稼働をどう考えるか、安全性を現段階でどう高めていくのかというのは、これはやはり並行してやっていかなければならないというふうに考えます。

○服部議員
 どうもちょっと歯切れが悪いなと思うんですけれども、まさにこの規制機関をどうするかという国会の審議中に再稼働を認める、ゴーサインを出すということは、これは国会軽視じゃないかという国民の多くの声が寄せられて、そういう懸念もあってそれは西川知事もおっしゃっているんじゃないかなと思うんですけれども、そういう一般論じゃなくて、まさにこの審議中にゴーサインするということはあり得ない話だと私は思いますけれども、済みません、ちょっと話がくどいので、もう一回、端的に御答弁をお願いいたします。

○細野国務大臣
 昨日、西川知事と直接私は会話をしておりますので、そこで私が受けとめた中身で申し上げるならば、西川知事は、再稼働そのもののタイミングであるとか是非ということとはまた別に、例えば再稼働の後ということも含めて、規制機関をしっかりつくって、そこで厳しい規制をかけていくべきだという、そういう御趣旨の御発言と私は受けとめております。

○服部議員
 いや、私は本当にこういうことはあり得ないことだというふうに思います。まさにこの国会の審議中に再稼働するなんというようなことは本当におかしいということを、もしそうなればですよ、強く申し上げておきたいと思います。
 先ほど、新規制組織が発足した後に大飯の稼働をとめることもあり得るということもおっしゃいました。これは大変重要な発言だというふうに私はお聞きしていたわけですけれども、また一方で大臣は、この大飯の再稼働の判断基準については、暫定的なものであるということも認めておられます。
 私、この間の議論の中で何回聞いても本当に理解できないんですけれども、新たな独立した規制機関で事故の検証を踏まえた基準をつくられるわけですよね。そしてバックフィットも導入される。それなのに、古い保安院とか安全委員会で検討した暫定の基準で再稼働を判断されるということの意味がどうしてもわからないわけなんですよ。ですから、暫定基準での再稼働というのは私はあり得ないというふうに思います。
 即時、再稼働の手続を中止すべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

○細野国務大臣
 私と服部委員の考え方は、やはりそこは考え方を異にするなと感じました。逆に、新しい規制機関ができ、新しい規制が誕生するまでの間は何もしなくていいということになりませんか。
 再稼働せずとも、ついこの間までは、定期検査に入るまでは原発は動いていたわけですね。プールがあるものは原子炉として存在するわけです。それに対して、最新の知見に基づいて、法律は改正できないけれども、より高いレベルの安全性を確保していくというのは、これは政府としては当然の措置だというふうに考えます。
 そして、新しい規制機関が誕生したら、果たしてこれまでやってきた基準なり考え方は正しいのかということについて厳しく検証していただくのも、これも当然のことではないでしょうか。
 この考え方というのは、常に安全について、絶対はないわけですから、高いレベルを目指していくというこの一貫した考え方に基づいた措置でありますので、矛盾をしているというふうには考えておりません。

○服部議員
 いや、私はどうしても理解ができないわけですね。新しい規制機関で厳しく基準を見直して検証していくということであれば、何でその前に再稼働という形でゴーサインを出されるのか、そこがどうしても理解できない。
 結局、いかにも安全を確認したプロセスを踏んできたというふうにおっしゃるわけですけれども、要するにこの再稼働に踏み切られるその本音は、電気が足りないということなのか、あるいは安全が確認できたということなのか、あるいは、電力会社がその対策にコストをかけたくないということでそのことに配慮をされているのか、この再稼働の本音というのは一体何なんですか。

○細野国務大臣
 安全性についての確認、これが最も重要な点であります。
 チェルノブイリ事故が起こった後も旧ソ連政府は原発を動かし続けました。そして、スリーマイルアイランドの事故が起こった後もアメリカでは原発が動いていました。我が国は、慎重に判断したがゆえに原発が一基も動いていない状況になっているわけですね。
 そういう状況の中で、安全性について、東京電力の福島原発を襲ったものと同様の津波が襲ったとしても炉心の損傷には至らないということが、これが技術的に確認をできた。さらには、高いレベルの安全性を求めるという意味でやらなければならないことをできる限り前倒しをして対応できた。そのことを確認した上での再稼働の判断ということでございます。

○服部議員
 今、国会事故調の中に、津波でなくて地震によって配管系が破損をした可能性もあるじゃないか、そういうことを主張されている田中三彦先生も事故調の中に入っておられるわけですね。そして、まさに福島の事故の検証をやられているわけですよ。
 ですからこそ、この検証で一体何が福島で問題があったかを徹底的に検証して、それを反映させるということ抜きにやはり再稼働はあり得ないということが私が言いたいことであって、今、津波は大丈夫ですというふうにおっしゃいましたけれども、やはり国民は納得しておりません。そのことをちょっと申し上げておきます。
 きのう、福井県知事にお会いになって、県知事はボールは国にあるというふうにおっしゃっています。野田総理が国民に直接説明し理解を求めることを要求されたと。福井県の判断はその後との認識だと。一方、細野大臣は、政府の考えはしっかり説明したので福井県の判断を見守るというふうにおっしゃっていますけれども、逆にボールは福井県にあるというふうな認識なんですけれども、結局、ボールは今どちらにあるんですか。

○細野国務大臣
 ボールとおっしゃっておりましたので、そうやってキャッチボールをしているということではなくて、政府は政府として安全性を確認をしている、そして、福井県は福井県でずっと専門的な知見を蓄積をして判断をされているわけですので、そこは私は、こういう事態を受けて、半ば共同作業でそれぞれが進めているという認識でおります。
 きのう福井に行ってまいりまして、その後、福井県がどのような御見解を持っておられるのかということについては、きょうは一日この委員会におりますので、私は確認ができておりません。
 したがって、そこは福井県の県知事を初めとした皆さんのお考えというのもしっかり伺った上で、今後どのようなプロセスを踏んでいくのかというのは、政府全体として判断していくべきものというふうに考えます。

○服部議員
 福井県知事、運転再開の必要性について説明を求める中で、原子力の基幹電源としての必要性とか、あるいは経済への影響、国際的なエネルギー問題など、あらゆることについて国民に対して明確に説明をしろ、それから、使用済み燃料についても検討体制をつくるということを求めたというふうに、報道ですけれども、この再稼働について、今後そういったことも全部ひっくり返して議論されるということなんですか。福井県知事はそれを求められているんですけれども、国としてはどうされるんですか。

○細野国務大臣
 使用済み燃料、もしくは使用中も含めて燃料の管理の問題は、これは、三月十一日以前も含めて、我が国において非常に深刻な問題なわけですね。特に福井の場合には、発電をしているのは福井県ですが、電力を使っているのは関西ということで、そこが言うならばずれますので、むしろ消費地も含めてこの燃料の問題については考えるべきではないかと、そういうふうに私自身は受けとめております。
 ただ、これは、何か突然物事が解決をするとか、ましてや誰かが持っていってくれるとか、そういう種の問題ではありません。日本全体でどう考えていくのかというのを、相当これは議論を煮詰めていかないと問題は解決をいたしませんので、例えば、それがすぐに解決をしなければ稼働そのものにかかわるというような意識で福井県知事がおっしゃったというふうには受けとめておりません。しっかりとそういったことも政府として責任を持って検討していかなければならないという、そのように考えましたので、私の方からは知事にそのことをお伝えをしたところであります。

○服部議員
 いずれにしても、再稼働の前に福井県知事には、そういったことを含めてトータル的に総理から説明をされるということなんですね。ではないんですか。

○細野国務大臣
 そこは福井県知事としてどのようなお考えなのかというところを、これは慎重にしっかりと受けとめなければならないというふうに思うんです。総理は、これまで何度か総理としてのお考えを大飯についても発信をされています。自分の責任でという趣旨の発言も、この間の四大臣会合でございました。
 そうした中で福井県が今どのようなことを国に対して求めておられるのか、そこはしっかりと受けとめた上で政府としての対応を検討する必要があるというふうに思っております。

○服部議員
 何かいま一つ、どうされるのかよくわかりませんでしたけれども。
 あと、政府は、規制庁発足までの間、特別な監視体制をとるために政務三役を現地に常駐させるというふうに表明されていますけれども、一体、政務三役って何をするんですか。何か役に立つんですか。

○細野国務大臣
 これは東京電力の福島原発の経験からいっても言えることなんですけれども、やはりオフサイトにおいても、特にオフサイトということが重要になると思いますが、地元の自治体の首長の皆さんに対する説明であるとか、政府として責任を持って対応するという意味において、私は政治家の存在というのは重要だというふうに思っています。それは決して、さまざま皆さんが懸念をされているような技術的な分野に踏み込むであるとか、その判断をそれこそ曲げるであるとか、そういったことをするということでは全くありません。
 地元の自治体に対して政府としてしっかりと取り組んでいる、そして、それこそあってはならないことでありますけれども、何らかのトラブルが生じた場合には、それをしっかりと政府全体で受けとめた上で対応するという意味においても、常駐というのは、現地にいるということ自体は意味のあることだというふうに思っております。

○服部議員
 お手元に資料をちょっと配らせていただきました。大飯原発の敷地内の活断層の評価の問題です。
 かなり専門的な資料でもありますので、またゆっくりお目通しをいただきたいわけですけれども、地形学の専門家である渡辺先生が、原発周辺の活断層評価が明らかに間違っており、過小評価が横行しているというふうに警鐘を鳴らしておられます。
 このF―6断層の問題が検証されていない、F―6断層は活断層だということをおっしゃっているわけですけれども、ちょっと大臣、このF―6断層の問題、あるいは活断層の連動の問題、三つの活断層が連動するじゃないかということも言われておりますけれども、こういった科学的検証は尽くされたというふうにお考えでしょうか。
 私は、こういったことが明確な結論が出るまでは再稼働の判断は保留すべきだというふうに考えますけれども、それもあわせていかがでしょうか。

○細野国務大臣
 御指摘のF―6の破砕帯ということについては、トレンチ調査、穴を掘るという方法ですが、そうした調査によって、破砕帯の上に乗っている地層に変位を及ぼさない、つまり、それが原発の健全性そのものに影響を及ぼすというものではないという確認がされているという報告を受けております。
 常に新しい知見に基づいてさまざまなことについて検討していくということは、極めて重要であるというふうに思います。
 ただ、服部委員の御質問を聞いておりますと、常に新しいことについてチャレンジし、新しい知見に基づいて考えていくわけですね。そもそも、原発の事故の最終的な全てのことがわかるのも、恐らく三十年、四十年になると思います。
 つまり、服部委員がおっしゃっていることは、そういう常にいろいろなことが新しくわかるので、それがわかるまでは原発はもう動かさないということですから、言うならば、それはもう全てこれから原発を動かすなということをおっしゃっているわけですね。というように私はとれます。
 そうではなくて、安全神話に陥らずに、常に最新の知見に基づいて、そして、安全性に問題があればバックフィットをして、とめるわけです。その考え方をベースの部分で御理解をいただかなければ、これはなかなか議論がかみ合わないなという、率直にそんな印象を受けました。

○服部議員
 時間が来ましたので終わりますけれども、私、考え方は脱原発ですよ。しかし、今言うているのは、例えばこの審議期間中に再稼働するんですか、あるいは、前も国会でやらせていただきましたけれども、国会の事故調の報告の前に再稼働するんですか、あるいは基準の見直しもしない前に再稼働するんですか、そういうことを私は聞いているわけで、別に、三十年、五十年とか、原発ゼロとか一〇〇とか、そういう話をしているわけではないので、そこはよく受けとめていただきたいというふうに思います。
 いろいろ質問が残りましたけれども、これで質問を終わります。どうもありがとうございました。

○生方委員長
 次に、柿澤未途君。

○柿澤議員
 みんなの党の柿澤未途でございます。きょうは、委員外発言ということでこういう時間を与えていただきまして、まことにありがとうございます。
 まず、衆法提出者の自民党さんにぜひお伺いをしたい、こういう点がございます。
 一月三十一日の政府提出法案の閣議決定に当たって、国会事故調の黒川清委員長は次のような声明を出しております。国会事故調は、その設置法において、今般の事故を踏まえた行政組織のあり方の見直しを含む提言を行うことを任務の一つとしている。その国会事故調が調査中であるにもかかわらず、行政組織のあり方を定めた法案を政府が閣議決定してしまうというのは、これは私には理解できません。こういう二月二日付の黒川清委員長の声明であります。
 これについて自民党の議員さんも公明党の議員さんも、やはり同じように、政府はおかしいんじゃないのか、こういうふうに国会質問等で批判をしてこられたのではないかというふうに思うんです。
 ところが、今回、その自民党さんが公明党さんと一緒に政府提出法案の対案を出してきた。国会事故調の提言は今もって出されていないわけです。国会事故調を尊重しろ、そう言ってきた方々までもが、政府と同じように、その国会事故調の提言に先んじて、行政組織のあり方はこうだ、こういう法案をつくって提出をしてしまったわけです。
 これは、今までに言ってきたことと自己矛盾を来してしまっているのではないかと思いますが、この点、どうお考えになられているのか、お伺いをしたいと思います。

○柴山議員
 柿澤議員にお答えいたします。
 確かに、今委員が御指摘のとおり、国会の事故調が判断をするに先立って、特に、政府提出法案のような形で、政治からの独立性が必ずしも十分でないと我々が批判をしている法案が提出をされ、そしてそれが四月一日から施行されてしまうということに対しては、私たちは非常に強い懸念の意を表明してまいりました。
 ただ、我々が対案をこういう形でずっと議論をしてまいりましたのは、まず一つ、ベクトルが逆だということは御理解をいただきたいと思います。つまり、まさしく黒川委員長が御指摘のように、しっかりと政府から独立した形での事故分析をなす、そしてその意見が十分反映される組織というものを目指しているという方向で私たちは対案づくりをしていこう、そういう意図があったということをまず御理解をいただきたいというように思っております。
 そして、この段階での対案提出ということなんですけれども、まず一つ、国会事故調の報告書は、先ほど来お話があるように、今月にも出されるというように伺っております。そして、恐らくその中で、現行体制の問題として明らかになっている事項というものが多々出てくると思われます。そして、それらに早急に対応して、原子力利用における安全の確保を強固なものとして国民の不安を取り除くということは、これは私は政治の使命であるというように思っております。
 そこで、現時点で、IAEA、国際基準などにも照らして考えられ得るベストの案を、先ほど申し上げたように、恐らくその黒川委員長の意に沿うような形で、政治から独立を徹底するという案を法案として提出することといたしまして、原子力規制委員会をひとまず立ち上げて運用させた上で、三年以内に、今申し上げた国会事故調査委員会の報告の内容等を踏まえた形で、場合によっては組織のあり方の見直しを行うという整理をさせていただいているところであります。

○柿澤議員
 黒川委員長がこういうふうに恐らく考えているだろうから、その方向を酌み取って法案化したので、だからいいんだと。これはちょっと、なかなか苦しいものがあるなというふうにも思います。
 もう一度繰り返しますが、国会事故調の設置法の第一条だったか第二条だったか、とにかく、今般の事故を踏まえた行政組織のあり方の見直しを含む提言を行う、これはまさに事故調の任務の一つでありますから、それを踏まえて国会がこうした新しい規制機関のあり方について立案し、成立をさせていく、こういう流れであるべきでありまして、この点において、政府が足早に新しい原子力規制機関のあり方について法案を閣議決定した時点では皆さんがおっしゃったとおりだなと思っていたんですけれども、この段になって、あのとき言っていたことと今こうやって審議入りされていることとどういう整合性になっているのかな、こういうふうにも思えてしまうわけであります。
 次に、関西電力大飯発電所の再稼働について、国会事故調の提言を待たずに再稼働の政治判断を行うのは、やはり国権の最高機関の全会一致の意思を無視している、したがって白紙撤回されたい、こういう趣旨の国会決議案の提案を作成し、有志の議員に今お持ちをさせていただいております。恐らく、塩崎先生も吉野先生もそれはお手元にお持ちだろうと思います。
 現に、再稼働の判断根拠となっている政府の安全性に関する判断基準については、四月十八日の国会事故調でも質疑の対象となっていて、安全に稼働するために必要な対策が先送りされている批判的検証が加えられております。
 国会事故調が今なお調査中であり、事故を踏まえて厳しい批判にさらされている保安院、安全委員会にかわる新しい規制機関が今こうして審議中でありますから、設置をされる前に既存の機関がつくった暫定的な安全基準に基づいて政治判断による再稼働を行う、こういう野田内閣の方針は衆法提出者さんは妥当なものだと思っているのかどうか、これを確認させていただきたいと思います。

○柴山議員
 お答え申し上げます。
 私も、今の御質問に関しては柿澤議員と問題意識を共有しております。一連の野田内閣のこの再稼働への対応を見ると、やはり、今般の原子力事故からの教訓を学んでいないのではないかというように感じざるを得ません。
 原子力利用における安全の確保に関しては、もちろん物理的な客観的基準ということも大事なんですが、私、本会議でも答弁を申し上げたように、国民の不安を払拭してその信頼に応えるということが最も重要だと思っております。
 これまで我々も、与党時代、しっかりと本来であれば反省しなければいけなかったんですけれども、原子力村が構築してきた安全神話のもとで安全性が軽視されてきたという反省に立って、国民の信頼を回復するための努力を丁寧に尽くすべきであるというように思っております。
 ですので、その安全基準は、科学的知見に基づき、そして、その決定プロセスも国民に明らかにされる中でつくられるべきものであります。
 にもかかわらず、申し上げたとおり、民主党政権のもとでは、政治的に決定をされているというようにどうしても映ってしまうんですね。
 例えばストレステストについても、法律の枠組みに沿ったものというよりは、いわゆる三大臣、すなわち、内閣官房長官、経済産業大臣、特命担当大臣の取りまとめ、これによって菅総理の思いつきの体裁を整えたものであるというふうに感じております。
 また、例えば、再稼働に当たっての安全性の判断基準とされております、先ほど斎藤委員からの御質問にもあったと思うんですけれども、いわゆる四大臣の判断基準、これも、中越地震のときに問題とされたフィルターつきベント管あるいは免震事務棟、これの設置などについても、事業者による実施計画を求めるということにとどまっているわけでありますし、また、過去の地震などについての検証というものが本当に十分になされているのか、細野大臣からは、何度も何度も議論をした上で出されたんだというようにお話があったんですけれども、やはり疑問を拭い去ることはできないわけであります。
 野田内閣の再稼働の進め方は、やはり余りにも稚拙、拙劣でありまして、安全よりも需給対策を優先させたと。先ほどお話があったんですけれども、安全性をしっかりと確保するから全てとめたというのは、これは私は詭弁だと思うんですね。やはり、世論の反発があるから全部とめざるを得ない状況にあるわけです。そして、再稼働についても、需給対策がやはり優先をされてしまっているということは透けて見えてしまっております。
 たび重なる方針変更、そして、専門知識に欠ける閣僚が再稼働の判断を行ったということで、政府の原子力政策に対する国民の信頼を失った事態になっている。
 これをやはり解決するためには、本会議で私が答弁申し上げたように、「新たな原子力規制組織のもとで新たな基準が定められるのが望ましい」というように思っております。

○柿澤議員
 しからばこの御答弁は、自民党は現時点で暫定的な安全基準に基づく大飯発電所の再稼働の政治判断には反対する、こういう立場であるわけですか。ちょっとここは御答弁をいただければ。

○柴山議員
 ですので、今申し上げたとおり、再稼働のためには、「新たな原子力規制組織のもとで新たな基準が定められるのが望ましい」というふうに明確に答弁申し上げております。

○柿澤議員
 反対だ、こういうふうに解釈できる御答弁だったと思います。
 細野大臣にお伺いをいたしたいと思います。
 今、お話がるるありました四閣僚会合、そして総理の政治判断による大飯発電所の再稼働の判断というのは、これはいかなる法的根拠に基づくものなんですか。それとも、これは一種の超法規的措置と解するべきものなんでしょうか。お伺いしたいと思います。

○細野国務大臣
 現在、定期検査で停止中の原子力発電所は、現行法令にのっとり安全性の確認が行われております。昨年七月に三大臣が取りまとめた方針において、ストレステストの一次評価を実施をするということを事業者に求めました。これは、それを求めた上で政府として再稼働の可否を判断することといたしました。これは行政指導の一環であります。
 その判断が出るまでの間は再稼働を行わないということを求めた結果として、各原子力発電所の運転が再開されない状態が続いているということであります。
 今後、四大臣会合において個々の原子力発電所の再稼働を認めた場合、これは、当該原子力発電所について、昨年七月以来の再稼働を行わないように求める行政指導を行った、それを解除するものというふうに位置づけられるということであります。

○柿澤議員
 これは要するに根拠法はない、こういうことでいいですね、イエスかノーで。

○細野国務大臣
 先ほど柴山議員の答弁を聞いて、若干私も自民党さんがそうだったのかということで改めて認識したんですが、私どもは、新しい規制機関ができて新しいルールができなければ、判断はあらゆるものは保留するという考え方はとっておりません。
 新しい法律というのは国会審議をいただかなければなりませんので、そこは一定の時間もかかるし、当然慎重な検討が必要です。そういったことが全て終わる前においても、常に新しい知見ができ、新しい安全についてやるべきことができた場合には、それは、目の前の問題について対応すべくしっかりと対応していく、その考え方に立っております。
 これを私どもは、安全神話から脱して、しっかりとやれることをやるという対応としてこれからもとっていく必要があるというふうに考えております。

○柿澤議員
 ちょっと的が外れた御答弁をいただいてしまいましたが、基本的には、法令に基づいたことではないということを御答弁をいただいたと思います。
 いわゆる暫定的な安全基準と呼ばれている「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」及び保安院の技術的知見、この策定とそれに基づく安全確認に原子力安全委員会はどのようにかかわったのか、これをお伺いしたいと思います。

○班目参考人
 安全基準の策定等については、原子力安全委員会は直接的には何らかかわってございません。 
 しかしながら、具体的な安全基準に関しましては、これは規制行政庁の方でしっかりと策定していただければよろしい。それも、これからいろいろなことが明らかになってくると思いますが、最新の知見を反映して、安全性を常に高めていくという方向でやっていただければ結構だというふうに考えているところでございます。

○柿澤議員
 班目委員長、原子力安全委員会の根拠法である原子力委員会及び原子力安全委員会設置法、ここには何と書いてありますか。原子力安全委員会の所掌事務として、原子力利用の政策のうち安全確保に関すること、原子炉規制のうち安全確保に関すること等々、これらのことについて原子力安全委員会が「企画し、審議し、及び決定する。」十三条に書いてあるではありませんか。この法律のとおり全く行われていない、こういうことを班目委員長はみずから委員長として認めたことになりますよ。いいんですか。

○班目参考人
 原子力安全委員会のそこに書いてある任務というのは、まさに、原子力の安全確保のための規制に関する基本的な考え方の提示でございます。
 これに対して、具体的な規制をどのようにやるか、これは規制行政庁の所掌だというふうに考えてございます。

○柿澤議員
 では、今回のストレステスト、その後の暫定的な安全基準による再稼働の判断、ここで、十三条に基づいて安全委員会が企画、審議、決定した場面がどこにあったのか、あるいはなかったのか、お伺いします。

○班目参考人
 原子力安全委員会といたしましては、本会議の場に保安院からいろいろな状況を聴取し、それに対して個別具体的にいろいろな指導は行ってきております。

○柿澤議員
 そもそも、ストレステストの導入時、昨年七月十一日の枝野官房長官、海江田経産大臣、細野大臣、三閣僚名による「我が国原子力発電所の安全性の確認について」、これでは、再稼働に関し、保安院による安全性の確認について疑問を呈する声も多い、こう言った上で、安全委員会による確認のもと、評価項目、実施計画を作成し、事業者の自己評価を保安院が確認をして、「安全委員会がその妥当性を確認する。」こういうことになっていたわけです。
 その上でストレステストの一次評価を行ったわけですけれども、結局、一次評価をパスしたことがイコール安全ということになるのかどうかについて、班目委員長はずっと論評を避けています。すると政府はどうしたか。保安院に新しい安全基準の作成を指示して、それをクリアしたから大丈夫だ、こういうふうに言い始めたわけであります。
 保安院がだめだからストレステストだったのに、安全委員会に今度はだめ出しを食らったら、また保安院に逆戻り。これでは法律も何もあったもんじゃないというふうに思うんですよ。再稼働ありきで基準をあれこれいじっているだけのことではありませんか。私は、ここに全ての問題があると思っているんです。
 現に、効力を発揮し政府を拘束している既存の法律の定めをすっ飛ばして、総理が政治決断したんだからいいんだというのでは、これでは法治国家とは言えない。政府首脳の意思として、法に定められた適正手続がこうやってないがしろにされるのであれば、新しい規制機関、安全基準をつくる以前の問題、法案審議以前の問題だというふうに思うんですよ。
 こういうことをやっていることについて、細野大臣、また班目委員長、時間もないですが、ぜひそれぞれ御答弁をいただいて終わりたいと思います。よろしくお願いします。

○細野国務大臣
 四大臣で決定をいたしましたあの三つの基準というのは、原子力安全委員会を含めた専門家の意見を伺いながら、公開の議論を通じまして慎重に知見を集約をした、それを取りまとめたものであります。そうしたプロセスにおいて安全委員会が保安院から議論を聴取してさまざまな知見を出してきたことについては、先ほど班目委員長がおっしゃったとおりであります。
 したがいまして、そこをしっかりと判断をして、最終的には、やはり東京電力福島第一原発の津波をしっかりと防止できる、ここはしっかりと確保しなければならないということでありますから、それについても判断を加え、さらには最新の知見をできるだけ前倒しをして反映していく、そういうことができているというふうに考えております。

○班目参考人
 安全委員会といたしましては、今回議論されているような新規制機関において、今後も、安全神話に陥ることなく、しっかりとその安全性の向上の努力を図っていただきたい、それに尽きると思っております。

○柿澤議員
 全く何一つ法的根拠に基づかずに今の大飯発電所の再稼働が行われ、そして、今、安全基準のもとにこうした判断が下されようとしている、このことがはっきりこの質疑によって明らかになったと思います。
 終わります。

○生方委員長
 次に、松木けんこう君。

○松木議員
 委員外でお話をさせていただく機会をいただきました。委員長さん、本当にありがとうございます。そして与野党の理事の方、そして委員の皆さんも、本当にありがとうございます。
 それでは、いろいろ質問をつくってきたんですけれども、答えていただいたところとかいろいろとあってちょっと変わっちゃいますので、ただ、答えづらいようなものは余りないと思いますので、進めさせていただきます。
 まず江田先生、よろしいですか。江田先生も、今、柴山さんが再稼働反対だということだったと思うんですけれども、同じような御意見でよろしいですか。

○江田(康)議員
 再稼働、今、この新たな組織で新たな基準にのっとって再稼働はきちんと決められていくものと考えておりますので、そのように考えております。

○松木議員
 ということで、これで自民党も再稼働はもうちょっと後の方がいいかなという話、そして公明党の先生方も基本的にはそうである、そして、ちょこっと後ろで聞いてきたんですけれども、共産党の方々もそう、社民党もそう、そして新党大地・真民主の我々もそうです。そして、多分みんなの党の皆さんもそうなんだろうなと思うんです。
 まあ、余り無理しないで、僕はずっと細野さんの顔を見ていました。もともとイケメンだけれども、それ以上に本当にあなたは真剣な顔をしてずっと答弁していましたよ。そして、自民党の方々、公明党の方々も本当に真剣な顔でされていました。吉野先生なんかはまさに地元ですから。その中でこういう委員会が開かれて、いろいろなものが決まる前の再稼働に対してはいろいろな意見が出ましたよね。
 今は答えなくても、もしあれだったらいいですけれども、私は、何かこのままいったら民主党だけが悪者になるようなそんな気がする。ぜひもう一度よく考えられたらいいんじゃないかなというふうに思いますけれども、お気持ちがあればお答えください。余り無理しなくていいよ。

○細野国務大臣
 ほかでもない、愛情に満ちた松木けんこう委員からのお話でございますので、そこはしっかり承ります。
 ただ、これだけはぜひ御理解をいただきたいんですが、一年以上たった中で原発が一つも動いていないということに関して、それは安全性を確認したからではなくて国民が受け付けないからだ、そういうお話もございましたけれども、そこは、安全性について非常にこれは慎重に検討してきたんです。これはもう事実なんですね。その上で……(松木議員「それはわかったから、だからもう一回話し合いしてみて、それだけでいい」と呼ぶ)はい、もちろん話し合いはしっかりとしなければなりませんので、ありがとうございます。

○松木議員
 一度また関係大臣で、委員会でこういう話が多かったんだということをぜひ反映されるということで、私は細野大臣の決めたことだったら何でも従っていきたいと思うんだけれども、なかなかそうもいかない部分もあるわけでございまして。
 自民党の皆さん、公明党の皆さんも法案を出されて、政府も出されて、そして建設的な討論がずっとなされてきた。私は、やはりなるべく早くこういうことは決めていくべきだというふうに思っております。
 その中で、原発再稼働が目的でやるというのは私はいかがなものかなという気持ちはありますけれども、それは別にして、それぞれの我が法案のこういうところが肝なんだよというのはお互いにあると思うんですね。そして、ちょっとそれぞれここが違うんだ、だからここら辺をのんでくれたらいいなというのを三分以内でお互いにちょっとお話をしていただければありがたい。どちらからでもいいですよ。

○吉野議員
 ありがとうございます。
 松木議員の奥様の実家は大熊町であります。私も何度かお訪ねをしていろいろお世話になっている。本当に御苦労なことでございます。
 そういう中で、きょう朝の議論から、まさに政府案と私たち自公案の違い、いろいろな方々の質問の中で明らかになってまいりました。
 私たちの自公案は、誰の圧力も受けないで原子力の安全についての規制を行えることのできるような組織をつくりたい、すなわち、独立性をどうかち取るかというこの一点に尽きると思います。私たちの自公案については、まさに独立性、人事の独立、政府からの独立、お金の独立、全てを含めた独立性は私たちの方がまさっている、このようにある意味で自負をしているところです。
 もう一点、一元化です。
 特に政府案については、保障措置、モニタリング等々はまだ文科省に残っております。私たちはこれをも含めて一元化に取り組んでおります。スリーSをきちんと規制当局でやっていく。
 この辺が大きな違いであり、また、私たちの自公案のすぐれている点であるというふうに思っております。
 以上です。

○細野国務大臣
 政府案の考え方については、趣旨説明でも申し上げましたし何度も申し上げていますので、それについては省かせていただいて、大きな方向性として、自民党・公明党案とそして政府案というのはいろいろな点で共通していると思います。推進サイドから独立をさせていくであるとか一元化をしていくであるとか、そういったことについてかなり共通していると思います。
 従来、総理の指示権のあたりが、政治家の関与のあたりが、これがやはり違うのではないかと言われておりましたが、きょうの質疑を通じてそこはかなり近いものがあるということを確認をできたのは、非常に大きな収穫でした。
 その上で、まだ若干詰めの作業が必要だなと思いますのは、私どもは規制の中身にも踏み込んでいる点を自公の皆さんがどうお考えになるか。具体的には、シビアアクシデントの法制化、そしてバックフィット、四十年の運転制限制、これらについての御見解をできれば早目にお示しをいただけると非常にありがたいなというふうに思っております。
 もう一つだけ申し上げると、マイナーな論点のように言われますけれども、私が気になっていますのは、事故調査を初めとした何らかのチェックをする機関というのは、これはあった方が、これからの原子力行政というのを考えるといいのではないかなと思うんです。
 我々はそういう委員会をつくるたてつけにしておりますが、それが今のところ自公案の中では見られないものですから、そこが何らかの形で方向性が見えてくれば、私は、一致点はもう十分見出せるのではないかと感じております。

○松木議員
 私が聞いた限りは、お互いにベストミックスでつくることは私は可能じゃないかなというふうに思いました。
 総理大臣のことに関しては、かなり特別に変な人だったからというのもありますよ、はっきり言って。そう思います。本当に私はとんでもなかったというふうに思います。それをちょっと割り引いてそこら辺は自公の皆さんもお考えになったらいいのではなかろうかな、私は本気で本当にこれは思っています。
 どうでしょう、塩崎先生、何となくこれはいけそうだなという感じがしませんか。

○塩崎議員
 先生がおっしゃるとおり、きょう、大臣の答弁を聞いていて、これはいけるんじゃないかと。基本的には私たちのラインでいけるなというふうに思いました。

○松木議員
 なるほど。しかし、ぜひ譲り合ってくださいよ。決められない政治だとか言われているじゃないですか。
 そもそも皆さん、私思うんだけれども、国会議員の定数を減らせなんというのが随分世の中にあるでしょう。これは寂しい話ですよ。いやいや、国会議員はもっとふやせ、我々の気持ちを代弁してくれるんだって言われるぐらいにならなきゃ、政治家は。本当に寂しい。ちょっとこの話とは違いますけれどもね。そんなことでお互いにぜひ頑張っていただきたいというふうに本当に思っております。
 それともう一つ、原発のことでいうと、最後の処理の問題というのがありますよね。例えば脱原発ということになっても、原発を動かすことになっても、いずれにしても、最後にこの処理というのをどうするのか。要するに、立派なマンションにトイレがないんだという話をする方がいましたけれども、まさにそういうことだと思いますので、ここはやはりどんなことになっても、処理はこれから脱原発しても必要なんですからね。そういう方々に対しての何というんですか、研究者を大切にしていくということはやはりいずれにしても怠っちゃいけないんだというふうに思いますけれども、細野大臣、そこら辺どうですか。

○細野国務大臣
 松木委員がおっしゃるとおりだというふうに思います。
 使用済み燃料を初めとした、これをどう取り扱っていくかというのは、中間貯蔵も含めて非常に深刻な問題です。ましてや最終処分ということになってまいりますと、これはリサイクルしようがしまいが、最終的には何らかの最終処分が発生をしますから、これはさらに深刻な問題なわけですね。
 ですから、今回の事故を、一つの本当に極めて厳しい教訓ではあったけれども、改めてその教訓を受けとめた上で、会派を超えて最終処分の問題について考えていく必要があるというふうに思います。
 それは、ひいては、日本だけではなくて、世界全体の問題にどう日本が向き合うかということにも密接にかかわってくると考えているところでございます。

○松木議員
 ありがとうございます。
 ちょっとローカルな話をさせていただきますけれども、先ほど、吉野先生に私の父の話をしていただきました。実は、私はかみさんを大熊町からもらっています。二十四歳のとき結婚をさせていただきました。今五十三歳ですから、もう二十九年たって、一番初め、うちのおやじに会ったときに町議会議員をやっていたんですよ。怖そうなおやじだったんですよね。ちょっと会うのも嫌だなと初めは思っていたんですけれども、一番初め行ったら連れていかれたところがあるんです。それが実は原発なんです。それで、原発の温排水で魚の養殖をやっているとか、そういうところも見させていただきました。
 そのおやじがこう言っていました。今会うと、郡山の方に今は避難生活していて、もう体育館じゃなくて普通のところにはいるんですけれども、私の顔を見ると泣くんですよ。もう八十幾つで、こういうことは見たくなかった、俺が死んでからこうなってもらいたかった。
 それで、実はうちの父はどちらかというと自民党系ですから、最後は推進したんですけれども、やはり地元で随分反対が本当はあったそうなんですよ、一番初めは。ところが、だんだん押し込まれていって、結局やはり、うちの父に言わせると、大熊町というのは東北のチベットだからなと、これは言葉が悪いですけれども済みません、そういう話がありまして、やはり原発を持ってくるしかなかったという話もありました。それを聞くと本当に寂しいなと思うんですけれども、その中でよく言われていたのが、電力会社が地元に余り本当のことを言わないと。そのことで随分うちの父は怒っていましたよ、何回も。
 これはこれからどういうことになるかわかりませんけれども、そういうことは政治家がやはりきちっと見ていくべきだというふうに思っておりますので、ぜひそこら辺を御留意いただきたい。
 先生、せっかく来てくれたんですから、もし今のお話に意見があれば一言、せっかく来たんですから。

○柳澤副大臣
 松木議員とは公私ともに大変親しくさせていただいておりまして、去年の九月から私も原子力災害現地対策本部長として福島に入らせていただいていまして、おかげさまで、皆さんの御協力で復興庁もできまして、本当に一日でも早く、一人でも多くの方に戻っていただくという体制にしたいというふうに思っております。
 福島の皆さんは、できるだけ去年の三月十一日以前の生活に少しでも戻りたいというのが本音だというふうに思っておりますので、また一生懸命頑張らせていただきますので、御協力よろしくお願いいたします。

○松木議員
 終わります。ありがとうございました。

○生方委員長
 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。
 ただいま本委員会において審査中の各案件に対し、関係委員会から連合審査会開会の申し入れがありました場合には、これを受諾するに御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○生方委員長
 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 また、連合審査会において、政府参考人及び参考人から説明または意見を聴取する必要が生じました場合には、出席を求め、説明等を聴取することとし、その取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○生方委員長
 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次に、ただいまお諮りいたしました連合審査会において、委員でない議員から発言を求められた場合には、その取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○生方委員長
 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、委員長間で協議の上決定いたしますので、御了承願います。
 次回は、来る八日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

第180回 国会 衆議院 憲法審査会

第180回 国会 衆議院 憲法審査会 第6号
平成24年5月31日(木)
午前九時三分開議

【日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法の各条章のうち、第二章の論点)】

○大畠会長
 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に日本国憲法の各条章のうち、第二章の論点について調査を進めます。
 本日の議事について申し上げます。
 まず、衆議院法制局当局から説明を聴取し、その後、各委員からの意見表明等を含む自由討議を行うことといたします。
 それでは、衆議院法制局当局から説明を聴取いたします。衆議院法制局法制企画調整部長橘幸信君。

○橘法制局参事
 衆議院法制局の橘でございます。
 前回に引き続きまして、今回は、第二章戦争の放棄の章につきまして、お手元配付の資料に基づき、その主要論点について御説明をさせていただくことになりました。よろしくお願い申し上げます。
 今回の資料では、二〇〇五年、平成十七年の衆議院憲法調査会の最終報告書に倣いまして、第九条に関連して議論されることの多い、安全保障及び国際協力一般についても取り上げております。何とぞ御了承願います。
 それでは、早速内容に入らせていただきますが、冒頭、若干のお時間を頂戴して、まずは、第九条に関する政府解釈のポイントにつきまして御説明させていただきたいと存じます。
 と申しますのは、多分に釈迦に説法であるとは存ずるのですが、時として芸術的とか技巧的とまで評される政府、内閣法制局の九条解釈が、国会でのこの第九条論議の基底にあるからであります。これを前提とした上で、賛否両論のお立場から先生方の自由な御意見の表明がなされることが、本日の会議をより活発かつ建設的なものとするのではないかと生意気ながら思料いたしたからでございます。
 それでは、「憲法九条解釈のポイント(政府解釈を前提として)」と題するA3横長カラー版の一枚紙をごらんいただければと存じます。
 まず、上段の青い網がけ部分に現行憲法九条の条文を掲載してございます。
 その上で、中段の黄色い網がけの中で、九条の条文の中でよく議論の俎上に上ります四つの論点について、政府解釈のポイントをまとめてございます。
 まず最初のポイントが、第一項前半の「国権の発動たる戦争」という文言でございます。「国権の発動たる」という修飾語が冠されておりますがために、国権の発動でない戦争というものがあるのかといった御指摘があり、さらには、例えば国際的枠組みの中で行われる武力行使のようなものがこれに当たるんだろうか、そうだとすると、そのような戦争や武力行使は九条一項では放棄されていないと解釈できるのではないかなどといった趣旨の御指摘があり得るからでございます。
 しかし、これについて、政府解釈及び学説における通説的見解では、次のように述べられております。
 「国権の発動たる」は、国家の行為としてという意味の戦争にかかる修飾語にすぎず、結局、「国権の発動たる戦争」とは、国家の行為としての国際法上の戦争という意味であって、単に戦争というのと変わらないものであり、国権の発動でない戦争というものがあるわけではない、このように解釈されているところでございます。
 次は、第一項後半の「国際紛争を解決する手段としては、」という文言の意味についてでございます。
 この文言の意味について、政府見解及び学説の多数説は、国際紛争を解決する手段としての戦争というのは、国家の政策の手段としての戦争というのと同じ意味であり、具体的には侵略目的の戦争を意味するとか、このような解釈は、一九二九年発効のパリ不戦条約の同様の文言の解釈以来、一貫したものであり、定着したものであると解されております。
 したがいまして、九条一項は侵略戦争だけを放棄したものであり、それ以外の戦争、例えば自衛戦争や制裁のための戦争などは九条一項限りでは放棄されていない、このように解釈されているところでございます。
 このように、九条一項自体では侵略目的の戦争や武力の行使しか放棄されていないとすると、二項冒頭の「前項の目的を達するため、」という文言が大きな意味を持ってくることになります。
 すなわち、これを第一項で規定されている侵略戦争放棄のためというふうに理解すると、第二項は侵略戦争のための戦力は保持しないということを定めているだけということになりますから、例えばそれ以外の、自衛や制裁のための武力行使を行うための実力装置、戦力なら持ってもいいということになってしまうからでございます。
 この第二項の「前項の目的を達するため、」という文言は、当初の政府案にはなく、衆議院修正で追加されたものですが、この修正を行った衆議院の小委員会の委員長でいらっしゃいました芦田均先生が、そのような解釈が可能となるように修正したのであると、昭和三十年代に至って内閣の憲法調査会で証言されました。これは芦田修正と呼ばれ、その意味するところが大きな議論になったのは、先生方、御承知のとおりでございます。
 しかし、政府見解及び学説の通説的見解におきましては、この「前項の目的」は第一項全体の趣旨を指すものであり、二項の戦力不保持は一切の戦力の不保持を規定したものと解釈されており、この芦田修正が殊さらに大きな意味を持つものとは解釈されておりません。
 次に、そのようにして保持してはならないとされている戦力とは何かが四番目のポイントでございます。
 この戦力の意味について、政府は、当初は近代戦争遂行能力などと答弁したこともございましたが、自衛隊法が制定されました昭和二十九年以降は一貫して、自衛のための必要最小限度の実力を超えるものと解釈されております。
 わかりやすくするために、少々正確さを欠いた表現になってしまいますが、あえて敷衍して申し上げれば、次のようになるかと存じます。
 国内の治安を維持するためのいわゆる警察力を超えるものであっても、外敵から自国を防衛するために必要最小限度のいわゆる自衛力は、憲法九条二項で規定されている戦力ではないというわけです。さらに単純化して比喩的に言えば、警察力以上戦力未満として自衛力は認められ、ここから、この自衛力を行使する実力部隊としての自衛隊の合憲性も導き出されてくるといった論理構成になるかと存じます。
 以上を前提として、先生方の御議論に資するよう、二つばかりの補足説明をさせていただきたいと存じます。
 まず、国会での憲法解釈の中で最も議論されてきた論点と言っても過言ではない自衛権の問題、端的に言えば、憲法九条のもとで個別的自衛権は行使できるが集団的自衛権は行使できないとする政府解釈は、どのような論理構成のもとで導き出されているのかという論点でございます。
 ここで言う個別的自衛権とは、我が国自身が攻撃された場合に反撃を行う権利であり、また集団的自衛権とは、我が国自身は攻撃を受けていないけれども、我が国と密接な関係にある外国が攻撃を受けた場合に我が国が実力をもってこれを阻止する権利と説明されております。
 このことを前提に、政府は、憲法九条一項は独立国家に固有の自衛権までも否定するものではなく、我が国も個別的、集団的であるとを問わず自衛権を有することは、主権国家として当然であると述べます。その上で、しかし、九条一項、二項の全体のもとで許される自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度のものにとどまるべきであり、その意味で、我が国自身が攻撃されていない場合の集団的自衛権の行使は、その範囲を超え、許されないと解釈されているように思います。
 もう一つは、以上のような集団的自衛権の行使を否定する解釈が余りに技巧的であるとしつつ、かといって、憲法改正自体の困難さなどにも鑑みて、現実的な政策選択として、憲法解釈の変更でもって集団的自衛権の行使を可能とすることはできないかという重要な問題提起がなされております。
 しかし、これについて、政府は一貫して、これまでの政府の憲法解釈は論理的追求の結果として示されてきたものであり、自由にこれを変更できるような性質のものではないとした上で、そのようなことは、政府の憲法解釈の権威、ひいては内閣に対する国民の信頼を著しく失墜させ、損なうおそれがあるばかりか、憲法を頂点とする法秩序の維持という観点からも問題がある、さらには、九条のような国家の根本政策に係る解釈について、しかも戦後六十年以上もの間積み重ねられてきたものについては特にそうであるなどとして、もし集団的自衛権の行使を認めようという政策判断をするならば、それは、解釈変更によってではなく、憲法改正という手段を当然にとらざるを得ないと述べられているところでございます。これはあくまでも政府の見解だというふうに存じますが、先生方の御議論に供するところでございます。
 さて、前置きが長くなってしまいましたが、以上を前提に、九条をめぐってこれまで国会でなされてきました論点を、前回同様に、明文改憲の御主張、明文改憲ではなくて立法措置による補充の御主張、そのいずれも必要ないとする御主張の、ABC、三つに大別しながら、簡潔に御報告申し上げたいと存じます。
 A3一枚紙、縦長の論点表をごらんいただければと存じます。ここでは、冒頭申し上げましたように、九条に直接関連する論点以外にも、衆議院憲法調査会報告書の整理に倣いまして、日米安保、在日米軍基地の問題や国際協力、核兵器廃絶等の問題なども取り上げております。
 以下、順次御報告申し上げます。
 まず、自衛隊の位置づけに関しましては、明文改憲をして自衛隊を憲法に位置づけるべきだという御主張がございます。これにつきましては、まず、現在の、戦力に至らない自衛力、これの実行部隊としての自衛隊のまま憲法に明記するのがよいというA1のお立場と、戦力の不保持を定める九条二項を削除することを前提に、国防軍あるいは自衛軍といった、戦力を保持する軍隊として明確に位置づけるべきであるとするA2のお立場がございます。
 これに対して、全く現状どおりでよいとするのがC1のお立場かと存じます。他方、九条の理念に合わせて、まずは自衛隊の段階的解消を図るべきだとするのがC2のお立場です。これは、将来的には自衛隊法の廃止につながるという意味では、Bの立法措置を要するとの見解に位置づけられるものとも言えるかと存じます。
 次に、最大の論点であります自衛権に関する御議論です。
 まず、冒頭申し上げました政府の九条解釈を前提とした上で、その結論は妥当であるが、憲法の文言上はかなり無理があるので、解釈上の疑義を払拭するのが望ましいという立場がA1の立場であります。そして、現状の解釈で実際上の支障はないのであるから、そのままでよいとするのがC1の立場かと存じます。
 これに対して、政府の九条解釈では行使できないとされている集団的自衛権についても行使することができるようにすべきである、そのために憲法改正をすべきであるとするお立場がA2であり、同じことを、憲法改正ではなく、まずは安全保障基本法などの法律制定による解釈変更という形で行おうとするのがBの欄の御見解かと存じます。その右の欄のC2は、現状のまま、集団的自衛権の行使はあくまでも認めるべきではないというお立場でございます。
 九条関連の論点の三つ目として、日米安保条約をどのように位置づけるべきか、あるいは、在日米軍基地をどのように考えるべきかという論点がございます。
 まず、明文改憲に属する見解として、フィリピン憲法などにあるように、外国軍隊の駐留は認めないという規定を、我が国でも憲法改正によって設けるべきであるとの御主張もございます。他方、条約の破棄あるいは改正という、いわば広い意味での立法措置を主張する見解として、まず、九条の精神に沿って日米安保条約を解消すべきであるとするB1の御主張や、日米地位協定を改定すべきであるとするB2の御主張がございます。
 これに対して、日米安保条約に基づく日米同盟が果たしてきた役割は極めて重要であり、今後ともこれを堅持すべきであるとするC1のお立場や、我が国の安全保障は、現実には日米同盟を前提に考えざるを得ないが、我が国の自立のためには国連中心主義をより重視すべきであるとするC2のお立場もあるように存じます。
 次に、九条の周辺に位置する関連論点として、国際協力に関する論点について御報告申し上げます。
 一九九〇年代のいわゆる湾岸戦争以来、PKOを初めとする国際貢献の一環として、自衛隊の海外派遣が大きな憲法上の論点となってまいりました。このような国際情勢を背景にしつつ、我が国が直接に攻撃を受けた場合における個別的自衛権の行使による場合以外には、我が国は武力の行使を行うことはできないとの、冒頭に申し上げました政府の九条解釈は、国際協力の場面でも、武力行使を伴うような国際協力活動ができないのはもちろん、他国の武力行使と一体化するような活動はできないとの、いわゆる武力行使一体化論という考え方として、より緻密化、具体化されてきたわけでございます。
 論点表A1の見解は、このような現行憲法の解釈を是とした上で、これを解釈によって導き出すのではなく、明文の規定をもって明確にするべきであるとするお立場かと存じます。B1は、同じことを、国際協力基本法などの法律ベースで明確に規定するべきであるとするお立場かと存じます。これらに対しまして、同じ欄のCに掲げた見解は、現行憲法解釈と同じなのであれば、特段の措置を講ずる必要はないとする見解でございます。
 以上の現状維持的な見解に対して、A2の見解は、軍事を含めた国際協力、すなわち、武力の行使を伴った国際協力を含めた国際貢献活動ができるように、憲法に明文の規定を置くべきであるとするお立場です。そして、B2は、同じことを、憲法改正によらずに国際協力基本法などによって、いわば解釈変更によって認めようとするお立場です。このA2やB2のお立場は、先ほどの集団的自衛権に関する明文改憲の立場、解釈変更の立場とそれぞれ軌を一にするものと言えるかと存じます。
 最後に、以上の四つの論点とは若干視点を変えた憲法改正の論点として、核兵器の廃絶などに関する論点がございます。
 すなわち、唯一の被爆国である我が国であればこそ、その国家の基本法たる憲法におきまして、核兵器の廃絶や、現在国会決議として定式化されている非核三原則などを規定するべきではないかという御議論です。
 憲法に明記すべきであるとする見解がAの欄の見解であり、これを法律ベースで法制化すべきであるとするのがBの欄の見解であります。もちろん、明文改憲も法制化も必要ない、今のままでよいとするCの欄の見解もございます。
 以上、憲法第二章第九条をめぐる主要論点について御報告させていただきました。
 今回も雑駁で拙いものであったかとは存じますが、いささかでも先生方の自由討議の御参考になれば幸いでございます。どうもありがとうございました。

○大畠会長
 以上で衆議院法制局当局からの説明聴取は終わりました。

○大畠会長
 これより各委員からの意見表明等を含む自由討議に入ります。
 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派を代表する委員が順次発言を行い、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。
 それでは、まず、各会派を代表する委員の発言に入ります。
 発言時間は七分以内とし、その経過につきましては、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしますので、よろしく御協力のほどお願い申し上げます。
 発言は自席から着席のままで結構でございます。

(中略)

○柴山委員
 会長、御指名ありがとうございます。
 九条の歴史的な意義は決して軽視することはできませんけれども、私は、先ほど来お話がありましたように、余りにも技巧的、芸術的な解釈によりまして、九条をかえって国民から遠ざける役割も一定程度果たしてしまったのではないかというように思っております。
 例えば、自衛隊が戦力に当たらないということを解釈上主張しているわけですけれども、国際社会から見て、五兆円になんなんとする防衛費をつぎ込んでいる今の自衛隊が戦力ではない、あるいは軍隊ではないということは全く通用しませんし、これはまさしく自国民を欺いているとしか言いようがないというように思っております。
 こういった自衛隊や自衛権についての無理な解釈を積み重ねていくことは、私は、解釈改憲によって本来あるべき平和主義のあり方がどんどん動いてしまうということから、かえって危険な状況であるというように感じております。
 またあわせて、この憲法の条文、それから無理な解釈に固執するが余り、完全に、防衛あるいは軍事がプロの世界に落とし込まれてしまっていて、国民が正確な情報をなかなか受け取り得ないような状況にもなってきていると思っております。それが政権交代後の、学べば学ぶほど、本来しっかりと把握をしていなければいけなかったこういった政策についての無理解、無知というものが弊害をもたらしてきたことにもつながっているのであろうというようにも思っておりますし、また、先ほど来、文民統制が重要だということが言われていますけれども、現職の防衛大臣がこの文民統制の正確な定義を誤解しているということにもつながっているのであろうというようにも思っております。
 したがって、私は、今こそ、例えば自衛隊について、軍として正確に憲法上位置づけるということも必要であると思っておりますし、自衛権についても、これを憲法上明確に位置づけることによって、まさしく、子供でもそれらの重要性それから国際社会における位置づけというものがわかるようにするべきであるというように思っております。
 集団的自衛権に関しては、これを有するが行使できないというのは、やはり私は理解しがたいものがあるのであろうと思っています。
 一部の方々がおっしゃるとおり、地球の裏側にまで同盟国の戦争に駆けつけて、一緒に戦争、戦争というか武力の行使をするということは確かに避けるべきであろうとは思っておりますけれども、これはすぐれて、自国の国益をどのように守り、そのために、他国が攻撃されたときにも、一定の範囲で、それに対して防衛なり武力の適切な行使を行うかということを解釈上明確化していくということだと思っております。
 そのためには、他国との、今不平等という御指摘もありましたけれども、同盟関係がどのようなものであるのか、あるいは使用されている攻撃の特性、ミサイル攻撃などが今はあるわけですから、それに適した防衛体制をどのようにとっていくのか、そういったことを具体的に要件立てていくことが必要であって、ただ講学上集団的自衛権に当たるからこれは一切行使できないというようなことは、これは思考停止を招くものであるというように思っております。
 最後に、集団的自衛権の行使と集団安全保障の問題、これをやはりいまだに混同している方が非常に多いというように思いますので、そこの概念整理をきちんとしていくとともに、先ほども御指摘がありました集団安全保障の問題については、PKO三原則あるいはPKFへの参加の問題も含めてしっかりと、国際的な実務に支障がないような仕組みを、これもやはり下位法規を中心とした整備を行うことによって図っていくべきであるというように考えております。
 最後の部分は、ちょっと今回の討議の重点的な分野ではありませんでしたけれども、集団的自衛権との区別ということで付言させていただきました。
 以上でございます。

第180回 国会 衆議院 本会議

第180回 国会 衆議院 本会議 第22号
平成24年5月29日(火)
午後一時開議

【原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、原子力安全調査委員会設置法案(内閣提出)及び地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件並びに原子力規制委員会設置法案(塩崎恭久君外三名提出)の趣旨説明及び質疑】

○議長(横路孝弘君)
 これより会議を開きます。
 原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、原子力安全調査委員会設置法案(内閣提出)及び地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件並びに原子力規制委員会設置法案(塩崎恭久君外三名提出)の趣旨説明

○議長(横路孝弘君) 
 この際、内閣提出、原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案、原子力安全調査委員会設置法案及び地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件並びに塩崎恭久君外三名提出、原子力規制委員会設置法案について、順次趣旨の説明を求めます。国務大臣細野豪志君。

〔国務大臣細野豪志君登壇〕

○国務大臣(細野豪志君)
 原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案、原子力安全調査委員会設置法案及び地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 昨年三月十一日の東日本大震災によって発生した東京電力福島原子力発電所の事故は、放射性物質の大量放出という事態に至り、発電所周辺の住民を初めとする多くの国民の生活に深刻な影響をもたらしました。その結果、我が国の原子力の安全に関する行政に対する内外の信頼は大きく損なわれました。
 このような事態の再発を防止し、損なわれた信頼を回復するため、原子力の安全に関する行政の体系の再構築は喫緊の課題であります。昨年六月に国際原子力機関に提出した日本政府報告書においても、今回の事故から得られる教訓を踏まえ、原子力安全対策を根本的に見直すことが不可避であるとしているところであります。
 これを受け、八月には、原子力安全規制に関する組織等の改革の基本方針を閣議決定し、原子力安全規制に関する組織と制度の改革を進めることといたしました。また、十二月には、東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会の中間報告も取りまとめられたところです。
 これらにおいて示されている事故の教訓、検証を踏まえれば、原子力安全規制組織及び原子力事業者双方において、職員に求められる専門性を確保するための体系的な取り組みを促していくことが重要であり、これを通じ、それぞれの組織文化を一新する必要があります。もとより困難な課題が山積しておりますが、今後の長い道のりの第一歩を踏み出す必要があります。
 こうした認識のもとで、損なわれた信頼を回復し、原子力の安全に関する行政の機能の強化を図るべく、原子力安全・保安院の原子力安全規制部門を経済産業省から分離するなど、規制と利用の分離を徹底し、原子力の安全の確保に関する事務を一元化するなど、関係する組織を再編するとともに、規制機関としての独立性を確保しつつ、事故発生時における迅速な対応を確保するため、環境省に原子力規制庁を設置し、あわせて原子力の安全の確保に関する規制その他の制度の見直しを行うため、これらの法律案を提出した次第であります。

 まず、原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、環境省設置法等の関係行政機関の組織に関する法律の改正についてであります。
 環境省に、原子力の規制等を行うことにより、原子力の安全の確保を図ることを任務とする外局として原子力規制庁を設置し、これまで原子力の利用の推進を担う組織においてそれぞれ行われてきた安全規制を一元的に所掌するため、関係行政機関の組織に関する法律について、任務、所掌事務の変更等を行うこととしております。
 第二に、原子力基本法の改正についてであります。
 原子力利用における安全の確保は、国際的な動向を踏まえつつ、放射線による有害な影響から人の健康及び環境を保護することを目的として行うことを原子力利用の基本方針とすることとしております。
 第三に、環境基本法等の改正についてであります。
 従来、環境基本法の適用除外とされていた放射性物質による大気の汚染等の防止のための措置について、環境基本法の適用の対象とすることとしております。
 第四に、原子力の安全を確保するための関連法律の改正についてであります。
 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律について、最新の知見を踏まえた基準に許可済みの原子力施設を適合させる制度への転換、重大事故対策の強化及び運転期間の制限等を行うとともに、電気事業法との関係を整理し、発電用原子炉施設の安全規制体系を見直します。
 また、原子力災害対策特別措置法について、原子力災害の予防対策を充実させ、原子力緊急事態が発生した場合に設置する原子力災害対策本部を強化するとともに、原子力緊急事態が解除された後においても事後対策を確実に実施できるようにすることとしております。

 次に、原子力安全調査委員会設置法案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、原子力安全調査委員会の設置、所掌事務、組織等についてであります。
 原子力利用における安全の確保を確実なものとするため、新設する原子力規制庁に原子力安全調査委員会を設置することとしております。
 委員会は、原子力の安全の確保に関する施策等の実施状況や原子力事故等の原因について調査を行い、必要があると認める場合には、環境大臣、原子力規制庁長官、関係行政機関の長に対する勧告等を行うことができることとしております。
 委員は両議院の同意を得て環境大臣が任命することとしております。
 第二に、原子力安全調査委員会が行う原子力事故等調査についてであります。
 原子力事故等が発生した場合に委員会が行う原子力事故等調査に関し、委員会が行うことができる処分や報告書の公表等について定めることとしております。
 次に、地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件の内容について、その概要を御説明申し上げます。
 原子力安全・保安院の原子力安全規制部門を経済産業省から分離することに伴い、経済産業省が引き続き産業保安部門の事務を担うため、同省に産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署を設置することとしております。
 以上が、二法案及び国会承認を求めるの件の趣旨でございます。(拍手)

○議長(横路孝弘君)
 提出者塩崎恭久君。

〔塩崎恭久君登壇〕

○塩崎恭久君
 ただいま議題となりました原子力規制委員会設置法案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び概要を説明いたします。
 昨年三月十一日に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故により、極めて多くの方々が、生活基盤を奪われ、困難な避難生活を余儀なくされております。御本人の意思とはかかわりなく、生まれ育った故郷を離れざるを得ない状況に追い込まれた被災者の皆様方、十六万人にも上り、また、環境の放射能汚染による子供たちの健康への影響を懸念している父母の皆様方、風評被害による売り上げの落ち込みなどの悪影響を受けている方々など、今なお多くの国民の皆様方が、事故の傷跡を背負い、不安にさいなまれながら、日々の生活を送られています。
 我が国の原子力規制体制について議論する本通常国会において政治が果たすべき責任は、今回の事故の深い反省に立ち、原点に立ち返って真摯な議論を行い、二度とこのような事故を起こさない、確固たる規制体制を構築することにあります。国会での議論を通じ、真に安心して暮らせる日本をもたらすことこそ、福島の被災者の方々のみならず、国民の皆様方、そして世界の人々に対して、我々国会が果たさなければならない責務だと思います。
 我が国の原子力規制体制を振り返ってみますと、自民党政権のもとで、長らく安全神話に安住し、真の安全文化が育まれない風土が定着していたことを率直に認め、反省せざるを得ません。
 現在、国会の事故調査委員会が原因究明などの調査をされているところでありますが、今回の原発事故の教訓を総括すると、第一に、原子力を推進する経済産業省に規制を担う原子力安全・保安院が属することにより、利益相反が生じ、規制機関の独立性が欠如する中で、安全が軽んじられてきたことが挙げられます。
 第二に、緊急事態の対応において、本来、規制機関に任せておくべき専門技術的な事柄にまで総理などの政治家が介入して、混乱が生じたことであります。
 昨日、国会原子力事故調査委員会において、菅直人前総理の参考人聴取が行われました。素人の総理が、知人の外部有識者を頼りに、生半可な知識で専門家のつもりになって事故収束の現場に介入し、大混乱を起こしたのは明らかであります。このような、いわゆる菅直人リスクは排除されなければなりません。
 第三に、我が国の原子力規制機関に専門的知識を有した人材と能力が欠落していたこと。
 第四に、原子力規制と放射線モニタリングの所管官庁が異なり、SPEEDIの結果を公表する責任者が明確でなく、情報が迅速に国民に提供されないなどの機能不全が生じ、国民を放射線等から守れなかったことなど、規制が一元化されていなかったこと。
 第五に、自然災害と原子力災害との複合災害ともなった今回の原子力災害において、有効な、そして総合的な対応ができる体制ができていなかったことなどが挙げられます。
 野田総理は、昨年九月の国連ハイレベル会合において、規制と利用を切り離すとともに、規制の一元化を図り、原子力発電の安全性を世界最高水準に高めると述べられました。しかしながら、政府提出法案は、野田総理の高い理想を実現するものとは、到底言えません。
 まず、規制機関の独立性に関して、国際原子力機関、IAEAの安全基準では、規制組織の独立性、すなわち、十分な権限、人事及び予算を持った上で、政治状況や経済条件に関する圧力等に左右されず、他省庁から独立した判断と決定が確保され、さらには、独自の他省庁への勧告権を付与すべき旨が定められています。
 しかし、政府提出法案では、規制機関である原子力規制庁は環境省の外局とされ、長官を初めとする人事及び予算は同省の支配下に置かれています。
 また、既に公表された人事政策では、推進官庁へのノーリターンはごく限定的で、このままでは単なる原子力村の環境省への引っ越しとなる可能性大としか言いようがありません。
 また、保障措置や放射線モニタリング、放射性同位元素の規制やテロ対策などは文部科学省の所管のまま残され、何ら一元化されておりません。
 野田総理大臣が国際的な場で発言された、我が国の国際約束ともいうべき内容が全く徹底されていない政府提出法案では、総理みずからがおっしゃった、安全性を世界最高水準に高めることなどは望むべくもないことは明らかであります。
 原発事故を起こした我が国政府が、規制体制の見直し法案を昨年の臨時国会に提出できず、しかも、今回の政府提出法案は、霞が関の組織防衛のための本格的改革なき第二保安院づくりと見られ、これでは、国際社会から、日本は事故から何も学んでいないと批判をされてもいたし方なく、また、福島の被災者の思いを裏切ることになってしまうと言わざるを得ません。
 今回の原発事故の反省に立てば、新しい原子力規制組織は、国際的な規範であるIAEAの安全基準にのっとり、平時、緊急時のいかんを問わず、原子力推進官庁からの独立はもとより、他の省庁や政治から独立していること、権限、人事及び予算の独立性が与えられた、専門技術的な規制が行える規制機関とすべきこと、職員全員にノーリターンルールを適用し、独立性を保ちながら、専任の職員が教育訓練により専門性を磨き、職能に応じたキャリアパスがある人事制度を構築し、世界の規制機関の専門家と共通言語を持ち、伍して議論ができる職員を養成すること、原子力安全委員会、原子力安全・保安院、原子力安全基盤機構という三層構造を一体化により解消し、専門性の高い実効的な規制機関とすることなどを実現した組織とすることが必要であります。
 以上のような独立性を備えた組織体は、我が国の法体制のもとでは、規制組織全体をいわゆる三条委員会とする以外に方法はありません。
 今回の原発事故のような過酷事故を防止することは、我々政治の重要な責任であります。

 次に、この法律案の具体的内容について、概要を御説明申し上げます。
 第一に、原子力規制委員会の組織について定めております。
 規制委員会は、国際基準にかなった、独立性が高い三条委員会とし、規制機関として必要な権限は全て規制委員会に付与いたします。また、その事務局を原子力規制庁と呼ぶことといたします。
 原子力規制委員会は、安全確保に関する専門的知識と経験を有し、人格が高潔である委員長及び委員四人をもって組織し、委員長及び委員は、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命することとし、委員長は認証官といたします。
 さらに、委員長及び委員の任期中の身分保障を定め、政治などの介入を排除いたします。
 また、原子力規制委員会の職員には広く有為な人材を求めるとともに、高度な技術的知見を有する現在の独立行政法人原子力安全基盤機構を規制委員会のもとの規制庁に統合、一体化し、規制機関の専門性を高めることにしております。
 さらに、事務局の全ての職員にノーリターンルールを適用し、経済産業省などの原子力推進官庁はもちろんのこと、規制委員会の関与が不可欠な安全基準のもとで除染や放射性瓦れき処理事業を担う環境省など、原子力安全に関する利益相反が起こり得る省庁との人事交流も戒め、独立性を確保するとともに、専任の職員の教育、育成による専門性の向上を図ることとしています。
 また、出身官庁や関係業界との癒着防止の徹底のため、退職後に出身官庁の関係機関に天下ることの禁止など、再就職についても規制をいたします。

 第二に、同委員会は、平時のみならず、緊急時においても、他の関係政府機関と緊密な連携協力のもと、独立性を確保いたします。
 原発敷地内、すなわちオンサイトにおける原子炉事故の収束のための専門技術的判断については規制委員会が責任を担い、敷地外、すなわちオフサイトの住民避難などの対応については政府が責任を持つという役割分担がなされます。例えば、使用済み燃料プールに自衛隊が放水する必要がある場合は、原子力災害対策本部長、すなわち総理が防衛大臣に対し自衛隊の派遣を要請することになります。
 また、緊急時の際には、迅速かつ適切な対処を可能とするよう、委員長単独で意思決定ができるなどの内部規範を定めることとしております。

 第三に、原子力規制委員会の任務、所掌事務について定めています。
 原子力規制委員会は、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資するため、原子力利用における安全の確保を図ることを任務としております。
 この任務を達成するため、これまで経済産業省や文科省に分散していた、原子力安全、保障措置及び核セキュリティーのいわゆるスリーSに関する事務を原子力規制委員会に一元化することとしております。
 また、原子力規制委員会は、その所掌事務に関し、関係行政機関の長に対する独自の勧告権を有することとしております。

 第四に、原子力規制委員会の職員として優秀かつ意欲的な人材を確保するため、高い専門的能力を有する人材にふさわしい処遇の充実、独自財源の確保など、所要の措置を講ずることを「政府の措置等」として定めております。

 第五に、原子炉等規制法の目的規定を改正し、「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資すること」を加えるとともに、同法の許認可権などを原子力規制委員会に一元化することにしております。

 第六に、原子力災害が生じた場合の関係機関の連携協力体制の整備を図るとともに、原子力災害だけ特別とされている現行の制度について、原子力災害であるか自然災害であるかを問わず、全てに共通した災害対策の新しい枠組みを構築するため、大規模災害に対処する政府組織について抜本的な見直しを行うことを「政府の措置等」として政府に求めております。

 第七に、新設する原子力規制委員会について、この法律の施行後三年以内に、国会事故調査委員会の報告書の内容や最新の国際的基準等を踏まえ、内閣府に三条委員会を設置することを含め検討が加えられ、必要な措置が講ぜられるものとしております。

 なお、この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその概要であります。
 何とぞ、十分に御審議の上、この法律案にぜひ御賛同いただけますようお願い申し上げたいと思います。(拍手)

 原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、原子力安全調査委員会設置法案(内閣提出)及び地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件並びに原子力規制委員会設置法案(塩崎恭久君外三名提出)の趣旨説明に対する質疑

○議長(横路孝弘君)
 ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。山花郁夫君。

〔山花郁夫君登壇〕

○山花郁夫君
 民主党の山花郁夫でございます。
 ただいま議題となりました原子力安全改革法案並びに原子力安全調査委員会設置法案などにつきまして、民主党・無所属クラブを代表して質問をさせていただきます。(拍手)
 昨年三月十一日に発生した東日本大震災でお亡くなりになられた方々に心より哀悼の意を表しますとともに、三千名を超える行方不明の方々が一刻も早く発見されること、被災により、負傷された方々、心の傷を負われた方々の回復を心よりお祈り申し上げます。
 また、家を失うなどして避難しておられる方々がついの住みかとできる場所で安心して過ごせるよう、与党として全面的に支援してまいります。
 さらに、我が国の内外を問わず、発災直後から、被災地、被災者に対して心温まる人的、物的支援をいただきましたことに感謝を申し上げますとともに、このことを決して忘れることなく後世に語り継ぎたいと思っております。
 被災地に対して政府・与党も懸命に財政的、人的また物的支援を行ってきておりますが、現地はいまだ厳しい状況にあります。政府は、このような認識のもと、被災地域における社会経済の再生及び生活の再建と活力ある日本の再生のため、国の総力を挙げ、東日本大震災からの復旧、そして、将来を見据えた復興へと取り組みを進めていかなければなりません。
 東日本大震災、そして津波に端を発した東京電力福島第一原子力発電所事故では、原子炉が損傷、メルトダウンを起こし、ベント、冷却水漏れ、水素爆発などにより、大量の放射性物質が大気中や水中に放出されてしまいました。そして、多くの住民が避難を余儀なくされ、農林水産業に甚大な被害が生じました。放出された放射性物質による健康への影響などの不安は、今後何十年も続きます。
 このような事態が生じた原因をしっかりと把握、分析をし、そして、その反省の上に立って、二度とこうした事故を起こさないよう、制度を改革しなければなりません。
 原因の詳細は国会や政府の事故調の報告を待たなければなりませんが、本質的な原因として、私は、原子力の関係者の閉じた世界においては、国民の安全よりも原子炉を中心に物事を考える面があったと思っております。これを根本から改め、国民を守ることを何より優先する考え方に立ち、組織の改革、規制の強化等の制度全体を見直す必要があると考えますが、総理の見解を伺います。
 今回のような事故が、規制庁の設置によって回避できるかどうかについてお尋ねいたします。
 東海第二原発については、茨城県が津波の再評価を行い、護岸かさ上げが行われ、大事故を免れることができました。一方、産業技術総合研究所などからさまざまな指摘があり、東京電力みずからも十五メートルを超える津波を想定していたにもかかわらず、津波被害を過小評価して、対策が後手に回り、重大な事故が起こされました。
 規制庁ができた場合、このようなことを防ぐことができるのか、お伺いいたします。
 組織は外からのチェックがなければ内部の論理でよどむというものは、経験則上明らかであります。今回の事故は、安全規制がいわゆる原子力村の論理にゆがめられていたために引き起こされたものと言うことができましょう。利用と規制を分離し、規制機関の独立性を担保することは重要ではありますが、原子力規制機関をあらゆる機関から独立させ自由にしてしまうと、これまで以上に村の論理がまかり通るおそれもあります。
 そうならないためにも、まず一つとして、外部から監視する仕組みを設けること、二つ目に、規制庁を適切な府省のもとに置くこと、三つ目として、透明性を高めること、この三点が重要であると考えます。
 このような観点から、原子力安全調査委員会についてお伺いします。
 法案では、原子力規制庁の規制の独立性を担保する監視機関として原子力安全調査委員会を置くこととしております。監視機関の中立性、独立性、公平性が法案でどこまで担保されているのか、政府の見解を伺います。
 また、原子力規制庁を、独立性や省庁横断的対応という観点からいたしますと、内閣府に置くというのも一つの考え方ではあります。しかし、規制と推進を厳格に分離するという観点からは、環境省に置くべきだとも考えられます。
 政府案では環境省に置くこととしておりますけれども、その意図についてお伺いいたします。
 次に、原子力規制庁が行う各種評価の客観性、信頼性の担保についてお伺いします。
 これまでの原子力行政は、ともすると、専門家の判断が優先され、国民への情報公開が十分ではありませんでした。そのために、事故やトラブル隠し、検査の丸投げ、記録の改ざんなどが明らかになるごとに、信頼性が揺らぐこととなりました。やはり全ての情報を原則として公開し、厳しく国民からの評価がなされる状況をつくるべきであると考えます。
 このような観点から、評価報告書についても、民主党の事前審査で、概要ではなく評価報告書そのものを公表するという修正を行いました。
 透明性確保のための情報公開について、政府の見解をお伺いいたします。
 原子炉水素爆発という危機的な状況において東京電力が福島第一原発からの全面撤退を要請したかどうかということについて、国会事故調でも調査が進められているところでございます。このような緊急事態において、撤退の可否というのは極めて重大な政治判断であると思いますし、そうした決断が必要となる局面というのは想定しておく必要があるでしょう。
 原子力災害対策特別措置法第二十条の、原子力災害対策本部長である内閣総理大臣の指示権、これは、阪神・淡路大震災を教訓とし、災害対策基本法の改正で創設をされた総理指示権の原子力災害対策版であります。危機対策の最後の手段であり、伝家の宝刀として、行使は必要最小限とすべきと思われますが、一刻を争う事態が生じ得る災害対策の現場においても、独立性を強調する余り、全く総理が指示できないとすることは、国家の危機管理上問題となると考えますが、政府の御認識をお伺いします。
 この点について、衆法の提出者にも見解を伺います。
 緊急時において、政府のあらゆる組織を動員して対応すべきであるにもかかわらず、東京電力福島原発事故対応においては、現地対策本部に各省から参集すべき要員が集まらなかったり、放射能の拡散を把握しながら円滑に避難を誘導することができなかったりしたことから、広域にわたる避難やモニタリング等が必ずしも円滑に行われなかったことも、反省すべき点であります。民間事故調の報告でも、使用済み燃料プールへの注水作業を例に、「今回、最後の砦は、自衛隊だった」としています。
 こうした緊急時の対応は急にできるものではなく、平時から、権限や役割を明確にし、自治体の首長や自衛隊、警察等と調整し、訓練を重ねておくことが不可欠であります。
 自公案では、担当大臣なしに、本来は原子炉の安全確保を任務とする原子力規制委員会がこれを担うとしており、オフサイト対策として現実に機能するのかどうか、疑問がございます。この点について、政府の見解をお伺いいたします。
 また、あわせて、衆法提出者はいかがお考えか、見解を伺います。
 このような事故が二度と起こらないようにするためには、組織の改革だけではなく、規制、制度の見直しが不可欠であります。民間事故調の報告などで、重大事故を想定した対策が行われていなかったこと、最新の科学的知見を反映して安全性を向上させる仕組みが欠如していたことなどが指摘をされております。
 自公案では、組織の見直しだけで規制強化がなされていないように見受けられますが、政府案における原子炉の規制強化は、事故の再発を防ぐために十分なものかについて伺います。
 また、発電用原子炉の運転期間について、法案では四十年とし、基準に適合している場合は二十年まで延長できることとしています。原発の運転は、四十年が原則なのか、六十年が原則なのか、明確に御答弁願います。
 さて、予算の問題でございます。
 規制庁の予算は電源開発特別会計からとなっており、推進と規制の予算が電源開発特別会計に同居することとなります。このような状態で規制庁の予算が十分確保できるのか、疑念も生ずるところであります。
 まず規制庁の予算を十分に確保した上で、残りを利用側に充てるなどの工夫が必要であると考えますが、いかがでしょうか。
 また、利用側の電源立地対策枠と電源利用対策枠の比率の固定化が既得権益化しているという指摘もあり、見直しが必須であると考えますが、見直しの検討についての御見解もあわせてお伺いいたします。
 悲惨な事故から一年が経過をし、法案が国会に提出されているにもかかわらず、ようやく審議が行われるという状況では、国会の信頼問題にもなりかねません。法案に十分でない点があれば、国会でしっかりと議論をすべきであります。十分な審議を行った上で規制と利用の分離による原子力行政の発足を速やかに行うべきであり、これこそが福島原発事故の教訓を生かす方法であることを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

○内閣総理大臣(野田佳彦君)
 民主党山花議員の御質問にお答えをいたします。
 原子力安全規制組織、制度の改革についてのお尋ねがございました。
 今般の東京電力福島第一原発事故により、大量の放射性物質が放出され、多くの人々の暮らしに深刻な影響を及ぼしました。利用推進と規制とが同じ組織のもとにあるこれまでの原子力安全行政の信頼は大きく損なわれました。二度とこのような事故を起こさないためには、放射線から人と環境を守るとの理念のもとで、組織と制度の抜本的な改革を行うことが必要です。
 このため、政府提出法案では、放射線による有害な影響から人の健康及び環境を保護することを、原子力安全規制の目的として、原子力基本法に明記することとしました。そして、この理念のもと、規制と利用を分離し、独立性を高める組織の再編、緊急時に政府の総力を結集して俊敏に対応できる体制の構築、重大事故をも想定した安全規制の抜本強化を、一体の改革として行うこととしています。
 国民の不安に応えるためにも、一日も早く、新たな組織のもとで新たな規制、制度と防災体制を整えることが急務であると考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

〔国務大臣細野豪志君登壇〕

○国務大臣(細野豪志君)
 原子力規制庁ができた場合、津波対策を初め、今回のような事故の防止が可能かについて御質問をいただきました。
 御指摘の津波対策も含め、既に運転している原子力施設も含めた安全対策について、新たな技術的知見が得られた場合には、これを取り入れて安全対策に万全を期す必要があることが、今回の原子力事故から得られた教訓であります。
 今回の法改正案では、安全性に係る評価や対策を安全基準として新たに設けた際に、これを、既に許可を受けた原子力施設にも適用して、基準を満たす義務を課す規制強化を盛り込んでおります。
 具体的な基準の内容については、今後、新たな規制機関において、地震、津波対策を初めとして所要の取り組みが規制により求められ、今回のような事故が二度と起きないよう、厳格な基準を設けてまいります。
 原子力安全調査委員会について御質問をいただきました。
 原子力安全調査委員会は、原子力規制庁が客観的、科学的な規制を行うことを担保するため、原子力規制庁の規制の内容をチェックする、重要な役割を担うものです。
 委員会は、科学的かつ公正な判断を行うことができると認められる者のうちから、国会同意を得て任命される委員により構成されます。環境大臣が委員を罷免する場合も国会同意を得なければならないこととしており、人事上の独立性も確保されています。
 また、原子力事業者など原子力安全行政に利害関係を持つと考えられる者については、欠格条項を設け、委員になることができないこととし、中立性、公平性を担保しているところであります。
 環境省に原子力規制庁を設置する理由について御質問をいただきました。
 今回の事故の教訓を踏まえると、独立性の観点からは、規制と利用の分離が最重要です。また、原子力安全規制の目的は、人と環境を守ることです。これは、IAEAの安全基準の冒頭にもうたわれているところであります。
 環境省は、環境の保全を任務とし、今般の原子力事故によって生じた除染などの問題に、先頭に立って取り組んでいます。今般の改革により原子力規制庁を環境省のもとに置くことは、二度とこうした問題を起こさないとの決意を持って原子力安全行政に取り組む上で、大きな意義があると考えます。
 透明性の確保のための情報公開について御質問をいただきました。
 御指摘のとおり、原子力の安全に関する情報は広く公開するとともに、原子力規制庁の意思決定プロセスやその根拠等について、国民から見て、オープンで、透明性のあるものにすべきと認識しています。
 言及をいただいた安全評価の報告内容を公表することについても、今般、民主党内における議論を経て、原子炉等規制法を改正し、原子力事業者がみずから原子力発電所の安全性の向上のための評価結果を公表することとしています。
 こうした情報が多数の目に触れることを通じ、事業者みずからが安全性を向上させる取り組みを進め、全体として原子力安全の水準が高まることを期待しています。
 その他、原子力施設に係る安全審査等、原子力規制庁における意思決定は、主として有権者による議論や意見を踏まえるものとなりますが、こうした意思決定の過程を公開し、国民への透明性を徹底していく必要があると考えております。
 緊急時における総理の指示権について御質問をいただきました。
 原発事故の収束は、まず何よりも、事故の原因者であり、事故が発生した施設について熟知している事業者が責任を持って対応することが必要であり、IAEAの基本安全原則においても、この考え方が基本とされています。
 しかしながら、事業者が必要な対応を適切に行うことができない場合には、政府としても、事業者が的確な判断を行い、必要な対応を円滑に行うよう監視、指示することも必要です。これは、基本的には、原子力安全の専門家が科学的な知見に基づいて客観的に行うべきものです。
 こうした前提に立った上で、国民の安全を守るという観点から、例えば、専門家のその判断が適切なタイミングで行われないような場合に、これを補完するものとして、政府として責任のある対応をとれる仕組みになっているということが必要であります。
 したがって、国としての、危機管理上の最低限の、かつ最後の手段として、本部長たる総理の指示権を残すことが不可欠と考えます。
 もちろん、総理の指示権は、危機対策の最後の手段であり、抑制的になされるべきものであります。原子力災害対策特別措置法第二十条第三項において、総理の指示は、特に必要があると認めるときに、その必要な限度において行うことができるとされており、その趣旨が貫徹されているところであります。
 緊急時のオフサイト対策の体制について御質問をいただきました。
 今般の原子力事故対応の教訓を踏まえると、大規模な原子力事故については、事業者と規制機関のみの対処では限界があることも明らかです。オフサイトの住民の安全確保への対応に、さまざまな省庁、関係機関を含め、政府の総力を結集して俊敏に対応することが不可欠であると言えます。
 これらの諸機関の活動を調整し、対策を推進するためには、内閣一体での行政執行の責任のもとで、迅速な意思決定が行われ、危機管理対応が行われる体制とすることが極めて重要であると考えます。
 このような認識から、合議制の独立行政委員会ではなく、環境省の外局として原子力規制庁を設置する法案を閣議決定し、国会に提出しております。
 原子力規制庁においては、住民避難等の安全確保対策の実務責任者となる原子力地域安全総括官を置くなど、オフサイト対応の体制を充実整備し、平時から実効性の高い訓練等を行って、万全を期したいと考えております。
 原子炉の規制強化の具体的措置について御質問をいただきました。
 政府から提案した法案においては、まず第一に、先般のような重大事故を二度と起こさぬよう、実際に事故で起きた事象にとどまらず、重大事故対策を抜本的に強化することとしています。
 具体的には、事故の発生防止はもちろんのこと、万一事故、故障が起きても放射性物質が異常に放出するような重大事故に発展しないように、多様かつ重層的な対策を安全規制で求めることとしています。
 次に、御指摘のように、最新の科学的知見を規制に反映し、既存の施設に対しても適合を義務づける、いわゆるバックフィットの措置を講じます。
 さらに、運転開始から長期間が経過した原子炉については、原則として運転できない仕組みを設けました。
 これらのほか、事業者みずからが安全性向上に向けて積極的に取り組むことの義務づけ、災害発生時における国民の生命、健康を守るための緊急措置などを盛り込んでいます。
 これらの措置により、事故の再発を防止するとともに、先般の事故への対応にとどまらず、原子炉の安全性を抜本的に強化することになると考えています。
 原発の運転期間の制限についても御質問をいただきました。
 運転期間は、あくまで原則四十年にすることを考えております。しかし、原子炉ごとに事情が異なる上、技術進歩の可能性もあり得ることから、一切の例外を排除するということは適切ではなく、一定の要件を満たし、認可を受けた場合には、一回に限り運転期間の延長が可能な制度としております。
 最後に、原子力規制庁の予算について御質問をいただきました。
 政府提出の法案では、推進側省庁からの独立性を確保しつつ、必要な予算を確保するため、特別会計に関する法律を改正し、エネルギー対策特別会計に、新たな経理区分として、原子力安全規制対策を設けることとしております。
 また、今年度予算においても、これまでの原子力安全規制関連の予算から大幅に増額し、エネルギー対策特別会計の約四百億円を初め、総額約五百億円を確保したところであります。
 東日本大震災の発生を受け、現在、関係省庁が一体となって、ゼロベースでエネルギー政策全体の見直し作業を進めているところであります。この結論も踏まえ、原子力を含むエネルギー関係予算の見直しをさらに進めます。その中で、原子力安全規制等について、必要となる予算をしっかりと確保してまいります。(拍手)

〔塩崎恭久君登壇〕

○塩崎恭久君
 民主党の山花議員から、二つ、御質問をいただきました。
 まず、原子力災害対策本部長である内閣総理大臣の指示権につきまして御質問いただいております。
 原子炉規制等に関する判断は高度の専門技術性が求められるものであり、このことは、平時であろうと、緊急時であろうとも、変わるものではありません。したがって、緊急時だからといって、原子炉規制等に関し、専門家ではない原子力災害対策本部長から指示を受けることは適当ではないと思います。これは、緊急時だからといって、病気の診断を医師にかわって内閣総理大臣にしてほしいと思う人がいないのと同じであります。
 そこで、自公案では、原子力規制委員会は、原子力災害が発生した場合でも、平時と同様に独立した役割と責任を持ってオンサイトの専門技術的な事項に係る事務を行うべきであるとの考え方から、原子力災害対策本部長が規制権者に対し指示することができるとする規定を削除したところでございます。
 ただし、その他の点について、原子力災害対策本部が中心となって原子力災害への対処に当たるとする枠組み自体を変更するわけではありません。したがって、例えば、自衛隊による原子炉建屋への放水については、原子力災害対策本部長である総理の派遣要請に基づいて実施をすることになり、国家の危機管理上、問題になることはないと思います。
 なお、原子力災害対策本部と原子力規制委員会との間はもちろんのこと、他の政府各部門との緊密な連携協力は不可欠であります。具体的には、原災本部には副本部長として原子力規制委員会委員長が加わるとともに、原子力規制委員会の職員の原災本部や現地対策本部などへの派遣、情報提供、助言等も想定をしております。
 第二番目の質問でありますが、緊急事態に対する平時からの備えについて御質問をいただきました。
 緊急時において災害応急対策が円滑かつ有効に行われるためには、日ごろからの防災対策に関する理解と習熟、さまざまな事態を想定して明確に目的を定めた上での訓練の実施、原子力事業者、国、地方自治体、関係機関の責任体制や連絡調整の事前準備などが非常に重要でありまして、このことは、今般の原子力事故の教訓でもあります。
 この点、自公案では、政府案と同様に、原子力災害対策特別措置法を改正し、原子力災害対策の円滑な実施を確保するための指針の策定、原子力事業者に対する防災訓練の報告の義務づけ等による原子力災害予防対策の充実等に関する規定を新たに設け、これらの事務を原子力規制委員会に所掌させるとしているところでございます。
 御指摘のように、この事務は、自治体との調整から自衛隊や警察との連携協力に至るまで多岐の分野に及ぶことから、一つの行政機関に委ねることが適当かどうかという議論はあったとしても、担当大臣がいるかどうかでその事務の実施に差異が生ずるわけではないというふうに考えております。
 なお、この点について、自公案では、附則第六条第六項に、「政府は、東日本大震災における原子力発電所の事故を踏まえ、速やかに、原子力災害が発生した場合における国、地方公共団体、原子力事業者等の間及び関係行政機関間のより緊密な連携協力体制を整備するため必要な措置を講ずるもの」と規定しており、緊急時の対策を実効的に機能させるための平時からの備えに関する措置についても言及しておるところでございます。
 以上でございます。(拍手)

○議長(横路孝弘君)
 井上信治君。

〔井上信治君登壇〕

○井上信治君
 自由民主党の井上信治です。
 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、ただいま議題となりました、政府提出、原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案等及び自由民主党、公明党提出、原子力規制委員会設置法案について質問をいたします。(拍手)
 冒頭、政府・与党に対して厳重に抗議をいたします。
 本日の本会議は、我々自民党が与党の国会運営に抗議し退席する中、議運委員長の職権の形で強行にセットされたものです。なぜ、このような強引な手法で本会議を開会しなければならないのか、私には全く理解ができません。
 我々自民党は、前田国土交通大臣、田中防衛大臣は大臣の任に値しないとして、参議院において、全ての野党の賛同を得て問責決議を可決しております。しかし、本日に至るまでの四十日間、野田総理はこの国会の意思を無視し続け、問責大臣はその地位に居座りを決め込んでおります。これは、国会軽視で、決して許すことのできない暴挙であります。
 本来であれば、問責大臣が辞任しない限り、野田政権そのものを認めることができないわけでありますが、野党といえども国民の信頼に応える責務があるとの思いから、我々は、社会保障と税の一体改革に関する特別委員会の審議にも応じております。
 また、本日議題となっております原子力規制組織に関する議論は、国民の間でも重大な関心を集めているテーマでもあります。民主党の、ルール無用、野党の足元を見るようなひきょう千万な国会運営は、決して容認できません。
 しかし、この議論を欠席しては、我々も民主党と同じ無責任政党になってしまう、そんな思いから、我々は、堂々と出席をし、みずからの対案を示し、議論を進めるという判断に至りました。
 原発の再稼働がおくれているのは、原子力規制庁の設置がおくれているからだといって、野党のせいにしたがっている方もいるようです。とんでもない間違いです。
 本来、昨年の臨時国会で提出してくるべきであった法案を、ことしの通常国会までおくらせたのは、政府・与党の怠慢にほかなりません。そうした事態を受けて、我々自民党と公明党は、責任野党として、原子力規制のあるべき姿を示す対案を共同提出したのです。
 原発の再稼働についても、国民の信頼を得るために政府ができることは多くあったはずです。しかし、それを全く実行に移してきませんでした。原発の立地・周辺自治体の新たな関与のあり方についても、政府は今に至るまで何ら明確な方針を示さず、当該自治体は、困惑の中、不安と不満を募らせております。
 信頼を基礎とした政治を進めるためにも、改めて、国民の信を問う解散・総選挙を強く要求いたします。
 さて、本当に信頼することのできる原子力規制組織を、今こそ構築しなければなりません。国民の皆様の不安に対し、今、我々政治がすべきことは、国際基準にのっとった形で、国民の信頼に足る規制組織をつくり上げることです。この問題意識に立脚し、両法案に対し質問をさせていただきます。
 国際原子力機関、IAEAの安全基準では、規制組織の独立性、すなわち、十分な権限、人事及び予算を持った上で、政治状況や経済条件に関する圧力等に左右されず、他省庁から独立した判断と決定が確保され、さらには、独自の他省庁への勧告権を付与すべき旨が定められております。しかし、我が国では、この世界標準が守られておりませんでした。
 これまでの大きな間違いは、原子力を推進する経済産業省の中に、規制役の原子力安全・保安院を置いていたことでした。
 政府案では、原子力規制組織を経済産業省から切り離し、環境省に移すことにしており、一見、推進と規制を分離したように見えます。しかし、真に独立した安全規制が行えるかについては、大いに疑問があります。
 政府案では、原子力規制庁長官についても、官邸や環境大臣の人事権の下に置かれ、環境大臣の部下として、政権の意向やエネルギー政策に影響を受けながら規制を行わざるを得ない体制となっております。
 総理にお伺いします。
 なぜ、事故の反省に立って、本当の意味で独立した機関を設けないのでしょうか。民主党は、二〇〇九年のマニフェスト、インデックスでは、独立性の高い三条委員会としての原子力安全規制委員会を創設する旨を約束しておりました。かつては法案まで提出をされております。なぜ、その方針を翻し、またしてもマニフェスト違反を繰り返すのでしょうか。
 一方、自公案では、独立性の高い三条委員会として原子力規制委員会を置くこととされており、独立した判断と決定が担保されております。さらに、事務組織の職員に対するノーリターンルールの徹底などについても言及されております。これらの考え方について御説明ください。
 三条委員会に対する批判として、緊急時にはやはり政治家が対応すべきだという議論があります。例えば、自衛隊が出動するような事態になったとき、出動指示の判断まで専門家である三条委員会に委ねるわけにはいかない、それはやはり政治家が判断しなければならないといった議論です。しかし、この議論にはそもそも誤解があるように思います。
 原子炉に関する問題が発生したときの対処は、専門家が判断すべき事柄であり、素人の政治家が干渉すべきことではありません。日本では、政治家と専門家の役割分担が不明確で、政治家が専門家の領域に口を出すことが可能となっておりました。ここに今回の事故の教訓の本質があり、国際社会が最も問題視したのも、まさにこの点です。
 IAEAの安全基準や諸外国においては、原子力災害時に、基本的には、原発敷地内、すなわちオンサイトにおける原子炉事故の収束については規制組織が事業者とともに役割を担い、敷地外、すなわちオフサイトの住民の退避などの対応については政府が責任を持つという役割分担が明確になされております。
 昨年の六月に取りまとめられたIAEA国際専門家調査団の報告書では、政府と規制組織の役割と責任は、緊急時においても混同すべきではない旨を厳しく指摘しております。
 なぜ、諸外国では当たり前になされている役割分担が、日本ではできないのでしょうか。なぜ、日本では、素人の総理大臣が規制組織に指示を出すような制度をまたつくらなければならないのでしょうか。細野大臣のお考えをお伺いします。
 他方、自公案については、三条委員会だからといって、緊急時にありとあらゆることを三条委員会が管轄するわけではありません。緊急時においても、三条委員会の役割は、あくまでオンサイトにおける専門技術的な事項のみです。自衛隊の出動指示といったことは、原子力災害対策本部のもとで政治家が判断する仕組みになっているのではないでしょうか。
 例えば、使用済み燃料プールに自衛隊が放水する必要が生じた場合に、三条委員会が指示をするようなことにはなっていないと思いますが、この点、法案提出者から改めて御説明をください。
 また、三条委員会に対する誤解として、細野大臣がしばしば口にする、三条委員会は合議体であるから緊急時の迅速な意思決定には向かないというものもあります。この誤解についても、法案提出者から御説明いただければと思います。
 もう一つの問題は、規制が一元化されていなかったことです。
 今回の原発事故では、SPEEDIの試算結果が迅速に公表されなかったことが問題となりました。これは、放射線モニタリングは文部科学省、原子力安全規制は保安院、原子力安全委員会などと、所管がばらばらに分断され、役割分担が不明確で、一貫した責任体制がなかったことに問題がありました。
 平和利用の観点から把握しておかなければならないプルトニウムについても、我が国が保有する約半分が文部科学省の傘下の機関にあると言われております。同省が規制法のもとで行っている保障措置は、原子力規制委員会に移管し、一元的に規制されることが望ましいことは言うまでもありません。
 総理御自身も、昨年九月の国連ハイレベル会合において、規制の一元化を図ると明言されたはずです。
 しかし、政府案では、文部科学省の放射性同位元素の規制とテロ対策、保障措置、環境モニタリングのうち、モニタリングの司令塔機能のみを原子力規制庁に移管することとされ、全く一元化は実現されておりません。文部科学省の強い抵抗があったとも聞いておりますが、なぜ、総理御自身のいわば国際約束とも言える一元化を実行しないのでしょうか。
 一方、自公案では、放射線モニタリングや保障措置を含め、徹底した一元化がなされているように思われますが、その考え方を御説明ください。
 最後に、人材の問題です。
 これまでの原子力安全・保安院や原子力安全委員会では、本当の意味で専門的知見を持った人材が不足しておりました。
 その大きな要因は、やはり、規制組織の位置づけだったと思います。独立性もなく、経済産業省の一部局として人事ローテーションがなされるような組織では、本当に能力と志を持った人材が集まり、育つわけがありません。
 政府案では、こうした問題意識が全く欠落しており、いわば従来の霞が関の論理で、故意に放置されていると言わざるを得ません。ノーリターンルールも、その霞が関の抵抗に屈し、全くの骨抜きとなっております。
 なぜ、わざわざ環境省の中に第二保安院をつくるようなことをするのでしょうか。そんな組織に優秀な人材を集めることは難しいと考えますが、総理の御見解を伺います。
 一方、自公案では、人事交流や退職後の天下り禁止及び今後の原子力規制の根幹を担う人材の育成、養成、訓練などについて、どのような措置、準備をしているのでしょうか。
 法案の附則において、「専門的な知識及び経験を要する職務と責任に応じ、資格等の取得の状況も考慮した給与の体系の整備その他の処遇の充実を図る」とありますが、これらの規定に関する考え方についても御説明ください。
 以上、国民が見守る中、十分な審議が尽くされ、国民の安全と将来を担うにふさわしい原子力規制組織が誕生することを切に願い、質問を終わらせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

○内閣総理大臣(野田佳彦君)
 自民党井上信治議員の御質問にお答えをいたします。
 まず、原子力安全規制組織の独立性についてのお尋ねがございました。
 今回の事故の教訓を踏まえて、大規模な原子力事故に際して、緊急対応を責任を持って行うためには、内閣から独立した合議制の委員会形式ではなく、内閣の責任のもとで、迅速な意思決定が行われる組織形態が適切であります。
 このような認識に立って、政府提出法案では、環境省の外局として原子力規制庁を設置することとしています。
 民主党政策集インデックス二〇〇九には、三条委員会を設置するとの記述がありますが、今般の政府提出法案は、党の政策を現実の大災害の経験と教訓から発展させ、危機管理対応を強化したものであります。
 IAEAの国際基準は、安全関連の意思決定において規制機関が実効的に独立していること、また、不当な影響を及ぼす可能性のある組織と機能面で分離されていることを求めています。
 政府提出法案では、規制と利用の分離の観点から、原子力安全・保安院の原子力安全規制部門を経済産業省から分離するとともに、政治的影響からの独立を担保するため、原子炉等の規制に係る権限を、法律上、原子力規制庁長官に委任し、独立して判断を行える仕組みとしています。
 さらに、国会同意人事の委員によって構成される原子力安全調査委員会が原子力規制庁の規制の内容をチェックすることにより、その独立性を担保することとしています。
 これらの措置により、IAEAの国際基準が求める独立性を十分確保していると考えますが、独立性の確保のあり方については、今後、国会での御審議の中でしっかりと議論していきたいと考えております。
 次に、規制の一元化についてのお尋ねがございました。
 今回の法案では、試験研究用の原子炉も含め、原子力の安全規制については全て一元化することとしています。加えて、放射線審議会や核セキュリティー対策など、原子力規制の一層の向上に寄与することが期待できるものについても、原子力規制庁に一元化します。
 また、放射線モニタリングについては、原子力規制庁が司令塔機能を担い、関係省庁においてそれぞれの行政目的に沿って実施しているモニタリングを総合調整することとしています。
 一方、核不拡散の保障措置に関する業務や、放射性同位元素の規制については、原子力の安全規制とは異なる等の理由から、今回の法案においては、原子力規制庁に移管する業務には含めなかったものであります。
 いずれにしても、原子力規制庁が担うべき業務については、今回の事故の検証結果や、今後の原子力政策及びエネルギー政策の見直しの結果等を踏まえ、改めて検討してまいります。
 次に、ノーリターンルールについてのお尋ねがございました。
 原子力規制庁の人事については、指定職は例外なく、また、課長クラスも原則として推進側の府省へは戻らない、ノーリターン人事とすることとしております。
 しかしながら、原子力規制庁の立ち上げに必要な全ての職員をノーリターンとしてしまいますと、強い意欲を持って規制業務への参加を希望する優秀な職員が少数にとどまることが懸念され、円滑な業務実施が困難となると考えられます。
 他方、優秀な人材にとって魅力ある組織となるためにも、原子力規制庁の中で専門性を持った職員を育てていくことは重要であり、長期的観点から、適性のある職員の採用と適材適所の配置をしつつ、将来の管理職や幹部となる人材も含め、職員をしっかりと育成してまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

〔国務大臣細野豪志君登壇〕

○国務大臣(細野豪志君)
 緊急時対応の各組織の役割分担について御質問をいただきました。
 緊急時の原子炉鎮圧については、事業者が第一義的に責任を持ち、規制機関は、科学的知見に基づく客観的判断から、事業者の対策に対する指導助言、さらには必要な指示を行うことが基本と考えております。
 そうした前提に立った上で、国民の安全を守るという観点から、例えば、国家的危機となるような重大事故が発生をした場合、規制機関による事業者への指示等が適切なタイミングで行われないような場合に、原子力災害対策本部長たる総理が、政府としての責任ある対応をとれる仕組みとなっていることが不可欠であります。
 今回の事故では、オンサイトからの撤退が検討されました。井上議員の御質問は、いわば、国家の命運を誰に託すかということだと私は考えます。
 総理の指示権は抑制的に行使される必要があります。しかし、国としての、危機管理上の最低限の、かつ最後の手段としては、不可欠な存在であると考えております。(拍手)

〔吉野正芳君登壇〕

○吉野正芳君
 自民党井上信治議員の御質問にお答えいたします。
 まず、IAEAの安全基準に照らした規制組織の独立性についてのお尋ねがございました
 従前の原子力規制組織については、原子力発電の推進を担う経済産業省と、その規制を担う原子力安全・保安院とが一体となっていたため、独立した規制上の判断と決定が担保されず、安全規制がゆがめられる事態が生じておりました。
 自公案では、原子力規制組織を、独立行政委員会、すなわち、いわゆる三条委員会として設置することとし、委員長及び委員は、人格が高潔であって専門的知識及び経験を有する者のうちから国会同意を得て任命されること、法定の欠格事由に該当しない限り罷免されないこと、職権の独立行使が確保されること等を明記しているところであります。これにより、十分な権限、人事及び予算が担保された上で、原子力事業者のみならず、他の行政機関や政治部門からも独立して職権を行使することができると考えます。
 この点、政府案は、環境省の外局として原子力規制庁を設置するものであり、長官人事について、閣議決定を経た上で環境大臣により任免されることになり、政治的影響を受けるなど、独立した規制上の判断と決定が担保されていないと言わざるを得ません。
 また、原子力規制委員会の独立性を確保する上で、原子力安全規制に係る事務組織の職員が、経済産業省等の原子力推進官庁や原子力事業者に属する者から、組織を超えてその人間関係に基づく影響を受けることのないよう、制度的に担保することが重要であります。
 そのための措置が、いわゆるノーリターンルールの設定であります。
 政府の方針では、指定職と政令職が対象とされていますが、政令職の場合は例外が認められ、結局、ノーリターンルールが実質的に適用されるのは指定職の七名だけと聞いております。ノーリターンルールを実効的に機能させるためには、これでは不十分であり、幹部職員のみを対象とするのではなく、末端の職員についても全て対象に含めるのが適当です。
 あわせて、自公案においては、原子力規制庁の職員の職務執行の公正さに対する国民の疑惑または不信を招くような再就職についても規制することとしております。
 このことにより、他省庁の組織の論理に左右されず、原子力利用における安全確保に取り組む原子力規制組織が形づくられることになると考えられます。
 次に、緊急時における原子力規制委員会と原子力災害対策本部の役割分担や、合議体である三条委員会が緊急時に意思決定を行うことについてのお尋ねがございました。
 原子力災害が発生した場合に、原子力災害対策本部が中心となってその対処に当たるとする点においては、自公案と政府案とに差異はございません。
 自公案では、原子力災害対策本部は、原子力施設外、すなわちオフサイトに関する事項全般についてその事務を遂行するほか、原子力施設内、すなわちオンサイトに関する事項であっても、例えば、自衛隊の派遣要請や関係機関への支援要請について、原子力規制委員会と緊密な連携を図った上で、その事務を行うこととなります。
 他方、原子力規制委員会は、原子力災害時にも、平時と同様に、独立した役割と責任を持って、オンサイトの専門技術的な事項に係る事務を行うこととなります。
 その上で、両者の緊密な連携協力が不可欠なため、原子力災害対策副本部長として原子力規制委員会委員長が加わるとともに、原子力規制庁の職員の派遣も想定されております。
 したがって、先ほどの御質問にありました、自衛隊による使用済み燃料プールへの放水の対応などは、原子力規制委員会が指示するなどということはなく、原子力災害対策本部が、原子力規制委員会と緊密な連携を図った上で行うこととなります。
 また、原子力規制委員会が緊急時に意思決定を行うことについての御疑念については、原子力規制委員会は合議によってその意思を決定するものであるから、迅速性を欠き、実効的な対応ができないのではないかということであるかと思われます。
 米国では、スリーマイル原発事故の反省から、緊急時には、NRC委員長が単独でNRCの権限を行使することができるとする制度改正が行われたと承知をしております。
 こうしたことも勘案し、自公案では、緊急時も迅速かつ適切な対処ができるよう、さまざまな事態を想定した上で、委員長等が一堂に会する必要のない会議運営方法その他行動規範を内容とする内部指針をあらかじめ定め、これを適正に運用する旨を明記しているところであります。
 次に、放射線モニタリングや保障措置を含めた一元化についてのお尋ねがございました。
 まず、放射線モニタリングに関し、政府案においては、緊急時の放射線モニタリングと平時の放射線モニタリングの司令塔機能を、原子力規制庁が所管することとされております。
 しかし、緊急時において放射線モニタリングを迅速かつ的確に行うためには、平時より放射線モニタリングを行い、データ等の蓄積とその傾向の把握を行う必要があります。このため、平時の放射線モニタリングと緊急時の放射線モニタリングとを切り離すことはできず、緊急時の放射線モニタリングと平時の放射線モニタリングの司令塔機能だけを一元化しても、有効に機能はいたしません。
 そこで、自公案においては、平時の放射線モニタリングについても、その司令塔機能だけではなく、実施も含め、原子力規制委員会に一元化したところであります。
 また、保障措置に関し、保障措置とは、核物質が平和目的だけに利用され、核兵器等に転用されないことを担保するために行われる検認活動のことであります。原子力利用の安全の確保という観点から、また、政府による意図的な転用を防止するという意味からも、原子力事業者や政府等からの独立性が確保された上で実施されるべきものであると考えます。
 また、原子力安全、保障措置及び核セキュリティーのいわゆるスリーSに関する事務については、原子炉等規制法や放射線障害防止法を中核とする法体系のもとで取り組まれてきたもので、かつ、二〇〇八年の洞爺湖サミットにおいて、原子力基盤整備に当たってのスリーSの確保の重要性が福田総理によって提唱されたという経緯もございます。
 そこで、自公案では、保障措置についても原子力規制委員会に移管し、一元的に取り組む体制を構築したところでございます。(拍手)

〔柴山昌彦君登壇〕

○柴山昌彦君
 私からは、今後の原子力規制の根幹を担う人材の育成、養成、訓練等についてお答えいたします。
 原子力利用に関する国際的な動向に精通するとともに高い専門知識を有する優秀かつ意欲的な人材を養成し、継続的に確保することは、原子力規制の質的向上を図る上で、極めて重要であると認識しております。そのためには、政権の思惑や、経済、エネルギー政策や与党の政治圧力などから完全に独立し、原子力の安全性に対し科学的、客観的に責任を持つ体制として、原子力規制組織を構成する必要があります。
 諸外国では、アメリカNRC、フランスASN、イギリスONRなど、いずれも独立組織であり、許認可や検査をみずから行い得る権限を有しています。また、これらの規制組織は、高い専門性を有し、原子力の専門家の職場として高い評価を得ており、国民からも、その規制行政に関し、相当の信頼と権威を得ています。
 こうした体制を確保するためには、他省庁の組織の論理に左右されず、原子力利用における安全の確保に、使命感を持って、長期的に貢献する専門人材を育て上げる制度を確立する必要があります。
 その重要な要素の一つが、ノーリターンルールの徹底であります。
 その上で、自公案では、原子力規制庁の職員に関し、一、給与その他の処遇の充実、二、国の内外の専門家の積極的な登用、三、国際機関や大学等との人材交流の実施、四、研修体制の整備等について、政府に必要な措置をとるよう義務づける規定を設けたところであります。
 以上です。(拍手)

○議長(横路孝弘君)
 佐藤茂樹君。

〔佐藤茂樹君登壇〕

○佐藤茂樹君
 公明党の佐藤茂樹でございます。
 ただいま議題となりました政府提出の原子力組織及び制度改革の環境省設置法改正案等並びに自民党、公明党提出の原子力規制委員会設置法案について、公明党を代表して質問いたします。(拍手)
 質問に入る前に、一言申し上げたい。
 私は、本法案の重要性は十分認識しておりますが、問責大臣の処理を放置したまま、職権で本会議を開催して議事を進行しようとする、傲慢な与党の姿勢は容認できません。冒頭、まず、政府・与党に強く抗議し、猛省を促すものであります。
 法案の質問に先立ちまして、最近明らかになった原子力委員会の問題について、政府の姿勢をお尋ねします。
 国の原子力政策の基本を決める役割を担ってきた原子力委員会が、あろうことか、核燃料サイクル政策の見直しに当たって、経済産業省や文部科学省や電気事業者ら推進側だけを集めた非公式な会合を二十回以上も重ね、報告案の原案を配付して意見を聞いていたことが明らかになりました。原子力委員会への信用を根本から揺さぶる事態です。原子力委員会は、経緯と事実を明らかにし、姿勢を正すべきです。
 中立公正であるべき政策決定が、非公式な秘密会議の議論に影響されることがあってはなりません。政府は、事態を深刻に受けとめるべきです。電力会社から原子力委員会事務局への出向を取りやめる程度の対策で事を済ますのではなくて、政府として、これまでの議論も不正な点がないか検証するなどの、徹底した実態の解明を急ぐべきです。その結果によって、責任の所在を明確にし、組織のあり方も根本的に改めるべきです。総理の明確な答弁を求めます。
 さて、公明党は、東京電力福島第一原発事故を直視し、今こそ本格的に、原発に依存しない、安全、安心エネルギー社会への移行に取り組むべきと考えています。
 そのためには、思い切った省エネの推進、再生可能エネルギーの導入、化石燃料利用の高効率化を推進し、原発の新たな着工を認めず、段階的に原発を縮小していくべきです。
 その上で、既存の原発については、科学的、客観的な規制を実施し、安全性を確保していかなければなりません。そのために、原子力規制組織のあり方が極めて重要になってきます。
 公明党は、規制組織には独立性、中立性、専門性、強い規制権限が必要であり、内閣から独立した地位が与えられている、独立行政委員会として設置すべきと主張してきました。
 この点において、自由民主党と見解を同じくし、原子力規制委員会設置法案を共同提出したところです。
 以下、法案の内容について、六点にわたってお尋ねいたします。
 第一にお伺いしたいことは、組織改革の最大の眼目である、規制組織の独立性の問題です。
 政府案では、原発の推進を担ってきた経済産業省からの独立性を確保するため、環境省に原子力規制庁を設置するとしています。
 しかし、環境省は、内閣の統括のもとに一体として行政機能を発揮することが求められている、国の行政機関です。環境大臣は、原子力規制庁への指揮命令権を持ち、規制庁の長官を任命します。この枠組みの中で、規制庁は、予算、人事面を含め独立性を保ち、政府の思惑に影響されない科学的、客観的な判断を下せるのでしょうか。
 IAEAの安全基準においては、政府は、規制機関が、その安全関連の意思決定において実効的に独立していることを確実なものとしなければならない、あるいは、政府は、規制機関が不当な圧力または制約なしでその機能を完遂することができることを確実なものとしなければならないと指摘しています。
 このIAEAの安全基準から見れば、政府案の規制庁は、独立性の点では甚だ不十分であると言わざるを得ません。
 政府は、なぜ、かつて民主党が主張していた三条委員会のような独立性の高い規制組織とせず、環境省の外局として規制庁を設置することにしたのか、総理の答弁を求めます。
 一方、自公案では、経済産業省だけでなく、環境省を含む他の政府組織からの規制組織の独立性を強調しています。
 すなわち、現行の原子力安全委員会及び原子力安全・保安院等の所掌事務を引き継ぐ原子力規制委員会を環境省に設置し、同委員会の事務を処理させるために、事務局として原子力規制庁を設置することとしております。そして、この規制委員会は、独立性の高い三条委員会とし、委員長及び委員は独立してその職権を行うことを明記しております。
 このように高い独立性を持った自公案の規制委員会の設置こそが、原子力の安全の確保には不可欠です。
 ただし、三条委員会の設置が望ましいとしても、環境省の外局とすることには疑問が残ります。公明党内においても、本来、規制委員会は、人事院並みの内閣の所轄とするか、公正取引委員会並みに、内閣府に置き、総理の所轄とすることが望ましいという議論がありました。
 そこで、自公案提案者に、発足時に規制委員会を環境省に設置するとした理由、そして規制委員会と環境省との関係、三年後の見直しの方向性について、考えをお伺いします。
 第二に、原子力規制の一元化による機能向上についてお伺いします。
 政府案では、テロ対策などのセキュリティー規制、放射線規制は規制庁に一元化するものの、放射線の日常的モニタリングや、核不拡散のための保障措置は現状のままとなっています。
 これに対し、自公案では、これらを規制委員会に一元化することとしています。
 政府の原子力事故再発防止顧問会議の提言では、政府案の新たなモニタリング体制について、規制庁が司令塔機能を担うこととなるが、実施機能については十分に移管されず、実施部門が司令塔の指示のもとで実効的に機能するか懸念が示されていると述べ、政府案に懸念を示しています。
 この提言を踏まえれば、放射線モニタリングについても、司令塔、実施機能ともに一元化する自公案の方に妥当性があると考えます。
 また、アメリカやフランスでは、保障措置、セキュリティー規制、安全規制が一体的に扱われています。
 政府並びに自公案提案者は、一元化についてそれぞれどのような判断をしたのか、考え方をお伺いします。
 第三に、規制組織の中立性についてお伺いします。
 規制組織の業務は、ゆめゆめ事業者を初め利害関係者の意向に左右されるものであってはならず、科学的、客観的な知見に基づいた中立的なものでなければなりません。
 冒頭に原子力委員会の問題について指摘しましたが、それ以外にも、政府にかかわる原子力専門家の中に、寄附金や研究費の名目で、業界との間で多額の金銭授受が行われていた問題も明らかになりました。
 今回の法案で、こうした状況を一新し、どのように規制組織の中立性を確保しようとしているのか、総理の答弁を求めます。
 また、自公案では、規制委員会に高い独立性を与えており、中立性が一段と重要になってきます。自公案提案者は、規制委員長、委員の人事を含め、どのように中立性を確保する考えか、お伺いします。
 第四に、規制組織職員の中立性や専門性の確保方策について質問します。
 自公案では、独立行政法人原子力安全基盤機構における専門知識の蓄積を十分活用することを目指し、同機構の職員を基本的に原子力規制庁の相当の職員とすることを定めています。
 その上で、規制庁の職員は、幹部職員のみならず、それ以外の職員についても、利用推進側の行政組織への配置転換を基本的に認めないこととするとともに、職務執行の公正さに対する国民の疑惑を招くような再就職を規制することを求めています。
 一方、政府案は、安全基盤機構との一体化は構想されていません。
 そして、各省から規制庁に移った職員のうち、指定職七人については、利用推進側の府省には復帰させないノーリターンルールを適用し、課長クラス十二人については原則としてノーリターンとするが、一般職員については適用しないとしております。
 しかし、規制庁の定員四百八十名のうち、最大でわずか十九名程度にノーリターンルールを適用するという方針では、到底、規制庁は、推進側の経済産業省等の影響力から独立した組織にはなり得ないのではないでしょうか。
 私は、中立性、専門性を持った規制庁を構築するために、原子力安全基盤機構との一体化を図るとともに、職員のノーリターンルールを徹底すべきと考えますが、総理の見解を伺います。
 第五に、政府案では、世界最高水準の規制を導入するとして、最新の知見を既存施設にも反映するバックフィット制度を導入するとともに、発電用原子炉について、四十年運転制限制を導入しています。
 四十年制限制については、原発の老朽化対策として評価する意見がある反面、四十年まで安心という保証はどこにもないと危惧する声もあります。また、例外として二十年を超えない範囲で運転延長を認める例外規定を設けたことについても、四十年制限制がなし崩しになるのではないかと懸念する声があります。
 安全性の面から見て、発電用原子炉の運転を四十年で制限する根拠は何なのか、また、二十年を限度とする運転延長を認める例外規定を設けられたのはなぜなのか、総理の科学的根拠に基づく合理的な答弁を求めます。
 第六に、緊急時対応と規制組織の役割について質問します。
 政府事故調や民間事故調の報告書を読むと、政府首脳が、原子力災害対策における役割分担に十分な認識がないまま原子炉の鎮圧にのめり込み、本来政府が最大に力を注ぐべき住民の避難に瑕疵があったのではないかという疑いが浮かび上がってきます。
 その一方で、官邸の原子炉鎮圧に対する助言は、ほとんどの場合、効果を上げていないことが報告されています。特に民間事故調は、官邸の現場介入が事故対応に無用な混乱をもたらしたと強調しています。やはり、緊急時における各機関の役割分担を明確にしておくことが重要です。
 ところが、政府案においては、規制庁が総理の指揮する原災本部の事務局となり、政府全体での対応の中心とするとしております。これは、政府と規制機関の役割を混然一体とし、事業者の責任範囲に介入し、無用の混乱や事態の拡大を招きかねない体制と危惧します。
 政府は、何が緊急時における規制組織の役割と考えるか、また、総理や政府が原子炉鎮圧について介入する是非についてどう考えるか、お伺いをいたします。
 この点について、自公案では、総理が原子炉災害防止のための事業者への命令を指示する権限を認めていません。そして、発電所内における専門技術的な事項に関しては、規制委員会が原子炉等規制法上の監督官庁として権限を行使することを明確にしています。
 自公案提案者は、何を緊急時における規制組織の役割と考えるか、また、地震等との複合災害をも考慮した防災体制はどう構築するか、見解を伺います。
 最後に、ことし三月、原子力安全委員会は、原発の安全に関する安全設計審査、耐震設計審査、防災の三つの指針の改定案をまとめました。しかし、この見直し案も、新たな規制組織の発足を待って、たなざらしにされています。
 このような状態で、どうして原発の再稼働について国民の理解が得られるでしょうか。しっかりとした規制組織を、慎重な議論の上、できるだけ速やかに発足させ、新しい安全基準を策定して、原子力の安全の確保を図っていくべきであると訴え、私の質問といたします。(拍手)

〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

○内閣総理大臣(野田佳彦君)
 公明党佐藤茂樹議員の御質問にお答えをいたします。
 まず、原子力委員会のあり方などについてお尋ねがございました。
 原子力委員会の原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会において、核燃料サイクルの選択肢の定量評価を行ったところであり、コストや廃棄物量などのデータ提供等を受けるため、事業者を含めた関係者を集めた会合を開いたと承知をしております。
 同小委員会の報告書は、小委員会の場で委員の意見を踏まえて取りまとめられており、一部報道にあるような、事業者の意見を受けての書きかえ等の事実関係はないと承知しておりますが、国民に疑念を招くとすれば問題だと考えております。
 原子力行政の遂行に当たっては、国民の信頼確保が必要であり、今後、このような疑念を招くことがないよう、当該小委員会の運営のあり方の見直しも含め、十二分に留意して対応してまいりたいと考えております。
 次に、原子力安全規制組織の独立性についてのお尋ねがございました。
 今般の事故対応の反省点を踏まえるならば、大規模な原子力事故に際しては、政府の総力を結集して俊敏に対応することが何よりも重要であります。そのための組織としては、内閣から独立した合議制の委員会形式ではなく、内閣の責任のもとで、迅速な意思決定が行われ、適切に危機管理対応が行われる組織が適切であると考えます。
 このような認識に立って、政府提出法案では、環境省の外局として原子力規制庁を設置することとしております。
 規制組織の独立性の観点からは、規制と利用の分離が最重要であります。
 政府提出法案では、原子力安全・保安院の原子力安全規制部門を経済産業省から分離することにより、これを徹底することとしています。また、原子炉等の規制に係る権限は、法律上、原子力規制庁長官に委任することにより、独立して判断を行える仕組みとしています。さらに、国会同意人事の委員によって構成される原子力安全調査委員会が原子力規制庁の規制の内容をチェックすることにより、その独立性を担保することにしています。
 これらの措置により、IAEAの国際基準が求める独立性を十分確保していると考えますが、独立性の確保のあり方については、今後、国会での御審議の中でしっかりと議論をしていきたいと考えております。
 次に、規制組織の中立性についてお尋ねがございました。
 産学連携は、研究成果を上げ、これを実社会で利用することを進めるために有効であり、大学等の専門家と民間企業等が連携協力することは、本来、奨励されるべきものであります。他方、佐藤議員が御指摘のように、大学等の専門家が原子力安全の規制の許認可等に関与する場合、規制対象となる事業者との関係で利益相反が生じず、中立的立場で参加することは重要であります。
 このため、政府が提出している法案においては、原子力規制庁の原子力安全調査委員会の委員に係る要件を法定しています。これに加え、原子炉等規制法に基づく許認可等に当たって意見を聞く審査専門委員についても、利益相反について厳格なルールを設定し、中立性を確保する必要があると考えております。
 次に、ノーリターンルール等について御質問がございました。
 原子力規制庁の人事については、指定職は例外なく、また、課長クラスも原則として推進側の府省へは戻らない、ノーリターン人事とすることとしております。
 しかしながら、原子力規制庁の立ち上げに必要な全ての職員をノーリターンとしてしまいますと、強い意欲を持って規制業務への参加を希望する優秀な職員が少数にとどまることが懸念され、円滑な業務実施が困難となると考えられます。
 他方、原子力規制庁の中で専門性を持った職員を育てていくことは重要であり、長期的観点から、適性のある職員の採用と適材適所の配置をしつつ、将来の管理職や幹部となる人材も含め、職員をしっかりと育成してまいります。
 また、原子力安全基盤機構との一体化については、行政組織の肥大化を招くこと、公務員制度の枠内では独立行政法人と比べて柔軟な人事管理が難しいことなどの課題について、慎重な検討が必要であると考えております。
 次に、原発の運転期間についてのお尋ねがございました。
 一般的に、設備、機器等は、使用年数の経過に従って、経年劣化等によりその安全上のリスクが増大することから、こうしたリスクを低減するため、発電用原子炉の運転期間を制限することとしています。
 運転期間の年限に関しては、原子炉設置許可の審査に際して、重要な設備、機器等に係る設計上の評価が運転開始後四十年の使用を想定して行われていることが多いことを考慮し、原則四十年としています。
 なお、米国でも、四十年で運転認可を更新する制度を採用しています。
 また、個々のプラントごとに施設の状況が異なることも踏まえ、運転期間の例外を一切排除するのではなく、一定の要件を満たして認可を受けた場合には、運転期間の延長を可能とする余地も残しております。ただし、最新の技術的な知見を踏まえた技術基準を満たすことが求められることから、実際に延長が認められるのは例外的な場合に限られると考えております。
 最後に、緊急時における対応についてのお尋ねがございました。
 緊急時における原子力規制組織の役割は二つに大別され、その一つは、事業者のオンサイトでの原子炉事故鎮圧対応の監督や支援、もう一つは、原子力災害対策本部の事務局として、政府全体のオフサイト対策を支えることと認識をしております。
 特に、緊急時の原子炉鎮圧の対応については、事業者が一義的に責任を持ち、規制機関は、科学的知見に基づき、事業者の対策に対する指導助言、さらには必要な指示を行うことが基本と考えております。
 そうした前提に立った上で、国民の安全を守るという観点から、例えば、規制機関による事業者への指示等が適切なタイミングで行われないような場合に、原子力災害対策本部長たる総理が、政府として責任のある対応をとれる仕組みとなっていることが必要であります。
 したがって、国としての、危機管理上最低限の、かつ最後の手段であり、抑制的に行使されるものとして、本部長たる総理の指示権が存在することが不可欠と考えております。
 残余の質問については、関係大臣が答弁をいたします。(拍手)

〔国務大臣細野豪志君登壇〕

○国務大臣(細野豪志君)
 原子力に関する事務の一元化について御質問をいただきました。
 今回の法案では、原子力の安全規制については、全て一元化することとしています。加えて、放射線審議会など放射線防護に関する業務のうち、原子力規制の一層の向上に寄与することが期待されるものについては、原子力規制庁に一元化することとしております。
 また、放射線モニタリングについては、今回の事故の反省を踏まえて、原子力規制庁がモニタリングの司令塔機能を担い、関係省庁においてそれぞれの行政目的に沿って実施しているモニタリングを原子力規制庁が総合調整することとしております。
 一方、核不拡散の保障措置に関する業務につきましては、原子力発電所の安全規制そのものではないこともあり、検討課題として、今年末まで協議を継続することとしているところであります。
 いずれにしても、原子力規制庁が担うべき業務については、昨年八月時点の閣議決定において示されているとおり、今回の事故の検証結果や、今後の原子力政策及びエネルギー政策の見直しの結果等を踏まえて、改めて検討してまいりたいと考えております。(拍手)

〔江田康幸君登壇〕

○江田康幸君
 公明党の佐藤茂樹議員の御質問にお答えいたします。
 まず、原子力規制委員会を環境省に設置することとした理由、原子力規制委員会と環境省との関係、また、三年後の見直しの方向性について御質問をいただきました。
 原子力規制委員会を環境省に設置することとした理由につきましては、政府がこれまで原子力安全規制のための新組織を環境省に設置するということで準備を進めてきたという事実を踏まえ、自公案でも、原子力規制委員会を環境省に設置することとしたところでございます。
 もっとも、原子力安全規制に係る事務に関しましては、例えば、核物質の防護に係る事務が我が国の安全保障にかかわるものであるなど、広範な分野にわたる政策課題への対応が必要になります。
 この点を踏まえますと、現時点においても、内閣府に原子力規制委員会を設置する方が適当ではないかとの考えもあり、今後、この法律の施行状況、国会事故調査委員会の報告書の内容等を踏まえて、三年以内に組織のあり方について検討がなされる際に、内閣府に原子力規制委員会を設置するという案も含めて御検討いただきたいと思っております。
 なお、原子力規制委員会と環境省との関係につきましては、原子力規制委員会を三条委員会として設置することとし、委員長等の身分保障や、職権の独立行使を明確に定めていることから、原子力規制委員会が行う業務に対し環境大臣の影響が及ぶようなことはありません。
 次に、保障措置や放射線モニタリングに関する一元化について御質問をいただきました。
 まず、保障措置についてでございますが、保障措置とは、核物質が平和目的だけに利用され、核兵器に転用されないことを担保するために行われる検認活動のことであり、原子力利用の安全の確保という観点から、また、政府による意図的な転用を防止するという意味からも、原子力事業者や政府等からの独立性が確保された上で実施されるべきものでなければなりません。
 次に、放射線モニタリングについてですが、政府案では、緊急時の放射線モニタリングの実施と平時の放射線モニタリングの司令塔機能のみを、原子力規制庁が所管することとされております。
 しかし、緊急時において放射線モニタリングを迅速かつ的確に行うためには、平時より放射線モニタリングを行い、データ等の蓄積とその傾向の把握を行う必要があるのであって、両者を切り離しては有効に機能しないのではないかと考えております。
 原子力安全、保障措置、核セキュリティーのいわゆるスリーSに関する業務については、原子炉等規制法や放射線障害防止法を中核とする法体系のもとで取り組まれてきたもので、かつ、二〇〇八年の洞爺湖サミットにおいて、原子力基盤整備に当たってのスリーSの確保の重要性が提唱されたという経緯もございます。
 そこで、自公案では、保障措置や放射線モニタリングについても原子力規制委員会に移管し、一元的に取り組む体制を構築するとしたところであります。
 次に、原子力規制委員会の委員長及び委員の任命について御質問をいただきました。
 御指摘されたように、原子力規制委員会の委員長及び委員については、中立公正の立場から、みずからの専門知識、経験のみに基づき、独立した規制上の決定と判断ができる者でなければなりませんし、また、今般の原子力事故を受けて、原子力利用における安全の確保が喫緊の課題であり、国民からも強く望まれている中で、人格の高潔性や高い使命感が求められております。
 このようなことを踏まえますと、政府も、適切な判断のもとに、原子力規制委員会委員長及び委員の人選案を提示することになると思われますし、また、その場合には、この同意人事案件が政争の具となり、委員長や委員ポストが空白になるようなことは考えられず、国会においても適切な判断がなされるものと確信しているところであります。
 次に、緊急時における原子力規制委員会及び原子力災害対策本部との役割分担について御質問をいただきました。
 原子力災害が発生した場合に、原子力災害対策本部が中心となってその対処に当たるとする点においては、政府案も自公案も差異はございません。
 自公案では、原子力災害対策本部は、オフサイトに関する事項全般について、その事務を遂行するほか、オンサイトに関する事項であっても、例えば、自衛隊の派遣要請や関係機関への支援要請についても、原子力規制委員会と密接な連携を図った上で、その事務を行うこととなります。
 他方、原子力規制委員会は、原子力災害時にも、平時と同様に、独立した役割と責任を持って、オンサイトの専門技術的な事項に係る事務を行うことになります。
 具体的に申し上げますと、原子力発電所で事故が発生した場合、原子力事業者が応急措置を講ずる第一義的な責任がございますが、原子力規制委員会は、緊急の必要があると認めるときは、原子力事業者に対し、災害防止のための必要な措置を講ずることを命ずることができます。この点について、原子力災害対策本部長である内閣総理大臣から指示を受けることはございません。
 もちろん、原子力規制委員会は、オフサイトに関する事項についても、原子力災害対策本部に対し、専門技術的な知見や情報を提供することとなります。
 これらのことは、IAEA安全基準に定める、規制機関は、政府と管轄当局に対して助言をし、専門的役務を提供するとの規定の趣旨に合致するものであると考えております。
 その上で、両者の緊密な連携協力は不可欠なため、原子力災害対策副本部長として原子力規制委員会委員長が加わるとともに、その職員の派遣も想定されているところでございます。
 最後に、地震や津波との複合災害も考慮した防災体制のあり方について御質問をいただきました。
 今般の原子力事故に際しては、複合災害ということもあり、原子力災害対策特別措置法に基づく原子力災害対策本部や、災害対策基本法に基づく災害対策本部など、さまざまな組織が創設され、指揮命令系統の混乱が生じたものと認識しております。
 また、現行の法体系においては、災害のうち、原子力災害だけ特別な対策の制度が設けられておりますが、そもそも、被害の拡大防止や住民避難など、災害時において政府が講ずべき措置の基本は同じである以上、原子力災害であるか自然災害であるかにかかわらず、災害全てに共通した対策の枠組みと、災害発生時には、人的、物的体制を直ちに整え、包括的かつ一貫した指揮命令のもとに対策に当たる組織を構築すべきではないかと考えております。
 もっとも、原子力災害への対処に関しては、原子力の専門技術的な知識、経験が必要となることから、原子力規制委員会が必要な知見や情報を提供する体制が不可欠であることは言うまでもありません。
 なお、米国では、国土安全保障省のもとに連邦緊急事態管理庁、FEMAが設置され、あらゆる災害に対応することとされております。このような組織や制度も参考とすべきではないかと考えております。
 以上でございます。(拍手)

〔議長退席、副議長着席〕

○副議長(衛藤征士郎君)
吉井英勝君。

〔吉井英勝君登壇〕

○吉井英勝君
 私は、日本共産党を代表して、政府提出の原子力規制組織関連法案及び自公両党提出の法案について質問します。(拍手)
 法案は、昨年三月十一日の東京電力福島第一原発事故を受けて提案されてきたものであります。
 原発・エネルギー政策を考える際、忘れてならないことは、いまだ事故の収束が見えない中で不安な日々を送る被害者の方々のことであります。被害の補償と復旧復興がはかどらず、避難者と被災者の暮らしと権利の回復は進んでおりません。
 事故が浮き彫りにしたものは、東電初め電力業界と歴代政府が原発安全神話に浸り、原子炉メーカー、鉄鋼、ゼネコン、メガバンクなど財界中枢が築いてきた、原発利益共同体ともいうべき構造の根本的な問題です。
 加害者である東京電力初め利益共同体の責任をどのように果たさせるのか、まず、総理の基本的な見解を聞くものであります。
 原発事故を受けて根本的に見直すべきは、単に原子力規制行政だけではありません。戦後の原子力政策及びエネルギー政策に係る法体系の全体であります。
 そこで、法案について、三つの角度から質問します。
 第一は、原子力利用の推進と規制の分離、独立性の問題です。
 もともと、一九九九年のジェー・シー・オー事故の後、十一月に、日本共産党は、原発の推進機関と規制機関とは完全に分離しなければならないと指摘しました。これは、国際的に、我が国も締結した原子力の安全に関する条約でもうたわれているものであります。規制機関については、その任務を遂行するため、権限、財源、人的資源を与え、十分な体制を確立することを求めてきました。
 ところが、自公政権は、事もあろうに、原発推進の経済産業省のもとに原子力安全・保安院を置いたのであります。この致命的な誤りが、今回の事故に結びついたのではありませんか。両案提案者に問うものであります。
 政府案は、この誤りを認めず、肝心の権限、人材、財源の独立性の原則が守られておりません。法案で、権限のある原子力規制庁を置くとしている環境省は、原発推進の一翼を担ってきたではありませんか。
 環境省は、これまで、原発立地アセスメントでノーを言ったことは一度もありません。そればかりか、二〇〇九年、九州電力川内原発のアセスメント発表時に、当時の環境大臣は、地球温暖化対策のために原発を推進すると記者会見で明言しました。政府の温暖化対策基本計画でも、今国会に提出している地球温暖化対策基本法案でも、原発推進を法文上に明記しています。
 もし、環境省が原発推進機関でなく規制機関であるというのなら、以上の三点を反省し、少なくとも地球温対法案は撤回するか修正しなければなりません。明確な答弁を求めます。
 民主党は、二〇〇二年と二〇〇三年に、日本共産党、社民党と三党共同提案で、独立性の強い、旧国家行政組織法の第三条委員会として、原子力安全規制委員会法案を提出しました。政権につくと、独立性の強い公正取引委員会型の規制機関とすることをやめてしまったのは一体なぜなのか、明らかにしていただきたいと思います。
 人材の独立性という点ではどうか。
 原子力規制組織の職員には、経産省、文科省などの職員を充てると言われています。規制組織には、推進組織の全ての職員を戻さない、いわゆるノーリターンルールを徹底することが必要です。
 また、原子力委員会、原子力安全委員会事務局には、電力、原子力産業など民間企業からの在籍出向が常態化し、原発関係大企業の霞が関出張所となっています。総理、法案は、これを改めるものになっていないのではありませんか。
 しかも、最近明らかになった原子力委員会と原発関係業界の勉強会と称する秘密会合は、核燃料リサイクルの中止、見直しや、使用済み燃料の処理処分問題を業界に有利に修正しようとするものであり、断じて許せません。事の経緯と真相をどのように明らかにするのか、総理としてはっきり答弁されたいと思います。
 財源面の独立性はどうか。
 エネルギー特別会計の電源開発促進勘定に名前だけの安全規制対策を設けても、原発推進を目的とする電源開発促進税を財源としていることに手をつけないのでは、規制のための財源とはならないのではありませんか。答弁を求めるものであります。
 環境基本法を一部改正して、これまで放射性物質による汚染について対象外としていたものを環境基本法の中に入れることにしたのは、当然のことであります。
 しかし、政府は、放射性物質の海洋投棄についてはロンドン条約によって禁止されているのに、昨年、東京電力の低レベルと称する大量の放射性物質である汚染水を海洋投棄しても、ロンドン条約違反に当たらないと強弁してきました。これからもこの立場をとるのですか。はっきり答えていただきたい。
 また、深刻な湖沼や太平洋岸の海底にたまっている放射性物質による水質汚染についてどう対処するのか、明確にお答えいただきたいと思います。
 第二は、事故原因を教訓とする原子炉規制の問題です。
 現在、国会事故調査委員会が福島原発の事故原因の究明と検証作業を行っていますが、東京電力会長や当時の政権中枢に対する調査の途上にあり、新しい事実とともに新たな疑問も生まれています。
 事故の直接の原因となった地震による外部電源の喪失、これを受けて、全国の原発の送電鉄塔の倒壊と、その受電施設の耐震チェック及び耐震基準を一体どうするのですか。
 東電内部でも原発敷地内の南側で押し波による十五・七メートルの波高を想定しながら、なぜ津波対策をとらなかったのか、安全よりコスト優先があったのではないのか、また、全国の原発の引き波の想定値の見直しと取水口の位置をいつまでに改善させるのか、はっきりお答えいただきたいと思います。
 日本原子力研究所を初め内外の専門家が、全電源喪失や水素爆発など、今回の問題となった事例について、一九八〇年代後半には研究を進めていました。政府及び東電は、これらの知見に耳を傾けず、なぜ過酷事故対策をとらなかったのですか。
 事故後の対応の誤りはどこにあったのか。
 現場で直ちに炉心を冷却水の上に出させないためにベントと海水注入など、なぜ収束に必要な対策がおくれてしまったのか、原子力災害特措法、原子炉規制法など法律上の権限がどう行使され、あるいは行使されなかったのか、この間の経緯を全て明らかにしていただきたいと思います。総理の答弁を求めます。
 さらに、福島第一原発四号機の使用済み核燃料プールの耐震強度の解析によって、マグニチュード幾ら、震度幾らの地震にまで耐えられることになっているのか、解析手法と安全評価を伺います。
 今回、新たな知見を既存施設にさかのぼって適用するバックフィット制度を設けるのは当然ですが、福島原発事故で既に明らかになった知見を電力会社に直ちに実行させることができないのは、一体なぜなんですか。これすらなしに再稼働などというのは、論外であります。
 運転期間四十年を原則としつつ、さらに二十年、都合六十年の運転も可能としていますが、総理、これは、老朽化原発の半永久的稼働を認めるものではありませんか。
 福島事故の最大の教訓の一つは、事業者任せの安全評価や自主検査が問題であったのに、法案では、規制緩和はそのままにして、事業者による安全評価を明記しています。これは、事故の教訓に逆行するものではありませんか。明瞭な答弁を求めます。
 新たな、原発の個々の特定機器の個別審査を省略する、型式証明を導入するとしています。この制度の趣旨は何か。アメリカでは最短でも申請から四十八カ月の時間をかけていますが、この規制法案には期間の定めがありません。原発輸出のための大量生産を狙ったものではありませんか。仮に事故の際は、申請者の製造者責任はどう問われるのでしょうか。明らかにしていただきたいと思います。
 第三は、原子力基本法の改正問題です。
 政府案では、原子力基本法第二条の基本方針で、わざわざ「国際的動向を踏まえつつ」放射線対策を行うとしたのはなぜですか。ICRP、国際放射線防護委員会の人体への線量基準は、内部被曝を軽視するものだとして、欧州初め内外で厳しく批判されていますが、これをどう踏まえるのですか。答弁を求めます。
 一九五五年に制定された原子力基本法は、原子力の利用は平和の目的に限り、自主、民主、公開のいわゆる原子力平和利用三原則をうたいながら、同時にその一方で、日米協定によってアメリカから濃縮ウランの購入を義務づけられ、核兵器保有国であるアメリカが推し進める、アトムズ・フォー・ピースから始まった核の商業利用を通じた世界支配体制に組まれたものです。そのため、日本共産党は原子力基本法に反対しました。
 以来、三・一一までの五十年余り、一貫して、日米同盟、日米原子力協定のもとで、対米従属的なエネルギー政策が進められてきたのであります。福島原発事故を経験した今こそ、この体制の根幹からの見直しが必要なのであります。総理の見解を求めます。
 今回、自公両党が提案する原子力基本法改正案で、原子力利用の目的について、「我が国の安全保障に資する」こととしたのはなぜですか。提案者にその意図と理由の説明を求めます。
 この問題は、背後にある日米同盟を抜きにして考えることはできません。東芝、ウェスチングハウス、日立製作所、三菱重工業、ゼネラル・エレクトリックなど日米原発利益共同体は、世界の原発市場の制覇を狙う戦略を進めています。今、野田内閣の進める原発輸出戦略は、このことと軌を一にしたものではありませんか。
 さきの日米首脳会談において、総理は原子力のハイレベル二国間委員会を設置しましたが、この委員会の目的、任務、狙いは何なのか、答弁を求めます。
 かつて、一九七八年に、オーストリアでは、完成したばかりのツベンテンドルフ原発を稼働するか否かの国民投票を行い、その結果、原発を選ばない道を進みました。日本は逆に、原発推進に暴走し、年間発電電力量の三割を原発で賄うという異常なエネルギー需給構造にしてしまいました。同じ道を進んだドイツは、福島事故の後、二〇二二年までに原発をゼロにすることを決定しました。
 日本共産党は、今こそ原発ゼロの日本への政治決断を行い、地域の特性に合った再生可能エネルギー、自然エネルギーの爆発的普及に力を尽くし、その仕事を地域の農林漁業や中小企業に回すことで地域経済の再生と雇用を確保し、エネルギーの面でも地域経済の面でも、原発に依存しない、持続可能な将来への道筋を選択すべきだと考えております。総理の決断を求めるものであります。
 また、原子力の規制機関は、原発ゼロへの道に沿って、廃炉、使用済み核燃料処理までの全体を展望した研究開発と技術力でもって規制に取り組むべきものであります。
 最後に、私は、ウラン型から始まった原発をゼロに、使用済み燃料から生まれる核兵器の原料となるプルトニウムを持たない世界を目指すことを訴え、質問を終わります。(拍手)

〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

○内閣総理大臣(野田佳彦君)
 共産党吉井議員から、十六問、御質問をいただきました。順次お答えをいたします。
 まず、東京電力福島原発事故の責任についてお尋ねがございました。
 原子力損害賠償法は、被害者の迅速かつ適切な保護を図る観点から、原子力事業者に賠償責任を集中させることとしており、東京電力が一義的に責任を負うこととなっています。政府としては、原子力損害賠償支援機構法を整備し、被災者に対して万全の救済が図られるよう対策を講じています。
 他方で、原子炉メーカーなど産業界を含めた関係者においても、一丸となって、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉や除染といった今後の課題に対し、積極的な協力を続けていただきたいと考えております。
 次に、原子力利用の推進と規制の分離、独立性の問題についてのお尋ねがございました。
 二〇〇〇年の省庁再編に際しては、原子力安全行政について責任ある遂行体制を整備する観点から、エネルギー政策としての一体性を確保しつつ、安全規制行政と振興行政とを組織的に分離するため、資源エネルギー庁に特別の機関として原子力安全・保安院を新設いたしました。
 こうした組織体制と事故との関係については、政府事故調等において調査が行われておりますが、政府としては、今回の事故の反省を踏まえ、規制当局と推進当局との組織的な分離の徹底を速やかに実現するべく、原子力規制庁の設立を図ることとしたものであります。
 次に、原子力規制組織と地球温暖化対策に関するお尋ねがございました。
 環境省は、省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの導入促進などを中心として、地球温暖化対策を総合的に実施してきております。また、原子力事故により生じた放射性物質による汚染は究極の環境問題であり、環境省は先頭に立って除染等に取り組んでいるところであります。
 原子力規制庁については、二度と事故を起こさないとの決意を持って原子力規制行政に取り組む観点から、これまで原発を中核的に推進してきた経済産業省等から原子力安全規制当局を分離し、環境保全を任務とする環境省に置くことは、規制と推進の分離の観点からも、大きな意義があると考えております。
 また、今後の地球温暖化対策については、エネルギー・環境会議を中心に、エネルギー政策と表裏一体で検討しており、今後、選択肢を提示し、国民的議論を経て、今夏を目途に決定することとしております。検討に当たっては、原発依存度を中長期的に低減することを旨として、省エネルギーや再生可能エネルギーの推進等を図ることとしています。
 地球温暖化対策基本法案に関しては、引き続き、国会にて御議論いただきたいと考えています。
 次に、三条委員会としない理由についてのお尋ねがございました。
 今回の事故の教訓を踏まえて、大規模な原子力事故に際して緊急対応を責任を持って行うためには、内閣から独立した合議制の委員会形式ではなく、内閣の責任のもとで、迅速な意思決定が行われる組織形態が適切であります。
 このような認識に立って、政府提出法案では、環境省の外局として原子力規制庁を設置することとしています。
 民主党は、かつて、原子力規制組織として三条委員会を設置するとの政策を掲げていましたが、今般の政府提出法案は、党の政策を現実の大災害の経験と教訓から発展させ、危機管理対応を強化したものでございます。
 次に、ノーリターンルールと民間企業からの出向者についてのお尋ねがございました。
 原子力規制庁の人事については、指定職は例外なく、また、課長クラスも原則として推進側の府省へは戻らない、ノーリターン人事とすることとしています。
 しかしながら、原子力規制庁の立ち上げに必要な全ての職員をノーリターンとしてしまいますと、強い意欲を持って規制業務への参加を希望する優秀な職員が少数にとどまることが懸念をされ、円滑な業務実施が困難となると考えられます。
 他方、原子力規制庁の中で専門性を持った職員を育てていくことは重要であり、長期的観点から、適性のある職員の採用と適材適所の配置をしつつ、将来の管理職や幹部となる人材も含め、職員をしっかりと育成してまいります。
 また、原子力規制庁においては、規制対象となる事業者の従業員が一定期間後にもとの企業に復職することを前提とする、いわゆる在籍出向の職員としては受け入れない方針であり、この運用を徹底してまいります。
 次に、原子力委員会と関係業界との会合についてお尋ねがございました。
 原子力委員会の原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会において、核燃料サイクルの選択肢の定量評価を行ったところであり、コストや廃棄物量などのデータ提供等を受けるため、事業者を含めた関係者を集めた会合を開いたものであり、業界に有利に修正するためのものではないと承知をしています。
 しかしながら、原子力行政の遂行に当たっては、国民の信頼確保が必要であり、会合の運営に際しては、疑念を招くことがないよう、当該小委員会の運営のあり方の見直しも含め、十二分に留意をして対応してまいります。
 次に、財源面の独立性についてお尋ねがございました。
 政府提出の法案において、特別会計に関する法律を改正し、推進側省庁からの独立性を確保しつつ、必要な予算を確保するため、原子力安全規制対策という区分を設けることとしております。この区分に計上される予算については、原子力規制庁から環境省を通じて財政当局に要求することとしており、実質的にも、推進省庁からの独立性が確保されることとなっています。
 次に、放射性物質の海洋投棄とロンドン議定書との関係についてのお尋ねがございました。
 御指摘のロンドン議定書は、陸上で発生した廃棄物等を船舶等から海洋へ処分する行為等を規制する条約であり、昨年の原発施設からの放射性排水の海洋への放出は、同議定書の対象とはならないものと認識をしています。
 他方、低レベルとはいえ、放射性物質を含んだ水を放出させざるを得なかったことは大変残念であり、政府としては、再度の海洋放出を防ぐために万全を期すとともに、我が国によるさまざまな対応について、近隣国に対する丁寧な説明や国際社会に対する情報提供に引き続き努めてまいります。
 次は、送電鉄塔の耐震性、津波対策についてお尋ねがございました。
 先般の東日本大震災の際、東京電力福島第一原子力発電所では、地震による近傍の盛り土の崩壊に伴う送電鉄塔の倒壊等により、全電源喪失状態に陥りました。
 外部電源については、昨年四月に複数ルート回線の確保などについて事業者に指示し、六月までに確認をしています。
 送電鉄塔の強度については、四十メートル毎秒の風圧荷重等に耐える設計であれば、今回の東京電力福島第一原発を襲った地震動よりも大きな地震動に耐えられることを確認しています。
 津波対策については、東京電力福島第一原発を襲ったような津波を想定し、対策を講じられなかったことは事実であり、政府としても重く受けとめなければならないと考えています。
 今回の東京電力福島第一原発の事故において、想定を九・四メートル上回る津波に襲われたことを踏まえ、それと同程度の津波により全交流電源喪失に至ったとしても炉心損傷に至らない対策を、緊急安全対策等により講じています。
 これに加え、今後、専門家の意見を聴取しながら、今回の知見も踏まえ、津波対策全般に関して検討を進め、引き波を含め、津波の評価を適切に実施し、極力早期に適切な対応をとるよう取り組んでまいりたいと考えています。
 次に、シビアアクシデント対策と再稼働の是非についてのお尋ねがございました。
 政府としては、これまで、東京電力福島第一原発の事故のようなシビアアクシデントが起き得ることの認識や、国際的な動向を迅速に取り入れる姿勢が欠けていたことなどの問題があったと考えています。
 このような問題は大きな反省点ですが、今般の事故対応においては、実際、ベント及び海水注入について、原子炉等規制法第六十四条第三項の規定に基づき、当時の海江田経産大臣から措置命令を実施するなど、法的権限を行使したところであります。これに関連して、政府事故調や国会事故調等にて検証がなされるものと承知をしています。
 東京電力福島第一原発四号機の使用済み燃料プールの耐震安全性については、これまでに、水素爆発による損傷状況等を模擬した上で評価を実施し、東日本大震災と同程度の震度六強の地震が発生しても、評価上は耐震余裕があることを専門家の方々にも確認いただいており、さらに、念のために使用済み燃料プール底部の補強工事を実施するなど、安全性の向上に努めてきております。
 これまで事故の検証を行った結果、事故原因及び事象の進展に関して、基本的な理解が得られていると考えます。
 得られた知見のうち、直ちに実施すべき緊急安全対策などについては、事業者にその実施を指示し、既に対応済みです。一方、今後原子力安全規制に反映すべき事項については、新たな規制組織のもとで実施されるものと考えます。
 再起動に関しましては、政府としては、これまで約一年間にわたり専門家による検討を踏まえ積み重ねてきた知見や対策を、国民の目から見てわかりやすく整理したものとして、原子力発電所の再起動に当たっての安全性の判断基準を取りまとめました。
 この判断基準は、今回の原発事故と同様の事故を起こさないための対策の実施を、現行法体系のもとで追加的な法規制として求めると同時に、今回の事故に関する現時点での最大限の知見を反映し、法規制化を待つことなく、それらを先取りして、高いレベルの安全性の実現に向けた取り組みを求めるものであります。
 定期検査で停止中の原子力発電所の再起動については、安全性の確保が大前提です。再起動を判断するに当たっては、こうした判断基準に照らして、安全性を厳格に確認してまいります。
 次に、原子力発電所の運転期間及び事業者による安全評価と事故の教訓との関係についてのお尋ねがございました。
 運転期間の制度は、原子炉の運転を四十年または六十年間認めるものではなく、今回提出している法案による規制強化が施行されますと、最新の技術的知見を踏まえた技術基準に適合していない原子炉は、四十年以内であっても運転をすることができなくなります。
 次に、先般の事故の教訓として、重大事故への対策が事業者の自主的取り組みに委ねられ、事業者も、安全基準さえ守ればよいとして、新知見を踏まえた自主的な安全対策に消極的だったという点が挙げられます。
 本法案においては、重大事故対策を事業者に義務づけるとともに、国が定める安全基準を超えて、みずから安全性向上に向けた取り組みを行うよう義務づけます。
 こうした規制強化に伴い、国が行う検査についても実効性が上がるよう、検査官の育成も含め、対応を強化してまいります。
 型式認証制度についてのお尋ねがございました。
 安全性を向上させる対策の中には、各地の原子力発電所で共通の機器等の導入が必要となる場合があります。今般導入する型式認証制度は、複数の施設で共通的に導入が可能な設備について、その導入に係る原子炉設置者の許認可取得をそれぞれ個別に行うのではなく、あらかじめ認証しておくことにより、手続に要する時間などを軽減し、安全性向上に資する設備の導入を加速しようとする趣旨のものです。
 したがって、御指摘の米国における原子炉全体としての型式を認証する仕組みとは、当面念頭に置いている対象が異なり、審査期間などを一概に比較することはできません。
 なお、型式認証を受けた製造者等に対する報告徴収や立入検査を行い、該当する機器の健全性等を確認するとともに、仮にこうした検査などを忌避した場合には、型式の認証を取り消すことができる仕組みとしています。
 また、万一、型式認証を受けた機器等に起因して事故が発生した場合、製造者等に対して罰則規定等はないものの、原子力発電所における事故の責任は一義的に事業者がとることとなっており、責任の所在が曖昧になることはありません。
 次に、原子力基本法の基本方針についてのお尋ねがございました。
 今般の事故を踏まえ、我が国の原子力利用の基本方針については、これまで以上に安全の確保を重視したものとする必要があります。その際、安全の確保の内容を具体化するに当たっては、IAEAを含む国際機関の考え方や、諸外国の原子力安全確保のあり方の動向を踏まえ、国際基準にも合致したものとする必要があると考えたものです。
 放射線防護の考え方については、国際的にも幅広い議論があることは承知しています。これらの議論の動向も把握しながら、安全の確保を行っていくべきと考えています。
 原子力に係るエネルギー政策見直しについての御質問をいただきました。
 もとより、我が国の原子力政策は、原子力基本法の原子力平和利用三原則の堅持のもと、進められてきているところであります。また、日本はみずからウラン濃縮を実施するなど、御指摘のような対米従属的なエネルギー政策を進めてきたとの指摘は当たらないと考えております。
 いずれにせよ、今後のエネルギー政策のあり方については、昨年の東京電力福島第一原発の事故を踏まえ、現在、エネルギー・環境会議において抜本的な見直しを行っているところであります。
 次に、原発輸出及び民生用原子力協力に関する日米二国間委員会についてのお尋ねがございました。
 原子力協力に関しては、昨年の原発事故を踏まえ、事故の経験と教訓を世界と共有することが重要であり、これにより国際的な原子力安全の向上に貢献していくことは、我が国が果たすべき責務と考えます。この観点から、諸外国が希望する場合には、相手国の事情を見きわめつつ、核不拡散、平和的利用等を確保しながら、相手国に高い水準の安全性を有する技術を提供し、原子力協力を行っていくことには基本的な意義があるものと考えます。
 我が国が原子力協力をするに当たっては、こうした観点に立ち、各国それぞれのケースに応じて判断しており、その意味で、御指摘のように、世界の原発市場の制覇を狙って無制限に原発輸出を進めているわけではありません。
 また、民生用原子力協力に関する日米二国間委員会は、廃炉、除染といった事故対応のほか、原子力安全や核セキュリティーに関する日米間の意見交換、研究開発交流の調整の場として設置するものであり、委員会の活動を通じて、こうした分野での日米間の協力を強化していく考えであります。
 最後に、持続可能なエネルギー政策についてのお尋ねがございました。
 再生可能エネルギーについては、七月一日の固定価格買い取り制度の施行を控え、調達価格の案を公表したところであります。これを受け、市場では現在さまざまな事業化プランが検討されており、政府の試算では、本年度だけでも、二百五十万キロワットの再生可能エネルギーの導入拡大が進むところと期待しています。
 また、政府としては、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギーの導入を促進し、農山漁村の活性化を図るため、今国会に、農山漁村における再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律案を提出したところであり、審議をお願いしているところであります。
 導入拡大が進めば、太陽光の設置工事といった市場はもとより、山間部における未利用の森林資源や水利資源の活用、さらには太陽光パネルや風力発電機の製造市場なども拡大し、地域経済の再生や雇用の拡大にも貢献することが期待されます。
 このため、政府としても、固定価格買い取り制度や、審議をお願いしている法案に加えて、立地に関する規制の見直しや研究開発支援など、考えられる政策を総動員して再生可能エネルギーの導入拡大に取り組んでまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁をいたします。(拍手)

〔国務大臣細野豪志君登壇〕

○国務大臣(細野豪志君)
 湖沼や太平洋岸の海底の放射性物質による水質汚濁についてお尋ねがございました。
 陸地から放射性物質が河川、湖沼、海域に流出し、水底の土が汚染されていることについては、重要な問題と認識をしております。
 放射性物質による汚染の対処につきましては、まずは、人の健康の保護の観点から、子供の生活環境を中心とし、住宅等の生活圏を優先的に除染を実施することが重要だと考えているところであります。
 水底の土の放射性物質については、雨により陸地から放射性物質が流入するのは避けがたいこと、水底の土の放射性物質は常に移動することから、まずは陸地の除染を着実に実施するとともに、水環境のモニタリングを継続し、環境中の放射性物質の動態解明を進めることが重要であると考えております。
 このため、当面は、放射性物質の拡散の有無及び汚染状況について把握をするため、必要なモニタリングに努めてまいります。(拍手)

〔国務大臣枝野幸男君登壇〕

○国務大臣(枝野幸男君)
 まず、私から、得られた知見の反映に関する御質問に対して御答弁申し上げます。
 今般の事故の原因については、政府の事故調査・検証委員会から中間報告が出ております。また、原子力安全・保安院に四つの意見聴取会を設置し、外部の専門家も加わっていただいた上で、公開のもとに、詳細な調査、検証を行ってまいりました。
 これらを通じて得られた知見のうち、直ちに実施すべき緊急安全対策やシビアアクシデント対策などについては、事業者にその実施を指示し、既に対応がとられているところであります。
 一方、今後の原子力安全規制に反映すべき事項については、新たな安全規制体制のもとで実施されるものと考えておりますが、こうした法規制化を待つことなく、これを先取りして、高いレベルの安全性の実現に向けた取り組みを求めているところであります。
 こうした考え方のもと、原子力発電所の再起動に当たっての安全性の判断基準を取りまとめたところでありまして、この判断基準は、政府として、これまで約一年間にわたり専門家による検討を踏まえ積み重ねてきた知見や対策を、国民の皆さんの目から見てわかりやすく整理したものであります。
 定期検査で停止中の原子力発電所の再起動につきましては、安全性の確保が大前提であり、これを判断するに当たっては、こうした判断基準に照らして安全性を厳格に確認してまいります。
 次に、原発輸出戦略に関する御質問にお答えをいたします。
 政府としては、今回の東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、事故の経験と教訓を世界と共有することが重要であり、これにより国際的な原子力安全の向上に貢献していくことは、我が国が果たすべき責務と考えております。
 この観点から、諸外国が希望する場合には、相手国の事情も見きわめつつ、核不拡散、平和利用等を確保しながら、相手国に高い水準の安全性を有するものを提供するなど、原子力協力を行っていくことには基本的な意義があると考えておりまして、日米の二国間関係においても同様な考え方に立っているところでございまして、御指摘のようなことは当たらないと考えております。
 以上でございます。(拍手)

〔江田康幸君登壇〕

○江田康幸君
 共産党の吉井英勝議員の質問にお答えいたします。
 まず、原子力規制組織の独立性について御質問がございました。
 現行の原子力規制組織の抱える問題が今般の原子力事故にどのような影響を与えたかについては、現在、国会事故調査委員会において調査中であり、詳細については、来月にも予定される報告書を待ちたいと思います。
 もっとも、御指摘のように、従前の原子力規制組織については、原子力発電の推進を担う経済産業省と、その規制を担う原子力安全・保安院とが一体となっていたため、独立した規制上の判断と決定が担保されず、安全規制がゆがめられる事態が生じていました。また、IAEA等の国際基準から見ましても、原子力の推進を担う機関と、その規制を担う機関は、明確に分離されるべきことは明らかであります。この点につきましては、我々も反省しなければならないところであります。
 だからこそ、この反省を踏まえ、自公案では、原子力規制組織を、独立行政委員会、すなわち、いわゆる三条委員会として設置することとし、十分な権限、人事及び予算が担保された上で、原子力事業者のみならず、ほかの行政機関や政治部門からも独立して職権を行使できることとしたところでございます。
 次に、原子力基本法において、原子力利用の目的に「我が国の安全保障に資する」ことを規定した理由について御質問をいただきました。
 原子力利用における安全の確保に関する規制については、原子炉等規制法に詳細が定められておりますが、原子炉等規制法には、原子力施設及び輸送時における核物質の防護に関する規定が置かれております。また、核燃料物質等に係る技術は軍事転用が可能な技術であることから、これを防止するための保障措置に関する規定も置かれております。
 これらの措置は我が国の安全保障にかかわるものであることから、自公案では、原子炉等規制法及び原子力基本法において、その究極的な目的として、「我が国の安全保障に資する」を明記するとしたところでございます。
 以上でございます。(拍手)

○副議長(衛藤征士郎君)
 斎藤やすのり君。

〔斎藤やすのり君登壇〕

○斎藤やすのり君
 新党きづなの斎藤やすのりでございます。(拍手)
 昨日、福島県の浪江町で、一時帰宅し、行方不明になっていたスーパーの経営者の方が首をつって死亡しているのが見つかりました。周囲の方には、生きていても仕方がないということを話して、睡眠剤を服用していたといいます。
 昨年六月には、相馬市で酪農を営んでいた方が作業小屋で自殺して、男性の牛小屋の黒板には、原発さえなければという言葉が書かれていました。
 被災地を歩きますと、よく、原発さえなければという言葉を聞きます。
 飯舘村の世帯数は、震災後、倍増しました。避難で家族がばらばらになってしまったからです。福島県内では離婚もふえています。県外に避難している家族が、戻るか戻らないかでけんかになっています。
 家、仕事、家族、先祖が大切に耕した土地、落ちついた生活が、一度の事故で台なしになってしまうのが原発です。津波や地震の被害は復旧できますけれども、原発の災害は未来をも奪ってしまいます。一度事故が起きれば、取り返しのつかないことになってしまいます。
 ですから、今、国民は、二度と事故を繰り返してほしくない、事故を起こしてはいけないという、これが共通の願いでございまして、この願いをきちんとかなえるのが新しい規制庁の使命であると考えます。
 しかし、残念ながら、今回の原子力の安全規制に関する新組織の政府案は、次の福島が日本を滅ぼす、次に事故が起きれば日本に住めなくなるという危機感に欠けていると言わざるを得ません。
 原子力規制組織を三条委員会方式に変えると言っていたのは、従来の民主党の主張でございます。ところが、今回の政府案では、あっさり撤回しております。三条委員会では危機のときに対応できないというのが政府の考えのようです。
 しかし、なぜ、今回の福島事故で被害が拡大してしまったのか。原発には素人の政治家が、間違った政治主導をしてしまったからではないでしょうか。
 国会の事故調査委員会は、二月に参考人として招かれた米国の原子力規制委員会、NRCのリチャード・メザーブ元委員長が、昨年の原発事故の際、原子炉から気体を出すベントを当時の総理大臣が指示したことに、米国では考えられないことだ、大統領が決めることではない、米国では、電力会社が決めて、NRCが許可をする、日本は政治家の方が知識があるのかもしれないと皮肉を込めて言っております。
 また、SPEEDIの情報を公開せずに、多くの福島の子供たちを被曝させてしまいました。
 このように政治が間違ったかじ取りをして被害が広がったことを考えれば、政府案はもっと独立性を持った規制機関にするべきなのではないでしょうか。
 また、時の政府や環境大臣が偏ったエネルギー政策を推進した場合に、いわゆる原子力村の住人である人材の重用なども考えられるのではないか。政府の見解を求めます。
 原子力規制庁の人事についてお伺いします。
 今回、政府案では、環境省の外局として、組織体制五百人、五百億円の予算規模で原子力規制庁を設置すると言っています。しかし、環境省の外局とはいっても、職員の四分の三が保安院からで、あとは原子力安全委員会と文科省のスタッフです。組織にいる人間が同じであれば何も変わらないのではないかという懸念があります。今回の福島原発事故のいわば戦犯をそのままスライドさせて、だめなものはだめと言える体制づくりができるのでしょうか。
 規制する側は電力会社の技術者と同じぐらいの知識を持った人材でないと、誤りは指摘できません。今までの保安院は、申請内容をうのみするばかりでございました。
 事故後、保安院は第一原発で情報収集に当たらなければいけなかったのにもかかわらず、七人の保安検査官は、情報を集めるどころか、いち早くどこかに行ってしまったといいます。
 規制庁を形だけ引き剥がしても、それを構成する中身の職員の質が変わらないのならば、単なる看板のつけかえにしかなりません。原発推進の立場をとってこなかった専門家を配置させることなど、抜本的な中身改革、人材の独立性の確保は考えておられるのでしょうか。
 また、出身官庁から出向した場合に、もとに戻らないノーリターンルールを運用するとの話ですけれども、これは先ほど質問もありましたけれども、その対象、そして人数、具体的なルールを教えていただけないでしょうか。
 今回、我が党から提出者への質問通告はいたしませんでしたけれども、現時点では、規制庁の独立性の確保などについて、提出者案の方がより評価に値するものであると申し添えさせていただきます。
 さて、ここで、大飯原発再稼働のことを聞きます。
 大飯原発の事故対策は、万全とは言いがたい状況でございます。防潮堤を海面から八メートルの高さにかさ上げする工事をしなければいけませんが、完成は来年度。また、大飯原発は、ストレステストに水素対策が評価されていません。この原発は、加圧水型で、容器内で水素爆発が起こり得る原発です。また、今回、福島原発で現場作業を支えた免震重要棟が大飯原発にはありません。完成は四年後です。
 もう一つ心配なのが、災害想定が不完全であるということです。
 大地震の痕跡や言い伝えは、古文書や神社、仏閣に残ります。仙台には、海岸から三キロの場所に津波が到達したことが名前の由来になっている浪分神社というのがあります。今回、東北で津波の被害が拡大したのは、こうした神社や古文書に載っていた災害の痕跡を無視した防災計画があったからでございます。
 実は、大飯原発のある若狭湾の海沿い、高さ三十メートルの場所に波せき地蔵という地蔵があります。西暦七〇一年、大宝年間に若狭湾に巨大津波が押し寄せたことからできた地蔵だと言われております。
 大飯原発では、一五八六年の天正地震のボーリング調査はされていますが、それより古い調査はされていません。もう想定外は許すことはできないです。
 大飯原発の再稼働は、福島事故前の基準やこれまでの対策を整理しただけのもので判断するのではなく、福島事故後の安全基準を新しい原子力規制機関でつくり直し、その安全基準に基づいた新たなストレステストを実施するべきだと考えますが、総理の見解をお伺いします。
 危機管理体制を万全にしないで、再稼働ありきでこれを動かすことに国民は大変今不安を覚えております。政治のプロセスに怒りさえ覚えております。
 原発事故は、広範囲で事故の被害のリスクが生じます。炉の安全だけではなくて、住民の安全をきちんと確保しなければいけません。原発から百キロ程度の住民の安全確保が必要です。再稼働には、広域の自治体との安全協定を締結し、そして、再稼働への同意をとることが必要なのではないでしょうか。総理の見解を求めます。
 今回の大飯原発再稼働は、安全性も、政治的正当性も、著しく欠けています。それでも大飯原発を再稼働させるのか、ゴーサインを出すのか、ゴーサインをいつ出すのか、総理の見解をお伺いいたします。
 報道によると、関電は、ことし三月十五日の週の供給力、これは二千二百四十四万キロワット、需要は二千四百五十九万キロワットと、二百十五万キロワット足りないと予測していました。三月十五日の週です。しかし、実際は、供給力が二千六百六十三万キロワット、ピーク需要は二千二百五万キロワット、逆に四百万キロワット余ったんです。
 百歩譲って、需要予測を誤るのはある程度理解できますが、自分たちがどれほど発電できるかを四百万キロワットも違うというのは、あり得ないのではないでしょうか。需要を過大に、そして供給を過小に見積もって、電力が足りないから原発を動かせというやり方に疑問を覚えます。
 きょうの不安定な天気にもあるように、ことしは、上空の寒気が南下する傾向が強かったり、それから、赤道付近の海面水温も一昨年のような猛暑になるリスクは少なく、必要性という観点から見ましても、大飯原発再稼働には疑問を持たざるを得ないと、気象予報士の立場から申し添えます。
 今回の政府案では、運転期間は原則四十年と明記され、例外規定として、二十年以内で一度に限り運転の延長を許可することができると明記されています。福島原発事故があったにもかかわらず、二十年も延びた根拠は何なのでしょうか。
 世界で最も長く稼働している原発は、四十五年の英国オールドベリー原発でございます。米国にも、世界にも、いまだ五十年以上稼働した原発はありません。米国では、コストが見合わなくなった四十年以上稼働した原発は、大半が運転をとめているはずです。
 寿命の根拠、この四十年という根拠が明確でない上に、技術への過信、おごりが呼び起こした福島原発の事故がこれだけたくさんの方を不幸に陥れているのに、そこから学ばずに、さらに例外規定を設けて運転延長を設けるのはなぜでしょうか。電力が足りないから、コストがかかるからということよりも、事故が起きたわけですから、事故の前以上に安全面を重視しなければならないのではないでしょうか。
 昨年の秋、飯舘村に行きました。青空に映える紅葉、そして、たわわに実ったダイダイ色の柿の風景は、まさに日本の原風景でした。しかし、そこには、人がいなくなり、柿の実は収穫されずごろごろと道を転がり、何よりも、空気、水、大地、森、これが汚染されているんです。先人たちが守ってきた景観、そして、数百年にわたって耕しつくってきた肥沃な土地、地域の文化や伝統、全てが、三・一一以降の原発災害で、あっという間に台なしになりました。
 飯舘村の多くの方は、自然を恐れ、自然に感謝し、自然の恵みを自然の秩序を壊さないようにいただき、つつましやかに生活していました。
 今回の原発災害は、技術への過信が生んだ災害です。人間のおごりが、たくさんの恩恵を与えてくれた自然を汚してしまいました。日本では、大地、水、植物、あらゆるものに神が宿っているという宗教観がありますから、そういう意味では、今回の原発災害は、神への冒涜、罰当たりと言っても過言ではありません。
 野田総理は、福島の惨状を見て、原発のあり方についてどう考えておられるのでしょうか。二十年後の日本の原発は、エネルギー供給のどれぐらいの割合で、どのようなポジションにあるのか。過渡期のエネルギーとして捉えているのか、それとも主電源として捉えているのか。この国のリーダーとして、総理の原発への考え方をお聞かせください。
 被災地では、多くの方が、原発に不安を抱き、再稼働に反対しています。共同通信の世論調査では、定期検査で停止中の原発について、再稼働することに反対が五六・三%。これは地域に温度差があります。我が東北地方では、七二%、七割が反対しています。多くの方が、放射能におびえながら、子育てをし、食事をしている現状があります。放射能が原因で一家がばらばらになってしまっている家族もあります。原発事故のせいで人生がおかしくなってしまったという方がたくさんいます。
 被災地東北の、原発はやめてくれという声にどう応えていただけますでしょうか。
 日本は、地震・火山大国です。世界のマグニチュード六以上の地震の二割が日本で発生しています。津波というのは、英語でもツナミです。日本で津波災害が多いからです。全世界四百以上の稼働中の原発のうち、地震危険地帯に設置されている原発は五十六基。そのうち、海岸から一マイル未満にあって、地震にも津波にも弱い原発は三十九基。この三十九基のうちの九割超の三十五基が日本にあります。
 日本は、原発設置にはもともと向いておりません。福島の原発事故がありました。事故の検証もされていません。向いていないだけではなく、原発を再稼働させる資格も現段階ではないと言わざるを得ません。
 今我が国がやるべきことは、徹底的な福島原発事故の検証とその情報公開、そして、既存の原子力規制当局が機能しなかったことで原発事故が発生し、誤った政治主導で原発事故が拡大した反省に立って、原発村から距離を置いた独立性の高い三条委員会としての規制庁を設置すること、そして、日本の財産である自然を生かしたエネルギーの爆発的普及を促進させ、脱原発を実行することであるということを訴えまして、私の質問を終わりにさせていただきます。(拍手)

〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

○内閣総理大臣(野田佳彦君)
 新党きづな、斎藤議員の御質問にお答えいたします。
 まず最初に、原発の新しい安全基準、ストレステストの新機関での実施についてのお尋ねがございました。
 今回の事故から徹底的に教訓を引き出し、新しい規制機関において新たな安全基準を作成した上で、それらに照らして原子力発電所の安全性を確認する必要があることは事実であります。他方、今回のような事故を二度と繰り返さないため、新たな安全規制が施行されるまでにおいても、原子力安全に係る信頼性向上に継続して取り組んでいくことが必要です。
 これまで、政府としては、安全性について、緊急安全対策やその効果を確認するストレステストなど、約一年をかけて、IAEAや原子力安全委員会を含めた専門家の意見をお伺いしながら、四十回以上にわたる公開の議論を通じて得られた対策や知見を積み上げてまいりました。
 こうしたさまざまな対策を適切に実施してきた原子力発電所は、今回の事故と同程度の地震、津波に対応できるものとなり、安全水準は大幅に引き上がると考えています。
 現在、再起動を判断する際の条件として実施しているストレステストは、こうした対策がとられた施設が現時点でどの程度の安全裕度を有するか、確認するために行っているものであり、適切なものと考えております。
 次に、自治体の同意や原発事故の原因と再稼働についての御質問をいただきました。
 原発事故の原因については、政府事故調査・検証委員会や保安院の意見聴取会、民間独立検証委員会による事故検証を通じて、基本的な共通理解が得られたと考えています。
 また、政府事故調査・検証委員会等における検討を踏まえ、現在知り得る限りの知見は全て判断基準に反映しており、判断基準を満たす原子炉は、今回の事故のような地震、津波に襲われても燃料損傷に至ることがない、十分な安全性が確保されます。大飯発電所三、四号機については、四大臣として、この判断基準を満たしていることを確認いたしました。
 立地自治体以外の電力消費地などに対しても、政府としての考え方を御説明し、一定の理解を求めていくことが必要であると考えており、再起動ありきではなく、あくまで安全性の確認を大前提としている政府の姿勢をしっかりとお伝えし、理解を求めていくことは重要であると考えております。このような努力をしつつ、再起動については、最終的に政府として責任を持って判断してまいります。
 次に、原子力発電所の再稼働及び今後の原発のあり方についてのお尋ねがございました。
 中長期的には、原子力への依存度を最大限引き下げていくという方向を目指すべきと考えています。政府としては、今後、国民が安心できる中長期的エネルギー構成を目指し、幅広く国民各層の御意見をお伺いしながら、ことしの夏をめどに新しい戦略と計画を取りまとめてまいります。
 また、事故の教訓を踏まえ、二度とこのような事態が起こることのないよう、独立性の高い新たな規制組織の設置や安全規制の抜本強化が必要です。この安全規制改革の一日も早い実現に向け、国会での建設的な御審議をいただきたいと考えております。
 他方、これまで電力供給の約三割を担ってきた原子力を直ちにとめてしまっては、現実の日本経済、国民生活は成り立ちません。このため、安全性や必要性が確認された原子力発電所については、立地自治体を初めとする関係自治体の御理解を得つつ、政府として再稼働についての判断を行ってまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

〔国務大臣細野豪志君登壇〕

○国務大臣(細野豪志君)
 規制組織の独立性について御質問をいただきました。
 政府提出法案では、原子炉等の規制に係る権限は、法律上、原子力規制庁長官に委任することとしており、推進組織からの独立性の確保はもちろん、政治からも独立して、原子炉の安全規制に係る判断を行える仕組みとしております。
 他方、大規模な原子力事故に際して緊急対応を責任を持って行うためには、内閣から独立した合議制の委員会形式ではなく、内閣の責任のもとで、迅速な意思決定が行われる組織形態が適切です。
 このような認識に立って、政府提出法案では、環境省の外局として原子力規制庁を設置することとしております。
 なお、政府案では、国会同意人事の委員によって構成される原子力安全調査委員会が原子力規制庁の規制についてチェックし、仮に問題がある場合には委員会が勧告等を行うことによって是正を促す仕組みとしており、原子力規制庁の規制が不当な影響によってゆがめられることは排除されているというふうに考えております。
 次に、原子力規制庁の人事について御質問をいただきました。
 原子力規制庁の人事については、指定職七名は例外なく、また、課長級十二名も原則として推進側の府省へは戻らない、ノーリターンルールを採用することとしております。
 しかしながら、過去の業務経験により制約を設けたり、原子力規制庁の立ち上げに必要な全ての職員をノーリターンとしてしまうと、強い意欲を持って規制業務への参加を希望する優秀な職員が少数にとどまることが懸念され、円滑な業務実施が困難になると考えられます。
 このため、当面は原子力安全規制を担う府省からの出向を求めざるを得ませんが、原子力規制庁発足に当たっては、民間や研究機関などからの専門的知見、経験を持った人材の登用、職員への行動規範の周知や研修、訓練の徹底により、問題意識と能力の面で従来に増して水準の高い規制組織となるよう努めてまいります。
 最後に、原発の運転期間の延長について御質問をいただきました。
 運転期間の年限については、経年劣化等による一般的な安全上のリスクを低減するため、発電用原子炉の運転期間を原則四十年に制限することとしております。
 一方で、個々のプラントごとに施設の状況は異なることから、運転期間の例外を一切排除するのではなく、一定の要件を満たして認可を受けた場合には、運転期間の延長を可能とする余地も残すこととしています。ただし、運転期間を延長するには、長期間の運転に伴い生ずる劣化の状況を踏まえ、延長とする期間において安全性を確保するための基準を満たすことが求められることから、実際に延長が認められるのは例外的な場合に限られると考えているところでございます。
 以上でございます。(拍手)

○副議長(衛藤征士郎君)
 服部良一君。

    〔服部良一君登壇〕

○服部良一君
 皆さん、最後の質問、社民党の服部良一です。
 社会民主党・市民連合を代表して、政府提出、原子力規制制度改革法案等及び自民、公明両党提出の原子力規制委員会設置法案に対して質問をいたします。(拍手)
 冒頭、両法案の付託先が環境委員会になったことに抗議します。
 社民党など八党は、連名で、東日本大震災復興特別委員会での審議を要請してきました。原子力規制行政の見直しは、三・一一の反省、教訓を踏まえた、復興に不可欠の柱であり、かつ、今後の日本経済社会に大きくかかわる国民的関心事です。
 また、政府案は、新組織の設立にとどまらず、原子炉等規制法、原子力災害対策特別措置法など十七本の法律改正にかかわり、規制のあり方、内容も総合的に見直そうとするものです。平時の規制だけでなく、原子力防災、緊急時対応も重要なポイントであり、国だけでなく、地方自治体との強いかかわりがあります。
 このような日本の将来にかかわる法案こそ、全会派が正式に参加する場で徹底審議し、全会派による修正協議を経て国民的合意をつくるのが重要です。
 そもそも、総理、原子力規制行政見直しの歴史的意義をどのように認識されているのですか。総理の言葉でお答えください。そして、総理としては、本国会でどのような審議を期待されていますか。
 さて、両法案は、原子力の利用と規制を分離することが目的です。社民党は、新たな原子力規制組織を三条委員会とすることが、独立性と権限という点で望ましいと考えます。政府は、三条委員会は危機対応の面で問題があると指摘しますが、重要なのは、指揮系統と判断基準、責任の所在が明確となっていることであり、三・一一の反省、教訓を踏まえて機能する仕組みを整備し、政治と一線を画した制度設計とすることです。総理、いかがですか。
 もちろん、形だけを整えても意味がありません。独立性や中立性が阻害されず、法律上の権限が適正に行使されるための実質的な裏づけが必要です。その点、両法案ともに、方針や基準の立案、個別の審査や評価がどのような場、手続で行われるのかが、必ずしも明らかではありません。これらを、どこで、誰が行うのか、細野大臣及び提出者より、具体的に御説明ください。
 この間、二〇〇六年の耐震設計審査指針改定時に保安院が安全委員会に旧指針でも安全と表明するよう求めた事件を初め、防災指針、シビアアクシデント対策、スマトラ沖津波を受けた溢水勉強会など、保安院や事業者が安全対策や原子力防災の見直し、強化の先送りを図ってきた事実が次々と明らかになっています。原子力委員会のいわゆる秘密会議や事務局体制、民間出向問題も、原子力村の閉鎖性と癒着の象徴です。疑惑を招いて遺憾という言葉だけでは済みません。
 立派な組織をつくっても、非公式の場で物事が決まったり、不当な影響力が行使されたりするのであれば意味がありません。アメリカNRC、原子力規制委員会では、委員が三人以上集まれば、公式の委員会となり、記録に残されています。三・一一直後の膨大な記録も公開されました。
 新たな規制組織は、透明性を徹底的に確保すべきであり、非公式な会議や接触は原則禁止とすべきです。情報収集の必要性はあったとしても、その場合も、会議や接触の事実を即座に公表し、資料や議事録も公開すべきです。
 以上の提案について、細野大臣及び提出者は、どう受けとめられますか。
 政府案の安全調査委員会委員であれ、自公案の規制委員会委員であれ、その職に誰がつくのかが重要です。独立性を実質的に確保するためには、兼職制限だけでは不十分であり、経歴制限や厳格な利益相反排除が必要です。また、保安院や安全委員会の委員や有識者について、これまでさまざまな利益相反の疑いが指摘されてきましたが、自己申告制と個人情報保護が壁となって、検証が阻まれてきました。申告情報の開示や、中立的な第三者が経歴や利益相反について判断する仕組みが不可欠です。さらに、審査専門委員や各種の外部委員も当然対象とすべきです。
 これらの中立性確保策につき、細野大臣及び提出者の見解をお尋ねいたします。
 実効性が問われるのはノーリターンルールも同様です。
 細野大臣は課長級以上に原則適用すると表明されましたが、実務者も大事です。全職員を対象とすること、中途採用者や技術参与らも例外としないこと、民間出向は禁止すること、当然ながら、天下りは排除することが必要です。そして、抜け道を塞ぐために、ノーリターンルールを明文化し、監視の仕組みを設けるべきです。
 これらの提案について、細野大臣及び提出者より、明確に御回答願います。
 次に、規制の中身の関係です。
 まず、提出者にお伺いしますが、自公案には、政府案の原子炉等規制法等改正案など、規制内容に係る事項が入っておりませんが、いかなる立場で審議に臨まれるのか。すなわち、規制内容に係る政府案を、そのまま、あるいは条件つきで受け入れられるのか、全て新たな規制委員会が考えるべきこととするのか、明確にしてください。
 実効性のある規制の中身について、以下、具体的に伺います。
 原子力安全委員会の安全審査指針類及びその見直しに係る中間取りまとめと、新規制組織が定める各種安全基準との関係につき、細野大臣及び提出者は、どう想定されているでしょうか。
 政府案に盛り込まれたバックフィット、つまり、最新の基準を既存の原発に適用する仕組みは、新たな規制体系において不可欠ですが、運転停止命令等は、「できる」規定となっている等、運用ルールが明確ではありません。四大臣会合でまとめられた再稼働基準三のように、猶予期間を設けるのであれば、骨抜きです。
 バックフィットの完全義務化と厳格な適用が必要であり、細野大臣にはその運用ルールについて、提出者にはバックフィットに対する考え方について、伺います。
 社民党は、国会及び政府事故調の最終報告を初めとする福島第一原発事故の検証を踏まえて新たな安全基準が策定され、対策が完了することなしに再稼働はあり得ないと訴えてきました。保安院、安全委員会が信頼を失墜し、安全審査指針類の明白な瑕疵が認識され、バックフィットが導入されようというのに、現時点で再稼働判断をするのは、明白な論理矛盾です。
 あたかも規制庁が発足したら再稼働できるかのような議論もありますが、新組織のもとで事故検証を踏まえた新たな基準が策定されていない以上、再稼働に向けた手続は中断すべきです。総理、提出者、双方の見解をお示しください。
 政府案では、原子力発電所の四十年運転制限が盛り込まれています。
 まず、総理、既に四十年を経過した敦賀原発一号と美浜原発一号、ことし七月に四十年を迎える美浜原発二号は、即時廃炉にすべきではないですか。お答えください。
 美浜二号については、保安院が高経年化技術評価を進めていますが、総理、当然中止すべきだと考えますが、いかがですか。
 運転制限については、政府案では最長二十年の例外的延長規定がありますが、これは削除すべきです。そもそも四十年の妥当性も問われるべきであり、例えば、設計寿命とされる三十年とする案も含め、検討すべきです。
 延長規定の削除及び四十年の再検討につき、細野大臣及び提出者の見解を求めます。
 ここで、総理に、脱原発依存、エネルギー政策転換への決意について、改めてお聞きします。福島第一原発事故の深刻な被害に苦しんでいる方々に響く言葉でお答えください。
 私は、電力需給の検証データや省エネ、需要管理、デマンドレスポンスなどの具体的提案を見て、この夏を第一歩として、原発なしでも電気が賄える、すなわち、原発を、ベース電源ではなく、当面バックアップと位置づけ、最終的に原発ゼロにできる道筋が見えてきたと考えます。安全対策や防災強化のコスト、廃炉後の地域づくりといった観点からは、原子炉の仕分けをすべきときです。
 社民党は、脱原発アクションプログラムで、老朽炉三炉に加えて、被災地東北の全ての原発、危険なマーク1タイプの原子炉、浜岡など地震、津波の危険が特に高い立地の原発を廃炉とし、新増設は中止することを提言しております。
 総理に、これらの具体的な原発版仕分けへの見解を伺うとともに、決断を求めます。
 さらに、脱原発依存の前提、「もんじゅ」や再処理施設のトラブルの歴史、高レベル廃棄物の処分問題、コストなど数々の判断材料を踏まえれば、「もんじゅ」廃炉、使用済み燃料の全面直接処分、核燃料サイクルからの完全撤退が合理的な選択肢であると考えますが、総理、いかがですか。国民的議論と逃げずに、まずは総理自身のお考えをお示しください。
 両法案では、公開性、透明性、市民参加について、必ずしも明確になっておりません。傍聴やパブリックコメントも必要ですが、一方通行ではなく、例えば双方向の対話フォーラムなど、より実質的に市民に開かれ、その意見が反映される仕組みを構築することが必要であります。細野大臣及び提出者より、具体案をお示しください。
 次に、原子力防災について、細野大臣に、三点、お伺いします。
 原子力安全委員会が三月に取りまとめた防災指針の見直しについて、改定スケジュールを明確にお示しください。
 防災指針改定については、PAZ及びUPZの運用基準、オフサイトセンター、被曝医療、沃素剤事前配布など、多くの重要課題が積み残しとなっています。これらについて、具体的に、いつ結論を得、改定するのでしょうか。
 班目安全委員長らが認めているとおり、現行指針には明白な瑕疵があります。実質的に無効化した現行指針と見直し案とが併存している今、事故があった場合に大混乱が生じることは明らかです。
 再稼働前に、防災指針の完全改定、地域防災計画改定、そして、ハード、ソフト両面での整備が完了している必要があると考えますが、異論はありませんね。
 加えて、社民党が再三追及してきましたが、大飯原発で過酷事故が起きた場合の放射能拡散予測を滋賀県が再三要望しているにもかかわらず、SPEEDIの試算結果が提供されていません。それどころか、いまだに試算に着手さえされておりません。
 平野文科大臣、滋賀県は、よく御存じのように、大飯からわずか十数キロです。近畿一千四百五十万人の生命の水源、琵琶湖のある滋賀県に、なぜ、提供もせず、試算さえもしないのですか。この場で、すぐ出すと、明確にお約束ください。
 同時に、細野大臣、防災指針改定を前提とした地域防災計画改定を自治体に要請されている立場として、文科省の対応はおかしいと思いませんか。
 最後に、国会事故調との関係について伺います。
 なぜ最終報告を待たずに法案が出されているのかという黒川委員長の痛烈な批判は、真摯に受けとめるべきです。総理の御認識を伺います。
 とはいえ、だらだらと保安院と安全委員会が存続する現状は望ましくありません。新規制組織の発足が先行する場合でも、事故調最終報告の反映を確約し、そのスケジュールを明示することが必要です。
 一方、事故調の提言への対応が決まるまでは、規制庁の仕事は、停止中の原発の安全確保に必要な事項等、最低限の対応にとどめるべきです。
 以上、事故調との関係につき、細野大臣と提出者は、どうお考えですか。
 規制庁であれ、規制委員会であれ、適正な運営を外部から監視し評価するシステムが欠かせません。加えて、賠償を初め事故処理は、今後何十年にもわたる長期的なプロセスであり、何らかの監視機能が必要です。
 そこで、提案いたしますが、国会事故調の後継組織を設け、原子力規制行政の監視・評価機能をあわせ持たせてはいかがでしょう。
 総理と提出者の御所見を求めるとともに、同僚議員に検討をお呼びかけし、私の質問を終わります。
 どうもありがとうございました。(拍手)

〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

○内閣総理大臣(野田佳彦君)
 社民党服部議員の御質問にお答えいたします。
 まず第一に、原子力規制行政見直しの歴史的意義についてのお尋ねがございました。
 今般の原子力規制組織等の見直しは、東京電力福島第一原発の事故の反省の上に立ち、放射線の有害な影響から人と環境を守るという観点からそのあり方を全般的に見直すものとして、大きな意義があります。
 具体的には、原子力安全規制と利用の分離、原子力安全関係業務の一元化、環境省のもとでの原子力規制庁の設置に加え、放射性物質による大気汚染等の防止措置の環境基本法への追加等の見直しを盛り込んでいます。
 審議につきましては、議員提案も提出されていますが、新しい原子力規制組織を早期に発足させる必要があるという点については、考え方は共有されていると考えています。一日も早く新しい規制組織と制度を導入できるよう、国会において建設的な議論を進めていただくことを期待します。
 なお、国会における議論の進め方については、国会において適切に御判断いただいているものと承知をしております。
 次に、事故の反省、教訓を踏まえた制度設計についての御質問をいただきました。
 今般の事故における政府の危機管理対応の反省、教訓として、政府内の指揮系統、中央と現地対策本部との役割分担、関係省庁の責任関係などがあらかじめ整理できておらず、混乱が生じたり、対応が不十分であったりしたものと認識をしています。
 このため、政府提出法案に基づく原子力防災の危機管理体制については、原子炉等規制法に基づく事故そのものの収束への対応は基本的に原子力規制庁が助言、指示するなどして行うことや、モニタリングの司令塔や被災者の健康管理は環境省が担うことなど、緊急時の対策の責任を明確化することとしています。
 また、避難や食品摂取制限等の実施基準は原子力災害対策指針に規定するなど、判断基準や行動手順についても、マニュアルの改定などにより準備をする考えであります。
 他方、政治的配慮への御懸念については、こうした緊急時の対応についても目を光らせ、環境大臣などに勧告等を行う権限を付与することで、規制組織等を監視する原子力安全調査委員会が対応することと考えております。
 次に、再起動の判断についてのお尋ねがございました。
 原子力発電所の再起動については、安全性の確保が大前提であります。これまでの政府事故調査委員会や保安院の意見聴取会、民間独立検証委員会による事故検証等を通じて、事故原因については基本的な共通理解が得られたと考えています。
 政府としては、昨年三月以降、緊急安全対策等の対策を指示、確認するとともに、昨年七月にはストレステストの実施を指示し、専門家やIAEAにより、慎重に確認してまいりました。また、事故検証により得られた知見を踏まえ、新たな規制の方向性として、三十の対策を取りまとめたところです。
 先般、四大臣会合で取りまとめた原子力発電所の再起動に当たっての安全性の判断基準は、こうした積み重ねを、国民の目から見てわかりやすく整理したものです。この判断基準は、今回の事故のような地震、津波に襲われても燃料損傷には至らない十分な安全性が確保されていることを求めており、大飯原子力発電所三、四号機については判断基準を満たしていることを確認しています。
 次に、原子力発電所の廃炉及び高経年化技術評価についてのお尋ねがございました。
 高経年化した原子力発電所等については、厳しい規制のもと、安全を確保した上で運転することが求められますが、安全が確保できなくなったものは廃炉となります。また、運転年数の原則四十年制限等が盛り込まれた改正法が成立した場合には、こうしたルールに基づいて、個々に、廃炉すべきかどうか、判断がなされることになります。
 いずれにしても、こうした改正法が成立し、運用が開始されるまでは、高経年化した原子力発電所等の安全性を確保するためにも、現行制度の枠組みのもとで粛々と安全性の評価を行うことが必要と考えています。
 次に、原発の廃炉及び新増設についての御質問をいただきました。
 高経年化した原子力発電所等については、厳しい規制のもと、安全を確保した上で運転することが求められますが、安全が確保できなくなったものは廃炉となります。
 また、原発の新増設については、現状では困難な状況に置かれていると考えています。他方、建設中の原発等については、進捗状況もさまざまであり、立地地域の方々の御意見も踏まえながら、個別の事案に応じて検討していく必要があると考えています。
 また、原発を含む今後のエネルギー政策については、中長期的には、原子力への依存度を最大限引き下げていくという方向を目指すべきと考えています。今後、国民が安心できる中長期的なエネルギー構成を目指し、幅広く国民各層の御意見をお伺いしながら、ことしの夏をめどに新しい戦略と計画を取りまとめてまいります。
 いずれにせよ、原子力発電所については安全の確保が最優先であり、御指摘の提言にある原子力発電所も含め、こうした確認を厳格に行ってまいりたいと思います。
 次に、「もんじゅ」と核燃料サイクルについてのお尋ねがございました。
 現在、昨年末にエネルギー・環境会議で決定した基本方針を踏まえ、核燃料サイクル政策を含む原子力政策の徹底検証を行う中で、原子力委員会において、核燃料サイクル政策の選択肢の提示に向けた検討を進めています。その際、再処理方針に限らず、高速増殖炉「もんじゅ」や直接処分も含め、幅広く議論をいただいています。
 その上で、原子力委員会等の検討を踏まえ、原子力を含む中長期的なエネルギー構成や核燃料サイクルのあり方について、本年夏の革新的エネルギー・環境戦略等の策定に向けて、経済性や国際的な視点等も含め、エネルギー・環境会議等の場でしっかりと議論を進めてまいります。
 次に、国会事故調との関係についてのお尋ねがございました。
 東電福島第一原発の事故により、原子力安全行政の信頼は大きく損なわれました。原子炉は、稼働か否かにかかわらず、常にしっかりした安全規制が必要であり、国民の不安に応えるためには、新たな組織のもとで、一日も早く、放射線から人と環境を守る規制、制度と防災体制を整えることが急務です。
 もとより、立法府において設置された国会事故調査委員会の重要性は言をまたず、そこで事故の総括を通じてまとめられる提言を踏まえて、政府においてさらなる検討を行わなければならないと認識しています。
 昨年八月の閣議決定においても、当面の見直しを行った後により広範な検討を行うこととしており、今後、国会事故調の提言等を含めて、新組織が担うべき業務のあり方や、より実効的で強力な安全規制組織のあり方について、平成二十四年末を目途に成案を得るべく取り組んでまいります。
 最後に、原子力規制行政の監視、評価機能についてのお尋ねがございました。
 今般のような原子力事故は、二度と起こしてはなりません。そのためにも、御指摘のとおり、規制機関から一歩離れた中立的な立場から原子力安全規制行政のあり方を監視、評価する機能は極めて重要と考えております。政府提出法案においては、原子力規制庁とは別に原子力安全調査委員会を設置し、規制行政の有効性の監視、原子力事故の原因調査等の役割を担わせることとしているのは、そうした認識に基づくものであります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

〔国務大臣細野豪志君登壇〕

○国務大臣(細野豪志君)
 服部議員から、十一問、御質問をいただきました。
 まず、方針の策定、個別の審査等の手続について御質問をいただきました。
 安全性の判断やその基準の策定などに当たっては、科学的な知見に基づく合理性、客観性が重要であることは言うまでもありませんが、より幅広い知見を集約するため、規制組織外の有識者による調査審議や意見の聴取を行うことも不可欠であります。こうした外部有識者の知見も活用し、規制組織自身が、安全に係る基準の策定、個々の許認可等に係る審査を行い、最終的な安全性の判断をすることが基本となります。
 こうした考え方から、政府提出法案では、原子力規制庁に原子力に関する高度な専門的、技術的知見を有する審査専門委員を置き、原子炉の設置許可等の処分を行おうとする際にはあらかじめ審査専門委員の意見を聞くことを明記し、手続を明確化しているところであります。
 次に、透明性の確保、情報公開について質問をいただきました。
 御指摘いただきましたとおり、新たな規制組織の透明性の確保は最も重要な課題であり、原子力規制庁の意思決定プロセスは、国民から見て透明性のあるものとすべきと認識しております。
 具体的には、原子力施設に係る安全審査、種々の安全基準の策定等について、できるだけそのプロセスを公開していくルールを設定する必要があると考えております。
 今後、米国の原子力規制委員会の例なども参考にしつつ、記録のとり方や公開のあり方について、対象範囲、手法などについて検討を行ってまいります。
 次に、外部の有識者の中立性の確保について御質問をいただきました。
 御指摘のように、大学等に籍を置く専門家などの有識者が原子力安全の規制の許認可等に関与する場合、規制対象となる事業者との関係で利益相反が生じず、中立的な立場で参画することが重要です。
 このため、政府が提出している法案においては、原子力規制庁の原子力安全調査委員会の委員に係る要件を法定化しています。それに加えまして、原子炉等規制法に基づく許認可等に当たって意見を聞く審査専門委員についても、利益相反について厳格なルールを設定し、中立性を確保する必要があると考えております。
 次に、ノーリターンルール、民間企業からの出向等について御質問をいただきました。
 原子力規制庁の人事については、指定職は例外なく、また、課長クラスも原則として推進側の府省へは戻れない、ノーリターン人事とすることとしております。
 しかしながら、原子力規制庁の立ち上げに必要な全ての職員をノーリターンとしてしまうと、強い意欲を持って規制業務への参加を希望する優秀な職員が少数にとどまることが懸念され、円滑な業務実施が困難であると考えられます。
 他方、原子力規制庁の中で専門性を持った職員を育てていくことが重要であり、長期的な観点から、適性のある職員の採用と適材適所の配置をしつつ、将来の管理職や幹部となる人材を含め、職員をしっかりと育成してまいります。
 また、原子力規制庁においては、規制対象となる事業者への職員の出向は行わず、その事業者の従業員が一定期間後にもとの企業に復職することを前提として出向することも受け入れない方針であります。その運用を徹底してまいります。
 天下りの排除については、原子力規制庁においても、ルールにのっとって適切に対応してまいります。
 次に、原子力安全委員会の安全審査指針類及びその見直しの中間取りまとめと、新規制組織が定める各種安全基準との関係について御質問をいただきました。
 今般の事故の教訓等を踏まえ、原子力安全委員会においては安全審査指針類に反映させるべき事項について、また、原子力安全・保安院においては今般の事故の技術的知見について、それぞれ中間的な取りまとめがなされております。新たな安全規制基準については、こうした検討の結果等を踏まえて、新たな原子力安全規制組織においてその詳細を検討していくこととなります。
 次に、バックフィットの運用ルールについて御質問をいただきました。
 最新の技術的知見を規制に取り入れ、既に運転している原子力施設にも適用していくことは、今般の事故の教訓を踏まえた安全規制強化の根幹です。
 このいわゆるバックフィットの運用に当たっては、適用される個々の対策の特性に応じた適切なルールを設定することが必要です。
 例えば、今回の法改正に伴う安全対策の強化策の中には、施設の設計思想の大幅な見直し等を伴うものもあり、ただ単に対応のみを急がせると、設計や工事に不備が生じ、実効的に施設の安全性を向上させることができなくなる可能性もあります。こうした点も踏まえて、一定の準備期間や対応措置期間を含めた運用ルールが必要であります。
 また、一たび適用されることになれば、バックフィットの適用で要求した基準を満たせない原子力施設に対しては運転の停止や許認可取り消しといった強制措置があり、必要な安全対策を厳格に義務づけていくこととなります。
 次に、運転期間の制限に係る延長について御質問をいただきました。
 運転期間の年限を原則四十年としているのは、原子炉設置許可の審査に関して、必要な設備、機器等に係る設計上の評価が運転開始後四十年の使用を想定して行われていることが多いことを考慮したものです。
 また、個々のプラントごとに施設の状況が異なることも踏まえ、運転期間の例外を一切排除するのではなく、一定の要件を満たして認可を受けた場合には、運転期間の延長を可能とする余地も残しています。ただし、最新の技術的知見を踏まえた基準を満たすことが求められることから、実際の延長が認められるのは例外的な場合に限られると考えております。
 なお、運転期間の制限制度は、原子炉の運転を四十年間認めるのではなく、今回提出している法案による規制強化が施行されますと、最新の技術的知見を踏まえた技術基準に適合していない原子炉は、四十年以内であっても運転をすることができなくなるということをあわせて申し上げたいと思います。
 次に、公開性、透明性、市民参加について御質問をいただきました。
 御指摘のとおり、原子力の安全に関する情報は広く公開するとともに、原子力規制庁の意思決定プロセスやその根拠等について、国民から見て、オープンで、透明性のあるものとすべきと認識しております。
 したがって、原子力施設に係る安全審査等、原子力規制庁における意思決定は、主として有識者による議論や意見を踏まえたものとなりますが、こうした意思決定の過程を公開していく考えです。また、有識者のみならず、市民との対話、情報共有の機会を設け、国民各層の声を直接に聞くような広聴活動にも注力してまいります。
 次に、防災指針の見直しについて御質問をいただきました。
 防災指針については、今般提出している法案において、原子力災害対策指針として新たに法定化することとしており、その内容につきましては、本年三月の原子力安全委員会の中間取りまとめを踏まえて本法案の施行の段階で告示するなど、順次反映していくこととしたいと考えております。
 とりわけ、UPZやPAZ、オフサイトセンターについては、地域防災対策の見直しを進める上で極めて重要な事項でありますので、本法案施行直後の告示に反映をする考えであります。
 他方、被曝医療等、引き続き専門的、技術的な検討を要するものにつきましては、関係府省で可能な限り早期に結論を得るべく検討を進め、原子力規制庁に引き継いで、その結果を原子力災害対策指針に順次反映していく予定としております。
 なお、防災対策については、これで全て完了というものではありません。いわゆる安全神話に陥らず、不断の向上を図っていくことが重要であり、防災指針や地域防災計画等についても継続的に見直しを図っていく所存であります。
 次に、SPEEDIの試算結果の自治体への提供について御質問をいただきました。
 今回の事故の教訓を踏まえた防災対策については、新たな体制のもとで、防災対策の強化に向けて、現在、関係省庁や自治体など関係機関と具体的な検討、準備を進めているところであります。
 一方、原子力防災の見直しは寸断なく進めていくものであることから、現行の体制においても可能な限り準備を進めていくことが重要であると考えます。
 このため、御指摘のSPEEDIの試算結果の提供に係る要望につきましては、法律案の成立後、できるだけ早い段階で準備を整えて対応できるよう、私としても最大限協力していきたいと考えております。
 最後に、国会事故調との関係について御質問をいただきました。
 立法府において設置された国会事故調査委員会の重要性は言をまたず、そこで事故の総括を通じてまとめられる提言を踏まえて、政府においてもさらなる検討を行わなければならないと認識しております。
 昨年八月の閣議決定でも、当面の見直しを行った後により広範な検討を行うこととしておりまして、今後、国会事故調査委員会の提言等を含めて、新組織が担うべき業務のあり方や、より実効的で強力な安全規制組織のあり方について、平成二十四年末を目途に成案を得るべく取り組んでいくこととしております。
 いずれにしても、原子炉は、稼働か否かにかかわらず、常にしっかりとした安全規制が必要であり、一日も早く、新たな組織のもとで、放射線から人と環境を守る規制と防災体制の強化を実現することが必要と考えております。
 以上でございます。(拍手)

〔国務大臣平野博文君登壇〕

○国務大臣(平野博文君)
 服部議員から、滋賀県へのSPEEDIの試算結果の提供についてのお尋ねがございました。
 文部科学省におきましては、これまで、従来のEPZに係る十九道府県につきましては、各都道府県の要望に応えたSPEEDIの試算の実施及びその結果の提供を行ってまいりました。その結果につきましても、文部科学省のウエブサイトにおいて公開しているところでございます。
 先ほどの細野大臣からの御答弁と多少ダブりますが、政府といたしましては、原子力規制庁の設置等に係る関連法案の成立後、速やかに、原子力安全委員会が本年三月に取りまとめました防災指針の見直しに関する考え方を踏まえて、新たに原子力災害対策指針を定める、こういうことにいたしております。
 本方針を踏まえて、UPZの設置に伴う滋賀県へのSPEEDIの試算結果の提供を含め、やるべきであると考えております。
 文科省としましては、これまで、関係地方公共団体との間で、計算条件についての調整など、可能な準備については前倒しして取り組んできたところでございますから、滋賀県の要望につきましても、新たな指針を踏まえ、速やかに対応してまいる所存でございます。
 以上でございます。(拍手)

〔柴山昌彦君登壇〕

○柴山昌彦君
 社会民主党服部良一議員からの御質問に、政府案との対比を意識してお答えいたします。
 まず、法律上の権限の行使について御質問をいただきました。
 原子力規制委員会は合議制の機関として組織されますので、原子炉の安全基準の策定、原子炉の基準適合審査やその評価等を初めとする原子力規制委員会の意思決定は、全て、原子力規制委員会の合議によりなされることとなります。
 原子炉施設の安全審査に用いる指針の策定を例に具体的に申し上げますと、この指針の整備に当たっては、原子炉安全専門委員会の専門部会において、最新の科学的知見の進展に応じ、逐次見直しのための検討が行われることになり、その検討の結果が、原子力規制委員会の決定により指針として策定され、適用されることとなります。
 このような指針の策定等に関するプロセスは、現行制度の運用を踏襲したものとなっているところであります。
 次に、情報公開について御質問をいただきました。
 今般の原子力事故を受けて新たに創設される原子力規制機関は、原子力利用における安全の確保に関し、国民の不安を払拭し、その信頼に応えるものとして組織されなければならないことは申し上げるまでもありません。
 その意味で、原子力規制委員会において、透明性を確保し、国民への説明責任を全うすることが重要であり、規制情報、委員会議事録等については、原子力利用における安全の確保の観点から判断される例外的事項を除き、できる限り公開していくという方向で検討されるべきものと考えております。
 次に、委員の中立性確保策について御質問をいただきました。
 自公案では、原子力規制委員会の委員長及び委員については、利益相反を排除するという観点から、原子炉等規制法等の規制対象者はこれにつくことができないこととされております。そして、これらの者の任命に当たっては、両議院の同意を必要とすることとされております。
 したがって、まずは、適切な人事案が政府から示された上で、しっかりと国会において判断が行われることが期待されるところであります。
 なお、原子力規制委員会の審査会等の委員については、法律上は欠格事由を明記しているわけではございませんが、原子力規制委員会の委員長及び委員に関する欠格事由の考え方等を踏まえ、適切に下位法令や運用において制約が設けられるものと考えております。
 次に、ノーリターンルールについてのお尋ねがございました。
 原子力規制委員会の独立性を確保する上で、原子力安全規制に係る事務組織の職員が、経済産業省等の原子力推進官庁や原子力事業者に属する者から、組織を超えてその人間関係に基づく影響を受けることのないよう、制度的に担保することが重要であります。
 そのための措置が、ノーリターンルールの設定であります。
 政府の方針では指定職と政令職が対象とされていますが、先ほど来お話があるとおり、政令職の場合は例外が認められ、結局、ノーリターンルールがきちんと適用されるのは指定職の七名だけと聞いております。総理からは、立ち上げにおける限界などというお話もありましたけれども、ノーリターンルールを実効的に機能させるためにはこれでは到底不十分でございまして、幹部職員のみを対象とするのではなく、末端の職員についても全て対象に含めるのが適当です。
 あわせて、自公案においては、原子力規制庁の職員の職務執行の公正さに対する国民の疑惑または不信を招くような再就職についても規制することとしております。
 このことにより、他省庁の組織の論理に左右されず、原子力利用における安全確保に取り組む原子力規制組織が形づくられることとなると考えます。
 次に、原子炉等規制法の厳格化に対する自公案の考え方についてのお尋ねがございました。
 この点につきましては、自公案は、原子力規制に係る組織論を中心に関係法律の整備を行ったものであります。このため、自公案では規制の内容に係る事項について言及がされておりませんけれども、このことは、このような措置が必要ないということを意味しているわけではございません。
 これらの事項については、原子力規制を独立かつ一元的に行う組織として原子力規制委員会が創設されることを前提に、今後の審議を通じて、必要な事項については盛り込むということも考えられます。
 次に、原子力安全委員会の安全審査指針類及びその見直しに係る中間取りまとめと、新規制組織が定める各種安全基準との関係についてのお尋ねがございました。
 各種安全基準は、客観的な科学的知見に基づき、新規制組織の判断において今後新たに定められるものと考えられます。他方、安全審査指針類の見直しに係る中間取りまとめを拝見した限りにおいては、IAEAの安全基準や最新の科学的知見を取り込んだものとなっており、これについては一定の評価ができるものと思われます。
 したがって、新規制組織においては、安全審査指針類の見直しに係る中間取りまとめの内容等を踏まえて各種安全基準を策定することになるのではないかと思っております。
 次に、バックフィットに対する考え方についてのお尋ねがございました。
 バックフィットについては、最新の科学的知見をアップデートしていくというものであって、原子力利用における安全の確保という観点からは適切な規制であり、今後の審議を通じて、私どもの案に盛り込むことも考えられます。
 次に、事故検証を踏まえた新たな基準がない以上、再稼働に向けた手続は中断すべきではないかとのお尋ねがございました。
 そもそも、安全基準は、科学的知見に基づくものであり、どの組織が策定したとしても、これが科学的知見に適合していれば直ちに適用させるべきものであるとは考えられます。
 しかしながら、今般の原子力事故を受けて、原子力利用における安全の確保に関しては、国民の不安を払拭し、その信頼に応えるものとすることが何よりも重要となっております。
 このことを踏まえますと、新たな原子力規制組織のもとで新たな基準が定められるのが望ましいと考えます。
 次に、原発の四十年運転規制について御質問いただきました。
 原発の運転制限については、政府から、四十年ならば四十年とする合理的根拠、例外事由等を明確に示していただいた上で議論を尽くしていきたいと思っております。
 次に、原子力安全規制に係る公開性、透明性、市民参加について御質問いただきました。
 今般の原子力事故を受けて、原子力利用における安全の確保に関しては、国民の不安を払拭し、その信頼に応えることが何よりも重要となっております。そのためには、原子力安全規制に係る公開性、透明性を確保することは欠かせません。先ほど申し上げた、情報公開の徹底、パブリックコメントなどの活用が図られることを期待しております。
 次に、国会事故調査委員会との関係について御質問をいただきました。
 国会事故調査委員会の報告書は六月にも提出されることとなっていると聞いています。しかし、現行体制の問題として既に明らかになっている事項も少なくなく、これらに早急に対処し、原子力利用における安全の確保を強固なものとし、国民の不安を取り除くことは、政治の務めであると考えております。
 そこで、現時点で考えられ得るベストの案を法案として提出することとし、原子力規制委員会をひとまず立ち上げて運用させた上で、三年以内に、原子力事故調査委員会の報告の内容等を踏まえた組織のあり方の見直しを行うという整理をしているところであります。
 最後に、外部からの監視、評価システムについて御質問いただきました。
 原子力規制委員会は、それ自体、三条委員会として設置され、委員長及び委員の職権の独立の行使が認められる以上、その職務執行をチェックするための特別の第三者機関を新たに設ける必要は乏しいと思われます。
 また、原子力事故の原因究明につきましては、たとえ法律上の規定がなくとも、原子力規制委員会が行うことができるのは当然であります。
 また、第三者的な観点から、より客観的で公正中立な調査が必要ということであれば、国会事故調査委員会のような組織を別途設けることも考えられます。
 したがって、国会事故調査委員会の後継組織を現時点で恒久的なものとして設ける必要はないと考えております。
 以上でございます。(拍手)

○副議長(衛藤征士郎君)
 これにて質疑は終了いたしました。

○副議長(衛藤征士郎君)
本日は、これにて散会いたします。

第180回 国会 衆議院 憲法審査会

第180回 国会 衆議院 憲法審査会 第5号
平成24年5月24日(木)
午前九時開議

【日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法の各条章のうち、第一章の論点)】

○大畠会長
 これより会議を開きます。
 この際、幹事会で決定されました現行憲法の各条章ごとの検証の進め方について、会長から御報告いたします。
 幹事会の協議によりまして、本憲法審査会では、現行憲法の各条章ごとの検証を行い、論点を抽出し、整理していくことといたしました。
 つきましては、日本国憲法の論点を抽出、整理するため、各委員から御意見をお述べいただきたいと存じます。
 なお、委員の御発言に際しましては、意見の当否に関する論争というよりも、各論点に関する意見表明に主眼を置くという趣旨に御配慮いただきたいと存じます。
 なお、表明されました意見の趣旨や論拠を明確にするために、必要があれば発言者に対する質問を行っていただくことは結構でございます。
 充実した調査が行えるよう、委員各位の御協力をお願い申し上げます。

○大畠会長
 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に日本国憲法の各条章のうち、第一章の論点について調査を進めます。
 本日の議事について申し上げます。
 まず、衆議院法制局当局から説明を聴取し、その後、各委員からの意見表明等を含む自由討議を行うことといたします。
 それでは、衆議院法制局当局から説明を聴取いたします。衆議院法制局法制企画調整部長橘幸信君。

○橘法制局参事
 衆議院法制局の橘でございます。
 大畠会長を初め幹事会の先生方の御指示によりまして、このたび、日本国憲法全十一章百三カ条の検証が行われるに当たりまして、お手元配付のような資料を憲法審査会事務局の方々とともに作成させていただくことになりました。あわせて、先生方の御意見の表明に先立って、その概要の御報告をさせていただくことになりました。どうかよろしくお願いいたします。
 本日は初回でございますので、冒頭、簡単に資料の御説明をさせていただきたいと存じます。
 お手元に二種類の資料を配付させていただいてございます。

まず一つは、A3一枚紙の「憲法に関する主な論点」と題する論点表でございます。この論点表の作成に当たりましては、幹事会等で御示唆いただきました方針を私なりにそんたくすれば、大要、次のようなものであったと認識してございます。
 一つは、二〇〇五年、平成十七年四月に取りまとめられました中山調査会の衆議院憲法調査会報告書、これをまず第一の基礎的データベースとした上で、さらに、この間に発表されました各党各会派の憲法提言や憲法改正草案などによってその論点を補充しながら、現時点における国会での憲法論議の概要を示すようなものとすること。

二つ目といたしまして、明文改憲の御主張と、改憲は必要ないという典型的な護憲の御主張との二項対立的な意見の整理のみならず、あくまでも現行憲法の検証であるという枠内において、現行法体系のままでよいわけではないが明文改憲によらずとも立法措置での対応でも可能だ、そのような御意見を含めて、ABC、三つに類型化しながら整理すること。
 以上の二つでございます。

もう一つの資料は、この論点表に基づいて、作成の基礎となった各会派の御提言や先生方のこれまでの御発言及びこれらに関する、大変拙いものかもしれませんが、用語解説などの基礎的事項を取りまとめた詳細な資料、衆憲資第七十六号と題する参考資料でございます。
 これらの資料は、時間的制約あるいは私どもの能力的な制約のために、決して網羅的なものとはなっておりません。至らない点が多々あるとは存じますが、あらかじめ御容赦をお願い申し上げる次第でございます。あくまでも、先生方の御意見表明に当たっての御参考というふうに御認識いただければ幸いでございます。
 それでは、早速ですが、日本国憲法第一章天皇の章の主要論点につきまして、この一枚紙の論点表に基づきまして、ごく簡潔に御報告をさせていただきたいと存じます。
 まず、冒頭の米印でありますけれども、現行の象徴天皇制につきましては、衆議院憲法調査会の最終報告書でも各党の憲法提言等においても、今後とも維持されるべきものであるとして、その存廃を当面の憲法問題としようとする意見はございませんでした。日本国憲法によって象徴という形で定式化された我が国の天皇制は、国民から支持され、確実に定着していると評価されているものと理解されているように存じます。

その上で、この象徴天皇制を前提とした上で、天皇の章について議論されているのは次の大きな三つ、三点であるかと存じます。
 すなわち、天皇の地位に関する論点、皇位の継承に関する論点、天皇の行う行為に関する論点の三つでございます。
 まず第一の、天皇の地位に関する論点でありますが、これは、天皇が象徴であることを前提として、さらに元首であることを憲法上明記するべきか否かという論点でございます。
 論点表Aの欄の、明文改憲が必要とするお立場からは、我が憲法のもとにおいて、学説上、誰が国家元首であるか疑義があるような状態がある、これはよくない、明確に天皇が国家元首の地位にあることを明記すべきであるというお立場でございます。
 これに対して、現行憲法の象徴のままでよい、天皇が元首であることをわざわざ明記する必要はないというCの立場ももちろんございます。
 なお、このCの立場には大きく二つの異なる見解があるように見受けられます。
 一つはC1でありまして、現行憲法上天皇が元首であることは明らかであるから明文改憲は必要ない、こういうものでございます。
 さらに、この見解の中にも二つの異なる理由づけがあるように存じます。
 一つは、単に、元首であることを憲法改正までして明記する必要はないというものでありますけれども、しかし、もう一つの理由づけにも御留意される必要があるかと存じます。すなわち、元首などという法的表現はヨーロッパの国王、君主についていうものであって、我が国の天皇は、一時期を除いて一貫して、権力の象徴ではなく権威の象徴であった、その意味では、元首以上の存在であり、象徴という表現こそふさわしい、象徴天皇のままにしておくことこそ、その本来の地位にふさわしいものであるとする理由づけであるかと存じます。
 他方、現行憲法の象徴のままでよいというもう一つの御意見はCの2でありまして、天皇を元首と認識するのは難しいし、また、元首と呼ぶのは適当でないというものでございます。
 すなわち、従来の学説上、元首という法的概念は一般に、外交を通じ国を代表し、行政権の全部または一部を有する国家機関という意味に用いられてきたものであり、その意味では、国事行為しか行わず、国政に関する一切の権能を有しない天皇は元首たり得ず、これを元首というのは用語法として間違っている、このような理解を背景にするものであるかと存じます。

 第二の論点は、皇位継承に関する論点でございます。
 現行憲法は第二条で、皇位は世襲のものであるとだけ定め、これを受けた法律である皇室典範第一条において、皇位は皇統に属する男系男子が継承すると定めております。
 この点について、皇室の現状に鑑みて、今後とも皇室を維持するためにも、女性天皇、さらには女系天皇を認める必要があるのではないのかという立場が一方にございます。これを、憲法改正をして認めようとするお立場が論点表のAの2のお立場であり、同じことを皇室典範という法律改正で対処すればよいのではないかとする御主張がBの2のお立場です。
 ただし、このいずれの立場にも、女性天皇を認めるにとどまるのか、それとも女系天皇まで認めることとするのかについては意見の相違があるように見受けられます。
 これに対して、現行の男系男子による皇位継承を維持すべきであるとする御主張もございます。
 この見解の中には、女性天皇や女系天皇の主張を明示的に否定するためにも、憲法上、男系男子による皇位継承を明記すべきであるとするA1の立場がございます。
 また、先ほどのA2やB2の主張の背景にある、今のままでは皇統の維持、皇位継承者の確保が難しくなってしまうのではないのか、これを確保する必要があるという趣旨に鑑みて、男系男子による皇位継承のもとにおいてもこのような趣旨を確保するために、皇室典範の改正によって、旧皇族の皇籍復帰や旧皇族の男系男子を養子に迎えることができるようにすべきとの意見もございます。これがBの1でございます。
 もちろん、現在のままでよい、一切さわる必要はないとするCの御意見もございます。

 第三の論点は、天皇の行為についてでございます。
 これには二つの小論点が含まれております。
 一つは、現行憲法において、天皇の国事行為は、内閣総理大臣の任命、最高裁長官の任命のほか、憲法第七条において、法律などの公布や国会召集、衆議院解散など十個の行為に限定されているところでありますけれども、このほかにも、宮中祭祀などは我が国の文化的伝統であり、明文改憲によって国事行為に追加するべきとする見解であります。これに対しては、政教分離原則などの関係から、そのような宗教的色彩を帯びる行為は国事行為として位置づけるべきではなく、現行のままでよいとする見解がございます。

 もう一つの論点は、天皇の公的行為についてでございます。
 現行憲法では、第四条で、天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しないと定めるとともに、その国事行為については、今申し上げましたように、憲法に限定列挙されておりますが、しかし、これらの国事行為以外の天皇の行為は全て私的な行為かというと、そうではございません。先生方御承知のように、現実には、天皇陛下は、国会開会式でのお言葉や外国訪問、被災地でのお見舞いや地方への行幸や各種行事への御臨席などをしておられます。そして、これらについては、一般的な運用解釈では、天皇の象徴性に基づく象徴行為とか公的行為などと呼ばれて、国事行為でも私的行為でもないと位置づけられているところでございます。
 このような実際の憲法運用を前提に、天皇の象徴としての性格を強固にするとともに、これに対する内閣の助言と承認という責任政治を明確にするためにも、憲法に公的行為を明確に位置づけるべきだとする御意見がございます。これが明文改憲を主張するAの欄の御意見でございます。
 これに対して、憲法改正を要せずとも皇室典範等に明記すれば足りるとするのがBの欄の見解でございます。
 そして、そのようなことは必要なく、現状の運用のままで全く支障ないではないかとするのがCの1でございます。
 これに対して、Cの2の見解は、現在の公的行為のような運用自体がおかしいのであって、天皇が国政に関する権能を有しないとする現行憲法の規定を厳格に守るべきであって、公的行為として整理されている先ほどのような行為は、あくまでも憲法の条文に忠実に、私的行為として考えるべきであるとするのがCの2の見解でございます。
 以上は、天皇制に直接に関連する論点でございましたが、憲法冒頭の第一章に規定されるべき事項としてそのほかに御議論がなされている論点として、国旗・国歌や元号の御議論がございます。
 これについては、諸外国の憲法、例えばフランスの現行憲法であります第五共和制憲法第二条の第二項や第三項の規定によりまして、国家の表象、国旗のことでありますが、これは青、白、赤の三色旗であるとか、国歌はラ・マルセイエーズであるといった規定などに準じて、我が国の国旗は日の丸、日章旗であり、国歌は君が代であること、さらには、元号についても憲法に明文規定を置くべきとするAの欄の明文改憲の御主張がございます。
 これに対して、既に国旗・国歌法が制定され、元号法も制定されているのだから、わざわざそのようなことをする必要はないとするCの欄の御意見もございます。
 そのほかにも、第一章天皇の章に関しては幾つかの明文改憲の御主張がなされている論点もございますが、大きな論点は以上であるかと存じます。
 ちょっと早口で拙いものでございましたが、御指示による御報告を終わります。ありがとうございました。

○大畠会長
 以上で衆議院法制局当局からの説明聴取は終わりました。

○大畠会長
 これより各委員からの意見表明等を含む自由討議に入ります。
 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派を代表する委員が順次発言を行い、その後、各委員が発言を行うことといたします。
 発言は自席から着席のままで結構でございます。
 発言時間の経過につきましては、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせをい。

(中略)

○柴山委員
 会長、御指名ありがとうございます。
 まず、冒頭、この憲法審査会で各党の改正憲法草案を取り上げるべきかどうかということについては、山花幹事からは、そういった草案を出すよりは各党で議論をするべきだというお話がありました。また、赤松幹事からは、従として取り上げるのはよろしいのではないかという御説明がありました。
 ただ、もし、こういった草案をこの場で提起することがなければ、やはり憲法の具体的な見直しというものにはドライブがかからないのではないかというように思います。現に、私たち自民党がこの改正憲法草案をこういう形でお示しすることによって、批判も含めて、議論がオープンに憲法審査会という形で展開をされるのだと思いますし、また、先ほど緒方委員の方からも御指摘があったように、元首というワーディングを使うことが、若干誤解が生じているのではないかということも、こういったオープンな議論を通じて明らかになってくるというように思いますので、ぜひ御理解を賜りたいというのがまず第一点目でございます。
 元首制度については、私から繰り返すことはいたしませんけれども、今申し上げたように、元首とすることが、天皇の統治権の総攬者の復活を意味するということは全くの誤解であるということを私からも強調させていただきたいと思いますし、外交的な配慮も含めて、やはり、元首についていろいろと争いがあったり、あるいは儀礼上混乱が生じたりということは避けなければいけないということを申し上げたいと思います。
 続きまして、天皇の公的行為についてですけれども、自民党の改正草案ではこれを明文化いたしておりますけれども、ただ、その一方で、その公的行為の範囲がどんどん広がって、それに対して内閣等を通じた民主的コントロールが及ばなくなってしまうのではないかという懸念は、これはやはり共有する部分でもありますので、その公的行為の枠づけ、あるいはどういう形でそれに民主的コントロールを及ぼしていくかということについては、国会等を通じて議論をしていくべきだと思っております。
 特に、被災地への天皇陛下の御訪問等、最近、天皇陛下の御公務が非常に多忙をきわめているという実態がありますので、これは早急に整理が必要ではないかというように思っております。
 続きまして、皇位継承の問題なんですけれども、これについても、きちんとオープンに議論をし、そして、憲法の理念との関係、男女平等原則との関係も含めて突っ込んだ議論をしていくということが必要だと私も考えております。内閣官房長官が、女性天皇と女系天皇の区別を聞かれて国会答弁でしどろもどろになってしまうという事態は、これは私は極めて遺憾でありまして、しっかりとした、概念の混同、混乱がないような形でオープンに議論をしていく必要があるということを意見として申し上げたいというように思っております。
 以上でございます。

第180回 国会 衆議院 憲法審査会

第180回 国会 衆議院 憲法審査会 第4号
平成24年4月5日(木)
午前十時開議

【日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(憲法改正問題についての国民投票制度等)】

○大畠会長
 これより会議を開きます。
 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に憲法改正問題についての国民投票制度等について調査を進めます。
 本日の議事の順序について申し上げます。
 まず、衆議院法制局当局から説明を聴取し、その後、自由討議に入ることといたします。
 それでは、衆議院法制局当局から説明を聴取いたします。衆議院法制局法制企画調整部長橘幸信君。

○橘法制局参事
 衆議院法制局の橘でございます。
 本日は、幹事会での御協議に基づきます大畠会長からの御指示に従いまして、憲法改正国民投票法附則第十二条に定める憲法改正問題についての国民投票制度等をめぐる諸問題につきまして、御報告させていただくことになりました。
 もとより、拙い御報告にすぎませんが、衆議院憲法調査会設置以降十年余りにわたりまして、与野党の多くの先生方から御教示をいただいてまいりました。そのようなことを思い起こしながら、衆議院の憲法調査会及び憲法調査特別委員会の議論の経過と概要を中心に、本日の先生方の自由討議の素材を御提供申し上げる観点から御報告をさせていただきたいと存じます。
 早速ですが、お手元配付の資料を含めまして、内容に入らせていただきたいと存じます。
 我が日本国憲法は、その前文の第一項第一文の末尾で、「ここに主権が国民に存することを宣言し、」と述べ、また、第一条の天皇の地位に関する条項におきましても、「この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」と規定して、この憲法が国民主権の原理に基づくことを明確にしております。
 この国民主権の意味するところにつきましては、憲法学説上大いなる御議論があるところではありますけれども、その最大公約数的なところを申し上げるとするならば、国家の政治のあり方を最終的に決める力、すなわち権力あるいは権威が国民にあることを意味するものと理解されているところでございます。
 ただ、そのような力を国民がどのような形で行使することができるのかについては議論がございます。すなわち、憲法第十五条において保障されている成年者による普通選挙のもとでの選挙権の行使、すなわち、国民代表でいらっしゃる先生方、国会議員を通じての国政参加の方法以外に日本国憲法が明文で認めているのは、第七十九条に定める最高裁判所裁判官の国民審査、第九十五条に定める地方自治特別立法における住民投票、そして第九十六条の憲法改正国民投票の三つであるというふうに言われております。
 これら以外の場面において、国民主権の原理に基づいて、法律でもって国民投票のような直接民主制を創設することができるのか、できるとすれば、それはどのような条件のもとにおいてであるのかといった問題が本日のテーマの基底にある問題であるかと存じます。
 と申しますのも、前文第一項の冒頭におきまして、「正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」とあることや、憲法第四十一条の、国会は、国の唯一の立法機関であるとの規定から導かれます国会単独立法の原則、すなわち、法律の制定については国会のみが関与し得るとの原則でありますけれども、これに鑑みますれば、日本国憲法は、代表民主制、間接民主制の原則を採用しているのだ、そういう解釈が一般的になされているところだからであります。
 ところで、このような現行憲法下における一般的な国民投票制度をめぐる問題は、実に古くて新しい問題であると言っても過言ではないと存じます。
 例えば、新憲法施行の息吹がまだ残っておりました昭和三十年代に内閣に設置されました憲法調査会でも、この論点につきまして活発な御議論がなされており、その報告書においては、わざわざ「国民投票制度」と題する独立した一節が設けられて、賛否両論の概要がまとめられておるのでございます。
 お手元配付の資料一に若干詳細な引用を参考につけておきましたけれども、そこでは、特定の問題に対する国民投票制度について、次のような両論があったことを紹介しております。
 すなわち、一方では、代議制ないし議会政治のもとにおいては、国民の意見は国会議員の選挙という形式においてのみ表明されるほかないのであるが、選挙権の行使という方法とは別に、特定の問題に対して、直接に国民の意見を表明するための国民投票制度を拡充すべきであり、それによって重大な政治問題を国民自身が決定することができるとともに、また議会政治を補完することができるとする積極論でございました。ちなみに、この見解を強力に主張しておられたのは、若かりしころの中曽根康弘先生でございました。
 他方では、特定の問題に対する国民投票制度は民主主義に反するものであるとし、または国民投票制度には種々の欠陥があり、むしろ議会政治、議院内閣制の育成を図るべきであるとし、したがって、新たに国民投票制度を設けるべきではないとする見解も述べられております。
 そこでは、国民投票制度は決して民主主義的なものではないとし、その理由として、デモクラシーとは、合意を目指しての努力としての討論や説得の過程にこそその本質があるのだ、だから、みずから討議、審議をなし得ない多人数の国民に、単にイエスかノーの結論だけを問うという国民投票制度は決してデモクラシーとは言えないのだ、そういう趣旨のことが述べられております。
 なお、内閣憲法調査会においては、この後者の消極論が大多数の意見であったと総括されておりました。
 以上の先行する議論を踏まえまして、衆議院の憲法調査会におきましても、この論点に関して活発な御議論が繰り広げられました。最終報告書においては、「直接民主制」と題する独立した項目が設けられ、その中の一項目として、この国民投票制度に関する論点が取り上げられております。お手元配付の資料二にその部分を抜粋してまいりました。
 そこでは、積極、消極の両論が併記されておりまして、いずれの見解も多数意見となるには至らなかったとされております。
 すなわち、一般的な国民投票制度を導入すべきであるとする積極論の立場からは、価値観が多様化する中で、さまざまな国民ニーズや意見を反映させていくべきこと、あるいは議会政治の補完の必要性ということが述べられる一方で、これを導入することに慎重な立場からは、民主主義の本質は討議の過程にあるのに、政策の是非を判断する手段を必ずしも有しない国民に対して、直接にその意思を問うことは危険であるとか、議会制民主主義を健全に機能させていくことこそがまずは重要であるといった意見が述べられております。
 参考人の意見陳述におきましても、大東文化大学の井口秀作先生や京都大学の大石真先生のように、直接民主制の導入自体は、憲法前文の「代表者を通じて行動し、」という文言と必ずしも矛盾するものではないとか、民主主義にとっては、人を選ぶことも重要だが、それ以外に、我々のことは我々で決めるという要素を取り入れることも重要であるとする積極的な御意見もあった一方で、東京大学の森田朗先生のように、国民の要望を的確に酌み上げて政策に結びつけていくのは、基本的には国会議員の仕事であるとする慎重な御意見もございました。
 憲法調査会が最終報告書を取りまとめてその調査活動を終了した後、平成十七年、二〇〇五年の八月のいわゆる郵政解散・総選挙後に召集されました第百六十三回特別国会におきまして、憲法改正国民投票法制の整備のために設置されましたのが衆議院の憲法調査特別委員会でございました。この特別委員会において、今御紹介申し上げましたようなそれまでの御議論を踏まえつつ、いよいよ国会の場で本格的に国民投票制度に関する御議論が開始されたのでございました。
 同特別委員会におきましては、国民投票法制の制度設計をするに際して、網羅的な論点整理をまずは行うべきという観点から、諸外国の国民投票法制を含めた広範な調査を行うこととされました。
 お手元に、資料三として、二度にわたります欧州各国の国民投票法制に関する調査のうち、本日のテーマでございます国民投票の対象範囲に関する部分を抜粋した資料を配付してございますので、御参照いただければと存じます。それぞれの各国のより詳細な内容は、衆議院の憲法審査会事務局におきまして整理していただきました、お手元配付の衆憲資第七十五号の二十六ページ以下にも整理されておりますので、あわせてごらんいただければ幸いでございます。
 これらの資料の概要を、誤解を恐れずに大ざっぱにまとめてみますと、まず、調査対象となった国々におきましては、基本的に、憲法改正以外の事項についても国民投票の対象としている、まずこのことを指摘できるかと存じます。もちろん、そのような諸外国においては、そのような一般的国民投票ができるという旨の根拠規定は、憲法の中に明文であるわけであります。
 次に、国民投票の対象とされている事項につきまして、国民投票を行うことが義務的か任意的か、あるいはその国民投票の結果に、議会や政府を拘束する、そういう法的拘束力を持たせているのかいないのかといった論点は、制度設計上大変重要であると存じますが、国民投票の対象範囲を考察されます本日の先生方のテーマに照らして示唆的であると思われるのは、一つ、国民投票に付するかどうか及びその案件を誰が決めるのかといった発案権の所在、二つ、国民投票に付してはいけない案件というようなものをあらかじめ想定しているのかどうかといった論点も大変重要であるかと存じます。
 例えば、前者の発案権、発案者に関する論点につきましては、いずれの国も、大体におきまして、議会が発案のイニシアチブをとることを基本としているように存じます。しかし、一覧表で見ていただきますとおわかりになられますように、スペインやフランスのように、政府提案を認めている国もございます。さらには、イタリアやスイス、スロバキア、さらには、一定の限定つきではございますけれども、二〇〇八年憲法改正後のフランスなどのように、一定数以上の署名をもってすれば国民に発案のイニシアチブを認めている、そういう国もございます。
 また、後者の国民投票の付議禁止事項に関する論点につきましては、イタリア、エストニア、オーストリア、スロバキア、デンマークのように、租税や予算などを対象外とする国が少なくございません。
 また、そのほか、特に調査派遣団の先生方を驚かせたのは、スロバキア憲法におきまして、最も憲法事項であります基本的人権に関する事項、これが国民投票の対象外とされていることが大変注目され、目につきました。
 そのような背景として考えられることは、租税や予算などにつきましては、特定の利害を離れた全国民的見地から、議会制民主主義の過程の中で国会議員の先生方こそが決められるべき事項であるといった思想が、また、基本的人権につきましては、基本的人権の本質は少数者の人権保障、いわば異端の自由にあるといったことに鑑みれば、そもそも多数決で決めるべき事項ではないといったような思想がそれぞれ読み取れるように存じます。
 なお、イタリアにおいて、憲法改正以外の国民投票の対象は、法律などの廃止であって法律などの制定ではないとされることにつきましても、海外調査の中では、あくまでも、一旦議会制民主主義のルートに乗せた上で、その行き過ぎを補正するのが直接民主制である、だから、法律の廃止のみが国民投票の対象なのだといったヒアリングの調査を頂戴してございます。
 この海外調査におきましては、法制度面のみならず、その実際の運用における課題や問題点につきましてもさまざまなヒアリング調査を行っておられますけれども、例えばスイス、これは世界でも最も国民投票について豊富な経験を持つ国でございますが、その背景には、民族や言語のみによっては国民統合を図ることは困難である、そのため、国民投票の頻繁な実施によって、これが国民を統合する作用を果たしているという面もあるのではないのか、そのような指摘もございました。
 以上のような調査を踏まえまして、平成十八年の四月に至りまして、憲法改正国民投票法制に関する論点一覧表が取りまとめられました。そして、これに基づきまして、全会派参加のもと、理事懇談会の形で行われました実務者協議の場で、七回、合計十時間にわたる活発な御議論がなされました。そこでの御議論のうち、国民投票法案の対象範囲に関する部分を抜粋したものが、お手元配付の資料四でございます。
 そこでも、一方では、一般的な案件に関する国民投票制度の構築は、憲法改正にかかわる大きな問題である、現時点においては、やはり憲法改正国民投票に限定した議論をすべきである、あるいは、欧州各国の調査でもたびたび指摘されていたように、国民投票は、往々にして、その時々の政府に対する信任、不信任を問うものとなってしまう危険性があるといった見解が述べられました。
 他方では、欧州各国の調査によれば、各国は、憲法改正の場合以外にも直接民主制の手法を、限定的にではあるけれども採用しているではないかとして、我が国も、間接民主制を補完するものとして、また、憲法四十一条の、国会が唯一の立法機関であることに反しない形での諮問的な国民投票制度としてこれを導入すべきである、あるいは、国民投票の経験がない我が国においては、まずは一般的な政治課題について諮問的国民投票を行い、その経験を踏まえて、国の最高法規である憲法についての国民投票を行う、そういうプロセスを踏まなければ、民主主義の誤作動につながりかねない危険性を感じるといった意見も述べられたところでございました。
 以上のような、約八カ月に及ぶ調査を踏まえまして、一般的国民投票制度に関する消極、積極それぞれの考え方から立案、提出されたのが、第百六十四回通常国会の会期末近くの同年、平成十八年五月二十六日に提出されました自民、公明両党の日本国憲法の改正手続に関する法律案と、民主党の日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案でありました。
 すなわち、両法案の題名に端的にあらわれておりますように、自民・公明案は憲法改正国民投票だけを対象とする一方、民主党案は、憲法改正国民投票に加えて、国会自身が発議をし、かつ、その結果に拘束されないという制度設計のもとに、国政における重要問題に係る案件につきましても国民投票を行うことができるものとしておりました。
 両法案は、提出直後の六月一日に、大変珍しいことではございますけれども、議員立法両案が本会議で趣旨説明、質疑が行われました後、同年九月召集の第百六十五回臨時国会におきまして、両法案審査のための小委員会が設けられ、そこで活発な議論及び一本化を目指した修正協議が行われました。
 以下につきましては、衆憲資第七十五号の四ページに非常に的確にまとめていただきました「法案・修正案の推移」の表がございますので、あわせ御参照いただければと存じます。
 一見、対極にあるように見えます両法案でありましたけれども、議論の過程では、双方から柔軟な意見が述べられておりました。
 特に、民主党側からは当初より、国政における重要問題に係る案件として想定しているのは、皇室典範のように憲法問題に準ずる事項、自衛隊のイラク派遣のように国家全体の運命に関する事項、安楽死などの国民の死生観、生命倫理に関する事項などであるとした上で、もし、国民投票に付すべき案件について明確に限定をかけておく必要があるというのであれば、今後の議論の中で、これを法律上限定することも含めて柔軟に検討、対処していきたい旨の御発言が、提出者のお一人でもありました鈴木克昌先生から明確に述べられておりました。
 他方、保岡興治先生初め自民・公明案の提出者からも、一般的国民投票制度の中でも、憲法改正に関連する問題に限った諮問的、予備的国民投票制度を念頭に置くのであれば、それは検討に値する、そういう旨の御発言がたびたびなされておりました。
 ちなみに、ここで言う諮問的というのは、国民投票の結果に法的拘束力がないことをいうもので、特段の御説明を要しないかもしれませんが、予備的というのは少々わかりにくいかもしれませんので、一言御説明を加えておきたいと存じます。
 この予備的国民投票制度の発案者は、私の記憶では、現在も委員でいらっしゃり、ここにもおられる赤松正雄先生だったと存じます。その赤松先生の前で私が解説するのは、何か非常に面映ゆいのですけれども、間違ったら後で御指摘いただくとして、赤松先生は次のように言っておられました。
 国会で詳細な憲法改正原案を作成していきなり国民投票に付するというのでは、いささか国民の間に戸惑いもあるだろうし、また、その憲法改正のテーマの選び方や内容に国民の意思が十分に反映しない場合もあるかもしれない、こうされた上で、むしろ、あらかじめ国民の意思を推しはかるという意味で、まずは予備的にアンケート調査的な国民投票を行い、しかる後に、国会は、その全体的な国民の意思を踏まえた憲法改正原案の立案に着手する、それで詳細な条文をつくる、その後に、憲法第九十六条で要求されている正式の国民投票を行うといった慎重な手続が有効な場合もあるのではないのかということを述べられていたと記憶してございます。
 以上のような両法案のそれぞれの立場からの歩み寄りが頂点に達したのが、平成十八年十二月十四日、その年最後の憲法調査特別委員会での、双方の提出者から示されました修正要綱とこれに基づく修正発言でございました。
 まず、自民・公明案の提出者を代表して船田元先生からは、憲法改正を要する問題及び憲法改正の対象となり得る問題についての国民投票制度に関し、その意義及び必要性の有無について、日本国憲法の採用する間接民主制との整合性の確保その他の観点から検討を加え、必要な措置を講ずる旨の検討条項を設けたいとの御発言がございました。
 他方、民主党案の提出者を代表して枝野幸男先生からは、国政における重要問題に係る案件というだけでは確かに広過ぎるかもしれないということを念頭に置かれつつ、憲法改正以外のこのような国政問題に係る国民投票については、現在、修文を検討中であるとされて、次の三つの案が提示されたのでございました。
 すなわち、A案、国政問題に係る案件について一定の限定を付する、B案、その限定については、船田修正発言のとおり、憲法改正を要する問題及び憲法改正の対象となり得る問題に限定する、C案、憲法改正以外の国民投票法制の是非とその具体的制度設計については急がない、船田修正発言のとおり、検討条項とすることも考える、そのような三案でございました。
 ここに至って、両法案の最大の相違点について合意点が見えてきたのではないかという期待が一気に高まったのでございました。
 しかし、年が明けました平成十九年以降、さまざまな政治的あるいは政局的な環境の変化があり、両法案の一本化に関する合意に至らなかったことについては、昨年十一月十七日の本審査会における中山太郎先生の御報告で言及されているとおりでございます。
 しかし、このような両法案の提出者から述べられたそれぞれの修正発言は、誠実にその後法案化され、まず、自民、公明提出の併合修正案では、今ほど述べました船田先生の修正発言どおりの検討条項が設けられました。これが、現在の附則十二条そのものでございます。
 他方、民主党提出の全部修正案におきましても、枝野先生の修正発言のA案の線に即して、国民投票の対象範囲が限定されることになりました。
 すなわち、国政における重要な問題のうち、一つ、憲法改正の対象となり得る問題。例えば女性天皇問題などは、法律的には皇室典範の改正でも済むわけでございますけれども、これは憲法改正の対象ともなり得る問題である、そういうものでございます。
 二つ、統治機構に関する問題。例えば、これにつきましても、一院制の問題などは、むしろ国会議員の先生方からの発議を必ずしも期待し得ないのではないのか、そのような問題について、まず国民の意思、意向を聞くことが必要なのではないのか、そのようなことが想定されたものと推察されます。
 三つ、生命倫理に関する問題。このような問題は、政党政治を超えた、国会議員、国民の皆さんの死生観、倫理観に関する問題であり、まずは国民の意向を伺うべきではないのかといったことが考慮されたものであると推察されます。
 この三つを例示した上で、そのより具体的な内容については、国民投票の対象とするにふさわしい問題として別に法律で定めるというふうに、別法の検討に委ねられたのでございました。
 したがって、現在の附則十二条が直接に規定している検討対象範囲よりも、この民主党の全部修正案の想定されていた一般的国民投票の対象範囲の方がやや広い、あるいはやや広いかもしれないということになっているように存じます。
 なお、現在の附則第十二条の検討には、選挙権年齢などの十八歳への引き下げや公務員の政治的行為の制限に関する法制上の整備条項、いわゆる二つの宿題のような特段の期限は付されておりません。この三つ目の宿題については、特段の期限は付されておりません。
 しかし、民主党の最終的に御提出されました全部修正案におきましては、今申し述べました具体的な国民投票の対象範囲について別に定める法律、これも、二つの宿題と同様に、本法施行までに整備するもの、そのように規定されておりましたことを最後に付言申し上げます。
 以上、拙い御報告ではございましたが、本日の先生方の自由討議の素材を御提供させていただきました。
 御清聴ありがとうございました。

○大畠会長
 以上で衆議院法制局当局からの説明聴取は終わりました。

○大畠会長
 これより自由討議を行います。
 この際、委員各位に申し上げます。
 発言を希望される委員は、お手元にあるネームプレートをお立ていただき、会長の指名を受けた後に発言をお願いします。発言が終わりましたら、ネームプレートは戻していただくようにお願いいたします。
 発言は自席から着席のままで結構でございます。また、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただきますようにお願いいたします。
 なお、幹事会の協議によりまして、一回当たりの持ち時間は五分以内といたしたく存じます。委員各位の御協力をお願いいたします。

○照屋委員
 社会民主党の照屋寛徳です。
 本日のテーマ、いわゆる三つの宿題の一つである憲法改正問題についての国民投票制度に関する検討について、若干の質問と私の意見を表明いたします。
 私は、現行憲法が国会を唯一の立法機関と定め、基本的に、議会制民主主義と呼ばれる間接民主制を採用しているとの前提に立っても、諮問的国民投票と呼ばれる一般的国民投票制度の導入を認めるべきだと考えます。
 参議院憲法調査特別委員会では、一般的国民投票は、日本の統治原理である議会制民主主義そのものを崩壊、形骸化させることにつながるとの参考人の意見表明もあったようですが、私はそのようには思いません。むしろ、一般的国民投票制度は、間接民主制と呼ばれる議会制民主主義のもとで、幅広く多様な国民意思を政治と国会に反映させるものだと考えます。
 特に、衆議院における現行小選挙区制度にあっては、各党の得票数と議席占有率の著しい乖離もあり、その結果として国民意思と国会意思との乖離も生じているだけに、間接民主制を補完する役割を担うものと思います。
 配付資料、衆憲資第七十五号によりますと、参議院憲法調査特別委員会では、私と同じ意見の参考人陳述も多かったと理解をしております。
 質問の第一点は、自民党、公明党の憲法改正手続法提案者が、諮問的国民投票制度について、憲法九十六条の周辺に位置するものと考えられると述べております。一方で、配付資料、衆憲資第七十五号の九ページによりますと、自民党保岡興治議員は、「憲法問題に限った諮問的、予備的国民投票制度というのは、憲法改正事項に直接民主制を取り入れた憲法九十六条そのものの趣旨からすると、憲法の許容するぎりぎりの範囲内とも考えられる」と述べております。その点について、議論の経緯、詳細をお教えください。
 質問の二点目は、日本国憲法の改正手続に関する法律附則第十二条では、国は、必要な措置を講ずるものとするとなっております。憲法改正問題についての国民投票制度に関する検討主体は、国なのか、それとも憲法審査会なのか、参議院における附帯決議一との関連を含めて伺います。
 以上です。

○橘法制局参事
 照屋先生、御質問ありがとうございます。
 二問頂戴いたしました。
 一問目は、憲法予備的国民投票に関する御議論であったかと存じます。
 自民・公明案の提出者の先生方が基本的に考慮されましたのは、先ほど御報告申し上げました、日本国憲法は間接民主制を基本的に採用しているということでございました。
 例えば、憲法学者の宮沢俊義先生のコンメンタールによりますと、「正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」とは、憲法は、主権を有する日本国民が直接にみずから国政に参与するという原則を採用せずに、国民によって正当に選挙された国会議員を通じて、いわば間接的に国政に参加、参与することを原則とする、すなわち、代表民主制または間接民主制の原則を採用することを意味する、国民が直接に国政に参与する場合として、憲法は、憲法改正の場合の国民投票を認め、また、公務員の選任に参与する場合として、国会議員の選挙のほかに最高裁判所裁判官の国民審査などを認めているけれども、しかし、原則としてはどこまでも代表民主制をとり、国会をもって国権の最高機関としているのだというような、もちろん別の学説はございますけれども、このような一般的な学説を念頭に置かれたものと考えております。
 その上で、自民、公明の法案の提案者の先生方が、対象を広く、民主党案のように国政上の重要問題とするのは、このような憲法の採用する間接民主制に反するおそれがあるけれども、しかし、憲法改正については九十六条があるので、これに関連する、そういう範囲内であればぎりぎり許されるのではないのかというふうに言われたものと存じます。それが、個別の憲法問題、憲法関連問題に限定し、かつ諮問的で、あるいは予備的なものであれば、憲法上許容されると。冒頭、先生引用されました、九十六条の周辺に位置する、これは、このようなことを比喩的に述べられたものであろうかというふうに拝察いたします。
 あともう一点、附則十二条の検討条項の主体が「国は、」となっている点でございます。
 これは、先生方からたびたび議員立法で御指示をいただいてまいります際に、数々の検討条項を私どもお手伝いさせていただきました。検討条項には一般に、国はという主語で書く場合と政府はと書く場合とがあり、また、主体を書かずに受け身で書く場合などがありますけれども、一般に、国はと書く場合には、これは国の統治権を有する三つの機関、国会、政府、あと裁判所を観念的には含むわけですが、ただ、裁判所が意味内容上主体になることはありませんので、国はと書く場合には、通常、政府と立法府である国会を指すことは自明であります。
 ただ、この附則十二条に関しては、制定時の議論では、政府に検討を命じたり法案提出を求めることは全く想定されていませんでした。あくまでも、この検討の主体は国会であるということがたびたび、当時の与党案、自民・公明案の御提出者からも民主党案の御提出者からも言われておりました。
 例えば、最も端的なのが、両案の当初の法案から最終的に修正されたそれぞれの案で、実はこの憲法審査会の権限が変えられているのです。当初の案では次のようになっておりました。この憲法審査会の権限は、憲法改正原案の審査権と日本国憲法の改正手続に係る法律案の審査権というふうになっていたんですが、実は、修正の最終局面でして現在の国会法ですが、憲法改正原案の審査権のほか、日本国憲法に係る改正の発議または国民投票に関する法律案の審査権というふうに変えられているわけです。
 この趣旨につきましては、船田元先生は、予備的国民投票の検討もここでできるようにする、こういうことを取り込んだ形で修正したのだというふうに、憲法改正に限らない国民投票制度の制度設計もこの憲法審査会の権限なのだというふうに言われていますし、他方、枝野幸男先生の御発言でも、憲法審査会の権限についてでございますが、先ほど来、一般的国民投票などについての議論も行っていこうという与党からの御提起もございまして、私どもの一般的国民投票についての法案を可決していただいた場合であっても、これについて、今後、改正等を行う審査機関が必要でございます、すなわち、それは個別の、例えば内閣委員会とかそういうことよりも、むしろ憲法のところであろうということで、今私が申し述べたような、そういう条文にさせていただきたい、そんなことをおっしゃっておられるところでございます。
 先生が御指摘いただきました参議院の憲法調査特別委員会での附帯決議におきましても、「国民投票の対象・範囲については、憲法審査会において、その意義及び必要性の有無等について十分な検討を加え、適切な措置を講じるように努める」というふうに、主体の国の中身は国会そのものであるということが明確になっているかと存じます。
 冗長で申しわけございませんが、最後に付言するならば、それであれば、この検討条項の主語を国はじゃなくて国会はと書けばよかったじゃないかと。ただ、私どもがお手伝いしている限り、検討条項の主語を国会はとした立法例は、少なくとも私の記憶の中では見当たりません。何でだろうかというのはちょっと不思議なところもありますが、先生方がつくられる法律において、自分たちはこう検討しろというのは少しおかしいのではないかという、そういうのがあるからかもしれません。
 以上でございます。

○柴山委員
 私は、現時点では、自民、公明の附則十二条の案を中心として、緩和をするにしてもぜひ検討をしてほしいというように思っております。
 直接民主制については、今の御報告の中にはなかった視点として、リコールですとかあるいはカウンティー、シティーマネジャー、そういった形で、直接民主制を広く導入している地方の案件と国の案件を同一に扱ってよいのかという問題意識も必要ではないかなというように思っております。やはり国民は、自分から遠い、国の、特に、さっきイラクの問題についても言及がありましたけれども、専門的かつ非常に継続的に検討を加えなければいけない案件について、どうしても判断が十分できないのではないかという懸念が私としては拭い切れません。
 先ほど照屋委員の方からは、国会を唯一の立法機関とし、また代表民主制を導入している現在の憲法の中でも、こういった補完的な国民投票の意義を積極的に評価するというような御発言があったのですが、私は、やはり国レベルの問題については、代表民主制をとっているということをむしろ積極的に評価するものであります。
 そういう意味では、従前、伝統的に言われております国民主権、人民主権、ボロンテ・ゼネラルなどの、かねてから検討されていたさまざまな論争については、現代社会にあっては、やはり間接民主制というものにより積極的に評価をする、国レベルの問題では評価をするというような形で検討を開始するべきだというように思っております。
 欧州では確かに、橘さんから御指摘いただいたようなさまざまな任意的な国民投票の仕組みもあるんですけれども、思い返してみれば、昨年十一月のギリシャにおける歳出削減等について、これを国民投票にするということを検討した瞬間に非常に大きな危機が顕在化しかねない状況だったように、やはり運用の実態というものを精査する必要がこれらの国々においてもあるのかなというように私は思います。
 法制局においては、最近実施された国民投票が諸外国においてどのようなものであり、そしてその結果、どういういろいろな反応というものが出てきたのかということをぜひお伺いしたいなというように思っております。
 それと、イラクの派遣については、先ほど申し上げたように、これを例えばさまざまな外交、防衛についての専門的な知見なく、裸の形で国民投票に付することによって、それが、政権交代の後、普天間の問題もいろいろありましたけれども、あるいは給油支援の問題もありましたけれども、本当にしっかりとした責任を持った結論というものが導き出せるのかということについて、やはり不安に思う部分があります。
 それから、最後になりますけれども、迷惑施設について、これを例えば住民投票や国民投票に付した場合に、結局、ロケーションの設定ということについて、最終的に決まらないことによって非常に大きな損失というものが生じてしまいかねないのではないかということも、これは先ほど申し上げた外交、防衛の問題とはちょっと異質の問題ではありますけれども、付言をさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。
 質問については、ぜひ御答弁をお願いします。

○橘法制局参事
 御質問ありがとうございます。
 諸外国の国民投票の実施例については必ずしもつまびらかにはいたしませんけれども、先生方、お手元配付の衆憲資七十五号でございますと、事例は決して網羅的ではございませんが、二十六ページ以下のところに若干の最近の国民投票の実施例も載っております。
 世間の耳目を集めましたものでございますと、例えば、イタリアにおけます新たな原子力発電所の計画、建設の廃止に関する国民投票、これは三十ページでありますが、昨年の六月に実施されたということが一つ載ってございます。
 あと、少し旧聞に属することになりますが、スイスの、スイスは年に四回定期的に国民投票をやっているという国でございますけれども、日本でも大変問題になりましたのは、三十六ページに掲げてありますような、二〇〇九年十一月に、国民のイニシアチブ、国民発案で国民投票に付され、当時、スイスの政府は、政府としては反対だ、反対投票を投じてくれというふうに言ったにもかかわらず賛成されてしまったというような、ミナレット、イスラム教寺院の塔の建設禁止、これが憲法に規定されるというような事例もあったかと存じます。
 憲法調査特別委員会におけます海外調査で専ら議論になったのは、先生には釈迦に説法でございますが、EU憲法に関する国民投票の事例を中山太郎先生から大変御教示いただきながら、フランスやオランダなどでのEU憲法改正に係る国民投票、否決に至るそういう過程については、先生方と一緒に勉強してまいりました。
 以上でございます。

○緒方委員
 民主党の緒方林太郎でございます。
 一般的国民投票制度について、諸外国、いろいろなケースがあるわけですけれども、よく、きょうもスイスの例が取り上げられておりますが、スイスは非常に、歴史的にも国の成り立ちにしても特殊なところがあるので、余りスイスの、国民投票制度が日本にそのまま導入できるかどうかとか、スイスでやっているからというのは議論の前提として成り立たないのではないかというふうに思います。
 私はフランス憲法を勉強したことがあるんですけれども、フランスにおいては、この国民投票制度、憲法事項と法律事項がありますけれども、これは何かというと、あの国においては議会不信がそもそも根底にあるツールであります。今の憲法、シャルル・ドゴール大統領のときにできたものでありますけれども、議会がごたごたしているときに、うるさいとやって、直接国民に聞くんだということで、議会不信のツールとしてこの国民投票制度が存在する国があるということについては、私、強調させていただきたいというふうに思います。
 そういうときにどういうふうに使われるかというと、統治のあり方として、君主的統治を行うときのツールとしてまさにこの国民投票制度がある。議会との関係がうまくいかない、なかなか法律が通らない、そういうときに、もういい、国民に直接聞くんだということで、そういうふうに使われるということがある。ここは国によって、政治文化によってそれぞれ適用の仕方が違うと思いますけれども、念頭に置くべきかと思います。
 そして、これをもう少し政治的文脈に置きかえてみると、一般的国民投票制度といいますけれども、これは恐らく、政権が満を持して提出した案件で否決されたときには、最低でも内閣総辞職だと思います、日本の制度においては。さすがにその状態で解散・総選挙に出ることはないと思いますけれども、それすらあり得る。いずれにせよ、政権が崩壊することに直結する可能性が非常に高い案件、考え方によっては解散・総選挙と非常に似たような制度として運用されることがあり得る政権信任のツールであるということも考える必要があると思います。
 フランスにおいては、これまで二回否決されたことがあります。シャルル・ドゴール大統領のとき、一九六九年、上院改革をしようとして否決された。このときは、シャルル・ドゴール大統領は辞任をしています。そして二〇〇四年、まさに先ほど橘部長からもありました、欧州の条約が否決をされた。このときは首相が辞任をしています。
 フランスは大統領と首相で政治的権力を分有しているので、どっちがやめるかというのはそのときの政治情勢によって違うわけですけれども、日本みたいな制度で政治的権力が分有されていないケースにおいては、間違いなく総理に責任が全部来て、内閣総辞職、場合によっては解散・総選挙というふうになるということについては、これはよく考える必要がある。政治的文脈に置きかえたときによく考える必要があるだろう。
 そして、さらに言うと、私は首相公選制というのは日本ではなかなかうまくいかないのではないかと思いますけれども、仮に首相公選制を導入してこの一般的国民投票制度を合わせたときに何が起こるかというと、首相を選んでいる勢力と議会の多数派が異なるとき、法律が一本も通らない。私がそのときの総理大臣であれば、ばんばん国民投票を打つと思います。もう議会に諮るのが面倒くさいから。そういうふうなツールとしてもあり得るということ、これも強調させていただきたい。
 最後に一つ。この問題、国民投票をやるときにもう一つ考えなきゃいけないのは投票率との問題でありまして、実は、例えば、国にとって重要な案件だけれども特定の集団または特定の地域に非常に利害が集中するような案件である場合、このときは投票率が上がらない可能性があるんですね。
 フランスでも一回こういうことがありました。一九八八年、ニューカレドニアの独立の問題について、国民投票を一回打ったことがあります。本土からすると地球の真裏にある話、全く投票率が伸びなかった。可決はされたけれども投票率が全く伸びないと、何となくその案件自体が、その案件そのものが不信任を受けたような感じがあって、可決はされたけれども敗北感が漂うみたいな話が出てくるかもしれない。こういうことも問題として提起をさせていただきたいと思います。
 最後に、これをまとめて申し上げさせていただきますと、仮にやるとしても、仮にこの一般的国民投票制度というか、やるとしても、テーマを絞る。そして、できれば政府提案は避けた方がいいと思います。先ほどありました、議会が提案する国が多いということでしたが、政府提案を避ける。そして、最後は、投票率の問題についてまとめる。この三点を強調させていただきまして、発言を終わります。
 ありがとうございました。

○近藤(三)委員
 発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 国民投票法は、憲法改正に限定した法律です。本日議題の国民投票法附則第十二条は、憲法改正問題についての諮問的国民投票として、次の二点について速やかに検討するように定められています。
 その第一が、憲法改正を要する問題についての国民投票です。これは、憲法改正についての予備的な民意の動向を探るための国民投票であるというふうに言われています。
 私が伺いたいのは二点目について。衆議院法制局の橘部長に伺わせていただきます。
 お伺いしたい二点目の国民投票は、憲法改正の対象となり得る問題に関する国民投票について。この憲法改正の対象となり得る問題とは、具体的にどのような事項、事柄などを想定しているのか、どのような国民投票なのかということ。これまでの国会での議論、憲法の論文などを使ってお答えいただけないでしょうか。橘部長、よろしくお願いします。

○橘法制局参事
 御質問ありがとうございます。
 先生から頂戴した御質問は、憲法改正の対象となり得る問題とはどのような問題を具体的に想定されていたのかということでございます。
 提案者の先生方におかれましては、一言で言いますれば、憲法改正は必要ではないけれども、しかし憲法に明記することもできるような問題ということを想定されていたと思います。先ほどは、皇室典範の改正でも対応することができるけれども、諸外国の憲法典に考えれば憲法で明記することもあり得る、例えば女性天皇といった問題を挙げました。
 提出者の先生のお一人でいらっしゃいます船田元先生の参議院での御答弁を引きますれば、例えば次のように述べられています。
 今御指摘の点につきましては、統治機構に関する問題、それから生命倫理に関する問題というものも、これは、私個人の考えからしますと、当然に憲法改正を要する問題でなくても、憲法改正の対象となり得る問題という中には含まれる、こういうふうに述べられています。そうなりますと、結局は、民主党が言われていた事柄と近づいているのかなと思います。
 あと、先生、諸外国の事例あるいは憲法に関する論文でもそのようなことは言われているのかということを、質問を頂戴してございますが、大変不勉強で、諸外国で、改正の対象となり得るとか、あと、憲法の論文におきまして、憲法改正の対象となり得る問題はこういうものだといった文献を直接参照してはおりません。当時、立案のお手伝いをした場合も、こういうことが国民投票の対象として考えられるのではないのかということを、まさしく国会議員の先生方がこの場で考案した概念であって、それを、まさしくこの憲法審査会で検討してほしいということであったかと存じます。
 後段の御質問にお答えできなかったものですから、先生がおっしゃいました前段について、生意気ですが一点御報告させていただきますと、憲法予備的国民投票については、予備的の意味については赤松先生から御教示いただいたことを先ほど御紹介申し上げましたが、具体的にどういう問題かということについては、必ずしも先生方の中でイメージが共有されていたのではないようにも思われます。
 ただ、余りに具体的な、例えば個別の法案についての賛否を予備的国民投票で問うのだということは、これは違うというふうには、例えば枝野先生の御答弁などでは言っておられました。個別の法案についての賛否は、これは国会議員の仕事だ、その前に至るもう少し抽象的なものだと。ただ、抽象的であればいいのかというと、では、今の憲法の改正に賛成ですか反対ですかということを聞く、これは抽象的で余り意味のない事柄だと。
 当時の先生方で最大公約数的に想定されていたのは、例えば、具体的に国会答弁の中に残っているわけではありませんが、先生方から私どもが立案の過程で御教示いただきましたのは、多分次のようなことであったかと存じます。
 例えば、早急に憲法改正の対象とすべき問題はどういう問題ですか、一、九条改正、二、環境権創設、三、憲法裁判所創設。国民の皆さん、どれに興味がございますかといって、そこで例えば、環境権だ、当面環境権でやってくれということになると、では、環境権については、環境の権利として規定するのか、それとも国または国家の環境保全の責務として規定するのか、それを国会で制度設計を詰めて、いよいよもって最終的に九十六条で発議していく、そんなイメージなのだということであったと拝察いたします。

○大畠会長
 赤松委員のお名前も出ていましたが、何か付言することがございましたらと思いますが、いかがでしょうか。

○赤松(正)委員
 先ほどから聞いておりましたら、何か発言しなくちゃいけないなという気分にはなっておりました。
 先ほど橘部長の方から私の発言等の引用がありましたが、幾つかの点があるんですけれども、一つは、憲法改正をめぐる議論というのが、やはり戦後長きにわたって特定の政党の間でかなり細かくいろいろな議論がされてきたという経緯はありますけれども、それに対して、国民全体における個々の具体的なことに対する空気といいますか傾向というものは大体余り出てこない。世論調査というふうな格好で出るにせよ、余り明確に出てこないということがあります。
 そういう状況の中で、憲法改正という形で発議をされて、三分の二という条件がありますけれども、九十六条に基づいて発議をするということでは、国民のふだん考えていることとの大きな乖離が出てくる可能性がある。そういう意味で、那辺に国民の関心があるのかということについて、予備的に、政党が考える憲法改正の方向性と大きな乖離がないように事前にそういうことをキャッチする必要があるんじゃないか、そういう点が一つあります。
 もう一つは、三分の二という壁はなかなか大きいものがあるわけで、ある意味、逆の観点かもしれませんけれども、国民の意見を聞くということによって、その非常に高い壁というものが、ある意味で実質的に壁を下げられるんじゃないかという思い、つまり、国民の要望が強ければ、いわゆる政党間の差異というか、そういうものを超えて合意をつくっていくことに寄与できるんじゃないか。そういうことも含めて、今の、ある種、憲法をめぐる硬直したというか逼塞した状況を打破していくためにも、国民の皆さんの考えるところをあらかじめ予備的に聞いておくということはあっていいんじゃないか、こういうふうな考え方で、先ほど引用していただいたような発言につながっていった、こんなふうに今思い起こしているところでございます。

○柿澤委員
 柿澤未途でございます。御指名をいただきまして、ありがとうございます。
 私たちみんなの党は、首相を国民が直接選ぶことを求める声が世論調査で七五%に上がっている、こういうことも踏まえて、憲法改正によらずに諮問的な国民投票で総理大臣に誰がふさわしいかということを国民に推薦をしていただく、内閣総理大臣の指名に係る国民投票制度の創設にかかわる法案を今立案中でございまして、今国会に提出をする、こういう方針でございます。
 国民投票の結果を国会議員が参考にし、あるいは尊重して投票行動を行う、こういうたてつけであれば、国会を唯一の立法機関としている現行憲法には矛盾をしない、こういうふうな理解をしております。
 ましてや、先ほど橘部長からもお話がありましたとおり、この国家は国民主権であって、国会議員が主権者であるわけではないわけですから、ある意味では、国民の意見を直接聞いて、そして国会議員がそれを取り入れて立法を行っていくということについては何らの問題、阻害をするに当たらない、こういうふうな理解をしております。
 そうした観点から、一点御質問を申し上げたい基本中の基本でありますけれども、そもそも、諮問的国民投票、あるいは、今、赤松先生がおっしゃられた予備的国民投票でも結構ですけれども、いずれにしても、この諮問的な国民投票というものを制限する根拠があるとすれば、それは一体何なのか。これまでの議論の経過を踏まえたある種の立法政策ということであるのか、あるいは、そもそも法律的な根拠を持ってこの諮問的国民投票を制限しなければいけない、こういう認識であるのかどうか、この点をお尋ね申し上げたいというふうに思います。
 私たちの理解では、これは立法政策の問題であって、憲法周りならよくて、そのほかではだめだということではないのではないか、こういうふうに思いますが、その理解でよいのかどうか、あわせて、これまでの経過も踏まえて橘部長から見解をお示しいただきたい、こういうふうに思います。
 以上です。

○橘法制局参事
 先生、御質問ありがとうございます。
 まさしく、現行憲法下でも、一般的国民投票制度を諮問的という形で位置づければ当然憲法問題はクリアできるというのが一つの御見識であり、現に立案され国会に上程された民主党案でございました。その意味では、先生がおっしゃられた問題は、これは立法政策の枠内だと。
 これに対する反論として国会でなされたのは、次のようなことでございました。
 一般的国民投票制度は、仮にその効果が諮問的なものであるとしても、事実上の拘束力があり得ることは否定できない、国民がこうだというふうに言ったことについて、幾ら国家機関が拘束されないといっても、これに事実上の拘束力がある、これを大変に当時の自民、公明両党の提案者は重く捉えられ、この点、現行憲法が定める議会制民主主義の根幹にかかわる重要な問題であるというふうに指摘されていたところかと存じます。
 他方、民主党の御提出者でいらっしゃいました枝野幸男先生も、最終修正案で、国政における重要問題というものを限定されました。限定されたときも、事実上の拘束力があるという指摘を受けたので限定したのだという御答弁をされているように思います。
 もちろん、これは先生方のそれぞれのお立場からする解釈でございますので、それ自身が立法政策、憲法解釈問題なのだとは存じます。

○橋本(勉)委員
 衆議院議員の橋本勉でございます。
 このテーマについて、ちょっと一言述べさせていただきたいのと、質問も一つさせていただきたいと思っております。
 私は、個人的な見解としまして、もっともっとこの国民投票法というものを積極的に導入してもいいんじゃないかなと思っています。ここに、一般的国民投票に規定すべき、諮問的、一般的国民制度が書いてありますが、もう一つ上のランクとして、もっともっと積極的に導入していただきたいと思っております。
 というのは、いろいろと直接民主制ということで慎重な意見というのは、民主主義の本質は討議の過程にあるのに、政策の是非を判断する手段を必ずしも有しない国民に対して直接問うことは危険であるというふうなことで反論がありますけれども、現実どうなのかということですね。
 今、一つは、我々も国会に所属して、国会というものをいつも見ております。一期生として私もいつも眺めておりますけれども、現実は、本当に自由な意見を言える場所になっているかどうか、これが問題だと思います。間接民主制というのは、少し限界にあるんじゃないかなと思っているんですね。
 というのは、本当にセレモニックな国会になっているということとか、あと、党議拘束に縛られたり、支援団体に縛られた利権が、選挙を意識した代表が、どうしてもここでゆがめられてしまう、政策がゆがめられてしまう。こういうことが本当に、間接民主制が限界を持ってきているんじゃないか、そういうことを私は思わざるを得ません。
 そういう意味で、憲法論上のもう一つの理由として、ただこういうテクニカルな間接民主制か直接民主制かといって、それ以上に大切なのは、国民主権そしてまた基本的人権の尊重であり、平和主義である、それが憲法の大切な主張であると思います。そういったものが逆にゆがめられてしまうような事態になれば、むしろ私は、間接民主制というのは非常にまた疑問としなければならないと思います。
 そういう意味で、今ここの、もっともっと直接民主制的なシステムというのを導入した方がいいんじゃないかと思います。いろいろなテーマについてヨーロッパも導入してきていると思いますので、しっかりとこの辺は積極的な導入を考えていただきたいと思います。
 ただし、一つ論点として上がってきていないものがあるんじゃないかなと思っております。それは何かというと、コストであります。コストというのは何かというと、例えば、聞くところによると、一人当たり大体八百円から千円かかる。これが一億人にかかるとなると八百億円から千億円かかると通常言われておりますので、それだけのコストをかけなければならないかどうかということについてちょっと質問をしたいということと、ヨーロッパの場合、インターネットとかそういったものがあればもっともっと安い投票ができるんじゃないかなと思っておりますので、その辺についての質問をさせていただきたいと思っております。
 総合的に言うと、すべからくもし重大なテーマで衆議院の解散をしなければいけないとかいうことになってしまうと、もっと大きなコストがかかってしまって、国民の皆様に対して大きな御迷惑をおかけするならば、こういう国民投票法で、拡大することによって直接民主制を補っていくようなシステムこそ、むしろ我々は望むべきところではないかなと思っております。
 参議院は解散というのがないのでありますので、そういった意味でも、ぜひともこの拡大路線というものを主張しながら、コストの面で制約条件が若干あるんじゃないかということで質問させていただきたいと思っております。
 以上です。

○大畠会長
 なかなか難しい課題でもありますし、きょうは中山太郎前調査会長も傍聴されておりますが、橘部長として答えられる範囲内で率直に御発言をいただきたいと思います。

○橘法制局参事
 会長、御配慮ありがとうございます。
 先生、御質問ありがとうございます。お答えできる範囲内でお答えさせていただきます。
 自民・公明両党案の国民投票法案に付された経費文書は八百五十億円でございました。民主党案の国民投票法案に付されました経費文書は八百五十二億円でございました。二億円の差は何かといいますと、民主党案におきましては当初から十八歳投票権でございましたので、この二歳分の投票事務費等として二億円をオンしたものでございます。
 ほとんどの八百五十億円につきましては中央選挙管理会などが使うわけですけれども、しかし、国民に対する周知広報は国会に設けられます国民投票広報協議会、つまり先生方が国会の事務局を使って全国民に全て周知広報するのだ、テレビでも新聞でもそうやって周知広報する、そのような費用として八百五十億円余が積算されたものと承知しております。

○橋本(勉)委員
 ちょっと追加で、ヨーロッパの、例えばインターネット投票とか国民投票とか、そういった手段のデータというのはあるんですか、それによってコストがどれぐらいかかるかとか。今の国民投票の八百五十億円程度というのは、これは通常八百円とかいう想定で出したものじゃないかなと思うんですね。いわゆる全部投票用紙を配って、インターネット投票というのを全く考えない想定の数字じゃないかなと思いますので、その辺はどうなっているのか、ちょっとお聞きしたいと思います。

○橘法制局参事
 失礼いたしました。おっしゃるとおりでございます。
 諸外国で調査をしたときには、中山太郎先生からも御教示いただきましたように政府がホームページで公表したり、インターネット投票まではちょっと記憶にありませんが、さまざまなツールは利用されておりました。
 先ほどの積算にはそのようなことは念頭に置いてございません。

○山花委員
 民主党・無所属クラブの山花でございます。
 きょう傍聴にお越しになっています中山太郎前会長と、ルクセンブルクで国民投票が行われたときに一緒に視察に行ったという経験がありまして、そのときに、例えばカフェとかレストランなどでもその是非についてルクセンブルクの国民の方々が語り合っていたりとか、学生さんが授業が終わった後集まってそれについて語り合っていたりというような状況が起こっておりまして、先ほど柴山委員から、本当に判断能力あるのかみたいな御懸念が示されましたけれども、実際やると、そういったことというのは起こってくるのではないかというふうに思っております。
 また、事実上の拘束力ということについては、私、以前、参考人の立場で意見を申し上げたことがありますが、法的な効果がある国民の直接民主制を取り入れた制度というのは三つ、この国民投票と裁判官の国民審査、あと地方自治特別法ということになりますけれども、諮問的なものであればその三つ以外にもできるんだろうというのがもともと当初のプランでありました。
 例えば、法的な拘束力を伴うのか事実上のものかというのは、法律論としては極めて大きな違いでありまして、以前参考人として述べさせていただいたのは、例えば、判例の先例拘束性というのがあると言われているけれども、それはあくまでも事実上の拘束力であって法的なものではない。これはかなり大きな違いですし、また、法的効果を伴うという意味で申し上げると、衆議院で内閣の不信任案が議決をされると解散または内閣の総辞職という法的な効果を伴いますが、法的な効果を伴わない問責決議というのが参議院で事実上行われていることからも、法的な拘束力があるものだけ憲法に定められているので、それしかやっちゃいけないということには直ちにはならないでしょうということを申し上げたいと思います。
 また、そうはいっても、何でもかんでもやっていいのかというのは、これはまた話が別でありますし、どういったテーマがふさわしいかということについては、よくよく国会の方で判断をしてということだと思います。
 先ほど橘部長からもいろいろ御説明いただきましたし、私も以前から主張していたことなのでかぶってしまいますけれども、例えば、以前、小泉内閣のころに、女性の天皇を認めるかどうかのような議論が報道で出たことがございました。皇位継承順位というのは皇室典範という法律でありまして、憲法ではありませんから、国会で議決をしてしまえばそれで決まるということになるんですけれども、日本国民統合の象徴とされている天皇の地位にかかわることについて、本当に国会だけで定めていいんでしょうか。国民が、恐らく確認的なことになるのではないかと推測をいたしますけれども、そういった憲法典ではない事項についても必要ではないかということを従前から提起させていただいております。
 また、先ほど生命倫理にかかわることという話が出ました。長きにわたりまして、人の死というのは三徴候、自発的呼吸の停止、心臓の不可逆的停止、瞳孔の拡散というこの三つをもって死とするというのが恐らく国民の多くの方の意識だったのではないかと思いますが、例えば、人の死かどうかということを、脳死ということをもって人の死とするかどうかというのは、これは単純に法律だけで決めて本当にいいんでしょうか。やはり死生観にかかわることでありますし、あえて憲法上のものということでいうと、生命、自由及び幸福の追求の権利というのが憲法上認められておりますので、いわばその権利の享有主体としての終期をいつにするかという話でありますので、こういったことも対象となり得るのではないかというふうに考えているところであります。
 でき得れば、どういったテーマがふさわしいのか、法律上の限定をつけるということであれば考慮しましょうということを我が党としてもこれまで言ってまいりましたので、ぜひこの点について議論を深めていただければと思います。
 なお、従前も発言をさせていただいたことがありますけれども、国民投票についても、衆参三分の二で、かつ議会の側で発議をするということを想定しておりますので、何か解散に結びつくとか政府の責任になるというようなことは我々としては想定をしていないということを付言させていただきます。

○小沢(鋭)委員
 民主党の小沢鋭仁です。
 皆さん方から大変有益な議論を承って、先ほど来、いろいろな考え方があるんだな、こう思って聞かせていただいておりました。
 幹事の立場でありますので、若干進行めいた話を一点提案させていただきたい、こういうことでございます。
 もちろん、これは幹事会でやるべきことでありますが、全体の皆さん方にも申し上げておいた方がいいと思うものですから、発言をするわけでございます。
 まず、きょうで、いわゆる三つの宿題というそれぞれのテーマについては扱わせていただきました。きょうの議論もそうでございますが、先ほど橘部長からお話もあったとおり、この国民投票法に関しても、ほぼ与野党で当時合意ができていた、できつつあった、こういう話でございますし、現に今法律ができておりまして、その法律の附則のところで、これは自民党、公明党さんがおつくりになった案でありますけれども、先ほど近藤さんがお話があったような内容を決める、こういう話になってきているわけであります。
 民主党の方は、御案内のとおり三つの例示を申し上げて、さらに加えて、別の法律で定める、こういう話を提案として申し上げてきているわけでありまして、そろそろ、やはりそういったこれまでの調査会で、約十年、経過からすると十年を超える、こういうことでしょうか、それを積み上げてきた、そういった成果あるいはまた見解、そういったものに基づいて、我々はそろそろ話を詰めていく段階になっているのではないか、こういうふうに思います。
 先ほど来、中山前会長のお話がありますが、十年、ずっと頑張ってやってきていただいて、ここまで来たわけで、後は、ここは話をそろそろ詰めていかなければいけない。そして、詰める段階においては、もちろん皆さん方の御意見を本当に最大限尊重するのですが、これまでの経緯というものを踏まえた上で話を進めていかないと、なかなか建設的な話にならない、こういうことだろうと思っておりまして、幹事会ではそういった議論をさせていただきたいと思いますので、ぜひ委員の皆さん方にもそういったことを踏まえていただいて、御協力をいただきたいな、こういうふうに思います。
 以上です。

○大畠会長
 ただいまの発言は幹事会の中でもよく論議をさせていただきたいと思います。

○柴山委員
 二度目の発言ということでお許しをいただき、ありがとうございます。
 先ほど山花委員からお話がございましたルクセンブルクの事例ですけれども、スイスのお話もあったんですが、私はやはり、冒頭の発言で申し上げたとおり、地方における国民投票と、それから大きな国のレベルでの国民投票というものは、必然的にその求められる度合いというものが違ってくるのではないかというように思っております。
 やはり、サイズが小さくて、みずからの生活に身近なさまざまな事柄を扱う部分の判断というのは比較的容易にできるのではないかというように思いますし、ルクセンブルク、あるいは、先ほどお話があったように、さまざまな特殊な歴史を持つスイスと日本との間で、国レベルの国民投票が求められる度合いというのは違っているのではないかなというように私は思うのが一点目です。
 そして、二点目なんですけれども、先ほど橋本委員の方から御党の中でのいろいろな悩みについて率直な吐露がありまして、共感できる部分が多々あるんですけれども、議会制民主主義が機能しないということをそれで率直に結論づけてしまってよいのかなという疑問があります。
 むしろ、そういった事柄については、政党のガバナンス、場合によっては政党法の策定による党内民主主義の確立、そういったことも踏まえてやっていくべきだと思いますし、ねじれ国会が機能しないことについては、それこそ、それに即応した形でのさまざまな議論というものもなされるべきだと思いますので、今の現状で、物事が前に進まないから、では国民投票かということは、私はちょっと、一歩議論が飛躍をしてしまいかねないというような懸念を持っております。
 そして、三点目なんですけれども、確かに、先ほどお話があったように、国民投票が必ずしも解散等に直結しないというような御意見、それはそのとおりかと思いますが、たとえ諮問的であっても国民投票が持つ政治的な意義というのは、私は、場合によっては非常に大きいものがあるというように思っております。たとえ諮問的な国民投票であっても、先ほどお話があるように、政府が行うということにはやはり相当の政治的な意味合いが強いということから、これは慎重に行うべきであろうというように思っております。
 そして、最後なんですけれども、私は、憲法に準じる問題等については国民投票はなじむと思いますが、生命倫理にかかわる脳死等の問題、これは、検討の余地は十分あるかと思いますが、それこそ、先ほどお話が出たとおり、非常に微妙な問題であり、投票率の問題も結構考慮しなければいけないのではないかなというように思いますので、生命倫理等の問題については、もう少し検討を深めた上で採否を決定するべきではないかなというように思います。
 以上でございます。

○笠井委員
 きょうのテーマについては、先ほど橘部長からもお話があって、私自身も憲法調査特別委員会の時代のこと等含めていろいろと思い起こしながら伺っていたので、あえてきょうは発言、質問をするつもりがなかったんですが、先ほど小沢民主党筆頭幹事の方から発言があったものですから、あえて言わざるを得なくなったということでございます。
 先ほど橘部長が説明されたとおり、憲法改正問題についての諮問的あるいは予備的国民投票について検討するとした附則十二条については、憲法調査特別委員会の審議の過程で、自民、公明両党とそれから民主党の間で妥協点を探るという状況があって、いわば最終盤の局面の中で盛り込まれたというか出てきたものだということで、その経過からも、附則十二条というのは国民の要求があって盛り込まれたものじゃないというのが私自身の認識でありますし、経過だったなというふうに思っております。
 それで、前提として、先ほど小沢幹事の方から、国民投票法そのものについて言えば、ほぼ与野党で合意があるものであると言われたんですが、これはもう、違うということを言わざるを得なくて、野党の中には私たちもおりますし、それ以外にも内容的にも反対した会派があったはずでありますし、ほぼ合意というふうに言われた自公と民主の間でも、最後は民主党は反対をされたわけでありますから、そういう言われ方をすると、全然話が違ってくるということを言わなきゃいけないというふうに思うんです。
 その上に立って、話し合いを詰めていく段階だということで幹事会でも議論するがということも言われたんですが、私自身、きょうの話というのは、三つ目の宿題と言われている問題について、橘部長からも説明を受け、話を聞いて、質疑ないし討議で意見を述べるという場で、それを踏まえて、会長も先ほど幹事会で言われたように、来週予定している幹事懇の中で今後どうするかということを幹事の間あるいはオブザーバーを含めて議論しようということになっていたわけです。
 何かそれが、きょうまだ終わっていない段階で、詰める段階になっていますねということを与党の筆頭がここで言われて、やるということになると、ちょっと、この話し合いというか協議のルールからしても逸脱しているんじゃないかと。きょうはきょうで終わったところで次の幹事会でそういう話をしていただいて、それを踏まえてどうするかというのがルールであって、そういうやり方をされるんだったら、きょうも含めて、こんなやり方でやっていいのかというふうになってくるわけです。
 だから、そこはきちっと、幹事会あるいは幹事懇そして審査会ということでやっているわけですから、そして仕切ってきたわけで、きょうの幹事会でもそういうことは一切小沢幹事も言われていないわけですから、そこはきちっと守っていただかないと、きちっと参加するということになっていかない、そして実りあるものにならないと思います。
 以上です。

○中谷委員
 まず、民主党の国民投票法についての趣旨の確認ですが、橘さん、もしくは民主党の幹事の方もおられますので、発言という形でお伺いしたいんです。
 まず、国会自身が発案し、その結果に拘束されないものの制度設計というのは、これはアンケート的な拘束力のない国民投票と考えていいのか。先ほど山花委員が、問責決議のように、実質は法的効果があるもので拘束せざるを得ないというような趣旨だという御発言だったのか。
 伺いたいのは、何を目的とする国民投票で、どういう意味を持つのか。ワンイシューを国民投票に付したら、結果は事実上拘束力があるものとして無視できないものになるのではないかという気がするんですが、この点はいかがかということと、公明党の予備的国民投票の発案でございますが、これはやはり、憲法改正のための予備調査、準備としての提案であって、原発とかイラクとか沖縄の個別事項の意見聴取のアンケートは含まないというふうに考えていいのか。その点をお話しいただければいいと思います。
 それから、先ほど国民投票法の今後についての話がありましたが、早期に国民にこれを提案して、投票できる状態にしておく必要がありまして、この三つの課題におきましては、先ほど意見聴取をいたしましたが、やはり、この国会の会期内においても、結論が出る部分においては結論を出して、法律の修正もしくは改正をいたしまして、十八歳の年齢の問題、公務員の問題につきましては、合意を得て処理ができるようにしておく必要があると私は思います。
 そういう意味で、幹事会におきまして、今後、この問題を協議する場が必要でもありますし、各党の意見を集約するなら、幹事会の中で各党の代表者による筆頭協議会を設置して協議する必要があると私は思っておりまして、小沢幹事の提案に賛成をさせていただきます。

○橘法制局参事
 御質問ありがとうございます。
 民主党案の立案をお手伝いさせていただきました立場から、民主党案がどのように考えられていたのか、条文がどうなっているのかについて御報告申し上げます。
 まず、民主党の国民投票が諮問的なものである、これを法律案の中に盛り込んだ趣旨について、提出者のお一人でいらっしゃいます枝野幸男先生は、次のように衆議院の本会議で述べておられます。
 立憲主義にかかわる問題について、国会がみずからの意思に基づき、諮問的に国民の意思を問い、その主権者の意思を十分に考慮しながら権限行使することは、何ら憲法に反するものではなく、むしろその趣旨にかなうものです。こう考えると、法体系的には、国会が一般的に国民の意思を問う諮問的国民投票制度こそが基本にあり、特に、必要的で拘束力を持つ九十六条の憲法改正国民投票制度は、その特例的な制度として位置づけられます。一般法がないまま特例法を制定するのは不自然なことですと。
 それで、条文の中には、第百三十三条として、「国政問題国民投票の結果は、国及びその機関を拘束しないものとする。」このような形で憲法問題はクリアされているのだというのが民主党案の基本的なお立場であったかと存じます。
 以上です。

○大畠会長
 あと、後段のことにつきましては、先ほど笠井委員からもお話ありましたように、幹事懇談会の中で今後のことについては率直にいろいろと意見交換しながら進める、こういうことで引き取らせていただきたいと存じます。

○赤松(正)委員
 先ほど、中谷会長代理からの御質問と、それから、私も小沢幹事からの発言に対して少し申し上げたいことがありますので、二点ほどについて。
 まず、私どもが申し上げておりました諮問的、予備的云々という話につきましては、先ほども申し上げましたように、あくまで憲法改正にかかわる問題でございまして、原発問題を初めとする政治一般、全体的な課題ではない、そういうものを含むものではないということでございます。
 それから、先ほどの小沢幹事の発言については、恐らくちょっと言葉足らずだったんじゃないのかと。要するに、詰める段階に来ている、もう十年やってきたんだから詰める段階だとおっしゃったのは、ちょっと違うと思います。私も、笠井委員が言われたのと全く重なるわけじゃありませんが、例えば十年というのは憲法調査会も含んでしまうわけで、恐らく小沢幹事が言われたのは、この三つの宿題をめぐる問題について詰めよう、こういうふうに言われたんだと思います。それなら全くそのとおりでありまして、ただ、聞いている限りにおいては誤解を呼ぶ発言だと。何か、憲法にまつわる問題全体を詰めよう、こういうふうに言われたように聞こえました。
 それに付言して言うと、例えば、自由民主党、公明党と、それから民主党との考え方の違いを詰めるということに当たって、さっき中谷会長代理が言われたこととも若干絡むんですが、例えば一院制、二院制をどうするか。一院制云々なんという問題は、これは極めて、なかなか国会議員の方からは出しづらい。例えば、私どもの方でもそういう問題を党内で議論するとやはり、誤解もあるんですけれども、参議院側からの反発があるというふうなことがあるので、こういう問題は、民主党提案の中の課題は、大いに詰めるというかすり合わせをするというか、そういうものも取り入れるという可能性は十分にある、そんなふうにも思います。
 あわせて、三つ目としては、これもここで言うのはまだ早いのかもしれませんが、先ほど小沢幹事が幹事会云々ということを言われたのであえて申し上げますと、こうした三つの宿題の議論とあわせて、ぜひ、憲法全般をめぐって、憲法改正をする必要があるのか、いや、しなくてもいい、法律で対応できる、改正など必要ない、こういう意見と、いや、改正すべきだという意見をしっかりと両方対峙する格好で、この憲法審査会において、当初三年ぐらいかけてやろうと言っていた作業をやるべきである、こういうふうに申し上げさせていただきまして、私の発言とさせていただきます。

○山花委員
 民主党の山花郁夫でございます。
 中谷委員から御質問いただきました。また、先ほど柴山委員からの御指摘がありましたルクセンブルクの話は、規模が小さいじゃないかという指摘は甘んじて受けますけれども、中身については、EU憲法の当否についての国民投票、これが本当に、町中でもいろいろなところでも議論をしているという姿が見受けられるような状況が出てくるんじゃないか、日本国憲法の場合も似たようなことがあるんじゃないかという、楽観論と言われるかもしれませんけれども、そういったことでございます。
 また、政府の都合でこの問題についてやってみようみたいなことは我々も想定しておりませんで、あくまでも、要するに、衆参で三分の二の会派が、よし、これでいこうというようなことが条件であると思っております。
 その上で、先ほどちょっと例えがわかりづらかったかもしれませんけれども、二段階に分けて考えていただきたいんです。
 そもそも、一般的な国民投票ということが憲法上認められるかどうかという話であると、認められますよね、それは事実上の拘束力しかないからですという話であります。ただ、事実上の拘束力がインパクトが大きいのではないかという指摘は、全くもってそのとおりだと思っております。
 ちょっと専門的な話になっちゃいますけれども、憲法典というのは、授権規範であるとともに制限規範です。国会に立法権というのを憲法が与えていますが、これは授権規範としての側面ですけれども、国の法律は国会以外の機関がやってはいけないという意味では、制限規範という意味が憲法四十一条にはあります。
 したがって、制度設計として、国民投票の結果に縛られる、これがなければ法律として成立しないというようなたてつけにするとすると、それは憲法違反になる可能性がありますので、諮問的なものでなければいけないという認識です。
 ただ、他方、先ほど問責決議の例を出したのは、そうはいってもインパクトは大きいですよねと。つまり、問責決議が出されたとしても、憲法上は、総辞職しなきゃいけないとか解散しなきゃいけないとか当該大臣は辞任しなきゃいけないなんてどこにも規定されていませんけれども、そのインパクトが大変大きいものですから、これまでもその結果として辞任をされてきた方がいますよね。
 同じように、拘束力がないとはいえ、国民投票で示された意思というのは、かなり政治的には重く受けとめる必要があるでしょうというような意味で先ほど申し上げました。
 以上です。

○照屋委員
 私も、小沢幹事がおっしゃった先ほどの発言内容には大きく違和感を持っておりますし、その点については、笠井委員からありましたように、会長において、当憲法審査会の運営については、幹事懇談会、幹事会等の議論を踏まえて慎重にお運びをいただきたい。これは要望でございます。
 あと一点は、私は書面でも意見書を出しましたが、いわゆる三つの宿題についてもいまだ議論は不十分である、もっと議論を尽くすべきだ、こういうふうに言いましたので、中谷先生からありました実務者協議会、これも非常に拙速である、当審査会でもっともっと三つの宿題などについても議論を深めるべきだという意見だけを申し上げておきます。

○大畠会長
 きょうの憲法審査会は、一般的な国民投票についての題材のもとに、これまでの調査会の事実関係を含めて橘企画調整部長から報告を聞き、それについて委員の間で議論をしようというのが目的でございますので、今後のこの審査会の進め方については、先ほど数名の方から御指摘がありますように、幹事懇談会で皆さんのお話を聞きながら進める、こういうことにさせていただきたいと思います。
 照屋委員からの御指摘は、私もそのとおりと受けとめておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

○橋本(勉)委員
 柴山委員から間接民主制のことで言われましたので、ちょっと反論させていただきたいと思います。
 一つは、間接民主制そして直接民主制という分け方で、柴山委員は、間接民主制に今なっているからということだと思いますし、今ねじれているから、今の現状だけを直すには別の問題だとおっしゃいました。
 私は、もともと間接民主制と直接民主制には根源的な問題があると思います。例えば、今、小選挙区制では、過半数をとる人が当選します。過半数をとった人が当選して、その中でまた過半数で決まっていくということは、二分の一掛ける二分の一で、要するに四分の一の民意があれば決まっちゃうんですね。それに対して、直接民主制というのは過半数ということで、もともと間接民主制に限界があるということを申し上げたいと思います。それを是としていくならば、これはどういうテクニック論で話してもこの溝は埋まらないということだと思います。
 では、選挙区の選挙制の問題だから直したらいいんじゃないのということになるでしょうけれども、これも、過半数というのはなかなか直せない問題だと思いますので、それはどうしても国民投票法で補っていかなければならない問題が本質としてあるんじゃないかなと私は柴山議員に反論させていただきたい。
 世の中には、ヨーロッパでも多くの国々で拘束力を持った国民投票制というものを既に持っているんですね。これによって、この間接民主制の限界を補っていく制度がもう既につくられているんです。日本だけが非常に出おくれて、この問題だけに何年もかかっているというのは非常に情けないと私は意識をさせていただいております。
 そういう意味で、早目にもっと拘束力のある国民投票法を導入していただいて、ギャップができてしまっているものをしっかりと埋めていかないと大変なことになると思います。八〇%がこの政策を否定しているのに国会で決めてしまうということが本当に民主主義なのかどうか、ここはしっかりと考えていかなければいけない本質的な問題があると思います。
 以上です。

○大畠会長
 直接民主主義と間接民主主義に関しての御発言をいただきました。一つの課題として受けとめさせていただきます。

○山尾委員
 発言の機会をありがとうございます。民主党の山尾志桜里です。
 お時間がまだあったので、済みませんが、発言をさせていただければと思います。
 私の立場は、この国民投票制度については非常に慎重な立場をとっておりまして、ただ、必ずしも意義が全てにおいて見出せないというものでもないと思いますので、この附則十二条に沿って議論を進めていけばよいと思っております。
 なぜ慎重かと申しますと、この国民投票制度というものも、その最終的な目的は、国家として決断をするに当たって意義を有するからだということになると思うんですが、国家としての決断をするに当たっては、もちろん、一方で多様な民意や価値観、意見を受けとめながら、最終的には大局に立った決断をすることが求められる。場合によっては、その大局に立った決断というのが民意の大勢とは一致しない場合もあり得るということだと私は思っております。
 国民投票を積極的に受けとめる御意見の中には、多様な民意を反映できるという言葉も出てくるんですけれども、恐らく、特定のテーマの是非を問うような国民投票であれば、むしろ逆に、結果としての数の力で国民の意見の多様性というのは捨象されてしまう場合というのが非常に多いのではないかと私は感じております。
 ましてや、国民投票で是非が問われれば、先ほどから御意見も出ていますように、実質的には、民意の大勢とは異なった大局に立った判断、決断をするということは、政治家にとっては、不可能とは言いませんが、非常に困難な状況になるというふうに思います。
 意義として、そのほかに国民の政治参加ということが挙げられておりまして、私ももちろん、キャンパスで学生たちが自分の支持する政党やあるいはさまざまな政策について議論をし合うというような姿が日本にも見られるようになればいいなと思いますし、そうしていきたいと思いますけれども、その第一歩として、前回のこの会議でもお話になりましたように、十八歳に選挙権を広げる、あるいはその前提をつくるための学生に対する政治参加への教育を深めていくということがまず先にあろうかと思います。
 もちろん、国民投票という制度ができれば、政治参加には資するとは私は思います。思いますが、ほかの手段もあるわけであって、この政治参加が国民投票を推進する大きな理由ということにはなかなかなりがたいのではないかなと私は感じております。
 そろそろ最後にいたしますが、そういった意味合いで、私は非常に慎重な立場ではあるものの、例えば一院制の問題などのように、憲法改正にかかわるテーマであって国会議員発議の推進力が類型的に弱いと思われるような場合については、この国民投票の諮問的、予備的な制度設計というものも、もしかしたら高い意義が見出し得るかもしれない。
 最後は非常に曖昧で大変恐縮ですけれども、そういった意味で、附則十二条に沿って少し具体的な議論を進めていけばよいのではないかと思っております。
 以上です。

○近藤(三)委員
 再び発言の機会をいただきます。
 先ほど幹事の小沢先生の方から、本件に関しましては、先ほど、話があったような内容を決めると私が発言したというふうに小沢幹事がおっしゃいましたけれども、私はこのように申し上げました。本日議題の国民投票法附則第十二条は、憲法改正問題についての諮問的国民投票として、次の二点について速やかに検討するように定められていますというふうに申し上げただけで、速やかに定めていくという私の考えを申し上げたわけではございません。附則十二条はあくまでも検討を求める条項ですので、私としましては、この審査会で十分に検討、議論するべき課題だというふうに考えております。
 以上です。

○大畠会長
 事実関係についてはっきりとしたいということで御発言をいただきました。

○棚橋委員
 短くちょっと質問をさせていただきますが、事前に通告をしておりませんので、法制局の方、もしお答えになれればということで結構でございます。
 私は、憲法改正規定、これが衆参それぞれの院の総員の三分の二の賛同をもって国民投票というのは、もともと、時代の変化の中で非常に硬直的なものであり、これをまず改正する必要があるというふうに考えておりますし、多くの委員の方々もそうお考えではないかと思います。一方で、憲法を制定する国民の主権あるいは国民の意思からして、憲法改正規定自体を、そういう形で国会が発議し国民投票にかけるということに対して、憲法の制定あるいは憲法制定権者という観点から、何らかの憲法上の問題点があるという指摘があるかどうか。もし御記憶にあれば、その点だけ教えていただければありがたいと思います。
 審査会長、どうもありがとうございました。

○橘法制局参事
 先生、御質問ありがとうございます。
 浅薄な知識ではございますが、先生御指摘の、九十六条自体が改正の対象となり得るかという点については、憲法学説上、両論ございます。まさしく改正規定はみずからの改正規定によって改正され得ないのだというロジックでもって改正不能という論者もおられます。ただ、どちらかというと、私が判断するわけにはまいりませんが、多数あるいは通説と言われる学説からすると、もちろん九十六条も憲法の中の一条項であるから、これは、三分の二を例えば過半数、今、先生方が検討しておられるような、そういうことは可能だという見解も強くございます。
 ただ、九十六条については、先生今おっしゃいましたように、国民主権の原理から基づく憲法制定権力、国民が持っておられる憲法制定権力というものがどのようなものであるのかという深遠な御議論があるかと存じます。九十六条はまさしく憲法典の中に制度化された憲法制定権力なのだという御議論がその賛否両論の背景にあるものと存じます。
 以上です。

○大畠会長
 ほかに御発言を希望される方はおられますか。
 他に御発言を希望される方がおられないようでありますので、これにて自由討議は終了いたします。

第180回 国会 衆議院 法務委員会

第180回 国会 衆議院 法務委員会 第4号
平成24年3月23日(金)
午前九時三十分開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 先週に引き続き、ホテルあたみ百万石の件についてお伺いします。
 このホテルの運営会社で、大臣に代理人弁護士となるよう依頼していたファーイースト・キャピタルマネジメント株式会社は、K2キャピタル、現ウィング・プランニングですけれども、K2キャピタルという株式会社の傘下にありましたね。

○小川国務大臣
 かなり密接な関係にあるというふうに認識を持っておりますが、資本関係は承知しておりません。

○柴山委員
 報道によりますと、蓮村不動産とファーイースト・キャピタル、これが兄弟関係に立ち、そしてK2の傘下にあるというような事実があるというふうにされております。そして、このK2キャピタルは、企業再生をうたい文句に、グループ会社としてあたみ百万石に入ってきたものの、結局は乗っ取り屋のようなもので、創業者一族は次々とホテルから追い出されてしまったということであります。中国資本に売る、韓国に売るなどと転売目的の話ばかりで、ホテル経営については素人同然、それまで年間十五億以上の売り上げがあったホテルなのに、結局、破産になってしまったという報道があります。これは事実なんでしょうか。

○小川国務大臣
 かなり偏見に満ちた見方による意見だというふうに思います。
 K2という会社が、百万石ですか、山代温泉にあります、その再生に協力した。そのオーナー家のかなり親しい方から、そして各大手のファンドからの紹介を受けてそういう事業に乗り出したというふうには聞いております。
 その再生の一環として、熱海の方は、これを切り離して売却する、その資金で山代の方を、本店を再生しよう、こんなような概略的な話は承知しております。

○柴山委員
 当然、関連施設がある場合に、どれをとってどれを切るかということは非常に重要な経営戦略になるということは理解をしております。しかしながら、結局、このあたみ百万石が、こうした外部の資本を入れたことによって破産につながってしまったという事実自体は、これはやはり紛れもない事実であろうかと思います。
 そして、大臣は前回、稲田議員の質問に対して、ファーイーストを被告に提起された訴訟の第一審のあなたの弁護士着手金が三千三百万円支払ってもらえない段階でなぜ控訴審の依頼を受けたのかという問いに対して、私が事情を一番よく知っているし、依頼者も私にやってほしいからと答えられています。
 依頼者から見ればそうであってほしいかもしれませんが、弁護士としては、着手金が追加で必要となる控訴審を、一審の着手金が多額の未払いを抱えたままでさらに受任して、支払いの不安はなかったのでしょうか。

○小川国務大臣
 支払いの不安というか、支払いの見込みは大変不安定でございました。要するに、ホテルの営業は水商売でございますし、リーマン・ショックですか、これがあって、かなり営業は苦しい状況にございました。ですから、一審の着手金も、分割払いの約束が、結局、分割の分は相当部分もらえないまま推移してきたわけでございます。
 それで、二審の着手金のお話がありましたが、一審がまだ未払いがあっても、二審は二審で、やはりこれは、別に、報酬をいただくというのが弁護士業界では当然のことでございますから、私がやる以上、当然、着手金は計上するということでございます。

○柴山委員
 前回の稲田議員の質問にもありましたように、弁護士会の職務基本規程では、弁護士が依頼者との間で金銭の貸し借りに実質的につながるようなことを禁止しているんですね。つまり、依頼者との間に債務を抱えるような状態になってしまうと健全な弁護活動ができないというのがその職務規程の基本的な趣旨だと思っておりますけれども。
 今大臣がお話しになられたとおり、結局、一審の着手金も回収できないまま控訴審を受任したということは、実質的にこの職務規程に抵触するのではないかとお感じにならないですか。再度、質問をさせていただきます。

○小川国務大臣
 依頼者との間で貸し借りは一切いたしておりません。ただ、着手金という私の弁護士報酬が未払いだったということだけでございます。

○柴山委員
 大臣は、私の質問に対して、ファーイーストもそんなに資金繰りが豊富な、豊かな会社ではございませんでしたと説明されました。間違いありませんね。

○小川国務大臣
 第一審の事件を着手した時点、これが春過ぎですか、それから、秋にリーマン・ショックがありました。要するに、ホテル営業という一つの水商売ですから、業績はかなり変動いたします。ですから、時期時期によっては異なりますが、そんなに楽な状態ではなかったというのは、当初から一貫した状況です。

○柴山委員
 訴訟の直後に債権者破産が認められてしまったわけですから、資金繰りが潤沢でなかったということは事実かと思います。
 ただ、今大臣がおっしゃった事実関係をもとにすると、一審が未払いだから控訴審の着手金をもらうのはおかしいといったら、私は無報酬でやらなくてはいけないことになります、前回もそのように答弁されていたんですけれども、着手金のめどがつかなければ、さっき私が言ったとおり、弁護士の職務基本規程に鑑みて、依頼をお断りするのが普通なんですよ。
 大臣は、何かファーイースト社の依頼を断れない特殊事情があったんですか。

○小川国務大臣
 いやいや、特殊事情も何もありません。依頼者が訴訟の継続を希望しておるわけでございますから、そして、この私にやっていただきたいというわけですから、これは当然のこととして受けたわけでございます。

○柴山委員
 繰り返しになりますけれども、弁護士が健全な職務活動をするに当たって、依頼者からのしっかりとした着手金、あるいは結果を残した場合には報酬金、これを受領することによって弁護士の仕事というのは成り立っているわけですね。にもかかわらず、一審の着手金が、後づけであるとはいえ、三千三百万円未払いとなっている中で、さらに、今の大臣のお言葉をかりれば、追加で四千万円、支払いの当てのない事件を引き受けて、しかも公正証書を作成するということは、極めて異常だというふうに私は感じざるを得ません。
 公正証書をつくって、そこまでして依頼者から将来お金を回収したかったんですか。

○小川国務大臣
 まず、公正証書作成の件と、それから控訴審の着手金の件は、これはまた全然別の理由でございます。
 そして、支払ってもらえる見込みがないという一つのこの断定的な見方は、これは当たっていないと思います。
 控訴する段階で、一審判決においても、結果的に敗訴はしたとしても、五億円のリニューアル工事を相手方が行わなかったということは一審の裁判所も認めておるわけでございますから、そうした状況を踏まえて、控訴審によって判決をいわばひっくり返す、あるいは、判決で黒白という決着をつけずに、このような生きている建物を、営業しているものが入っている建物の明け渡しというものは、世間一般的には、判決で強制執行というのは両方に損害があるから、やはり一審判決を踏まえて、控訴審において和解という形で、円満な形で、出ていくなら出ていく、残るなら残るという形もあるわけでございます。いわば、控訴審の受任をした際には、どのような進展をしていくかということで、かなり幅広いさまざまな見通しがあるわけでございます。
 ただ、相手方が相当に、私から見れば全くにべもないような強硬な対応をしてきたので、結果的にこちらは強制執行で明け渡しされたということでございますが、それはあくまでも結果から見たことでございます。

○柴山委員
 この事件は、原告家主がファーイースト社に対して未払い賃料を請求し、そして支払えないことを理由として建物を明け渡せといった事案なんです。和解することによって被告側に何らかのお金が入ってくるという案件じゃないんです。逆なんですよ。被告側から原告がお金を取ろうという訴訟なんですね。
 ですから、さっき大臣は、いやいや、このホテル運営というのは非常に苦しかったということをおっしゃっていて、訴訟の結果によっては経済的な好転が見込まれるというのは、私は全く理屈が通らないと思いますよ。訴訟が勝っても負けてもファーイースト社にはお金が入ってくることはなかったわけですね。少なくとも、この控訴審のいかんによって経済状況が、ファーイースト社がよりプラスになるという関係にはなかった。私は、さっきの説明と照らして、非常に矛盾が生じているというように断じざるを得ません。何か答弁はありますか。

○小川国務大臣
 まず、この紛争に関して、委員は、家賃未払いの契約解除だという非常に単純化した構造、まあ相手方はそういうふうに言うのかもしれませんが、実際には、そうではなくて、大変に複雑な事件でございますが、それを説明しないとわからない部分があるので、エキスだけ申し上げさせていただきます。
 このホテルは四十五億円で売却すべきものでございました。ただ、四十五億円であって、売却した後、こちら側が引き続いて賃借権を受けて営業するという賃借権つきの売買でございましたので、四十億円ということで売買代金を設定しました。
 ところが、四十億円と売買代金を設定しましたが、しかし実際には、三十五億円という売買契約にして、五億円は、買い主が建物のリニューアル工事を五億円の分行う、行うことによって、賃借人となったファーイーストの営業を助ける、このような形に変形的な契約といたしました。すなわち、売買代金四十億円のうち五億円はファーイーストのために買い主がリニューアル工事を行うという義務に転換したわけでございます。
 そして、もう一つは、賃借料につきまして、リニューアル工事を行えば営業成績がかなり上がるから、こういう理由で、賃料を五割アップ、千二百万ぐらいのものを、たしか千八百万ぐらいかな、ちょっと今数字は確かじゃございませんが、かなり賃料も高額にしたわけでございます。
 そして、そのような契約を一体化して契約したところ、その売買代金を転嫁したはずの五億円のリニューアル工事を相手方が行わなかったわけでございます。行わなければ、こちらは、それはどうしてくれるんだ、では、リニューアル工事を行うことを前提に増額した家賃は払えませんよ、あるいは、五億円分リニューアル工事をやらないんなら、その五億円を何とかしてください、こういうことが紛争でございまして、ただ単に賃料未払いで居座ったというような事件でないということは御理解いただきたいと思います。(発言する者あり)

○柴山委員
 棚橋理事が今ちょっとお話しになったんですけれども、リニューアル工事が契約の内容としてどのような意味合いを持つかということはともかく、非常に筋の悪い事件であることは間違いないと思います。
 先ほど大臣は控訴審で勝つ可能性もあったというお話をされましたけれども、私は極めてそれは疑問です。それは後で質問をさせていただきます。
 大臣は、訴訟の見込みと公正証書とはまた別のお話だということをおっしゃいました。
 大臣、一審と控訴審の着手金合計七千三百万円の支払い確保のために、公正証書というのは強制執行が可能な書面、いわゆる債務名義としての役割を果たしますけれども、公正証書を作成され、そして、それを使って依頼者に対してあなたは自分が、依頼をしてきた依頼者に対して差し押さえをしているわけですね。そこまでして依頼者から回収をしようとした理由は何ですか。

○小川国務大臣
 まず一つ、大変筋が悪い事件だと言っておりますが、私どもは、大変筋が悪い買い主にひっかかった、そのために、ホテル、四十五億円で売れるものを三十五億円でとられてしまった、このような認識でおります。
 次に、公正証書のことがございました。
 公正証書、これは私は差し押さえをするために作成をしたわけでございますが、なぜそうしたのかといいますと、買い主が先にファーイーストの預金と売掛金を差し押さえしてきたわけでございます。ですから、それに対する対抗上、買い主がひとり占めできる債権ではありませんから、私の方にも配当してくださいと。その配当に加入するためには、これは差し押さえがされている債権については私も差し押さえをしなくてはいけないから差し押さえた、こういうことでございます。(発言する者あり)

○柴山委員
 今、棚橋理事の方からお話をいみじくもいただいたんですけれども、つまり、依頼者からはお金が欲しかったわけではないけれども、一審で勝訴をした買い主、いわゆる原告家主ですね、原告家主から仮執行宣言つき判決に基づいて差し押さえがされた財産、すなわち、もはやそのままではファーイースト社には入ってこない財産から支払いを受けたかったということでよろしいわけですか。

○小川国務大臣
 相手方の債権は一般債権でございます。私の債権も既に発生している一般債権でございますので、どちらに優先権もございませんから、その債権額について案分配当していただくのは当然のことでございます。

○柴山委員
 繰り返します。もしこの原告家主側の差し押さえがなければ、この財産、具体的にはもろもろの売り掛けとか預金の債権はファーイースト社の財産だったわけです。ところが、原告家主がこれを差し押さえたことによって、ファーイースト社、あなたの依頼者はこの財産を手にすることができなくなったわけです。そのできなくなった、原告の手元に入る財産を、たとえ案分とはいえ、あなたが超過をして差し押さえるということは、結局、依頼者からの回収ではなくて、原告、強制執行した側からの回収になるんじゃないですか。

○小川国務大臣
 全く違います。差し押さえされたけれども、その預金そのものはファーイーストの預金でございます。その預金を差し押さえによって強制執行で配当手続する際に、相手方と私とで、それからさらにほかに差し押さえが共存すれば、その共存した差し押さえの間で配分するわけでございまして、その配分を受けるのはあくまでもファーイースト社からの一部弁済でございます。

○柴山委員
 こんな簡単なことが、あえてごまかして答弁をされているわけですけれども、非常に私は納得ができません。(発言する者あり)

○小林委員長
 一問一答でいきましょう。はい、どうぞ。

○柴山委員
 繰り返しになりますけれども、経済的には、本来、原告家主に差し押さえた財産の価値というものが帰属をするわけです。これは、仮執行宣言といっても、執行停止の申し立てがなければ最終執行と同じ形の強制執行なんです。その強制執行されたものに対して、大臣が、案分配当という形ではあれ、その経済的な価値を一部手にしようという形で、しかも、それを依頼者と通じて行っているわけです。違いますか。

○小川国務大臣
 差し押さえは、差し押さえたことによって原告のものになるわけではございません。あくまでも差し押さえされた債務者のものでございます。その債務者に対する強制的な弁済を促すのがまさに差し押さえでございます。相手方が行ったその強制的な弁済を促す行為に、それも優先権がない債権で、一般債権であります、私の債権も一般債権でありますから、私も同じようにファーイーストのその預金から弁済をいただきたいということで差し押さえしたわけでございまして、これは相手方の原告のものを取り上げたのではなくて、あくまでもファーイースト社の財産から一部弁済を受けた、このようなものでございます。

○柴山委員
 差し押さえの結果、それが実行されて配当に至らなければ、大臣のおっしゃるとおりです。しかし、差し押さえというのは、強制執行及び配当に結びつく行為で、要するに、あなたの依頼者であるファーイースト社に帰属をしている財産を凍結するものなわけですから、だから、今おっしゃったことは非常に限られた、手続の一番初めの部分にしか着目をしていないということを申し上げます。
 次に、事務方にちょっとお伺いしたいんですけれども、昨年七月十四日以前、刑法九十六条の二に定める強制執行妨害罪はどのような内容のものでしたか。

○稲田政府参考人
 お答え申し上げます。
 情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律が昨年の六月に成立いたしまして、それが七月の十四日に施行されまして、刑法九十六条の二が改正されましたが、その改正前の九十六条の二の強制執行妨害罪の構成要件は、強制執行を免れる目的で、財産を隠匿し、損壊し、もしくは仮装譲渡し、または仮装の債務を負担したというものでございます。

○柴山委員
 具体的にどのような事例が想定されるのか、現実の判例などもあれば、ぜひ教えていただきたいと思います。

○稲田政府参考人
 いつも申し上げているところでございますが、犯罪の成否というのは、個別の事案におけます証拠関係により定まるところでございます。
 ただ、今、裁判例でということでございましたので、私どもの方で把握している裁判例の中で、そこで当該構成要件に該当するとされたもののその部分を私どもなりに若干整理をさせていただきますと、次のようになるのかなということで聞いていただければというふうに思います。
 例えば、先ほど申し上げました行為のうち、隠匿に該当するとされたものといたしましては、架空の金銭債権を記載した公正証書に基づく有体動産の競売手続によりまして債務者の所有物件があたかも仮装の競落人の所有に帰したかのごとく装う行為というふうに言われているものがございます。
 それから、損壊に該当するとされたものといたしましては、抵当権が設定された建物を、抵当権を消滅させて、強制執行を免れる目的で損壊した行為などを挙げられたものもあります。
 また、仮装譲渡に該当するとされたものとしては、不動産業を営む会社の代表者らが、所有建物に係る賃料債権に対する強制執行を免れるために、賃借人に対して賃料債権を別会社に譲渡した旨の内容虚偽の通知を行った上、別会社代表者名義の預金名義に賃料を振り込ませた行為とされたものがあります。
 また、仮装の債務を負担に該当するとされたものといたしましては、手形債務の弁済を求める内容証明による請求書を受領した者が、自己所有の不動産に対しましてその強制執行を受けることを免れる目的で、その一部につき仮装の金銭消費貸借契約締結に基づく抵当権を設定した行為があるというふうにされているところでございます。

○柴山委員
 本来であれば、債務者の有している責任財産、強制執行の引き当てとなるべき財産を隠したり、あるいはその経済的な効用を失わしめる、これは法律的にも含めて、特に、公正証書を作成して虚偽の債務を負担させてこれを処分する行為、こういうことが全て、この強制執行妨害罪の判例として、既に処罰をされているということでございます。
 もう一つお聞きしたいんですけれども、弁護士が、顧問の不動産会社に資産の差し押さえを免れるように指示したとして、強制執行妨害罪に問われた事案はありませんか。

○稲田政府参考人
 突然のお尋ねで恐縮でございますが、私どもの方で、それほど網羅的に事件を把握しているわけではございません。現在、手元に持っているものの中で、今御指摘のようなものに該当するような判例というのは、申しわけありませんが、把握しているところでは、ございません。

○柴山委員
 今紹介された事案の中に、不動産会社の賃料債権を架空の譲渡をしたことによって免れた案件というのが紹介をされたかと思いますが、それは恐らく、私の手元にある、Yと言われる弁護士が、この方は死刑の案件について一躍名をはせた方でありますけれども、この方が、依頼者である不動産会社に対してそのような指示をしたという案件ではなかったでしょうか。

○稲田政府参考人
 済みません、今手元に詳細な判決文を持っておりませんが、多分、御指摘の判例とは違う、判例というか事例とは違うものだろうと思います。今私が申し上げましたのは、平成十年ころの熊本の地方裁判所の判決でございますので、多分違うのではないかというふうに思っております。

○柴山委員
 私の手元に、今紹介をさせていただいた事案についてのニュースレベルでの説明があります。
 二〇一一年の十二月八日の記事なんですけれども、今紹介をさせていただいたとおり、このYさんという弁護士は、死刑廃止運動の中心的な人物として知られ、山口県光市の母子殺害事件の元少年の主任弁護人を務めるなど、数々の刑事事件を担当されていることで知られています。
 この方が、顧問弁護士を務めておられた不動産会社の社長らに、当該ビルの賃料債権の差し押さえを免れる方法として、その賃料債権を移しかえるように助言をし、そして、一審は無罪だったんですけれども、二審では有罪、そして最高裁も上告棄却となって、強制執行妨害罪が認定をされたという事例がありましたけれども、これについて把握されていないですか。再度、質問します。

○稲田政府参考人
 御指摘のような案件があったことは知識として今覚えておりますけれども、申しわけございませんが、その判決を今手元に用意してございませんので、その内容につきましてちょっとここで御説明はいたしかねますので、御容赦いただきたいと思います。

○柴山委員
 当然のことながら、このように弁護士が犯罪に手を染めれば、弁護士会への懲戒請求も問題となる、そういう事案ではないかなというふうに思うんです。
 そこで、大臣にお伺いしたいんですけれども、先ほど大臣は、控訴審での裁判、これは十分勝つ見込みがあったんだというようにおっしゃいましたけれども、ファーイースト社のための控訴審裁判は、書面を一回出して、判決を含めて期日は二回、前回そのように答弁されましたが、間違いありませんね。

○小川国務大臣
 回数については間違いございません。準備書面は一回でございます。
 この控訴審におきましては、私どもの読みと違いまして、相手方がまさか実行はしてこないだろうという強制執行をやってきたために、建物を退去させられてしまいました。退去させられてしまった後ですと、これはもう旅館営業できないし、訴訟もしようがないなということで戦意喪失して、依頼者の了解のもとに、それ以上の訴訟活動は行わなかったということでございます。(発言する者あり)

○柴山委員
 いや、私は、今、棚橋理事の方から指摘があったんですけれども、極めて不自然だと思いますよ。それほど御自分の主張に自信があり、そして勝訴の見込みがあるというのであれば、まず、控訴審を提起した後に、和解の交渉をするのが普通なんです。そういうことも一切しないで、強制執行をしてきましたと。強制執行したといったって、さっき大臣が御自分でお認めになったように、これはファーイースト社の預金を凍結しているにすぎないわけですね。実際にそれが換価されるのは、配当という手続を経た後です。凍結をした段階で、いや、もう戦意を喪失しましたということで、あっさりギブアップをしている。
 しかも、控訴審判決では、大臣が出された書面について、このように書かれているんです。控訴人らの、つまり大臣たちのですね、控訴人らの当審における主張は実質的には原審における主張の繰り返しにすぎないと、あっさり退けているわけです。
 そして、前回の質疑で稲田議員が指摘したとおり、完全勝訴をした原告側の弁護士報酬が、大臣側のほぼ一割の八百万円なんです。大臣側の着手金の設定は明らかにおかしいというようにお感じになりませんか。

○小川国務大臣
 まず、委員の前段の方でございます。
 私どもは、ホテルの、旅館の営業ということが中心の会社でございます、それが強制執行で出されてしまったわけですから、当然、ホテルの営業はそこで終わってしまったわけでございます。そうした状況を踏まえて、これ以上裁判をやってもホテルの営業は戻りませんから、ですから、しようがないなということでございます。
 また、和解の努力というものはいたしました。これは、裁判の弁論が始まる以前にいろいろな、裁判所に対する上申とか、そのような形で行いましたが、しかし、裁判所からも、結局、強制執行で出されちゃったのならもう和解もしようがないね、こういうふうに言われて、和解も断念したわけでございます。
 それから、後半部分の話でございますけれども、まず、これまでも説明しております、訴額が十八億四千万円。これに弁護士会報酬規定を当てはめて私は四千万円という数字を、私と依頼者の間で合意したわけでございますが、この金額の算定につきましては、特段委員も異議を述べておられませんので、十八億四千万円という訴額の事件について、弁護士報酬規定を当てはめると四千万円になるということについてはお認めいただけると思います。私は、そういう中で、報酬規定どおりということの着手金を依頼者との間で合意したわけでございますので、特段不審なところは持っておりません。
 また、相手方が八百万円と、弁護士報酬規定からするとその十倍以上はもらってもいい話を、随分安いなと思いますが、それは相手方と相手方の弁護士との間の事情でございますから、不当に安過ぎる、私からいえば、何かダンピングに近いような価格で、そんな値段にしなければ事件を受任できないのかというちょっと寂しい気がしますが、しかし、いずれにしましても、それは相手方と相手方代理人との話ですから、私が関与すべき、あるいは関知すべきことではありません。

○柴山委員
 大臣は、弁護士報酬規定、弁護士報酬規定というふうに錦の御旗のようにおっしゃっていますけれども、前回の質問の中で、結局、事件の難易とか、それからどういう展開をしていくかということによって、これは着手金の額というものについても、それから分割の仕方についても変わってき得るというように御自分でお認めになっておられるんですね。
 弁護士報酬規定というのは、決して単一無二のぴしっとした基準ではなくて、一応の目安にすぎないんです。それは、やはり弁護士としてのさまざまな活動の仕方によって着手金の具体的な金額というものは変わり得るものですし、この報酬規定が一応の目安としてあったからといって、それが丸々とることのできる正当性のある債権だとは私は到底思えません。
 それから、もう一つ非常に重要なことは、大臣は、明け渡しを受けたからもうホテルの営業は立ち行かなくなったというふうにおっしゃいますけれども、実際にこの第一審の勝訴原告から仮執行宣言に基づいて差し押さえがされたのが平成二十二年の三月十五日ですよ。明け渡し執行がされたのはもっと、数カ月後じゃないですか。その間に、棚橋理事がおっしゃったように、本当に理があるというふうに思えば、もっと全力を尽くして依頼者のために交渉するとか、そういういとまは十分あったと私は思うんです。何をされていたんですか。

○小川国務大臣
 まず、相手方の代理人弁護士と話し合うのが一番、通常の方法なんですが、私から見ますと、大変に話し合いを、一審の段階、当初から話し合いをしていただけない方でしたので、なかなか難しい面がございました。
 また、強制執行そのものの申し立ては委員が言われる日かもしれませんが、それは相手方が申し立てただけで、私どもはそれは承知しておりません。私どもは、執行官が来て初めて、ああ、申し立てしていたのかということがわかったわけでございます。
 それから、和解の努力、裁判の努力、これは当然行っておりました。控訴審に向けて、例えば、相手方会社、相手方の会社も破綻しましたから、そこの社員等の証人の予定とか、あるいは、相手方の会社の社長も実質上失墜していましたから、地位をほとんど失っておりましたから、そこら辺との話し合い、あるいは、先ほども申し上げましたように、裁判所に対する上申等、あるいは、さまざまな面で私どもの範囲ではやっておりました。ただ、それは、相手方から見れば、ただ見えないだけでございます。

○柴山委員
 後づけでいろいろ理由を述べられていますけれども、少なくとも、第一審の仮執行宣言つき判決に基づいて原告家主が差し押さえをファーイースト社の預金や売り掛けに対してしてきたのが三月十五日ですよ、平成二十二年の。そして、それはまず、当然のことながら、第三債務者と言われる、ファーイースト社が持っているさまざまな債権のさらに債務者、そこに送達をされます。その上で、債務者であるファーイースト社に送達をされます。この直後に、小川大臣たちは、公正証書によって自分たちの差し押さえをぶつけているんですけれども。
 いずれにせよ、予定に反して執行をかけてきたというふうに判断をできるのは、もう三月時点なんですよ。三月時点で、ああ、これはもう原告は本気だな、やることをやってくるな、このままでいったら、差し押さえだけじゃなくて今度は明け渡しまで求められるな、そういうことは十分に予想ができたはずなんです。
 にもかかわらず、大臣は、控訴審、たった二回ですよ、口頭弁論。二回の判決まで、書面は一回だけ。そして、明け渡し執行までされて戦意喪失、それで判決ですよ。しかも、判決が七月七日ですよ。これは私は余りにも、本気で勝訴を目指す弁護士のやることではないというように思っております。
 もし仮に、大臣、それでも本気で回収を求める正常な正当な弁護士着手金債権だとおっしゃるのであれば、再度そのように述べてください。

○小川国務大臣
 まず、委員がおっしゃられた差し押さえ、金銭債権の差し押さえと明け渡しの差し押さえというのは、これは相当性質が違うものでございます。金銭債権の差し押さえというのは仮執行で行ってくることはよくあることでございますが、建物なんかの明け渡し、この強制執行というのは、普通に考えますと、そう簡単に行うものでもない。これは、執行費用が大変かかると同時に、明け渡した後の管理というものがあるわけでございます。
 私ども、ホテルを営業していますから、それは、ホテルを使っていると同時にメンテナンスもやっておるわけでございます。しかし一方、相手方が、強制執行で出してしまった後、これをいわばメンテナンスのないまま、ただ鍵をかけたまま放置しておきますと、建物が大変劣化します。特に、温泉、給排水等、さまざま面で建物が劣化します。そうしますと、明け渡しの強制執行をやる場合に、相手方の方も、明け渡した後、かなり損失をこうむるのであります。
 ですから、これは企業と企業のいわばそれぞれが採算を見ての行動でございますから、そうしたことを考えれば、そうは明け渡しの強制執行は実際にはやり切らぬだろう、このような読みを一つの見通しとして持っておりました。
 それからもう一つ、大事な点を私まだ申し上げてございませんでしたが、あくまでもこの強制執行は第一審判決の仮執行宣言でございます。ですから、この仮執行は、私どもが保証金を積んで執行力をとめることができるわけでございます。裁判所に執行力停止の申し立てをするわけでございます。ただ、これは申し立てすれば自動的に出るものではなくて、十分な保証金を積まないと執行停止にならないわけでございます。
 それで、私どもは、私どもというか私の方は依頼者に対して、強制執行をとめるために、仮執行をとめるから、その保証金として、私の見込みでは三億円あれば足りるだろう、ですからそれをめどにその保証金を用意してもらえないかということで、依頼者との間ではそういう方向で話はついておりました。しかし、依頼者の方はその保証金ができなかったために、結局は執行停止の手続をとれなかった。執行停止の手続をとれないために、強制執行をされて出されちゃった。このような事実経過でございます。

○柴山委員
 繰り返しになりますけれども、大臣、あなたは、あなたの控訴審も含めた弁護士着手金債権、これは本気で回収を求める正常かつ正当な債権だったというように自信を持って言い切れますか。

○小川国務大臣
 もちろん正当な債権でございます。

○柴山委員
 それなら大臣、このときに発生し、当然弁済期も到来している着手金合計額七千三百万円は、翌年の確定申告において未収金として届け出ていますよね。

○小川国務大臣
 その年の間に債務者が破産になりましたので、当然これは回収不能となったわけでございますので、未収としては届け出ておりません。

○柴山委員
 ちょっと待ってくださいね。
 これは、破産手続の中で、回収が見込めないのであれば、そういった回収が一定以上は見込めないという書類を税務署に出した上で、その未収金については特別の処理をするというのが正常な手続になっているはずなんですよ。にもかかわらず、あなたが本当に回収を求める正当な債権、しかも、これは破産がかかる前は家主との差し押さえの競合があった事例ですよね。ですので、その段階では一定程度の回収が見込めたということだと思うんですけれども、破産がされた後、どれぐらい回収見込み額というのが減額すると大臣は踏んでおられたんですか。

○小川国務大臣
 ほかに財産がありませんから、結局ほとんどないなというふうには思っておりました。具体的な数字は承知しておりません。

○柴山委員
 ですから、先ほど私が申し上げたように、七千三百万円というのは膨大な、べらぼうな金額なんです。通常であれば、それは発生した未収金として確定申告のときに届ける。ただし、これが回収できないということであれば、回収できないことを書面をもって届け出て、そして税務署の認定を受ける。一部しか回収できないのであれば一部しか回収できないということを届け出るのが、これは普通の確定申告のあり方じゃないんですか。大臣、いかがですか。

○小川国務大臣
 私の方は、弁護士法人でもございませんし、青色申告もしておりません。まさに、実際に、要するに白色申告でございます。ですから、実際に収入があったものについて収入の申告をしただけでございます。

○柴山委員
 ちょっと、本当に真っ当な個人事業としてやっているのかということを、私は今の大臣の御答弁を聞いて極めて疑わしく思いますね。
 ちなみに、話はかわりますけれども、大臣は馬主であることを趣味であるというふうに言われていますけれども、その馬主であることによって損が出た場合には、他の事業と通じてその分税金が戻ってくるんですね。ですから、決して通常の趣味と一緒には語れないんですよ。通常の趣味は、どんなにお金がいっぱいかかって、それで自分の生活費に食い込んできたとしても、それによって税金が戻ってくるということはありません。大臣は一般的に、内規で株の売買すらも自粛が求められているわけですね。にもかかわらず、このように、場合によっては税金が戻ってきて、しかも当たれば巨額の利益を得られる、この馬主でいることを大臣である間、おやめにならない。先ほどの青色申告のお話ともあわせて、極めて私は事業主として不適当でないかというように思うんですが、いかがですか。

○小川国務大臣
 私が青色申告をしていない、まさに青色申告の特典を使わないでいわゆる白色申告をしているということが何かいいかげんだみたいなお話でございましたが、白色申告がなぜいいかげんなのか、全く理解に苦しむお話でございます。
 次に、馬主のことに関しての趣味で、損益通算ができるというふうにございましたが、これは損益通算ができるというふうになっておりますからしたまでのことでございまして、これがなぜいけないのか、御趣旨がよくわかりません。

○柴山委員
 委員長、ちょっと今の大臣の答弁は見過ごすことができませんよ。損益通算という制度自体を私が批判しているように受け取られるのは極めて心外ですね。私はむしろ、趣味というふうに言いくるめて、結局、議員歳費も含めた形で損益を通算できる、これは立派な副業だ、サイドビジネスだということを申し上げたいだけなんですよ。そのことについて、大臣規範には抵触しません、趣味なんだから結構です、税金が戻ってきて何が悪いんですか、こうやって開き直るのは、私は大臣の資質としていかがなものかというように思いますが、大臣、どうですか。

○小川国務大臣
 まず、副業としてやっているものではございません。まさにビジネスとしては全く成り立たない可能性があるものを副業というような感覚でやるわけがないわけでございますから、私はあくまでも趣味としてやっているわけでございます。副業ではございません。(柴山委員「ちょっと、今の答弁、納得できませんよ」と呼ぶ)

○小林委員長
 では、ちょっとそういうことを発言して。質問の中で納得できない理由を説明して質問してください。

○柴山委員
 巨額の損失が出る可能性があるからこれは副業なんかじゃないと言ったら、株式投資だって同じじゃないですか。全く説明になっていないんですよ。こういう不誠実な説明をする人物が法務大臣であっていいんですか、本当に。

○小川国務大臣
 ちょっと委員の質問の御趣旨、二つのことを混同されていると思うんですね。いわゆる大臣規範に触れるからビジネスとしてやることはいかぬという一つのお話と、それから株式投資。
 これは、株式投資は一般的に個人はビジネスでやるんではなくて一つの投資としてやるわけでございますが、大臣規範でこれを禁止している理由は全く違います。株式投資は、要するに、政治家の地位を利用して得た情報等で不正なことがあってはいけないから株式投資を自粛しようということでございます。ビジネスの方、営業を行ってはならない、事業をしてはならないというのは、やはりこれも政治家の地位を、大臣、政府にいる地位を利用してそうした事業に結びつけることがあってはならないということからきているわけでございます。
 ですから、私も再三予算委員会でも申し上げましたとおり、私の馬が走るかどうかは、政治家の地位によって得たことによって馬が走る走らないがあるわけではございませんし、そして政治家の地位を利用したからこれが一つのビジネスとして成功するかどうかということとは全く無関係でございます。あくまでもこれは、そうしたことで政治家の地位とは全く関係していないから、株式投資と同じというふうには言えませんし、また事業ではなくあくまでも趣味でございます。

○柴山委員
 どの馬に投資するかとか、その馬の育成をどういう方々にお願いをするかとか、ある事業と言われるものをするに当たっては、やはり政治家として、あるいは所管省庁のトップとして、さまざまな抵触というものは生じ得るんですよ。だからこそ、さっき大臣は、事業と株は違うとおっしゃいましたけれども、結局趣旨は同じなんです。
 大臣として、その職務の公正を確保するために、そういった、ビジネスでもうけるということについてはこれを自粛しようというちゃんと規範があるわけで、それはこの馬主になることについても十分適用される。だからこそ、我々がこれほど、またマスコミの方々がこれほど、おかしいんじゃないかということを言っているわけじゃないですか。
 大臣、全く認識が違いますよ。いかがですか。

○小川国務大臣
 ですから、再三申し上げましたように、私は何も、委員が言うような、おかしいという感じは持っておりません。私は、趣味として行っておりますので、委員の御指摘は当たらないと思っております。

○柴山委員
 一般の感覚からいかにかけ離れているかということは、この質疑の様子をインターネットなどでごらんになっている一般の方々が感じているところだと思いますよ。
 だって、私、大臣の届け出られている所得の状況も拝見をさせていただいておりますけれども、やはり事業所得というのがかなりマイナスになって、税金が返ってくる年が多々あるんですね。やはりそれは、私は、一般の方々からすれば、これは、国会議員が歳費として受け取るそのお金が減ったからといって税金が返ってくるというのはおかしいんじゃないかというふうに感じるのは当然だと思うんですよ。
 ファーイーストの問題について、質問をちょっと続けさせていただきたいと思います。
 大臣は、つい先ほどおっしゃったんですけれども、第一審判決の仮執行宣言をとめる、いわゆる執行停止の手続のためには保証金を積まなければいけないというふうにおっしゃいました。前回もそのようにおっしゃいました。予想では三億円、あるいは二億円でできたかもしれないというふうにおっしゃっているんですけれども、結局大臣は、この保証金の金額を裁判所に確認していないんですか。交渉とかはしていないんですか。

○小川国務大臣
 ですから、保証金の用意ができないのに申し立てはいたしません。

○柴山委員
 資金繰りができなかったというふうにおっしゃいましたけれども、一方で、ファーイースト社のグループ会社である蓮村不動産から、敗訴直後の三月十八日に、要するに強制執行がされたとき、もうその直後に、キャッシュで七千万円もの大金がファーイースト社にぽんと貸し付けられているわけですよ。
 保証金は、申し上げるまでもなく、そういった現金だけじゃなくて、国債とかあるいはボンド、いわゆる支払い保証委託契約を組むことだってできるはずなんです。
 少なくとも、そういった強制執行がなされてきた場合に、これを回避する努力というのは、普通の弁護士だったら、私は最善を尽くすのが当たり前だと思うんですけれども、本気で保証金を積む努力をしないで、大臣は原告の差し押さえの妨害をする道を選んだということではないんですか。

○小川国務大臣
 全く論理的に合っていない議論だと思います。すなわち、努力云々といいましても、保証金を用意するのは、弁護士の私ではなくて、あくまでも依頼者でございます。
 また、蓮村不動産が七千万円を急遽支出した、貸し出ししたわけでございますが、これは、あくまでもホテルの従業員に払う給料あるいは熱海の取引先に払う支払い代金、これを払う原資であった預金や売掛金が相手方の会社に差し押さえされてしまった、しかし、従業員や熱海の業者を見殺しにすることはできないからということでやったわけでございます。

○柴山委員
 大臣は、都合のいいときには依頼者とぐるになって、都合のいいときには、いや、債務者で決めることだから自分は関係ないと言って、立場を非常にころころ使い分けているなというふうに思います。
 しかも、蓮村不動産が公正証書を巻いたときに、大臣は蓮村不動産の代理も務めているわけですね。要は、この蓮村不動産あるいはファーイーストなど、このK2キャピタルの傘下となっているグループ会社一体と大臣はずぶずぶの関係で、そのさまざまな相談に乗っていたという実態がある。しかも、控訴審の受任をやはり求められたら、それを断れない何か事情があったとしか思えないんですよ。大臣、一体何があったんですか。どういうことなんですか。説明してください。

○小川国務大臣
 まず、保証金を用意するのは、これはあくまでも依頼者本人でありまして、弁護士が用意するものではありませんから。(柴山委員「そんなことはわかっていますよ」と呼ぶ)いや、だって、都合のいいときには全部本人にやらせるようなこと、何かそのことを言っているようでしたから、説明させていただきました。
 それから、なぜその控訴審を受けたのかと。それは、やってくれと言われたから、控訴してくれと言われたから受けたわけでございます。それ以上説明しようがないですよね。

○柴山委員
 きょうはビギナーズ・ネットの人たちもこの我々の質疑の傍聴に来られていますよ。要は、一審で着手金をもらえずに全面敗訴した弁護士が、控訴の提起をして、その着手金の回収も見込みがないという案件がいかに異常かということを、将来の法曹の卵も多分十分わかっていると思いますよ。
 なぜその依頼を受けたんだ、いや、依頼者がやってくれと言ったからだと。弁護士に主体性はないんですか、大臣。

○小川国務大臣
 だって、弁護士の業務というのは弁護士のためにやるんじゃないので、あくまでも依頼者のために、依頼者から依頼を受けてやるわけです。何も依頼者がやらぬでくれと言ったのに私がやると言ったわけでもありません。依頼者としては、一審で、結果は敗訴したけれども、その理由中では、相手方が五億円の債務、五億円のリニューアルをやる義務があることを認めて、それをやっていないことも認めた上での判決であるわけでございますから、そうした事情を踏まえて、依頼者の方は、いや、控訴審はやってもらいたいということであるから、私は引き続いて受けただけでありまして、何もおかしいと言われることはありません。

○柴山委員
 弁護士倫理とか弁護士職務規程というのは、そういった依頼者との間の後日のトラブルを避けるために、弁護士のいわば規範として自主的に定められているものなんです。
 真っ当な弁護士だったら、七年に一遍、皆さんも覚えておいてほしいんですけれども、弁護士の倫理研修というものが行われて、そういう依頼者との間のトラブルをなくすにはどうするか、あるいは、利益相反事案、この間行かれたでしょう、辻さんと私は一緒に弁護士会の倫理研修に行って、そのセミナーに参加してきたんですよ。だから、弁護士のやはり倫理として、依頼者との間にあるべき正常な関係はどういうことかということを、辻理事、一緒に勉強したじゃないですか。そうですよね。
 では、大臣にお聞きしますけれども、大臣はちなみに弁護士会のこの倫理研修というのはちゃんと受けておられますか。

○小川国務大臣
 弁護士会の倫理研修が始まった時期、私が国会議員になって今で十四年ですけれども、まだ比較的早い時期に、倫理研修しなさいという案内が来たので、一回行ったことがあります。ただ、それ以降、案内もないので、行っておりません。

○柴山委員
 必ず何年に一回来ますから、そのときには、ぜひ大臣、受けて、いかに大臣の答弁が荒唐無稽であるかということをほかの弁護士とともにしっかりと学んでいただきたいというふうに思います。
 ちなみに、次の質問に行かせていただきますけれども、大臣は前回の私との質疑において、蓮村不動産からのファーイースト社への貸し付け、現金による七千万円の貸し付けは、銀行に振り込みますとまた差し押さえされてしまうといけませんので、現金で渡しましたとお述べになっていますが、間違いありませんね。

○小川国務大臣
 間違いありません。

○柴山委員
 つまり、原告の強制執行を免れるための処理だということですね。

○小川国務大臣
 強制執行を免れるという場合は、具体的な強制執行があって、それを免れるということでございます。私どもの方は、そうではなくて、預金に置かなかっただけでありまして、現金は現金できちんと置いておったわけでございます。

○柴山委員
 大臣、法律の専門家に釈迦に説法で大変申しわけないんですけれども、一部の債権者、従業員等に対して抜け駆けした弁済を行うということは、詐害行為あるいは破産法上の否認権の行使を受けかねないんですよ。
 つまり、本来であれば原告を含めた形でしっかりとした弁済をトータルでやらなくちゃいけないのに、一部の方々にそういった弁済をするために、グループ会社から原告家主にないしょで現金を入れて、そしてそれを、七千万円という膨大な額を支払いに充てるということは、これはかなり私法上問題があるというように私は思うんですが、そのようにお感じになりませんか。

○小川国務大臣
 全く問題があると思っておりません。
 まず、押さえられた金額、回収金額で見ますと、六千五百万円ぐらいですか。ですから、まさに生きているホテルを運営するための資金が六千五百万円押さえられてしまって、従業員の給料が払えないわけですから、あるいは、さまざまな熱海の業者に対する支払いが払えないわけでございますから、営業を継続するということ、あるいは従業員の生活を守るために、そこに支払うというのは当然のことでございます。

○柴山委員
 大臣は先ほど、ファーイースト社は資金繰りが苦しかったというようにおっしゃっています。これは、済みません、法律のイロハで申しわけないんですが、債務者が無資力のときに、責任財産を構成する、特に現預金のような散逸しやすい財産を、たとえ必要性が高いからといって、一部の債権者に対して弁済なり、あるいは代物弁済でも結構です、あるいは譲渡だったらもっとひどいわけですけれども、こういうことを行うことはいけないことなんですよ。当たり前です、債権者間の公平を害しますから。
 それに、大臣は、いやいや、これはちゃんと払わなくちゃいけないとか、いや、これを支払わなければ事業そのものが立ち行かなくなるとかいうふうに今お述べになりましたけれども、そういった従業員の労働債権とか事業継続のための費用というのは、破産やあるいは民事再生においてきちんとした法律上の保護の手続があるんです。そういった公正な法的手続をとらないで、一部の債権者に抜け駆けをした支払いをしたり、あるいは、関連会社から融資を受けて、それを公正証書に巻いて債権者からの差し押さえにぶつけたり、こういうことは私は全くイレギュラーなことだというように思います。大臣、いかがですか。

○小川国務大臣
 委員の質問は、その半年後に申し立てられて決定が出た破産と今の仮執行宣言というものを全く同一時期に起きたかのように言っていらっしゃるわけでございまして、破産法上といいますけれども、半年後の破産の問題を半年前にさかのぼってというのもおかしな話でございます。
 それから、従業員の人件費、これは賃金は優先債権でもございますから、払って当然でありますし、会社には、企業はそのときに破綻しておったと委員はおっしゃいますけれども、いわば売掛金を六千何百万円か押さえられたから、その押さえられた分のお金を補填したわけでございまして、経営が破綻して事業が行き詰まったということがその段階で確定したものではありませんです。

○柴山委員
 債務者の立場に立って一方的に御自分の主張をお述べになっていますけれども、もしそういうような形で、債務者、つまりファーイースト社が真っ当に事業運営ができる見込みだったら、大臣、あなた自身がおっしゃったとおり、債権者がわざわざファーイースト社を追い出して、資産の一部劣化を織り込みながらも強制執行するなんてことはないんですよ。
 やはり、それだけファーイースト社の営業には問題があったし、事業の継続性ということにも疑問があったし、債権者としては、これをきれいにしなくちゃ次のステップが踏めないということを感じたからそういうことをやったわけです。それは当然、債権者だって、サービサー関連会社ですからね、事業採算性に反することを行っているわけじゃないんですよ。
 そういうような形で、債務者がいわば、大臣、御自分でお認めになられているように、窮地に陥っているにもかかわらず、そういうことを、さっき、一部、理事の方からお話があったように、私も十年前、弁護士をやっていましたけれども、反社会的勢力の執行妨害を幾つも、たくさん見てきました。同じような事例をたくさん見てきたんですよ。ほとんど全ての弁護士が、恐らく金融機関にお勤めになられていた階理事も含めてですよ、これはちょっと、余りにもイレギュラーだなというように感じられているはずなんです。苦しんでいるはずなんですよ。それは一般の金融機関が非常に、十年前、この執行妨害ビジネスに苦しんだからこそ執行法が改正され、そして責任が厳格化された、そういう経緯を大臣は知らないはずがないんですよ。
 だから、このような一連の弁護活動というのは、私は到底、サービサーの所管官庁である法務省のトップあるいは捜査当局のトップである大臣としてふさわしくないというように申し上げたいというように思います。反論、ありますか。

○小川国務大臣
 まず、委員のお話の中で、債権者という言葉を使いましたけれども、いわゆる熱海の債権者ではなくて、いわゆる裁判の相手方のことを債権者と言っていらっしゃるんだというふうに理解いたしましたけれども。
 この会社は、もともとは、競売屋といいまして、競売物件を安く買って、そして占有者を、いわば占有関係を整理して、きれいにして、高く売ってというビジネスモデルで成長した会社でございます。先ほども申し上げましたように、何か相手方の会社が一方的に正しくて、こちら側が何か一方的に悪い会社のようにおっしゃいますけれども、私の方からすれば、先ほども申し上げましたように、四十五億円のものを何か三十五億円で契約させられて、あとは得意のわざで出されてしまったなといって、私どもの方が、いわばたちの悪い業者にひっかかって、私どもというのは依頼者の方ですけれども、被害者だと、このような考えでおります。

○柴山委員
 今回の訴訟について話しているわけじゃありません。大臣の行為の異常さについて私はさっきから質問しているわけです。
 事案についても、大臣はいかに原告が悪質かということをるる述べられておりますけれども、結局、全面勝訴しているわけですよね。
 そのことはちょっとともかく、ちなみに、この蓮村不動産の七千万円の融資は、さきの質問での大臣の御答弁は、返済される見込みがあるとか利息を取って貸すとかいう通常の融資ではなかったということでしたけれども、返済の当てのない融資であれば、蓮村不動産にしてみれば、商法上の特別背任罪や株主代表訴訟あるいは取締役の第三者責任などが問題となってきます。当然ですね。そういうことでよろしいわけですね。

○小川国務大臣
 何回も申し上げますように、従業員に対する給料を払うお金がないからこれを何とかしなくてはいけない、熱海の業者をなくしてはいけないという、こうした緊急性があるから融資したわけでございます。

○小林委員長
 蓮村不動産について答えてください、蓮村不動産の側に立って。

○小川国務大臣 
 蓮村不動産は、株主も経営者もいわば一体の会社でございますから、その人が判断すれば、特に異議を述べる人もいないと思いますが。

○柴山委員
 大臣は私の一番最初の質問に、資本関係はわからないと言ったんですけれども、今ここでそれがうそだということが暴露されたわけですね。要するに、蓮村不動産が結局このファーイースト社と経済的に一体となっている資本関係にある。だから、要するに、ファーイースト社の利害関係は蓮村不動産の利害関係である、そしてそこに大臣がコミットして、みんなで一緒くたとなって原告側の強制執行を妨害したという一連の構図は、今の大臣の答弁からしても、私は、極めて明らかになったというように申し上げたいと思います。
 時間があと五分になりましたので、人権擁護法案についての質問に移らせていただきます。
 大臣、私が、あるいは城内議員が人権擁護法案について何度か質問をさせていただいておりますけれども、今国会に、人権委員会設置法案あるいは人権擁護委員法の一部改正案というのは、結局提出されるんですか、されないんですか。

○小川国務大臣
 提出するよう努力しておるところでございます。

○柴山委員
 私が伺ったところによりますと、今国会に非予算関連の法律として提出するのであっても、三月中旬から下旬にかけて閣議決定というものを経るのがその以後の手続上必要だというように聞いているんですけれども、今大臣がおっしゃったように、今後、そういったスケジュールで閣議決定される見込みがあるんですか。

○小川国務大臣
 今、具体的な見込みがあるかどうかということは、まだ確定的に説明できるような状況ではございませんが、そうした状況を、いわば、状況といいますか、できるような状況を整えて提出したいというふうに努力しておるところでございます。

○柴山委員
 具体的にどういう状況をつくろうとしているんですか。

○小川国務大臣
 法文の作成、それから政府・与党内の調整、それから、これは絶対的に必要かどうかは別にしましても、野党の皆様との御理解をいただく、そうしたようなさまざまなことでございます。

○柴山委員 
 ちょっと私は今、信じられなかったですね。
 これはやはり、非常に内容的に、私あるいは稲田議員も城内議員も指摘をしているとおり、さまざまな疑問がある法律案なんですね。骨子の段階でもこれだけいろいろと問題が生じているのに、これからその条文を詰めて、しかも与党内手続を踏み、しかも閣議決定を経て、そして、何ですか、野党に対してはどういう形で理解を求めようとするんですか。それは本当に今国会でやることができるんですか。
 それと、あと、大臣、私の質問に対してちょっと答弁が曖昧だったんですけれども、結局、外国人の地方参政権が認められた場合には、今の法律のたてつけによりますと、将来外国人も人権擁護委員の資格になれるというようなことを答弁されたというふうに思うんですけれども、そこら辺の事実関係や制度設計についても、私はきちんと答弁を受けておりません。
 いま一度、大臣に、これらの手続、そして法律の内容について、きちんとした説明を求めます。

○小川国務大臣
 まず、法案につきましては、これは野党の皆様の御理解をいただかなくてはならないというふうに考えております。
 ただ、法案の提出そのものについて、これは……(発言する者あり)いやいや、ですから、先ほどの趣旨をお話ししておるわけでございまして、法案の提出について、これは、政府提案なのか、あるいは与野党で提案するのかとか、さまざまな形がありますので、ですから、一つの法的な要件として野党の参加が必要だというふうに言っておるわけではございません。
 ただ、この法案につきまして、その後の審議の見通しというものも考えれば、やはり野党の皆様との御理解、御協力も必要であるというふうには認識しております。

○柴山委員
 どうなんですか。閣法なんですよ。閣法で、一体どういう手続を想定しているんですか。

○小川国務大臣
 いや、ですから、提出そのものは、それは政府で提出すれば政府提出でございますが、しかし、それを提出した後の審議は、やはり、つるしを下げていただいて実質審議に入っていただくとか、さまざまな面でこれは野党の御理解と御協力をいただかなくてはならないわけでございます。そうした趣旨でございます。

○柴山委員
 いずれにいたしましても、きょうの大臣のさまざまな行動とか発言を見るにつけて、どうしても、この提出を予定している法案についても、しっかりとした議論ができるものなのかどうかということが極めて疑問に思うところであります。
 時間が参りましたので、これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

第180回 国会 参議院 法務委員会

第180回 国会 参議院 法務委員会 第4号
平成24年3月22日(木)
午前十時一分開会

○委員長(西田実仁君)
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律案の審査のため、本日の委員会に法務大臣官房司法法制部長小川秀樹君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(西田実仁君)
 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(西田実仁君)
 東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律案を議題といたします。
 提出者衆議院法務委員長代理大口善徳君から趣旨説明を聴取いたします。大口善徳君。

○衆議院議員(大口善徳君)
 ただいま議題となりました東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律案につきまして、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。
 昨年三月十一日の東日本大震災から一年が経過しました。しかし、その甚大な被害により、多くの被災者の方々はいまだ苦しい状況に置かれています。また、原子力損害賠償紛争解決センターが昨年九月に和解の仲介申立ての受付を開始するなど、被災者の方々の法的サービスに対するニーズは高まっています。
 このような状況の中、日本司法支援センター、いわゆる法テラスは被災地に出張所を設置し、被災者の方々が必要な法的サービスを受けることができるように努めておりますが、民事法律扶助制度には資力要件が設けられていることなどにより、一部の被災者の方々には必要な支援を円滑に行えないといった状況が生じています。
 そこで、この法律案は、東日本大震災の被災者の方々が裁判その他の法による紛争の解決のための手続及び弁護士等のサービスを円滑に利用することができるよう、東日本大震災の被災者の方々に対する援助のための法テラスの業務の特例を定めるものであり、法律案の内容は次のとおりであります。
 まず、支援の対象とする被災者については、東日本大震災に際し災害救助法が適用された東京都以外の市町村の区域に平成二十三年三月十一日において住所、居所、営業所又は事務所を有していた国民又は我が国に住所を有し適法に在留する者をいうものとしております。
 次に、東日本大震災法律援助事業として、被災者の方々の資力を問わず、民事裁判等手続のほか、裁判外紛争解決手続、行政不服申立て手続であって、被災者を当事者とする東日本大震災に起因する紛争に係るものの準備及び追行を援助の対象とし、このために必要な費用の立替え、法律相談等を行うことができることとしております。

また、東日本大震災法律援助事業として実施した立替金の償還等については、その手続の準備及び追行がされている間は猶予するものとしております。
 なお、この法律案は、公布の日から三か月以内で政令で定める日から施行することとしております。施行の日から起算して三年の時限立法としておりますが、失効が予定されている時期における被災者の状況によっては延長も当然検討されるべきものと考えているところです。
 以上が、本法律案の趣旨及び概要であります。
 何とぞ、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

○委員長(西田実仁君)
 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○桜内文城君
 みんなの党の桜内文城です。今回の法テラス特措法について質疑をさせていただきます。
 まず一つ目ですけれども、今回の特措法、震災復興関連ということで出てくるのが本来もっと早くすべきものではないかなという意味で、その趣旨には大変賛同するものでありますが、実は今回特措法が出てくる前から、私自身、法テラスに関しましては、この参議院の法務委員会におきましても、ちょっと会計処理が一体どうなのかという問題提起は過去、これまでもさせていただいてきたところでございます。
 独立行政法人に準じた枠組みということですので、この説明文によりますと、パンフレットみたいなのがあるんですけれども、「独立行政法人とは、国民生活に欠かせない公共的な事業のうち、国が直接実施する必要はないが、民間に委ねると実施されないおそれがあるものを効率的・効果的に実施するため、」云々というふうな形が書いております。特にこの法テラスはやや特殊でありまして、法務省の所管法人なんですけれども、その業務が単に行政にとどまらず最高裁が設立や運営に関与しているということで、独立行政法人に準拠という形になっておる次第でございます。
 先ほどの大臣所信に対する質疑の中で、魚住委員から民事法律扶助等につきまして歴史的な経緯につきましても質問していただきまして、私も大変勉強になったところでありますけれども、要は今回の特措法で、ある種、資力要件の撤廃ですとか、業務が拡大していくわけですよね。それ自体はもちろん震災対応ということでどんどんやっていただくべきことかと思うんですけれども、これまでの五年間、法テラスができての会計処理において、いかにもちょっとこれはどうなんだよという部分があるんですね。
 具体的に言いますと、貸倒引当金の積立ての方法なんですけれども、一年以上償還されないものは全て破産更生債権に移し替えて、全額貸倒引当金を積むと。その分費用が掛かるわけですので、何といいますか、財務の健全性といいますか、をきちんと公表しているとは言い難いと。といいますのは、一般の弁護士法人に限らず、いろんな会社というのはもちろん貸倒引当金というのは勘定科目として持っておるわけですけれども、そこに対する会計処理の方法として他に例を見ない非常に特殊なやり方を取っているものですから、少なくとも国が今、大体年間百五十億円前後運営費交付金を投入しておりますし、どんどん業務はやっていただきたいところではあるんですけれども、会計処理という意味においてはしっかりと、他の法人と比べても、民間法人と比べてもちょっとこれ何でかなということがないような会計処理に改めるべきではないかと考えるんですけれども、その辺について御所見を伺います。

○政府参考人(小川秀樹君)
 お答えいたします。
 御指摘ございましたように、法テラスでは、監査法人の了解の下ではございますが、一年以上償還のなかった債権は破産更生債権等に当たるとして、その全額について貸倒引当金を計上してございます。これは元々、民事法律扶助業務自体が資力の乏しい方に対する立替えということで、立替金の債権を取得するという、そういう性質のものでございます。加えて、担保を取るということはおよそ想定できませんので、その意味では、性質上不良債権を比較的抱えやすく、なおかつ担保はないという性質の法人でございます。
 そのような前提で先ほど申しました一年以上償還のなかった債権をこれは実態調査をした結果、この後一年以上償還がなければ実際上も償還がなかったという、その調査を踏まえた上で破産更生債権等に分類をしているということでございまして、今申し上げましたように、民事法律扶助制度、これは立替え償還制という制度を取りますし、性質上やはり債権の相手方の資力が乏しいこと、あるいは担保がないことなどを考慮いたしますと、現在のような会計処理となるのはこれはやむを得ないのではないかというふうに思っております。
 弁護士法人が例えば企業会計基準でやったとしても、恐らく実際上同じような債権の分類がされて、しかも担保がございませんので、やはり貸倒引当金として計上せざるを得ないということも十分考えられまして、その意味で、これは当然のことながら監査法人の監査も受けておりますし、私どもの方で考えますところ、法テラスの会計処理自体は適正であるというふうに考えておりまして、現時点において早急に見直す必要性があるとまでは現状から見て言えないのではないかというふうに考えております。
 ただ、もっとも、法テラスの財務状況を国民に分かりやすく公表するということは、これ当然、会計の適正処理という観点から重要でございますので、その点については、私どもも、今後とも引き続き法テラスに対して必要な助言などをすることによって適正化を図っていきたいというふうに考えております。

以上でございます。

○桜内文城君
 何でこんなことを言っているかといいますと、一年以上償還がなかったものに関しても後々戻ってくるものが幾らかあるという実績値なりを十分法テラスの側で把握していらっしゃるとのことですので、そういった意味でも、そういった実態に即してやっていらっしゃるということをきちんと示していただくというのは必要だと思っております。
 ただ、そういうのが全くない中で、貸倒引当金、一年以上未収であればそのまますぐに立てちゃいますということだと、実際に後に返ってくる分もきちんと把握していらっしゃるんであれば、もっと精緻に貸倒引当金の設定というのはできるんではないかという指摘であります。
 それともう一つは、監査法人の監査を受けていると、もちろん独法準拠ですので当たり前ではあるんですけれども。私自身、この独法会計基準の設定に関与してきてまいったわけですけれども、なかなかこういった会計処理されることまで基準設定者の側で想定していたかというと、それをちょっと超えているんですね。こういった会計処理というのを認める趣旨で会計基準を作ったわけでもありませんので、そこはいろいろ言い分もあるかと思いますけれども、十分国民に分かりやすく説明を果たしていただく必要はあろうかと思って、そこは指摘しておきます。
 それから、次の質問に移ります。
 今回の特措法、先ほど申しましたように、その趣旨には大変賛同するところでございますし、これからどんどん業務を被災地において行っていただきたいというふうに思うんですが、ちょっとこれ、ここまではどうかなと思う点があります。というのは、資力要件を撤廃するということで、どれだけお金持ちであっても利用できるようになると。
 これは一つのやり方ではあると思うんですけれども、元々の例えば民事法律扶助業務の目的といいますか趣旨というのは、資力の乏しい国民などに対していろんな法律サービスを提供していくことを可能にするということであるとすれば、やや法テラス自体の性質を変えてしまうような今回の規定ではないかなというふうにも考えるわけですけれども、例えば資力要件の緩和とか、そういうのがなぜできなかったのか、その辺について理由を御説明いただければと思います。

○衆議院議員(柴山昌彦君)
 議員立法の内容についての御質問ですので、提案者の方から答弁をさせていただきます。
 今、桜内委員が御指摘になったように、元々の法テラスについては御指摘のような趣旨に基づきまして資力要件を設けておりました。しかしながら、今回については、やはり震災による混乱によりまして御指摘のような資力要件を判断するための帳票についても紛失してしまったりする場合がございますこと、それからまた、本来、民事扶助制度の支援の対象となるべき被災者が、例えば義援金ですとか保険金等の一時金を得たばかりにそういった支援の対象外となることは、いかにもこれは一般の感情から懸け離れているだろうということもありまして、資力要件を撤廃をしたものであります。
 東日本大震災が未曽有の大災害であり、特に様々な支援も必要だということを踏まえまして、今回はこの被災者に限定をしまして資力要件を撤廃したということが法テラスの基本的な理念、つまり所得が低い方に対する支援をするということに完全に違背をするということは考えておりません。
 ただ、先ほどの御質問であるように、そういった高額所得者に対する会計処理がどうかということについては、これは私は十分検討するに足りる問題提起なのかなというように個人的に考えております。
 以上でございます。

○桜内文城君
 ありがとうございます。
 次の質問をさせていただきます。
 今回、長期借入金の規定が盛り込まれたわけですけれども、元々、先ほど独法のそもそもの成り立ちというかについても読み上げましたけれども、特にこの法テラスのような独立行政法人準拠のものというのは、他の独立行政法人、例えばNEXCOみたいに何か巨大なインフラを造るですとか、そういった投資等を予定していない。逆に言うと、こういった長期借入金ですとか財投機関債とか発行する必要のない法人なわけですけれども、そういった意味で、今回長期借入金の規定が盛り込まれたことについて、法テラスの業務に照らしてやや違和感を覚えるところなんですけれども、これについてわざわざ盛り込まれた理由、それを教えていただければと思います。

○衆議院議員(大口善徳君)
 それでは、私の方からお答えさせていただきます。
 今、桜内議員から御指摘のあった点でございますけれども、まず、このようなインフラ等の投資以外の場合であっても長期借入金の制度を設けることは法的には可能であると、こういうふうに考えております。現に、例えば独法の日本学生支援機構法に基づく学生への奨学金の貸与業務、また、これも独法の理化学研究所法に基づく研究所での科学技術に関する試験・研究業務の費用については長期の借入金制度が設けられております。
 今回の特例法によりまして今後どの程度業務が増加するかということは、正確には見積もることは難しいわけでありますけれども、東日本大震災法律援助事業として、やはり資力の多寡を問わない、そして、問わないで当該支援事業を利用できるということにしたこと、また、本来の支援事業のメニューにないADR、特に原子力賠償紛争解決センター等がございます、そういうADRを明記する、また、行政不服審査に関する支援の事業も行うということでございますので、東日本大震災に起因して被災地での紛争解決のニーズが高まっているということ等に鑑みますと、この法案の施行によって法テラスの財政的な負担は増加することが想定されております。
 ただ、私どもは、これは万が一の場合に備えて、念のために例外的な手段として設けさせていただきました。すなわち、予想外に事件数が増え、年度途中で予算が不足し、諸般の事情から補正予算等の手段も講じることができないような万が一の場合に備えて、念のために例外的な手段として長期借入金という資金調達の道も準備したということでございます。
 このように、長期借入金の制度はあくまで万が一の場合に備えて設けたものでありますから、必要な予算はまずは通常どおり国で措置をすることが当然と考えております。また、年度途中、予算が不足した場合にも、まずは先に補正予算などの方法を考えるべきであると、こういうふうに考えております。

○桜内文城君
 ありがとうございます。
 これで質問、時間なので終えますが、例えば日本学生支援機構ですとか、ある種、貸付けを行うことが主たる業務ですので、そういう金融面の業務を持たない、全然持たないわけじゃないんですけれども、ちょっとやはり違和感は残ります。また、そういった意味でいえば、法テラス自体の性質を変えるような規定ですので、本来であれば委員長提案と言わずしっかりと議論を尽くしていただきたかったなとは思いますが、大変いい法律であるとも思いますので、そこは趣旨には賛同いたします。
 以上で終わります。

○井上哲士君
 日本共産党の井上哲士です。
 今年の一月に法務委員会の委員派遣で被災地を訪れた際も大変強い要望があったものでありまして、昨年の臨時国会において、参議院の委員会から提案できないかという各党間の協議もあったわけでありますが、残念ながら間に合いませんでした。今回法案を提案をされた衆議院の法務委員会の皆様にまず敬意を表します。成立すれば速やかに施行されるように、法務省始め関係機関にも要望をいたします。
 昨年協議されていたものと若干変わっている点がありますので、まずその点について提案者にお聞きしますが、今後も大きな災害は予想されます。今回と同様の法的な支援が求められることになる。その際にも適用できるように、被害者を東日本大震災その他の災害発生による特定非常災害の被害者とするという法改正も検討されておりました。今回の法案は、東日本大震災の被災者に限定をされ、そのため援助事業も災害被害者援助事業から東日本大震災法律援助事業というふうに議論の途中からは変わったと思うんですが、こういうふうに限定をした理由はどういうことなんでしょうか。

○衆議院議員(黒岩宇洋君)
 井上委員の御質問にお答えいたしますが、確かに委員御指摘のとおり、本法案の検討段階においては、これも御指摘の特定非常災害特別措置法を改正いたしまして、東日本大震災の被災者に限らずに、今後、特定非常災害として指定された災害の被害者も対象に含むとする案も検討されていたところでございます。
 しかしながら、その後の検討過程におきまして、喫緊に必要とされているのはこの度の東日本大震災の被災者に対する援助であると。その上、今回のような法的支援事業の要否については、私ども立法府としては、今後個々の、別々の災害の被害状況に応じて個別に判断していく必要があるとの判断に至ったことから、今回は対象を東日本大震災の被災者に限定したものでございます。

○井上哲士君
 急がれたということもあると思うんですが、やはり逆に言えば、今度新しい災害が起きたときにまた時間が掛かってしまうということもあるわけです。
 先ほど、魚住委員に対する答弁も法務大臣ありましたけれども、やはりそういうことを考えますと、今後起き得る災害にも対応できるような立法を検討すべきだと思うんですが、検討はしたいと言われていましたが、前向きにこれやるということでいかがでしょうか。

○国務大臣(小川敏夫君)
 確かに、今回のような大震災のような災害が起きないことを願っているわけですけれども、現実としまして、起きた場合にまた急いでやるよりも、恒久法があれば速やかに対応できるわけでございますので、そうした観点から検討してみたいと思います。

○井上哲士君
 是非前向きにお願いをしたいと思います。
 一点だけ確認ですが、東日本大震災関連の一連の法律では、名前は東日本大震災の被災者になっていますが、長野県北部震災の被災者も対象としていると思うんですが、この法案も同様だということで確認してよろしいですか。

○衆議院議員(黒岩宇洋君)
 簡潔にお答えします。
 委員の御指摘のとおり、この法案の第二条第二項には「東日本大震災に際し災害救助法が適用された同法第二条に規定する市町村の区域」とありますけれども、これには長野県北部地震の被災者であって災害救助法が適用された地域も含まれる。ですから、結論からすれば、長野県北部地震も対象になるということでございます。

○井上哲士君
 この支援の対象者について、これも昨年のまだ協議過程の段階では、資本金若しくは出資の総額が五千万以下の法人、若しくは常時使用する従業員の数が五十人以下の法人に拡大するということも盛り込まれておりました。一月の早い段階での新聞の報道にも、こういうふうに拡大するということが出たということがあって期待をされた方も多いかと思うんですが、今回はこの点は結局盛り込まれておりませんけれども、この理由はどういうことなんでしょうか。

○衆議院議員(柴山昌彦君)
 井上委員御指摘のように、一定の規模以下の法人について、この恩典を受けられるということも確かに検討いたしました。
 ただ、資本金の額ですとか、あるいは従業員の人数といった形式的な基準を設けるということは必ずしも実態にそぐわない。経済的弱者に当たるような法人でしたら、例えば資本金は必ずしも大きくないけれども利益はたくさん上げているというような法人はどうするんだとか、様々な議論が出てきかねないわけです。そういうことを考えるとともに、そもそも法テラスが行う民事扶助制度というのは資力の乏しい自然人の方に支援の手を差し伸べるというような制度でもあったことから、今回はそういった、いわゆる法人、あるいは代理援助の制度ということを対象とはしなかったものであります。
 ただ、そうはいっても、会社の、例えば代表取締役が個人的に法律相談を持ちかける、あるいは会社の債務について自らが連帯保証人になっていることから、その連帯保証債務についての相談を通じて必要な範囲で法人の相談というものが付随的に行われるというようなことは十分想定し得るわけでして、こういった形を取ることによって劇的に不都合が生じるというようには私どもは考えておりません。

○井上哲士君
 今回、未曽有の災害の中で被災地のいろんな中小零細企業のいろんな被害があったわけですから、今回はこれは盛り込まれなかったわけですが、是非今後の検討としていくことが必要だろうと、こう考えております。
 先ほど長期借入金の規定を盛り込んだ理由については答弁がありまして、本来的には補正予算等で対応されるべき問題だということがお話がありました。
 阪神・淡路大震災のときにも特別の援助事業が実施をされまして、法律扶助相談でいいますと、三年間で一万三千八百四十三件、代理援助で二千三百二件というふうに聞いておるんですが、今回は被害の規模や範囲も更に大きいわけですけれども、法務省としては、本法案が施行されれば、どの程度の利用になると推定しているのか。そして、そのための予算的な手当ては長期借入金などが必要ないようにきちっと手当てするということでよろしいでしょうか。

○国務大臣(小川敏夫君) 
 どの程度の利用件数を見込むかと言われても、今現在ちょっと確たるものがないんでありますが、この法テラスは年度で余りました予算をすぐ戻すということになっておりませんで、たしか四年間で使用できるということになっております。平成二十三年度の既定経費の中で残額がございますので、そのやりくりで当面賄いたいと思っております。

○井上哲士君 
 当面そういうことなんですが、むしろ今からずっと増えていくことでありますから、そういう際にもきちっと当然手当てをするということでよろしいですね。
○国務大臣(小川敏夫君) はい、そのつもりでございます。

○井上哲士君 
 阪神大震災と比較しても非常に復興は遅れております。原発事故の被害に遭っている福島の県民意識調査では、九割以上の方がまだ復興のめどが立っていないと言われているわけですね。提案者からも、三年後の失効の時期における状況では延長も当然検討されるべきものというふうに言われました。
 阪神大震災のときと比較しますと、はるかにこの規模やそして長期化が予想されるということになれば、あらかじめもう少し長い期間を設定した方が良いのではないかと私は思うんですが、その点はいかがでしょうか。

○衆議院議員(大口善徳君) 
 井上議員の御質問にお答えをしたいと思います。
 この点は与野党協議で非常に議論になったところでございます。

それで、御指摘のように、今回の法テラスの業務の特例については三年間の時限立法と、ただ、復興が遅れている、また福島の状況もあるということからいいますと、この三年ということについてはいろいろ議論もございました。
 そういう中で、やはり本法案の主眼が資力要件の撤廃に対するニーズ等について、一つのめどとして三年が経過すればある程度落ち着くのではないかと、こういうことが考えられる。そういう点で、この東日本大震災の被害は甚大でありますので、その失効が予定されている時期における被災者の方々の状況によってはやっぱり延長も当然検討すべきであると。こういうことで、時限立法ではあっても状況によって延長というのはほかの法案でも多く見られることであります。
 ですから、そういう点で、あえてこの趣旨説明で、私どもが、三年の時限立法としておりますが、失効が予定されている時期における被災者の状況によっては延長も当然検討されるべきものと考えているところですと、あえてこの趣旨説明に言及をさせていただいたところをよく御理解を賜ればと思っております。

○井上哲士君 
 終わります。ありがとうございました。

○委員長(西田実仁君) 
他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕

○委員長(西田実仁君) 
 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、桜内君から発言を求められておりますので、これを許します。桜内文城君。

○桜内文城君 
 私は、ただいま可決されました東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律案に対し、民主党・新緑風会、自由民主党・たちあがれ日本・無所属の会、公明党、みんなの党及び日本共産党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たっては、次の事項について格段の配慮をすべきである。
 一 日本司法支援センターは、その資本金を政府及び地方公共団体が出資する組織(総合法律支援法第十七条第一項及び第三項)であること及び総合法律支援法第四十八条により準用する独立行政法人通則法第三十七条の規定(企業会計原則)の趣旨に鑑み、適正な会計処理に努めること。
 二 東日本大震災法律援助事業においては被災者の資力の状況にかかわらず援助することになったことに鑑み、その運用状況及び日本司法支援センターの財務状況への影響を検証するため、次に掲げる事項を当分の間一年ごとに当委員会に対し報告すること。
  1 東日本大震災法律援助事業における訴訟代理援助、書類作成援助及び法律相談援助別の実施件数並びに立替金額
  2 東日本大震災法律援助事業における立替金に対する未償還金額の割合(貸倒率)
 三 本法第四条に基づく長期借入金については、総合法律支援法第四十七条第五項において日本司法支援センターは長期借入金をすることが禁止されていることの特例措置であることを踏まえ、慎重な運用をすること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○委員長(西田実仁君)
 ただいま桜内君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕

○委員長(西田実仁君) 
 全会一致と認めます。よって、桜内君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、小川法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。小川法務大臣。

○国務大臣(小川敏夫君) 
 ただいま可決されました東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

○委員長(西田実仁君) 
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(西田実仁君) 
 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。

第180回 国会 衆議院 法務委員会

第180回 国会 衆議院 法務委員会 第3号
平成24年3月16日(金)
午前九時開議

○柴山委員
 自由民主党、影の法務大臣柴山昌彦です。
 今の河井委員からの広島刑務所についての質問に関連して続けさせていただきます。
 大臣は、所信表明の冒頭で、今の広島刑務所の受刑者逃走事件について、心よりおわび申し上げますと謝罪された上、原因の究明に努めるとともに、講じるべきと認められた再発防止策については既に講じてきたところですが、今後とも、このような事件の絶無を期すべく、取り組みを進めてまいる所存ですと高らかに宣言されました。三月二日、わずか二週間前です。しかし、一昨日、十四日午後、愛媛県松山市の少年院にて、十五歳の少年が逃走する事件が発生してしまいました。
 大臣、再発防止は、同じ矯正局の施設である少年院には及ばないんですか。

○小川国務大臣
 いや、もちろんのこと、少年院についても逃走はあってはならないことでございますので、再発防止、少年院も含めて、徹底的に起こさないように指示したところでございます。
 この松山少年院につきましても、フェンスを今回乗り越えられてしまったわけでございますが、これまで、フェンスの網の目が粗くて、いわばその目を爪先の足がかりにして登れるようなものであったと。実際、そうしたものであったためにフェンスを登られてしまったわけでございますが、ちょうど、そうした観点から、フェンスの目を細かいものにして、足がかりとならない、すなわち、フェンスを乗り越えがたいものに順次かえていくさなかで起きてしまったことでございます。
 もちろん、そのような逃走を起こしたこと、これはまことにもって申しわけなく、深く反省しているところでございます。

○柴山委員
 私の質問になるべく短く、端的に答えていただければ結構です。
 要は、広島刑務所の事案について、再発防止策のためにどのような対策をとり、そして、今、少年院も対象だというふうにおっしゃいましたけれども、どの範囲の施設にその再発防止策を周知したんですか。

○小川国務大臣
 これは、法律に基づいて、いわば、さまざまな受刑者等あるいは少年等を収容する施設全部でございます。

○柴山委員
 どのような対策をとったんですか。

○小川国務大臣
 一つは施設面でありまして、脱走の手がかりとなるような施設をもう一度チェックして、それを改善するということ。もう一つは、受刑者あるいは収容中の者の心情把握等、行動観察等、これを徹底して、そのような逃走の意欲を起こさせない、逃走の気配があればそれをすぐに察知して対応する、この面でございます。

○柴山委員
 そういった再発防止策について、先ほどの河井委員の質問に対しても、報告書を取りまとめたということで御説明はいただきましたけれども、そのような中で、今、私が冒頭申し上げたような少年院の脱走事件というものが発生してしまったわけなんです。フェンスの網の目がどうたらとか、そういうお話はありましたけれども、結局のところ、こういった形で、周知徹底がされてもやはりこういう事件が起きてしまった。本当に大丈夫なんだろうか。私も河井委員と同じ問題意識を持つものであります。
 しかも、今回事件が発生したその松山学園の、石原学園長はまだいいです。謝罪申し上げます、二度と起こさないようにいたしますとコメントされたのに対して、宇野次長は、初等少年院は刑務所と違い開放的だ、適正な人員配置をした上で逃走があっても仕方ないとコメントしているというんですよ。
 大臣、大臣の認識はどちらですか。

○小川国務大臣
 逃走があってもしようがない、そういう認識は決して許されるものではないと思います。逃走があること自体、これは絶対にあってはならないことだと思います。
 ただ、一つの事情としまして、やはり少年院は、刑罰というよりも少年の更生というものを主眼に置いて、施設も開放処遇ということで、いわばなるべく社会に近い形の中で少年に更生してもらおうという努力をしておるところでございます。そうした意味で、その開放処遇、また、これは短期の収容でございますので、比較的非行の程度が軽い者ということでございます。そうした中で、いわば開放処遇ということと、厳重な施設、例えば窓に鉄格子を入れるとか、そうした面との兼ね合いがございまして、難しいところの折り合いどころでこうしたことが起きてしまったのかなと思います。
 ただ、開放処遇だから脱走があっていいということでは決してございませんので、深く反省いたしております。

○柴山委員
 大臣、この少年は傷害や恐喝などで、しかも、収容されたのはそんな前じゃないですよ。先月下旬から当該少年院に入っていたということなんですよ。
 このようなことがあると、地域住民も非常に不安になるんじゃないんですか。いかがですか。

○小川国務大臣
 御指摘のとおりでございます。

○柴山委員
 さっき大臣は、少年院と刑務所の違いについていろいろとコメントされていましたけれども、これまで五年間で全国の刑務所及び少年院の逃走件数を教えてください。

○三浦政府参考人
 本年発生いたしました広島刑務所、それから松山学園の逃走事故のほかで申しますと、平成十九年の一月から平成二十三年十二月末までの間の逃走件数は、刑事施設が一件、少年院が七件でございます。

○柴山委員
 母数がかなり多いですけれども、一件と七件ということです。やはりこういったデータもしっかりと関係者の方には胸にとどめおいて、そして対策を立ててほしいというように思っています。
 あと、今回の少年院については、事案の経緯についても報道がまちまちなんですよ。あるものでは、授業を終えて移動中に突然窓をあけてフェンスを乗り越えたということになっていますし、別のものでは、一階の図書室で授業を受けていたが、窓をあけて網戸を外して建物の外に脱出して、約三メートルのフェンスをよじ登り、逃げたという話になっています。
 一体どうなっているんですか。そして、監督者に落ち度はなかったんですか。

○三浦政府参考人
 今回の事故の詳細につきましては、現在調査中でございますので、その調査の結果を待って詳細が明らかになると考えておりますが、現段階におきましては、私ども承知しているところでは、当日の状況としては、教室棟の図書室におきまして授業が行われていて、それが終了し、移動のために少年らに出入り口の方に向かうよう指示していたところ、その少年が今いた図書室の窓をあけて網戸を壊して屋外に出たという状況であったと承知しております。

○柴山委員
 私は、監督者に落ち度はなかったのかということを聞いたんですけれども。

○三浦政府参考人
 失礼いたしました。
 監督者の落ち度を含めまして、問題点については現在調査中でありますので、その結果を待って判断をいたしたいと考えております。

○柴山委員
 ほかの生徒たちが入り口に向かって歩いていったのに、一人だけ窓の方に行って窓を、今お話をさせていただいたとおり、網戸を外してということをやり出したら、それは、おい、おまえ、ちょっと待てと言うのが私は当然だと思うんですよね。だから、開放処遇だ何だ、鉄格子だ何だというようなお話がありましたけれども、私はやはり、監督している人の気持ちの持ち方とか、そういうことが今回大きく問われるんじゃないかなというように思っております。
 政府は、今回、少年院や少年鑑別所についての運営状況をチェックする第三者機関の設置ですとか、あるいは処遇に対する不服申し立て制度の整備を柱とする少年院法案、少年鑑別所法案を閣議決定したということなんですけれども、今後は、対象者のこうした事例に対して、別の意味で、要は規律を厳しくする方向で、改善策をとるというおつもりはありますか、大臣。

○小川国務大臣
 特に従来に比べて厳しくするということではありませんが、ただ、規律の面に関しましても、個々具体的にそれをきちんと記載しまして、規律の面につきましても、それはしっかりと少年に守っていただくという観点からも取り組んでおります。

○柴山委員
 要は結果なんですよ。結果としてやはり不祥事が起きてしまったら、それまでどのような取り組みがされていたかということは、努力はあったかもしれないけれども、そういうまずい結果が出てしまったということでしか評価はされないということを、くれぐれも御理解をいただきたいと思っております。
 次に、死刑の問題についてお伺いします。
 千葉景子元法務大臣によって法務省内に設置された死刑の在り方についての勉強会が、このたび報告書を取りまとめました。大臣はこれをお読みになって、どのような感想を持たれましたか。

○小川国務大臣
 報告書の記載云々よりも全体的な感想でございますが、やはり、死刑の存廃に関しましては、死刑の制度を存続するという方の考えと、いや、死刑制度は反対するべきだという方の考えというものが、かなりそれぞれが強固な考え方に基づいて主張されているなと。そして、そうした主張される点を議論して一つの方向性に向けていくには、まだそういう時期ではないなと、そのような印象を持っております。

○柴山委員
 ただ、二月二十一日の予算委員会で私が大臣に対して質問したときに、大臣は、死刑制度に関しての検討については、検討状況のまとめを見て判断するという考えでおりますというふうにお述べになったということを、お答えをいただきました。
 今、大臣がおっしゃったように、結局、両論併記ということになると、これで今後何らかの制度設計の変更というものは、結局、実現されないということでよろしいわけですね。

○小川国務大臣
 私の認識では、勉強会そのものが何らかの制度設計を目指す、あるいは死刑制度に関して意見集約して何らかの制度の実現を目指すというものの勉強会ではなくて、存廃について勉強しよう、状況を知ろうという勉強会だったと認識しております。

○柴山委員
 認識を深めていただくのは結構ですけれども、結局、これもさっき広島刑務所について私が質問したことと同じなんですけれども、ただ勉強しているだけで、それが何らかの形の果実あるいは成果というものに結びつかなければ、それは何のために一生懸命みんなで勉強していたんだという話にもなりかねないと私は思うんですよ。
 ですから、そういった勉強して詳細な報告書をまとめていただいたということは、もちろんいいことではあると思うんですけれども、では、それをどうするかということについて、しっかりと大臣として判断をしていただきたいなというように思うんです。

○小川国務大臣
 刑罰のあり方、これはやはり国民が決めるものだと思っております。いわば刑罰権は国民にあるものと思っております。
 そうした意味で、法務省の方で今回勉強会をして、存続の考え方と反対するという立場の考えの方、さまざまな考え方というものを勉強した。そのさまざまな考え方を、いわば国民の皆さんに披露して、そして国民の間でいわば死刑制度のあり方について十分議論していただきたいなと、このような趣旨でございます。(発言する者あり)

○柴山委員
 今、ちょっと理事席からも声があったんですけれども、国民での議論に委ねますといっても、結局、この問題は立法の問題なんですよ。国民投票にかけて決めるという話ではないんです。
 大臣は、私の予算委員会での、あのときの質問に対して、現在、死刑の未執行者が百三十名を超えているという状態は認識しております、つらい職務ではあるが職責を果たすというその考えは述べておりますとお答えになりました。
 今この時点で、職責を果たす上で、現在、制約となっているものはないことを改めて確認させてください。

○小川国務大臣
 まず、ちょっと前の点ですが、今、現に刑法で死刑制度というものがあるわけでございます。ですから、国民の議論に委ねるといっても、全く新たに、新たなものをこれからつくろうということではなくて、今現在、死刑を定めた法がある、その法を変えていくという動きをするまでの国民の合意ができていないなということでございます。
 それから、今質問をいただきました点につきましては、職責を果たす、つらい職務であるけれども職責を果たすという考えは一貫して変わっておりません。

○柴山委員
 何度かこの場でも申し上げていますし、予算委員会でも申し上げましたけれども、刑事訴訟法四百七十五条二項は、死刑判決確定から六カ月以内に、法務大臣は、一定の場合を除き、死刑執行を命じなければいけないと定めております。法律改正案を提出しないのであれば、死刑をお引き受けになった小川法務大臣の責務は明白であるということを改めて強調させていただきます。
 その上で、ちょっとお伺いしたいんですけれども、自民党政権時代、鳩山邦夫大臣が就任をされてから最初に死刑執行を命じられるまで、どのぐらいの時間がかかったんでしょうか。

○小川国務大臣
 百三日でございます。

○柴山委員
 小川大臣が就任されてから今まで、どれぐらいの期間がたったでしょうか。

○小川国務大臣
 一月十三日ですので、二カ月と数日でございます。

○柴山委員
 二カ月と数日。六十日ちょっとですね。今の質問のお答えも私は参考になるのかなというようにも思っております。
 次の質問に移らせていただきます。
 今問題となっているAIJ、これは投資顧問会社ではありますが、深刻な企業不祥事であると私は思っています。ただ、オリンパスや大王製紙など、株式会社の企業統治が問題となっている事案、これらも含めると、やはり私は非常に深刻な状況になっているのではないかというように思います。
 大臣が所信表明で話されたように、現在、会社法の改正に向けた作業が進んでいますけれども、今政府・与党ではどういう検討状況になっているんでしょうか。

○小川国務大臣
 政府の方では、平成二十二年二月に法制審議会に対して諮問いたしました。そして、先月二十二日から法制審議会会社法制部会の審議が再開しております。今後、パブリックコメントの手続も踏まえて、さらに法制審議会の方で検討していただけるものと思っております。

○柴山委員
 法制審、本格的に再開をされたということですから、拙速であってはいけないのかもしれませんけれども、先ほど申し上げたような深刻な状況の中で、しっかりと、ここでも強調しますが、結果を出すようにしていただきたいというように思っております。
 その上で、大臣の基本的な考え方をお伺いしたいと思います。
 以前、この会社法改正について、大口理事の方から、企業は誰のものかという大きな問題提起がありました。もちろんそれも非常に重要な視点だと思います。それに加えて、結局、こういったさまざまな不祥事、不祥事は一体誰が気がついて、どこでそれを是正するべきものなんでしょうか。

○小川国務大臣
 なかなか、一般的で、ちょっと答えにくいところでありますけれども、本来、不祥事であれば、誰がどのように告発してもよろしいわけでございますが、例えば、商法上の点でございますと、監査役が会計監査人ですか、ちょっと済みません、正確を期しますので。(柴山委員「基本的な考え方を示していただければ結構です」と呼ぶ)基本的な考え方は、それは不祥事は誰でも告発できる、指摘できるというふうに考えております。

○柴山委員
 そうなんです。不祥事は、気がついた者がそれを告発できるようにすることが大切なんです。
 ところが、企業の中にいる人は、当該不祥事の情報には接しやすいけれども、それをなかなか言い出せない。なぜならば、中にいる者が告発すれば潰されてしまうからなんです。一方、外にいる人は、潰されはしないけれども、中の情報がよくわからない。だから、これを組み合わせていくことによってしっかりとしたガバナンスを確立していくという視点が大切ではないかというように私は思っております。
 そういう意味では、社外取締役を設置して、そして外の目と中のさまざまな経営についての情報を両方持つ存在というものを義務化するというのは、私は一つの有力な方向であるというように思っておりますが、大臣、いかがですか。

○小川国務大臣
 私も、方法論として非常に有意義な方法だと思っております。
 ただ、私にとって衝撃的だったのは、今回、オリンパスが巨額な不正をかなり長期間にわたって継続しておりました。このオリンパスには社外取締役がいたわけでございますので、そうすると、社外取締役が機能していなかったという点もございました。
 ですから、社外取締役を設ける、それから、その社外取締役の置き方あるいは仕事ぶり、こうしたことについてもやはり実効性があるものにするような検討が必要なのではないかと思っております。

○柴山委員
 そのとおり、ただ置けばいいというものではありません。しかも、これを置けば解決するというものでもありません。しっかりと制度が機能するようにするほかのさまざまな制度設計も必要になってくるんです。
 そこで、大臣にお伺いします。
 今、民主党の中では、例えば、労働組合などから選ばれる従業員選任の監査役を設けるという制度が検討されているやにお伺いします。これは私は重大な問題点を含むというふうに思っておりますけれども、大臣の認識はいかがでしょう。

○小川国務大臣
 今、党のワーキングチームの方で検討されているかどうか、ちょっと正確な情報はないのでありますけれども、やはり従業員が監査役あるいは取締役に入るということにつきましては、さまざまな観点から検討することも必要だと思っております。

○柴山委員
 だから、具体的に何が問題かということをお聞きしているんです。

○小川国務大臣
 従業員といいましても、従業員がくじ引きで入るわけでもないでしょうから、そうすると、従業員組合、労働組合かなということになりますと、労使のあるべき立場がどうなのかという根本的な問題も出てくると思います。
 あるいは、従業員であっても、それが、どこが選ぶのか、会社の意のままに選ばれる従業員であってはまた意味がないわけでございますから、従業員から取締役ということであっても、その中身によりましてやはりさまざまな意見があるものというふうに考えております。

○柴山委員
 ちなみに、明文で、会社法の三百三十五条の二項は、監査するものとされるものの利益相反というものがあってはならないということが明定されております。そのことについてはしっかりと指摘をさせていただきたいと思います。
 この問題についての最後の質問なんですけれども、一般の会社と株式が高度に流通する上場会社とでは、やはり規律のあり方についても違うのではないかというように思われます。
 例えば、有価証券報告書が出されている、あるいは株式が上場されている、そういった会社により厳しいルールというものを適用するいわゆる公開会社法の制定、そういったものについて法務省で何か考えておられますか。

○小川国務大臣
 やはり、大会社、市場に株式を上場している会社等、あるいは債権者が多いとか、さまざまな事情があれば、それはそれだけ関係者が多い。関係者が多いということは、私は、やはり企業の経理、あるいは経営の透明性、適格性がそれだけ強く要求されるものだというふうに思っております。そうした点を踏まえて、企業の不祥事を少しでも防止する、そして、あればすぐにわかるという透明性の確保、これはやはり基本的に取り組むべきことだと思っております。

○柴山委員
 しっかりと制度設計をしていただきたいというように思います。
 ちなみに、自民党でも、法務部会、財務金融部会、経済産業部会、企業・資本市場法制プロジェクトチーム、企業会計小委員会合同で、企業統治に関する改正の提言を今検討しているところであります。ぜひ、我々の提言についても真摯にまたテーブルの上にのせていただきたいということをお願い申し上げまして、次の質問に移ります。
 三月十二日の参議院予算委員会での世耕議員に対する答弁についてお伺いします。
 大臣は、かつて、ホテルあたみ百万石を運営していたファーイースト・キャピタルマネジメントという会社が滞納家賃の支払いと建物の明け渡しを求められた訴訟で、この被告会社の代理人を務めていましたね。

○小川国務大臣
 務めました。

○柴山委員
 これがかかった東京地裁における第一審の着手金は幾らと定められ、幾ら支払われたんですか。

○小川国務大臣
 受任当初は弁護士報酬規定どおりというふうに約束しました。そして、事件が終わった後の段階で、具体的には、それまでの既払いが千五百万円、未払い分が四千万円だったかな、三千七百万だったかな、ちょっと済みません、今、既払いが千五百万です。そして、未払い分がたしか、今ちょっと正確な数字はわかりませんが、大体そんな感じの金額です。

○柴山委員
 総額もわからないし未払い分もわからないということで、そんなに昔の事件ではありませんよ。不自然だと思います。
 当該着手金についての契約書ないし見積書はないんですか。

○小川国務大臣
 受任した時点では、委任契約書、その報酬を明示した委任契約書は作成しておりません。訴訟委任状を受けただけでございます。そして、事件が終わった後、これを確定する必要がありましたので、金額を確定する公正証書の債務弁済契約を締結いたしております。

○柴山委員
 今お話をされたことがいかに重大な問題かということは、この後、指摘をさせていただきます。
 ちなみに、訴額が十八億円超と、被告のファーイースト・キャピタルマネジメント、以下ファーイースト社というふうに略させていただきますけれども、その被告の経営には極めて重大な影響を与える訴訟でありまして、大臣は今お答えになられませんでしたけれども、着手金の残金は三千三百万円だったんです。
 しかしながら、今大臣がお話しされたように、裁判が終わるまで、その金額、着手金ですよ、普通、着手金というのは事件に着手するときに決められるものなんです。決められていなかった、あるいは書面もなかった。これは一体どういうことなんですか。

○小川国務大臣
 弁護士会の職務規定に、事件を受任する際には報酬を明示した契約書を作成するようにという事務規定がございますが、これは例外がございまして、合理的な理由があれば、別に金額を明示した契約書を作成しなくてよいということになっています。
 では、具体的に私の場合はどういうことかといいますと、事件が、非常に複雑な内容の事件でございました。そして、受任した段階では、その訴訟の成り行きがしっかりと見通せない。もっとわかりやすく言えば、私がどれだけの事務を行うのかということが確定できませんでした。事務の量が確定できないと、弁護士の着手金も確定できないわけでございますので、それで、依頼者との間では、これも依頼者もよく知っている依頼者なんですが、弁護士会の報酬規定どおりだよというこの原則を約束した上で、また、ファーイーストもそんなに資金繰りが豊富な、豊かな会社ではございませんでしたので、とりあえずということで一千万円をいただいたわけでございます、着手金の一部として。

○柴山委員
 よく事件の進展がわからなかった、あるいは依頼者はよく知っていたという二点を挙げられましたけれども、では、この訴訟が、結局、ファーイースト社の全面敗訴に終わった。その後の控訴審、第二審の着手金については契約書がつくられたんですか。

○小川国務大臣
 公正証書による債務弁済契約公正証書を作成しております。

○柴山委員
 この公正証書による着手金の明示ということがいかに不自然かということは、この後、お話をさせていただきますけれども、少なくとも、控訴審段階で契約書はつくられておりませんでした。
 ところが、今大臣がお話しになられたように、第一審、未払い着手金は三千三百万円と定めたわけですね。それと、控訴審の着手金、これは四千万円と定められました。この合計額、七千三百万円について、何と、第一審で負けて、その後、依頼者である被告ファーイースト社との間に公正証書がつくられたわけなんです。
 つくられた日付を覚えていらっしゃいますか。

○小川国務大臣
 日付は覚えておりませんが、一審判決が出て、その判決に基づいて仮執行宣言がありましたので、相手方がファーイーストの預金や売掛金を差し押さえしてきた、その直後だと思います。具体的な日にちまではわかりません。

○柴山委員
 しっかりとお述べいただいたとおりです。
 第一審で、平成二十二年二月二十六日に原告家主が全面勝訴したという判決が出てしまった。その上で、仮執行宣言、つまり今大臣がお話しになったとおり、控訴されても強制執行が一応できるという裁判所のお墨つきを得て、原告家主が被告ファーイースト社が持つ預金債権や売り掛け債権を差し押さえるという裁判所の命令が出たのが同年三月十五日です。その三日後に公正証書が、大臣とファーイースト社との間の公正証書がつくられたことになるんです。私も弁護士ですけれども、このようなやり方をいまだかつて見たことはありません。
 しかも、大臣、参議院予算委員会で何とおっしゃっていますか。今大臣もお話しになったように、先に原告の差し押さえがあって、相手方、原告がひとり占めしようという状況の中で、お互いに債権額でこれを分け合いましょうという場合に、差し押さえの配当を得るためには私も差し押さえをしなくてはならない。すなわち、原告が正当な強制執行によって回収する取り分を減らすために、事後的に公正証書をつくって同じ預金などに差し押さえをかけたと御自分で認めておられるわけなんです。
 では、その着手金債権についてですが、大臣、その後の控訴審で、書面を幾つ提出し、何回裁判所に通いましたか。

○小川国務大臣
 まず、私は債権があるわけですから、相手方が差し押さえをしてきたので、私もその配当に加入するために、当然の債権の行使として差し押さえを行ったわけでございます。
 控訴審については、もちろん、受任した後、控訴状を提出し、準備書面を提出しております。

○柴山委員
 いや、だから、書面を幾つ提出して、何回裁判所に通ったかという質問です。

○小川国務大臣
 結論からいいますと、準備書面は一回でございます。出廷は、私の記憶では二回だと思いますが、ちょっと確かな記憶はございません。
 事情は、お話ししますと、仮執行宣言が一審判決でついておりました。ですから、この仮執行を執行されてしまいますと、裁判に勝った負けたにかかわらず先に出されてしまうわけですから、裁判を追行する意味がなくなってしまうわけでございます。そうした事情から、仮執行宣言をとめる、その執行宣言の停止の手続をとらなくてはいけない。
 しかし、その手続をとるためには保証金を積まなくてはいけない。その保証金は、私の予想では三億円ぐらい、あるいはもっと、二億円ぐらいでできたかもしれません、これは実際に裁判所に申し立てしてみたらどうなるかの金額ですが。この資金繰りをファーイーストはやっておったわけですが、結果的にその資金繰りができなかったために、仮執行宣言に基づいて強制執行で出されてしまった。出されてしまった中で、結局裁判所も、もう強制執行が終わっちゃったんだったら、これ以上裁判しようがありませんねと。私の方も、いわば戦意喪失ですので、そのまま判決を迎えたということでございます。

○柴山委員
 長々とおっしゃっていましたけれども、結局、控訴審にはほとんど経済的なあるいは実質的な意味はなかったんです。
 それだけじゃないんですよ。控訴審の係属されていた期間は、平成二十二年の六月七日から七月七日までの一カ月間だったんですね。大臣、あなたの前回の参議院選挙の投票日は、何年の何月何日だったんですか。

○小川国務大臣
 たしかその年の七月だと思いますが、別にそのときに受任したんじゃなくて、この事件そのものは、その二年前に受任した事件が一連の中でずっと続いてきて、結果的に、もっと早く終わればいいものが、私の選挙のときまで続いてしまった。しかし、そこでおっぽり出すわけにいきませんので、そのまま続いておったということでございます。

○柴山委員
 もう一度言います。控訴審の期間は平成二十二年六月七日から七月七日まで、そして、あなたはその期間、まさに厳しい選挙戦、民主党逆風の中での参議院選挙、東京選挙区では知名度の高い蓮舫さんとあなたの複数立候補で、本当に厳しいラストスパートの時期だったんです。ちなみに、投票日は七月の十一日です。なのに、さっき申し上げたように、ほとんど経済的には実効性のない控訴審の着手金が四千万円ですよ。明らかに不合理です。
 原告家主は、その後、同年八月に至って、ファーイースト社に対して公平な債権回収を図るために債権者申し立て破産を提起して、認められました。破産手続が進んだ翌年、平成二十三年六月二十四日の家主側、つまり原告側弁護士の破産管財人に対する意見書に、こう書いてあります。
 小川氏についてその主張する全額(ないし少なくとも一部)について、虚偽の債権届が出されたとみるべき可能性があります。
  仮にそうであれば、強制執行手続で虚偽の債権を主張して配当を得ようとする行為は強制執行妨害罪(刑法九十六条の二)に、破産手続で虚偽の債権を主張して、破産財団から配当を得ようとする行為は詐欺罪(刑法二百四十六条)に該当する可能性のある行為です。
  まして、小川氏は、「社会正義を実現することを使命とする」弁護士であって、さらに、二〇一〇年九月二十一日以来、法務副大臣の要職にあります。かかる行為が、弁護士法上の懲戒事由にあたり、さらに政権全体のスキャンダルにも繋がりかねない重大な不祥事であることは明らかです。
  破産者の破綻によって、多くの従業員が職を失い、地域の取引先が重大な損害を被っているのを横目に、弁護士と関係会社が共謀して、虚偽の債権を届け出て配当をだまし取ろうとしたのであれば、その悪質さは際立っています。
  破産管財人は、一部であってもこれを容認する結果をもたらすべきではありません。
 以上、引用を終わりますが、大臣、この意見から半年後、去年十二月十六日に破産管財人が債権者たちに配付した債権認否表で、あなたの弁護士報酬債権、合計七千三百万円は認められたんですか。

○小川国務大臣
 いろいろな点を今お話しされました。
 まず、そういうふうに言っている者がいるということでいろいろお話しされましたが、全く具体的な根拠がない、ただ一方的な意見でございます。しかも、その意見そのものは私に断定している話ではなくて、そうであればこうなるというような一つの仮定の意見でしかすぎませんので、そうした意見を前提に答えられても、私としては、そのようなことを発言している人に対して非常に人間の不信を覚えるところでございます。
 そして、破産管財人の異議に関しましては、さまざまな異議があるかもしれませんが、法的に有効な異議というものは私は受け取っておりません。(発言する者あり)

○小林委員長
 大臣、的確に答えてください。

○小川国務大臣
 まず、破産管財人は、私の債権を否認するためには裁判を起こさなくてはいけません。これは、破産法に明確に規定されておるわけでございます。(柴山委員「債権認否表で認められたんですかと聞いているんです」と呼ぶ)債権認否表は私は見ておりません。

○柴山委員
 ほかの債権者については、ちゃんと金額が書き込まれ、認められていますけれども、あなたの債権については認められていないんです。
 ちなみに、あなたは、二月十六日号の週刊文春の記事で、債権が否認されたら争うよ、正当だからとコメントしたと報じられていますが、間違いありませんね。

○小川国務大臣
 ですから、破産管財人が私の債権に異議を述べるためには、破産法の規定によりまして、訴訟によらなければならないという規定があるわけでございます。ですから、私も、週刊文春の記事がありましたので、裁判所に確認しましたところ、破産管財人は訴訟を起こしていないし、裁判官がそのような許可を与えたこともないということでございます。ですから、破産法の有効な異議はなされていない。もし、そうした破産法の手続を経ていない何らかの異議が何らかの形で表現されているとすれば、それは単なる事実であって、異議の効力はないということでございます。
 また、週刊文春の記事に関しましては、何の不正もない、虚偽もない者に関しまして名誉毀損している事実無根の記事でございますので、私は、損害賠償請求訴訟を起こすつもりでございます。ただ、損害賠償請求は、不法行為でございますので、時効が三年ございます。私は今は法務大臣の職務を中心に行おうと思いますので、法務大臣の職を務め上げてから、時間の余裕ができてから、ゆっくりと、週刊文春に対しては損害賠償を請求しようと考えております。

○柴山委員
 それはおかしいですね。
 小川法務大臣は、かつて結婚されていた女優さんとの離婚についての週刊誌の記事、この某週刊誌に対しては本人訴訟を起こしているんですよ、ちゃんと。今のお話は、私は全く納得することはできません。
 おかしなことはまだあるんです。
 ファーイースト社とともに、K2キャピタルという商号だった株式会社の傘下にあった蓮村不動産という会社があり、この蓮村不動産は、人事の面でも、かつての代表者をファーイースト社の代表取締役に送り込んだり、ファーイースト社の渉外担当としてホテルあたみ百万石の実質上の責任者をしていたYという人物が今、蓮村不動産の現代表であったり、ファーイースト社と非常に密接な関係にあります。さらに、ファーイースト社の前本店所在地である中央区日本橋二丁目所在のビルの所有者が蓮村不動産です。
 この蓮村不動産が、先ほど述べた訴訟原告家主によるファーイースト社の預金や売掛金に対する平成二十二年三月十五日付の差し押さえ命令の三日後、まさに小川大臣が弁護士としての着手金債権について公正証書をつくったその同じ日に、同じファーイースト社に対する七千万円の貸し付けの契約を結んで公正証書を作成しているんです。
 大臣、この蓮村不動産とファーイースト社との間の公正証書作成の場にもあなたは立ち会っていますね。

○小川国務大臣
 ですから、参議院の予算委員会でも説明しましたとおり、初めに相手方が預金と売掛金を差し押さえしました。そのために、従業員の給料も払えなくなりました。熱海の業者に対する支払いもできなくなりました。そのために、急遽、関連会社の蓮村不動産がそうした資金手当てをするために七千万円を貸したわけでございます。その七千万円につきまして公正証書を作成しました。(柴山委員「だから、大臣はその場にいたんでしょうと言っているんです」と呼ぶ)ええ。私の弁護士の報酬債権の公正証書と一緒につくりました。

○柴山委員
 そうなんです。この小川法務大臣の弁護士着手金債権と、今申し上げた蓮村不動産の七千万円のファーイースト社に対する貸付債権、連番の公正証書です。同じ機会につくられたんです。(発言する者あり)
 ちなみに、それが、信じられないと弁護士出身の大口委員もおっしゃっていますけれども、この貸付契約、金銭消費貸借というのは要物契約と申しまして、実際に蓮村不動産がこの貸し付ける七千万円をファーイースト社の手に渡して初めて成立する契約なんです。
 今、大臣はるる、金策のためというようなことをおっしゃいましたけれども、公正証書作成、三月十八日時点で、この七千万円は、現金でファーイースト社に渡されたんですか、それとも銀行に振り込まれたんですか、振り込みの場合はどこの口座に入金されたんですか。

○小川国務大臣
 銀行に振り込みますと、また差し押さえされてしまいますといけませんので、現金で渡しました。公証人の面前で現金を渡しました。

○柴山委員
 大臣、あなた自身が、この蓮村不動産の代理人として、当該公正証書に基づいて、この貸付契約、弁済期が三月の二十三日ですよ、たった五日後が弁済期ですよ、その契約に差し押さえをかけているんです。
 いずれにせよ、直前に敗訴したファーイースト社に対して七千万円もの貸し付けをキャッシュで行うということは極めて不自然だと思うんですけれども、何のための資金だったかということはさっき御説明になりました。
 もう一回確認させてください。差し押さえによって、要は、ファーイースト社が従業員の給料とか熱海のさまざまな業者に対する支払いができなくなった、だから、そのまま放置できないから、七千万円をこの会社に入れたということでよろしいわけですね。確認です。

○小川国務大臣
 そのとおりです。
 ですから、先ほど委員は、何か差し押さえが従業員の給料を払わずに困らせたみたいなことを言っておりますが、従業員の給料はそうしたことで全て完済しております。

○柴山委員
 ちなみに、私が言ったのは、あくまでも原告家主の意見書を申し上げただけですから、そこは誤解しないようにしてください。
 今申し上げたとおり、その蓮村不動産の貸し付けについては、弁済期限がたった五日後の三月二十三日なんですよ。ファーイースト社から蓮村不動産に対して七千万円返済される見込みはあったんですか。

○小川国務大臣
 ですから、これは返済される見込みがあるとか蓮村不動産が利息を取って貸すとかいう通常の融資ではなくて、あくまでも、ファーイーストの方で、相手方がいわば従業員の給料に充てるお金なんかを差し押さえてしまって、従業員に給料を払えない、熱海の業者に対する支払いができないというまさにひどいことを相手方がやってきたわけです。そのまま倒産してしまえば、それは蓮村不動産は別にお金を払わなくて助かるかもしれませんけれども、そういうわけにはいかない。従業員に対する給料は払わなくちゃいけない、熱海の業者に対する支払いはしなくちゃいけない、しかし、支払いをするお金はファーイーストにはないわけですから、蓮村不動産が出すしかないから、蓮村不動産が七千万円を急遽貸したわけでございます。

○柴山委員
 つまり、こういうことなんです。
 今、まさしく大臣がおっしゃったとおり、初めからその七千万円が返済されることなどあり得ないということをわかっていながら、当該公正証書をつくることによって、そしてその公正証書で競合する差し押さえをすることによって、家主からかかっている差し押さえに競合させて、正当な強制執行をかけている家主の取り分を減らそうとしたんですよ。これこそ典型的な執行妨害じゃないですか。しかも、あなたは堂々と、ファーイースト社の支払いをするために七千万円を入れたというようにおっしゃっていますけれども、これはへんぱ弁済以外の何物でもありません。
 十年前、私は弁護士として似た事例をたくさん見てきております。理事の階さん、いらっしゃいませんか、金融機関にお勤めのある弁護士ですから私の言いたいことはわかっていただけると思いますし、先ほど大口理事の方からもあり得ないというお話をいただきましたけれども、全くあり得ない事例なんです。
 現に、蓮村不動産は、当該公正証書に基づいて、三月二十四日、つまり返済期限のわずか一日後に、返済猶予の、お願いをすることもなく、競合する差し押さえをかけているんです。このときの蓮村不動産の代理人をした弁護士は誰ですか。

○小川国務大臣
 まず、返済見込みがないのに貸すのはおかしいといいますけれども、返済見込みがなくても、これは関連会社として貸さなくてはいけないから貸したわけでございます。貸したお金は、当然債権があるわけですから、その債権についてしっかりとした強制執行の手続をとる、相手方が起こしている以上、とるのはこれは弁護士としてごく普通の職務だと思っております。
 それから、ファーイーストの代理人でございますね。(柴山委員「違う、蓮村不動産」と呼ぶ)蓮村不動産。これは、今言いましたように、この融資そのもの、これは、公正証書の債務弁済契約、これもワンセットでございますが、ファーイーストの従業員の給料を払うために行ったことであります。ですので、ファーイーストの依頼と承諾、これを受けて蓮村不動産の代理をやりました。

○柴山委員
 もう一回、答弁してください。
 蓮村不動産の代理人弁護士は誰ですか。

○小川国務大臣
 ファーイーストの承諾を受けて私がやりました。

○柴山委員
 大口理事から、ええという声がありました。そのとおりなんです。
 弁護士職務規程二十七条三号は、受任している事件の相手方からの依頼による他の事件について、その職務を行ってはならない、利益相反から当たり前ですね、と規定していますが、今大臣がお述べになったとおり、あなたの依頼者であるファーイースト社が同意をしたから、大臣、あなた自身が、自分の弁護士報酬債権と蓮村不動産の七千万円の貸付債権、両方の弁護士として、ファーイースト社に対して正当な強制執行に競合した差し押さえを行っているんです。要は、あなたも含めて、みんなぐるということじゃありませんか。これは余りにもひどいということにはなりませんか。
 あなたの依頼者であるファーイースト社は、破産して保全管理命令を受けた後も口座から一千六百万円以上もの出金が認められると破産管財人の昨年十二月十六日付報告書で指摘をされており、管財人は、こうした預金の推移についても引き続き調査を行うとともに、ファーイースト社の元代表者に対して民事上及び刑事上の責任追及を検討する予定であると報告書で述べています。当たり前のことです。
 ところが、破産管財人がこうした刑事上の責任追及をするのに今、大きな壁があるんです。おわかりですか、大臣。

○小川国務大臣
 まず、いや、委員がいろいろ、一遍に四つも五つものことを言われるので、最後のことだけ答えると、また聞いている方にもいろいろ誤解を招くものですから述べさせていただきますけれども、双方代理云々というのは、あくまでもそれまでの受任者の利益に反するようなことであってはいけないわけでございますが、再三申し上げているように、これは、ファーイーストの利益のために貸し出しをするわけでございます。その貸し出しとワンセットでございまして、ファーイーストの方がそれを承知しておるわけでございますから、何ら双方代理と言われる筋合いはございません。
 そして、七千万円を貸した債権、これは現に債権として全く正当に存在をする債権でございますし、私の報酬債権も正当な債権でございます。正当な債権でありますから、相手が強制執行してとってくればこちらも強制執行してお互いに債権額で分けるというのは、これは余りにも当然なことでございます。
 それから、何かファーイーストの関係者が破産の後にいわば預金を引き出したというような御指摘がありましたが、そういう事実はないと聞いております。

○柴山委員
 破産管財人が刑事上の責任を追及するのに大きな壁、それは、利害関係人であるあなたが法務大臣として捜査当局のトップにいることなんです。
 ちなみに、今回原告となった家主はクレディセゾン系サービサーの系列会社なんですが、サービサー法の許可を所管するのも法務大臣、あなたがトップを務める法務省です。この件については、家主サイドも非常にナーバスになっていると私は聞いております。
 私は、さっき大臣は何の問題があるんだというように開き直られましたけれども、依頼者の債務者と結託して執行妨害をすることがおかしくないというようにもしお述べになっているとすれば、これは、今の刑法を無視した大変な暴言であり、コンプライアンスの観点から、あなたがその席に座っていることを容認することはできません。
 ところで、先ほど申し上げた蓮村不動産の代表者Yさん、このYさんの国籍はどこですか。

○小川国務大臣
 まず、執行妨害を云々というのは全くの言いがかりでございまして、正当な債権の行使でございます。
 また、刑事事件に妨げがある云々かんぬんといいますけれども、刑事事件そのものが存在しないわけですから、全く、誰かが一方的な、無責任なことを言っているんだというふうに思います。
 最後、何でしたっけ。(発言する者あり)国籍は、それは私人のプライバシーにかかわることですから、お答えできません。

○柴山委員
 プライバシーにかかわるというようにお話しでしたけれども、大臣は当然おわかりだと思いますが、報道によると、この蓮村不動産の代表者のYさんは在日の韓国人であられるということのようです。
 大臣、最後にお聞きします。
 外国人の地方参政権について、どのようにお考えだったでしょうか。

○小川国務大臣
 私一人の政治家個人としましては、永住外国人の地方参政権については付与してもいいのではないかと考えております。

○柴山委員
 今申し上げたような経緯、そして今の大臣の答弁、到底、法律に携わる者として容認することができないということを最後に申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

第180回 国会 衆議院 憲法審査会

第180回 国会 衆議院 憲法審査会 第2号
平成24年3月15日(木)
午前九時八分開議

【日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に公務員の政治的行為の制限と国民投票運動をめぐる問題について】

○大畠会長
 これより会議を開きます。
 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に公務員の政治的行為の制限と国民投票運動をめぐる問題について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、人事院事務総局職員福祉局長桑田始君及び総務省自治行政局長久元喜造君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○大畠会長
 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

○大畠会長
 次に、本日の議事の順序について申し上げます。
 まず、公務員の政治的行為の制限と国民投票運動をめぐる問題について政府から説明を聴取し、その後、自由討議に入ることといたします。
 それでは、政府から説明を聴取いたします。人事院事務総局職員福祉局長桑田始君。

○桑田政府当局者
 それでは、日本国憲法の改正手続に関する法律附則第十一条に規定されております、公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう、必要な法制上の措置を講ずるものとするとの規定と、現行国家公務員制度における政治的行為の制限との関係について御説明します。
 国の行政に携わる一般職の国家公務員は、その職務遂行に当たっては、国民全体の奉仕者として政治的に中立な立場を維持し、一部の政党や政治的団体に偏することがないようにすることが求められております。
 このため、一般職の国家公務員については、国家公務員法第百二条及び人事院規則一四―七政治的行為により、一定の政治的目的をもってする政治的行為を制限されることとなっています。具体的には、人事院規則で政治的目的と政治的行為をそれぞれ限定的に列挙した上で、あくまで人事院規則に掲げられる政治的目的をもってする政治的行為を制限するという形をとっています。
 行為制限の基本に置かれます政治的目的としては、衆参両院議員の選挙または地方公共団体の首長、議会の議員の選挙期間中の特定の候補者に対する支持、反対、特定の政党などに対する支持、反対を掲げています。しかしながら、地方公務員法と異なって、公の投票における支持、反対などは政治的目的として規定されていません。
 したがいまして、国民投票に際して行う憲法改正に関する支持、反対については、人事院規則で政治的目的として掲げられている項目には該当しませんので、国家公務員法が定める政治的行為の制限の対象とはなりません。
 このことは、日本国憲法の改正手続に関する法律附則第十一条において、「公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう、」と規定されていることと整合しているものと理解しております。
 一方、国民投票運動と称し、実質的に特定政党への支持、反対を目的として、ビラや政党機関紙の配布、署名運動やデモ行為の企画などを行うことは、現行制度上の政治的目的を持つ政治的行為に該当し、制限の対象とされることになるものと考えます。
 以上でございます。

○大畠会長
 次に、総務省自治行政局長久元喜造君。

○久元政府当局者
 総務省からは、国民投票法附則第十一条に規定される、公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう、必要な法制上の措置を講ずるものとするとの規定と、現行地方公務員制度における政治的行為の制限との関係について御説明を申し上げます。
 一般職の地方公務員は、公務の中立性や公務員の全体の奉仕者としての性格の確保のために、政治的中立性を確保することが求められております。
 このため、一般職の地方公務員については、地方公務員法第三十六条において、公の選挙または投票において特定の人または事件を支持し、またはこれに反対する目的をもって、公の選挙または投票において投票をするように、またはしないように勧誘運動をすること、署名運動に積極的に関与すること、金品の募集に関与すること、文書を庁舎に掲示するなど、地方公共団体の庁舎、施設、資材または資金を利用し、または利用させること等が禁止されております。
 この政治的行為の制限に違反する行為については、刑事罰は科されておりませんが、懲戒処分の対象となります。
 こうした現行法の規定は、憲法改正国民投票を念頭に置かずに制度設計されているところであります。
 なお、附則第十一条は、国家公務員法、地方公務員法の定める一般的な公務員の政治的行為の制限について、国民投票運動の自由の確保と公務員の政治的中立性の観点から、憲法改正の国民投票法上いかなる特則を設けるべきかという問題として国会において議論されてきたものと理解しております。
 総務省といたしましては、憲法審査会における御議論を踏まえながら、その状況に応じ、関係府省とも協議しつつ適切に対応してまいりたいと存じます。

○大畠会長
 以上で説明は終わりました。

○大畠会長
 これより自由討議を行います。

(中略)

○緒方委員
 民主党、緒方林太郎でございます。
 発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。質問というよりも意見表明ということにさせていただければと思います。
 まず一つ目、自由な勧誘活動ということですが、これが本当に政党支持ときちっと切り離すことができるかどうかということについては精査が必要なのではないかなというふうに思います。
 政治活動と国民投票の話とを本当に完全に切り離すことができるかというと、例えば国民投票と、何らかの地方自治体の選挙であったり国政選挙であったりというのがあったときに、例えばですけれども、こういう働きかけをしたときにこれが合法か違法かということなんですが、民主党という政党はこの案を支持していますという前置きを置いた上で、この案を支持してくださいというふうに言ったときに、これは物すごく政党支持がにおう働きかけだと思いますけれども、言っていること自体は、案を支持してくださいとしか言っていないわけでありまして、これがどう解釈されるか。本当に、政治活動、政党支持と切り離された国民投票法というのがあり得るのかということについては精査が必要ではないかというふうに思います。
 二点目については、憲法上、公務員に関してさまざまな規定がございます。公務員がやっている仕事についての規定もございます。こういったものについて勧誘活動をすることが本当に適切なのか、自分自身の、憲法の中に公務員に関するさまざまな規定があるものについて、これをこう改正すべきだ、こう改正すべきだという発言を自由にやるということがいいのかなというふうに思っています。
 三点目、これは職場での上下関係を使った上で、例えば企業であれば、企業が選挙のときに誰々を推すとかいうことで号令をかけるというのと同じように、例えば役所で局長が、もっと言うと大臣が、この案でいこうじゃないかというふうに役所の中に働きかけをするということ、こういったことまでが許容されるか。これは極論でありますけれども、可能性として検討されるべきものではないかというふうに思います。そして、庁舎内での国民投票法における勧誘活動というのが許されるのかどうかということ。
 そして最後に、公務員の中には、自衛隊であったり警察であったり、さまざまなそういった実力を持っている人たちがいるわけですが、この方々をここで言うところの公務員の範疇に入れるのかどうかということ。これは、例えば、これも極論になると思いますけれども、自衛隊の方々が憲法九条に関して活動することがこの検討の中でどうあるべきかということについて問題提起をさせていただきまして、発言を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

○照屋委員
 会長、御配慮ありがとうございます。社会民主党の照屋寛徳です。
 最初に、石原慎太郎東京都知事の憲法についての発言に対し言及しておきます。
 石原東京都知事は、去る二月二十一日の都議会自民党の新春の集いに出席をし、日本国憲法について、自民党に頑張ってもらって破棄したらいい、改正しようとすると国会の議決が要るなどと述べ、改正よりも破棄すべきだとの見解を示したと報道されております。
 理論的には、クーデターや革命により現行憲法の理念を全否定する政権が誕生した場合、憲法改正ではなく破棄もあり得ると思いますが、私や国民はそれを望まないし、そのような事態があってはならないと考えます。
 さて、本日の憲法審査会のテーマである公務員の政治的行為の制限と国民投票運動について意見を申し述べます。
 私は、人を選ぶ公職選挙と、憲法という国の最高法規を選ぶ、いわゆる政策を選ぶ国民投票運動とは全く異なるものであり、したがって、全く異なる法規制によって律せられるべきものと考えます。
 言うまでもなく、憲法改正に関する国民投票運動は、主権者たる国民の重要な権利の行使であり、最大限に保障されなければならない人権でもございます。本来、政治活動は原則として自由であるべきです。そのことを保障することが、民主主義と民主政治の根本であります。したがって、憲法を改正すべきか否か、またどのような憲法を選択するかについての国民投票運動は原則として自由とすべきであり、規制を前提とすべきではありません。
 このような基本的考えに基づき、国家公務員であれ、地方公務員であれ、国民の一人として憲法改正案に対する賛否の勧誘、意見の表明を行うなどの国民投票運動について、制限すべきではないと考えます。
 同時に、私は、国家公務員法第百二条、人事院規則一四―七、地方公務員法第三十六条の規定を承知の上で、公職選挙と国民投票運動に同じような規制を設けるべきではないものと思料いたします。
 国民投票運動にかかわる公務員の政治的行為の制限については、衆議院憲法調査特別委員会においても、平成十八年十二月十四日段階の民主党、自民党・公明党の修正要綱が国家公務員法等の政治的行為の制限規定を全面適用除外とすることで一致していたことを思い起こすべきであります。その後に、自民党、公明党の切り分け論の提起があり、日本国憲法の改正手続に関する法律附則第十一条になったものと理解をしております。
 以上です。

○大畠会長
 ただいまの意見表明あるいは御自分のお考えを述べられたわけでありますが、これについて、人事院、総務省関係で御発言はございますか。あるいは、橘部長は、今のお話についてずっと経緯を御存じでしょうから、これまでの調査会での審議を経て、何かありましたら御発言を許したいと思いますが、どうでしょうか。

○橘法制局参事
 会長からの御指示でございますので、一点、情報提供という形で御報告をさせていただきます。
 今、全面適用除外と切り分け論については、照屋先生からお話があったとおりであります。
 先ほどの緒方先生の御指摘も踏まえれば、本当に純粋な勧誘運動、政党への支持、反対を目的としない純粋な勧誘運動というものがあり得るのかということも、国民投票法制の論議の中では御議論になられました。
 その観点から、公務員についても国民投票運動に関しては原則自由であるべきだ、その切り分けも難しいという観点から、公務員の行き過ぎた行為は、地位利用、先ほどもおっしゃられましたけれども、公務員の地位利用による国民投票運動への関与という形を規制すればいいのではないのかというのが、最終的に民主党の案になりました、いわゆる全面適用除外。これは、国民投票運動の場合では、少々の行き過ぎは地位利用でもって対処すればよくて、純粋な勧誘運動とのその曖昧なところは全面適用除外で対処するべきだというのが民主党案に最終的になったものと思われます。
 他方、幾ら国民投票運動の場面であっても、本当に公務員の政治的中立性を担保する必要はないのかという観点から出てこられたのが、自由民主党、公明党の、この附則十一条に結実した、いわゆる切り分け論。ですから、先ほど緒方先生御指摘の問題は、実際に制度設計される場合の大きな論点であるということは、附則十一条を起案されたときも先生方は認識しておられたと思います。
 以上です。

○柴山委員
 発言の機会をありがとうございます。
 今のお話で非常に気になる部分がございます。制度設計として、本来、国家公務員よりも地方公務員の方が、その政治的な活動の自由というものは、権力性の薄さにより、より担保されなければならないにもかかわらず、国の公務員が公の投票における支持、反対が自由であるというふうになっているのに対して、地方の方ではそのようになっていない、いわば、本来の方向性とは逆の規定となっているところが非常に大きな問題であろうかと思います。
 ただ、先ほど緒方委員の方からもあったように、国の方が本当に自由かというところを考えた場合に、やはり政党の支持と切っても切り離せない部分があるということと、それから、これはぜひ質問なんですけれども、先ほど例に挙がった自衛隊のみならず、例えば裁判官ですとか検察官ですとか、地位利用でなくても、その職務のあり方に高度な信頼性、中立性の確保が求められている職種もあるわけであります。こういった方々に対して、本当に、公の投票ということで、政治的な目的を直接有するものでないということで自由に発言を許していいのかということについて、特に、国家公務員も憲法尊重擁護義務があるはずですので、そういったあり方について御意見をお伺いしたいと思います。
 そして、地方公務員については、やはり限定的に規制をするべきだと思うんですけれども、教職員、特に公立学校の教職員については、これは、地位利用というような形で規制をすれば、その弊害の大きな部分は担保されるのかというような意見もあろうかと思いますけれども、仮に、学校の関係以外のところでもこういった活動を教職員に認めた場合に、私は、やはりかなり学校の教育課程への信頼というものに影響が出てくるのではないかというような気がいたしますので、地方公務員への一定程度の自由ということについても、やはり職種によっては慎重な配慮が必要になるのではないかというように考えておりますので、このあたりの議論、あるいは総務省の考え方についても御説明をいただけたらと思います。
 以上です。

○桑田政府当局者
 お答え申し上げます。
 私ども、附則第十一条で、「公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう、」ということがありまして、それにつきまして必要な法制上の措置を講ずるということにつきましては、先生が御指摘のような考え方もあろうかと存じますけれども、いずれにしましても、現行制度におきます国家公務員の政治的行為の制限の内容を踏まえた上で、当憲法審査会において御議論いただき、必要があれば法制上の措置を講ずることとされているものというふうに理解をしております。

○久元政府当局者
 柴山委員から、国家公務員と地方公務員との政治的行為の規制のあり方について、国家公務員の方が規制が緩やかで、地方公務員の方がこれが対象になるというのは逆の方向を向いているのではないかという御指摘をいただきました。
 この点についての私どもの考え方ですけれども、現行の国家公務員法も地方公務員法も国民投票ということを念頭に置いて規定されていないということは共通しているというふうに思います。その上で、国家公務員の場合には対象にならなくて地方公務員の場合には対象になるというのは、恐らくは両方の規定の仕方からくるのではないかというふうに考えております。
 まず、国家公務員法につきましては、その目的と行為の態様を人事院規則に委任をしております。そして、目的につきまして個別に書いているわけです。公選による選挙、それから最高裁判所の裁判官の審査などを個別に書いているわけです。地方公務員法の場合には、法律で「公の選挙又は投票において」というふうに一般的に書いておりますので、ここに形式的に入ってくるということであろうかと思います。
 さらに、その上で申しますと、国家公務員法の方が範囲が狭くて地方公務員法の方が範囲が広いということは、国民投票を除けばないというふうに思います。
 具体的に申しますと、人事院規則では、例えば地方自治法に基づく条例の制定、直接請求も対象になりますが、地方公務員法の場合にはなりません。また、政治的行為の態様につきましても、人事院規則の方が個別に詳細に具体的に書いておりまして、その範囲は恐らくは地方公務員法の概括的な規定よりもより具体的に詳細に書いておりまして、その範囲は広いのではないかというふうに考えております。これが現行法の考え方についての私どもの見方でございます。
 それから、教育公務員について御指摘がございましたが、教育公務員につきましては、教育公務員特例法で「国家公務員の例による。」というふうになっておりますので、基本的には今の人事院規則と同じ規制が適用になるというふうに理解をしております。

第180回 国会 衆議院 予算委員会 第5分科会

第180回 国会 衆議院 予算委員会 第5分科会 第1号
平成24年3月5日(月)
午前八時開議

○柴山分科員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 きょうは、厚生労働省所管の第五分科会ですので、お茶の放射性セシウムについての質問を主にさせていただく予定ですが、その前に、去る二月二十三日に、FAC三〇四九所沢通信施設、いわゆる米軍通信施設の一部土地の返還について日米合同委員会で合意された件についてお伺いいたします。
 平成十八年四月、すなわち自公政権時代に、所沢市から、今申し上げた通信施設内の東西連絡道路用地の返還の要請がなされました。その後、政権交代に至るまで、当時、私も外務大臣政務官としてかかわってまいりましたが、政権交代前までに、この所沢市からの要望に対して米側からどのような対応が引き出せたのか、お伺いしたいと思います。

○山内政府参考人
 お答えいたします。
 先ほど来、委員から御質問の中でございましたように、所沢市からは、平成十八年四月、当時の防衛施設庁に対しまして、東西連絡道路を建設するため、所沢通信施設の土地の一部返還について要請があり、これを受け、当時の防衛施設庁では、米側に対して返還を提案したところでございます。
 これを受け、平成十九年二月でございますが、米側からは、一部土地の返還に当たって、通信任務を妨げることがないよう東西連絡道路は半地下方式とするとともに、既存の施設の移設などを日本側において実施することを条件に用地の返還に同意するという考え方が示されたところでございます。
 これを受け、米側の返還条件案について所沢市と調整したところ、平成十九年九月、所沢市からは、半地下方式の道路とする案については、建設費の負担あるいは安全管理などの観点から、当該道路については平面方式としてほしい旨の要望がございました。このため、この所沢市の御要望を受け、米側と鋭意調整を行い、道路を平面方式とすることについて米側の了解が得られたところから、平成二十一年の六月、所沢市に対しその旨を説明したところでございます。

○柴山分科員
 ありがとうございました。
 いわゆる平面方式、すなわち道路を地上に通すという方式で、既に政権交代の前に米側からの方針が示された、これは本当に大きな前進だったのだなというように思います。
 そして、政権交代後も、関係各機関の御尽力によりまして、今回、土地約九千四百平方メートルの返還が合意されたとのことですが、その内容について御説明ください。

○山内政府参考人
 お答え申し上げます。
 本年二月二十三日、日米合同委員会において、所沢通信施設の一部土地約九千四百平方メートルを返還することが合意され、そこでは、東西連絡道路用地の返還に伴い影響を受けます既存の施設の移設などを日本側で実施することが返還の条件とされております。
 具体的には、返還予定地に所在するアンテナ、倉庫の移設、あるいは、道路用地の返還に伴い保安用地を確保するために必要となる通信局舎などの移設などについて、日本側で実施することが条件となっております。

○柴山分科員
 日本側で米側施設の移設を完了させた後に返還されるという御説明だったんですけれども、そうすると、実際の返還時期はおよそいつごろになるんでしょうか。

○山内政府参考人
 お答え申し上げます。
 今後、米側の返還条件となっている施設の移設整備について、具体的に米軍、所沢市と調整の上、個々の施設の整備を行った後、土地を返還されることとなりますが、この時期について、現時点で具体的に申し上げるということは困難なところでございます。
 いずれにいたしましても、防衛省といたしましては、できる限り早期に土地の返還が実現できるよう、今後、移設整備について努力してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

○柴山分科員 
 具体的にいつになるかわからないということですけれども、まだまだ、確かに幾つものステップが予定されていることは理解をいたしますが、この土地が返還されて東西連絡道路が開通するということは我々所沢市民の悲願でもありますし、またこれについて、一刻も早く、防衛省におかれまして御尽力をいただきたいなというように改めてお願い申し上げたいと思います。
 防衛省への質問は以上ですので、御退室をいただいて結構です。ありがとうございました。
 それでは、次の質問に参ります。
 私の地元は今申し上げたとおり所沢市ですが、そのほか、ふじみ野市旧大井町地区、三芳町で、狭山茶の一大産地であります。しかしながら、東京電力福島第一原発事故によるお茶からの放射性セシウムの検出によりまして、消費者の不安、そして生産者への経営の打撃が非常に大きいものとなってしまいました。
 私は、何度も厚生労働省にお伺いして、科学的な根拠があやふやな暫定基準値ではなく、信頼できる新基準値を早急に設定してほしいとお願いしてまいりました。出荷停止や風評被害による生産者等への補償問題も重要なんですけれども、きょうはこの基準の問題に絞ってお伺いいたします。
 まず、先般、二月二十四日の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会において決定された食品中の放射性物質の規格基準についてです。
 お茶は、九〇%以上が飲用茶で使用されているにもかかわらず、これまでの暫定基準値では、食品と同じように、生葉あるいは荒茶等、これをキログラム当たり五百ベクレル以下という基準を設定されてきたわけなんですね。そして、今回の答申では、ミネラルウオーターなどと同じ、飲料の状態でのキログラム当たり十ベクレルという新たな基準値ということになったわけなんですけれども、このようにされた根拠は一体何なんでしょうか。

○小宮山国務大臣
 今回、暫定基準値でも十分安全ではあるんですけれども、さらに安心もしていただくためということで、全体の放射性物質の量も減っていることから、厳しい基準にいたしました。
 新たな基準では、飲料水、牛乳、乳児用食品、一般食品の四区分としていますが、この中で、飲料水の基準値、これは、全ての人が摂取をして代替がきかない、摂取量が非常に大きいということがございますので、WHOが示している飲料水の水質ガイドラインにあります飲料水中の放射性物質のガイダンスレベル、これに沿いまして、一キログラム当たり十ベクレルといたしました。
 緑茶などのお茶は、飲料水との代替関係が非常に強くて、ほかの飲用される食品に比べて摂取量が極めて多いため、飲料水の区分に含めて、飲む状態で十ベクレルということを適用することにいたしました。

○柴山分科員
 蓮舫元消費者担当大臣は、茶葉も食べることがあるということで、前の暫定基準値、食品と同じ基準を正当化していましたけれども、私から言わせれば、合理性を欠く乾燥状態の茶葉を基準にするべきでないということを訴えておりまして、各県も同様の訴えをしていたわけなんですけれども、それを酌んで飲料としての基準を別途つくっていただいたということに関しては評価をさせていただきます。
 ただ、今、飲料水と同じようにたくさん飲むということを根拠に挙げられたんですけれども、子供が飲む牛乳がキログラム当たり五十ベクレル以下なんですよね。しかし、その一方でお茶が十ベクレルというのは不公平とは言えませんか。

○小宮山国務大臣
 それは、例えば七歳から十二歳の男の子の摂取量からしますと、飲料水がWHOのガイドラインに基づいて二千グラムであるのに対して、牛乳は、国民健康・栄養調査の結果ですけれども、三百八・二グラムということなので、飲料水は、やはり子供たちにとっても牛乳よりも多いということから、こういう数値を出したということです。

○柴山分科員
 ただ、今、飲料水について御紹介されたように、水には当然、ミネラルウオーターもありますし、あと、それ以外のスポーツドリンクですとかそういうところからも摂取をされるわけです。
 例えば給食をとって考えてみても、恐らくお茶が出る給食よりも牛乳が出る給食の方が私は多いというように思っていますので、飲量が桁が違うからということで、牛乳が五十ベクレル、お茶が十ベクレルというのは、私はやはり不公平だなということを率直に感じさせていただいております。
 次の質問に移ります。
 埼玉県茶業研究所によると、お茶の抽出液で今申し上げたように測定した場合、サンプルのとり方や抽出方法によってプラスマイナス四ベクレル程度の誤差が出るということなんですね。ただでさえ低い十ベクレルという基準にあって、四ベクレルもの誤差というのは私は致命的だと思っています。
 正確な測定のためには、かなりの数の検体をとって、手間をかけなければならなくて、円滑な生産を目指すなら、測定器をかなりふやさなければいけないということにもなると思うんですけれども、まずお伺いしたいのは、今申し上げたようなサンプリングや検体数についての基準はどのように考えておられるのか、また、測定器の購入について、国として何らかの助成を考えておられるのでしょうか。

○辻副大臣
 国としての助成という御指摘がございましたけれども、厚生労働省におきましては、食品中の放射性物質の検査につきましては、平成十四年に策定したマニュアルで精密検査の手法を詳細に定め、正確な測定ができるように努めさせていただいているわけであります。
 同時に、新しい基準値の施行に向けても、地方自治体の職員に対する研修の開催など、円滑な検査の実施に必要な情報提供に努めさせていただいております。
 また、各地方自治体が行う検査機器の整備につきましては、関係省庁による支援に加えて、厚生労働省としても、四月から新しい基準値の施行に向けて、ゲルマニウム半導体検出器等の導入費を補助するなど、支援を強化することにしているところでございます。
 サンプリングについての誤差というお話がございましたけれども、委員御指摘のお茶で捉えますならば、お茶に対する新しい基準値の試験では、製造、加工され、ある程度均質化された段階のものから抽出した液を試料とする予定でありまして、原料の茶葉の濃度差による誤差が影響するとは考えにくいというふうに考えております。

○柴山分科員
 ちょっとよくわからなかったんですけれども、まず助成についてなんですけれども、ゲルマニウム測定器というお話があったんですが、大体幾らぐらいの金額のもので、幾らぐらいの補助が出るのかということをまずお伺いしたいと思います。

○辻副大臣
 二千万でございます。失礼いたしました……

○笹木主査
 確認をしてください。
 今ちょっと確認をしているので、違う質問というか、その関連質問を先にしていただくことはできますか。

○辻副大臣
 失礼いたしました。
 二十四年度につきましては、ゲルマニウム半導体検出器の補助基準額は千八百三十八万一千円というふうになっておりますけれども、そのトータルとしての額は、通常の保健衛生施設等設備整備費補助金という十六億の中にメニューとして計上されているということでございます。

○柴山分科員
 通常、一機当たり幾らぐらいのコストがかかるものに対して国の補助が幾ら出るんですかということをお尋ねしているんです。

○辻副大臣
 国の補助は二分の一ということになっております。(柴山分科員「だから、一機当たりは幾らですか」と呼ぶ)千八百万円の二分の一ということでございます。

○柴山分科員
 測定器一機当たり一千八百万円もする。通常の農家であれば、恐らく一つの農家が買うには余りにも高い金額であって、それで、二分の一補助が出たからといって、これが本当に普及するかどうかというのは、私はなかなか難しいのかなというふうに思っています。
 それと、あと、後段の方でお答えいただいた、非常に微細な基準についてしっかりと、検体数をたくさんとって調査をしないと正確な値が出てこないんじゃないかという質問に対しては、お茶が均質化されたものについて、つまり製品化したものについて行うのだから、だから関係ないということでよろしいんですか。

○辻副大臣
 いろいろなお茶の葉を一緒に蒸してつくられるんだろうと思いますけれども、寄せ集めますので、均質化されるということで、そういった中で、茶葉ごとの濃度差による誤差は影響しないのではないか、こういうことでございます。

○柴山分科員
 そうすると、ブレンドの仕方をいろいろと生産者の方で左右して操作をすれば、この濃度というのは、例えば生産地を表示しなくてよいということになれば、幾らでも、当然、例えば地元以外のお茶をまぜて、それで薄めることをしてもいい、そういうことになるわけですか。

○辻副大臣
 そういった不正的なことが行われるという前提で考えるのはなんでございますけれども、いずれにいたしましても、そういったことも懸念されることもありますので、基準値に適合するかどうか、その判断のお茶の浸出方法について厚生労働省で現在検討しているところでございまして、三月中ごろまでにその方法について通知をしたい、このように考えております。

○柴山分科員
 今申し上げたように、製品をどういう由来のものとして捉えるのかということ、そして、私が紹介をしたように、その抽出方法、これについてはしっかりとした基準が必要じゃないかというように思っているんですね。
 お手元に配付資料をお配りしております。この資料は、私が昨年十二月二十三日に農林水産省に対して要請して、提出していただいた資料でございます。昨年六月に、厚生労働省から農林水産省に対して、茶葉から飲用茶に至る生産過程でセシウム量がどのように変化するのかということの試算を依頼したのに対する調査結果でございます。
 二ページ目の一番下、下線を引いた「注」の部分なんですが、「「飲用茶」は、十グラムの荒茶を九十度、三百ミリリットルのお湯で一分間浸出させたもの。」というふうに書かれております。ところが、実際、この方法で抽出したお茶は、日本茶インストラクター協会によると、非常に濃くなってしまうということなんですね。
 そこで、農水省にお伺いしたいと思います。この抽出方法及び数値の根拠を教えてください。

○今井政府参考人
 お答えいたします。
 農林水産省では、昨年、お茶から暫定規制値を超える放射性セシウムが検出された後、生葉、荒茶、飲用茶の各段階の放射性セシウム濃度の具体的な変化について調査をいたしました。
 その際、茶葉から飲用茶を浸出する方法については、一般的な煎茶の入れ方を参考に設定いたしたところでございますけれども、一般的な煎茶の入れ方が、湯量につきましては茶葉の三十倍から四十五倍、湯温については七十度から九十度、浸出時間につきましては三十秒から六十秒とされているところ、安全側に立ちまして、湯量については一番厳しい三十倍、湯温については一番熱い九十度、浸出時間については一番長い六十秒というのを条件として実験をしたところでございます。

○柴山分科員
 ただ、煎茶の標準的な入れ方という、ここに資料があるんですけれども、煎茶の例えばよい品質のものを入れたりするときには六グラムに対して百七十ミリリットル、そして、煎茶の並のものを入れるときには十グラムに対して四百三十ミリリットルということが書かれているんですね。
 確かに、四十五倍ということが基準となった場合に、安全を見て、すごく濃く三十倍にしたということも理解できないではないんですけれども、これだけ濃くすると、やはり私たちの基準として、消費者の方々に非常に偏った基準ということも一方では言われるかもしれないというように思うんですけれども、それについてはどういうふうにお考えでありますか。

○今井政府参考人
 お答えいたします。
 昨年、農林水産省が行いました実験、調査におきましては、食品安全と国民の健康を守ることを最優先という考え方のもとで、より安全側に立った数値を採用し、実験したものということでございます。いろいろな入れ方はあると思いますけれども、昨年の実験では、そういう考え方に立って行ったということでございます。

○柴山分科員
 消費者目線に立ってということで、それはそれで非常に納得のいく考え方ではあるかと思います。
 次の、配付資料の三ページ目をぜひごらんいただきたいと思うんですけれども、このポンチ絵の下の方で、結局、製茶を三十倍以上のお湯で入れて飲用茶にした場合、今三十倍という御説明があったんですが、これによると、もちろん、出てくる放射線、全て出てくるわけではありませんので、もとの五十分の一に放射性物質が薄まるというように書かれております。正確に言うと、農水省の担当課の方のお話によれば、五十分の一ないし五十九分の一ぐらい。今御答弁になった、より消費者目線で安全側に立てば五十分の一倍ということになろうかと思うんです。
 ただ、先ほど申し上げたとおり、飲用茶での十ベクレルという基準は、プラスマイナス四ベクレル程度の誤差というものが出てきてしまう。また、先ほど質問させていただいたとおり、測定には手間も費用もかかってしまうという指摘があることから、例えば、一案として、製茶あるいは茶葉を計測して、その数値に今申し上げたような係数を掛けて計算した方が現実的だということがまた再び言われるようになってまいりましたが、大臣は、これについてはどのようにお考えですか。

○小宮山国務大臣
 そういうお考え方もあるかと思いますけれども、もともと、さっき委員がおっしゃったとおり、荒茶でやるというのは現実的でないということは私も省内でずっと言ってまいりましたので、今回、口に入るところで、その状態ではかるという形をとっていますので、そういう意味では、やはりちゃんとお湯を注いで口に入る状態にしたものではかるということの方がよいのではないかというふうに私は思っています。

○柴山分科員
 それだったら、やはり、先ほどのサンプリングとかあるいはトレーサビリティーの問題ですとか測定方法、これについては、先ほど、一応の目安として「注」に示していただいたんですけれども、しっかりとした基準をオーソライズする必要があると私は思うんですね。
 私が当初この測定方法についてお伺いしていたのは、ことしの一月上旬から三十日間程度パブコメを募集して、二月ごろ方針を決定するということだったんですが、まだ決定されたとは伺っておりません。現状はどうなっていて、いつ決まるのか、厚労大臣に御答弁願います。

○辻副大臣
 先ほど委員から御指摘もございましたように、お茶の検査法のあり方についてはいろいろな御意見をいただいているところでございまして、農林水産省の考え方もあれば関係団体のお考えもあるということでございまして、現在、これらの方法の中で最も安全側に立った方法を試験方法とすることについて、業界の取りまとめを行っていただくよう農水省にお願いをしているところでございます。
 二月というふうな、ちょっとおくれているじゃないかということでございますけれども、そのような考え方のもとに、調整に少し時間を要しているということでございますけれども、いずれにいたしましても、三月中ごろまでには通知をさせていただいて、四月からの対応につなげていきたい、このように思っております。

○柴山分科員
 ぜひ、新茶の時期もそろそろ迫ってまいりますので、迅速に対応していただきたいというように思います。
 ただ、いかにそういった入れ方についての基準をつくっても、このように低い数字、しかも誤差の大きな基準を採用する以上、実際に十ベクレル未満の数字しか出なかった場合については、具体的な数字ではなくて、一律に十ベクレル未満という公表の仕方にするべきではないかというように私は考えるんですけれども、いかがでしょうか。

○辻副大臣
 いろいろなお考えもございますけれども、その公表の仕方についてもまた考えていきたいと思いますけれども、今の基準につきまして、三月中ごろまでに通知を出したいと思っておりますので、そのあたり、しっかりとお示ししたいと思います。

○柴山分科員
 一番最初に小宮山厚労大臣がおっしゃったように、暫定基準値の値も、これもかなり消費者の健康ということを考えた上で出された基準だということをおっしゃって、それで、さらに今回、網羅的に精査をして、より消費者目線で安全を考えて出したのが今回の基準なわけです。
 ですから、十ベクレルというのはいわばもう本当にミニマムの基準ということで、私は消費者目線に立つということを否定するつもりは全くありません。全くありませんけれども、例えば敏感な方が、やれ、あそこのお茶は四だ、あそこのお茶は五だと。誤差がプラスマイナス四なのにですよ。そういうことを考えて消費者行動をとって、本当にそれが消費者のためにプラスになるというようにお考えになるんですか。

○小宮山国務大臣
 やはりこれは、国内、海外を問わず、非常に放射性物質の汚染については、食品について敏感でございますので、そういう意味で、今、調査したデータを毎日正確に、迅速に公表しているということなんです。
 おっしゃったような、少しでも低いものを選びたいということが消費者の心理としてあるということは事実かと思いますけれども、いかにこの十ベクレルということが安全プラス安心な基準かということを含めて、リスクコミュニケーションといいましょうか、その内容について、今いろいろな方法で周知を図っております。
 まだまだ十分ではないかと思いますけれども、これは厚労省のみならず政府を挙げて、しっかりと皆さんにそこのちゃんとした知識を持っていただいて、そのことによって、日本の食品、お茶を含めて安心で安全だということがわかっていただくような方向で周知にも努めますので、御理解をいただければと思っています。

○柴山分科員
 基準の安全性についてアピールしていただくというのは当然です。
 ただ、私が申し上げたかったのは、やはり対外的な公表の仕方で、ミニマムの基準より下のものについて、しかも誤差が非常に大きいものについては、一律に十ベクレル未満という形で公表した方がかえって消費者の混乱を防ぐために有用なんじゃないんですかということの質問なんです。

○小宮山国務大臣
 すると、非公表のものについて、一体どれぐらいのものなのかという皆さんの心配もまた出てくるかと思いますので、そこのところは、十ベクレルを超えなければ安全だということはしっかりと周知もさせていただきますので、正確な数字をきちんと毎日公表することによって、かえって日本のお茶が安全だということを皆さんにわかっていただくことにつながるのではないかと考えています。

第180回 国会 衆議院 憲法審査会

第180回 国会 衆議院 憲法審査会 第1号
平成24年2月23日(木)
午前十時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 まず冒頭、意見を申し上げたいと思います。
 先ほど橘部長の方からお話がございましたとおり、本来、必要な立法措置ができるまでの間の経過的な状態をどのように考えるかということは、御紹介いただいたとおり、この間の質疑でも話題にはなりました。ただし、それを書き込むことによって、結局、必要な立法措置そのものが遅くなってしまうということで、与野党の合意の中で、そういったおくれというものを想定しないということで、割と不完全な形でのこうした立法とならざるを得なかったということを、ぜひ与野党の議員の皆様に重く受けとめていただいて、それは、我々が必要な立法措置をとるということの強い決意表明だったわけです。だから、これはぜひとも今のような不作為の状態を早期に解消させるようにしなければいけないという意見、これがまず第一点目です。
 そして、二点目は、これは法務省の民事局からのペーパーなんですけれども、消費者被害の拡大のおそれ等の問題を解決する視点から、消費者庁による消費者行政の一元化及び充実というようなことが書かれておりました。消費者被害の拡大のおそれを解消するために、消費者教育について充実をさせなければいけないということは当然でありますけれども、消費者行政の一元化というと、今いろいろと非常に問題となっている国民生活センターの組織的な統廃合の問題に矮小化されてしまうというように思いますし、これ自体、非常に議論のあるところですので、私は、これを書き切ってしまうのはいかがなものかというように感じております。
 意見を申し上げた上で、質問をさせていただきます。
 先ほど、消費者教育の充実、特に若年層の消費者教育の充実ということをさまざまな委員の方がおっしゃっていましたけれども、ここでやはり、まだ高校生の段階での十八歳と、多くの方々が大学に進学をして親元を離れて自活を既にスタートしているという二十とでは、例えば、財産上の契約を行う形態等についてもかなり違う実態があるのではないかということは指摘できると思います。
 そこで、例えば実家を離れて自活をしている人の、十八歳時点あるいは二十時点での割合、そういったものを、どちらかの省庁、特に法務省の方で把握しておられるのかどうかということをお伺いしたいと思います。
 それから、総務省の方にお伺いしたいのは、民法上の判断能力と参政権の判断能力は一致すべきであることというように言い切って、法務省との見解の相違を見ているわけなんですけれども、総務省としては、これは具体的にどのような理由からこの二つの判断能力が一致しなければいけないのか。それは一致した方がいいという以上に、どのような根拠があるのかということをお伺いしたいと思います。
 それとあと、もし、これを一致させなければいけない、投票にそれだけの精神的な成熟性というものが必要であるのであれば、先ほど中島委員が少年法の改正についてお触れになりましたけれども、例えば選挙犯罪、投票にまつわる選挙犯罪についても、やはり同じような形での精神の成熟性というものが考慮されなければいけないのかということでありますので、参政権の年齢と刑事責任の年齢というものが連動をする必要があるということを言い切ってしまっていいという議論につながってしまうのではないか。その点について質問をさせていただきたいというように思っております。
 以上でございます。

○原(優)政府当局者
 柴山先生からお尋ねがありました第一点目の、親元を離れて自活している十八歳の者の割合ということでございますが、申しわけございませんが、法務省としてはその実態を把握している資料は持っておりません。

○田口政府当局者
 お答え申し上げます。
 まず、選挙権と民法の成年年齢を一致させることは適当であるというふうに考えます理由につきまして申し上げますと、民法上の成年年齢は、先生御指摘のとおり、社会経済において、自己のために私法上の行為をなすのに十分な判断力を持っているかという視点で民法上の成年年齢がございます。他方、選挙権年齢につきましては、政治に参加して選挙権を行使するのにふさわしい判断力を持っているかということで判断がされると思いますが、両者につきましてこれを異ならせる理由はないというふうに考えておりまして、両者は一致させるべきというふうに考えた次第でございます。
 また、戦後でございますが、昭和二十年に選挙権年齢は二十五歳から二十歳に引き下げをされております。その際の立法の趣旨を見てまいりますと、これは平成十九年四月の国会審議におきましても提案者の方から御指摘がございましたが、民法上の判断能力と参政権の判断能力は一であるべきだという前提で選挙権年齢が引き下げられた経緯もあるので、成人年齢と選挙権年齢を合わせるのが国民に理解がしっかりと受けとめられるという旨の答弁をされたところと承知しております。
 また、先ほど来、引用がございます平成二十一年の法制審の部会の最終報告書におきましても、その中で、民法の成年年齢を選挙権と一致させることにつきましては、より責任を持った選挙権の行使を期待することができること、また、社会的、経済的にフルメンバーシップを取得する年齢は一致している方が、法制度としてシンプルであり、また、若年者に、社会的、経済的に大人となることの意味を理解してもらいやすいこと、また、大多数の国において私法上の成年年齢と選挙権年齢を一致させていること等の理由により、特段の弊害がない限り、選挙年齢と民法の成年年齢は一致していることが望ましいという結論に達したというふうにされているところと承知をいたしております。
 そういったことから、総務省といたしましては、先ほど申し上げたとおり、一致させることが適当と考えてございます。
 もう一点、少年法の刑事年齢につきましての御質問がございました。
 最終的には内閣官房の方で、これから検討委員会で検討、調整がされるというふうに考えてございますが、もし仮に、公選法の選挙権年齢のみを十八歳に下げて少年法の刑事責任年齢は二十のままというふうにした場合につきましては、例えば、選挙権を有します十八歳、十九歳の者が公職選挙法違反をしても、少年法によって原則として保護処分となり、刑事罰や公民権停止の対象とならず、同じく選挙権を有します二十以上の者との均衡を欠きます。
 また、選挙権を有する十八歳、十九歳の者が買収の罪を犯しても刑罰は科されず、連座制の対象とならないので、これらの者を利用して悪質な選挙運動が行われるおそれもあるといったような課題が想定されるところと存じます。

○稲田政府当局者
 先ほども御答弁申し上げましたように、少年法の対象年齢をどうするかという問題は、当該罪を犯した少年の刑事司法の中における取り扱いをどうするかという問題であろうというふうに、私どもは基本的に考えております。
 そのような観点を前提にしながら、先ほど公選法の関係で、十八歳に引き下げた場合で、少年法の適用年齢が引き下げられないと均衡を欠くのではないかというようなお話がございました。
 確かに、現行の少年法のままで選挙年齢が十八歳に引き下げられますと、選挙違反をした十八歳、十九歳の者について選挙権停止の効果が生じないということが起こり得るのはそのとおりでございます。
 しかし、今申し上げましたように、少年法の適用対象年齢というのは、あくまで刑事司法の中でその少年をどういうふうに取り扱うかという刑事政策的な問題であろうというふうに考えておりますし、そもそも選挙権の停止は刑罰そのものではない、選挙が公明かつ適正に行われることを確保することを目的とした措置であると考えられております。
 したがいまして、選挙権年齢引き下げとともに選挙犯罪により選挙権が停止される者の均衡を図る必要があるかどうかは、この選挙権年齢の引き下げと選挙犯罪の発生との関係などの実態的な検討を踏まえつつ、選挙権停止という公選法上の取り扱いを徹底する必要がどの程度あるのか、公職選挙法のあり方の問題として考えられるべきものというふうに認識しております。
 また、現在でも、未成年者につきましては、罪が成立するのはするわけでありまして、その意味におきまして、もちろん問題が広がるという面はあろうかと思いますけれども、現在でも生じ得る問題であろうというふうに認識しております。

第180回 国会 衆議院 予算委員会

第180回 国会 衆議院 予算委員会 第13号
平成24年2月21日(火)
午前九時開議

○柴山委員
 自由民主党、シャドーキャビネット法務大臣の柴山昌彦です。
 小川法務大臣にお伺いします。
 きのう、山口県光市の母子殺害事件で加害者の元少年に対する死刑判決が最高裁で確定しました。被害者の夫であり父親である本村洋さんは、十三年の長きにわたり苦しい日々を過ごしてきたわけですけれども、この判決を受けて、大臣、どのようにお感じでしょうか。

○小川国務大臣
 お答えします。
 最高裁、さまざまな観点から議論した上での結論だと思いますので、当然それは尊重させていただきますが、その判断内容に関しまして法務大臣としての意見を述べるのは好ましくないと思いますので、御容赦ください。

○柴山委員
 もちろん、法務大臣として、判決の内容、その事実認定の経緯等について言及することができないのは当然でございます。
 私は、やはり大臣から一言、この十三年の長きにわたって遺族として苦しい思いをしてこられた本村さんにねぎらいの言葉が欲しかったなというのが実感でございます。
 その本村さんは、社会正義の実現のためには今回の事件で死刑が求められるとずっとおっしゃってきたわけですけれども、それはその刑の執行が速やかになされて初めて言えることだとお感じになりませんか。

○小川国務大臣
 死刑の執行につきまして、受刑者といいますか死刑判決の確定者に対して、具体的にどのような方向であるか、どのような状況であるかということも、これも、やはりさまざまな影響がございますので、差し控えさせていただきたいと思っております。

○柴山委員
 ちょっと待ってください。私の質問は、社会正義の実現のためには確定された死刑というものが速やかに執行されなければならないとお思いになりませんかということをお聞きしているんです。全く今の御答弁は私の質問に答えておりません。もう一度御答弁をお願いいたします。

○小川国務大臣
 死刑に関しましては、既に死刑判決が確定した者がたしか百三十名おる状況の中で、具体的に誰を執行するのかとかいう、その具体的なことに関しましては、やはりそうした対象者の心情の問題、さまざまな観点から控えさせていただきたいと思っておりまして、今出ましたこの光事件の、確定したわけでございますが、この者についても、いつ執行するのかというような話になりますと、これはやはり、具体的なことになりますので、控えさせていただきたいと思っております。
 ただ、死刑に対する私の考え方といたしましては、これは法務大臣の職責であるということはしっかりと認識しております。

○柴山委員
 本件についていつ死刑を執行するかなんて私は聞いていませんよ、法務大臣。あるいは、個々の具体的な事件についてどういう優先順位をつけて執行するべきかということをお尋ねしているわけでもありません。
 私はただ、一般論として、確定された死刑は速やかに執行しなければ社会正義の実現というものは図られないんではないですかということをお聞きしているんです。もう一度御答弁をお願いします。

○小川国務大臣
 裁判の結果、死刑というものが確定したということは、当然のこととして受けとめさせていただきます。それをいつ執行するかどうかということになりますと、やはり、個別のことでございますので、答弁を控えさせていただきます。(「柴山委員「全然答弁になっていないですよ。これ、おかしいでしょう。全くかみ合っていないですよ」と呼ぶ)

○中井委員長
 いや、かみ合っているよ、結構。結構かみ合っている。

○柴山委員
 全く私の一般論としての質問にお答えをいただいていない。非常に遺憾でございます。
 今大臣は御自分でお認めになったように、未執行の死刑囚は過去最多の百三十人台に上っているんです。一方で、昨年は一九九二年以来、実に十九年ぶりに死刑執行が一件もない年となってしまいました。こうした状態を大臣は問題だとお感じになっていらっしゃるんですか、いないんですか、お答えください。

○小川国務大臣
 まず一点、光市の事件、確定したと言いましたが、まだ、厳密に言いますと、記録訂正期間がありますので、確定する直前でありますので、ちょっと、正確に訂正させてください。
 それから、昨年一年間執行がなかったという問題、それから確定者がたくさん、百三十人たまっている状態が異常ではないかということでございますが、昨年執行されないということにつきましては、昨年の法務大臣がそれぞれの状況の中で行ったことでございます。また、百三十人が未執行の状態であるということ、これは長い経過の中でそういう状態にあるということは認識しておりますが、しかし、それが直ちに違法な状態であるというような認識までは持っておりません。

○柴山委員
 異常かどうかということを私はお聞きしているんです。この状態が望ましくないとはお思いになりませんか。特に民主党政権になってから、死刑執行は、千葉法務大臣が執行した、しかも選挙が終わった後、執行した二件だけなんです。そのことについて異常だとお思いにならないんですか。もう一度お聞きしたいと思います。

○小川国務大臣
 死刑が執行されないということにつきましては、例えば自民党政権時代にも三年間執行されないという期間もあったわけでございます。さまざまなそうした状況を経て、今現在、死刑の未執行者が百三十名おるという状態は認識しております。
 私は、そのことが違法であるからすぐに解消しろという考えまでは持っておりませんが、ただ、法務大臣の職責として死刑執行があるということは十分認識しておるということでございます。

○柴山委員
 違法ではない、違法ではないと再三にわたっておっしゃっていました。確かに、厳密な意味においては違法ではないかもしれない。ただ、刑事訴訟法四百七十五条二項でこのように書いてあります。死刑判決確定から六カ月以内に法務大臣は、一定の場合を除き、死刑執行を命じなければならないと。
 しかも、大臣は、ことし一月十七日の閣議後記者会見で、やはり職責は果たさなくてはいけないなと思っていますというように述べておられます。間違いありませんね。

○小川国務大臣
 ですから、記者会見で、つらい職務であるが職責を果たすという、その考えは述べておりますし、その考えは今も同じでございます。

○柴山委員
 これまで大臣は議員連盟などで死刑廃止に向けた活動をされたことはありませんか。

○小川国務大臣
 私自身は、取り組んだことがございません。

○柴山委員
 私の手元の名簿では、大臣は死刑廃止を主張として訴えているアムネスティ議員連盟のメンバーであるというように承知しておりますが、間違いありませんね。

○小川国務大臣
 アムネスティ議連に所属していることは事実でございますが、アムネスティ議連は、アムネスティの場合は、ただ単に死刑制度のみについて意見を述べているわけではございません。

○柴山委員
 大臣は、私が先ほど触れさせていただいた一月の記者会見で、千葉景子元法務大臣の立ち上げた死刑の在り方についての勉強会について、特段これ以上というものがなければ、そのまとめた内容で一つの報告を出して区切りをつけたいと思っていますとおっしゃっています。しかし一方で、具体的な執行方法についての勉強会は行います、そしてこれからの死刑制度に関しての検討についてはこれまでの検討状況のまとめを見て検討したいという考えでおりますというふうにおっしゃっていると手元の資料にあります。
 これはすなわち、執行方法の勉強会を新たに実施し、しかも、これまでの検討をまとめた後もまた大臣は検討を続けて、結果として死刑の執行がさらに先送りになるということではないのですか。

○小川国務大臣
 勉強会についての発言は委員御指摘のとおりであると私も認識しております。
 なお、勉強会で勉強するから死刑の執行をそれまで見合わせるという、その関連づけた考えは一切持っておりません。勉強会は勉強会、法務大臣の職責は職責と考えております。

○柴山委員
 今、大変重要な御答弁をされたと思います。勉強会は続けるけれども、そのことが法務大臣の職責に影響を与えることはないというように今ここで大臣は言明されたということを確認させていただきました。
 次の質問に参ります。
 一連のオウム裁判が確定をしております。二十五人を超える犠牲者、そして六千人もの地下鉄サリン事件での負傷者を出した史上空前の凶悪犯罪に、ぜひ大臣、毅然と臨んでほしいと思っておりますけれども、一つ懸念材料があります。
 年初の平田信容疑者の逮捕で、確定していた死刑の執行がさらにおくれるということにはなりませんか。

○小川国務大臣
 オウム事件にかかわらず、死刑囚というものは、やはり決して許されない凶悪な犯罪を犯したからこそ死刑になっているんだというふうに思っております。
 また、オウム真理教の死刑囚に関しまして、平田容疑者が、今は被告人ですか、出頭したことがということで質問されました。
 私は、個別のことではなくて、一般論として、共犯者が裁判になれば、その共犯者の裁判の場において死刑囚が証人として出頭を要請されることもあるということも、やはりその共犯者の裁判の中で考えなければならないなと。これは一つの、それがあるからする、しないということではなくて、やはりそれも一つの考慮事情だなというような趣旨で述べたわけでございます。

○柴山委員
 指名手配がまだいるということをぜひつけ加えさせていただき、また、この死刑の問題は、大臣、立法を含め非常に波及効が大きい重要な問題でございます。これからもしっかりと議論をさせていただきたいと思います。
 次の質問に参ります。
 既に骨子について民主党の了解が得られているとお聞きしている人権委員会設置法案についてお伺いします。
 これは、大臣、いつ条文が閣議決定されるんですか。

○小川国務大臣
 まだ骨子の段階でございまして、条文そのものはまだできていない状況でございますので、いつということは申し上げられない状況でありますが、そうした作業に向けて努力はしております。

○柴山委員
 今国会中に提出する予定なんでしょうか。それだけお伺いしたいと思います。

○小川国務大臣
 環境が整えば提出をしたいと思っております。

○柴山委員
 どのような環境でしょうか。

○小川国務大臣
 これは党内手続もございます。そして、党内手続を経て、法案提出、法案を作成して、そして閣議決定を経るという手順でございますが、法案でございますので、やはりその後の審議のこともございますので、野党の皆様方の御理解もいただきたいというふうに念じております。

○柴山委員
 御理解というようにおっしゃいましたけれども、既にドメスティック・バイオレンス、児童虐待、高齢者や障害者の人権侵害、労働条件などの男女差別、いじめ等々、さまざまな人権侵害について、個別の機関ですとか、自治体や弁護士会などの相談窓口が整備されているわけです。
 今検討されている委員の身分保障や職権行使の独立性がある統一的な行政委員会、このようなものは必要ないのではありませんか。

○小川国務大臣
 確かに、個別の態様におきます人権侵害等につきまして個別の対応する機関なり法があるわけでございますが、しかし、それが全ての人権侵害を網羅しているというわけではないと思われますので、やはり人権委員会は必要ではないかと思っております。

○柴山委員
 既に各都道府県に人権擁護委員の方々がいらっしゃいますね。そして、法務省には人権擁護局があります。さまざまな駆け込み需要というものも処理されていると伺っています。
 しかも、今個別の機関だけでは不十分だというようなお話がありましたけれども、個別の機関、別に弁護士会で相談できない人権侵害案件というものはありません。不十分だというのは、各機関の連携をしっかりとしていけば足りるだけのことではありませんか。

○小川国務大臣
 まず、人権擁護委員がいる、それから法務省に人権擁護局がございます。ただ、これが政府の、法務省の中にあるものですので、やはり、パリ原則に従いまして、政府から独立した委員会で行っていただきたい、そういうふうにしたいということで取り組んでおるわけでございます。
 したがいまして、独立した委員会ができれば、人権擁護局あるいは人権擁護委員というものはこの独立した人権委員会のもとで仕事をしていただく、こういうことになろうと思います。

○柴山委員
 今、パリ原則についてお触れになりました。ただ、パリ原則は、そのような独立行政委員会をつくらなければいけないという内容まで持っていないんじゃないんですか。

○小川国務大臣
 パリ原則の中で、言葉として独立した委員会という言葉はないのでありますが、その具体的な文章としましては、十分な財政基盤を有すること、あるいは、構成員の任命は一定の任期を定めた公的行為によるというふうに文章としてはございます。この趣旨は、要するに、独立した委員会をと言っているものと考えております。

○柴山委員
 全然違いますよ。十分な財政的基盤を持てとか一定の任期をしっかりと見ろというようなことは、何も国会同意人事で、しかも委員の身分が極めて高度に保障されている、例えば公正取引委員会ですとか、あるいは人事院ですとか、そういった三条委員会とはレベルが違う話だとはお思いになりませんか。
 大臣、もう一つお伺いします。
 今大臣はパリ原則という国際基準を持ち出されましたけれども、世界で、御指摘いただいたような人権委員会を設置していない国はないんですか。

○小川国務大臣
 設置していない国はございます。

○柴山委員
 どのような国が設置をしていないのか、具体的にお答えください。

○小川国務大臣
 主要国としましては、アメリカ、中国などがございます。

○柴山委員
 あの人権の国アメリカでこのような委員会がないということで、日本が急いでつくらなければいけないという国際的な標準とは言えないのではないかというように私は思っています。
 しかも、大臣、今政府が提出されている原子力規制庁、これをどのようにするかということと、私は議論があべこべになっているんじゃないかと思いますよ。あちらの方は、IAEA等の基準で、きちんと推進側あるいは政府からの独立性が必要だということを明文で書かれているんです。そちらの方は環境省の外局として置きながら、この委員会は三条委員会にする。私は、今の政府のやっていることが支離滅裂のように思えてなりません。
 次の質問に移ります。
 今後、そうした人権委員会による委嘱あるいは指揮監督を受けることになる、先ほど触れた各地の人権擁護委員の方々は、非常勤の国家公務員と位置づけられることになりますけれども、日本国籍を持つ方以外がなれるんでしょうか。

○小川国務大臣
 これはそのときの法律の規定の仕方だと思っておりますが、今まとめております人権委員会の設置法案の骨子の中では、選挙権を有する者というふうに考えておりますので、選挙権は今国民でありますので、外国人はなれない、このような骨子案をまとめております。

○柴山委員
 大臣、大臣は外国人の地方参政権を認めないというお立場ですか。

○小川国務大臣
 外国人といいますか、永住外国人についての地方参政権については付与した方がいいのではないかというのが私の個人的な考え方ではございますが、今申し上げましたように、この人権委員会の骨子の中では、現状、選挙権は国民にしかないという、その状況の中で考えております。

○柴山委員
 繰り返しになりますけれども、今政府で検討されている今回の法律、人権擁護委員の改正法案では、地方参政権を持つ者が資格を有するというたてつけになっていると思いますが、今大臣がいみじくもおっしゃったように、大臣と同じように外国人の地方参政権を進めるべきだというお考えの方々が将来政権をとり、そのような法律をつくった場合には、自動的に全国一万四千人の人権擁護委員の方々に外国人を選ぶことができるというようになる、そういうことでよろしいわけですね。

○小川国務大臣
 そこまでの議論はしておりません。すなわち、今我が国の公職選挙法は、選挙権ということで国政選挙権も地方参政権も区別しておりません。ただ、これが将来、公職選挙法で、もし万が一、国政選挙権はないけれども地方参政権、地方選挙権はあるというような状況が出た場合に、では人権擁護委員はどちらの選挙人名簿でやるのかということは、これは議論しなくてはならない問題が生ずるというふうには考えております。
 委員がおっしゃられましたように、人権擁護委員は選挙人名簿の中から選ばなくてはいけないということにした場合に、将来、永住外国人の地方参政権を認めた場合に、自動的にそれが、人権擁護委員も永住外国人の人には開かれるんじゃないかと。自動的になるものではなくて、やはり、公職選挙法が変わったときに、その状況を踏まえて議論する必要があるというふうには思います。

○柴山委員
 この問題については、極めて関心の高い部分ですので、ぜひしっかりとした議論をしていただきたいというように思います。
 また、今度の制度では、公務に従事する方がその職務を行うについて人権侵害をしたと認め得る場合に、侵害をした者及びその所属する公的機関に対して人権委員会が必要な措置を勧告したり公表したりすることができるという仕組みとなっております。
 そうすると、例えば、自治体の教育委員会が公立学校の教師に対して行う処分はこれに含まれますね。

○小川国務大臣
 法律の手続を逸脱した処分がなされて何らかの不利益をこうむれば、観念的な意味では人権侵害に当たると思いますが、ただ、具体的に委員の御指摘のような場合には、既に、公務員であれば人事委員会なり、その処分に対して不服の申し立てができる、その行政手続がなお不服であれば司法手続によってその救済を求めることができるという別の手続が用意されておりますので、基本的には、その別に用意されている手続でその受けた処分について争うものと考えております。

○柴山委員
 大臣、先ほどおっしゃったことと矛盾しているんじゃないですか。先ほどは、私が、個別のそういった人権救済手続というものが充実しているから、少なくとも、その個別救済で図られる部分についてこのような委員会を設けて救済する必要はないのではないかということをお聞きしたわけです。
 大臣、もう一度お伺いします。
 このように個別の救済手続があるとした場合に、この人権委員会はこうした案件を取り扱うことはできない、すなわち補充性の原則というものが明定されるんですか。いかがですか。

○小川国務大臣
 それは当然のことだというふうに思っております。やはり、個別の手続があれば、その個別の手続、法律の制度に従って救済の手続をとるべきものであると思っております。
 ただ、個別の手続が各分野にありますが、しかし、各分野に個別の手続があっても、そこには当てはまらないものもあるわけでございますので、その当てはまらないものを広く全て包括するという意味で人権委員会が必要だと思っております。

○柴山委員
 公的な機関のさまざまな人権救済についても、例えばADRですとか、あるいは地方の弁護士会、また労働的な問題であれば労働委員会が既に出てきています。ですので、先ほど申し上げた高齢者虐待の問題も含めて、弁護士会すらカバーしない案件というのは極めて希有であるというように私は思っておりまして、そういった個別の案件がきちんと機能しているのであればこういった委員会の出る余地がないというのであれば、大臣、それは非常に重要な御答弁だと私は思いますよ。それで本当にいいんですか。もう一度確認させてください。

○小川国務大臣
 私は、ADRとか弁護士会のそうした取り組みによって人権の問題が解消されるのであれば、大変望ましい社会であるな、そういう方向になってほしいなとは思っておりますが、現状では、全ての人権侵害が救済されるという状況になっていない状況の中ですので、やはり必要であると思っております。

○柴山委員
 大臣、それは仕組みの問題と事実認定の問題を混同しているんです。
 人権侵害とは、大臣がおっしゃったように、違法とされる人権侵害だということで今度の枠組みができています。申立人は、違法な人権侵害がされていると思っているわけですよ。ところが、規制をする側は、いやいや、これは違法ではないというように思っているわけですよ。ですから、当該個別救済手続が本当に機能しているかどうかというのは、結局のところ、その判断が妥当であるかどうかに帰着する部分がかなり大きいのではないかというように私は思っています。
 例えば、今私が例に挙げました自治体の教育委員会と公立学校の教師、この関係でいえば、国旗掲揚の際の起立あるいは君が代の伴奏を拒否した教師に一定の範囲で処分を行うことが許されるというのは、数多くの裁判の集積の結果、ようやく決着しつつあるのが現状なんです。
 一方、例えば、二〇〇五年に第二東京弁護士会が人権救済措置として、こうした君が代ピアノ伴奏を拒否した教師への不利益処分を一切するなというように勧告をしているんです。
 大臣、人権委員会が違法な人権侵害というものを判断するということが本当に担保されるんですか。いかがですか。

○小川国務大臣
 逆に、個々ばらばらというよりも、やはり人権委員会というものが、全国でばらばらな人権感覚を持ってはいけませんので、統一的に適切な人権侵害に対する対応をしていただけるというふうに思いますので、私は、人権委員会は設置する必要があると思っております。

○柴山委員
 それが危ないと言っているんですよ。
 だから、今設置を求められているような、委員の身分保障があり、しかも指揮監督権が今度各地の人権擁護委員にまで及んでいくというような形の統一的な機関、しかもデュープロセスが司法手続に比べて保障されているとは私は到底思えない。そういう機関を設置するというのは、これだけ今、人権の解釈が多義的になっている以上、私は、極めて逆の危険性、つまり逆差別の危険性というものが出てくるのではないかということを強く申し上げたいと思っております。
 この委員会は、今申し上げたような勧告や公表だけではなく、果ては被害者の権利行使のために資料提供までするという案まで骨子に含まれているというように認識しておりますので、ぜひ、私は、慎重な取り扱いをしてほしいということを大臣に要請させていただきまして、次の質問に移ります。
 先日、同僚の稲田朋美議員が質問した日中貿易促進に絡む不明朗な集金問題についてお伺いします。
 お手元に資料の3、中国語の書面ですけれども、昨年の七月十五日、中国農発食品有限公司の董事長、サインは熊貞さんが書いた日本農林水産品採用についての特別鑑識管理確認書という書面でございます。この宛名が、ごらんいただいているとおり、一般社団法人農林水産物等中国輸出促進協議会、そしてもう一つが、日本国農林水産省副大臣筒井信隆となっております。
 これは私が独自に入手した資料なんですけれども、筒井副大臣、この書面に見覚えはございますね。

○筒井副大臣
 見覚えあります。農発食品から日本側の促進協議会に届けられて、促進協議会から私の方に、農水省の方に届けられた、その文書です。

○柴山委員
 この書面によりますと、済みません、きょうはちょっと訳語を添付していないんですけれども、日付後の、この本文の二行目にありますように、七月二十日に日中農林水産品合作基本協議書という書面を取り交わしたということが書かれているんですけれども、この七月二十日の今申し上げた日中農林水産品合作基本協議書、その現物はございますか。

○筒井副大臣
 日本語訳ですと基本合意書ですが、それも存在します。あります。(柴山委員「あるわけですね」と呼ぶ)はい。

○柴山委員
 今後の質疑にとって重要な書類かと思われますので、この書類をぜひ農水省の方から提出してほしいと思っておりますが。

○中井委員長
 理事会で協議して対応を決めます。

○柴山委員
 この書面の中にはどういうことが書いてあるかというと、北京で中国が開設している日本産農林水産品・食品常設展示館での展示品、販売品の通関及び検疫は特別鑑識管理方式を採用するですとか、中国農発食品有限公司が常設展示館に展示される物品の通関及び検疫、これは特別管轄手続を行いますというように書かれているんです。これらは一体どういう意味を持っているんでしょうか。

○筒井副大臣
 通常の通関、検疫ですと、中国に着いた空港あるいは港で行われます。しかし、ここで言う特別管轄は、この設置予定の展示館の中で通関及び検疫手続が行われる、それを特別管轄というふうに言っていると聞いております。

○柴山委員
 いや、私は極めてイレギュラーな手続だと思いますね。
 ちなみに、なぜこのような書面がつくられたんですか。

○筒井副大臣
 基本合意書もそうですが、今の書類も、中国の民間会社であります農発食品がつくったものでございまして、それがこういう通関及び検疫手続についての便宜を図ってくれるという努力をしているんだという書類でございまして、そこに書いてあるとおりの目的だと思いますよ。そういう努力をしているんだということを連絡してきてくれたという書類だと思います。

○柴山委員
 ただ、筒井副大臣、あなたは農林水産副大臣ですよね。そして、役所にこれをきちんと示していると、私はきのう事務方からお話をいただいております。
 もし、農水省が筒井副大臣と一緒になって、こうしたいかがわしい内容の問題について、国内の事業者さんたちと接触をしていたとすれば、私は、かなり倫理的な問題が少なくとも生じてくるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○筒井副大臣
 日本産農林水産物の輸出拡大を図るというのは重要な、大切な仕事だというふうに考えて推し進めているわけでございまして、それを官民協力で行うのは何の問題もないことでございます。それの一環としてのこの書類でございまして、この事業の当事者、契約当事者は、日本側の一般社団法人の促進協議会であり、相手方中国側は民間企業であります農発食品でありますが、その事業を農水省として支援、協力する、これは何にも問題ない、必要なことだというふうに考えております。
 今、いかがわしいと言われましたが、どこがいかがわしいんですか。そのいかがわしいという言葉は撤回してください。

○柴山委員
 撤回をするかどうか、なぜこの社団法人に元秘書が関与しているのか、また、さまざまな事実経緯についても稲田議員が質問をしたような点が多々ある。これについては引き続き、我々、取り上げさせていただきます。
 次の質問に移ります。
 松原国家公安委員長に伺います。(発言する者あり)
 必ず次に質問をしますので。きょうは質問枠がございます。きょう質問した内容に基づいて、引き続き質問を行います。
 次の質問に移らせていただきます。
 松原国家公安委員長に伺います。
 いわゆる和牛オーナー商法で急成長しながら先般破綻した安愚楽牧場の問題です。
 負債総額四千三百億円超、被害投資家は七万三千人という、戦後最大規模の消費者事件と言われています。差し支えない範囲で結構ですので、現在、この問題について消費者被害事件としてどのような刑事手続の状況なのか、御説明ください。

○松原国務大臣
 御答弁を申し上げます。
 安愚楽牧場の経営破綻をめぐる問題については、多数の関係者を巻き込む大きな社会問題となっていることは認識をいたしております。
 お尋ねの事案については、関係する都道府県警察において告発の相談を受けていると承知をいたしております。
 国家公安委員会委員長として個別の事案に対する捜査について言及することは差し控えますが、警察は、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、法と証拠に基づき適切に対処するものと承知をしております。また、警察においては、要件の整った告発等はこれを速やかに受理するものと承知しておりますほか、告発等の動きにかかわらず、犯罪があると思料するときは捜査を行うものと承知をいたしております。
 以上です。

○柴山委員
 松原委員長、ありがとうございました。
 お手元の資料1をごらんください。この図は、今回の契約の仕組みを示したものです。
 右上にあるオーナー、これが投資家です。投資家が繁殖牛の持ち分を購入し、そしてまとまった牛を安愚楽牧場の方に飼養委託する、預託をするという仕組みでございます。そして、購入代金と飼養委託費を安愚楽牧場側に支払います。法律的には、安愚楽牧場に買った牛を預託するという仕組みになっているので、所有権はこの投資家のもとにあります。そして、この繁殖牛が子牛を次々と産んでいきます。産んだ子牛を安愚楽牧場がオーナーから買い取り、その代金を配当、利益金として交付します。一年目に子牛が生まれ、二年目に子牛が生まれ、そして三年目から次々と子牛が生まれ、安定した配当が見込める、そういううたい文句です。そして、一定の期間が経過をしたら、この繁殖牛を買い取る、投下資本を回収させるということで、売買・飼養委託契約が終了する、こういう仕組みになっているわけであります。
 一見、投資家が損をすることなどあり得ないように見えますけれども、実はとんでもないことが起きていました。
 ところで、松原国家公安委員長、あなたは、先ほど理事席からも声があったように、今回、消費者担当大臣ともなられたわけですけれども、民主党政権になってから、松原大臣は何人目の消費者担当大臣か御存じですか。

○松原国務大臣
 八人前後かな、このように思っています。

○柴山委員
 正解であります。
 福島大臣、そして平野博文官房長官の兼務、荒井聰大臣、岡崎トミ子大臣、蓮舫大臣、細野大臣、そして前任の山岡大臣、松原大臣。松原大臣が民主党政権になってから八人目の消費者担当大臣であります。
 問題は、この間、消費者庁がこの安愚楽牧場に対してやるべきことをしていたかということなんです。
 松原大臣は、前任の山岡大臣から、この安愚楽牧場問題を引き継ぎましたか。

○松原国務大臣
 この安愚楽牧場の問題は、まさに先ほど委員から御指摘があったように、大きな問題であるというふうに認識をしておりまして、そうした意味において、消費者庁として、この問題に対しての取り組みを当然するという認識を持っているわけであります。

○中井委員長
 済みません、大臣、山岡さんから聞いたかという御質問です。

○松原国務大臣
 当然、この問題に関してはその認識を持っております。聞いております。この問題は引き継いでおります。(発言する者あり)

○柴山委員
 今、理事の方からもあったように、知りませんとは言えませんよね。
 それでは、民主党政権が発足した後、消費者庁が安愚楽牧場に対して、事業について報告を求めたり、何らかの調査をしたのはいつですか。

○松原国務大臣
 昨年の十一月三十日に安愚楽牧場に対して、その間、調査を十人ぐらいの規模で一カ月ぐらいした経緯を含めて、景品表示法違反を理由に行政処分の措置命令を行いました。
 以上です。

○柴山委員
 もう一度、時期をおっしゃってください。

○松原国務大臣
 消費者庁としては、安愚楽牧場の倒産が報道されてから、消費者が必要とする情報が的確に提供されるよう、事業者の代理人、弁護士などの関係者にヒアリングをして状況を確認しました。報道直後の昨年八月二日以降十二月十二日まで六回にわたって、確認した情報を全国の消費者生活センター等に情報提供してまいりました。

○柴山委員
 警告を全国に発したかどうかということを質問しているんじゃありません。
 もう一度私の質問を繰り返しますと、消費者庁が安愚楽牧場に対して、事業について報告を求めたり、何らかの調査をしたのはいつですかと聞いているんです。先ほど、内容としては的確な答弁をされたんですけれども、時期だけもう一度お答えください。

○中井委員長
 松原消費者担当大臣、今の時期を明確に言ってください。

○松原国務大臣
 申し上げましたように、約十人の職員が一カ月そこで現地調査、なかなか手間が入ります、それは、雄牛、雌牛とか。そういったことを含めて一カ月して、そして十一月三十日に措置命令を行っておりますから、当然、その一カ月半ぐらい前ではなかろうか、このように思っております。

○柴山委員
 今大臣から御説明があったように、景品表示法違反、すなわち、一般の消費者に対して、実際のサービスより著しく優良であることを示して勧誘を行っていたという判断が十一月三十日に示されたんですけれども、その根拠となったのがお手元の次の資料です。資料2をごらんください。
 ここに書かれているとおり、オーナーから実際に募集した共有持ち分、これが一番上の段にあります。そして、B、これが問題なんですけれども、現実に飼養されている投資対象となった繁殖牛、これがこの赤く塗り潰されたところに書かれている頭数なんです。すなわち、A分のB、これは平成二十二年度でいうと六六・九%。平成二十二年度だけではありません。二十一年、二十年、十九年、十八年、特に十八年度は五五・九%でした。すなわち、持ち分が現実の繁殖牛に比して明らかに過大であります。
 なお、これは、私が仕組みを説明したように、子を産む繁殖牛への投資ですから、この下の繁殖牛の赤い線、その下に黄色いところで塗り潰している例えば子牛の雌ですとか、あるいは食肉用に売却する肥育牛までは、繁殖牛にカウントすることは許されないはずです。
 ただ、ここ三年間、平成二十年度以降を見ると、この子牛の雌や肥育牛の雌を足したものと繁殖牛を足したものが何となくオーナーの共有持ち分の合計に近い数字にはなっていることは見てとれます。しかし、それも、平成十九年や十八年については、かなりオーナーの持ち分から乖離をしてしまっている。
 このような実態よりはるかに多い持ち分の勧誘では、とても配当なり元本返還が回っていかないことは明らかであり、にもかかわらず、安愚楽牧場は勧誘を続けたわけなんです。
 松原大臣、調査は本当に、昨年十一月三十日に措置命令が出された景表法違反についてのものだけでよかったんでしょうか。その前、二〇一〇年春の口蹄疫の発生で、宮崎県内の安愚楽牧場の牛約一万五千頭が殺処分され、実際の牛がオーナーの持ち分を大きく割り込み続けることが確実と見られる状況であったときも、消費者庁は安愚楽牧場に、実態と異なる勧誘や、正確な財産状況を記した書類の不備がある場合にできる預託法上の立入調査をしなかったということでよろしいわけですね。

○松原国務大臣
 御答弁申し上げます。
 この安愚楽牧場に関しては、申し上げましたように景表法違反でしたわけでありますが、委員御指摘のように、口蹄疫発生後の状況の中でという議論は、私個人としては、真摯に受けとめる議論だというふうに思っております。
 この段階で報告を受け調査をしていれば被害拡大が防げたかどうかについては、確たることは申し上げられないというふうにこの場では申し上げますが、いずれにせよ、平成二十一年七月の農林水産省への報告や、平成二十二年夏の消費者庁への報告予定資料には、オーナー所有の牛の頭数について、その総数しか記載されていないわけでありまして、私としては、総数のみならず、その内訳、繁殖牛の頭数、肥育牛の頭数を明らかにするように求めるべきだったという認識を持っております。
 以上です。

○柴山委員
 おっしゃるとおりだと思います。率直な御答弁、ありがとうございます。
 ただ、問題はそれだけにとどまらないんです、大臣。
 昨年十一月の我が党の上野通子参議院議員の質問に対する当時の山岡消費者担当大臣の答弁によると、この口蹄疫が発生した直後のおととし、二〇一〇年七月に、わざわざ安愚楽牧場の方から消費者庁に対して定期報告をいたしますというように持ちかけた際、消費者庁側はどういう対応をしたんですか。

○松原国務大臣
 お答えいたします。
 平成二十二年夏、安愚楽牧場より担当課に対し、預託法遵守状況について報告をしたい旨の連絡がございました。担当課は、平成二十一年七月の安愚楽牧場から農林水産省への報告により、農林水産省が平成二十一年一月の立入検査を踏まえ安愚楽牧場に指摘した財産状況にかかわる書類における記載の不備が改善されていたこと、平成二十二年夏の時点でPIO―NET上には安愚楽牧場の預託法違反をうかがわせる苦情、相談はなかったことから、安愚楽牧場に対し、必要と判断した場合には話を聞くと伝え、結果として報告を受けなかった事実がございます。
 消費者庁においては、安愚楽牧場から報告は聞いておくべきであったと、昨年夏に長官が担当審議官及び担当課長に厳重注意したとの報告を受けておりますが、安愚楽牧場から報告を受けることを怠ったことについては、担当大臣として、極めて遺憾であるというふうに認識しております。

○柴山委員
 そうなんです。これは、また具体的なことを聞く場合にはこちらからお問い合わせをいたしますというように消費者庁が言って、それで放置をしてしまったんですね、せっかく検査結果を報告しようとするのを。そして、そのままになってしまったということなんです。
 しかし、消費者庁の設立前に預託法上の監督をしていた農水省から、安愚楽牧場への立入検査の状況やフォローアップが必要であることを、今ちらっと松原大臣おっしゃいましたけれども、消費者庁は引き継いでいたんじゃないんですか。具体的にどのようなことを引き継いでいたんですか、農水省から。もう一度御答弁ください。

    ―――――――――――――

○中井委員長
 大事な質疑の最中でありますが、ただいま後ろの座席にソンプー・ドゥアンサワン・ラオス日本友好議員連盟会長御一行が傍聴にお見えになっております。御紹介し、歓迎を申し上げます。

    〔起立、拍手〕

○中井委員長
 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

○中井委員長
 松原担当大臣。

○松原国務大臣
 引き継ぎの、その段階で消費者庁が農林水産省から引き継いだ内容を、率直に言って、つまびらかに現在私は承知をしておりませんが、流れから考えて、当然、農林水産省の立入検査によって、この段階では、この牛の頭数云々ではなくて、案件としては、いわゆる引当金とかこの手のものの財産状況に関しての預託法の報告だったというふうに認識をしておりますが、そういったことについての報告を恐らく引き継いでいたのだろうというふうに考えます。

○柴山委員
 ちょっと待ってください。恐らくというふうに言いましたけれども、私は、きのう質問通告で、この間、消費者庁がどのような対応をしてきたのかということを通告しているはずなんです。
 どのような事柄を消費者庁が引き継いでいたのかということを具体的に御答弁していただかないのは、私は遺憾です。もう一度お願いします。

○松原国務大臣
 指摘事項確認書というものがございまして、その当時の農林水産大臣は石破先生でありますが、石破茂農林水産大臣宛てに、今申し上げましたように、「個別財務諸表であるにも拘わらず、債務超過状態にある子会社等に対する貸付金や売掛金等に係る貸倒引当金を計上していなかった。 給与規程において、賞与の規定があり、かつ、毎年賞与を支給し支給時に費用処理をしている。毎期賞与の支給が見込まれるにも拘わらず、賞与引当金を計上していなかった。 退職金規程が定められており、かつ、退職金を支給している事実があり、また、相当数の従業員を雇用しているにも拘わらず、退職給付引当金を計上していなかった。」等々のことの指摘があって、それが改善されたという報告を受けているわけであります。

○柴山委員
 ところが、そのときに指摘された、例えば中期計画の策定、あるいは大会社になるときに必要な公認会計士の関与、これについての報告はなかったわけです。
 農水大臣、今、松原大臣から御答弁がありました。確かに、おっしゃるとおり、これは、麻生内閣時代の当時の石破茂農林水産大臣が、預託法に基づき、つぶさにこの安愚楽牧場に対して立ち入りをし、頭数はともかく、今申し上げたような財産上あるいはガバナンス上のさまざまな問題点があり、それをきちんと消費者庁に引き継いだのではないですか。農水大臣、いかがですか。

○鹿野国務大臣
 安愚楽牧場に対する農林水産省の対応につきましては、平成二十一年の一月に立入検査を実施の上、同年の三月には、検査結果をもとに財務諸表等を適正に作成し、かつ、その結果を定期的に報告するよう指示をし、同年七月に第一回目の現状報告を受けた、このようなことでございますということを承知しております。

○柴山委員
 今御指摘のように、安愚楽牧場に対して、今後も定期的に所管官庁に対して報告をするようにということを石破大臣のもとの農水省は指示をしていたわけです。にもかかわらず、先ほど松原大臣の方から御指摘があったように、それに基づいて財務報告をしに来た安愚楽牧場を、いわば、必要があったらまた聞きますよという形で門前払いをし、あげくの果てには、その後、一回もこうした報告を受けていない。景表法違反の調査があるまで、このようなことをやっていない。
 引き継ぎ、どうですか、松原大臣、今の鹿野大臣の御答弁に対して反論がありますか。

○松原国務大臣
 御答弁申し上げます。
 先ほど申し上げましたように、したがって、私はこれは極めて遺憾であると申し上げたところであります。

○柴山委員
 極めて遺憾であるということで足りるのかということなんです。
 民主党政権が政権をとった後の消費者庁、必要な調査もしないで、国民生活センターとの統合問題ばかりに力を注ぎ、その結果、安愚楽牧場は業務改善することもなく経営破綻に向かっていったわけなんです。この間の消費者庁長官、あるいはころころかわった大臣の責任は極めて重いと申し上げざるを得ません。
 松原大臣、今の消費者庁のトップとして、被害者に対して謝罪するべきではないですか。

○松原国務大臣
 御答弁申し上げます。
 事柄の経緯は今の質疑を通して明らかになったところでありまして、私、この問題に関して、そのことに関して極めて遺憾であるというふうに思っておりますし、今の立場としては、それは申しわけないなというふうに思っております。

○柴山委員
 申しわけないという言葉をいただきました。
 ところで、戦後最大の消費者被害事案であるこの安愚楽牧場問題も、第二番目と言われる豊田商事問題、あの永野会長の刺殺事件で御記憶かと思いますが、これはいずれも現物投資を内容とする契約で、これを規制する預託法がもっと適切に機能するよう法改正するべきでないかということが問題となってくると思うんですね。
 松原大臣、例えば、投資家保護のために、金融商品取引法などで定められた規制を預託法に導入できないでしょうか。

○松原国務大臣
 委員にお答えいたします。
 今回の安愚楽牧場に関しましては、預託契約を締結しているオーナーが所有する牛の頭数及び内訳、申し上げましたように、繁殖牛と肥育牛などが開示されていなかったこと、安愚楽牧場がオーナーと称される契約者に対し預託契約期間終了後に返還することを約していた金額の総額が開示をされていなかったことといった問題点が指摘をされており、今後、法令の見直しも含め、制度面、運用面の見直しも検討していくとともに、私としては、消費者庁に対して、緊張感を持って法令の運用に当たるよう指導してまいりたいと思います。
 意味するところは、やはりここは、率直に言えば、人員の問題もあるので、いろいろとこれは議論していかなきゃいけない部分があると思います。
 ただ、現実には、こういった問題で報告があったときに、そこが本当かどうかの真偽を含めてチェックをする体制、冒頭申し上げましたように、十人入って一カ月かかったというのが、景表法のこともそうでありますが、現状はそこの人員が極めて不足しているのも事実であります。
 こういったことも含め、再発が起こらないように、どのようなことを講ずるべきか検討していきたいと思っております。

○柴山委員
 人員の問題だけで解消されないんじゃないかと私は思うんですね。例えば、今おっしゃったように、チェックをするために事前登録制度を設けるですとか、あるいは最低資本金をきちんと設定するですとか、あるいは、今回のように、必ずもうかります、損はしませんというような損失補填、これを禁ずるというのは金融商品取引法の中では明定されているわけなんですよ。
 自見大臣、金融庁として、今申し上げたようなさまざまな消費者保護についての規定がある金融商品取引法の方の窓口を広げて、これらの契約を規制できないんでしょうかね。
 消費者は、確かに法律上は牛の持ち分を預けているんですけれども、実際には一切牛を見てはいないんです。実質的に金銭を出資しているのと何ら変わらないんです。しかも、実際の牛の相場よりも高い値段で安愚楽牧場が投資家を集めているということは、商品にやはり投資性があるというように判断できるんじゃないんでしょうか。いかがでしょうか。

○自見国務大臣
 柴山議員にお答えをさせていただきます。
 今先生御指摘がございましたが、金商法上の集団的投資スキーム規制では、投資者から拠出を受けた金銭を共同の事業に充てること等の性質に応じたものとなっておりまして、物品の所有権を預託し、その有効活用によって利殖を図るスキームについては、仮に集団的投資スキームに類似する面があったとしても、さきに説明した集団的投資スキームの性質には当てはまるものでないから、金商法上の規制対象とすることはなじみにくい面があるというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、これはもう先生御存じのように、金商法上は、金銭を出資、拠出する、あるいは事業から生ずる収益の配当金を受けるということでございまして、このため、物品を購入、例えばこの場合は繁殖牛でございますけれども、これを購入、預託するスキームについては、いわゆる集団投資スキームあるいは金商法になじまないというふうに御理解をいただければと思っております。
 いずれにいたしましても、動物等の預託取引にかかわる顧客保護は、消費者庁が所管する特定商品等の預託等取引契約に関する法律、いわゆる預託法でございますが、において図られるところでございます。
 仮に預託法においてこの顧客保護の観点から不十分な点があるというのであれば、同法上の問題点として検討されるべきものと考えておりまして、仮にこの集団投資スキーム規制のうち預託法においても適用すべきものがある場合には、この預託法において規制の見直し等を検討すべきではないかというふうに考えております。

○柴山委員
 官僚答弁なんですよ、自見大臣。本当に官僚答弁なんですよ。
 預託法は、今回のような安愚楽牧場、現物まがい商法という金銭出資とほとんど変わらないような契約類型から、例えば先祖代々受け継がれたかぶとを預けるというような契約まで、幅広く対象としている法律なんですね。ですので、どういう法律できちんと規制をするかということは、省庁の垣根を越えて真摯に取り組んでいただかなければいけないんです。
 きょうは、安愚楽牧場の被害対策弁護団の方と被害者御本人がこちらの傍聴席に来られて、我々の質疑をごらんになっているんです。松原大臣、消費者庁は、各省をまたがり、消費者救済のための知恵を出し、取り締まりをするという官庁であります。大臣からはかなり前向きな御答弁をいただきましたけれども、被害者の方々の前でいま一度、松原大臣、決意を述べてください。

○松原国務大臣
 御答弁を申し上げます。
 この案件に関しては、既にこの質疑で申し上げたとおりの認識を私は持っております。遺憾であり、そして申しわけないという思いも申し上げたところでありますが、また、今後の再発防止に関しても、委員から強い問題意識を提示されましたので、消費者庁担当の大臣として、そういったことを含め取り組んでいきたい、このように思っております。(柴山委員「省庁の垣根を越えてですね」と呼ぶ)取り組んでまいります。

○柴山委員
 以上で、少し早いですが、質疑を終わります。
 ありがとうございました。

第179回 国会 衆議院 法務委員会

第179回 国会 衆議院 法務委員会 第3号
平成23年12月2日(金)
午前九時開議

○柴山委員
 自由民主党、影の法務大臣の柴山昌彦でございます。
 大臣に、先ほど大口理事から質問のあった大王製紙、オリンパス問題について、関連でお聞きしたいと思います。
 この問題は、私ども自由民主党も、法務部会、財務金融部会、経済産業部会、合同で調査をしておりまして、この後も十一時から、私ども会議をすることとなっております。
 先ほど大口理事から、企業はだれのものかという極めて重要な問題提起がありまして、これについて大臣が言いよどんだことは、わからなくはありません、いろいろな考え方はあると思います。しかし、極めて基本的、かつ古典的な疑問であって、先ほどおっしゃったように、所有について解釈すればというように、むしろ、この質問を予想して、大臣の側からしっかりとした答弁をしてもらえたらよかったのかなというように思っております。
 しかも、これについて、聞き方が悪いというやじは、私は言語道断だと思っております。これについて我が党の理事が抗議をしたときに、委員長もしっかりと議事整理をしてほしかったというように、残念に思っております。
 大臣にお伺いします。
 これらの問題の本質的な、根源的な原因というものは一体何だとお感じになりますか。

○平岡国務大臣 
 お答えしたいと思いますけれども、今、これらの問題というのは、会社法の問題でしょうか。はい、わかりました。
 これは、やはり制度の問題もあるだろうというふうに思いますし、それから制度の中で行われているガバナンスの問題でもあるだろうと思いますし、さらには個々の経済人の心構えというものもあるだろうと思いますし、いろいろなものがあるだろうというふうに思います。
 本質は何かと言われれば、これだというふうに決めつけるということはなかなか難しいわけでありますけれども、多くの企業がある中で起こってしまったということについて言えば、やはり個別的な問題というのもあったのではないだろうかなというふうには思います。

○柴山委員
 個別的な問題というふうにおっしゃいましたけれども、私はそれは極めて認識が甘いと思っています。
 社員という言葉は、大臣、御存じでしょうけれども、社員というのは法律的に一体どういう概念でしょうか。

○平岡国務大臣 
 多分、社員という言葉以外に、従業員というような言葉とか、あるいは労働者、勤労者というような言葉とか、いろいろあるんだろうと思いますけれども、社員というのは、社がついていますから、会社あるいは何とか社とついたようなところで雇われて働いている方々のことではないのかなというふうに思います。

○柴山委員 
 今の答弁が根本的な誤りを内包しているわけです。今大臣が御答弁になったのは、従業員なんです、先ほど御答弁になったとおり。
 いま一度答弁を求めます。

○平岡国務大臣 
 ちょっと質問の趣旨を私が十分に理解していないような気もいたしますので、どういう御質問の趣旨なのかをちょっと教えていただければというふうに思います。

○柴山委員 
 極めてわかりやすい質問だと思います。社員とは一体どういう概念ですかというふうにお聞きしているんです。

○平岡国務大臣 
 先ほど答えましたように、何とか社というふうに、株式会社、有限会社、合資会社、いろいろあろうかというふうに思いますけれども、そういう何とか社において雇われて働いている方々を社員というのではないだろうかというふうに思います。(発言する者あり)

○柴山委員 
 今、我が党の理事からさまざまな形で声が上がっておりますけれども、基本的に、法律的な会社法の概念で社員というと、会社に出資してその持ち分を構成しているもののことを社員というわけです。株式会社になれば、いわゆる株主が社員。だからこそ、先ほど大口理事の方から話があったように、企業というのは、本来、出資者であるオーナーのものであると。そして、そこから経営陣が経営の委託を受け、そして、経営陣は、従業員を雇って、そのオーナー、社員あるいは株主の利益が最大になるようにさまざまな仕事をするというのが会社法の仕組みであるはずなんです。
 今大臣が御指摘になったように、社員というのはまさしく我が社の従業員だと。我が社のということが会社の経営者あるいは社員の認識であるからこそ、株主あるいは本来的な社員を軽んじるような経営というものが出てきてしまっているのではないか、また、ワンマン企業が物言えぬ雰囲気をつくり出しているんじゃないか。やはり、そこの意識改革をしっかりとやらなければ、どのような制度構築をしても、それはもうすり抜ける対象でしかないというようなことになりかねないわけですから、会社法の改正だけでなくて、例えば公益通報制度も含めて幅広い議論をしなければいけないというように考えておりますので、ぜひしっかりとした検討をお願いしたいと思っております。
 続きまして、平岡法務大臣の政治姿勢について伺います。
 この委員会あるいは予算委員会でも取り上げられた、大臣秘書官と公設秘書との給与二重取り問題についてお伺いします。
 大臣、あなたは、今回の二重取り問題、制度の欠陥だからしようがないという考えでよろしいんでしょうか。

○平岡国務大臣 
 制度の欠陥というふうに呼んでいいのかどうか、私もそこは、本当に皆さんが欠陥だと思われているのであれば、制度は直さなければいけない。ただ、これまでこうした仕組みがずっと続いていたということについて言えば、やはりそれなりの理由あるいは事情というものがあってこういう状況になっているのではないだろうかというふうに思います。ただ、制度が欠陥であるということであるならば、その欠陥はしっかりと正していかなければならないというふうに思います。

○柴山委員 
 制度的欠陥論以前の問題ではないでしょうか。
 大臣が予算委員会で、いや、二重取りではない、公設秘書が例えば九月二日で辞職をして、後任の公設秘書は九月分の給料は取れませんというふうにお答えになりましたけれども、これはもう当たり前のことであります。問題は、九月一日に公設秘書として採用し、そして二日からその方を大臣秘書官として登用し、そして秘書官としての給与と公設秘書の月割りの給与を二重取りにされてしまって、大臣秘書官としての給与は返納が可能であるにもかかわらず、その返納処理をしなかったということが一般の常識に反するのでないかということが問題とされているわけですけれども、そういう処分をとるように大臣の方から働きかけをしなかった根拠をお聞かせください。

○平岡国務大臣 
 今の御質問、大臣秘書官としての給与を返済しなかったというようにちょっと私には聞こえたんですけれども、大臣秘書官の給与については、私の承知しているところによりますと、日割り計算でございますから、一月分まとめていただいた分については、たしか、彼が勤務しなかった月の残りの部分、働いていない部分に対しては返納をしたというふうに聞いております。

○柴山委員 
 大臣秘書官が辞職をしたのは十月の何日だったんですか。

○平岡国務大臣
 十月の十九日であったというふうに記憶しております。

○柴山委員
 今大臣が返納をしたのではないかというようにお答えになったのは、つまり、十月十九日、辞職をした後の、十月十七日振り込みだったかと思いますけれども、一カ月分の給与のうち働いていなかった分の給与を返納したというだけにすぎないわけです。
 公設秘書として九月、そして九月の大臣秘書官としての給与を、二カ月分受け取り、そして十月分の大臣秘書官としての給与をしっかりと、十月一日から十月十九日の勤労の分を受け取っている。それで本当に世間常識が納得するかという質問なんです。

○平岡国務大臣 
 ちょっと今、私、聞き間違ったのかもしれませんけれども、公設秘書の給与を二カ月分受け取っているというふうに言われたような気がしたんですけれども……。(柴山委員「いや、それは違います」と呼ぶ)それは九月分の一カ月ということですね。
 その点については、棚橋委員を初めいろいろな方々から、この委員会あるいは予算委員会でも御質問をいただきまして、私の方からも答えさせていただいておりますけれども、これまでの取り扱いということがそういうことであったということであり、これは野田総理も答弁をしておられますけれども、制度の問題というものがあったということもこういう事態が生じた一つの原因であったというふうに認識をしておるところでございます。

○柴山委員
 驚きですよ。
 今申し上げたように、秘書給与は九月分、そして大臣秘書官としての給与は九月分と十月の一日から十九日分、都合三カ月分、当該秘書の方は受け取り、そして、二重取りの部分は、大臣秘書官分については理屈の上では返納が可能なんです。
 これについて、返納をアドバイスしていない、制度の問題として何らそのままにして放てきしているということでよろしいんでしょうか。

○平岡国務大臣 
 大臣秘書官分は返納可能であるというふうに今御質問がありましたけれども、大臣秘書官として働いていない部分については、これは返納をしました。ただ、これまで問題となっている公設秘書の分については、返納という仕組みがないということも確認をしております。
 ですから、これを本当に皆さん方が指摘しているような形での事実関係を発生させようと思えば、返納という仕組みではなくて、国庫に対して寄附をするという仕組みで対応せざるを得ないという状況になっている。これも予算委員会で私は答弁させていただいたところでございます。

○柴山委員 
 予算委員会でのテレビ中継入りの棚橋理事からの質問で、公設秘書としての給与については返納という仕組みがない、これは大臣が衆議院の議員課の方に問い合わせをしたところをそのように答えられたということなんですけれども、私が今聞いているのは、大臣秘書官としての九月二日から勤務をしていた分の給与については、公費ですから、何らかの形で返納ということができるのではないかと。棚橋理事も、何らかの形でその部分については返納ができるのでないかということをテレビ中継入りのときにおっしゃっていたと思うんですけれども、これについて検討はされたんですか、されなかったんですか。

○平岡国務大臣 
 九月二日からの九月分の大臣秘書官としての給与については、勤務の実態がございますので、それを返納するということは筋としておかしいのではないかなというふうに私は思いますけれども。

○柴山委員 
 それが一般常識とかけ離れているというんです。
 勤務の実態は確かに大臣秘書官としてはあったかもしれないけれども、でも、公費としては、九月一日の公設秘書としての勤務の分と、それから九月二日以降の秘書官としての給与の分と、これは一本なんですね。にもかかわらず、九月二日から九月末日までは、公設秘書としての給与と大臣秘書官としての給与を二本分丸々もらっているわけです。これがおかしいというように感じられませんか。大臣秘書官としての勤務の実態がある以上、何ら手当てをしなくていいんですかということが棚橋理事の問題提起であったかと思います。
 もう一つ問題があります。
 私が先日この委員会で指摘をさせていただいたとおり、いわゆる公費の詐欺で有罪判決を受けていたことが発覚をしたのは九月下旬であります。九月下旬に発覚しながら、給料日である十月十七日の後の十月十九日に辞表を受理した。そして、翌十月二十日からこの臨時国会が始まり、そこでいろいろな形で追及を受けることが予想された。
 まさしく、臨時国会対策として、そして、給与日をまたいで、その給与をもらうために辞職を引き延ばさせたというふうに疑われても仕方がないんじゃないですか。

○平岡国務大臣
 柴山委員の今の御指摘について言えば、私が、給与日をまたいで、給与を支給させるために引き延ばしたとかいうようなことは全くございません。これも委員会で答弁させていただいた記憶がございますけれども、私としては、当時、大臣秘書官であったものの、事実関係というものを自分なりに確認をしなければいけない、そういう確認作業等をしなければいけないという状況の中で判断をしてきたということでございます。
 確かに、臨時国会が始まってからそういう事態にならないようにという気持ちを持ってやっておりましたのでタイミングとして十九日ということになったかもしれませんけれども、ただ、十九日にそういう発令を出すためにはもっと前の段階で意思決定をし、そして手続を進めなければならないということもあるわけでございますので、その点は真摯に対応してきたということで御理解をいただきたいというふうに思います。(発言する者あり)

○柴山委員
 今我が党の議員からも指摘があるとおり、これはかなり古い事件のはずです。そして、既に裁判が終了しているわけですから、一件記録を本人から出させて、本人から事情を聞けば、一カ月かかるはずがないじゃないですか。
 今大臣がいみじくも答弁されましたけれども、十月二十日から臨時国会が始まるということもあったかもしれませんがというようにおっしゃいましたけれども、結局、そういった調査とは関係ない諸事情によってこういった辞職のおくれということがあったんじゃないんですか。もう一度答弁を求めます。

○平岡国務大臣
 何回も繰り返しになりますけれども、決して、給料日をまたぐためにとか、あるいは少しでも長くいさせてやりたいからとか、そういうことではなくて、自分なりに今度の処分をどうしていくべきなのかということをしっかりと考えていくという中であった話でございます。

○柴山委員
 全く説得力がない。多分、この委員会質疑をインターネットでごらんになっていらっしゃる方々もそう思われるんじゃないかと思います。
 次の質問に行きたいと思います。
 十二月一日に、堺市で象印マホービン元副社長の尾崎宗秀さんが亡くなった。手足を縛られ、ラップを顔に巻かれるという大変痛ましい事件だったわけですけれども、この事件について大臣はどのように思われますか。

○平岡国務大臣
 個別事件のことについては、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

○柴山委員
 私は、それが大臣の犯罪とか犯罪被害者に対する基本的な考え方のあらわれであろうかと思うんです。もちろん、私が聞いているのは、この事件の実態がどうだとか、それに対する刑事処分をどうするべきとか、そういうことまで突っ込んでお話を聞こうとしているわけじゃないんです。こういった凶悪事件があったときに、それに対して、まず、大臣の職責と矛盾しない範囲で、人としてどう感じるのかと。そのことが全く大臣の口からは聞こえてこないんですよ。
 もう一度お伺いします。この事件についてどうお考えなんですか。

○平岡国務大臣
 報道されている中身は私も承知しておりますけれども、大変痛ましい事件だとは思います。さらに、職責としていえば、こうした犯罪が起こらないような、そうした社会をつくっていくということは、法務大臣、閣僚の一人として与えられている使命であるというふうに思っております。

○柴山委員
 この委員会で取り上げた、四年前の「太田光の私が総理大臣になったら」というテレビ番組で、息子を少年のリンチで殺害された被害者のお母さんの目の前で、加害者にもそれなりの事情があった、子供たちにどうなってもらいたいのと発言された問題で、大臣はお母様のもとに謝罪に行かれたんですか。

○平岡国務大臣
 柴山委員の御質問がいつの時点の話をされているのかちょっと私も定かではありませんでしたけれども、お母さんのもとに謝罪に行ったのかという質問であるならば、参りました。

○柴山委員
 いついらっしゃったのか、その日時をお答えください。

○平岡国務大臣
 十一月の十三日の日曜日であったというふうに思います。

○柴山委員
 ことしの十一月。これは私が申し上げるまでもなく、この委員会で同僚の平沢勝栄委員が十月二十五日に質問をして、四年前のその番組で共演をした元同僚の大村秀章議員が、その後、このお母様のところにお線香を上げに行かれたということを指摘されて、それで大臣が新幹線の中から電話一本で済ませたということについて問いただしたのに対して、謝罪に行きますということを約束され、そしてその後行かれたんじゃないかなというように思います。
 ただ、このお母様が大臣の謝罪に全然満足していないんですよ。早く帰ろうという気持ちがありありで心がこもっていなかった、あのときのテレビの自分の発言の言いわけに終始していたと。私は、これはあんまりだったんじゃないかなというように思うんです。
 ちなみに、大臣、この日はお一人で謝りに行かれたんですか。

○平岡国務大臣
 一人ということではございませんけれども、運転をする者、警護をする者、そういう人たちもおられました。そういう意味では、一人ではございません。

○柴山委員 
 SPさんや運転をされる方を連れてぞろぞろと行かれて、しかも、いろいろとお忙しいのはわかりますけれども、後の日程を気にしてそわそわ、そういったお気持ちは相手に伝わるんです。本当に心から謝罪をされていたのかどうかということについて、かえって御遺族を悲しませる、あるいはいら立たせる、そういうきっかけになってしまったことは、私は非常に残念だと思います。
 大臣のこういった凶悪犯罪に対する考え方、引き続いてお伺いいたします。とりわけ死刑の執行です。
 大臣は、私の先日、十月の質問で、千葉景子元法務大臣が法務省内に設置した勉強会において大臣御自身の考えを整理されている間は当然死刑執行の判断はできないと就任のときの記者会見でおっしゃったということにつき、間違いありませんというようにお答えになりました。そのお考えに変更はあるんですか、ないんですか。明確にお答えください。

○平岡国務大臣
 今の委員の御指摘については間違いございませんけれども、ただ、私も、この記者会見の模様というものをしっかりと調べさせていただきました。
 確かに私は、勉強会で考えている間は死刑執行をしないのかという点については、勉強会そのものが結論を出すという性格のものでないというものであるとするならば、考えている間は当然判断ができないだろうと思います、その後、ただ、勉強会が結論を出すという性格のものでない以上は、勉強会でやっていることを踏まえて私なりに結論を出していくということはあるのかもしれないというふうに思いますというふうに、ここまでが私の言葉でございまして、今委員が指摘されているのはその前段部分だけを取り出して言われているので、その後の私のいろいろな予算委員会あるいは法務委員会での質疑のときに、何か今まで言ってきたことと違うじゃないかというふうに御指摘をされているという点だろうというふうに思います。
 先ほど私が冒頭に申し上げたところが私が初登庁後の記者会見で申し上げた全体像ということで御理解をいただきたいというふうに思います。

○柴山委員
 その後、いろいろ質疑を、その後というのは大臣就任後、いろいろと質疑ですとか法務省の仕事をしていくに従って、今お述べになった後段の部分、すなわち、勉強会をやっている間にも死刑執行について職務命令を下す可能性がある、あるかもしれないというより、あるというような形で、慎重ながらこれを進めていく余地が明確にあるということに変わっていったということでよろしいんでしょうか。

○平岡国務大臣
 表現ぶりは確かに最初の記者会見のときの言い方とは違ってきているかとは思いますけれども、考えている基本は同じだというふうに思っています。制度は制度の勉強として、私は、しっかりと国際的な動向等も踏まえて勉強していかなければならない。そういう勉強会というものが今法務省の中に千葉景子元大臣がつくられたものがあって、まさにやっているわけですから、その制度の勉強もしっかりとやっていかなければいけない。
 ただし、その勉強会というものが死刑制度について何らかの結論を出すという性格のものでない以上は、個々の死刑の取り扱いの問題については私なりに考えていかなければならないという可能性があるというふうな認識を持っているということは、基本の路線として、私は、基本の考え方としてずっと持っているところであり、その考え方に従って、質問の角度といいますか、質問の視点に応じて私が答弁をさせていただいたというふうに考えているところでございます。

○柴山委員
 何が核で何が周辺なのかよくわかりませんけれども、私は、ただ、大臣の基本的なスタンスが変わっているとは実は思えないんです。それをうかがわせるのが、先日、オウム真理教の遠藤誠一被告の上告審判決が出た十一月二十一日、この後の大臣のコメントなんです。このことに関して大臣が、一般論だが、死刑については慎重に判断していかなければいけない問題だというように述べておられるんですね。
 日本の犯罪史上、最悪のテロを巻き起こして、二十五人以上の死者を出した団体の代表である松本智津夫を含めた幹部の者の処分について聞かれて、このような一般論に終始した慎重なコメントを出すというのは、私は、余りにも法秩序あるいは死刑制度に対する見識の低さをあらわしているんじゃないかなというように思うんですが、いかがでしょうか。

○平岡国務大臣
 これは何度も答弁したことがございますけれども、死刑というのが極めて重い刑であるということを考えたときには、慎重に判断をしていかなければいけないということは私は間違っていないというふうに思います。
 そういう意味で、法律の規定の中でも、いろいろと死刑執行に当たって考えなければならない要素というようなものも書かれているわけでございます。そういう意味で、私は、執行に当たっては慎重に考えていくということは間違っていないというふうに思っています。

○柴山委員
 全くお答えになっていません。刑訴法四百七十五条で、今大臣がおっしゃったように、死刑執行に当たっていろいろと考慮しなければいけない問題というのは確かに書かれていますよ。しかし、その一般論をこの上告審判決のときに述べることが果たして対外的なメッセージとしてふさわしかったんでしょうか。私は、このコメントを聞いた、二十五人を超える犠牲者の方々あるいは地下鉄サリン事件で負傷された六千人を超える方々、非常に納得がいかなかったと思うんです。今の御答弁で本当に国民に対して正確なメッセージが発信できたというように大臣はお考えになるんですか。

○平岡国務大臣 
 これも繰り返し御答弁申し上げているところではございますけれども、個々の事案についての死刑執行の問題については、検討しているかどうかも含めて、お答えすることは従来から差し控えさせていただいているという中で、一般論として申し上げたということで御理解いただきたいというふうに思います。

○柴山委員 
 一般論として、あるいは個別の事案については答えられない、それで辞職をした法務大臣もいますけれども、もし大臣が誠実に刑事訴訟法どおりに職責を全うしているのであればそういった答弁もあるいは受け入れられるかもしれませんけれども、大臣のこういった職責に対する姿勢が一向に見えてこないというよりは、逆に非常に後ろ向きである。先ほど私が申し上げたように、直近の凶悪犯罪について、あるいは御自分の被害者の方への対面の姿勢について、そういうところから私は、平岡大臣がこの治安の維持ということについて極めて関心が薄いのでないかというように感じざるを得ないわけです。
 そこで、お伺いします。このオウム真理教の地下鉄サリン事件、発生から十六年余りたちます。平岡大臣は、法務関係のお仕事をされて長いわけですけれども、この地下鉄サリン事件の遺族であられる高橋シズヱさんと何度お話しになったことがありますか。

○平岡国務大臣 
 このオウム真理教の地下鉄サリン事件が発生したときは私もまだ役所に勤めていたときでございまして、平成七年だったというふうに思います。そういう事件というので、大変私も、大きな事件が起こったということで自分自身もショックを受けたわけでありますけれども、今御指摘のあられた高橋シズヱさんについては、お会いしたことはございません。

○柴山委員 
 それでは、犯罪被害者が構成するさまざまな団体がありますけれども、その団体の方ですとか、あるいは被害者の会の岡村勲弁護士とは、これまで何度お目にかかったでしょうか。

○平岡国務大臣
 岡村弁護士とは、たしか法改正のときの参考人として来ていただいたときに、いろいろとお話を伺ったことがございます。
 犯罪被害者の方々について言えば、犯罪被害者週間がきのうまであったわけでありますけれども、そういう機会にもいろいろな方々にはお会いさせていただいているところでございます。

○柴山委員
 私は若輩でありまして、平成十六年が初当選です。しかし、私は、この方、当選してからこのわずかな期間に、高橋シズヱさん、そして今お名前を紹介した岡村勲弁護士、あるいは交通被害者の方を初め被害者団体、もう何十回もお目にかかっています。もちろん、弁護士会の方々ともお会いしておりますので、自分として被害者の方々に偏ったさまざまなヒアリングをしているとは思いません。
 ただ、この間、犯罪被害者の救済ということが、今も御紹介があったように国会の場でも議論をされ、そして、民主党の中でもこの法案をめぐってさまざまな取り扱いがされ、そして、平岡大臣も法務委員会の理事をお務めになられる中で、高橋シズヱさんとは全く会ったことがない、岡村弁護士とはこの法改正のときの参考人の質疑でお会いしただけだ、また、大臣になってから被害者週間で犯罪被害者の方々とお会いになっただけだというのは、私はちょっと、これまでの御経歴としてはいささか偏っているんじゃないかなというように思います。
 私と大臣とどちらがその席に座るのにふさわしいかということは、いずれ民意が判断することかというように思います。
 次の質問に移らせていただきます。
 この私の質問が決まったのが実はついきのうでしたので資料としてお配りするに至っていないんですけれども、ここにあるのは、二〇一〇年五月二十三日、見直せ米軍再編五・二三岩国大集会、来るな艦載機、要らない愛宕山米軍住宅、連帯しよう沖縄・全国と、この集会に冒頭でごあいさつをされている平岡大臣のお姿でございます。
 説明書きがあります。一番手の平岡さんが登壇するや、民主何やってんだ、公約守れと怒号で騒然。平岡さんは岩国出身だそうで、断腸の思い、岩国の意思は総理に必ず伝えますと苦渋の表情であいさつしよったけんど、参加者は冷ややか。一人激高して壇上に上がろうとし、警備の人に連れていかれてしまうという一幕もという説明書きがあるんですけれども、これはホームページからの出典でございます。
 この事件について、平岡大臣、御記憶ですか。

○平岡国務大臣
 記憶はございます。

○柴山委員
 このときの平岡大臣の御感想を、あるいは今の時点で結構ですので、お伺いしたいと思います。

○平岡国務大臣
 民主党が今から二年前の総選挙を戦うときに、米軍再編については、その基地のあり方を含め、見直しの方向で臨むということを申し上げておりました。当時の鳩山代表も、そういう観点に立って普天間基地の問題についてもいろいろと発言をされておられたというふうに思います。私も、民主党政権になってすぐに、そうした見直しの方向で臨むという方向でいた当時の民主党政権に対して、私は政府に入っておりませんでしたので、関係する大臣、外務大臣、防衛大臣等に対して、岩国の問題について、かつての政権ではこういうことが行われている、なぜこんなことになったんだろうかということについてしっかりと検証してほしいという、二十六項目の検証項目というものを提示して取り組んできたわけでございます。
 そういう一連の活動があった中で、最終的に、鳩山内閣の判断として、普天間基地については国外、県外は難しいという判断をされたということに対して、私自身も大変に残念に思いましたし、これに対しての地元住民の皆さんあるいはこれまで運動にかかわってこられた皆さんから私たちに対して厳しい御批判があるということもまたこれはやむを得ないというか、批判は甘受しなければならない、そういう思いでその集会に出させていただいたということでございます。

○柴山委員
 これまでの大臣のさまざまな活動に照らして、断腸の思いだったということなんですけれども、それでは大臣にお伺いします。
 一川防衛大臣が、つい先ほど、平成七年の九月に沖縄で少女を暴行したという有名な三米兵の事件について聞かれて、この事件について知らなかったというような発言をしたということなんですけれども、平岡大臣の感覚からいって、この一川大臣の発言をどう思われますか。

○平岡国務大臣
 ちょっと詳しい状況、一川大臣がどういう状況のもとで言われたのかということも私ちょっとわかりませんので、私のコメントは控えさせていただきたいと思います。

○柴山委員
 中身を知らなかったというコメントだったんです。これについて平岡大臣は、日本の防衛、特に米軍再編について責任あられる防衛大臣としてどのように受けとめていらっしゃいますか。

○平岡国務大臣
 柴山委員の言われていることを別に疑うわけではないんでございますけれども、どういう状況のもとでどういう表現を使われてどうなのかということがわからないということもございますので、私としてはコメントは差し控えさせていただきたいというふうに思います。(発言する者あり)

○柴山委員
 今、同僚の稲田理事の方からも話がありましたけれども、支援者はがっかりすると思いますよ。
 最後に、大臣、このときの、というのは五・二三岩国大集会のときのいわゆる五団体との懇談会についての大臣の御発言を紹介しておきます。これもホームページが出典です。私は日本に外国の軍隊が居続けるのはおかしいと思う、あなたはこのように支援者の方々の前でおっしゃっているわけですよ。あなたのこういったスタンスと今のさまざまな答弁の食い違いというものを決して有権者の方々は見過ごさないであろうということを最後に申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

第179回 国会 衆議院 憲法審査会

第179回 国会 衆議院 憲法審査会 2号
平成23年12月1日(木)
午前十時三分開議

○柴山委員
 前回に引き続き発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 まず重要課題は、申し上げるまでもなく、国民投票法の三つの宿題、とりわけ、本法施行までの間に対応しなければいけない投票権の問題と公務員の政治的行為、これに関する法整備であろうかと思います。
 そして、先ほど、選挙権の十八歳の実現のための法整備については閣法でというお話があったんですけれども、これについては、当然、民法等関連の法律が非常に多岐にわたるわけでもあります。ですので、国会が閣議における立案にしっかりとコミットすることが私は極めて重要だと思いますし、一度この審査会の場で、関連する、成人年齢というものがどのようなものが想定され、そして十八歳への引き下げというものがどういう効果を持つかということをしっかりと検討する場を一覧表とともに設けることが私は有用だと思いますので、会長にぜひ御検討をお願いしたいというのが一点目でございます。
 そして二点目については、憲法の改正の中身についてでありまして、前回も私は申し上げたとおり、これについてもやはり、ここで集中的に議論をするべきだという考えを申し上げさせていただき、時代の変化によってその必要性が高まったということを申し上げさせていただきました。
 そして、私も実は一度ですべての改憲というものが実現できるとは思っておりませんでして、とりわけ、今、棚橋委員からもお話がございました九十六条の問題というものは、また、先ほど緊急権についてお話がありましたけれども、緊急性の高い部分についてやはり先行的に考えをまとめていくべきだというように思っております。
 九十六条については諸先生から慎重論がありましたけれども、私は、硬性憲法ということが、憲法の発議要件、国会での発議要件を引き下げることによってあいまいになってしまう、あるいはなくなってしまうとは思っておりません。
 何となれば、この硬性憲法の本質は、国民投票というプロセスが最後に控えているということ、それから、一般の法律と違って衆議院の優越性というものが定められていない、つまり、再可決ということが存在しないので衆参両方の決議が絶対に必要であるということ、この二点において、私は、憲法改正発議の要件を例えば二分の一に引き下げることによって硬性憲法の内実が損なわれることはない。
 その一方で、私は、国民一般により憲法の改正のチャンスを広く与える、しかも、政治的なバイアスということも懸念されますけれども、やはり国民トータルで議論することで、そのバイアスが党派的な色彩を薄めて深められるというように理解をしております。
 ですので、こういった優先的な課題についてぜひこの審査会で集中的に議論をし、そして国民にイエス、ノーがわかりやすく提起できるようにぜひ御検討いただきたいというように会長にお願いをいたします。
 以上でございます。

第179回 国会 衆議院 憲法審査会

第179回 国会 衆議院 憲法審査会 2号
平成23年11月17日(木)
午後九時十一分開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 憲法調査会そして特別委員会でずっとお世話になってまいりました中山参考人、そして橘部長のお話を私も胸の詰まる思いで伺っておりました。
 あれから四年間の空白期間がありまして、私は、その間、国民投票法そして憲法を取り巻く環境は、大きくむしろ審議が必要な事態になっているというように考えております。
 この政権交代以後の、例えば普天間基地をめぐる問題等で、本当に日本がみずからの安全をみずから守れるようにしなくてよいのかという意見を私は地元で数多くの主婦の方からいただくようになりました。また、国民投票法の問題についても、原発立地の可否をどのように決めるか、あるいは先般のギリシャでのEU包括支援策を国民投票にかけることの是非等で、その対象について、これをどのように解するかということが、間接民主制をしく我が憲法との整合性から非常に大きく問題となってきていると思っております。
 先ほど、笠井議員や辻元議員からは、やはり国民の多くの意思を尊重すると、拙速に進めるべきではないというようなお話もありましたけれども、むしろ、その国民の意思をしっかりと確認するためにもこうした手続を進めるということが必要になってくると思いますし、政党色が憲法改正案にそれほど反映されてはならないというからこそ、国民投票がしっかりと硬性憲法の最終的な手続として定められていることも言うまでもございません。
 そういうことをもろもろ勘案すると、やはり私は、国民投票が一刻も早くしっかりと現実的な社会において機能するように、この投票法の三つの宿題をこの場で集中的に議論するとともに、今の憲法の緊急権制度を初めとしたさまざまな課題についても、それこそ並行して議論をすることを強く訴えさせていただきたいというように思っております。
 会長の精力的な審査会の開催を心よりお願い申し上げまして、私からの意見表明とさせていただきます。

第179回 国会 衆議院 法務委員会【NO.2】

第179回 国会 衆議院 法務委員会 第2号
平成23年10月25日(火)
午前九時開議

○柴山委員
 柴山昌彦です。二度目の質問をさせていただきます。
 今の棚橋委員の質問を引き継ぎますけれども、法務大臣の政務秘書官が公金詐欺で有罪判決を受けていたことが採用後発覚した。そして、それに基づいて、今月の十九日付で辞任の申し出があり、平岡大臣は自発的な辞職という形で処理をされたという御説明があったんですけれども、繰り返しの質問になりますけれども、九月の下旬に発覚しながら、なぜ十月十九日に辞表を受理するという扱いになったんですか。(発言する者あり)

○小林委員長
 ちょっと速記をとめて。
    〔速記中止〕

○小林委員長
 定足数になりましたので、では、速記を起こしてください。再開します。

○平岡国務大臣
 委員の御質問について言いますれば、本人からこういう事件で取材を受けているという報告があり、その中身について私なりに確認する必要があるということであったので、先ほども御答弁申し上げましたように、判決文あるいは関係者の供述調書といったようなものについて本人から提出を受け、さらに本人からもいろいろな事情を聞いたというような作業をしておりまして、自分なりに調査をし、その調査を踏まえた判断をするということに少し時間を必要としたということでございます。

○柴山委員
 今おっしゃったんですけれども、もうかなり前の事件なんですね。一件記録を読み、そして本人から事情を聞くのに一カ月必要だったとは到底思えません。十月二十日からこの臨時国会が始まり、そして、当然のことながら、この問題について法務委員会で追及される。
 ちなみに、この政務秘書官は、最後のお給料はいつもらったんですか。

○平岡国務大臣
 私としては、十九日付で退職したということ以上に今おっしゃったことについての情報は持ち合わせていません。

○柴山委員
 簡単なことですので、ここで確認をしてください。

○平岡国務大臣
 具体的な通告もございませんでしたので、後刻御報告をさせていただきたいと思います。(柴山委員「今すぐわかるでしょう」と呼ぶ)

○小林委員長
 特別な措置を講ずることがなければ、何日にやめると給料がどうなるかということは自動的に決まっていますので、多分、多分というか、自動的に決まったはずだというふうに大臣が申している。それを踏まえて質問してください。(発言する者あり)

○柴山委員
 まず速記をとめてください。

○小林委員長
 では、速記をとめて。
    〔速記中止〕

○小林委員長
 それでは、速記を起こしてください。再開します。
 では、大臣、回答を。

○平岡国務大臣
 今報告がありましたので、お答えいたします。
 九月二日から九月末日までのものについては九月十六日に支給をされた、十月一日から十月の十九については十月の十七日に全額支払われたけれども、勤務をしていない部分についてはこの後戻入するというのがルールになっているというふうに聞いております。

○柴山委員
 今御答弁のとおり、要するに、給与日をまたぐために辞任の時期をおくらせたんじゃないかという疑いが極めて濃厚なんですよ。要するに、給料泥棒ということで、事実が発覚をしていたのに、そういうことが非常に疑われるわけです。しかも、この政務秘書官は、公設秘書は辞任されているんですか、していないんですか。

○平岡国務大臣
 公設秘書も辞職をしております。

○柴山委員
 公設秘書の給料日はいつですか。

○平岡国務大臣
 公設秘書については、先ほどの説明にもありましたけれども、九月一日に公設秘書になって、九月二日に大臣秘書官になりましたので、九月の二日には公設秘書は辞職をしております。

○柴山委員
 要は、公設秘書に採用されたことによって、兼職の禁止ということで、公設秘書は自動的にやめた、そういうことでよろしいわけですか。失礼しました。
 それでは、ちょっと棚橋委員からの質問の補足ですけれども、これは、懲戒解雇相当ではないということで、退職金が支払われる扱いになるはずですけれども、退職金の額は幾らですか。

○平岡国務大臣
 退職金はなしというふうに聞いております。

○柴山委員
 それは、在職期間が短いからということでよろしいでしょうか。

○平岡国務大臣
 そのとおりであります。

○柴山委員
 いずれにいたしましても、先ほどお話があったように、極めて一般感覚からしておかしい処分ではなかったかなと。また、給与の問題も含めて、極めて不透明であるということを指摘せざるを得ません。
 次の質問に移らせていただきます。
 大臣、ことしの五月、今席をお立ちになっている黒岩宇洋前政務官にも質問をした、市民の党についてお伺いします。
 横浜市議会を国旗引きずりおろしという理由で除名された井上桜氏や、拉致犯で国際指名手配中の森容疑者及びよど号ハイジャック犯故田宮容疑者の子供で、三鷹市議選に立候補した森大志氏などが所属する市民の党、そして、その関係団体が菅直人前総理や民主党と資金面、活動面で密接な関係にあることについて、これを望ましいことと考えていますか。

○平岡国務大臣
 望ましいというふうには別に思いませんけれども、そこは私が論評することではないというふうに思います。

○柴山委員
 私が論評することではないというふうにおっしゃいましたけれども、政権与党の資金関係について、今言ったように、北朝鮮等との関係も疑われる団体との関係について、論評をするべきではないというふうに大臣はおっしゃったんですけれども、それでいいんですか。

○平岡国務大臣
 望ましいという言葉が何を意味しているのかというのは私もちょっとよくわからないんですけれども、個別の事案について、私の立場で、これがどういう法的評価を受けるかというふうなことも含めて、論評するのは適当でないというふうに思っております。

○柴山委員
 法務大臣は公安調査庁の責任者でもありますが、これについて全く情報を入手されていないんですか。

○平岡国務大臣
 私としては、特に報告は受けておりません。

○柴山委員
 既に同僚議員からさまざまな場面で問題提起がされ、そして何度も報道でも明らかになっているとおり、この市民の党については、責任者斎藤まさし、本名酒井剛氏がさまざまなセクトの活動をし、問題とされている。特に、この人物は北朝鮮、そして日本赤軍関係者らとの面会も認めている。そして、今申し上げたような形で、所属する構成員が横浜市議会やあるいは身内の関係者にそういう犯罪を犯したとされる方々がいらっしゃる。そういうような、極めて日本の治安で問題となり、そしてメディアでも報道されているということは、もうこれは公知の事実だと思います。そういった方々が民主党の議員に多額の寄附をし、そして関連団体は前総理の菅直人さんの資金管理団体に六千万円を超える寄附をしている。
 こういうようなことについて、私は論評する立場でないということを現職の法務大臣でおっしゃって、本当にいいんですか。

○平岡国務大臣
 お尋ねの政治資金の流れの詳細については私自身も承知しておりませんし、前提となる事実関係についても承知しておりませんので、よろしくお願い申し上げます。

○柴山委員
 では、今後調べるつもりはおありですか。現在活動している団体について、これについて関心を持つということはないんですか、あるんですか。

○平岡国務大臣
 捜査に関する話であれば、捜査当局が法と証拠に照らして適切に対応するというふうに思います。

○柴山委員
 繰り返しになりますけれども、日本の治安にかなり大きな影響が出てくるのではないかというように考えられ、報道されている団体についての活動に、公安調査庁の責任者である法務大臣として関心を寄せないということでいいんですか、今後。

○平岡国務大臣
 公安調査庁が何をするのかということについては、一義的には公安調査庁が判断していくということだろうというふうに思います。
 私自身としては、御指摘のあった団体については現時点では承知していないので、どうすべきかということについてコメントすることはできません。

○柴山委員
 大臣は、山口二区の補欠選挙で、市民の党のメンバーの選挙応援を受けていましたね。

○平岡国務大臣
 市民の党というふうには承知しておりませんけれども、いろんな方々からの支援をいただいておりましたので、その中にはおられたのかもしれません。

○柴山委員
 把握をしているところによりますと、ざま市民の党、沖永明久市議会議員のホームページからの引用ですけれども、「衆院山口二区補欠選挙の結果から」、これは二〇〇八年四月二十八日月曜日、選挙の恐らく翌日ではないかと思いますけれども、衆院山口二区補欠選挙で民主党平岡さんの応援にこの間はほぼ集中と。「今後の政治の流れを決める重要な選挙でしたが、見事に平岡さんが当選。「死に体」の福田政権をさらに追い詰める結果となりました。」このように書かれております。
 また、市民運動家の方の、Dといいますけれども、Dという方のホームページからの抜粋ですけれども、衆議院山口二区補欠選挙の最終日、午前中は岩国の平岡事務所で電話かけをしました、電話かけを終えて、応援に来ていた市民の党の面々と一緒に平岡事務所を出ようとしたら、民主党の人たちが最敬礼で見送りしました、私は何だと思ってしまいました、こういうような記載があるわけですね。(発言する者あり)
 こうした団体、今、辻理事の方から政治活動の自由というふうに言われたわけですけれども、このように問題が指摘をされている団体からの応援をもって選挙戦を戦ったということについて、何らの痛痒も感じないということでよろしいでしょうか。

○平岡国務大臣
 委員がホームページ等でお調べになったことなので、多分応援に来ていただいていたのではないかというふうに思いますけれども、私自身は、市民の党であるかどうかということについては認識はございませんし、応援に来てくれた方々に対して最敬礼でお見送りというような形での感謝の気持ちを伝えるというようなことも、選挙ではそんなに不思議なことでもないような気がいたします。

○柴山委員
 私は、もう一度質問させていただきますけれども、問題のある方々が、団体の構成員、例えば私だったら、自分の選挙事務所に、いかに厳しい選挙だからといってですよ、言い方は大変失礼になるかもしれませんけれども、反社会的な団体の構成員が応援に来ているということがわかったら、即座に来るのをやめてくださいと言いますよ。それは私は、政治に携わる人間のモラルとして当然のことだと思うんです。
 今こういう形で私の方から問題点を指摘させていただいたので、今後大臣が御自分の選挙で、そういう方々からの応援の申し出があった場合、あるいはそのお申し出がなくても、今後選挙を戦われる場合に、そういう方々の応援は御遠慮したいということをきちんとおっしゃっていかれるかどうかということについてお伺いしております。

○平岡国務大臣
 反社会的団体であるのかどうかということの仕分けというものをどこでするのかということもあろうかというふうに思いますけれども、仮にそういう位置づけの団体であるということが客観的にも明白であるならば、それはお断りするということになるというふうに私も思います。
 ただ、その人がどういう団体に所属しているのかということについては、すぐに一見して判断がつくということでもないだろうというふうに思いますので、その辺は注意しながら対応しなければいけないことではないかというふうにも思います。

○柴山委員
 条件つき、すなわち、この団体が反社会的な団体であるかどうか明確になればという条件つきではありましたけれども、そのように判明した暁にはこうした団体からの応援は受けないということを今この委員会の場で明言されたということについて銘記したいと思います。
 次の質問に移らせていただきます。
 先ほども質問がありましたけれども、郵便不正事件の国家賠償訴訟についての質問であります。
 大阪地検特捜部の担当検事が不当な形で自白を引き出し、冤罪ということで精神的な苦痛を受けたということで、村木元厚生労働省の局長から国家賠償請求があり、これに対して国側、国側というのは要するに法務大臣が被告となるわけですけれども、全面的に認諾をし、約三千七百七十万円を賠償するということになったわけでございます。
 ただ、これも先ほど質問にありましたけれども、この事件についての故意が当該取り調べの前田検事等の検事にあったということであれば、当然、こうした責任のある検事たちに求償していくということになろうかと思いますが、間違いありませんか。

○平岡国務大臣
 求償の問題については、先ほどの階議員とのやりとりの中でも申し上げたというふうに思いますけれども、あくまでも、国家賠償法第一条の第二項の要件に該当するかどうか検討した上で適切に対応してまいりたい、このように考えております。

○柴山委員
 大変重要な今の御指摘であったと思います。
 というのは、当該検事が、みずからが不法行為を行ったというように、国と同じように認めてくれればいいんですよ。だけれども、国からの求償訴訟でこの事実関係ないし法律関係を争ったことによって、国が求償債権を取りはぐれるという可能性があるわけなんですね。
 この取りはぐれるかどうかということを防ぐためには、例えば、元検事らとの一体的な判決を求めるというようなことをするべきではなかったかと思いますし、また、担当検事がどういうスタンスをとるかということについて事前に確認をする、あるいは訴訟告知をするというようなことも考えられたかと思います。
 こういうような、いわば国の大切なお金をしっかりと無駄にしないで確保するための方策というものを法務大臣はおとりになったんでしょうか。

○平岡国務大臣
 今言われたような措置はとってきていなかったというふうに承知しておりますけれども、これも先ほどの階議員の質問に答えました、今回のこの国家賠償請求について言えば、刑事事件の重要な証拠であるフロッピーディスクを改ざんする行為に及ぶという重大な犯罪行為が行われているという本件事案の特殊性にかんがみて認諾をしたというふうに承知しているところでございます。

○柴山委員
 改ざんをされたということは事実かもしれないけれども、それが国家賠償法上しっかりと請求を基礎づけるものであるかどうかというものは、ある程度訴訟が進行しないと見えてこないのが実態だと思うんですね。
 特に、前田検事等が全面的に否認をしているわけですね。全面的に刑事事件で否認をし、当然のことながら、そういった関連の求償事件についても争ってくるだろうということが明確な中で、事実関係をしっかりと法的な評価の裏づけをもって明らかにしない段階でこれを認諾するというのは、まさしく、先ほど来問題となっている検察改革に対して法務省として後ろ向きにしか取り組んでいないんじゃないか、結局事実隠ぺい体質というものが改まっていないんじゃないかという疑念を持たざるを得ないんですけれども、いかがでしょうか。

○平岡国務大臣
 本件については、認諾に当たりまして、私にも事前に説明があり、私も了承したという経緯がございますけれども、その説明の中には、この損害賠償請求事案の中身について、請求の趣旨に対する認諾というのは損害賠償義務の存在を認めるものという枠組みの中で、これは認諾せざるを得ない、認諾することが適当であるというような事案であるというふうに私としても判断をしたところでございます。

○柴山委員 要するに、法務大臣がこの判断についての責任を負うということなんですよ。事務方から説明が上がってきて、私が申し上げたように、将来それが国の、国庫の損失になり得るかもしれないという事情の中で、いわば法務省の人たち、事務方からの言い分をうのみにして、大臣御自分がその認諾をする。要するに、原告、村木元局長の言っていることを認めて争わないという判断をしたということですから、これが将来、もし求償債権が取りはぐれるということになった場合、これは大臣御身の責任になるということで間違いないですね。

○平岡国務大臣
 責任という言葉がどこまでのことを含めて考えるのかということはあろうかと思いますけれども、何がしかの責任というものは、それぞれ物事を判断するときには私はあるというふうに承知しております。

○柴山委員
 今ここで御自分の責任について言及をされましたので、次の質問に移らせていただきます。
 先ほどもお話がありました取り調べの可視化についてでございます。
 私も、この委員会で再三にわたり取り調べの可視化については質問をさせていただいておりますし、これを進めるということについては、基本的には大臣と意見、認識を共有しているというように考えております。
 ただ、その中でぜひお伺いしたいのは、冤罪を防止することももちろん大事なんだけれども、結局、うそをつけば逃げられると。要するに、取り調べが甘くなって、本来であれば、これまでのような取り調べであればしっかりと本人が自白をしたにもかかわらず、今後は、取り調べ官が萎縮をしたり、あるいは関係者のプライバシーですとか、それこそ反社会的勢力の構成員からの報復を恐れるなどして取り調べの実が上がらないというようなことになってしまってもこれは困るわけでして、どのようにこの可視化に伴う治安確保に対する悪影響というものを防止するのか、これについて大臣の御所見をお伺いします。

○平岡国務大臣
 ただいま柴山委員が御指摘になった話というのは、取り調べの可視化を図る中でも、特定の事案については、可視化をすることによっていろいろな別の問題と申しますか、犯罪を摘発したり、あるいは犯罪の手がかりをつかんだりというようなところに問題があるんではないかという御指摘だというふうに思いますけれども、その点については、十分にそういう問題を認識しながら可視化について検討していくべきであるというふうに私も思っております。

○柴山委員
 というふうに口ではおっしゃっているんですけれども、ただ、先ほど大臣は、新たな捜査手法の導入が可視化の条件ではないというようにおっしゃっているんですね。
 先ほど、GPS位置情報の獲得ということにはいろいろと副作用があるというような御質問もありました。それ以外にも、盗聴ですとか、あるいはおとり捜査、司法取引、先進国では当たり前のように導入されている捜査手法で、日本で取り入れられていない、あるいは不十分なものもあります。それを導入することが今後の自白に頼らない裁判というものに非常に重要なウエートを持ってくるのではないかと思うんですけれども、先ほどの大臣の新捜査手法の導入に対するいわば消極とも言える姿勢ということについては、私は非常にバランスを欠いたものがあるんじゃないかなと思うんですが、いかがでしょうか。

○平岡国務大臣
 先ほどの私の答弁では、新たな捜査手法の導入が必ずしも可視化の実現の前提条件となるものではないと考えているというふうに申し上げたところを今御指摘されたというふうに思いますけれども、現在、これは国家公安委員会の方でも研究会をつくっていろいろ検討されているということでもありますし、また、法制審議会の中でもそういう検討結果というものも踏まえながらこれから検討をしていくということでございますので、私としては、その検討で大いにいろいろな問題点を議論していただきたい、このように思っているところでございます。

○柴山委員
 しっかりと国家公安委員会とも連携をして、こうした問題点について検討してもらいたいと思います。
 一方、国家公安委員会とは違いますが、先ほど申し上げたとおり、法務大臣は公安調査庁の責任者でもあるわけですから、くれぐれもこういったさまざまな情報収集についてのバランスを逸することのないような形での法務行政というものをぜひ心がけていただきたいというように思います。
 先ほどリーダーシップが見えないというお話がありましたけれども、こういう問題でこそ、やはりさまざまな機関での検討を踏まえてリーダーシップを最終的には大臣に発揮していただかなくてはいけないと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 もう質問時間があとわずかとなりましたので、最後に、城内委員からも質問があった人権救済法案についてお伺いしたいと思います。
 大臣は、記者意見で、遅くても来年の通常国会までにはこの人権救済法案を提出したいというように言われているわけですけれども、法務省の中の検討状況はそういうことでよろしいんでしょうか。

○平岡国務大臣
 部内の検討状況についても逐次報告を受けているところでございますけれども、この事務方からの説明の中では、法案提出の時期についてはいろいろな調整等もあって確定的なことは申し上げられないというふうに聞いておりますけれども、私としては、できる限り来年の通常国会には出せるように、私自身もいろいろな調整に取り組んでまいりたいというふうに思いますし、事務方にも督励をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

○柴山委員
 そこまで急ぐ立法事実というのは一体何なんですか。先ほどの質問にもあったように、各国に確かに人権救済機関というものはありますけれども、今、日本で検討されているような網羅的な人権委員会という、三条委員会で、さまざまな調査権限もあるようなものをどんと据えるような仕組みを持っている国というのはないと私も理解をしております。これの成立を急がなければ日本の人権が侵されてしまうというような立法事実があるのか、ぜひお伺いしたいと思います。

○平岡国務大臣
 委員御案内のように、もともと、平成十三年の五月に人権擁護推進審議会が政府から独立性を有する新たな人権救済制度の創設を提言されたという過去の経緯というものがございます。その後、いろいろな議論がなされてきておりますけれども、先ほども申し上げましたように、国連の各種人権条約に基づく委員会も我が国に対してこうした人権機構の整備の必要性についてたびたび言及しておりますし、先ほども申し上げましたけれども、新たな人権侵害事態に対して対応するというのに個別的な対応をとっていくということでは迅速さに欠けるというようなこともございますので、我々としては、早急に、できるだけ早く政府からの独立性を有する人権救済機関を創設することが必要であるというふうに考えて行動しているところでございます。

○柴山委員
 個別の機関では救済がおくれるとおっしゃいますけれども、それは個別の機関のネットワークがしっかりしていないからたらい回しが起きるというだけのことなんです。
 それで、窓口をそんな世界に全く例の見ないような人権委員会という強大なものに一元化をしなければ救済の迅速性が図られないということは、諸外国の例から見てもあり得ないですよ。そんなものに意を注ぐぐらいでしたら、例えば法律扶助ですとかADRとか駆け込み寺の充実ですとか、そういうことをもっとしっかりとやっていくべきではないんですか。
 今度の第三次補正予算でも、例えば福島で放射能のいわれなき中傷を受けた人たち、あるいは、さまざまな原子力による損害を風評被害も含めて受けた人たちの権利の救済ということに対する法律扶助の予算というものが計上されていないじゃないですか。そういう身近な、本当に必要な施策を充実させずに、みずからの既得権益の拡大につながるような、そんな機関を設置することについては極めて疑問が大きいということをこの場で申し上げさせていただいて、時間ですので質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

第179回 国会 衆議院 法務委員会【NO.1】

第179回 国会 衆議院 法務委員会 第2号
平成23年10月25日(火)
午前九時開議

○柴山委員 
 柴山昌彦です。
 このたび、自由民主党、影の法務大臣を拝命しましたので、平岡大臣とはさまざまな議論をさせていただくことになろうかと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、米軍再編に絡み、大臣の政治姿勢についてお伺いします。
 今の政権が厚木基地からの空母艦載機五十九機の御地元岩国基地への移設を進めている理由は何でしょうか。

○平岡国務大臣
 米軍再編というのは、委員も御案内のとおり、抑止力の維持、そして地元負担の軽減ということであるというふうに理解しております。
 その中で、特に私なりに理解しているのは、空母艦載機が厚木にあるべきなのか岩国にあるべきなのかについて言うと、抑止力の維持という観点からするならば、私は、余り大きな違いはないのではないだろうかと。むしろ、厚木基地周辺における地元負担というものを、岩国の方が、どちらかといえば飛行場が海に面しているわけでありますから、負担が小さいというような視点で行われたのではないかというふうに私としては認識をしているところでございます。

○柴山委員
 余り違いはないけれども、どちらかというとと。負担の違いということで岩国基地への移設を進めているというような御説明だったかと思います。
 それで、ことし九月二十七日の衆議院予算委員会における我が党河井議員の質問に対して、大臣はこの件について、「賛成とは申し上げませんけれども、閣議で決まったことについては従っていく所存でございます。」と答弁をされました。間違いありませんか。

○平岡国務大臣
 一言一句は覚えておりませんけれども、たしか、委員が今御指摘になられたような趣旨のことは申し上げたというふうに記憶しております。

○柴山委員
 これまで大臣は、この米軍基地再編あるいは空母艦載機移転の反対派の集会に出席をされ、この問題について反対の意見を繰り返し表明されてきたというように考えておりますけれども、閣僚に入ったら、それについては閣議決定すれば従う、そういうことでよろしいのですか。

○平岡国務大臣
 委員も御案内だとは思いますけれども、一政治家としての発言あるいは一政党人としての発言というものと閣僚としての閣内不一致の問題等については、既に政府見解というものが出されておりまして、その政府見解によれば、閣僚の一人が一政党人、一政治家として自分の意見を述べることは、それはそれで差し支えないけれども、閣議で決定したことあるいは閣内で統一して実施することについて従うということがあくまでも前提となっての話であるというような、これも細かい表現ぶりは覚えておりませんけれども、たしか平成五年、当時の統一見解として示されているというふうに記憶しております。その範囲内で私も行動してきているつもりでございます。

○柴山委員
 それでは、滝法務副大臣にお伺いします。
 副大臣は、平成十七年の七月、時の小泉内閣において法務副大臣をされておりました。私が副大臣に何度か郵政民営化法案について質問をさせていただきましたね。大臣は、この法案に反対を貫かれるためにどういう行動をとられましたか。

○滝副大臣
 どういう行動かということでございますけれども、さかのぼれば大変長い昔にさかのぼるものですから一つ一つ覚えておりませんけれども、基本的には、郵政民営化そのものに対しては大変危惧を持っておりましたので、これを何とか郵政事業全体として立ち行くようなシステムに修正すべきだ、こういう観点から常に行動をしてまいりました。

○柴山委員
 平成十七年七月の四日、どういう行動をとられましたか。

○滝副大臣
 七月五日に衆議院の本会議でいよいよ採決がある、こういうことになりましたので、それまで、何とか郵政事業が事業として成り立つように修正をしてもらいたい、そういう行動をとってまいりましたけれども、いよいよその修正もだめになる、こういうことでございましたので、私は、七月四日の午後三時ぐらいでございますか、当時の法務大臣に法務副大臣としての辞表を提出させていただきました。

○柴山委員
 そうなんです。副大臣は、小林委員長と同じように、この郵政民営化法案に対して反対の意向でありました。当然のことながら、政治家としての意思とそして閣内の一員としての行動というものは別だ、平岡大臣おっしゃったとおりかもしれません。しかし、そこで滝副大臣は、南野知恵子法務大臣に対して辞表を提出されたんです。
 再度確認しますが、平岡大臣、平岡大臣は、米軍基地再編に反対して閣僚を辞任することなく、閣議決定を進める立場だということでよろしいわけですね。

○平岡国務大臣
 予算委員会の場でも申し上げましたけれども、今私がすべき最も重要なことは、私の地元の中にさまざまな声がある、その声をしっかりと政権、内閣に伝えることであるというふうに考えております。そういう認識のもとに、しっかりと活動してまいりたいというふうに思っております。

○柴山委員
 私の質問に答えていただいておりません。
 再度お伺いします。
 大臣は、米軍基地再編に反対して閣僚を辞任することなく、閣議決定を進める立場だということで間違いないわけですね。

○平岡国務大臣
 閣議決定を進めるというのが、私の与えられた法務大臣という職責の中で何か具体的なことがあるかどうか、私はわかりませんけれども、閣議決定されたことについては、閣僚の一員としてそれには従ってまいります。

○柴山委員
 いや、その閣議における決定、閣議というのは全会一致が旨とされておりますけれども、賛成の意思を表じられる、サインをされるということで間違いないですねということを申し上げているんです。

○平岡国務大臣
 これから行われるべき閣議決定というのがどういう内容になるかということをあらかじめ想定しての発言にはしたくないと思います。
 閣議決定をされることがあるのであれば、そのときに、どういう閣議決定であるべきかについてはしっかりと意見を述べていきたい。その結果として、閣内で、みんながこういう認識でいこうということであるならば、それはそれで私も従ってまいります。

○柴山委員
 今大臣がおっしゃいました、閣議の中でみずからの意見については申し上げたい、そして議論をしたい、そのかわり、議論をした結果には従う、そういうように私は受けとめさせていただきました。
 では、お伺いします。
 そのようなプロセスを経て、納得してサインをされたら、大臣は、今後大臣を退かれた後でも空母艦載機の移設に反対するのか、それとも賛成をするのか、どちらでしょうか。

○平岡国務大臣
 今の仮定の話は、私が大臣を退いたらということだけではなくて、民主党が、あるいは民主党政権がこれからの米軍とのかかわりをどう持っていくのかについては、その時々の国際的な情勢あるいは国内情勢によって変わってくるというふうに思いますので、内容をあらかじめこれというふうに想定して、どうするのかということについてはお答えしかねます。

○柴山委員
 私の質問を御理解していただいていないようなので、再度質問をさせていただきます。
 どのような閣議が行われるか、それは不明確だ、そのとおりです。私は何も、将来行われるべき閣議のプロセスを今ここで予言しろとか、どういう結論が出るかとか、そういうことを平岡大臣にお尋ねしているのではありません。私が平岡大臣にお尋ねしているのは、先ほど大臣みずからお述べになったように、閣議でみずからが参加をし議論をして決まった結論について、それに従うとおっしゃいましたけれども、その将来出た結論については、内閣を離れた後についてもその方針を堅持されるということで間違いないんですか、そういうふうにお伺いしているんです。

○平岡国務大臣
 質問の趣旨が私にはよく理解できないところがあるのかもしれませんけれども、閣議決定をしたときの情勢というものと、その後の時を経て起こっている状況というのは違うわけですよね。ですから、あるときにこういうふうに閣議決定しました、だからそれを未来永劫守っていかなければいけないというふうな立場には多分立たなくて、やはり閣僚として、その内閣が続いている限り、その閣議決定したことが新たに変更しない限りはそれは生きているということでいいと思いますけれども、閣僚でなくなった後にかつての閣議決定の中身に従うのかということについては、一概には私は申し上げられないというふうに思います。

○柴山委員
 繰り返しになりますけれども、今、平岡大臣は、閣議決定が行われ、そしてその後、閣僚の一員たる地位をやめられた後の事情の変化というものがあるだろうというようにおっしゃいました。そのとおりだと思います。事情の変化があれば、それに対して政治も動きます。
 ただ、当該時点の判断については、これに参加をし、そしてその決定に加わったということについて、それをひっくり返すというようなことを御地元でされることはいたしませんねということを私は聞いております。

○平岡国務大臣
 今のお話は、閣僚時代に閣議に参加して決定したことについては、閣僚でなくなっても、それを地元との関係では守っていくのかという御質問だったのかなというふうに思いますけれども、それは、先ほども申し上げたように、その時々の情勢についてはいろいろ変化がございますから、その変化を見ながら、閣議決定した当時の状況というものを踏まえて、なおかつ維持しなければならないものであれば維持していきたいと思いますし、維持するという状況ではなくなっていると思えば、それは政治家の一人として、自分の考え方を、その時点における考え方を主張していくということになろうかというふうに思います。

○柴山委員
 この質疑の様子は、当然のことながら議事録にしっかりと記載されるわけです。
 今、大臣は、みずからお話しになったように、閣議決定後、みずからが閣僚たる地位を離れた後、事情の変化があれば、それについては考慮するということをおっしゃいましたけれども、少なくとも、その時点において決断したことについて、その時点での判断について、御地元でこれをひっくり返して、いやいや、あのとき私は反対だったんだというようなことはおっしゃらないということを今ここで明言されたということでよろしいわけですね。

○平岡国務大臣
 閣議決定をする前の、閣議でのいろいろな意見交換といいますか議論の中では、閣議決定とは異なる意見を述べているかもしれません。その事実を私は否定するものではありません。
 私はこういう主張をしたけれども、閣議の中では多くの皆さんの意見がこういうことであり、私も、全体的な流れの中で、それは自分としても受け入れざるを得ないということであったというような事実関係の説明は当然あってしかるべきだというふうに思いますけれども、私が参加した閣議決定において、私はその閣議決定に反対だったというふうなことを言うということ自体は、私にはちょっと想像がつかないところでございます。

○柴山委員
 それは賛成をするということですよ。署名をするということは、それはいろいろと議論はあったかもしれないけれども、賛成すると。
 滝法務副大臣が辞任をされたように、政治家としての立場と閣僚としての立場は確かに一致はしません。だからこそ、滝副大臣は辞任をした。そして、小林委員長、今、後ろにいらっしゃいませんけれども城内実委員は、自民党の決定に賛成できないということで党を離れられているわけですね。私は、立場は違いますけれども、そういった滝先生、小林先生、城内先生の行動自体は敬意を持って受けとめております。
 先ほど大口委員が平岡大臣にいろいろと質疑をされて、平岡大臣は別人みたいだというふうにおっしゃったんですよ。私もそう思いますよ。
 だって、平岡大臣のこれまでのさまざまな活動や、あるいはいろいろと培ってきた政治的な実績に平岡大臣の御地元の有権者は信頼をし、そして一票を平岡大臣に投じておられると思うんですね。だけれども、立場が違って、いや、これまでは移設に反対だったんだけれども、大臣になったから進めます、あるいは、大臣じゃなくなったからまたもとに戻って反対しますということでは、有権者は一体何を信じて投票すればいいんですか。
 もう一度お答えください。

○平岡国務大臣
 有権者の皆さんには、私の主張なり意見なりというものは、私の責任においてしっかりと説明してまいりたいというふうに思います。
 私が別人のようだというお話がありましたけれども、別人ということではなくて、今までも、野党時代を含めていろいろなことを考えながら、そのときにおいて最も主張すべきことを主張してきたというふうに考えております。

○柴山委員
 それぞれの議員が地元で、私は反対だったんです、でも政府が私の言うことを聞かないんです、皆さんの思いを実現するために、私を次も、またその次も当選させていただいて、ポストにつけるようにしてください、そう言って選挙活動をされていらっしゃる方がかなり多いんじゃないかなと思うんですよ。実際、ポストにつくと、役所の決定、閣議の決定に従いますと。こういうのを詐欺というんじゃないんですか。違うんですか。

○平岡国務大臣
 どういうふうに呼ぶかというのは、私も、ちょっと適当な言葉が見つかりませんので、そういうふうにいうんじゃないですかと言われても、そうですと言えるような見識は持ち合わせておりません。

○柴山委員
 見識を持ち合わせていないということをお答えになったことに失望を感じざるを得ません。
 次の質問に移ります。
 大臣は先日の就任あいさつで、「国民が安心して生活することができるよう、社会の法的基盤を整えることが、法務省の大きな役割である」とされています。一方、いわゆる共謀罪や死刑の問題については一言の言及もありませんでした。その理由をお聞かせください。

○平岡国務大臣
 どの場面のお話をされているのかというのも私にはちょっとよくわかりませんでしたけれども、死刑の問題についてはいろいろなところでいろいろな質問等がありまして、所信ですか、失礼いたしました。今、私が述べたところというのは、所信、あいさつのことであったというふうにちょっと指摘がありました。その中には特に触れられていませんけれども、その問題について言えば、私にとってみれば、共謀罪の問題は既に私たちの考え方として整理されている問題であるというふうに思いましたので、特に入っていなかったかというふうに思います。
 死刑の問題については、私なりの考え方を整理しなければいけないということでありますので、ここで所信として述べるほど固まった考え方は今持ち合わせていないということでございます。

○柴山委員
 共謀罪の関係は、今後、もしかすると別の議員からも質問があるかと思いますが、それでは、死刑の問題についてお伺いします。
 千葉景子元法務大臣が法務省内に設置した勉強会について、大臣は就任会見において、ここで御自分の考えを、今おっしゃったように、整理をするとした上で、考えている間は当然死刑執行の判断はできないとお話しになりました。間違いありませんね。

○平岡国務大臣
 前後の脈絡があろうかと思いますけれども、その部分だけ取り上げれば、確かにそのように申し上げたと思います。

○柴山委員
 その御発言の当否はともかく、では、いつになったらその死刑執行の判断というものをされるんですか。

○平岡国務大臣
 その問題については、今ここで具体的に申し上げられるような状況ではございません。コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

○柴山委員
 それはおかしいですね。当然、勉強会というわけですから、成果が出るはずであります。お勉強ばかりずっとやっているというわけじゃないと思います。具体的な時期をまず当然お答えいただきたいんですけれども、それに加えて、今言ったような勉強会がどのような段階になったら判断できる段階だと言えるのかということをお聞きしたいと思います。

○平岡国務大臣
 委員御指摘の勉強会については、先日も新しい政務三役になったところで初めての開催をさせていただいたところでございます。
 その勉強会では、これまでの勉強会がどういうことをやってきたのかということについて総括的なおさらいをするということでございました。さらに、これまでの勉強会がやってきたことについて同じような問題意識を持って取り組んでいくということについても合意をさせていただきました。
 今後の取り進め方については、法務省の政務三役を初めとして、この勉強会に参加しているみんなと協議しながら考えていきたいというふうに考えているところでございます。

○柴山委員
 繰り返しになりますけれども、そうすると、具体的な時期のみならず、その勉強会の検討状況がどのような段階になったら死刑執行をするかしないかを判断するようになるのかということも、今この段階で、大臣になった、しかも勉強会のレクチャーを受けた、その段階にあってもお話しすることができない、そういうことでよろしいですか。

○平岡国務大臣
 今の段階では申し上げることはできません。

○柴山委員
 死刑制度が法律上明定され、刑事訴訟法四百七十五条一項に、これが大臣の判断、職責であるというように定められているということは御存じでしょうか。

○平岡国務大臣
 刑事訴訟法第四百七十五条に死刑の執行についての規定がございます。第一項が「死刑の執行は、法務大臣の命令による。」、第二項は「前項の命令は、判決確定の日から六箇月以内にこれをしなければならない。但し、上訴権回復若しくは再審の請求、非常上告又は恩赦の出願若しくは申出がされその手続が終了するまでの期間及び共同被告人であつた者に対する判決が確定するまでの期間は、これをその期間に算入しない。」というふうに規定してあるということについては承知しておるところでございます。(発言する者あり)

○柴山委員
 今、棚橋筆頭理事の方からもあったように、四百七十五条二項には、死刑の判決確定の日から六カ月以内に、今おっしゃった再審請求とか、さまざまな特段の事情がなければ、法務大臣は死刑執行の判断をしなければいけないと明確に書かれているわけなんですよ。
 今、勉強会でいろいろと議論をされていることはともかくとして、既にこういう法律がある以上、民主党政権になってから千葉法務大臣のもとで二件だけ死刑は執行されましたけれども、これに反してずるずると滞留をさせているということは職務の懈怠じゃないですか。いかがですか。

○平岡国務大臣
 死刑の執行については、大変重い刑罰でございますから、その執行に際しては慎重な態度で臨む必要があるというふうに考えております。
 それに加えて、私が一つの問題意識として持っておりますのは、現在、国際的な状況を見たときに、OECD三十四カ国の中で死刑制度が維持されているのは三カ国、その中の一つである韓国は過去十年間死刑が執行されていないということで、国連の事務総長の発表によれば事実上の死刑廃止国、そしてもう一つ、アメリカ合衆国は五十州ある中で十六州は死刑を廃止している、こういう状況にあって、いろいろな国際機関からも、あるいは特にヨーロッパ諸国からも、日本の死刑制度についての問題提起というのがされているという状況にあるわけです。
 そういう状況もやはりしっかりと我々としては踏まえて、死刑制度のあり方をどうするのかということを考えなければいけない時期に今来ているのではないか、こういう問題意識も私の中にはあるということも、あわせて御理解いただきたいというふうに思います。

○柴山委員
 さまざまな国際的な潮流ですとか、あるいは諸機関からの指摘というようなお話がありましたけれども、私たちは、当然、日本国憲法のもとで法制定、そして法運営をしているわけですね。現在の死刑制度は、憲法に反しているんですか。

○平岡国務大臣
 憲法解釈を私がする立場ではございませんけれども、私が承知している限りにおいては、最高裁の判決でも、日本の死刑あるいは死刑の執行の仕方については、違憲という判決が出たことはないというふうに承知しております。

○柴山委員
 非常に正確な御答弁、ありがとうございました。
おっしゃるとおり、我が国の死刑制度、そしてその死刑のやり方も含めて、最高裁の判決で憲法に反してはいないということが明確に判示され、そしてそれは現時点でも変更されておりません。何度かこれについては争われていますけれども、判例は変更されておりません。
 とすれば、先ほど大臣みずからが御指摘のとおり、現在の刑事訴訟法四百七十五条のもとでは、法務大臣は、少なくとも、どのような確定事案があり、そして死刑執行を判断するべきかどうかということを精査した上で、職務執行を行うべきと考えるのですが、違いますか。

○平岡国務大臣
 私も、私の職務は適切に執行してまいりたいというふうに思っております。その中で、さまざまな要素を考えながら、何が今の時点で最も適切なのか、このことについても判断をしてまいりたい、このように考えています。

○柴山委員
 私の質問に答えられていないんですけれども。今の憲法そして憲法解釈、そして刑事訴訟法のもとで、今の平岡大臣のスタンスというものが違法状態になるのではないかということをお聞きしているんです。

○平岡国務大臣
 これも、かつての判例でございますけれども、地方裁判所段階での判例ですけれども、刑訴法四百七十五条二項の規定についての判断が示されております。先ほどの六カ月以内に執行するということについてでありますけれども、こういうふうに述べております。
 第二項の趣旨というのは、第一項の規定を受け、死刑という重大な刑罰の執行に慎重な上にも慎重を期すべき要請と、確定判決を適正かつ迅速に執行すべき要請とを調和する観点から、法務大臣に対し、死刑判決に対する十分な検討を行い、管下の執行機関に死刑執行の準備をさせるために必要な期間として六カ月という一応の期限を設定し、その期間内に死刑執行を命ずべき職務上の義務を課したものと解される。したがって、同条第二項は、それに反したからといって特に違法の問題が生じない規定、すなわち法的拘束力のない訓示規定であると解するのが相当である、このような判例も出ているということを御紹介申し上げたいというふうに思います。

○柴山委員
 今、この六カ月は訓示規定だという下級審の判断があるということをおっしゃいました。私もその判例についてはよく存じております。
 しかし、今まさしく御答弁になったとおりに、それは、法務大臣がそれぞれの事件について慎重な検討をすることを前提として判断されているわけですね。大臣は、今、滞留件数百二十件と言われていますけれども、この確定死刑案件について、そういった十分な検討をされているんですか。

○平岡国務大臣
 ちょっと質問の趣旨が明確に私には把握できていないことがあるかもしれませんけれども、死刑執行の問題については、いろいろな影響を生じさせる問題であるので、従来から、検討しているのかどうかについてはコメントは差し控えるというふうに、これまでも対応してきたところでございます。(発言する者あり)

○小林委員長
 それでは、まず質問者からもう一度。
 柴山君。

○柴山委員
 一言で再度お伺いします。
 滞留されている、百二十件を超えると言われている確定死刑判決の案件について、平岡大臣は、その職務執行、つまり死刑の執行のための検討を行ったんですか、行っていないんですか。

○平岡国務大臣
 死刑については、先ほど来から申し上げているように、人の生命を絶つ極めて重大な刑罰であって……(発言する者あり)ちょっと待ってください。最後まで聞いてから。
 事務方から死刑執行のために具体的な案件が上がっているか否かを含め、死刑執行の検討を行っているか否か等、その執行の判断にかかわることについて大臣である私から発言すること自体で、死刑の執行を待つ立場にある死刑確定者の心情の安定を害するおそれがあるものと考えられており、従来から、死刑執行の検討を行っているか否かについてはお答えを差し控えさせていただくということとさせていただいております。

○柴山委員
 先日、九月二十七日のテレビ中継入り予算委員会において、我が党の河井委員が、百二十人の経歴、事件、読んだのかというように質問されたとき、平岡大臣は「その資料はまだ見ておりません。」というふうにちゃんと答えているんですよ。違いますか。

○平岡国務大臣
 そのときは確かにそう申し上げましたけれども、その時点では、まだ私が法務大臣に就任して間がない時期であったので、当然そういうことが想定されるということで申し上げたところでございます。

○柴山委員
 想定というのは何ですか。

○平岡国務大臣
 一般的には、就任して間がないときに、どれだけのことがどれだけできるのかというのはある程度想定できるというふうに思います。そういう意味で、就任して間がないときなのでそこまでは手が回っていないということで、そういうふうに申し上げたということでございます。

○柴山委員 九月二十七日の予算委員会の質問のときから、きょうは十月二十五日、一カ月近くたっておりますけれども、それこそ、先ほどちらっとお話があったような時間の経過、事情の変化があったということをおっしゃっていると善意に解釈をさせていただきました。
 次の質問に行きたいと思います。
 大臣は、覚えておられるでしょうか、四年前に出演された「太田光の私が総理大臣になったら」という番組で、息子を少年のリンチで殺害された被害者の母親の眼前で、目の前で、加害者にもそれなりの事情があった、子供たちにどうなってもらいたいのと発言し、猛烈な批判を浴びています。
 あなたは犯罪被害者の気持ちというものについてどう考えておられるんですか。

○平岡国務大臣
 あのときの状況については、私が言った発言そのものの是非がどうかということではなくて、犯罪によってお子さんを亡くされた方に対して質問をする、あるいは私の言葉で物を申し上げるということについて、被害者の御遺族への配慮に欠けていた部分があるということで、その当時もおわびの気持ちを明らかにさせていただいたところでございます。
 ただ、被害者の皆さん方の問題については、実はあのテレビは、放映されたのは多分五十分程度だろうと思いますけれども、二時間半ぐらいにわたって議論をしまして、被害者の方々に対するいろいろな支援なりあるいは救済なりというようなことについてもしっかりと議論したんですよ。そのことについて、みんながやはり被害者の皆さんに対する支援なり救済なりというものはしっかりやらなきゃいけない、どうやったらいいんだろうかというふうなことについてもしっかりと議論しました。
 しかし、その部分については一切放映されていないという状況の中で、あの部分だけが取り上げられていましたから、そういう意味では、私が被害者に対して何の温かい気持ちもないというふうに受けとめられるような状況になっていたのではないかということで、その点については、私は大変に申しわけなく思うとともに、残念に思っているところでございます。

○柴山委員
 犯罪被害者の問題について、オンエアされなかった時間帯について、しっかりと関心を持って議論をされたという大臣のお言葉ですから、それでは大臣、現在法務省で進められている犯罪被害者権利強化の方策はどのようなものがありますか。御自分で把握されているものを事務方に聞かずにこの場で説明してください。

○平岡国務大臣
 犯罪被害者の問題について言えば、犯罪被害者給付金という仕組みも随分前に出てきておりますけれども、果たしてそれで十分なのかどうかというような問題、あるいはメンタルケアについて、どういうふうな形で支援していったらいいのか、さまざまな取り組みをしているところでございます。

○柴山委員
 メンタルケアと給付金の問題、二つだけお答えになりましたけれども、被害者の問題について二時間検討されたという割には随分あっさりとしたお答えじゃなかったかなと思います。
 これ以外にも、当然のことながら、裁判の結果を遺族の方々に通知する、あるいはそういった方々に陪席をしていただく、あるいは、今メンタルケアというお話がありましたけれども、さまざまなカウンセリングの制度を充実していくというのは当然のこととして、あとは、やはり今、例えば振り込め詐欺などで各金融機関に滞留しているお金をこういった犯罪被害者の御遺族の方々、そういう方々に支給をしていく、本当にさまざまな方策がとられているわけです。
 犯罪被害者基本法に基づいて、犯罪被害者あるいはその御家族に対してさまざまな政策をもっともっと私たちは幅広くとらなければいけないということを訴えさせていただいているので、大臣、そういうことについても、ぜひしっかりと温かい心を持って進めていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○平岡国務大臣
 まさに柴山委員が言われたように、犯罪被害者に対するいろいろな支援、救済、あるいは生活設計等についてもできる限りの支援をするということが大事だと思います。
 先ほど私が、裁判における犯罪被害者の方々の関与の問題とか、あるいは委員が御指摘になった振り込め詐欺等の被害の救済の話については、既にある程度の法律も整備されているということでございますので、今それについて特に具体的な検討をしているということではないという意味で申し上げませんでしたけれども、裁判制度の問題、あるいは犯罪による被害の復活、そうした点についても当然取り組んでいかなければならない課題であるというふうに考えています。

○柴山委員
 死刑の問題についてもう一つお伺いします。
 大臣は、御地元の山口県光市の母子殺害事件の死刑判決について、御自分の山口二区補欠選挙でどのように説明をされていましたか。

○平岡国務大臣
 私は、補欠選挙でこの問題について何か訴えたという記憶はございません。
 先ほどの私のテレビでの発言というのも、タイミング的にいうと、判決が出る前に収録をされ、そして判決が出た後に放映されたというような時間的関係の中で取り扱われていたというふうに承知をしているところでございます。

○柴山委員
 死刑の判決が出て、その後、先ほどのテレビ放映があって、そしてその後、まさにあの山口二区の平岡さんの補欠選挙があったのですね。当然のことながら、しかも地元の問題ですから、特に平岡さんというのは法務行政に明るい方ですから、死刑制度のあり方ですとか、あるいは治安の根本をどう考えるかとか、そういうことは訴えてしかるべきじゃなかったかなというように思うんですけれども、そういうことが全く、街頭演説とかあるいは議論をなさらなかったということでよろしいわけですか。

○平岡国務大臣
 あのときの選挙をちょっと思い起こしてみますと、当時の与党の大物政治家の方が来られて、私のテレビにおける発言と光市における事件とを結びつけて私を批判するような場面があったというふうに私としては承知しておりますが、私自身は、光の事件について言えば、これは司法で裁かれている問題でもございますので、私からこの問題についてとりたてて何か主張するといったようなことはなかったというふうに記憶をしております。

○柴山委員
 繰り返しになりますけれども、法務行政に通じ、そして先ほど来お話があるように、この法務委員会で筆頭理事として治安の問題、死刑の問題についてずっと議論をされてきた平岡議員が、この選挙においてこういうことについて一切口を封じていたというのは、私は全く納得ができない部分があるかと思います。
 時間がもう間もなく経過をしてしまいますので、後で私の持ち時間はもうワンピリオドありますので、残りの質疑はそちらの方にゆだねたいと思いますが、給費制の問題についてお伺いしたいと思います。
 法曹の卵、司法修習生への給費なわけですけれども、従来、国が司法修習生の生活資金を公費の給費で賄っていたところ、平成二十二年の十一月から無利息の貸与制となるはずだった。しかしながら、さまざまな考慮の結果、議員立法によって一年間の給費制の延長ということになっていたわけです。
 先ほどちょっとお話がありましたが、衆議院の法務委員会では、平成二十三年の十月三十一日までに、所要の検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることという附帯決議をされています。
 きょうは十月二十五日、十月三十一日まであと六日間であります。法務省としてどのような検討をされたのか、お伺いしたいと思います。

○平岡国務大臣
 先ほど来からいろいろとお話が出ておりますけれども、法務省の中では、法曹の養成に関するフォーラムというところで、まさにこの法務委員会の決議をしっかりと受けとめるための議論を積み重ねてまいりました。八月にそのフォーラムで第一次取りまとめというものが出ました。
 そこの中身は、貸与制は貸与制でありますけれども、法務委員会の決議の中にも示されているように、司法修習が終わった方々の経済的状況というものをしっかりと踏まえた制度にすべきであるということで、司法修習終了後五年たったところで返済が開始されるわけでありますけれども、そのときのその人の経済状況というものをしっかりと踏まえた制度であるべきだということで、そのために必要な法案の提出の準備を今させていただいているというところでございます。

○柴山委員
 先ほども少し大口委員の方からもお話があったんですけれども、余りにも枝葉末節、びほう的な検討に歪曲化、矮小化されているんじゃないかというように言わざるを得ません。
 この法曹養成フォーラムは、今、給費制、貸与制の問題というものは法曹養成トータルパッケージの一局面として、総合的な検討を加えるという形で発足をしているはずなんです。にもかかわらず、この期限間際になって貸与制の経済的な困窮の状況についてちょこちょこっと検討して、それで今回法案を出そうとしている。
 この法案にも私はいろいろな議論すべき論点があると思っていますよ。それについてはこの後の質疑で突っ込ませていただきたいと思いますので、私の持ち時間は過ぎましたので、ひとまずここで終了とさせていただきます。
 ありがとうございました。

第177回 国会 衆議院 法務委員会

第177回 国会 衆議院 法務委員会 第16号
平成23年6月15日(水)
午前十時三十分開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 今回、私たち自由民主党の第三次提言におきまして、相続の承認または放棄をすべき熟慮期間を延長してほしいという要望を出していたところでしたので、こうして対応していただいたことには率直に感謝を申し上げたいと思います。
 ただ、先ほどもお話がございましたとおり、私どもの提言は五月中に既にされておりますので、時間的に大変時間がかかり過ぎているんじゃないかなということには不満を申し上げたいと思います。
 さらに、幾つか伺いたい点がございます。
 まず、今回の大震災で多数の相続が発生してしまって、その相続人の救済のために一律の熟慮期間延長処理をする必要性があることはわかります。しかし、震災の前に相続が発生していて、通常であればあと一日で相続放棄のできる三カ月が経過してしまうはずだった方が、たまたま三・一一の災害があったからといって、こうした震災で相続が発生した方々と全く同じ救済を受けるというのは、公平の観点から問題だとお思いになりませんか。提出者、いかがでしょうか。

○階委員
 柴山委員にお答えします。
 今の点は、提案者としても、立案段階で悩んだ点でございます。震災前に相続の放棄の熟慮期間が進行中の方々を救済の対象にすべきかどうか、かつ、今御指摘のような残り一日というような人まで救済の対象にすべきかどうか、その点は悩んだわけでございますけれども、たとえ残り一日であっても、その最後の一日に大災害が起こった、そして、相続する財産、それまではプラスだったかもしれない、しかし、震災によって家も店舗も漁船も何もかも流されて、今度は、プラスだと思っていたのが大きくマイナスになっているかもしれない、そのように状況が大きく変化し得る今回の大災害でございます。
 したがいまして、熟慮期間が現に進行中だった方々についてもこの際救済対象にすべきではないかというように考えまして、このような立案をさせていただきました。

○柴山委員
 最後の部分は理由になっていませんからね。
 というのは、震災前に例えば単純承認をした人は、これでは救われないんですよ。単純承認をした後、この震災によって財産が失われたということと、さっき言った一日残っているという利害状況というのがそんなに違うのかということは、今、階議員が御指摘になった最後の理由によっては、私はちょっとやはり不均衡というのは説明できないんじゃないかなと思いますので、まずその点を申し上げたいと思います。
 それともう一点。民法の時効であれば、期間の途中でも、一定の事情があれば、リセットをして、改めてすべての進行を始めるという中断制度というものはございます。しかし、天災などの場合は、そういった障害がなくなってから二週間は時効が完成しないという意味での時効停止制度が認められているにすぎず、これと同様に考えた場合には、先ほど私が申し上げたように、震災前に相続開始を知った被災相続人に関しては、災害復興、ひとまず、一段落させる日を法定した後、より短期に権利関係を確定させることとすべきではないでしょうか。あるいは、相続を知ったのが震災の前後を問わず、震災から一定の日までに一律に残存期間の進行を停止させる、こういうふうにすることが簡明かとも思われるんですが、以上のような二つの道については考えられないんでしょうか。

○階委員
 まず、震災前に相続の開始を知った人について二通りのやり方、一つは、一定期間を置いて、三カ月というよりも短期に権利関係を確定するということでございますけれども、それについては、私どもは、確かに御指摘のようなことも考えられるかと思いますけれども、やはり一律に制度を構築するということがわかりやすいのではないかということでございます。
 それからもう一点、震災前に、平時の状況で熟慮期間が一カ月なり二カ月なり進行していたわけでございますから、その部分についてはもうカウントせずに、残った、残存期間の分だけ熟慮期間を延長すればいいのではないか。例えば、我々の考え方に沿えば、八月末から残り期間一カ月なり二カ月ということで考えればいいのではないかということでございますが、いろいろ委員の御指摘も踏まえてまた議論もさせていただきましたけれども、やはり、相続を知った日がいつであるかということが、震災の結果によって証明するのがなかなか難しいこともあるのではないかという問題があるかと思います。
 したがいまして、相続を知った日ということを立証せずとも、しっかり必要な期間は熟慮できるという意味では、八月末から三カ月という期間を設けてあげるというのが震災前の相続人に対しても望ましいのではないかというふうに考えました。

○柴山委員
 ちなみに、財務省にお伺いしたいんですけれども、国税通則法では、十一条で、災害その他やむを得ない理由によって期限までに申告などをできないときは、政令で定めるところにより、その理由のやんだ日から二カ月以内に限り、当該期限を延長することができると定められています。この手続は、今回の震災に当たってはどのように適用されているのか、また、今回のこの相続に関する熟慮期間の扱いとのバランスをどう考えたらよいのか、御説明ください。

○尾立大臣政務官
 柴山委員にお答えいたします。
 国税における申告期限の延長、特に災害等に関しての質問でございますが、今委員御指摘のとおり、国税通則法第十一条においては、災害その他やむを得ない理由により申告等の行為をすることができないと認められるときは、政令で定めるところにより、その理由のやんだ日から二月以内に限り、期限を延長することができるとされております。
 この理由のやんだ日ということでございますが、これは、申告等をするのに差し支えないと認められる程度の状態に復した日、この日を起算日といたしまして、国税庁長官または税務署長等が二月以内の日を延長期限の期日と指定することとしております。
 現在どうなっているかということでございますが、震災発生後、三月十五日に、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県の五県全域をこの延長の対象地域と指定をいたしました。そして、今も継続中でございますが、一部、青森県及び茨城県、これは比較的被害が軽微と判断し、もう申告の準備ができるということで、平成二十三年七月二十九日を延長期限の期日と指定をさせていただいたところでございます。

○柴山委員
 まず、エリア的には、青森と茨城が今、七月二十九日という形でおしりを区切ったというか、期限を到来させたという扱いにしたんですけれども、災害救助法の適用地域を見ますと、青森は除外されていて、茨城は入っているんですよね。ですので、国税とこの相続とでエリアの不均衡、扱いの不均衡というものが生じてしまう。これは一体どのように考えたらいいのか。ちょっと通告していないんですけれども、もし説明があればお伺いしたい。
 あと、今御説明があったように、要は、申告ができる期間を終わり二カ月間延長するということですから、それは別に、既存の権利関係を、例えば時効の中断のようにフルに延長させる、例えば、相続税の申告期間がそれより長い場合には、それには全く影響しないというようなことで間違いないですか。

○尾立大臣政務官
 済みません、税法上の扱いだけ私の方から御説明させていただきますが、先ほど青森、茨城の両県のことの質問がございました。実は、なお書きがございまして、この二県についても、個別の申請によって、どうしても申告ができないという場合にはさらなる延長ができるということになっております。
 以上、国税の扱いでございます。(柴山委員「あとの質問に答えてください」と呼ぶ)

○階委員
 国税のお話だったかと思いますけれども、多分、委員の問題意識をそんたくさせていただきますと、我々の法案は、遡及効というものを設けて、一たん熟慮期間が終わったものについても復活させるとか、あるいは熟慮期間の残存期間が短いか長いかにかかわらず一律延長している、そこが国税とは違うのではないか、こういう問題意識なのかと思います。
 しかし、この点については、先ほどの繰り返しになるかもしれませんけれども、今回の震災によって状況が大きく変わったということで、私どもは一律に十一月三十日というふうに定めさせていただいたということでございます。

○柴山委員
 よく理解できません。
 次の質問に移らせていただきます。ちょっと先ほどの質疑の中で納得のできない質疑がありましたので、確認をさせていただきます。
 震災後の承認、単純承認でしょうか、個別の事情によるというような御答弁があったかと思うんです、その効果が。要するに、動機の錯誤に当たるけれども、その動機が表示されていないから、それが必ずしも効力を有しないというようなお話だったんですが、これは条文を読むと、明らかに、震災後の法定単純承認については、猶予、延長ですね、相続熟慮期間の延長の保護を受ける、震災後の法定単純承認であれば。要するに、相続人の債権者の保護というものは一歩後ろに下がるとしか読めないですよね。だって、これは当該相続人についても適用されると。
 発災日前の法定単純承認はこの限りではないと書いてあるわけですから、これを反対解釈すると、発災後の法定単純承認事由においては、これは法定単純承認というのは意思表示ではありませんから、要するに、事実関係に対する債権者の保護というものを優先するために、それを承認と同じように扱うというのが法定単純承認ですから、これについては、やはり、発災後にそういう事情が生じた場合は、例えば財産の処分とかそういうものは一律に、やはりもう一回相続放棄をし直すことができるというように解釈しないと、私は、法文にも適合しないし、法定単純承認のもともとの趣旨にも合致しないと思いますので、そこをちょっと確認させてください。

○江田国務大臣
 熟慮期間経過後に、そして本法律案の施行前に、単純承認を意思表示によって行った場合には、錯誤という問題が出てき得る。ただし、その錯誤は、その場合にはこれは動機の錯誤ですから、表示をされていなければ法律行為の錯誤による無効という問題にはならないので、そこのところの、法律が後からできて、何もしなければ、遡及適用で熟慮期間が十一月の三十日まで延びるということについて錯誤があったということが法律行為にどういうふうに影響するかということは個別の事情によるということを申し上げたのであって、法律行為の錯誤の問題を今申し上げたところでございます。

○柴山委員
 繰り返しになりますけれども、あくまで法律行為の効力の問題であって、この熟慮期間の延長には当然影響しない、そこは間違いないですね。

○江田国務大臣
 私が先ほど御説明させていただいたのは、法律行為の効力の問題です。

○柴山委員
 続きまして、住所の意義についてお伺いしたいと思います。
 今回の法案の文言によれば、東日本大震災におきまして、先ほど申し上げたとおり、災害救助法が適用された市町村の区域に震災時に住所を有していた者となっておりますけれども、この住所の有無の判断に住民票の登録というものは関係がないということを再度確認させていただきたいと思います。

○辻委員
 住民登録の有無というのは、そこを実質的な住所としているということを推測させる資料としては重要でありますけれども、民法上の住所というのは生活の本拠とするということでありますから、住民登録の有無とは関係なく判断されるということで間違いありません。

○柴山委員
 それでは、震災時に単身赴任をしておられた方が相続人になった場合というのはいかがでしょうか。また、介護のためにその地に滞在をしておられたというような方はいかがでしょうか。

○辻委員
 お答えします。
 いずれも、具体的な事情によって裁判所により判断されるということでありましょう。
 単身赴任の場合には、やはり、赴任期間の長短とか、家族のもとへの往来の頻度等の事情を勘案して判定することになりますし、介護のための滞在の場合も、その滞在期間等を勘案して判断する。いずれにせよ、個別の事案における具体的事情を具体的に判断して、裁判所により認定されるものと考えております。

○柴山委員
 それはいかがなんでしょうか。
 今言ったような、個別の事情によって住所かどうかを判断するというその考え方自体は私は正しいと思うんですけれども、いかなる疎明資料があればそのような住所地性というものが判断されるかということでございます。

○辻委員
 例えば、郵便物が届いているとか光熱費の支払いをしているとかいうようなものも具体的な判断材料でありましょうし、通勤証明や通学証明というものがその地域でとれるということであれば、それも具体的な資料として有益であります。また、近所の人とか友人、知人が、確かにそこに住んでいたとか日常生活をしていたという、例えば陳述書をとったり証言をしていただくということが具体的な判断材料となると思います。

○柴山委員
 しかし、先ほどの階議員の御答弁によると、そういった個別の、例えば、相続が発生したかどうかというものがわかった時期というものを判断する資料が流されてしまったから一律三カ月間にするという御説明があったわけですね。
 相続を知ったということの疎明資料はなくなっちゃったけれども、住所地かどうかということを判断する例えば光熱費等の領収書は持っているということを考えるのは、私はちょっとおかしい立論じゃないかなというように思うんですけれども、いかがでしょう。

○階委員
 私が今考えますに、やはり、相続を知ったかどうかというのはすぐれてプライベートなことで、なかなか自分以外に証拠資料を持っている人は少ないのではないか。
 一方で、どこに住んでいるかということは、先ほど辻委員もお答えになりましたけれども、学校であり職場であり、あるいは隣近所の人であり、周りの人から証明していただける可能性が高いのではないかということで、私どもとしては、委員御指摘の点について、特段矛盾はないのかなと思っております。

○柴山委員
 ひとり暮らしの方もいるでしょうし、周りの方々がみんな津波で流されてしまったというような方もいらっしゃるでしょうから、私は、それは程度問題だと思いますよ。
 次の質問に行きますけれども、これは、発災時には当該エリアに住んでいたけれども、事後的に域外の仮設住宅に避難をしたというような方々については含まれるんでしょうか。

○辻委員
 発災時にそこを生活の本拠としていたかどうかが判断の基準です。

○柴山委員
 先ほども桑原委員の方から御質問がありましたけれども、遠く離れたところに避難をされておられる方々は、今回のこういった処理についてほとんどわからないと思うんですね。ですので、それに対する周知徹底方法というものが非常に重要になると思うんですけれども、こういった域外に避難しておられる方々への周知というのはどのようにされるおつもりなんでしょうか。

○辻委員
 例えば、私の選挙区の堺にも、被災地の方々が約百世帯の規模で避難されておられます。ですから、全国あちらこちらに避難をされている被災者の方々には、やはり最終的には市町村で具体的に周知徹底を図る必要があるだろう。
 ですから、法務省の方でウエブサイト等々で周知されることとあわせて、先ほど桑原委員への大臣の御回答にもありましたけれども、とりわけ市町村に対してその周知を徹底させるということが重要かなと考えております。

○柴山委員
 くれぐれも、不都合、また救済の手が漏れないようにお願いをしたいと思います。
 私の質問は以上です。ありがとうございました。

第177回 国会 衆議院 法務委員会

第177回 国会 衆議院 法務委員会 第15号
平成23年5月31日(火)
午前九時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 今も少し出ましたけれども、今回の、コンピューターウイルス作成段階で処罰可能とする法案は、私たちが前政権で治安確保のため必要だと考えて一体として提出した法案のうち、組織的な犯罪の共謀を処罰可能とする部分を落としたものです。
 ともに、現行法の処罰範囲を、実害発生以前の行為という点で拡大することを内容としながらも、国会で承認した条約に基づく法整備であって、一方の共謀罪はあれだけ強硬に反対だとしておきまして、一方のコンピューターウイルス作成罪は結構ですという方針に、民主党との調整はきちんと済んでいるんでしょうか。

○江田国務大臣
 きちんと済んでいると理解をしております。

○柴山委員
 済んでいたらいいんですけれども、前々回の質疑で橘委員から、民主党の法務部門会議では、相当これは異論であったり反対というものが相次いでいたのですが、何かいつの間にか結局決まってしまって、法案が提出をされてしまったんじゃないかといった印象を持つものでありますというような御指摘もありますし、また、橘委員のブログでも、手続上の問題ということがるる書かれているように思います。
 さはさりながら、民主党の党内手続が仮に済んだといたしましょう。今御指摘のあった共謀罪については、これはどうなっているのかということについてぜひお伺いしたいと思います。

○江田国務大臣
 前政権といいますか、一昨年の九月の政権交代以前の政権が提案をされておりました共謀罪、いわゆるつきですが、これについて民主党として反対という態度を決めているのは、これは事実でございますが、そのときに出されましたさまざまな問題点を踏まえて、条約締結のための国内整備にどういうものが必要であるか、可能であるか、これは党としても十分検討をこれからしていただけるものと思っております。
 共謀罪というのは犯罪の実行に着手する前の段階の処罰、コンピューターウイルスは作成という実行行為が行われた場合の処罰でありまして、根本的に違うので、そこは、先ほど委員の御質問の冒頭にありました点はちょっと見解を異にするかなと思っております。

○柴山委員
 ところが、これまで累次の共謀罪での質疑におきまして、例えば対象犯罪を絞り込むですとか、今、江田大臣がおっしゃったように、純粋たる共謀はやはり処罰の対象とするのはおかしいんじゃないかというような御指摘を受けて、明確な外部的行為というものを伴った形でやはり処罰をするというような、さまざまな限定の方向での修正ということも議論されてきたことも事実なんですね。
 コンピューターウイルス作成罪についても、いろいろと濫用のおそれがないように修正をしているわけですから、これとしっかりと理論的な一貫性を貫くような形で共謀罪についてもぜひ検討していただきたいと思うんですけれども、江田大臣は、これに対して、新規立法が必要かどうかはいろいろ意見があるというようなことも、今お話があったように前回質疑でおっしゃっていますが、結局、いつまでにどうされるんですか。

○江田国務大臣
 これは今、この委員会でもいろいろ御質疑があったところで、両方の意見もございますし、また関係省庁との協議も十分進めていかなければならないことでございまして、いつまでにという確定的な日時を今お答えする段階には至っていないと思っております。

○柴山委員
 しかし、コンピューターウイルスに対する対応も喫緊の課題かもしれませんけれども、さまざまな組織犯罪だとか暴力団とかあるいはテロへの対処ということも、これもやはり国際的な喫緊の課題でもあります。
 前回の質疑で、組織犯罪防止条約の五条に定める共謀罪または参加罪の立法化などの措置がなければ結局条約上の義務を果たしたことにはならないと、同僚の稲田議員などの質問に対して外務省が明確に答弁をされていましたが、これについて再度確認をさせていただきたいと思います。

○武藤政府参考人
 お答えいたします。
 国際組織犯罪防止条約、TOC条約でございますけれども、この五条1、これは、重大な犯罪を行うことの合意または組織的な犯罪集団の活動に積極的に参加することの少なくとも一方を犯罪とするということを義務づけてございます。したがって、この条約を締結するに当たっては、上記行為のうちいずれか一つが犯罪とされている必要があると考えております。
 TOC条約につきましては、平成十五年に国会承認をいただきまして、その国内担保法についての議論がなされてきたところでございますけれども、TOC条約の締結に伴う法整備については、これを進めていく必要があると考えておりますが、条約に従っていかなる形で進めるのが適当かという点も含めて、関係省庁との間で協議をしながら検討を行っているところでございます。

○柴山委員
 必要性はありますし、今お話があったように、やはり何らかの形で、どういう形をとったらいいのかということは協議をしなければいけないわけですから、くれぐれも立法不作為というようなそしりを免れないように、どういう検討が行われているかということも含めて、しっかりと……(発言する者あり)辻議員、ちょっとやじを飛ばさないでください。しっかりと議論の状況については委員会でも明らかにしていただくようにお願いしたいと思いますが、いかがですか。

○江田国務大臣
 これは、今まさに関係省庁がしっかり議論をしていくべきことであって、その議論については、もちろん委員会での審査の対象になるものと思います。

○柴山委員
 次の質問に移りますが、事前には通告をしていませんが、先ほどちょっと大臣の答弁をお伺いしていて気になる点がありましたので、一点確認をさせていただきたいと思います。
 フリーソフトウエアのバグの問題で、バグがあることを知りつつも、引き続きそれをインターネット上の提供状態に置いていた場合に、提供者にウイルス提供罪、ウイルス供用罪が成立するかどうかというところで、大臣は、成立する可能性はあるんだけれども、ただ、目的として、損害や誤作動を与えるというような積極的な目的を持っていなければこれを処罰できないというようなお話をされていたのかなと思うんですけれども、ただ、これは条文を見ると、目的はあくまでも「電子計算機における実行の用に供する目的」というように書かれておりますので、大臣がおっしゃったような目的を私は限定の材料にすることはできないんじゃないか。
 もちろん、利用者の推定的な承諾、推定的という言葉を使うかどうかはともかく、それは一つ根拠になります。あと、正当な理由なくといって、つまり、やはり一定のそういったバグがあっても、それを上回るさまざまな効用というものがあれば、これを提供し続ける正当な理由があるのかどうか。そういうようなところで縛りをかけるのはともかく、条文上、やはりこの目的のところで限定というものをすることはできないんじゃないかなというように思いますので、江田大臣、先ほどの御答弁を繰り返してください。

○江田国務大臣
 条文の一つ一つの文言についての細かな解釈ということになりますと、私もよく吟味をしながらお答えをしなきゃならぬかと思いますが。
 全体にこれは故意犯で、そしてもちろん故意は積極的な故意だけじゃなくて未必の故意と言われるものもあるわけですけれども、やはりそういう故意犯であるということは一つの縛りになるし、さらに、フリーソフトウエアというものが持っている社会的な効用、フリーソフトの場合にいろいろなそういうフリーズなどのことが起きるということをあえて引き受けながら、しかし、フリーソフトの世界をより有効に、有用に社会的に活用していこう、そういう、ここへ参加をしてくる者の多くの認容というものはあるわけで、そういう意味では、ある程度のバグ的なものがあってもこれは許された危険ということになっていくのだと思いますし、そこはまた、もし時間がありましたら、この条文の一語一語について細かなコンメンタール的な解説というものは必要かと思います。

○柴山委員
 今御指摘のように、許された危険というのは一つの考え方かと思います。
 続きまして、保全要請の問題について質問をさせていただきます。
 今回、通信履歴の電磁的記録の保全をプロバイダーなどに要請する制度を新設するに当たって、書面によることとするとともに、要請主体を検察官、検察事務官や司法警察員に絞りました。そしてまた、「差押え又は記録命令付差押えをするため必要があるとき」に限定をいたしました。しかし、これらはいずれも捜査側の行為規制であって、濫用防止として不十分じゃないかという指摘もあるところです。
 そこで、大臣に伺うんですけれども、この保全要請の運用状況の国会報告など、外部の目を入れる制度について検討されていますか。

○江田国務大臣
 濫用防止について、保全要請をする側にいろいろな縛りをかけるということで濫用にわたらないようにしようという努力をしてまいりまして、ここまで歯どめをかけますと、濫用ということは考えがたいと思っております。
 さはさりながら、やはりどの程度の件数、どういうものがあったか、そうしたことを把握して事後的に報告をする制度を設けてはどうだという御指摘については、そういう御指摘をいただいているところでございますが、なかなか、捜査現場の負担のことも考え、また、迅速かつ機動的な捜査に支障が起きるかといったことも考えていかなければいけませんので、そうしたことを総合勘案いたしますと、これが濫用にわたらないよう適正に運用されること、これの周知を十分していき、そして、それを踏まえた上で、運用を見守らせていただきたいと今のところ思っております。

○柴山委員
 ちょっと今の御答弁には納得できません。というのは、今申し上げたとおり、書面によって要請するということを義務づけているわけですよ。紙が出ているわけなんです。紙の枚数を数えれば、すぐにそんなもの、事務作業なんかは必要なくわかるわけですよね。
 また、緊急性というふうにおっしゃいましたけれども、これは別に、捜査の途中に出せなんて私は言っているわけではありません。実際に捜査を遂げ、そして、要請の後に続く差し押さえなんかも終わった形で、その件数ですとかあるいは要請した理由、こういうものをただ統計的に報告させればいいということですから、これに例えば警察上の何か手間が過大にかかるということは全く考えられないと思うんですけれども、警察庁、いかがですか。

○樋口政府参考人
 通信履歴の確保は、私ども、サイバー犯罪の捜査、検挙が非常に大きな課題になっていますけれども、それだけではございませんで、各種の犯罪捜査で、被疑者特定で欠かせない捜査事項でございます。
 現状におきましても、御承知のとおりでございまして、通信事業者の通常の保存期間の制約があるものですから、現状でも、捜査の進捗状況を踏まえて、必要があると考えた場合には、関係の通信事業者に対しまして特定の通信履歴の保存をお願いいたしておるところであります。その際には、過度の負担にならないように、十分な配意をしながらやっておる。
 ただ、件数的には、申し上げますと、サイバー犯罪に限らず、さまざまな犯罪捜査で必要があるものですから、サイバー犯罪の検挙だけでも、昨年、年間で約七千件ございます、等々勘案をいたしますと、保全要請の件数は相当多数になるものですから、仮にこの報告が求められるということになりますと、捜査現場にとりましては非常に大きな負担になるのではないかと危惧をいたしております。

○柴山委員
 紙の枚数を集計して出すということに、そんなに私は、そんな十万件も二十万件もあるなら話は別ですよ、負担があるとは到底思えませんので、ぜひこれを国会報告の対象にしていただきたいということを、この法案とは別に強く要請させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

第177回 国会 衆議院 法務委員会

第177回 国会 衆議院 法務委員会 第11号
平成23年5月17日(火)
午前九時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 昨日付で、中村明福島地検検事正を交代させるという人事が発表されました。これは、私が三月三十日に質問させていただいた、東日本大震災後、同地検が勾留中の容疑者を処分保留で釈放したことを問題とした更迭処分でしょうか。

○江田国務大臣
 福島地検における委員御指摘の被疑者の釈放、これは、個別の事案について、さまざまな要素を判断してなされたもので、違法であるというようなことはなかったと思っておりますが、しかし、釈放された者が後に同種の事犯を起こすとか、軽微だと言われたものが必ずしもどうかなというようなことがあったとか、あるいは関係の役所との連絡がどうも十分ではなかったのではないかとかいろいろなことが言われて、混乱が生じたこと、これは確かでありまして、反省しなきゃならぬ点もあるし、私も申しわけないということを言ったところでございます。
 そうしたことも踏まえて、さらに、当該検事正の在任期間も相当の期間になっているとか、あるいは震災後の対応で大変な状況にあった福島地検も落ちつきを取り戻してきたとか、関係の役所との連携を一新しなきゃいけないとか、そうしたことを総合勘案して、人心一新の趣旨も込めて、人事異動ということをいたしました。
 委員の御指摘の点も踏まえているというふうに御理解いただければと思います。

○柴山委員
 率直な御答弁、ありがとうございました。
 続いて伺います。
 釈放された被疑者については、その後、身柄の所在の把握や、捜査は進んでいるんでしょうか。

○江田国務大臣
 これは、私は、いろいろな、やれ処分だとか何だとかのことよりも、まずはこの釈放した事件についての捜査をしっかりと遂げて、そして適切な最終処分に全力を挙げてほしいと願っておりました。
 そして、現在、警察ともいろいろ協力をいたしまして、釈放した被疑者三十一名のうち、既に福島地検が発表しております部分もございますが、残りの事件も含めてすべて処分ができる見込みになったというふうに承知をしております。すべての処分が終われば、その段階で検察庁から発表するものと思っておりますが、そういう状況にやっとなってきたということを申し上げておきます。

○柴山委員
 とにかく、被災されている住民の方々に生じる不安というものをぜひ払拭していただきたいと思います。三十一名の方々の中には、私が前回のこの質疑で申し上げたように、住所不定の方もいらっしゃると思いますので、それは今法務大臣が重い御答弁をされましたので、引き続き、この案件の推移については見守らせていただきたいというように思っております。
 法案質疑に先立ちまして、もう一つ確認をしたいことがあります。
 前回の当委員会で、黒岩政務官は、あなたが御自分のキャッチフレーズとしていた越後の暴れん坊という名称を使い、その上、あなたの名前が収支報告書の表紙に載っている登録政治団体の存在をお認めになりました。
 この団体は、あなたを応援する団体ということで間違いありませんね。

○黒岩大臣政務官
 せんだっての委員会でも、私、答弁させていただきましたけれども、私の承知しているところでは、その団体は、その他政治団体ということで、いわゆる二号団体ということだと承知をいたしております。その際に、私のことを応援するという意思を持ったということを、今委員御指摘のような、書面上あらわれているということで承知をいたしております。

○柴山委員
 前回の、同僚である河井議員の指摘によれば、横浜市議会を国旗引きずりおろしという理由で除名された井上桜氏や、拉致犯で指名手配中の森順子容疑者及びよど号ハイジャック犯故田宮高麿容疑者の子供で、三鷹市議選に立候補した森大志氏などが所属する市民の党に、この越後の暴れん坊が献金と選挙応援をしていたということですが、政務官はこれらのことは御存じでしたか。

○黒岩大臣政務官
 それらの事実については、私は承知をしておりませんでした。

○柴山委員
 あなたは、越後の暴れん坊の役員である山本ひとみ市議会議員、菅総理のおひざ元である武蔵野市の市議さんですけれども、この役員の方を御存じだと前回答弁されました。間違いありませんね。

○黒岩大臣政務官
 山本ひとみさんという方が市議をしているということは存じ上げております。

○柴山委員
 前回の質疑後、今私がいろいろと申し上げたことについて、越後の暴れん坊の山本さんを含む役員に事実を確認されるなどの行動をとられましたか。

○黒岩大臣政務官
 事実確認ということがちょっとどういうことかあれなんですけれども、ただ、この前も私、申し上げたんですけれども、私が参議院をしているときに、当時、選挙に向けてさまざまな勝手連が、最初の補欠選挙のときもそうですが、その後の二度目の選挙のときにも多数の勝手連ができたということは、私、承知しております。その中には、例えば私の黒岩という名前を使ったところもあるでしょうし、私のキャッチフレーズを使ったようなところもあるでしょうし、そういった幾つもの勝手連というものができたということは承知しております。
 そのうちの一つが、政治的に、政治団体として多分登録をされたんでしょう。ですから、そういったことで私を応援いただけるんだったらそれはありがとうございますということだったと思います。ですが、その団体がその後、どういう独自の政治活動をされているかというようなことは、私、せんだっても何度も申し上げましたけれども、私自身は承知をしておらなかったということでございます。
 ただ、そういう経緯の中で、時間がかなり経過した中で、もともと私のことは応援してくださる、参議院のときはということは認識しておったんですが、その後、時間の経過によって、応援するとかそういったことも、多分、当初の向こうの団体の意図等とも、今時点では現状が変わってきているという認識もありますので、私の事務所の方からは、先方の団体の方には、私を応援する意図とか団体とかそういったことではないような、そういうような事務的な手続をしてほしいということは私の方から申し上げました。

○柴山委員
 ちょっとわからなかったんですけれども、あなたのキャッチフレーズを冠している越後の暴れん坊という団体で、しかも、あなたの登録政治団体であるというその団体の方に、あなたを応援するという形をとらないでくれというようにあなたの事務所から要望した。
 具体的には、一体どのような手続で何を要望したんですか。もっと具体的に細かく教えてください。

○黒岩大臣政務官
 繰り返し申し上げますけれども、私の団体、黒岩の団体というところは、ちょっと事実の考え方というのがいろいろとあると思います。
 私の場合は、一号団体では、例えば私の資金管理団体とか、私が代表者を務めているような団体が一号団体ですので……(柴山委員「質問に答えていただければ結構です。誤解していませんから」と呼ぶ)今の委員の御指摘のような二号団体ですと、応援をいただく場合は被推薦書とかそういった書類を当初出しておると聞いておりますので、それについて、異動届というのでしょうか、そういった書類を出していただくように要請をいたしました。

○柴山委員
 名称の変更は申し入れましたか。

○黒岩大臣政務官
 名称は、そこは、その団体自体がどういう意図か、主体的にやっておるので、そこまでは申し入れてはおりませんけれども、ただ、誤解を招くようだったら、その活動は……。名称変更については特段何かを申し上げてはおりません。

○柴山委員
 繰り返しになりますけれども、武蔵野市議さんが役員をされていて、それで横浜市議さんですとか、あるいは、今言ったように、三鷹の方から立候補をされた、問題のあるとされる方々がいる中で、越後の暴れん坊という団体、しかも、あなたの名称を付した収支報告書が提出されている、そしてあなたを応援する団体である。これは私は極めてイレギュラーだとしか言いようがないと思っています。
 だから、この名称はやはりあなたとの結びつきを強く推認させるものですから、これは名称も含めて変えさせるのが当然じゃないですか。

○黒岩大臣政務官
 今委員からそういう御指摘を受けまして、それは私としても、また自分なりにしっかりそれは考えさせていただく、きょうはこう答えさせていただきます。

○柴山委員
 そもそも、先ほど来私が申し上げた市民の党ですとか、所属メンバーである井上桜氏の、河井議員がいろいろと指摘をした事柄について、あなたは御自身でどう評価されているんですか。

○黒岩大臣政務官
 これもせんだっての委員会で申し上げましたけれども、ある政治団体は政治団体として独自の活動をされているということだと理解しておりますので、そのことについて私が特段どうこうというのを評価という形でするのは、それは政治団体にとっては政治活動の自由があるというのは一般論としてあると思いますので、それ以上のことは私はなかなか申すことはできないと思っています。

○柴山委員
 ここにあなたのホームページのコピーがあります。「黒岩たかひろブログ 本人が書く活動日記」とあります。この二〇〇二年六月二十八日の部分を今から読み上げます。繰り返します。あなたが書いた活動日記です。
 ところで皆さん、横浜市議除名のニュース知ってますよね。写真は
 このブログには写真が添付されています。
 写真は二十六日付新潟日報の社会面です。
 概説すれば、横浜市議会が議場に国旗を掲揚することに反対した女性市議が二人、議長席を六時間に渡り占有し、強制退場。その後、その責を負って議会の四分の三以上の多数決をもって市議を除名されたと言うもの。
 写真左のきれいな女性が、除名された井上さくら市議。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、この度の補選、一ケ月ほど新潟に入り、私のうぐいすをして下さった方です。さくらさんとは堂本選挙以来の付き合い。当時、「気の強い方だな」という印象でしたが、確かに気は強いが、気さくな素敵な方です。
 今回の騒動での問題点は二つ。一つは国旗国歌法を通過させたとき、国歌斉唱や国旗掲揚の強制はしないと政府は言っておきながら実際には様々の現場で強制が行なわれていること。もう一つは「除名」という重い処分。
 政令指定都市では初めての議員除名。有権者からの負託を受けた議員と言う身分を議会の多数決で剥奪すると言う、およそ民主主義を崩壊させかねない暴挙。
 さくらさんに早速電話したら意外にしょげてました。この事件は新潟日報のみならず全国各紙、朝日新聞にいたっては社説で取り上げるほど。凄まじいパブリシティー効果です。裁判をおこすでしょうから「横浜市議除名処分裁判」として日本の稚拙な議会制民主主義の足跡として後世に残ることでしょう。「功績デカいよ」と伝えたら喜んでいました。
 さくらさん頑張れ。
 これがあなたの日記です。あなたが書いた日記ですよ。(発言する者あり)

○奥田委員長
 御静粛に。御静粛にお願いいたします。

○柴山委員
 先ほど述べたことと違うじゃありませんか。
 そして、前回の質疑、覚えていらっしゃいますか。あなたは、河井議員から、井上議員が「市議会から除名処分を受けている。そのことは御存じ、そしてその理由も御存じでしょうか。」政務官「済みません。その除名云々の厳密な認識というのは、ちょっと私、わからないんですけれども、」こういうふうに御答弁されているんですよ。虚偽答弁でしょう。いかがですか。

○黒岩大臣政務官
 私、率直に正直に申し上げます。
 せんだって指摘を受けたときには、九年前のことで、細かなことは本当に私はもう失念をしておりました。ただ、そのときも、記憶を手繰る中で、何らかの議会で議論というか、多分もめたことがあったなというのは徐々に思い出してきたことは事実です。ただ、それが、一個一個の事実、除名とかそういったことについての正確な記憶はこの前の委員会ではなかったもので、私はそれは率直にそのことを申し上げた次第です。

○柴山委員
 御自分が書いて、しかも写真まで御丁寧に添付して、そして井上議員と電話までやりとりをして、「さくらさん頑張れ。」というように書いておきながら、いや、九年前、日韓ワールドカップの年ですよ、これは記憶にありませんでした、でもだんだん思い出してきました、こんなことで通じると思ったら大間違いです。
 そしてもう一つ。先週の河井議員の質疑の直後、直後です、あなたはこの日記を迅速に見つけ出して、御自分のホームページから削除されましたね。違いますか。

○黒岩大臣政務官
 私もホームページの記述とかについては本当に記憶はかなり薄れておったんですけれども、ある方から、こういった形でブログがあるということで、私、確認しました。先ほど柴山委員がお読みになった内容を私も読みました。ただ、私の記憶の中ではもう一カ所記述がありまして、議場占拠したことはもうこれは明らかに不適当である、井上市議が悪いんだということが書いてありました。
 私は、国旗・国歌法については、私は国旗は間違いなく敬礼しますし、国歌についても大きな声で斉唱いたします。(発言する者あり)いや、それは私は尊重しております。ただ、九年前に……(発言する者あり)

○奥田委員長
 御静粛に。答弁中です、御静粛に。

○黒岩大臣政務官
 九年前に、強制云々が政府の見解としてはいかがなものだろうかと。
 私は、その中でもっと書いてあったのは、私は当時は無所属の議員だったので、多分、私の記憶だと、議会から除名というのは国会でもないですし、無所属の議員が四分の三以上か何かの規定で除名をされるというようなことがあれば、これは大変重いことであると。
 ですから、少数会派であるとか無所属の議員が活動するに当たっては、この除名処分というのはいかにも重いということで、非常に、私は、民主主義というのは、少数派の意見を尊重することも民主主義の一つの大きな要素だと思っておりますので、これを、ともすると、かなり……(発言する者あり)

○奥田委員長
 不規則発言はおやめください。御静粛にお願いいたします。

○黒岩大臣政務官
 かなりその権利を阻害するような、そういったことはいかがなものかということを私は記述したと、その後自分の文章を見て改めてその点は思い出させていただきました。(発言する者あり)

○奥田委員長
 不規則発言はおやめください。御静粛にお願いいたします。

○柴山委員
 ちゃんと井上議員が悪かったということも書いているというふうにおっしゃいました。内容に自信があるんだったら削除なんかしなければいいじゃないですか。河井議員の質問の直後、削除をしなければよかったんです。
 どうぞ皆さん、メモしてください。メモしてください。(発言する者あり)

○奥田委員長
 速記をとめてください。
〔速記中止〕

○奥田委員長
 速記を起こしてください。
 柴山議員の方から、もう一度、政務官の答弁に不足がある、あるいは答弁が入っていないという点がありましたら、再度御指摘をいただきたいと思います。
 柴山君。

○柴山委員
 繰り返します。
 今、黒岩政務官は、御自分の書かれた内容についてるる正当化の弁明を行われましたけれども、御自分のおっしゃっていること、書かれたことに自信があるのであれば、なぜ、河井議員が質問した直後、これを抹消したんですか。ほかの日記の部分については削除されていないんです。この日記の部分だけ削除したんです。お答えください。なぜでしょう。

○黒岩大臣政務官
 前回の委員会質問で、河井委員の方から、例えば他の方に与える印象についてどうかとかと、いろいろなことを聞かれました。
 私は、九年前から今に至っても、それはもちろん私の考え方だってその時々で少しずつ変わりがあります。そして、私の今持っている真意とか本意とか、それが仮に伝わりづらいとすれば、それについては私は訂正しなければいけないという思いがございます。
 ですから、先ほど、私は最後ちょっと結論的な答弁が、的確に答えなくて、それは柴山委員に申しわけなかったんですけれども、今言ったそういった意図はあるんだけれども、とらえようによっては、確かに、ともすれば国旗・国歌に対する否定的な見解ととられかねない。そうなると、それは私の本意と違うことですから、これは明らかに本意と違うことですから、私は、自分の著作物として、その部分は削除をさせてもらったということでございます。

○柴山委員
 いつ削除したんですか。正確な時間をお答えください。

○黒岩大臣政務官
 法務委員会が昼に終わって、その後、その報告を受けまして、私はその日のうちに削除したと思っております。

○柴山委員
 今でも、例えばヤフーあるいはグーグルなどの検索ページで、二〇〇二年六月二十八日、横浜市議除名、黒岩たかひろブログということで検索をかけて、出てきたページのURLを押したら見られないんですけれども、その後のキャッシュという欄をクリックすると、削除された日記を見ることができます。
 黒岩政務官、こうやってやりとりをされた後、この日記は、きちんともう一回、今おっしゃったような留保つきで、復活をさせるおつもりはありますか。

○黒岩大臣政務官
 今、柴山委員の指摘は初めてそういう形で受けたので、どういう形で私の表現をするかは、またこれはちょっと私、考えさせていただこうと思います。

○柴山委員
 江田法務大臣は、前回の質疑で、法務大臣……(発言する者あり)

○奥田委員長
 御静粛にお願いいたします。

○柴山委員
 大臣は、前回の質疑で、黒岩政務官の適格性について疑いはないと述べられました。今のやりとりを聞いて、あるいは、黒岩政務官の答弁内容ですとか、今のさまざまなその後の経過をお聞きになった上で、黒岩政務官の政務官としての適格性に問題はないというお考えに変化はありませんか。

○江田国務大臣
 そうです。変化ありません。

○柴山委員
 市民の党は北朝鮮に近い立場にある疑いが濃厚である、河井議員の質疑から明らかになったと思っています。そして、この市民の党のメンバーが黒岩さんの登録政治団体の管理を行っていたことも、河井議員の前回の質疑で明らかになりました。これからも、市民の党の構成メンバーと黒岩さんの関係は、今の質疑を皮切りに明らかになっていくことだと思います。
 にもかかわらず、黒岩さんは、民主党政権発足後、平成二十一年九月から十二月まで、衆議院で北朝鮮拉致問題特別委員会の筆頭理事でありました。民主党は、拉致問題の担当者にこういった人物を置いていた。大臣は、このことをどうお考えになりますか。

○江田国務大臣
 申しわけありませんが、そのこと自身は私は存じておりませんが、しかし、これは、党の方でそういう決定をしているということだと思います。

○柴山委員
 党人事だからコメントの限りではないということでした。
 それでは、法務省の責任としてお伺いします。
 公安調査庁は、法務省下にあります。菅内閣は、法務大臣政務官として公安情報に関与できる立場に、今さまざまなことを申し上げた黒岩さんを任命されているんです。李下に冠を正さず、日本の国益を守らなければいけないという職責が法務大臣にはおありのはずです。この人事に問題があるとは思われませんか。

○江田国務大臣
 思っておりません。

○柴山委員
 なぜでしょうか。(発言する者あり)

○奥田委員長
 御静粛に。

○江田国務大臣
 今いろいろやりとりをされていますが、まだ私も、ここで聞いて、何が事実であるかというのもよくわかっておりませんし、また、黒岩大臣政務官が公安調査庁が視野に入れている団体とどういう関係にあったかもよくわかっていないので、むしろ、私の判断としては、それはそういうような組織的な関係はないということを私は確信をしておりまして、それ以上でも以下でもありません。

○柴山委員
 ないと確信をしているというふうにおっしゃいましたけれども、あるかないか、どうぞ調べてください。
 この問題は引き続き私どもも追及してまいりますが、時間もありませんので、次に移ります。
 東京電力の株式の問題です。
 枝野長官は、金融機関に東電の債権放棄も求めたというように報じられていますが、法的には、ガバナンスの一端を担う株主がまず損失を負うべきではないでしょうか。上場廃止どころか、新しい国の機構が資本の充実を行うという決定をしたというように、関係閣僚会合の決定、このペーパーは私も思っておりますけれども、報じられています。法的にバランスと透明性を欠く処理は、国際的にも日本の信用性を失わせると思いますが、大臣、どうお考えでしょうか。

○江田国務大臣
 東京電力が今回の原発事故によって負担をする債務をどういうふうに弁済していくか、それについてだれがどう負担をしていくかという話の中で、今の債権者と株主との関係について問題提起をされたものだと思います。
 原子力損害賠償法、いわゆる原賠法では、原子力の事業者は、一元的な責任、無過失責任そして無限責任というものが規定をされております。それを免れる場合というのは、原賠法三条一項ただし書きの場合ですが、このただし書きには当たらないということで今のスキームはできておりまして、しかも、十六条によると、その事業者が十分な賠償ができない場合は、もちろん予算措置の範囲内ですが、国が支援をする、そういうスキームになっておりまして、清算であるとか破産であるとか会社更生であるとか、そういうような手続の場面というのは想定できませんので、私としては、どちらが優劣というような話にはなっていかない。
 株主というのは有限責任でございまして、自分の株券が紙切れになればそれ以上の責任を負うわけではないので、株主が後に追加的に何かの支出を求められるということはあり得ない話だと思っておりまして、そのような認識でおります。

○柴山委員
 株主有限責任のことを今大臣にはお聞きしたんじゃないんです。仮に破綻とか更生の処理がされなくても、法のたてつけとして、やはりガバナンスの一端を担っている株主が、会社債権者である金融機関を初めとした、社債権者も含まれますけれども、そういう方々にあたかも優先して守られるかのごときメッセージが発せられているのは、これは国際社会から見て極めて異例である。これは自民党の関係者のところにも、何で債権放棄を求められて、上場廃止もされていないし、これっておかしいんじゃないかという声が届いているというように実際に私は聞いているんです。
 大臣、再度、法律の専門家として、今議論の方向性がおかしいと思われないかどうか、御答弁ください。

○江田国務大臣
 大変申しわけないんですが、東京電力の負債の弁済の仕方というものは、これは法務省の所管ではないという前提でお答えを申し上げますが、恐らく東京電力に対しては、国も、あるいはこれはこれからいろいろなスキームをつくっていかなきゃなりませんが、原子力発電をしていた他の電力の事業者も、いろいろな形で支援をしていかなければ賠償ができないのではないかなと感じております。
 そういうときに、債権者あるいは社債権者、そういう人にもステークホルダーとして一定の拠出をお願いするということは、これはちゃんとそういうスキームができれば、行われてもいたし方がないことだと思います。
 ただ、その場合にも、今申し上げたとおり、株主であることによって追加の負担が求められるというようなスキームは、これは考えようがないのだと思います。

○柴山委員
 具体的にお話を進めたいと思います。
 今回改正案が提出されている非訟事件手続法、これは株式価格の決定も対象にします。今後、東電を処理する中で、仮に事業譲渡ですとか会社分割ですとか、あるいは一〇〇%持ち株会社をつくるための株式移転といった組織変更を行うとすると、議案に反対する株主はどのような手段をとればいいんでしょうか。

○黒岩大臣政務官
 今委員御指摘の個別の事案については、回答することは適切でないと考えますけれども、ただ、当然一般論としては、株式会社が事業譲渡、会社分割または株式移転をする場合は、反対株主は株式会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができるとされております。そして、買い取り価格については、株主と株式会社との間で所定の期間内に協議が調わないときは、株主または株式会社は裁判所に対して価格の決定の申し立てをすることができるとされております。

○柴山委員
 まさしく非訟事件手続に入るわけですけれども、その際の株式の価格決定について、利害関係を持つ会社ですとか、あるいは他の株主の利益に配慮する必要があるのではないでしょうか。

○黒岩大臣政務官
 確かに、反対株主が株式の価格の決定の申し立てをした場合において、裁判所が価格を決定する裁判をすると、会社はその裁判により拘束されることになりますから、会社については、その手続保障を図るため必要な措置を講ずる必要があると考えております。
 他方、これに対しまして、特定の反対株主が株式の価格の決定の申し立てをした場合において、裁判所がその株主の株式について価格を決定しても、他の反対株主の株式の価格が決定されることにはなりません。したがって、特定の反対株主の価格の決定に係る事件において、他の反対株主については、その手続保障を図るために必要な措置は講じる必要はないと考えております。

○柴山委員
 とすれば、株主や会社がこういった手続に対応する機会を保障するために、例えば、一部株主から、反対株主ですよ、反対株主から買い取り請求というものがあれば、それについて会社や他の株主に、そういった申し出がなされたという通知をするといったような制度は設けられたんですか。

○黒岩大臣政務官
 今委員御指摘のように、このような問題意識のもと、今回の整備法においては、会社法を改正し、反対株主が株式の価格の決定の申し立てをした場合には、会社が反対株主の主張に対し反論する機会を十分に保障するため、原則として、会社に対し申し立て書の写しを送付して、申し立てがあったという事実を知らせることとしております。
 そのほか、原則として、審問の期日を開いて、株主と会社の陳述を聞かなければならず、そしてまた、主張及び反論の期限を設定し、裁判をする日を定めなければならないものとしております。

○柴山委員
 会社はいいんですけれども、今政務官が御答弁になったように、ほかの株主にも事実上大いに影響が出てくるんだと私は思うんです。それはやはり私は等閑視してはいけないというように思っております。
 それに、もう一つ申し上げさせていただくと、今でも裁判所が関係者を審尋するということは行われていると思いますけれども、裁判所の許可を得て参加をすることができるようになるということにどれだけ意義があるんですか。

○黒岩大臣政務官
 お答えいたします。
 委員が今御指摘されたように、これまでも裁判所は、事実の調査として当事者以外の者を審尋し、その言い分を聴取することがあったものと承知をしております。ただ、もっとも、これは、その者の言い分を聞くのみで、その審尋を受けた者は、例えば証拠の申し立て権など手続上の権能を行使することができるものではございません。
 ですから、今回の非訟事件手続法案では、参加制度を設け、参加した者は、証拠の申し立て権など当事者が行使することができる手続上の権能を行使することができるとしているところでございます。

○柴山委員
 そういう意味では、いろいろなことができるようになるということ自体は評価をしたいと思うんですけれども、ただ、今回は、それに加えて和解の制度というものが取り入れられています。
 例えば、株主が理不尽に低い価格で会社と和解してしまった場合に、その効果というものが他の株主などには及ばないということで間違いないでしょうか。

○黒岩大臣政務官
 委員御指摘のとおり、今回の非訟事件手続法案では、第六十五条において和解を可能としております。
 ただ、この和解についてでございますけれども、株式の価格の決定に係る事件では、反対株主と会社との間で和解をすれば、その反対株主の株式の価格を決めることができます。もっとも、この和解は、当該反対株主の株式の価格を決めるのみで、他の反対株主の株式の価格を決めるものではございません。したがって、仮に特定の反対株主と会社との間で例えば低廉な価格で和解が成立いたしましても、他の反対株主の株式の価格の決定に法律上の影響を及ぼすものではない。ですから、他の反対株主に悪影響を与えないものと考えております。

○柴山委員
 そこが不徹底だと思うんですね。
 やはりアメリカなんかでは、例えばクラスアクションなんかで、あるクラスター、層の一部から法的手続があった場合には、同じような立場にある方々にそれについての告知を広くされるというような制度もあります。私は、手続保障ですとか関係人の立場というものを考えるんだったら、やはりそういったことまで踏み込んで対応するべきだったというように思っております。
 端的に伺いますけれども、訴訟事件の扱いと今回の改正法での非訟事件の扱い、それはどこが違うんですか。

○黒岩大臣政務官
 これも委員の御指摘のとおり、今回の非訟事件手続法案では、例えば証拠調べや電話会議システムなどに民事訴訟法の手続に類似した制度を導入しております。
 ただ、もっとも、非訟事件の手続は民事訴訟に比して簡易迅速に処理すべきものであり、よって憲法上の公開の要請がございません。そこで、そのような特質を踏まえて、民事訴訟では必ず弁論期日を開き、そして弁論を公開しなければならないのに対しまして、大きな違いとしては、非訟事件の手続では、その審理は非公開とし、期日を開かなくても裁判をすることができるとされております。
 ただし、非訟事件の中にも紛争性がある事件もあることから、個別法におきまして、例えば借地非訟やきょう議論になりました株価の決定の申し立て事件などの会社非訟の一部などは、期日を開かなければ裁判をすることができないこととしております。

○柴山委員
 公開の原則が必ずしも貫徹されていないというふうにおっしゃったんですけれども。
 今回、利害関係人の記録閲覧権というものについて定められましたが、利害関係人については裁判所の許可に係ることとなっているんですね。当然認められるべき労働審判事件などとの不均衡というものが私は指摘され得るというように思っているんですけれども、同じ訴訟ではないにもかかわらず、これはどのように説明されるんですか。

○黒岩大臣政務官 
 お答えいたします。
 非訟事件一般におきましては、この非訟事件手続法案の閲覧、謄写等の規定は、特段の定めがない限り広く非訟事件一般に適用されますけれども、非訟事件の中には、紛争性の程度、そして収集される証拠の種類や秘匿性の高さ等においてもさまざまなものがあり得る。
 そこで、非訟事件手続法案においては、このような多様な事件に対応できるように、閲覧、謄写等の請求が当事者からされた場合と利害関係を疎明した第三者からされた場合とでは、要件を異にしつつも、いずれについても閲覧、謄写等を許容しない場合を認めることとし、それぞれ要件に該当するかどうかを判断するために裁判所の許可に係らしめております。
 他方、これに対しまして、労働審判法が手続を規定している労働審判事件は、紛争当事者の利害の対立が顕著な事件であるため、当事者等が裁判資料を十分に了知した上で主張、反論をすることができるようにする必要がございます。そのため、労働審判手続においては、当事者及び利害関係を疎明した第三者は特段の例外なく記録の閲覧等をすることができるものとするのが相当であり、裁判所が許可を通じて記録の閲覧等を認めるか否かを判断すべきものとはしておりません。
〔委員長退席、牧野委員長代理着席〕

○柴山委員
 ぜひ、許可において不明朗な運用がなされないようにお願いしたいと思います。
 そして、改正法では、鑑定によらないで機動的に専門的な知見を活用するために専門委員制度の創設を決めました。
 ただ、非訟事件には借地条件の変更なども含まれまして、今回の東日本大震災で、こういった借地条件の変更などのニーズは非常に大きくなることも予想されます。当局として、専門委員の確保、恐らく鑑定士などだと思いますけれども、こういった問題をどうするかなどの対応は考えておられるんでしょうか。

○永野最高裁判所長官代理者
 お答えいたします。
 専門委員については、既に訴訟事件の審理のために専門家が専門委員に任命されておりますので、これらの専門家を非訟事件においても利用していくことが考えられますほか、さらに、事件の動向を見ながら、必要な分野の専門家の確保に機動的に当たってまいりたいというふうに考えております。
 また、御指摘のように、借地非訟の分野では、専門家が鑑定委員という形で必要になってまいります。被災地におけるニーズ等も把握しながら、こういった形での専門家の確保についても遺漏のないよう適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

○柴山委員
 最後に、家事事件手続法の改正案について伺います。
 当事者の権利を強化する方向には一定の評価ができると思うんですけれども、子供の陳述の聴取について、各法条で十五歳以上に限定されている趣旨は一体何でしょうか。

○黒岩大臣政務官
 十五歳以上に限定している理由についてお答えさせていただきます。
 子の陳述聴取とは、子から言語的表現による認識、意見、意向等を聴取するものであるから、子の陳述を聴取するためには、子がみずからの認識を表現し、または意思や意向を表明することができる能力があることが前提であると考えております。
 したがって、そのような能力がある程度に発達した子から陳述を聴取すべきということになりますけれども、それぞれの子の発達の程度には個人差がございます。他方、陳述聴取を必ずしなければならない対象者を法律で定めるためには、明確な基準を定めなければいけないことから、従前の例に倣いまして、少なくともその年齢になれば陳述を聴取することができると考えられている十五歳を基準とした次第でございます。〔牧野委員長代理退席、委員長着席〕

○柴山委員
 委員の方で、今のやりとりをお聞きになっておられる方は、先日私が合同委員会で質問した親権の停止や喪失などの質問で、何で子供単独でできるんだということを聞いたのを御記憶だと思うんですね。意思能力があれば特に申し立てができるというふうにしているんですよ。なのに、証拠方法だとか陳述を聞くというのに必要的な要件として十五歳以上に限るというのは、これは私は筋が通らないと思う。通らないんじゃないんですか。

○黒岩大臣政務官
 お答えさせていただきます。
 民法等の一部改正では、十五歳未満の子であっても意思能力があれば親権喪失等の請求をすることが可能となっております。
 十五歳未満の子の取り扱いについてでございますが、陳述聴取について、家事事件手続法案では、家庭裁判所は、子の陳述の聴取、家裁調査官による調査その他の方法により、子の意思を把握するように努め、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならないとされております。
 そのことから、十五歳未満の子であっても、陳述聴取が常に不要ということになるのではございません。その子に意思能力があり、手続行為能力が認められる場合など、その年齢や発達の程度等を考慮して、陳述聴取の方法により子の意思を把握することが適切であると家庭裁判所が判断するときは、十五歳未満の子であってもその陳述が聴取されることになりますし、たとえそうでない場合であっても、他のさまざまな方法により、子の意思の把握に努めることとなる、そういう次第でございます。

○柴山委員
 ぜひ、さまざまな法律の間の整合性というものをしっかりと検討してやっていただきたいと思います。
 それから、政務官においては、今の答弁だけじゃなくて、やはり私が最初に質問したことにも、きちんと国民が納得できるような、そういう答弁を改めてしていただきますように、これから質問続きますから、ぜひよろしくお願いいたします。
 以上で質問を終わります。

第177回 国会 衆議院 法務委員会青少年問題に関する特別委員会連合審査会

第177回 国会 衆議院 法務委員会青少年に関する特別委員会連合会審査会 第1号
平成23年4月20日(水)
午後一時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 今回提出されている親権についての民法改正案についてですが、二〇〇〇年、平成十二年に、実は民主党が議員立法案をまとめています。そこでは、子供に対する懲戒について定めた民法八百二十二条は削除することになっていましたが、江田大臣は当時、党内でどのようなお立場でしたか。

○江田国務大臣
 かなり古いことなので十分記憶をしていないんですが、資料をいろいろ調べましたら、当時、民主党の司法ネクスト大臣というものを務めておりました。これは、詳しい説明はいいかと思いますが、影の内閣ではちょっと暗いので、明日の内閣というものをつくりまして、ネクスト大臣という制度を入れて、その司法を担当していたわけでございます。

○柴山委員
 そして、今回は、表の大臣として法案を提出されたんですけれども、この法案では、先般から出ているとおり、条文が削除されておりませんけれども、なぜでしょうか。端的にお答えください。

○江田国務大臣
 経過を調べてみますと、当時、民主党が用意をしました児童虐待の防止等のための体制の整備に関する法律案、これは、私は司法ネクスト大臣ですが、千葉景子男女共同参画・人権・総務ネクスト大臣がネクストキャビネットに提案をして、了承を受けております。そこで、私から提案しているものではなくて、しかも、これは国会には提出をされていないものでございまして、最終的に国会に委員長提案で現在の児童虐待防止法が提出されて、そして成立をした、そういう経過でございます。
 さはさりながら、私どもが取りまとめました今の児童虐待防止の法律案では、民法改正をして、懲戒というところを削除することになっているのは事実でございます。それは、その当時の、これはプロジェクトチームがございまして、田中甲座長のところでそういうものを取りまとめたということでありまして、民主党の中の議論でそうなった。
 今回は、私どもが提案をさせていただいたのは、さまざまな識者の皆さんから、法制審の答申なども含めて議論をしていただいて、懲戒権というものを削除する案ももちろん検討されましたが、しかし、さまざまな事情から、今懲戒という言葉を削除することによってかえって誤った認識を広げることになってはいけない、それよりもむしろ、懲戒という言葉は残しながら、ただし、これは子の利益のために行われるものですよ、そのことを明確に記述することの方が、社会の誤解を防ぎ、児童虐待を防ぐことに資するのではないか、そういう思いから今回の文言ということになったわけでございます。

○柴山委員
 長い御答弁でしたけれども、短くまとめると、いやいや、自分はネクスト大臣だけれども、実際にこれをまとめたのは千葉景子さんだよと。それから、学べば学ぶほど、やはりこの条文を削除するといろいろ問題がある。
 確かに虐待は許されないことです。しかし、条文を削除することは、当然、先ほど来お話があるように、必要なしつけまでもが許されないという誤った考え、イデオロギーと言ってもいいかもしれませんが、こういうことを広げかねないわけです。当時、大臣は、ネクスト大臣という立場にありながら、そういう御発言をし、そして党内論議に生かしてこなかった。このことは私はしっかりと反省していただかなくてはいけないというように思って、次の質問に移らせていただきます。
 これまでは、親権の喪失などについて家庭裁判所への請求権を有していたのは、子の親族と検察官に限られていました。これを今回の改正法では、子供本人にも請求権を認めています。
 しかし、児童の裁判申し立ては有効なんでしょうか。具体的に何歳の子供がどう請求することを想定しているんですか。

○江田国務大臣
 この法律案では、年齢を問わず、意思能力がある限り子に請求権を認めるということにしております。子供がそういう家庭裁判所への親権喪失等の申し立てをすることができるか。これはできるということにしているわけです。
 ただし、もちろん、そういうことを行う意思能力がなければそれは当然できないわけでありまして、実務では、十五歳以上であれば、特段の事情のない限り、意思能力があるものとして本人の申し立てを認めているということだと承知をしております。
 それ未満の年齢ではだめだと一律に決めるのではなしに、まさに事案ごとの本人の成熟度等の判断によって決まるということでございます。

○柴山委員
 十五歳以上は、それは遺言もできるし、養親子契約だってできるから、これはできるのは当然だと思いますよ。
 ただ、今大臣が、意思能力があればできる扱いになっているというふうにおっしゃいましたけれども、これまで、意思能力というのは小学生でも認められているんですよ。今おっしゃるように、ケース・バイ・ケースで、裁判所に対する申し立てが、あるいは有効だ、あるいは無効だ、こんなことになったら、これは私は手続の安定というものを極めて阻害するんじゃないかと思っています。
 それともう一点。弁護士に対してこれを依頼する、子供が一人じゃできないから弁護士に対して依頼するということも当然想定されると思うんですが、弁護士に対する委任契約は有効なんですか。

○江田国務大臣
 有効な場合も無効の場合もあると思います。

○柴山委員
 そのメルクマールは何でしょうか。

○江田国務大臣
 子供の法律行為を行う能力は、一般には、これは未成年者ですから、親権者なりあるいは未成年後見人の同意が要るわけでございますが、しかし、専ら権利を受けあるいは義務を免れる、これについてはそうした同意が要らないということで、したがって、弁護士との契約においても、弁護士に対する報酬債務を負わなければ、これは子供も弁護士と契約ができることになるということでございます。

○柴山委員
 要は、私的な関係で弁護士を頼むということは事実上できないということなんですよ。こういうことをもっとしっかりと議論した上で法律の制度設計というものをしてもらいたいというように思います。
 また、午前中の参考人に対する質疑で、子供が申し立てをするということによって、親子関係が再統合ができなくなってしまうような決定的な事態にならないかというようなことも言われていましたけれども、御説明の中では、いやいや、家庭裁判所と児童相談所とか関係者の連携を密にして適切に対応しますと。場合によっては取り下げということもあるかと思うんですけれども。
 まず、取り下げが有効なのかということと、あと、そういう連携をしなくちゃいけないということが何かに書いてあるんですか。

○江田国務大臣
 例えば、十七、八ぐらいの子供で親から性的虐待を受けて弁護士と相談をしている、こういうような場合もあるわけです。そういう場合に、その子が弁護士を代理人として親権の停止や喪失を求めるということ、これは容易に想像できる具体的事案だと思います。(柴山委員「報酬が発生しなければね、弁護士報酬が」と呼ぶ)もちろんです。報酬は発生しない場合でなければ、さっき申し上げたとおりです。
 そして、そういう場合に、それでは再統合は無理じゃないかと。それは無理な場合もあるし、しかし、そうではなくても、やはりいろいろな人のサポートによってまた再統合という道が開けるかもしれません。その道を閉ざすわけではもちろんありません。
 さらに、申し立ての取り下げはもちろんできますし、また、私ども別に、子供が直接に親に対してそういう申し立てをすることを奨励しているわけではありません。そういうこともできる道だけは残しておこうということで今回決めているわけでございます。

○柴山委員
 ぜひ、今最後に申し上げたことも含めて、具体的な不都合というものが生じないように、しっかりと政省令なり含めて手当てをしていただかなくてはいけないというように感じております。
 それと、概念的な整理のために質問をさせていただきますが、今回、未成年後見人にも親権喪失などについての申し立て権を認めていますが、そもそも、親権者がいないときに選ばれるのが未成年後見人なのに、親権喪失の申し立て権を未成年後見人に認めるというのは一体どういうことですか。

○原政府参考人
 今回の法改正によりまして、親権停止制度というのが創設されます。したがいまして、まず親権停止制度が活用されて、その後に親権喪失の申し立てがされるというケースがございますので、そういうケースであれば、親権停止によって選任されている未成年後見人が申立人になる、そういう場合を想定しております。

○柴山委員
 それではお伺いしますが、親権停止を一たん受けた、そして選ばれた未成年後見人が、再度、親権停止の更新というものも請求できるんでしょうか。

○江田国務大臣
 更新という扱いではなくて、再度親権の停止あるいは喪失を申し立てる、そういう制度設計にしております。

○柴山委員
 もう一度停止の申し立てをした際に、しっかりと審査をして停止にするかどうかというのを決めるということで、まずは安心しましたけれども、これは考えてみますと、一度親権の停止という判断を食らっておきながらその行状が改まらないというのは、イエローカードを一枚もらった人間がもう一枚イエローカードをもらうのと同じことだと思いますよ。私は、この場合に、再度審理をするということであれば、二回目は喪失ということにしてもらわなければいけないのが原則であると思いますが、いかがでしょうか。

○江田国務大臣
 親権の停止の制度は、私ども、かなりいろいろなバラエティーがあると思っております。
 例えば、医療ネグレクトで、医療行為が必要、そういう場合には、そんなに二年も停止する必要がないわけです。そうではなくて、もっと短い期間、この医療行為を行うときだけちょっと親権は後ろへ下がっていてくださいという形にしますので、そういう場合には、医療行為が終わって一定の状態に、もとへ戻ると、良好な関係に復する可能性は十分にある。しかし、それでもなお、そのとき、例えば半年なら半年の後にまた停止をする必要があるというようなことは、それは十分あり得ることで、一度親権の停止があったら、それが例えば一カ月であってもイエローカードだから次は喪失だ、それはちょっとかたい制度になり過ぎているのではないかと思います。

○柴山委員
 必ずレッドカードにしろと言っているわけではありませんので、そこはぜひお間違いのないようにしていただきたいと思います。
 続きまして、親権停止について再度、別の質問をさせていただきます。
 親権喪失という制度がなかなか利用されないのを改善するという観点から停止制度を導入するということは、私は大きな改善だと思っております。
 そこで、伺いますが、ここ三年間の児童虐待関連の検挙件数及び人員と、親権喪失の申し立て件数及び認容件数、それぞれお聞かせください。

○田中政府参考人
 まず、過去三年間の児童虐待事件の検挙件数及び検挙人員についてお答えします。
 過去三年間の児童虐待事件の検挙件数は、平成二十年三百七件、二十一年三百三十五件、二十二年三百五十四件でございます。検挙人員は、平成二十年三百十九人、二十一年三百五十六人、二十二年三百八十七人と増加傾向にあります。

○柴山委員
 では、 法務省、お願いします。

○原政府参考人
 私の方から、親権喪失の件数について御報告したいと思います。
 司法統計の件数を御紹介いたしますが、司法統計上は、親権喪失と管理権の喪失、あるいはそれらの取り消しの件数が区別されておりませんで、合計の数字になっておりますので、これから申し上げる数字は、そういうことだという前提でお聞きいただきたいと思います。
 まず、平成二十年の新受件数は百三十九件、二十一年の新受件数が百十件、平成二十二年の新受件数が百四十七件ということで推移しております。ただ、このほとんどは、実務的には親権喪失の件数であろうというふうに考えております。

○柴山委員
 しかも、認容件数ということでいえば圧倒的に少ないわけですね。三十件とかそういうレベルで推移しているということだと思います。この停止という制度がしっかりと活用されることを望むんですけれども、それだけで足りるとは私は思えません。
 児童福祉施設に子供が入所しているのに、ほとんど面会にも来ないで、子ども手当だけはちゃっかり受け取っているというような親ですとか、あるいは施設の子供の携帯電話の契約に嫌がらせで親が同意をしない、こういうような場合、これは親権停止ということにまでなるんでしょうか。

○小川(敏)副大臣
 基本的には、さまざまな事情を勘案して、家庭裁判所の審判で決めることだと思います。
 携帯電話につきましても、同意しないのが、嫌がらせということで、マイナスな、消極的な評価の携帯電話契約の不同意ということで質問されておられるんでしょうけれども、しかし、不同意とした親の方から見て、やはり携帯電話を子供が余りいいことに使わないからという理由で不同意なのか、あるいは本当に嫌がらせなのか、そういったことも含めて、やはり個々的に家庭裁判所の方で、その背景事情も含めて判断して決定していくということだと思いますので、委員のお尋ねのように、一つの事例をとらえて、それですぐ停止かと言われても、なかなかちょっと答えられないというようなことだと思います。

○柴山委員
 ことし、現に十七歳の高校生が、裁判所の命令で、虐待する親と離れて児童福祉施設に入所しているのに、親の同意なくNTTドコモの携帯電話の契約をしようと思ったら、これが断られたというんですね。施設長は同意をしている。再三要請しているのに事態が変わっていないということなんですよ。これはつまり、親権停止をしていない場合の施設長の権限とあるいは親の親権、この矛盾抵触の場面だと思うんですけれども、これは一体どっちが優先するんですか。

○小川(敏)副大臣
 これまで施設長の方に親権停止の申し立て等がなかった、あるいはそういうことで施設長と親権者である親の意見とが衝突して、結果的に子供のためによくないというようなケースがございました。まさに委員がお尋ねのとおりでございます。
 まさにそうした問題に対応できるように、今回は、親権喪失というのはなかなかであるけれども、やはりそうした問題について、親権停止というものを導入して、個々具体的に適切な対応ができるようなということで、今回の法改正に及んでいるものと認識しております。

○柴山委員
 質問を繰り返します。
 親権停止が出ていないときに両者の権限はどのような関係になっているんですかとお聞きしているんです。

○小川(敏)副大臣
 現行法でございますね。これはやはり……(柴山委員「新法でも同じですよ。親権停止がされていない場合の両者の関係は」と呼ぶ)親権停止がされていない場合ですか。親権停止がされていなければ……(柴山委員「向こうで手を挙げていますけれども」と呼ぶ)失礼しました。

○石井政府参考人
 お答え申し上げます。
 親権者につきまして、親御さんについて親権がまだある、その上で施設に入所している場合に、施設の側におきましても、監護、教育そして懲戒といったような、いわば親権の一部の権能というのは有している。そういう意味では、親権の状態が、親権の種類が、若干幅に違いがありますけれども、同時並行的にあるというのが現状でございます。

○柴山委員
 つまり、今御説明があったように、監護、教育、懲戒について、施設長の固有の権限については、不当に妨げられないという条文もつきましたけれども、施設長が優先する。だけれども、携帯電話の契約というのはそれには入りませんよね。とすれば、やはり親御さんの権限が優先する。親権喪失という行為がなければ、これは親御さんの同意がなければ契約できない、そういうことですね。

○石井政府参考人
 結論から申しますと、その携帯電話の件、いろいろありますけれども、確かに、親権者の同意を得ない契約というのは、親権者が後に取り消し権を行使することがあるという意味で、やや不安定な面がございます。しかしながら、今の携帯電話の件でございますが、会社によっては親権者の同意を本当に必須とするケースもあれば、その辺は、施設長さんがそう言っているんだからということで認めるケースもあるわけでございまして、むしろそういう意味で柔軟にこういう問題について考えていただくようなケースがあるということを私ども知らしめながら、特に必要な場合においては、お子さんが携帯電話を持ってもいいようなケースにおいては、子の利益ということに照らして持てるような形で情報の周知ということを図っていきたいと思っているところでございます。

○柴山委員
 ぜひ、不都合のないような形で、趣旨を徹底していただきたいというふうに思います。
 続きまして、親権の代行という制度についてお伺いします。
 今度の児童福祉法の改正によりまして、児童相談所長は、これまでの入所中の児童に加えて、例えば二十に至るまでの子供ですとか、里親委託中あるいは一時保護中の児童についても、親権者や後見人がいない場合には児童相談所長が親権を代行するということとなります。
 この親権代行という制度は、何らかの裁判手続が必要なのでしょうか。また、親権者等がいない場合には、物理的、法律的にいないケースのほか、事実上会いに来ないようなケースも含まれるんでしょうか。

○石井政府参考人
 一時保護中や里親委託中の親権を行う者または未成年後見人のいない児童等につきましては、その児童等がそのような状態に至ると同時に、裁判手続を経ることなく、当該一時保護や里親委託の措置に係る児童相談所長によって親権代行が開始されるというふうに解しております。
 また、親権を行う者がないときとはどういうケースかというお尋ねがございました。
 もちろん、親が親権停止や親権喪失の宣告を受けている場合は法的に児童等に対して親権を行使する者がいないわけでございまして、その場合はもちろん親権を行う者がないときに入りますし、また、児童等の両親がともに亡くなった場合など、物理的に親権を行使する者がいない場合もそうでございます。さらには、親権者は存在するけれども、重い病気、あるいは行方不明、刑務所に入っているなど、事実上親権を行使することが不可能な場合も含まれると思いますが、今委員御指摘がありましたように、親が子供に会いに来ない、それをもって親権がとまっているかというと、それは親権を行う者がないということにはならないと思います。

○柴山委員
 ただ会いに来ないだけではだめだということだったんですが、物理的、法律的にいない場合には限られないという御答弁だったかと思います。
 としますと、例えば、子供が捨てられて施設で保護されているような場合、赤ちゃんポストなら匿名という場合が多いんでしょうけれども、会いに来ず、しかも今おっしゃったような行方不明になっている親御さんは、裁判行為がないわけですから、法律的には親権を失うことはなく、先ほどと同じように、児童相談所長の代行親権とやはり権限がバッティングするということになるのではないでしょうか。具体的には、子供の財産の処分とか、そういうことは一体どうなるんでしょうか。

○石井政府参考人
 お答え申し上げます。
 子供が見捨てられて施設入所しているけれども全く会いに来ない親がいて、親権者もいるけれども親権代行者もいるケースだろうと思います。
 その場合には、事実上親権を行使することができないような状態でなければ、やはり親権を行う者がいるものと解されると考えております。そのように、親権を行う者がいるのであれば、親権代行の規定は結果として効力を発しないということになりまして、そういう意味では調整を図られるということであります。
 ただ、親権者と親権代行者が併存しますと大変錯綜いたしますので、御指摘のように、混乱しないように、親権者の存在は判明しているけれども、親権の行使を長期間行っていないために子供の利益が害されているといったような場合には、やはり親権停止の申し立てを検討すべきではないかと考えております。

○柴山委員
 検討すべきではないかではなくて、そこはしっかりと申し立てをすると。緊急の場合には申し立てなければならないと書いてありますが、それ以外の場合は義務化されていませんからね。今言ったような実務をきちんとマニュアル化してほしいと思います。
 時間がなくなりましたけれども、先ほども出ました東日本大震災によります震災孤児についてお伺いします。
 この結果、多くの施設入所者や里親の保護を受ける子供が出てきていると思いますが、まず、その実態について、どんな子供の保護状況になっているのか、お聞かせください。
〔奥田委員長退席、高木委員長着席〕

○小林大臣政務官
 今回の震災で両親を亡くした、また両親が行方不明の児童については、現在、児童相談所の職員が各避難所を巡回するなどして、早急に把握に努めております。
 四月十九日現在の確認状況では、百十名、岩手県が四十四名、宮城県が五十名、福島県十六名の確認が行われていますけれども、今後ふえる見込みがあると思っております。
 具体的には、被災地の児童相談所職員と他県の児童相談所職員がチームを組んで、要援護児童の確認、要援護児童との面談、養育と生活に関する親族との話し合いを実施しております。
 今後は、親族による受け入れや里親などによる受け入れの調整を図るほか、児童のメンタル面の支援として、児童相談所職員の巡回等の取り組みを通じて、児童が安心して生活、成長できるようにきめ細やかな対応を図ってまいりたい、このように考えています。

○柴山委員
 親族に預けられているケース、それから里親の保護を受けているケース、どうしてもそれで救われなければ施設ということになるんだということだと思いますけれども、ただ、これは、今おっしゃったように、百十人と非常に数が多い。しかも、その上、放射能の被害が広がっている子供たちについては、いじめが横行しているというような報道もあります。
 そのような中で、そういった保護関係が不幸にも不適切であった場合、安心して愛情を注げないですとか、あるいは保険金を私してしまうとか、そういうようなケースでは一体どのような措置がとられるんでしょうか。

○石井政府参考人
 児童相談所は、里親や施設に子供を措置した場合には、この里親や施設から子供の養育状況について報告を求めております。また、職員が定期的に訪問して子供から直接意見を聞いたり、施設と合同で会議を行ったりしておりまして、里親や施設と連携をとっているところでございます。
 また、被措置児童等虐待の都道府県等への通告制度を設けておりますのと、それから、被措置児童等虐待対応ガイドラインというのも作成をいたしまして、里親や施設職員等に対する研修による意識向上や、あるいは子どもの権利ノートといったようなものの作成、推進なども進めております。
 仮に不適切な対応があった場合でありますけれども、これは児童相談所が中心となりまして、里親や施設に報告を求めて指示を行うものであります。さらに、必要な場合には、児童相談所が子供を一時保護をしてそういったいじめから守るといったようなことも行うわけでございまして、いずれにしましても、子供が健やかに育つことができるよう、きめ細かな配慮に努めておりまして、またそうした目配りをしっかりしていく必要があるというふうに思っております。

○柴山委員
 報告を求めるということで本当に実効性が図れるのかということもぜひ考慮していただきたいというように思います。
 時間がなくなりましたけれども、未成年後見人、こちらの場合についての同様の監督のあり方、それから、法人について後見人たる資格が認められることになりますが、法人で実際に当該児童を担当している方が職務不適格であるという場合の措置、それぞれお伺いしたいと思います。

○原政府参考人
 後見人の職務執行につきましては家庭裁判所が監督しているわけでございますので、法人が未成年後見人に選任された場合につきまして、当該担当者に子の利益を害するような事情がある、そういう情報が入れば、家庭裁判所としては速やかに状況を調査し、当該事実が確認できれば、後見人に対して担当者を交代するように指示する、その他相当な処分を命ずるということになろうかと思います。

○柴山委員
 こちらは公権力を適切に行使するということであろうかと思います。
 最後に、里親なんですけれども、きのうも質疑に出ていたようですけれども、通常の里親ですと里親の手当が払われるんです。しかし、親族が里親としていろいろと世話をする場合には、里親手当というものは出ない扱いになっています。
 また、先ほどお話があるような、後見人の場合の報酬ですとか、あるいは損害を与えてしまった場合の保険、私はこういうものを一刻も早く制度設計をして、国が十分に手当てをしていくことが必要だというように思っております。
 いつまでにこうした手当てを講じるおつもりでしょうか。最後にそのことを質問させていただいて、私の持ち時間を終わらせていただきます。

○高木委員長
 石井大臣官房審議官。申し合わせの時間が参りましたので、御協力願います。

○石井政府参考人
 このたびの地震ではさまざまな問題が起こっておりますけれども、私どもは、可能な問題について一生懸命取り組んでまいりたいと思います。
 いつまでとはちょっと、恐縮でございますが、今申し上げる用意がございませんので、お許しいただきたいと思います。

○柴山委員
 事は緊急を要します。ぜひ迅速な対応をお願い申し上げます。
 ありがとうございました。

第177回 国会 衆議院 法務委員会

第177回 国会 衆議院 法務委員会 第4号
平成23年3月30日(水)
午前九時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 法案については後でお伺いします。
 まず、きのうの報道によりますと、福島地検において、いわき支部が、逮捕、送検されていた容疑者を、東日本大震災の発生後、十数人釈放していたということであります。また、けさの報道ですと、十一日から十六日に、この福島地検、郡山、いわきの二支部を含めて、容疑者計三十一人が処分保留で釈放されていた。また、仙台地検でも、十二日から十六日にかけて、勾留中の容疑者二十七人を処分保留や起訴猶予で釈放したというように発表されているんですけれども、大臣、これは事実ですか。

○江田国務大臣
 お尋ねのとおり、福島地検いわき支部において、震災から三月十五日までの間に、起訴前の勾留中の被疑者十二名について釈放し、さらに、いわき支部以外にも、私のここにある報告ですと、仙台地検管内三十名、福島地検管内三十一名、釈放の手続を行ったと承知しております。

○柴山委員 
 これはどういう根拠で釈放されたんでしょうか。超法規的な措置なんでしょうか、それとも、先ほどちょっとお話があったような刑事施設法上の処分なんでしょうか。あるいは、刑訴法八十七条一項に定めてある、勾留の必要性がなくなったということなんでしょうか。

○江田国務大臣 
 これは、それぞれの事件ごとに担当している検察官が判断したものでございまして、超法規的なものではございません。そうではなくて、それから刑事施設法によるものでももちろんございません。これは、刑事訴訟法六十条の、勾留の必要性がなくなった、こういう状況で勾留を継続することが適切でない、そういう判断をしたものだと承知しております。

○柴山委員 ちょっと待ってください。六十条は、勾留取り消しについて書かれた八十七条一項と違って、勾留理由についてたしか書かれていたと思いますので、例えば住所不定ですとか逃亡のおそれですとか、あと罪証隠滅のおそれですとか、そういうようなことがたしか定められていたんじゃないかなと思うんですけれども、本当にそれでいいんですかね。この後質問しますけれども、現に住所不定者もこの中には入っていたということですから、六十条というのはちょっとおかしいんじゃないでしょうか。もう一度御答弁ください。

○江田国務大臣 
 私が今申し上げたのは、刑事訴訟法六十条に勾留の理由と勾留の必要性というものを規定しておりまして、釈放についての規定というものはないんですが、全体に検察官が持っている刑事司法についての権限を行使して釈放したものだということでございます。

○柴山委員
 いかなる罪名の容疑者を何人釈放したんですか。

○江田国務大臣
 福島地検管内で釈放した被疑者の罪名ごとの内容は、窃盗などが十三名、傷害等が五名、覚せい剤取締法違反等が四名、道交法違反が三名、詐欺、業務上横領が二名、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反が二名、建造物侵入等が一名、強制わいせつ一名となっております。
 そして、仙台地検管内は、窃盗が十一名、詐欺、業務上横領が七名、傷害等が四名、建造物侵入等三名、覚せい剤取締法違反等二名、児童買春等の法律違反が二名、道交法違反一名となっておりまして、今委員ちょっと触れられた強盗とか殺人とか、そういう裁判員裁判の対象事件になるような重大犯罪は含まれておりません。

○柴山委員
 昨日の報道によると、福島地検の小池隆次席検事は、市民に不安を与えたくないということで罪名や人数を明らかにされていなかったというように報じられております。しかし、これは、公益上の必要性がどの程度認められるのかですとか、あるいは治安上問題があるのかどうかということを検証するために必要な情報じゃないかなというように私は思います。現に今法務大臣の方からも情報を明らかにしていただいたわけですから、明らかにしなかったということは極めて妥当性を欠くことではないかなというように私は思うんですが、いかがでしょうか。

○江田国務大臣
 今お触れになりました福島地検次席検事の発言がどういう発言であったか、報道されていることは存じておりますが、そのとおりの発言があったかどうかということは承知していないので、そこのお答えは控えますが、しかし、これは、不安を与えたくないといって罪名を述べないというのは適切ではないと思っておりまして、私としては、治安上の影響、それは全くないとは言いませんが、こういう種類のものだから釈放したんだということは申し上げた方がいいと判断しまして、先ほど答弁いたしました。

○柴山委員
 警察は、これらの釈放及び報道されなかったことをどのように考えておられるんでしょうか。

○金高政府参考人
 一般論として申し上げれば、勾留の必要のある被疑者を釈放するとすれば捜査上の問題も生じる場合もあり得るというふうに思いますけれども、個々の検察官の処分について警察庁の立場でコメントすることは控えたいと存じます。

○柴山委員
 これも報道なんですけれども、警察関係者は、中には、今大臣の方からお話があったように強制わいせつ事件の容疑者が含まれていたり、あるいは私が申し上げたように住所不定者も中にいるということで、治安上問題があるというような指摘がされているというやに伺っています。
 誤解しないでいただきたいのは、私は釈放が絶対いけないということを申し上げているわけではありません。ただ、合理的な理由があるのか、また、こういった釈放について今後の見通しが立っているのかということを確認したいだけでございます。
 ちなみに、これらの釈放した方々については、いろいろと困難はあったかと思うんですけれども、移監ということを検討されたのかということを確認させてください。

○江田国務大臣
 これは、移監という、他の留置場等に移送することができないわけではございませんが、本件の場合には、裁判官の同意を得て別の刑事施設に移送するところまでの余裕はなかったということで、移監ではなく釈放したということだと思っております。釈放する必要がある理由は十分あったと思っております。

○柴山委員
 起訴後の被告人についてはどうだったんですか。

○江田国務大臣
 勾留中の者のうち、釈放せずに起訴した者が一名あると承知をしておりまして、これは当然、刑事訴訟法の規定により、被告人勾留に移行するということでございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 また、先ほどお話しになられているように、裁判員裁判の対象となっている方についても釈放された方はいないということですから、今後、やはり情報の開示のあり方についていろいろと検察庁への批判が強まっている御時世ですので、きちんと説明ができるような処理をしていただきたいというように思っております。
 最後に、釈放された容疑者の方々の現状についてはきちんと把握ができているんでしょうか。

○江田国務大臣
 誤解があってはいけませんが、身柄をとっている被疑者については時間が限られているわけですね。原則は勾留十日、延長してもあと十日ということで、その間に関係者も調べたりいろいろなことをやらなきゃいけないので、そこで、情状関係などすべて見て、今回の場合には余震もずっと相次いでいるというような事態なので、これは釈放をしてさらに捜査を続けようということで、一時、大部分が処分保留のまま釈放しているわけで、決して、何か、冒頭申し上げましたが、超法規的に釈放したものではない。釈放した者については、もちろん今後の捜査の継続はできる体制をとっているものと思いますが、若干の困難はあるかもわかりません。
 ちなみに、先ほど強制わいせつというのが御指摘ありましたが、これは具体的な事件について触れるわけにはいきませんが、情状等は、比較的そう重くない情状のものであったというように聞いております。

○柴山委員
 若干の困難というお話はありましたけれども、ちょっと余り建前でおっしゃってほしくないなと思ったのは、例の中国人の船長を中国に帰した案件もあるわけですから、やはりこれは公益上の理由から、ある程度そういった今後の終局処分に差し支えがある場合でも、比較考量の上、やむを得ずそういうことをやった、中にはきちんとトレースできない方々もいるということを、むしろきちんとおっしゃった方が私は司法に対する信頼というものは守られるんじゃないかなという意見を申し上げさせていただきまして、続きまして震災関連の法律問題についての質問に移らせていただきたいと思います。
 先ほど来お話が出ております損壊家屋等の撤去等に関する指針についてであります。
 お手元に資料として配付をさせていただいておりますけれども、確かに、津波で家屋、船舶、車両などの財産や瓦れきが広範に散乱をしてしまっていて、これを撤去しなければ再築などの復興ができない状況にあるということは十分理解をしております。ただ、そもそも、こういった大災害が外国で発生した場合には、こういった指針というものは出されているものなんでしょうか。

○原政府参考人
 法務省といたしましては、外国で今回のような指針が示されているか否かにつきましては承知しておりません。

○柴山委員
 それで、なぜこの指針は環境省の方から提出をされたんでしょうか。

○小川(副)大臣
 これは環境省といいますか、政府という位置づけで出されたものというふうに考えております。被災者生活支援特別対策本部という、政府のその本部名から出された。私、法務副大臣は、その政府の命によって、法的な見解を検討しろということでそのチームの座長を務めたという、そのような経過でございます。

○柴山委員
 防災担当が松本大臣ですし、環境大臣が松本大臣ですから、そういうことで、中には若干、自動車リサイクル法ですとか産業廃棄物にかかわる部分もありますけれども、ちょっと違和感を感じたところでもあります。
 では、この指針に従った形での処理をすれば、撤去にまつわる責任というものは免責をされるんでしょうか。

○小川(敏)副大臣
 基本的には個々のケースで考えるわけでございますが、仮にこの作業の過程の中で、私は基本的には、これは撤去できる、あるいは移動することができる、そうした面があると思っておるわけでございますが、個々のケースとして、例えばまだ他人の所有権が明らかにあるものを、間違って、その方の承諾も得ない、あるいは法の手続も経ないで撤去、廃棄したようなことがあれば、それはやはり何らかの賠償問題、あるいはそうしたものが生じるケースもあるのかもしれませんが、私は、基本的にはこの撤去に関しましては、これにのっとっておれば違法性はない、したがって責任の問題は生じないのが一般である、このような考えに立っております。

○柴山委員
 生じないのが一般であるという御答弁でありまして、そのとおりだと思います。これはあくまでもガイドラインでありまして、これに従えば絶対に法的な責任がなくなるというものでは恐らくないのであろうというように思います。
 中身についてちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、倒壊家屋等の撤去について、原形をとどめている場合には所有者等の意向を確認するのが基本だけれども、所有者等に連絡がとれない場合や倒壊等の危険がある場合には、土地家屋調査士等の専門家に判断を求めて、価値がないと認められたものについては解体撤去して差し支えないというような文章がありますけれども、手近におられる土地家屋調査士の先生方は、当然のことながら限られているかと思います。
 国としてどのようにこうした有資格の方々を確保するのか、また、こういった専門家の方々がいらっしゃらない場合には一体どういうふうになるのかということを検討しておられるのか、お伺いしたいと思います。

○原政府参考人
 今回の指針におきまして、土地家屋調査士等の専門家の御判断を求めるということを記載しましたのは、やはりそれぞれの家屋等が損壊しているのかどうかについての判断が難しい場合があろうかということで、こういう指針が示されたわけでございます。
 当然、東北地方にお住まいの専門家の方々はそれほど多くはないと思いますけれども、全国の専門家の皆さんが全面的に協力をしていただけるものと考えておりますので、そういったことを踏まえながら、具体的な運用につきましては今後議論がされていくんだろうというふうに考えております。

○柴山委員
 積極的なサポートですとか、今申し上げたように専門家の方がいらっしゃらなかった場合について一体どうするかということは、これは法的な効力がないというお話だったんですけれども、もうちょっと明確にしていただいた方がよいのではないかなというように私は思います。
 次の質問なんですけれども、瓦れきですとか効用をなさない自動車ですとか、価値のないものであればいいんですけれども、そうでない場合には、市町村の職員ですとか自衛隊の方々ですとか民間の方々の責任というのはどのようになるんでしょうか。

○原政府参考人
 今回の瓦れき等の撤去に当たりまして、過って客観的に価値のあるものを壊してしまったという場合には、法律上は国家賠償法あるいは民法の不法行為責任の問題が出てこようかと思います。
 自衛隊なりあるいは自治体の皆さんがやっているということであれば、国家賠償法は個人が責任を負う場合は限定されておりますので、そういう面での配慮がされていくということだろうと思います。

○柴山委員
 例えば民法の七百二十条は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためにその物を損傷した場合には、緊急避難として違法性は解消できるというようにされていますし、先ほどもちょっと質問に出ていたようですけれども、土地の所有者が土地利用を妨げているものの所有者に対して、所有権に基づく妨害排除請求ができるはずですから、みずから費用負担する、あるいは、みずから負担できない場合に自治体や消防の方々、自衛隊の方々が撤去を負担して行うということであれば、それと妨害物の毀損による損害というものは、ある程度相殺というか解決済みということはあり得るのかなというようにも思うんですけれども、ただ、恐らくこれは非常に難しい判断なのではないかなというように思います。
 刑法上は、今言ったような有価物、価値のあるものを壊した場合、あるいは領得をしてしまった場合、一体どのようになるんでしょうか。

○西川政府参考人
 お答え申し上げます。
 これはもうあくまで一般論でございますけれども、もちろん、考えられる罪名としては窃盗罪であるとかそれから遺失物横領罪であるとか、あるいは壊した場合は器物損壊罪というのが考えられまして、それぞれの構成要件に該当するかどうかというのは、証拠に基づいたケース・バイ・ケースの判断ということになろうと思います。
 ただ、通常の撤去作業、これを考えますと、他人のものを例えば移動させたということについては、通常は不法領得の意思は欠けるということで、窃盗罪や遺失物横領罪は成立しないというふうに考えられますし、また、倒壊して瓦れき状態になったものを通常の撤去作業に伴って損壊するということについても、器物損壊の犯意を欠くということで、器物損壊罪はそこで成立しないというふうに考えております。

○柴山委員
 また、この指針の自動車のところで、効用がある自動車で、所有者が返還を求めない場合、所有者がわからない場合、そういった場合の取り扱いについては「追って指針を示す。」ということになっているんですけれども、これはいつ結論が出るんでしょうか。

○小川(敏)副大臣
 現状ですと、その自動車は所有者、管理者の管理を離れておるわけですから、遺失物というような扱いになるのかと思います。
 そうすると、遺失物ですと、遺失物法によって、公告をした後、提出者の所有になるというようなことになるんでしょうけれども、実際に数がどれだけあるのか、遺失物法の処理をした場合に、遺失物ですと警察が行うわけですが、保管場所の確保とか事務の量によって処理し切れないというようなケースもあるのではないかということもありますので、状況をもう少しよく把握して、遺失物法で処理できるのならそれでいいでしょうし、仮にとても遺失物法では処理できない、でき切れないという状況があるなら、しかし、人の所有物を勝手に廃棄するわけにはいきませんから、何らかの立法が必要なのかどうか、そういったことも踏まえて検討しておるところでございます。
 速やかにという姿勢で臨んでおりますが、そうした状況を見てからということも考慮しております。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 それと、自動車の場合、リース物件が結構あると思います。リース物件がこういった震災で滅失した場合の所有権ですとかあるいは危険の負担はどのように考えるんでしょうか。
 一般法理からすれば、ユーザーに利用させる義務を負うリース業者がこういった危険というものをかぶるはずだと思うんですけれども、特約でユーザーの側が損害を負担するとなっている場合が多々見られるところであります。これは有効な規定なんでしょうか。

○原政府参考人
 自動車のリース契約における所有者と使用者との間の法律関係は、契約の性質等に応じてさまざまであろうと思いますので、一概にお答えすることは困難であろうかと思います。
 ただ、一般論でお答えいたしますと、いわゆるファイナンスリース契約に基づいてユーザーが自動車を使用している場合には、ファイナンスリース契約の実態はユーザーに金融上の便宜を供与するものでありまして、リース物件の使用とリース料の支払いとは対価関係に立つものではございません。したがいまして、リース物件が滅しても、ユーザーはその後のリース料の支払い義務を免れるものではないというふうに判例上解釈されております。
 したがいまして、いわゆるファイナンスリース契約におきましては、ユーザーが自動車滅失後のリース料を支払わなければならないとの条項がありましても、その有効性が否定されることにはならないものと考えられます。
 ただ、リース契約にはさまざまなものがございますので、その契約類型ごとに自動車の所有者と使用者との間の法律関係もさまざまでありますので、その効力については、個々の事案ごとに、公序良俗に反するのかどうか、そういった観点から判断されることになるだろうと考えております。

○柴山委員
 ユーザーは、車を失った上、リース料は引き続き負担をしなければいけない。震災に遭っている上、大変な苦労に見舞われることが予想されるわけですね。ましてや、この損害というのは通常の保険ではカバーされないですよね。地震に関する保険に入っているということはないでしょうし、ましてや、津波が襲ってきたときの損害という形での保険というものはないのではないかというように思いますので、これは、やはり適切な形での処理というものがなされるようにぜひお願いしたいというように思っております。
 まだまだほかにも、先ほど御質問が辻議員の方からあった借地借家の関係の問題ですとか、あるいは山崎議員の方からお話があった境界の確定の問題ですとか、聞きたいことがたくさんあるんですけれども、時間がありませんので次の質問に移らせていただきたいと思います。
 震災によって会社が休業を余儀なくされた場合に、使用者の賃金支払い義務というものは一体どうなるのか。
 具体的には、工場設備が地震で壊れてラインが停止した場合、また、原発事故による放射能汚染で食品の生産ができなくなったような場合、また、今建設資材が大変不足をしておりますけれども、部品の入手が困難になってしまった場合、こういった場合で休業をした事業者の賃金支払い義務というものは一体どうなるんでしょうか。

○金子政府参考人
 お答え申し上げます。
 労務の提供が行われないときは賃金も支払わない、ノーワーク・ノーペイというのが原則でございますが、労働基準法第二十六条では、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合には休業手当を働く方にお支払いいただく必要がある、こういうふうに規定されているところでございます。
 今議員からお話のございました、例えば、事業場が倒壊したようなケースでございますが、こうした事業場の施設設備が直接的な被害を受けた場合、これは、その結果として休業せざるを得ない。こうした場合につきましては、原則として、今申し上げました使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しないものと考えられます。したがいまして、労働基準法二十六条の休業手当の支払い義務はないものと考えます。
 他方、食品原材料の放射性物質による汚染が疑われることや建設資材の調達難、こういったことで休業するようなケースも考えられますけれども、このような場合には、事業場の施設設備が直接的な被害を受けていない場合でございますので、原則としては、使用者の責めに帰すべき事由による休業に該当し、休業手当の支払いが必要になるというふうに考えられます。
 しかしながら、このような場合におきましても、他のルートで原材料が入手できないとか資材が入手できない、あるいは、使用者の方として休業回避のために具体的な努力がなされたというような場合には、こうしたことも総合的に勘案して判断すべきものと考えておりまして、中には、使用者の責めに帰すべき事由による休業に該当しないと判断されるケース、すなわち、休業手当の支払いが不要になるケースもあるものと考えております。

○柴山委員
 結論からすると、直接的な倒壊のような場合には休業手当を従業員に対して支払わなくても大丈夫だけれども、そこまで至らないような場合はケース・バイ・ケースで、休業手当を支払うべき場合と、それすら免れる場合というものがあるというようなお話だったかと思います。
 では、これらについて国がそういった損害をどのようにカバーしていくのか。休業手当を払った場合には事業者が損害をこうむるわけですし、休業手当がもらえない場合は、今度は従業員が経済的な損害をこうむるわけですから、それぞれについて国がどういう支援策をとっているのかということをぜひ御説明いただきたいと思います。

○中沖政府参考人
 御指摘の点でございますが、工場が倒壊した場合あるいは原発周辺地域にあるような場合、いわば震災による直接的な被害から事業主がやむを得ず事業を休止したことによりまして賃金を受け取ることができない状態にある労働者につきましては、実際離職していなくても失業したものとみなしまして雇用保険の給付ができる特例措置を今実施しているところでございます。
 また、流通網の遮断等で、例えば物品調達ができない、あるいは従業員の通勤ができないといった、震災や原発に起因する経済的な理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るため休業等を行いましてその手当を払うというような場合につきましては、その一定割合を助成する雇用調整助成金の対象になるわけでございますので、私どもとしては、こうした雇用保険の特例措置あるいは助成金を使いまして、労働者の生活あるいは雇用の安定に努めてまいりたいと考えております。

○柴山委員
 ただ、では計画停電によって損害が出た場合はどうなるのかですとか、あるいは風評被害によって生じた損害はどうなるのかですとか、さまざまな形で今言った雇用関係の損害というものは、無限とはいかないまでも、膨大に広がっていくことが予想されると思うんですね。やはりこの境目というものをある程度しっかりと考えていかなければいけないというように私は思いますが、もし何かございましたら。

○中沖政府参考人
 雇用調整助成金でございますが、実は、地震が今回発生しました後、直ちに活用事例あるいはQアンドAを出しておりますが、この活用事例の中に、例えば、計画停電の実施を受けて事業活動が縮小した場合はこれは対象になり得るというのを明示しておりますし、また、先生御指摘ございましたが、風評被害により例えば観光客が減少した、あるいは農産物の売り上げが減少した、こうしたものも雇調金の対象になるということを明示しているところでございますので、できるだけ幅広く弾力的に解釈をして、我々としては雇用の安定に努めたいというふうに考えております。

○柴山委員
 それともう一つ。今私が質問させていただいたのは、事業活動自体がストップしたりあるいは縮小したりした場合の国の助成というか保護について質問したんです。これとは違って、事業自体はやっています、ただ、計画停電で従業員が定時にその事業所に行けなかった、それによって例えば就労時間が限られてしまったですとか、そういう場合は一体どうなるんですか。

○金子政府参考人
 議員から今御指摘がございましたけれども、計画停電によって所定の時間に通勤できなかったとか、その間労働ができないというようなケースが考えられるわけでございますが、こうした場合につきましては、それぞれの事業場で労働協約とか就業規則とかあるいは労使慣行がある場合には、まずそれに基づいて、必要な賃金の支払いを使用者の方に行っていただく必要があると考えております。
 仮に、このような定めがない場合には、これは最終的には民事上の問題としてしかるべき判断がなされるべきものとなると思いますけれども、一般的なことで申し上げますと、計画停電によって出勤できないことを使用者の責めに帰すべき事由による労務の提供不能であると解すことは難しいと思いますので、したがって、民法五百三十六条等の規定に照らせば、使用者に賃金等の支払い義務はないと考えられると思います。
 ただ、このような事態が長期にわたりますと、大変働く方に不利益が生ずるという問題も生ずるわけでございまして、こうした点での賃金の取り扱いにつきましては、私どもとしては、労使で十分にお話をいただいて、適切な対応をいただく必要があるというふうに考えております。

○柴山委員
 ありがとうございました。
 次の質問に移らせていただきます。
 先ほど、部品の入手が困難になった場合の事業主の休業ということについて質問させていただいたんですけれども、これは対従業員だけではなくて、その製品を売る相手取引先への債務不履行責任という観点からも問題となり得るかと思います。この取引債務の不履行は、震災によって免責をされるんでしょうか。

○原政府参考人
 民法の四百十九条三項によりますと、金銭債務の不履行については、債務者が不可抗力を抗弁とすることはできないと規定しておりますので、一般論としましては、金銭債務以外の債務につきましては、不可抗力によって債務不履行責任を免れることができると解釈されます。
 それで、お尋ねのような事案につきまして考えますと、売り主が債務不履行責任を免れるかどうかというのは、震災がどの程度その事業に影響を及ぼしたのか、その個々の具体的な事情によって判断されることになるものと考えております。

○柴山委員
 わかりました。不可抗力と言えるかどうかはケース・バイ・ケースということであろうかと思います。
 逆に、買い主側、まさしく今御指摘のあったように、代金を期限までに支払えなかったですとか、あるいは手形が決済できないですとか、そういう場合はどうなるのか。金銭債務は不可抗力ということで免責をされない絶対的な債務だというように言われておりますけれども、金融庁や経産省はいかなる対策を講じているんでしょうか。被災地振り出しの手形が落ちないというような場合について、ぜひお伺いしたいと思います。

○遠藤政府参考人
 お答えいたします。
 今般の地震の発生を受けまして、三月十一日に、金融担当大臣、日銀総裁から関係金融機関に対して要請文を発出しております。その要請文の中で、災害時における手形の不渡り処分について配慮することを要請しております。
 この要請に基づきまして、手形交換所を運営している各地の銀行協会はこれを踏まえまして特別措置適用を決定しております。災害のために不渡りになった手形に係る不渡り処分については、それを猶予するといった措置を講じているところでございます。

○柴山委員
 一見よさそうなんですけれども、ただ、それでは十分じゃないと思うんですね。
 というのは、不渡り処分を免れるための措置を受けるためには事前にきちんと相談をしていなくちゃいけないということが言われております。また、これはあくまでも被災地の債務者が振り出した手形ですから、二次的な被害ですね、結局、その手形については落ちないことは落ちないわけです。不渡り処分にはならなくても、落ちないことは落ちない。では、その決済を当てにしていた被災地外の事業者がさらに支払いができなくなってしまうような場合については、この処理の範囲外ということになってしまいます。
 こういったさまざまな不都合については一体どのように考えればいいんでしょうか。

○遠藤政府参考人
 まず、柴山先生の最初の御質問でございますけれども、事前相談が必要なのかということだと思います。
 今回の手形交換所による特別措置は、支払い銀行がその原因が災害によるものと認めた場合に不渡り処分を猶予するものということでございますので、できるだけ手形債務者がその振り出し銀行に、支払い銀行に対して事前に相談することが望ましいと思います。ただ、いろいろな事情がございますので、仮に手形債務者から事前相談がない場合であったとしても、残高不足がもし認められる場合には、支払い期日当日に銀行側から手形債務者の方に連絡いたしますので、その連絡の中で資金不足の原因の確認が行われれば処分を猶予することは可能でございます。
 また、仮に連絡がつかない場合であったとしても実務上どういう判断をしているかということについて、銀行側にいろいろとヒアリングをしております。それによりますと、手形債務者に連絡がとれない場合、それで資金不足の原因が確認できなかった場合においても、被災状況を確認して不渡り処分を猶予しているといった実務上の取り扱いが行われているというふうに聞いております。
 それから、被災地以外の者に対していろいろと影響を与えるではないかという先生の御指摘でございました。これに関しては、今回の手形の不渡りの特定猶予という話とともに、つなぎ融資等がどのような形で行われるかということでございます。これについても、私どもは金融上の措置を三回にわたって各金融機関に要請しております。特に、手形決済が増加する年度末の資金需要期を迎える中で、三度目の要請、三月二十三日に要請しておりますけれども、ここにおいては、今般の災害の影響を直接、間接に受けている顧客から、返済猶予等の貸し付け条件の変更、あるいはつなぎ資金の供与等の申し込みがあった場合には、中小企業金融円滑化法の趣旨を踏まえて、できる限りこれに応じるように努めるということを要請しているところでございます。
 こうした要請を踏まえまして、金融機関は、災害の影響を直接、間接に受けている被災地、その他の地域の中小企業者に対する金融の円滑化に全力を挙げて取り組んでいるものと承知しております。

○柴山委員
 経産省の方では、こうした中小企業の、特に間接被害を受けた方々への支援ということは、どういう対策を考えておられるんでしょうか。

○伊藤(仁)政府参考人
 お答えいたします。
 三月十四日に、政策金融機関でございます日本公庫や商工中金より、直接に被害を受けた中小企業のみならず、その取引先であります中小企業を含めて対象としました長期、低利の融資制度、災害復旧貸し付けと申しますけれども、それを開始しております。特に、貸し付け後三年間、借入金の一千万円を限度として、〇・九%の金利引き下げ措置を実施しているところでございます。
 また、これらの公的金融機関に対しましては、既往債務の返済猶予など、条件変更にも柔軟に対応するよう要請をあわせて行っているところでございます。
 さらに、被災中小企業に限らない資金繰り支援策として、日本公庫によりますセーフティーネット貸し付け、売り上げが急に落ちた場合についての低利、長期の融資でございますけれども、それを実施しておりますし、加えて、各都道府県の信用保証協会が行う信用保証制度におきましても、二十三年度の上半期から四十八業種を対象として実施する予定でありましたセーフティーネット保証について、今回の震災の発生を踏まえまして、業種判断というものを据え置きまして、原則全業種、八十二業種を対象とすることとしたところでございます。
 なお、今後とも、間接被害も含めまして、支援策についてしっかりと検討してまいりたいと思います。

○柴山委員
 金融庁、経産省と伺ってきましたけれども、法務省については、この債務不履行への対策ということをどのように考えておられるんでしょうか。

○原政府参考人
 今回の震災に対しましては、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律に基づきまして、三月十三日に政令が公布されております。
 この政令の中で、債務超過に陥った法人の破産手続の開始の特例の措置をしております。具体的には、この特別措置法で認められております最長の期間でございます平成二十五年三月十日までの間、今回の震災に伴う被害によって債務超過に陥った法人については、破産手続開始の決定をすることができないという、こういう措置をしております。

○柴山委員
 法人に対するということを言われましたけれども、個人が債務者である場合もあると思うんですね。個人に対する債権者破産ということは引き続き申し立てられてしまうということで本当にいいのかということをお伺いしたいのと、あと、民事調停の申し立て手数料についても特例が出されるということですけれども、これもその対象地区や適用期間ということがやはり重要になってくると思いますので、その検討状況、あわせてお伺いしたいと思います。

○原政府参考人
 まず、個人の問題でございますが、個人につきましては、破産法上、破産原因が支払い不能のみとされております。支払い不能の状態に陥った場合にはもはや清算の段階に入るべきものと考えますので、特例措置の対象には法律上されていないわけでございます。ところが、法人の場合には債務超過も破産原因になっておりますので、それについての手当てがされているということでございます。
 それから、民事調停の手続費用の問題でございます。これも、この特定非常災害に関する特別措置法において措置ができることになっておりますので、どのような地域にするかについて検討をしているところでございます。

○柴山委員
 ぜひ迅速な検討をお願いしたいと思います。
 続きまして、時間がそろそろなくなってきたんですが、ちょっと行政上の関係についてもお伺いしたいと思います。
 震災によって行政上の手続が妨げられたり、あるいは期間が十分でないというような事態が生じる場合があると思うんですね。例えば、外国人の在留期間が終わりの方に震災が起きてしまったような場合ですとか、あるいは運転免許ですね。被災地で免許を持っておられる方々が更新をしようと思っていたところ震災が起きてしまった、そういうような事態に一体どういう対応がされるんでしょうか。

○黒岩大臣政務官
 お答えいたします。
 今甚大な被害を受けている東北四県及び茨城県の被災地域には約七万五千人の外国人住民がおられる。そのうちの相当数の方々が被災されまして、在留期間が切れそうになっても、入国管理官署に出頭して手続をとる余裕などもない方が多分多くいらっしゃるだろうと思っております。
 そこで、法務省といたしましては、三月十六日に、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特措法に基づきまして告示を行いました。今回の震災のときに東北四県及び茨城県に住んでおられた方など、これは震災当日にそこにいた方または外国人登録をしている方なんですけれども、この方たちを対象に、在留資格に伴う在留期間を一律平成二十三年、本年の八月末日まで、三十一日まで延長いたしました。
 このことによりまして、被災した外国人の方々は、仮に在留期間が到来したとしても、何ら手続をとらなくても本年八月末日までの在留期間が延長されることになる、このような対応をとらせていただいております。

○石井政府参考人
 運転免許の有効期間につきましては、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律に基づく国家公安委員会告示によりまして、被災地に住所がある方で運転免許証の有効期間の満了日が平成二十三年三月十一日以降である場合は、当該満了日が一律に平成二十三年八月三十一日まで延長されることとなっております。

○柴山委員
 延長されるということを聞いて、それはそれでよいのかなというように思います。
 ただ、免許証とかの場合ですと、震災によって流されてしまったり所在がわからなくなってしまうというようなことがそもそも起きてくるんだと思うんですね。そういった場合の運転免許証の不携帯ということについてはどのように扱われるのかということをお伺いしたいと思います。

○石井政府参考人
 道路交通法によりますと、自動車等を運転するときは、当該自動車等に係る運転免許を携帯しなければならないとされているところでございます。
 しかしながら、今回の災害により運転免許証を紛失するなどして、やむを得ず運転免許証を携帯せずに運転しなければならない状況もあることから、このような被災者の方につきましては、事実関係を確認し、免許証不携帯として検挙しないように都道府県警察に既に指示したところでございます。

○柴山委員
 当たり前の措置だとは思いますけれども、その場合の再交付、これは義務づけられないんでしょうか。いつまでの特例なんでしょうか。

○石井政府参考人
 先ほども申しましたように、運転免許がなければ基本的に運転ができないことでもあり、また運転免許証が本人確認の書類として有用であることから、被災者の利便を考えまして、できる限り速やかに運転免許証を再交付できるように努めているところでございます。
 被災地を管轄する警察におきましては、運転免許センターの施設等に大きな被害を受けましたが、再交付の業務を最優先で行うべく鋭意復旧作業を進めてきたところでございまして、本日現在、被害が著しかった宮城県警察を除き、すべての県警察で再交付業務が行われております。宮城県警察におきましても、できるだけ早い時期に業務が再開できるよう、引き続き作業を続けているところでございます。

○柴山委員
 よろしくお願いいたします。
 もう本当に残り時間がわずかになったんですが、法案について短くお伺いしたいと思います。
 こうした震災に伴って、さまざまな法律事件の増加が見込まれると思うんですけれども、そういうことへの対応ということもやはりこの司法インフラの充実に含めて考えていかなければいけないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○戸倉最高裁判所長官代理者
 委員御指摘のとおり、今回の震災の結果、さまざまな法的紛争が発生することが当然予想されているところでございます。過去の阪神・淡路大震災の際には、神戸地方裁判所の管内で調停事件、特に宅地建物関係の調停事件が前年度の三・五倍というふうに顕著に増加したという状況がございました。そういった点で、当時は、神戸に事件を集中的に処理する体制をとったところでございますが、今回は、神戸の場合と比べましても被災地域が非常に広範である上、被災の状況も神戸とはかなり実情が違うということでございます。
 そういった点で、私ども、一応神戸の状況も参考にしつつ、今後どういう事件が起きてくるかということをいろいろな観点から予測をしながら体制を整えていくわけでございます。例えば調停事件が増加するということになりますと、これは調停委員を確保する必要もございますが、神戸の場合と異なりまして、調停委員もかなり被災されておるような地域の実情もございますので、この点もまた今後十分検討してまいらなければならないというふうに考えております。
 そういった点で、まだ確たる予測ができない状況ではございますけれども、私どもといたしましても、このような事件が増加するかということは、いろいろな情報で早期に判断、予測をいたしまして、それに対応できる体制を物的あるいは人的両面で検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

○柴山委員
 これは必ず来ますからね。必ず来ますし、来たときに対応しても絶対間に合いませんから、今のうちからしっかりと適切な準備をしてほしいと思います。
 また、裁判所の定員ももちろん増加しなければいけないということになると思いますけれども、やはり法曹人口トータルのやり方についてもこれを機にもう一度見直しをしてほしいと思うんです。
 やはり、裁判官とのバランスの問題ですとか、あるいはその質の問題ですとか、あるいは今言ったように今後のニーズについていま一度検証ということを行っていただきたいと思いますし、またロースクールのあり方についても、本当に今のままの体制でよいのか、今後引き続きしっかりとやっていける体制になっているのかということも見てほしいですし、また修習生の給費制の問題、こういうことについても検討をしてほしいというように思っているんです。特に給費制、あと一年間しか延長されませんので、もろもろの司法改革の抜本的な見直しということをどの程度今やっているのかということをお伺いしたいと思います。

○江田国務大臣
 法曹養成については、委員が今御指摘のようなさまざまな問題状況が出てきていることは確かでございます。法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度、これが、法科大学院の志願者の大幅な減少等が起きてまいりました。
 そこで、法務省と文科省が共催をした法曹養成制度に関する検討ワーキングチーム、これが、法曹養成制度の問題点、論点を検証して、改善方策の選択肢等を整理して取りまとめを昨年の七月でしたか、いたしました。さらにその後、昨年十一月二十四日の当委員会の決議がございまして、そこで政府に対して、法曹養成に関する制度のあり方全体について速やかに検討を加えよ、その結果に基づいて順次必要な措置を講ぜよ、こういうことを言われておりますので、現在、文科省を初めとする関係機関とともに、法曹養成に関する制度のあり方全体の検討を開始するためのフォーラムを立ち上げようとしているところでございまして、既に関係者の集まる期日など決めたところへこの震災ということになりまして、ちょっとおくれておりますが、余りおくらすことはできないと思っているところでございます。

○柴山委員
 もちろん、震災復興第一で考えていただきたいと思いますけれども、こちらのインフラも、司法インフラもまた非常に重要で、急な検討を要する課題であるかと思いますので、ぜひ関係の皆様には御尽力を賜りたいと思います。
 最後に一点だけ、通告をしておりませんが、お伺いしたいのは、先ほど階議員の方から、判事補から判事への昇進を例えばおくらせるということを今回検討できないかという御質問があったんですけれども、これを検討するに当たって、特段、何か法的な障害がある、例えば報酬を減らせないという、憲法八十条の二項でしたか、規定があったかと思いますけれども、そういった障害はないですよね。それについて最後にお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

○戸倉最高裁判所長官代理者
 突然の御質問でございますので、ちょっと確たることを申し上げるのは難しゅうございますけれども、判事補あるいは判事というものについては、それぞれ法律上任命資格が定められております。そういう意味で、判事補を任命する、判事を任命するというのは、それぞれ資格があれば任命できるわけでございますので、例えば、仮定の話でございますけれども、判事補を十年やられた方がまた判事補を任命希望された場合に、それが法律上問題かというと、それは多分障害はないんだというふうに考えている次第でございますが、先ほどこの点は人事局長も答弁いたしましたとおり、裁判官の任命手続は、まず、その裁判官に任命希望というか任命したいという意思が表示されて、それを受けて、一定の手続を経て、それに任命するかどうかを判断するわけでございまして、その関係で、例えば判事に今任命を希望しておられる方について判事補で任命するということについては、やはりこれは御本人の意思等の関係で問題があるんではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。

○柴山委員
 質問を終わります。以上でございます。

第177回 国会 衆議院 予算委員会

第177回 国会 衆議院 予算委員会 第15号
平成23年2月21日(月)
午前十時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 きょうは、政治と金の問題の集中質疑ということになっています。
 菅総理にまず伺います。
 集中質疑ということなんですけれども、超党派の議員で、予算委員会とは別に、政治倫理を扱う中継入りの委員会を開催して、そこに証人や参考人を呼べるということを提言しているんですけれども、こうした考えについて総理はどのようにお感じでしょうか。

○菅内閣総理大臣
 今、具体的な話としては初めてお聞きしましたので、やはり、国会の中でどういう新たな一つのルールといいましょうか、何かをつくるといったことについては、国会の中で御議論いただくのがいいのではないか。私の立場で、余り詳しいことを知らないであれこれコメントするのは、少し遠慮した方がいいんじゃないかと思います。

○柴山委員
 ぜひ御検討いただきたいと思います。
 続きまして、菅総理に伺います。
 政治資金規正法違反で起訴されて、二月七日に初公判が開かれた石川知裕元民主党所属議員について、私は議員辞職を勧告せざるを得ないと考えますが、あなたはどうお考えですか。

○菅内閣総理大臣
 石川議員は、現在、党を自発的に離れておられると理解しておりまして、どういうことをおっしゃりたいのかわかりませんが、私は、そうした御本人の対応を党としても理解をしている、このように承知しております。

○柴山委員
 私は今、菅直人総理に、一議員として、この議員辞職勧告決議ということについてどのように考えるかということをお尋ねしたんです。
 既に二月八日に、自民党、公明党、たちあがれ日本が衆議院にこの辞職勧告決議案について提出をしております。総理、総理は野党時代に、自分の所属をしている政党ではなくても、議員辞職についてさまざまな形で質問をされていたと記憶しております。
 もう一度お伺いします。石川議員について、総理は一議員としてどうお考えなのですか。

○中井委員長
 総理に一議員として聞くというのは、ちょっとつらいと思いますが。

○菅内閣総理大臣
 私も多少この国会の場が長いので、私が当選してしばらくしたときに、田中角栄元首相が一審で有罪判決があったときに、議員辞職の議論がいろいろとあったことは私もよく覚えております。
 いろいろな場面、いろいろなことがあると思いますが、一議員として答えろということでありますが、この場にこういう形で出ているのは、総理という立場で出ておりますので、この問題については、やはり党の方でしっかりと議論をした中で、先ほど申し上げたように、離党ということを御本人が決断をされて、それを党としては了としているというふうに理解しております。

○柴山委員
 議員として質問をするなということでしたけれども、先ほど来、民主党の代表としての質問は、民主党の所属議員からもさまざまな形で質問をされていたんです。そして私は、今第一審での田中元総理についてのことについて御発言になられましたけれども、今回も、確かに石川知裕さんは起訴段階での議員辞職についての検討なんですけれども、田中さんのときとは決定的に違うことが一つあるんですよ。
 石川議員は、確かに、みずからの自白について誘導されたものだと争うために、取り調べの際に隠し録音をしたやりとりを証拠として提出しています。しかし、先日の初公判での左陪席裁判官の再現によれば、その録音自体のICレコーダー再生から三分過ぎの部分で、石川議員みずから、どういう努力をしたら執行猶予三年になりますか、だって無罪になるわけじゃない、それは百も承知、ただ、ちょっとこれはというところは訂正したいと発言しているんですよ。
 弁護人はいろいろ理屈をつけていますが、本人自身がこのように罪を自覚している案件なのですから、議員をやめていただくのは当然じゃないんですか。

○枝野国務大臣
 法務大臣もおいでになっておりますので、どちらから答えた方がいいのかわかりませんけれども、まさに今裁判所で裁判が行われている案件でございます。なおかつ、これについては、広い意味での行政権の行使として公判請求をいたして裁判になっているところでございます。
 もちろん、法務大臣の指揮権以外に内閣が直接コントロールすることができないということでの一定の独立性がありますが、まさに内閣総理大臣のもとで、その行政権の一環として公判請求がされて、現に裁判が行われている案件についてかかわることについては、内閣総理大臣の立場にある以上は、これはお答えできないというのは御理解いただければと思います。

○柴山委員
 再度繰り返します。
 私は、この石川議員の辞職勧告決議ということについては、今申し上げたことも含めて、政治的道義的責任として、議員としての立場を返上するのがふさわしいのでないかということを確認させていただいているんですよ。そして、この問題は、次に質問させていただく小沢元代表の処分につながってくる問題なんです。
 総理は、つい先日、一月四日の記者会見で、起訴が実際に小沢元代表に対して行われたときには、やはり政治家としての出処進退を明らかにして、裁判に専念されるのであればそうされるべきと、議員辞職にまで言及されました。今回検討されている党員資格停止という処分は、不十分だとお感じになりませんか。

○菅内閣総理大臣
 先ほどのことは、官房長官が答えられたので、あえて繰り返す必要はないかもしれませんが、何か、裁判の中でいろいろなやりとりがあるということを、柴山さんも専門家ですからいろいろ取り上げられるのは、そのこと自体は自由ですが、その中身を、こういう中身があったからこうすべきだ、ああすべきだというのは、少なくとも私が答えるような趣旨ではない。やじでは逃げるなと言われますが、そういうことまで答えていたら、裁判の証拠調べについて総理大臣が何か、この証拠調べはこうだった、ああだったというのは、これは明らかに私はちょっと趣旨が違うのではないかと思います。
 その上で、今おっしゃったことは、私は、一月四日でしたか、起訴が決まったときには、出処進退というのは基本的には政治家みずからがまずは考えるべきことだということを申し上げましたし、そのようにそのとき考えて、そしてその後も、そのこと自体、私が考え方を変えたわけではありません。

○柴山委員
 再度繰り返しますけれども、私は、石川議員の問題については、政治的道義的責任として、議員たる地位を返上する必要があるのでないかということを質問させていただいたものであって、何も、裁判とか証拠調べの内容について容喙しろということを申し上げているわけではないんです。
 その上でお伺いしますけれども、先ほどの小沢元代表についての議員としての身の処し方については、確かに、一義的には御本人が判断されることであろうことは間違いはないかもしれない。ただ、あなたは、出処進退を明らかにして、裁判に専念されるのであればそうされるべきということは、明らかに、議員辞職をするべきだという価値観をお述べになったものではないですか。党員資格停止ということが、この総理の御発言と余りにもかけ離れたものであるということを指摘せざるを得ないと私は思っております。いかがでしょうか。

○菅内閣総理大臣
 どうも柴山さんの論理は、非常に厳しいようで、私には少しずれているように思うんですね。
 つまり、私自身が申し上げたのは、御本人が判断されるべきことではないかということを申し上げたんです。そういう意味で、私は、考え方を特にそれから変えたわけではありません。
 今言われている問題は、党としてどういうことをするか、いわゆる処分をするかということでありまして、これは、党が例えば議員云々ということを普通はやるのではなくて、党の中のルールにのっとって、党の倫理綱領等に基づいて、現在、役員会で発議したものを先日常幹で諮問をして、予定どおりであれば、あした、党の倫理委員会でお話を聞くという手続になっていまして、若干、そのことと今言われていることは、私は少し場面が違うことを言われているんじゃないかと思います。

○柴山委員
 あくまでも党としての処分であるというふうにおっしゃいました。
 しかし、考えてみてください。強制起訴が決まったのが昨年の十月四日ですよ。ここまで党としての処分が長引いて、そしてその間、もう御存じのとおり、党内抗争がさらに熾烈さをきわめて、そのことが政権与党としての本来の意思決定、役割についてマイナスに働いたとはお感じにならないんですか。

○菅内閣総理大臣
 もしかしたら御心配をしていただいているのかとも思いますけれども、この問題がどのくらい一般的にも難しい問題であるかということを、柴山さんもよくおわかりだと思うんです。先ほど田中角栄先生の話が出ましたが、一審有罪判決が出た後、当時の自民党は、当然ながら、議員辞職は必要ないという立場で押し通されました。
 つまり、この小沢さんの問題も、我が党は我が党として、大変な重い課題として議論を重ねているわけで、党の民主主義をしっかり守りながらの議論でここまで来ているわけです。ですから、そういった形で丁寧に手続を進めていることであって、決して党として責任を放棄しているわけでもありませんし、何か、早くやれ、早くやれと言われますけれども、どういう意味で早くやれと言われているのかですね。
 つまり、民主党の中の手続を丁寧にやるということを、何か特に、早くやれやれと言われる趣旨が、応援なのかどうなのかよくわかりませんけれども、逆に、もっと党内抗争を期待されて言われているとしたら、それは大分趣旨が違うんじゃないでしょうか。

○柴山委員
 私は、本来、適切な期限を持ってしっかりと処分をするということを行わないがゆえに、こうしてさまざまな国政の混乱が生じているんではないかということを申し上げているんです。
 別の角度から伺います。
 今回、小沢氏に近い衆議院議員十六名が、十七日、会派離脱届を出したとのことですが、先ほど総理がおっしゃいました、党としての丁寧な手続をとるということは、責任ある処分をするということとは別だとおっしゃいました。
 では、たとえこれらの方々が離党することとなって、与党側が法案を衆議院で再可決するために必要な三分の二の多数派を維持することができなくなったとしても、小沢氏の処分の手続は責任を持って貫徹するというお考えでよろしいですね。

○菅内閣総理大臣
 先ほども申し上げたんですけれども、柴山さんの議論は非常に精密に聞こえるんですが、しかし、責任を持ってというのは何に対する責任なんですか。
 私たちがやろうとしているのは、党の中の手続は、きちんと一つのルールにのっとって、まさに、これは私ももちろん責任ですが、党の責任で順次進めているんですよ、現実に。ですから、それを何か、自由民主党、今は私たちとはライバルの政党である一議員の方が、責任を持ってと言われるときには、何に対する責任なんですか。私たちは、党のことはちゃんと党の自律的な判断でやっていますから。やっているということは皆さん承知なんですよ。

○柴山委員
 党の責任は一体何の責任だとおっしゃいますけれども、国民に対する責任ですよ、総理。
 今、もし民主党が分裂をした場合、そして先ほど申し上げたように、三分の二の与党の多数派を維持することができなくなったとき、国民新党との連立関係、そして社民党との関係がどうなるのかということは、いわば日本国の将来にかかわる問題なんです。
 そういう事態になった場合でも、国民新党とともに、いわば郵政を再国有化する法案の成立を目指したり、あるいは、社民党の合意を取りつけるために、米軍普天間飛行場の県内移設予算の凍結、これについてはまだ総理は明確に否定をされておりません。これについて検討したり、そういうことをされるんでしょうか。

○菅内閣総理大臣
 私も一生懸命聞いているつもりですけれども、十六人の皆さんが会派を出たいということを実際言われたことは事実です。しかし、それに対して幹事長の方から、いや、それは認められないということで、実際の国会手続においても会派離脱は現実のものにはなっておりません。
 何かそういうことを、いろいろと仮定を置いて、そうなった場合に、さらに他党との関係でどうするつもりだ、こうするつもりだというのは、それはちょっと仮定が多過ぎるんじゃないでしょうか。そういう意味で、私が答える趣旨ではない、こう思っています。

○柴山委員
 今、総理は仮定が多過ぎるとおっしゃいましたけれども、報道では決してそんな生易しい報道になってないんですよ。(発言する者あり)報道をもとに発言をするなということなんですが、もし、この十六名が予算関連法案に対して反対の意を申し述べ、そういうことがあった場合、一体政局はどうなるんですか。
 総理、小沢さんと会談をされたということですけれども、小沢氏の証人喚問の問題、そして今回の処分の問題、しっかりとお話し合いになられたというのであれば、その内容を教えてください。

○中井委員長
 いつの会談のことですか。

○柴山委員
 十日の会談です。

○菅内閣総理大臣
 先ほどのことも、どうしても私は、なぜそのことを柴山さんが、我が党の、何か、三分の二なのか、あるいは予算関連法案について心配をしていただいているのであれば、ぜひそれは賛成をしていただきたいと。これは国民的にも混乱を招くからどうするんだと言われるのなら、ぜひ賛成をしてもらいたい、私たちはそういうことをずっとお願いしているわけでありまして、そういうことを抜きにして、そうなったときにはどうするんだ、どうするんだと言うことは、本当に私には、率直なところ、よく意味合いが理解できないので、あえて申し上げたんです。
 それから、小沢元代表と私がお話をしたのは、かなり報道にももう出ておりますけれども、私としては、強制起訴が決まった中で、やはり、党の処分という形よりも、御本人の意思で党を離れていただくという判断をされた方がいいのではないかということは、私の意見として申し上げました。

○柴山委員
 法案の成立に心配なら賛成すればいいじゃないかって、あなたは全く我々自民党の主張を理解していませんよ。
 私たちが今申し上げたのは、予算関連法案については余りにも内容がひどいではないか、そして、その予算関連法案の提出される内容がどうなるかということが、結局、今の普天間基地移設関連予算の執行がどうなるのか、そういうことも含めて、まずどういう案が提出されてくるのかということについて、このままだと明確にならないのではないかという問題意識で申し上げさせていただいているんです。
 続きまして、前回も質問させていただきました、小沢元代表の団体についての迂回献金問題について質問させていただきたいと思います。
 このパネル一をごらんください。
かつての新生党の解散などによって巨額の資金を集めてきた政治団体、改革フォーラム21の問題についてお伺いします。
 一昨年の衆議院解散日である七月二十一日に、改革フォーラム21は、小沢氏が代表を務める民主党岩手県第四区総支部に三億七千万円の寄附を行い、翌二十二日には、その民主党岩手県第四区総支部から、そっくりそれと同じ金額が小沢氏の資金管理団体、陸山会に流れました。そして、陸山会から民主党の候補者九十一名に、総選挙公示までに計四億四千九百万円が提供されたんです。
 ちなみに、昨年の九月十四日実施の民主党代表選挙では、菅総理が勝利をおさめました。しかし、このお金をもらった九十一名の投票行動は、このパネル二のとおりです。
 この一番右の方々は、だれに投票したかを報道に対して明らかにしていませんけれども、この左と真ん中、わかっているだけで圧倒的に多くの方々が小沢さんに投票していることがわかります。
 片山総務大臣に伺います。
 一般論として、政党や政治資金団体、すなわち、自民党であれば国民政治協会という政党のお金の受け皿がありますけれども、それ以外の政治団体から同様の政治団体への寄附金上限額は年間幾らでしょうか。

○片山国務大臣
 今の御質問でありますと、政治資金規正法の規定によりまして、年間五千万ということになっております。

○柴山委員
 パネル一をもう一度ごらんください。
 先ほど……

○中井委員長
 柴山さん、申しわけありませんが、理事会でも少し話がありましたが、この資料は間違いないと思いますし、興味深い資料ですが、出典をちょっと明らかに。

○柴山委員
 先ほどというのは……

○中井委員長
 いや、一番最初に出ていないから。

○柴山委員
 これについては、議員の名前ですか。

○中井委員長
 いやいや、違う、出典。だから、新聞でしょう。

○柴山委員
 これは日経新聞です。

○中井委員長
 何日の日経新聞か。

○柴山委員
 これは十二月の一日です。

○中井委員長
 それで、二枚目の資料は読売新聞ですね。

○柴山委員
 二枚目の新聞は読売新聞です。

○中井委員長
 はい、承りました。

○柴山委員
 質問を続けます。
 今、片山総務大臣の方からは、政党あるいは政党の受け皿である政治資金団体以外の政治団体間の献金の年間上限額、これは五千万円という御指摘がありました。
 では、こちらの図のように、政党支部を間に挟むことによって、そうした政治資金規正法違反の罪は免れられるんでしょうか。

○片山国務大臣
 罪を免れるかどうかということとはちょっと違った御答弁になりますけれども、一般論として申し上げますと、政治資金規正法においては、政党及び政治資金団体、先ほど御指摘になった政党と政治資金団体とそれ以外の政治団体との間の寄附については、年間上限額は設けられておりません。そこの規制はございません。

○柴山委員
 しかし、そんな言いわけは通用しませんよ。政党支部を間に挟んだということだけで本当にいいのか。二つの資金移動の間はわずか一日。動いたお金も、三億七千万、三億七千万で、全く同額。さらに、民主党岩手県第四区総支部の代表者も陸山会の代表者も、同じ小沢さんじゃないですか。
 それだけではありません。このパネルをごらんください。
 当時、一番最初の団体、改革フォーラム21の会計責任者だったのは平野貞夫民主党元参議院議員でしたけれども、このように発言しています。ごらんください。この金は「天下分け目の戦いの時に使うつもりでプールしてあった。陸山会に直接寄付するのはまずいということで、政党支部に寄付した」。しかも、このときには、小沢さんとしっかりと打ち合わせをした上でこのような処理をしていると発言をされているんです。
 ここまで露骨なマネーロンダリングをそのまま是認することが、本当に正しい処理だとお感じになるんですか。

○片山国務大臣
 個別の案件については承知をしておりません。一般論として、法の規定の内容を申し上げますと、先ほど申し上げましたとおり、政党及び政党の政治資金団体については上限がございません。それら以外の政治団体間のやりとりは年間五千万ということでありますから、それぞれの局面でそれぞれの規定に違反しているかどうかの、その判定が必要になるだろうと思います。

○柴山委員
 菅総理、同じように、このような事例を放置しておいてもいいとお感じになりますか。

○菅内閣総理大臣
 私は、クリーンでオープンな政治ということを掲げて九月の代表選に出まして、多くの皆さんに支持をいただいて再選をしていただきました。ですから、そういう形で党の運営も、その後、心がけているつもりであります。
 そういう意味で、いろいろな、きょう午前中の議論にもありましたが、法律的に違法ではなくても、どういうことが適当であるか、あるいはおかしくないかということは、私はいろいろな議論がある、そういうふうに思っております。
 そういう意味で、巨額の、その当時はちょうど選挙の前でありますけれども、民主党としては、民主党の資金によって若い皆さんが頑張っていただくというのは当然あっていいことでありますけれども、そういう形以外のものがどのように使われるのが適切であるかというのは、それは一般的には議論のあることだと思っております。

○柴山委員
 全く答えになっていないと思います。そして、テレビをごらんになっていらっしゃる方も、同様に、今の御答弁には納得していないと思います。
 この改革フォーラム21に巨額の税金を入れたのではないかという疑惑を先日来追及させていただいております。キーマンは藤井官房副長官です。
 小沢氏がかつて代表を務めておられた自由党が、平成十四年、税金によって賄われている政党交付金を、十五億円超にわたって、当時の幹事長だった藤井官房副長官に支出したとされている問題。そして、二年後の平成十六年ごろ、先ほどの改革フォーラム21の口座に、収支報告書に記載のない、まさしく十五億円の入金があったと報じられた問題。この場で取り上げられました。この一番左の改革フォーラム21です。
 そして、藤井副長官、先日の質疑で、あなたが平成十四年に自由党から合計十五億円超の政党交付金を受け取った際に署名したとされる二枚の領収書について、あなたは認識がありませんとお答えになりました。間違いありませんね。

○藤井内閣官房副長官
 全くそのとおりです。

○柴山委員
 この領収書のあなたの署名の一つを拡大したのがパネル四です。
 一方、私たちの手元には、あなたがみずから署名をした書面があります。このパネル五をごらんください。平成十二年に衆議院議員の定数削減に関して交わされた合意書です。自民党、公明党に加え、自由党藤井裕久という署名があります。
 改めて、藤井副長官、この三党合意の署名はあなたが書いたものに間違いありませんね。

○藤井内閣官房副長官
 そのとおりです。

○柴山委員
 そして、この三党合意の署名部分のみを拡大したのがパネルの六です。
 これと先ほど問題となった領収書の署名を重ね合わせるとどうなるか。ずれないように透明セルを使ってきちんと重ね合わせます。まず藤の字、そして井の字、そして個性のある裕の字、久の字。どう見ても一致しているんじゃないんでしょうか。
 それだけではありません。おとといも一部報道で、この両者を照合した日本筆跡鑑定人協会会長が、民事裁判や事件で筆跡鑑定を手がけた経験を生かして、二つの筆跡が同一人によるものと判断したとされています。
 総理、この二つの署名をごらんになって、総理は一致しているとお思いになりませんか。

○菅内閣総理大臣
 私は筆跡鑑定をする立場でもありませんので、私がそれについてコメントをする立場にはないと思っております。

○柴山委員
 総理、かねてからこの問題については疑惑とされていました。にもかかわらず、藤井副長官を任命されたわけですから、もし実際に御本人がこうした領収書を作成して多額の政党交付金を使途不明にしていた場合に、みずからの任命責任が問われるとお感じにはなりませんか。

○菅内閣総理大臣
 これも、幾つか何かが飛躍があると思います。
 一つは、たしかこれは自由党の中のことで、それについては、当時合併前でありますし、党が違いますので、そのことを前提にいろいろとおっしゃるのは、どうして私におっしゃるのかなというふうに思います。
 ですから、何か、そのことが御質問の中でどういう意味で私に問われているのか、よく理解できません。

○柴山委員
 みずからの政党の一員になる前のことは不問に付してもよい、そのようにおっしゃるんですか。

○菅内閣総理大臣
 いや、今申し上げたとおりで、私が当時党が違った党のことをあれこれ言うのはふさわしくないと申し上げているんです。

○柴山委員
 それでは、そのときのことは調べられないと言うんだから、藤井副長官、そして関係者はみんな今民主党にいらっしゃるんですよ。今から調査しようと思ったらできるはずなんです。調査をしていただけますか。

○枝野国務大臣
 済みません、何をお尋ねになりたいのかがよくわからないんですが、菅総理が民主党の代表になりまして、そして、法的には問題はないけれども、いわゆる組織対策費については、今後は民主党としては行わないということを私が幹事長として決めさせていただきました。
 しかし、いわゆる組織対策費については、御党もたくさん支出をされておられる、そして法的に問題のものではございません。そのことが大前提の御議論ではないかというふうに思っております。

○柴山委員
 今回の問題で非常に大きいのは、この十五億円というのが、まさに政党交付金の報告書に書いてあるとおり、すべて税金であるということなんですよ。
 そして、藤井副長官、あなたは、私が先日、このように筆跡を照らし合わせて追及した際、私はその金をいただいておりませんから、それに対しての領収書の認識は全くありませんと、ちょっと含みのある御答弁をされました。そして、私が、金を受け取ったかどうかということとこの署名があなたのものかどうかということを、あえて分けた上で署名についてお尋ねしたのに対して、ああ、二つを分けてくださってありがとうございますとおっしゃったんです。
 一体、このありがとうございますというのはどういう意味なんですか。

○藤井内閣官房副長官
 この間のやりとりのときの当時のことをおっしゃっていただいたと思っています。
 分けたということは、全然そういうものはいただいていないということ、それから、いただいていない以上は、署名を書いたかなんということは全く認識の中にない、そういうことでございます。

○柴山委員
 お金をもらったかどうかということと署名をしたかどうかということを、二つを切り離して別々に、署名自体についてお尋ねしたんですよ。お金を直接は受け取っていないけれども、署名についてはもしかするとしたかもしれない、そういうことじゃないんですか。

○藤井内閣官房副長官
 違います。

○柴山委員
 では、先ほど申し上げた、二つを分けてくれてありがとうございますというのは、どういう意味なんですか。

○藤井内閣官房副長官
 受領しないということをはっきり言ってくださったということです。

○柴山委員
受領しないとうことをはっきり申し上げたわけではありません。お金を受け取ったかどうかということと署名をしたかどうかということを分けて、署名について質問させていただいただけなんです。
 まず、この署名について、あなたが署名をしたこと自体を否定されるんですか、それとも記憶がないんですか、それともだれかに代筆をさせたんですか。明確に御答弁ください。

○藤井内閣官房副長官
 記憶がないんじゃないです。

○柴山委員
 今重要な御答弁をされました。記憶がないんじゃないんですというふうに今聞こえました。記憶がないのではなければ、事実はどうなんですか。お答えください。

○藤井内閣官房副長官
 だから認識がないということです。

○柴山委員
 記憶がないのではないけれども認識がないというのは、一体どういうことなんですか。

○藤井内閣官房副長官
 申し上げたとおりです。

○柴山委員
 認識がないと、あなたは今明確におっしゃったんですよ。だけれども、記憶がないということではないとおっしゃったではありませんか。あなたは、要するに、この署名は自分がしたわけじゃないということをおっしゃりたいんですか。もう一回、明確に御答弁ください。

○藤井内閣官房副長官
 全く認識がないということです。(発言する者あり)

○中井委員長
 もう一度お答えをいただきます。三つのうちどれだと言われていますから、三つ全部違うのか、三つのうちのどれかか、藤井副長官、お答えください。

○藤井内閣官房副長官
 認識がないというのが正しい答えです。

○柴山委員
 ですから、認識がないというのは、あなたは今、記憶がないわけではないとおっしゃいました。ということは、私、つまりあなたが署名をしたのではないということをおっしゃったのですか、それとも、だれかに代筆させたのだということをおっしゃったのですか、それとも、第三者が不正にこの署名をしたということをおっしゃったんですか。明確にお答えください。

○藤井内閣官房副長官
 認識がないということは、本人が書いた認識が全くないということです。それ以上のことはわかりません。

○柴山委員
 自分の署名ではないということを今、藤井副長官はおっしゃいました。
 その上で、代筆ということではないのかという質問についてはどうですか。

○藤井内閣官房副長官
 それは認識がありません。

○柴山委員
 第三者の代筆も私は認識がない、つまり、藤井副長官が権限を与えたことはないということです。あなたが書いた署名ではなく、そして、あなたがこの代筆の権限も与えないということは、要するに、第三者が不正に署名をしたとあなたは今発言をしたということなんです。
 もし、いいですか、先ほど申し上げたように、この二つの署名は、既に一部の鑑定の方がおっしゃっているように、あなたの署名に間違いはないという意見も出ています。そのことを前提にもう一度お尋ねします。

○藤井内閣官房副長官
 全く認識がありませんし、それがどういう形で書かれたかということについても含めて、認識がありません。

○柴山委員
 もし、この領収書の藤井さんの署名が、今申し上げたとおり、あなたが代筆を許可していないにもかかわらず第三者によって不正になされたとすれば、それは刑法上いかなる罪に当たるんですか。江田法務大臣、いかがでしょうか。

○江田国務大臣
 今かなり仮定の質問をされたのですが、これがなかなか難しいんですね。
 二つの署名をそこへそうして並べておられますが、鑑定というのは、これはもう委員はよく御存じのとおりで、裁判でいう場合には、裁判官も検察官も弁護士も、もちろんいろいろなことを当然勉強して知っていますが、それでも全然知らないことはあるんです。そういうときに、専門的な知識や経験のある人に専門的な立場から調べていただくということで、この二つがそうやって並べていると、テレビで見ている人はそれは同じように見えるかもしれないけれども、必ずしもそうでもないので、今私、片山総務大臣とちょっと当時私どもが若かりしころのことを言っておったんですが……(柴山委員「質問に答えてください」と呼ぶ)答えます。
 「太陽がいっぱい」という映画がありますよね。あれなんかでも、本当に一生懸命署名を人が代行してしまうようなこともあるんです。
 ですから、余り仮定で聞かれても困るので、お尋ねの犯罪の成否ということについては、今の仮定だけで答えろと言われても、これは捜査機関が収集した証拠に基づいて個別に判断することでございますから、今のこういう事実だとどうですかと言われましても、それはお答えできません。

○柴山委員
 二つを重ね合わせて一致するかどうかという話だったのですけれども、藤井副長官、今こうやって改めてこの二つの署名をごらんになって、この領収書の字は自分の字に似ているなということをお思いにならないんですか。

○藤井内閣官房副長官
 そっちの署名は認識がありません。

○柴山委員
 それでは、認識がないというふうにお答えだったんですけれども、それで本当に世の中通るというふうに思うんですか。藤井副長官、認識がないというだけで、本当にこうやって照合させて、それで通ると思っているんですか。

○藤井内閣官房副長官
 さっきから申し上げているように、それを受け取っていませんから、そういう事実ということに対して全く知らないということです。

○柴山委員
 藤井副長官、そうやってあくまでも事実についてしらを切るということで、国民の皆さんは納得できません。
 江田大臣、この領収書は、一般論として尋ねますが、社会生活上重要な事実を証明する書面には当たらないんですか。

○江田国務大臣
 私は、この委員会、きょうは通告をされたから出てきたんですが、この領収書はと言われても、私、ちょっとその領収書が出たときにいないんだと思うんですね。どの領収書か、よくわかりません。

○柴山委員
 では、一般論として、領収書ということについてお伺いします。

○江田国務大臣
 一般論として領収書が重要な書類かどうかということですね。
 領収書というのは重要な書面だと思います。

○柴山委員
 社会生活上重要な事実の証明に関する書類について、もし第三者が不正に署名をして偽造したとなれば、これは文書偽造の罪になるんです。
 そして、藤井副長官、片山総務大臣とこれは認識が一致しているかどうか、ぜひお伺いしたいんですけれども、一般論として、政党交付金の支出先を偽って収支報告書が記載された場合、会計責任者は、政治資金規正法上、いかなる罪を問われるんでしょうか。

○片山国務大臣
 一般論として申し上げますと、政治資金規正法では、故意または重大な過失によりまして収支報告書に記載すべき事項を記載しなかった者または虚偽の記入をした者については、五年以下の禁錮または百万円以下の罰金に処する旨の規定があります。

○柴山委員
 藤井副長官、平成十四年の収支報告書提出の際、藤井副長官は自由党の幹事長であるとともに会計責任者でしたね。

○藤井内閣官房副長官
 そのとおりです。

○柴山委員
 とすると、副長官、鳩山前総理の偽装献金事件を思い出してください。友愛政経懇話会の事務担当者、勝場啓二氏が収支報告書の虚偽記載で処罰されましたけれども、会計責任者である芳賀大輔氏も重過失を理由に、先ほど片山総務大臣が御指摘をされましたけれども、同じく刑事処分を受けることになったんです。
 仮に、この署名が別人のものであって、政党交付金を藤井裕久さん以外の人が受け取ったということになっても、あなたも、知らないじゃ済まされないんですよ。いかがですか。

○藤井内閣官房副長官
 今の話は所管庁において判断されることと思っています。

○柴山委員
 さらに、このパネル七を見てください。
 これは、平成十四年の自由党の収支報告書です。これには、この右にあるとおり、「この報告書は、政治資金規正法に従って作成したものであって、真実に相違ありません。」という宣誓書が添付されていて、会計責任者である藤井副長官の署名捺印があります。これについても、あなたは、御記憶にない署名捺印であるということでよろしいんだったでしょうか。

○藤井内閣官房副長官
 記憶にないのではなく、認識がない。

○柴山委員
 総務大臣に伺います。
 一般論として、会計責任者が収支報告書に添付される宣誓書に署名をしなかった場合に、政治資金規正法に反することにはなりませんか。

○片山国務大臣
 政治資金規正法の二十九条によりますと、収支報告書を提出する者、これは会計責任者でありますけれども、この収支報告書を提出する者は、真実の記載がされていることを誓う旨の文書、これは宣誓書でありますから、これを添えなければならないという規定がありますので、もしそれがなければ、この二十九条の要件は満たしてないということになります。

○柴山委員
 おっしゃるとおりだと思います。
 藤井副長官は、先ほど、当時の会計責任者であることは認めておられるわけですから、もし第三者がこの署名をして、あなたがしていないということなら、今総務大臣がおっしゃったとおり、あなたはこの義務を果たしていないとみずからお認めになるということなんです。
 さらに伺います。
 総務大臣、本人が認識がないと言っている署名の領収書は、有効な領収書なんですか。

○片山国務大臣
 個別のことについてはお答えいたしかねます。

○柴山委員
 一般論としてお伺いしているんです。選管の判断を求めます。

○片山国務大臣
 一般論であっても、それがどういう領収書であるのか、どういう経緯で作成された領収書であるかによってわかりませんので、ここで一般論としてでも答えることはできないと思います。

○柴山委員
 今、重要なことを片山総務大臣はお答えになったんですよ。
 収支報告書には、領収書の保管ということ、あるいは、一定の金額以上のものについては添付が要求されているんです。その領収書について、第三者が不正に作成したものが有効なのかどうかということは、決して個別の事案でも何でもないじゃありませんか。お答えください。

○片山国務大臣
 すべての領収書について会計責任者が全部自分で例えば関与するとかということは、恐らく事実上ないと思うんです。いろいろな人が関与して、最後に会計責任者がまとめるんだと思いますから、個別の一つ一つの領収書について、一般論としてであっても、ここでそれが無効であるか有効であるかということをお答えすることはできない、そういうことを申し上げたわけです。

○柴山委員
 テレビをごらんになっておられる方が、一体どのようにお考えになるか。全く納得できませんよ。もう一回、しっかりと答えてください。

○片山国務大臣
 もっと一般論で言いますと、もしそれが虚偽である、それが故意または重大な過失により虚偽のものであったということになりますと、政治資金規正法でそれに対応する罰則がございます。

○柴山委員
 初めからそのように御答弁をいただきたかったと思います。
 先日来、私はこの件、特に、先ほど来、藤井副長官が再三、認識がない、あるいは、みずからは関与していないとおっしゃっている資金の流れについて、何度も、当時の自由党の職員で、現在、民主党に移られている方々への調査をお願いしているはずです。一体どのようになっていますか。

○藤井内閣官房副長官
 先日もお答えしたように、その人の名前は知っています。しかし、私自身がそういう認識がないわけですから、一々聞いておりません。

○柴山委員
 おかしいですよ。私が固有名詞を挙げてまで藤井副長官に調査を依頼し、そして、当時の資金の流れを確認、調査してくださいと二度にわたってお願いをしたにもかかわらず、これは議会軽視ととられても仕方がないんじゃないんですか。こんなことで私は質問を続けられませんよ。
 藤井副長官、調査を確約してください。

○藤井内閣官房副長官
 今申し上げたように、そういう認識がありませんから、そういうことについて一々聞いてはおりません。

○柴山委員
 再度、参考人として関係者をしっかりと呼んでいただきますようにお願いをしたいと思います。

○中井委員長
 三人のお名前が挙がったと思っております。各党間の協議、理事間の協議をいたします。

○柴山委員
 小沢元代表をめぐる疑惑は、こればかりではありません。次のパネル八をごらんください。
 今質問させていただいた平成十四年の件の翌年、平成十五年九月二十六日に、自由党は民主党と合併して解散しました。ところが、その二日前に、民主党は、解散する自由党に対して三億円もの寄附を行っています。そして、自由党の解散当日になって、自由党から、自由党の政治資金団体だった改革国民会議に約十三億円、うち、税金である政党交付金が五億六千万円流れている。これは非常に不明朗な処理だと思いますが、枝野長官にお伺いします。
 枝野長官、長官は、平成十九年十月七日放送の「サンデープロジェクト」に出演された際、正直、この話を聞いて私はむっとしていますとコメントされていますね。御記憶ですか。

○枝野国務大臣
 記憶しています。

○柴山委員
 なぜ、むっとされたんですか。御説明ください。

○枝野国務大臣
 当時の自由党の財政状況について存じ上げませんでしたので、私は民主党の方に属しておりましたので、民主党の方から自由党の方に寄附がなされているということについては、合併前の民主党の立場からは余りおもしろいことではないなというニュアンスのことを申し上げました。

○柴山委員
 違うでしょう。「サンデープロジェクト」の、実際、そのときの出演のあなたの発言を私は持っています。
 私は、当時、党の政調会長でした、党の役員会のメンバーでもありました、こんな重要な話は相談一つ受けていませんので、三億円からの大きな資金を勝手にどこかの判断で寄附をしていたということは、党員に対する背信行為だと非常に怒っています、このように発言をされたんです。思い出しましたか。

○枝野国務大臣
 ちょっと、正確に何と申し上げたかというのは、それこそ御通告もありませんし、記録もとっておりませんが、今申し上げたような趣旨で、政党の中においては、政策調査会長はこの手のことにもともと、本来かかわる立場ではありませんので、私が当然存じ上げなかったんですが、でも、知っていたら、何でなんですかねと聞いていただろうなという趣旨でそういうことを申し上げたんだと思います。

○柴山委員
 では、枝野長官、今このようにしっかりと図をもって説明をさせていただきましたけれども、このように駆け込み処理をしたことは、自由党が小沢さんの関連団体に民主党からの持参金を流すために行われたものだ、そういうようにお感じにはなりませんか。

○枝野国務大臣
 当時の自由党の財政状況や当時の自由党の内部事情について私は知る立場ではありませんし、その後も小沢議員からそういったことについて話を聞く機会もありませんので、私は何とも申し上げようがありません。

○柴山委員
 違いますね。このときに、同じ番組で、あなたはこのようにおっしゃっているんです。
 自由党の側に借金でもあってね、それを合併するに当たって清算しなきゃならないというなら話はわかりますが、自由党は十三億からの資金をお持ちなわけですから全く意味不明です、このように不快感を出しておられるんですよ。
 こうした事態を避けるために、枝野長官、何かおっしゃりたいことはありますか。

○枝野国務大臣
 ですから、その自由党の財政状況の詳細とか当時の自由党の御判断について私は知り得る立場でありませんし、その後、残念ながら、小沢議員とそういった話をする機会もございませんでしたので、どうしたことであったのかということについては存じ上げませんが、当時の心情を当時その番組で申し上げたということで、その心情については否定するものではございません。

○柴山委員
 こうした事態を避けるためには、税金をもとにした政党助成金の余剰金について、国庫に返還するというルールを確立するという政党助成法の改正が必要だと考えています。自民党は既に、改正案を政治倫理の確立及び公職選挙法に関する特別委員会に提出していますが、総理、速やかに民主党としても成立に協力することをお約束していただけるんでしょうか。

○菅内閣総理大臣
 大変有意義な提案だと思います。
 先ほど来の議論、私には特に御質問がありませんでしたけれども、党の合併に伴う段階で、自由党として、もう既に選挙準備などの費用をかなり支出されていたということもあって、一定の処理を当時の岡田幹事長とともに正式の手続の中でやったわけでありまして、今の提案については、傾聴に値する意見だ、このように感じております。

○中井委員長
 柴山君。時間が来ていますので、まとめてください。

○柴山委員
 最後です。こちらのパネル十です。
 今問題となっている民主党小沢元代表の資金管理団体、陸山会が保有する不動産の一覧です。処分したものもありますが、一等地のいいところにこれだけ持っている。不動産屋じゃないんです。政治団体が政治資金で買っているんです。しかも、個人として、沖縄の辺野古近くに五千二百平米という広大な土地を、平成十七年十一月二十八日、基地移設に係る日米中間合意のわずか一カ月後に購入をしている。
 こうしたことを問題としないで、しかも、先ほど申し上げたように、小沢マネーを多くの所属議員が活用する中で、菅総理、あなたが掲げているクリーンな民主党に本当にできるのか、最後にお考えを伺いたいと思います。

○菅内閣総理大臣
 まさに、私が代表選でクリーンでオープンな政治と申し上げた中には、いろいろな思いが入っているわけでありまして、党の運営というのは、私は、特に政党助成金をいただく中では、これまで以上にしっかりとした透明性が必要だと。少なくとも、私が代表になって以降、あるいは過去の時期も含めて、そういう形でやってきたわけでありまして、それに反するような形はこれからも民主党としてはとらないでいきたい、このように強い決意を持っております。

○中井委員長
 柴山君、終わってください。

○柴山委員
 大変納得ができない答弁が多々ありましたが、以上で私の質疑を終わります。ありがとうございました。

第177回 国会 衆議院 予算委員会 第五分科会

第177回 国会 衆議院 予算委員会 第五分科会 第1号
平成23年2月25日(金)
午前八時開議

○柴山分科員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 ニュージーランドの震災被害者の救助状況が大変気がかりなんですけれども、今、日本では地域医療の連携の必要性が叫ばれる中で、これをどのように考えたらいいんでしょうか。
 細川大臣にお伺いします 。国策として、中規模以上の災害や感染症が発生した場合の地域医療連携について、どのように充実させようとしているんですか。また、テロについては考えておられるんでしょうか。

○岡本大臣政務官
 まず、災害時やテロが起こった場合の医療については、被災した地域における医療機関や被災地外の医療機関が十分に連携を図っていくということが重要だと考えています。
 このため、災害発生時等の医療の拠点となる災害拠点病院の整備や、災害時での活動に特化して訓練を受けた災害医療派遣チームの養成等、これはDMATでありますけれども、これを進めております。ちなみに、災害拠点病院は、二十三年一月一日現在で六百九カ所を指定しておりますし、また災害医療派遣チームは、二十三年一月一日現在で八百一チームが養成済みとなっています。
 また、都道府県が定める医療計画では、災害拠点病院における診療など、災害時やテロが起こった場合における医療提供体制の確保に関する事項を記載するよう求めております。
 さらに、新型インフルエンザ発生時の地域医療体制の整備については、新型インフルエンザ対策行動計画に基づき、都道府県に対し、新型インフルエンザ発生時に外来、入院を担う医療機関の整備を進めるよう要請するとともに、原則として、二次医療圏を単位として、地域医師会等の関係機関から成る対策会議を設置して、地域の実情に応じた医療体制の整備を推進するための支援等を行っています。
 いずれにいたしましても、都道府県や関係府省としっかり連携しながら、災害医療体制等の確保に取り組んでいく必要があるというふうに認識をしております。

○柴山分科員
 体制を整備しても、実際に一たび事が起きたときにきちんと機能しなければ、絵にかいたもちに終わってしまうわけですよ。
 ですので、お伺いしたいのは、実際にそういった災害や感染症が発生した場合の訓練、これがどのような状況になっているのか、また課題がどのような形で認識をされているのか、ぜひお伺いしたいと思います。また、今、訓練が夜できていないというような御指摘を地元で受けるんですけれども、これについてもぜひ実情を紹介していただけたらと思うんですが。

○岡本大臣政務官
 災害時の医療に関する訓練といたしましては、災害派遣医療チームが参加して、毎年九月一日に実施される政府総合防災訓練において、被災した患者を被災地外の医療機関に搬送する訓練のほか、全国八つの地方ブロックごとに、これも年一回でありますけれども、訓練を実施しております。
 また、各自治体においても、災害派遣医療チームや地域の医療機関が参加して、災害時の医療に関する訓練が適宜実施されていると承知はしておりますけれども、今委員御指摘の、夜間に行っているかということを問われますと、各自治体が行っているところについては承知をしていませんし、先ほどの政府が行っているいわゆる訓練においては、残念ながら、夜間に実施をしているということではありません。
 災害時への対応を高めていくためには、こうした訓練を通じて対応能力を不断に高めていくことが課題と考えておりまして、引き続き、災害派遣医療チームの養成に取り組むほか、災害時の医療に関する訓練の充実、委員がおっしゃるような点も、我々としてしっかり受けとめながら図っていく必要があろうというふうに考えております。

○柴山分科員
 阪神・淡路大震災というのは未明に起きたわけですよ。みんなが寝静まっているときに、あるいは火を多くの世帯が使っているときにどういうことが起きるかということは、きちんとシミュレーションをしていかないといけないと私は思うんです。ぜひ、御検討いただきたいと思います。
 私の地元には防衛医科大学校また入間基地がありまして、こういった災害医療の問題については大変意識の高いエリアだとは思うんですけれども、防衛医大や入間基地を中心とした訓練の実態及び課題ということは一体どのようになっているのか、また自治体の役割が一体どうなっているのかについて、ぜひお伺いしたいと思います。

○原政府参考人
 お答えいたします。
 防衛医科大学校病院は、御承知のように、昭和五十二年に開設をされまして、今現在までに、埼玉県における地域医療にも貢献をしているところでございます。
 先ほどお話がございましたように、災害拠点病院としても指定をされておりまして、近年でいいますと、例えば平成二十一年度、関東の八都県市の合同防災訓練でありますとか、あるいは今年度の埼玉県の特別機動援助隊応用研修であるとか、県の特別機動援助隊合同訓練などに参加しているところでございます。
 また、入間基地でございますけれども、こちらの方は、県内というよりももう少し広域的な観点からの役割を期待しているところでございまして、例えば、首都直下型の地震対処でありますとか、あるいは東海地震対処などにおいての広域的な患者搬送拠点として考えているところでございます。
 毎年九月に政府全体で実施しております防災訓練の一環としましても、今年度あるいは十九年度等々、最近も広域医療搬送拠点としての訓練を実施してきたところでございます。

○柴山分科員
 ぜひ、しっかりと今後とも検討を続けていただきたいと思います。
 続きまして、看護職員の問題について伺います。
 今私の手元にあるのが第七次の埼玉県看護職員需給見通しというペーパーなんです。平成二十三年でいいますと、病院や診療所など需要側の数ということで、常勤で換算すると四万九千八百四十七名、一方、供給側は、同じく常勤換算をすると四万八千九百十七名、差し引きで九百二十九名の人手不足ということになっております。
 そして、これが平成二十七年の見通しということになりますと、需要数が常勤換算で五万五千六百二十六名、そして供給側が五万四千五百三十六名で、差し引き千八十九名の人手不足ということでありまして、かなり需給が逼迫しているという実態がおわかりいただけるかと思います。
 こういった需給のアンバランスと、それから医療機関や地域による看護職員の偏在、こういった問題について、原因が一体どういうところにあるのか、そしてどのように今後の見通しというものを立てておられるんでしょうか。

○岡本大臣政務官
 昨年十二月に公表した第七次看護職員需給見通しによれば、供給見通しの需要見通しに対する割合が、平成二十三年には九六%、平成二十七年には九九%となっております。委員御指摘の同様の数字を見ますと、平成二十三年ですと、全国は、百四十万四千三百人の需要数に対して供給が百三十四万八千三百人、これで九六%でありますが、また、二十七年は百五十万九百人の需要数に対して供給数が百四十八万六千人、これで九九%、こういうような見通しになっておりまして、全国規模ではかなりの程度満たされる見通しとなっているところであります。
 しかし、個々の地域や施設類型ごとに見れば、看護職員が偏在し、なお不足感のある医療現場があるなど、こういった指摘もありまして、その原因といたしましては、就労条件や勤務環境など、さまざまな要因が複合的に影響していると考えられます。
 今後、医療現場の特性に応じた確保対策のためのデータ集積を図るとともに、国、地方公共団体、病院開設者等の関係者が協力をいたしまして、地域や施設類型に応じたきめの細かい確保対策を講じていく必要があると考えています。
 また、そういった看護職員の確保対策といたしましては、看護師等学校養成所の運営費補助等のいわゆる養成促進、また、子育て中の看護師等の離職を防止するための院内保育所への支援や、新人看護職員の早期離職を防ぐための新人看護職員研修への支援等、定着促進とともに、ナースバンクにおける求人・求職情報の提供、就職あっせんなどの再就職支援などのさまざまな施策に取り組んでいく必要があろうかと思っております。
 今後とも、こうした対策を総合的に実施しつつ、引き続き看護職員の養成確保のために対策を強化していく、こういったことが必要であろうというふうに考えております。

○柴山分科員
 今、厚労省の方から、看護職員のいわゆる供給をふやすための方策として、養成システムの充実、そして公費の投入ですとか、あるいは今おっしゃったような離職防止などの待遇の改善ということは、これはぜひ進めていただきたいと思います。
 ただ、今、看護職員を養成しているのは、厚労省所管の専門学校等の機関だけじゃなくて、文科省でも、大学等を設置して、そこで看護師を養成しているわけですよ。ですので、これは文科省の方でも、大学における看護養成の拡充ということについて、何らかの手だてというものは講じていただいていないんでしょうか。

○加藤政府参考人
 お答えを申し上げます。
 文部科学省におきましては、平成四年の看護師等の人材確保の促進に関する法律の施行を受けまして、看護師養成に取り組む大学の拡充を図ってきてございます。平成三年には十一大学で入学定員五百五十八名であったものが、平成二十三年度には百九十四大学で入学定員が一万五千九百四十九人というふうになる予定でございます。
 一方、最近、医療の技術の高度化などが非常に速いテンポで進んでおりまして、離職する看護師が多いという調査も職能団体の調査などでございます。したがいまして、今後は、長期にわたって働き続けられるよう、大学において質の高い看護師を養成することが重要であると認識してございます。
 文科省におきましては、厚生労働省様の協力も得て、大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会というものを開催いたしまして、このたび、学士課程修了時に看護専門職者として修得すべきコアとなる能力、また、その修得に必要な教育内容というものを示しました学士課程版看護実践能力と到達目標といったものを策定していただいたり、また、看護実践能力の教授に必要な教員の能力開発などの取り組みの方向性といったものもまとめていただいたところでございます。
 こういったものを受けまして、文科省といたしましては、各大学における取り組みを促すなど、引き続き、厚生労働省とも連携して、社会の要請にこたえられるよう看護師の養成に努めてまいりたいと思っております。

○柴山分科員
 ぜひ、役所の縦割りとならないように、今御説明いただいたように、連携をしっかりと厚生労働省ととって進めていっていただきたいと思います。
 ただ、例えば養成所の充実一つとっても、実際にこれを実習する機関がしっかりと確保されていないと、絵にかいたもちというか、うまく養成が進んでいかないということもあると思うんですけれども、その受け入れ機関ということについてはどのように考えておられるんでしょうか。

○岡本大臣政務官
 今御指摘がありました看護師養成所の設置に当たっては、あわせて、病院や訪問看護ステーションなど、学生の実習場所を確保することが必要だと考えています。講義そして学内演習とあわせて必要な実習場所でありますけれども、近年、看護職員の養成数が増加しており、実習施設の確保は重要な課題の一つとなっております。
 厚生労働省といたしましては、看護学生の実習に協力していただける施設がふえますよう、看護師等養成所の運営に対する支援において、実習施設への謝金等を盛り込むとともに、患者やその家族など、看護学生の実習に対する理解や、また、協力を求めるためのパンフレットによる啓発など、実習を受け入れる施設の確保に取り組んでいるところでございます。
 いわゆる数がどうなのかということについては承知をしていないということになっております。

○柴山分科員
 厚労省、文科省と聞いたんですけれども、先ほど申し上げたように、私の地元には防衛医大がございまして、防衛医大では、看護師養成課程について、平成二十六年度から四年制のカリキュラムがスタートするということで、これ自体、私は、コメディカルの充実という観点では望ましいというように思っているんですけれども、四年制に切りかわると、一瞬、卒業生が空白の一年というものが生じてしまうことになるんじゃないかなというふうに思っているんです。この対策はどのようにとられているでしょうか。

○原政府参考人
 お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、平成二十六年度から四年制に移行したいというふうに考えております。現在、自衛隊におきましては、中央病院附属の高等看護学院と御地元の防衛医科大学校の高等看護学院、二つございます。教育体制のこともございますし、同時にその両方を募集するという点での受験者の質の問題等もございます。そういうことから計算していきますと、ちょうど平成二十八年度末は空白になるということになっております。
 ただ、その中で、現在も防衛医科大学校の附属病院の看護師は、必ずしも卒業生だけではございませんで、一般の公募からもかなりの数を採っております。そういう意味では、その公募枠の拡大でありますとか、あるいはまた、自衛隊そのものとしては千人を超える看護師をもちろん持っておりますので、そういう方々の活用であるとか、そのあたりの検討を医療の質に差しさわりのないように進めていきたいというふうに考えております。

○柴山分科員
 あと、今、介護と医療の境目という問題が大変、療養病床の問題とか、いろいろあるんですけれども、ホームヘルパーなどの介護従事者が医療的行為をどこまでできるんだということがこの人手不足解消について大きなポイントとなってくるのかなというように私は思うんですけれども、これについて一体どういう検討がなされているのか。また、そういった介護従事者に対する医療サイドからの研修の充実、こういうことについて一体どういう対策が打たれているのか、お聞かせいただきたいと思います。

○岡本大臣政務官
 ホームヘルパー等介護職員によるたんの吸引や経管栄養の取り扱いについては、在宅や特別養護老人ホーム、特別支援学校において、当面のやむを得ず必要な措置として、運用によって認めてきたところでございます。
 しかしながら、こうした運用については、そもそも法律において位置づけるべきではないか、また、グループホーム、有料老人ホームや障害者施設等においては対応できていないのではないか等の課題が指摘をされてまいりました。
 このため、今般の介護保険法改正とあわせて、介護福祉士及び研修を受けた介護職員等が医療職との連携のもとにたんの吸引等の行為を実施できるよう、法律の改正案を今国会に提出する予定でございます。
 その際、教育、研修の具体的内容については、現在実施している試行事業の検証結果等を踏まえて検討していくということになろうかというふうに考えております。

○柴山分科員
 これもやはりしっかりとデータをもとにした検証をやらないと、現場が回っていかないということになりかねませんから、ぜひそこはしっかりとやっていただきたいと思います。
 続いて、いろいろと問題が指摘されている特定健診、メタボ健診についてお伺いしたいと思います。
 私は、これからは予防医学の充実ということが大きなテーマとなってくるということで、その意義自体はよく理解をするんですけれども、巷間指摘されているような低い受診率、あるいは、事務処理が非常に煩雑で、代行機関を雇ったりするということが促進されているというようには聞いているんですけれども、改善点が多々あるというように考えていますけれども、どのように把握されているんでしょうか。

○細川国務大臣
 柴山委員の御指摘のとおり、特定健診については、目標値は七〇%、こういうふうに設定しているんですけれども、残念ながら、まだ四〇%ぐらいなんです。したがって、これをぜひ向上させなきゃいかぬということで、これまでもいろいろと取り組んでまいりました。
 それは、県単位で複数の医療保険者と医療機関等が契約をするときに集合的に契約をして円滑に進めるようにというような取り組みとか、また、特定健康診査とがん検診等の同時実施というようなことを推進しよう、そういうようなことで推進をしてきたところなんですけれども、まだまだ足りないということで、もっともっとやっていかなければというふうに思っております。
 これらの取り組みに加えまして、この三月に取りまとめをしようとしております、全国医療費適正化計画というものの中間報告というのをすることになっておりまして、そこでその実施率の向上に有効な取り組みというのをやりたいというふうに思っておりまして、これまでの取り組みに加えて、委員が言われるような、向上に向けてしっかりやっていきたいというふうに思っております。

○柴山分科員
 特定健診は保険者が実施をするんですよね。それで、これまでの都道府県の基本健診の場合には、今大臣がおっしゃったように、がん検診と一緒にやらせるということもできるわけですけれども、今御指摘のように、それがうまくできない、レントゲンを撮らないということになると、そもそも、サービスが落ちて、当初の予定である予防医学のしっかりとしたスクリーニングということに逆行する結果が出てきてしまいかねないと私は思うんですよ。それをぜひしっかりとした形で改善をしていただきたい。
 それと、今、実施率の話もありましたけれども、きちんと受診勧奨を行っていただかなければいけないというように思っているんですけれども、どうですか。何か補足することがあれば。

○岡本大臣政務官
 御指摘のように、保険者の種別ごとに特定健診の受診率に差があるというのは事実でございまして、組合健保が六三・三、共済組合が六五・四、市町村国保が三一・四%、それぞれこのような実施率になっております。
 そういった中、いわゆる被用者については、特定健診と同じ項目の事業主健診を職場で受診できる、こういったことが一つパーセンテージが高い理由としても考えられるわけでありますけれども、いわゆる市町村国保における課題についても、委員からもまた御意見をいただきながら取り組んでいかなければならないというふうに思っております。
 また、いわゆる市町村との連携、先ほどお話がありましたが、レントゲンの例もそうでありますけれども、基本健康診査とレントゲンを項目として含むがん検診は、ともに市町村が実施主体となっていたため、両者の同時実施がかつては行われやすかったということでありました。
 平成二十年度より、特定健診は医療保険者が、また、がん検診は市町村が実施主体となり、地域住民のがん検診と特定健診の受診の利便性の向上と受診促進のために、都道府県、市町村、医療保険者等で連携、連絡調整を図り、がん検診と特定健診の同時実施を推進していくというようなところでございまして、そういった意味でも、委員のいろいろな御指摘もまたいただきたいというふうに思います。

○柴山分科員
 時間がなくなってまいりましたので、次の質問に移ります。
 一般用医薬品のインターネット等の販売の規制についてお伺いしたいと思います。
 私は、改革は積極的に進めていくべきだという立場でありますけれども、それが要するに実際にどのような効果を生むかということは、きちんと現場の声を聞かなければいけないというように思っています。
 そこで、お伺いしたいんですけれども、行政刷新会議の規制・制度改革分科会ライフイノベーションワーキンググループのこの問題に関する検討状況はどうなっているのか、内閣府から伺いたいと思います。

○平野副大臣
 規制・制度改革に関する分科会につきましては、昨年十月から調査審議を開始したところでございまして、具体的には、分科会の下に設けられているライフイノベーションワーキンググループにおいて議論を行い、ことし一月二十六日の分科会で中間取りまとめを行いました。今御指摘の件については、その中の一項ということでございます。
 具体的には、販売履歴の管理、購入量の制限など、一定の安全性を確保しながらインターネット等で医薬品を販売するためのルールを設定する、こういったことについての検討をすべきだ、こういう旨の提案をいただいております。
 現在、この提案につきましては、三月の閣議決定を目指しまして厚生労働省と協議を行っている、こういう状況でございます。

○柴山分科員
 当然、これを促進すると利便性が増すということだと思うんですけれども、ただ、これを進めることによって、既存の薬局の経営に対する影響というものは、やはり少なからざるインパクトというものが私はあるんだと思うんですね。そうなると、薬局の廃業リスクによる、地域の薬剤がすぐ買えるという利便性、これのマイナスということはきちんと考慮に入れて検討されているんでしょうか。
 それと、薬局の今の機能としては、セルフメディケーションということで、お薬についてのさまざまな情報を地域の方々に提供するという機能が私は無視できないというように思っていまして、そうなると、やはり郵便局と同じように、ユニバーサルサービスということがある程度必要になってくるのかなというふうにも思うんですね。
 ですので、これについて、内閣府サイドと厚労省サイドと、それぞれぜひ意見をお伺いしたいなというように思っています。

○平野副大臣
 この分科会の議論におきましては、今御指摘にあったような、既存の薬局の経営に関する影響等々についての定量的な分析まで行っているわけではございません。
 いずれにせよ、この提案につきましては、今の制度に対して、インターネット販売の解禁というのがどういう便利性があるのか、またどういう問題があるのか、こういったことを総合的に判断して、この取り扱いにつきましては、先ほど申しましたように、厚生労働省と私どもとの協議の中でその方向性が打ち出されるものだ、そのように思っております。
 なお、かかりつけの薬剤師を決め、店舗で相談しながら医薬品を購入したいというニーズは大きいと考えておりまして、セルフメディケーションの拠点としての地域の薬局は、今後も重要であると私どもも認識をしております。

○岡本大臣政務官
 今委員御指摘のような、既存薬局の経営に与える影響ももちろんインターネット販売を解禁することで考えられるわけでありますが、厚生労働省といたしましては、国民の健康と安全を守る観点から、一般用医薬品の販売に関し、リスクの程度に応じて専門家が関与し、適切な情報提供等がなされる仕組みを定着させることが重要だというふうに考えています。
 また、ユニバーサルサービスが崩壊するおそれはないのかということでありますけれども、これも、厚生労働省といたしましては、今後とも、国民が一般用医薬品を適切に選択し、適正に使用されていくように努めていかなければならないというふうに考えているところでございます。

○柴山分科員
 とにかく、ぜひ現場の実態をきちんと踏まえた形で調整をしていただきたいなというように思っています。
 続きまして、同じく規制・制度改革分科会の検討対象となりました調剤基本料の一元化についてお伺いしたいと思います。
 この問題についての検討状況はどうなっているんでしょうか。

○平野副大臣
 中間取りまとめの概要についてだけ御報告を申し上げたいと思います。
 今、保険薬局の調剤基本料は原則四十点であるのに対し、受け付け回数四千回超、特定医療機関からの集中率七〇%超の薬局は二十四点となっておりますけれども、患者にとってその質的な差は認められないため、次期診療報酬改定では調剤基本料を二十四点に一元化することを検討すべきである、こういう御提言をいただいております。

○柴山分科員
 今、四十点と二十四点というお話があったんですけれども、では、四十点の薬局の全体における比率は何%なんですか。

○外口政府参考人
 現在、約九九%の保険薬局が、原則である四十点の調剤基本料を算定しております。

○柴山分科員
 要は、九九%を占める四十点の点数を、大規模な特定の医療機関の処方をばっとたくさんやっているようなところの二十四点に引き下げよう、そういうお話だと思うんですね。
 とすると、さっきも薬局の経営というお話をしたんですけれども、薬局が今後は特定の医療機関のそういった処方せんを大量に扱うことでしか生き残れないということになって、経済的に独立の薬局としてそういった処方せんのチェックをするという機能が果たせなくなっちゃうんじゃないですか。また、かかりつけ薬局の育成ですとか、複数医療機関が発行する処方せんの重複や相互の飲み合わせとか、そういうものをチェックするということもできなくなってしまうんじゃないか。
 それについて、内閣府、厚労省、一体どのように考えているんでしょうか。

○平野副大臣
 この点に関しましても、最終的には三月の閣議決定を目指しまして、今厚生労働省と協議中でございます。今委員が御指摘されたような点も含めまして、この取り扱いについては検討することになると思います。
 ただ一方で、こういう一物二価という状況がありますと、消費者が自己負担の低い薬局に誘導される可能性が将来的には否定できない。確かに今、二十四点の薬局は全体的には非常に小さいんですが、その安い、自己負担の低い薬局に誘導される可能性は将来的に否定できず、むしろ結果的に町じゅうの薬局から顧客を奪う懸念も生じるため、中間取りまとめでは、公的価格設定のあり方として一物二価は改めることを検討すべきとの提案になっているというふうに理解をしております。

○泉主査
 岡本厚生労働大臣政務官、簡潔にお願いします。

○岡本大臣政務官
 通常の保険薬局においても、先ほど割合が低いと言われました、二十四点の調剤基本料にまで引き下げるということにすると、その経営を継続することができるのかどうか、また、複数の医療機関を受診している患者の処方の一元的管理を適切に行えるかどうかなどについて、慎重な検討を行う必要があるというふうに考えております。

○柴山分科員
 以上、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

第177回 国会 衆議院 予算委員会

第177回 国会 衆議院 予算委員会 第3号
平成23年2月1日(火)
午前九時二分開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 ぜひ御答弁は簡潔にお願いをしたいと思います。
 民主党の小沢元代表ですけれども、きのうの強制起訴の手続を受けて、総理は、けさ、我が党の石原議員が今後の対応を質問した際に、基本的な方針として、国会での説明を求めると述べられました。しかし、期限も見通しもない方針は方針とは言いません。一体いつ国会での説明を実現させるおつもりなんでしょうか。

○菅内閣総理大臣
 私が申し上げたのは、国会での御本人の説明が必要だ、そのように考えている、そして、そのことについては国会の手続の問題がありますので、我が党でいえば岡田幹事長を中心に、与野党間でよく協議をしていただきたい、このように申し上げました。

○柴山委員
 問いに答えてくださっていないんですけれども、その手続はいつまでに終わるんでしょうか。

○菅内閣総理大臣
 国会での手続を、それは総理大臣という立場と党の代表という立場はありますけれども、残念ながら、いつまでにどうするということを単独で決めることは私はできない種類のことだと。ですから、与野党でよく話し合っていただきたいと申し上げたんです。

○柴山委員
 一つの指標があります。折しも、小沢氏の秘書だった石川知裕議員の初公判が今度の二月七日に予定されています。その場で、冒頭陳述で検察側がこの陸山会事件についてどのような事実を主張するか。小沢氏のかかわりについても明らかにすると思いますが、それが、小沢元代表にどういった政治的責任あるいは説明責任があるかを判断する材料になるとお考えになりませんか。

○菅内閣総理大臣
 私は、その公判がどういう形で進むかという予測をする立場にありませんし、もしそういう予測を柴山さんがされたからといって、その仮定に基づいて何か申し上げるということはやはりすべきではないと思っております。

○柴山委員
 江田法務大臣を初め、いささかでも法律業務に通じておられる方は、この初公判で検察官の冒頭陳述が行われるということは、恐らく広く知られていることだと思います。
 仮に冒頭陳述が行われた場合、今少し声がありましたけれども、それに近い時期に政治と金についての集中審議を行っていただけると理解してよろしいですか。

○中井委員長
 集中審議の件につきましては、ただいま各党間で協議がされております。

○柴山委員
 話はかわります。
 こちらのパネルをごらんください。
 これは、平成十四年、小沢さんが当時代表を務めておられた自由党、今は民主党と合併していますけれども、自由党の政党交付金に係る報告書要旨の抜粋です。
 申し上げるまでもなく、政党交付金は国民の払った税金によって賄われるもので、以後の政党活動のあり方にもさまざまな影響が出てくることからも、その使い道につき国民に対する説明責任があるとされているわけです。
 この表を一見見て明らかなとおり、赤で囲ったここの組織活動費、九億七千九百万円が藤井裕久氏へ、そして五億四千百九十万円が藤井裕久氏へ。この項目が金額的に突出しているんです。
 藤井副長官、この合計すると十五億円超となるお金を一体何に使ったんですか。

○藤井内閣官房副長官
 その内容は存じません。

○柴山委員
 次のパネルをごらんください。
 こちらはそのときの領収証の写しです。この下の欄に藤井裕久との署名捺印が見えますが、これはあなたのものではないのですか。

○藤井内閣官房副長官
 まず、前半を申し上げましたが、私はそのお金を受け取っておりません。したがって、そういう認識は全くありません。
 ですから、今の問題については、私としてはその認識が、まず領収書の認識がありません。

○柴山委員
 確認ですけれども、これは領収証と書いたのをあなたは全く見ないで署名捺印をしたということなんでしょうか。

○藤井内閣官房副長官
 認識がありませんから、それは私が書いたものかどうかについてはわかりません。

○柴山委員
 今、大変重要な御答弁をされました。
 私はあえて、この藤井裕久の後に押捺されている、あなたの恐らくこれは銀行届け出印であろうかと思われますけれども、それをプライバシーの観点から塗りつぶしています。
 これがもし、その印影が明らかになって、それがあなたの銀行届け出印あるいは実印ということになれば、その印鑑が冒用されたということの御主張をされるわけですか。お答えください。

○藤井内閣官房副長官
 その紙は見たことがないので、何とも申し上げられません。

○柴山委員
 次のパネルをごらんください。
 しかも、あなたは、当時、自由党の幹事長であり、かつ、この収支報告書にもあるとおり、会計責任者だったはずです。そして、この隣にある収支報告書提出の際に添付される宣誓書、「この報告書は、政治資金規正法に従って作成したものであって、真実に相違ありません。」というこの書面に署名捺印をされております。
 先ほどの領収証と同じ筆跡に私にはどう見ても見えるんですけれども、これはあなたの字ではないのですか。

○藤井内閣官房副長官
 その紙の中のその文字は、私は認識がありません。

○中井委員長
 ちょっとお待ちください。
 藤井先生、これはお持ちなんですか。この資料はお持ちなんですか。

○藤井内閣官房副長官
 持っています。

○中井委員長
 持っていますか。はい。

○柴山委員
 自分の書いた、あるいは捺印した書面が真実かどうか、収支報告書、しかも幹事長かつ会計責任者という立場にありながら、その署名をしたかどうかを忘れるような方が内閣官房副長官をやっておられる。これは私は許されないことだと思いますよ。
 もう一回お答えください。

○藤井内閣官房副長官
 知らないということを申し上げております。

○柴山委員
 くしくも、平成十六年ごろ、同じく小沢元代表の関連政治団体である改革フォーラム21の口座に、収支報告書に記載のない約十五億円の入金があったと昨年一月十七日の日本経済新聞で報じられています。
 そして、その改革フォーラム21は、一昨年の衆議院解散日である七月二十一日に、小沢氏が代表を務める民主党岩手県第四区総支部に表に出ている額で三億七千万円の寄附を行い、翌二十二日には、その同額が、今回問題となっている資金管理団体陸山会に流れているんです。
 陸山会からは、小沢氏に近いとされる候補者九十一名に、八月十七日の総選挙公示までに計四億四千九百万円が提供されています。
 藤井副長官、このように報道等で疑惑を持たれれば、その説明責任が生じるはずです。あなたがどうしても、このさきに述べた十五億円の使い道、御存じないとおっしゃるんだったら、一体だれが知っているんですか。

○藤井内閣官房副長官
 私が知らないということで、それ以上のことはわかりません。

○柴山委員
 繰り返しますが、あなたは当時、自由党の幹事長で会計責任者でありながら、その自由党が受け取っている政党交付金、これについての使い道、しかも自分が領収証に自筆で署名捺印されているものについて、使い道について一切知らない、そしてだれが知っているかもわからない、こういうふうにおっしゃるんですか。

○藤井内閣官房副長官
 これは、七、八年前に今と同じことをお答えしています。それから自来七、八年間、同じようにお答えをいたしております。

○柴山委員
 この収支報告書の表紙には、事務担当者としての八尋護さんとおっしゃる方の署名があります。残念ながら、もう亡くなられておられます。しかしながら、当時、同じ自由党の職員で、かつてあなたのところにいらっしゃった高橋さんですとかあるいは俊成さんですとか女性の事務をされていた方々などが御存じないんでしょうか。今は民主党の職員となっておられるはずです。いかがですか。

○藤井内閣官房副長官
 今の名前は全部承知をいたしております。

○柴山委員
 それでは、現在、民主党経理部におられる俊成浩章氏、同じく民主党の衆議院第三控室の高橋豊和氏の参考人招致を求めます。

○中井委員長
 理事会で協議いたします。

○柴山委員
 再度確認をいたします。
 この署名捺印は、あなたは、御自分のものなんですか。再度御答弁ください。

○藤井内閣官房副長官
 今申し上げましたように、このお金はもちろんいただいておりませんし、それから今の内容も存じません。したがって、これについての認識がないんです。ですから、私はそれをどうこう言う立場にありません。

○柴山委員
 これがこの官邸の実態でございます。
 次の質問に移ります。
 ごらんください。ここにある質問主意書、我が党の佐藤勉衆議院議員が昨年の四月二十七日に提出し、それに対する答弁書が、閣議決定の上、五月十一日に送付されてきたものです。
 枝野長官、昨年の五月十一日当時、長官は行政刷新担当大臣として内閣におられました。間違いありませんか。

○枝野国務大臣
 内閣府特命担当大臣、行政刷新担当として内閣におりました。

○柴山委員
 この質問主意書は、JRの労働組合に、日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派、すなわち革マル派が影響力を持っているかということについてのものでした。このように書かれています。
 革マル派は、共産主義革命を起こすことを究極の目的としている極左暴力集団であり、これまでにも、殺人事件等、多数の刑事事件を引き起こしている。革マル派は、その組織拡大に重点を置き、周囲に警戒心を抱かせないよう党派性を隠して基幹産業の労働組合等各界各層への浸透を図っており、JR総連及び東日本旅客鉄道労働組合内には、影響力を行使し得る立場に革マル派活動家が相当浸透していると認識している。今後も、革マル派は、組織拡大に重点を置き、党派性を隠して基幹産業の労働組合等各界各層への浸透を図っていくものと見られる。
 こちらの、次のパネルをごらんください。
 これは、枝野長官の政治団体が、平成八年以降、今の答弁書にあったJR総連及びJR東労組から幾ら献金を受け取ってきたかを示すものです。一昨年の衆議院選挙の年まで、一時中断の時期もありますが、継続的に合計七百九十四万円に上るお金をもらっていたことになります。
 枝野長官、あなたが閣議決定に署名した答弁書で問題が指摘されたJR総連、JR東労組からこれだけの献金を受け取ることは道義的に問題があると思われませんか。また、今後も献金を受け取るおつもりがおありなんですか。簡潔にお答えください。

○枝野国務大臣
 私は、連合加盟の各産別といろいろな意味でおつき合いさせていただいておりますが、その連合加盟の各産別とおつき合いをする範囲内で当該労働組合ともおつき合いをさせていただいてまいりましたが、それ以上でもそれ以下でもございません。
 今後については、李下に冠を正さずということもございますので、献金等のお申し出があってもお断りさせていただこうと思います。

○柴山委員
 次のパネルをごらんください。
 李下に冠を正さずということを今おっしゃいましたけれども、今後はそれを、内閣官房長官、内閣の方針として内閣の各大臣に周知徹底されるおつもりはありますか。

○枝野国務大臣
 それぞれの政治活動、特に政治資金やその他のことについては、基本的にはそれぞれの政治家がそれぞれの責任でしかるべく対応されるものと思います。

○柴山委員
 しかしながら、先ほどの答弁書には閣議決定の上署名がされたということを念のために申し上げておきたいと思います。
 今の提示させていただいたパネルは、枝野長官が平成八年の、長官の二期目の総選挙の際、仮にYさんとしますけれども、JR東労組大宮支部の委員長と取り交わした覚書です。間違いありませんか。

○枝野国務大臣
 大分前のことでございますので、個別具体的に正確に記憶はいたしておりませんが、一般論として申し上げれば、連合に加盟する各組合とのおつき合いの範囲の中で、そこに示されているような、いわゆるひな形的な政策協定を結ぶことはあると思っておりますので、私の署名だと思いますので、そのような政策協定を結んだことがあるんだろうというふうに思います。

○柴山委員
 一般論として、慣例的にそのような協定書を結ぶというように今おっしゃいました。
 しかしながら、この墨塗りをした方、今申し上げたようにYさんと申し上げますけれども、Yさんは、このころ、JR革マル派のリーダー的地位にあるLC会議のメンバーであり、職場から集めた革マル派のカンパを上納する財政担当者だったんです。そして、この書面を見ると、1のところに書かれているとおり、「わたし」、枝野長官ですけれども、「わたしは、JR総連及びJR東労組の掲げる綱領を理解し、連帯して活動します。」と明記されています。さらに、このYさんは、平成十四年、方針に従わなかった組合の同僚をおどして脱会を強要したといういわゆる浦和電車区事件で他の幹部とともに逮捕され、東京高裁まで有罪判決が出ています。
 枝野長官、長官は、この判決に先立つ平成十八年十一月に開催された「えん罪・JR電車区事件から四年〜七名の完全無罪をかちとる」埼玉県集会に呼ばれて講演をされていますね。決して一般的な関係じゃないじゃありませんか。

○枝野国務大臣
 その協定書に書かれているような趣旨の内容のことについては、個別には名前を挙げませんが、他の労働組合等とも、あるいは労働組合以外の団体とも、一般的な政策協定として締結されることはあるというふうに思っておりますし、それから、今黒塗りにされておられます部分の方について詳細な記憶はございませんが、これは機関と私との間でしたものではありません。連合加盟の産別組合との間で結んだものでございまして、たまたま、当該、そのときのその立場におられた方がどういう立場であったのかということは、少なくともその時点では存じ上げませんでした。
 また、今の集会については、詳細について記憶はございませんが、一般的に、私も柴山さん同様、弁護士でございますので、適正法定手続についていろいろな場所で講演を頼まれて、その限りにおいてそういった講演をすることはあるかというふうに思いますが、当該組合の活動そのものについての講演とか何かをしたという記憶はございません。

○柴山委員
 弁護士として適正手続についての講演をしたということなんですけれども、覚書が交わされた先ほどの平成八年以降の長官と両組合との関係を見ると、実に八回にわたって新年会等の講演会に御出席をされているということなんです。
 さらに、昨年夏の参議院選挙で比例当選された田城郁議員は、JR総連の政策調査部長であり、JR東労組の委員長や会長を歴任した革マル派創設者の一人である松崎明氏の側近でした。また、日本鉄道福祉事業協会の元理事長が業務上横領を行ったとされる刑事事件で、田城議員の口座にも入金がなされていたとして、捜索、差し押さえを受けており、田城議員はそれが不当であると国家賠償請求訴訟を提起しましたが、高裁で棄却判決が出て既に確定をしております。総理、間違いありませんね。

○菅内閣総理大臣
 今お聞きになったことを私自身、承知をいたしておりません。

○柴山委員
 今、述べたことは、昨年十月十二日に、同じく佐藤勉議員から出された質問主意書で、あなた方の政府が閣議決定の上、答弁書で書かれたことなんです。
 菅総理、私は労働組合の健全な活動を否定するつもりは毛頭ありません。しかし、社会的にさまざまな問題が指摘される過激な活動を行う組織については、断固として政治や行政からの遮断を図るべきだとお感じになりませんか。いかがですか。

○菅内閣総理大臣
 一般的に申し上げれば、私たち民主党はいろいろな団体に御支援をいただいております。労働組合でいえば、いわゆる連合の皆さんにも多く御支援をいただいております。そういう中にたくさんの組合があるわけであります。
 そういう意味で、そういう皆さんとのおつき合いというのは、基本的には、そういう党と連合との友好関係を背景に、あとは個々の議員なり候補者が判断することだと思っております。
 もちろん、今言われたような、組合に限りませんが、社会的に、何といいましょうか、問題が極めてあるということの団体との関係というのは、当然ながらそこは気をつけなければならない、このように思っております。

○柴山委員
 なお、夏の参議院選挙では、民主党の比例代表で当選された十六名のうち実に十名が労働組合、教職員組合系の候補者であります。こういった民主党の組合依存体質が、例えば今度提出されます税制改正法案で、一定以上の給与収入のある役員のみに負担を強化する給与所得控除の見直しですとか、経費的性格と認められない組合費をサラリーマンの特定支出控除の対象に追加するですとか、筋の通らない政策につながっているのではないか、また、公務員の人件費二割カットというマニフェスト実施の障害となるのではないか等々という問題点を今後徹底的に追及させていただきます。
 次に、与謝野大臣に伺います。
 鳩山前総理が、平成十四年から二十一年にかけて母親から十二億円を超える巨額の子ども手当を受けていたということで、おくればせながら贈与税約六億一千万円分の納付をしたのですが、悪質性がないということで、平成十四年と十五年の二年分、約一億三千万円が、時効により、まあ除斥期間というのが正確かと思いますが、鳩山前総理のもとに還付されたとのことであります。まじめに毎年税金を納めたら戻ってくるはずのないお金が、まんまと鳩山前総理の懐に入ったことになるわけです。
 大臣、大臣は昨年二月十二日の予算委員会で前総理を平成の脱税王だと批判されましたが、どう思われますか。

○与謝野国務大臣
 そのようにお呼びいたしましたことは事実でありますが、鳩山由紀夫前総理に対しては、税務当局が厳格に税の執行を行ったと思いますし、また、還付があったかどうかというのは私は知りませんけれども、それらについても厳密な税法の解釈を行った上でのことだと考えております。

○柴山委員
 それで納得されるんですか。
 あなたはこの日の同じ委員会質問で、「民間の方だったら、十何億も贈与を受けていて、ああ知りませんでしたなんと言ったら、すぐ告発されて逮捕、起訴。まあ、少なくとも一年以上、二年か三年刑務所へ行くんですよ。総理大臣だけ特別扱いしていいわけはないんだ。」と追及されたんですよ。いかがですか。

○与謝野国務大臣
 野党ですから、そのぐらいの迫力で物を言わなきゃいけないと思っていました。

○柴山委員
 自分が質問をした言葉に立場が変われば責任を持たない、これが今の与謝野大臣の体質であります。
 大臣、これは私の提案ですけれども、国がこれだけの借金を抱えているときに、本人がわざわざ払うと言って申し出た額は納められるようにすることを考えるべきですし、コンピューターのシステム上、時効期間を延ばすということもぜひ検討してほしいと思うんですが、いかがでしょう。

○野田国務大臣
 委員の御指摘は、報道を前提にお話をされているというふうに思います。鳩山元総理が後から贈与税を払ったとか、還付があったとか、個別の案件については私どもはお話をする立場ではございません。という前提で議論を進めていただきたいというふうに思います。

○中井委員長
 済みません、野田さん、時効を延ばすとかそういう話について。個人じゃなしに、個々じゃなしに。

○野田国務大臣
 一般論でそのお話をするには大きなテーマだと思います。

○柴山委員
 ぜひ御検討ください。
 また、与謝野大臣はこの質疑の中で、鳩山前総理の資金管理団体である友愛政経懇話会への偽装寄附問題を追及し、当時の菅財務大臣に、偽装寄附で「税の還付を受けた人がいるかどうか調べてください。別に名前は必要ないですよ。今は国税庁のコンピューターもよくできているから、ボタン二つ、三つ押せばぱっと出てくる。」と質問されています。野田大臣と連携して、この調査を行っていただけますか。

○与謝野国務大臣
 日本の税務署というのはなかなか厳しい役所でして、政治家であろうとも現職の総理大臣であろうとも、税務の執行については極めて厳正であると私はいつも思っております。
 したがいまして、鳩山さんのケースも、国税当局は厳正に税務執行を行ったと私は推定をしております。

○柴山委員
 私は失望いたしました。
 与謝野大臣、鳩山前総理は秘書の刑事裁判が終われば国会に一件記録を提出すると明言しておきながら、いまだ約束を果たしておられません。私たちが要求した関係者の証人喚問もまだ実現していません。総理と連携して、この実現に向けて汗をかいてくださいますか。

○与謝野国務大臣
 これは国会と鳩山前総理との関係でございまして、私どもが、行政側にいる人間が汗をかいてもどうしようもないことだと私は思っております。

○柴山委員
 失望いたしました。
 前原大臣に、続いての質問、お伺いいたします。
 前原大臣、私が今手元に持っているのは月刊誌中央公論の平成二十年七月号のコピーです。与謝野大臣と前原大臣の対談記事が載っています。この中で前原大臣は、その前年に実施された前々回の参議院選挙のマニフェストで、農家への戸別所得補償など主要政策の経費が十五・三兆円と試算されていることに加えて、道路特定財源のガソリン税暫定税率を廃止するなど、これに加えて新たな政策を加えると十八兆円かかるとした上で、行政改革だけで捻出するのは絶対無理だ。マニフェストをまとめるとき、当時の政策責任者たちの間では、最後まで財源の根拠が希薄だとの難色が示されたと聞いているが、最後は小沢さんのえいやだったと実態を暴露しています。
 また、前原大臣はこうもこの中でおっしゃっています。民主党が最もしてはならないのは、国民に対して耳ざわりのいいことばかり言っておいて、仮に政権をとったときにやっぱりできませんという事態を招くこと、すぐに自民党に政権が返る、最悪だ。御記憶ですか。

○前原国務大臣
 覚えております。

○柴山委員 
 さすが前原大臣、藤井官房副長官と違ってよく御記憶だったと思います。
 そして、この参院選のマニフェストが基本的に一昨年の総選挙につながったわけですから、菅総理、これは選挙をやる前から、先ほど無知だ無知だというお話がありましたけれども、決して無知ではない。民主党がマニフェストの実施が無理だとわかっていたということの証明です。
 そして、藤井副長官、もう一度記憶を手繰っていただきたいんですけれども、大蔵省OBで財務大臣を務めたあなたも、一昨年の総選挙前、七月七日の民主党常任幹事会で、財源にはそこまで触れなくていいんだ、どうにもならなかったらごめんなさいと言えばいいじゃないかと述べておられたと報道されています。違いますか。

○藤井内閣官房副長官
 ごめんなさいという言葉はマスコミさんがつくった言葉です。私は、そういうことに対しては謙虚に反省しなきゃいかぬということを申し上げただけです。

○柴山委員
 いずれにせよこの事態は、小沢さんのみならず、民主党全体の責任であります。今の政権に正統性は全く認められないということを申し上げさせていただき、前原大臣に次の質問をさせていただきます。
 前原大臣、先ほど前原大臣は、同僚の稲田議員に対して北朝鮮問題についてお話をされました。大臣はことし一月四日の記者会見で、対北朝鮮外交について、拉致問題という日本の主権にかかわる問題もあるので、六カ国協議や多国間の場のみで北朝鮮問題を扱うのではなく、拉致、核、ミサイル問題をじかにしっかりと二国間で話ができる状況をつくり出すことが大事だと述べられ、十一日の会見や十五日の訪問先の韓国でも同様の発言を繰り返しておられます。
 これに対して北朝鮮側は、例えば国営朝鮮中央通信が、関係発展に合致する肯定的な動きだと歓迎する報道をしています。
 繰り返しになりますが、大臣は、本当に北朝鮮との二国間対話が諸案件の解決につながるという見通しを持っておられるんですか。

○前原国務大臣
 二つのことを申し上げたいと思います。
 一つは、現実に、二〇〇二年、そしてその後に、小泉元総理が訪朝されて拉致被害者が帰ってこられた。政治が直接動いた中で拉致被害者が帰ってこられたのは、これは事実であります。また、拉致問題がまだ全面的に解決されていない中で、やはり政治が、政府が主体的に動くということは、これは拉致被害者の御家族の方々も願っておられることではないかというふうに思っております。
 ただ、その前提として、やはり我々独自でやることには限りがあります、情報も含めて。また、北朝鮮の分断作戦に乗ってはいけない。そういう意味において、日本、韓国、アメリカとの連携というものはしっかりととるということと、そして、やはり今一番この問題について被害を受けて敏感になっているのは韓国です。
 去年、延坪島への攻撃、そしてまた天安の撃沈、こういうものにおいて被害を受けたのは、当事者は韓国でありますので、韓国との話がまず先行される、南北の議論が先行されるということの中で、我々は直接の対話というのももちろん設けていきたいと思いますけれども、とにかく、日米韓、そしてロシアや中国との連携をしっかりとっていく中で問題解決のために取り組んでまいりたい、そう考えております。

○柴山委員
 くれぐれも、日本が突出して日米韓の結束を乱すようなことをすることは避けてくださいと前原大臣に重ねてお願いさせていただいて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

第176回 国会 衆議院 予算委員会

第176回 国会 衆議院 予算委員会 第9号
平成22年11月15日(月)
午後三時五十八分開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 馬淵大臣に、今回のビデオ流出問題についてお尋ねをいたします。先ほどのパネルを使わせていただきます。
 大臣、馬淵大臣は、先ほどお話がありましたように、十月の十八日に、その指示において、映像管理について保管管理者を定めることということで各部局に対してお話をされています。既にこのビデオの情報の管理の重要性が議論をされているときに、この指示で十分だったとお考えだったのでしょうか。

○馬淵国務大臣
 先ほど申し上げているように、海上保安庁には情報セキュリティーポリシー実施手順というものが厳格に定められております。私は、さらにその上をしっかりと管理しなければならない、このように考えて、具体的なその場所場所における個別の責任者というものを設けるようにということでの海上保安庁長官への連絡をいたしました。
 したがいまして、こうした情報管理、もともと厳格になされている上において、これは前回あるいは以前にも長官から説明がありました、金庫において保管をしていくといった管理を行っておりますので、これをさらに高めるためにということで、十月の十八日に改めての指示を出したわけでありますが、私は、こうした情報セキュリティーポリシー、さらにその上の管理ということを指示することによって、海上保安庁内における規律というものを高めることができる、そのように考えて指示を出させていただきました。

○柴山委員
 実は私は、この十一、十二両日に、実際に石垣島に飛んで、石垣海上保安部にヒアリング、聞き取り調査を行ってまいりました。今大臣の口からは、海上保安庁セキュリティーポリシーでこの映像の管理が厳格に行われているというお話でしたけれども、私の調査では、それとは全く違う結果が出ております。
 当日、九月七日の逮捕当時、中国の漁船は、この尖閣付近で三十そうを数える形での航行がなされていました。当然のことながら、石垣海保だけでこのすべてに対応することは不可能であり、これまでもそういった事例に適切に対応するために、現場での撮影映像は、船での撮影という制約があるからこそ、衛星回線を通じて、東京の海上保安本部を含め、応援体制を迅速にしくために、オール海上保安庁で共有をしていた、私はそのように実際にお話をお伺いしております。
 したがって、馬淵大臣、そもそも海上保安庁の職員がこの映像に接するということは、むしろ当然、当初から予定されていたことであり、もしその管理をさらに十全あらしめようというのであれば、当然のことながら、単に三人の保管管理責任者を定めるだけでは足りずに、例えば一定のアクセス制限を強化する、あるいはアクセスした者の特定を行うべくシステム開発を行う、そういうことまでやらなければいけない実態があったのではありませんか。お答えください。

○中井委員長
 最初の部分で鈴木海上保安庁長官、後の部分は大臣にいたします。

○鈴木政府参考人
 お答えいたします。
 問題となっている映像は、私どもの巡視船が撮ったものではありますが、巡視船の乗組員がハンディーカメラ、採証用カメラで撮ったものでございまして、それでああいう間近の映像が撮れておるわけでございます。したがいまして、衛星回線を通じて送られてくるというような映像とはまた違うものでございます。

○中井委員長
 大臣はいいですか。

○柴山委員
 大臣、実際に撮影されたものがそのまま共有されるかどうかはともかく、今お話があったように、オール海保でその管理を共有しなければいけないということについて、大臣御自身の認識として、この管理の厳格化を、ここに書いてあるただ三人の管理責任者の選任ということだけで足りるというようにこのときお考えになられたか。先ほどのお話ですと、お考えになられたということですが、再度、それで間違いないかどうか、お聞きします。イエスかノーかだけでお答えください。

○馬淵国務大臣
 これも再三申し上げているんですが、この海上保安庁の情報セキュリティーポリシーというものは厳格になっております。そこですべて、管理者も含めて、これは決まっているんですね。決まっている上において、再度徹底するようにということで、改めて個別の責任者、担当者ということを定めさせたということであります。
 しかし、こうしたものについて、私は再三再四、徹底管理、これを申してきました。具体的な方法ということについては、当然ながら庁務を統理する海上保安庁内での判断になります。私が、例えば電子的な制御について、特別の知見を持ち合わせているわけではありません。具体的なそのような指示を私が行う権限もございません。徹底管理という言葉が、すなわち、こうした情報に対する十全性を十分に保つようにという意思を持った言葉として伝えられるべきものだと私は考えております。

○柴山委員
 私の手元には文書の原本があるんです。その写しがあるんです。映像管理について保管管理者を定めることということで、海上保安庁のそれに対する対応が、海上保安庁本庁、また第一管区保安本部次長、そして石垣保安部部長の三人を定めた、これだけなんですよ。これについて馬淵大臣は、それから先はその後でこれらの管理者が徹底すると思っていたというようにおっしゃっているんですが、それは私は、当然のことながら、監督の不十分ということが少なくとも指摘されると思います。
 次に、十月二十七日、これは衆議院の横路議長の那覇地検検事正あてに、記録の提出要請について、実際に答えが返ってきたときの書面であります。那覇地検の検事正、そして仙谷官房長官からも、この情報を公にするに当たっては慎重を期すことが相当である、あるいは特段の御配慮をお願いしますというようなことで書かれています。
 本来、那覇地検の検事正に対しての要望に対して、内閣のかなめである仙谷長官がこのような要望書を出し、その情報管理の徹底性というものについての政府としての意思を示されたわけですけれども、このことについて馬淵国土交通大臣は承知をしたんでしょうか。

○馬淵国務大臣
 政府内での意思が図られてそのような形で提示された、このように理解しております。

○柴山委員
 質問にお答えください。
 馬淵大臣は、この十月二十七日付の、特段の、この映像の管理、取り扱いについては慎重に取り扱われなければいけないという内閣官房長官の書面について、これを認識されましたか。イエスかノーかでお答えください。

○馬淵国務大臣
 認識されましたかという質問に対しては、認識しましたと申し上げます。

○柴山委員
 いつの時点でしょうか。

○馬淵国務大臣
 申しわけございませんが、ちょっと記憶が確かではございません。いつの時点かということについては、私はちょっと記憶にないです。

○柴山委員
 今、馬淵大臣が重大な御答弁をされたんです。この内閣官房長官がオフィシャルに出された書面の内容について、馬淵大臣は、少なくとも、これが、いつそういうものが出されたということについては記憶にないとおっしゃっているんです。
 官房長官、官房長官は内閣のかなめとして、この情報の慎重な取り扱いということについて、閣僚にしっかりと、この日、あるいはそれ以外の日でもいいです、徹底をされたんですか。

○仙谷国務大臣
 まず、国会、衆議院議長から提出要求といいましょうかがなされたあて先は、御存じのように、那覇地方検察庁の検事正であります。那覇地方検察庁であります。つまり、この記録の保管者あてでございます。
 那覇地方検察庁の検事正が、映像記録を提出するに当たって要望をつけられております。それは、多分、今で私はわかっておるわけでありますが、マスターテープから、国会で調べていただくにはこれがいいだろうということで編集されたものを出すに当たって、それの調べ方といいましょうか審査の仕方、あるいは、それをどう広がることについての地方検察庁の要望がついております。
 これは、内閣としてもこういう要望を、ある種、国会法百四条との関係でございますので、国政調査権との関係でございますので、このような要望を出したということでございますが、当然のことながら、法務省を通じて、私どもとしてもこういうものを出します、内閣の責任において官房長官の名前で出しますということは伝えてございます。

○柴山委員
 伝えてありますというお話でしたけれども、具体的なその指示の状況についてはお答えはいただけておりません。
 また、先ほどお話がありましたように、一部国土交通大臣の経験者は、海保のビデオ情報は原則公開をされていると。現に、私が石垣海保に出張に行ったときでも、捜査の後ではありますけれども、実際に衝突をしたときの映像、またそのときの写真、そういうものはしっかりと庁内で共有をし、そして、今後のさまざまな活動の用に供するという実態が明らかとなっております。
 この刑訴法四十七条、捜査資料は確かに公開されてはいなかったかもしれないけれども、少なくとも、オール海保でこれについて取り組む以上は、一定のセキュリティーはあったにせよネットワークが共有をされていた。そして、それについて、これまでの答弁では、そのような実態について十分に答弁をされてこなかった。そのようなことについて、私は非常に欺瞞性のある答弁がなされていたというように確信をしておりますし、また、この問題が起きた後についても、仙谷長官は、この情報の管理の徹底というものについて少なくとも明確な形に残る処理をされていない。
 私は、これについての徹底審議を求めるとともに、改めて、官房長官、そして馬淵大臣は現場の海保を所管する大臣として責任は免れないということを強く申し上げさせていただきます。

第176回 国会 衆議院 法務委員会

第176回 国会 衆議院 予算委員会 第2号
平成22年10月22日(金)
午前十時七分開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 大臣に伺います。
 今回の中国漁船衝突事故の船長釈放について、行政上の最終責任者はだれだとお考えですか。

○柳田国務大臣
 今回の被疑者の釈放方針の決定は、検察当局において行ったものと承知いたしております。
 私は、検察としての方針の報告を受け、検察に対する指揮権を有する法務大臣として考えた結果、この方針に異議を差し挟むことはせずに了解し、検事総長に対する指揮権を行使しませんでした。
 那覇地検が高検ともに最高検とも相談した結果でございますので、検察当局というふうに答えさせていただきました。

○柴山委員
 検察当局とおっしゃいながら、今大臣がおっしゃったように、指揮権を発動しなかったということで法務大臣の判断が介在した、そういう御答弁だったと理解をしております。指揮権を発動する必要はないというように、法務大臣は御報告を受けた後にそう判断をされたわけでございます。
 ちなみに、何か修正があるんだったらお答えください。

○柳田国務大臣
 ですから、刑事局長から報告を受けたときに、私は異論を挟むことなく、わかりましたと申し上げました。ですから、これは指揮権を発動したということには関係ないと思います。

○柴山委員
 指揮権を発動する機会を与えられて、指揮権を発動しないという判断を大臣が行ったという理解だと私は受けとめております。
 続きまして、ちなみに、衆議院予算委員会で、国会法百四条によって、漁船衝突時のビデオを提出するように要求する旨、決議をされています。
 本来、提出を求められた那覇地検が、刑訴法四十七条ただし書き、すなわち証拠の公開の公益上の必要を判断するべきでありますのに、政府が、限定的な範囲とはいえ、与党と公開を決めた、それも、けさの報道を見てみると、APECの後にすると決めたというのは、まさしく司法手続上の外交上の配慮を政府で行っているということではありませんか。

○柳田国務大臣
 事実について正確に報告をいたします。
 衆議院の予算委員会におきまして議決をされました。その内容については、九月七日の尖閣諸島沖での我が国巡視船と中国漁船との衝突事案をめぐる問題についてということで、提出を求める記録については、本年九月七日の尖閣諸島沖での我が国巡視船と中国漁船との衝突事案の映像記録、これが求められまして、十月十四日付で衆議院の横路議長から那覇地方検察庁検事正の方に記録の提出が要求をされたわけであります。
 これを受けまして、現在は、那覇地検と海上保安庁の間で、このことについて今協議を行っているというのが事実でございます。

○柴山委員
 繰り返しになりますけれども、APEC後に公開を、しかも予算委員会のメンバーに限ってするというようなことがけさ報道で出ている。しかも、これが政府の決定であるというように報じられています。
 どこかの官房長官が、報道をもとに質問をするのは非常に拙劣だというふうにおっしゃいましたけれども、この問題について法務大臣が一切関与していない、そういった政府の決定というものについてあずかり知らないということであることを確認させてください。

○柳田国務大臣
 日付はちょっと忘れましたけれども、先週でしたか、こういうことで衆議院の方から要請が来ています、御意見はいかがでしょうかといって、お話を聞いたことはあります。
 柴山さんが先ほど来から言っている政府の関与が、何とかが終わった後ということについての話し合いというのは一切行われていない。私が出席した会議、その中においては一切触れられていないということだけははっきり申し上げられます。

○柴山委員
 それでは、この中国人漁船の釈放の問題に戻りますが、十八日午後の参議院決算委員会において、丸山和也議員が、この中国人漁船船長の釈放を受けて、法律に従って粛々とやるということではないのかなどと電話で仙谷官房長官にただしたところ、そんなことをしたらAPECが吹っ飛んでしまうとか、今はその時期ではないというように語ったということが紹介をされています。
 これは、先ほど大臣が御答弁された、検察当局であるという責任の所在にも影響する大変重要な事実ではないかと思われますが、大臣は、仙谷長官にあるいは丸山議員なりに、この会話の真偽というものを確かめましたか。

○柳田国務大臣
 御存じのように、私もその決算委員会に出席をしておりましたので、その質疑については聞いております。
 そのときに官房長官がどう言ったか、柴山委員も御存じのとおりでありますので、私がどうのこうの確認する筋合いではないと思っています。

○柴山委員
 仙谷さんは、健忘症にかかったかもしれないなどと煙に巻いたお話をされています。しかし、私は昨夜、直接丸山議員に連絡をとりまして、これは確かなことであるという確認をとっておりますし、また、きょう、この委員会の質問で丸山議員の発言を引用することについても了解をもらっています。
 先ほどお話があったとおり、これはあくまで検察当局の判断だということを法務大臣がおっしゃいました。そして、仙谷長官の、記憶にないということが虚偽かどうかはともかく、この答弁がもし問題をはらむものであったら、それは先ほどの御答弁の根幹を揺るがす大変大きな問題であるということだけを指摘させていただきたいと思います。

○柳田国務大臣
 決算委員会で丸山議員がおっしゃったことは私も記憶しています。一方的なことだけを聞いて、それで決めつけられては困ると私は思います。どうぞ必要なことがあるんだったら必要な委員会に出ていらっしゃって官房長官からも聞いてもらいたい、そうじゃなければ公平じゃないんじゃないか。その上で先ほどのような質問をするんだったら聞けるかもしれませんが、一方の方だけの発言だけでこれはそうだと言われても私は困ります。

○柴山委員
 二人の会話であります。
 それで、官房長官はこのことについては明確な形での否定はされていません。健忘症にかかったかもしれない、あるいは、いいかげんな人がいいかげんなことを言った、こういう形でお話をされているということなんです。
 丸山議員が御自分のブログに書かれていますけれども、もしこのことについて官房長官が、会話の内容自体は肯定しながらも、それについて自分として置かれている立場を釈明されているということであれば、これは私は誠実な態度だと思います。しかし、今申し上げたような官房長官の対応を見れば、それは私は将来に禍根を残しかねない非常に不誠実な態度であると言わざるを得ない。このことを申し上げて、次の質問に移らせていただきます。
 先ほど、検察当局による判断だと御説明がありました。今後、この事件につきまして、捜査の継続、あるいは起訴、不起訴の判断、これは必ずなされるとの理解でよろしいでしょうか。

○柳田国務大臣
 そのとおりでございます。

○柴山委員
 しかし、御存じのとおり、身柄はもう既に中国の国内にあるわけです。身柄を拘束しないでどうやって捜査を継続するのか。また、起訴しない場合に被告人の出廷をどう担保するのか。検察当局の責任でそういうことを行ったということなんですけれども、検察当局はこれについてどう責任をとるのか。以上、質問させていただきます。

○柳田国務大臣
 検察当局がしかるべきときに適切に判断をされるものと私は考えております。

○柴山委員
 処分、不処分の判断を問うているのではありません。私が申し上げたような事態が発生したときに検察当局はどう責任をとるのかという質問をさせていただいているんです。

○小川副大臣
 ちょっと委員の質問も、今後不起訴となったときにというふうに問われたように思うんですが、今後起訴となった場合にどうするかという御趣旨なんでしょうか。(柴山委員「そうです」と呼ぶ)
 ただ、いずれにしましても、これは検察庁としましては、具体的な事件の処分の最終処理として、起訴、不起訴、あるいは中止か、そうした最終処分は必ずすべきものでございます。(柴山委員「だから、先ほど私が言ったとおりです。そうです」と呼ぶ)はい。
 ですから、その必要な判断を行って、最終的には必ず、起訴、不起訴、いずれかの処分を行うことになります。

○柴山委員
 もうこれ以上繰り返しません。質問に答えていないということは、だれが見ても明らかです。
 次の質問に移らせていただきます。
 今後、類似の事案が生じた場合に、今回の処理がそういった類似の事案に影響するとはお感じになりませんか。

○柳田国務大臣
 法と証拠に基づいて判断されるものと思います。

○柴山委員
 法と証拠に基づき、そして処分の具体的な内容について、今回の処理が影響しませんかと私は聞いているんです。

○柳田国務大臣
 ですから、お答えいたしております。法と証拠に基づいて適切に判断をされるものと思います。

○柴山委員
 この問題については、後でまたお伺いします。
 続きまして、大阪地検特捜部の捜査資料改ざん、隠ぺい事件についてお伺いします。
 これは、元主任検事の前田被告のみならず、前特捜部長の大坪弘道被告、あるいは元副部長の佐賀元明被告まで逮捕、そして昨日起訴されたという異例な事態となっております。
 大臣は、所信表明で、本件においては徹底的な検証を行うべく、外部の第三者の意見を聞くように指示したとのことなんですけれども……(柳田国務大臣「だれに、最高検に」と呼ぶ)最高検におけるということですね。具体的に、どの段階で、いかなる第三者を、どのように関与させるおつもりなんですか。

○柳田国務大臣
 最高検の検証チームの第一回目の会合のときに、異例ではございますが、出席をさせていただきまして、私は、今回の事態を真摯に受けとめて、しっかり反省すると同時に、ちゃんとした検証を行ってほしい旨申し上げました。そのときに、自分たちだけで最終報告をまとめるのではなくて、最終段階において、第三者の意見も伺ってまとめるようにというふうに指示をいたしました。

○柴山委員
 今、最終段階とおっしゃったんですよ。
 事件とか事故が発生した場合に、それを検証する第三者委員会というのは枚挙にいとまはありませんけれども、最終段階の報告取りまとめのときに第三者の意見を聞くなんという委員会はありません。例えば、刑務所における苦情処理を行う視察委員会だって個別の苦情を処理しているわけなんですよ。それと同様に、しっかりと第三者委員会を検証のプロセスから関与させていくということは考えられないんですか。

○柳田国務大臣
 最初のころから関与させろという御意見かもわかりませんけれども、捜査段階でございますと、いろいろと取り調べも行われるわけでございます。個人のプライバシーとかいろいろな問題も出てきますので、第三者を入れることは適当ではないと私は考えました。
 ただし、最高検だけで結論を出すのではなくて、第三者の意見も最終段階では聞くようにというふうに指示をしたところであります。

○柴山委員
 それではお伺いしますが、その最終段階で、第三者の意見で、これは身内の捜査だ、自分の腹に自分がメスを十分入れていないというような意見が出たら、それをやり直すんですか。

○柳田国務大臣
 そういう御批判もあろうかと思います。極めて遺憾な事件でございました。前代未聞の事件でございました。いろいろな御批判を浴びているのも私は承知いたしております。
 ですから、私のもとにおける検討会議をつくりまして、そこで、第三者の皆さんを入れて、再度いろいろな全般にわたる検討を加えて、十二月の早い段階で最高検は報告を出すと言っていますから、それも参考にしながら、いろいろなことをやらせていただきたい、国民の信頼を回復するためにいろいろなことを議論させてもらってやらせてもらいたい、そういうふうに考えているところです。

○柴山委員
 私はやり直しをする余地があるのかと聞いているのに、全く答えになっていない。そのことだけを指摘させていただきまして、次の質問に移ります。
 大臣は、所信表明の中で、なお、より高い観点から別途検察のあり方について検討するために外部有識者による会議を立ち上げるというようにお話をされていました。
 今回舞台となった大阪地検、そして東京地検、それぞれで特捜部在籍経験のある堀田力弁護士は、東京では、全体の構図と供述は主任検事に集中させる、そして一線の検事同士は互いに話をできないとすることによって、ストーリーに沿った誘導をできないようにしていたということを述懐されています。一方、大阪では、検事同士の連絡は自由なかわりに、特捜部長など上司への報告は非常に厳しく求められていたとされているんですね。
 にもかかわらず、今回、報道によれば、前田容疑者は、上司に直後に相談できる状況ではなかったと供述しているとも報道されていますし、同僚の検事によりますと、無理をしていて、特捜部というのはやはり余り行きたくないところなんだというような話もされています。
 さきの本件についての最高検での委員会とあわせて、この検察のあり方について検討する委員会のしっかりとした調査と国会への報告、これをぜひ大臣、お約束してください。

○柳田国務大臣
 堀田さんという方がどういうふうな発言をしているのか、私は実は承知いたしておりません。ただ、ほかのいろいろな意見は聞かせてもらっております。
 最高検の検証については、当然公開もされるというふうに伺っておりますので、それを受けましたらば、国会の要請があれば私の方から国会の方に報告をいたします。
 なお、私のもとに行われる検討会議についても、速やかに人選を終えて立ち上げたいと思います。その中の議論にもなるかと思いますが、できるだけ公開もしたいと思いますし、折に触れて国会にも報告ができれば、そんな思いでいるということでございます。

○柴山委員
 ぜひよろしくお願いいたします。
 ただ、よく一般の人があるいは議員の人が言ったりしているように、専門性の高い特捜部を解体するということになりますと、悪質な経済事案ですとかあるいは権力に近い者の摘発というものが困難になりかねないという懸念があります。ぜひ冷静な議論を行っていただきますように要望申し上げます。
 また、今回の事案についての責任の所在というものが私はかなり重要だと思っております。
 大臣、まず、一般論として、検察庁において検察官が職務遂行に関して、私生活に関してではないですよ、職務遂行に関して違法行為あるいは結果として著しく妥当性を欠いた行為をした場合、行政上、だれが責任をとるんですか。

○柳田国務大臣
 一般論でよろしいんですね。(柴山委員「はい、一般論で結構です」と呼ぶ)事案ごとに私の方で判断をさせていただきたいと思います。

○柴山委員
 そういう抽象的な御答弁ですと、では本件についてということに話を進めさせていただきます。
 昨日発表された本件の処分ですと、部長らの行為について上級庁に報告しなかったということで、もちろん特捜部長それから副部長は懲戒免職だったんですけれども、小林敬大阪地検検事正あるいは玉井英章前次席検事が減給ということで辞職を予定されています。また、証拠の改ざん当時の検事正も減給で辞職の方向、また大阪高検次席も戒告などということで、かなり大量の処分者が出ているわけなんですね。これが一体どういう根拠に基づくものなのか。
 それから、ちなみに、こうした処分を受けた方が退職された場合の退職金、これは一体どうなるのか。それぞれお答えください。

○柳田国務大臣
 一遍にたくさん聞かれたので、一つずつ聞いてもらえるとありがたいんですが。
 懲戒免職処分に当たった方については、退職金のすべてを支給しないということになります。
 前段はどうでしたっけ。(柴山委員「では、それ以外の懲戒処分はどうですか」と呼ぶ)
 それ以外の、今回、訓告と戒告をいたしましたけれども……(柴山委員「減給もあります」と呼ぶ)減給もあります。これは……(柴山委員「いや、辞職を予定している人がいるんですよ」と呼ぶ)辞職を予定している人の退職金ですね。これはお支払いいたします。(柴山委員「全額ですか」と呼ぶ)全額です。

○柴山委員
 それから、一遍にたくさんにというふうにおっしゃられたんですけれども、私が言っているのは、要するに、直接刑事処分を受けていない方々についてもこれだけ大量の懲戒処分者が出ているということなんですね。
 ですので、私は、一人一人についてその根拠を言えということではありません。基本的な考え方を聞いているんです。なぜこれだけ多くの方が行政上の懲戒処分を受けているのか。その理由について、大臣は先ほど、一般論として私が決めますというのは、それは人の支配ですよ。全然基準というものが明らかになっていない。
 だから、懲戒処分をするときのその根拠というものについて一体どのような形で判断をされたのかということを聞いているんです。

○柳田国務大臣
 国家公務員法八十二条に基づいて処分をいたしました。
 なお、この処分が通常より重いのか軽いのかということもいろいろと話をさせてもらいましたけれども、通常よりも厳しい処分にさせていただきました。

○柴山委員
 私は、厳しいか厳しくないかということを聞いているのではありません。なぜ、直接刑事責任を問われていない人が行政上の懲戒処分を負わなきゃいけないのか、それは大臣がこの人を減給させようと思えば自由にできるものなのか、その根拠ということを今尋ねているんです。

○柳田国務大臣
 その他の人については、監督責任ということで処分しました。

○柴山委員
 基本的な概念ですから、その言葉を早く大臣から私は聞きたかったのです。
 いずれにいたしましても、今、監督責任ということについて触れられました。それでは、伊藤鉄男次長検事が今回、監督上の措置として訓告を受けているということですけれども、今回、改ざんの報告が最高検まで上がらなかったということについて、最高検として、何らかの組織的な不作為の責任、あるいは監督責任があるとは考えられないんでしょうか。検事総長あるいは大臣が無傷でいいんでしょうか。

○柳田国務大臣
 今回の処分の一つは、当時の方々について処分をしたということでございます。詳しくはいいですね。昨年の二月の段階の方々、今回発覚するまで隠していた方々、そういうことに関連する人々の処分を行いました。
 ちなみに、現検事総長は、その間、関係ない部署におりました。今回の、検事総長に就任したのは三カ月か四カ月前でございますので、関係がない。私については御存じのとおりでありますので、私がこの事件に関与したことはありません。

 ただ、今この立場におりますので、私がやるべきことは、二度とこんなことが起きないように、国民の信頼を取り戻すべく頑張るのが私の責任だと思っています。

○柴山委員
 そのポジションにいるがゆえに、とらなきゃいけない責任というものもあるわけなんです。
 それと、あと、今、大臣は重要なことを御答弁されたんですよ。行為の当時は私はそのポジションにいなかったからということで、その責任は発生しないんじゃないか、そういう御答弁をされたんですよ。
 例えば、もしその理論が通用するんだったら、先ほどの中国漁船衝突事件は那覇地検と最高検が協議して決定したことなんですよ。そして、これはまさしく大臣が在任中に、先ほど大臣が御自分でおっしゃっていたじゃないですか、指揮権を発動しないと自分で判断されたんです。それでこういうことを判断されたわけなんです。とすれば、それを監督し得る立場にあった監督責任、これは今、大臣、自分が御答弁されましたね。これについて、先ほど私が、今後の捜査の見込み、あるいはさまざまな影響、そういうものについて、大臣、監督責任あるいはそれにかわる責任、負うんですか。

○柳田国務大臣
 今回の尖閣の問題について、私の責任についていろいろおっしゃっていますので、かわって副大臣が答えます。

○柴山委員
 いや、それは、監督責任としてあなたは御自分の責任をどう考えるんですかということをお尋ねしているんです。大臣ですよ。

○柳田国務大臣
 ですから、先ほど触れましたように、事件そのものについて私は責任がないと思っております。ただ…… (柴山委員「監督責任と自分で言ったじゃないですか」と呼ぶ)だから、当時の監督責任はあるでしょうと。私は当時、しておりません。今私が負うべき責任というのは、しっかりとした対策を打って、国民の信頼を回復すること、また、こういう不祥事が起きたということに対して私は国民におわびすることだと思っております。

○柴山委員
 村木事件でそういうロジックを使ったので、では中国人漁船衝突事件において、大臣は御自分で指揮権を発動しないということを判断されたわけじゃないですか。それはまさしく行為当時の大臣だったわけじゃないですか。それについて大臣は、要するに、那覇地検あるいは最高検がそういう決定をしたことに対する監督責任というものを負わなくていいんですかというふうに、私は今度は中国漁船衝突事件についてお聞きしているんです。

○柳田国務大臣
 今回の件は適切に判断をされたものだと私は思っております。

○柴山委員
 現時点では適切に判断をしたというふうに御答弁ですけれども、今後さまざまな事案が起きたときに、大臣、御自分で監督責任について触れられたわけですし、そして、指揮権を発動しなかったのは御自分の判断だったというように今この法務委員会で御答弁をされたわけですから、今後生じてくるさまざまな事例、事象について私は大臣の責任を追及し続けますので、お覚悟をいただきたいというように思っております。
 続いて、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 今回の事案を受けて、被疑者取り調べの可視化の機運が高まっています。既に法務省では、政務三役を中心とした勉強会を進めて、ことし六月に中間的取りまとめを行い、来年六月以降、勉強会としての取りまとめを行うというようにされているんですけれども、この可視化についての取りまとめ、最終取りまとめ、来年六月以降、一体いつされるんですか。

○柳田国務大臣
 何回も予算委員会等で答弁していますけれども、六月以降の早い段階で取りまとめを行いますと申し上げております。

○柴山委員
 六月以降の早い段階と言いますけれども、来年でも再来年でも、今年度中と言っていないんですよ。来年の六月以降のなるべく早い時期にというのは、結局、できるだけ早くやりますと言っていることと同じなんですね。やはりそのスケジュール観というものについては、もう少し私はしっかりとしたもので御答弁をいただきたいと思います。
 それと、あと、やはりこの問題については同僚からも懸念の声が出ています。可視化はもちろん私も賛成なんです。この委員会でも何度も質問させていただきました。しかし、うそをつけば逃げ切れるという仕組みにしてはいけないわけです。刑事司法のトータルな適正化のために、ぜひバランスのとれた報告書にしていただきたい。
 スケジュールの点、それから内容の点、いずれについてもお答えください。

○柳田国務大臣
 六月のできるだけ早い段階で取りまとめを行ってまいります。(発言する者あり)

○奥田委員長
 柳田法務大臣、再答弁をお願いします。

○柳田国務大臣
 六月以降できるだけ早い段階で取りまとめを行います。(柴山委員「内容は。中身」と呼ぶ)
 可視化については副大臣に担当してもらっておりますので、そういう中身については副大臣に答弁をお願いします。

○小川副大臣
 委員の御指摘の点も十分踏まえまして、可視化に向けた検討をしっかりと行ってまいりたいと思います。
 ただ、可視化を実現する場合には、やはりさまざまな問題がございます。委員が指摘されましたように、捜査に支障を来してもいけませんし、しかし一方で、このような誤った捜査がなされてもいけませんので、慎重、しかしまたスピード感を持った検討をさせていただきたいと思います。

○柴山委員
 ぜひよろしくお願いいたします。
 先ほど監督責任ということについてお伺いしていたんですけれども、今回の村木厚子元厚労省局長、無罪が確定しましたけれども、一方、今回の郵便料金不正事件の当時、課長であられたんですね。そして、係長だった上村勉被告が、今公判が係属しています。上村被告に対する村木元局長の監督責任は、厚労省はどのようにお考えになっているんでしょうか。

○小林大臣政務官
 お答えいたします。
 村木元局長については、刑事事件に対しては無罪判決が確定しましたが、御指摘のとおり、上村元係長の上司としての責任はあるものと考えております。
 上村元係長に対する刑事訴訟がまだ係争中であり、事実関係が確定していない部分があるため、厚生労働省として判断する段階には至っておりませんが、判決確定後、上村元係長の処分とあわせて、当時の関係者の監督責任について検討することとしていますので、その際に、村木元局長の責任についてもあわせて結論を出したい、このように考えております。

○柴山委員
 今のは大変重要な御答弁です。
 今、民主党は、この村木元局長をさまざまな役職につけようとしているんです。厚労省、今の答弁の内容としては全く妥当な答弁だと私は思いますけれども、その方向で、ぜひしっかりとした、筋を通した処分をお願いしたいと、私からお願いをしておきます。
 続きまして、小沢さん、鳩山さんの案件について短く質問をさせてもらいます。
 今回の小沢さんの検察審査会の起訴相当の議決に関連して、取り消しなどの行政訴訟が提起をされているんですね。一般論として法務省あるいは裁判所にお伺いしたいんですけれども、私は、行政訴訟という訴訟は、訴えの利益というものが非常に問題となるというようにお伺いしているんですけれども、この行政訴訟について、何か問題点はないんでしょうか。

○小川副大臣
 仮処分の関係では、却下するという地裁の判断が出ておりますが、一般に刑事事件でありますと、起訴したら、その起訴が有効、無効あるいは有罪、無罪はその刑事事件の場において争うということでございます。恐らく、この検察審査会の処分に関しても同じような考えがあり得るんじゃないかと思われますが。

○柴山委員
 極めて明快な御答弁、ありがとうございました。
 続きまして、司法修習生の給費制の問題についてお伺いしたいと思います。
 司法修習生に国が給与を支給するという現行の給費制を生活資金貸与制に切りかえるという裁判所法一部改正法の施行時期について、大臣はどのように御認識でしょうか。

○柳田国務大臣
 私としては、現段階で貸与制の実施を見直すことは考えておりません。
 ただ、国会の中でいろいろ議論が調いまして決定をされることになれば、それに従いたいと思います。

○柴山委員
 副大臣、同じ認識でよろしいでしょうか。

○小川副大臣
 同じ認識でございます。

○柴山委員
 政務官、同じ認識でよろしいでしょうか。

○黒岩大臣政務官
 大臣、副大臣と同じ認識でございます。

○柴山委員
 自民党の中では、貸与制にすると裕福な世帯の方しか法曹になれないという懸念が出る一方、貧しい修習生には貸与金の返済を免除すればいいじゃないか、一律の税による給費制の維持というものには国民の理解は得られないという意見も出ているところであります。
 そこで、財務省に伺います。財務省のこの件に関する予算措置は、どのような理由で、どういう金額になっているんでしょうか。

○吉田大臣政務官
 予算の方は、法律を前提に、つまり貸与制への移行を前提に組まれております。
 裁判所の二十二年度予算を申し上げますと、新しく始まります修習資金貸与金として二十七億円、そして従来からの給費制にかかわる分として司法修習生手当六十九億円、これは職員基本給、期末・勤勉手当等が含まれております。さらには、その方々の国家公務員共済組合負担金として七億円、これが二十二年度予算でございます。
 また、来年度、二十三年度の予算の概算要求においては、貸与金として八十九億円、手当として二億円、共済組合の負担金として一千八百万円、こういう要求が裁判所から出ております。これを前提に現在予算編成の作業を行っているところでございます。

○柴山委員
 もう既に貸与制を前提とした予算を組んでいる、そして、貸与制を前提とした予算要求が来年度の分については出ているという御答弁だったかと思います。
 今、私が御答弁をすべての政務の担当の方にお伺いしたんですけれども、全員が民主党の議員さんでいらっしゃいます。
 きのうの読売新聞には、民主党は既に九月十三日の法務部門会議で給費制維持の方針を決めていながら、実は、党の上層部の了解まではとれておらず、取りまとめにはなお時間がかかるという見方が示されていたということが報道されていますけれども、給費制維持の場合にはどういう措置をとるかということを、例えば財務担当者は民主党の法務部門と打ち合わせをされたんですか、吉田さん、いかがですか。

○吉田大臣政務官
 私の知る限りでは、民主党の法務部門会議から財務省に対して特別なお話は来ていないと承知しております。

○柴山委員
 この問題は、自民党だけが何かもめているというような報道がちょっと散見されるんですけれども、決してそういう実態ではないということを今の質疑を通じて主張させていただきまして、時間がオーバーいたしましたので、私の質問時間を終わらせていただきます。
 菊田政務官におかれましては、済みません、時間切れになってしまいましたので、質問を用意していたんですけれども、またの機会にお願いいたします。

第175回 国会 衆議院 予算委員会

第175回 国会 衆議院 予算委員会 第1号
平成22年8月2日(月)
午前九時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 まず、国民の安心の基礎となる法務行政についてお伺いします。
 その前に、総理、今回の参議院選挙において議席を得られなかった千葉法務大臣を、引き続きその職にとどめておられることの理由を端的にお聞かせください。

○菅内閣総理大臣
 法務大臣として適任な方だと思いましたので、議席は失われましたけれども、憲法的には、民間人の方が大臣を務められることもしばしばありますので、そういう判断として、適任な方ということで、そのまま大臣として職務を遂行していただきたいと私からお願いをいたしました。

○柴山委員
 適任とおっしゃいましたけれども、今回の金賢姫元死刑囚の入国許可、これについては選挙後の話ですし、また、あした同僚議員から詳しく質問があると思いますが、さまざまな批判があります。そして、例えば、かつて拉致実行犯の辛光洙氏の釈放要望書に署名したり、在日外国人の地方参政権について大臣在任中にこれを支持する集会に祝電を送ったりする等々、法務大臣としての行為、姿勢への評価も今回の選挙結果につながった側面は否定できないはずです。にもかかわらず、総理が内閣の都合で大臣を続投させるのは、まさに民意の軽視そのものではありませんか。
 内閣総務官室に伺いますが、落選した議員が大臣を務めた最長期間はどれだけでしょうか。

○原政府参考人
 これまで現職大臣が選挙に落選され、その後も大臣として在任された最長期間についてのお尋ねでございますけれども、戦後の新憲法制定以降においては、昭和二十八年四月の第四次吉田内閣における参議院議員選挙後二十七日間というのが最長であると承知しております。

○柴山委員
 このままでいけば記録更新は間違いないということです。
 さて、この七月二十八日に民主党政権下で初めて執行された死刑についてお伺いします。
 千葉大臣は死刑廃止を推進する議員連盟のメンバーだったんですけれども、考えを変えられたのでしょうか。これも端的にお答えください。

○千葉国務大臣
 私は、法務大臣を拝命いたしますときに、法務大臣の職務、職責として死刑執行について指揮をするということを十分に承知をして職務を受けさせていただきました。それを法務大臣としての職務として執行させていただいたということでございます。

○柴山委員
 かつてと考え方を変えられたんでしょうか。
 あなたはかつて、杉浦正健法務大臣が二〇〇五年に就任した際、御自分の信念として死刑執行命令書にサインしないと発言した直後に発言を撤回したことについて、参議院本会議における質疑で、「死刑制度に疑問をお持ちであれば、死刑制度廃止に向けた姿勢を貫くべきではなかったのでしょうか。」と一貫性の欠如を指摘されております。おかしくないでしょうか。
 大臣はちなみに記者会見で、慎重に検討して時間がかかったとおっしゃっていますが、いつ今回の案件が大臣に持ち込まれ、どのぐらいの時間、検討されたのですか、お答えください。

○千葉国務大臣
 個別の執行につきまして、どのような時点から、そしてどのような時点で決定をしたかということをお答えすることはできません。しかし、さまざまな、再審の事由がないか、あるいは心身の状態はどうか等々を含めて慎重に検討させていただいた結論でございます。

○柴山委員
 誤解しないでいただきたいのですが、私自身は、今大臣がおっしゃったように、冤罪の防止などを条件として、凶悪な犯罪には極刑をもって臨むのはやむを得ないと考えています。
 問題は、これまでは死刑の執行を拒んでおきながら、選挙で民意の支持を失って、先ほど述べたとおり、職務の継続に疑問を持たれている中で、極めて重い職務である死刑執行のサインに踏み切ったことなのです。
 ちなみに、内閣府のことし二月発表の世論調査では、死刑制度について、やむを得ないとして認める方が八五%という高い割合になったということです。もし大臣が国民の支持を目当てに対応を変えたということであれば、不謹慎であるとの非難を免れません。
 ちなみに、大臣は、今回、死刑にサインするので執行に立ち会いたい、また、東京拘置所の刑場を報道陣に公開したいと述べられたということですが、事実でしょうか。

○千葉国務大臣
 事実でございます。

○柴山委員
 実は、刑場の公開は、先ほど述べた死刑制度を廃止する議員連盟に所属していた社民党の保坂展人前衆議院議員が法務委員会などで繰り返し主張してきたことなんです。
 今後、法務省に勉強会を設けるということですが、大臣は、結局、かつて例がない、そして国民にとって衝撃の大きな死刑立ち会いの経験やこういった刑場の公開を通じて、世論を死刑廃止に傾けていく意思なんじゃありませんか。あなたは考え方を変えたかどうか今さまざまな議論がありますけれども、結局のところは、そういった裏の意図が隠されているんじゃありませんか。お答えください。

○千葉国務大臣
 全くそのような御指摘は私は考えてもおりません。

○柴山委員
 全くなぜ判こをついたかということについての説明にはなっていない、私はそのように考えております。
 続いて、今その展開が注目されている小沢前幹事長の検察審査会での審査に関連してお伺いします。
 こちらのパネルをごらんください。これは、ことし四月二十七日に起訴相当の議決が出た東京第五検察審査会、これについても書かれております。右上の1の部分です。
 つまり、実際には、ここの点線で書いたとおり、二〇〇四年十月に小沢氏の資金管理団体陸山会が世田谷の土地を購入したにもかかわらず、左に示した購入資金四億円の出どころを隠すために、収支報告書にはそのようには書かないで、別の入金があった翌二〇〇五年の一月七日に、実線のとおりに、購入したと書いた、そういう疑いのある事件です。
 一方、ことし七月八日に議決のあった東京第一検察審査会の事案は、左の2の部分です。お金のできた陸山会から小沢氏に対し提供額四億円を返済したにもかかわらず、それを収支報告書に書かなかったと疑われている問題です。
 おわかりのとおり、これらは一連の取引であるにもかかわらず、たまたま別の事件とされたために、二つの検察審査会で、それぞれ一般市民からくじで選ばれた別の十一名が検察庁の不起訴処分の妥当性を判断し、結論として、いずれも起訴しないのはおかしいと判断したわけであります。
 そこで、裁判所にお伺いしたいんですが、検察審査会における評議の経過、あるいは各審査員の意見は公開されていますか。

○植村最高裁判所長官代理者
 お答えを申し上げます。
 検察審査会に対しまして申し立てがございますと、検察審査会議というところで審査が行われます。検察審査会議における評議の経過、それから各検察審査員の意見につきましては非公開とされているというふうに承知をいたしております。

○柴山委員
 なぜ非公開とされているのでしょうか。

○西川政府参考人
 お答え申し上げます。
 まず、法律上の根拠でございますが、検察審査会法第二十六条には「検察審査会議は、これを公開しない。」という規定がございますので、この規定に基づいて公開はしていないということでございます。
 なお、この法律の趣旨でございますが、一つは、検察審査会は職権の独立が保障されて、検察審査会議における検察審査員の自由な審査活動を保障する必要は高い。検察審査会議を公開すると、審査員が他から不当な影響を受けるなどのおそれがあるということ。それから、検察審査会の審査が起訴前の手続であるため、被疑者その他の関係人の名誉の保護に配慮する必要があること。さらに、捜査の延長としての面もあるため、捜査の秘密を保護する必要があること等の理由に基づくものと理解をしております。

○柴山委員
 そのような中で、検察審査会の起訴相当の議決にもかかわらず東京地検がこの1の方の事件で小沢氏を再度不起訴処分としてから、わずか五日後の五月二十六日に、辻惠民主党副幹事長は検察審査会の事務局に電話をして、報道によれば、まさしくこの第五、第一審査会の各事務局長を指定して、審査員の補助をする弁護士の選任方法や標準的な審査期間などについてみずからの議員会館の事務所に説明に来るよう求めたとされています。
 これがもし事実なら、司法手続に政治的影響が及びかねない重大な問題であります。日本弁護士連合会の刑事法制委員長も、こうした接触があれば問題だと表明しています。
 総理、自民党と公明党の弁護士資格のある議員は、連名で、辻副幹事長に対し、こうした接触を図った事実があるのかどうか、配達証明郵便で公開質問状を郵送し、それはことし六月四日に配達されました。これがその配達証明書です。しかし、今もって辻議員からは回答がありません。総理は、この一連の経過について、辻議員あるいは幹事長室から報告を受けていますか。

○菅内閣総理大臣
 特に聞いておりません。

○柴山委員
 ちなみに、質問状を出したのは鳩山前総理の辞任表明の後の六月三日であることを申し添えておきたいと思います。
 辻副幹事長は、かつて、日本歯科医師連盟の政治資金問題で、橋本元総理らの不起訴を不服としてみずから検察審査会への申し立てを繰り返しておきながら、今回の事件では一転して、審査会の議決を魔女狩り的手法で葬り去るものだと批判をして、さらに、民主党議員などで結成した審査会制度の見直しなどを議論する議員連盟の事務局長を務めていると報道されています。司法への政治的圧力と批判されかねない動きはぜひ自重していただきたいと思います。
 現に、第五検察審査会の補助員を務められていた弁護士は、さまざまな嫌がらせがあって辞任したと報じられています。再度の議決は、検察審査会の構成員がすべて入れかわる予定の八月を大幅に超えて、民主党代表選挙の後になるという観測もあって、その間、公正なプロセスを確保する必要があると私は信じております。
 ところで、総理にお伺いしたいんですけれども、もう政治家が秘書に金の問題で責任転嫁をすることを認めるのはやめにしませんか。総理は、財務大臣だったことし一月の参議院予算委員会で、収支報告書についてはみずからごらんになっていると森まさこ議員の質問に対して答弁をされました。資金管理団体の代表者である議員本人が収支報告書に確認の上署名することを要するという法改正を、与野党の壁を越えて行ってはいかがですか。

○菅内閣総理大臣
 考え方としては、私は一つの拝聴すべき考え方だと思います。関係者でぜひ御議論いただきたいと思います。

○柴山委員
 もっと前向きな御答弁をぜひお願いしたかったところです。
 その上で、ここまで一般の方が不審に思っているこの事件について、国会の場で説明責任を果たすべく、小沢前幹事長や石川知裕議員、あるいは小沢氏の元秘書の高橋嘉信氏や水谷建設の幹部を初め、関係者の証人喚問を行うべきと考えています。
 先ほど総理は、国会のことは国会が決めるという趣旨の御答弁をされましたけれども、実は、民主党の幹部やあるいは閣僚からも、証人喚問に応じるべきだという意見を私は幾つか聞いております。もし総理がリーダーシップをとれば、世論をバックにこれを実現できる可能性は私は高いと考えております。何より、自民党が政権与党のときには、そういった疑惑があったときには証人喚問に応じてきたんですよ。
 総理、どのようにお考えなんですか。

○菅内閣総理大臣
 いろいろなケース、いろいろな場面があったことは承知をいたしております。
 そういった意味で、この案件についても、委員会あるいは国会の関係者の中で御議論をいただければと思っています。

○柴山委員
 なぜそうやって逃げるのか。私は大変失望しております。
 それでは、次の質問に移らせていただきます。
 荒井国家戦略担当大臣、大臣は、問題となった事務所費の内訳を明らかにすると称して、報道陣に極めて短時間、またコピーも認めずに示した領収書について、七月三十日の記者会見でこのように述べておられます。弁護士事務所からこれとこれは修正を要するのではないかと指摘があったので、指摘に基づき修正したのであって、架空経費問題は説明させていただいたと思っている。
 間違いありませんか。

○荒井国務大臣
 ただいまの案件でございますが、六月の九日でありましたでしょうか、読売新聞から私の事務所費問題で架空ではないかという指摘がございました。その結果、この件が架空ではないということを立証するために領収書を提示いたしました。この結果、架空ではないということが理解をされたというふうに考えてございます。
 ただし、この領収書の中に不適切なものがあったのではないかという御指摘がございましたので、監査法人やあるいは弁護士事務所に調査を依頼いたしました。その調査結果で十八件、うち十三件はコミックでありましたけれども、十八件、約十万円弱が私費利用との疑いもあるということで、是正をする方がよろしいという勧告を受けましたので、これを勧告どおりに修正を行いました。

○柴山委員
 それでは説明になっていないですよ。たとえそういった専門家の指摘に基づいて収支報告書を訂正したとしても、不適切と言われた具体的な内容は明らかになっていないじゃないですか。一たん疑惑を持たれた以上、少女漫画代やキャミソール代あるいはクリーニング代など、個別の費目ごとにきちんと領収書をもってどう処理したのか説明すべきです。違いますか。

○荒井国務大臣
 訂正内容は、領収書の数字の読み間違い、あるいは誤記載、収支報告後保存すべき領収書の紛失、私用で購入した物品の領収書の混入でございます。
 主な原因でありますが、仕事が多忙の中、秘書が支出後ある程度時間をかけてまとめて処理をしたため、誤読が発生したり、私用のものが錯誤により混入したり、領収書の保存状態が悪くなったりという原因でございます。
 今後は、会計帳簿入力作業に対するダブルチェック体制が万全でなかったことも原因でございますので、反省をしてございます。
 問題の点については修正をいたしました。問題は十八件あったと弁護士から報告がございました。その十八件について、約十万円弱でございますが、それを修正いたしました。

○柴山委員
 私は、今、個別の費目ごとに領収書をもってどう処理したのか説明すべきではありませんかとお聞きしたのに、全く御答弁になっておりません。
 ちなみに、今、民主党の議員から、そんなささいな問題をというようなやじがありましたが、二〇〇七年、菅総理は、我が党の大臣に事務所費問題が生じた際、きちんと領収書をそろえて説明すべきで、それができないならやめるべきだとおっしゃっていたんです。
 総理は、仮に荒井大臣が菅総理が当時おっしゃっていたような説明をしない場合、罷免されるおつもりですか。

○菅内閣総理大臣
 どの場面でどういう表現をしたか、ちょっと私、はっきり記憶をしておりませんけれども、先ほど荒井大臣の方から、専門家の皆さんの調査も含めてきちんと処理をしたということでありますので、それでいいのではないかと思っております。

○柴山委員
 過去におっしゃっていたことと全く食い違っております。領収書は一円から公開せよと言っていたのは一体どこの政党なんでしょうか。
 確かに、私も三年前のNHK「日曜討論」に出演した際、一定金額以下の支出についてまですべて領収書を公開するのではなくて、公認会計士などの外部のチェックを行うとともに、領収書については保管義務を課せばよいと発言をさせていただきました。
 しかし、先ほど述べたとおり、既に荒井大臣は不適切な支出があると指摘され、ほかにもないかと疑われているのですから、一層厳格な説明責任が求められるのは当然であります。パフォーマンスだけの政治はぜひやめていただきたいと思います。
 では大臣、御答弁ください。

○荒井国務大臣
 訂正内容は一件ずつ公開すべきとの御指摘でございますが、法令で求められている以上の公開を行うことは、今後の議員の皆さんの政治資金に関する説明責任にも影響を及ぼすものと思われますので、扱いは理事会で御議論にゆだねたいと思います。

○柴山委員
 ぜひ御自分で判断をしていただきたいと思います。
 また、同僚の西田昌司参議院議員がことし六月十五日に参議院本会議で、現在総理補佐官の阿久津幸彦議員が落選期間中、勤務の実態がないにもかかわらず、荒井大臣の政策秘書と登録され、選挙区支部長の公費を受けながら政策秘書の公費を二重取りしていたのではないかという問題を取り上げました。
 このときの菅総理からの御答弁はこのようなものでした。阿久津さんについて、荒井議員の秘書としては議員会館に籍を置き、当時国対委員長代理を務めていた荒井議員の補佐を務め、国対の会議に陪席し、他の会議、会合にも代理出席をしていたと聞いておりますというものでした。
 ところで、荒井大臣、当時の大臣の議員会館の部屋番号を覚えておられますよね。

○荒井国務大臣
 二百二十三番だったでしょうか、第一議員会館のそういう番号だったと思いますが、もう三、四年ぐらい前になりますから、正確には覚えておりません。

○柴山委員
 三、四年前とおっしゃいましたが、大臣は二〇〇七年に北海道知事選に出馬され、議員辞職をされる前は第一議員会館の二百三十三号室にいらっしゃいました。そして、荒井議員が辞職をされたことによって、同じ北海道ブロックの石川知裕議員が繰り上げ当選となり、あなたのかわりにその部屋に入ったんです。
 しかし、大臣の隣の二百三十二号室にいた山本有二議員に聞くと、部屋が隣同士で、通行証の貸し借りなどのため、お互い秘書が行き来していたにもかかわらず、議員、秘書を含め、だれ一人会館で阿久津氏に会った人はいないということなんです。何人かの近くの部屋の議員にも調べてもらいましたが、会った人物はおりません。おっしゃっていたことと違うのではありませんか。

○荒井国務大臣
 それは全く違います。
 阿久津さんは、私が国対委員長代理をしておりまして、国対関係は私は初めてでございましたので、阿久津さんは国対関係が長い方でございまして、あえて阿久津さんに政策秘書として国対関係の仕事を手伝ってほしいということで、当時、国対は毎朝会合を持っておりました。その場に毎朝、時にはそうでもない場合もありましたけれども、ほとんど国対の朝の会合の開かれるときには阿久津さんが参加をしていただいて、私に適切な助言などをいただきました。(発言する者あり)委員長代理は出ています。委員長代理のそばで、私に助言をしていただきました。

○柴山委員
 その他の会議に出席とおっしゃられましたけれども、その他の会議というのは一体どのような会議だったんですか。

○荒井国務大臣
 私の後援会の会合や、あるいは国のかたち研究会の会合でございます。

○柴山委員
 かつて、菅総理の秘書を務めた元衆議院議員が政策秘書給与の流用事件で服役をされましたけれども、同氏の手記によれば、総理御自身、実際は見たことがない、名前だけの公設第一秘書を登録していたと書かれています。私は極めて疑問に思います。
 こういった秘書給与の問題については、かつて大問題となりました。あなたのグループによる公金を利用した互助関係があったのではありませんか。

○菅内閣総理大臣
 柴山議員も、弁護士でもあるんですから、そういう質問をされるときにはよく調査をされた上で質問された方がいいと思います。
 その本が出たときにそういう質問をいただきました、同じような質問をマスコミの方から。私は、すべてそれに対してきちんとお答えをいたしました。そのことをおわかりの上でお聞きになっているのか。それとも、かなり古い本ですから、たしかもう七、八年前の本ですから、当時それを読まれたマスコミの方から聞かれましたので、記者会見ですべてお答えしました。
 この場では、同じことを申し上げてもいいですけれども、少なくとも、そのくらいの調査をされて質問したのかどうか。その上で改めてお聞きになりたければ、ちゃんとお答えをいたします。

○柴山委員
 当時、菅総理はこのように御説明をされていました。第一秘書は衆院選出馬予定者の応援に行くなどの活動をしていました、このように菅総理はそのときに御説明していたんです。私も調べております。
 ただ、元最高検検事の土本筑波大名誉教授は、それは極めて問題があるのではないか、本来、秘書とはまず所属議員の仕事にしっかりと専念するべきものではないか、同じ政党の候補者の選挙応援に行っていたというのは、もしそれが国がしっかりと情報把握していたら給与は支払わないのではないか、このように述べているんです。
 ぜひ、しっかりと調査をしていただきたいと思います。
 さて、荒井大臣は、国家……(菅内閣総理大臣「よろしいですか」と呼ぶ)どうぞ、菅総理。

○菅内閣総理大臣
 そういう調査もされた上での質問ならお答えいたしますが、私も当時、弁護士とよく相談をいたしました。当時私は、小さな政党でありましたけれども、東京の責任者を務めておりました。そして、その東京の責任者の政治家として、東京から立候補を予定している候補者のところに秘書を送るのは、これはまさに政治活動である、秘書としての政治活動であるから全く問題がないというのがその当時の私が相談した弁護士の見解であって、そのこともその場で申し上げたつもりであります。
 私の職務に関する仕事を秘書にやらせたことで、何も法律に反したことはありません。

○柴山委員
 将来、議員になることを志して秘書業務にまじめに取り組んでいるというケースはあると思います。しかし、御自分の選挙活動に本当であれば従事をしながら、このような活動をしている、そういうことはぜひともしっかりと私は見直しをしていただきたいと再度強調させていただいて、次の質問に移らせていただきます。
 荒井大臣は国家戦略の担当ですが、民主党が声高にうたう政治主導の政策決定への取り組み、これについてぜひお伺いしたいと思います。
 先ほど話題になっていましたが、昨年九月に内閣官房に発足し、各省にまたがる政策の総合調整を担うことを想定して局となるはずだった国家戦略室の権限が大幅に縮小され、中長期ビジョンを菅総理に提言する機関にとどまると伝えられています。これでは財務省主導の、各省縦割りの予算編成となるとお感じになりませんか。

○菅内閣総理大臣
 先ほど来、何人かの方から類似の質問をいただきましたが、柴山委員、全く趣旨が違います。
 つまり、もともとこの国家戦略室は、総理の直属という形を想定してつくられてはおりましたが、当初私が担当大臣をしておりましたけれども、まずスタッフから、一人目から集めることがありまして、そういう中で次第に陣容を整えていき、そしてその当時は、例えば複数年度にわたる予算などについて勉強会をやったりいたしておりました。
 そして、今回改めて、私が総理になったときに、総理直属の機関として、総理に対してシンクタンク機能を果たしていただきたい。この趣旨も申し上げましたが、改めて申し上げますと、総理に対していろいろな役所から説明に来ますけれども、それは、多くの場合は、その役所がこうしたいと思うことに沿った説明であって、それと矛盾する説明は余りありません。そういった意味で、最終的な政治判断を行う総理としては、ある意味での役所ごとの説明以外の立場からのそうした知見もしっかりと得ることが重要であり、そういう役割を果たしていただきたいということで新たな位置づけとしたということで、決して格下げでもなければ機能低下でもありません。

○柴山委員
 非常に苦しい説明だと思いますし、この点については閣僚にも、あるいは前官房副長官にも大変な異論があるとお聞きしております。ぜひとも、しっかりと党内での議論をまず詰めた上で野党との協議に臨んでいただきたいと思っております。
 続きまして、郵政問題についてお伺いします。
 民営化の方針を受けて二〇〇七年十月に発足した日本郵政グループは、三年間で約九千四百億円の法人税を納付し、旧公社時代の四年間で九千六百億円という国庫納付金と比べれば財政的に貢献していると評価できると思います。
 しかし、民主党政権は、郵政の民営化推進阻止、肥大化を進めようとしています。各地で反対を受け、WTO協定違反の疑いもある貯金、保険限度額の引き上げを初め、分社体制の見直し、全国一律の金融サービス義務づけ、株式売却凍結。
 総理、総理は七月二十二日に国民新党の亀井代表と会談されたとのことですが、連立の維持と、通常国会で廃案になった郵政関係法案を九月召集の臨時国会で成立させるということを確認したということで間違いないんでしょうか。

○菅内閣総理大臣
 参議院の選挙の前にも両党間で一つの確認をいたしまして、その法案成立に向けて全力を挙げるということを確認して、選挙戦に臨みました。
 選挙の結果は御存じのような結果でありますが、選挙後も連立を維持してくださるということで、両党間で、その法案についても成立に向けて全力を挙げる、そういう趣旨で合意をいたしました。

○柴山委員
 その国民新党にも問題が生じています。
 パネルをごらんください。これは、全国の郵便局長やその御家族、OBの方々がつくっている、この左から二番目、郵政政策研究会、以前は大樹全国会議と呼ばれていました政治団体が国民新党にどのような献金をしているかというのを示した図であります。
 郵政政策研究会は国民新党に対し、平成二十年、ここにあるように、一千五十万円を寄附するとともに、国民新党の政治資金パーティー券代として百五十万円をみずから支払っています。しかし、郵政政策研究会、以後郵政研と言いますが、本体以外にも北海道から沖縄までに、ここにあるように、全国に十二の地方本部があります。これらがすべてパーティー券百五十万円を買っているんです。
 ちなみに、政治資金規正法は、一つのパーティーに一団体が支出できる上限を罰則つきで百五十万円と定めています。このパネル上の十二組織は、それぞれ地方本部とは呼ばれていますが、政治資金規正法では、名称や独自の届け出いかんにかかわらず、一体的関係があれば支部と扱われて、本体の規制をかぶることになっているはずです。
 原口大臣、このパーティー券購入は政治資金規正法の上限規制違反になるんじゃないんですか。

○原口国務大臣
 柴山議員にお答えいたします。
 政治資金規正法第二十二条の八第一項、ここでは、政治資金規正法においては、政治資金パーティーについて、今委員がおっしゃったように、一つの政治資金パーティーにつき、同一の者から、百五十万を超えて当該政治資金パーティーの対価の支払いを受けてはならないとされております。
 個別の事案が同一の者からの政治資金パーティーの対価の支払いか否かについては、個々の事案ごとに具体の事実に即して判断されるべきものと考えております。
 これまでの大臣も同じ答えをしているわけですけれども、総務省としては、個別の事案については、実質調査権を有しておらず、具体的な事実関係を承知する立場にはございません。お答えを差し控えさせていただきます。
 また、具体の事案が政治団体の支部に該当するか否かについても、一義的には当該政治団体において判断されるべきものと思料しています。

○柴山委員
 御答弁になっていないと思います。
 郵政研の規約には、下部組織として地方本部を置くと書いてありますし、また、地方本部長は旧大樹全国会議の理事を兼務するなど、本体と一体的な運営がなされてきました。また、地方本部の収入は大半が郵政研からの、本体からの政治資金に依存しており、もしこうしたパーティー券の扱いを容認すれば、全国の地方組織を迂回させることによって容易に上限規制を免れることができてしまうこととなり、極めて問題だと思います。
 そもそも郵政研は、国民新党に資金提供をするのみならず、党員となっている方は党費を納めています。そして、国民新党以外をも含めた個別の国会議員の関係団体への寄附、会費などを合わせると合計三億五千万円という巨額の資金を政界に提供しているんです。
 中でも突出して応援をしているのが、資金管理団体や後援会などへの寄附が合わせて四千万円、政党支部党費二億二千三百四十万円という国民新党の長谷川憲正総務政務官であります。
 菅総理、千葉大臣同様、長谷川政務官も今回議席獲得に至らなかったわけですけれども、なぜ引き続き政務官を続投させることとされたんですか。

○菅内閣総理大臣
 政務官としてその職務にふさわしい、そのように考えたからです。

○柴山委員
 どのようにふさわしいのかということをお聞きしております。

○菅内閣総理大臣
 ふさわしいことの判断の中身というのはそれぞれあると思いますが、少なくとも、その職務にふさわしい仕事をこれまでもされておられましたし、これからもされることが期待できるということです。

○柴山委員
 しかし、国民新党は、あれだけ亀井代表が強烈なアピールをし続けていたのに、今回の参院選では一議席もとれなかったんですよ。巨額の資金提供を受けながら民意の支持を得られなかった政党に振り回される改革逆行内閣を国民は望んでいないということを強調して、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

第174回 国会 衆議院 法務委員会

第174回 国会 衆議院 法務委員会 第13号
平成22年5月21日(金)
午前九時一分開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 法案質問に先立って、どうしてもお伺いしたいことがあります。
 まず、前回の四月二十日のこの委員会での私の質疑に関することで一つお伺いします。
 鳩山総理の公設秘書だった勝場啓二氏の判決公判を翌々日に控えた中で、私は、「鳩山総理が、以前おっしゃっていたように、最終処分が出た後に、検察庁に提出されている資料をしっかりと説明をする、あるいは国会の場に提出をするということがなされなかった場合に、それをするように閣僚として説得するかどうか」ということを質問させていただきました。
 それに対する千葉大臣の御答弁は、「この間の総理の説明あるいは国会での答弁等を含めて、一定の裁判ということがはっきりした段階で適切に対処するとおっしゃっているわけですので、適切に対処されるものだと私は考えております。」このように答弁をされました。御記憶ですね。

○千葉国務大臣
 はい、記憶いたしております。

○柴山委員
 それに応じまして、私は、「総理は適切に対応されると思うというようにお答えでしたけれども、私がお聞きしているのは、適切な対応がとられなかった場合に、とるように説得するかどうかということを大臣にお聞きしているんです。」というように質問をいたしました。そうしたところ、民主党の委員の方々の壮絶なやじの中で、千葉大臣は、「仮定の話になりますので、お答えはできません。」というようにお答えになったんです。
 もう既に仮定の段階は過ぎました。案の定、私が思っていたとおり、鳩山総理は御自分の言葉をひっくり返して、そういった資料の提出は行わないというように明言をされたわけであります。
 大臣、再度お伺いいたします。
 このような総理の対応を受けて、大臣は、再度、きちんと筋を通し、鳩山総理に関係資料の提出を求めるように説得することをお考えかどうか、いま一度お伺いします。

○千葉国務大臣
 これは総理が御自身でお決めになることでございまして、私の職務から、それを説得するとかあるいは促すとか、そういう立場には私はございません。(発言する者あり)

○柴山委員
 総理に言ってくださいと、今委員の方からやじがありました。
 ただ、内閣というのは、一体性を確保しつつ、国民の負託にこたえていくものなんです。何のために閣議という手続があるんですか。
 大臣、大臣の期待は無残にも総理によって打ち砕かれているんです。ぜひとも、大臣、お考えを改めて、総理に対して説得してください。そしてここでそのことを言明してください。

○千葉国務大臣 
 今御答弁申し上げたとおりでございます。

○柴山委員
 大変失望をいたしました。
 この質疑の模様もしっかりと、今は動画サイトも充実しております。そして議事録も公開されております。御答弁には十分に行き届いた配慮をしていただきたいと申し上げて、次の質問に移らせていただきます。
 これも四月二十日の私の質問に関することです。
 当日は、千葉大臣に加えて中井国家公安委員長もこちらの方に御出席でした。お二人に対して私は質問をいたしました。「大臣は、今度実施される参議院選挙ではマニフェストの大幅修正は行うべきだとお考えなんでしょうか。」
 これに対して、まず、中井大臣がこう答えられました。「マニフェスト自体は四年で実行する、こういうことが大前提であります。今回の参議院選挙では、まだ一年目。御批判はたくさんいただくことは承知をいたしておりますが、私は、大きな修正なしで、マニフェストどおり選挙戦を戦って御評価をいただくべきだと考えています。」
 そして、千葉大臣もこのようにお答えでした。「私は、マニフェストは、昨年の政権交代において、これから与えていただいた四年間で実現をしていく、こういうことを掲げさせていただいているものでございますので、そういう意味では、これが今回で極端に変わるというものであってはならないというふうに思っております。」
 お二人とも全く筋の通った御答弁をされているんですけれども、今、仄聞するところによりますと、政府部内ではマニフェストの手直しということが検討されているやにお伺いしております。
 大臣、こういった御発言に基づいて、そういうことは憲政の常道からして行うべきでないということを閣議等でおっしゃっているんでしょうか。

○千葉国務大臣
 今、マニフェストの議論は確かにされております。これは、党としてマニフェストを策定するということ、今協議中であろうというふうに私も承知をいたしておりますので、大きく異なるかどうか、これはまだ私も十分に詳細あるいは最終的な結論を承知しているわけではありません。

○柴山委員 
 それでは、党の方でマニフェストが仮に大幅に修正、変更された場合に、大臣は、先ほど御答弁を紹介させていただいたように、大幅変更はするべきでないと。
 大臣は法律家の御出身です。憲政の常道ということについて、あるいは政治過程、プロセスのあるべき姿ということについて大変御造詣が深いというように承知をしておりますけれども、そういう形で、そういうことはするべきでないというように御意見をお述べになるおつもりはありませんか。

○千葉国務大臣
 今、非常にいろいろな議論がされている途中でございます。基本的に、これまでのマニフェストが大きく変更されるかどうかということは、まだわからない、仮定の話でございますので、それはまた状況を私も見据えさせていただくということでございます。

○柴山委員
 また仮定の話ですのでお答えできませんというようにお答えになりましたけれども、繰り返しになりますが、大臣のお答えというものは、私の記憶のメモリーのみならず、すべてしっかりと議事録、記録に残ります。それに基づいて、また状況の変化があった時点で私は質問をさせていただきますし、今は、先ほど申し上げたように、一般国民の方々がこうした委員会での質問というものを皆さん注視されています。その重みを重々理解された上で、責任と使命感を持って職に当たられることを切に希望申し上げます。
 次の質問に移らせていただきます。
 十月十九日に採用された内閣官房専門調査員についてお伺いします。
 今、政治主導ということが大変声高に叫ばれているわけですけれども、この内閣官房専門調査員というのは、平野官房長官が、鳩山内閣総理大臣を任命権者として、民主党の政調職員の二十七名を非常勤の一般職国家公務員として採用し、辞令を交付したというように仄聞をしております。
 その中で、総括と言われる方、プライバシーの関係からここではイニシャルを用いさせていただきますが、Y、別名H参事とおっしゃる方です。そして、法務の御担当はS部長代理とおっしゃる方です。
 大臣、法務省としては、こうした方々のこれまでの経歴あるいは活動について把握をされておりますか。

○千葉国務大臣
 これは内閣の方できちっと適切に対応、判断をしているものではございますけれども、私のもとでも経歴等の内容について適切に把握はさせていただいております。
 ただ、個人に関する情報ということになるものですから、その内容についてはお答えは差し控えさせていただきます。

○柴山委員
 今大変重要な御答弁をいただいたんです。私のところにきのう質問にいらっしゃった職員の方は、法務省としては、その経歴、活動の詳細というものは承知をしていないというようにお答えだったんです。ところが、今大臣の口からは、法務省としてその経歴を承知しているというように御答弁がありました。
 大臣、もちろん、履歴書等については、それは法務省でこれから仕事をされるわけですから、そのリストの一部ということで、もしかすると御入手をされているかもしれません。私が申し上げているのは、そういった通り一遍の履歴書に書かれているようなことだけではなくて、これまでどういう活動をしてきたか、そしてどういうような社会的なさまざまな出来事というものにかかわっておられたか、そういうことまで把握をされているかということなんです。

○千葉国務大臣
 私も、今御指摘がありましたように、経歴等承知をしているという話をさせていただきましたが、すべて、細かいところまで必ずしも承知をしているかどうかということを言われますと、そこまでは承知をしていない部分もあると思います。

○柴山委員 
 それでは、実際に採用に当たられた内閣官房の方にお伺いいたします。きょうは松野副長官においでいただいております。
 内閣官房としては、こうした経歴あるいは過去の活動というものについて把握をされた上で採用ということをされたんでしょうか。

○松野内閣官房副長官
 その経歴というのがどこまでのことをおっしゃっているのかわかりませんけれども、当然、履歴書、職歴等は確認をしてございます。(発言する者あり)

○柴山委員
 今、野党の理事の方からもお話があったように、本当に通り一遍の経歴書で足りるのかというところが実は大変重要なんです。
 特に、今申し上げたように、法務担当の職員というのは、例えば法務行政というものは、国の根幹を左右する治安の問題についてコミットをいたします。あるいは、今、私もプライバシーに配慮した形での質問をさせていただいておりますけれども、プライバシーとか、国の重要な情報について接するということも想定されるわけなんですね。
 千葉大臣あるいは政務三役の方だったら、これまでどういう著書を著し、どういう活動をされ、そしてどういう信条をお持ちかということは、私たちはある程度承知をしております。同僚の国会議員も含めてですけれども、この場で、そういうことと今の例えば仕事との関係もるる質問をすることもできます。ところが、こういった一般の方が政府の中に入ってきたときに、そういうことが必ずしも十分にできないという実態があるわけなんです。
 いま一度私はお伺いいたしますけれども、今私が質問をさせていただいた方々に関して、特に法務担当の専門調査員の方ですけれども、どういうお仕事をされているんでしょうか。きょうは小沢民主党幹事長の不起訴処分が決定するのではないかというような報道もされていますけれども、検察行政などについて、非公開となっている趣旨と反するような運営がなされるおそれはないんでしょうか。

○千葉国務大臣
 ちょっと御質問の趣旨がようはわかりませんけれども、この専門調査員の方々は、内閣官房長官の指示を受けまして、各府省、私ども政務三役に対して、さまざまな政策的な、これまでの知見に基づいた情報の提供あるいは助言等を行うということを職務にしております。
 そういう意味では、その職務において、例えば検察の捜査処理等に対する情報に関するところに接するというそんな機会は全くございませんで、そのような情報などについて何か特別な扱いとかあるいは行動をとるということはとても不可能だというふうに私は考えております。

○柴山委員
 今、不可能というようにおっしゃいましたけれども、例えば、法務省に入っておられる今私が申し上げた部長代理の方、あるいは主査でもう一人入っていらっしゃいますけれども、特にこの主査の方は、法務省には毎日のようにいらっしゃっているというようなことをお伺いしております。また、確かに検察庁そのものはセキュリティーもかかっておりますけれども、残りの法務省とは、庁舎としては一つの庁舎で皆さんお仕事をされています。また、もう私が申し上げるまでもありませんけれども、法務省の刑事局の方と検事の方、人事ローテーションで頻繁に交流をしております。そのような中で、専門調査員の方が、検察を含む刑事行政に一切情報として入手する機会がないというのは、私はそれは若干疑問を持っているところでもあります。
 ちなみに、この調査員の方々については、守秘義務というものがかかっていると思いますけれども、この守秘義務というものに違反したら、それは、法律上、どのような効果をもたらすんでしょうか。

○千葉国務大臣
 当然のことながら、この内閣官房専門調査員は非常勤の国家公務員ということになりますので、国家公務員法第百条第一項の規定に基づく守秘義務が課せられております。また、この守秘義務違反については罰則が設けられておりますので、これに違反をいたしますと、一年以下の懲役または五十万円以下の罰金に処せられるということになります。

○柴山委員
 今御指摘のように、行政処分ではなくて、刑事罰まで想定をしているということであります。ぜひとも、情報管理ということについては徹底をしていただきたいと要望させていただきまして、法案の中身に入らせていただきます。
 なお、大臣、きょうはこの後、御予定があるということですので、御予定に沿って、適宜、御退室をいただいて結構ですので。
 法案の中身ですけれども、今回……

○滝委員長
 ちょっと失礼します。速記をとめてください。
〔速記中止〕

○滝委員長
 では、速記を起こしてください。

○柴山委員
 それでは、質問を続行させていただきます。
 今回問題となっている国際裁判管轄ですけれども、とりもなおさず、裁判権という国家主権が一体どの事件に及ぶかという問題で、本来、国家間のルールで解決しておくべきではないかと思いますけれども、なぜそれが実現をしていないのでしょうか。
 EUでは、ブラッセル条約やルガノ条約が国際裁判管轄を定めていますし、また、民間航空運送という特定の分野に関しては、日本も締約国となっているワルソー条約があります。いかがでしょうか。

○千葉国務大臣
 確かに御指摘のとおりでございまして、できればこれは国際的な条約できちっと整備をされるということが望ましいと私も思っております。
 この国際裁判管轄につきましては、ヘーグ国際私法会議において、この間、条約交渉が続けられてまいりました。ただ、このヘーグ国際私法会議におきまして、関係国間の意見の対立等もありまして、包括的な多国間条約は採択できずに現在に至っているところでございます。平成十七年に管轄合意に関するところだけは条約が採択をされることになりましたけれども、包括的な条約という形にはなっておりません。
 そういう意味で、それを待つ、これから将来、どの程度見込みがあるのかということがまだはっきりいたしませんので、そういう意味で、まずは国内法で整備をさせていただくという経緯になったということでございます。
 私も、でき得れば、国際裁判管轄について包括的な多国間条約が成立するということが望ましいことは、もう言うまでもないことだろうというふうに考えております。

○柴山委員
 今大臣が御指摘のとおり、本来、多国間の包括的な条約が結ばれるべきであるというように考えるんですけれども、今、なかなか将来の見込みというものが不透明だというような御趣旨の御答弁だったんですけれども、先ほど申し上げているように、EUでは既に条約があるわけですし、特定の分野に関してはそうした条約もあるわけなんですけれども、包括的な条約というものがそういった状況であるというのは、一体どういった根拠に基づいてそういう状況になっているんでしょうか。

○千葉国務大臣
 なかなか根拠ということは私もすべてはわかりませんけれども、それぞれの各国の法制あるいは管轄に関する考え方がかなり異なっているということもあって、なかなか、それを統一する、共通な土台をつくるということが難しいという、そこが現状ではないかというふうに認識しております。

○柴山委員
 特に大陸法系の国々と英米法系の国々の間では、確かに御指摘のように、なかなかすり合わせができない法律上の違いがあるというように私も承知をしております。
 それでは、今御指摘のように、そういった条約ができるまでの間、いろいろと日本でもこの管轄に向けた取り組みを進めなければいけないということなんですけれども、これまで日本において、この問題に対する対処はどのようにされてきたんでしょうか。私も学生時代は逆推知説というような言葉で勉強した記憶があるんですけれども、どのような原則だったんでしょうか。

○加藤副大臣
 柴山先生に御配慮いただきましたので大臣と政務官はちょっと失礼をいたしますが、お許しいただきたいと思います。
 お尋ねの件でございますけれども、現行の民事訴訟法には、国際裁判管轄に関する明文の規定が存在しておりませんで、それはもう御指摘のとおりでございます。
 これまでどういう運用をされてきたかといいますと、日本の裁判所の管轄権が及ぶ範囲につきましては、訴えが提起された後、裁判所において最高裁の過去の判例に従って、個々の訴えごとに判断をしてきたということになります。
 あえて申し上げますと、その判断基準、大きく二つございますが、基本的には民事訴訟法の国内土地管轄の規定に依拠しつつ、各事件における個別の事情を考慮して国際裁判管轄の有無を判断するということ、もう一点につきましては、その際、我が国で裁判を行うことが当事者間の公平、裁判の適正、迅速を期するという理念に反するような特段の事情がある場合には、その国際裁判管轄を否定する、この二つが、いわば判断基準ということになろうかと思います。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 本来であれば、まず日本の主権に属する事件なのかどうかということを判断してから、どの裁判所がその事件を扱うかという形で考えなければいけないところですけれども、今の御説明によると、国内でどの裁判所がその事件を扱うかという一般的な原則というものを逆に利用して外国間の事件の割り振りということを判断していくということで、逆推知説というような考え方なのかなというように思っております。
 今回の法案は、そうしたこれまでの解釈を基本的には明文化したものととらえてよろしいんでしょうか。

○加藤副大臣
 この法律案につきましては、今申し上げた国際裁判管轄に関する従来の判例で示された判断基準を十分に踏まえて立案をいたしたところでございます。
 重ねてになりますけれども、基本的には、今先生も御確認をいただきました民事訴訟法の国内土地管轄の規定に依拠しつつ、各事件における個別の事情を考慮してその管轄の有無を判断する、また、特段の事情がある場合には、その管轄を否定するという、この考え方に基づいているところであります。

○柴山委員
 ただ、私も実務家の端くれだったんですけれども、今、中小企業も国際的な取引を行うという事例が非常に拡大をしているんです。ただ裁判ができればよいということでは全く意味がありません。たとえ日本が裁判権というものがあるというようにみずから認めたとしても、その裁判の結果を強制執行したり、あるいは裁判の結果を実効あらしめるために財産の保全措置をとったり、そういったことができなければ、まさしく裁判というものは絵にかいたもちとなって、意義の薄いものとなってしまうんです。
 こういった裁判の執行あるいは保全のルールは、一体どのようになっているんでしょうか。

○加藤副大臣
 お尋ねのように、せっかく裁判をしても実効性を欠いてしまっては意味がないというお尋ねだろうと思います。
 少しテーマを分けてお答えを申し上げたいと思いますが、国内の財産に対する強制執行ということでいいますと、日本の裁判所に管轄権が認められて請求を許容する判決が確定をすれば、当然のことながら、国内にある財産に強制執行をすることは可能であります。この問題はないと。
 外国の財産に対する強制執行の場合というのが一つ課題になろうかと思いますが、外国にある被告の財産に強制執行をするということになりますと、日本の裁判所の確定判決が、その外国において承認、執行されるということが必要になります。外国裁判所の判決の承認、執行をどのような要件のもとに認めるかというのは、これは各国の国内法によりますので、外国において日本の裁判所の確定判決の承認、執行が認められる場合、それはその国に所在する被告の財産に対する強制執行も可能になりますが、認められるかどうかというのはその国の法律によるというところであります。
 一方で、この法律案による国際裁判管轄の規律というのは、国際的にも一般的に受け入れられている規律を明文化したという考え方でございますので、この法律案によって、日本の裁判所に管轄権があるとして請求を許容する判決をした場合には、外国においても、今申し上げた承認、執行される可能性というのは極めて大きいというふうに考えております。その意味では、この強制執行については、本法律案が実効性を欠くということはないのではないかというふうに思います。
 それから、もう一つ御指摘をいただきました民事保全の件でありますが、国内における民事保全で申し上げますと、日本の裁判所に本案の訴えを提起することができる場合、または、仮に差し押さえるべきものもしくは係争物が日本国内にあるときは、日本の裁判所に対して保全の命令の申し立てが可能でございます。これは問題がないと。
 外国における民事保全でありますが、これはもう先生御承知のとおりだと思いますけれども、外国にある財産または係争物に対して、その国の法令に従ってその国の裁判所に民事保全の申し立てをしなければならなくなりますので、この部分だけは確かに御指摘のような課題がないとは言えないということであろうと理解をしております。

○柴山委員
 大変明快な御答弁をありがとうございました。
 要は、たとえ中小企業であっても、これから必然的となってくるグローバル取引を行うに当たって、さまざまな紛争を予防、そして解決をするためには、まさに御指摘のとおり、この法律だけを整備しても、果たして、その当該相手国において、しっかりとした日本の判決の承認あるいは執行体制ができているのかということのチェック、あるいは、その保全というのは、まさしく今副大臣が御指摘になったように、これは日本に対して申し立てるという手段がありませんので、当該外国に対して、仮差し押さえなり、その保全の申し立てをしなければいけないという、これはある種、大変な負担になってきますので、そういうことまでしっかりと調査をした上で取引をしなければならない。このことは、法務省として、この大変重要な法律を成立させるに当たって、十分、広報、周知していただきたいと思います。
 実は私も、きのう地元の商工会で、きょう、こういう質問をしますよ、それから、こういう内容について問題があると思いますよというふうに言ったら、既に外国の会社と取引している会社があるんですよ、やはり。商工会の中でも、そういう小さな中小企業の中でも、そういうことは当たり前のように起こっているんです。ぜひ、そういったことをお願いさせていただきたいと思います。
 さて、次の質問なんですけれども、今、千葉大臣の方からお話があったように、大陸法系と英米法系というような形で、この国際裁判管轄においては、ちょっと基本的な考え方の相違というものがいまだに残っています。とするならば、全く同じ事件について、外国裁判所と日本裁判所が競合して管轄を有するという場面があり得るわけなんですね。
 では、こういった同一事件について、例えば日本での訴訟係属中に外国の裁判所に訴訟が提起された場合に、日本の手続を当該外国に移送するですとか、あるいは日本の手続を中止するというような措置はあり得るんでしょうか。

○加藤副大臣
 今御指摘のとおり、外国と日本の裁判所において同一の事件が同時に係属した場合、いわゆる国際訴訟競合の場合について、例えば、判決が矛盾をしたりとか、あるいは、訴訟経済というようでありますけれども、平たく言えば世界全体を見たときの効率の問題だと思いますが、これらの観点から、一定の要件のもと、日本の裁判所の訴訟手続を中止する規律を設けてはどうかという御意見があることは承知をいたしております。
 ただ、さすがに主権の問題がありますので、日本の裁判所に係属している事件を外国の裁判所に移送するというのは、これは国内の裁判所同士であればもちろん今できているわけでありますが、それはなかなかちょっとハードルが高いのかなというふうには思いますが、中止する等々の規律は設けるべきではないかという御意見は承っております。
 ただ、実際、実務上、外国の裁判所で仮に日本国内と同一の事件が係属をした場合には、その事案ごとに、日本の裁判所において、それぞれの裁判の審理の進行状況などを見ながら、必要に応じて、例えば弁論等の期日の間隔を調整したりしてかなり柔軟に対応してきていると聞いておりますし、また今後もそれは可能であろうというふうに思います。
 一方、一律に中止をするという規律を設けるような場合ですと、当然のことながら、中止の決定に対する不服申し立てというものを認めなければならなくなるだろうと思いますので、かえってそのことによって手続がどんどん遅延をしてしまうということが考えられるところでありまして、そういう理由で今回は一律に中止をするような規律については設けていないということであります。もちろん、今後も外国における訴訟手続の進行状況も考慮しながら、弁論の期日を含めて実務上の運用で適切に事案の処理が図られるものと私どもは理解をいたしております。

○柴山委員
 要は、ダブルトラックでやりましょうというお話だと思います。
 逆に、外国の裁判所に既に係属している訴訟と同一の案件が日本の裁判所に提起をされたら、国内であればいわゆる二重起訴の禁止などということで却下をしたりあるいは併合したりというような手続になるわけなんですけれども、そういったことはなされるんでしょうか。

○加藤副大臣
 今の御指摘も幾つかパターンがあろうかと思うんですが、日本の国内の裁判所の判決が確定した後に同一の事件について外国裁判所で訴訟が提起をされたという場合でありますと、これはその外国の裁判所がその国の法律に基づいてその訴えの審理あるいは判断をするということになりますので、一概にお答えをするのは難しいわけであります。
 逆に、外国の裁判所の確定判決があって、その同一の事件について今度は日本の国内の裁判所に訴訟が提起をされたという場合でありますけれども、このときには、その外国裁判所の判決が民事訴訟法百十八条の承認要件を満たさないときにはその判決は日本において効力を有しませんので、日本の裁判所は、その外国裁判所の判決の内容にかかわらずに、提起された訴訟について審理をして判断するということになるだろうと思います。
 ただ、今申し上げた民事訴訟法百十八条所定の承認要件というものを満たす場合、外国の裁判所の確定判決がその条件を満たす場合には、日本の裁判所におきましては、その外国裁判所の確定判決を承認するということになりますので、改めて訴えの内容について審理判断をすることはないというふうに理解をいたしております。

○柴山委員
 済みません、大変失礼をいたしました。ちょっと私の質問の仕方がまずかったのか、副大臣、私の次の質問に対して今御答弁をされました。
 今、加藤副大臣の御答弁は、一たん日本や外国で判決が出てしまった案件が再度別の裁判所で訴訟提起された場合は一体どうなるかということについての御答弁で、当然判決の効力の拡張ということはないのだ、外国での訴訟については、日本での承認という手続というものがありますし、日本における判決が外国においてどうなるかということは、それは外国でのお話だというようなことでしたけれども、私の今の質問は、先ほど質問したようなことで、外国の裁判所に係属していてまだ判決が出ていない訴訟と同一の案件を日本の裁判所に提起したら二重起訴の禁止ということが働くのかという質問でした。
 恐らく、先ほど申しましたように、日本の裁判所に先に提起されたもので、外国の裁判所とダブルトラックでそのまま審理が続くということですから、これは、外国の方で先に裁判が提起されても、やはり日本においてダブルトラックで係属されるということでよろしいですね。それはちょっと確認です。

○加藤副大臣
 失礼しました。先生御指摘のとおりの御理解で結構でございます。

○柴山委員
というように、訴訟もダブルトラックで進んでいく。しかも、一たん判決が出た後も、それが承認されれば当然それは承認された国で効力を持ちますけれども、そうでなければ必ずしも実効性を持たないということになれば、これはどうもそれぞれの国で訴訟合戦みたいなことが起きてはこないかなというような危惧もしております。
 ですので、今副大臣の方からもおっしゃったんですけれども、そこはしっかりとした訴訟指揮とかあるいは見通しというようなことをした上でぜひ案件の処理ということを行っていただきたいというように思っております。
 次の質問に移らせていただきます。
 日本で裁判が起こせるからといって、そこで適用となる法律が日本の法律であるとは限らないわけです。裁判に用いられる法令というものが、一体どの法令か、いわゆる準拠法をどう定めるかということは、実は四年前、私もこの委員会で質問をさせていただきましたけれども、昔、法例、法の適用に関する通則法という新しい法律が解決をしているところであります。
 そこで、お伺いしたいのは、日本の裁判所に管轄が認められながらも、準拠法、つまりそこで適用される法律は海外の法律であるというのが一体どういう場合なのか。逆に、用いられる法律、準拠法は日本の法律でありながら、海外の裁判所に管轄が認められるような場合は一体どういう場合なのか、教えてください。

○加藤副大臣
 恐らくいろいろなケース、相当細かく調べれば複数あり得るんだろうとは思いますが、お尋ねのケースについて一例御紹介をさせていただきたいと思います。
 例えば、外国にいらっしゃる著名人の方が、日本の会社、正確に言えば日本国内に主たる事務所を有する会社に名誉を毀損されたとして、その会社に対する損害賠償請求の訴えを日本の裁判所に提起したというケースを考えますと、この場合、被告の会社の主たる事務所が日本国内にございますから、この法案の第三条の二第三項によりまして日本の裁判所が管轄権を有するということになります。
 一方で、ではどの国の法律を適用するかということは、先生今御指摘いただいた通則法の第十九条によりまして、他人の名誉を毀損する不法行為については、被害者の国の法律、外国法が適用されるということになりますので、このような場合には、日本の裁判所が管轄権を有して日本で裁判は行われるけれども準拠法は外国法というケースに当たると思います。
 それから、逆のケースでありますが、これは、外国の裁判所に訴えが提起をされてその管轄権が認められる場合には、当該外国の国際私法が適用され、それによって準拠法が定まるということになりますので、外国裁判所が管轄権を有するけれども準拠法は日本の法律だという具体例を探すのはなかなか容易ではございませんので、ちょっとこちらは御勘弁をいただければというふうに思います。
〔委員長退席、樋高委員長代理着席〕

○柴山委員
 ありがとうございます。
 今御指摘になったように、全然まれな事例じゃないんですね。当たり前のように、そういった管轄とその用いられる法律の食い違いというものがこれからどんどんふえてきます。ですから、そういったトラブルがないように、準拠法にせよ管轄にせよ、もはや契約で合意によって特段の定めを設けていく事例というものが取引においては大半であろうというように思っています。
 ただ、今副大臣がおっしゃったように、例えば名誉毀損などのような不法行為、そういう取引によらないで裁判をしなくちゃいけないようなときというのは、これは本当にしようがないのかなという気はいたします。
 そこで、今指摘をさせていただいたように、契約あるいは合意で管轄などについて別段の定めを設ける事例についてお伺いいたします。
 国際裁判管轄の合意において効力が認められる条件というものはどのような形になるのか、また、国内における裁判所の選択を内容とする管轄の合意との考え方の違いというものがあれば、ぜひお示しください。

○加藤副大臣
 国際裁判管轄に関する合意、それから国内土地管轄に関する合意、いずれも同様と考えてございますが、一つには、当事者が合意により定めることができるということ、そしてまた、その合意が、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でされなければならないということにされております。
 国内土地管轄と国際裁判管轄との異なる内容の規定でありますけれども、国際裁判管轄に関する合意の場合には、消費者契約に関する紛争と個別労働関係民事紛争を対象とする管轄権の合意については、その効力を制限いたしております。一方、国内土地管轄に関する合意の場合には、そのような規定はございません。
 その理由でありますけれども、国際的な事案におきましては、消費者または労働者が外国の裁判所において訴えを提起したり、あるいは応訴をしたりということが著しく困難であるという事情、あるいは、国内事案と異なりまして、先ほどもありました、事件を裁量移送することにより当事者間の公平を図ることができないというような事情、これらを考えてそのような規定になっているところでございます。
 したがいまして、国際裁判管轄の合意について、国内土地管轄の合意と基本的には一緒だけれども、その部分が違うという内容の規定を合理的な判断として設けたということでございます。
〔樋高委員長代理退席、委員長着席〕

○柴山委員
 合意に関して特段の強行的な修正ということをしなければいけないというのはそのとおりなんだろうなというように思います。確かに、消費者契約ですとかあるいは労働契約というものは、当事者双方の間に場合によっては非常に大きな資力などについての隔たりがあるというように思われますので、そこは理解できないわけではないですね。
 ただ、世の中の合意というのは、消費者契約と労働契約以外にもさまざまな契約がありまして、それに基づく管轄の合意というものについても、私はもっときめ細かく配慮をしていかなければいけないのかなというようにも思っております。
 例えば、集合債権の譲渡というような事例を一つとってみても、個々の債権というものは非常に細かい債権というものもたくさんあるわけですね。ですので、その債権譲渡の当事者間の紛争の利害関係人として零細な方々が参加をしてくるというようなことだって当然あり得るわけなんですね。そういうようなことも含めて、では、そういう方々の合意をとっていった場合にそういうものが本当に効力を持つのかとか、細かいことを考えていくと結構こういうところは難しいと思うんですよ。そういうようなことまで逐一配慮されているんでしょうか。

○加藤副大臣
 先生御指摘の債権譲渡の契約等々、さまざま細かなところを見渡してまいりますと、いろいろ御指摘、御意見もあろうかというふうには思います。ただ、どこかでこれは線引きをして判断をしなければならないものというふうにも理解をしているところであります。
 先ほどもお答えを申し上げましたけれども、当事者が管轄権に関する合意をした場合に効力を有するというのは、それが原則であります。それは何ら変わりません。
 ただ、先ほど申し上げたように、消費者契約とかあるいは個別労働関係民事紛争については、先生もおっしゃっていらっしゃったように、企業側と個人との間の資力を含めた力の差というものが非常に大きなものがありますし、例えば、労働契約を結ぶ段階で、その管轄権の合意について、さあこれから会社に入りましょうという人が異論を唱えて交渉するというのもなかなか難しいだろう、こんな考え方もございまして、特段の規律を設けたところでございます。
 その意味では、御指摘のように、いろいろな契約、さまざまな契約について一つ一つ見ればいろいろ御意見はあろうかとは思うんですけれども、今回、これまでさまざま議論をしてきた中では、消費者契約や今申し上げたような労働契約と同様に、類型的に、情報収集力、経済力、交渉力などで圧倒的な格差があるというような取引類型を見つけるというところには至っておりません。確かに御意見、御指摘はわからなくはないのでありますけれども、やはり何がしかきちんと線引きをして法律上の規定を設けるということになりますと、消費者契約や労働関係と全く同じという程度のものはないというふうに今の段階では考えているところでございまして、その結果として、この法律案の形にさせていただいたというところでございます。

○柴山委員
 一定の線引きということで、私も副大臣と同様、理解できなくは当然ないんですけれども、そうなると、やはり一般の法定原則ということと、では、その法定原則を貫いた場合の不都合性ということをどういう形で対処していくか、この原則と例外のパターンという考え方が恐らくとても必要になってくるのかなというように思います。
 例えばインターネット取引なんかを考えてみると、では、インターネット取引というのは果たして消費者契約なのかとちょっと考えると、これはなかなか非常に難しい部分があるんですね。今はネット販売なんということは当たり前のように行われておりまして、それが、例えば事業者に対するさまざまな事業用資産の取引ということもありますし、また、もっと細かい物品についてネット販売をするということもあります。また、その購入者も、法人である場合もあれば、当然のことながら、個人である場合もあるわけですね。しかも、仮に申し込みの名義が個人であったとしても、実態としては、それは法人との取引だったりとかいうこともあるわけです。
 特に、インターネット取引というものは相対をして取引しないわけですから、そこら辺は境目というものが非常に難しいというふうに私は思うんですけれども、これは消費者契約かどうかということは、一体どういう基準で判断をすればいいんでしょうか。

○加藤副大臣
 この法律案における消費者というのは、簡単に言うと、個人から個人事業主の方を除くというふうに考えていただいていいと思うんですが、個人であって、事業としてまたは事業のために契約の当事者となるものを除いた者というふうに規定をいたしております。消費者に該当するかどうかは、その取引の相手方の主観によるものではなくて、その意味では客観的に判断をされるということになります。
 ただ、そうなりますと、御指摘のように、取引の態様によっては、相手方が消費者に該当するのかそうでないのかということがインターネット取引の瞬間において不明な場合というのは正直あり得るというふうに思います。ただ、消費者の利益保護という観点から、この法律案の第三条の七第五項というものを規定させていただいているところでございまして、その趣旨からすると、幾ばくか不明な点が取引上残ってしまうというところはやむを得ないのではないかというふうに判断をいたしております。
 また、実際の取引の場面におきましては、事業者が取引相手の属性を確認するという方法もとることもできると思いますし、また、商品の種類や、その数、取引態様からも相手方の属性をある程度判断することもまた可能ではないかというふうに思っております。
 決して、先生おっしゃっていることが一〇〇%心配ないですよということではもちろんありません、やむを得ない部分もあろうとは思いますが、総合的に考えますと、この法律案の規律というところで、決して不合理であるということは言えないのではないかという判断をいたしております。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 ファジーな部分というものは当然残らざるを得ないと思いますけれども、いずれにいたしましても、きょう、この法律案は、これまでの解釈を積み重ねて一定の到達点というものに結びつけたという意義では、これは大変有意義であるということを評価させていただきます。
 ただ、与党の方からも先ほど御質問があったように、例えば知財の帰属と内容、効力についての切り分けの問題ですとか、今申し上げたような消費者契約の解釈の問題ですとか、さまざまな形でこれから詰めていかなければいけない、あるいは運用で解決をしていかなければいけない、外国との間でしっかりと調整をしていかなければいけない、さまざまな課題がまだまだ残っていると私は思うんです。
 ですので、今の政権になるか、私どもの政権になるかわかりませんけれども、将来において、そういうことを引き続きしっかりとウオッチをして、検討していくことの必要性ということを再度強調させていただくとともに、千葉大臣初め皆様には鋭意この問題に引き続きしっかりとした形で取り組んでいただくことを切に希望いたしまして、少し早いですが、私の質問を終わらせていただきます。
 きょうはどうもありがとうございました。

第174回 国会 衆議院 決算行政監視委員会 第一分科会

第174回 国会 衆議院 決算行政監視委員会 第一分科会 第1号
平成22年5月17日(月)
午前九時三十分開議

○柴山分科員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 まず初めに、通告しておりませんけれども、新しい動きがありましたので、お伺いします。
 北澤防衛大臣が、きのう、長野市内の記者会見で、米軍普天間飛行場の移設に関する政府の基本方針について、負担を一部沖縄にお願いせざるを得ないということを基本に、それをはるかにしのぐ形で負担を全国展開することの大枠を決定するのが五月末決着の大筋だと述べられました。
 岡田大臣、こうした準備を政府で進めているというのは事実ですか。

○岡田国務大臣
 普天間基地の危険性除去、そして移設の問題について、今、政府の中で、関係五大臣が中心になってさまざまな検討を行っているところであります。今御指摘のような、そういう具体的な内容について、特にそういうものが決まっているわけではございません。

○柴山分科員
 特に決まっていないということであれば、これは北澤防衛大臣の単独プレーということでよろしいんでしょうか。

○岡田国務大臣
 今、関係五閣僚でいろいろ議論していることについて、詳細を申し上げるべきではないというふうに思います。
 ただ、北澤大臣がおっしゃったことについて、私は、そういったものを、具体的なものについて承知をしているわけではございません。
 しかし、言えることは、沖縄の負担をできるだけ減らす、そういう総理の強い思いの中で、一体何ができるのかということを、今さまざま検討を行っているというところでございます。

○柴山分科員
 今、関係五大臣ということをおっしゃったんですけれども、この動きがきちんと成案になるかどうか。最終的には政府として決着を図らなければいけないわけです。それは、社民党の福島大臣も含む政府の方針としてきちんと決まる見通しであるということでよろしいんでしょうか。

○武正副大臣
 関係閣僚で、この普天間移設、また米軍再編についての政府としての考え方をこれまでも協議し、また、基本政策閣僚委員会、そうした場も通じて、そしてそのもとに、私もメンバーでありますが、沖縄基地問題検討委員会、これは、三月中旬までそれぞれ委員のレベルで案をつくって、それを官房長官、委員長のもとに提出というようなことで、与党として、委員のレベルでありますが進めてきた、こういった経過でございますので、福島大臣も含めまして、それぞれしっかりと協議をして意見を整えていくということだというふうに思います。

○柴山分科員
 もう私が改めて申し上げるまでもなく、福島大臣は、何が何でも、県内ということでは賛成しないということをずっと一貫しておっしゃっているわけです。そのような中で、果たしてそういうような、今武正さんがおっしゃったような具体的なプランというものが成案を見るのか、極めて疑問です。
 また、岡田大臣は、先ほど、北澤防衛大臣の具体的なプランについては承知をしていないというようなことをおっしゃったんですけれども、今週二十一日には、クリントン国務長官が来日の上、岡田大臣と協議をされるということです。また、北澤大臣は今月下旬にも訪米してゲーツ国防長官と会談をされるということでありまして、こういった実際にハイレベルの、大臣クラスがお互いにほとんど軌を一にしてお話をするということは、そういった具体的な案を想定して、まず米国側の了解を得るとともに、また、六月以降も含めた今後の進め方を協議するための会合なのではありませんか。

○岡田国務大臣
 いろいろな報道がなされておりますけれども、クリントン長官が日本に来るのかどうかということはまだ正式な発表にはなっていないと思いますので、そのことについてコメントするのは適切ではないというふうに思います。
 ただ、仮に、今、例えば今週のどこかでということを考えたときに、普天間の問題のためにクリントン長官とお会いするということではないだろうというふうに思っております。
 今、日米間で急いで意思疎通をしなければならない問題は、一つは韓国艦船の沈没の問題であり、もう一つはイランの核疑惑の問題であります。その二つの問題を日米間でハイレベルで意思疎通しなければいけないということは、機会があればぜひそういったことを行いたいというふうに思いますが、普天間の問題がそういう段階に来ているというふうには私は必ずしも思っておりません。

○柴山分科員
 先ほど関係五大臣のお話をお伺いしました。そして今、岡田大臣から、確かに喫緊の課題としては、御指摘の韓国の哨戒艦の沈没の問題あるいはイランの核疑惑の問題、そういったものがあるのであろうということはわかりますけれども、お互いに防衛省あるいは外務省の間で、この五月末というように総理が期限まで区切った形の普天間飛行場の問題について、しっかりとした意思疎通ができていないというのは、私は極めて問題だと思います。
 このことはぜひ防衛省にも見解をお伺いしたいと思うんですけれども、本当にそういうようなレベルで、今、具体的な素案、政府としての検討案というものはまとまっていないということでいいんでしょうか。

○楠田大臣政務官
 済みません、通告を受けていないものですから時間をかけましたが、さまざま、負担の軽減策等、そうしたことをもちろん議論しておりますけれども、具体的なお答えについては差し控えさせていただきたいと思います。

○柴山分科員
 非常に納得がいきませんが、とりあえず次の質問に移ります。
 やはり米軍の問題ですけれども、私の地元の所沢市に、米軍が進駐以来占有している基地があります。現在は通信基地となっておりますけれども、九十七ヘクタールもの広大な土地が、市の中央部、市役所のすぐ近くに位置しております。この基地の全面返還が市民の願いとなっているんですけれども、岡田大臣は、この場所にこれだけの基地が果たして本当に必要であるとお思いでしょうか。

○武正副大臣
 柴山委員の御指摘の所沢の通信基地、私もよく地元に伺いますので、過去、二百七ヘクタールが返還をされてきた、その中に当然、防衛医大とか市役所がある、あるいは航空記念公園があるということは理解をするところでございます。今、その九十七ヘクタールが通信基地として現存しております。
 米側については、航空機、艦船等の通信任務上、現在の規模が必要であるというのが米側の立場。他方、地元所沢市からのそうした返還要求、御要望も踏まえまして、現在、いわゆる東西の連絡道路用地の返還に取り組んでいるところでございます。

○柴山分科員
 おっしゃるとおりでして、これは実は、前の政権において、私が外務政務官の時代に、地域の皆様の御努力が実りまして、市の当局あるいは議会、市民の方々を交えた基地対策協議会が、地上式の東西連絡道路の開設に向けて再開をされました。
 そこで、防衛省にお伺いしますけれども、昨年の政権交代の時点で、この米軍通信基地の東西連絡道路の問題はどのような状況にあったんでしょうか。

○楠田大臣政務官
 お答えをさせていただきます。
 委員も御承知のとおり、昭和四十三年以降、全面返還の要望が続いております。その中で、平成十四年に至りまして、全面返還までの当面の解決策として、東西連絡道路用地の早期返還を強く要望してきたものであります。
 その後、これを受けまして、平成十五年から十七年にかけて、当時の防衛施設庁が返還要望地付近の調査などを実施して、用地の返還について米側との調整を行ってきた。その後、平成十八年四月、所沢市から返還要請書の提出があり、防衛施設庁として、同年七月、米側に対して返還を提案し、以後、日米間で返還の実現に向けた協議が行われてきた。
 その結果としまして、米側から、既存の施設、通信局舎やアンテナ等の移設などを日本側において実施することを条件に、用地の返還に同意する考えが示された。これを踏まえて、平成二十一年八月、政権交代前の時点で所沢市に対し米側の返還条件の概要を提示し、その後、同市及び米側との間で用地の返還に向けた具体的な調整を実施している。
 これまでが政権交代までの状況であります。

○柴山分科員
 具体的に米軍側からそういう提案がされましたと。
 それで、実は八月中に、つまり政権交代の前に、この移設に伴うさまざまな費用の調査というものが予算立て、概算要求の中に盛り込まれました。その概算要求は、そのまま今年度予算に盛り込まれたということでよろしいかと思います。
 ちなみに、次回の所沢市の基地対策協議会というのがあさって、十九日に開催されるんですけれども、政権交代後、もし何らかの新しい状況の変化があれば報告をされるのかなと思いますけれども、そういった新しい状況の報告というものは想定されているんでしょうか。

○楠田大臣政務官
 お答えをさせていただきます。
 先ほど申し上げました米側の返還条件であります既存の施設の移設につきまして、平成二十一年十二月、所沢市から、市の負担をできるだけ軽減するよう要望がなされたところであります。
 一方、一般論として、地元要望に応じて行われる米軍施設の一部土地の返還に必要な施設の移設に関する経費は要望者が、受益者が負担することが適当であるというのが一般論でありますが、その中で、政権交代後も当省としては、米側の返還に伴い必要となる施設の移設等の経費をまず全体としてできるだけ削減すべく、米側や所沢市と精力的に調整を行っているところであります。
 具体的に言えば、具体的な施設について、その内容や移設方法等について米側と会議の場で日米の担当者による調整を行うとともに、返還条件の実施に係る経費負担のあり方等について所沢市との調整を継続的に行っているところである、そうした状況であります。
 今後とも、所沢市の経費負担をできるだけ抑えられるように鋭意検討して、可能な限り早期の返還実現に向けて努力してまいる、そうしたものが今の状況であります。

○柴山分科員
 政権交代からこの方、まず市の要望ということで、所沢市の負担をなるべく減らすように要望があった、そしてそれに伴って具体的な実施方法について今協議をされているということで、特に新しい状況というものは生じていないかと思います。
 ところで、今政務官が御指摘になったように、この東西連絡道路の設置については、事業者負担、要するに事業者である所沢市の一部負担が求められているわけなんですけれども、今示されている案は、道路設置に伴って返還される予定地、要するに、直接道路が通るところ、ここに係っている施設の移転は市の負担とする、そしてその周辺にある施設については保安用地確保のために移転する分を国が負担する、こういう内容となっております。
 これは一体どういう理念に基づく案なんでしょうか。国が負担するという周囲の保安用地確保というのは、いかなる根拠に基づいて必要なんでしょうか。

○楠田大臣政務官
 先ほども申し上げましたように、本件につきましては、まず一般論として、地元要望に応じて行われる米軍施設の一部土地の返還に必要な施設の移設に要する経費は要望者が負担することが適当と考えられる、これが我々が考えております、まず前提であります。しかしながら、今までの累次のさまざまな御指摘を踏まえ、また議論を踏まえまして、防衛省として、経費負担の方法について柔軟に検討してきたというところであります。
 先ほど委員の御指摘にもありましたように、返還予定地に存する施設の移設に要する経費については所沢市の負担といたしているところでありますが、これは、先ほどの一般論からしても、当然、道路になる部分ということでありますので、この点は地元負担というのはお願いせざるを得ない。
 一方で、保安用地の確保といいますのは、二〇〇一年のいわゆる九・一一テロ以降、米軍側の考えといたしましても、一定の保安距離、施設・区域の境界から二十メートルから三十メートルに所在する部分は、そこに建てないように保安用地を確保する、そうした相手側の取り決めもあるものですから、防衛省としましては、この保安用地の確保の部分のために必要となる施設の移設に関する経費については国で負担することもやむを得ないという考えのもと、こうした検討を行っているというところでございます。

○柴山分科員
 幾つもお聞きしたいことが出てきました。
 まず、二十メートルから三十メートル、要するに、一般の方が通るところから、テロを防ぐために距離を確保しなくちゃいけないというようなことは、今取り決めというふうにおっしゃいましたけれども、何らかの文書的な根拠があるんでしょうか、それをまず一点お伺いしたいと思います。

○楠田大臣政務官
 こちらは米軍の部内の規則であります。

○柴山分科員
 その部内の規則については、あらゆるところできちんと守られるコンクリートな規則なんでしょうか。

○楠田大臣政務官
 あらゆるところでというところは今の時点で調査に至っておりませんが、あくまで米軍の中での規則であります。
 そして、米軍自体との議論の経過の中でこれは返還されるということになってきたわけでありますし、また、その米軍の施設との関係でこうした保安用地の確保を要望されているというところでありますので、この点は尊重する必要があると考えております。

○柴山分科員
 要は、結局、所沢市がほとんどすべての費用を負担して、この保安用地というところについての施設については結局のところ国が負担をする必要がなくなったと、市がだまされるような形で市に負担が押しつけられるというようなことがあってはならないというふうに私は思っているんです。いずれにせよ、そこのところはしっかりとした根拠をぜひ示していただきたいと思います。
 また、そもそも論なんですけれども、この道路に係る施設については日本側で撤去するということを条件に話が進んでいるということなんですけれども、例えば、在沖縄米軍海兵隊のグアムへの移設費用についてはアメリカが四割を負担するわけですね、当初は二割五分だったわけですけれども。この件について、米側が一切費用負担をしないでいいというのはなぜなんでしょうか。

○楠田大臣政務官
 この点は、米側に、今回新たに返還をして工事をする必要性がないからだと考えております。

○柴山分科員
 ちょっとよくわからなかったんですが、要するに、アメリカ側にとってメリットがない、そういうことを言いたいんですか。

○楠田大臣政務官
 あくまで地元の要望のもとでこの道路建設を行うわけでありますから、アメリカ側のメリットはないと考えております。

○柴山分科員 それでは、沖縄の海兵隊がグアムへ移設するということのアメリカ側のメリットというのは一体何だったんですか。

○楠田大臣政務官
 その点、さまざま議論があると思いますが、当然、グアムに移転をして、それを新たに米軍が使用するわけでありますから、米軍にメリットがあるのは、一部それがあるというのは明白ではないでしょうか。

○柴山分科員
 例えば、撤去したさまざまな施設を本国に持ち帰ってそれを再び利用する、これもメリットなわけですよ。
 私は、もし政務官でなくて例えば事務局の方がきちんとした答弁をされるのであれば、事務局が答弁していただいて結構です。私は、政治主導というのは、政治レベルが答えることが政治主導だとは思っておりません。質問者が事務局を指名したら、事務局にきちんとした正確なお答えをしていただく、それはこちら側に任せていただくのが政治主導だと思っておりますので、国会法の改正なんかもありますけれども、私は極めて疑問に思っております。
 ちなみに、本来、米軍基地の問題は、日米地位協定に基づいて国が費用を負担するのが筋だと思いますけれども、先ほど来、事業者負担、事業者負担とおっしゃいますが、自治体が費用負担するのはその趣旨にもとるんじゃないでしょうか。

○楠田大臣政務官
 御指摘もありましたけれども、私は、今の責任ある立場での正式なお答えとして考えていただければと思いますので、お答えをさせていただきます。
 先ほど来申しておりますように、我々の原則論、一般論として、地元要望に応じて行われる一部土地の返還でありますので、受益者負担というのが原則だと考えております。

○柴山分科員
 実際に基地関係の返還に伴って自治体でそういう費用負担をしているというのは、どういう実績があるんでしょうか。

○楠田大臣政務官
 お答えをさせていただきます。
 既存の施設の移設経費を地方自治体が負担した例は数々ございますが、代表的な例を挙げさせていただきますと、道路拡幅事業に伴い多摩サービス補助施設、また、厚木海軍飛行場の一部土地の返還を行った際に、要望者である地方自治体が境界さく、倉庫等の施設の移設に伴う経費を負担しているという実績がございます。また、相模原住宅地区、赤崎貯油施設等々、さまざまな例があるというのが実際であります。

○柴山分科員
 果たしてそういったケースが本件に妥当するのかということは、ぜひきちんとした検証が必要になってくるのじゃないかなというように思っています。
 岡田大臣、これまで鳩山総理御自身が、先ほど申し上げたように、五月末までに、米国のみならず移設先の同意などを得て解決のめどをつけるとしていた普天間飛行場の問題ですけれども、その解決自体極めて難しい状況となっております。こういった状況や米国との関係の変化がこの所沢通信基地の決着に影響するんじゃないですか。

○岡田国務大臣
 どういう趣旨でおっしゃっているかわかりませんが、私は、何かあると、普天間の問題が関係しているということを根拠なく言われることが非常に多いものですから、何か具体的なことがあればぜひ御指摘をいただきたいと思います。
 最近、何かあると普天間、あるいは何かあると中国ということが非常に多過ぎるように思っております。

○柴山分科員
 実際に、基地対策協議会も、前回開催されたのが十月五日、その前が九月二日だったんですけれども、そして次回開催されるのがあさってということで、かなり間をあけております。
 そして、岡田大臣、何よりも北澤防衛大臣が、この所沢米軍通信基地について取り上げられたことし二月二十五日の予算委員会第一分科会で、こういうふうに述べておられるんですよ。基地が存在する、これは所沢の米軍通信基地のことです、基地が存在するということは地域の皆さんに大きな負担と懸念を醸成しているわけでありまして、これは沖縄の普天間の返還協議とそれぞれみんなリンクしておるわけです、こういうふうに答弁されているんですよ。いかがですか。

○岡田国務大臣
 今の北澤大臣の答弁、どういう脈絡の中で答弁されたのか、ちょっと私は承知しませんので、コメントは控えたいと思います。

○柴山分科員
 いずれにいたしましても、事実上でも悪影響が一切ないということは、とても私には信じられません。
 防衛省に最後にお伺いしますけれども、この東西連絡道路の平成二十三年度予算編成における方向性はどのようなものとなるんでしょうか。また、今後の道路開設の見通しはどのように考えておられるんでしょうか。

○楠田大臣政務官
 先ほど来御指摘ありますが、これは、相手もあることでありますし、歴史もあることでありますので、さまざま、お気持ちは察しますが、難しい状況があると考えております。
 その上で、今後の方向性でありますが、平成二十三年度以降、通信局舎、アンテナ等の移設に係る具体的な配置検討を今後とも行っていくこととしております。今後、米側の返還条件について、米側及び所沢市と具体的な調整を加速化し、できるだけ早く日米合同委員会で本件一部土地の返還を合意すべく対応してまいるということでありまして、今の時点では額はまだ言明できないところであります。

○柴山分科員
 質問を終わります。ありがとうございました。

第174回 国会 衆議院 決算行政監視委員会

第174回 国会 衆議院 決算行政監視委員会 第3号
平成22年5月11日(火)
午後二時十六分開議

○柴山委員
 自由民主党、ネクスト・ジャパン無駄撲滅副担当の柴山昌彦です。
 菅大臣にお伺いします。
 私は、ことし一月二十一日に、予算委員会で、民主党の議員の方々が壮絶なやじを飛ばす中、プライマリーバランスについてお伺いしました。あのとき大臣は、プライマリーバランスを軽視するわけではないが、歳出の中身あるいは成長戦略、そういうものを組み立てる中から、ことしの五月、六月には中期財政フレームを出していただくことになっているので、その中で財政再建の道筋も打ち出していきたい、そう答弁されました。間違いありませんね。

○菅国務大臣
先ほどの御質疑でも申し上げましたように、現在、中期財政フレーム、さらには財政運営戦略を仙谷大臣のもとの国家戦略室を中心に六月を目途に取りまとめを進めていただいている、このように承知しております。

○柴山委員
 答弁は簡潔にお願いします。
 複数の報道で、四月二十八日に財務省が民主党に示した試算によりますと、仮に社会保障費などを抑制して名目成長率が二・七%まで回復しても、民主党のマニフェストを実行すれば、二〇一三年度の歳出と歳入の差額は実に今年度の四十四兆円から五十八・四兆円にまで拡大するとのことですが、いかがでしょうか。

○菅国務大臣
 この四月二十八日に、そういう報道があったことは、私も、質問がありましたので調べてみて承知をしておりますが、財務省がそうした試算を民主党に提示したという報道は間違いです。
 そうではなくて、このメンバーの中の方が、一部は確かに財務省の、皆さんにもお示ししている後年度負担といいましょうか、そういうものも含めた資料を出されたということで、それを報道の方が財務省が出したものというふうに間違って報道されたということです。

○柴山委員
いずれにせよ、根拠のない数字ではないわけですから、大幅な増税なくしてマニフェストを完全実施することが不可能であるということは今や明らかであると考えます。
 そのような中で、菅大臣あるいは枝野大臣、お二人のマニフェストの変更についてのお考えを改めてお聞かせください。特に枝野大臣は、さいたま市の講演の中でマニフェストの見直しについて言及されたとのことですが、事実関係も含めてお答えください。まず、菅大臣。

○今村委員長
 もう一回言ってください。菅大臣ですか。

○柴山委員
 マニフェストの変更についてお答えください。まず菅大臣、そして報道がありました枝野大臣、どうぞ。

○菅国務大臣
 先ほど来申し上げていますように、マニフェストについて、今年度の予算の中で、少なくとも初年度分について、子ども手当等実行できたものと、それから一部実行できないものがありました。
 そして今、来年度に向けて党と内閣の方でもさらに議論をしておりまして、先ほど来申し上げていますように、マニフェストについてはできる限り実行するということと同時に、この日本の財政、経済が、持続可能な形で、ギリシャのようなことにならないようにやっていくにはどうすべきか、こういうことも当然ながらあわせて考えていかなければならない、このように思っております。

○枝野国務大臣
 私は、政権交代前から一貫して、マニフェストはきちっと守るべきであるというマニフェスト原理主義の立場に立っております。ただし、その大前提は、客観情勢が変更ない限りはマニフェストは約束どおりやらなければいけない、これがマニフェストを軸にした政権交代選挙の基本的な位置づけである、その考え方は全く変わっておりません。
 ただし、前提となっている状況が変わっているとき、四年間ある間には、社会状況、経済状況、いろいろなものが変化をいたします、それに対応することも政治の一つの重要な役割だというふうに思っております。
 特に、財政問題との兼ね合いでいえば、前政権の経済運営の失敗によって法人税収が当初の想定よりも約九兆円落ち込んでいる、このことがプライマリーバランスの問題を初めとして日本の財政状況に想定外の大きな悪影響を与えている、このことをしっかりと考慮に入れて、マニフェストを最大限守っていくことをやっていくということだと思っています。

○柴山委員
 状況の変化により、急激な税収の落ち込み、先ほど五十嵐議員も御質問されていたようですけれども、そういう御指摘がありました。
 ところが、リーマン・ショックの前、民主党の前原誠司元副代表は、前回の参議院選公約で掲げた農家の戸別所得補償制度や、先ほどお話が出ました暫定税率の廃止などの実行について中央公論にこう書いています。繰り返します。リーマン・ショックの前です。
 行革だけによる捻出は絶対無理だ。参院選のマニフェストをまとめるとき、当時の政策責任者の間では財源の根拠が希薄だとの難色が示されたと聞いているが、最後は小沢さんのえいやだったと、小沢さんの責任を指摘しています。また、民主党が最もしてはいけないのは、国民に耳当たりのいいことばかり言って仮に政権をとったときにやっぱりできませんとなること、すぐに自民党に政権が返る、最悪だと述べておられるんです。
 藤井財務大臣に至っては、だめだったらごめんなさいと言えばいい、そういうふうにおっしゃっているではありませんか。
 マニフェストを変更するのであれば、昨年の総選挙が平成の一大詐欺選挙だったと率直に認めた上で、前のマニフェストで多数を得た衆議院を解散して民意を問うべきだと指摘をさせていただきたいと思います。
 菅大臣は御退室いただいて結構です。
 続きの質問に行かせていただきます。(発言する者あり)

○今村委員長
 御静粛に願います。

○柴山委員
 枝野大臣にお伺いします。
 四月の独立行政法人を対象とした事業仕分けで、国庫返納額が一兆円を超えました。大臣は、二〇一一年度予算に向けてかなり大きな資金を確保できた、あるいはこういうことを続けていけば無駄はなくなると御満悦のようですけれども、一兆円というのはストックでありますから、一回だけの効果であります。ですので、先ほど申し上げたような経常的な歳入歳出のバランスの回復に役立つものではありません。
 年間の歳出削減額はわずか六百億円にとどまり、これは先ほど申し上げた五十八・四兆円のギャップのわずか一千分の一ですよ。一万円の赤字をなくそうというときに十円無駄をなくしたからといってそうそう満足もしておられないと思うんですけれども、大臣は本当にこの事業仕分けという手法で税金の無駄遣いを撲滅できるとお思いなんでしょうか。

○枝野国務大臣
 私は一度も、事業仕分けだけで無駄を撲滅できるなどという趣旨のことを申し上げたことはございません。それから、先ほどの、前原現大臣の過去の論文での引用をされておりましたが、行政改革だけで、フローの九兆円の、マニフェストで約束をした財源を出すなどということは一度も申し上げたことはございません。
 無駄を撲滅する。無駄を撲滅するというのは不断にやっていかなきゃならないことであって、たとえプライマリーバランスが確保されたとしても、無駄の撲滅のことは不断にやり続けなければならない。そのための一つの有力な手段として事業仕分けは大事であるというふうに思っております。
 と同時に、財源をしっかりと確保するためには、事業仕分けなどで行っている狭い意味での無駄の撲滅と、そして政策の優先順位をつけて、無駄とは言えないかもしれないけれども、優先順位の低い事業はあきらめていただくということを含めて、四年後に九兆円のフローの財源を出す、そこに向けて一歩一歩着実に進んでいるというふうに思っております。

○柴山委員
 そういう手法でいいかどうかは後ほどお伺いしますけれども……(発言する者あり)いや、後ほどお伺いします。
 そもそも、今回の事業仕分け第二弾で提言された事業の見直しなどはきちんと守られるんでしょうか。

○枝野国務大臣
 これは、第一弾のときもそうでしたけれども、今回も、今回の事業仕分けにおける結論が最終決定だとは申し上げておりません。
 しかしながら、第一弾についても、大方は、特にすぐに実行できるものについては本年度予算の予算案策定に生かされているというふうに思っておりますし、この後、実際に予算の執行がなされ始めている中で、昨年の事業仕分けの指摘がどういうふうになっているのかということをフォローアップして、そこで不十分なものについてはさらに改善を求めていくつもりでおりますし、あるいは、昨年の事業仕分けで指摘をされたことについて、二年後、三年後に実行できるという部分もございます。
 今回の事業仕分けについては、そこで出された、先ほど御指摘いただいた一兆円余りの埋蔵金の話については、これは来年度予算に反映できるというふうに思っておりますが、組織、制度を変えるということを通じて、独立行政法人制度やその組織が持っている無駄を生み出しやすい構造を変えていくということを主たる目的としておりまして、最終的にどういう組織形態にすることが、事業仕分けでの指摘を踏まえた対応として適切であるかということをしっかりとこれから組み立ててまいります。
 もちろん、個別に申し上げれば、廃止と言ったものがどういう形で改革をされるかということについて、すべてが全く同じということにはならないとは思っていますけれども、前回同様、おおむねその趣旨は生かされた結論になるというふうに認識をしております。

○柴山委員
 大臣、あれだけ公開の場で結論づけたのに、いざ予算が提出されたら、さしたる情報公開もなく、それがないがしろになる可能性があるというのは、これはいかにも国民としてはおかしいと感じるということだけは指摘をさせていただきたいと思います。
 また、世界第二位でなぜ悪いとの発言が物議を醸した次世代スーパーコンピューター開発のように、世論が大きく仕分けの結果に反発したり、ノーベル賞学者のように著名な応援団がいたりする事業については風見鶏のように方針を見直し、声なき声で反対する者がいる場合にはそのまま平気で予算を切り捨てるというようなことでは、削りやすいところから予算を削っていると前の政権を批判する資格はありませんから、そのことだけはぜひ申し上げたいというように思っております。
 次の質問に移らせていただきます。
 独立行政法人評価委員会という仕組みがあります。これは、独法通則法に定められている民間の方を入れる形で事業の見直しをする、そういう仕組みで、既存の仕組みとしてビルトインされているわけなんです。この機能を強化すれば、事業仕分けにかわるものとはならないんですか。

○枝野国務大臣
 まず申し上げておきたいと思いますが、例えばスーパーコンピューターについて、事業仕分けの指摘を声が大きい声に基づいて変えたという事実は全くございません。
 もともと事業仕分けの結論も、現在の、あの時点で世界一速いコンピューターを当初の予定どおり、途中でいろいろな状況の変更があったにもかかわらずただ続けているということに対しては、廃止を含めた抜本的な見直しが必要だという指摘はいたしました。それを踏まえて、しっかりとその事業の目的、趣旨を整理し直して、位置づけをし直して、その上で予算要求をしていただいているというふうに認識をしておりまして、仕分けの趣旨に基づいた結論になっているということをまず御理解いただきたいというふうに思っております。
 それから、今御指摘のところでございますが、現在のビルトインされている評価の仕組みというものが機能しているのであれば、自民党政権からの独立行政法人における無駄はなかったはずでありますが、現実にそうではない。つまり、今の仕組みだけでは必ずしも機能していないということは、現実に先日の事業仕分けでもいろいろな問題点が指摘をされて、廃止とか縮減とかという結論も幾つも出ているということで証明をされているというふうに思っています。(柴山委員「だから強化すればいいんじゃないですか」と呼ぶ)
 強化をするという仕組みの改革についても、どういう仕組みが本当の意味での強化になるのかということを含めて、今回の事業仕分けの結果を踏まえた上で。この事業仕分けは、先ほど申しましたとおり、恒常的にこういった形で無駄に対応していくということが必要だというふうに思っておりますが、独立行政法人をターゲットにした事業仕分けをまた来年も再来年もやるという意味ではございませんで、今回、独立行政法人の評価の強化なども含めた制度のあり方を抜本的に見直す入り口として独立行政法人の事業仕分けを行ったものであります。
 その結果として、現在までの評価システムが必ずしも有効に生きていない部分があるという現実の結果が出ていますので、そのことを踏まえて、組織のあり方や、それから評価、チェックのあり方も含めて、この結果に基づいて対応していくということでございまして、やったからこそ、その問題点がより明るみになっているんだというふうに思っています。

○柴山委員
 事業仕分けの効用を盛んに主張しておられますけれども、既にこの国会が、政治家が入って、あるいは外部の人にも時には参考人という形で来ていただいて、予算や決算をチェックすることになっているわけですよ。
 この決算行政監視委員会がまず、無駄の撲滅ということについて、既に議事録もオープンにするような形で仕分けをする機会になっているわけですから、ここの質疑の仕方や報道の仕方を変えたりして、国民が関心を持てるように考えていただきたい、そのことを私は申し上げたいと思います。決算行政監視委員会がこれからもっと開かれたオープンなものに、そして実質的な実のあるものになるように、ぜひ与野党の壁を越えて、ちょっとこれは私の意見ですので、要望ですので申し上げたいと思います。
 続きまして、次の質問に行きたいと思います。
 枝野大臣は、二十八日実施された事業仕分けで、大学病院などに資金を貸し付ける国立大学財務・経営センター、これについて議論をされましたけれども、八事業のうち七事業が廃止と判定され、残る一つの東京連絡所の運営も別法人と統合を求められました。
 これは事実上、センターの廃止という結論だと私は思いますけれども、元三重大学長の豊田長康理事長は、そもそも民主党政権における公募で選考されて、この四月に就任したばかりなんです。仕分け後に、大学と病院の役に立つことが地域住民のためと張り切っていたのに大変残念だ、過去のことが話題になって、私のプランニングは仕分けの作業の中で話題にならなかったと嘆いておられました。こんなことになるんだったら、なぜわざわざ選考のための金と時間を使ったんですか。

○枝野国務大臣
 先ほどの御要望については、私も過去にこの委員会の委員長をさせていただいておりますが、行政府に対して要望される趣旨ではないのかなというふうに認識をいたしております。国会の中で委員会の運営のあり方等については御議論をいただければ、行政府としてはそれにきちっと協力というか対応させていただくということを申し上げたいというふうに思っております。
 今の御指摘でございますが、まず一つは、御指摘のとおり、公募によって新しい理事長が四月一日付で任命されました。これは、従来の官僚天下りポストというものが問題であるということから、公募というシステムによって、より透明性の高い形で独法の役員を選んでいくという方針に基づいているものであります。
 そして、当該法人が廃止になるかどうかというのは、四月一日の段階でも別に廃止という議論が出ていたわけでもありませんし、当然のことながら、内閣として決められたルールに基づいて、これは文部科学省で公募されたというふうに理解をしております。
 さらに加えて申し上げますと、事実上の廃止ということをおっしゃられましたが、当該法人の事業仕分けの公表を既にされていると思いますけれども、評価の結論のところを申し上げますと、例えば、一番主たる業務だと思いますが、貸付事業でございますが、評価者からは、各国立大学の自立が重要であり、独自にファイナンスする方式にできるだけ早く改めるべき、基本的に民間金融機関で対応できるよう国としてもバックアップすべき等というコメントなのに基づいて、当該事業は廃止、ファイナンスに関し、各大学の自立を促進と結論をいたしております。
 今の読み上げましたコメントでもおわかりのとおり、現状で直ちに廃止をしたら各国立大学病院のファイナンスについては十分に機能しないということも議論の中で十分に出た上でこういった結論を出しているのでありまして、仮に廃止をするとしても、それにかわってしっかりと各大学病院がファイナンスできるための仕組みづくりということに一定の時間とエネルギーをかけなければならない。
 なおかつ、先ほど申しましたとおり、この事業仕分けは、すべて一〇〇%同じことをやるかどうかということではありません。最終決定ではございません。これから、独法の新しく公募で選ばれた理事長さん等の御意見を聞きながら、主体的には文部科学省を中心にして、この仕分け結果を踏まえて、それぞれの事業のあり方、そして組織のあり方について、最終的な結論が時間をかけて導かれます。
 ちなみに申しますと、前政権において独立行政法人、特殊法人の改革等をした場合にも、組織そのものが変わるまでには、議論を始めてから五年ほどかかっています。私どもは、四年間の任期のうちに、組織改革も含めた独立行政法人の改革を前政権よりもスピードアップして行おうと思っております。

○柴山委員
 ただ、一たん理事長は前職を退職しているんですよ。要するに、民主党のこの間のプロセスとしては、極めて見通しが甘かったと私は言わざるを得ません。
 最後に、時間もなくなりましたのでお伺いさせていただきます。
 枝野大臣は、四月二十日に国立大学財務・経営センターの東京事務所を視察された上でいろいろと批判をされていますけれども、あなたがいらっしゃる内閣府の行政刷新会議の事務局の利用形態も、かなり問題があると言わざるを得ません。
 私は、自民党の無駄撲滅プロジェクトチーム事務局長の平将明議員とともに、四月二十三日にこの事務局を見に行かせていただきました。百二十度の角度がついたブーメラン形の変わった机が、三台の頂点を合わせてつけて、Yの字のようにしてずらっと並んでいるんですよ。そして、その価格は、いすとのセットで十六万六千二百十五円。そして、隣の国家戦略室の分も含めて、計八十二セット、千三百六十二万九千六百三十円で購入した、こういう報道がありました。
 これは、普通の机で余っているものも探せば、こんなにかからなかったんじゃないんですか。レイアウトについて、一体どういう検討が行われていたんでしょうか。

○古川副大臣
 お答えをさせていただきたいと思います。
 柴山議員も外務政務官をやられて、役所の中のオフィスの状況がどうなっているかは御存じだと思いますが、極めて旧来型で、こうした官僚的な、今までの行政の硬直的な発想というものからすると、今、民間企業にお勤めになっていたわけでありますから、柴山議員もよく民間企業などのオフィスなんかもわかっていると思いますが、やはり時代に合わせて変わっていっているわけであります。
 そういう意味では、今回、新政権のもとで発足した国家戦略室、そして行政刷新会議、いずれも、従来の行政のそうした発想を超えた新しい発想のもとで、今までの行政というものを刷新し、そしてまた大きな戦略を立てていこう、そういった意味では、オフィスの形というものも変えていく必要があるだろうと。
 ですから、もともと机やいすがストックとして十分な数がありませんでしたから、新規に購入をしなければいけない、そういう状況にありました。そういう意味で、新しいいすや机等を購入するに当たって、これまでの行政で使っていた同じものじゃなくて、新しいコンセプトに合った形、そうしたものを私どもとしては導入していく。
 そういった意味で、これまで、通常、役所におきましては、役職に応じて机、いすの規格が異なって、皆さん御存じのように、役職が上になると窓際にいて大きな机や大きないすに座っている、そういうものを一切やめて、上級職員も一般職員も同じ規格で、別に上の者が窓際に座るとかそういう差をなくしました。フラットにした。隣に座っている高木議員なんか、そうすべきだなというふうに思っていらっしゃるような顔をしていらっしゃいますけれども……(発言する者あり)

○今村委員長
 答弁は簡潔にお願いします。

○古川副大臣
 また、通常、審議官以上の職員の場合には個室が割り振られているわけでありますが、この国家戦略室、行政刷新会議の場合には、そういう個室もなくして、みんなが同じ部屋で、みんなが同じ机で、そして同じいすでやる。そういうことによりまして、トータルとしては、通常の行政組織、これまでよりもコストも削減できる、そういう形でのオフィスのデザインを、そして新しい形をつくらせていただいたということでございます。

○柴山委員
 時間がないので、その当否についてはまた別の機会で議論させていただきます。
 最後に、福島大臣がいらっしゃっていますので、短く一問だけお伺いしたいと思います。
 きょうお配りした、これは消費者委員会の事務局の山王パークタワーにおけるオフィスなんですね。これは、実は、消費者委員会の運営経費に二億八千八百万円、トータルで計上されているんですけれども、実にその三分の一以上の一億八百万円が、この山王パークタワーの借り賃で吹き飛んでいるんです。
 それで、このレイアウトを見て、一体何人の方でこのスペースを使っているのか、それについてだけ、短く最後に御答弁ください。

○福島国務大臣
 御質問、本当にありがとうございます。
 事務局の数を消費者委員会の機能強化のためにふやしまして、十六名から、現在、二十三名の事務局、それから消費者委員でやっております。
 御質問、本当にありがとうございます。
 自民党時代に、この山王パークタワー、八億円で賃貸借契約をいたしました。私が消費者担当大臣になり、その金額はやはり余りに高く、引っ越しも含め検討をいたしました。しかし、引っ越しをするとなると、二カ月間ぐらいLANの中止だとか、また、引っ越し費用、もう一回改装費用、お金がかかり、あらゆる計算をして、もう一回やり直しました。
 まず、賃料を減額してもらうということで、当時、合わせて八億三百万円だった年間賃料を、一億五千三百万円減額をしていただきました。四階入居面積のすべて及び五階入居面積の一部を返上いたしました。消費者委員会におきましても、これは、一億三千百万円だったのを一億五百万円、二千六百万円減額をいたしました。柴山先生も私も弁護士ですが、交渉をして、これだけ、やはり国民の皆さんの税金を本当に有効に使うということのために、一部返上した上で、一億五千三百万円減額。おっしゃった消費者委員会も、二千六百万円減額をしました。
 消費者委員会は重要な機能を持っており、野党の議員からも機能強化をすべきだと言われています。ですから、これは大事に使い、機能強化もし、そして、賃料の点についても、これ以上安くはなかなかならないかもしれませんが、返上した上で使っているということを申し上げます。

○柴山委員
 違うんですね。野田大臣のときには、いわゆるコンニャクゼリー問題ですとか、あるいはシンドラーエレベータ事件ですとか、消費者被害が非常に続出している中で、この消費者委員会というものを非常に大きな形で推進していかなければいけないという時代的な背景があったんです。
 それで結局、今大臣がおっしゃったように、こういうようなことで見直しということを行っていただくのは結構ですけれども、それでもなおかつ、今の、二十人に比べて八百二十二平米というのは私はいかにも過大だと思いますし、委員十名のところを二百四十平米です。
 これについて、もし自民党がそのままでいいというんだったら、政権交代する必要はないわけなんですよ。だから、しっかりと無駄の撲滅ということをやらないのであれば、しっかりと、できないというふうにおっしゃってください。
 質問を終わります。

第174回 国会 衆議院 内閣委員会

第174回 衆議院 内閣委員会 第10号
平成22年4月23日(金)
午前九時一分開議

【国会公務員法等の一部を改正する法律案・幹部国会公務員法案(議員立法)】の提出者として、自民党橘慶一郎議員の質問に対する答弁

○橘(慶)委員
(中略)

天下り規制の一点目。
 内閣案、議員案ともに、民間人材登用・再就職適正化センターについて、センター長は国務大臣である。副センター長というものが当然補佐する立場で置かれるわけで、技術的ですが、どのような人物像でお考えになっているか、提出者、政府という順番でお願いいたします。

○菅原議員
 お答えをいたします。
 民間人材登用・再就職適正化センター、この副センター長、現在の官民人材交流センターの副センター長は民間から起用いたしておりますので、このセンターにつきましても、やはり民間人の人材登用ということを考えますと、同様に民間人であるというふうに考えております。

○大島副大臣
 お答えをいたします。
 民間人材登用・再就職適正化センターの副センター長は、国務大臣が充てられるセンター長が再就職規制違反行為の監視、組織の改廃等の場合の再就職支援等のセンターの業務を統括するのを助けるものであり、この業務が適正に遂行できる高い見識を有する人物を充てることが必要と考えております。
 副センター長の人選は、任命権者である内閣総理大臣がセンター長の意見も聞いて行うことになると思われますが、民間からの登用も含めて適任者を選定されるものと考えております。

○橘(慶)委員
 ちょっと区切りのいいところまで進めます。
 議員案、衆法では、センターは分限免職時の再就職あっせんも行わない、こういう形になっております。それは私は納得はしながら聞くんですが、では、そういう場合の政府案にかわる代替措置はどのようにお考えになっているか、お伺いします。

○柴山議員
 お答えいたします。
 分限免職時の再就職あっせんを行わないことの代替措置についてのお尋ねですが、民間企業ならば、整理解雇を回避するために、まず、判例上もこれは言われていることですが、役員報酬の削減などの努力を行うべきだというように考えられております。政府においても、まず、役員報酬の削減に相当する幹部職員給与改革を初めとした給与制度の抜本改革などに取り組むことが筋だというようには考えております。
 その上で、やむを得ず整理解雇に相当する分限免職を行わざるを得ないという場合には、これも何度か答弁を申し上げているとおり、外部の、民間のアウトプレースメント会社の活用ですとか、また、大規模な整理解雇が、あるいは分限免職が必要となるようなケースでは、かつて国鉄の整理の際に設けたように、特別な組織を設けるといった個別の方策を講じるべきだと考えております。
 少なくとも、整理解雇に対応するための再就職あっせんの官制の組織というものを恒常的に維持しておく必要はないのではないかというのが我々の考え方でございます。
    〔委員長退席、小宮山(洋)委員長代理着席〕

○橘(慶)委員
 その部分は全く私も認識を一にするわけで、分限免職、たまたま今、社保庁改革があったので非常にクローズアップされましたが、過去の政府の歴史を見ても、分限免職なんて実はほとんどやっていないんです。
 せんだって、レクを受けたときに聞きますと、昔、姫路城の修理が終わったときに、そこにかかわっていた人をしたことがあるけれども、それはもう何十年前のことで、分限免職ということはそうそう、やはり本当に行き詰まったときの話であって、めったにやることではない。だから、それを予定した組織をつくっておくというのは、またこれは気持ちの悪い話でありまして、この辺はぜひもう少しよくお考えをいただきたい。
 おっしゃるように、何かあったときに、それは大変なことですから、それぞれの改革法なり特別法で幾らでも手当てできることじゃないか、それは認識を一にいたします。

第174回 国会 衆議院 法務委員会

第174回 国会 衆議院 法務委員会 第8号
平成22年4月20日(火)
午前九時開議

○滝委員長
 次に、柴山昌彦君。

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 まず、質問に先立ってお伺いしたいんですけれども、報道によりますと、民主党小沢幹事長の政治資金規正法違反に関する検察審査会の議決がきょう、あすじゅうにも出るのではないかということが言われておりますけれども、この検察審査会の議決におきまして、不起訴不当あるいは起訴相当の結論だった場合に、その結論というものは尊重されるんでしょうか。法務大臣にお伺いします。

○千葉国務大臣
 まだこれからどのような推移になるかは私も全く承知をいたしておりませんし、どのような御結論になるのかもわかりません。仮定に基づいたことについて、今私の方から答弁をさせていただくということは差し控えたいというふうに思います。

○柴山委員
 検察審査会の議決の効力に関しては改正も行われているところでもあります。しっかりと一般の方々の気持ちが刑事処分に反映されるようにという改正でございます。ぜひとも、検察当局あるいは法務省におかれましては、こういった法の改正の趣旨もしっかりと勘案して、適切な処分をしていただきたいというように思っております。
 そして、加えて、鳩山総理の公設秘書であった勝場啓二氏の判決公判、これも、あさって午後三時からだったかと思いますが、予定をされております。これを踏まえて、検察庁に提出されている資料についての説明をしっかりと行うようにということを、総理に対して閣僚として説得される御意思があるかどうか。きょうは閣僚が二人お見えでございますので、それぞれ質問をさせていただきたいと思います。

○千葉国務大臣
 総理も、この間、答弁を、御説明をされていることでもございますので、多分的確に対応をとられるものだというふうに思います。それに基づいて、必要なことはきちっと法務省、検察の対応としてとっていくように私からも指導したいというふうに思います。

○中井国務大臣
 近々判決が出るというのは、今初めて知りました。その後、被告人が控訴するのかどうかも含めて私どもは判断がつきかねます。
 しかし、いずれにいたしましても、裁判の判決文あるいは資料等は、弁護士を通じてきちっと処理されるんだろうと考えております。
 また、私個人といたしましては、一日も早く政治資金規正法に基づいて修正提出をしてほしいと考えております。

○柴山委員
 ちょっと質問の意味をよく理解していただかなかったのかなというように思いますが。
 千葉法務大臣、私は、鳩山総理が、以前おっしゃっていたように、最終処分が出た後に、検察庁に提出されている資料をしっかりと説明をする、あるいは国会の場に提出をするということがなされなかった場合に、それをするように閣僚として説得するかどうかということをお聞きしているのであって、それが出された場合に法務省として的確な対応をとるというのは当たり前のことでありますので、その点を再度お答えいただきたいと思います。
 それと、あと中井国家公安委員長の方にお伺いをしたいのは、これは自白事件なんですね。要するに、勝場秘書は罪体を争わない、全面自供をしているわけです。ですので、有罪をみずから認めておられるわけですから、実刑が出るのかあるいは執行猶予が出るのかわかりませんけれども、量刑不当ということで控訴をすることは、あり得ないことではないかもしれませんが、それは恐らく、御自分で判断をした上でこういう自白をされているんでしょうから、控訴ということは余り考えられないのかなというように思っているんです。
 そうなりますと、恐らく、あさっての判決の後、一定の期間の経過をもちまして判決が確定をするということになるわけですから、その場合におきまして、やはりしっかりとした処理が必要になってくるのではないかと思うんですが、その点、いかがお考えでしょうか。

○中井国務大臣
 総理が国会あるいは委員会等で国会議員の方々にお約束されたことは、それはそれで実行されるものだと考えております。
 また、裁判につきましては、先生は弁護士さんでいらっしゃるから方向づけ等がよくおわかりなんでしょうが、私どもは、やはり裁判中は余りいろいろなことを申し上げない方がいい、こういうふうに育っておりますので、失礼をいたします。

○千葉国務大臣
 先ほど申し上げましたように、この間の総理の説明あるいは国会での答弁等を含めて、一定の裁判ということがはっきりした段階で適切に対処するとおっしゃっているわけですので、適切に対処されるものだと私は考えております。

○柴山委員
 質問にお答えいただいていないので、再度お尋ねいたします。
 総理は適切に対応されると思うというようにお答えでしたけれども、私がお聞きしているのは、適切な対応がとられなかった場合に、とるように説得するかどうかということを大臣にお聞きしているんです。

○中井国務大臣
 仮定で、たらればの話にお答えするわけにはいきません。

○千葉国務大臣
 同じことで恐縮でございますけれども、的確な対応をとられるものと思います。それ以上、どういう事態になるかは、仮定の話になりますので、お答えはできません。

○柴山委員
 お二人の大臣のしっかりとした信頼に沿った行動を総理がとられることを期待申し上げて、質問に入らせていただきます。
 先ほども御質問があったかと思いますけれども、本時効延長に関する法律なんですが、民主党の政策集インデックス二〇〇九の十三ページ、こちらに書かれている文言としては、「公訴時効のあり方については、法定刑に死刑が含まれる重罪事案のうち特に犯情悪質な事案について、検察官の請求によって裁判所が公訴時効の中断を認める制度を検討します。」という文言となっているわけです。
 にもかかわらず、参議院法務委員会での質疑によると、この案は一顧だにされず否定され、政務三役が今回の時効などの一部撤廃法案を採用されたということですけれども、それはどういうことなんでしょうか。

○千葉国務大臣
 今、一顧だにされなかったという、それを引用をなさりましたけれども、決してそういうことはございません。公訴時効の見直しについては、いずれにしてもやらなければならないという方向性は、いずれもが持ち合わせていたわけでございます。このようなそれぞれの考え方、幾つかの考え方、これを合わせて、それから、多くの国民の皆さんの御意見、そして法制審議会で大変充実した議論をしていただいて、そういうことを経て、民主党のインデックス、公訴時効を見直そうということを踏まえつつ、今回の法案の取りまとめをさせていただいたところでございます。
 法制審議会でも、民主党の提起をした考え方、それから、これまで前政権のもとでいろいろ御議論をされてきた考え方等を合わせて、それから、いろいろな関係者の皆さんの御意見も聴取をいただいて、そして一定の方向をまとめていただいたということでございます。
 それを尊重しながら今回の法案の取りまとめをさせていただいたということでございますので、全く一顧だにしないなぞということはございません。

○柴山委員
 この問題に関しては、今御指摘のとおり、森英介前法務大臣のもとで法務省内で勉強会が設置されて、早川忠孝前政務官を座長とするワーキンググループで検討が進められてきた、そのとおりであります。
 ただ、その結果として昨年の七月十五日に取りまとめが行われておりますし、また、それに至る過程で中間状況に関する報道もたくさんありました。そして、それを大臣初めインデックス作成に関与されてきた民主党の方々は承知の上で、あえてインデックスにこうしたオプションを示されたわけなんですね。
 だから、当然のことながら、自民党政権下において取りまとめされた案とは、もちろん法制審では民主党さんのインデックスに従うオプションも示されて検討の対象とはなっていたんですけれども、あえてそちらの方を政権公約に伴うインデックスの方には書かれていたわけですから、これは民主党としての明確な意思がその時点であったというように私は解さざるを得ません。にもかかわらず、政権についた段階で、なぜみずからが否定された私たちの案の方に乗りかえたのか、そこのところをぜひお聞きしたいと思います。

○千葉国務大臣
 乗りかえるとか、あるいは全く同じものを採用したということではございません。いずれにしても、公訴時効を見直そうということについては方向性があったわけでございます。
 ただ、どういう形で公訴時効の見直しを行うか。しかも、御承知のとおり、やはり重い犯罪について逃げ得を許したり、あるいは刑罰権の行使を消滅させるというようなことを避けなければいけない。しかし反面、捜査の負担とかあるいは防御権の行使、こういうことにも配慮をしなければならない。その両方の配慮のもとで、幾つかの意見あるいは考え方、そういうものが出されていたものだというふうに思います。
 そういうことを全体としてもう一度精査をして、そして多角的な見地から法制審議会でも議論をいただき、私どもも、みずから出していた考え方あるいは前政権が出されていた考え方、そういうものをもう一度考えてみたところ、今回のような案がやはりそれぞれの考え方、意見を十分に盛り込みつつ納得いただける案であろうということで、このような案にまとめさせていただいたということでございます。

○柴山委員
 長々とした御答弁だったんですが、要は、まとめると、インデックスをつくるときには粗雑な検討しかしていなかった、だけれども、政権をとってからよくよく丁寧に検討したら、やはり自民党で検討された案の方がよかったということで、要するに、マニフェストというものあるいはインデックスというものは粗雑な検討の上でしか出されていなかったということをおっしゃりたかったんですね。確認です。

○千葉国務大臣
 インデックスで提起をされた案も、それからこれまで前政権下で、いろいろ自公で御議論をされてきた案と、それぞれ完璧なものということではないというふうに思っています。そのいろいろな案をもう一度議論をさせていただき、そしてまた専門的な見地やあるいは多くの国民的な意見、こういうものも含めて再度精査をさせていただいた、こういうことでございまして、どの案が粗雑で、あるいはどの案が完璧で、こういうことではない、いいものをできるだけ納得いただけるものにまとめて今回の案に至っているということでございます。

○柴山委員 
 再度申し上げたいんですけれども、民主党のインデックスの案というのは、ずっと検討されていた法制審議会のC—2の案と同じなんですね。要するに、今回採用された案と並べて検討されているオプションの一つだったわけです。それぞれについてしっかりと検討され、そしてその上で昨年七月十五日に取りまとめが行われているわけですね。実際に選挙がなされたのは八月の三十日なわけですから。にもかかわらず、民主党がこのC—2のオプションの方を選択されたということは私は極めて重いというように思いますし、政権につく前は違うことを言って、政権についたら自民党の政策をぱくるというのは、有権者に対して極めて不誠実だと言わざるを得ません。
 ちなみに、大臣は、今度実施される参議院選挙ではマニフェストの大幅修正は行うべきだとお考えなんでしょうか。これは中井大臣にも、お二人にお聞きします。

○千葉国務大臣
 私は、マニフェストは、昨年の政権交代において、これから与えていただいた四年間で実現をしていく、こういうことを掲げさせていただいているものでございますので、そういう意味では、これが今回で極端に変わるというものであってはならないというふうに思っております。

○中井国務大臣
 先ほどもお答えしましたように、マニフェスト自体は四年で実行する、こういうことが大前提であります。今回の参議院選挙では、まだ一年目。御批判はたくさんいただくことは承知をいたしておりますが、私は、大きな修正なしで、マニフェストどおり選挙戦を戦って御評価をいただくべきだと考えています。

○柴山委員
 今の御答弁は議事録にもきちんと残りますので、私も、お二人の御答弁についてはしっかりと記憶のメモリーにたたき込みましたので、この後民主党がどのような形で政権をおつくりになるのか、それを確認した上で今後の国会質疑に臨ませていただくことを御理解賜れればと思っております。
 続きまして、平成十六年の刑訴法改正で、既に時効期間の延長というものはなされておりました。にもかかわらず、今回このような時効延長また撤廃の措置を行った趣旨、これは一体どういうところにあるんでしょうか。

○千葉国務大臣
 平成十六年の改正でございますけれども、これは、凶悪犯罪を中心とする重大犯罪に対して、事案の実態及び軽重に即した適正な対処を可能にすることを目的として、法定刑の重い犯罪について公訴時効の延長という手直しを図ったという内容でございます。すなわち、平成十六年の改正というのは、これから将来、重い犯罪についてきちっと処罰をしていこう、こういう方向性を持って行われたものでございます。
 今回の改正というのは、むしろこれまで生じた犯罪について、処罰の機会を失うような、消滅させるようなことをしない、処罰に対して厳しく対処をしていくということを目的としていると考えていただければというふうに思います。
 この間に、やはり逃げ得を許してはならない、それから、重大犯罪に対して厳しく処罰を求める、こういう国民的な意識やあるいは被害者の皆さんからの大変強い要望、こういうものが出てきていたということも事実でございますし、今申し上げましたような、十六年の改正は、法定刑を厳しくして、それに基づいて公訴時効も延長する、こういう、これから先のこと。そして今回については、もう既に起こっていることについて公訴時効という形で処罰の機会を消滅させるようなことをなくしていこう、こういうところに大きな趣旨があるということで、十六年改正とはいささか趣旨を異にするというふうに考えております。

○柴山委員
 いろいろな背景があったんだろうとは確かに思います。
 今、重罰化に伴う時効期間の延長というようにちょっととられかねない御答弁だったんですが、重罰化とは別に、時効期間そのものの延長も平成十六年改正法では内容としておりましたから、そこはやはり、その十六年改正の刑訴法で時効期間の延長ということがされたことはお認めをいただかなくてはいけないんだろうと思っておりますし、それでは不十分だった、今法務大臣が御指摘になられたように、過去について遡及をしない、また十五年から二十五年というような形の引き上げでは、必ずしも国民感情に沿った形とは十分言えなかったということはあるのかなと思います。
 もう一つ、私がつけ加えさせていただくとすれば、前政権のもとで、被害者に対するさまざまな配慮、被害者救済のための施策というものをこの数年間急速に進めてきたものですから、そういう方々がこれまで声なき声として虐げられてきた部分が表に出てきて、そういう方々の正義の声というものがやはり届く環境になってきたということも非常に大きな要因の一つだったのかなというようにも私は感じております。
 そしてその一方で、弁護士会からは、今回の法改正の結果、被告人に有利なアリバイ証言や情状証言などが得られる可能性が時の経過とともに低下をしてしまって、一方で、中井大臣が先ほど御指摘になったDNA鑑定などの客観証拠、これが偏重されるのではないかというような指摘をする声があるんですけれども、これについてはどのようにお答えになられますでしょうか。

○加藤副大臣
 柴山先生に御答弁申し上げるというのはもう釈迦に説法で、十分御理解の上での御質問だと思いますが、事案が発生してから長時間経過をしたことによって証拠が散逸をして、今おっしゃられたように、被告側が防御上不利になるのではないか、困難になるのではないか、こういう御指摘があることは私どもも承知をしておりますし、その可能性が一〇〇%全くないんだというところまではなかなか申し上げにくいだろうというふうにも思います。
 ただ、刑事訴訟の手続におきましては、御案内のとおり、検察官が挙証責任を負っているわけでございまして、犯罪の構成要件はもとより、違法性の阻却事由及び責任阻却事由のすべてについて、合理的な疑いを超える程度の立証をしなければならないということでありますから、あくまでも一般論でありますけれども、時間の経過によって証拠が散逸したといたしますと、被告の方だけに不利に働くということにはならずに、それを立証する検察官の方も難易度が高くなる、また、ある意味ではそちらが不利になるということも当然あり得るだろうというふうに思います。
 実際、刑事訴訟におきましては、もうこれも釈迦に説法でありますけれども、被告人の人権を保障して適正な裁判を行うというための仕組みもあるわけでございまして、検察官の挙証責任だけではなくて、証拠裁判主義、自由心証主義、自白法則、伝聞法則など、さまざまな制度も整えられておりますから、こういう仕組みが正しく機能する限りにおきましては刑事裁判も当然適正に行われる、疑わしきは被告人の利益にという原則で適正に行われるものというふうに理解をいたしております。
 多少付言をさせていただきますと、公訴時効の廃止、延長によって、その立証上、例えば証人の方が亡くなられるなんというケースも当然起こり得ると思いますから、それが有利、不利だということにつながらないように、不均衡にならないようにするという観点からも、客観証拠についてはやはり適正に保管をされてくるということは極めて重要だというふうに思ってございます。
 これは、きょう中井大臣お見えでございますから、本来なら国家公安委員長からお話しいただいた方がいいのかと思いますが、とりわけ、昨今注目を集めておりますDNA型鑑定試料の適正保管などについては、これまでもさまざまな取り組みをされておりますけれども、さらにより一層、今回の法改正に合わせまして、適正を確保していかなければいけないというふうに考えているところであります。

○柴山委員
 それでは、加藤副大臣の御指摘ですので、中井大臣の方にお伺いいたします。
 この法改正に伴う特に警察捜査の現場への影響、これがやはり非常に懸念されるわけでして、今のそのDNA等の客観証拠についてももちろんですけれども、先ほども御質問があったような、凶悪事件についての捜査体制ですね。例えば、捜査本部の解散時期、こういうようなこともやはり影響が出てくると思うんですね。単純な発想ですけれども、当然、時効が長引けばその分対象となる事件もふえてくるわけですから、そういうことに対して、人員等の確保また配置、そういうことが適正にできてくるのかどうかということをお伺いしたいと思います。
 またあわせて、法務省についても、捜査担当官庁の一環として、同じ質問をさせていただきたいと思います。

○中井国務大臣
 御承知だと思いますが、捜査本部は犯人検挙をしない限り解散することはありません。しかし、時効廃止に伴いまして、それでは人員配置をどういうふうにするのか、あるいは、今でしたら、時効五年前あるいは一年前、もう一度事件を見直そうじゃないか、こういうことでやっている本部も多いわけでございますが、今度は時効がなくなったらいつどの時点で見直しをやるのか、こういったことについても、法案成立後、改めて捜査本部体制のあり方といったものについて十分な対応をとっていかなければならない、このように考えています。
 なお、この機会に付言をさせていただければ、過般、海外でマスコミの方が騒動に巻き込まれて亡くなるという悲惨な事件がございました。この事件も、御遺体が日本に帰りまして、お住まいの警察署に本部を置くというので、僕は、それは違うだろう、こういう事件がこれから起こったときに、海外と連携をとるという意味ではそれは警視庁だろうということで、今回は警視庁に捜査本部を置く、そして、地元の署にも御遺族に十分対応できる体制もつくる、こういう新しい方向を打ち出したところでございます。
 これから、法案が成立後、時効がなくなるという事件を中心に、どういうふうに捜査本部体制をつくっていくか、そして、どのぐらいの期間本当に頑張り抜くか、こういったことを含めて体制をつくっていきたいと考えています。

○加藤副大臣
 警察での取り組みについては、今、中井大臣から御説明のあったとおりでございますけれども、今回の法改正で対象としておりますような凶悪重大事件につきましては、今の中井大臣の御発言にもございましたとおり、捜査の初期段階からの取り組みが非常に重要でございまして、検察当局といたしましても、その初期段階から警察との緊密な連携を図りまして、適正な捜査を進めていかなければならないというふうに考えてございます。
 そのために、検察といたしましては、今月最初でありますが、本年の四月一日付で、殺人などの凶悪重大事件のうち、警視総監または各道府県警察本部長が捜査本部を設置した事件などに関する事項を担当いたします本部係検事というのを全検察庁に配置することにいたしました。この本部係検事が捜査の初期段階から警察と緊密に連携をとりまして、捜査状況等を正確に把握するとともに、犯人が絞り込まれていくその過程も吟味をいたしまして、犯人の特定やその後の捜査に遺漏なきよう対応していくということを目指しているところでございます。

○柴山委員
 ぜひ積極的なお取り組みをお願いいたします。
 続きまして、先ほど来質問が出ていることでありますけれども、今回、時効期間の延長、廃止を、法施行時に既に実行されている犯罪についても遡及して行っていくということになっております。最初の質問は、繰り返しになりますので短く御答弁をいただきたいんですが、憲法三十九条、事後法禁止との関係での問題点ということについて、ぜひ御説明をいただきたいと思います。

○千葉国務大臣
 今回の、時効が進行中のものについて公訴時効、法改正を適用するということについては、憲法三十九条というのは、実行のときに適法だった行為を後から処罰するとか、あるいは刑罰を後から重くするということをこの三十九条が禁止することの趣旨であろうというふうに思いますので、進行しているということについては、この三十九条には違反をするものではないということで今回の改正をさせていただくということでございます。

○柴山委員
 それでは、先ほど稲田委員も御質問されていましたけれども、憲法三十九条の枠外に今回の法律があるということであれば、なぜ時効完成前の事件のみを対象として遡及することとしているのか。これは、理論上、かなり不徹底ではないかという指摘があり得ると思うんですが、いかがでしょうか。

○千葉国務大臣
 御指摘の点については、法制審議会でもかなり御議論があったところであるというふうに聞いているところでございます。
 この憲法議論について私が結論を出すなぞということにはなかなかできませんけれども、法制審の中でも、一たん公訴時効が完成したものということについて改めて改正を、時効がまた進行するというようなことになりますとこれは三十九条に違反をすることになるのではないか、こういう考え方もあるというふうに指摘をされています。ただ、かといって、そうではない、三十九条に違反しないという、そういう考え方も学説上はあるということです。
 ただ、法制審議会では、今回は立法政策上ここまで改正に盛り込むべきではないということが一致した取りまとめであったというふうに私も受けとめておりますので、明確に三十九条には違反しないだろうという御意見が多数であるものと、やはり三十九条に違反するのではないか、こういう危惧がかなり強く出されているものとは、やはり取り扱いにおいて差異を設けるというのは私は必要なことだろうというふうに思っております。

○柴山委員
 ごめんなさい、ちょっと私はまだよくわからなくて。
 加藤副大臣がさっき御答弁されていたんですけれども、時効が完成をしたということで、その後の犯人の社会的な地位ですとか、あるいはそのいろいろな期待というようなことをおっしゃっていましたけれども、まず、ちょっとわからなかったのは、もう少しで逃げおおせるんだという犯人の期待は一切保護しなくていいというふうにして、ああ、逃げおおせたなという犯人の期待は保護するということが、本当にその均衡上妥当なのか。
 それからまた、社会上の地位が変わるというふうに言われましたけれども、時効完成前の犯人の社会生活と時効完成後の犯人の社会生活というのは、そんなに変わるものなんですかね。しかも、これは、法施行が一日、二日ずれれば、要するに、それで対象となる犯人の範囲も変わってくるわけですね。
 そういうことも考えると、遺族間の公平ということについても、ちょっと私はなかなか腑に落ちない部分も残るんですけれども、これについて再度御答弁いただきたいと思います。

○加藤副大臣
 施行の日によってそこで差が生じてしまうというのは確かに起こり得ることでございまして、これは、この法律に限らず、どんな法案でも残念ながら発生する事案であります。
 今まで公訴時効が定められていたものを今回法改正によって一部廃止をしようということでございますから、その施行前後だけ見比べれば、どうしてその数日でこんなに違うんだということは確かに起こり得ることだとは思いますけれども、社会全体の大きな変化ということでいえば、十分に御納得いただける方向への改正だというふうには思ってございます。
 先ほどの御指摘でありますけれども、一度過去に公訴時効が完成をしていて、いわば国家として刑罰を与えない、刑罰権を行使できなくなったという事案について、つまり、犯人からすれば、もう一たん処罰を逃れたということが確定をしたものについて改めて事後的に処罰することに変更するんだということになりますと、先ほど稲田先生の御質問にもお答えしたとおり、憲法三十九条の問題ではさまざま両論の御意見があったことは承知はしておりますけれども、いわば一たん適法となった行為を後々さかのぼって処罰するに等しいではないかという指摘もあるところでありますし、また、法制審議会などでの議論でも、憲法がどうかということとは別に、判断として、それはとるべきではないのではないかということについては大多数の御意見だったというふうに聞いているところでありまして、これは三十九条云々ということではなく、判断として、それは相当ではないというふうに考えたところであります。

○柴山委員
 また別の質疑者からもこの点については質問があるかと思いますので、とりあえず、次の論点に移らせていただきます。
 今回の時効期間の延長によって、強盗殺人罪と強姦致死罪、この二つの構成要件の間でどのような違いが生じてくるんでしょうか。

○千葉国務大臣
 今回の法改正で公訴時効を廃止する犯罪というのは、刑事責任の追及に期限を設けず、事案の真相をできる限り明らかにすることが強く要請されるほどの当罰性を備えた犯罪とすべきだということで、人を死亡させた犯罪のうちでも最も悪質であり最も刑も重い、故意に人を殺害した殺人等を中心とした死刑に当たる罪に限るという形になっているところでございます。
 強姦致死罪については、確かに私も大変凶悪重大な犯罪だというふうに思います。ただ、法定刑として死刑が定められておりませんで、殺人罪や強盗殺人罪とは法定刑を異にしているということで、やはり公訴時効については一定の明確な基準に基づいて制度設計をしなければいけないということになりますが、今回は、人を死亡させ、それから死刑に当たる罪だということをもって定めさせていただいておりますので、強姦致死罪については、重大ではございますけれども、今回の公訴時効の廃止というところには該当しないということになるわけでございます。

○柴山委員
 今大臣が御指摘のとおり、強姦致死という犯罪は、やはり非常に憎むべき、犯情の重い構成要件だと思います。にもかかわらず、今大臣が御答弁のとおり、強盗殺人については死刑という法定刑が定められているのに対して、強姦致死については死刑というものが入っていないということであります。
 そもそも論ですけれども、なぜこの二つの構成要件にこのような法定刑の差ができているんでしょうか。

○千葉国務大臣
 これはもう委員御承知のところであろうというふうに思います。
 強盗殺人といいますか、強盗致死という個別類型は、強盗致死と、それから強盗殺人という故意犯も含めて構成をされております。それに対して、強姦致死というのは故意犯を含めていないということになります。
 ただ、例えば、殺意を持って強姦、そして致死の結果が起こったということになりますと、これも御承知のとおり、観念的競合という形で殺人罪も適用になりますので、そういうケースであれば、これは公訴時効廃止の適用があるということになろうというふうに思っております。

○柴山委員
 それでは、大臣、今の御指摘のとおり、強盗殺人、刑法第二百四十条については、人を殺すことについて、それを予期していた、認識、認容していた、故意があった場合と、それがなかった場合と、二つの類型があるということでありまして、そのとおりだと思うんですけれども、それでは、そういった死の結果についての認識、認容がないときの強盗致死、この場合についての公訴時効というのはどうなるんでしょうか。

○千葉国務大臣
 まず、法定刑を定める場合に考慮すべき要素としては、違法性の程度や責任の重さ等が法定刑を定めるに当たって一定の基準とされるものだというふうに思います。公訴時効期間を定めるに当たって、考慮すべき要素に影響を与える法定刑を基準として公訴時効期間を定めるということが、そういう意味では合理的なことではないかというふうに思っております。
 生命という究極の法益を犯したという、取り返しのつかない形で奪うものであるという特殊性にかんがみて、人を死亡させた犯罪について特別の取り扱いをするとしても、人を死亡させた犯罪の中で公訴時効の取り扱いを定めるに当たっては、法定刑に応じた取り扱いをすることがやはり適当であろうというふうに思います。
 現行法上だと、強盗致死罪の法定刑には死刑が含まれ、強姦致死罪の法定刑には死刑が含まれていないということになります。これは多分、この法定刑の中に、違法性それから責任の重さということが、ある意味では評価をされているということになりますので、これに基づいて公訴時効についても取り扱いに差が生ずるということになるというふうに理解をいたしているところでございます。

○柴山委員
 そもそも問題意識としては、今、強盗についてお話ししましたけれども、死の結果について認識、認容をしていなかったにもかかわらず生じてしまったという過失の形態と、あえて人の命を奪うんだということを認識、認容していた故意のある場合とで、同列に扱うべきなのかということなのであります。
 大臣にお伺いしたいのは、基本的な犯罪を犯して、その結果、致死の結果が生じてしまった、それについては、求めていなかったんだけれども、たまたま死の結果にまで至ってしまったという中で、強姦致死罪には死刑というものは選択される余地がないんですけれども、結果的加重犯というように講学上言いますが、そういった犯罪で死刑というものが定められている犯罪というものはどういうものがあって、それで、強姦致死とは一体何が本質的に違うんでしょうか。

○千葉国務大臣
 死刑に当たる罪、すなわち、当該犯罪の法定刑として死刑が定められている犯罪は十九ございます。
 このうち人を死亡させた罪に当たるものは十二ございまして、このうち死亡の結果について故意がない結果的加重犯は、御指摘をいただいた強盗致死のほか、例えば汽車転覆等致死罪、あるいは往来危険による汽車転覆等致死罪、水道毒物等混入致死罪、強盗強姦致死罪、あるいは航空機墜落等致死罪、航空機強取等致死罪などがございます。

○柴山委員
 質問の後段に答えていただきたいんですが、そういった犯罪と死刑の定めのない強姦致死罪とは、一体何が本質的に違うんでしょうか。

○千葉国務大臣
 このようなものと、それから死刑が定められている犯罪、これはやはり、その犯罪の態様において、違法性あるいは責任の重さ、こういうものがそこに盛り込まれて法定刑が定められているものだというふうに思います。

○柴山委員
 もちろん、テロに準ずる行為ということであれば、その行為の危険性ということが一つの大きなファクターになってくると思います。
 また、そもそも強姦致死の場合は、その反抗を抑圧するだけの暴行でなくても、相手が怖がって、要するに、被害に遭ってしまうというところから、その暴行の程度というものがそれほど強くなくても強姦致死罪というものが成立してしまう余地があるということも背景にあるというようにも思います。
 いずれにいたしましても、死の結果について認容していなかったにもかかわらず、その致死の結果が生じてしまったというところに、その時効の廃止というところまで持っていくというのは、一つの検討というものを加える余地があったのかなというようにも思います。
 そしてまた、過失犯についてでありますけれども、過失犯について死刑が選択されるということはないんですけれども、例えば業務上過失致死の類型におきましては、医療崩壊が叫ばれる中で、例えばお医者さんの致死事件の公訴時効を五年から十年に引き上げてしまうと、カルテの保存期間ですとか医師の業務上、心理上の負担に重大な影響を与えてしまうのではないかということが指摘されると思うんですが、この点、いかがでしょうか。

○加藤副大臣
 柴山先生御指摘のとおり、今回の改正案では、業務上過失致死罪の公訴時効期間につきましては、これまでの五年間を十年間に延長するということにいたしております。ただ、この公訴時効期間と医療界におけるカルテ等の保存というのは、必ずしもそこでリンクしているといいますか、一致しているものではございませんで、医師法等によってカルテの保存期間は五年というふうに定められているところであります。
 これはもちろん、カルテそのものが、何か医療過誤が起きた、あるいは起きることを前提にして保存されているというだけの趣旨ではございませんので、医師法等の法令によって作成、保存を義務づけられている書類の保存期間というのは、いわゆるその作成、保存が必要と考えられる趣旨とか、あるいはその文書等の性質等から、十分に検討の上、定められているというふうに思います。
 一方、私どもの今回の御提案の改正案でありますけれども、犯罪の公訴時効期間を定めるに当たりましては、処罰の必要性と法的安定性の調和を図るという公訴時効制度の趣旨に照らして、基本的にはその法定刑によって定められるというのが相当ではないかというふうに考えてございまして、それゆえ、今申し上げたとおり、確かに立証上重要な特定の書類の法定保存期間と公訴期間というものがずれることはあり得ますけれども、それは必ずしも、だからといって時効の長さを左右するということにはならないというふうに思ってございます。
 仮に医療過誤のようなケースで立証をしなきゃいけないということになった場合にも、そのカルテの保存期間内に捜査あるいは差し押さえ、あるいは証拠保全手続などがなされることも当然あり得るわけでございまして、保存期間が過ぎたからといって立証が完全に不可能になるというふうに、必ずしもそうなるとは限らないものというふうに思います。
 一方、医師の萎縮の問題というのが先ほど来指摘をされておりまして、これは私もそうあってはならないといいますか、日本の医療界全体にとって、それが蔓延するということは決してプラスだというふうには思っておりませんが、そもそも、医療技術の進歩に伴って注意義務の内容が変化をしていくというのは当然の可能性としてあるわけでございまして、過失の認定基準にその変化が影響を及ぼすんじゃないかということが心配をされているというのはよく聞く話であります。
 ただ、注意義務の基準というのは、あくまでも行為当時の医療水準に照らして判断をされるべきものでありますし、これまでもそのように運用されてきたというふうに考えてございますから、今の段階で、業務上過失致死の公訴時効期間が延びたからといって、それがそっくりそのまま医療行為の萎縮効果を招くというふうには考えてはいないところであります。

○柴山委員
 今おっしゃった過失の認定に必要な注意義務違反ですけれども、副大臣が御指摘のとおり、これはやはり行為時の基準で判断をするということになるんだろうと思います。
 ただ、さはさりながら、DNAのときもそうだったんですけれども、技術が確かに進展をしていくわけですね。そういう中で、行為当時の注意義務を的確に認定して、それに対して違反していたかどうかということを判断するというのはなかなか難しいんじゃないかなというようにも思うんですけれども、もう一度、そこの部分についての配慮ということについてお聞かせいただきたいと思います。

○加藤副大臣
 御指摘のとおり、あくまでも、注意義務の基準というのは、医療行為が行われたその当時の医療水準に照らして判断をされるべきものであるというのはもう本当にそのとおりでございます。また一方で、医療技術の進歩というものが昨今大変スピードアップをしているというのも事実でございまして、それゆえ、先ほど御指摘を申し上げたような不安感といいますか御意見が出ているものと思います。
 ただ、行為当時の医療水準がどの程度のものであったかというのを判断する場合には、医学的に高い識見を有する医師による鑑定なども実施をされると思いますし、また、当該医療分野の論文やあるいは文献資料などにも十分当たった上で立証されるわけでありますから、その立証の過程が余り粗雑になるということはもちろんあってはなりませんし、ないものと確信をいたしております。
 また、刑事事件のみならず民事上でも、病院や医師などに対する金銭賠償等を求める医療過誤訴訟というのが起きておりますけれども、こちらにおいても同様の認定がなされているというふうに承知をいたしております。

○柴山委員
 ぜひしっかりと配慮の行き届いた形での捜査ということをお願いしたいというように思っています。
 そもそも、業務上過失致死という類型の中には、百名を超える死者が出た福知山線の脱線事故のようなケースもあれば、今話をさせていただいている医療過誤、大変社会的に話題を呼んだ福島県大野病院事件のようなケースもあるわけで、こういった多様なケースが同列に扱われるというのがいかにも不合理だというようにも思われるんですが、例えば、これは構成要件を細分化するというようなことはできないんでしょうか。

○加藤副大臣
 簡単に言うと、業務上過失致死罪を小分けにして構成要件を分ける、こういう御意見かと思いますが、それはそれで一つの考え方としてはあり得るのではないだろうかというふうには思いますが、これまでのところ、もう先生もよく御案内のとおり、自動車運転による過失致死傷事犯というものを業務上過失致死傷の中から切り分けて別の構成要件にした、別の犯罪にしたという事例があります。
 そのときのことを振り返ってみますと、そもそも、その切り分けをする前の段階で法定刑や処断刑の上限近くで量刑される事案がふえていた、もう圧倒的に上限に近い判決がずっと続いていたということがございますし、また、国民の皆さんの規範意識としても、いや、これは少し切り分けて別の量刑にした方がいい、あるいは、はっきり言えばもう少し重い刑罰を与えた方がいいんじゃないか、こんないわゆる国民的な意識が広がってきたというような事情があったというふうに認識をいたしてございます。
 先生御指摘のように、例えば福知山線の事故、では、例えば鉄道の事故はどうかとか、飛行機の事故はどうかとか、医療過誤はどうかということが、今申し上げたような国民的な議論が沸き起こってくれば、また当然検討の余地のある話だろうとは思いますけれども、きょう現在で、何か業務上過失致死罪の中からこの部分だけ切り分けた方がいいというのが世論の大勢になっているとまでは言えないというふうに思いますので、今後の検討課題としてはあり得るものというふうに理解をいたしております。

○柴山委員
 もうそろそろ時間がなくなってきたので、あと二つだけお伺いしたいんです。
 さっきも少しお話が出ていましたが、ひき逃げ事件ですね。ひき逃げ事件で人が亡くなった場合の法定刑と公訴時効期間、これは今回の法改正で一体どのようになるんでしょうか。これは今までと逆で、過失形態でも悪質な事例、こういうものについてどうなるんだという声が出ていることから質問させていただきます。

○加藤副大臣
 もちろん、ひき逃げが悪質であることは言うまでもありませんし、私も全く同感でございますけれども、そのひき逃げという部分だけ取り出しますと、いわゆる道路交通法上の救護義務違反ということになりますので、その罪だけで考えれば今回の改正の対象にはならない、人を死亡させた罪ということにはならないというふうに理解をいたしております。
 ただ、これまでの経緯で、御案内のとおり、悪質な交通事犯については、平成十三年に危険運転致死傷罪が創設をされて、平成十六年にはその法定刑の上限が、致傷の場合には十五年以下の懲役に、それから致死罪の場合には二十年以下の懲役にということで引き上げられて、また、先ほど申し上げましたように、平成十九年の刑法の改正で自動車運転過失致死傷罪も創設をされたという経緯がございます。
 今回の御提案を申し上げている改正案で言えば、そのひき逃げの部分、つまり救護義務違反の部分だけ取り出せば法改正の対象にはなってはおりませんけれども、今申し上げたような危険運転致死罪であるとか自動車運転致死罪については公訴期間を延長するということになってございますので、一般的に言うと、その範疇で対応できるものというふうに考えております。

○柴山委員
 では、最後に一言だけお尋ねしたいんですけれども、法務省から出てきたこの関係資料を見ると、人を死亡させた犯罪のうち、主なものの時効完成数というものは、近年、特に殺人を中心として若干ふえる傾向にあるようにも思えるんです。社会の状況の変化ということにも関係してくるんだと思いますけれども、こういった迷宮入りした凶悪事件というものは、単に時効期間を延長、廃止したからといって劇的に解決事件がふえるわけではないと思うんですね。
 そういった場合には、やはり犯人検挙に向けて、これから捜査手法の再検討などを行っていくことが必要になってくるんじゃないかなというように私は思いますので、中井大臣、最後、この点をお伺いして、私の質疑を終わらせていただきます。

○中井国務大臣
 本年から、警視庁におきまして、そういういわゆる迷宮入りと言われるような事案に対して特別班をつくって対応するという試行を開始いたしたところであります。
 また、DNAの鑑定ということに関しましていろいろと言われておりますが、実は、検体そのものが六万しかまだ蓄積されていない。これをやかましく言いまして、今ようやく約八万台に乗った。これではもう全然足りません。ただ、国会の議論等を通じて人権問題もあります。
 だから、いろいろな形でDNA鑑定をして蓄積をさせていただける、こういうところと、その精度を高める、そして保存をする、こういう手法や科学的捜査手法、これらを着実に積み重ねる、こういうことによって、少しでも、一件でも迷宮入りというものをなくしていきたい、このように考えています。

○柴山委員
 終わります。

第174回 国会 衆議院 内閣委員会

第174回 国会 衆議院 内閣委員会 第7号
平成22年4月16日(金)
午前九時三分開議

【国会公務員法等の一部を改正する法律案・幹部国会公務員法案(議員立法)】の提出者として、自民党赤澤亮正議員の質問に対する答弁

○赤澤委員
(中略)
 次に、法案の立案プロセスについてもぜひ聞いておきたいんです。
 まず冒頭、今回の法案について仙谷さんに伺います。政務三役が方針を決めたのか、役人が決めたのか、イエス、ノーでお答えください。

○仙谷国務大臣
 先ほどから申し上げておりますように、政務三役で、今回の改正案として出す範囲、そしてその中身を、皆さん方には多分、ポンチ絵と言ったら語弊がございますが、図柄になっていると思いますけれども、あそこに書かれていることは政務三役で、こういうふうにこれでいこうねと、議論の末、そういうふうに確定をしたわけでございます。
 法案整備等々はもちろん事務方の方で、これはこれでいかがでしょうかと次から次に持ってこられて、それを我々も見ながら、ではこれでこういうふうにしましょうというふうに積み上げていった。
 こういうふうに御承知おきいただければありがたいと思います。

○赤澤委員
 今の答弁は、もちろん政務三役だというような言い方じゃなくて、役人と役割分担で仕事をしたということをおっしゃったと思うので、私には割と聞きやすい答弁だったというふうに思います。方針を決めて役割分担でやられたということだと私は理解しましたけれども、違いますか。まあ、そこはいいです。次の質問行きましょう。
 それで、かつて天下り根絶法案の提出者であった泉政務官、政務三役が決めたということであれば、法案制定プロセスにどう関与したのか。天下り根絶法案に盛り込まれていた早期退職勧奨の禁止というのは主張したんですか。それは、主張したとすれば、だれが反対をして結局この規定に入らなかったんですか。その点、お答えいただきたいと思います。

○仙谷国務大臣
 だから、守備範囲を決めたときに、今回の法案については、鳩山内閣の九月二十九日の、天下りあっせんを根絶する、あっせんを伴う退職勧奨は、組織の改廃等に伴い離職をせざるを得ない場合、民間でいえば整理解雇のような場合を除いて禁止をした、まずこれが前提でございます。
 これに引き続きまして、十二月十五日に、総理より、幹部人事の一元化を実現すべく内閣人事局を設置するとともに、官民人材交流センター等を廃止する、再就職等規制違反行為の監視等を行う新たな組織を整備する法案の提出、今回の法案でありますが、御指示をいただいて、この法案を提出した。
 したがって、内閣人事局を初めとする新たな体制のもとで、公務員が天下りをしない、定年まで勤務できる環境を整備するということを次の段階で抜本的に行いますので、今回は早期退職勧奨を禁止するという文言を書かなかったということでございます。

○赤澤委員 
 いろいろ説明していただいたけれども、私は、このような質問は、次のようなことをきちっとやっていただいておけばそもそもしなくて済んだものだと思うんです。
 それは何かというと、立案のプロセスですよ。政務三役のだれがどういう意見を言って、そしてそれが、外部からの意見で、あるいは役所からの事実関係の説明を受けてどう変わっていったのか。その辺のことをきちっと明らかにしながら今議論をされていないから、この辺のことが逆に言えば勘ぐられるわけですよ。何か役人からの御進講で泉政務官がかねてからの主張を変えたんじゃないかとか、そういうことが出てきちゃうのはまさにそこのところですよ。
 なので、私が指摘をしておきたいのは、従来ならば、法案を出す前には、審議会などのオープンな場でかなり議論をしています。公務員改革の分野なら顧問会議といったようなものも開かれていたわけであります。こういう場を全く設けずに、政務三役でブラックボックスの中で政策を決めてしまうから、今みたいな質問が出てくるわけですよ。議論の過程が全くわからない。
 このようなやり方、端的に言えば、政務三役がどれだけ政治主導しているのか国民が外から検証のしようがない、このようなやり方は不適切ではないかと思いますけれども、その点、仙谷さん、いかがですか。

○仙谷国務大臣
 泉健太政務官は、本法案を策定するについての政務三役では全くございませんので、政務三役の一人としてこの法案策定で議論をする立場にはなかった。内閣府の政務官でありますけれども、公務員制度改革担当ではないということをまず前提にしていただきたい、そういうことを前提にしていただきたいと思います。
 鳩山政権におきましては、国民の審判を受けた政治家が国民の視点で政府の運営に名実ともに責任を持つということにいたしておりまして、この法案の策定に当たっても、内閣府政策会議におきまして、四回、副大臣、政務官らが、政務官がみずから説明をして、議員と意見交換を行っておるところでございます。この会議はマスコミにもオープンにし、議論の模様を内閣府のホームページに掲載するなどして、透明性の確保にも気を使っているというところでございます。

○階大臣政務官
 若干補足させてください。
 今、仙谷大臣からは、公務員制度改革の担当で泉政務官は違うというお話でございましたけれども、正確に申しますと、もともと泉健太政務官がいらっしゃったわけですけれども、泉政務官が所管が非常に多種多様でございまして、そういったことも踏まえまして、物理的に対応が難しいだろうということで、二十二年の一月十九日の閣議における内閣総理大臣の発言によって、私がこの担当に加わって以降、私が主に公務員制度改革担当の政務官として働かせていただいているということでございます。

○赤澤委員
 まず、感想を述べれば、大臣が不正確なことを言ったときに補足すると言って間違いを正すというのは、昔は役人がやっていたんだけれども、政治主導のもとで政務官がやっていて、お疲れさまでございます。
 それで、その上で伺いますけれども、泉政務官は担当じゃないんですか。

○仙谷国務大臣
 形式的に、担当者であることを失念いたしておりましたが、今のように、泉政務官も多分、担当、五大臣以上にお仕えになって、あっち行ったりこっち行ったり大変忙しい毎日をされておりますので、階政務官に専従的にこの公務員制度改革の法案策定についての仕事を総理大臣から特命でお願いした、こういうことでございます。

○赤澤委員
 一番熱意を持って取り組んでいた政務官が外されたのが役人の入れ知恵だったかとかいうような言い方はしませんけれども、何かちょっと私は不透明でわからぬものを感じます。ただ、その話はちょっと不毛過ぎるので、この辺にさせていただきたいと思います。
 提出者に一言伺いたいのは、政務三役がブラックボックスの中で法律を立案しているような今のやり方についてどのような感想をお持ちかということを伺っておきたいと思います。

○柴山議員
 赤澤議員にお答えいたします。
 今委員が問題意識を示されたように、そもそも立案のプロセスも、また担当政務三役がだれかも知らずに、国民から見ると、どういう問題点があって、だれが、立案過程でどのように結論を出したのかということが全く見えない、そういう状況だと感じております。
 少なくとも、前政権、自公政権のときには、このような重要な法案を立案するときには、今御指摘のあったようなブラックボックスに陥ることがなるべくないように、国民に見える形で多くの方々の意見を聞いて、取り入れながら行っていくことが当然だったと思います。
 例えば、今回の国家公務員制度改革基本法の立案に至るまでは、公務員制度の総合的な改革に関する懇談会という組織で約半年にわたって計十四回議論をし、そして、その議論の様子を今でも動画でホームページ上で公開をされているということでございます。
 こういった難しい問題は、従来以上に慎重に、時間をかけて、論点を一つ一つ明確にしていく必要があると確信をしております。

○赤澤委員
 政策決定過程をオープンにするということについて、私は本当に、自公連立政権の時代よりも悪化しているということを強く感じるものであります。
 それで、説明責任のところについて、今の話を聞いていて私は感じたので、ちょっとこれはまとめて述べておきます。機会があればまた別の機会にお伺いをしますし、担当が枝野さんだったりするのであれなんですけれども。
 要は、今の政府、国民に対する説明責任を軽んじ過ぎですよ。それは何かといえば、前に仙谷さんがやっていた事業仕分けもそうですけれども、無駄を指摘する方には、もう頻繁に、もう得意げに政治家が出てきますよ。その必要性を説明する方にほとんど政務三役が出てこない、出てこないですよ。国民への説明責任というのは、むしろ予算の必要性を説明する方がでかいんですよ。血税を何に使うのか、これは必要ですという説明は物すごい大事なんですよ。
 私は、事業仕分け、これから枝野さんがやると言っているけれども、政務三役がきちっとその必要性を説明しに、無駄を指摘されたら反論する側に出てこなきゃ、こんなものは政治主導でも何でもない。追及する方だけええ格好をして政治家が出てきて、そして、いざ予算の必要性の説明を求められたらこれは役人任せ、こんなやり方が政治主導なわけがないし、国民への説明責任を全く果たしていませんよ。そのことをきちっとやるのでなければ、事業仕分けなんてものも政治主導の看板からぜひ外してくださいよということを私は強く感じるんです。
 きょうの議論を聞いていても、明らかに自公連立政権の方が政策決定過程をオープンにすることに熱心じゃないですか。その辺については私は猛省を促しておきたいと思います。やっていることが、とにもかくにも、役人をぶざまに見せて自分たちがいい格好をして浮揚しようと、今や事業仕分け頼みじゃないですか。そんなやり方で国民の信頼は得られないんですよ。気づき始めていますよ、二匹目のドジョウはいない。そんなことをやったって、国民は二度はだまされませんね。その辺のことも厳しく申し上げておきたいというふうに思います。

○仙谷国務大臣
 事業仕分けの件について申し上げますと、当然、予算を要求し、そしてその必要性を主張できる政務官も事業仕分けの場に、昨年の事業仕分けでも存在をしておりましたし、その政務三役の中で、我々から見て、これはここまで族議員的になられたら困るなと思うようなことを主張された三役も相当数はいらっしゃったんじゃないかと思います。あながち、赤澤議員が言われるような、一方的に役人をたたいて喜んでいるような話ではなかったということを申し上げておかなければなりません。
 それから、自民党あるいは自公政権の方がずっと透明性が高かったというお話でありますが、何か私的懇談会とか審議会でいろいろやったからよかったというお話でありますが、それをしてオープンとおっしゃるのならば、我々野党から当時見ておりまして、皆さん方の法案が総務会を通るまでは、野党にも国民にとっても、どのような法案ができるのかなんということをオープンにされたことはほとんどないじゃないですか。
 それで、いいですか、いわゆる審議会政治、そして事務局をだれが握り、どのような人を審議会の委員にし、その審議会とか懇談会でどのような文書がつくられて、それを前提にして官僚が法律をつくる。ほとんど、いわば、自民党の政治家の方々はそこで政治判断をどうしたのかなんてことが野党とか国民には全くわからない状況で審議会政治が行われたというのが実態じゃないんでしょうか。

○赤澤委員
 今の二点について申し上げて終わりますけれども、公務員制度改革、今あなたたちが出した法案の方が後退しているんですよ。役人主導だと言ったものより後退したものを出しておいて言うせりふじゃないですよ、今のせりふは。
 そして、事業仕分けについても、あえて申し上げさせてもらえば、だったら、子ども手当とか高校授業料無償化とか、国民のばらまき批判が強いものについて、担当大臣が出てきて説明してくださいよ。何で大臣が逃げるんですか。一番大事な国民への説明責任は大臣が果たすのが当たり前でしょう。そのことを何で果たさないんですか。そのことをやらないでおいて、政治主導の看板なんか絶対守れないですよ。
 そのことを申し上げて、あと加えて、仙谷さん、さっき私が指名していないのに答えたのは一つ貸しにしておきますから、それを申し上げて、私は質問を終わります。
 以上であります。

第174回 国会 衆議院 内閣委員会【NO.3】

第174回 国会 衆議院 内閣委員会 第6号
平成22年4月14日(水)
午前九時四分開議

【国会公務員法等の一部を改正する法律案・幹部国会公務員法案(議員立法)】の提出者として、自民党平井たくや議員の質問に対する答弁

○平井委員
 仙谷大臣、どうも、お疲れでございます。
 本会議のときには大分お疲れのようだったですけれども、体調もよくなられたようで、答弁、非常に長くて丁寧な答弁が続いておりますが、国家公務員法に関して言えば、長くて丁寧なのも結構なんですが、はっきり答弁をしていただくということもお願いをさせていただきたいと思います。
 これはちょっと法案とは関係ない話なんですが、ここ数日の新聞を見ておりまして、さすが仙谷大臣だなと思われることが幾つかありました。それは、瀬戸大橋の料金に関する問題です。
 塩崎議員も私もたまたま四国の議員なんですよね。さすがに、やはりいきなり瀬戸大橋が千円から三千円に上がってしまうのは、えっというような声が多数寄せられていて、それで、民主党の多くの議員も、何か十人程度、見直すように申し入れをするというような話もされました。
 これは全然通告していなかったんですけれども、たまたま、私も前にいた国土交通省の副大臣もおられるので、馬淵副大臣は答えられたらで結構ですよ、仙谷大臣の気持ちと私の気持ちは同じだと思いますので、この瀬戸大橋の料金に関しての御発言に関して、今後とも一緒に四国の議員として行動をともにしていただく可能性はあるかどうか、お聞きしたいと思います。

○仙谷国務大臣
 内閣で国務大臣のポストを占めておりますので、国務大臣として発言を求められれば、それは、よくて沈黙を守るしかないかなと思っておるのでありますが、一議員としての発言は、先般から申し上げているとおりであります。
 私自身は、あえて申し上げると、本土から四国に渡ることについては、我々の先輩議員が五十年間も夢のかけ橋一本で議席を守ったというような話もあるくらい、ある種の悲しみとつらさの中で、四国という島でいろいろな事柄に遭いながら、これが橋でつながったらどんなにいいだろうかという願望で暮らしてきたわけですね。
 ところが、そもそも別途料金が設定をされた、十五年前だったか二十年前だったかわかりませんが、そういうところからも私自身はこれは問題があるなと思っておりまして、これはある種の宿願として、本土から我々が、我々にしてみれば帰るということでありますが、この瞬間に別の木戸銭を払わなければ四国へ帰れない、あるいは四国から本土へ上がるときにも別の木戸銭が必要だ、私は、これはあってはならない、そういう仕組みだなというのが考え方でございまして、こういうことをなくするのが宿願です。せっかくここまで整備したわけですから、全国一気通貫で走れるような仕組みでなければならない。
 これはあくまでも個人的な宿願であります。

○平井委員
 国務大臣としては内閣不一致になるようなことは言えないということだと思いますが、街頭演説で、幾ら前原大臣が親しい同志でも、こんなことは許してはならない、四国に来る人がどんどん減るような政策は絶対許さないとおっしゃっています。この言やよしで、私は、やはりこういう議員個人としての立場は常に明確にされるべきだと思います。
 これは答弁しづらいでしょうけれども、もし何か、このような議員個人としての仙谷議員の心意気に副大臣としてお答えすることがありますか。

○馬淵副大臣
 国土交通副大臣としてお答えさせていただきます。
 今回の料金改定、新しい上限制度の料金でございますが、本四の料金のみならずすべての料金体系につきましては広く皆様方の御意見をお聞きしてまいりたいというふうに考えておりますし、また、この二十二年度においては試行ということで進めさせていただきたいというふうに考えております。
 いずれにしましても、しっかりと皆さんの御意見を賜りながら検討させていただきたいというふうに考えております。

○平井委員
 私が副大臣でも同じような答弁をしたと思いますが、これはぜひまたお考えをいただきたいし、きょうおいでの皆さん方にもこういう問題をぜひ認識していただきたかったということでお話をさせていただきました。
 法案の条文に関して、先ほど、中川秀直先生の質問に対して、大臣は、法文の条文はよく知らないとかわからないとか、さっきの総務省設置法の問題等々についてなんですが、あれは、私、横で聞いておりまして、やはりちょっとおかしいなと。
 つまり、どういうことかといいますと、適格性審査と幹部候補者名簿作成を内閣人事局で担うことにしたいのであれば、内閣法で事務を規定した上で、総務省の事務からやはり抜くべきだ。技術的な話で申しわけないんですが、これは何かのミスではないかなと私は思っているんです。そうじゃないとやはりおかしいと思うんですが、この話は法案修正の中で御検討いただける話なのか、そうではないのか、その辺について御意見をいただきたいと思います。

○仙谷国務大臣
 私から言わせれば、中川先生も平井先生もちょっと混同されていらっしゃるのではないか、こういうふうに思います。
 今回の法案で新たな事務として加わる幹部職員の適格性審査、任免協議、それから公募、これは、内閣官房の主任の大臣たる内閣総理大臣及びその委任を受けた内閣官房長官の事務として新たに加わるものであります。これは中央人事行政機関たる内閣総理大臣の所掌する事務ではないため、総務省が補佐することとされている事務にも含まれるものではありません。
 したがって、内閣人事局と総務省の事務に、重複はこの点に限ってはないということでございまして、間違ったわけでも修正が必要なわけでもないと私は考えております。
 以上です。

○平井委員
 ということは、総務省は、適格性審査とか幹部候補者名簿作成等々に関してはやらないということですか。

○仙谷国務大臣
 今回の国家公務員法改正案で規定された適格性審査、それから、例えば公募の手続、任免協議、これについて、総務省が補佐をするという事務には全く含まれません。やりません。

○平井委員
 これは、法文上はやはりおかしいと思うんですね。
 衆法の方もここの方は議論をされたと思うんですね。そしてそこのところを除外したということなんですが、今の我々の議論について、衆法の方、御意見はありますでしょうか。

○柴山議員
 お答えいたします。
 いろいろと理屈を唱えられて、総務省の所掌から外れるというようなことを御答弁されましたけれども、やはり、条文を一読してその点が明確になってこなければいけないというように思っております。午前中、山内議員の方からもお答えをさせていただいたとおり、私どもの議員立法案では、この点をしっかりと明確にするということを主眼として立案をさせていただいております。
 繰り返しになりますが、総務省設置法上の「国家公務員法に規定する中央人事行政機関たる内閣総理大臣の所掌する事務について、内閣総理大臣を補佐すること。」という規定は明確に総務省の所掌事務からは削除しておりまして、内閣法上の内閣人事局の事務として移管することとしております。さらに、内閣人事局は「国家公務員の人事行政に関する事務」を包括的に所掌するということも定めているわけでございます。

○平井委員
 この問題は、やはりどう読んでも、総務省設置法には「内閣総理大臣の所掌する事務について、内閣総理大臣を補佐する」と書いてある以上、総務省も並行して補佐を行わないと、これは総務省の任務を懈怠したことになるんですよ。ですから、ここはやはりどう考えてもちょっと無理筋の説明だと思うんです。これは変えられることを我々はぜひ要望しますが、このことを私は本来きょう質問する予定じゃなかったので、別の質問に移らせていただきたいと思います。
 政治主導の人事というのは大変聞こえはいいんですね。鳩山内閣になられて、もう既に政治主導でいろいろな人事を行っていると思います。新聞報道等々でも私もいろいろ見聞きをしているわけでありますが、まず、そういう状況の中で、仙谷大臣御自身の人事についてお伺いをさせていただきたいと思います。
 昨年十二月、公務員制度改革事務局の事務局長ら十人を更迭して、人事刷新を行われましたね。これは、仙谷大臣がお決めになって人事を刷新したということでよろしいんですか。

○仙谷国務大臣
 先ほどから申し上げておりますように、形式的には、国家公務員制度改革推進本部事務局は内閣官房の部局ということでございますので、任命権者は官房長官になるんだろうと私は思っております。
 内閣官房長官に、私の方から、この事務局人事を一新してほしいということをお願いいたしまして、一新するについては、ここにこういう方がいらっしゃる、民間からはこういう方においでいただこう、あるいは、この間民間からおいでいただいた方について引き続き残ってもらおう、そういうふうに人事を内閣官房と私の方で詰めまして、現在の事務局人事ができ上がっているというふうに御理解をいただければ結構でございます。

第174回 国会 衆議院 内閣委員会【NO.2】

第174回 国会 衆議院 内閣委員会 第6号
平成22年4月14日(水)
午前九時四分開議

【国会公務員法等の一部を改正する法律案・幹部国会公務員法案(議員立法)】の提出者として、自民党橘慶一郎議員の質問に対する答弁

○橘(慶)委員
 それでは、前回の質問に引き続きまして、国家公務員法一部改正案、また衆法提出二法案ということで、順次御質問をさせていただきたいと思います。

(中略)
○橘(慶)委員
 幾つか論点を出していただいたんですが、きょうのところはこの辺にいたしまして、ちょっと先へ進みながら、またいつか時間があれば戻ってくるかもしれませんけれども、きょうは先へ進ませていただきたいと思います。
 基本法の第五条第二項第一号で、「幹部職員を対象とした新たな制度を設けるものとすること。」という一つのそういうプログラム規定がございまして、これを踏まえて、それぞれ提出者の皆さんも政府の方も、今回の案ということになっていったわけでありますが、この規定を踏まえられて、どういう観点で今回の案に至っているかということについて、先にまず提出者の方からお伺いをしたいと思います。

○柴山議員
 橘議員にお答えいたします。
 今、基本法に示していただきました条文の文言なんですけれども、どういう意味を持つものかということに関しては、これは、少なくとも幹部に関しては一般職とは区分をした新制度を設けるべきだというのが、かつて修正協議に直接携わった民主党側の議員の認識であったと理解しております。
 かつて民主党行政改革調査会長だった松本剛明議員は、これまでも本会議場を含め、たびたび申し上げているとおり、昨年二月の衆議院の予算委員会では、政権のニーズにこたえるためにということでは、今までの一般職の基準の延長線では結局骨抜きになる、区分して新たな制度を設けるべき、従来の一般職に置いたままであれば、能力、実績の範囲から逃れることはできないと発言をしていたことからも明らかだと思っております。
 そして、私どもの議員立法案では、まさしく、幹部職員を対象とした新たな、区分された制度として、幹部職という制度を設けて、一般職といわゆる政治任用職の中間的な制度を設けることとしたわけです。具体的に言えば、中間的というのは、第一に、能力・業績評価は客観的に厳密に行うということです。
 先ほど大島副大臣の方から、ちょっと、なかなかよくわからない御答弁をいただいておりまして、また、政府側からも、標準職務遂行能力に基づく評価が余り現実的にできないですとか、キャリアだったら全員幹部の適格性を満たすといったような評価がなされていますけれども、そんなことを言えば、やはり、橘議員がさっき御質問になられた、人事の客観性というものをどう担保するかということが非常に、よくわからなくなってしまうわけです。
 ですので、今申し上げたように、能力・業績評価というのは、能力にせよ業績にせよ、しっかりと、客観的に厳密に行っていくということであります。
 そして、第二に、その一方で、そうした評価を基礎としつつ、内閣との一体性の確保にも配慮した人事管理を行うということなんです。
 つまり、これはどういうことかといえば、行政目的に応じて、その能力、業績の枠を乗り越えた人事を行う。当然、その行政目的に応じた正当性というものが、そういった乗り越えた人事を行うために求められてくるわけなんですけれども、そういうことを正面から私たちは受けとめた形で抜てきあるいは降格ということを行っていくために、そういった特別の仕組みをつくっていく、そういうことでございます。

○橘(慶)委員
 同じ質問になりますが、内閣提案の方は、この制度、プログラム規定に対して、どのような観点で臨んでおられますか。

○階大臣政務官
 お答えいたします。
 これは、先ほど来、何度も申し上げておりますけれども、私どもの幹部職員を対象とした新たな制度というものは、縦割り行政の弊害を排除するということと、複雑多様化する行政課題に迅速かつ的確に対応するということが主眼にあります。
 そういった中で、幹部職員人事の一元管理の仕組みと、事務次官、局長、部長、各級の官職について同一の職制上の段階に属するとみなして、この間では自由自在に異動できる、こういう仕組みにしているわけでございます。私どもの制度は、まさに斜め異動もできますし、将棋でいうと、金とか銀とかのように一個ずつこまが進むわけじゃなくて、角とか飛車のように二つ進んだりとかできる、そういうイメージでございます。
 それから、私どもの幹部職員を対象とする制度というのは、これで終わりということではございません。附則の方に規定も設けてございますけれども、議院内閣制のもとで国家公務員がその役割をより適切に果たす体制を整備する観点から、事務次官その他の幹部職員の位置づけ及び役割について引き続き検討していくものでございます。

第174回 国会 衆議院 内閣委員会【NO.1】

第174回 国会 衆議院 内閣委員会 第6号
平成22年4月14日(水)
午前九時四分開議

【国会公務員法等の一部を改正する法律案・幹部国会公務員法案(議員立法)】の提出者として、自民党小泉進次郎議員の質問に対する答弁

○小泉(進)委員
 自由民主党の小泉進次郎です。

(中略)
○小泉(進)委員
(中略)
 私は、この地方移管という言葉だけじゃなくて、まだまだわからない言葉があるんです。それは私の知識不足もありますが、大臣がよくお使いになる言葉で、横異動という言葉があります。横異動というのは、早期勧奨退職が一つの横異動だと大臣は答弁でおっしゃっております。横異動という言葉が私にはわからないんです。横異動は何を意味するのか、教えてください。

○仙谷国務大臣
 この数年、自民党、公明党政権下でも行われた横異動の最も大きなものは、多分、農林水産省の食糧庁職員を税務署の職員に移した、税務大学校での研修を間に挟んで、そういう職種転換、配置転換が行われたということが、つまり霞が関内部のというか、国家公務員内部での横異動の典型的な事例だったと思います。
 そういうのも横異動だし、官民人材交流ということで、民間からも霞が関に入っていただくけれども、こちらからも民間のところに出向するというのも横異動でしょう。あるいは、退職をお願いして、勧奨して、それに応じていただける方、こういう方に動いていただくのも横異動の一つだと思います。
 さまざまな手法があるわけでありますが、人事というのは、やはり年がら年じゅうくるくるかわっていいというものではありません。これは、公務員がある種のプロフェッショナルとして、行政のプロになっていただかなきゃいけないということもございます。ただ、同じところに長年滞留すると、これはコケが生えたりカビが生えたりするということもございます。
 そして、今、やはり国家公務員制度の中で最大の問題は、同期の入省者が同じように課長までは同時期に昇進していく、これは民間の会社ではあり得ない仕組みですね。果たしてそんなことでいいのかということが、これは労務人事管理の問題というか、ガバナンスの問題としても私は問われていると。そういうことをあわせて、どこまで民間的な、横異動を含めた人事の配置、ガバナンスができるのかということが、これからの霞が関の行政府を担当する政治家に問われているのではないか、あるいは、そういうのが制度化されなければならないというふうに考えているところです。

○小泉(進)委員
 ありがとうございます。
 今の大臣の答弁ですと、横異動の横とは、配置転換、職種転換、民間出向、肩たたき、こういうことになりますが、最後の肩たたきを含めていること自体、民主党が当初から言ってきたことと矛盾しているじゃないですか。これはやめると言っていたんでしょう、早期勧奨退職を。それなのに、あたかも、いつの間にかそれを忘れたかのように、横異動のうちの一つに組み込まれちゃっている。これも私は全然わからないんです。
 ちょっとこの横異動についても、法案提出者の皆さんにもお伺いしたいので、見解を聞かせてください。

○柴山議員
 小泉議員にお答えいたします。
 今御指摘があったように、横異動については、仙谷大臣の見解ですと、ポストの横滑りあるいは民間出向、それから早期勧奨退職、この三つというような御指摘がありました。
 まず、最初のポストのつけかえ、横異動ということは、これはとりもなおさず、給与を維持したままで、例えば局長ポストの人が名誉職ということで移転をするということで、まさに人件費の削減には一切役立たない、そういう話となるかと思います。
 民間への出向、これは、明確な基準を設けた上で行うのであれば、官民人事交流として行う余地があるかなというように思います。
 そして、まさに議員御指摘の早期勧奨退職、これについては、民主党の従来の、これを廃止するという方針と、今の、もしかするとこれもあり得べしという答弁は、全く矛盾していると言うしかありません。
 とりもなおさず、これまでの給与水準を見直さない、だからこそ、結局のところ、役所から出ていってもらわなければいけない。しかも、仙谷大臣は否定していますが、これまでのような人事ピラミッド形システム、これから外れた者はやはり定期的に外に出していく、こういうことの温存の仕組みのために早期勧奨退職というものが使われてきたわけですから、そもそも、この早期勧奨退職という言葉を仙谷大臣の口から聞くことは私は極めて心外だということを、議員立法提出者として申し上げたいと思います。

○小泉(進)委員
 ありがとうございます。私も同感です。
 民主党は、肩たたきはしない、そしてマニフェストの中でも明確に、公務員が定年まで働ける環境をつくる、そういうふうにはっきり書いてあるわけですよ。それなのに、肩たたきは横異動のうちの一つですというのは、横異動という言葉も、国民からしたら全くなじみはありませんよ。それがどういうものを意味するのかイメージもできません。もっと言えば、縦異動か何かもわからないですよ、普通は。それでいきなり横異動と言われて、何となく肩たたきはしないようなイメージを持ちかねない。
 民主党のマニフェストどおり、定年まで働かせる環境をつくること、それが大臣の役割じゃないですか、この国家公務員改正法の本来の趣旨じゃないですか。

○仙谷国務大臣
 私が申し上げておるのは、制度的に定年まで働いていただくためにも横異動が必要だ、こういうことを申し上げているんです。
 つまり、先ほどから申し上げておりますように、時代とともにその部署の事業量は当然減る、あるいは政権がかわる、あるいは内閣がかわって、政策の基本的な、重点的に行うことが変わるとなれば、当然のことながら、今まで大量な事業をやっていた部署が事業量が減ってくる、あるいはなくなるということは予測できるはずじゃないですか。そこに、その部署に張りついた公務員が、いや、事業はないけれども給料だけもらっておるなんということが許されるはずがない。
 一方では、この数十年目立ってきたのは、例えば税関とかそういうところは、これだけの物流と人の流れが変わってきたときに、玄関口で担当する職員が追いつかない、夜寝ないでやっても追いつかないような事態になっている職場だって国家公務員の職場にもあるんですね。
 そうだとすると、これは片一方、すべて分限免職で、自民党さんは分限免職でたたき切るみたいなことを言う方が多いけれども、分限免職の制度で一方で免職をしながら、一方でこっちで新規採用をする、そんなことは民間の会社でもほとんど行われていないんですよ。やはり、ある部署からある部署へ、自分のそもそもの職種とかスキル、それを変えてでも移ったらどうですかというのが民間の会社でも普通じゃないですか。
 そういう横異動が日本の霞が関では縦割りの中でほとんどできなかったから、それをできる仕組みをつくろう、あるいはそういう意識を持とう、こうしない限り、霞が関の改革というのは絶対にできない。何よりも、局益、省益、課益の縦割り構造が公務員制度問題にも一番の問題じゃないですか。そのことをおわかりくださいよ。

○小泉(進)委員
 大臣は縦割りを変えるのがこの改革の主眼だとおっしゃいますが、柴山議員が言ったように、官民の人材交流が進むような民間出向とかだったら、それは国民の理解も得られると思いますよ。
 でも、この横異動のうちの一つの、肩たたき、早期勧奨退職はやめるともともと言っていたんですよ。ですから、あたかも今までそういう縦割りでできなかったから横にやるんですというのは議論のすりかえですよ。もし横異動の中の一つに肩たたきを含めるのであれば、それは、今まで民主党が言っていた肩たたきはやりませんということはやめます、これはやりながら定年退職まで国家公務員が働ける環境をつくるんですと言い直して、国民に説明してくださいよ。でなかったら、横異動という言葉を使われたって、国民は決して理解できないですよ。

○仙谷国務大臣
 私どもは、再就職あっせんを伴う早期退職勧奨はやらない、こう申し上げてきたんです。これは今でもはっきりしています。それ以上でもそれ以下でもない。つまり、反対側からいいますと、自公政権下で行われている退職勧奨は、むしろ天下り、再就職先を提示しての早期退職勧奨ですね、つまりセットですね、こういう話です。
 私どもは、そういうセットになった退職勧奨をやって、それがうまくいって、ポストをあけて、次の人がそこへ来れる、このぐるぐる回しは余りよくないですねと。それで国家公務員の人件費が減ったように見えても、どこかに再就職あっせん、特に独法とか政府関連の公益法人に再就職をあっせんして、そこに、交付金の名前なのか、随意契約の名前なのか、あるいは助成金なのか補助金なのか委託費なのかわかりませんけれども、その方の人件費相当分を込めて予算をつけるんだったら、一見人件費が減っているように見えるけれども国民のコストは変わらないじゃないか、こういうことを申し上げてきたんじゃないですか。

○小泉(進)委員
 大臣がそこまで、肩たたきをしないとは言っていない、天下りのあっせんをしないと言っているんだ……(仙谷国務大臣「あっせんつきの」と呼ぶ)あっせんつきの肩たたきはしないと言っている。
 では、天下りの根絶をする、そこまで言っていますが、どうやってその根絶を担保するんですか。
 民主党が出した政府の答弁書、一般職があっせんするのは天下りだけれども、特別職がやるのは天下りじゃないと言っているんじゃないですか。そうしたら、大臣含め政務三役のあっせんによる再就職先のあっせんは天下りじゃないと言っているんですよ。でも、国民からすれば、それは天下りですよ。そして、かつて野党時代に民主党が言っていたことは、それも含めて天下りと言っていたんですよ。
 もし、天下りを本当に根絶する、そう言うのであれば、どの制度でどのようにそれを担保するのか、はっきりおっしゃってください。

○仙谷国務大臣
 今審議をお願いしてございます再就職等監視・適正化委員会で厳しくチェックをしていく、それと、内閣の閣議決定も踏まえた方針を徹底する、そのことによって、公務員の上から下までの皆さん方に、もうネギカモつきの天下りというのは上から見ても下から見てもやってはいかぬ、こういうことを徹底させていくということであります。

○小泉(進)委員
 横異動、私はこの横異動をなぜ伺いたいかと思ったら、まず言葉自体もわからないし、横というのがどこからどこへの横かがわからなかったんですよ。イメージとしては、縦割りをなくすというのが民主党の公務員改革の一つの柱ですから、最初イメージしたのは、省庁間の横断ですよ。他省庁にもそういう異動ができるということの横異動。
 しかし、さっき大臣が言った一つは、配置転換、つまりポストのつけかえ。実質的な権限はない、そして出世ルートからは外れるけれども、給与は、例えば部長職の方と同じとか、そういうことだとしたら、公務員の総人件費なんて、カットどころか、さらに膨れ上がっていくじゃないですか。それは横異動じゃないんですか。

○仙谷国務大臣
 余り固定的にそういうふうにお考えになるのは全く過ちだと思いますね。
 だって、いいですか、必要なところは必要なんですよ。税務署の職員、税関の職員というのは必要なんですよ。従来の、その他の事業官庁で、もう事業がなくなったような省庁で、まだそこに滞留している、そうするとふえ続けるじゃないですか、そういう人事をやったら。必要なところに必要のない人を横へも異動する、そして、なるべく従来百人でやっていた仕事を五十人、六十人でできるようにする、そういうガバナンスがない限り、人件費なんか減らせませんよ。
 そういうガバナンスを今までだれがやっていたんですかというのがこの国家公務員制度の大問題じゃないかというふうに私は提起しているんですよ。いいですか。(発言する者あり)そういう、甘利さんのおっしゃっているような話じゃないでしょう。

○田中委員長
 やじに答えないでください。

○仙谷国務大臣
 この人事労務管理をする責任者は内閣総理大臣なんだけれども、民間の会社のように、人事労務管理の担当部局と担当の大臣か副大臣かが日本の国はなぜいないのかということを、私はずっと声をからして言っているんですよ。
 つまり、人事労務管理の責任者がいないんですよ、この政府には。だから、各役所へ行って聞いてごらんなさいよ、各役所、各役所で、おたくは人事労務管理の責任者はだれなんだと。最近では、いや、それは事務次官だと言うかもわかりません。今までは少なくとも事務次官じゃなかったですよ。では官房長なのか。いや、うちは官房長じゃない、人事課長だ、うちは秘書課長だと。もうめいめいばらばらですよ、各省庁も。
 それで、政府全体としてはだれが一体全体当事者なんだ、人事労務管理の当事者、責任者はだれなんだ。これ、お答え、だれか教えてほしいんだけれども、まあ形式的には内閣総理大臣、だから官房長官ですねという、この程度の答えしか返ってきませんよ。

○小泉(進)委員
 今の大臣のお話を聞いていると、だったら内閣人事局に総務省、財務省、人事院、こういったところの機能を移管した方がよっぽどわかりやすいじゃないですか。それなのに、今回それをやっていない。自民党、みんなの党案の方はやっている。
 私は、話し合い、修正の余地が十分あるように聞こえるんですけれども、大臣、そういったお考えはありませんか。

○仙谷国務大臣
 抜本的にそれをやらなければ意味がないと思っておりますから、今回は幹部人事の問題だけですから、それをやっていない。あえて、むしろやらない方がいいということでやっていない。
 つまり、幹部人事と、大多数の一般の公務員といいましょうか、もっと言えば職員団体に所属する職員、この方々の勤務条件を果たしてそんなにすぱっと切れるのか切れないのかということが大問題なわけですよ。
 つまり、おっしゃるように、給与改定について書いていないと言うんだけれども、では自民党の案で、一体全体、人事院が今まで行ってきた作業を、一般の職員についての人事院の作業をどうするんですか、どうするんですか。そんなことを、何かミシン目がついているようなことで、ここから先はこれから政令でやるとおっしゃるのか、法律を新たにつくるとおっしゃるのか知りませんけれども、何にも具体的なことを書いていないじゃないですか。単にその権限が人事局に移るということしか書いていないじゃないですか。
 それは、基本的には、労働基本権を付与することによって全体として交渉を通じて、勤務条件については、変換とか、あるいは改善なら改善を行うということが基本にならない限り、全体の公務員の、例えば給与なら給与、あるいは何とか水準なら何とか水準を変える、そういうことにならない、かえって混乱するというふうに私は心配したものだから、あえて書かなかったんです。

○田中委員長
 もう時間です。

○小泉(進)委員
 もう時間だから終わりますが、この国家公務員改革基本法は、共産党以外の、自民党、民主党含めた各党の合意でできたものです。大臣にはその原点をお忘れいただかないように。そして民主党の中からも後藤議員のように、わかりやすく、すぱっと人も減らす、金も減らすでやった方がいいという声もあるんですから、まだまだ話し合いの余地はいっぱいあるんじゃないかなと思います。
 前向きな議論を期待して、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

第174回 国会 衆議院 内閣委員会

第174回 国会 衆議院 内閣委員会 第5号
平成22年4月9日(金)
午前九時二分開議

【国会公務員法等の一部を改正する法律案・幹部国会公務員法案(議員立法)】の提出者として、公明党高木美智代議員の質問に対する答弁

○ 高木(美)委員
 公明党の高木美智代でございます。

(中略)
○ 高木(美)委員 
 それでは、衆法の提出者に、あっせん禁止違反に刑事罰を入れるとされておりますが、そのねらいにつきまして質問をさせていただきます。

○ 柴山議員
 刑事罰新設のねらいについてでございます。
 鳩山内閣発足以降、先ほど少しお話がありましたいわゆる裏下り、すなわち、表向きは、確かに役所はあっせんしていないですとかOBがあっせんしたんだというように言いながら、実は、事実上役所があっせんしているような事例がまだまだ横行しているという認識であります。
 例えば、昨年の十一月、日本損害保険協会副会長のポストに財務省OBの後任として元国税庁の長官が就任をされました。このポストは代々、財務省OBの就任する、先ほど御議論があったいわゆる固定天下りポストでありましたけれども、鳩山内閣はOBのあっせんによるものとして容認をしたわけであります。
 しかし、今後調査があるというように御指摘をいただきましたが、OBのあっせんと言いつつ水面下で役所のあっせんが存在するということは、霞が関ではいわば公然の秘密であります。何となれば、数多くの固定天下りポストに切れ目なく省庁OBが就任し続けるということは、OB個人がばらばらにあっせんをしていたのでは決して起こらないというように私は思っております。霞が関ではよくOB人事という隠語が使われますけれども、要するに、役所が組織的に人事としてポストを割り当てているからこそこういったことが起きるのであろうと思っております。
 したがって、こうした裏下りを根絶する方策としては、やはりあっせん禁止の実効性を高めることが極めて重要であると思っております。現行法では、御案内のとおり、あっせん禁止違反には役所内部の懲戒処分しか科されておりません。また、先日の本会議での仙谷大臣の御答弁にもありましたように、センターがそういった懲戒処分の勧告をするというだけで本当に実効性のある規制というものになっているのかどうかということを私は極めて疑問に思っております。
 その点、我々の法案では、鳩山内閣での裏下りの横行にかんがみ、さらに、国家公務員法百六条の二に倣った二十万円以下の罰金という刑事罰を科すこととした次第であります。
 以上であります。

○高木(美)委員
 今、議場からさまざま声が飛んでおりますが、そうした公務員制度改革、基本法のときも、与野党で力を合わせて天下り根絶のために頑張ろう、そういう流れがございますので、やはりこれは、そういうことをしっかり踏まえて、当委員会も力を合わせて審議をさせていただきたいと私は思っております。
 今、柴山議員からお話ありましたように、やはり官僚OB、表向きはOBの形にしながら裏は役所という、実はこれは、十一月六日、新政権が議運に、天下りの定義、政務三役の法律上の位置づけということで出された書類です。天下りの定義というところですが、もう一度念のために読ませていただきます。
 「「天下り」とは、府省庁が退職後の職員を企業、団体等に再就職させることをいう。したがって、公務員が法令に違反することなく、府省庁にあっせんを受けずに再就職先の地位や職務内容等に照らし適材適所の再就職をすることは、天下りには該当しない。 「渡り」とは、府省庁が」云々とあります。その「府省庁」というところに米印がありまして、「※「府省庁」には、政務三役、官僚OBは含まれない。」実はこういうコメントがあります。
 私は、これは大事なことだなと思っておりまして、やはりOBはここには含まれない、しかも議員も含まれない、また政党関係者がこうしたことをあっせんする場合も含まれない、こういう考え方からいきますと、今柴山議員からお話ありましたように、やはりこの裏下り、ずっとこれは長い間、長妻大臣も以前から、裏下りルートを根絶するために実態調査をすべきだ、こういうことをずっと繰り返して求めていらっしゃいました。私もやはり、新政権になられたのですから、この実態調査はしっかりとやるべきではないかと思います。
 実態調査をしていただいた上で、その上で、これで裏ルートを根絶できる、そのようなめどが立つのであれば、ただいまのような大臣の答弁、そのまま素直に受けとめさせていただきますが、そうでなければ、当然、私は、これは裏に入る、むしろ地下に潜る、この懸念をぬぐい去ることはできません。
 このことを指摘させていただきまして、またさらなる御協議をお願いしたいと思います。

第174回 国会 衆議院 本会議

第174回 国会 衆議院 本会議 第19号
平成22年4月6日(火)
午前九時開議

 【国会公務員法等の一部を改正する法律案・幹部国会公務員法案(議員立法)】の提出者として、公明党高木美智代議員の質問に対する答弁

○高木美智代君
 公明党の高木美智代でございます。

(中略)
 公務員制度改革は、我が国のあり方を根本から見直すものであり、長期にわたる計画性、実効性が求められる極めて重要な課題であります。
 本来、政府は、本法律案を上程する前に、公務員制度改革に関する全体像及びその工程表をまず国民に示すべきであります。そして、パブリックコメントを求めるなど国民的な議論の過程があってしかるべきであります。今回のような場当たり的な改革案では、本当に国民のためになる公務員制度の構築は期待できません。
 さて、次に、自民党、みんなの党共同提案による国家公務員法等の一部を改正する法律案並びに幹部国家公務員法について質問いたします。
 自民党、みんなの党共同提出の改正案についても、残念ながら、天下り根絶には不十分であり、国民の期待に十分こたえる内容とは言えません。
 事務次官の廃止は、いかにも霞ヶ関改革の象徴のように聞こえますが、他方、公務員全体の士気、政策の効率性と専門性の低下が懸念されることに対し、どうお考えなのでしょうか。
 むしろ、ウェストミンスター議会制度諸国では、昨今、幹部職員にマネジメント機能を与え、政策の企画立案への助言、人事や予算などの資源を効果的に管理し、アウトプットを効果的に行うような官僚機構への改革を行っており、こうした取り組みも参考になると考えますが、いかがでしょうか。
 また、幹部職を特別職とし、任用の際は、内閣との一体性の確保にも配慮して行うとしていますが、憲法に規定された公務員の公正性、中性性との整合性をどのようにお考えなのでしょうか。
 以上二点について、答弁を求めます。
 いずれにしろ、国民が注目しているのは、天下りは本当になくなるか、公務員は本当に国民のための仕事に専念してくれるのかであります。
 これらの声にこたえ得る公正で中立な人事行政の仕組みを適切に導入することこそ、今求められている公務員制度改革であると申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

(中略)

(柴山昌彦君登壇)
○ 柴山昌彦君
 高木議員に対してお答えを申し上げます。
 まず、事務次官についてですが、平井議員の質問に対してお答えしたとおり、従来、実質的な省のトップであった事務次官ポストは、真の政治主導の実現のために廃止するべきものといたしました。
 確かに、公務員の士気を高めること、政策の効率性や専門性を高めること、これらはいずれも重要な課題です。しかし、これらは、事務次官ポストを初め旧来の体制を維持することによって達成されるもではなく、むしろ、優秀な若手や民間人を抜てき登用したり、頑張った人により大きなチャンスが大胆に与えられるような組織をつくることによってこそ達成されると考えます。
 また、例えば英国などにおいて事務次官ポストが存在することは御指摘のとおりです。しかし、御指摘のような、政策立案への助言を行うために、かつて政治サイドに政務次官という役職がある時代からあった事務次官というポストが必ずしも必要とは考えられません。また、人事管理や予算管理、アウトプットを効果的に行うための改革を事務次官が行うべきということも必ずしもないと考えます。御指摘の、政策立案への助言などの役割を的確に果たすための体制は、幹部ポストの再整理を行う中で整備していくこととしております。
 もちろん、外国の制度を参考にすることは、よりよい制度を構築する上で有効な方策の一つですが、より優先されるべきことは、我が国の行政機構において、そもそも事務次官ポストを置くべきかどうかです。
 鳩山内閣が目指すという真の政治主導の実現のためには、実質的な省のトップとして、時に大臣と異なる方向を向いて動くようなポストなど、残しておくべきではなく、廃止するべきと考えます。
 続きまして、幹部職の公正中立性についてお尋ねがありました。
 私たちの議員立法案における幹部職とは、政務秘書官あるいは官房副長官などのいわゆる政治任用職とは異なり、むしろ、一般職と政治任用職の中間形態と位置づけております。
 人事管理は、先ほど来申し上げているとおり、能力・実績主義を基本としつつ、内閣との一体性の確保にも配慮して行うとしています。
 また、任用についても、いわゆる政治任用職のように、だれでも任命してよいわけではなく、しっかりとした適格性審査と候補者名簿作成を経て、その中から、総理、官房長官、大臣が選ぶ仕組みとしております。
 このように、議員立法案は、公平性、中立性との整合性、憲法の定める「公務員は、全体の奉仕者」との規定にも十分に配慮した内容となっていることをご理解いただければと思います。
 以上です。(拍手)

第174回 国会 衆議院 消費者問題に関する特別委員会

第174回 国会 衆議院 消費者問題に関する特別委員会 第3号
平成22年3月25日(木)
午前九時開議

○柴山委員 
 自由民主党の柴山昌彦です。
 大臣に、一般論としてお伺いしたいんですけれども、消費者被害などの企業不祥事が発生した場合に当該企業がしなければいけないこと、これは一体何だとお考えですか。

○福島国務大臣
 原因究明をすること、それと、一刻も早く国民に対して啓発、警告、あるいはきちっとした広報を行うことだと思います。

○柴山委員
 刑事手続に任せ切ることない原因の究明、それから消費者への説明、そして、当然のことながら、再発防止ということではないかと思います。私も大臣と全く同じ意見であります。
 ところで、今、与党にそれができているんでしょうか。鳩山総理や小沢幹事長の政治資金問題あるいは北教組の違法献金問題など、国民の大半が原因の究明また国民への説明が不十分と感じています。
 大臣は、率直に言って、今の与党がこうした部分において十分でないとお認めになられますね。いかがですか。

○福島国務大臣
 私は、きょう、大臣として、消費者被害、消費者問題について担当しておりますので、それについては、大いに、日本のさまざまな部門が事実究明それから説明と再発防止をするべきだと考えています。もちろん、政治の世界もそのことは重要であり、説明責任は尽くされるべきだと思っております。

○柴山委員
 今、内閣支持率が急落する中で、連立を組む社民党にも少なからぬ影響が出てくると私は思うんです。このまま大臣が何の手だても講じないということになると、御党にとっても非常に重大な危機となると私は思うんですけれども、ぜひこれから社民党の存在意義を発揮していただきたいと思うんですが、大臣、これから閣内でこうした問題について、何かこうした手だてを講じる、そういうような御意思はありますか。

○福島国務大臣
 これは消費者特別委員会ですので、社民党党首としての発言は差し控えさせていただきます。

○柴山委員
 社民党党首としての活動が閣僚の一員としての活動とリンクしないというようなお話かとも思うんですが、普天間問題ではそういうことは通用しませんので、ぜひ考えを改めていただきたいと思います。
 また、本日発売の週刊新潮に、中井洽国家公安委員長が銀座のホステスにカードキーを持たせて何度も赤坂議員宿舎に出入りをさせているという問題が報道されています。御本人は、何か問題はあるのかと開き直っておられるようですけれども、中井大臣は日本の治安を預かる大臣です。セキュリティーあるいは情報管理の観点から、また、女性閣僚として、福島大臣はこの問題についてどうお考えになりますか。

○福島国務大臣
 申しわけありませんが、私はその件は全く存じ上げておりませんで、新聞の広告で見ただけでありまして、済みません、全く存じ上げておりません。報道の中身も知りませんので、コメントはちょっと今の段階ではできません。

○柴山委員
 ぜひしっかりと中をチェックしていただきたいと思います。鴻池官房副長官は辞職されておりますので。
 きょうは、辻元副大臣にもおいでいただいておりますけれども、辻元副大臣はこの件について、御意見、御感想はありますか。

○辻元副大臣
 私は、今知りましたので何とも言えません。(柴山委員「感想はいかがですか」と呼ぶ)いや、さっぱりわかりません。

○柴山委員
 これだけ昨日から大きく報道されているにもかかわらず知らないというのは、私は問題だと思いますよ。
 さて、きょうは、公正取引委員会のあり方について質問させていただきます。
 この公正取引委員会、昨年九月一日に消費者庁に移管された景品表示法の所轄官庁であったことはもちろん、広い意味で消費者の利益を損なう談合ですとかあるいは不公正取引、こういったものを監視する重要な機関であります。
 実は、民主党の小沢幹事長のおひざ元である岩手県で、九十社を超える大規模な建設業界組織のトラスト・メンバーズ、今はTST親交会というように名前を変えているようですけれども、談合を繰り返していたとして、平成十七年の六月に公正取引委員会から排除勧告を受けています。この件は、異議が申し立てられていて審判が続いていたんですけれども、既に結審して、ことしの一月八日に業者側の直接陳述がなされました。もうそれから二カ月以上がたっています。この事件についての結論、審決は一体どうなっているんですか。

○鵜瀞政府参考人
 岩手県が発注する建築一式工事の入札談合事件につきましては、審判手続を行ってきたところでございますが、三月二十三日付で審決を行ったところでございます。

○柴山委員
 審決を行ったところでありますというんですけれども、それについての対外的なコメント、記者発表はやっているんですか。

○鵜瀞政府参考人
 現在、送達手続中でございまして、本日、新聞発表する予定でございます。

○柴山委員
 本日発表されるということのようでございます。
 なぜ、この問題についてここまで時間がかかったんでしょうか。

○鵜瀞政府参考人
 本件の経緯を申し上げますと、平成十七年六月に勧告をいたしまして、不応諾の会社がございましたので、審判開始決定をいたしまして、十七回審判を行いました。そして、先ほど委員御指摘のとおり、昨年に審決案を送達いたしまして、異議申し立てと直接陳述の申し出がございましたので、一月に直接陳述の聴取をしたところでございます。
 直接陳述の聴取から現在まで二カ月以上かかりましたけれども、これにつきましては、審判記録、異議申し立て書、直接陳述、そして審判官が作成した審決案を公正取引委員会が調査して審決を行うものでございますので、本件につきましては、被審人の数が八十社と多かったこと、それから直接陳述の申し出を行った被審人の数も多かったこと、そして、直接陳述の後、被審人の中で特別清算手続が終了して排除措置を命ずる必要があるとは認められない者が新たに確認できたという事情がございましたことから、結果的に二カ月以上経過したものでございます。

○柴山委員
 ただ、これまでの私の経験からして、ここまで時間がかかる案件というのはそうそうないと思います。この後、ちょっとまた審判手続については質問をさせていただきますけれども、今後、この件についても、岩手県の達増知事の指名停止等の処分がどうなるかなど、大きな関心を持ち続けてまいります。
 お手元にお配りした資料をごらんください。これは、今国会に提出を予定されている公正取引委員会の審判制度の改革に関する図です。
 これまでは、一番左の方にあるとおり、談合などの事案については、今の私からの事例でも問題提起させていただいたように、迅速な処分をしなければいけないということで事後審査型の審判、すなわち、一たん公取が処分を下して、それに不服がある場合に、公正取引委員会が当事者の言い分を聞いた上で審決を下すという制度だったんです。ところが、今度の独占禁止法改正案では、一番右の図にあるように、この審判制度が廃止されるということであります。なぜこのような改正が行われるんでしょうか。

○田村大臣政務官
 お答えいたします。
 今回、独禁法改正法案の提出をさせていただきまして、今御説明いただきましたように、審判制度を廃止するということでございます。
 柴山委員にお配りをいただいたこの資料にも書いてありますように、公正取引委員会が行政処分をして、その行政処分を実際に実施した公正取引委員会がまさに審判制度においては処分の適否を判断するというのはやはり不公平だ、不公正だという批判はもうずっと前からあったことでございまして、例えば民主党におきましては、従来から、かなり前、五年以上前から審判制度を廃止すべきという主張で一致をしていたところでありましたので、今回、この政権におきましても、その意見で法改正をするということでございます。

○柴山委員
 今、田村政務官からお話があったんですけれども、経済界はあくまで処分庁と不服申し立てを判断する審判庁の分離独立をきちんとしろというふうに言っているのであって、従前から専門性があり、迅速性があり、そして柔軟な判断ができる公正取引委員会の審判制度自体を廃止するまでのことはないんじゃないでしょうか。

○田村大臣政務官
 先ほど申し上げたように、民主党におきまして従来からそういう主張をしておりますのは、経済界の意見も参考意見としては聞いた上で総合的に判断をしているわけですけれども、そもそも経済界自体でも、柴山委員が今おっしゃったような御意見の方もあれば、あるいは、やはり廃止をすべきという意見もあったというふうに私も記憶をしているところであります。
 ですから、今回のこの総合的に判断というのもいろいろな要素はございますけれども、例えばヨーロッパやアメリカ、そういったところの制度も基本的にはやはり裁判所に任せるという流れになっておりますので、そういった世界的な流れも見た上で今回決定をしたということです。

○柴山委員
 今、総合的な判断ということをおっしゃったんですけれども、それでは、これまで公取がやってきた審判手続を裁判所に要するにぶち込むということになりますと、東京地裁の通常部、一番右下の絵にかいてあるように、東京地方裁判所も専属管轄になるということなんですけれども、東京地裁の通常部で談合などの経済事案に詳しい裁判官がどれだけいるんですか。

○田村大臣政務官
 東京地方裁判所にそのような問い合わせはそもそもしておりません、何人いるんですかと。
 そもそも、これからまさに東京地方裁判所で体制整備をする、それは法案を通していただいた場合ですね。そうしたら、法案を通していただいた場合に、それから施行までというのは一年六カ月を超えない範囲というふうに定めております。そこは、裁判所、法務省と事前に相談をさせていただいて、まさに体制整備には少なくとも一年六カ月は欲しいという先方の、法務省、裁判所の要望を踏まえて今回法案に盛り込んだものでございますので、その期間では体制整備ができるというふうに裁判所でも考えているということです。

○柴山委員
 今、野党の理事の方からもちょっと失笑が漏れましたけれども、そもそも、こんな重要な改正をするに当たって、地裁の裁判官がどういう体制になっているのかとか、あるいは、これは専門部を設けるわけじゃないですから、通常部の裁判官の勤務実態がどうなっているのか、そういうことを調査しないということ自体、我々としては信じられないですよ。
 裁判所の負担が今どのような実態になっているかということを御存じですか。ことし三月十二日に法務委員会で私は質問したんですけれども、東京地裁民事通常部で裁判官一人当たりの手持ち事件数は実に二百七十件。二年前の二百件に比べて大幅に増加しているんです。(発言する者あり)
 今、辻理事の方からお話があったように、裁判官の人数も、ことしは純増がわずか四十五人、思うようにふえないのに、こうした新しい事件をふやして大丈夫なんですか。

○田村大臣政務官
 まず最初に、先ほど先方に問い合わせをしていないと言ったのは、何人いますかと聞いていないだけでありまして、さらに申し上げるなら、東京地方裁判所に現在何人いるかというのは聞いても意味がないわけです、当然それは、最高裁、高裁、地方裁判所含めて、全体の中で人員をどうするかという話ですから。例えば、体制整備をする、今後どう体制整備をしようというのはまさに裁判所、法務省が考えていることでありますけれども、専門家は東京高裁そして最高裁には当然いらっしゃるわけでありますから、そういった方々の、トータルの体制を含めて考えるということでありますので、現在の東京地方裁判所に何人いるかというのは意味がない、だから聞いていないと申し上げただけであります。
 ですので、そこはともかく、法務省、裁判所としても一年半あればしっかり体制は整えられるということを言っているということでありますし、あと、今、確かに、東京地方裁判所、裁判官一人当たりの負担が大変重いという話は私も聞いておりますけれども、それは、一人一人の件数と今回の件というのは必ずしも、場合によっては東京地方裁判所の例えば人をふやすとか、いろいろな形はあると思いますので、本件が、今柴山委員がおっしゃったことをもって今回適正じゃないというふうには全く考えておりません。

○柴山委員
 今、専門家は高裁にも最高裁にもいるというふうにおっしゃいましたけれども、右下の図にあるように、これは、第一審手続はすべて東京地方裁判所が管轄をするという仕組みなんですね。だから、もし高裁とか最高裁に専門家がいても、第一審手続というのは全部東京地裁に事件が配てんされるわけですよ。だから、その一年六カ月の間にそういった専門官との人事ローテーションが適切に行われて、東京地裁にしっかりとした人材が集中して、そして、そういった人を持ってきたところに迷惑をかけないというようなことまできちんと考えているか。(発言する者あり)
 それから、今、辻理事から裁判官の定員の問題についてお話ありましたけれども、裁判官の定員は急にふえないわけですよ。これから一年六カ月の間にどういう形でトータルの定員がふえるかということについては、私は極めて疑問が大きいと思っています。
 それから、政務官、裁判所の人的体制の問題だけを私は問題にしているんじゃないんです。これが、例えば特許庁や国税庁や証券取引委員会など、さまざまなほかの行政審判を行っているところにどういう影響をもたらすかということをぜひ考えていただきたいんですね。
 例えば、特許の無効審判だって、審判官の任用システムが特許の審査官と同じ人事ローテーションの一環となっていて中立性に問題があるということはかねがねから指摘をされているんですよ。また、国税不服審判所の判断だって、これは有名な論点ですけれども、国税庁長官がこれに介入できるということになっていて、これもやはりおかしいじゃないかというように指摘をされているんです。金融庁の証券取引等監視委員会にも審判制度はあります。
 そういった他の行政庁による準司法手続をどうするかということと整合性を持って、きちんとした検討がされているんですか。

○田村大臣政務官
 いろいろと御指摘をいただきました。
 最初の東京地方裁判所の件に関しましては、ほぼ繰り返しになりますけれども、法務省も裁判所も一年半あれば体制整備はできるというふうに言っているわけです。ですから、私がそれ以上さらに力説する立場にはないわけでありますけれども、法律を通していただいたら、そこはしっかりと、まさに政府全体として体制を整備していくと。
 あわせて、委員は御案内だと思いますけれども、過去におきまして、そもそも、年間六件程度、ただ、一件一件は当然大変重いわけでありますので、委員の御主張というのはそれを踏まえた上であると思いますけれども、いずれにせよ、そこは政府としてしっかりと体制を整備するということであります。
 そして、後段の御質問の件でありますけれども、ほかの行政手続との関係におきましては、もちろん、そこは、今回の審判制度廃止も踏まえて、あるいは踏まえなくても、各省庁で検討をしているというふうに聞いています。
 今回、まさにこの独占禁止法の審判制度だけを廃止したというのは、やはりほかの行政手続と比べても特殊性、重要性、こういうようなものがある、そこは、それは切り離してやるのは十分に意義があるというふうに考えて判断をしております。
 例えば、国税不服審判所につきましても、まさに税制調査会で検討をする素材にはのっているところでありますし、そこは各省庁で今後検討されていくんだろうというふうに考えています。

○柴山委員
 私は、自民党が政権与党だった時代に、この準司法手続やADRと司法プロパーの体制の関係について省庁横断的な検討を進めてきたんです。政権がかわってから、経産省など役所の思惑と、それから縦割り行政に基づくそういう横ぐしのない検討が行われているということは私は甚だ遺憾ですので、ぜひ経済産業委員会でこの問題については徹底した議論をしていただきたいというように思っております。
 続いて、トヨタ車のリコール問題について質問をさせていただきます。
 まず、大臣に伺います。
 今回のリコール問題で、消費者庁と国交省、経産省はうまく連携できて事案の対処に当たれたというようにお思いになりますか。

○福島国務大臣
 トヨタの車の問題については、国内で発生した問題と国外で発生した問題とあるわけですが、トヨタ車のリコール問題に際して、消費者庁において、国土交通省、経済産業省等の関係行政機関との間で事故情報、関連情報の共有、事業者に対するヒアリングや改善要請を共同実施、消費者への情報発信に関する情報の共有などの連携協力を図ったところです。今後とも、消費者事故等の対応に際して、適切に関係行政機関等との連携強化を図ってまいります。
 御存じのとおり、フロアマットやいろいろな点はアメリカで起きたことで、日本の消費者に対する問題で起きた点につきましては、問題が起きたその日にトヨタ社に連絡をし、きちっと説明に来てもらい、各関係省庁と連携をとり、リコールにすぐなった次第です。

○柴山委員
 という御説明なんですけれども、民主党の消費者問題に関する議員政策研究会は、報道によると、消費者庁がトヨタ自動車のリコール問題などで国交省や経済産業省などとの連携がうまくいかなかった例があるなど司令塔としての役割を十分果たせていないということで、重大事故が起きた際に各省庁に報告させる権限を拡充するよう政府に提言をするということが言われているんですね、民主党のことだから御存じないかもしれませんけれども。
 これについて、福島大臣はどういうお考えをお持ちでしょうか。

○福島国務大臣
 消費者問題というのはグローバルで起きますので、今後外国で起きた消費者問題に関してどう消費者庁がやるかは、私は検討事項だと思っております。
 ただ、この問題は、日本で起きた消費者問題について消費者庁がどうするかというスタンスで基本的にはやってきました。アメリカで起きたフロアマットなどについては、現在、国民生活センターにおける商品テストを行っている段階で、起きたことについては、商品テストを行って、結果を待っている状況です。日本においては、今回の報道された件以降につきまして、これについては、その日に行動し、関係省庁と連携をとり、リコールということになった次第であり、今後も事前の連携などはきちっとやっていきたいというふうには思っております。
 ただ、今回、PIO―NETなどにこの情報がきちっと上がっていなかった、要するにブレーキの件で。ですから、消費者庁としては、事態が外部に出る前にどう把握できたか、どう認知できたかという点について課題はありますが、問題が出た以降については、その日に行動し、関係省庁と連携をいたしました。トヨタ社も説明に来られ、最後は社長もきちっと消費者庁に説明に来られるということで対応しました。
 ですから、重大事故が起きたときに機敏に行動し、司令塔、エンジン役として頑張るべく、今回の点ももっと出っ張れたんじゃないかということについてはまた考えつつ、きちっとやっていきたいと思っております。

○柴山委員
 ぜひ検討していただきたいと思います。
 本件については、各省庁の連携の問題について、今福島大臣みずからが少しお触れになったように、国内の問題のみならず海外の問題があったということが私は大変重要だと思っているんです。直嶋大臣や前原大臣はトヨタの対応が遅いというように批判されていましたけれども、各省庁は、今回、大きな問題となった米国トヨタ車の今おっしゃったフロアマットですとかアクセルのふぐあいについて、過剰な米国での反応ですとか、あるいは不当な調査を防ぐための何らかの活動というものは行っていたんでしょうか。国交省及び経産省にお伺いします。

○辻元副大臣
 お答えいたします。
 国交省では、自動車の安全、まず国内での安全を第一義的には担当しています。今回、米国でのトヨタ車のリコール問題は、米国の運輸当局の取り扱うところになっています。ただ、これはそれぞれの主権があって、日本の国内で例えば外国車の何かが起こったとしても日本の基準できちんと国交省が対応する。それは、日本であった事故等ふぐあいについて、その国の運輸当局が、そこが判断するのではなくて、しっかり日本でやらせていただく。そのかわり、米国であったら米国でやるというように、それぞれ国際的にはリコールや自動車等の安全問題は対応するということになっております。
 しかし、今回の場合は、トヨタという日本の会社で、そして広く世界にも進出している会社であるということから、米国の運輸当局からの情報提供をいただいたり、それからトヨタの社長及び関係者に対して報告を求めたり、そして、その対応についてしっかりやっていただくように要請したりということを行ってまいりました。

○近藤大臣政務官
 柴山委員の御質問にお答えいたします。
 まず、基本的な認識として、自動車産業にとって、安全性を含めて品質の高い自動車をつくるということは大事な生命線であります。そうした中で、今回のリコール問題でありますけれども、そもそも、事の本質といいますのは、米国であれ国内であれ、消費者の方々とメーカーの問題であります。
 委員御指摘の、何をもって不当な調査とおっしゃっているのかよくわかりませんが、米国の公聴会において、それぞれ、各出席者の方々が、本件に関するそれぞれの認識に基づいてそれぞれのお立場で御発言をされている、こういうふうに考えております。ですから、この内容について経済産業省ないしは政府としてとやかく言うのは正しいことではないだろう、私はこう考えています。
 一九九〇年代の半ばにあったいわゆる日米構造協議のときとは随分様相が違っておって、当時は、クリントン政権下の中で、ミッキー・カンターUSTR代表が橋本通産大臣に竹刀を向けて、こういう時代でございました。ただ、あれはまさにGGベースの交渉だったわけですけれども、今回はアメリカの消費者の方とメーカーの問題でありますし、当時のようないわゆる日米摩擦という認識は少なくとも我々は持っておりませんので、トヨタにおける真摯な対応を注視しておるということであります。
 いずれにしろ、経済産業省としては、在外外交官を含む外務省、国交省、他省庁と連携をしつつ、大変大きな産業でありますから、注視をしてまいりたい、このように思っておるところでございます。

○柴山委員
 全く認識が甘いと私は申し上げたいと思います。
 考えてください。オバマ政権とアメリカの議会は、米国ビッグスリーの再建という国益を前面に出してトヨタを追及しているんですよ。そして、それに対して日本はどうか。日本は、ジャパン・ブランドに対する信頼が重大な危機にさらされているのに、アメリカと、今政務レベルの交渉という話がありましたけれども、どう交渉すれば早期に収拾を図れるかですとか、Gレベルで、政府レベルでどういう対処をすればいいかというような発想は全くなかったとしか思えないんです。
 そして、お伺いしたいんですけれども、この問題について、アメリカ三大ネットワークの一つであるABCテレビが二月に、トヨタ車の急加速の原因が電子制御装置の欠陥であるとする専門家の実験の再現番組を放映して、急加速するトヨタ車の映像と同時に、エンジン回転数の急上昇を示すタコメーターの映像を流したんです。ところが、実は、この問題のタコメーターの映像は別の停止中の車のものを編集段階で組み合わせたもので誤った編集だったということをABC自身が認めているんです。こういったやらせ番組に対して、政府は抗議などの対応をしたんですか。

○近藤大臣政務官
 そもそも、米国の報道機関が報道した民間企業に関する内容について政府が抗議をするということが果たして適切かどうかというのは、私は非常に疑問であります。
 もう一点、もう一度御説明を申し上げたいと思うんですが、それは柴山委員の御認識は御認識として承りたいとは思いますけれども、米国トヨタは、米国で生産をし、米国で雇用をし、米国の企業としてもう既に活動をしているわけです。私どもは、米国政府がそうした米国で雇用をし米国で生産をしている企業に対して不当な調査をしているという認識は持っておりません。
 以上でございます。

○柴山委員
 それは別法人だということは当然ですけれども、そういった認識というのは、私は国益の観点から極めて問題だと思うんです。正当な調査、不当かどうかは、もちろん、向こうのことです、内政干渉はするべきではありませんけれども、正当な調査や報道であれば、これはきちんと我々は受けとめるべきですし、現地法人にも受け入れてもらわなくちゃいけないと思いますけれども、そうでなければ、やはり日本の国益を断固として守るという姿勢を政府には持っていただかないといけないと思います。
 どうも、今の与党の皆さんは、野党時代の企業たたきの発想に偏っていて、国益を顧みない、こういった姿勢が極めて濃厚だという問題点を指摘させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

第174回 国会 衆議院 法務委員会

第174回 国会 衆議院 法務委員会 第4号
平成22年3月12日(金)
午前九時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 まず、千葉大臣にお伺いします。
 大臣は、法曹人口の拡大についてどのような方針、御意見をお持ちでしょうか。

○千葉国務大臣
 お答えをさせていただきます。
 私は、法曹人口の拡大は基本的には必要だという認識でこの間考えてまいりました。
 委員も御承知のとおり、司法制度改革におきまして、審議会でも、二十一世紀にふさわしい司法制度のあり方ということが幅広く議論をされまして、その中で、これからの社会像といいましょうか、そういうことも踏まえながら、今後は国民生活のさまざまな場面において法曹に対する需要が多様化、高度化するということが予想される、社会の中で法の支配をあまねく実現する前提として、例えば、弁護士の地域的偏在などを是正する、あるいはさまざまな司法にかかわる人、人的基盤を広げていく、こういう必要性が指摘もされてまいりました。
 私は、この改革審議会の意見、こういうものが今の社会の大きな基礎を示しているものではないか、そういう意味で、法曹人口、それに伴って的確に拡大をされていく、あるいはすることが必要であろうという認識に立っているものでございます。

○柴山委員
 なるべく御答弁は簡潔にお願いしたいと思います。
 拡大の方向性というものは間違っていないというような御発言だったかと思います。
 もちろん、今回の法案で取り上げる裁判官の定員をどうするかということは、裁判官とともに仕事をする検事や弁護士の定員をどうするかということに密接にかかわってくるわけです。
 しかしながら、おととい三月十日、異例の再投票で、日本弁護士連合会会長に、法曹人口拡大の政府目標に正面から異論を唱えておられます宇都宮健児弁護士が当選されました。
 弁護士会長の個別人事ということではなくて、法曹人口削減を唱える日弁連会長の誕生ということについて、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

○千葉国務大臣
 私としては、これまでと同様、法曹人口は十分にこれからも増大をさせていく、そういう方向で、当然のことながら、日弁連などの御協力もいただいてまいりたいというふうに思っております。
 今度の会長の御真意といいましょうかお考え方、正式に伺っているものではございません。また、これから日弁連としてどのようなお考え方を全体としてお取りまとめになっていくのか、こういうことも定かではございませんが、できれば、司法制度改革、そして法曹人口、本当にきちっと的確に充実させていくということに後ろ向きになっていただくことがないようには期待をいたしているところでございます。

○柴山委員
 確かに、諸外国に比べて一けた割合が少ないと言われる日本の法曹人口の拡大の必要性は、実はこれは私が生まれる前から指摘をされておりましたし、にもかかわらず、弁護士会などの反対のためにそれがなかなか進んでこなかったのは、やはり、ギルド的な既得権益擁護体質があったという面は否定できないと私は思います。また、それを打ち破るための改革が必要だということも私自身確信はしております。
 しかし、質の低下ということはやはり避けなければいけないと思うんですね。手術が満足にできないお医者さんがお医者さんとして仕事をする、ぞっとするようなお話であります。今、法曹の社会的役割ということを考えた場合に、私はまさしくこういった配慮が必要となってくるんだと思うんですね。
 そこで、大臣にお伺いいたしますけれども、急速な法曹人口の拡大という中で、さまざまな弊害も指摘されております。政府目標、二〇一〇年までに司法試験の年間合格者数を三千人まで引き上げるというこの目標が見直される可能性はないのでしょうか。もうことし二〇一〇年ですけれども。

○千葉国務大臣
 基本的に、平成二十二年ごろには合格者数三千人程度を目指すという、既に閣議決定をいただきながら進めてきたものを今見直すということは考えておりません。

○柴山委員
 今とおっしゃいましたけれども、これまで私も、与党時代、さまざまなヒアリングをしてきましたし、また法務省の方々にもさまざまな場面で今申し上げたような懸念、さまざまな現在の状況について説明をさせていただいたんです。
 もうことしも三月の十二日ということになりまして、当然のことながら、間もなく司法試験シーズンがめぐってくるわけなんですよ。どうしてこうやって対応が先延ばしになっているのか、どうして率直な検討が行われていないのかということを私は極めて遺憾に考えております。今からでも、できる検討を極力加速して行っていただきまして、文科省等ともしっかりと議論を進めてほしいというように申し上げたいと思います。
 法曹がふえ過ぎでないかという検討の一方では、逆に、その中の裁判官はふえなさ過ぎではないのかという疑問を私は持っております。
 先ほど御指摘があったかとも思うんですけれども、裁判官、こちらは平成二年には人口は二千十七名、そして平成二十一年には二千七百六十名、この間三七%の増加となっているんですね。一方、弁護士は、同じく平成二年には一万四千百七十三名、平成二十一年には二万六千九百五十八名ということで、この間の増加は何と九〇%であります。検事ですら、平成二年千百七十三名、そして平成二十一年には千七百二十三名で、四七%の増加となっていて、裁判官よりは大きな伸び率を示しているわけです。
 こういうデータのもとで、弁護士や検事に比べて余りにも裁判所の体制が不十分じゃないかという指摘が可能かと思うんですけれども、これは裁判所の方にぜひお伺いしたいと思います。
〔委員長退席、樋高委員長代理着席〕

○戸倉最高裁判所長官代理者
 お答え申し上げます。
 裁判官の人的体制というのは、基本的には、裁判官がどのような負担を負うかということを基準に判断してまいるわけでございますが、そのような負担というものは、委員も御存じのように、直接的には裁判所に提起される事件数や事件の中身といった点がございます。さらに、事件処理がどのように行われているかという点も関連してまいります。さらには、裁判員制度を初めといたしました裁判手続がどのように変わってきたか、どのような効率化が図られてきたかといった点も規定要素となろうかと思います。
 こういったことを踏まえまして、裁判官の増員につきましても、このような事件を適正迅速に処理するために裁判官が足りているかどうかという観点から検討しているところでございます。
 今委員の御指摘の、弁護士あるいは検察官の増加率の比較の点でございますが、これは、弁護士であれば、訴訟事件だけではなくて、予防法務あるいは裁判外の紛争解決など、さまざまな広範な社会的、法的ニーズに的確に対応しておられるという点がございます。また、検察官につきましても、公判だけではありませんで、その前提となる捜査という点にも大きなエネルギーを割いておられるところと承知しております。
 そういったことがございまして、裁判官のこれまでの人員の増加率と弁護士、検察官の増加率とを比較して、裁判所の体制がどうであるかということを御説明申し上げるのは非常に困難であるということは御理解いただければと思います。
 ただ、いずれにいたしましても、法曹人口の増加は、いずれ、民事事件を中心といたしまして、裁判所に提起される事件の増加につながっていくものと我々は予測しておるところでございまして、こういった点も考慮、念頭に置きながら、国民の裁判所に対するニーズをできる限り的確に把握いたしまして、計画性を持って鋭意必要な人的体制の整備に努めてまいりたいというふうに考えております。

○柴山委員
 ただ、法曹人口がふえれば、それに伴って、例えばある程度民事事件がふえていくというような相関関係というものはやはり私はあるんじゃないかと思うわけです。法の支配がその分やはり広がっていく、アンダーグラウンドに埋もれていたものが表に出てくるという関係にはあるのかと思いますので、そこはぜひしっかりとした検証をしていただきたいと思います。
 今御説明の中で、裁判官の負担というものが大きなメルクマールだというようなことをおっしゃったと思うんですけれども、それでは、一人当たりの裁判官の手持ち件数について、例えば東京地裁の民事部の通常部についての最近の推移をぜひ聞かせていただきたいと思います。

○戸倉最高裁判所長官代理者
 お答えいたします。
 今御指摘の東京地方裁判所民事、これは通常部でございますが、これの裁判官一人当たりの手持ち件数、これは平成二十一年度末の数字でございますが、約二百七十件ということになってございます。

○柴山委員
 二百七十件ですよ。ちょっと私は想像を絶する数字だと言わざるを得ません。
 実はこの問題は、私、二年前にも質問したんですね。二年前に同じことを聞いたんですよ、東京地裁民事部の通常部での裁判官一人当たりの手持ち件数は幾らですかと。そのとき何と答えられたかというと、二百件ですよ。この二年間の間でまた飛躍的にふえているわけなんですね。
 私の手元に平成十三年の四月十六日付で、最高裁判所事務総局が出した「裁判所の人的体制の充実について」というペーパーがあります。この中に、今後の目標として、裁判官の手持ち件数を大幅に減らさなければいけない、手持ち件数を現在の百八十件から、四分の三の百三十件から百四十件、こういった形でペースダウンしていくということが必要だというように明記されているんですよ。今おっしゃっていることと全く矛盾しているじゃないですか。どういうことなんですか。
〔樋高委員長代理退席、委員長着席〕

○戸倉最高裁判所長官代理者
 答え申し上げます。
 最高裁判所が、司法制度改革審議会の過程で、今委員御指摘のような手持ち件数の減少を図るということを申し上げたことにつきましてはそのとおりでございまして、それを踏まえまして、最高裁判所といたしましても、平成十四年以降、計画的な増員を図ってきたわけでございます。
 これに対しまして、当時の御説明におきましても、これはあくまで、事件数がその当時の事件で推移する場合は、その前提であるということを申してきたわけでございますが、その後、特に近年、過払い金事件を中心といたしまして事件が激増したという状況がございまして、その結果、今申し上げたような手持ち件数の増加ということにつながってまいったわけでございます。
 そういう意味で、その増員部分を増加した事件への対応ということに当面振り向けるということになってまいっているわけでございますが、そのような状況にありましても、審理期間等を見ましても、事件処理につきましてはおおむね支障なく行われてきておるところではございます。
 ただ、この意味で、裁判官の負担が非常に大きくなっておりまして、こういった事件処理を維持する上で、やはり裁判官の負担が大きくなっておるということは、我々も間違いのないことだと認識しております。
 そういうことで、裁判所といたしましても、今後とも、事件数あるいは処理状況などを踏まえながら、引き続き、必要な人的体制の整備に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

○柴山委員
 そういう認識がありながら、何で今回こういうものを出してくるんですか、こういう数字のものを。
 判事補採用だって、これだけ修習生がふえているわけですから、それはやはり、さっき言ったように、質の低下というものは避けなければいけませんよ。だけれども、任官希望者の中でしっかりとしたセレクションをかけた上で、そんな、一割弱しか採用しないというようなことは、これは私はノズルを絞り過ぎじゃないかなと思うんですよ。
 はっきり言って、この平成十三年の、今私が紹介した書面の中には確かに十年間で五百人の増員ということが書いてあるんですね。さっきの法務大臣の御答弁と同じじゃないですか。一度決まった方針に要するに波紋を呼びたくないと。担当が変われば、それは時限爆弾の先送りで、自分のところで波風立てたくない、決まったことはそのまま忠実に、事情が変更してもそのままやっていく、そういう役所体質が日本の国をだめにしていくんですよ。
 それから、先ほど稲田委員の方からもちょっと御指摘ありましたけれども、裁判員裁判の導入で、やはり裁判官の忙しさというか払底状況というものはますます大きな問題となってくるんじゃないかというように私も思います。またさらに、事件の専門化、また複雑化によりまして、今、特別部がたくさんできていますね。そういう特別部の充実の要請ということにも私は十分配慮するべきじゃないかというように思っているんですけれども、どのようにお考えでしょうか。

○戸倉最高裁判所長官代理者
 お答え申し上げます。
 今委員御指摘の裁判員裁判への対応につきましては、平成十七年度から二十一年度までの間、五年間で合計百五十名の増員を行っております。これは、昨年、裁判員制度が施行されまして、その後の状況を見ておりますと、この体制によりまして順調な審理が進んでおるのではないかというふうに考えております。
 ただ、委員も御承知のように、裁判員裁判というのは、今後、否認事件であるとか、さらに複雑困難な事件などの審理が本格化するという状況にございますので、私どもといたしましても、審理の実際の運営がどのようになっていくかということには十分注意を払いながら、その必要な体制の整備という点にも意を払ってまいりたいというふうに考えております。
 また、専門性への対応も裁判所にとっては重要な課題でございまして、これまで専門性への対応ということで、集中部など、あるいは専門部を設けるというようなことをやってまいりました。
 その観点から裁判官の体制を見てみますと、例えば東京地方裁判所の知財専門部、知的財産権専門部がございますが、これは平成九年は一カ部、裁判官八名体制でございましたが、これが平成十年度以降、部の増設と増員を行った結果、現在では四カ部、裁判官十六人体制となっております。また、大阪地方裁判所におきましても同様な措置を行いまして、現在は二カ部、裁判官六人体制となっております。さらに、平成十七年には知的財産高等裁判所を設置したところでございます。
 このような専門事件への対応を行ってきました結果、知的財産権訴訟の審理期間につきましては、地裁第一審で、この十年間でおおむね半分になるといった成果が上がっておるところでございます。

○柴山委員
 確かに、専門部をつくって審理期間が大幅に短縮されるですとか、あるいはその事件解決の適正性というものがより高まるとか、そういうことがあれば、例えば通常部の裁判官を引っ張ってくるということで足りるという判断にも一部は合理的な部分もあるのかもしれませんけれども、ただ、やはり事件数の拡大ということとの絡みで、本当にそれで十分なのかということは常に私は検証していくべきだと思うし、さっき申し上げたことの繰り返しになりますけれども、一度方針を決めたからといって、不都合が生じればしっかりとそれに対応していくということは忘れないでいただきたいというように思っております。
 そしてもう一つ、私が指摘をさせていただきたいのは司法過疎地への対応ということなんですね。弁護士もゼロワン地域の解消ということで、司法支援センター、法テラス、そういった対応をしているわけですけれども、裁判所の方では、支部、支庁の充実、あるいは増設ということについて、どのような対応をされているんでしょうか。

○戸倉最高裁判所長官代理者
 お答え申し上げます。
 裁判所の使命は適正迅速に事件を審理、判断することでございまして、このことは、都市部であると、あるいは人口の少ない地域であるとを問わないということは言うまでもないというふうに考えております。
 また、裁判所の人的体制の整備におきましても、各地の業務の質、量に見合った体制を整える必要がございまして、裁判所といたしましても、これまで各地の裁判所における事件数の動向等に応じた体制整備に努めてまいっております。この点は支部等の小規模裁判所においても同様でございます。
 こういった点で、各地の裁判所におきますニーズに対応する体制を整備することで、支部などの小規模の裁判所におきましても、おおむね本庁と遜色のない事件処理が行われているものと承知しております。
 裁判所といたしましても、地方を含め、どの地域においても滞りなく事件処理が行われるようにいたしまして、全国的に公平な司法サービスを実現すべく、その体制の整備に努めているところでございます。
 また、さっき、支部の増設という点も御指摘がございましたけれども、支部の増設等を含めました支部の配置ということにつきましては、これは、裁判所へのアクセス、あるいは提供する司法サービスの質等を総合した国民の利便性を確保するという観点から、人口動態、交通事情の変化、あるいは裁判所で取り扱う事件数の動向等を考慮しながら、さらには近時のIT技術の進展等も視野に入れて、これは総合的な利便性の向上という見地から検討する必要性があろうかと認識しております。
 こういった点から、最近の情勢といたしましては、司法制度改革に関連した新たな諸制度が順次実施されまして、これがどのように裁判審理に影響を及ぼしておるか、あるいは市町村合併に伴う地域社会の状況の変化がどうなっておるかという点も我々としては注視しているところでございます。
 今後とも、裁判所といたしましては、地域の住民の方々がよりよい司法サービスを受けることができるよう、裁判所全体の配置のあり方といった観点から検討を行ってまいりたいというふうに考えております。

○柴山委員
 今おっしゃった人口動態ですとか、あるいはさっき言ったような手持ち事件のデータとか、そういうのはどういう形で検証しているんですか。今、一般論としておっしゃったけれども、例えば個々の地域でそういうことをきちんと検証するというような作業は、裁判所の事務局の方ではやっているんですか。

○戸倉最高裁判所長官代理者
 お答え申し上げます。
 各裁判所のニーズと申し上げますと、やはり具体的に個々の支部、あるいは簡易裁判所に提起された事件数といったことを我々としては一つ大きな手がかりとしているところでございます。
 その際、我々として、そのニーズに十分おこたえしておるかということに関しましては、その各地の裁判所の事件数、あるいは裁判官がどのような処理をしておるかというのは随時把握をして、検討しておるところでございます。
 あと、その処理状況という点では、例えば支部におきます訴訟の平均的な審理期間というものがどうなっておるか、非常におくれてはいないかというようなことも注視しておりまして、この点、審理期間につきましては、全く本庁と遜色のない状況になっておるというふうに把握しておるところでございます。

○柴山委員
 しっかりと検証していただきたいと思います。
 さっき、IT技術の進展というお話ありましたけれども、ITが使える方ばかりではありませんから、特に高齢者をねらったさまざまな悪質な事件等も続発しているわけですから、そういったことにもきちんとした目配り、配慮というものをお願いしたいというように私は思っております。
 こういうところで、法律家あるいは裁判制度が十分機能していないときにどういうふうになるか、御存じですか。政治家が出てくるんですよ、間に、口ききで。私も弁護士時代に、ちょっと固有名詞は挙げられませんけれども、何人かの、複数の政党の方から、やはり政治家介入案件というものがありました。そういうことをやはり少しでもなくしていくということがこれからの社会には求められていくというように思うんです。政治家は政治家としての仕事をする、そして法律家は法律家としての仕事をする、そういう社会の実現のために、ぜひ御尽力を賜れればと思います。
 ただ、今いろいろと逼迫の要因ばかり申し上げましたけれども、今、少しお話があったように、紛争解決の多様性と、弁護士がいろいろな紛争解決の手続に力を発揮しているというような御指摘もありましたけれども、そういうものがどんどん進んでくれば、裁判官だけが紛争解決をするということは恐らくなくなってくるんだと思うんです。
 この委員会でも検討してまいりましたADR手続の充実ですとか、あるいは準司法手続、行政の中で公正性を担保するために司法に準じる手続で審査をするという手続、また仲裁等の手続、さまざまあると思うんですけれども、こういった事柄の拡充ということについて、法務省、大臣、どういう御見解をお持ちなんでしょうか。

○千葉国務大臣
 大変重要な御指摘だというふうに私も受けとめさせていただいております。
 もう既にお触れいただけましたように、司法制度改革の中で、民間ADR、法務省としては認証制度、それを受け持つということで創設されておりますし、仲裁制度の整備、労働審判制度等々、さまざまな紛争解決手続が新しくつくられたということがございます。
 残念ながら、仲裁制度はなかなか日本でまだまだ活用がされにくい、されていないという実情はありますが、民間ADR、こういうものがかなりつくられ、そして機能を発揮しつつあるところでもございます。
 そういう意味では、法務省としても、このような解決手段、とりわけ、認証した民間のADR、これが大いに利用していただけるように、また環境の整備や、あるいは充実のために力を尽くしてまいりたいというふうに思っております。

○柴山委員
 お願いしたいんですけれども、ただ、けさの新聞なんかを見てみましても、今、独占禁止法の改正の議論の中で、準司法手続である公取の審判制度を廃止して、不服申し立てを裁判所の手続に一本化しようというような法改正を民主党さんの方でされようとしているんですよね。今おっしゃっていることとあべこべじゃないですか。もちろん、いろいろとこれまでの制度に問題点があることは私も承知をしていますけれども、これこそまさしく縦割り行政以外の何物でもないんじゃないですか。
 経産省は経産省で独自の判断をする、法務省は法務省で法務省の独自の判断をして政策立案をする、相互の連携とか、特に準司法手続というのは各省横断で取り組まなければいけない問題なんですよ。行政改革の非常に大きな起爆剤となるとすら私は思っているんです。そういうことの問題点について、質疑時間が終了したということですので、これは消費者特別委員会の方でしっかりと追及させていただきますので、またよろしくお願いいたします。
 以上です。

第174回 国会 衆議院 法務委員会

第174回 国会 衆議院 法務委員会 第3号
平成22年3月9日(火)
午前九時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 本日は、まず検察捜査の公正性について伺います。
 民主党石川知裕議員が政治資金規正法上の虚偽記載罪で起訴されたにもかかわらず、小沢幹事長は不起訴となっております。この理由につきまして東京地検はどのように説明しているのか、改めて伺います。事実関係の確認なので、当局に伺います。

○西川政府参考人
 お答えを申し上げます。
 検察当局においては、小沢幹事長について、告発を受け、処分に必要な捜査を遂げた上、嫌疑不十分による不起訴としたものと承知をしております。
 嫌疑不十分のより具体的な理由について申し上げますと、検察当局において、収支報告書の作成、提出義務者でもなく、現にその作成、提出に直接かかわっていない小沢議員を収支報告書虚偽記入等の罪に問うためには、会計責任者らの行為を通じてみずから犯罪を実行する意思を有していたことが必要であるが、同議員にそのような共謀の成立を認定すべき証拠は不十分であると判断したため、嫌疑不十分により不起訴処分としたものと承知をしております。

○柴山委員
 石川元秘書の行為を通じて虚偽記載罪を実行する意思、これが認められなかった、共謀を認定するに足る証拠が不十分だったというようなお答えであったのでしょうか。
 共謀を認定するに足る証拠が不十分というのは、一体どういうことなんでしょうか。小沢氏は、当時の石川秘書が勝手にやったことで自分はあずかり知らないというように主張されているわけですけれども、検察は小沢氏が虚偽記載を知っていたことが証明できなかったわけではないのですか。

○西川政府参考人
 小沢議員に対する嫌疑不十分の具体的理由については先ほど申し上げたとおりでございまして、今の御質問にかかわりましては、小沢幹事長の認識も含めまして、ただいま申し上げた以上の事柄につきましては、現在公判係属処理中の具体的事件の証拠関係にかかわる事柄でありますので、お答えは差し控えさせていただきます。

○柴山委員
 繰り返しますが、小沢氏は、自分はあずかり知らないというように主張しているわけです。ただ、今回、検察側が嫌疑不十分とされたことについては、あくまで当該石川秘書との共謀について立証されていないというにすぎません。
 一月二十一日に私が予算委員会で指摘したように、小沢氏は、自分の積み立ててきた金で世田谷の不動産を買うように石川氏に指示したと一方では言いながら、同じ金額を銀行から借り入れて当該不動産の購入資金とすることを了承して関係書類にサインしていたわけですから、どう考えても、小沢氏自身が前者のみずからの積み立ててきた金が収支報告書に記載されていないことを知っていたとしか思えません。
 検察がもし小沢幹事長が知っていたことが証明できたのであれば、そのようにぜひ指摘をしていただきたいと思います。

○西川政府参考人
 繰り返しになりますが、嫌疑不十分の理由については先ほど申し上げたとおりでございまして、今の小沢幹事長の認識の問題も含めまして、お尋ねの事柄は、現在公判係属中の具体的事件の証拠関係にかかわる事柄でございますので、答弁は差し控えさせていただきます。

○柴山委員
 では、本当に共謀の事実、共犯性は証明できないんでしょうか。
 現在、検察審査会に不起訴不当の申し立てがされていますから、そちらの展開にゆだねますけれども、私からは判例を一つ紹介します。
 これは、暴力団の組長である被告人が、直接みずから指示を下さなくても、ボディーガードが襲撃に備えてけん銃を所持していたということを確定的に認識しながら、これを当然のこととして受容し、ボディーガードも被告人のこうした意思を察知していた以上、意思の連絡があるというように認定し、しかも、被告人がボディーガードを指揮命令する権限を有し、ボディーガードによって守られているという事実があることで、実質的には被告人がけん銃をボディーガードに所持させていたとして、銃刀法違反の共謀共同正犯を認めた事案です。最高裁の平成十五年五月一日の決定であります。
 こうした事例があるにもかかわらず、今回、小沢氏の起訴が見送られた背景として、最高検の伊藤鉄男次長や東京高検の大林宏検事長が消極的であったとか、あるいは、検事総長の人事に与党の介入があるのを恐れたとか取りざたされていますが、そのようなことがあり得るのか、当局に伺います。

○西川政府参考人
 個別事件の捜査機関の具体的活動内容、それからそれに関連する事項については、お答えを差し控えさせていただくしかないわけでございますが、検事総長の任命につきましては、検察庁法十五条一項により、内閣が行う、制度上そのようにされているということでございます。

○柴山委員
 検事総長の任命は内閣がするということを今おっしゃったんですけれども、確かに検察庁法十五条にはそのような規定が書いてありますけれども、例えば、先日、二月二十六日に開催された衆議院の予算第三分科会で、民主党の議員がこんな質問をしているんですよ。検事総長は内閣が任命すると書いてあるが、法務大臣が人事権の一環として自分が選んだ人を内閣に諮るということにはならないのか、また、法務大臣が民間人を検事総長に指名することができるのではないか。これについてはいかがですか。

○西川政府参考人
 お答え申し上げます。
 まず、検事総長の任命につきましては、先ほど申し上げたとおり、検察庁法十五条一項によって、内閣が行うとされているところでございますが、検事総長の適任者について、その任命のための閣議を求めるのは法務大臣、制度上そういうような関係になるということでございます。
 それから、どういう方を検事総長に任命するか、民間人の登用はあり得るかということでございますが、これは検察庁法に規定がございまして、検察庁法十九条で、八年以上二級の検事、判事補、弁護士の職にあった者などを検事総長、次長検事、検事長に任命することができるとされておりまして、いずれにしろ、検事総長、次長検事、検事長には、この法律の定めに従い、その時々でその地位にふさわしい者が任命されるというふうに承知をしております。

○柴山委員
 例えば弁護士ですとかあるいは大学の先生とか、そういう方を検事総長に任命することも理屈の上では可能だということですね。

○西川政府参考人
 委員のおっしゃるとおりでございまして、検察庁法十九条の要件を満たせば可能でございます。

○柴山委員
 では、検察幹部、例えば検事総長あるいは次長検事、各検事長、こういった方に今申し上げたような民間人の登用をした場合に、どのようなことが起きると考えられますか。現に、民主党は、国家公安委員に高木前連合会長を充てています。どうぞお答えください。

○西川政府参考人
 事務当局としては、先ほど申し上げた制度の説明を申し上げるしかないわけでございまして、先ほど申し上げましたとおり、検察庁法十九条の要件を満たし、かつ、先ほど申し上げた手続に従って、その地位にふさわしい適格な者が任命されるというふうに承知をしております。

○柴山委員
 答えになっていないんですよ。時の与党の息がかかった民間人が検事総長になった場合、権力の適正なチェックに支障が生じないか、そういう疑問が当然出てくるじゃありませんか。
 また、先ほど申し上げた二月二十六日に開催された衆議院予算第三分科会、この委員会で、先ほど私が言及した議員はこんな驚くべき質問をされているんですよ。「千葉先生のように、弁護士の経験があって国会議員である方が法務大臣になった。法務大臣と検事総長を兼任することは可能でございますか。」「私は、解釈上、法務大臣と検事総長が兼任することは憲法上も検察庁法上も何ら問題はないというふうに思っているんです。ぜひこれは法務省内で研究されて、」「公式の解釈を書いていただきたいというふうに思います。」
 この発言をお聞きになって、刑事局長、どう思われますか。

○西川政府参考人
 お答えを申し上げます。
 御指摘の分科会において、中島議員より、まず国会議員と検事総長との兼職についてのお尋ねがございました。それについて、私、その場では、憲法上、法律上、除外する規定はないという言葉を申し上げましたけれども、これはやや舌足らずでございまして、憲法、検察庁法には除外する規定はないという趣旨で答弁をいたしましたが、いささか正確性を欠いた嫌いがございますので、この場において正確な表現に改めさせていただきたいというふうに思います。
 その上で、お尋ねに関する法律の定めについてお答えいたしますと、国会法上、議員は、別に法律で定められた場合などを除き、「その任期中国又は地方公共団体の公務員と兼ねることができない。」とされているため、国会議員が検事総長となるためには法律の定めが必要でございますが、現在、そのような法律の定めはないので、国会議員が検事総長を兼任するためにはこの手当てが必要であるということになるというのが第一点でございます。
 次に、もし法務大臣が民間の方であったら検事総長と兼任することができるのだということになりますが、これは、国会法上の問題ではございません。しかし、他方、検察権は行政権に属するものではありますが、司法権とは密接不可分の関係にある。その独立性と政治的中立性を確保すべきことが要請されるということで、検察庁法十四条は、法務大臣は、「個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。」と定めているところでございます。
 ところが、法務大臣が検事総長を兼任した場合を考えますと、検事総長たる法務大臣がすべての検察庁の個々の検察官の具体的事件の捜査や処理について指揮するということができることになります。したがって、さきに述べたような検察庁法の趣旨に反することとなると考えられますので、法務大臣と検事総長の兼任は、本来、法律が予定しているところではないというふうに考えられます。

○柴山委員
 当然です。こんなことを許したら、これまでいろいろと議論をされている法務大臣の指揮権、こんなことを議論しなくても、政治が検察に圧力をかけ放題ということになってしまうんですよ。こういう発想がある、こういう質問をする議員がいる、これは私はスキャンダルに匹敵する大問題と思いますよ。マスメディアはもっと大きく取り上げるべきです。このような発想があること自体、私は、今の与党の極めて危険な体質をあらわしている、そういうふうに言わざるを得ません。検事出身の議員もおられますけれども、私は同じ意見だと思います。
 ところで、東京地検が最高検などと小沢氏の処分について協議をしたとされる二月三日の一部新聞に、朝刊で早々と「小沢氏不起訴の方向」という報道があったんです。何でこういう報道があったんでしょうか。どのような背景によるものなんですか、お答えください。

○西川政府参考人
 個別事件における捜査機関の具体的活動にかかわる事柄については答弁を差し控えさせていただきますが、今の御質問が、あるいは検察当局側から何らかのリークがなされたのではないかという御質問であるとすれば、従来から、捜査上の秘密に検察当局は格別の配慮を払ってきたものと承知をしておりまして、捜査方針や捜査情報を外部に漏らすということはあり得ないというふうに承知をしております。
 報道機関各社は取材活動に基づいてさまざまな情報を各社の判断で記事にしているものと思われますが、各社の判断の根拠は承知しておりませんので、法務当局としてコメントすることはできないところでございます。

○柴山委員
 民主党でも検察情報の漏えいに関するプロジェクトチームが立ち上がったということを仄聞しておりますけれども、今の御答弁にどれだけの方が納得をされるか、私は極めて疑問であります。
 私も実は与党時代に、重要な政策会議が開かれるまさにその日の朝、ああ、こうやって役所側の方針にしっかりと異論を唱えてこようと、喜び勇んでというか、しっかりと決意を固めて会議に臨むわけです。ところが、その朝刊に役所側の方針が、本来一部の政党幹部とか役所の中でしか知らないはずであるにもかかわらず、ばんと新聞に掲載されるという経験を何度もしております。
 これは意図的なリークではないんですか。これは、さまざまな一覧表とかを使って、そういう形でリークをされることがあり得るわけです。いかがですか。(発言する者あり)

○西川政府参考人
 委員の今提起された問題について私は承知しておりませんので、お答えができませんけれども、検察当局に関しましては、先ほど答弁申し上げたとおりということでございます。

○柴山委員
 先ほど後ろの方から、それは自民党の幹部が漏らしているんじゃないかというお話がありましたけれども、例えば、今回の検察捜査のさまざまな情報の漏えいというのは、与党幹部は経由していないんです。にもかかわらず、本当にこういう形で、しかも大変重要な会議が開かれる朝に、その会議に予断を与えかねない非常に重要な情報が出てくるということは極めて問題だと私は思っています。ぜひ、情報管理には注意を徹底してほしいというように思っております。
 いずれにせよ、秘書に当たる者、しかも現職の、現在国会議員の身柄をとって、しかも小沢幹事長の取り調べを二回も長時間にわたって行って、黙秘権の告知を行い、被疑者調書もとりながら、また資金源について再三小沢氏本人の供述がぶれているのに起訴を見送るというのは、私は経験則上、極めてイレギュラーであると感じています。
 さて、政治資金規正法以外にもさまざまな問題点があります。石川議員も小沢幹事長も、不正な、かぎ括弧が必要かと思いますが、不正な資金を受け取ったことは断じてないと言われていますけれども、それでは、なぜ、石川議員が、御自分も認めておられるように、不動産購入の資金源をこのような形で隠し、そして小沢幹事長がそのことに異を唱えなかったのか、納得のいく説明はついぞありません。
 先日の予算委員会で、私は千葉法務大臣にお伺いいたしました。もし公共工事を受注する会社から国会議員が見返りとして寄附を受けた場合、あっせん利得罪などの刑罰に触れる可能性はありますか。覚えておられると思います、いま一度御答弁ください。

○千葉国務大臣
 一般論として、あっせん利得処罰法上の公職者あっせん利得罪というのは、公職にある者が、国もしくは地方公共団体が締結する契約または特定の者に対する行政庁の処分に関し、請託を受けて、その権限に基づく影響力を行使して公務員にその職務上の行為をさせるように、またはさせないようにあっせんをすることまたはしたことについて、その報酬として財産上の利益を収受したときに成立をする。この要件に当たればあっせん利得罪に該当する、成立をすることになるというふうに思います。

○柴山委員
 今の要件の中で、野党の議員には、公務員に対する影響力を行使する権限は認められないんでしょうか。

○西川政府参考人
 お答え申し上げます。
 これも一般論でございますけれども、あっせん利得処罰法第一条の主体、これは衆議院議員、参議院議員または地方公共団体の議会の議員もしくは長とされております。
 また、同法立法時の国会審議によりますと、同条に言うその権限とは、公職にある者等が法令に基づいて有する権限を行うもので、その例としては、議案発議権であるとか修正動議の提出権あるいは質疑権等もろもろが挙げられております。
 また、その権限に基づく影響力というのは、この権限に直接または間接に由来する影響力、それから、法令に基づく職務権限から生ずる影響力だけではなくて、法令に基づく職務権限の遂行に当たって当然に随伴する事実上の職務行為から生ずる影響力も含むと承知をしております。
 したがって、あっせん利得処罰法は与野党の議員の区別はしておりませんので、一般論として申し上げれば、以上の要件を満たせば、野党の国会議員においても、その権限に基づく影響力が認められる場合はあり得るものと承知をしております。

○柴山委員
 今、大変重要な御答弁をいただいたと承知をいたしました。事実上の職務行為を含め、公務員に対する影響力というものを行使したということが認められれば、野党議員であってもあっせん利得法の処罰の対象となり得るという御答弁だったかと思います。
 私は、数件、事業者の話を耳にしていますが、岩手県では野党であっても小沢氏の影響力は絶大だったと承知をしています。現在公判中の西松建設事件でも、ゼネコン関係者の供述として、小沢事務所の意向で指名を外されたこともあったですとか、小沢事務所の意向には逆らえなかったというものが出てきています。
 こういう事情があったら、さっきおっしゃった影響力を行使する権限というものは認められるんじゃないですか。

○西川政府参考人
 委員御案内のとおり、犯罪の成否それから犯罪の構成要件を充当するかどうかというのは、捜査機関が収集した証拠に基づいて個々に判断されるべき事項ということでございますので、お答えはできないのでありますけれども、あくまで一般論ということで申し上げれば、このあっせん利得処罰法は議員立法であって、法務当局として立法時の検討資料がないわけでございますけれども、当時の委員会の質疑等を見ておりますと、提案者である議員が、国会議員が、例えば県の職員に対しまして、県の行う公共事業に対する国の補助金は過剰ではないか、所轄の委員会で質問するぞなどと言いながら、特定の業者との間で物品納入契約を締結するように働きかけた場合はそれに該当すると思うという旨の答弁をしたことがあるという、これも承知しております。

○柴山委員
 わかりました。
 では、一般論としてお伺いしますけれども、請託に関する要件として、入札手続における地元企業との公平な取り扱いを求めるといったような比較的弱い内容であっても要件を満たす、同罪成立のための請託の要件を十分満たすという理解でよろしいでしょうか。

○西川政府参考人
 今の御質問の点もやはり証拠によって個々に判断されるべき事柄ということでございますが、これもあくまで一般論ということでございますが、あっせん利得処罰法の請託については、同法立法時の国会審議によりますと、あっせん行為の請託とは、権限を有する公務員に一定の職務行為をさせるように依頼することであるというふうにされております。
 ところで、刑法百九十七条の四のあっせん収賄罪におきましては、公務員が請託を受け、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、または相当の行為をさせないようにあっせんすることまたはしたことが要件とされておりますが、あっせん利得処罰法においては、このような職務上の不正行為をさせるとか相当の行為をさせるというのは構成要件になっておりませんので、被あっせん者に正当な行為を行わせた場合でも成立する犯罪であるとされているものと承知をしております。

○柴山委員
 専門用語で言えば枉法性という、要するに法律を曲げる内容であることは要件とされていないという今の御答弁だったかと思います。
 個別の指摘には御答弁をいただけませんでしたけれども、少なくとも、今申し上げたような内容の、つまり、よそから参入をしたい事業者が地元の事業者と同じような形で入札に参加ができるようにしてほしいというような、普通余り内容的に問題がない請託であっても同罪の請託として成立し得るというように私は受けとめました。
 あと、小沢氏のおひざ元で今話題になっている胆沢ダムですけれども、きょう、委員各位のお手元に写真をお配りしているかと思います。この写真を見ておわかりのとおりに、建設予定地にこんな立派な胆沢ダム学習館という施設があるんですよ。
 国交省にお伺いしますけれども、こんな施設はどこのダムでもつくるものなんですか。

○三日月大臣政務官
 お答えいたします。
 これは、国直轄のダム事業は現時点で四十八事業あるんですけれども、そのうち八事業において当該ダムの広報等を行うためのこうした施設を設置させていただいております。

○柴山委員
 こうした広報館、学習館はどういった基準で設けられるんですか。そもそも何のためにつくるんですか。

○三日月大臣政務官
 設置基準は特にありません。
 それぞれのダムが置かれている状況、またその進捗状況等を広く国民の皆様方や一般住民の皆様方にお知らせするため、広報、伝達するために設置させていただいております。

○柴山委員
 国民や一般住民に啓蒙普及というか、啓発宣伝、説明のために設けられるというのであれば、こんな立派な施設は要らないんじゃないですか。
 ほかには用途はないんですか。

○三日月大臣政務官
 済みません、何をもって立派と表現されているのかというのは私は存じ上げませんが、不断に、その事業にしろ、置かれているものにしろ、必要なのか必要でないのかということを検証していくことは必要だと思いますし、前原大臣以下、これまで行ってきた事業についても、人口が減り、そして少子長寿化が進み、財政悪化が進行しているこの機において、前例にとらわれることなく、継続事業であったとしてもそれを見直していこうという方針で、今、事業のさまざまな再検証を行っているところであります。
 今お尋ねの胆沢ダム学習館については、先生も御承知かと思いますが、胆沢ダムの学習館とともに、工事の監督員の詰所と合築させていただいておりまして、半々のスペースを分けながら使用をさせていただいております。

○柴山委員
 工事事務所だったら、ダム建設が終わったら取り壊すということになるんだと思うんですけれども、この学習館というのは、ダム工事が終わったら取り壊すんですか。

○三日月大臣政務官
 これは、旧胆沢町、現奥州市の教育関係者からの御要望にこたえて学習室を併設した施設となっておりまして、その工事が終わった後は、地域住民の皆様方の御要望におこたえする形で、地域の施設として活用される予定だと伺っております。

○柴山委員
 要望があるというふうにおっしゃいますけれども、どれぐらいこれは使われているんですか。
 ホームページを見ますと、この学習館というのは、十二月から四月までは閉鎖しているんですね。要は、やはり、建設工事の受注ということが本当に透明な形で行われたのかということを私は極めて疑問に思っているんです。一体、この学習館の必要性というのはどれだけあったんですか。(発言する者あり)さっき質問したじゃないですか、野党が権限を行使できるということを。どうぞお答えください。

○三日月大臣政務官
 先ほども答弁をいたしましたように、その事業の置かれている状況、進捗状況も含めて、住民の皆様方にお知らせする広報施設としてつくられたもので、地域の実情に応じて、御要望に応じて、教育施設等も併設する形で今活用がされていると。
 先生御指摘のとおり、十二月から四月までの冬期間については、工事が冬期休工、工事を休む状態になるものですから、休館とさせていただいておりますが、事前の申し込みがあった場合は臨時に開館をしながら活用をされているということでありまして、その必要性については、その当時あったものだということで、つくられたものだと承知をしておりますし、その活用状況については、私たちはしっかりと不断の検証をしてまいりたいというふうに思っております。

○柴山委員
 ところで、この施設の建設費用、それと、併設されていると言った工事事務所の建設費用、それぞれ幾らかかっているんですか。

○三日月大臣政務官
 これは、約一億二千万円の費用をかけて建設されております。

○柴山委員
 一億二千万というのは、この学習館の費用単体ですか。それとも、併設されている立派な工事事務所、これも合わせての費用なんですか。

○三日月大臣政務官
 失礼いたしました。
 学習館の建設費用が一億二千万円でございまして、詰所の合築分も含めて全体フロアにかかる費用は、約二億五千万という形で算出をされております。

○柴山委員
 ぜひ、この施設についても仕分けにかけて、その必要性というものを検討してほしいものだというふうに思っています。
 ちなみに、この学習館の受注事業者は何というところですか。

○三日月大臣政務官
 この建設は、十二年から十三年にかけて建設をされたんですけれども、当時受注した企業は高弥建設株式会社でございます。

○柴山委員
 今御答弁になった高弥建設、この会社と小沢事務所が一体どういう関係かということを、実は私は情報を持っております。ただ、時間の関係上、きょうはここまでにいたしまして、三日月政務官はここで御退室いただいて結構です。御出席どうもありがとうございました。
 さて、予算委員会で一部指摘をさせていただきましたけれども、政治家個人が寄附を受けた場合、法人から受けるのは当然政治資金規正法違反ですけれども、寄附を受けた場合は雑所得収入となり、政治活動のための支出を含む必要経費の総額を差し引いた残額は課税の対象となります。
 東京佐川急便事件では、金丸信元自民党副総裁が、政治資金規正法違反により、罰金二十万円の略式命令を受け、一たん刑事手続は決着しましたけれども、半年後に脱税で逮捕されました。検察当局が先輩諸兄に恥じない公正な捜査、処分をされるよう切に希望するものであります。
 ところで、特捜部を含めて検察人事の春の異動はいつですか。

○西川政府参考人
 お答えの前に、先ほど、あっせん利得処罰法の構成要件について若干間違いの答弁をしたようでございますので訂正をさせていただきます。
 先ほど、他の公務員に職務上不正な行為をさせることや相当の行為をさせることなどは構成要件となっておらずと答えたようでございますが、相当の行為をさせないことなどは構成要件となっていない、そういう意味でございますので、その点は訂正をさせていただきます。
 それから、検事の異動時期でございますけれども、通常、四月に多数の検事の異動があるほか、適時適切にそれ以外の人事異動も行われるということでございます。

○柴山委員
 適時適切な異動はもちろんありますけれども、当然、まとまった人事異動というものは四月一日に予定されているという御答弁だったかと思います。
 ところが、それを前にして、民主党の中でさまざまな活動がされているようでありまして、その一つが取り調べの可視化をめぐる動きですので、次に、この点についてお伺いしたいと思います。
 民主党は、取り調べの可視化法案を、平成十九年の臨時国会、第百六十八国会だったかと思いますが、また、平成二十一年の通常国会、第百七十一国会だったと思いますけれども、参議院に二回提出をされておりまして、二回とも可決しているんですね。当然です、参議院は民主党が多数派ですから。
 大臣、あなたもこの提出責任者に入っていたはずです。どうしてこれを今国会に提出されないんですか。

○千葉国務大臣
 私も、取り調べの可視化法案、参議院で提案をさせていただくという際に、何回かその議論には加わっておりましたし、責任者になっていたこともあるかと承知をしております。
 この取り調べの可視化については、今、その実現に向けて努力を続けているところでございます。決して出さないということを、方向を決めているわけではございませんで、さまざまな具体的な課題、あるいは、実務的に、実際に運用するに当たってそごがないような、そういう内容で整備をしなければいけないということもございますので、実現に向けて、今、省内に勉強会を設けて議論、検討を進めているところでございます。
 その結論をできるだけ早くまとめさせていただいて、法案提出の運びにできるだけ早く持っていくことができればと考えております。

○柴山委員
 運用の問題その他というようにおっしゃいましたけれども、この可視化というのは、非常に大きな重たい問題なんです。
 どのような形で対象となる事件をピックアップするのか、本当にすべての事件で取り調べ過程を録画、録音するのか。あるいは、出張尋問のような場合に一体どのような手だてを講じるか。また、財政が一体どういう形で手当てをされるのか。諸外国がどういう形で運用されているのか。プライバシーの配慮、こういうことが必要なのではないか、特に暴力団犯罪のような場合で問題となります。また、新型捜査。こういう形で取り調べ過程をオープンにしていく一方で、しっかりと捜査の機能というものを失わせないための捜査機能の強化ということについて、いろいろと必要な検討があるんじゃないか。そういうような、本当にさまざまな検討をしなければいけないと思っております。
 冤罪を防ぐことも正義ですけれども、罪を犯した者を逃がさない、うそをつけば逃げられるという制度にしない、そういうこともやはり正義だと思います。
 大臣、大臣はさっき、法案提出に際して議論をさせていただいたというふうにおっしゃいましたけれども、この法案、中身を見ましたけれども、至ってシンプルで、議論の形跡が全く見えない法律なんですよ。今大臣がおっしゃった事柄、そういったさまざまな配慮を、さきの法案を国会に提出するときに何で議論をされなかったんですか。

○千葉国務大臣
 確かにシンプルな法案であろうというふうに思います。
 しかし、そのときに可能な限りで議論や、あるいは論点を党内で議論させていただいた、あるいはいろいろな皆さんから御意見をいただいたということもこれは事実でございます。ただ、そのときにまだまだ十分に議論し尽くしていない、あるいは、今委員がおっしゃったようないろいろな問題点、まだきちっと精査をし尽くしていない部分がやはりあったなというふうに今考え、さまざまな詰めをさせていただいているということでございます。

○柴山委員
 これはあの後期高齢者医療制度廃止法案と同じなんです。いろいろ調整や検討が必要だとわかっていながら、争点を単純化して、やりますといって有権者を引きつけて、衆議院で否決されると知りつつ欠陥だらけの単純な法案を参議院に提出して、政権をとってみたら、やはり先送りだと。これでは、詐欺だ、あるいはパフォーマンスだと言われても仕方ないじゃないですか。
 どうですか、大臣。

○千葉国務大臣
 その御指摘は、私は当たらないというふうに思っております。
 参議院でも議論した際に、そのときはできるだけの詰めやあるいは論点を真剣に議論させていただいたというのは事実でございます。ただ、やはり改めて考え直してみますと、漏れていた論点や、あるいは実務的にここは詰めておかなければいけない、そういう問題も出てくるということも事実でございまして、私たちは、それに真剣にまた改めて対応をさせていただいているということでございます。
 決してパフォーマンスで、あるいはまた議論を全くせずして形だけ出したなぞということは全くございませんので、そこだけは御理解をいただきたいと思います。

○柴山委員
 これは政治の質が問われている問題なんです。マニフェストというものは一体どういう性質のものなのか、そして、それを実現するために一体政治家はどういう責任を持っているのか、こういうことをやはり与野党を超えてしっかりと、これからいろいろ、政権交代ももっと頻繁に起きるはずですから、議論をしていくべきだというように思っております。
 さらに、見過ごせないのは、さっき異動の話もしましたけれども、この問題を民主党が検討されているタイミングなんですよ。
 先ほど申し上げた、東京地検が最高検などと小沢氏の処分について協議をする日だったまさに二月三日の参議院本会議において、施政方針演説など政府四演説に対する質疑の中で、民主党の参議院議員が、延々とこの被疑者取り調べの全面可視化の必要性を訴えるとともに、千葉大臣に、可視化法の今国会成立に向けた決意と、いつごろ提案されるのかという見通しについて質問されました。間違いありませんね。

○千葉国務大臣
 そのような御質疑があったことは事実でございます。

○柴山委員
 これについて千葉大臣はどのようにお答えになったか、御記憶ですか。

○千葉国務大臣
 基本的に概略になるかというふうに思いますけれども、そのときのお答えといたしましては、今の段階で提出時期について確定的に申し上げることはできない、政務三役を中心にして今論点を精力的に議論させていただいている、こういうことを概略御答弁申し上げたと承知をしております。

○柴山委員
 大臣は、今おっしゃったように、省内に政務三役を中心とする勉強会を設けて検討するというような内容をまずおっしゃっております。そして、提出時期については、「今確定的なことを申し上げることはできませんが、」「今後とも皆さんの協力の下にこの実現に向けて取組を進めてまいりたいと思います」、このように御答弁をされているわけです。
 そこで、加藤副大臣にお伺いします。
 今大臣がおっしゃった、省内に政務三役を中心とする勉強会を設けてというようなお話がありましたけれども、この可視化についての省内勉強会は既に活動しておりますか。

○加藤副大臣
 大臣がお答えをした省内の勉強会については、昨年から活動を進めさせていただいております。

○柴山委員
 いつ開催をされたんですか。

○加藤副大臣
 これまで開催されました省内勉強会の日程でございますが、昨年の十月二十三日に第一回目、同じく十二月二十五日に第二回目、そして、年が改まりまして本年一月二十日に第三回目の勉強会を開催いたしております。

○柴山委員
 一月の二十日、微妙な時期ですね。
 次回はいつ開催されるんですか。

○加藤副大臣
 本日今の段階では、まだ決定をいたしておりません。

○柴山委員
 また、この省内勉強会に加えて、副大臣を座長とするワーキンググループが開催されているというように仄聞をしておりますけれども、このワーキンググループはどのように開催され、どのような問題を扱っているんですか。

○加藤副大臣
 国会の日程にもよりますので、一〇〇%このリズムでということではございませんけれども、おおむね毎週一回程度ワーキンググループを開催させていただいておりまして、第一回目の省内勉強会で指摘をされた論点等について研究を進めているところでございます。

○柴山委員
 ちなみに、勉強会あるいはワーキンググループで議事録はちゃんとつくられているんですか。

○加藤副大臣
 あくまでも私どもの研究、勉強のための会でございますので、議事録というものは作成をいたしておりません。

○柴山委員
 これはぜひ、本気で検討している会議であれば、しっかりと議事録をつくっていただきたいと思います。
 それから、これは、被疑者段階の取り調べも重要な論点なわけですから、公安の方とも、公安委員長ともしっかり連携をとって、ぜひ、きちんと誤りないような制度設計にしていただきたいということを希望したいと思います。
 あと、民主党の中にも取り調べの全面可視化を実現する議員連盟というのが立ち上がっていて、何か当局の人を呼んでヒアリングをしているということなんですけれども、これはいつ開催されたんですか。

○西川政府参考人
 お答え申し上げます。
 取り調べの全面可視化の実現を求める議員連盟から要請があったことから、本年二月十六日と二月二十三日の二回、法務当局において、同連盟の会合に出席させていただきまして説明を行いました。

○柴山委員
 余りよそ様の党についていろいろとせんさくするようなことはいけないかもしれませんけれども、どのようなことが議題になり、どういう追求がされたのか、差しさわりのない範囲でぜひお答えください。

○西川政府参考人
 先ほど副大臣が答弁なさいましたような取り調べの可視化に関する省内勉強会について、開催状況等について説明を求められましたので、これらの点について報告をいたしました。

○柴山委員
 誤解をしていただきたくないんですけれども、可視化に伴うさまざまな問題点に、先ほど申し上げたような形できちんとした検討が加えられ、そしてそれに対する対応が行われた形であれば、全面的な録音、録画を進めることに私は賛成なんですよ。
 ただ、先ほど来申し上げているように、政治的な思惑ですとか不当な圧力ですとか、そういうものを伴わない形で、冷静に政策そのものを純粋に議論していかれることを強く希望申し上げまして、ちょっと早いですけれども、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

第174回 国会 衆議院 予算委員会

第174回 国会 衆議院 予算委員会 第2号
平成22年1月21日(木)
午前九時一分開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 今回の二次補正予算において、実に九兆三千四百二十億円の公債の追加発行をすることとされています。それにより、平成二十一年度の公債発行額は五十三兆四千五百五十億円となり、公債依存度は実に五二・二%となるわけです。
 無論、緊急の景気対策は必要です。しかし、現政権は、一度麻生内閣の緊急経済対策のための補正予算を一部執行停止した上でこの予算を組みました。この是非については後ほど同僚議員から質問していただくとして、私からは一点だけお伺いします。
 これまで、自公政権では、プライマリーバランス、すなわち、一般会計における国債発行収入を差し引いた歳入と国債費を差し引いた歳出のバランスを二〇一〇年代初頭までに回復しようという目標を立てておりました。
 鳩山内閣においては、このプライマリーバランスをいつまでに回復しようとお考えでしょうか。

○菅国務大臣
 柴山議員の方から、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスをバランスさせたいということを前の政権で言っておられたと。私も、何度もその話は聞かせていただき、この場でも議論させていただきました。
 しかし、残念ながら、麻生政権のもとで既に第一次補正で四十四兆円の国債を発行され、さらに九兆円税収見通しが下回った中で、今言われた五十三兆の国債発行になったわけでありまして、もちろん、すべてが前の政権とは言いませんけれども、五十三兆の中身でいえば、大部分は前の政権から引き継いだ財政でありますので、プライマリーバランスは大きくギャップが開いたわけであります。
 私たちは、決してプライマリーバランスを軽視しているわけではありませんけれども、少なくとも、これまでできなかった原因をしっかり踏まえないで単にプライマリーバランスをいつごろまでにこうしたいということを言っても、それは従来の失敗を繰り返すと思いましたから、例えば新しい経済成長戦略などを十二月の末に発表いたしましたが、そういう歳出の中身あるいは成長戦略、そういうものを組み立てる中から、ことしの五月、六月には中期財政フレームというものを国家戦略室を中心に出していただくことになっておりますので、その中で財政再建の道筋も打ち出していきたい、このように考えております。

○柴山委員
 それでは、ことしの五月あるいは六月に示される財政健全化の目標の中において、プライマリーバランスをいつまでに回復されるか、その見通しも示していただける、そう約束されたという認識でよろしいですか。

○菅国務大臣
 今聞いていただければわかったように、確かにプライマリーバランスというのは一つの客観的な数字でありますから、それを無視するということを言っているわけではありませんけれども、それによって、それをいついつまでにこうするという形で、これまでやられたことができていないわけでありますから、私たちはそういう形で数字を示すことになるのか、そうではない形で示すことになるのか、今、御存じのように、新成長戦略では、これは見通しではなくて目標ではありますけれども、例えば目標としては名目成長率を三%、実質成長率を二%、つまりは物価上昇率を一%という目標を掲げておりますから、そういう掲げ方も例えばあり得るということで、必ずしもプライマリーバランスだけにこだわったものを出すという約束をした覚えはありません。

○柴山委員
 財政健全化は待ったなしであります。今御説明をいただきましたが、ぜひとも国民が納得するような財政健全化の目標をお出しいただくことを強く期待を申し上げて、次の質問に移ります。
 総理大臣と与党第一党幹事長がともに政治資金問題について会計担当者の刑事手続に発展し、果ては現職の衆議院議員に逮捕者が出るという前代未聞の展開となっていることは、異常としか言いようがありません。
 そのような中で、まず鳩山総理の問題についてお伺いします。
 総理は、昨年十二月二十四日、政治資金規正法違反で元秘書が起訴されたのを受けて記者会見を開催され、その中で御自分の政治資金問題について説明されました。私は、このことはよかったと思っております。これからその会見の内容について若干お伺いいたします。
 総理は、秘書について、父親の代から手伝ってくれておりました勝場、そして私が議員になる前から手伝ってくれた芳賀、二人とも非常にまじめで、きちょうめんで誠実に仕事をしてくれてきているという信頼感が前提にございましたと述べておられます。間違いありませんね。

○鳩山内閣総理大臣
 確かにそのようなことを申したと思います。

○柴山委員
 一方、二〇〇二年九月十三日付の北海道新聞によれば、当時、総理の届け出られた政治団体には、総理の資金管理団体である友愛政経懇話会のほか、北友会と鳩山由紀夫後援会というものがありました。そして、後の二つは実はペーパー団体であるにもかかわらず、個人献金をこの三つの団体に分散させて、実態として一つの団体が個人から受けられる年間百五十万円の政治献金の上限額に関する規制を免れていたことを問題としています。
 この献金の上限規制は今回の事案でも問題となるべき規制です。鳩山事務所は、当時、この事案について法の抜け道と受け取られても仕方がないと釈明しています。総理、この当時の友愛政経懇話会の会計責任者、そして北友会と鳩山由紀夫後援会の代表者はだれだったんですか。

○鳩山内閣総理大臣
 これは御通告がなかったのでわかりませんが、後で調べてお答えします。

○柴山委員
 今回刑事処分を受けた芳賀大輔さんなんです。つまり、総理は、このような問題があることを御存じでありながら、芳賀大輔氏を友愛政経懇話会の会計責任者として再任されているんです。
 このパネルをごらんください。
 このパネルの上から二つ目の段落、政治資金規正法の代表者、つまり鳩山総理が、会計責任者、つまり芳賀大輔氏に対する選任及び監督義務を怠った場合、五十万円以下の罰金刑が科され、それが確定した場合は公民権停止となり、議員生命にもかかわるという規定を載せてあります。
 総理、このような問題のある人物をなぜ頼り続けたんですか。

○鳩山内閣総理大臣
 柴山議員にお答えいたしますが、先ほどの二つの政治団体を一つにいたしました。その当時、私は、疑われても仕方がないという思いでありましたが、法に照らしては違法ではなかったという認識をしております。したがいまして、しかし疑われてはいかぬという思いのもとで一つにまとめたと記憶をしております。
 その行動自体、私は間違ったものではないと思っておりますし、したがって、私は、私の芳賀秘書は大変、その意味でも、多くの同僚議員にも理解をしていただけると思っておりますが、有能な秘書であると思っておりますので、私は、その意味での、例えば選任の責任などというものがあるとは思っておりません。

○柴山委員
 当然のことながら、一つにまとめたことはいいことです。問題は、献金を分散していたときの当時、この三つの政治団体の責任者がこの芳賀大輔氏だったということを私は問題としているんです。
 そして、総理、ここに一通の商業登記簿謄本があります。北海道の有力なコンクリート会社である株式会社ホッコンについてのものです。この謄本の日付はことしの一月十三日、最新のものです。
 これによると、芳賀大輔氏は同社の取締役となっており、代表者としては、会長の芳賀昭雄氏と社長の芳賀俊輔氏が登記されています。
 総理、この芳賀昭雄氏と芳賀俊輔氏は芳賀大輔氏とどういった身分関係にあるのですか。

○鳩山内閣総理大臣
 芳賀アキオではなく、あの字でテルオと読みます。
 それで、親子関係でございます。

○柴山委員
 失礼いたしました。芳賀テルオ氏と芳賀俊輔氏と訂正させていただきます。
 そして、その芳賀昭雄会長から、友愛政経懇話会は、二〇〇三年から二〇〇八年まで毎年、上限ぎりぎりの百五十万円、計九百万円を、そして芳賀俊輔社長から二〇〇八年に百万円の寄附、計一千万円の寄附を受けています。
 総理、私は、この献金がいけないものだと申し上げるつもりは毛頭ございません。ただ、みずからが応援してもらっている企業の役員だからといって秘書に対する監督に影響があったとすれば、それこそ、あなたたちが最も嫌うしがらみの政治につながってしまうと指摘したいのです。
 ちなみに、罰金及び公民権停止の処分を受けた芳賀大輔氏は今どうしているのですか。

○鳩山内閣総理大臣
 私は、今でも芳賀秘書を秘書として、ただ、公設の秘書ではなくて私設の秘書として仕事を行ってもらっています。大変有能な男だと思っています。しかし、寄附をしてもらっているということで、私の監督責任とか選任責任に影響があるとは全く思っておりません。

○柴山委員
 繰り返しますが、今でも芳賀大輔氏は総理の秘書である、そう今答弁をされたということで間違いないですね。

○鳩山内閣総理大臣
 そのようでございます。

○柴山委員
 総理、そうした扱いでよいのか疑問を留保しつつ、次の質問に移らせていただきます。
 総理は、年末の会見で、お母様の巨額の献金について、何に使われたかわからないとおっしゃいました。それを受けて弁護士が、東京地検が恐らくいろいろお調べになった中で、この使い道については問題なかったのだろうと理解しているとおっしゃいました。
 ただ、地検がまだ立件していないだけで、別に問題がないことが明らかになったわけではないはずです。いかがですか。

○鳩山内閣総理大臣
 私は、その政治資金規正法の問題、いわゆる虚偽記載の問題に関しては、昨年の暮れに検察が捜査を終了した、終結をした、そして処分を決定した、そのように考えております。したがいまして、そのように判断をいたしております。

○柴山委員
 この巨額の献金について、地元でこのお金を使ったり、あるいは同僚議員に配ったりされたことはありませんか。

○鳩山内閣総理大臣
 私にはそのような思いはありません。
 ただ、この件に関して先ほどお尋ねがありました。母から私に対していわゆる贈与があったということ自体を私自身が知らなかったわけでありますだけに、それがどのようなところに使われているかということもわかるはずもないわけでございます。
 しかし、私として、政治家に対してお金を例えば配るような話はありませんから、どうぞそこのところは御理解をいただきたいと存じます。

○柴山委員
 総務大臣に一般論としてお伺いします。
 もし金銭が選挙区で使われた場合、公職選挙法上の問題が生じることはありませんか。

○原口国務大臣
 柴山議員にお答えいたします。
 個別の事案については、具体の事実に即して判断されるべきものであって、総務省としては、具体の事実関係を承知する立場にないので、答弁は差し控えさせていただきます。
 今、一般論ということでございましたが、公職選挙法上、公職の候補者及び後援団体は、当該選挙区内にある者に対し、一定の例外を除き、いかなる名義をもってするを問わず、寄附をしてはならないとされているところでございます。

○柴山委員
 一月二十一日号の週刊新潮によれば、総理の後援会主催のパーティーに出席された地元の教師が、自分は会費の千円など払っていない、鳩山さんの後援会の婦人部の女性から来てくれといってチケットをもらって行っただけだ、ほかにもただで入っている人がたくさんいたと話していることが紹介されています。同じく、そのチケットには三枚のビール券がついていたが、実際は飲み放題、食べ放題であって、量が多いから、主婦の中にはタッパー持参の人もいたと地元漁師が証言をしているとのことです。こうしたチケットは町内会や商店会で、一括して売られたこともあったそうで、私たちの取材でも似たような事実が判明しています。
 原口大臣、一般論として、飲食物の提供は先ほどおっしゃった寄附行為に該当いたしますか。

○原口国務大臣
 柴山議員にお答えします。
 これはあくまで一般論ですけれども、飲食物の提供はその対価を等しく取る、これが原則でございます。

○柴山委員
 明快な御答弁、ありがとうございました。
 続いて、総理にお尋ねいたします。
 総理は、お母様からの資金提供を贈与として税務申告された根拠として、自分、つまり総理のために提供され、政治活動や個人活動の支出のために使われているからと答えられています。借用書などもなかったと伺っています。間違いありませんね。

○鳩山内閣総理大臣
 その前に、先ほど、あたかも何かただのビール券のようなものがたくさん配られたというような印象を与えかねない発言がありましたが、私は、そうではありません、そのようなことはしていない、そう信じております。すなわち、だれかがある意味で、例えば町内会のだれかが一括しているということはあるいはあるかもしれません、私はわかりませんが、しかし、決してそのような不正なことは行っていない、そのように信じております。
 その上で、今お尋ねでございますが、母からの、何でしたか、済みません。

○柴山委員
 お母様からの資金提供を贈与として税務申告された根拠として、御自分のために提供され、政治活動や個人活動の支出のために使われているからと答えられていますが、借用書もなかったと伺っています。間違いありませんね。

○鳩山内閣総理大臣
 母からの贈与であることも、すなわち私は全く知らなかったわけでありますだけにそれは贈与という判断になったわけでありまして、したがって、借用書などというようなものも存在しておりません。

○柴山委員
 この寄附を処理していたのは、総理の会計実務担当の勝場啓二元秘書でした。しかし、同じ勝場秘書が総理御自身のお金を六幸商会から引き出し、あなたの政治活動に使った部分については、総理から友愛政経懇話会への貸付金として訂正処理されているのです。なぜこのような違いが生じるのでしょうか。

○鳩山内閣総理大臣
 これは、母から私に贈与があった、そしてその分も含めて、例えば政治活動に使う、いわゆる政治資金規正法にのっとった収支報告の中で使うお金に関しては、借用ということで、私のお金ということになるわけですから、それを貸し付けという形にしたということでございます。

○柴山委員
 質問を繰り返します。
 お母様のお金に関しても、あなたは会見で、政治活動や個人活動の支出のために使われていたというようにお答えされています。そして、総理御自身の六幸商会から引き出したお金についてもあなたの政治活動に使った部分があります。一方は贈与、一方は貸付金。なぜこのような違いが生じるのですか。

○鳩山内閣総理大臣
 もう一回繰り返しますが、母からのは私は存じ上げていない話でありました。したがって、これはすべて私に対する、個人に対する贈与である。そして、そのお金が、私の出したお金と含めて、例えば政治活動に使う部分もある、あるいは個人の議員活動、あるいは個人自身の活動に、生活に使うというお金である。そこからという、一度私の資産というものになった中で使われているということでありまして、政治資金のために使われている部分に関してはいわゆる貸し付けという形になったわけでございます。

○柴山委員
 とすれば、お母様からのお金に関しても政治活動に使った部分は貸し付けという形で処理をされたということですか。

○鳩山内閣総理大臣
 繰り返しますが、私の、要するに母からの贈与ですから、そこで私のお金になっているわけであります。したがいまして、そこから使ったものに対しては、必要に応じて必要なところに、貸し付けるものは貸し付けという形をとったということであります。

○柴山委員
 今出したこのパネルをもう一度ごらんください。
 上から三段目におきまして、政治資金規正法では、資金管理団体の代表者であっても、個人からの献金が年間一千万円を超えたら刑事罰に問われると、量的規制が定められています。
 総理に伺います。
 先ほど御説明になった総理からのお金については、友愛政経懇話会との間に借用書があったのですか。また、返済の事実はありましたか。

○鳩山内閣総理大臣
 それは私には今答えるすべがありませんが、多分、必ずしも存在していないかもしれません。

○柴山委員
 貸し付けかどうかわからないということをおっしゃったんでしょうか。今総理は貸し付けということで明確に御答弁をされたはずです。貸し付けのためには返還の合意がなければならないはずです。

○鳩山内閣総理大臣
 私の資金を貸し付けるという形で処理をしたわけでございます。

○柴山委員
 だから、貸し付ける、つまり、返還の合意というものが友愛政経懇話会との間であったのですかという御質問です。

○鳩山内閣総理大臣
 それは、本来ならば、多分、何年かかってという話になるのかもしれませんが、そこの部分に関しては、必ずしも、いつまでに返すという話になっているとは思っておりません。

○柴山委員
 総理は、昨年十一月四日の予算委員会での私の質問に対して、寄附金の上限規制を超える分については貸し付け処理されると思っていたと御答弁されています。私も記憶しております。
 では、勝場秘書などに、実際に、そのように上限規制を超える分について貸し付け処理されているかどうか確認をされたことがありますか。確認書で逐一あなたは資金の流れをチェックしているはずです。その過程で、秘書に貸し付け処理を適正に行っているかどうか確認をされたことがあるのでしょうか。

○鳩山内閣総理大臣
 これは、当時の勝場秘書にすべて任せておりましたから、そのようなものは存在しておりません。

○柴山委員
 とすれば、総理が本当にこの資金を貸付金だとこの指示書を出した時点で考えていたとは到底思えません。事後的に貸し付け処理をしても、量的制限違反の疑いは消えません。そして、同じように、総理は、お母様からの献金を貸付金と事後処理し、年間百五十万円の量的制限規制違反を逃れようとしたものの、お母様との打ち合わせやほかの御兄弟との整合性がとれず、やむを得ず一般の贈与を受けたという道を選んだのではないですか。

○鳩山内閣総理大臣
 そういう認識は全く持ち合わせておりません。

○柴山委員
 そもそも、総理はお母様からの資金提供を御存じなかったとおっしゃっています。しかし、十二億円もの巨額の資金を受けながら、一切それを御存じなかったというのは、到底一般の感覚から納得できません。
 総理は、これまで、選挙に立候補されるときや御結婚のとき、あるいは人生の節目節目でお母様から資金提供を受けたことはなかったんですか。

○鳩山内閣総理大臣
 そういう記憶はありません。確かめたこともありませんが、現実に母からもらったという記憶はありません。

○柴山委員
 二〇〇〇年以降、お母様と会食するなど、お母様と接触した事実はありますか。

○鳩山内閣総理大臣
 たしか、正月とか、あるいは年に一、二回だと思いますが、やはりもうかなり年老いておりますから、母を見舞いがてら伺った思いはあります。一年に一度も行かないような、大変親不孝をした年もあったかと思いますが、一度、二度は顔を見ていた、そのように思います。

○柴山委員
 それでは、総理、お母様にお金が足りなくて困っているとおっしゃったことはありませんか。

○鳩山内閣総理大臣
 私は、そのようなことは一切申しておりません。

○柴山委員
 これは事実関係の確認であります。
 国税庁にお伺いします。
 これまで、贈与税の申告漏れで今回のような巨額の案件はありましたか。

○岡本政府参考人
 お答えいたします。
 記者発表資料でございますけれども、十年間さかのぼりまして、平成七年以降の税目別の、贈与税ということで、脱税の告発件数というところでは贈与税に係る脱税はございませんでした。

○柴山委員
 大変珍しい案件だということを確認させていただきました。
 そろそろ確定申告の時期を迎えます。一般の方が汗水垂らし不備がないように書類をつくり、親子間の資金移転についてもおかしなことがあれば調査や査察がある中で、このような巨額の案件について、指摘されれば払う、上申書で済ますということでよいのでしょうか。税務調査や刑事手続の余地はないのでしょうか。

○岡本政府参考人
 一般論でお答えいたします。
 国税当局といたしましては、納税者の適正な課税を実現するという観点から、あらゆる機会を通じて課税上有効な各種資料情報の収集に努め、これらの資料と納税者から提出された申告書等を総合検討し、課税上問題があると認められる場合は税務調査を行うなどして、適正公平な課税の実現に努めているところであります。
 また、特に脱税事件として検察官に告発し刑事訴追を求める場合には、国税犯則取締法に基づき査察調査を行う必要がございますが、この場合には、逋脱犯の法律上の構成要件に該当することを立証する見通しがあるかどうか、悪質な脱税事件であるかどうかを慎重に検討した上で要否を判断することといたしております。

○柴山委員
 そもそも納税義務は、国民の基本的な、かつ本人に帰属する義務であり、御本人が課税原因を知っていてもいなくても、当然のことながら果たさなければいけないはずです。ぜひ、総理大臣だからという理由で、今おっしゃった扱いと不公平なことのないようにお願いしたいと思います。この財政の厳しい折、私たちの税に対するモラルが損なわれかねない案件だからです。
 ちなみに、総理は今回、二〇〇二年にさかのぼって贈与税を納付されたということですが、重加算税や延滞税の関係はどうだったんですか。

○岡本政府参考人
 個別にわたる事項については差し控えさせていただきまして、あくまで一般論として申し上げさせていただきます。
 平成十五年分以前の年分の贈与税の徴収権は、法定納期限から五年間行使しないことによって、時効により消滅することとされています。贈与税の徴収権の時効は、納税者による援用を要せず、また、納税者は時効の利益を放棄することができず、絶対的な消滅となります。したがって、贈与税の徴収権が消滅している平成十四年分、十五年分の贈与税に係る期限後申告は何ら効力を有しないことになりますので、その贈与税が納付されたとしても、その納付された贈与税は還付されることになります。
 なお、偽りその他不正の行為により贈与税を免れていた場合の贈与税の徴収権は、法定納期限から二年間は時効が進行いたしませんので、法定納期限から七年間行使しないことによって消滅することとなります。
 いずれにしましても、国税当局としては、納税申告書が提出された場合に、その消滅時効の成立の有無など個々の事実関係に基づき適正に取り扱うことといたしております。

○柴山委員
 今の御指摘のとおり、重加算税あるいは延滞税についても国税庁当局がしっかりと事実関係を認定した上で処理をしますが、この二〇〇二年にさかのぼって納付した行為であっても、今の御指摘のとおり、徴収権が消滅をすることによって総理の手元にまた戻ってきてしまう、そういう可能性があることを今御答弁いただいたということを再度確認させていただきます。

○岡本政府参考人
 十四年分、十五年分については、期限後申告は何ら効力を有しないこととなり、その贈与税が納付されたとしても、納付された贈与税は還付することになるということでございます。

○柴山委員
 今の扱いが本当に国民の皆さんが納得できるものなのか、ぜひ疑問を呈させていただきたいと思います。そのような手続になるということは、私も認識をしております。
 さて、総務大臣、本件偽装献金について架空の寄附金控除の証明書が発行されていたことは、私からの前回の質問で指摘をさせていただきました。
 では、平成十七年以降の収支報告書から削除された寄附金に関する控除証明書で鳩山氏側から返還されたものは何通ありますか。

○原口国務大臣
 柴山議員にお答えいたします。
 今の御質問は、平成十七年分以降の収支報告書から削除された寄附者にかかわる寄附金控除のための書類に対して返還された証明書は何通かと。
 友愛政経懇話会に交付した寄附金控除のための書類については、その後、総務省においては確認をしておりません。
 なお、政治資金規正法上、寄附金控除のための書類の不正取得や破棄に関して特段の規定は設けられていないところでございます。

○柴山委員
 今、後の質問を先にお答えいただいたわけですけれども、証明書を不正取得すること、あるいは破棄することに問題がないかどうか。今、原口大臣は、これについて、特別法として特段の規定はないというように御答弁をいただいたかと思います。
 しかしながら、公印の押された証明書を不正取得し、あるいは破棄するということについて、それでは、千葉法務大臣、何の問題も生じないのでしょうか。

○千葉国務大臣
 個別の問題についてはお答えを差し控えますが、一般論として申し上げれば、一定の犯罪類型構成要件に該当するということはあり得るのかと思います。

○柴山委員
 次の質問に移ります。
 総理、総理は、再三にわたって御自分の、私は政治家と秘書は同罪と考えます、政治家は金銭に絡む疑惑事件が発生すると、しばしば、あれは秘書のやったこととうそぶいて、みずからの責任を免れようとしますが、とんでもないことです、秘書が犯した罪は政治家が罰を受けるべきなのですと述べた御発言について、その発言から逃げるつもりはないけれども、自分は私腹を肥やしたのではないから、過去の事例とは違うとおっしゃっています。
 総理、税金の負担を免れることは、私腹を肥やしたとは言えないのですか。また、一般社会で部下が不祥事を犯して上司が責任をとってやめるのは、必ずしも部下が私腹を肥やすことを目的とする事例ばかりではないはずです。総理のお考えは余りに一般社会とかけ離れているのではないでしょうか。お答えください。

○鳩山内閣総理大臣
 先ほど申し上げましたように、天地神明に誓ってと申し上げましたけれども、母からのこのお金は全く知らなかった話であります。したがって、贈与ということになったわけでありますが、私は脱税をしたという認識は一切持っておりません。そこだけはぜひとも御理解を願いたい。
 したがいまして、今お話がありましたように、秘書がやった行為というものに対しては私としても反省をいたします。当然それなりの責任、責めというものもあろうかと思います。その責めをどのように考えるかという中で、先ほども申し上げたとおりであります。
 先ほど、私腹を肥やすような行為ではなかったということを申し上げました。そのことは当然皆様方にも御理解を願いたいと思っておりますが、少なくとも今までの行為と今回の事件、私はいささか違う部分もあるという思いのもとで、したがいまして、今大事なことは、そういう中でも多くの国民の皆様方に御期待をいただいて、しっかりやれ、政権交代をだから認めてやったぞという思いを大事にさせていただいて、身を粉にして国民のための政治に努めてまいりたい、そのように思っています。

○柴山委員
 国民の信頼にこたえてということをおっしゃいましたけれども、総理、有権者は決して総理の偽装献金問題の全容やあるいは今回の小沢氏の資金問題の全容を把握した上で投票したわけではないということは、ぜひ御認識をいただきたいと思います。
 続きまして、民主党小沢幹事長の問題についてお伺いします。先ほど議論にあったガソリン税の暫定税率の問題や、質問のあった天皇陛下の政治利用の問題だけではなく、外国人参政権の問題を含め、小沢氏の物議を醸した言動についても、一体どれだけ民主党の中で民主的に議論をされたのでしょうか。民主党は今や小沢独裁政党と言われても仕方がないのではないでしょうか。
 ちなみに、今月十七、十八両日に実施された共同通信社の世論調査によれば、内閣支持率は前の週の五〇・八%から四一・五%に急落、不支持率は三三・二%から四四・一%と、初めて不支持が支持を逆転しました。小沢氏の進退については、幹事長をやめるべきだという意見と議員辞職すべきだという意見を合わせれば実に七三・三%となっています。私たちも、仮に今報道されているような内容が事実であれば、小沢氏には議員辞職をしていただくしかないと思っています。
 総理、このような状況でなお小沢氏に幹事長を任せるしかないとおっしゃるのはなぜですか、明確にお答えください。

○鳩山内閣総理大臣
 小沢幹事長は、私が代表そして小沢幹事長の体制の中で国民の皆様方の御信頼をいただいて政権交代の道筋をつけることができて、そして今、このような形で政権運営を行っている、その同志であることは間違いありません。
 私は、むしろ、代表と幹事長として、幹事長の潔白を信じて、だから闘うんだ、その思いを信頼しているのでございまして、だからこそ、今幹事長には幹事長として堂々としていただきたい、もし必要ならば、訴えるべきところを堂々と訴えるべきところへ行って訴えていただきたい、そのような思いで、むしろ潔白を証明していただきたい、そのように願っているところでありまして、そのことを大いに期待しているということでございます。

○柴山委員
 仙谷大臣にお伺いします。
 大臣は、昨年春、当時民主党代表だった小沢氏の公設第一秘書がいわゆる西松建設事件で逮捕、起訴された際、刑事処分がまだ下されていないにもかかわらず、小沢氏の代表辞任を唱えられました。
 今回、それより深刻な事態に立ち至った今、今の総理と同じ御意見でしょうか。

○仙谷国務大臣
 当時は単なる野党の一代議士でございます。私の今のポジションは、個人としての、あるいは弁護士経験者としての立場、そういう思いは当然のことながらあります。
 だから、弁護士の立場であるとするならば、当然、すべての捜査官憲の行為については、うのみにするというふうなことはあり得ないということになりましょう。そしてまた、野党の一政治家の立場とすれば、当然のことながら、当時の民主党が選挙に勝つためにいかなる政治判断をすべきか、こういう観点から私が発言し行動することは当たり前でしょう。
 今は、もう一つ、官邸に極めて近い立場で、行政府の一員としての立場もあるわけでありますから、これは当然のことながら、そういうことも踏まえてみずからの発言を律しなければならない、こう考えているだけでございます。

○柴山委員
 今、大変重要な御答弁をいただいたんです。野党の時代は選挙に勝つために行動した、ところが、今は官邸に近い場所にいるので自分の信念を抑えなければいけない。
 仙谷大臣、あなたには、今の政権のあり方に納得がいかない場合、大臣としての地位を投げ出すという選択肢はないのですか。

○仙谷国務大臣
 柴山先生、大変お若いので、一直線の部分でお話しされておるようでありますが、一人の人間の中にいろいろな立場があるわけですね。そのどの立場に比重を置くかは、その時々の判断をしなければならないと思います。政治家である以上、ある種の政治的なポジションのためにあるいは判断で行動することもあるでしょう。
 例えば、今私の判断で戦争の火ぶたが切られるかどうかというときに、私がそのある内閣の一員としての判断でそれに賛成するのか、それとも最も原理的な個人としての、自分の人間としての判断でそのことに反対するのか、それはそのときになってみないとわかりませんし、ぎりぎりの判断が迫られる、こういうふうに思います。

○柴山委員
 それでは、今お答えをされた内容を前提として、閣僚の一員としての前原大臣にお伺いします。
 前原大臣は、一月十八日、小沢氏の政治資金疑惑について、潔白だというなら国民の疑念が晴れるよう説明すべきだとおっしゃっていたと報道されました。間違いありませんね。
 そして、福島大臣。福島大臣も同旨の発言をされていますね。お二人に確認をさせていただきます。

○前原国務大臣
 おっしゃるとおりです。

○福島国務大臣
 おっしゃるとおりです。

○柴山委員
 総理、総理も今の前原大臣や福島大臣と同じ御意見はとれないのでしょうか。小沢氏に説明責任を果たさせるために、国会での参考人質問あるいは証人喚問に応じてもらうという民主党代表としての決意は示せないのでしょうか。

○鳩山内閣総理大臣
 今、前原大臣方が申した言葉は、近々小沢幹事長自身が事情を、すなわち自分が潔白であるということを示したい、そう申しているんですから、しかるべき場でしかるべき発言をされる、そのように思っておるわけでありまして、今まさに検察からそのような話があると仄聞しておりますから、そのような状況になることが望ましい、私もそう思っております。それがまず先の話であって、後は、個人の判断もありましょうが、国会のことはどうぞ国会の中でお決めをいただきたいと存じます。

○柴山委員
 これまであなた方が野党時代に捜査中の案件についてとことん当時の与党に説明責任を求めていたことと今のスタンスは、私は余りにもかけ離れていると断じざるを得ません。そして、記者会見あるいはそれ以外の方法、特に検察庁での説明などでは私たちが小沢氏に質問する機会は与えられず、小沢氏が十分な説明責任を私たちの前で果たす担保はありません。与党の方々の質問あるいは意見を述べる機会もないわけです。
 小沢さんは、これまで東京地検による任意での事情聴取を拒んできたのを確かに一転させて聴取に応じる構えを見せていますが、通常国会が始まって、議員の逮捕に所属する院の許諾が憲法上必要となり、今のように与党民主党所属議員が反対すれば小沢さんは逮捕されないわけですから、安心して当然のことながら出頭できるわけです。
 総理、もし総理が捜査に支障が出ることを憂えておられるのであれば、小沢問題に関して逮捕された石川知裕議員と同期の民主党議員十三名が、この中には政府に入っておられる方も含まれているとお聞きしていますけれども、この十八日に勉強会を結成して、石川容疑者の逮捕は不当として、近く法務省から担当者を呼んで事実関係を聞くとともに、釈放要求の発議を検討することも決めたというのは捜査に対する支障にはならないのでしょうか。

○平野国務大臣
 先ほども議員からの御質問、同じ質問がございました。政府の関係者がいたことも事実でございますが、それは、その会合の目的が同期会、こういうことであって出席をした、こういうことでございますので、それについては、私は、そういう趣旨でないならば、慎重に対応し遠慮してもらいたい、こういうことを申し上げました。

○柴山委員
 それでは本題に入ります。
 まず、このパネルをごらんください。
 これは、今回の資金問題についての全体図です。小沢氏の資金管理団体である陸山会が二〇〇五年一月七日に東京世田谷区の土地を買ったと登記及び収支報告書上記載されていたのですが、実は、前年、二〇〇四年の十月二十九日に購入されていたことが読売新聞の報道から明らかになりました。小沢氏は、この問題につき、単純なミスだとされています。
 そして、この購入の原資は、こちらの資料の左半分にあるとおり、二〇〇四年十月二十九日付の、みずからの銀行からの借入金をさらに陸山会に貸したものであるというのが従来の御説明でした。しかしながら、陸山会に四億円が入金したのは二〇〇四年十月二十九日の午後だったのです。一方、実際に不動産屋に三億四千万円で代金の決済がされたのは同じ十月二十九日の午前中でありまして、この時点では、陸山会の資金残高はわずか二億数千万円でした。ここで、不動産購入に巨額の帳簿に載っていない金が故意に使われ、収支報告書に虚偽の記入がなされた疑いが浮上したのです。
 この部分は、報道によると、小沢氏の元秘書で今月十五日に逮捕された民主党の石川知裕議員が、虚偽記入の事実を認めて、小沢氏個人から四億円を借りたと述べており、仄聞するところによると、小沢氏も十六日の民主党大会で、原資は積み立ててきた個人の資金であって、何らやましいことはないと説明されているということです。
 しかし、そうすると、小沢氏は、御自分の積み立ててきたお金で不動産を買うことを石川議員に一方で指示しながら、同じ金額を銀行から借り入れて不動産の購入原資とすることを了承し、対外的にもそう説明していたことになります。どう考えても、小沢氏自身が、御自分の積み立ててきたお金が収支報告書に記載されないことを御存じだったとしか思えません。
 きのう、折しも、石川議員が、小沢氏が不記載を了承していたと供述していることが報道されています。
 そこで、原口大臣にお尋ねします。
 政治資金規正法上の虚偽記入罪を犯すことを了承していた場合、政治家本人にその共犯が成立するのではないですか。

○原口国務大臣
 柴山議員にお答えいたします。
 個別の案件についてはお答えする立場にございません。

○柴山委員
 そして、この購入原資が個人資産だという小沢氏の御説明にも疑惑が持たれています。
 けさの報道では、購入原資には奥様や三人の子供さんの名義のものが含まれ、合わせると七億円を超えるので不足はないと小沢氏が主張される見通しだということが報道されました。しかし、小沢氏がこれに先立って明らかにした資産の大半は、お父様からの遺産を信託銀行に預けていたのを引き出したものであると報道されており、その金額は約三億円であって、石川議員が小沢氏から受け取ったという四億円には足りません。御家族の方々には、ぜひ、しっかり事情を検察庁に御説明いただきたいと思います。
 一方、三重県の中堅ゼネコンである水谷建設株式会社の元幹部が、くしくもこの不動産取引と同じ二〇〇四年の十月十五日の金曜日に小沢氏側に五千万円を持っていったと供述していることがテレビ報道で取り上げられています。そして、水谷建設側の供述では、その後の土日を挟んで翌銀行営業日の十八日月曜日に、石川氏の陸山会口座への五千万円の入金がされたということなのです。そして、先ほど申し上げたとおり、そのわずか十日ほど後に、東京世田谷区の土地を陸山会が購入しました。購入資金にこの資金が使われた可能性は本当にないのでしょうか。
 まず、菅財務大臣、または国税庁に確認します。仮に、この購入資金が建設会社などの企業から小沢氏個人に寄附されたものであった場合、それを表にしないと、小沢氏に課税上の問題が生じるのではないですか。

○岡本政府参考人
 あくまで一般論として申し上げさせていただきます。
 政治家個人の方が受けた政治活動に関する寄附金は、雑所得の収入金額となります。雑所得は、総収入金額から政治活動のための支出を含む必要経費の総額を差し引いた残額が課税の対象になります。残額がない場合には課税関係は生じないということでございます。

○柴山委員
 政治資金とされる部分を含めた経費を控除した上で雑所得となって、それに税金がかかるという御答弁だったと理解いたしました。
 それでは、お伺いします。もしこれが政治資金であった場合に、政治資金の収支報告書にもあらわれていないというのみならず、企業から個人あるいは資金管理団体への献金があったことになりますが、これは政治資金規正法上、今回容疑がある虚偽記入罪のほかに何か問題は生じないのでしょうか。
 総務大臣にお伺いします。企業から個人あるいは資金管理団体への寄附があった場合に、政治資金規正法上、問題は生じないでしょうか。

○原口国務大臣
 柴山議員、一般論としてお答えいたします。(発言する者あり)

○鹿野委員長
 はい、座って。
 どうぞ答えてください。

○原口国務大臣
 政治資金規正法についてお答えをいたします。
 第二十一条第一項において、会社等は、政党及び政治資金団体以外の者に対して、政治活動に関する寄附をしてはならないこととされており、何人も、この規定に違反してされる寄附を受けてはならないこととされています。同法第二十二条の二でございます。
 いずれにしても、柴山議員、総務省としては、個別の事案については実質調査権を有しておらず、具体的な事実関係を承知する立場にないので、個別の案件についてはお答えすることができません。

○柴山委員
 政策の質問をしろという御指摘がありましたが、企業、団体からの献金禁止は、民主党が昨年の総選挙のマニフェストで訴えていたことであることを付言させていただきます。
 続きまして、水谷建設は、小沢氏のおひざ元にある岩手県胆沢ダムの工事を国土交通省からジョイントベンチャーで下請受注しており、同社の元幹部は、資金提供は受注の謝礼だったと供述していると報じられています。あわせて、供述の中で、元請の大手ゼネコンが工事費に上乗せして後から穴埋めしてくれるというから提供したと話しているとのことで、現に、鹿島など他の建設会社にもことし一月十三日に東京地検特捜部の強制捜査が入るなど、同じく土地取引の原資に関する捜査が進められていると見られます。
 そこで、千葉法務大臣にお伺いするのですが、このように、公共工事を受注する会社から国会議員が見返りとして寄附を受ける行為があっせん利得罪などの刑罰に触れる可能性はありませんか。一般論としてで結構ですので、お答えください。

○千葉国務大臣
 一般論としては柴山議員も御承知のとおり、条文をそのまま引用して、読んでいただければわかることだと思いますけれども、あくまでも一般論では、あっせん利得処罰法上の公職者あっせん利得罪は、公職にある者が、国もしくは地方公共団体が締結する契約または特定の者に対する行政庁の処分に関し、請託を受けて、その権限に基づく影響力を行使して公務員にその職務上の行為をさせるように、またはさせないようにあっせんすることまたはしたことにつき、その報酬として財産上の利益を収受したときに成立する。これが構成要件でございます。

○柴山委員
 大変明確に御答弁をいただき、ありがとうございました。
 先ほど来、報道ベースで物をしゃべるなという御指摘が多々ありました。しかしながら、今申し上げてきたことを裏づける話をする人物がいます。昨年七月まで約一年、石川議員の私設秘書をしていた金沢敬氏で、ことし一月十四日に自民党本部で実施された勉強会において、昨年三月に小沢事務所の大久保秘書が西松建設事件で逮捕された際、石川議員とともに、鹿島や西松建設、西松建設の政治団体の名刺、ゼネコンからの陳情ファイル、鹿島からもらった胆沢ダムのファイルなどを隠したと述べておられました。この発言と同趣旨の記事がことしの文芸春秋二月号にも記載されています。また、石川議員が証拠隠しの指示を小沢氏から受けたとも発言しています。
 これらの発言が信頼できるものなのか、それとも、与党の皆さんがおっしゃるように、全く信頼の置けないものなのか確かめるべく、委員長に金沢敬氏の参考人招致を求めます。

○鹿野委員長
 後刻、理事会で協議をいたします。

○柴山委員
 この不動産購入の原資には、あわせて、旧自由党が解散した際に、同党の政治資金団体である改革国民会議に流れた多額の政党助成金が用いられた可能性も指摘されております。しかしながら、この後、同僚の小里議員からこの件については質問をしていただきます。
 最後に、前原大臣にもう一度お伺いいたします。
 群馬県の八ツ場ダムについては、マニフェストに書いたからという理由で、さしたる手続もなく建設中止を表明する一方で、小沢氏の地元岩手県の胆沢ダムについては、ゼネコンから業務受注の見返りに巨額の裏献金が小沢氏に流れた疑惑が発生し、そして建設予算が計上されている。
 これで本当に予算やマニフェストの公平性に対する自信が、あるいは信頼が図れると前原大臣はお感じになっておられますか。明確に御答弁ください。

○前原国務大臣
 百四十三のダムについて、何をもって再検証するのかしないのかということについての一線は、本体工事に入っているかどうかということでありまして、胆沢ダムは本体工事に入っておりましたので、継続をしております。

○柴山委員
 私が申し上げたかったのは、予算やマニフェストの公平性に対する信頼が図れるとお考えかどうかということでございました。
 時間がなくなりましたので、以上をもちまして私の質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

第173回 国会 衆議院 予算委員会

第173回 国会 衆議院 予算委員会 第3号
平成21年11月4日(水)
午前九時八分開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦です。
 この財政難の折、十一月二日の報道によれば、総理が平成二十年に株を売って得た七千二百二十六万円余りもの所得を申告していないことが判明したということです。また、連日報道されている総理の献金問題についても、税法違反があるのではないかという疑問が出されています。
 そもそも民主党は、企業・団体からの献金を禁止する方向を打ち出していますが、そうしたものを禁止しても、個人からの献金があったかのように巨額にわたって偽装することを認めれば、政治資金の適正化、透明化は図れません。また、結局は、企業・団体献金隠しに利用されるおそれもあります。
 総理、この問題は重大です。ぜひとも誠実に、かつ要を得た御答弁をお願いいたします。
 まず、確認いたします。
 総理は、弁護士とともに行ったことし六月三十日の記者会見で、偽装献金は四年間で百九十三件、総額二千百七十七万八千円だと発表されました。間違いありませんね。

○鳩山内閣総理大臣
 この件に関して、改めて国民の皆様方におわびを申し上げたいと思います。
 今、柴山委員からお話がありましたとおり、六月三十日の時点でお話を申し上げました、その数に間違いはありません。

○柴山委員
 このような処理が行われた背景として、総理は、この六月三十日の会見で、会計実務を任せていた元秘書の気持ちを推察してこう述べておられます。個人献金が余りにも少ないものですから、そのことがわかったら大変だという思いが一部にはあったのではないか。
 しかし、総理、実際は四年間で個人献金は二億円超と、ほかの政治家と比べて突出しています。というのは、総理の個人献金は、氏名などの個別記載の必要がない年間五万円以下のものが大変多いからなんです。
 こちらのパネルをぜひ見ていただきたいと思います。
 このパネルは、総理の資金管理団体である友愛政経懇話会の個人献金に関する図です。ごらんのとおり、平成十七年から二十年まで、総理が訂正発表されたのは、右側の実名献金の部分のみです。四年間の匿名献金は、合計で個人献金総額の六割を超える一億三千万円余り。仮に最大額の五万円の寄附ばかりだったとしても、延べ二千六百人もの寄附があったことになってしまって、極めて不自然です。無論、政治資金パーティーはこれとは別にあるわけです。
 総理、六月三十日の会見では、この五万円以下の献金について、弁護士が、まだ完全には終わっておりません、調査を続けるということでありますと約束されています。また、七月十日には、衆議院政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会から、理事会の協議に基づいて、友愛政経懇話会の質疑に関連し、五万円以下の献金を記載した会計帳簿をもとに、人数、金額等の明細を速やかに提出されることという要請文がそちらに届いているはずです。
 こうした約束や要請に基づき、五万円以下の匿名献金がどのようなものなのか、明らかにしていただけますね。いかがですか。

○鳩山内閣総理大臣
 今、柴山委員がお話をされましたように、六月三十日の時点において、いわゆる五万円以上、すなわち表に名前が出る部分に関して、私どもが依頼した弁護士による調査によりまして、先ほどお尋ねがありました額が判明をいたしました。そのときに、私が、なぜこのようなことを元会計実務担当者が行ったか、これは推察の域を出ないのでありますが、その思いを私なりに判断して申し上げたところでございます。
 私は、実は、この件に関して、もともと私の個人資産が勝手にこのような形で虚偽記載の穴埋めに使われてしまったということを全く承知しておりませんでした。そのことが大変に国民の皆さんに御迷惑をおかけしたことは事実だと思います。
 私が申し上げたいことは、すなわち、このような事件が発覚した日以降、この調査を依頼した弁護士からは、一切その元会計実務担当者と連絡をとってはならない、もしとったとすれば、そのことによっていろいろと口裏合わせをされたというふうに思われてはいけない、したがって、私は、その日以降、一切、彼とも電話も含めて連絡をとっておりません。
 その六月三十日の時点においては、私は、やはり何か私自身が、個人献金そして企業献金、その額をそれなりに、ある意味で個人献金の部分もふやすようにすることがむしろ透明性が高まってよいのではないかという発想をいろいろな機会で述べておりましたから、元秘書もその思いで、しかしなかなかうまくいかないから、それを合わせるために虚偽記載をしたのではないか、そのように考えておりました。
 しかし、そのときに、五万円以下の部分に関しては、調査を依頼した弁護士からは、まだ確実にそこのところは調査が進んでおらないからよくわかりません、ただ疑わしい部分もないとは言えないのではないかという話はありました。
 したがって、いまだに私も、どのくらいその中で実際に本当に小口で納めて寄附をしてくださった方がおられるのか、また、そのうちのどの部分が虚偽であるのかということは判明しておりません。
 連絡も一切絶っておりますので、そのような状況でございまして、その中で、今御案内のとおり捜査が進んでいるということでありますので、地検の捜査にゆだねて、全容が解明されることを祈念しているところでございます。
 以上です。

○柴山委員
 元公設秘書の方に接触をしなくても、政治資金収支報告書やそれに付随する会計帳簿は、総理がいつでもごらんになれるわけです。したがって、御自分でそうしたことについて調査をし、そして全容を把握することは極めて容易であります。
 少し質問をかえます。
 ここで重要なのは、総額五万円超にせよ以下にせよ、こうした偽装献金の資金源です。
 六月三十日の会見、そして今総理からもお話がありましたように、総理個人のお金を預けていたものが不正流用をされていて、自分は全く知らなかったけれども、それが一千万円を楽に超えているという説明が弁護士からありましたが、間違いありませんね。

○鳩山内閣総理大臣
 そのことは事実でございます。

○柴山委員
 では、それを超える偽装献金があった場合、その資金源はどうなっているのでしょうか。
 朝日新聞の十月二十五日の報道によれば、平成十六年から二十年までの政治資金収支報告書に記載されていた合計約一億七千七百十七万円に上る小口の匿名献金の大半が、鳩山家の資産管理会社である株式会社六幸商会の管理資金だったと報じられています。これは事実ですか。

○鳩山内閣総理大臣
 六幸商会というのは、私を初め、私の家族の資産の管理をしているところでございます。その中の管理資産というのは、すなわち私の個人資産ということでございます。

○柴山委員
 要するに、個人の口座、それから六幸商会の口座、これが二つとも偽装献金に使われていた可能性を、今総理はみずからお認めになったと理解をいたします。
 現に、十月二十九日付のNHKニュースでも、総理の先ほど来問題となっている会計担当の元公設秘書が二つの口座からこの偽装献金の資金を引き出していたとしています。
 一つは、総理個人名義の口座であり、必要に応じて、秘書が通帳などを預かって金を引き出していたとされています。
 もう一つは、六幸商会のことだと思いますが、鳩山氏の資産管理会社が管理する口座であり、資金が必要になるたびごとに、総理自身が了承したとする指示書が会社に出され、元秘書が金を受け取っていたと報じられているんです。このような手順であったことは、私どもの調査でも確認をしております。
 いずれにせよ、総理がこの資金操作を御存じないことはあり得ません。間違いありませんね。

○鳩山内閣総理大臣
 今お尋ねがありましたが、元の秘書、会計実務担当者が、お金が足りなくなりましたということで、いわゆる六幸商会に管理してもらっている私の口座から、これだけお金が足りないから貸してください、引き出させてくださいということで、引き出すことに私が署名しているのは事実でございます。
 ただ、その全容が幾らになっているかというようなことも、私自身、全くこの全容を承知していないで、いわゆる私の政治活動に対するお金が足りなくなったから私のお金を借用するんだな、そういう思いでそれを理解して、署名をしていたのは事実でございます。それは、調べればすべてわかるわけですから、総額をお調べになればわかりますが、そこは、すべて今、地検の方で捜査が進んでおりますので、いずれ全容が判明すると思います。

○柴山委員
 総理、こちらのパネルにも書きましたが、政治資金規正法では、年間一千万円を超える寄附は、たとえ政治家がみずから代表を務める資金管理団体に対しても行うことができないという量的制限が罰則つきで定められているんです。
 あなたは、自己資金とおっしゃいますが、この規制違反があるかどうか全く無関心だったんですか。

○鳩山内閣総理大臣
 言うまでもありませんが、その一千万という、寄附において上限があることは理解をしておりました。
 したがって、私は完全に元秘書を信頼しておりましたから、その部分、一千万円までは当然のことながら寄附とする、それを超えた部分は当然のことながら貸し出しをするという、すなわち、私のお金を借りて運営をする、そして、したがって、その部分に関しては後で当然返してもらうような判断ができていたものだと理解をしておりました。

○柴山委員
 御自分の刑事責任に関する問題ですから、これが本当に貸し付けに使われていたのか、それともそれ以外の支出に使われていたのかということを、当然総理みずからが確認をされていなければおかしいという話になると思います。
 委員長、以上の質問に関する事実確認のため、株式会社六幸商会の社長である小野寺重穂氏の参考人招致を求めます。

○鹿野委員長
 後刻、理事会で協議いたします。

○柴山委員
 総理、偽装献金の資金源について、総理御本人以外の個人、例えばお母様などの親族ですとか、会社、労働組合などの団体からのものはないと言い切れますか。

○鳩山内閣総理大臣
 私としては、私の知る範囲においてそのようなものはない、そのように信じておりますが、そのこともすべて、今、地検の捜査が進んでおりますので、そこで全容が解明される、そのように信じております。

○柴山委員
 総理が、この問題について説明責任を果たす御意思が全くないということがわかりました。
 申し上げるまでもなく、政治家個人の資金管理団体、こちらに対する企業・団体献金がもしあるとすれば、それ自体、政治資金規正法によって罰則で処罰をされることになっています。そして、代表を務める政治家以外の個人、これには親族なども含まれますけれども、こういう方からの献金が年間百五十万円を超えることも、同じく罰則つきで禁止されていることを付言させていただきます。
 次の質問に移ります。次も大変深刻な質問です。
 私たちの調査や報道によれば、平成十七年以降、実際に献金をしていなかった方々に対しても、友愛政経懇話会の方で所得税の寄附金控除に係る証明書が発行されていたことが判明いたしました。こうした不適切な発行は、四年間で延べ百十六名、献金額合計千四百三十万円分に上るということです。
 そこで、財務省にお尋ねしたいのですが、この不正交付された書類が寄附金控除に実際に使われたという事実はありますか。イエスかノーかだけで結構ですので、お答えください。

○藤井国務大臣
 イエスかノーかだけよりも若干申し上げますが、選挙管理委員会などでこれは出すわけですね。そこは適正に調べていると思います。それに対して、国税庁に対してその申告書が出てくるということでございます。それについては、申告書というか、寄附のための書類が適正であるという前提で国税は処理をいたしております。

○柴山委員
 要は、提出されているということは間違いないということでよろしいわけですね。

○藤井国務大臣
 選挙管理委員会から出たものは提出されているというふうに申し上げられると思います。

○柴山委員
 選挙管理委員会から出たものが提出されているということについて確認をさせていただきました。
 では、総務省に伺います。
 偽装献金であるとして収支報告書から削除された平成十七年以降のこの架空の寄附金の控除証明書について、鳩山氏側に返還の指導をした事実はありますか。それに対して鳩山氏側から返還された証明書は何通ですか。事前通告しています。

○原口国務大臣
 柴山議員にお答えいたします。

 友愛政経懇話会の収支報告書から訂正、削除された寄附者の寄附金控除のための書類の返却を当該政治団体に指導した事実はあるのかという御質問だったと思います。
 法に定めがございませんので、指導した事実はございません。

○柴山委員
 総務省に返還された証明書はありましたか、なかったんですか。これについて答弁漏れだと思います。お答えください。

○原口国務大臣
 柴山議員にお答えいたします。

 法に定めがないものですから、指導をしていません。ですから、定めがないものを返却するということを、これは適切にやってくださいと言ったことはあります。(柴山委員「それは指導しているんでしょう」と呼ぶ)これは指導ではありません。法に定めがないということでございます。そのことを御理解ください。

○柴山委員
 わかりました。指導という言葉は撤回をさせていただきましょう。
 いずれにせよ、適切に処理をしてくださいと言われて、鳩山氏側から返還された証明書は何通ですか。

○原口国務大臣
 柴山議員にお答えをいたします。
 友愛政経懇話会に交付した寄附金控除のための書類については、その後、総務省では確認をしておりません。

○柴山委員
 こうした架空の証明書がもし利用されていれば、所得税の脱税や国家に対する詐欺行為となりますし、これがもし廃棄されていたとすれば、それは偽装献金隠しのための不当な公文書の破棄となります。
 さて、総理と弁護士の六月三十日の会見によると、偽装献金が始まった時期は平成十七年ごろ、少し前かもしれないとのことでした。よろしいですね。

○鳩山内閣総理大臣
 はい、そのように私も感じております。

○柴山委員
 しかし、今回、偽装献金発覚に伴う収支報告書の訂正方法として、当該偽装額を寄附項目から削除するとともに、総理御自身から友愛政経懇話会に対する貸付金に追加するという形で処理をされていますが、平成十七年以前からも偽装献金があることに気づいていた以上、その金額も貸付金に加味するべきではなかったんですか。

○鳩山内閣総理大臣
 これは、いわゆる弁護士の方による調査によりまして平成十七年以降の分まではまず明らかになった、ただ平成十六年以前のものに関しては必ずしも正確にまだわからないということが六月三十日の時点の報告でありました。
 その意味で、当然のことながら、もし平成十六年以前においてもそのような事実というものがあるのであれば、当然その分、私の個人資産から偽装の部分に流用されていたということになるわけでありますし、今お尋ねがありましたように、その部分に関してはまたしっかりと、今検察において調査をされていると思いますから、その額がもし判明いたしましたら当然また貸し付けという形で処理をする必要が出てくる、そのように思っております。

○柴山委員
 いずれにいたしましても、平成十六年以前の部分、そして今回問題となっている五万円以下の部分、偽装献金の額が間違っていたらさらに貸付金額の訂正が必要になるということを総理御自身がお認めになったと理解をいたしました。
 とすれば、先日発表された閣僚資産報告書にある貸付金の記載もうそということになりますが、結局、総理の発表される経理関係の書類はすべて信用できないということになりませんか。

○鳩山内閣総理大臣
 私は、今調査をして判明している事実に基づいて修正を申し上げているところでございます。できる限りそこは正確に行いたい。ただ、その後、今お話がありましたように、この小口の部分、さらには平成十六年以前の部分に関しても当然、貸し付けから偽装という部分があったとすれば、その部分に関して修正をしなければならない、そのように理解をしております。

○柴山委員
 それでは、次の質問に移ります。
 総理御自身の責任についてお尋ねをいたします。
 総理は、六月三十日の会見で、先ほど申し上げたとおり、今回の事件について、総理はおろか会計責任者も見ていないという状況で、会計の実務担当の秘書が一人でやっていたとお話しされています。
 しかし、先ほど述べたとおり、秘書が偽装献金のために六幸商会から資金を引き出すたびに、あなたは指示書を出しておられる。しかも、名前を勝手に使われた人には、総理の同級生や高校時代の恩師などのあなたの個人的な知り合いまで、住所や氏名が明記されているのです。あなたが無関係だったとは到底思えないんですけれども、いかがですか。

○鳩山内閣総理大臣
 本当に申しわけないことに、私が大変にお世話になった方々の名前がその中に入っていました。私がお世話になっていない方でも失礼な話ではありますけれども、そういった恩師に対して大変申しわけないことをしたという思いは強く感じております。逆に言えば、もし私がこんなことを知っていたらば当然やらせる話もないわけでありまして、全く承知をしておらなかったことが残念でなりません。元会計実務担当者を完全に信頼し切ってしまっていたことを、会計責任者も元会計実務担当者を信頼しておりましたから、その意味で、大変、うちの事務所のコミュニケーションというものが足りなかった、その結果でこのようなことを起こしてしまったことは本当に申しわけない、今そのような思いをさらに感じております。

○柴山委員
 そのことを別にしても、かつて鈴木宗男衆議院議員の秘書が、いわゆるムネオハウスの受注に絡む業務妨害事件で逮捕された件について、総理は、平成十四年五月二日の夕刊フジの記事において、このように書かれています。「私は以前から鈴木議員に辞職を求めてきたが、議員の分身と言われている会計責任者の逮捕は議員本人の責任であり、改めて強く求める。」と述べておられます。

 また、土井たか子元衆議院議長の秘書による秘書給与流用事件でも、総理は、平成十五年七月二十三日のメールマガジンで、「私は政治家と秘書は同罪と考えます。政治家は金銭に絡む疑惑事件が発生すると、しばしば「あれは秘書のやったこと」と嘯いて、自らの責任を逃れようとしますが、とんでもないことです。」「秘書が犯した罪は政治家が罰を受けるべきなのです。」と述べておられます。
 今回、会計実務担当者が犯した事件について、あなたはどう責任をとられるのですか。

○鳩山内閣総理大臣
 会計実務担当者も当然元秘書であります。私も、かつて何度もいろいろとこういった政治腐敗の話が出た際に、このように、秘書が犯したことだから、だからこれは議員は関係ないんだというような弁明をすることは潔く思っておらなかった、それは言うまでもありません。このことは私自身にも適用できる話だと思っています。
 その意味で、会計責任者に対する監督及び選任というものに対してそれなりの責めというものを感じてはおりますが、元会計実務担当者に対して会計責任者が同じように信頼し切ってしまって、この問題を全く把握しておらなかったということも問題があると思っております。私自身に全く責任がないと申し上げているつもりもありません。
 したがって、全容をまず、地検に今捜査が及んでおりますから、その捜査を進めていただいて、全容を解明していただきたい、まさにそのことを感じておりまして、そのことを通じて、すなわち、いわゆる監督責任があるかという話であろうかと思いますが、監督責任の是非に関しては、捜査が今進行しておりますから、そこにゆだねたいと思っております。

○柴山委員
 それでは、当該担当者の刑事責任が確定した場合はどうするおつもりですか。

○鳩山内閣総理大臣
 まだそのようなことが確定をしておるわけでありませんから、そのときに判断を申し上げたいと思いますが、仮定のお話に今ここでお答えさせていただくのは控えさせていただきたい。御容赦願いたい。

○柴山委員
 念のために申し上げますが、政治団体の代表者が会計責任者の選任、監督について相当の注意を怠ったときには五十万円以下の罰金に処すると規定されておりますし、また、罰金刑に処せられた場合は五年間の選挙権、被選挙権の停止となり、議員生命にもつながる重要な事態となる。このことを総理にはぜひ最後に御認識をいただきたいと思います。
 委員長、質問の最後に当たりまして、この鳩山資金スキャンダルの集中審議をぜひ開催していただきますようにお願いいたします。

○鹿野委員長
 後刻、理事会で協議をいたします。

○柴山委員
 質問を終わります。ありがとうございました。

第171回 国会 衆議院 内閣委員会

第171回 国会 衆議院 内閣委員会 第17号
平成21年7月8日(水)
午後一時二分開議

○保坂委員
 社民党の保坂展人です。
 お二人の林大臣、御就任おめでとうございます。
きょうは、まず最初に、規制緩和ということで、これまでの許認可が届け出制になったということで、KDDIが行ってきた国際オペレータ通話、これは日本国内から〇〇五一をダイヤルするとオペレーターの方が出てくる、こういうサービス、そして、海外からジャパンダイレクト、このサービスが、二〇一〇年の、つまりは来年ということになりますね、三月三十一日以降終わるということについてお尋ねをしていきたいと思うんです。
 きょうは柴山外務大臣政務官に来ていただいていますが、これまでこのジャパンダイレクトが果たしてきた役割というのはかなり大きいんだということを私は聞いております。例えば、盗難に遭った場合に日本のカード会社を的確に捜してくれて解除の申し入れをつないであげるというようなことであるとか、あるいは事故、病気、そういった個人のアクシデント、さらには、最近では新型インフルエンザでメキシコでホテルに滞在をしているところに日本から架電をしても電話がかからない、あるいはかかっても言葉の問題で日本語、英語では通じないということで、大変利用が多かった、こういうことなんです。
 外務省として、邦人保護ということで現地の大使館等あるわけですけれども、こういったジャパンダイレクトが廃止をされるということに対して私は懸念を持っているんですね、大丈夫だろうかと。高齢の方の旅行者も多いです。四十二、三回ダイヤルすれば直接できますよと、これはスーパージャパンダイレクトですか、これも導入されるということですが、この点について、柴山さん、いかがですか。

○柴山大臣政務官
 お答え申し上げます。
 今先生がいろいろと事例を挙げて御質問されましたけれども、邦人保護という観点から申し上げますと、一般的には、海外邦人からの援護要請、これは主として滞在国の国内通話として管轄の在外公館に対して行われているのが実情です。まれに、確かに海外邦人から外務本省の邦人保護を担当する部署に対して直接国際電話をいただくということはありますけれども、そのまれな事例におきましても、一般的には通常の直接国際電話であるというように承知しております。
 そして、それ以外のさまざまな、外国から日本に対する通話ですけれども、外務省としては、海外から日本への電話のかけ方の照会を受けた場合には一つの手段として御紹介をすることはありましたけれども、結果として、どの程度の海外邦人が日本国内への国際通話の際に御指摘のKDDI国際オペレータ通話を利用されているかということについて、私どもとして把握してはおりません。

○保坂委員
きのう、部屋に、私のもとに来てもらいました。私ちょっと驚いたのは、大体、日本からメキシコにかける、つまり日本から海外、これはもうやっていないんじゃないかと言うんですね。ところが、やっていないというのは間違いでした。やっているんですね。ですから、こういうときに、新型インフルエンザで、ホテルで、ちょっと出られなくなっているというときに、こういうオペレーターを介した通話で安否確認や家族の通話がされているということを外務省が認識していないのはとてもおかしいし、では、これが廃止をされたらどうするんだと言ったら、通訳を介した会社を紹介しますと言うんですね。
柴山政務官、これは費用はどのぐらいかかるか、御存じですか。

○柴山大臣政務官
 一般的には、通訳を扱う会社にはさまざまなものがありまして、一概に相場等は、平均幾ら幾らということは、なかなか言いにくいと思っております。
 それと、今先生が御指摘になった新型インフルエンザに際して、確かに安否確認等の必要性から、日本からの海外に対する通話そのものがふえたということはあるのかもしれませんけれども、それによって、御指摘のKDDI国際オペレータ通話がどの程度ふえたのかということについては、これは外務省としては把握はしておりません。

○保坂委員
 柴山大臣政務官に確認したいんですが、ロシアは核大国、軍縮の話も再開されて、それはうれしいことですけれども、ただ、日本の使用済み核燃料の再処理というのはうまくいっていないのは御承知のとおりなんですよ。六ケ所もなかなか進んでいかない。
 もう時間がないので、では林大臣が原子力関係を所管されているので、そこで総括して答えていただいてよろしいですか。
 六ケ所で処理がし切れないんですよ。大量の委託を今度ロシアにしていかなければいけないという日本側の事情もある。他方において、ロシアでこういったIAEAの査察体制は現状はない、ないけれども、ここの、具体的にアンガルスク国際ウラン濃縮センターというところは記されている。私たちとしては、やはりIAEAのしっかりした保障措置があることが前提であって、例外だけが走るなんということがないようにしっかりこれは目を光らせていかなければならないと思いますが、その点についていかがですか。

○林(幹)国務大臣
 原子力安全委員会を抱えていますけれども、あくまでも国内での所管でございまして、ちょっと所管外でありますので、コメントは控えたいと思います。

○柴山大臣政務官
 今委員御指摘のとおり、現在の協定の中で、我が国からロシアに対して使用済み核燃料を含めた原子力関連品目等の移転を行うためには、ロシアにおいてIAEA保障措置が実際に適用される施設が存在することが条件となっておりまして、この点は本協定に明記をされております。
 ですので、政府としては、先ほど参考人から答弁をさせていただいたとおり、こうした点についての見通し等が得られた上で、この協定の締結について必要な承認を求めるために国会に提出をするという予定でおります。
 ですので、今おっしゃったように、IAEAの保障措置が適用される施設がどこにもないままで我が国の使用済み核燃料から回収されたウランが再濃縮のためにロシアに移転されるということはございません。
 そして、急いでいるんじゃないかという御指摘なんですけれども、日ロ原子力協定は、二〇〇七年の四月から本年二月まで計八回にわたる交渉を経まして、その内容について日ロ両国政府間で合意が得られたということから、去る五月十二日に署名を行ったものでありまして、御指摘のような国内事情との関連性はありません。

第171回 国会 衆議院 外務委員会

第171回 国会 衆議院 外務委員会 第18号
平成21年6月24日(水)
午前九時開議

○近藤(昭)委員
 大臣、ありがとうございます。
 大臣にも御説明をいただきましたように、さまざまな背景、手続がある中ではありますが、ぜひ、しっかりと推進をしていっていただきたいというふうに思うわけであります。
 ところで、政府は、今月十二日、情報交換を主な目的とした租税条約を英領のバミューダ諸島と締結するための交渉を始める、こういう発表をされたわけであります。
 今回のバミューダとの交渉開始は、四月のG20首脳会合がタックスヘイブンの監視強化で合意したことによる、我が国のタックスヘイブンへの監視の強化の一環ともとれるわけでありますが、同じく租税回避地と言われる英領ケイマン諸島や香港島との租税条約交渉への弾みとなることが私は期待されておると思います。
 今回、バミューダ諸島との交渉に至った背景やねらいについて、具体的な説明をお聞かせいただければというふうに考えます。

○柴山大臣政務官
 お答えいたします。
 御指摘のとおり、租税に関する透明性の確保等に協力的でない国、地域を通じた国際的な脱税及び租税回避行為の防止に向けては、OECD、G8、そして今御指摘のあったG20といった多数国間の枠組みにおける取り組みが行われていますけれども、こうした国や地域との間で直接国際基準によった情報交換を実施する枠組みを構築することによりまして、国際的な情報交換ネットワークの整備及び拡充を図ることが重要だと考えております。
 このような観点から、我が国政府といたしましても、今お話があったように、本年六月にバミューダ政府を対象といたしまして、租税に関する情報交換を主体とした協定の締結に向けた交渉を開始したところです。このような協定を我が国がバミューダとの間で締結することは、現下の国際経済金融情勢のもとでタックスヘイブン問題への関心が高まっている中で、OECD等の場を通じた国際的な取り組みと相まって、我が国としても重要な役割を果たすことにつながると考えております。

○日森委員
 特にウラン鉱山ということが大変焦点になっていると思うんですが、これまでオーストラリアとかカナダとかいうところから中心に輸入をされてきたんですが、カザフスタンとの協力関係、これが一層強化をされるという御答弁がございました。そうすると、特に、恐らく焦点の一つであるウラン資源をどのように日本側で利用していくのか、その計画について、できる限り具体的にお示しいただきたいと思います。

○柴山大臣政務官
 委員御承知のように、我が国は、平和的目的に限って利用するために、主に原子力発電所等の燃料として、カナダ、豪州等の諸外国のウランを輸入しております。
 それと同様に、二〇〇七年六月、カザフスタンとの原子力協定締結交渉を開始する中で、原子力の平和的利用及び核不拡散等を担保するのに十分な内容の協定を作成すべく、現在、鋭意交渉を行っているところであります。

○日森委員
 先ほども出ましたが、オバマ大統領のプラハ演説というのがございました。核の廃絶に向けて我が国も努力を行うというふうに中曽根外務大臣もおっしゃっておりまして、「ゼロへの条件 世界的核軍縮のための「十一の指標」」というのを発表されました。核不拡散はそのための重要な要素だというふうに私どもは理解しています。
 先ほどと同じ答弁かもしれませんが、カザフスタンと原子力協力を進めるという中にあって、どのような努力が進められているのか、もうちょっと具体的にお示しいただきたいと思います。

○柴山大臣政務官
 委員の御質問ですけれども、個別具体的な計画については、商業上の考慮も必要であることもありますので、ちょっとこちらでの説明を差し控えさせていただきたいと思います。
 ただ、カザフスタンは、ウラン資源の供給国として大きな可能性を有しているわけですから、ここからウランを輸入できれば、将来、我が国の原子力発電の安定的な運転にとって有益であるというように考えておりますので、そういう方向で交渉を進めております。

○日森委員
 中央アジアプラス日本、これも先ほどどなたか御質問がありましたが、ちょっと違う角度で御質問したいと思うんです。
 当時外務大臣だった麻生総理が、中央アジア非核地帯条約案起草のために資金を拠出して非核兵器地帯創設を支援する意向というのを示しておるわけです。中央アジア諸国は、先ほど武正委員の御質問にございましたけれども、五カ国が非核地帯を宣言している。中央アジア諸国もその早期署名に向けて核兵器国を含む関係国間の協議を実施するということになっているんですが、この点について、カザフスタンとの確認は既に行ったのかどうなのかということについてお聞きをしたいと思います

○柴山大臣政務官
 お答えいたします。
 御指摘の条約は、中央アジア五カ国の批准を得まして本年三月二十一日に発効しておりますけれども、本件条約が実効性を伴って機能するには、核兵器国の義務を定めた議定書、これが発効することが望ましいわけで、我が国としては、核兵器国との協議の現状を含め、カザフスタンを含む中央アジア五カ国に対して確認を行うなど、関連の動向を注視してきました。しかし、現時点でそのような協議が行われたとは承知をしておりません。

第171回 国会 参議院 外交防衛委員会

第171回 国会 参議院 外交防衛委員会 第21号
平成21年6月23日(火)
午前十時開会

○白眞勲君
 防衛大臣、どうもありがとうございました。今日はこの辺りで私は結構でございますので。防衛省さんは大丈夫でございます。ありがとうございます。
 それでは、EPA協定についてお聞きしたいと思います。
 まず、ベトナムとのEPA協定についてお聞きしたいんですけれども、この条文を見ますと、将来における看護師や介護福祉士の受入れの可能性について言及があるわけなんですけれども、どうなんでしょう、外務省さん、これは受け入れるおつもりなんですか。

○大臣政務官(柴山昌彦君)
 御指摘のベトナムとの関係なんですけれども、ベトナム国内では医療、介護水準の向上ですとか人材育成が必要だとされておりまして、また、看護師に係る国家試験制度等も未整備であるといった状況にあります。ですので、交渉において、インドネシアやフィリピンと同様の受入れ枠組みを設けるという結論には至っておりません。
 最終的には、本協定の発効後、可能な場合には一年以内、遅くとも二年以内に結論に達することを目的として両国間で引き続き交渉していくということで合意をいたしまして、これを協定で我が国の約束として明記をしました。
 ただし、先生御指摘の点ですけれども、この約束はベトナム人の看護師候補者をインドネシアやフィリピンと同様の枠組みで将来受け入れていくということについて何ら現時点で決めているものではありません。
 なお、この継続交渉に係る約束とは別に、我が国の現行の入管法令で認められている内容を本協定でそのまま約束してほしいというベトナム側からの要望を踏まえて、現行の入管制度の範囲内で、我が国の看護師免許を取得した日から最長で七年間、看護業務に従事するための入国及び一時的な滞在を認めるということ、これについては合意をしております。

○白眞勲君
 交渉をこれからしていくんですよというお答えなんですけれども、交渉するには、当然、こちらとしてのスタンスというのを見せていかないとこれは交渉にならないと思うんですね。
 受け入れる方向で交渉していくのか、いや、受け入れたくないけれども向こうからの強い御要望があるから、その辺はそういうスタンスで交渉していって、どこかで妥協点を見出していくつもりなのかどうか、この点についてちょっとお答えいただきたいと思うんですけれども。

○大臣政務官(柴山昌彦君)
今申し上げたとおり、まず、とにかくやはり我々としては質の確保というところが重要な問題であるというように思っております。
 当然のことながら、インドネシアやフィリピンとの間で特別の枠を設けて受け入れていくというような仕組みをつくっておりまして、ただ、その制度設計として、現時点では、やはりベトナムの国内状況、そういったことも今申し上げたような状況もありますし、また、トータルとしての看護師、介護福祉士候補者の受入れの実施状況、こういう部分もしっかりと見極めていかなければいけないと思っておりますので、総合的な判断として交渉に当たっていきたいというように思っております。

○白眞勲君
 そうしますと、次に、スイスEPA協定について日本との関係でお聞きしますけれども、原産地証明制度が今回簡素化されたということですけれども、これは、今までのEPA協定、特にASEAN関連についてはこれちょっと内容が違っていますよね。これはASEANから簡単に言えば文句出ないのかなという感じがするんですね。こっちもこういうふうにしてくれないかという要請ですけど、この辺どうでしょうか。

○大臣政務官(柴山昌彦君)
 今御指摘のとおり、日・スイスEPAに規定される原産地証明制度は、これまでASEAN等で行われておりますような発給当局が原産地証明書を発給する第三者証明制度ということを採用しているのに加えまして、今回、輸出国の権限のある当局から一定の基準を満たしているとしてあらかじめ認定を受けた認定輸出者、これによります原産地申告を認めていくという制度が設けられておりまして、輸出者はこれら二つの制度のうちいずれかを用いるということができるようになります。
 この原産地申告制度によって、今申し上げた認定輸出者、こちらは原産品であることの証明に必要な費用及び時間が軽減され、輸出手続が円滑に行われるということになります。これによって日本・スイス間の貿易が促進されることが期待されるということになるわけです。
 ただ、今御指摘のように、じゃ、これまでとの均衡はどうなのかという当然声も出てくるんだと思います。要は、認定輸出業者の信頼性という問題をどう考えるかということだと思うんですね。
 本件制度の実施に当たっては、これまでのやはりスイスの実績などについてもしっかりと我々精査をいたしまして、日本・スイスEPA及び日本、スイス両国それぞれの関連国内法令、これに基づいた認定輸出者の認定要件の在り方、それから運用ということについてしっかりと厳格に行っていけるかどうかということだと思うんですけれども、双方、認定輸出業者が認定条件を満たさない場合には、その認定の下で不適切な運用を行う場合には認定の取消しの義務をきちんと行っていくと。あるいは、原産地申告に疑義がある場合、原産地申告の真正性あるいは正確性についてそれぞれ締約当事国が確認を行っていくと、そういうことをしっかりと担保していくという制度を設けております。
 そのような確認ができない場合には関税上の特権待遇を与えないことができるということが定められておりまして、本制度を適正に運用することによって迂回輸出等の問題にも適切に対処できるというように考えております。

○浜田昌良君
 今答弁いただきましたように、相手国の信頼に足る制度が前提になりますけれども、貿易量からすればスイスに比べ圧倒的にやっぱりASEANなりが大きいわけですから、そういう国々への日本の事業者の輸出をするときの負担を考えれば、そういう能力構築を図りながら世界の貿易を活性化するというのも日本の貢献の大きな一つだと思いますので、前向きに検討をいただきたいと思います。
 次に、ベトナムとの人の交流の話に移りたいと思います。
 これにつきましては既に白委員からもまた小池委員からも質問がございました。今回の日・ベトナムEPAにおいては、日本での資格を取ったベトナム人看護師は、フィリピンEPAやインドネシアEPAと違いまして、これらの二つのEPAの場合は期限なしの在留資格が認められたわけですね。今回は違うと、七年間だと。その理由は何かというと、向こうの国に看護師や介護福祉士の国家資格がないというのが根拠になっているわけですね。
 だから、そうであれば、相手国に看護師の国家資格の制度をつくってあげると、このための技術支援をするというのは向こうの国のいわゆる医療水準の向上にもなるわけですから、是非こういう視点で是非ODAを活用してそういう制度づくりをし、その延長線の中には七年じゃなくて期限をなしにしていくということも含めて考えていくと、こういう見方が重要と思います。これらについての御答弁いただきたいと思います。

○大臣政務官(柴山昌彦君)
 御指摘非常にごもっともだと思います。その御指摘の技術協力については、今回協定署名時の共同声明に添付されている日・ベトナム間の協力事業・計画リストの一項目として、ベトナムの看護師、介護福祉士の資格制度整備のための技術協力という項目が盛り込まれているところであります。
 この技術協力については、現在ベトナム政府が我が国に要請する支援の内容を検討しているところでありまして、今後、同政府から具体的な要請が出された後、実施の是非を含めて我が国政府において検討を行うこととなります。

○井上哲士君
 日本共産党の井上哲士です。
 EPAと日本農業の問題に絞ってお聞きいたします。
 まず、外務大臣にお聞きしますが、ベトナム、スイス、両国の農林水産物の平均関税率はそれぞれ幾らか、また、両国より平均関税率がはるかに低い日本がこの分野で譲許する理由は何なのか、まずお願いします。

○大臣政務官(柴山昌彦君)
 WTOの統計によりますと、ベトナム及びスイスの農林水産品に対する平均関税率は、それぞれ二四・二%及び四三・五%でありまして、我が国の平均関税率二一・八%よりも高い水準となっております。
 そして、後段の、なぜ日本がこの分野で譲許するのだということについてなんですけれども、当然のことながら、日本そしてこれら両国との間におきましては、産業構造も国の発展段階も違うわけでございます。そして、それを踏まえて、こうしたEPA協定を締結すれば相互発展に資するということからこうした協定を締結するわけでありまして、その上で、お互いの困難な状況を考慮しまして互いの国内産業へ悪影響を与えないよう十分留意をした上で、御指摘の農林水産品も含めて双方が関税の撤廃や削減を行っているということで御理解をいただきたいと思います。

○井上哲士君
 カナダの先ほどの報告書では、日本の輸入自由化によって日本では穀物及び肉製品の生産が減少する、こうありまして、国内農林畜産業への経済的打撃を指摘をしているわけですね。立場に変わりはないという答弁でありましたが、堅持していただきたいと思います。
 同時に、国内農業への打撃を及ぼす懸念のもう一つは日本とオーストラリアのEPAでありますが、今年三月に第八回会合をされております。オーストラリア側からの日本側への農林水産品の関心品目について、現時点ではどういう要求がされているんでしょうか。

○大臣政務官(柴山昌彦君)
 日豪EPA交渉におきましては、豪州サイドよりは、米、牛肉、乳製品、砂糖及び小麦を含む多くの農林水産品に係る関税等の国境措置に関して特恵的な待遇を得ることについて関心が示されています。

第171回 国会 衆議院 決算行政監視委員会

第171回 国会 衆議院 決算行政監視委員会 第5号
平成21年6月10日(水)
午前九時二分開議

○平岡委員
 二十一年度までに七千九百億円ということで、これで終わったわけではない、まだまだこれから続いていくんだろうというふうに思います。
 今大臣が言われたように、何のためにこれはあるのかというと、やはり基本的には大量破壊兵器に対応するということが視点だと思うんです。では、しからば、大量破壊兵器とは一体何なんですかということですね。一つは、化学兵器ということもあるでしょう。ただ、これについては、禁止条約で北朝鮮だけが周辺諸国では加盟をしていないという状況。それから、生物兵器でありますけれども、生物兵器について言えば、これは北朝鮮も含めて周辺諸国は参加しているということですね。それから、やはり最大の問題は核兵器ということなんだろうというふうに思います。
 この問題については、やはり私は一つ一つ丁寧に、大量破壊兵器というのが使われない状況、あるいは大量破壊兵器を運搬するミサイルというものが使われない状況、こういうものをつくっていく努力をしていかなければいけない。ただ単にBMDをつくれば安心というものでもないでしょうし、BMDができれば、それに対抗するための措置を周辺諸国がとっていくということになって、まさに軍拡競争になっていくということであって、お互い全くためにならないというふうにも思います。
 それを前提として、私たちは、先ほど言いました大量破壊兵器の中でも、核兵器については、東北アジアの非核地帯条約というようなものをつくっていきたいということで党の中でも提案をさせていただいているということでありますけれども、今、世界各地に実は既にそういう条約というのはあります。南半球は実質的には非核地帯にもう全部なっている。東南アジアでも条約はできている。モンゴルも非核地帯宣言をやった。こんなことで進んでいるわけでありますけれども、そうした世界の非核地帯条約のような動きについては、日本政府としてどう評価しているんでしょうか。これは外務大臣政務官、答弁いただければ。

○柴山大臣政務官
 お答えいたします。
 今、委員が御指摘になった非核地帯条約としては、中南米におけるトラテロルコ条約、南太平洋におけるラロトンガ条約、そして東南アジアにおけるバンコク条約、中央アジア非核兵器地帯条約、これらが発効しています。
 これらの条約は、締約国が核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませずという、いわゆる非核三原則を内容としておりまして、それぞれの地域の平和と安定の強化に向けての努力のあらわれであると私どもとしては受けとめております。
 これらの条約においては、いずれも、すべての核兵器国の参加を予定した議定書が存在しておりまして、その中には、核兵器国が非核兵器国に対して核兵器の使用または使用の威嚇を行わない、いわゆる消極的安全保障などを……(平岡委員「中身はいいですから。評価です」と呼ぶ)はい。
 こういう議定書があるんですけれども、ただ、トラテロルコ条約を除いては、そうした議定書、実はすべての核兵器国が署名、批准を終えている状況にはありませんので、これらの条約がより実効性を伴って機能するのかどうかということについて、引き続き関連の動向を注視していきたいというように考えております。

第171回 国会 衆議院 海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会

第171回 国会 衆議院 海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会 第7号
平成21年4月23日(木)
午前九時開議

○中谷委員
 先ほど外務大臣は、国連の決議も出された、まさに国際社会として看過できない状況に陥っているということでありますが、この国連決議の内容について御説明を願います。

○柴山大臣政務官
 御質問のありました昨年ソマリア沖海賊に関して採択された国連安保理決議、こちらは、第千八百十六号、第千八百三十八号、第千八百四十八号及び第千八百五十一号と四本あるわけですけれども、この具体的内容といたしましては、例えば、ソマリア沖で海軍艦船及び軍用機を展開させている各国に対して海賊行為への警戒を要請したり、あるいは、ソマリア沖の公海上における海賊対策に特にこうした海軍艦船及び軍用機を派遣することによって積極的に参加すること等を要請しています。

○赤嶺委員
 日本共産党の赤嶺政賢です。
 きょうは、ソマリア沖の海賊問題についての総理への質問であります。
 ソマリア沖の海賊は、国際的な犯罪行為であり、現地周辺国の警察活動を基本に国際的な連携協力で対処すべき問題です。日本は、ソマリアと周辺国の海上警察力の強化や、ソマリアの内戦と貧困の解決に向けた支援を行うべきであって、自衛隊は派遣すべきではないというのが私たちの立場であります。
 そこで、外務大臣に確認しますが、ことしに入って以降、ソマリア沖の海賊事件はふえているのか、あるいは減っているのか、端的にお答えいただけますか。

○柴山大臣政務官
 お答えいたします。
 ソマリア沖の、またはアデン湾の海賊事案は、特に昨年の夏以降急増しております。昨年は百十一件で世界の約四割、〇七年の約二・五倍の事案が発生しています。
 今委員御質問のことしについてですけれども、ことしに入って海賊事案は四月二十日現在で八十二件発生しておりまして、既に昨年の件数の七割強、ハイジャックされた船舶は二十隻に達しております。そして、十六隻が抑留されており、約二百七十名の乗員が人質となっているということで、顕著な増加傾向が見られるというように判断できると思います。

第170回 国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会

第170回 国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第2号
平成20年12月10日(水)
午後零時十一分開議

○柴山大臣政務官
 柴山昌彦でございます。
 外務大臣政務官として、国民の皆様の御期待にこたえるべく、中曽根大臣の指導のもと、沖縄及び北方問題に全力で取り組む決意でございます。
 藤村委員長初め本委員会の先生方に御指導、御協力を賜りますよう、心からお願いを申し上げます。(拍手)

第170回 国会 衆議院 安全保障委員会

第170回 国会 衆議院 安全保障委員会 第2号
平成20年11月27日(木)
午前九時開議

○柴山大臣政務官
 おはようございます。外務大臣政務官の柴山昌彦でございます。
 今津委員長初め委員の皆様方にごあいさつを申し上げます。
 本日も、タイあるいはインドから大変な事件のニュースが飛び込んできているわけですけれども、こうした国際情勢が依然として不透明な中で、我が国の安全と繁栄を確保するために一層の努力が必要であると考えております。
 私は、外務大臣政務官としての責任を果たすべく、中曽根外務大臣の御指導のもと、外交、安全保障政策の推進に全力で努力をしてまいります。
 委員長初め本委員会の皆様方の御指導と御協力を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)

第170回 国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会

第170回 国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第2号
平成20年11月12日(水)
午後零時十分開会

○大臣政務官(柴山昌彦君)
 柴山昌彦でございます。
 外務大臣政務官として国民の皆様の期待にこたえられるように、中曽根大臣の指導の下、沖縄及び北方問題に関して全力で取り組む所存でございます。
 市川委員長を始め委員各位の先生方に御指導、御協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

第170回 国会 衆議院 外務委員会

第170回 国会 衆議院 外務委員会 第1号
平成20年11月7日(金)
午前九時三十一分開議

○柴山大臣政務官
 外務大臣政務官の柴山昌彦でございます。
 激動する時代の中で、外交上の諸案件に外務大臣政務官としての全力を尽くしてまいる所存でございます。
 河野委員長初め委員各位の皆様方の御指導と格段の御協力をお願い申し上げます。
 ありがとうございます。(拍手)

第170回 国会 参議院 外交防衛委員会

第170回 国会 参議院 外交防衛委員会 第1号
平成20年10月23日(木)
午前十時開会

○大臣政務官(柴山昌彦君)
 外務大臣政務官の柴山昌彦でございます。
 北澤委員長を始め委員各位に謹んでごあいさつを申し上げます。
 中曽根外務大臣の指導の下、我が国の外交上の諸課題に全力で取り組み、職務を全うしてまいる決意でございます。
 また、本委員会担当政務官として、委員長また委員の皆様方の格段の御指導と御協力を賜りますようにお願いを申し上げます。

第169回 国会 衆議院 法務委員会

第169回 国会 衆議院 法務委員会 第10号
平成20年04月22日(火)
午前九時三十分開議

○柴山委員
 ありがとうございます。
 まず、本日、参考人の皆様方には、法務委員会に御出席をいただき、貴重な御発言を賜ったことを心からお礼を申し上げたいと思います。
 まず、山下先生にお伺いしたいと思います。
 今回の保険法改正の大きなコンセプトとして、いわゆる第三分野に関しての規定の新設ですとか、あるいは共済契約への拡大など、カバーする範囲を広げているということが挙げられるかと思います。
 ただ、これだけ保険商品が多様化している中で、いまだに伝統的な損害保険あるいは生命保険の枠組みということはしっかりと維持している。御案内のとおり、年末の税制改正では、保険料控除の範囲で生命保険、損害保険の壁をどう考えるかということが大変大きなテーマとなりました。また、今回の保険法と保険業法との間で傷害疾病保険の範囲がずれているというようなことも指摘されている部分であります。この点についてどのようにお考えになるかということを、まず冒頭お伺いしたいと思います。
 そして、二点目なんですけれども、共済契約の規律の問題なんですけれども、先ほど今尾参考人の方からも御指摘がありましたとおり、共済契約の中には、もちろん数理計算を前提とする大規模なものもありますけれども、自助的、相互扶助的な要素を強く持つものなど、非常に多様な種類があるかと承知をしております。
 こういった部分を、例えば少額短期というような観点に着目して、契約ルールの異なるものを設定するというようなことも十分考えられ得たのではないかなと思うんですけれども、この点についてどういう議論がされたのかということをぜひお伺いしたいというように思っております。

○山下参考人
 ありがとうございます。
 御質問の今回の保険法案で適用対象としておる保険あるいは共済の類型と、例えば業法であるとか税法における保険の類型との関係という点でございますが、特に業法の面につきましては、今回、第三分野の保険、傷害疾病保険に関する規定を設けようということで、これは従来、保険業法の方では約十年前の全面改正で傷害疾病保険、第三分野の保険の類型化も図ったわけでございます。それとの関係をどうするかということを一応慎重に審議いたしまして、やはり今回の保険法案では業法とは少し異なる類型化を図っているわけでございます。
 これは、契約として考えますと、保険会社であるとか、共済事業を営んでいる組合、これがどういうふうな事業者であるかということよりも、契約内容、すなわち保険契約者、共済契約者と保険者、共済者との間の私法上の権利義務という関係で考えれば、事業者がどういうものであるかということよりは、契約内容がどうかということが決定的に重要である、こういうことでございまして、そういう面から考えると、保険法案のように、傷害疾病定額保険契約という類型を立て、それからもう一つ、損害保険契約の中に傷害疾病損害保険契約、こういう形の類型に分けて整理するのが適切であろうということになったわけでございます。
 これに対して、保険業法でありますとか各種の共済事業法、特に保険業法の方は生損保の分離という、事業者がどこまで業務を営んでいいのかということについて、やはり監督の観点から類型化を図る必要があるわけでございまして、そういう観点から、従来、保険業法でとってきた類型化というものを、改めて金融審議会の場でも維持してよいかどうかということを検討いたしまして、やはり業法上は従来の枠組みを維持するということが必要であろう、その上で、両者が食い違った場合に何か実務上深刻な問題が生じないかということを精査したわけでございますが、特段、この点で問題は生じないだろうという判断で今回のような法案になったものでございます。
 それから二点目の、共済契約を今回の保険法案で規定するに当たりまして、例えば少額短期というふうな契約類型を取り出して、一般の保険、共済契約とは別の規律を設けてはどうかという点でございますが、保険法というのは、この法案をずっとごらんいただきますと、やはり民事の基本法でございまして、例えば損害保険契約あるいは生命保険契約というものを、いわば保険金額で規律を分けていくというふうなことは民事の法律では基本的には技術的に難しいだろうということでございます。
 そうすると、保険契約、共済契約を一元的に規律するということになろうかと思いますが、そのときに、少額短期の保険契約に契約法の面でも強い規制を及ぼして、そういう少額短期の利便性の高い共済が実施しにくくなるというふうなことがあれば、それはそれで問題かと思います。
 先ほども意見として申し述べましたように、この保険法案の要綱案をつくる法制審議会の部会では、実際の共済事業者の代表の方にもメンバーとして加わっていただいて、実際行われている少額短期の共済契約も含めて、実務上不都合が生じないかどうかということを慎重に検討して、その結果、特に問題ないだろう、こういうことで今回のような法案になっているわけでございます。
 非常に少額の見舞金を支払うような、相互扶助制度のようなものは、そもそもこの保険法案に言う保険契約には該当しない、またその種の制度については従来どおり可能になるという区分けで、そこの具体的な境というのは今後の解釈で明らかにされていくのではないかと思っております。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 続きまして、先ほど来、問題として取り上げられております保険金の不払い問題に関連してお伺いしたいと思います。
 確かに、今回のルール、消費者の保護として告知についてのルールの整備、例えば保険者からの質問に回答すればよいという形でのルール設計、また募集人による告知妨害があった場合の支払いというような形で整備をされたことは確かに高く評価するべきであろうかと思います。
 しかし、今御説明があったように、今後重大な過失による免責をどうするか、あるいは調査に必要な期間というものをどうとらえるか、重大事由解除、こういった問題についてきちんと詰めていくべきだという御指摘もあるところですし、また、私は、そもそも今回の不払い問題のもう一つの大きな背景としては、やはり説明義務の問題があるのではないかなというように思っております。
 例えば、今、最後、坂参考人の方から御指摘があった、責任開始前の発病、こちらについて負担をしないというような問題についても、これをあらかじめきちんと説明していたのかどうかということは私は非常に重要な問題ではないかなと思っておりますし、また一般に、特約について、これをきちんと説明しなかったことによる不払いの問題等についても大きく指摘をされているところでもございます。
 こうした説明義務に関して、もちろん消費者契約法あるいは金融商品取引法等の規律なども考えられるかと思うんですけれども、やはり保険法できちんと明定すべきではないかという議論が当然出てきてしかるべきだと思うんです。これについてどのようにお考えか、また、事業者として、この説明義務、不払い等に関する取り組みが一体どのようなものになっているのかということについて、まず生命保険協会の方から御説明をいただきたいと思います。

○筒井参考人
 お答えをいたします。
 改めて、お支払い問題で大変な御迷惑をおかけいたしまして、本当に申しわけございません。やはり、適切、迅速にお支払いに努めるということは、我々は保険のプロでございますので、そういう自覚のもとに、当然の責務として、こういう問題が二度と起こらないということで取り組んでまいりたいと考えております。
 いろいろな再発防止策を組み立てて現在取り組んでいるところでございますが、その最大の柱は、今先生御指摘のとおり、お客様に対する御説明というものをもっと充実し、強化をしていかなければいけないということを重要な柱として今取り組んでいるところでございます。
 特に、生命保険の営業職員については、かねてから言われておりましたが、ややもすれば新契約をいただくということに傾斜がかかっているんじゃないかというふうな側面も確かにございましたので、こういう新契約に偏ったような評価体系を大きく変えまして、お客様のアフターサービス、特に御加入いただいている保険契約の内容を定期的にお知らせするでありますとか、あるいは万が一そういう事故が起こったときにどういうふうなお支払いの手続、請求が必要なのかということについての説明、そういった活動も評価するような形で取り組んでいるところでございます。
 象徴的な活動としては、御契約内容確認活動、これは弊社日本生命の例でございますが、定期的にお客様を御訪問して、先ほど申し上げたようなお客様への御説明ということを重点に取り組んでいるところでございます。
 今回の法案の御趣旨も、そういう説明義務の強化というところは当然趣旨としてございますので、引き続き、今やっている取り組みをさらに強く推進していきたいと考えております。
 以上でございます。

○柴山委員
 続きまして、損害保険協会の方にもお伺いしたいと思うんです。
 特に、これは損害保険協会さんに限ったことではないんですけれども、今、保険会社相互間の合併あるいは統合が活発に行われているところでございます。そのような中で、商品あるいは約款の統合ということが本当にスムーズにいっているのか。もしこの部分で問題があるのであれば、それが、先ほど御説明のあった説明義務、特に約款の説明のようなところに影響してくるのではないかという指摘があろうかと思います。これについてどのように対処されているかということを、まずお伺いしたいと思います。
 また、損害保険の場合に、事故があった場合に、ともすると、ユーザーサイドからすれば、請求主義がかかり過ぎているんじゃないかと。今回の法律十四条で、事故についての通知義務が課されていて、これ自体はやむを得ない部分かと思うんですけれども、それにしても、ユーザーサイドからは会社の不親切性ということがややもすると指摘をされている部分かと思います。これについてどのような対応をされているのかということについて、ぜひお伺いしたいと思います。

○柄澤参考人
 先生御指摘の点、真摯に業界として受けとめたいというふうにまず考えます。
 この間のいろいろな問題につきまして、合併の問題が影響したのではないかという点につきましては、一定程度先生御指摘の点はあろうかというふうに思います。
 保険料規模で上位の六社、損保、いずれも合併を経験しております。私ども三井住友海上も二〇〇一年十月に合併いたしました。また、幾つかの統合話も巷間うわさされているという業界でございます。
 当社の場合で申し上げれば、既に統合のプロセスは終了いたしまして、三井住友海上としての商品の開発、システムの高度化等に取り組んでおります。旧両社の統合のプロセスにおいては、苦労したことは少なくございませんでしたが、御指摘の商品、約款につきましては、統合プロセスの一環として、統合後の新商品を開発し、御契約者が満期を迎えるごとに移行をお願いし、商品の一体化を進めることができました。
 損害保険商品は、主力の自動車保険を初め一年契約が中心であることもございまして、比較的早期に移行が進んだ面もあろうかというふうに思います。システム面の統合も大きな課題でしたが、安全性を重視して慎重に準備を進めることで、大きなトラブルを来すことなく統合できたというふうに考えております。
 しかしながら、一方的に統合の事務の混乱等において一部契約者の皆さんに御迷惑をおかけしたことは事実だというふうに思いますので、これを真摯に受けとめて、このようなことがないよう、取り組んでまいりたいというふうに考えます。
 また、先生御指摘の請求主義の問題でございますけれども、基本的に各社積極的な請求案内に努めておりまして、例えば三井住友海上におきましては、事故を受け付けた際に、お支払いの可能性がある保険金のすべてを御案内申し上げているところでございます。また、地震などの災害が発生した場合におきましては、お客様のお申し出を待つことなく、保険会社が被災地域のお客様を訪問するなどして、被害状況の把握、保険金のお支払いの御案内を申し上げる活動を行っております。
 このように、損害保険の公共性、社会的意義にかんがみまして取り組んでいるところでございますので、よろしく御指導をお願いしたいというふうに思います。
 以上でございます。

○柴山委員
 質問がまだ全然終わっていないんですけれども、十五分で質疑時間がもう終了してしまいましたので、あとは残りの先生方にお任せしたいというように思っております。
 きょうは本当にありがとうございました。

第169回 国会 衆議院 経済産業委員会

第169回 国会 衆議院 経済産業委員会 第3号
平成20年4月2日(水)
午前十時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 知的財産権の充実をずっと訴えてこられた甘利大臣に、こうして特許法等改正案につきまして質問ができることを大変うれしく思っております。
 私は、現行の特許法の有する大きな課題として、国際的連携が必ずしも十分ではないこと、それと、特許の登録ですとか紛争解決に時間やコストがかかり過ぎることをずっと主張してまいりました。今回の改正はその是正に資するものと思いますけれども、まずお伺いしたいのは、特許、意匠、商標の拒絶査定の不服審判請求期間を三十日から三カ月に拡大するという点でございます。これは、もちろん権利保障のためであるとはいえ、さっき申し上げた紛争解決の迅速性の要請からは若干問題も指摘されるところだとも思うんですけれども、この点についてはどういうお考えなのでしょうか。

○肥塚政府参考人
 お答え申し上げます。
 特許制度については、審査処理件数が増加しておりまして、これに伴って、拒絶査定が行われる件数、さらには拒絶査定に対して不服審判を請求する件数も増加してきております。それから一方で、制度利用者にとっては、各特許出願について審判請求の当否を判断するための調査や検討の時間を十分確保することができないという要望が出されております。
 こういう状況下で、審議会でも御議論をいただきまして、他国の特許制度においては、米国ですとか中国では審判請求期間が三カ月、欧州では二カ月となっていること、それから行政不服審査法で、手続保障の観点から、請求期間を六十日から三カ月に拡大する方向だということを踏まえて、請求期間を三カ月に拡大する提案をしているところでございます。
 今の期間の問題でございますけれども、特許制度では、審判を請求する際に、特許を請求する技術範囲に補正がなされますと、拒絶査定を行った審査官が再度審査をして、適正な補正がなされていますと、みずからの拒絶の査定を取り消して特許にするという制度、前置審査という制度がございます。
 この前置審査、再審査の段階で特許になる確率は非常に高うございまして、いわゆる二〇〇六年の統計で四五%ぐらいございます。また、この審査官による再審査は原則二カ月以内にやるということになっておりまして、補正が行われますとこういうスピーディーな処理がなされるわけでございます。
 今回の請求期間の拡大で、補正の検討可能期間が長くなるということになりますと、適切な補正を伴った審判請求がふえるというふうに思われまして、その場合には、審査官による再審査の結果特許にされる可能性がさらに高まるということで、速やかに権利取得がなされるということになろうかというふうに考えております。
 それから、このように、審判部における審理待ち期間を経ることなく特許になるケースがふえるということになりますと、結果として、特許庁全体として効率的な出願の処理にもなっていくのではないかというふうに考えている次第でございます。

○柴山委員
 結果的には、件数の処理がうまく回ることによって迅速性の要請に資するという趣旨も今御答弁いただいたかと思います。
 さて、この期間の問題もそうなんですけれども、先ほど申し上げたようにコストの問題も非常に大きな要素になってくると思います。
 特許あるいは商標関係の料金、特に中小企業の負担が大きい十年目以降の特許料ですとかあるいは商標設定登録料の引き下げ、これが実現をしたことは評価をさせていただきたいと思います。
 しかし、その引き下げの理由というのが、いわゆる特許会計におけるシステム化等の歳出軽減というようなところが理由になっているわけなんですけれども、そもそもこの特別会計制度というのは、この際抜本的に見直すべきではないか、同じような趣旨を持っている登記特別会計との統一処理も、場合によっては考えていくべきではないかと思うんですけれども、これについて大臣どのようにお考えですか。

○甘利国務大臣
 特会というのは、なぜ設定するかといえば、それは受益と負担の関係を明確にするということであります。その意味では、登記特会も特許特会も同じ趣旨にのっとって設置をされた。問題は、その目的が達成されているか、その目的に沿って引き続き行われているかという違いだと思います。
 登記特別会計は、コンピューター化を早急に進めていくという趣旨でもって、受益と負担の関係を明確にする特会として設けられているわけなんですが、平成二十二年度末をもって当初の目的を達成すると考えられることから、一般会計へ統合することになったというふうに聞いております。
 一方で、特許特会の方は、技術革新に合わせて不断に特許事務が高度化される体制を構築していく、財源としての手数料等の適切な改定をそれに沿って行っていくという仕組みでなされているわけであります。
 国内外のユーザーニーズに合わせた制度改正、国際的な出願増に対応したワークシェアリング、それから国際的な制度調和等に不断に対応するために、今後とも、出願人の理解と協力を得つつ、所要の財源を確保するという意味で、特別会計を維持する必要性が依然として特許特別会計にはあるということであろうと思っております。

○柴山委員
 御指摘の趣旨は大変よくわかるんですけれども、やはり登記にしてもこの登録にしても、しょせんは手数料であるというような部分では共通性を有するのではないかなと思っております。
 また、時代おくれの収支相償の発想を持っていることによって、特許審査関係の請求料を、国際的に見て大変高いと言われている商標の登録料で補っているというような指摘もあります。
 そういうようなことからすれば、やはり抜本的な見直しが必要ではないかということを問題意識としてぜひ提起をさせていただければというように思っております。
 次の質問に移らせていただきたいと思います。
 今回の改正では、発明を実施できる通常実施権、あるいは、今回仮通常実施権という形で、出願段階での権利も保護される対象また登録の対象となったわけですけれども、この登録で、ライセンシーの情報ですとかあるいはその権利の具体的な内容についてはマスキングをかけることができるという形になっているわけですね。このマスキングは、例えば利害関係人、特に特許権を譲り受けようとする者の取引の安全を害するのではないかというようにも思われるんですけれども、この点はいかがなんでしょうか。

○肥塚政府参考人
 先生御指摘のとおり、通常実施権の登録記載事項の開示を制限することによりまして、対抗力を具備した通常実施権者に関する情報は、通常実施権者がサブライセンサーになっている場合も含めて、登録原簿上は不明確となります。この点は御指摘のとおりだと思います。
 ただ一方で、特許権取引の実務は専門家同士で行われることがほとんどでありまして、権利を譲り受けようとする者などの利害関係者は、事前に、ライセンス契約の存在についてのデューデリと申しますか法的監査を行うことを通じて、当該権利に関する情報を取得した上で取引を行う場合が多いということは御承知のとおりでございます。
 また、特許権の譲渡契約においては、表明保証条項あるいは解除条項を設けることが通常でございまして、仮に、契約時に示されたライセンシーにかかわる情報と事実が異なったことによって譲り受け人が不測の損害をこうむることがあっても、これらの条項に基づくと、事後的には金銭的に補われるということになっていると承知しています。
 一方で、特許権にかかわる通常実施権の登録率は、今、十万件に対して千数百件、一%ぐらいにとどまっているというふうに推計されておりまして、登録記載事項の開示制限、ユーザーニーズでございますが、こういうことを導入することによって通常実施権の登録制度が利用しやすくなって、これまで登録されていなかった通常実施権が登録されるようになるということを通じて、特許権の取引の際に、通常実施権の有無について、公示を通じて得られる情報量が全体としてふえるという側面もあるというふうに思っております。また、これらの登録制度の活用を通じて、知財の活用の拡大というのを目指しているのがこの改正の趣旨でございます。
 したがいまして、御指摘のような側面はあろうかというふうに思いますけれども、これら全体を考えますと、登録記載事項の開示制限の導入によって、取引の安全が損なわれるケースは限定的だというふうに考えておりまして、むしろ、通常実施権の保護を図る見地からは、開示制限を導入して登録制度の活用を促していくという方が妥当ではないかというふうに考えている次第でございます。

○柴山委員
 今、特許権を譲り受けようとする者は、当該特許権のライセンス契約の存否についてはデューデリジェンスをかけるからいいじゃないかというようなお話があったかと思うんです。
 ただ、これについては、今の特許というのは、いろいろ複合的な特許が設定をされているものですとか、あるいは、さっきサブライセンスという説明もありましたけれども、そういう形で派生的な権利が発生しているものもあるわけですね。また、本当にプロだけの間しか特許権が流通しないのか、今後さまざまな形での、信託も含めた形での取引がなされる中で、確かに今登録が、余り普及が進んでいないという側面はあるんですけれども、私はやはりこれをオープンにしていくということが求められているのではないかなというように思っております。
 現に、諸外国における通常実施権の登録制度を比較しましても、ライセンシーの情報ですとかあるいはライセンス期間、またその権利の内容等については登録事項とされている国が大宗であるというように思います。恐らく、審議会ではさまざまな議論があったかと思うんですけれども、こういうこともぜひ配慮をしていただきたいと思いますし、もし説明に追加することがあればお願いをしたいと思います。
 また、今私は、特許権を取得しようとする者についてだけ言いましたけれども、例えば、並列的に別の通常実施権を取得した者ですとか、あるいは一般公衆ですとか、こういったほかの利害関係人に対しても、登録ということをきちんとオープンにしていく要請はないのかということについてもあわせてお聞きしたいと思います。

○肥塚政府参考人
 まず、今の最後の点でございますけれども、通常、通説ですとか判例でございますと、通常実施権者は、無権原の第三者が発明を実施したとしても、特許権者にかわって第三者に対して権利を行使するということは認められていないというふうに承知していまして、通常実施権者同士の間の関係、確かに実態として複数の、重畳的に通常実施権が与えられるというようなケースもあろうかと思いますけれども、通常実施権の登録自身は、効力発生要件ではなくて第三者対抗要件でありますので、現行制度の中でも、登録簿上にあらわれていない通常実施権が数多くあるというような状況であろうかというふうに思っております。
 さっき先生がお話しになられましたように、海外では開示をする制度をとっている国がございますけれども、その点は、先ほど先生からまさにお話がありましたように、審議会でも議論がございました。ただ他方で、我が国でも動産ですとか債権の譲渡の対抗要件に関する、例の動産・債権譲渡特例法などのような、こういう制度をとっている法制度も徐々に広がってきているのも事実でございまして、したがって、先ほど申し上げましたように、登録記載事項の一般への非開示によって取引の安全性が損なわれるケースは限定的ではなかろうか、むしろ、こういうことの改善を通じまして登録制度の活用を促していく方が、全体としての知財の活用を推し進めるのではないかというふうに考えている次第でございます。

○柴山委員
 次の質問に移りたいと思います。
 今度の改正法では、特許法あるいは実用新案法における優先権書類の電子的交換の対象国の拡大について処理がなされています。PDFファイルでこの優先権書類をやりとりするということになるかと思うんですけれども、この際私が心配するのは、やはりセキュリティーの問題でございます。どうしても、間に偽造あるいは捏造というプロセスが入ってきてしまうのではないかなと思うんですけれども、これについてはどのような手当てをお考えなんでしょうか。

○肥塚政府参考人
 先生御指摘のとおり、私どものシステムでも、それから国際的にも、ますます特許の世界は情報化が進んでまいりますので、セキュリティーは非常に大事だというふうに思っています。
 優先権書類の交換につきましては、一番先駆けてやりましたのは欧州特許庁とで、一九九九年から優先権書類の電子交換を開始しております。その後、韓国やアメリカとの間でも優先権書類の交換を実施しておりまして、今、一カ月当たり大体七千件程度の優先権書類が電子的にやりとりをされている状況にございます。
 今回の法改正は、こういう交換実績を積んでいる枠組みを世界各国に拡張しようということの前提として、こういう制度の改正を提案しておりまして、具体的には、欧州特許庁を介してドイツ、フランス、オランダといったような国との優先権書類の交換、それからもう一つは、国際知的所有権機関、WIPOを介して世界各国との優先権書類の交換が可能になるという制度が今議論になっておりまして、WIPOでは二〇〇九年にそのサービスが開始されるということになっております。
 このWIPOの制度を含めまして、今までの欧州、アメリカとの実績のもとで拡大していこうというふうに考えておりまして、当面、欧州特許庁それからアメリカ特許庁を介したもの、それからWIPOを介したものを予定しております。したがいまして、ネットワークセキュリティーが確立して信頼性が高い国、あるいは機関を考えております。
 そういう意味では、現在の優先権書類のやりとりと同等のセキュリティー基準のネットワークでやられていくというふうに考えておりまして、技術的にはいろいろございますけれども、優先権書類の真正は担保されるんじゃないかというふうに考えております。
 ただ、先ほど先生御指摘のように、セキュリティーの問題というのは非常に大事だというふうに考えておりますので、技術的にも、電子化あるいは電子データの交換の過程で、優先権書類の捏造といったことが行われる可能性がないような仕組みを考えておりますけれども、非常に重要な課題でございますので、国際的な専門家会合、これは三極でもWIPOでもございますので、そういう場でも引き続き議論してまいりたいというふうに考えております。

○柴山委員
 いずれにいたしましても、送信の過程での作為、また出願人が違うデータを送らせるという、やはりこの両面あるというように私は思っておりますので、今の御指摘は、WIPOあるいは欧州各国とか米国とか、そういうセキュリティーのしっかりしたところからデータをもらう、当面はそこに限るというようなお話だったので、今後しっかりと関係各国と連携、またセキュリティーの問題等もきちんと深めた検討を進めていただきたいと思います。
 今回の法律については、喫緊の課題ばかり対応していただけたと思いますので、ぜひ速やかな成立を図っていただきたいと思います。
 時間が参りましたので、私の質問は以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。

第169回 国会 衆議院 法務委員会

第169回 国会 衆議院 法務委員会 第4号
平成20年03月25日(火)
午前九時三十一分開議

○下村委員長
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴山昌彦君。

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 時間がありませんので、早速質問に入らせていただきたいと思います。
 今回議題となっております裁判所職員定員の変更という問題なんですけれども、まずしっかりと注目をしなければいけないのは、法曹人口のトータルの増加のペースに裁判官の増加のペースが及んでいないのではないかという事実だと思います。
 裁判官、平成二年には人口は二千十七名、そして十九年には二千六百十名で、この間二九%の増加となっております。一方、弁護士は、同じく平成二年には一万四千百七十三名、平成十九年には二万三千百五十四名で、この間の増加は何と六三%であります。検察官ですら、平成二年、千百七十三名、そして平成十九年には千六百三十四名で、三九%の増加となっております。
 今後、司法試験の合格者が年間三千人にもなりなんとする中で、法の支配と紛争処理を飛躍的に高めていこうというこの御時世に、余りにも裁判所の体制は不十分ではないかと思うんですけれども、この点、どのようなお考えなのでしょうか。裁判所の方にお伺いしたいと思います。

○高橋最高裁判所長官代理者
 お答え申し上げます。
 今、法曹人口が飛躍的に増大しているときに、裁判所の、特に裁判官の増加がそれに見合っていないのではないかという御指摘でございます。
 司法修習生が増加いたしますと、判事補の給源、判事補をそこから採る給源も増加するということになるわけでございますが、裁判官の採用数を考えるに当たりましては、まずは司法に対する需要がどのぐらいあるのか、すなわち司法、つまり裁判所の処理すべき業務量がどのぐらいあり、それを処理するのにどのぐらいの人数の裁判官が必要かという観点、基本的にはどの程度の事件が裁判所に提起されるのかという点から検討すべきものと考えております。
 法曹人口が増加すれば、ある程度民事事件がふえていくであろうということは予測されることでございますが、それでは刑事事件がそれに比例してふえるかというと、必ずしもそういうわけではございません。弁護士さんがすべて訴訟事件をおやりになるかというと、必ずしもそうではなくて、予防法学の方をされることもございましょうし、さまざまな面がございます。そういう点で、将来的には、法曹人口がふえれば民事訴訟事件もふえるであろうということは想像にかたくないわけでございますけれども、それに対応して裁判官の採用もふえなければならないという関係にはないものと承知しております。
 言うまでもないことでございますけれども、裁判官として採用するにつきましては、それにふさわしい資質、能力を持った人材でなければならないわけでございます。今後とも、これらの要素を注意深く見きわめながら、国民のニーズにこたえるために必要な、それにふさわしい人材を裁判官に採用していきたいと考えております。

○柴山委員
 刑事事件がふえるわけではないという御指摘でしたけれども、先ほど申し上げたように、検察官の定員は三九%ふえているわけですから、その御立論は説得力がないと思います。
 それと、もう一つ言わせていただくと、法曹の資質の問題を取り上げましたけれども、それでは弁護士あるいは検事さんの資質はどうでもいいのかという話です。要するに、法曹トータルの質の強化ということは、我々が司法制度改革の中でしっかりと議論をしていかなければいけないわけですから、裁判所だけがギルド的な既得権益の擁護ということにもしこだわっているとすれば、これは断じて許されないということだけはぜひ申し上げたいと思います。
 その上で、先ほど事件数のことについて御指摘をされたんですけれども、それではお伺いしたいと思います。一人当たりの裁判官の手持ち事件数、そして新しく配てんされる事件数、これについて、最近の推移をぜひお聞かせいただきたいと思います。

○高橋最高裁判所長官代理者
 最近の全国の裁判官の手持ち事件数、民事訴訟を担当している裁判官の手持ち事件数それから新受件数というものについて、現在、数字を手元には持っておりません。
 支部の裁判官でありますと、単に民事訴訟事件だけではなくて刑事、それから保全事件、破産事件、さまざまな事件を担当しておりますので、裁判官一人当たりの民事手持ち事件数、新受件数というのは、数値を出すのは非常に困難であるということは御理解いただきたいと思います。
 具体的に申し上げますと、それでは東京地裁の、委員お尋ねの裁判官一人当たりの手持ち件数について、繁忙とされます東京地裁民事通常部の事件数を出してみますと、平均して二百件程度でございます。同じくお尋ねの一人当たりの新受件数、一カ月当たり民事通常部は三十件程度となっております。

○柴山委員
 一人当たりの裁判官の手持ち件数が二百件、それから一カ月間に新しく受ける事件数が三十件ということですね。もちろん、これらのすべてが終局処分が判決という形で終わるわけではありませんから、そのあたりは注意をしなくてはいけませんけれども、果たしてこのようなペースで、裁判官がしっかりと熟慮の上、真っ当な判決が書けるかということなんですね。
 私の手元に、平成十三年の四月十六日付で最高裁判所事務総局が出した「裁判所の人的体制の充実について」というペーパーがございます。この中に今後の目標として、裁判官の手持ち件数を大幅に減らさなければいけない、手持ち件数を現在の百八十件から四分の三の百三十件から百四十件、こういった形でペースダウンしていくということが必要だというように明記されているわけですね。
 にもかかわらず、現状は今おっしゃったような形になっているわけでございます。ぜひこの点について、しっかりと今後、法の支配の拡大ということで必要な体制ということを考えていただきたいというように考えております。
 加えてもう一点申し上げたいことは、裁判員制度が、平成二十一年五月二十七日までの政令で定める日で施行されるということなんですね。この裁判員制度の導入に当たって、必要な人的体制は一体どのようになっているんでしょうか。

○高橋最高裁判所長官代理者
 お答え申し上げます。
 裁判員制度の導入といいますのは、裁判所にとって非常に大きな、特に刑事裁判にとって非常に大きな制度改革であると考えております。制度導入までに、現在の事件動向に適切に対処しつつ、裁判員の参加にたえ得るように、審理の充実、迅速化を徹底しますとともに、制度導入後の手続を円滑に実施するためには、合議体を構成する裁判官のみならず、選任手続において多くの事務処理を担当する書記官を含め、人的体制を順次整備していくことが不可欠でございます。
 裁判員制度の導入に伴う増員につきましては、裁判員制度の具体的な運用等について、模擬裁判等を通じて検討を進めているところでございます。これまでに最高裁や全国各地の裁判所において実施された模擬裁判の結果や、これまでの事件数をもとにいたしますと、裁判官についてはおおむね百五十人程度の増員で行うということを考えております。

○柴山委員
 この裁判員制度の導入に際して、それだけで裁判官の増員が百五十人必要だというように今御指摘になっているわけですけれども、今各地で模擬裁判をされているというお話はありましたけれども、その中で、この百五十人という人数について、増員の必要性というような声は上がってきていないんでしょうか、どうなんでしょうか。

○高橋最高裁判所長官代理者
 お答え申し上げます。
 模擬裁判をする過程におきまして、審理及び評議の両面において、これは思ったよりも業務量といいますか手間がかかるではないか、大変ではないかという声が上がっていることは事実でございます。
 ただ反面、この裁判員裁判ということによりまして、訴訟関係者の間で共通認識が生まれてきていると思います。それは、できるだけ公判前整理手続で争点を整理して、そこに集中して審理を行う、非常に効率的な審理を行うということが実現できそうな状況が生まれてきております。そしてもう一つ、刑事事件が最近少し動向が、事件数が落ちついてきております。こういった点も考慮しますと、百五十人でやれるのではないかというふうに私どもは考えております。

○柴山委員
 今後の裁判所の定員を考えるに当たって非常に重要なのは、紛争解決手続における裁判所の位置づけというものが今後どのようになっていくかということだと思うんです。刑事事件もそうですけれども、紛争解決ということが裁判所の大きな役割になってきます。
 その中では、この委員会でも検討されているADR手続ですとか、あるいは準司法手続、行政の中で公正性を確保するために司法に準ずる手続で審査等をするという手続、また仲裁等の手続、さまざまあると思います。
 ここで、今後の司法行政の担当者に、裁判所の位置づけについてのビジョンをぜひお伺いしたいというように思います。

○高橋最高裁判所長官代理者
 お答え申し上げます。
 裁判所は、公正かつ透明な手続を通じて事実関係を確定し、法律を適用して、具体的な紛争を解決する司法作用を行うことをその本質的な役割としておりまして、これまで民事、刑事、行政、家庭事件を、そういう意味で適切に処理してきたものと認識してきております。
 そして、最近では、非常に最先端の金融機関同士の合併をめぐる紛争でありますとか、最先端の技術が争われる特許紛争であるとか、これまで裁判所に来なかったような物すごく難しい事件、非常に最先端の事件が来ております。
 また、他方、従来は行政の分野に属すると思われてきた事柄も裁判所で担当してはどうかということで立法が行われてきております。最近の薬害C型肝炎の被害者救済特別措置法でありますとか児童虐待防止法の改正などは、そういうような議論がされたというふうに私ども承知しております。
 さまざまな裁判所の関与が求められてきておるわけでございますが、その背景には、社会構造が行政による事前規制型社会から事後救済型社会へと転換しつつある、そういうことを反映しているのではないかと思われるわけでございまして、中立公正な機関としての裁判所に対する期待が高まっているのではないかと思われます。
 このような事件について裁判所はどういうスタンスで対応するのか、先ほど言われましたADRでありますとか準司法手続、行政不服審査手続の改正でありますとか、そういった点についてどういう考えを持っているのかということでございますが、政策的な問題についてあれこれ申し上げるのは必ずしも適切ではございませんが、先ほど申し上げましたような司法の本質にそぐわないようなものについては、やはり裁判所がそれを担当するのは適当ではないと考えております。
 私どもは、すべての社会的紛争が裁判所で解決されなければならないと思っておるわけではございません。ADRの特徴もございます。安くて、解決の方法が柔軟性があって速いとか、そういういろいろな特性を備えたADRもございましょうし、専門の行政不服審査手続で十分解決される紛争もあると思います。
 あくまでも裁判所はラストリゾート、つまり、最後のよるべきところとしてその機能を果たすべきところでございますので、そういう機能に即した事柄については、裁判所としては引き受けていかざるを得ないと考えております。

○柴山委員
 今、独占禁止法の改正の議論で、要するに、行政の審判制度を廃止して、裁判所の手続に一本化しようなどという議論も行われているわけですけれども、先ほど御指摘をいただく中で、そういう単純な議論というものが果たして妥当するのかどうかということについては、ぜひ我々議員がしっかりと考えていかなければいけないというように思っております。
 この紛争解決の多様性ということについて、法務省からもし御意見がありましたら、司法法制部の方から伺いたいと思います。

○深山政府参考人
 委員御指摘のとおり、一口に法的紛争と申しましても、さまざまなものが存在しておりまして、紛争解決に関する国民のニーズも多様であると考えております。
 そこで、今般の司法制度改革におきましても、労働審判制度の創設、仲裁制度の整備及び裁判外紛争解決手続の認証制度の創設など、国民にできる限り多くの紛争解決手続の選択肢を提供して、それぞれの紛争に適した解決方法の選択を可能にするというようなことが図られていますし、いずれの紛争解決手続も迅速で公正なものになるよう制度の充実が図られております。
 中でも裁判所は、今最高裁の御答弁にもありましたけれども、紛争解決制度の中心的な存在であることは否定できませんし、他の方法では解決できない紛争を含むすべての法的紛争の最終的な判断機関でございますので、日常的な紛争から高度な専門技術にかかわる紛争まで、いかなる法的紛争にも対応することが求められていると思っております。
 法務省の立場としては、今後とも、各種の紛争解決手続が国民にとって多様なニーズにこたえ得るものになるようその整備に努めるとともに、裁判所が国民に求められている機能を十全に発揮できるよう必要な検討を行っていく所存でございます。

○柴山委員
 時間が終わりましたので、以上で質疑を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

第168回 国会 衆議院 財務金融委員会

第168回 国会 衆議院 財務金融委員会 第6号
平成19年12月4日(火)
午後一時二十二分開議

○石井(啓)議員
 それでは、本法律案の趣旨についてまず申し上げます。
 現在、振り込め詐欺等の預金口座への振り込みを利用した犯罪行為が行われた場合には、金融機関は、捜査機関等からの情報提供を受けて、約款にのっとり、預金口座の利用の停止、解約を行い、その預金口座に係る資金を別段預金で管理しまして、申し出のあった被害者に被害金を返還する扱いをとっております。しかしながら、平成十九年三月末の時点で約八十億円もの資金が被害者に返還されることなく金融機関に滞留をしておりまして、被害回復が十分に行われていない状況にございます。
 このように金融機関に滞留しておりますのは、一つは、この預金口座に係る預金の債権が名義人に帰属をしておりますので、金融機関には被害者と名義人と二重の支払いリスクがあるということがございます。もう一つは、預金口座に複数の被害者から振り込まれている場合における被害者に対する分配のルールが定まっていない、このことから、金融機関から被害者への資金の返還が進んでいない、こういう状況にございます。また、被害者が訴訟を提起する等の方法によって預金口座に係る資金の返還を求めることについては、時間とコストがかかります上に、特に名義人が行方不明の場合が少なくないという状況で、余り行われていないわけであります。
 そこで、振り込め詐欺等の被害者の財産的被害の迅速な回復に資するために、犯罪に利用された預金口座を、一定の慎重な手続のもとに失権をさせまして、これを原資として被害者に被害回復分配金を支給する、この手続等を定めることにしたものでございます。
 また、本法案の概要について申し上げますが、本法律案は、振り込め詐欺等の預金口座等への振り込みを利用した犯罪行為の被害者の財産的被害の迅速な回復に資するために、犯罪利用預金口座等に係る預金等債権の消滅手続、振り込み利用犯罪行為の被害者に対する被害回復分配金の支払い手続等を定めたものであります。
 まず、預金等債権の消滅手続でありますが、金融機関は、捜査機関からの情報等を勘案いたしまして、預金口座等が犯罪利用預金口座等であると疑うに足りる相当な理由があるときは、預金等債権の消滅手続の開始に係る公告を預金保険機構に求めなければならないということにいたしまして、六十日を下らない権利行使の届け出に係る期間内に名義人等による権利行使の届け出等がない場合は、公告に係る預金等の債権は消滅するということにしております。
 次に、被害回復分配金の支払い手続でありますが、預金等債権が消滅した場合には、金融機関は被害回復分配金の支払い手続の開始に係る公告を預金保険機構に求めなければならないことといたしまして、三十日を下らない申請期間内に申請があったときは、被害者及び被害額を認定して、被害回復分配金の額を決定してこれを支払うこととしております。
 なお、被害額が消滅預金等債権の額を上回る場合には、被害者の被害額により案分した額を支払うということにしております。
 次に、預金等債権の消滅手続において失権した名義人等の救済措置でありますけれども、名義人等の預金等債権が消滅した場合であっても、権利行使の届け出等に係る期間内に権利行使の届け出を行わなかったことについてのやむを得ない事情等について名義人等から必要な説明が行われまして、この預金口座等が犯罪利用預金口座等でないことについて相当な理由があると認められる場合には、名義人等が金融機関に消滅預金等債権の額に相当する額の支払いを請求することができるというふうにしております。
 支払いを行った金融機関に過失がないときは、預金保険機構に対してはその支払い相当額の支払いを請求することができるとしております。
 さらに、被害回復分配金の支払い手続が終了いたしまして、まだ残金がある場合につきましては、金融機関はその残金を預金保険機構に納付しなければならないとしておりまして、預金保険機構は、その納付を受けた金銭について、省令で定める割合を除きまして、犯罪被害者等の支援の充実のために支出することとしているところでございます。
 以上であります。

○関委員
 今、石井先生から、概要、趣旨をお伺いしまして、本当によく、すばらしくでき上がっているな、弁護士とも何度も何度も打ち合わせされたというところも伺っていますし、全銀協、金融機関の方ともしっかりと打ち合わせされたということが本当に反映されているなというのが、今非常に感じたところでございます。
 そして、一方、銀行の方は、金融機関の方は、実務手続としまして、いろいろなことが今後も発生することでございますけれども、一点、確認をさせておいていただきたい点がございます。それは、振り込み利用犯罪行為による被害財産とまた他の財産が一つの振り込みされた口座に混在している場合、このような場合の預金口座等はどのように扱われるか、その点についてお伺いしたいと思います。

○柴山議員
 お答え申し上げます。
 関議員には、私どもの苦労の成果につきまして最大限の賛辞をいただいたこと、まず御礼を申し上げたいと思います。
 今の御質問ですけれども、確かにおっしゃるとおり、名義人に関しては、たとえ犯罪行為を行ったにしても、その預金には固有財産ですとかあるいは他の正当な取引によって振り込まれたお金等々が混在をしているという事例が多々あるわけでございます。しかしながら、私どもの考えといたしましては、金融機関が事前に被害財産とそういった他の財産を区分することが困難であることから、名義人等の権利保障にはしっかりとした形での配慮をしつつ、預金口座等に係る預金等の債権全額につきまして、預金等債権の消滅手続を実施することとしております。
 こうした形で預金等債権の消滅手続がとられた場合には、権利行使の届け出等に係る期間内に行使の届け出があれば預金等債権の消滅手続は終了し、そして、その届け出等がなければ預金等債権全額が消滅してしまうという形をとらせていただいているわけでございます。
 なお、このように権利の全部が消滅した場合でありましても、名義人等の救済措置といたしまして、名義人等が権利行使の届け出等に係る期間内に権利行使の届け出を行わなかったことにつきまして、やむを得ない事情があったということについて必要な説明を行った場合には、金融機関に対して当該被害財産以外の固有財産の支払いを請求することができるということを二十五条二項で定めさせていただいております。

○関委員
 今、柴山代議士の方から内容の説明を受けまして、本当に手続が明確化されておりまして、今の手続がきっちりと踏まえられますと、預金口座の名義人とももめることなくスムーズに事務が進んでいくだろうということが想像されるところでございます。

〜中略〜

○関委員
 私も民間の金融機関で十七年ほど働いてまいりましたけれども、今、石井代議士がお答えいただいたようなことで、この立証というのは実際に金融機関しか無理だな、私も全く同感でございます。そのことを一言申し添えておきたいと思います。
 最後の質問をさせていただきます。
 これは政府等によります周知、公表に係る責務規定ということでございますけれども、この法律案に関しまして、民主党の案の方では、政府に対して、法律の円滑な実施を図るため、法律の趣旨及び被害回復分配金の支払い手続等に関する事項等について、広報活動等を通じ国民に周知を図り、その理解を得るよう努めるものと規定をされております。これは当然のことだとは思うんですけれども、そのことをあえて言わなければならないのかなという気もいたすわけでございまして、その点につきまして、与党の提案者の方から感想を聞かせていただけたらと思います。

○柴山議員
 関委員御指摘のとおり、どのような法律でありましても、法律が成立し、そしてそれが施行されれば、それを誠実に執行する責務のある政府としては、その周知を徹底しなければいけないというのは当然のことだと私どもも考えております。ましてや、この振り込め詐欺等に関する法律に関しては、国民に対して、なおさら、身近な法律関係について平易にわかりやすく説明しなければいけないという必要性が大きいものと考えております。したがって、わざわざ特別の規定を設けるまでもなく、そういった国民への周知広報をするということは当然に私どもとしては予定しておりましたので、あえて御指摘のような条文を設けなかった次第であります。

〜中略〜

○小川(友)委員
 関連して再度お伺いします。
 被害回復分配金の支払い手続が実施されていることを知らない被害者、自身がいわゆる振り込め詐欺等の被害に遭ったことを認識していない被害者が存在し得る可能性ということは当然想定がされると思います。
 そのような意味で、三十日という支払い申請期間というものはちょっと短過ぎるのではないかなというふうに、要するに支払い申請期間が三十日間であるということは短過ぎるのではないかなというふうに考えますが、いかがお考えでしょうか。

○階議員
 今のはおっしゃるとおりだと思っていまして、私どもの案は、三十日間だと被害者の支払いの申請の期間としては短いということで六十日間設けておりますので、そういった意味で、被害者の保護には我々の方の案が資するのかと思います。

○小川(友)委員
 与党として、今の民主党、野党案を聞いていてどのようにお考えになっているか。この一元化、二元化の方がいいというのが与党案ですよね。その辺をどうお考えなのか、お伺いします。

○柴山議員
 後段の三十日間の権利の届け出期間というものが、もしこれが単体で、被害者保護のための救済期間として、そこで終わりなんですよということであれば、それは若干短いのかなという感触もあると思います。
 しかし、先ほど来御説明をさせていただいているとおり、既にその前提として六十日間の公告等の手続がありますので、少なくとも、被害者と見込まれる方は、その期間内に自分の被害について認識する機会というものは確保されているわけです。
 それを前提とした上で、その申請のみの期間を三十日という期間に限ることは、先ほど御説明があったかと思いますけれども、確定刑事事件等に係る犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律との均衡からいっても、必ずしも短いとは言えない。むしろ、被害回復の迅速性ということに重きを置いた形で、処理の迅速性を図っていくというフェーズに入っていくのかなというように思いますので、また、トータルとしての期間の既存の遺失物法との均衡も考えてこのような制度設計をしたということでございます。
 加えて申しますれば、一度被害者が、これは申し出をすれば被害回復が図れるんじゃないかということで手を挙げたんだけれども、最終的に、何か知らないけれども、調査のときには黙っていた名義人がやおらよっこいしょと手を挙げてきて、いや、やはりあれはおれのものだと言った場合に、金融機関として、こうした手を既に挙げてきた被害者に対して通知を改めて全部出し直さなくちゃいけないという形での混乱ということが見込まれることについても、ぜひ御配慮いただきたいと思います。
 以上です。

〜中略〜

○佐々木(憲)委員
 次に、預金等に係る債権の消滅手続という問題ですが、法案では、疑うに足る相当な理由があると金融機関が判断した場合となっておりますね。法案では、相当な理由を判断する基準ということで四点挙げておるわけですね。一つは捜査機関等からの情報提供、それから被害状況について行った調査の結果、それから名義人の住所への連絡等による名義人の状況についての調査の結果、預金口座等に係る取引の状況、この四つを挙げられているわけです。
 相当な理由という場合、預金口座を債権の消滅を行う場合には、この四つが基準になっている。しかし、凍結を判断する場合、最初に私が申し上げました凍結、最初の凍結という場合の判断、これは判断基準に差があるわけですね。そういう認識でよろしいですね。では、与党案。

○柴山議員
 この部分は、民主党の提案と私どもの提案で差がないものと考えますので、私の方から答弁をさせていただきます。
 今、階議員の方から御答弁がありましたとおり、口座の凍結ということに関しましては、要は、名義人、いわゆる加害者がこれを引き出すのを何とかして食いとめなければいけないということで、もちろん金融機関側の債務不履行のリスクというものはありますけれども、比較的迅速性に重きを置いた形で凍結等の運用をしなければいけないという必要性があるのに対しまして、佐々木委員が御質問されたとおり、失権という部分に関しましては、むしろ、より名義人の権利保護にしっかりと重きを置いた形での扱いが必要になるというわけで、御指摘の法四条の各号に、失権をさせてもやむを得ないという形で、これはあくまでも例示列挙でありますけれども、相当の理由というものを書かせていただいた次第でございます。
 なお、これに加えまして、先ほど階議員の方から法三条の方について御説明があったのと同様、金融機関が行う認定方法の詳細につきましては、全銀協等の業界団体で、実務を踏まえた形でガイドライン等の統一的な基準ですね、口座売買を疑わせる相当な理由ですとか、あるいは異常な入出金、過去の履歴等と比較して異なる形での取引履歴が発生しているような場合等々、精緻な検討がされているというように承知をしております。

第168回 国会 衆議院 災害対策特別委員会

第168回 国会 衆議院 災害対策特別委員会 第4号
平成19年11月2日(金)
午後一時三十二分開議

○西村(智)委員
 そこで、先ほど答弁の中にありました、遡及はしないけれども、それと同様の支援が行われるべきであると考えている、提案者はこのようにおっしゃったと思います。やはり、この遡及についての地元の要望は本当に強いわけなんですけれども、昨日も私は担当大臣、泉大臣に質問させていただきましたが、その同様の支援というのは一体何を想定されておられるのか、この中身を具体的に伺いたいと思うんです。
 一部報道などで、これは萩生田提案者がどうも発言されたというふうに承知をしておるんですけれども、復興支援基金への国からの支援で住宅本体への支援が行えるようにする、それだから、仮にこの法律が新潟や能登に遡及しなくてもカバーされますよというふうに話があった、そんなふうに承知をしておるんですけれども、本当に総務省から基金の適用の範囲についてそのようなお話というのがあったんでしょうか。伺いたいと思います。

○柴山議員
 今西村議員から御指摘のあった点ですけれども、先日の衆議院総務委員会におきまして、増田大臣から次のように御答弁がありました。
 能登半島地震や中越沖地震の災害復興基金に係る地方団体の負担について一定の交付税措置を講ずることとしているが、国の被災者生活再建支援制度とも歩調を合わせて、住宅本体に係る支援金の支給事業については、従来は交付税措置の対象外としていたところであるが、今般、国の支援制度が改正された場合には、地方公共団体の判断により、災害復興基金を通じて、改正後の支給内容におおむね相当する程度の支援金を支給しようとする場合、交付税措置の対象とすることを考えているというものでございます。

○西村(智)委員
 基金の上乗せについてはどのくらいのものが示されているんでしょうか。ここは大事なところなんです。つまり、基金の総額というのは、既に総務省の方からは、新潟へは一千二百億円ということで示されております。これはもう九月の上旬に既に示されているんです。これに基づいて県の方は支援メニューを構成しております。ですので、基金の大幅な上乗せがなければ、総務大臣が仮にそのようにおっしゃっているとしても、これは到底受けられる話ではありません。具体的な額の提示はあったんでしょうか。

○柴山議員
 具体的な金額についてのお尋ねでございます。
 内閣府の試算によりますと、今の制度と与党案における改正支援金支給額の差額は、能登半島地震においてはおおむね十七億円、中越沖地震についてはおおむね三十二億円とされております。
 そして、総務省の方から、今御指摘があったそれぞれの復興基金の運用益、これは五年分を積み上げますと、能登半島地震でおおむね三十七億円、中越沖地震で九十億円であるということで、改正法遡及適用のレベルをカバーする範囲であるというような形で聞いております。

○西村(智)委員
 しかし、それは総務省がはっきりと示しているわけではありませんし、基金全体の中で、基金の利益の総額を今おっしゃって、その中から内閣府が試算している額は十分賄えるというふうな御答弁でしたけれども、何度も申し上げますけれども、ほかにも基金ではいろいろなことをやらなくちゃならないわけなんです。全部が全部この住宅本体への投入に充てられるというものではありません。そこのところはぜひ御理解をいただきたいと思います。ですので、私たちは、あくまでもここはやはり、地元自治体からも要望がありますように、法律の遡及、これはしっかりとやらなくちゃならない、これは立法府の責務であると考えております。
 最後に一つ伺いたいんですけれども、昨日、この災害対策特別委員会におきまして、我が党の寺田委員の方からも、そして私の方からも、いわゆる災害に係る住家の被害認定基準運用指針の見直しについて質問をさせていただきました。私が質問したのは判定方法についてでありましたし、寺田委員の方から質問がありましたのは、地震関係の災害と水害関係の災害と、これは余りに違うのではないか、つまり、水害に伴う被害の実態を踏まえていないのではないか、こういう指摘があったところでございます。

~ 中略 ~

○日森委員 
 この間、中越沖地震の被災者のお話を伺ったら、これは柴山先生も一緒だったんですが、三年前、きょう長島先生もいらっしゃいますが、山側で地震が起きた、今度は海側で起きた、もう一回来るんじゃないか、こういう不安にさいなまれながら、生活再建を今これから始めようというところなんですね。そういう思いが一つある。
 それから、あるマスコミの世論調査でも、住宅再建、八〇%が、住宅再建に支援するというのは当たり前じゃないかというマスコミの世論調査の結果も出ていました。当然、その結果、そういう世論を形成しているのは、中越沖や能登で被災した方々の実態を見て、本当にこれは放置できないぞということが実は背景にあって、八割以上の人が住宅再建にも支援すべきだというふうに賛意を示しているということだと思うんです。
 こういう思いにどうこたえていくのかというのが、やはり今大変重要になっているんだと思うんですよ。重要になっているんだと思うんです。別の形でという話もありましたが、でも、法律そのものはやはり生身の人間を相手にしているのであって、そこに今、仮設住宅にやっと入れました、これから生活再建をやっていきましょうという人たちが現にいらっしゃる。いらっしゃるけれども、その人たちは対象外であるということで論議が進んでいくということについて、私自身も非常にじくじたる思いがあるんですよ。
 そういう意味で、何度も同じことを聞いて申しわけないんですが、そういう、例えば、これからよりよい支援法をつくっていくんだ、そのために柔軟な対応もしていくぞという御決意を伺ったわけですから、遡及適用の問題について改めて修正する余地があるのかどうなのかということについてお聞きをしたいと思います。

○柴山議員
 ありがとうございます。
 先日、被災者の皆様のお話を、日森議員ともども、私もお伺いしたところでございます。
 まさしく御指摘のとおり、要はしっかりとした救済を、遡及適用したのと同じような形で行えるかどうかという、理屈よりも実際の支援のあり方をしっかりしていくということが大切なのではないかというように思っております。
 先ほど西村議員からも御質問があったとおり、復興基金の運用で果たして、ほかにもさまざまな用途がある中で、十分なのかという御指摘もありました。それについてももちろん、新潟県から例えば相談があれば、その運用状況も踏まえながら、しっかりとした形で真摯に対応していくということを考えております。
 また、遡及適用については、例えば、今御指摘のあった能登また中越沖地震以外に、長島先生もいらっしゃいますけれども、平成十六年の中越地震もあるわけなんですね。同じ新潟の中でも、旧法を受けて、または、仮に平成十九年一月一日以降、この改正法の適用をした場合にその適用を受けるという方々との間のバランスの均衡を欠くというところがあるわけです。また、赤羽先生は阪神・淡路大震災に被災されています。
 ということで、どこまでさかのぼったら本当に皆様に御納得のいただくような形で制度が設計できるのかということは、公平性の観点から非常に難しい議論になってこざるを得ないのではないかというように思っております。
 また、先ほど来御説明申し上げているように、今回の制度設計をした場合の将来の震災あるいは災害に対する相互扶助ということから考えても、今回は公布日以降の災害を対象とすることとして、これで直接救われない方々に関しては、先ほど来申し上げているような別の形での十全な救済ということをしっかりと検討させていただきたいというように考えております。
 なお、阪神・淡路大震災につきましても、厳密に言えば、この法律が遡及適用されたということではなくて、復興基金の事業の拡充等を通じて対応したということをあわせて申し添えさせていただきます。

○日森委員
 あの阪神・淡路の場合にはこの法律がなかったわけで、しかし、別の意味で幾つかの特別立法みたいなものをつくってかなり対応した。もちろん十分じゃありません。それは赤羽先生が一番御存じだと思いますが。十分じゃありませんが、そういう対応もあったということなんですよ。
 この法律がその三年後にできて、改正に改正を重ねてきて、今回本当に使い勝手のいい中身にみんなの努力でしていこうということになっているわけで、そういうお言葉は確かに理屈の上では理解できるんですが、しかし、本当に被災された方々のお気持ちを考えると、何とかそこのところは合意を得てやっていくことができないのかということをちょっと改めて、お聞きをするんじゃなくて、お願いとして申し上げておきたいと思います。
 それから、復興基金の活用の問題で、これも何度も言われていることなので、それが同等の支援になるかどうかということは非常に定かではありませんけれども、仮にその復興基金並びにほかのものを使って同等の支援ということになるのであれば、遡及適用ということも、それをもっと考えてもいいんじゃないかという気が素人判断としてはするわけですよ。
 復興基金で支援を行う、これは大変大きな役割を果たしているというふうに思っていますが、別の方法での支援というのを、それは実効ある支援になるわけですから、これはある新聞の社説によると、実際に遡及適用してほしいと思っている方々から見ると、あれだけ頑張ってつくってもらった与党案が遡及について触れていないということに本当に失望している人たちから見ると、例えば別の形で支援していこうじゃないか、同等の支援ができるんだったらやっていこうというのは物すごい期待感があるんですよ。
 今のところ、与党はそういう話をされていますが、具体的にどういう形でそれをおやりになろうとしているのかということについて、もしここでお示しいただけるんだったら、それはある意味で、十分ではないけれども、遡及を期待している多くの被災された方々の気持ちに若干なりともこたえることになるんじゃないかというふうに思うんですが、その辺はどうでしょうか。

○柴山議員
 具体的な救済の方法についてのお尋ねでございます。
 遡及適用しない場合にも、現行法、これは先ほど来答弁をさせていただいておりますとおり、居住関係の経費についてわずか二八%の支給率にとどまっているという大変使い勝手の悪い制度なんですけれども、これと改正法による支給額との差額分、これにつきましては、被災県の判断によりまして設置した復興基金、これは能登半島であれば五百億円、また中越沖地震であれば千二百億円、また平成十六年の中越地震であれば三千億円、この復興基金の運用を通じて支給する場合に、基金造成のための起債利子分の三分の二が対象となる特別交付税の措置を使いまして、しっかりと国として支援をしていくということを考えております。
 なお、支給対象についてしっかりとした、これまで認められなかった形での運用を改善していくというのは、西村議員に対して答弁をさせていただいたとおりでございます。

○日森委員
 ですから、今その話はわかりました。恐らく政府とも御相談されて今度の案はおつくりになっていると思うんですが、それがしっかり担保されるのであれば、本当にこれから復興支援をやっていこうと、今みんな仮設に入っている方がたくさんいらっしゃるわけですよ。その方々が復興に向けて本当に意欲を持ってやっていくということになるんですが、そこはそういう話ですということだけだと、これはなかなか、同等の支援について検討したいと言われても、納得できないところがあるんじゃないかという気がしてなりません。そこをぜひ詰めていただきたいと思いますよ。もう少し具体的な形で、これだけの支援ができますということにしていただかないと、ちょっとその気持ちにこたえたことにはならないんじゃないかというふうに思います。

 もう時間がありませんので、あと一点だけ。
 これは質問が出たかもしれませんが、先ほど申し上げました、山で地震が起きて、長島先生のところですが、三年前、山で起きて、今度は海で起きて、もう一カ所どこか起きるんじゃないか、今度は一体どうなるのかという不安を、新潟の方だけじゃありませんけれども、持っていらっしゃいます。
 二重被災者がたくさんいらっしゃるわけですよね。この方々に対する対応について最後にお聞きをして、終わりたいと思います。

○柴山議員
 二重被災者につきましては、それぞれの災害について支援金を申請をいただければ、それに応じて支援を受けることができるという制度となっております。
 なお、新潟県が設置した復興基金では、二重被災者に対する支援メニュー、これがきちんと整備をされておりますし、また、義援金の配分においても、二重被災者に対する増額配分が行われるというように承知をしております。
〔委員長退席、望月委員長代理着席〕

第166回 国会 衆議院 法務委員会

第166回 国会 衆議院 法務委員会 第25号
平成19年07月04日(水)
午後一時三分開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 DV法の質問に先立ちまして、少し時間をちょうだいして、マスメディア等で話題になっている新司法試験問題漏えい疑惑についてお伺いさせていただきます。
 この事件は、司法試験考査委員である法科大学院の教員がみずからの学校の学生らに対していわゆる答案練習会等を実施していたところ、今回の本試験で類似の問題が出題されたため、この試験の公正性に疑惑、疑念が生じているといった問題でございます。
 既に当該考査委員は解任をされておりますけれども、今後、今回の試験の公平性をどういった形で図っていくのか、法務大臣
にお伺いしたいと思いますし、またインターネット上では、同じような事案がほかにもあるというような指摘がされているところですけれども、そういった事案について調査をされるおつもりがあるのかどうか、お伺いしたいと思います。

○長勢国務大臣
 今回、考査委員によって不適正行為があって、特に受験者の方々を初め皆さんに御迷惑をかけたことについては大変残念に思いますし、こういうことのないように再発防止に努力をしていかなければならないと思っております。
 法務省といたしましては、試験委員会を通じて、考査委員の方々に、こういう受験指導をしたことがあるかないかという報告を今求めておるところでございまして、その結果を踏まえながら、また文部科学省とも連携をしながら、再発防止のための措置を進めていきたいと思っておるところでございます。
 また、この試験をこれでどういうことにするのかということも各方面から御心配の向きがあるわけでございますが、試験の採点、判定は司法試験考査委員で行うことになっておりますので、今回の試験の採点あるいは合否等に影響を与えるかどうかについては、この司法試験考査委員において専門的な立場で今検討をしていただいておりますので、私といたしましては、その結果を踏まえて対応していきたいというふうに考えております。

○柴山委員
 今回の事件の背景には、新司法試験導入の後、法科大学院間で非常に熾烈な競争があるといったことが挙げられると思います。
 このような中で、今後こうした事態を二度と起こさないためにどういうことをお考えであるか。例えば、こうした答案練習会を既に実施している現役の教員については考査委員になるまで一定の期間を設けるとか、そういった具体的な形での再発防止策を検討されているかということについてお伺いしたいと思います。
 また、こういった試験は、やはり委員の関心事ですとか、あるいは社会でいろいろと取りざたされている重要な事件等々を反映して問題がある程度絞られてくる、重要論点ということが発生するのはやむを得ない部分もあるわけですけれども、それがために、予備校を通じて、また特定の首都圏の受験校が、情報収集能力に秀でている一定の受験校だけが試験で非常に有利であるというような事態になってしまっては、これは新司法試験導入の理念に反する事態が発生してしまうというように考えますが、こうした情報格差の問題についても今後どのように対応されていくのか、法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

○長勢国務大臣
 新司法試験において、また法科大学院を創設するに当たって、司法試験についての予備校化を避けて、より広い範囲からの法曹を養成していこうという理念に基づいて行われてきたものでございますので、今先生御指摘のような点はぜひなくしていかなければならないことだと思います。
 法務省においても、また文科省においても、そういう受験指導のような予備校化については従来からずっと注意を喚起してきたところでございますので、実態等も今申し上げましたような形で調査をしておりますので、その結果を踏まえて、さらにすべきことがあるかどうか、対応策を検討したいと思っております。
 情報格差の問題についての御質問でございますが、御指摘の趣旨はわからないわけではありませんが、自然に起こる事象でありますので、どういうふうに考えればいいのか、ちょっと今のところ私として申し上げることが特にないのをお許しいただきたいと思います。

○池上政府参考人
 ただいま大臣からお答え申し上げましたような趣旨で、司法試験委員会では、さらに公正な試験を行うために検討を続けていくこととしているところでございます。
 また、情報格差等の問題につきましては、司法試験委員会といたしましても、司法試験問題を公開するのはもとより、出題の趣旨等もできるだけ速やかに公表するなど、そういった情報格差がないように努めているところでございますが、さらに、新しい司法試験が法科大学院の教育と連携する形で進められているという制度の中で、どのような公正さをさらに保っていくかということについて検討を続けてまいりたいと考えているところでございます。

○柴山委員
 いずれにいたしましても、今回、法科大学院に入られる方は人生をかけてこの試験に臨まれるわけですので、しっかりと納得のいく形で対応をしていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
 DV法の質問に移らせていただきます。
 今回、DV法の改正に際して、生命身体という重要な法益を守るためのDV法の保護命令の対象の拡大に当たって、なぜ個人の生活の安全等を守るためのストーカー規制法の類型を用いたのか、法案提出者にお伺いしたいと思います。

○南野参議院議員
 お答えいたします前に、私の不注意で左足を骨折してしまい、本日、車いすを使うことになっております。座ったままの答弁、よろしくお願いいたします。
 柴山先生の御質問にお答えさせていただきたいと思います。
 接近禁止命令が発令されるという被害者は、多くの場合、精神的に極めて不安定な状態にあるということが指摘されているところでございます。そのような被害者に対しまして、ストーカー規制法のつきまといなどとして禁止されているような、面会を求める内容、または嫌がらせ的な内容、またはそういう態様、その電話等が行われる、そういった場合には、戻らないといつまでも嫌がらせを受けて困らせられるのではないか、またもっと怖い目に遭わされるのではないかなどといった恐怖心などから被害者が配偶者のもとに戻らざるを得なくなってしまう、また要求にこたえざるを得なくなってしまう、そういう生命身体への危険が高まるということが考えられております。
 そこで、今回、このような行為の禁止を命じることができることとしたものでございます。

○柴山委員
 確かに、条文上、十条では、「裁判所は、被害者の申立てにより、その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため、」こういった禁止の命令が出せるというように定められているところで、保護法益はあくまでも生命及び身体だということを今確認させていただきました。
 その上で、お伺いいたします。
 十条二項の五号には、緊急やむを得ない場合を除いて夜の十時から朝六時までの間に電話をかけることを禁止している、そういう条項がございます。とすれば、脅迫も面会も内容としていないけれども、緊急を要しない、例えば子供は元気にしているかという電話を夜の十時半にする行為、これは、さっき申し上げた生命または身体に危害が加えられる危険がないということで、命令の対象にはならないんですか、なるんですか。

○南野参議院議員
 今先生お問い合わせの午後十時から午前六時までの間における電話等につきましては、その内容いかんにかかわりませず、接近禁止命令が発令されている被害者が一般に著しく不安を感じ、恐怖心などから配偶者のもとに戻らざるを得なくなったり、または要求に応じて接触せざるを得なくなったりして生命身体への危険が高まると考えられることから、禁止行為としたものでございます。

 したがいまして、生命身体に危害を加えるものではないとの抗弁をいたしましたとしても、命令違反を免れることはできないということでございます。

○柴山委員
 それでは、全く同様の内容の電話を午後七時にかけたらどうなりますか。

○南野参議院議員
 電話禁止命令が発せられた配偶者が午後七時に被害者に電話をかけることは、改正後のDV法第十条第二項各号に掲げた行為に該当しない限り禁止されない、そのような電話を受けた被害者が一般に著しく不安を感じるものとまでは整理しませんでした。刑罰をもって担保する電話等禁止命令の対象とはしなかったところでございます。

○柴山委員
 これを聞いておられる方で、今の御説明で御納得される方がどれぐらいいらっしゃるかということなんですけれども。十時半ならば一律だめよ、けれども九時半ならば、もちろん、繰り返してかけたり無言電話はいけないというふうにされているわけですけれども、電話してもオーケーよ、そういう法律になっているわけですね。
 例えば、この通信禁止のニーズが今どのぐらいあるのかということについて、厚生労働省にぜひお伺いしたいと思います。
 現在、婦人相談所等の支援センター、また、先ほど神崎先生からも御指摘があったような民間シェルターは、こういう加害者からの電話については一切取り扱わない扱いとしています。今回、この改正法が昼間の電話を容認するという姿勢を明確に打ち出したことによって、この現在の扱いを厚生労働省は改めるんですか、改めないんですか。

○村木政府参考人
 DV法の被害者の方を婦人相談所や民間シェルターにおいて保護している場合でございます。
 この場合、加害者を含む外部からの被害者に対する通信、電話等でございますが、これについては、被害者がそこに保護をされているか否かを含めて問い合わせには応じないというのが取り扱いの原則でございます。この取り扱いは、被害者の安全確保の観点、また一時保護という物事の性質上、不可欠なものというふうに考えておりますので、この取り扱いを今回変えるという方針はございません。

○柴山委員
 電話をさせないというのは、通信の自由という憲法の権利にかかわるものです。それを制限するということであれば、当然のことながら、相当の理由が必要ですし、場合によっては法律上の根拠ということが必要になると思います。だからこそ、今回、法律を変えてそういうものに対応しようというふうにしたわけですけれども、ストーカー規制法という別の趣旨を持った法律を用いることによって、こうしたきちんとした手当てが十分できていないのではないか。
 今、厚生労働省さんから、引き続き立法事実は変わらないというようなお答えがありましたけれども、これは厚生労働省さんの取り扱いが間違っているのか、あるいは今回の立法が不十分なのか、それについて法案提出者はどのようにお考えですか。

○村木政府参考人
 先ほどの答弁に少し補足をさせていただきます。
 婦人相談所や民間シェルターの場合は、もちろん加害者の方々がそこの相談所そのものにお電話をかけてくるということを制限しているわけではございません。そういう意味で、加害者の方が直接被害者に対して通信等をしていく、これを禁じる趣旨とはやや趣旨が違うのかというふうに考えているところでございます。

○柴山委員
 これ以外にもいろいろと類型はございます。ぜひ、各委員の先生方には、その内容を精査された形で、再度、必要があれば検討をしていただけたらと思います。
 以上でございます。

第166回 国会 衆議院 内閣委員会

第166回 国会 衆議院 内閣委員会 第28号
平成19年6月13日(水)
午前九時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 私どもの党では、飲酒運転根絶プロジェクトチームを結成して、今参考人の皆様からお話があったような悲惨な事故の予防策の策定に取り組んでまいりました。その一員として、先日、法務委員会の方でも質問をさせていただいたわけですけれども、きょうは、こちらの内閣委員会で引き続き質問をさせていただきたいと思います。
 きょう、まず取り上げたいのは、そちらのPTでも提言をさせていただいた酒類提供罪、要するに、飲酒運転をする可能性のある方にお酒を勧める行為自体を処罰するという規定でございます。
 従前、こうした行為は酒酔い、酒気帯び運転の教唆、幇助犯として取り締まりがされていたわけですけれども、これまでのこうした取り締まりの実績、検挙件数について、冒頭、お伺いしたいと思います。

○矢代政府参考人
 お答え申し上げます。
 教唆、幇助ということになりますと、その本犯があるわけでございますが、酒酔い運転、酒気帯び運転の検挙件数は、平成十七年が、酒酔い運転千六百七十五件、酒気帯び運転十三万九千百九十八件、また平成十八年は、酒酔い運転が一千四百七十八件、酒気帯び運転が十二万三千六百九十八件でございます。
 これに対しまして、飲酒運転に係ります教唆、幇助の検挙件数でございますが、平成十七年、教唆が二十四件、幇助百五十一件、また平成十八年は、教唆三十六件、幇助二百九十一件でございます。

○柴山委員
 今御指摘があったように、平成十七年から平成十八年にかけては、報道等でも明らかなとおり、こうした酒酔い、酒気帯び運転の合計の数は減っているわけですけれども、教唆あるいは幇助の検挙件数はふえているという結果だと思いますが、これはどのような背景に基づくものでしょうか。

○矢代政府参考人
 お答え申し上げます。
 飲酒運転の検挙件数が減少するのに対して教唆、幇助の検挙件数が増加したという点でございますが、これはある程度警察の取り締まりの姿勢が反映しているものと考えております。
 本犯がありまして、その後、教唆、幇助がございますが、昨年八月二十五日の、この委員会でも指摘がありましたあの痛ましい事故でございますが、これも契機といたしまして、飲酒運転取り締まりに際し、教唆、幇助の存在が疑われる場合には、これを積極的に厳正に捜査するということで都道府県警に対しまして指示いたしまして、取り組みが強化されました。
 したがいまして、数字を見ますと、教唆につきまして、昨年一年間では三十六件でございますが、実はこのうちの二十三件が九月以降のものでございまして、また、三百二十三件が幇助でございますが、このうち百八十四件はやはり九月以降の検挙でございまして、そのことをうかがわせるものでございます。
〔委員長退席、西村(康)委員長代理着席〕

○柴山委員
 取り調べを強化したというお話がありましたけれども、それでも、十二万件以上の総数のうち、こうした教唆、幇助犯の検挙件数は三百件ちょっと。割合にすれば、トータルの中でわずか〇・三%未満という件数なわけですね。
 そこで、今回、酒類提供罪等の新設を見たわけですけれども、先ほど冠婚葬祭のお話もございましたけれども、例えば、冠婚葬祭あるいは会社の新人歓迎会などで、車で会場に来た人に対して、いやいや、ちょっとぐらい飲んだって大丈夫だから場を盛り上げるためにも酒を飲めというように勧める行為は、この条文で処罰されることになるんでしょうか。

○矢代政府参考人
 お答え申し上げます。
 現在、酒を提供し、または勧める行為でございますが、勧める行為につきましては、道路交通法ではこれはしてはならないとなっていますが、今回の御提案申し上げております改正案については、勧めることは対象としておりませんで、提供したということにしております。
 提供したと申しますのは、そのお酒につきまして処分権限を持っている方が、自分で管理するものを、これを相手方に、飲める状態に置く、そういう概念でございます。
 したがいまして、今例示がありました冠婚葬祭あるいは歓迎会などの席でございますが、例えば歓迎会でございますれば、全部自分持ちで、酒を本人に対して提供するということを自分の責任であるいは自分の処分権限の中で行っている、そういうことですと提供ということになり得るわけでございますけれども、たまたまそこにあるものを飲んだり飲ませたりした中で、たまたま勧めたというだけですと、これは対象外というふうに考えております。

○柴山委員
 まず問題なのは、お酒の処分権限ということがなかなか十分明確ではないということ。
 それと、あと、お酒を飲む方の側が、自分はきょうは車を置いて帰ろうというように思っていた場合、こうした飲酒運転を想定していない方にお酒を勧める行為、この行為は今回の条文で処罰されることになるんでしょうか。

○矢代政府参考人
 お答え申し上げます。
 なお、一点訂正させていただきたいと思いますが、先ほど、幇助の検挙件数、十八年につきまして三百二十七件と申し上げましたが、二百九十一件ということで訂正させていただきます。
 それから、ただいま御指摘の点でございますが、これは、飲酒運転をすることとなる者に対しまして酒を勧め、あるいはその他の幇助行為をするということが今回対象でございますので、飲酒運転をするつもりがない人に酒類を提供して飲酒運転をする意思を生じせしめて運転させるという場合には教唆犯ということになりますので、これは道交法六十五条第一項の教唆犯に該当するというふうに考えております。

○柴山委員
 ただ、この条文を見ると、何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対して、酒類を提供し、飲酒を勧めてはならないという条文になっているんですね。これは、運転をすることとなるおそれがある者に対する酒類提供を処罰するわけで、別に、飲酒運転をするつもりである人に対して酒類を提供し、飲酒を勧めてはならないと書いてあるわけではないわけです。
 つまり、そういう飲酒運転をするかもしれない人に対してお酒を提供する行為を処罰しているのに、その方がたまたま飲酒運転を、いや、自分は本当はするつもりはなかったという場合には、教唆犯ですから、酒気帯びあるいは酒酔い運転と同じ刑で処罰される。だけれども、そうしたことをしようというように決意をしている人に対しては、お酒の提供をした人は、例えば酒酔い運転の場合の酒類提供であれば、上限三年の懲役ということで軽く処罰をされる。これは、ちょっと条文の書き方としてはなかなかわかりづらいところではないかということだけ申し上げておきたいと思います。
 また、今御指摘があったように、酒類提供をした場合に、それが教唆犯に当たるような場合、あるいは今回の条文に規定されていない形での幇助、手助けになるような場合については、結局、明文の規定というものは設けられないことになってしまうわけですけれども、そういうようなことでこうした飲酒運転関与ということが適正な処分を図れるのか。特に、一番最初に数字を御指摘いただいたように、こうした事案は極めて検挙件数が少ない、もうゼロと言っても過言ではありません。取り締まりを強化してもこういうような状況なのに、本当にこうした飲酒運転の関与ということがしっかりとした処罰がされるのかということについて、国家公安委員長の御見解を伺いたいと思います。

○矢代政府参考人
 お答え申し上げます。
 御指摘のように、今回の改正法は、幇助行為の中から一定の悪質な類型のものを取り出して、これを正面から処罰の対象とし、かつ処断刑を重くするというものでございますので、したがいまして、それ以外で、非定型的なもので、しかし幇助行為に当たるという場合には、従来同様に幇助犯に該当いたしますし、また教唆に該当する場合にはもちろん教唆犯として該当するわけでございます。
 したがいまして、今後、法改正がなされますと、特に悪質な車両等提供あるいは酒類の提供、それから一定の同乗行為でございますが、これに対しまして、捜査上、そういうことがないかということを正面から捜査していくと思いますし、また、今回、全体として飲酒運転に対する重罰化が図られてまいりますので、したがって、それに該当しない場合であっても、教唆ないしは幇助になっていないかどうか、こういうことも含めて捜査するわけでございますので、その数字がどこまで出てくるかというのは一概には言えませんが、少なくとも、積極的な取り組みによりまして、責任追及というものが進んでいくものであろうというふうに考えております。

○柴山委員
 次の質問に移りたいと思います。
 今回の改正法では、免許証の提示義務についても大きな変更が加わっています。従前は、無免許などが客観的に明らかな場合にだけ免許証の提示義務というものが課されておりました。しかし、今回、道交法違反ですとか交通事故を起こした場合には、今申し上げたような要件なしに免許証の提示義務が課されることになったわけでございます。この趣旨を簡単に御説明いただきたいと思います。

○矢代政府参考人
 お答え申し上げます。
 現在、道路交通法の規定では、第九十五条でございますが、免許証の携帯義務が定められておりまして、違反に対する制裁もございます。実際に免許を持っているかどうかということにつきましては免許証を見て確認するわけですけれども、その提示を求めることにつきましては、現在は、基本的には運転者が任意で免許証を提示していることを前提として成り立っておりまして、走行状態から明らかに無免許等であるという、つまり、一定の場合に限って運転者に免許証の提示義務を課しております。これに違反しますと制裁がある、こういうことになっております。
 近年は、交通違反の取り締まり現場では、警察官が運転者に対して免許証を提示するように任意の協力を求めましても、その法的根拠は何か、あるいは任意であれば応ずる必要はないなどと申し立てて、これを拒否する事案が少なからずございます。
 一方、平成十三年の改正によりまして、飲酒運転その他、制裁強化がなされましたことから、免許を取り消され、長期の欠格期間を指定される者が増加しておりまして、いわゆる潜在的な無免許運転のリスクのある層が増加しているわけですが、今回の改正によりますと、さらにこれが増加するという見込みでございます。
 そこで、この無免許運転、これはひき逃げの動機にもなっておるわけですが、これに対応するために、第六十七条第一項で規定されます事由、一定の場合でございますが、これに加えまして、車両等の運転者が道路交通法の規定に違反している場合、つまり交通違反のあった場合や、交通事故を起こした場合には、この者に対しまして免許証の提示を求めることができるということにしようとするものでございます。

○柴山委員
 要するに、免許禁止期間が今度の改正法で延びるわけですから無免許のリスクというものが大きくなる、そのことも踏まえて今回免許提示義務というものを強くしたというようなお話があったかと思いますけれども、それでは、例えば、今回対象となる交通事故において、車両が大破してしまって、もうその車にはこれ以上乗れないというような場合には、運転者は免許の提示を拒否できるということでよろしいでしょうか。

○矢代政府参考人
 お答え申し上げます。
 そのとおりでございます。現在の免許証の提示につきましては、危険防止の措置として、それ以上運転させていいかどうかということを確認するわけでございますので、そのような事例で、車が大破していてもう運転することは事実上ないということになりますと、この六十七条第二項で想定しております事由から外れてまいりますので、その場合には、この条文に基づく提示義務はないということになります。

○柴山委員
 ただ、一般的な常識からして、交通事犯として非常に重いものを犯しておきながら身分を明かすことを免除されるというような規定のあり方というものが本当に妥当なのかどうなのかということについては、ぜひ検討をしていただきたいというように思っております。
 次の質問に移ります。
 改正法は、七十五歳以上の高齢者に対して、認知機能の検査を義務づけるなど、規制を強化しております。そして、聴覚障害者に関しては、一定の標識の表示を義務づける一方、これまで免許取得を制限していたのをどのように改めることになるのか、御説明をいただきたいと思います。

○矢代政府参考人
 申し上げます。
 聴覚障害者の方につきましては、現在の制度は、これは欠格条件から外してはおるわけですけれども、その適性として、一定の聴力があるかどうかというのを検査いたしまして、それ以下の場合には適性がないということで免許が不合格になる、こういうことでございます。
 それで、現在制度改正を進めようとしていますのは、聴力に係る適性基準、聞こえ方の程度でございますが、現在の基準に合致しなくても、ワイドミラーを装着した車を使うことによりまして慎重に運転してもらえばいいということで、まず、ワイドミラーを装着した車を運転することを条件に、それからもう一つは、今回法律でお願いしようとしているわけでございますけれども、聴覚障害者が普通自動車を運転するときに聴覚障害者標識を表示していただくということを義務づける、そういう条件で免許を与え、運転していただく、そういうふうになってまいります。

○柴山委員
 ワイドミラーをつけて、そして車には聴覚障害者であることの標識をつける。これによって、ただし、全くクラクションが聞こえない、また、物が倒れてくるときのような音も聞こえない、あるいは、自転車や自動車のブレーキ音、急ブレーキ音も聞こえないという方々に免許を付与することについて、十分安全性が図れるのか。要するに、そうしたワイドミラー等の装着によって、外部から音として入ってくる情報がないことの代替手段になり得るのかということについてどのような調査をされたのか、お聞かせいただきたいと思います。

○矢代政府参考人
 お答え申し上げます。
 まさにその点が、平成十三年にその問題を御指摘を受けながら、調査研究に時間を要し、現在の制度提案になったということでございます。
 この間、私どもは、聴覚障害者の方々で、現在、補聴器をつけますとその基準を満たす人がおられますので、その方々の協力を得まして、補聴器をとった状態で運転するということをやっていただきました。つまり、音が聞こえない状態でございます。これによりまして、さまざまな交通の場面、死角のある場面でございますとか、あるいは車線変更その他でございますが、実験いたしました。その結果、ワイドミラーを活用することによりまして慎重な運転をいたすれば安全に運転できるという結論に達しました。
 あわせて、この間、諸外国の、聴覚障害者に対する免許付与の状況を見ておりますが、諸外国でも、多くの国では普通自動車につきましては無条件で聴覚障害者にも運転免許を与えている国が多いわけでございますけれども、その国における考え方なども参考にしながら結論を得たわけでございます。
 これがこれまでの検討の状況でございます。

○柴山委員
 確かに、バリアフリーに対して思いをいたすことはとても大切なことだと思いますし、諸外国との比較ということもしっかりと行っていただいたことはよいことだと思っております。ただ、諸外国が本当に日本のような非常に交通状況が悪い国と同一の形で論じられるのかどうかということについては、もう少し検討が必要かなというように思っております。
 そして、何よりも、今、例えば東京都の道路交通規則の八条三号では、大音量でカーラジオをかけて走行することを禁止しているわけですね。これが一体どういう規制になるのか。また、今、道交法の五十四条では、山道とか見通しの悪い場所、こういうところでは警笛鳴らせという標識が立っていまして、そこに来ると、危険回避のために警笛を鳴らすことを義務づけているわけですね、法律上。
 これで、健常者の方と聴覚障害の方とが上りと下りの道を走っているような場合は、両方が警笛を鳴らせば、どちらかが健常者ですから危険回避の措置をとれるわけですけれども、両方とも聴覚障害の方が走っておられるような場合には危険回避の措置がとられないわけですね。こういうようなこともきちんと調査されて結論を出したのかどうかということについて、ぜひ御説明をいただきたいと思っております。
〔西村(康)委員長代理退席、委員長着席〕

○矢代政府参考人
 お答え申し上げます。
 その点も、私どもが調査研究に手間取った一つのポイントでございます。警音器使用というのは、今御指摘のようなケースで必要なわけでございますが、端的に申し上げまして、聴覚障害者の方は警音器の音はとれません、聞こえません。それを前提で安全が確保できるかどうかということでございました。
 それで、聴覚障害者の方は、実は警音器の使用について十分な経験がないので、御自身で使ったことがないんですね。それで、それをまず使えるかどうかということで、これは実際にやってみました。どういうふうにして、どの程度の音を、どのくらいの時間鳴らすのだ、こういうことでやりました。それから今度は、音を御自分でとれないわけでございますけれども、見通しのとれないカーブ、あるいは交差点なんかでも一緒でございますけれども、そういう場合の見通しのその線のとり方、それから、相手に自分の車を見せる、前部をどういうふうに見せていくか、そういうところがポイントでございますが、そういったところについての教育が可能であるかどうか、こういうことで実験してまいりました。
 結論的には、一定の訓練は必要なのでございますけれども、それは充足できるということでございます。
 それから、一部の公安委員会、地方の公安委員会規則で、確かに、音または声が聞こえないような状態で運転してはならないという規定がございますが、これは運転者の遵守事項でございますけれども、これは健聴者の方々について、この方々は通常、音が聞こえるわけでございまして、音が聞こえない状態というのは通常ない状況になるわけでございますが、そういう状況で運転してはならないということでございます。聴覚障害者の方々は、通常、音が聞こえない状況で生活しておられますので、実質的な問題としては、これと同列には評価する必要はないだろうという実質的な判断がございます。
 また、規則自体の理解といたしましても、これは、健聴者の方がカーラジオあるいはその他の音で必要な音または声が聞こえないような状態をつくり出して運転することを禁じているものであるので、したがって、この規則そのもの自体が私どものこれからやろうとすることと抵触するものではないという理解をしておるわけでございます。

○柴山委員
 ぜひ慎重に検討をしていただけたらと思います。
 もっとたくさん質問を用意してきたんですが、時間がございませんので、最後の質問とさせていただきます。
 この改正法の施行期日なんですけれども、特に、運転免許の取り消しを受けた方が再度免許を取得できるまでの期間を大幅に十年間と延長したわけなんですけれども、これの施行が公布後二年となっているんですね。なぜこうした行政処分の強化を行うのに二年の施行期日という大変長期を要するのかということについて、しっかりと御説明いただきたいと思います。

○矢代政府参考人
 お答え申し上げます。
 これは、率直に申し上げまして、運転者管理システムの改修の問題でございます。
 今回の一連の改正でも、できるだけ急ぐということで、制裁強化につきましては三カ月以内ということで御提案を申し上げているわけでございますけれども、免許の処分関係につきましては、膨大な資料を運転者管理システムで処理しておりまして、これによりまして、運転免許証の交付あるいは更新、あるいは免許証の取り消し、停止、あるいはその他のさまざまな講習の区分などでございますが、これはさまざまな要素の組み合わせで、期間計算も相当複雑になっております。
 したがいまして、これまでの経験からいたしますと、これを間違いないものとして運用しようといたしますと、二年をいただかないと自信を持ってプログラム改修できないということでございまして、したがいまして二年とはいたしておりますけれども、当然のことながら、用意ができる見込みがつけば、できるだけ早く施行したい、そういう考えではございます。

○柴山委員
 一刻も早く施行していただきたいのと同時に、先ほど御説明があったように、免許証の提示義務については、これは欠格期間が長引くことによって免許提示義務の規定を強化したわけでして、この罰則はもう公布から三カ月後には施行になるわけですから、そこはやはり論理的な矛盾というか不合致というものが生じているのではないかということを最後に指摘させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。

第166回 国会 衆議院 法務委員会

第166回 国会 衆議院 法務委員会 第15号
平成19年5月11日(金)
午前九時三十二分開議

○柴山委員
 自民党の柴山昌彦でございます。
 折しも、きょうから春の全国交通安全運動が始まったわけでございます。まさしくタイムリーなこの委員会質問であると思っておりますので、ぜひ国民の関心が高まる形で委員会運営をしていきたいというように思っております。
 さて、今回の改正法案は二つの大きな柱があるわけですけれども、その一つに、危険運転致死傷罪の対象に二輪車を含めることとしたことが挙げられると思います。これについて、平成十三年の改正以降、一体どのような必要が生じたのかということについて、まずお伺いしたいと思います。

○小津政府参考人
 お答え申し上げます。
 平成十三年に危険運転致死傷罪が新設されました際に、衆参両法務委員会におきまして、自動二輪車の運転者を同罪の対象とする必要性につき、今後の事故の実態を踏まえ、引き続き検討すべき旨の附帯決議がなされたわけでございまして、これを受け、同罪の新設後に発生した二輪車の運転者による業務上過失致死傷事犯を調査いたしましたところ、その中には、酒酔い運転によるもの、赤信号無視によるもの、著しい速度超過によるものなど、危険かつ悪質な運転行為によって被害者を死亡させ、または被害者に加療期間一カ月以上の重傷を負わせるなどの重大な結果を生じる死傷事故が少なからず発生している状況にあるということが明らかになったわけでございます。
 また、二輪車による事故の被害者、遺族などから、危険運転致死傷罪の対象が四輪以上に限定されていることを疑問とし、その対象を二輪車にも拡大することを求める声が見られるようになっているところでございます。
 そこで、二輪車の悪質かつ危険な運転行為による重大な死傷事故の事案の実態に即した適正な科刑を行うため、今回の法整備が必要になったと認識しております。

○柴山委員
 確認なんですけれども、十三年の法改正以降に二輪車の事故がふえるというような事実があったのか、それとも、十三年の法改正以降調査をしたらそういうような事案もあったということなのか、そのいずれかということです。もし後者であれば、十三年の法改正時点できちんとした調査を行っていれば、二輪車の部分も含めてきちんと対象とすることが可能であったというような意見も当然出てくるところだろうと思うんですが、それは一体どちらなんでしょうか。

○小津政府参考人
 ただいま私も施行された後の数字だけ申し上げたわけでございまして、まさに、施行された後の実情を調査したらそのようなことであったということでございます。したがいまして、施行された後、例えばその数字が前と比べて飛躍的に伸びたということを申し上げているわけではございません。
 それでは、当時、なぜ二輪車まで含めなかったのか、こういうことになろうかと思います。そこはいろいろな御議論があり、まさにその中で両法務委員会の附帯決議もいただいたわけでございますけれども、当時、立案当局といたしましては、業務上過失致死傷罪としてそれまでは扱われることが多かった事案につきまして、新たに危険運転致死傷罪という大変に重い法定刑のものを設けるに当たりまして、その適用範囲について慎重に考えたものと理解しております。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 それでは、今回の改正法の二番目の柱であります自動車運転過失致死傷罪の創設についての質問に移らせていただきたいと思います。
 先ほど、大口先生の方からも御質問がありましたけれども、今回なぜ自動車を特別扱いにするのかという問題意識は当然あり得るところだとは思います。先ほど、法務大臣
の趣旨説明の中で、多数の死傷者が出るなどの重大な結果を生じるものがあるんだというお話がありましたが、当然、JR福知山線の脱線事故等を見ても明らかなとおり、頻発する列車事故では非常に多くの方が亡くなる事例が多々あるわけです。
 また、先ほど御答弁の中で、運転者の注意義務違反についてお触れになっていたと思うんですが、例えば、爆発物の取り扱いですとか、あるいは放射線を取り扱っているような施設においては、その注意義務違反の程度が非常に重いからこそ生じる死傷の結果ということもあるわけです。これ以外にも、食品衛生の取り扱い、あるいは製薬業務等の部分において、自動車だけを特別扱いすることの合理性ということをもう一度ちょっと御説明いただければと思うんです。

○小津政府参考人
 お答え申し上げます。
 まず、国民の皆様の規範意識あるいは量刑の実情という観点から申し上げますと、業務上過失致死傷罪が適用される事犯のうち、飲酒運転中の死傷事故を初めとする悪質な自動車運転による過失致死傷事犯につきまして、その量刑や法定刑が国民の規範意識に合致しないとして、罰則の強化を求める意見がこの点については見られる。また、法定刑や処断刑の上限近くで量刑される事案も、悪質な自動車運転による過失致死傷事犯については近年特に認められるようになってきたわけでございますが、それ以外の業務上過失致死傷事犯についてはそのような状況が認められないということがまず一つございます。
 次に、自動車を他の車両や歩行者等が往来する道路等において運転するということ、これは自動車の性状、形状等からすると、いわゆる業過傷が適用される業務の中でも人の生命身体を侵害する危険性が類型的に高い。
 また、もう一つ、自動車の運転による過失致死傷事犯は、その発生を防止するためには、基本的に運転者個人の注意力に依存するところが大きいというところが大変大きな特徴でございます。大変大きな危ないものを扱っている業務はほかにもあるわけでございますけれども、そのような業務について、事故の発生を防止するためには、いろいろと業務を取り扱っている組織、企業等のシステムの中でその防止が図られる面が大きいというものもあろうかと思いますが、自動車については、もちろん道路の状況を整備する等々はございますけれども、やはり基本的には個人の注意力ということになってくるということでございます。
 そのような特徴に着目すれば、単にこの部分だけを重くすればいいということだけではなくて、そのような類型化という点からも、これを取り出してその部分の罰則を強化するということに合理性があると考えたものでございます。

○柴山委員
 ありがとうございました。
 また、これも大口先生から先ほど御質問があったところなんですけれども、危険運転致死傷罪の対象を拡大すればよいのではないかという問題意識がありました。これについては御答弁がありましたのでここでは繰り返しませんけれども、特にアルコールあるいは薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる事案、なかんずく飲酒運転ですね、この部分については、やはりこの構成要件ですと、先ほど暴行類似というようなお話もありましたが、アルコールの影響があること、そしてそれを認識していることというところが要件となってきますので、非常に狭い類型なのではないかという批判はあろうかと思います。
 私は、早川理事が事務局長をされている自民党飲酒運転根絶プロジェクトチームの一員として、飲酒運転の適切な処分については特に関心を持って取り組んできた者の一人なんですけれども、特にこの飲酒運転の部分について、危険運転致死傷の対象とする部分が狭いんじゃないかというところについて、ごく短く御答弁をいただけたらと思います。

○小津政府参考人
 飲酒運転中の事故というのが危険運転致死傷罪の一つの典型的な事例であることは間違いありませんし、また、委員御指摘のように、現行法では、その影響によって正常な運転が困難な状態での走行行為ということにはなっております。さらに、これは故意犯でございますので、その認識が必要であるということでございます。
 それから、そのうち後者の点につきましては、やはりこれは、故意犯であるということでここまで重い法定刑でございますので、ここのところを緩めるのも困難ではなかろうかと思いますし、また、危険運転致死傷罪全般につきまして、先ほど申し上げたような事情がございますので、今回の改正では、ここのところを広げると申しますか、緩める改正はしなかったということでございます。

○柴山委員
 ということで、適切な処分ができないということで、道交法において、酒酔い運転あるいは酒気帯び運転の処罰の強化というところが次に想定されるところだと思います。
 そこで、これは道交法の方になりますけれども、現在、法改正がまさしく議論されているところだと思います。道交法における酒酔い運転あるいは酒気帯び運転の擬律がどうなるのかということについて、御説明をいただきたいと思います。

○矢代政府参考人
 お答え申し上げます。
 今回、道路交通法改正を御提案申し上げているわけでございますが、まず、飲酒運転に対する罰則、酒気帯び運転が現在、一年以下の懲役または三十万円以下の罰金になっておりますが、これを三年以下の懲役または五十万円以下の罰金にということでお願いしております。また、酒酔い運転につきましては、三年以下の懲役または五十万円以下の罰金となっておりますが、これを五年以下の懲役または百万円以下の罰金ということで、それぞれ引き上げるものでございます。

○柴山委員
 となると、酒気帯び運転、酒酔い運転で人をひいてしまった場合にはそれぞれどのような処分になるのか、懲役刑の上限で説明をしていただきたいと思います。

○小津政府参考人
 危険運転致死傷罪ではなく業務上過失致死傷罪が成立したということを前提にして御説明申し上げますが、道路交通法の改正が行われて刑法が現在のままであったということを前提にして御説明申し上げますと、酒気帯び運転の罪と業過致死傷罪の併合罪となりますと、道交法が現在のままだと六年以下の懲役でございますが、道路交通法改正後、刑法は現在のままだといたしますと、両罪の併合罪として七年六月以下の懲役ということになります。
 次に、酒酔い運転の場合でございますが、これは、現行法では、同じく道交法が現在のままだと七年六月以下の懲役でございますが、この部分につきましては、道交法の改正が実現いたしましても、やはり併合罪加重の結果として七年六月以下の懲役になる、こういうことでございます。

○柴山委員
 当然のことながら、重く処罰されることになる。ただし、酒気帯びの場合であっても、酒酔い運転であっても、重い業過の刑の上限が五年であるために、その一・五倍ということで、七年六月で両方とも同じ刑になってしまうということになるんだろうと思っております。
 ただ、今回、酒気帯び、酒酔い運転を重く処罰する道交法改正が実現をするとなれば、酔いをさまして出頭する行為を誘発するのではないかという疑問が出てくるところだろうと思いますし、あるいは、その直後に飲み直しをする、それによってそういった運転であることを隠そうとする動きが出てくるのではないかという疑問も指摘をされるところだろうと思います。
 これは、実は、危険運転致死傷罪が設けられた当初もこういった懸念の声があったと思いますし、また現に遺族の皆様からも、飲酒運転根絶プロジェクトチーム、自民党の中で設けられた会の中で、そういった事案を何とかなくしてほしいという悲痛な訴えもあったところでもございますので、これについてどういうようなお考えをお持ちかということについてお伺いしたいと思います。

○小津政府参考人
 まず、危険運転致死傷罪が本来適用されるべき事案につきまして、委員御指摘のようなことでその罪を免れるということがあってはなりませんので、捜査当局といたしましては、仮に、その事故を起こした者が事故直後に現場を離れた場合でありましても、また何か、飲酒の状況をごまかすような行為をした場合でありましても、その者が実際にどのように飲酒をしたのかということをいろいろな方法で捜査いたしまして、それが運転行為中にどのような影響を及ぼすものであったのかということについて鋭意捜査を尽くしているわけでございまして、現にいろいろな事案で、委員御指摘のような事案につきましても危険運転致死傷罪で処罰をしているということでございます。
 もう一点につきましては、ひき逃げそのものにつきまして、道路交通法の世界でどのような手当てをするべきか。また、これについては、引き上げる方向で検討されていると承知しておるところでございます。

○矢代政府参考人
 あわせて御説明を申し上げます。
 事故を起こしまして逃げるということはあるわけでございまして、ひき逃げでございますが、確かに、酒を飲んでおったために逃げたというのが、捕まえてみますと、大体二割ぐらいがそのようなケースでございます。
 それで、この捕まえた後のことなんですが、捕まえますと、ひき逃げの事故でございますので、実は、その車がどこから来てどこに行ったかという経路を特定する必要があるんです。そういうわけで、前足、後足を含めまして、その前後の行動を捜査いたしまして、そのひき逃げの事案自体を確定しますとともに、どのような状況であったのかということをつまびらかにしてまいるわけでございますが、そこで、その事故の原因が飲酒運転によると疑われる場合には、その事故前の飲酒運転の状況等を捜査いたしまして、これを結果にあらわしていく、こういうことをやるわけでございます。
 それから、今、法務省刑事局長からもお話がありましたが、今回の道路交通法改正では、あわせて、ひき逃げ事件につきまして、現在、五年以下の懲役または五十万円以下の罰金となっていますが、これを、十年以下の懲役または百万円以下の罰金への引き上げをお願いしているわけでございまして、そうしますと、事故を起こしてひき逃げということになりますと、十五年まで引き上がります。そういうわけで、大幅な制裁の強化になりますので、これはひき逃げを抑制する方向に働く要素にはなるかと考えております。

○柴山委員
 最後の御答弁ですけれども、要は、お酒を飲んで酔ったことを隠して逃げた場合には、救護義務違反と、仮に今回刑法を改正しなかった場合には業務上過失致死傷で処断ができるので、十年、それから五年、一・五倍の計算によっても、単純加算の計算によっても、十五年以下ということで処断をされる。先ほど御説明があったとおり、酒気帯び、酒酔い運転で致死傷をした場合には、両方とも七年六月の上限ですから、逃げたらかえって損をする、上限が七年六月ではなくて十五年以下となってしまうということで、逃げるモチベーションがなくなるという理解でよろしいわけですか。

○矢代政府参考人
 御指摘のとおりでございます。

○柴山委員
 ということであれば、今回の自動車運転過失致死傷罪を創設しなくても、ある程度適正な処罰がなされるようにも思われるのですが、それでも今回の法改正が必要な理由を御説明いただきたいと思います。

○小津政府参考人
 確かに、道路交通法の改正が実現いたしますと、道路交通法違反のうち、特に酒気帯び、酒酔いを伴うもの、あるいは救護義務違反を伴うものにつきましては、相当に重く処罰されるということになるわけでございます。ただ、幾つかの点でそれで十分であろうかということでございます。
 基本的には、非常に悪質で大変重大な結果を生じている事案のすべてが、それではお酒を伴うもの、あるいは逃げたものかというと、決してそうではないわけでございますので、やはり、基本法であります刑法の世界における、これまでは業務上過失致死傷でございますけれども、飲酒運転による今回の構成要件、そこの世界できちんと評価をするということが考え方としても大事でございますし、実際の運用上も重要ではないかと思うわけでございます。
 また、具体的ないろいろな面を見ていきますと、先ほど委員も御指摘になられましたように、道交法の改正が実現して、刑法の方をいじりませんと酒気帯びでも飲酒運転でも七年六月になってしまう等々の問題もあるわけでございますけれども、基本的には、私が先ほど申し上げましたような考え方で、やはり刑法の方の改正が必要であると認識しておるものでございます。

○柴山委員
 確かに、おっしゃるとおり、今回、刑法をいじらなければ酒気帯びでも酒酔いでも七年六月が上限ですが、今回、こちらの刑法を改正することになれば、先ほど御答弁いただいたとおり、酒気帯びが十年、そして酒酔い運転であれば十年六月ということで差が出てくるし、当然のことながら、より重く罰せられるという部分はあるかと思います。そして、それプラスアルファで、やはり自動車事故に対する世論の厳しい目、また抑止の必要性ということに関しては一定の理解はいただけるものと私も考えております。
 ただ、飲酒運転撲滅に向けた取り組みは、厳罰化だけで足りるというものではないと私は思うんですね。やはり総合的な取り組みをしていかなければ、こういった悲惨な事案、特に、先ほど川口の事故について大口先生も御指摘をされていましたけれども、去年、非常に大きなきっかけとなったのが、福岡の幼児三人がお亡くなりになった大変痛ましい事故だったわけですが、こうした事案の再発ということは十分防止できないのではないかと思っております。
 そこで、ほかにどういう取り組みがなされているのかについて、ぜひお聞かせをいただきたいというように思っております。

○矢代政府参考人
 お答え申し上げます。
 飲酒運転でございますが、このたびの道交法改正案におきましては、飲酒運転本人の制裁の強化にあわせまして飲酒運転の周辺者に対する制裁強化、つまり車両の提供ですとか酒類の提供あるいは同乗、一定の条項についてこれを厳罰化するということで、周辺者対策を入れております。
 この制裁強化も、つまるところ、飲酒運転をしない、あるいはさせないという意識を確立するというわけでございますので、取り締まりを強化するほかに、運転者等の教育、さまざまな機会がございますが、これを警察あるいは他の機関と協力してやる場合もありますが、これを徹底するということでございます。飲酒運転の危険性を周知する必要があります。
 それから、各企業において従業員についての安全管理をやっておりますが、そのような体制、あるいは飲食店などでは自主的に飲酒運転防止に取り組んでいただいておりまして、このようなさまざまな局面での飲酒運転をさせない、あるいは許さない環境づくりが重要でございまして、これは内閣府ともども、私ども、あちこちお願いいたしまして、取り組みを推進しているところでございます。
 それから、自動車運転代行業でございますが、これは、営業が適正に営まれれば飲酒運転の防止には確実に資するものでございますので、国土交通省と私ども一緒にやっておりますが、連携しながら、業者に対します指導監督、一定の場合には取り締まりも行いまして、これが国民に広く利用されるように業務の適正化を図っていきたいと考えております。

○松本政府参考人
 私ども、飲酒運転の根絶対策の一環といたしまして、技術を活用した対策を実施していくということも大変重要であると考えております。
 このため、飲酒している場合には、その状態を自動的に検知してエンジンが始動しないようにする装置、アルコールインターロック装置と呼びならわしておりますけれども、この開発、実用化につきまして検討するために、一月三十日に警察庁あるいは法務省とも一緒に、さらには自動車メーカーの専門家にも入っていただきまして、技術課題検討会を立ち上げたところでございます。
 現状の技術といたしましては、欧米におきまして、呼気、呼吸の中のアルコールを検知するという方法が一部実用化されております。具体的には、飲酒運転違反者への制裁として、運転する場合にはアルコールインターロックつきの車しか運転してはいけない、こういう形で運用されていると聞いておりますけれども、本人確認が難しい、つまり成り済ましがやりやすいとか、耐久性が十分でないなどの課題があることが判明しております。現在、これらの課題への技術的対応について議論を進めているところでございます。
 これらを踏まえまして、年内に、現状の技術をベースにした場合に、飲酒運転常習者への活用を念頭に置いた技術的要件の整理をしたいと考えております。
 それから、将来的な技術でございますけれども、まだメーカーにおいても調査研究段階でございますが、技術課題の明確化の検討を進めまして、今後の技術開発を促進してまいりたいと思っているところでございます。

○荒木政府参考人
 内閣府でございます。
 昨年九月に、交通対策本部におきまして、「飲酒運転の根絶について」を決定いたしまして、政府を挙げて飲酒運転根絶に向けた取り組みを推進しているところでございます。
 指導取り締まりを徹底するのはもちろんでありますけれども、飲酒運転を絶対にしない、させないという国民の意識改革を図るために、集中的、継続的な政府広報を行いました。また、関係省庁から業界に対しまして、運転者に対してお酒を提供しないように協力依頼を行ってきております。
 先ほど警察庁の方からもありましたけれども、飲食店等におきまして、最寄りの駅からの無料送迎を行ったり、あるいはタクシーや代行運転の割引券を配布したりというような取り組みがふえてきております。また、運輸業者、運送業者においても、就業時に必ずアルコール検知を行うというような業者がふえてきていると認識をいたしております。そういった官民挙げての取り組みによりまして、ことしに入って、飲酒の死亡事故が昨年に比べ約四割ほど減少を見ているところであります。
 飲酒運転追放の機運が高まっておりますこの時期をとらえまして、引き続き飲酒運転根絶に向けた広報啓発に強力に取り組むこととしておりまして、先ほど御指摘のございました、本日から始まります春の全国交通安全運動におきましても、飲酒運転の根絶を全国重点として取り組みを強化してまいりたいと考えております。
 さらに、アルコール依存症等の常習的な飲酒運転対策につきまして有識者の意見を聞きながら検討を進めることといたしまして、先日、常習飲酒運転者対策推進会議を関係省庁とともに立ち上げさせていただきました。
 以上でございます。

○柴山委員
 特に、最後のアルコール常習者の対策は、日本はアメリカ等に比べて大分おくれているというような指摘もあるところですので、しっかりと検討をお願いしたいと思います。
 時間が終わりましたけれども、最後に、こうした飲酒運転等悪質な交通事故の根絶に向けた法務大臣
の決意を、ぜひ一言お伺いしたいと思います。

○長勢国務大臣
 今各各内閣府等からも御説明があったとおりでありまして、政府を挙げてこの飲酒運転等重大な交通事犯に対する対応措置を強化していきたいと考えております。そういう中で、今回、法案を通していただければ、何よりもやはり国民の皆さんの意識がきちんとすることが基本になると思いますので、こういうことも含めてお役に立てればいいのではないかというふうに思っております。

○柴山委員
 ありがとうございました。以上で終わります。

第166回 国会 衆議院 日本国憲法に関する調査特別委員会

第166回 国会 衆議院 日本国憲法に関する調査特別委員会 第5号
平成19年4月12日(木)
午前十一時一分開議

○中山委員長
 これより両法律案並びに保岡興治君外三名提出の修正案及び枝野幸男君外二名提出の修正案を一括して質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴山昌彦君。

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 本委員会で大変長時間にわたって与野党間で活発で真摯な調査及び審議がなされた結果、ことし三月十七日、与党から、与党案、民主党案の併合修正案が提出されたのに引き続きまして、今般、民主党からも修正案を提出していただくこととなりました。まず冒頭、民主党の真摯な議論には敬意を表したいと思います。
 しかし、その上で、今、園田先生からは、民主党の考えと与党修正案との間には厳然たる相違点が存在していると言わざるを得ないといった御発言がございました。以下、私の質問で、本当にそれが厳然たる差異なのか、乗り越えられないものであるのかということについて、個別にお伺いしていきたいと思っております。
 まず第一に、投票権者の範囲でございます。
 民主党案におきましては、国民投票の投票年齢について本則で十八歳以上として附則で関連法令の見直しをするとしておりますけれども、その内容及び趣旨は一体どのようなものなのでしょうか。そして、与党案において幾らでも先送りできるというような御説明も今あったわけですけれども、この点についてどのように考えておられるのでしょうか。民主党修正案提出者及び与党修正案提出者それぞれにお伺いいたします。

○枝野委員
 私どもは、成人年齢あるいは他の選挙権年齢が二十であったとしても、憲法改正の国民投票については、より長期にわたって国民を拘束するという性質にもかんがみ、より若い世代に可能な限り投票権を認めるべきであるということで十八歳の投票権ということを従来から主張してきております。と同時に、私どもは、もともと十八歳成人、十八歳選挙権も主張しておりますし、国民投票について十八歳にするということであるならば、成人年齢を初めとして、それを出発点として十八歳に引き下げることをきちっと検討して結論を出すということは当然あっていいことだろうということで、こういった附則を設けております。
 与党修正案にも似たような附則がございますが、法改正がなされるまでは二十とするという規定が与党案にはくっついております。ところが、国会は、どちらの案によっても、施行までの三年の間に関連法令を見直すという法的義務が課せられている。この法的義務をちゃんと実行するのであれば、それまでの間は二十とするという与党にだけある附則は必要ないはずなんですね。
 にもかかわらず、そういった必要ない附則をつけているというのは、附則には書いたけれども、この義務を履行しない、あるいは履行できない可能性があるということを少なくとも危惧しておられるのは間違いないわけでありまして、ちゃんと三年以内に関連法令を整備するならばそんな規定は必要ないことでありますので、それは先送りの意図があるのではないかと勘ぐられても仕方がない。
 三年以内にちゃんと整備をするということで与党のお気持ちがかたいのであれば、民主党案で何の問題もないということであると思います。

○船田委員
 私ども与党の併合修正案におきましても、本則において十八歳以上ということを決定させていただいております。これは言うまでもなく、諸外国の例を見ても十八歳以上というのが世界標準である、こう思っております。これを取り入れることといたしました。
 ただ、本法施行までの間に関連法令、私どもが明示をしているものは公選法それから民法その他ということになっておりますが、少なくとも公選法、民法については十八歳、二十から十八になるようにこの期間において法整備をしなければいけないということを附則で載せております。
 なお、経過措置ということで、その関連法令が施行されるまでは二十以上のまま、こういうことにいたしておりますのは、例えば、何らかの理由によりまして公選法の規定が十分整備されないという事態が起こったときに、国民投票法案が十八以上、そして公選法による選挙が二十以上という事態が万が一生じた場合には大変な混乱を招くことが予想されることから、私どもは、万が一を考えての措置ということで書いたわけであります。
 しかし、これを書いたからといって、先延ばしにしようという意図は一切持っておりません。ここまで本則においても十八歳以上ということを明示している以上、我々与党としては十八歳に整備をするということについては政府に対して非常に大きな責任を負ったわけであります。したがって、これを履行することは与党の責任として確実にやらせていただきたいと思っておりますので、そのような心配は無用であると考えております。
 以上です。

○柴山委員
 よくわかりました。
 続きまして、公務員の政治的行為の制限についてお伺いしたいと思います。
 民主党案においては、公務員の行う国民投票運動については国家公務員法、地方公務員法等の公務員法制における公務員の政治的行為の制限規定を適用除外とするという修正を行ったわけですけれども、その内容及び趣旨がどういうものであるのか、民主党修正案提出者にお伺いしたいと思います。
 一方、与党修正案提出者に対しては、今、園田先生の方から、附則において検討を加えるということがどういうことを検討しようとしているのか意図不明であるというような御指摘があったわけですけれども、この論点についてどのように考えておられるのか、それぞれお伺いしたいと思います。

○枝野委員
 現行の国家公務員法や地方公務員法におきましては、憲法改正国民投票に際しての意見表明などを念頭に置くことなく、それ以外の政治的行為を専ら念頭に置いて服務上の問題として規制をしてきています。この現行公務員法制に何ら手当てをしないまま放置をいたしますと、原則自由であるはずの国民投票運動も、公務員法制の観点から規制がかかってしまうことになります。しかも、その規制のかかり方は、現行法制を前提としますと、国家公務員法による人事院規則と地方公務員法、さらにはその他の特別職公務員の特別規定などによって、それぞればらばらになってしまいます。
 さらに、そもそも公務員法制の政治的中立性は与えられた憲法秩序の枠内における公務員の義務であるのに対して、国民投票運動は憲法秩序それ自体を形成する作用に直接関与するものでありますから、主権者国民として最も重要な権利であり、もちろん公務員である以上は一定の制約に服するということは認めますけれども、しかし、やはり原則自由である、より一般的な政治活動以上に制限は制約的でなければいけない、少なくなければいけない、こういうふうに考えます。
 したがいまして、我々は、公務員法制上の政治行為の制限規定によって制約されることのないよう、国民投票運動には公務員法制上の政治的行為の制限規定を適用しない条項を置くという修正を行ったものであります。
 なお、このことによって、では公務員は何でもしていいのかということになるとそうではありません。これを原則自由にするかわりにと言ってはなんですけれども、我が党が当初は予定していなかった地位利用の禁止の規定を置くことにいたしました。地位を利用してということは許されない。
 さらに言えば、例えば国民投票運動に名をかりて、国民投票運動としての実体ではなくて、例えば特定の政党や特定の公職の候補者を支援するような活動をすれば、これはまさに名をかりてということでありますから、この原則自由というところの自由の枠からは外れるだろうというふうに考えます。
 それから、他の公務員法制上の信用失墜行為等の規定は、当然いきますので、それに該当するということで、悪質といいますか、公務員として、いかに憲法秩序を形成する作用に直接関与するものだといっても許されないような行為については、この規定があっても何ら問題なく規制を受ける、許されないことになるというふうに考えております。

○葉梨委員
 前回、この委員会でも御答弁をさせていただいたわけなんですけれども、与党案においては、附則の十一条で「公務員の政治的行為の制限に関する検討」というような状況になっておりますが、検討を加えるというのは、検討して何もしないということではございません。これは、ここにもございますとおり、「この法律が施行されるまでの間に、公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう、」「検討を加え、必要な法制上の措置を講ずる」ということですから、これは義務でございます。
 なぜこのような形に置いたかというのは、実は私自身は、民主党の修正案と我々与党案とそれほど違いがあるというふうには感じておりません。前回も申し上げましたように、公務員法の世界においては、公務の中立性という観点から諸規制が加えられている。公務の中立性があるからといって、十二月十四日に与党提案者が答弁いたしましたように、国民投票に関しての勧誘だとかあるいは意見の表明が制限されることになってはならない。
 どちらの世界、国民投票法の世界でそれを規律するのか、あるいは公務員法の世界で規律するのか、これはもう技術的な問題だろうと思うんです。公務員だからといって意見の表明は全部いいんだといって、では職務専念義務違反の行為もできるのか、あるいは信用失墜行為に当たる行為もできるのか、そこのところはいろいろと議論があるところだろうと思うんです。
 ですから、そこのところをしっかりと整理しながら、公務員法の世界において、国民投票に関する意見の表明だとかあるいは勧誘だとか、これはしっかりできるんですよ、しかしながら、ほかの公務の中立性に関する規制については公務員としてちゃんと守ってもらわなきゃいけないんですよということをその世界においてしっかりと整理していただく方が、国民投票法において単に適用除外とするというよりも丁寧な議論ができるだろう。その意味での検討でございまして、これは、この法律が施行されるまでの間に必要な措置を講ずるという、あくまで義務でございますから、何について検討を加えるというのは、今申し上げたとおりでございます。

○柴山委員
 続きまして、新聞の無料枠についてでございます。(発言する者あり)

○中山委員長
 静粛に願います。

○柴山委員
 民主党案についてでございますが、新聞の無料枠の規定、これを削除する修正を行ったということでございますけれども、これは一体どういう趣旨に基づくものであるのか、お伺いしたいと思います。
 それとともに、与党案においては、この民主党の削除修正を受けて、新聞の無料枠についてはどのように考えておられるのか、それぞれお伺いしたいと思います。

○枝野委員
 私どもは、発議をした国会として、国民の皆さんにその内容等について周知をする責任があると一方で思います。
 ただ、この間のこの委員会における議論の中で、なぜ国会つまり政党だけが公費を使って賛成だとか反対だとかアピールできるのか、発議をした側なんだから、むしろ発議を受けた側で賛成だとか反対だとかというところにこそ金を回すべきじゃないか、こういう指摘がたくさんありました。この両方の要請を満たさなければいけないだろうというふうに思います。
 そうした中で、いわゆる電波媒体については、ほかに手段がありませんので、放送局の電波を使って、無料CMと誤解をされていますが、正確に言うと政見放送類似の、それぞれの政党が主体となって賛成反対どういう理由でなのかということを国民の皆さんにお伝えする枠を、これはほかに代替手段がないのでやらざるを得ないだろう。
 ただ、紙媒体については、別途、広報協議会で選挙公報のような公報をつくることになっていて、これは賛否両方対等の枠で国民の皆さんに周知をするという仕事を公費を使って行うということがあります。それがあるにもかかわらず、それに加えて新聞の無料枠まで公費を使ってやるということになると、なぜ国会だけ、なぜ政党だけそんなにやれるんだ、むしろ発議を受けた国民の側こそが自由闊達に意見表明して運動すべきではないかという声になかなかこたえられないなというふうに思っています。
 実際に公報を配布する手段は一般的には新聞に折り込むということになるだろうと思いますので、折り込まれる方に公報があるんだから、新聞本体の方に何も広告を、わざわざ税金を使って買い取って、同じように政党に広告させる必要はないということであります。もちろん、政党を含めて、新聞広告等を自費で行うということについては全く自由でございます。
 以上です。

○船田委員
 今、民主党から御指摘をいただいた点でありますが、確かに活字メディアを使っての広報という点では広報協議会がつくる予定のパンフレットもございます。またその他さまざまな雑誌等がありまして、確かに活字の部分では一定の広報活動といいましょうかPRはできることとなっておりますが、それら私費で行うものについては、やはり賛否の平等という観点からすると、確かにばらつきがあると思います。したがって、活字メディアにおきましても、新聞の存在の大きさを考えた場合には、新聞をあえてなくすということまで踏み切ることはできないんじゃないか、私はこう考えております。
 また、テレビの無料枠もございます。テレビは確かに有効な媒体ではございますけれども、国民の感情に訴えるとか、あるいは刺激的な内容で報じてしまう危険性もなきにしもあらずということでございます。また、テレビやラジオなどは、一度見たものや聞いたものはその場で過ぎ去ってしまうわけでありまして、やはり活字という固定した媒体を見て、何回も読み直して確かめる、こういう国民の間での奥の深い議論に資することは新聞の役割としてはとても大きいものがあると考えておりますので、私どもとしては、新聞無料枠につきましてはやはり存置をして税金の範囲内でしっかりとこれを措置するべきである、こう考えております。

○柴山委員
 続きまして、今度はテレビ等の有料広告についてお伺いしたいと思います。
 民主党案はこの点で大変重要な修正がされております。投票日前のテレビ、ラジオにおける有料広告の禁止期間を発議後の全期間という修正をされた理由についてお伺いしたいと思い ます。一方、与党修正案提出者には、投票日前のテレビ、ラジオにおける有料広告禁止期間を一週間から二週間に延長する案を提出しているわけですけれども、この点について、民主党の修正案を受けて、どのように考えておられるでしょうか。それぞれお伺いしたいと思います。

○枝野委員
 表現行動についてですから、できるだけその規制は少ない方がいいというふうに我々も思っております。ただ、この委員会でるる議論されてきておりますとおり、テレビCMというのは非常に多額なお金がかかりまして、普通の人がかかわることはできない種類のものである、そして、かける金額の大きさによって圧倒的にその影響力に差が出るということになります。
 私は、賛成側、反対側どちらがお金をお持ちでどうこうというのはその発議の内容によって違いますから、それをあらかじめ予見を持ってする必要はないと思いますが、いずれにしろ、経済力によって差がつく。しかも、電波というのは一種の公共物でありまして、限られた電波は限られた人たちしか持っていない。紙媒体であれば、新聞、一般紙に広告を載せれば多額のお金がかかるかもしれませんが、テレビに比べれば大幅に金額は少ないですし、さらに言えば、同じような紙媒体でほかに安い手段でということがあります。ただ、電波は代替性がない、しかも大変大きな金がかかるということになります。
 たくさん金をかけて、たくさんCMをしたから、ではそれでその意見が多数になるという影響をどれぐらい与えるかというのは、これは検証のしようがないのでわかりません。しかしながら、結果的にたくさんCMが流れた方が多数であったなんていう結果が出たときに、それは金で買われた憲法じゃないかだなんてことになれば、でき上がった憲法に対する国民的信頼は非常に低いことになる、悪い影響を与えることになるというふうに思います。したがって、経済力の多寡によってCMの量に大きく差がつくということがないことが、でき上がった結果との関係で望ましいだろうと思います。
 では、賛否平等になるようにというようなことを何らかの規制ができるのかといえば、それは現実のテレビコマーシャルの売り方、買い方から考えると現実的に難しいだろうと思いますし、表現の自由に対する介入のあり方として、形式的にだめだというのと、実質に踏み込んでいいとか悪いとかというのでは、実質に踏み込んでいい悪いという方が介入としては大変強力な介入になって、できるだけ避けた方がいい。賛否平等にできるだけ近づけるようになんていう決め方をすると、それが賛成のCMなのか反対のCMなのかの内容に踏み込むことになりますから、そういう規制の仕方はできない。
 そうすると、全面的にテレビCM自体を禁止して、賛否どちらのサイドもテレビCMは使わない。ただ、賛否どちらも、少なくともテレビ媒体からは、国の政見放送類似のところではメッセージが発信される、あとは放送媒体以外の、どなたでも自由に参加できる媒体を通じて運動しましょう、これがやはりフェアなあり方じゃないか、こういうふうに考えて全面禁止ということに踏み切りました。

○船田委員
 私ども与党の原案では、七日間の禁止ということを決めました。
 これは、やはりテレビCMが、先ほど申し上げましたように場合によっては国民の感情に訴えるとか影響力が非常に大きいということが挙げられました。また、一度テレビCMにおきまして誹謗中傷などがもしあった場合に、それを打ち消すような、つまり言論に対しては言論で対処していく言論の自由市場というものがきちんと機能すればそれはそれでいいのかもしれませんが、やはり投票日数日前にこれをやられた場合に、反論するだけの時間も与えられなければこれは大変なことになる、こういったことを考えましてまず七日間の禁止を考えたわけであります。
 しかしながら、さらにこの委員会でのさまざまな議論の中で、非常にその影響力が大きいということも明らかになってまいりました。また一方で、これは今枝野委員が話をされましたように、財政力の差によってテレビCMをいっぱい流せる政党とそうでない政党あるいは団体、こういった金銭的な差による賛否のアンバランスも当然出てきてしまうということで、これを十四日間禁止ということとしたわけでございます。
 しかし、民主党がおっしゃるように全期間禁止ということになりますと、少し行き過ぎではないのかなということを考えました。確かに、一方では広告主という立場もございます。その表現の自由も考えますと、全期間禁止はちょっと行き過ぎているな、こういうことも考えまして、両方のバランスをとりまして十四日間というのが妥当ではないか、このように考えて修正をさせていただいたということでございます。

○柴山委員
 民主党案提出者に今の点でちょっとお伺いしたいんですけれども、今、国民投票法案に対する国民の周知が必ずしも十分ではないというように言われておりますけれども、民主党修正案提出者は、有料CMでなくて評論番組あるいは報道番組等で周知行為は十分行われるというような御認識でしょうか。

○枝野委員
 国民投票が行われますよということ自体は、その広報は別途あり得るんだというふうに思いますし、それをテレビコマーシャルに使ったりして行うことについてはこの法律で別に禁止をされていない。つまり、それは選挙管理委員会的な形で、投票がありますよ、こういう周知はもし必要があればきちっとやった方がいいんだろうと思います。でも、憲法改正の発議がされて投票がありますよということ自体は、それなりにきちっと周知をされるんだろうというふうに思います。
 その上で、賛否それぞれの内容についてはということであれば、そもそもが十五秒とか三十秒のテレビCMで内容について国民の皆さんに理解を求めようという発想自体がやはりちょっと現実的ではないんだろうなと。印象、イメージを伝えて、賛成を募る、反対を募るということにやはりならざるを得ない。
 そういう意味では、政見放送類似のかなりまとまった時間を賛否それぞれからきちっと流すとか、あるいは紙媒体でじっくり読んでいただくとか、それこそ御指摘のあったような、いわゆる番組の中で、放送局が中立な立場で賛否両論についての意見を国民に伝えることを通じて、内容についてはきちっと伝わるというふうに思っています。

○柴山委員
 最後に、両案について、最も隔たりが大きいと思われる国民投票の対象について質問をさせていただきたいと思います。
 今回、民主党案においては国政における重要な問題に係る案件について国民の賛否を問う一般的国民投票制度の対象を限定する修正を行われたわけですけれども、その趣旨はどのようなものなのでしょうか。そして、この点を与党修正案提出者はどのように評価をされているのか。それぞれについてお伺いしたいと思います。

○枝野委員
 当初の案でも、具体的な法律案を国民の皆さんに賛成ですか反対ですかというようなことは、少なくとも憲法四十一条の趣旨に照らして望ましいことではないというふうに考えております。もちろん、法的には拘束力がないということでありますから憲法四十一条に反しないと思いますが。
 我々も想定をしている国政問題、重要問題というのは、具体的な法律案について賛成か反対か国民に問うということではなくて、例えば、脳死のときには中山先生と私と違う案のそれぞれ提出者でありましたが、それについて国民の意見を問うとかということではなくて、脳死を人の死と認めることについてどう思いますかというような、つまり憲法四十一条に反しない、その前提となる重要な問題についての国民の意見を問う、そういうことをもともと当初から意図している法律のつもりでおりましたが、この委員会での議論を踏まえて、どうも誤解をされる、あるいは少なくともそこのところがあいまいであるという認識を深めましたので、今のような、つまり具体的な法律案について聞くわけじゃありませんよと。
 あるいは、憲法四十一条との兼ね合いで国民投票に付することが普通は望ましくない、間接民主制の趣旨からして望ましくない案件もたくさんある。というか、これは最終的にはポジティブリストで書いた方がいいんだろう、これをやっちゃだめということではなくて、これについてやりなさいと。ネガティブリストなのかポジティブリストなのかはこれから決めてもいいと思うんですが。
 いずれにしても、何らかの形で、今のように、具体的な法律案を聞くわけではないですよ、あるいは事柄の性質上、国民投票に付すのは適切ではないものがありますよねというようなことを、きちっと基本的なルールを決めた上で国会として整理をしなきゃならないということは当初から考えておりました。
 ただ、そのことについてきちっと明示的に書いた方が、何でもかんでもかかるのかみたいな不安を与えないということになると思いましたので、今のような趣旨のことを法文上明確にしたということであります。

○葉梨委員
 先に与党案について簡単に説明してからコメントをさせていただきたいと思います。
 与党で法律を出すわけですけれども、もちろん、国民の中には今自衛隊が違憲であるというような意見もあることは承知しておりますけれども、我々としては、憲法に反する疑いが非常に強いようなものを法律として書くことはなかなかできないだろうと思うんです。
 現行憲法においては、間接民主制というのをベースにして、そして直接民主制については限定列挙という形をとっております。諮問的な国民投票といったところで、やはり相当な拘束力を持ってくるとなれば、それはどうしても直接民主制の導入ということで、公述人からもさきにお話がございましたけれども、憲法改正も必要になるんじゃないかという議論もあろうかと思います。
 しかし、憲法調査会あるいは憲法調査特別委員会を通じて、やはり一般的な国民投票あるいは予備的な憲法改正に関する国民投票についての必要性もるる各委員あるいは各参考人、各公述人からもお話があったわけです。
 そこで、そこのぎりぎりのところということで、与党案においては、憲法改正を要する問題及び憲法改正の対象となり得る問題について、これはまあ九十六条の外延という形で位置づけられようと思いますけれども、国民投票制度に関し、その意義及び必要性の有無について、日本国憲法の採用する間接民主制との整合性の確保その他の観点から検討を加え、必要な措置を講ずるものとすると。
 先ほどの公務員の政治的行為と違いまして、意義及び必要性の有無というような形で憲法との整合性を持っているわけですけれども、ただ、こう書いておけば、憲法審査会の中で憲法上一般的な国民投票の位置づけが一体どうなるんだというような議論は当然なされるというふうに、私は事実上の話としては思っております。
 民主党案について申し上げますと、非常に限定した形で条項を絞っていただいたということと、非常に大きな点というのは、間接民主制との整合性について民主党が明記していただいたということはやはり前進だと思いますし、議論のベースというのは相当近づいてきているというふうに私自身は感じております。そんなに大きな違いということはないと思います。

○柴山委員
 今の葉梨先生のおっしゃったことと私も全く同感でして、両案の実質的な差異というものは、少なくとも認識のレベルではなくなってきていると思います。(発言する者あり)

○中山委員長
 静粛に願います。

○柴山委員
 きょう、これをもって質疑を終わりますけれども、与党案、民主党案、今お伺いしたところ、広告規制については若干の差異はありますけれども、それ以外の部分については、少なくとも基本的な認識、ポリシーに関しては内容がほとんど一致しているというように思われます。
 この点について、最後、民主党修正案提出者に認識を再度お伺いするとともに、国民主権原理を実効化させるための大変重要な法案、また七割の国民が整備に賛成しているこの法案をくれぐれも政局に絡めることがないようにすべての会派に要望いたしまして、私の最後の発言とさせていただきます。

○枝野委員
 私、この間の報道も皆さんの御議論もちょっとよくわからないところがあるんですが、与党の皆さんはほとんど違いがないとおっしゃっているのであるならば、民主党案に御賛成いただければ円満にすべてが解決するんです。ここがよくわからなくて、早く採決をしろと言っているのは与党の皆さんで、我々は、もっともっと議論をすればもっともっと詰まるかもしれない、なおかつ違いがあると申し上げている。そちらは、違いがないとおっしゃっているんだったら、なぜ民主党案に賛成できないのか、それがさっぱりわからない。
 しかも、先ほどの話のとおり、違いの大きな点は、三年以内にちゃんとやるかどうかという違いです。しかも、今の国会の状況を考えれば、これから三年間は皆さんの方が多数で、法律をつくるということについての圧倒的な決定権を持っていらっしゃるわけです。私ども三年間につくるという決定権を持っていない側が、その三年間でちゃんとやってもらわなきゃいけないことについてちゃんと法律上担保をとらざるを得ないということは当然のことだと思うんですね。ですから、この違いについては、三年以内にちゃんとやるということであるならば、我々の側に乗っていただくのが、今現に、それから今後三年間、国会で多数を持っている可能性の高い皆さんの当然の責任であろうというふうに申し上げたいと思います。

第165回 国会 衆議院 本会議

第165回 国会 衆議院 本会議 第14号
平成18年11月7日(火)
午後一時開議

○議長(河野洋平君)
この際、内閣提出、貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣山本有二君。

〔国務大臣山本有二君登壇〕

○国務大臣(山本有二君)
ただいま議題となりました貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 現在、多重債務問題が大きな社会問題となっている状況を踏まえ、貸金業の適正化、過剰貸し付けに係る規制及び出資法の上限金利の引き下げ等の措置を講ずるため、本法律案を提出した次第であります。
 以下、その大要を申し上げます。
 第一に、貸金業の適正化を図るため、財産的基礎要件として最低純資産額を五千万円に引き上げること等、参入要件を厳格化するとともに、貸金業協会を内閣総理大臣が認可する制度を設け、その自主規制機能を強化し、広告の適正化や過剰貸し付けの防止等について自主規制規則を制定させ、当局が認可する枠組みを導入すること等としております。また、借り手保護の観点から、貸金業者に対する取り立て規制の強化等の措置を講ずるとともに、新たに業務改善命令を導入すること等、所要の措置を講ずることとしております。
 第二に、借り手の返済能力を超えた貸し付けが行われないよう、内閣総理大臣が信用情報機関を指定する制度を創設するとともに、貸金業者が個人向けに貸し付けを行う場合に指定信用情報機関の信用情報を利用して返済能力の調査をすることを義務づけ、年収の三分の一を超える貸し付けを原則禁止すること等、所要の措置を講ずることとしております。
 第三に、借り手の金利負担の軽減を図るため、貸金業者に適用されてきたいわゆるみなし弁済制度を廃止し、業として行う貸し付けにつき出資法の上限金利を年二九・二%から年二〇%に引き下げること等、所要の措置を講ずることとしております。
 第四に、やみ金融に対する罰則を強化するため、年一〇九・五%を上回る超高金利の貸し付けに対する罰則を新設するとともに、無登録営業に対する罰則を懲役五年以下から十年以下へ引き上げること等、所要の措置を講ずることとしております。
 第五に、政府は、関係省庁相互間の連携を強化することにより、カウンセリング体制の整備、やみ金融の取り締まりの強化、この法律による改正後の規定の施行状況の検証等、多重債務問題の解決に資する施策を総合的かつ効果的に推進するよう努めなければならないこととしております。
 なお、貸金業制度のあり方や出資法及び利息制限法に基づく金利の規制のあり方について、この法律の施行後二年六月以内に、過剰貸し付けに係る規定等や出資法及び利息制限法の規定を円滑に実施するために講ずべき施策の必要性の有無について検討を加え、その検討の結果に応じて所要の見直しを行うこととしております。
 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

○議長(河野洋平君)
ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。柴山昌彦君。

〔柴山昌彦君登壇〕

○柴山昌彦君
自由民主党の柴山昌彦です。
 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)
 多重債務問題の解決は、我が国にとって重大かつ緊急の課題であります。テレビをつければ、あるいは町中で、オペレーター役の若い女優やマスコットの動物が登場する消費者金融、いわゆるサラ金の広告が至るところにはんらんしています。そして、十日で二割、三割といった法外な高金利の、いわゆるやみ金融のばっこ、臓器を売ってでも、あるいは死んで保険金で返せなどといった過酷な取り立て、家庭崩壊。私は、東京弁護士会の広報委員として、このような近年急速に深刻さ、悲惨さを増している実情を取材してまいりました。
 現在、消費者金融の利用者は約千四百万人、そのうち約二百三十万人が多重債務状態だと言われております。そして、我が国の年間の自殺者数は約三万人ですが、そのうち相当数が多重債務状態に陥っているとも言われております。なぜ、このような悲惨な状況が、特に無担保消費者金融において続いてきたのでしょうか。そして、国はこれまでどのような対策をとってきたのでしょうか。金融担当大臣に御説明を求めます。
 このような中で、利息制限法で定める一五ないし二〇%の上限金利と、出資法で定めた刑罰金利であり、かつ貸金業法上書面を作成して任意に返済すれば有効となる二九・二%の上限金利に挟まれたグレーゾーンの存在が、債務者を苦しめるものとして大きくクローズアップされました。
 裁判例においては、このグレーゾーンの返済の任意性を厳格に解するものが続出し、ついには、こうした高利息の返済を一回でも怠れば一括して残りの債務を即時に支払わなければいけないという当たり前のいわゆる期限の利益喪失約款をもって、特段の事情がない限り返済が任意に行われるものでないと本年一月十三日に最高裁が判示しました。
 その結果、二九・二%という高い金利を容認するこの貸金業法の規定は既に事実上効力を失っており、全国至るところで、既に債務者が支払った利息制限法超過利息の返還訴訟が起きています。既にこうした動きがある中で、今回の改正法案が法文上グレーゾーンを廃止することの意義を金融担当大臣にお伺いします。
 一方、例外や特例なく上限金利を利息制限法の水準に引き下げた場合、貸し倒れの危険性の高い消費者や事業者が適法に融資を受けられなくなり、かえってやみ金融を増長させかねないですとか、資金調達を初めとするコストや貸し倒れリスクに耐えられない中小の貸金業者が淘汰され、信用収縮、いわゆるクレジットクランチが発生するなどといった懸念も示されています。
 自民党においては、ことし五月に金融調査会のもとに貸金業制度等に関する小委員会を設置して以来、関係部会との合同会議も含めて、ほぼ二十回にわたりこの問題を討議しました。消費者問題、金融問題のエキスパートを初め、多くの議員たちが、ベテランから当選一回の皆さんまで、まさに改革政党の名にふさわしい正々堂々たる議論を繰り広げたのであります。(拍手)
 結局、今回の法案では、少額融資の場合に一定の高金利を認める特例を設けることや、利息制限法の上限金利の融資金額による区分の見直しは見送られ、あわせて、これまで金利規制の抜け穴となっていた保証料などについても、利息と合算して上限金利規制の対象とすることになりましたが、こうした金融排除やクレジットクランチの懸念に一体どのように対処していくのか、金融担当大臣にお伺いします。
 また、今回の法案では、無登録業者に対する罰則が懲役五年から懲役十年に引き上げられるなど、やみ金融に対する罰則も強化されておりますが、やみ金融に対する取り締まりの強化にどのように取り組んでいくのか、その決意と具体的な取り組みについて国家公安委員長にお伺いします。
 さて、こうした対応以外にも、多重債務問題の解決のためには非常に広範な対策が必要です。特に、借り入れの額については、債務者ごとの総量規制が不可欠ですし、期間についても、例えばいわゆるリボ契約について規制を設ける必要があります。このほか、貸金業者の登録要件、信用情報機関のあり方、貸し付けの際に業者に課される規制や取り立ての際の規制の強化について、それぞれ改正法でどのような手当てがなされているか、金融担当大臣にお伺いします。
 なお、これまで述べてまいりましたそれぞれの対策には、経済や債務者への影響を慎重に考え、一定の経過措置が必要と考えますが、具体的な施行時期、スケジュールについて金融担当大臣の御説明を求めます。
 一方、こうした債務者への対策としては、このたび発足した日本司法支援センター、いわゆる法テラスやカウンセリング機関の体制強化が必要であり、あわせて、債務整理等の専門家である弁護士会などの協力を仰ぐことが不可欠となるので、これら関係機関、団体による多重債務者への支援に関して法務大臣のリーダーシップが大いに期待されるところです。今後どのような取り組みをお考えか、法務大臣にお尋ねいたします。
 しかしながら、既に、例えばにせものの高級時計を情を通じた業者から借りさせて、それを質受けするなど、消費者を食い物にした新たな金融手段が登場しています。こうした行為に対する取り締まりの強化にどのように取り組んでいくのか、国家公安委員長にお尋ねいたします。
 また、貸金業者の中には、みずからが行う強制執行に用いる公正証書を作成するのに必要な債務者の同意を、委任状を債務者から不当に入手することによって得ることが多く見られています。さらに、債務者の生命保険契約をみずから締結し、保険料の立てかえ払いも行って、債務者の死亡後、生命保険金をもって債務の返済に充てさせている例までもが見受けられます。このような状況にどう対応していかれるのか、金融担当大臣の御所見を伺います。
 いずれにせよ、今回の法改正を円滑に施行するとともに、新たな対策を講じ、さらには借り手教育を充実させていくためには、関係省庁が連携して、また官民が一体となって、総合的で息の長い取り組みを行っていくことが必要です。この作業では、内閣官房が司令塔となって省庁横断的な情報収集及び対応を進めていくことが非常に重要だと思いますが、内閣のかなめである官房長官より、それに向けた御決意をお聞かせください。
 最後になりますが、今回の改正内容については、長年にわたり多重債務問題に真摯に取り組んでこられた日本弁護士連合会などの諸団体から、高く評価する旨のコメントが発表されました。安倍総理は、拉致問題に関し、一人の被害者も見捨てることはしないと述べられていますが、多重債務問題で亡くなる方を根絶することも、国を挙げての重要な課題です。一日も早くこの法案を成立させ、国民の期待にこたえることが立法府としての責務であることを強調して、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

○国務大臣(塩崎恭久君)
柴山議員にお答えいたします。
 多重債務者問題に関する内閣官房の対応についてお尋ねがございました。
 政府といたしましては、多重債務問題の解決に向け、政府を挙げて取り組む決意でございます。このため、内閣官房に多重債務者対策本部を設置し、改正法の円滑な施行に加え、消費者教育の強化やカウンセリング体制の充実等について、関係省庁が連携して取り組んでまいりたいと考えております。(拍手)

〔国務大臣山本有二君登壇〕

○国務大臣(山本有二君)
柴山議員にお答えいたします。
 多重債務問題への政府のこれまでの対策についてお尋ねがありました。
 政府としては、近年、貸金業者による高金利での過剰な貸し付け等により多重債務問題が深刻化しており、その解決が重要な課題となっていると認識しておりました。こうした認識のもと、政府としては、これまでも、貸金業規制法等関係法令が累次改正される中で、法令に基づいて厳正かつ適切な監督に努めるなど、借り手の保護のための施策の実施に努めてきたところでございます。
 今回の改正において、いわゆるグレーゾーン金利を廃止することの意義についてお尋ねがありました。
 今回の法案では、多重債務問題を解決するために有効なあらゆる施策を講じることとしており、その重要な施策の一つとして、貸金業法第四十三条に基づくいわゆるグレーゾーン金利を廃止し、出資法の上限金利を二〇%まで引き下げることとしております。これにより、債務者の金利負担が軽減され、多重債務問題の解決に資することとなるものと考えております。
 信用収縮などの懸念に対し、どのように対処していくのかとのお尋ねがございました。
 今回の改正により、新たな多重債務者を発生させない枠組みを構築する必要がありますが、その過程において、現在の借り手が急に返済を迫られ、かえって生活に悪影響が出るような事態を招かないようにすることも必要であると考えております。こうした点も勘案し、今回の改正におきましては、上限金利引き下げと新たな過剰貸し付け規制の実施までおおむね三年程度の準備期間を設けることとしております。
 借り入れの額や期間に対する規制など、改正法上手当てされている施策についてのお尋ねがありました。
 今回の改正においては、上限金利の引き下げとあわせて、返済能力を超える借り入れが行われないよう、個々の借り手の総借入残高を指定信用情報機関を通じて把握させた上で、総量規制を導入するとともに、いわゆるリボルビング契約の毎月の最低返済額等についての自主規制規則を制定させ、金融庁が認可することとしております。
 このほか、貸金業者に対して、純資産要件の引き上げや資格試験の導入など参入要件を厳格化するとともに、日中の執拗な取り立て行為の禁止などの取り立て規制の強化及び事前の書面交付義務など行為規制の強化を行い、多重債務問題の解決に資する総合的な施策を講じることとしております。(拍手)

〔国務大臣溝手顕正君登壇〕

○国務大臣(溝手顕正君)
柴山議員の御質問にお答えいたします。
 まず初めに、やみ金融に対する取り締まりの強化についてお尋ねがありました。
 御指摘のとおり、高金利貸し付けや違法な取り立て等、やみ金融事犯については依然として深刻な被害が出ているものと認識しております。
 警察では、これまでもやみ金融事犯の取り締まりを強力に進めてきたところでありますが、今回の改正を機に、関係機関、団体とも連携しながら、今後、さらに取り締まりを強化し、被害防止に努めるものと承知いたしております。国家公安委員会といたしましても、この問題について警察に寄せられる国民の期待と信頼にこたえることができるよう、その取り組みを督励してまいる所存でございます。
 次に、消費者を食い物にした新たな金融手段に対する取り締まり強化の問題であります。
 警察は、貴金属や商品券等を利用した金融手段についても、それが実態として高金利の貸金業と認められる場合には、これまでも出資法や貸金業規制法を適用して厳正に対処しているものと承知いたしております。御指摘のような新手の金融手段につきましては、それが違法な行為に該当すれば、警察においても厳正に取り締まりを推進していくものと承知いたしております。(拍手)

〔国務大臣長勢甚遠君登壇〕

○国務大臣(長勢甚遠君)
柴山議員にお答え申し上げます。
 多重債務者への支援に関する取り組みについてお尋ねがありました。
 御指摘の多重債務者への支援については、日本司法支援センターにおいて、法的トラブルを抱えた国民に対する情報提供業務の一環として、多重債務問題などの金銭の借り入れに関する法的トラブルの問い合わせを受け付け、破産手続等の法制度に関する情報や多重債務者に対する助言等を行うカウンセリング機関などの相談機関に関する情報を迅速適切に提供しております。
 多重債務の問題に適切に対応するためには、御指摘のとおり、弁護士会の協力を得るなど、関係機関、団体との連携協力のもとに司法支援センターの業務が行われる必要があります。このため、司法支援センターにおいては、協議会を開催するなどして、関係機関、団体との連携協力関係を一層深めるよう努めているところであります。(拍手)

第165回 国会 衆議院 日本国憲法に関する調査特別委員会

第165回 国会 衆議院 日本国憲法に関する調査特別委員会 第4号
平成18年11月2日(木)
午後二時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 本日のお話をお伺いしまして、与党あるいは民主党の提案者の皆様ともども、国民投票運動の保障を最大限図っていかなければいけない、表現の自由あるいは学問の自由、政治活動の自由に照らしてそのような意見を持っているということを改めて認識した次第です。
 しかしながら、両案ともにこれに対する規制を容認しております。そこでそれぞれの提出者にお伺いしたいのは、そのような規制によって守ろうとする利益は一体何なのか、これについて手短にお答えをいただきたいと思います。

○保岡議員
 まず、特定公務員の国民投票運動の制約の条項については、中央選挙管理会の委員等というのは、やはり手続の中立性、公正さを担保するという意味で、最もその手続に直接携わる方たちですから、これは運動にかかわることを禁止して、中立性やその信頼を保護法益と考えていいんじゃないでしょうか。
 それから、裁判官や検察官、公安委員会の委員、警察官というのは、その職務の性格や強制力によって投票人の意思決定に対して他の一般の国民ではなし得ないような大きな影響を及ぼすおそれがある職種のものであるという意味で、国民の自由闊達な意見の表明とか、国民投票運動の盛り上がりなどに対する自由、公正さというものを保護法益にしていると考えていいのではないかと思います。

○園田(康)議員
 柴山委員にお答えを申し上げます。
 民主党の場合は、私どもは保護法益としては、国民投票の投票そのものにかかわる自由な運動というものが行われるべきものであろうという形から、この国民投票そのものの自由と公正をしっかりと担保していきたいというふうに考えた次第でございます。
 したがって、この国民投票運動そのものに関しましては、いわゆる国民の意見表明、政治的な意見表明というものがきちっとここで担保されなければいけない。そこにかかわる規制をかけていくということになれば、すなわち、先ほどから議論が、午前中でも出ておりましたけれども、萎縮効果を生んでしまうことになってしまうというところから、ここに関しましては少なくとも必要最小限度のものにとどめようという形で、例えば投票事務関係者、そういったところでの運動禁止というものを設けたということでございますけれども、そのほかにつきましては私どもは原則自由という形をとらせていただいている次第でございます。

○柴山委員
 基本的には、両案とも自由な意思表明を確保するための公正性の確保ということを中心としていると思います。
 ただ、ここでちょっと問題提起をしたいんですけれども、公務員の政治活動の禁止、これは公職選挙法等に規定されている、あるいは国家公務員法等に規定されているわけですけれども、この場合の保護法益としては公務の中立性に対する国民の信頼ということが挙げられるのではないでしょうか。
 憲法は十五条二項で公務員は全体の奉仕者であるというように定めております。また、憲法に限って言えば、九十九条で憲法尊重擁護義務が公務員には課されています。先ほど笠井委員が御指摘のような宣誓をするという行為が公務員には課されています。このような中にあって、猿払事件で問題となったように、すべての公務員について一律に国民投票運動を制限するということはいかがかと思いますが、例えば、一昔前は閣僚が憲法改正に言及しただけで首が飛んだ時代がありました。そういうようなことを考えた場合に、例えば裁判官がその担当している案件とは別のコンテクストで自由に改憲を主張するような場合に、憲法上の争点が問題となっている裁判が仮に発生した場合に、その当事者が裁判官に対して忌避を申し立てることができるんでしょうか。
 私は、公務員の職務に対する国民の信頼、中立性への信頼、こういうことを考えた場合に、最低限、与党の提案された裁判官、検察官、公安委員会の委員並びに警察官、こういった公務員の国民投票運動に関しては、意見表明にとどまる場合はいかがかと思いますが、少なくとも一定の制限というのはやはり必要になってくるのではないかと思うんですが、この点について両党の提出者に伺いたいと思います。

○保岡議員
 先生言われるように意見表明はだれでも自由にできるということを前提として、いわゆる国民投票に関する勧誘行為、こういった国民投票運動というものについては、先生のおっしゃるように、先ほども私も申し上げたように、裁判官等の特定公務員、あるいは場合によっては一般的な公務員でも、地位利用といったものは、職種柄、あるいはそれに伴う強制力、あるいは類型的に国民の投票の公正さに影響を与える疑義が生ずるおそれがある。したがって、らしさという信頼を確保する意味でも必要だと思って我々は提案したんです。
 しかし、いろいろ海外調査をしたり、いろいろ議論して、けさの小委員会でも議論してまいりまして、やはり裁判官にしても、デンマークなどの判事さんといろいろディスカッションしたんですけれども、そのときも、裁判官であれこの国では国民運動は禁止されていない、ただ、それはひとえに公務員の自分の立場からする自制というか常識的な対応の範囲内の問題であって、したがって公務の公正さを疑われるような場では発言を控えるようにするなどみずから判断している、特に高い地位にある公務員ほどそういうような判断をきちっとしているというお話でございました。
 そういうようなことを考えると、例えば裁判官だとか検察官だとか、そういう法律家に、むしろ節度を持った常識の範囲内で憲法に対する意見を言ったり、それに伴って多少意見表明からオーバーするような行動も目くじらを立てて何か罰則で担保して禁止する必要まであるかどうかについては、これは外国の例なども参考によく考えてみたい。与党としては、そういうふうに今後の再考を含めて検討の余地を念頭に今考え方を取りまとめようといたしております。

○園田(康)議員
 先ほど公務員の発言、特に裁判官について御指摘があったわけでございますけれども、今保岡委員からも発言がございましたし、本日の午前中の意見の中でもございましたけれども、いわゆるそういう地位の方々が憲法改正についての意見をされるということは、自然と意見表明という形にはなるんでしょうけれども、さらにそこから判決に絡んだ話をするというところまでは至らないのではないか、その点はそれぞれの良識あるいは常識の範囲内でおさまるのではないかというふうに考えていると同時に、そういったことがなされれば、自然とその地位に当たる方々にいわゆる常識、社会的な通念の中から批判が出てくるものというふうに考えるわけでございますので、この点は心配には当たらないというふうに私は思っております。

○柴山委員
 諸外国の事例については原則自由ということは、確かにそのとおりだと思います。ただ、例えばフランスのように、原則は自由ですが、公的助成を受けてキャンペーンを行う政治団体に関しては一定の規制が課されるというような事例もあることですから、やはり公的な色彩を帯びた団体あるいは機関の運動に関してはいま一度見直してもよいのではないかなという問題意識を私は持っております。
 また、公務員の地位利用の問題につきましても、威迫と呼べるようなものについてまで放置しておいてよいのかということについては、ぜひ問題提起をさせていただきたいと思います。
 次の質問に移りますが、教育者の地位利用についてでございます。
 これは公立あるいは国立学校以外に私立学校に関しても恐らく当てはまる規制なのだと思いますけれども、与党案を拝見しますと、学校の児童生徒に対して地位利用をしてはいけないという規定になっておりますが、当たり前のことですが児童は国民投票の投票権はありません、そのような事例においてまでなぜこうした地位利用の禁止を設けているのか。また、これも学説の講義をするということまで地位利用に当たるのかどうかという問題提起がいろいろな方からなされますが、この地位利用の意味についてもあわせてぜひお伺いしたいと思います。

○船田議員
 お答えいたします。
 今柴山委員御指摘のように、教育者の地位利用ということについては、与党案としては国民投票運動については禁止をしたい、こう考えております。これには、もし公務員法だけで対応するとすれば、私立の学校の教育者が除外されるということもありますので、これはやはりバランスをとらなければいけないということで対応したいと思っております。
 ただ、御指摘のように確かに児童は投票権者ではありませんので、児童に対して直接投票を依頼するというようなことは考えにくいわけでありますが、教育者が児童に対して間接的にその保護者に働きかける場合、その児童に対する教育者としての地位を利用して直接に保護者に働きかける場合、そういった、子供を通じて保護者に何らかの影響を及ぼし得るのではないかということに着目をしたわけでございます。
 例えば、もうちょっと詳しく申し上げれば、特定の憲法改正案に対して賛成または反対するように児童を通じてその保護者に依頼をする行為とか、保護者会の席上や家庭訪問の際に国民投票運動をするという行為、あるいは教育者が教室において社会科の科目として児童に特定の憲法改正案に賛成または反対するよう講話をする、そしてそれが親に伝わっていく、こういったような例も考えられるんだと思っております。
 ただ、この問題につきましては、先ほど来話が出ておりますように、地位利用そのものということを罰則として設けるべきかどうかということについては、なお諸外国の例を見ながら、また、きょう午前中のさまざまな角度からの議論を見ながら慎重に検討していかざるを得ない、このように思っております。

○小川(淳)議員
 民主党案におきましては、教育者の地位利用につきましても特段の制限を加えていないわけでございまして、議論になっております公務員の方、検察官、裁判官、教育者、これは極めて良識的な、高い良識を持った行動が常に求められているわけですから、まずはそこへ信頼を置きたいと思います。
 その上で憲法秩序には、日ごろ遵守をしていただいている公務員、教育者もこの国民投票に限っては憲法秩序に働きかけていただく主権者の一人でございまして、そういう意味でも自由な政治的な意見の表明の機会は最大限確保してまいりたいというふうに考えております。

○柴山委員
 続きまして、罰則に関する質問なんですけれども、与党案では国民投票運動に関する買収罪が設けられています。これについて影響を与えるに足りる物品もしくは財産上の利益等の提供ということがなかなかわかりづらいという指摘が恐らくあろうかと思います。これについてどのようにお答えになるでしょうか。また、先ほど民主党の方から指摘がありましたとおり、公務員、教員に対する取り締まりということが本当に現実的かということをお伺いしたいと思います。
 一方、民主党に関しては、こうした買収の規定が本当に不要なのか。先ほど余りないだろうというお話がありましたが、我々は起きた場合にどうするかということを議論しているわけでありまして、犯罪も同じでありまして、どんな悪質なものでも起きたときに本当にそれを放置しておいてよいのかという観点からぜひ考えていただきたいと思います。法的なペナルティーがなくていいのか、社会的非難で本当に足りるのかということについてぜひお伺いしたいと思います。

○船田議員
 お答えいたします。
 私どもは、組織的多数人買収罪ということで、これは公選法にも準じながらこのような規定をとりました。しかし、公選法の規定はかなり厳しいものでございますので、できるだけその要件を限定いたしました。例えば、組織によるものである、それから、多数の投票人に対して行われるものである、それから、賛成または反対の投票をしまたはしないように勧誘をするという行為がある、そして、その投票をしまたはしないことの報酬として金銭の授受がある、あるいは、賛成または反対の投票をしまたはしないことに影響を与えるに足る物品その他の財産上の利益、これはサービスも含めまして、そういったものに限定をして、買収罪という形をさらに限定していこう、こういう考えであります。
 おっしゃるとおり影響を与えるに足る物品というのは一体何だろう、こういうことでございますけれども、我々、一つは財貨性ですね、そのものが利益をその人間にどの程度与えるのかということや、あるいは市場流通性、お金を払うことによって市場で買うべきものがただで入ってしまう、こういったことが一つの条件としてはあるのではないかと思っております。
 ただ、それを突き詰めていきますと、それでもなお非常にあいまいな部分が出てくる。例えば国民投票運動の意見表明をする手段として通常使われているもの、例えばDVDであるとか、それから、反対を唱えている有名な学者が書きおろしで自分でパンフレットや本を書いてそれをただで会場で配った場合どうなのかとか、そういった問題についてはなお整理をしていく必要があるだろうということで、これはこれからまた議論を深めながらなるべくさらに限定をする方向で考えていきたいと考えています。

○園田(康)議員
 民主党も、御指摘のとおり一票をお金で買うような行為は当然許されるものではないという側に立つわけでございますが、しかしながら、今回そういった罰則は設けていないということは、高度に、私どもは、自由闊達な国民投票運動というものが展開されていくという、それに対する萎縮効果が働かないということを前提に置いているわけでございます。
 しかしながら、起きた場合はどうなるのかというようなお話を今ちょうだいしたわけでありますけれども、我々は主権者たる国民の政治的な意見表明の機会は最大限配慮をしていかなければいけないというふうに考えると同時に、それに対する悪質なケース、先ほどから少しいろいろ出ておりますけれども、悪質なケースがどのようなものであるのかということの構成要件、これはどうしても今の現時点ではあいまいになってしまっているのではないかなという懸念を一方で持っているわけであります。
 したがって、例えば一票をお金で買うということが、一億人の投票権者がいらっしゃるわけでありますので、その過半数を買収するという状況が果たして可能であるかどうか、あるいは秘密裏にそういったことを行うことができるかどうかというところがまだ私たちは疑問を持っているところでございます。また、それが仮に明るみに出たという形になれば、やはり、先ほどのお話ではありませんけれども、十分に社会的な制裁を受けるに足るものというふうに思っております。
 そしてまた、個人の当落を争う選挙という形ではございませんので、個人的な利害関係から買収行為へとつながる危険性については今現時点においてもそれほど高くないというふうに判断をさせていただいておりますので、今の現時点では特段そういった萎縮効果を生じさせるような罰則を設けるということは考えるに至っていないということでありますけれども、しかしながら、今後の議論の中で、やはりこれはどうしてもまずい、見過ごしておくことはできないというものが出てくれば、それにつきましては私たちも検討の余地がないということではないというふうに申し上げておきたいと思います。

○柴山委員
 ありがとうございました。質問を終わります。

第165回 国会 衆議院 法務委員会

第165回 国会 衆議院 法務委員会 第1号
平成18年11月1日(水)
午前九時三十二分開議

○七条委員長
 これより法務委員会財務金融委員会連合審査会を開会いたします。
 先例によりまして、私が委員長の職務を行います。
 第百六十四回国会、内閣提出、信託法案及び第百六十四回国会、内閣提出、信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 両案の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付してあります資料により御了承願います。
 これより質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴山昌彦君。

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 本法案に関しましては、私は二回目の質問となりますが、この連合審査会の中で議論がより深まればと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 まず、お伺いいたします。
 改正法のもとで、信託銀行等の受託者にはどのような義務が発生することになるのでしょうか。端的にお答えいただきたいと思います。

○長勢国務大臣
 おはようございます。
 受託者が受益者に対して負う信託法上の義務について御質問でございますが、これについては信託法案の第三章第二節に規定をしてございます。
 具体的な受託者の義務の主なものは、一つは、信託事務の処理をするに当たっては、自己の財産に対する場合と同一の注意では足りず、より高度の注意をもってしなければならない、いわゆる善管注意義務でございます。二つ目は、自己の利益ではなく、受益者の利益のために行動すべきであるという忠実義務。三つ目は、一つの信託で受益者が複数ある場合には、受益者を公平に取り扱わなければならないという公平義務。四つ目に、受託した信託の信託財産と自己または他の信託の信託財産を分けて管理しなければならないという分別管理義務。五つ目に、信託事務処理を委託した場合には、委託先である第三者を選任、監督しなければならないという委託先の選任監督義務。六つ目に、信託事務処理の状況についての報告をしなければならないという報告義務、もう一つ、帳簿等の作成、報告、保存及び開示をしなければならないという義務などを規定いたしております。

○柴山委員
 大変多岐にわたる厳しい義務が課されているわけなんですけれども、こうした受託者の義務が、新しい改正法の信託法案及び信託業法においてどのような形で緩和をされているのか、それぞれお伺いしたいと思います。

○寺田政府参考人
 この新しい信託法案におきましては、今大臣からお示しいたしました義務のうち、基本的に二つの大きな義務について緩和というべき措置がされております。
 これは、第一に、受益者の利益相反行為に関する規定の見直しであります。利益相反行為に関しましては、今の規定を強化する、もう少し明確にするという部分もございますが、もう一つ、利用者の方から非常に御要望がありましたのは、今の規定でありますと、利益相反行為は基本的に禁止ということでございまして、非常に硬直的であるということでございます。
 そこで、今度の新しい法案におきましては、例えば、ほかに買い手がないような信託財産に属する財産を受託者が適切な価格で自分の固有財産にする、売買をするというようなものについて、実質的には受益者の利益にもなるという配慮から、信託行為に定めがある場合や重要な事実の開示を受けて受益者がこれを承認した場合、このような場合には、これを例外として扱いまして、利益相反行為を一定の要件のもとに許すという緩和策をとっております。
 第二は、受託者の自己執行義務、今大臣から申し上げたところでございまして、これは現行法では、信託行為に定めがある場合またはやむを得ない場合に限って信託を第三者に委託するということが認められているわけでございますけれども、今日の社会においては非常に分業化、専門化が進んでおりまして、この信託分野でも、必ずしも自分でみずからやるのではなくて、むしろ専門家である第三者に事務を委託した方が適切であるという場合も決して少なくない、こういう情勢にございます。
 そこで、新しい法案では、第三者に信託事務の処理を委託することを許容するという定めがない場合であっても、目的に照らして相当である、こういう要件のもとに、受託者はこれらを第三者に委託することができるということで合理化を図っているところでございます。

○柴山委員
 ただ、ここで問題なのは、信託というのは、そもそも他人を信じて託するというところから来た契約類型なわけですね。そこには、受託者は当然、受益者に対してしっかりと利益相反行為を排して忠実に物事を処理しなければいけないという義務が、要は中心的な義務として課せられているはずであります。
 そのような場合に、受益者が、いや、そういう義務は負わなくていいですよという形で解除してくれればともかく、それ以外の類型で、例えば、正当性あるいは相当性というような要件でこれを緩和するというのは、私は大変大きな問題を含みかねないと思います。そこら辺の類型はやはりきちんと説明をしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

○寺田政府参考人
 おっしゃるとおり、この義務は非常に基本的なところでございますが、今言った合理化の観点から、おのずから、したがって、例えば、新しい法案の三十一条の二項の四号に言う「正当な理由がある」ということは解釈されるべきところであります。
 例えば、価格の相当性ということが非常に問題になるわけでございますけれども、信託財産に属する土地が競売に付されているというようなときに、受託者が競売手続において正当な手続で落札する、競落するというような場合は、これは問題ないのではないか。
 あるいは、管理型の信託で申し上げれば、例えば、銀行を経営している受託者が、全く普通の預け入れをする者と同一の利率で信託財産に属する金銭を受託者の固有財産に預金する場合というような、いわゆる自行預金と言われるわけでございますけれども、こういうようなものは、一般的な利率と全く同じでございますので、ほかに考えられる余地が余りないということでございますから、これはまた正当な理由に当たるというように思われるわけでございます。
 それから、運用型で申し上げれば、信託財産に属する金銭を、市場で有価証券を購入する、その有価証券を受託者が固有財産で売却したという、これもまた市場を通すということによって、価格メカニズムの点で全く不当なところはないはずでございますので、こういうものは許される、そういう理解に立っております。

○柴山委員
 また、信託契約に関しては、要するに、利益を受ける受益者がしっかりと受託者を監視することによってみずからの利益を図れるというところが恐らく肝になっているんだと思うんですが、例えば、今回の改正法では、受益者と受託者が一体であるというような契約類型が認められることになっております、期間は限定されるということになるんでしょうけれども。
 そういうような場合に、受託者と当初受益者が一緒であるような場合に果たして本当にこうした監視機能ということが十分発揮できるのかというところがきのうの参考人質問でも出てまいりましたので、その点についてちょっと御説明をいただきたいと思います。

○寺田政府参考人
 おっしゃるとおり、信託の委託者、受託者、受益者の三者の関係のうち委託者と受益者が一致するもの、これは今も自益信託としてあるわけでございますし、今回新たに、委託者と受託者が一致しているもの、これは自己信託、信託宣言として認めるわけでございますが、問題は、信託の本質は受益者のために受託者が義務を負うというところにございますので、この受託者と受益者の一致というのは基本的には認めないという方針に立っております。
 ただ、完全に認めないということになりますと、例えば受益権を売り出そうとしているときに、まだ売り出す前に一時的に受託者がこれを持っている状態というのは今の状態に相当するわけでございますけれども、それを完全に禁止してしまいますと、非常に実務的にも、買い手が見つかるまでの間もそれは許されないというようなことでございますので、そこで、期間制限といたしまして一年間という期間を限って、今回、そのようなことを容認するということを明らかにしたわけでございます。
 これはあくまで期間限定の措置で、いわば信託としては異例のことでございますので、信託関係全体としては眠っているも等しい状態でございます。この間は、確かにおっしゃるとおり、受益者の側から受託者を監視するという意味は、全く両者が一致しておるわけでございますので、ありません。
 ただ、これが、一たん受益権が他人の手に渡るということになりますと、たちまちそこに忠実義務というのは顕在化してまいります。したがいまして、この時点で第三者のためにする意味が出てくるわけでございますので、一年間の間に限るということで例外措置を認めたことによって、基本的に、だれかの権利が害されるということはないのではないかというように考えているわけでございます。

○柴山委員
 同様の質問でございます。
 金融庁で、受託者の義務の緩和について一体どのような措置がとられているか、教えてください。

○山本国務大臣
 信託業法改正案では、当事者間の合意による受託者義務の軽減を原則として認めておりません。これは、多数の受益者の取引の安全、公平、そういった観点からであろうと思いますが、信託法改正の趣旨を踏まえまして、受益者保護に問題がない場合に限って受託者義務の合理化を図ろうとしております。

○柴山委員
 ありがとうございました。
 続きまして、この改正法で大変大きな議論を呼んでおります自己信託の許容について、これまでもかなり議論が尽くされてまいりましたけれども、若干補足して説明をさせていただきたいと思います。
 要は、この自己信託に対する不安の本質は、信託財産は固有財産と独立の存在であるにもかかわらず、自己信託の場合には、簡単にそのままの名義でそうした独立財産をつくることができる。これは、要は、メリット及び需要とは裏腹の関係で、それが悪用されるのではないかというデメリットが指摘をされています。
 そしてもう一点は、そのようにして形成された独立財産が、範囲が不分明である、また中身もよくわからぬ、そういった外部開示の問題があるかと思います。特に、開示の問題に関しては昨日の参考人質問でも取り上げられたところであります。
 そこで、お伺いいたしますが、信託財産が固有財産から切り離されたこと、及び、信託受益権勘定といいますか、財務諸表においてどういう取り扱いになるか、それぞれぜひお聞かせいただきたいと思います。

○三國谷政府参考人
 お答え申し上げます。
 信託法と信託業法がございますけれども、信託法によりますれば、信託の受託者が貸借対照表、損益計算書等の帳簿を作成いたしまして、これを受益者が閲覧、謄写することが可能となっております。
 信託業法の方でございますが、こちらの方では受託者が信託財産状況報告書等を受益者に交付することとなっております。

○柴山委員
 ただ、信託受益権を構成する財産がどのようになるかというような個別の問題に関しては、これは公認会計士の先生方からも非常に懸念が表明されていることですから、ASBJで今検討が進められているというように聞きますけれども、しっかりとこれを、一年後の自己信託に関する施行のときまでには明確にしていただきたいというように思います。
 次に、この自己信託に関して、課税の適正ということが十分になされるのかということが非常に大きな疑問点となっております。利益隠しに使われるのではないかということが恐らく筆頭の懸念だと思いますけれども、これについて、ぜひ御説明をいただきたいと思います。

○田中副大臣
 ただいまの御指摘のように、自己信託などで会社同様の事業を行うような場合に法人税等の租税回避が起こるのではないか、こういう懸念が指摘されておりまして、今までも、各方面、関係者の御検討があったところでございまして、私自身も重要なポイントである、このように思っております。当然、私は、課税の公平及び中立性の確保の観点から法人課税を行うべきだ、このように考えております。
 いずれにしましても、信託法案への税制上の対応については、今後、十分な検討を行った上で、十九年度、来年の税制改正において措置してまいりたいと思っております。
 いずれにしても、財務省といたしましては、適切に、公平、中立性の観点からしっかりと扱ってまいりたいと思います。
 以上でございます。

○柴山委員
 これ以外にも、事業信託の問題あるいは倒産隔離の問題について、いろいろと聞きたいことがあるんですが、私の持ち時間は終了いたしましたので、残余の質問はほかの委員の先生方にお任せしたいと思います。
 きょうはどうもありがとうございました。

第165回 国会 衆議院 法務委員会

第165回 国会 衆議院 法務委員会 第4号
平成18年10月25日(水)
午前十時二分開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 信託法に関しては、今、大口委員からお話がございましたとおり、制定されてから八十年以上実質的な改正がされなかった法律でありまして、それを今回のような形で大変ドラスチックに大幅な改正を加えるということですので、ぜひ慎重に審議をしたいというように思っております。大口委員から御質問がありました事項については、できるだけ重複を避けながら質問を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず最初に、大変その弊害が懸念をされております信託宣言、いわゆる自己信託の問題点についてお伺いしたいと思います。
 今、大口委員から御質問がありましたとおり、これに関して、さまざまな将来の可能性というか有益性については指摘をされているとおりだと思います。証券化ビジネスの拡大ですとか、あるいは事業再編において必ずしも法人格、その権利主体を交代する必要がない、あるいは最後に御指摘がされたマンション管理等において有効活用できるのではないか、さまざまな指摘がされております。
 ただ、実際にこの信託宣言を導入しているアメリカで果たしてこれがきちんと活用されているのかどうかということについて、例えば二〇〇五年十一月二十一日付の「金融財政事情」、こちらの方に紹介をされているところによりますと、アメリカでは、個人の相続ですとか贈与の手段として信託宣言は活用されているけれども、ビジネス分野においては決して一般的には活用されていないという指摘がされています。信託宣言を利用した公的機関であるファニーメイの住宅ローン、こちらの債権流動化というようなものを除いては余り活用されていないというようにも指摘をされていると思います。
 ですから、今申し上げたようなさまざまなメリットは、別の、例えば営業譲渡ですとか、あるいは企業担保を利用しての資金調達とか、あるいはマンション管理についてももう少し管理組合について柔軟な制度をつくっていくとか、そういう代替的な手段でカバーできるのではないかという指摘も恐らくされるところだと思うのですが、この外国との比較、あるいはその代替手段との関係、こういうものについて、冒頭、ぜひ御説明をいただきたいと思います。

○長勢国務大臣
 外国の自己信託について、どういうことになっておるかというお尋ねだと思います。詳細、また必要があれば事務方から答弁をさせますが、先生も相当勉強されておられるようで、先生の方が詳しいのかもしれませんが、答弁をさせていただきます。
 今おっしゃいましたように、海外においても自己信託というのは認められておるわけで、例えばアメリカでは、アメリカの統一信託法典においても、信託の設定方法の一つとして明示をされております。
 アメリカで具体的な自己信託の例としては、今もお話がありましたファニーメイが住宅ローンの証券化で信託宣言をする場合とか、あるいは銀行の預金者が、その預金につき、みずからを他人のための受託者である旨の信託宣言をすることによって預貯金信託をする場合、債務者が債務を支払うためにみずからの特定の財産を信託財産として自分で受託者になる場合等が挙げられます。ちょっと日本では余り例のない、少ない例だと思います。
 また、イギリスでもアメリカと同様のものが認められておるというふうに承知をいたしております。
 なお、ドイツ及びフランスには信託制度がございませんので、こういう自己信託というものもございませんが、EUにおける取り組みとしては、一九九九年一月に欧州信託法の権威者が集まってつくりました欧州信託法基本原理におきまして、自己信託による信託の設定も認められておるというふうに承知をいたしております。
 必要があれば、詳細は事務方から答弁をさせます

○寺田政府参考人
 先ほど申しましたように、この制度はもともと英米法の制度でございまして、英米においては、今大臣が御説明申し上げましたような利用形態というのが一応考えられておるわけでございます。
 ただ、委員も御指摘のように、アメリカにおいて、ではこれが全面的にビジネスに利用されているかといいますと、これもまた、一部、債権の流動化には利用されておりますけれども、それは総合的な評価としてはまだまだこれからだという御意見も当然あるわけでございます。我が国でも、とりわけ同じように債権流動化にこれを利用したいという声があるわけでございますけれども、そういう意味では、この自己信託というのはこれからの制度だ、利用面においてはこれからの制度だということにもなるわけであります。
 ただ、大臣が申し上げました三つの例のうちの後の二つ、つまり、だれかのために資金を預かっているという状態は一般に広く見られることであります。ある種の会費というのを幹事さんが預かっている、こういうものをどういう権利関係に置くのが適当かというと、おっしゃるとおり、いろいろな代替手段と申しますか、法律で賄えることもあるわけであります。現にそういうときは民法上の寄託がされているというような形になるわけでありますけれども、そうした場合に、では私の債権者にそれが差し押さえられないのが正当なのかどうかということは常に悩むところであります。
 そういった意味で、こういう新しい選択肢が民事上もできるということはそれなりに意義のあることだと思いますし、それが商事上、事業上も利用される場面があるということも、これも否定しがたいところでございますので、私どもとしては、できるだけ弊害防止措置というのを考えた上でこれを利用に供するというのが正しい姿勢ではないかなと考えているわけでございます。

○柴山委員
 まさに弊害なんですけれども、今寺田局長がおっしゃった財産の隔離ということがこの制度の大きな眼目になっておりまして、その意味で、先ほど大口委員も財産隠しに対する不安ということを口にされたわけですけれども、こういった執行逃れをどのように防止していくか、あるいは対外的なディスクロージャー、ガバナンスの問題も含めてですけれども、これをどうしていくか。また、租税回避の問題ですね、利益を移転して税金逃れを図るんじゃないか。あるいは、マネーロンダリングに使うんじゃないか。こういうようなさまざまな懸念が指摘をされているところだと思いますが、簡潔に御答弁をいただきたいと思います。

○寺田政府参考人
 今、弊害として予想され得るものを列挙していただいたわけでございます。
 先ほども大口委員の御質問に対して御答弁申し上げたとおり、財産隠しと一般的に言われましても、この場合は、だれかと通謀してその財産をどこかにやってしまうということではなくて、自分の手元にありながら責任財産から一部離れるという性格のものでございますので、当然、債権者を詐害するかどうかということが問題になるわけであります。
 この点については、先ほど申しましたように、これはいわば受益者のもとに実質的な利益を移転してしまうという形でございますので、通常の詐害行為と本質的には変わりがないんじゃないかなというように考えるところであります。したがって、本来であれば、詐害行為取消権ということがあれば、それをうまく立証できるかどうかという問題だろうと思います。
 ただ、先ほど申しましたように、これを懸念される方の中には、実際上の問題としてなかなか難しいのではないかという御懸念もあったものでございますから、私どもの手当てといたしましては、詐害行為については、裁判所によって詐害行為の取り消しがされて初めて債権者が掴取すべき財産としてもとの委託者のもとへ戻ってくるというのではなくて、二十三条の二項にお示ししているところでございますけれども、もう要件さえあればいきなり強制執行を当該債権者ができるという形の規定を設けたわけでございます。したがいまして、執行を逃れるということからいえば、相当強力な武器が債権者側には与えられたというように御評価いただけるのではないかと思います。
 なお、先ほど申しましたように、それでも、債権者が動くだけでは十分ではないという場合に、これはいわば公共的な悪のレベルだという評価ができまする場合には、公益確保のための措置として、裁判所が関係者の申し立てによって信託の終了を命ずるという措置も用意されているところでございます。
 次に、税金逃れという問題がございます。これは、実際に税務でこれをどう評価して税金をおかけになるかということでございますので、この点について、一年の執行の延期をここに盛り込んでいるということで先ほど申し上げたわけでございますけれども、この自己信託についてどういう課税の仕方をするかということは、一般的な信託の課税とはまた一段レベルの高い検討をしていただくということになろうかと考えております。
 それから、マネーロンダリングの問題も御指摘があるところでございます。ただ、この点は、一般的なマネーロンダリングの懸念については規制がございまして、金融機関等による本人確認法あるいは組織犯罪処罰法等がございますので、そちらのいわば公的な規制にこの自己信託も当然服するということになるわけでございます。そういったわけで、法律上の手当てとしてはこれでなされるところでございます。
 あと、事業者につきましては、もちろん、冒頭に申しましたような事業者特有の規制というのもまたあり得るところでございますが、それは信託法自体の問題ではない、こういう整理でございます。

○柴山委員
 事業者の問題にもお触れになったんですけれども、この自己信託、信託宣言を取り扱うことのできる主体に関する規制、これは、今寺田局長の方からお話があったように、信託法自体には定めがないということでよろしかったでしょうか。そうだとすれば、信託業法の方でどのような定めがされているのでしょうか。

○寺田政府参考人
 信託法でこの自己信託をだれができるかということについては、何の制約も一般的にはございません。受益者の定めのない信託につきましては経過規定で一定の制約がございますが、この自己信託につきましては、先ほど申しましたように、個人でのニーズというのも、福祉その他を中心として十分に考えられるところでございますし、またビジネスにおいては当然考えられるところでございますので、その制約はないということにいたしているところでございます。

○渡辺(喜)副大臣
 自己信託を行う者が信託業法上の登録を受ける要件いかん、こういう御質問でございますが、一般に自己信託を行う者が多数の受益者を顧客として事業を行う場合には、多数のお客さんと事業者との間に情報量や交渉力の差が生じます。また、信託は信託財産を受託者が自己名義で管理運用するという特質がございますから、事業者側に特に高い信頼性が求められるわけであります。
 したがって、信託受益権を多数の方々が取得できる場合には、一定の要件を定めた上で、信託業法上の登録を求めることといたしております。具体的には、自己信託を行う者が信託業法上の登録を受ける際には、株式会社とか合同会社等でございますが、会社法上の会社であること、次に、一定以上の資本金、純資産を有すること、第三に、自己信託を的確に遂行することのできる人的構成を満たしていること、第四に、兼業業務が信託事務の適正かつ確実な遂行に支障を及ぼすおそれがないこと等の要件を満たすことを求めることとなります。

○柴山委員
 最後の兼業規制についてなんですけれども、要は、自己信託業務に悪影響を及ぼしてはいけないという以外に、従たる業務として他業をしなくてはいけないですとか、あるいは兼業する業務について何らかの種類の規制をするとか、そういったようなことは想定されていないのでしょうか。

○渡辺(喜)副大臣
 兼業を行う場合でございますが、通常の信託に係る信託会社の兼業業務につきましては、この兼業が本業である信託業務に関連性、それから付随性を有することが承認の要件とされております。これは、信託会社につきましては、銀行、保険会社などと同様に、自己名義で他人である顧客の財産を預かるという特徴がございますので、兼業業務を行うことによって本体業務に影響を及ぼすことがないよう、専業を原則とした規制を行っているということに基づくものであります。
 他方、自己信託につきましては、みずからが所有する財産を受益者のために管理運用するという特徴がございますので、他の事業活動に伴って生じた財産を自己信託する目的での参入が想定されるということを踏まえれば、専業が原則であるという前提はとり得ません。自己信託業務と他の業務との関連性及び付随性は特に求めないことといたしております。
 そのために、自己信託を行う者につきましては、兼業業務の状況が悪化をし、信託財産を毀損する事態を未然に防ぐため、兼業業務の財務の健全性を確認できるような基準を内閣府令で定めることといたしております。

○柴山委員
 ただ、忠実義務の緩和ということに関して、信託業法の方では緩和にストップをかけているわけですから、ある程度そこら辺はしっかりとした信託契約の保護ということを行っていくことが特に業法の関係では必要ではないかなという問題提起だけをさせていただきまして、次の質問に移りたいと思っております。
 新しい信託の仕組みとして、限定責任信託制度が導入をされました。この制度について、なぜ必要かということについて、まず簡単に御説明をいただきたいと思います。

○寺田政府参考人
 限定責任信託につきましても、この法案を作成する過程でいろいろな議論があったところでございます。しかし、最終的にはやはり必要だということでこういうことを載せているわけでございますけれども、もともと限定責任信託と申しますのは、対象となる信託の財産が、その信託の運営の過程で生じた債権の債権者の責任財産であってそれだけだ、そういう信託でございます。
 通常の信託におきましては、なるほど、受益者に対する責任の関係では、今申しましたように信託財産そのものが責任財産に限られるわけでございますけれども、その他の関係では、外形的に受託者が権利の主体、財産の主体になるわけでございますので、これの活動に関して生じた債権についての債権者は受託者にその責任を追及できるというのは大原則でございます。これは我が国の信託法だけではなくて、もともと英米法の信託でもそれが大原則になるわけでございます。
 しかしながら、この信託をいわばビジネスに利用する傾向にあるわけでございますけれども、そういうことになりますと、どういたしましても、債権者というものの持っている債権が、受託者が全部この責任を負うというのは、同じようにビジネスをしている例えば会社を想定してみますと、甚だ不都合があるところでございます。本来なら、そのビジネスをしている財産そのものが公示されているわけでございますから、その財産をもとに債権者は責任財産を考えていただいてもいい、そういうものがあるはずでございます。
 ただ、そういう財産においては、もちろん公示でありますとか、責任財産の確保というのが非常に重要になってまいりますので、それは相当の手当てをする、そういうことを条件にいたしまして、責任財産を信託財産そのものに限った、債権者に対する責任財産を限った、そういう信託を新たに認めるということがビジネスの上では非常に有用である、こういう御指摘がございましたので、そういう形でこれを用意したわけでございます。

○柴山委員
 ビジネスにとって有効であるということはそのとおりなんでしょうけれども、例えば、信託財産に責任が限定されるということになりますと、その財産が滅失あるいは毀損をされてしまったような場合には、これは当然のことながら、信託債権者としては大変な損害を受けるわけですね。ですから、これについて、どういう責任が受託者に準備をされているのか、そして、それが過失責任なのか無過失責任なのかということについても御指摘をいただきたいと思います。
 また、この財産については、例えば、土地工作物であるような場合に、土地工作物責任、つまり、危険な工作物とかによって不法行為責任が発生をしたりすることもあろうかと思うのですが、そういうような場合にでも、そのものの価格だけに責任が限定されるということでよいのか等々含めて、ぜひ御指摘をいただきたいと思います。

○寺田政府参考人
 おっしゃるとおり、限定責任信託というのは、先ほど申し上げましたように、結局のところ、債権者にとって、どういう資産状況にあるかということがわかるような仕組み、またそれが限定責任信託であるということがわかる仕組み、それが非常に重要でございますし、また、どういう種類の債権がその対象になるかというと、やはり一定の債権は責任を限定しないのが適当だということもまた考えられるわけでございます。
 まず、前者の方から申し上げますと、これはそもそも、取引する相手に対しまして、これが限定責任信託のためにする契約であるということを示さないとこの効果は出ないという規定になっております。
 次に、今度はその財産の中身が流出するかどうかという問題でございますが、一番は、受益者に対して全部その財産を給付してしまうということになりますと、債権者はたまらないわけでございます。したがいまして、これについては、純資産額の範囲内において一定の額しか受益者に対して給付をしてはならないという規定を置いているところでございます。それに違反して給付が行われた場合には、受託者、受益者の方から逆に限定責任信託の方に財産を戻さなきゃならない、そういうてん補義務を負っているわけでございます。それから、受託者、受益者は、一定時期に生じた欠損額についても、同じようにてん補責任を負うわけでございます。
 次に、どういう対象について責任の限定が決まるかどうかでございますが、これは原則としてはそういうことですべての債権ということになるわけでございますけれども、今おっしゃったような不法行為債権については、責任を限定するのは政策上適当でないということで、限定の対象から外しているというところでございます。

○柴山委員
 過失責任か無過失責任かというところについても、当然会社法の改正と結構パラレルな部分がありますので、ちょっとお答えを追加していただきたいのと、あと、済みません、ちょっと質問を追加させていただくのですが、ガバナンスの問題として、先ほどの自己信託、信託宣言については、第三者、士業の方によるチェックということが働いていますし、公正証書で契約を定めなければいけないという仕組みも確保されております。しかし、今回のこの限定責任信託に関しては、特にどういうガバナンス、さっき公示ということをおっしゃってくださったんですけれども、そういった仕組みがあるのかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。

○寺田政府参考人
 失礼いたしました。
 先ほど御説明いたしましたてん補責任は、会社法の四百六十二条の第一項第六号と同様の性格のものでございますので、これは過失責任ということになるわけでございます。
 次に、ガバナンスの問題でございますが、これは、一般的にガバナンスをどう信託においてとるかと申しますと、それは基本的には受益者がこれをチェックしているということになるわけでございまして、受益者には受託者を監督、監視するための帳簿閲覧権等、あるいは報告請求権等が認められておりますし、違法行為を是正するために、損失てん補の請求権でありますとか、あるいは信託の違反行為の差しとめ請求権まで認められているわけでございますが、受益者が必ずしも判断能力が十分でないという場合には、新たに信託監督人の制度を設けている、これが一般の信託の利用で限定責任信託のガバナンスをカバーする部分でございます。
 しかし、先ほど申しましたように、限定責任信託においては、特に債権者にとっての債権債務状態の公示、財産状態の公示というのが重要でございますので、通常の信託と異なりまして、必ずその信託についての計算書類の作成義務というのがございます。これは二百二十二条でございます。したがいまして、これによって、債権者にとっては通常よりもしっかりした公示がされるということになるわけでございます。
 第四に、限定責任信託の受託者に対しまして、仮に信託事務が悪意、重過失で行われたということになりますと、受託者はこれによって第三者に生じた損害を賠償しなければならない。会社法で言う取締役の第三者責任みたいなものがここでも認められているわけでございまして、そういう悪意、重過失がある場合には、債権者は直接にその限定の責任性を打破することができる、こういう関係になっているわけでございます。

○柴山委員
 しっかりと穴のないような制度運用をしていただけたらと思います。
 次に、目的信託、受益者を特定しない形の信託についての質問をさせていただきたいと思います。
 先ほど、大口委員の方から、福祉型の信託制度について、現行法制度上、甚だ規定が不備であった、利用しにくかったという問題提起がございました。公益信託に限定されない形でこうした受益者を特定しない形の信託ということが導入されたのは大変画期的なことだとは思うんですが、まだまだ不十分な点があるのではないかと思います。先ほど、三年を目途としての見直し、業法の見直しということも御指摘をいただきましたので、それについてはぜひしっかりと前向きに進めていただきたいと思います。
 ただ、ちょっと概念上整理をさせていただきたいのは、例えば、個人が、相続あるいは後継ぎ相続人というんですか、孫等に財産をとっておきたいというような後継ぎ遺贈型の信託、これと今回の目的信託、これはどのように概念上区別されるのでしょうか、御説明をいただきたいと思います。

○寺田政府参考人
 今委員がおっしゃいました後継ぎ遺贈型の信託と申しますのは、委託者が、自分の生存中は自分が例えば受益者になる、死亡したら、第一に自分の妻が受益者になる、妻が死亡したら子供が受益者になる、そういう転々と受益者が変わっていくタイプの信託でございまして、受益者連続型とも言うわけでございます
 もともと信託と申しますのは財産の処分の側面がございまして、遺贈に近いことをこれをもって行えるということでございますので、遺贈の場合ですと所有権が完全に移ってしまうわけでございますが、この後継ぎ遺贈型信託というのは、受益権が次々と移るわけでございます。そこが違うわけでございます。
 したがいまして、本来ですと所有権が移る、それが、ある人のその所有権は一定期間たったらまた次の人に移る、また次の人に移るということになりますと、ちょうど所有権が期限つきのものになってしまうという、民法の概念からいきますと極めて異例のことになります。それは、民法ではさすがに認められていないわけでございます。
 しかし、この後継ぎ遺贈型は、単なる受益権がそういう転々とするわけでございますので、機能的に似た側面はございますが、しかし、概念上は全くそういう所有権の期限性というようなものは抜けられるわけでございまして、これは、どちらかといいますと、信託の先進国であります英米においては、こういう型の信託こそまさに信託のメリットだということが言われるくらいでございます。
 しかし、これについても、いろいろ問題は相続との関係であるということから、一定の制約は課しているわけでございます。所有権秩序との関係で、余り長くなってもどうかということで、世代ということを考慮いたしまして制約は課しているわけでございますが、しかし、こういうニーズはこれからの高齢化社会には必ずあるだろうということで、今回、これを間接的に、つまりどういうものは有効かという形で示すことによって、新たにこの信託法の中に登場させた、こういう関係に立っているわけでございます。
    〔委員長退席、上川委員長代理着席〕

○柴山委員
 余り長期のものについては認めないということで、今回は三十年という期間が限定されていたかと思います。
 これは確認としてですが、この後継ぎ遺贈型の信託についても、遺留分を侵害することはできないという規制があることは当然だと思いますが、その点の確認がまず一点です。それから、これは後継ぎ遺贈型には限らないのですけれども、受託者が死亡して財産主体がなくなってしまったときに、この目的信託の財産というのはどのような扱いになるのか。それぞれについて、お答えを簡潔にいただけたらと思います。

○寺田政府参考人
 先ほど申しました後継ぎ遺贈型の信託につきましては、三十年という期間制限があるわけでございますが、当然のことながら、先ほど相続秩序の問題もあると申し上げましたとおり、これのやり方によっては遺留分の侵害ということが起こり得るわけでございますが、それは、相続法の秩序の方が優先する、つまり、遺留分の侵害がある場合には、当然、遺留分減殺請求権を持っている者は、その限度でその権利を行使することができるということになるわけでございます。
 次に、受託者が死亡した場合の目的信託のあり方についておっしゃったわけでしょうか。
 目的信託といいますのは、今の後継ぎ遺贈型の信託とは異なりまして、これは受益者がいないわけでございます。そう言いますと信託の本質にやや問題が生ずるかもわかりませんが、信託としては、いわば公益目的のようなものが現在でも目的信託的なものとして認められており、しかし、今後の公益を果たす主体のあり方といたしまして、基本的には非営利なものを認め、その上にさらに公益があれば公益認定をして、いわば要件を積み重ねた上で公益という新たな地位に上る、そういう仕組みが今後構想されている関係で、公益信託というのではなくて、非営利信託としての目的信託を認めたものでございます。
 これについて、受託者が死亡するということになりますと、この種の信託においては、基本的には受託者についての信認というのが非常に重要なものでございますので、受託者の相続人がそのまま受託者になるというようなことはございません。あとは、信託そのものがどう終了するかという利害関係者の問題になるわけでございます。

○柴山委員
 今後、税金の話についても恐らくしっかりと見ていかなければいけないと思います。
 例えば、遺贈によって目的信託がなされたような場合、この場合の課税関係についてちょっと指摘をさせていただきたいと思うのです。
 目的信託の場合は、受益者が不特定なわけですから、基本的には委託者が当然課税をされなければいけないということになるんでしょうけれども、遺贈によってこれがなされた場合には、委託者がいなくなるわけですから、これは結局課税ということが適切になされないのではないかという問題点が多分出てくるんだと思います。
 この点について、課税当局はどのような形で対応をされるのか、教えてください。

○古谷政府参考人
 お答えをさせていただきます。
 御指摘ございましたように、現行の相続税法におきましては、遺言によって受益者が特定されない信託が設定された場合、委託者の相続人は委託者の地位を引き継ぐということになっておりますので、現在では適切な相続税の課税ができるわけでございますけれども、今般の信託法案におきます遺言信託、ここでは、委託者の相続人は相続によって委託者の地位を承継しないということになっております。したがいまして、遺言によりましていわゆる目的信託が設定されました場合には、委託者が亡くなりますと、御指摘がございましたように、その権利につきまして相続税として課税できないという問題がございます。
 このことが相続税の租税回避に用いられる懸念がございますので、私どもといたしましては、この信託法案に対する税制上の対応につきまして、十九年度の税制改正でいろいろな検討をしなければいけないと思っておりますが、その中で議論をさせていただいて、適切に措置をさせていただければというふうに考えております。

○柴山委員
 税制の問題については重要な論点が結構たくさんありますので、時間も残り少ないのですが、簡単に網羅したいと思います。
 まず、結局、受益権を生み出すのがこの信託制度なんですけれども、例えば無償でその受益権を第三者に与えたような場合の贈与税、個人の場合ですが、贈与税のかかり方はどのようになっていくのか。また、受益権を売却したときの課税がどのようになっていくのか。また、受託者に対してどのような形で課税がされるのかということについて、それぞれお答えをいただきたいと思います

○古谷政府参考人
 お答えをいたします。
 まず、委託者以外の者に受益権を取得させる、いわゆる他益信託が無償で設定されました場合には、その設定されました時点で委託者から受益者へのいわゆる信託受益権の贈与があったものとして、贈与税が課税をされます。それから、信託受益権が受益者から譲渡をされました場合には、課税上は信託財産を譲渡したものとして、譲渡所得税の課税が行われるということでございます。
 それから、受託者に対する課税というお話がございましたが、信託財産は法律的には受託者に帰属をしておるわけでございますけれども、現行の信託税制におきましては、このような信託財産から生じます収益に対しまして、信託の内容ですとか性格に応じまして幾つか取り扱いを異にしております。
 具体的に申し上げますと、特定目的信託ですとか私募投信のような一定の投資信託につきましては、同様の活動を行う特定目的会社などとのバランスを踏まえまして、その収益につきまして受託者の段階で課税を行う、いわゆる法人課税を採用しております。
 それから、貸付信託ですとか証券投資信託といいました不特定多数の受益者を有するような、いわば金融商品的な性格を有する信託に対しましては、これは収益が受益者に現実に分配をされるところまで課税を繰り延べまして、受益者の段階で、分配された時点で課税を行うという考え方をとっております。
 それ以外の信託でございますけれども、これにつきましては、信託財産から生ずる収益等が受益者に帰属するものだというふうにみなしまして、事業年度ごとに、分配がなくても、受益者にいわゆるパススルー課税をするといった取り扱いを行っております。
 以上でございます。

○柴山委員
 まだまだ非常に重要な論点がたくさん残っておりまして、例えば先ほど大口委員が御指摘いただいた忠実義務の緩和のところの類型化、特に、受益者の同意なくしてこれを本当に緩和してよいのか、その類型化が十分なのかといった論点、あるいは信託の併合あるいは分割制度についての規律、あるいは受託者が破産をした場合あるいは信託財産が破産をした場合の取り扱い等々、実務的に本当に取り上げなければいけない論点が多々ございまして、時間があればお聞きをしたかったのですけれども、これで質疑時間終了ということですので、またほかの委員の先生方にぜひ御質問をいただければと思っております。
 どうもありがとうございました。

第164回 国会 衆議院 法務委員会

第164回 国会 衆議院 法務委員会 第31号
平成18年6月14日(水)
午前十時一分開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 本日は、参考人の先生方、貴重なお時間を割いていただきまして、本当にありがとうございました。
 なかなかなじみの薄い国際私法の問題についてなんですけれども、まず、両参考人、特に鈴木先生にお伺いしたいのは、こうした領域の法律が必要になるのは、特に取引法について、やはり先進国同士で不整合な部分があるということが大きな要因になってくると思うんですが、この特に取引法の部分について、先進国間での統一の動きをもっと促進すべきではないかという意見があるかと思います。そうした意見について、何か日弁連として取り組まれているのでしょうか。

○鈴木参考人
 おっしゃるところは、取引に関する実質法の統一という問題であるかと思います。
 この実質法の統一の問題につきましては、個々の実質法の分野におきまして統一化の動きがあると思いますが、現状で、日弁連として正面から取り組んでいる現状にはございません。実際の国際私法の改正問題の取り扱いにつきましては、むしろ、まだ統一が進んでいない、あるいは、現状では統一できていない分野についてどのような処理をするかということを中心に検討しております。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 それでは、法案の中身について具体的にお伺いしていきたいと思います。
 今回、日弁連の方から、特に消費者契約ですとかあるいは労働契約ですとか、弱者保護の問題については大変な御関心をお持ちだったと伺っております。特に消費者を対象とした不法行為について、より消費者に有効な形での準拠法を選択できないかというお取り組みがなされたところも評価をさせていただきたいんですけれども、その一方で、労働契約に関しては、これは割とすんなりと、労務提供地を労働契約に最も密接に関係する地の法という形で推定をなさっているというか、そういう法案になっております。
 EUでもそういった定めがなされているということは伺っているんですが、ただ、それですと、労務提供地を労働者保護が少ないところにあえて持っていって、それで働かせるというようなことも当然考えられるわけでして、消費者のところで日弁連さんが御提案されたように、例えば労働者の常居地、さまざまなフォーラムの中から、労務者に一番有利なものを選択する自由を認めるべきではないかという主張も恐らく考えられるところではないかと思うんですが、これについて日弁連の御意見はどうなんでしょうか。

○鈴木参考人
 日弁連としまして、労務提供地をもちまして最密接関連地と推定するということに賛同いたしましたのは、労働者自身が日常的に業務を通じまして服さなければいけないさまざまな取り決め、それはやはり労務提供地が中心になるだろうということでございます。
 例えば、日本の労働者が日本におきまして外国の企業との間で労務契約を締結して、準拠法が外国法になるというような場合もあるかと思いますが、その場合でも労務提供地である日本の保護を受けるということを念頭に置いております。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 それでは、一般の法律行為につきましての準拠法の選択についてお伺いしたいと思います。
 今回、非常に大きな考え方の変更があったわけでして、いわゆる行為地法では、鈴木先生が論文で書かれている例えばFOB契約ですとか、あるいは最近問題となっているインターネットの契約とか、必ずしも行為地が明確でないというような事例がありましたので、これを契約に密接に関係する地という形に変えているわけですね。ところが、これはこれでやはり非常に適用に難しい問題が出てくる部分もあるんじゃないかということで、以下、ちょっと具体的に事例を挙げて質問させていただきます。
 先ほど鳥居先生の方から御説明のあった、例えば売買契約。売買契約の場合は、物の給付を行うということが特徴的な給付だよというのはわかるんですけれども、例えば消費貸借契約ですね、お金を貸します、借りますと。日本の法制では、お金を貸すというところは契約の内容になっていないんですね。これは要物契約として契約の成立要件にはなっていますけれども、あくまでも、債権債務の関係としては、貸した後のお金を返すというところが債務の内容となっているわけです。そうなると、日本の法律では、お金を借りた人が一方的に貸し主に対してお金を返さなければいけないということが債務の内容になっているわけですね。
 そうなると、給付というのは、お金を借りた方が貸した方に対してこれを渡さなければいけない、返さなければいけない。だから、これが特徴的な給付になるのかということですね。あるいは、準消費貸借契約という類型があります。これは、例えば売買契約によって、代金債務を貸し金債務に切りかえるというような場合ですね。こうした場合に、果たして特徴的な給付というのは一体どういう考え方をすればいいんだろうかということについて、鳥居先生、ぜひ伺いたいと思います。

○鳥居参考人
 実は、この特徴的給付というのは大変難しいところがございまして、今、質問者の方が言われましたような問題点はございます。したがいまして、特徴的な給付があると言える場合についてはこの推定を行うことになるわけでございますので、それが非常に不明確であるという場合には推定は働かない。推定でございますから、反証ができるということでございます。

○柴山委員
 鈴木先生から、もし今の事例について何か補足されることがあれば。

○鈴木参考人
 不明確な点につきましては、判例法の集積であるとかによってこれから明らかにされていくと思いますが、今の御質問の例でいきますと、消費貸借契約自体の弁済は金銭の弁済にすぎないということで特徴性がないんじゃないかというのもありますけれども、恐らく締結された時点で、例えば債務者の資産であるとか債務者の責任財産の状態であるとか、そういったその時点における最も密接に関連する場所というのは比較的容易に見出せるのではないだろうかと思います。
 従前の場合ですと、それを行為地という概念でやっておりましたので必ずしも明確ではなかったということでありまして、今回の法律である密接関連地という概念の方がより便宜にかなっているのではないだろうかと思います。

○柴山委員
 ちょっと事前にいろいろと勉強させていただいた範囲では、むしろ逆に、例えばお金を貸すという契約の場合は、貸し主、要するに債権者ですね、債権者の貸す行為自体を何か特徴的な給付と考える考え方もあるというように聞いておりますので、このあたり、本当に基本的な類型の契約なわけですから、混乱が起きないような形で今後運用がされ、また解釈が積み重ねられていくことが必要なのではないかというように感じております。
 次の質問に移らせていただきます。
 先ほど鈴木先生の方からも御指摘くださった不法行為、特に生産物の引き渡しの不法行為についてなんですけれども、これについて、特に鳥居先生の方にお伺いします。
 被害者が生産物の引き渡しを受けたということの認定が、例えば、被害者の方が第三国で、全く被害者に本来縁もゆかりもないような地で引き渡しを受けて、それを自分の国に持って帰って使う。そして、自分の国で、例えばとんでもない製造物の欠陥によってけがをしたというような場合に、本当に、たまたま購入した第三国、縁もゆかりもない国の法律で、これを日本の裁判所なりが判断するということが妥当なのかどうか。具体的に予見可能性の縛りももちろんあるとは思うんですけれども、こうした原則についての妥当性について、もう少し突っ込んで御説明をいただければと思います。

○鳥居参考人
 今おっしゃいましたようなことが起こるわけでございます。したがいまして、例えば、全く思いもかけない、要するに、ある国で、男性の方でしたらひげそりの機械をお買いになって、それをまた旅行によって全然別の国で使っているときに故障が起きてけがをした、そういうような場合というのは当然考えられるわけでございます。
 けれども、これはやはり想定できないということでございますので、一応は、そこにございますように、まだ法案の内容が頭の中に何条と入っておりませんのでもう一度見させていただきますが、生産物責任につきましては常にそういう問題が起きるということは考えられていることでございますので、予見できない場合には、通常予見できないものだということになりまして、生産物の引き渡しということについて法案の十八条はそのように申しておりますけれども、この場合にはやはり事業所の所在地の法になるということが出てくるのではないかと思います。

○柴山委員
 そろそろ時間がなくなってくるんですけれども、ただ、今最後に鳥居先生がおっしゃったように、結局、わけがわからないようなところで引き渡しがされてしまったような場合には、その場合は生産者の主たる事業所の所在地の法律で定めることになっているわけでして、これが本当に被害者の保護という観点から妥当性を持つのかどうかということについて鈴木先生にお伺いします。
 あと債権譲渡で、先ほど鳥居先生の方から、集合債権譲渡等のニーズがそんなに大きくないんじゃないかという御指摘がありました。債権自体が一体となって譲渡される場合に、債権それぞれの準拠法が違うような場合には、やはり譲り渡し人の例えば居住地、常居地等をフォーラムとするようなことも考えられてしかるべきではなかったのかと思うのです。
 以上二点について、鈴木先生、御意見があればお願いします。

○鈴木参考人
 まず、先ほどの生産物の引き渡し地の問題でございますが、例外としまして、通常予見することができない場合には、生産業者等の主たる事業所の所在地法になる。それでもだめな場合、それでも不都合のある場合というのが、恐らく、明らかにより密接な関係がある地がある場合というふうに考えるのがいいかと思います。
 例えば、今、外国の生産しましたエスカレーターが日本で生産物のゆえに事故を起こしたという場合を考えたらよろしいと思うんですが、このような場合には、事故に遭った人は決してエスカレーターの引き渡しを受けているわけではございません。そうしますと、一体どこがより密接な関係がある地かというふうに考えますと、恐らくおのずと答えが出てくると思います。
 それからもう一つ、債権譲渡の準拠法に関する御指摘でございますが、おっしゃられましたように、恐らく集合債権譲渡の場合のことも想定した上で、譲り渡し人の常居所地を一つの準拠法としてどうだろうかという意見もありました。ただ、集合債権譲渡の場合に、全部譲渡人を同じくする場合とは限りませんで、それぞれの債務者がまた異なっておりますので、譲渡債権そのものの準拠法というのは必ずチェックしなければいけないということで、いろいろ考えました結果、日弁連としては、実務的にこれが簡便であろうというふうに考えたわけでございます。

○柴山委員
 本当は、この後、身分法について鳥居先生に詳しくお聞きしたかったんですけれども、大変残念なんですが、持ち時間が終了してしまいました。すばらしい法律の改正の内容だと思いますので、しっかりと支えていきたいと思っております。
 どうもありがとうございました。

第164回 国会 衆議院 決算行政監視委員会

第164回 国会 衆議院 決算行政監視委員会 第7号
平成18年6月12日(月)
午後一時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 本日は、質問の機会をいただき、ありがとうございます。
 まず、総理に伺います。
 総理は今通常国会を延長しない方針を示され、教育基本法の改正、憲法改正国民投票法案の審議など重要案件が軒並み先送りになりました。一方、この秋に実施される自民党総裁選に総理は立候補されない旨明言しておられますので、これらはすべて次の政権に引き継がれるわけです。
 総理は、ポスト小泉、あなたの後継者に何を期待しておられるのですか。何を託したいと思っていらっしゃるんですか。

○小泉内閣総理大臣
 まず、私は、九月で任期が切れますから、それまでは総裁として、また内閣総理大臣としての職責を果たすべく全力を尽くしていく。そういう中で、今国会、今月の十八日で会期末を迎えます。皆さんの御協力のおかげによって、かなりの法案も成立を見ました。
 今御指摘の、教育基本法改正案また国民投票法案、あるいは防衛省昇格の法案、これは、本来与党と野党第一党が対立すべき法案でないと思っています。決して先送りするということではなくて、これを審議していただき、次の総理・総裁がこれを成立させることによって、与野党共通の国家の基本問題についての認識ができればよし、成立すれば実績にもなる。改革に終わりはないし、総理大臣の仕事はだれがやっても困難であり、懸案は山積しております。これはどの時代にも共通しております。
 そういうことを考えますと、総合的に考えて、今国会延長せずに、自由民主党も総裁選挙が行われる、野党第一党の民主党も代表選挙が行われる、お互い、夏休みに入りますから、時には頭静かに国家の将来をかくあるべしと考えるのもいいのではないかと思います。

○柴山委員
 与野党一体として改革に邁進をしなければいけない、まさしく、重い課題、次期政権に課された一つのノルマではないかと思っております。
 そこで、次にノルマの問題についてお伺いします。 今、多くの社会保険事務局で行われていた国民年金保険料の不正免除問題で、これは、村瀬社保庁長官が保険料の納付率を六割台から八〇%に回復させるというノルマを設定したことが原因だという声があります。顧みれば、昨年四月に発生したJR福知山線の脱線事故でも、日勤教育の名のもとに運転士に課されたノルマが大惨事を招いたと言われています。また、最近の耐震偽装問題でも、事業者が建築士に鉄筋の量に関して厳しいノルマを課したことがああいった構造計算書の偽装を呼んだとされているわけですね。 このように、ノルマを掲げることに疑問の声が上がっていることについて、総理はどのようにお感じになりますか。

○小泉内閣総理大臣
 ノルマという言葉がいいかどうか、それはともかく、目標というものを掲げるということは、どの世界においても必要だと思います。
 その目標なりノルマが達成可能であるか、実現可能であるかということを考えるのは、ノルマ設定、目標設定においても重要なことだと思っております。それが不可能なノルマなり目標を掲げて、これを達成しろ達成しろと言ってしりをたたくのがいいのかどうか。それを受けた人たち、また指導者の、ふだんの性格なり人柄なり指導力にも影響があるんだと思います。
 いずれにしても、一定のノルマなり目標を掲げるのは悪いことではないと思っております。

○柴山委員
 今御指摘のとおり、ノルマの設定自体は決して悪くないけれども、ノルマの設定の段階で、あるいは実施の段階で、法令遵守、いわゆるコンプライアンスを意識することですとか、問題行為をチェックできる体制、ガバナンスを確立することですとか、あるいは今御指摘のように、常にノルマや業務の見直し、評価を行っていくこと、そういうことが大切だと思うわけです。まさしく業務の中身、質の確保が重要だということだと思います。
 今通常国会で行政改革推進法が成立しましたけれども、国家公務員を五年間で五%以上純減させるとか、原則二年後までに政策金融機関を一元化して貸付金残高をGDP比で半減させるとか、特別会計の統廃合によって五年間で二十兆円の財政健全化を図るといった内容は、いわば量の改革なんですね。ノルマの発想なんです。これはこれで、今おっしゃったように、よいことですし、わかりやすいと思うんですけれども、今後は、今申し上げた質の改革が求められるのではないでしょうか。予算を削りながら、どのようにサービスの効率を上げていくかという戦略の立案や、今やっている政策が本当に効果を上げているかという評価を充実させていくことが大切だと思っております。
 竹中総務大臣に、こうした質の改革についての取り組みについて、簡潔にお答えいただければと思います。

○竹中国務大臣
 委員がおっしゃいますように、例えば経費の削減とか、まさに法律を遵守しながらしっかりとそうしたことに取り組む、そういう個々の公務員の気持ち、モチベーションをしっかりと持ってもらうということに尽きると思っております。
 結局のところ、このためにやらなきゃいけないこと、人事政策上はたくさんあると思いますが、一つの大きな問題は人事評価であると思います。そういう人事評価の制度をしっかりとつくっていく。簡単に言うと能力主義、実績主義ということではありますが、その中に、今おっしゃった質を取り込んでいくということだと思います。
 今、そういう意味で、人事評価の第一次試行を行っているところでございます。その試行を行った結果、いろいろな結果が出てくると思います。ここを変えなければいけない、そういうことをしっかりと織り込みながら第二次の試行もやりまして、新しい人事における評価システム、それを確立していきたいというふうに考えております。

○柴山委員
 今は個別の公務員の人事評価制度についてお答えをいただいたわけですけれども、今総務省の方では政策評価のあり方についても検討を重ねられていると聞きますので、その点についてもできればお答えいただきたいと思います。

○竹中国務大臣
 最近よく使われる言葉で、プラン・ドゥー・チェック・アクション、PDCAという言葉があります。これは民間企業だったらどこでもやっていることだと思います。成果目標を立てて、しっかりと実行して、それを評価する。その評価について、政策の面でも行わなければいけない。そのために政策評価法が定められています。
 ちょうど先般、十七年度の政策評価の実施状況等について国会に我々も報告を行ったところでございまして、これによりますと、政府全体で毎年約一万件の政策評価が行われています。その政策評価に基づいて、例えば、例として申し上げますが、公共事業については、平成十四年から十七年度の四年間で総事業費として約三・二兆円規模の事業が廃止、休止、中止されたということになっております。これはいろいろな面でそういうのが出ております。
 ただ、これは国民にもっと知っていただかなければいけない、その点が実は大変重要だと思います。総務大臣になりましてから、この重要な仕事をやっているんだからもっと国民に知ってもらおう、そのための努力を重ねておりますが、さらにそういう努力を進めていかせていただいて、また、その成果を国会でもしっかりと御審議を賜りたいというふうに思っております。

○柴山委員
 今おっしゃった評価の充実に加えて、行政サービスの利用者の不服を独立した機関が迅速、公平かつ専門的に判断する準司法手続の拡充も有効だということを、あわせて申し上げさせていただきたいと思っております。
 現行の国への不服申し立て制度では、二〇〇二年度一万七千六百件のうち、不服申し立てが結局認められたのはわずか一八%、そして、結論まで六カ月以上かかった事例は三五%に上っているわけです。こうした実態をどのように改善するかということも大変重要な課題ではないかと思っておりますので、御検討をよろしくお願い申し上げます。
 先ほど、公務員の人事評価制度について御説明をいただきました。能力主義というようなお話がございました。質の改革の一環として、それでは、逆に、同じ業績をより少ない経費で実行したことが報われる仕組みは御検討されていますか。

○竹中国務大臣
 先ほど申し上げましたように、全体の中でやはり成果目標をしっかりと立てるということなんだと思います。成果目標というのは、要するに、この政策をやることが目的なのではなくて、政策を行った結果どういうよいことがあるのか。例えば事業でありましたら、ここの混雑率がこれだけ改善するとか、何かの雇用率がこれだけ上がるとかその目標を設定して、それをやる執行はできるだけ自由にやっていただく。そうすることによって、実は経費削減の、先ほど申し上げた一種のモチベーションなんかも出てくるわけでございます。結局のところ、政策のいろいろなところに、先ほど申し上げましたようなPDCAのサイクルをしっかりと取り入れていく、それが基本であると思います。
 そのためのモデル事業等々をこの三年間もいろいろやってまいりました。そういうことを拡充していくこと、そしてその中に、私が先ほど申し上げました公務員のそれぞれの経費削減に対する動機づけ、モチベーションをしっかりと取り込んで、その人事評価を適切に行っていくこと、これが必要ではないかと思っております。

○柴山委員
 個々の公務員の能率に関する創意工夫を大切にする、あるいは、経費節減についてモチベーションを図る仕組みを検討していくという御説明だったわけですけれども、大変難しいことだと思っております。と申しますのは、民間企業では、経費を削減して利益をふやせば、それは、株価の上昇ですとか賞与の増加といった形で社員や役員にプラスになりますから、みんな必至で節約に努めるわけですよね。私の地元所沢の事業者の方々からも、とても御苦労をされている実態をお伺いしております。しかし、役所では、予算や人員をふやせば、それが権限の拡大につながる一方、予算は基本的に税金によって賄われてしまうわけですから、節約しても役所や公務員には直接のメリットはないわけです。
 年末になると私も役所から予算の陳情を受けますけれども、この施策は重要ですから予算と人員の拡大をお願いしますという要望は受けますけれども、いまだかつて、この施策は不要になりました、あるいは、これだけ経費を削減しましたといって予算の削減をお申し出になられる方に出会った記憶がありません。
 もちろん、公共事業の随意契約ですとか指名競争入札の不透明性といった一般に指摘されている問題に関しましては、昨今の、入札、契約に関する適正化指針の改正案が、五月二十三日でしたか、閣議決定されたと承知しておりますけれども、それ以外にも、やはり、年度末に工事がふえるですとか、小さなところでは、役所が紙を無駄遣いし過ぎるんじゃないかですとか、終電がまだあるのにタクシーを使うのはおかしいんじゃないかですとか、失礼な言い方になりますけれども、私は、事の性質上、公務員の皆様にはコスト意識という思考回路が欠落しているとしか思えないんですが、いかがでしょうか、竹中大臣。

○竹中国務大臣
 御指摘のとおり、こういう人事評価の御専門家がいらっしゃいます、労務管理、人事管理の専門家がいらっしゃいますけれども、そういう専門家のお話を伺っても、民間企業の場合は利益ないしは売り上げ、シェアというような非常にわかりやすい評価の基準がある、それに対して、まさに公務の場合は、本当にそれによって成果がどのくらい上がっているのか、その成果そのものが社会的な評価になりますので、大変難しい問題であるということを口々におっしゃいます。とはいえ、それでも評価をしなければいけないということで、専門家の間でもいろいろな知見が今蓄積されているというふうに思っています。
 そういう知見を活用しながら、今まさに、先ほど申し上げました第一次の評価の試行を行っています。その中で、例えば実績面では、役割達成度の評価、それと先ほどの成果の評価、そういったことを組み合わせて、まさに委員がおっしゃったようなその難しい問題に今我々なりにチャレンジをしようとしています。
 まだ一次評価が始まったばかりでございます。この一次評価を受けて、つまり、ここの部分はこの評価のままではまずい、今委員がおっしゃったような点、まだうまくここは取り入れられていない、であるならば、今度は二次評価でこういう評価基準をつくってみよう、そういうことの試行錯誤を数次の試行で行っていこうというふうに思っております。
 これは諸外国でも大変苦労しているところだとは思いますが、やはりそこに踏み込まないとよい仕事はできませんし、国民の納得も得られないというふうに思っております。

○柴山委員
 業績の評価ということと経費の節減ということは、いわば裏と表の関係にあるのかなと思っております。ですから、直截的に、例えば公務員が経費の削減をした場合に、その削減額の一定割合を賞与の増加などの形で当該公務員に還元させるですとか、もっと明確なインセンティブを考えないといけないのではないかというように私なんかは思っています。
 あと、役所に民間の人材をもっともっと登用することが必要だと思います。大臣のようにですね。
 この決算行政監視委員会で、筒井委員長初め同僚の先生方と昨年十一月にシンガポールに視察に行きましたけれども、シンガポールには、いわゆる公務員試験はありません。また、公務員の身分保障もありません。公務員の給与は民間の水準を参考に頻繁に改定されています。それでも、民間で経験を積んだ、若くて優秀な人材がどんどん公務員に採用されていますし、逆に、郵便事業や金融機関あるいは警備部門などの民営化も活発に行われているわけですね。ぜひ参考にしていただければと思っております。
 さて、ことしの六月七日に参議院の決算委員会で、総理は、決算の重要性につきお触れになっていました。しかし、衆議院でも参議院でも、予算委員会は花形委員会とされているわけですが、参議院の決算委員会や行政監視委員会あるいはこの衆議院の決算行政監視委員会は、必ずしもそうは扱われていないと思います。しかし、同僚議員の先生方、今、シーズンですから各種総会に出席されると思うんですけれども、民間の団体では、決算をもとに翌年の予算を検討するのが常識です。
 そこで、提案なんですけれども、この委員会で決算審査をする際に、重立った予算単位に関して、査定した財務省主計局の主査と各省の事後評価の担当者、もちろんこれには外部の有識者も含めてですけれども、しっかりと呼んで、時にはサポート役である総務省の行政評価局の方を呼びまして、充実した審議を行う。そして、それを踏まえて次の予算要求ができる。そういうような制度にしたらいかがかと思うんですけれども、どうでしょうか。

○谷垣国務大臣
 私、財務大臣になりましたとき、総理からいただいた指示、幾つかございましたけれども、その一つに、予算の質の向上を図ることというのがございました。それで、予算の質の向上を図っていくときに、今委員のおっしゃった決算というものによく学ぶということは、基本的に大事なことだと思います。
 私どもも、財務省として予算執行調査というようなものも行っておりますし、それから会計検査院の検査報告であるとか、各省の行っております政策評価、こういうものを予算に反映していく。なかんずく、国会における決算審議というようなもの、どういうことを国会で御関心を持って議論していただいているか。私ども、これは大いに参考にしなければならないと思っておりますし、このように決算重視の流れが出てきたことは、私どもの仕事にとりましても、非常に刺激になっているというふうに思うわけでございます。
 そこで、国会でどう決算審議をされるかということにつきましては、私の方からこうしてくれ、ああしてくれと余り申し上げにくいことがございまして、この委員会で、どういう形であればさらに我々にインパクトを与える御審議がいただけるか、御工夫をいただきたいと思っております。

○柴山委員
 加えて申し上げれば、会計検査院の検査報告書も、違法、不当事項しか指摘されていない上に、出てくるのが十一月の終わりと、大変遅い時期に出てくるわけですね。これは当然、翌年の予算審議にとっては大変不十分だということを一言申し上げたいと思っております。
 そこで、今、財務大臣の方から御指摘がございました決算を次の予算にフィードバックするという仕組みについてなんですが、我々が憲法の議論をしているときに、二院制の特質を明確にするために、参議院を決算重視とし、衆議院を予算重視として性格をきちんと分けたらどうかというような議論がなされることがあります。しかし、今申し上げた決算の予算へのフィードバックという観点からは、こういった主張に本当に合理性があるのかどうか、疑問に思うところでもございます。
 財務大臣もしくは小泉総理、この点について、もし何か御意見があれば、よろしくお願いいたします。

○小泉内閣総理大臣
 二院制ですから、衆議院には衆議院の独自の運営もあり、参議院には衆議院と違った運営を考えていこうという動きが現在も出ております。そういう中で、先般も参議院では、決算委員会のある時期においては全閣僚出席を求めるという審議も行われております。
 予算も決算も両方重要なんですが、これは、法律を変えるまでもなく国会の運営の、政党間の合意でなされることであります。憲法改正も必要ない、法律改正も必要ない。それぞれ衆参両院の政党の方々が協議していただいて、同じことをやるよりも、それぞれの役割、独自性を出してもいいのではないかということから、現在、参議院でかなり決算重視の方向が出てまいりました。
 今後もこういう点については、同じ国会議員として、二院制の役割をどう充実させていこうかという議論の中でどういう運営がいいかということを考えていくべきものだと思っておりますし、政府もそれに従って対応していきたいと思います。

○谷垣国務大臣
 今、憲法の議論の中でとおっしゃいましたけれども、決算重視ということが今言われておりまして、これは非常にいいことですが、政治が予算の方に何というか突っ込んでいくというのは、ある意味では当然のことだと私は思うんです。
 やはり何かを打ち出して、何か今の現状を変えていきたいという気持ちがあるからこそ政治をやっておりますので、そういう中で、どうしてもそれは、予算で形をつけていこうというふうになるのは、ある意味で当然ですね。さらにしかし、その予算をさらに質のいいものにし、それから無駄のないものにしていく、こういう観点から決算が必要になってくるのだろうというふうに私は思っております。ですから、それをどう割り当てていくかというのは、憲法論でもありますけれども、むしろ国会の運用論で考えるべきところが大きいのじゃないかなというのが私の感じでございます。

○柴山委員
 確かに、政治の性質としては、新しいものを生み出して有権者の方々にアピールをしていくということが中心にはなっていくと思うんですが、その結果、既に機能していない法律ですとか、あるいは本当に効果があるのかどうかよくわからない政策税制とか、そういうものが大変滞留をしているというような実態があるんじゃないかということが、私は大いに疑問に感じるところであるんですね。
ですから、こういうものを例えば定期的にしっかりとスクラップ・アンド・ビルドしていくという工夫を、我々政治家がしっかりと肝に銘じなければいけないということを申し上げたいと思います。
 将来世代の活力のために真に必要な改革を行うことの必要性ということは、まだまだ道半ばだと思いますが、これから私たちが一丸となってこうした努力を進めていかなければならないということを指摘させていただいて、若干早いですが、私の質問を終わらせていただきます。
 きょうはどうもありがとうございました。

第164回 国会 衆議院 法務委員会

第164回 国会 衆議院 法務委員会 第20号
平成18年4月25日(火)
午前十時二十二分開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 早速質問に入らせていただきます。
 修正案提出者にお伺いします。今回、なぜこのような提案をされたのでしょうか、理由をお聞かせください。

○早川委員
 政府案に対しましては、これまでの審議において、特に組織的な犯罪の共謀罪について、一般の労働組合や民間団体の活動も対象となってしまうのではないか、犯罪の共謀をしただけで処罰することは人の内心を処罰することと紙一重ではないか等の御懸念が示されてきたところであります。
 そこで、これらの御懸念の点をも踏まえ、法案の共謀罪が成立する範囲をさらに明確かつ限定的なものとするため、今回の修正案を提出することといたしました。
 修正の第一は、一般の労働組合等の正当な目的を有する団体の活動についてはおよそ対象にならず、犯罪組織と言えるような団体の活動として行われるものである場合に限って対象となることを条文上明らかにするため、政府案の「団体の活動として、」という要件に言う「団体」を、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体に限定するものであります。
 第二は、組織的な犯罪の共謀罪については、共謀をしただけの段階にとどまる限りその処罰を差し控え、さらに進んで実行に向けた段階に至ったことのあらわれである外部的な行為が行われた場合に初めて処罰の対象とすることにより、その処罰範囲を明確かつ限定的なものにするため、政府案に、処罰条件として、共謀に係る犯罪の実行に資する行為が行われた場合という要件を付加するものであります。
 また、これらの点以外にも、組織的な犯罪の共謀罪や証人等買収罪の規定の適用に当たっては、思想及び良心の自由を侵したり、弁護人としての正当な活動を制限するようなことがあってはならないことなど、運用上留意すべき事項を定めることとしております。
 以上であります。

○柴山委員
 今回、一たん法案を撤回して出し直すのが筋ではないかというように野党は主張しているわけですけれども、この法案をここまで早急に成立をさせなければいけない必要性について教えてください。法務大臣、お願いします。

○杉浦国務大臣
 この法案が成立するまでは、我が国は、国際組織犯罪防止条約、既に国会で御承認済みでありますが、それに附属する人身取引に関する議定書、それからサイバー犯罪条約、これも国会で御承認いただいておりますが、それを最終的に締結することができません。国際組織犯罪防止条約につきましては、既に百十九カ国もの国々が締結しております。我が国としても、これらの条約を早期に締結して、これらの国々と手を携えて、協力して組織犯罪に立ち向かっていくことが必要であるというふうに考えております。
 また、この法案は、我が国におきまして、暴力団による組織的な殺傷事犯、あるいはいわゆる振り込み詐欺、何人かが共謀して振り込み詐欺を、仕事を分担してやっておるのが多いわけですが、そういうもの等、組織的な犯罪による重大な被害が発生することを未然に防止し、国民の安心と安全を確保することにも資するものでございますし、また、最近はウィニーを通じた情報流出などが問題となっておりますが、コンピューターウイルスの作成等に適切に対処するために必要な法整備を図ろうとするものでございますが、その成立がおくれれば、このような治安に関する取り組みもおくれることになってしまいます。
 したがって、法務省としましては、この法案につきまして、この委員会において御審議いただいた上で、また、関係者の御努力で内容のすばらしい修正案を御提案いただきましたが、それを含めて、できる限り早急に成立させていただきたいと願っております。

○柴山委員
 今、諸外国での条約締結状況についてお伺いしたんですけれども、特に日本以外の先進七カ国、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、カナダ、ドイツ、イタリアでの締結状況について、外務省の方からお聞きしたいと思います。

○辻政府参考人
 お答え申し上げます。
 締結国につきましては、先ほど法務大臣がお答えした百十九カ国でございます。
 G8のうちにおきましては、カナダ、フランス、ロシア、米国及び英国は、既に締結を了しております。また、その他のイタリア及びドイツについても、国内の手続を了し、あとは締結手続を残すのみと理解しております。
 以上でございます。

○柴山委員
 そのような、まさにこの法律を我々としてもしっかりと成立させるに熟しているという状況にあることを前提とした上で、以下、内容の質問に入らせていただきたいと思います。
 まず、修正案六条の二第一項で、団体の説明のところで、「その共同の目的がこれらの罪又は別表第一に掲げる罪を実行することにある団体」という文言が加わりましたが、これはどのような意味でしょうか。

○早川委員
 「「団体」とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われるものをいう。」とされています。これは、組織的犯罪処罰法の第二条第一項であります。
 そして、この「共同の目的」とは、結合体の構成員が共通して有し、その達成または保持のために構成員が結合している目的、すなわち、構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的をいうと解されております。
 また、「これらの罪」とは、「死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪」を指しております。また、「別表第一に掲げる罪」とは、この法案によります改正後の組織的犯罪処罰法別表第一に掲げる罪を指します。
 したがいまして、「その共同の目的がこれらの罪又は別表第一に掲げる罪を実行することにある団体」とは、構成員の継続的な結合関係の基礎になっている目的が、先ほど述べました罪のいずれかを実行することにある団体という意味であります。

○柴山委員
 ということは、先ほど、冒頭御指摘もいただいたんですけれども、その構成員を結びつけている目的が、例えば消費者利益の増進ですとか労働者の保護にあったりするなどの正当な団体に関しては、その性格が変わらない限り、こうした犯罪の謀議をしてもこの法律では処罰できないという理解でよろしいでしょうか。

○早川委員
 委員御指摘のとおりであります。
 修正案は、共謀罪における「団体の活動として、」という要件に言う「団体」について、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体である場合に限って共謀罪が成立することとするものであります。この共同の目的とは、構成員の継続的な結合関係の基礎となっている目的、すなわち、まさにそのために構成員が継続して結合しているという、構成員の継続的な結合関係を基礎づけているその根本となる目的でなければならないと考えられます。
 したがって、御指摘のような目的で活動している団体の場合であれば、仮に、ある特定の時期に、ある特定の犯罪に当たる活動をしたとしても、そのことだけで直ちに、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにあると認められるわけではなく、構成員の継続的な結合関係が全く一変して、まさにそのために構成員が継続して結合しているという、構成員の継続的な結合関係を基礎づけているその根本となる目的が重大な犯罪行為を実行することにあると認められない限り、なかなかその解釈が厄介でありますけれども、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体には当たらないことになります。

○柴山委員
 簡潔にお願いしたいと思いますが、ということであれば、去年の十月十四日に私が質問をさせていただいたんですけれども、例えばOLが万引きを目的としたような形で集まった場合には、原則としてそのような実体を備えないということが明確に定められた、そういう理解でよろしいんでしょうか。

○早川委員
 全く御指摘のとおりであります。
 なお、政府原案におきましても、そもそも団体の定義に当たらない場合、団体の活動としての要件に当たらない場合、犯罪行為を実行するための組織に当たらない場合などが考えられるところであります。
 今回の修正案で団体を限定したことによって、まさにそのために構成員が継続して結合しているという、先ほど御説明申し上げました構成員の継続的な結合関係を基礎づけているその根本となる目的が重大な犯罪を実行することにあると認められる団体でない限り、その共同の目的が重大な犯罪等を実行することにある団体には当たらないことになります。
 今回の修正案によりまして共謀罪が成立するのは、お尋ねの事例に即して言えば、組織的な窃盗団のような犯罪組織の活動として行われる場合に限られることになるのでありまして、御指摘のような事例については、原則として共謀罪の対象とならないことがより明確になるものと考えております。

○柴山委員
 この点、一部には、指定暴力団のような犯罪組織に限定して適用するべきではないかという意見もあるんですけれども、なぜそのような修正にしなかったんですか。

○大林政府参考人
 団体指定という御意見に対するものとしては、御指摘のいわゆる暴力団対策法は、暴力団という一定の種類の団体の危険性に着目して、その活動を直接規制することを目的としたものであることから、同法においては、規制の対象となる暴力団について、あらかじめ特定して指定することとされているものと考えられます。
 これに対し、この法案が定める共謀罪は、国際組織犯罪防止条約の定めに従って、組織的な犯罪の共謀をした者に対する適切な処罰を目的とするものであることから、団体の性質や危険性という観点からではなく、犯罪組織の性質や態様に着目して、共謀に係る犯罪行為が、団体の活動として、犯罪行為を実行するための組織により行われるもの等の要件を定めたものでございます。
 また、法案の共謀罪の対象となる団体は、暴力団だけでなく、外国人犯罪組織ややみ金融会社、組織的詐欺商法を行う団体など多種多様のものが想定されますので、このような団体のすべてを暴力団対策法のように行政的な手続で把握し指定をすることは現実問題として困難であり、実効性を欠くものと考えられるところでございます。

○柴山委員
 今のような趣旨から今回の修正の対象には加えなかったということでよろしいですか、法案提出者。

○早川委員
 委員御指摘のとおりであります。

○柴山委員
 次に、共同の目的の対象として「別表第一に掲げる罪」というものが加わっているんですけれども、このリストを拝見するとかなり広範にわたっているように思われるんですが、これを含めた理由についてお伺いしたいと思います。

○早川委員
 お尋ねの別表第一でありますけれども、これは、国際組織犯罪防止条約に従って定められる犯罪、すなわち、国際組織犯罪防止条約の締結に伴って、いわゆる犯罪化を必要とする犯罪の一覧であります。
 この条約は、共謀罪の対象となる犯罪について、組織的な犯罪集団が関与するものという要件をつけることを認めております。この組織的な犯罪集団とは、「一又は二以上の重大な犯罪又はこの条約に従って定められる犯罪を行うことを目的として一体として行動するものをいう。」とされております。
 したがって、仮に、この条約に従って定められる犯罪、すなわち、別表第一に掲げる罪を実行することを共同の目的とする団体について共謀罪が成立し得ないことといたしますと、条約が求めるところよりも処罰範囲が狭くなってしまいます。条約の義務の履行上、問題があることになります。
 また、別表第一に掲げる罪は、いわゆるマネーロンダリングや司法妨害の罪など、犯罪組織によって典型的に犯される犯罪としてこの条約において各国が処罰の対象とすることを義務づけられたものであります。これらの犯罪を実行することを共同の目的とする団体の活動として行う犯罪行為の共謀がなされた場合には、重大な犯罪を実行することを共同の目的とする団体の場合と同様に、共謀に従って犯罪が実行されて重大な法益侵害が生じる危険性が大きいと考えられます。
 そこで、修正案におきましては、その共同の目的が別表第一に掲げる罪を実行することにある団体の活動も、共謀罪の対象となり得ることとしたものであります。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 続きまして、修正案に「その共謀に係る犯罪の実行に資する行為」ということが新たに要件として加わったんですけれども、この「実行に資する行為」というのはどういう意味なんでしょうか。

○早川委員
 今回の修正案における実行に資する行為の要件でありますけれども、これは、共謀が行われただけでは足りず、これに加え、共謀に係る犯罪の実行に向けた段階に至ったことのあらわれである外部的な行為が行われるまでは処罰を差し控えることとする趣旨から設けるものであります。
 したがって、実行に資する行為と言えるためには、次の三点が必要になります。すなわち、第一に、共謀が成立した後であること、第二として、共謀の段階を超えた、すなわち共謀する行為とは別の行為であること、三番目に、共謀に係る犯罪の実行に役立つ行為、共謀の推進といったことの表現も妥当するかと思いますけれども、こういった要件が必要であると考えております。

○柴山委員
 具体的に、今おっしゃった実行に役立つ行為というのはどのような行為を想定されているんでしょうか。ちょっと事例を挙げていただけますか。

○早川委員
 具体的に事例を申し上げますと、例えば、ある場所で凶器を用いて殺人を実行する旨の共謀がなされた場合において、犯行現場の下見をする行為、凶器を購入する行為等、個別具体的な事実関係にもよりますけれども、いずれも通常は実行に資する行為に該当し得ると考えられます。
 また、共謀がなされた後に、犯行現場の下見をするために共犯者との集合場所に赴く行為や凶器を購入するために銀行口座から金を引き出す行為、犯行現場に赴くためのレンタカーを予約する行為なども、個別具体的な事実関係にもよりますけれども、同様に、実行に資する行為に該当し得ると考えられます。

○柴山委員
 今の具体的な事例なんですけれども、例えば、犯行現場に赴くためにレンタカーを借りる行為も犯罪の実行に役立つという話になりますと、実は、レンタカーを借りた行為が、家族と行楽に行くために借りたという場合だってあり得るわけでして、そうした行為も、いや、これも実行に資する行為だということになりますと、甚だ運用が難しいということになろうかと思います。
 どうやって実行に資する行為かどうかということを証明していくのでしょうか。また、立証できなかった場合はどうなるんでしょうか。

○大林政府参考人
 実行に資する行為の存在を立証する方法としては、被疑者の供述のほか、関係者の供述や物的な証拠など、必要な証拠を収集して立証することとなると考えております。
 お尋ねのような主張がなされている場合であっても、その他の関係者の供述や物的な証拠などによって、レンタカーを借りる行為が、真実は犯行現場へ行くためのものであって、実行に資する行為、すなわち共謀に係る犯罪の実行に役立つ行為であると立証できる場合もあろうかと思いますが、仮に、家族と行楽に行くためとの主張を覆す証拠が他にない場合には、そのような行為は実行に資する行為とは認められないこととなると考えられます。
 そこで、仮に、捜査の過程でこの点に関する立証ができないと判断した場合、検察官は起訴をしないことになるものと考えられます。

○柴山委員
 起訴をしないことになると考えられますというお話があったんですけれども、そもそも、犯罪として処罰されるのは共謀なのか、実行に資する行為なのか。この実行に資する行為の法的な位置づけは一体どういうものなのですか。

    〔委員長退席、倉田委員長代理着席〕

○早川委員
 実行に資する行為の要件は、共謀が行われただけでは足りず、これに加え、共謀に係る犯罪の実行に向けた段階に至ったことのあらわれである外部的な行為が行われた場合に限って初めて処罰の対象とする、そのことによって共謀の処罰範囲を明確かつ限定的なものにするという見地から、共謀罪として処罰するためのいわゆる処罰条件として設けるものであります。
 したがって、法案の共謀罪において犯罪として処罰されるのは、実行に資する行為ではなく、共謀自体であります。

○柴山委員
 ということは、処罰はできないにせよ、共謀の嫌疑さえあれば、実行に資する行為があるかどうかにかかわらず、逮捕を含め強制捜査をすることができるという理解でよろしいでしょうか。

○大林政府参考人
 共謀が行われたという嫌疑があるのであれば、犯罪が行われた嫌疑があるということになりますので捜査を行うことは可能ですが、実行に資する行為が行われていない段階で逮捕や捜索等を行った場合、その後に実行に資する行為が行われることは想定されず、起訴することもできないことになりますので、現実問題としては、そのような捜査が行われることはないと考えております。

○柴山委員
 もちろん、逮捕等の強制捜査が行われた後に実行に資する行為が行われるということは多分ないでしょうけれども、そういう実行に資する行為があったかどうかわからない段階で、共謀が行われたという嫌疑のみで逮捕して、それで調べていって実行に資する行為があったかどうかを捜査の中で判定することはあり得るのかなということは指摘をさせていただきたいと思います。
 次に、その一方で、実行に資する行為は犯罪行為ではないわけですから、この資する行為の現場で令状なしに現行犯逮捕することはできないという理解でよろしいですか。

○大林政府参考人
 委員御指摘のとおり、修正案の実行に資する行為の要件は、いわゆる処罰条件としてつけ加えられたものであり、修正案による修正後の共謀罪においても、犯罪として処罰されるのは共謀自体であると理解しております。
 したがって、実行に資する行為を現認したからといって、犯罪を現認したということにはなりませんので、それだけでは現行犯逮捕ができる場合には当たらない、このように考えております。

○柴山委員
 ありがとうございます。実務上極めて重要な点だと思います。
 それと、これは前に聞いたことなんですけれども、共謀をした後に実行をやめた場合、中止犯ということで刑の必要的減免がなされるんでしょうか。念のために確認をさせていただきます。

○大林政府参考人
 中止犯の成立の問題でございますね。
 いわゆる中止犯について、刑法第四十三条は、犯罪の実行に着手したが、既遂に至る前に、自己の意思によりその犯罪を中止した場合には、刑を減軽し、または免除する旨を規定しております。
 一方、法案の共謀罪は、重大な犯罪を実行することについての合意がなされた時点で既遂に達することから、共謀後に翻意しても、既に既遂に至っている以上、予備罪や準備罪について中止未遂の規定が適用されないのと同様に、中止犯とはならないと考えております。

○柴山委員
 理論上は当然そうなると思いますが、ただ、今回の修正案によって、実行に資する行為というのが処罰条件、要件として加わった場合には、共謀したけれども実行に資する行為が行われる前に実行をやめた場合は処罰されないと当然考えてよろしいわけですね。

○早川委員
 委員御指摘のとおりであります。
 今回の修正によりまして、共謀が行われた場合であっても、実行に資する行為が行われない限り処罰されないこととなりますから、共謀が行われた後、実行に資する行為が行われる前に共謀に係る犯罪を実行することをやめた場合には、いわゆる処罰条件を満たさないことになりますので、処罰されないことになります。

    〔倉田委員長代理退席、委員長着席〕

○柴山委員
 逆に、実行に資する行為が行われてしまった後、謀議が撤回されたような場合はどうなりますか。

○大林政府参考人
 組織的な犯罪の共謀が行われた後に、修正案の実行に資する行為も行われた場合には、処罰条件も満たされることとなりますので、そのような共謀については、その後処罰することが可能な状態になると考えられます。また、仮に共謀後に翻意しても、既に既遂に至っている以上、中止犯とはならないと考えられます。
 もっとも、実行前に翻意したという事実については、刑事手続においても当然に有利な情状として考慮されることになりますし、仮に共謀した者が実行に着手する前に自首した場合には、刑が減軽または免除されることになります。

○柴山委員
 どうもありがとうございました。
 続きまして、修正案には留意事項として幾つか規定を設けられていたと思います。
 具体的には、組織的な犯罪の共謀罪や証人等買収罪の規定の適用に当たっては、思想及び良心の自由を侵したり、弁護人としての正当な活動を制限するようなことがあってはならないということなどを条文に明示された。この趣旨はどういったことからなんでしょうか。

○早川委員
 今回の修正案の提案に当たって最も提案者が腐心したところでありまして、単なる訓示規定ではない、あるいは附帯決議のようなものではない、法律事項としてこの留意事項を定めるということの重要性を訴えたいと思っております。
 政府案が定める組織的な犯罪の共謀罪に対しては、これまでの審議において、内心の自由を制約することになるのではないかという御懸念や、労働組合等の団体の正当な活動を妨げることになるのではないかといった御懸念が示されてまいりました。
 もとより、憲法の保障する基本的人権を侵害するようなことがあってはならないのは当然であります。共謀罪の規定の適用に当たり、いやしくもこういった御懸念のようなことが生じることのないよう、思想及び良心の自由を侵したり、あるいは団体の正当な活動を制限することがあってはならないという運用上特に留意すべき事項を条文に明記することとしたものであります。
 また、政府案が定める証人等買収罪に対しましては、これまでの審議において、弁護人が証人と打ち合わせる等の弁護活動を制限したり、これを萎縮させることになるのではないかとの御懸念が示されてきたところであります。
 そこで、証人等買収罪の規定の適用に当たり、いやしくも御懸念のようなことが生じることのないよう、弁護人としての正当な活動を制限するようなことがあってはならないという運用上特に留意すべき事項を条文に明記することとしたものであります。
 以上のとおり、今回の修正案は、捜査機関や裁判所など、これらの規定を実際に適用する者が、万が一にも、思想及び良心の自由を侵したり、団体の正当な活動を制限したり、あるいは弁護人としての正当な活動を制限するようなことがないようにするとともに、一般の御懸念を払拭するため、法的な責務として、この点を法文上も明らかにしたものであります。

○柴山委員
 大変よくわかりました。
 私の質疑時間は以上で終了したということですので、これで終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

第164回 国会 衆議院 日本国憲法に関する調査特別委員会

第164回 国会 衆議院 日本国憲法に関する調査特別委員会 第7号
平成18年4月6日(木)
午前十時一分開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 国民投票制度につきましてさまざまな議論があるわけですけれども、一部に、これを定めて改憲の動きが活発化するというような懸念が出されております。その議論の際にいつも話に出てくるのが、実態と理想とのずれが生じたときに、実態をむしろ理想である憲法に合わせるべきだという議論がなされております。
 しかしながら、この議論を聞くときにいつも思うのは、先進国の中で憲法の見直しを一切行っていない国が一体どれだけあるのかということです。そして、そうした見直しをしている先進国の憲法は、果たして理想を定めていないのかということをぜひ問い返したいと思います。
 憲法の見直しは、先ほど岩國委員が御指摘になったとおり、まさしく主権の行使の発露でございます。私も全面的に岩國委員の御意見に同意をするものでありまして、新しい民主党の新体制のもと、ぜひこの憲法の見直しに関する熱い委員の議論を全党的に広げていっていただきたいというように思っております。
 改憲の要求が国民から出ているわけではないのではないかという御意見もございます。しかしながら、改憲を急ぐべきかどうかはともかく、少なくとも改正に賛成する世論が多数であるということは無視できません。国民投票運動をしていく中で、国民の改憲に関する緊急性への認識、また関心というものが高まっていくのではないかというように感じておりますので、ぜひそうした運動を私は進めていっていただければと思います。そして、その結果、やはり改正する必要がないという世論が多数になれば、それはそれで、もちろんそれに従うべきであるというように考えております。
 個別の論点について若干申し上げます。
 投票方式は、個別投票か一括投票かということについてさまざまな御議論がありました。そして、これは、投票形式、マルかバツかあるいは白票か、そして白票をどう扱うかという議論、そして、先ほど渡海委員から御指摘のあった、投票率についてどう考えるかという議論ともさまざまな絡みが生じてまいります。
 私は、前回のこの席で、白票を反対票と同じように扱えば、結局、投票総数と有効投票数が同じような形で扱えるのではないかという問題提起をさせていただきました。恐らく、これに対しては投票所に行って積極的に棄権をする者の自由を奪うのではないかという反論が出てくると思います。これに対しては、以前、斉藤委員からだったかと思いますが、投票用紙を個別の論点ごとに別にするということが棄権の自由を確保する一つの有効な手だてになるのかなというように思っております。確かに、投票用紙を複数設けるということは大変な手間になるわけですけれども、場合によっては投票日を複数期日設けるということも視野に入れて考えるべきではないかと思っておりますし、それが投票率のアップにもつながるのではないかと私は考えております。
 最後に、滝委員から御指摘のあった国民投票無効の訴訟制度について一言申し上げます
 枝野理事から執行停止についての議論があり、私は、これに関しては必ずしもその必要はないのではないかという個人的な意見を持っておりますが、しっかりと精緻な議論を行っていくべきだという意見には賛成でございます。
 ただ、これで無効判決が出た場合に、将来効判決ということをぜひ考慮していただきたいと思います。違憲判決の効力についても、その効力は遡及しない、将来効を有するという議論は、これは複数の最高裁判事がきちんとこれまでも判例の中で出しているところでもございますので、ぜひそうした議論も含めて精緻な議論を行ってほしいと思います。
 以上でございます。

第164回 国会 衆議院 法務委員会

第164回 国会 衆議院 法務委員会 第12号
平成18年3月31日(金)
午前十一時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 長年大きな論争を巻き起こしていた未決拘禁者の処遇につき、今回抜本的な法改正がなされるということは非常に高く評価されるべきでありまして、一刻も早い本法案の成立、施行がなされることを強く期待しております
 ただ、若干疑問がございますので、以下、質問をさせていただきます。
 まず最初に、警察署に付設された留置場を拘置所のかわりにするいわゆる代用刑事施設、この制度につきまして、本法案はこれを認めております。今後、これをふやしていくのか、現状維持をしていくのか、減らしていくのか、基本的な政策の方向性をぜひ法務大臣にお伺いしたいと思います。

○杉浦国務大臣
 柴山委員におかれましては、弁護士としての長い経験を踏まえられまして政治の道に参加いただいて、本当にありがたく思っております。法務行政、これからますます大事になりますので、今後とも、この面においても大いにお力をおかしいただき、御活躍いただきますよう、まずもってお願い申し上げる次第でございます。
 先生は長年にわたると申されましたが、個人的には、実に万感こもるものがございます。昭和五十七年、拘禁二法が提案された際、私は第一東京弁護士会の副会長でございました。そして、反対運動の先頭に立ったわけであります、代監制度を廃止しろと。私ども一弁はどちらかというと伝統的に保守的な会派でございまして、東京では、東弁、二弁は、一弁よりは革新的と申しますか、傾向の強い団体であったわけですが、私ども一弁は自民党を担当いたしまして、議員の先生方と説得活動に当たったわけであります。
 あのころの留置場はひどいものでした。施設もよくありませんし、捜査と留置の区別がつかなかった。代用監獄は自白の温床であるという指摘も無理からないものであった、正直言ってそう思います。
 反対運動、長く続きました。四半世紀、紆余曲折ございましたが、ここに、日弁連も加えた検討会議の議を経て正式に成案を得た、国会で御審議いただくまでになったということでございまして、まことに感無量のものがございます。
 留置施設も変わってまいりました。当時、我々が猛反対したものですから、警察庁は留置場の大改修を始めました。昭和何年でしたか、警視庁が建てかえられたときに、今の警視庁の留置場が当時一番いい留置場だと。そして、捜査と留置の区別もきちっとする初めての施設として、東京警視庁に留置施設が誕生したわけであります。
 今回法務大臣に就任して、実は、東京の留置場のうち一番新しいものと一番古いものを見せてくれというふうに頼みまして、視察に参りました。一番新しいのは池上警察署でした。一番古いのは警視庁の留置場でございました。本質的に差はございませんが、池上の方は施設も立派で、警視庁の留置場よりもいろいろな面ですぐれているという印象を持ちましたが、基本的にそんなに変わっておりませんでした。
 全国で、私の地元でも、留置場をどんどん改造しております。一々見たわけじゃありませんけれども、相当程度改善され、当時私どもが指摘した、捜査と留置の分離がなされていない、施設も劣悪である、警察官の思惑次第で差し入れも自由、自白誘導が可能なような運営が行われている、そういった問題点はかなりというかほぼ解消されているような印象を今度の視察で受けた次第でございます。
 したがって、このたび、今度の法案で、代替刑事施設を維持する、それが現実的な方法でもあるということで、代用刑事施設制度の存続を前提とした上で制度的改善を加えることとしておるわけでございます。
 我が国の刑事司法制度のもとでは、最大二十三日間という限られた身柄拘束の期間の中で、被疑者の取り調べその他の捜査を円滑かつ効率的に実施しなければなりません。被疑者と家族、弁護人等々の接見の便にも資するためには、津々浦々にきめ細かくいわば設置されている、つまり警察署に併設されているわけですから、そういう留置施設に被疑者を勾留することが現実的であるということも言えると思うわけでございます。
 ちなみに、私が弁護士になったころ、当時、巣鴨の刑務所から今の東京拘置所へ移転するということになりました。先輩が猛反対運動をいたしました。私が弁護士になったときにはもう移転しておりましたが、その反対の理由は、何であんな田舎へ持っていくんだ、不便になると。まあ、巣鴨は、電車の便もいいし、タクシーで行っても近い。あの当時はまだ小菅はかなり田舎でございまして、高速道路もない、鉄道も不便という状況で、猛反対運動があったそうでありますが、それに次ぐこの私どもの反対運動は盛り上がったわけであります。
 弁護士の本音としては、近いところにあった方がいい。だから、名古屋や広島とかであるように、裁判所、検察庁の近くに置けと。今弁護士会館が建っているぐらいのところへつくりなさいというのが、当時の我々の主張だったと思います。全国を私は歩きまして、地域によっては裁判所と検察庁と拘置所が、名古屋もそうですけれども、すぐ近くにある。これは非常に便利ですね。来られる人も、交通も便利だと。
 それが理想的ではあると思うんですが、ただ、現実問題として、地域によっては恵まれていない地域もあるわけでございまして、理想は理想としながら、現実的な面にも配慮されなければならない。東京にいる弁護士さんの本音は、近くに留置施設があった方が便利だという本音ではほぼ一致していると思うんです、ほぼ。そうじゃない先生もいらっしゃいますが、多くの先生はそう言っていると思います。
 代用収容制度にしても、これで永久に存続するとしているわけではございませんで、法律には、今後の検討としておりまして、今後の刑事司法制度のあり方を検討するに際しては、取り調べを含む捜査のあり方のほかに、刑事施設のあり方についても、留置施設のあり方についても、刑事手続全体との関係の中で検討を怠ってはならないと考えております。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 今大臣の方から、捜査と留置の人の分離ということが言われたわけですけれども、この点について、法案の十六条三項に、留置担当官は当該被留置者の犯罪の捜査に従事してはならないという規定がございます。この規定はもちろん、逆に捜査官が留置業務に関与するということも禁じた規定であると理解しておりますが、それでよろしいでしょうか。

○安藤政府参考人
 ただいま委員の御指摘のとおりでございます。
 ここで言います留置担当官とは、留置管理係に所属する者のみならず、現に留置業務に従事する者をいいまして、この第十六条三項は、この留置担当官がその被留置者の捜査に従事してはならないことを定めたものでございます。
 したがいまして、現に被留置者の捜査を行っている捜査官が当該被留置者の処遇を行いますと、その捜査官は、この十六条三項で言います留置担当官に該当することとなるため、この規定に違反することになるということでございます。

○柴山委員
 とすれば、今度の法案の百八十四条に、留置業務管理者は食事あるいは就寝の時間帯を定めるということが書いてあるわけですけれども、捜査担当者はこうした時間帯をしっかりと守らなければいけないということになろうかと思いますが、そうしたことが担保されているということでよろしいでしょうか。

○安藤政府参考人
 新しい法律、新法の百八十四条の規定に基づきまして、留置業務管理者は、日課時限、これはすなわち、被留置者の起床とか就寝時間、食事の時間、運動の時間等をあらかじめ定めることとしているところであります。もちろん、被留置者の処遇というのは原則としてこれらの時限に従って行われることとなりますが、他方、被留置者は刑事手続の対象でもあり、勾留質問、取り調べ、公判出廷、弁護人等との面会等を実施すべき公益上の必要性もあるところでございます。
 したがいまして、具体的事案に応じて、やむを得ず、定められた時間に実施できないこともやはりあり得るところではございますので、そういう場合も、定められた時間に運動が実施できない場合には別の時間に運動を実施する等の補完措置を現在講じている状況でございます。

○柴山委員
 続きまして、不服申し立ての制度についてお伺いしたいと思います。
 留置施設の処遇に関する不服申し立てはどのようになっているんでしょうか。従前は情願という非常に不十分な制度しかなくて、また、施設内でこうした不服が握りつぶされていたのではないかという指摘もございました。お聞かせいただきたいと思います。

○安藤政府参考人
 お答えいたします。
 今回の法案におきます留置施設における不服申し立て制度というのは三本柱で成り立っておりまして、一つは、処分性のある措置についての警察本部長に対します審査の申請、二つ目は、警察職員による違法な有形力の行使等についての警察本部長に対する事実の申告、それから三つ目が、処遇全般に関します苦情の申し出、この三つの制度を設けておりまして、審査の申請と事実の申告につきましては、これはさらに公安委員会への不服申し立てができる、こういう組み立てを行いまして、刑事施設における不服申し立て制度との均衡を図っているわけでございます。
 これらの不服申し立てにつきましては、例えば、警察本部長による裁決等に不服がある場合につきましては、第三者機関であります都道府県公安委員会が不服申し立ての審査を行うこととか、あるいは不服申し立ての処理状況は留置施設視察委員会に報告されること、さらには留置施設を実地監査します監査官、こういう制度を新しく設けるわけですが、この監査官にも直接苦情を申し出ることができる、こういうことなどを定めまして、被留置者の不服申し立てを適正に処理することが法的に担保されていると考えております。

○柴山委員
 今、刑事施設と横並びというお話もありました。公安委員会が警察署に対してどれだけ独立性を持っているかということも、議論のあるところだと思います。留置施設におきましても、公安委員会と独立した第三者機関による審査ということが弁護士会の方からも提言されていると思いますので、御検討いただければと思います。
 さて、いろいろと質問があるんですが、今後の課題として、この後、倉田理事の方からも言及があるいはあるかもしれませんけれども、取り調べの適正化をどのようにして図っていくかということが大変大きなテーマとなってくるかと思います。
 今、取り調べの可視化、いわゆる録画、録音等について大変大きな議論がなされているわけですけれども、これにつきまして、大臣、どのような御見解をお持ちでしょうか。

○杉浦国務大臣
 これはかねてから大変問題になっている件でございますが、被疑者の取り締まり状況を録音ないし録画すれば、捜査段階の供述を事後的に正確に確認することが容易になる。特に、自白の任意性が争われた場合には非常に有効であるという意見があることは承知しております。他方におきまして、取り調べ状況の録音、録画を義務づけた場合、取り調べ状況のすべてが記録されますので、関係者のプライバシーにかかわることを話題とすることが難しくなることもあり得るし、被疑者に供述をためらわせる要因となって、その結果、真相を十分解明し得なくなるといった問題がございます。
 いずれにしましても、取り調べ状況の録音、録画等可視化につきましては、司法制度改革審議会意見においても、刑事手続全体における被疑者の取り調べの機能、役割との関係で慎重な配慮が必要であることなどの理由から、将来的検討課題とされているところでございます。法務省としても、慎重な検討が必要であると考えております。

○柴山委員
 今の御指摘の中で、テープの取り扱いがプライバシーの関係で問題ではないかということがあったんですが、当然のことながら、今の刑事司法手続の中では、インカメラの手続とかも工夫できるわけですし、また、被疑者が供述をためらうであろうというようなお話もあったんですが、私はむしろ、被疑者にはカメラが見えないようにすることができるわけですから、捜査官側がためらうんじゃないかということで危惧をされているんだと思っています。
 私は、何も、カメラを入れることによって捜査が萎縮をするという事態は望んでいるわけではありません。取り調べというのは、自由な社会で対等な、例えば契約者が交渉するというような社会とは違うわけですから、時には大声を出したり、場合によっては机をたたいたりするようなこともあるんだと思います。ただ、状況に応じた一定の節度というものはあるわけでして、それを超えたかどうかをチェックすることは必要ではないかと考えております。
 また、捜査の側にとってみても、私も杉浦大臣ほどではありませんが若干弁護士の経験がございますけれども、被疑者というものは、本当に不合理な弁解を時としてするものでありまして、こういうような取り扱いを受けたと言うわけですが、それを客観的に示す、あるいはそれがうそだよというものがなければ、我々弁護人としては、その被疑者の不合理な主張によって動かざるを得ないわけですね。そのことが公判を紛糾させたり、検察官との信頼関係を損なったりする一つの大きな原因になっていることは、私は否めないと思っております。こうした不要なフリクション、あつれきというものを解消するためにも、私はこれはぜひ前向きに検討していただけたらというように思っております。
 もう一度、御意見をお伺いしたいと思います。

○杉浦国務大臣
 検討を進めておるところでございます。
 最高裁、法務省及び日弁連による刑事手続の在り方等に関する協議会や、そのもとに置かれた三者による研究会でも取り調べの録音、録画制度に関する研究を行っておりますし、法務省としても、こういう制度を導入している国ではどんな手段でやっているかということを調査研究もいたしております。さまざまな方法で検討はいたしております。

○柴山委員
 よろしくお願いいたします。
 もう時間が過ぎますので、一点、さらに追加してお伺いします。
 今回、海上保安留置施設の処遇についても規定が整備をされたんですけれども、これは他の留置施設と一体どのような理由で、どういう違いが定められているのでしょうか。お聞かせいただきたいと思います。

○平田政府参考人
 お答え申し上げます。
 海上保安留置施設につきましては、長期にわたり被収容者を収容する刑事施設でございますとか警察の留置施設とは異なりまして、被逮捕者の送致までの四十八時間以内の短期の留置を前提として運営され、代用刑事施設としての運営を行わない施設としている点が特徴でございます。したがいまして、本法案におきます規定ぶりも、刑事施設でございますとか警察の留置施設と一部異なったものとなってございます。
 具体的に申し上げますと、まず、施設関係におきましては、海上保安留置施設につきましては、被逮捕者を留置するものでございまして、被勾留者の代替収容は行わないこと、施設の視察委員会を設置しないことでございます。さらに、処遇関係におきましては、海上保安留置施設は、ただいま申し上げましたように四十八時間以内の短期留置であるために、留置期間中の捜査、食事、就寝などの時間配分から余暇活動は不可能であるため、余暇活動に対する援助は行わないこと、定期の健康診断は行わない、処罰の規定は置かないというようなことになっているところでございます。

○柴山委員
 今御指摘のあった被留置者に対する処罰の点等々、まだ質問事項はございますけれども、質疑時間が終了いたしましたので、以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

第164回 国会 衆議院 日本国憲法に関する調査特別委員会

第164回 国会 衆議院 日本国憲法に関する調査特別委員会 第6号
平成18年3月30日(木)
午前十時開議

○柴山委員
 柴山昌彦でございます。
 先ほど早川議員から、国民及び議員の多数の意見をしっかりと聞きながらこの国民投票制度の議論を進めていくべきだという御指摘があり、私も全面的に賛成でございますし、また、今それが可能な雰囲気が醸し出されているというように考えております。
 笠井委員からは、望まない国民投票法案を求めない運動、この運動も国民主権の一つの発言形態ではないかという御指摘がありました。それは確かにそのとおりなんでしょうけれども、国民主権の観点からすれば、この国民投票制度こそがまさしく国民が最高法規である憲法につき判断する機会を保障するものでございますから、この制度をつくることは喫緊の課題であると考えております。最高法規である憲法も、制定後六十年を経過した中で、変えるにせよ変えないにせよ見直しをするための手続法が一切できていないというのは非常に異常な事態だと思っております。
 私個人は、私学助成を認めるにせよあるいは裁判官の報酬を減額するにせよ、大変無理な解釈を憲法上しなければならないという現状に照らせば、やはり一定の見直しを早急にしていくべきであると考えております。ぜひ御検討いただきたいと思います。
 辻元委員から、憲法改正に関して民意がまだ高まっていないのではないかという御指摘がございました。その一方で、中身については大変詳細な御検討をされ、御発言をされているわけでございます。ぜひ、委員御指摘の諸点につき、党派の壁を超えて国民的議論を一緒に盛り上げていっていただけたらというように切に希望するものでございます。
 もろもろの論点について若干コメントをさせていただきたいと思います。
 まず、全般的な国民投票制度、憲法改正と離れたそうした制度についての議論についてでございますけれども、こうした制度について議論をすることはもとより結構なんですけれども、以前古川理事が御指摘だったかと思いますが、この国民投票制度の持つ大きな影響、一度やってつぶれたら、例えばEU憲法の問題に見られるように大変大きな影響をもたらすものであります。それは、これを諮問制度と解することによってもやはり言えることであろうと思います。私は、一般的な国民投票制度の検討ということは、喫緊の課題である憲法改正のための国民投票制度よりも、より慎重な検討を重ねていかなければいけない課題ではないかというように考えております。
 続きまして、近藤理事から白票の取り扱いについて大変詳細な御分析がありました。まさしくこれもおっしゃるとおりでございまして、白票を反対とするのかあるいは棄権とするのかということと、過半数を算定するための分母をどうするかという議論は密接にリンクしているわけでございます。
 私個人の意見を申し上げると、賛成はマル、反対は白票とすれば、積極的に棄権をしたいという方は投票所に行かないわけですから、仮に私が以前から申し上げているような投票総数の過半数をもって決すべきだとする立場をとったとしても、事実上有効投票の過半数という結果がもたらされるのだというように思っております。
 時間になりましたが、公務員の国民投票運動について一言申し上げます。
 私は、一般公職選挙法と区別して、これについて規制を設けることは必要であると思っております。何となれば、憲法九十九条、ここには憲法尊重擁護義務が明定されているわけでございまして、これに明示的に反対する活動を容認するのは問題である。また、それとのバランス感覚でいえば、現行憲法を維持することの積極的な運動ということも問題と考えるわけでございまして、やはりこの法律をもって具体的に特別の規定を設けるべきだと考えております。
 虚偽報道の問題については、私は、フランスの機関であるオーディオビジュアル高等評議会のような第三者機関を設けて、最終的にはそれについて公的機関がチェックするというあり方が一番妥当ではないかと思っております。
 以上でございます。

第163回 国会 衆議院 国土交通委員会

第163回 国会 衆議院 国土交通委員会 第15号
平成18年1月19日(木)
午後一時一分開議開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 十七日の証人喚問で、ヒューザー小嶋社長が真相を解明したとは到底言えません。ぜひ、皆様には真実を語っていただきたいと思います。
 後ほどお手元に資料を配付させていただきますが、資料一、これは国土交通省から提出された最新の偽装物件の一覧表になります。後ほどお配りいたします。
 さて、まず井上参考人にお伺いします。
 既に判明している姉歯氏の構造計算書偽装物件のうち、あなたが代表取締役を務める株式会社スペースワンが元請設計事務所であるものが、未完成物件を含めて七件あります。このうち、木村建設が関与していない物件は幾つありますか。

○井上参考人
 まず冒頭に、私の設計いたしました複数の建物の構造設計の部分で偽装がありまして、結果、耐震度に満たない建物が存在してしまいました。お住まいの方々、御近所の方々、そして御関係の皆様方に大変な御迷惑をかけたことを、まずはおわび申し上げます。申しわけございませんでした。
 ただいまの質問ですが、木村建設でない、請負が木村建設でない建物は二件であると思います。

○柴山委員
 川崎大師は太平工業の直施工、そしてグランドステージ稲城も志多組の施工となっておりますね。
 次に、下請の設計に姉歯氏を指定したのは一体どこでしょうか。すべての物件についてお答えください。

○井上参考人
 姉歯氏に直接私の方から設計外注をしたものは四件ありまして、残りに関しては、木村建設の下請としての発注、あるいはヒューザーからの直接の発注であります。

○柴山委員
 今、ヒューザーからの直接の発注、つまり姉歯氏の指定という御発言がありました。
 後ほどお手元に、ことし一月十七日付の産経新聞の記事を配付させていただきますが、そこにも、元請設計事務所のうち数社が、下請に姉歯氏を使うようにヒューザーから強く求められていたという記事がございます。我々は、イーホームズを初め各所の裏づけ取材によって、どこの元請設計事務所がそうした圧力をヒューザーから受けていたということを明らかにしております。スペースワン以外にもそうした元請設計事務所が複数あるということだけ申し添えて、次の質問に移らせていただきます。
 姉歯氏の設計料はスペースワンが払ったんですか。

○井上参考人
 先ほど申し上げましたとおり、当社から直接姉歯建築設計事務所に発注されたものに関しましては、当社が支払いました。

○柴山委員
 裏を返せば、四件以外、残り三件、要するに半分近くは木村ないしヒューザーからも直接あったという、指定があったということですけれども、木村あるいはヒューザーが姉歯氏に設計料を直接支払っていたということでよろしいわけですね。確認の答弁を求めます。

○井上参考人
 はい、それで間違いないと思います。

○柴山委員
 次に伺います。
 あなたは、昨年の十月二十五日、イーホームズ本社で開かれた会議に出席されていますね。何のための会合で、だれから呼ばれたんですか。それぞれお答えください。

○井上参考人
 イーホームズから呼び出しを受けました。私の方に連絡をいただいたのは、ヒューザーの担当者、それと姉歯さん自身から連絡を受けております。

○柴山委員
 その二十五日の会合、ヒューザーは曽我常務が出席をされておりますね。

○井上参考人
 そのとおりでございます。

○柴山委員
 その席で、イーホームズの藤田社長と姉歯氏はそれぞれどういうお話をされたんでしょうか。短くお答えください。

○井上参考人
 質問をもう一度お願いします。イーホームズで、イーホームズと姉歯さんの会話ということですか。(柴山委員「それぞれの御発言について簡潔にお答えください」と呼ぶ)
 まず、当日、去年の十月二十五日なんですが、会議室に入りまして、イーホームズから、四件ほどの物件について構造計算書の改ざんがあるというふうな指摘を受けました。

○柴山委員
 曽我常務は、それに対してどのような反応を示されましたか。

○井上参考人
 曽我常務は大変驚いた様子でした。

○柴山委員
 後ほどお配りする朝日新聞の記事、また一月十六日のNHKの朝七時からのニュースでも、この後ヒューザーの小嶋社長が、夕方姉歯氏に会って事情を聞くとともに、ヒューザーの役員にわざわざ千葉の姉歯事務所に向かわせて、パソコンで偽装物件の名前と改ざんした数値を割り出したことを御自分で認めていらっしゃるんです。
 ちなみに、この席には、井上参考人は千葉まで同行されたんですか。

○井上参考人
 私は、イーホームズでの会合の後、その報告のために、ヒューザーで報告を済ませて、その後すぐ事務所に戻りました。

○柴山委員
 つまり、イーホームズでの会議の後、小嶋氏のところに姉歯氏が報告に行くのに同行をされて、そこから後は、千葉までは一緒には行かれなかったということでよろしいわけですね。
 あなたは、同月の二十七日に今度はヒューザーで開かれた会議にも出席されていますね。いつ、だれから連絡されて行かれたんでしょうか。

○井上参考人
 ヒューザーの担当者からの連絡で、二十七日に集まるようにというふうな連絡を受けました。

○柴山委員
 連絡を受けたのが二十七日ということでよろしいわけですね。当日連絡を受けて、二十七日に行ったということでよろしいわけですね。

○井上参考人
 失礼いたしました。二十六日に連絡を受けて、二十七日に協議するので集まってくれというふうに連絡を受けました。

○柴山委員
 何のために、あなたはヒューザー本社に呼び出されたんですか。ほかにも、元請設計事務所のエスエスエー佐々木社長、そして自殺されたとされる森田設計事務所社長、下河辺設計事務所社長がいらしていますけれども、何のためにいらっしゃったんでしょうか。

○井上参考人
 私の認識では、二十五日にイーホームズで協議がありまして、ただ、その内容が余りにも大きな問題であるというふうに思いましたので、その二十五日の会合のときに、もっとトップと話してもらいたいというような、たしか曽我さんの意見もありまして、また、では、その話し合いの機会を持とうというふうなことで二十五日は帰っておりますので、そのための二度目の会合だというふうに認識いたしました。

○柴山委員
 余りにも大きな問題であるので、曽我常務が、トップすなわち小嶋社長と話してほしいということで、いらっしゃったわけですね。
 次の質問に移ります。
 このとき、下河辺氏が元請設計している二月竣工の船橋海神の物件について、検査済証を何とかおろしてほしいと小嶋社長はおっしゃっていましたか。

○井上参考人
そのようなことは申しておりませんでした。

○柴山委員
 では、別のセントレジアス船橋の物件について、まげてでも検済みをおろしてほしい、そういうような発言はされていましたか。

○井上参考人
 そのような発言はしておりました。

○柴山委員
 後ほどお配りする資料五、イーホームズ藤田社長ほか二名が当日の出席されたメモを持ち寄ってまとめたもので、大変信憑性の高い、そういう資料となっております。後ほどお配りを申し上げます。今申し上げたことがすべて書いてあります。イーホームズは、こんなものをつくったら指定確認機関としての、偽装を見過ごしたという、能力が疑われてしまうのにあえてつくっているわけです。
 次の質問に移ります。
 姉歯氏が、震度五までは大丈夫だ、五以上はどうなるかわからないと述べたと書いてありますが、それについては記憶ありますか。

○井上参考人
 二十七日の会合では、姉歯氏は別室で控えていたんですが、必要に応じて会議室に呼ばれまして、確かにそのようなことを言ったように覚えております。
○柴山委員
 そのとおりですね。
 そして、それとともに、小嶋社長が、大地震が来て建物が倒壊したときに調査し発覚したことにしたい、役所もそれがいいとおっしゃっていたとありますが、事実ですか。

○井上参考人
 そのような具体的な文言については覚えておりません。

○柴山委員
 具体的な文言については覚えておられないとおっしゃった。
 では、覚えておられる範囲で結構ですので、この件についてどのように小嶋さんがコメントされていたか、もう一度お聞かせください。

○井上参考人
 このときの会合は、二十五日には工事中の物件だけの指摘だったんですが、もしくは工事着工前の物件についての指摘だったんですけれども、二十七日には既存物件、完成物件が何件かイーホームズの方から指摘されたわけです。それについて公表をしたい、するというふうなイーホームズの意見に対して、小嶋社長は、公表は少し待てというふうなことと、先ほど申し上げたとおり、当社のセントレジアス船橋について検査済証をおろせ、おろさないというふうなやりとりがありました。

○柴山委員
 今までの質疑から明らかなように、今回の耐震偽装事件では、ヒューザーがイニシアチブをとって姉歯氏を巻き込み、同時に、部分的には金銭の流れもつくり、しかも知った上で、この偽装を知った上で販売を行っていた。また、イーホームズに、これに対して隠ぺいをするように迫っていたという事実が明らかになったかと思います。
 私の質問を終わります。

第163回 国会 衆議院 日本国憲法に関する調査特別委員会

第163回 国会 衆議院 日本国憲法に関する調査特別委員会 第4号
平成17年10月20日(木)
午前九時一分開議

○柴山委員
 先ほど辻元委員がおっしゃった改正手続の啓蒙ということは、私も非常に重要だと思っております。これをすることによって、国民がより自分たちの問題として憲法問題を考えることができるということで、全面的に賛成です。
 また、先ほど中山会長からお話があった、在外邦人の国民投票のあり方について問題提起がありましたが、私はこの問題も非常に重要であると思っておりますし、在外邦人、なかなかこうした情報に接する機会が少ないということもありますので、国の負担でやはりさまざまな基礎資料を発送する等の工夫をしていくことがぜひとも必要になってくるのではないかというように考えております。
 午前中の意見の中で、国民投票運動の自由に関して、公共空間という吉岡参考人からのお話がありました。確かに、こうしたパブリックフォーラムというものは、思想の自由市場が確保されている間はそうした議論も可能だとは思うんですけれども、たびたびお話をさせていただいているとおり、メディアの寡占、あるいは先ほど問題提起があった政府の言論ということが国民の投票行動に決定的な影響を与えかねないということで、一定程度の規制が必要なのではないかという問題意識は私は必要なのではないかと思っております。
 その際、政府のこうした活動のみを規制するのか、あるいは、きょう今井参考人がお配りになった資料にあるように、放送媒体については規制をする、ただ、新聞、インターネットについては規制をしないという方法でいくのか、あるいは、前回私、また先ほど船田委員から御指摘があったように、虚偽の報道、明らかに虚偽であるものを現実の悪意を持って発表した場合に規制をするというあり方をとるのか。それはまた今後の議論の中できちんと詰めていったらいいのではないかなというように思っております。
 続きまして、国民投票無効訴訟の制度について申し上げたいと思います。
 これを明定することはよいとしても、その却下ないし棄却の確定をもってこの憲法改正の効力を発生させるべきではないかという立場には私は反対であります。前回、枝野理事から、暫定的判断である仮処分の活用を考えればよいのではないかという御発言がありましたけれども、仮処分の場合は被保全権利と保全の必要性ということが要件となってくるわけでして、こうした客観訴訟、つまり自分の権利の侵害を問題としない訴訟について仮処分という制度を使うことはいかがなものかなという気がしております。
 また、行政事件訴訟法の四十四条には公権力の行使、憲法改正が公権力行使と言えるかどうかはかなり微妙な部分がありますけれども、仮処分の手続を排除しております。また、公選法にも当然ないということもありますので、考えられるとすれば執行停止、行政事件訴訟法の二十五条なのかなという気がしております。
 しかし、これについても、先週平岡委員の方から発言がありましたとおり、この無効事由というところが非常に私は場面が少ないのではないか。また、長期にわたる不安定さというものも、本訴の提起期間を例えば一カ月というような形で限定すれば、そうした不安も生じないのではないか。何よりも、多数の国会議員、国民が示した民意をやはり私は尊重するべきではないかという観点から、執行停止の導入ということにも反対であります。現に、アメリカでは、憲法改正に係る行為はポリティカルイシューとして司法判断を回避するべきである事例の一つとされていることが参考になると思われます。
 次に、先ほど御指摘のあった前文の改正について、どのような単位で行うべきかという点について一言申し上げたいと思います。
 私がたびたび申し上げているとおり、憲法改正の国民投票は、これは個別条項を対象とするべきである、これが原則だと考えております。これは、るる、さまざまな先生方から御発言があったところを根拠としておりますが、また、その国民投票の過程で、国民に修正権がないというところも一つの根拠になるのではないかなと思っております。国会議員の場合は、当然、法案を審議するに当たりまして修正ができるわけですから、その修正する中で個別の条文について考えるということができますが、国民投票の場合はそのような修正権はありません。
 ですから、私は、個別審議、個別投票を原則とするべきだと思っておりますが、憲法前文の場合は、これは先ほど発言のあったパラグラフごとというのはちょっといささか形式的に過ぎるのではないか。国民主権等の基本原理、あるいはさまざまな一体として醸し出す風格というものがありますので、やはり前文は、これは一括して投票の対象とするべきではないかなというように考えております。
 以上です。

○柴山委員
 二度目の発言、お許しをいただきありがとうございます。
 先ほど、船田委員、そして小川委員、吉田委員が御発言なされたことに関して、直接民主制のあり方について私見を申し上げたいと思います。
 私も、スイスでの直接民主制、国民投票のあり方は当然これから参考にしていくべきだとは思いますけれども、やはり日本と同一視して考えられない部分も多々あるのではないかというように思っております。
 一つは、先ほど吉田委員が御指摘になられたように、やはり国の規模が違うと思います。例えば、けさの事例で、スイスで行われた性犯罪者の終身刑化ということに関する国民投票が行われたという指摘がありました。例えば日本でこれを実施した場合に、ここの犯罪に終身刑を導入したら、では他の犯罪類型についてどういう刑のバランスをとっていったらよいのであろうかですとか、あと、そうした終身刑を受けた人の処遇をではどうやって図っていけばよいのかとか、当然、派生する問題についてもいろいろと検討をしなくてはいけません。
 司法、外交等々、この一億人を超える国民がいる中で、検討すべき事項が多々ある中で、そうした専門的な事項について、仮にその国民投票のための周知、啓蒙期間を長くとったとしても、組織性、継続性に欠ける国民に逐一直接投票でその意思を確認するということは、私は、極めて難しいのではないか、また必ずしも妥当な結論には達しないのではないかと考えております。
 結論的に申し上げれば、やはり私は、日本の国政においては、国民投票、少なくとも拘束力を伴う国民投票は基礎的事項に限られるべきであるというように考えております。
 一方、地方自治体においては、そういうような配慮は必ずしも必要ない、住民投票をより積極的に活用する場面もあるかと思います。ただし、よく言われることですけれども、国の政策あるいは迷惑施設等に関する住民投票というものは必ずしも妥当ではない部分もあるのではないかと考えております。
 市町村合併については、これは大変難しい配慮が必要でして、国との連携あるいは財政のあり方等についてどう考えるか、ケース・バイ・ケースであろうかなというように思っております。
 以上です。

第163回 国会 衆議院 法務委員会

第163回 国会 衆議院 法務委員会 第5号
平成17年10月14日(金)
午前十時二分開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 ただいま平沢委員から詳細な質問があったわけなんですけれども、私は、若干心配が残っておりますので、以下、具体的な事例を用いて質問させていただきます。
 これは、私が検察修習時代に実際に取り調べを担当した現実の事案を若干アレンジしたものです。
 ある会社にA子さんとB子さんという二人のOLさんがいました。二人は別の部門に勤めておりまして、顔はお互い見たことはあるけれども、会話はしたことはありません。
 ある日、近くのデパートの化粧品売り場で二人は顔を会わせたわけですね。そして、B子さんがA子さんにあいさつをした。そうしたら、A子さんがB子さんに対して、私、このデパートでちょくちょく万引きしているの、結構スリルあるわよ、やってみないと誘われました。B子さんは迷ったんですけれども、ちょっとやってみようかなということで万引きをして、まんまと成功したわけですね。これはなかなかおもしろいじゃないかということで、二人は、この二人の集まりを万引きクラブと名づけて、その後、ちょくちょく万引きを繰り返したということです。
 何回目かのときに店員さんに見つかったんですね。そこで書類送検をされて私のところに来ました。まじめに出頭していますし、前科もありませんでしたから、また二度とやりませんと真摯に言いますので、私は起訴猶予にしたわけなんです。
 さて、ここで問題なんですね。
 では、起訴猶予になったこの二人が、今後、また具体的な日時、場所を伴う万引きの共謀をしたら、これは共謀罪になるんでしょうか。メールでその相談をしたら、そのメールの通信履歴の差し押さえができるんでしょうか。言うまでもなく、窃盗は、十年以下の懲役が法定刑となっておりますので、今回の共謀罪の対象になります。また、この万引きクラブというのは、まさしく犯罪行為を実行するために形成された組織なんですね。
 こういうことで、今の質問についてはどのようにお答えになりますでしょうか。

○大林政府参考人
 まず、今問題となっておる法案の共謀罪について、適用の関係について御説明いたします。
 共謀罪は、重大な犯罪のうち、団体の活動として、犯罪行為を実行するための組織により行われる犯罪行為、または団体に不正権益を得させるため等の目的で行われる犯罪行為を実行しようとした、こういうものでございます。
 そこで、今の例でございますけれども、今の事例はお二人がやったと。そうすると、前も御説明しましたけれども、団体というのは、共同の目的とかそれから犯罪実行部隊である、そういうものが必要だと。そうすると、今のような、対等の地位にある二人が一緒に万引きする、そういうものについては、これは要件を満たさないというふうに言えます。当然、第二の不正権益というものは、「団体の威力に基づく一定の地域又は分野における支配力」、このような定義でございまして、このような要件も満たさないということで、お尋ねのような事案については共謀罪は成立しないものと考えております。(発言する者あり)

○塩崎委員長
 御静粛に願います。

○柴山委員
 対等な二人と言いましたけれども、それでは、暴力団が対等に集まって組織犯罪をしたときも、対等な立場ならば処罰できないということなんですかね。
 またこの二人について質問させていただいて、例えば、B子さんが、では見張りをしましょうと共謀して、A子さんは万引きを実際にやりましょうという謀議をした場合、あるいはこれまでそういうことをしてきた場合、そういう役割分担が実質的になされた場合はどうなんでしょうか。

○大林政府参考人
 窃盗集団もいろいろあるわけでございます。今のような法案の定義規定によれば、窃盗集団であっても、構成員の交代があっても集団としての同一性が認められる、かつ、指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体である組織を備えるような場合は、これは団体に該当する場合もあるのではないか、こういうふうに考えております。
 あるいは、利益の帰属の問題でも、その場で盗んで二人で分けるという形ではなくて、ある程度の集団が、とったものをある程度どこかに集めるなり上納して、それから分配する、このような形態を予想しているんだと思います。

○柴山委員
 ちょっとこれ以上この事例についての細部の議論には立ち入りませんが、要は、こうした比較的身近な事案についても構成要件上該当し得るということがかなり問題となってくる場面があるのではないかということで、次の質問に移らせていただきます。
 次の質問なんですけれども、この共謀罪というのは、自首減免の規定はあるんですけれども、いわゆる中止の規定がないんですね。
 一般の犯罪であれば、実行の着手をした後、自分の意思でそれをやめた場合には、刑の必要的な減免、いわゆる中止犯という規定があるんですけれども、当然のことながら、予備ですとか共謀というような場合にはもう共謀してしまったら即それが既遂なわけですから、実際に共謀したけれども後でやめましょうと言った場合にもこれは共謀罪の適用があるということになってしまうわけですけれども、この中止犯があり得ないということについては、刑事局長、理論的にどのようにお考えですか。

○大林政府参考人
 御指摘のとおり、法案の共謀罪は重大な犯罪を実行することについての合意がなされた時点で既遂に達することから、共謀後に翻意しても、既に既遂に至っている以上、中止犯とはなりません。この点は予備罪や準備罪について中止未遂の規定が適用されないのと同様でございます。

○柴山委員
 そうなると、実際に合意に至らなかったのか、それとも合意をしたけれどもそれは撤回したのかということが、この二年以下の懲役という極めて重要な犯罪の認定において微妙な部分になってくるということなんですね。そこがかなりあいまいではないかという問題意識があります。
 次の質問なんですけれども、現在の刑法百五十三条で通貨偽造準備罪という犯罪があります。これは現実の通貨偽造も当然犯罪なんですけれども、その定型性、当罰性の高さから、準備行為そのものが独立の予備罪として構成要件化されているんですね。
 それでは、この通貨偽造準備罪、五年以下ということでこの共謀罪の対象になるんですけれども、通貨偽造を共謀するのではなくて、この通貨偽造の準備を共謀した場合、これは共謀罪に該当するんでしょうか。犯罪の実行という、実行の定義についてお伺いしたいと思います。

○大林政府参考人
 予備罪ないし準備罪は、一般に、ある罪を犯す目的で予備行為をした者を処罰する犯罪類型でございます。
 予備行為の遂行を合意する場合には、その目的となる犯罪の遂行についての合意も認められるのが通常であると考えられます。したがって、通貨偽造準備罪のようにその法定刑が長期四年以上の重大な犯罪に当たる予備罪であっても、予備罪の共謀罪ではなく目的となる犯罪、すなわち通貨偽造罪の共謀罪が成立する場合が多いと考えられます。
 もっとも、みずからは目的となる犯罪を実行する意思がない、いわゆる他人予備行為の共謀に加わった場合であって、当該予備行為が御指摘の通貨偽造準備罪のようにその法定刑が長期四年以上の重大な犯罪に該当する場合には、当該予備罪についての共謀罪が成立する可能性はある、このように考えております。

○柴山委員
 しかしながら、例えば、通貨偽造については全く具体的な日時、場所等を明らかにしていない、だけれども、これから札の偽造をしたいので精巧なカラーコピー機を買いましょうという合意をすることは当然あるわけですね。この場合はどうなんですか。やはりこの場合も、正犯しかも既遂犯の目的が明らかということであるから、これは通貨偽造の共謀罪ということになるわけなんでしょうか。

○大林政府参考人
 今おっしゃられるもの、結論としては、それは成立する場合があろうかなと。
 ただ、証拠次第、先ほど委員がおっしゃったように、証拠の認定、収集の問題がございますので、それは、そういうことで可能性のある場合とない場合があるんじゃないか、このように考えております。

○柴山委員
 だから、成立する場合があるというのは百五十三条の共謀罪なんですか、それとも通貨偽造罪の共謀罪なんですか、どちらですか。

○大林政府参考人
 その本人がやろうとする、目的とする犯罪が何かということにかかっているのではないかというふうに思います。
 ですから、本罪の共謀罪が成立する場合もあれば……(柴山委員「そうですね」と呼ぶ)ということでございます。

○柴山委員
 以上、申し上げたとおり、この共謀罪というのは、具体的にでは何をするかということがかなりあいまいな場合であっても、またその当罰性がそれほど高くなくても、あいまいな基準によって刑罰権の行使がなされる、そういう可能性が高い類型だなということは、これはもう認めざるを得ないというように私は思っております。
 したがって、次に、ではその弊害というものをどうやって防いでいくかということになるかと思うんですけれども、国際的組織犯罪防止条約の第五条を見ると、この共謀罪の限定要素として、参加者の一人による合意の内容を推進するための行為または組織的な犯罪集団の関与ということが挙げられておりまして、一般に説明されるのは、この組織的な犯罪集団の関与ということを私たちの国はとったんだという説明がなされております。
 では、ここで質問なんですが、前者の参加者の一人による合意の内容推進行為、いわゆるオーバートアクトということを同時に要素とすることが条約上禁止されているんでしょうか。

○大林政府参考人
 条約との関係で申し上げれば、このようなオーバートアクトが認められる場合に限って重大な犯罪の共謀を処罰するものとすることは、特段の問題はないものと考えております。

○柴山委員
 それを要件とした場合に、法益保護上、あるいはその他の何か不都合な事例というものが、先ほど平沢先生からもお話があったんですけれども、あるでしょうか。
 というのは、オーバートアクトを要求しても、だれか一人が何らかの行為をすればいいわけです。例えば先ほどの国際的なクレジットカードの偽造の場面でいっても、だれか一人が例えばプラスチックカードを購入して、それを準備するという行為が認められれば、オーバートアクトの要件を導入したとしても、これを処罰することは可能なんです。ただ、これを全く要件としなければ、合意をしたかどうかということも不明確、合意を撤回したかということも不明確です。だけれども、その外部的な徴憑ということ、これを要求すれば明確性というのは格段に広がるんじゃないかというように思うんですが、この点はいかがでしょうか。

○大林政府参考人
 おっしゃられるオーバートアクトを条件とした場合には、理論的には、例えば共謀者の一人が共謀の成立直後に自首した場合など、いまだ当該共謀の内容を推進する特段の行為が行われていない場合には、他の共謀者についても検挙、処罰ができないという場面が想定されると思われます。
 もっとも、今回の法案の共謀罪においては、共謀の存在のほか、組織性の要件等を満たすものに限って処罰するものとしており、その要件は極めて厳格なものとなっております。そして、これらの共謀が行われたことや組織性等の要件に該当することを立証するためには、実務上はオーバートアクトの存在が非常に重要となり、オーバートアクトが存在せず、あるいはその存在が立証できない事案においては、これらの立証が困難になる場合も多いと考えられます。
 したがって、共謀罪において、オーバートアクトを要件としない場合と、した場合の実務上の差異は、結果としてはそれほど大きくない場合もあり得る、このように考えております。(発言する者あり)

○柴山委員
 今ありましたけれども、それなら入れても問題はないじゃないかというのが私の意見なんです。
 また、オーバートアクトが明確でないという批判があるんですけれども、これは、この条約の解釈として私たちが独自に決められると思うんですね。例えば予備行為とか幇助、まあ幇助までいくと書き込み過ぎかと思うんですが、例えば予備行為というような、あるいは予備とは何かということをちょっと定義づけたり、そういうことを入れればいいわけですから、それによって特段の不都合が生じる、それは、先ほどおっしゃった共謀の段階で一人が自首した場合という場合に確かに差異が出てくるかもしれませんが、これを入れることによって特段のデメリットがあるとは私は思えません。
 その一方で、先ほど申し上げたとおり、謀議の認定ということに非常にあいまいさが残るところをかんがみれば、やはり行為というものを一歩要求することによって、明確性あるいは当罰性というものが高まるのではないかという問題提起だけさせていただきたいというように思っております。
 共謀罪から、次にサイバー犯罪条約の問題に移りたいと思っておりますが、その前に、今のやりとりを聞いて、法務大臣、オーバートアクト、要するに外部的な行為を要求することについて、法務大臣なりの御感想というものがあれば、ぜひお伺いしたいと思います。

○南野国務大臣
 先生が今お話しになられましたオーバートアクトに関しまして、御指摘のような御意見があるということは承知いたしております。条約も、共謀罪につきまして、合意の内容を推進するための行為を伴うものという条件を付加することを認めております。
 しかしながら、このような条件を付するべきか、つけるべきか否かについては、法制審議会での議論において、共謀罪については厳格な組織性の要件、それがつけられており、処罰範囲が不当に広がるおそれはないことなどに照らし、その必要はないとされた経緯がございます。
 このようなことから、政府案におきましては、条約が言っております合意の内容を推進するための行為を伴うという条件は付しておりません。
 いずれにいたしましても、御指摘の点も含めまして、十分に御審議いただきたいというふうに思っております。

○柴山委員
 私は、すべてのこの長期四年以上の犯罪についてオーバートアクトが絶対必要だと言っているわけではないんです。例えばテロですとか大規模な薬物犯罪、こういうものについては、オーバートアクトを要件としなくてもいい事案、いい構成要件についてもあると思います。現に、私戦陰謀罪ですとか、あと、破防法の犯罪でも陰謀罪というのはあるわけです。だから、本当に取り返しがつかない、もう早期の検挙が必要だ、重大な犯罪であるというようなものについては、こういうオーバートアクトが要らないものも当然あっていいと私は思うんですね、その法益保護の観点から。
 だけれども、それが必要なものと必要でないものを一緒くたにして、長期四年以上のものであれば全部、組織犯罪であればこれを認めてしまってよいという考え方は、ちょっといささか間口を広げ過ぎなんじゃないかなということだけ指摘をさせていただいて、サイバー犯罪条約の問題に移りたいと思います。
 サイバー犯罪条約についてなんですけれども、これは平成十七年の一月二十七日現在、G7諸国を含む三十八カ国が署名を済ませていたということなんですけれども、署名した各国の中での批准手続は今どのような状況になっているんでしょうか。

○大林政府参考人
 御指摘の欧州評議会サイバー犯罪に関する条約につきましては、本年十月現在、すべてのG7諸国を含む四十二カ国が署名を済ませており、そのうち、デンマーク、ハンガリー、ルーマニア等の十一カ国が既にこの条約を締結済みであるものの、G7諸国はいまだこの条約を締結していないと承知しております。
 しかしながら、例えばフランスでは、本年、サイバー犯罪条約の締結を許可する法律が成立しており、大統領が署名すれば条約締結の承認の手続は終えることになると聞いておりますし、また米国では、サイバー犯罪条約締結のために法律の制定や改正の必要はなく、平成十五年、大統領がサイバー犯罪条約を上院に提出し、条約締結の承認を求めていると聞いているところでございます。

○柴山委員
 進んではいるということなんですけれども、要は、署名した各国でそういう手続が進んでいる中で、日本の法整備というものが突出して進んでいるのではないか。
 当然のことながら、サイバー犯罪ということになりますと、ちょっとこの後若干質問させていただきますけれども、やはり処罰の範囲の限定ということが恐らく重要な要素になってくると思うんですね。だから、そのあたりはやはりくれぐれも慎重な検討をしなくてはいけないのではないかということを付言したいと思います。
 それで、実際に今回、刑事訴訟法の改正なんですけれども、九十九条第二項に「電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、」複写した上で差し押さえすることができるというふうになっているわけですけれども、その当該端末で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されている、それは具体的にはどういうものを想定されているんでしょうか。

○大林政府参考人
 端的に申し上げますと、これまで、現在の現行法の刑事訴訟法は、差し押さえの対象を有体物としておりますので、コンピューターそのものを押さえる。しかしながら、現代問題となっているのは、コンピューターにある情報がどうなのかという問題がございまして、しかしながら情報自体は別のサーバー等に入っている、それを呼び出さないと意味がない、こういう場合に捜査手法としてどうしたらいいかということで手当てをするものでございます。
 御質問の、電子計算機、すなわちコンピューターに電気通信回線で接続している記録媒体からの複写の事例といたしましては、例えば、そのコンピューターの利用者にあてた電子メールが保管されているメールサーバーや、インターネット上のリモートストレージサービス、すなわちインターネットを利用して遠隔地にあるコンピューターにデータを保管することができるサービスを利用してデータを保管している場合、あるいは社内LANで接続されている他のコンピューターをデータの保管のために使用している場合などにおいて、これらの電子メールやデータを複写することを想定しております。

○柴山委員
 ということは、要するに、コンピューターの端末から勝手にプロバイダーから情報を得て、それを犯罪に利用している場合に、それを意外とする当該プロバイダー、このデータというものはどうなんでしょうか。要するに、勝手に端末でデータを写している場合でも、そのもとのプロバイダーが、処理すべき電磁的記録を保管していると認定できるかどうか、その線引きはどうなんでしょうか。

○大林政府参考人
 電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体からの複写の処分が認められるためには、まず、当該電子計算機自体について、裁判官によりその差し押さえを許可する差し押さえ許可状が発付されることが必要でございます。その上で、この処分が認められる範囲については、差し押さえの対象となっている電子計算機に電気通信回線で接続しているだけでは足りず、それに加え、当該電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にある記録媒体に限るとしております。そして、この処分が認められる記録媒体の範囲については、裁判官が発する電子計算機の差し押さえを許可する差し押さえ許可状に明示されなければならないことになっておりまして、捜査機関はこの範囲内に限って複写を行うことができることとされています。

○柴山委員
 質問に答えていただいていないんですが、要は、勝手にデータをダウンロードしてそれを使っているだけでその親のプロバイダーが差し押さえられるかどうかであって、その差し押さえの手続的な要件を聞いているわけじゃないんですね。
 要するに、当該端末のコンピューターで勝手にデータを引っ張ってきてもよいと言ったら、どんなプロバイダーも全部差し押さえの対象となりかねないわけですね、その令状さえ、特定さえしていれば。今特定性の要件をおっしゃったんですけれども。
 だから、当該パソコンとの実質的な結びつき、何らかの結びつきがなければ、プロバイダーを運営している人もたまったものじゃないですよ。勝手に犯罪をやったら、どんどん差し押さえられてしまう、そういうことにはならないんですか。

○大林政府参考人
 今申し上げているのは、今の当該電子計算機、それを使用する人について、例えば、何かの犯罪の被疑者の疑いがあります、その人のデータのやりとりが問題となりますというときに、当然、先ほど言いましたリモートに、サーバーに入っていることがあります。
 ただ、今おっしゃられることを私が正確に理解をしているかどうかわかりませんけれども、その被疑者のコンピューターからサーバーに対して今のようにデータが行っている場合には、IDなり、当然アクセスする権限を持っているはずですね。ですから、その範囲内の、IDにおいてアクセスできるところを引っ張るという形ですから、当然、サーバーの方ではそういうものに被疑者が利用するということは承知している実態があるわけですから、そこはサーバーの方の権限を害するということではないと思います。

○柴山委員
 以上です。質問を終わります。どうもありがとうございました。

第163回 国会 衆議院 日本国憲法に関する調査特別委員会

第163回 国会 衆議院 日本国憲法に関する調査特別委員会 第3号
平成17年10月13日(木)
午前九時開議

○柴山委員
 まず冒頭、今回改正しない条文についてもこの際国民投票が必要ではないかという問題について、私は不必要であると感じております。
 むしろ、緊急性の高い条項につき今回については最終的に国民投票の対象となるだろうということを考えた場合、あくまでも個別投票によってそうした条項の改正をしていくことになるだろうというように考えております。
 二番目に、投票権者の範囲についてでございます。
 前回申し上げたとおり、私は、国民投票に参加する権利は選挙に参加する権利よりも強い保障を与えるべきであるという見地から、例えば国民投票の公正を、あるいは選挙の公正を害するような行為をした者についても投票権を認めるべきだという立場に立ちましたけれども、選挙年齢と区別した国民投票年齢というものについても、私は考えてもよいと思っております。ただし、立法政策上、例えば十八歳というように選挙年齢を国民投票の年齢と引き下げるということは、もとより妨げられるものではないと考えております。
 次に、投票運動の規制についてでございます。
 先ほど高見参考人から、虚偽報道規制については慎重であるべきだ、そしてその根拠としては、むしろ公共空間で議論を闘わせるべきだということを根拠にされておりましたが、現在、そうした思想の一般市場、公正な市場というものはメディアの寡占体制の中で私は確保されていないのではないかというように思っております。やはり、明らかに虚偽であることを知りながら現実の悪意を持って報道するようなものについては、規制を及ぼすべきではないかというように考えております。ただ、それに対する規制というのは、前回申し上げたとおり、一定の機関による警告ということを前置させるべきだというように考えております。
 なお、一部の委員から反論権について指摘がありましたけれども、反論権というのは、メディアの報道の自由を侵害しながらこちらが、その反論者の意見を、主張を受け入れさせるという、いわばより大きなアクセス権という問題を含んでおりますので、これについては慎重に考えるべきではないかなというように考えております。
 なお、先ほど高見参考人から、政府が公金を用いてパンフレットを作成することは慎重であるべきだという指摘がありましたが、これもやはり、思想の市場の公正を害する行為として検討に値する論点ではないかと思っておりますが、やはりここでも、明らかに虚偽であることを知りながら政府が広報をするというような場合を規制すればよいのではないかなと考えております。
 外国人の表現の自由についてでありますけれども、これは私も高見参考人と同じように、国民の投票の権利の前提としてそうした多様な情報に接する機会を保障するという観点から、これを認めてもよいのではないかなと考えております。
 なお、次に過半数の算定基準の問題に移りたいと思いますが、前回申し上げたことに若干補足をさせていただきます。
 今回、条項別の投票制を原則とし、また、マル・バツ式をとることを前提として以下議論したいと思いますが、例えば独立なA条、B条、C条について、一枚の投票によってマル・バツをつける、白票を投じた場合には、これは全面的に無効であります。しかし、Aだけマルをつける、そしてB、Cについては何も記載をしなかった場合、やはりAに対してマルをつけた人の意思を尊重するべきであると考えます。そして個別に、やはりBとCについては無効と考えざるを得ないのではないか。とすれば、仮に有効投票の過半数をもって決すべきとした場合には、条項ごとに無効票を集計しなければいけないという膨大な作業が必要になってくるわけでございます。
 私は、この総投票者を分母にするか有効投票を分母にするかということは一定程度立法政策で決められる問題だと思っておりますので、ここは総投票者を分母とする方が実務上現実的ではないかなと思っておりますし、またそれが、大量の棄権者が出た場合の正当性の確保にも役立つのではないかなというように考えております。
 最後に、無効訴訟のあり方についてでありますけれども、滝委員から指摘されたように、高裁どこでも訴訟は提起されるべきであるというように考えております。そして、その効果についてでありますけれども、私は、将来効として効果を発するべきであると思っております。その間に積み重ねられた事実の覆滅ということが問題によくされるわけですけれども、これは、二回改正があったときも同じような覆滅ということは、混乱ということは避けられないわけですから、将来効できちんと投票の効果は無効であると宣することが必要であると私は考えております。
 以上です。

第163回 国会 衆議院 日本国憲法に関する調査特別委員会

第163回 国会 衆議院 日本国憲法に関する調査特別委員会 第2号
平成17年10月6日(木)
午前九時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 時間がありませんので、個別の論点について触れたいと思います。
 まず、投票権者の範囲についてですけれども、私は、国民投票の投票権者の範囲と公職選挙の投票権者の範囲は区別して論じるべきだと思います。
 国民投票に参加する権利というのは、国民主権の究極的な発現形態であり、強く保障されるべきであると考えております。これと、公正な代表を選ぶためにさまざまな制約が課されている公職選挙の権利というものは、おのずから区別して論じられるべきではないかというように考えております。個人的には、年齢要件の違い、あるいは、公職選挙法違反で公民権が停止されている者にも国民投票に限っては認めるべきだという考えであります。
 事務のさまざまな問題ということが反対意見に述べられますが、こうした重要な権利についての制約につき、実務上の困難性を理由にするということは説得力を欠くと考えておりますし、仮に実務上の問題を考えた場合においても、国民投票と国政選挙を同時実施しない、別々の機会に実施するということであれば、その実務の困難性ということもさほどではない。また、今パソコンが十分発達しているわけですから、ソートという機能を使えばそれほど困難なく実務上も処理することができるのではないかというように考えております。
 二番目に、投票の形態でありますけれども、私も、多くの先生方が指摘されるように、個別に国民の信を問うということが望ましい、またそれが現実的であるというように考えておりますけれども、ただ、論理的に一体性をなすもの、政策的に不可分であるもの、例えば内閣に関する条項を一条一条分けて国民投票に付するということは、私は非現実的であるというように考えておりますので、そうした関連性のあるものに関しては、一括した投票を認めるべきだというように考えております。
 次の点でありますけれども、運動の自由について申し上げたいと思います。
 私は、先ほど申し上げたとおり、公職選挙の場合における、例えばインターネットの運動を一定期間禁止するというようなナンセンスな規制をするべきではない、基本的には自由であるという考えでありますけれども、先ほど来お話にあるような、組織的な大規模な買収、供応というようなものを自由にしてしまってはいけないというように考えております。ですから、おのずと、保岡理事が先ほど御指摘になったような、一定の報道規制、あるいは金で投票を買ってはいけないというような規制、これはやむを得ず付するべきではないかと思っております。
 ただ、そこも恣意的にならないために、やはり一定の機関による警告制度というものを前置するということで、罰則の適用については慎重であるべきだというように考えております。
 続きまして、国民投票の過半数の定義について最後に申し上げたいと思います。
 基本的に有効投票の過半数でよいのではないかという意見も説得力があるんですけれども、仮に、先ほど申し上げたように、逐条ごとにマル・バツで判断をするとした場合に、すべてに白票を投ずることと条文ごとに白票を投ずるということ、これを本当に区別できるのかなというような部分があります。やはり投票総数の過半数ということで、白票を投じた人は主体的にこの国民主権の行使の機会に参加したのだ、その人の中から過半数を選ぶのだということを考えても、私は十分理屈としては成り立ち得るのではないかなというような気がしております。
 以上でございます。

第162回 国会 衆議院 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会

第162回 国会 衆議院 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 第4号
平成17年7月15日(金)
午前十時開議

○柴山委員
 おはようございます。自由民主党の柴山昌彦でございます。本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 まず、整理をさせていただきたいんですけれども、今回の改正案、政治団体のする同一政治団体に対する寄附の上限を与党案では五千万円というふうにされていますけれども、一方、政治活動を本来の目的としない企業、団体のする政治活動に関する寄附の上限は、これは一億円という数字が出ています。この二つはバランスを欠くのではありませんか。簡単に整理をしていただきたいと思います。

○佐田議員
 本改正案では、同一の政治団体間の寄附の上限を年間五千万円としたところでありますけれども、これは、いわゆる個別制限、つまり、ある政治団体が一つの政治団体に対してする寄附の制限でありまして、これに対しまして、御指摘のとおり、企業、団体のする寄附については、上限が、これは資本金にもよりますけれども、年間一億円とされているところで、これはいわゆる総枠規制、つまり、一つの企業、団体が複数の政党、政治資金団体に対してする寄附の総額に関する制限であるところであります。
 したがって、御指摘の点は、個別制限と総枠制限という趣旨の異なる規制を比較するものでありまして、バランスを失するとの指摘は当たらないものと考えておるわけであります。

○柴山委員
 個別制限というお話だったわけですけれども、とすれば、受ける政治団体、これを分ければ、複数の政治団体をつくれば、結局、上限額の潜脱ということが容易にできてしまうのではないか、むしろ、こうした上限規制を設けるよりは政治資金の透明性を図るための努力をすべきでないか、こういう意見があるところだと思うんですけれども、どのようにお考えでしょうか。

○宮腰議員
 確かに、ある政治団体が複数の政治団体を設立いたしましてそれぞれが寄附を行えば、個別制限の趣旨を潜脱することができないわけではありません。
 しかしながら、政治団体は、政治資金規正法上、収支報告書の提出を義務づけられておりまして、政治資金の流れが国民の監視の目にさらされているところであります。収支報告書に記載されました政治資金の流れを追跡することによりまして、政治団体が関連政治団体を複数設立し、個別制限の趣旨を潜脱している実態が明らかになった場合には、国民の厳しい批判を浴びることとなろうと思います。
 もっとも、常識的に申し上げまして、政治団体を不必要に多数設立するということは極めて不自然でありまして、考えられないことだと私どもは認識いたしております。

○柴山委員
 一方で、二十二条の一項に関して、政党や政治資金団体に係る寄附、これについてはなぜ上限を設けなかったのでしょうか。

○早川議員
 御承知のとおり、政治資金規正法は、議会制民主主義の健全な発展を図るため、政党本位の政治資金制度の確立を図ろうとするものであります。政党は、政治活動の中心となるべき存在であることから、政党の政治活動の自由を妨げることがあってはならないというふうに考えております。
 このような点を踏まえまして、与党案におきましては、政党、政治資金団体以外の政治団体からの寄附に上限を設ける一方で、政治団体から政党及び政治資金団体に関する寄附については上限を設けないこととしたものであります。

○柴山委員
 次に、今回、民主党から出ている案について質問したいと思います。
 ここで、迂回献金の禁止に関して、条文で言えば二十二条の六の四ということになると思うんですけれども、特定の政治団体に対して寄附をすることを条件とした寄附の禁止ということを明定されているわけですけれども、条件というのはどういうことなんでしょうか。これは、停止条件、要するに条件が成就した場合には効力が認められる、そういうような意味なんでしょうか。

○辻議員
 お答えいたします。
 民法上の停止条件とか解除条件とか、そういう意味ではありません。寄附をする際に付される条件であって、寄附の受領者が特定の政治団体に対して寄附をするという約束のことであります。
 それで、このような条件を付した法案というのは少なからずありまして、一例としては、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の三十五条の三の一号で、当該接客業務受託営業を営む者の使用人その他の従業者で法律に規定する業務の一部に従事するものに対し、「受託接客従業者でなくなつた場合には直ちに残存する債務を完済することを条件として、その支払能力に照らし不相当に高額の債務を負担させること。」というような規定がございます。
 したがって、このような規定ぶり、条件を付することはほかの法律でも見られる例であります。
 以上でございます。

○柴山委員
 今、要は要するに、特定の政治団体に対して寄附をすることを約束するというような趣旨のことだというようにおっしゃったんですけれども、そうしたら、一たん寄附をした後に、事後的に、あれは、では特定の政治団体について寄附をすることにしましょうというようにした場合、これは当該寄附につけられた法律行為の付款ではないわけですけれども、こうした事後的な約束についてはどういうことになるんでしょうか。

○辻議員
 お答えいたします。
 それは、この法律の条項の脱法行為というか、ないしは潜脱する目的に出たものが明らかな場合には、この法案でこの規定に違反するということになりますが、そうでない場合には、法律違反にはならないということであります。
 これは、前回の答弁でも出ておりますけれども、迂回献金の禁止ということをこのような形で明定することにより重要な意味がある、こういうことで御理解いただければと思います。
 以上でございます。

○柴山委員
 明定することに意義があるというようにおっしゃったんですけれども、そうしたら、約束をすることはしないけれども、特定の政治団体に対してこのお金のうち幾ら幾らを寄附してくださいねというようにお願いをするということ、相手方は何にも承諾もしませんというような場合には、これはどうなるんですか。

○辻議員
 今おっしゃっているのは、やはり立証の問題だと思うんですね。だから、規定は規定としてきちっと今回改正案としてお認めいただいて、あと、いろいろな種々のケースについては、その規定の趣旨を逸脱するものであればこの規定の違反になりますし、そうでない場合には規定の守備範囲には達していないということでありますから、個々のケースの立証の問題とこの規定をこのように設けることの意味というのは、これはまた別の問題だろうというふうに考えます。
 以上です。

○柴山委員
 立証の問題というようにおっしゃったんですけれども、これは、後ろの方で、二十六条の二で罰則規定がついております。辻委員、法曹の先輩として尊敬申し上げておりますけれども、罪刑法定主義という重要な原則がありまして、要するに、構成要件というのは明確性ということが非常に強く求められています。また、さっき、脱法行為とおっしゃいましたけれども、類推解釈、これは厳に禁止しなければいけないということになります。
 とすれば、結局、こういう法律を設けても実際に機能する場面はないと私は言わざるを得ないと思うんですが、どのようにお考えでしょうか。

○辻議員
 脱法行為とか潜脱というのは、どの法律、法規についてもやはり事例があります。だから、判例でいろいろ裁判所があえて認定をしている例というのはもう本当にたくさんあるわけですよね。ですから、この法規だけがとりわけ構成要件として明定さを欠いているということではありません。そこの点についてはきちっと申し上げておきたい、このように思います。

○柴山委員
 一応、次の質問に移ります。
 今回、不実記載についての過失犯というのを設けられております、二十六条の四の二ですけれども。こうした過失による不記載というような犯罪はほかにどのようなものがあって、どういう法定刑が認められているんでしょうか。

○辻議員
 いろいろ調査をしてまいりましたけれども、現時点で明らかになっている範囲では、過失による不記載罪という規定はほかにはございません。

○柴山委員
 非常に、現行の法制度あるいは実際の妥当性という点からも、今回のこの御提案されているものについてちょっと疑問があるんじゃないかなということを申し添えまして、再度、与党案に対する質問をさせていただきたいと思います。
 さて、政治資金団体に係る寄附、これについて、金銭の場合は振り込みをしてくださいというような規定を設けられるわけですけれども、そうなりますと、金銭、あるいは例外として定められている不動産譲渡、貸し付け、これ以外のものは一切禁止される、そういうことになるんでしょうか。客観的な相場がある動産ですとか有価証券の場合はこれを許容してもいいように思うんですけれども、いかがでしょうか。

○佐田議員
 本改正案の趣旨は、政治資金団体にかかわる寄附については、その透明性を確保するために、原則として銀行等への振り込みによることとして、寄附が行われたことについて客観的な記録を残すことにありまして、寄附の目的物に客観的な相場があるかどうかは関係がないということであります。したがって、政治資金団体にかかわる寄附については、御指摘のような動産や有価証券といった銀行等への振り込みの方法によることができないものの寄附は、原則としてできないこととなるわけであります。
 なお、政治資金団体は政党のために資金上の援助をする目的を有する団体でありまして、このような規制を設けても特段の支障を生ずるものではないと考えておるところであります。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 もうほとんど時間がなくなりましたので、国庫納付制度についてお伺いしたいと思います。
 今回、違反をされて納められた寄附について国庫納付制度というものが定められたんですけれども、この法的性格はどういうものなのか、没収とは異なるのでしょうか。

○宮腰議員
 今回の国庫納付の制度は、刑法の付加刑としての没収ではありませんで、法的に一定の者の所有権を剥奪して、これを国庫に帰属させるという性格のものであります。
 一方、没収は刑法上の付加刑でありまして、主刑たる禁錮や罰金にあわせて付加される刑罰であります。
 今回の改正におきましては、違法な方法でされました寄附について、刑事罰の規定を設けない一方で、そのような寄附の授受をそのまま認めることは妥当ではないという政策判断によりまして、このような制度を設けたものであります。

○柴山委員
 以上で質問を終わります。
 どうもありがとうございました

第162回 国会 衆議院 郵政特別委員会

第162回 国会 衆議院 郵政特別委員会 第19号
平成17年6月23日(木)
午前九時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。本日は、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 さて、これまでたくさんの議論が出てきたわけなんですけれども、ここで少し整理をさせていただきたいと思います。
 自民党で今回の民営化法案に慎重な考えを持っておられる先生方のプラン、あるいは民主党のホームページで示されているプランを拝見いたしましたが、実は、何らかの制度面での改革の必要性というのはどの勢力の方々も認めておられるわけですね。現状でも確かに、生田総裁のもと、大変経営での改善というものは見られるわけですけれども、それでももう実は限界に来ているのだというように総裁御本人がおっしゃっているところであります。
 そこできょうは、細かい点を捨象して、また揚げ足取りもあえてすることなく、大きく整理をさせていただいて、それぞれのプランの比較ということをパネルで行ってみたいと思います。
 さて、お示ししたこちらのプランなんですけれども、まず政府案は四分社化、もちろん持ち株会社あるいは独立行政法人はちょっとこれとはまた別なわけですが、四分社化して民営化という内容であります。趣旨はたびたび政府から説明があるとおりでございます。
 そして、自民党のいわゆる慎重な方々の皆様が提示されている公社維持案、ここではあえてAというように名前をつけさせていただきました。これは、実は今、四年間の中期経営計画、これの終了後に一定の基本理念に基づいて見直しを行っていきましょうというところでありまして、この基本理念というのは、ここに書いてあるとおり、適切な負担を行いつつ民間、公的な業務受託を公社のまま拡大をしていきましょうということであります。趣旨は、中期経営計画の成果を見きわめたい、また、よく言われている郵政の公益性というものをきちんと確保していかなければいけない、また、国民の利便性を拡大するとともに、公社の経営基盤を強化しましょうというところが趣旨として挙げられると思っております。
 また、民主党さんのホームページを拝見したところ、公社のまま金融部門を縮小すべきだ、「民営化よりも正常化」というメッセージが示されていて、これは資金の流れの透明化というところに非常にウエートが置かれているのかなと。それで、要は、郵便局が果たしているのはいわば民の手の届かない部分、民業補完というところを徹底したものであるのかなというように考えております。
 さて、その下に、問題点というところはあえて空欄にしてあります。そこで竹中大臣に、まず、公社維持案Aと公社維持案B、このそれぞれについてどのような問題点が考えられるかということをお伺いしたいと思います。
 このAとBは、公社維持というところでは共通しているんですが、片一方は拡大していきましょう、片一方は縮小していきましょうということで、実は全く違う主義主張に基づくものなんですね。ですから、一部でこの二つを連携させようという案があるんですけれども、これは私は全くナンセンスなのかなというように思っております。
 その上で、この問題点について、それぞれ大臣のお考えを伺いたいと思います。

郵政表.jpg

○竹中国務大臣
 我々、政府案も本当に一生懸命考えて出させていただいているわけでございますけれども……(発言する者あり)

○石破委員長代理
 静粛に願います。

○竹中国務大臣
 A案もB案も、それぞれの立場で一生懸命お考えの上、お出しのものだと思います。
 その意味で、短時間で問題点だけあれしますと不十分な点もあるかもしれませんが、あえてお尋ねでございますので思うところを幾つか述べさせていただきますと、やはり、まず基本的な考えとして、民間でできることは民間でやろうという市場経済社会の根本的な原理を考えますと、今のような形で特別の公的な組織でやる必要があるのか。民間でできることを民間でやっていくというその姿勢がやはり政府案の中心でありまして、その点、A案、B案とは違っているというふうに思います。したがって、基本的な哲学の問題があろうかと思います。
 具体的には二点、特に申し上げたいと思いますが、一つは、経営の自由度とイコールフッティングとの関係でございます。
 経営の自由度について申し上げると、公社が取り扱うものというのは、これは公共の目的を担保する公社の性格を踏まえまして、どうしても個別具体的に法律上限定されざるを得ない。その意味で、柔軟で機動的な事業運営に困難を来す、そういう制約があるというふうに思っております。御承知のように、郵便事業を取り巻く環境はすごい変化をしている。金融も同じである。その点を考えますと、やはりこの時代のすさまじい変化に対応していくのは困難なのではないかというふうに思うわけでございます。
 イコールフッティングについて申し上げますと、例えば、現在の公社の制度では法人税そして預金保険料等の負担がない、郵貯、簡保については政府保証が付されている。これはやはり、民間から見ると明らかに優遇措置が講じられているわけでございまして、民間企業と同一の競争条件とはならない。公社の場合、民間企業との間に公正な競争が行われないというような問題点が生じかねないのではないかというふうに思っております。
 民間にできることは民間にというのは、やはり市場における自由な経営と創意工夫、革新に向けたたゆまない努力によって経済社会は進歩していくものである。その意味では、公社形態を維持したままでは限界があるのではないかというふうに考えるわけでございます。
 そしてもう一点、加えて、金融部門を縮小するということになりますと、これはまた別の問題が生じてくると思います。
 公社に課されている官業であるがゆえの制約を取り払って、経営の自由度拡大によって郵貯、簡保の資金、機能を市場経済の中で効果的、効率的に運用して、郵便局ネットワークという貴重な国民の資源を最大限活用していきたい、我々はそう思うわけであります。そして、国民や地域の利便性を向上させるというふうに考えるべきでありますので、これは、資金の残高を縮小させるのみでは金融の改革の本来の成果は極めて限定的にならざるを得ない。また、規模を無理やりに縮小させた場合に雇用への影響も場合によっては深刻なものになりかねない。そのような問題点が生じようかというふうに思っております。
 その意味で、さまざまな問題を克服して、私たちは政府案を私たちのベストの考えとして御提示させていただいているところでございます。

○柴山委員
 ありがとうございました。
 資金の運用の面についてお伺いしたいと思います。
 しきりに、今回は、出口論の改革をまず最初に優先すべきである、財務省の非効率な財投運用、これを何とかして改革していかなければいけないという指摘がございます。
 ただ、そうした影響力を遮断するには、当然、やはり資金がプールされているこの郵便事業関係の各会社に民営化あるいは天下りの制限ということを行って、その影響力の遮断を徹底すべきであるというのが今回の民営化のプランだと思っておりますが、どのように考えておられますでしょうか。
 あともう一点は、こうした多様なポートフォリオ、宮澤委員等から御指摘があったんですけれども、もしこれを透明な形で運用していくということであれば、民営化しようがしまいが、公社のままでそういった影響力を遮断していくのであれば、ポートフォリオを組むときの困難さ、あるいは国債の消化可能性、こういった部分については同様の問題が出てくるのではないかなというふうに思っておりますが、この点、どのようにお考えでしょうか。

○竹中国務大臣
 柴山委員御指摘のとおり、公社のままで改革することの限界は、この資金の流れを変えるという観点を議論する場合に、私はやはりより明確になってこようかと思います。
 資金の流れを変えるには、当然のことながら、入り口と出口、そして中間、これをすべて同時に改革していかなければなりません。
 出口の財投改革につきましては、これは既に改革が始まっております。政策金融につきましても、骨太の方針で明記をさせていただきましたように、秋に向けて政策金融改革の基本方針をさらにつくっていくということを決めております。そして、その際、政策金融の残高をGDP比で半分程度にするという目標も掲げてやっていくわけでございます。
 しかし同時に、入り口、資金の入り口についてもしっかりとした改革をしなければいけない。今、三百四十兆円、家計の資産の約四分の一の資産が郵貯、簡保に集まっているわけでございますが、これは政府保証が付された政府のお金ということで、安全資産に運用せざるを得ないという宿命を持っております。したがって、そこからはリスクをとる民間の資金には入っていけないという一つの問題点、宿命を持っております。やはりそこを変えない限り、資金の流れを変えて経済を活性化していくということにはどうしても結びついていかないわけでございます。
 一方で、柴山委員が御指摘の第二点、これはポートフォリオでございますから、今度は郵政という経営主体から見た場合でございますけれども、これはこの委員会の場で生田総裁御自身がお述べになっておられたと思いますけれども、やはり多様な資産運用をしないといろいろなリスクに対する対応ができないわけでございます。今のような限られた資産運用では、その有効な、いろいろな金融手法を駆使したポートフォリオが組めない、そういう制約を今の公社である以上は持ち続けるということになろうかと思います。
 そうした観点からも、やはり経営の観点からもポートフォリオの多様化を認める。それはやはり民間と同じ条件で競争していただいて、民間の自由な競争の中でやっていただくしかない。公社としての運用では限界があるということであろうかと思っております。

〔石破委員長代理退席、委員長着席〕

○柴山委員
 業態の自由化については、ちょっと後ほど質問させていただきたいと思います。
 先ほどの表で、問題点のところを政府案についても空欄にさせていただいたんですが、幾つかこれまで指摘をされている中で、分社化というのが非常に不自然であるということが指摘をされております。また、コストがかかるのではないかということも指摘をされております。分社されれば、当然のことながら相互取引に消費税がかかってくる、あるいは資産や従業員の切り分け、これについても基準が必ずしも明確でないとか、あるいはコストがあるのではないかといった指摘があるわけなんです。
 しかし、実は平成十二年の商法の改正で、会社の分割制度というのがわざわざ導入をされております。当然民間会社にもこのようなデメリットというものは生じてくるにもかかわらず、なぜこうした会社の分割制度というものが商法の世界に導入されたのか。生田総裁も分社化自体は別に異議を唱えませんと明確におっしゃっておりますが、これについて法務副大臣の方からお願いします。

○滝副大臣
 ただいま委員の方から、会社の分割が平成十二年の法律で改めて商法にでき上がったという御指摘がございました。そのとおりでございまして、その目的の前に、今回のというか、平成十二年の改正でどういうふうになったかということだけ最初に申し上げたいと思います。
 それまでの商法では、会社の分割はそれなりに可能であったのでございます。要するに、親会社が分割して子会社をつくるときに、親会社が子会社の株主になるという形での分割は可能だったのでございますけれども、親会社の株主が子会社の株主になるということが商法上はできませんでしたので、平成十二年では、あえて親会社の株主が会社を分割したときに子会社の株主に同時になるという改正をいたしました。
 その趣旨は、これは国際化の波あるいは企業の競争力を高める、そういう意味で組織の編成を柔軟化させる、こういうことでございました。

○柴山委員
 先ほどのコストの問題もあるわけでして、実際に会社の分社というものはどの程度実績があるのか、把握されている数字を教えてください。

○滝副大臣
 平成十五年度の数字でございますけれども、これは法務局に会社の登記がされた数字で拾ってまいりますと、株式会社で平成十五年、設立された会社が全国で一万八千。それに対して、分割で設立した会社が、株式会社ですけれども、これが約九百。九百にちょっと欠けますけれども、約九百でございます。約五%ということになります。

○柴山委員
 コングロマリット化あるいはシナジー効果というところから、この分社ということについては反対の意見を唱える考え方の方もたくさんいらっしゃるわけですけれども、法人格が一体でなければこのような効果は発揮できないのか。また、この三事業が一体ということ、特に国営の金融機関、これだけの大規模なものを持つということについてどのようなデメリットというものが予想されるのか。それぞれについて竹中大臣にお伺いしたいと思います。

○竹中国務大臣
 これは、その時々で、分散がいいのか統合がいいのか、いろいろな議論が繰り返されてきていると思います。これは一概にどれがよいという状況ではないというふうに私は認識をしておりますが、コングロマリットで総合的にワンストップのサービスを提供するというメリットもあれば、一方で、経営の専門性を高めるないしはリスクを遮断するという観点から分割をしなければいけないという場合もある。それはまさに経営の実態判断ということなのだと思います。
 いずれにしましても、その場合に、委員まさに御専門家として御指摘のように、一つの法人格を持っていなきゃいけないかどうかというのは、これはまた別の問題になってまいります。一つの別々の法人格を持った中で、しかし一体的な戦略的なグループでの経営というものもあり得るわけでございますし、むしろ、意思決定そのもの、その責任を明確化という観点からは、私の認識している限り、その機能を分社化するような中で、グループとしては全体的にいろいろな戦略性を持ってやっていくという会社も結構活躍しているな、そのような認識を持っております。

○柴山委員
 ただし、今回の分社案というのは、実は私は若干疑問も持っておりまして、というのは、会社法、商法の上では、資産のこうした分割に際しては、債権者、今回のプランでいえば預金者ですとか保険契約者、こうした取引関係者の保護の手続というものが予定をされております。債権者の異議催告という手続がとられておりますが、今回は特段そのような契約者保護の手続というものがとられていないのではないか。この点についてどのようにお考えでしょうか。

○竹中国務大臣
 これは、例えば郵便貯金を持っている債権者である預金者がどのようにその通知を受けるかということなのかと存じますけれども、これについては、基本的には法律の改正をするわけでございますので、法律の仕組みが変わるということを通してその周知徹底が行われるのが原則であろうかと思っております。
 もちろん、それ以外の債権者というのもいらっしゃるわけでございますから、これについては、その準備会社においてやはり適切な措置がとられていかなければならないというふうに思っております。

○柴山委員
 当然のことながら、旧勘定契約の分については政府保証が依然としてつくわけですから、だから、仮に五千億円超の負債を抱えている郵便事業の株式会社の方に資産が切り分けられてしまうということは、村井先生が憲法違反じゃないかというような御指摘があったわけですけれども、預金契約者に本当にそれほど格段の不利益を及ぼすかというと、実はそういったことはないというように考えております。
 あとは、職員の意見聴取手続。一定の、窓口会社等での職員の切り分けということがされるわけですが、職員のそうした身分の変更についての希望の聴取手続等について、どのような設定になっているのでしょうか。

○竹中国務大臣
 これは、新設されます各会社への具体的な職員の帰属につきましては、主務大臣、具体的には総理大臣と総務大臣が作成をいたします基本計画に従いまして、準備企画会社である日本郵政株式会社が、それぞれのビジネスモデルに基づく各社の具体的な業務内容を勘案しながら承継計画において定める、そういう手続になるわけでございます。
 この日本郵政株式会社が承継計画を作成する際の具体的な手続が大変重要だというふうに思いますが、日本郵政株式会社の判断にこれはゆだねられるわけでございますけれども、同社が承継職員の労働条件を定めるに当たっては公社での勤務条件に配慮すること、これが郵政民営化法案の第百七十一条で定められております。したがいまして、そこの職員の帰属先につきましては、公社における就業場所、そして従事している業務などの勤務条件に配慮して定められることになると思います。これによって職員が安心して意欲的に働いていただくということは、我々も大変重要なことであろうというふうに思っております。

○柴山委員
 さて、問題点としてさらに指摘をされているのは、民間会社との競争により民業圧迫にならないかという問題点が種々指摘をされております。もちろん、公務員の身分を保有したままで競争するのとどっちの方が民業圧迫の度合いが強いかということは、これは先ほど大臣が御指摘になったとおりなんですけれども、民営化した上での競争でも、これだけ大きな会社が競争するということになれば、そこにはやはりある程度の緊張関係というものが当然生まれてくるわけです。
 そこでお伺いしたいんですけれども、きょうは日通総研さんもお見えになっているということなんですが、物流の関係でちょっとお伺いしたいと思います。
 改正法の二十九条では、物流業務については子会社からの受託という形でやっていくことが可能であるわけですが、準備期間終了後は本体がこうした物流業務に進出できるようになるということになるわけであります。
 現在、運送業者さんが受けているさまざまな法規制について、イコールフッティングになっていないという批判が、例えばヤマト運輸さんの方から問題提起されておりまして、係争になっていることは皆様御案内のとおりかと思うんですけれども、こうしたイコールフッティングの問題、どのようにお考えでしょうか。
 まず竹中大臣に、これについてどのように処理されるのかということについてお伺いしたいと思います。

○竹中国務大臣
 何といいましても、民営化の最大の目的、目指すところは、経営の自由度を持っていただいて、そしてダイナミックに経営をしていただくということに尽きるわけですが、そうであるからこそ、民間とのイコールフッティングのバランスをどうとるのかというのが大変重要なポイントになってまいります。
 今回の場合、やはり規模が非常に巨大だという委員の御指摘でございますが、全くそのとおりだと思います。そのほかにも、実は、全株を処分するまでは政府出資の形で国の信用や関与が残るという点もございます。また、一般事業会社と子会社を持つ持ち株会社の傘下に置かれるというある種の特例がその間、移行期間ですね、認められるということになりますので、これは金融機関、特に金融の側から見ますと、やはり競争上の優位性を持っているということであろうかと思います。
 こうした点については、与党との協議におきましても、一方で民業圧迫という角度から、他方で経営の自由度という角度から、種々の意見を賜ったところでございます。そうした意見も踏まえまして、今回の法案では、持ち株会社に対しまして、移行期間内における郵便貯金銀行等の株式の完全処分義務を課して国の信用、関与を断ち切ることにする、そして、当初は公社と同様の業務からスタートして、国際業務等々については別の規定もございますけれども、基本的には同様の業務からスタートして、経営の自由度とイコールフッティングのバランスをとっていく、それを民営化委員会の意見を聴取の上、透明、公正なプロセスのもとで段階的に拡大していくというふうな、そういう仕組みをつくっているところでございます。

○柴山委員
 私の方であえて指摘をさせていただきますが、郵政民営化法案の七十四条というところで、郵便事業株式会社は、成立の日以後六カ月間は、貨物利用運送事業法、貨物自動車運送事業法、こうした許可規定というものを猶予される、だけれども、その後についてはイコールフッティングを図っていくというような規定が定められているわけですけれども、きょうは日通総研さんもお見えだということなんですけれども、このイコールフッティングの問題と今回の法律案について、どのようにお考えかということをぜひお伺いしたいと思います。

○塩畑参考人
 日通総合研究所の塩畑でございます。
 物流事業は今、非常に厳しい競争状況下にあるわけですね。したがいまして、若干の競争条件の違いというのが結果的には非常に大きな今後の競争力の相違になってくるというようなことが十分にあるわけです。そういうような視点から考えますと、できるだけ細部にわたってこの競争条件を統一していただくというのは非常に重要なことなんだろうと思うんです。
 ただ、その一方で、郵便事業会社の成り立ちですとか、あるいはユニバーサルサービスを法的に義務づけられているといったような特殊な性格からいたしますと、いきなり条件を完全にそろえるというのは現実に非常に難しいことだろうと思うんですね。したがいまして、大きな問題点だけは少なくともそろえていくというようなことが重要かと思うんです。
 今先生お話しの中にございましたけれども、例えば、小包事業のトラック輸送にかかわる部分につきまして、現在準拠する法律が違うわけですけれども、それが民間の宅配便事業と同じように貨物自動車運送事業法が適用されるというようなことになりますと、かなり大きなイコールフッティング上の問題点は、完全にクリアとはいきませんけれども、ある程度クリアされるというように見ていいのかなと思うんですね。
 ただ、若干次元が違うのかもわかりませんけれども、特に国際事業につきまして、欧米の企業を中心にMアンドAが活発化しているわけですけれども、その郵便事業会社のMアンドA資金が持ち株会社を通して還流するというようなことがあり得るのかどうか、判然といたしませんけれども、そういうことはぜひ歯どめがかけられてしかるべきではないかなというように考えております。

○柴山委員
 今の最後の御指摘は極めて重要な御指摘だったと思います。当然、郵便事業会社は、この前ちょっとどなたか御質問されていたんですけれども、全部、一〇〇%持ち株化されていますので、直接の株式交換ということはできない法律上の定めになっていますが、確かに、御指摘のように、子会社を通じた形での提携というものは十分あり得るわけですから、現にそういうことをされるというようなお話もあるわけですから、それについて、今の御指摘は十分御留意をいただけたらなと思います。
 せっかくですので、今、国際物流の話が出ました。先日麻生大臣が、国際物流は当たればもうかりますというようなお話をされていました。また、この国際物流に関しては、特にアジア市場については今進出しなければおくれてしまうというようなお話もあります。そういうような観点から、このビジネスの将来性あるいは進出の緊急性、こういうようなものについて、もしお考えがあれば伺いたいと思います。

○塩畑参考人
 国際事業でございますけれども、例えば、我が国の輸出入の海上コンテナの貨物量あるいは国際航空貨物量は、長期にわたって非常に伸びております。物流事業の中で際立った成長分野だと言ってよろしいかと思うんですね。したがいまして、有望だということにつきましては、まさにそのとおり、非常に有望なマーケットだと思うんです。
 ただ、それだけに、先ほどもちょっとお話し申し上げましたけれども、欧米の主要物流事業者を中心としまして積極的な展開をしているわけです。こういうような動きに対して、我が国の既存の大手の物流事業者もどういうような対応をしていくべきか、今、相当決断を迫られているというような時期だろうと思うんですね。一言で言いますと、非常に有望ではあるけれども、それだけに競争も激しい、また相当高度なノウハウも要求されるといったようなことでございますから、進出するリスクも当然大きいと言っていいんだろうと思うんです。
 グローバル企業の物流の考え方といいますのは、従来のように、個々の物流業務を切り離して物流事業者に委託するような方向から、トータルで物流を委託するような方向にどんどん変わっているわけですね。これは荷主企業の物流やロジスティックスの考え方が全体最適志向というようなことになっていることを反映したものでございますけれども、そういうような顧客のニーズに対応していくには、グローバル企業のロジスティックスの仕組み、効率的な仕組みを提案できるといったような能力と、国際間のドア・ツー・ドアの物流のオペレーションを非常に高度に、なおかつ効率的にやれるといったようなノウハウが非常に強く要求されるわけです。したがって、単独の企業でこういう仕組みをつくり上げるというのはなかなか難しいということで、合従連衡が非常に進んでいるということだろうと思うんですね。
 もう一点、緊急性のお話でございますけれども、今、中国市場が非常に重要なターゲットになっているわけでございますけれども、御案内のように、WTO加盟以降、中国の物流事業に対する外資規制は順次取り外されております。二〇〇八年にはほぼ完全に外資規制が撤廃される予定になっております。そういうことを受けまして、二〇〇一年から、これは我が国の物流事業者だけじゃございませんで、欧米の物流事業者も非常に活発に中国進出を進めてきております。
 当然、他社に先駆けて顧客ニーズに対応したような仕組みをつくり上げるということはその後の競争上非常に有利な展開になるというのは物流の世界だけじゃないだろうと思いますけれども、そういうような観点からいいますと、可及的速やかに進出をするというのは、このマーケットで成功するための非常に重要な要件になるのかなというように考えております。

○柴山委員
 どうもありがとうございました。
 また、業務の拡大については、特に金融部門で貸付業務の拡大をするということが、特に地域の金融機関との競合ということがやはりかなり懸念される材料ではないかなと私は思っております。特に地域での貸し付けということが、オーバーバンキングの時代ということはいろいろな委員の方から御指摘があるわけですけれども、顧客の侵奪ということがあるのではないかということが言われております。このあたりの民業圧迫について、竹中大臣、どのようにお考えでしょうか。

○竹中国務大臣
 郵貯銀行がどのような経営戦略をとっていくのか、別の言い方をしますと、ビジネスモデルを組み立てて業務展開をしていくか。これはもちろん、言うまでもなく経営判断の問題でございますけれども、そのビジネスモデルが地銀の業務と重なる部分がどの程度あるかないか。これはちょっと、私の立場から具体的に申し上げるのはなかなか難しいわけでございますけれども、やはり郵貯銀行というのは、全国の郵便局ネットワークを通じた地域の顧客基盤が強みになるということで、地域密着型の業務を当然展開していくことになるのではないかというふうに想定をしております。
 そのような中で、この郵便局を通じた資金調達力にすぐれて、資金量も豊富だけれども、少なくとも民営化当初は融資等の資金運用面の能力が十分ではない郵貯銀行が、同じく地域の顧客を基盤とする地銀と、融資業務などのノウハウを補うとともに地域経済の発展に必要な資金を供給するように、例えばでありますけれども、シンジケートローンのような形で、あるいはもっと緊密な業務提携というような形で相互補完していくということも十分に考えられるのだろうと思います。
 また、地銀にとりましても、このような郵貯銀行との提携だけではなくて、郵便局会社と提携することによって、この郵便局ネットワークという強力なチャンネルを活用したビジネスチャンスの拡大というのもあろうかと思います。
 我々としては、やはり大いに競争していただきたいということ、これはございます。しかし同時に、その競争はイコールなものでなければいけないわけでございます。相互の強さを生かして、拡大均衡、プラスサム志向の改革をぜひ相互に続けていっていただきたいと思っているところでございます。

○柴山委員
 今、大臣から、窓口を利用しての貸し付けもあるじゃないか、地銀さんが郵便局の窓口を通じての貸し付けというようなお話もありましたけれども、先ほど加藤先生が銀行法上の問題点について御指摘になられました。それ以外にも、やはりこれまで郵便局と地銀さんとは、お互いが目のかたきにして戦ってきているわけですよね。それが、あしたから、じゃ、地銀さんの窓口として働きなさいといって、人は別にかわるわけじゃありませんから、どれだけモチベーションが上がるのかなという疑問も一部では指摘されるんじゃないかなというふうに思っております。
 また、郵便局のお金を地銀さんに融資しろというようなお話があるんですけれども、これも今、地銀の預貸率が大体七割程度という中で、どれだけその受け入れたお金をきちんとした形で、地銀さんが限られたパイの中で運用できるかということも、私は、実は率直なところ、なかなか難しいのかなという気がしております。
 今、大臣が御指摘のとおり、さまざまなノウハウの融通だとかあるいはシンジケートローンとかについても、しっかりと新しい分野で努力、協力をしていくというようなお話もありましたので、そういうところではきちんと一緒にやっていくという基盤はあるのかなという気はしておりますが、このあたりの微妙な関係について、地銀協さん、きょうお見えになっているということなんですが、ちょっと御意見を、短くお伺いしたいと思います。

○瀬谷参考人
 瀬谷でございます。
 ただいま柴山先生から大変行き届いた御質問をいただきまして、恐縮いたしております。確かにこれはデリケートな問題でございます。私、ありていに、きょうは率直に話せといいますから、せっかくの機会でございます、率直に言わせていただきます。
 やはり基本的に民営化ということについては、プリンシプルは賛成でございます。なぜなら、これは外国との比較になりますけれども、公的セクターが非常に、異常に肥大している、これをある正常な形に戻さないかぬ、その意味においては全く同感でございます。
 ただ、余りにも現在郵貯、郵貯について問題を絞って申し上げますと、ツーマッチ、巨大なんですね、二百三十兆ですから。それに対して、私ども地銀だけでも資金量が百八十六兆ぐらいですか、六十四行全部足してもかなわないだけの資金量を持っていらっしゃる。
 それが、今のところは貯金業務の方にだけ特化されておりますけれども、これが今度、貸し出しとか消費者ローンに回ってきた場合、今柴山先生が御指摘されたとおり、貸し出しのマーケット、融資マーケットはいわば過飽和なんです。オーバーサプライになっていると思う、現象的に。これは、将来的な経済の状況によりましてはまた回復するかもしれませんけれども、世界的に見てやはりディスインターメディエーションが進んでいる。そういう中でこれが急激に入ってこられた場合、なかなか残念ながら、先ほど竹中大臣がおっしゃったような予定調和的な、仲よくするという選択肢は相当難しいのではないか。
 あと、もちろん代理店を、郵便局会社ですね、我々とが手を結ぶことも、それはあり得ないわけではありませんけれども、なかなか現実問題としては難しい。
 それから、きょう簡潔にというお言葉、もう一つだけ申し添えますと、先ほどは地銀地銀とおっしゃっていましたけれども、私は、地銀の代表で出ているとは思わない、地域金融機関全体を代表していると思っている。それはもちろん第二地銀もあるし、信金も信組もあります。それが今、非常につらい経済情勢の中で一生懸命お客さんを支えている。そういう重層的な金融構造を、壊滅させると言ったらオーバーかもしらぬけれども、基礎を危うくするような急激な進出は、これはちょっとお考えいただきたいし、抑止力を十分に働かせていただきたい、かように存じております。
 私からは以上でございます。

○柴山委員
 本当に率直な御意見を伺えたと思っております。
 今回、さまざまな、将来の不安だとかそういうことが御指摘をされているわけですけれども、将来の不安にとことん備えるということも大切ですけれども、今後十年間という期間に、さまざまな環境の変化も予想されているわけです。だから、この十年間に当然、今、投資信託とかさまざまな証券化も大分実績が伸びてきているというようにデータも報道されておりますし、この十年間でさまざまな変化が生じてき得る。
 私は、現時点では、一定の合理性のあるシミュレーションに基づいてメリットとデメリットを比較した上で、メリットの方が大きいということであれば、やはり比較検討の上、制度設計を行っていくべきだというように考えております。それで、もちろん、これから後、そういう環境が変化し得るわけですから、変化して何らかの困った事態が生じた場合には、その時点で、将来の立法府がやはり適切に対応、その時々に応じたかじ取りをしていくということが大切なのではないかなと思っております。
 ただし、将来の立法府が過度な負担をこうむってしまうような制度だけは、これはぜひ避けなければいけない。将来の地方の人たち、将来の社会的弱者の人たちが過度に負担をこうむってしまうような制度設計を今やることだけは避けなくてはいけない、そのような考え方でおります。
 それで、一点伺いたいと思うのですけれども、基金の積み重ねということが話題になって、一兆円という規模の基金が将来足りなくなるのじゃないかというようなことがしきりに言われているわけです。これは、基金の運用益、今、地域、社会両方の貢献基金で年間百八十億円の利用ということが想定されているわけですけれども、もしこれが足りなくなった場合、これは足りるか足りないかの争いはもういいです、足りなくなった場合にどうなるのかというところをぜひお伺いしたいと思います。取り崩し等はできるのですか。

○竹中国務大臣
 これは、私たちはこれで足りると思っているわけでございますけれども、それについての説明はもういい、基金を取り崩すことがあるのか、そういうお尋ねであろうかと思います。
 この基金というのは、地域や社会にとって必要性が高い業務を郵便局株式会社そして郵便事業株式会社が安定的に実施する、それを可能にする仕組みでございます。したがって、これは原則として取り崩すことはできないということにしております。
 しかしながら、基金の運用益のみでは財源を確保できない、郵便局株式会社、郵便事業株式会社の経営努力によっては貢献業務の実施が困難になって、かつ、地域社会の安定に重大な影響を及ぼすおそれがあると認められる、そういう要件を満たす例外的な場合には取り崩すことができるというふうな仕組みにしているところでございます。

○柴山委員
 そういう仕組みがあるということで、先ほど申し上げたとおり、将来の立法府が適切な対応をとってもらうということをぜひ強く期待したいと思います。
 最後の一点、私、郵便認証司の問題について一言お伺いしたいと思います。
 内容証明郵便は、これは認証司の役割だということが言われているわけです。先日も、この問題について、村井委員の方からるる指摘があったわけですけれども、現実の問題として、内容証明郵便というのは、これは私も仕事をやっていたときによく使ったんですけれども、夜とかでも持っていって、複数、三通持っていって、その内容を照合してただ判こを押すだけの仕事なんですね。これは資格が必要という業務というよりは、やはり郵便局という公的な機関がやっていたからこそ高度な証明力というものが与えられていたんじゃないかというのが、私は疑問があります。
 それで、もしこれを資格制度と結びつけるのであれば、例えば、私が夜間、内容証明郵便を出して、認証司さんがいませんでしたということになれば、それは、せっかく一生懸命早く持ち込んだのに、その日では処理できないということになってしまうんですか。それを副大臣の方にぜひお伺いしたい、法務省の担当にお伺いしたいと思います。
 滝副大臣には、ここで改めて、今回の法案に政府の一員として賛成をされて、一生懸命御努力をされるということについても確認させていただきたいと思います。

○滝副大臣
 まず最後のところから申し上げます。私は、ここで副大臣として答弁する限りにおいては、政府原案に反対することは一言も言ったことはございません。
 それから、今の認証司の問題でございますけれども、基本的に内容証明郵便は、いろいろな法律行為を起こすときに、それが後で証拠能力を持つということで扱われているわけでございます。
 一番有名なのは、民法四百六十七条で、債権、要するに目に見えない債権、紙の債券じゃなくて目に見えない債権、指名債権を第三者に譲渡するときには確定日付の証明が要るということでございまして、これが今、内容証明郵便で扱われているわけですね。したがって、昔、フランス人のボアソナードが民法案をつくったときには、認証制度がなかったものですから、母国のフランス民法では第三者に対する債権譲渡が有効だったんですけれども、日本ではなかったんです。そのぐらい重要な制度でございます。
 したがって、私どもとしては、当然、この郵便認証司は、そういう時間的な問題として十分考えて処理をしてもらえるというふうに思っております。

○柴山委員
 以上で終わります。どうもありがとうございました。

第162回 国会 衆議院 武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会

第162回 国会 衆議院 武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会 第4号
平成17年5月11日(水)
午前十時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 お二方にお伺いしたいんですけれども、いわゆる災害弱者と言われる高齢者の方々が、最近、大規模災害で被害になる事例が大変多発しております。また、周辺自治体、こちら、片山知事の事前の資料等で周辺自治体の長には組合消防に大変遠慮されている方もいらっしゃるということですので、こうした災害弱者あるいは周辺市町村の防災体制の充実ということをどのようにお考えかということをまず伺いたいと思います。
 その上で、先ほど来、地域防災ということについて、私は、小中学校、要するに義務教育を受けている人たちの親御さんを交えた形で活性化していくということが非常に有効な手だてになっていると思っておりますが、こうした小中学校との連携あるいはそうしたものの避難訓練、そういった形を通じての訓練というものをどのように実践されているかということをお伺いしたいと思います。

○片山参考人
 災害弱者の皆さんの問題というのは、国の指針にも出ていますし、それから県でも県の保護計画の中で考えるんですけれども、具体的には、やはり一番は市町村が肝心だと思うんです。市町村の皆さんが、それぞれの該当の方がどういう状況にあるのかということもよく把握しておかなければいけないので、市町村の計画をつくるときにうまくそれが取り込めるかどうかということだろうと私は思います。
 それから、弱者というわけではありませんけれども、子供たちの問題があるわけで、これも非常に重要です。これは学校との連携ということもありますし、もう一つは、保護者の意識、保護者との共通の理解と認識ということも必要なものですから、例の法律に基づいてつくります保護協議会にも保護者の代表に入っていただいて、そこで理解を深めていくということをとりあえずやっているような次第であります。

○河瀬参考人
 私ども、市内をブロックに分けまして、そこでいろいろな訓練をやっています。
 そういう中で、そこには当然、そのブロックに入っていますPTAの皆さん方にも連携ということで協力をお願いして、それぞれ、老人会からPTAからすべてを包括してのいろいろな訓練に取り組んでおるんですけれども、やはり学校としても学校独自の、教育委員会としてのいろいろな、子供たちに対する防災なり避難ということは非常に大切でありますので、私どもも今まで以上にやるように要請はしてまいりますが、私どもとして、いろいろな部署と連携をとることがより一層必要でございますので、その辺、今まで以上に努力をしていきたいと思います。

第162回 国会 衆議院 法務委員会

第162回 国会 衆議院 法務委員会 第15号
平成17年4月26日(火)
午前十時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 私は、質問二回目となります。前回の質問で社外取締役についてお伺いしたところ、次の日の朝刊に、これを上場会社に必要的に導入することが検討されるという記事が掲載されるなど、この委員会での質問が日本の企業制度のあり方というのをどんどん変えていっているのかなと思いまして、やりがいを感じている次第であります。そういった観点から、きょうも幾つか重要と思われる問題点について指摘、また御質問をさせていただきます。
 まず第一点目、代表訴訟の問題でございます。
 今度の会社法の中で、代表訴訟の却下、これは簡易却下制度だと言う方もいますが、「会社の正当な利益が著しく害される」ような場合ということが挙げられております。一般に、代表訴訟というのは会社に成りかわって役員に対して訴訟を起こす場合であるにもかかわらず、その訴訟の提起が会社の正当な利益を著しく害するというのはどのような場合を想定されているのでしょうか。

○寺田政府参考人
 会社から見ますと、その違法行為そのものによって損害をこうむっているということは当然想定するわけでございますけれども、しかし、会社の活動というのはさまざまな面で多方面にわたっているわけであります。別の法律関係でもって当該法律関係の責任の追及が影響を受けることがございます。
 私ども、今典型的に想定いたしておりますのは、会社が例えばアメリカで訴訟絡みの事件を起こしている、その場合に、アメリカの訴訟においては会社側にいろいろな特権がございます。私ども、今典型的に実務上こういうことがあり得ると言われておりますのは、アトーニー・クライアント・プリビレッジという特権の一つでございますけれども、日本で訴訟をすることによってある事実が明らかになる、そういたしますと、アメリカでのその特権が失われてしまって、その事実を明らかにしなきゃならない。それによって、別の訴訟で多大の損害をこうむる可能性がある。
 本来は、正当な権利として特権を主張して頑張っていけたのにそれができなくなる、そういうような場合が実務上は典型的に考えられるのではないかというふうに私どもは聞いております。

○柴山委員
 ただし、本来、追及されるべき責任であるわけですから、それはやむを得ないと考えることも当然可能だと思うわけです。
 次に、費用が過大な場合ということもあるんですけれども、そもそもこの費用が過大な場合というのを本当に類型の一つとして設けるのが妥当なのかどうか、また、その費用が過大な場合とはどのような場合を想定されているのか、それぞれお伺いしたいと思います。

○寺田政府参考人
 通常、損害賠償請求をするということになりましても、これは代表訴訟に限らず通常の場合を想定していただければおわかりになると思うのでございますが、相手方が無資力で、それの責任を追及するとすると、弁護士費用その他さまざまな手続費用がかかる可能性があるわけでございます。
 その場合に、そんなに費用がかかるなら、責任の追及ということで訴訟するということは避けた方が会社としては賢明ではないかという判断をする場合があるわけであります。代表訴訟もその意味では例外ではありませんで、その取締役の責任を追及するということは法律上は可能でも、しかし、その取締役が無資力で、実際に判決が出ても損害が回復することはまずない。にもかかわらず、その責任を追及するのに訴訟を起こす、弁護士費用がかかる。
 それが、通常の見合いですと、それはそういう違法な行為をしたことでございますのであり得るとも思うわけでございますけれども、それが非常に過大である、ほとんどとれる可能性がないのに物すごいお金をかけなきゃいけないというのは会社としてはやはり全体として避けるべきであるという判断をなさるのは、それは全く不合理なことではないだろうという判断でございまして、そのようなケースを念頭に置いて、このような却下事由というのを新たに設けようとしているものでございます。

○柴山委員
 ただし、代表訴訟については、先般の改正で八千二百円で訴訟が簡単に、手数料のレベルですけれども、提起できるようになったわけで、今弁護士費用というお話がありましたけれども、この弁護士費用だって、報酬の自由化ということが今後行われて、市場原理でどんどん競争が働いていくということになると、どれほど説得的な材料になるのかなということは疑問でございまして、また、それを裁判所が判断して却下をするというのが本当にあるべき姿なのかどうかということもちょっと疑問なんですが、これはもしかすると野党の議員の方から指摘をされるかもしれませんので、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 一般的に、これは参考人質問の中でも出たんですけれども、親会社株主が事業子会社の役員に対して代表訴訟を起こせるような制度をつくるべきではないか。
 今回、一〇〇%親会社ができた場合にも従前の株主が原告たる地位を承継できるというシステムはできたんですが、そもそも、初めからそうした二重代表訴訟、こういうものを認めるべきではないかという提言が浜辺陽一郎弁護士の方からなされているわけですが、これについて法務省の方ではどのようなお考えをお持ちでしょうか。

○寺田政府参考人
 そういうお考えというのが理論上あり得ることは、私どもも承知をいたしております。
 この会社法案では、おっしゃるとおり、そのような訴訟を代表訴訟としては認めるという範囲に入れていないわけでございます。そもそも、親会社と子会社というのは法人としてはやはり別でございますので、責任追及を親会社の株主がするということが適当かどうかということを検討するといたしますと、そもそも親会社の役員というのが一体子会社とどういう関係にあるのか、取締役、監査役、会計監査人を含めまして、すべて非常に慎重に検討してみなきゃならないという問題がもともとあるわけでございます。
 つまり、親会社、子会社について、現在の責任追及のあり方というのは、それぞれの会社の中でのコーポレートガバナンスというものを前提にして行われているために、代表訴訟だけ一つ取り上げて親会社の権限というのを拡大するというのは、バランスを欠くのではないかということになるわけでございます。
 また、もう少し直接的に申し上げても、直接の利害関係にない会社の責任追及を認めるというわけでございますけれども、それはやはりそれなりの相当の重たい理由がなければならない、あるいは濫訴にならないかどうかというような別の角度からの検討も必要、そういう意味で、今回は総合的に親子会社の問題を検討するにいまだ至っておりませんので、この問題というのも、それだけを取り上げて認めるのは難しいことでございますし、またそれ自体としてもなかなか難しい問題だというように考えているわけでございます。
 なお、仮に、親会社の株主というものが損害を受けた、その損害と子会社の取締役の行為との間に因果関係が認められるということになりますと、これは申し上げるまでもないかもしれませんが、第三者に対する責任というのはございますので、その責任を直接追及していただければいいということになるのではなかろうかと考えております。

○柴山委員
 いずれにしても、昨年、UFJ銀行が三菱東京フィナンシャル・グループに拒否権つき優先株を発行したということで、銀行さんの親会社の株主が損害をこうむっているんじゃないかというようなジャーナリスティックな話題を通じて、子会社のガバナンスをどうやって確保していくのかということは大きな問題点になっていることは疑う余地はないと思っているわけでございます。
 そのような観点から、子会社のガバナンスを確保できるシステム、これについてお伺いしたいと思います。特に、親会社の株主あるいは親会社の監査役、それぞれが、例えば取締役の行為の差しとめ請求、これは当然同じ会社であればできるわけですけれども、そういうものを行っていけるのかどうか、どういうシステムがあるのかということについてお伺いしたいと思います。

○寺田政府参考人
 先ほども申しましたように、これは原則に立ち返るわけでございますけれども、子会社のガバナンスというのは、やはり子会社は一つの会社でございますので、その中で、会社に対して善管注意義務を負っています取締役でございますとかあるいは監査役、そういった方々によって確保されるべきものだろうというふうに考えております。
 仮に、先ほど委員が提示されました例というのは具体例でございますので、その点について私どもが具体的にどうすべきであるということを申し上げる立場にはございませんけれども、ただ、こういう子会社のガバナンスが適当でない、それについて親会社の側で何ができるかということでございますけれども、それはむしろ親会社のガバナンスの問題としても問題になり得るわけであります。つまり、親会社が子会社の適当な管理を怠っているということにもなりかねないわけでございます。その場合には、むしろ、親会社の株主は、親会社の取締役等の役員に対して責任を追及するということが筋ではないかと考えております。
 子会社のガバナンスについて、親会社の株主と監査役がどういうことができるかということの具体的な御質問がございましたので、少し細かくなりますが申し上げますと、この新しい会社法案の規定上、親会社の株主が子会社に対してできることは、これは裁判所の許可のもとではございますけれども、定款の閲覧、謄抄本の交付請求が一つございますが、そのほかには、さまざまな書類の閲覧謄写請求権がございます。株主総会の議事録、取締役会の議事録、会計参与の保存する計算書類、委員会の議事録、会計帳簿等々でございます。裁判所の許可ではございますけれども、そういう閲覧請求等の情報の開示を求めることによって、何が行われているかということを明らかにすることは可能でございます。
 次に、では親会社の監査役が何ができるかということでございますが、これは、職務を行うために必要があるときに、子会社に対して事業の報告を求めたり、子会社の業務、財産の状況を調査するということが権限として認められております。三百八十一条の三項でございます。
 なお、親会社の株主や監査役が直接に子会社の取締役の行為の差しとめができるということは、これは認められておりません。

○柴山委員
 ただ、一〇〇%子会社であれば、当然その親会社の意のままに子会社の経営陣は動くわけですから、ここに例えば強力な差しとめ請求権などの措置を講じていくということが求められていくのではないかなという問題意識はぜひ共有していただきたいと思っております。
 次の質問に移りますが、今回の改正で、株主総会の招集地、これは現行法では原則本店所在地あるいはその隣接地ということになっているわけですけれども、これが撤廃されたということで、恣意的な株主総会の招集地の選定が行われるのではないかという懸念があるところであります。
 言うまでもなく、本店所在地というのは定款記載事項で、これは株主総会の特別決議がなければ本来変更できないことになっているわけですが、これを一切縛りを外すということになると、株主に非常に大きな不利益をこうむらせる状況が考えられ得るわけですけれども、これについてはどのようにお考えでしょうか。

○寺田政府参考人
 現在の商法のもとでは、おっしゃるとおり、この株主総会の招集地につきまして、原則としては本店の所在地またはそれに隣接する地ということが決められておりまして、定款で別段の定めができる、こういう形での規定を置いているところでございます。これに対しまして、有限会社については全く規定がございません。
 今回、現実の問題として、多くの中小企業が株式会社のカテゴリーに入ってくるということを念頭に置きまして、現実に株式会社の形態をとっておられる中小企業の方々を含めまして、いろいろな意見をお伺いいたしました。この方々の御意見というのは、この株主総会の招集地の規定がこのままであると非常に不便であるというお話でございました。
 つまり、実態といたしましては、本店の所在地や隣接地外を株主総会の開催場所として用いる会社がふえている、これは大会社についても決して想定されないことではないわけでございまして、会場をわざわざお借りになって株主総会をお開きになるということもあり得るわけでございます。
 こういたしますと、一体どっちを原則にするのかという問題でございまして、私どもの方は、多くの会社の存在ということを念頭に置きまして、原則は自由、しかし、おっしゃるとおり、株主のことを十分お考えになって一定の場所で招集すべきであるというポリシーをおとりになる株式会社にとっては、定款でそのことをお定めになるべきである、こういう方針を今回とったわけでございます。これによって御不便が解消されると同時に、そういうポリシーを明らかにされる会社にとってもある種の解決方法になるだろうというふうに思うわけでございます。
 なお、現実にそういう定款がなくてどこでも招集ができる場合に、殊さらにある種の株主の方々にとって御不便な地を選ぶということになりますと、これは招集手続自体が著しく不公正だということで株主総会の取り消し事由になり得るということは御指摘申し上げたいと思います。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 続いての質問ですが、会計監査人の責任についてでございます。
 前回、質問をさせていただいたときに必ずしも十分なお答えをいただいておりませんので、再度質問させていただきますが、そもそも会計監査人、これは公認会計士あるいは監査法人がやるわけですけれども、プロとして一定の提出された書類を監査するということを求められている以上、外部からその会社の社外取締役として職務を執行する社外取締役、これとは異なって、責任の一部免除ということを認めるのは不合理だと私は思うんですが、この点、どのようにお考えでしょうか。

○寺田政府参考人
 責任のあり方あるいは責任免除のあり方について、現状はどうなっているか、会社法案がどうなっているかということは前回御説明を申し上げました。
 これについての考え方でございますが、おっしゃるとおり、プロフェッショナル、ある種の職業倫理にある者ということで会社に対してより重たい責任を持つという考え方があり得ないわけではないと私も思うわけでございます。しかし、会社に対する関係としては、仮にプロフェッショナルな会計監査人であろうが、あるいは社外取締役で別にプロフェッショナルでない方であろうが、結局、会社に対してどういう義務を負うかという面では、その重要性において優劣をつけがたいものがあると私どもは考えるわけでございます。
 むしろ、会計監査人が専門家としてどういう責任を負うかということは、その会社に対してではなく世の中一般に対して負っていただきたいというふうに考えるものでございまして、これは、公認会計士法上のさまざまな責任、懲戒処分を受けるということを含めましてさまざまな責任というのをむしろ公認会計士として負っていただくというのがこの場合の問題解決の筋ではないか、こう考えたもので、今のような規定ぶりにしているわけでございます。

○柴山委員
 会計監査人と同じような話ですけれども、今度、監査役も権限についてはいろいろと見直しがされていると思っております。取締役会がある場合と取締役会がない場合、それぞれ監査役の業務監査権限、これがどのようになっているかということをお伺いしたいと思います。
 ちなみに、今小会社では、監査役の権限というのは、先ほど出た会計監査人と同様、会計監査だけ負担するという仕組みになっているわけですけれども、今度の新しい会社法では、それぞれの会社について監査役の業務監査権限というのはどのようになっているのでしょうか。

○寺田政府参考人
 監査役につきましては長い歴史があるわけでございます。戦後すぐ、あるいは不正事件が相次ぎました昭和四十年代、五十年代ということで、現在、それらを通じまして監査特例法もできた関係で、その監査特例法上の大会社とその後つけ加わりました中会社については業務監査権限があるということでございますが、それに対して小会社については会計監査権限のみでございます。つまり、そういう一対一の対応をこの業務監査権限についてはしているわけでございます。
 これに対しまして会社法案では、それぞれの会社の規模というものと監査役の業務監査権限というものが、こういう言ってみればワンパターンの一対一の対応というものが必ずしも今の会社の実態に合わないのではないか、むしろ会社御自身でそれを選択していただける、選択の幅というのを広げるべきではないかという考えでできております。逆に申しますと、むしろ中小企業というものについてもこの監査権限というものを強化する余地というのを広げよう、こういう考え方でございます。
 したがいまして、資本金の額にかかわらず監査役というのは原則として業務監査権限を持つということにいたしております。三百八十一条でございます。
 これに対しまして、非公開会社については、もし会社の方でそういうチョイスをなさって定款でお定めになれば、監査役の権限というのを会計監査権限だけに限定するということができるようになるわけでございます。三百八十九条でございます。
 ただ、その場合には、では今度はどなたが監督権限で欠けるものを補うかということになりますと、考え方は、当然、中小企業で、株主の方が権限を持つということになるべきであります。したがいまして、監査役が会計監査権限しか持っていない会社においては、株主によって違法行為の差しとめというのをより広く認めて、取締役会の招集権ですとか出席権というものを株主に与えるということで、株主によるガバナンスというものをより重視していく。会社の規模でのワンパターンではなくて会社のチョイスでそれぞれに対応していただける、そういう格好にいたしたわけでございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 続きまして、株式の関係の質問に移りたいと思います。
 自己株式の取得なんですが、近年、非常に緩和をされてきているということで、今回の改正でも、株主総会の定時総会に限らない、普通決議によって一定の範囲、種類、数、そして一年を超えない範囲内の買い受け期間というものを決議すれば、その範囲内で自由に買い受けということができるようになるわけですけれども、これは、従来自己株式の取得の弊害として言われてきた株主の平等ですとかあるいはインサイダー取引の危険とか、そういうものを増幅させるものではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○寺田政府参考人
 おっしゃるとおり、この自己株式の取得の問題につきましても、さまざまな契機はございましたけれども、基本的に自己株式というものの取得を拡大してきたという歴史がございます。結局のところ、自己株式の取得によって、会社の財産がどうなるかということと同時に、株主間の平等その他をどうするかというさまざまな考慮をしてこの間拡大をしてきたわけでございます。
 今度の会社法案においても、自己株式の取得については、これまでは授権する決議というのを、定時株主総会でしかできなかったところを、臨時の株主総会でもできるようにするということで、チャンスを広げるという部分はございます。
 しかし、この問題については、今委員も御指摘のとおり、むしろ株主間の不平等ということについてより神経をとがらすべきであるという声が強いわけでございまして、そういう声に応じまして、今回は、その取得条件、自己株式を会社が取得する条件の均等決定というものを義務づけるという規定を新たに置くことにいたしております。百五十七条の三項でございます。それとともに、総株主に、全部の株主に売却機会の確保のための通知、これも義務づけるようにしているわけでございます。つまり、自分が知らない間に、ある種の人だけが会社に株を取得されるということの不平等感というものをなくそう、そういうねらいでございます。
 したがいまして、一面では確かに、総会のチャンスを広げたわけでございますから、より自己株式にとっては便利になった面もあるわけでございますけれども、株主の平等原則の観点からいうと、むしろ今回は厳しくなったということが言えようかと思います。
 次に、インサイダー取引でございますけれども、これは、具体的な市場からの買い取りの注文というのは代表取締役が決定するところでございますので、どういうタイミングでどうするかということについて、特に新たにチャンスをふやしたからインサイダーの危険がふえたというものではございません。もともと、代表取締役がどういうタイミングで行うかによってインサイダー取引の危険が生ずるかどうかということについては、インサイダー取引についての規制自体でやはり対処していただかなければならない問題だろうというふうに思うわけでございます。
 したがって、そこは今回の改正によって影響を受けることはないだろう、むしろ別の対処方法にゆだねる、そういう考え方でございます。
    〔委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

○柴山委員
 今、別の規制というお話がありましたので、そのあたりですね。要は、代表取締役が自己株式の取得を行える範囲が広がったということで、この点、証取法で何らかの手当てが新しくなされているのかどうかということについて、ちょっと金融庁の方にお伺いしたいと思います。

○振角政府参考人
 お答えいたしたいと思います。
 証取法におきましては、百六十六条というところでインサイダー取引の禁止を規定しておるんですけれども、その同条第二項におきまして、自己株式の取得をインサイダー取引の重要事実として規定しているところでございます。したがいまして、上場会社の役員等の会社関係者や第一次的な情報受領者というものが、自己株取得の決定の事実を知りながら、その事実が公表される前に当該上場会社の株式等の売買を行えばインサイダー取引に該当することとなりまして、自己株取得によるインサイダー取引を防止する規定は既に措置されているということでございます。
 これが入りましたのは、十三年に金庫株を解禁したときに、いろいろなまたリスクが高まるだろうというところで既に手当てしているところでございまして、今回の会社法改正に伴う改正は行っておらない、もうそのときに既に措置しておるというふうに考えているところでございます。

○柴山委員
 しっかりと運用をしていただけたらというように思っております。
 続きまして、株式の消却についての御質問です。
 従来、利益による株式の消却ということを行うという場合には、必ずその株主の同意がなければいけないのではないかという制度設計あるいは学説になっていたと思いますが、今回、株式の消却、一〇〇%減資の場合そのほか、どのような変更点がなされているでしょうか。

○寺田政府参考人
 御指摘のとおり、現行法においては、株式の消却というのは二つのタイプがございました。一つは、発行されている株式というのを、発行会社が取得することなく、株主の手元にあるままでこれを消却するということを決めるわけでございます。これが商法二百十三条等に規定されているわけでございます。これに対しまして、発行されている株式を発行会社が一たん取得して、取得済みの自己株式というのを消滅させる消却、自己株式の消却というのが二百十二条に規定されているわけでございます。
 今回、この関係を整理いたしまして、消却ということの意味は、これは会社が自分の手元にある株式を消却させることで、株主の手元にあるままで消却が起きることはないという整理をいたしました。逆に申しますと、今まで強制消却をしていた部分というのは、一たん会社が株式を取得して自己株の形にして、それを消却するということでございます。これは、株主の手元に置いたままでの消却というのは一体どういう法律関係なのか、必ずしもすっきりしないところがございましたので、このような整理をしたわけでございます。
 次に、減資が行われる際に、この株式の消却ということがあり得るわけでございます。現行法でも、減資によって無償で消却される、それと同時にさらに新たに新株を発行するということが会社の再建等で見られるわけでございます。これは、一〇〇%減資を行うためには株主全員の同意が必要である、こういう解釈のもとにそのようなプラクティスを行っているというふうに理解をいたしております。
 しかし、先ほども申しましたような整理がなされましたので、今後、一〇〇%減資というのは次のような形で可能になると考えております。
 つまり、現在発行されている株式を、一たん全部取得条項つきの種類株式とする定款の変更をいたします。これは、株主総会の特別決議と種類株主総会の決議でできることになります。もちろん、これに反対される方については買い取り請求権がこの際に生じるわけでございます。その上で、つまり全部取得条項つきの種類株式ができた上で、今度、その全部取得条項つき株式というのを取得するという株主総会の特別決議をするわけでございます。それと同時に、現在行われているように新株の発行を行えば、一〇〇%減資と同様の法律関係になるわけでございます。この場合に、株主総会の特別決議が行われる際には、反対株主には取得価格の決定請求権というのがあるわけでございます。
 そのような形で、今後も、一〇〇%減資に伴って、同時に新株を発行するということが一回のチャンスでできるわけでございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 株式の質問を続けますが、今、株式の譲渡制限会社において議決権を制限する株式というものが発行可能なわけですけれども、その発行限度を撤廃するという定めになるかと思いますが、こうした譲渡制限会社というのは、特に取締役会がない会社の場合、株主による経営チェックというものが必要なわけですから、そのような場合に株主のチェックが弱まってしまうのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○寺田政府参考人
 これも会社の実態によるわけでございます。
 現行法においては、すべての株式会社について、議決権制限株式の発行限度というのを二分の一ということで定めているところでございます。これは、もともと株式会社というのは公開を前提にいたしておりまして、多数の株主の間で、しかもそれが入れかわる可能性がある株主の間で株式が持たれている状態というのを念頭に置きまして、少数の議決権を有する株主のみが会社を支配するというのは会社本来のあり方からすると適当でない、こういう考えに基づくものでございます。
 しかしながら、このたび、有限会社法制と一致させたということもあるわけでございますけれども、新たに中小企業を対象とするというふうに考えられます譲渡制限が行われる会社、こういう会社においては、そもそも株主が不特定多数と言えない場面も多いわけでございます。もともとどのような株主が会社について支配権を有するかというと、それはこういう会社においては会社自体が選んでいるに等しいわけでございます。
 そういうことを考え合わせますと、今度の会社法案においては、譲渡制限会社において議決権制限株式の発行限度というのを一律に決めてしまうのは適当でないというふうに思われるわけでございます。そこで、そのような制限というのを撤廃したわけでございます。
 もちろん、その場合に、そういう会社が一体どういうガバナンスを行われるかということはそれなりに慎重に考えていかなきゃならない面もございます。しかし、そういう会社においては、むしろ出資者、株主がどういうガバナンスを行うかということを直接考えるべきところでありまして、法制の上で議決権の制限を行うか行わないかによる規制を設けて、不特定多数の株主を相当数置いておくということを強制することによってガバナンスを確保するというのは、そういう会社の実態に合わない場面が多いのではないかというふうに考えられます。
 したがって、法律で一定の制限をかけるのはむしろやめまして、それぞれの会社にふさわしいガバナンスをそれぞれの会社でお考えになって、株主によっておやりになることをお決めいただく、そういう考え方に基づいているところでございます。

○柴山委員
 個人的には、そういう議決権が制限されているような会社で、かつ、取締役会がない場合には、監査役の設置を義務づけるべきではないかなというように私は思っておりますので、ぜひ御検討いただきたいと思っております。
 続きまして、次の質問なんですが、基準日の関係でお伺いしたいと思います。
 基準日、要は株主たる地位の確定の基準の日なんですけれども、それ以降に登場した株主について、これを会社の側から任意に株主と認めてよいかどうかということで従来から非常に大きな学説上の対立があったところなんですが、今回、特定の株主についてのみ基準日後の株主たる資格を認めることができるということになったわけです。このような扱いが、株主平等原則との関係から、取締役会の恣意的な運用を招くのではないかという批判が当然あるところだと思いますが、これについてどのようにお考えでしょうか。

○寺田政府参考人
 この規定は、もともと、基準日を設けて、そこで会社に対して議決権を有する株主というのを確定するという仕組みになっているわけでございますが、この基準日以後、例えば組織再編、合併等が行われまして新たに株主になる、なり得る者が出てきた場合に、その株主を会社として株主として認めていいのかどうかという問題があるわけでございます。これを一切だめということにいたしますと、むしろ会社にとりましては非常に組織再編等がやりにくくなるという影響も出てくるわけでございまして、それについて何らかの手を打ってほしいというのがむしろ実務界の要望であったわけでございます。
 今回、会社法案のこの百二十四条の四項というところで、基準日後に株式を取得した者についても議決権を行使することができるということの可能性を広げたわけでございます。
 もちろん、この場合に、一部の者については認めるけれどもその他の者については認めないという扱いをされる懸念がおっしゃるとおりあるわけでございます。もともと会社法においては、今度新たに株主平等原則を明文化したわけでございまして、この株主平等原則はこの場合にももちろん働くわけでございます。したがいまして、この株主平等原則に違反する扱いというのは許されないわけでございまして、例えば、同一の新株発行によって株主になった者のうち、一部の者だけをこの基準日以後の株主ということで株主として会社側が認めるというようなこと、これは許されないことでございます。
 したがいまして、この場合はむしろ、明文化された株主平等原則がきいてくるということを御理解いただきたいところでございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 時間もございませんので、その他の部分についての質問に移りたいと思います。
 今回、社債についてもかなりさまざまな改正がなされているわけですが、社債管理会社の責任、これについて大分強化の方向で見直しが行われたというように承知しておりますが、具体的にどのような違いが生じているのか、お聞かせいただけたらというふうに思います。

○寺田政府参考人
 社債発行会社がデフォルトに陥る事例というのが最近出てきているわけでございます。そういった場合に、今まで社債発行会社に対して貸付債権等の債権を有する社債管理会社と実際の社債権者との間に利益相反が先鋭化するという事態が現実に生じているという指摘がされているところでございまして、平成五年に社債についてはいろいろ見直しをいたしましたが、その後、こういう社債発行会社あるいは社債の管理者というものをどう見るかということについて重大な変化が生じているという認識は私どもも持っていたわけでございます。
 会社法案をつくる際に、このことを念頭におきまして、むしろ社債管理会社の責任というのを重くしようという方針がとられまして、社債発行会社に支払い停止等の事態が生じたときの前三カ月間にされた社債管理者の債権の弁済の受領等について誠実義務違反の立証責任の転換等において社債管理者の責任を強化するという今の規定について、さらに次のような措置をとっているところでございます。
 一つは、社債発行会社に支払い停止等があった後にされた債権の弁済の受領についてもこの規定の対象にいたします。立証責任の転換が起こるわけでございます。二番目は、社債管理者自身のみならず、その親会社、子会社等の社債管理者と特別の関係がある者の行為もこの規定の対象にするというところでございます。三つ目は、社債管理者の行う相殺もこの規定の対象にするというところでございます。いずれも七百十条に規定を置いているところでございます。

○柴山委員
 管理会社の責任の強化ということについては、私は賛成をしたいというように思っております。
 時間が大分なくなってまいりましたので、いよいよ企業買収の問題に入っていきたいと思っております。
 今回、買収防衛策としてアメリカで導入されているいわゆるポイズンピルあるいは黄金株などの制度が、我が国の法制化でもこれを取り入れることができるということが明らかになったと言われております。ただ、それ以外にも世界各国さまざまな買収防衛策というものがあるというように承知をしておりますが、ポイズンピルあるいは黄金株といったもの以外の諸外国での買収防衛策について、これは企業価値研究会、経産省さんの方で研究されていると思うんですけれども、お聞かせいただきたいと思います。

○舟木政府参考人
 お答えします。
 ヨーロッパの各国における防衛策の状況でございますが、これは国によりまして異なっているようでございます。
 まず、イギリスでございますが、これは入り口段階でございます公開買い付け規制を課しておりまして、全部買い付け義務を課しているところでございます。したがいまして、部分買収は禁止ということになっておりまして、強圧的な買収を行いにくくする措置を講じているということのようでございます。ただし、イギリスにおきましては、各企業自身がアメリカのように自由な防衛策をとるということは原則禁止をされているというふうに承知をしております。
 ドイツでございますが、ドイツでは二〇〇二年に企業買収法を制定しております。これで新たな防衛策の体系を定めているところでございますが、ここでも入り口段階はイギリスと同様に公開買い付け規制を厳しくしておりまして、強圧的な買収を行いにくくする措置を講じているところでございます。これに加えまして、イギリスとは異なりますが、監査役会の承認があれば、それぞれの会社が独自で防衛策を採用することも可能ということになっておるようでございます。
 そのほか、北欧の各国、それからフランス、オランダ、こういったいわゆるヨーロッパの大陸諸国におきましては、黄金株や複数議決権株式といった種類株式が活用されておりまして、これらの国では、一株一議決権の原則に従う企業は三割に満たないという調査もあるようでございます。
 このように、ヨーロッパの各国では各国がそれぞれ独自の防衛策の体系を持っているわけですが、EUで、EU全体でMアンドAの市場を適正なものに形成するために、各国の企業買収に関するルールを統一しようという試みが行われているところでございます。
 二〇〇四年、昨年でございますが、EUの企業買収指令がまとまっておりまして、加盟国に対しまして、共通ルールとして全部買い付け義務が強制をされることになっておるようでございます。一方で、企業がみずから講じる防衛策、これは原則禁止とはされておりますが、各国の事情に応じて選択制とされているということのようでございます。

○柴山委員
 極めて貴重な御指摘だったと思います。要は、ポイズンピルとか黄金株のような、各会社で個別に買収防衛策をとるということに対しては、少なくともヨーロッパ諸国の間では法制度の上では後ろ向きのスタンスであるのかなというような認識でございます。
 ただし、一般に、敵対的買収を行う際に、それはきちんと公平な買収でなければいけない。経営権をある程度握った上で、残りの株主さんたちに対してより劣悪な条件で買いたたきをするという強圧的な買収というものは、やはりこれは規制をしていかなければいけないのではないか。全部買い付け義務というお話もありましたけれども、そういうような方向で日本でも検討を進めなければいけないと私は思っております。
 そこで、これは会社法のみならず証取法の分野にもまたがる問題だと思いますので、今の全部買い付け義務、あるいはちまたでスクイーズアウトとかあるいは買収におけるTOBのルールの改正ということが話題になっておりますが、これらについて、金融庁に現在の検討状況をお伺いしたいと思います。

○振角政府参考人
 それでは、金融庁の方からお答えさせていただきたいと思います。
 先生が御指摘されましたように、企業買収に関連した証取法に関連する制度としては、公開買い付け制度、いわゆるTOBがございます。
 金融庁としましては、企業の合併、買収、いわゆるMアンドAをめぐって今いろいろ活発な議論が行われているわけでございますけれども、この観点からいいますと、証券取引のいわゆる透明性、あるいは当事者間の公平というのが確保されることが極めて重要だというふうに考えておりまして、こうした観点から、会社法を所管する法務省と連携したり、あるいは今報告がありました経済産業省とも意見交換をしつつ、今後、現在ございます公開買い付け制度について、さらによりよくできないかという観点から議論をしているところでございます。
 具体的には、公開買い付け制度をめぐっては、以上の点を踏まえまして、今金融審議会というところで議論を行っているところでございます。金融審では、現在の証取法を、現在の貯蓄から投資へという大きな流れの中で、投資全体を横断的、機能的に規制する投資サービス法に改組することを念頭に置きまして幅広い議論が行われているところでございまして、その中における開示制度のあり方というところで議論を行っているというところでございますけれども、先ほど言いましたような観点から今議論が行われているというところが現状でございます。

○柴山委員
 検討を進めていただきたいと思います。特に、今申し上げたスクイーズアウトというのは、買収者に、一定以上の株式を取得した場合に、合併と同じように、要は、全部買う、残りの株式についても取得をして、少数者には対価のみを補償する、いわゆる締め出しの制度なんですが、これについても、円滑な合併と比較して、MアンドAの推進ということについては検討に値する制度ではないかなと思います。
 これについては、証取法なのか、あるいは会社法なのか、ちょっと所管が明確でない部分がありますが、法務省、副大臣にこのような制度についてどのようなお考えかということについてお伺いしたいと思います。

○滝副大臣
 今委員御指摘のように、基本的に、これは証取法の世界なのか、あるいは法務省の商法上の問題なのか、境界があいまいでございますけれども、少なくとも法務省所管の法制審でもこの全株買い取り義務の問題、あるいはスクイーズアウトの問題は議論をしてまいりました。
 議論はしてまいりましたけれども、これは賛否両論がありまして、なかなか決着のつかない問題なんですね。特に、基本的な認識としては、全株買い取り義務とスクイーズアウトはワンセットでもって導入しなければならない、そういうような共通認識はできているようでございますけれども、さて、それでは全株買い取り義務というものを認めようとすると、何か、一律に、画一的に認めるのはいささかどうだろうか、やはり例外事項なんかも設ける必要があるんじゃないだろうかな、こういう議論がございまして、そういったことで、なかなか法制審としては踏み切れない、こういうようなことでございました。
 しかし、今経産省からも報告がありましたように、企業価値研究会の研究もございます。そして、金融庁における検討もございます。そういうようなことをあわせながら、この問題は改めて、そういうものをにらみながら今後の問題として研究していく、こういうことであろうというふうに考えております。

○柴山委員
 よろしくお願い申し上げます。
 買収について、最近の報道で、東京証券取引所が上場会社さんに対して「敵対的買収防衛策の導入に際しての投資者保護上の留意事項について」というような形で通知をされたというように伺っております。
 一連のライブドアの事件をきっかけに過剰な防衛策というものが講じられるのではないかという懸念が一部には出ておりまして、これに対して対応したものだというように承知しているんですが、その大まかな内容と、こうした東証の処理についての御感想というのを最後に金融庁にお伺いしたいと思います。

○振角政府参考人
 お答えさせていただきたいと思います。
 基本的な趣旨は先生がおっしゃったとおりでございまして、敵対的買収防衛策につきましては、ライブドア事件以降、いろいろな報道等もありますし、さらに、先ほど経済産業省からお話がありましたように研究会が行われていまして、五月を目途に企業価値防衛指針が策定される見込みが示されたという中で、防衛策の早期導入について検討を進めている企業もあるというふうに聞いているところでございます。
 そういうような状況を踏まえまして、こうした個別の敵対的買収防衛策の導入に際しましては、投資者保護上問題が生じかねない事態も想定されるということで、二十一日に、先生御指摘のように、東京証券取引所から上場各社に対しまして、防衛策を導入する場合における投資者保護上の観点から何点か留意してほしいという事項を通知したということでございます。
 主な内容としましては四点ございまして、第一点は、株主、投資者への十分な適時開示を行うこと、第二点としては、防衛策の発動、解除及び維持条件が不透明でないこと、三番目としましては、買収者以外の株主、投資者に不測の損害を与える要因を含むものでないこと、第四番目としては、議決権行使による株主の意思表示が機能しないこととなるようなスキームでないことという四点の留意事項を定めているところでございます。
 金融庁としましては、複数の上場会社が株主総会に向けて防衛策を検討している中で、自主規制機関として東京証券取引所が投資者保護の観点からこのような留意事項を上場会社に通知することは、時宜を得た対応であるというふうに評価しているところでございます。
 以上でございます。

○柴山委員
 今回の会社法改正は、会社法のみならず、さまざまな隣接、関連する法律にも影響を与える非常に重要な改正だと思っております。きょう準備した質問は本当はまだまだたくさんありますけれども、同僚あるいは野党の先生方にしっかりとこの法案についての御質問をお願い申し上げて、私からの質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

第162回 国会 衆議院 法務委員会

第162回 国会 衆議院 法務委員会 第15号
平成17年4月20日(水)
午前九時二分開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 参考人の皆様方には、本日は、御多用中のところ大変貴重なお話を賜りまして、本当にありがとうございます。
 時間がございませんので、単刀直入に質問に入らせていただきたいと思います。
 まず、久保利参考人、そして村上参考人にお伺いしたいと思います。
 言うまでもなく、このたび、大変大きなMアンドAの事件のいわゆるプレーヤーとして私どもの関心を呼んだわけですけれども、この中で、企業防衛ということが大変大きなテーマとなりました。
 今回の会社法改正で企業防衛に対する一定の法制度の枠組みというものはできたんですが、実際の運用上、これが果たして、過剰防衛、経営者の保身に当たるのか、それとも本当に企業のためによい防衛なのかということを選別するのは、もちろん裁判所という機関がありますけれども、それ以外にどこが妥当な買収かどうなのかということを判断すべきだとお考えでしょうか。
 社外取締役なのか。社外取締役が、いや、これは企業価値を損ねるんですよというように言うのが妥当なのか。定款あるいは株主総会の特別決議でそれを判断するシステムをつくっていくのが妥当なのか、地域社会を含めたパネルという形で判断するのが妥当なのか、それ以外の何か仕組みというものが考えられるのか。
 企業は株主のものであるという村上参考人のお話もあったんですけれども、この買収防衛についての判断のあり方、これについてお二方にお話をそれぞれ伺いたいと思います。

○久保利参考人
 久保利でございます。お答え申し上げます。
 私は、プレーヤーとして出たつもりはないので、社外取締役ですから、あくまでも経営陣に対するモニタリングということでありますけれども、企業価値あるいは企業防衛という問題からいいますと、少なくとも裁判所の決定も、この新株予約権の発行については自己保身ではないと。なぜならば社外取締役四人も賛成をしているからという形で、自己保身でないことは認めていただいたんですが、では、それは一体何なんだという話になりますと、結局はフジサンケイグループに残りたいという判断である。
 私の考えとしては、結局、企業価値、企業防衛というのは、一般株主さんのためにどれだけの価値をこの会社に残せるかということでありまして、結果的に一〇〇%買ってしまえば、どんなに企業価値が落ちようと損をするのはTOBで買い取った方ですから一向に構わないんですが、そういう点からいいますと、今回のようにTOB対TOBでないような場合、特に一〇〇%でない場合には大変神経を使いまして、一般株主さんにできるだけ企業価値を守ったまましかるべき時間を与える必要があるだろうというふうに考えました。
 企業価値というのは、私は、裁判所が判断するわけでも社外取締役が最終判断するわけでもない、結局はユーザーあるいは株主さんが最終的に判断するんだろう。
 私、今でも思い出しますのは、ミネベアの高橋高見さんが、敵対的MアンドAもいいけれども、MアンドAの成功かどうかは株をとったかどうかで決まるんじゃない、その後本当にその会社が爆発的に成長していく、成功した、そのときMアンドAは成功するんだということをおっしゃいまして、まさに企業価値というのは、そういうある程度の時間もかけないと本当は正確には判断できないものではないかというふうに思っております。
 ありがとうございました。

○村上参考人
 現在の日本の公開企業の中で独立社外取締役が一体どれぐらいいるかというと、多分一%に満たないんじゃないかと思います。欧米の上場企業の場合は、独立社外取締役というのが相当数います。その場合に、独立社外取締役の役割は、もし公開買い付けがかかったときに、その公開買い付けプライスよりも高いプライスを現経営陣でできるのかどうかということに尽きるんだと思います。公開買い付けがかかって、やめてくれと言う前によく言われるのは、株主のためにもっと価格を高くしてくれという意見が出ます。自分だけが保身に走るようなことは絶対にあってはいけないわけですし、逆に、今は企業の中から、ずっとそこに二十年、三十年働いた人がほとんどの取締役をやっている状況の中で、企業防衛は、ほとんど保身につながっていく状況だと僕は思います。
 そういう意味では、先生の御質問に対しては、一義的には、やはり独立社外取締役が、上場した暁には過半数になるような状況が早く達成されることが必要だと思っております。
 さらに、一点つけ加えさせていただきますと、何のために上場したのかということが今回のニッポン放送やフジテレビの問題でも言えるかと思います。そもそも上場する必要がなかったのではないか。例えば、放送法という体系の中で公的な部分がよく最近もお話をされていると思いますが、そうであれば、自由に株主が決められるような上場という選択をなぜ選ばなければいけないのかということを真剣に考えてそれぞれの上場企業の役割を考えるべきだと思いますので、上場とは何かということを上場される折にはぜひ考えていただければありがたいなと思います。
 以上でございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 今回、いろいろな法制度の改正がされたんですが、まだまだこれから考えなければいけない課題がたくさんあると思います。
 先ほど久保利先生からスクイーズアウトのお話がありました。私も検討に値する法制度だと思っておりますので、これに関して、江頭先生、上村先生、内藤先生、浜辺先生、そして村上先生、それぞれ一言ずつ、その導入の採否についての御意見、コメントをいただけたらと思います。
 あと、最近、防衛策の一環としてアメリカなどで採用されている、要するに買収に先立って被買収会社の取締役と事前協議をしましょう、そしてその同意が得られなかった場合には買収してからの組織再編を例えば二年間凍結します、そういうような制度を導入すべきじゃないかという議論がされております。これについてのコメントも一言ずつ、できればお伺いしたいと思っております。
 あと、今回、買収防衛策がとれることになったんですが、例えば拒否権つき株式を譲渡制限をかけて導入するということが劇薬になるのではないかというような意見が一部で言われておりますが、これについての御意見、これも一言ずつお伺いしたいと思います。

○田村(憲)委員長代理
 皆さんにですか。

○柴山委員
 それでは、村上先生、江頭先生、上村先生のお三方にお伺いします。

○江頭参考人
 先ほど久保利先生から提案があったのは、イギリス等であるような、三分の一を取得するとその残りの株式も買わなければいけないという制度ですね。この点につきましては、私も非常に重要な提言であると思っております。
 企業買収制度につきましては、とかく、日本ではアメリカの影響が強いものですから、ライツプランといいますかポイズンピルといいますか、そちらの方に話が行ってしまうんですけれども、あれはやはりアメリカ的な制度でありまして、ヨーロッパはそういう制度をとっていない。むしろ、株主保護のためには久保利先生が指摘されたような制度をとっている。この点は、どちらの道を行くかということについては、日本は十分議論を尽くす必要があるのではないかというふうに考えております。
 それから他方、ライツプラン、ポイズンピルによる防衛策についてどう考えるかという点でありますけれども、この点は、結局、ライツプランを解除して買収できるようにしなければいけないのではないかという判断がどうしても裁判所に持ち込まれるわけであります。その場合の法制度が問題でありまして、これは企業価値を高めるいい買収なのかどうかをだれが判断するのか、先ほどから問題になっている点がまさに問題になってくるわけです。裁判所なのか社外取締役なのか云々といった問題であります。
 この点は、村上参考人が先ほどから言っておられますように、日本の独立社外取締役の現状がどうかとかいろいろな要素にかかわりますので、だれが判断すべきかということについても、現段階ではどうなのか、それから将来についてはどうなのかというのは分けて議論しなければいけないのかもしれません。なかなかこの点も難しい問題を含んでいるというふうに考えております。
 現在、経済産業省の企業価値研究会でしょうか、あそこで提言が出ておりますけれども、何か、こういう形をとっておれば原則適法であるとか、そういう発想が強いんですが、取締役の独立性とかが非常に流動的な段階で、この方法なら原則有効だとか、はっきりしたルールにするのが賢明なのかどうかということについてもよく考える必要があるのではないかというふうに考えております。

○上村参考人
 お答えさせていただきます。
 まず、今江頭参考人からもお話がございましたけれども、日本は、アメリカをモデルにするのかヨーロッパをモデルにするのかというのがやはり大きな選択肢だと思います。
 アメリカは、私の理解するところでは、変な表現ですけれども、保安官とライフルとジョン・ウエインのいる西部劇のように、徹底的な自由でありますけれども、悪者がいたら、あるいは不正があれば徹底的に追及する。証券規制は包括規定が大活躍しておりまして、抜け道とか漏れというのはないわけです。そういうふうな形で徹底的に追及していくという形だと思います。
 ヨーロッパは、やはり伝統的な共同体の厚みといいましょうか、そういうものを背景に、必ずしも、自己株式の取得だってまだ原則禁止でありますし、最低資本金も頑として守りますし、種類株もそんなに自由にやれるわけではないし、ストックオプションだって余り評価していないということであります。
 それぞれの行き方があろうかと思います。ただ、自由だけはアメリカ型で規律だけヨーロッパ型のように、おいしいところだけつまみ食いということがないようにしなきゃいけない、そういう主張がかなり強いというふうな印象を持っております。
 それから、ポイズンピルでございますけれども、これは、ポイズンはポイズンで、相手が健康体であれば毒であります。ですから、それは認められない。しかし、相手がより猛毒であれば多少の毒であっても良薬になる、そういうものでありまして、つまり、攻める側との相対的な評価が基本にある。単に企業価値が高められさえすればいいというだけではなくて、攻める側が、例えば今回のように証券市場の論理を踏みにじって出てきたというようなものの場合には、そういうものに対してはある程度の毒薬といいましょうかポイズンも必要な場合もあるというふうに私自身は考えております。
 ですから、比較的凡庸な経営者であったとしても、しかし、攻める側が非常に違法、不正な行為をしてきた場合には、凡庸でも守られるべきだというふうに私は考えております。
 それから、アメリカの場合には、LBOの経験がございまして、短期で借金漬けで会社に買収をしかけてくる。それに対して、先ほど柴山委員から御紹介がございましたように、例えば、二年間は企業結合できないとか、あるいは取得しても議決権は二年間行使できないとか、自分たちの州の会社を守るために各州がそういう立法をした経緯がございます。
 それは、一つは防衛策がどうかという問題がありますけれども、今度は攻める側をどう評価するかという問題がありまして、短期間で借金漬けで買収をするという場合には、恐らくは、買収した後の会社を食い物にするという蓋然性が高いので、例えば二年間は議決権が行使できないというような資金であれば、それは真っ当な資金のはずだから、それはいいというような考えだろうと思います。
 株主というのは、株を取得して一株持っていましても、六カ月持っていないと代表訴訟も提起できないわけでありまして、それは、きのう買ってきょう代表訴訟を提起するというようなことは認めないわけですね。まして、会社を支配するほどの者であれば、支配する側の正当性というものをスクリーニングする仕組みというのはあってしかるべきだというふうに私は思っております。そういう意味で、ポイズンピルというのは評価されるべきだと。
 今回の場合は、例えば、塩崎委員長がおっしゃっていますように、日本版SECがあったり、証券市場の規制が非常に厳格だったりしたら、どういうふうな形に変わっていたのかなというふうに思うんですが、どうもその辺のチェックが十分でなかったために、防衛も過剰な反応をしがちだ、そういう印象を受けているということだけ申し上げさせていただきます。

○村上参考人
 スクイーズアウトについては、私は賛成であります。そのようなオプションが適用できるようにしてあげることは賛成であります。
 それから、二年間の凍結やポイズンピルにつきましては、私は、最終的にそのようなものが入れられることを判断するのは、個々のケースでは株主だと思うんですね。株主の過半数が賛成しているかどうか。もしこれで、総会で決議できないのであれば、その株主からの代理人である取締役がどう考えるか。
 ただ、今申し上げましたように、日本の場合は、株主から選ばれている取締役というのはほぼ現状ではいないような状況の中で、このような経営者の保身ができるような制度ができることが本当にいいのかどうか、そこはもう少し成熟した上場企業というものがまず求められるのではないかというふうに思っています。その暁に、このような制度ができ、また活用されることはいいのではないかと思っております。
 以上でございます。

○柴山委員
 どうしてもあと一問質問したかったんですが、質疑時間が終了してしまいましたので、問題提起にとどめます。
 浜辺先生、そして内藤先生が御指摘になった多重代表訴訟の件でございますけれども、これは、持ち株会社、株式移転、交換を導入するときに、既にその危険性というものが本来検討されていなければいけなかったのかなという気がいたします。
 私は、個人的には、法人格の否認、江頭先生、詳細な論文をお書きですけれども、というものとか、あるいは第三者としての損害賠償責任の追及、今で言えば商法二百六十六条ノ三等、これを活用するとか、いろいろ工夫をしていくしか道がないのかなというような気がしております。
 いろいろ課題が多い法制度ですけれども、これから定着に向けて頑張れればと思います。
 以上です。どうもありがとうございました。

第162回 国会 衆議院 法務委員会

第162回 国会 衆議院 法務委員会 第12号
平成17年4月15日 (金)
午前九時三十三分開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 本日の質疑、これで最後となりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
 今回の会社法の現代語化によりまして、本法律が国民により身近となる一方、企業文化の根幹が大変大きく変わることになるのではないかと私は思っております。
 そもそも、現行法上、会社の種類として、有限責任社員のみがいる株式会社、そして無限責任社員のみがいる合名会社というのが典型的でありまして、その両者がいる合資会社、それから、有限責任社員のみだけれども小規模閉鎖的な性格を有する有限会社というものもある。私は、こうした現行法上の会社の分類というものは、それなりにこれまで一定の合理性があったのではないかというように思っております。
 しかしながら、今度の法律においては、物的会社を株式会社一つというように定めた上で、さらに、有限責任社員のみだけれども、機関の柔軟性、それから利益配当の柔軟性というものを持つ新たな合同会社というものを新設するという改正を行っているわけであります。
 こうした新たな枠組みというものは、どのような要請によって定められたのか。また、今回のこの現代語化がその要請にこたえられているのかという根本的なところなんですが、ぜひ南野大臣の方にお伺いしたいと思います。

○南野国務大臣
 お答え申し上げます。
 会社法案は、株式会社と有限会社を統合して、先ほど先生がおっしゃったように株式会社に一本化いたしますが、これは、従来の物的会社の区分が理念どおりではなく形骸化しているという上に、物的会社に一様でないニーズがあるということでございます。最近では、株主総会と取締役のみから成る最も基本的な形の会社を出発点として、その成長に応じて、取締役会とか会計参与、監査役、会計監査人など、必要とされる機関を選択しながらステップアップしたいというような中小企業のニーズも出てきております。
 これらの事情にこたえるために、合同会社は、株式会社のように出資の比率で配当等を決めるのではなく、高い技術を持っている社員に厚く配当をすることができるようにするなど、柔軟な経営が可能な有限責任の法人制度の創設が必要であるというベンチャー企業等からの要請にこたえるために新設されたものであります。
 株式会社と有限会社の一本化も、合同会社の創設も、特に中小企業に高く評価していただいております。今回の改正は、その要請にこたえられているというふうに感じております。

○柴山委員
 昨日、衆議院を有限責任事業組合法がまさに通過をしたわけですけれども、この法律の中では、先ほどもちらっと御指摘ありましたとおり、いわゆるパススルーの課税、構成員課税の要請というものが実現をされることになり、かつ、各組合員が有限責任しか負わないという、その仕組みが実現したわけでございます。
 にもかかわらず、こうした合同会社という仕組みをつくるということについては、どのような実益があるんでしょうか。

○寺田政府参考人
 これは端的に申し上げますと、今御指摘になりましたLLPは、法人格がない、組合そのものでありながら、しかし出資者が有限責任を負っている。これに対しまして、合同会社、LLCと言われるものは、法人格があって、出資者が有限責任を負っている。ただ、内部的には組合そのものである。こういうことでございまして、違いは、法人格があるかないかというところでございます。
 したがいまして、LLP、有限責任事業組合と比べてどういうメリットがあるかということは、必然的に法人格があることによるメリットということになるわけでございまして、具体的に申し上げますと、例えば、組織変更等で将来株式会社にずっと移行していくというようなことが可能でございますし、あるいは、ほかの会社との合併、分割などが可能であるということがございます。また、法人格があるということでございまして、当然のことながらその名において登記ができる等、社会的にもあるいは取引上も非常に便利な、そういう地位に立つわけでございます。

○柴山委員
 従前、いわゆる組合的色彩の強い人的会社においては、社員たる地位の移転というものは、ほかの社員の同意があればできましたけれども、原則としてはできなかった。
 一方、物的会社においては、株式会社では、株式は原則として自由譲渡、有限会社は、小規模閉鎖性を加味して持ち分の譲渡が制限をされているとともに、社債発行も認められなかったわけですけれども、新法では、今局長が御指摘になった合同会社を含めて、それぞれの仕組み、譲渡性あるいは社債についてどのような扱いになっているのか、お答えいただきたいと思います。

○寺田政府参考人
 株式会社は、その社員の地位、つまり株式でございますが、それを譲渡することができる、自由に譲渡することができるというのが本質的な要請でございます。したがいまして、この新しい会社法におきましても、自由譲渡ということを原則にいたしております。
 しかし、これまでもございましたとおり、譲渡によりまして株式を取得したことの対抗要件であります株主名簿への書きかえを株式会社の承認に係らしめることができる、つまり譲渡を制限することができるわけでございます。これは、この新しい会社法においてもそれを引き継いでおりまして、会社の承認ということを制約として課することができるわけでございますが、ただ、新しい会社法においては、その承認すべき機関というのを、現在は取締役会の承認に係らしめているだけでございますけれども、定款自治を認めまして、株主総会等でも承認をすることができるような仕組みにすることもできるわけでございます。
 これに対しまして、持ち分会社、合名、合資会社等でございますが、これらは、社員の地位というのを基本的には全員の承諾がなければ譲渡することができないわけでございます。これは、この新しい会社法においても維持している原則でございます。
 では、どういうときに譲渡ができるかといいますと、有限責任社員については、業務を執行する社員の全員の承諾があれば持ち分の譲渡をすることができるわけでございます。ただし、定款でそれと異なる定めをすることももちろん許されております。
 社債につきましては、株式会社、持ち分会社とも、社債を発行することができるようにいたしております。

○柴山委員
 特に社債の部分については、有限会社にもこれを認めてほしい、小規模の物的会社についてもこれを認めてほしいという関係各位からの要望があったと伝え聞いております。
 さて、そこでちょっと疑問が出てくるのは、会社、特に社員の個性が重視される人的会社において、一人会社をこのたび認めることにしたわけですけれども、これは会社の社団性というものに反するのではないでしょうか。いかがでしょうか。

○寺田政府参考人
 これはなかなか、理論的にはいろいろ経緯があった問題でございます。
 つまり、株式会社が発展してきた経緯というものを追いますと、もともと団体というものがあり、その団体に法人格を与え、その地位というものを細分化して現在の発展形態をつくったということがございますので、どうしても団体ということが基礎になっていたわけであります。
 そこで、我が国の商法におきましても、かつては、これは、一人会社というのは認められないというような仕組みもございました。しかし、その後、むしろ、法人格ができた、そういう営利法人である会社を中心に考えて、一体社員は何人でなきゃいけないのかというように論理が逆転したわけであります。
 そこで、株式会社の場合は、特に今まで譲渡性ということがありました関係で、仮に一人会社でも、その地位というのはいろいろな形で複数人に譲渡し得るようなことになるわけでありますので、むしろ一時的に、これは結果的には恒久的になるかもわかりませんけれども、それが一人の会社であっても別に差し支えないのではないかという議論になりまして、そこで、株式会社においては一人会社が現行法で認められるということになっているわけであります。
 持ち分会社も、これは本来は譲渡性を持ち分に持たないものでありますけれども、しかし、先ほど申し上げましたように、社員の加入や持ち分譲渡というものもあり得ないわけではない、非常に例外的な場合ではございますけれども、あり得ないわけではないので、こういうことを全く無視して一人会社を認めないという規制をどうかというふうに問われますと、これもなかなか、論理的には一人会社を認めてもいいのではないかという結論にならざるを得ないわけであります。
 今回の見直しでは、そういうようなプロセスを経て、この持ち分会社についても一人会社が認められたということでございまして、ただ、私どもは、この一人会社がそう主流を占めるような存在になるだろうということは考えておりません。何と申しましても、この持ち分会社というのは、いろいろな団体というもの、無限責任社員を中心とした団体というものがやはり発展的に法人格を持ったものがどうしても中心になるだろうというふうには考えております。

○柴山委員
 将来の譲渡可能性というところから理論づけてくださったわけですけれども、実益からしても、例えば機関設計が簡素な有限責任社員による会社である合同会社、先ほど谷口先生の方からエンロン事件について言及がありましたけれども、こういうような会社で一人会社を認めると、いわゆる他者による監督ということがどうしても必要になってくるんじゃないか、一人会社によって有限責任の利点というものを享受させるということになると、会社債権者を害する事態が生じてくるのではないかということについて、どのようにお考えでしょうか。

○寺田政府参考人
 この会社内部の規律をどう保つかというのは、会社法の本質的な課題でございますので、ここは非常に慎重に考えなきゃならないところでございます。しかしながら、複数人いれば会社の規律が保てて、一人ではなかなか保ちにくいというのも難しい論理ではないかなと。
 つまり、こういう会社内部の規律、会社内部で運用を正していくというのは、それは社員が一人であろうが百人であろうが、やはり非常に難しい問題でありまして、それはむしろ、第三者チェックあるいは外部の方に対する情報提供、具体的には財産状況の開示等によって確保されるということになるのではないかなと。
 また、社員全員が有限責任である合同会社については、財産状況の開示について、債権者にも貸借対照表の閲覧権を認められる等の手だてがございますので、そういう形でチェックをしていくということにならざるを得ないのではないかなというふうに思っております。

○柴山委員
 一方の有限責任組合、これについては、先ほどの質問とちょっと関連しますけれども、一人で設立することはできるんでしょうか。

○舟木政府参考人
 お答え申し上げます。
 LLPでございますが、LLPは、組合契約を締結することで設立をされるものでございます。したがいまして、必然的に最低二人必要でございます。

○柴山委員
 そういう意味からすれば、先ほどの寺田局長に対する私の質問で、これが合同会社の一つのメリットになっているかなという気はいたします。
 それとあと、それぞれやはり、今局長の方からもお話があったとおり、第三者に対する公示ということが非常に重要になってくると思うんですが、合同会社と有限責任組合、それぞれ登記にどのような事項が含まれているのか。特に、責任の有限性というところから資本、これについて御説明いただきたいと思います。

○寺田政府参考人
 合同会社につきましては、これは法人でございますので、基本的な登記事項というのは、法人格を有するほかの会社と同様ございます。資本金の額も登記事項でございます。

○舟木政府参考人
 LLPの登記事項でございますが、これは今度のLLP法案の五十七条に規定をしているところでございまして、組合の名称、事業内容、所在地、組合員の氏名、名称、住所、組合の設立年月日、存続期間、組合員が法人の場合の職務執行者、組合契約で特に解散事由を定めたときはその事由が登記事項でございまして、出資金自体は登記事項にはなっておりません。

○柴山委員
 いろいろと両制度の間には違いがあるということがよくわかります。
 続きまして、ちょっと総則の関係なんですが、商号の規律について伺いたいと思います。
 今回の法律で、同一市町村内における商号の重複登記を排除する商法の十九条、これが廃止をされました。また、不正競争目的による商号使用の差しとめ請求を定めた商法二十条についても、これを削除するとともに、同一市町村内における利用にそういった不正競争目的を推定するといった規定、これもまた削除されたわけでございます。これはどのような趣旨に基づくものなんでしょうか。

○寺田政府参考人
 現在の同一商号、類似商号についての規制でございますが、これは問題点が幾つかございますけれども、第一に、その効力の範囲が同一市町村にあるというところです。東京で申しますと、例えばここですと千代田区でございます。千代田区にある会社を、例えば永田町商事という会社をつくりますと、千代田区に同一目的の永田町商事あるいは永田町商事に類似する商号を持つものについては、この規制によって登記ができない、こういう効力になるわけでございます。
 しかし、今日の経済情勢を考えますと、これが隣の中央区あるいは新宿区には設立できるのに千代田区にはつくれないというのは、余り実態に沿わない規制ではないかという指摘がかねてあったわけでございます。そこで、こういう規制をやめてはどうかという声がかねてからあったわけでございますので、それにこたえるというポイントが一つございます。
 もう一つは、これは同一目的の会社という点にございます。今日、会社というのはいろいろな営業活動をやっております。しかし、登記事項をごらんいただきますと、一定の目的、つまり、例えば物の売買ですとか不動産の建設でありますとかということが書いてございます。それが一致したものについて、同一商号規制、類似商号規制がかかるわけであります。そういたしますと、登記所の方では、それが同じ目的なのかどうかということを非常に苦心して審査をせざるを得ないということがございます。最近では、非常に新しい業種がどんどん出てくるわけでございますけれども、その業種が果たして同じなのか違うのかということを審査するのはまことに難しい問題でございます。
 そこで、これもまた利用者の方から、そういう登記所のさじかげん一つでできたりできなかったりするような規制というのはやめていただきたいという要請がこれまたあったわけでございまして、今回はそれにもこたえるということでございます。
 このように、設立についての事前規制としての商号の機能というのはなくなるわけでございますけれども、しかし、不正競争の目的で、相手会社に損害を与えようということで同じ商号を使うということになりますと、それは当然、事後的な規制の対象にはなるわけでございまして、今後は、そういうことも、規制に移行することによって、全体はスムーズに運営したいというように考えているところでございます。

○柴山委員
 事前規制から事後的な、個々の事情を考慮した上でのきめ細かな判断に移行するというお話で、その方向性自体は理解できないではありません。しかし、小規模の商店などは、やはり同一市町村内において同じ商号をかたられた事業者が活動すると大変困るという方も大勢いらっしゃるわけでして、そういった紛争を簡易迅速な形で事後解決するための工夫というものはやはり必要になってくるんじゃないかというように思っております。
 例えば、既存商号を含む商号を新たに登記しようという場合に、これは、同一の文字列があるかどうかというのは、今はパソコンですぐ検索できるわけですから、そういった類似先行登記の存在について後行者に対して通知されるようなシステムを設ければ、それは当然、後行者は、そういう先発している人の存在を認識しつつ、一定の覚悟を持ってやるというわけですから、当然のことながら、そういった事後的な紛争解決に当たって、かなり有力かつ簡便な指針を提起するということになると思うんですが、こういうシステムについてどのようにお考えでしょうか。

○寺田政府参考人
 このような類似商号規制、事前規制の廃止によりまして、かえってトラブルが非常にふえたということになりますと、やはりそれは望ましくないわけであります。おっしゃるとおり、それについての工夫が幾つか必要になります。
 まず、申請者側に対してどう対応するかでございますが、現在は、新たな申請人は、登記所の窓口において備え置いてある商号調査簿というのを閲覧することができますので、事前にどのような商号が既に登記されているかということを調査することは登記所で可能です。
 ただ、それは一々登記所に赴かなきゃなりません。申請する直前ならそうなさるわけでしょうけれども、もっと事前にわからないかという問題がございます。
 そこで、現在利用できるものといたしましては、登記全体のコンピューター化に並行いたしまして、登記情報提供サービスが平成十二年から実施されておりまして、この法律の施行までには全国のすべての会社はほぼその登記情報提供サービスの範囲内に入るだろうというふうに私ども努力しているところでございます。
 これは、インターネットで一定の手続を踏んでいただければ、どういうものが現在商号として登記されているかがわかる、そういう仕組みになっておりまして、この仕組み自体は、登記簿をとるのは有料でございますが、商号にどういうものがあるかということをインターネットで検索なさる範囲では無料でございます。
 本来的には、登記申請人がこういう努力をしていただきたいというふうに思うわけでございますが、当初はいろいろな混乱もございましょうから、私ども登記所の方でも、申請人の方に、事前に、こういう登記をされると登記されているものと全く同じ商号になりますよというような御注意というのは、場合によってはさせていただけるようになるのではないかなというように、そういう方向で少し検討をしてみたいというように思っております。
 また、御指摘になりましたADRその他の紛争解決についても、これも先ほど申したように、裁判所へ行けば事後的に差しとめ等の請求ができることになるわけでございますけれども、しかし、裁判所に行かないで解決できるというのにも一つのメリットがあることは言うまでもないことでございますので、私どもも含めまして、この点についても、施行までにさまざまな努力をさせていただきたいというふうに思っております。

○柴山委員
 ADRの点についてはよくわかったんですが、前者についてはちょっと納得できない部分がありまして、というのは、後から出ていく人は、それは調べればわかるというのはわかるんですけれども、あえてそういう事業者がいるということを内々に知っていて出ていく場合には、それは、そういうやつを排除して出ていきたいというやつは、調査をしなくてもわかっているわけでして、そういう人が不正の目的を持っているかどうかというものを簡易に立証する手段として強制的な事前通知制度というものをつくったらどうかというのが私の提案でございます。

○寺田政府参考人
 既に登記されている方の利益をどうやって守るかということで、これもまた大事なことだとは思います。ただ、こういうことを登記所の方でやるかどうかというのには、官と民のすみ分けの問題としてなかなか難しい問題がございます。
 いろいろな工夫はあり得ると思いますので、私どもの方でも、既に登記された方が何らかの形で通知が得られるような仕組みというのは考えられないかどうか、それは少し検討してみたいと思っております。

○柴山委員
 ぜひ御検討をお願いしたいと思います。
 次に、設立の部分について少し質問をさせていただきたいと思います。
 最低資本金制度がなくなった、平成二年に一たん設けておきながらまた廃止したわけでありますけれども、非常に事業者にとっては大きなメリットが生ずるというのは先ほど来いろいろ御説明をいただいたんですが、やはり、先ほど来御説明があったように、弊害もあるのではないかというように思っております。
 とりわけ、私の弁護士時代の経験から、法人格制度を濫用する事例がかなりふえてくるんじゃないかというように思っております。債務の免脱等、こういうような事例が今後ふえていくのではないかと思うんですが、当初、この法人格の濫用について配慮するというような条文が検討されていたやに伺っていますが、これがなくなってしまったというのはどういう事情によるものでしょうか。また、私が申し上げたような事例について、簡便にそういう事例というものを排除するための工夫というものがやはり必要になるのではないでしょうか。
    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

○寺田政府参考人
 最低資本金の制度の廃止についてはたびたび御説明しているとおりでございますけれども、おっしゃるとおり、これに伴って弊害がないかどうかということについても、もちろん慎重に考えなきゃいけないところでございます。
 そのことと若干関連をいたしまして、先ほど申しましたような法人格の濫用について具体的に規定を置くかどうかということでございますが、この平成十四年からの新しい会社法の検討の過程では、とりわけ試案に至る過程では、そのことについて検討いたした経緯がございます。
 しかしながら、検討の結果、逆に、濫用を否定する、こういう濫用は許さないということで条件をつけてしまうというのは、今の法人格否認の裁判所の論理というのが比較的いろいろな場合に柔軟に対応できるような形で設けられているということを考慮いたしますと、むしろ決め込んでしまわないか、つまりそれ以外の場合には法人格の濫用に当たらないということを決めつけてしまうのではないかという、つまりプラス・マイナスの比較からするとマイナスの方が大きいのではないかというような御議論がございまして、最終的に、法律上の規定という意味ではそういうような規定を置かないことにいたしております。
 しかしながら、そのことは、この場合に法人格の否認の論理がきかないということではもちろんないわけでありまして、今後もそのようなことの存在ということは念頭に置いて法人格というものを考えていただかなければならないわけでございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 設立については、その健全性というものが非常に大きな要請になってくるのではないかなというように私は思っております。
 その観点から質問させていただきたいんですが、平成二年に、事後設立、会社設立後二年内に営業のために継続使用する資産を資本の二十分の一以上に当たる対価で取得する、こういった行為は、現物出資ですとか財産引き受けと同様の規制ということで、検査役の検査を要求するという法改正がなされたわけであります。しかし、今回、こういった検査役の検査の制度というものが廃止されることになったわけですが、なぜこのような廃止が行われたんでしょうか。

○寺田政府参考人
 これも平成二年の法改正によるものでございますけれども、もちろん事後設立におけるさまざまな問題というものについては適切に対応しなきゃならないわけでございます。この検査役の調査というのも、それを企図して導入された制度であります。
 しかしながら、二年間の間に財産を取得する場合にすべて検査役の調査を受けなきゃならないということについては、非常な費用や時間がかかる、円滑な事業の遂行の妨げになるということで、実務界には非常に評判が悪かった制度でございます。設立直後に大きな財産を購入するということは相当多く見られるわけでございまして、それに対してチェックがあるということは、なかなか会社の運営にとってはつらい問題だという御指摘があったわけでございます。
 こういう設立規制を避けるために、むしろ会社の成立後数年を経過したような休眠会社というものの利用が起きたり、あるいはこういう会社の高値での取引がされるというような非常にゆがんだ実務さえ登場したというふうに私どもも聞いております。
 そもそも、会社が事業のために必要な財産を購入するということについて、その対価が適正かどうかということは、これは会社の運用上非常に基本的なことでございまして、当然のことながら、取締役あるいは取締役会、あるいは場合によっては監査役というような、会社の普通の機構でその適正さがチェックできないということは、逆に申しますと、非常にゆゆしいことでございます。そういうようなことを、あり得るといいますか、しばしばあり得るというようなことを前提に制度を組むのはやや行き過ぎではないかなと私どもも、平成二年に導入したところではございますけれども、反省するに至ったわけであります。
 むしろ、先ほどのような、ゆがんだところに逃げ込ませるようなことをしないようにして、しかしながら、本来の取締役あるいはその他の執行者に対するチェックという形でこういうものの適正さは担保すべきではないかなというふうに考えているところでございます。

○柴山委員
 基本的には、事前規制というよりは、事後不都合が起きた場合にその責任をしっかりととっていくという方向、今回の法改正は基本的にそういう大きな流れになっていると思いますので、それがもし徹底されていれば、それで了としたいと思います。ただ、今御指摘になった、今回の設立の健全性を初めとして、資本の充実についての責任というものが軽くなっているのはおかしいんじゃないかというのをちょっとまた後ほど私は指摘させていただきたいと思います。
 続いて、機関の方に質問を移らせていただきたいと思います。
 近時、リコール隠しですとかあるいは粉飾決算が続出して、コンプライアンス強化ということが非常に大きなテーマとなっているわけですけれども、こうした観点から本法を見ると、会社のガバナンスを柔軟化して、株主の自主権限、自主監督権限を強化するというような仕組みになっていると思います。これもやはりシステムの柔軟化という今の流れに沿ったものであると思うんですが、果たしてそれでこれまで同様の会社債権者の保護というものが図れるんでしょうか。

○寺田政府参考人
 会社のガバナンス、つまり会社の内部で株主と執行を任された役員とでどういう権限の分配があるかということと債権者の保護ということは、私どもは直接結びつかないのではないかなというふうに考えております。
 株主と役員との関係、あるいは株主同士の関係については、おっしゃるように、この会社法においては相当柔軟化いたしまして、株主総会の決議により、あるいは定款の変更により、さまざまなことが可能になっております。しかし、債権者保護は、そういうこととは相対的に別の次元の問題として十分に考えていかなきゃならない、むしろ会社の有限責任との関係で考えていかなきゃならない問題だろう。
 具体的に申し上げますと、この会社法においても、会社の財産状況が適切に開示される、つまりディスクロージャー、あるいは会社にその財産があると示されている財産が現にきちっと留保される、そういうことが債権者のためには重要だと考えておりまして、まず、財産状況の適切な開示といたしましては、会計帳簿の作成の適時性、正確性の明文化、あるいは会計参与制度の創設、会計監査人の設置範囲の拡大、これらの施策をやっておりますし、あるいは株式会社はすべて計算書類、貸借対照表の公告の義務づけがなされているわけでございます。
 また、会社に示された財産というのが適正に留保されるかどうかという点については、株主に対して財産の払い戻しをする、従来ですと配当と言っておりますが、その配当規制について、一般的に財源規制を課す。これは自己株式の取得も、そういう整理で同じような規制をいたしております。また、財源規制に違反して配当を行った取締役の責任について、これが仮に配当可能利益を超えるということになりますと、総株主の同意があっても免除ができないという非常に厳しい規定を設けております。さらに、会社には純資産が三百万円なければ配当等ができないということにもいたしております。
 こういう形で、債権者に対しましては、会社の財産が十分に表示どおりあり、その表示が適正に世の中に示されているということを重視しているということで理解をいただきたいと思います。

○柴山委員
 会社債権者と限るのが少し語弊があるのであれば、利害関係人、ステークホルダーと言ってもいいかもしれません。
 いずれにしましても、会社の経営が適切になされるかどうかというのはやはり重要なことではないかと私は思っておりますので、以下ちょっと各論でお尋ねしたいと思います。
 今度の会社法で、株式の譲渡制限を行っているような会社、当然、こうした会社でも大会社はあるわけですけれども、従前、こうした会社にも当然のことながら取締役会が設けられて、取締役の相互チェックによって業務運営の適正性というものを図ってきたわけですけれども、譲渡制限会社、今度は取締役会が必ずしも必要ないというような形になっていますが、本当にこれで妥当なんでしょうか。

○寺田政府参考人
 まず、今回のガバナンスの基本を申し上げますと、株主総会の権限というのは、もし株主総会が望めば、運営、組織、管理の基本事項すべてについて株主総会の権限とすることができるわけでございます。これを二百九十五条の一項で定めております。
 しかしながら、取締役会を設置した会社においては、これらの会社の業務に関する重要な事項、これは取締役会にゆだねられる、こういう仕組みになっております。この場合には、株主総会が決議することができる事項は当然限定されるということになるわけであります。
 午前中も御説明申し上げましたとおり、株式会社法制の中で、今回は一方では公開ということを基準にし、他方では大か中小かということを基準にして、それによって、どういう運営形態、どういう役員の構成をとるかということを決めたわけでございますけれども、大会社について言えば、これは相当に大きいわけでございますので、財産管理面で重要性は高いということで会計監査人の存置というのを義務づけておりますけれども、しかし、大会社であっても譲渡制限を課している会社というのはだれでも株主になれるというわけではないので、必ずしも取締役会のように株主総会の権限を代行するという組織を義務づけることはないのではないか。
 つまり、やはり譲渡制限会社というのは株主にある程度の特殊性があるということも念頭に置かなければなりませんので、そういうところは株主総会の機能というのもある程度あるということを前提に制度を組まなければならないだろうというわけでございます。
 したがいまして、大会社であっても、譲渡制限会社においては取締役会の設置というのを必要的ということにしておりません。しかし、もちろん会社はさまざまな御事情があって、そういう取締役会を設けるということのメリットをお感じになることもあるわけでございますので、それは任意的には取締役会を置けるということになるわけでございます。

○柴山委員
 もう一つ、私が非常に疑問に思っているのは、取締役会を設置しない、取締役は一人でいいんだよという株式会社において、監査役会を設置できないという定めになったのは一体どういうことなんでしょうか。

○寺田政府参考人
 これは、先ほど私が申し上げました原則からいいますと、論理必然ではございません。つまり、一応、大会社、中小会社と公開会社、非公開会社で分けまして、基準を立てた上で、後はその範囲内で自由にやってくださいというのが基本でございますので、今おっしゃるように、取締役しかいないけれども監査役会がある会社というのも理論上は可能ではないかなというふうに私自身思うわけでございます。
 ただ、この場合は、取締役はあるいは場合によっては一人で、監査役は三人以上、こういうことになるわけであります。しかも、監査役は、この場合は社外監査役も入ってくるわけでありまして、そういう組織形態というのは現実にはちょっと考えにくいんじゃないかなということでございまして、今まで申し上げたことからすると、法律は緩やかに決めておいて、後は御自由にというポリシーからすると、少し逸脱した決め方かもしれませんが、そこまでニーズはないんじゃないかなということをここでは考えさせていただいたわけでございます。

○柴山委員
 定めは柔軟にというお話がたびたび出ておりましたけれども、今、資本市場の監督体制、これについてやはり充実強化させるべきではないかという議論が大変我々の間でかまびすしくなされているわけでして、例えば、日本版のSECの導入というか強化ですか、あるいは継続開示に関する課徴金の制度とか、そういうような仕組みというものが検討されているわけであります。
 そんな中で、やはり大きな会社については第三者によるきちんとした監督ということが必要になってくるのではないか、社外取締役の義務化、例えばこれを上場公開会社についてはやっていくべきではないかという議論があるわけなんです。今では当然、重要財産委員会を設置する場合には社外取締役は一人以上いなくちゃいけないということになっていますけれども、もう少し拡大をしていかなければいけないと思うんですが、この点、どのようにお考えでしょうか。

○寺田政府参考人
 これは大変難しい問題です。社外取締役は、言うまでもなく、社内に余り縁のない方を取締役としてお願いして、いろいろなチェックを相対的に独立してやっていただきたい、そういう意図でございます。それはそれとして、有用に思う企業の方はおいでになりますし、これを非常に有力なガバナンスの一つの工夫というふうに評価される方も多いわけであります。
 しかしながら、この社外取締役を強制するというのが果たして現実的かなということはやはり考えざるを得ないわけでございまして、会社によってはこういう社外取締役ではなく、むしろ監査役を充実させたいというふうにお思いの会社もおありになりますでしょうし、もっと違う形で会社のガバナンスを行いたいという会社もおありになるわけであります。
 委員会設置会社については社外の方というのが一つの大きな役割を持っておられますけれども、すべての株式会社、特に取締役の人数が余り多くない小規模の株式会社にこれを義務づけるというのは、少し義務としては重過ぎるかなという感じがいたしております。

○柴山委員
 今、監査役を強くしてもいいんじゃないかというお話があったんですが、その監査役も実は十分監査ができない仕組みになっているんじゃないかなということでお尋ねしたいんですが、今の制度ですと、監査役等に貸借対照表等を提出してから一定期間を経過しなければそれを承認する定時総会を開けないというたてつけになっているんですけれども、これが今度の法律では廃止されてしまう。そうなりますと、当然のことながら、監査役あるいは監査役会の監査の期間が十分確保できないのではないかという危惧が生じるんですが、これはどのようにお考えでしょうか。

○寺田政府参考人
 監査役に監査の期間を十分与えないということは許されないことでございますので、会社法でも、監査役等に一定の監査期間を確保するということに四百三十六条でなっております。
 ただ、現行法は、おっしゃるとおり、定時総会の七週間前に提出義務を課することによって、事実上、定時総会の開催時期を制限するというような形での規制になっております。しかし、それはどちらかというと、規制の仕方としてはやや異例で、定時総会の開催時期と監査に十分の期間を与えるということをぴったり連動させるという必然性はないのではないかと私どもは考えたわけでございます。
 もちろん、監査を受けた計算書類を定時総会に提出するというのは今度の会社法でも同じでございますから、監査が終了しなければ定時総会は開けないわけであります。しかしながら、その監査の期間の確保というのは監査の期間の確保という規定自体で決めたい、これが今回の考え方でございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 続いて、取締役の任期についてお伺いしたいんですけれども、小規模の会社について取締役の任期をどうやって考えていくかというのは従来から大きな問題となっていたんですが、このたび最長十年ということになったわけですが、今、商事時効も五年ということになっていますし、また、最後の登記から五年間全然役員登記等が変わっていない場合に休眠会社が解散するというような制度、これも五年ということになっております。にもかかわらず最長十年というのは、いかにも長過ぎるんじゃないかなと。
 十年というと、個人商店も代がわりして、子供が立派な大人になるという大変な長い期間であります。十年という期間に合理性があるのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。

○寺田政府参考人
 この点については、この法案を作成する過程でもいろいろ議論があったところでございます。
 実は、有限会社を廃止いたしまして、現在有限会社を想定されるような会社も株式会社として取り込むということにいたしました時点で、取締役の任期をどうするかというのは非常に大きな問題になったわけであります。有限会社には、御承知のとおり、役員の任期というのはございません。これに対しまして、株式会社について現行法は二年という年次を決めております。委員会設置会社については一年でございます。
 したがいまして、これをどう調整するかというところでございます。株式会社に典型的な大きな会社を考えてみれば、おっしゃるとおり、もっと短い期間でどんどん取締役の任期を来させてチェックをさせるということも十分考えられるわけでございます。
 しかしながら、やはり相当小さい会社も含まれるということが先ほどのことからもおわかりいただけるとおりでございますので、そういう会社について全く規制をしない、任期を決めないというのもともかくといたしまして、任期をどんどん短くしていくというのはやはり相当の負担になりますし、また、そういう必要性も必ずしもない会社も少なくないわけであります。
 そこで、さまざま調整いたしました結果、原則は二年としつつも、定款で十年と定めて、その範囲内で決められるという仕組みにいたしたわけでございます。
 これについてどういう評価があるかということはさまざまでありましょう。十年はおっしゃるとおり長過ぎるということもございますが、しかし他方で、今まで有限会社について全く規制がなかったのが十年ごとにやらなきゃならなくなったというのは相当の負担だとおっしゃる方も実はいることも事実でございます。そういうことで、私どもは、バランスからいうと、このぐらいが制度の大枠としては妥当かなというふうに現在のところは考えているところでございます。
 なお、会社法でこのとおり任期を決めたということになりますので、休眠会社の意義ということも変更をせざるを得ません。この会社法では四百七十二条で、最後の登記があった日から十二年を経過したものを休眠会社として扱うということにいたしているところでございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 取締役会についてお尋ねします。
 従前、我々の理解では、持ち回り決議はいけませんというのが一つの大きな原則になっておりまして、取締役会の書面決議を認めてしまうと、取締役が実際に集まっていろいろ協議をしていかなくてはいけないというその実質が失われてしまうと思うんですが、今回の法律ではこれを認めてしまっております。これは問題ではないでしょうか。
 また、仮に書面決議を認めるとしても、やはり会社の実態に合わせて、これは一定の事項に限っていくべきではないでしょうか。

○寺田政府参考人
 これも、非常に小さな会社も株式会社の中に取り込むということによって、考えるとなかなか難しい問題になっております。
 現行法ではもちろん認められていなかったわけでございますので、これをどうするかということでございますが、会社法では、いろいろ小さな会社が簡易に取締役会を開かなきゃならない場面も想定いたしまして、書面決議も認めるということにいたしております。
 しかし、これはかなり限定的でございます。まず、定款に定めを置くことが必要でございます。しかも、取締役会の決議の対象になる事項についてそれぞれの取締役が同意をしており、かつ、業務監査権限を有する監査役が設置されていて、それについて監査役には意見がないという条件があるわけでございます。
 つまりは、株主、取締役、監査役、どれも、まあ問題ない、集まって相談するまでもないというときにだけこの書面決議が認められるということでございますので、社会的にほかにいろいろな会議体がございまして、一定の場合には認められておりますが、ここでも非常に限定的ながらそれを認めたというように御理解をいただきたいところでございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 さて、いよいよ事前規制から事後責任の強化という、その事後責任についてお話を移していきたいと思いますが、取締役の責任を今回かなり広範に過失責任化しております。
 まず、そういったものは一体どういうものがあるのかということについてお伺いしたいと思います。

○寺田政府参考人
 現行法においては、二百六十六条で違法配当ほか四つの類型について取締役の無過失責任が認められ、法令と定款の違反についての責任、これが過失責任、こういう理解を通常されております。これに対して、委員会設置会社においては、違法配当でありますとかあるいは利益相反行為についての責任は、これは明らかに過失責任だという明文の規定があるわけでございます。
 そこで、今回、会社法を整理するに当たって、この点についてどう調整をするかという問題を検討したわけでございます。これは、とりわけこの前の商法の改正における委員会の附帯決議でも、この点についての調整が必要であるという御意向が示されていたところでもございます。
 私どもは、この点について、委員会設置会社に認められている過失責任というのがむしろ原則としてはあるべき姿であって、無過失責任というのは今の法律の立場からするとやや異例であるということで、しかも、事の実態を見れば、仮に無過失責任を過失責任にいたすとしてもそう大きな違いは出ないんじゃないかなという感じもいたしたところで、具体的に、分配可能額を超える額の剰余金を配当した場合の責任その他について、無過失責任を過失責任に転換させたということで立法的な解決を図ったわけでございます。

○柴山委員
 ただ、我々の従前の理解からすると、やはり取引主体にとっては、資本の充実というものは、資本を登記している以上、これはやはり絶対に信頼できるものでなくてはいけないわけで、証取法でも、開示書類の虚偽記載、これについては、市場における民事上の無過失責任、そういう制度になっております。
 無過失責任、要するに、先ほどディスクロージャーをきちんと確保していくべきだというお話をされましたけれども、そういった信頼に対するしっかりとした責任というものは、私はやはりとっていくべきじゃないか。従来、我々、やはり資本充実というのは担保責任で無過失責任というようにずっと教わってきたということもありますので、この点について、特に資本充実との関係で御説明いただければと思います。

○寺田政府参考人
 資本充実の原則は、先ほども御説明しましたとおり、表示された額の資本を現実に確保しなければならないという点でございます。したがいまして、それについては取締役は、役員は非常に重たい責任を持っているわけでございますので、これについて確保ができなければ、例えば設立のときはそれは許されないということになるわけでございますけれども、取締役の責任をどういう形でとるかということは、それとは別に過失責任化するということに矛盾はないだろうというふうには考えております。

○柴山委員
 一応、次の質問に移らせていただきます。
 今回、会社役員等についての責任ということで、会計監査人の責任、これについて、代表訴訟の対象となるという仕組みになるとともに、社外取締役同様の一部免除が認められたわけであります。しかし、会計監査人というのはそもそも会計書類を自分たちの専門性をもって監査するというのが職務なわけですから、社外取締役が会社の外から取締役の職務を執行するというのとはわけが違うというように私は思っております。一部免除というのは理論的におかしいのではないかと思っておりますが、この点、いかがでしょうか。

○寺田政府参考人
 おっしゃるとおり、会計監査人の責任の免除について、現行法上は何らの規定もないわけであります。
 これに対しまして、社外取締役の株式会社に対する責任についてこれは免除する規定がございまして、しかし、免除するには原則として総株主の同意を要するということにされております。また、一定の要件を満たす場合には、株主総会の特別決議等で責任の一部免除が認められるわけであります。
 会計監査人の株式会社に対する責任につきまして、これは非常に重大な責任でございますし、その地位の社外性ということもございますので、私ども、今回も、これはいろいろな平仄を考えまして、やはり社外取締役の株式会社に対する責任ということと異なるのはおかしいのではないかという結論に至ったわけでございます。したがいまして、会計監査人の責任についても社外取締役と同様の一部免除の制度を導入するということにいたしているわけでございます。
 なお、この会計監査人の責任の一部免除について、責任の限度額として確定金額を法定するということも一つの考え方ではございますが、法律上、当然に、確定金額に至るまでの責任が限定されるということは必ずしも合理的ではないのではないかということから見送っているところでございます。

○柴山委員
 必ずしも質問にお答えいただけていないかなと思いますが、時間もございませんので、先に進ませていただきます。
 代表訴訟についてお伺いしたいんですが、先ほどの御質問の中で簡易却下について御説明をいただきました。今の制度でも、先ほど局長御自身が御説明になりましたけれども、訴権濫用による却下ということもありますし、また、悪意の場合の担保提供命令、これも可能なわけですけれども、従前の制度で、果たして、そういう悪意の株主に対する制裁というか、濫訴に対しては対応不十分なんでしょうか。

○寺田政府参考人
 おっしゃるとおり、この種の訴訟、つまり本来の目的に沿わない代表訴訟の利用については、裁判所の方でさまざまな工夫をされております。訴権の濫用の法理により訴えの却下をされた例もあるということは先ほど御説明申し上げました。また、被告側の請求によりまして担保の提供が命ぜられるという仕組みもあるわけでございます。
 しかしながら、訴権の濫用については、これは必ずしも定着している扱いではございません。どういった場合に訴権の濫用になるかということを明示しておくことには一定の合理性があるというように考えております。
 それから、担保の提供命令というのは、これは、悪意の株主が訴訟を提起したことによって取締役自身に損害が生ずる、こういう場面の措置であります。私どもがこの場合に念頭に置いておりますのは、むしろ、取締役ではなくて、会社自体に損害が生ずる、原告の悪意ある訴訟追行によって会社がお金を原告に払わなきゃならない、無理やりですね、そういう事態を原告がねらって訴訟をしてくるというようなところを念頭に置いてあるわけでございますので、担保提供等によっては対応できないのではないかなということで、あえてこのような仕組みを今回御提案しているところでございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 大分時間がなくなってまいりましたので、株式の問題に移りたいと思います。
 このたび、譲渡制限会社におきまして、株式の相続の扱いなんですが、相続というのは、いわば親の地位に取ってかわる、包括承継であるということになっているにもかかわらず、株式会社が相続人から株式を取得できるというような制度に改められているわけですが、これは一体どのような趣旨に基づくものなんでしょうか。

○寺田政府参考人
 おっしゃるとおり、相続は包括承継でありまして、財産の承継という観点からいたしますと、全く同一人が財産を持っている状況と変わりがないというのが法律上の原則でございます。
 しかし、組織上を考えてみますと、相続人が被相続人の地位にそのまま成りかわるということが必ずしも適当でない場面もありまして、株式の譲渡制限制度が置かれている株式会社において相続が生じた場合もその一つでございます。
 この譲渡制限制度というのは、形の上で一般承継という財産承継の形が認められている場合であっても、会社にとって必ずしも適当でない方が株式の所有者、株主におなりになるということはやはり認めがたいときもあることは否定できないところでございます。株式の売り渡しをもって株主たる地位を失わせるということは、それなりに閉鎖会社、非公開会社の実体を維持するときに必要な制度の一つと言えなくもないわけであります。中小企業における円滑な事業の承継という観点で団体からいろいろな要望が寄せられている中にも、この点が一つのポイントにもなっていたわけであります。
 そこで、今度の会社法では、定款の定めによりまして、相続その他の一般承継により株式を取得した者に対して株式会社の側から売り渡しを請求することができるという制度を設けたわけでございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 株式の問題として最近よく議論になっているのが株式分割の問題でして、平成十三年に商法改正で一株当たりの純資産額規制、五万円を下回ってはならないという規制が廃止されてから、大分盛んに無償交付、分割等々が行われるようになってきたわけです。
 ただ、最近は、これが錬金術に使われているんじゃないかと。実際に株券が手元に届くまで売買ができないということで需給バランスが崩れるとか、あとは、小口になればそれは投資対象としての魅力が増すというような形で、錬金術に使われているんじゃないかという批判があるんですが、これに対して何か会社法上の手だてというものは講じられているんでしょうか。

○寺田政府参考人
 これは基本的には株式の流通上の問題で、市場の問題もございますので、いろいろ市場のルールでもっての工夫というのも一つあろうかと思います。
 会社法上の手だてといたしましては、昨年の通常国会で成立いたしました株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部改正法によりまして、上場会社は、株券を出さない、不発行会社になるということが可能になったわけでございます。
 こうなりますと、株券の交付なしで株式を譲渡することが可能になりますので、おっしゃるような、株式の譲渡があるのにもかかわらず株券の交付がないためにさまざまな弊害が出るということはなくなるわけでございます。会社法案もこのことを前提にいたしておりますが、ただ、今申し上げた法律の施行は、公布の日の五年以内の政令で定める日というふうになっておりますので、平成十六年の六月から五年さらに先ということでございますから、今から四年少し先ということになるわけでございます。
 もう一つは、現行法においても株券の保振法がございます。
 これについて、原理的といいますか、法律の制度の上では、預託株券について、株券が発行されない段階でも株式の取引をすることがこれは可能でございます。ただ、保振の制度の運用に当たっておられる側面から申し上げると、運用者の方で、新株券が発行されるまでは株式の譲渡をしないという扱いを現在はされておられるようでございます。しかしながら、今のような問題もあるので、保振機関や株券の保護預かりを行っている証券会社の皆さんを中心に、もう少しこの点の運用が改善できないかということで御相談なさっておられるというふうに私どもは承知しております。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 いよいよ佳境ということでしょうか、MアンドAの関係に行きたいと思っております。
 合併対価の柔軟化によって、外国会社の子会社とのいわゆる三角合併というものが法制度上認められるようになったわけですけれども、こうした三角合併、これは諸外国ではどのような取り扱いになっていますでしょうか。

○寺田政府参考人
 親会社の株券を合併によって消滅する会社に与えることによって三角合併をするというのが今御説明のあったいわゆる三角合併でございますが、これは、アメリカ合衆国において、ほぼすべての州が認めているところでございます。ただ、ヨーロッパではこのような形での合併は法制上は認められておらないようでございます。

○柴山委員
 当然それにかわる制度ということになるんでしょうが、いずれにいたしましても、日本で今回この制度を導入するに当たって、自民党の中でも、敵対的買収を促進するという効果がないのかということが活発に議論されましたが、これについての御説明を簡潔にお願いしたいと思います。

○寺田政府参考人
 一言で申し上げますと、合併というのは組織変更の当事者の合意による出来事でありまして、買収が敵対的であるかどうかであるにせよ、どういうふうに成功するか成功しないかというのは、これはそれに至る前の企業の株式の取得の問題でございまして、両者は直接的な関係はないというふうに理解をいたしております。

○柴山委員
 簡潔な御答弁ありがとうございました。
 ただ、会社の過半数の支配権を持った場合に取締役の解任決議ができるようになりましたね。従前は特別決議によらざれば取締役の解任というものはできなかったんですが、そういう意味では、経営陣の交代ということがより容易になったという側面は否定できないと思うんですが、この点、いかがでしょう。

○寺田政府参考人
 おっしゃるとおり、取締役の解任には特別決議が現行法では必要だったのを、ガバナンス強化の観点から、解任の要件を原則として普通決議に引き下げたわけでございます。つまりは、三分の二でない、二分の一をとっても取締役をとれないということはやはり原則として適当でないという判断でございます。
 しかし、会社のあり方は会社自身がお決めになることでございますので、これは定款でそういう要件でないように定めることもできるわけでございます。具体的には、もちろん特別決議に改めることも可能ですし、さらに、特殊決議等の厳しい要件を課することも法律上は可能ということになります。

○柴山委員
 そういう懸念がある一方で、先ほど小泉総理の対日投資促進のお話もありましたけれども、こうした対日投資を促進していくことが日本企業の活性化につながっていくというお話もあるわけでして、この点、経済産業省はどのようにお考えでしょうか。

○桑山政府参考人
 一般論として申し上げますけれども、今先生御指摘のとおり、対日直接投資の促進を図るということは、新しい技術とか経営ノウハウの導入、あるいは雇用の維持確保、あるいは消費者利益の増大といったようなことに資するということでございますので、我が国の経済活性化のかぎになるものと認識をしております。
 ただ、他方、こういう外国からの投資を促進するということといいましても、守るべき我が国の安全を損なうとか、そういうようなおそれのあるような外国からの投資等につきましては、外国為替及び外国貿易法、いわゆる外為法によりまして、きちんと規制することが必要と考えております。
 経済産業省といたしましても、このような認識のもとで安全保障上の必要な措置等に万全を期すということを十分確保いたしました上で、引き続き対日直接投資の促進に努めてまいりたいと思っております。

○柴山委員
 また、今日本企業はやはり、先ほどの御質問にもあったのですが、これは経済産業省の企業価値研究会でよく御検討されていると思うのですが、不当に低くしか評価されていないんじゃないかという実態があると思うんです。その実態についてどういうふうに把握されているか、お聞かせいただきたいと思います。また、その理由についても御見解を伺いたいと思います。

○舟木政府参考人
 日米の株価の時価総額の御質問でございます。
 これは、日米の株価の時価総額は網羅的に把握するということはできないわけでございますが、例えば、日本の東証一部上場企業の時価総額とアメリカ・ニューヨーク証券取引所上場企業の時価総額を二〇〇四年八月時点で比較をしてみますと、東証は三兆ドル程度、ニューヨーク証券取引所は十二兆ドル程度ということになっておりまして、約四倍の差があるということになっております。
 どういう要因でこういうことになったのかという御質問でございますが、株価の水準は、経済産業省としましても、その水準自体についてコメントすることはできないわけでございます。いずれにしましても、いろいろな要因によりこういう現実になっているわけですが、企業がみずからの価値を向上するための経営努力を引き続き行っていくことによって、日本企業の株価が上昇していくことを期待したいと考えております。

○柴山委員
 一般的には、利益配当が非常に少ない、あるいは経営の透明性、予測可能性というものに欠けるというようなことが要因として指摘されていると思います。
 今申し上げたような守るべきか開くべきかというはざまの中で、今回の会社法の改正で買収防衛策というものがとられていると思うんですが、これが本当に適切、有効なものなのかどうかということについて、どういう買収防衛策がとられているのかとともに簡潔に御説明いただきたいと思います。

○寺田政府参考人
 おっしゃるとおり、買収防衛策自体は企業でいろいろお考えになることでございます。
 極端に申し上げると、株価を上げることあるいは下げること自体が買収防衛策になる場合もございます。そういうこととは別に、普通に言われておりますポイズンピルですとか黄金株だとか言われるものがございます。これは、ポイズンピルでいいますと、強制転換条項つき株式あるいは新株予約権を利用した防衛策でございますし、黄金株は、種類株と譲渡制限というものを利用した防衛策でございます。
 このうち黄金株について、わかりやすいので申し上げますと、黄金株は、例えば一定の会社の重要な事項について、ほかの株とは違った権限を持つ株式ということになるわけでございます。具体的には、例えば合併をするときに、その合併は許さないというようなことを、この株式を持っている人だけがそういう権限を持つ、そういうような形での株でございますけれども、こういう株というものを持つということは現行法上も許されてはおります。しかし、だれにでも手に渡るということになりますと、防衛策としては少し不十分なものだというふうに理解はされているわけであります。
 それを、会社法によりまして譲渡制限と種類株というものを組み合わせることができるということになりますと、これは甚だ強い効力を持つわけでありますので、そういうことが会社法のもとでとれるようになるということは、それなりの有効性は防衛策としては高まる、そういう余地を与えるわけであります。
 ただ、そういうのを実際に利用されるかどうかということは、これはポイズンピルが毒薬ということで呼ばれていることからもおわかりになりますとおり、今さまざまな副作用があるわけであります。当然のことながら、マーケットに敬遠されるということも一つあり得るわけでありますので、それは会社自身でそれぞれ御判断になられることでありますし、特にポイズンピルと呼ばれるものの中には、やり方によっては相当株主の地位を危うくするというものもあり、裁判所でこれが完全に有効だというふうに認められるについて疑問符が打たれるものもあり得るわけであります。
 そういう意味で、経済産業省の方では、こういうものを特に客観的に会社の取締役の立場を離れて評価できる人が評価できるシステム、あるいは一般にこういうものをとっているということが十分に開示されるかどうかというようなマーケットに対する発信、そういったことを組み合わせてガイドラインを設けようというような方向で御検討になっておられると承知しております。
 私どもも、そういうことの努力と相まって、今回の会社法の整備とともに、企業の防衛策というのは進化していくだろうというふうには考えております。

○柴山委員
 ソトーあるいはライブドアの非常にジャーナリズムを騒がせた事件等で、今局長の方からお話があったとおり、この問題について過敏になっているという面もあるのじゃないかなと私は思います。
 こうした防衛策が経営陣の保身に使われ、過剰防衛ということになっていかないかという懸念がやはりあると私は思いますので、これについて、先ほど第三者チェックというお話がありました、マーケットによる淘汰というお話もありました、ほかに何か過剰防衛に対するチェック、考えられますでしょうか。

○寺田政府参考人
 これは、今委員も御説明の中で引用されました事件については、裁判所がその有効無効を御判断になったわけであります。その際には、株主への影響その他を考えまして、現在の特に不公正な有利発行等の枠組みを利用して、その枠内で違法と判断されたわけでありまして、そういう裁判所によるチェックというのも一つ考えられるわけであります。
 そもそもは、何といいましても株主を中心といたします会社の経営機構の中でそういうことの健全性が判断されるというのが第一のポイントではないかと思いますので、会社の関係者の皆様には、私どもも、こういったことの実際の機能については、経済産業省の方と御協力して十分に御説明した上でおとりいただく必要があるんじゃないかなというふうに思っているところでございます。

○柴山委員
 最後の質問です。
 企業価値、これにおいて、従業員あるいはステークホルダー、そういったものをどのように考えて、それらの利益も保護していかなくてはいけないのかということが、私はこれから新しいテーマとして問われていくべきではないかなと思っておりますので、そのあたり、経済産業省の方で何かお考えがあれば。

○舟木政府参考人
 従業員や取引先、地域といったいわゆるステークホルダーに関しての御質問でございます。
 企業価値、これは会社自体の持つ利益の総体であろうかと思いますが、これを長期的に高めていくためには、やはり従業員、取引先、地域といったステークホルダーと良好な協力関係を確立するということが不可欠であろうというふうに考えております。
 したがいまして、例えば、買収者が、ステークホルダーの利益をいたずらに犠牲にして、株主への配当だけをふやすような提案は、これは企業価値を損なうものであるというふうに我々考えておりまして、長期的な株価向上にもマイナスとなる場合もあると考えておるところでございます。
 いずれにしましても、企業価値を考えます上で、ステークホルダーの利益を無視して判断をすることはできないと考えておりまして、極めて重要なファクターであろうというふうに考えておるところでございます。

○柴山委員
 これからの課題として制度設計を私も一緒に考えていきたいと思いますので、どうか皆様方、格段の御支持、御支援のほどよろしくお願い申し上げます。
 長時間にわたりまして失礼いたしました。どうもありがとうございました。

第162回 国会 衆議院 予算委員会第七分科会

第162回 国会 衆議院 予算委員会第七分科会 第2号
平成17年2月28日(月)
午前十時開議

○柴山分科員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 本日は、産業再生機構の案件について質問をさせていただきたいと思っております。
 大型案件を多数処理しまして、大分実務上定着をしている産業再生機構の利用についてでございますが、一段落ということで、ことしその最終局面を迎えるということになっていると承知をしております。
 私の地元である所沢のダイエー店舗についてですが、去る十二月二十八日、産業再生機構の支援が決定をいたしまして、二月一日の報道では地元所沢店の閉鎖が決定をしたというような報道がなされまして、大変地元が混乱をしております。
 そこで、ぜひお伺いしたいのですが、今後の産業再生機構の処理、全体及びダイエーという企業について、それぞれどのようなスケジュールで動いていくのかということについてお伺いしたいと思います。

○藤岡政府参考人
 産業再生機構でございますが、現在まで四十一件の支援決定、また三十二件の買い取り決定、また処分決定につきましては六件行っております。
 機構法上、債権買い取り申し込み等の期限につきましては本年三月末、三十一日と定められておりまして、現在機構は、これまで支援決定を行った事業者に対して残りの買い取り決定を行えるよう、精力的に関係金融機関との調整等を行っていると承知いたしております。
 買い取り決定期限後、四月以降でございますが、以降におきましても、機構といたしましては、買い取った債権等の三年以内の売却等に向けまして、支援決定をした事業者の事業の再生を確実なものとすべく、引き続き活動を続けていくということといたしております。
 また、お尋ねのダイエーにつきましては、債権買い取り申し込み等の期限でございますが、本日となっておりまして、関係金融機関等との調整を行った上で速やかに買い取り決定を行う予定というふうに聞いております。
 なお、スポンサーの決定につきましては、来月になるというふうに聞いております。

○柴山分科員
 ありがとうございます。
 スポンサーの決定がまだということでございます。
 ただ、今回の閉店の計画ということで、先ほど申し上げたとおり、地元では大変な混乱をしております。中心市街地の空洞化が進む、あるいは当然のことながら当該ダイエーで雇用されているたくさんの方々の雇用がどうなるのか、地域経済にははかり知れない影響が出てくるということで、さまざまな要望活動等も行われております。
 そこでお伺いしたいのが、今回どのような基準でこうした閉鎖店舗というものが決定をされたのか。その五十三店舗、一部には少な過ぎるのではないかという専門家の意見もあるやに伺っておりますが、どのような基準で閉鎖店舗が決定されたのかということについてお伺いしたいと思います。

○藤岡政府参考人
 個別具体的なことでございますので、恐縮ですが、お答えできませんが、一般論として申し上げますと、機構が支援対象事業者に対しましてその事業を継続するか撤退するかを振り分ける際には、事業再生計画をつくりまして、事業分野、地域等の戦略等も勘案しつつ、基本的な投下資本に対してどの程度の利益が上げられるかなど、いわゆる収益性を考慮して決めているものと承知いたしております。

○柴山分科員
 当然のことながら、企業再生を図るわけですから、一定の収益性が確保されなければいけないというのはもちろんだと思っております。
 ただ、今申し上げたような地域経済に与える影響、これについて判断はされていないのでしょうか。

○藤岡政府参考人
 一般論で恐縮でございますが、収益性の判断でございますけれども、機構は、将来の国民負担につながらないよう、経済合理性に基づいて活動することということでございます。実現可能性を厳格に見きわめながら、事業再生計画を作成するということといたしております。

○柴山分科員
 収益性の判断基準なんですけれども、当然のことながら、過去の実績というものが重要なファクターとなっていると思います。ただ、店舗によっては、本件所沢駅前のダイエー店の場合は、五年前に駅前の車両工場が移転されて再開発計画が予定をされております。十ヘクタールの区画整理が決定され、またその中で所沢市議会の方では周辺まちづくり特別委員会というものが設置をされまして、ダイエーあるいはその近辺の日東地区という地域の再開発に配慮した形でのそういう計画変更というものが今立ち上がっているところでございます。
 そうした地域の再開発の問題のほかに、所沢でいえばダイエーはいわゆる貸し店舗、賃借人なんですけれども、オーナーさんとの賃料交渉、これも今行われている。当然のことながら、払う賃料が削減されれば、またその不採算店舗などの返還等が行われれば、収益性というものはアップするわけで、こうした個別の事情というものが収益性の判断に考慮されているのかいないのか、そのあたりについてお伺いしたいと思います。

○藤岡政府参考人
 どのような要素を判断の材料として織り込むかにつきましては、個々の事案によっても異なると承知いたしております。
 申し上げましたように、一般的にはやはり機構は実現可能性を厳格に見込むものということでございます。ただ、基本的には、将来の不安定な要素である場合には見込むことはしないということが機構の基本的な考え方というふうに聞いております。

○柴山分科員
 ありがとうございます。
 これから債権カット、そしてスポンサーの決定等具体的な手続がある中で、当然、今御指摘のとおり、計画の策定については確実なものということで進めなければいけないことは私も理解はしております。
 ただ、まだ最終的な債権の買い取りの決定、これは三月二十八日と仄聞しておりますが、それまでには大分時間があると思っております。それまでに、仮に今申し上げたようなオーナーさんとの賃料の改定の合意を証明する書面のようなものが提出されるなど、客観的な事情の変更が看取された場合、この閉店を内容とする計画が変更されるということはあり得るのでしょうか。

○藤岡政府参考人
 恐縮でございます。お答え申し上げます前に、先ほど処分決定六件と申し上げましたが、誤解を避けるために、すべての債権持ち分を譲渡した案件が六件ということでございまして、一部の案件が入ってございません。それについては除いてあるということでございます。恐縮でございます。
 お尋ねの、まさに計画に変更の余地があるかということでございますけれども、一般論で申し上げまして、機構が作成した事業再生計画につきましては、金融機関等の要請する金融支援額を算定する前提といたしまして、事業再生の専門家集団が厳格な資産査定に基づきまして事業価値の最大化を追求しつつ策定したものでございまして、撤退する事業とされたものについて大きな変更の余地は見込めないというふうに考えてございます。
 いずれにいたしましても、事業再生計画そのものはスポンサーの意向を踏まえまして実施されるものでございます。その内容が最終的に確定するのはスポンサーの判断を待つということでございます。

○柴山分科員
 ありがとうございます。
 今御指摘のとおり、まだスポンサーも最終的に決定をしていない段階でございますので、必ずしも断定的な判断ができない局面にあるということは理解を申し上げます。
 さて、そうした中で、万が一、残念なことに、例えば今申し上げた例で言えば所沢店の撤退ということが決まった場合に、その後、当然建物は残るわけでして、これをどのような形で後行の事業者というものに引き継いでいくかということが必要になってくると思われます。こうした後行事業者、仮にこれが持ち店舗であればそれは売却によって回収を極大化するということが言えるわけですけれども、今回のような貸し店舗のような場合にどのような後行事業者に対する手当てと配慮ということがなされていくのか、それについてお伺いしたいと思います。

○藤岡政府参考人
 一般論で恐縮でございますが、機構は非基幹事業につきまして経済合理性を追求する中で、雇用等の影響にも配慮しつつ、できる限り他の事業者に有効に活用してもらうことを念頭に置いて事業の売却等を行うことといたしております。機構自体も、まさにその資産を保有しているか保有していないか、それはどちらの場合におきましても、撤退する場合におきましては、店舗が閉鎖されるのは譲渡先がどうしても見つからない場合というふうに承知してございます。

○柴山分科員
 いずれにいたしましても、店舗を空き店舗にしてしまう、そのようなことは先ほど申し上げたとおり地元経済に対して深刻な悪影響を及ぼすという観点から、ぜひこれは、地元の要望でもあります、計画の最終的な決定そして店舗の撤退、こうした事柄について、地元を代表する商店街あるいは地域の自治体等との協議、手続、そういったものを経てほしいという要望があります。これについてどのようにお答えいただけますでしょうか。

○藤岡政府参考人
 私どもも地元からさまざまな御要望があるということは承知いたしてございます。その際には、まさにさまざまな地元の御事情、いろいろ異なりますので、それぞれダイエーあるいは機構と意思疎通をよく密接にするようにお願いをしてございます。

○柴山分科員
 ありがとうございます。
 その上で、ダイエーが不幸にして店舗を撤退してしまった場合に、新しい事業者、これがその地元に容易に進出できるための政策をとらなければ私はいけないというように考えておりますが、こうした新事業者の店舗進出、これについて経済産業省で何らかの政策を考えておられるのか、そのあたりについてお答えいただければと思います。

○望月政府参考人
 お答えいたします。
 集客の核であります大型店舗の撤退というものが町のにぎわいを低下させて商業集積の魅力を減じるものとして、周辺商店街を含めた地域経済への影響は大変懸念されるところでございます。
 このため、従来よりチャレンジショップ事業やコミュニティー事業など、空き店舗問題を解消するために実験的に行う商店街振興組合などの取り組みに対して、関係自治体と提携して支援を行ってきたところでございますし、また、これらの支援とともに、商店街全体の魅力の向上を図るために、アーケードなどのハード施設の整備や、専門人材の派遣や、新規創業を担う人材の育成支援や、駐車対策あるいはイベント開催などのソフト事業など、ハード、ソフトの両面にわたる支援を行っております。
 今後とも個別具体的な御要望を踏まえながら関係自治体とも連携をいたしまして、きめ細かな支援を行っていきたいというふうに考えているところでございます。

○柴山分科員
 さまざまなハード、ソフト等の支援、人的支援あるいは物的支援ということだと思いますけれども、例えば所沢店でありますと、店舗面積が実に二万四千五百平米、市内第二位、県内でも第十三位という大型店でございます。こうした大型店、しかも従業員の数も、職員が六十名、パート職員が二百七十名という非常に大きな施設でございます。こうした施設の受け皿ということになると、やはり半端なことではなかなか新しい事業者の進出が難しいということになると思いますが、そのあたり、スポンサーさんも明確なモチベーションというものがないとなかなか難しい部分があると思いますので、大型店であることのやはり特殊性というものについてぜひお伺いしたいなというように考えております。
 特にダイエーの場合、再生機構が出資する比率が大き過ぎるんじゃないかですとか、それについてスポンサーに移転するときにかなり価格面で厳しい条件が付されているんじゃないかとか、スポンサーさんもなかなか二の足を踏んでいる部分があるやに仄聞しておりますので、かなり強いモチベーションというものがなければいけないと考えておりますので、そのあたりの施策面、大型店の施策面ということについてお伺いしたいと思います。

○望月政府参考人
 お答えいたします。
 大型の空き店舗面積が一気に生じたときにこれをどうやって埋めるかというのは、各商店街なりなんなりの核店舗を持った大型店が特にそういうふうな状態になったときの周辺商店街の大問題であることは、これは各地で起こっている問題でございます。
 そういう際に、これはやはり何か手段としていえば、誘致活動を一生懸命やるわけでございますけれども、しょせん最後は、その新たに入ってこられる店舗の競争力が問題になろうかと思います。したがって、そのあいた店舗の賃貸料をどうするかとか等々、経済合理的な観点から新規の入居があり得るかどうかということについての競争力の改善というのを地域としても協力しながらしていくということが必要ではないかと思っております。
 なかなか条件整備が進まないで空き店舗のままに残っている地域もあるわけでございまして、この辺は大変、もともとそこのところに大型店が営業し続けられなくなった状況から別の店が入ってきたときに営業し続けられるような状況に変えるというのは、その条件整備が大変重要なことになろうかと思っております。

○柴山分科員
 今おっしゃったように、別の店が入ってきた場合の競争力の整備ということが、万が一撤退された場合の非常に重要なファクターになるということだと理解をいたしました。
 それと、私が今ちょっと申し上げたような、ダイエーに対してスポンサーがより出資しやすいようにするということとは確かに若干別の観点でございますので、確かにそういう視点が本件では、仮に撤退された場合に必要であるということについて再度確認をさせていただきたいと思います。
 いずれにいたしましても、産業再生機構、私はその歴史的使命というものは少なくなかったというように考えております。法的な破綻処理ということにとどまることなく、いわゆる任意処理の形に専門家を多数、法律専門家あるいは税制の専門家等を投入して再生を図っていくというようなこうした手続、これについて、今後は買い取りの決定をされた後の売却手続等に注力をシフトしていくというようなお話がございましたが、これにかわる新たな枠組みというものを今の段階で考えておられるのかどうかということについて最後にお伺いしたいと思います。

○藤岡政府参考人
 お答えいたします。
 委員御指摘のように、産業再生機構、四十一件の支援決定、それからあと買い取り決定等の活動を経まして、まさに事業再生、再建の分野でのモデルづくりという面におきましては非常に大きな、重要な活動をしているというふうに認識をしてございます。
 御指摘のように、まさにこの活動は、この三月買い取りが終わるわけでございますけれども、その後、いわゆる事業再生、再建の分野におきましては、法的に考えますと、法的整理あるいは私的整理、産業再生機構はどちらかといいますと私的整理の中に入るわけでございますけれども、私的整理の中において速やかに事業再建、再生が図られる枠組みといたしまして、機構の経験を踏まえまして、どういう法的なあるいはその他の周辺的な環境の整備ができるかということにつきましては、まさに政府一体となりまして今検討を進めておるという状況でございます。

○柴山分科員
 五分少し早いですが、以上で質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

第162回 国会 衆議院 憲法調査会

第162回 国会 衆議院 憲法調査会 第4号
平成17年2月24日(木)
午前九時一分開議

○柴山委員
 先ほど鹿野委員から、現在、主権在民の理念というものが本当に機能しているのかという大変貴重な視点を御提示いただきました。官から民への号令は、必ずしも十分その理念が実現されているとは言えない状況にあると私も考えております。これは、現代の膨大な行政需要の拡大あるいは中央集権的な体制ということにももちろん一つの原因があると思いますけれども、国民の側にもやはり原因があると考えております。我々は余りにも、政治、また、自分の地域ですとか国を支えていこう、そういうことに関して無関心であったのではないかと思っております。
 また、先ほど永岡委員そのほかからいろいろ御指摘があったとおり、これ以外の場面でも、やはり国民がただ自分のことだけに関心を持つのではなくて、もっと家族とか地域とかそういった事柄に関心を持ち、それを支えていく、そういった気概がなければ日本の社会というものは変わっていかないんじゃないかな、そのように考えております。昨今のさまざまな報道で提示されている事件を見るにつけ、私も全く同感であります。
 ここで、憲法の前文を見た場合、前文というのは、国の形をつくる憲法のさらに基本理念をうたうエッセンスであります。そうしたエッセンスの中に私は個人的人権の尊重主義というものは確かにはっきり書くべきであると思っておりますが、いわばそれとセットにした形での、こうした、地域やあるいは国を大切にするという理念や公共性の理念、そして、自己の権利、自由に対する責任の概念をセットにした形で書いていくことが必要であると私は考えております。
 こうした考え方に対しては、憲法というものは国家権力に対する制限規範である、そういった責任や義務は法律で定めればよいではないか、こういう批判がよくなされます。確かに、近代憲法はそういった理念のもとに制定されたものでありますけれども、憲法は、一方で根本法たる性質もあると考えております。法は、やはりバランスをとって制定されるものですから、こうしたバランスのとれた価値観をうたっていくことが私は必要であると考えております。
 私は、歴史、文化、家族、そういったものはやはり憲法に書かざるを得ないと思っております。土井委員からは先ほど、そういった概念は内容として一定のものではないのではないか、また、丸谷委員からは、そうしたものを書いていくとより多くの人の共感を得られないのではないか、そういうような御懸念も提示されました。
 しかし私は、そのような確かに一定性を持つ概念ではないということをあえて認めながら、それぞれの家族、そしてそれぞれの地域、そういったものに関する寛容性というものを前提とした上で、そういったものを大切にしていくということは大切なことではないかというように感じております。私は、ビジネス等あらゆる場面で今グローバル化が進展する中で、これを進めていかなければいけないという立場に立っておりますけれども、だからこそ、そうしたアイデンティティーというものはこれからますます大切になるのではないかというように考えている次第であります。
 さて、平和主義について一言申し上げたいと思います。
 私も、平和主義というものは非常に大切であると思っております。山口委員から先ほどありましたとおり、平和的生存権も、まあ、裁判規範性はその抽象性からないのではないかという疑問はありますけれども、やはり大切である。しかし、武器を捨てて戦争をやめることによって本当に平和というものは実現するのでしょうか。冷戦の崩壊によって地域紛争がふえてしまっている、また、最近ではテロが多発をしている。そのような中で、不作為によって平和というものが本当に守られるのでしょうか。やはり我々は、一定の平和に対する貢献をしていくことが必要だと考えております。
 もちろん、その内容につきましては、日本が軍事的な部門で貢献をするのが果たして世界の安全のためにプラスなのかどうなのかということは考えていかなければいけません。ただ、そうした問題意識はしっかりと持たなければいけないと思っております。
 時間がほとんどありません。あと一言だけ申し上げます。
 生命の尊重、そして、これからはやはり環境の重視ということを訴えていかなければいけないと思っております。憲法前文、内容をより豊かに、わかりやすく、今申し上げたような諸理念をつけ加えていっていただけたらというように思っております。
 以上です。

○柴山委員
 現行憲法下で六十年近い間、内外で生じたさまざまな事象を考えるとき、現行憲法の果たしてきた役割の大きさ、そして人権、平和のありがたさというものを私は本調査会で学ばせていただきました。と同時に、多くの立法府の方々、行政府の方々、司法府の方々、そして何よりも国民の皆様方がこの憲法と現実のはざまで大変な御苦労をされてきた、そのようなことも勉強をさせていただきました。その中で、この憲法調査会の議論が報告書にまとまるという歴史的な時期を私がこの席で迎えることの幸運を本当に感謝したいと思っております。
 この報告書については、先ほど船田幹事から御指摘があったとおり、多数意見そして少数意見を明記し、一定の方向性というものを持たせるべきであると私は考えております。そして、こうしたチャンスは何度も訪れるとは限らないと考えております。二大政党が政権を競い合い、そして激動する世界情勢、環境の問題、少子化問題が深刻化する中、一定の問題点については、早急に私は、現実的な政治的日程として、国民の信を問うそのスケジュールづくりに取りかかっていくべきではないかなというように考えております。
 その観点からは、先ほど枝野会長代理から的確に御指摘があったとおり、国民的関心をしっかりと喚起していかなくてはいけないと考えております。もちろん、我々も政党の所属構成員でありますから、それぞれの政党のプランというものを独自性を持って主張することは必要であると考えております。
 しかし、先ほど申し上げたとおり、一定の問題点については、喫緊の改正の課題として、全国民的合意を得られるような形で、しっかりと共通の合意を求めていくということをぜひ検討していかなければいけないと思っております。それは、私たち自民党に課せられた課題である、枝野会長代理が御指摘のとおりでもありますが、と同時に、もちろん、民主党あるいは公明党、第二、第三党についても同じような課題が課せられているのだということをぜひ御理解、御認識賜れればと私は考えております。
 そのような中で、何人かの先生方から御指摘があったとおり、この憲法調査会を、恒常的に憲法問題につき議論をする、そして国民投票法等の具体的な法案を提出できるような、そういう組織に何とか改組していく、発展させていく、そういう私は時期に来ているというように考えておりますので、この点につきぜひ御配慮をいただきたい、そう強く申し上げながら、発言を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

第162回 国会 衆議院 法務委員会

第162回 国会 衆議院 法務委員会 第2号
平成17年2月23日(水)
午前十時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 まず初めに、司法改革の関連で、今後の裁判所の体制の量と質の改革についてお伺いしたいと思います。
 平成十七年の裁判所の体制で、裁判官の数を大幅にふやす。具体的には、判事の員数を四十人、判事補の員数は三十五人増加するというような計画となっております。ただ、判事補について見れば、対前年、平成十六年比で十人から三十五人と大幅な増加になりますが、判事については、むしろ、平成十六年の四十二人から四十人に減少しております。これは、当然のことながら、一定の期間判事補を経験した者だけが判事になれるということで、急激には判事の増加が図れないという限界があることが背景にあると思います。
 そこでお伺いしますが、今、裁判員制度の導入などにより、司法の民主化ということが大きく言われる中で、例えば、弁護士任官を大幅にふやす、また民間の経験のある方をふやしていくという中で、判民交流というものも積極的に進めていくべきではないかというように考えます。弁護士会では法曹一元制度を究極の理念としているわけですけれども、こうした提案についてどのようにお考えでしょうか。

○南野国務大臣
 お答え申し上げます。
 裁判官の民間企業での研修などにつきましては、このところ、年間四十名を上回る裁判官が参加されているというふうに承知いたしております。また、弁護士から判事への任官につきましては、これまで弁護士七十五名が裁判官に任命されているというところでございます。
 裁判官任官制度は、その運用が適切に行われるのであるならば、法曹三者の経験の交流を深め、相互理解にも資するものであると理解いたしており、平成十三年六月十二日に取りまとめられました司法制度改革審議会意見におきましても、弁護士任官の推進や、裁判官、検察官、弁護士及び法律学者といった人材の相互交流の促進が提言されているところでございます。
 今般の司法制度改革におきましては、判事補に弁護士としての職務経験を積ませる制度、弁護士が、民事調停事件及び家事調停事件に関し、裁判官と同等の権限を持って調停手続を主宰することができる制度を創設するための法整備が行われたところであります。
 裁判所におかれましても、これらの制度の活用なども通じまして、判事補が法律専門家としての多様な経験を積み、また裁判官に適任の弁護士が多数任官することにつながる、そのようなものと期待しておりますということは承知しております。

○柴山委員
 方向性としてそのような御認識だということには大変ありがたいと思っておりますが、今後促進される今おっしゃったような方針、スケジュール及びその人数等で具体的なプランというものが既にできているのかどうか、ここについてもちょっと突っ込んでお答えいただけますでしょうか。

○倉吉政府参考人
 ただいまスケジュール及びプランという話がございましたが、今のところ考えておりますのは、先ほど大臣からお話のありました司法制度改革でもたらされた新しい制度、これが運用していくのを見守りつつ、もちろん、これが定着するようにということで、最高裁でもさまざまな運用基準を改めるなどして弁護士から任官される人が任官しやすいように、それから、裁判官が民間の方でいろいろな経験をするということもさらにふやしていこうと考えておるところでございますので、さらにその定着の度合い、そしてこれが一層発展していくようにということを見守りながらやっていきたいと思っております。
 以上でございます。

○柴山委員
 どうもありがとうございました。
 続きまして、入管行政についてお伺いしたいと思います。
 法務省が、昨年の十二月だったと思いますが、入管法の七条一項二号の基準省令の改正案を公表されたと思いますが、こちらで、いわゆる興行ビザの発給基準を、外国政府などが発行した芸能人資格証明書、これが今まで認められたものを削除するというような提案がなされたと思います。
 つきましては、どうしてこのような改正というものがなされるのか、その理由を教えていただけますでしょうか。

○三浦政府参考人
 お答え申し上げます。
 ただいま委員御指摘の法務省令の改正でございますけれども、昨年十二月に策定されました政府の人身取引対策行動計画の中にも盛り込まれているところでございますが、本年二月十五日に改正省令を公布しておりまして、一カ月後でございます三月十五日にこれが施行されるという予定になっているところでございます。
 この省令改正の趣旨でございますけれども、我が国におきまして、近時、人身取引の被害者と目される人がかなり見られる状況にございます。これらの人身取引はまさしく人権を侵害する重大な事案でございまして、これに対して適切に対処をするべきである、被害者に対しましても適切な保護を遂げる必要がある、こういう観点から対策を講じることとされたわけでございます。
 今回の基準省令の改正につきましては、主としてフィリピンの方についてでございますけれども、興行の在留資格というものがございます。これは、外国の方でいわゆる芸能を身につけた方々が日本に来ていただいて、その文化を日本に紹介していただくというようなことで、在留資格の一つとして認められているわけでございますけれども、いろいろな要件がございます。
 と申しますのは、興行と申しましても、やはり日本に来て収入を得て労働に従事するということでございますので、入管法全体の趣旨からいたしますと、我が国の労働者の受け入れ政策の基本となっておりますのは、専門的、技術的分野の方々については積極的に日本に来ていただくという反面としまして、単純労働者につきましては受け入れを認めていないという政策をとっておるわけでございます。入管法もこの政策に基づきまして種々の規定が置かれているところでございます。興行につきましても、その一環、同様でございまして、まさしく興行、芸能人であるということにふさわしい方には日本に来ていただくということから、従来、基準を設けております。
 実際の省令は、まだ改正前の現行のものを紹介いたしますと、一つは外国の政府またはこれに準ずる機関が自国民を芸能人であるというふうに証明した証明書を有している方、もしくは二年間の芸歴がある方などにつきましては、それらを理由として日本に入国を認めるということになっておるわけでございます。
 フィリピンの方は年間八万人ほどお見えになっているわけでありますけれども、ほとんどがフィリピン政府の証明書、興業の、芸能人の証明書で入っているわけでございます。ところが、現実に見ますと芸能人としての実力を備えていない方が相当いるという実態が把握できておりまして、これらの方、多くの方々がいわゆるパブ等でホステスとして稼働しているという実態が明らかになってきたものでございます。
 結局、こういう事態になりますと非常に低賃金で働かされるという実態がございまして、かなり労働の搾取をされているというような実態も判明してきたものでございますので、ここを見直すべきであるという議論から、外国の政府の発行した証明書のみによって芸能人として我が国に入国するという制度はこの際取りやめるべきであるということから、省令を改正するに至ったものでございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 その趣旨は理解できるところですけれども、一方で、今後、日本が観光立国を目指していく、またFTA交渉が進む中で、単純労働は認めないという原則をこのまま維持するのが妥当なのかどうか、むしろ、しっかりとした経済的基盤あるいは語学能力とかを確保した上で積極的にこれを受け入れ、そして管理監督等を強めていくという方向に進めて、まじめな人はやはり受け入れていくということが国策としてふさわしいのではないかという声もあるところだと思っております。
 そこで、今後、こうした外国人の積極的な受け入れを推進していった場合に、今ある簡易な資格証明書というものを廃止した場合に、現在の入管のチェック体制でそういうものが全部チェックできるのか、二年以上芸歴がある者とかというものを現在の体制で本当にチェックできるんでしょうか。

○三浦政府参考人
 お答え申し上げます。
 今、委員御指摘の体制の点でございますけれども、現時点におきましても、興行の資格で日本に入国される方は、一番多いのがフィリピンの方でございますけれども、それ以外の国の方も相当多くございまして、トータルで年間十三万人くらいの方がお見えになっているわけでございます。フィリピンの方は、先ほど御説明いたしましたように証明書によって入国されてくるわけでございますが、その余の国の方々につきましては、すべて二年間の過去の外国における芸歴というものを要件として入国されてきているわけでございまして、これにつきましては、現在におきましても、入国管理局におきまして、適正な審査によりまして入国を認めるか認めないかということを判断しているわけでございます。
 したがいまして、この体制をより強化いたしまして、フィリピンの方々につきましても、今後一層審査に充実を期してまいりたいというふうに考えているところでございます。

○柴山委員
 先ほど入管局長が、今十三万人というようなお話がありましたけれども、フィリピンからの興行ビザによる入国者が八万人というようなお話をされていたと思いますので、その八万人をやはりきちんとチェックする体制というものは、一方でしっかりと拡充をしていかなければいけないのではないかと思います。
 そして、先ほど私が申し上げたとおり、そもそも搾取等がどれだけあるのか、そのような中でどれだけ今後外国人の労働者を受け入れていかなくてはいけないのか、そのあたりにつきまして、外務省ともし調整をされているというようなことがあれば、その状況について教えていただけたらと思っております。

○三浦政府参考人
 お答え申し上げます。
 御指摘の第一点目の外国人労働者の受け入れ問題一般につきましては、これはなかなか、法務省だけの問題ではございませんで、日本の労働政策全般という観点から考えるべき問題でございます。委員御指摘のような考え方もございますことは十分承知しております。これから関係省庁といろいろ議論を重ねていく必要があるのかなというふうには思っているわけでございます。
 それから、外務省との連携でございますけれども、今回の省令改正につきましても、外務省その他関係省庁との間で種々議論を重ねまして、省令改正の手続に至ったものでございます。この実施につきましても、当然、対外国との関係もございますので、外務省等関係省庁と緊密に連携をいたしまして、適正な受け入れができるような形で準備をしていきたい、こういうふうに考えております。

○柴山委員
 もちろん、そうしたホステスなどの搾取などを決して許すものではないということだけ強調させていただいて、次の質問に移りたいと思います。
 犯罪被害者等基本法が昨年の臨時国会で成立をいたしまして、今後、各省庁横断的にその対策の具体化の作業に入っていくことになろうかと思いますが、これからの各省庁でのこうした具体策の取りまとめのスケジュール、そしてどのような論点が出てくるのかということについて、順次お伺いしていきたいと思います。

○大林政府参考人
 犯罪被害者等基本法は、昨年十二月八日の公布から六カ月以内の政令で定める日に施行することとされているところでございます。
 現在、内閣府におきまして、この法律の速やかな施行に向け所要の準備を進めており、施行後においては、犯罪被害者等施策推進会議において犯罪被害者等基本計画の案を作成した上、政府が同計画を定めることになると承知しております。
 法務省といたしましても、この基本計画の定めるところに従い、他の府省庁とも連携しつつ、犯罪被害者のための制度の整備や運用の充実を図るなど、さらなる施策を推進してまいりたいと考えております。

○柴山委員
 その中で、ちょっと論点についてもというようなことで申し上げたんですが、被害者の刑事手続の中での地位の見直し、あるいは附帯私訴ですとか独立の上訴権等々、考えられると思いますが、それについての検討もこれからということでよろしいでしょうか。

○大林政府参考人
 犯罪の被害に遭われた方々やその御家族のお気持ちを真摯に受けとめて、保護や支援を図っていくことが非常に大事なことであると認識しております。このため、法務省におきましてはこれまでも、例えば平成十二年のいわゆる犯罪被害者保護二法により、被害者やその御遺族が量刑に対する意見を含め被害に関する心情などの意見を法廷で陳述できる制度を導入するなど、種々の施策を講じてきております。
 また、御指摘の犯罪被害者等基本法が制定されたところでございますが、法務省といたしましては、これまで、外部の有識者を招いて犯罪被害者のための施策を研究する会を開催し、お尋ねの法廷における被告人への質問権を含め、被害者に対する保護、支援のあり方について調査研究をしてきたところでございます。
 今後さらにその検討を深めてまいりたい、このように考えております。

○柴山委員
 続きまして、犯罪被害者に対する救済という観点から、現在の犯罪被害者給付金制度の見直しについてお伺いしたいと思いますが、どうなっていますでしょうか。

○片桐政府参考人
 お答え申し上げます。
 犯罪被害者等基本法におきましては、犯罪被害者等に対する給付金支給制度の充実等、警察に関連する多くの施策が盛り込まれているところでございます。今後、この法律に基づきまして犯罪被害者等基本計画が策定されまして、政府全体としての取り組みのあり方が議論されていくこととなるわけでございますけれども、警察庁としましても被害者支援全般の充実方策について検討してまいりたいと考えております。
 なお、御指摘の犯罪被害者給付金制度でございますが、これは平成十三年に法が改正されまして制度の充実が図られたところでございますが、今後この法律の制定を受け基本計画をめぐる議論がなされますが、そうした中で、今回の犯罪被害者等基本法の趣旨を踏まえていかなる充実を図ることとすべきか、検討してまいりたいと考えております。

○柴山委員
 そもそも、こうした犯罪被害者に対して給付を行うべきは究極的には加害者であるというのが大原則でありますから、この給付については、例えば保険制度の検討ですとか、あるいは一時金が適当なのか年金が適当なのか等々、さまざまな、哲学から方法論等、多面にわたる検討が必要だと思いますので、例えば厚生労働省等とも協議をしていただいた上で、深い議論を早急に行っていただけたらというように思っております。
 続きまして、被害者の精神的な支援ということがやはり重要だと思っております。こうした中で、保護観察所の保護司の活用ということが考えられると思うのですけれども、このあたりの検討状況についてお伺いしたいと思います。

○麻生政府参考人
 保護司は全国津々浦々に約五万人配置されております。この方々は、民間ボランティアであるとともに、非常勤の国家公務員として守秘義務を負っておられるという公的な側面も持っておられますので、その意味で、犯罪被害者や御遺族の方々が安心して相談できる立場であると考えております。
 犯罪被害者等基本法が制定されましたことを踏まえまして、更生保護官署及び保護司がその担当する地区に居住しておられます犯罪被害者や御遺族の方々に対する支援を行うための制度の導入に関しまして、所要の検討を進めておるところでございます。

○柴山委員
 どうもありがとうございました。
 いずれにせよ、被害者の皆様が大変待ち望んでいた法律でございます。早急に、スケジュールそして具体策の策定に取り組んでいただければと強く願っております。
 続いての質問に移らせていただきます。
 つい先日の報道で、二月九日、東京地裁の判決で、暴力団のやみ金融事件で下された判決なんですけれども、組織犯罪処罰法違反の罪に問われた被告の約五十三億円に上る犯罪収益、これが全く没収、追徴を認められなかったという判決でございました。これについて、どうしてこのような判決がなされたのかということについて御説明をいただけたらというように思います。

○大林政府参考人
 御指摘の判決におきまして、裁判所は、被告人が得た利益はいわゆる組織的犯罪処罰法に定める犯罪収益等に該当するものの、当該収益は同法第十三条第二項に定める犯罪被害財産と認められるので、没収、追徴が禁止されているとして、検察官請求に係る追徴を認めなかったものと承知しております。
 他方、検察官は、論告において、本件預金債権等がいずれも犯罪収益として没収、追徴の対象となり、一方、組織的犯罪処罰法第十三条第二項に規定する犯罪被害財産とは、刑事手続上、犯罪行為及び被害者が特定されていること、すなわち、被害者の財産と没収対象財産の結びつきが明らかであることが必要であるところ、本件においてはこの点が明らかではないので、没収、追徴が禁止されている犯罪被害財産に該当しない旨、主張したものと承知しております。
 なお、本件につきましては、検察官において控訴し、上級裁判所の判断を仰ぐこととしたものと承知しております。

○柴山委員
 確かに我々の、法曹実務家の認識では、没収の大原則として、犯人以外の者に属している財産というものは没収できない、その後の被害回復というものは、そういう被害者の方からの民事的な請求にゆだねるというのが大原則であるというようには認識をしております。
 しかし、今適切に御指摘されたように、被害者が不特定である場合についてはこうした回復措置というものはとれない、また、組織犯罪の場合に本当に、被害者が仮に特定されていても、それらの被害者の方々が暴力団に対して民事訴訟を起こすことが実効的かということは、ぜひ御検討いただけたらと思います。
 私などは、こういった犯罪収益については、しっかりと没収をした上で、これを、例えば簡便な処分で配当等の手続を行うことができないか、あるいは、簡便な処分でないにせよ、債務名義を得ればそういうことを認めていったらよいのではないかというように考えますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。

○大林政府参考人
 犯罪被害財産を犯人から剥奪した上で、これを国庫に帰属させるかわりに被害者に帰属させることができることとする制度につきましては、平成十一年の法制審議会でその導入の是非について議論されましたが、起訴されて有罪となった事件の被害者のみが救済されて、起訴の対象とならなかった事件の被害者は救済されないことなど、被害者間の公平が図られないなどの問題点が指摘され、組織的犯罪処罰法の運用を踏まえつつ引き続き検討を継続すべきこととされた経緯がございます。
 いずれにいたしましても、被害者の保護、支援の充実を図るための施策につきましては、犯罪被害者等基本法も成立しましたので、今後、基本法の定めるところに従い、制度及び運用の両面についてさまざまな角度から検討を進め、適切に対処してまいりたいと考えております。

○柴山委員
 いずれにしましても、こうした組織犯罪というものについては、今後、しっかりとその根っこを絶たなくてはいけないということを強く主張させていただきまして、次の質問に移りたいと思います。
 民事の関係についてです。
 今国会で会社法の改正が予定をされているわけですけれども、一面、敵対的買収等の事件に目が向きがちなんですが、その一方で、一円からでも株式会社の設立が可能であるというような重要な改正がなされると聞いております。
 この改正によって、ベンチャー企業等が新しく事業を起こしやすくなるというプラスのメリットがあると思いますが、その一方で、いわゆるこうした企業の統治体制、いわゆるガバナンスというものがかなり緩やかになっているというように承知しております。そのような場合に、会社債権者あるいは出資者の保護というものはきちんと図られているのか。役員あるいは発起人等の責任をきちんと明確化することが必要ではないかと考えますが、そのあたりの考え方についてぜひお聞かせいただきたいと思います。

○寺田政府参考人
 ただいまお話ございましたとおり、現在、商法中にあります会社の規定と、有限会社法、それから商法特例法、監査特例法でございますが、これの中にある規定、これらを総合的に見直しをいたしまして、一つの会社法をつくるというプロジェクトをかねてから計画いたしておりまして、去る二月九日の法制審議会において、その会社法の現代化に関する御答申をいただいております。現在、事務当局では、この答申に基づきまして法案を作成作業中でございます。
 今おっしゃいましたいろいろな論点がございますが、そのうち非常に重要な柱が、大きい会社は大きいなりに、中小の会社は中小の会社なりにそれぞれにふさわしい統治のあり方、会社のあり方を今回は規定して、できるだけその会社自体がそれに沿った運営の仕方をしていただきたい、このような考え方が一つの大きな柱になっているわけでございます。その場合に、大会社は基本的にこれまでと同様の規律が維持されるわけでございますが、中小にとりましては、株式会社には仮になりましても、相当大幅な会社の内部の自治、裁量の余地が出てくるわけでございます。
 その場合に御心配になりますのは、ただいまありましたガバナンスの問題でございますが、私どもは、基本的には株主の権限というものが非常に重要だというふうに考えております。株主総会で行うことのできる権限でございますとか、あるいはこういう中小会社、現実には株式の譲渡の制限のかかっている会社ということになるわけでございますけれども、そういう会社において、どういう場合に株主が会社の全体のガバナンスに口を出すことができるかということを、相当これまでよりは活発にできる余地を高めようという方向で、現在、この要綱に基づいて検討しているわけでございます。
 と同時に、やはり会社の内情の公開ということも非常に重要な柱でございまして、例えば決算公告を義務づけるというようなことをいたしまして関係者の保護を同時に図ってまいりたい、このように考えているわけでございます。

○柴山委員
 当然のことながら、株主のガバナンス、それから情報の透明性、公開ということは非常に重要であるということは論をまたないわけでありますけれども、それと同時に、やはり関係者の責任、これについてはちょっと分けて考えなくてはいけないんですが、取引上の責任の有限性ということと違法行為を行った場合の関係者の責任ということはやはり明確に区別しなければいけないし、また、一定の資本についてはこれをしっかりと充実させていく責任というものはあるのではないかという問題意識だけ提起をさせていただきまして、今後、議論がなされると思いますので、しっかりと検討させていただきたいというように思っております。
 私の方からは以上です。ありがとうございました。

第162回 国会 衆議院 憲法調査会

第162回 国会 衆議院 憲法調査会 第3号
平成17年2月17日(木)
午前九時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 先ほど来御指摘がある健全財政主義についてのプログラム規定化ですけれども、私も、現在の深刻な財政状況を見るにつけ、こうした規定の創設が必要だと思っております。
 先ほど、土井委員から御指摘がございました、予算の審議をもう少しきちんと実質化すべきではないか、私も同様に感じておりますけれども、そのためには、やはり国会の審議の中身の充実というものをしっかり図っていかなければいけないと思っておりますし、また、そのためには、決算についての情報をしっかりと国会でそしゃくすることが必要なのではないか。会計検査院の機能の強化、それと、新しく設けられました決算行政監視委員会、それとの連携を図っていく、あるいはこうした国会の決算行政監視委員会の調査の外部委託等についても、しっかりと行っていくことによって、予算というものを、きちんと中身のある審議を確保していくということが必要ではないかと考えております。
 先ほど来、単年度主義についての御発言がございました。私は、この単年度主義は、もちろん規律という点から望ましいものであるとは考えますが、ともすると、前年の前例の踏襲、また、船田幹事から御指摘のあったように、年度末の無理な予算の執行などの弊害があることも事実ですので、しっかりと、五カ年計画など計画を持った形での積み上げ方式による、真に必要な予算の検討ということも私は部分的に進めていかなければいけないのではないかなというように思っております。
 八十九条の問題については、いろいろ価値観の対立もあったところではあると思います。私の意見を申し上げると、やはりここは、支配の意味というものを緩やかに考えていくべきではないかなという考えに立っております。もちろん、公益あるいは教育の中立性ということを厳格に考えるという解釈も成立し得るわけですけれども、葉梨委員からお話があったとおり、やはり、国として必ずしも容認できないような内容の団体あるいは教育というものについては、緩やかな事業の報告等を徴求するというような形で、その公費については、一定程度の支出をしてこれを助成するというような形で運用をしていくというのが私は一番望ましいのではないかなというように思っております。
 公費の乱用の防止のためにこの八十九条というものは設けられたものと解するべきでありまして、そういった趣旨がしっかりとわかるようにするために八十九条の規定を改正するべきだというように私は考えております。
 地方自治の分野についてでありますけれども、先ほど来、分権についてのさまざまな御発言がありました。私は、現在の日本の実情というものを考えると、連邦制に移行するということはいささか難しいのではないかなというように思っております。地方は、やはり自治体が自治の固有権を有するというよりは、国の主権から伝来をする、ただし、その地方自治の本旨となる部分、いわゆる住民自治、団体自治となるような部分については侵せないというような制度的保障説に立つのが私は最も穏当ではないかなというように考えております。
 そのような観点から考えるときに、道州制というものは、私は採用することもしないことも現行憲法上は可能であると考えておりますが、現行の自治体の統廃合を行うには、しっかりともちろん憲法上明記した方が明確化するのではないかな。二層性というものを維持して、そして行財政改革というものを行っていく、そして、地方のより一層の権限というものを確保するという観点から、もし道州制を採用する場合には、やはり憲法上明記する方が望ましいのであるというようには考えております。そして、地方自治の本旨についても、憲法上、先ほど言った団体自治、住民自治のほか、そういった形での補完性の原則などについても書き込む余地があるのではないかなというように思っております。
 法律の範囲内でしかさまざまな規制あるいは課税等について認められないのはやはり問題であるというようなお話がありました。私は、徳島公安条例判決に見られるように、法律の範囲内ということを一定程度緩和して解釈するということが可能である以上、現在のシステム自体をいじる必要はないのではないかなというように考えております。
 地方交付税を水平的な交付制度に改めるということについては私も検討の余地があると考えておりますが、これは、憲法ではなくて法律のレベルで考えるべき問題だと思っております。
 以上です。

○柴山委員
 柴山でございます。二回目の発言となっておりますが、失礼いたします。
 先ほどの補足で少し申し上げたいことがございます。
 まず一点は、コミュニティーの重視ということでございます。
 先ほど来お話をさせていただいたとおり、補完性の原則、そして身近なコミュニティーの尊重ということが私は極めて重要になってくるというように思っております。そして、コミュニティーあるいはその地域の習俗というもののやはり尊重ということなくしては、例えば、先ほど早川委員から御指摘がありました、八十九条前段の宗教的な行事に対して公金を支出すること、これについても、例えば目的効果基準を明確にした形で憲法上落としていったとしても、現在の判例のように、全く同じ基準を用いながら合憲と違憲が分かれてしまうというような事態を回避するのに役立つのではないかというように私は考えております。
 もう一点は、道州制に絡みまして、その道州の長となる新しい、知事と言うのかどうかわかりませんけれども、その首長についてはやはりかなりの権限を持つということが想定をされます。もちろんこれは、団体自治の観点からは想定をされるわけですけれども、例えば事業の硬直化あるいは健全性という観点から、その多選制を制限することの必要性が、現在の首長の議論よりもやはり深刻に議論の対象となってくるのではないかなというように考えております。
 現在の憲法上の恐らく議論としては、職業選択の自由ですとか、あるいは選挙権、被選挙権の絡みの問題ですとか、いろいろと難しい問題で、この制限を設けるということについては、恐らく学者等は消極説が多数だと思っております。
 これについて私は、きちんと議論を深め、どちらかといえば、余りにも多数回の選出をするということについては弊害が大きいので、これを憲法上定めるかどうかはともかく、制限していく方向というものも考えていかなければいけないのではないかなというように考えております。
 以上です。

○柴山委員
 憲法改正の要件について申し上げたいと思います。
 先ほど来、改正の要件を緩和すること、これについて慎重な方の御意見が相次いでおります。私は、憲法改正手続において本質的な手続とは何か、それは国民投票だと考えています。制度化された憲法制定権力である国民投票、その国民の意思こそがやはり憲法改正の肝であると私は考えております。国会で余りにも厳しい改正手続を設けることは、この憲法制定権力に対してアクセスする機会を不当に狭める可能性がないか、それを私は恐れるものであります。
 先ほど来、枝野幹事が、憲法改正が実現してこなかったのは憲法改正要件とは関係のない事柄であるという御主張をされました。それは一面事実であると思います。しかし、仮に憲法改正手続がとられたとした場合に、ほんの三十年前、自衛隊の存在自体が非常に国民の間でどうかなというような意識があったころと、現在の、自衛隊をある程度、平和的な国際活動あるいは人道復興活動、国内の災害支援活動に積極的に活用することに国民の理解が得られている、そういう状況では、やはり国民投票の結果に有意な差が出てくると私は考えております。
 政権の交代ごとに国民投票が行われる、そういう可能性もあるのではないかという御主張があります。確かにそういう危険性もなくはありません。しかし、国民投票の結果がそれほど頻繁に大きくふらつく、フラクチュエートするということは私は考えられないと思います。
 そういう観点からすれば、私は、可能な限り、憲法制定権力である国民の意思にアクセスする機会を多く設ける。特に安全保障の問題については、今、平和的な国際貢献は是であるというようなことが恐らく国民のコンセンサスであると思いますが、将来においては、国連の決定によれば武力活動にも参加をするということが大勢になるかもしれない、あるいは、国民に国防の義務というものをきちんと課することが必要であるという意見が大勢になるかもしれません。そういった改正をいわば時代の要請に従って国民の意思を問うていくということは、もちろん国民に対してしっかりとした啓蒙普及活動をすることが前提ではありますけれども、私は必要なのではないかと思っております。
 ただ、三分の二という要件、これも、例えば単純小選挙区制を導入した場合にはその合理性というものも考えられるかもしれない、そのように考えております。
 司法の問題について。憲法裁判所について申し上げたいと思います。
 私は、憲法裁判所の創設については、結論から申し上げると若干消極的であります。現在の司法制度というものが非常に後ろ向きである、官僚主義的であるということは私も残念ながら認めざるを得ません。しかし、現在の付随的審査制度が、人権保障と民主主義、これと非常に調和した苦肉のシステムであるということも私は評価したいと考えています。場合によっては、事案が違えば区別の論理を用いて妥当な解決策を導くことができることも、これはまた事実であります。
 もちろん、こうしたこと、司法の積極主義化というものも、私は、例えば、精神的自由あるいは経済的自由でも消極目的規制、あるいは人格の中核をなすような権利については行っていかなければいけないというように考えております。統治行為の部分についてもしっかりと、統治行為の自律性ですとか、あるいは行政、立法などの裁量論ということで、理屈をつけた上で、もし憲法判断を回避するのであれば政治部門にゆだねるというような形をとることは当然必要であると思っておりますが、憲法裁判所ということは必ずしも私は必要でない、むしろ、先ほど来ちょっと御指摘あったように、国会の中に憲法の常設委員会というものをつくっていくことによって解決するべきではないかと思っております。
 ただ、私は、傍論において憲法判断をするということには極めて不快感を持っております。私は、憲法の争点限りにおいて上告をするということを認めるべきではないか。いわば、結論としては不服はないけれども、憲法判断において不服である場合には最高裁判所に上告をすることは可能であるというシステムをとることができる。そして、それによっても付随的審査制の本質とは必ずしも矛盾しないというように私は考えております。そして、最高裁判所において、私は憲法部というものを設けるべきであると思っております。
 特別裁判所について一言だけ申し上げたいと思います。
 先ほど、労働裁判所や行政裁判所、あるいは軍事裁判所ということを考慮すべきではないかという御指摘がありました。私も、これはそのとおり、そういった要請もあると思っています。ただし、特別裁判所というのは通常裁判所の組織系列に属しない裁判所のことを言っているのであって……

○柴山委員
 二度目の発言で失礼をいたします。
 先ほど、今、辻委員がもういらっしゃらないのですが、辻委員あるいは土井委員から、憲法判断の問題点をいかに解決すべきかという大変建設的な御提案がされました。先ほどの私の発言にはそれがなかったので山花委員からおしかりを受けましたが、私も、やはり現実的な、今の制度の中で改革を行っていくためには、先ほどのお二人がおっしゃったような、司法の官僚的な体質というものを国会の側からどのように変えていくかということを真剣に考えていかなければいけないと思っております。
 一つは、やはり先ほど来御指摘のあった法曹養成のあり方、そして弁護士と判事との間の交流、そのようなあり方をしっかりと検討していくこと、また国民審査のあり方について、さまざまな御指摘があったとおり、今の国民審査は余りにも形式的に堕しているということですから、私は、例えば、参議院に本当に最高裁判事となるにふさわしい方かどうかというものをきちんと審議するような、そういう機関を設けてもよいのではないかなというように考えております。
 憲法と現実とのほころびの最たる例ということで、裁判官の報酬を減額できないという七十九条六項あるいは八十条二項の例がよく挙げられます。こうした規定を早急に解決するためにも、私は、先ほど申し上げましたけれども、憲法の改正を早急に行っていただきたいと思います。
 以上です。

第162回 国会 衆議院 憲法調査会

第162回 国会 衆議院 憲法調査会 第2号
平成17年2月10日(木)
午前九時四分開議

○柴山委員
 国会と内閣の関係でございますが、ガバナンスという観点から、株式会社の機関の問題と少しパラレルに考えてみたいと思っております。
 株式会社においては、業務執行、これを決定する取締役会は、全員、株主総会で選挙によって選ばれます。しかしながら、内閣におきましては、内閣総理大臣一人だけが国会から指名を受ける、そういう存在でございます。
 ただ、この場合、内閣におきましては、総理大臣が指名する国務大臣は、過半数は国会議員より選ばなければいけないという規定がございます。これによって民主的な正当性というものが、現行憲法上、制度的には保たれているわけですけれども、民主的統制というものをきちんと図っていくという観点からは、やはり、内閣総理大臣のリーダーシップというものを今よりもはるかにしっかりと図っていくべきである。
 現在の内閣法六条、これの閣議必要、この原則についても、場合によっては見直していくべきではないか。また、先ほど枝野委員から御指摘のあったとおり、行政権が内閣に属するという条文の仕方も、本来、内閣総理大臣に行政権が帰属すると解釈すべきでないか、そのような改正も一つ考えられると思っております。むしろ、積極国家の要請ということとともに、民主的統制の要請からも、私は、内閣総理大臣のリーダーシップというものが今よりも強く要求されるのだと思っております。
 そして、これに関連して、国務大臣は全員国会議員であるべきかという問題につきましても、私は、内閣総理大臣のリーダーシップがきちんと保たれるのであれば、やはり、株式会社における社外取締役の制度と同じように、民間からきちんとした資質を持った人物を総理大臣の責任と権限によって選ぶということも許容することが認められてしかるべきではないかなと思っております。
 現在、先ほど早川委員からもありましたとおり、任期つき公務員あるいは弁護士の裁判官への登用等、民の力の活用ということが積極的に行われています。こうした時流にもきちんと目を向けるべきではないかなというように思っております。
 さて、衆議院と参議院の関係でありますけれども、確かに、衆議院と参議院の意思の不一致ということは大変重大な問題となりつつあります。
 このような中で、果たして、不一致が生じた場合に、先ほど御提案のあったように、例えば参議院が衆議院と違う議決をした場合に、拒否権の発動があれば三分の二以上で賛成とするというような基準を設けるべきなのか、あるいは、衆議院で再議決を過半数という要件で行うべきなのか。その場合には、私は両院協議会を義務的なものとするべきだと考えておりますが、これは両院のチェック機能、参議院のチェック機能をどこまで考えるべきかというところで御検討いただければ幸いだと思っております。
 最後に、単独立法の関係で、国会が唯一の立法機関であるというところから、単独立法機関性というところから、内閣の法案提出権というものを否定するべきでないかという点について一言だけ申し上げますと、この件について、私は、現行憲法七十三条一号が、「国務を総理すること。」ということが内閣の一つの職務となっておりますこと、また、積極国家化の現状に照らしまして、やはり内閣にも法案提出権を認める、ただし、そのかわりに、しっかりと現在の国会の審議機能というものを高めていき、不当な法律というものをきちんと立法府の段階で修正していく、そういうシステムをつくっていくべきではないかなというように思っております。
 以上です。

○柴山委員
 先ほどの発言に若干補足をさせていただきたいと思っております。
 内閣総理大臣のリーダーシップについてでありますけれども、やはり私は、与党と内閣総理大臣の一体性ということを憲法が想定している以上、真にその一体性というものが発揮されるように、例えば、内閣総理大臣の指名に当たって、総理大臣候補が明確に、そのみずから望む政策を全国会議員に対して、詳細な形でマニフェストとして提起をするというような事実上の運用が必要であるというように考えております。
 また、先ほど少し言葉が足りなかったかもしれませんが、私は、国会で選任されるのはあくまでも内閣の中で首相だけである、そして、それに対して、株式会社等においては、取締役は株主総会において選任される、そしてその取締役会で代表取締役が選任される、そういうところから、いわゆる民主制の担保、担保と申しますか、確保の基本的な発想が違うというようなことを申し上げたかったわけでございます。
 要は、内閣の場合は、やはり、総理大臣を通じて民主的コントロールがしっかりと閣僚全員に及ぶということが求められている、その意味からリーダーシップということが求められているということを先ほど申し上げたかったということを補足させていただきたいと思います。
 また、二院制について先ほど来いろいろ御発言があり、私も、選挙制度において衆議院と参議院を異ならせるべきではないか、特に、参議院においては、道州制の導入、そして比例制のあるいは大選挙区制の導入ということを積極的に考えていかなければいけないのではないかと思っております。
 以上です。

第162回 国会 衆議院 憲法調査会

第162回 国会 衆議院 憲法調査会 第1号
平成17年2月03日(木)
午前九時七分開議

○柴山委員
 本日議題となっております天皇制についてですけれども、私は、今、国民と皇室の関係というものは大変親密な関係である、そして、皇室を、権威の対象としてよりは、むしろ親しみの対象として考える関係になっているということを大変喜ばしく思っております。
 そして、先ほど早川委員からお話があったとおり、オープンに皇室の問題について議論をするということはとてもよいことだと思っておりますし、あわせて、ともすると権威の陰に隠れてなかなか改革の対象になっていない宮内庁のあり方というものについても、真剣に議論を進めていくことが必要ではないかと思っております。
 以下、各論点について申し上げます。
 まず、元首論についてでございます。
 私は、天皇を象徴と規定している、正確には象徴にすぎないと規定している現在と、あるいは元首としての性格を併有すると明定する場合に、現実の運用面としてどの程度の違いが出てくるのかということについては、若干疑問を持っております。先ほど葉梨委員からお話のあったとおり、対外的、また歴史的、また現行憲法の条文立てに照らして、天皇を元首と定めることに格段の障害があるとは思えません。
 ただ、元首とすることによりまして、イメージ的に、天皇の政治に対する関与を否定しているというところに抵触するのではないかというあらぬ混乱、そうしたイメージの問題というものが出てくるのではないかなというように思っておりますので、この点については慎重に考えていくべきではないかなというように思っております。
 さて次に、皇位継承の問題について大変最近議論になっております。
 私は、女帝を認めることには賛成でございます。しかし、先ほど来、これを全くの長子の承継ということに改めてよいのかということについては、若干議論の必要があるのではないかなというように思っております。
 よく男女平等論がその背景として言われるわけですけれども、先ほど大出委員から御指摘があったとおり、現行の天皇制自体、世襲制を導入し、また長子を優先としているという、現行憲法の平等原則上看過できない例外的な存在であることは言うまでもありません。葉梨委員からもありましたとおり、皇室の存在自体、憲法二十条からはなかなか説明の難しいような部分もありまして、私は、現行の天皇制というものは、むしろ憲法原理とは異なって、日本の伝統あるいは文化を体現したそういう存在であるものだというように考えております。
 そのような観点からは、やはり皇位の継承ということを考えるに当たっては、一足飛びの改革というものはもう少し議論が必要ではないか。また、先ほど大出議員の方からあったように、女性の宮家を創設した場合の財政の影響、これを最小限にするためにさまざまな複雑な議論が必要になってくる。また、女帝の配偶者の問題もあります。長女を皇太子とする場合、摂政を、女帝の配偶者である御主人とするのか、あるいは女帝の皇太子である長女とするのか。長子承継とした場合には、こういった難しい問題が生じてくることもしっかりと考えていかなければならないと思っております。
 また、先ほど御指摘のありました、養子を認めるべきではないかというところについてもきちんと議論を進めていかなければなりません。
 いずれにしましても、男系の女子に例外的に認めるのか、あるいは長系相続とするのかということは世論の動向をしっかりと見きわめて考えていくべき問題であり、そういう意味からすれば、この問題は、憲法事項というよりは、やはり皇室典範の改正によって対応するのが望ましい事柄ではないかなというように思っております。
 最後に、時間がなくなりましたが、天皇の国事行為について若干触れさせていただきます。
 私は、国事行為は現行憲法のものよりもふやす必要はないと思っておりますが、必ずしも私的行為と違うものがある。先ほど、植樹祭ですとか被災地の見舞いですとか、あるいは国会の開会式のおことば等がありましたが、このようなものについて、やはり私は、公的行為として、しっかりと内閣の助言と承認を得た上で認めていくべきではないかと思っております。ただ、これを儀礼的行為として正面から憲法上認めていくということについては、さらに検討が必要かと思います。
 以上です。

○柴山委員
 ただいま山口委員から御指摘がありました、規範と現実が一致しない場合には、むしろ現実を規範の方に合わせるべきではないか。一般論としてはそのとおりだと思います。しかし、私は何も理想がいけないと言っているわけではありません。規範と現実が乖離したときに、その現実に対してどのように対処すべきか、そうした枠組み、制度論として、今の九条では対応し切れなくなっているのではないか。余りにも解釈があいまいでこれに対応できていない。そこを我々の同僚の委員たちは指摘をしているのではないかと思っているのであって、決して理想を捨てるということを申し上げているのではないということを御理解賜れればと思っております。
 さて、自衛権の問題についていろいろ議論がございました。私は、自衛隊について、これが隊であるから、軍ではないから合憲であるといったような言い方は、これは国民を欺くものではないかというように思っております。その意味で、やはり私は自衛のための武力組織というものはしっかりと憲法上位置づけていくべきであると考えております。
 先ほど自衛権について、枝野委員から、その行使の要件等について明記すべきではないかという問題提起がございました。私も半ば賛成でございます。半ばと申しますのは、従来、やはり自衛という概念については、例えば刑法上の正当防衛にもありますとおり、急迫不正な侵害に対してやむを得ない範囲での反撃しか認められないという解釈が私は解釈上も可能ではないかというように考えております。仮に、集団的自衛権の概念を採用することによってこの伝統的な自衛権の概念を拡大するのであれば、私はやはりここの部分は明文上きちんと書いていくべきではないかなと思っております。ここの部分については、やはり米国とどこまで行動をともにするかという部分にもかかわってきますので、しっかりと考えていかなければいけない問題だと思っております。
 さて、国際協力の範囲についてでございます。
 私は、自衛権の問題と異なり、この国際協力の範疇につきましては、いわば我が国の主権がある程度制限されるというような話でございますから、項を改めて定めるべき問題ではないかなというように考えております。そして、やはり国民的なコンセンサスを得られるということで、まず第一弾の改正を考えるとすれば、やはり国連決議に基づき、非武力的な、いわゆる人道復興活動等の非武力範囲での活動というものに範囲を限定するということが現実的ではないかなというように思っております。
 ここで反論として、非武力的な活動とは何か、究極的には武力と一体化するのではないかという反論がありますけれども、例えば、犯罪においても、実行行為とこれに対するいわゆる幇助の行為、これも、幇助についても有形的な幇助行為とあるいは無形的、つまり技術的あるいは資金的な幇助行為ということが概念を区別できるわけでありまして、そういうような工夫をやはり私はしていくべきではないかなと考えております。
 また、NGO等の活動に期待をすべきだという反論もございますが、NGO等をこうした人道復興活動に派遣したときの危険性というのは、まさに今回のイラクにおける人質事件等が如実に物語っていると私は考えております。
 また、自衛隊と別組織の実力部隊を派遣すべきだという意見もございますが、思考としては確かに筋が通っているのかもしれませんが、現実的にどれほど経済的に合理的かということは問われ直さなくてはいけないと思っております。
 なお、この国際貢献に関連しまして、日本の安全保障理事会の常任理事国入りが検討されております。しかし、まず、常任理事国入り云々の前に、非常任理事国であれ、この安保理入りすること自体が実は法的に検討されなくてはいけない問題をはらんでおりまして、国連憲章でいえば四十二条の問題でございます。また、もちろん常任理事国に入った場合には四十七条のハードルもクリアしなければいけません。この点について、きちんと議論をしなければいけないというように思っております。
 最後に、国家緊急権の問題について申し上げます。
 この点について、憲法に明記すべきであるという意見はありますけれども、国民保護法あるいは激甚災害法等の下位法規である程度対応ができるのではないかという見解にも私はうなずけるものがあると思っております。また統治機構、例えば、総理大臣を含め大臣が全員死亡してしまった場合にどのような事態が生じるのか、そういったような問題もございますが、これについてもやはり下位法規で定めてもよいことではないかと思っております。
 今後の議論にまちたいと思います。以上です。

第161回 国会 衆議院 憲法調査会

第161回 国会 衆議院 憲法調査会 第4号
平成16年12月2日(木)
午前九時一分開議

○柴山委員
 二院制の両院の権限について、参議院の権限に、現在形骸化している裁判官、最高裁判所判事の国民審査に代替する指名機能というものを付与してもいいんじゃないかというように思っております。
 それと、選挙制度に関連して、先ほど来、いろいろ意見が出ております。衆議院で小選挙区制を導入するとやはり問題ではないかというような御意見もありましたが、やはり私は、多数党をつくって政権を安定させるといった機能ですとか、政権交代を実現しやすくすることのメリットというものは否定できないというふうに思いますので、民意の集約という言葉で、小選挙区制を政権交代を重視するための選挙である衆議院選挙においては重視するべきではないかなというふうに思っております。
 ただ、これに関連して、参議院選挙をそれでは比例代表制を中心に考えるのかというところについては、逆に政党色を薄めた選挙とするべきではないかという反論があるところでございまして、これは私は、両方、ハイブリッドに考えて、結局、現在のような制度というものを当面は維持してよいのではないかと思っております。
 道州制の導入に絡みまして、現在の都道府県代表の部分を道州代表にするというプランも私は将来的には検討に値すると思いますが、その際、複選制という形で行うべきかどうかというところは、やはり、今なお定着している現在の直接選挙のメリットということで、少し慎重に考えた方がよいのではないかなというふうに思っておりますし、先ほど船田先生から御意見もあったとおり、推薦制についても慎重に考えるべきではないかなというように思っております。
 次に、衆議院の優越性についてですけれども、先ほど、衆議院、内閣に対して参議院が余りにも防衛的になってしまって不都合な事態が生じると、例えば予算等法律の乖離などの事案が出ましたが。これに対しては、アメリカの拒否権、それからヨーロッパでは上院についても解散権が認められておりますが、当面、先ほどちらっと佐藤先生から触れられたところでもあるんですけれども、衆議院の再議決、法律についての再議決の要件を現在の三分の二から緩めていく、過半数まで緩めるかどうかは議論の余地があるかと思うんですが、そういう方向で検討していくのも私は一つの手だてだと思います。
 ただ、その場合においては、現在任意的とされている両院協議会、法律の場合は衆議院、参議院の両院協議会は任意的とされているわけですけれども、これを必要的とすることによって、参議院が余りにも軽視されることを防ぐ工夫が必要なのではないかなと思っております。
 政党制についてですけれども、私も実は、これは現在の政党のあり方が国民的にいろいろ議論され、または問題が生じている中で、憲法的に組み込んでいってもいいのではないかなと。特に、資金のあり方についてドイツの憲法に倣ったような規定を置いてもよいのではないかなというように思っております。
 ただ、民主的秩序を侵害して国の存立を危うくすることを目指す政党は違憲とするというような、こういった闘う民主制についての規定は、ドイツは今小選挙区比例代表の併用制になっていて、少数党が比較的容易に議席を獲得できるシステムになっているというところも一つ背景にあるのではないかなというように思っておりますので、私は、ここの部分は日本の結社の自由、政党の自由というものには必ずしもなじまないのではないかなというように思っております。
 以上です。

○柴山委員
 改めまして、このような場で憲法の議論ができることを大変光栄に思っております。私もこの四月まで法律実務に携わっておりましたけれども、先生方あるいは参考人の皆様に大いに学ばせていただきました。本当にありがとうございました。
 科学的に申しまして、人間は、翼のないエンゼルではなく、二本足で歩く猿である。ともすると、我々は、人間の理性を過信し過ぎるとともに、ほかの生物との類似性、あるいは環境と仲よくしなければいけないという事実に気づいていないのではないか、そのように感じることがあります。
 この調査会で、平和主義や教育の問題を考える際、近代初期の憲法が措定した人間の完全性を前提とした、そういった議論がなされておりましたけれども、私は現実とやはり乖離する部分が大いにあるのではないかなというように思っております。
 生物は、厳しい生存競争の末、環境に適合した種を残してまいりました。そうした競争が私たち人間にとっても厳然として大切であるということを率直に認め、その一方で、公正な競争のためのルールというものをきちんと定めること、そしておのおのの個というものを包含し、そして時には個と緊張関係に立つ公の概念というものをその競争と同様に大切にしていくべきだということを、私はこの調査会の場を通して言い続けてきたつもりでございます。
 先ほど中川先生がおっしゃったことと少し関連するんですけれども、憲法をもし改正するとした場合、私は二回行わなければいけないのではないかなと思っております。現在の厳しい改正条件のもとでは、やはり大勢の皆様がまずコンセンサスをつくれる、そういうような条項、例えば明文上明らかにおかしいと思われる私学助成の八十九条ですとか、裁判官の報酬の減額を認めない七十九条等のそういった条項をまず修正すること。そして、解釈が余りにも難しい自衛隊の存在など大きな問題については、最大限の合意が得られる範囲で修正をしていくべきではないかなというように思っております。
 参考人質疑の中などで、憲法改正の場合の国民投票は各条項ごとに行うべきだという意見もありましたけれども、国民の十分な理解を得るためにも、改正は小幅にならざるを得ないのではないかな、そして、引き続き、あるべき憲法の抜本的な姿について、しっかりと国民とともに理解を深め、議論を深めていくべきではないかなというように思っております。
 本当にありがとうございました。

第161回 国会 衆議院 憲法調査会公聴会

第161回 国会 衆議院 憲法調査会公聴会 第3号
平成16年11月25日(木)
午前九時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 本日は、公述人のお三方におかれましては、お忙しいところ朝から御出席をいただき、貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございました。
 白石公述人より、順次、今お述べいただいた所見について若干質問をさせていただきたいので、よろしくお願い申し上げます。
 公述人は、天皇制につきましていろいろと御見解をお述べになりました。元首の問題についても、また公述人お述べにならなかった天皇の権限についてもいろいろと意見の分かれるところではありますが、今、最後にお述べになった女帝の問題、これについて少し質問させていただきたいと思います。
 この女帝を認めることについて、これはきちんと推進していくべきだという御意見だったんですが、これを憲法上も全く男女平等の取り扱いということで位置づけるべきであるかどうか、これについて公述人はどのようにお考えですか。

○白石公述人
 私は、憲法上もはっきりと位置づけるべきだというふうに思います。私どもの地方自治体でも、男女共同参画社会の条例をつくって、男女が平等に社会に参画するんだということをはっきりと条例上、第一条に明記してございますので、そういう意味でいえば、天皇の地位も憲法上明記すべきだというふうに思います。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 それでは、例えば将来女帝が誕生した場合に、職務が行えないときにこれを補佐する摂政、これは、今、皇室典範では皇太子の立場にある人が摂政をするということになっているんですけれども、女帝の御主人に当たる方を優先するのか、それとも現行の皇室典範のように皇太子となる人が行うべきなのか、これについてはどのようにお考えですか。

○白石公述人
 私は、天皇の制度そのものはやはり皇統に基づくというふうに考えておりますので、摂政についても、少なくとも皇太子が摂政をすべきだというふうに思います。

○柴山委員
 確認ですが、それはもちろん、皇太子たる地位の方が女性でも同じ、そういうことでよろしいわけですね。

○白石公述人
 それは全く同じでございます。

○柴山委員
 次の質問に移らせていただきます。
 憲法第九条、これについてお伺いしたいと思います。
 先ほど公述人は、自衛隊を軍隊に位置づけるべきだ、また、国際紛争を解決する手段として、武力の行使も認めるべきだという御見解でした。個人的には、最終的にはそのような方向も私は十分検討に値するというように思っておりますが、先ほど来、憲法の改正には、各議院の三分の二以上の議員の発議が必要で、また国民の過半数の同意が必要だという高いハードルがあるわけです。
 このようなハードルの中で、今公述人がおっしゃったような御意見というものが受け入れられる見通しというのをどの程度考えていらっしゃいますでしょうか。

○白石公述人
 先ほど、読売新聞の各党の国会議員に対するアンケート調査の結果についてちょっと触れさせていただきましたが、自由民主党は九六%改正に賛成、民主党も七七%が賛成、公明党が八三%賛成という中で、私は、憲法改正そのものについては大方三分の二の賛成は得られるのかなと。
 ただ、九条について言えば、なかなか難しい部分がありますけれども、これも新聞の世論調査ですが、国際貢献などの今の憲法では対応できない新たな問題が生じているので憲法を改正すべきだという意見が六二%あるということで考えますと、国際貢献について言えば、少なくとも国民の過半数は賛成していただけるのではないか。
 しかも、今の憲法の前文にも書いてありますけれども、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」、こういう形で前文にも書かれているように、まさに日本がこれだけの経済大国になった以上、国際貢献をしなければならない責任はますます大きくなっている、このことについては国民の皆様方の御理解は得られるものというふうに考えています。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 また、九条二項の部分で、公述人の御意見として、自衛のための戦力は保持することができるという御見解でしたが、他国からの不当な侵害に対する自衛ということには、いわゆる密接な関係国に対する集団的自衛権、これは含まれるとお考えでしょうか、どうでしょうか。

○白石公述人
 これもまた日本国憲法の前文にあるんですけれども、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、」この後が問題なんですが、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」もしこの決意が本当であれば、日本という国は本当に独立国なのかということを疑わないわけにはまいりません。
 そういう意味でいえば、他国の侵略から断固として国民の生命、財産を守ることについては当然の国の義務ですから、このことについて当然、それは軍隊と言いますか国防軍と言うか自衛軍と言うか、名前はどういう名前でも結構ですけれども、日本国民の命と財産を守るための組織は必ず必要だ。
 それでは、日本国が一国で日本の平和を守れるかということになれば、これはもう全く不可能なことはだれが考えたって当たり前ですから、集団的自衛権もこの中に入るというふうに思います。

○柴山委員
 さらに、緊急事態の憲法のあり方について、国家緊急権を憲法上位置づけるべきであるという見解もあります。また、被爆国日本のあり方として、大量破壊兵器、また核兵器についての非核三原則、これについても明確なスタンスというものを打ち出すべきではないかという意見もあるところですが、これについて公述人はどのようにお考えでしょうか。

○白石公述人
 大量破壊兵器並びに核の廃絶は、まさに日本だけではなくて、世界の念願ですから、悲願ですから、このことについては明確に打ち出すべきだというふうに思います。
 なお、国家非常事態については、当然いろいろな状態が想定されますけれども、そうした事態になったときに、国会を召集してすべて国会の決定に従うというようなことで本当に国の安全、国民の安全が守れるかということになれば、国家非常事態を想定した条項、条文はあってしかるべきだというふうに思います。

○柴山委員
 次に、私有財産の制限についてお伺いしたいと思います。
 公述人は、なかなか進まない区画整理あるいは土地収用等を念頭に置かれまして、それを制限するという明文を設けるべきだという御主張だったわけですけれども、具体的に公述人のような条文の体裁にした場合に、具体的なその収用等の手続をどのようにすればよいとお考えですか。先ほど、土地収用委員会が有効になかなか機能しないというような御主張だったと思うのですが、例えば、議会の多数決で少数者の財産権、これは必要不可欠な財産には及ばないとはいえ、それを剥奪するような決定もできるというような形でお考えなのか、公述人の御意見を伺いたいと思います。

○白石公述人
 現在の土地収用法では、例えば成田空港の問題もそうですけれども、過激派に収用委員が襲われるという中で、千葉県の収用委員会は収用委員全員が辞任をしてしまって、収用委員会そのものも存在しないというような、こんな異常事態が現在の法律のもとでは現実に起こっている。
 このことを考えたときに、私は、ある意味で土地というのは領土ですから、国を形成する基本の三原則の一つ、領土ですから、これを個人が、絶対に公の福祉に使わせない、どうしても賛成しない、どうしても売却に応じないということであれば、基本条例の中で、これを議会の決議によって売却、収用ができるという形にすべきではないのかな。
 収用するといいましても、現在では、民民売買より民官の売買の方が高い値段で収用しておりますし、民民売買の場合は、例えば建物があった場合は建物を取ってから売買するというのが今の習慣ですけれども、私ども例えば足立区と民の売買の場合には、建物もそっくり買い取るということですから、古い建物も、現実には坪数に応じて、新規の建物が建ったら幾らになるかということを前提にした形で、土地も建物も営業権もすべて補償して買い取るということですから、私は、私有財産の侵害には当たらない、こういうふうに思います。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 それでは、地方自治の議論に移りたいと思います。
 まず、今、地方公共団体の長の多選の禁止を法律上設けるべきではないかという議論がなされていますが、これについて公述人はどのようにお考えでしょうか。

○白石公述人
 私どもの地域では、四選以上した首長は足立区にはおりませんけれども、足立区の四選目の首長で一番大きな問題になったのは、四選もしますと、執行機関、部下をどうも自分の言うことを聞く、言いなりの部下を集めてしまう、こうした嫌いがややあって、常に行政は区長のイエスマンになってしまうということを考えますと、私は、首長の多選は禁止すべきだ、このことが地方自治体、地方政治の活性化に必ずつながっていくというふうに考えております。

○柴山委員
 基本条例と国の法律との関係についてお伺いしたいと思います。
 国の固有の権限ということで恐らく公述人が考えられているのは、司法あるいは外交、刑罰といったような全国的な事務だと思うんですけれども、それ以外の自治事務に関連する事項であっても、例えば公害の規制ですとか河川法による管理などについて、国全体の利益や他の地方公共団体の利益を配慮した形でのやはり国の法規制というものは当然想定されると思うのですね。
 そのような中で、徳島市公安条例事件の判決というものが昭和五十年に出ていて、法律と条例との抵触関係については、ただ文言上比較するだけではなくて、その趣旨とか目的、内容とか効果をきちんと判断して決めるべきだ、つまり矛盾、抵触があるかどうかを決めるべきだという判断がなされていますが、このような判断で、例えば上乗せ条例ですとか横出し条例というようなものの適法性を妥当な形で解決できるのではないかと思うんですが、公述人はどのようにお考えでしょうか。

○白石公述人
 私は、今言うような形の中で、もちろん条約とか司法とか、こうしたものについて国の権限を地方自治体が侵すというようなことは考えてもおりませんけれども、そういう意味で、例えば河川などという広域的な問題については、先ほど私の方からお話しさせていただきました道州制というような形のものを導入していく中で、一地方自治体というよりは、新たにつくった道州制の中で広域的な行政については解決していくべきだというふうに考えております。
 例えば、私ども足立区、東京都の水道の主な供給源は群馬県でございまして、群馬県は関東地方ということで、利根川の流域全体で広域団体をつくって、利根川河川の管理等については、たくさんの県と市町村が合同で利根川水域を管理するというような形もやらせていただいておりますが、そうした意味で、道州制の中でその部分は解決していくことの方が妥当なのかなというふうに思います。

○柴山委員
 どうもありがとうございました。
 続きまして、篠原公述人にお伺いしたいと思います。
 行政の監視ということを中心にさまざまな有益な御提言をいただいたわけなんですけれども、そもそも政府の法案についてなかなか修正が難しいというようなお話があったんです。今、内閣の法案提出権、これは解釈上認められているわけですが、もちろん国会法の中でもそれを認めるような記述がありますが、これについて、国会議員が法案提出権を独占するべきであるというような議論がなされております。これについてどのようにお考えでしょうか。

○篠原公述人
 もう数十年ぐらい前の憲法学の中では、内閣に提出権があるのかどうかというのが大変盛んに議論されたと思うんですが、やはり、議院内閣制というのをとっている各国を見ていても、内閣が、政府が法案を提出するのは、もうこれは議院内閣制である以上は当然のことだと思いますので、私は、必ずしも国会議員が法案提出権を独占する必要はないのではないかというふうに考えます。

○柴山委員
 それでは、次の質問です。
 先ほど公述人は、国会、もちろん委員会も含めて、審議が非常に形骸化している、空洞化しているという中で、立案段階から、いわゆる法律がまだ大綱の段階から議論を進めていくべきではないかというような御示唆をいただきました。ただ、当然のことですけれども、与党と野党、大分基本的な考え方が違う議員がたくさんいるわけで、そのような中で、いわゆるガチンコの形で議論をしていっては、とてもでないけれども時間が足りないというような意見も出ているところでございます。これについてどのようにお考えでしょうか。

○篠原公述人
 政府が提出する法案も、例えば人事院勧告によって公務員の給与を改正するような法案であったりとか、そういう事務的な法案もございますので、そういうものはある程度ここで、平場で議論するのは妥当ではないのかもしれないんですが、年金改革法案のような場合はやはりもう少し政府・与党は柔軟に対応することができたのではないのかなというふうに思いますし、すべての法案を一から立案していくというのは難しいと思うんですが、やはり暗黙の了解としてこれは重要法案であるぞというのは、国会議員の先生方の中ではある程度の合意がある法案があると思うんです。その点に関しては、やはり一から議論できるようなシステムを整えていった方がよいのではないのかなということでございます。

○柴山委員
 例えば、代替案として、現在の委員会審議を、論点ごとにきちんと整理をして柔軟に修正を考えながらやっていくというような形で、もちろん一たん成文となったものを修正するというのは御指摘のとおり大変難しいわけですが、もう少し審議の進め方いかんによっては内容が実質化するのではないかというような考えも私は持っているんですけれども、これについてはどのようにお考えでしょうか。

○篠原公述人
 全くそのとおりだと思います。
 私がこの数年間の国会の中で記憶に残っておりますのは、一番最初の有事法制のときに、民主党の枝野委員と自民党の久間議員がさしで理事懇で話し合って修正案を最後にまとめられたというのが記憶に新しいんですが、でも、あのときは、何か採決の直前になって急に与野党で、議事録上ですよ、議事録上では、急に与野党で合意をして修正案をぱっと出しましたというような形になっているわけですね。論点ごとに、では、ここをこうしましょうという議論は議事録上は残っていないわけで、もう少しそうした部分が表に出るようなシステムにしていくべきではないのかなというふうに思います。

○柴山委員
 次の質問に移りたいと思います。
 今、憲法調査会では議会オンブズマンについていろいろと議論をしているわけなんですね。今公述人の御意見によると、国会内の決算行政監視委員会の機能を充実させて、行政に対するチェック機能を果たすべきだというような御提言だったと思うんですけれども、オンブズマン構想についてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。

○篠原公述人
 これに関しては、九〇年代後半に、これは、今の民主党じゃなく多分以前の民主党になると思うんですが、日本版GAO、行政監視院構想みたいなものを提出されて決算行政監視委員会ができたと思うんですが、そのときに委員会調査室が調査局に格上げされて、予備的調査というのができるようになって、また、それとともに先ほど申し上げた会計検査院に対して検査の要請ができるようになったわけですね。その今の制度が十分活用されていない中で、また国会オンブズマンという新しいものをつくって陣容をふやすというのは、やり方としては余りスマートではないのかなというふうに思います。今ある会計検査院への要請や予備的調査といったものを、もう少し活用していく必要があるのではないのかなというふうに思っております。

○柴山委員
 具体的には、例えば陣容を拡大するべきだとか、あとは一般市民からの告発とかそういうものを幅広く受けたり、調査を外注したり、そういうような形が考えられると思うんですけれども、何か具体的なプランというものがもしあれば、お聞かせいただきたいんです。

○篠原公述人
 この決算行政監視委員会のことに関してですか。
 やはり、国会が行政に対して全面的にいろいろ監視をしていくというのは難しいと思うので、テーマを三つなり四つなり決めて、それについての報告書をつくっていくことなのかなというふうに思います。一般国民から意見を受け付けるというのは今の決算行政監視委員会でもやっているはずなんですが、やはり、さまざまな意見、質のいいものからちょっとおかしいかなと思うようなメールやお手紙が来ているようですので、そこはちょっと工夫をしなければいけないのかなというふうに思いますが、一般国民から直接意見を受けるという点に関しては、私は余り前向きな気がいたしません。
 しかし、例えば予算委員会でやっているような政府追及というのは本来決算行政監視委員会でやるべきであって、あのようなものを決算行政監視委員会で議論して、もう少し国会内における決算行政監視委員会の権威を高めていかなければならないのかなというふうに思います。
 それと、例えば、かつて薬害エイズというのがありまして、菅厚生大臣がリーダーシップを発揮して資料が出てきたということがありましたが、あのようなわかりやすい事例が国会と政府の間で起これば、これは一つ、いいのかなというふうに思います。

○柴山委員
 ちなみに、私も決算行政監視委員会に所属しているということを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。
 憲法解釈について、司法が抽象的な憲法判断を下せない現状であるということで、大変問題があるというような御提言があったかと思いますが、これについて、憲法裁判所を設けるというプランと、あとは、先ほど議院法制局と内閣法制局との対決というようなお話もちらっと出たんですが、議会の中で憲法委員会を設けて、それで憲法問題について議論をするというような構想も実は持ち上がっています。
 こういった動きについて、公述人、どのようにお考えでしょうか。

○篠原公述人
 議会の中に憲法委員会をつくるということは、これは大変よろしいことだというふうに思います。冒頭にも申し上げたのですが、基本的に、日々政府から出される法案を処理していくことに通常の委員会はいっぱいいっぱいになってしまっていて、憲法といった中長期的な視点を議論する場が余りに少ないのではないのかなというふうに思います。
 そういう意味で、委員会という国政調査権を発動できる政治的なバックボーンの中で憲法を議論できる場ができるというのはいいことだと思います。

○柴山委員
 最後の総論の部分で、事前調整型から事後調整型という御提言がございました。緊急性のあるものについては、例えば国会の同意などを事後的な承認ということに回すことは考えられるんですけれども、それ以外に、例えば公述人は、政令、通達にちょっと多く規定されているというような御発言もあったんですが、事前の国会のコントロールを、例えば委任の程度をより絞っていくというようなことを考えるのは非現実的だと思われますか。

○篠原公述人
 済みません。もう一度御質問いただけますか。

○柴山委員
 失礼いたしました。
 統治システムの事後調整型がこれからは重要だということについてなんですが、例えば議会の行動に対する承認、これを、例えば緊急案件については事後的な承認で足ります、ただし、事前の承認も、やはり今、余りにも行政に幅広い裁量が与えられ過ぎているのではないかという批判があると思いますが、これについて、このままでよいとお考えでしょうか。

○篠原公述人
 それはまさにおっしゃるとおりでございまして、これは、国会と政府の関係というよりも、政府内の問題であるのかなというふうに私は思っております。政府がやたらと憲法とか法律とか判例とかで政策に二の足を踏んでいる、そういうのではなくて、もう少しアメリカ型に、政策を積極的に打ち出して、政府の政策が違憲であるという判決は余りよくないんですが、とりあえずやってみるという姿勢がもう少し政府の中において必要なのではないのかなというふうな意味で書いております。
 そういう意味で、議会が政府に対して事前に承認を行うとか、そういうことに関しては、やはり行っていくべきものは行っていくべきものであると思います。今のイラク特措法に関しても、やはり事前に国会の承認ができるような法制度であった方がよかったのではないのかなと個人的には思っております。

○柴山委員
 最後に、ちょっと小さな論点かもしれませんが、国会の会期制ですけれども、イギリスなんかで誕生したように、通年国会だと、なかなか議員が腰を落ちつけて政策について勉強する機会がないですとか、有権者と接触する機会が余り多くとれないとか、そういうような問題もあるというような形で議論されております。
 また、衆参法制局の統合については、憲法四十八条、五十五条、五十六条などで各院の自律性というものが明確にうたわれている以上、なかなか難しい部分もあるんじゃないかなというような、恐らく反対の意見がそれぞれ出てくるのかなというように思いますが、これについて、最後に簡単に御意見を伺いたいと思います。

○篠原公述人
 まず、院の自律性についてなんですが、これは、先ほども発言の中で申し上げたのですが、審議において自律性が保たれればよいのであって、事務局とかの後方支援に関しては統合しても問題はないと思います。速記の方に関しては、近く衆参統合されるようなお話がございますので、これは考え方の違いなのかもしれませんが、進めていこうと思えば進めていけることなのかなというふうに思います。
 会期についてですが、これはやはり先生方の選挙等々の御都合もあるかとは思いますが、今の制度は余りにも、ちょっと柔軟性を欠くのではないのかなというふうな認識でございます。

○柴山委員
 大変どうもありがとうございました。
 続きまして、平塚公述人にお伺いしたいと思います。
 公述人がお述べになられました、国民投票の具体的施行方法についてはあらかじめ明確に規定しなければいけない、また、その制度の前提として国民の憲法に対する理解度を高めていかなくてはいけない、ともに大変ごもっともな御指摘だと思いました。
 その上で、ちょっとお尋ねをしたいんですが、例えば義務教育課程で、憲法の問題を、充実して教育の中に、プログラムに取り入れるということになりますと、先ほど公述人御自身ちらっと触れられたところなんですけれども、教師によって、その持っている思想ですとかそういうもののばらつきがどうしても憲法教育にも反映されてしまうのではないか、政治的なバイアスというものが、特に教員はいろいろな団体に所属しているわけですけれども、その団体の基本的な考え方というものが、教員を通じて、まだ批判能力の少ない子供たちの教育に反映されてしまうのではないかという懸念が出されるところじゃないかなと思いますが、これについてはどうお考えでしょうか。

○平塚公述人
 全くそう思います。一番怖いなと思うのは、そこだと思うんです。
 ですから、教師の思想によって教えるのではなくて、できるだけしっかりしたテキストをやはりつくるべきだと思います。その内容も、特に小学生のうちは、そんなに思想的な見解の相違ということが出るような内容を教えるのではなくて、要するに、日本という国自体がそういった憲法を持っているということを教えていかなければ、まず、そういったものがあること自体、義務教育が終わった時点で頭の中から飛んじゃっているという若い人たちが今多いんじゃないかなと。
 ですから、一番私が言いたいのは、日本という国にはこういう憲法があるんだ、そういうことが頭に残るような形の教育をまずはしてもらいたい。ですから、その詳しい内容の教育は、小学校の時点では多分そうはできないと思います。

○柴山委員
 私も全く同感でございます。ありがとうございます。
 続きまして、公共の福祉といった問題を教えていくべきだと。特に、先ほど公述人、人に迷惑をかけることはいけないというような教育、あるいは道徳の教育、これを充実させていかなければいけないというようにお述べだったと思います。
 ただしかし、今、人に迷惑をかけなければ、自分がたばこを吸おうが、人に煙で迷惑をかけなければいいじゃないか、援助交際をやって、人に迷惑をかけなければいいじゃないか、そういうような反論をする子供がいるわけですね。
 個人の権利を最高のものとするという価値体制が今大変揺らいでいるような印象を私は受けるんですが、これについて公述人はどのようにお考えでしょう。

○平塚公述人
 全くそのとおりです。若い人たちと話すと、やはり日本は自由だと。自由という意味が、何でもやっていいという自由というふうに考えている人たちが非常に多いんじゃないか。
 ですから、これは一例として公共の福祉という言葉を私は入れましたけれども、人に迷惑をかけるということが何なのかということ。子供たちは、例えば、先ほどおっしゃいましたとおり、人に迷惑をかけなければ何をやってもいいんだと。何をやってもいいということ自体が自由と履き違えているところがあるので、世の中にはいろいろなルールがあるんだということを教える意味でこの一例を述べたまでであって、公共の福祉が必ず迷惑をかけるということでもないと思うんですよ。ですから、これは単なる一例です。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 続いて、仮に将来、憲法を改正するに当たって、どのような形でその手続をとらなければいけないのかということについてちょっと御意見を伺いたいと思うんです。
 特に、公述人がおっしゃったような、憲法に対する教育が十分になされていないで数年以内に仮に憲法改正が行われるような場合に、憲法を一括して改正案を国民に対してイエス、ノーを問うということが果たしてどれだけ意味があるのか。逐条で賛否の投票をさせるべきではないかというような意見も出されます。その手続というか、国民投票のあり方、これについて、公述人、もし思うところがあればお考えを聞かせていただきたいと思います。

○平塚公述人
 私自身としては、憲法が、全面改正ということがいきなり行われること自体は余り想定できません。ですから、全面改正ということについては、ちょっと意見は、私自身、ここでは述べられないんですが、仮に複数の条文改正とした場合に、一件一件の条文ごとに是非を問わなければ、例えばこちらはいいけれどもこちらは反対だといった意見の場合に、非常に混乱すると思うんですね。ですから、その点については、各個別にやはり是非を問うべきだと思っています。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 最後に、公述人は人事課長として長年仕事に携わってこられたわけなんですけれども、職務につかれて間もないころと現在とを比べた場合の面接に来る学生の気質にどのような変化が見られたか。また、それに関連して、教育あるいは職業の導入をどのような形で行っていったらいいのか、そういうような問題について、ぜひ御経験から意見を伺えたらなというように思います。

○平塚公述人
 これは私見なんですが、私もずっと管理職をやっているわけではありませんので、最初のころの自分の感覚と今の感覚との違いは、来る学生さんたちが非常に受け身である、こちらから提供するものを非常に待っている。ですから、受け身の態勢で来るのと攻めの態勢で来るのと、非常に自己アピールをする方と、昔は自己アピールする方が非常に多かった、今はとりあえずはまず受け身で来るということが非常に印象深い点の違いです。
 最近、学生たちも、先ほども申し上げたとおり、離職率が若い人たちは高いというふうに今世間では評判になっているんですが、評判という言い方は変なんですけれども、そういうふうなことがよく言われるんですが、それに対して厚生労働省も、いわゆるインターンシップというようなことも導入されている。
 ところが、このインターンシップというのが、日本の場合には約二週間なんですよ。二週間で就労体験をしなさいということで、果たしてできるのか。二週間という時期、一週間五日間ですから、正味十日です。十日間で就労体験をするということをまず受け入れられる企業の実態としては、やはり大企業、それなりの余裕がある企業でなければ受けられないわけですね。
 そういった企業に仮に二週間足らずの就労体験をするといったところで、どういったイメージを描くのだろうか。周りの人間は、はっきり言ってお客さんとしてしか扱いません。実際、二週間で仕事を見せるとか教えるということはできませんので、絶対むだだというふうには感じていませんので協力はさせてもらっていますが。ただ、大企業で受け入れてもらった学生たちが、いざ就職活動をして、果たして、中堅企業もしくは小さな会社に入ったとしたら、どうでしょうか。今まで自分たちが見てきた会社との実態の違いにまずギャップを感じるはずなんです。これに耐えられなくなってやめていくという方たちも結構多いというふうに私自身は考えます。
 ですから、私自身は、自分の会社に来る学生、逆にこの方は結構だと思う学生についても、一通り、あなたとしては、しっかり考えて、自分の目で見て自分の道を決めた方がいいというアドバイスを最近するようにしています。
 情報としては、インターネットが今学生たちの間ではかなり重要な情報になってしまっています。このインターネットというのは非常に便利なんですが、我々企業の方から提供する内容だけで学生さんたちは判断してしまいます。それで、来て、私はたまたま理工系の学生を採用することが多いんですが、特に人と話す機会を嫌がります。面接も嫌がります。電話をかけるのも嫌がります。携帯電話になれているために、だれが出るかあらかじめわかっているという情報については安心して話しますが、だれが出るかわからないという固定電話については、まず嫌がります。こういった学生さんたちがもうほとんどです。
 世の中に出ると、コミュニケーションをとれない学生さんたちが非常に多いということがやはり問題になります。ですから、情報として、一方通行しかしない情報がはんらんしている現在、今後もまたこういった学生さんたちがふえていくんだろうと。今一番問題になっているのは、やはりこういったコミュニケーション能力ということだと考えています。

○柴山委員
 今の教育のあり方として、やはり、仲間としっかりコミュニケーションをするということが少ないですとか、あるいは在学中に社会実習のような形でアルバイトですとか、あるいは外国に行ったりして経験を積ませる、そういうことが重要でないかというような意見がいろいろ出ているところでもありますが、最後に、これに対する公述人の御意見をお伺いしたいと思います。

○平塚公述人
 インターンシップという制度とまたつながるんですが、私個人としては、こちらで提供したインターンシップという制度のもとに企業に行かせるということは、あくまで受け身なんです。ですから、言葉は悪いんですが、嫌々来ている学生さんもいるわけなんですね。これは、自分たちで行きたい企業を見つけるということも含めてインターンシップということを考えるのが前提だと思っているんです。
 ですから、学校によっては、今、必須としてインターンシップをやっている学校もあります。こういった学校が人気があるそうです。要するに、学生さんたちも、学校側が自分たちが社会勉強をさせてくれる場を提供してくれるんだというふうに考えているわけですね。これではやはり就業体験にはならないと私は思うんですよ。
 ですから、その辺のことをよく考えた上でいろいろな制度をつくっていただきたいんですが、現実は、企業側には受け入れなさいという指針が数々出てきますので、それについてはやはり問題があるというふうに私は考えています。

○柴山委員
 以上で私の質疑を終わります。どうもありがとうございました。

第161回 国会 衆議院 法務委員会

第161回 国会 衆議院 法務委員会 第10号
平成16年11月19日(金)

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 参考人の皆様におかれましては、本日は、御多用中のところ、本当にありがとうございました。よろしくお願いいたします。
 さて、早速、法案の内容について、事例を交えて質問させていただきます。
 まず、動産の譲渡の対抗要件の特例に関する質問でございます。
 例えば、法人Aが法人Bに対してその倉庫の内容物を譲渡する、そういう契約を結んだといたします。そして、それについて動産譲渡登記ファイルにしっかりと対抗要件を備えた。そうした場合に、第三者CがAから当該倉庫動産を譲り受けた場合、Cは即時取得によって保護される余地があるのでしょうか。山野目参考人、いかがでしょうか。

○山野目参考人
 御質問ありがとうございます。
 動産譲渡登記制度の創設を見た場面における民法百九十二条が定める即時取得制度の適用関係との関係につきましては、これは、基本的には従来法制との関係で大きな変更を加えるものではない。御提案申し上げている法律案の中におきましても、民法百九十二条との関係での改正であるとか特例であるとかいうことは設けられておりませんので、基本的には従前法制が維持されるというふうに考えるべきであろうと思います。
 その上で、ただいま議員から御質問のありました設例について申し上げますと、Cが登場した際に、通常は、Bなる者の存在を知らないでCが取引に入ってきて、民法百九十二条が定める要件を充足しているというふうに認められて、それらの要件が立証された場合には、当然のことながらCの即時取得が認められるわけでございます。
 Cが、何と申しますか、取引裡において専門的に事業を行うような者ではないような、通常のという言い方はちょっと変な言い方でありますけれども、そのような譲受人である場合につきましては、そのような即時取得の要件の充足が認められる可能性も高いのではないかというふうに考える次第でございます。
 しかしながら、例えば、Cが、事業裡において、あるいは取引裡において登場してくる人物でありまして、このような動産譲渡登記制度の存在、あるいは動産に係る譲渡担保の取引慣行のようなものを知っているんだというふうなことが言えて、そのような観点から動産譲渡登記の内容について注意を払う、調査、確認をすべきことが期待されるような場面におきましては、当然、そのような観点を考慮に入れて、百九十二条が定める善意かつ無過失、とりわけ過失の方でございますけれども、その認定判断がなされるということになりましょうから、そのような場面におきましては、場合によっては百九十二条の要件を充足せず、したがって、Cのための即時取得の成立が妨げられるということも一般論としてはあり得るのではないか、かように考える次第でございます。
 以上でございます。

○柴山委員
 結論としては、即時取得、場合によっては可能ということですが、最高裁判所昭和六十二年の判例で、登録制度のある自動車については即時取得の適用がないという判断が下されておりますが、これとの整合性はどのように説明をされますか、山野目先生。

○山野目参考人
 ありがとうございます。
 ただいま議員御指摘の点に関しましても、従来法制及び判例との関係で大きく何か変更を加えようという提案が今般の法律案に含まれているものではない、かように考える次第でございます。
 議員も御案内のとおり、自動車に関しましては、登録が所有権移転の対抗要件であるという仕組みがとられているわけでございますけれども、反面、未登録の自動車については、通常の民法百七十八条の規律のもとで取引が行われるわけでございまして、この未登録の場面に関して申しますれば、自動車であるからといって殊さら何か特段の取り扱いの違いが生ずるわけではなく、今般御提案申し上げております動産譲渡登記制度の対象としてその登記をすることも可能でございますし、それがなされた場合の法律関係の運用も、従来法制及びそれに基づく、議員も御指摘のとおりの判例に基づいた運用がなされるであろうというふうに考えられるわけでございますので、未登録の自動車の法律関係については、一言で申し上げれば、従来と同じに考えてよい、かように考える次第でございます。
 以上でございます。

○柴山委員
 しかしながら、登録された自動車と登録された倉庫動産については規律を異にする。具体的には、登録された倉庫動産についてはその後の譲受人が即時取得をすることが可能だけれども、登録自動車の譲受人については即時取得によって保護されることはない、この不均衡があることはお認めになられるわけですね。

○山野目参考人
 ただいま議員御指摘の法律関係がそういうふうになるということは確かにそのとおりだと存じますけれども、それをもって不均衡というふうに考えるべきかどうかということ、それは評価がいろいろあり得るのではないかと思いますけれども、それは、従来の自動車に関する登録がなされた場合の法律関係について即時取得の適用関係が変容を来してくるということから、十分にあり得ることでございまして、それによって関係取引当事者に何か甚大な、民事上の紛争処理において困ったことが生ずるかというと、必ずしもそうではないというふうに参考人としては認識いたしております。
 以上でございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 当然のことながら、自動車の場合は、登録制度はその自動車と終始するものであって、容易にそれを調査することが可能である。一方、今回の登録動産につきましては、これは必ずしもその動産について登録がされているものではなくて、指定登記所あるいは譲渡人の本店所在地において概要ファイルが設置されているだけだ、そういうような違いもあるのかなということから、私は、こういった扱いをすること自体については特段異議を述べるわけではありません。
 ただ、その場合、Cからさらに当該倉庫動産を譲り受けたDについては、これは前者につき、いかに調査しようとも登記が出てくることはないわけですから、この場合は、従前と同じように、登記されていようがされていまいが、Bは権利を失ってしまう、当初の譲受人Bは権利を失ってしまうということは避けられないと思いますが、この点、いかがでしょうか。

○山野目参考人
 御質問ありがとうございます。
 ただいま議員の御指摘のDが登場してきた場合のそのDの保護は、まさに民法百九十二条の一般的な適用によってそのDを保護しなければならないと考えますし、仮に、動産譲渡登記がBのためになされていたからといって、またその担保取引を保護する一般的、経済的な必要があるからといって、ただいま御指摘のような場面のDを保護しないということも、これはまたちょっとバランスが欠けていておかしいわけでございまして、それはもちろん、百九十二条の一般的要件を充足すればDは即時取得が可能だと思いますし、また、そのような結果でよろしいと。
 そのことは、恐らく、この動産譲渡登記制度による例えば譲渡担保の推進といったようなことにとって別に欠点ということではなく、従来法制上、一般的に予定されている、一つの限界といえば限界であろうというふうには思いますけれども、それなりに合理的な結果なのではないか、かように思料する次第でございます。

○柴山委員
 次の質問に移ります。
 今回の動産登記制度において、担保目的の譲渡と真正譲渡の区別は結局のところなされなかったわけですが、例えばその場合に、債務者が破産した、そういう事例であれば、この両者は、いずれにせよ、別除権なり、もちろん譲渡の場合は否認権が行使されない限り財団から外れているということで、統一的に処理をしてよいかと思うのですが、債務者が会社更生手続に入ったような場合、これは更生担保権になるのか、あるいは債務者の財産でなくなるのかということで、私は大きな差があるのではないかと思いますが、この点、担保目的の譲渡と真正譲渡の区別がなされなかったということについて、実務家の立場から、奈良先生、どのようにお考えでしょうか。また、これについて妥当性があるとお考えでしょうか、山野目先生。

○奈良参考人
 私どもの意見は、先ほど申し上げたように、余り積極的に賛成してはおらないわけですね。しかし、動産の登記制度の必要性の要請というのも非常に理解できるので、限った範囲で認めてはどうだろうかという程度の意見でございますので、今のように、真正譲渡と担保目的譲渡の違い、会社更生上の違い等は検討しておりませんので、まことに申しわけありませんが、お答えすることができません。

○山野目参考人
 議員御指摘の、倒産手続が開始された場合の動産譲渡登記に係る譲渡担保の設定などがあった場合の関係処理のことでございますけれども、これは確かに、法制審議会における調査審議の中でも、管財業務などを担っておられる弁護士の先生方からの意見が出されて、それらを踏まえて調査審議を進めたところでございます。
 確かに、対抗要件具備の方法が広げられることによって従前以上に幅広く担保権が機能するということになりますと、破産管財人が処理をして配当等の原資にすることができる財産の保護に影響を与えてくるのではないかということが一般的に懸念されるわけでございまして、そのような一般的懸念はさらに、当該倒産手続が破産であるか、会社更生であるか、民事再生であるかなどによって若干の違いはあるところでございますけれども、一般的な御懸念として理解できるところでございます。
 しかしながら、例えば民事再生手続の場合に、譲渡担保権は、明文の規定はございませんけれども、恐らく別除権として取り扱われるということになるんだと思うんですけれども、しかし、別除権として取り扱われるからといって、必ずしも管財人のお仕事がしにくくなるようにがっさりと常に債権者が持っていってしまうものなのかということを考えますと、それは恐らく、倒産処理実務の実地のことを見てみますと、何分にも問題となっているものは動産でございますから、それをとんとんと売却して権利を、別除権を行使していくということにはなかなか実際上難しいこともあるのではないかと思います。
 そういう場合に、再生債務者自身に処分をしてもらって、別除権協定などが成立するといったようなことの期待を踏まえて、そのうちの一部を債権者に分配し、しかしまた、その自余の部分については別途の処理を考えるといったような、いわば法律の字面とは違う実地運用というものを期待していく余地というものは大いにあるのではないかというふうに考えるものですから、議員御指摘の御懸念がもっともであると同時に、それに対しては一定の合理的な対応を期待することができるのではないかということも申し上げさせていただきたいと存じます。
 以上でございます。

○柴山委員
 最後に、この動産登記について、質権の行使というものは結局今回は検討されなかったわけですか。

○山野目参考人
 検討しなかったわけではございませんけれども、結論として、質権については適用がないというふうな法律案の内容になってございます。何分にも、需要が確認でき、立法事実の認知できるところについて法律案を策定するという方針で法制審議会の調査審議及び立案が行われました。それらを踏まえて考えますと、動産の質入れではなくて、非占有型の担保である譲渡担保をコアとなる立法事実として考慮の上制度設計を仕組んだ、かようなことであるというふうに理解しております。

○柴山委員
 次に、債権譲渡の対抗要件の特例についてお伺いします。
 債務者不特定の将来債権をAからBに譲渡された場合に、Bの債権者が、Bが債務不履行であるということで当該債権を差し押さえしてその満足を得る方法について、どのようになるのでしょうか。山野目先生あるいは奈良先生、いずれか。

○山野目参考人
 お答え申し上げます。
 AからBに譲渡されたときに、Bの債権者が差し押さえをするということでございますと、通常の差し押さえの手続と同様の仕方で行われるということで、特に従前法制との関係で変更がないというふうに考えられます。

○柴山委員
 私が申し上げたかったのは、債務者が特定されていない場合には差し押さえ命令は第三債務者には送達されませんので、この場合について、それでもBからあるいは第三者に転々譲渡されてしまう可能性がある場合に、債権者としてはこれを差し押さえる必要があるのではないかということで質問させていただいたところでございます。

○山野目参考人
 議員も御案内のとおり、債権差し押さえ命令の発令を執行裁判所に申し立てる際には、第三債務者を表示して差し押さえの申し立てをすることが必要でございます。恐らくそのような観点からの御質疑をいただいたんだというふうに考えますけれども、これは当然、まだ債権が文字どおり将来債権であって発生していない段階では、第三債務者を表示することができませんので、その差し押さえができないということは、物理的にと申しますか、事柄の、事物の本性上当然のことだと思います。
 債権が発生して、そして第三債務者を特定、誰何するという努力は、やはりその申し立てをする差し押さえ債権者にしていただかなければいけないわけでございますし、その表示をした上で債権差し押さえ命令を申し立てていただくということになります。この手続の流れは、今までの債権譲渡登記制度の運用のもとで行われてきたことと特段変わるところはないというふうに認識しております。

○柴山委員
 結論としては、Bに対して債権者は当該債権を差し押さえることができないというように承りました。
 さて、時間が非常に限られていますので、本当はもっとたくさんあったんですが、一点だけ。
 民法の一部改正について、包括根保証はこの後松島委員の質問にお任せするとしまして、それ以外の、民法の例えば不合理な規定、百二十二条ただし書きで、取り消し得る行為を一定の追認権者が追認したときに当初から有効なものとする、ただし、第三者の権利を害することができないという規定がありますけれども、このただし書きは、もともと当該行為というのは有効なんだからただし書きは不合理ではないかというような議論がいろいろあったと思うんですが、この点について、そのまま放置されたというのはどういう根拠によるものでしょうか。

○山野目参考人
 議員、何分にも民法を大変よく研究しておられて、大学の講義でいつも議論が展開されるような御質問を今ちょうだいしたんだというふうに考えまして、私も大変自分にとっては親しみのあるフィールドのお尋ねをいただいたというふうに感じました。
 御指摘のようなことも、例えば大学の講義や演習の授業などで議論する際に、なぜあの規定が置かれたのかというようなことについて諸説あって、いろいろな議論をいたします。例えば、立法の過誤ではないのかとか、いや、そうはいってもやはり適用がある場面があるんだとかいうようなさまざまな議論が学説裡において交わされております。
 そのことを踏まえて申し上げたいのは、今般の民法の現代語化の法律案は、およそ判例、学説上異論のないところであって、かつ、それが法文上明らかになっていない事柄については内容的な変更であっても大いにつけ加えていこうではないかという方針で作業を始めたことでございまして、反面において、今申し上げたように、若干でも、例えば一人の学者が言っている異論でも、一応これはもう少し検討してみる必要があると思われるところは、それを現代語化の作業で一遍にやってしまって規定を入れるということになりますと、やはりそれは今後の学界論議とか判例の運用等に影響を与えてまいる部分がございますから、そこはやはり慎重に考えて控えよう、かような方針で作業が始められたものだというふうに認識しております。
 御指摘の法文についての議員の御所見といいますか解釈は承りましたけれども、なお論議がある部分であるということもまた申し上げさせていただきたいと存じます。
 以上でございます。

○柴山委員
 時間になりました。以上で終わります。

第161回 国会 衆議院 法務委員会

第161回 国会 衆議院 法務委員会 第3号
平成16年11月2日(火)
午後三時十八分開議

○柴山委員
 柴山昌彦でございます。
 まず冒頭、イラクでの人質事件に関連いたしまして犠牲となった香田証生さんの御冥福を心からお祈り申し上げるとともに、御遺族の方々に対してお悔やみを申し上げます。また、相次ぐ災害で被災された皆様に対してお見舞いを申し上げます。
 さて、本法案、以下ADR法と省略いたしますけれども、これについてただいま南野大臣より詳細な趣旨の御説明がございました。
 そこで、南野大臣に改めてお伺いいたします。本ADR法、これを導入することによっていかなるメリットが生じるのか、簡潔にもう一度お聞かせいただきたいと思っております。

○南野国務大臣
 裁判外紛争解決の手続につきましては、厳格な裁判手続と異なりまして、紛争の内容等に応じて柔軟な対応が可能である、そういう特徴を有しておりますが、我が国では十分に機能していないという状況にあります。
 本法案は、このような状況に対処し、国民の利便の向上を図るため、認証の制度を設け、時効の中断等の特例を定めること等をその内容としております。これらによりまして、国民が紛争の解決を図るのにふさわしい手段を選択しやすくなり、そして国民の権利利益の適切な実現に役立つものと考えております。

○柴山委員
 ただいま御説明にもあったとおり、従前、我が国には、司法型ADR、あるいは行政型ADR、民間型ADR、さまざまなタイプのADRがあったわけですけれども、必ずしも利用状況が十分だったとは言えないというように認識しております。
 そこで、事務局長の方にお伺いしたいんですけれども、従前、これらのADRはどのような利用状況にあったのか。特に、正式な、公的な紛争処理手続である裁判手続との比較というものについてもできれば教えていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

○山崎政府参考人
 ただいま委員の方からも御指摘ございましたけれども、いわゆるADRについては三つのパターンがございます。
 一つは、裁判所が行う民事調停あるいは家事調停の部類のものでございます。二つ目が、行政機関でございます、例えば建設工事紛争審査会あるいは公害等調整委員会などが行うADRというものがございます。これ以外に、民間団体でございます、例えば全国各地の弁護士会の仲裁センター、あるいは社団法人日本商事仲裁協会、各種PLセンターなどが行う仲裁、調停、あっせん、こういうものがございます。
 この中で、ちょっと事件の数を申し上げたいというふうに思います。全般的な統計資料がございませんので、公表されました資料によって、平成十四年度の新受事件で見てまいりたいというふうに思います。
 まず裁判所の関係でございますが、民事調停が約四十九万件ということでございます。ちなみに、通常の民事訴訟事件も大体同じ事件数ぐらいでございますので、それと同じぐらいが調停に申請がある、こういうことでございます。家事調停が約十二万九千件という件数でございます。それから、行政機関が行うものに関しまして、建設工事紛争審査会、これは国と地方と両方ございますけれども、これが二百五十五件、それから公害等調整委員会が行うもの、これも国、地方がございますけれども、三十七件ということでございます。そのほか、民間団体で行うもの、弁護士会の仲裁センターの合計でございますけれども、千五十件、それから日本商事仲裁協会が行うものが二十一件、それから消費生活用製品PLセンター、ここが行うものが五十四件ということでございますので、これで比較していただきますと、圧倒的に裁判所ADRが利用されておりまして、民間のものの利用率が極めて悪い、こういう状況にあるというふうに言えるかと思います。

○柴山委員
 問題は、こういったADRの利用が大変進んでいないというような現状が、この法律の成立によって劇的に変わるのか、国民の紛争解決の利便性というものがどれだけ向上するのかということだと思っております。
 アメリカでも成功しているADRは、コートアネックスドADRというような、裁判所と連携しているようなADRであるというような実情を聞いております。私としては、この法律の成立に加えまして、裁判所であるとか今お話があった弁護士会等、一般に信頼が高いところから、こうしたさまざまなADRの機関に事件を送り込んでいくようなシステムをぜひ確立していただきたいというようにも思っております。
 そこでお伺いしたいのが、やはりこの法律が導入されたことによって、どの機関がどれだけこのADR法を利用するのかという見通し、これをちょっと予測をしていただきたいなというように思っております。
    〔委員長退席、田村委員長代理着席〕

○山崎政府参考人
 この予測を申し上げるのは、結論から言うと大変難しいということになるわけでございます。若干その理由を申し上げたいというふうに思います。
 まず、この法案でも、認証を受けるかどうかというのは、その業務を行う民間の事業者の自主的な判断にゆだねているということでございまして、認証を受けなくても業務を行う、こういうことができるという仕組みにしているわけでございます。どのような業界、あるいは団体等が申請してくることになるかということは、現在の時点で具体的に予測を申し上げるのは非常に困難でございますし、また、それを申し上げることによってそれを強制するようなイメージにもなることもございますので、その点については申し上げるのも相当ではないだろうというふうに考えております。
 ただ、現状を見てまいりますと、公益法人、あるいはNPO法人、あるいは任意団体といった各種の組織、団体が、金融関係、知財関係、製造物責任、あるいは交通事故、こういうものにつきまして、さまざまな分野にわたって解決手続を行っているわけでございます。ですから、こういう既存の団体の中で認証を申請してくるものも当然予測されますし、それ以外に新たにこの認証を受けて活躍をしていくというものも期待できるわけでございまして、これ、ちょっと数値とかどの分野かということを現在の時点で言うことはできないということで、御勘弁をいただきたいと思います。

○柴山委員
 今御指摘のあった認証の任意性ということについては、ちょっとこの後時間をとって質問をさせていただくことにいたしまして、まず認証の基準についてのお尋ねを幾つかさせていただきたいと思っております。
 先ほど、本会議におきまして、江田先生の方からも少し御質問があったんですけれども、ADR機関、この認証の要件として、弁護士の関与、これをきちんと定めていることが必要だということが六条の五号に定められております。私は、紛争解決の適切性ということを確保するために、この要件は非常に重要な要件だと思っております。具体的な意味につきましては、先ほど本会議の席で南野大臣が御答弁をされましたので、私はちょっと違う観点からお尋ねをしたいと思っております。
 この法文、六条五号を見ますと、要件として「法令の解釈適用に関し専門的知識を必要とするときに、弁護士の助言を受けることができるようにするための措置を定めていること。」となっておりますけれども、この専門的知識を必要とするかどうかは一体だれが判断するんですか。
    〔田村委員長代理退席、委員長着席〕

○山崎政府参考人
 これは、手続の実施をしている手続実施者がおりますけれども、その手続実施者が一番その内容についてよくわかっているわけでございますので、基本的にはそこの判断ということになろうかというふうに思っております。

○柴山委員
 ADRに対して、やはり十分な法律的な解決というものにつながらない、どうも不安だと。実際の当事者がそのように不安を抱いた場合に、それでは当事者は、法律の専門家に対してどのようにアクセスをすればよいのでしょうか。

○山崎政府参考人
 当事者の選択として二つあろうかと思いますけれども、一つは、そういうような、弁護士が関与していないところで話し合いをするのは嫌だという方もおられるかもしれません。そういう方は、そこでは話し合いをしないという選択をするかもしれません。
 ただ、そこでどうしても話し合いをしたいということで、弁護士に関与してほしいという場合には、最初に、申請したときに手続について事業者の方から説明をすることになっておりますので、そこの段階で、その説明を聞いて、弁護士をその手続実施者に加えてもらえないかという希望があれば、その希望を述べていただくということでございます。
 事業者によって、そういうことを可能にするルールを決めているところと、弁護士は一切そのパネルの中に入らないで助言だけでやっていくというシステムをとっているところもあろうかと思います。そこはやはり事業者とその申し込む側の最終的な判断で決まっていくということになると思いますけれども、それは手続として加えることは通常は可能であるということになろうかと思います。

○柴山委員
 実際に、利害関係を持つユーザー、当事者がやはり法律の専門家の助言を受けたい、当初からではなくて途中からでもそのような希望を持った場合には、主宰者側がこれを最大限尊重して弁護士の助言を受ける、当事者に私はそのような請求権を付与してもよいのではないかなというように思っておりますし、また、当事者が弁護士を代理人としてつける、そうしなくてはいけないということであれば、簡易で廉価な制度として発足をするこのADRの趣旨が私は損なわれてしまうのではないかと思っておりますので、そのあたりはぜひ運用面で御考慮をいただけたらなというように思っております。
 さて、認証の基準としてそれ以外に幾つか問題点があると思っておりますが、六条の十五号を見ますと、主宰者の申請者が支払いを受ける報酬または費用がある場合、これはない場合もあるという書き方ですけれども、ある場合には、その額、算定方法、支払い方法その他必要な事項を定めており、これが著しく不当なものでないことというように書いております。
 この著しく不当でないことというのは、政令等でその具体的な基準を定めるべきではないかというように思っておりますが、この点、いかがお考えでしょうか。

○山崎政府参考人
 この点につきましては、報酬の例えば上限、これを超えるものは著しく不当だということはある程度決めることが可能かと思いますけれども、それ以下のところで、報酬をこういう事件に関しては幾らにするというふうに一律に決めることは、やはり独占禁止法との関係でやや問題が生ずるおそれもございます。
 これはもう委員も御案内かと思いますけれども、各士族の報酬規定につきましても、各弁護士会で決めることにはしないで、弁護士会で決めることはやめまして、それぞれの任意の形でやっていくというふうに法改正が行われておりますけれども、それと同じような問題が生じますので、これ以上にわたるものはだめだというようなことは書けるかもしれませんけれども、それ以下の基準について事細かく決めることは相当ではないのではないかというふうに考えております。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 続きまして、六条の四号を見ますと、主宰者、申請者の独立性に関する規定がございます。
 申請者の実質的支配者等または申請者の子会社等を紛争の当事者とする紛争について、こうした紛争解決手続の業務を行うこととする申請者にあっては、そうした実質的支配者等または申請者がこの手続を実施する者に対して不当な影響を及ぼすことを排除するための措置が講じられていなければいけないというように書いております。
 通常ですと、この手続の主宰者は、手続実施者に対して雇用契約あるいは委任契約を締結しているのが通常の場合だと思いますけれども、こうした利害関係を許容しつつ、その不当な影響を及ぼすことを排除するという文言は、具体的にはどのような措置を想定されているのか、御答弁をいただきたいと思っております。

○山崎政府参考人
 この号の表現はかなり難しい書き方になっておりますけれども、要は、親子会社のようなことをイメージしていただければいいかと思いますけれども、その親の会社の方がADRを申請してくる場合とか、それから子の側、子の会社の方がADRを申請してくる場合、この両方が考えられるわけでございますが、いずれにしても、その影響力を実質的に及ぼすような、そういう形を禁止しているわけでございます。
 これにつきましては、例えば、事例で申し上げますけれども、手続の実施者に外部の弁護士等が当たるという構成にしている。例えば、親会社の顧問弁護士がそこに加わっていくというようなことではなくて、それ以外の弁護士さん、あるいは弁護士でなくても結構でございますが、それ以外の方々、そういう方々を選任するというシステムになっているということ。それから、もう一つの考え方は、事業者から独立性の高いパネル、いわば委員会でございますが、独立の手続実施者委員会のようなものを構成いたしまして、その事業者からのいろいろ影響を排除できるようなシステムになっている、こういうような手続を持つとかですね。組織的に持つか、人によって決めていくか、こういうようなイメージで考えているわけでございます。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 ちょっと認証要件論で最後にお伺いしたいと思います。
 同じく六条の十一号あるいは十四号で秘密保持の関連について規定がございます。実際にこうした組織的なシステマチックな形で秘密保持のための方策を定めていても、具体的に秘密の漏えいというものがあった場合に、認証の取り消しというような事態に至るのでしょうか。

○山崎政府参考人
 秘密の保持の問題につきましては、ここに掲げられているわけでございますけれども、では、これに違反した場合に直接罰則規定は設けてはおりません。
 問題は、そういうことを行えば信用を失うわけでございまして、迷惑するのは国民、利用者側でございますので、そうなりますと、法務大臣が監督権限の発動をするということで何らかの是正をかけるということになろうかと思います。調査が先行いたしますけれども、それから、必要であれば是正を。それに従わないということになれば、認証の取り消しということにもなろうかと思います。それからまた、刑事罰はございませんけれども、民事上の責任も負う。こういうようなことになろうかというふうに考えております。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 以上で認証の基準についての質問を終わらせていただきますが、次に、本ADRの利用というものは、やはり国民に廉価に紛争解決の適正な処理をしてもらうということが眼目にあると私は思っております。
 そこでお伺いしたいのは、資力の乏しい者へのADR関連費用の扶助、これが現行制度上きちんと確立をされているのか、また、確立されているとすれば、その実績があるのかということについてお伺いをしたいと思います。

○寺田政府参考人
 現行法上は民事法律扶助法でございますし、先ほど成立いたしました総合法律支援法にもその規定が受け継がれているわけでございますけれども、法律上は、認証ADRかどうかにかかわらず、ADRにおける和解交渉が民事裁判手続に先立つもので特に必要と認められるものであれば、これは法律扶助の対象になるということになっております。したがいまして、その代理人に支払うべき報酬を扶助協会の方で立てかえるということになるわけでございます。
 この実績でございますが、これは必ずしも明らかではございません。基本的には今訴訟中心になっておりますので、ADRの利用というのは基本的には例外的なものだというふうに私どもは聞かされております。

○柴山委員
 ぜひ、利用の促進ということで、今おっしゃっていただいた扶助法、支援法の積極的な活用をお願いしたいと思っております。
 さて、続きまして、ちょっときょう、この点を非常に大きく取り上げて質問をさせていただきたいと思っているんですが、今回のADR法が成立をしたことによりまして、弁護士法の七十二条違反、すなわち、業として報酬を得る目的で他人の紛争にコミットしていくということを禁止するということの例外が明確に定められたわけでございます。しかし、先ほど本会議の席でも少しお話があったかもしれませんけれども、この認証の有無によってADRに対する差別というものが生じてはいけないというような発言もあったと私は思っております。
 そこでお伺いしたいのは、非認証ADRに対する弁護士法七十二条、これの適用、改めてこれがどうなるのかということについてお伺いしたいと思っております。

○山崎政府参考人
 確かに、この法案で、認証を受ければ、弁護士法七十二条の例外、いわば業としてあっせん等ができる、調停等ができるということになるわけでございますが、これを利用していただくかどうかというのは全く任意だということでございますので、従来、現在の弁護士法七十二条の中で業務が許されているもの、こういうものについては従来どおり許されるということになりますし、現在の七十二条の中で許されないというものについては、それはまた将来も許されないということでございまして、いわば七十二条そのものが変わるわけではございません。その認証を受けたものについてだけ特例を設ける、こういう位置づけであるということでございます。

○柴山委員
 理屈としましては、非認証ADRについても、相当な手続と内容で紛争解決をするものについては刑法三十五条の正当業務行為として違法性が阻却されるというような枠組みになるのではないかなというように思っております。
 しかし、先ほど来お話があったとおり、このADR制度というものが大変利用されていない。そのような中で、せっかく時効中断等の恩典を与えてこれを積極的に活用させようということで、いろいろな、暴力団等は入っちゃいけないよというような形で認証制度をつくっているわけでございますから、これ以外のものについては、可及的にこれを排除していく方向で弁護士法七十二条の解釈を進めていくべきではないかというように考えていますが、いかがお考えでしょうか。
○山崎政府参考人
 今回も、そういうような議論、検討会でもいろいろございましたけれども、やはり多様なADRを育てていく、それも自由にいろいろ活躍をしていただくという観点から、すべてこの認証制度を受けなければ業務をやらせないということになると、そういうやはり多様性とか自主性、要するに自由な雰囲気で話し合いをして解決をしていく、こういう利点が失われかねないという御意見もかなりございまして、したがいまして、こちらの制度を利用していただく方については有料で法律相談業務等ができるということになりますけれども、それ以外の方について強制をすることはしないという考え方をとったわけでございますので、そこの点について、将来的に七十二条違反がないようにきちっとやっていくということはそのとおりかと思いますけれども、それをすべてこちらに強制するというのは相当ではないというふうに考えております。

○柴山委員
 わかりました。
 さて、それでは続きまして、時間ももう残り少なくなってまいりましたので、このADR法に基づく認証の効果について少しお伺いしたいと思います。この認証の効果として主なものを簡単に列挙していただきたいと思います。

○山崎政府参考人
 簡潔に申し上げますけれども、この法案で決まっておりますのは、時効中断の効力を付与する、あるいは訴訟手続を中止する、それから調停前置主義の適用をしない、この三つがまず一つは考えられます。
 それからもう一つは、弁護士法七十二条の例外として、報酬を受けて業として行うことができるということです。
 それからもう一つ、論点としては、できた合意に対して執行力を付与するかどうかという点があったわけでございますが、これは盛り込まれておりません。

○柴山委員
 今の最後の、執行力を付与しないことにする。先ほど本会議の中でも質問がありましたけれども、結局これは裁判外の手続ですから当然既判力がないのは当たり前として、執行力を付与しないということになると、紛争解決の実効性というものが本当に担保されるのかという議論は恐らく相当程度あったんだと思います。
 私は、裁判所あるいは弁護士の関与をきちんと確保すれば、そうした強制力というものを付与してもよいのではなかったのかというような疑問を持っておりますし、また、それがない状態では、このADRの解決というものは結局は私法上の和解ということになってしまうのではないか。もちろん、手続面におけるさまざまな、今事務局長からいただいたような効果はあるわけですけれども、必ずしもユーザーに対して所期の目的を達成するというような解決方法とならないのではないかというような懸念を持っていますが、いかがお考えでしょうか。

○山崎政府参考人
 ただいま委員が御指摘されたような意見も当然ございました。私どもいろいろ悩んだわけでございますけれども、最終的には、現在このような業務を行っている方、その方の反対が非常に強いということでございます。
 要は、執行力を持ちますと、強力な武器を持ちながら話し合いをするということになるわけでございますので、そうなりますと自由な話し合いの雰囲気がなくなってしまう、これがいいことかどうかということがかなり言われたわけでございます。本当に強い効力を持ってやるなら、それは裁判所でやるんだろう、裁判所以外でやるならば、同じような形の効力を持たせてしまうとかえって自由が失われる、そういう御意見がかなり強かったわけでございまして、それからもう一つは、執行力をつけた場合のいろいろ弊害等についてまだ十分な検討ができていないじゃないかということもございまして、この点は導入を見送った、将来の課題にしたということでございます。

○柴山委員
 質疑時間が終了いたしました。
 最後に、これまで法律がなかった分野にこのように大きな意味を持つ法律ができたわけですけれども、必ずしも国民一般の認知度は高いとは言えないと思っております。平成十四年の五月に、消費者問題におけるADRに関する意識調査、これについて統計が出ているわけですけれども、実際よくわからない、ADRについてよくわからないということを答えた人が九二%だったというようにも伺っております。
 最後に南野大臣にお伺いしますが、このような状況下、どうやってADRに対する認知度というものを高めていくのかということについて、最後の御質問とさせていただきます。

○南野国務大臣
 本法案による認証は、新たに設けられた仕組みであります。その仕組みが十分にその機能を発揮し、おっしゃるとおり、国民が紛争の解決を図るにふさわしい手続を選択することを容易にするためには、その意義や内容について国民の正確な理解を得ることが必要であります。そのためには、積極的かつ十分な広報活動を行う必要があると考えております。
 具体的には、例えば、内容をわかりやすく説明したホームページの作成、またパンフレットの配布などが考えられますが、その効果的なあり方については今後検討を深め、適切に実施してまいりたいと考えております。

○柴山委員
 ありがとうございました。終了いたします。

第161回 国会 衆議院 憲法調査会

第161回 国会 衆議院 憲法調査会 第3号
平成16年10月28日(木)
午前九時一分開議

○柴山委員
 田中先生から大変個別の問題にまで踏み込んで詳細な分析がなされまして、従来の直接民主制か間接民主制かという抽象的な議論にとどまることなく、個別的な問題の事案ごとに、直接民主制を導入した場合どういう問題点があるかということまで詳細に分析をされた上での御発言だったと思います。
 その上で、あえて申し上げますと、まず私は、現在ハイスピード化されている、また高齢化しているということで行政に託される役割というものが非常に大きくなってきているというところから判断すれば、これはむしろ、先ほど委員から御指摘のあった、継続性に欠ける、また十分な政策決定のためのシンクタンク等を持たない有権者が、どれほど有意な提案なり投票というものができるのかということについて、若干危惧を抱かざるを得ません。
 ちょっと個別の事案で申しわけないんですが、かつて消費税を導入するときに、国民の大多数はだめなものはだめというお話の中で、厳しい御判断をされたと思います。しかし、今こういった高齢化社会が進展している中で、やはりそうした消費税の必要性というものがかなりの部分国民生活に定着してきた。
 そして、やはり税制等の専門的な分野については、国会議員がしっかりとした組織的な検討を加えるということが必要になってくると私は思っております。条約、そして税制等の専門分野について、継続性を欠く、また組織性を欠く国民の意思をどの程度反映させるかというのは、難しい問題ではありますが、必ずしも国民投票という形によってこれを解決するのがふさわしくない部分が、特に委員がおっしゃったハイスピード化している、高齢化しているという中では多々生じているのではないかなというように私は思っております。
 枝野委員から御指摘のあった二大政党制のマニフェスト選挙を補完する役割としての国民投票というのは、私は大変示唆に富む御発言であったかと思います。
 ただ一つ、公約を掲げて政党が戦って、それを国民が選択したということの重みというのは、やはり私は無視できないのではないかというように思っておりますので、その重みというものは、やはり国民投票という形で左右できるものなのかどうかということを、いま一度問い直さなくてはいけないのではないかなというように思っております。マニフェストというものは、単にきれいごとを並べるだけのものではなくて、一つ一つに政党の運命をかけた、非常に大きな力が注がれているわけですから、これについて、先ほど申し上げた組織性を欠く国民が、少なくとも国政レベルの選挙においてこれに異議を唱えるという機会を与えるのが本当に妥当かどうかということは、もう少し慎重に議論をしなければいけないのではないかなというように思っております。
 地方の問題についてはまた別の機会をいただいてお話をさせていただければと思います。

○柴山委員
 土井先生が退席されてしまったのでちょっと残念なんですが、先ほど御指摘のあった、憲法改正手続自体を現行憲法手続によらないで行うなんていうことを考えてはいないでしょうねという御発言がありましたが、これは、私はちょっと筋違いの議論ではないかなと。
 もちろん、仮に改正手続を行うことになれば現行憲法の改正手続を踏むことは当然の話でございまして、その上で、今の憲法が、事実上、五十年全く手を加えられないで、解釈解釈の拡大でいかようにも運用されてきたというこの実態に懸念を示して、よりしっかりと時代の趨勢に合ったものに形を変えていけるものにすべきではないかということで、改正手続をより柔軟に認められる方向に進めていくべきではないかということが問題意識だと私は思っております。
 その上で、土井委員から憲法の最高法規性という御指摘があり、もちろん私もそれについては異論を唱えるつもりは毛頭ございませんけれども、だからこそ、通常の法律手続と違って、きょう議論のある国民投票制というものをあえて導入し、憲法制定権力の制度化された側面としてそれを要件としているわけですから、その点については、例えば憲法の発議要件を、両院の三分の二以上を二分の一以上とすることに何ら憲法的な理論上の制約があるものではないし、また、私はそうすることが望ましいのではないかなというように思っております。
 あと、住民投票の件について幾つか申し上げたいと思っていたんですが、国民投票のレベルの問題について、その後、幾つかお話がありましたので、一言だけ付言をさせていただきますけれども、何を国民投票の対象とするにふさわしいかというお話で、脳死のお話がありました。
 確かに、生命倫理に対する個人個人の信念というものはこの法案の重要なファクターではありますけれども、もちろんそればかりではないわけで、これについては最先端の臓器移植の問題等についても、無関係とはいいながら、やはりそういったものも視野に入れた考慮が必要なのではないかというような問題もございますし、その意味では、やはり専門的、継続的な検討というものが必要になってくるのではないかと思います。
 また、一点、この問題について、先ほど加藤委員からも御指摘がありましたが、やはり報道等によって、ねじ曲げられたような形で世論のあおりというものが生じるという懸念もあると思います。
 結論的に言えば、やはり、外交、防衛上の問題のみならずこうした問題についても、必ずしも国民投票を導入するのにはなじまないのではないか、現行憲法が七十九条あるいは九十六条以外に国政レベルでの直接民主制というものをあえて記入していないということに積極的な意味を見出すべきではないかというように私は考えております。
 現に、イタリアの憲法におきましては、法律の発案権で、国際条約批准の承認に関する法律については人民投票は認められないというような形で安全保障の問題に書いてありますし、予算、租税についての法律についても、これは日本国憲法上も当たり前のことだと思うんですけれども、人民投票は認められないというように書いております。
 ただ、その一方で、スイスでは、集団安全保障機構への加盟についてはそういった義務的レフェレンダムとして位置づけていることもありまして、必ずしも国際的な比較からは、この問題については一義的に結論を出せるものではないと思っております。
 しかし、やはり私は、現在の日本における民主制のあり方としては、こうした組織的、継続的な議論を必要とする問題については、直接民主制というものは、たとえ脳死といったような問題であってもなじまないのではないかなというように思っております。
 以上です。

○柴山委員
 改正の条件については、ちょっと価値観の相違になりますので、もう繰り返しません。住民投票の問題について触れたいと思っております。
 先ほど来、皆様から御発言があったとおり、住民投票については、より国政よりも身近に、住民の身近な問題に関して、住民自治を尊重し、あるいは団体の自立ということをしっかりと考えるという観点から、私はこれについては、一定の重要なものについては採用することも合理性があるという立場でございます。
 その上で、やはりこの問題について、先ほど来いろいろな形で御指摘のある合併の問題、あるいは、特に今問題となっている迷惑施設の問題、このような問題について、必ずしも妥当な結論というものが得られていないんじゃないかという危惧を多く持っております。やはり、いかに九十五条がプライベートアクトを淵源にした文言を定めているとはいえ、あくまでも、地方のことについて、住民の意思を尊重するのは重要だけれども、一定の制約というものがある。例えば、原子力発電の場合には、国家のエネルギー施策ということを抜きにしては語れないわけですし、基地の問題についても、国家レベルの安全保障というものを抜きにしては考えられないわけでございます。
 そうした国家レベルの施策というものを考えるに当たって、もちろん、形式的な特例法というもので特定の自治体だけをねらい撃ちにしているような法律というものは、これはその自治体の承認というものを要件にしなくてはいけないとは思いますけれども、そういう形ではなくて、あくまでも形としては一般的な形をとっているのであれば、先ほど山口委員がおっしゃったように、事実上、例えば沖縄の基地について重大な利害関係のある問題についても、これを住民投票に付したものを唯一絶対のものとして、それに従って行動しなければいけないということは、私は行き過ぎなのではないかと思っておりますし、また、合併の問題についても同様のことが言えるのではないかと思っております。
 結論としましては、住民投票については、これは非常に重要なものであると私は考えますけれども、これを遵守しなくては違法となるとは必ずしも言えない部分が数多くあると思っておりますし、また、九十五条の解釈におきましても、この視点をしっかりと持つべきではないかなというように思っております。
 以上です。

第161回 国会 衆議院 憲法調査会

第161回 国会 衆議院 憲法調査会 第2号
平成16年10月21日(木)
午前九時一分開議

○柴山委員
 発言の機会を与えていただきましたことをお礼申し上げたいと思います。
 ただいま中山会長の方から詳しく御説明がありましたとおり、オンブズマン制度、日本においても自治体レベルではかなり発展してきた、そういうような状況にあります。このような中で、私は、前回のこの調査会で、オンブズマン制度を憲法上位置づけるということに関してはやはり慎重な議論が必要ではないかという立場から意見を申し上げました。もちろん、各会派を代表してというお話ではありますが、私の発言については私の個人の信条に基づくものであるということを冒頭にお断りをさせていただきたいというように思います。ただ、その上で、私は、立法措置の上であれば、このオンブズマン制度を国のレベルでも導入するということは検討に値するのではないかなというように思っております。
 以下、前回に申し上げたところを敷衍して若干説明を補足したいと思います。
 まず、このオンブズマン制度を導入することの必要性の検討を行い、その後、これを仮に導入した場合、それに問題点というものがないかということについて見解を申し上げたいと思います。
 まず、ただいま中山会長から御指摘のあったとおり、オンブズマン制度を導入しているEU諸国、特に今回視察に行かれたスウェーデンあるいはフィンランドといった国と日本との差異について着目をしなくてはいけません。
 平成十六年度の予算案ベースによりますと、日本の国民所得に対する租税負担率は二一・一%、社会保障負担率は一四・四%、合計で三五・五%となっております。もちろん、これに財政赤字を含めた潜在的な国民負担率というものが一〇%程度あるわけでありますけれども、日本ではそういった負担率となっていることです。
 一方、これはOECDのレベニュー・スタティスティックスによるものでありまして、若干古いデータなんですが、二〇〇一年度のスウェーデンの租税負担率は五二・〇%、社会保障負担率は二二・三%、合計で七四・三%となっております。フィンランドの租税負担率も四七・四%と、スウェーデンの五二・〇%とほぼ同程度の水準となっております。
 近年、日本が行政国家と言われますが、これら北欧の国家はまさしく超高福祉・高負担の国でございまして、そういった行政サービスの適正化、これは日本にも増して極めて重要な課題なのであるということを冒頭に申し上げたいと思っております。
 さて、私は、行政国家化している日本において、それをどうやって統制する機能が現行制度において認められているのかということをまず、若干、中山会長の御説明と重複する部分はありますが、申し上げたいと思います。
 もちろん、日本は議院内閣制をとり、また衆議院による内閣不信任制度もある以上、国会を通じてコントロールが及ぶということが建前となっております。また当然、行政は議会の定めた法律あるいは予算に従って執行されるという意味におきましても、議会が一義的な行政に対するチェック機能を期待されていることは言うまでもありません。また、各院に認められた国政調査権も行政統制に資するわけであります。
 なお、これに関連して、正確には行政行為についてではなく法案の提出についてでありますけれども、前回の議論で、国会の審議で内閣法制局が説明をするのはおかしいのではないかというお話を何人かの先生がされていたと思うんですけれども、私は、これは少し正確ではないんじゃないかなというように思います。
 というのは、内閣が提出する法案については当然、まず提出の段階で、内閣自身が既存の法律や憲法との適合性というものを判断しなくてはいけないわけですから、その提出に当たっての判断ということについて内閣法制局の見解をただすということは、私は特段おかしくはないのではないかと思っております。もちろん、ただ、法案審議に際して、その法制局の見解をうのみにするということは確かに問題があるというように思っております。
 いずれにせよ、政府組織がこのように大規模化、専門化しているという中で、また議院内閣制が政府・与党の協調型であるという限界もあることから、こうした議会によるチェック機能が十分機能していないのではないかという疑問は当然のことながら出てくるということでございます。ただ、国政調査を補完する制度である予備的調査制度、これも特に野党の皆様が積極的に活用されているところでもございますし、世論を喚起する機能というものは一定程度を期待できるのではないかなというように思っております。
 さて、こうした国会のチェックというものを補完する立場としての裁判所、この権限行使が非常に重要になってまいります。もちろん各種の不服審査制度、これは自己チェックをするわけですけれども、自己チェックであることの限界ということがやはりありまして、独立した裁判所による判断が極めて重要である、行政訴訟制度が重要であるということは論をまたないわけでございます。
 ただ、これについては、先生方御案内のとおり、門前払い、従来の行政訴訟は原告適格が非常に厳しかった、また行政裁量というものを余りにも広く認めていた、憲法判断を行うに当たって司法消極主義と伝統的に言われていた、そういう嫌いがあったわけでございまして、こういう裁判所のスタンスあるいは行政事件訴訟法の限界というものが従前から声高に叫ばれていたわけであります。
 ただ、この点につきましても、御案内のとおり、私も所属しておりますが、法務委員会において行政事件訴訟法の一部が改正され、取り消し訴訟の原告適格が大幅に拡大された。法律の目的、趣旨あるいは処分において考慮されるべき利益の内容、性質など、こういうものを考慮して原告適格を広く認めていく。あるいは、これまで認められていなかった行政の義務づけ訴訟あるいは差しとめ訴訟というものが法定されるようになっておりますし、また審議の充実のための釈明処分、裁判所が行政庁に対して裁決の記録や処分の理由を明らかにする資料を求めることも新設されたわけであります。
 さらに、仮の義務づけ、仮の差しとめという制度も新設をされ、私は、行政訴訟というものは、大幅にユーザー、国民の利益を図るものに生まれ変わっているのではないかなというように思っております。
 これまで行政訴訟は、新受件数が、例えば平成十二年におきましては二千件、そして勝訴率は二割弱という極めてゆゆしい制度であったわけですけれども、こうした法改革によって一定の成果が出てくるのではないかと私は思っておりますし、平成七年から平成十二年にかけて勝訴率が一一%から一七%に伸びた、これもやはりこれからの司法改革に伴って改善がなされていくのではないかなというように思っております。
 もちろん私は、今後、この行政訴訟法制度というものをやはりしっかりと見直していかなければいけないと思っております。ただ、恐らく先生方、御懸念されているところだと思いますけれども、やはり訴訟というのは金がかかる、手間がかかる、なかなか気軽に行政についての不満、不服というものを申し立てる機会というものがないんじゃないかというところであります。
 これについて私は、行政型のADR、今ADR法につきましても法務委員会の方で検討しているわけですけれども、この行政型のADRというものを法制度として積極的に位置づけていくということが考えられるのではないかなというように思っております。
 次に、問題点についての指摘であります。
 憲法上オンブズマン制度を位置づけるということについては、やはり私は若干問題があるのではないかなと思うのは、欧州型のように、予算権、予算措置を伴って、あるいは調査権をこのオンブズマン制度に与える、非常に強力な制度として位置づけられているわけでありますけれども、そのような強力な機関を憲法上設けるということになりますと、当然のことながら質の確保ということが重要な問題となってくると思います。これは、量とは反比例する、必然的にそういった限界があるわけでございます。
 あと一分ほどではしょって申します。
 そして、これについて、やはり権限の強さということと反比例しまして独立性ということが懸念されるということは否めないのではないかと私は思っておりますし、また、こうしたオンブズマンが、裁判所という公的な手続と比較しまして、公益性というものについてきちんと配慮できるのかという懸念が否めないと私は思っております。
 また、こうした制度を憲法上位置づけることによりまして、民間のオンブズマンの活動、今、例えば地方で設けられている行政型オンブズマンと違いまして、民間レベルで私的オンブズマンがいろいろ、世論喚起、裁判、勧告等の活動を行っておりますが、こうした民間オンブズマンの活動を軽視する、そういうような役割があるのではないかというように懸念をしているところであります。
 専門的な分野においてオンブズマンをどうやって法律で設けていくのか、その人選はどうか、各論等につきましていろいろと申し上げたいことは多々あるわけでございますが、とりあえず私からの問題提起は以上のような形で終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。

○柴山委員
 先ほど少ししり切れトンボになった点もありますし、また、いろいろな先生方から問題提起もありましたので、若干補足をさせていただきます。
 まず、行政国家について枝野先生から御指摘がございました。
 まず、日本が財政赤字になった理由としましては、必ずしも行政の乱費ということによるものだけではないと私は思っております。やはり非効率的な行政システム、特にスウェーデンは各省の職員数は平均が二百人という効率的な、簡素な政府であるにもかかわらず、あのような、いわゆる行政の質というところにお金をかけているのに対して、日本の行政についてはやはり政府自体が大きかった。
 だから、これを統制するのは、むしろやはり行政改革という政治の分野が重立った役割を果たすべきなのではないか。だから、財政赤字を統制するがゆえに行政の適正がヨーロッパよりも高く認められるのではないかという御指摘は、私は必ずしも当たらないのではないかと思っておりますし、先ほど申し上げたとおり、日本は所得税等かなり低い水準にとどまっておりますから、やはり消費税を含めた税制の改革というものを行っていくのが本道であって、行政オンブズマンとこの財政赤字の問題というものが必ずしも連動するものではないというように私は思っております。それがまず第一点。
 それから、私が先ほど指摘をさせていただいた憲法上の位置づけに伴う問題点というものについての正面からの御反論というものが余りないように思いますが、私は、法律上のシステムとしてオンブズマンを設けたことによって、それが不十分ではないかという御懸念は必ずしも当たらないのではないかと思っております。
 というのは、先ほど辻先生から御指摘があった調査権の問題にしても、今情報公開法がかなり整備をされておりますし、また、先ほど申し上げた行政事件訴訟法における釈明制度あるいは文書提出命令などの活用、これはもちろん訴訟上の制度なんですけれども、そういうものも十分整備をされてきているわけであります。
 また、土井先生からも御指摘のあったように、オンブズマン制度というものが、憲法上位置づけたときに、それがいわゆる議会の附属機関として、要するに、議会というのは多数決主義ですから、議会の側の機関になるのか、あるいは個人的な権利を侵害された個々の市民の救済機関というものになるのか、その位置づけが、第四権というようなお話がありましたけれども、私はちょっと今の時点でまだちゅうちょする部分がありまして、そういう意味からも、先ほどの、憲法上位置づけるということの懸念に今申し上げた懸念をつけ加えたいなというように思っている次第であります。
 結論としましては、今、行政相談の仕組みというものをやはり充実させる、あとは個別的な相談、苦情というものをもう少し拾い上げていく、そういう機関をつくっていく、あとは決算行政監視委員会、先ほど船田先生からありましたとおり、決算行政監視委員会に市民の側からもう少しアクセスができるようにする、あるいは決算行政監視委員会の外局あるいは調査委託機関としてしかるべきそういった行政をチェックする機関をつくっていく、そういうような形で現行制度をやはり充実させていく、それを立法に基づいて充実させていくのが現実的なオプションではないかなというように私は思っております。
 以上です。

○柴山委員
 先ほど来、やはり行政へのチェック、特に現行の制度が非常に不十分である、鹿野先生初めさまざまな委員の先生から御指摘をいただいたところでもあります。
 ここで再度申し上げたいのは、やはり、一義的にこれをチェックするべき議会あるいは民主的な制度というものが機能不全を起こしていることは率直に認めつつ、そういったものを例えば訴訟の場でしっかりと補っていくことが私は現実的ではないかなと思っておりますし、また、実効性という点でも、勧告しかできないオンブズマン制度よりも、行政訴訟ということの充実によって図っていく方が私はいいのではないかと思っております。
 もちろん、コストの面からして、必ずしも市民的に十分な救済ができないのではないかという懸念はあろうかと思いますけれども、こういった強制的な契機、モメントを持つ救済制度というものを私は充実していかなければいけないと思っておりますし、繰り返しになりますけれども、先ほど来出ている行政の不作為の場面については、一定の処分がなされないことによって重大な損害を生じるおそれがある、ほかに適当な方法がない、そういった場合の義務づけ訴訟というものが今般新たに新設をされたところでもあります。また、不作為の違法、違憲の確認訴訟、これも認められる。行政関係の権利義務に関する確認訴訟を、当事者訴訟の一類型として明確に明示をされているというような形での改正が行われているところを御理解いただけたらなというふうに思っております。
 また、先ほど山花先生の方から、情報公開制度では不十分ではないかというようなお話がございました。そういう御批判は私も共通の認識を持っているんですけれども、オンブズマン制度を仮にとった場合に、それでは劇的に情報公開のシステムとして有益に機能するかというところは、私は疑問に思っております。
 というのは、例えば軍事の場面あるいは警察の場面、こういった部分についてはやはり公益性とのしっかりとした緻密な利益衡量というものが必要になるわけでありまして、これが憲法上の制度となったからといって、そこの利益衡量というものが不要になるということでは当然ないわけであります。
 ただ私は、革手錠の事件を初めとする行刑システムのあり方ですとか、非常に密室で行われている人権侵害というものに対して、より情報をオープンにしていかなければいけないのではないかという問題意識は常に持っておりまして、そこは、例えば監獄法の改正ですとか、そういった特別権力関係と従来言われているような方々の声を積極的に吸い上げる、これはまさしく市民レベルのオンブズマンとか苦情処理機関というものでも十分行っていけるのではないかなというように思っております。
 いずれにいたしましても、憲法上の機関として位置づけることの懸念を、再度、大きなものを申し上げますと、それによって、そういった今申し上げたような市民オンブズマンが一段下に見られるのではないかというような懸念があるのではないかと私は思っております。私は市民オンブズマンの活動をかなり積極的に評価をしている立場の者でございまして、また、憲法上位置づけることによる質の確保の問題あるいは予算を伴うことによるコントロール、独立性の懸念、それから手続的なあり方、裁判所の手続に比して公益についてきちんと配慮できるのか、そういった部分について、やはり私は十分懸念を払拭できないでいる。少なくとも、まだ欧州に比べてそういった制度が熟していないんじゃないかなというところは、再度申し上げたいと思っております。
 以上です。

○柴山委員
 柴山でございます。
 大きな問題としましては、やはりこの国連憲章と日本の憲法の関係を考えた場合に、この日本の憲法九条、これを変えた方が果たして平和なのか、変えない方が平和なのかというそこの分かれ道が、まだコンセンサスが得られていない部分があるのではないか。
 九条を全くいじらないことが結局のところ平和維持に資するというような議論があって、そして、その根拠としては、もちろん確かに現行の内閣法制局の運用、解釈は非常に融通無碍になされている部分はあるけれども、それでもやはり国権の発動たる戦争を禁止している以上、侵略戦争は禁じられているじゃないか、あるいは陸海空軍といった名前の戦力は保持しないというように入れているではないか、そういったいわゆる歯どめ論、要するに、融通無碍な解釈はされてはいるけれども、歯どめというものはやはりあって、そして、時の政府の解釈もそこを最終的には尊重せざるを得ないという部分から、やはりこの部分についてはそのままにしておいてもいいのではないかという議論が一方ではもちろんあります。
 ただ、やはり先ほど来野田先生、渡海先生を初めとする皆様方の御指摘のとおり、この憲法が定められた当時は、自衛戦争すら、あの第二次世界大戦の後でする、そういうような状況ではなかった。ただ、当然のことながら、この日本国憲法が定められている中で、さまざまな妥協的な修正、芦田修正というお話もありましたけれども、が加えられて、将来に含みを持つ規定が設けられた。
 そういうような世界情勢と、現在の国際テロ頻発あるいはボーダーレス社会における国際貢献ということが問題となってくる世界情勢というのは明らかに異なるわけでして、こうした世界情勢の変化というものを的確に憲法の条項に反映していく、これこそがまさしく平和主義憲法のあり方ではないか。
 冒頭、葉梨委員からも御指摘がありましたとおり、そういった解釈というものにある程度枠をはめるためにも、そういった文言の明確性というものをしっかりとしていかなければいけないのではないかというところをまず冒頭に申し上げたいと思います。
 それから、やるのかやれないのかというような御議論も先ほどありましたけれども、これは、私は前回の調査会でも申し上げたとおり、国際貢献を一たび表明した以上は、しっかりと有形力の行使の部分についても行っていくのが筋ではないかというようには考えておりますけれども、これはあくまでも長期的なスパンで考えるべき問題でありまして、当面におきましては、やはり現行憲法と現実の運用との乖離ということを解消するということが私は喫緊の課題だと思っておりますし、そういった側面から、平和的な実力行使を伴わない、直接的な形でそれにコミットしないという形での、限定つきの括弧書きの集団安全保障、こういったものは、やはり一定の歯どめを設けた上で憲法上書き込んでいくべきではないかなというように思っております。
 集団的自衛権の問題についてはこれとは別個の問題でありますし、私は、集団的自衛権については、これは自然権の一つとしてやはり行使も存在も両方認められてしかるべきだ。あくまでも日本は自重してその行使を認めていないのではないかという立場に立つものであります。
 国連憲章との関係では、やはり常任の安全保障理事国になった場合に、三十九条、四十条、そして四十二条の軍事的措置、これに加わる必然性は、少なくとも法解釈上はないということは私もそのとおりだと思っておりますし、常任理事国に加わることによって、国連において積極的に発言をする、また、この集団的な安全保障においてもしっかりと議論をリードできる立場に日本が立つことができるということで、積極的に考えているということを申し上げたいと思っております。
 以上です。

第161回 国会 衆議院 憲法調査会

第161回 国会 衆議院 憲法調査会 第1号
平成16年10月14日(木)
午前十時開議

○柴山委員
 柴山でございます。
 大変有意義な視察だったと思います。参加された先生方の熱意に改めて敬意を表するものであります。
 私から若干申し上げたいのは、まず一点は、オンブズマン制度についてでございます。
 かなり欧州では機能しているというような御意見がありましたが、我が国の憲法下でこれを明文の法制化、位置づけるということが本当に現実的かどうかというのは、いささか、やはり国情の違いがあるのかなというふうに思います。
 北欧におきましては、言うまでもなく、国民負担率が七割、八割を超える超福祉国家、行政国家というところで、その適正化ということが非常に重要な課題となっております。また、その中で、憲法的統制というものが、国民一般の統制ということが求められているというのもやはり理解できる。また、議会、スウェーデンにおいては全会一致の選任、フィンランドにおいては多数決での選任というような基盤もあり、それに選ばれた方々の意識というものも相当程度高いのではないかと思っております。
 翻って、これを日本に導入した場合に、やはりその質の確保というものについて若干の疑念があるほか、どのような性質のものを想定するのか、既存の違憲審査制度、行政監視制度等の関係をどのように考えていくのか、さまざまな難しい問題が出てくるものと考えております。
 私は、このような観点から、オンブズマン制度を憲法上位置づけるということには、やはり相当な議論が必要になってくるのではないかなというふうに思っておりますし、また、憲法上明定することによって、そうした今活動している私的な団体というものに対して、保護以外に、何らかの規制的な側面というものも出てくるのではないかなというように考えております。
 防衛、安保の観点について申し上げたいと思います。
 先ほど保岡先生から御指摘のありましたとおり、これから日本も平和のために貢献をしていかなければならないという問題意識、このEUの視察からも大変強くうかがえるところでございます。今、日本が、やはり自分たちの国あるいは世界の平和をしっかりと自分たちのリスクを持って維持していかなければいけない、守っていかなければいけない、そのような共通認識を持つということは大変重要なことだと考えておりますし、そのために兵力、そのようなものを整えていかなければいけないという事情も私は賛成でございます。
 ただ、やはり、そういった国民的なコンセンサス、また自国の憲法の改正ということになりますと、当然のことながら三分の二以上の発議ということが必要になってくるわけでございまして、当面は、やはり自衛権の明定、そして平和的な分野における国際貢献という、最大公約数的なものに現実的には落ちつかざるを得ないのかな。長期的に、それを超えた部分、国際的な貢献というものは、国民的なコンセンサスを我々政治家が主体的につくり上げてから改めて議論をする、一度に五十年もつような制度というものを、あるいは憲法というものをこの数年間の短期的なスパンで構築するということはなかなか難しい側面があるのではないかなというように考える次第でございます。
 以上です。

第159回 国会 衆議院 憲法調査会

第159回 国会 衆議院 憲法調査会 第8号
平成16年6月10日(木)
午前九時一分開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 今古屋委員から御指摘があったとおり、私も、日本国憲法制定六十年になりなんとする現在、また国民の六割から七割が改正を支持している現状においては、改正が喫緊の課題となっているという認識でございます。
 ただ、今御指摘のあったように、現行憲法では九十六条で極めて難しい改正手続が定められておりますので、私は、常任委員会として憲法改正に関する委員会を設けるとともに、当面、必ず改正しなければいけない規定というものについて、まず早急に改正のための具体的な議論に入るべきだ、このように考えております。
 具体的には、先ほど下村委員などから御指摘のあった私学助成の問題、あるいは憲法七十九条や八十条で裁判官の報酬は減免できないと明文上なっている規定、あるいは犯罪被害者の刑事手続における権利を何とかすべきではないか、そういった与野党を超えて合意が得られるような喫緊の課題について、まず改正の俎上にのせるべきだと私は思っております。
 また、改正手続の緩和についてでございますけれども、現在こちらの調査会でも、将来における参議院制度改革あるいは地方自治改革といった議論の中で、極めて改正が困難な状況にあることは、これは否定しがたいものがあると思っております。
 先ほど、民主党の委員より、国会での発議の要件を過半数にした場合、また与党が強行採決をするのではないかという懸念が示されましたけれども、私は、そうした強行採決に対する懸念というものは、国民投票によって過半数の支持を得なくてはいけないというプロセスを経ることによってこれをある程度緩和することができるのではないかということで、憲法の改正というものを真剣に現実化するためには、現在の改正要件を緩和することが必要であるという考えを持っております。
 なお、若干の時間を使いまして、私の憲法上のスタンスというものを申し上げたいと思っておりますが、まず、憲法上、公共性あるいは義務という概念を設けることについての意見でございます。
 先ほど来、若干の委員より、現行憲法というものは国家権力からの国民、個人の権利の防衛というものが主眼であるから、義務というものを創設するということはなじまないのではないかという意見がありました。
 しかし、そのような概念的な立場で物を言えば、現在の憲法が定めている教育を受けさせる義務、あるいは勤労の義務、あるいは納税の義務というものについても説明ができないのでございまして、私は、現行の憲法というもの、あるいは今後改正及び制定が必要となる憲法というものは基本法である、そのような観点から、こうした義務についてもやはり真剣に検討をしていかなければいけないのではないかと思っております。
 また、先ほど保岡委員より御指摘があったとおり、他者や社会をしっかりと尊重するというような観点につきましても、やはり公共性というものをもう少し、現在の憲法十三条あるいは二十二条、二十九条といった公共の福祉という規定以外に、きちんと内容を豊かにした形で公共性というものを何とか盛り込んでいくべきではないかなということも将来的な課題としては考えていかなくてはいけないのではないかと思っております。
 統治機構については、国会審議の現在の形骸化という御指摘が河野委員からありましたけれども、私も、今般、新人の国会議員となりまして、この国会審議というものを実質しなければいけないのではないかという問題意識を持っております。将来の課題として御検討をいただければ幸いです。
 以上です。

第159回 国会 衆議院 法務委員会

第159回 国会 衆議院 法務委員会 第33号
平成16年6月2日(水)

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 私の方からは、昨日、長崎県佐世保市で発生した小学六年生の女子児童殺害事件について質問させていただきたいと思っております。
 なかなか未解明の事実がまだたくさん残されているわけですけれども、報道では、同級生の女子児童が行ったとされております。
 ここで、刑事局長の方にお伺いしたいんですけれども、いわゆる凶悪犯、殺人、強盗、放火、それと強姦ですね、凶悪犯に該当する行為を行った刑事未成年、十四歳未満の少年少女の最近の動向、統計、こういったものがあれば、どのような状況になっているのかお聞かせください。

○樋渡政府参考人
 警察庁の統計によりますと、平成六年以降おおむね百八十名前後で推移しておりまして、昨年、平成十五年には、最近では初めて二百人を超しまして、二百十二名となっております。昨年、二百人を超えた大きな原因は、凶悪犯のうちの放火犯が一昨年に比して六十四名増加していることが原因だと考えられます。

○柴山委員
 先ほど松野委員から、こうした少年少女に対する処遇というのは厳罰一辺倒ではいけないのではないかという問題提起がなされましたが、処遇についての質問はまた後ほどさせていただくといたしまして、仮に今回、報道されているように、同級生の女子児童、今まだ十一歳だというように仄聞していますが、この児童がその事実を行った、あえて犯人と言いますけれども、犯人であった場合には、その後はどのような手続、処分がなされることになっているのでしょうか、引き続き刑事局長の方にお伺いしたいと思います。

○樋渡政府参考人
 刑法の規定によりまして、行為時に十四歳に満たない場合は刑事未成年者として犯罪が成立せず、少年法上は三条一項二号により、「十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年」、すなわち触法少年として扱われることになります。したがいまして、行為時に十四歳に満たない場合は、逮捕などの犯罪捜査のための強制処分を行うことはできません。
 このような少年につきましては、第一義的には都道府県知事や児童相談所長によりますいわゆる児童福祉法上の措置にゆだねられておりますので、警察官としては、十四歳に満たない者による刑罰法令に触れる行為であることが判明した場合、児童相談所に通告することになります。児童相談所長は、必要があると認めるときは、一時保護を加え、または適当な者に委託して一時保護を加えさせることができます。
 そして、児童福祉機関は、通告を受けた児童につきまして、家庭裁判所の審判に付することが適当と認められる場合にはこれを家庭裁判所に送致することとなっておりますが、それ以外の場合には、例えば都道府県において児童自立支援施設入所等の措置がとられることもございます。
 家庭裁判所が事件の送致を受けたときは、事件について必要な調査、審判を行うこととなります。家庭裁判所は、審判を行うため必要があるときは、観護措置として少年鑑別所送致などの措置をとることができ、この収容期間は、法律上四週間が限度とされております。
 家庭裁判所は、審判において、事案の内容に応じて、保護観察、児童自立支援施設送致などの保護処分などの決定をすることができます。児童自立支援施設への収容期間は、家庭裁判所で保護処分が言い渡される際に決められるわけではなく、施設側の判断によりますが、特に法律上の定めがあるとは承知しておりません。
 以上でございます。

○柴山委員
 詳細な御答弁をちょうだいしましたけれども、要は、今回警察によって補導がされて、逮捕という手続はないというお話でしたけれども、補導がされて、それで児童相談所から家裁に送致されて、それで観護措置がとられて、それが四週間、長くても四週間というその期間ですね、事実解明手続というものが一切予定されていない。
 少なくとも警察は、一般の刑事事件の場合には、当然のことながら、もちろん相当の犯罪容疑がある場合に限りますけれども、強制処分ということもできる、また任意処分として証拠物を領置したりあるいは実況見分ということを行ったりすることができるわけですけれども、こうした事実解明についての手続というものが、その後、観護措置、その後の少年審判というところに至るまで一切予定されていないのではないかという疑問があるわけでございます。
 これについて、何か事実解明について有効な手段があるのかどうかということを、まず刑事局長にお伺いしたいと思います。

○樋渡政府参考人
 おっしゃられるとおり、犯罪ではございませんので、警察が捜査する権限は持っておりません。家庭裁判所に送致された後は、家庭裁判所が、その少年に対する保護処分等を決定するに当たっての事実調査を家裁が主導で行うことになるわけでございます。

○柴山委員
 家裁の調査というお話が出まして、ただ、その家裁の調査といっても、当然のことながら調査に関する必要な権限というものについては予定されていないわけでございます。
 当然のことながら、被害者にとっては、何よりもまず、どういう事実があったのか、そこが一番の関心事でございまして、もちろんその後に引き続き行われる民事上の損害賠償等の手続もございますし、また、こうした事件の再発防止といったものについても、やはり事実の確定、調査というものが何よりも重要になってくると思うんですけれども、そのあたりは一体どうなっているのかということを重ねてお伺いしたいと思います。

○樋渡政府参考人
 少年法によりますと、家庭裁判所といたしましては、事実調査のために刑事訴訟法が準用されておりまして、捜索、差し押さえ等の強制処分はできることになっております。要するに、犯罪ではございませんので、捜査機関が捜査する権限は持っておりませんでして、すべて家庭裁判所で事実の調査を行うというのが現状でございます。

○柴山委員
 実際に家庭裁判所で調査を行って、その場合に刑事訴訟法の規定が準用されるとありますけれども、例えば、家庭裁判所の調査官の方が、今回加害者とされる女子生徒の家に行って、それで、インターネットのホームページへの書き込みが何か原因だというように報道されています、これは事実関係はまだ確定されていないのでわかりませんけれども、そういうような証拠品を例えば捜索、押収するために調査官の人がパソコンを無理やり持ってきて、それでパソコンをあけて中身を調査する、親が嫌だと言うのに無理やり押収するという手続は予定されているんでしょうか。

○樋渡政府参考人
 これは法律上のことでございますけれども、委員御指摘のようなことは、家庭裁判所の調査官ではなくて家庭裁判所自体が法律上はできることになっております。そして、それを実際にどうやっているかにつきましては、これは犯罪ではございませんで、検察を全然通らないものでございますから、現状等をちょっと私の方でお答えする資料がないところでございます。

○柴山委員
 いや、だから、そういう、裁判所がやることになっているとか、法律が準用されているとか、理屈の問題ではなくて、実際にそういういわば有形力によって、抵抗された場合にそれを、例えばお母さんがそんなことやめてくださいというふうに言われた場合に、それでも、これは事実関係のために必要ですからといってそれを振り切ってでも事実関係を調査しなくちゃいけないときは調査しなくてはいけない、そこら辺の手続は全く法律上定められていないのが現状ではないんでしょうか。

○樋渡政府参考人
 家庭裁判所は、加害少年といいますか触法少年の将来の保護の観点もありますので、どういうようなところまで踏み込めるかという事実上の問題はあるかもしれませんが、その点、私は推測を交えて申し上げるのは控えさせていただきますけれども、家庭裁判所に送致する前、児童相談所の方に行くことしかないわけでありますから、そこでの調査というのは全くなされない。これが大きな一つの問題点だろうというふうに思っておるわけでございまして、家庭裁判所に行ってからは家庭裁判所が法律を使ってどのように調査されるか、これも一つの事実上の問題ではありますけれども、それ以前に調査をする機関がないというところ、それをどうやっていけばいいのか、現在、刑事局内に置いておりますプロジェクトチームで鋭意検討をさせていただいているところでございます。

○柴山委員
 捜査というと、確かに、特に刑事未成年、少年少女というような場合には、あるいは我々弁護士の中で言われているのは、ともすれば捜査機関の質問に対して迎合的な傾向がとられたり、いろいろ弊害があるということは存じています。
 ただ、そういうことの弊害があるにしても、例えば付添人の方の同席の上で必要な調査を行うことができるようにするとか、あるいは、もちろん、先ほど御指摘のあったように、犯行直後の証拠の保全、収集というものが一番この手の事件については必要でありますから、その行為直後の証拠の収集ということをどうするかということについては、適正な手続をしっかりと整えて法整備を行う必要があるんじゃないかということを私も考えているんですが、この点、法務副大臣、立法に関する何か意見があれば、ぜひお伺いしたいと思います。

○実川副大臣
 いわゆる触法少年の事案につきましては、今議論がありましたように、刑事訴訟法に基づく捜査ができなくなり、事案の真相解明が十分できないのではないかという指摘があることは承知をいたしております。
 青少年育成施策大綱におきましては、現在、触法少年の事案について、警察機関が必要な調査を行うことができる権限を明確化するための法整備について検討をすることが盛り込まれております。
 法務省といたしましても、この問題の重要性を踏まえまして、先ほど刑事局長が、局内にプロジェクトチームを設けまして、法改正の要否を含めまして検討を進めているところでございます。今後も、関係機関と協力しながら、鋭意検討を進めてまいりたいと考えております。

○柴山委員
 いろいろ難しい問題があると思いますが、ぜひしっかりと検討していただければと思います。
 次に、こうした少年少女の処遇についてお伺いしたいと思います。
 今、刑事未成年について、特に今回の加害者とされる方、少年院に送致するということは予定されていない、児童自立支援施設で、開放的な空間で教育を中心とした措置を加えていく、しかもその期間も不定期というように御説明があったかと思います。
 教育という点も確かに重要だと思いますが、現在、被害者の人権の観点から、やはり、教育の観点だけではなくて罪を償うというような観点の処遇も必要なのではないかという指摘があると思っております。なかんずく、可塑性のある少年だからこそ、自分の行ったことの重要性というものをしっかり認識することが、その少年少女の更生のためにも必要なんじゃないかなと私などは考えているんですけれども、触法少年について、今回の事例はともかく、少年院に対する送致というものを可能にすべきではないか、この問題提起について、法務副大臣あるいは刑事局長の御見解を伺えればと思います。

○実川副大臣
 委員御指摘の十四歳未満の少年を少年院に収容することはできませんけれども、この点につきましても、先ほどお話し申し上げましたように、青少年育成施策大綱におきまして、触法少年につきましても、早期の矯正教育が必要かつ相当と認められた場合には少年院送致の保護処分を選択できるような法改正を現在検討しておるところでございます。
 法務省といたしましても、関係機関と協力しながら検討を進めていきたいと思います。

○樋渡政府参考人
 今副大臣の方から答弁をしていただきましたとおりでございまして、刑事局内に置きましたプロジェクトチームにおきましても、先ほどの調査権限、この少年院送致を可能にする問題、保護観察のあり方の問題等を鋭意検討しているところでございます。
 できるだけ早期にまとめて、法制審議会にかけるものがあれば上げたいというふうに思っているところでございます。

○柴山委員
 早期にというお話があったんですけれども、少年犯罪についても、我々自民党の中では、これについてしっかりとやはり数を減らしていく、教育の観点も含めてしっかりと対処をしていくということを大きな重要な課題としているわけでありますけれども、難しい問題ではあるけれども、早急に早急にと言うだけでは話は一向に前に進まないわけでして、実際にどういう法改正がいつまでにできるのかということが一番重要ではないかと思っておりますが、法改正の時期、これについてはどのような見通しでいらっしゃるのか、改めて法務副大臣に伺いたいと思います。

○実川副大臣
 先ほどから委員御指摘の触法少年の事案についての事実解明のために必要な調査権の明確化の法整備、また、早期の矯正教育に必要な、相当な触法少年に対しての少年院送致の選択であるとか、保護観察中の少年の遵守事項の遵守を確保し、指導を一層効果的にするための制度的措置、これらにつきましては、先ほど申し上げましたけれども、十分な検討が必要でございまして、結論を出す時期、その内容につきましては、現時点では何とも申し上げられませんけれども、いずれにしましても、できるだけ早く必要な検討を行い、適切な対応を図ってまいりたいというふうに考えております。

○柴山委員
 大変難しい問題であるとは認識しておりますけれども、とにかく、教育の問題も含めて、この少年の犯罪に対する対処の問題というのは、非常に重要な、これからの日本の治安の根幹をやはり左右する問題だと思っておりますので、ぜひ早急に、対処、検討をお願いしたいと思います。
 私からは以上です。どうもありがとうございました。

第159回 国会 衆議院 法務委員会

第159回 国会 衆議院 法務委員会 第29号
平成16年5月25日(火)
午前十時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 本日は、参考人の皆様、お忙しい中をありがとうございます。
 先般の九・一一テロ、あるいはイラク情勢の悪化、あるいは先ほど来御質問に出ているような外国人犯罪の増加の中で、我が国の外国人犯罪に対する取り締まりの強化の声というものは非常に大きくなっていると私も認識しております。今回の法改正はそのような要請に一定程度こたえたものであると私は認識しております。
 まず、竹花参考人にお伺いしたいのは、例えばこうした罰則の強化、特に不法入国者に対する罰則の強化、そしてその一方、一定の入国管理官署にみずから出頭した不法滞在者のうち、軽微な事案については上陸拒否期間を短縮するというような措置も設けることによって、より入管手続の徹底というものを図っていると思うんですけれども、こうした手続を外国人自身がしっかりと認識しなければ、その取り締まりの実は図れないと思います。ところが、外国人の大半は、不法入国者あるいはオーバーステイの外国人というものは、そんな日本の制度なんか知ってはいない。そのような中で、先ほど申し上げたような黄金の橋である上陸拒否期間の一定の場合の短縮ですとか、あるいは罰則の強化というものをどうやって周知徹底していけばよいのか。
 また、私は、こうした不法就労の問題というのは、やはりそれを雇う側に非常に大きな問題があると思っています。今回は、不法就労の助長罪についても、罰金二百万円以下というものを三百万円以下というふうに引き上げていますけれども、こうした罰則の強化についての周知徹底、これもまた同様に非常に重要な問題であると考えます。これについてどのような施策をお考えなのか、竹花参考人にお伺いしたいと思います。

○竹花参考人
 法改正の周知にかかわる問題でございますけれども、東京都は、不法滞在者対策を講ずる上で、先ほど申し上げましたように、特に不法滞在者対策、外国人の犯罪を防止する上で、やはり中国人の組織犯罪を抑止するということが最も重要な課題だというふうに考えておりまして、その点で在日の中国人の方々と意見交換を進めてきております。
 その過程で明らかになっておりますのは、こうした入国管理の内容について中国人社会は非常に大きな関心を持っており、それは不法滞在者にとっても同様であるということでありまして、どういう対策を講じるのか、あるいは政府がどういう対応の変化をするのかということについては、非常に速い速度で主に口コミで伝わってまいるというふうに思っております。
 が、一方で、その対話の中に、中国人向けの情報紙を発行しておられます、新聞ということですから、一週間に一回程度の新聞を発行しておられる方々が多数おられますけれども、そういう方々とのお話の中で、実は東京都がこの問題に関心を持っていることについてはその新聞に載せてもらいまして、こういう不法滞在者対策についても入管局と一緒になって、悪い者には厳しく、そうでない者については早く帰れるような方法を考えているぞというようなことにつきましても、彼らの新聞を通じまして、東京都の姿勢といったようなものについても、これまで既に周知をする方向で努力いたしておるわけでございます。
 いずれ本法案が改正されますれば、法務省当局ともいろいろるる相談をいたしまして、東京都といたしましても十分な工夫をしてまいりたいと考えております。(柴山委員「雇う側の問題」と呼ぶ)雇う側につきましては、東京都におきましても産労局がございますので、そうしたところから事業者にあててそうした情報の周知を進めてまいりたいと思っております。

○柴山委員
 ありがとうございます。
 今回、不法就労者が非常にふえているという問題については、雇う側にも非常に問題がある。実際、雇用の調整弁的な役目をオーバーステイの外国人に負わせて、そして景気が悪くなったら真っ先に切り捨てて、それで生活の糧がなくなったこうした人たちが犯罪に走る、そういうような面が私は否定できないと思うんです。
 こうした日本に在留する外国人、定住外国人について、日本の人たちと同じような法制度に組み込む。具体的には、帰化制度をあるいはもう少し弾力的に運用した方がよいのではないか。あめとむちという言葉もありますが、いわば、外国人のうち、日本に本拠を持ち、日本人と同じような生活をしている人にはもっと積極的に日本国籍を一定の要件のもと与えていったらよいのではないかと私は考えるのですが、これについてどのようにお考えでしょうか。竹花、山神、市川各参考人の方々にお伺いしたいと思います。

○竹花参考人
 不法入国あるいは不法滞在を長期間継続することで日本における永住資格等が得られるということが蔓延するのは、やはり入国管理上問題があるというふうに考えます。が、他方で、日本における外国人労働力の活用の方法につきましては、現状不法就労者がこれだけ多いという実情を考えますと、そのニーズがあるというふうにも考えるわけでございまして、その適切な受け入れ方について、やはり国全体としてクリアな方針を立てていくべきだというふうに考えます。

○山神参考人
 私も、不法に長い間滞在し、働いているということの積み重ねの上で、例えば永住あるいはそのまま帰化というふうな話になりますと、それはかえって新たな不法入国あるいは不法残留による就労ということを招きかねないと思いますので、必ずしもそういうふうな方向でいくのが望ましいとは考えておりません。
 しかしながら、やはり、今竹花参考人も申されましたように、現実に働く需要があるというふうなこと、そしてこれが長い間そういうふうに伝わってきているということは間違いない事実でございますので、一方では、それは治安問題だという意識を、雇い主がそういう意識を持つように啓蒙を進めなければなりませんが、もう一つはやはり、そういうふうに社会に必要な労働力の部分をどうやって埋めていくのかという真剣な議論が必要かもしれないと思います。
 特に、先ほどちょっと、一九九〇年代前半の三十万人近い不法残留者が二十数万人まで減ってきた、もちろんこれは失われた十年という経済的な停滞もあったかもしれませんけれども、同時にやはり、そこに日系人が入ってきて働いたこと、あるいは、これもさまざまな御意見ございますけれども、技能実習制度によってある程度すき間を埋めることができたというふうなこと、そういうふうなこともございます。
 今後の外国人労働者の受け入れ問題についての議論が必要だと考えるゆえんでございます。

○市川参考人
 まず帰化制度でございますが、在留資格があるなしということとはまた別に、帰化制度あるいは永住の資格の付与を弾力的に運用するということは、これは十分考え得ることでありまして、それによって在留を安定させて生活の安定を図っていくということは、選択としてあり得ることであろうと思います。ただ、これは日弁連として今見解を申し上げているわけではございませんが、個人的な意見としては、そういうことはあるだろうと思います。
 ただ、帰化ということになりますと、これは日本国籍を取得させるということでございまして、その選択も一つの選択だとは思いますが、やはり外国人の方たちというのは、それぞれ自分たちの国の背景であるとか言語、文化を持って日本に来ていらっしゃるということでございまして、日本国籍に一律帰化するべきであるというような政策もまたいかがかなと思います。むしろ、それぞれの民族的背景や言語的な背景というものを広く包み込むような形で共存していく、共生していくという社会の構築ということをもう一つの視点として持っていくことが一つは必要ではないかなというふうに思っております。

○柴山委員
 非常に難しい問題ですけれども、外国人の中でも、例えばフィリピンとか東南アジアの方から入国した女性が、事実上日本の男性と肉体関係を持って、婚姻ということをしないまま子供ができてしまう。その子供を学校に連れていかないわけにはいかないわけですから、学校に上げる。そうしたら、その子供はどういう法的な地位があるんだということは、私も弁護士時代に非常に難しい問題が出てきたのを記憶しております。
 そのような中で、国籍の取得というもの、あるいは定住としての保護をもう少し弾力的に考えていくべきではないかということを再度申し上げて、次の質問に移らせていただきます。
 さて、難民の認定制度については、この後、恐らく民主党の皆様方から非常に詳細な質問があるものと思いますので、そちらの方に譲りますけれども、ただ一点、私が山神参考人にお伺いしたいのは、先ほど市川参考人の方から提起された、参与員制度を導入するとすれば、そのあり方について非常にしっかりと考えるべきではないかという御提言がありました。専門家、特にUNHCRの方々、あるいは日弁連の方々を積極的に登用していく、またその人数比も考慮して、入国管理行政を担う人たちとのバランスというものを考えていかなくてはいけないのではないかという御提言がありました。これについてどのようにお考えか、お聞かせいただけますでしょうか。

○山神参考人
 現在提出されている法律案を見ますと、法律あるいは国際関係についての有識者の中から選定されるというふうなことになっておりまして、その規定ぶりとしては、恐らくそういうふうな視点から選ばれるのが望ましいんではないかと存じます。日弁連からというふうに、あるいは日弁連の意見を聞くかどうかというふうなことにつきましては、それは恐らく、これを任命される法務大臣のところで考えられるべきことでございますけれども、やはり、せっかく公平中立というふうなことをねらって行われた制度でございますから、その趣旨に見合ったような任用がされるものと私は確信しております。
 今、ただ、UNHCRのお話が出ましたので、UNHCRとの関係についてだけ一言申し上げますと、難民条約上、UNHCRとの協力関係というのは一般の問題として広く規定されておりまして、難民不認定に関する異議申し出の過程だけでなくて、もっと認定申請一般からさまざまな格好で意見交換がなされているものだと思います。
 むしろ、国連難民高等弁務官事務所と各主権国家との関係が、余りに対立的なものがたくさんあるとかというふうなことが内外に出てくるのはかえって好ましいことではなくて、むしろ、国際機関と各主権国家は協力して難民の問題の円滑な処理に当たっているというふうなイメージをさらに高めますためにも、もし、法務省あるいは外務省とUNHCRとの間の意見の違いとかがあるのであれば、むしろビハインド・ザ・シーンというふうな格好で緊密な協力がなされていくべきもの、そんなふうな感想を持っております。

○柴山委員
 まだ聞きたいことがたくさんあったんですけれども、持ち時間が終了しましたので、これで終わらせていただきます。
 きょうはどうもありがとうございました。

第159回 国会 衆議院 法務委員会

第159回 国会 衆議院 法務委員会 第26号
平成16年05月18日(火)
午前十時開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦でございます。
 参考人の先生方におかれましては、本日は、御多用中のところをどうもありがとうございます。
 個人的なところを申し上げますと、青山参考人は、私が学生時代に民事執行法を教えていただいた非常に学恩ある先生ということで、本日は、よろしくお願い申し上げます。
 早速質問に入らせていただきます。
 今回の破産法の改正につきましては、先生方から御説明のあったとおり、非常に大きな前進であると私も考えております。そこで、まず先生方、なかんずくユーザーとしての立場から綿引参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、今回の破産法改正が積み残した問題点、とりわけ経済界におきましては、例えば管財人の解除権との関係で、登録のない契約、登録のないライセンス契約の保護などをどうやって図っていくかというようなことが私は個人的には問題なのではないかなと思っているんですけれども、今後の課題についての御意見をまず先生方にお伺いしたいと思います。各参考人の先生方にお願いしたいと思います。

○青山参考人
 ライセンス契約は、双方未履行の、双方が義務を持っている一種の双務契約であろうというふうに思います。そこで、ライセンサー、ライセンシー、どちらでも一方が破産した場合の処理は、これは破産法の今までの現行法の規定ですと、五十九条の双方未履行の双務契約から考えていくべき問題であろうというふうに思います。
 そこで、破産管財人は、従来のライセンス契約を継続するのかどうかということを選択し、そしてその結果、もし継続をするということになれば、そのために払うべきものは財団債権として払うし、解除した場合には、相手方からの損害賠償という問題は破産法の中で処理する、そういうことになっているというふうに考えております。

○綿引参考人
 お答え申し上げます。
 今回の破産法案で、賃貸人が破産した場合の取り扱いについては、賃借人が対抗要件を備えている場合について、破産管財人の解除権を制限するというふうにしたわけですが、この規律は、契約上の使用収益権一般を対象とするということで、第三者に対抗することができる権利を目的とするライセンス契約におけるライセンサーの破産についても適用されるということになったわけです。しかし、対抗要件制度が用意された知的財産についても、通常実施権の登録は実務上非常に少ないと言われておりますので、一歩前進ではあるものの、やはり限界があるなと考えております。
 この点、昨年の七月に政府の知的財産戦略本部がまとめた報告の中に、知的財産権法における第三者対抗要件制度の見直しに関する検討を行うというようなことを言っておるようですから、知的財産権法による保護をちょっと今は期待しているという形でございます。
 以上でございます。

○須藤参考人
 弁護士会の方で統一的に、この点が積み残しなのでまた改正をというような統一見解は持っておりません。あくまで個人的な意見でございますが、例えば、いろいろな債権の優劣を決めるときに、現在は租税債権というものが一番優先する形になっておるわけでございますが、考え方によりますと、倒産した企業に一番密接なところから保護すべきではないか。
 例えば、労働債権というのは、そこに全面的に依拠していた人たちの権利ですから、これが最優先されて、それからその企業と取引をしている取引債権、こういったものが次に優先される、そして金融債権、そして租税債権は国民全体で負担するんだから一番遠い債権ではないかなどという考え方もありまして、いろいろ優先関係については意見がたくさんあるところでございます。ただ、租税債権の優先性というものについて、もう少し見直されてもいいんではないかというような個人的な考えを持っております。
 以上でございます。

○柴山委員
 どうもありがとうございました。
 次に質問させていただきたいのは、先ほど来、破産者のモラルハザードと、あとは、一度破産した人でももう一度やり直すことができるようにしなくてはいけないという、二つのある意味では相反する要請をどうやって調整していくかということに非常に大きな議論が割かれたのではないかなと思っております。
 その点から、今回の免責制度については、私が先ほど質問しようと思っていた事項については須藤先生の方から、悪意で加えた不法行為の運用の問題、あるいは給与再生の開始手続から七年ですか、以内の免責の申し立てというものが免責不許可になるということの問題点については御指摘いただいたんですけれども、私がここで一つ取り上げたいのは、免責手続中、例えば同時廃止とかによって既に破産手続が終わった後、免責が確定するまでの間に強制執行が結局できなくなってしまうというところで、これは非常に大きな議論、また判例の動きもあったところだと思うんですけれども、これについて新法では、個別の強制執行は結果としてはできなくなってしまうということで、行き過ぎた破産者の保護になっているのではないかという意見も当然あろうかと思うんですけれども、これについての御意見を伺いたいと思っております。

○下村委員長代理
 だれがいいですか。

○柴山委員
 では、青山先生と須藤先生に。

○青山参考人
 お答え申し上げます。
 今の問題は、最高裁の判例も出ておりますが、例えば、破産手続が同時廃止で終わった、免責の申し立てをしている、その間に、例えばその破産者の被相続人が亡くなって自分に財産が少し入ってきたというと、それを目がけて強制執行をする。その強制執行が許されるかどうかといいますと、従来の制度では、それは強制執行は禁止されておりませんので許されたわけでございます。しかし、その後に破産者が免責を許可されますと、そうすると強制執行でとられたものが不当利得になるかどうかということの問題もございました。
 そこで、今度の破産法の改正は、そういう破産手続と免責手続が連続しないことによって、その間を縫って債権者が、強制執行をかけられる債権者とかけられない債権者との間にバランスを失するのはおかしいのではないか、たまたま債務名義を持っている者は強制執行をかけられるし債務名義を持っていない者は強制執行がかけられない、そういう債権者の平等に違反するようなことはやめようと。それからまた、後になって免責が許可された場合に、その間にとられたものが結局返ってくるのかこないのか、そういう複雑な問題もありますので、この点は、債務者の再生、再チャレンジを保障しようということで一連の手続とした。
 これは私は、モラルハザードを生じさせないで、むしろ、これはアメリカ法なんかと同じですが、破産手続と免責手続を一つの倒産手続として考えることの方が合理的だというふうに考えております。
 以上です。

○須藤参考人
 お答え申し上げます。
 破産というのは、破産宣告、今度の言葉で言いますと破産手続開始決定ということになりますが、その開始決定時にある財産はすべて吐き出す、先ほど自由財産というのが広げられたという点はございますが、しかし、それ以外の財産というものはすべて吐き出して弁済に充てるという手続でございますから、したがいまして、その後、免責をされるということは非常に妥当なものだろう。そうすると、たまたまその手続が進行している途中で給料債権等が差し押さえられるというのは、これはやはり何とか防止してあげていいんではないか。弁護士会の中ではほとんどがそういう意見でございまして、差し押さえを許さないことがモラルハザードを来すんではないか、このような意見は余りなかったように記憶しております。
 以上でございます。

○柴山委員
 個別の問題点をやっているとほとんど時間がなくなってきますので、ちょっと大きな観点から質問をさせていただきたいと思います。
 今回、我々自由民主党では、倒産法制のみならず、例えば、中小企業の社長さんを連帯保証人にとる包括根保証制度について、これを何とかして見直す必要があるのではないか、保証人を保護する必要があるのではないかという観点から意見を述べさせていただいているところでございます。
 そのような中で、保証人の倒産法制におけるあり方について、従前、いわゆる全部義務者ということで、破産宣告後にその保証人が履行しても、一部履行である場合には、その破産債権者たる地位の承継をする必要がなかったわけですね。この点について、実は、今まで実務に非常に混乱を来していた部分があって、例えば保証協会の代理人とかから、一部弁済するので破産債権の一部について地位承継をしてくれなんということを私も弁護士時代に何度か言われたこともあるんですけれども、こういうような制度をむしろ促進した方が保証人の保護ということにもつながるのではないかということで、いわゆる、この点についての抜本的な改革というものについてどうお考えか、青山先生に特にお話を伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○青山参考人
 大変大きな難しい問題を提起されました。今、法務省では、保証制度の見直しという、法制審議会にそういう部会がありまして審議しておりますけれども、そこでその問題を扱うかどうかは私は十分には存じておりません。
 会社が倒産した場合に、特に中小企業の場合には、社長さんが個人保証人になってもらわなければお金を貸さないという事態は、もう一般的でございます。そうすると、もともと有限責任である会社が倒産すると、では個人である連帯保証人である社長さんが今度は前面に出てきて無限責任を追及される、これはおかしいのではないかというのは、感覚としては私は非常によく理解できる、その点は委員のおっしゃるとおりでございます。
 さて、それでは、民法の保証制度、特に連帯保証というものをどういうふうに考えるかという大きな問題があろうかと思います。もともと連帯保証人、あるいは通常の保証人もそうでありますが、主たる債務者が破産した場合には連帯保証人が全面的にそれを引き受けるということで民法はつくられているわけですね。
 しかし、一般に世の中で、私も何人も連帯保証人になって大丈夫かなと思ったこともありますけれども、連帯保証人になる場合に、それほど、この人が倒産したら自分は全部ひっかかるということをきちんと意識して判こを押すのか、あるいはそこまで考えていても、判こを押さないと言ったらこれは人間関係がこじれちゃうなというようなことがあって判こをつい押してしまうという現実があろうかと思います。
 最近は、そういう個人、連帯保証にかわって保証協会とかそういうものができつつありますけれども、しかし、全部が保証協会で保証がされるわけではない。そうすると、委員今御指摘のように、やむを得ず連帯保証人になってしまった、それで主たる債務者が倒産しちゃった、さあどうしようかという事態はおっしゃるとおりだと思います。
 これは二つの方向があると思いますが、一つは、連帯保証というものはそういうものであるということをきちんと教育して、そういうものとして運用していくということが一つ。もう一つは、連帯保証人の義務というものを軽減するということは、これは法律の改正をすればできるわけであります。どちらをするかということは、これは日本の金融政策全体との関係で考えなければならない問題かなということで、特に私は今連帯保証人の義務は軽減した方がいいというような定見は持っておりません。広く検討していただきたいというふうに思っている次第でございます。

○柴山委員
 最後の質問とさせていただきたいんですけれども、これも私の実務における一つの経験であったんですけれども、賃貸借契約における賃貸人の倒産についての今回の法制度について、対抗要件を備えればそれは引き続き保護されるというお話をいただいたんですが、この場合の賃借人の敷金返還請求権がどうなるかという問題が一つございます。
 これについては、再生手続あるいは会社更生手続におきまして一定の保護はされたところでございますけれども、実は、私、これが果たして本当に全額保護されるものなのかどうなのかというところで、非常に、裁判でも争った経験があるものですから、これについて、今後、破産手続でどのように処理されるのかということについて御意見を伺いたく思います。それでは、青山先生と、では須藤先生にお願いします。最後の質問です。

○須藤参考人
 お答え申し上げます。
 間違っておりましたら青山先生に御訂正いただきたいと思いますが、敷金を預けている場合に、賃料は払うけれどもそれを寄託しておいてくれという制度が今回設けられたわけでございます。
 そうしますと、敷金の返還請求権というのは、後に明け渡した後でなければ返還の請求ができないわけで、現在、すぐにそれを賃料と相殺ということはできないわけですが、そのように、寄託させておいて、後に明け渡すときに賃料と敷金返還請求権を相殺した上で寄託していたお金を全額返してもらう、こういったことができるようになったんだというふうに私は理解しておりまして、これは妥当な改正だろうというふうに思っております。
 以上でございます。

○青山参考人
 私の答えも今の須藤参考人の答えと全く同じでございますが、従来は、賃貸人の破産の場合に解除ができる、賃借人は保護されない、ただ敷金を納めている場合には当期及び次期の分だけが保護されるという法制であったわけですが、今回は、賃借人はそこに居続けることができるという保護の制度を取り入れ、今御指摘にありましたように、敷金返還請求権についても、寄託という制度を設けることによって金銭的にも保護が図られたのではないかというふうに思っております。

○柴山委員
 以上です。どうもありがとうございました。

第159回 国会 衆議院 法務委員会

第159回 国会 衆議院 法務委員会 第23号
平成16年5月11日(火)
午前十時一分開議

○柴山委員
 自由民主党の柴山昌彦と申します。
 埼玉地区から今回の補選で当選させていただきましたが、従前、弁護士をしていたということで、水野参考人の先ほどの御説明で私の質問しようとしていたことがすべて解消されてしまったような部分もございまして、今さら何を聞けばいいのかという部分もあるんですけれども、今回の政府の改正案については、特に実務家の目から見れば、先ほどおっしゃった被告適格の緩和、あるいは争点整理の段階から釈明処分という形で、行政庁の手持ち資料を積極的に開示するという形で、立証責任の転換を図ることなく武器対等ということになるべく近づこうとしている、このような点も含めて、また義務づけ訴訟の導入も含めて非常に評価できる点が多いとは考えております。
 ただ、若干私としても疑問に思っている点が残っていますので、これについて、ほとんど時間がないんですけれども、幾つか質問をさせていただければと思います。
 まず第一点は、従前、原告適格については非常にいろいろなところでさまざまな議論がなされていて、今回は原告適格の判断のための文言上の要件という形で補充が行われた。ただ、そこで示された四要件のうち、結局、従来の判例の整理だけで、実のあるのは最後の四番目の不利益の部分だけではないかというような声も聞こえてくるんです。
 まず、三人の参考人の先生方にお聞きしたいのは、このような不利益あるいは原告の害される利益というものの中で、それが憲法上の利益をダイレクトにしんしゃくすることができるのか。関連法律とかそういう問題をしんしゃくすることなく、例えば処分の根拠法あるいは趣旨を共通にする法律以外の、例えば環境の問題あるいは騒音、景観、そういったものについても憲法上ダイレクトに原告適格を判断するのにしんしゃくすることが今度の改正法によってできるのかという点について、まず先生方にお聞きしたいと思います。

○塩野参考人
 私は、行政法の定義として、憲法的価値の実現の技術に関する法であるというふうに講義もいたしましたし、教科書にも書いてあります。その枠内で考えるということであれば、基本権というのは当然にその考慮の対象になるということであると思います。
 ドイツにおきましては、基本権の考慮義務というものを原告適格の拡大の一つのてこにして動いてまいりました。ただ、それでは、基本権が何でもすべて、根拠法規の処分要件の解釈の問題でございますから、それとおよそ関係のない基本権を持ち出してきてこれで認めろといっても、それはなかなか裁判所としては認めがたいところでありましょうし、あるいは今度の四項目についても、そこは憲法的なことは直接には書いてございませんけれども、およそ関係のないものを持ち出してくるということにはならないのではないかと思います。
 しかし、繰り返して申しますけれども、憲法的価値の実現の技術に関する法が行政法であるということを御理解いただきたいと思います。

○藤川参考人
 お答えいたします。
 大変難しい問題で、私のような法律の素人には答えられるかどうかわかりませんが、そうであってほしいし、そうあるべきだというのが私の基本的な考えでございます。
 今御指摘のありました、例えば環境の問題です。
 私は三年ほど四国に赴任したことがあるんですが、そのときに白砂青松の浜辺を埋め立てるという問題がありました。埋め立てて工業用地をつくる、そのときに、漁業補償、これは公有水面埋立法に基づいた補償対象ですから彼らの同意が必要なんですが、そうではなくて、朝に晩に海岸に出て浜辺を散歩したり、海水浴を楽しんだり、潮干狩りをしたり、そういう人にその埋め立てをちょっと待ってくれという権利があるかどうかというのが非常に問題になった。ところが、今の、これまでの考え方だと、それはだめですよということだと思います。
 今御指摘のように、憲法十三条に基づく人格権なり環境権という考え方からすると、私はそれを認めてもいいのじゃないかという気がします。そういう行政訴訟法であるべきではないかという気がいたしますので、その憲法上の権利あるいは憲法上の利益がここに書きました考慮すべき利益とすごいストレートにつながるかどうか、これは学者じゃないのでわかりませんけれども、そういうものを実現する行政訴訟制度であってほしいという気がいたします。

○水野参考人
 今回の、九条二項を設けたことによってどれだけ原告適格が広がるのかという御趣旨でございます。
 おっしゃるように、一から三まではこれまでの判例が認めてきたとおりじゃないか、四だけが多少広がる可能性があるか、こういう先生の問題意識で、御指摘はそのとおりだと思います。
 私どもの「考え方」というのを出しましたときには、今おっしゃった四つを並列的に並べておったんですね。今回の法律案では四番目の項目というのが二番目の項目の中に組み込まれた形になっておりまして、それが私としては若干気になっているところでございますが、いずれにしましても、原告適格を拡大する、今の判例の到達点よりも拡大するということで今回の法律ができておるわけでございますので、今おっしゃる四について柔軟に解釈していく必要があるだろうというふうに考えております。もちろん、憲法に保障された具体的な権利、そういったものも当然、先生のおっしゃった四のところで十分に考慮すべきものだというふうに考えております。

○柴山委員
 次に、義務づけ訴訟についてお伺いしたいと思います。
 実は、私も弁護士時代に、この義務づけ訴訟というものがあればややこしい国家賠償の請求なんかしなくても済むのになというようなことで制度化を非常に心待ちにしていた一人でございます。ただ、今回の義務づけ訴訟については、各界から要件がかなり厳し過ぎるのではないかという声が上がっております。
 よく挙げられる例では、原子力発電所の建設について、取り消し訴訟、これを起こす場合については、隣の住民が生命身体を害されるおそれがあるということで恐らく原告適格が認められる。ただ、結局、原子力発電所あるいは工場について、最新の技術水準に合うように改善命令を出してくれというような義務づけ訴訟を起こすためには、処分が行われないことによって重大な損害を生じるおそれがあって、かつ重大な損害を避けるためにほかに適切な方法がないことなどというような非常に厳しい要件が付加されているわけでございます。
 当然のことながら、取り消し訴訟よりもこういった改善命令の方が、少なくとも再考してくれという判決ぐらいはすぐに出せるのではないかと思うんですけれども、この要件の厳しさというものについて三人の参考人の先生方の御意見をお伺いしたいと思います。

○塩野参考人
 ただいまの御質問にすぐお答えする前に、先ほどの原告適格に関する四項目で、第四番目のものについては従来の判例はない、それまでは従来の判例のそのままではないかということでございますけれども、第四番目も従来の判例に見出すことができます。それから、そのまま引き写して従来の判例、既往の判例の固定化を考えているという御趣旨の御発言であれば、それは誤解であるということを申し上げておきたいと思います。
 私は、検討会の間におきましても、判例評釈はやめてくださいと。この四項目はそれぞれ一つの視点を持ってきたものである、その視点の素材は既存の判例からとったものですけれども、これをどう発展させ、どう組み合わせていくかは、それこそ裁判所、そして弁護士の役割であるというふうに考えております。
 それから、今のお話でございますけれども、これは原子力発電の施設の許可における許可の基準の問題をどう見るかということとも関係いたしますが、現在の最高裁の判例ですと、当時の科学水準というのは、つまり科学水準ですから常に新しい水準で見直す、そういう形になっておりますので、日本ではなかなか今のような、新しい技術が発展してきたので、あるいは知見が発展してきたので、今までのではどうも危ないから、取り消し訴訟ではなくて義務づけ訴訟を出すということにはなかなかならないんですけれども、ドイツではまさにそういう議論をしております。第三者に対する義務づけ訴訟の典型的な例が原子力発電所等の停止命令でございます。
 今の例ですと、私はまさにそのものずばりだと思います。原子力発電について、何かしら新しい知見でもって多少危険なものがあるということであれば、それはもう当然にこの三十七条の二は導き出せるということで、それを押しとどめるような議論は全くしたことがございません。

○藤川参考人
 お答えいたします。
 大変難しい問題で、私みたいな素人にはよくわからないんですが、やはり考え方としては、考慮すべきことを考慮し、考慮すべきでないことを考慮したというのは非常に問題であると思います。そういう意味において、現段階において考慮すべきことの内容として最新の技術水準を考えるというのは、それは当然のことだと思います。
 ですから、現在の水準から見て欠陥があるとわかったことについて、それについて差しとめるなり、あるいは補修を義務づけるなりというのは、周辺住民として僕は当然認められるべきことではないかという気がいたします。
 以上でございます。

○水野参考人
 御指摘の問題は、今回の義務づけ訴訟の要件では、一つは、一定の処分ということの解釈、これが問題になろうと思います。ただし、この一定の処分というのは、具体的な改善命令、どういう改善命令をせよというところまで特定しなくても、何らかの改善命令をせよというので一定の処分と解釈すべきだという、これは検討会で一致しているところでございまして、そこの点はまずクリアできる。
 それから、重大な損害については、これは原発のことですから生命身体にかかわる、これは重大な損害に当たるだろうと思いますし、その損害を避けるために他に適当な方法があるかどうかということについては、これは極めて例外的な場合のことを指している、例えば民事訴訟でやれるからいいじゃないかということにはならないということは、これまた確認されておりますから、この問題もクリアできる。
 原告適格が認められることについては、これは現在の判例でも認められておりますから、御指摘の事例については、義務づけ訴訟で何らかの改善命令をせよといった義務づけ判決ができるというふうに解釈できると思います。

○柴山委員
 今はわかりやすい事例で、恐らく、水野参考人がおっしゃったように、判決としては不当な判決は出ないであろうと思いましたが、ただ、要件論として、今みたいな厳しい要件がこの義務づけ訴訟で定められているということで何らかの不当な結論が出る可能性があるのではないかという問題意識だけは提起をさせていただきたかったわけでございます。
 さて、時間がほとんどないんですけれども、まだまだ、納税者訴訟についてもお聞きしたかったんですが、またの機会に譲らせていただくこととしまして、次の質問は確認訴訟についてでございます。
 確認訴訟の積極的な活用によって、処分性のない行政行為についても、その違法の確認をすることによって、行政庁に対して何らかのインパクトを与えることができるのではないかということについては、私も賛成でございます。
 ただ、この確認訴訟についても、やはり対世効がないという問題がある一方、また、確認の利益を厳格にとらえた場合に、それがどれほど救済に役に立つのか。あるいは、確認訴訟で違法が確認されたにもかかわらず行政庁が何らその違法状態を是正することなく放置していた場合に、それをどうやって改めさせればよいのかというような問題があると思いますが、これについて、お三方の意見を最後にお伺いしたいと思います。

○塩野参考人
 私どもが大変頭を悩ませている論点についての御指摘というふうに承りました。
 まず対世効についてでございますけれども、実は判決の効力については、検討会では十分な議論をする余裕がございませんでした。義務づけ判決についてもそうでございます。ここは私としては大変心残りのことでございますけれども、これは今後の学説、判例にゆだねざるを得ないというふうに思っております。
 判決の効力につきましては、昭和三十七年の行政事件訴訟法制定に際して、六年もかけて、その時々にその判決の効力についての議論がなされました。それ以後は、学説、判例、かなり積み重ねておりましたけれども、今度の検討会においては、それがいろいろな事情で間に合わなかったということでございます。
 それから、確認の利益について。これは一番頭の痛いところでございまして、これはだんだんに積み重ねていくよりしようがない。その場合の積み重ねとして、例えば、行政訴訟検討会で素材にいたしましたのはドイツの行政事件訴訟法における確認訴訟でございます。
 つまり、日本の民訴あるいは民訴法学はドイツ法を基礎に成り立っておりますけれども、ドイツの行政事件訴訟法でもこれだけ確認の利益を認めているではないかという資料が出てまいりまして、そういうことを参照にしながら、確認の利益というものについて、十分行政訴訟の特殊性を考慮しながら判断していただきたいというのが裁判所に対する私の希望でございます。
 それからもう一つ、それに従わない場合どうするか。これは、判決についてすべて同じようなことが起こるわけでございまして、例えば取り消し判決の拘束力というものがございますけれども、その拘束力に従わないで行動した場合にはどうなるか。例えばこれは、諸外国におきましては、裁判所侮辱罪的なものを使うとか、あるいは罰金を科するとか、そういった手だてをとっておりますけれども、日本の場合には、そこは割合従うという慣例がございます。それで、今回の場合も、判決に対しての違反、それに従わないということについては特段の措置は講じておりません。
 ただ、確認訴訟の場合には、同じく、準用規定におきまして行政主体あるいは行政機関に対する拘束力が働きますので、その拘束力が、従来の取り消し判決の拘束力と同じような意味合いにおいて、行政機関においてそれを守るということを期待しているという次第でございます。
 以上でございます。

○藤川参考人
 お答えいたします。
 だんだん専門的な話になってきまして、不得意な分野でございますけれども。
 まず対世効の問題でございますけれども、確認訴訟を求めた当事者が求めているものは何かというと、要するに、違法の宣言、それによって紛争の根源を絶つということだと思います。だから、取り消し訴訟と違って、確認訴訟の段階で、例えば、先ほど御指摘のありました違法な行政指導が行われたという場合を考えた場合、その指導そのものが違法であるということを宣言してもらえれば、それで指導を受けた側としては目的を達し得たと思います。そういう意味で、判決主文の主観的範囲といいますか及ぼす範囲をそれ以上に広げる必要があるのかな、取り消し訴訟と違ってあるのかなという気が私はちょっといたします。それはまあ素人の考えです。
 それから、確認の利益のことでございますけれども、そもそも、憲法で裁判を受ける権利というのを認めている以上、僕はかなり広くとっていいんじゃないかという気がします。今までの行政訴訟法は、憲法で認められている裁判を受ける権利を勝手に裁判所というか法律の都合で切っているわけですから、かなりもっと広げていいんじゃないかと思います。
 それから、違法状態については、僕はこういうことだと思います。行政というのは公益を目的としておりますから、裁判所によって違法と宣言されたものを追求することが果たして行政としていかがかという問題であり、行政はそういう意味で社会的な責任を追及されるんじゃないかと思います。

○水野参考人
 先ほど塩野参考人が御答弁されたとおりでございますので、それを援用させていただきます。
 一つだけつけ加えさせていただきますと、先生の御質問では、当然に、例えば行政指導、そういったものの、そのものの違法確認ができるという前提で御質問されたと思います。私も、今回、確認訴訟の関係で、公法上の法律関係の確認というのが例示されましたけれども、法律関係に置き直せない場合においても、行政処分的なもの、例えば行政指導とかありましたけれども、そのものの違法確認を求めることができるというふうに今考えておりますので、そのことだけつけ加えさせていただきます。

○柴山委員
 五分ほど時間がオーバーしてしまいました。後続の御質問の方に御迷惑をおかけしたことをおわび申し上げます。
 本当はもっと具体的な事例をとらえて申し上げたかったんですけれども、初めての質問ということで、多々不手際な点があったことをおわびしたいと思います。
 以上です。どうもありがとうございました。